○辻原弘市君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいまから内政面における基本的な課題、かつ、具体的な問題について、若干の意見と提案を交えながら、
総理以下
関係各大臣に対し、その所信をただしてまいりたいと存じます。(
拍手)
第一の問題は、政府は、これまでの大企業中心の高度成長経済を、どのように
国民福祉中心の経済に変えていくかという課題についてであります。
総理は、就任以来たびたび発想の転換を言い、選挙中には、いわゆる
日本列島改造論をもって、流れを変えるなどと広言をしてこられたが、いまや、
国民の大多数はそんな
ことばをだれも信用はしておりますまい。(
拍手)あなたの列島改造論にあおられて丁土地の投機は収拾のつかないまでも進行し、
日本列島総買い占め、
日本列島総公害化への危険を
国民がはだで強く感じているからであります。(
拍手)
田中内閣発足以来おやりになったことは、一つには
アジアの緊張緩和に逆行する四次防の決定とこれが推進であり、いま一つは列島改造論を振りかざした昨年暮れの大型補正
予算の成立と、いままたそれに輪をかけた超
大型予算の編成であります。そこには土地と株の高騰と
公共料金引き上げによる激しい
インフレの足音が聞こえるばかりで、
国民生活、
福祉優先の影すら見当たらないというのは言い過ぎでありましょうや。功罪相半ばするどころか、せっかくの
日中国交回復実現というはなやかな舞台も、いまや、
国民の脳裏から消え去りつつあることも、けだし当然といわなければなりません。
四十八年度
予算を見ても、また
総理の施政
方針や答弁を承っても、発想の転換どころか、超過密経済へひた走る高度成長路線を一そう強めていることは明らかであります。事実、政府の経済計画の前提となっているのは、列島改造構想でありましょう。先ほどあなたは石橋書記長の答弁に、開き直って、いたけだかになって答えられておりましたから、あらためて申しましょう。すなわち、昭和六十年のGNPの規模をあなたは三百四兆、言いかえれば一兆ドルの経済にするというのでありましょう。一兆ドルといえば、ちょうどいまの
アメリカのGNPとほぼ同額であります。人口が
わが国の倍、面積が約三十倍の
アメリカと同じ経済規模を四つの島に乗せようというのでありますからたいへんであります。この一兆ドル経済を実現していくためには、鉄は現在の二倍、石油は四倍、工場用地では二・五倍、水は四倍、さらには超大型コンビナートも必要となってくるでしょう。いま
国民が願っていることは、こんなタイプの
経済大国ではないはずであります。現実に政府・
自民党や財界が謳歌した昭和元禄
経済大国は、
国民の
福祉を保障しないばかりか、生活のあらゆる分野で矛盾を露呈し、ますます住みにくくしているではありませんか。のみならず、世界からはつまはじきされ、孤立化の傾向を深めていることはいなめない事実であります。
大量生産、大量消費の経済は、いやおうなしに大量の廃棄物を生み出すのであります。国内は公害とごみの山、しかも輸出第一主義の経済は、ドルの札びらはたまっていくけれども、世界の資源を食い荒らし、一兆ドル経済のもとでは、世界資源貿易の三〇%を
日本が占めることになるのであります。第三の世界といわれる開発途上国では、すでにタイ等に見られるように、資源ナショナリズムが高まりつつあるのでありまして、たとえば一兆ドル経済に見合う八億キロリットルの原油を海外からスムーズに買い得るかどうかだけをとってみても、まことに考えさせられる問題であります。
公害と環境破壊、資源の浪費と収奪、これが高度成長の帰結であるという反省が、広く世界にも、
国民の間にも高まってきているのも当然であり、
わが国の経済のあり方を根本的に考え直さなければならぬことはいうまでもありません。国際経済との調整をなし得るような真の
福祉優先の経済への転換を急げというのであります。そのために、経済の計画的運用が必要であります。大企業の野放し的投資のあり方を改めさせるため、主要産業の設備投資計画を国の計画で規制できるようにし、公害防除の義務化、社会的諸施設への資金の確保など、投資内容を生活関連投資に比重を移していくことが不可欠であります。また、石油、電力などエネルギー需給の計画化、効率的利用のための国の管理、さらには私的独占の制限、不公正取引、独占価格の規制、土地、水などの資源利用についての企業の社会的責任を明確にするなど、経済の民主的、計画的運営のため、経済計画法あるいは経済基本法をおつくりになる考えはありませんか、
総理にお伺いをいたします。(
拍手)
第二は、スピードの速まってきた
インフレに対して、どのように政府は対処しようとしているかという問題であります。
本年初頭の新聞は、一斉に、ことしは
インフレの年だということを強調しておりましたが、新聞の論調をまつまでもなく、すでに
わが国経済は
インフレの新たな局面に突入していると見るべきでありましょう。
これまで、
わが国の
物価は、
卸売り物価が比較的安定していて、
消費者物価が高騰をするという特色を持っておりましたが、昨年からは
卸売り物価が急上昇を始め、去る十二月の
卸売り物価指数は一一九・一%で、年間
上昇率は八・五%をも示しているのであります。これはやがて
消費者物価の高騰に発展することは必至でありますが、政府の御認識を承りたいと存じます。
他方、景気は円切り上げにもかかわらず、次第に回復、上昇に転じ、ドルの蓄積は一そう進み、貿易収支は政府見通しでも八十九億ドル、九十億ドル以上の黒字になることは明らかであります。このドルの増加に対して、政府は不況による一時的現象だと説明してまいりましたが、景気回復基調となっても一向に減りそうもなく、四十八年度も八十億ドル以上の黒字が予想されております。このことは、輸出第一主義などの経済構造に由来するもので、根本的に体質を改めない限り、この傾向は続くものでありますが、
総理はどのような認識と具体策をお持ちか、承りたいと存じます。(
拍手)
総理の
日本列島改造論の提唱は、政府の大規模な公共投資やだぶついた資金と相まって、土地と株の異常な投機を招き、土地と株による不労所得がいまや数十兆にも達する結果となっております。営々と働く勤労者や庶民は、いまや
インフレで苦しみ、一方、大量の土地や株や不動産を持つ企業や人は笑いがとまらない。これでは額に汗して働く者はたまったものではありません。(
拍手)
この
インフレテンポに一そうの拍車をかけているのが、二兆三千四百億という巨額の国債を財源とした四十八年度の超
大型予算並びに
財政投融資であることは、先ほど石橋書記長が指摘をしたとおりでありますが、前年に比べ三千九百億増という国債発行は、前年よりわずかに依存度は下がったというものの、諸外国の五%から六%という依存度に比べれば、きわめて高く、
インフレ進行に強いプレッシャーとなっていることは疑う余地もありません。(
拍手)
政府は、四十八年度
予算を「イイヨニハシレ」などと自画自賛をしておるようでありますが、巷間「イイヨニハシナイ」とも言っていることを御銘記願いたい。(
拍手)また、私がごろ合わせをいたしますと、「ヒトノヨニハジヲシレ」となりましたが、いかがなものでございましょう。(
拍手)
来年度の
経済成長率は、政府見通しでも実質一〇・七%と高く、一〇%以上の成長は間違いないでしょう。特に、年度後半には民間設備投資が大幅にふくれ上がることが予想され、再び民間設備主導型の経済拡大が大きく頭をもたげ、
日本経済の矛盾と悪循環が増幅される危険が大きくはらんでおるのであります。
私は、これらの観点から、政府は
インフレ、
福祉、円のトリレンマなどと逃げず、まず
インフレ対策を第一義として、きびしい姿勢をとることをこの際要求いたします。(
拍手)
民間設備投資の行き過ぎを抑制していくために、この際、独占企業、大企業の
法人税率を
引き上げるべきではなかろうか。
わが国の大企業は、手厚い租税特別措置と国際的にも低い
法人税にささえられ、中小零細企業の倒産、破産を横目に繁栄し続けていると言ってさしつかえありません。租税特別措置による減免は、国税だけで三兆円にも達するという計算もあるほどで、先ほどの
総理の四百億程度という御答弁には、全く納得がいきません。まさにナンセンスといわなければなりません。
法人税率は、基本税率で三六・七五%、地方税を合わせての実効税率四五・〇五%となっておりますが、諸外国のそれに比べると低く、少なくとも基本税率を四〇%程度に
引き上げる必要ありと考えます。財源の確保と、過度の設備投資抑制という両面の効果をねらい、この際実行すべきだと思うが、
総理の御所存を承りたいと思います。
さらに、焦眉の問題である土地対策については、これまた先ほど石橋書記長が詳しく触れましたので重複は避けますが、政府の土地
対策については、実際の効果を危ぶむものであり、
国民の期待とはほど遠いものとなったことは事実でありましょう。特に、若干の課税がかえって末端需要者である庶民の購入価格に上乗せせられる危険が大いにありますが、その防止策をお持ちかどうか、承っておきます。
次に、有価証券取引税については税率の
引き上げが行なわれましたが、株の売買利益、いわゆるキャピタルゲインについては手をつけておりませんが、過度の投機を押えるため、諸外国並みに復活すべきではないでしょうか、承りたいと存じます。
総理の施政
方針の中にも、みずから認めておられるように、数次にわたる
円対策も、何らの効果があがっておらず、その苦慮のあまり、
調整インフレなどという、
国民大衆を無視した暴挙が行なわれているのではないかという疑念は、先ほどの
総理の否定にもかかわらず、依然として去らないのであります。
機を見るに敏な一部業界においては、再三にわたる再切り上げ否定の政府言明にもかかわらず、すでに実質二百八十円のレートでの取引を行なっており、再切り上げへの時期切迫の感を深めております。私は、いたずらに円再切り上げを断行せよなどと主張するものではありませんが、政府に何らの見通しも
対策もなく、結果的に切り上げに至れば、その準備なき中小企業や庶民一般は、
インフレと切り上げ両面のしわをもろにかぶる結果となり、政府の責任は重大であるといわなければなりません。(
拍手)したがって、この際、あなたの情勢判断を承りたいと思います。
総理はまた、昨年十一月九日、参議院
予算委員会において、わが党羽生議員の質問に答えて、再切り上げという事態を招くならば相当の責任をとる、とあなたは明言をされておりますが、
ほんとうにそうお考えですかどうか、承りたいと思います。
一国の
総理が責任をとるという発言は、きわめて重大であって、私はむしろ、あなたが公約した
福祉優先が実現されなかった事態について、また
国民生活に犠牲をしいる
インフレが退治できないことについて、責任をとると言ってもらいたいと思いますが、いかがでありましょう。
インフレ対策との関連において、イタリアと
日本だけという三けたの対ドルレートをデノミする考えを、新内閣は持っているのかどうか。また、
インフレに対するデノミの効果について、どのように判断せられているか、承りたいと思います。
いま
国民は、もろもろの
インフレ要因によって押し上げられる
消費者物価の動向に最大の関心が集まり、特に家計を預かる主婦は、毎日戦々恐々としております。
消費者物価の上昇は、四十八年度政府見通しの五・五%をはるかにこえる七%以上になるであろうことは、残念ながら常識化いたしております。特に、政府が予定している
国鉄運賃の
値上げをはじめ、その他の
公共料金の
値上げがその主因となっているのであります。特に
国鉄運賃の
値上げは、現在の
インフレ進行下においては他の
公共料金、
物価へのはね返りはきわめて大きく
インフレに加速度を与えることは必至であります。この点を一そう重大に考え、国庫負担をさらに投入するなど、運賃
値上げにかわる別途国鉄再建策をいま一度衆知を集めて考究し、この際、
値上げはとりやめるべきであろうと思いますが、政府にその御決意があるかどうか承りたいと思うのであります。(
拍手)
また、かねてから問題となっている各種の工業製品の値下げをはかるために、大企業、独占企業による管理価格、寡占価格について、必要ある場合、
公正取引委員会が立ち入り調査、勧告、また特に必要と認めた場合は、原価の公表をも行ない得るような立法措置をとるべきであろうと考えますが、その御用意があるかどうか承りたいと存じます。(
拍手)
政府は、口では
公共料金抑制、
物価対策を言いますが、先ほどの御答弁のごとく何もありません。今回の施政
方針を承っても、どこにも断固として行なうという強い姿勢も決意も見当たりません。まことに遺憾でございます。この際、決意を新たにして諸策を実行するよう強く
国民の名において要求いたします。
次に、
福祉政策について承ります。
総理は、ことしは
福祉の年とするということを盛んに強調され、選挙中には、いわゆる五万円年金をつくるということを大いに宣伝されました。ところが
予算案からその中身を見ると、ハイは前年対比二四・六%ときわめて大きくなりましたが、
福祉は一向に大きく伸びてはおりません。
確かに、
社会保障関係費は、昨年の一四・三%から一四・七%と微増はしておりますが、それは二六・四%という
予算の規模の膨張に比べますると、まさしく微増であるといわざるを得ません。しかも、その内容は、
老齢福祉年金月三千三百円が五千円に
引き上げられたこと、難病
対策に幾ばくの前進が見られたこと程度でありまして、
福祉重点などとはどこをつついても言えるものではございません。(
拍手)
特に、政府公約の五万円年金に至ってはさたの限りで、羊頭狗肉もいいところであります。
国民はあすにでも五万円もらえるものと考え、選挙に
自民党に期待を寄せました。ところが五万円もらえるのは、
厚生年金では
加入者二千二百五十万人、受給者六十四万人のうちわずかに六万人で、受給者の一割にすぎないのであります。また、
国民年金では五万円もらえるのは昭和六十一年からとあっては、だまされたと
国民が憤慨するのもあたりまえであります。
一方、掛け金だけは容赦なく
引き上げられることになりました。
厚生年金の場合六・四%から七・九%に、
国民年金は五百五十円が九百円と大幅に
引き上げられ、まさに高負担、低
福祉のモデルとも言うべきでありましょう。このようなごまかし年金をつくらなければならないというのも、
賦課方式ないし修正賦課の方式に転換させないからであります。欧米先進諸国のほとんどは
賦課方式をとっているではありませんか。なぜ
賦課方式がとれないか。先ほどの
総理の御答弁では納得ができませんから、いま一度あらためてお尋ねをするのであります。(
拍手)
政府は、また財界も、約八兆にのぼる積み立て金運用の魅力を忘れることができないとでも言うのでありましょうか。年金は人生の有給休暇であるという思想が
ヨーロッパ社会では定着しております。
わが国では、早くかくあらしめたいとわが社会党は念願をしております。この立場から考えて、年金の給付開始の時期と定年が食い違っていることは、老後を一そう不安定ならしめており、問題であります。したがって、これに相互の関連性を持たせるために定年を延長させることが必要と思われまするが、積極的に行政指導されるお考えはありませんか、お伺いをいたします。
次に、かねてから非常に苦情の多い所得制限については、この際、年金は権利としての年金であるという立場から、これを撤廃してはどうかと考えますがいかがでありまするか、お伺いします。
無拠出の老齢年金を月五千円に
引き上げるとおっしゃるが、どう考えても中途はんぱであります。あめ玉年金から、ようやくお小づかい年金になった程度で、老後保障にはほど遠い。せめて、政府であっても、
自民党であっても、生活保護の水準並みくらいには
引き上げるのが常識であろうと思うが、いかがなものでありましょうか、承りたいと思います。(
拍手)
また、激しい
物価上昇の中で老後生活に苦しんでいる多くの退職公務員その他の年金生活者の方々に対し、今回、おおむね四〇%程度の改定が行なわれましたが、今後毎年ベースアップに完全にスライドさせる方式を確立する必要ありと考えますが、実行されますかどうか。
また、
厚生年金その他の年金についても、欧米では常識化している賃金に対する自動スライド制を採用すべきでありますが、その御用意がおありになりますかどうかをお尋ねいたします。
わが党は、今度のこの国会に、
国民年金、
厚生年金を中心として、被用者年金の全面的改正案を提案するつもりでありますので、この機会に、その内容の骨子を申し上げておきたいと存じます。
六万円年金を実現し、最低保障は月四万円とし、最高時賃金の六割を制度として保障いたします。
また、既裁定の年金を含めて、年金の賃金に対する自動スライド制を確立し、現行の
積み立て方式を修正
賦課方式に転換させるとともに、積み立て金の運用については
加入者も参加し、民主的な運用を可能ならしめるため、運営審議会を設けることにいたしておるのであります。
また、積み立て金の使用目的は、
加入者の生活と
福祉の向上に直接寄与するものに限定すべきであると考えているのであります。
次に、年金に関連して、労災補償についてお尋ねいたします。
私は、昨年の
予算委員会でもこれらの問題を取り上げましたが、あらためて新内閣にその実現を要求いたしておきましょう。
労災問題に対する調査は、昭和四十四年、四十五年に労働省が行なったのが唯一であります。四十四年調査によりますと、職場における公務死に対する労災補償の平均額がわずかに百十五万円、遺族に対する年金額が平均三十万円であります。人間一人の命があまりにも、その代償としては低過ぎるではありませんか。他の各種の補償に比較しても均衡を失しておるのであります。
前田村労働大臣は、「ILO百二十一
号条約の基準には達しているが、ぜひ再検討したい」と私に答えておりますが、ぜひとも改善をしてもらいたいと考えまするので、労相から明確に
お答え願いたいと存じます。
また、労災保険の中には制度としての一時金がありませんが、これは遺族年金と一時金の両建てにすべきであろうと思いますが、いかがなものでありましょう。
いま一つ、労災の問題として提起しておきます。
最近、農業の機械化が進むに伴って、それを使う農民のけがが非常にふえているのであります。そのため、これらの農民の労働に対して、労災の適用を一そう拡大する必要があると考えまするが、今後これをどう扱われますか、政府の御所見を承っておきます。
次に、医療制度の改革について厚生大臣にお尋ねをいたします。
現在の医療制度は三つの大きな欠陥を持っております。
その第一は、予防を忘れて治療本位に堕しているということであります。PCB汚染などに代表されるように、公害病、難病、また成人病などによる健康破壊が進行している現状において、これに対応し得る医療体系の整備が緊急の問題でありまして、予防、健康管理、リハビリテーションなどを含む総合的な医療制度の確立を急がなければなりません。
第二は、保険主義による低医療からの脱皮であります。特に、医師、看護婦の不足をどうして補うか、これまた緊急の課題でございます。
第三は、売薬医療といわれる弊害の除去であります。
わが国の総医療費三兆円のうち、四四%は薬代であります。いまの制度のもとでは、ますます薬代の比重は高まり、一そう保険財政を脅かすでありましょうし、薬による公害も広まる危険を内蔵しております。これらの弊害をなくしていくために、今後医師の技術料をうんと高めることによって、医薬分業に進むべきではないかと考えますが、そのお考えがありますかどうか。この点については、去る十二日の党首会談において、わが党赤松副委員長に対して、
総理も明言されているようでありますから、あらためて
総理からもその
方針を承ります。
政府は、以上私が指摘した根本問題に触れようとせず、いまに至るもなおいたずらに保険財政の赤字にのみこだわり、若干の国庫負担と
保険料の
引き上げによって当面を糊塗しようとしているのは、医療保障を後退させるものであって、断じて許せません。(
拍手)再検討するお考えはありませんかどうか承りたいと存じます。
ここで、私はあらためて
総理に伺います。
先ほどから指摘をしてまいりましたように、政府のいう
福祉国家、
福祉優先というのは全くの口頭禅で、その証拠が
わが国の
国民所得に対する
社会保障の給付率に端的にあらわれております。一九五五年の五・三%がようやく六・三%程度になったにすぎず、欧米各国の一五ないし二〇%に比べますると、とても問題になりません。昭和三十七年の
社会保障制度審議会の答申に指摘されているように、西欧並みにするためには、
社会保障費を倍以上にせねばならないのであります。したがって、この際、老後保障、医療保障、心身障害者保護、母子
福祉、生活保護など、社会
福祉の諸問題について長期計画を作成し、その実現目標を明らかにする必要があると考えます。
総理は、施政
方針、また先ほどの答弁でも、新長期経済計画の中で
社会保障の位置づけを考えると述べておられるが、はっきりいたしません。その場合、
国民所得に対する給付率はどの程度を目標とされるか、考えがあれば明確に承りたいと思います。
要するに、私の言わんとするところは、
福祉の長期計画を立てることによって、経済の中で、
国民のための
福祉を先取りせよということであります。積極的な御見解を承りたいと思います。(
拍手)
次に承りたいのは、減税の問題です。いま、勤労
所得税を納めるサラリーマンや労働者の税に対する不平不満はまさに爆発寸前にあるといって差しつかえないでありましょう。株や土地や資産に対する税金は安いのに、なぜ働く者の税金は高いのかというのであります。政府は減税、減税と宣伝するが、一向に減税にはなっていないではないか、むしろ去年よりことしのほうが税金はふえているという素朴な憤りがみなぎっているのであります。要するに、名目的な給与のアップと
物価上昇の中で、一向に減税感がわいてこないというのが偽らざる庶民感情であることも
総理は銘記すべきであろうと思います。そのとおり、結果的には、減税にはならず、
自然増収という形の増税となってあらわれているのであります。本年度の
自然増収もまた、勤労
所得税だけではむろんありませんけれども、おおむね三兆円が見込まれるではありませんか。その中で、
所得税減税は四十八年度わずかに三千百五十億円にすぎず、
物価上昇を七%とすれば、三千五百七十億円の
物価の調整減税が必要だというのに、これでは
物価上昇のカバーすらできないことになります。(
拍手)
総理府の統計によれば、勤労世帯四人家族の年間生計費は約百五十万円となっております。生活費非課税の原則からいうならば、
課税最低限は当然百五十万円に
引き上げるべきでありましょう。
総理はたびたび諸外国の例を引かれるようでありますけれども、諸外国の給与はどうか、
福祉はどうかという比較をやったことはございません。私は、
わが国のこの低い
課税最低限の問題について、それを含んで直ちに一兆円程度の減税を行なう必要ありと考えまするが、いかがでしょう。また、年度内にいま一度減税をやるべきだと考えますが、そのおつもりはありませんか。
次に、住民税についてでありますが、
所得税は政府も四人世帯百三万円から百十四万円に
課税最低限を
引き上げようとしておりますが、住民税に至っては、八十万円が八十六万円になるにすぎず、
所得税との差はかえって大きくなることになるのであります。この差をいつごろまでに解消するつもりなのか、承りたいと思います。
次に、今回、中小零細事業者について、事業主報酬制度を設けて減税措置をとったことはけっこうだと思いますが、それを青色申告者だけに限定したことはいかなる理由に基づくものか。青色、白色とも認めるべきだと思いますが、政府の態度を承りたいのであります。
昨今、富と所得の不平等がますます拡大しておりますが、その中で政府は、高
福祉高負担などという所得格差を無視した理屈を押しつけてきております。それはやがて、付加価値税あるいは売り上げ税などという大衆課税へ発展させるための下心ではないかという勘ぐりも生まれるのでありますが、いかがなものでありましょう。私は、
物価へのはね返り、中小零細企業への悪影響、また大衆課税となる税の性格から、絶対に認めがたいのでありまするが、
総理、
大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
次の問題は、内外から注目を集めている官公労働者の労働基本権の問題について、
田中総理の所信を承りたいと存じます。
今日、
日本の経済はGNP世界第二位という高度成長を遂げ、よきにつけあしきにつけ、内外の関心と注目を集めております。しかしながら、この成長の背景に、三千五百万人にのぼる
わが国労働者の低賃金と長時間労働のあることを見のがすわけにはまいりません。欧米水準の半ばに達しない低賃金構造のために、
日本に対するチープレーパーあるいは輸出ダンピングという非難はますます高まり、低コストによる輸出の増大は円切り上げという形で逆流してきていることは、先ほどから申し上げましたとおりであります。
こうした国際的非難のよって来たったゆえんは、歴代
自民党内閣の前近代的な労働政策にその多くの原因があるといわざるを得ません。とりわけ、労働基本権に対する政府と使用者の硬直した態度は、ILOという国際的な場で再三批判の対象とされてきているのでありまするが、ILO憲章や
わが国憲法をひもとくまでもなく、スト権を含む労働基本権は、近代社会における労働者固有の権利であります。それはまた、労働者の労働条件と密接不可分の
関係を持つものであることは言うまでもありません。
わが国労働者の低い労働条件の原因の一つは、政府の労働基本権制約に由来することは、いまや明白な事実であります。
一昨年末の国鉄マル生運動に関連して、ILOの結社の自由委員会は、国鉄労組、動力車労組の提訴を全面的に認め、ILO九十八
号条約に明確に違反するとの立場から、国鉄当局並びに
日本政府に対して改善の勧告が行なわれたことは周知のとおりであります。また、昨年十一月、総評ILO調査団の提訴を踏まえて、ジェンクスILO事務総長みずからが仲介の労をとり、政府と総評の間に直接協議が行なわれることになりました。
しかしながら、昭和四十年のドライヤー勧告に見られるように、歴代政府の労働権に対する態度は終始硬直したままであります。そのことは、ドライヤー勧告を受けて設置された公務員制度審議会が、過去六年間に何らの前進を見ていない事実をもって明らかであります。特に、労働問題に対する政府の治安
対策的な観点に問題があり、こうした考えを改めない限り、政府に対する国際的非難は今後も繰り返し行なわれるであろうことを私はつけ添えるのであります。
そこで私は、決断と実行を一枚看板とする
田中総理に端的に伺いたい。
その一つは、内外から批判の対象となっている労働基本権問題に対して、この際、その態度を明確に示されたいと思うのであります。
二つ目には、ジェンクス提案に基づく直接協議を成果あらしめるものにする決意ありやいなや。
第三は、六年間の日時を空費している公務員制度審議会を、直ちに労働基本権問題を解決する場たらしめる御意思がありますかどうか。
第四は、ILO労働
関係条約について、すべて批准するお考えがありまするかどうか。
以上、明確な御答弁を要求いたします。(
拍手)
次に、農業の問題について若干お伺いいたします。
今日、
日本の農業は、歴史始まって以来の危機に直面しているといって過言ではないでありましょう。わが党はかねてから、米、畜産、果樹を三本の柱とした均衡のとれた農業政策のもとに食糧の自給体制を確立せよと主張してまいりましたが、いまや、
わが国の自給体制はくずれ去ろうとしております。現下の世界の食糧事情から考えてみて、この際、
日本農業に根本的な改革を行なう必要があると考えますが、政府の見解を承っておきたいと存じます。(
拍手)
次に、当面の緊急問題として、果樹対策のうち、特にミカンの
対策についてお尋ねをいたしておきたいと思います。
いままでの政府の無計画な果樹振興策の結果、温州ミカンの栽培農家は、十年前の二十万戸から三十七万戸とふえ、その生産量も、昭和三十五年の九十万トンから四十七年には三百二十万トンと飛躍的に増加しており、おそらく十年後には四百二十万トンにも達するのではないかといわれておるのであります。この生産量の増加は価格の暴落となってあらわれ、いま生産地においてはキロ当たり二十円から三十円という、生産コストを大幅に割る危機的な状態が続いております。
かくならしめた原因は、需給の無計画と価格安定策がないことに基因するのであります。しかも、いまなおパイロット事業などで作付面積の拡大が行なわれていることなどは全く理解に苦しむのであります。特に温州ミカンは、グレープフルーツなどの輸入自由化の影響を大きく受けつつあるのでありまして、まさにダブルパンチといわなければなりません。このままで放置すれば、遠からずミカン農家は壊滅するでありましょう。したがって、この際、価格の安定をはかるために、加工用だけではなく、すべてに価格支持制度をとる考えはないか。また、隔年結果の防止策をどう進めるのか。また、加工比率がきわめて低いが、これを三割以上に
引き上げるため大幅な助成を講ずる必要があるが、その御用意があるかどうか、具体的に承りたいと思います。(
拍手)
次に、教育問題について文相にお伺いいたしましよう。
政府が教育改革の指針としている、いわゆる中教審答申に対する各方面の批判は、きわめて大きいものがあります。当時平均年齢六十六歳といわれた委員の構成そのものにも問題がありました。特に、過去の郷愁にとらわれた改革への発想は、新時代における人間教育、民主教育とはなじまない多くの面を持っていることは否定できません。特に、詰め込み教育、画一教育の復活であり、人間尊重や創造性をスポイルするものであって、教育改革に向かっての情熱も、発想の転換も、どこにも見当たらないのであります。さらに、中教審の構成についても再検討を加え、答申をやり直してはどうかと考えまするが、御見解を承りたいと思います。
次に、いま一点承ります。
教育の機会均等を
国民に保障することは、憲法のもと、政府の責任であることは言うまでもありません。これを実現する一つの有力な手段は、経済的な理由から進学が困難な子弟に対して、国が学資を負担、もしくは援助することであります。現在、そのために
日本育英会があり、そのもとで育英資金の貸し付けが行なわれていますが、はたして本来的な目的を果たしているかというと、必ずしもそうではありません。
まず第一に指摘しなければならないことは、戦前から続いている育英会、育英資金という名前が示しているその性格についてであります。先ほど申し上げましたように、その目的は、一人の英才を国が援助、養成するところにあるのではなく、広く
国民に対して教育の機会均等を保障するためのものであるわけですから、名前からして、育英会、育英資金というのは当を得ないのであります。この際、名称を改め、たとえば奨学会、奨学資金とし、その名のごとくに運営の改善をはかることが必要と思われまするが、
総理、文相の見解を承りたいと思います。(
拍手)
次に、運営内容を見ますと、対象人員は同年齢層のわずか二%にしかすぎません。イギリスの一三%、
アメリカの一〇%など、国際的に見てもいかにも低過ぎ、文化国家、教育の先進国の名を恥ずかしめるものであります。せめて対象人員を一〇%程度に拡大すべきであると考えまするが、文相の御所見を承り、私の質問を終わるものであります。(
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〔内閣
総理大臣田中角榮君登壇〕