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1973-06-27 第71回国会 衆議院 法務委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十七日(水曜日)     午前十時十六分開議  出席委員    委員長 中垣 國男君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 谷川 和穗君 理事 福永 健司君    理事 古屋  亨君 理事 横山 利秋君       井出一太郎君    植木庚子郎君       住  栄作君    松澤 雄藏君       赤松  勇君    正森 成二君       沖本 泰幸君    山田 太郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         警察庁刑事局保         安部長     綾田 文義君         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         法務大臣官房長 香川 保一君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省保護局長 高瀬 禮二君         公安調査庁長官 川井 英良君         大蔵政務次官  山本 幸雄君         海上保安庁次長 紅村  武君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      田中啓二郎君         文部省大学学術         局審議官    安養寺重夫君         水産庁漁政部企         画課長     新井 昭一君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ――――――――――――― 委員の異動 六月二十六日  辞任         補欠選任   原田  憲君     羽田野忠文君   水田三喜男君     吉永 治市君   山田 太郎君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   正木 良明君     山田 太郎君 同月二十七日  辞任         補欠選任   吉永 治市君     中村 梅吉君     ――――――――――――― 六月二十二日  出入国法案反対に関する請願竹村幸雄君紹  介)  (第七四六九号)  同(古川喜一紹介)(第七四七〇号)  同(山中吾郎紹介)(第七四七一号)  同(新井彬之君紹介)(第七五一二号)  同(池田禎治紹介)(第七五一三号)  同(受田新吉紹介)(第七五一四号)  同(土井たか子紹介)(第七五一五号)  同外一件(馬場昇紹介)(第七五一六号)  同(長谷川正三紹介)(第七五一七号)  同(広沢直樹紹介)(第七五一八号)  同(和田貞夫紹介)(第七五一九号)  同(辻原弘市君紹介)(第七五七七号)  同外二件(渡辺三郎紹介)(第七五七八号)  同(高橋繁紹介)(第七六一七号)  同(広沢直樹紹介)(第七六一八号)  同(浅井美幸紹介)(第七六四八号)  同(塚田庄平紹介)(第七六四九号)  同外四件土井たか子紹介)(第七六五〇  号)  同(成田知巳紹介)(第七六五一号)  同外二件(芳賀貢紹介)(第七六五二号)  同(原茂紹介)(第七六五三号)  同(広瀬秀吉紹介)(第七六五四号)  同(山中吾郎紹介)(第七六五五号)  同(米内山義一郎紹介)(第七六五六号)  保護司活動強化に関する請願愛野興一郎君  紹介)(第七五〇七号)  同(江崎真澄紹介)(第七五〇八号)  同(坂本三十次君紹介)(第七五〇九号)  同(笹山茂太郎紹介)(第七五一〇号)  同(村山達雄紹介)(第七五一一号)  同(江崎真澄紹介)(第七五七三号)  同(松浦利尚君紹介)(第七五七四号)  同(三原朝雄紹介)(第七五七五号)  同(村山達雄紹介)(第七五七六号)  同(江崎真澄紹介)(第七六一三号)  同(大野市郎紹介)(第七六一四号)  同(倉成正紹介)(第七六一五号)  同(廣瀬正雄紹介)(第七六一六号)  同(瀬戸山三男紹介)(第七六四三号)  同(塚原俊郎紹介)(第七六四四号)  同(野田毅紹介)(第七六四五号)  同(野中英二紹介)(第七六四六号)  同(三原朝雄紹介)(第七六四七号) 同月二十六日  保護司活動強化に関する請願唐沢俊二郎君  紹介)(第七七二九号)  同(梶山静六紹介)(第七七三〇号)  同(中村寅太紹介)(第七七三一号)  同(森下元晴君紹介)(第七七三二号)  同(江崎真澄紹介)(第七七八五号)  同(小山長規紹介)(第七七八六号)  同(田中龍夫紹介)(第七七八七号)  同(田中正巳紹介)(第七七八八号)  同外一件(三池信紹介)(第七八三〇号)  同(塚田庄平紹介)(第七八九七号)  同(葉梨信行紹介)(第七八九八号)  同(村山達雄紹介)(第七八九九号)  出入国法案反対に関する請願稲葉誠一君紹  介)  (第七七三三号)  同外二件(中村茂紹介)(第七七三四号)  同外四件中澤茂一紹介)(第七七三五号)  同(野坂浩賢紹介)(第七七三六号)  同(福岡義登紹介)(第七七三七号)  同(竹内猛紹介)(第七七八〇号)  同(土井たか子紹介)(第七七八一号)  同外一件(楢崎弥之助紹介)(第七七八二  号)  同(横路孝弘紹介)(第七七八三号)  同(米田東吾紹介)(第七七八四号)  同(中村重光紹介)(第七八三一号)  同(渡辺惣蔵紹介)(第七八三二号)  同(神門至馬夫君紹介)(第七九〇〇号)  同(塚本三郎紹介)(第七九〇一号)  同外一件(藤田高敏紹介)(第七九〇二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  検察行政に関する件      ――――◇―――――
  2. 中垣國男

    中垣委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますのでこれを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 昨日の連合審査会法務大臣に対して発言を求めまして、殖産住宅の問題につきまして報告を求めましたところ、本日の委員会において報告すべき旨の御答弁がございましたので、まず大臣から殖産住宅に関します経過の報告を求めたいと思います。
  4. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 昨日の御質問に対する、殖産住宅事件と申しますが、その概要刑事局長から御報告申し上げます。
  5. 安原美穂

    安原政府委員 ただいまお尋ねの件についてでございますが、現に検察庁において捜査を開始したところでございまして、まだ捜査中でございますので、詳しいことは申し上げるべき段階でもございませんが、一応被疑事実の概要等中心といたしましてお答えいたしたいと思います。  いわゆる殖産住宅事件というものは、大別いたしましてその会長であります東郷民安中心とする所得税逋脱事件と、それからもう一つは、この捜査の過程で明らかになりました大蔵省証券局係官東京証券取引所職員に関する贈収賄事件、この二種類に分かれて、いま捜査中でございます。  まず東郷会長所得税逋脱事件につきましては、その被疑事実は、この東郷会長殖産住宅株式会社代表取締役として同会社の業務を主宰するかたわら、個人で営利を目的とした有価証券売買を継続的に行ない、多額の所得を得ていたが、所得税を免れようとする目的のもとに、秘書室長総務部次長あるいは新日本証券株式会社本店引受部職員等共謀の上で、この有価証券売買他人名義で行なうなどして所得を秘匿した上、昭和四十七年の課税所得金額が実際は配当所得給与所得雑所得と合計で十七億三千十七万四千百二十六円であったのにかかわらず、昭和四十八年の三月十四日、目黒税務署に対する申告においては、先ほどの有価証券継続的売買による利益等雑所得がない、給与所得配当所得しかないということで、その課税の総所得金額が七千百五十五万円であるという申告をいたしまして、さような虚偽の所得税確定申告書提出によりまして、そういう不正の行為によりまして、正規の所得税額十二億四千九百七十九万五千八百二十一円との差額でございます十二億四千二百九十六万五百円という所得税を免れたという疑いでございます。  これにつきましては、殖産住宅の本社、銀座支店あるいは被疑者らの自宅など十カ所を捜索いたしまして、鋭意捜査中でございます。  それから第二の類型でございます大蔵省証券局係官東京証券取引所職員に関する贈収賄事件でございますが、これがまた二つに分かれておりまして、いわゆる大蔵省証券局証券監査官岡村監査官に対する贈収賄事件、それから東京証券取引所上場部次長であります高田光雄次長に対する贈収賄事件二つに分かれるのでございます。  これにつきましては、まず岡村監査官関係におきましては、殖産住宅株式会社の元取締役であり現在殖産土地株式会社取締役であります渋谷取締役が、殖産住宅株式会社の加藤という財務部長共謀いたしまして、昨年の九月の下旬ごろに、この殖産住宅株式会社におきまして、有価証券届け出書審査等について職務権限を有しておりました大蔵省証券局証券監査官岡村監査官に対しまして、この会社計画有価証券届け出書審査等について便宜の計らいを受けたということの謝礼及び将来も同様の計らいを受けたいという趣旨のもとに、この会社新株一万株を、公募価格である一株千二百五十円で取得する利益を供与した。そして岡村は、この情を知りながらこれを受け取ったという贈収賄事件。  それからもう一つは、先ほどの東京証券取引所上場部次長関係でございますが、これにつきましては、殖産住宅株式会社の西端という取締役が、同社の総務部次長榎本次長共謀の上――この会社は昨年六月有価証券上場申請書東京証券取引所提出しておったわけでありますが――その審査に関しまして、やはり同年九月中旬ごろ、日本橋兜町の東京証券取引所におきまして、先ほど申し上げました高田上場部次長に対し――この次長株式新規上場審査職務を担当しておるわけでありますが――この高田次長に対しまして、この新規上場申請審査について便宜の計らいを受けたという謝礼趣旨のもとに、この会社新規株式五千株を、公募価格である一株千二百五十円で取得する利益を供与した。高田次長はその情を知りながらこれを収受した、こういう事件であります。
  6. 横山利秋

    横山委員 申すまでもなく本委員会商法審査を長らくにわたっていたしております。審査基盤となりますものは、少なくとも公認会計士監査証明書をさらに監査する大蔵省監査官及び大蔵省が間違いがない仕事をしておるものとして、われわれとしては審査をしておるわけであります。ところが、その一番根幹となる大蔵省証券審査官増収賄にひっかかるというようなことでは、私どもとしては、いままで何を一体審査をしておったのか、何を一体政府に対して質問答弁を得ておったのか、最終的な守るべき基盤というものがくずれ去ってしまったような感じがするわけであります。ですから、私はきのう特に言うたわけでありますが、まあ早い話でいえば、こうなると証券監査官監査する監査官をまたつくらなければならぬではないか、こういうことを申し上げたわけでありますが、事はきわめて重要でありますから、一体どうしてそういうような事態が起こるのかという点について少しただしたいと思います。  いま全国及び中央に監査官は何人おって、そして監査をする対象会社は何社でありますか。
  7. 田中啓二郎

    田中説明員 四十八年四月一日現在で、証券監査官本省九名、財務局十七名、計二十六名となっております。そしてこの監査官は、証券届け出書並び報告書審査に当たるわけでございますが、四十七年におきます報告書提出件数は三千九百件からございまして、現在では循還審査と申しまして、三年に一回はその報告書をきちんと審査する。したがいまして、大体その三分の一、千三百件と届け出書、これは増資とか上場の場合に提出されるものでございますが、それが四十七年では六百件を若干上回りまして、それは全部。そういたしますと、約千九百件、これを担当しているわけでございます。したがいまして、先ほどの二十六名で除しますと、一人当たり件数は七十三件ということになっております。
  8. 横山利秋

    横山委員 一人当たりで七十三件の審査をする。四十七年の総件数三千九百といいますから、ちょっとまあ手にさわるものだけでも、二十六人で約百五十件、本省関係のものになりますと二百件を優にこすと思われるわけであります。  一体、これほどいまきびしい社会的な批判やあるいは厳重な監査を必要とするものについて、一人当たり二百件――二百件といえば、概算いたしますと、まあ一日一件。一体それで、われわれが信頼するに足る大蔵省監査が行なわれておるというふうに考えられるでしょうか。  大体どうなんですか、その現場に出かけたり会社を呼んだりすることがこれではほぼまれで、ほとんどが書面審査、こういうふうに考えてよろしいのですか。
  9. 田中啓二郎

    田中説明員 この点につきまして、届け出書報告書に記載された財務諸表につきましては、まず会計の専門家である公認会計士による監査が第一次的に行なわれておりますので、大蔵省審査にあたりましては、通常、公認会計士または会社に対する質問、資料の提出要請によりまして、記載上の不備の有無の審査を行なうという方法をとっております。しかしながら、状況によりましては、その結果といたしまして自発的に訂正報告書報告大蔵省として求めたり、あるいは訂正命令大蔵大臣の名において出すということがございますので、そういったことに直結する補佐としての仕事監査官はしているわけでございます。たてまえといたしまして、第一次的に公認会計士による監査を信頼するというたてまえで、監査官の分掌とかあるいは定員法による大蔵省内の人員というものは、現在のところ、先ほど申し上げました人数ということで対処しているわけでございます。
  10. 横山利秋

    横山委員 それであなたは、大蔵省としては、現陣容をもって十分に大蔵省としてなすべき役割りが果たされている、そして内部監査制度も充実しておる、こうお考えですか。
  11. 田中啓二郎

    田中説明員 公認会計士による監査を、初めからまた完全に再監査し直すということが必要ということとなりますれば、とても現在の人員ではこなせるものではないと思います。しかしながら、法律により公認会計士と、そしてその監査というものが証券取引のディスクロージャーについての基幹となっておりますので、その一次的な監査を補完して投資家のために万遺憾なきを期するというたてまえで監査官監査が行なわれているということでございます。
  12. 横山利秋

    横山委員 問題は、これは新聞によりますと、「九月末、殖産住宅は四億七千万円を増資し、資本金三十億円となったが、この増資では額面五十円の新株九百四十万株が一株千二百五十円で時価発行され、野村、大和、新日本の三証券会社がその引受け幹事社となった。二部上場が決る直前に開かれた殖産住宅役員会では、この九百四十万株のうち、七三%に当る六百九十万株を株主安定工作のため、殖産側があらかじめ売先を指定するいわゆる「親引け株」とし、取引銀行殖産の翼下にある指定建設業者、自社の役職員らに割当て、残る二百五十万株を上場と同時に市場で売出す」ことにした。こう報道されておりますが、この限りにおいて事実と相違ありませんか。
  13. 田中啓二郎

    田中説明員 殖産の当初の上場予定書におきましては、公募株は五百万株、親引け株は四百四十万株、計九百四十万株ということになっておったわけでございます。そして、ただいま先生のおっしゃいました数字につきましては、まだ私ども確定してそうであるというところまで申し上げられない状態にございます。
  14. 横山利秋

    横山委員 この親引け株というものについて、大蔵省事前にその親引け株パーセントについては相談に乗らないのか、事前段階において報告を受けないのか、親引け株は自由であるのか、その比率はどうなんです。
  15. 田中啓二郎

    田中説明員 親引け株につきましては、昨年来時価発行増資が盛んに行なわれた際に、発行会社におきまして安定株主工作その他種々の名目をもってこれが行なわれてきたわけでございますけれども、これは、株主を定着化して将来の株式流通にとって、特に価格形成にとっても思わしくございませんので、昨年の暮れ並びに本年、大蔵省指導によりまして親引けは五〇%以下に押えろ、そして最近はそれを四〇%以下にするように、証券会社でも自主ルールをつくりましてさらにこれを縮小するように努力をしているところでございます。
  16. 横山利秋

    横山委員 昨年九月現在においては、そうすると、親引け株パーセントについてはフリーであった、こうおっしゃるわけですか。
  17. 田中啓二郎

    田中説明員 昨年の九月の当時におきましては、親引け株の実態を大蔵省のほうで調査しているという段階にございまして、仰せのとおり、そのような自主ルールというものはまだございませんでした。
  18. 横山利秋

    横山委員 そういたしますと、私は多少疑問を生ずるのでありますが、昨年の九月ころには親引け株パーセントについては、自主ルールもなく、大蔵省指導も何にもなかった。そうしてこの殖産住宅問題が惹起した。偶然かあるいはどういう理由か知りませんけれども、昨年の暮れになって親引け株が五〇%の比率、さらに本年になりまして四〇%の比率、こういうふうに大蔵省指導し、自主ルールが確立してきたということは、単にいまお話がございますように、安定株主工作云々株主定着化云々という表向きの理由ではないような気がする。もうここ数年来上場株がたくさんできているというときに、どうして一体、昨年の暮れ、本年になって急に五〇%、四〇%になったのか。大蔵省内部として、親引け株による問題が各所に実はあるということを知っていたのではないかと思われるのですが、どうですか。
  19. 田中啓二郎

    田中説明員 大蔵省としてそのようなことが盛んに行なわれていたという認識があったわけではございません。そうして五〇%以下あるいは本年春、四月以降は四〇%以下という点は、先ほど申しましたように、時価発行増資についてのルールでございまして、この公開上場に関しましては、公開上場必要最低公募株数が二百五十万株ということになっておりまして、本件の場合はその必要要件をオーバーした株数公募株、親引け株ともに所要な株数を上回ったのでございます。それについて自発的に必要以上に公募なり親引け株を出した、それについての自主ルールとかあるいは規制というのはなかなかできにくい事情もあったわけでございます。
  20. 横山利秋

    横山委員 法務省安原局長に伺いますが、この殖産住宅親引け株を七三%と報道されておるわけでありますが、この親引け株が何%であったかという点については御承知でございますか。
  21. 安原美穂

    安原政府委員 その点につきましては捜査しているかどうか、捜査が妥当であったかという報告はまだ受けておりません。
  22. 横山利秋

    横山委員 親引け株のうち、この大蔵省監理官、それから東証の問題の人にそれらが渡っておる。したがって私は、当然親引け株が何%であり、同時に、親引け株がどういうルートを通じて配布をされておるということについては承知をしてなければならぬはずでありますが、それはどうなんですか。
  23. 安原美穂

    安原政府委員 先ほど申し上げましたように、報告を受けておりませんので、捜査をしているかどうかということは申し上げるわけにいかないということを申し上げたわけでございます。
  24. 横山利秋

    横山委員 そんなことは常識的に、報告を受けていないからといって、あなた方がきょう国会でその質問があり、大臣から答弁をしなければならないときに、向こう報告をしてきたことだけで、あなたは何にもその報告について質問をしなかったのですか。あなた方がきょうの国会に対する報告のために向こうから言ってきた、ああ、そうですかと言って、それを持ってここへ出てきたんですか。あなたが当然そのことについては質問をし、自分が腹に入れて出てくるのが当然ではないのですか。
  25. 安原美穂

    安原政府委員 本日は、先ほど冒頭に申し上げましたように、捜査中の事件でございますので、詳細を申し上げるわけにはいかないということを御了承願いたいと思いますし、そういう意味におきまして逮捕状を請求して勾留をしたという事件についての報告を申し上げたつもりでございます。
  26. 横山利秋

    横山委員 納得できませんよ。私どもはいま商法審査している、商法において監査のあり方について審査している。その監査の中で重要な問題は私は二点申し上げたいと思うのでありますが、親引け株というものが今後どういうような――この件だけでなくてこれからもどういう影響を及ぼすかということはきわめて重要である。同時に、公開価格と寄りつき価格とがべらぼうもない、倍にもなっている、どうしてそういうことになるのか、そんなに、倍にもなるならばこんなことはどこにでも起こり得ることだ、あらゆる上場のときに起こり得るものだ、そういう感じを私どもは当然起こすわけであります。したがって、国会審議がこの問題の捜査にもちろん関係はあるけれども、少なくともあなた方はこれから商法審査にあたってこの二点について問題の所在を究明しなければならぬ。したがって、今度の殖産について親引け株がどういうルートをたどっていったのか、そして、この売り出し価格と寄りつき価格とがどうしてこんなに開きが生ずるのか、この二点が究明されなければ、法律体系をつくったところで商法審査は絵にかいたもちだ、私はそう思うのであります。どう思いますか、法務大臣
  27. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 横山先生、ひとつ御理解をいただきたいのですが、どういうことかといいますと、昨日あなたの重要な御質問があって私が答弁に立った、そのときに申し上げたことは、事件捜査中である、全部は申し上げられませんが、差しつかえのない限度においてぜひ明日御報告をしたい、商法の御審査を願っておるという関係がございますので、積極的に私はこのことをお答えを申し上げたので、そこでこの重要な事柄が限度を越えて国会に出る、報道されるとものの一時間もならぬ間に業者は知ることになりましょう。そういうふうなことになりますので、実は文書をつくりまして、きょう御報告申し上げる限度文書にいたしまして、差しつかえない最大限文書をつくりまして、この文書に基づいて刑事局長にただいま御報告をさせた、こういう事情でございます。そこで、本日の御報告だけでは不十分であること、よくわかっておるのです。わかっておるけれども、きょうの限度横山先生、そこでひとつ御理解をいただいてお許しを願いませんと、捜査中のことを国会に持っていってじゃんじゃんやった、発言直後には全部漏れているというようなことに至りましては――そこへいかぬと御満足がいかぬでしょうけれども、それはいけないのです。それはひとつきょうはきのうからの私の真意もよくおくみ取りをいただきまして、こういうふうに捜査中の事件を詳細にわたって数字に至るまで御報告を申し上げたという例はいままでちょっと前例がございませんね。(横山委員「そんなことぐらい新聞に載っている」と呼ぶ)新聞に載る、載らないにかかわらず、捜査当局の口からこれを申し上げたということは異例に近い御答弁を申し上げているという努力をしておるわけですから、まあ先生、これはおしかりにならずに、ここのところはちょっとおくみ取りをいただいて、そして一定の時期が来たら全部言います。
  28. 横山利秋

    横山委員 そんなにネコなで声を出したってそれはだめです。あなたのほうはあなたのほうの立場があるだろう。しかし残念ながら大臣、いま商法審査をしているのですよ。商法審査を――その根幹に触れる問題が惹起したというのです。だから待てというなら待ってもよろしゅうございます。そのかわりこの問題が十分腹に納得され、公認会計士監査なり大蔵省監査が今度の体験によっていかにあればいいかということがわかるまで商法審査を延ばします。当然のことなんです。その点が、私は何もこまかいところまで知ろうとは必ずしも思わないが、どうしてこういうことが起こる、根幹には触れなければならぬ、根幹には触れた議論をしなければならぬと思う。  次に、お伺いしましょう。なぜ一体証券局の監査官が一万株をもらったか、もらえる条件下にあったのか。いまの御報告によれば、配慮をしてくれた、今後も配慮をしてもらいたいという話で、一万株もらった。しかも、新聞の報道するところによれば、要求をしてもらった、こういうわけですね。そして私の整理したところによれば、まず第一は千二百五十円の売り出し価格、募集価格でもらって、そしてそれを他人名義で買っている、それから代金を一部殖産に立てかえてもらった、数日後にこれを売り払ったという、それによって、二千五百数十円で売り払ったのであるから、千二百万円くらい利益がその人、岡村はあがっておる、こういう容疑である、間違いありませんか。
  29. 安原美穂

    安原政府委員 きのう来たびたび申し上げておりますように、有価証券届出書の審査について便宜ある計らいを受けたということの謝礼と今後に対する便宜ある計らいを受けたいという請託の趣旨でこれらの株の割り当てを受けたという疑いで捜査をしておるということでございまして、それ以上のことは、いままだ捜査をしている段階でございますから、申し上げる段階にないというふうに御理解を願いたいと思います。
  30. 横山利秋

    横山委員 それでは大蔵省に伺いますが、監査官というものの職務はどういうことなのか、配慮ができるとすればどういうことが配慮ができるのか、上場の際に、まず第一に公開価格についてこの監査官は了承し得る、それでよろしいと言い得る立場にあるのか、親引け株比率について報告を受け、了承をし得る立場にあるのか、上場基準について報告を受け、これを了承し得る立場にあるのか、それらを了承し得る立場にあるとするならば、それらは局長に報告する義務はないのか、その監査官の裁量にゆだねられておるのか、その点はどうなんですか。
  31. 田中啓二郎

    田中説明員 まず証券監査官の任務でございますが、これは大蔵省組織規程第六条の二の2に規定してございます。「証券監査官は、命を受け、証券取引法第二十六条の規定に基づく検査を実施し、及び令第三十三条第三号に掲げる事務を処理する。」この「令第三十三条第三号」、これを読ませていただきますが、「有価証券の募集若しくは売出し又は公開買付けに関する届出書及び有価証券に関する報告書審査し、必要な措置をとること。」かようになっております。したがいまして、権限としては検査を実施することと審査を行なうこと、そしてそれに基づいて必要な措置をとること、この二つに分けることができると存じますが、今回の場合は審査を行ない、必要な措置をとったということでございますが、必要な措置は、これについて審査の結果、何ら訂正を求めるべきものがなかったというような事実行為を行ないまして、それに基づいて課長なり局長が、それでは本件は問題ないという心証を得ることになるわけでございます。  次に先生御指摘の上場基準、これが監査官の裁量にゆだねられているか、あるいは公開上場価格というものが監査官の裁量にまかせられているかという点につきましては、両方ともそうではございません。  まず第一に上場基準、これは取引所におきまして上場規程というのがございまして、そしてそれに基づいて上場基準というのがきまっているわけであります。したがいまして、その基準を満たさない限り上場できない。そのような形式基準が充足されているかどうかという審査を事実的に行なっているのが監査官でございます。  次に上場価格でございますが、これにつきましては現在引き受け証券会社は業務方法書の中に次のような株式公開価格算定基準に基づいて公開価格を算定いたしますという条項が添付書類として盛り込まれているわけでございます。そうしてその内容は、基本方針といたしましては公開会社に類似する会社を選びまして公開会社と類似会社との一株当たりの配当金、純利益及び純資産について比率の平均を求めまして、そうして当該平均比率を類似会社の株価に乗じて算出するということをきめているわけでございます。そうしてこの殖産住宅の場合もこの方法に基づいて算定いたしまして、監査官といたしましてはその算定に計算の誤りがなかったかというような事実上の審査はいたしたわけでございまして、何らその点について瑕疵はなかったという審査はいたしました。要すれば、上場基準ないし公開価格については監査官に裁量の余地は全くないと申し上げてよろしいかと思います。
  32. 横山利秋

    横山委員 あなたの話を聞いておると、全く本件について問題はない。それにもかかわらず一万株、千二百万円という金が操作をされて渡されている問題、どうお考えになるのですか。  これは政務次官にお伺いしたいのですが、本件を大蔵省としては、要するに配慮をした、便宜をはかったという事実はなくてあいさつとしてもらった、こういう贈収賄の事実はないというふうにお考えなのか、それとも何かの便宜がはかられたと思われる、千二百万円の金をもらうのですから、利益をもらうのですから、それはただのあいさつとは思われぬという、どちらにお考えなのですか。
  33. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 今回の事件は、監督あるいは指導の立場にある大蔵省としてかような事件が発生いたしましたことはまことに遺憾なことでございます。  いま当局から御説明を申し上げましたように監査官職務権限は、新しく増資をするという場合の審査をする。上場をするかどうかということについての権限は、この岡村監査官の所属しておりまする課とは別に総務課のほうで上場については取り扱う、こういうことになっておりまして、岡村監査官がこの事務をやっておったわけでありますが、この募集についての届け出書の効力の発生も原則としては三十日たてば自動的に発生をするということで大蔵大臣が格別の認可行為もしない、こういう証券取引法の規定になっておるわけでございます。  お話しのごとく伝えられるところが事実であるかどうか私も存じませんが、私どもとしましては、これは現在は捜査中でありますから、捜査の厳正なる検察庁の手に待たなければならないと存じますが、そういう巨額の金が贈賄されたということであるとするならば、一体その間に何が行なわれたのか、私どもほんとうにその実情を知りたいという気持ちでおるわけであります。いま刑事局長からのお話のごとく事案が検察庁の捜査にまかされておりますのでその結果を待ちたい、こう考えておるわけでございます。
  34. 横山利秋

    横山委員 あなたの御答弁趣旨がよくわかりません。  法務大臣にお伺いします。あなたは先ほど、きょうの段階では十分な御説明はいたしかねる、こうおっしゃった。しかしそれならば私が要求したいのは一番ポイントの一つである親引け株パーセントです。この場合は四百四十万株が親引け株として当初予定されておった。岡村氏にいったのはそのわずか一万株です。あと四百三十九万株が親引け株としてあちらこちらに移っておるわけですね。この問題は今後のためにも必要なんです、親引け株が一体最終何株であったか、そしてそれはどこへ流れたのかということが今後の上場問題、商法審査に対して重要な問題なんです。確かにいまは四〇%に圧縮自主ルールが確立された。しかしこれは自主ルールでありますからね。七三%を四〇%にしても、大体親引け株というのはどういうところへ流れるか、それによってどういう犯罪の問題が起こる可能性があるかということは大事なことなんであります。したがって適当な機会に親引け株の率及び親引け株がどこへ流れたかという点について御報告を徴したいと思いますが、いかがですか。
  35. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 刑事局長もここにおりますので同様の意見と思いますが、なるほど仰せのとおりこれは審査にもちょっと影響のある大事なことですね。そこでこれは別に法務省は隠して通ろうというような意図は全くございません。ございませんが、いま仰せになっておることは、これは大事な捜査の急所ですから捜査のじゃまになっては困るということ、そういうことでございます。捜査段階が一段進みましてひとつ捜査当局とも相談をさせまして、そして本日のようにまた一定限度の御報告を申し上げて審議の御参考にするということにいたします。
  36. 横山利秋

    横山委員 もう一つ大事なことがございます。その親引け株の一部が国会議員にも流れておるといううわさであります。これは私どもきわめて重要に考えておるわけであります。これが殖産住宅にどういう関係のある国会議員か、私も多少想像にかたくないのであります。そういうところに流れておるとするならばゆゆしき問題である。それがどういう性格で流れたのか、あるいはあっせんし便宜をはからい大蔵省との間に介在をしたかどうかという点に触れていきますならば、これはきわめて重大であります。国会議員に親引け株が流れていますかどうか回答をいただきたい。――(田中(伊)国務大臣 「私に」と呼ぶ。笑声)どちらでも。両方知っているでしょう。
  37. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 笑いごとでない重要な影響のある発言でございますので、本日はちょっと待ってください。
  38. 横山利秋

    横山委員 待ってくださいとはどういう意味ですか。あるかもしれぬが待ってくださいというのですか。
  39. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 あるとかどうとか、あるとすればどうとか、四十万株の流れ先いかんといったような事柄については、このたびの捜査の最重点にこれがあるわけですからね。それで、先ほど申し上げましたように、時期をお待ちをいただきます。おおい隠して通ろうという考えはございません。どうぞお願いします。
  40. 横山利秋

    横山委員 読売新聞二十六日の報道によりますと「あいさつ株の一部は政界や関係官庁にも流れたが、官庁側は自分から要求した岡村、高田以外は、受け取るのを断わったという」この「断わったという」という報道は一体だれが流したか。いま法務大臣のお話によれば、この答弁を拒否なさる。聞きようによっては、ある、けれども言えない。聞きようによっては、わからないから言えない。私はわからないとは言わせませんよ。いかようにもとれるのであります。それで、すでにきのうからきょうにかけて、国会周辺におきましては、国会議員はだれかという話が廊下でいろいろあるわけであります。事は重大であります。問題の所在は、政界に波及するとなれば、これはきわめて重要である。殖産住宅に過去から今日までいろいろな関係を持っていらっしゃる国会議員は知っている、わかっている。そういう人たちの身辺急だという話もある。この点についてどうお考えですか。
  41. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 あるともないとも、授受があったとすれば、あるいは提供されたという事実があったとすれば、何びとであるかという問題を含めまして、この問題はここに御答弁を申し上げることができない。時期をお待ちをいただきたい、こういうことを申し上げておるのでございます。
  42. 横山利秋

    横山委員 大蔵省に聞きましょう。  一体四百四十万株、表に出たのは一万五千株にすぎない。あと四百三十八万五千株というものが親引け株としてあちらこちらに配られている。もちろんそれはただでやったというものもあれば、一般価格で買われた、発行価格で買われたということが大部分であろう。逆説的な質問ですから、よく考えて答えてもらいたい。千二百五十円の発行価格である。それは親引け株ならずとも、証券会社へ行って、あれで何とかひとつ買ってくれといえば、買える条件下にある。こう考えましたときに、親引け株から買ったからそれが贈賄になるという論理が、いま地検がとっておる論理ですね。その贈賄というのは特別な利益を与える、特別な利益がある。ところが、この場合、千二百五十円で岡村が買った。その千二百五十円ならどこでも買えるという条件下にあるとしたら、これは一体贈賄になるのか、ならぬのか。こういう点については大蔵省どう考えているのですか。あなたには答弁できないか――できない。それでは法務省に聞きましょう。その観点はどういうことなんでしょう。
  43. 安原美穂

    安原政府委員 横山先生御案内のとおり、わいろというのは、経済的価値、価格を有することは要しないのでありまして、人の欲望を満たすに足りる利益であれば、いかなる利益であろうとわいろ性がある、わいろであるということになっておるわけであります。この場合において、私ども理解するところでは、公募価格は千二百五十円であったが、上場される株であって将来において値上がりすることが見込まれるという意味において、おそらくその当時においては一つの期待権ではございますが、そういう見込みのある有力な株ということで、何人も、株に関心のある者ならば取得をしていたであろうという状況下にあるという判断のもとに、それは人の欲望を満たす利益になるということで、わいろ性があるという判断のもとに、地検は捜査をしているものと理解いたしております。
  44. 横山利秋

    横山委員 もう一ぺんそこの論理をはっきりしてほしいのですが、この品物を買いたい。これはどこでも売っている。しかも千二百五十円である。たまたま殖産住宅のところへ行ってそこで買ったというのと、ほかの証券会社へ行って同じく千二百五十円で買った、自分は銭を出したという点がどうしてわいろになるのかという点を、私は逆説的に聞いている。この点をもう少しだれにでもわかるように説明してください。
  45. 安原美穂

    安原政府委員 公募価格で取得することが、私ども関係では、そのとおりのお金を払って得たものであろうとも、その段階には千二百五十円であったとしても、将来それが有力な株で値上がりをする、したがって利益が見込まれるという主観的な期待でも、それは一種の欲望を満たす利益に該当するからこれはわいろ性があるというふうに判断してよろしいという理解のもとに、捜査しておるものと思います。
  46. 横山利秋

    横山委員 私の言うことがわかっていないのだな。これはどこでも買える。殖産の本社で千二百五十円で金銭の授受が行なわれたのであるけれども――そういう仮定のもとに立ちますよ。これはここでも買える。ほかの証券会社でもどこでも買える。どこでも千二百五十円で売っている。たまたまそこで買った。それが千円で買うならばともかく、五百円で買うならばともかく、同じ価格で買ったのにどうしてわいろになるのか、こういう論理です。
  47. 安原美穂

    安原政府委員 失礼いたしました。この事件ということを離れまして、一般論の問題として考えました場合に、どこでも買えるものであるということになると問題でございますが、どこでも簡単に買えるものではないという状況であろうと思います。
  48. 横山利秋

    横山委員 わかりました。  その次に、この点はどうなんですか。殖産へ行って他人名義でやった。その他人名義の中には、殖産の某氏が同窓会名義で買わせて、にせの売買代行契約書をつくったという。他人名義で、本人が、実在はしているけれども、全然知らなかったというのでありますが、この他人名義売買代行契約書をつくったのは、何法の何条違反であるか。  それからその次に、代金の一部を、千二百五十円のものを一万株買ったのだけれども、銭がない。銭がないから殖産証券会社に代金の一部を立てかえさせたとするならば、何法の何条違反であるか。  それからもう一つは、証券売買をするについては保証金が要る。保証金なしで行なわれたとすれば、何法の何条違反であるか。  その三つのお答えを願いたい。
  49. 田中啓二郎

    田中説明員 他人名義株式取得に関しましては、私ども証券局といたしましては、監督下にあります証券会社に対して通達を出しておりまして、これをきびしく、真正な名義をもって売買をするようにということをいっております。したがいまして、この通達は発行会社には及びませんし、発行会社の親引けについての他人名義の問題は証券局の監督権の外にございますので、その点に関しまして、そのようなことが起きたらどういう罪になるか、立てかえさせたらどうかという点につきましては、これまた法律の問題でございますので、私お答えできかねる立場にあります。
  50. 横山利秋

    横山委員 私の質問に各省とも自分の所管の問題で答えてもらわなければならぬ。たとえば大蔵省は、もし証券会社が保証金を取ってないとするならばどういうことになるのかという答えはしてもらわなければならない。
  51. 田中啓二郎

    田中説明員 公開上場株の取得に関して保証金を積めというような規定はございません。一般論といたしまして、たとえばこれと離れまして、信用取引等におきまして委託保証金率とか現金の預託率、これを規制に違反して証券会社が行なっている場合には、そしてそれが検査の結果わかったような場合にはそれ相当の処置をいたしますし、取引所におきましてもそのようなことが起きますれば、注意を与えるなり戒告をするなり、場合によっては信義則違反ということで処置、処分を行なうこともあるかと存じます。
  52. 安原美穂

    安原政府委員 申し込み書に他人名義を使用するということはおそらく私文書偽造の問題になるでありましょうし、金融の便宜を受けるということでわいろ性を持つ場合があろうかと存じます。
  53. 横山利秋

    横山委員 政務次官にお伺いしますけれども大蔵省は最初、東郷の脱税事件が出ましてから以来、これは東郷の脱税、個人の脱税として証取法の問題ではないと新聞記者に語られた。ことさらに証取法に関係のないという立場、それから証券行政に関係がないという立場、こういう立場をわざと強く堅持をしていられた向きがあるようであります。今回もまた、これは地検のあり方にもよると思うのでありますが、ことさらに贈収賄に限定されておる、そういう感じが私はいたします。証取法にどうして関係がないのか、証取法違反の事実は皆無であるか、その点について法務省に伺いたい。
  54. 安原美穂

    安原政府委員 もう御理解いただけると思いますが、現在は贈収賄ということで捜査をしておりますので、今後どういう発展を遂げるか、したがってそこに証券取引法違反ということに発展するかどうかということは、私はいまのところでは申しかねるということで、ないということは言えないと思います。
  55. 横山利秋

    横山委員 時間がありませんけれども、もう一つ大事な点を伺います。  発行価格が千二百五十円、そして寄りつきもう二日間のうちに倍になっているのですね。二千五百円台ですね。そしてすでにこの岡村は、数日のうちにこれを放出して千二百万円をもうけておる。この発行価格と利付け価額がかくも開くということはどう考えられるか、大蔵省に伺いたい。
  56. 田中啓二郎

    田中説明員 公開価格に関しましては、先ほども申し上げましたように、類似会社をとりまして、それとの権衡におきまして価格をはじいておるわけでございます。したがいまして、理論的にはそこに落ちつく価格であるというふうに考えられるのでございますが、株式市場におきましては新しい投資物件として未知の要素も多く、投資者の期待感を集めやすいという事情はあるかと存じます。ただ、これは当日にならなければどうなるかわからない性質のものでございまして、たとえば本年に入りまして公開上場を行ないました銘柄についてみますと、公開価格と始め値の買い売り状態は三割未満にとどまっておるものが全体の八割六分を占めておりまして、したがいまして昨年十月に起こりました殖産住宅のような例はきわめて珍しい例だったわけでございます。
  57. 横山利秋

    横山委員 きわめて珍しいと人ごとみたいに言ってよろしいのかどうかというのが私の質問の焦点なんです。千二百五十円として、発行価格法律に基づいて目論見書が大蔵省提出された、そのときに担当者が歴戦の士でありますから、常識的に、これはさて発売になった場合にはとてもこのくらいになるという見通しができなかったものか、それから七三%の親引けが異常である、どうしてそういう感覚が起こらなかったものか、まことに私はふしぎに思うのであります。したがってそれは単に、あなたが言うように、その岡村個人の裁量権にゆだねられるものでないとするならば、課長だって局長だって、千二百五十円が妥当であるか、七三%の親引け株が妥当であるか、どうしてそういう疑問が生じないのであるか。もしもそれを、担当者を信用してそうだというなら、千二百五十円が異常なほどの値上がりをするということが予知、予見できたとするならば、もうすでにそこにばく大な親引け株の配付による利益が予想できる、予見できる。これらの上場の各種の例をいろいろ調べてみますと、あいさつにあちらへ持っていったりこちらへ持っていったり、それは確実に株をはけるためにひとつ引き受けてくれという場合が普通であるけれども、この場合においては全く利益を予見できる、あまりにも予見できる利益をあちらこちら持っていった。だからこの証券局の御本人も一万株を自分から要求するということは、容易にこれがばく大な利益が生ずるということを予見しておった。本人が予見しておるのに、どうして本人は千二百五十円という発行価格で了承を与えるのか。まことに七三%という親引け株はあまりにも株価操作が自由に、しかもそれをもらった人たちはばく大な利益が受け得られるということが明白な事実ではなかったのか。そういう点についてまことに私はふかしぎ千万なことである。大蔵省にしたって、東証にしたって、その関係者が、しろうとでもわかるようなこれらの客観的事態というものを見抜けなかったはずはない。見抜いておったからこそ、伝えるところによれば殖産の本社で要求して一万株を受けたという、こういう点について一体どういうふうにこれから是正さるべきものか、審査にあたってこれらを除去するためにはどうあるべきか、証取法を改正するとするならば、あるいは上場基準を改正するとするならば、発行目論見書の基準を改正するとするならば、あるいはまた証券局の坂野旧局長の言うのによれば、関係業者と個人的なつき合いはするな、これはまあ普通のことである。もう一つ、公開株に手を出すなという内規があったそうである。ところがそれはこういうようにこの殖産株ばかりでなく他の株にも手を出しておる。まことに情報が的確に把握できる監査官が株に手を出すとするならば、全部が全部もうかるとは思いませんけれども、しかしまことに有利な地位にある。もしそういうことが許されるならば、建設省の都市計画、道路計画をやる担当者は土地を買うであろう。運輸省で新幹線が引けられるならば、総理大臣以下――そういうことを言うとちょっとまた語弊があって懲罰にひっかかるかもしれませんが、みんなそういう担当者が自分の地位を利用するならば同じことができるではないか。一体今回のこの殖産住宅の経験はどういうふうに今後生かすべきであるか。商法の改正に対しても証取法の改正に対しても、またこの上場基準や目論見書やあるいは庁内におけるあり方についてどういうことが考えられるのか、政府は今後どうしようとするのか、その点について法務省大蔵省の御意見を伺いたい。
  58. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 今回の事件たいへん遺憾でありますが、こういう事件が今後起きないようにするためのいろいろな制度あるいは慣行あるいは要すれば法律の改正、そういうことも今後考えてみたいと思っておるわけであります。ただいま御指摘の証券局の職員がそういう株式に手を出したということにつきましては、従来とも証券局の職員は株式売買等には、これは親からもらった株を手放さなければならない場合とかあるいは増資があるとかそういう場合もありますけれども、そういう場合は常識的に判断すればいいのであって、原則としてこういう売買に手を出してはならない、こういうことを部内としてはかたく戒めてきたのにこういう事件が起きたということにつきましては、今後とも一そうの戒心をしてやってまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  59. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 私の立場では事件の処理でございますが、事件の処理に対しましては捜査を遂げました上で厳正公平な態度で対処をしたい、こう考えます。
  60. 横山利秋

    横山委員 たいへんこれだけ具体的な問題を提起しておるのに、抽象的なお二人の答弁で残念であります。特に法務大臣は、この殖産住宅の処置について厳正公平であることはあたりまえである。あたりまえであるが、私のきょうの質問の焦点は、商法にどういうふうに生かすか、証券行政にどういうふうに生かすかということを質問しておるのであって、厳正に処置をしなければならぬのはあたりまえのことではありませんか。  大臣、時間がございませんので、私の質問これで一応終わりますけれども、後日、先ほど注文をいたしました親引け株がどういうふうに配付されておったのか、それから特にわれわれ国会議員として看過することのできない国会議員に対して親引け株がどういうふうに回っておったのか。回っておったとしてもそれに間違いのない回り方であるのか、あるいは便宜をはからった贈収賄に関連する回り方であるのかという点につきましては、これは容易ならぬことですから、あいまいなことになさらぬように、適当の機会に御報告を求めたいと思います。  私の質問を終わります。
  61. 中垣國男

    中垣委員長 次に赤松勇君。
  62. 赤松勇

    ○赤松委員 実はこの国士舘大学の問題は単なる刑事問題ではなくて、これは言うまでもなく善隣友好の立場から言えば重要な政治問題であります。  きょうは大平外務大臣の出席を要求しましたが、外務委員会と重複しましたので、来週本委員会に出席をしてもらう、こういうことになっておりますが、きょうは法務大臣田中さんでなくて、田中内閣の閣僚の一員である国務大臣としてのあなたに、政府の見解として私はただしたいと思います。  まず第一にお尋ねしたいのは、例の関東大震災の際に六千人にのぼる朝鮮人が一部の扇動者の手によってたいへんな迫害を受けて、中には虐殺された者もあります。これはあなたも十分御承知のところです。それからいま日弁連を中心に戦前の朝鮮人虐待の実態を調査するために日本弁護士連合会人権擁護委員長の尾崎弁護士を団長として総勢二十人の調査団が北海道を調査しております。  この調査の過程で次第に明らかになったのが、朝鮮におきまして通りがかりの子供を拉致して、そしてこれを北海道に持っていって強制労働をやらせておったという事実、さらに朝鮮の婦女子を二百人拉致して、そうして北海道に連れてまいりまして、強制的に慰安婦、つまり売春婦として遊郭の一角に閉じ込めて、そしてこれを虐待しておったというような事実、数えあげれば、ここに資料がたくさんございますけれども、やがて私はこの法務委員会におきましてこの事実を明らかにしまして、そして今後の対朝鮮外交政策の一つの資料にしたいと思っておるのでありますが、これらの戦前の、民主主義の観点からいえば人権じゅうりん、外交的に言えばこれは侵略行為です。こういうことについて国務大臣田中伊三次としてどのようにお考えになっておるか、この際あなたの政治的見解をお尋ねしたい。
  63. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 具体的な事案に関する意見でありますと、私の所管以外は答えができないと  いうことになるわけでございますが、先生のおことばは一般論としてお聞きをいただいておるわけであります。北海道にそういう資料がどうもありそうに私も思う。それから戦前のわが国の反民主主義的な暗い時代、この暗き時代におきましては、先生のお説のごときまことに、陰湿な、見ようによりましては残酷きわまるやり方が徐々に行なわれておったのではないかと存じます。そういう資料がやがてだんだんと出てくることと存じますが、こういう資料の背景というものを将来の朝鮮対策の政策の上に生かしてまいりたい、反省とおわびの気持ちを十分に腹に入れまして、そして対朝鮮政策というものに外交政策もこれを移していくべきものである、こう考えるのでございます。単にそれが外交政策にとどまらず、朝鮮関係の人々が日本に入国するという段階に入りますと、日本の重要な内政問題にもなるわけでございます。そういう内治、外交の対朝鮮の政策の上には十分反省の資料として過去の暗き時代のできごとというものを生かしていきたい、こういう心持ちでございます。
  64. 赤松勇

    ○赤松委員 おわびをするという気持ちは私は当然だと思うのです。田中総理が北京に参りまして周恩来総理と会いました際に、たいへん御迷惑をかけました、つつしんで中国におわびをした。それが今日日中国交回復の外交の基調になっておると思います。したがって、中国以上に被害を与えた、被害国である朝鮮に対する政府の態度としてはいまあなたがおっしゃったような態度でなければならぬと思うのです。  そこで、お尋ねしますが、すでに世界保健機構に加盟を見た朝鮮民主主義人民共和国、そして韓国政府は国連への二国の加盟についてはこれに反対しないという態度を表明し、金日成主席は高麗連邦共和国建設、これを行なって朝鮮民族の統一をした後に国連に入ろうではないかという提唱をしています。そういうように、もうこの秋国連総会でたな上げ方式はだめになる、いよいよ朝鮮民主主義人民共和国の国際的地位を認めざるを得ない、こういう状態になりつつあるにもかかわらず、なお今日朝鮮民主主義人民共和国に対する敵視政策の一環として、祖国への往来の自由を認められない、これは一体どういうことですか。
  65. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 赤松先生、この祖国往来、日本のことばで再入国、こういう祖国の往来ないし再入国を認めないということはその話とは別の観点で考えていただかなければならないのではなかろうか。と申しますのは、統一を念願するわれわれの心持ちであるにかかわらず、現在はとにかく南朝鮮と北朝鮮が別個独立に分かれておる、こういう事情でございます。困ったことには、南朝鮮は日本の立場から申しますと承認国、北はだんだん仲よくなってきてはおりますけれども、何といっても非承認国である。そこで承認国と非承認国とを全く同様に取り扱うということは国際法上できないのですね。そこでやむを得ず北の関係の入国の問題、再入国を含めまして、北との往来の問題は、わが国の国益に反せざる限りにおいて御便宜をはかろう、こういう態度が本来のわが国の外交並びに内政の態度でございます。  そこで、私は昨年の十二月に法相としておつとめをすることになりまして以来の方針は、ほぼ御存じのことと存じますが、こういうことで困るという具体的な国益の侵害が考えられない限りは、先生の仰せになる往来、ことに再入国、ことに人道ケースの再入国というようなものについては、でき得る限りこれを大幅に認めていきたいという考え方を打ち出しまして、次官以下の事務当局にも十分徹底するようにこれを申してありますばかりでなく、具体的にこういう申請が出た、ああいう申請が出たという場合には、これはいいじゃないか、この程度はやったらどうかというふうに指導して今日に至っておりまして、しかし、韓国と比べますと、北朝鮮の人民共和国関係のところからおいでになります場合には、幾らか窮屈はまだとれていない、だんだんとりたい、だんだん取りはずしていきたい、こういうふうに考えておるのでございます。  お尋ねはございませんけれども、御参考に申し上げますと、その考え方を日本は全世界に徹底をしていかなければならぬのだ、こういうふうに私は考えておりまして、ベトナムの問題についても、北ベトナム、同様に取り扱うべきものだ、こういうふうに考えております。また、南ベトナムも、本来の南ベトナム・チュー政権と臨時革命政府と称せられる対立した関係がありますが、こういう関係でも、事人道ケースに関します限りにおいては、こういうものも国境を越えて考えたい、こういう考えをもって、現にそれは実施してきておるのでございます。しかし、まだ十全でございませんので、おしかりのことはよくわかるのでございますけれども、そういう考え方で力を入れておるところでございます。
  66. 赤松勇

    ○赤松委員 前段は政治論で国務大臣としてたいへんりっぱな御答弁、後段になると田中さんの本性がだんだんあらわれまして、法務大臣としての法律論、そうすると、あなたは――戦前の憲法と戦後の憲法は違いますけれども、日本民族は厳として生存しておるのです。そうすると、戦前の行為についてはおわびをしなければならぬというように責任を感じていらっしゃる。戦前日韓併合と称して、そして軍隊を朝鮮に派遣して、強制的に日韓併合をやらしたという歴史はベトナムと違うのです。これは朝鮮特有の侵略の歴史的事実です。そういうことを前提として政治的に考えるならば、単に承認をしていないという一片の法律論でもって片づけるわけにはいきません。  もう一つは、いまは朝鮮は統一の方向に向かっているのです。ところが、昨年国連において日本政府はたな上げ論に同調して、韓国政府を支持して非常な策動を展開した。私、この間、廖承志さんのレセプションに招かれまして、ホテルニューオータニで各大臣の態度を見ておりましたけれども、実に醜態でした。中国代表団の肩をたたいて、そしておせじたらたら、元気で帰ってくださいと言っている。その日本政府の閣僚の中に、昨年外務大臣をやっておりまして、国連で中国敵視政策をやって、その策動を展開してまいりましたいまの大蔵大臣の愛知君の姿がありました。彼はぺこぺこ頭を下げながら中国代表団にお追従たらたらなんです。これは一体何たることですか。これは日本外交の無定見さ、不見識を暴露したものです。一年後の国際情勢がわからない。一年後の歴史の流れがわからない。その洞察力のなさ、無定見さ、まさにきわまれり。私は何もそこで愛知君が肩を怒らして、中国代表団と接せよと言っているのじゃないのです。ないのだが、一年前は敵視政策で奔走している、一年後にはそういう態度で接している、そこに問題があるのです。私はどうせ来週は大平外務大臣を呼びますから、これ以上あなたに対して申し上げませんが、いま法務大臣として、未承認国ではあるけれども、しかしできる限りのことをしている、こういうふうにおっしゃいました。私は法律論の中に引きずり込まれるわけではないけれども、そこでせっかくの御答弁ですから、それでは朝鮮民主主義人民共和国に対して、在日朝鮮人の往来の自由についてどの程度今後認めていく考えでございますか。
  67. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 結論を申し上げますと、できるだけ大幅に認めていきたい。そして、私がいつまでおるものかわかりませんけれども、できるだけ大幅に認めていくべきものだという考え方を、そういうレールを一つ引いておきたい。現にその方向に努力をしております。まず先生仰せの再入国問題で、人道ケースというものは四の五の言わずにできるだけ大幅にこれを認めていくことにしたい。続いて往来についてもこの努力をしたい、それが先だ、続いてベトナムだ、こういう考え方でございます。
  68. 赤松勇

    ○赤松委員 最初にちょっとお尋ねしておきますが、人道上のケースというのは具体的に何と何をさしますか。
  69. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 これ、広範囲に見るとずいぶんございますけれども、具体的に申しますと、たとえば親、子供、妻というような者が現に北鮮におる、これだいぶございます。それからそれに会いたい、会って日本へ戻りたい、再入国になります。これはたいへん同情すべきもの、人道ケースの最たるものでございます。お年を召されたおとうさま、おかあさま、おじいさま、おばあさまが北鮮にいらっしゃる、これに会ってきたい、当然のことでございます。人道ケース、これ以上のものはございません。それから御先祖の墓参りをしたい。この間も、墓参りをしたいというので、調べてみたら墓はなかったというような人もあるのですけれども、墓が存在する限りは、墓参りをしたいと言われると、ほかの御用を兼ねて旅行をしたいと仰せになっても、この場合は人道ケースと認めなければならない。これに類するような人道に関する事柄、これをとらえまして人道ケースと申しております。
  70. 赤松勇

    ○赤松委員 きょうは国士舘大学の問題ですから、この問題につきましてはまたあらためて御質問したいと思います。  私の強調したいのは、国士舘大学の問題はなぜ起きたんだろうか、あの朝高生徒に対する暴行事件がなぜ起きたんだろうか。この前々回の法務委員会における同僚稲葉君の質問に対しまして、法務大臣は、若い者だから元気がよくてというような答弁をされました。私は、ここにいろいろ資料を持っておりますけれども、国士舘大学の朝高生に対する暴行事件は、単なる若い者の行き過ぎとかあるいはけんかではなくて、これは先ほど指摘した関東震災にも見られるような、その後の対朝鮮侵略政策に見られるような大国主義あるいは朝鮮人に対するべっ視、こういったものが根底としてずっといまの社会構造の中に流れている。少なくとも反動勢力の中には流れている。たまたま国士舘大学で発生した事件というものは、そういうべつ視観念あるいは敵視観念、あるいは特殊なあそこにおける差別教育が、こういう結果を生んだものであるというように私は判断しております。もちろん一般市民に対する暴行事件もありましたけれども、朝鮮高校生に対する暴行事件は今度だけではないんですよ、しばしば起きておりますね。そして法務委員会でしばしば問題になっております。これが系統的に歴史的にずっと行なわれておるということは、いま言ったようなことが原因をなしておるというように考えますが、あなたのお考えはいかがですか。
  71. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 このたびの事件の発端は、新宿駅の事件でございますね。続いて起こりました高田馬場事件というものは、なぜ起こったかということを調べますと、新宿事件のやり返しだといっておるんですね、大体そのようです。そういう点から見ますと、どうも先生仰せのように、私は心配をしておりまして、民族的な偏見ないし民族的な差別ということばで当てはまるような気持ちが、動機、原因になって、朝鮮の高校生の諸君と事が起こるということになりますと、これはまことに重大なことでございます。そこでだんだんその点につきまして捜査段階を経まして、家庭裁判所も調べておりますが、こちらでもずいぶん調べておるのでありますが、今回の事件先生どうも、単純なやり返しやり返しがエスカレートしてこういう状態に発展をしたということに判断をすることになりそうな、まだ結論が出ておるわけじゃございませんけれども、どうも傾向はそういう――私は非常に心配をして打診をしてみますと、どうもいままでの捜査の結果では、民族的偏見が基礎にあって、それがもとで大問題に発展をしたんだということではないと見られるようでございます。まだわかりません。それで捜査の終了を待ちまして、家庭裁判所の意見も一方において聞いてみて、両方がやっておるものでありますからこれも聞いてみて、そしていやしくも民族的偏見に背景があるというような場合には、これは相当入念な対策を講じて根絶をはからなければならない。その具体的な方法としましては、何といいましても子供を預かっておるのは学校でございます。何といいましても学校は何をしておるかという態度でなしに、学校当局と懇談をしてみて、検察の調べたところはこういうものだということをよくひとつ知っていただく。この仕事は文部省の所管の仕事でございますので、まず第一にこの資料を学校当局に見ていただく。そのやり方は文部省を通じまして、文部省と懇談をして、文部省の手によってこの事実を示して、そしてやっていきたい。できれば文部省と学校当局、法務省――ここへ家庭裁判所を引っぱり出すことはどうかと存じますので、まず法務省とよく懇談を遂げまして、一体学校の教育方針自体が民主的であって――封健思想の残滓ともいうべき旧時代の考え方で学校教育が行なわれておるというような事態がありとするならば、この教育の基本方針、教育の根幹をひとつ改めてもらわぬことには、こういうことは根絶できぬのではないかということが私の意見でございます。具体的結論を得ました上で、文部省とまず相談をいたしまして、学校当局も加えましてよく懇談をして、これをやっていってみたい。私が言うのは少し行き過ぎておりますので、これは文部大臣におっしゃっていただけば適当なんでありますけれども、そういう努力を私のほうでもしてみたい、こう思っております。
  72. 赤松勇

    ○赤松委員 ただ一つ、あなたの認識と私の認識と違うのは、たまたま暴行事件が発生した、それが動機となってエスカレートしていったというのでなしに、その根底には民族問題がある、少なくとも学校教育の産物である、こういうように私は考えています。前々回の委員会のときに、あなたが退席したあとでぼくはその点を指摘しまして、特にその点に重点を置いて調査をしてくれということを希望しておきましたが、あなたと私の考えの違いを指摘して次に移ります。  文部省のほうへお尋ねしたいのですが、第五十一回国会の、これは昭和四十一年の四月十五日です。この委員会、当時大久保武雄君が委員長をしておりました。そして本委員会におきまして、いま法務大臣が言いましたように、これは単なるけんかでなくて、民族差別教育の産物としてこういう問題が発生したということで、朝鮮人高校生の人権擁護に関する件、及び国士舘大学の鹿島という教授の人権を擁護する件に関しまして本委員会で問題になったわけであります。その際国士舘大学の学長の代理として参考人に横山という人を喚問しました。その喚問の議事録がここにございますが、時間がありませんから逐一申し上げることはいたしません。文部省には言うまでもないことでありますけれども、教育基本法、これには  1 われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。  2 われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。  3 ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。  第一条(教育の目的)教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。  第二条(教育の方針) 教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。 と示しておりますね。しかも、この基本法につきましては本委員会でも問題になりましたし、それから日本弁護士会の人権擁護委員会におきましてもこの問題が取り上げられました。自来、もう八年近くたっている。日弁連人権擁護委員会が取り上げてからもう四年たっている。しかるに学校の教育方針は、いささかも変わっていない。文部省は国会で問題となって、そして国会におきましても学校の民主化のために努力するということを政府に約束をされました。委員会で問題になってから八年間、日弁連の人権擁護委員会で問題になってから四年間、一体文部省は何をやっていたのですか、答弁してください。
  73. 安養寺重夫

    ○安養寺説明員 先回いろいろ問題がございまして、文部省としましても当時たいへん憂慮いたしまして、関係大学の方々とずいぶん相談を申し上げまして、大学のほうへ直接視学員であるとか関係の局課の人間が参りまして、具体的な改善案を練ることにいろいろと力を注いだわけでございますが、四十二年の初めになりまして、大学から幾つかの指摘に対する改善計画というものが出まして、これはたいへん遅々としてわれわれは申しわけないのですが、そういったことが改善の軌道に乗るというようなことになりましたので、いろいろその行くえを見守っておったわけです。前回、前舘長がなくなられまして新舘長になりました際にも、事務次官から大学の教育のあり方等々いろいろと御注意を申し上げるというようなことで、努力は微々たることではございますけれども、続けてまいっております。  今回またしてもかような暴力ざたに及ぶような不祥事が出ましたので、前回十三日の委員会では、さっそくそのときにおける模様を申し上げたわけでございますが、横山委員からも御指摘もございましたので、私のほうへ学長に来ていただきまして、その後何度も常務理事などにも御往復願っておるわけでございますが、いろいろの暴力ざたは直ちに根絶すべきである、またその関係者に遺憾の意を表する、具体的な手だてをとるべきである、これは強く申し上げました。そしてその他、大学もたくさんの学生をお預かりしておるわけでありますし、その父兄も心配しておる、また世人の多くの方に御心配をいただいておる状況でもございますので、そういったあたりのお話を申し上げまして、巷間いろいろ御心配の、本学の教育の方針、教育のあり方にその根拠があるのではないかという点について、大学のき然たる改善策を求めて、それが直接の原因と申すほどではございませんが、さっそく大学の中にも学園近代化委員会というようなものが責任者の構成によってできまして、すでに大学の機構組織、学生の生活、学外を通じてのいままでやっておりました諸行事、あるいは教育課程について基本的にこの際衆知を集めて検討するというかたい決心と具体的な手だてがこちらのほうへお返事としてまいっておりますから、われわれといたしましては、これを強く信用をするという形で、一刻も早く善処方を具体のものとして皆さん方のお目にかけたいと、あらためてまた努力をしておるわけでございます。
  74. 赤松勇

    ○赤松委員 昭和四十四年五月十四日に東京弁護士会人権擁護委員会報告書を出しております。この報告書で勧告をしておりますけれども、その後一向に改まっていない。新聞が連日報道しましたように、学校の教育方針、それから教育の内容、そういったものを週刊誌も取り上げております。私は学校へ直接行ったことはありませんけれども、これらの新聞の取材記事を通じて見まして、いささかもこの偏向教育が直っていないということを指摘せざるを得ないのです。  まずこの東京弁護士会の人権擁護委員会の当時の報告書を見ますと、「教育基本法第六条に明定の通り、」これは偏向教育の事実をあげております。「私立学校といえども、すべて法律に定める学校は、公の性質をもつものであるところ、」公の性質を持っている私立の学校でも、「被提訴学園の館長である被提訴人柴田徳次郎はこれを私物化し、後述の「選承権銀行倶楽部」なる極端な偏向を内容とする政治組織を学園にもちこみ、或いは現行、日本国憲法を「犬法であり、」犬の法律ですよ。「「犬法であり、詐欺文書」であると、同学園の学生、生徒に対して公言するなど、偏向教育をなしている。而して別に、東京弁護士会人権擁護委員会に提訴されている、朝鮮人高校生に対する被提訴学園高校生による、暴行事件は、右偏向教育の現れにほかならない。」「右偏向教育の現れにほかならない。」という、この点は法務大臣の認識と違うのです。すでに四年前にこのことが指摘されている。「かかる偏向教育は教育基本法ならびに、日本国憲法の精神に反するものである。」そして、その具体的事実をずっとあげて、「選銀クラブのかかげる政綱の主なるものを摘記すると、一、日本から占領軍の原爆政治の大洪水のあとを掃除する。一、天皇の御心のままの政治。一、国防を強化して(イ)漁民が日本海で朝鮮人に、北洋沖でソ連人に無法に拿捕されず安心して出漁できるようにする。(ロ)日共の革命暴動を応援するソ連、中共の侵入を自力で撃退し得る国防力を充実する。(ハ)アメリカとソ連が戦争する場合は樺太、千島を取り返す実力を準備する。一、共産党を法律で禁止する。ストはすべて三ケ年禁止する。一、国民の祭日に、三月十日陸軍記念日、四月二十一日及び十月二十一日靖国神社祭、五月二十七日海軍記念日等を設ける。一、外交ではソ連、中共と復交する条件のうちに、(イ)ソ連、中共は彼等が飼育した日本共産党員、社会党員を全員即時、引き取ること、」ぼくも引き取られるわけだ、中共、ソ連に。「即時、引き取ること、(ロ)樺太、千島の即時返還、(ハ)ソ連が戦争の際、日本人を強制労働させ婦女を暴行虐殺した謝罪及び賠償として、ウラル以東(西シベリアと東シベリアと極東シベリア)、シベリア全域合計面積千百三十万平方キロ(日本領土の三十一倍)を日本に割譲すること。などであるところ、第一、これらの政綱は明らかに憲法に違反するものであるが、これが実現のための政治組織を学内に設け、運動を展開することは、教育基本法第八条第二項に違反し憲法が保障する基本的人権としての学問思想の自由、その他の権利を脅かすものである。」ということが提訴をされまして、そしてその結果、東京弁護士会の人権擁護委員会が結論として、「以上の通り、被提訴学園ならびに被提訴人柴田徳次郎は、被提訴学園において、学生に対し偏向教育をなし、前記の如き政綱に基く、政治的活動を強制していたと認められるのであるが、かかる被提訴学園ならびに被提訴人柴田徳次郎の偏向教育及び政治活動と、その学生に対する強制が教育基本法第八条第二項、同法前文に違反することは明らかであろう。」というふうにいたしまして、そしてすみやかに学園の民主化を行なうよう勧告をしています。  さらに、あの国士舘高校の中で行なわれました解雇事件につきまして、東京地方裁判所は昭和四十六年八月二十三日、次のような判決をくだしている。「本判決は、その解雇事由のうち一部は認め難いとしながらも、その多くの事実は認めた。しかし、いずれも、その動機、実害を考えると、解雇事由とするに足りるものではなく、これらは、真の解雇事由を隠ぺいするための口実としか思われないとしたうえ、その真相について判断を進め、真の解雇事由は、被告学園の代表者が、原告ら一部の教員が学校運営の民主化等を目的に始めた親睦会の活動を嫌忌した点にあるとして、右解雇を解雇権の濫用であると判示した。」以上のように解雇無効の判決をくだしているのです。ずっと続いているのですけれども、文部省がいまごろ柴田を呼んで、そして学校民主化について相談をするというような、なまぬるい態度でよろしいのでしょうか。こういう憲法違反を行ない、教育基本法に反するような教育方針をとっておる学校をどうしてもっと強力に指導しないのか。どういう教育をやっておるかという内容を私これだけ資料を持っている、これだけ……。ここで一々申し上げることは煩瑣ですからやめますけれども、もう諸君は新聞で十分知っているでしょう。朝日も読売も毎日もその他主要な新聞は全部これを取り上げている。そしてその具体的事実を報道している。重ねて文部省は、こういうずっといまなお続いている学校の偏向教育に対して、あるいは憲法違反もしくは教育基本法違反の行為に対して、どういうように指導するのか、いまの答弁じゃ納得できません。さらに答弁を要求します。
  75. 安養寺重夫

    ○安養寺説明員 前回の事件以来、いろいろ問題があったわけでございますが、文部省もこれはやり方には限度もございまして、個々の教育内容をとかくというようなことは控えるべきである。私学でございますし大学でもございますので、そういうような慎重な態度をとり過ぎておるというように、あるいは煮え切らぬ部分もございましょうけれども、まあ今回の事件を、災いを転じて福となすということもございますので、せっかく大学のほうもいままでに見られないような新しい決意で学園の近代化にいろいろの責任の体制をもって臨む、しかもその具体の結論を出したい、こういうようなことでもございますので、その決意を激励して、できるだけ早くいま御指摘のような疑いのないように、また名実ともに学園らしい教育がそこで行なわれるように努力をするということに文部省の立場も尽きるのじゃないか、かように考えておるわけです。
  76. 赤松勇

    ○赤松委員 そんな答弁はもう八年前に文部省はしているのですよ。それからちっとも直ってないんだ。いつまでにそれをやるのか。学校の教育方針を教育基本法にのっとって変えさせる、それをいつまでにやるのか、はっきり答弁しなさい。
  77. 安養寺重夫

    ○安養寺説明員 まあこれは文部省がいろいろ立ち入って、あれをどうこうせよとか、いろいろの諸規定をどのようにせよというようなことを強力に御指導はいたしますにせよ、限度がございます。大学のほうの努力を大いにわれわれとしてはエンカレッジするという立場にございますので、せっかくこのところ先ほど申し上げましたようなテーマごとに急ぐということでもございますし、早いものは夏休みまでにはいろいろと具体の姿をもって文部省とも相談をしたい、かような申し出もございますので、ぜひそのような誠実な努力をしていただくように考えております。重々いままでの怠慢についておしかりを受けることは当然の筋とも思うのでございますけれども、おのずから文部省の立場にも限度がございますし、今回はそういうような明るい見通しもございますので努力をしたいと、重ねて恐縮でございますが、かように申し上げるわけでございます。
  78. 赤松勇

    ○赤松委員 それは答弁にならぬですね。それで学校に学生の心得というのがありますね、知っていますか。これを廃止させなくてはいかぬと思うのだが、どうですか。内容を知らなければぼくが説明する。どうですか。
  79. 安養寺重夫

    ○安養寺説明員 過日、関係のそういった集まりもございまして、責任の当事者が改善すべき事柄の一つにこの心得というものがございます。ぜひこれは直したいというようなことを申されておりますので、われわれとしてもそれはよかろう、かように対応しております。
  80. 赤松勇

    ○赤松委員 それから学長の訓話の中には「ソ連、中共は日本の安寧を破壊する在日北鮮人扇動を即時停止すること。」つまり在日朝鮮人がソ連や中共に扇動されている、そして安寧を破壊する政治行動をとっている、こう言うのです。「現下の日本の社会不安政治混乱は領土の鶏舎が狭すぎてエサが足らないのが大きな原因であります。そこで鶏舎の広すぎるソ連から(略)シベリアを割譲させて極東シベリア一帯の日本の十倍ぐらいの土地を日本の専有領土に」しなければなりません。こう言っている。あなたこれは何たることですか。これが平和憲法に違反していませんか。教育基本法に違反してないですか。こういう学長の訓話を許しておいていいのですか。よく懇談してなんて、懇談したって直らないですよ。これで文部省はしゃあしゃあとして、いやだんだんいい方向に向かっていますとか何とか、そんななまぬるい態度ではだめだ。こういうことが朝鮮高校生を襲撃する動機になっているのですよ。つまり朝鮮民主主義人民共和国の籍を持つ朝鮮人というものはソ連、中共の扇動を受けて、そうして日本の政治の混乱をはかっているのだ、こういうことを総長が訓話でもってやるものですから、だから多くの青少年がああそうかと思って、そしてそういうような暴力事件を起こすということになるのだ。根本はここにあるのですよ。なぜこれを直さないのですか。これを直さなければ何ぼでもこの事件は起きる。帝京高校ですか、あそこもしばしば朝高生と紛争が起きたけれども、その後学校の方針を変えて、いまゲームなどをしばしばやって、そして非常に友好関係ができ上がっているでしょう。なぜそういうふうに指導しないのですか。こんなにばかげた訓話というのはあるのか。これは一九七〇年代ですよ、一九三〇年じゃないよ。文部大臣によく言っておきなさい。もう一ぺん約束しなさい。こういう偏向についてはいつごろまでにこれを直させると。
  81. 安養寺重夫

    ○安養寺説明員 われわれも最近の内外の事情は大学の責任者に詳しく申し伝えておりますし、文部省自身の改善に対する要請もはっきり申し上げておりますが、なくなりました館長が存命中そういうようなことを学生に訓話しておったということも知っておりますが、いろいろとそういう点について、いついつまでにと、先ほど申しました文部省の立場もございます、日限を限ってお返事はいたしかねますけれども、これは大学並びに文部省の……。
  82. 赤松勇

    ○赤松委員 文部大臣を本委員会に出席させるように努力をしてもらいたい。  もう一つは、国士舘大学の柴田総長などを参考人として呼んでもらいたい。これは昭和四十一年に呼んでいるのだから呼べないわけはない。これを私は要求します。  そして法務大臣に言っておきますけれども、あなた調査するということをこの前この委員会で約束した。その後どういうふうにやっていますか。当然現行犯で暴行を加えた国士舘大学の学生はそれぞれ起訴されるか、あるいは処罰されていると思うのだが、どうなっているか。
  83. 安原美穂

    安原政府委員 お尋ねの件は、例の新宿駅の凶器準備集合という事件と、それから高田馬場の襲撃事件ということであろうと存じますが、新宿駅の事件につきましてはすべてこれ、大学生とはいいながらいわゆる二十歳未満の少年でございますので、東京地検を経由いたしまして目下東京家裁で審理中でございますので、結論はまだ得ておりません。もう一つの国電高田馬場駅の事件につきましては、現在まだ東京地検で身柄を勾留をして取り調べ中でございます。ただ、大臣も申されましたように、法務省といたしましては当委員会における大臣のお約束もございますので、当然のことではございましたが、東京地方検察庁に、この種暴力事件の背景として特にその動機についてはよく調べてもらいたいという要望を申し上げ、当然検察庁でもその点は留意いたしまして調査をしておるわけですが、先ほど申しましたようにまだ勾留中の事件でもございますので、詳細なバックグラウンドについては報告を得る段階に至っておりませんけれども、家裁に送致した少年事件調査の過程におきましては、先ほど大臣も少し申されましたように、結論から申しますならば、民族的な差別観からの暴行ではない、特にこの新宿駅の事件で木刀を持って集まったA少年の動機というものの供述によりますと、「高校時代朝鮮高校生らに暴行を受けたことがあって、かねてから反感を持っていた。四十八年六月の一日に同級生らと新宿に来た際、新宿駅で朝鮮高校生らとけんかになり、その際け飛ばされて階段から転落し、足首をくじき、一週間学校を休んで療養したことがある。それで機会があったら朝鮮高校生らに仕返しをしてやろうと考えていた。」……。
  84. 赤松勇

    ○赤松委員 失礼だが、ぼくはそんなことを聞いているんじゃない。現状はどうなっているか、この勾留の取り調べの状況は。
  85. 安原美穂

    安原政府委員 現状は先ほど申し上げましたように、家裁送致、それから勾留中であります。
  86. 赤松勇

    ○赤松委員 それで司法当局は一貫して、法務大臣の認識のとおり、これは単なる若い者のけんかだ、こういうように片づけるんだが、私は偏向教育の産物である、こういうように考えています。そしていま具体的に東京弁護士会人権擁護委員会がすでに勧告の中でこれを指摘しているわけです。そしてきょう今日起きた問題ではないのです。したがって早期にひとつ取り調べをやってもらいたいということと、もう一つは、時間がないから言わないけれども、たまたま事件が発生したときに新聞が指摘しているように、朝高生の諸君がなぐられている、それを警官が傍観しているんだね。そして国士舘大学の学生が、これはもう新宿の警察とはちゃんと了解済みなんだ、こう言ったら手を引いたというのです。しかも取り調べが公正を欠いて、朝高生にはきびしく、国士舘大学の高校生には非常にゆるやかだったという。そういう証拠を持っている。幾らでもあなたに示す。しかし一応取り調べが終わってから本委員会報告すると法務大臣は言っているのですから、それを待って再び私は質問します。だから、法務当局と警察は帰ってくださっていいです。
  87. 中垣國男

    中垣委員長 警察庁と文部省関係の方は御退席願います。
  88. 赤松勇

    ○赤松委員 次に、海上保安庁の紅村さんに伺います。  六月二十一日の朝、知多半島沖で操業中の漁船が外国貨物船に網をひっかけられて転覆して、乗り組み員五人のうちの四人が海中に投げ出され、一人が死にました。すでに伊良湖みさき付近は昨年だけで二百八隻、うち漁船が四十二隻、衝突事故が全体の一八%にのぼっております。たいへんたくさんの事故が起きているわけですが、これについて七月の一日から海上交通安全法を適用する、こういっておるけれども、しかしこれは時差漁獲というのか、ぼくもよくわからぬが、時間をきめて漁獲をする、時間をきめて大型船を通すということらしいのだが、これは漁民の魚をとる仕事の上にたいへん大きな影響を与えると思う。この点について伊良湖みさきの安全保障というのかあるいは漁民の安全保障というのか、そういったものをどう考えるか。あるいは漁民の生活問題についてはどんなふうに考えているのか。水産庁も来ていると思うから両方から説明してもらいたい。
  89. 紅村武

    ○紅村政府委員 ただいま先生おっしゃいましたように、来たる七月一日から海上交通安全法が施行になるわけでございます。この海上交通安全法は、日本の海域の中で非常に船舶交通がふくそうする、したがいまして事故も多い、こういうところで航路を設定いたしまして、各種の航法等を規制をいたします。そういったことで事故の防止につとめたい、こういうことでございますが、ただいま先生おっしゃいましたように、伊良湖方面は非常にかっこうな漁場になっておるわけであります。そこで船舶航行と漁業操業との調整をどうするか。これは非常に立法当時から大きな問題であったことは先生も御承知いただいていると思います。ただこの調整と申しますか、船舶航行の実態あるいは漁業操業の実態が、各海域あるいは航路ごとに非常に異なるわけであります。したがいまして私どもといたしましては、それぞれ担当の管区本部あるいは保安部署におきまして、現地の方々と十分に意見を調整をいたしまして、お互いに差しさわりのないようにやってまいりたいということで、現在でもまだ具体的な意見調整をやっておるはずでございます。
  90. 新井昭一

    新井説明員 先生御指摘のとおり、この海域は非常に好漁場でございます。今度衝突事故が起こりました丸俊丸は一カ統で網を引いてイカナゴ、イワシ等をとっておったようでございます。  ここは非常に漁船操業と船舶交通が錯綜しておりまして、水産庁といたしましては、まず海上衝突予防法等がございまして、漁労船につきましては一般船舶が、漁労船は航行が不自由でございますから、一般船舶が漁労船を避けるというような海上交通のルールになっております。そういうルールをしっかり守っていただく。海上保安庁のほうに御指導をいただくと同時に、漁船側といたしましても、漁船の操業中に所定の標識等をつけて遠方からそこで漁労をしているということがわかるように定められております。それらの交通ルールを十分私どもとしては漁船の側に徹底するように指導してまいりたい、こういうふうに考えております。
  91. 赤松勇

    ○赤松委員 ところが最近は大型船が非常にスピードが速まっているのだ。あなたたち役人だからわからないけれども、あっという間に来てしまう、だから避難するひまがないんだな。だからどうしてもこれは時差漁獲というのか、大型船の入る時間を一応設定して、その間は漁民の安全を守るために漁獲を少し休むとかいうようなことをやる以外にないような気もする。われわれも専門家じゃないからよくわからないが、専門家でないお互いがここで議論しておっても問題は解決しない。  そこで、海上保安庁のほうでは、伊良湖みさきの問題については、運輸委員会でももうしばしば問題になっているから、これはひとつ安全保障のために大いにがんばってもらいたい。  それから水産庁のほうは海上保安庁と相談する。知多一帯の漁業組合がありますね。この組合と集団的にこの種の問題について十分に打ち合わせをして、漁民の希望する漁獲の時間をそれらの諸君の意見を聞いてきめるとかなんとか、そういう方法はどうだろうか。これは具体的な提案だ。これについてはどうだろう。
  92. 紅村武

    ○紅村政府委員 ただいま先生のおっしゃいましたように、この時差漁獲と申しますか、これはやはり季節その他の変動もありまして、一律に規定することにはなかなかむずかしい点があろうかと思います。私どもも実は漁船の操業につきましては専門家ではございませんので、何でありましたら後ほどその点は水産庁から補足いただけたらと思うのでございますけれども、ただ私どもといたしましては、先生おっしゃいましたように、大型船は確かにスピードが上がってきております。したがいましてあっという間に来てしまう。もう避けるひまも何もないということになっては非常に困るわけでございます。したがいまして、巨大船につきましては何時ごろに到着するかということをあらかじめ通報させることにいたしております。その通報によりまして、必要な漁民の方々にはもちろんそういった通報を周知徹底をいたしますし、そういうことで事故を防止するというように考えておるわけでございます。
  93. 新井昭一

    新井説明員 保安庁のお答えのとおりでございますが、今後やはり一般船舶について航行がいわゆるふくそうしていくであろう。そういう意味で一般船舶と漁船操業との調整問題というのがだんだんむずかしくなりますし、また必要にもなるわけでございます。そういうことで、通過時間等をまずあらかじめ漁業側に連絡をしてもらうということは従来から保安庁のほうにもお願いをいたしてございますが、今後そういうような方法を、漁業操業の実態が各海域で違いますから、それを十分突き合わせまして、そういうような方法を検討いたしたい、こういうふうに考えております。
  94. 赤松勇

    ○赤松委員 結論だけでいいですよ。もう途中のむだなことはやめてもらって結論だけ聞きますが、私はいま提案したのだよ。それでまた海上交通安全法が七月一日から適用されますね。ところが漁民にとってはぱっと七月一日からこの法律が適用されても、これは法律の内容が何だかわからないのですよ。したがって現地の愛知県と十分に連絡をとって、そして知多一帯の漁業組合がたしか三百ぐらいあるのじゃないか。その漁民の諸君と、それぞれとるものも違うしそれから潮かげんでいろいろ変わってくるのだから、その辺きめこまかく指導する。それから漁民の意見を十分聞いて、この交通安全法が文字どおり安全法になるようにしてもらいたい。だからその漁業組合と十分に話し合ってこの法律を施行するということについて、どうなんですか。
  95. 紅村武

    ○紅村政府委員 先ほどお答えいたしますのを忘れましてたいへん失礼をいたしました。私どもといたしましては、立法当時からもちろん漁業組合関係の方から十分意見を聞いておるつもりでございますし、それからまた昨年御審議いただきました段階におきましても聞いたつもりでございます。  それからさらに施行があと数日間に迫っておるわけでございますが、その間におきましても、十分漁業組合の方々、これは全部ではないかもわかりません。たとえば非常に沿岸関係だけでございますと、直接この法律には関係ございません。そういう組合もたくさんございますので、そういった方は入っていないかと思いますけれども、少なくとも関係のある漁業組合の方々とは十分また話をいたしまして、また、意見も伺っておるところでございます。それからまた、今月、六月の初めから、いわばPRと申しますか、この海上交通安全法の趣旨をさらに周知徹底させますために特別の月間を設けまして、さらに趣旨徹底につとめておるところでございます。  それからさらに、七月一日以降になりましても、この法律趣旨の徹底には努力を重ねていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  96. 赤松勇

    ○赤松委員 海上保安庁、水産庁はもうけっこうです。  あと、保護局長にお尋ねいたしますが、帝銀事件の平沢の問題だが、もう数回にわたって再審査を請求してきた。私も経過はあまり明らかじゃないんだが、終戦直後の占領軍の占領当時に死刑になった犯罪については再審査をする。これを中央更生保護審査会にかける。そして、当時西郷法務大臣は、十分に配慮するということを約束して、神近君が出した法律を一応撤回したという経緯をぼくは聞いている。きのう平沢から手紙がきまして、すでに八十幾つで老衰の極に達しておる。ほとんど、いまは法務大臣のたいへんいい保護を受けて、懐炉なども入れてもらって、一応下痢などはなおったといっておりましたが、もう棺おけに半分以上足を突っ込んでおる、 こういうことをいっておりました。もうぼくは、この辺であなたが英断をもって、裁量権はあなたにあるんだから、ぜひ釈放してやってもらいたい。あと二年生きれるか一年生きられるかわからないけれども、出してやってもらいたい、こう思うのです。理由は、平沢がやったということは明らかになっていない。これが理由です。いま新宿のある百貨店につとめておる当時の警視庁の主任捜査官の鳴智警部がはっきり、犯人は彼でないと言っておる。当時の警視庁の藤田刑事部長も、平沢はシロである、犯人ではないと言っている。検察庁の藤田という若い検事が、これが警視庁の警部補と結託して、そして彼を無理やりに犯人にしてしまった。銀行員を毒殺した青酸カリなるものは存在しない。当局が捜査をして、売ったと称する薬局に行っても、私のうちは青酸カリは扱っておりませんと言っている。何の薬で殺したのかわからない。しかし、平沢は拷問をかけられて、結局青酸カリで殺しましたと、こう言っておる。どこで買った、ここの薬局で買いました、調べましたら、その薬局は売っていないし、ないものは売れないじゃありませんか、こう言って、薬局がこれを立証しておる。全然証拠がない。もう一点、ぼくは検事調書を見て不審に思ったのは、たしか銀行員を毒殺したのは十一人ですか、その十一人が、何分以内でですか、三分以内で死んだ。そして、犯人は逃げた。そうすると、絵かきである彼が三分以内に毒殺をしておいて、コップでずっと飲ましておいて逃げた。死体がどこにあったかというと、検事調書を、あなたもう一ぺん読み直してごらんなさい。十一の死体の場所がちゃんと確認されているわけだ。平沢は次のように述べている。田中さん、あなた、十一人を、三分以内で人を殺しておいて、それで悶絶だよ、もだえているわけだよ、そっと死ぬわけじゃない、銃で撃ったわけじゃないから。それを一々、ここに死体がありました。ここに死体がありましたと言って、十一の死体を確認している。あの検事調書にちゃんと書いてある。そんなこと、人間ができますか。そういう証拠も何もないのに、自白だけでもって彼に死刑の判決を下している。ぼくは平沢とは何も関係ない。ただ私は人間として正義感にかられて、この問題と、それから例の岩窟王の吉田石松の問題を国会で取り上げた。吉田石松は幸い無罪の判決が下った。けれども平沢は今日なお死刑を前にして、仙台の刑務所におるわけです。あなたはこういう点について疑問を持たなかったですか、再審の請求があったとき。どうなんですか。
  97. 高瀬禮二

    ○高瀬(禮)政府委員 お尋ねの平沢につきましては……(赤松委員「簡単にやってください、もう時間がありませんから。」と呼ぶ)先生承知のとおり、ただいま三回目の恩赦の出願がございまして、現在、中央更生保護審査会におきまして審査中であるわけでございます。これも御承知のところでございますが、過去二回恩赦の上申がございまして、これは結論といたしましては、恩赦不相当の議決がなされているわけでございます。過去二回の出願理由を含めまして、今回の出願理由もそうでございますが、ただいま先生が申されましたように、平沢は、自分は犯人ではない、真犯人は他におるんだ、それにもかかわらず無効な自白調書あるいは不十分な証拠によりまして有罪の判決を言い渡された、そこで恩赦によって救済されたい、こういうことであったわけでございます。したがいまして、審査会といたしましては、通常の恩赦事件でございますと、御承知のように犯罪事実は、大体判決によりましておおむねわかるわけでございますが、本件につきましては、事実の認定に争いがあるわけでございますので、審査会におきましても証拠関係に立ち入りまして、詳細な綿密な調査検討がなされておるわけであります。その結果、ただいま申し上げましたように不相当の議決が過去におきましてはなされておる、こういう状況に相なっておるわけでございます。今回の三回目の恩赦出願に基づく上申につきましては、ただいま申し上げましたように、中央更生保護審査会で諸般の事情を考慮いたしまして、現在慎重な審議がなされている。その結果につきましては、私どももまだ何とも申し上げる段階に至っていない、こういう状況になっております。
  98. 赤松勇

    ○赤松委員 法務大臣、ぼくは法務大臣に長くつとめてもらいたい。けれども、遺憾ながら田中内閣は、こんな公害をまき散らしたりして、あと余命幾ばくもないような気がする。そこで、あなたが在任中に何とかこの問題を処理してください、あなたに裁量権があるんですから。中央審査会の諸君にも、証拠がない事件である、ただ自白によってのみ死刑の判決を下されておるのだ。しかも過去二回却下されているでしょう。これは私はほんとうに人間として耐えられない。疑わしきは罰せずは言うまでもないことでありますけれども、もうあとほんとうに一年か二年しか生き長らえられない。だからこの際、ひとつ思い切って英断を持って、田中法務大臣、善処していただきたいということを要望しまして、私の質問を終わりといたします。田中さん、何か意見ありますか。――ちょっと待ってください、意見あるでしょう、どうですか。――言わぬほうがいいですか。
  99. 中垣國男

    中垣委員長 正森成二君。
  100. 正森成二

    ○正森委員 公安調査庁に対する質問に入る前に、私は以前にも質問しましたが、昭和四十八年四月四日に尊属殺についての違憲の判決が出ております。それについて立法府としてどういう態度をとらなければならないか。大臣は前の御答弁でもすみやかに処理したい――自民党の中ではいろいろ文教部の方まで出てこられて御意見があるようですが、前向きの答弁をされました。しかし国会も残すところあと一カ月足らずになっておりますので、明確な答弁を承りたい、そう思います。
  101. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 この四月四日の違憲の判決に対しましては、政府二つの処置をしようとしておる。第一の措置はすでに終わったのでございますが、あの直後に二百条違憲判決に従いまして全国の検事長、検事正に対しまして検事総長から、自後における事案の処理は百九十九条に基づいてやれ、二百条は無効となったという意味の通告を行ないまして、日本全国の検察関係はこれで処理をしております。これが第一の処置でございます。  それから第二は、違憲だときめつけられておりますこの二百条を削除しなければならぬということが問題でございます。いや、削除せぬで、これは改正でいいという意見もなくはありません。しかし何としても無効の判決に対しては削除が順当である、こう考えまして、その方針で、少し時間がかかっておりますけれども、削除の方針を立てまして法制審議会に諮問をし、その結論も得ましたので、目下内部関係で、詳しくは申し上げかねる点がございますが、手続の終わり次第国会提出したい、こう考えまして、手続を終わり次第国会に出してよろしいという閣議の決定も、条件つきの決定でございますが、取りつけておりまして、目下その手続の完了いたしますのをたいへんな期待をもって待っておる、こういう状態で、おくれておることはたいへん申しわけがないと思っております。
  102. 正森成二

    ○正森委員 いまそういうお話を伺いましたが、私がこの間質問して伺ったときに、自由民主党が何らかの決定をするまでの停止条件づきの閣議決定であるようなお話だったのですね。いまの答弁を伺いますと、やはりその時点からあまり進歩していないんじゃないかという気がしてならないのですね。  ものの本によれば、昭和三十七年の十一月二十八日に、最高裁の大法廷が第三者の所有物没収事件で関税法百十八条一項に定めるところにより第三者の所有物を没収することは憲法三十一条、二十九条に違反する、こう判決したわけです。これはもちろん十一月ですから通常国会が開かれておりませんけれども、直ちに三十八年に、昭和三十八年法律第百三十八号で刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する応急措置法というのを制定し、さらに最高裁判所の規則八号で刑事事件における第三者所有物の没収手続に関する規則というのを制定して最高裁の判決の趣旨を生かしております。こういう点から見ますならば、今度の判決はよりさらに重大な問題を含んでおる。それに対して停止条件つきで閣議決定までされておるのに、どのような手続か知りませんけれども、非常に長引いておるということは、これは最高裁の違憲判決に対して立法府及び行政府が非常に軽視しておるというようにいわれてもしかたがありません。大体今国会提出され――提出なさればわれわれは可決しますが、提出できる見込みがあるのか、それを伺いたい。
  103. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 軽視しておるので延びておるのではないのです。内部の手続は、数日前もこれをいたしておりますし、一両日後にも重要な会議が開かれるわけでございまして、それで延びておるのでなしに、手続がたいへん慎重であるから延びておると、こういうふうにお聞き取りをいただきたい。どこで慎重なのかということは申し上げかねるので、内部関係でございますからおまかせをいただきたいと思います。  それから見込みの点でございますが、私は手続が終わればきょうにも出したいということを考えておるのでございますが、判決のあったのは四月四日のことでございます。相当日時を経過しておるのでございますから、何としても早急に、今国会中などと言わずに、結論を得次第一刻も早くこれを出したい、こういうふうに考えております。
  104. 正森成二

    ○正森委員 今国会中に必ず出せるように努力されることをぜひ期待したい。それからもうすでに尊属殺で既判の者については恩赦あるいは仮出獄の手続、そういうものは考慮し、実行されておりますか。
  105. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 その趣旨で目下盛んに作業を続けております。
  106. 正森成二

    ○正森委員 警備局長来ましたか。――それでは私から公安調査庁並びに警察に対して若干質問したいと思います。  私は三月二十八日に当委員会において名古屋のいわゆる公安女スパイ事件について質問をいたしました。そのときにはまだ横井久子さんは受刑中でございました。したがって私は一定のことしか質問しませんでしたが、その後私ども調査によりますと、四月に一カ月の仮出獄ということで、刑期満了前に出獄し、五月には刑期が満了して出てまいりました。そこで私は名古屋へ参りまして当人に面会して詳しく事情を伺い、また名古屋弁護士会――これは人権擁護の関係で記録がそちらに行っておりますので、それと担当弁護人の好意で記録を全部見てまいりました。そこでそれに基づいて詳しく質問を行ないたいというように思っております。  公安調査庁は竹田空海という男が横井久子さんと接触をして情報を得たということは認めておられますが、公安調査庁は四十二年の八月に横井久子が窃盗をしたということを初めて知って、そしてそれ以後は接触を断ったというようにいまでも主張されるのかどうか、その点を答弁していただきたい。
  107. 川井英良

    ○川井政府委員 私ども調査によりますと、四一十二年の八月に窃盗事件を起こしたということを知りまして、竹田調査官が上司と相談をいたしまして、このような事件を起こした者についてさらに協力関係を続けることは適当かどうかということであらゆる面から調査をいたしまして、その次の月の九月になって、調査協力関係を打ち切るということが適当だということで、九月に竹田から横井に対して以後協力関係を打ち切るという通告をして、それ以後協力関係はない、こういう報告になっております。
  108. 正森成二

    ○正森委員 そういう答弁ですが、私はここには関係の記録を全部持ってきておりますが、公判廷での供述によると、それは全く間違っておる。四十一年の十月に毎日文化センターで本人が料理や木彫りの講習を受けに行っておるときに竹田空海から接触され、その後二回目と三回目は数日おいてボルガという喫茶店で会い、四回目にさらに喫茶店で会って、そのときから三千円の報酬をもらっております。つまり実際に情報提供するようになったのは四十一年の十月ないし十一月からでありますが、あなたのおっしゃる愛知県立大学自治会での窃盗が起こったのは四十二年の八月十二日、記録によれば。それ以前に、四十二年の春に名古屋女子市立短期大学において屋上の体育関係のクラブハウスから金を窃取するということで現行犯でつかまり、そしてそのことが問題になっておりますその時点で、竹田空海がすでに接しておるということが記録に明白に出ております。なぜかこの記録を見ますと、彼女は大学へあやまりに行ったときに、こういう人が来ておる、こういうことを言って竹田空海の名刺を見せられたという事実が明白に裁判記録に載っております。そうだとすれば四十二年の春に名古屋女子市立短期大学において窃盗を行なった時点において、すでに窃盗を行なう女性であるということを知っていたと言わなければなりません。しかるにそれ以後もさらに接触を続けただけでなく、それまでは新婦人の会員として新婦人の情報及び大学の情報を入手しておりましたが、さらに民青関係専門家だというのに引き合わして、今後は民青に入ってくれ、そして情報をくれということを四十二年の窃盗事件以後に明確に頼まれたということが裁判記録に載っております。  そうすれば、あなたの説明は全く誤りでありませんか。私どもはこの前に石川の事件を例に引いてどろぼうから物をもらってはいかぬ。どろぼう会社あるいは共犯になるということを言いましたが、本件においても明白に窃盗をしたということがわかっておりながら、なおかつ新たに民青に入れ、そして情報をくれと言うているとすれば、まさに言語道断だというように言わなければなりません。これは私が単なる推測で言っているのではなしに裁判記録に明白に載っており、かつ私が本人に会って確かめた事実に基づいて言っております。こういう事実に対して川井長官はどういうように思われ、どういうふうに処理されますか。
  109. 川井英良

    ○川井政府委員 このいまちょっとお話がございました調査官とそれからこの女性との最初の、何といいますか協力関係ができる最初のきっかけでございますが、この点につきましては、なるほどこの放火事件の法廷における被告人としてのその女性の供述はただいまお話しになったような経過でございますけれども、私どものほうの調査官の報告によりますというと、そういうようなきっかけで協力関係になる道筋、経緯が進んだんじゃなくて、この女性はかなり、あとから調べてみますと変わった考えや性格の人であるようでありますけれども事前調査局に対して情報を提供したい、こういう申し出があったんだというふうなことになっておりまして、判決はこの前も御指摘がございましたけれども、その被告人の供述のほうをとって調査官から依頼を受けた、こういうことになっておりますけれども、私ども調査では、重ねての調査でもそうではなくて、前の調査官の報告が真実だ、こういうようなことに相なっております。  それからもう一点。四十二年の五月ごろに窃盗事件を起こして云々ということでありますが、これは私も名古屋弁護士会の申し立ての審理の経過、それから人権擁護委員会の警告書というようなものを拝見いたしましたけれども、本人の供述の中にはそのことが出ておりますけれども、その他の私どものほうの調べの中では、八月の窃盗事件調査官が知っておりますけれども、その前の五月に起こした事件は、これはおそらく事件にもなっていなかったんじゃないかと思いますけれども調査官はそのことについては全く知らなかったんだ。八月に起こした事件で、初めて打ち明けられてびっくりして直ちに協力関係を断つようになったんだ、こういうことになっておりますので、事実関係が御指摘のところと、それから私ども調査との間ではかなり違っているように思うわけであります。
  110. 正森成二

    ○正森委員 いま川井長官からそういう答弁がありましたけれども、私はあなた方の竹田空海氏その他の供述も全部読みましたけれども、なるほどその供述では、あなたがいまおっしゃった趣旨に沿うような証言があります。しかし、裁判所がいみじくも横井本人の供述をとりましたように、私どもはわざわざ自分から公安調査庁に電話をかけて情報提供を申し出るというようなケースは非常にまれであるということを私ども自身の経験から知っており、かつ供述調書を見ても彼女は情報提供について接触され始めてから二カ月くらいは、公安調査庁というところがいかなる役所であるかということを十分知らなかったということも言っております。そしてそれらの経過から見ますと、かつ名古屋女子市立短期大学に竹田空海氏が名刺を持ってその窃盗事件の後訪ねていっておるということから見ましても、そのことを知らなかったという竹田空海氏の弁解というのは信用することができない。被害者である横井久子氏がこういう点について何もうそをつかなければならない理由は毛頭ないのだから、したがって裁判所もまた横井久子の供述を採用して、そうして判決が行なわれ、検察官も控訴しないということになったのだと思うのです。そうだとしますと、あなた方は調査の上、そうだ、そういう事実はどろぼうということを知ってからさらに情報提供を頼んだことはないと言われますけれども、しかし、それは信用することができない、こう思います。記録には明白に載っておるし、判決も認めたことでありますから、あなた方はこれらの点についてやはり部下の監督というものを十分に行なって、そうしていやしくもどろぼうをしておったものであるということがわかりながら、いろいろな資料をもろうてきてくれ、とってきてくれというようなことを頼むというようなことは慎まなければならぬというように思うのです。法務大臣に伺いたいのですが、あなたは速記録もお読みになっておられますし、部下からも報告を聞いているということを言われましたが、この名古屋の女スパイ事件は三年の実刑を食らった事件です。私は今度公判調書を詳細に読んだ上で聞いておるわけですが、いやしくもこういう犯罪を犯すに至らしめる経過として、公安調査庁が介在し、そうして窃盗を行なったという女性を、公判記録では少なくとも、知りながら、また民青の情報をとってくれと頼むというようなことは、これは厳に慎まなければならぬと思いますが、統督される立場の法務大臣としての御意見を伺いたい。
  111. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 お尋ねの点でございますが、長官申しますのは、四十二年の五月の窃盗事件というものは当時の調査官はこれを知らなかったのと、知ったのは四十二年八月のできごとを知っておるので、翌月の九月には協力関係を打ち切ったという説明をしておるわけであります。  それはそれといたしまして、いまお尋ねの問題点でございますが、おおよそこういう事件を起こすような人物を協力関係に持ったということは誤りであったと思います。  それで今後の外局である公安調査庁の長官を通じての私の指導方針でございますが、こういう関係にあるものを協力関係として使わない、そういう方針を堅持していきたい、できるだけひとつ注意してやっていきたい、こう思います。
  112. 正森成二

    ○正森委員 川井長官にただしておきたいのですけれども、当時の中部公安調査局長は荒井道三氏だったと思います。荒井氏に警備公安スパイ糾弾各界連絡会議質問状を出しておりますが、その第十項に「公安当局は現在も横井以外に犯歴者を情報収集活動に利用しているか。」こういう質問に対して、「そういう質問は失礼ではないか。だいたい本件については当局としては何も抗議を受ける覚えはない。むしろ、横井に盗癖があることがわかって直ちに関係を断っていることからも、ほめてもらいたいと思っている。」こう言っている。しかしこういう態度は、石川の事件の例を見ても、私が数々追及した事件の例を見ても、失礼ではないかということではなしに、あなた方のほうが十分に反省すべき事案なんです。これの回答は昭和四十五年段階ですから、いまから三年くらい前ですけれども、こういう反省のない態度でなしに、やはり厳重に反省する。いまも大臣も、そういうものをそもそも情報提供者にしたのが誤りであったと言うておられるのですから、逆に「ほめてもらいたいと思っている。」とは何ごとですか。そういうふざけた答弁をさせないように、あなた方は部下を監督するということを言えますか。
  113. 川井英良

    ○川井政府委員 前回に田中大臣が、法律に基づいてやっている調査であるけれども調査をされるほうの側から見るならばいろいろな人権上の問題があるから、念には念を入れて注意をさせたい、こういう仰せがございました。私も大臣のお考えに全く賛成でございます。したがいまして、ただいま御指摘になりましたような問答があったかどうか、その辺につきましては、私いま初めて聞いたので実際のところは確かめておりませんけれども、かりにそのような趣旨のそういうふうな表現のことばが監督者からあったということでありますれば、これはただいま仰せになりましたような大臣の御趣旨らいいましても必ずしも適当ではない。私はなお一そう全体を引き締めまして、そして正森さんからも指摘されましたように謙虚な態度でやっていきたい、こう思っております。
  114. 正森成二

    ○正森委員 なお、公安調査庁には関連のことで伺いますから、しばらく残っていただきたいと思います。  警備局長、これから警察関係のことについて伺います。  公判記録に基づいて質問するわけですから、前に課長がおいでになって、情報提供者の人権を守る上で答えられないというような木で鼻をくくったようなことをお答えになると私としては納得できない。したがって、十分に誠意をもって答えていただきたい。そういうことを初めに要望しておきます。よろしいか。
  115. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 そのことは十分承知しております。
  116. 正森成二

    ○正森委員 それでは伺います。  本件では、御承知のように昭和四十二年の八月十二日に愛知県立大学自治会で横井久子が窃盗を行なった。そのことについて現行犯逮捕をされたときに、あなた方の警察ですね、瑞穂署というのですか、生田あるいは羽場というような人が、そのことを不起訴にするというようなことで情報提供者にしたんだということで本人の供述が載っておるわけですね。前回伺ったときには非常に簡単に伺って、判決の内容を引用しただけで、そういうことについては遺憾であるという大まかな答えだけでしたが、私が記録に基づいてこれから伺っていきますけれども、四十二年の八月十二日に現行犯で逮捕されて、そして警備の者が取り調べの途中で入ってきてそういう情報提供を依頼するというようなことをしたのかどうか、そしてそれについてあなた方はどういうように評価しておられるか、まずその点について答えてください。
  117. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 四十二年の八月、お話のように本人が逮捕されて瑞穂署で取り調べを受けて、一件記録は名古屋地検に送致されております。しかしその取り調べの中で、そういうような形で本人に事件を不起訴に持っていくから協力してくれというようなことを言ったというふうにはわれわれは聞いておりません。ただ不起訴になったのは、事件について親族の者が弁済をして、そういう本人の情状を考えて不起訴になったというふうに思われますが、それは別といたしまして、その調べの途中でそういうことを本人にいわば取引として頼むというようなことはないというふうに考えております。
  118. 正森成二

    ○正森委員 裁判記録によりますと、警察へ行って調べを受けて、翌日取り調べ官から連絡があって、その事実をほかへ漏らしたかということをわざわざ確かめているわけですね。つまり漏らしたとすればいろいろやりにくいけれども、漏らしていなければこれは警察でいろいろできるという意味のことを本人に言うておるわけです。私も法律家ですから、起訴、不起訴は検察官の裁量であるということは知っておりますけれども、少なくとも本人に警察が不起訴で済ますという印象を与えたということは、この記録を読んでみると歴然としておるのですね。しかもあなたはそういう取引的なことはしていない、こう言われますけれども、実際に四十二年の八月にすでに情報をもらっておるでしょう。それは知っていますか。――四十二年の八月の事件のあったときに情報をもらっておるのです。だからだれが何と言われようと、記録によれば十月二十五日に送検されて十一月七日に起訴猶予の連絡があった、こうなっておりますから、それより前にすでに情報提供者にしておるということがあるとすれば、客観的には何らかの取引があったと疑われてもしかたがないじゃありませんか。
  119. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 わがほうとしては、さっきお話がありました警察官から事情を聞いたのですが、前から学生運動をやっていたということで顔は知っておったようですけれども、そういう情報提供を本人に頼んだというのはもう少しあとの段階であって、その当時ではそういうことをしたというふうに聞いております。
  120. 正森成二

    ○正森委員 明敏な山本警備局長のお答えですけれども、あなた方の管轄のもとにある警察官が明確にそれと違う証言をしておる。ここに裁判記録がありますが、そこで羽場良、はばりょうと読むのですか、当時の瑞穂署の警備課長ですが、その証言の中で、生田にいろいろなことを全部やらしておったけれども、生田君に注意した記憶があると言っている。  ここからは速記録のとおり読みます。「横井さんが非行の関係で穂積署へ来て、言うなれば被疑者という立場でございますので、そういう方からお借りしたり、もらうことは好ましくないじゃないか、すぐ返しなさいということで注意したと思います。」「それはいつごろのことですか。」「四二年八月中ごろのことです。」「新聞はどういう新聞ですか。」「聖教新聞といったと思います。」「聖教新聞の綴りですか。」「だったと記憶しております。」  「聖教新聞」というのは生活協同組合の略の生協だと思いますが、そういうやりとりがあるわけですね。したがって生田という実際の現場の担当者は四十二年の八月からちゃんと資料をもらっておって、そうしてほんとうは羽場と相談の上でやったと思われるけれども、公判廷では羽場はいいかっこうして、自分はその後それを注意したんだということで、はしなくも四十二年八月から情報をもらっていたということを裁判で明白に認めているじゃありませんか。そういう点から考えれば、現場の警察官が、上司の意向はどうあれ取引をしておったというように疑われてもしかたがないし、警察庁の警備局長が、いまに至るまで、資料をもらったのは翌年からだというようなことを言っておるのは、これは数が多いからしかたがないかもしれないけれども、裁判記録一つまともに読んでいないということじゃないですか。
  121. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 私不明にしてよく存じておらないわけですが、われわれのほうは、本人からあるいはそういう情報提供があったのかもしれないけれども、正式といいますか、警察のほうから情報の提供を求めて提供を受けたのは次の年からだというふうに聞いておるわけでございます。
  122. 正森成二

    ○正森委員 いまあなたがそうおっしゃいましたけれども答弁のニュアンスが変わって、本人からの申し出で資料の提供を受けたかもしれないということは認められました。しかし本人の供述及び羽場良の供述によれば、やはり四十二年八月から情報提供を受けておる、こういうことになります。そうだとすれば非常に疑惑を招く行為であるということをお認めになり、そして以後そういうことをすべきでないというように考えられ、部下の指導をされますかどうか、その点についてお答え願いたい。
  123. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 われわれのほうの警察からの報告については何回も繰り返すようですが、正式に協力関係に入ったのは次の年からだということでございます。もしまだそういう窃盗犯として取り調べ中に情報の提報を受けて、それをあとで返したとはいっておりますけれども、そういう疑われるようなことがあったとすれば――あったのだと思いますけれども、そういうことがあったとすれば、それは非常に残念であって、そういうことは戒めていかなければならないというふうに考えます。
  124. 正森成二

    ○正森委員 羽場良という人は、本人がその後情報提供するようになってから、こんな仕事はやめたいというふうに言ったのに対して、七〇年の六月、六月二十三日の安保の十年間延長、その時期がくるまでは情報提供を続けてくれということを繰り返し頼んだということを言っておりますが、その羽場良の動機ですね、それについてあなた方は知っておられますか。
  125. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 私どもその点について承知いたしておりません。
  126. 正森成二

    ○正森委員 それでは裁判記録に基づいて私から申し上げますけれども、本人に羽場良が語ったところあるいは鈴木幸平が語ったところでは少しでもいいポストにつきたい。いまやめられるといいポストにつけない、こういうことで本人にもう少し情報提供をしてくれということを言ったということが裁判記録に載っております。私どもは警察の内部のことは知りませんが、三十七歳で警部になったものは署長になれる。しかしそれ以後はなかなか署長になりにくい。羽場良というのは当時四十歳だった。したがって次長どまりかもしれないけれども、せいぜいいい情報を得てそれを上司にいっていいポストにつきたかったんだという意味のことを言っておる。そうすると、あとでいろいろ資料が出てくるように、本人に窃盗をさせ、放火をさせるというような事実に導いた、そういう情報提供をさせている。その目的が、不偏不党、中立公正といいますか、そういう警察の目的も一方にあったかもしれないけれども、直接的には自分がいい情報を上司に報告して、そして少しでもいいポストにつきたいということであれば、その行為というのは非常によくない行為だというように言わざるを得ません。これは裁判記録に明白に載っておりますから。そういうことをどう思われるか。もし事実だとすればそういうことは絶対にあってはならないというようにお考えになるか、お聞きいたしたいと思います。
  127. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 もしそういうことが事実とすれば、絶対にあり得べからざる言動であるというふうに考えます。
  128. 正森成二

    ○正森委員 羽場良にそういう点を裁判記録を示して――本人の供述の中にあります。よく本人の意向を聞いて注意をするように、私から厳重に言うておきます。  本人の供述を見ますと、羽場良やあるいは生田、その後鈴木幸平というように引き継がれておりますが、何を持ってきてくれと言われたかというと、「それらの大学で、どんな資料を取るようにと言われたわけですか。」「民青のものと、共産党のものでした。自治会のものはそんなに言われないです。ほとんどなかったです。ただ名市大と県大は、自治会のものも頼まれました。」こう言って、「全体でいえば八割ぐらいが代々木系のもので、二割ぐらいが反代々木系のものでした。」こういうことを言っております。そして実際上は提供したものは何かといえば、会議録だとかあるいは民青同盟員あるいは党員の名簿であるとか、そういうものが盛んに提供されておるという事実があります。あなた方はこういうように指示をして民主青年同盟や共産党というものをことさらに調査をするということを命じておるわけですか。
  129. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 そういうことはございません。
  130. 正森成二

    ○正森委員 そういうことはございませんといわれても実際上情報を提供した横井久子というのがそういうことを言っておるわけですかう、信用することはできませんけれども、なお少し供述調書に基づいて詳しく順次聞いていきたいというように思います。あなた方は窃盗の経歴があるということは四十二年の八月に調べたから知っておりますね。その窃盗の経歴のあるものに――前科調書をとるでしょうからいろいろ前の非行歴も知っておると思いますが、その情報提供者にさらに窃盗をけしかける、教唆する、暗示するというようなことはよもやしないでしょうね。してなかったでしょうね。
  131. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 もちろんそういうようなことはいたしたはずはございません。
  132. 正森成二

    ○正森委員 ところが裁判記録を詳細に見てみると、実際には窃盗を教唆し、むしろそうしろということを言っておる。いいですか。  順次裁判記録に基づいて言いますけれども、羽場から鈴木に移ったあとで、四十六年十二月十七日の速記録ですが、「名市大の看護学校の一階の教室から民青のL・Cの名簿をとったことがあります。それと薬学部の自治会室から二回ありましたけれども、一回は民青新聞や赤旗の読者名簿、もう一度は同盟員の名簿がありました。」こういうことを言って、どこから入手したのかという質問に対して、講義室の机の中からだ、こういうように言っております。そして「名市大の薬学部の自治会室、これは自由に出入りすることができたのでしょうか。」「いえ、鍵がかかっていました。」「で、鍵がかかっていたのにあなたはその中に入ることができたのですか。」「その時よりちょっと前に鈴木さんに鍵の番号を教えてもらったもんですから、それではいれました。」「今その番号を覚えておりますか。」「二四八だったと思います。」二、四、八という三段のかぎになっております。こういうように明白に答えておるのです。しかもそのあとのほうの部分を読みますと、鈴木というのは名古屋市大は公立だから重要視されているということをそのとき言って、これがわからない、あれがわからないということで資料を入手したいということを言っておる。そこで横井久子は、「名市大は建物の構造上人がいない時はいつも鍵がかかっているから取りにくい」ということを言った。そうするとそのかぎの番号を言うて、そしてそのかぎの番号を鈴木はなぜ知ったかといえば、反代々木系」とこの調書ではなっておるけれども、その学生を逮捕したときに調べたら代々木系のかぎの番号がわかったということで、それを横井久子に教えておるのですね。「いつも鍵がかかっておるから取りにくい」こう言ったときに、それを事実上暗示するようなことを言うておる。そこでこのかぎをあけて、ふだんはしまっておって取れないものを取ってきたということを明白に横井久子は言っております。しかも取ってきたものは、普通のだれでももらえるビラとかそんなものではない。明らかに普通の人が渡したくないようなものを持ってきておる。警察の常識として、どこかから取ってきたということは明らかではありませんが、しかもかぎの番号を言って、まさにこれは窃盗の教唆であるだけでなく、共謀共同正犯ではありませんか。どろぼうを捕えてみればわが子なりということばがあるが、どろぼうを捕えてみれば警察なり、そういうことをあなた方はやっていいと思っているのですか。この記録に明白にそう書いてあります。このことについて、あなた方はどういう措置をおとりになるか。警察は、どろぼうをつかまえる役所であります。したがって自分たちの部内からそういう者が出れば、明白に処理をし、そして検察庁に送り、あるいは免官するということを当然やるべきであります。この間も京都でしたか、ここでは直接関係がありませんけれども、不祥事件が起こりましたね。強姦するというようなことをした。これは処置をされました。この件についてはどういうように状況判断をされ、どう処置されるか、お答えを願いたい。
  133. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 本人と警察官との間の協力関係は、本人が非常に学生運動に興味を持って、自分も大学を出てその後もそういう運動に携わっているということでございまして、したがってそういう問題について君の知っている点あるいは君の交友関係らいろいろな問題がわかるだろうから、そういう問題でもし参考になるような点があったら知らしてほしいというような形の、一般的ないわば協力関係であり、当時四十三年で大学紛争その他学生運動が非常に盛んであったということで、一般的な意味においていわば協力関係を結んでおったというわけでございまして、決して不法な手段あるいはそういういま言ったような形の犯罪行為を使嗾するようなことで協力関係をつくっているということは絶対にございませんし、われわれのこれまでの調べでもそのようなことはなくて、警察としては本人がこれまでの協力関係なり友人関係、そういう点から得た資料なりを提供を受けておったということでございます。
  134. 正森成二

    ○正森委員 不法手段で得たものではない、友人から得たものだというようなことを言っておりますけれども、本人の供述では友人からもらったのかどうかということは一回も確かめたことはない。そして容易に手に入ることができないたとえば「どんなものを頼まれて、どんなものを鈴木さんに渡したかわかりますか、」という質問に対して、「愛大の機関紙読者、赤旗の読者名簿――コピーでとったもので十枚ぐらいありました」というようなこととか、「県大の平和と民主主義を守る会という部屋から織田という男の学生のフィラーノート、民青の会議録でしたがそれを取りました。」とか、あるいは「法学部の自治会室と教養部の自治会の間ぐらいの部屋から民青の同盟員の名簿――何名かはっきりわかりませんが、八十名から百名相当数が書いてある」そういうものを渡したというように明瞭に言っているのです。こんなものを喜んで友人関係からもらうとかあるいは普通のビラと同じようにもらうなんということはあり得ないじゃないですか。そんなものをもらってくれば、これはどこかからとってきたということは明白じゃないですか。もしとってきたものでなければ、これは横井久子のほかにもう一人重要な情報源がある。それは一体だれだということを警察官は聞くのは当然です。私は情報提供がいいか悪いかは問題外として聞いておるのですよ。そういうように考えてみれば、不法手段で入手したということは普通の常識の者なら明らかです。しかもかぎの番号まで言うておるということが調書に明白に載っているとすれば、この鈴木幸平という男は非常にけしからぬ方法で情報入手を続けていたと言われてもしかたがないと思います。それを、私どもの調べではそうなっていないと言っても、裁判記録に明白に載っているのだから、鈴木幸平なり何なりをもっと厳重に調べて、こういうことのないように万遺憾なきを期すべきだ、こう思いますが、どうですか。
  135. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 本人がそのような供述を裁判でしたのだと思いますけれども、警察のほうとしては、そんなに精緻なあるいは重要な情報は彼女から受け取っておる事実はないと言っておるわけでございまして、むしろありきたりのビラとかパンフレットあるいは友人から聞いたような情報程度であって、そう価値あるものはなかったということでございます。そしてもしいまお話しのような重要なものがありとするならば、それはいまおっしゃったような形の推論が成り立つと思いますけれども、これまで彼女から提供された情報の価値というものはそんなに深刻なあるいは高度な、重要なものであったというふうにわれわれは理解しておりません。
  136. 正森成二

    ○正森委員 いま山本警備局長はそういうようにお答えですけれども、当時関係の大学等でそういうものがひんぴんと盗まれたということから、非常に問題になっておったということは当時の大学関係者の調べの中で出てきております。放火事件でそれが一ペんに表面化したわけですけれども。だからそういう弁解をされても決して万人を納得させることはできません。  そこで伺いますが、鈴木幸平という男、この男は横井久子と何らかの特別の関係があって情報提供を続けさせましたか。それとも、そういうことはありませんでしたか。
  137. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 特別の関係というのはどういうことかちょっとわかりませんが、普通の関係であって、特別な特殊な関係にあったとは思われません。
  138. 正森成二

    ○正森委員 ところが、裁判記録を見ると公判廷でこの鈴木という男は、問題の起こりました年の前年の八月を初めとして七回ないし十回にわたって横井久子の家まで出かけて肉体関係を結ぶということをやっております。これは裁判記録に明白に載っておる。こういうことをやって、情報提供をやめたいと言っていた女性の心をつなぐということを実際上やったのだということが裁判記録に載っておる。何ならそこのところを一応読み上げてもよろしい。  横井久子の家に行って「鈴木さんが東側で、私は北側でした。」問、「で、仕事の話などしていて、それから何がありましたか。」「それから鈴木さんが突然抱きついてきまして……。」「坐ったままですか。」「はい。」「あなたはどうしたんですか。」「……抵抗しましたが肉体関係に入ってしまいました。」「そのいきさつというのは、坐ったままあなたのほうに抱きついてきたという趣旨ですか。」「坐って乗ってきたわけです。」云々ということで、それ以上は読みませんけれども、こういうことを実際上やったということが載っておる。それは日曜日以外で大体牛後一時ごろから三時間ぐらいが多かったということになっておるわけです。一体日曜日以外の勤務時間中に情報提供を受けておる警察官がこういうけしからぬことをして、それで情報提供を続けておるなどというのはもってのほかじゃないですか。どう思いますか。
  139. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 そういうことが事実としたら、それはまことに問題にならないけしからぬことであるということは明白でございますが、私どもその点についていろいろと本人についても調べたわけですが、鈴木君は絶対にそんなことはありません、とんでもないぬれぎぬですと言っておりまして、そういう事実は全くわれわれの調べでは認められません。
  140. 正森成二

    ○正森委員 あなたの調べではそういうことはないといいますけれども、さらに加えて四十七年一月十九日の公判調書では、これは九月の末、二回目に関係があったときのことですけれども、この間子供のことも心配だということもおっしゃっていたのですけれども、「鈴木さんは、二回目のときは何か用意されてきておったでしょうか。」こういう問いに対して「避妊具を持ってきた?」「それは使用されたわけなんですね。」「はい。」こうなって、裁判長が「何を持ってきたんですか。」こういう問いに対して、「コンドームです。」と明白に答えておる。つまり二回目からは用意周到にコンドームまで用意して情報提供者のうちへ行っておる。こういうことになっておる。女性が公判廷でこういうことを言うというのは、これはでっち上げじゃないです。私は、彼女が出獄してきて、実際に会って、非常に聞きにくかったけれども職務上やむを得ず聞くのだ、お許しくださいということで聞いたら、それはうそではありませんというように言っております。それを本人が、あなた方が聞いて、はいはい私はそういたしました、コンドームを持っていきましたというようなことを上司に言うと思いますか。現行犯ででもつかまったのならともかく、そんなことを言わなくても横井久子が言っておればそういう疑いがあったということは明白で、それについて姿勢を正すということは当然ではありませんか。それでもあなた方はこういう事実はなかったと言うんですか。
  141. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 そういう事実は全くございません。
  142. 正森成二

    ○正森委員 それでは、四十六年五月三十一日に鈴木幸平の本人尋問がありました。そこでその前でいろいろ尋問が行なわれ、最後は対質質問まで行なわれた。そこでも横井久子は明白にこの肉体関係の事実を供述しました。そこで、それを聞いたあとで裁判長が鈴木幸平に質問した。その部分を読み上げます。弁護人が最初に「あなたは被告人に対してどういうふうに考えていらっしゃるんですか。」こう聞いたのに対して、「現在も横井さんが放火したというようなことは信じられないというふうにぼくは思っております。」問、「何でですか。」「新聞にはいろいろ書いてありましたが、私が会って経験した話ぶりとかいろいろ考えてみますと、そういうことは考えられない、信じられないという気持ちでございます。」ここで答えが終わっているわけですね。そこで裁判長が「それだけですか。いま横井に対してどういう感情を持っていますか。」こう問うたら、「私たちのためにいろいろ積極的に協力してもらってありがたかったという気持ちは十分持っております。」こう答えておる。そこで裁判長が再度「それだけですか。こちらから聞かなくてもわかるでしょう。」こう問うたのに対して、答えがない。さらに裁判長が「いまあなたと関係があったというようなことを言うことについてはどういう気持ですか。」こう聞いて、やっと「それについては私は天地神明に誓ってそういうことはございませんので私は心外です。」こう答えているのです。そこで裁判長が再度「そんなことはあんたどんな気持を持っているかと言うとすぐ口をついて出るはずじゃないですか、こちらから聞かなくても。」こう言われて答弁ができない、答えていないということが載っております。いやしくも現職の警察官が、自分がやってもおらない情報提供者、向こうの家に行ってコンドームまで用意して何回も関係をしたというようなことを言われておれば、私なら机をたたいて激怒する。そういうことをやらないで、裁判長からわざわざどういう感情を持っておるかと言っても、いろいろ積極的に協力してもらってありがたかったという気持ちは十分持っておりますということしか答えていない。それで裁判長は見るに見かねて、そうか、こう言うて、やっと心外だということを言うておる。これは私はその当時立ち会った弁護人からも直接聞いておりましたが、その法廷にいた者はみな黒だというように思ったと言っておりました。私は速記録を見ただけでもそう思いました。  そういう点から見て、鈴木幸平というのがこういう不法手段でそれこそ趣味と実益を兼ねてこういうことをやっておって、そして上司に対してはまさか自分がそういうことをしたと言われないから隠しておる、こう見るのが明敏な山本局長の当然の判断ではないか。それをそう思わずに、いや部下が否定しておるからそういうことはないというように考えるのは、これは普通の刑事事件だとか被疑事件では警察としてあり得ないことだというように私は思います。もってのほかの事実ですね、これは。私もこれも本人が言うただけならあれですけれども、裁判記録に残っておって、裁判長がここまで念を押してなおかつこういうもたもたしたことを言っておる。どう思いますか。
  143. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 先ほど答弁申し上げましたようにまさにあってはならないことであり、あるべきではない事実であって、まあそういうふうに疑われたのは非常に残念なわけでございますが、しかし考えてみますとそれは被疑者がいわば言っていることであって、またこの被疑者もあとでわかったことですが、いろいろと窃盗癖があって放火もしているというようなことで、やや異常心理的な面も持っている人じゃないかというような推定も成り立つわけでございます。裁判の際の雰囲気等私存じないわけでございますが、本人の立場からいえばおそらく思わざることを言われて本人は気が動転して、しかるべき適切なことばを発見しないで、沈黙を守ったんじゃないかと思いまして、その点非常に本人の立場というものも考えてやらなければならぬと思いますけれども、いずれにしろそういうような事実は絶対にわれわれはあってはならないことだということは私確信をいたしております。
  144. 正森成二

    ○正森委員 そんなことはあってもよいこと、だというようなことを、これは国会で言えるはずもなし、あってはならないことだと言うのは当然のことですけれども、現にこういうことが行なわれた、裁判記録にもそう載っておるし、私どもの調べでもそれは十分に信憑力がある。私が繰り返し本人に尋ねても、下を向きながら、それは事実だ。本人に窃盗癖があり異常心理なんだとおっしゃったけれども、それならそんな者をずっと情報提供者に使っていた警察というものはもってのほかだ、どっちにしろもってのほかだということになりますけれども、この鈴木というのは、これはまたあとでいろいろありますけれども、二百四十八というかぎの番号を教えたことといい、こういうことをコンドームまで持っていって関係したということを公判廷で言われ、それに対して適切な反撃をしていないという点から見ても、これは十分に心証がとれるというように思うんですね。  さらに重大なことは、窃盗についても教唆をしておるという事実があります。そういう事実は知っていますか。知らないでしょう。だからもう少し記録を読み上げますからその上で判断をしてください。  三月十三日、すなわち十六日に窃盗事件が起こったわけですが、それの三日前横井久子は鈴木に会っております。すでにそういう親密な関係になってからのことです。そこで、そういうようになったあとで、これは名古屋市大というのは非常にとりにくいのだというようなことを言ったら鈴木のごきげんが非常に悪かったわけですね。そこで横井久子はそういう特別な関係があるのでこれをこのままに済ますわけにはいかない、こういうことで、以下本人の供述を読み上げますが、「取りにくいと言いますと、さっき言ったように教養部や経済がわかっていないとか、公立だから重要視されていると言いますので、私はちょっと腹も立ったもんですから「そんなに欲しかったら県大の火事のような状態になれば取れるかもしれない」と言って私は立ったら」、「立ったら」というのは立ち上がったら、「お金をかばんのへ中へ入れてくれました。」「そのときいくらお金をもらったのですか。」「二千円です。」こうなっているのです。したがって三月十三日というきわめて切迫したときに情報がほしい、情報がほしい、こう言って、それだけとりたければ火事でも起こればとれるかもしれないと言えば、とんでもない、そんなことをしたらいけないと言わずに逆にかばんの中に二千円情報提供費を入れておる。こうなれば明白に教唆共謀正犯じゃないですか。そうして三月十六日にとってきたものを渡したときに本人は非常に喜んでおる。そういうことが裁判記録に明白に載っておるのです。どう思いますか。
  145. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 われわれ、鈴木君と横井久子さんとの関係でございますが、それについてはどこまでも本人がそういう窃盗なりあるいは放火なりというような不法行為をするということを期待して情報を提供してほしいというようなことは、これは言うべきことでもないし、あり得べからざることであって、むしろ横井さんのいわば任意な形での協力関係が望ましいのであって、そういう形での依頼はしたはずでございますけれども、いま言ったような教唆扇動とかそういうような意味合いのことは言うべきではないし、またそういうことはわれわれ言っていないというふうに考えております。
  146. 正森成二

    ○正森委員 本件について、放火が行なわれましたね、三回にわたって。そこで、非常に問題になった。そのときに、不審な女性が警察官に質問をされておるわけです。不審尋問に三月十六日にかかっておる。そこで、横井久子は名前も住所も電話番号も言っておるわけです。ところがあなた方は、だれが犯人であるかということをいろいろ調べている大学関係者に対して、不審尋問をした人間がだれであるかというようなことは現段階ではわからないという意味のことを当初言っておられた。これは当時の記録の中で明らかになっておるのですね。どうしてそんなことを言われたのですか。
  147. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 その件については承知いたしておりません。
  148. 正森成二

    ○正森委員 いま承知していないと言われましたが、翌日の三月十七日に鈴木幸平が横井久子と会って話をしたということは知っておりますか。
  149. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 その点も知っておりません。
  150. 正森成二

    ○正森委員 それでは裁判記録を読みますけれども、三月十七日に本人は鈴木幸平に電話をしております。鈴木は忙しくて会えないというようなことを言っておったわけですが、結局瑞穂三丁目のパリ屋という喫茶店で十一時半ごろに会うております。そして、そこは人が多かったので、山崎川のほうに歩いていって、歩きながら話をしたということが裁判記録に明白に載っております。そして、本人は前の日に放火しておるわけですよ。そのことについて詳しくは言わなかったけれども、警察官あるいは学生から問い詰められるというような羽目になったということをにおわしたら――ここからは速記録を読みますが、「問い詰められた学生はどう言っておったとか、しつこかったかとか、私は新聞に内部の対立だと出ていたと言いますと「警察はそうする」ということを言っていました。それで山崎川のほうは薬学部に近かったもんですから、鈴木さんは何か知ってる人がいるというので、知ったやつに会ってはいかぬというのでまた帰っていきました。」こうなっておるのです。  したがって、三月十七日のお昼ごろにはすでに、大学関係者、警察官からいろいろ問い詰められたということを鈴木幸平は知っており、しかも、新聞に内部の対立だというように出ておると、捜査もしないうちに「警察はそうする」というようなことを言っておる。このことから本人は、なるほど警察は自分のしわざではなしに、内部の対立だというように処理してくれるんだなという、非常な暗示といいますかそういう考えを持ったということが出ておるのですね。こういうことは事件の処理の上からいっても絶対にあってはならないことで、そういうことを鈴木幸平がやっているということを物語っているのではありませんか。
  151. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 われわれとしてはそういう事実は知らなかったわけでございますが、鈴木としてはおそらくそういうことを言ったことはないと思うのでございます。放火事件捜査については、警察としては所轄署に捜査本部を設けて徹底的に進めておったわけでございまして、もしそういうことを鈴木が言い、あるいは聞いたということになれば、捜査本部その他に連絡すべきであったと思うのですが、私どもはその点について聞いておりません。
  152. 正森成二

    ○正森委員 鈴木というのが報告をしなかったのか、あるいは報告をしてもそれが記録に載っておらないのか、いずれにせよ警察内部の怠慢あるいは故意であるというようにいわなければなりませんけれども、その点はその点でよく調査されるように望みます。  さらに三月二十八日にこの人が、大学関係者、国民救援会の人々、弁護士に、不審であるということでいろいろ問われて、そして供述をし、録音テープをとられておるのですね。そこで、翌日の三月二十九日に、急遽警察が警察署ではなしに――「新瑞」と書いて、愛知のほうではどう読むのですか。
  153. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 瑞穂だと思います。
  154. 正森成二

    ○正森委員 瑞穂の誤りですか。「新瑞」と書いてある。速記ではそうなっている。そこの四階建てか五階建てのアパートの二階で、太田課長、そのほかかっぷくのいい一名、これと会うておる。いいですか。そして、その名古屋の窃盗のことを供述書にとられて指印を押したと言うと、びっくりして二人で相談をしておった。そして、横井が録音テープや供述調書をとられた、どうしたらいいかと言うと、あれは証拠がないことだから、強制されたと言えばいいということを言って、早くせい早くせいと言うて、警察署へ連れていった、こう言うておる。そうして、車で瑞穂署へ行ったら、受付には何も言わなくていいから三階の警備課の部屋へ行きなさいと言うので、まっすぐに行った。そして、放火のこと、公安スパイをやっているということ、ノートを取ったということ、窃盗したということ、それすべてについて強制されたというように言え、こういうように言われたと言っているのですね。実にむちゃくちゃじゃないですか。  それから三月三十日には――穂波という警察署がありますか。
  155. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 ちょっと知りません。
  156. 正森成二

    ○正森委員 穂波というところへ行って、そこでもいろいろなことを聞かれております。そして加藤五月、これは何と読むか知りませんけれども、その警察官から「警察の手のうちを谷口達にべらべら言ったと言って小突かれました。」「どこを小突かれましたか。」「背中です。それで帰りたいと言うと、そんなことは許さぬと言って帰してくれませんでした。」こう言うておる。警察の手のうちを谷口たちに――谷口たちというのは国民救援会の人たちですね、べらべら言ったと言ってこづくというようなことをやっておる。名前もちゃんとあがっておる。  それから瑞穂署に丸山という取り調べ官がおる。この男は「三十日に派出所で調べられたときに、丸山さんは、あんなものを取られにゃいくらでも蓋ができたのにと言いました。」「あんなもの」というのは三月二十八日の録音テープと供述調書です。こういうでたらめなことをやったら――あなた方は、情報提供者に情報を提供させるために、どろぼうから火つけの教唆までやり、そして見つかれば、それは隠して、脅迫だ、強制でわざと言われたんだ、ふたをしてやる、こういうようなことを言うとなれば、これはもうもってのほかのことを次々にやっておるということになるではありませんか。こういうことは調べてみましたか。
  157. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 いま先生のおっしゃったことが事実とすれば、これはもうおっしゃるとおりとんでもないことであり、あり得べからざることであり、非常に残念なことだと思います。しかしおことばを返すようですが、一方的な横井の話でもあるわけでございまして、真実はまた別のところにあるかもしれません。それらの点、まだ調査はいたしておらないわけでございますが、私としては、そういうことはあり得べからざることであり、そういうような形で横井をめぐっていろいろなことが行なわれたということは信じられないという気持ちでございます。
  158. 正森成二

    ○正森委員 まだだいぶ残っておりますが、二時の理事懇の時間が近づきましたし、昼めし抜きですから、あとでまた続行するとして、一応終わりにしたいと言いますけれども、当時の警備公安スパイ糺弾各界連絡会議というものがいろいろ警察や公安調査庁とやりとりをしておりますが、それを見ると、これは四月の中旬に、横井久子は放火についても白であるという意味のことを言っているのですね。これは相当いろいろ聞いておるにもかかわらず、そういうことを言うておるということは、ちゃんと資料に残っておって、それは遺憾であったという意味の証言もあるわけです。あなたは繰り返し、そういうことが事実であったとすれば、あり得べからざることだと言っておられますが、たとえば五月五日の段階でも「私が騒ぎにしてビラを取ろうと思った」という点を、動機の点を聞かれたときに言ったら、「丸山さんがすごくおこりまして、おまえがそういうつもりなら信子もすえ子も留置場へ放り込む、おまえのお陰でどれだけ警察が槍玉にあげられたかわからない。」こういうことを言うて頭や背中をこづかれ、そして髪の毛をとって引っ張られるということをやったといっております。私はこの記録を読んだときに、そういうことがあるかと思って、本人に会うたときに実際に聞きましたが、そうだと言っておる。許しを得て、私自身が髪の毛をつかんで、このくらい引いたかといって聞いたら、いやいやもっと引っ張られました、こう言うておる。いいですか、そんなことを、本人がうそを言うか。もういいかげん――放火で三年も実刑を受けておるのです。いいですか、何もこんなにわざわざうそを言う必要はない。それが公判の中でも言い、出てきてからでもなおそれを維持しておるということは、あなた方のほうによくよく反省すべき事実があったというように思わなければなりません。私が聞いたのでは、警備局長はいろいろ事が多いからやむを得ないかもしれないけれども、横に連れてきている下僚にしてみたところで、この記録を十分に読んでおるとは思われない。そんなことで、実際にそういう事実があったかなかったか、そんなことをここで答弁してもらっても、警察はなかったというにきまっている。しかし、私どもはこの膨大な公判記録を全部読み、弁護人にも会い、本人にも会って、ここに書かれていることは真実であろうというように思われます。なぜなら、全経過を見ても、どろぼうだと知って、わかっておりながら、情報提供をまだ被疑者段階から受け、そしてかぎの番号まで言うて、かぎのかかっているところから、普通は入手することのできないものをもらい、火をつけて騒ぎ出せばもっと取れるかもしれぬというのに、二千円渡して、それを容認するようなことをやり、事件が起こった翌日に会うて、デートをしておる、いろいろ話をしておるというような点、それらを考えると、警備警察と刑事警察とが一緒になって、一生懸命この真の動機を隠蔽しようとしたというようにいわれてもしかたがないと思う。そうだとすれば、警察というのはどろぼうを使い、火つけをとらえ、証拠隠滅なんか弁護士にも絶対にさせないというように言うておるのに、全く逆なことをやっておるというようにいわなければなりません。あなたは、これは本人の一方的な言い分でありまして、こういうように言い抜けをしようと思い、されるかもしれない。あるいはそうではない、私はほんとうのことを言っておると言われるかもしれないけれども、現実に三年の実刑を情報提供者として受けてしまった人が、公判廷で裁判所にほんとうのことを言いますと言っておる。三年の刑をつとめて出てきた人が私に会って、ほんとうですかと聞いたらやっぱりほんとうですと言っておる、ということはもっと尊重して、自分の部下を取り締まるということでなければならない。どこの世界に情報提供者と肉体関係がありました、コンドームを持って二回目からは行きました、そんなことを言う者がおりますか。厳に反省をして、警察の姿勢を正さなければならぬというように思いますが、あなたは警備局長として、なおこの件について、いま鈴木がどこへ勤務しておるか、瑞穂署から中部管内にいまかわっておるということも聞いておりますが、そういう点も調べて、私どもは、警察にもし良心があるのなら、国民に信頼をされたいと思うのなら、こういう関係者は処分するのが当然だ。それがまだ警察官として、国民の一部が犯した犯罪の取り調べをするというようなことはもってのほかで、許されないというように思います。それについてのあなたの覚悟のほどを聞きたい。
  159. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  また繰り返すようで恐縮でございますが、われわれ情報の提供を求める場合は、どこまでも提供者の任意と善意と警察に協力するという信頼関係に基づいてやるべきであり、それがあるいは金銭的な魅力なりあるいはいろいろなほかの打算的な問題にからめて、そういうことはあるべきものではないというように考えております。また、そのように指導をしていかなければならぬ。そして私はこの一連の本件の過程を見ますと、知らなかったとはいえ、そういうような不正、不法な行為をした女性を協力者に使っておったということは、あとでわかったとはいえ、非常にまずかった、これは慎むべき行為であるというふうに反省をいたしておるわけであります。愛知県警もそういう意味では私は深刻に反省をいたしておると思います。いま先生のおっしゃった趣旨に沿った情報提供の関係でなければならないということは、私も全く同意見でございますので、そういう線に沿って姿勢を正していきたい、こういうふうに考えております。
  160. 正森成二

    ○正森委員 それでは時間が参りましたので、公安調査庁長官、長い間警察関係のことを聞いていただいて失礼しましたけれども、あなたに聞いていただいたのは、竹田空海というおたくのほうの公安調査官がまず情報提供者にして、そして窃盗事件が二度まで起こって、二度目に警察の情報提供者にくらがえしたということから、その担当の警察官の中にまた不心得者がおって、この女性が公判廷で言っておるような、こういうみじめな目にあったということになりますと、やはりそのスタートをつくった公安調査庁というものも十分に反省してもらわなければならないと思ったから、失礼だと思いましたけれども、最後まで残っていただいたわけです。あなたとして、部下に、情報提供をいろいろ工作する場合でも、こういうようなことが万が一にも起こることがないように、これは厳重に自戒してもらいたいというように思いますが、なお重ねてあなたの御見解を伺いたいと思います。
  161. 川井英良

    ○川井政府委員 この件は別といたしまして、一般的に申しまして、違法な方法による調査はさせないように努力したい、こう思います。
  162. 正森成二

    ○正森委員 私は石川の事件もありましたので、再度長官に確かめたいと思いますが、こういうケースもありますから、窃盗の前科のあるような者をいやしくもものをとってくるというような情報提供者には絶対にしないということを約束できますか。
  163. 川井英良

    ○川井政府委員 いままでもそういうふうにしていると信じておりますけれども、なお今後におきましても同じような姿勢でまいりたいと思います。
  164. 正森成二

    ○正森委員 そうしていただかないと、情報提供者が窃盗の前科があった、しかしだいじょうぶだと思ってやっておった、またやって申しわけないということの繰り返しではよくないから、そういう前歴のある者はそもそも情報提供者にはしない、幾らあなた方がのどから手が出るほどほしいと思っても、そういう者を使ってものをとってこさせるというようなことは絶対にしないというように部下に厳重に通知をする、そしてそういう方向で指導する、これはよろしいね、公安調査庁、警察。――声に出して言うてください。
  165. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 これまでも私どもはそういう方針で指導しておったわけでございますが、念のために、またそういう意味で十分戒心していきたいと思います。
  166. 川井英良

    ○川井政府委員 同じ考え方でございます。
  167. 正森成二

    ○正森委員 それでは時間が来ましたから……。
  168. 中垣國男

    中垣委員長 次回は、六月二十九日金曜日午前十時理事会、十時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時五十九分散会