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川島政府委員 会社の目的につきましてはいろいろ問題があるわけでございます。
仰せのとおり定款に記載
事項になっておりますけれども、これがいかなる意味を持つものであるか、たとえば権利能力の範囲を示すものであるか、あるいは
行為能力の範囲を示すものであるかといった点にまで及びまして、判例あるいは学説の上でいろいろな
議論のある問題でございます。実際の例といたしましては、日本の
会社の場合には比較的代表的なものをあげまして、
あとその他事業目的遂行に必要な事業といったような形で書いておるのが普通かと思います。これに対しまして、たとえば
アメリカあたりの
会社の目的を見ますと、原稿用紙にいたしまして数十枚にわたるような多数の項目が列挙してございます。そのいずれがいいのかということになるとなかなか問題があろうと思います。
一つには
会社がどういう範囲の事業を行なうのかということを示すメルクマールであるという意味におきまして
会社は厳格にこれを守らなければならないと思います。しかしながら
会社と取引をする第三者の
立場から申しますと、一々
会社の定款を見、あるいは登記簿を見て取引をするわけではございませんので、目的外の
行為をしたことが
会社の権利能力の外であるということになりますと、第三者に迷惑がかかる、こういう点もございます。そういうことで、判例などは目的遂行に必要な限度では
会社に
行為能力がある、権利能力もあるというふうに認めておると思いますが、これは現実の取引を円滑に行わせるという趣旨からやむを得ない解釈であろうかと思うわけでございます。ただ、
仰せのように、目的に全然掲げられていない、あるいは目的から演繹できないような事業を非常に大規模に行なう、それによって収益を上げるというような
行為は非常に
商法としても予想していないことでございますし、こういったものについては厳格な取り締まりが必要であろう、今回の
改正におきましても、たとえば
取締役が
会社の目的に反するような
行為をした場合には、
差しとめ請求ができるといったような
規定もあるわけでございますけれども、そういう意味で、
会社としては目的の範囲を十分頭に入れて、そしてそれに忠実な行動をとらなければならないということになろうと思います。具体的に
法律の上でそれをどういうふうに規制するかということになりますと、規制するのがいいのかどうかという問題を含めまして非常にむずかしいことになろうと思うわけでございまして、こういった問題につきましては、十分判例の動向を見、あるいは学者の
意見も伺ってみた上でありませんと、はたして現在のままでいいのか、
改正する必要があるのかという点については、私自信をもってお答えするわけにはまいらないのでございます。御指摘を受けましたので、十分研究さしていただきたい、このように考えております。