○金子満広君 私は、
日本共産党・
革新共同を代表して、
国鉄運賃法等
改正案について、
総理並びに
関係閣僚に
質問いたします。
言うまでもないことでありますが、この法案は、今
年度の大幅な
運賃値
上げを手始めに、今後十年間に四回にわたって、相次ぎ値
上げを行なおうとするものであります。物価高に苦しむ
国民への新たな重大な挑戦といわなければなりません。(
拍手)これこそまさに
政府みずからが先頭に立って、物価高を促進しているものであります。
政府、
国鉄当局は、今回の値
上げによる物価上昇率への影響は〇・四%にすぎない、このように強弁をしております。しかし、すでに
政府統計によっても、四十七年の
国鉄の
旅客運賃は、四十年に対して一六七・九%にも達しており、これは同じ期間の消費者物価の上昇率一四四・九%さえ大きく上回っておるのであります。これをさらに値
上げしようとする
政府の態度は、物価高に苦しむ
国民を全く無視するものといわなければなりません。(
拍手)
しかも、
国鉄のこのような値
上げが行なわれるならば、私鉄
運賃をはじめ公共料金、諸物価の値
上げに一そう拍車をかけることは火を見るよりも明らかであります。
国民の怒りは日増しに強くなっているのであります。
政府は、これでもなお、
国鉄運賃の値
上げが物価に影響を与えない、そのように言い張るつもりかどうか、
総理の
所見を伺いたいと思います。(
拍手)
また、特に重大なのは、
国鉄当局の
発表によってさえ、四十六
年度の
旅客、
貨物別の損益は、
旅客で十億円の
黒字に対して、
貨物のほうは二千百五十三億円の
赤字になっているということであります。
国鉄の
赤字の重要な
原因の一つが、このような不当、不合理な
運賃体系そのものにあることは、あまりにも明白ではありませんか。(
拍手)
しかも、この
貨物赤字の大
部分は、セメント、石油、鉄鋼、自動車など、大企業の原材料であり製品であります。ところが、これら大企業の
貨物運賃に対しては、営業
割引や私有貨車
運賃の特別
割引など、各種の
割引制度を今後も続け、他方、生鮮食料品など、
国民生活に直結した
貨物の
政策割引は廃止してしまっているのであります。
また、
旅客からは、特急、急行、さらには座席指定料金まで取り立てながら、大企業の
貨物を大量に、安価に、高速で運ぶ急行
貨物列車については、急行料金
制度すらつくられていないありさまであります。
その上、今回の値
上げ法案では、大企業の自動車、工作機械など、その
運賃は六・八%しか上がらないのに、米や麦、生鮮野菜、鮮魚などについては、何と二九・六%も引き
上げられているのであります。
そこで、
総理及び
運輸大臣に
お尋ねいたします。
政府、
国鉄当局は、これまでも、大企業に特別奉仕している事実はない、このようにいわれておりますが、このような
運賃体系こそ、明らかに大企業奉仕ではな
いか。なぜ
黒字の
旅客運賃を
上げなければならないのか。
運賃体系を改めるべきであると思うけれども、この点について明確な答弁を求める次第であります。(
拍手)
また、大企業に対する一切の
運賃割引制度を廃止するとともに、昨年九月に全廃した生鮮食料品などに対する
政策割引を復活させることが絶対に必要だと思うが、関係大臣、どう
考えるか、答弁を求めます。
今日、
運賃値
上げに反対する
国民の声は、日に増し強くなっており、重大な社会問題、政治問題になっております。
総理、あなたは、このような
国民の声にどのように答えられるか、責任ある答弁を伺いたいと思います。(
拍手)
第二に、
日本列島改造
計画と
国鉄再建計画との関係について
質問いたします。
田中
総理は、その著書「
日本列島改造論」の中で、次のように述べております。「トラックで運びきれない
貨物輸送量を
鉄道に切替えるには、いまの
鉄道の
貨物輸送能力を四・六倍に
拡大しなければならない。そのためには、まず全国
新幹線鉄道を九千キロメートル以上
建設し、これによって浮いた
在来線の
旅客輸送力を
貨物に切替える必要がある。」
これは、
旅客は
新幹線に、
貨物は
在来線にということであり、
新幹線計画も、
貨物輸送体制の強化に力点を置いて
考えているということであります。
大企業が
日本の
国土を食い荒らし、公害を全国にばらまくのが
日本列島改造
計画でありますが、このような全国各地の大企業、大工業地帯を結ぶネットワークづくりが、
国鉄再建計画の中心に据えられているのであります。
このため、
国民にはどういう影響があらわれているか。昨年八月、交通協会主催で行なわれたゼミナールで、磯崎
国鉄総裁は、
貨物駅について次のように言っています。「昔は四千くらいあったものをやっと千ばかり減らしましたけれども、まだ三千あります。これを思い切って、極端にいえば、一県一つか二つくらいにする。そうすれば、ほとんど
旅客列車と同じような速度で走れる。」こう言い切っております。一体、これはどういうことですか。大企業のための
貨物輸送力をスピードアップするためには、中小の荷主を犠牲にしてもはばからないという態度ではありませんか。
旅客についても、駅の廃止、無人駅の増大、手小荷物扱いの停止などによって、
在来線の利用をできにくくし、その上、普通
運賃だけでは乗れない、座席指定から急行券、特急券、こういう高い料金まで支払う
新幹線を利用せざるを得なくさしている。これこそ大企業本位の
日本列島改造
国鉄版といわなければなりません。(
拍手)この点について、
総理及び
運輸大臣の見解をお聞きいたします。
また、
政府、
国鉄当局は、十年後に、
通勤列車の混雑度を二〇〇%
程度にしたいと
予算委員会で述べておりますけれども、この
程度の
通勤難緩和で、はたして
国民のための
国鉄と言えるでしょうか。大企業に対する各種の料金の割り引き、スピードアップなどのサービス改善と比較して、あまりにも
通勤対策が無責任ではありませんか。
このように、大企業のための
貨物輸送の
整備を中心としながら、中小荷主や
旅客を犠牲にし、
通勤対策もきわめて不十分な
計画が、
日本国有鉄道法第一条で規定されている
国鉄の公共性、これにふさわしいものと言えるかどうか、明確な答弁を求めるわけであります。(
拍手)
第三に、
国鉄の安全と
国鉄労働者に対する
合理化についてであります。
政府の今回の
計画によれば、
国鉄労働者十一万人を削減する一方、
国鉄の業務量は、五十七
年度には約二三〇%に
拡大することになっています。労働者は大きく削減をされながら、仕事量の量はますますふえていく。これが労働強化とともに、
国民へのサービスに大きな影響を及ぼすことは必至であります。
さらに重大なことは、このような
国鉄労働者の大削減が、
在来線、
新幹線を問わず、続発している事故と決して無関係でないことは、否定できない事実であります。
運輸大臣は、二月十三日の運輸委員会において、安全の確保を最も重要な
政策課題にすることを言っておられますが、しかし、このような労働者に対する大
合理化を押しつけておいて、どうして乗客の安全が守れますか。
安全確保のためには、
国鉄労働者十一万人の削減を根本的に再
検討し、撤回することが最も重要な措置の一つであると思うが、責任ある答弁を伺いたい。(
拍手)
また、今日、国際的にも認められている労働者の基本的権利であるストライキ権が、
日本の
国鉄労働者からは不当に奪われているということにも、重大な関心を払わざるを得ません。
それに加えて、
国鉄当局が、いわゆるマル生運動など不当労働
行為を公然と行なってきたことも天下周知の事実であります。
一切の不当労働
行為をやめ、
国鉄労働者の労働基本権を確保することについて、関係大臣の
所見を求めるものであります。(
拍手)
以上で明らかなように、今回の
改正案は、まず第一に、
運賃値
上げを今後十カ年にわたって四回行なうこと、しかも十年後には、
運賃が現在の二倍になるということであります。
第二に、
輸送の安全を無視して、今後十年間に
国鉄労働者十一万人の人員削減を行なおうとしていることであります。
第三は、
運賃の値
上げによって吸い
上げる八兆円の資金を柱に、合計十兆五千億円にのぼるばく大な資金を、大企業本位の
国鉄再建のために投資しようということであります。しかも、このばく大な投資のために、大銀行から巨額な資金を借り入れ、
運賃値
上げの予想
収入額の五〇%以上に当たる四兆五千億円もの利息を払うのであります。これこそ、
国民の耐えがたい
負担と
国鉄労働者の犠牲の上に、大企業の高度成長、これを基本とした
日本列島改造の動脈に
国鉄を仕立て
上げ、その
輸送体系をつくり
上げようとするものにほかなりません。
いまや
国鉄は、田中内閣の手によって、
国民にはますます遠い
国鉄となり、大企業にはますます近くなる
国鉄にさらに変質しようとしているのであります。(
拍手)
わが党は、これまでも、このような無謀な
計画に対しては、事実に基づいて全面的な批判を行なってきました。また、
国鉄の
赤字の
原因についても、これが大企業本位の
国鉄運営の結果からきたものであることも繰り返し
指摘してまいりました。
国鉄を、真に公共の福祉のための
国鉄にするためには、何よりも大企業本位のばく大な設備投資をやめること、
国民にとって必要な
建設資金は、原則として一般会計から支出すること、これが営利を目的としない
国鉄の真にあるべき姿であると
考えます。(
拍手)この点について、
総理並びに
運輸大臣の明確な
所見を求めます。
最後に、私は、
国民を犠牲にする
運賃値
上げ法案の撤回を強く要求して、
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣田中角榮君
登壇〕