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内閣総理大臣(
田中角榮君) 円平価の再
調整を迫られるような
事態が起こるまでに対しての実効があがらなかったではないかということでございますが、先ほどから間々御答弁を申し上げておりますとおり、
政府は、一貫して
国際収支の
均衡を目ざして
努力をしてまいったわけでございます。
第一回目の
通貨調整というのが多国間で行なわれたわけでございまして、異例な
措置として行なわれたわけでございます。また、その後、御
承知のとおりの
国際収支対策をたくさんやってきたわけであります。臨時国会を開いてさえ、法案や
予算の御
審議を願ったこともございます。そういうようなことをしながら、日本がなさなければならない
国際収支均衡対策に対しては全力を傾けたわけでございますが、いつも御
指摘を受けるとおり、
黒字国の
責任だけでもってこのようなものは解消できないのだ、だから、
ドルの価値維持ということに対して
赤字国である
アメリカも
努力をしなければならないということでございまして、私が先ほど御答弁申し上げたように、
アメリカに対しても、
ドルの交換性を回復するようにしてもらいたい。それは日本だけでもってできるものではないので、
アメリカみずからが
ドルの価値維持のための諸施策を進められることと相まって日米間の不
均衡は解消したい。そのためには、ハワイ会談におきましては、日本の基礎収支の
均衡、少なくともGNPの一%以内に経常収支の
黒字幅を押えるには三年間ぐらいかかりますよ、こう言っておったわけでございます。
ところが、その後のいろいろな施策において、
輸入は
拡大をいたしました。一−三月は
輸入期であるとはいいながら、史上最高の
輸入というふうにもなっております。しかし、
国内の景気が非常に上向きになってきて、いま御
審議いただいております
経済見通しでは、一〇・七%ということで出しておりますが、しかし、御
審議の過程において、どうもいまの状態からいうともっと景気は上向くのじゃないか、そうすると五・五%と
政府が考えておる物価も、もっと上がるのじゃないかという御
質問を受けておるわけであります。ですから、一〇・七%に成長率を押え、五・五%に押えるためには、四十八
年度、御
審議をいただいておる
予算の中で思い切った政策的な
措置が必要でございます、そして、五・五%にし、一〇・七%に押えたいと思っております、こう述べておるわけでございます。
そういう状態において、
輸出が急激に内需へ
転換もなかなかできないということでございます。しかも、現在のような高い成長率であっても
輸出はふえるのでございますから、そうすれば、貿管令の適用とか、
輸出税とか、いろいろなことを考えざるを得ないのであります。そういう意味で、前の前の国会には、国際
経済調整に関する法律の御
審議をお願いしたわけでありますが、しかし、
国内の情勢を見れば、簡単にあの法律が
成立ができなかった事情もございます。ですから、先ほども申し上げたように、
輸出を伸ばすことは、税制上とかいろいろな問題でもって的確な
効果をあげることはできますが、しかし、日米間の三十億
ドル、四十億
ドルという日本の出超を一ぺんに直すということはなかなかできないのであります。そういう事情は、日本の
産業の力が大きくなり過ぎた、国際競争力がつき過ぎたという見方もありますし、同時に、
アメリカや外国の状態が悪くなり過ぎておるということもあるわけであります。そういう両面からの問題がありましてついに今日のような状態に至ったわけでございまして、
政府は、私は、これからも長期的に
国際収支均衡に対して
努力を続けてまいらなければならぬと思います。また、
政府はやってまいります。やってまいりますが、今度の問題は日本の問題だけではなく、
ドル対マルク、
ドル対フラン、
ドル対リラ、
ドル対英国のポンド、そしてその
影響を日本も避けることはできない、
ドル対円と、こういう問題になり、主要国間の
話し合いで
アメリカが自発的に一〇%
切り下げる、一〇%
切り下げることは、現行
レートを維持しておっても、こちらは自動的に一〇%価値が上がったということになるわけでございますが、やはりこれからの平価
調整というものは、多国間でやるか二国間でやるかという問題はございますが、これからも日本だけではなく、相手の立場によって変動が起こるということは、これは理解をしていただきたい。
羊毛を
輸入しなければならないオーストラリアは、日本に黙って、ぽんと平価を上げておるのであります。そういう問題もございますし、今度は日米だけではきめられません。日本と
ドルだけではなく、日本とポンドの問題、日本とリラの問題、日本とマルクの問題が出てくるわけでございますから、
変動相場制に移行をしながら
事態の
推移を見なければならない。国益を守るためにはそういう
方法しかないのでございますから、そういう意味ではひとつ御理解をいただきたい。その意味では四十八
年度の
予算案も、
国際収支対策ではないかとこの席上から御
指摘を受けたぐらいに、三つの目標を持っておりまして、その
一つには
国際収支対策でございますとお答えをしておるわけでございますから、その意味ではぜひ御
審議を賜わりたい、こう思います。(
拍手)
それから、
中小企業対策につきましては
関係大臣からお答えをしますが、私からも
基本的な問題はお答えをしなければならないので答えます。
今回の処置に伴い、
輸出関連中小企業が受ける
影響の
実態を
十分把握をいたしまして、適用する諸施策に万全を期します。これはいまある法律を延長していただかなければならないような、もう、前の国会でもってつくってもらっておる
中小企業対策の法律もございます。こういうものを延長していただくとか、それから
財政金融の状態で
予備費を使用するとか、財投を弾力的に運用をするとか、いろいろな問題があります。こういう問題に対しては完ぺきな、万全の
体制をとってまいりたい。これは一ぺんもうやっておりますから、手のうちは大体
承知しておるわけでございますから、そういう意味では万全の
対策をとってまいりたい、こう思います。
それから
輸入物価の
引き下げ対策、これは、私が先ほどから申し上げておりますように、円平価が
切り下げられるのではないんです。
昭和の初年は
切り下げられてきたわけです。一
ドル対二円、一
ドル対二円五十銭、一
ドル対三円のときには戦争を始めなければならぬというくらい下がってきたわけでございますが、今度は三百六十円をピークにして、いよいよ何十年ぶりかでもって日本の円と
ドルとの価格は、円が強くなる。強くなるわけでありますから、
輸入品は安く入るわけであります。そういう意味で、
輸入品の価格の低下が
消費者物価によりよく還元しますように、
輸入代理店対策、
輸入の
自由化、
関税の
引き下げ、
輸入品にかかる
流通機構の
改善などの
各種施策を強力に
転換をし、少なくとも物価
対策に寄与できるようにしなければいいところはない、こういうふうになるわけでございますから、その意味では十分な
配慮をしてまいりたいと思います。(
拍手)
それから
最後の、
国際通貨制度の安定化についてどうするかという問題でありますが、具体的な問題は
大蔵大臣からお答えをいたします。しかし、やがて今後の
国際通貨問題について、当面の混乱が
収拾されたことにより、長期的な
通貨改革への
努力が推進されなければならないということは当然でございます。いま
IMFの二十カ国
委員会等がありますから、これを
中心として行なわなければならないということでございます。しかし、これは三十九年の東京総会を
中心にして国際流動性の問題が起こり、SDRが解決をし、そして今日の
段階まで十余年の歳月を経てきておるわけであります。それで、基軸
通貨である
ドルが金との交換性を失ったというところにまず大きな問題があります。ですから、先ほども御
指摘ありましたように、金・
ドルの交換性の回復ということは、
アメリカのためだけではなく、日本のためでもあり、
拡大均衡を保っていく新ラウンドを推進するためにはどうしても必要であります。それができなければ新
通貨を考えなければならないという議論が出ておるわけでございまして、私たちは、対米
貿易がこれほど大きくなっておるということを考えますと、
ドル価値が維持されて、かつての基軸
通貨としての
ドルの面目を維持してもらうようになってもらいたい、そして金との交換性を回復してもらいたい、そのためには日本も
努力をし協力をすると同時に、
アメリカ自身の強力な施策も求めていく考えでございます。(
拍手)
〔
国務大臣愛知揆一君登壇〕