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川島政府委員 お答えをする前に、今度の
監査制度はいわば
粉飾決算の問題が起こってから思いつきにやったのじゃないかという感じに受け取れたものですから、その点をひとつ釈明させていただきたいと思います。
御
承知のように証券取引法というのが戦後間もなくできまして、
公認会計士の
監査というものが始まったわけでございます。そのころから
商法の
制度との
関係がどうなるのかということが問題になっておりまして、三十年代になりましてから
公認会計士の
監査の
制度が整備されてまいりました。そのころからもうすでに何とか
商法の
改正を考えなければいけないのではないか、こういう
議論があったわけでございまして、問題はその辺から尾を引いているわけでございまして、
粉飾決算の問題がそれに拍車をかけるということになったわけでございますけれども、これは早晩手をつけなければならない重大な問題の
一つであったわけでございます。それから御
承知のように
商法は戦後
改正が加えられまして、特に
昭和二十五年にアメリカの
制度を大幅に取り入れた形の
改正が行なわれまして、それが実用にはたして合うのか合わないのかというような点もございまして、
法制審議会の
商法部会では全面的に
株式会社制度については検討する必要があるということになったわけでございまして、今回の
監査制度の
改正は、そのいわば一番最初の仕事ということがいえるかと思います。今後
株主総会あるいは
取締役会の
改正がおそらく議題にのぼってくることと思いますが、従来
株主総会につきましては、現実の姿と
法律の
規定との間に非常に大きな差がある。実際の
株主総会というのは株式が大衆化されたということもございますけれども、白紙委任状を集めて、そして形式的にごく短時間に済まされてしまう、こういう形でございまして、はたしてこれで
会社の最高機関としての機能が果たしていかれるのかどうかということが問題になるわけでございます。
そこで
株主総会の
改正につきましては、いわば相反する二つの考え方があろうと思います。
一つは、株主の議決権などの権利の行使を容易にさせる、そういう意味で、現行法では認められておりませんけれども、書面による決議なども認める、そういう緩和の方向に向かったらどうかという
意見、それからもう
一つは、いわゆる所有と経営の分離と申しますか、そういう立場をさらに徹底いたさせまして、
株主総会には定款の
変更であるとか役員の
選任、その程度の
権限を持たせることにしておいて、
利益の処分であるとか
決算というようなものは
取締役の責任において行なわせる、こういう形に持っていって、そのかわり
取締役に対する監督を強化する、その方策を別途考えていくべきではないだろうか、こういうような問題があるわけです。
それから
取締役会につきましては、現在社長とか会長とかいうのがおりまして、それが一番権力をふるっておる、あとは社内重役でもってその号令に従って動いておるというような傾向が一部になしとしない、こういった形をもう少し
商法の所期するような方向に持っていくためには、
取締役会の
権限とかそういったものについて検討を加える必要があるのではないか。以上のような点が大きな
問題点としてあげられると思います。しかしこれは別に国の政策的な問題ではございませんし、やはり実際界の
意見を聞きながら、また学識経験者の
意見というものを十分に聞きながら
改正していかなければなりませんので、いずれの方向が妥当であるかという点につきましてはちょっと私からもお答えいたしかねる次第でございます。