○和田耕作君 私は、
民社党を代表いたしまして、ただいま問題になっております
健康保険法の問題あるいはそれに
関連した問題について、総理あるいは関係大臣の御所見を承りたいと思います。(
拍手)
わが国の
医療は、ほんとうに
国民の
医療のために役立っておるのか、この問題を真剣に考えてみる時期にきておると思います。
いままで十数年にわたりまして、この
健康保険法の問題をめぐって、
政府あるいは
医療関係者で熱心な討議を重ねておりますけれども、しかし、やればやるほどおかしくなってしまう。一歩前進するように見えて、実際は二歩後退をしておるという繰り返しではないかと思います。
総理、このような問題をどのようにお考えになるのか。つまり、このような問題についての切っ先の入れ方が間違っておるのじゃないのか。一番大事なことは、いろんな
制度をこまかくすることではないのでございまして、りっぱなお医者から、りっぱな
医療機関から、りっぱな
医療サービスを受けられるようにすることです。議論があんまり
保険制度のこまかな点にばかり入って、支払う側はできるだけ少なく払う、お医者さんのほうはできるだけもうけるように、このような観点からこの問題を議論するから、いつまでたってもよくならない、ますます悪くなる、このようなことじゃないかと思います。
総理、ひとつこのあたりでこのような悪循環を断って、国はもっと真剣になってお金を出して、そして正しいお医者さん、正しい
医療機関ができるにはどうしたらいいかという問題を突っ込んでいただきたいと思いますが、総理の御所見を承りたいと思います。(
拍手)
現在、いままでいろいろの質問者が述べましたように、日本はたいへん危険に満ちた状態だと思います。産業公害あるいは都市公害、交通事故の激増、それに加えて成人病の増加、難病の続発など、
各種の傷病の危険に対して、
国民はたいへん生命、健康を脅かされておるのでございます。これに対して、
医療機関の
整備は全く立ちおくれの状態である。過疎地帯の
医療の
確保はますます困難になっておる。大都市においても
医療機関は混雑をきわめておる。一日がかりの診断を受けなきゃならぬのが通常である。入院するにもかなりの期間が必要であり、そしてまた、入院となれば、高額な差額
医療やあるいは高額な付き添い料を出さなければ入院できない。
特に、私がここでお訴えしたいことは、救急病院の状態の乱脈でございます。また、夜間あるいは休日の診療ができなくて困っておる問題でございます。そしてまた、一方では、病院などはたいへん深刻な赤字に悩んでおる、人手不足に悩んでおる、看護婦等の
確保ができない、せっかくの病床を利用するにも事欠くというような、不合理千万な問題が山積いたしております。
このような状態にもかかわらず、
医療を担当する労働者は、驚くほどの低賃金にあえいでおる。患者も、病院も、労働者も、
関係者すべてが苦しんでいる状態があるわけでありまして、これがはたして福祉国家の
医療といえるかどうか。私はまず総理に、このような問題について、総理は深い反省を持っておられるのか、申しわけないことだったということが言い切れるのか、その点からお伺いを申し上げてみたいと思います。
そうしてまた、先ほど抜本策の要求に対して、総理は、何とかしようと思っていま検討しておるのだというようなお答えでございますけれども、抜本策の検討も必要ですけれども、いま申し上げたような問題が山積しているわけでございまして、このような問題についての効果的な具体策を精力的に準備しなければならないと考えております。このような問題について総理の御所見をお伺いしたいと思います。(
拍手)
また、
厚生大臣に対しては、過疎地帯の
医療はますます困難になっておる。
昭和三十一年から対策をしておると言っておりますけれども、ますます困難になっておる。これで一体
国民の皆
保険なんということが言えるかどうか。
第二に、また、高額な差額ベッドや付き添い看護人の
負担の問題がある。このような問題を
解決しないで、給付の
改善や、また先ほどから、この法案にあります高額
医療の問題等のことをいばっておりますけれども、はたして、こういう問題に対して手をつけないで、
政府は給付の
改善をしたということができるかどうか。また、その次には、病院等の赤字、看護婦の
確保についてお伺いをしたいと思います。
病院の占める役割りというのは、ますます重要になっております。
一般の開業医に比べて、病院の赤字の状態がひどいということは常識となっております。また、看護婦の不足も、病院においてはなはだしいといわれている。この際、病院の基本
施設その他について、国はもっと配慮が必要である。この病院の状態を、中医協で代表する代表がいないなんということはおかしなことです。
厚生大臣は、この問題について即刻対策を講じて、病院の状態について中医協が十分理解するような処置を講ずべきだと思います。
また、その次には、救急病院の拡充の問題でございます。
いま、交通事故にかかった。救急病院に行く。あの病院がいい、この病院が悪いなんという判断はできない。しかし、救急病院では、このような患者に対して、はたして親切な、良心的な治療をする体制にあるのかどうか。また、夜やあるいは休日の患者の問題がさまざまな社会問題になっております。このような問題を処理するために、どうしても救急病院というものの中に、休日や夜間の診療を義務づける要員の配置が必要だと思いますけれども、この問題について
厚生大臣はどのようにお考えになっておるのか、お伺いをしたいと思います。
その次に私は、現在一番大事な問題、
医療担当者側の中核となっているお医者さんの問題についてお訴えをしてみたいと思います。
保険制度やいろいろな機関の拡充も必要ですけれども、それにも増して重要なことは、信頼のできるりっぱな医者をどうして
確保するかということだと思います。かりに、量的に
医療機関が拡充した、形だけりっぱな
保険制度ができた、安い
保険料で十割の給付が得られたとしても、肝心の医者の質が悪ければ何にもならないのでございます。
医療は他のサービスと違って、
国民の健康と生命を守るというかけがえのない仕事をしており、また、病人は医者を選ぶ権利があるとはいっても、事実上は、医者の無条件な管理下に置かれておるというのが実態でございます。
このようなお医者さんが、薬を売らなければ
収入が得られないというような
保険制度は、早急に改めなければなりません。薬は薬剤師の職分であることは、
昭和三十一年の
法律ではっきりしておる。最初に自民党の代表の方が言われた医薬分業の問題、これはただ一つ正しいことを言われたと思って感心をいたしておりますけれども、この問題については、
法律の
趣旨を忠実に実施するという点において、自民党
政府はさぼっておった。
昭和三十一年にはそういう
法律ができておるんだから、それをやらないというのはさぼっておったことになる。ぜひともこの問題に着手しなければならない。具体的にどうしたらこの問題が
推進していくのか、この問題について
厚生大臣のお答えをいただきたい。
また、これに見合う問題は、お医者さんの待遇
改善の問題でございます。生命を守る高貴な職分にあるお医者さんにふさわしい
収入が得られるように、十分な診療報酬の
制度をつくるべきであります。そのために一時的に
医療費がかさむとしても、よい
医療が受けられれば
国民は納得すると思います。
この二点について、総理と
厚生大臣の責任のある御答弁をいただきたいと思います。
最近、私は日本医師会会長の武見さんとお会いいたしました。武見さんは非常にりっぱな本を出されております。「将来における
医療水準
確保のために」という本でございますけれども、この本で強調されていることは、日本の社会
保険のこの体制のもとで、日本の医師の技能がいかに低下しておるかという問題を書いておるのでございます。また、これについて、国家試験を含めて、そしてお医者さんの再訓練の問題を含めて、かなり的確な、そしてきびしい
提案をしておるのでございます。医師会の責任者である武見さんがこのような勇気ある
提案をしていることに対して、私は敬意を表したいと思います。
総理、このような問題について、日本のお医者さんの技術水準が低下しておる、どうしたら上げられるかという問題について、ぜひとも考慮していただきたいと思います。
これと
関連して、私は、ぜひともここで申し上げたい問題がございます。
現在、特に私立大学で裏口入学といわれておる問題でございます。文部省の調査によりますと、
昭和四十六年、いまから二年前の調査によれば、私立大学の医学部の入学生は二千百三十七人、そのうち六五%に当たる千三百九十三人は、多額の寄付金を納めて入学しております。その総額は八十三億五千二百万円にのぼっております。一人平均六百万円、最高は二千百万円出しておるというのが文部省の調査でございます。
昭和四十八年の三月現在、医科大学に入学する総数は、国立は三千四十人、公立は五百八十人、私立は二千五百八十人、合計六千二百人の人たちが入学するのでございますけれども、この私立の二千五百八十人のうちの六五%といえば、千六百人以上が裏口入学であることは確実でありましょう。しかも現在では、その寄付金は平均一千万円ともいわれておる。最高は三千万円ともいわれておる。
総理、このような状態を放置して、いい医者ができると思いますか。
事実、現在お医者さんになるには、大学を卒業する、大学を卒業して国家試験を受ける。卒業するときに落第するものは一人もいない。国家試験の合格率は九八%だといわれておる。このような国家試験は無意味じゃありませんか。つまり、このようにしてできたお医者さん、毎年つくるお医者さんの三割近いものが、このようにしてつくられておる。
国民は、このような方から
医療サービスを受けておる。
総理大臣、文部大臣、
厚生大臣、この事実を放任する
政府の責任は重大だといわなければなりません。この点だけについて、私は武見さんの
意見に
賛成です。国家試験のやり方を含めて、
政府は早急に対策を講ずべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
第三は、
健康保険法の
改正の問題についてであります。
政府は、今回の
改正案を、給付の
改善と
財政の
健全化を目的としたものだと述べておりますけれども、六割給付にせよ、高額
医療費にしても、すべて、昨年
国会に
提案した、そして廃案になった、そのままのものを
提出されております。ほとんど目新しいものはありません。
しかも、家族の六割給付に至っては、
社会保険審議会でも社会保障
制度審議会でも、七割給付にすべきだと強く答申をいたしております。なぜ七割にできなかったのか。かりに本年できなくても、来年できる。
法律では、今年から実施するとして、来年からやりますということがどうして言えないか。この点についての
厚生大臣の御所見を承りたいと思います。
次に、高額
医療費の
制度についてであります。
そのねらいとするところは、一応評価することができると思いますけれども、月に
自己負担が三万円ということになれば、勤労者の平均の所得の四割近いものになります。このようなものを毎月毎月納める。大部分の
国民にできると思いますか。できやしませんよ。三万円にしたその根拠をひとつ教えていただきたい。
そしてまた、三万円を二万円あるいは一万円と少なくしていく予想をしておられるのか。現在、少なくとも三月ぐらいあとには全額を国が補償するようなことを考えていないのか。このような問題について
厚生大臣にお伺いをしたいと思います。
次に、弾力条項について。昨年、本院において修正、削除された
保険料率の弾力条項とほとんど類似の形で再
提出をしていることは、これは何と言っても議会の軽視だといわざるを得ないのです。少なくともこのような問題を出す場合には、去年の本院で議論になった諸点を参考にして、どのような場合にこの弾力条項を発動するのかという、具体的な内容を明らかにするぐらいのことはしなければなりません。そうしなければ
審議のしょうがないじゃありませんか。このような意味において、私どもは
政府のこの問題についての真剣さを疑わざるを得ないのでありまして、反対せざるを得ないのでございます。
また、ボーナスの問題に対する
特別保険料の徴収が今回も
提案されておりますけれども、これは、
一般の
保険料では見合うものがあります。たとえば出産費あるいは傷病手当を増加するとかいうような見合いがありますけれども、このボーナスの問題についてはそのような見合いが一つもない。
収入一方のものだ。こういう点はぜひともお考えを願わなければなりません。やめていただかなければなりません。
保険料率の
引き上げについても、内容は昨年の案と全く同じものであります。
政府の
説明では、給付の
改善を行なう、それだから
保険料率の
負担は当然じゃないか、こう言っておりますけれども、
審議会の七割はやらないで、六割程度でお茶を濁しておって、
負担増を言うということは、
国民を愚弄するものになりはしませんか。