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1973-05-09 第71回国会 衆議院 法務委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年五月九日(水曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 中垣 國男君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 谷川 和穗君 理事 古屋  亨君    理事 横山 利秋君 理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    植木庚子郎君       住  栄作君    早川  崇君       佐野 憲治君    日野 吉夫君       正森 成二君    山田 太郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         法務大臣官房長 谷川 保一君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省入国管理         局長      吉岡  章君         公安調査庁長官 川井 英良君  委員外出席者         郵政大臣官房電         気通信参事官  富田 徹郎君         郵政省人事局審         議官      浅尾  宏君         日本電信電話公         社総務理事   山本 正司君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 中垣國男

    中垣委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。小島徹三君。
  3. 小島徹三

    小島委員 私が質問申し上げたい点は、廖承志一行の方々に対する国内における態度に関する問題でございます。私がなぜこのような質問を取り上げたかと申しますと、私は元来、友人関係にいたしましても国と国との関係にいたしましても、お互いに悪いことは悪い、いいことはいいというふうにすっきりとけじめをつけておかないと、将来とんでもない大きな間違いを起こすもとになる、かように思いますのでこの問題を取り上げた次第でございまして、私の質問には裏も表もございません。何らの底意もございません。サザエさんの漫画家がかいておるいじわるばあさんのようなああいう底意を持って質問するわけではございませんからして、質問額面どおりに受け取っていただきたいし、またお答えを願うほうもすなおにお答えを願いたい、かように思う次第でございます。  最初にお伺いしたいのは、廖承志一行はどういう資格入国を許されておるのか、その点をまずお聞きしたいと思います。
  4. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 廖承志氏御一行は、中日友好協会の代表という資格親善のために日本訪問する、こういうことでございます。
  5. 小島徹三

    小島委員 入管当局親善目的のためにお許しになったということでございますが、それでは、もしその滞在期間中において日本国政に関するような問題について発言したりするということは、私はある場合には滞在目的に沿わぬことがあると思うのでございますが、入管局におきましては、入国を許しても——もちろん廖承志一行に限りませんけれども、親善目的のために入ってきた者が好ましくない行動をとったという場合には、これは一定基準に当てはめて国外退去を求めるというようなこともできるわけだと思いますが、いかがでございますか。
  6. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 小島先生、これはありのままに申し上げるのでございますが、入国目的に反する言動入国後において行なわれた場合にはという仮定の御質問、この仮定の御質問に対して、さような事態があった場合は断固たる態度をとらねばならぬということを答えますことは、この両国友好親善関係にたいへん誤解を招く、仮定で答えているんじゃないかという説明をしなければならぬということになりますので、そういう入国目的に反するような言動があった場合にはどうするのかという御質問に対するお答えは、しばらく御遠慮をしておきたいと思います。
  7. 小島徹三

    小島委員 私はいま廖承志一行行動についてだけ聞いたわけじゃなかったので、一般的に、入国を許可する入管局においては、滞在目的と異なった行動をとった場合には、一定基準に当てはめてこれに国外退去を命ずるとか追放するということができるのではないか、おやりになるのではないかということを聞いたわけであります。
  8. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 御訪問廖承志一行言動を離れて、一般論といたしましては、わが国の法規に照らし断固たる処置を講じます。
  9. 小島徹三

    小島委員 それではお伺いしたいと思いますが、もちろん入管当局としては、入国を許可したあとでその入国した人がどんな行動をとるかについて一々これをフォローして調査しておるということは、とてもできるものではございますまいから、おそらくやっておられないだろうと想像いたします。だがしかし、もしそこにそういう疑いのある情報が入った場合には、その情報に基づいてお調べにならないと、追放する、国外退去を言いつけるということはできないわけでありますから、そうなれば、たぶんその調査をなされるであろうと思いますが、いかがでございますか。
  10. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 おことばのとおりやります。
  11. 小島徹三

    小島委員 それでは私は、ここに一つ情報を提供いたします。これは新聞でございますから、たぶんごらんになっておると思いますし、おそらく入管当局は知らぬとはおっしゃらないと思いますが、私はあらためてここに一つ情報を提供いたします。  五月七日付のサンケイ新聞東京新聞でございますが、この新聞を読んでみますと、この中にははっきりと、廖承志一行のある人が長崎において、日本共産党というものは修正主義のゲリラである。宮本一派というのは、ほんの一握りの人間であって、大多数の人間革命を願っておるのだというようなことをしゃべっておるわけでございますが、この新聞紙上だけでは、これは公共場所であるのかどうか私にはわかりません。だから、これをもって直ちにどうこうというわけじゃございませんが、こういうような、いやしくも日本国内においては一応公認された政党として認められ、そして国政におきましても、直接政治を行なっておるわけではございますまいけれども、自民党内閣と違いますからそうではないかもしれませんが、国会を通じて国政に参与しておることは事実でございます。そういうものに対して、これを非難、攻撃するというようなことは、これ一回であるならばともかくといたしまして、かりにこういう事実がたびたび重なるということになった場合は、これは一種の政治活動として国政に干渉するものである、内政干渉に当たるというような場合も起き得ると思うのでございますが、そういう仮定には、また返事はできないとおっしゃるかもしれませんが、それでは具体的なことを一つ取り上げてお聞きしたいと思います。こういうことは、一体親善旅行で来た人の目的にかなっておるものでありましょうか。それとも、そうじゃない、少し好ましくない行き過ぎの行動だとお考えでございましょうか、それをお聞きしたい。
  12. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 座談会が開かれ、その座談会に出ております出席者の一人から、一体日本共産党というものと中国共産党というものは、どこが本質的に違うのかという質問が出た。その質問に対して答えたということが真相のようでございます。この座談会自体公開座談会とも受けとれないようでございます。そういう質問が出たのでこれに対して答えをしたということが真相のようでございまして、白昼公然、わが国の大事な政党攻撃して顧みなかったものだというふうに解釈ができないと認められるのでございます。したがって、そういう事情でありますから、これが内政干渉である、行き過ぎた政治活動であるというように受け取ることはむずかしいのではなかろうか、こう考えております。  本来の法務省考え方わが国法律に基づく考え方でございますが、それは今回のような廖承志氏御一行の御訪問ということに関連をいたしましては、日中両国親善友好関係というものから考えてみまして、あらゆる御一行行動につきましてはほほえみと好意をもって、拍手とほほえみをもってこれを迎える。そういう心持ちですべての行動解釈するというふうにやっていきたいものだと考えておるのでございまして、そういう心持ちから、これをどのように厳格に解釈をいたしましても、内政干渉をやっておるんだ、具体的政党攻撃をしておるんだというようにはどうも判断をいたしかねる、これが解釈でございます。
  13. 小島徹三

    小島委員 それは座談会という形ということですが、座談会というのはどの程度のものを座談会とおっしゃるのですか。座談会という名前さえつければ公共場所じゃないということになるのですか。具体的にこれは何人おって、どういう場合だったということの調査はまだできていないだろうと思いますが、だから、座談会という名前をつけさえすればいいということになれば問題になると思いますが、一体座談会というのはどの程度のものをおっしゃっておるのですか。
  14. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 座談会であったから差しつかえがない、座談会でなかったらいけないという意味を申し上げたのではない。私の舌が足らぬのかもしれませんが……。私が申し上げておりますのは、こういう席で、こういう事情で、こういう経過で、こういう話をしたんだという場合に、これを総合して視察をいたしますのに、内政干渉である、具体的政党攻撃である、したがって行き過ぎた政治活動をしたものだという判断は、全体から見てそうはならぬ、こう言うておるのでございます。
  15. 小島徹三

    小島委員 大臣のおっしゃることはわからぬではございません。好意と善意をもっていろんな行動をながめるということは、まことに当然のことだと思います。だがしかし、そういう好意をもって見たところで、こういうことが一回も二回も三回も続いていくということになったら、それは必ずしも大臣のおっしゃるとおりには解釈はできないのではないかと思いますが、私はこれ以上追及していこうとも思いません。もうその程度で私はこの問題は切り上げます。あと関連質問もあるそうでございますから、私はこの程度にいたします。  次に、先般のストライキの最中に西舞鶴郵便局で起きました、局の応援のために出張しておった、八鹿というところの郵便局のある課長が肋骨を折ったけがをしたという具体的な事実があったそうでございますから、その点についての詳しい説明をひとつお聞きしたいと思います。
  16. 浅尾宏

    浅尾説明員 お答えいたします。  西舞鶴のいま先生指摘事件は、今次春闘で二十六日、七日、八日の三日間にわたるストを計画したわけでございまして、西舞鶴郵便局はその中の二十六日にストの拠点に指定をされたわけでございます。  起きました傷害事件でございますが、前日の二十六日の午後二時過ぎからでございますけれども、二十六日からのストに対処いたしまして、応援管理者あるいは自局の管理者あるいは郵政局管理者等警備体制と申しますか、応援体制と申しますか、そういう体制をしいておったわけでございます。  一方、全逓の組合員及び部外の応援人たちもおったようでございますけれども、それが二十五日の午後二時過ぎから郵便局に集まりまして、その数が約四百名程度だったと聞いておるわけでありますが、その人たち郵便局局舎の中まで侵入いたしてまいりまして、だんだん郵便局の二階の廊下にまで入ってきて、しかもそういう人たち状態が非常に喧騒にわたった。局内で仕事をしている者たち業務に非常な支障になる、こういう状態になったわけでございます。そこで郵便局側といたしましてそういう事態を排除したい、こういうことから退去命令を出したわけでございますが、そういたしますと、その組合員などが退去命令を出しました者を拉致しようとした。これに対して拉致させまいということで、先生指摘のいまの八鹿貯保課長がそれの応援にかけつけた。それが組合員に力で室外に出されまして、それで胸を突くなど、実力での傷害を受けた。こういう事件でございます。
  17. 小島徹三

    小島委員 そういたしますと、応援にかけつけた課長という者のやったことは公務なんでしょうか。何でしょう。
  18. 浅尾宏

    浅尾説明員 さようでございます。
  19. 小島徹三

    小島委員 公務といたしますならば、その公務を執行しようとしておった場合に、これを暴力によって拒否してしかもけがさしたというような場合においては、ある意味において公務執行妨害ということになるのじゃないでしょうか。いかがでしょう。
  20. 浅尾宏

    浅尾説明員 いま先生指摘点等も含めまして、その事実関係と申しますかあるいは暴行を加えた事実関係、そういうものを詳細に調査しておるわけでございます。したがって、現在西舞鶴郵便局あるいは近畿郵政局等中心になりましてその事実関係調査してその後結論を出していきたい、かように考えております。
  21. 小島徹三

    小島委員 私のお聞きしたのは、西舞鶴郵便局応援に頼んだというのですから、それはおそらく郵便局仕事をさせるために応援を頼んだものだと思うのですが、具体的にその課長が、先ほどおっしゃったような退去命令を出した者を拉致しようとしたのを食いとめようとしたという行為公務になるのかと聞いたら、それは公務だとおっしゃったのですが、それはどうなんです。それが公務だということになったら、それを暴力によって排除してけがをさした行為公務執行妨害に当たるのじゃないかということを私はお聞きしたわけです。それは公務でないということならまた別問題ですよ、威力妨害というか、何か威力によってするということになるかもしれませんが。
  22. 浅尾宏

    浅尾説明員 八鹿郵便局課長でございますけれども、西舞鶴郵便局業務応援するという意味業務発令をいたしております。したがって公務だと考えております。
  23. 小島徹三

    小島委員 そこで警察にちょっとお聞きしたいのですが、今日の刑事訴訟法のことですからして、けがをさした人間が具体的にだれかということをはっきりしない限りはなかなか犯人は検挙できないというのが実情であります。安保騒動におきましても、ああいう多数の団体行動においてだれが犯人かということについては非常に困難性があるということは私は認めます。だが今日の西舞鶴事件について、現在警察は一体どこまで調査が進んでいるのか、お聞きすることができるならばちょっとお聞きしたいと思います。もっともできないということであればけっこうでございます。
  24. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  本件については、ただいま御説明のあったような事案、これは二十六日に所轄署警備課長が承知いたしまして、いろいろと郵政当局事情をあわせて調査した結果、公務執行妨害並びに傷害罪の容疑があるということで、現在被害者五人並びに関係者等を招致して捜査を進めている段階でございます。
  25. 小島徹三

    小島委員 私先ほど申しましたとおりに、具体的にだれがけがをさせたかということで傷害罪に当たる人間をさがすことは、なかなかむずかしい問題だろうと思います。しかし公務執行妨害罪ということになってきますと、私はそこにおって一緒にこれを食いとめようとした人間というものは、何人か何十人か知りませんけれども、公務執行妨害を共同でやったということだけははっきりするのじゃないか、こう思うのです。傷害罪で調べるということになると、おのずから調査の範囲、難易というものがはっきりしてくるのですが、そういう場合、先ほどおっしゃったようにはたしてこれが公務執行妨害になるのならば、犯人の捜索でもある程度できていなければならぬ。四百人とおっしゃいますけれども、大体どこの者が来ておるかぐらいのことはおわかりになっているだろうし、何十人かということになれば、その中にはあれがおった、これがおったということはわからぬことはないのだろうと私は思うのです。だからこの点は至急に調べていただきたい。そしてはっきりと公務執行妨害したものだということを先ほど言明された以上は、公務執行妨害罪ではっきりした結末をつけていただきたい。もしこれが公務執行妨害にならぬというなら、ならぬということをはっきりしたもので示していただきたい。これをお願いして私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  26. 横山利秋

    横山委員 自由民主党小島委員質問に対して関連質問をいたしますのはなにでございますけれども、しかし前段の質問は私ちょっとあっけにとられたような次第でございました。日本共産党を代表して御質問になったのではないかと思うくらいの、えらい調子でございますけれども、ちょっと関連質問をさせていただきたいと思います。  法務大臣にお伺いいたしますが、廖承志一行友好のために日本をずっと歴訪されまして、政界、財界、労働界、地方自治体と、全国にわたって多大の親善の成果をあげていることはお認めになりますか。
  27. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 おことばのとおりたいへん親善の成績をあげていらっしゃる、こう考えます。
  28. 横山利秋

    横山委員 それから第二番目の質問は、確かに中国と日本共産党との確執というものは歴史的なものであり、いまに始まったことではなく、日本国じゅうすべての人間知っておるということはもちろんお認めになりますね。
  29. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 はい。
  30. 横山利秋

    横山委員 そして廖承志一行日本にいらっしゃったとき、最初質問に答えて、表現は適当でないかもしれませんが、要するにお答えをする事情にないというふうに第一番に言われた。それからいまあなたもお認めになったように、みずから進んで言うたことではなく、座談会での質問に答えてやむを得ず言われたことである。宇都宮さんの会合ですか、それでもようやく質問に答えて、事の原因はソビエトに対する認識の相違というところにあるのだというようなことを答えられたと今朝の新聞が報じておるのでありますが、要するにそれらの一連の事実を考えてみますと、日本へ来られて廖承志一行日本共産党との関係についてみずから進んで発言されたものではないという事情は、先ほどあなたもお認めになったようにそう確認してi確認という意味じゃない、あなたも同一の認識を持っていらっしゃると思いますが、いかがですか。
  31. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 進んでおっしゃったものでなしに、質問に応じてお答えになったものと理解をしております。
  32. 横山利秋

    横山委員 そこであなたが先ほどおっしゃったことばにちょっとひっかかるのでありますが、あなたは日本共産党わが国の大切な政党だとおっしゃった、小島委員もまた日本共産党を、議会主義を通じてやっておる政党についてとやこう言うのはおかしいということをおっしゃった。期せずして政府自民党日本共産党に対する認識として、大切な政党だといい、議会を通じてやっておる政党だという発言がありました。私はそれを了といたします。それならば、そういう政党に対してなぜ一体破壊活動防止法調査指定団体にしておるかという点をお聞きしたい。
  33. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 それは御質問がありますから必要な限度でお答えをするというつもりで申し上げるのでありますが、私は、わが国政治議会政党政治をやっておる、議会運営政党責任において運営が行なわれておる、こういう政党中心議会運営政治という現実の政治をいたしております以上は、所属党員大小にかかわらず、議会運営に当たっております責任政党というものはみな大切な政党、大事な政党、こういう観念が私の頭の中にこびりついておるのですね。自由民主党けが大切な政党である、それ以外は大切でないなど夢にも思っていない。大小にかかわらずりっぱな政党である、これは大事にしなければならぬ政党である、傷つけてはならぬ政党であるという考え方に立っておる。それがまず第一段の私のお答えでございます。  それから、それならばなぜ一体破壊活動調査をやるのか。それはそういうことを仰せになるのがおかしい。破壊活動防止法という法律がございます。この法律の存在というものを忘れないでものを考えるということになりますと、破壊活動防止法の命ずるところに従って、将来破壊活動をするおそれがあるかないかということに関して克明に調査をいたしますことは、破壊活動防止法の命ずるところ、そのあるかないかを調べている。そういうことを調査いたしますことは、破壊活動防止法というものを国が持っておる当然の帰結である。その破壊活動防止法において私の法務省の外局である公安調査庁がその調査を行なっておるということは、法律上の義務を果たしておる。それがりっぱな政党であるかないかということとは別でございます。区別をしてお考えをいただきたい。
  34. 小島徹三

    小島委員 いま横山委員の御発言の中で、私のことばが足りなかったのかもしれませんが、私の言ったことを誤解されておる点があるように思いますので、一言つけ加えさせていただきます。  私は、日本共産党議会主義政党であるというようなことばを使った覚えはございませんし、私が申し上げたのは、日本共産党といえども国会に席を持っておって、そして国政に参与しておるんだ、そういう政党に対して、日本で公認されておる政党に対して云々することはと申し上げたわけでありまして、私は何もここで言いわけをするわけではございませんが、日本共産党議会主義政党看板どおりそうであるというふうに私がここで断言する必要もなければ、また否認する必要もないと思います。そういうことは申し上げた事実はないということだけ申し上げておきます。
  35. 横山利秋

    横山委員 たいへん興味あるやりとりになって、お聞きになっていらっしゃる方も大事な焦点がここにあるということはおわかりだと思うのであります。明らかに政府は矛盾をおかしておりますね。大事な政党という、大事ということをあなたから言われる筋合いはないと日本共産党にかわって私は申し上げたい。それは失礼ですよ。大事なんということを、吉田さんじゃあるまいし、あなたから言われる筋合いはないとかわって申し上げますが、しかし、その気持ちは日本の国にとって合法的な政党であるからという意味だろうと私は思うのであります。  そこで問題は、こういうことであるのにかかわらず破防法によって調査指定団体になっておることは、あなたの議論からすれば、将来とも破壊活動をやるかもしれない、やらないかもしれないから調査をする。やらないときまっておるならば指定を解除すべきである。やるかもしれない、やらないかもしれない、なぜそういうあれがあるかというと、日本共産党には前にそういうことがあったから、完全にやらないとは保証できないから、やるかもしれないから、やらないかもしれないから調査をする、こういうわけです。破壊活動をやるということはどういうことであるか。ありきたりのわかりやすいことばで言えば、国の革命をするということだと私は思うのであります。そこで革命というものは一体どういうことなのか。先ほども廖承志一行のある人が言われたこととして小島委員から話があったのですが、それによれば、ある人が、共産党の中央は修正主義である、宮本一派けがそうであって、大衆革命をやろうとしておるということを言うたといわれる。その革命とは一体何だ。党は違いましても近代的な政治家がここに集まっておるときに、革命とは何か、権力が一つ階層から一つ階層に移ることである、その中には暴力革命もあれば平和革命もある、そういう簡単な論理はおわかりのはずなのに、革命といえばすぐさまそれを暴力革命と結びつけるところに非常に認識の違いがある。ある人が言ったという、大衆革命を望んでおるというその革命暴力であるか平和であるかという議論もしないで暴力革命と結びつけてしまうということに、まず第一の問題があると私は思うのであります。  そこで、しかし政府破防法の適用、調査指定団体にしておるということは、この後者の判断暴力によって革命をやるおそれがある、やらないかもしれないしやるかもしれないという根底には、まさにある人が言ったこととずばり政府と共通の意思がある、こういうことなんですよ。あなたはときどき破防法があるからしょうがないじゃないか、こうおっしゃる。破防法法律の中に日本共産党、朝鮮総連とは書いてないのですよ。破防法を適用、運用するにあたって、あなた方が朝鮮総連や日本共産党は将来破壊活動をするおそれがあるかもしれないし、ないかもしれないということは、半分はおそれがあるという立場に立っているじゃないか。立っているとすれば、小島委員指摘したある人とまさに共通の意思があるじゃないか。その意味では、そういう論理的な矛盾をあなたはおかしながらカワズに小便みたいにしゃあしゃあと答弁されるということは非常に不親切である。もっと腹蔵ない意見を言うべきである。もしもそれあなたが小島委員に答えたとおり、私の質問に答えたとおりであるならば、日本共産党破壊活動防止法による調査指定団体から削除すべきである。いかがですか。
  36. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 横山さん、あなたは日本共産党のことについてそんなに仰せにならぬでいいじゃないですか。それはどういうことですか。私ははっきりものを言うことの好きな男で、影響はあまり考えぬ男なんです。そういう御意見を仰せになるのなら、国会破壊活動防止法などという法律をおやめになったらいい。破壊活動防止法という法律を上から下へ天がひっくり返るような大騒動をして制定しておいて、官報で告示をしてこれが有効な法律であるといって施行しておいて、そうしてあなたのようなことを野党から仰せになるということは、私はここで聞いておって心外だ——より心外ということばがあるから、あなたが仰せになっていることを聞いておると、心外なことをおっしゃるものだ。よくもああいうことがしゃあしゃあと言えるものだ。社会党のことをおっしゃるのならわからぬことはないですが、共産党のことをあなたが横合いからおっしゃるということは。革命とは何ぞや、そんなことは私は答える力はありませんよ。それは革命をやるやつにお聞きをいただきたい。ほんとうにびっくりするようなことばかりあなたはおっしゃるんですね。答えの余地はないですよ。破防法を廃止してから言うてください。破防法がある限りは活躍せねばならぬ。私の外局である公安調査庁が活動を鈍らすことは許さぬ。予算も通っておることだ。活動せよとの国会の御意思は明らかです。これは活動せぬわけにはいかぬ。こういうふうに割り切ってお考えをいただかぬと、破防法はつくっておいて、それを認めておいて、破防法に基づく調査の権限を公安調査庁に与えておいて、おまえは何をしておるか、けしからぬではないかということは、けしからぬ話であります。答えになるかならぬか知りませんよ。
  37. 横山利秋

    横山委員 まあようほんとうにしゃあしゃあとあなたはおっしゃる。大体あたかも野党が破防法をつくったような話です。あきれはててものが言えぬ。しかし、あなたもそういうような答弁しかできないということで、私の質問しておることにずばりの答えができないということは銘記しておいてもらいたい。あなたが廖承志氏に関連をしまして、日本共産党わが国にとっては大切な政党である云々と、その共産党破壊活動のおそれありというわけで破防法調査指定団体にしておることとは明らかに論理が矛盾しておるということを明白に申し上げておきたい。  それから何で社会党がその共産党のちょうちんを持つかという答えも明白にしておかなければなりません。これは私がこの前ここでも何回も申し上げたのですが、公安調査庁はいま二千人ぐらいですか、そして予算が四十億ぐらいですかな。べらぼうな金を使って、主力が日本共産党と朝鮮総連、あと右翼それから暴力団体団体ですか、やっておるのですけれども、むだづかいだと私は考えているからです。国民の税金のむだづかいである。これほどむだづかいはない。朝鮮総連にしたって、日本共産党にしたって、いまあなた方お二人が——小島委員あとで訂正はされたけれども、与党も政府廖承志問題に関連をしていみじくも言われておることが、不必要な調査指定団体、税金のむだづかいであるから私ども社会党は申し上げる。この点はひとつ明白にしておきたい。  それからもう一つ、たいへん小島委員に申しわけないのですけれども、西舞鶴事件であります。西舞鶴事件のことを、あまり小島委員の言ったことをあげ足取りみたいなことを言うのは避けたいと思いますから、問題を整理だけして警察庁なりどこかで議論される場合には考えてもらいたい。  和歌山南局で、四月十七日ストライキの際に、全逓の写真班の一人が当局側監視班に取り囲まれ、もみくちゃにされたが、その際右手に五日間の切り傷を受け、さらに八ミリカメラ一個を奪われた。警察に被害届けを出したけれども、八ミリカメラは出てこない。  それから、松江局では、四月二十六日ストライキの際、松江局の集配課長は、すわっている全逓の動員者の肩を足でけって警察に連行され、翌二十七日の朝帰宅をした。課長がそういうことをやった。  それから、西舞鶴局におきましては、郵政局の某課長が足が痛いと言っているらしいとのことであったので、二十六日正午ごろ、同局玄関でスト責任者の京都地区副委員長が古谷氏に向かってどこが痛いのかと聞いたら、どこも痛くないと答えた。  それから、二十六日の毎日の夕刊で報ぜられた八鹿局の課長受傷——二週間という話ですがについては、組合側では全然了知してないということであります。  それから、同じく宮津局の某課長は、右第一肋骨骨折で三週間の安静加療の診断書が出されているが、同人が局長に提出したてんまつ書では、組合側と省側との押し合いの中でのことである旨申し述べている。  こういうことでありますから、要するに、小島委員の言われるように、応援に行ったのが公務で行ったということについては、議論の余地はないと私も思います。思いますが、その公務執行中に押し合いの中で自分でころんでやったのか、あるいはまず自分がなぐったからなぐり返されたのか、その辺のことは、正直なことをいうと、わからぬのであります。  労働問題というものについて、全く労働問題から刑事問題を切り離して、刑事問題だけで解決をするということは、私も多年労働問題をやっておったが、問題をかえって紛糾させるばかりである。よほどのことでない限りは、労使の問題については、警察はそう軽々に介入すべきではない。しかも事がこういう押し合いの中で起こったことであり、それならば、当局側でそういう主張があるならば組合側でもこういう問題がある。それならばおれのほうも、おれのほうもということで、波及的に拡大するばかりであるから、この点については労使の自主的な交渉なり判断にまかせるべきではないか、私はこう思うのであります。小島委員が逓信委員会で取り上げるようなことを法務委員会でお取り上げになるというのは、何か個人的なお考えがあると思うのであります。その気持ちはわからぬではありませんが、大局的に考えてみまして、その辺はほどほどにひとつお考えになることを私は要望したいのであります。法務大臣、どうお考えになりますか。
  38. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 わが国の労働運動が健全な発展を遂げていくことを期待をしておるわけであります。そこで、わが国の労働運動の健全なる発展をするには、一つの折り目がある。それは何が折り目なのかと申しますと、いやしくも刑事事件の起こる余地のないようにやっていただくということが、健全な労働運動の一つの折り目であります。先生お説のとおり、労働運動の渦中で起こった事柄は、なるべく警察、検察がこれに関与すべきでないということは、お心持ちはわからぬことはありませんが、その理想の姿に労働運動が発展生成されていくことを期待するあまり、もしその途中において刑事事件が引き起こるようなことがあるならば、断固たる態度でこれは糾明しなければならぬ。先ほど仰せになった公務執行妨害にしても、器物毀棄にいたしましても、断固たる態度をもって警察、検察はこれに関与をしていかねばならぬ。残念であります。まことに無念残念でありますけれども、これは断固としてやっていかなければならぬ。検察はその大方針で全国警察を指揮する、こういう態度をとらざるを得ないのでございます。ここは御理解をいただきたい。それは矛盾じゃないかなんてまたおっしゃらずに、ここはよく御理解をいただいて、そして警察、検察が関与するような事態の起こる余地なきように、健全な行き方で労働運動が発展をしていただきたい、こういう希望を持っておるわけでございます。
  39. 小島徹三

    小島委員 個人の釈明をするのは二度目ですから恐縮ですけれども、私は個人的な考え方をもって一つもこの質問をしておりませんことをはっきり申し上げておきたいと思います。労働運動はけっこうだ、健全な労働運動をすることは差しつかえないし、当然のことだと私は思います。だがしかし、そのために暴力によって人を傷つけてもかまわないのだというような気持ちがもしも一般になったときはたいへんだ、多数の力によって、多数の暴力——暴力というものは絶対に排撃するというのが私の性格であります。それは必ずしも肉体的な暴力だけではなくて、金銭の暴力も私は許さぬつもりであります。権力の暴力も許さぬつもりであります。だがしかし、多数の暴力によって当然行なわれるべき公務の執行すら妨害されることは許さるべきではないと思うから質問したことであって、私の個人的な考え方というか利害関係というか、そういう因縁は少しもございません。ただ、たまたま私の郷里の郵便局人間けがをしたということが新聞に出ておったので、私はそれを取り上げたにすぎないことでありますからして、どうか誤解のないようにお願いしたい。
  40. 横山利秋

    横山委員 わかりました。  法務大臣のおっしゃった演説に対して、私も基本的な演説をしておかなければなりません。それはどうしてこの春闘がかくも戦後最大の規模になったかということは、インフレの渦巻きの中にある生活防衛の心理というものがあることは言うまでもありません。これが第一であります。  第二番目には、労働者には申すまでもなく憲法によって保障された団結権というものがある。団体行動権というものがある。それは具体的に言えば説得活動が必要である。合法的である。それから事情によって許されるピケが必要である。それから組合に対する鼓舞激励というものが許されるべきである。  そういうようなことを踏まえて、四百人か何か知りませんが、それらの人が集まった。そこへ省側が公務執行援助と称してたくさんの管理者を動員してそれを破ろうとする。その中で起きたことであるということなんですね。ですから、けがをした人ということになると全逓側にもあるわけですね。先ほど例証いたしましたように、けがをした人といえばその人もある、全逓組合員側にもある。けがしたことだけを取り上げて、事実かどうかわかりませんけれども、かりに肋骨だとか何とかけがをしたことだけで、だれがやったか、やった人間はけしからぬ、そういうようなことにはこれはならぬのであります。もしもその管理者人間として耐ゆべからざるようなばり雑言を与え、肩をこづき、頭をたたき、その傷は残っておらぬけれども、そういうようなときにそれに対して何こくかというようなことはわれわれも容易に想像されることであります。したがって、あとに残ったけがだけをもって刑事事件の対象とするには、労働問題はこれだけで律するわけにはいかぬということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  41. 中垣國男

    中垣委員長 次に、正森成二君。
  42. 正森成二

    ○正森委員 ただいまわが日本共産党について、与党の尊敬する自民党小島徹三委員はじめ野党の横山さんからいろいろ御発言がありまして承っておったんですけれども、ちょうど仲人が若い人の意見、本人の意見を聞かないでいろいろ論議をなさっているという感じでございましたが、しかしこのことは、いかにその論議されている日本共産党が美男美女であって、いろんな人がこれは何か世話をしなければいかぬと、そういうふうに思っておられる証拠である、人気上昇の証拠であるというふうに私たちは善意に解釈いたしましたが、われわれは自分の党の問題について自主独立の立場から、そして野党はじめ広く世論の力を得て、破防法をはじめ公安調査庁がその存在の理由なからしめられるというときが来るために全力をあげて国会の内外で奮闘するということをまず最初に申し上げておきたいというように思います。  そこで、それに関連して伺うわけですが、ただいま大臣発言中に、革命をやるやつから聞いてくれという御発言がございました。革命といいますと、中国の代表団も一九四九年に革命をやったところから来た人々でございます。したがって、革命の定義にもよりますけれども、いやしくも法務大臣としては、革命をやるやつというような、そういう国会議員としてはもちろんのこと、大臣としても品位が疑われるようなことばを使うべきでない、革命をやる者とかいうように言うべきであるというように思いますが、いかがですか。
  43. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 思うておるとおりに発言をするのが私の欠点でございます。よいときと悪いときとある。いまのは悪いときに当たる。そこで訂正をいたします、革命をおやりになる方と。
  44. 正森成二

    ○正森委員 そこまで丁寧におっしゃっていただかなくても、通常の日本語でけっこうですが、率直に取り消されたことは非常にけっこうでございます。  それでは私本論に入りますが、最近の新聞のほとんどすべての記事は、ウォーターゲート事件について書き立てております。ウォーターゲート事件についてはもう法務大臣がよく御存じのことでございますが、昨年の六月十七日に民主党の本部があるウォーターゲートに五人の犯人が侵入をした。そのことから発覚えをいたしまして、当初は普通のこそどろであるというように思われておったところが、そうではない。民主党本部に盗聴器をしかけ、当日はそのうちの一台が故障しておったのでそれをかえるために侵入したのであるということ、しかもそれらの人物が単にこそどろではなしに、そこで得た情報によって相手方の党である民主党の大統領候補、それを自分の意のままに操作するために、たとえば最も強敵であると思われたマスキー候補をおとしいれるための謀略活動をやっておったというようなこと、あるいはケネディ氏が大統領に立候補する場合に備えて、国務省の電報を偽造してそれをある新聞社に見せるようなことをたくらんでおったというような事実、さらにはそれよりも一年前の七一年九月に例の国防総省秘密文書で問題になったエルズバーグ博士の精神分析記録を窃盗するために侵入するということもやった同一のグループであるというようなことが、次々にわかってまいりました。しかもそれを指図したと思われる者の中には、ハルドマン補佐官、アーリックマン補佐官、それからミッチェル・ニクソン再選委員長、元司法長官——田中法務大臣と同じ立場ですが、田中さんはそんな悪いことしないと思いますが、そういう人から、あるいは現職だったクラインディーンスト司法長官、それからディーン特別顧問というような人々が関与しておるということがわかってまいりました。これは非常な政治的スキャンダルである。ある閣僚が買収をされたとかしたとかいうことではなしに、国家が国家機関を使って、民主党という反対党に対して反対党の大統領候補となることを左右するためにきたならしいことをやった、それを政府職員がやっておるということでございます。これを暴露しましたワシントンポストは、最近の報道によりますと、報道についての最も栄誉ある賞であるピュリッツアー賞を獲得しております。また、この件について英国の世論も沸騰して、たとえば英国ではこういっております。「もしニクソン氏が英国の首相であり、ウォーターゲート事件のようなスキャンダルを引き起こしたとすれば、彼は再び議会に信任を求めることはしないだろう。彼自身が有罪であれ、無罪であれ、彼は辞任するだろう。」こうデーリー・ミラーはいっております。あるいは「米国民は、大統領が無関係だとだれひとり考えないが、それを公言すれば米国政治の基盤が崩れるので、公言はできない。裁かれるべきはニクソン政権と同時に米民主主義ものそのだ。」これはデーリー・テレグラフがいっております。こういうことについてわが国法務大臣として政治姿勢の問題としてどうお考えになるか。もしそれが外国のことであり、非常に微妙な問題だとおっしゃるのであれば、わが国においてはこういうことは断じて許されないというように言明できるかどうか。それについて明確な答弁を伺いたい。
  45. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 御研究になっていろいろ御意見をお述べをいただきまして参考になりました。ただ、申し上げたいと思うことは、いま先生仰せのように、この事件はアメリカのできごとで、日本国のできごとでないということ。そんなこと言わないでもわかっておることです。しかしこれは大事なことです。それからもう一つは、真相が、先生仰せになったことで真相に近いことがわかるような気もいたしますけれども、何が真相なのかということがよくわからぬ。日本の、離れたところにおる私の立場で申しますと、何が真相なのかということがよくわからぬ。これが第二点。第三点は、アメリカの政府の司法機関がずいぶん苦労をして捜査中であると考えられる。友好関係にある米国の捜査機関が苦心をして捜査中だ。その内容いかんによっては先生仰せのごとく重大事態である。大統領の運命を決するような重大事態が起こらないものとは限らないような情状に置かれている。こういう三つの理由から、日本法務大臣の立場にある私がここでこの問題に言及してお答えなどをしないほうがよい。これは御遠慮をすべきものであるということが結論でございます。せっかくの御貴重な御意見だけを聞かしてもらって自分の意見を言わぬ。——言いたいことたくさんあるのですよ。山ほどあるのです。あるのだが、それは言わない。これがいい、こう考えます。
  46. 正森成二

    ○正森委員 言いたいことが山ほどあるというのは、田中法務大臣の御気性からしてこれはほんとうであろうというふうに思います。ただ私が申し上げておきたいのは、なるほど事実についてはこれから究明さるべき、解明さるべきこともある。その途上であるということは事実でございます。しかし、報道されているところでは、大統領もしくはその側近みずからが口どめ工作を行ない、リディとかハントとか実行行為者に対して千ドルないし三千ドルの口どめ料を出しておったというようなことも報道されておる。それもまた事実であるかどうかわからないというようになお慎重に、法学博士である田中法務大臣がおっしゃるとすれば、動かせない事実はハルドマンとかアーリックマンという現職の有力な補佐官、そしてクラインディーンストという司法長官、グレイというFBI長官代理というような者が辞任したということはこれはもう動かすことのできない事実です。それは事実があったから辞任したのではなしに、疑いを避けるために辞任した、こう言い抜けができるかもしれないけれども、わが国において内閣官房長官や法務大臣やその他有力閣僚二人が辞任する、補佐官は閣僚とは違いますが、それと同じようなことが起こっておるということ、これはもう歴史の事実でございます。そうだとすれば、この事件は非常に重大なことであり、しかも当局がその重大性を十分に認め責任をとったと考えなければならない、こう思います。そのことを申し上げた上で、田中法務大臣がアメリカのことについて日本国の法務大臣がいろいろ言うのは差しさわりがあるということで、あなたのお立場もわかりますから、私はこういうぐあいに聞き直したいと思います。  わが国において国会に席を有し、国民の意思によっては政府を組織する可能性のある反対党を、盗聴、窃盗その他の手段によって情報を入手し、それによってその政党の消長に影響を与えるということはいいかどうか、そういうことまでして調査するというのはよくないし、すべきでないと思われるかどうか、これなら日本国のことだから答えられるでしょう。お答え願います。
  47. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 なかなかお考えになって、御研究になって慎重な質問ですね。答えに困るんです、そういうことを言われると。しかし、困るというわけにはいかぬから、この関所は通れないから、お答えを申し上げますと、結論的に申しますと、法律に根拠なくして仰せのようなスパイ行為を——スパイ行為ということばが適当かどうか、スパイ行為を行なう、盗聴行為を行なうということは許すべきでない。天下国民の道義というものの上から申しましても、それは許すべきものでない。しかし法律に根拠があり、法律に基づく権限があって行なわざるを得ないから行なう場合においては、そういうけしからぬという判断は阻却される、これが結論でございます。
  48. 正森成二

    ○正森委員 盗聴についての御意見はわかりましたが、窃盗についてはお答えがございません。窃盗についても法律上の根拠があれば国家機関がしてもいいという考えでしょうか。もしそうだとすれば、その法律上、憲法上の根拠をお示し願いたい。
  49. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 窃盗ということをここで——窃盗をお聞きになるのですか。
  50. 正森成二

    ○正森委員 さっきの速記録を調べてください。私は盗聴、窃盗と……。
  51. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 窃盗などということは法律に基づいて行なうことはあり得ないでしょう。そんなことお答えをせぬだって……。
  52. 正森成二

    ○正森委員 現にやっているんだから……。
  53. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 やっておったっておらなんだって、法務大臣が——窃盗が法律に基づいて許される。そんなことないでしょう。あなたはおかしいことおっしゃる。
  54. 正森成二

    ○正森委員 それは質問だから一応聞いているのです。
  55. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 じゃ、一応答えておきましょう。そういうことはございません。
  56. 正森成二

    ○正森委員 いまのお答えで、少なくとも窃盗については絶対に国家機関はそんなことはしてはならぬということはわかりました。しかし、私の前からの質問で、公安調査庁はそれをやっておるということもあったわけです。しかし、それは三月二十八日に質問しましたから、ここでそういうことについてあなたの御宸襟を悩まそうとは思っておりません。そこで盗聴について伺いますが、あなたは非常に慎重な表現ではありますが、法律上の根拠なくしてそういうことをやることは絶対に許されない、しかし法律上の根拠があれば別でございます、こういう意味のことを言われました。これは非常に微妙な答弁ではありますが、軽々に聞きのがすわけにはまいらないことでございます。  そこで、電電公社と郵政省は来ておりますか。手をあげてください。私は呼んでおいたはずだ。——電電公社や郵政省、こういう関係に携わっておる行政機関あるいは公社でありますが、そういう盗聴、秘聴ということは、現在の日本法律で一体許されておるのかどうか。その規定があるのかどうか。規定があるとすればそれについてお答え願いたい。
  57. 山本正司

    山本説明員 お答え申し上げます。  通信の秘密に関しましては、公衆電気通信法第五条の規定に従いましてこれを侵してはならない、こういうことになっております。国内の電気通信業務を扱う電電公社といたしましては、この法律の規定に従いまして、厳重に秘密保持の点については配慮をいたし、措置をいたしておるところであります。
  58. 富田徹郎

    ○富田説明員 ただいま電電公社のほうからお答えしましたとおり、公衆法の五条によります通信の秘密につきましては、特定の場合を除いて特定といいますのは逆探知の場合だけでありますが、それ以外の場合は一般的に全面的な禁止をされております。
  59. 正森成二

    ○正森委員 いま公衆電気通信法の五条について言われましたが、私は電気関係の専門ではございませんが、たとえば有線電気通信法の二十一条ないし二十三条等についても、それに類似する規定がありますが、これも同様の趣旨であると考えてよろしいですか。
  60. 富田徹郎

    ○富田説明員 全く同様の趣旨であります。そしてなお、電波法にも同様な規定がございます。
  61. 正森成二

    ○正森委員 逆探知の場合を除いては全面的に禁止されておりますということでしたが、逆探知というのは、私の知っておるところでは、子供を誘拐して身のしろ金を請求してくる、そのための電話が再々かかってくるという場合に、その犯人を逮捕するため等に逆探知装置が許されるというように考えておりますが、あらためて電電公社及び郵政省に伺いたいが、そういう特段の例外である逆探知をなさる場合には、一定の要件が必要だと思うのですね。電電公社が逆探知してもいいと思えばどれだって逆探知できるということであれば、逆探知ということは盗聴を前提とするんだから、逆探知をなし得るためには一定の要件が要ると思うが、それについて電電公社ないし郵政省は、いかなる内規あるいは準則を持っておるか、それについてお答え願いたい。
  62. 山本正司

    山本説明員 逆探知につきましては、現に脅迫の犯行がありまして、被害者からの要望に基づいて捜査当局からの捜査協力依頼を公社が受けまして、これに基づいて逆探知を実施する、こういう手続になっております。
  63. 正森成二

    ○正森委員 いいですか、それで。
  64. 富田徹郎

    ○富田説明員 けっこうです。そのとおりであります。
  65. 正森成二

    ○正森委員 いまの御答弁について、規則何号とか、そういう件名番号があれば、それを明確にしていただきたい。
  66. 富田徹郎

    ○富田説明員 三十八年に、内閣法制局一発第二四号によりまして、内閣法制局第一部長から郵政大臣官房電気通信監理官あて、通信の秘密に関する法令照会につきまして一応解釈が出ております。それをもって有権的解釈といたしまして、それにのっとった基準を電電公社でつくりまして、その基準の番号は電電公社から申し上げますが、それについて、以後、その基準の変更はしておりません。
  67. 山本正司

    山本説明員 ただいまの郵政当局の御答弁によります内閣法制局見解に基づきまして、電電公社といたしましては、電文第一一〇〇号という通達でこの趣旨を下部に流しております。
  68. 正森成二

    ○正森委員 それでは郵政省と電電公社に、いまお読み上げになった分についての写しを国会に提出していただけますか。それは当然できると思いますが、いかがですか。
  69. 山本正司

    山本説明員 提出いたします。
  70. 富田徹郎

    ○富田説明員 提出いたします。
  71. 正森成二

    ○正森委員 それでは、わが国において盗聴、秘聴をなし得る場合は、その場合に限られる、それ以外には、わが国の憲法及び法律において盗聴が許される場合はないと当該電電公社あるいは郵政省は考えておる、こう解釈してよろしいか、もう一度答えてください。
  72. 山本正司

    山本説明員 そのとおりでございます。
  73. 富田徹郎

    ○富田説明員 郵政省の立場で所管しております法律は、通信関係法律でありますので、その限りではいまの御趣旨のとおりであります。
  74. 正森成二

    ○正森委員 郵政省の管理しておるその限りではというように言われましたが、そうすると、郵政省の管理しておらない範囲でできる場合があり得るのですか。
  75. 富田徹郎

    ○富田説明員 法律関係は、特別法のほうが一般法よりも強いということが一般的にあるかと思いまして、そのようにお答えした次第でありまして、その特別法がどのようなケースについてどうあるかは了知しておりません。
  76. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、少なくとも公衆電気通信法あるいはその他関連法、電波法等が特別法であるということを御認識になっての答弁ですね。
  77. 富田徹郎

    ○富田説明員 通信の秘密を守るという観点からの法制といたしましては、われわれは通信関係法が一般法だというふうに観念しております。それで、これは憲法の規定に基づきまして、その通信の秘密を通信関係法令はすべて盛り込んで、通信法制上といいますか、通信実体の上で通信の秘密を確保すべく各法律に盛っておる考え方というのは、ほとんど異同がございませんで、各法律によりまして一般的にこれを厳重に守るという精神に徹しておるという意味で、通信の秘密に関する一般法が通信法であるというふうに考えております。
  78. 正森成二

    ○正森委員 そうだとすると、しかし、あなたは専門家ですが、その一般法を破るような特別法はどこかにあるのですか。そんなものはないでしょう。しかも、それがかりにあるとすれば、行政当局である郵政省が知らない間にそういうことが行なわれておるというようなことは、当局として怠慢しごくじゃないですか。そんなものはないでしょう。あったらえらいことだ。
  79. 富田徹郎

    ○富田説明員 警察当局から特に通信の秘密の確保に関しまして照会等があります。それで、私どものほうにおきましては、この通信関係の通信の秘密に関する規定に関しまして特別法があるというふうには了知しておりません。
  80. 正森成二

    ○正森委員 いま電電公社及び郵政省とのやりとりでお聞きになったとおりです、大臣。そうだとすれば、あなたの答弁は、法律に特別の規定がない限り——法律で許されておる場合は別ですが、それ以外には盗聴というようなことはやってはならないという意味のことを言われましたが、それでは法律上はどうなのかということになれば、いま電電公社及び郵政省がお答えになったとおりです。そうだとすれば、いま二人がお答えになった場合を除いて盗聴は許されないというのがわが国の法制のたてまえである、こう結論しなければなりませんが、法務大臣としてそれをお認めになりますか。それをお答えになった上、どうぞ御用に行ってください。
  81. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 電話盗聴に関する限りは、ただいま御意見のとおり、まさにそのとおりと存じます。  それでもう釈放してもらってよろしゅうございますか。
  82. 正森成二

    ○正森委員 ちょっと待ってください。  電話盗聴に限りというように非常に何か気になるようにおっしゃいましたが、電話盗聴以外であればそれはいろいろできるということですか。
  83. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 電話盗聴以外の場合と——その抽象的におっしゃると答えに困るのです。具体的にこの場合はどうだとおっしゃると、こういう法律のこういう条文の精神に基づいてこれをやらねばならぬのだ、こう答えができるのです。あなたは意地が悪いところがあるから……。  もうよろしいですね。
  84. 正森成二

    ○正森委員 よろしいです。  それでは、大臣が用事があるので出られましたから、以後の問題については関係責任者がお答え願いたいと思います。  まず第一に公安調査庁に伺いたいと思いますが、公安調査庁はアメリカの機関にたとえるとすればどこが一番近いですか。
  85. 川井英良

    ○川井政府委員 よくそういう質問に接するわけでありますが、いろいろ検討してみますと、どこの国の制度にもぴったり当庁は当てはまらないようなかっこうのものだと思います。
  86. 正森成二

    ○正森委員 いまそういうお答えがございましたが、昭和三十七年十月三十一日の参議院の法務委員会の答弁によれば、当時の公安調査庁次長の関説明員が「もしかりに公安調査庁と同じ役所ということになりますと、やはりFBIがそういうことになろうかと思っております。」こうちゃんと答えておるのです。したがって、あなたのほうの責任者が、それはCIAに似ておるかもしらぬし何に似ておるかも知らぬが、しいて言えばFBIに似ておる、こう言うて答弁しておるわけですが、それについて川井長官はどう思いますか。
  87. 川井英良

    ○川井政府委員 FBIは私も直接行っていろいろ調べたことがありますけれども、多分にいわゆる捜査活動のほうが主になっております。したがって、かなりいろいろな強制権を持っておりますが、私どものほうは御承知のとおり強制捜査権、調査権というものは全然与えられておりませんし、それから犯人を逮捕、検挙して起訴する、裁判手続に乗っけるというようなこともしておりません。ただ、FBIは他面またいろいろな情報収集もしておるようでございますので、個人ないしは団体についてのいろいろな情報収集をある場合に限ってしておるというふうな点においては、当庁と一脈通ずる点があろうかと思います。
  88. 正森成二

    ○正森委員 関氏の答弁と同じですね。関氏の答弁を読みますと、「FBIの機能は、私どもの役所より非常に広大なものでありまして、国家警察のような権限を持っておりまして、そうしてまた私のほうの役所のような機能を持っておりまして、そうして」——そうして、そうしてと、そうしてが多いから、だいぶ困って答弁したんだろうけれども、「そうしてFBIの中に公安調査庁のような機能がある、こう考えてよろしかろうと思います。」こう言っているわけですね。そして「もしかりに公安調査庁と同じ役所ということになりますと、やはりFBIがそういうことになろうかと思っております。」こう言うておるわけですが、そうすると、全体とすれば昭和三十七年の関次長の答弁とあなたの答弁とは変わっておらず、FBIの中には公安調査庁と同じような機能があるというように考えてよろしいですね。
  89. 川井英良

    ○川井政府委員 ある限度で相通ずる職務関係があると思います。
  90. 正森成二

    ○正森委員 そうすると伺いますが、ウォーターゲート事件では、アメリカ大統領は「FBIにニューヨーク・タイムズの記者二人を含む数人の新聞記者と、ホワイトハウスの部下、少なくとも四人の電話を盗聴するよう要請した。フーバーFBI長官はこの犯行がもし発見されれば弁護不能になるとの理由で抵抗したが、ミッチェル司法長官の書面による承認があれば盗聴を行なうと答え、ミッチェル長官は書面の承認を行なった。」というように言っているわけですね。そして「司法省がフーバー長官を追い出しにかかったとき、フーバー長官はこの盗聴許可をゆすりの道具に利用、それからはフーバー長官を追い出す動きはとまった。」これは五月七日のサンケイ新聞ですが、同様のことは他の各紙にも載っております。  そこで、アメリカのことをすぐ日本に類推するわけではありませんけれども、日本公安調査庁に最も似ておるアメリカのFBIというのは、こういう問題について新聞記者まで盗聴しておる。そして報道によれば、パトリック・グレイは秘密書類を処分して、そのことによって辞職をしたということはあなたも職掌柄御存じのとおり。そこで私は伺いたいが、FBIに非常によく似ておる役所である公安調査庁は、たとえそれが総理大臣からの命令であれ、法務大臣からの命令であれ、法律に規定なきにかかわらず電話の盗聴その他で新聞記者の言動調査したり、あるいは他の何人であれ日本国民を調査するというようなことをやるのかやらぬのか、それについて明白な答弁をお願いしたい。
  91. 川井英良

    ○川井政府委員 何人の命令がありましょうとも、憲法で定められた通信の秘密を侵すようなことは、私はいたしません。
  92. 正森成二

    ○正森委員 それについては、警察庁の山本局長も来ておられますが、警察も同様にそういうことはいたしませんと言えますか。
  93. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 同様でございます。
  94. 正森成二

    ○正森委員 電話等についてはそういうことはなさらないというようにおっしゃいましたが、そうすると電話以外の方法で有線電気通信法などに違反して会場等に盗聴器をしかける、そしてそれを有線でテープレコーダーにつないで盗聴するというようなこともやはり電気関係法律に触れるわけですが、そういうこともいたしませんか、それともそれはいたしますか。
  95. 川井英良

    ○川井政府委員 先ほど来のお話は、かつてアメリカ、イギリス等で問題になりましたいわゆるワイヤータッピングの問題だと思います。電話の盗聴が主になって発展してきたあれでございますけれども、諸外国におきましてはそのワイヤータッピングが犯罪の捜査あるいは情報収集に使われるということが合法であるかどうかということにつきましては、御承知のようにいろいろな裁判例もたくさん出ておるようでございます。ただ、わが国におきましてはきわめて明確でございまして、現行憲法で通信の秘密は絶対に守らなければいけないというように書いてありますので、わが国におきましては、犯罪捜査はよけいなことでございますけれども、私が担当しております情報収集におきましてもワイヤータッピングを使うというようなことは絶対あってはなりませんし、過去にもありませんし、将来も私がおる限りは絶対にさせません。これは先ほど申し上げたとおりであります。  そうすると今度は、ただいまの御質問お答えになるわけでありますが、しからばそのほかに、近ごろ市販でも御承知のように小型マイクというのですか、いろいろなものが開発されまして、それは電波法等の規定の中でも除外例が設けられ、きわめて微弱な電波の場合には云々ということで市販されて、どなたでも持ってそれを使っておるというような状況になっておりまして、そのようなものがいろいろな場面で、悪用と言ってはことばが悪いかもしれませんけれども、適当な使い方をされていないというようなことがいろいろ言われております。そこで、私の担当しております役所の調査のために、そういう市販されているようなものでも使うかどうかということでございますが、これは四十五年の七月十三日だったと思いますが、この衆議院の法務委員会でおたくの松本善明さんの御質問に対して前の長官が答えておりまして、そういうふうなものも全然使っていないし、自分がおる限りはそういうようなものも調査のために使う意思はないということを明らかにしておりますので、私もこの考え方に全く賛成でございますので、前長官の考え方を私も踏襲してまいりたい、こういうつもりでございます。
  96. 正森成二

    ○正森委員 そういう答弁を伺ったわけですが、国会での答弁ですから、もしそれに違背するようなことが起これば当然長官としては部下に厳重な処分もするし、みずからも責任をとる、こういうことでございましょうね。
  97. 川井英良

    ○川井政府委員 行為者についてもその時点において責任考えますし、また最高の責任を負わなければいけない私自身といたしましても、毎度申し上げておることでございますけれども、その時点で責任を明らかにしたいと思います。
  98. 正森成二

    ○正森委員 警察についてはいかがですか、山本局長
  99. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 警察庁も全く同様でございます。
  100. 正森成二

    ○正森委員 そういう答弁を伺って、それがほんとうに守られるのであればけっこうですが、あるいはまだ若干の留保もありますけれども、ただ私どもの疑問について言いますと、これについては疑問として申し上げるわけですが、山本局長も聞いておいていただきたい。あなた方は専門家ですからすでにお読みになっていると思いますが、太田書房から一九七一年七月十日に発表、出版された「そこにCIAがいる」という本があります。これは昭和二十一年以来約二十年間にわたってCIAの情報員であった松本政喜、その人が自分のいままでやったことをいろいろと書いたものでございます。これを全面的に信用するかどうかは別として、ここに書いてあることを見ますと、「電話盗聴の方法」というものを書き、かつそれを実行したという意味のことが書いてあるのですね。それは電電公社——電電公社、聞いておいてください。もう仕事が済んだと思ったらだめですよ。「まづ、盗聴する目標人物の居住地の電話局の試験課の課員、もしくは機械課の課員の住所氏名を知るために名簿を入手する。この課員は両課で約二十名位いるが、住所がわかればその全員の身辺調査からはじめる。」「この場合、CIAの手先の警視庁外事課員が権力を利用してこの工作に当たる。」そして、「「すべての責任警察がもつ。君たちは安心して指示されたことをやれば良い。警察に協力していればなにかの時に(違反等で警察の厄介になった)便宜を計る」。こんな甘言をもって引き入れる。」「この工作された局員は彼の給料以外に報酬としてCIAから毎月、自分の月給と同額のものを支給される。ボーナスも同様である。」こう言い、その作業としては、「買収された試験課員又は機械課員は、CIAに指示された通りを実行に移す。盗聴対象者の狙った電話線と空線を、機械室の配電盤の下の露出している部分で巧妙につなぐ。」ということで、そのつなぎ方まで詳細に書いてある。「文化人はもとより、社会党、共産党(幹部はほとんど)、労働組合の幹部等はこの方式で盗聴の対象者になっている。この卑劣な謀略は、世界の国々にもあまり例がない。アメリカと日本くらいのもの。このCIAの横暴さを露骨に許しているのは、権力の暴力装置ともいうべき警察(警備課)が協力の源になっているからだ。決して国民として許されるべきではない大事件である。」こういうておる。  これは元CIAの職員であったという松本政喜さんが書いておるものだから、だからあなた方にはいろいろ言い分があろうと思うけれども、しかし実際に自分がそういういろいろなことをやってきたということを詳しく書いた中に出ておるわけですね。  そこで、こういうようなことについて、あなた方としては、たとえ松本が何と言おうとそんなことは断じてない、こう言っていただけるかどうか、あるいは電電公社側でもそういうようなことはたてまえとしても許しておらないし、万一そういうようなことがあれば処分するというように姿勢を正していただけるかどうか、たまたま松本という人がこういうことを書いて、その中で、いまあなた方の答弁が真実だとすれば非常にあなた方にとって迷惑なことが書いてあるので私はあえて聞く次第です。無用のことかと思いますけれども、御三人の方の御答弁をお願いしたい。
  101. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 松本氏が書いたという事実、全く承知いたしておりません。そういう事実は絶対やっておりません。
  102. 川井英良

    ○川井政府委員 明らかに法律に違反するような行為はしないつもりでございます。
  103. 山本正司

    山本説明員 電電公社といたしましてもかようなことがあるとは全然考えておりませんし、またそういうこともあり得ない、ないように常々厳重に指導をいたしておるところでございます。
  104. 正森成二

    ○正森委員 そこで公安調査庁に念には念を入れて伺いたいわけですが、昭和三十七年三月二十八日、少し古いですが、予算委員会の第一分科会で、亀田得治委員が質問をしておられて、それに対して公安調査庁お答えになっておる。それを見ますと「無電等を使っての盗聴ですね、こういったものはやはり活動の手段としてお使いになっているわけでしょうか。」政府委員の関君、「現在はやっておりません。」こういうようなことをお答えになって、その後の質疑応答の中で、盗聴器ですね。それは調査庁で何台くらいあるのか、こういう質問に対して「現在のところはいたしておりませんから、何台といいましょうか、まあ特にすぐ使えるようなものは一台も持ってない、こういうようなことになろうかと思います。」「廃品的なものならば、かつてそういうことがありましたから、調査局には一台——今の広島に一台、二台はあるかと思いますが、要するにその程度の問題でございまして、正確にここで何台と、そういう廃品的なものを加えた記憶はございません。」こういうように答えておるのですね。つまり廃品としては一、二台あるかもしれないけれども、それ以外にはないというように三十七年にお答えになっておるわけですが、それは現在でも——現在は十一年たっておるからますます廃品になっておると思うけれども、そういうものは一切ない、関氏の答弁をそのまま肯定し裏づけられるかどうか、いやいやこのごろはだいぶ買うておりますと言われるかどうか、念のためにお答えください。
  105. 川井英良

    ○川井政府委員 ただまいあげられましたのは昭和三十二年のいわゆる中国における秘聴器事件で、裁判例にもなった御承知のケースだと思いますが、そのとき以降当庁におきましては秘聴器ないしは秘聴のために使うというようなものは一切持っておりません。
  106. 正森成二

    ○正森委員 山本局長いかがですか。
  107. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 私どもも現在そういうものは所持しておりません。
  108. 正森成二

    ○正森委員 山本局長は現在所持しておりませんと言われましたが、一九六〇年の十月二十三日に有名な島根県警文書というのが出てまいりましたね。ごみ屋にぼっとほって九台分くらいの文書が出てきた。その文書をわが党が調べたところでは島根県警文書「島備第一二〇号警備警察準備品の現況報告書」こういうものがあってその中に一九五八年回県警備品に秘聴器SL六型、S七二五型、PH四型という記載があります。そうだとすれば、少なくも一九六〇年までは警察はそういう盗聴器を一つのへんぴな県でさえも三台は備えておったということになるわけですが、この島根県警文書を認められるかどうか、そしてかりに認められるとすれば、そのときはあったかもしれないが現在はないと言われるのか、あるいは現在もあるというのかそれについてお答え願いたい。
  109. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 島根県警文書については私は存じませんけれども、少なくとも現在はございません。
  110. 正森成二

    ○正森委員 おそらく、現在はございませんというお答えでしたが、島根県警文書についても当時国会でも各委員が聞かれた有名なことですから、こういう器材がほんとうにあったのかどうか、その後どういうぐあいに変わっていったのかどうかという点についてお調べください。で、場合によったら、国会のこの席でなくてもけっこうですから、私の部屋まで御報告ください。  そこで、私から伺いますけれども、いままで公安調査庁警察庁及び電電公社のたてまえとしては、法律には盗聴してはならないという定めがあり、そういうことはしていないという御答弁があったわけですけれども、しかしたてまえと実際とが違うということはどこででもあるので、これはどの世界でもそういうことがある。で、私どもが皆さんにお聞きしたいのは、わが党が行なった第七回大会以降第十一回大会に至るまで、すべて盗聴器がしかけられておる。そのことはあなた方がよく御存じのとおりであります。またわが党の幹部会委員長、盗聴された当時には、書記長のときもありましたが、宮本顕治氏宅にも盗聴器が二回にわたって備えつけられておるという事実があり、当時そのことは新聞紙上に広く報道されたことは御承知のとおりであります。で、皆さん方の記憶を新たにするために、ここにそのスクラップを持ってまいりましたけれども、こういうすぐ近くの電信柱に、非常に小さい精巧なものがしかけられておる。これは一九六五年のたしか三月三日に発見されたものであります。またその後昭和四十五年にも非常に精巧なものが再びしかけられました。各大会にもしかけられましたが、第十回大会のものに至っては、大会期間中に二回にわたって発見されました。第十一回大会のものも同じように発見され、宿屋の名前は宿屋の営業に差しさわりがありますから言いませんが、われわれ代議員の宿舎にもしかけられておるという事実がありました。あなた方はそれについて、警察公安調査庁関係がないと言われるかもしれませんけれども、それについて一体捜査はどのようになっておるのか、それについて私どもは明確な答弁を伺いたいというように思っております。  当時、何回かにわたってわが党の委員が質問いたしました。たとえば昭和四十一年十一月十一日の参議院においては、岩間正男委員が第十回党大会の盗聴問題について伺っております。それについて警察庁及び検察庁はどのような捜査を行なったのか。また電電公社側は、問題の盗聴器の現物をわが党から保管し、わが党に何らの了解もなしにそれを警察に渡し、しかもそれはうやむやになってよく調べておらないというような事実があったことは御承知のとおりであります。もし記憶がないと言うなら年月日まで言ってもよろしい。  そこでその問題について、ウォーターゲート事件でアメリカをゆるがすような大問題になっておるときに、わが国の治安を預かる警察、検察庁は、どういうように捜査しておるのか、それについて責任ある答弁を伺いたい。
  111. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 第十回の党大会の件につきましては、昭和四十一年の十月二十七日、世田谷の区民会館の管理事務所所長から捜査依頼がありましたので、これについては徹底的な捜査を全力をあげてやったのでございますが、被疑者不明ということで、四十二年の四月ごろで一応打ち切らざるを得ない状況になっております。  それから第十一回党大会の件については、四十五十年の七月六日に、党の中央委員会から東京地検に告訴がありました。警視庁もこれに捜査協力して地検のほうに連絡をいたしておりますが、その結果どのようになっておるか、つまびらかにいたしておりません。  それから宮本委員長の宅の事件でございますが、四十年三月四日でございますが、これは三月四日、荻窪の電話局長から高井戸警察署に、有線電気通信法、公衆電気通信法違反で告発が出ております。高井戸警察署で科学警察研究所及び東京大学の鑑定嘱託に嘱託をいたしまして捜査をいたしたわけですが、これも結局、被疑者の割り出しというまでに至らない状況で、同年七月二十一日に、被疑者不明のまま東京地検に送致いたしております。  もう一件、昭和四十五年七月十一日の宮本委員長事件。これも七月十一日にやはり荻窪の電話局長から告発がございまして、これについても現在まで鋭意捜査をいたしておるわけでございますが、被疑者を特定する段階に至っておらない状況でございます。
  112. 安原美穂

    ○安原政府委員 いま警察の警備局長からお話しの宮本委員長宅の電話盗聴事件につきましては、昭和四十年の分につきましては、警察から事件の送付を受けまして鋭意捜査をいたしましたが、遺憾ながら犯人が特定できませんで、四十一年八月三十日に犯人不明で、中間処分としての中止処分をいたしましたところ、四十五年の三月一日に、この事件は有線電気通信法二十一条違反ということでございまして、公訴時効が完成いたしましたので、四十五年の五月六日に不起訴処分になっております。  それから第二回目の委員長宅の電話盗聴事件につきましては、四十五年の七月十七日に野坂参三氏から東京地検に告訴がなされましたが、犯人がいまだに特定できないために、検察庁の処分としては、四十七年三月十七日に中止処分にしております。  それから共産党第十一回党大会の盗聴事件につきましては、警備局長から検察庁に送致してあるということでございますが、遺憾ながら報告を受けておりませんので詳しいことはわからない次第でございます。
  113. 正森成二

    ○正森委員 いまの話を伺っておりますと、鋭意捜査したとかなんとかと言うが、結局犯人はわからないというようなことを言っておりますが、たとえば電電公社側にわれわれが盗聴器を渡した。それをわれわれに十分な了解なしに捜査当局に渡してしまって、その後その盗聴器がどうなったかわからないという事実もあって、わが党は厳重に抗議をしたことがありますが、それについて電電公社はどういうぐあいに状況をつかんでおられますか。念のためにお答えください。
  114. 山本正司

    山本説明員 宮本委員長宅の加入者引き込み線の電柱にしかけられました異物を発見いたしまして、これを持ってきて捜査当局に渡したわけでございますが、公社の電気通信設備にしかけられた異常物でございますので、有線電気通信法二十一条違反ということで、その証拠品を添えて告発いたしたわけでございます。そういう次第で、別に党のほうに了解を得るというような問題ではないだろうというふうに思っております。
  115. 正森成二

    ○正森委員 いまいろいろお答えがあったけれども、アメリカでは政界をゆるがすようなことになっておるにもかかわらず、わが国では日本共産党という天下の公党の大会に対してしかけられておることについて、非常に捜査は不熱心だ。警察はほかのことについてはいろいろやるけれども、ふしぎとこの種の事案について犯人を見つけたためしがない。そこで私のほうから言うけれども、第十回大会についてわれわれの調査によれば、現場には手がかりとなるものが非常にたくさん残されておった。もちろん第一には、この盗聴装置自体であります。これは非常に精巧なものですから、ここからこういうものを入手し得る者はだれであるかということを非常に割り出すことができるはずであります。第二には、テープレコーダーの上にあった一部の録音済みになったテープ。第三には、録音テープを巻き取るリールに張りつけられていたばんそうこうに記入された「4」という字であります。この「4」という字については、われわれは筆跡鑑定もして、当時この世田谷区民会館に出入し得る可能性を持ち、しかもこの筆跡が非常に似ておると鑑定もされたある人物についても新聞で発表し、捜査当局の注意を喚起しております。私は名前も言うことができますけれども、ここでは名前は言いません。N氏としておきましょう。  そこで山本局長に伺いたいけれども、わが党が新聞記者会見までして発表したこの人物について数々の疑わしい事実があり、長くなるから言いませんが、八点にわたってわれわれはその根拠をあげておる。その点について十分に捜査をしたのかどうか、そのことは捜査の結果に明らかになっておるのかどうか、それについてお答え願いたい。
  116. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 私その事案について実はいま記憶しておりません。資料もないのでございますが、推定で申しわけありませんけれども、それはもう十分捜査は徹底しておると思います。しかし捜査上の問題でございますので、この席ではっきり申し上げるわけにはいかないと思います。
  117. 正森成二

    ○正森委員 捜査のことでこの席では言えないということでしたが、いま伺ったところによると、時効が完成したりというようないろいろなこともある。そこで裁判の確定記録とは違うけれども、われわれは重大な利害関係がある、N氏とだけ言っておくけれども、それについてはあなたのほうで調べればわかることです。当時の昭和四十一年十一月十六日の「赤旗」にも載っております。そこで、その事実だけを言っておきますから、それについてどのような捜査がされたか、なぜその人物について容疑なしと見たのか、それについて報告できる範囲で、この席でなくともいいから、私のところまで報告していただきたい。それを要望しておきます。  そこで、いまいろいろなことが言われましたけれども、この第十回大会の世田谷区民会館の点について言いますと、二つしかけられておりましたが、そのうちの一つの録音式盗聴器というのはかなり前から区民会館に備えつけられておった。したがって、区民会館で集会をした人々は何人といえども盗聴される状況になっておった。わが党の第十回大会が行なわれた昭和四十一年だけをとってみても、そこで集会をやったおもな人々は、全学連の第七回大会、創価学会——これは毎月数回やっておる。立正佼成会、東京農大学生会、わらび座、PTA研修会、自民党河野一郎後援会、賀屋興宣後援会等々がこの区民会館で集会を行なっておる。それを全部この録音式盗聴器で盗聴し得る状態にあったということは、われわれの調査によってきわめて明らかであります。  また、これは昭和三十八年三月二十日の毎日新聞の東京版でございますが、「国会議員の自宅電話や通信、雑誌社の電話が何者かに盗聴されている」ということで、某通信社が被害を受けて、それを電電公社に言うていったということが載っております。また、社会党の前の委員長が盗聴されておったというようなことも新聞に出ております。  こういうようなことが新聞紙上にも出ておるのに、一向にその真相が明らかにされないということは一体いかなることであるか。それについては鋭意やったけれどもわからなかったと言われるかもしれないけれども、ここに日本弁護士連合会の昭和四十三年版の人権白書があります。そこでこういうことをいっておるということを最後に申し上げて、あなた方の注意を喚起したい。「此の際、捜査当局に対し本件の重大性に関する認識ならびに、かかる案件に関する捜査の僻怠はかかる案件が国家機関と無関係に行われたものでないとの国民の疑惑を一層強めるものであることに関する認識を促し、捜査を適正、厳正、迅速になすべきことを強く要請する必要があるものと認める」これが日弁連の結論でございます。何人といえども首肯できることだ。こういうことについて、たび重なっておるにもかかわらず捜査が僻怠しておるということは「国家機関と無関係に行われたものでないとの国民の疑惑を一層強める」、こう日本弁護士連合会がいっておる。日本弁護士連合会には田中法務大臣も加入されておる。そういうことをよく考えて、これらの問題について厳正に捜査されることを望みたいと思います。  そこで、別の問題に移りますが、公安調査庁長官に伺いますけれども、あなた方は盗聴器を全然使っておらないと言われますが、実際には使っておられるのではないですか。おたくの役所の中で使っておられるのではないですか。
  118. 川井英良

    ○川井政府委員 そういうことはありません。
  119. 正森成二

    ○正森委員 それでは私から伺いますけれども、この間私どもが質問しました石川公安調査局の村本宏之というのがおります。昭和四七年(わ)第一一一号で、懲役一年六月、執行猶予三年の判決を受けた調査局員であります。その供述調書及び実際に実行行為をやった鈴木俊一の供述調書、それらを私どもは調べてまいりましたけれども、そこでは公安調査局の中で盗聴をやっておるということがはっきりと検察調書に記載されておる。その部分を読みますと、この事件は御承知のように村本というのが城田という第一課長と仲が悪く、うらみを抱いてやったわけですけれども、公判廷での尋問で局内に盗聴器をかけて悪口を言っているのを聞いてやる。どういうぐあいにしてそれを聞くのかと言えば、FMラジオの周波数を合わせて、盗聴器もそれに合わすと語していることが聞こえる。そして局内にはFMラジオが設置されておったがそのことを鈴木に言ってからしばらくしてからFMラジオが撤去されたというようなこともあって、鈴木という村本のスパイが城田課長に通報しているんじゃないか、通報していないというなら身のあかしを立てるために書類を盗んでこい、こういうことになったんだということは調書の中にはっきり出ておる。また念のためにと思って鈴木の調書も見てきましたけれども、鈴木もそれと同趣旨のことを言っている。そうなれば、公安調査庁という役所は、庁内でFMラジオなどに合わせてお互いのことを盗聴しておる、そういう醜悪きわまる役所であるということがこの事件の中ではっきりしておる。お互い同士でさえ課員と課長が盗聴し合うというような、そういうけがらわしい役所が——記録にそう書いてあるんだから、一般国民を盗聴しないという保証がどこにありますか。これは法務省の刑事局長も聞いておいていただきたいけれども、検察官などがとった調書にそういうぐあいに書いてある。また公判でも言っておられる。そうだとすれば、あなた方はそれについて事実かどうかをきちんと捜査する、あるいは当局である公安調査庁はそれについて事実を確かめ、そういうことが万が一にもあるとすれば、それについて厳重な処置をするということはぜひとも必要だというように思われるが、それについてあなた方もこの記録は読んでおられると思うけれども、どう思われますか。
  120. 川井英良

    ○川井政府委員 私もその村本が裁判所に出した上申書とそれから検事に対する調書等を読んだものでありますけれども、その当時検察庁からも公安調査局に対して具体的にそういうようなものを使っておるのかというふうな確認照会があったこともあり、また公安調査庁の本庁といたしましても直ちに金沢の地方局に対しましてそういうふうなものがあるのか、またこういうふうな上申書や調書にいわれているようなものが役所の器具として備えつけられ、また使用されているのかどうかということについて厳重な調査が行なわれておりますが、その結果によりますと、局長の回答その他を総合いたしましても、金沢局においていわゆる盗聴器の使用訓練をしたり、あるいは盗聴器というようなものを庁の備えつけとして使ったようなことは絶対にない、こういう報告になっておりまして、私もそれが真相だと思います。
  121. 正森成二

    ○正森委員 お調べになったということですけれども、しかし、公安調査局員が自分の役所に盗みに入らせるということをやった重大な動機の一つにそういう事実があって、そしてどんな悪口を上司が言っているかということを調べるためにFMラジオに合わせて盗聴するということを言うておるわけですね。しかも、いろいろ調べたとおっしゃるけれども、それをやったのは村本という、もうすでにおたくの役所を首になった人間がやったわけですね。だから村本という人間及び鈴木という人間をよく聞かなければ、城田というような盗聴される側にあった者を幾ら聞いてみてもこれはわからないと思うのですね。村本をよく調べましたか。局として調べましたか。あるいは、私ら見たところでは、裁判所には警察記録というのは自首調書等一部しかなかったけれども、警察、検察庁は、そういう重大なことについて、いままでの答弁で明らかなように、そういうことは絶対にあってはならないことですけれども、十分に調べたかどうか。安原局長及び川井長官にもう一度お答え願いたい。これはわれわれの私文書に書いてあるのなら言わないのです。しかし、公の裁判所における記録の中に明白に書いてあるから——お互いの局同士そんなことをやっているのに、ほかの一般人民を聞かないなんというそういうことは考えられないから、それで聞くわけです。
  122. 川井英良

    ○川井政府委員 この上申書並びに供述調書は、よく読んでみますと、たいへん複雑なことになっておりまするし、それから両者の関係がこういう関係でありましたために、第三者が見ましてかなり舌足らずな会話になっているわけでありますが、それを総合いたしまして、私どもといたしましては、村本が、局内に盗聴器をかけて自分の悪口を言っているのをFMラジオで聞いてやる、こういう趣旨のことを鈴木に対して申し入れた。そうしてその結果を伺っていると、その後に、はたせるかな局の中にいわゆる盗聴器発見用のためのFMラジオが設置された、こういうことを村本が言っている。要するに結局こういうことがこの供述調書や上申書の結論だろうと思う。そうしますと、その後段のほうの、あとでもって局内に盗聴器発見用のFMラジオが設置されたというのは、村本が設置したのではなくて、その上司なる城田課長あるいはそれ以外の局員が設置をした、こういう趣旨にならないと首尾一貫してこないわけでありますので、私といたしましては、村本自身を直接調べなくても、城田以外その他全局員についてそういうふうなものを設置した事実があるかどうか、またそういうようなものを買った事実があるかどうかということを入念に調べるならば、この村本と鈴木との間のやりとりというのは真相が明らかになるのではなかろうか。こういうふうに考えたわけでございまして、そういうふうなわけでいろいろ調べました結果、局でそんなものを備えつけたことはない、こういうことでありますので、結局結論は上申書や裁判記録の中に出ておりますけれども、真相としては、彼らの問答の中に出てくるような事実関係というのはなかったのじゃなかろうか、こういう結論に落ちついたわけでございます。
  123. 正森成二

    ○正森委員 いまの川井長官の御説明は、川井長官なりに筋を通しておられると思うのですが、その上申書や検察調書にないことを公判での問答の中で言っているのです。そこを念のために読みますと、「「当時ラジオがあったのか」「はい、FMラジオです」「そのラジオにどのような措置をしたら聞こえるのか」「FMラジオの周波数を合わせて盗聴器もそれに合わすと、話していることが聞こえるのです」」こう言っておるのですね。だからFMラジオというものは盗聴器発見用ではなしに、まさにそのFMラジオがあってそれに盗聴器の周波数を合わせると聞こえるというように、この公判での記録では当然読み取れるわけです。だから村本は別に盗聴器を持っておってそれをFMラジオの周波数に合わせるということをやったと、これはだれが読んでもとれるような公判での記録になっておる。そうすると、川井長官がいま御説明になったようなことでは疑問は解明しないということになるのですね。少なくとも公判記録ではそうなっておる。そこでもしそうだとすれば、村本も調べなければ、その点についてははっきりしないじゃないかということを思うし、それでわれわれは非常に遺憾千万だというように思うのですね。これはおたくの役所のことが聞かれておったということを遺憾だというだけでなしに、そうでなしに、そういうことをやるような体質の役所はきっと一般国民に対してもいろいろやるだろうということが類推されるから遺憾千万だというように思うのです。したがって、それについては、この公判調書が間違っておるのかもしらぬけれども、念のために技術的にもそういう点についてお調べになって、そしてまた別の機会に御報告いただきたいというように思います。  そこで次の問題に移りますが、公安調査庁長官に伺いたいけれども、あなた方は、私どももその点については適当な機会にもっと徹底的に伺いますが、調査指定団体にしておるところ以外は調べません、調査指定団体の中にはどことどこが入るという意味のことを言われましたね。そうすると、たとえば日本社会党とか公明党というのは調査指定団体では当然ないわけですね。したがって、それを調べるというようなことであれば、それはたとえ破防法があっても違法であるというように確認してもよろしいか。
  124. 川井英良

    ○川井政府委員 そのとおりであります。
  125. 正森成二

    ○正森委員 それでは、私から伺いますけれども、私が自身で調査した村本の昭和四十七年(わ)第一一一号の記録七十九丁にはこう書いてある。三月三十日付の実行行為を行なった鈴木俊一の検察調書です。「村本から城田は公明党の党員らしい、うちに帰ってから創価学会の集まりに参加しないか、または党員の者が出入りしているかいないか調べてほしいと頼まれました。私はこの頼みを引き受けて、真田運転手は女の住居へたずねてきたところを二枚写真にとったことがあり、また城田課長行動を張り込んだこともあります」こう答えておる。ここの真田運転手という者が女の住居へたずねてきた云々というのは、この前にあなたの役所の真田運転手というものが局の事務局とできておるということがあるので、それがほんとうかどうかということのために個人の私生活を調べたということですが、これは本件に直接関係がないから省きますが、はっきりと村本という公安調査局員が、城田という人物は公明党の党員らしいから、うちに帰ってから創価学会の集まりに参加しないか、または党員の者が出入りしているかいないか調べてほしいと頼まれました、城田課長行動を張り込んだこともありますと明白に答えておる。そうだとすれば、おたくの役所は単に指定団体にしておるところだけでなしに、公明党も明白に調査しておるということになるではありませんか。これはちゃんと裁判記録にあるのだ。不届き千万じゃないか。それについてどう思いますか。
  126. 川井英良

    ○川井政府委員 これはちょっと説明が必要なんですけれども、この村本と鈴木といういわゆる学生協力者の関係というのは二カ月ほどで切れているわけでございます。そのことは裁判記録の中にもところどころに明白に出ていますが、上司である城田課長に対して、鈴木の関係の報償費を上げたいならそれを出してくれ、こういうふうに要求したところが、全然情報が入ってこないのだからそんな者に報償費を出すわけにいかぬといって、明確に断わられたということも出ております。  局のほうといたしましては、村本が持っておりました鈴木という協力者の関係は二カ月で切れてしまって、局の台帳からはその協力者の名前はすでに消えているわけであります。そこで、あとでいろいろ追及しましたところが、もうあの関係は切れたということでありましたので、村本に対しては鈴木に渡す報償費は全然渡していないわけであります。ところが、この事件が発覚したあとで調べてみますと、公的な関係は切れましたけれども、何か私的に非常に仲よくなりまして、二人の間は全く私的な交際関係がしばらくの間続いておった、こういうことでありますので、この前提をもとにいたしまして、ただいま御指摘になりました公明党云々の点を考えてみなければならない、こう思うわけでございます。  そこでもう一つは、この事件が問題になりましたのは、これは十分御承知のとおり、結局村本が、上司の城田というものと非常に意見の相違ができて仲が悪くなりまして、何とかして城田課長を失墜さしてやろうというふうなことから、城田を困らせるために、自分のかつての協力者であった鈴木を使って局の秘密の書類を盗み出させた、こういうふうな関係になっておりますので、そういう点から見ますると、かりにいまお読み上げのような事実、問答があったといたしましても、それは全く私怨関係というのでしょうか、城田と村本との私怨関係で、特に自分が懇意の関係にあった鈴木を使ってその城田の私的なことを調査させて自分のほうに報告させよう、こういうふうにしたものとしか受け取れないわけでございますので、私どもといたしましては、そういうふうな事実があったかとかどうかということにつきまして、これは鈴木の供述もありますし、村本の供述もありますので、おそらくそれに似たような話が出たのだろう、こう思いますけれども、事実といたしましても、それは全く私的な関係で、公な関係にはなかったのだ、こういうふうに申し上げざるを得ないわけでございますので、やはり私のたてまえといたしましても、指導といたしましても、指定以外の団体調査するというようなことはやらしておりませんし、今後もかたくやらせないつもりでございます。
  127. 正森成二

    ○正森委員 いま長官からそういう答弁があったわけですが、私怨というのは私の恨みという意味だと思うのです。また、鈴木俊一については、実費弁償というか維持費といいますか、そういうものも切れた段階で行なわれたというようなことを言われましたが、かりにそれが事実だったとしても、命令したのは現職である公安調査局員だ。そうすると、現職の公安調査局員が、かりに城田を失墜させるためであったとしても、公明党の党員であり、創価学会の集まりに参加しないとかしたとかいうようなことがなぜ失墜の原因になるか。そういう考え方の構造を持っておること自体が非常に問題ではありませんか。あたかも破廉恥行為をしたのと同じように——信教の自由があるから、創価学会の集会に出ようと、自由だ。公明党は天下の公党だ、公明党が多数を取る場合もあるかもしれない、あるいは共産党と社会党と連合して民主連合政府ができるかもしれない、そういう政党の党員らしいから、創価学会の集まりに出ているかいないか、公明党の党員が出入りするかどうか、それを調べてほしいというようなことを調べて、それが何か本人を失墜させる種になるかのように考えておる。そういう公安調査局の考え方と体質が問題だ。そして、現にそれを行なっておるということになれば、あなた方の役所というところは、私怨か何か知らないけれども、機会があれば、共産党であろうと、社党会であろうと、公明党であろうと、いろいろとお調べになるということを物語っているではありませんか。したがって、それは私怨であるとかなんとかいうことでなしに、いやしくもそういうことをさせないということで綱記を正すということがぜひとも必要だというように思われますか、いかがですか。
  128. 川井英良

    ○川井政府委員 この村本という調査官は、立件記録を見ましても非常に変わった性格であり、また変わった考え方の人であった、こういうふうに思うわけでありまして、それらの事情も含めて、事件を契機としまして懲戒免職の処分をいたしたわけでございまして、これはごく例外的な人がたまたまそういうふうなことを考えてそういうふうな問答があったということであります。  私の、役所の本筋といたしまして、ほとんど全部の調査官というふうなものが、そういう者と同じような考え方を持っているとはとても考えておりません。しかしながら、ただいま御指摘のようなこともありましたし、現に、私的な関係にありましても、その当時当庁の職員であったことは間違いございませんから、いままでもそうでありますけれども、その指摘を契機といたしまして、職員全体について誤りなきを期してまいりたい、こういうつもりでございます。
  129. 正森成二

    ○正森委員 いま例外的な人物であると言われましたけれども、それは必ずしも例外ではない。たとえば、私がこの間、四月十八日に質問をして、時間がないので時間切れになりましたが、あなた方の、山梨公安調査局というのですか、甲府ですか。(川井政府委員「山梨です」と呼ぶ)山梨公安調査局の、古屋正というペンネームの男がおりますが、この人物が、磯野茂というのと接触したということは、あなた方も認められておる。そこで、私が磯野茂に現実に会って、ここに私は供述録取書をとってきておる。これは言いましたけれども、そこで、古屋さんの自宅に報告に行ったときに、友人から貸してもらったものだがと言って、公明党のほうの資料を見せてもらったことがあります。古屋さんは、公明党は共産党をよく研究していると話しておりましたということで、公明党の資料について収集しておるということをはっきりと言っておる。したがって、あなた方は村本宏之が特殊な人間だからというように言われるかもしれないけれども、そうではなしに、それ以外にも一般的にも、共産党情報を得るためだけでなしに、公明党自身の情報も得るために、たとえば共産党と協力しないかどうかということのために公明党も捜査しておるということが現実にいえるのじゃないかということを、私たちは重大な疑いを持たざるを得ない。それは一方には公判記録にあり、一方は私が自分で聞いてきたことだからです。それについて、そういうことは絶対にない、あるいはかりにあったとしたらそういうことはゆゆしいことだから姿勢を正すというようにおっしゃるかどうか、もう一度伺いたい。
  130. 川井英良

    ○川井政府委員 いま公明党という名前が出ましたので、それをそのままおかりいたしますが、公明党を調査の対象にして、公明党に関する資料を集めているというようなことは絶対ございません。いまあげられました甲府の例は、その時期からいいましても、これも説明を申し上げるまでもないことでございますけれども、当時、日本共産党と公明党との間でいろいろ、一般新聞にも書かれたような、基本路線についての議論が展開された当時だと思いますが、公安調査官としましても、そういうようなことに深い関心をもって、公にされたものを研究した、そういうふうなことはあろうかと思いますけれども、それはともかくといたしまして、指定対象団体にしていないというようなものを積極的に何らかの意図をもって調べるというようなことは、過去においてもなかったと思いますし、将来においても、そういうことはさせない覚悟でございます。
  131. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう御答弁がありましたが、われわれは、社会党についても捜査されておるという証拠をつかんでおります。それについてはまた後ほど、時間があれば申し上げますが、その前に、村本宏之の関連する事件の調書によれば、実行行為を行なった鈴木俊一というのは、三月二十九日付兼子副検事の調書において、友人の小林という人が鈴木にはおったようでありますが、それと金沢の珍萬という中華料理店において会話をした。その会話の内容が載っておる。それを見ますと、「それをやらないと就職できない。」それをやらないとというのは公安調査庁にどろぼうに入らないとということです。「ある男と縁を切るためにやらなければならない。」「秘密警察で、やらないと裏で捜査されて就職ができない。」秘密警察というのは公安調査庁のことだ。「秘密警察で、やらないと裏で捜査されて就職ができない。」こういうことで、この犯行の直前、二月二十二日——二十二日から二十三日にかけて入っておるのだから。そのときに最も親しい友人の小林というのにそういうことを言って、小林が制止をするにもかわわらず、こういう事情があるからやらなければならないのだ、こう言ってどろぼうに入っておる。そうだとすれば、あなた方の協力者であった鈴木俊一みずからが、公安調査庁というのは秘密警察で、やらないと裏で捜査され就職ができないとか、ある男、公安調査局員と縁を切るためにはやらなければならないとか、それをやらないと就職できない、つまりどろぼうをしなければ縁も切ってもらえないし、就職もできない。戦前のおかっぴき時代よりもまだいやらしいじゃないですか。そういうことを検察官の調書で堂々と言っておる。こういう役所だ。それについて安原刑事局長に伺いたいが、あなた方は、こういうどろぼうをしなければ縁を切ってもらえないということを被疑者が言うておるということについて、単に被疑者の言ったことだけでなしに、それがどういう内容であるかどうかということについて詳しく捜査したのかどうか、それについて伺いたい。
  132. 安原美穂

    ○安原政府委員 いまお尋ねの最後の点については、詳しいことを存じませんが、先ほど川井長官も申し上げましたように、検察庁といたしましても、盗聴器を使ったとかあるいは窃盗を教唆したとかというようなことはゆゆしい問題でございましたので、重大な関心を持って、公安調査局に連絡をして、善処方を求めたということが検察庁でとった処置として承知しておるところでございます。
  133. 正森成二

    ○正森委員 安原刑事局長に、あなたは捜査官ではないけれども、伺いたいと思うのです。  この調書が事実だとすれば、その鈴木というのは非常にかわいそうなことになってくる。入ってきて身のあかしを立てなければ就職もできない、縁も切れないということだということになれば、これはもう非常にたいへんなことだ。そこでわれわれの調査によれば、鈴木俊一というのは実行行為を行なった重大な犯人であるにもかかわらず、起訴されておりませんね。これは証拠上明らかだ。そこで、この鈴木俊一という実行行為者は不起訴になったのか、それとも情状酌量をされて起訴猶予になったのか、それについて伺いたい。よもや不起訴ではあるまい。
  134. 安原美穂

    ○安原政府委員 御指摘のとおり起訴猶予でございます。
  135. 正森成二

    ○正森委員 起訴猶予だとすれば、われわれの常識概念によれば、公安調査庁という役所に入って重大な書類を、われわれにとってはそれを見る機会が与えられたから非常にうれしいけれども、あなた方にとっては重大なことでしょう。そういう文書を実際に盗んだ実行行為者は起訴もされず、調書を綿密に見ると、本人が示唆したと言っておるが、一方では犯行を確定的にやれとまでは言わなかったという弁解もしておる。そういう村本宏之という調査局員だけは起訴されておるということになれば、何らかの点で実行行為者のほうを猶予とすべきであり起訴とすべきではないという事情があったとしか考えられない。われわれは検察官の訓練も修習生時代に受けたから、実行行為者が処罰されないのはよくよくのことだ。そのよくよくのことというのは、この三月二十九日付の兼子副検事調書にもあるように、それをやらなければ就職もできないというような苦境に追い込まれたから、つまり村本宏之の道具として鈴木俊一が使われたから、その刑事責任を追及するのは酷だ、そう思ったからあなた方は起訴猶予にしたのではないのか。そうとして考えられない。ということは、この調書の事実を真実である、あるいはそれに近いと認めたことにほかならない、そう理解してよろしいか。それ以外には起訴猶予にする理由は何らない。
  136. 安原美穂

    ○安原政府委員 いま御指摘のような、鈴木俊一の供述がそのまま真実であるかどうか、つまり義務なきことを行なわせるような心理的な拘束状態に置いたということであったかどうかは別といたしまして、少なくとも御指摘のとおり、本件における主犯的地位にあったのは村本であり、鈴木はそれに比べて従たる地位にあったということで、起訴猶予になったものと理解しております。
  137. 正森成二

    ○正森委員 いま非常に含みのある答弁をされましたが、従たる地位にあると言われましたが、かりにこれが共謀共同正犯であるにせよ、おそらくそうでしょうが、実際に便所の窓から忍び込んで盗んだのは鈴木俊一、それを起訴猶予にしておるということですから、実行行為者よりもうしろにおった者がはるかに重大であるということを検察官が認識されたにほかならない。そうだとすれば、本人のいろいろ犯行をやらざるを得なかった事情というものについて、相当程度の信憑力を認められたからそういう措置をされたと受け取らざるを得ない。そうでしょう。そうだとすれば、ここに書いてあること全部をほんとうと見た、これは一〇〇%ということはあり得ないにしても、こういう弁解について、検察庁として同情すべき余地があると思ったからこそ従的立場にあると思い、したがって起訴しなかった。これは法律家ならだれでもそう思うことですが、安原局長、私がそう思ってもいいでしょうか。
  138. 安原美穂

    ○安原政府委員 大筋といたしましては、さように理解されるものと思います。
  139. 正森成二

    ○正森委員 そうなるとすれば、わが国の検察庁お墨つきで、公安調査庁というところは実に不届き千万なところだ、どろぼうをしなければ就職もできない、縁も切ることができないという局員をかかえておる役所であるということが、わが国の検察庁によってもある程度証明されたことになる。そういう役所。それについて川井局長局長じゃないあなたは長官、格がもう一つ上だ、失礼しましたけれども、厳重に姿勢を正していかなければいかぬですね。  しかも私はもう一つ申し上げますけれども、記録を読んでみるとそれだけではないんですね。記録では、丹羽という二課長がおる。あなたも御存じでしょう。上申書を村本宏之が書いておりますね。これはあなたもお読みになったことでしょうが、村本宏之が裁判所に自分がなぜこういう犯行を犯すに至ったかという真情を吐露した上申書。それを見ると、その中に丹羽課長はこういうことを言ったというのが載っておる。その点の抜粋を読み上げると、「山田一課係長は」これは総務係長ですね。「山田一課係長は、「この事件は俺がやりたかったぐらいだ」と言っていたし、荒井さんも」荒井さんというのは公安調査局員、これはまた別の機会にこの問題については取り上げますが、「「局の中におるよりも外で協力者と会っているのがよっぽどよかった。城やんがおらんかったらこんなことにならなかった」と泣いて訴えていたよ。村本君はあとでみんなから感謝されるよ。」いいですか。どろぼうした人間が「あとでみんなから感謝されるよ。」こうおたくの人間が言ったということが裁判所への上申書に書いてある。何という役所だ。一方では実行行為者はこれをやらなければ就職できないということだから検察庁は起訴猶予にしたというぐらいどろぼうをけしかけ、そのけしかけた人間が「あとでみんなから感謝されるよ。」「俺がやりたかったぐらいだ。」こんな役所がわが国の予算で飼われておる。犯罪者集団じゃないか。私はこれは事実に基づかないで言うておるのではない。裁判所の記録に基づいて言うておるのだ。それについて長官はどう思うか。
  140. 川井英良

    ○川井政府委員 かつて当庁の職員であり、また公安調査官であった者が、ただいまいろいろと公判調書について御指摘を受けたような、あるいはそれに近い類似の行為があったものと思いますけれども、不始末があったということにつきましては、やはりたいへん申しわけないことだと思います。今後引き続き——その当時にもすでにそれを契機として全庁に誤りなきを期すように厳重な通達が出ておりますけれども、引き続きまたそういうようなかたい信念を持して誤りなきを期してまいりたい、こう思っております。
  141. 正森成二

    ○正森委員 いま川井長官は、姿勢を正すという意味のことを言われましたが、あなた、お読みになったと思いますが、上申書には、これは役所の体質だというようにいっている部分もありますね、あなたが御存じのとおり。  そこで、私は安原刑事局長に伺いたい。私が金沢地方検察庁へ行って、自分みずからが捜査といいますか、調べてまいったわけですけれども、あなたのところには、おそらく報告が行っていると思いますが、私が記録を見るということを言ったときに、刑事訴訟法の五十三条に何人でも閲覧できるというふうになっておりますね。これはあなたも御承知のとおりだろうと思います。私が国会議員としてここで質問しようとすれば、あいまいなことが言えないから、当然閲覧ないし少なくともメモをとる必要がある。そうでなければ、私が事実と違うことを言ったということになる。しかも、私はその記録を閲覧するときの目的に、法務行政調査のためということを明白に書いた。しかるに金沢地方検察庁のある人物は、私はあえて名前は聞かなかったけれども、閲覧だけならよろしいが、メモをとることは一切許さない、もしメモをとるならこの記録は持って帰ると言ったから、私が一喝して、何ということを言うか、それならばその者の官、姓名を言えということを言ったら、やっと、それなら最小限度、メモだけはおとりいただいてもけっこうです、こういうことになったわけです。そこで、それについて刑事訴訟法五十三条に明文の規定があり、その例外規定もまた五十三条で規定されておる、そう思いますが、違いますか、二項か三項かに。そこで、いかなる根拠に基づいて、国会議員が法務行政のためにそういうのを調べるときにメモをとってはならないということを言うのか。それをもし言えるとすれば、その根拠について、刑事局長からお答えいただきたい。
  142. 安原美穂

    ○安原政府委員 刑事訴訟法の五十三条の第一項に原則がございまして、「何人も、被告事件の終結後、訴訟記録を閲覧することができる。」そこで、「但し、訴訟記録の保存又は裁判所若しくは検察庁の事務に支障のあるときは、この限りでない。」これは事務上の支障あるいは陳腐化した記録で破損するおそれがあるというようなことを言っておると思いますが、それはそれといたしまして、第二項に閲覧を禁止し得る例外の場合が規定してございまして、「弁論の公開を禁止した事件の訴訟記録又は一般の閲覧に適しないものとしてその閲覧が禁止された訴訟記録は、前項の規定にかかわわらず、訴訟関係人又は閲覧につき正当な理由があって特に訴訟記録の保管者の許可を受けた者でなければ、これを閲覧することができない。」ということになっておりまして、この規定の条文からは、謄写のことは何も言っておらないわけであります。そこで、私どもは、訴訟法の規定を受けまして事務取扱要領というものをつくっておりまして、その中に事務の指導といたしましては、「閲覧を許す場合には、記録の謄写、撮影、摘録等を許すことができる。」という要領になっておりまして、場合によりましては記録の謄写もさせることができるということにしております。  そこで、そういうことでございますので、閲覧を許さない場合といたしましては、ここにある「閲覧に適しないもの」といたしましてわれわれが考えておりますのは、「閲覧人が未成年者(訴訟関係人を除く。)であるとき。」「閲覧人が精神病者である疑いがあるとき。」もう一つは「閲覧人が記録の内容を故なく流布して訴訟関係人の名誉を著しく毀損する等の行為をする虞があるとき。」あるいは「閲覧人が閲覧票に虚偽の記載をし、又は閲覧に関する指示に従わないとき。」というような場合には「閲覧を許さないことができる。」というふうにしているのであります。これは「閲覧に適しないもの」としての、閲覧が禁止されたということの条理上の解釈として、そのような場合は「閲覧を許さないことができる。」というふうに理解をして取扱要領を定めておるわけでございます。そこで、謄写を許さないというようなことを一事務官が申し上げたといたしますれば、それはその取扱要領を誤解してそう言ったのであろうと思いますし、かつてその事務官がもし閲覧を許さないということを言ったとすれば、それはいわゆる第三号にあります、ゆえなく訴訟人の名誉を著しく棄損するおそれのあるような場合としてその閲覧を許さないということ、そのことがあったのかとも思いますが、いずれにいたしましても、取扱要領でわれわれは、閲覧につきましては謄写を許すということを原則としております。ただ、五十二条の一項に規定がございますように、記録の保存に支障があるというようなことが、万一記録が陳腐化して古いものであるという場合は、そういうときには、謄写によって記録が破損するおそれがあるということでお断わりする場合があるかもしれませんが、今回、先生のような調査目的でおいでになった方に閲覧、謄写を拒否したということは、一時的にもせよ誤りであったと思います。
  143. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう答弁がありましたが、私どもの調べたところでは、昭和四十五年十一月二十四日付法務省刑事局長通達に、いま安原刑事局長がおっしゃったようなことが書いてありますね。われわれはそれを十分に調べた上で閲覧に行っている。そこで、そうだとすれば、刑事訴訟法五十三条二項の「弁論の公開を禁止した事件」にはこの事件は当たらないわけです。そしてわれわれは、ここに書いてある「未成年者」でもなし、「精神病者」でもなし、「記録の内容を故なく流布して」「名誉を著しく毀損する」わけでもない。国会で、まさに法務行政調査するために聞く、こういうことで行っており、しかも規則の中には、閲覧だけではなしに「謄写、撮影、摘録等を許すことができる。」ということになっているにもかかわらず、したがって、一般の人間でもできるにもかかわらず、弁護士であり、かつ国会議員であり法務委員である、しかも法務行政調査のために行っているというようなことが、一事務官か検事正か知らぬけれども、そういうことをやるのはもってのほかではないか。今後、厳重にそういうことをしないということを約束するかどうか。そのために私は十分に謄写することができなかったけれども、私及び私の委任状を持った者が行けば謄写を許すかどうか。あるいは私は、公明党をはじめとして、種々重要なことが載っているから、それについてはこの国会に訴訟記録を提出していただいて、私はそれについてなお十分に調べたい。メモをとることもできなかったから、ここで質問をする場合にもきわめて簡潔にしか聞けなかった。そこで安原刑事局長に、その点についてあなたは適当な措置をとられるかどうかということについてお伺いして、私はきょうは質問を一応終わりたい。ほんとうはまだまだあるのですが、中垣委員長、実はこれを続けますと、後続の方がないとすれば、あと一時間でも二時間でも続けるわけですけれども、ちょうどお昼ですから、もし続けるなら休憩をしてからやっていただく、あるいは来週に延ばしていただくということで、安原さんの答弁を伺って、これで午前中は終わりたいと思います。
  144. 安原美穂

    ○安原政府委員 実は金沢地方検察庁から正森先生がおいでになってかくかくの閲覧をされたという報告は受けたのでございまするが、詳しいいま御指摘のようなことの報告は受けておりません。しかし御指摘のような目的のためでございますので、どういう方法で内容をより正確に、閲覧の結果をどのような方法で御了知いただくようにするか、ちょうど検事正会同で上京して金沢地方検察庁来ておりますので、よく相談いたしまして後刻御連絡申し上げます。
  145. 正森成二

    ○正森委員 それでは一応終わります。
  146. 中垣國男

    中垣委員長 次回は、来たる十一日午前十時理事会、午前十時十五分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時五十分散会