○清水徳松君 ただいま御提案になりました
都市計画法及び
建築基準法の一部を改正する
法律案に対しまして、私は、日本
社会党を代表いたしまして、
総理並びに
関係閣僚に対しまして、若干の御
質問を申し上げたいと存じます。(
拍手)
まず、
質問の第一点は、都市計画の推進に重大なる支障を与えておる最近の異常な地価の値上がりについてであります。
昨年六月、田中
総理は「日本列島改造論」なる著書を公にいたしました。日本列島改造を国の政策の軸とすることを公約され、その公約をもって自民党の総選挙に臨まれました。そして総裁となり、
総理となられたのであります。そのことがいわゆる列島改造ブームなる開発ブームに拍車をかけたことは、まぎれもない事実でございます。すなわち、不動産、金融業、建設業を中心とする大企業は、日本列島改造利益の先取りに狂奔をいたしまして、争って土地の買い占めに走ったのであります。
その結果は、御承知のごとく、全国津々浦々に及ぶ土地の買い占めと地方における地価の異常なる暴騰でございます。全国至るところの無秩序、無計画なる乱開発と自然の破壊、そしてがけくずれ、地すべり等の災害の発生でございます。
建設省がこの四月一日に発表した地価公示法に基づくあの公示価格におきましても、対前年比三〇・九%という土地の異常なる値上がりをはっきり示しております。有効なる土地利用計画とそれに基づく土地利用の具体的な規制
措置、あるいは地価抑制のための実効のある政策手段を用意することなしに「日本列島改造論」を発表し、そして、今日のこのおそるべき土地の値上がりを招いたことに対し、田中
総理は、一体いかなる反省と
責任をお持ちになっておるか、御
説明を願いたいと思います。(
拍手)
もちろん、土地の買い占めと乱開発は、「日本列島改造論」を発表する以前より進行しておったとしても、これを一そう刺激したことの
責任は、まことに重大であります。
総理の明確な御答弁を求めるものでございます。(
拍手)
質問の第二点は、田中
総理の土地問題に対する
基本的な
考え方、あるいは御認識についてであります。
総理は、その著書「日本列島改造論」において、「土地は、生産できず移動もできない。供給の限られた土地は、
国民全体の富と福祉の増大に役立つよう有効に利用しなければならない。そのためには、土地利用について私権よりも公共の福祉を優先させることが大切である。」と述べられ、公共優先を強調されております。ところが、その一方、「個人の土地所有権が個人の財産として尊重されるのは当然だ」とも申し述べられておるわけであります。
そこで、
総理にお尋ねいたしますが、現在の時点で、土地について公共優先の原則をどこまでお貫きになる
決意であるのか、お伺いをいたしたいと思います。
また、現行憲法下で、土地所有権に対する公共の福祉からする制限をどこまで可能であるとお考えになっているか、明確なる御答弁をお願いをいたします。
「土地は商品ではない」と瀬戸山前建設大臣が
発言をし、土地の
公共性をうたわれたのは数年前であります。以来、歴代の建設大臣は、公共優先の原則に立ち土地対策を進める旨約束しており、現在の建設大臣金丸さんも、
委員会の席上において、土地問題を解決することは建設省の政治問題の大半を解決することになるとまで思い詰めておる、こういうふうに言っておられますが、しかし、実際は、全くその成果はあがっておりません。むしろ、土地税制に見られるがごとく、かえって
政府が地価の高騰をあおる結果となっているではありませんか。諸物価が急激に値上がりし、インフレが進行している今日、土地は最も安全かつ有利な財産として、その財産価値のみが強調され、また、企業にとっても最も有利な商品として、投機の
対象とされ、その中心とすらなっているではありませんか。
総理が、土地に対する公共優先の原則について、単なることばではなく、実効のある態度で示されようとするならば、大企業による土地買い占めの排除、あるいは大企業によって買い占められた土地を公共の福祉のために有効に吐き出させる具体策を用意し、それを直ちに実行に移すべきであると考えますが、
総理の明快なる御所見をお伺いをいたします。(
拍手)
質問の第三点は、
都市計画法に基づく市街化区域、市街化調整区域の区分け、いわゆる線引きに対する
総理の御認識についてであります。
御承知のように、
昭和四十四年六月、新
都市計画法が施行されて以来、今日まで、都市計画区域の決定、市街化区域と市街化調整区域との区分け、いわゆる線引き、この作業が進められ、現在その作業がほとんど完了するところまで至っております。
ところが、新聞紙上に報ずるところによれば、田中
総理は去る一月二十六日、土地対策要綱を閣議で決定するに際し、この市街化区域、市街化調整区域の線引きの再検討を命じ、市街化調整区域内での宅地化を促進させることを考えるべきではないかと述べたといわれておりますが、その事実がはたしておありになるのかどうか。もし事実であるとするならば、建設大臣はそれを受けとめまして、いかなる御検討を加えられておるのか、それをお知らせ願いたいと思います。(
拍手)
このことは、地価の安い市街化調整区域で、企業による大規模な土地の買い占めが進行してしまった今日、宅地の供給を増大させるという名目のもとに、結果的には、大企業による土地投機の現状を追認し、土地を買い占めた不動産業者、金融業者等に著しい利益をもたらすことが明白でございます。
政府がとるべき
措置としては、新たなる混乱を引き起こす線引きの再検討や、あるいは市街化調整区域内での大規模開発の許可ではなくて、市街化区域内の宅地化の促進であり、そうしてまた、土地の有効利用の促進のための具体的な実行であろうと思います。せっかく
関係者の
努力によって実施された線引きについて、この際厳格にこれを守り、そうして、調整区域内での開発はこれを認めないという、明確な御答弁を求めるものでございます。(
拍手)
質問の第四点は、今回の
都市計画法の改正によって、不十分ながら、都市計画区域に編入されておる地域については開発の規制が実施されることになりますが、都市計画区域外のいわゆる無指定地域における無秩序な開発に対して、いかなる
措置をお考えになっているかについてであります。
去る一月二十六日に決定された土地対策要綱では、「
昭和五十年の三月をめどに全国的な総合開発計画を策定し、また全国土にわたる土地利用
基本計画を策定して、この計画に基づき、開発
行為については適正な規制を行なう」と述べているが、列島改造ブームに乗って全国各地で乱開発と自然破壊が急激に進行し、各種の災害が引き起こされている今日、
昭和五十年三月までの間、今回の
都市計画法改正による開発規制の適用の外に置かれ、しかもまた、森林法、農地法等による規制の網にもかからないところのいわゆる無指定地域の原野等における乱開発に対して、
政府はいかなる
措置を用意されておるのか、建設大臣より明快なる御
説明をお願いするものでございます。(
拍手)
質問の第五点は、現在、レジャーブームの波に乗って、全国至るところで無秩序に行なわれておるゴルフ場の造成に対する規制の
措置についてであります。
建設省の調査でも、現在開発されているゴルフ場の数は六百にものぼります。そうしてまた、計画中あるいは造成中のものが七百件もあるというではありませんか。ゴルフが大衆化した現在、ゴルフ場の造成を今後一切認めませんといったようなことは申しませんけれ
ども、この狭い国土を有効に利用し、公共の福祉の向上をはかるという観点に立てば、ゴルフ場の開設を無制限に認めるということは、現在、多数の
国民が宅地難あるいは住宅難に苦しんでいる今日、いかがなものでございましょうか、はなはだ疑問であるといわざるを得ません。(
拍手)
大規模な土地の開発を必要とするゴルフ場の新設については、自然環境の保全や土地利用の優先順位の面からきびしい規制を行なうべきであると考えますが、ゴルフ場の新設について特別の
措置を講じられる御用意があるのかないのか、金丸さん、ひとつ御答弁を願いたいと思います。(
拍手)
今回の改正によって、都市計画区域内におけるゴルフ場の造成については、新たに災害防止の見地から開発許可の制度が設けられ、不十分ながら規制の
措置がとられることになりましたものの、改正法では、ゴルフ場の造成について、開発を抑制する
立場から厳格なる制限を設けておる
都市計画法三十四条の市街化調整区域における開発許可基準の適用を除外をいたしまして、ことさらに三十三条の
一般的な開発基準を適用することとしておるわけでございます。この結果、現在大企業が買い占めておる市街化調整区域内のゴルフ場の開発はきわめて容易になり、さなきだに拍車をかけておる調整区域内でのゴルフ場建設ブームをますます容易にするものであるということを考えるときに、調整区域内での開発は絶対に認めないという本来の
趣旨に戻り、ゴルフ場の造成についても厳格なる規制を加えるべきであると考えますが、この点について建設大臣の確固たる御答弁をお願いをするものであります。(
拍手)
質問の第六点は、市街地開発事業についてであります。
今回の改正で、市街化区域内での市街地開発事業の施行を容易にするために、予定区域の制度が創設されることとなりましたが、その前提として、現在市街化区域として指定されている区域内に、新住宅市街地開発事業等の大規模な宅地開発を行なうその適地がどの程度存在をするのか、建設省が先般行なわれた宅地開発適地調査の結果をもとに、その明らかなる数字を示していただきたいと考えるわけであります。特に、首都圏、近畿圏、中京圏においてはどれぐらいあるのか、具体的にお示しを願いたいと思います。
さらに、これに
関連して、土地区画整理事業についてもお伺いをいたします。
今日、市街化区域における住宅建設のために行なう土地区画整理事業の持つ任務はきわめて重大であります。しかるに、その非民主的な運営の
ゆえに、さらに減歩率や費用
負担をめぐりまして問題が多く、事業の計画、施行が妨げられている場合もきわめて多いのであります。
政府は、区画整理法を改正して、運営には借地、借家人の代表を役員に加えるなど民主的に行ない、減歩についても原則として有償とするなど、また施行についても地方公共団体が直接当たるなど、抜本的な
改善を行なうならば、市街化区域の宅地開発は大きく前進することが明らかであります。
政府の御見解をお示し願いたいと思います。
最後に、都市計画事業の推進と日本の農業の振興対策について、
総理並びに農林大臣にお伺いいたします。
今日の乱開発と国土の荒廃の原因は何でありましょう。それは
政府の農業に対する対策及び
指導の誤りであります。(
拍手)大資本本位の高度
成長政策が、農民に農業に対する自信と誇りを失わせ、いたずらに農業放棄に追いやり、土地買い占めのえじきたらしめたではありませんか。
総理の「日本列島改造論」のごときも、この誤った
指導にさらに拍車をかけた以外の何ものでもございません。
しかし、いまや、乱開発と国土の荒廃は、
人間生存の基盤を大きくゆるがしております。これを見過ごすことはもう許されません。農業、農地、農家の犠牲の上に立って工業生産を高めようとする農業と工業の二律背反の時代はもう過ぎて、いまや二者一体の時代に移りつつあるということを考えなければなりません。農業の荒廃が都市の荒廃につながることがいまや明白になりつつあるときに、日本農業は、単に食糧供給のにない手だけではなくて、
人間生存の基盤としての環境保全という重大な使命を持っておったということを忘れてはなりません。(
拍手)林業や漁業についても全く同じであります。
都市計画法第二条においても、都市計画と農業の調和をはかり、土地の合理的利用を進めることを都市計画の
基本理念としているではありませんか。
日本農業のになう
役割りをあらためて発見をし、そして再認識をし、日本農業振興のために、
予算、財政、金融、税制、経営技術、労働
教育、文化など、あらゆる面からの勇気と決断をもっての抜本的対策を行なうべきであると考えますが、この際、
総理並びに農林大臣の明確なる御答弁をお願いをいたしまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣田中角榮君
登壇〕