○小川省吾君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程議案とされました
地方自治法の一部を
改正する
法律案に関して、その
基本的な幾つかの点について、総理並びに関係閣僚の所信と見解をただすものでございます。(
拍手)
まず第一に、
田中総理にお尋ねをいたしますが、あなたは総理として、
憲法、
地方自治法の
精神にのっとり、
地方自治を充実をさせ、
住民の
福祉を守る
行政を執行することは、けだし当然であろうと思うわけであります。
しかしながら、今回
提案されているこの法案は、一方では、第三十九国会以来、わが党が
地方自治法の
改正案として
提案をしてまいりました
区長公選という
地方自治拡大充実の
内容と、片や
住民自治無視の一部
事務組合の
改正、いわゆる連合法案を一本にして盛り込んだ、まさに木に竹をついだというか、薬の中にカプセルをかぶせた毒薬をまぜたような
内容になっておるわけであります。(
拍手)
地方自治の本旨を、まさに両極端に踏み違えられているわけでありますけれども、私どもは、かねがね分離をして
提案をするよう
政府に申し入れをしてきたわけでありますけれども、抱き合わせにして出してきたということは、
区長公選を実現しようとする
意思がほんとうにあるのかどうか、疑わざるを得ないわけであります。一本にして出してきた
経過とその意図を明らかにしていただきたいのであります。
先ほどの
港湾法にも見られるとおり、
地方自治体に対する
政府の
権限が強化されようとしております。国土総合
開発法をはじめとして、このような
地方自治体に対する
権限の強化がされようとするときに、連合が再び出てくるということは、真に
地方自治を守り、発展させようという
意思があるのかどうか、きわめて疑わしいので、この際、総理の
地方自治に対する所信と決意のほどを明らかにしていただきたいのであります。(
拍手)
また、いまからでもおそくはない、この際、この法案を撤回をして、分離をして、再
提案することを強く要求をするものであります。(
拍手)
また、この点について、
地方自治を守るべき直接の衝に当たる江崎自治大臣の見解をあわせて明らかにしていただきたいのであります。
次に、第二点として、一部
事務組合の
改正、いわゆる連合条項についてお尋ねをいたします。
この
改正は、第六十五国会以来問題法案として取り扱われて、廃案になってきたものであります。
住民の
自治体に対する期待と輿望を裏切るものであり、明らかに第二次市町村合併の促進であり、府県連合、道州制への布石であり、わが党の容認し得ないものであります。
今回は、従来問題にされてきた諸点を削除をして
提案をしてきておるわけでありますけれども、本質的には、その意図する点は変わっていないと判断をするものであります。この府県連合と新たな市町村合併を進め、
自治体を
日本列島改造の受けざらとしようとする
改正点について、いま四年目を迎えた広域市町村圏の実態に触れつつお伺いをいたします。
広域市町村圏の
運営の現状はまちまちでありますけれども、大体において一つの
自治体から首長なり
議長あるいは議会常任
委員長等が参加をしておるわけであります。基礎である構成
自治体の議会は無視をされ、事前協議や同意も求められず執行され、広域圏の組合議会に必要以上の
権限が集中をされているケースが多いわけであります。
住民意思はほとんどくみ上げられず、中核である市などの都合により振り回され、負担金に悩んでいる弱小町村も数多くあるのであります。
さらに、構成をする市町村議会の少数党の
意見は締め出されている場合が多いわけであります。
幸いというか、現状では消防とか道路
整備等の事業が多いので、問題は少ないわけでありますけれども、屎尿
処理施設の建設場所をめぐる問題や、あるいは
住民自治という観点から見た場合には、多くの問題点を含んでいるわけであります。
今回の
改正点は、いわゆる複合的な組合を意図をし、各
自治体に共通をしない
事務をも包含し得ることになっております。幾つもの
事務事業が一部の代表者によって
運営をされ、本来の市町村の
事務が連合に吸収をされ、
憲法違反の独裁化のおそれすらあります。これは明らかに広域市町村圏に法的地位を与え、府県と市町村との間に中間的な
自治体をつくる構想であり、これを強化することによって合併を誘発、促進をさせ、府県連合への方向づけをねらっているものと断定し得るのであります。
本来、
法律なり
制度なりは、国民の要望に沿って
制度化、法制化されていくことが当然のはずであります。そこでいわゆる連合、包括組合の性格はどうなのか、広域市町村圏との関係、位置づけはどうなるのか、組合議会の
運営、その財政をどう進めようというのか。
以上の諸点について、所管の自治大臣の答弁を求めるものであります。
総理、あなたは、あなたの著書といわれる「
日本列島改造論」の中でこう述べておられます。「国土改造の中における
地方自治体の役割はきわめて大きい。
日本列島再編成のため、
行政の
広域化が促進されるべきである。その手段としては、まず、市町村を基礎的な地方団体として強化するため、市町村の第二次合併を積極的にすすめ、その
行政力、財政力を強化することである。現在の府県
制度は
行政区域としてはせますぎるし、
行政単位としても国と市町村のあいだに立ってあいまいな性格をもっている。
現行制度の改廃を含めて将来の府県
制度のあり方を根本から検討する時期にきている。その場合、新たに広域ブロック単位で国と
地方自治体の中間的性格を持つ新しい広域地方団体を設置するのもひとつのアイデアではないか。」と述べておられるわけであります。明らかに第二次市町村合併と府県連合を、府県をこえる
自治体づくりを示唆をしているわけであります。
この発言や記述を踏まえて、いわゆる連合の意図するところについて、総理の考え方を率直にお示しをいただきたいのでございます。(
拍手)
第三に、
区長公選に関連をしてお尋ねをいたします。
私どもは、
昭和二十七年以来この運動を進めてきたものとして、いまようやく日の目を見ようとする
自治権拡大の公選制実現については、大いに賛意を表するものであります。本来、
住民自治の本旨は、
住民みずからが、みずからの首長に対する選挙権、被選挙権を持つこと、すなわち
行政への
住民参加がその
基本であると思うわけです。特別区においては、長年にわたってゆがめられていた自治が、本来の姿に戻るわけでありますから、歓迎をすべきことであります。
公選に関連をして、数点、自治大臣にお尋ねをいたします。
第一に、当然、区に多くの
事務が帰属をしているわけでありますけれども、
業務として、その性格から区分することが困難であり、むしろ都に残すことが都民サービスになると思われる
業務がございます。
清掃なり下水道なり消防なり、いま
趣旨説明されたように、典型的な
業務であるというふうに思いますけれども、その他、
法律または政令等で都知事に属する
事務というふうにいわれておる点について、予想されるものがあるのかどうか、まずお尋ねをいたします。
次に、配属職員の問題でありますけれども、人事権を確立することは当然でありますけれども、余人をもってかえがたい職、現状においては充足をすることが困難と思われるような職群については、依然として配属とか出向とかいう職が出てくるのではないかと考えます。たとえば医師等についてはどのようになるのか、あるいは出向するような
立場に立つ職員があるのかどうか、明確なお答えをいただきたいのであります。
また、現在空席である
区長、本年から来年にかけて任期が満了になることが明らかである
区長があるにもかかわらず、即時
施行とせずに、五十年四月
施行とした
理由はなぜか、明らかにしていただきたいのであります。
さらに、財源問題について明らかにしていただきたいと思います。
現行地方自治法や地方交付税法の中では、都に対する特例の扱いをいたしておるわけでございます。超過密の大都市東京においては、大都市としての財源
確保がいまは何よりも必要であります。第十五次の
地方制度調査会でもその点を指摘をいたしておるわけでございます。公選制
提案のこの時期こそ、まさにその機会であるはずであります。また、自治法
施行時の公選制が
昭和二十七年にくずれ去ったのも、実にこの財源問題にあったわけであります。
あらゆる産業の本社、事業所、
管理部門が集中をし、産業、文化、
交通、情報等の中枢としての東京は、地価の高騰、住宅難、通勤難、大気
汚染等をはじめとする各種
公害、物価高、等、
生活環境のすべてが、いま打開をし、解決をしなければならないときに迫られております。また、膨大な都民の要求に根ざす
行政需要を持っております。巨大な集積、集中による不利益が、もろに都民におおいかぶさっているわけであります。
これらを解決するためには、巨額な原資が必要であります。
しかし、現状では、大都市財源としての特別な手だては何一つ講ぜられていないのが実態であります。公選制を実施をし、普通
地方公共団体並みの仲間入りをするいまこそ、過密集中の大都市に対し、適切なる財源
確保とその配分こそ、考慮さるべきであります。当然、いまこそ地方交付税法第二十一条の「都等の特例」は廃止すべきときだと考えます。
特別区に対する今後の財源の付与、大都市財源の
確保とその配分について、自治、大蔵両大臣の見解を明らかにしていただきたいのであります。(
拍手)
次に、第四点として、東京都の議員定数についてお伺いをいたします。
御承知のように、都議選はこの六月二十六日公示でございます。いまごろ出してくること自体が不親切きわまるわけであります。この案によれば、
現行百二十六でいくということでございます。都道府県の議員定数は、法第九十条で定められているところでありますけれども、都道府県にあってはその定限を百二十人、都にあっては百三十人といたしておるわけでありまして、第二項で、特別区の人口を百五十万人で除することになっております。申し上げるまでもなく、いま人口のドーナツ化現象が進んでいるわけでございますし、超過密の
行政需要にこたえていく都議会の重要性からしても、むしろ、私は、百五十万条項を削除をしてよろしい時期に到来をしたのではないかと考えます。また、そのことが都民の期待にこたえるゆえんであると思いますけれども、自治大臣の見解はどうか、明らかにしていただきたいのであります。
最後に、私は、このような自治法の大
改正をするならば、当然
改正案として
提案すべき緊急な、地方の長年の要望があったはずだと思うのであります。
あらゆる
制度なり
法律は、人によって運用し執行されるものであります。すべての
行政も、その職員の理解と協力を得て実施をされてこそ初めてその
効果をあげ得るわけであります。
職員問題について、一、二見解をただしたいと存じます。
その第一は、法第百七十二条とその関連条項であります。
「普通
地方公共団体に吏員その他の職員を置く。」という、いわゆる「その他の職員」
規定が、長年にわたり地方公務員に差別と分断と大きな混乱を生じさせているのであります。公務員試験合格者にあらためて吏員昇任試験を課してみたり、同一
業務に携わりながら差別がつけられておったり、他人名儀で滞納処分等を執行したり、自己の名前では起案文書も書けないというような実態があるわけであります。そして、ひいては女子職員に対する差別になっているわけであります。自治労の身分差撤廃闘争によって是正をされつつありますけれども、百七十二条とその関連条項が存する限り、問題は残るわけでございます。若い職員の勤労意欲を減退させているわけであります。
この際、百七十二条と関連条項を
改正をして、
地方公共団体の
行政の円滑なる推進のため、差別をなくすべきだと考えますけれども、その
意思があるかどうかお尋ねし、どう解決し対処されようとするのか、自治大臣の見解をお聞きしたいのであります。(
拍手)
次に、長年の懸案の附則第八条であります。
「当分の間、なお、これを官吏とする」といういわゆる自治法
施行時の
経過規定が、実に四分の一世紀以上も生き続けているわけであります。社会保険、国民年金、職安、失業保険関係職員等の身分を、名実ともに都道府県に移管をさせるため、附則第八条は即刻撤廃をすべきであります。佐藤前首相や歴代自治大臣も、その方向を明らかにしている問題でもあり、この際、決断と実行をもって、附則第八条を削除をして、長年の懸案にいまこそ決着をつけるべきであります。自治大臣、
田中総理の見解と決意のほどを明らかにしていただきたいのであります。
以上、私は数点にわたり、
地方自治の本旨に沿って質問を申し上げました。
政府が真に
地方自治を守り、発展をさせる
意思があるならば、この際、
区長公選を直ちに実現をし、連合条項はあくまで分離をすべきだと、重ねて強調いたすものでございます。(
拍手)
田中総理以下関係閣僚も、
憲法や
地方自治法の
精神にのっとり、前向きの答弁を期待し要請をいたしまして、私の質問を終了いたします。(
拍手)
〔
内閣総理大臣田中角榮君
登壇〕