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1973-04-04 第71回国会 衆議院 法務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月四日(水曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 中垣 國男君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 福永 健司君 理事 青柳 盛雄君    理事 横山 利秋君       井出一太郎君    植木庚子郎君       住  栄作君    千葉 三郎君       早川  崇君    三池  信君       日野 吉夫君    沖本 泰幸君       山田 太郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君  出席政府委員         法務大臣官房長 香川 保一君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省人権擁護         局長      萩原 直三君         公安調査庁長官 川井 英良君         公安調査庁次長 冨田 康次君  委員外出席者         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 四月三日  商法の一部を改正する法律案内閣提出第一〇  二号)  株式会社の監査等に関する商法の特例に関する  法律案内閣提出第一〇三号)  商法の一部を改正する法律等施行に伴う関係  法律整理等に関する法律案内閣提出第一〇  四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件      ————◇—————
  2. 中垣國男

    中垣委員長 これより会議を開きます。  法務行政に関する件及び人件擁護に関する件について調査を進めます。沖本泰幸君。
  3. 沖本泰幸

    沖本委員 私は、本日最高裁尊属殺しのなにについてのあれが出ることになっておりますから、お示しをいただいたらその御質問をしたいと思っておりますが、きょうの大臣に御質問したい点は、人の健康に係る公害犯罪処罰に関する法律、いわゆる公害罪についてお伺いしたいと思います。  この公害罪につきましては、四十五年にこの法律ができまして、そのときにおそれという文言を削除するかしないかという点にかかって議論を呼びました。法律からは削除されてできたわけになるのですけれども、単純にいいまして、この法律ができまして約二年を経過したわけですけれども、この法律国民生命財産あるいは健康を守る上からいってどういう効力を発生して、国民がこの法律からいかなる恩典に浴しているか。また、法務省としてどういうふうなこの法律を受けたお仕事をして実効をおあげになっていらっしゃるか。その点についてまず御説明いただきたいと思います。
  4. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 技術的なことでございますので、刑事局長から先にちょっとお答えいたさせます。
  5. 安原美穂

    安原政府委員 沖本先生お尋ねの、どういう効果公害処罰法がもたらしたかという点でございますが、すでに御案内と思いますけれども、今日四十六年の七月一日からこの法律施行になりまして以来、この公害処罰法ということで検察庁に送られてまいった事件は、わずかに二件でございます。そういう意味において、現実に捜査の対象あるいは審判の対象になっているということにつきましては、ゼロにひとしいということでありまして、現実適用という意味においての効果はある意味においてはあげていないとも言えるのでございますけれども、この法律が出たことによりまして、私どもは自画自賛かもしれませんけれども、こういう健康に害がある悪質な公害犯罪というものに対しての抑止的効果は、十分にあげているというふうに考えております。  なおわれわれ検察庁といたしましては、公害処罰法の制定を機にいたしまして、この法律を第一として、その他の公害関係法令違反の検挙あるいは処理に当たるために、全国検察庁公害係検事を置いて、検察の重点としてこれに対処していきたいというふうな処置をとっております。
  6. 沖本泰幸

    沖本委員 抑止的な効果を発揮している、こういう御説明なんですけれども、この法律ができる時点に立ち返って見てみますと、当時の会議録公害連合審査会の記録の中から拾ってみますと、辻刑事局長の御説明ですが、その会議録を読みますと、「前提条件があると思うのでございますが、かりに有毒物質水銀なら水銀を放出しておる、その放出の量が結局最終的には人間が汚染されるおそれがあるというくらいの程度水銀なら水銀排出しておる、そういうことが前提でございまして、さらにそれで汚染されていた魚をその付近の人が通常食べている、常食としておるというようなことを前提条件といたしまして、ただいま四つの段階についてお答えを申し上げますと、まず魚が水銀によって汚染された。その汚染された魚を付近方々が通常の頻度で食べておられる。そうするとそれが発病してくるということであれば、その魚が汚染されました状態、これは危険を生ぜしめたというところに当たると思うのでございます。それから微生物、魚の前の場合でございますが、プランクトンならプランクトンというものが汚染されておるけれどもまだ魚は汚染されていないという状況、この段階人間にとって、この法案にいう危険を生ぜしめた段階には至っていないと思うのでございます。ところで、そのプランクトン段階は、危険を及ぼすおそれのある状態という場合には当たるのではなかろうかというふうに考えておる」こういうふうなプランクトン議論がたくさん出てきまして、結局排出なり何なりを前提とした規制基準をどの辺に持っていくか、あるいは行政官庁がいろいろ果たす役割り、そういうものとの関連性からこの法律抑止的な役割りを果たす、こういうような議論に終わって、私たち考えてはっきりした、国民の目から具体的にどういう働きがあるのだということがいまだにばく然としておるのじゃないかと考えられるわけです。ですから、こういうふうないわゆるプランクトン論とか抑止的な役割りというのが、一般国民考えてどの辺でこの法律抑止的な役割りを果たしてくれているか、この点について御説明していただきたいと思うのです。
  7. 安原美穂

    安原政府委員 非常にむずかしいお尋ねでございますが、いま沖本先生指摘のとおり、プランクトンが汚染しているという段階がこの法律にいう危険を生ぜしめたということにならないことは、この法律の成立当時審議にあたりまして当局が申し上げたとおりでございます。したがいまして、この法律はいま御指摘の危険を生ぜしめるおそれのある状態処罰することにはなっておりませんので、そういうものに対しての抑止的効果ということは端的にいえばないということになるわけでありますけれども、その点につきましてはいまも御指摘のように、危険を生ずる前段階であるおそれの状態を抑制するものとしては、水質汚濁防止法とか大気汚染防止法というものにおいて排出基準が逐次定められておりますので、その排出基準による規制、それは罰則を伴うものでございますので、公害処罰法とそれからそのおそれの状態を防止するための各行政法規による取り締まり法、あわせて御指摘のとおり抑止的効果を発生しておるというふうに考えております。
  8. 沖本泰幸

    沖本委員 その辺が単純に国民の目から見て、公害が発生する原因がいろいろあるわけですけれども、じゃ具体的に国民の目に、公害罪という法律ができました、これは歯どめになりますですよということを法務省から、政府から説明があって法律ができたわけですけれども、それじゃずっと見ていてどの辺の段階抑止力を発揮しておるのか、どういう形でそれが実際に公害を発生させないという歯どめの役割りをどの辺で果たしておるのか、こういう点がわからないわけです。結局、先ほど刑事局長の御説明がありましたとおりいまやったのは二件だけでこれもまだはっきり結論が出ていませんし、それからその基礎的な内容のものが一ぱいあるわけですし、それに対して四十八年度は、検事さんとかいろいろな五人の御担当の方がいらっしゃるし、それぞれの予算が組み込まれておるわけですけれども、そういう方々働きなり何なりというものがどういう形で国民の目の前で働きを展開しておるのか。それがどういう効果を得ておるのか、あるいは行政官庁とどういうつながりを持ってこの法律が実行されておるのか、その辺がはなはだあいまいもことして疑問なんですが、その点についてわかりやすく御説明いただきたいと思います。
  9. 安原美穂

    安原政府委員 罰則犯罪抑制効果というものは目に見えて国民にわかっていただくということが非常にむずかしい事柄だと思いますが、あえて申し上げますならば、先ほど申しましたようにたった二件しか受理件数がないということは、ある意味じゃ抑制的効果を発揮しておるというふうにいえないこともございません。  それから行政と申しますのは、先ほど申しましたように、検察庁としてはあるいは警察としては、この公害犯罪処罰法を含む公害犯罪抑止ということには強い姿勢で臨んでおるわけでありまするけれども、それとあわせ考えますと、受理件数の少ないということは抑止的効果を発揮しておるというふうに見て間違いがないのではないかと思います。ただ、公害犯罪処罰法の前段階を担保いたしますところのいわゆる大気汚染防止法とかあるいは廃棄物処理に関する法律違反とかいうような、危険を生ずるおそれ段階規制する法律違反につきましては非常に多数の事件処理されておるのでございまして、たとえば昭和四十六年の七月一日から四十七年の十二月三十一日までの間に全国検察庁が通常受理いたしました公害関係法令違反、いまの廃棄物処理及び清掃に関する法律とか港則法とか海洋汚染防止法とかそういう法律違反受理件数人員数は三千四百十六人でございまして、そのうち起訴いたしました人員数は千八百八十人ということになっておるのでございます。こういう関係法令適用につきましては、密接に出先の厚生省あるいは通産当局というようなものとも連絡をとりながらこのような事件処理を行なっているのでございまして、公害犯罪処罰法自体抑制的効果としての効果をあげておるが、その前段階につきましては違反のあるものはこのように検挙して危険の発生を防止しているということになると思います。
  10. 沖本泰幸

    沖本委員 ですが、考えてみますと実際にこの法律が働いて、何度も繰り返すようですけれども、どういう形で実効があがっておるか、ほかの関連行政措置あるいは行政措置を講ぜしめる法律とどの辺でからみ合っておるのか、その実効の度合いというものはどの程度かわからないわけです。じゃ、結局、この法律をはずしたらどういうことになりますかということになるのですよ。はずした場合にはこういう危険が生じていろいろな問題が続出するけれども、この法律があったためにこれだけの効果があがっておるという目安になるようなものは何もないわけなんでしょうか。
  11. 安原美穂

    安原政府委員 結局この法律をなくした場合にはどういうことになるかということになりますと、最近四大公害として問題になっておるような事件も、その当時の行為につきましては公害犯罪処罰法適用できないわけでございますので、あの場合において刑事罰則適用するとするならば、刑法の業務上過失致死傷ということにならざるを得ない。となりますと、あれは現実に人の生命、身体に関する危険ではなくて、健康の危険ではなくて、致死傷という現実の結果が発生しなければ処罰できないことに相なるわけでございまして、そういう意味で、この法律があるということは、危険を生ずるおそれは各行政取り締まり法規で取り締まり、ですから危険を生ずる悪質な重大なことになりますれば、この法律処罰できるということになるという意味において、現実の結果が出る場合に、しかしおそれのある具体的な危険段階はこれがなければ取り締まれないということになるのでございます。
  12. 沖本泰幸

    沖本委員 もう一つ納得できないのです、その辺の関係性が。大臣はこういうことの御説明に非常にごたんのうな方でございますから、私たちしろうとにわかりやすいような形で——決して刑事局長さんの言われたことが全然わからないということではないのですが、さらにかみ砕いて、国民が納得いくようなこの法律実効なり関係性なりを御説明いただけたら非常にけっこうだと思います。
  13. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 私がりっぱな説明ができるわけでもないのでありますが、私の見るところを申し上げますと、いま局長から話の出ました四大公害訴訟事件、これは御承知のとおりに水俣事件、それから四日市事件阿賀野川事件神通川事件というものをいま局長が申したのだと存じます。こういう事件が起こりまして、世間は、民事裁判損害賠償がとれるということになるほどであるならば、なぜ一体刑事的に処罰をせぬのか、刑事罰をなぜおろそかにしておるかということ、これは国会でも盛んに論議が出ておるところでございます。  ちょっと考えますと、まことにもっともな御意見で、民事裁判損害賠償過失を認めておるではないか、故意を認めておるではないか。なぜ刑事罰適用して処罰をせぬのか、検察は何をしておるかなどという御議論が出そうな感じがいたします。ところが民事裁判は、申し上げるまでもなく、故意過失原因とします不法行為に基づきまして、損害賠償義務があるということを認定いたしましたもので、その民事不法行為に基づく損害賠償義務があることを認定したことと、そして刑事罰によって国家が罰則適用して処罰をするということとは別のものであるということになるわけであります。これは理論上当然のことになるわけであります。  そこで、先ほど局長が申しましたように、別のことになるならば一体何を適用していくのかといえば刑法適用以外にはない。刑法故意過失を証明をいたしまして、そうしてここで刑罰を科する、殺人罪あるいは致死傷罪によって処罰をしていくということ以外にないのでありますが、これはなかなか容易なことでない。ところが先生お話し公害罪というものがありますと、これは先生は四十六年と仰せになったようでありますけれども、これは四十六年の七月一日から、ただいま局長が申しましたように実施になっておる法律でございます。それ以前の四大公害事件という公害訴訟事件には適用がないわけであります。適用することが妥当であるかどうかということで幾らか議論はございますけれども、大体通説は適用がない、遡及はしない、こういうことでございますから、適用がないわけです。この法律適用がないのですが、かりに今後の事件としてこの法律が生きておることになりますと、公害罪法適用になる。そうすると故意罪についても過失犯についてもこの法律がどんどん適用できる、こういうことになるわけでございます。この法律がなければ刑法以外で処罰はできない。この法律があれば刑法の困難な適用をせぬでも比較的容易に適用できる。この法律適用してぴしゃり犯罪として取り扱えるという大きな効果があるのではなかろうか。しかしそんなことを言ったって、一件や二件ではしようがないじゃないかというおことばがあるかもしれませんが、法律は、必ずしも適用をいたしまして罪人をたくさんつくること自体法律の目的ではないので、それが抑止力効力を生じまして、一般世間に反省を求め、警告になるならば法律を制定いたしました効果が十分でございます。むしろ法律的効果はあったけれども、罪人は少なかったということが理想中の理想じゃないか。幾らか私の言うことは極端かもしれませんけれども、私はそういうふうに思っておるのであります。ごくわずかなものしか表には出てきておらぬ、適用を受けたものはないじゃないかということではございますけれども、この法律は確かに効果がある。刑法によらなければどうにもならぬというものがこの法律では処罰ができるということになるのでありますから、危険が生じればぴしゃりいけるのだ、こういうことになるわけでございます。おそれということは削っておるのでございますけれども、危険が発生すればぴしゃりいける、こういうことでございます。そういうことでございますから、私は非常に効果のあるものではなかろうか、こう考えております。
  14. 沖本泰幸

    沖本委員 質問はさらに続けたいと思いますが、いま尊属殺し違憲、合憲の問題で、最高裁から違憲判決が下ったというふうに連絡を受けました。昨日来からいろいろ議論があったわけでございますが、そうなりますと二百条、二百五条の第二項、二百十八条第二項、二百二十条第二項、これははずしてしまうということになるのではないかと考えるわけでございますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  15. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 これはまことに重大な影響をもたらす事態でございます。まだ判決内容は拝見するよしもございませんが、とにかく親殺しについて違憲判決が出されたということは事実のようにただいま報告を聞いておるわけでございます。これをこの機会に私が答弁で言及いたしますことでたいへん注意をしなければなりません点は、具体的事件裁判判決が下ったのでございます。そこで、その下りました判決批判をする、よいとか悪いとか、間違いであるとか、正しいとかいうことに論及をいたしまして批判をいたしますことは、立法府の発言としては、ことに行政府におります大臣発言としては注意をすべきもので、したがってそれは私は申しません。裁判のよい、悪いということ、裁判官の御判断に対する評論は一切避けるのでございます。避けるのでございますが、ただいま重要な御質問がありましたのでお答えをしなければなりませんが、これは重大影響を各方面にもたらすものでございます。  第一の重大影響は、いままでに刑法二百条を適用して判決をした、その判決確定をしておる、この事件を一体どう取り扱うのかというのが重大問題中の重大問題でございます。中には確定判決を受けて死刑になった人で、死刑執行を終わっておる者もあるのではないか。これは後によく調べてみます。あるとは申しませんが、あるのではないかと私は思う。判決確定して死刑になっている、こういう者もあるやに思われるのでございます。後に調査をいたしまして、あらためて御報告を申し上げたいと思いますが、そういうことがあろうかと思います。それから死刑執行という極端なことはともかくといたしまして、現に判決確定をしておりますものにつきましては、これは非常上告制度適用して非常上告をするのかどうか、こういう場合には漏れなく非常上告が許されるかどうかということについても両論があるものと思います。私は、非常上告をさせなければ理屈の合わぬものだと判断をするのでございますが、これはまだ私が確定的にそう所信を持っておるわけではございませんが、確定判決を受けた者に対して非常上告が許されるのかどうかということについて、法務省を中心といたしまして早急に検討を加えなければならぬ重大事態でございます。  それからもう一つの問題は、ただいま先生お触れになりました刑法二百条関係の一連の法律、これは現行法でございます。この現行法は、ときあたかも刑法改正審議が長年月にわたって継続されておる現状でございますから、このときにあたってこういう判決が出されたということは、この刑法の二百条をめぐる関係条文というものはすみやかに改正をしなければならぬのではなかろうか、こういうふうに考えるのでありまして、この及ぼすところ甚大である。甚大な判決をしたことはけしからぬなんということを言うのじゃありません。及ぶところは甚大である。それに対する対策は早急に講じなければならないものと考えるのであります。この所論は、下された最高裁判決を尊重し、その影響するところをどう処置するかということについての私の発言と受け取っていただきたいのでございます。
  16. 沖本泰幸

    沖本委員 この件に関しましては、いろいろ他の同僚議員からも御質問があると思いますけれども、私はいまの御質問程度にしまして、先に進んでいきたいと思います。  さらに公害について、大臣お答えは、おそれの字を削除しておってもこれは効力を発生し、その後の内容について刑事事件として対象として取り上げることができるようになった、こういうことをお述べになったと思うのですけれども、それにつきまして、最近はこの排出基準というものに対しての考え方が具体的にどんどん変わってきております。地方自治体でもこの基準をどんどんきびしくしていっておりますし、いままでの厚生省基準も、いままでが甘過ぎたということによってもっと厳重な排出基準をやるということになっていると聞いておりますけれども、こういう内容からいきますと、周囲がどんどん厳重にこの問題を取り上げながら公害に対処してきている。日本全体が重大問題として、日本全体の国民生命財産にかかわる問題として、政府関係あるいは地方自治体関係あるいは企業のほうも、こういうものを以前と変わった考えに変わってきている。そういうふうに変わった考えに変わってきたということは、私はこの公害罪という法律の歯どめがきいてそう変わったということではなく、すでに現実にその危険性が発生してきておるからほっておけないという事態で、国民の世論も高まってきているし、現実危険性が出てきているということになりますと、何か最初この法律をつくるときにプランクトン議論をいろいろやってきたけれども、プランクトン段階でどうだ、魚介類が汚染されて、それを食べて人間のからだに影響が発生してくる、こういうふうなのが議論の原点になっておったように思うわけです。その議論といま申し上げたものと並べて考え合わせていきますと、この法律自体がもうすでに古きに失しておる、あるいは法律自体考え方、重さというものが軽過ぎているのではないか。そういう事態になってきておる。ですから、この法律ができた時点と現在の時点とはずいぶん変わってきてしまっている、こういうふうに私は考えるわけです。そういたしますと、単純なもののたとえにして非常に恐縮ではございますが、たとえばおつけものがあります。おつけものに大きなおもしを入れて水けを出して、そして塩とかぬかとかをきかしてつけていくわけですけれども、石が軽過ぎると中身は腐ってくるわけですね。塩けが甘かったりするとこれまた影響を及ぼしてくる。こういうことで、周囲のほうが、たとえば公害罪法をおつけものの石とすれば、周囲がもうたいへんだというので塩とかぬかとかをどんどんほうり込んできた。しかしおもしが軽かったら効力を発生しない。もっともっと重いおもしにしなければならない。こういうふうな事態ではないかと私考えるのですが、そういう観点から、おそれという字をはずしておること自体おもしを軽くしておるということになるんじゃないか。これができましたときは、私たち企業側についた法律であって何の歯どめにもならない、おそれを入れてこそ初めて歯どめになるんだということを盛んに申し上げましたけれども、そういう議論をはずれて、通り越してきておそれという字を入れてあたりまえというふうになってきている。それはこの四大公害裁判判決の主文の中からもそういう点がうかがえるのではないか。ただ、大臣がおっしゃったのは、この法律以前の四大公害ということになりますけれども、この判決が出たのは法律が制定されてからという点になってきておりますけれども、そういう関連性ではなくて、裁判所の判断というものはもっともっときびしいものを受けて考えてこういう御判決があったということで、原告側の勝訴になった。その点については被告側のほうは企業責任なり何なりをきびしく追及されてきておる。こういう内容とこの公害罪法を比べてみますと、何か私はこの法律が浮き上がってしまって歯どめの役割りははずれているんじゃないか、こういうふうに考えるわけです。大臣のほうはおそれという字をはずしておっても十分効力があるんだ。こういう議論をやると平行線になるかもわかりませんが、法律の持つ意味あるいは法律働きですね、そういう内容考えていくと、現段階ではもうおそれという字を入れるべきである、こういう私の考えでございますが、大臣はどうお考えでございますか。
  17. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 おそれの条文を入れることがこの法律をしっかりさすことになるのではなかろうかという御議論は、お説はよくわかるのでございますが、この法律故意過失によって一定基準以上の毒性物質を排出して危険を生ぜしめたということが条件で犯罪を構成することになります。これは危険犯の場合です。そういうことによって結果、人を殺傷する、人の健康を害したということになります場合においては結果犯として重く処罰はするのでございますが、根本は危険が発生したということが要件となって処罰をいたします。そういうことになりますと、おそれがあってもなくとも、まあわかりやすいことばで言えば、おそれのある場合、おそれ条項を適用したいと思うおそれのある場合、そういうおそれのある場合もこの危険犯の条項で処罰ができるのですね。おそれがある場合は処罰ができないというのだったら、先生仰せのようにおそれ条項を加えなければということになる。おそれのある場合の処罰は現行の危険犯に関する条項で処罰できる、だからおそれ条項を二重につくらぬでもよい。こういうことが法務省で、当時私は法務省におったわけではございませんが、その法律をつくりますときにおそれ条項を抜いた、要らぬじゃないか、二重につくらぬでもいいじゃないかということでこれを抜いたということが理由となっておるものと存じます。そういうことでございますから、おそれ条項がないからこの法律が軽いじゃないか、この法律に欠陥があるじゃないか、役に立たぬじゃないかということは、どうもそういう趣旨の御意向であるとすると、これは当たらぬのではなかろうか、こう考えるのでございます。  それからもう一つ、先生のただいま仰せになった重要なおことばの中にありますことは、この法律は時代がおくれておるのじゃないか、ぐんぐんぐんぐん基準が変わってしまうじゃないか、こう仰せになるのですが、私はこれと反対に思っております。ただいまくどく申し上げましたように、一定の基準以上の毒物を出した場合に、危険犯として適用をいたして処罰をするのでございます。その一定基準とは何か、この一定基準がぐんぐんぐんぐん変化をしてくるではないかということは、一定基準がぐんぐんぐんぐん変化をしてくれば、基準が上がってくれば上がってきた基準以上の排出をして危険を生じた場合ということでこの法律適用される。基準が下がる場合はございますまいけれども、理論的に申せば基準がかりに下がった場合、基準が下がった場合には下がった基準以上の毒物を排出して危険を生ぜしめた場合というように、これは縦横無尽に適用できる条文でございますので、先生のお仰せになりましたおことばとは逆に、私は社会感情、時の情勢、そういう複離な社会事情に応じまして、また公害関係の毒性についての程度もだんだん研究が進んでまいりますわけでございますから、それが進んでくるに伴って、この法律で言う罰則適用されるかされないかの境界線になる一定基準というものが今後もどんどん変更がされるであろう。変更されてもこの法律は微動もしない。その変更された一定基準基準としてこの法律適用していこう、こういうことができますので、時代おくれの法律ではないかということは当たらないのではなかろうか、こういうふうに思うのであります。
  18. 沖本泰幸

    沖本委員 公害罪法ができるにあたりまして、四十五年の十二月四日に連合審査の中で、わが党の正木委員からの質問に対して小林前法務大臣お答えになっていらっしゃる中に、いまの大臣お答えと少し違うのじゃないかと思えるお答えがあるわけです。この記録を読んでみますと、「要するに人体に害が及ばない先に、危険があれば処罰をする、こういうことであるから、私は、法の趣旨からいってあまり大きな差異はない、こういうことを申し上げておるのであります。」こういう御答弁があるわけです。そうすると、大臣の先ほどのお答えとは全然逆になってくるのです。大臣は先ほど危険が起きてからということを御答弁になっていらっしゃるのです。その辺の食い違いというのは御訂正になるわけですか。もう一度言いますけれども、小林前法務大臣は、「人体に害が及ばない先に、危険があれば処罰をする、こういうことであるから、私は、法の趣旨からいってあまり大きな差異はない、」という御答弁をしていらっしゃいます。法制局長官は、危険が生じたという場合と危険を及ぼすおそれのある状態ということになると理論的には確かに差がある、こういうお答えをしていらっしゃるわけです。  これを一つにしてお伺いしたいわけですけれども、その議論はこまかい議論で言い違いがありあるいは食い違いがあるということにいたしましても、法律ができたあとの議論でございますけれども、それじゃこの法律国民の側に立って、そして不特定多数の国民の人権を守っていき、生命財産を守っていくためにつくられた法律であるということになるわけです、と私は思うわけです。ですから、裁判を起こすあるいは因果関係が立証できない、あるいは故意であるとか過失であるとかという点についてもどうすることもできない人たちのためを考えながら、公害が多く生じるという問題をとらえながら、この法律ができ上がってきた、こういうふうに私は考えておるわけです。  そういう観点からいきますと、結局どういう形で具体的に国民生命財産を守るためにこの法律が働いていくか、いわゆる関連するところの地方自治体であるとか関係の各省庁においてとらえる問題は、事件が発生してからこの問題が大きくとらえられておるということになっておるわけですし、そのとらえられてきておる問題はだんだんその度数を高めてきておるわけです。たとえば水俣の裁判にいたしましても勝ったからといって原告側はひとつも喜んでいない。問題はこれからなんだということを言っているわけです。すでに水俣の人たちは、一度企業の人たち水銀を飲んでみればいいじゃないか、病気になったらいいじゃないか、そうすればわかるということをおっしゃっておりますし、この水俣の周辺はもうヘドロだけでたいへんな量のものを含んでおり、どうしようもない状態で、これから将来それを除くだけでもばく大な費用がかかる、こういうふうな状態、いろいろな関係で被害が四方八方に出てきておる、それからまだ患者が発生するのではないかという点があるわけです。  そしてこの法律議論したときは、プランクトンと魚の状態で、プランクトンがおかされた時点でどうだ、魚がおかされた時点でどうだ、それが人間に発効してきて、そして人間に被害があらわれる段階でどうだ、だからプランクトン段階では問題にならないのだ、魚の段階から問題になってくるわけだ、だからプランクトン段階ですとそれを魚が食べて蓄積されていって、人間の中にまた蓄積されて、そして問題が出てくるというのは十年、二十年かかってくる、こういうことになるわけですけれども、この公害問題がいろいろと現実国民の大きな危険問題となってきた時点からさかのぼっていくと、もう十年、二十年以上の経過を経ながら、いま結果が出てきている。こういう時点に立っておるときに、ただこの法律が歯どめになったという点と、それから予算をお組みになり、これに対する専門の担当の方を用意しておられる法務省として、どういう働きを持ってこの法律を実行さしていくかという点、刑事局長さんは非常に少ないんだ、その少ないことを喜ぶべきか、上がってこないから少ないのか、どういう角度でこの事件をとらえられて、浮き彫りにしていって問題解決をはかっていくか、こういう形になっておるのか、ただ法務省としては法律抑止力があるから、法律があるだけでけっこう力を発揮していくのだ、こういうふうにおとらえになっていらっしゃるのか、その辺の関連性なり法の働きなり、そういうものが、やはりいままで大臣の御説明をいろいろ聞いていてもまだぴんとこないわけなんです。
  19. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 くどい話になりますが、先生の仰せになったおことばに沿うて、ちょっと一口意見を申し上げますと、一定基準以下の排出は無罪なんですね。おそれがあるとかないとか、それは問題が起こってこない。一定基準以下はただ一定基準をこえる場合に、だんだん順序をいいますと、一定基準まではただ、一定基準をこえるとおそれが出てくる、もっといくと危険が出てくる、もっといくと危険だけでなしに人を殺傷する結果が出てくる、こういう段階があるとお考えをいただきますと、一定基準以上の直罰規定があれば、その中に含まれておるおそれも処罰ができるわけでございますから、おそれ規定は要らぬではないか、こういうのが法務省の意見でございます。  それでやっぱり、これもくどくなって申しわけございませんが、法務省考えておりますのは、いままでの取り調べの過程から申しまして、たいへん数は少ないのでございますけれども、これは十分に抑止力がある。この法律があれば刑法適用は必要がない。いや必要がないんじゃなくて、刑法適用するに至らない。刑法というむずかしい条件の規定を適用せぬでも、この法律でぴしゃりいける。危険が生ずれば危険、結果が生ずれば結果加重犯、こういうことでぴしゃりいけるんだ。故意過失も両方いける、こういうふうに判断をいたしておりますので、公害罪法はいわばおどしのきく法律ではなかろうかというふうに考えておるのでございます。これは私一人が考えておるのでなしに、法務省全体、刑罰法規を取り扱いまする役所といたしまして、そういうふうにこの法律は評価しておる、こういうことでございます。
  20. 沖本泰幸

    沖本委員 何度も繰り返すようでございますが、たとえていいますと、水俣病裁判判決の中で、安全性を確認せず、安全性が不明のまま廃水を流してはならない。さらに動植物や人体に危険性のあることが公知されている汚悪水を排出したこと自体責任があるという、被告側過失に対する点は、新潟水俣判決や四日市判決より一歩進んだ内容である。汚悪水論というものを出してきているということになりますし、だんだんと企業責任というものが、先ほど申し上げましたとおり、イタイイタイ病では疫学的因果関係が証明された、こういうふうになっているわけです。しかし、これがみな被告側のほうから、民事問題にしましても、いわゆる訴訟を起こして問題が議論されながら判決が出てきた、こういうことになっておりますし、それでは日本全体の公害がだんだんと薄くなってきたのかといえばそうではないわけです。現実には、それはどんどんふえていっている、そういうことで日本列島改造論まで出てくる結果に日本全体がなってきているということになるわけですし、公害がどんどん進んでくるから排出基準をだんだん高めていかなければ、いまの国民生命財産の安全というものははかれないということから、基準がどんどん上がっているわけです。そして四日市のような場合に、いま大臣は一つ一つの基準以下であればと言いますけれども、一つ一つの基準以下の問題が集まって複合的な公害をいま発生しているということが大きな問題になっているわけです。ですから、基準以下であれば問題がないという考え方は四日市の場合は破られてきている、こういうような事態になってきているわけですね。そうしてはたのほうの世論も高まっていき、この問題を考える人たち考え方も変わっていき、それから厚生省政府機関もいろいろとこの問題をとらえてやっていくし、地方自治体厚生省基準以上の基準を設けてやっていっている、それぞれに働きを起こしているんだと。私はそういうものによって公害がなくなっていくとかあるいは公害が落ちたとは思わないわけなのですけれども、発生した時点の中から問題がとらえられていっているというふうに考えられるわけです。そうすると、そういうほかのほうの状況の中でこの問題はとらえられながらどんどんどんどん進んでいっている。その中でこの法律がいまおっしゃったような役割りをはたして目に見えないところで果たしているのかいないのか、どうやって国民にわかるのでしょうかということになるわけなんですよ。ですから、そのおそれという字を入れなくても十分効果はあるのだというけれども、国民がクエスチョンマークをつけて、そうして国会の中でいろいろ議論したのは、入れたほうがまだいいじゃないか。大臣は入れなくても十分効力はあるのだと言うけれども、ばく然としてわからない。国民の目にわからない。法務省大臣のほうでは歯どめになる。確かに私たちも、この法律ができたときには、なるほど歯どめになるかもわからない、こういうことで法案そのものには賛成だったわけです。中身について反対意見を持っておったわけですね。ですから、それほどのものであるなれば、現在まできた段階において、そのおそれという字を入れたほうが、なおかつ国民の目にちゃんと歯どめ役にもなるし、入れたほうがもっと力を発揮するのではないか。入れなくても十分力があるんだ。力があるんならおそれを入れてもまた力は発効する。そのおそれを入れたらどういうところに影響が出てくるんですかということになるわけですね。おそれを入れたほうが国民の目にもよくわかってきますし、そしてより歯どめの役を果たしていくということになるのであれば、おそれを入れたほうがいいのではないか。さらに周囲がどんどん進んだ段階法律だけがぶら下がって効力を発揮していないような、ただ看板だけがあるような感じが私はしてならないわけです。その点いかがでしょうか。
  21. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 私の申しておりますのは、おそれある場合の処罰は、わざわざ条項をつくらなくとも、現在の直罰規定で処罰ができるのだから、二重に設けることは要らぬのではないかということが意見でございます。そういうことでございます。  それから、私の言うことはときどき舌足らずのところがあって問題を起こすようでございますが、一定基準以下は無罪なんだという話は、この公害罪法の解釈について言うておるのです。一定基準先生仰せのように変わっていきますけれども、そのときどきの一定基準、その一定基準以下は無罪放免なんだ、こういうことです。全体としての公害対策という、国の政策というものから申しますと、先生のおことばどおり、一定基準以下のものでも、それが堆積すればこうなるのではないかという危険が想定される時期が来ております。そういう研究も行なわれておるわけでございますから、対策としては一定以下は自由だ、ただだというわけにはいかぬ。政策を離れましてこの公害法の解釈論といたしましては、一定基準以下はおそれがあろうがなかろうが無罪である、一定基準をこえる場合に直罰規定が適用されるわけでありますが、その場合におそれが出てき、危険が出てき、ついに殺傷が出てくる、こういう三段階が上にある。それはおそれを含んでおるわけであるから、二重には要らぬのではないか、こういうことを申し上げておるのであります。
  22. 沖本泰幸

    沖本委員 以前にも私はこの問題を当委員会で御質問して、同じような議論に終わったことがあるわけです。そのときに具体的に法務省としてのいわゆる体制ですね、この問題をとらえていく人員なりあるいは科学的な問題を捜査するだけの技術を持った権威者なり何なり、そういう方々の配備あるいは配置は十分かという点を御質問したときには、まだ十分ではないけれども研究して十分の対策は立てていくというお答えがあったわけなんです。そのときに横の連携はどうなりますかということをいろいろ伺ってみました。そうすると、それぞれのところで、それぞれの関連のある省庁なり自治体なりと綿密な会議を開き、連絡をしながら、この問題をとらえていっているというお答えがあったわけなんです。そうしますと、当時は法律ができてしばらくたってからでございましたが、現在の時点に立ってみまして、そのような内容の具体的な連絡なり協議なり、あるいは具体的に活動をお始めになって一体どういうふうな結果が出ているか。たとえば事件として取り上げるに至らないけれども立ち入り検査をするとか、あるいは公害罪に当てはまるいろいろな内容というものを熟知されておるかどうかという点に私は非常な危惧を抱いているわけです。ここですらこういうふうな議論が出るわけでありまして、私は決して専門家ではございませんけれども、しかしこういう複雑な議論内容をはたして関係省庁の方が十分理解していらっしゃるかどうか。そうすると、向こう側もこの公害罪法適用があるんだという点について、これは歯どめ役の働きをする法律なんですから、どこかで歯どめになっていく働きが起きてこなければいけないわけですけれども、企業なりあるいは関連省庁、地方自治体あたりがこの法律を十分働かしておるかどうか。それで、実効をあげてこういう形で歯どめ役になっているとか、企業はこの問題をどういうふうにとらえているとか、そういう点についてどういうふうにお握りになっていらっしゃるか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  23. 安原美穂

    安原政府委員 いまお話しのとおり、各地検察庁では、都道府県ごとに検察庁が中心となりまして、関係の出先機関あるいは都道府県の公害担当者と定期に協議会を開きまして情報の交換をやっておるのが実情でございまして、そこでいろいろな対策、行政措置について検察庁としてもいろいろ意見を申し上げておるということで、各地においてそれが活用されておるという報告を聞いております。  なお、どういう効果を発揮しておるかということでございますが、法律のたてまえは先ほど大臣からも私からも申し上げたようなことで、遺漏のないことになっておるわけでありまして、特に関係省庁の分野といたしましては、公害犯罪処罰法は御案内のとおり、何も関係行政庁の告発を待たずとも一つのいわゆる自然犯として検察庁あるいは警察がみずから捜査を開始することになる犯罪だと思いますが、いわゆるそのおそれを防止する段階であります。各行政法規取り締まり法規直罰規定の適用につきましては、先ほど申し上げましたように、四十六年七月一日から四十七年十二月三十一日までの間に全国で三千四百十六人にわたりまして事件の送致を受けております。それは廃棄物処理及び清掃に関する法律水質汚濁防止法海洋汚染防止法とか大気汚染防止法とか、それから都道府県の公害防止条例の違反とか、いわゆる関係省庁の主管法律についての告発なりあるいは警察への連絡なりがなされて、相当多数の事件が検挙、処理されておるということでございますので、関係省庁のチームワークが十分にできて、公害の発生の防止ということにつとめておるということがいえるんじゃないかと思います。
  24. 沖本泰幸

    沖本委員 まあ疑いの目をもって伺っているからかもわからないのですが、はたしてそこまでいっているかどうかという点ですね。年間のいろいろな活動方針なり、具体的な内容としてそれだけのことを講じていらっしゃる点はいらっしゃると思いますけれども、実効という点についてどうしても私たちはぴんとこないわけなんです。  それで一つ考えられるのは、この間から人権擁護の立場からいろいろ大臣に御質問もいたしましたけれども、そういう点からいきますと、国民のいわゆる生命財産なり人権を守っていく、国民の人権を尊重していく、こういう立場からいくと、結局人体にとって危険状態がはっきりしてから取り締まっていく、処罰する。で、そういうことをするから、その前の段階でやられるから歯止めになるんだということになるけれども、わかるのははっきりしたその危険の段階が出てからということになってくる。こういうことになるわけです。  それで、その問題はほかの場合でもできるわけなんですね。まあ、刑事罰が加えられるということがいわれますけれども、それじゃその刑事罰を加えられるところの段階基準というものは、いわゆる複合公害であるとかそのほかの公害排出基準なり何なりの以下があってそういうものが生じた、こういうふうな段階とか、具体的に人体に影響が出てから問題視されてくる。しかし先ほどから申し上げているとおり、何の措置も講じられない不特定多数の国民にとってみれば、その段階ではどうしようもないという点が出てくるわけです。ですから、人権擁護をしていく立場でそういう点をとらえていくんではもうおそいんではないか。ですからむしろそのおそれというものをかましておいたほうがその効果をもっと発揮していく、それによって動いていくことのほうがより人権を守ることができる、こういうふうに私は考えるわけでございます。  裁判所からの資料でいろいろの内容を伺ってみますと、相当の数が裁判所に出ているわけですね。四十五年一月以降言い渡しのあったものの中でも、結果として水質汚濁なり何なりで相当件数が出てきております。この中から見ていきますと、これはみな裁判所へ訴訟を起こしてから言い渡されているわけですから、その訴訟を起こす前の段階検察庁なりが歯どめのために動くという時点なのですか、あるいはそういう訴えが起こってから動くのか。また、この前の御質問のときには連絡協議をやっておる、関連するところの諸団体からのいろいろな連絡を受けて検察庁のほうも公害罪法適用で動いていく、こういう内容お答えがあったと思うんです。そういうものとは一いま、大臣お答えなんかを伺っていると、法律があるから防いでいるんだ、防いでいるんだという点と現実にある問題との間に大きな開きがあって、それが歯どめに陰に陽になっているかどうか、その点の関連性がどうしても出てこないわけなんですがね。いま申し上げたような点についてどういうふうにお考えになりますですか。
  25. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 これはなるほど、ただいま先生の仰せのような御懸念があるかもしれませんが、検察が発動いたしますのは、告訴、告発のある場合はもちろんでございます。また、警察より送致があります場合はもちろんでございます。それがなくとも、新聞、ラジオ、ことに投書、そして事件取り調べ中に認知をいたしましたもの、これを検察官の認知事件と申しておりますが、そういう一切の動機を含めまして、検察官が認知をいたしました場合に発動する。したがって、危険が発生しておるということが明らかになりますれば、刑法適用は不可能でございますが、この公害罪法によってぴしゃり適用する。これはできるのでございます。こういうところに抑止力があるということを言うのでございます。関係各官庁も、危険が生じたという段階で直罰規定が適用されるんだ、おそれがある場合も直罰規定の適用でやれるのだ、おそれのある場合はすっかりのがれておるんだというようには、各関係官庁もみな考えていないようです。みな私が申しますように、おそれのある場合から始まって、結果が発生して人が死傷した場合、その間の事柄は全部直罰規定でやれるんだ、何といいますか、たいへん強力な取り調べのできる規定であるというふうには、関係官庁全部認識を持っておるものと思っております。
  26. 沖本泰幸

    沖本委員 大臣は、思っておるというお答えなんですが、私は思っていないだろうと思うのです。これは具体的にそこへ行って聞いたみたらすぐ答えは出てくるわけなんですけれども、そういうことで、以前に前任の辻刑事局長にお伺いしたときにも、協議をして協議の中なり、あるいは協議の中から進展していくいろんな内容の中から問題を取り上げてやっていく、こういうようなお答えがあったと思うんです。そうしますと、むしろいわゆる告示なり通知なりあるいは告発なり何なりがあって検察庁が動くというのか。先ほど大臣のお話ですと、新聞に出ておっても何に出ておっても、結局、公害発生あるいは公害罪が成立しそうだという内容のものについてはどんどんやっていくんだということになりますと、先ほど刑事局長のお話ですと、いま受理しているのは二件だけだ。数がふえるということを望むというわけではありませんけれども、効力を発生して、数が押えられていっているような段階になっているものか、あるいはつかめないままに二件しかないのかという点に、私は非常な関連性もあり、深い問題があるんじゃないか、こういうふうに考えるわけです。ですから、いままでは、警察なら警察が問題をとらえ、あるいは税務所なら税務所が脱税をとらえて、そういうものを通じて検察庁のほうへいろいろの手続をとっていくというふうなことが、いままでの検察庁のお仕事の中の大半なような気がするわけです。しかし、この法律からいくと、むしろ進んでどんどんそういうものを調査もしていかなけりゃならないし、やっていかなけりゃならない。そうすると、たとえば各都道府県なら都道府県で、どれだけの公害に関するいろいろな問題を受理したかという点をお集めになって、それをいろいろ判断基準をきめていって、該当するものをいろいろ検討していって、現在のところはこういう程度段階のものが出てきておるとか、これではこの法律のワクがはまっているとは思えないとか、これはワクがはめられているとか、そういうふうないろいろの御検討の内容がどこかに形として出てきていなければならないのではないか、こう考えるわけですけれども、大臣お答えは、先ほどは思うとこういうお答えであったわけです。その辺について刑事局長さん、何か具体的なものはお持ちなんでしょうかどうでしょうか。
  27. 安原美穂

    安原政府委員 先ほどいわゆる関係機関の協議会のことを申し上げまして、相当の効果をあげておると申し上げましたが、沖本先生御期待のとおりの一〇〇%効果をあげておるということを申し上げたわけではございませんで、今後とも、公害検察というものは検察の当面の重要課題の一つでございまして、検察としても大いに力を入れているところでございますが、さらに十二分の力を入れて協議会の活用をはかり、そして、そこから危険が生ずる前の段階処罰するのが直罰規定でございますから、そういうもののいわゆる告訴あるいは検挙というものの処理を励行していくということで、さらに一段と力を入れたいというふうに考えております。
  28. 沖本泰幸

    沖本委員 これはうわさ話でございますけれども、たとえば大臣、だんだん紙がなくなるのじゃないだろうか、というのは、製紙の過程で出す公害の発生を防ぐための設備の要求がきびしくなってきて、結局そのために生産力が十分発揮できない、コスト高になっていくということで、紙を買い占めている人もおるのではないか、おるらしい、それで大もうけをしている人もおるとか、いろいろな話が出てきておるわけです。そういう形で、その辺まで公害影響というものが放置できない、こういうことになってきておるわけですね。そういうふうな内容と、この法律の及ぼす抑止力の力の度合いですね、こういうものを比べていくと、私は、先ほど申し上げたように、古いということではありませんけれども、結局、わかりやすいことで言えば、先ほど言ったとおり、つけものの石の重さの役目を果たさなくなってきたというふうに私はとらえておるわけです。そこで、大臣のほうもひとつ前向きにこの問題をおとらえいただきまして、御研究いただいて、ただこの法律をつくるときに、おそれを入れる入れないで議論をした、私たちはその議論段階で、はずしておったから間違いじゃないか、入れなさいということを言ったが、そういう意味合いではなくて、どうぞ広い意味で御検討をいただいて、おそれという字をたとえば入れてみるほうが効果が、世論に対しあるいは現在の社会情勢に対して、公害をとらえていく上からいろいろな効力を発揮するから、法務省独自のいろいろな検討段階大臣のお考えで入れたほうがいいとか、さらにこの法律をもう少し形を変えたところに改正したほうが力を発揮するのではないか、こういうふうに、ほかのものが底上げになってきているというものをとらえながら、法律検討をしてみるお考えはございませんでしょうか。そういう点だけをお伺いしたいと思います。
  29. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 長い時間にわたりまして御熱意のある御質問でございます。これはよく御意を、お考えを体しましてひとつ検討することにいたします。
  30. 沖本泰幸

    沖本委員 では、質問を終わります。
  31. 中垣國男

    中垣委員長 それでは、青柳盛雄君。
  32. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私は、きょうは、公安調査庁の川井長官のほうに質問をいたしたいと思います。  昨年の、つまり昭和四十七年十一月四日の午前中に、私は公安調査庁の当時の長官であられた川口光太郎氏に面会を求めまして、公安調査庁の役所の応接間でお会いしたわけでありますが、その際に、プレスクラブという看板を出している事務所がありますが、そういう事務所に出入りしているところの公安調査庁の役人の活動について、それが日本共産党の正当な政治活動を妨害をしているという意味で抗議を行ないましたが、後任の現長官はその事実を知っておられるかどうか、知っておられるとすれば、それはどういうことであったのか、一応お答えいただきたいと思います。
  33. 川井英良

    ○川井政府委員 前長官からこの問題については引き継ぎを受けました。そして、関係部局に対して、この問題の経緯の調査報告を求めました。その結果によりますと、当庁の部局である関東調査局に所属する三人の公安調査官が、ただいま御指摘のプレスクラブに出入りをして調査活動に従事しておった、そういう事実はあった、こういうことが概要でございます。
  34. 青柳盛雄

    ○青柳委員 本日の質疑の主たる重点がどこにあるかを先に申し述べて、それから順次お尋ねしたいと思いますけれども、その際、私は前川口長官に対して、確かにいま言われたとおり、三名の方々が公安調査庁の調査官であるということを述べられましたが、もう一人星野という人物について、これはどうかということを質問いたしました。そのときに、それはまだ調査中であって、わからないというお話でございました。つまり、公安調査庁の調査官であるのかあるいは一般の、俗にいう民間人であるのか、いずれであるかはわからないというような趣旨の御答弁だったように思います。それで、私は、その調査をすみやかに進めてもらいたい、いずれまたそのことについてお尋ねをするからということを述べたわけであります。  昨年の十一月四日というのは、ちょうど衆議院の解散が目前に迫っているということが常識になっている時期でございまして、長官は、国会でこの問題を質疑されますかというお話でございましたから、もう解散直前だからおそらく法務委員会は開かれないだろう、だから解散後の衆議院の法務委員会お尋ねするようになるだろう、もっとも私がそれを担当するかどうかは選挙の結果いかんにもよるのであって、私自身がやるとかやらないとかいうのではなくて、共産党にとって重要な関係があるから、共産党として、そのときになってだれがやるかはきまらないけれども、お尋ねをすることは間違いないと思うから、厳重に調べておいてもらいたい、こういうことは申し上げておいたわけでありますが、その点の申し継ぎはございましたでしょうか。
  35. 川井英良

    ○川井政府委員 そのような趣旨の引き継ぎはありました。
  36. 青柳盛雄

    ○青柳委員 その結果、御調査は継続されて判明されたでしょうか。
  37. 川井英良

    ○川井政府委員 私に対する調査の結果の報告によりますと、ただいま御指摘の星野何がしにつきましては、当庁の職員にはそういう氏名の者はおりませんし、またそれに該当すると思われるような調査官も発見できない、こういうことでございます。
  38. 青柳盛雄

    ○青柳委員 いまのお話ですと、それは川口さんの責任においてそういう調査結果をあなたに申し送られたということであって、それがもし真実でないということになれば、これは川口前長官の責任になるのか、それとも現長官の責任になるのか、それもあらかじめお聞きしておきたいと思います。
  39. 川井英良

    ○川井政府委員 私の責任においてあらためて調査を指示して、その結果の報告を求めておりますので、私その報告を信用してここでお答えをいたしておりますので、本日の回答に関する限りは、それが間違っていることのないことは確信しておりますけれども、かりに御指摘のようにそれが間違っておったということになりますれば、責任は私にあると思います。
  40. 青柳盛雄

    ○青柳委員 それではこの問題の経緯についてしばらくお尋ねをいたしたいと言います。ここのP・Sクラブという事務所の存在を共産党として知るに至りましたのは、ある婦人共産党員が星野なる人物から連絡を受けまして、いろいろと共産党の情報などについて提供方を要請されたということから、そのP・Sクラブ、星野という人物が何者であるかを調べることになったわけでございます。それは昨年のあまりおそくない時期であったと思いますけれども、夏ころかもしれませんが、星野なる人物がたまたまその婦人党員に手渡しました名刺が私どもの手に入っております。  その名刺にはどういうような記載があるかと申しますと、肩書きにPSクラブ・話の教室、司会者長良会々員星野中男事務所と書いて、東京都文京区本郷三の一五、三洋ビル、電話(八一四)二六〇七番、こういうふうなものでございます。  そこで、一体このP・Sクラブなるものはどういう仕事をやるところかというので、この事務所の番地のところに行って確かめましたところが、それはどうもビルディングではなくて、三洋電機という株式会社の倉庫になっている。そこで、その近くに三洋ビルというようなものがあるかどうかを調査いたしましたところ、本郷一丁目の五番地十七号に三洋ビル別館という建物がございました。そこの入り口に表示されている案内板を見ますと、四階の四十六号というところにP・Sクラブという表示が出ております。まさにこれがそのP・Sクラブの所在地であることがわかりました。そこで、一体これはどういう仕事をやるところかをビルの管理人に尋ねてみますと、これは昭和四十二年の一月三十一日に契約になっておる。新聞広告及びサービスというのが事業目的である。それから契約書の賃貸人は、世田谷区成城三百九番地。その後、二丁目十八番五号というふうに変更になったようでありますが、岡崎武夫という人であるということがわかりました。それから電話番号は四八二の三四五〇であるということがわかりました。そこで、この岡崎武夫という人物はどういう商売をしている人かということで、その所番地を尋ねましたところが、そこにはある会社の役員の住まいがあるだけであって、岡崎武夫という表札を出しているような人物は一人も見当たらないということがわかりました。また電話番号の四八二の三四五〇に照会をいたしましたところ、それは岡崎という人とは何の関係もない歯科医の自宅であった。こういうことがわかったわけでございます。そうしますと管理人は非常に驚いているわけでございまして、そういう架空な人物でこの契約をしたということになれば、はたしてこれからも家賃がきちんきちんともらえるものかどうかもわからないし、契約解除をして敷金を返してあげるにしても、にせものが来たのではちょっと困る。岡崎武夫という人の印鑑証明でも持ってきてもらわねばということを言っておったそうでありますが、いずれにしても怪しげな存在であることだけは明白でございます。  そこで、ここに出入りする人物を尋ねているうちに、たまたま千葉県の千葉市あやめ台団地というところに住んでおられる関東公安調査局の調査官樋口憲一郎という人、これは正真正銘の関東公安調査官が、出入りをしているということがわかったわけでございます。先ほど名前の出た星野中男という人物も出入りしているかどうかというところまでは、その段階では確認はしていなかったわけでありますけれども、いずれにしても樋口という方がいることは明白でございました。  そこで、これは一ぺん訪問をして樋口氏に会うなりそこにいる人に会って、共産党の情報を収集するためのアジトに使っているのではないかどうか、それを確認しようといたしまして、昨年の十月十一日に共産党の東京都委員会の和田利弘常任委員ほか六名の者がこの部屋にノックして入ったわけです。そうしますとそこに二人の人物がおりました。その二人の人物は、その際写真をとりましたのでここに持ってきておりますけれども、一名は玉井という名前を名のっておられる方であります。こういう写真の人物です。この人は公安調査庁の役人ではないのかという質問に対して、とんでもない、自分はちょっと頼まれて毎週水曜日に一回だけ電話番に来ているんだということで、公安調査庁とは何の関係もないと言って否定されたのでありますけれども、たまたまその部屋に黒板がありまして、黒板に「八月度出張予定」というのが横書きにしてあって、縦書きに上のほうから下に向かって「中、福山、玉井、樋口、三門、原」こう六人の名前がある。要するに八月度の出張予定をその黒板で書くようになっておって、それは消されたけれども、名前の部分などは残っていたわけですね。そこで玉井という人が三番目にあるわけですから、どうも水曜日に頼まれて電話番に来るだけの人が出張予定というところに麗々しく名前が載っているのはおかしいじゃないかということになって、この人は何とも弁明のしようがなくなった。それからもう一人の人物は、やはり写真をとってあります。この方でありますけれども、これは最初は名前も何も言わずに、時事通信の記者であると言っていたわけでありますけれども、その後ついに名前を名のらざるを得なくなって、三門という名前であるということも認めたわけであります。いずれにしても、責任者はだれだと言って尋ねましたが、自分たちは責任者じゃないというようなことで、もちろん公安調査庁の役人であることを否認されますし、責任者はだれかわからないと言う。ここにがんばっているのにわからないというのはおかしいではないかというようなことで、数日後にはだれかに会えるから責任者に連絡をとるようにする、連絡がとれたら知らせるというので、こちらの電話番号なども教えて帰ってきた、こういうわけでございます。  いずれにいたしましても、この程度のことで私どもは公安調査庁と何のゆかりもないというふうに見るわけにいかない具体的な根拠がございます。それは、先ほど申しました婦人党員が星野という人物と連絡をとるようになったいきさつというものからして、並々ならぬ事態があるわけでございますので、そこでこれは公安調査庁のいわゆるスパイグループのアジトであるということを断定するに至りまして、先ほど申しましたように川口長官に抗議に行くわけでございますが、その婦人党員というのは、昭和二十七年にある事件で拘置所に入られたことがございます。そのときにたまたまいままで面識のない人ではあるけれども、館三郎という名前を使っている人物から手紙が参りまして、たいへんに慰問、激励するような手紙であって、アドレスも書いてあるものですから文通が始まる。そしてその後、保釈になった後のことでございますけれども、お互いにある場所で会うというようなことになって、男女の仲でございますのでつい深い仲になったようでございます。  しかしこの館三郎なる人物は、おれは警察に追われているから、ちょっと住所は転々とするのであって、はっきり教えるわけにいかない、しかし必ず適当な方法で連絡してお会いしましょうというようなことで、三十五年ころまでそういう関係が続いたようでございます。  ところが、三十五年からぷっつり連絡が切れてしまったのですが、四十五年になっていろいろの方法によって、館三郎という人が茨城県の茨城郡友部町で町会議員をやっている荻津昭という人である、館三郎はその変名であるということが判明をしたわけです。  ところが、この荻津なる人物は、昭和三十一年に共産党の公認で友部町の町会議員に当選をした。共産党に入ったのは昭和二十二年の五月、地元の友部ではなくて水戸市で共産党に入った。その後郷里へ帰って、共産党の町会議員に当選をし、共産党の活動家になっておったのでありますが、あにはからんや、この人物は昭和二十二年入党する少し前ごろには、婦女暴行、山林窃盗の疑いで笠間警察署に取り調べを受けたという事実があり、そのときの署長は関守之介という人で、後に茨城県公安調査局へ転勤をいたしまして、地元の有力党員に対し公然とスパイ工作をしていたという方であります。それからその人の二男の関昭三郎という人は、現在、茨城公安調査局の調査官という公安一家のやり手ということになっている。  このようなひもがつけられて荻津は茨城県警の警備第一課第一係長の井坂武という方に情報を売っておったことが四十年に判明いたしまして、共産党から追放された。  そうとも知らずにこの婦人党員はこの人を信用してつき合いを続けようとしたわけでありますが、たまたまその四十五年、つき合いを始めるに至ったころに、星野なる人物があらわれてきたわけであります。これはもちろん荻津との関連においてあらわれてきた。東京駅などで喫茶店へ入ったりしていろいろと情報提供を求めるわけでありますが、その情報提供を今度は大っぴらに求めるのですが、公安調査庁の役人だということはさすがすぐは言わない。先ほど言いましたような名刺を出して、何かこういう仕事をやっているような偽装をこらしているわけです。その際に、婦人党員を自分の協力者にする一つの手段とも考えたのか、それとも共産党の内部を撹乱するということももちろん目的としたのかもしれませんが、現在の代々木共産党はいわゆる宮本修正主義であって、革命などをできるようなものじゃない。革命というのは暴力革命でなければならない。しかるにもかかわらず、宮本修主義は議会制民主主義のもとでも政権が樹立できるんだというようなことをいっておって、自分は意見が違うものだから除名をされたんだ。こういうふうにしてまことしやかに彼女をあざむき、情報提供を要求し続けてきたという事実が判明をいたしたわけであります。これはおもに彼女の共産党に対する供述によってわかったわけでございます。  以上申し述べたような経過から見まして、私どもはこのP・Sクラブなるものは公安調査庁と全く無関係のものであるとは考えられませんので、先ほど申し述べたように、川口長官にお会いいたしまして、そのものずばりお尋ねをいたしましたら、玉井あるいは三門、これはもう公安調査庁の役人であること間違いない。それから本名のあらわれている樋口憲一郎氏も当然そうだということでございました。  そこでまずお尋ねいたしますが、このP・Sクラブというのに出入りをいたしましたことの明白な玉井という人はどういう本名でどういう仕事をやっている人か、また三門という人はこれが本名なのか、本名が別にあるのならばその本名は何で、そしてどういう仕事をしておられるかお尋ねをいたしたい。
  41. 川井英良

    ○川井政府委員 玉井も三門もいずれも本名でございます。そして職務の担当は四十二年ないし四十三年以降引き続き過激派の調査部門を担当しているものでございます。
  42. 青柳盛雄

    ○青柳委員 そこで、先ほど長々と申しました中に、黒板に中とかあるいは福山とか原とかいう氏名が記載されておりますが、これは公安調査庁の調査官の中に思い当たる人がありますか。
  43. 川井英良

    ○川井政府委員 これはただいまもお話がございましたし、また前にたしか「赤旗」にも記載があったと思いますので、いまの玉井、三門、樋口三人について、いろいろ調査の結果によりますと、ただいま御指摘の中、福山、原の三人については、私のほうの調査官に該当者はおりません。
  44. 青柳盛雄

    ○青柳委員 それではこのP・Sクラブに、いまの学生担当の玉井あるいは三門という本名の調査官が出かけていっていたというのにはどういう理由があるのでしょうか。
  45. 川井英良

    ○川井政府委員 私どもの調査によりますと、大体調査官は二人ないし三人一組で調査を担当するように指導いたしておりますが、その玉井、樋口、三門の三人が一緒になりまして、都内における学生運動の調査に当たっておったわけでございますが、たまたまそのうちの一人の知人の紹介で、昨年の六月ごろと聞いておりますが、P・Sクラブというクラブがあって、そこがルポライターや民間あるいは官庁に所属する調査官が集まりまして、お互いに情報の交換をやったり、あるいは協力者から話を聞いたり、あるいはそこを利用して執筆をしたり、あるいは関係者にそこで連絡をとるというようなかっこうの場所があるということを聞きまして、そこに連絡をとって、三人が昨年六月ごろからそこでもって、そこに集まるその他の機関の人たち連絡をとったり情報の交換をしたりして、過激派の調査に従事しておったのだ、こういうことでございます。
  46. 青柳盛雄

    ○青柳委員 そこに集まる人々というのは、いまいわれたこの三名の報告によってどういうような人たちであったのか。その中に先ほどから一番質問の重点に置いている星野という人物がやってきていたのかどうか、こういう点は調べられたのですか。
  47. 川井英良

    ○川井政府委員 この三名の説明によりますと、いずれも昨年の六月ごろからの利用ということになっておりまして、それ以後三人がタッチした限度におきましては、星野というふうな名前の人物にそこで会ったというようなことはないと言っております。
  48. 青柳盛雄

    ○青柳委員 先ほどからくどいようですが、中とか福山とか原とかいう人は黒板にわざわざ出張予定になっている。玉井、樋口、三門、この人も出張予定になっているわけですね。いわゆる常勤者みたいな形です。ですから中、福山、原と肩を並べて黒板に名前を連ねているわけでございますから、中、福山、原というのは公安調査庁とは関係ないといわれましても、ここの常連ということになりましょうから、どういう人物かくらいなことはわかりそうなものだと思いますが、いかがでしょうか。
  49. 川井英良

    ○川井政府委員 その三名の説明によりますと、六人ではなくて、九人くらいが常時出入りをしでおった、こういうことでありまして、その他の人々は先ほど説明しましたように、ただいま御承知のように私ども官庁の調査官ばかりではありませんで、民間にも同じような調査に従事している者が非常にたくさん出てまいりましたし、またいろいろな出版物にもこの種のものが非常に盛んになってまいりまして、そういうような人たちも同じような調査といいますか、事に従事しているわけでございまして、そういうような人たちがかねて集まってつくったそのクラブだということでありまして、この三人以外の者が中、福山、原と称しておりましても、これが本名なのかあるいはペンネームなのか、その辺のところはこういう仕事に従事しておる者の間柄として必ずしも確認していないようでありまして、民間の人もおったと申し、いろいろの人がそこにおったということでありまして、それ以上、中がどういう人であり、福山がどこの会社に属するこういう人であり、また原がどういうふうな官庁に属する人であるかということは知らないと申しております。
  50. 青柳盛雄

    ○青柳委員 そうすると、そこへ集まる面々はお互いに自分の身元を必ずしも明かさない。むしろ仕事の性質上そういうことは秘密にするというような関係であったようにもとれるわけでありますが、玉井、樋口、三門というのは本名でそのままそこに名前を連ねている。しかも客観的にはいずれも公安調査庁の調査官である。しかしその場所に集まる面々には公安調査庁の調査官であるということは秘匿しておったのでしょうか、どうでしょうか。
  51. 川井英良

    ○川井政府委員 名前は本名を名乗っておるようでありますけれども、自分の所属についてはだれにもしゃべっていない、こういうことであります。
  52. 青柳盛雄

    ○青柳委員 情報収集に役立つということでそこへ出入りすることを認めてもらったみたいな先ほどの御回答でございましたが、これを経営している者がどういう人物であるかということについては、この調査たち調査もしないで、また上司に対してもそのことについて報告もしないで、そこに出入りしておったということになるのでしょうか。
  53. 川井英良

    ○川井政府委員 これは偶然行きずりにそういうところに軽卒にあれしたものではありませんで、先ほどもちょっと触れたと思いますが、三人のうちの一人の調査官が、知り合いの者がありまして、その知り合いの者がここにかつて出入りしたことがあって、こういうものがあって最近の学生運動の情報収集には非常にかっこうの場所であるというふうなことを教えてもらいまして、そして、その三人が一組になっておりますので、いろいろな面からこのクラブの性格なりあるいは出入りの人なりというふうなものについて、ある程度調査をしました結果、間違いないということになりまして、三人が利用さしてもらう、分担金を出すことによってここを利用さしていただくというようないきさつになってここへ入ったんだ、こういうふうになっております。
  54. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私の質問に対する答えが少し抜けているようでありますが、そのクラブの責任者といいますか、先ほども申しましたように偽名を使って、そしてビルの管理人を欺いて借り受ける。そしてふれ込みは新聞広告及びサービスなどということなんであるけれども、大体そういう情報収集が専門である。こういうような組織というものの責任者が、いかがわしいものであるという場合でも、役人がそれを利用してよろしいということはおそらくないと思うのですね。たとえばそれが麻薬グループであるとかあるいはもっとよからぬことをたくらんでいるアジトである。そういうところへ公安調査庁のお役人が、便利だからといってのこのこ行くわけにはまいるまいと思うのですね、これは。だからやはりそういうところを利用するからには、一役経営者というか責任者はどういう人物であるか、分担金を払うのでもあるし、ほんとうにまごまごすると不法行為の共犯者になっていく危険性があるわけですから、そういう点確かめたかどうかをお尋ねしているわけです。
  55. 川井英良

    ○川井政府委員 責任者と認められるような人、あるいはまあ幹事というような人でしょうか、それから調査官の一人がそこを紹介してもらったその調査官の友人というようなものは、これはもとよりわかっているわけでございますが、たいへん申し上げにくいことは、調査活動についての広い意味での二人とも協力者でございますので、いまここでその幹事に当たる人はだれであり、紹介した友人はだれであるということを具体的に申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。こういうことでございます。
  56. 青柳盛雄

    ○青柳委員 結局は、協力的であって適法的な活動に協力してもらうということで、間違いのない人物だからそれ以上は信用してもらう以外にない、名前を言うのはあとの情報収集その他協力を得るために差し控える、こういうことで挑げようとしておられるように、ことばが悪いかもしれませんけれども、なるのであります。どうも最初から申し上げましたこの星野なる人物が主役でございますが、私どもの党に対して破壊的な活動、つまり破壊活動防止法の二十七条の乱用であり、したがって同法の四十五条の職権濫用罪を犯している。したがって、これは告訴、告発した場合には刑訴法二百六十二条の準起訴手続にまで発展する、そういう内容のものでございます。したがって、これが一般の民間人だということになれば、それはまた条文は違ってまいりますけれども、それは公安調査庁と関係ないと言って逃げればそれで済むことかもしれませんけれども、先ほど冒頭に、もし星野が公安調査庁の役人であるということがわかった場合には責任をとるとおっしゃるし、これが先ほどの三名の方々と密接な連携をとっていた場合にどういう責任をとられることになりますか。よしんばこれは民間人だと仮定いたしましても、それについては何ら関知しないということになりますか。その点いかがですか。
  57. 川井英良

    ○川井政府委員 私も三人の調査官の説明を決してうのみにしたわけではございませんで、その説明が間違いないものかどうかということにつきまして、いろいろな状況というものについても調査を命じたわけでありますが、これは赤旗の記載にも明確に書いてありますように、昨年秋に共産党の人たちがそこへ訪問されたときにも、そこにあったいろいろの書物というものは、いわゆる左翼文献ではなくして、過激派のテキストといわれるようなものとか、それに参考となるような文献だけがそこに置かれておったというような事実があるようでございますし、それから、その三人は四十二年以降全部一貫して左翼、いわゆる日本共産党ではございませんで、学生過激派の調査に従事しておる担当局の者でございまして、これも少しも間違いありませんし、昨年の六月ごろからのそこの利用だということであって、九人くらいの大ぜいの者がいろいろ出入りしておったのだということも間違いございませんし、それから先ほど御指摘もございましたが、管理人のお話を聞きましても、何か出版とか新聞とか広告とかいうようなことをあれするのだということで、たくさんのいわゆるルポライターなんかが出入りしておったというような事情もございますし、それから調査官が、これも先ほど触れたことでございますが、三人くらいが一組になって行動するということが原則でございまして、五人も八人も一緒になって同じところを借り受けて、そこにたむろして何年もおるというようなことは、そのような拙劣な調査の方法というものは、これは常識的にも考えられませんので、私は三人の説明するところが間違いない、こういうふうに今日信じているわけでございます。  そこで問題の星野でございますが、星野というのは、私のほうの関係者には該当者はない、こういうことでありますし、それから、この三人が利用したのは昨年の六月ごろからであるということでありまして、そのころから以後に、星野という人物に三人はここでもってあるいはその他のところでも見たりあるいは連絡をとったことはない、こういうふうに供述いたしておりますので、その星野との関係において三人が関係あった場合にどういう責任をとるかということにつきましては、いまここでお答えができないわけでございます。
  58. 青柳盛雄

    ○青柳委員 私どものほうでも調査は続けておりますので、いずれまたお尋ねを続行するようになろうかと思いますが、このP・Sクラブなるものは依然として公安調査庁の先ほどの三名の者は利用しているんでしょうか。
  59. 川井英良

    ○川井政府委員 昨年の十一月以降はここを利用しておりません。
  60. 青柳盛雄

    ○青柳委員 本日は終わります。
  61. 中垣國男

    中垣委員長 次回は、来たる六日金曜日午前十時十五分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時七分散会