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1973-04-25 第71回国会 衆議院 法務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月二十五日(水曜日)     午前十時十八分開議  出席委員    委員長 中垣 國男君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 谷川 和穗君 理事 稲葉 誠一君    理事 横山 利秋君 理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    植木庚子郎君       住  栄作君    千葉 三郎君       羽田野忠文君    早川  崇君       保岡 興治君    日野 吉夫君       山田 太郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         警察庁刑事局保         安部長     斎藤 一郎君         法務大臣官房長 香川 保一君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省矯正局長 長島  敦君         法務省入国管理         局長      吉岡  章君  委員外出席者         警察庁刑事局参         事官      宮地 亨吉君         法務大臣官房営         繕課長     水原 敏博君         最高裁判所事務         総局家庭局長  裾分 一立君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 四月二十四日  借地法等の一部を改正する法律の一部を改正す  る法律案青柳盛雄君外一名提出、衆法第三一  号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 中垣國男

    中垣委員長 これより会議を開きます。  おはかりいたします。  本日最高裁判所裾分家庭局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中垣國男

    中垣委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 中垣國男

    中垣委員長 法務行政に関する件、検察行政に関する件及び人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。稲葉誠一君。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 きょうは、当面いろいろ問題になっていることについて簡潔に要点だけをお聞きしていきたいと思います。  一つは、千葉大学の例の事件無罪判決が出て、まだ十四日たちませんから検事控訴期間があるわけですが、それに関連をして、検事控訴のあり方あるいは本件における捜査問題点、こういうようなことで若干お聞きしたいと思うわけです。  これは検事捜査過程で、例のチフス菌を注射した場合に、いつごろどういうふうな罹病が起きるか、そういうようなことについての鑑定をやったのですか。
  6. 安原美穂

    安原政府委員 鑑定勾留期間中にやっております。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは裁判所でやった鑑定本件事件無罪のきめ手となった鑑定がありますね、あれと別な鑑定ですか。
  8. 安原美穂

    安原政府委員 さようでございます。別でございます。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 どういう鑑定検事勾留中にやったわけですか。検事の手持ちの期間というのは短いわけですから、おそらく一部起訴をしてそれから鑑定をやったのではないか、こう思うのですが。
  10. 安原美穂

    安原政府委員 千葉県の衛生部の技師にカステラと菌との関係については二日間、カステラでどれくらい菌が生き残るかというようなことを中心とした、いわば御指摘のような簡単な鑑定を依頼して、その結果を得たということでございます。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 あんまり捜査のこまかい内容に入ることは避けますけれども、これは無罪になったところから見ると、確定しているわけじゃありませんけれども、どうも検察官起訴段階においての学問的な鑑定というものが不十分だった。これはまあ判決の認定、そういうところが中心ですわな。そこら辺のところに本件捜査上のミスとはぼくは言いませんけれども、時間的な制約がありますから、裁判所でやる鑑定とは時間的な面での非常な違いがありますからね、わかりますけれども、そういう点で不足があったというふうに思うのです。  それから自白内容ですね。勾留されて七日目ですかに自白をした。自白については任意性はあるけれども、信用性がないというふうな判断ですね。その判断が正しいかどうかは別として、そうすると、その自白があって、その自白内容起訴までの段階で、科学的な学問的なというかな、そういう検討をどの程度この事件はして、そして起訴に持っていったのですか。そこがちょっとわからないようですが。
  12. 安原美穂

    安原政府委員 確かにこのような事件につきましては非常にむずかしい科学上の問題を含んでおりますので、いわゆる延長いたしましても二十日という勾留期間内に十分科学的な調査を遂げるということには相当困難があったことは否定できないのでございます。しかしながら、検察官は御案内のとおり有罪を得る見込みのない事件につきましては起訴すべきではないということで、本件につきましても検察官としては有罪を得る心証を得て、自白等を勘案して起訴したものと思います。しかしながら、いま御指摘のように、そういう見込みがないときには身柄の問題もさることながら、やはり在宅にして、なお科学的な鑑定を経て有罪を得る見込みの確信を得るまでは起訴すべきではないわけで、その点について、結果的には無罪でございましたけれども、検察当局においてその点についての心証を得ることについての過誤があったとは思いませんけれども、なお先ばしるようですが、その後、公判審理過程におきましてさらに詳細の鑑定が出た結果、科学的に自白というものの信用性がないという判断に達したわけでございます。この事態を踏んまえまして検察当局といたしましては慎重の上にも慎重に、検事控訴の要否を検討して事に対処すべきだというふうに考えております。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これはたとえば被告人が心身喪失したとか、その疑いがあるとか、あるいは精神障害というようないろいろな問題があるときには、鑑定留置の場合でも、長く何といいますか事件を持っていくことはできるのですけれども、いまの制度では、これは二十三日の間に一部起訴せざるを得ないということになるわけです。本件については何か二年間勾留したのですか、そこはどうなんです。
  14. 安原美穂

    安原政府委員 起訴後の勾留を入れて二年六カ月にわたる未決勾留でございます。
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは検事の問題だけじゃなくて、おそらく保釈請求だって却下したんでしょうから、一がいに言えないかもしれぬけれども、二年六カ月の勾留というのは事件が十三あったのですが、一部起訴、一部起訴でやっていったんじゃないかと思いますが、よくその点は、はっきりしないところがありますが、いずれにしても非常に長い勾留ですね。そうして裁判に七年かかったというようなことを考えてみると、これはむずかしい事件ではあるけれども、自白内容についての科学的な裏づけというようなものが不十分なままどうも起訴したような、そのときの流れで起訴したような感じを受けるのですが、それはそれとして、大臣お聞きしたいのは、どうもこういう事件がありますと、検察庁としてはいわばメンツにとらわれるというか、意地になって、これが確定したら自分たちミスだ、責任だ、こういうようなことで意地になって検事控訴をするというきらいがなきにしもあらずだ、こういうことを考えられるのですよ。本件はもう七年かかっている。身柄も二年六カ月勾留されておる。私は記録を見たわけではない、被告人に会ったわけではない、弁護人に会ったわけではありませんから、だから適切なことを私が言える筋合いのものじゃないかもわからないのですけれども、一般国民感情から見て、意地になって無理に検事控訴をやってさらに裁判をあれするという筋合いのものではないように思われるのですが、こういう点について法務大臣としての見解があれば、お聞かせを願いたい、こう思うわけです。
  16. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 検察官も血の通うた人間でございますから、おことばのように感情が全く入らないとは言いかねるのでございます。しかしこういう重要な判決に対して上訴手続をとるかどうかという重大な事柄を決しますには、検察をあげて一貫して冷静に感情を離れて判断するということを永年の鉄則とし、これをかたく守って今日に至っているのでございます。そういうことでございますから、先生御心配をいただきますようなことのないように十分注意をさせたい。注意の上にも注意をさせたい、こう考えるのでございます。  なお、この上訴をすべきかどうかという問題に関しましては、私の意見は永年にわたって苦労苦労を重ねてきてくれました信頼をしておりまする検察の独自の判断政治家としての私の意見考えないで、大臣がどう考えておるかなどということを頭に置かないで、独自の検察判断判断をしてくれますことを私は尊重していきたい、こういうふうに念願をしておりますので、いまちょうど検討をしておる最中でございます。非常に大事な時期でございます。今明日というところが大事な時期でございますので、この時期に私が国会で発言をいたしますことは遠慮しておきたい、こう考えております。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それがぼくも正しい行き方だ、こう思いますね。あなたがここでああだこうだ意見を言うことは、これは政党政治検察庁に対する支配という形になりますし、問題が起きるところですから、それはそれでいいと思うのですけれども、ただ、いま言ったように、メンツ意地、いろいろあるでしょうし、それから検事控訴したときに新しい証拠が発見できるという確たる見通し、そうしてまたそれがこの判決をくつがえすだけの証拠、しかもそれは科学的な形での証拠が発見できるという可能性がない以上は、これはあなた方にとっちゃあ涙をのんでかもわからぬけれども、検事控訴すべきではないのじゃないか、これは私の考え方ですけれども、これだけのことを申し上げておくわけです。  そこで別のことになるわけですが、きのうも参議院法務委員会で取り上げられたといいますか、参考人として石巻のお医者さんを呼ばれて、いろいろ聞かれておるわけですね。そのことに関して、これは警察のほうにお聞きをするわけですが伝えられるところでは、宮城県警石巻警察がいまの段階ではいろいろ事情を聴取されておるということを聞いておるわけですね。本件についての、第一次的にはやはり警察ですから警察としての見方、見解、こういうようなことをお聞かせ願いたい、こういうように思うわけです。
  18. 宮地亨吉

    宮地説明員 お答え申し上げます。  石巻署におきましては、四月十七日と四月十八日に、親を求むという広告が出ました。非常に変わった広告でございましたので、四月二十日の朝、石巻署防犯係がお医者さんのところに参りまして事情をお伺いいたしました。そうしましたら、新聞に出ておったような状況がわかったわけです。  次に、これをどうするかという警察考え方でございますが、その事犯は形式的には公正証書原本不実記載という罪に該当する疑いがあるのでございますけれども、捜査を行なうことによりまして、子供をもらい受けられた家庭のしあわせを根底から破壊するおそれがある、こういうようなことから関係機関等意見を十分に考慮いたしまして、慎重に検討した上で判断すべきものであろう、こういうふうに考えたわけでございます。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その点については法務省としてはどういうふうに考えておられるわけですか。きのうもいろいろ答弁があったようですけれども、大臣としてはどうお考えですか。
  20. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 たいへんむずかしい、むずかしいというより深刻な問題でございます。これは親を求めるという広告をめぐって実態がだんだんと明らかになってまいりました。かりにこの問題は刑罰法規に触れる事柄があるといたしましても、たとえば公正証書原本不実記載行使罪などという罪名に当たるものがあるといたしましても、これを直ちに摘発して、この罰則を適用して処断をするということがよいのか悪いのか、ここが深刻なところでございます。ややこしい問題でございますから、私は、一口にこういうふうに簡単に判断を——簡単、慎重に判断をしておるのであります。どう処置することが子供の幸福につながるかという、子供の幸福を本位に観察をいたしまして処理をしていきたい。罰則はあれど、この罰則は必ず適用しなければならぬという法律制度ではないわけでございますから、そこでそういうふうに考えていきたい、こういうふうに思っております。刑罰法規罰則を適用すること、そのこと自体は法秩序が成り立つ上には必要なという判断もできないことはありますまいが、それによって子供の将来が幸福になれない、あるいはせっかく親を求むの広告によってつくり上げられたその子供の幸福というものが破壊されるということならば、これはたいへんぐあいの悪いことだ、こう考えますので、事態事態を取り上げまして、そうして子供の幸福になるように処置をしていくためにはどう取り扱うべきかということを判断いたしましてこれをやっていきたい。  それからお尋ねのないことでありますが、つけ加えて申し上げておきますと、新しい法律制度をつくったらどうかという問題でございます。新しい法律制度をつくってこの種の問題を処理していくということも大事なことでございますが、かりに新しい親子制度というものをつくり上げるといたしましても、必ずしもその制度をそのまま適用を強制することが当を得るか得ないかということも子供の幸福の上から考えなければならない。したがって新しい親子制度というものがかりに国会の御意向によってでき上がりましても、それを適用するかしないかは任意の姿でいけるようにせなければ、子供の幸福を真に考えることにならないのではなかろうか、こういうふうにも考えておるわけでございます。  とりとめのない話で申しわけございませんが、そういうふうに観測しております。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 子供のしあわせということですね。そのとおりです。私もそう思います。だから変なことばですけれども、生まれてくる子供には罪はないというか、そのしあわせを考えなければいけないということで、民法でも、昔あった名前の使い方を変えたり廃止したりしているわけですね。そうすると、いま大臣が言われたのはこれから私も聞こうと思っていたところなんですが、新しい法律制度ということ、いまあなたが先に言われたものですから、このことの具体的な内容ですね。これは民事局長もいるからあとで聞きますけれども、大臣が先に言われたから、あなたの頭の中にあるだろうと思うのですが、具体的にどういう法律制度をあなたとしてお考えになっているのか、その点はどうなんですか。
  22. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 新しい法律制度について私の頭の中に確たるものがあるわけではないのでございます。ところが、一昨日以来参議院でも同様の問題が論議されまして、新しい親子制度というものを考えて、公正証書原本不実記載などという罪名に触れる心配のないようにしたらどうかという熱心な子供を思う気持ちの御意見が表明されております。具体的なことはどういうことがよかろうかということを国会で私が発言申し上げるほどの内容が私の頭で確たるものがあるわけではございませんが、表から申しますと、だれが見ても公正証書原本に対して不実記載をしたということになるわけですね。それはそうでないということは言えない。それをそう扱って処罰するかどうかという問題があるだけでございます。確かに違反だ。確かに罰則がここに動かそうと思えば動かせぬこともないという事態が起こるわけであります。そういう制度をほうっておかないで、実情は親を求める新聞広告が必要な事情も若干あるのだから、そういう事情がある以上は新しい親子制度というものを法律上つくってはどうか、こういう考え方が熱心にあるわけでございます。そういうことをちょっと私が先に触れたという事情でございます。具体的に確立したものを持っているわけじゃございません。
  23. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その新しい親子制度というのが、いま大臣の話を聞くと戸籍記載が正確であるかどうか、不実であるかどうか、こういうところだけに重点が置かれているように聞けるのです。それも一つのあれかもしれませんが、そのことがそんなに重要性のあること、絶対的なものではないはずですね。子供が生まれて記載された、それは自然科学的な事実だけれども、それが法律的な形でオーソライズされて記載されれば、それは真実だと見ていいわけですから、そうそこだけにこだわるのもいかがかと思うのです。大臣日本でも江戸時代制度はちょっと違うかもわかりませんけれども、実際には自分子供ではないのだけれども、養子という形ではなくて実子として、嫡出子として届けたいというか、届けたほうが子供のしあわせのためにもなるという考え方で、実際それが行なわれているという慣行が日本の中にも非常にあるわけでしょう。このことはどの程度大臣としてはお知りでしょうか。これは民事局長通達も出ているのですよね。「昭和三十六年九月五日民甲二〇〇八号」というのがあるわけですよね。これは民事局長、そこまで調べていられるかと思いますけれども、たとえばこれは母親が五十歳に達した後に出生した子供として、嫡出子として出てきているわけですね。女の人が五十歳になったら子供が生めないのかどうかわかりませんけれども、そんなことはないでしょうけれども、わかりませんけれども、そういう形でだいぶ出ている。そういうときには慎重にやれというような民事局長通達もあるわけでしょう。それから、そういうふうな問題が戸籍のときのいろいろな照会や、あるいはこれは大阪ですか、大阪戸籍住民登録事務協議会というような、こういうところでもそういうようなことが出ているわけですね。  たとえば大阪のは——戸籍事務というのは、法務省の所管、民事局の五課の担当ですね。「我々戸籍事務担当者戸籍相談事務或は戸籍訂正事件を通じて世上多くの養子を持つ親たちが、あらゆる手段を尽してこの違法な届出を敢てする実状を大いに憂慮するところでありますが、いかにその要求が切実であり、これにはどのように罰則規定を強化しても無力であることを考え合せるとき、我々第一線にある者の声として或は目に見えざる世間の声として、本間の声として、本間の採択を強くお願いする次第です」、こういうことを言っているわけです。このことは、いわゆる特別養子制度というものの支持を訴えているということですね。そうすると、これはどこでもそうだと思うのですけれども、実際問題としてそういうような事実が相当日本の中でも行なわれている、こういうように見ざるを得ないわけですね。  そこで、これは昭和三十四年の法制審議会民法部会身分法委員会ですか、そこでこの問題が出された。どのような形で出されたのか、ちょっとわからないのです。その民法部会はどなたが部会長なんですか。中川さんですか。いずれにしても、どういう形でこれが出てきたのかということをまずお聞きしたい、こう思うのです。そしてそれに対する反対意見、いろいろな意見があるわけです。それはまたあとで私からも申し上げていきたいと思いますが、いまのところは、どういう経過で特別養子制度を設けるということが出てきたのでしょうか。
  24. 川島一郎

    川島政府委員 特別養子制度というのは、先ほどの説明にありましたように、法制審議会民法部会におきまして、民法親族編検討を行なっておったわけでございますが、その際に、こういう制度採用したらどうかということで問題になったわけでございます。法制審議会民法部会では、昭和三十年から三十四年にかけまして、民法親族編規定の再検討を行なっておったわけでございますが、三十四年に、それまでに一応審議いたしました事項を仮決定及び留保事項という形でまとめました。この中にただいまの特別養子という制度が出ております。  ちょっと読んでみますと、この要綱の第二十七でございますが、「通常の養子のほかに、おおむね次のような内容の「特別養子」の制度を設けることの可否について、なお検討する。」それで(イ)、(ロ)、(ハ)とございまして、「(イ) 特別養子となるべき者は一定の年令に達しない幼児に限る。(ロ) 特別養子はすべての関係において養親実子として取り扱うものとし、戸籍上も実子として記載する。(ハ)養親の側からの離縁を認めない。」こういうことになっております。  なぜこういう問題が出てきたかと申しますと、これは身分法の小委員会というのをつくってそこで検討しておったわけでございますが、その身分法の小委員会に属しておりました委員、幹事の一部の学者の方から、こういう一般養子とは違う、実子に近い養子というものを制度として認めてはどうかという御意見がありまして、それでこの点が問題として取り上げられたわけでございます。  ところが、この制度採用可否につきましてはいろいろ意見が分かれまして、結局仮決定として採用するまでには至らなかったのでございますが、しかし、そうかといって全然考慮に値しない案でもないというようなことで、こういった制度採用可否については将来検討を続けていこうということで、こういう留保事項として記載されたわけでございます。
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまのその制度は、学者というか実務家といいますか、どなたが、どういうふうなところから——差しつかえないでしょう、その程度のことは、言われたのか。それから、どういうところからその必要性が起きてきたわけですか。身分法は戦後、相続制度中心かもしらぬけれども、親族も変わったでしょう。親族は変わらなかったですか、ちょっと私は忘れちゃったですけれども。それをすぐ直すというようなことをまた考えていたわけですか、その当時は。
  26. 川島一郎

    川島政府委員 御承知のように、戦後新憲法ができまして、それに伴って家族制度を改める必要がある、廃する必要があるということで民法身分法、つまり親族編相続編が全面的に改正されたわけでございます。しかしながら、それはきわめて早々の間に改正を行ないましたので、なお戦後の新しい時代にさらにこまかく検討すべき問題がいろいろ残されているんではないかということで始められたわけでございまして、相続編につきましても、それの全面的な一応再検討が行なわれたわけでございます。その一環としていまの養子制度が出てきたということが言えると思います。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはわかるのですけれどもね。だからどういう、ただ突然こういう意見がぽかっと出てくるわけではないでしょう、何らかの必然性、何らかの社会的要請、そういうものがあってそれは出てくるわけでしょう。そこら辺のところはどういう社会的要請なり必然性があってこういう議論が出てきたのか、どなたからそういう議論が出てきたのか、こういうふうなことをお聞かせ願いたいと、こう思っておるわけです。  それに対する反対論というのは私のほうから説明しますけれども、これはフランスでも一九三九年に準正養子というような制度を出されているし、ソビエトでも一九四三年に孤児保護法というのですか、養子縁組みに関する幹部会令というのかな、いろいろな形でフランスあるいはソビエト、ことに戦後のいろいろな問題の解決の一環として出てきたのかもわかりませんけれども、そういうふうなものが出ているわけでしょう。どういうふうなことからいまの小委員会でこういう議論が出てきたのですか。そこのところ、社会的な背景を全然抜きにして、ただぱっと出てきただけじゃないでしょう。そこを説明願いたいと思うのです。
  28. 川島一郎

    川島政府委員 私も詳しいことは承知しておりませんのですが、聞くところによりますと、戦後外国の制度などをいろいろ比較研究いたしました際に、いま仰せになりましたフランスあたりの例とかそういうものを見てこられた学者がおられまして、こういう制度をとるということも考えられるのではないか、一方においては、わが国に古来養子実子として届け出るというような慣習がありましたし、養子にはどうも二種類あるんじゃないかというようなことで、通常の養子とは違った、こういった養子縁組を認めたらどうかという意見が出てきたというふうに聞いておるわけでございます。この制度につきましては、伝統的な立場から、戸籍というものが事実関係記載するものでありますから、こういう制度をとるとすればよほど慎重な配慮が必要ではないかといったような意見、それから近親婚の禁止とどういうふうに触れるかといったような問題などが提起されまして、議論は相当いろいろあったようでございますけれども、結論に達しなかったという実情だと聞いております。
  29. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 どういう学者がどういう意見を出したかということを聞くのもあまり失札かとも思うし、まさか学者が思いつきで出したわけでもないと思うので、その意見そのものについてはこの程度にしましょう。  いま言った点で、この意見に対する反対は、大きく分けますと三つですわね。外国におけるような社会的、現実的な基盤がまずないじゃないかということ。それから戸籍記載の真実性ということ。それから近親婚を防げないということ。大きく分けて、大体この三つですわね。ところが、社会的な基盤というのは日本にも江戸時代からあった。江戸時代のはちょっと制度が違うかもわかりませんが、いずれにしてもそういう制度は相当あった。あなたのほうで、あなたじゃありませんけれども、民事局長通達というのが三十六年に出ていますね。どうしてこんな通達を出したのか、まずそれから聞きます。出したということは、社会的な基盤があったということじゃないですか。
  30. 川島一郎

    川島政府委員 通達の問題でございますが、これは、先ほど、五十歳を過ぎても子供が産めるじゃないかとおっしゃいましたけれども、そのとおりだと思います。しかし、まあ実例としてはあまり多くないであろう。そのときに虚偽の届け出がなされるという場合が多いのではないか、そういう点をよくチェックしろという趣旨であろうと思います。戸籍というのは、一応事実に基づいて身分関係記載していくという制度になっておりますので、五十歳を過ぎた女性の子供として届けられる場合には、真実と違った届け出がなされる公算が大きい、そういう点をよく注意せよ、こういう趣旨のものであるというふうに理解しております。
  31. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 なぜそういうふうな通達が出たかということにはやはり理由があるわけでしょう。何もないのにただぽかんと出たわけじゃないので、どこかの法務局からか市町村からか何か質問というか、あったのかもわからぬし、あるいはそうでなくても、そういう事実がたくさんあるということでこういう通達が出たのかもわからぬが、それはそれとして、いま言った大阪の例、あるいは全国連合戸籍住民登録事務協議会第十五回総会ですか、ここでも群馬県の代表が同じようなことを言っておる。実際に相当ありますよ。私も相当知っていますけれども……。いずれにしても、そういうふうな社会的、現実的基盤がないということはちょっといえないんじゃないかな。フランスソビエトにあって——ソビエトはちょっと違うかもわかりませんが、フランスのは日本のとそう違わないと思うのです。日本に社会的、現実的な基盤がないということはいえないんじゃないですかね。それから、戸籍の場合に、戸籍の真実ということの見方ですね。私、前に言ったように、自然科学的な事実だけではなくて、法律的に裏づけられている特別養子という形になって、それが実の親子として記載されておれば、法律的にオーソライズされておれば、それが真実なんですから、そうこだわる必要はない。それから、近親婚というのはないとはいえぬだろうけれどもね。それは考えればないわけじゃないでしょう。  そういうふうに戸籍記載されておるから、ある場合もあるじゃないかといえば、それは理屈としてはあるかもわからないけれども、実際としては考えられない。それはまたいろいろな技術的な措置として、出生証明書の保管方法などでくふうによって避けられるというふうな学者もいるわけですけれども、学者の言うことだから机上の空論かもわからないということで、あなた方実務家は、何を学者は言っているんだというふうにとるかもわかりません。いずれにしても、反対理由としてあげられている三つのものというのは、ある程度理由があるように見えるけれども、しさいに検討すると必ずしもその理由は完全なものではない。しかも、いま大臣が言ったように、子供のしあわせということを第一に考えるんだ。これは、養子制度はそうですよね。昔は家を継ぐという形になっていたけれども、このごろは変わってきて、未成年者の場合は家庭裁判所の許可ということになっているわけです。そうなってくると、これは当然いろいろな形で新しい法律制度というものが考えられていいのではないか。確かにこれは、かりにどうなっても強制するわけにもいかないし、いろいろむずかしい問題が出てきて、それからほかに派生する問題もあることですから、ぼくも軽々にこうだというふうになかなか言えないところがあって、これはもうほんとうに研究しなければならぬことですね。ただ学問的な研究だけではなくて、社会的、現実的な研究というか、そういういろいろな影響も考えなければならぬから、むずかしいところがあると思うけれども、大臣はせっかく、私のほうから言わないのに、新しい法律制度考える、そういう意味のことを言われたのですから、そこら辺のところを、いまの問答や何かを含めて、ひとつ大臣として——いますぐここで結論を出せと、そんなことを言うわけじゃありませんが、あなたお得意の前向きというやつだね。あなたはよく前向きということを言われる。うれしそうに笑わないで、ぜひ前向きに検討をしていただきたい。そのことに対する答えを聞いてほかの質問に移りたい、こういうふうに思うわけです。
  32. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 この問題は、実子ではないけれども、子供の幸福のために実子として育てていく、世の中の本件問題の念願はこれですわね。他人の子供自分実子として戸籍に登載して育てていくということが子供の幸福につながることが多い。実子じゃないんだけれども、実子同様に法律が扱うんだ、よって第二の実子なんだ、特別の親子関係なんだなどというような法制、そんなものはできてどれだけ役に立つのか。関係者と神さま以外は知らぬのだ、これはわしの子だということで他人の子を育てていきたいというところに子供の幸福があるわけです。ですから、先ほど申し上げましたように新しい法律——新しい法律というのは、抽象的にいえばほんとうの親と養親との間のまん中みたいな制度ですね、そういうものをつくる必要がどうしてもあるということでつくる場合には、あんまり適用を強制せぬようにしていかなければなるまい。特別の子であろうが、普通の実子であろうが、それはほんとうの血縁の親でないというととが表現されておるような登録ならば何のことやらわけがわからぬ、こういうことになるわけでございます。ですから、非常にむずかしい深刻な問題でありますので、この問題につきましては一つ考え方でございますが、やはり現行法をそのままにしておいて、そして違反は自由であるなどというようなことは言えないのでありますけれども、法律というものは罰則はあっても適用せなければならぬものではない、罰則はあっても事情によっては適用せぬでもよろしいということが法制のたてまえでございますから、あまり制度をなぶらずにいくほうがよいのではなかろうか。立ち消えになったというのもその辺でございましょう。立ち消えになるほうがいい、こう考えられる。ごく一部の者と神さま以外は、本人も知らぬのだ。おとうさん、おかあさんの子だということが幸福なんでしょうね。私の知り人の中にもそれがありますよ。ありますけれども、本人はいま気づいておるんです。気づいておるが、意見を聞いてみると、わが子でもないのにわが子として育ててくれた、これは感謝感激にたえぬのだといって非常に孝養を尽くしていますね。そういうことはありますから、これはいろいろ制度的にあまり考えないほうがいいんではなかろうか。しかし問題が起こったら処理をしていかんならぬでしょうが、この処理も子供の幸福を中心の処理がいい。罰則適用云々などということは二の次だ、三の次だというように私は考えておるわけでございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私も本来は大臣と同じような考え方なんです。だからあなたの言われた言外の意味、これを私なりに理解をしていきたい、こう思います。だけれども、大臣としてあるいは刑事局長らとしても、これは一種の放任行為とまでは幾ら何でも言えないでしょう。だからここでもってそういう質問をしてはまずいから質問しません。だから大臣の言われた言外の意味を察して、これは一応きょうはこの程度で終わります。  そこで大臣にお尋ねをしていきたいのは、南ベトナムからの臨時革命政府のパリ会談次席代表のグェン・バン・チェン氏の入国の問題にからんで、三月二十四日の参議院の予算委員会であなたが答えられておるのは、「いまのような人物が、いまのような条件で入ってきます場合においては、受け入れる用意がございます。」これがあなたの一つのお答えですね。それから三月二十七日の当委員会における横山さんの質問に対する答えは、「私は去る二十四日、自分の信念に基づいて発言をした。」「基本方針は、そういう人物がそういう御要件でおいでになる場合においては、受け入れる用意ありということを、そのままそれでよいのだということにきめましたので、それは決定事項でございます。」こういうふうに言っておられますね。  まず最初にお尋ねをするのは、このとおりにいまでも承って当然よろしいと思うのですが、よろしいのでしょうね。
  34. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 たいへん問題になりまして、私と官房長官と外務大臣と三大臣が協議をいたしまして、いまお読み聞けの発言のとおり、それを政府の態度とする、変更の必要はないということにいたしまして、そのことを委員会で報告をして、委員長からこれを委員会に宣告をされたようなたいへん問題化いたしました事案でございますので、当然のことを私は言うのでありますが、私の発言いたしました二十四日の委員会の発言の文言のとおり間違いはございません。文言以外の事柄が起こってまいりますと協議をしなければなりませんが、文言のとおり間違いがございません。そういう場合には受け入れるという積極的な態度、これは今日も変更はございません。
  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 三月二十七日の記者会見で、新聞記載によると、あなたは入国にあたっていろいろ検討すべきことがあると言ったのは、これは三月二十四日のときに、最初のときに言っていますね。「いろいろ検討すべきことがあるといったのは手続き上の問題のことで、方針として入国を認めることを決めた以上は、この方針に合わせるべきだ。従来も入国を認める方針を決めたのに手続き上の問題でこれを断ったことはない」こういうふうに記者会見であなたは述べたというふうに各紙なっていますが、これはもうこのとおり承知してよろしいでございましょうか。
  36. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 手続上の問題と申しておりますのは、一番大事なのは時期でございます。いつ入国をさすのかという時期、第二の問題はどれくらい滞在されるのか、一口にいう滞在期間。そういう問題については、私の発言の場合には質問をなさる田先生もこれに対しては言及がございません。言及がないものですから、私のほうでも答弁に言及がないわけであります。時期や滞在期間とかその他の手続に関するこまかい事柄は言うておらぬ。言わぬはずですよ、これは。現実に申請が出ておるので質問があったんじゃないのですから。かりにそういう人が来るという場合、仮定の場合おまえはどう思うか、こういう御質問であったわけですから、それは当然のことですね。それですから私が先ほど言うたように、厳格にというのはそれをいうのです。問題になったことを決定したことでございますから、私の発言をいたしました発言の文言のとおりをこれを厳格に守る、したがってその発言で触れておらない事柄についてはその発言の方針に沿うて協議をする、こういうことをしなければ手続はとれぬわけでありますから協議をしていきたい、こういうふうに思う。したがって、いつ入国しどれくらいの期間必要なのかというような事柄につきましては、あらためて誠意をもって協議をしていきたい、これできめていく、それはもう道理上当然のことでございます。そんなことは言わんでもいいことでありますけれども言うたのでありまして、手続については触れておらぬのでありますからね。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、あなたが記者会見で言われたのは、手続上の問題でこれを断わったことはない、方針として入国を認めることをきめた以上は手続上の問題でこれを断わったことはないと言われた。それでぼくは確かめたわけですね。そうしたらそのとおりだ、こういうわけでしょう。そうすると、基本方針はきまっている。その手続ということで、時期それから滞在期間というのは具体的にはどういうことなんですか。ちょっとよくわからないのですがね。
  38. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 それは私の発言の内容は二つのことを言うておるのです。そういう資格を持った人物、そういう人物が具体的に示してあるわけですね、そういう人物、いま質問者のおっしゃった、いまあなたのおっしゃったような人物ということを言うてある。もう一つは目的が復興経済援助、経済とは言わなかったかもしれないが、復興援助についての相談、打ち合わせということが言うてあるわけでしょう。そういう目的でそういう人物、いまあなたのおっしゃるような、いまのような人物、いまのような目的で、こういうふうに言うてあるわけですね。そこで、そういう目的でおいでになる場合においては受け入れる用意がある、こういう基本的な方針は、政府の態度はきめてある。どの時期にどれくらいの期間おいでになるのか。もっと詳しく言えばパスポートはどういう形のものを持ってくるのか、一口に言うと入国なさる人の身分。身分ということばを使っているのですが、身分はどういう身分でおいでになるのかというような事柄につきましては、これは将来こうしてもらいたいという申し入れがありました、紙が出ました時点で、政府と御招待をなさる政党といいますか、あるいは本人から希望があるとすれば本人の希望というものとの間に調整をして懇談をするのだ。そういう場合に、基本方針をきめておいて、手続がとんちんかんになってうまくいかなかった例はいままでないのだ。ほんとうにないのです。一つもないようです。政府が基本方針をきめて、それで入れられるようにならなかったのだ、つまり手続的な問題で意見が一致をしなかったんだ、こういうことでこわれた例はないようであります。ずっと古いことは存じませんが、私の知ります範囲ではないようでございます。そういうことを申し上げておるのでございます。したがって、世の中に幾らか誤解があるのですが、時期がどうだとか期間がどうだとか手続がどうだとかいって、腹の中は入国させぬ腹なんだろうという誤解をされておられる向きが多いようですね。私の会った新聞記者でも、腹は入れたくないのでしょう、こういうふうに言う人がおる。しかしながらそういうふうには私は考えていないのです。こういう新興勢力というものが、こういう重要な事柄で、その勢力を代表するような人物がおいでになる場合においては招き入れたい。ことに日本の立場を言いますと、経済援助はどの地域にも区別せずやりますと言うておるのですから、経済援助をいたしますと言うておいて、相談には来るなというのは理屈に合わぬですね。それですから、これはひとつ突破口というとことばは悪いのですけれども、これはひとつぜひこの点から前進していきたいという考えを持って腹を持って答えたものなんです。それをいろいろ誤解されるのですね。質問になく答えにない事柄、手続は答えにないのですから、そういう事柄については入れる方針に向かって協議する、あたりまえのことです。それは後退でも何でもない。誤解のないようにしていただきたい。
  39. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 別なことに移りますが、それからいま、前に私が特別養子関係のことを言ったのは、引用を明らかにしておきますが、法学セミナーの五月号、一番新しいもの、立命館大学教授中川淳という人の「現代家族法の諸問題」というところから引用しておりますから、引用を明らかにしておきます。  それでは別のことを聞くのですが、高知の刑務所で殺人事件が起きた。それにからんで、よくわからないのですが、現職の裁判官が何か刑務所の看守の人を告発したというようなことがちょっと朝日新聞に出ておったのですが、これは具体的にはどんなことなんですか。まず時間の関係がありますから、殺人事件というものはどんなものか、それからそれに伴って裁判官の告発、これは裁判官という形でしたのかあるいは個人でしたのか、どういうプロセス、どれだけの証拠を握ってというとことばが悪いけれども、確証があってやったのか。裁判官が告発するというのが事実とすれば、なかなか珍しいことだと思うものですから、それでお聞きするわけなんです。
  40. 安原美穂

    安原政府委員 まずこの告発された内容は、要するに刑務所の職員が石川という殺人を犯した者に対して職権乱用の暴行をやったという告発事実なんですが、そのいまお尋ねの、石川の殺人はどういう殺人かということを申し上げますと、要するに作業場で担当看守に注意を受けたのに対して、立腹して、のみで担当看守を刺し殺したという事件でございます。  それで、それを取り押えた際に、その事件につきましては刑務所の看守が被害者でもございますので、警察身柄を、代用監獄に留置して、そして警察捜査に待とうということのために、その殺人事件につきまして勾留状の請求をしたわけです。現行犯で逮捕して勾留状の請求をした。その勾留状の請求をした際に、その勾留尋問に当たった裁判官に対しまして、この石川という殺人の被疑者が、自分は刑務所で殺人を犯して取り押えられたときに職員から暴行を受けた、いわゆる職権乱用にわたるような暴行を刑務所の職員から受けたということを当該勾留尋問に当たった裁判官に対して訴えた。そこでその裁判官がこの訴えを聞いて、検察庁に特別公務員の陵虐罪があるということで告発をしてきた、こういう経過になるわけであります。
  41. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その告発というのは口頭ですか文書ですか。それから肩書きが、裁判官個人としてやったのか、あれは高知裁判所の判事補の人ですか、そういう肩書きでやったのか、そこら辺のところはどうなんですか。
  42. 安原美穂

    安原政府委員 告発状の正確な中身は知りませんが、個人としてかということになりますと、もし刑事訴訟法上の公務員が職務上知り得た犯罪についての告発義務ということになると、それは何と申しますか、この判事補さん、溝淵勝という人ですが、その人の公務員という立場においての告発であろうと思いますが、そういうおつもりで告発をされておるようです。
  43. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 文書ですか。
  44. 安原美穂

    安原政府委員 正確な文書の報告はありませんが、中身を申し上げます。  告発人は溝淵判事補、現在四月二十日付で大阪高裁に転勤しておりますが、当時は高知地裁の判事補です。被告発人は高知刑務所保安課長外三名の看守。告発事実の要旨は、特別公務員暴行陵虐致傷等ということで、刑法百九十五条、百九十六条の罪。中身は、被告発人らは、昭和四十八年四月十日午前九時十五分ごろ、高知刑務所第三工場において、受刑者石川清文三十四歳が看守山下澄雄二十五歳を殺害したことに立腹し、右石川に報復することを企て、共謀の上、同日午前九時二十分ごろ同所において、無抵抗の石川の両腕をうしろで捕縄で縛り、なぐる、ける、踏むなどの暴行を加え、倒れた同人を保安課に引きずり込み、顔面をなぐった上、うつぶせにして腰部、でん部をけるなどして、同人に対し、顔面、右上肢、外陰部、腰部、でん部等に打撲症の傷害を負わせたものであるということでございます。
  45. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは問題が、現職の裁判官が勾留尋問したときに勾留尋問の段階ではまだ被疑者なわけですね。いずれにしてもその言い分を聞いて告発したというのは、おそらく私の知る範囲ではちょっと希有の例だと思うのですよ。必ずしも勾留尋問の場合でなくても、現職の裁判官が告発するというのは非常に珍しい例ですから、これは事実関係をきちんと調べて、そしてあと、きょうでなくてもいいと思うのですが、またお聞きしたいと思いますが、別の日に報告をしてもらいたい、こういうふうに思うのです。  それから、いま傷害みたいなものですけれども、その告発状には診断書もついているのですか。
  46. 安原美穂

    安原政府委員 現在受けております報告によると、診断書がついているかどうかわかりませんが、おそらくついていないのではないかと思います。ただ、告発人は告発にあたって石川の傷害を現認いたしました、撮影した写真があるということでございます。
  47. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これはいま言ったとおりよく事実を調べてください、どちらの言い分が正しいかは別として。法務省としても告発されてやはり厳正公平にやらなければ困りますね。  それはそれとして、法務大臣、いま看守の方が刺されてなくなられたわけでしょう。看守の人は非常に危険にさらされているわけですね。あれは広い作業場に看守の人が非常に数少ないわけですね。その高知の刑務所に何人くらいそのときいたのかわかりませんが、看守の数が少ないですね。それから保安の勤務状態がだいぶ変わってきた、交代制で非常にからだをこわすものですから、何回か制度がだんだん変わってきておるわけです。仮眠の制度があるのですけれども、仮眠がなかなかできないわけですよ。仮眠室なんか私らも何回か見ましたけれども、実際問題としてできないし、それから刑務所の看守の人の、ことに保安関係が勤務が不規則なものですから、定年に達したりして退職するでしょう。退職するとなくなる人が多いのですよ。いかに勤務が不規則かということを物語っているんですね。こういう点についていま結局、監獄法の改正がありますけれども、これは別として、至急刑務所の看守の人たちの声をよく聞いて、いろいろな面での改善に努力してもらいたい、こう思うのです。これが一点。  もう一点、なくなられた方に対してどういうふうなあれになっているのですか。弔慰とか共済というか、どういうふうな形になっていますか。前のは大臣が答えてください。あとのは事務で……。
  48. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 たいへん苦労しております看守等の処遇について御理解をいただきましてたいへんありがとうございます。  一言申し上げますと、一般公務員は四十四時間勤務をしておる、ところが看守は四十八時間勤務をしいておるというのが現状でございます。数も少ないし、勤務もひどいしということで、これは今年も苦労をしたのでございますが、来たる年度の予算折衝に対してもこの点は十分御意向のほども大蔵省に伝えまして、看守の増員に努力をいたしまして、そういう不都合のないように漸次解消をしていきたい。  第二の点は事務からお答えいたします。
  49. 長島敦

    ○長島政府委員 なくなられた看守の方にはできるだけの弔意を表したいということで、すでに二等級の特別昇進で副看守長にいたしました。それからただいま大臣の賞じゅつ制度がございますが、これらのことも手続中でございますし、そのほか公務災害補償なり、その他の手続は一切済ましております。近く五月に矯正協会と現地の刑務所との共同主催の葬儀を盛大にいたしまして弔意を表したいと思っております。
  50. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの矯正関係はいろいろな問題がたくさんあるところですよ。矯正局長になるとたいへんで、気の毒ですけれども、何か事件が起きては責任をとらされたりして、長島さん、まじめな方だからそういうあれは気の毒だし、そういうことはないと思いますが、いままでそういうことが非常に多いですよ。  それから看守の人が一番困るのは子供の教育問題ですよ。それで異動のときに一番困るし、それからこれは中野ですか、看守の人の子供を入れる学生寮があるでしょう、あれなんかもっと入るのですよ。あき地があるはずだと思うのですけれども、もっとやればやれるのに、途中でやめたでしょう。理由はよくわかっておりますけれども、殺人事件があったでしょう。そういう関係で大きくするのをやめたりしまして、東京に来て子供さんを大学にあげたいといって一生懸命になっている人が多いのですが、学生寮が足りないのです。これはあとからまたいろいろお話をいたします。  それに関連するのですが、刑務所や何かが土地の発展に伴って町のまん中にあるわけですよ、それの移転のことについてはいまどういうふうに考えていらっしゃるわけですか。たとえば栃木に女の刑務所がありますね、これは町のまん中にあります。それの移転の問題なんか、何とか移転してほしいといっておるし、それから宇都宮の場合は前の刑務所のあと地の利用の問題で、鑑別所の移転の問題等がありますが、こういうことについて総合的にどういうふうに考えていらっしゃるのかということが一つ。  それからいまの栃木の女子刑務所、それから宇都宮の少年鑑別所の移転の問題、少年鑑別所の移転問題は、土地の住民たちがそこに来てもらっては困るということで、大反対しているわけですね、住民の意思も十分尊重して慎重に対処してもらいたい、こう思うのですが、そういう点についてはどうでしょう。
  51. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 少年鑑別所、刑務所等市街化された市街地の中心にだんだんと存在するような傾向が深くなると考えております。そういう場合には、適当なる代地を求めまして、適当なる代地があります限りはここに移転をする方向をとりたい。ところが、かってに移転をするといいましても、なかなか地元が承知をしてくれない場合が多うございますので、適当なる代地があるということのほかに、地元の了承が得られる場合という条件をつけ加えまして、そういう場合には極力移転をする方針をとりたい、こう考えております。  具体的に栃木の刑務所、それから宇都宮の少年鑑別所等につきましては、事務のほうから申し上げます。
  52. 水原敏博

    ○水原説明員 営繕が所管事項でございますので、私から御説明申し上げます。  まず第一点の栃木の刑務所の移転問題につきましては、現在栃木の刑務所は施設の老朽が著しく、全面的に改築を必要とされておりまして、たまたま昭和四十六年の三月に栃木市から移転の要請がございました。そこで、種々検討いたしました結果、市側の御要請をいれまして、栃木市の惣社地区にございます建設省所管の国有地への移転を決定いたしまして、現在移転実施を準備中でございます。  第二点の宇都宮少年鑑別所に関しまして御説明申し上げますと、この建物は昭和二十五年に建築されました木造の建物でございまして、これまた老朽化がはなはだしい現状でございます。なお鑑別所の業務の遂行にいろいろ支障を来たすような建物の構造等がございまして、これに加えまして敷地がまた狭隘でございます。そのために、現在地における増改築がきわめて困難な現状にございますので、昭和四十六年の三月に黒羽刑務所ができましてそちらに移転いたしました旧宇都宮刑務所あとの敷地の一部に鑑別所を移転、新築いたしたい、そのように計画をいたしました。ところが、その移転計画中に、移転先地域の住民の誘致反対がございました。  そこで、法務省といたしましては、少年鑑別所の機能等につきまして、地域住民の御理解を求めますとともに、関係機関とも協議を重ねまして、その計画が実現できますように、移転が実現できますように、現在折衝中ということが現状でございます。
  53. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 あとの少年鑑別所のほうは、いろいろ地元の住民なんかも反対していますし、今後よく話し合ってやっていただきたいと思うのです。きょうは時間の関係で質問を終わりますけれども、大臣、少年鑑別所の場合、その機能はたいへん悪いのですけれども、非常にこまかく少年をいろいろ調べるわけですよ。調べてもそれが生かされていないのじゃないか、実際問題として。家裁ではそれをほとんど——家裁は家裁で、調査官ものすごく詳しく調べますから。鑑別所の鑑別結果というのは、そう重視してないというのが筋じゃないか。必ずしもそうでもありませんけれども、鑑別所の意見も出てきますから、それに伴ってやる場合もありますけれども、あまり重視されてない。それから、そんなに入ってない。入ってないのはいいのですけれども、収用人員も非常に少ないところが多いですね。いろいろな問題があると思うし、それからいまの刑務所の代替地を求めるったって、代替地がなかなかないわけで、それが問題なんで、だから釧路のような場合に、いま町の発展で移転問題が起きているでしょう、釧路刑務所。答弁は要らないけれども、帯広にありますし、網走にもある。網走はちょっと性質が違うかもしれませんけれども、近所の帯広にあるし、代替地を求めてもなかなか求められない。特に釧路の場合など、どうしても必要だということではないように思うのです。これはやはりいろいろ考えて見る必要があるのじゃないかと思う。だから、それが刑務所や少年院の統廃合をしろという意味ではなくて、いろいろ考えたら、ただ代替地、代替地と言うだけでなく、考えてみる必要があるのじゃないかと思います。これはまた別の質問ですから、きょうは私の質問はこれで終わります。
  54. 中垣國男

    中垣委員長 次に日野吉夫君。
  55. 日野吉夫

    ○日野委員 過般質問いたしました場合、だいぶきょうの委員会に回してある問題がございますが、きょうは新しい事態に基づいて、過般四月の十六日ですか、宮城県の地方労働委員会から本山製作所不当労働行為事件の命令書が出ておる。これはたぶん各省で入手されてごらんになられたと思いますが、この意見書は長文のものでありまして、だいぶこまかく書いてあります。そしてだいぶいろいろな角度から判断をされておって、国会法務委員会、社労、それから商工委員会等、各委員会で論議を何べんも重ねられました。それで結局そこで一致する見解は、ガードマンの排除をどうするか、こういうことのようでありますが、この意見書も結局この一点にしぼって、主文に、「被申立人は、昭和四十七年十月二十二日当時守衛であった者を除き、その他の警備課の職員全員を、直ちに会社構内から退させなければならない。」という命令書で、この一点にしぼっている点で、国会意見が十分反映しておると、私、考えておるのでありますが、これをごらんになったとすれば、ひとつ各省からこれに対する感想なり、いままで何べんもやったことですからもし意見があるならば意見なり、あるいはみんな相談なさって、省の係の意見等が統一されるのであれば、そういうことをひとつまずお聞かせ願えればけっこうだと思いますが、どうぞひとつ……。きょうは労働省はストのために来られないというので、労働省の分はあとに残すことに、いま打ち合わせをいたしましたからどうぞ。
  56. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 いま先生お尋ねの問題を法務省の立場でどう考えるかということを、お答え申し上げるのでございます。  法務大臣の立場からいたしますと、一定の要件がそろうておると事実関係を認定するに至りました段階で、法務大臣のやり得ることといたしましては、文書をもって裁判所に対して、法人の解散を命じてもらいたいという請求をするかどうか。一応要件がそろう場合にはそういう権限が私にございますので、そういう権限に基いて、その解散請求の文書を所轄の裁判所に提出をするような事態になるかどうかの問題が中心でございます。  しかしながら、これは先生もよく御存じでありますように、この問題は会社自体が法令に違反をしておる、あるいは会社の定款に違反をしておるという事実がまず認定されまして、そういう法令または会社定款の違反が将来も繰り返される状況にある、こういうふうな状況がありますときに、もう一つありますのは、その状況が、裁判所が見て、国家、公益、社会の利益——国家、公益という立場から考えて、この会社は許すべからざる存在である、こんな会社を置いておいちゃたいへんだ、こういう認定を裁判官がしてくださるような要素がそろうておりませんと、法務大臣裁判所へ文書を出せない。これが商法の規定でございます。そういうむずかしい要件が、一つでもむずかしいのに二つも三つも重なっておりますむずかしい要件がそろうておると、本件争議自体を判断いたしまして、そういうふうに判断ができるかどうか、ちょっといまの段階においては判断をいたしかねております。たいへん濃厚でございますけれども、そういう判断を、よし、やろうということに裁判所に文書を提出することを必要とする段階だと判断するに至らない、こういう事態が現状の事態でございます。ほっておるわけではないのでありますが、たいへん事態がむずかしいのでございます。そういうふうに考えておるということをとりあえず答弁を申し上げておく次第でございます。
  57. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 警察が労働運動に関連してどういう基本的な態度であるかということは機会があるごとにお答え申し上げておりますが、労使のいずれの側にも加担しないで厳正、公平な立場を堅持していくというのが警察の基本的な態度でありますが、いわゆる正当性の限界を越えて暴力の行使など不当な事態に至った場合には警察としては犯罪の予防、鎮圧、捜査、そういったことを警察の責務としてやらなければならぬというのが基本的な態度でございます。  特に今回の事案については、いわゆるいまお尋ねがございましたガードマンが関係しておる、こういったこともありますので、昨年の十一月一日から警備業法が施行になったわけでございますが、これに関連して私ども警備業法が制定されたいきさつからいって、ガードマンが労働組合などの正当な活動に干渉して暴力行為に出るといったようなことのないように事前にいろいろ警備措置を講ずる、あるいはまたそういう事案が未然に防止できなかった場合に、犯罪が発生した場合にこれを検挙する、警備業法の趣旨をよく生かすと同時に、先ほど申しました警察としての一般的な責務を果たすという努力をしてまいる覚悟でおるのでございます。  先ほどお尋ねの地労委の命令書は私も拝見いたしましたが、主文では御指摘のとおりのことを書いてございまして、昨年の十月二十五日以降に雇った者は、警備課員はこれを工場の外に出しなさいということが書いてございますが、あの命令に関する限り私ども警察はいま申し上げた立場からはすぐに犯罪の容疑だとかあるいはまた具体的な警察措置を要するという段階ではないのではないかというふうに思っております。
  58. 日野吉夫

    ○日野委員 警察との関係では、前回いろいろ聞きましたし、去年の五月出しました仙台地裁の判決も読んで、処分の解釈の相違点がありますが、まだきょうはここでその論議をしようとは私考えてないので、いま申し上げましたように国会意見が十分に反映した、そしてガードマン一本にしぼってこれをのかすよう、しかも内容を見るというとかなりこまかな注意を払っているようであります。まあ申し立て人のほうにも義務づけをしてあるようでございまして、これはいまの事態、あれから長いことやって、法の秩序も何もないあの状態がいままで続いているということは、これはまさに法治国としてあるべき姿じゃない、これを何とかしないかというのは全体の声であります。そういうときにこの新しい地方労働委員会の強制力がある命令が出たが、たぶんいままでのあの態度からこれに直ちに承服するということは考えられない。そうなると、これは地労委の決定でありますから、中央労働委員会に提訴する道もあるでしょう。そういたしますならば、いままでの繰り返しがまだまだ先まで続くのではないかということをわれわれは憂えるのであります。そういう意味から私はいまちょうど事態収拾のチャンスでないかと思いますから、きょうはひとつ問題を事態収拾の点にしぼって聞きたいと思うのです。労働省の出席も頼んでいたのですが、きょうはストのために、全員出て、課長さんが出られることになっていたのが何か別の委員会にとられてどうしても出られないから次に延ばしてくれということなので非常に残念に思っておるのですが、ここらでひとつ事態収拾を考えることが大事でないか。この間法務大臣がおられないときに私質問をしたので十分事情がわかってないと思いますが、民事局長さんですか、法務大臣の会社解散権の問題についていままで調査をしたこともないしやる気もないというような答弁があったので、これは法務大臣に直接聞こうということで残してあるわけなんです。いまも法務大臣から意見が述べられましたが、法務大臣はとにかく感覚がよくて当意即妙の回答をしておられる人であることを私はよく知っているから、特に考えていただきたいと思うのは、この間ベトナムの問題でああいう発言をして問題を起こしましたが、いまも問題になっていますが、法務大臣のとった態度、答弁したあのことは非常にりっぱなものであると思いますし、きのうはまた私の郷里ですが、石巻の菊田医師の問題で法務委員会に呼ばれて答弁しているあの答弁なども、まことに適切な答弁だと私は考えているのでありますが、こういう感覚を持った法務大臣にひとつ、法務省はほんとうは法秩序を守る権限を持ったものである。いまの事態というものはその事態でないというようなものじゃないので、この地労委の決定書でも十七件の事件が起こっている。そして関係した被害者が、けが人が七百人もあるといわれているのです、この一つの労働争議に。こういう事態を一体見ていていいのでしょうか。調査をした経験がないということだけでこれを退けるわけにはいかないと思う。やはり積極的に乗り込んで調査をして、そして適切な、いま法務大臣の言われたように裁判所に申請するか、やはり何か適当な措置をとるだけの新しい態度、人間尊重の政治の中でそういう態度をとることが必要でなかろうか。同時に、あとで相談することに——きょうは見送って残念だと思うのですが、これは不当労働行為に関することですから、これは労働大臣の直接の、労働法の七条、八条、九条の規定によるものだと思うのですが、そこらと相談をしてこの事態収拾策を協議する。警察庁もすでに調べているでしょう、職安法違反とか何か、そういうものを持ち寄って相談して事態収拾を考えるほんとうにいい時期じゃないか、私はこう考えているので、そういう考え法務大臣は——ことに法務大臣と官房長官と外務大臣と協議して事態に対処するというのがこの間の法務大臣の態度でありますが、あれがみんなから非常に喜ばれている。いままでのような官庁なわ張りで法務省法務省、労働省は労働省というようなことでは今日の事態に対処できないのじゃないか、こういうだけの用意があってほしい。きょうは法務大臣意見だけでも、必要あれば各省と相談してこの事態収拾をやる、こういうお考えがおありであるかどうか、一応承ります。
  59. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 事態内容、紛争事件内容というものが先生御承知のとおりたいへん複雑多岐をきわめておる。ちょっとこういう事件も珍しい事件だ。それともう一つ、私が法務大臣としてタッチのできる範囲は、商法に基づいて裁判所に対して解散の命令を請求することができる規定がある、こういうことを申し上げたのでございますが、この規定を適用した先例がないということで、非常にむずかしいのでございます。先例がないことがやれるかやれぬかということは、ちょっと尋常では先例がないとなかなかやれません。それから、非常に複雑な要件が必要になってくる。先ほどお話をいたしましたような複雑な要件が整わなければ法務大臣は商法に基づいて請求書を裁判所に提出はできない、こういう事態でありますので、いま直ちにこれをやる方向で検討をいたしますというように答えをいたしますことにだいぶちゅうちょをしておるわけでございます。むずかしいのであります。事件が複雑で、手続が複雑で、商法上明文はあるけれども使った実例がないんだ、こういうことを検討するということでございますから、たいへんむずかしいのでございます。先生せっかくの熱意のある御質問に対して御満足のいく答えのできないことが残念でございますけれども、たいへん苦労をしておるところでございます。
  60. 日野吉夫

    ○日野委員 横山さんから関連質問があるそうです。横山さんのあとに二、三質問します。
  61. 横山利秋

    ○横山委員 時間がございませんので、ちょっと関連質問をお許しを願いたい。  地労委の命令書、警察庁としてもお考えを願わなければならぬことでありますから、話が出たかもしれませんが、議事録に残すためにちょっと朗読を一カ所だけします。  「以上を総合して判断すれば、会社が警備課を新設することによって労使の紛争を力によって制圧し、かつ、また、警備課員の存在自体によって全金本山に対して脅威を与え、その組合活動を阻害し、よって全金本山の団結権及び団体行動権を侵害したことは明らかであると言わなければならない。」「当委員会判断は前記のとおりであって、元守衛であった者を除く警備課職員の存在自体によって、全金本山の団結権及び団体行動権が侵害されていると断じ得るため、判断において挙示した事項を総合して勘案すれば、会社の全金本山に対する支配介入の事実は疑い得ないところである。したがって、警備課を新設し、元守衛であった者を除く警備課職員を会社構内に存在させている会社の行為は、労働組合法第七条第三号に該当する不当労働行為であると言わなければならない。」  このことは、ガードマンの法律を審議いたしましたときに私どもが強くこのようなことを指摘をしておったのでありますが、次の国会である本国会で具体的に私どもの心配が事実をもって証明をされ、地労委の命令という立場において行なわれておるわけであります。  そこで、この間法律論について聞きました。いま警察は職安法違反ということでやっておるわけでありますが、オーソドックスな方法ではないという感じがどうしても免れ得ないのであります。ガードマン会社というものはこういう脱法行為をすればできるのだ、法本来の目的を達し得ないのだ、そしてまた、地労委がそれは明らかにいかぬことだ、だからやめよ、会社から出ていかせろというふうに言っておることについて、ガードマン法の本来の行政の責任を持つ警察としてはどう一体考えるべきであるか。現行法ではしかたがないでは、これは済まないのではないか。法の目的を達成するために、今回の地労委の命令を考えて、今後どうあるべきかという点についてお考えがなくてはうそだと思うのでありますが、この点いかがですか。
  62. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 先ほども日野先生のお尋ねにお答えしたのですが、私もいまの命令書を拝見しまして、地労委が十月二十五日以降に元警備隊員でなかった者を雇ったことが不当労働行為であるという意見をお出しになっておるということをよく承知しております。  そこで、いま先生のお尋ねの警備業法との関係でございますけれども、過般来申し上げておるように、従前までのいきさつで警備業法に違反する点がないかどうかということをいろいろ検討したのでございますが、いま御指摘のように実態的にはなかなか疑わしい点がございますけれども、形式的に昨年の十一月一日以降の特別防衛保障会社の責任に法律的に帰することのできる点がどうしてもなかなか出てこない。そこで、やや本来の警備業法ずばりではございませんけれども、職安法違反でもって過般来捜査を進めておりますが、その過程においても、私どもは絶えずそういう資料の中から現在の特別防衛保障会社の法的責任、警備業法上の責任を問えるものはないかということをいろいろ検討いたしておりますが、やはり法律的になかなかむずかしい点がございまして、現在の、ことに昨年の十一月一日以降の形式的な特別防衛保障会社の法律的な責任ということがなかなか問えないという状況でございます。いま御指摘の点は、私、不当労働行為になるという地労委の態度に関連した御指摘の御意見、もっともだと思いますし、私どもなお今後努力してみたいと思います。
  63. 横山利秋

    ○横山委員 労働運動に右翼の介入ということについて、今回特徴的な例でありますが、きのうの晩の国電の問題について、今朝来いろいろ私どもも調査をしておるわけでありますが、もうきのうの晩の状況において準備されたビラがまかれておる。新聞報道によれば、右翼が先頭に立って器物破壊をいたしておる。もちろんそれは順法によっていらいらした人の心理を挑発をしたということなんでありますけれども、今回の春闘というものは労使関係でありますが、それに介入をして、きのうなんか右翼が車を連ねて東京市内を走り回り、民衆を挑発し、そして順法闘争をやっておるところの駅に行って大衆の前に立って率先して器物破壊をしておるという点も、きわめて顕著な状況だと思うのであります。一体きのうの晩の状況について警察庁としてはどう事実を把握をしておるのか、また法務大臣としましても、公安調査庁はこの種の右翼の春闘に関する介入についてどう考えておるのか。先頭に立った人たちがほんとうに純然たる民衆であったかどうか、そういう判断はきわめて重要だと私は思う。しかもビラも、すべて印刷されておる。印刷されておるビラが駅の街頭なり、あちらこちらにまかれておる。こういう労働運動に対する右翼の介入について、きのうの晩の状況についてどう状況を把握されておるのか、また今後どうしようとなさるのか、警察庁並びに法務省意見を聞きたいと思います。
  64. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 今朝起こりました事件で、事態の真相が那辺にあるかということを究明する材料を目下収集中でございます。まだ手元に集まっておりません。メモ程度でございます。そういうことでございますので、事態をよく見きわめました上で所見を申し上げたいと思います。
  65. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 ただいまお尋ねの昨夜来の事態については、実は私、警察庁の中ではその当面の責任者でございませんで、直接の関係者は別な局長でございます。そこでお尋ねのことについて、私の所管外でございますから、責任をもってお答えするわけにもまいらないのですが、けさほど、私が警察庁の幹部の一人として聞いたところを申し上げてお答えしたいと思っております。  昨夜来の、こまかいいきさつは除きまして、最初大宮でもって午後五時過ぎごろから荒れ始めて、それが次々と各駅へ伝染したのでありますが、結論的には、警視庁が約一万八千人の動員をして、そして警察としてやるべき取り締まりを行なっております。その過程において、警視庁と埼玉県警と合わせて百二十七人の者を、器物毀棄あるいは威力業務妨害でつかまえておるということでございます。けさから、これらの者について調べ、あるいは実況見分をするという捜査をやっておりますが、いままでの段階では、いまお尋ねのような右翼その他の特定のグループが計画的にやったという形跡は認められておらない。現在までの捜査では、引き続く順法闘争による列車ダイヤの混乱に対して一般乗客のふんまんが爆発したものであるというふうに聞いております。また、逮捕した者はほとんど身元がわかっておりますが、その中に、右翼とか、そのほか政治的な色彩のある者もいまのところは発見されておらない。ただ、先ほど御質問の中にございましたように、一部右翼らしい者が街頭でもっていろいろ宣伝しておるということは、私どももそういう事実があることを聞いており、また承知しております。  それで、今後はこの労働運動に対してどういう態度をとるかということでございますが、これはさっき、横山先生、席においでにならないときに日野先生にもお答えしたのですが、繰り返しになるのでございますけれども、労使いずれの側にも加担しないで、厳正公平な立場から警察としては臨んでいく。ただし、いわゆる正当性の限界を逸脱した暴力の行使、これに対しては警察は当然責務を果たしていくという考えでございます。また、それをめぐってのいろいろな犯罪予防、鎮圧、捜査、そういったことについても警察としては全力を尽くして、御期待に沿うということをやってまいるという考えでおります。
  66. 横山利秋

    ○横山委員 本山事件の場合には、私どもは当初の段階において、警察当局に対して非常に不信を持っております、率直に言いまして。今日段階におきましては、とにかく本庁はじめ精力的に努力をしておられることは認めますけれども、この職安法違反の決着について適当な、いわゆる悪い意味の適当な処置でないように、きちんとした処置をとっていただきたいと思います。  それから、閣僚の一人である田中大臣に最後にお伺いしたいと思うのでありますが、きのうの状況の中でつくづく痛感されるのでありますが、けさも、テレビごらんになったかどうか、乗客の一人がこういうことを言っていますね。順法だからと思って朝、間引きで通勤した、帰りも間引きで順法で帰れると思って来た、ところがとまっているじゃないか、電車がとまるならとまる、動くなら動くと、きちんとなっておれば、私はそうは思わぬ、そういうことで怒りを爆発しておりましたね。私もそうだと思うのであります。  きのうの段階一つ重要なことは、国鉄が電源を切りました。電源を切ったことは、一斉に国鉄当局がストをやったということなんです。それは別にいたしまして、本来、ここまで来ますと、やはり私鉄はとめる国鉄はとめてはいかぬというような法律上の問題が、庶民的にはもう、とめるならとめるでいたし方ないのだ、労働問題の基本的な権利としてしかたがないのだ、はっきりしてくれというところに、争議の困難性といいますか複雑性というものもあるわけでありますから、この際こういう経験を繰り返していますときには、やはり国鉄なりそういう交通機関の労働者に対して正々堂々とやる、そして民衆にも、この覚悟をきちんとして支障なからしめるために、労働基本権である罷業権というものをもう認めるべき時期に来ておるのではないか、これはまあ庶民的にもみんなそういうふうに理解しておる段階ではないか、こう思うのですが、閣僚の一人である田中さんに意見を聞きたいと思います。
  67. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 いまお尋ねの御意見、ごもっともな点を感ずるのでありますが、これは横山先生、えらい問題で、たいへん重大な発言をすることになるので、ちょっと、一国務大臣では——法務大臣としては所管外でございますね。そこで、一国務大臣としてものを言うにはあまりにも重大である。あまりにも重大であって、発言ができぬ、こういうふうにお聞き取りをいただきたい。
  68. 横山利秋

    ○横山委員 重大であればこそ、大臣に聞いているんじゃありませんか。あなたも実力者大臣のお一人であるから、私は率直にあなたの感想を聞きたいと申し上げておるわけでありますが、しかし、そういうことがもう、いまや国民の常識になりつつある。やるならやる、やらぬならやらぬと、はっきりしてくれということは、素朴な国民の理解、一般的認識になりつつあるということをひとつ、重大なことではありますけれども、閣僚の一人として十分御認識を願っておきたいと思います。  関連質問でたいへん長くなって恐縮でございましたが、最後に希望を申し上げておきたいと思います。  この本山事件を取り上げましてからもう何回も努力をいたしております。法務省の商法に関する問題、あるいは警察庁の取り締まりに関する問題、警察のあり方の問題、あるいは労働省の職安局に関する問題、たくさん問題を整理してまいりましたけれども、要するに、一にかかってこの本山製作所の労働問題を一刻も早く解決をさせたい。あなた方は、それが直接の目的ではありませんでしょうけれども、間接的にあなた方もやはりそこにものを頭へ置いて、すみやかに解決するようにしてもらいたい。そのためには、きょう春闘の関係で、労働省がえらい申しわけないけれどもと言うてまいりましたので、これは了承はいたしましたが、ひとつ法務省からも十分話をしていただきまして、すみやかな解決がされるように希望いたしまして、関連質問を終わることにいたします。
  69. 日野吉夫

    ○日野委員 中絶いたしましたが、警察庁に伺いますが、いまの話は、前からも何回も繰り返して聞きました。ガードマン法では、脱法行為であるから取り締まれないという話でありましたが、脱法行為は、これは不法であり不当であるのです。   〔委員長退席、谷川委員長代理着席〕  これはやはり何かあなた方は、ガードマン法にも一部いい点があって、最近は登録して調査が自由になるようになったという話もしておりましたが、問題は、脱法行為を認めて、これはやむを得ないという態度でほっておくことが、いま横山君の言うような、こういう事態に右翼が——あれも一つの右翼集団ですからね。右翼集団が共同戦線を張って混乱の事態を引き起こそうとする動きなどが出たら、それこそ法務大臣の言うように重大なことになりますが、やはり警察庁でもあの法律の一部改正なり——脱法行為で自分の会社を脱退し、あるいは解散をして、新しい争議会社に雇われる。これは当然合法的だということになると、これはとんでもない事態になると思うのですが、何かここらで法の一部改正なり、あの問題に何か考えを持っていられますか。あったらお聞かせ願いたいと思います。
  70. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 警備業法については、昨年十一月、法の施行を見て今日までまだ半年足らずでございますが、それまでいろいろ先生も御承知だと思いますが、労働争議に関連して、ガードマンがいろいろなことをやるということで、あの法律ができる過程においてずいぶん議論がかわされて現行法ができたのでございますが、施行になってみると、今回問題になっておる本山製作所の事件のように、まことに法律にひっかからないようにいろいろな措置をとっておるものがあるということが出てまいりまして、私どももこの警備業法が施行になった本来の趣旨が十分生きるように活用してまいりたいと思います。せっかく法律で、いままで何にもなかったところに法規制が行なわれるということになったのでございますから、この法律を十分に効果あるように活用して、本来の法制定の趣旨が生きるようにやってまいりたいというふうに考えております。  それから一部改正をする考えはないかというお話でございますが、いま申し上げましたように、何ぶんまだ半年もたっておりませんので、よくこの法の制定の経過並びにその運用の結果、そういうものを勘案して、その問題も考慮して、念頭に置いておきたいと思いますが、一般的に申しまして、警備業法が施行になって非常に取り締まり成果があがっております。この結果、いままで警察では全国に一体どういう業者がおるのかというのは全然把握できなかったのが、届け出でわかる。また警備業に従事しておる者の人数もつかめる。それから大阪や兵庫でございますが、法に反したことがあればこれでもって監督ができるということで、一般的には非常に法制定の成果があったというふうに考えております。ごく特殊のものに対して、警備業法のほんとうの効力が発揮されておらないうらみがございますが、これも私ども大いに努力して、本来の法制定の趣旨が生きるように努力してまいりたいと考えております。
  71. 日野吉夫

    ○日野委員 いまのお話で、まだ実施されて一年もならぬと言いますけれども、すでにこういう弊害が起こっている。本山争議がこんなにエスカレートして幾多の犠牲者を出し、こんな混乱を起こした原因も、私、ここに関係なしといえないと思いますよ。同時に、国会意見が大体このことに集中されている。そういう事情があるならば、やはり一部改正でも何でも考えていく。ことにそれを放置しておくことによって、いま起こっている事態などにも重大な関係を持ってくるということになれば、これに責任があると思いますし、脱法行為だから何とも取り締まれない一点張りでは済まされないと思うのです。大体脱法行為というものは、私は、合法でない。不法で、そして不当である。こういう観点から、そういうものの法の存在を認めたなら、法務省にいたしましても、法の番人として、そういう法が存在するならば、これは改正に踏み切ってやるべきものじゃないか。   〔谷川委員長代理退席、委員長着席〕 改正をやれないならば、あるいはその最も弊害の多い部分をやる、こういう一部改正でもやるという強固な意思を何か聞きますけれども、解散権がありながら、これを立ち入って調査することを回避するという態度は、いまの事態に対処する政治の姿ではないと私は考えておるのですが、重ねて法務省から、そういう決意があるのか。法務省のほうでも、この間の答弁では、全く熱意を持たない態度であったのですから、両方からひとっこれに対する考え方を述べていただきたいと思います。
  72. 斎藤一郎

    ○斎藤(一)政府委員 いまの重ねてのお尋ねでございますけれども、本山製作所における特別防衛保障会社のやっておることというのは、警備業法の制定の直前までのできごとでございまして、警備業法が制定になってからは、法人格を持っておる特別防衛保障会社としての警備業に対する違反行為というものは、具体的に存在しません。そういうわけで、今後これが繰り返し同じ事態が起きるというふうににわかに私ども判断するわけにまいりません。警備業法が制定されて以降、同じ行為を、特別防衛保障会社と同じことを繰り返しやることができないという時間的な問題があると思うのでございます。そういった意味で、まことに本山製作所の事態は遺憾であると思うが、しかしながら、警備業法の一般的な改正をもって臨む必要があるかどうかという点については、私はやや消極的に考えております。  それから、不当な行為であるから取り締まれという御意見でございますが、私ども実態を見て、まことにいろいろ考えるところがございますが、何ぶん警察としては、やはり法に根拠があることでなければ、私は、不当だからといって、法を曲げて運用するわけにはまいりませんので、私どもの立場としては、法に準拠して、そうして警察として当然やるべきこと、あるいはやらなければならないことをやって、御期待にこたえたいと思っております。
  73. 川島一郎

    川島政府委員 解散命令に関する問題でございますが、この点につきましては、先ほど大臣からお答えになりましたので、大臣の仰せられました趣旨に従ってなお検討をいたしてまいりたい、こういうことでございます。  それから脱法行為についての見解でございますが、脱法行為と申しましてもいろいろあるわけでございまして、たとえば形の上では法律に触れないような形式をとっておるけれども、実質はこの法律の禁止しているところに触れる、こういう場合もございます。こういう場合にはやはりそれは違法行為だということで取り締まれる場合があろうと思います。要するに、その行為の実質いかんによって違反として扱うことができるかどうかきめていくべき問題であろうというふうに考えております。
  74. 日野吉夫

    ○日野委員 この間あなたがちょっとおられなくて、大竹さんが委員長代理でおられたとき、あまり積極的なあれがないから、参議院の社労で国会として現地調査をやるという話があるがひとつそれに参加する意思がないかと言ったら、代理だからいかぬ、本委員長に相談してという話であったが、何か相談がありましたか。
  75. 中垣國男

    中垣委員長 まだ正式にはありませんけれども、もし何でしたら次の理事会ででも一ぺん相談してみましょう。
  76. 日野吉夫

    ○日野委員 委員長に、理事会で相談してそれをきめてほしいと要望しておきます。  不当労働行為の問題は主として労働省関係でやろうと思ったのですが、きょうは労働省の出席が得られませんので、斎藤保安部長のほうから、不当労働行為であるという認識を持ってこの文書を見られた、こういうようにうかがえたのですが、これはどうですか。不当労働行為であるという一つの認定は、当然そうであろうと私は思いますが、労働者の団結権、団体交渉権その他の団体行動権に対する使用者の干渉ないし侵害行為、これら労働者の権利は憲法二十八条によって保障されるところであり、その尊重は国家のみならず私人たる使用者の義務でもある。そこで、不当労働行為を何らかの形で禁止する規定が設けられ——これは労働省管轄の労働法で設けられているのでありますが、これには刑罰その他の制裁を加えてこれを禁止する処罰主義と、不当労働行為を排除してもとどおりにさせるために使用者に作為または不作為を命ずる原状回復主義とがある。現行法は原状回復主義でいっております。このとおりでございますが、これをひとつ適用して、この命令書がそのとおりに出ているのでございますから、これを助けて、この機会に不当労働行為というものをもとに戻させるという努力が法務省としても警察庁としても——これは労働大臣の所管のようですから、労働大臣が来れば、三者そろって決定を何らかの形で助けて早急に本問題解決の曙光が見出せるのですが、私は非常に遺憾に思っているのだが、これに対してどう思うか。法務大臣は協力してこの事態解決のために骨を折る気がございませんか。この決定が出た機会に、これをひとつ国会の方針あるいは各省の方針として、あなたが官房長官、労働大臣と協力して重大な場合には事に処すという方針をここで確立したら、この問題はもっと早く解決ついていたのではないかと思うので、労働大臣は横山君に約束したようですが、その約束ができますか、それを重ねて法務大臣から伺っておきたいと思います。
  77. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 むずかしい問題でございますが、お説もまことにごもっともでございますから、ひとつ労働大臣とも協議をいたしまして相談をしてみることにいたします。
  78. 日野吉夫

    ○日野委員 きょうは新しい事態に対して、問題を事態収拾だけにしぼって、過般来の懸案はまだ残しておるし、労働大臣も次に来ることを約束しておりますから、時間もだいぶたっておるし、この程度で終わっておきます。
  79. 中垣國男

    中垣委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これには散会いたします。    午後零時二十七分散会