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玉置一徳君 私は、民社党を代表いたしまして、現下最大の社会問題である
商品投機の問題について、
政府の
所見をただしたいと思います。(
拍手)
昨年十一月、旺盛な
国内需要にささえられた
木材価格は、海外原料の先高見込みを織りまぜまして、突如、前月比八割高という異常な
高騰を見せ、翌十二月には、前年比十割高という高値をつけたのであります。これにつられまして、十二月には
大豆、もち米、
生糸、羊毛、鉄鋼、綿糸布に至るまで異常な
値上がりを見せ、一月、二月にいずれも最高潮を示すに至り、かくて、一般
国民は生活に大きな脅威を受け、二次加工業者は操業を停止するのやむなきに至りました。現下最大の社会問題に発展してきたのであります。
今次の異常な
物価騰貴は、そのいずれもが、海外のインフレによる品物の先高見込みや、あるいは気象条件によります農産物の不作とか
流通経路の未整備など、そのほかに旺盛な
国内需要など、それぞれの原因のあることは事実でございますけれども、年間総
需要と供給にさしたる過不足もないのに、
売り惜しみ、
買いだめのため仮
需要のみ旺盛でありまして、十一月から十二月、一月、二月にかけて、類は類を呼び、片っ端から
価格のつり上げを行なってきたのであります。その陰に
銀行の
資金をバックにした大
商社の暗躍が、
国民大衆の脳裏にいやというほど焼きつけられ、いやが上にもその憤激を高めてまいったのであります。
前回、円の
切り上げに対処するため、
政府は、公定歩合を引き下げ、市中の
金融を緩慢にし、
国内需要を喚起する政策をとったのであります。加えて、十四兆二千八百億円という思い切った
大型予算を編成し、景気刺激策をとったということが、九十億ドルにのぼるという、円
切り上げ直後の年としては予想を越えた
輸出超過と相まちまして、いわゆる余剰
流動性のはんらんを招来したのであります。これが今回の異常なまでに過熱した
商品投機の悪の
背景であり、その温床であります。
インフレ基調にございましたわが国の
経済は、さきの総選挙の景気のよい与党・自民党の積極政策の声に力を得て、完全に悪性インフレの軌道に乗ったものと
国民の目には映り、金より物に関心が移っていったのであります。かくて、
国内にたまり過ぎた余剰
流動性は、そのはけ口を
土地と
株式に見出し、不動産会社といわず、大
商社、
銀行までが、恥も外聞もなぐ、その
資金の動員力にものを言わせ、
日本じゅうの
土地を買いあさったのでありますが、ようやくにして
国民世論の反撃が高まり、
土地規制の機運が熟するとともに、うまみがないという見込みで、反転して
商品投機になだれ込んで、
国民大衆の生活の破壊に目もくれず、利潤の追求に強者の力をいかんなく発揮して、あれよあれよという間に手当たり次第に
物価をつり上げ、縦横無尽にあばれまくったのであります。
これが資本主義のたてまえだとばかりのしぐさ、
法律に違反しなければ何をしてもいいというやり方は、今日ではもはや通用いたしません。
企業はすべて
国民に奉仕する社会的責任を持つべきであります。この調子で
日本品海外進出の先兵としてあばれられたら、世界各国の非難と反撃を受けるのも、むしろ当然であります。
政府も国会も、よほど腰を据えてかからなければならないと思います。(
拍手)
そこで、
総理にお伺いをいたしたい。
今次の
商品投機による異常な
物価高の現出について、
政府の
施策の誤りはなかったかどうか。どのように反省しておいでになるか。
次に、今次の
投機の問題を徹底的に解決して、今後二度とこのような
事態の起きないよう十分な
対策を講じ、
国民大衆の暮らしを守るために、
総理はどのような決意をお持ちになっておるか。なお、その際、将来とも、さきに
政府から示された本年度の
消費者物価上昇目標でございます五・五%を守り抜く決意ありやいなや、明確にお答えをいただきたいのであります。
さらに、わが党は、さきに、かかる
事態に対処し、
買いだめ、
売り惜しみなど反社会的行為を
規制するための特別立法のすみやかな制定を
政府に申し入れ、これが立法の成立に協力する用意があることを表明してきたのでありますが、
政府にその用意ありやいなや。その内容として、先進各国の例に見るごとく、この種反社会的行為に対しては厳罰をもって臨むことが必要であろうと思うけれども、御
所見はいかん。
なお、事前にこの種行為を防止するため、
立ち入り調査権を持った専門の
物価調査官、いわば
物価Gメンともいうものを常時設置することが望ましいと思われるが、御
所見をあわせて承りたいのであります。
さらに、今次
商品投機の経験にかんがみまして、
商社がその巨大な
資金動員力でもって反社会的な商行為をやりますことをどのようにして
規制するか。また、平時にあっても、
中小企業が不本意にその
資金力のために
買収されることがあるのをどう防ぐか。あるいは
資金力の相違による不当な競争等をどのように排除するか。いわゆる
商社業法の立法化を
検討する時期に来ておると思われますが、
総理並びに所管
大臣の御
所見を承りたいと思います。
次に、
商品取引について
通産、
農林大臣にお伺いしたいのでありますが、今回の異常な
価格の暴騰を来たした
大豆、
モチ米、
生糸、飼料、
木材並びに鉄鋼、羊毛、綿糸布は、どのような手を尽くすことによって、いつごろ、どの程度まで
価格に下げられると思うか、この際、できるだけ詳しく
国民の前に明らかにしていただきたいのであります。
なお、公正
取引委員会は、今次の
事態にどのように対処しておられるのか。独禁法の
改正をすることによって、すなわち、その
目的に一項目を追加することによって、たちどころに
立ち入り調査、報告、
勧告など、今次
事態にも対処し得ると思うが、公正
取引委員会委員長の見解をお伺いしたいと思います。
さらに、今次
商品投機の
背景となりました余剰
流動性の
対策について、
総理及び所管
大臣にお伺いを申し上げたい。
前回の円
切り上げに対処いたしまして
政府のとった
金融、財政
施策が、裏目に出たわけでございます。余剰
流動性吸い上げのために、数次にわたって
政府は、
預金準備率、公定歩合の
引き上げ、不動産
融資の
規制及び
商社に対する
融資の窓口
規制を実施してきたのでありますが、その
効果をどのように測定され、さらにどのような手を打とうとしておられるか、所管
大臣より御説明をいただきたいと思います。
なお、この際、余剰
流動性吸い上げのため、かねて税制
調査会より答申のありました
法人税の
引き上げを、思い切って実施に移すべきだと思いますが、これまた、所管
大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
さらに、余剰
流動性吸い上げのため、貿易
商社その他の貿易収支の黒字分につきまして
国債を買わすことを
検討していると聞きますが、その内容及び
所見を
経済企画庁長官にお伺い申し上げたいと思います。
同様な意味で、西ドイツの例にならい、外資
預金の手数料徴収制度を取り上げ、余剰
流動性の吸い上げに使う考えはないかどうか、所管
大臣にお伺いしたいと思います。
同じく、
投機の対象となりました
土地の
売買につきまして、その超過利得の一定割合分につきまして
国債を買わす方法が、余剰
流動性の吸い上げのためにぜひとも必要であると思いますが、どう思われるか。
株式の時価発行についても、超過利得の一定割合について
国債を持たせることが、この意味において必要と思われるが、
大蔵大臣の
所見をお伺いしたい。
次に、長期にわたる
物価対策、特に、主として海外の
輸入に仰がなければならない
物資の資源の安定的供給につきまして、
総理並びに所管
大臣にお伺いしたいと思います。
今次の
大豆、
モチ米、
木材、
生糸、飼料、羊毛、綿花等の
投機による
価格高騰の教訓は、備蓄制度の拡充強化でございます。諸外国におけるインフレの高進から
国内価格の長期安定をはかるために、
輸入先の多角化と長期契約あるいは開発
輸入が絶対に必要だと思いますが、
政府はどのように対処されようとしておるか。
なお、その際、今年ソビエトが
アメリカから大量の穀物を
輸入した
事態は、不足傾向の世界
食糧の需給の中で将来とも不安定要素を加えたことになるが、その経験に徴し、食管法の堅持は、あらためてその
必要性を痛感させられたわけでありますが、あわせて所管
大臣の
所見をお伺い申し上げたい。
同様のことは、石油、非鉄金属等について一そう痛感せられるわけであります。
生産国周辺の紛争、移送途中の故障が生じた場合、わが国産業界の混乱は思い半ばに過ぐるものがあります。産業構造審議会の石油の三割自給
対策はどのようにして達成するのか。特にチュメニ油田開発とイランその他産油諸国の直
輸入問題について、及びわが国の石油の備蓄をあわせて、所管
大臣より御説明を承りたい。
非鉄金属の海外開発と
価格安定
対策から見た
国内鉱山の位置づけにつきまして、同様、所管
大臣の御
所見をいただきたいと思います。
これらの海外開発
輸入につきましては、従来のぶったくり開発では、資源の略奪という非難を受けることとなり、二国間相互
信頼と資源の確保にも悪影響をもたらすおそれがなしといえません。海外
経済協力と並行して、できる限り合弁事業として、十分その国の発展に留意して、資源の開発に向かわなければならないと思いますが、外交を展開すべき外務
大臣の御
所見を承っておきたいと思います。
さらに、
輸入品の
国内価格でございますが、円
相場のフロート、そしてドルの切り下げを積極的に
物価政策に生かすことが肝要であります。
輸入物資が、ドルの切り下げにかかわらず、あまり
価格の切り下げを見ていない現状にかんがみ、どのような
施策をとられんとしておるか、
経済企画庁長官の御
所見を承りたい。
さらに、
流通機構の整備及び近代化が、今回のような
投機による
売り惜しみ、
買い占めに対処するときに、非常に必要であることが痛感されたのでありますが、これについての
対策はどうするか、所管
大臣よりそれぞれ承りたいと思います。
あわせて、関税引き下げと貿易の
自由化の促進が、長期的
物価対策に貢献するところ大でありますが、これについての所管
大臣の
所見を承りたい。
以上、要するに、今次の
商品投機は、前回の円
切り上げに対処する
政府の一連の財政、
金融、税制政策の結果であり、一言でいえば、インフレの発生しやすい土壌の上に開花した悪の花であります。さきの総選挙で、
総理の言う
日本列島改造論もまた、そのよしあしは別として、そういう意味においては無縁のものであったとはいえません。
一生懸命に働いてたくわえた貯金を、不時の出費並びに老後の生活の安定に充てるという
期待を持てる社会を現出することがよい政治といわなければならないのであります。この意味におきまして、政治家たる者、悪性インフレとの戦いに全力を傾注すべきだと思います。この意味におきまして、
最後に
総理並びに所管
大臣の御
所見を承っておきます。
インフレ回避のため、膨大な予算の
実行にあたっては、余剰
流動性の原因をつくらないよう慎重な
配慮が必要と思われるが、どう思われるか。
二つ目に、今回の事例に徴するも、
銀行が一般
国民生活に与える影響は実にはかりしれないほど大きゅうございます。
銀行の
運営は、その社会的使命にかんがみ、利益をのみ考えた
運営であってはならないと思います。この意味で、一般
消費者、産業界、労働者、学識経験者等の代表を取締役会の経営諮問機関として置く必要があると思うが、どう思われるか。
さらに、
日銀政策委員の改組についてでありますが、そのことは、
日銀政策委員についても当てはまると思います。役所代表が三名、
銀行代表が二名、こういうものであっては断じてならないのであります。この意味におきまして、
日銀政策委員をさらに拡充強化されるお考えがあるかどうか、
最後に御
所見を承りまして、私の
質問を終わりたいと思います。(
拍手)
〔
内閣総理大臣田中角榮君
登壇〕