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1973-08-24 第71回国会 衆議院 法務委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年八月二十四日(金曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 中垣 國男君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 福永 健司君 理事 古屋  亨君    理事 稲葉 誠一君 理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    植木庚子郎君       住  栄作君    羽田野忠文君       保岡 興治君    沖本 泰幸君       山田 太郎君    河村  勝君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   江崎 真澄君  出席政府委員         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省入国管理         局長      吉岡  章君         公安調査庁長官 川井 英良君  委員外出席者         警察庁警備局外         事課長     佐々 淳行君         外務省アジア局         外務参事官   中江 要介君         海上保安庁警備         救難部長    船谷 近夫君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ――――――――――――― 委員の異動 八月二十四日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     河村  勝君 同日  辞任         補欠選任   河村  勝君     佐々木良作君     ――――――――――――― 七月十八日  出入国法案反対に関する請願青柳盛雄君紹  介)(第九二九二号)  同外一件(佐野憲治紹介)(第九二九三号)  同(坂本恭一紹介)(第九二九四号)  同(柴田健治紹介)(第九二九五号)  同(柴田睦夫紹介)(第九二九六号)  同(嶋崎譲紹介)(第九二九七号)  同(高沢寅男紹介)(第九二九八号)  同(竹村幸雄紹介)(第九二九九号)  同(辻原弘市君紹介)(第九三〇〇号)  同(土井たか子紹介)(第九三〇一号)  同(中澤茂一紹介)(第九三〇二号)  同外一件(成田知巳紹介)(第九三〇三号)  同(正森成二君紹介)(第九三〇四号)  同(青柳盛雄紹介)(第九六一〇号)  同(池田禎治紹介)(第九六一一号)  同(受田新吉紹介)(第九六一二号)  同(上坂昇紹介)(第九六一三号)  同外一件(佐藤敬治紹介)(第九六一四号)  同(柴田睦夫紹介)(第九六一五号)  同(竹内猛紹介)(第九六一六号)  同(玉置一徳紹介)(第九六一七号)  同(塚田庄平紹介)(第九六一八号)  同(野坂浩賢紹介)(第九六一九号)  同(芳賀貢紹介)(第九六二〇号)  同(福岡義登紹介)(第九六二一号)  同(正森成二君紹介)(第九六二二号)  同(和田貞夫紹介)(第九六二三号)  同(下平正一紹介)(第九九一〇号)  同(楢崎弥之助紹介)(第九九一一号)  同外一件(矢野絢也君紹介)(第九九一二号)  保護司の活動強化に関する請願愛知揆一君紹  介)(第九三〇五号)  同(勝澤芳雄紹介)(第九三〇六号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第九三〇七号)  同(塩谷一夫紹介)(第九三〇八号)  同(坪川信三紹介)(第九三〇九号)  同(床次徳二紹介)(第九三一〇号)  同(中村重光紹介)(第九三一一号)  同(西村直己紹介)(第九三一二号)  同(橋本登美三郎紹介)(第九三一三号)  同(粟山ひで紹介)(第九三一四号)  同(山口敏夫紹介)(第九三一五号)  同(山崎平八郎紹介)(第九三一六号)  同(熊谷義雄紹介)(第九六〇三号)  同(小林正巳紹介)(第九六〇四号)  同(斉藤滋与史君紹介)(第九六〇五号)  同(高見三郎紹介)(第九六〇六号)  同(竹内黎一君紹介)(第九六〇七号)  同(竹中修一紹介)(第九六〇八号)  同(竹本孫一紹介)(第九六〇九号)  同(中村拓道紹介)(第九九〇九号)  司法書士法改正に関する請願外一件(林百郎君  紹介)(第九六二四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月十八日  出入国法案反対に関する陳情書外七件  (第六一三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法務行政及び検察行政に関する件(金大中事件)      ――――◇―――――
  2. 中垣國男

    中垣委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  3. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 まず最初法務大臣お尋ねをするのですが、この金大中氏の事件について、その重要性大臣はどういうふうに把握をされておられるのか、それと、どこに大きな問題があるのかということをどうお考えになっておられるか、最初にお聞かせを願いたい、こう思うわけです。
  4. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 この事件重要性をどう認識しておるかというお尋ねでございます。  私は、日韓両国関係は、他国の関係とは違う、一衣帯水の隣接した関係にあるばかりでなく、両国の間には、すでに、両国民が結婚をいたしまして、子供ができ、孫ができ、ひ孫ができておる、その数は膨大な数に及んでおる。現にわが国がおあずかりをしてある、いわゆる法務省入国管理をいたしております人々の頭数が六十二万人にも及んでいます。外国人をあずかっております数は七十三万人でございます。そのうち六十二万人まで朝鮮半島の出身の諸君である。こういう深い関係にあります両国の間柄が、本件事件のいきさつのために、誤って、両国の間にみぞができるようなことが起こりますならば重大事態、非常に悲しむべき事態である、何とかどのようなことをしても解決をせなければならぬ、解決せずにおける問題ではないという信念でございます。重要性認識の程度はそう考えておる。  それから、第二の御質問の点は、どうすれば解決ができるかというお尋ねの点でございます。第二はそこにあろうと存じますが、それはたいへん私は、信条として、信念として考えておるのでありますが、事件発生以前の状態というものは両国はよく認識している、事件発生以前の、両国認識のできているこの状態に戻せ、戻してくださる責任は韓国にある。本人自由意思によって国に帰ったのじゃないのです。拉致されたものである、誘拐されたものである、略取されたものである、刑法の条項をそのまま申し上げますならば、国外に拐取されたものではないか。これを原状に返さずして両国の間はうまくいくはずがない。どんな困難があっても、捜査が一段落をついたならば、どうか韓国はおおらかな考え方になって原状回復に御協力を願いたい。だれがやったかというようなことは別の問題です。原状を回復することに御協力をいただく、まげて御協力をいただくということを韓国にとってもらいたい。これなくしては解決はできぬ、こういうふうに私は思っております。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 具体的な事実のことについてお聞きをしたいと思うのですが、最初金大中という方の日本へ来た経過、それからどういうふうな旅券で来たのか、現在どういう状態になって日本におられたのか、それをお聞きしたいと思います。
  6. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 一口に申しますと、詳しいことは事務から申しますが、お尋ねでございますから概略を私から申し上げますと、本年の一月五日米国から、彼の本国である韓国に帰る道の途中、病気療養並びに自叙伝発行原稿校正のために日本国に立ち寄った。そこで三十日の滞留期間を設けて上陸を許したのであります。途中でもう一ぺんこれを更新してくれということでありまして、もう一ぺん更新をいたしまして、六十日置くことになりました。  しかるところ三月二十五日に至りまして、アメリカへ往復してきたいから、日本におる本人の立場から申しますと、米国に再入国をしたい、行って帰ってきたい。帰るのは本国でなしに日本に帰りたい、それで何とかしてくれということがありまして、二百四十日の期間をきめてやりました。これは十一月二日になりますが、十一月二日まで滞在を許すということにいたしまして再入国を許しました。先月の十日、七月十日にアメリカに参りまして、日本へ再入国をいたしました。そうして大臣は、そういう事情必要ありと認めまして、特別在留許可をいたしまして今日に及んでおる、こういうことであります。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その特別在留許可の保証といいますか、身元引き受けというか、これは私の聞いた範囲では金山元駐韓大使がおやりになった、あるいはもう一人の現職の外交官がおやりになったというふうにお聞きをしておるのですが、そこはどうでしょうか。
  8. 吉岡章

    吉岡政府委員 お説のとおり、金山元大使でございます。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 梁一東という方は、私が法務省政府委員室を通じて、どういうことで日本入国をしたのかということを調べてもらったわけです。メモをいただいたのですが、一九七三年七月十六日に入国許可になっております。旅券外交旅券になっておるようですね。それから身分国会議員となっているのですが、これはあるいは法務省からいただいたメモの間違いじゃないかと思うのですが、国会議員じゃないはずだと思うのです。国会議員をやめられたのじゃないですか。国会議員ですか。そこらの点はどうなんでしょうか。まず、旅券外交であるかどうか、身分国会議員かどうか。
  10. 吉岡章

    吉岡政府委員 外交旅券をもって入国許可しております事実は確認してございます。それから身分国会議員でございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 金敬仁という方は、公用の旅券おいでになっている、こういうふろに私どもは調べてあるのですが、なぜこの梁一東という方が外交旅券おいでになったのでしょうか。これは、考えられるのは、韓国の大統領なり首相との綿密な連携というか、そういうふうなものがあって初めて外交旅券が出たというふうに考えられるのですが、その間の経過はどういう経過ですか。
  12. 吉岡章

    吉岡政府委員 私のほうにおきましてもその間の事情をつまびらかにしておるわけではございませんが、われわれが得ました情報によりますと、梁一東氏は野党の党首でございますので、こういった方に対して韓国政府外交旅券を付与しておるというふうにわれわれ聞いております。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、韓国では、外交旅券で出てくるときには、あなたのほうではわからないのでしょうか。いわゆるCIAというものの承認がなければ日本へ来られないというふうにわれわれは聞いているのですが、その点はどういうふうにお調べになっておられるのでしょうか。
  14. 吉岡章

    吉岡政府委員 その点は全く韓国内部事情と申しますか、内部手続の問題でございまして、入管当局といたしましては、韓国政府が発給した有効な旅券を持っておる限り、その旅券を尊重するというたてまえをとっております。
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私は外交旅券で来ていることにどうも問題の意義があるように思うのです。どうも、ここに何か一つのかぎがあるように思うのですが、これはあとの話にいたしまして、警察関係にお聞きをしたいのですが、この事件について、初動捜査一つはおくれたということ、あるいは予断を持っておったのではないかということ、このことがいろいろいわれておるわけなんですが、一つお聞きをいたしたいのは、宇都宮代議士のところから後藤田官房長官のところに、この事件電話があった。それを二時五分だというふうに聞いておるのですが、まず、その事実がどうかということが一つと、それに関連をして、警察本件についてどのような捜査の陣容をつくり、着手をしたか、このことを最初にお聞きしたいと思います。
  16. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  警察事件発生を入手いたしましたのは、当日午後二時十四分ごろ宇都宮徳馬代議士から警視庁警備部長電話があったわけでございまして、官房長官のほうに電話が何時にあったかということは、私ども確認をいたしておりません。  われわれといたしましては、その宇都宮さんからの電話連絡によりまして、警備部長は直ちに所管外事課長のほうに連絡いたしまして、外事課長のほうは直ちに課員現場に急派し、それから事件確認を始めたわけですが、その最中に金大中事務所の代表の趙という方から一一〇番が入っております。一一〇番は、したがって、二時四十一分に入っております。そして、この一一〇番に基づいても麹町警察は直ちにパトカーを出している。これは二時四十九分に着いたと思いますが、したがって、本庁から行った捜査官パトカーとここで合体になったわけであります。したがって、これが二時四十九分ごろということであります。  麹町署は、署長以下が現場に行きまして、現場保存目撃者発見、特に、手配をするにしても、どういう車で出たかということがわかりませんと手配できませんので、そういう目撃者発見につとめたわけで、最初は、現場到着前後を含めまして百五十二名という初動体制捜査に着手いたしたわけでございます。  そして、緊急配備、これは東京港、羽田空港等出国監視を直ちに指示いたしました。  午後三時十五分に緊配の発令があって、これに関与した警察官は八百七十一名でございます。それから、海空港の警戒を全国警察本部に指示いたしましたのは、警察庁を通じで三時四十分ということでございます。  それから警視庁から全国事件発生手配をいたしまして、次いで、翌日になりますが、特別捜査本部を設置いたしました。  それからホテル宿泊客チェック、これは全国警察本部に指示いたしました。  そういう初動捜査から一連の打つべき手は打っておりますが、大略そういうことでございます。こまかくはまた御質問があれば申し上げます。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで問題になるのは、一一〇番があったのが二時四十一分ごろということになってくると、少なくとも宇都宮さんのところから電話があった。それから警察官がかけつけたのは三時ちょっと前。それまでに民間人はこの現場へかけつけているわけですね。どうして宇都宮さんのところから電話があってすぐ現場へかけつけなかったのでしょうか。これはずいぶんおくれているのじゃないのですか。その前にもうかけつけている人が相当いるのですね。ここのところは、初動捜査がまずおくれたということがいえるのじゃないですか。
  18. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 宇都宮さんからの連絡がありまして、所管課長を通じて所管課員現場に行ったのは二時二十分ごろで、麹町署のパトカー到着が二時四十五分ということでございますが、その前にこの事件関係の方が、秘書とかそういう人がいろいろな方面連絡をしているわけですね。それで、そういう方が飛んできた。要するに金大中さんの関係事務所ですね。そういう人が飛んできた。そのあと警察のほうに連絡があったというかっこうになっております。われわれとしては直ちに飛んでいったということでございます。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこは見解の相違になるかとも思うのですが、一般の民間人の方が行った後に警察のほうが来ているというふうに——本隊はですね。いまの説明の中ですと、そういう形になっておるのですね。  そこで、本件について、警察最初段階でいろいろな四つの犯行説というのがあったらしいのですが、そういうことから、現在のような状態犯罪であるということについての十分な認識がなかったんじゃないですか。そこはどうなんですか。
  20. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 捜査は、御承知のとおり、どこまでも客観的な事実の調査に基づいて行なうべきであって、あらかじめ予断をもってあることを想定して、それに基づく捜査というのは、これはわれわれのとらないところでございまして、われわれとしては、どのような形になるかということを最初から特に予想したわけではございませんで、そういう訴えてきた人の陳述、供述、それから現場に遺留された品物、それから目撃者供述、こういうものを正確に調べてどこまでも真実を解明する、こういう体制で臨んだわけでございます。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで一つの問題になってくるのは、その検問が非常におくれていることは一つですけれども、海だの空だのの港、それはまあやったとして、ところが、陸のほうの、たとえば東名で行くということになれば、事件発生が一時半かどうかは別として、多少の時間のズレは別として、百キロで走ったところで、東名道路なら東名道路、その他の道路に十分な緊急手配が行なわれておれば、常識的に見てこれは当然発見できたんじゃないでしょうか。ところが、そういう方面での手配というものをやらなかったのですか。これはどうなんですか。やったとしてもずっとおくれたのですか。
  22. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 これは、先ほど申し上げましたとおり、三時十五分、通信指令室の一斉指令によって緊急配備をいたしております。それから全国には、警察庁のほうから三時四十分、これは管区警察局を通じて全国の各空港、海港について、その道に来る検問、それから航空機、船舶のチェック、乗員、乗客のチェックを徹底するように指示したわけでございます。  時間的な問題ですが、これは御承知のとおり、こちらの通報がおくれたということで、結局検問した時間では、金大中さんのソウルにおける供述から逆算しますと、その時期には東京のところはかからなかった。しかし、関西へ行ったとすれば関西のほうでかかったのではないかというお話ですが、御承知のとおり、どういう車に乗ったのか、それから車の番号、こういうものが、現場目撃者はいないわけでございますので、これはわからなかったわけでございます。ですから、手配としては、拉致したと思われるような人の人相なり金大中さんの特徴、こういうものに対しての手配はいたしたわけでございますが、車自体、何番の車の、車種がどういうことで、東名をどういうふうにのぼっていったか、こういうような形の情報が得られなかったために、具体的な検問での資料がなかったということはいえるわけであります。ただ、われわれの指示に基づいて、全然やらなかったわけではなくて、滋賀県、それから神奈川県それから京都府、大阪府、これらはこちらから連絡した時間のすぐあとに、それぞれ東名高速について検問を実施いたしております。
  23. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは警視庁が中心になってやったので、ほかの県はあまりやらなかったのじゃないですか。どうもそういうふうに聞いているのですが、これは。それならば、この時間的な経過からいって、それは車はわからなかったかもしれないけれども、一々検問すれば当然発見できたんじゃないですか。どうもそこら辺のところがこれは理解できないんですがね。発見できたはずじゃないの、時間的な経過からいえば。飛行機で行っちゃったのならばわからないかもわからぬけれども、自動車で行ったとすれば発見できたんじゃないですか。また、発見できる可能性はあったんじゃないですか。
  24. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 もし東名高速を通っていれば、先ほどお話ししたように、ある時間帯では滋賀県、京都府、大阪等でやっておりますので、それにひっかかれば発見する可能性はあったと思われます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この事件について、法務大臣、結局何人ぐらいの人が国内において事件に関与しているか、あるいは向こうへ行ってからいろいろなルートがありますね。船に乗ったとか、おりたとか、どっかに連れていかれたとか、いろいろあるわけですけれども、そういうの全体を見ると、何人ぐらいの人が関与しているというふうにいまお考えになっているわけですか。
  26. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 ちょっと伺いますが、それは犯人ですか、犯人側警備側……。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いや、犯人側に関連してですね。
  28. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 私では……。はい、すみません。  だれかわかるか、
  29. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 梁一東さん、金敬仁さん、こういう方から事件発生直後事情を聴取したときに、具体的には三人と二人ですね、別々の部屋から来て、だから五人は確実なわけです。それから、何と申しますか、金大中さんがソウル記者会見などしておられて、それで、数名の者に——ですから、そこから大阪のほうまで連れてこられて、そこからモーターボートに乗って、そのときはまた交代したと言いますから、また船におそらく数名いただろう。それから向こうに上陸してからまたどっかに連れていかれた、それはまた違う人だと言っておりますので、前後するとおそらく二十名近い人がこれに関係したのじゃないのか、これは推定でございますが、間違いないのはその五名というふうに思います。
  30. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは大臣にお聞きするんですが、これだけの大がかりな犯罪、略取というか拉致が日本で行なわれて、そうして韓国へ、戒厳令は解かれたといっても、事実上そういう状態にある韓国へ入れる、こういうことになると、そこに何か国家機関というか、あるいはそれに類するものというか、そういうふうなものが関与していなければ、この犯罪というものは行なわれないのじゃないかというふうにぼくも六感で思うわけです。あなたもそれについてどういうふうに、もう少し詳しくあなたの六感というものの内容を少し分析して、そうしてお答えをお願いいたしたい、こういうふうに思うわけです。
  31. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 捜査が一向進んでいない現段階でございます。その重要な捜査段階であんまりこまかいいわゆる第六感説というものを述べることはどんなものであろうか。第六感で感ずるということは、何人も百人が百人、百人とも第六感でものを感じ得るのでございます。それはきのうも言うたことでございますが、第六感ではこう思う、しかし、それをあからさまに国会において表現することはどんなものであろうかというので、きのうも直接表現を差し控えておりますということでございます。  それから、個人の第六感というものは、まあいわばたよりないものでしてね、確たる証拠があるものは第六感といわぬのですね。確信を持って言うわけです。第六感でということは、根拠は明らかではないけれども感じとして、感触としてこう思う、フィーリングな一つ感じを言うわけでありますので、あまりこの国会捜査のこまかい段階までいろいろなことを言うことはいかがなものであろうかということで、大局に関しては昨日すでに言明をしておりますので、お許しをいただきたいと思います。
  32. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは事件事件ですからね、そういうふうなこまかいことを言って、あなたがこの場でそれを断定するわけにもちろんいかないし、そのことの影響も各方面にわたって出てまいりますから、私もそれは理解するのですが、そこで一つお聞きをいたしたいのは、このアメリカ駐在韓国CIAが全部で六人ですね。この方が大体七月の末ごろから日本——末ごろでもないですね。中旬ごろから日本へ来ておられますね。このことは事実なんですか。名前は私わかっておりますけれども、一々言いませんが、公使の方、そのほか五名ね。で、そのうち現在帰っておられる人と帰っておられない人とあるわけですね。どういう目的で来たのでしょうか。そこら辺のところをお聞かせ願いたいと思います。
  33. 吉岡章

    吉岡政府委員 アメリカにございます韓国大使館の館員で、金大中氏が日本に参りました直後ワシントンからいなくなったという報道がございまして、私のほうでは四名の報道でございましたので、それにつきまして一応わが国入国の事実があるかどうかということを調べましたところ、その四名の中で朴正一という二等書記官が七月の十一日でございますか、一泊で日本を通過いたしまして韓国に帰っております。それから同人物が八月の七日に日本到着しまして八日アメリカに向かって出発しておるという事実だけは出入国記録によって確認しておりますが、その他の人につきましては何ら記録がございませんので、おそらく日本に立ち寄ることなく通過して韓国に帰り、あるいはまたアメリカに帰ったのではないか、そういうふうにわれわれは推測しております。
  34. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私どもの調べたというか聞いた範囲では、公使の人がいますね、この人が七月二十六日に来て帰っておるらしいのですね。この人は西ドイツの留学の例の事件のときの指揮者である人ですか、これは。名前が違うようですね。そこら辺のところをつかんでおられるのですか。全部で六人来ているのじゃないですか。四人しかわからぬのですか。
  35. 吉岡章

    吉岡政府委員 私のほうで調べまして、金大中氏がアメリカからいなくなって日本に参りました直後、ワシントンからいなくなったということでわれわれのほうに入りました情報に、これは新聞情報でございますが、それによりますと、在米韓国大使館員の李相浩公使、崔洪泰参事官、朴正一二等書記官、林奎一大佐の四人ということになっておりまして、先ほど申し上げましたようにこの中でパク・チョンイル、日本読みにいたしますと朴正一等書記官だけがわが国に一泊してアメリカから韓国へ帰り、また韓国からアメリカへ帰ったということだけが確認されております。
  36. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私どもの聞いた範囲では三人の方がまだアメリカに帰っていない、三人の人は帰っておる、こういうふうに聞いておるのです。  そこで話は戻るのですが、梁一東という人が、韓国の公使、これは金在権という方ですか、この方と事件の前にホテルで会っているということは、これは調べの中ではっきりしているのですか。これが一つ。それから金敬仁という人が順天堂病院に梁さんをお見舞いに行ったわけですね。そのときに韓国大使館の参事官、情報担当官の人、これが梁さんに会って、金大中さんに会ってこれを韓国に帰るようにいろいろ説得してくれというふうな話があったとか伝えられておるのですが、この二つの点についてはどうでしょう。
  37. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 私のほうの調べでは、八月四日に会ってそのようなことを申し入れたということは承知いたしておりますが、その以前の病院等のことはちょっと承知しておりません。
  38. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 八月四日にその金在権という方が梁一東さんに会って、そして何を申し入れたというのですか。そこら辺のところをもう少し詳しくお話し願いたいのと、それからもう一つは、金在権という方はほんとうの名前というのは金基完という方ですか、そこをどういうふうにつかんでおられますか。金基完という人と同一人物ですか。
  39. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 八月四日の話の内容はただいま先生の御質問になったとおりに、やはり国に帰ってこないかというような意味の話であったということであります。  それから金在権さんと金基完さんとおっしゃいましたが、その辺こちらのほうは全然存じておりません。
  40. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこでいろいろ問題になってくると思うのですが、あまりこまかいことになってはあれですけれども、梁という人と金敬仁という人との供述が食い違っているというのでしょう。差しつかえない範囲内で言うと、どこがどういうふうに食い違っているのですか。  それからなぜ梁一東という人を日本捜査のために呼ばなければならないという必要性がまだあるのですか。
  41. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 梁一東さんと金敬仁さんは、これは捜査本部のほうで直ちにいろいろ事情を聴取したわけですが、これは個々に事情を聴取したものですし、ある程度興奮状態にあった時期でもございましたし、たとえば時間的に食い違いがあるとか、事実のおっしゃっていることが違うということなんですが、梁一東さんのほうは何か十五日に野党としての式典の準備があるから、早くお帰りになってしまったわけです。金敬仁さんはしばらくあとまで残っておられたわけですが、金敬仁さんからはかなり詳しく聞けたのですが、梁一東さんからはあまり詳しく聞いておらないという事情があり、したがって梁一東さんにも来ていただいて現場における具体的な話を詰めて聴かないと、いろいろこれからの捜査に確定的な線が出てこないという、そういう必要性からでございます。それからあるいはいろいろな食事など、あるいはお茶を頼んだとか、そういう事実関係でやはり時間的な食い違いが出てきている、こういうことでございます。
  42. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 この梁という方が、参考人として取り調べたのでしょうけれども、そのときに何というのか捜査に対してきわめて非協力的だった、これは十五日に帰るからということもあったのでしょうけれども、きわめて捜査当局に対して非協力的だった、こういう話もわれわれは仄聞するのですがね。その点はどうなんでしょうか。
  43. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 特に非協力的であったということではございませんが、十一日に帰られたのですね。非常に時間が短かかったので、いろいろと向こうも予定があるし、時間的に制約があって十分聞けなかったということでございます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは国家公安委員長も来ればお聞きしたいところなんですが、今後警察としては本件捜査にあたってどういう点を中心として、どういう態度、方法をとろうとしておるのか、このことをお聞きしたいわけなんですがね。
  45. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 第一点はやはり直接被害者であります金大中さんに来ていただいて現場を照らし合わせてその犯行の状況を具体的に聴取する必要、これが絶対的に必要だ。それから梁一東さんについても同様でありまして、できればさらに金敬仁さんにもたとえば犯人などの特定の際には来ていただきたい、これが基本的な態度。それでぜひということを外務省を通じていろいろと交渉しておるわけですが、現在までのところはまだこちらのほうに、日本によこす段階じゃない、こういうことを言っておるわけです。  それから、捜査情報向こうでいろいろと取り調べているようですので、あるいは事情聴取しているので、その内容を通報願いたいということですが、これは断片的には来ておりますし、それからきのうは金大中さんの指紋あるいは血液型、こういうものが送られて来ておるわけで、ぼつぼつそういう形にはなっておりますが、もっと積極的にそういう情報がほしいということ、これも外務省を通じてやっておる。それからじみちな捜査としてはやはり遺留品がございます。リュックサックですね。こういうものをだれが買ったか。これは買った者はわかっておりますが、そういう形で買った男の特定につとめたい。それから、グロモントびんに入った睡眠薬というものがあるわけですが、こういうものの基本的な捜査も現在進んでおります。それから、梁一東さんの泊った隣の部屋に部屋を予約した畑中金次郎なる人物、これの人物の特定にもつとめておりまして、逐次これは浮かび上がってきておりますが、そういう捜査をいたしておる。それから車の捜査でございますが、これはやはり時間帯が最初から非常に梁一東さんなり金敬仁さんあるいは金大中さん、時間がみんな食い違っているのでむずかしいのですが、かなり幅を広げて駐車場から出ていった車、これが三十台ということで抽出捜査をしておりますが、現在まで半分は白になったという状況でございます。これは下四けたしか記録してないものですから、上の練馬の55とかそういうのは記録してないものですから、一台の捜査についてもこの該当車両が場合によっては二百数十台、少なくとも数十台の番号を調べないと一台の捜査が完了しないということで非常な時間、労力がかかっておるわけでございます。  それから、あとは船の捜査でございますが、大体幅を広げた時間帯に日本の港を出航した韓国向けの船、これも海上保安庁の協力を得てわかっておりますので、その船の捜査をそれぞれやらしておるという状況でございます。
  46. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 法務大臣お尋ねするのですが、本件という意味ではなくて、本件に関連するのですけれども日本の国家主権が侵害されたとかされないとかという議論がありますね。大臣としては、本件に関連をしていうと、どういうときに日本の国家主権が侵された、こういうふうに判断をされるのでしょうか。
  47. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 一口に申しますと、加害者、犯人が個人でなくて国家である場合、国家といったって国家は抽象的なもので、どうということはない。国家であるということは国家機関ということ、国家が予算を出して国家の権限として一定の機関に対して行為を行なわしめておる、そういう国家機関である場合、その国家機関は上のほうのものであろうが下のほうのものであろうが上下を問わず国家機関の責任において国家予算で運営をしておる、そういう国家機関がやったということになれば主権の侵犯である。ところがそうでなしに某国の個人、私人がやったものだということになると治安の撹乱、治安の侵犯はある。社会秩序の乱された、治安のこわされたということは起こり得るけれども、主権の侵犯という表現には当てはまらないのではなかろうか、これが解釈であります。
  48. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、その国家機関というのは、それが自分の手でやるということもありますけれども、そうでなくて、ある特定の人とかなんとかを補助的に使ってやるという場合もありますね。こういう場合にももちろん国家主権の侵害と受け取ってよろしいわけですね。
  49. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 お説のように考えます。いかに末端部分のものであっても、国家機関がこれをして行なわしめておるという場合においては主権侵犯になる、こう考えます。
  50. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 しかし某国では国家機関がやったんではないというふうにこれは発表するに違いない。それは常識的にそうでしょう。日本ではそれと違った判断をする可能性ももちろんあるわけですね。
  51. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 個人の場合には治安に関する、国家機関の場合は主権に関する、こういう考え方に立って解釈しなければならぬとこう思っておるわけであります。
  52. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから解釈が食い違うでしょうというのです。おそらくある国の判断はそういう判断をしないでしょう。日本の判断はそうだというときに一体どうするのですか。どっちを優先させるのですか。これはあたりまえの話だけれどもね。
  53. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 これは水かけ論はこの段階なんですね。現在の段階においてはやったであろうという者もあり、おれのところは関係ないという者があり、それはいろいろまちまちである。やがて捜査が進展するに従って確たる証拠によって犯人はだれかということがきまる。人間社会で起こったことは人間の力できまらねばならぬ。きまらぬ場合もないとは言えぬけれども、原則はきまる。きまりました上の責任を私は言うのです。きまりましたら四の五は言わさぬ、それはそうでないと……。捜査のいま中途ですから、捜査の中途は意見が違いますよ。やったんだろうという人もある。私のように某国のCIAが、こういう表現をして、たいへん遠慮がちでものを言う者もおる。しかしぴしゃっと言う人もおりますよ。私は責任のある立場だから責任のあることを言うておるわけです。それでもあんな言い方をしたらおかしいじゃないかといって文句を並べる人もだいぶあるわけです。電話もきております。ということでございますので、私はそういうふうに考える。
  54. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、これは国家公安委員長がおいでになったからお聞きしますが、現在の段階では、最初あった四つのいろいろの説がありましたね、本件について。そのうち全部が消えて一つの、いま法務大臣は、これは明らかに拉致されたんだ、略取、誘拐されたんだと、最初にはっきり言われたんですが、その説だけにしぼられていることは間違いないわけですか。
  55. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 警察側では鋭意事件の真相究明に全精力を傾注しておりますが、まだいまこれというふうに断定するものは出ておりません。もともと被害者である金大中氏がいませんので向こう側で調べたもの、その中でわずか連絡があった点、あとは新聞等によって伝えられる金大中氏語るというそのことばを中心にして捜査を展開しておるというわけでございまするから、これが四つのうちの一つである、その四つというのは、どういう過程でいまおっしゃって見えるのか、私途中から来ましたのでよくわかりませんが、そういう具体的なものはまだ確認いたしておりません。
  56. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 法務大臣最初に言ったこととそれから公安委員長の言ったこととは、だいぶ違うのですよ。ただ、あなたはあとから来られたから、またそれはそれで別の機会に聞くとして、そこで、公安委員長としては、これはあなたとしては、こういうふうな事件が白昼行なわれて、そして警察手配も及ばずに海外へ拉致された、法務大臣に言わせれば拉致だ、略取だ、誘拐された。このことについて国家公安委員長としては、警察として捜査全体に絶対に手抜かりはなかったんだというふうにあなたとしてはお考えなんですか、あるいはこういう点については多少というか何というか、まあいまから考えれば及ばないところがあったとかなんとかいうふうにお考えなんでしょうか、それがまず第一点ですね。
  57. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 警察としては全力をあげておるわけでありまするが、万全ではなかったと思います。ただ、これは、警備局長もおりますが、初動捜査において非常におくれたわけですね。事件は十二時過ぎとも言われるし一時ごろとも言われるし、まあいろいろ言われておりますが、いずれにいたしましても、警察宇都宮徳馬君の秘書から電話がかかってきた。その当時としては、やはり状況を調査する必要がありますので、八方へ手を広げておった。そのうちに一時間半ぐらいおくれた時点で一一〇番がかかった。一一〇番も御承知のとおり、現場へすぐ行くことになります。代議士の秘書からかかったということになりますと、やはり現場へ問い合わせて、そういう状況があるのかないのかというようなことで手配をしておった。そこでまあ初動捜査において一時間半ないし二時間ぐらいのおくれを生じた。このあたりは非常に残念であったというふうに考えております。
  58. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 公安委員長の言うのと警備局長の言うたのとは違うのですが、まあそれはいいですよ。公安委員長のほうが正直だから、それはそれでいいんですが、今後の捜査についてもいま聞きました。こまかい点は聞いたのですが、おそらく金大中氏を韓国では、こちらへ来いと言ったって来させないでしょうね、考えられるのは。そういう点について、これからどういうふうに警察としてはするのですか。
  59. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 こういう事件というものは、政治的な背景もあるようですが、いずれにしましても、被害者である金大中氏、これの唯一の関連者である梁一東、それから金敬仁、こういった人々にぜひ日本に来てもらいたい、これを外交ルートを通じて日本警察としては真相究明のためにねばり強く要求していく、これが警察側の姿勢でございます。
  60. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ねばり強く要求したって、相手は応じないじゃないですか。応じるかもわからぬけれども、最後に……。そうすると、あなたとしては、ねばり強く交渉していけば相手は応じてくれると、こういうふうに確信をしておるわけですか、また確信したいわけですか。
  61. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 これは相手の国のものの考え方ですから、私が確信をしてみても、相手がそれに誠意をもってこたえてくれないということになれば、これは確信ということばを使えませんね。しかし、韓国側は、外務省に対して私どもしばしば身柄をもらいたいということを要求しておるわけですが、当面は不可能だという回答に接しておるが、当面と、こう言っておるわけですね。だから関係者の訪日が全く不可能であるというふうには受け取っていないわけであります。韓国側も基本的には捜査には十分協力をいたしますということで約束をしておりまするから、いまこの時点で三氏の来日がないというふうに断定することは早計だというふうに思います。また、どうしても身柄を渡さないという場面では、これはやはりその時点で日本側としては判断をする、こういうことだと考えます。
  62. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 どうしても身柄を渡さない場合に日本側としては判断する、これは当然。常識的に見てどういう判断をされるのですか。
  63. 江崎真澄

    ○江崎国務大臣 いまのはきわめて仮定の話ですから仮定のお答えしかできませんが、身柄を渡していただけないということは捜査に非協力という形にならざるを得ませんですね。これはきわめて遺憾なことだと思います。
  64. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 公安委員長、けっこうです。時間のあれもありますから……。  そこで法務大臣、もうさっきからいろいろお答えがあった中で、これはやはり質問としては仮定の問題になっちゃうですね。ですけれども日本の国家主権が侵されたという場合の考え方、広い解釈の場合と狭い解釈の場合とあるから、あなたの解釈は非常に狭い、厳格な解釈をしておるわけですね。あなたの解釈に従った場合でも、そういうことになった場合、これはなる可能性が多いし、現にもうなっていると私は思うのですが、そのときに一体まずあなたとしては、法務省の管轄としてはどういうことをするわけですか、またするべきだというふうにお考えなわけですか。たとえばその関係者の強制退去の問題もあるだろうし、それから韓国とのいろいろなほかの問題もあるでしょうし、いろいろあるわけですね。法務省としてあるいは国務大臣としてどういうふうにされるのかということをお聞かせ願いたいし、国民はそれをまた聞きたいというふうに考えているのじゃないか、こう思うのです。
  65. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 国家機関がやった場合でなくとも主権の侵犯じゃないかという意見が強く行なわれておりますね。私はそうは思わない。そこは区別したい、こう思う。しかし国家主権というものをどういう概念でとらえるかということによって、いま先生仰せのように、広い意味における国家主権と国家の治安、国家の安寧、国家の保安、そういうものを広く解釈すると、国家主権が侵されたと言えぬこともないのですよ。私は前言をひるがえすのじゃないですが、その解釈が……。それはどういうことかというと、たとえば個人がやったという場合でも、事件が起こったら治安が侵害されていますわね。治安はどういう治安かというと、その国の国家の主権下における治安である。治安が侵犯されて主権に影響がないということは起こり得ない。治安の侵犯という限度において主権に影響がある。こういう意味において、主権というものを広い意味に解釈をいたしますと、あの個人の犯罪だって主権が侵されたと言えないことはないではないか。こういう解釈は広義、狭義、私は狭義の解釈で判断せぬとものがはっきりしませんから、言っておる。広義、広い意味の国家主権というものを基準として考えますと、主権の侵犯と言われたから見当違いのことを言っておると言えないのではなかろうか、こういうふうにも思うのでございます。
  66. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そのことを聞いているんではなくて、広義にしろあなたの解釈の狭義にしろ、あなたの解釈の狭義に従って一応進めて、それが侵されたと判断したときに——私はすでに侵されていると思っているんですけれども、あなた方というか政府がそれが侵されたと思ったときに、一体法務大臣としては対外的あるいは対内的にどういうふうな態度に出られるのですか、こう聞いているわけです。
  67. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 これはいま言うことは無理でございます。それはえらいことに発展をするわけで、いま申し上げることはたいへん無理でございますが、言い得ることを申し上げますと、政府は、狭義の主権侵犯明白である、証拠はこのとおり固まったという事態発生をした場合においては、重大決意をもって重大申し入れを行なう、その内容についてはここで直ちに私個人の口から言いかねる。これは両国関係において重大なことであります。これに善処をしなければならぬ、放任はできない、こういうことでございます。
  68. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはぼくもこれ以上聞きません。失礼だけれども、それはやはり総理大臣がやることであって、あれですが、もう一つ、最後に一番大きな問題の一つ、それは八月二十日の記者会見アメリカのロジャーズ国務長官も言っておるのですが、金大中氏の安全と、それからもう一つアメリカでは、アメリカにおける韓国CIAの不法な侵犯というか、こういうことに対してロジャーズ国務長官韓国に申し入れをするとかそういう意味のことをはっきり言っておりますね。日本として、金大中氏の身の安全ということについては、人道的な見地からあなた方としてはどういうふうにお考えになって、どういうふうな打つ手があるというふうにお考えなんでしょうか。
  69. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 人道的見地に立って処置をするということは、からだが日本へ戻ってきてからの問題であろうと思うのです。根本問題はからだが戻るということ。からだを戻すということは一体何を根拠に戻すと言うのかというと、国際法上の条理に基づく必要がある。国際法上のリーズンに基づく必要がある。条理とはどういうことか。金大中君はおのれの意思で祖国に帰っておるんではない。拉致されたものである。先ほどからくどく申し上げますように誘拐、略取、刑法のことばで申しますと拐取されたものである。これが、だれがやったかは別にして、とにかく韓国に帰って韓国にからだはあるのです。略取の事実は間違いない。略取されて韓国にある場合においては、略取以前の状態に回復するという国際法上の義務が韓国にある。それを国際法上の義務に従って返せ、ことに日本との間においてはそれがいやだと言うような関係にはないではないかという考え方で、しんぼう強くあくまでも継続してこの要求をいたしますと、先ほど公安委員長も仰せになりましたように、私は戻ってくると思う。いま捜査が済まぬから返せないと韓国さんは仰せになっておるので、これは私は韓国の立場はよくわかる。何にしたってからだが韓国にあって現に捜査をしておるから、捜査の済むまで待ってくれという意味で捜査が済まない間は返せないと仰せになっておるんならば、私はたいへん理解ができる。だから、韓国さんのお考えのとおり捜査をお進めになって、それで無事に捜査——無事か何かわからぬが捜査が済めば、おれのほうの捜査は済んだから原状回復だ、そちらに返すからといってお返しをいただくということに、私は見通しはなくはない。日本の熱意の問題でありまして、日本が熱意をもってこれを懇請するならば、実現する可能性は十分にある。また、そうしないと犯罪捜査はできませんよ。本人がいないで、見聞をしたあとの二人は、一人は金国会議員、一人は梁一東でしょう。この三君がおらなければ、これは犯人の確定ができません、三君のみが犯人のつらを知っておるというわけですからね。(稲葉誠)委員「つらとはどういうことです」と呼ぶ)つらというのはフェース、顔のことです。そのフェースを知っておる、こういうことになりますから、私は三君はどうしても日本おいでをいただきたい。それは、韓国捜査が済んだらきっと協力をしてくれる、こうかたく私は信じております。
  70. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私のお聞きしているのは、金大中という人が韓国でのいろんな法律の違反という容疑をかけられて、処罰されて日本に来られなくなってしまうのではないかということが——それは国家保安法ですか、いろいろありますね。そういうことを懸念し心配しているわけですね。その危険というものをロジャーズなんかもはっきり言って、韓国に申し入れたか何かしたようですね。日本でも、金大中氏の身の安全ということについて韓国政府に、そういうような日本側の取り調べ、捜査といろか、そういういろんな問題の真相を明らかにする必要性もあることだしするから、金大中氏の生命、身体についてはその安全をしっかり守ってくれ、こういうふうなことを日本の政府として韓国政府に申し入れをしてあるのかないのか、同時にまた、これからするつもりがあるかないかということをお聞かせ願いたいと思うのです。  それともう一つ、いま大臣のお話をお聞きしていると、ぼくは韓国政府から何らかの、信書か何か知りませんけれども、あなたが必ず金大中氏が日本に戻ってくれるのだ、韓国のほうでそういうようにしてくれるのだと確信しておられるその裏づけというか、何かすでに向こう側から日本の政府に対してあったのではなかろうか、こういうふうに私は感触を得たわけですが、その点についてはいかがでしょうか。
  71. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 前段の御質問は外務省からお答えをいたします。  後段の問題につきましては、私は条理ということを盛んに言っておるのでありますが、韓国は条理の下をくぐるような野蛮な国ではない、そういうけしからぬ国ではない、必ず条理というものに従って原状回復の道は考えてくれるものである、したがって捜査が済めば戻すであろう。しかし、戻す戻さないにかかわらず、別個の犯罪で云々というおことばがいまございましたが、これは韓国の憲法、韓国の法律に基づいて韓国政府が金君を別個の犯罪として御処罰になるということに、日本政府はあまり言及はできないですね。へたをするというとそのこと自体が主権の侵犯である。少しかた苦しいものの言い方でありますけれども、その問題はないことをこいねがう、そういう荒々しいことのないことをこいねがうのでありますけれども日本国の立場といたしましては、かってな言い分のように聞こえますけれども原状回復をしてくれ、そして日本の治安を回復し主権の侵犯のおそれなきに至るようにしてもらいたい。最善を尽くしてこれらの人々に会わしてもらうなれば捜査をする。どうしても金大中を返せないというのならば、こちらは犯罪捜査ということが目的でございますから、どうしても返すことができないと仰せになるならば、こちらから出張をいたしまして、韓国捜査官を派遣をいたしまして——この間私の旅行中に捜査官派遣の意思がないと言ったのは、それは新聞の聞き違いで、検事を、現段階において検察官を派遣する段階でないということを言うたのでございまして、それは送致を受けておりませんからそう言ったのであります。どうしても帰してくれない場合においては捜査官を派遣して三君を中心として捜査を繰り返す、こういうことをやる以外にない。それはあんまりそれを言いますと、それなら帰さぬでも来るのかということになりますから、こちらもあんまり言えない。どうしてもいかぬ場合は、それなら行くから調べさしてくれい、こうなる。それでもいかぬというのなら、取り調べた一件調書のコピーをよこせ、こういうことにも勢いなっていく以外にない。とにかく日本としてはからだを帰せということに最善を尽くす。それは原状回復の条理である、国際条理に基づいてこれをやれ、こういうふうにやっていきたいと思っております。
  72. 中江要介

    ○中江説明員 先生の前段の御質問に関しまして若干御説明さしていただきますが、金大中氏の身体の安全につきましては、これはロジャーズ国務長官の発言はまだはっきりした用語について私ども手にしておりませんけれども報道その他では金大中氏の身体の安全と自由について懸念を表明しているというふうに伺っております。日本政府が本件が起こりましてから韓国側に申し入れておりますのは、単なる身体及び自由の安全に対する懸念にとどまらないで、むしろわがほうが真相究明のために行なっております捜査協力していただくために、金大中御自身を日本に出国することを認めてもらいたいということでありまして、これはいままで東京及びソウルにおいて何回となく公式または非公式といいますかいろいろの接触の場面で繰り返しておるわけでございます。  それからそれに関連しまして、先ほど法務大臣から、本件の場合被害者である金大中氏を日本に戻すというのは韓国の国際法上の義務であるという御発言がありまして、これは御質問されている稲葉先生のお気持ちもまた答弁されました法務大臣のお気持ちも私はわかるのですけれども、ただ用語といたしましては、非常に冷ややかにいいますと、逃亡犯罪人の場合でもなかなか引き渡しというのは国際法上はむずかしい問題がございますので、いわんや現段階では被害者として捜査協力のために来ていただくという場合の韓国日本への本人引き渡しという問題は、厳密な意味での国際法上の義務といってきめつけるにはちょっと法律論としてはむずかしい、むしろ韓国の道義的責任とかあるいは政治的配慮、そういったところが実は核心ではなかろうか、こう思いますので、補足さしていただきます。
  73. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ここで時間が来たので終わりますが、いまの話は、義務とか何とかということよりも、大臣が言ったのは条理ということばで、リーズンというかラチオというか、条理ということばで表現しているので、その条理の内容はどうかということをぼくも聞かないわけですよ。それはそれとして、この事件については、いま言った日本の主権の侵犯というか、そういうふうな問題もあるし、事実を早く、しかし慎重な捜査の中でしっかりつかんで、その結果によっては断固たる措置を当然とってもらいたいし、とらなければならないということが起きるということと、同時に金大中氏の身の安全ということについても、これはまあアメリカのほうでどの程度希望して韓国に申し出ているのか、詳細わかりませんけれども日本としてもそれについてただ捜査の必要上ということだけではなくて、もっとヒューマンなところからこの安全のために骨を折れる範囲で折る、これは当然のことではないか。このことについてもぜひあなただけでなくて全体としてお骨折りを願いたいというようなことを希望をいたしまして、時間が来ましたので、お約束を守りまして、これで私の質問を終わらせていただきます。
  74. 中垣國男

    中垣委員長 次に、青柳盛雄君。
  75. 青柳盛雄

    青柳委員 法務大臣お尋ねいたしますが、金大中氏が拉致された当時、同氏が日本に滞在している外国人としての在留資格というものは、何か先ほどの御答弁では特別の許可であるように承ったのでありますが、それはどういう意味で特別なのでございますか。
  76. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 私が在留の特別許可をいたしました事情は、先ほどもちょっと触れておきましたが、本人が病気の治療——腎不全症のようでございます、病気の治療をしたい、そうしてアメリカに、長期にわたっていままでおったアメリカにもう一度行って、住復してきたい、こういう理由を申し出てまいりましたので、入管令の上からの配慮としまして、それではということで二百四十日を与えた。その最終日が来たる十一月二日となっております。こういう事情でございます。
  77. 青柳盛雄

    青柳委員 金大中氏の政治的な立場がどういうものであるかは、まあ日本の政府また一般の民間でも非常に公知の事実になっております。そしてこの方が韓国の朴政権に対して反対の立場をとっておられるということも非常に明白でございます。こういう方があえて本国に戻られないで日本に滞在する、あるいはアメリカに行かれるというような状況は、単純に病気の治療ということ以上のものがあるのじゃないか。つまり端的に申しますと、日本において政治的な活動の自由を守ろう、これは事実上の亡命生活のようなものを期待しておったのじゃないか。そういうことを考慮の上で特別に在留許可を与えたということはあるのかないのか、この点をお尋ねしたい。
  78. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 詳しくは管理局長からお答えをいたしますが、大事なことがありますから私からお答えをいたします。  特別在留許可を与えましたのは、先ほど申し上げましたとおり亡命であるからという要素はないのであります。これは純粋の入国管理令に基づく手続としての特別在留許可ということでございます。  それならいま先生仰せのような政治亡命的色彩はどうであったか、こう言われますと、これは大臣の、このごろ第六感ということばが流行しますが、第六感で見るところでは、これは本国にはいれられないな、本国の政権には反対の態度をとっておるな、反対の動きもしておる男だな、本国には簡単に帰れないな、こういう意味で政治亡命的な立場の人ではなかろうかということは、この法律手続の上で許可を与えますときの要素にはございませんけれども、私のほうの気持ちの中にはそういうことは幾らか反映しておった、こういうことでございます。
  79. 吉岡章

    吉岡政府委員 ただいまの御質問につきまして補足的に説明させていただきます。  大臣から御答弁いたしましたことにつきまして、私のほうから大臣に詳しい説明をいたしておりません点で技術的に多少説明させていただきますと、金大中氏は昨年一回韓国から日本を通過いたしましてアメリカに参っておりますが、一月の五日でございますか、アメリカから日本入国いたします際にはすでに韓国で取得した査証が有効であるというつもりでアメリカから入ってきたわけでございますが、その査証は一回行使されておりますので結局その査証は無効である。したがいまして、アメリカから日本に入ってきました場合に有効な旅券は所持しておりますが、有効な査証がなかったということでございますので、これを審査いたしまして、法務大臣の特別上陸許可を与えたということでございます。
  80. 青柳盛雄

    青柳委員 特別に入国を許すとかあるいは滞在を許すというような場合にはこれは特別な例外的なものであって、大きな顔をして活動ができないというような扱いになっているんではないかというふうに考えられるのです。たとえば朝鮮民主主義人民共和国あるいはベトナム民主共和国などから日本を訪問する方に対しては、国交が未回復であるというような理由もありまして、特別な入国が認められるというのが現状である。そういう客人に対しては日本における言動を絶えず入管当局としては調査している。一々あとをつきまとってはしの上げおろしまで調べるというわけじゃありませんけれども、どんな状況をやっておるか。もし、その入国を特別に許した理由、たとえば病気治療といいながら病気治療にはあまり携わらないでもっぱら政治活動をやっておる、あるいは文化交流といいながらそれは名ばかりであって実際は政治活動が主であるというような状況が出てまいりますと警告を発するとか、あるいは退去を強制するとかいうようなことがいままでにもたくさんありました。そういたしますと、特別に金大中氏を許したというからには、そういうような立場において彼の言動に入管当局としては関心を持っておったかどうか、全然そういうことには関知しておらぬ、情報も別に得ようとはしなかったというのであるか、その点をお尋ねしたい。
  81. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 先ほど申し上げましたように、気持ちの中にはそういう立場をとっておる人であるということは思えたのでありますが、特別在留許可許可をいたしましたのは、いま私並びに局長が申し述べますように政治亡命的な要素を加味してやったものではない、純粋な事務的、法律的手続にのっとって許可を与えたものである、こういうふうにお聞き取りをいただきたい。
  82. 青柳盛雄

    青柳委員 私の質問にまともにお答えになっておられないのですけれども、事務当局の方でもよろしいですが、金大中氏の日本における動静について無関心でおられたのか、それとも多少の関心を持っておったのか、また、どこでどういうようなことをやっておられるかについての情勢が得られれば得るように努力したのかあるいは全然そんなことは関知しないというのであったのか、その点をお答え願いたいと思います。
  83. 吉岡章

    吉岡政府委員 金大中氏の在留につきましてはただいま大臣から御答弁いたしましたとおりで、同氏のわが国における在留の目的は病気療養とそれから自分の自叙伝を出版するにあたってそれの校正ということでございますので、金大中氏の韓国における政治的な立場というものはわれわれ踏んまえてはおりますが、特別に政治亡命的な取り扱いをしておらない、しなかったということは大臣答弁のとおりでございまして、それでは、金大中氏が日本に在留中の活動についてどういうふうな在留管理をしておったかという質問でございますが、先生先ほど引用されました外国人わが国に入った場合の政治活動について入管といたしましてはいろいろ関心を持っておることはおしなべてすべての人についてでございますが、わが国における政治活動と申しますものの中にもいろいろございまして、入管当局として一番関心を払っておる政治活動と申しますのは、日本の、日本政府が決定した政策に反対するような政治活動それからまた日本国が友好関係を結んでおります国を誹謗するような政治活動という観点でございまして、金大中氏の政治活動につきましてはそういった観点からいたしましてわれわれが特別に異議を差しはさむという態様のものではないというふうにわれわれは認識いたしております。
  84. 青柳盛雄

    青柳委員 金大中氏の立場が韓国における野党的なものである、朴政権には反対であるけれども韓国の政治を破壊するというようなものではないという立場と理解すれば別にいまの御答弁でもおかしくはないのですけれども韓国体制というものは御存じのように衛戌令がしかれたりあるいは戒厳令がしかれる、憲法も改正されるというような状況の中で朴政権の一党独裁、永久政権化といったようなファッショ体制がしかれておるということはもう公然たる事実でございます。したがって野党の存在は一応認められておるかもしれないけれども、朴政権に反対するという人たちは必ず反共法あるいは国家保安法、朝鮮民主主義人民共和国との何らかのつながりがあるというようなことででっち上げをされるというような非常に危険な立場にあることは私ども十分に想像がつくわけです。そういう方が日本で朴政権反対という行動をとっているということは、日本政府の立場でいうならばこれが日韓友好親善の妨げになるのではなかろうかという、いわゆる日本の国益に反するのではなかろうかという懸念というものを私は日韓条約を結び、これを堅持しておられる自民党政府としてはうなづけるところだと思うのです。したがって、金大中さんが日本国内において公然たる反朴運動というようなものをやられることに対してどういう態度をとるべきかということを考えていなかったといえばうそじゃないかと思うのです。したがって、そういうことについて何らの情報も得ようとしていないということであるのかどうか、この点を重ねてお尋ねしたいと思います。
  85. 吉岡章

    吉岡政府委員 先生御指摘の点につきましてはきわめてデリケートな問題であるかと存じます。入管当局といたしまして関心のある政治活動というものは先ほど御説明いたしましたようなものでございまして、金大中氏がされる政治活動というものが、これが朴政権に対して全くの外国人の批判であるということでございます場合と、それから金大中氏のようにれっきとした韓国民であるという場合とは、われわれの観点から申しますとやはり違った面があるのではないか。金大中氏の活動はおそらく言論の自由の範囲内で許されることであるという観点もございまして、われわれといたしましてはこれを大幅に制限して入国目的違反であるというふうなところまで持っていくということにつきましては、少なくとも八月八日までの金大中氏の在留状況から見ましてそういった判断は下し得なかったという状況でございます。
  86. 青柳盛雄

    青柳委員 まあ突き詰めて言えば、法務省当局とすれば特段の扱いはしていなかったという結論になるようであります。  それはそれといたしまして、金大中氏が七一年の大統領選挙で朴正煕氏と争って非常にデッドヒートだといわれるほどの戦い、つまり非常な接近したところで惜しくも破れたというような立場であられたということを考えますると、しかも国会議員としての地位も保持しておられるというような方であるとすれば、これは俗にいう政治的な要人、政治情勢の変化によっては韓国の政権を担当するような立場にあり、それだけの国民の支持も受けている方、現在は野党かもしれないけれども状況によっては与党になる、そういう政治的な立場の方であったと思いますが、そういう外国の政治的な要人が日本に滞在する場合に、そういう方を一般の商取引などでやってきた外国人と同列に扱うことができるかどうかという点についてお尋ねをするわけですが、警察庁が制定いたしました警護要則というのがございます。これは第二条に「警護対象者」として「この要則において警護対象者とは、内閣総理大臣、国賓その他その身辺に危害の及ぶことが国の公安に係ることとなるおそれがある者で警察庁長官が指定するものをいう。」こういうことになっております。金大中氏は警察庁長官によって警護対象者ということにはなっておらなかったかどうか、この点を警察庁の係の方にお尋ねしたい。
  87. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  その警護の指定というのは、外国人についていえば国賓、公賓、外交使節団の長、及びそれらに準ずる者、その他の要人で特に必要がある者について警護を行なうということになっておりますので、今回の場合は、いわばこのその他の要人で特に必要がある者、こういう範疇に入るかどうかということになるわけでございますが、御本人に対して特別危害を加えるというような情報もなかったし、本人あるいは関係者から金大中さんの警護を頼むというような依頼もなかったということ、それからわれわれに入ってきている、最初申し上げましたいろいろな情報からして、そういう危険性がないという判断のもとに立って警護対象者という指定はいたしておりません。
  88. 青柳盛雄

    青柳委員 本人から要請があったからそれに従うというようなそんな単純なものでないことはよくわかります。本人はあえてそれを要請されなかったかもしれません、私はその真相はわかりませんけれども、いずれにしましてもいま御答弁のような結果になった、それがはからずも今度のような事故の原因にもつながっていると思うのです。八月九日の日本経済新聞の記事によりますと、警視庁金大中氏が日本に滞在をしておったということ自体を知らなかった。警視庁は、要人警護のやり方について「政府が招いた外国要人の警護は外務省からの要請、それ以外の外国人で警護が必要とみられる人物については在日の各国大使館などを通じて警視庁に警護の要請があった場合に行っている。しかし、今回のように本人からも大使館からも要請がない場合には、手の打ちようがない」といっているのです。だから滞日自体すらも知らなかったみたいな話なんですが、私は、これは警察の一事務的立場の人がそう言っているとするならばそれもわからぬではないけれども、少なくとも政治的にも敏感な、また責任のある立場にある警察当局の人であるならば、金大中氏について警護するかどうか、あるいは警護はしないまでもその動静については無関心ではいないということは想像がつくわけでありますね。したがっていま警察庁の方から御答弁のありました「しなかった」という結論だけはまあそうだろうと思うのでありますけれども、それはまずかったというような考え方はなかったのかどうかですね、いまになって反省してみればやっぱり警護対象にしておくべきではなかったか。本人が断固として拒否するということであるならばこれは別です。個人の身辺を警護すると称して実際上は政治活動を調査する、あるいは統制する、規制する、そういうことは基本的人権を侵害するものでありますから、これはやるべきではないと思いますけれども、あえてそうではなくて、こちら側で何ら無関心でいたということが正しかったかどうか、この点はいかがでしょうか。
  89. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  今回、金大中さんが七月十日来日したこと、これはもちろん承知いたしておりました。しかし先ほど御答弁申し上げましたように諸般の情報を総合いたしましても特に危険な情報は入ってきておらない、それから御本人関係者からの申し出もない、そういう情勢を総合的に判断いたしまして特別に警戒する必要はないというふうにきめたわけですが、結果から見て、ああいう事件が起こったということは、われわれの情報その他が不十分だったということになり、まことに残念だというふうに思います。
  90. 青柳盛雄

    青柳委員 結果論で私はいま議論しようとは思いません。それはまあ今後の参考、教訓にすべきだというふうに考えるにとどめますけれども、それよりも一歩さかのぼって、何ら彼の身辺に危害が及ぶというようなおそれ、そういう情報はなかったといわれるのは、これはこういう事件が起こったから言うんじゃありませんけれども日本におけるKCIA韓国情報局といいますか、このKCIAの跳躍ぶりというか、これがアメリカにおける異常にはなはだしいものである。そういうことはもういままでに幾つかの事例によって論証され、また国会で問題にもされたことがあるのですね。この六月時分にすでに参議院でそれが問題になっている。そういう状況のもとで、政治的な活動をも含めて非常に世界でも有能だと見られている日本警察が全然何の情報も得なかった、危険を感じなかったというのは、これは単なる怠慢というだけで済ませるかどうかというふうに思うのですが、この点はKCIA日本における活動というものの実態を全然警視庁はあるいは警察庁はつかんでいないのかどうか。つかんでいるとすればどの程度のことをつかんでいるのか。それがまた日本の政治にどういう影響力を持つか。具体的には日本にいる韓国人あるいはいわゆる北朝鮮系などというふうに俗にいわれますけれども、総連傘下の人々、そういう者に対するKCIAの影響力、統制力といいますか、そういうものはどうであるのか。またこれに関連して、日本人自身の活動に対してもどういう影響力を持っているのか、こういうことについて無関心でいたのかどうか、この点をお尋ねしたい。
  91. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  韓国のそういう情報部員の日本における活動というものは、われわれとしては全く認知いたしておりません。
  92. 青柳盛雄

    青柳委員 法務省の公安調査庁にお尋ねいたしますけれども国会での答弁で聞きますと、朝鮮総連がいわゆる破防法容疑団体に指定されている。したがって総連に参加している朝鮮人あるいはこれに関連している者の言動については、絶えず情報を集めることに努力しておられたというふうに思うわけですね。これはわが日本共産党に対しても非常な広範な情報収集活動をやっておられますので、容疑団体である以上はやっていたと思うのです。そうだといたしますと、当然そういう情報を得るのにいろいろの便宜を得ようとするわけでありますから、KCIAの存在並びにこれからやられるであろうところの情報の収集の方法とかあるいは協力関係とかいうようなものについても考えていたのではないか。何か具体的にも連携をとっておったのではないかということも考えられるのでありますが、この点いかがでしょうか。
  93. 川井英良

    ○川井政府委員 朝鮮総連を調査の対象にしていることはお説のとおりでございますが、それに関連いたしまして、韓国CIAというものと連絡ないしは情報の交換があったのではないかという趣旨のお尋ねでございますけれども、私ども調査対象団体についての調査は、終始一貫いたしましてわが庁独自の立場でこれを行なうという方針を堅持いたしております。したがいまして、朝鮮総連の調査に関連いたしまして、韓国中央情報部と連絡したりあるいはその手助けを得て調査を遂行しておるというようなことは、過去におきましても現在におきましてもございません。
  94. 青柳盛雄

    青柳委員 公安調査庁の長官のお話は、韓国中央情報局の存在並びにその活動についての知識を持っておられるようでありますけれども、先ほど警察庁の答弁は存在すら知らないといったような、また活動がどんなものであるかも知らないといったようなお話で、私どもはその答弁に信をおくことが非常に困難のように思うわけです。  しかし、それにしても、外務省当局にお尋ねいたしますが、韓国中央情報部員というのは、アメリカにおいても、日本においても、外交特権を持った外交官である場合が多いようであります。したがって特権的な立場でいろいろの活動が行なわれるわけでありますが、それがあまりにも目に余るということで、過去においても諸外国では問題になっております。最も顕著なのは六年前の一九六七年の西ドイツにおける学者、文化人、学生などの蒸発事件でございます。したがって、外務省では、こういうような存在というものが日本の主権を侵害するような危険性を持っているのではなかろうか。こういうものの活動にもおのずから節度があってよろしいのであって、いまのような国際社会では、他国の政治情勢をいろいろと探るということが幾ら許されるにいたしましても、それが目に余ると追放を命ずるとか報復措置をとるとかいうようなことが行なわれているわけでありますが、韓国のこの諜報機関の日本における活動で、警告を発するとか報復措置をとるとかいうような事例が過去においてあったかなかったか、こういう点をお尋ねしたいと思います。
  95. 中江要介

    ○中江説明員 外務省として承知しておりますのは、韓国の中央情報部員が日本において外交特権を持っているということは全然ないということがまず第一点でございます。  第二点といたしまして、韓国の中央情報部員が、そういう資格を持った人が、個人として日本に来て何かをしているという場合には、一般外国人日本における活動が日本の憲法で守られている限度においては問題はないと思うのですが、それが何らかの違法行為なり事件を起こすなり、そういう違反があったときに、その取り調べた結果、その個人の行為がもし国家機関の行為であるとみなされる場合には、いま先生の御指摘のような問題となりまして、国家主権が侵害されたのではないかという疑惑が強くなって取り調べ、それがはっきりいたしますと、諸外国で一、二例のありますような措置になると思うのですが、私の知っておる限りでは、そういう事例が過去においてあったということは聞いておりませんし、したがいまして、韓国の中央情報部の日本における活動について韓国に抗議をしたということもないと承知しております。  第三番目に、過去において韓国中央情報部の部員であった人が、わが国にある韓国大使館に外交官として勤務しておられるという事例は、これはないとは言えないと私どもは推測しておりますけれども、これは外交官として正式に相手国政府から通報を受けて大使館の書記官なり参事官なりとして活動しておられる。その活動が外交官の通常の国際法上認められた活動である限りにおいては何ら問題がない。韓国大使館から得ております情報によりますと、こういう人たちも外交官として来ているときには韓国中央情報部との身分関係はすっかり断たれて、韓国外交部、日本でいえば外務省の職員として発令されて来ておる、こういうふうに聞いております。
  96. 青柳盛雄

    青柳委員 お答えのとおりであるとするならば、韓国CIAなるものは実態が非常にわかりにくい、少なくとも公的には日本政府としてはその存在を確認することは困難というような状況。またそこにこういうものが跳梁ばっこする余地もあるのかもしれませんけれども、しかし国民の間では、日本にそういうものの存在を許すことは日本の主権にもかかわるし、また日本に在留しておられる朝鮮人の基本的人権をも侵害するものである、憲法違反の行為につながるものであるということで、そういう存在を日本政府がどういう方法をとるにせよ認めないということが正しいと考えるのでありますが、この点法務大臣はどのようにお考えになりますか。
  97. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 何ぶんにも日本におられる外国人の行動というものは、日本の憲法、日本の法律が施行される地域であります限りは、どうも政治的行動というものをチェックする道はないのではないか。日本の憲法が施行され、日本の法律を適用するという立場に立ちます場合に、いわゆる政治行動、思想の表現というものはどうもむずかしく取り扱うことができないのではなかろうか、こういうふうに考えるのであります。  ただ、お尋ねの趣示とちょっと違うことをおしゃべりするのでありますけれども外国人日本に来ておる、それはいいとして、その行動が日本の国益を害するおそれのあるような行動をとっているという場合は、入管令に基づいて、ちょっと待った、さようなことはおやめなさい、やめなければ強制送還をするということはできる。日本におるアメリカ人が日本本国の政府に反対をする運動を日本でやっている。韓国の人が日本におって、日本政府じゃない韓国政府に反対をする運動をやっておるという場合、これにちょっとストップをかける、取り締まる、呼んでしかる、追い返すという道がないんですね。これはあってもよかりそうにお考えでございましょうが、ないのです。遺憾ながら、ない。こういうように見てみると、外国人の行動というものを調べることなかなか容易なことでない、しかしその活動が行き過ぎまして、わが国の刑罰法規にぴしゃっとかかるようなことがございますと、それはもう刑罰法規の発動でございます。ぴしゃりいける。それにかからない限度でやっておる単なる思想の表現の自由、政治運動、政治活動の自由という域を出ない場合、これが一番めんどうである。韓国日本との関係から申しましても、日本において韓国政府に反対する運動が起こっておるということは好ましいことではございませんね。それは好ましいことではございません。日本の政府の反対運動をしてもらうことと同様、これに準じて困ることではあるけれども、どうも道理の上ではこれを取り締まる道がない、こういうことが日本の特徴であって、そういうことにおいては日本一つのマイナス点でもなかろうか、こう考えるのでありますが、いまの現状はそういう状態と心得ております。
  98. 青柳盛雄

    青柳委員 私はいまのお話については、法務大臣と全く逆の考え方を持っておるのでありまして、それこそが日本の憲法が外国人にも保障されておる人権ではないか。私の聞いたのはそうじゃなくて、一個人としての人権、自由というようなことではなくて、政府機関、KCIAは政府機関ですから、政府機関が忍者のような形で日本の国内でうようよしている、こういうことが日本の民主国家として黙認していいかどうかということなんですよ。だから民間のほうでは法的な手続のことについては別にむずかしくてわからないけれども、少なくとも政治姿勢が民主主義を守る、自国の主権を守るということであるならば、外国の政府機関が日本の国内で日本の法律に直接的に触れるというような違法行為には出ないにせよ、あるいは出ているかもしれないけれどもなかなかわかりにくいというような巧妙なやり方であるかもしれませんが、いずれにしても、そういうものが活動することは好ましくない、こういう政治姿勢はとるべきではない、私は当然それが国民の要望に沿うものだと思うわけであります。  同時に、日本には国際勝共連合というのがございます。これは国際的な勝共連合における日本の一組織のようでありますけれども、これは行なうところは全くKCIAの活動、策謀と質を同じゅうするものであって朴正煕の政権を維持するためにその下働きをするものといわれております。最も特色的なのはいわゆる名前が示しているように反共そのものでございます。こういうものが日本において堂々と活動を続けている。本家は韓国である。これをわれわれはやはり重視しなければならないと思うわけです。今度の金大中事件において具体的に勝共連合がKCIAとどのような連携をとってやっておるかというようなことについては、私どももまだはっきりした具体的事実をつかんでいるわけではありませんけれども、少なくともたとえば勝共大会が開かれたときに自民党の岸信介元首相が名誉顧問に名を連ねる。佐藤榮作首相がその当時メッセージを寄せているというような事実を見ると、この勝共連合なるものも非常に日韓関係の友好親善、つまり日韓の韓というものを朴正煕一味というようなものに縮小してみて朴正煕一味と仲よくすることが日韓友好関係であるというような立場で見れば、この政権を維持するためにあらゆる活動をしている勝共連合というようなものの名誉顧問になろうと、メッセージを送ろうとそれはかまわないという議論もありましょうけれども、私はそんな考え方が正しいとは思いません。したがって政府は勝共連合の存在というものをこの際どのように評価し、今後どのように対処すべきものとお考えになっておられるか、法務大臣のお答えをお願いしたいと思います。
  99. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 勝共連合の行為はけしからぬじゃないかというお立場にお立ちになっての御質問とこう承るので、話がしにくいのであります。答弁言いにくいのでありますけれども、共産主義であろうが反共産主義であろうが、勝共連合であろうが、わが国の刑罰法規に抵触しない範囲において行なわれる行動、運動、表現の自由、これは全くの自由、文字どおりの自由、世界に冠たる日本の憲法がものをいうておるのでございます。どうにもいたしようがない、困ったことをやるものだということもございますが。目に余るものもございますが、目に余ろうが余るまいが、わが国の刑罰法規に抵触しておる場合以外はどうも手の打ちようがない。これは個人の場合でございますが、かりに国家機関がというようなことは、ちょっと想像のできぬことでございますが、仮定でものを言うとすぐそれが誤解をされ、誤られるので、うかうか仮定のものの言いようがないわけでございますけれども、かりに国家機関の場合を申しますと、日本の刑罰法規に抵触しておるといっても、国家機関をつかまえて日本が強制する強制力がないわけです。こういうものは、その所属をされる国家を通じてこれを是正していくということ以外に道はございません。そういう状態に置かれておるのが日本憲法下の日本の高度な自由主義国家という立場であろう、こういうふうに考えております。
  100. 青柳盛雄

    青柳委員 もうお約束の時間が参りましたので、最後に一点だけ。昨日私自宅へ帰りましたら、在日本大韓民国居留民団中央本部、団長が金正柱という方の印刷した声明書なるものを、私あてに送ってまいりました。これは多くの同僚議員諸君にも届けられていると思いますが、要するに、今度の事件について日本の言論機関の態度はよろしくない、また一部の政治家もよろしくないというような趣旨のものでありまして、これを糾弾するということが主たる目的のようであります。そして、「わが民団としては、今後とも日本の言論機関の報道方針、日本政界人の発言信条について、強い関心を持つと同時に、警告と抗議を行なうであろうことを附言する」とこういって、いわば脅迫的な文言まで入っているわけであります。つまりこの事件は絶対に韓国国家機関は関与しないのだ、それはもう天地神明に誓って間違いないという信念を持ち続けるのだ、どのように言論機関がいおうと政界人がいおうと、この信念は曲げられないということを貫いているわけです。これと読売新聞の、政府機関が関与したのだという、あの政府筋からの情報ということでトップ記事になっていることに対して韓国情報部の責任者から訂正申し立てをした。読売新聞はこれを断固として拒否する。これは私どもは言論の自由の立場からいって当然なことだと思うのでありますが、こういうふうに、絶対に間違いないのだ、もう政府あたりがかりそめにもKCIAあるいはその他少なくとも韓国政府の機関がタッチしたのだというような態度をとるのならば許さぬぞというような、こういうやり方、かさにかかってくるやり方、こういうものがまかり通るようになったら、もう日本もおしまいだと私は思うのでありますけれども大臣はどうお考えでございますか。
  101. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 仰せのこと、わからぬこともございませんが、捜査が現段階においてものごとが明白になっていない。彼が出国をしていった出国の経路、経緯というものが明白になっていない。捜査段階は中間段階でございます。そういう段階で、何ぼ言論自由というても、韓国、KCIAが、といったような表現でいろいろなことを言いますことは、ことに、一般世間で仰せになることはやむを得ないといたしましても、政局担当に関係のある者、政界に関係のある政界人は、言論というものは自由であるが、自由な中で慎まなければならぬものでございます。私なども、慎みが足らぬのでしかられることが多いのでありますけれども、それが、いやしくも韓国とかKCIAとかいうような表現をしましてきめつけて論評をするということはよくない。取り締まる道はないんですよ。ぴしゃり逮捕をして取り締まるという道はないのでありますけれども、言うことはよくない。私は、某国ということばを使うのは、せいぜい息の詰まるような思いでこのことばを使っておるのであります、某国はたくさんあるからね。ですから言うておるのであります。名を具体的に示して、ということは、私は、その抗議文が当然じゃないかと思う。私がその関係の国民であったと仮定をいたしましても、けしからぬことを言うなということばは、言いたい、言うてみたい、こう思うくらいであります。政界人、特に政府におります者の発言、表現というものは真に慎みたい。できれば、その文書は私にひとつお回しをいただきまして、反省の資料としたいと考えます。
  102. 青柳盛雄

    青柳委員 終わります。
  103. 中垣國男

    中垣委員長 次に、沖本泰幸君。
  104. 沖本泰幸

    ○沖本委員 まず大臣にお伺いいたしますが、きのうの参議院の法務委員会で、大臣は、私は小ものだからと、こういう御発言もあったというふうに新聞記事で伺っておるわけですけれども、どうぞ、閣僚の一人としてこの問題に関してすべての責任を負う一人だと、こう御認識の上に立って、小ものにならずにお答えいただきたいと考えるわけです。  そこで、きのうの報道によりますと、日韓閣僚会議は、閣議で、これを延期するという決定があって発表されたというふうに聞いておりますけれども、閣議の中でのこの日韓閣僚会議の延期というのは、一部報道されておるように、総理の海外のいろいろな行事が終わったあとまで一時的に延ばすのか、あるいはこの金大中事件に関連して、こういう問題が解決するまでこれを延ばしておくのか、その点、どういうニュアンスでこの問題がきめられたか、その点が一点と、同時に、重大なこの事件に関して閣議でそれぞれお話し合いがあったと思いますけれども、総理はどういう角度でこの問題について閣議で御発言になったか、あるいは法務大臣に対してのお話し合いがいろいろ行なわれたか、その点について、言えるだけお話しいただきたいと思います。
  105. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 金大中事件そのものにつきましては、閣議の発言はございません。ただ日韓閣僚会議を延期するという問題については、外務大臣より発言がありました。これは、外務大臣の発言は大体外務大臣にお聞きを願うということが筋で、発言以外のやつがものをいうことはどうかということで、私はそういう方針をとっておるんですが、何も他意のないお尋ねでございますからお答えをいたしますと、政府首脳が、まあ総理大臣、外務大臣という意味でしょうね、政府首脳がヨーロッパ訪問を済ませてきた後に早い機会に期日をきめたい、そういう表面——表面ということばは取り消しますが、そういう理由でとりあえずこれは延ばしておこう、こういうことが延期の事情として説明されたところでございます。
  106. 沖本泰幸

    ○沖本委員 あとでも言及することにはなりますけれども、いろいろ複雑になってきて高度の外交交渉がこの問題解決に非常に重要になってくるということはお互いに想像されるわけですけれども、それから、大臣もお話しになっておられましたけれども、あるいは犯人が出た、犯人の引き渡しなり、あるいは金大中氏並びに関係された方々の再訪日、こういうものに対してこれからいろいろと厳重な交渉なりあるいは高度の政治折衝が必要であるということは考えられるわけですけれども、そういう点について法務大臣と外務大臣との間のお打ち合わせはいろいろあったかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  107. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 まだいまの段階におきましては、以心伝心はございますけれども、ことばをもって双方の間にこれについて懇談をしたということはございません。
  108. 沖本泰幸

    ○沖本委員 先ほど来大臣は、主権が侵されたということについて狭義の議論と広義の議論がある、こういうことで、大臣は狭義の点について考えているんだ、しかし広義の議論についても考えられないことはない、こういうお答えだったわけでありますけれども、しかし大多数の人々あるいはいままで出ておりますマスコミ関係の内容のものすべてを目を通してみましても、結局大臣のお示しになった広義のほうの主権が侵害された、こういう見方をほとんどがとっておるわけです。そういう点について、感情論的なものもあるかもわかりませんが、国民感情の上に立って、これがいま非常に国民の間に関心の持たれる重大な内容です。白昼堂々と元大統領候補であった方が法治国である日本の国の、それも首都のホテルからいつの間にか連れ去られて、厳重な警戒チェックを越えて、そして十三日にはソウルの自宅の前に釈放されている、こういう全く考えられないような事件が起きているわけですから、これは目や耳をそばだてないわけにはいきませんし、またその間のいきさつなり、あるいは政府なり関係当局の動き方あるいはいろいろな折衝、そういうものは国民一人一人の関心の的であるということもいえますし、また在留する外国人の方々なり、あるいは同じような類似事件が起きたところの西ドイツなり、あるいはこれにいろいろな関心を示したアメリカなりがこのいきさつ、経緯を見守っておるというような内容からいきますと、これは単純に済まされるものではないということになるわけですけれども、そういう観点からこの問題を考えていくときに、この解決についてはどうしてもはっきりした解決をしなければならない、こういう結論になってくると思います。大臣最初稲葉さんの御質問に対して、これはもう解決しなければならない問題だ、こういうふうにお答えでもありますけれども、国民にこういう点、知る権利、知らしむる義務、こういうような内容をお考えになっていただくと、当然この問題を追ってはっきりしたものが出てこなければならない。こういうことになりますと、広義のほうの国家主権が侵されたという考えに立つような内容のものも十分御配慮していただかなければならないということになるわけですけれども、その点について大臣のお考えはいかがですか。
  109. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 先生お説のとおりに考えております。私が主権が侵犯されたんじゃないと、こう狭義説を唱えますと何か水をかけておるようでそこは心苦しいのでございますが、私は理論的説明をしておる。主権というものを狭義に解釈すると、国家機関が関与をしておらぬ限りは主権の侵犯と言えないのだ。しかし広い意味、広義に主権というものを観念すると、個人がこれをやった場合においても治安の侵犯はあるのであるから、治安の侵犯はすなわち国家主権下の治安であるから、主権が侵されたという説明ができぬことはなかろうという理論を言うておるわけであります。水をかけておるわけじゃないのであります。そういうことでございますので、どんなことをしてもこの事件わが国の治安当局、というよりは日本国国家の名誉にかけてこの問題は明白に解決をしたい。それを解決いたしますには、くどく昨日以来申しておるところでありますが、本人を調べさしてもらって、そしてこの場面を目撃しておる梁一東君とそれから金国会議員の両君、この三名をぜひ心ゆくまで調べさしてもらいたい。できればおいでを願いたい。それは国際法上義務がないという話もありましたが、それはよくわかります。国際法上の義務がないということはよくわかるけれども、国際法上、義務以上の道義責任が韓国にもあるんじゃないか。どうしてそんなことが言えるのか。韓国日本との間だからだ。私は大きな声で言いたい。韓国日本を何と心得ていらっしゃるのですかということを言いたい。韓国日本の国、両国だけのことを言いますと、国際法上の、明文上の義務を越えた大切なモラル、両国モラルの上から義務以上のものがあるのではないか。必ず私は韓国はこのからだを返してくれると思います、誠意をもって、時間をかけて尽くせば。現在捜査中だということが理由なんです。ですから、必ず私は返してくれるものと信ずるのです。そうしてもらわなければ両国の因念関係というものは成り立たない、これは重大事態が来るおそれがある、こういうふうに心配をしておるので、私はその心配をありのままに、ずばり私の所見を申し上げておるのであります。どうしてもこの三君について捜査当局の得心のいくように調べさしてもらいたい。そうすればきっと答えは出てくる。私は、このことも私の推定でございますが、三君を調べさしてくれるならば、心ゆくまでこれらの三君が協力してくださるなら答えはきっと出る。その答えが出ないほどの貧弱な日本の治安当局ではございません。きっと出る、こう考えておりますので、時間はかかるが解決はできる、こういうふうに私は見通しておるわけでございます。
  110. 沖本泰幸

    ○沖本委員 大臣、先ほど韓国内の問題に関していろいろ言及するようなおそれがあるというお答えもあったわけですけれども、最近までのいろいろな記事の推移からいきますと、どうやら焦点がはずれていって、いま金大中氏はいわゆる韓国の国内法に抵触する被疑者としての扱いを受けつつある。そういう内容から、いわゆる韓国の国内法に関する被疑者として扱われ、あるいはそれによって犯罪を明白にされ、刑が確定されていくというようなことで、一歩も韓国から出られない、こういう形に結果的になっていくということが想像される面も一部あるわけです。新聞紙上によりましても、宇都宮先生なり非常に関連をお持ちの方々なり、憂慮している者のすべての者が考えておるのは、いわゆる身柄を日本へ送っていただいて捜査をするという一つのあり方と同時に、今度は金大中氏の生命が、あるいは安全であるのかないのかという点を考えなければならないという一つの問題は別にあるわけなんです。そういう点についてはこちらから手も足も出ないというような現状にあるわけなんですけれども、もしそういう形でわれわれの全然予想しないような方向に向かってこれが解決していくようなことになった場合に、政府や当局としてどういうふうに対処されていくか、それについてお答えいただきたいと思います。
  111. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 他国のことを日本国会で論ずるということは、なかなか誤解を生むのですね。韓国の憲法、韓国の国法に基づいて韓国金大中君を別個独立の犯罪人として処断する。これは理論的には私の、私というよりも日本国の立場から、ちょっと待った、ということは言えない。言えないが、そこが日本韓国との間柄でございます。日本韓国との間柄は道理を越えておる。道理を越えた親密な間柄でございますから、やはりものごとの道理に従って、私が条理ということばを妙に使ってこだわっておるのでありますが、条理に従って行動をとれ。条理とは、事件発生以前の原状に返すことだ。それを先にやってくれ、何か金君に犯罪があるということならばその上でもおそくはなかろう。原状回復をやらないで、それはあと回しにしておいて別個の犯罪があるなんという取り扱いというものは、日韓両国の間の道理を越えた考え方からいうと、そんなことはけしからぬじゃないかという話は日本国からして言えるのですね。これはぜひやりたい。この国会を通じてもこれは大きな声で言うて、原状回復を先にせい、それを済ませて犯人を確定してそれから後に、金、おまえの日本における行動、やり方は、ということはそれからでいいじゃないか、私はこういう考え方で、強く原状回復をしてくれということを押し出していくことは、これは結果において金君が日本に来るということになってきましょうから、本人の安全ということにも勢いつながってくるのではなかろうか。純粋の理論の上では、他国から、おまえのところの憲法、法律に基づいてやると、それがむちゃくちゃであろうがなかろうが、それをチェックしてかかるということはなかなか困難ですね。また簡単にやるべきことじゃない。幸い、いま言うたような道理が別個にあるものですから、リーズンによる行動を願うのだ、日本韓国とは国際法上の義務以上の大事な義務がお互いにあるじゃないかということで説いていけば、これは命を助ける一助になる、私はこういうふうに考えるのです。いまこの点は思いついて言うておるのであって、そういう御質問がありましたからなるほどと思って言うのでありますが、私はそういうふうに思っております。
  112. 沖本泰幸

    ○沖本委員 先ほどから御質問しているのは、その辺に関連して申し上げているわけなんですけれども、国際法上の問題点、いろいろイタチごっこ的な議論になっていきますけれども、究極は相手国に義務がない、いろいろな点で確認できないような点がいろいろ出てくるわけですね。  そこで、一番おしまいにはやはり高度の外交交渉の上に立って解決する以外にないということになりますし、いま私の御質問大臣がお答えいただいたようなお考えのものも、やはり外交交渉の上に立った高度の交渉でなければならない。ただお考えをお述べいただいて、ただ向こうが答えてくるだろう、こう待つわけにはいかない問題でもあるわけであります。そういう点につきまして、先ほど外務大臣からはまだ十分な話し合いもできていないというようなお答えがあったわけですけれども、今後大臣としては、こういうふうな重要な課題をかかえてこの問題を高度に外交交渉で解決していくためにはもっともっとお話し合いをし、進めてもいただかなければならないわけですけれども、そういう点について大臣の御決意はどういうのでしょう。
  113. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 先ほどから外務省の熱心な御答弁をお聞きをいただいておりますとおり、これはなかなかやっておるのです。おまえ、何にもせぬ、何をしておるのだというようにちょっとおことばが聞こえるのですが、そうではない。なかなか外務省は努力をしてやってくれておる。それからある種の情報——犯罪調書のコピーまでは送ってきておりませんけれども、ある種の情報はだんだんに報告もしてきておる。ただ、こちら側からいうと、もっと進んだ報告をもらいたいということはございますけれども、全く放任しておるわけでない。外務省の努力に報いて幾らか内容の報告もきておる。こういう事情でもある。それからこちらにおいても捜査の必要があるからということも言い分として言うておる。裏を返せば、捜査が済めば何ということはないということも考えられぬことはない。そういうことは言うてはおりませんが、考えられぬこともない。私は非常に希望を持っておりますのは、日韓両国関係という特別の因縁の深い関係にあるので、条理の立つことは聞いてくれるもの。そんなことはおれのところに国際法上の義務がないのだというようなことは言うまい。また、それは言わさぬ、そんなことは言わさぬ、こういう考え方でございます。しんぼう強くやっていけば、この問題は三者を調べることができる。三者を調べることができたらこっちのものだ、きっと答えが出る、こういうふうに思っております。
  114. 沖本泰幸

    ○沖本委員 ずいぶん希望的な御意見でございますが、やはり重なる外交交渉の上からこちらの意思も向こうに伝え、国民感情なり、いま日本の国で国会なりあるいは国民全体がどういう考えでこの問題を考えておるかということも、それは日本韓国の間ですから日本の新聞が行かないわけもないでしょうし、テレビもキャッチできないことはないとは思いますけれども、それは正式の政府間交渉というものがどんどん行なわれながら日本の国の政府の意思なり国民の意思なりを向こうへ伝えていただいて、解決の方向、大臣のおっしゃる希望ある方向に向かえるのではないか、こう思われるわけですけれども、先ほどからのお話を伺っておりますとまだ法務省法務省としての大臣のお考えであり、外務省は外務省としてよくやっておる、こういうふうな大臣の御見解でもあるわけですけれども、やはりこれは外務省と十分な御連絡をしていただき、外務大臣と十分、法務大臣の意のあるところをお話し合いをしていただいて、そしてこういう問題が十分解決のめどが見出せるような方向が出てぐる方向に向かって御努力いただきたい、私はそう考えるわけです。  向こうから捜査に関してあるいは現在までの時点で中間報告がある。ところが、二階堂官房長官の談話が出ておりますけれども、その中にも中間報告とみなされるものはいまだかつてないというような姿勢。あるいはきのうきょうの新聞を読んでみますと、この金大中氏の韓国の国内法にかかっている問題で金大中氏を処断してそれですりかえてしまうのではないだろうか、そういう強硬方針で韓国は臨むのではないだろうかというような観測記事も出ておるわけです。これは大臣が答えられる筋合いではないかもわかりません。そういうふうな内容のいろいろのものを考えていくと、なかなかこれはむずかしいのではないかという予測が私たちはできるわけなんです。そういう点につきましてなお十分外務大臣とお話し合いをして、いまお答えいただいた大臣の方向に方向づけがしていけるような、内容が国民によくわかるようにそういう問題を進めていただきたい、こう考えるわけですが、いかがでしょう。
  115. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 国の方針にのっとって主張をするのは外務省にお願いをする以外にルートがないのです。私が直接にやるという道はないわけです。  そこで、外務大臣がどうやっていらっしゃるかということが非常に重要なことで、これは政府の方針に従って実に熱心に仕事をしていただいておる。まだ正式会談をいたしませんというけれども、顔を見たら腹の中がわかる間柄で、同じ閣僚でございます。同一のもので、一つのものでございます。でありますから、私の考えておることと外務省のお考えになっていることがちぐはぐということはない。答弁のことばに足らぬところがあると補充をしてやるという親切心は外務省はちゃんと持っておる。親切はあるけれども、何かちぐはぐはない。そこは誤解のありませんように、政府の方針は、あくまでも時間をかけて、韓国日本との因縁というものを念頭に置いて、とにかく頼む、こうしてくれという実を尽くして、実現をするように持ってまいります。一生懸命やりますから……。
  116. 沖本泰幸

    ○沖本委員 それは十分信頼できそうなんですけれども、新聞によりましても、宇都宮さんは、法務大臣はやるだろうということもおっしゃっておりますし、それから最初大臣が御発言になった十四日の閣議のあと記者会見でも、最近は大臣が少しずつこう小さくしていらっしゃいますけれども日本の主権が侵害されたのだ、こういうふうな意味のことを記者会見でお話しになっていらっしゃるわけです。この十四日の閣議後の記者会見では、法務大臣は「「日本人以外の犯人によって金氏が国外に連れ去られたとすれば、日本の主権に対する重大な侵害である。まず事実を究明する必要がある」と次のように語った。」として、「今回の事件日本の保護下にある外国人を勝手に連れ出したという点で、日本の主権の侵害であることはいうまでもない。しかし、誘かいの事実の究明をすることが先決である。だれがやったか、日本人か外国人か、あるいは外国政府が介在しているのか。もし外国政府が介在していれば、事は重大である。」この辺のことはわかるわけですけれども、その主権が侵害されておるということは、先ほどお話になった、広義の意味からおっしゃった、こう考えるわけですけれども、どっちかしますと、大臣のほうがどんどん進んで御発言がされているようなことにも私たち受け取れるものですから、そうすると、他の省のほうが大臣の御発言よりだいぶうしろのほうから進んでおるというふうなことになれば食い違いが起きてくるので、そういう意味合いのことをお伺いしたわけです。  それで、少しこまかい質問になりますけれども韓国には、先ほど青柳先生もお話しになっていましたけれども戒厳令がしかれているということになるわけです。その戒厳令がしかれておる韓国のどこかの沿岸、岸ですね、あるいは港に、金大中氏が相当大きな船で、高速艇で連れ去られた。それから点々と三カ所を移動して、そうして十時二十分ごろソウル金大中氏の自宅の前のほうで、目隠しをされて、口にばんそうこうのサルぐつわをされて釈放されたという点を考えますと、あるいは日本の厳重なチェック、警戒の中をホテルから連れ去られて、関西と思われるところまで持っていかれている、それからボート、船に乗せられた、こういういきさつは、日本の国内では、相当日本の国内の交通なり何なりに詳しい人でなければできない。で、複数でなければできないことも事実ですし、そういう点を考え合わすと、日本に長く在住しておる人がやったんではないかと想像できるわけです。あるいはさきに申し上げた、韓国の港に上がって、朝鮮民主主義人民共和国からのスパイが来るんじゃないかというようなことのもとに海上規制を相当厳重にやっておる、それから夜間外出はとめられておる、こういう中を全然チェックなしに自宅まで連れていかれて十時二十分だ、こういうふうな時間的な内容を考えますと、相当ノーチェックで行けるような人でなければ、おそらく自宅まで金大中氏の身柄を持っていけるということは想像できない、こういうことになるわけなんですけれども、お答えになれるところと、なれないところとはいろいろあると思いますけれども、この点についてどうしても納得いかない。こういうふうなところが、あるいは韓国の政府機関に属する人であるか、あるいはそれに準ずるような方々が綿密な計画のもとにこういうふうな事件を起こしたのではないか、こう推測されるわけですが、その点について、大臣、いかがですか。
  117. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 その点は純粋の捜査に関することでございますから、第一線捜査当局である警察からお答え申し上げます。
  118. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 向こうのほうでそういう戒厳令、どの程度の警備をしているか、われわれ実態を承知いたしておりませんので、確定的なことは私ども全くわからないという一言に尽きるわけでございます。
  119. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 それじゃ、私かわって申し上げます。  捜査を進めておる段階で、いま先生仰せのようなことは捜査の急所で、そこを解明したら、もう非常な部分がわかってくるという、そこが捜査の急所でしょう。それを第一線捜査当局である人といえども、この段階で、それはごもっともやとか、そんなはずはありません、こういうことがありますとかいうことはちょっと言いにくい。ここのところはひとつお許しをいただきたい。
  120. 沖本泰幸

    ○沖本委員 これに関連して、先ほどから御質問もあったわけですけれども、初動がおくれたという点、江崎長官も遺憾であるというような御答弁もしておられたわけですが、記事を読みますと、保安庁のほうも全然どこからの連絡もなかった、だから保安庁は全然動いてないというような新聞記事を読んだんですけれども、その点、事実はどうなんですか。
  121. 船谷近夫

    ○船谷説明員 海上保安庁といたしましては最初に知りましたのは八日の十六時五十分だったですが、NHKのテレビでテロップの臨時ニュースがございました。それ以後、五時半と七時だったと思いますが、ニュースがございまして、この事件発生をある程度知ったわけでございます。それで同時に、警察捜査に入っておるということも承知したわけでございまして、その晩に警察のほうに何か情報はないでしょうかという問い合わせをいたしましたけれども、ニュース以外のことはいまのところないという御返事でございました。それで海上保安庁といたしましては、やはり沿岸の警備の任務を持っておりますので、できるだけのことはしなくちゃいけないと考えまして、八日の夜、関係の、大体関東から以西の管区本部でございますが、に指令いたしまして、情報の収集等、それから即応体制、そうして警備に当たれという指令をいたしました。それの処置によりまして、各管区が立ち入り検査、韓国向けの船舶七十五隻について、これは十三日金氏が韓国に帰ったということがわかるまでの期間でございますが、七十五隻について立ち入り検査をした次第でございます。
  122. 沖本泰幸

    ○沖本委員 一番あとでお伺いするつもりなんですが、その前に捜査のあり方について、これは大臣にお伺いしたいと思うのですが、ここに出ておる記事によりますと、「韓国刑法第一条および第六条では、韓国人が外国で罪を犯した場合、あるいは韓国人に対しての犯罪に対しては、その種類を問わず韓国刑法を適用することを定めており、韓国側からすれば金大中事件もこれに当てはまることになる。このため日韓両国捜査権がぶつかり合うことになり、これは両国の主権対主権の問題なので、どちらの捜査権が優位にあるということはない。互いに相手国の了解なしに、相手国で勝手に犯人を逮捕したり、参考人を連れてくることはできない。そこで外交交渉の問題になってくる。そうなると相互主義の建前から、捜査員の派遣にしても、まず韓国が了解すること、韓国日本捜査員を派遣する場合は、これを受け入れることが前提になる。」法務省のほうとしては、「日本韓国の間に犯罪人引き渡し条約がなく、過去に両国でこの種の例もない。」「しかし外交ルートを通じ、韓国へ引き渡しを請求し、必要があれば同種の事件について相互に保証を取り交わすことは可能——としている。仮に引き渡し条約を結んでいても、政治犯と自国民は除外」これは不引き渡し条項ですけれども、「するのが通例であり、まして日本との間に条約のない韓国が、引き渡すかどうか疑問視する向きが多い。しかし、引き渡し条約がなくても、外交交渉によって、さる三十八年スイスへ逃亡した犯人日本人)を引き取ったり、またさる四十五年には、富士銀行事件の有馬哲がフランスへ逃げ込んだのを引き取った例もある。今度の金大中事件も、日本の威信をかけて、高度の外交折衝の結果に待つ面が多い。」こういう記事も出ておるわけですが、こういう内容があるわけですから、刑事局長のほうから、検察庁としてはこの問題どういうふうにお考えになっておるか。
  123. 安原美穂

    ○安原政府委員 その記事はそのとおりで間違いはないと思います。  したがいまして、日本国で裁判権を行使するという場合には、かりに韓国犯人がおるとすれば犯罪人引き渡しを請求するという段階になることが十分に予想されるわけでありますが、いまお読みのとおり、両国間には相互に犯罪人引き渡しの条約はございませんけれども、いわゆる相互保証のもとに犯罪人を引き渡すということは国際法上も常に行なわれておることでございますので、条約はございませんが、相互保証ということで引き渡しを請求することは十分に考えられるのでありまするけれども、国際法上自国民、それに犯人韓国人であるという場合でありますれば、自国民不引き渡しの原則というものが働くという場合が非常に見込まれますので、そういう場合に、犯人の引き取りをするということは実際問題としては相当の困難を伴うものと思いまするが、それはまた外交交渉の成果の問題でございまして、一がいにだめであるとも言えないということでございます。
  124. 沖本泰幸

    ○沖本委員 時間がなくなりますので、これからちょっといやなことを申し上げて、それからまた改めていただくところは改めていただかなければならないのじゃないか、こういうふうに考えます。  これも記事によるところでありまして、私が全部事実を知っておるということではないわけです。しかしこれは十分考えなければならない日韓関係の問題だと考えますので、大臣も閣僚の一人として政府の方向なり政策決定なり、あるいは自民党の古老の一人として十分考慮していただかなければならない問題ではないかという点について、これは新聞に座談会が出ておりましたからそれを拾ったわけですけれども、これに出られた方は松本清張氏と宇都宮先生と佐藤勝巳、寺沢一の諸先生方なんですが、これは朝日の十四日の座談会で出ておるわけです。それによると松本清張さんは——あと飛ばしますけれども、「明治以来、日本が朝鮮をめぐる謀略に介入している歴史的事実もあるし、ただ主権じゅうりんという表面のことだけでなく、日本の政界の内部的批判、分析も必要だ。もう一つ、白昼堂々とあんなふうに連れ去られるということが起こるなら、日本人自身も不安を感じる。この点、警察も政治家もどう考えているのか。」という点。それから寺沢さんはこの点はいいわけですね。宇都宮先生のおっしゃっているのは「日本韓国対策を考え直すことの方が大切だ。日本韓国に援助し、投資もしている。日本韓国経済に大きなウエートを占めている。だが、韓国内では、援助の一部がピンハネされて日本に戻っているとの説が定着している。金氏も日本に求めたいのは、援助が朴政権だけのためでないものにしてほしいということだ、といっていた。この点は、われわれも反省しなければならないと思う。」佐藤先生は「この事件を契機に、韓国はダメな国といったとらえ方が広がっては困る。韓国民がダメなのではない。日本の歴代政府は、反共の方向で韓国政府を無原則に政治、経済的に援助してきた。そこにこんどの事件発生の要因があったと思う。政府筋の一部から、出入国管理令を再検討すべし、といった意見が出ているが、それはおかど違いだ。この事件を契機に出入国管理令を強化する、などということは本末転倒で絶対に許されない。」こういう点と、そのあと寺沢さんの話では「政府は日本の法律が公然と犯されたことに対して、厳重抗議だけに終わらせず、犯人の引き渡しを要求し、さらに事情を明らかにするために金氏に日本にきてもらうよう強く求めるべきだ。」宇都宮先生は「朴政権だけが韓国ではない。北も含めた朝鮮全体との友好関係、緊張緩和が日本外交の重要課題である。そういう大きな目でこの事件を見るべきだ。」佐藤先生は「日本は戦後一貫して、南北の分断の固定化、対立をあおることに加担してきた。そのことがこの事件で問われている。朝鮮統一を真剣に考えている人たちに焦点を合わせて考えなければ、不幸な問題はこんごも起きると思う。政府だけでなく日本人全部が考えるべきだ。」松本清張氏は「これは日本政府と朴政権の間だけの問題ではない。日本の主権が侵されたうえ、こんな状況では日本国民が外国に連れ出されることだってあり得ることをまざまざと見せつけた。日本政府が韓国に厳重抗議して終わるような問題ではない。国民が発言して、真相を徹底的に究明し、日本の主権が侵されたことを追及しなければならない」こういう類似記事がたくさん出ているわけです。これは国民全部が読んでいると思います。またいわゆる宇都宮先生がおっしゃっておる主権の考え方の中は、国民は独立した国家主権のもとで政府を持ち、生命、財産の安全、言論の自由、経済活動などを保障されている、その主権のもとで安全に生活しているもの、それから外部の力によって不当に自由を拘束されるのは明らかに主権の侵害だ。大臣が広義だ、こうおっしゃった点ですね。犯人が他国政府ならもちろんだが、そうでない外部の集団であっても同じことで、日本政府には金大中氏の身柄をもとの平穏な状態に復元する責任があり、それが主権を守ることになるという点を主張しておられるわけです。ですからこういう点は外国のほうも非常に注目してこの問題を見ておるという点何度も繰り返し大臣もお答えになっておるわけですけれども、ただ犯人に手錠をかけたということだけでこれを終えてはならないということを言っておるわけですけれども、いま言ったとおり、この週刊現代で宇都宮先生がおっしゃっておるのは、対韓援助に対してそれにたかる議員がおるのだ、政治家がおるのだ、それが日韓関係をおかしいもの、まずいものにしておる、それが日本が弱腰になっている一つの例だという点も指摘されておるわけです。こういうことがある、ないということは私は事実をつかんでおりませんから言えませんですけれども、こういう内容について、大臣は、こういう問題をかかえながら今後の対韓援助も考えなければならない。ただ一方的に韓国に経済援助をしていくということであってはならないわけですから、その問題の中にもこの問題がからんでいって内在しておるという点を考えなければならない、私はそう考えるわけですけれども大臣はその点についてどうお考えでしょうか。またどういうふうにこの問題の解決に対処していったらいいかという点についてお答えいただきたいと思います。
  125. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 ただいまお読み聞けの内容は、政治、経済、捜査、行政たいへん広範囲な発言をとらえての御意見でございます。そのままごもっともだと言えるところがあり、そう言えないところがあり、いろいろございます。ございますが、大事なところをとらえて感想を申し上げますと、またしてもこういうことが治安国家といわれる日本で起こるのではないか。いや起こそうと思えば起こし得るのではないかということが非常によく胸にはまる、ぴんとくる、おことばの中の記事ですね。こういうことのないように最善を尽くして治安の確保に邁進をしていきたい。私の意見は、どうも最初一一〇番に通告をする時間がかかり過ぎておる。なぜこんなに時間をかけたのか。事件が起こって一時間有余も何をしておったのかということは力を入れて究明したい。だれがそこにおったか。なぜもっと早く電話がかからなかったのか。何のために延びたのか。これはたいへん重要な点でございますが、この点などは本人がおらぬと究明の道がない。こういうことが原因で——捜査当局は実はそれはよく捜査に努力しております。まことに最近の事案といたしましてはまれに見る苦労を重ねてくれておる捜査当局でございます。うまくあがってこない。あがってこないはずです。電話をかける時間が一時間以上も経過しておる。原因はここにある。ですからこういうことも含めましてひとつ最善を尽くして、もう一度こういうことが起こらぬように努力せなければならないというその新聞記事の座談、対談のおしかりのことばは胸にしっかり入れたい。そしてこれをやっていきたいと考えるのでございます。  単に犯人を捕えて処理するだけでなくとこう仰せになりますけれども、まず何よりも犯人を捕えて処理をする、手錠をはめて公判に呼び出して裁判確定をして刑務所に入れる。この行動がとられないと法務省の役目も済まぬし、治安の回復はできないのです。こういう事件の治安の回復とは、手錠をはめて捕えて、裁判にかけて、そして刑の執行をする。これで初めてそれが終わりましたときに治安が完全にもとに戻るということに法律的になるわけです。ぜひそこまでやっていきたい。そういうことがもう一度起こらないように全力を尽くすということについては全力を尽くしてみたい。  経済援助をしておるじゃないかということをあまり鼻にかけた話は、こういう事件のときにどんなものだろうか。要らぬことを言わずに、経済援助をしておること、援助を受けてお喜びになっておること、韓国が繁栄に導かれておることはあほうでもわかっておる。そんなことを鼻にかけて別に言わいでも、そうでなしに条理をお考えを願いたい。ものの道理が原状回復が何より先ではないか。これは国際法上の義務以上の大事な義務ではないか。両国の仲ではないかという話に力を入れて、この問題は解決したい。たいへん楽観的なことを言うようですけれども、私はできるもの、時間をかけたらきっとできる。またこんなことができないようではお話にならぬです。そういう考えも持っておりますので、その新聞記事はちょっと過ぎたこともいうておるけれども、しかし大体においてその記事の仰せになっておることは深く反省をする資料にしたい、こう思います。
  126. 沖本泰幸

    ○沖本委員 もう時間が来ましたからやめたいと思いますけれども、ただ大臣のお答えになったところでちょっとひっかかるところがあるわけですけれども韓国を援助しているからそれを鼻にかけてはいけない、こういうお答えなんですけれども、別に鼻にかけて申し上げているわけではなくて、そのおっしゃっている犯人を逮捕して手錠をかけたいという、おっしゃるところまで持っていくまでには、いま言ったようなことがそれをかえってむずかしくする一つの大きな問題になっているという点を指摘されておるわけですから、その点は大臣ひとつ、お答えがお間違いだったのだと私は考えますけれども、時間があればこの問題もっともっとやりたいわけですけれど、対韓援助についてはほかの委員会でももう一度十分検討されると思います。しかしこの金大中氏を日本に再び連れ戻して、日本で十分真相を究明するというところにいくには、いろいろな問題がからんで横たわっておるという点を御認識いただいて、そういう点を含めた解決の方法を十分お考えになって、大臣がおっしゃっておるとおり絶対に解決して、国民の前に問題点を明らかにして、外国から来る人たち、あるいは日本外交というものが十分諸外国にもりっぱなものであるということが認識できるような今後の解決の進め方をお願いいたしまして、質問を終わります。
  127. 中垣國男

    中垣委員長 次に、河村勝君。
  128. 河村勝

    河村委員 今回の金大中事件というものはわが国の主権に関する重大な問題でございます。特に韓国との関係でありますから、これをあいまいな形で処理することがあれば、それは今後の日韓関係に破局的な影響をもたらすほどの重大な影響がある。それをわれわれは非常に憂慮しております。  そこでわが党としましては、二十日からわが民社党の春日委員長を団長とする調査団をたまたま韓国に派遣をしておりまして、私もその一員として行っておりました。そこで当然われわれの使命としましても、この金大中事件を究明し、わが国としての主張すべきことを主張するのが重大な任務となったわけでございます。そうして韓国の朴大統領、金首相をはじめ政府首脳と討議をしたのはもちろんでございますが、それだけでなくて、現に金大中氏が所属しておる、また問題の人物であります梁一東氏がこの一月まで所属しておりました新民党の幹部、これを中心といたしまして広く議会関係筋の多くの方々と、この問題についての検討をいたしました。そこで具体的な質問をいたしまして答弁をお願いする前に、とりあえず韓国の首脳に対しましてわれわれが主張しましたことの骨子と、それに対する韓国政府側の答え、それを大ざっぱにお話を申し上げまして、それから具体的な質問に入りたいと思います。  われわれの主張しております骨子は、第一番目に今回の事件というものは日本国内において発生をしておる、そうしてこの事件には韓国人が関与をしておる、ここまではきわめて明白であります。そこで、この事件の性格それから規模からいいまして、その背後には相当大きな、強力な組織がなければならないはずだ。そうであれば、いまの韓国事情から考え韓国の政府機関がそれに関与しているという疑惑がきわめて強い。そうであれば、大臣の言われるように日本の主権に対する重大な侵害である。そこで韓国政府に主張いたしますことは、こうした疑惑を一日も早く明らかにしなければならない。そのためにはまず、どうしても金大中氏ほか関係者に日本へもう一ぺん来てもらう以外にはない。だからそれを早く実行してほしいというのがわれわれの主張でございました。  それに対しまして、韓国政府としましてもきわめて真剣にわれわれのその主張を聞き、かつそれに対して金首相は、韓国の政財界人が多く集まる招宴の際に、韓国としては異例だそうでございますが、この事件によって日本の方々に非常な御迷惑をおかけしたことを深くおわびをしたいという発言もされました。しかし具体的に何を実行するかということになりますると、なかなかそうすらっとはまいりませんで、現在取り調べが非常に難航しておる、特に金大中氏その他の関係者の間の発言にも非常に大きな食い違いがあってなかなか進んでおらぬ。そこで現在の段階においては、少なくとも金大中氏を来日させることはきわめて困難である、こういうことでございました。  しかしその後いろいろと討議をしました結果、金首相の口から明らかにされたことは、一つ金大中氏は現在自分の家庭において家族とともに平穏に生活をしておる、そういう状態のもとで取り調べを受けておる。ただし捜査の都合上、接見、通信等については制約を加えておる、こういうことでありました。もう一つは、事態を少しでも早く日本政府に明らかにするために、できる限りすみやかに中間報告を発表したい。来日をさせられないかわりというわけではありませんけれども、この二つの発言があったわけであります。  そこで、帰ってまいりましてここでもって政府側にお尋ねをするのはきょうが初めてでございますが、先ほど大臣は、この事件に取り組む一番基本的な態度として事件発生以前の状態に戻す、原状回復が第一である。そして、そういう状態に戻す責任は韓国側にある、少なくとも条理上ある。これは誘拐、略取されたもので、金大中氏は自由意思によって帰ったものではないから当然返すべきものだ。そして、韓国側の捜査が一段落ついたならば韓国側に金大中氏をよこすことに協力してもらう、そういう発言がさっきありました。  そこで大臣にお伺いしたいのは、韓国側の捜査が一段落ついたらというのは一体どういうことを考えておられるのか、まずそれを伺います。
  129. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 私の答弁の内容は先生直接にお耳でお聞きになっておると思いますが、私の言うておりますのは、捜査中であるから返すことは容易でないということをいっておるのでございますから、捜査が済めば返してもらいたい。捜査中返せということに無理があると思うのです。捜査が済んだら返してくれ。捜査が済んでも自国民だから返さぬのだとか、これは政治的犯行と認める性質があるものだから返すことができぬとかいうことを四の五の言わずに、日韓両国の間のたいへん緊密な親しい間柄という情義にのっとってひとつ返してもらいたい。その道理は、事件発生以前の、寸前の状態に戻すことあたりまえじゃないかという態度で、政府、一生懸命にこれをやっていきたい。こう思っておりますので、捜査がいつ済むのかといったようなことまで考えていないで、済み次第——刻も早く済ましてくれ、早く日本へ返してやろうという気持ちで早く捜査を済ましてくれ。関係者はみな向こうにおるんですから、梁一東もおるし金国会議員もおるし、本人はちゃんと自宅におるんですから調べは早くできなければならぬ。極力急いで捜査をして、そして捜査が完全終了せぬでも大体一段落つけば、それじゃ日本のほうでどうぞという態度に出てもらいたい。それが両国の情義であり、姿をもとへ戻すということの条理に沿うゆえんではないかという考え方をここで述べておるのでございます。そういう意味でございます。
  130. 河村勝

    河村委員 いま大臣のお話を伺っておりますと、最初のほうは捜査が済んだらというふうに言われて、終わりのほうになりましたら今度は、捜査は済まぬでも何か一段落したらと言って、その辺にどうも若干食い違いがあるようでありますが、それで私は、一段落ついたらという発言があったので、何かもう少し具体的なことを考えておられるのかと思って伺ったのですが、その辺もうちょっと明確に言っていただきたい。
  131. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 特に意識して別のことばを使っておるわけでございません。同じことを言うておるのです。大体の捜査が済めばこちらへ回してくれ、こういう意味ですね。
  132. 河村勝

    河村委員 先ほど冒頭に申し上げましたように韓国側では、とにかく事件の全貌がわかるようにできるだけすみやかに中間報告をすると言っておるのです。ですからわれわれの野党外交として、別段党の立場を離れまして、それでこの事件解決できるように努力をしておるつもりです。そしてその結果韓国政府側でも、とにかくできるだけすみやかに中間報告をすると言っておるわけですね。ですからきのうも官房長官にはその事情をお話しをして、その旨正式に申し入れをいたしました。ですから政府側も——そこまで韓国側がわが党に言っても、それはわが党に報告しろということではございません。それは日本政府に対してなんですから。ですからそういうきっかけがあれば、当然そういう方向に推進するのが政府の責任だろうと私は思いますが、大臣いかがでございますか。
  133. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 同意見でございます。そういきたい。
  134. 河村勝

    河村委員 そこでこの中間報告ですが、きょうは外務大臣がおられませんが、とにかくまず早く全貌がわかるような——その内容というものは少なくとも責任の所在、で、責任の所在がわかったならばそれをどう訴追するか、処分するか、とにかくそういった内容も含めたものでなければならないはずであります。そういうものを極力早く私は督促すべきだ、そう思うのです。ただそれが、今日までのように捜査が済むまでというようなことでただ待っておるというだけでは私はいけないと思うのです。ですからほんとうに真剣に交渉して、なおかつその中間報告をさっぱり出さない、そういう場合に対する政府のしっかりした決意がなければ、こういうものはなかなか動くものではございません、問題が問題でありますから。ですから、そこで政府として当然重大な決意をもって臨まなければいかぬと思う。その点大臣はどうお考えになりますか。
  135. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 遠路わざわざ御出張をいただきまして、大事な事柄に御尽力をいただいておる、たいへん感謝をしておるところでございます。  おことばのように、この問題は単なる外交辞令ではなかなか思うようにいかぬのではなかろうかということが想定できますので、昨日以来国会で初めてこれは論議が展開されておるわけでございますが、先生仰せのとおりにひとつ腹をきめて、この問題は強腰でしんぼう強く、どこまでも原状回復ということを目標にいたしまして、引き取って取り調べたい、このねらいをしっかり一つ置きまして、外交交渉をしてもらいたい。  また、外務省は一生懸命に再三にわたって本件の問題についてはたいへんな苦心をしてくれております。さらに一そう努力をしていただきたい、こう思っております。
  136. 河村勝

    河村委員 私が申し上げたいことは、その中間報告をいつまでたっても出さない場合もありましょう。そういう場合もあるかもしれない。またもう一つ考えられることは、中間報告が出ましても、それでいろいろな責任者の所在や何かがわかりましても、なかなかそれによって日本国内の多くの疑惑を晴らすところまではいかない場合が多かろうと思う。そういう場合に、当然金大中氏、梁一東氏等の来日を求めなければならない。それにもかかわらずどうしても応じない場合には、その際には、先ほど経済援助云々を言うのは僭越だというお話もございました。確かに経済援助をそうした道具に使うというような感じで扱ってはいけないものでありますけれども、その段階になりましたら、経済援助の打ち切りを含めた、ただ断固として断固としてと言うだけでなしに、そうした具体的なほんとうの決意を含めた態度をはっきり表明すべきものだ、そうでなければなかなかこの問題は解決をしない、私はそう考えますが、大臣はどうお考えになりますか。
  137. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 これは日本国法務大臣の答えをすべき範囲ではございません。ございませんが、国務大臣でもありますから一応の意見を申し上げますと、私はこの問題を聞かざれば経済援助は打ち切ってみせるのだというような態度をとりたくない。先生御承知のように、日韓両国そんな水くさい間じゃありませんよ、これは。非常に両国の間は緊密、親密な間柄で、話をすればきっとわかる、こういうことが私の胸一ぱいありますので、聞かざれば経済援助は打ち切るのだ、さあ来いという態度は慎むべきものである、そういうふうに私は思っておりますので、腹のきめ方でございます。腹のきめ方に具体的な経済援助に関しますことまで持ち込んで、腹をきめて表に見せる、外交交渉としてもあまり当を得ない。私の思っておるとおり言うと、一番ぐあいの悪い外交の技術ではなかろうかというふうに考えておりますので、それを腹に置くか置かぬかは別にいたしまして、それを腹がまえの一つに見せるということはやってはならぬ、こういうふうに思います。
  138. 河村勝

    河村委員 私は、聞かなければ経済援助を打ち切る、そういう表現をしろと言ったのではございません。その中間報告が出て、それで全貌が明らかになった、それでもなおかつ疑惑が明らかにならない、あるいはいつまでたっても問題が片づかない、そういういわば最悪の段階です。そういう場合にはそこまで、両国間の摩擦相克がそのために相当あっても、それは最終的な両国間の友好関係のためにはやむを得ない、そこまで腹をきめておやりなさい、こう言っている意味なんで、道具として使っている意味ではないということを申し上げておきたい。それならば大臣としても私はそういう腹づもりでやられるということに反対であるはずはないと思いますが、いかがでございますか。
  139. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 これはなかなかむずかしい問題を御発言になっておりますので、私の立場でそういうことを加味して重大決意をするのだということは少し言いにくい。これは本会議もございましょうし、ひとつ内閣総理大臣にぜひお聞きをいただきたいと思います。
  140. 河村勝

    河村委員 私先ほどちょっと大臣の発言で気になったことが一つあります。それは、大臣はこの金大中氏について別の罪名で韓国側が起訴したような場合、そういうことはないと思うし、ないことを期待するけれどもという前提が入っておりましたけれども、しかしそういう場合には身柄を日本に引き取るということはむずかしいというような発言がございましたね。それはどういう意味でおっしゃったのですか。
  141. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 それは話のお取り違えでございます。自国民であるから不引き渡しの原則を適用するとか、政治犯罪であると認めるから不引き渡しの原則を適用するとか、本人には別個独立の韓国の罰則に照らして処罰をしなければならぬ、別個の犯罪があるとかいうような理屈はお述べなさるな、そういう理屈の前に原状回復の大事な義務がある、条理じゃないか、こういうことを言うておるので、そういうことをおやりになるということにとかく触れるわけにいきません、日本法務大臣としましては。  しかしその以前に、そういう原則云々ということを仰せになる以前に、おれの憲法でおれの法律でおれが処罰するのがなんだということをおっしゃる前に、この事件発生以前の状態に戻すべきものだ、それが両国の情義である、それが道理ではないか、リーズンではないかということを私が言うておるのでございますので、そう御理解をいただきます。
  142. 河村勝

    河村委員 私の聞き違いであればそれでよろしいのですけれども、それならば別段大臣は、さっき言われたことは、かりにそういうことがないことを私も期待します。期待するしたぶんないと思います。だけれども別の罪名、たとえば防共法であるとか国家保安法であるとか、そういうものでかりに起訴されたとしても、そういう場合であっても、別段金大中氏を日本に来させることに法律的な支障が新たに生ずるわけではない、そういうことでございますか。
  143. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 はい。
  144. 河村勝

    河村委員 ではそういうふうに理解をいたします。  次に警察関係に少し話を伺います。今回韓国におきまして新民党その他野党筋とずっと接触をして話を聞いたり討論したりしておりました過程で、韓国側では日本警察に対しても相当疑惑を持っているのです。  その疑惑の第一は、非常にある意味では単純素朴でありますが、世界に冠たる日本警察が、白昼東京のまん中で人が誘拐をされて、それがもう何の支障もなしにどんどん日本の国外に出てしまう、そんなことはとうてい考えられぬ。そうであれば、この事件には日本警察も一枚かんでいるのではないかというのが、きわめて単純ではあるけれども一つの理由であります。その点について、警察当局はどうお考えになるか。
  145. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  あの事件発生は、金大中さんのお話によりますと大体一時ごろということでございますが、われわれのほうにいろいろな方面から連絡があった、あるいは一一〇番があった、それは二時十四分あるいは二時四十一分ということで、事件発生後一時間以上もたってから連絡があったというのが、いろいろな手配その他に支障があったということでございます。  それから、目撃者がいないために、車のナンバーとか車種とか、どちらに向かったか、そういう緊急に手配すべき初歩的な具体的な事実を把握することができなかった、これが捜査上の初期における大きなガンになったわけでございます。  それで、その次の全国空港あるいは海港への手配、ホテルその他の臨検あるいは船の関係手配、こういうものはしかるべき方法によってそれぞれ徹底してとったわけでございますが、結果においてその網をくぐって金大中氏がソウルにあらわれた。これは非常にわれわれとしては残念に思っておりますけれども、これは手を抜いたとかあるいはそれらと何か関係があったのではないかというようなことは絶対にございませんので、この機会に明らかに否定をいたしておきます。
  146. 河村勝

    河村委員 もう一つ韓国側で非常に疑惑を持っておる点は、梁一東氏に対する扱いなんです。  この梁一東氏というのは、ことしの一月まで新民党に所属しておりまして、前副総裁であります。総裁候補に立候補して敗れてから平党員でありますけれども、この人が、ことしの一月の選挙の直前、二十日ぐらい前に、新民党を脱党して、新しく民主統一党というものをつくったんです。ところが、いまの韓国の政党づくりというものは、日本のように選挙前にぱっと届け出すれば一人一党でも幾らでもできるという状態ではないのであって、非常にむずかしい、容易なことではできないのですね。それにもかかわらず、二十日ぐらい前に民主統一党というものをさっとつくってしまって、選挙にかなりの候補者を出しまして、選挙は大敗をして、梁一東氏自身も落選をいたしましたが、しかし、そういうことができること自体、いずれの関係かはこれは別といたしまして、政府関係筋とかなりの関係があるということですね。  それと、その後においても、いま外国に出るということは、国会議員は別ですけれども、それ以外の者は非常にむずかしい。外国のしかるべき筋の要請がなければ出られないし、特に国会議員以外の政党関係になりますと非常にむずかしいのですね。ところが、それにもかかわらず、梁一東氏は自由に日本アメリカ等を往来をして行動しておる。  それから、今度の事件に関連をいたしましても、当初帝国ホテルにずっとおりながら、事件の直前になりまして、グランドパレスという、いままで韓国の政界筋で使ったことのないホテル、そういうところに突然移っている。それと事件直後の警察への連絡等もありましょう。とにかくそうしたものを含めて、梁一東氏に対する疑惑が非常に強いのです。  ところが、今回の事件の場合にあっさりと韓国に帰ってしまった。韓国に帰る正当なる理由というのはほとんどない。この点は、われわれは日本警察のためになかなかとめるわけにもいかぬのだという弁護はいろいろいたしましたが、しかしあまりにもあっさりと帰してしまった。そのことについて日本警察に対する一つの疑惑が生じておる。その点を警察はどうお考えになるか。
  147. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  それはまさにいわれなき疑惑でありまして、梁一東さんについては、われわれとしてはもっと長くいてもらいたいということを、外務省を通じて大使館からも本人にいろいろ説得してもらったのでございます。九日、十日と調べたのですが、どうしても帰るといって、十一日にあらゆる説得を振り切って帰ったということで、われわれとしては、もう絶対にいてもらわなければ困る、もっと聞きたいことがあるんだということを執拗に要求しておったわけでございます。
  148. 河村勝

    河村委員 法務大臣、この場合、私も法律的に非常にむずかしいんだと思うのですけれども、これは警察当局でもよろしいが、少なくとも容疑者に近いような状態にある場合ですね、これを何らかの形で足どめをするという方法は、現在の法制下においては不可能ですか。
  149. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 外国人であります場合には、出国したい、帰りたいと言いました場合には、話をつけて懇請をするということはございますけれども、これを帰さない、とめるという根拠はございません。
  150. 河村勝

    河村委員 法律的根拠はたぶんないだろうと思うのですが、行政的にというのはちょっと妙な言い方かもしらぬけれども、容疑者に近いような場合に、警察当局として一般的に何か少しでも延ばすような方法を従来とられた例はありませんか。
  151. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  そういうことはないと思いますけれども。できないと思います。  ただ、梁さんの場合には、さっき言い落としましたけれども、十六日にまたやってくるんだ、こういう約束で一応お帰りになった事実はあります。ところが、いわばその約束を破ってしまっておいでにならないというのが実情でございます。
  152. 河村勝

    河村委員 読売新聞の事件報道について、これは外務大臣所管であるかもしれませんが、きょうはおいでにならないので、外務省からもお見えになっておりますから、ちょっと法務大臣とあわせてお聞きをしたいと思います。  昨日、読売新聞のこの事件に対する報道に対して韓国側から抗議が出て、取り消しをしなければ新聞記者を退去を命ずる、そういう抗議があったそうであります。これは、私は新聞で見たのであって、直接聞いたわけではもちろんございません。今度の読売新聞の記事というものは、単なる推測記事ではなくて、韓国の政府筋の発言だという論拠があって報道したものでありますから、もし政府筋の発言という論拠そのものが事実無根であれば、それは別の問題だと思いますが、しかしそうでなければ、それが事実無根でない場合、韓国の国内で言論統制、報道の規制をやることは、これは韓国の国内法でできることでありますが、外国の特派員、外国の新聞記者に対して本国に対する報道を規制することは、韓国の国内法ではできないはずだと思います。その点は法務大臣はどうお考えになりますか。
  153. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 外務省からお答えを……。
  154. 中江要介

    ○中江説明員 御質問のような事件について、その場合に適用される韓国の国内法については、私、残念ながらいま知識がないので法律的にお答えすることはできないのですけれども、一般的にこういうことはないことはない、それは先生御承知のとおりだと思うのです。それから韓国につきましては、一度やはり同じ新聞社についてこのような事件があったことも承知しております。今回の場合につきましては、私どもまだ現段階では新聞報道で知っているだけで、いま現地で確認をして、やがて公電で事実を連絡してくると思いますが、まあ現地の大使館がいろいろ調べましたところで、ニュースソースの問題は、報道自由の原則からなかなかそうは簡単にはわからないでしょうけれども、どういうのが真相であるかということをまず知ってから判断したい、こう思っております。
  155. 河村勝

    河村委員 真相がわかるまでに退去命令が出てしまったらおしまいなわけですが、一体そういう場合、ゆえなく退去命令を出されたという場合、かつて中国等にありましたが、あの場合は国交を持っておりませんでしたね。今度の場合には国交があるわけですね。ですからその点は違うと思います。そういう場合に一体外務省は、もしゆえなく退去が命ぜられるというような結果になろうとする場合、あるいはなった場合、どういう措置をとられますか。
  156. 中江要介

    ○中江説明員 これは一般国際法上も認められております外交使節の任務の中に、自国民の保護の任務がございます。したがいまして、日本人が韓国で扱われた場合に、その取り扱いが法に沿っていない、あるいは基本的人権に反する、その他法の一般原則に反するようなことがあれば、やはりこれを救済するというのは現地の外交使節の責務かと思いますので、事実によってはそういうことも考えなければならない、こう思っております。
  157. 河村勝

    河村委員 きょうは外務大臣がおられませんので、まだ申し上げたいことがいろいろありますけれども、私はきょうはこの程度にとどめたいと思います。  ただ私、法務大臣国務大臣の一人としてとくと申し上げたいのでありますけれども、私どもは日韓の友好関係というものは今後とも日本にとって非常に大事なことだと思っております。それだけに、友好関係というものは相互の信頼関係に依存するものであります。でありますから、いろいろな疑惑を残したまま、この問題が何かわからぬままに片づいたというようなことになりますると、これはもう両国の将来は私はないと思うのです。ですからこの際、どうも特別な——大臣もしばしば日韓関係は他国とは違って特別の関係だということをおっしゃる。特別な関係だということをあまり強調されますと、そこにクールな交渉ができにくくなるんですね。私はこの問題はそういう危険性が非常に多いと思うのです。そうすれば逆に結果は悪くなるんですね。ですからほんとうに日韓両国の将来を考える場合には、途中で相当な摩擦、相克が起こっても、筋は筋として通すという態度を貫き通さないと、この問題は非常に危険だと私は思います。ですからその点について、私は大臣に最後に特にあなたの基本的な考え方をお伺いをいたしまして、きょうの質問を終わることといたします。
  158. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 お説のとおりと存じます。理屈は理屈、情は情といたしまして、御意向に沿うよう最善を尽くしてまいりたいと思います。
  159. 中垣國男

    中垣委員長 稲葉誠一君より追加の質疑の申し出がありましたので、これを許します。稲葉誠一君。
  160. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 一点だけですが、もうさっき梁一東さんの旅券のことで、七月十六日入国許可があった。旅券外交旅券だ、身分国会議員だという説明があったわけですね。私の聞いている範囲、いま河村さんも言われましたが、ことしの二月二十七日か、選挙があったわけでしょう。そこで不幸にも落ちられた、こういうふうに私ども聞いておるのですが、その点どうなっているのでしょうか。旅券の発行日付、これは半年ぐらい日本では通用なんでしょうから、旅券の発行日付はいつになっているのですか。やはり国会議員という形で身分は書いてあることは間違いないのですか。わかっていれば……。
  161. 吉岡章

    吉岡政府委員 私のほうの記録に基づいて調べましたところによりますと、職業欄に国会議員という記載がございます。旅券の発行期日はわかりません。入国は七月十六日でございます。
  162. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 入国の申請はいつあったの。
  163. 吉岡章

    吉岡政府委員 申請日もわかりません。入国の年月日と出国の年月日だけでございます。それから、入国目的は公務という記載がございます。
  164. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ちょっと、いまの点はあとで調べて何か知らせてください。
  165. 中垣國男

    中垣委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時六分散会