○
安原政府委員 まず、放棄要請するのは
アメリカの裁判が信頼がおけない場合であるというふうにおとりいただいたとすれば、それは失礼ですけれ
ども誤解をいただいたわけでございまして、私
どもは
アメリカ側に裁判させることが適当ではないという場合といたしまして、たとえば
公務中の
事件ということになりますと、大体
故意犯というのはあり得ないので、
過失犯といたしますならば、重大な
過失で、爆発物を配置させて多数の
日本人が死傷したというような場合、犯行の態様なり及ぼした結果の重大性等から、
わが国において司法権を行使するのが当然であると
考えられ、それが国益に合致するような場合というふうに、放棄を特に重要と
考えるというのはその程度にしぼりをかけた
考え方だろうというふうに申し上げたわけでございます。
本件につきましてどう解釈するか、まさに見解の問題でございますけれ
ども、私
どもとしてはそのように特に重大な
事件とは
考えられないし、また実際問題といたしましては、
本件につきましては、現在までの
捜査の
状況によれば、
公務中の
犯罪であり、かつ
過失自体が非常に認めにくい
状況であるということでもございますので、放棄を要請する事態ではないというふうに
考えておる次第でございます。そういうことでございまして、
アメリカを不信でやるということではございません。
なお、盲従するというお話がございましたが、かつて
昭和三十二年
ジラード事件にもあらわれておりますように、私
どもはあくまでも主張すべきことは必ず主張しておるわけでございまして、決して盲従しておるわけではない。また、この
事件が沖繩の県民に与えた感情的なものもよくわかっておりますので、盲従するどころか主張すべき点は大いに主張して、
わが国の
裁判権を行使する前向きの姿勢でありますが、この
協定も
協定でございますから、これに基づいてやるというわけにはいかない事態であるということを申し上げておるわけであります。
なお、
公務中のものについて第一次
裁判権を認めるということは、これはもう国際法上外国軍隊の
行動そのものでもあるわけでございまするから、こういうものについて一次
裁判権を外国軍隊側に与えるということは国際法上の原則といってもいいと思うのであります。決しておかしいことではないと
考えておりますし、大臣のお
ことばにさからうようでございますけれ
ども、このような
公務証明書の
公務の認定のしかたのプロセスというものは、これはNATOでもそのとおりのやり方をやっておるわけであります。駐留軍がおります西独等も同じことでございまして、決して
日本だけが盲従的にこのような
規定をしておるわけでもないということも十分御理解いただきたい、かように
考えます。なお、
反証をあげることはできるわけでございます。
最後に、先ほど申しましたように
わが国の
裁判所の、刑訴三百十八条の
裁判所の自由心証をこの
協定が制限するものではないことも明らかになっておりますので、決して屈辱的な
協定とは
考えておりません。