○塚田庄平君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、提案になっております
所得税法、
法人税法並びに
租税特別措置法の一部を
改正する
法律案につきまして、総理大臣並びに関係大臣に対して
質問をいたす次第でございます。
一昨年の
円切り上げでは、戦後
わが国経済が一貫してとり続けてまいりました高度成長
政策、輸出優先の生産第一
主義が国際的にきびしい批判を受け、また国内的にも、生産
拡大が即
生活向上にはつながらず、かえって公害の拡散による
生活環境の破壊と、生命の危険すらももたらすに至ったことは、周知の事実であります。アメリカの有名な経済学者は、日本は、このまま経済成長を続けるならば、おそらく今世紀のうちに個人
所得もアメリカを追い越すことは明らかであろう、しかし、そのときまで日本人が生きておるかどうかは別問題だ、このように実は指摘しておるのであります。
わが党は、従来にも増して、
政府の糊塗的な対策では円再切り上げを避けることはできず、労働者をはじめ
国民諸階層の利益を守るためには、早急に経済
政策の転換をはかり、低賃金構造を打破して、
国民福祉第一の
政策に改める以外には道はないと強く主張してまいりましたが、
政府は、一向に改めようとせず、ついに再び
円切り上げの局面を迎えておるのであります。この事態に対して総理が責任をとらないならば、およそこの国には政治責任ということすら存在しないことになるのではないだろうか、(
拍手)私はこのように言って過言ではないと思います。
政府の
国民不在の経済成長
政策を、その根底においてがっちりとささえておるのは、実は税制であります。いま
政府が口で言うように、
国民福祉重点の経済
政策に転換するというならば、まず大
企業、高額
所得者優遇の租税
政策のあり方を再検討し、是正しなければならないものでありますが、このたび提案された
改正案は、この点きわめて不徹底であり、あるいはむしろ逆行するものさえ見受けられる点が数多くあるのであります。まさに税制の混迷ここに至れりという感が私はするのであります。
以下、具体的に若干の点に触れて
政府の見解を求める次第でございます。
まず、
所得税についてでありますが、四十八
年度は大幅減税といううたい文句のもとに、初
年度三千百五十億円減税することになっております。四十七
年度の自然増収は実に二兆五千億をこえることが予想されておるのに、わずかに三千億程度の減税では、物価との関係からいえばむしろ実質的に増税結果を招くものである、こう断定せざるを得ないのであります。(
拍手)
国民の暮らし向きをよくするための減税であるならば、物価を考慮に入れない減税などは実はナンセンスであります。
消費者物価は四十八
年度は
予算の上で五・五%の上昇を見込んでおります。大体
政府みずから預金の利子五・二五%以上の物価の値上がりをのっけから
予算に見込むというこの不見識を、私は
国民とともに糾弾したいのであります。(
拍手)しかし、物価の実勢は
政府の見通しをはるかに上回ることは明らかであり、かりに
政府見通しどおりとしても、二千八百億円の物価調整減税を必要とし、差し引き純減税額は五百五十億円程度になってしまうのであります。
先ほど
大蔵大臣の提案理由の
説明の中で、
所得、
物価水準を加味して今度の
措置をしたと言っておりますが、
現実には何ら加味しておらないということが、この数字によって明らかであります。(
拍手)
所得税の本来の
負担は、実質
所得に対する
負担を
中心に考えるべきであります。しかし、実際には、
名目所得に対し直ちに累進課税が適用され、消費者物価の上昇に相当する
部分についても一律に課税されるので、実質
所得に見合う税額より当然多くなるのであります。
総理は、この際、物価調整減税を税制の中に織り込む用意があるかどうか。そして
生活福祉優先と言うならば、自然増収の額から見て、本
年度内に思い切って一兆円程度の
所得減税を行なうべきだと思いますが、決意を込めた総理の
所信を承る次第でございます。(
拍手)
また、
所得階層別に減税
割合を見ますと、低
所得層ほど低く、高
所得層ほど高く有利になっておりますが、このことが
国民に対して重税感を与えておる大きな原因であります。おそらく
政府は、私がこのように主張しますと、累進課税だから、減税の場合はその逆で高額
所得者が有利になることは、これはもう数字的にあたりまえだ、こういう答弁をなさるだろうと思います。しかし、
福祉の向上という
政策目的から、下に厚く上に薄い思い切った減税
措置が必要であると思うが、
大蔵大臣は一体どう考えるか、御
質問をいたす次第でございます。
次に、
法人税の
改正について御
質問いたします。
税制調査会の答申では、
福祉充実のためには、
法人に応分の
負担を求めるべきである、このように指摘しております。これはまさに、従来の産業優先の税制を大きく転換すべきことを示唆しておるものと私は考えております。後に
質問をいたします租税
特別措置の整理と相まって、まさに緊急の課題であります。
法人税の基本税率は、
昭和四十五
年度以来三六・七五%に据え置かれており、その実効税率は国税あるいは地方税を合計いたしましても四五・〇四%であり、まさにこれは国際的な水準からいって大きく優位性を表明しておるものであります。国際競争力が強過ぎて、円の再切り上げが具体的
日程にのぼっておる現在、何ゆえ思い切って増税に踏み切ることができないのか。この点を私は特に総理大臣に対してお伺いする次第でございます。
法人税率をわずか一%上げただけで、実に一千億円の増税になります。まさに決断と
実行を総理に望みますが、ずばり
所信を承りたいものであります。
私は、日本が今日のように国際収支の大幅黒字に悩み、国際的非難を受けなければならない大きな原因の一つは、
政府が
昭和二十五年以来大
企業の資本蓄積を助長するために、今日なおとり続けている租税
特別措置にあると断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)いまや、この
企業優遇
措置は、主要なものだけでも百三十項目に及んでおり、四十八
年度の減収額は実に四千六百四十五億円の
巨額に達しておるのであります。私は、今回新しく
措置されたものを
中心として、これがいかに不合理きわまる
国民無視の税制であるかを指摘し、総理大臣、
大蔵大臣の確たる見解を求めるものであります。
まず、
公害対策関係の
特別措置であります。私は、これこそまさに
公害防止に名をかりた大
企業優遇税制そのものであると断ぜざるを得ないのであります。もとより
公害対策は重点的にいま実施されるべき今日的な課題ではありますけれども、OECDなどは
公害防止に対する
政府の助成は非関税障壁とみなし、かかる一種の輸出補助金的なものは廃止し、公害費用の発生者
負担の
原則確立を主張しており、これがいまでは国際的な通念になっておるのであります。
しかるに、
わが国は、依然として資本蓄積の脆弱さを強調して、大
企業中心の恩典を与え続けておるのであります。四十七
年度に
公害防止準備金制度を設け、加えて、無公害生産設備の
特別償却制度を創設、さらに今回低公害車の
開発普及のための
物品税の
軽減措置を講ずる等は、いまやごうごうたる国際的な非難の的になっておるのであります。このような
措置をとるから、国内価格百万円の無公害車が、実は一千五百ドル前後で輸出される、つまり二重価格の横行する根本的な原因であり、外貨をためる真犯人なのです。
私は、かかる
特別措置を廃止して、経済行動の大転換をはかるべきだと考えますが、この点について
大蔵大臣の明快なる答弁を求めるものであります。(
拍手)
次に、青色
事業主報酬制度の創設が、
中小企業対策の中で五年間の
特別措置として出されておりますが、五年間の時限においてこの制度の基本的方向をどのように据える考えなのか、まずこの点について
大蔵大臣の考えを聞きたいのであります。
この制度に踏み切った以上、同時に、一般
給与所得者及び
白色申告者との均衡を絶対にはからなければなりません。そうでなければ、せっかくの
措置も悪法のそしりを免れないのであります。税の不公平感を助長しておるトーゴーサンとかあるいはクロヨンとかの
所得捕捉率の格差がある現況のもとでは、
給与所得者の重税感は深まる一方であります。私は、ここにもまた
所得税一兆円減税の重大な根拠が存する、このように主張するものであります。
大蔵大臣の確信のある御答弁を求めます。
次に、新たに創設されました土地税制について
お尋ねをいたします。
経済の成長と歩調を一にしておるのは物価の上昇であり、その中でも、地価の値上がりは、
田中総理の列島改造論と相まって、決定的なドライブをかけられたと言って過言ではないのであります。列島改造
計画が実施に移されれば
たちどころにすべてが解決されるとうそぶいていた
田中総理、この事態に対しては、まさに政治的責任を問われるものと思うが、総理大臣はどのように考えておられるか、率直な御答弁をいただきたいと思います。
国民は、無策無責任きわまる政治のもとで、いま深刻な住宅難あるいは土地入手難にあえいでおるのであります。豪華な邸宅に住み、高価な別荘をぽいと買い上げる総理には、わずかな公営住宅あるいは土地分譲に殺到する庶民の切ない気持ちはおわかりにならぬだろうと思います。(
拍手)いまや、住宅の抽せんに当たるのは宝くじに当たるよりもむずかしい、というのが庶民の率直なささやきであります。しかし、提案されております税制では、地価引き下げに役立ち、また未利用地の放出を促進するどころか、かえって逆の結果を招来するものと考えざるを得ないのであります。
その理由といたしまして、まず保有税については、その
強化によって持ち越し費用を高め、手放さざるを得なくするのが
目的であろうが、固定資産税に比べ、課税標準を土地取得価格としたところに違いこそあれ、全く同率であって一・四%、適用除外規定と相まって、おそらくその効果はほとんどあらわれないのではないか、このように私どもは考えております。
一方、国税である譲渡税では、課税率は二〇%とまことに低く、宅地造成は適用除外になっておりまして、宅地を造成して販売する業者には何らの影響もなく、適用されるのは、値上がり待ちで短期間土地を保有するものに限っておるのであります。特に私ども、がまんのできないのは、民間デベロッパーが適用除外になっておるということであります。
わが党が、過去十カ月にわたりまして、多くの困難を克服しながら調査を進めた最近の結果によりますと、首都圏においては、大手二十社の買い占めている土地は実に九千六百五ヘクタール、近畿圏において大手二十九社の買い占めておるのは八千四百九十一ヘクタールという驚くべき数字が判明しておるのであります。このように、土地があって住宅難に泣くのは、大手デベロッパーが土地を買い占め、地価高騰をあふっておるからということがきわめて明瞭になってきておるのであります。(
拍手)このようなデベロッパーが適用除外され、あまつさえ新規参入を抑制して、むしろ独占効果をねらった面さえあるのであります。適正利潤の保証と相まって、まさにざる法たる
性格を如実に露呈したものといわざるを得ないのであります。この点について、特に土地の問題ですから、総理大臣は一体どう考えておるかも御所見を承りたいと思います。
次に、実施の時期でございますが、
政府案では、保有税は四十九
年度から、譲渡税は新法施行後一年たってからとなっていますが、一体、この期間中に何が行なわれるでしょうか。私は、土地投機で取得した土地を、なるべく
税負担の安い
部分に移すということが公々然と行なわれる、こう判断せざるを得ない現況であります。私どもはこのような可能性を封ずるために、猶予期間を設けるべきではないと思います。
以上、数点にわたりまして
質問を申し上げましたが、土地問題は、「花見酒の経済」を待つまでもなく、物価上昇の元凶であり、また信用インフレを高めるものでありますから、列島改造論の著者といわれる総理大臣の率直な御所見を承りたいのであります。
これをもって私の
質問を終わりますが、誠意のある御答弁を強く
要求するものであります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣田中角榮君
登壇〕