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1973-09-21 第71回国会 衆議院 法務委員会 第46号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年九月二十一日(金曜日)    午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 中垣 國男君    理事 大竹 太郎君 理事 谷川 和穗君    理事 福永 健司君 理事 古屋  亨君    理事 稲葉 誠一君 理事 横山 利秋君    理事 青柳 盛雄君       植木庚子郎君    片岡 清一君       住  栄作君    千葉 三郎君       早川  崇君    三池  信君       渡辺 紘三君    日野 吉夫君       正森 成二君    沖本 泰幸君       内海  清君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         内閣法制局第二         部長      林  信一君         法務大臣官房長 香川 保一君         法務大臣官房司         法法制調査部長 味村  治君  委員外出席者         法務大臣官房秘         書課長     豊島英次郎君         法務大臣官房訟         務部長     貞家 克己君         最高裁判所事務         総長      安村 和雄君         最高裁判所事務         総局総務局長  田宮 重男君         最高裁判所事務         総局人事局長  矢口 洪一君         最高裁判所事務         総局民事局長  西村 宏一君         最高裁判所事務         総局刑事局長  千葉 和郎君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ――――――――――――― 委員の異動 九月十二日  辞任         補欠選任   山田 太郎君     渡部 一郎君 同日  辞任         補欠選任   渡部 一郎君     山田 太郎君 同月二十一日  辞任         補欠選任   井出一太郎君     片岡 清一君   中村 梅吉君     渡辺 紘三君   佐々木良作君     内海  清君 同日  辞任         補欠選任   片岡 清一君     井出一太郎君   渡辺 紘三君     中村 梅吉君   内海  清君     佐々木良作君     ――――――――――――― 九月二十一日  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一二七号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一二八号) 同月十一日  出入国法案反対に関する請願高橋繁紹介)  (第一〇二四一号)  同(近藤巳記夫紹介)(第一〇四〇一号)  国立瀬戸少年院移転促進に関する請願早稻  田柳右エ門紹介)(第一〇四〇〇号) 同月十八日  保護司の活動強化に関する請願安田貴六君紹  介)(第一〇五三五号)  出入国法案反対に関する請願外一件(瀬野栄次  郎君紹介)(第一〇五六七号) 同月十九日  出入国法案反対に関する請願山田太郎紹介)  (第一〇六二七号)  同月二十日  出入国法案反対に関する請願稲葉誠一紹介)  (第一〇七三九号)  同(中村重光紹介)(第一〇七四〇号)  同(野坂浩賢紹介)(第一〇七四一号)  同(広沢直樹紹介)(第一〇七四二号)  同(浅井美幸紹介)(第一〇八四五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 九月二十日  再審制度手続規定改正に関する陳情書  (第七二〇号)  岡山県久米南登記所存続等に関する陳情書  (第七  六四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一二七号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一二八号))      ――――◇―――――
  2. 中垣國男

    中垣委員長 これより会議を開きます。  おはかりいたします。  本日、最高裁判所安村事務総長田宮総務局長矢口人事局長西村民事局長千葉刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。
  3. 中垣國男

    中垣委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 中垣國男

    中垣委員長 本日付託になりました内閣提出裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題とし、順次提案理由説明を聴取いたします。田中法務大臣。     —————————————
  5. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を便宜一括して説明をいたします。  政府は、人事院勧告趣旨にかんがみ、一般政府職員給与を改善する必要を認め、今国会に一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職職員の絵与に関する法律等の一部を改正する法律案を提出いたしましたことは、御承知のとおりでございますが、そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般政府職員の例に準じましてその給与を改善するなどの措置を講ずるために、この両法律案を提出いたしました次第でありまして、改正内容は、大略次のとおりでございます。  第一に、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬並びに検事総長次長検事及び検事長俸給は、従来、特別職職員給与に関する法律適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職職員俸給に準じて定められておりますところ、今回、内閣総理大臣その他の特別職職員について、その俸給増額することになっておりますので、おおむね右に準じまして、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬及び検事総長次長検事及び検事長俸給増額することといたしました。  第二に、判事判事補及び簡易裁判所判事報酬並びに検事及び副検事俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職職員給与に関する法律適用を受ける職員俸給増額に準じまして、いずれもこれを増額するとともに、簡易裁判所判事及び副検事につきまして、特別のものに限り、当分の間、それぞれ簡易裁判所判事一号の報酬月額をこえる額の報酬及び副検事一号の俸給月額をこえる額の俸給を支給することができるようにいたしました。  これらの改正は、一般政府職員の場合と同様、昭和四十八年四月一日にさかのぼって適用することといたしております。  以上が、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案趣旨でございます。  何とぞ慎重に御審議をいただきまして、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  6. 中垣國男

    中垣委員長 これにて両案の提案理由説明は終わりました。
  7. 中垣國男

    中垣委員長 引き続き両案に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大竹太郎君。
  8. 大竹太郎

    大竹委員 簡単に三つばかり御質問したいと思います。  第一番目に、いまの御説明にもありましたように、一般公務員引き上げに伴うて判検事関係についても引き上げるわけでありますが、一般職引き上げの率と今度の判検事引き上げの率などについてお伺いしておきたいと思います。
  9. 味村治

    ○味村政府委員 今回の給与改定によって裁判官及び検察官に対します俸給改定率は、裁判官につきましては一五・一%、検察官につきましては一四・八%の増額と相なっております。  なお一般職職員につきましては俸給表改定が一三・三六%ということになっております。
  10. 大竹太郎

    大竹委員 そこでお聞きしたいのですが、たしか去年の引き上げ率一般職のほうが高くて判検事引き上げ率のほうが低かったというふうに思っておるのでありますが、ことしはその逆になった事由を簡単に御説明願いたいと思います。
  11. 味村治

    ○味村政府委員 裁判官及び検察官俸給改定はいわゆる対応金額スライド制によりましておおむね裁判官検察官俸給に対応する額の俸給をもらっております特別職あるいは一般職職員俸給増額に準じて増額をすることとなっておるわけでございます。したがいまして今回もおおむねそれによって増額措置を講じましたところが、結果的にこのように裁判官及び検察官俸給改定率一般職員俸給表改定率を上回ったということでございまして、これは従来の対応金額スライド方式をとりましたことの結果でございまして、裁判官及び検察官について特別の事情があったというわけではございません。
  12. 大竹太郎

    大竹委員 次に、この表を拝見いたしまして特に目についたことを一つお聞きしたいのでありますが、この表を見ますと、判事の三等、検事の三等は、この前後二等、四等と比較いたしまして特別に上がっているように見えるわけでありますが、これはどういう理由ですか。
  13. 味村治

    ○味村政府委員 判事の三号、検事の三号が御指摘のように上昇率が一八・八%と非常に高くなっております。これは先ほど申し上げましたように、対応金額スライド方式によっているわけでございますが、従前判事及び検事の三号は三十四万五千円でございました。これを一般職で三十四万五千円の俸給月額の方は、指定職の甲の二号ということでございました。指定職の甲の二号が三十四万五千円の俸給月額であったわけでございます。ところがこのたび指定職の甲、乙の区別は廃止されまして、指定職につきましては一号から十二号ということに相なったわけでございます。そうして指定職の甲の二は改正後では指定職の八号ということになりまして、四十一万円ということになったわけでございます。ところが、指定職の八号になりましたのは、ほかに、従前指定職の甲の二号より一号上の甲の三号という三十六万七千円現行法で受けておられる方も指定職の八号に改定になりまして、結局指定職の甲の二号から甲の三号が今回の改正指定職の八号になりました。つまり、その結果、従前上でございました甲の三号と一緒になりましたために、甲の二号の上げ幅が大きくなったということでございます。その結果、甲の二号にスライドしております判検事の三号も、同じように増額の率が多くなったという結果に相なりました。
  14. 大竹太郎

    大竹委員 次に、先ほど大臣趣旨説明にもあったようでありますが、いままで判事の一号の上に特号があったわけでありますが、今度は簡裁判事、副検事、それぞれ一号の上に特号というのですか、特号を置くということになったわけでありますが、その理由とでも申しますか、それを置かなければならなくなった理由を御説明いただきたい。
  15. 味村治

    ○味村政府委員 このたび簡易裁判所判事につきまして特号と申しますか、副検事につきましても特号というものを新設することになっておるわけでございますが、これは従来、簡易裁判所判事の一号俸あるいは副検事の一号俸によりましては、簡易裁判所判事の方の中には、いわゆる判事の有資格者もございますし、それで定年退職されまして、簡易裁判所判事号俸ではお気の毒だという方もございます。副検事の中にも非常に長いこと副検事に在職いたしまして、そして一号俸でなおかつ長い期間在職しておって、一号俸を支給しているだけではお気の毒だという方がございます。そういう方には特別の措置を講じたほうがよろしいんではないかということから、このような特号を設けることに相なったわけでございます。したがいまして、これは簡易裁判所判事職務評価あるいは副検事職務評価を変えたということではございませんので、いわば暫定的な措置として、それぞれのちょうど判事特号についての条文と同じところに規定をいたしたということでございます。
  16. 大竹太郎

    大竹委員 けっこうだと思いますが、さしあたりこの規定ができたことによって適用を受ける人は、全部でどのくらい見込んでいられるわけでありますか。
  17. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 簡裁判事、副検事につきまして特号を設けていただきました理由は、いま司法法制調査部長から御説明したとおりでございますが、この適用を受ける方は年間大体二十名から三十名の定年退官をされた簡裁判事、副検事の方がおいでになるわけでございまして、その中でも全員というわけにはまいりませんで、特にぬきんでておる方がなるわけで、従来判事特号については、所長等を御経験になったような名実ともにりっぱな方、そういう方に特号になっていただいておるので、大体これもそういうことを考えております。
  18. 味村治

    ○味村政府委員 どれだけの方に簡裁判事、副検事特号報酬を与えるかということは、これは人事課所管でございまして、私の所管ではございませんが、大体二、三十人程度というふうに聞いております。
  19. 大竹太郎

    大竹委員 最後に、いま一点だけお聞きしておきます。  これは四、五年前でありますが、裁判官検察官初任給について、一般職員から見ると、もっと何とか考えなければならないということで、初任給調整手当二万何千円がついたことは申し上げるまでもないわけでありますが、今度の改正を見ますと、一般職政府職員の中で特別職といいますか、医者とか歯科医師というような方々に対する初任給調整手当現行十万円のものを一万円上げて十一万円ということになっているようでありますが、これはやはり、私は調整手当そのもの意味からいいましても、物価その他の社会情勢によって、ある程度スライドをして引き上げるということ、これは当然かと思うわけでありますが、この判検事についての初任給調整手当等はお考えになっておらぬようであります。この点についてはどうお考えになっておられますか。
  20. 味村治

    ○味村政府委員 実は、先生の御指摘のように初任給調整手当増額の必要があるのではないかということで、ことしの四月から七月ぐらいまでの間に調査をいたしたわけでございますが、各地の弁護士会等に聞きましたところが、先輩弁護士事務所に働いて弁護士事務を扱っている方の初任報酬は、現在大体月額十万円ないし十二万円というところが大部分という結果に相なったわけでございます。それで今回の報酬法改定によりまして、判事補十二号、検事二十号は、大体扶養手当を含めませんでも、現在約十一万近くに相なりますので、まあ弁護士のほうにはほかに期末手当等を支給しているところもございますが、やはり判事検事期末手当を支給しておりますので、それほどの差が見当たりません。したがいまして、今回の初任給調整手当増額ということは見送るという結果に相なったわけでございます。
  21. 大竹太郎

    大竹委員 いまの御意見、私非常におかしいと思うのであります。と申しますことは、修習生の中から最近は弁護士のほうにいく人が多くて、判検事になる人が非常に少ないということが、人事の悩みであるというふうに聞いておるわけでありまして、せめてこういうものをほかの職員と比べて、ほかの職員が上がったのでありますから、それに見合うように上げて、そんなわずかなことで弁護士になるのをやめて検事になろうというような人がふえるとももちろん言われないかもしれませんけれども、せめてそういうようなことをしていくことで、そういうものの考え方によって、私はやはり判検事になる人もふえてくるのだろうと思うのでありまして、不利な方向で考えるときだけ弁護士と比較するというのは、私は非常に考え方が矛盾しているんじゃないかと思うのですが、これは大臣どうお考えになりますか。
  22. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 たいへん実情に即したごもっともな御意見と存じます。今回は事務から説明いたしましたような事情でこういう程度にとどめたのでございますが、将来の問題として御意向をよく胸に入れまして検討していきたいと思います。
  23. 大竹太郎

    大竹委員 終わります。
  24. 中垣國男

    中垣委員長 次に稲葉誠一君。
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この裁判官報酬で、判事補になって十二号からずっと上がっていくわけですが、そんな人はあれですか、だれでもみんなずっと一緒に、同じように一号ずつ上がっていくのですか。その差異ができるのはどこら辺から差異ができるのですか。
  26. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 病気とか特段事情ということがあれば別でございますが、判事補の間は差をつけていないのが実情でございます。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、差がつくというのはどこから差がつくわけですか。
  28. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 判事補判事を含めまして裁判官に任官いたしまして二十数年を経たところからは、ある程度差がついてくるという扱いでございます。
  29. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 二十数年を経て差がつくというと、どこら辺ですか。
  30. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 判事報酬で申し上げますと三号、四号というところでございます。
  31. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、その差というのはどうしてつくのですか。
  32. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 司法試験に合格いたしまして一緒の教育を二年間受けて裁判官になるわけでございます。最低限の資格要件というものは皆さん満たしておいでになるわけでございます。しかし二十数年たちますと、やはり人間でございまして、その間えて、ふえてもございます。健康上の理由等で十分に働けないというような方もございまして、いろいろなことがございまして、二十数年以上もたってまいりますと、やはり一般的な評価の差というものが当然出てこざるを得ないわけでございます。そういったものが結果的に反映いたしまして、先ほど申し上げたようなところである程度の差がついてくるということでございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 健康の場合は別ですけれども、裁判官で差がつくというのは疑問に思いますが、どうしてわかるのですか。そこがどうもよくわからないですね。この裁判官できるとかできないとか——できる、できないじゃないだろうけれども、おのずからわかるだろうというのはどうやってわかるのですか。そこらがよくわからない。それが一つと、それと同じようなことになるかもわかりませんが、ある裁判官が、たとえば判事補の場合は、大体三回ぐらい任地が変わるようになっているわけです。そしてそれが、たとえば東京地裁なら地裁に入るというふうなこと、東京地裁に入るのが優秀だという意味じゃないけれども、一応優秀と見られていますね。そういうのに入れる人と入れない人とが現実に出てくる。これはどうして出てくるのでしょうか。というよりも、どうしてそれがわかるかということですね。この裁判官がいいとか悪いとか、いい悪いというのはおかしいけれども、できる、できないというのはどうしてわかるのですか。  この前いつかお聞きしたら、一つ地裁所長報告ですね。一つ高裁判事報告一つ最高裁独自の調査でそれがわかるんだという話が一応あったと思いますが、こういう三つのことで裁判官の、俗にいう成績といいますか、そういうふうなものがわかる、こういうふうにお聞きしてよろしいでしょうか。
  34. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 差があるかないかという問題及びそれをどのようにしてはかっていくのか、知っていくのかという二つの問題だと思います。  これは最初の出発が同じでございましても、そこに差が出てくるというのは、何も裁判官の世界だけに限ったことではございませんで、一般的に考え得るところでございます。ただ元来、等質的な方の集まりでございますので、なかなか差がつきにくいということはあろうかと思います。私ども是が非でも差をつけなければいけないという観点からものごとを見ているわけではないわけでございまして、できるだけ差のないような扱いをいたしていきたいということを裁判官仕事の性質上念願しておるところでございます。  しかし実際問題といたしまして、二十数年も仕事をいたしておりますと、いろんなところから差が出てまいりますし、またその差が周囲の方々に客観的に間違いのないところとして映ってくるという状況が出てまいるわけでございます。そういう状況が出てまいりますれば、やはりそれに応じた扱いをいたしていくということでございます。  そういう状況というものをどのようにして把握するかという第二の問題といたしましては、前回に御質問がございまして、その際にも申し上げたかと思いますが、やはりその所属の所長長官の御意見あるいは具体的に上訴審として事件をお扱いになります高等裁判所あるいは最高裁判所事件の目を通した御意見、そういうものが中心になりまして、客観的な差というものがつけられていくということでございます。これにつきましては私ども事務総局としては、特に特段の独立した資料収集というようなことをいたすという趣旨のものではございません。その点はそのように御理解をいただきたいと思います。そういう事情で客観的におのずとできてくる差、これはやはりそれはそれなりに尊重していかなければいけないというのが、前に申し上げました結論になるわけでございます。
  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 客観的におのずと出てくる評価ということはあとから聞きますけれども、そうすると、最高裁事務総局に入るという人は、どういう方が入ることになるのですか。一番優秀な人が入るのですか。そこはどうなっているのですか。
  36. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 皆さんどなたも優秀な方でございまして、どなたでなければいけないということはないわけでございます。優秀な方々の中から、その時点において適当に選ばれた方ということに相なろうかと思います。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 最高裁事務総局に入る人は一番優秀だというふうにぼくは聞いているわけですが、その中で一番優秀なのは人事局長だという話も世間ではいわれているのですけれども、それはそれとして、いま言った、客観的におのずから裁判官評価がわかるというのは、これはおかしいと思うのです。どうして客観的にわかるのか。まず所長報告だというのでしょう。所長が一体何を報告するのですか。それから高裁判事報告するというのでしょう。高裁判事控訴審裁判官の処理の内容を見て、この裁判官はどういう訴訟指揮をしたとか証拠の判断を誤ったとか誤らないとか、そういうことが中心でしょう。そうなってくれば、この二つから見ても、裁判官裁判ということを一つ判断材料にして、そこでおのずから評価ができてくる、こういうことに結局なるのではないですか。ぼくら弁護士から見れば、あの裁判官はできるとかできないとか、率直に言いますよ。田中さんも弁護士だからわかるでしょうけれども、それは弁護士から見れば大体わかりますが、だけれども、それはやはり裁判内容自身ということから判断をしているようにとれるのです。訴訟指揮がうまいとかまずいとかいうことは司法行政上の問題だから、それは一つ判断材料にしてもかまわないわけですか。そこはどうなんでしょうか。それと、所長が一体何を報告するのですか。
  38. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 若いとき、あるいは十年を経ましたとき、あるいは二十年、三十年となりましたとき、おのずとその年配裁判官としての品格と申しますか、そういったものがあるわけでございます。若い間は理屈というものが先行いたすのが通例でございまして、理論というものにあまりルーズであるということになりますれば、それではかえって若い者としてはもう少し向上すべきではなかろうかということに相なろうかという感じがいたします。  そういうふうにいたしまして、結局は、その年配年配裁判官としての全人格的な評価といったものがおのずとできてくるものではなかろうかと思います。その場合に、もちろん裁判官裁判をいたしますことが本務でございます。りっぱにその仕事をなし遂げ得るかどうかということが中心的な課題になってまいる、これは当然のことではなかろうかと思います。非常に事件が忙しいといたしましても、大部分裁判官が適切に事件を処理しておると思われる。特定の裁判官だけが非常に事件がおくれるというようなことになりますれば、やはりこれはその裁判官のマイナス的な評価ということにも相なろうかと思うわけでございます。  そういうふうにいたしましてまいりました場合には、上訴審で記録等を通じてその裁判官評価するということも決して不可能なことではないのではなかろうかという感じがいたします。また何人かの所長方がそれぞれの立場でごらんになって、やはり人格的な欠陥といったようなものあるいは人格的な長所といったようなもの、こういったものを把握されるということももちろん可能なことでございますし、そうすべき問題ではなかろうかと思います。  ただ特にお断わりを申し上げたいと思いますのは、もちろん仕事を通じての、仕事中心とした評価でございますので、裁判内容のよしあしに立ち入るのかということの御反論があろうかと思いますが、そういうことを申し上げるわけではございません。結論がどうであるか、結論がどうであるからいいとか悪いとかいうような意味で申し上げるものではございません。しかしそういう理論を出してくるということの中に、やはり筋の通った理論でありますれば、結論がどうであるか、こうであるかといったような問題でよしあしということを申し上げる趣旨のものではない。しかし仕事を通じまして、全人格的に把握してまいりますれば、やはり非常に優秀な方、中くらいの方、そうでない方というものの差というものはおのずと出てくるのではなかろうか。そのことを申し上げておるわけでございます。
  39. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私、聞いているのは、たとえば地裁所長最高裁のほうへいろいろな報告をするわけでしょう。何を報告してくるのかということですよ。これは裁判官と会って話していますと、たとえば今月中にこれを落とさないと最高裁にしかられる、しかられるとは言わぬけれども、とにかく最高裁うるさい、とかなんとかいってくるわけでしょう。そうすると、個人的にこの人は事件をどういうふうに——新件ですね、古い事件、旧受の事件と新件とあるでしょうけれども、どの程度分けて、判決したとかあるいは和解にしているとかいろいろあるでしょうけれども、何をどういう報告を求めているわけですか。そこのところを私は聞きたいわけですけれども、それが一つと、それから高裁意見というものは、結局原審の裁判官裁判をしたという内容に立ち入らなければ、高裁はそれをやっているわけだから、そこから結論は出てくるのじゃないですか。だから証拠の取捨だとかそれから事実の認定だとか、いろいろな法律上の判断とか、そういうようなものが結局高裁でわかってくるのだから、それに基づいて裁判官の成績がいいとか成績が悪いとかいうことが出てくるのじゃないですか。そうなれば、裁判の独立というふうなものの内容に立ち入ってくるということになるのじゃないですか。それに入らなければ、裁判官ができるとかできないとかという結論は出てこないのじゃないですかね。だから裁判官、一番こわがるのは、いやがるのは、控訴ですよ。控訴されると、いろいろな自分の訴訟指揮内容なんかわかっちゃうから、何とか和解してくれ、和解してくれといって、弁護士のうちまで電話をかけてくる裁判官もいるわけだ。実際問題はいろいろありますよ。とにかく、だから地裁報告内容高裁での裁判官報告内容ということは、両方とも裁判内容というものまで入って、そして現実には報告がされてくるんじゃないですか。どうもそういうふうにとれるのですがね、ことに高裁の場合は。
  40. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 事件を通じて裁判をごらんになる、それは高等裁判所のごらんになるところでございます。そういった場合に、それを裁判内容というふうに、稲葉委員のおっしゃるようにとらえるか、あるいはやはり個々の判断という問題ではなくて、その事件の処理全般についての適切、妥当性の有無ということでとらえるか、これは非常に微妙なところでございますけれども、私が詳しく申し上げるまでもなく、専門家であられる稲葉委員、十分その辺のところはおわかりいただいておるのではなかろうかというふうに思います。決してそのことが裁判内容に立ち入る評価になり、ひいては裁判の独立を侵すという問題ではないということは、これは十分おわかりいただけるのではないかというふうに思うわけでございます。あまり極端なことになりますと、それではおよそ裁判官になった以上は、たとえばどんなに怠けておっても、どんなことをやってもそれは全部一律に最後まで昇給するべきだというようなことにも極端な議論としてはなるわけでございます。そういったことはやはり好ましくないということもあるわけでございます。しかしこのことは、逆の面から申しましてあまりにもぎくしゃくとしてこまかな差をつけていくということは、これは裁判官仕事の性質上好ましいことではないということは当然のことでございます。そういうこととの関連におきまして、先ほど来申し上げておりますように、いままで行なわれておる慣行といたしましては、大体二十数年間は平等の扱いをし、その間おのずと出てくる差というものをある程度給与に反映させていくという扱いがなされておるわけでございます。私こういう扱いというものは決して個々の裁判の独立というものと矛盾、抵触するものではないというふうに確信をいたしておるわけでございます。
  41. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 最高裁にお聞きしたいのは、これは質問としてはちょっとおかしい質問なんですが、よく世間で偏向判決、偏向判決といいますね。最高裁から考えた偏向判決というのはどんなものなんですか。答えとしてはそんなものはありっこないという答えになると思うのですが、どんなのを偏向判決というふうに最高裁考えているのですか。これも質問としてはおかしいですよ。おかしいとわかっていて質問しているわけですよ。どうなんですか。
  42. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 あらかじめお答えをお示ししていただきましたように、そういう偏向判決というようなものを考えておるわけではございません。
  43. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いや偏向判決を考えておるという意味ではなくて、どういうのを偏向判決と考えるのか、こういうことなんですよ。
  44. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 私どもそういう意味で偏向判決というようなものがあるとは考えておりません。個々の事件につきまして、裁判官が全知を尽くされてできるだけ多くの人を納得せしめる理論構成のもとにお出しになりました結論は、それはそれとして独立せる裁判官の結論として受けとめていくということでございまして、そういう観点から偏向判決というようなことを私どものほうから申し上げたということはいまだかつてないところでございます。
  45. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 法務大臣にお聞きしたいのですけれども、自由新報というのがあるのですが、五百八十六号、なかなかいい新聞だと思ってぼくもときどき見ていますけれども、この前長沼判決が出たわけですが、これに対して「自衛隊違憲は偏向判決」と大きく書いていますね。これは偏向判決と書いてあるのだけれども、あなたは、大臣はこれは当事者ですからね、ぼくは遠慮なく言っていいと思うのですよ。全然違うときに言う場合には裁判批判になりますけれども、これは当事者だからぼくはいいと思うのですが、これは安全保障調査会長衆議院議員有田喜一という人のあれで「意図的に仕組まれた“黒い作意” 長沼訴訟判決を読んで…」これは言論は自由ですから、何を言ってもいいのでしようけれども、「自衛隊違憲は偏向判決」と大きく書いてありますね。法務大臣としてはこれは偏向判決というのは一体どういうものなのか、この判決は偏向判決というふうにお考えになるのかどうか、この点ですね。二つどうぞ遠慮なくお話ししてください。
  46. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 これは頭の痛い答えでございますね。まあ私政府、党員ではありますが、政府におりますという関係から申しますと、それは党の機関紙である。何をお書きになっておるかということについては論及を差し控えたい、政府だから。  そこで、政府の立場で偏向判決ということをおまえは考えておるのかというと、それは政府の立場では考えていない。不服ではあるのです。世にいわれる偏向判決だから不服だというようには言うていない。また言うたらたいへんなことでございます。それで言うてはいない。しかしながら当事者でございますから、いま先生が仰せをいただきましたとおり、当事者は不服の申し立てをするについて、具体的に言えば控訴の理由を申し述べるについて、いろいろ所見を言うこと一向差しつかえはない。第二審を迎えたらこういう主張をしてみせる、これは通してみせる、こういうことを所信を持って申し述べること、一向に差しつかえがない、当事者として当然である、法廷へ出たら裁判長の面前で攻撃、防御の方法を遠慮なく繰り返す、そういう訴訟手続に許されておることですから、それは一向差しつかえがない、そういう意味で偏向ということばは使っておりませんけれども、判決が間違いである、こういう御判断は間違いであるということを強く信じまして、どこがどう間違っておるのかという理由を目下作成をしております。間もなくできることと思います。理由はあとから提出することになっておりまして、目下作成をしている。ここで詳細を申し上げることはできませんが、不服の点につきましては訴訟手続によって訂正を願いたい、こういう考え方で進めておるのでございます。偏向ということば自体は政府の立場では使ってはならぬことで、使ってはいないのでございます。
  47. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから私が聞いているのは、あなたがお考えになる偏向判決というのはどういう判決なんでしょうか、こう聞いているのです。
  48. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 そういう意味でありまして、本件具体的事件に関係ささずに偏向とはどんなものであるかというおことばでございますと、これは大いに答えてよろしいことと思います。それはどういうことかというと、私はこういうふうに思っております。裁判官裁判の態度というものはすべて中正のものでなければいかぬ、国民がたいへん迷惑をする、これは最高裁判所長官も仰せをいただいておることでございますが、右に片寄らず、左に偏せず、中庸、中道、中立の態度で裁判をしていただくことが望ましい、その観点を踏みはずした判決は、私は政府でありますから言わぬのですが、いわゆる世の中に偏向判決として糾弾されるものではなかろうか、こういうふうに考えております。中正でいってもらいたい、中正でいくことにじゃまになるようなことは、団体加入、団体活動すべて御遠慮を願わねばならぬ、これは裁判所法の精神である、こういうふうに考えております。
  49. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 結局そうするとこの判決は中正でないから控訴したのでしょう。そういうことでしょう。そう警戒しないでだいじょうぶです。中正でないから控訴したのですね。そうじゃないですか。それで答えが出てくるのじゃないですか。
  50. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 おことばでだんだん話が近づいてまいりましたけれども、おことばどおり……。
  51. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 国が当事者でしょう。この事件でも裁判官を忌避した、これをけしからぬと言う人がいるけれども、ぼくはそうは思わないのです、当事者ですから。当事者で、あなた一方の当事者が裁判官を忌避することだってあるのですから、訴訟手続であるから。それを一方の当事者である国がやったからといってけしからぬという考え方はぼくはとりません。ですから私はそういう質問はしませんが、もう一つ、憲法違反の判決を出したらあれですか、中正でないということなんでしょうかね。そういうところはどうでしょう、これはあなた法務大臣だから。
  52. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 憲法違反の判決がでても、中正であるかないかとは必ずしも一致せないのではないでしょうか。しかし、憲法違反の判決をすること、内容を検討してみれば中正でなかった、右寄りであった、左寄りであったということは起こり得る、そういうこともあるのでしょうね。憲法違反の法律であるから必ずしも中正でなかったとはいえないのではないか、こう思います、法律判断というのはその人の自由でございましょうからね。
  53. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると長沼判決、これはいま控訴していますからこまかいことをぼくは何も聞くつもりはこざいません、それは裁判所がやることですから。そこで、こういう判決が出ましたね。あなたのほうで控訴される、これは自由だ、国が控訴するのは手続に従って自由だ。だけれども、現実に憲法ができたときの状況なりあるいはこの憲法の条文をすなおに読んでみた場合と現実の自衛隊の持っておる力というか規模というか、そういうものとの間に非常にギャップがあるということは、これは大臣もお認めになりますか。
  54. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 最初出発のときといまの情勢は、だんだん結果においてギャップと見られるような情勢は確かにございますね。
  55. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いま私の言ったことを正確に理解してあなたがお答えになったのかどうか、ちょっと疑問なんですがね。そこで問題になってくるのは、この判決が出て、それであなた国の当事者として、とにかくこういう判決が出た、不服だ、これはまあいいけれども、あなた方の立場としてはわかるけれども、だけれどもこういう判決が出たことについていま言ったギャップがある。そのギャップが生じてきた理由なり何なり、そういうようなものから考えたりして、こういう判決が出た、それに伴ってやはり国としてはいろいろ考えなければならないところがあるというふうにお考えになりますか。
  56. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 先生、えらい私の見解を強く申し述べて恐縮なんですけれども、ちょっと世の中に誤解があるのですね。どんなところに誤解があるかというと、この間具体的な判決が下りましたね。下った判決を厳粛に受けとめる。ある裁判ではこういう判断をなさっておる、なるほどこれはこういう点もあるだろうというように厳粛に御裁判を受けとめるというその態度は、憲法を心得る者何人も三権分立の大精神にのっとってそうでなければならぬ。そのことと、控訴をすることによって判決は既判力を有せず、拘束力を有せず、効力のない、そういう意味においては、効力ということばは語弊があるんでありますけれども、既判力、拘束力がないんだ、ない拘束は受けようがない。判決が下った以上は、次の判決がきまるまでは、判決の精神を尊重して行政上こういうふうに改め、ああいうふうに改めたらいいじゃないかというおことばがすぐ出てくる。たいへん道理に合うたことばなんでありますが、一方、既判力はないんだ、拘束力はないんだ、こういう立場からいうと、そういう影響を受けようがない。だから厳粛に判決を受けとめるということと、これに従って諸般の行政を変えるんだということとは別個のものだということの区別をしていただきたい。これはそういうようなことを、わけのわかった簡単なことですけれどもね、これがどうもないようです。おまえの言うておることはけしからぬじゃないか、一体それで自由民主党はいいのか、政府はいいのかというおことばが各所でこう出てきておりますね。そこのところのかみ分けをして本件を国民の皆さんに説明していただくということがたいへん望ましいことじゃなかろうかというふうに思います。
  57. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 こういう裁判をされた裁判官、こういうのはいまの内閣の法務大臣としては、たとえば最高裁判事というものには推薦をするというようなことはこれはとても考えられない、不適任だ、こういうふうにお考えでしょうか。
  58. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 私は、そういうふうには考えません。それは、どうしてそういうふうに考えないかというと、それを考えることはたいへんなあやまちを政府が犯すことになる。喜んでこういう人を採用するようにいたしますということも言えませんが、こういう判決をした者はそれは欠格なんだということも言えない。それからもう一つ御理解をいただきたいのは、大事な答弁を逃げるわけではありませんけれども、この任命の手続としましても法律の根拠といたしましても、法務大臣には職務がございませんので、内閣総理大臣の行なう仕事である。現実の問題としては総理大臣の御都合いかんによって——ちょっと耳打ち程度はある。候補者が一人の場合には、田中君、これをやるよ、こういうふうにおっしゃると、ふんと言うよりしようがない。それから候補者が二人あると、これはどうだろう、こういうことが出てまいりますと、これはこうで、これはこうでという意見を申し上げる、そういう程度のことでございます、法務大臣仕事は。ちょっと耳うちがあるという程度で、事実は内閣総理大臣が、適否を信念によっておきめになる、こういうことであります。過去にこういう判決をやっておるからけしからぬということは、基準にはすべきものではない。またそういうことをいままでにやった例もない、こういうことであります。
  59. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 こういう裁判官最高裁裁判官になったとしたら、あなた方のほうは非常に困るのじゃないですか。これは困るでしょう。
  60. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 困るか困らぬか……(稲葉(誠)委員「困るなら困ると言えばいい」と呼ぶ)いえ、そんなことを、私は総理大臣じゃないから、先ほど言うように、言えない。逃げるのではないが、言えないというのです。けれども、私はただ法制上のことは言えるのです。法制上は、そういうことにこだわらずに人材を見る。ただ、ありのままのことを申しますと、右に片寄らず左に偏せず、中立、中庸の人でなければならないという考え方は、選定の基準になっておると思います。おるかおらぬか、聞いたことないが、そんなことがわからなかったら、それは総理大臣の資格はないわけですから、それはちゃんとわかっておるものと思いますが、そういう基準から申しますと、過去においてこういうことがある、ああいうことがあるということが、幾らか基準に影響するようなことはなくはないのじゃないでしょうか、それは。しかし、この判決をやっているでしょう。第二審に行っても憲法違反の判決が出た、第三審に行っても自衛隊は兵力である、九条違反だという判決が最高裁判所で出たといたしますね。そうすると、この判決は正しいということになりましょう。どこかの方面から、偏向ということばを使っておるというおしかりがありましたけれども、使おうが使うまいが、この判決は正しいということになりましょう。ですから、将来のことは簡単にここで言及はできない。抽象的に申しますと、右に片寄らず、左に偏せず、中庸の態度をとり得る、そういう裁判官でなければ最高の裁判官としては資格はない。下級の裁判官としても資格はないのですけれども、しかし、———————日本は思想は自由です。ものの考え方は自由です。憲法で自由なんです。ですから、そこはたいへんむずかしいところになるわけですね。
  61. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 —————————————————————いまのはあなた、憲法否定よ、それは。まずいですよ、それは。——————思想の自由があるという、そんな言い方に聞こえるもの。そういう意味じゃないですか。私はわざわざあなたのためを思って、再度取り消しの——取り消しでもない、陳謝、じゃない。取り消しかな。これは再度の発言というものを、ぼくは広大無辺な親心からあれしているのですから。まずいですよ、いまのは。速記録に残ったらまずいですよ。
  62. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 いまどう言うたのですかな。————————憲法上思想の自由————————ということばは取り消します。それでいいですね。
  63. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 やっぱり出るのね、本心が。やっぱり明治の教育を受けたあれだな。思想的に古いという感じを受けますね。  そこで、憲法のことに関連してぼくは疑問に思うのは、疑問に思うというか何というか、あなたの属しておられる自由民主党は、憲法を自主的に改正するということを党の綱領にされているわけでしょう。決して内政干渉という意味じゃなくて、与党として政権をとっておられるので……。憲法改正を党の綱領にしておられるということになってくると、現在の憲法について、まずどういうふうな考えを持っておられるのですかね。何か自民党の綱領を見ると、自主的憲法をつくると書いてあるのですね。いまの憲法は自主的でないという解釈ですか、まず前提は。それから、あなたのお考えはどうですか。非常に法務大臣として重要だと思うのです。
  64. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 憲法改正に関する党の立場は、私の言及すべきことではない。党員ですけれども、党員としてここにおるわけじゃないから、国務大臣としておるわけですから、これは私が言及すべきことでない。  おまえはどう思っておるのかということは、お答えを避けるわけにいかぬ。私は、憲法の改正は必要ない、世界に冠たるりっぱな憲法だ、こういうふうに信じておる。憲法九条に関しましても、同様のことを考えておる。おるのだが、一つ腹の中に——ということを言うとみなお笑いになっておるのですけれども、腹の中にありますことをありのままに正直に申し上げますと、どうも憲法九条ははっきりしない。主権の発動たる戦争、武力の行使、武力による威嚇、この三つは国際紛争の解決の手段としては放棄する。読みかえねばならぬ。それだけではわからぬ。国際紛争の解決の手段でない、自衛のための武力は持ってよいというふうに読みかえねばならぬ。一国の憲法というものは、読みかえなければならぬようなずさんなものであってはいけませんね。はっきり、自衛のための実力は持ってよいということを明記すること、一つの行き方でございましょう。ですから、将来、ずいぶん将来の将来ということになろうと思いますが、時を得て、国民のコンセンサスが得られるような時期到来をする場合には、場合によってははっきりと書き直しておいたほうが、後世のためによいのではなかろうかということを、私が個人として腹の中に考えておるのだ、そういうことも事実でありますという話をしたら、正直にものを言う男だといって御批評になる人と、やっぱり憲法改正が腹の中にあるのだといってお小言をいただく人と、二種類あります。しかし、私はそう思っておるわけですよ。思っておることを思っておるとおりに言うて通る男でございますので、私はありのままのことを言うてひやかされたり小言を言われたりしておるという事情でございます。しかし、本来憲法を私はりっぱな憲法だ、世界に冠たるこの憲法、こんな憲法はございません。人権擁護等を見たって、すばらしい憲法です。ですから、平和憲法、人権擁護の憲法、こういういい面を持っております憲法を、簡単に改正しようなどということは私は考えていない。改正せぬでも、だいぶん国民がなじんできておりますから、これは私はいいのじゃないか、こう思っております。
  65. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 非常に重要な問題なんですが、ここでその論議をする場であるかどうか、ちょっとこれも私は考えなければならぬと思うのです。  そこで、いまあなたの言われたのを聞いていると、いかにも日本の憲法が翻訳調だ——翻訳だとはいいませんよ。翻訳だというのじゃなくて、翻訳調といいますか、翻訳トーンだ、そういうふうに聞こえるわけですね。それはそういうふうにお聞きしておいてよろしいでしょうか。
  66. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 一口に言えるのですが、いまのお尋ねを、一口にものにたとえていうと、アメリカ製の生地を持ってきて日本で洋服を仕立てて着ておるようなものじゃないでしょうか。生地はどこでできたのか。アメリカでできた。点を一つ打ち直すのでも、GHQに乗り込んでいって、当時の芦田特別委員長は、私もついていったことは何度もございますが、オーケーをとったのです。点一つ打つのでも、オーケーがなければ、点は打ち直すことができなかったという憲法改正をやりました。生地は向こうです。しかしその生地をもらって日本国のからだに合うように、七十八カ所にわたって修正を加えた。私は特別委員の一人であります。生き残っておる者の少ない一人でございますが、七十八カ所の修正を憲法において加えましたので、仕立ては日本の仕立てでございます。向こう生まれの生地で、仕立ては日本でございます。着てみると、わりあいに着ごこちが出てきたというのが現行憲法であろう。ばたばた改正するなどということを言わぬほうがいい。党がいうのは別ですよ、党と私とは別ですから。ここへ来て話をするときは党のことは知らぬのです。私はそういう立場で申し上げているのです。
  67. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、法務大臣と法制局の人が来ていますから聞くのですが、ちょっと話がそれちゃうのですが、しばらくお許し願いたいのです。アメリカ製の生地というけれども、アメリカの憲法では戦争を放棄してないわけでしょう。日本の憲法では戦争を放棄している。だけれども、戦争になった場合に、放棄しているのと放棄してないのと実際にどこが違うのですか。そこがよくわからないのですね。そこは大臣はどうでしょうか。まず大臣から常識的なお答えを願って、法制局のほうはこまかい専門的な点をお答え願いたいと思います。
  68. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 放棄をしましても自衛力はあるわけです。ここがむずかしいところであります。放棄しておる、自衛力というものもゼロであるということなら話は簡単なんですね。放棄しておる、こう口では言うけれども自衛力は持っておるのだ。相当程度の自衛力を持っておる。こういうことになる。  そこで、どこが違うのかというと、自衛力を持っておる国の立場から申しますというと、どこの国ということを具体的にいうわけにいきませんから、外敵が攻め込んでくる、日本は自衛力によって防衛をする、迎え撃つ。かりに敵が国内におる間は国内において自衛力と外敵の侵入との間に戦闘が開かれる。領海の外に敵が逃げて出る。領空の外に逃げて出る。少し判断がむずかしいのでありますけれども、領土ははっきりしております、日本は島国ですから。領土の外に敵が遁走する。領土、領海、領空の外に敵が遁走したときにはこれを追撃する。ここまではいいのです。その追撃する自衛力が領土、領海、領空外に出ることは許せない。ぴしゃっととまって戻ってこなければならぬ。違うところはここでございましょう。これが自衛に徹した国の自衛のやり方でなければならない。それを追っかけていって敵の基地まで行って基地を爆撃するというのは行き過ぎておる。外敵の侵入に対して防衛が目的。防衛の限界は領土、領海、領空が限界、こういうことですね。
  69. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いや、アメリカの憲法とどう違うかと聞いているんだよ。アメリカの憲法と日本の憲法と具体的にどう違うのかと聞いているのですよ。だから日本の憲法ではそこまでしかできない。アメリカの憲法ではもうどこへ行っても相手方をやっつけることができる、こういうことですか。こういうふうにお聞きしてよろしいですか。はっきりしてください。
  70. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 そのとおりです。日本の限界はそこまでです。アメリカの憲法には自衛でなければ許さぬという規定がございませんから、どこまでも戦闘がやれる、自由にやれるということですね。
  71. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 法制局に聞く前に、アメリカの憲法には自衛でなければならないと書いてないとなると、そうすると自衛ということと侵略ということと概念を対比させていいかどうか、ちょっとむずかしいと思うのです。ぼくもむずかしいと思いますけれども、常識的にいえば自衛と侵略というものを——侵略ということばはちょっとあれかもしれませんが、対比させてみますね。そうすると、アメリカの憲法というのは自衛を越えて侵略をできるのだけれども、日本の憲法はそれはできない、こういうことですか。侵略ということばの響きが悪いけれども、そういうことになるのかな、いまあなたのお話を聞いてみると。
  72. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 アメリカの憲法論をここでやる気はないのですけれども、比較ということになると触れなければならぬから申し上げますと、アメリカの憲法なら自衛の限界というものがありませんから、他国の領土内に乗り込んで戦闘ができる。現にやっておる。やっておるからけしからぬといわれておるわけでしょう。日本の自衛隊はそういうわけにはいかぬ。領土、領空、領海内に限られる。一寸出てもいかぬというのじゃないでしょうけれども。大体この方針は、自衛の限界を守る自衛隊、日本特有の行き方でございますけれども、そうしなければならぬ。そのほかに兵力も侵略できる兵力は持たないとか、海外派兵が許されぬとか、付随をしたことがありますけれども、根本は、いま私の言うたことが根本原則でございます。
  73. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 話が、裁判官検察官給与のあれですから、どっかへいっちゃったのですけれども、だからここら辺である程度締めますけれども。  だけれども、自衛のためでも坐して死を待つ場合ならば、相手も外国もたたけるというのはいままでの自民党内閣の考え方でしょう。そうなれば、領土、領空、何とかいうよりもほかへ出てやっていけるのではないですか。それならば、実際アメリカの憲法とちっとも違わないのじゃないですか。それはどうでしょうか。
  74. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 えらい防衛論争になりましたが、それは先生仰せのとおり、たとえばICBM——外国のことをいうわけにはいきませんけれども、ある外国の地点から日本の東京に向かってICBMを飛ばすという場合に、飛ばすことが間違いがないということが情報の上で想定されておる場合においては、領空、領海、領土の外に日本はたまを飛ばしていく、そしてこれを爆撃するということをしなければ日本の自衛はできないということも理論的にはあり得るでしょう。そういうことはあり得ても、日本は憲法によって自衛に徹する国であるから、それはやらぬのだ。領土、領空の外に出て、領土の外に出て活躍をすること、戦闘行為を行なうことは許されぬのだ。遠慮をするわけです。遠慮をしておったのでは自衛ができぬ場合も多々ある。よくわかります。先生仰せのような場合はそうであります。しかし、それは遠慮するのだ、不便でも遠慮するのだ、こういう考え方であります。
  75. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 どうもことばが少しあれですね。慎重に答えないといけませんね。不便でも遠慮するというようなことばもちょっとおかしいですね、一国の防衛の問題に関連して、と思いますが、これはあなたの御自由ですからぼくはこれっきり言いませんが、この問題はこれでやめにします。  最後に法制局に聞きたいのは、結局こういうことですよ。日本の憲法は戦争を放棄している、アメリカの憲法は戦争を放棄してないとは言うものの、日本のように自衛権というか自衛力というものをどんどん拡大をしていけば、結局戦争放棄どいうことの意味はなくなっちゃって、戦争を放棄してないアメリカの憲法との差というものはだんだんなくなっていくのではないかということをぼくは考えるから聞くわけですよ。だからそこら辺のところはどういうふうに現実に違うのかということを、これは法制局のほうから——法務大臣の答えがあって法制局に聞くというのは、ちょっと法務大臣としてもおもしろくないかもわからぬけれども、しようがないから法制局のほうから答えていただいて、それでこの法案の質問にまた返ります。
  76. 角田礼次郎

    ○角田政府委員 ただいま法務大臣からいろいろ御答弁いたしましたことをもう少し条文に即して御説明申し上げたいと思います。  まず憲法の九条一項の解釈として、一切の戦争あるいは武力行使、そういうものを放棄しているという説があるわけでございますね。そういう説に立ちますと、アメリカの憲法と日本の憲法は非常に違いが出てくるわけです。ところが私どもはそういう解釈をしていないわけで、九条の一項においては侵略的な戦争とかあるいは侵略的な武力行使というものを放棄しているだけだ、こう解釈する。よけいなことですが、判決もその立場に立っていると思います。そういうふうにいたしまして、表からはそういうふうに言えると思います。  それから裏からは、私どもはいわゆる自衛権の存在というものを認め、また自衛のための必要な措置をすることができるのだという解決をとっているわけです。ただ、口でそこまで言いますと、アメリカの憲法には何も、九条一項のように明示的に侵略戦争、武力行使をやらないと書いてないと思いますけれども、アメリカの憲法の解釈としても、侵略的な戦争をやってよろしいという意味ではないだろうと思うのです。それからまた自衛権の存在も認めているだろうと思います。そうしますと、確かに御指摘のように九条一項だけを見ますとちっとも変わってないじゃないかという御批判もあるところだろうと思います。  ただ、そこから先が違うわけで、私どもは九条二項というものをまた日本の憲法として持っておるわけであります。ただ九条二項についても御承知のようにいろいろな解釈のしかたがあるわけですけれども、簡単に申し上げますと、自衛権は持っていても、いわゆる九条二項にいうような戦力は持てないし、また交戦権は持てないわけでございますから、そこにアメリカの戦争のしかたとだいぶ違ってくるということがいえるのじゃないかと思います。前に佐藤法制局長官が伸び伸びと戦争はできませんということを申し上げた。伸び伸びといいますと、何か戦争を楽しんでおるようでたいへん表現がどうかという御批判もあろうかと思いますが、もう少し正確に言いますと、戦時国際法上いろいろな、主として人道的立場からの制約、そういうものがあるわけでございますけれども、アメリカが戦争する場合は、一応そういう制約はむろん受けますけれども、しかしそれ以外はかなり自由に戦争ができる、武力行使ができる。ところが日本の場合には先ほど来法務大臣がお話しになりましたようないろいろ実態的なああいう制約を受けるわけでございます。自衛権の行使だからといっても、われわれは戦時国際法上の制約以上にいろいろな制約がある。そういう意味ではアメリカの憲法で戦争ができるとしても、われわれがやっておる自衛力の行使としてやる自衛権の発動、あるいは自衛行動というものはかなり幅が狭い。たとえば海外派兵ができないというようなことに解釈上そうなっておるわけですが、そういう点が明らかに違う点であると思います。
  77. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 防衛の論争はこれでやめますけれども、非常に落し穴があるわけです。たとえば海外派兵といったって海外派兵の定義のしかたですよ、これが問題でしょう。それから自衛権の行使と海外派兵とどういう関係になるかということも大きな問題になりますよ。戦事国際法上の制約といったって、中立国の拿捕の問題とかあるいは軍法会議が持てるとか持てないとか、その程度のことしかないのじゃないですか。まあこれは別の問題ですからやめまして、今度はきわめて現実的なリアルな問題になりますが、お話をお聞きするのです。  私はある法務省の管轄の役所に行ったんですよ。そうしたらお茶を出してくれたのだ。これはきわめて現実的な話になっちゃうのですけれども、そのお茶がきわめてまずいのですね。こんなまずいお茶かと言ったら、そう言わないでください、予算がないから私たち職員がお茶代を出して、そしてお茶を買っているのだ、こう言うのですよ。これはほんとうですよ。鑑別所もそうですよ。私はまずいお茶だなと言ったんだけれども、これはまずかったなと思ってあやまりましたけれども、一体法務省というのはあれですか、小さな役所かもしらぬけれどもそういうところでお客さんにお茶を出すのも、職員がみな金を出してやっているのですか。そういう役所あるのかなあ。あなたは法務大臣を長い間やっておられたので、聞かなくたって自分で答弁できることでしょう。どうですか。
  78. 豊島英次郎

    ○豊島説明員 お答えいたします。  私予算のことは専門ではございませんけれども、現場の実情といたしましては、お茶代という特別な予算をもらっておるわけではございませんので、それぞれ各自が出しました費用をもってまかなっておるというのが実情でございます。
  79. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 お茶代の話はあれですけれども、これは一つの例ですが、私は驚いたのですよ。法務省というのはそんなに力のない役所なんですかね。力がないといってはおかしいけれども、それは困りますね。そういうことで大臣一体どうするかということです。これは卑近な例ですが、それが一つ。  それから、大臣、この前岡山かどこか視察に行かれたでしょう。そのときの記事をちょっと私は見たのですが、検察事務官の待遇のことを、非常に悪いから直したいというのがちょっと出ていた。大臣がどの程度下部のことについて精通されておるか知りませんけれども、検察事務官の待遇が裁判所書記官と比べてどういうふうになっているかということ、これは大臣、失礼だけれども御存じでしょうか、どうですか。
  80. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 実情を調べに参りました。ところが人員が不足しておるということも重要なことなんですけれども、もっと大事なことは検察事務官の質が、質のよい人が来てくれればもっと能率が上がるのだ、質のよい人はどうして来ないのか、それは民間会社にとられてしまう、民間企業にとられてしまう。どういうわけかというと初任給が低い。検察事務官についてはそれがいえるのですね。そこでこれはいけないということに気づきましたので、いま検討をさせておるのでありますけれども、たいへんな違った金額というわけにもまいりますまいが、民間と比べてこの給与ならひとつ検察事務官のほうにいこうじゃないかといって来てくれるような額の初任給、特に初任給に重点を置きまして、いま検討をしておるところでございます。
  81. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうじゃなくて、裁判所の書記官の場合は一六%の調整がつくわけですよ、これは御案内でしょう。検察事務官の場合は公安職というかっこうで特別な号俸になっているわけでしょう。ところがこの差額があるのですよ。答弁はきょうでなくてもいいですが、違うのです。私は裁判所書記官の待遇がいいと言っているのではないのですよ。いいということを言っているのではないのですけれども、検察事務官の場合、公安職になっているけれども上がり方が一六%の上がり方ではないのです。最初はそうではなかったが差が出てきてしまって、ちょっと低くなっているのですよ。全部が公安職になっているわけでもないのです。  それから質のいい人とかなんとかいう話も、その言い方はまずいね。言い方というのもなんだが、いずれにしてもよく調べてください。
  82. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 これは別の機会にお答えいたします。
  83. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それからもう一つお聞きしたいのは、今度の場合でも多少改善になっているかもわかりませんが、副検事のことです。副検事の場合、これは大体検察事務官からいく人と警察からいく人とその他からいく人とありますけれども、それが五十くらいで一番上にいってしまう、一号にいってしまう。そういう人がだいぶおるのです。そうするとあれは六十三ですか、あと十何年間というものはずっと一号でとまってしまっているのです。今度ちょっと改善があったようなあれもありましたが、どういうふうに改善になったのか。副検事の一号というものをベースアップでなくてその上にもう一つつけるとか、それをもっと上げるとか、いろいろ方法があると思うのですが、副検事の人が一号になったきりで上に上がる希望がなくなってしまうということで、非常に不平があるのですがね。そこら辺のところはどういうふうになっているかということを、ちょっとよく研究してくれませんかね。今度それはどういうふうになったのですか。
  84. 味村治

    ○味村政府委員 実はこれは私の所管ではありませんけれども、確かに先生が御指摘のように副検事になりまして在職期間が長くて副検事一号で頭打ちなってしまう。そのあと楽しみといいまますか、昇給の楽しみがないという方がかなりいるわけでございます。そこで今回の改正によりまして、そのうちの優秀な方あるいは非常に経歴が古くて一号俸ではお気の毒だという方を、暫定的にもう一号上げようという措置を、今度の改正法でとることにいたしたわけでございます。
  85. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは最高裁のほうはよくわかっていると思うのですが、実際問題としていまの最高裁としても答えにくいかもわからぬけれども、裁判所書記官の調整と検察事務官の公安職の関係の指定で、現実には相当の差が出てきているのではないですか。これはわかればいいし、わからなければきょうでなくてもいいと思うのですが、それが一つ。  それから裁判官とよくお話をしてみますと、いろいろなお話が出てくるわけです。というのは、初任給裁判官も非常によくなった。よくなったのだけれども、古くからいる人で中だるみの人が相当いるわけですよ。これの是正が多少はされているのだけれども、なかなか中だるみの是正がされないということで、裁判官だから不平を言うわけじゃありませんけれども、どうもそういう点をもっと是正をしてほしいという声をよく聞くわけですね。その点が今度の法案の中でどういうふうになったのかということ、これを聞きたい。  それからもう一つ、これは特別職じゃないのですけれども、一般職になるのですけれども、前から言っているように、裁判所では警備の職員がいるわけですね。これは二百何人いるわけだ。これは毎日警備しているわけじゃないわけですよ。何か事件があったときに警備するのでしょうけれども、これは八%の調整がついているわけだ。ところが刑事裁判のときの廷吏さんなんかも、同じように法廷を守って危険にさらされているわけなんだけれども、これは調整がないわけだ。廷吏さんからは、警備員が調整があるならば、廷吏にも何とかある程度調整してくれということがよく出るのですよ。ところが民事の廷吏さんもいるから、なかなかむずかしい点があるかもしれませんが、警備員といったってこれは毎日警備しているわけじゃないので、何をしているのかと聞いてみたら、特別な法廷があるときには警備する。そのほかのときにも何か出ている人もいるそうですね。毎日二人くらい交代で出ているということを聞きましたけれども、特別な事件が法廷でないときも警備はあるのでしょうけれども、そのほかには大体何か集まってお茶を飲んでいるらしい。そうなれば警備手当、警備員については、これは事件があったら、裁判があったら、出動したそのときだけに手当を払えばいいのであって、一律に八%の調整をするというのはどうもおかしいのじゃないか、それが廷吏さんの非常な不平不満ですよ。そういうことをいろいろ聞きたかったわけですよ。  ちょっと現実的な話であれですけれども、こういうことを全体をまとめて御答弁願って、私は十一時四十五分までというつもりで質問しておりますから、そこで終わりにしたいと思います。
  86. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判官検察官以外の一般職員、ことに裁判所においては裁判所の書記官、検察庁におきましては検察事務官の待遇については、これはいずれも司法に関連いたします重要な仕事でございますので、関係のほうにおきまして日夜その点の配慮はいたしておるわけでございます。  稲葉委員指摘のように、一六%調整という方向をとりましたものと、特別俸給表という方向をとりましたものと分かれておりまして、その間ある程度の格差ができておるのではないかというようなことがこれまでいわれてきたわけでございます。人事院はその勧告におきましても、号俸調整というのを、そういう観点からだけであろうかどうかそれは私つまびらかにいたしませんが、号俸調整ということを検討すべきであるということを表に打ち出してきたわけであります。  今回の人事院勧告を見てみますと、調整ということはやはりその職務と責任の特殊性からそのままにいたしまして、一方公安職俸給表には上に一等級設けるという措置をとりました。そういうことでそれが全部の格上げになりますかどうか、これは私公安職俸給表のほうは所管でございませんのでつまびらかにいたしませんが、格差是正につとめるという方向を打ち出したのではなかろうかと推測をいたしておるわけでございます。  それで、私どもだけの観点から申しますと、やはりこの一六%調整というものは、その職務の責任に基づいて長年行なわれてきたもので、妥当なものであるという確信を持っております。これは堅持していきたいというふうに考えておるわけでございます。それと同時に、検察事務官等の俸給というものも、これは十分その職務と責任に見合う待遇をなさるということに少しも異論があるわけではない、何も差があるということをどうこう私ども申し上げる筋のものではないということは御了解をいただきたいと思います。  それから廷吏と警備員との関係でございます。警備員につきましては、御承知のように八%の調整というものが行なわれている。廷吏の職務がいま御指摘のようなものであるということはわかりますけれども、御指摘がございましたように、刑事だけの廷吏ではございませんで、民、刑、家事、少年といったような全部について廷吏の職務がございます。この廷吏の職務の全部について号俸調整を行なうということはなかなかいろいろな困難がございまして、これまでも数回にわたる要求をいたしてまいりましたけれども、実現を見ないという段階にあるわけでございます。  もっとも、それでは廷吏につきまして待遇改善的なことを全然考えていないのかということになりますと、決してそういうわけではございません。より現実的な問題といたしまして、廷吏の格づけということについては近時非常に意を用いまして、具体的には五等級定数の大幅獲得ということでございますが、これについては相当な努力を本年度もいたしまして、将来もいたしていくつもりでございます。またある程度それによって、適当な処遇という観点から努力を今後も続けていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  87. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 中だるみの点は。
  88. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 中だるみの点でございますが、これは確かに年々の俸給表におきまして、各号俸間の間差の是正、いわゆる間引きをいたしまして、中だるみの是正ということは努力されておるようでございます。本年度の人事院勧告におきましても、一般的にそういった意味の特色が見られるというふうに私どもは承知いたしております。  しかし、それはそれといたしまして、御承知のように裁判所の職員はかなり平均年齢が高うございます。平均年齢が高いということは、勢い二けた号俸等の人数が非常に多いということになるわけでございまして、何といたしましても、さらに適正な処遇という観点からは、より上の等級、たとえば書記官で申しますと平書記官の五等級、家庭裁判調査官で申しますと平調査官の四等級といったような定数の獲得、そういったものにさらに今後とも十分の努力をいたしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  89. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これで質問を終わるのですが、ぼくが申すのは、書記官の調整をどうこうしろということを言っているのでは決してありません。これはそのまま残しておくべきだということは言っているわけです。  いまの裁判官なり検察官もそうですけれども、中だるみの是正というのは今度の法案の中にどういうふうにあらわれているのですか、そこがどうもはっきりしないのですね。これは中堅の裁判官とお話ししますと、そういうふうなことを言われる方が多いわけですね。それでお聞きをするわけです。  それからもう一つ、廷吏の昇格の問題でも、いいところを最高裁の廷吏の人がみんなとっちゃうというとことばが悪いけれども、最高裁の廷吏の人は特別に優遇されている。その他の廷吏の人はぐっと格が下がっている。みんな最高裁のほうにいいところを持っていかれちゃうというふうに言う人も相当いますね。だから、いろいろな点があると思うのですけれども、廷吏さんの待遇改善ということについても、これは法務大臣も、それからいま言った下級のいろいろな、下級ということばは悪いですけれども、法務省関係の職員、これは特に気の毒ですから、そういう点の待遇改善ということに十分に骨を折っていただきたい、こういうことだけ質問をしお答えを願って、私の質問を終わります。
  90. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 最初にちょっとおわび申し上げますが、いま書記官が平五等級、調査官が平四等級と申しましたが、これは一等級ずつ違っておりまして、書記官については平四等級、調査官につきましては平三等級ということでございます。訂正させていただきます。  中堅の裁判官俸給のたるみがあるのではないかということでございますが、私具体的には行政官と比較いたしまして決してそういうことはないというふうに確信をいたしております。しかし判事補から判事になるところ、判事初任と申しますか、その辺のところはやはり十分に考慮されるべき問題であろうというふうに思います。今後ともその点につきましてはさらに一そうの努力をいたしていきたいというふうに考えておるわけでございます。  それから廷吏等の問題につきましても、決して定数だけで事を処理しようと考えておるわけではございませんが、具体的な問題といたしまして、結局は適正な待遇ということになりますと、先ほど申し上げましたような上位等級の級別定数の大幅増ということが現実の問題として非常に好ましいことでございますので、その方向の努力を今後も続けたいということを申し上げたわけでございます。ただその際、じゃあそういうふうにしてとったものは最高裁だけで使って、下級裁には一向回さないんじゃないかという御指摘でございますが、そういうことは決してございません。むしろ五等級等、とりましたものは全部といっていいほど下級裁に回している、最高裁では使っていない、こういうことでございます。
  91. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 十分配慮してまいります。
  92. 中垣國男

    中垣委員長 次に、青柳盛雄君。
  93. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私は、日本共産党・革新共同を代表いたしまして、ただいま提案されております二つの法案に対し質疑をするわけでありますが、最初にこの二つの法案に対する共産党・革新共同の態度を明らかにしておきたいと思います。  結論的に申しますと、この両案はいずれも棄権をする以外に方法がないと考えております。その理由は、わかりやすくいいますと、従来の俸給体系が上に厚く下に薄いという形になっておる。それを全般的にベースアップをするというのがこの法案でございますので、勢い上により厚く下にはあまり厚くならない、比較的にはより薄くなるという予盾を来たしておるからであります。上というのは概略的に申しますと司法行政に携わる幹部クラスの人たち、またよく職制といわれる人たち、管理職といわれる人たちのことをわれわれは上というふうに概括的にいいたいと思うのであります。そういう人たちに対してこんなに手厚い給与をしなければならないという根拠はわれわれは見出すことができません。むしろ下級の職にあって毎日労働強化され、国民に対するサービスのために健康をそこなってまで苦心しておられる方々に対してこそ給与をもっともっと上げるべきだというふうに考えております。そこで憲法は裁判官については俸給法律をもって保障するということになっておりまして、これは、民主主義のもとで裁判の独立を保障するためには、当然主権者である国民が法律をもってこれを保障し、一部の勢力が裁判官俸給を左右するというようなことで裁判の独立を侵害しないようにという趣旨のものでありますから、われわれはそれがこういう法律の形で出てくることには当然のことだと思って賛成をするわけでありますけれども、中身が問題だということでございます。そこで、それにいたしましても、下級の方々に対して従来よりも何がしか改良が施されておるわけでありますから、この部分については積極的に賛成をする。もちろん不満な点はありますけれども、改良部分についてこれを反対する筋はないわけでありますから、不十分であるといいながらも賛成をする。そうしますと、勢い、二つにこの法案が分かれていない以上、上の部分と下の部分に分かれていない以上、われわれとすれば、残念ながら賛成もできないし、反対もできない、棄権をせざるを得ない、わかりやすくいえばそういうことでございます。  ところで、司法行政というものの持っている機能というものはもちろん必要でございます。私どもは司法行政は必要ないというような考え方はありませんが、この司法行政こそが先ほどからよくいわれている中正、公正に行なわれることが大事だと思うのです。これが何らかの要因によりまして不公正に行なわれるということになりますと、事実上憲法の保障している裁判官の身分というようなものが裏からくつがえされる結果になるわけで、その最たるものが、給料が人によって違う。同じような経歴、同じような能力を持って、同じように働いていながら、ある者に対しては非常に厚いけれども、ある者に対しては低い。明らかにだれが見ても不公正だ。その原因は一体どういうことか。不公正であるべきでないのに不公正であるというのは何ゆえかといえば、それは要するに司法行政の衝に当たっている上級の部分においていろいろな判断をする際に、これはどうも好ましくない裁判官である。どういう意味で好ましくないかといえば、わかりやすくいえば、反体制的である。時の政府の政治方針などに従順でない。法律は厳格に守る。憲法は厳格に守る。憲法や法律をじゅうりんしている時の政府には迎合しないというような気骨を持って、また憲法に保障されている法律と良心に従って裁判をする立場で貫く、そういう人間は好ましくないということになって、これを本来ならば首にしたいのだけれども、なかなか、十年の任期のときに拒否する以外手がない。したがって、いやがらせの手段でやめさせよう。これは給料を上げてやらないということが一つの有力な手段になることは明白であります。もう一つは、任地をなるべく不便なところに置く。そこに定着させるか、島流し的に左遷するというか、そういうような措置、そのほかにもいろいろあろうかと思いますが、給料のことが今度は問題になっておりますので、最高裁に質問いたしたいと思います。  給料について本人が明らかに不公正だというような措置がとられた場合、これに対して当該裁判官はどういう方法でその救済を求めることができるのか。人事院というようなものは最高裁のほかにあるわけではありませんので、これは一般の行政職の場合と裁判官の場合、違いますから、その不服申し立ての方法とか救済申し立ての方法というのは保障されているのかどうか。また過去において、そういう制度があるとすれば、それは活用されていたのかどうか、これをお尋ねしたい。
  94. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 裁判官の現在の身分というのはいわゆる特別職でございます。一般裁判所の職員につきましては臨時措置法によりまして国家公務員法が準用されております結果、公平審査等の申し立てということも可能でございますが、現在のところ裁判官につきましてはそういう意味の、おれの俸給を上げるべきであるのに上げないといったような意味での不服の申し立ての方法はないというふうに考えております。
  95. 青柳盛雄

    ○青柳委員 これは憲法上そういう制度を設けないことが正しいのであるか。つまり禁止されていると解すべきであるかという点になれば、私はそういうものは憲法上設けるべきではないということではないと思いますが、にもかかわらず、現在の制度のもとで不服申し立ての方法がない。これではもう人事の最高の責任機関である最高裁におまかせをする以外にない。任地の問題につきましては本人の同意を得ないでかってに転勤を命じることはできないということになっておりますから、この点は拒否することもできるわけでありますが、またそうであればこそそれに対する報復的な措置として給料を上げないでおく、そして不服の方法がない、こういう現象を来たすわけでありますから、本人ももういや気をさして一生裁判官をやろうと思っておったんだけれども、もうあきらめて弁護士にでもなるかというようなことにならざるを得ないという事例は過去においてもたくさんあったと思うのですね。だからこれを改めて、何とか本人たちの言いたいことを言わして、そしてこれももちろん言ったことがすべて正しいというわけじゃありませんから、公正に第三者的な立場で判断してその苦情というものは取り上げられない場合もあり得るということはあるにいたしましても、全然道を講じてないということはこれはおかしいので、これを改めるような考え方最高裁としてはないのかどうか、これをお尋ねしたいと思います。
  96. 矢口洪一

    矢口最高裁判所長官代理者 ただいまも申し上げましたように、裁判官の職務の特殊性ということから現在特別職ということに相なっておるわけでございます。またそうでございますればこそ憲法に、意に反する転官や減給をされるということがないという規定も設けられておるわけでございます。私どもは裁判官の職務とその責任の特殊性ということを日夜考えますればこそ、そういったことにつきましてはいやが上にも慎重な運営をいたしておるわけでございます。  確かにいま申し上げましたような、お尋ねの意味での不服申し立ての方法はないわけでございまして、それでありますればこそ裁判官給与等の問題を取り扱う場合にいたしましても、先ほど稲葉委員の御質問にも申し上げましたように、その方の適正な処遇ということにつきましては、客観的な評価というものがはっきりと定まりますような時点に至りますまで、できるだけ一律の取り扱いをいたすということをいたしておるわけでございます。任地、転官の保障があるということから任地を拒否されたような場合に、報復的な扱いをするなどということは一切これをいたさないということで、その方針を堅持してきておるわけでございます。  今日まで裁判官報酬は、ただそういったような意味事務総局だけで原案をつくりまして裁判官会議の御判定をいただくという性質のものでないことは、機会ありますごとに申し上げてきたところでございます。本日も十分地方裁判所、高等裁判所の長の御意見等を伺って原案を策定し、さらに慎重に御審議いただいて裁判官会議でおきめをいただいておるということを申し上げましたことも、実はそういった裁判官の地位の特殊性というものを十分認識いたしておりますればこそのことでございます。今後給与というようなものをいま御指摘のような意味において使っていくというようなことは全然考えていないということを申し上げたいと思います。
  97. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私は時間が非常に短いので、ほかのことに触れる時間的な余裕がありませんが、いまのお答えでも要するにそういうことのないように努力するのだという、ただ抽象的な精神訓話みたいな話になってしまうのですが、制度的な保障がちっとも考えられていない。たとえば下級審の裁判官などの場合に裁判官会議というような制度がありますけれども、ここで昇給について論議するというようなことはおそらく行なわれていないと思う。結局はそこの所長とか、長官というところできめてしまわれるというようなことで、そこで原案をつくられるというようなことになるわけでありますから、私どもはもっと給与制度については民主化を最高裁考えてもらわなければならぬのじゃないか。あえて最高裁がそれを拒否するということであれば、国の最高機関である、立法機関である国会において法律をもって給与の具体的な実施のやり方について一定の基準を設けるとか、制度的な新しいものをつくるという必要が出てくる場合もあり得るということを申し上げまして、本日はこれでおしまいにいたします。
  98. 中垣國男

    中垣委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。
  99. 中垣國男

    中垣委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  100. 中垣國男

    中垣委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  101. 中垣國男

    中垣委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  おはかりいたします。  ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  102. 中垣國男

    中垣委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。
  103. 中垣國男

    中垣委員長 次回は、来たる二十五日火曜日午前十時理事会、午前十時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時八分散会