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1973-07-11 第71回国会 衆議院 文教委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年七月十一日(水曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 内海 英男君 理事 塩崎  潤君    理事 西岡 武夫君 理事 松永  光君    理事 森  喜朗君 理事 木島喜兵衞君    理事 長谷川正三君 理事 山原健二郎君       有田 喜一君    上田 茂行君       坂田 道太君    床次 徳二君       中尾  宏君    野田  毅君       林  大幹君    深谷 隆司君       藤波 孝生君    三塚  博君       山崎  拓君    勝澤 芳雄君       小林 信一君    嶋崎  譲君       馬場  昇君    山口 鶴男君       栗田  翠君    有島 重武君       高橋  繁君    安里積千代君  出席国務大臣         文 部 大 臣 奥野 誠亮君  出席政府委員         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         総理府人事局長 皆川 迪夫君         文部政務次官  河野 洋平君         文部大臣官房長 井内慶次郎君         文部大臣官房審         議官      奥田 真丈君         文部省初等中等         教育局長    岩間英太郎君         自治省行政局公         務員部長    植弘 親民君  委員外出席者         大蔵省主計局主         計官      廣江 運弘君         文教委員会調査         室長      石田 幸男君     ――――――――――――― 委員の異動 七月十一日  辞任         補欠選任   高見 三郎君     野田  毅君   山口 鶴男君     馬場  昇君 同日  辞任         補欠選任   野田  毅君     高見 三郎君   馬場  昇君     山口 鶴男君     ――――――――――――― 七月九日  公立高等学校事務長の職制及び職務の法制化に  関する請願澁谷直藏紹介)(第八二二五  号)  同(中山正暉紹介)(第八三三七号)  公立学校女子事務職員産休補助職員確保に関  する請願澁谷直藏紹介)(第八二二六号)  同(中山正暉紹介)(第八三三八号)  公立高等学校事務職員定数増加に関する請願  (澁谷直截君紹介)(第八二二七号)  同(中山正暉紹介)(第八三三九号)  国立学校設置法等の一部を改正する法律案撤回  に関する請願山原健二郎紹介)(第八二七  四号)  学校教育水準維持向上のための義務教育諸  学校教育職員人材確保に関する特別措置法  案撤回に関する請願紺野与次郎紹介)(第  八二七五号)  障害児教育推進に関する請願高橋繁紹介)  (第八二七六号)  同(長谷川正三紹介)(第八三四〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  学校教育水準維持向上のための義務教育諸  学校教育職員人材確保に関する特別措置法  案(内閣提出第六六号)      ――――◇―――――
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  学校教育水準維持向上のための義務教育学校教育職員人材確保に関する特別措置法案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。塩崎潤君。
  3. 塩崎潤

    塩崎委員 ただいま議題となりましたいわゆる人材確保法案につきまして、少し質問を申し上げたいと思うのでございます。  前回わが党の森委員から、非常に格調の高い、高度の政治的な観点からの質問がありまして、野党委員方々を含めまして、私どもはこの法案緊要性をあらためて認識したわけでございます。私はきょうはこのような政治的な高度な観点がどうして実現されるか、つまりどんな法的な形態で、そしてまた国家組織の中でどんなような形態で、さらにまた予算の上においてはどのような方法で行なわれるかという、おおむね法律的な観点から、この法案について御質問を申し上げたいと思うわけでございます。  と申しますのは、この法案については御承知のようにいろいろな評価がある、そしてまた間違った考え方が流布されている点も見受けられるわけでございます。私はこの法案について三つの考え方の型があるように思われるわけでございます。  一つは、この法案も、そしてまたこの法案に基づいて予定されておりますところの昭和四十八年度におきますところの百二十六億円の予算も、これは要らないのだ、こういった型でございます。私はこのような考え方は、六十一万人の義務教育職員先生方が非常に期待しておりますところの待遇改善でございますので、きわめて少ない考え方だろうと思うのでございます。おそらくつむじ曲がりか、かすみを食う仙人が申しておるのだと思うのでありますが、それが一つの型でございます。  もう一つの第二の型は、待遇改善は必要なんだ、しかしこの法律は必要はないんだろう、こういう考え方でございます。私はこのような考え方は少し楽観主義的な考え方で、これも間違った考え方ではないか、こういうふうに思うわけでございます。  私は、第三の考え方をどうしてもとりたいと思うのでございます。それは、この人材確保法案、そしてまた人事院勧告、そして昭和四十八年度の百三十六億円の予算、これが三位一体となって義務教育職員待遇改善、さらにまた、これに伴って高等学校先生方待遇まで改善される、こういうふうな考え方をとりたいわけでございます。  この考え方はおそらく最も健全な考え方だと思うわけでございますが、さて法律的にこれがどのように規定されておるか、そしてまたどう規定されるべきか、この法案はたいへんむずかしい法案だけに、ひとつ立法者でございますところの政府人事院、あるいは大蔵省意見を伺いたいわけでございます。  そこで、まず奥野文部大臣にお伺いしたいわけでございます。私は義務教育職員待遇改善こそ、そしてまた義務教育先生方職場を、男子にとって最も魅力ある職場とするには、もう待遇改善しかないのだ、わが自民党におきましては、御承知のように裁判官並み待遇改善をしようという意見を持ち出したことは御承知のとおりでございます。このような考え方のもとにおきまして、政府一つの案を考えられて、この法案を出していただいたわけでございますが、どうも私は  この法案を見て驚いたのでございます。もう少し変わった形で出ることを私は考えておったんでございます。つまり奥野大臣たいへん竹を割ったような、はっきりものを言われる方でございますし、とにかく暗夜にぱっと光をつけられる方でございますから、私はこのような法案ではなくて、つまり裁判官や検察官の俸給特別法律、あるいは防衛庁の職員特別法律みたいなものを出す、つまり個々の、個々と申しますか、俸給の金額についてまで一つ法律を出して特別職的な考え方待遇改善をはかられる、こんなふうに考えておったわけでございます。これは一番簡単で、議論が今日のような紛糾を招かない、私はこんなふうに思っておりましたら、どうも暗やみにぼっとちょうちんがついたくらいで、このあたりどういうふうに見たらいいのか、なかなかむずかしい法案になっておりますので、ひとつ奥野大臣真意をぜひとも伺ってみたいと思うわけでございます。  私は、このような法案になりまして、優遇措置についても中身規定されない、人事院勧告にこの中身はゆだねられておるわけでございますが、おそらくこれは人事院勧告という国家組織現行法上のたてまえを尊重した結果だと思うのですが、なぜこのようなぼうばくたる、そしてまた人事院にゆだねたような法案になったかどうか、ひとつこのような点について、真意を伺わせていただきたいと思うわけでございます。
  4. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 議論過程におきまして、塩崎委員の御指摘になりますように、国会がみずから責任をもって、教育俸給表までつくっていったらいいじゃないかということも、あったことも承知しているわけでございます。政府といたしましては、あくまでも公務員給与決定の現在の仕組み、これを尊重していきたい、人事院の自主的な勧告権限、これをあくまでも尊重していきたい。その中で私たちが考えている教育界人材を導入する目的を果たす。そのためにはやはりいろいろな条件があるだろうけれども、処遇の抜本的な改善、これも重要な点だ、それを果たしていきたい、そういうことで基本的な方針、それを書かせていただく。その基本的な方針の中で人事院が自主的な勧告権限を行使していただく。そういうことによって私たちが考えている目的を達成していきたい、こう考えたわけでございます。  そのために、たいへんこまかい気も使っているわけでございまして、あくまでも人事院の自主的な勧告権限を尊重したい。そのために、国の予算の上では、一月から三月の三月分の平均で一〇%引き上げることのできる予算を組ましていただいているわけでございます。それもわざと伏せながら、おそくとも一月からは実施できるように勧告してくださいよというような法律を書かしていただいたわけでございます。こういう点につきましても、人事院の自主的な勧告権限をそこなわないようにいろいろ注意をしながら、しかしまた予算の上で計上もしていることでございますので、それはやはり何らかの形で考えておいてもらえないだろうかという気持ちも合わせまして、苦労したところでございます。  くどいようでございますけれども、人事院の自主的な勧告権限、これを最高度に尊重しながら、しかも政策的なねらいをはっきり実現させていく道をくふうしたいということが今度の法律の経過でございます。
  5. 塩崎潤

    塩崎委員 私はそのようなお考えだろうと思うわけでございますが、それだけに、この法律解釈がたいへんむずかしいことだと思うわけでございます。  そこで、世上いわれておりますところの国家公務員給与も、組合と役所、官庁との間の交渉によってきめられるべきだという意見があります。しかし、いま国公法の六十三条の一項では、職員給与法律によってきめるのだ、こういうふうにいわれておりますが、大臣はもちろんその考え方をとっておられると思うのです。先般もちょっとそのようなことを森委員に御答弁されておったことを気がついたわけでございますが、法律によるという意味は、この人材確保法案も含めての法律によるというふうに解釈されるかどうか。そのあたりも含めて、国家公務員給与あり方、ひとつ御答弁を願いたいのでございます。
  6. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 公務員給与につきましても、いわゆる労使の交渉によってきめられるべきだという議論をなされる方々もございます。しかし、いま御指摘になりましたように、法律に基づくのだ、こう考えているわけでございます。公務員は全体の奉仕者でございます。その給料は国民全体から拠出された税金でまかなわれるわけでございます。国民全体が代表者議会に送っておるわけでございますので、議会給与を定めていくものだ。ただ、それでは公務員の利益が十分守られないというおそれがあってはいけませんので、人事院なりあるいは人事委員会公平委員会というような仕組みを設けて、そこで改善勧告をしてもらう、こうしているわけでございますので、いまの仕組みが最も妥当なものだ、かように考えているわけでございます。人事院の自主的な勧告権限も、これも法律授権に基づくものでございますので、今回さらに人事院の自主的な勧告あたりましても教育界人材を導入するという基本的な施策を貫いてもらう、それにはやはりこういう法律が必要だ、こう判断しているわけでございます。
  7. 塩崎潤

    塩崎委員 国家公務員法に基づきますところの人事院勧告のカバーする範囲、これについてはいろいろ議論ができるかと思うのでございます。すでに二月二十七日の内閣委員会で、奥野大臣、さらにまた人事院総裁は、大出委員とこの問題について論議され、それから四月二日の参議院の予算委員会安永委員との間にこれらの問題について御議論があったことを私も勉強したわけでございますが、そこで、私はこの人材確保法案が出ました趣旨は、確かに文教政策方向とマッチした教員給与改善ということは、大きな政策的な高度の次元を持ったものである。いわば先般の大臣の御答弁にもありましたが、いわゆる普通の年に一回行なわれるところの二十八条の第二項の勧告とは少し様子の変わった勧告を期待されるのだろうと思うのでございますが、私は国会において文教政策方向とマッチした待遇改善、これは大きな政策であり、国会で論議されるべきであり、そのためにこの法案が出されたと思うのでございますが、そういうふうに解していいのでしょうか、どうでしょうか。
  8. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 人事院は、従来からも給与改善勧告してきていただいておりますし、またその改善勧告は、情勢変化に応じてなされてきていると考えるわけでございます。今回は、教員給与につきまして、そういう情勢変化ではなしに政策的な改善を加えたい、こういうことでございますので、こういう政策的な意図を持ったことが、いま指摘されました条文からは、私は授権されているというふうには読めないわけでございます。やはり法律根拠を設けまして、そして人事院勧告してくださいといいません限りにおきましては、なかなかできにくいことではないか。また、するとすれば、従来の人事院勧告は間違っておったということになるかもしれません。また、そこまでの権限人事院に与えたということになりますと、これまた国会としてそれでいいものだろうか、国権の最高機関であります国会が、そういうことでいいものだろうかという疑問も私はわいてくるのではないだろうか、かように考えるわけでございます。単なる情勢変化に応ずる人事院勧告以上のものを、政策的にひとつぜひ人事院にお願いを申し上げたい、これが今回の法律趣旨だ、かように考えているものでございます。
  9. 塩崎潤

    塩崎委員 私も法律全体の構成、つまり国家公務員法、それから今度の人材確保法案、さらにまた予算等を見ましたら、大臣のおっしゃったとおりに解釈すべきだ、考えるべきだ、こういうふうに思うわけでございます。つまり、この法案によって、人事院にひとつ政策的な給与改善についての勧告を求める根拠を与えた、こういうふうに考えたいわけでございます。  そこで、だんだんとひとつ中身に入らしていただいて、この法律は非常に法文の少ない、そのわりになかなか解釈のむずかしい規定になっておるのでございますが、その中身を、若干触れながら、いまのような法律的な問題、予算との関係人事院勧告との関係を考えさしていただきたいわけでございますが、第三条――もう一条、二条は目的、定義でございますので、これについては論争がそうあるとも思いません。第三条でございます。第三条も非常に簡潔な文章でございますが、たいへん含蓄の深い、解釈についていろいろと意見が出るところでございます。  まず、第三条の精神ですね。いろいろと問題がございますが、まず第一に、法律的に一つはっきりしていただきたいのは、先般の森委員の御質問に対してもはっきり答えられましたが、法律的にそうなるのだというふうに私は言っていただきたいのでございます。この法律を見ると、優遇措置が講ぜらるべきは義務教育先生方だけである、その給与だけであるというのです。全くそう書いてありますですね。これが天下に宣明されて、国会を含めての全機関が縛られるのだと思うのですが、高等学校先生方給与、二十一万の高等学校先生方も、この義務教育職員待遇給与あり方についてたいへん心配されておりますが、この法律からは直ちには高等学校先生給与改善されないように見えるのですが、それはどういうふうな関係になるか、ひとつ法律的にお答え願いたいと思うのです。
  10. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 率直に申し上げまして、いまの点、各省間の折衝をする過程におきまして苦心をしたところでございます。まず表題をちょっと見ていただきますと、「学校教育水準維持向上のため」と書きまして、「義務教育学校」とは書いておりません。それから第一条を見ていただきますと、「この法律は、学校教育が次代をになう」云々と書きまして、義務教育ということは書いておりませんし、同時にまた、一番最後のところを見ていただきますと、「もって学校教育水準維持向上に資することを目的とする。」これも「義務教育」と書いておりません。これはやはり高等学校等も含めました学校教育法学校を意図してこう書かせていただいたわけでございます。  公務員の中で特別に優遇措置を講ずるのだということになりますと、どこかではっきりした区分をしなければならない。学校先生といっても、各省責任を負っているいろいろな試験所とか研究所とか、みんな関連を持ってくるじゃないか、それを文部省関係だけ優遇されるということはがまんがならない、こういう話になってくるわけでございます。そういうこともございまして、やはり特段に区別できるのは、法律で強制されている、義務づけられている義務教育だ、同時にまた義務教育自体が、将来にわたる人格の基礎が形成される非常に大切なときだ、こう考えると、実質的にも形式的にも、そこで一応他の公務員との間で区分はできるじゃないか、そういうところから第三条のように、「義務教育学校教育職員給与については、一般公務員給与水準に比較して必要な優遇措置が講じられなければならない。」こうさせていただいたわけでございます。しかし、義務教育学校先生方初任給高等学校先生方初任給よりも上に置いて、そのままでいいというわけにはいかないと私は思います。当然に、高等学校先生初任給も上げていかなければならないというようなこともございまして、これをてこにして、学校教育法上の先生方給与全体を引き上げていきたい、また引き上げていくことができる、そういうことでございまして、率直に申し上げますと、学校教育法上の教員全体の給与を上げていきたい、しかし、政策として、各省の同意を得てそれを進めていくということになりますと、非常に困難でございます。いまのようなところから義務教育にしぼってこれを明記させていただいて、そのことを通じて、学校教育全体に押し及ぼしていくのだという性格を法律の上に出させていただいた、また、そういう問題につきましては、それぞれ当局とも話し合いを済ませているところでございまして、この点につきましては、たびたび申し上げておりますので、差し控えさせていただきます。
  11. 塩崎潤

    塩崎委員 そうすると、高等学校先生方給与改善というものは、法律的には義務教育職員が上がれば改善されるということを期待しておるということでしょうか。そうすると、おそらくその待遇改善は、この法律に基づく人事院勧告じゃなくて、国家公務員法に基づくところの人事院勧告、これに基づいて行なわれる、こういうふうに期待されているのでしょうか、どうでしょうか。法律的な問題としてお聞きしておる。
  12. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、この法律に基づきまして、義務教育教員給与改善勧告される、それとの均衡において、当然高等学校等についても、人事院としては、勧告をせざるを得ない立場にあられるのじゃないだろうか。したがいまして、この法律に基づきまして、私たちとしては、全体についての勧告をいただけるんじゃないかと思っておるわけでございます。私はそういう考え方をしているわけでございます。人事院当局はどう考えておられますか、そこまでの打ち合わせはいたしておりませんけれども、また、していただけるという期待を、人事院当局との話し合い過程において持たせていただいております。
  13. 塩崎潤

    塩崎委員 法律的にはなかなかむずかしい問題だと私は思うのですけれども、それはしかし、いずれ人事院総裁に、四条に移って、お聞きすることにいたします。  そこで、三条はたいへんなむずかしい規定だといわれております。人事院からもこれについては十分な理解ができないというような表現がありますが、その中で、「一般公務員給与水準に比較して必要な優遇措置」、こういうことばが使われておりますが、この意味するところは何か、はっきりしないと、人事院総裁は、この必要な優遇措置勧告を出さなければならぬわけでございます。これは、非常にむずかしい解釈を招くことになりますと、人事院総裁はどんな反応を示すか、これはたいへんな問題になろうかと思うのでございまして、大臣の考えておりますところの、「一般公務員給与水準に比較して必要な優遇措置」という中身はどんなことを考えておられるか、私はこれと予算との関係も問題になると思うのです。百三十六億円、いまの給与水準の一〇%アップということが計上されておると思うのですが、私は、法律の上から見たら、この予算とは何も関係のない、あるいは将来三〇%までいくんだ、五〇%までいくんだと言われても、これからは直ちに出てこないと思うのですが、この哲学的なぼうばくたる規定意味するところを、ひとつ大臣、はっきりしていただきたい。
  14. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 「一般公務員給与水準に比較して」と、こう申しておりますのは、一般職職員給与に関する法律がございます。それに示されている一般職員を頭に置いて書かせていただいているわけでございます。今回の国の予算の上では、従来の人事院給与改善勧告に加えて、平均一〇%のものを上乗せしたいということで予算を組ませていただいているわけでございますけれども、それで終わっているわけではないんだということは、附則の二項に示されているわけでございます。「計画的にその実現に努めるものとする。」したがいまして、それよりももっと大きなことを考えていきたい、しかし、そのことにつきましては、国会の御賛成を得られなければできないわけでございますけれども、この法律を御承認いただくことによりまして、さらに将来一〇%じゃなしに、もっと上乗せしていくことが可能になっていく、こう私は考えているわけでございます。そういう意味においてかなり大幅な給与改善を意図しているということは、この法律からは読み取っていただける、また、この法律を成立させていただくことによって、それを可能にさせていただきたい、こう考えているわけでございます。
  15. 塩崎潤

    塩崎委員 なかなか法律論としてむずかしいのですが、国家公務員法の六十四条二項に、国家公務員俸給一つの目安が示されているわけでございます。給与は全部法律によってきめられる、それは俸給表によって示される。二項にまいりますと、「俸給表は、生計費、民間における賃金その他人事院の決定する適当な事情を考慮して定められ、且つ、等級又は職級ごとに明確な俸給額の幅を定めていなければならない。」こういった規定があるわけでございますが、私は、この六十四条の二項が、国家公務員である義務教育学校先生方給与に適用されるはずだと思うのでございますが、三条はこれとは別の意味の、文教政策観点から出たところの一つ俸給表を求めているというふうに考えられるのですが、それとの関係はいかがですか。  なぜこんなことを申し上げるかと申しますと、大出委員との間の質疑応答を見ておりますと、この六十四条二項の俸給表人事院勧告根拠、これとの関係が盛んに問題にされておりまして、この答弁から見ると、なかなかすっきりした結論が出ていないように思ったわけでございますが、その点についてどう考えられるか、御意見を承りたいのです。
  16. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほどちょっと触れましたように、人事院の自主的な勧告権限、それは必ずしもオールマイティーなものじゃないと考えるわけでございまして、国家公務員法によって授権されておる、その授権範囲内において自主的な勧告権限を持っておる、その自主的な勧告権限が、いま御指摘になりましたような六十四条その他におきまして、勧告する場合の基本的なものが示されていると考えるわけでございます。それだけでは私たちが考えるような教員給与の抜本改革は達成できない、そこでプラスしてこの人材確保法案を成立させていただいて、人事院の自主的な勧告権限にこのような責任をあわせ持ってもらおう、こう考えているわけでございます。
  17. 塩崎潤

    塩崎委員 そこで、三条は、いずれまたもとへ返ることにいたしまして、四条の人事院勧告規定について、まっ先に大臣にひとつ御意見を承りたいわけでございます。  四条を見ますと、「必要な勧告を行なわなければならない。」というように人事院に義務づけているわけでございます。これについては、いろいろ義務づけている点についても議論がありますが、まず第一に、大臣は非常に人事院の立場を尊重して、非常に抽象的な、私どもから見ますればもの足りない「一般公務員給与水準に比較して必要な優遇措置」というようなことで、すべて人事院に預けられているわけでございます。そして、人事院の公平なる勧告を期待されておるようなんですが、この四条の勧告は、いつごろまでに政府は受けたいと思っておられるか、いつごろまでに期待されておるか。これは期限も書いてなければ、直ちにとも書いてない。このような規定は非常に珍しいと私は思うのです。そしてまた、勧告の期待できる時期が、私どもにとってはたいへん大事なポイントになるわけでございますから、これは一体いつごろまでに期待されておるのか。非常にあいまいで、時期が書いてないだけに心配なんです。いかがですか。
  18. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 人事院の自主的な勧告の権能をそこなわないようにしながら、またこの法律が意図しておることの実現もはかりたいというようなところで苦心をいたしまして、附則三項を置いたわけでございます。「人事院は、国会及び内閣に対し、国家公務員である第三条教育職員について、遅くとも昭和四十九年一月一日から同条に定める優遇措置の計画的実現のための給与改善が行なわれるように必要な勧告をしなければならない。」こう書かせていただいたわけでございます。実現できるようにということでございますから、それまでの間には法律が成立していなければならないわけでございます。法律の成立を考え、臨時国会等のことを考えてまいりますと、十月までには給与改善勧告がほしいものだな、こう考えておるわけでございます。八月には一般的な改善勧告をいただいています。その後に引き続いてどれくらいの期間を要するのか知りませんけれども、また、文部省の中に置かれております給与の調査会、これも早く結論を出すようにしていかなければなりませんし、人事院の御協力もいただいているわけでございますけれども、一月一日実施に間に合わせるということになると、やはり十月には勧告をいただかないと困るのではないかな、こんな感じを持っておるところでございます。
  19. 塩崎潤

    塩崎委員 私は、この四条と附則の三項の勧告が、必ずしも一本に出るか出ないかはっきりしていないと思うのですね。いま大臣から、附則三項の勧告と四条の勧告が一本に出るようなお話が出たのですが、なかなか、「必要な優遇措置」の内容のきまり方いかんにもよろうかと思うのでございます。このあたりは、私は、よほど人事院との間の協議と申しますか、意思の疎通が必要だと思うのでございます。  そういった意味で、私は、必ずしも十月というふうにも四条の勧告は考えられないと思ったりするのです。よほど根本的に人事院総裁に研究していただかなければならぬ。私どもは裁判官並み待遇まで考えておるのですから、これらの意見を無視して人事院勧告が出ると私は思わない。そうなると相当時間もかかる。しかし附則の三項では、来年の一月からおそくとも実施できるような勧告がほしいんだ、こういつておりますから、二つに分かれるような気がする。このような気持ちを持つのですが、このような考え方について、大臣いかがですか。
  20. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 四条の「必要な勧告」は、一どきにというわけのものではないと考えておるわけでございまして、また今回予算の上ではさしあたり一〇%のかさ上げを考えておりまして、それを今後この法律をてこにして、さらに予算の上にも計上させていただきたいと考えておるわけでございますけれども、そうすることが人事院の自主的な勧告権限を助けることになるのじゃないだろうか。人事院といえども、国会の意向がわからないままに、やみくもに自主的な勧告をすることも非常に困難じゃないだろうかな、やはり国会の意のあるところがわかって、それに対応しながら、人事院が自主的な勧告権限を行なうことがスムーズに行くもとになるのじゃないか、こう考えておるわけでございます。  二項には計画的に実現する、そして今回の分は一月一日から実施されるようにするんだ、こういっておるわけでございまして、こういうのはやはり何回かに分けて改善を続けていく、そして所期の目的を達成させるということではなかろうか。財政上の問題もございますし、あるいは公務員間の給与の比較の問題もございますし、摩擦のないように進めていかなければなりませんので、一ぺんに何割か上げてしまうんだということは、私はかえって混乱を招くのではないだろうか、かように考えておるわけでございます。
  21. 塩崎潤

    塩崎委員 そこで、人事院総裁にそろそろお尋ねしたいわけでございます。  たいへんいろいろ御発言したいようなお顔をされておるし、私も当てないと、かつての大先生でございますので、失礼に当たりますから、まずまっ先にちょっと御意見をお伺いいたすわけでございますが、参議院での安永委員との間の質疑応答を読んでおりますと、さらに大出委員の御質疑にもあったようでございますが、この四条というのはけしからぬ法律である、人事院を拘束するじゃないか、人事院勧告を押しつけるじゃないかという話がある。私は、法律によって人事院に義務を課することは、すでにもう国家公務員法の二十八条第二項において、百分の五以上の給与の改定を行なうときには勧告しなければならないという義務を課したことから見て、これはおかしいことでない、むしろ位高き、見識高き人事院総裁ですから、閣議決定くらいで、義務教育学校先生給与を上げろということで押しつけると、おそらく不当なる拘束というふうに言われるに違いないと思う。私は、そういうふうに考えるのですが、不当なる拘束であるかどうか、この四条についての人事院総裁のお考え方はいかがでございますか。
  22. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 その点は、前回この委員会でもたしか他の委員にお答えしたかとも思いますが、いま塩崎委員のおっしゃるとおりの気持ちでして、これに対して何にも抵抗感はわれわれとしては持っていないわけでございます。
  23. 塩崎潤

    塩崎委員 そこで、簡潔にひとつ人事院総裁にお聞きしたいわけでありますが、私はいつも、人事院総裁法律論は若いときから拝聴いたしておりますので、もう三尺引き下がって師の影を踏まないつもりでおりますが、私は、この四条の「必要な勧告」は、この人材確保法上の必要な勧告であって、国家公務員法上の二十八条の勧告とは違った法的性格を持つものだ、こういうふうに考えるべきだと思うのでございますが、ひとつ簡単にお答えを願いたいと思います。
  24. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 私も、法律のことはもうすっかり忘れちゃいまして、しろうととしてお答え申し上げますけれども、先ほど来おことばにありましたように、公務員法上の権限だとか、今度の人材確保法上の権限だとか、そういう区別はわれわれは実は全然考えておりません。人事院勧告権という一本のものとして考えておりますということを申し上げさせていただきます。
  25. 塩崎潤

    塩崎委員 そこで、人事院勧告権の内容なんですが、三条に返りまして、奥野文部大臣人事院勧告を非常に尊重されて、必要なる優遇措置はすべて人事院勧告にゆだねられているわけでございます。総裁は、このゆだねられた結果どのようなことを考えられておるか、総裁の御意見をこの際ぜひとも賜わりたい。六十一万人の義務教育教員、さらにまた二十一万の高等学校先生方、七万二千人の幼稚園の先生方まで注目しておるわけでありますから、どのように考えていられるか、ひとつ簡単にお答え願いたいと思うのです。
  26. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 先ほどおことばにありましたように、三条そのものは非常に名文であるとはわれわれ考えませんけれども、読んでみれば大体御趣旨はわかるわけなんです。その趣旨たるや、われわれがかねがね考えておったところと完全に一致しておる。たとえば、われわれの従来やっておりますところをごらんいただけばわかりますように、先生方初任給をごらんになっても、一般の行政職の方々初任給よりは段違いに違う扱いをしておるというようなことも考え合わせますと、大体そういう線に乗ったところをここでお書きになっているんだなという気持ちを持っておりますが、それでよろしければわれわれは安心してそれでどんどんやりますが、いかがでございましょうか。
  27. 塩崎潤

    塩崎委員 たいへんむずかしい御答弁で、私もなかなか意味がつかまえられなかったわけでございますが、おそらく官民の給与の比較から、これまでやってこられました人事院の慣行と申しますか、法律的な根拠も持っておりますけれども、これから見て、一般公務員給与水準に比較してと言われますと、どんなふうなイメージをもって考えられるか、具体的には、昭和四十八年度の予算に計上されました百三十六億円との関係をどう考えるか、あれに縛られるものかどうかという点だけでも、一言人事院総裁の御意見を承りたいと思います。
  28. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 いま申しました趣旨は、要するに一般職に比べて、先生方については、われわれとしては相当待遇改善につとめてきたつもりではありますけれども、これではまだ足りないというお気持ちが、この法案の条文の中にこもっているんじゃないか。これは大いにけっこうな御激励であると考えてこの問題に臨もうという気魄を持っておるわけでございます。お金の問題は、それが非常に精密に、われわれの勧告の内容にそのままそろばん勘定して反映するものやらどうやら、私としてそうはっきり機械的に反映いたしますというようなことは申し上げかねますけれども、これは常識で、おとなのやることですから、それだけの予算がついているということならば、われわれはもちろんそのことを頭に入れながらやりますけれども、そのとおりにいくかどうかということ、たとえば現在の一般公務員給与の引き上げにつきましても、予算をごらんになれば、本予算にたった五%分しか組んでないわけです。あと予備費があり、補正がありということはございますけれども、われわれとしては、やはり人事院勧告として打って出て、しかもこれはまた国会にお出しをして、国会の厳粛なる御批判にさらされて、そして立法化される勧告でございますから、国会として皆さんの御賛成を得るような筋の通った勧告はいたします、そういう趣旨でひとつ御了察を願いたい。りっぱな勧告をいたしたいと思っておるということで御了解をお願いいたしたいと思います。
  29. 塩崎潤

    塩崎委員 そこで、私はひとつ大蔵省にお聞きしたいのでございますが、法律予算との関係はなかなかむずかしい関係があり、多分に沿革にもよるかと思うのでございます。私は、四十八年度の百三十六億円の予算は、この法律と一体的なものであり、この法律を前提にしたものである、こういうふうに考えたいわけでございます。つまり、たとえばアメリカでは予算というものは単に数字の集計であって、これによって支出権限が出るものではない。法律ができて、その法律によってそこに書かれておるところの数字が出るし、その金額が足りなくても余っても法律どおり出るのだということが、私どもが習った財政法の原理のようでございます。日本ではどうも予算自体に支出権限を与えるということが古くから行なわれておる。したがって、法律があった場合に、法律との関係がいかにあるべきかという点は、どうもまだ十分に練れてない。私は国会あり方から見て、法律のほうが優先する、法律が出て初めて予算が出てくるというふうな方向に進むべきだと思うわけでございますが、ことにこのような政策的な問題、しかもこの政策人材確保法案という形で国会に出した以上は、四十八年度の百三十六億円の予算は、この法律と一体をなしていくものである。したがって説明は、すでに通った法律については、この法律に基づきこれだけの金額を計上するものだと書いてあるように、この法律と一体のものであり、ほかのものとは全然関係のないものだというふうに考えるのですが、大蔵省の主計官にひとつ御意見を承りたいと思います。
  30. 廣江運弘

    廣江説明員 お答えいたします。  今回の義務教育教員給与改善につきましては、一方でそれに必要な財源措置を講ずるとともに、いま御審議を願っております法案におきまして、計画的な改善をはかり、また人事院勧告をすべきこと等を定める法律を出しておるわけでございまして、義務教育教員給与の計画的改善につきましては、この法案の成立がぜひ必要と考えており、この法案の成立をすみやかになされますよう望んでおる次第でございます。
  31. 塩崎潤

    塩崎委員 私は、いままでの論議から、この法律人事院勧告と四十八年度の予算は、三位一体でいずれも運命をともにする、こういうふうに考えておるわけでございまして、その考え方がお三方の御答弁ではっきりしたような気がいたしますので、さらにまた若干の質問を進めていきたいと思うのでございます。  附則の二項でございます。「国は、第三条に定める教育職員給与優遇措置について、計画的にその実現に努めるものとする。」こういうふうにこの法律は国に義務を課し、これは国会を含めてすべての国家機関に「計画的にその実現に努めるものとする。」と書いてあるのですが、これは人事院総裁も御指摘されておりますように、「計画的」という意味がなかなかわかりにくい。こういうものは一ぺんに実現してもいいようでもあるし、「計画的」というのがどういう意味か私もわかりませんが、どんなことを考えられてこのむずかしいことばがここで飛び出したのか。しかるべき必要な優遇措置がはっきりわからないのに、「計画的」ということばが飛び出したのはどういうことでしょうか。犬がしっぽを振るのじゃなくて、しっぽが犬を振っておるような気がするのですが、文部大臣どういう意味ですか。
  32. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 率直に経過を申し上げたいと思いますが、四十八年度の予算編成にあたりまして、文部省から大蔵省予算要求をいたしましたときには、教員給与を五割引き上げたいということでございましたが、最終的に一月から三月について一割引き上げに要する財源を計上するということにきまったわけでございます。そのときに、一割の計上額の性格を明らかにいたしますために、私と大蔵大臣との間で文書を交換いたしたわけでございます。教員給与改善はこれだけのことじゃないのだ、将来引き続いてやっていくのだ、言いかえれば、いま調査会を設けまして、どこまで引き上げるべきかということについての研究をやっているわけでございますけれども、その結果出てくる結論を実現させるのだ、したがって、それを達成するように毎年計画的に予算を計上し、そして目的達成に向かって進んでいくのだという考え方を明らかにしたわけでございます。そういうことを受けましてこの法律案が出てきておるわけでございまして、一〇%で終わっているわけではないのだ、今後も引き続いてあるべき給与額を求めて、計画的に実現をはかっていくんだという趣旨で第二項を設けさせていただいたのでございます。
  33. 塩崎潤

    塩崎委員 もう時間もございませんので、法文にあらわれましたところの規定法律についての質問はここでひとつ終わらせていただきたいと思うわけでございますが、この法案全体に関しまして私は文部大臣に御質問を申し上げたいのでございます。  義務教育の諸学校先生方は、たいへん特殊なつむじ曲がりか、かすみを食べる仙人みたいな方は別として、すべての方々待遇改善を期待し、そしてまたこの法律の早期成立を希望していると思うのです。それはなぜかと申しますと、何といっても待遇改善ということが必要だからということだと思うのでございますが、待遇はもう言うまでもなく給与だけではないと私は思うのです。しかしこの法案は、一条の「目的」に給与だけ書いてあるのですが、なぜもう少し広範な待遇改善の問題を入れなかったか。私は給与だけが済んだらこの法案はもう廃止するような情けない法律にしたくないのです。もう少し大きな角度の、これだけ大きな表題をつけて、大臣は大みえを切っておるわけでございますから、たとえば定年制の問題、これは総理大臣に、施政方針演説をして天下に宣明させた問題でございます。なぜこのような定年制の問題を取り上げるようなことをしなかったのか。これは私の県でも定年制の問題について非常に校長先生方に悩みがある。まだ五十九歳の定年で、六十歳にすることが願望でございますが、それが定員の関係でできない。勧奨退職をされておるわけでございます。(「定年制はないよ」と呼ぶ者あり)私は六十歳以前の退職勧告はしないような保障、これをこの法律の中に入れることが可能だと思うのです。定年制がないというおことばがございましたが、退職勧奨、このようなことをひとつここでチェックする、そしていわゆる定年を延ばすようなことが考えられないか。この法律をどういうふうに持っていくか、一ぺん大臣の考えを承りたい。
  34. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま塩崎委員、そういう意味でお話しになったんじゃないと思うのですけれども、給与改善が済んだらこの法律は要らなくなるようなことばがちょっとあったので、あえて申し上げさせていただきます。  私は、これは将来にわたる教員給与あり方を示す基本的なものだと思います。また、これがなければ人事院給与改善勧告されて、教員だけが一般公務員よりも特段に高い、これにどう対応していかれるか、やはりこの法律をてこにして対応していかれる以外にないのではないかと私は思うのであります。したがいまして、これは将来にわたる政治の基本的な姿勢、人事院給与改善勧告される場合の基本的なよりどころになっていくんじゃないか、私はかように考えておりますところを御理解賜わっておきたいと思います。  また、処遇の改善につきましては、給与だけのことではございませんで、人事院当局からも、旅費その他のものをひとつ文部省でしっかりやってくださいよと、私はむしろ佐藤総裁から激励を受けておりまして、ほんとうにそんな気持ちでおるわけでございます。  同時にまた、定年の問題その他たくさんございます。たくさんありますけれども、やはり何というても給与を格段に私たちは引き上げたいわけでございまして、他のものを入れ込むことによって事柄の性格をあいまいにしたくないし、問題の本質をはっきり打ち出し、そして将来にわたる基本的な政策として守り続けていきたい、こういう考え方でございますので、ここはぜひ御理解をいただき、またいろいろお示しになります点、当然努力していかなければならないところでございますので、積極的に努力を続けていく決意でございます。
  35. 塩崎潤

    塩崎委員 最後に一問だけですが、いまのお答えに対して私は賛成なんです。給与がほんとうに待遇の根本であることは私も否定いたしません。しかし、いま申しておりますところの六十歳前の退職勧告みたいなものをどういうふうにチェックしていくか。この法律でやっていくのじゃないのですから、何か別の法律を出して、内閣総理大臣のいわれたあの大政策をどんな法的な形態で実現していくのか。私はそれに対して、何らの法的な保障はまだ見られてないものですから、文部大臣の手段、これをどう考えておられるかを伺っておるわけです。
  36. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先生方の定年を引き上げていくことは非常に大事なことでございます。また、田中総理大臣も非常にこの点について関心を持っておりますし、私も絶えずしりをたたかれておるのでございます。現在の状態は区々でございます。区々でございますが、私たちはさしあたり六十歳まで定年をあげてくださいよ、将来は六十五歳まで持っていきたいのだ、こういうことを教育委員長さんの全国会議でも申し上げましたし、教育長さんの全国会議でも申し上げました。過疎県と過密県でその辺の運営がたいへんむずかしいのでありますけれども、過疎県におきましては先生方がふえない、したがって、人事の停滞を招きやすいというようなことがあったりするわけでございます。そういう場合には、たとえば非常勤講師の数を特段にその団体に向けてあげるとか、さしあたりその県には定員の数をふやしてあげるとかいうようなことをしながら、定年を一年一年延ばしているようなことの具体の相談にあずかっておるわけでございます。やはり県によりまして退職を勧奨する年齢に大きな差がございますし、また男女の間にも相当な開きもございますし、また過疎過密によって実態も変わってきておりますので、個々について御相談に乗っていく以外にないのじゃないだろうか、こう考えておるわけでございます。しかし、いずれにしましてもいま申し上げましたような目標に向かって文部省としても積極的な協力をして、そして実現をはかっていきたい、かように考えておるところでございます。
  37. 塩崎潤

    塩崎委員 これでやめたいと思いますが、いまの大臣の御答弁の中に、個々の県に相談しながらということでは、田中総理大臣の国の政策にならない、そして個々の県にはいろいろ財政事情があり、定数の関係があって、うまくいかないから、私はこの定年延長の問題は一つの国の法律的な形態で退職勧告をチェックすることが必要だと思っております。こういった観点から、大臣は常に地方自治が頭にあられるからそういうことを言われただろうと思うのですが、ぜひとも国の政策として考えていただきたいということを申して、もう答弁は要りませんから、私の質問を終わらしていただきたいと思います。
  38. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 答弁要らないということでございましたけれども、定年制の問題につきまして、過去何回か国会議論になっておるわけでございます。定年制を定めることについて、賛成側の意見もございますし、反対側の意見もございまして、たいへん混乱した経過をたどっておるわけでございます。私はいずれはっきりした立法措置でも講じまして、そして教員の身分を守っていきたい、こういう願いは抱いておるわけでございますけれども、いますぐにそういう話がまとまるような感じもいたしませんので、各県と相談を申し上げながら、いずれ国民合意の、国会でも合意の道が得られるような場合には政策として打ち出せるようにならないものか、こんな願いを抱いておるわけであります。
  39. 田中正巳

    田中委員長 馬場昇君。
  40. 馬場昇

    馬場委員 報道機関の伝えるところによりますと、文部大臣は近いうちに日教組の委員長とトップ会談をする、こういうような報道が行なわれておるわけですが、会談が行なわれるのか、いつやられるのか、お尋ねしたいと思います。
  41. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先般日教組のほうから、初中局長に対しまして、会談をしたいという申し入れを受けたわけでございます。それを受けまして、日教組の書記長と初中局長との間で、どういう問題について、どう運んでいくのだろうかという話し合いをしていただいておるわけでございます。その話し合いでまとまりましたら、来週早々にでも話し合いをするということになるんじゃなかろうか、かように思っておるところでございます。
  42. 馬場昇

    馬場委員 報道によりますと、十六日に会談をされるということを、大臣自身が言っておられるようでございますが、十六日にやられますか。
  43. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 両者の話し合いが円滑に進みますと、十六日ごろになろうか、こう考えているわけでございます。
  44. 馬場昇

    馬場委員 日教組の代表と文部大臣が会われるということは、そしていろいろ話し合いをされるということは、私は非常にいいことだ、こういうぐあいに思います。ぜひ予定されております十六日に会われて、そして実り多い会談にしていただきたいことを最初お願いをしておきたいと思います。  次に、私は、この法律案につきまして、本会議で代表質問をいたしました。そのときに、教育行政のあり方という問題についても質問をいたしました。教育行政というのは、どの行政に比較しても非常に大切なことですから、絶対に国民の合意のもとに行なわれなければならない、これについて総理大臣と文部大臣質問をしたわけですが、総理大臣は、そのとおりだ、教育行政は国家の将来にかかわる重大な行政であり、当然国民の合意を得て行なわれるべきである、そのためには「国民各界各層の意見を謙虚に」聞いて、施策に反映していかなければならない、こういう答弁を総理大臣はやっておられます。文部大臣も、まさに同じ答弁でございますし、そうして最後のところで、謙虚に施策に反映していけるものは十分取り入れてやる、こういうふうに答弁をなさっておられるわけでございますが、言わずもがなでございます。  いま私が読み上げました総理大臣答弁、文部大臣答弁が、そのようであったということを御確認いただきたいと思います。
  45. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 全くそのとおりに考えております。
  46. 馬場昇

    馬場委員 その答弁の中に、「各界各層」の意見を聞くと、こういうぐあいになっておるわけでございます。この「各界各層」の中に、日教組は入っておりますか、入っておりませんか。
  47. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 教員の組合の方々、ずいぶんこれまでも、率直に申しましてたくさんお目にかかっております。ただ、不幸にして日教組の方とはお目にかかっておりませんでした。また日教組と文部省との間において、二十数年来不幸な対立的な感情があったことも、馬場さんよく御承知のところでございます。こういうことのないように、ほんとうに協力し合って文教行政の充実をはかれないものだろうか、これが私の切なる願いでございます。
  48. 馬場昇

    馬場委員 質問は端的にしたわけでございます。「各界各層」ということばを総理大臣もあなたも使っておられるわけですが、「各界各層」の意見を聞くと言っておられるこの「各界各層」の中に、日教組は入っておられるのかどうかということを端的に質問をしておるわけです。
  49. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま申し上げましたように、これまでは不幸な対立関係があった、それはぜひ解消するように努力していきたい、だから抽象的には入ているけれども、具体的には入り得ないような対立関係にあったのじゃないだろうか、こういうことを申し上げただけのことでございます。
  50. 馬場昇

    馬場委員 文部大臣は、二十数年間というふうにおっしゃいましたけれども、私もかつて、やめられました中村さんが文部大臣のときにトップ交渉に参加した経験もございます。あなたの前の稻葉文部大臣も、実は会ってお話し合いをしておられるわけでございます。だから、いままでやらなかったというのはこれは間違いじゃないか、こういうぐあいにも思うのです。だから、「各界各層」の中にはいままでも入っておったし、いまからでも入るのだ、こういうぐあいに私は解釈するのですがどうですか。
  51. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 しょっちゅう、全くざっくばらんに話し合えるような関係に本来あるべきだ、こう私は強く考えております。
  52. 馬場昇

    馬場委員 ことばの中身を聞いているのです。一言で答えてください。「各界各層」の中に入っているのかどうかということだけでいいです。
  53. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 本来はそんな程度のものじゃないと申し上げているわけです。もっと力を合わせてやっていかなければならない。「各界各層」どころじゃない。私は、馬場さん、この委員会にいらっしゃらなかったから、私がずっと答えていることを御理解いただいていないようでございますが、たいへん失礼でございますけれども、一言つけ加えさせていただきます。  私は、教育の基本は教師その人にあるのだと考えているのでございます。だから、教師そのものの資質の向上、また働きやすい環境を整備する、文部省教育諸条件の整備をはかっていくんだ、だから本来両者が力を合わせてやっていくべきなんだ、同時に先生の組合とも当然協力し合っていくべきもんだ、それが不幸にして日教組に関してはいろいろな経過をたどってきている、これはもうぜひ私としては改善をはかっていきたい一番大きな問題とまで思っているのです。こんなことをたびたび答えておりますので、気持ちだけは御理解をいただいておきたいと思います。「各界各層」どころの問題じゃない、こう思っております。
  54. 馬場昇

    馬場委員 非常にことばは前向きで、「各界各層」の中にもちろん入っているが、そういうものよりも非常によけい話し合いをしなければならない、こういう気持ちでおるということはよくわかりました。  そこで、あなたは、この法律国会にかかりました本会議の席上で、自民党の松永光君の質問に答えまして次のようなことを答弁をされております。「一部の組合が、組合幹部のための組合に終わっている点が、たいへん残念なところでございます。」こういうことを言っておられます。重大な問題だと私は思います。そこでこの中身につきまして、「一部の組合」というのはどこをさしておるのですか、はっきり答えてください。
  55. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、この法案は、大多数の先生方の御支持を得ているものだ、こう確信をいたしているものでございます。しかしながら、組合の中には、この法律の撤回を求めておられるところもあるわけでございますので、法律の撤回を求められておられる場合には、その撤回を求める自分の立場は一体どこにあるのだろうか、こういう疑問を持っておりますので、すなおにその疑問を表明さしていただいたわけでございます。
  56. 馬場昇

    馬場委員 あなたは、大多数の教師がこれに賛成をしておると思っていると言うのですが、それは科学的にどういう調査に基づいて、どういう資料に基づいて賛成しておるというぐあいに思っておられるのですか。
  57. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私も、いろいろな機会に、いろいろな教育関係者と会っているわけでございまして、また、この法案をぜひ成立さしてくれということを、強く表明してきておられる組合もございます。この問は日教連の代表者十数人がやってこられまして、何が何でもこれを成立さしてくれ、自分のほうの傘下の先生方は全員これを熱望しておるのだ、ぜひ成立さしてくれ、こういう強い申し入れもあったわけでございます。
  58. 馬場昇

    馬場委員 あなたは、ことばをはっきり言ってもらわなければ困る。あなたは、大多数の教職員と言われました。大多数の教職員は日教組に組織されております。ほかの、いま言われました組合なんかというのは、実に一握りの小さなところなんですよ。だから、その組合の比較はいたしませんが、現実のことはあなたも御存じと思うのですよ。教員組織がどういう員数でもって存在しているかということは、あなたは知っておられるはずです。そういうときに、こういう席上で、調査もなしに、大多数の教職員ということばを使われたということは、これは軽率ではないですか。具体的に、何人教職員がおるのに、どういう調査をして、その中の何%が賛成しておるというような資料を持っておるんだというなら話は別です。そういうことを、資料なしに、大多数ということばを使われたのは軽率ではないですか。
  59. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いまも申し上げましたように、私もいろいろな方にお目にかかっている。特に教育関係方々がこの問題についての意見を私に申し入れてきておられる。また日教連に関しましては、御指摘の日教組と比べますと組合員がうんと少ないわけでございますけれども、その組合としては全員が熱望しているのだ、こういう表現まで使われておったわけでございまして、やはり組合員一人一人をとりましたら、どの組合に属しているかによりまして、こういう問題についての考え方にそんなに大きな差がないのではなかろうか、そう思いますので、大多数と申し上げさせていただいているわけでございます。
  60. 馬場昇

    馬場委員 私は、大多数の根拠を聞いているんです。根拠がなくて、自分はそう思っているのか、根拠があってそう思っているのか、大多数ということについて根拠があるのかないのか、ここのところをはっきりさせておいてください。
  61. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 根拠は、私いまたびたび申し上げているわけでございますけれども、いろいろな教育関係者と会っている。小学校長会、中学校長会、高等学校長会、それから日教連、それからまた私は、先生方ともずいぶんたくさん会っているわけでございまして、そういうところから推測して私はそうと判断しているわけでございまして、私の判断でございますから、あなたがそう思っていらっしゃるということを一つも言っていない。私はこう思っておるということを申し上げているのがなぜいけないのでしょうか。   〔発言する者あり〕
  62. 田中正巳

    田中委員長 静粛に願います。
  63. 馬場昇

    馬場委員 あなたの判断を聞いているのです。数字をもって大多数としておられるのかどうかということ、数字がないならないでいいんですよ。あるならあるで数字を言ってください。
  64. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 たびたび申し上げておるように、私がそういう判断をした根拠を申し上げておるわけですから、その私が判断をしている根拠については、いろいろな意見があっていいと私は思うのですよ。しかし、私がこういう材料からこういう判断をしているということを申し上げることがなぜいけないのか、私にはわからないのです。私はこういう判断をしているということを言っているだけでございまして、あなたがしているということは一つも申し上げておりません。
  65. 馬場昇

    馬場委員 文部大臣、それはあなたのそういう行政が、全く根拠もなく、資料もなく、一人よがりでやっているというあらわれです。いまの大多数ということばは、まさに一人よがりの行政をしているということ、そういうぐあいにこの問題は判断をいたします。
  66. 田中正巳

    田中委員長 この際、木島喜兵衞君から関連質疑の申し出がありますので、これを許します。木島喜兵衞君。
  67. 木島喜兵衞

    ○木島委員 いまの質問の経過は、こういうことですね。本会議での各界各層の意見を聞くべきであるという中に、日教組は入っておるかいないかという質問があった。あなたは、もう各界各層というようなそういうものではなくて、最も聞かなければならないとおっしゃった。そしてあなたが大臣になられたときに、日教組の委員長があなたに会いたいと言った。それを拒否したのはあなたである。結果的には今日まで会えなかったですね。そうでしょう。申し込んだけれども会わなかったのは、あなたが断わったからでしょう。そういう意見も聞かないで、そしていま馬場さんの質問のごとく、明確な根拠もなくて、そして本会議でもってそういう発言をされたことについての意見馬場さんは聞いておるのです。個々に流れているけれども、馬場さんの質問していることはそういうことですね。あなたは、各界各層というのですから、最も聞かなければならないのはそんなものじゃないんだ、一番聞きたいんだといまもおっしゃいましたね。その一番先に会わなければならない当事者、教師が子供と接するところにだけ学校教育は存在する。その最も大きな教師集団、だから、一番会いたいというあなたの気持ちはいまわかった。あなたが大臣になったときに、日教組はだからあなたに会いたいと言った。前の大臣も会った。その前の大臣も会った。だからあなたにも会いたいと言った。それを、あなたは意見を聞かない。聞けば、そのときに会っておれば、日教組の態度というものはみんな反対であるとか、あるいは中身とか、そういうものがわかるかもしれない。いろいろな意見が聞けるかもしれない。ところが、会わなければならないと言いながら、それを会わない。そして会わないでおいて意見の交流がなくて、そして本会議でもってこういう発言をしたというところを馬場さんがいま言っているのです。その関連を明確にして御答弁をいただきたい。
  68. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私が文部大臣になりまして間もなく、日教組のほうから会いたいというお話がございましたので、私はもっと先にしてください、こう言ったわけでございます。拒否したわけじゃございませんで、先にしてくれと言ったわけでございます。その後に、その先にしてほしいと言ったことについての新聞記者との会見の際に、日教組と文部省との間には深い対立関係があるようだ、これはぜひ解決しなければならない、解決をするのには自分なりにどういう事情でそうなっているのかということをよく検討したいと思っているのだ。-そのときにどういう表現を使いましたか、とにかく一度会ってそれきりということになっては私は不本意なんだ、こんなことを言うたのに対しまして、日教組の委員長でありましたか、何かのときに、もう文部大臣に会見は申し込まないというような発言をされたようでございました。またその後に、この国会で私に対して、会うか会わないかというお話がございました。会います、しかし国会中は国会に専念したいので、自分のほうから会いたいと申し入れる気持ちはありません、こう申し上げたわけでございます。しかし、その後に日教組のほうからまた会いたいというてきておられますので、それで書記長と初中局長との間にいろいろな話し合いをしているわけでございます。話がつけば、先ほど申し上げましたように、十六日前後にお目にかかるようになるのじゃなかろうか、これは全くそのとおりの経過でございます。  同時にまた、この法案について、大多数の先生方が賛成していると考えている、こういうことについてたいへん御不満のようでございますけれども、政府が、大多数の先生方が賛成されないと考えてこういうものを出せるものだろうか。私は当然共鳴をいただけるものだ、こういう確信を持って提案していることもお考えをいただきたいのでございます。  同時に、私が賛成していると考えたことにつきましては、再々申し上げましたので、そこで御理解をいただきたいと思います。
  69. 木島喜兵衞

    ○木島委員 あなたがさっき申したとおり、学校教育というものは教師と児童生徒との触れ合い、それ以外に学校教育はないでしょう。その最大の教師集団です。あなたは関係団体という中の何よりも増して深い意味だとさっきおっしゃった。それを先にしてくれ、自分のほうから会う気持ちはない。いまおっしゃったごとく、何をおいても会わなければならないはずです。現場というものは一体どうなっているのか、現場の声はどうなのかという最大の教師集団の意見を聞かないで文部行政はできるはずがない。あなたは、ひょっとしたら、八月人事でももしあったとすれば、あなたは大臣をやめているかもしれない。だからその間、先にして勉強している間にはあるいはそういうことだってあり得るかもしれないのであって、あなたはまっ先に会わなければならなかった。あなたもまっ先に会わなければならない、一番大事なんだ、会いたい、会って意見を聞かなければならないと、前のだれかの質問にもおっしゃいました。あなたが一番苦労しているのは、現場の教師の生活と意見を知ることで、それが一番大事だと思うと、どなたかの質問にも答えていらっしゃった。そういう立場であっただけに、やはりすなおにお会いになるべきだ。そういうこともなしに、あなたが会っているのは賛成する団体だけ、そして私が会っているのが大多数の意見である、大体賛成だ。政府は、国民が賛成すると思って出している、――あたりまえでしょう。政府は、国民が反対すると思って出すものはない。しかし出すものが反対されて、流れるものもある、廃案になるものもある、修正されるものもある。それは、政府が当然賛成するだろうと思って出すのはあたりまえである。しかし、国民というものは、主権者というものは、それに対するところの批判があっていい。その主権者の意思をわれわれが受け取って、どのようにこの法案を処理するか検討する。政府が出すものに反対するのはけしからぬという発想は、これは誤りであります。したがって、そういうことを前提にして、本会議においてあなたが一番意見を尊重したいと言っているその組合を誹謗することが、一体あなたとしてどうなのか。まさにあなたは、高一点といわれるところの高一点なのだろうかということが、馬場さんが言っておられるところだと思うのであります。
  70. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先生方あるいは先生の組合の意見を、できる限り聞いていかなければならないと思っております。だから、いろいろな組合の方々にもお目にかかっております。日本教職員連合その他の組合の方々にもお目にかかりまして、意見を聞いているわけでございます。ただ、日本教職員組合、日教組につきましては、不幸な経過のあることは、これはもう私が言わなくても御理解いただけると思うのでございます。これをどうほぐしていくかということが私は一番の問題点だと考えておりますので、やはり十分胸襟を開いてお互いに話し合えるようなかっこうに持っていく、その手だてを求め続けてきているわけでございまして、それが幸いにして今回そういう話になってきたわけでございますので、話し合いができる、実り多い話し合いになればいいがなあ、こう念願をしている、それがいまの姿でございます。
  71. 馬場昇

    馬場委員 あなたの答弁は――今度私の意見を言いますけれども、大多数の教職員がこの法律に賛成していると言われましたけれども、私どもの知っている範囲では、大多数の教員は反対をいたしております。これは完全に、具体的な調査をしてごらんなさい、全部反対をしておる。ほとんど大多数の教職員は反対であるということを私は言っておきますので、あなたも科学的に、具体的に判断をしていただきたいと思うのです。  そこでいま一つ、さっきの続きですけれども、あなたははっきり「一部の組合が、組合幹部のための組合に終わっている点が、たいへん残念なところでございます。」こういうことを言って、この本会議の議事録にもびしゃっと載っております。  そこで、聞きますけれども、「一部の組合」というのはどこか、このことをはっきり答えていただきたい。  もう一つは、「組合幹部のための組合」というのはどういう組合か、これをはっきり答えていただきたい。
  72. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど来申し上げますように、馬場さんと私との間で、ものの見方には違いがあるようでございます。違いがあるようでございますけれども、私は多くの先生方の御支持を得ている法案だ、こう考えているわけでございます。また多くの先生方のことを考えて、この法律を提案していることは、御理解いただけると思うのでございます。したがいまして、そういう考え方に反する方々は、必ずしも組合員みんなの利益を守っていることにならないように私には考えられるものですから、そういう意味で「一部の組合と」、こう申し上げているわけでございます。
  73. 馬場昇

    馬場委員 「一部の組合」という組合の名前をあげてください。あなた、はっきり本会議場で松永君への答弁で「一部の組合」と言っておられるのですよ。そしてまた「組合幹部のための組合」というのは何だ、どういう組合をあなたは言っておるんだということですよ。これは、言われた組合にとってみますと、まさに人格の否定ですよ。存立にかかわる問題ですよ。だからこの「一部の組合」というのはどこの組合をさしているのか、「組合幹部のための組合」というのはどういう組合ですか、はっきり言ってください。(発言する者あり)
  74. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま申し上げたとおりでございまして、具体的にどの団体というような失礼なことは私は言うべきではないと考えておるから、そういう言い方をしているわけであります。
  75. 馬場昇

    馬場委員 その辺からへたなやじが出ていますけれども、「一部の組合」以下、それは組合の運営にかかわる、組合の人格にかかわる問題をあなたは答弁しておられるのですよ。前のほうには「組合のすべてがこのような行動に出ているわけではございませんけれども、」と断わっておられるのですよ。だから少なくとも「一部の組合」というのは、前後から読みますと、特定の組合をさして言っておられるのですよ。どこの組合かということです。  それから、あなたが言う「組合幹部のための組合に終わっている点」、そういう組合なんかいまありませんよ。日本じゅう見たって、それなりに組合民主主義というものは、いい悪いはあるにしましても、それはみな追求して、組合幹部のための組合に終わっているというような組合はそうない。あなたが言う、組合幹部のために終わっている組合というのはどういうことか、「一部の組合」とはどこの組合か、幹部のための運営に終わっている組合というのは、どういう運営をしておる組合か、はっきり答えてください。
  76. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私が申し上げるような組合がないと馬場さんはおっしゃっておる。なければそれにこしたことはない、こう思うのでございます。私は、教育行政を円滑にしていきますためには、具体の名前をあげて、具体の組合を誹謗するようなやり方は避けるべきだ、こう考えておりますために、あえて抽象的に、私の考えてまいりました基礎を申し上げてまいってきているわけでございます。こういう法案、これは組合員全体の処遇のことを考えているわけでございますので、多くの組合員の方々の御支持を得られる、こう考えていますために、これに反するような態度をとる場合には、組合員全体のことを考えているというふうには理解できないじゃないかとこう申し上げているわけでございます。そういうふうに御理解をいただきたい。特定の組合を名ざししろ――私は名ざしするようなことは適当ではない、こう考えておるわけでございますので、そこの考え方の違いは考え方の違いとして御理解を賜わりたいと思います。
  77. 馬場昇

    馬場委員 これは考え方の違いじゃないのですよ。事実の誤認の問題ですよ。考え方の違いなら私も言いませんよ、あなたと私と立場が違います。これは考え方の違いじゃなしに、事実が間違っているんです。事実の誤認の問題、そしてまた、事実を誤認しておりながら、人を誹謗する、人格を否定する、こういうような問題ですよ。  たとえば、ある文部大臣は――奥野と言わない、ほんとうに頭が狂っている、どうかしている、こういうようなことを言われたら、あなたどうですか。(「言っておるじゃないか」と呼ぶ者あり)本会議の席上で言ってないよ、そんなこと。何言っているんだ、本会議の席上の議事録のことを言っているんだ。知らないで、黙っておれ。  そういう意味で、あなたが――たとえばこれは一つ、組合の人格の否定なんですよ、非常におかしい、あなたは何かの病気にかかっているとかなんとかと言われたら、どうしますか。そういう意味におきまして……   〔発言する者あり〕
  78. 田中正巳

    田中委員長 静粛に願います。
  79. 馬場昇

    馬場委員 これはまさに組合の誹謗だと思うのですよ。私は、事実を誤認しておられると思う。こういう組合はないと思う。それで、あなたがさしておる組合というのは根拠があるのかないのか。あるとすれば、その組合はこういうことはやっていない、そう思います。それで、こういうことを書いたならば、やはり日教組なら日教組が疑われるわけですよ。そういう点につきまして、あなたははっきりと事実があって言ったのか、事実がわからなくても自分の感じで言ったのか、その辺をはっきりさせてください、事実誤認じゃないかと私は思いますから。そうしなければ、組合の存立にかかわる、人格否定にかかわる大問題ですよ。そういうことを考えておっては、文部行政はできませんよ。私が当初、国民の合意を受けてやろうということを、総理大臣もあなたも答弁されたのを確認したのはここにあるのですよ。こういうような考え方では、合意に基づく教育行政はできませんよ。その辺について、あなたはそういう事実があって言ったのか、感じで言ったのか、事実誤認じゃないかと私思いますので、はっきり答えてください。
  80. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 たいへんくどいようでございますけれども、政府としては、大多数の先生方が共鳴していただけるつもりでこの法案を提出さしていただいているわけでございます。また経過的にも、多くの方々がこれをぜひ成立さしてくれと、教職員方々から私はお話を受けておるわけでございます。そういう意味で、私たちは大多数の先生方のいまの事情にマッチするし、また同時に御支持いただける、こう考えているわけでございますが、しかし、反対の組合も中にはあるわけでございますので、反対される場合には、私としてはそう考えざるを得ないという気持ちを込めて、そのような表現を使わせていただいているわけでございます。
  81. 馬場昇

    馬場委員 また重大な発言をされましたね。人材確保法案に反対する組合は、このような運営をしているといまあなた言われましたね。何ですか。この人材確保法案に反対する組合は、まさに組合幹部のための組合に終わっておる、こういうことをおっしゃるということは、はなはだもって不穏当な発言であると思うのですよ。まことにおかしいじゃないですか。その辺については、私は当初言いましたように、十六日会うとおっしゃっているわけですよ。こういうぐあいに相手を誹謗して、相手を誤解しておって、あなた、実り多い会談にはならない、教育行政のためにもならない。だから、はっきりそういう点については、たとえば私はそう思っていない……(発言する者あり)権利だよ、何言うんだ。  そういう意味で私は、十六日にあなたが会うから、そういうことをきちっと、言い過ぎなら言い過ぎ、暴言なら暴言、誹謗なら誹謗、そういう点に受け取られるとか、そういう点に考えられるならば、これは間違いだった、こういうことについて、はっきりやることが、教育行政を話し合いでやるという基本姿勢だと思うのです。そういうことについて反対する組合、人確に反対する組合は、組合幹部のための組合に終わっておる、そういうことをいま言われたら、まさに重大な問題ですよ。
  82. 田中正巳

    田中委員長 ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  83. 田中正巳

    田中委員長 速記を始めて。  午後一時に再開することとし、暫時休憩いたします。     午後零時二分休憩      ――――◇―――――     午後一時十七分開議
  84. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  学校教育水準維持向上のための義務教育学校教育職員人材確保に関する特別措置法案議題とし、質疑を続行いたします。馬場昇君。
  85. 馬場昇

    馬場委員 午前中の質疑の問題につきましては、理事会で次回の委員会の冒頭に処理をするというようなことだそうでございますので、次に移ります。  ILOとユネスコが教員の地位に関する勧告を一九六七年に採択をいたしておりますが、同勧告の八十二項に、教員の賃金や労働条件は教員団体と教員の雇用主との間の交渉過程を通じて決定されなければならない、こういうぐあいにあります。この八十二項につきまして、日本の文部大臣は、この趣旨を尊重されるのかどうかという基本態度を、最初に伺っておきたいと思います。
  86. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 組合のいろいろな意見に耳を傾ける、それは適当なことだと考えております。ただしかし、労使の交渉によって給与がきめられていくのだという考え方でお話になっておるといたしますと、それについては反対の考え方を持っておるわけでございます。
  87. 馬場昇

    馬場委員 私が質問しておるのは、この八十二号を尊重するのか尊重しないのか、こういう質問です。
  88. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 塩崎委員にお答えをしたと思うのでございますけれども、私は教員公務員でございますし、日本の公務員は憲法に示されておりますように全体の奉仕者だ、その給与国民全体から拠出される税金によってまかなわれるのだ、したがって、また代表者議会に送って、その議会がきめていくのだ、同時に、それだけで公務員の立場を守ることに十分でないおそれの生じないように、人事院ないし人事委員会公平委員会から議会に、給与について勧告する責任を与えておる、このような仕組みで、わが国においては給与が決定されていくものだ、そのように考えているものでございます。
  89. 馬場昇

    馬場委員 このILOとユネスコの教員の地位に関する勧告、こういうのは、いまの答弁によりますと、日本の制度を言われたようですけれども、結果からいいますと、この八十二項という方式は、日本国政府は、文部大臣はとらないということになりますね。
  90. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま申し上げましたように、給与議会できめられるのだ、こういう立場をとっているわけでございます。いろいろ組合等が給与について意見がある、それを当局側が聞き取る、それはもう適当なことだと考えておるわけでございます。ただ、そういう交渉過程を経てきめられるのだという意味でございますと、それについては反対でございます、こう申し上げておるわけでございます。
  91. 馬場昇

    馬場委員 少なくとも教員の地位に関する勧告の採択のときには、日本の文部省の代表も出ておったはずと思います。そして、これはまた国際機関でございますので、やはりこれを守るという姿勢をとるということが、私は国際的な信義ではないか、こういうぐあいにも思いますし、また、今日これを守るというような方向が、今日的課題ではないか、こういうぐあいに思います。いまの答弁では、まあいろんな過程意見を聞くということはあるのだけれども、決定方法はそうじゃない、こういうぐあいのお答えでございましたが、私としては、やはりこういうのを順守する方向改善をしていくというような姿勢というのは、やはり国際的信義の上からも日本国政府はとるべきではなかろうか、こういうぐあいに思いますが、やはり国際的信義、またILOのこの勧告というものの、日本国政府に対する位置づけといいますか、そういうものについて、もう少し具体的に答弁をしていただきたいと思います。
  92. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 教員の地位に関する勧告というのは、各加盟国の国情がいろいろ違うものでございますので、それに応じた相違を認め、各国の実情や法制の特殊性に適合した方法で考えていっていいものなのだ、加盟国を拘束するものじゃないのだというたてまえで決定されているようでございます。こういう決定が行なわれるにつきましては、いろいろな経緯があったようでございます。あったようでございますが、私が申し上げますようなこの問題についての考え方で対応していく、それがまた日本の国情なり、日本の諸制度にマッチした方式だ、こう考えておるわけでございます。
  93. 馬場昇

    馬場委員 いまの答弁は、このILO・ユネスコの勧告というものについて、やはり尊重するというような方向さえ示していないというのは非常に問題だろうと思います。  そこで、ここで押し問答は時間の関係もございますけれども、少なくとも国際的な勧告ですから、尊重するという方向を差し示して、そちらの方向に日本の文部省政府というものは努力をしていくべきである、こういうことを強く主張しておきたいと思います。  次に、具体的に法律案について質問いたしますが、冒頭にあります名称の、先ほども質問ありましたけれども、「学校教育」とありますが、この「学校」というのは、どこどこをさしておるのか、御答弁願います。
  94. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 学校教育法学校のつもりで書いているわけでございます。
  95. 馬場昇

    馬場委員 そうしたら、大学、高専、高等学校、幼稚園、こういうものも当然含んでおるわけですね。
  96. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そのとおりに理解しております。
  97. 馬場昇

    馬場委員 まず表題の「人材確保」ということばがございます。そうして第一条に「すぐれた人材を確保し、」と、こういうことばがございます。「すぐれた人材」といいますが、大臣は、よくいわれます、どのような教師像というものを描いておられるのか。この「すぐれた人材」という法文の内容と関係いたしまして、教師像について大臣の見解を承りたいと思います。
  98. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いつかもお答えさせていただいたわけでございますけれども、やはり学ぶ者が、みずから学ぶ意欲を持たない限りにおいて、教育は実を結ばない。学ぶ意欲を持たせるに足る教師でなければならない。したがいまして、教師は信頼される教師として、深い愛情、使命観を持った人であってほしい。同時に、広い一般的な教養に加えて、専門的な知識、そうして教育技術を身につけていただいている方が望ましい教師像ではなかろうか、こういうふうに思っているわけであります。
  99. 馬場昇

    馬場委員 教職員は、憲法二十八条にある勤労者、こういう勤労者に該当するのかどうかということについて、これは文部大臣の最初の答弁を求めます。
  100. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 勤労者であることには間違いはございません。
  101. 馬場昇

    馬場委員 総理大臣が本会議で、教職員はみずからの行動をもって範とすべき聖職にある、こういうような答弁をなさっております。この聖職というものは、勤労者性と対比して政府は使っておられるかどうか、お答えいただきたいと思います。
  102. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 人によってことばの使い方はいろいろだろうと思いますけれども、私たちが専門職でありますとかあるいは聖職でありますとか言う場合に、勤労者であることを否定してそういうことを申し上げているわけではございません。あわせまして、そういう高い倫理性が要求される職種だ、こういうふうに考えて申し上げているわけであります。
  103. 馬場昇

    馬場委員 よく聖職ということばが使われますので、大臣は聖職ということばの意義といいますか、どういうぐあいにお考えになっているんですか。
  104. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私は、物をつくるんじゃなくて、教師というものは人を育てるわけだから、その責任は非常に重大だという感じを持っているわけでございます。教師の持っているものの考え方、性格というものが、相手によってそれが学び取られていく。それだけに、その意義は、非常に強い倫理性の要求される性格のものじゃなかろうか、こんな感じを抱くわけでございまして、私は聖職というようなことばが使われる場合には、そういう気持ちを込めて使われているんじゃないかなと思っている一人でございます。
  105. 馬場昇

    馬場委員 ここで第一条で「すぐれた人材を確保」する、こういうような目的になっておるわけでございますが、現在の教職員というものの実態について、ここでわざわざすぐれた人材を確保するという法律を出しておられるわけですが、現在の教職員人材という範疇においての実態、どうお考えになっておられますか。
  106. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 どの程度で満足をするかということによって私は違うと思いますけれども、だんだんと大学の教育学部を志望される方が少なくなってきているんじゃないだろうか、あるいはその質が必ずしも向上しているとは見られないのではないだろうか、あるいは男子の方が教職を志望される方が極度に減ってきているのじゃないだろうかということになってまいりますと、魅力のある職種といえなくなってきているおそれが多分にある。この点が心配だという気持ちはあります。教育現場のあり方につきましていろいろな意見もあるようでございますけれども、少なくとも教育界を目ざして、りっぱな方々がどんどん入ってきてくださるようなものにしていかないと、将来が不安だという感じを強く持っているものでございます。
  107. 馬場昇

    馬場委員 現在おる者の人材について云々ということは、考えておられないわけですか。
  108. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 こういう傾向がずっと続いてきておりますので、私はいまの教育界そのままで満足かといわれますと、とても満足できない、もっと多くの方々から尊敬を集める充実したものにより以上に持っていきたい。どこで満足するかということによって違うと思うのでございますけれども、私はやはり日本の将来を左右するのは教育だと考えておりますし、また父兄の立場から考えましても、自分の子供たちがりっぱに成長してくれることを何よりも願いにしておられるだろうと思うのでございます。そういう父母の願いの立場から考えても、父母の方々みんな満足されているかといいますと、そうはいえない。だから国家、社会の立場から考えましても、いまの父母の立場から考えましても、やはりこのままでいいとは言い切れない、もっと充実したものにしていきたい、こう申し上げることはできるのじゃないかと思います。
  109. 馬場昇

    馬場委員 この表題ですけれども、法律の名前ですけれども、さっき尋ねましたら、「学校教育の」という「学校」には……(「定足数がない」と呼ぶ者あり)委員長、定足数は達しているのですか。
  110. 田中正巳

    田中委員長 それは理事さんからそういう話はしてください。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  111. 田中正巳

    田中委員長 では速記をとって。  続けていただきます。
  112. 馬場昇

    馬場委員 それでは続けます。  当初質問いたしましたこの表題の「学校教育」の「学校」というのは、幼稚園から大学までを示しておる、こういうことばでございますが、そういたしますと、大学、高専、高等学校義務教育学校、幼稚園の水準維持向上のための義務教育学校教育職員の、こう読まなければならないと思うのです。ちょっと無理じゃありませんか。
  113. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 たびたびお答えしておりますように、教員給与を他の一般公務員に比較して優遇するということにつきましては、他の公務員を所管しておられるところからは相当な抵抗のある問題でございます。抵抗のある問題でございますので、義務教育学校先生方給与改善をてこにして、学校教育全体の水準維持向上をはかっていきたいというねらいにさしていただいているわけでございます。そういうふうにお読みいただけるのじゃないかと考えるわけでございます。
  114. 馬場昇

    馬場委員 教育に関することですし、また法律の名前というのは、国民になるべくわかるようにしなければならない、こういうように私は思うのです。そしてまたこれは日本文としてもなっていないのじゃないか。たくさんの学校教育水準を向上するのに、義務教育の諸学校教員人材を確保する、そういう形になっていますね。これは日本文としてもなっていないのじゃないですか。国民によくわからないのじゃないですか。それについての大臣の見解を聞きます。
  115. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 先ほど来申し上げますように、たいへん苦心の存するところでございます。苦心の存するところから、こういう表現になっているわけでございますけれども、必ずしもたいへんわかりいい表題だと、私も思っておりません。思っておりませんけれども、これをまとめるにつきまして、それ以上の表現を使うことは困難であった、いま過去を振り返りまして考えましても困難であった、こう申し上げざるを得ないと思います。
  116. 馬場昇

    馬場委員 日本文としてなっておると思いますか。名前を変える必要は考えませんか。
  117. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 国会におまかせいたしたいと思います。
  118. 馬場昇

    馬場委員 議案を提出して、審議するのは国会ですから、国会にまかせるというのは当然なことです。これは提案者として苦心のところはわかりますけれども、日本語として考えてみた場合でも、国民にわからせるという場合でも、やはりこの表題というのは不十分であるということは認めますね。
  119. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 義務教育をてこにして、教育全体の水準を引き上げていきたいなんという、たいへん大それた希望を持っているものでございますから、やはりいま振り返って考えましても、この程度以上のわかりやすい表現を使うことは不可能であったんじゃなかろうか、こう述懐申し上げているわけでございます。
  120. 馬場昇

    馬場委員 これ以上はできない、しかし、違うでしょう、日本語としておかしいでしょう。おかしいと思われませんか。  たとえば、これをかえて読みますよ。高等学校一つ例をとりますと、高等学校教育水準維持向上のための義務教育学校教育職員人材確保に関する特別措置法、こう読まなければなりませんね。大学に入れかえてみた場合にはまたおかしくありませんか。そしてまた、あなたがほんとうに義務教育をてこにしてやるというなら、そういう名前に変えたらどうですか。
  121. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 文部省の苦心のところもひとつ理解していただきたい、馬場さんは、一つも理解していただいていないなという気持ちを私は申し上げたいような気がいたします。国会でお変えいただいたらいいと思うのでございますが、「学校教育」でやっとまとまったわけでございます。しかし、義務教育学校にしたくない――事実交渉過程ではあったんです。あなたが言われますように、「学校教育」を「義務教育学校」とすべきだという意見もずいぶんあったんです。あったんですけれども、ねらいはそう局限したくないものですから、あえて「義務教育」ということばを入れなかったわけでございまして、私も、非常にわかりやすい表現だと一つも思っていないのです。思っていないのですけれども、しかし、いまのような経過から考えますと、振り返ってみても、やはりこれ以上いい知恵は出なかったんじゃないかと思っているわけでございます。しかし、国会で御審議いただいているわけでございますので、国会でどう改正していただこうと、とやかく申し上げる性格のものではない、こう思っているわけでございます。
  122. 馬場昇

    馬場委員 私がこれをくどくど言っておりますのは、苦心のことがあったと言われますから、あとでまた経緯について質問をしたいと思うのですが、言うならば、自民党内のお家の事情でこうなった、あるいは大蔵省との交渉の不十分さでこうなった、こういうぐあいにしか私は考えられないのです。だから、そういう点につきましては、この法律というのは非常に拙速、ずさんきわまりない。ほんとうに大臣答弁されましたようならば、上のほうを変えなくて下のほうを変えればいいのです。「学校教育」というならば、あとを「学校教育学校の」と言いかえればいいわけですから、そういう点について、非常にずさん、拙速というような感じがしてなりません。  そこで、具体的にこの法案国会提案までの経緯について尋ねてみたいと思います。  大臣は、私の本会議における質問に、「教員の専門職としての地位を確立するため、年次計画を立て、教員の処遇を大幅に改善する」という自民党の公約を実現するものであります、こういうような答弁をなさいましたね。私は国務大臣たる文部大臣質問をしたのですが、自民党の公約の答弁がありました。私は初めての国会議員で、このことの是非は法律的によくわかりませんけれども、どうもおかしい。文部大臣質問したところが、自民党の公約の発表があった、こういうことについて、これは適切であるかどうかということを私は十分わからないのですけれども、大臣どうですか。
  123. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 この間、受田さんから、教育は特に国民全体の合意の上に立って行なうようにすべきだというような受田さん自身のお考えのもとに、私があなたに答弁したときに自民党の公約を掲げた、そのことの御指摘がございました。それで私は、どういう経緯でそういうお答えのしかたをしたのかいま記憶はしていないけれども、受田さんの話を聞く限りでは、ごもっとものように思います、こういうことの質疑をこの委員会で繰り返しました。  いま馬場さんのお話を伺っていて、唐突にそういう政策をきめたというふうにあるいはお尋ねになったんじゃなかろうか、間違っていたら失礼でございますけれども。そういうことから、私は公約を持ち出さざるを得なかったんじゃないか、いま過去をさかのぼって思い返しているところでございます。どういう経過でああいう答弁をしたのか、ちょっといま記憶していないのですけれども、あるいは唐突とか、そんなことをおっしゃったために、ああいうことを言ったのかなと、いま思い返しているところでございます。しかし、受田さんから、国民全体の合意の上に立ってやるためには、あまり一党一派の立場に立ったような言い方はしないほうかいいがというので御指摘がございました。私は、受田さんのお気持ち全くそのとおりと考えます、その限りにおいては問題があるように思います、そんなことを先日お答えいたしました。
  124. 馬場昇

    馬場委員 受田さんに何と答えたかを聞いていない。私がどうもおかしいじゃないかと言っておることについて、どうですかと聞いている。
  125. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま申し上げますように、唐突にこういう政策を決定したのじゃないかと言われたから、御返事としてそう申し上げたのならやむを得なかったのじゃないかと思うのですけれども、ちょっとお尋ねの趣旨を理解しておりませんので、先ほど受田さんのときの質疑を繰り返し、繰り返しここで御披露申し上げたわけであります。
  126. 馬場昇

    馬場委員 これについて私が聞いておりますのは、国務大臣質問をした、そのとき自民党の公約を発表した、これはやはり一党一派に偏すると私は思うのです。国務大臣答弁として、やはり少しおかしいじゃないかと思うから質問をしたのですよ。だから、受田さんに答えられたら、そう答えていただきたいと思うのですね。
  127. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 受田さんにも、私はどういう経過で私がそういう答弁をしたかということを、いま記憶していないんだ、こうお答えをしたわけでございます。いまあなたのお話を伺っていて、ひょいと、そういうふうなあなたの質問に対して、答えるしかたとしては、こういうふうに国民にも御意見を求めてきているのです、いま予算折衝のどさくさにすぐやったものじゃないのですというようなことを明らかにするためには、そういうことを持ち出さざるを得なかったんじゃないかなと思うわけでございます。  基本的には、教育国民全体の合意の上に行なうように努力すべきだ、だから一党一派の立場に立った議論はなるたけ避けたほうがいい、これは繰り返し申し上げているとおりでございます。
  128. 馬場昇

    馬場委員 総理大臣も、本会議で次のような答弁をしておられます。中教審答申は「国民の合意を得たものから順次実現をしてまいりたい」、こういう答弁をやっておられます。これにつきまして、この法律国会に提案するにあたって、国民の合意を得るためにどのような作業とか働きをされたか、それを聞きたいと思います。
  129. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 だんだんわかってまいったわけですけれども、やはりそういうところから、国民にすでに教員給与は思い切って引き上げたいのだということの問いかけをしている、こういうことで、私はやはり自民党の公約を出さざるを得なかったんじゃないかと思っておるわけでございます。そういういろいろな過程を経まして、教員給与の抜本改革は、やはり国民の多くの方々から御支持をいただいておるんじゃないだろうか、かように考えておるわけでございます。
  130. 馬場昇

    馬場委員 そこで、そのことはあとでもう一ぺん最終的に申し上げますけれども、四十八年度の予算要求で、文部省は国公立の幼稚園、小学校、中学校高等学校、高専、大学教員対象に、三カ年計画で五〇%上げる、そしてその一年度分として四百七十五億というものを概算要求された、こういうぐあいに私たち承知しておるわけです。これは事実ですか。
  131. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そのとおりでございます。
  132. 馬場昇

    馬場委員 大蔵省に聞きます。  この文部省予算概算要求に対しまして、大蔵省はゼロ査定を行なったということを知っております。この文部者の要求にゼロ査定をしたという当時の根拠を、理由は何でゼロ査定にしたのかということを大蔵省にお聞きします。
  133. 田中正巳

    田中委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  134. 田中正巳

    田中委員長 じゃあ、速記をとって。
  135. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 予算はすべてそうでございますけれども、いろいろな過程を経ながら政府案として閣議決定して、国会の御審議をいただくわけでございますので、結果として政府国会に御審議を求めました点について、いろいろと御討議いただきますようにお願いを申し上げたいと思います。
  136. 馬場昇

    馬場委員 ━━━━━━━━━━━━━━━
  137. 田中正巳

    田中委員長 ━━━━━━━━━━━━━━
  138. 馬場昇

    馬場委員 私が最終的に聞きたいのは、文部大臣が自民党の公約でもって国民の合意、こういうようなものを取りつけるような経過があった、こういうことを言っておられます。経過を見ますと、私は、ほんとうに自民党の公約に違反したようなかっこうで出ているのですよ。公約と違うのですよ、この内容は。そういう問題とか、そういう意味におきまして、私は党利党略というものの産物と、こう理解しておるのです。そういうことを明らかにするために私は聞いておるのですよ。そういうことにつきまして、文部大臣が少なくとも本会議場で、自民党の公約というものをとうとうと私の質問に答えるということでなければ、こういうことも聞く必要もないのですよ。そういう意味で私は聞いておりますから、少しも間違っていない、こういうぐあいに思います。  それで、さらに質問を遠慮なく続行いたしますが、本会議で私は念書の問題をお聞きいたしました。これについて私が聞いたのは、報道されるところによりますと、文部大臣は、四十八年度予算案では高校分まで計上をしていないが、愛知蔵相、倉石政調会長との協議で、予備費から支出するとの念書を取りかわしている。しかも人事院が高校を除外して勧告をすることは考えられない。こういうことを報道機関は言っておられます。そういうことで、そういう念書があるのですかと私は本会議で聞きました。これにつきまして文部大臣は、「教員の処遇の抜本的改善については、昭和四十八年度を初年度とし、年次計画を立てこれを実施する。」こういうような念書があるというぐあいに言われました。これは私の質問と少しピントがはずれておるのです。高校について予備費から出すというような念書が、倉石政調会長と大蔵大臣と文部大臣の間で、ある、あなたが新聞に発表しておるのです。これについて聞いたのですが、そこについては答えてなくて、まあ抽象的な念書があるとおっしゃいました。念書について、具体的に、その念書の内容を明らかにしていただきたい。
  139. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いま本会議でお尋ねになりました意味が、よくわかってまいりました。あなたがおっしゃいますような念書はないのであります。私が申し上げましたような念書はございます。あなたが言われましたようなことは、愛知大蔵大臣と私との間では、意思の統一はいたしておるわけでございます。念書ではございませんけれども、そういうことは話し合いをいたしております。
  140. 馬場昇

    馬場委員 あなたは本会議で念書があると言っておられるのですよ。そしてまた大蔵大臣は覚え書きがあると言っておられました。いまあなたはないと言われました。どちらがほんとうですか。
  141. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 あなたのおっしゃったような念書はないのです。念書はないのですけれども、大蔵大臣との意思の統一は見ているわけであります。要するに、人事院義務教育以外に、高校その他についても、これに準じて適用改善勧告してくれた場合には、その財源を予算には計上してないけれども、予備費等からまかなうようにします、こう言っていただいているわけでございます。また、人事院当局のいろいろな意向その他をそんたくしてみますと、必ずそういうことに触れていただけるという確信を、私たちとして抱いているわけでございます。別に政調会長も加わって、念書にしているというようなことではございません。同時に、念書としては、本会議場で申し上げましたような念書はございます。
  142. 馬場昇

    馬場委員 それではっきりしたのですけれども、本会議答弁した念書はある。私が言ったように予備費から出すというような、政調会長を含めたような念書はない。こういうことでございますが、そこで、人事院総裁にお聞きしたいのですけれども、高校を含めて勧告をされる、こういうような感触を持ったと文部大臣はいま言っておられますが、それはどういうようなやりとりが文部大臣人事院総裁の中であったのか。総裁のほうからお聞きしたいと思います。
  143. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 そもそも、そういうところまでやりとりをやらなければならぬことかどうかという気持ちを持つわけで、また実際そういうことはございません。大体常識的にお考えになれば、義務教育中心で相当大幅の給与の引き上げをやるということになりますと、これはほっておいたら、高校の先生のほうがいままで上だったのが、下になるという逆転現象も、当然起こり得るわけです。われわれとしては、教育職員の(一)表、(二)表、(三)表、(四)表までございます。それらの間のバランスは、当然われわれは責任をもって合理的に考えねばならぬことである。それにまた、ほかにもあるいは影響するかもしれぬ。そういう点はわれわれは周到に検討いたしまして、これは善処をする、りっぱな勧告をいたします。また周辺の方がお考えになっても、妙なことはようするまいよとおそらくお考えになるだろうと思うし、われわれとしてもりっぱなものを出しますから、その点は御心配は要りませんということを言ったこともございませんけれども、言わぬでもわかっておるじゃないかということです。
  144. 馬場昇

    馬場委員 文部大臣とやりとりはしていない、しかし、文部大臣が常識的に考えたのだろう、こういうようなことでございますが、じゃあ、人事院に詳しく聞きたいと思います。  人事院がいま勧告をされておりますが、人事院勧告法律根拠はどこですか。
  145. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 これはもう御承知のとおりなことでございまして、国家公務員法なり一般職給与法にもございますが、労働基本権の代償機関として、われわれとしては勧告権という重大なる使命をしょわされているということになるわけでございます。
  146. 馬場昇

    馬場委員 国家公務員法によって人事院勧告が行なわれるわけですね。これにつきましては生計費だとかあるいは民間の調査で五%差があったときとか、この法律でもって勧告をなさっておられる。そういうときに、この法律ができるという場合に、高等学校を入れるというのは、法的根拠はどれですか。法的根拠はなしに、常識なんですか。それとも法的根拠があるのですか。高等学校が当然勧告で出てくるだろうと思う法的根拠があるのかないのか。常識なのか。その辺についてお伺いしたい。
  147. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ちょっとさびしいお尋ねで、はなはだ意気そそうするわけでございますけれども、御承知のとおり、先ほどから労働基本権の代償という大きなことを申しましたのですが、大体給与関係、賃金関係というものは、普通ならば団交できまるべきところを、公務員については人事院がその代償機能を果たす役所として、その間の処置をすべてわがほうの責任における勧告によってまかない得るようにというのが、基本的には法律趣旨だろうと思うわけです。したがいまして、従来も勧告を申し上げておりますし、またその勧告あたりましては、いろいろな民間との関係その他もございますし、あるいは人材確保というような面も入ってきていることもございましたし、そういう点を百方勘案いたしまして、そしてりっぱな勧告を年々申し上げておるわけでございます。したがいまして、ここ数年間はわがほうの勧告に関する限りは全会一致で、全然反対なしに御賛成をいただいて成立をしているわけであります。これはわがほうに対する御信頼の証拠であろうという自信を持っておるわけでございます。
  148. 馬場昇

    馬場委員 たとえば人事院勧告に対して新しい法律をつくって、それに勧告をしろ、こういう押しつけられたというような経験が過去にございますか。
  149. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 それはたびたびお話にも出ておりますけれども、先ほど塩崎委員もたしかお触れになったと思いますけれども、閣議決定とか何とかで、ああせいこうせいという指図を受けるということになったら、われわれは黙っておらぬ。しかし、法律というのは、そもそも人事院をつくってくださったのは法律でございますし、勧告権をお与えいただいたのも法律なんですから、その法律でこういう勧告を、かりにいまおことばにありましたように五%以上、上げ下げをする必要があるときには勧告をしろという条文が、二十八条にあるわけですね。国会法律によってそういうことをおきめになることは、これはあたりまえのことで、それに抵抗感を感じておった日には、国会の尊厳に対する不敬罪じゃないかというくらいにさえ私は思うのです。これは全然抵抗を感じません。
  150. 馬場昇

    馬場委員 たとえば看護婦さんに人材が必要だ、あるいは公務員たるお医者さんに人材が必要だ、こういうぐあいにして、たくさんこういう法律ができたとしますね。そうした場合、いまの人事院勧告制度というものと、そういうたくさん出てきますね、そうした場合の関係はどう考えておられますか。
  151. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 すべてそういう事柄も、こまかいすみずみに至るまで法律をお出しになるという場面の御想像のもとにおけるお尋ねとは思いますけれども、これは私どもの立場からいいますと、先ほども触れましたように、公務員給与体系というものは、やはり一つの一貫した体系のもとに、私どもが一種の専門的な立場から技術的にこれを勘案していくという面においては、これはまた重要な役割りをしょわされていると思いますが、それがばらばらばらばらと、すべて法律で出てくるということになりました日には、われわれとしては、ちょっとそれは困るなという気持ちを持つことは、これはお察しいただけると思います。  ただしかし、これもたびたび申し上げておりますように、国権の最高機関が、あるいは立法機関法律でおきめになろうというのに、われわれがそれは困ります、それを阻止するというような大それたことは当然できない。したがいまして、そういう法案が出るときには、あるいは準備されてあるいは審議をされるときには、必ず人事院のわれわれをお呼び出しを願って、これは賛成か反対かということをちゃんと意見をお聞きになった上でやってくださる分には、これはおのずから帰趨は明らかになって、適切なところに事柄が落ちつくだろう。非常に素朴な考え方で、また極端な例をお出しになりましたから、たまたまその設例に乗ってお答えしますけれども、一方においては国権の最高機関というものに対する至上の権威というものは、われわれはどうしてもこれは認めざるを得ない。これはいまの憲法からいったらそうです。最高機関に対して刃向かうなんということは、これは不敬罪だと申しましたけれども、昔だったら不敬罪というくらいの気持ちを持ちながら、しかし、われわれはやはり一貫した、統一した給与体系というものを持ってその調整に当っているわけでございますから、その点の調整は、これは御審議の際に国会におかれても、われわれの意見を十分聞いていただきたい。また、たびたびいままでほかの人事院関係法案もございましたけれども、聞いていただいて、私ははなはだ不遜なことではありますけれども、賛成いたしがたいことはいたしがたいとはっきり申し上げ、またそれをお取り入れいただいた例もあるわけですから、そういう機会だけはお与えいただきたい。それでこの間ここで、喜び勇んで出てまいりましたと申し上げましたのは、そういう意味でございます。
  152. 馬場昇

    馬場委員 私が聞いておりますのも、法律ができたらあなたがどうこうという意味じゃないのです。いま審議する過程ですからね。そういうことで、よく聞いておるのです、人事院意見をですね。だから審議をする過程においては――法律ができたらあなたがどうこうすることはできないということはわかっていますから、過程についての実は意見を聞いておるわけです。そういう意味でお答えしていただきたいと思うのですけれども……。  次に、こともの人事院勧告はいつごろやられますか。
  153. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ちょっと話がまた急転いたしまして、実は例年から申しますと、去年は八月の十五日でしたか、勧告を申し上げた。大体八月の半ばごろに勧告を申し上げておるのが例でございますけれども、しかし、これはわれわれとして、できれば少しでも早く勧告を申し上げることが、これは国会の御都合なり政府の御都合を考えてどうということは言えませんけれども、かりに臨時国会が早く開かれるならば、それに間に合わせられればそれに間に合わせられるような時期に用意しておけば、これは公務員諸君の皆さんのためにはなるじゃないかという気持ちもありまして、ことしも今度の国会の会期中にはこれは幾ら何でもちょっと間に合いませんですけれども、やはりできるだけ早く作業を終わりまして、去年よりもまたことしのほうが何日か早目にということで、これは目下鋭意努力をしております。なるべく早く勧告を申し上げたいと思っております。
  154. 馬場昇

    馬場委員 高等学校の給料表ですね。また表に戻ってまいりますけれども、高等学校の給料表は、従来義務制よりも高かったですね。これは義務制の給料表と高等学校の給料表、この関係は従来どのようにお考えになっておられましたか。
  155. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 これは一般に三本立てというようなことで呼ばれております。俸給表が別になっておりますけれども、だんだん資格といいますか学歴の関係が一緒に近づいてきておるというような面も現実としてございますし、そういうような面から、いずれ別の俸給表にするのがいいかどうか、三本立てというものを踏襲するのがいいかどうかというような基本的問題は、教員組合の方々の間にもいろいろ御議論のあるところでございます。われわれとしても問題意識は持って臨んでおりますけれども、問題とは思いますけれども、まだきょうあすにどうというところは結論を得ておりません。しかし、それはおっしゃるとおり、一つの大きな問題を含んでいるという認識だけは持っております。
  156. 馬場昇

    馬場委員 従来の経過を聞いているのですけれどもね。従来高等学校が高いわけでしょう。だから、それと義務制との関係を、どのようにしてそういう差をつけておるのかという意味です。
  157. 尾崎朝夷

    ○尾崎政府委員 従来からの義務制の場合と高等学校の場合におきましては、義務制の場合には、教員の資格としまして師範学校卒ということでございましたのですが、高等学校の場合には専門学校卒以上ということで、教員の免許資格が違っておりましたので、そういう関係から、従前の関係におきましては、大体つまり昭和二十三年以来の関係といたしましては、義務制の関係は、行政職で申しますと五等級との関係比較、それから高等学校の教諭の場合には四等級比較という関係で従来対応してまいっておるという状況でございました。
  158. 馬場昇

    馬場委員 これを先ほど総裁は、いま検討中だというようなことをおっしゃいましたが、従来の行政職の五等級が義務制、それから四等級が高校だ、これはいまこういうことを続けていくかいかないかということを検討中ですか。
  159. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 いずれ資格なり学歴の問題からいって、これが当面の問題になる時期が近づいてくるであろうという意識を持って検討をしておるわけでございます。いろいろまたお教えを受けるべきことがございましたら、御意見もお聞かせいただければたいへん幸いであると考えております。
  160. 馬場昇

    馬場委員 次に、総理府のほうにお尋ねしたいのですけれども、この法律で、いま原案の段階ですけれども、他の公務員よりも義務教育学校の教師の待遇を優遇する、こういうぐあいになっておるわけでございます。これに対して、公務員給与担当大臣、総理府総務長官ですけれども、これに対して公務員賃金との関係についての総理府の見解を承りたいと思います。
  161. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 この法案では、教員の特殊な立場にかんがみまして、他との均衡を若干バランスを違えても給与改善をすべきである、こういう趣旨でできているわけでございますが、その具体的な中身は、人事院勧告におまかせしてあるわけでございます。したがいまして、もちろんどういう職種とどういう程度の比較をしてくるかということは、いろいろ複雑な問題が出てくると思います。私たちも、こういう法案が出ることによりまして、他の職種との間にいろいろな問題が出てくるだろうと思いますが、具体的にはやはり人事院がいろいろな角度から検討されまして、均衡をとった勧告をなされるであろう、かように考えております。したがって、その勧告に基づいて措置をすることが適当ではなかろうかと考えております。
  162. 馬場昇

    馬場委員 この法律をすなおに読みますと、一般公務員は絶対に教職員を上回ることはできない、こういうような法律案になっているわけですね。これにつきまして、いまお話を聞いたのですけれども、まあ勧告が出てから考えるというようなことでございますけれども、このことは、やはり公務員全体のいままでの賃金のあり方として、人事院勧告待ちということを、総理府、とってこられたわけでございますね。そういう、言うならば従来の公務員賃金に対する考え方というのが、この法律が出てまいりますとやはり変えざるを得ないということになるのじゃないかと思うのです。そういう面について、従来の人事院勧告体制に対する総理府の考え方というのを、さらに御説明願いたいと思います。
  163. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 人事院給与勧告権というのは、私は非常に幅の広いものであると思っております。どういう要素を加えて判断をするか、かなり権限の幅の広いものであると思っております。したがいまして、この法律が出たことによって、そういう給与のたてまえ、勧告権に大きなひびが入るとかということは全然考えておらないのでございまして、ことに具体的には人事院勧告によって個別の給与がきまるわけでございますから、基本的な制度において何も支障はなかろうかと思っております。ただ、一般的に、公務員給与をどういうふうにきめようかということにつきましては、実は御承知のように公務員制度審議会でもいろいろ御検討中でございまして、その結論がどう出るかによってまたいろいろな考え方も出てまいろうかと思いますが、少なくとも現在の法律制度のたてまえから見た場合におきましては、特別支障はないものと考えております。
  164. 馬場昇

    馬場委員 この法律の前提になる人事院勧告というようなことを近く行なうことになるわけでございますが、その前提となる問題についてひとつ聞いておきたいと思うのです。  ことしの四月二十八日に、坪川総務長官と公務員共闘の代表の交渉が行なわれました。そのときに、次のような確認が実は行なわれておるわけでございます。公務員の賃金について四月の十四日の三大臣、これは官房長でなしに官房は副長官ですが、総理府総務長官、労働大臣、この交渉において、民間、公労協の賃金に見合った改善が行なわれることを期待する、こういうぐあいに三大臣が四月十四日の交渉公務員共闘に答えられた。そういうことについて、これは事実であるかどうかということをお伺いします。
  165. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 四月十四日に公務員共闘、総評と会談を持っておりますが、そのとき政府側から出席されましたのは、総務長官と厚生大臣と労働大臣の三人でございます。官房副長官は御出席でなかったかと思います。  その中にはいろいろ、年金問題であるとかあるいは時間短縮、週休二日制の問題とか、スト権の問題とかございましたが、賃金の問題についても重要な話し合い中身であったわけでございます。その際、総務長官からは、この賃金につきましては、人事院の適正な勧告を待って処置をするつもりである、その勧告を尊重して政府の態度をきめていきたい、こういうことを一貫してお答えになっておると思います。  ただ、そのときでありましたかあるいはその後でありましたかに、組合のほうから過去の数字等をいろいろとあげまして、いままで少なくとも官民給与の比較を人事院がなさり、その場合に公労協の賃金の上昇率というものとかなり実質的な近似性を持っておるじゃないか、そういうようなことから、そういうことを期待することは、必ずしも無理な期待ではないだろうというような趣旨話し合いがあったかと思いますが、政府とあるいは組合側の間で、そういうことを期待するというような了解をしたということではないと理解しております。
  166. 馬場昇

    馬場委員 それじゃ、民間、公労協の賃金に見合った改善が行なわれることを期待するということを、おっしゃらなかったというのですか。
  167. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 政府、ことに公務員給与を担当する大臣としては、もちろん国民全体の経済、財政にも影響のあることですから無理は言いませんけれども、なるべくやはり公務員の立場を考えた勧告のあることが望ましいということは、基本的に申し上げてあるわけでございます。ただ、その結果どういう勧告になるかということは、これはあくまでも人事院の問題でございます。ただ、従来のいろいろな数字的な経過を見ますと、公労協の賃上げ率とかなり接近した数字で勧告をされておるというような事実がございますので、そういうことを組合として期待をされるということは、あながち無理な期待ではあるまい、まあそういう意味のことがお話に出ておりますが、政府のほうで、それを期待をしておるということはおっしゃっておらないと思います。
  168. 馬場昇

    馬場委員 四月二十六日、総理府の総務長官は、公務員共闘に対しまして、公務員人事院勧告も公労協の引き上げ率が反映さるべきだ、こういうぐあいにお答えになった、こういうぐあいに聞いているのですが、これはそういう事実がありますか。
  169. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 これは、先ほど言いましたような経過を踏まえまして、この際総務長官が申されましたことは、公務員の賃金問題については人事院勧告を尊重して措置する考えである、ただ、従来の経験からすれば、公労協の引き上げ率が勧告に反映するものと思われる、こう申し上げております。
  170. 馬場昇

    馬場委員 期待すべきだ、私は、確認したと聞いているのですけれども、思われるというようなことだった、こういうぐあいにおっしゃいますが、それはあとでさらに確認がどっかで行なわれると思います。  次に、さらに総務長官は、以上の趣旨に基づいて――四月二十七日に公労委の仲裁裁定が出ましたね、そのときに、公労委の仲裁裁定が一四・七%です、これから見て公務員の賃金はほぼ一四・八%、一万四千円、これを期待をするということを回答をされておりますが、これは事実ですか。
  171. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 四月二十七日には、総務長官は組合と会見をしておられません。
  172. 馬場昇

    馬場委員 じゃ日付が間違っておるかもわかりませんが、中身の、公労協の仲裁裁定が一四・七%ですから、それにつれて公務員の賃金も一四・八%、一万四千円を期待する、これは日付ははっきりしませんけれども、そういうことをおっしゃっておられますか、どうですか。
  173. 皆川迪夫

    ○皆川政府委員 四月二十八日に、私が公務員共闘の方々とお会いをいたしました。その際に、公労協関係の賃金もきまったので、従来の経過からして、いままで政府が述べておられたことにこの段階において変わりはないかどうか、こういうお話がございました。私は、事務的な立場からいたしますと、公務員給与勧告について、その水準にいろいろな予測を私が申し上げることは適当であるまい。ただ、一般的に言いまして、従来申し上げておったニュアンスのことばが、今時点においてそう変わるというようなことはあるまいということを申し上げております。一四・八%というのは、切り上げればそういう数字になるなというようなことを、組合のほうで言っておられましたけれども、これは別に私のほうで、それを了承したとかいう性質のものではございません。
  174. 馬場昇

    馬場委員 文部大臣にお聞きしますが、いま総理府のほうとだいぶやりとりをいたしました。これについて、ことしの給与改定、人事院勧告について、文部省の希望といいますか期待といいますか、民間、公労協の引き上げに教員を含めた公務員がなるということに改善されることを期待するとか、あるいはそういう引き上げ率が反映されるべきだとか、さらに公労協の仲裁裁定が出ましたときの一四・八%、一万四千円、そういうものを期待するとか、交渉公務員共闘と給与担当大臣で行なわれておるのです。こういうやりとりといいますか見解について、文部大臣としてはどのような気持ちを持っておられるか、お伺いしたいと思います。
  175. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いずれ人事院から、給与改定の改善勧告されるわけでございますけれども、公労協の仲裁裁定は、重要な基礎になるものだ、私はかように期待をいたしております。
  176. 馬場昇

    馬場委員 いま総理府と文部大臣に聞いたのですが、これらについて人事院総裁はどうですか。
  177. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 馬場委員はベテランで、這般の事情は十分御承知の上で御発言になっていますけれども、これは第三者の方々国民方々がお聞きになりますとちょっと誤解を招くおそれもあると思いますので、たいへん僭越でございますが、私どもの考え方の筋道だけはここで申させていただきたいと思います。  公労委の裁定がいつも私どもの勧告の前に出ますということと、私どもの勧告のパーセンテージと公労委の裁定のパーセンテージが、大体あまり違わないということは事実であります。したがいまして、たとえば勧告に対する予測を、新聞社の方々、その他組合の方々もそうですけれども、あらゆる関係者の方々がいろいろされます。そういうときに、公労委の裁定の率というものも、そのときの一つの基礎、一つの材料にお使いになる。それから一般の賃上げですね。ことしの賃上げはどのくらいだった、その相場というようなもの、それらを加味して、ことしの勧告はこのくらいになるだろう、これは皆さん関心のある方はそれぞれお考えになり、またおっしゃっておられるようであります。  私どもに言わせていただけば、これから先は釈迦に説法ということになるのですけれども、御承知のように、私どもは七千の民間事業所に人海戦術で克明に当たって、一人一人の従業員の、何十万というカードを調べた上で、そして民間給与水準を確認して、そして公務員給与と突き合わせた上で、格差を算定しておるということが事実でございます。したがいまして、そのわれわれが独自に調査をいたしました精密なる民間調査の結果を待たなければ、格差がどう出るか、引き上げの率がどうなるかということは出ないわけなんです。したがいまして、逆にわれわれに言わしていただけば、公労委の仲裁裁定も、実は最近は民間の賃金の動向というものを相当検討された上で出しておられる。しかし、私どもほどに精密なる調査の上のものではございません。しかしながら、さっき申しましたように、現実においてそうあまり隔たっておらぬということはあるわけです。私どもに言わせていただけば、たいへんなまいきな言い方ですけれども、なるほど公労委の裁定もあまりピントはずれじゃなかったな――われわれの調査のほうが一番信頼できるわけですから、そういうような批判をわれわれが逆にするという立場にある。法律をごらんになりましても、公社、現業の関係給与については、国家公務員給与をも参考にしてきめろというのであって、われわれが逆に公社、現業のほうの給与を参考にするなんて、これは法律からいってもさか立ちなんで、あり得ざることであります。しかし、結果においては、公労委もさすがよくおやりになるわいという結果できておる。したがいまして、周辺の方々、総務長官もまた関係者として深い関心をお持ちでしょうから、いろいろな感想を述べられるのはあたりまえ、組合の方々も、われわれしょっちゅうお会いしておってそういう観測をお述べになる。新聞記者の方もそういうことでございまして、あとはわれわれの集計が目下進行中でございまして、刮目してぜひこれをごらんいただきたいということに尽きるわけでございます。
  178. 馬場昇

    馬場委員 次に、自治省にお尋ねしますけれども、地方公務員人事委員会勧告でもって改定が、条例をつくってやられるわけでございます。これについて、この人材確保法案が通ったというときに、地方公務員たる教職員、各都道府県の人事委員会、これとの関係を明らかにしていただきたいと思います。
  179. 植弘親民

    植弘政府委員 お答えいたします。  地方公務員につきましては、教職員も含めまして従来から、地公法ないしは教特法の規定によりまして、国の職員に準ずるということで指導してまいっております。したがいまして、今回もこの法律によりまして人事院が適切なる勧告をされますと、それに準じまして地方の人事委員会にも指導いたしたい、このように考えております。
  180. 馬場昇

    馬場委員 地方の人事委員会を自治省は指導するということをおっしゃいましたが、これは行政指導ですか、それとも法律によってそうしなければならないのですか、どちらですか。
  181. 植弘親民

    植弘政府委員 行政指導でございます。
  182. 馬場昇

    馬場委員 地方の人事委員会が、独自的にこういう法律が出たけれども、われわれはこれに縛られない、かってにするのだ、こういうようなときに行政指導はなさるけれども、何か法的な措置がありますか。
  183. 植弘親民

    植弘政府委員 教育公務員につきましては、教特法の二十五条の五によりまして、「公立学校教育公務員給与の種類及びその額は、当分の間、国立学校教育公務員給与の種類及びその額を基準として定めるものとする。」という規定がございます。これを根拠にしてやるわけでございます。
  184. 馬場昇

    馬場委員 その教特法と人事委員会関係はどうですか。
  185. 植弘親民

    植弘政府委員 人事委員会は、教職員も含めまして、地方公務員について、人事院と同じような機能を果たしている点は先生よく御承知のとおりと思います。したがいまして、人事委員会がその機能を達成いたしますためには、地方公務員法なり、特に教員の特殊性にかんがみて定められております教特法、両方あわせて人事委員会が機能する、こういうことになるわけであります。
  186. 馬場昇

    馬場委員 そうしたならば、教特法は法律的に人事委員会を縛るのですか、縛らないのですか。
  187. 植弘親民

    植弘政府委員 人事委員会がその機能を果たしますためには、当然教特法は作用してまいりますから、縛ることになります。
  188. 馬場昇

    馬場委員 人事委員会を厳密に法律的に言った場合には、やはりこの法律ができたというときには人事委員会関係するような勧告に関する法律というのをどこか改正する必要があるんじゃないか、こういうぐあいに思いますけれども、そういう必要はありませんか。
  189. 植弘親民

    植弘政府委員 地方公務員給与決定につきましては、従前から人事院勧告の線に従って、準じて行なうというルールが引かれておりますために、今回も人事院勧告が出ました場合におきましては、地方団体といたしましては、当然これに準じて行なうということでありますから、特別の措置は必要ないと思います。
  190. 馬場昇

    馬場委員 ルールで行なわれているというのは、それは慣行ですか、法律ですか。
  191. 植弘親民

    植弘政府委員 先ほどもちょっと触れましたが、人事委員会が行ないますためには、地公法の二十四条の規定がまず冒頭に働くわけでございます。
  192. 馬場昇

    馬場委員 百三十六億予算が組んであるわけですが、地方財政について、たとえば地方公務員たる教員改善されますね。そのときの財政措置はどうなりますか。
  193. 植弘親民

    植弘政府委員 先生、お断わりいたしますが、地方財政の問題は、私どもの財政局が主管いたしておりますので、若干適当でないと思いますが、自治省から私だけ出席しておりますので、お答えいたします。  御承知のように義務教育職員につきましては、義務教育国庫負担法がございまして、国が二分の一、地方団体が二分の一ということで給与の財源を持つわけでございますが、この地方団体が持つ分は、地方交付税の中で措置されることになっております。したがいまして、当然にそういう法律が生まれますと、義務費として地方交付税の中に算入されることになります。そういたしますと、地方交付税全体の財源が足りるかどうかということは、地方財政全体の問題でございますから、その際、あわせまして地方財政の十分であるかどうかの検討をする問題だと思っております。
  194. 馬場昇

    馬場委員 さらに、文部省に戻りますけれども、教職員の賃金の実態についてお伺いしたいと思います。今日の教職員の賃金実態というものについて、文部大臣はどう考えておられますか。
  195. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 教職員公務員でございますので、公務員全体の問題として人事院が把握し、それで給与改善勧告していただき、そのとおり実現してまいっているわけでございます。しかし、教育の将来を考えます場合には、もっとこの処遇を改善をしていきたい、そして人材教育界に導入されるように努力をしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  196. 馬場昇

    馬場委員 教職員は非常に苦しい生活実態じゃないか、賃金が非常に低い、私はこういうぐあいに考えておるわけです。だから、文部省としてたとえば賃金なり生活実態調査を調べられたことがあるのかどうか、あるいは非常に足りておるのか、あるいはどのくらい赤字を出しておるのか、どのくらい不足して生活しておるのか、それが何%なのか、こういう賃金の実態調査、収支の状態、現実というものをお調べになっておられるか。そして調べてあれば、十分であるかどうか、そういう実態です。
  197. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 教員給与の問題につきましては、四十七年度、四十八年度、研究調査会を持ちましてあるべき姿を求めているわけでございます。食っていけるか食っていけないかというような見地での調査ではございませんで、私たちはやはり教育の充実、振興を考えているわけでございます。食っていけるか食っていけないかという問題につきましては、私は人事院を高度に信頼をいたしておるわけでございまして、人事院がそういう見地におきまして十分な調査もし、改善勧告していっていただいていると思います。しかし、文部省サイドから見まして、毎年人事院に対しましても、こういう点を勧告の中に織り込んでくださいよと、お願いをかなり多くの項目について申し上げているわけでございます。それ以外に、いま申し上げましたように調査会を設置して、さらによい結論を出すように、いま調査を続けているところでございます。
  198. 馬場昇

    馬場委員 私が聞いているのは、そういうことではなしに、具体的な今日の賃金の実態調査をしておられるかどうかということです。しておるならしておる、しておらぬならしておらぬでけっこうです。文部省がそういうような調査をして実態を把握しておられるかどうかという意味です。
  199. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 ただいま大臣から申しましたように、現在調査会で検討をお願いしておりますけれども、その検討の資料の一環といたしまして、ただいま教職員生計費調査というものもやっておりますが、まだ集計ができておりません。
  200. 馬場昇

    馬場委員 それはいつごろ集計ができますか。
  201. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 まだ完全な調査票が手元に来ておりませんものですから、参りましてから集計をいたしたいと思います。調査会の期間が大体二年でございますから、それに間に合いますように、できるだけ早く集計したいと考えております。
  202. 馬場昇

    馬場委員 一般職に比べて、教職員の給料表はどうなっておりますか。
  203. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 これはよくいわれておりますように、先ほど人事院総裁も申し上げましたが、初任給一般公務員に比べまして非常に優遇されております。平均で申しますと一〇%程度は高いというふうにいわれております。しかしながら、いわゆる逆転現象が上級職の乙に比べますと十七年目から始まるわけでありまして、この点もたびたび国会でお取り上げをいただいて、御批判がございます。最終的に見まして、たとえば校長先生でございますと、私ども一般国家公務員の地位で申しますと大体課長補佐程度、それから一般教員でございますと係長と課長補佐の間というようなことでございまして、その点につきましていろいろ御意見がある、私どもも不満足な点があるということを感じているわけでございます。
  204. 馬場昇

    馬場委員 人事院にお聞きしますけれども、この逆転現象というのは、今回の通常の勧告で解消されるのか、それともこの法律ができたあと解消されようと思っておられるのか。一般職との逆転現象の解消についてどういう見解をお持ちですか。
  205. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 いずれにいたしましても、今回の法律は、勧告の内容に大きな影響のあることでございますから、非常に僭越な言い方をしますけれども、早く通していただければわれわれの仕事がやりやすくなるな、これは正直な感想を持つわけです。ただ、一つの根本の手前の問題として、ここでいい機会でございますから御同情を得ておきたいのは、私ちょっと先ほど申しましたように、民間の給与調査をやって、公務員側の給与とこれを職種別に突き合わせておるわけです。ところが、いつも学校先生と看護婦さんは、公務員のほうは民間の方々よりほんとうは高いのです。それ以上上げる必要がむしろないという数字が出ておるわけであります。それにもかかわらず、私どもはやはりその使命の重要性と申しますか、先生方あるいは看護婦さん方の職務ということを考えまして、できる限り積み上げ積み上げて、先ほどの話のように初任給なども十分考慮してきたということであるわけです。しかし、官民総合格差の中でのやりくりなものですから、思い切って上げたくても、あまり上げよると、――九州弁になりますけれども、あまり上げよると、むしろ行政職の犠牲のもとに、こっちへ分け前を持ってこなければならぬという一つの壁がございまして、そういう面もあって、努力はしていきますけれども、目のさめるようなことはできなかったというところにこの法案が出てきているものですから、われわれとしては率直に言ってこれに飛びついておるということで、いまの交差点のところの、逆転のところの調整なんかも、これとあわせてこれはりっぱな改善ができるなと胸をわくわくさせて期待をしておるというのが実際でございます。
  206. 馬場昇

    馬場委員 文部省にお尋ねしますけれども、日本の教員の賃金ですね。これが諸外国の教員賃金に比べましてどの程度になっておるか、調査資料があれば発表願いたいと思うのです。
  207. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 私どもで比較したものというのはないわけでございますが、たまたまこれは毎日新聞に載っていたものでございまして、スイスの銀行協会の調査でございますが、スイスを一〇〇といたしますと、東京の場合が四七、それからロンドンが四八、パリが四六、ローマが四八、そういうところが大体似たようなところでございまして、一番高いのはニューヨークで一六八、これはドルの換算がちょっと違いますものですから正確ではないと思いますが一六八、それからストックホルムが一二二、それからデュッセルドルフが一〇〇というふうな一応数字が出ておりますので、私ども、どういう時点で、これをどういう観点から調査したというのかよくわかりませんけれども、大体の傾向はわかるのじゃないかというふうに考えております。
  208. 馬場昇

    馬場委員 文部省教員の賃金を優遇したいといって、わざわざこういう法律を出しておるわけですが、日本の教員と諸外国の教員との賃金の比較、そういうものを調査もしていない、資料を持っていないというのははなはだ遺憾だと私は思うのですよ。いまどこかの銀行の調査を発表せざるを得ない、ほんとうに賃金を考えようと思われるならば、ILO・ユネスコというものもあるし、勧告をもしておるわけだし、そういう中で文部省どうですか、こういう調査資料を文部省が持たぬというのは、やはり行政の怠慢じゃないですか。
  209. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 私どものほうの調査はございますけれども、たとえば初任給がどうである、あるいは最高俸がどうであるというふうな諸外国の調査はございます。しかし、どの時点をとらえるかということでだいぶ違うものですから、全般的な感じをつかむのには、いまのような調査が一番適当じゃないかということでお答え申し上げたわけでございますけれども、たとえばアメリカの場合には、一般教員が小学校で年額二百二十九万七千八百円、これは三百六十円一ドルで計算したものでございます。最高が三百三十四万八十円、それからイギリスでは初任給が九十四万五千五百五十八円、これはポンド八百二円で計算したものです。最高が百八十二万七千七百五十八円。それからフランスでは初任給が七十二万三千四百三十六円、最高が百四十万二千五百八十円、これはフラン六十円で計算したものでございます。それから西ドイツでは初任給が百三十六万六千八百六十七円、最高額が二百二十一万五百三十三円、これはマルク九十六円で換算したものでございます。それからソ連では初任給が三十八万四千円、最高が六十五万七千六百円、これはルーブル四百円で計算したものでございます。そういうふうな調査がございます。
  210. 馬場昇

    馬場委員 少し話が古くなりますけれども、三本立ての給与法と普通いわれておるのは、先ほどちょっと言ったのですけれども、これは小中学校よりも高等学校を高くするという議員立法でできたわけでございますが、そのときの考え方が、ずっと現在まで続いておるわけです。だからこの三本立ての考え方というのと、この法律案との関係について、それは文部省にお伺いいたします。   〔委員長退席、西岡委員長代理着席〕
  211. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 いわゆる三本立ての給与体系というのは、先生指摘のとおり、これは議員立法で昭和二十九年から行なわれておるものでございます。その関係がいままで続いているわけでございますけれども、その制定当時の理由は、先ほど給与局長からもお話し申し上げましたけれども、一つは学歴差の問題があるわけでございます。それからまた別の観点としまして、校長登用率とか、そういうようなことも要素の中に入っておるようでございますが、そういうような周辺のいろいろな事情は別にいたしまして、現在までその体系がずっと続いてまいったわけでございます。これにつきましては、先ほど人事院のほうからもお答えございましたように、いろいろ検討する余地もあるということでございまして、私どもは、人事院のほうで今度の義務教育職員給与改善等と相まって、適当な御検討がいただけるものというふうに考えております。
  212. 馬場昇

    馬場委員 教員の賃金決定の原則というものを、文部省はどう考えておられますか。
  213. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 これはほかの、たとえば裁判官それから検察官等も同じでございますけれども、一応基準になりますのは、いまのところは一般公務員というものが基準になって、それとの均衡、それから特殊な事情によりまして給与体系がきまっておるというふうに理解をしておるわけでございますが、特に教員の場合には、先ほどお話がございましたように初任給が高い。これは先生という仕事が、学校を卒業しましてからすぐ一定の子供さん方を預って一人前の授業をやらなければいけないというふうな職務の特殊性があるわけでございます。そのほかにもこのたび提出いたしておりまして、理由にも述べておりますように、よき人材を確保したいというような観点もございますし、それから大臣から申されましたように、ともかく人を教育するんだというふうな観点もございましょうし、そういうふうな要素をどれだけ取り入れていただけるかということは、これは人事院のほうでもそういう特殊性をお考えいただくと同時に、私どもも文部省の立場としまして、いままで文部大臣から人事院に対しまして、たびたびこういう点を改善してほしいというお願いを申し上げたわけでございます。教員独自の体系がつくれのかどうかという点は、私どもいま調査会でも検討いたしておる段階でございまして、その結果によりまして人事院にもお願いをしたいと考えておりますが、私どもは教員の特殊性から考えて、一般公務員とは違った特別の給与の体系というものがあってしかるべきじゃないか、そのために現在給与法も別になっておるのじゃないかというように考えておる次第であります。
  214. 馬場昇

    馬場委員 これは人事院にお尋ねしますけれども、ILO・ユネスコもいっておるように、基本的に十五年くらいで最高に達する、そして初任給と最高給との格差は二・五倍、こういうようなことをILO・ユネスコはいっているのですが、こういうような考え方について人事院はどういう見解をお持ちですか。
  215. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 それは重要な一つの示唆であろうと非常に評価はしております。おりますけれども、基本的に、先ほど申しましたように行政職の答えや何やら気にしながらやっておったのでは、とてもこれは伸び伸びしたことはできないということが一つあるわけですね。   〔西岡委員長代理退席、委員長着席〕 そこへたまたま今度のような法案が出ますと、そういう行政職との関係のそういった関連を断ち切って、伸び伸びと別の給与体系ができるというところに、非常にわれわれ期待を持っているわけなのでございまして、したがいまして、今度の法案については、非常にその意味での評価をしておるということが真相といいますか、ほんとうの気持ちでございます。
  216. 馬場昇

    馬場委員 人事院総裁は、えらい今度の法律を非常にいいものだというような感覚を持っておられますけれども、われわれは、もう全然そういう考え方を持っていない、この法律の意図するところ、望むところ、こういうものは、やはり給与改善に名をかりたいろいろな差別賃金その他出てくるという問題は、最後に申し上げたいのですけれども、人事院総裁公務員共闘あるいは教員組合ともしょっちゅう会っておられますが、そういう人たちの意思をほとんど尊重していないような、また全く手放しで喜んでいるような発言が聞こえまして、非常に職員とよく話しておられる総裁にしては、おかしな言い方だ、一方的な政府ぺ-スだと私は思っておりまして、そういうことはあとで最終的に申し上げるのですけれども、そういう意見を持っていることをつけ加えておきたいと思うのです。  次に、職場の実態について文部省にお伺いしたいのです。これは、金だけで人材が集まる問題じゃないということは、もうだれが考えても当然です。そしてまた、金で人をつるという考え方自体がおかしな考え方でございます。やはりほんとうに魅力ある職場というものがあって、初めてりっぱな人材が集まるわけでございます。そういう中で、現在の職場の実態というものを、文部省がどう考えておられるか、そういうような点について質問したいと思うのですが、まず、今日学校でついていけない子供がおる、通称お客さまだといわれるような子供が多いということがいわれております。これについて文部省は、そういう実態をどういうぐあいに把握しておられますか。
  217. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 教育研究所が各県の教育研究所と協力をいたしまして、先生方の意識調査をしたものがございます。それによりますと、半数くらいの先生が、子供の半分は授業を理解しておらないというふうなことをいっておりますけれども、この調査自体がアンケート調査、意識調査でございまして、一体その原因が何であるかということの分析ができておりません。たとえば、少なくともその調査の場合、先生方の受け持っておられる児童生徒数が、どれくらいなのかというような分析ができるはずでございますけれども、そういう調査が行なわれておりません。また、原因が先生の質にあるのか、それから生徒側にあるのか、あるいはそれを取り巻く諸条件にあるのか、そういう点についての分析もされておりませんから、私どもは、ただそういう事実があったということは、これは謙虚に受けとめなければならないと思いますけれども、その原因の分析、調査等は、これから十分進めてまいりたいというふうに考えております。しかしながら、先生も御案内のとおり、最近理科の国際規格の調査が出まして、わが国はその中で一番いい成績をとっているわけでございます。これは国際的な規格によります調査でございまして、無作為抽出によって行なわれておりますから、信憑性はきわめて高いと考えております。そういう点を見ますと、国際的な調査の結果では、子供たちはかなり理科とか数学とかにつきましては、ほかの国に比べまして理解度は高まっておる、そういうことはいえるのじゃないかというふうに考えております。
  218. 馬場昇

    馬場委員 私は、日本の中で、そして同じクラスの中で、お客さんというようなことばが出ること自体がおかしいという立場で質問をしておるのです。いまの話によりますと、教育行政をつかさどる文部省が、これだけ国民が、父母がそのことを心配しておるのに、どういう実態かということもわからぬ、それがどこに原因をしておるかということもわからぬ、こういうことでは文部行政は何をしているのだという感じがいたします。だから、こういうのを知らないということ自体が非常におかしいと私は思います。しかし、それが実態ですね。文部省の実態がそこにあるという事態にしか、いま受け取れないわけです。これだけ大きい問題を、その分析も原因も知らない、こういうような文部行政はあるべきじゃないということを強く言っておきたいと思うのです。  そこで、一クラスの日本の児童生徒数はこういう数である、諸外国の一クラスの児童生徒数はこうである、こういうものの比較をした資料があったら出してください。
  219. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 ちょっと手間取りまして、たいへん失礼いたしました。  わが国の場合は、現在最高四十五人ということでやっておりますけれども、実際の平均が一九七〇年で三十三人でございます。イギリスの場合は一九六八年で三十二・七人、フランスが一九六八年で二十三・九人、西ドイツが一九六六年で三十四・五人というふうな結果が出ております。これは小学校でございます。
  220. 馬場昇

    馬場委員 これは時間がございませんので、もう少し多くの国々、先進諸国ですね。それから中学校高等学校、そういうものの一覧表をぜひ機会があったら出していただきたい、こういうぐあいに思います。  それから、教師一人当たりの児童生徒数の諸外国との比較というものをお示しいただきたいと思います。
  221. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 教員一人当たりの在学者数でございますが、これは一九六四年のものでございますけれども、わが国の場合が二十九・二人、アメリカの場合が二十五・九人、イギリスの場合が二十九・七人、フランスの場合が二十五・一人、西ドイツの場合が三十五・六人、ソ連の場合が二十六・二人というふうな数字になっております。
  222. 馬場昇

    馬場委員 一九六四年というと、いまから何年前になりますか、まさに教職員教育効果を上げるという調査、諸外国との比較というのを、文部省はほとんど真剣に調査研究をしていないということです。一九六四年というと十年くらい前の話でしょう。その資料しかないということは実におかしなことだと思うのです。  文部大臣、いままで三つの資料を求めたのですけれども、ほとんど十分な資料がない、こういうことについて、あなたは教育行政を預かる最高責任者としてどうお考えですか。
  223. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 比較の場合の片一方だけ読みまして、失礼いたしました。  最近の年度でございますと、日本の場合が一九六九年二十六・〇、アメリカの場合が一九六八年二十三・二、イギリスの場合が一九六七年二十九・九、フランスの場合が一九六七年二十三・五、西ドイツの場合が一九六六年三十四・七、ソ連の場合が一九六八年二十六・九、そういう数字が出ております。
  224. 馬場昇

    馬場委員 大臣にこの資料のずさんさについての見解を聞きたい。
  225. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いまの数字は、当委員会においてたびたび論議をいただいているものでございます。今後も十分整備していくようにいたしたいと思います。
  226. 馬場昇

    馬場委員 これは私は、少なくとも毎年毎年その年の諸外国の状況を把握し、日本と比較して改善する、そういう作業を文部省は行なうべきだと思うのです。それをいまの答弁によりますと、当委員会ではたびたび言っておる――そんな古いのをたびたび言ったって同じじゃないですか。だから、毎年毎年そういうことをして、十分に調査研究しながら日本の実態を引き上げていく、こういうことをすべきじゃないか。どうですか、文部大臣
  227. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 たとえて申し上げますと、一学級最高四十五人だ、これを引き上げたらどうだという議論が、当委員会においてもたびたびございました。それは各国のことも頭に置いての御論議でございます。しかし文部省として、四十九年度から新しい教員定数の改善五カ年計画を立てたいけれども、この四十五人はそのままにしておきたいのです。それなりの理由は申し上げております。  その他の点については、こういう点について改善をはかっていきたいんだというような考え方も申し上げているわけでございまして、今後も資料の整備については努力をしていきます。
  228. 馬場昇

    馬場委員 私は、毎年毎年やれといま言っているのですよ。それについてはどうですか。
  229. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 ものによっては、毎年するほうがいいと思います。
  230. 馬場昇

    馬場委員 次に、先進諸国の児童生徒の授業日数の資料を出してください。
  231. 奥田真丈

    ○奥田政府委員 アメリカ合衆国、一九七〇年度の資料でございますが、年間授業日数百八十日、イギリス二百日、フランス一九七二年度約百八十日、西ドイツ一九七一年度約二百二十九日、ソ連一九七〇年度約二百十二日、そういうふうになっております。
  232. 馬場昇

    馬場委員 次に、中学校で無免許で教科を担当しておる、仮免なんかやる事実もありますけれども、大体何%くらいの人が無免許で授業をしておるかという問題、さらに、養護教諭、事務職員の置かれていない学校というのが、学校数で全体のどのくらいあるのか、それについて伺いたい。
  233. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 いわゆる無免許の調査につきましては、全県的な調査がまだできておりませんで、十一県の抽出調査を四十六年の十一月にいたしたものがございますが、それによりますと、三学級の学校で免許外の担当の教科の人数が、一教科の場合が三五・四%、二教科の場合が二二・六%、三教科の場合が八・四%、四教科の場合が三・六%というふうな数字が出ています。  それから六学級の場合には、一教科の場合が二八・二%、二教科の場合が一四%、三教科の場合が二・四%、四教科の者はございません。  こういうふうな抽出調査ではございますけれども、大体、三学級の場合には七〇%、四学級の場合には六三%、五学級の場合には四七%、六学級の場合には四〇%の教科外担当というふうな数字がございます。  それから養護教諭の配置率は、現在五二%の学校について配置されておりまして、したがって、あとは四八%残っておるわけでございます。  それから事務職員につきましては五四%の配置率でございまして、あと四六%の学校が残っておるわけでございます。
  234. 馬場昇

    馬場委員 次に、教職員の年休の消化が、平均何日年休をとっておるか、さらに教職員の健康調査、これは年間で教職員の数の何%の人が病院にかかったか、そういう健康調査の実態、さらにその病院にかかった病名だとか、あるいはたくさんの死亡者が出ますが、死亡の原因だとか、こういう健康についてどういう実態を把握しておられるのか、御答弁を願います。
  235. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 たいへん恐縮でございますが、いまの点につきましては体育局のほうで調べておりますので、いま資料を持ち合わせておりませんけれども、調査いたしました結果を、この委員会で御審査になっている間にお届けをしたいと思います。
  236. 馬場昇

    馬場委員 いまいろいろ職場の実態というものを御報告を受けたわけでございます。先ほどから何回も言っておりますように、諸外国に比べましても、また職場実態というのが非常に十分ではないというように私は考えます。そしてまた、教職員の労働条件というものも、ほかにもたくさんございますが、十分でないのです。  私は、ほんとうに人材教育界に求めるというならば、こういうような職場の実態と労働条件というものを、何ものよりも先に充実していくということが非常に緊要ではないか。しかし、どう見ても対策が十分とは考えられません。そういう点において、魅力ある職場という問題について文部省は今後どうしていこうと思っておられるのか、今後の対策の大綱についてお答えいただきたいと思います。
  237. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 文部省の使命は、先ほど来大臣からもお答えいたしておりますように、教育条件を整備して、先生方がその最大能力を発揮できるようにするということであろうと思います。そういう意味から申しまして、ただいま先生からいろいろ御指摘いただきましたような教育環境の整備ということは、ぜひ推進していかなければならないというふうな考え方でおるわけでございます。そのために私どもも、過去数年来、特に教職員定数とか学級編制の改善につきましては、学級編制の改善でございますと、明治以来初めて五十人を切ったというふうなこともやったわけでございますし、それから数次の教職員の定数の改善によりまして、大体十三万人くらいの教員をふやしてきたわけでございます。そういうふうにいたしまして教育環境を整備いたしまして、先生方がその能力をできるだけ発揮していただいて、児童生徒の教育に当たっていただきたいということを念願しておるわけでございます。
  238. 馬場昇

    馬場委員 大臣、従来こういう職場の環境というものが、非常に不十分だったと私は思います。こういう点について今後の大臣の、そういう反省をしておられるのかどうか。いま局長から答弁を受けましたけれども、おざなりに聞こえてならないのです。ほんとうに諸外国に比べましても不十分な職場環境だと私は思います。これでは教育の振興というのはできないと思いますので、こういう職場の環境の問題についての大臣の見解をさらにお聞きしたいと思います。
  239. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 反省しているのかというおことばでございますけれども、私は文部省はよくやってきていると思います。施設の整備にいたしましても、あるいは教材の整備にいたしましても、あるいは給食の整備の問題にいたしましても、あるいは定数の充実の問題にいたしましても、しかし際限はございません。どういうところから不十分であるかという問題になるわけでございますけれども、今後も教育職員の問題にいたしましても、事務職員の問題にいたしましても、さらに新しい計画のもとに充実に努力していきたい。また教職員の定数の問題にいたしましても、四十九年度からは第四次になるのでございましょうか、新しい五カ年計画のもとに充実をはかる。特に過疎地域の問題がございまして、小林さんから指摘されたのでございましょうか、三学級以上の複式はやめろ。文部省もぜひやめるようにいたしたいと思います。こういうここでの応答もあったりしているわけでございますけれども、なお一そう積極的に環境の改善につきましては鋭意努力を続けていく決意でございます。
  240. 馬場昇

    馬場委員 時間がないので、具体的にこちらのほうからの資料を出して言うのも差し控えますけれども、いま大臣は非常に、十分やっておるということをおっしゃいましたけれども、あなたはずっと職場を回って見られたことがありますか。そうして職場の苦しい実態というのを、回って見られたことがあるんですか。文部省にすわって、あるいは下のほうの局長とか、あるいは課長とかの話だけ聞いておってじゃ私はわからないと思う。ほんとうに職場の実態というのは、あなたが言っておられるように、十分だと思っておる者は、極端に言うと、一人もいませんよ。非常に不十分だ。文部省というところは非常に管理体制だけを強化することに狂奔して、ほんとうに環境をつくることについては不十分だ。これが私はすべての教職員ほとんどの意見だと思うのですよ。あなたは十分だと、反省を考えておられない。これはもう認識に非常に違いがありますが、では聞きますけれども、職場に行ってごらんになったことがありますか。
  241. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 職場にも参っております。私が申し上げますのは、過去何十年かということでございましょうけれども、一年一年の変化を、やはりそれなりに文部省事務当局も努力しておりますし、文教委員会も御努力いただいているわけでございますので、それは一応お認めいただいてもいいじゃないか。何もしていない、反省しろ、こういうような言い方になってしまいますと、私はやはり文部省あるいは文教委員会、いろいろ御苦心していただいていることにつきましての評価は、この際強調さしていただきたいという気持ちになるわけでございます。  そういう意味で施設整備の問題とか、あるいは給食の問題とか、あるいは教職員の充実の問題とかということを、具体的に例をあげて申し上げたわけでございます。先ほど教職員の充実で十三万人ふやしたのですと、こう申し上げましたけれども、終戦直後のときには、一学級何人だったんだろうかということも考えながら、とにかく四十五人にきておる。欧米先進国と平均数字で見てみますと、そう大きな違いのないところまできているわけでございます。今後とも、しかしなお四十五人を抑える気持ちを捨てているわけではございません。捨てているわけではございませんけれども、そういうところも見ていただけないだろうか、こういう気持ちを申し上げておるわけでございます。  理想を基本にして考えますと、まだまだ不十分だということはそれはよく自覚をいたしておりますし、また理想に向かって努力をしていかなければならない、そういう気持ちで先ほど来具体的な問題についても触れたわけでございます。ただことばのやりとりみたいなことで恐縮千万でございますけれども、反省、反省とおっしゃるものだから、やっぱり少しは努力しているところを認めてくださいよと、――私は十二月から文部大臣になったばかりでございますので、えらそうなことを言う資格はございません。えらそうなことを言う資格はございませんけれども、文教委員会なり文部省なりは、多年にわたって努力されてきておるわけでございますので、そこはまあひとつお認めいただきたい、そういう気持ちで御答弁申し上げている点を御理解いただきたいと思います。
  242. 馬場昇

    馬場委員 全然という意味は考えていないです。少しずつよくなりつつあるのは認めるのですよ。しかし、まだ、たとえば教職員の団体が、職場の実態というものから考えて、たくさんの要求を文部省に出しておる。何年も同じことを言っていても、ほとんど前進しない面がたくさんあるのです。これはもう文部大臣も、たとえば日教組なら日教組から、毎年毎年膨大な、いろいろな、こうやってくれという要求が出ているはずです。これが何年たっても解決しないのが非常に多い、こういう面もあります。だから、ぜひ今後努力をしてもらいたいと思うのです。  そこで、最後になりますけれども、本会議でも私は質問をいたしたのですけれども、この人材確保法案というのは中教審答申の差し示すところ、さらにそれに基づいて自民党が方針を出しております。この自民党の教育改革方針、こういうところを根拠にして提案されておられるわけですか。
  243. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 中教審にも教員給与改善が取り上げられておったと思いますし、自民党のほうにおきましてもそのことを強く主張されてまいってきておるわけでございます。そのほか教職員全体も、それを熱望しておられると思いますし、いろいろな方面の御意見を集約して、この法律案を提出させていただいているわけであります。
  244. 馬場昇

    馬場委員 また話が、大臣とやりとりしますとひっかかるのですがね。教職員全体が熱望しているとまたおっしゃった。どうしてそれを調べられたのですか。(「希望していないのかね」と呼ぶ者あり)してないですよ。それを具体的に言ってください。どうして全体が熱望しているということを、どういう資料でもって判断しておられるのかということを、もう一ぺん言ってもらわぬと困る。
  245. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私たちは、ストライキを公務員がやっちゃいけないと思うのでございますけれども、ストライキの手段に訴えても勤務条件の改善を叫んでおられたように記憶しているわけでございまして、そういう点から申しまして、やはり公務員の、特に教職員給与改善というものは多くの方々が、公務員の多くの方々、教職員の多くの方々が、非常に強く期待しておられるところじゃなかろうか、こういう判断もいたしておるわけであります。
  246. 馬場昇

    馬場委員 給与改善は全部が望んでおるのは事実です。しかし、こういうやり方ではいけないと言っている。だから、私が言っているのは、給与改善をみな望んでいるけれども、こういう形ではいけない、こういうことを言っているのです。あなたは、この人材確保を全体が支持しておるとおっしゃるから、私はそれに抵抗を感じて、そうじゃないのだと言っておるのです。  それから次に、まずひとつお伺いしますけれども、何回も質問が出ておりますけれども、五段階賃金というものを中教審は差し示しております。そうしてまた、自民党の方針にもそういうものがございます。これについて五段階賃金というもののこの法律案は引き金になるのか、出発点になるのじゃないか、こういうことでございますけれども、五段階賃金についてどう考えておられますか。
  247. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 五段階給与というのは、おそらく上級教諭と教頭職の給料表二本を加えろという意味でおっしゃっているのじゃないか……
  248. 馬場昇

    馬場委員 加えろという意味で言っているのじゃないのだ。
  249. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そのことがいいのか悪いのか、検討にも着手していないわけでございます。また、かりにいいと考えて実現させようとします場合には、それなりに法律案を国会へ提出いたしませんと、実現できないのでございます。現在のところ、何らその問題についての考えは持ち合わせておりません。
  250. 馬場昇

    馬場委員 中教審路線の具体化ということはおっしゃっておるのです。その中で、五段階は考えていないということですけれども、私は、いまの発言で、現在はということをおっしゃいますね。中教審路線はそれを差し示しておるのです。中教審路線は、具体的に進めていくとおっしゃっている。しかし、これは現在は考えていない。将来は五段階を考えられるのですか、どうですか、それを……。
  251. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そういう御心配もあろうかと思いましたので、私は、そういうことを決意する場合にも、法律案を国会に提出しなければできないのですよと、こう申し上げているわけでございます。  私は、現在のところ、ほんとうに調査もしておりませんし、その事のよしあしについて、事務当局から意見を聴取したこともございません。全然考えておりません。しかし御心配を将来に置いておられるようでございますけれども、そういう場合においても、法律案を国会に提出する。その法律が成立しないとできないことでございますので、その際の論議でよいことじゃないか。今回提出しております人材確保法案と五段階給与とは、何ら関係はない。そこだけは十分御理解賜わりますようお願い申し上げておきます。
  252. 馬場昇

    馬場委員 五段階賃金というのは、中教審に書いてありますから、これについて文部大臣はお読みになったと思うのです。これはどう考えられますか。こういうのが教職員の職務あるいは学校というところになじむと思われますか、なじまないと思われますか。
  253. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 正直申しまして、私、あまりよく知らないのです。知らないので、いま事務当局から、中教審の答申には五段階と書いてありませんよと言って、この答申書を持ってきてくれたところでございます。読み上げてみましょうか。
  254. 馬場昇

    馬場委員 読まんでもよろしい。
  255. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そういうことでございますので、ほんとうに考えてもいないし、事務当局から、これについて意見を聞いたこともございません。私、実態どういう影響を及ぼすものやらよく知りません。しかし、組合の中で、このことを非常に気にしておられることはよく知っておりますから、そういう場合には、組合の意見も十分聞いた上で考えなければならない問題だというぐらいの常識は持っております。
  256. 馬場昇

    馬場委員 さっきなぜ反対するのだと言われます、自民党の人からも。しかし問題は、長年の文部行政というのを見てまいりましたし、自民党の文教政策というのを私は知っておるのです。そういう中で、この問題が、結局五段階賃金というものが、もし教職の現場において行なわれるということになりましたら、これはまさに教育の破壊なんですね。こういう意味で、そういうことをみな心配しているのです。だから、それはもういかに――たとえば文部大臣が将来ともそういうことは絶対考えない、ただひたすらにこれをやるのだ、教職員の賃金の改善だけをやるのだ、こういうようなことであればいいけれども、将来やはりそういう心配があるから反対をしている。  その中で、いま一つは、先ほど省略いたしましたけれども、自民党の公約というものは「一律二五%アップ」という公約であったのです。ところが、折衝の過程で「一律」というのを削っておられるわけですよね。一律ではない、段階をつけるというようなかっこうになっているのです。そういう点を一つ見てみましても、一律であればいいけれども、ずっと段階をつけて、一律にはやらないということは、やはりそのこと自体が五段階を指向している第一歩だ。こういうことも心配をしているわけなんです。だから、「一律二五%アップ」というのが、「一律」というのがなくなったという経緯もお聞きしたいのです。そして、将来もそういうことは考えないというような意思があるのかどうか、再度御答弁願います。
  257. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 教員の処遇改善過程で、いろいろな議論がございました。先ほどもちょっとどなたかの質問でお答えをしたわけでございますけれども、国会がみずから責任を負って教職員給与改善をはかりたいというような意見のあったことも、事実でございます。しかし、最終的には、人事院の自主的な勧告権限、これを最高度に尊重すべきである、こういうことでまとまったわけでございます。したがいまして、人材確保法案に示されている考え方、これは国権の最高機関として、将来にわたり政治の基本方針としておきめいただくわけでございます。この範囲内でひとつ自主的な人事院勧告権限にゆだねようじゃないか。それを受けて、そのとおり法案国会に提出させていただこうじゃないか、こういう気持ちでおるわけでございます。
  258. 馬場昇

    馬場委員 一〇%というのは、一律でやるのですか。文部省考え方をお聞きしたい。
  259. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 平均一〇%の給与改定財源を計上させていただいたわけでございまして、これをどのような配分にしていくかということも、もっぱら人事院の自主的な勧告権限の結果を待ちたい、こう思っております。
  260. 馬場昇

    馬場委員 あなたは、法律中身質問をしましたときに、高校にも勧告があるだろうということを期待する、そういう感触を得たと言っておられます。この一律についての感触は得ていないのですか。
  261. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 そこまで立ち入ったことを人事院当局とお話し合いをするということは、私は僭越だと思いますので、そのような行動には出ておりません。慎むべきことだと思っております。
  262. 馬場昇

    馬場委員 これはどうしても心配が、いまの答弁では消えません。だから、もう少し中教審路線にかかわって、さらに自民党の基本方針といいますか、対策にかかわって、質問を次の機会にやりたいと思います。いまの答弁では了解できません。  いま一つは、先ほどの自民党の質問者の方も裁判官みたいにしたいのだ、給料を上げたいのだ、こういうことをおっしゃいます。裁判官給与は、教職員よりも確かにいいことは事実です。こういうことについて、給与及び身分についてというぐあいに、自民党の方針を読んだら書いてあります。これは将来、教職員の身分というものを、裁判官みたいにするというような意図があるのかないのか、これについて方針を聞いておきたいと思うのです。
  263. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 文部省といたしましては、教員給与をかなり大幅に引き上げさせていただきたい、こういう希望は持っておるわけでございます。いま調査会をやっておりますので、どういう結論が出るかわかりませんけれども、その結果によることではございます。しかしそれ以外に、身分についてどうこうというようなことについては、何ら考えておりません。
  264. 馬場昇

    馬場委員 これは将来についても考えていない、こういうぐあいに受け取っていいですか。
  265. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 私、具体的にどういうことか、よく知らないのでございますけれども、身分的なことについて、現在は考えておりません。
  266. 馬場昇

    馬場委員 これは、給与裁判官並みにしたいといいますと、たいへんな予算が要ると私は思うのですよ。裁判官の人数と教職員の人数を比較してみた場合に、これは比較にならない人数の差です。だから、そうおっしゃいましても、そこまではいかないのじゃないか、こういうぐあいに思いますが、私が、身分法というのは、結局聖職というような話が総理大臣のことばから出ておりました。そういうことを考えながら、いわゆる労働者性を否定する、団結権を否定する。いま裁判官は団結権とかあるいは団体交渉権とか、ストライキ権とか、こういうものはない、そういう意味で考えているのです。だから、教職員の身分というものを裁判官に近づけるといいますと、そういう心配をしておるわけです。そういう労働者性を否定するような身分法というのを、将来も考えないのか、こういうことです。
  267. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 現在公務員につきまして、団体協約締結権でありますとかあるいは同盟罷業権でありますとか、そういうものは認められていない。しかし、団結権は認められているわけでございます。この団結権を取り上げるというような式のことは、いささかも考えてはおりません。給与は思い切って上げていきたい、しかし、それ以外に、身分的に何か特別なことをやるのじゃないかという意味を、いま私が申し上げましたようなことで考えているのじゃないかということでございますと、少しも考えておりません。
  268. 馬場昇

    馬場委員 これはいま、現在においても、少しも考えていないということでございますが、中教審答申を見てみますと、そういう路線もしかれておる。そして教育自体の国家統制、そして教職員に対する管理、教育内容の軍国主義化、いろいろなことが出ておるわけです。こういうものの一環として、この人材確保法案が出てきておる。これはいかに表面をごまかしても、やはりその方向の第一歩であることは、私は事実であると思う。こういうことについてやはり中教審そのもの自体に対する議論というものがここで残ります。これにつきましてはあまりにも一人で長くやるのは何でございますので、そういう意味におきまして、この法案にはどうしてもそういう心配がある。だからこれは教員給与改善というのはお互い望んでいることですから、こういう法案は引っ込めて、そして先ほども言われましたように、やはり教職員団体とかあるいは国民各界各層の声を聞く、そして合意に基づいて教育の行政をする。私は過去国会におきまして、文教問題になりますと、強行採決だとかなんとかが盛んに行なわれてきているのが一番多いんじゃないかと思うのです。この前のこの委員会でも、やはり文教関係は強行されたということがございました。そしてまた、内閣委員会でもああいうことになりました。だから私は、こういう問題については、やはり合意を得てやるということが一番大切だと思うのです。だからこれは、もう委員長にもお願いしたいのですが、こういうところで審議を十分尽くしてもらいたい。そして強行採決をしてもらいたくないということを含めながら、やはり文部大臣にはこれを引っ込めて、全体の合意を得て、ほんとうに教育の問題ですから、やるほうも一やるということばは悪いのですけれども、受けるほうも喜んで事が行なわれるというような状況に、ぜひつくり上げていただきたいということを最後に申し上げまして私の……  ちょっと失礼しました。先ほど私の発言中に、自民党の五段階賃金云々と言いましたが、私はここに内容を持ってきておりますけれども、五段階賃金ということばはございません。だからこれは、自民党の政策にはそういうことばはありませんので、これは取り消しておきたいと思います。  じゃ、これで私の質問を終わります。
  269. 田中正巳

  270. 山原健二郎

    ○山原委員 いわゆる人材確保法案と呼ばれる法案についての質問をいたします。  最初に文部広報で出ております「義務教育学校人材確保法案の理解のために」というのがございますが、これは文部省が出されておるものでございますけれども、この中にある「教員待遇改善研究調査会」、先ほどからも文部大臣もしばしば調査会と言われておるのですが、これはたしか昨年の八月につくられておるわけですが、最初にこの調査会の構成、またその仕事の内容、それから最終報告というのが出ておるのか、あるいは出ていないとすればいつごろ出るのか、その辺の事情がちょっとわかりかねますので、最初にそのことについて伺っておきたいのです。
  271. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 最初に、教員待遇改善研究調査会の構成について申し上げますと、これは初中部会と大学高専部会の二つに分かれておりまして、初中部会は全日本中学校長長会長の片寄さん、それから東京学芸大学長の鎌田さん、全国連合小学校長会長の小山さん、全国高等学校長協会長の土肥さん、愛知県教育委員会教育長の仲谷さん、全国知事会事務総長の藤井さん、これらの方々をお願いしております。  それから大学高専部会につきましては、文化服装学院理事長、この方は前に人事院におられまして、教員給与について非常に詳しい方でございますけれども大沼さん、それから一橋大学長の都留さん、福島工業高等専門学校長の佐藤さん、信州大学の高梨さん、早稲田大学の西宮さん、この方々にお願いしております。  なお、初中・大学高専部会の共通の委員としまして日本クラウン社長の有田さん、それから立正女子大学長の小尾さん、産業労働調査所附属日本賃金センター所長の金子さん、前の東京新聞論説委員で都市エネルギー協力会専務理事・事務局長の木屋さん、元東京教育大学長の三輪さん、それからさらにオブザーバーと申しますか御列席をいただいている方としまして人事院給与局長の尾崎さん、そういう構成でございます。   〔委員長退席、森(喜)委員長代理着席〕  それからこの調査会を設けました趣旨は、これは給与が中心ではございますけれども、給与ばかりではなくて、教員待遇全般についてここで調査をお願いしまして、私どもに御意見をいただきたいというふうな趣旨で設けられたものでございます。  大体二年間で最終的な結論をいただきたいというふうにお願いはいたしておりますけれども、その間におきましても、たとえばこの法案の成立ができました場合には、それにつきまして人事院に対しましてこちらのほうから要望する、その要望する意見を取りまとめていただくというふうなこともあろうかと考えております。
  272. 山原健二郎

    ○山原委員 この教員待遇改善あるいは賃金の問題については、いろいろのところで研究もされ検討もされておるわけですね。たとえばこの場合にしましても文部省の中につくられた。これは文部大臣の諮問機関ですか。
  273. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 文部大臣に対しまして、御意見をいただくための臨時的な調査会でございます。
  274. 山原健二郎

    ○山原委員 これなども、やはり職員団体あるいは労働組合の代表を入れたらどうですかね。いまお聞きしますと、大体各学校における責任者の方、まあ当然人選としてはりっぱな方がお入りになっておると思う。また専門家の方もお入りになっておると思う。また一面では財界の出身の方も入っているわけですね。こういう中へ、たとえば労働組合あるいは職員団体の代表を入れる、待遇、賃金の問題ですからね、そういう必要が私はあるんじゃないかと思うんですよ。あるいはそういう点で話を持ち出したけれども、受けてもらえなかったとかいうことがあれば別ですけれども、そういう姿勢ですね、まず私が指摘したいのは。  それからまたこの調査会の最終報告あるいは中間報告といいますか、――中間報告もまだ出てないように思いますね。それから最終報告は二年の後ということですから、昨年の八月にこれが構成されたといえば、来年の八月ごろということになると思いますが、それもまだ出ていない。せっかく文部省がそういう諮問機関のような調査会をつくって、その結論もいままだ出ていないという時期ですよ。それからまた待遇、賃金の問題については、中教審の答申も出ております。また日教組などの労働組合としての見解も出ているわけですね。そういうものを総合して、落ちついて教師の賃金、待遇というものを考えていいのじゃないかと思うのですよ。そういう点がほんとうに、いまも馬場さんからもお話がありましたけれども、実際に幾つかの意見を聞いて、そして法案をつくっていくという過程があるべきだと私は思うのです。ただ、今度の場合は法案が先行して出てくる。文部省の中へせっかくつくった調査会の意見もまだ出ていない。また日教組などの意見も聞いたふうがないわけで、その辺に問題が一つ出てくるのではないかと思います。この私の見解について文部省意見を伺っておきたいのです。
  275. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 ただいま御披露いたしましたように、委員の人数はできるだけ限定をいたしまして、その中で特に、たとえば小学校校長会、中学校校長会というふうに、ある集団の方々を代表しておられるような方をお願いをいたしておりますけれども、私どもとしましては、これはあくまでも個人としていろいろ御意見を述べていただく。それからいままでの経験を生かしてお話をいただくというふうなことを望んでいるわけでございます。しかしながら、教員方々の団体もたくさんございまして、それぞれ立場が異なっておる。そういうところの代表者がおいでになりますと、どうしても個人としての御意見が述べにくいというようなこともあろうかと思います。しかしながら、そういう方々の御意見もやはり聞く必要があると考えまして、すでにこの調査会におきましても、そういう団体の方々の御意見を伺っております。いろいろな幅広い御意見を承りながら、委員方々に、個人としていままでの経験を生かして、いろいろ適正な御判断をいただきたいというふうに考えておるわけでございまして、ただいま先生が御指摘になりましたような団体の方々の御意見も、十分取り入れる機会を得たいというふうに考えておるわけでございます。
  276. 山原健二郎

    ○山原委員 最賃審議会ですね、これは労働省の関係ですが、これは三者でできていますね。労、使、公益というふうにできている。それから公務員制度審議会、これも労働省関係ですけれども、これも三者構成ですね。だから働いておる人たちの賃金、待遇という問題については、そういう性格を持って研究もしていただくし、そしてそこでも討論が行なわれるという立場が必要じゃないですかね。そういう職員団体が幾つもあるといっても、そうたくさんはありません。また見解の違う組織があるかもしれませんが、それでも待遇、賃金の問題について意見をかわすならば、それほど違った意見ばかり出てくるものでもなかろうと思うのです。その中からまた賃金の問題についての一定の方向が出てくるわけですね。私はぜひそういう態度をとってもらいたいと思いますが、そういう態度をとらぬところに文部省の性格が非常によくあらわれているのじゃないかということを心配するわけです。  それからこの調査会は、ほんとうに研究会ですか。それとも単なる研究ではなくして、あるいは意見を文部大臣に対して述べるというふうな一定の権限といいますか、そういうものを持っておるものかどうか、それも伺っておきたいのです。
  277. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 これは研究調査会でございますので、研究をしていただきまして、その研究の結果を大臣に御報告を願うというふうなことをいま考えておるわけでございます。答申でございますとかあるいは建議でございますとか、そういうものを得ようというものではございません。  それから、ただいま三者構成のいろいろなお話がございました。共済組合あたりでも、三者構成でいろいろやっている、運営しているという面はございます。しかしながら、公務員でございます教育職員につきましては、給与国会法律できめていただく。それから何よりも人事院という存在があるわけでございまして、私どものほうではその人事院の御決定のいろいろな資料を提供するために、こういうふうな調査会を設けるということが実情でございまして、したがいまして、三者構成で決定をするというふうな性格のものではないというふうに考えております。
  278. 山原健二郎

    ○山原委員 私が文部大臣だったら、三者を集めますね。一番わかりやすいのです。意見の違う者が集まって、初めてその方向というものがその中から生み出されるわけです。率直にいって、中学校校長会会長さんとか小学校校長会会長さんとかいう方は、実際は学校の現場のことはよくわからぬのですよ。またわからない立場に置かれる可能性を持っておる方たちです。その方たちも、むろん長い間教育者として苦労しておる方ではありますけれども、現在の職場におけるさまざまな苦労、目に見える苦労、目に見えない苦労がありますけれども、そういうものはわからぬのですよ。だからほんとうに文部省が研究調査の会としてつくるならば、そういう現場の方たち、あるいは組合、職員団体の方に入ってもらったほうが、実態を正確につかむ意味でも必要だと私は思っています。  それから、研究調査ということなら、せっかく一年前につくったこの会の研究の結果を見て、どうしてこの法案を出す前に――せっかくつくったものですよ。おそらくそのためにこそ皆さんはつくったのだろうと思いますが、そういうものを昨年の八月につくって、その研究調査会の意見も何もまだ出ていない段階で、今度は法律がぱっと出てくる。まさに教師の賃金、待遇改善しようとする文部省の意図があるならば、たとえばこのつくった研究調査会の答申といいますか、そういうものを急がせて、それが出てくる、それに基づいて法案が出てくるという手順を踏んでもおかしくないわけですよ。それがどうしてできないのだろうか。そしてそそくさとは言いません、それはいろいろ考えてきただろうとは思いますけれども、しかし、法案としてぱっと出てくる。こういうところに一面では唐突な感じもいたしますし、そういう点がどうも私わからないのです。せっかくつくった。それじゃこれは解散ですか。研究調査会のこれからの任務は何をやられるのですか。
  279. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 大臣から申し上げているとおりでございますが、この調査会では、これはほんとうに熱心に調査研究をいただきまして、それに基づいて教員給与がどうあるべきかというふうな最終的な御結論をいただくということが目的でございます。先生仰せのように、法案を出す前にこの調査会にかけるかどうかというふうなことも、私ども事務的に考えたことはございますけれども、しかしながら、これは審議会でございましたら、そういうふうな手続も必要でございましょうけれども、実質的に調査研究を積み重ねていただいて、結論をいただくまでには、これは最小二年くらいはかかるだろうというのが最初の考え方でございます。その経過の中で、そのときどきに応じた御結論を得ることは可能だと思いますが、しかしながら、これは慎重にやっていただくという趣旨から、普通の審議会のようにそこで御意見をいただくということを、ことさら私どものほうではやらなかったということでございます。これから教員給与あり方がどうあるべきかというふうな、非常に大事な問題、それから給与以外にも、教員待遇につきましていろいろあるわけでございますから、そういう面につきましての答申を得たいものだということを考えております。  なお、いままでに総会それから初中部会、合わせまして十回以上私どものほうで調査会の開会はお願いしております。
  280. 山原健二郎

    ○山原委員 だから私が申し上げますのは、せっかくつくられたその研究調査会の構成についても、もっとやり方があるのではないかと私は思います。同時に、そのつくられたものが、それはいろいろ意見は聞いておるかもしれませんが、少なくともまとまったものとしての中間報告もない状態でございますね。そういう中で今度の法案が出てくるということになると、これは疑心暗鬼が出てくるのもあたりまえなんです。だから、ずっと浮かび上がってくるのは、先ほど馬場委員からも出されました、自由民主党の出されておるいわゆる待遇改善の根本的施策というものの第一次案が出ておりますけれども、それなんかがぐっと浮き彫りになってくるわけですね。それから中央教育議会の答申の八七ページですか、ここなんかに随所に出てくる、いわゆる五段階ということばはもちろんありませんけれども、学校内に身分的な、あるいは待遇面でも、格差が出てくる。中教審の中には随所に出てくるわけですから、それが浮かび上がってくるわけです。だから、法律はこんな簡単なものだけれども、その背景にはこういうものがあるのではなかろうか。では、この法律のできる前に、もっと民主的ないろいろな意見文部省において総合されるとかあるいは労働団体の意見が聞かれるとかいうことがあれば、またこれは違った性格を持ってくると思いますが、そういう点についてはほとんどないわけです。寡聞にして私たち知らないわけです。だから、そういうことが今度の法案についての文部省側の答弁と、われわれの危惧する点とのすれ違いのもとになっております。その点をまず最初に指摘をしておきたいと私は思うのです。それはあとでも少し触れていくことになると思いますが、そのことを最初に申し上げておきたいと思います。  それから第二番目の問題として、本法案の第一条「目的」の項にありますところの、「義務教育学校教育職員給与について特別の措置を定めることにより、」という、この給与ですが、この法案による給与というのは、賃金のことですか。
  281. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 給与と申しますのは、一般職給与に関する法律とかでいう給与という意味でございまして、教員の場合には、これは地方公務員でございましたら、給料が中心になるということでございますけれども、この場合には給料というふうにお考えいただいてよろしいのじゃないかと思います。
  282. 山原健二郎

    ○山原委員 この給与というのは、労働基準法第十一条の賃金――第十一条をちょっと読み上げてみますと、「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」この賃金ですか。別のものですか。
  283. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 これはあとから条文がございますように、人事院勧告範囲に属するものというふうに解するのが適当だと思いますが、そういう意味で、一般職給与に関する法律給与というふうに御理解いただきたいと思います。
  284. 山原健二郎

    ○山原委員 結局国家公務員法の第六十二条ですね、これは給与の根本基準として、「職員給与は、その官職の職務と責任に応じてこれをなす。」こう定めておるわけです。これを受けて、いま局長が言われた一般職給与法の第四条に、俸給の項がありますね。それは「各職員の受ける俸給は、その職務の複雑、困難及び責任の度に基き、且つ、勤労の強度、勤務時間、勤労環境その他の勤務条件を考慮したものでなければならない。」と定めているわけです。  人事院の総裁にお伺いしたいのですが、この一般職給与法第四条の俸給の項ですね、人事院給与の算定の根拠もここにあるわけでしょう。これに基づいて行なわれているわけでしょう。
  285. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 この第一条にいっておりますことについては、おそらくいま文部省からお答えしたとおりでよかろうと思いますけれども、私どもの立場からいいますと、あまり窮屈にこれを定義づけをしていただかぬほうが実はありがたいので、われわれが一般給与勧告で扱っているような、その内容のことだというふうに御理解いただければ非常に都合がいいと思います。かってなことを申し上げますけれども……。
  286. 山原健二郎

    ○山原委員 今度出ております法案が、かりに成立をしました場合には、教員給与は、当然一般職給与法に基づくことになるだろうと思うのですが、そういうことになるのでしょうか。
  287. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 それはそのとおりに考えております。
  288. 山原健二郎

    ○山原委員 そうしますと、これは窮屈なとおっしゃるのですけれども、しかし、一応給与、賃金、俸給というものは、やはりそれなりに性格があるわけですから、この法案の中にありますところの優遇措置の問題ですね、このいわゆる優遇措置というのは、優遇というのは、その内容は一般公務員に比べまして、いま申しましたところの一般職給与法の第四条――これはちょっと第四条を持っておってください、これで質問していくのですから。賃金問題をめったに論議することはございませんので、私なりに申し上げますので……。  「各職員の受ける俸給は、その職務の複雑、困難及び責任の度に基き、且つ、勤労の強度、勤務時間、勤労環境その他の勤務条件を考慮したものでなければならない。」これが一般職給与法の中身でございます。そうすると、実際に今度出されております人材確保法の優遇という問題が出てまいりますと、その優遇とは、一般公務員に比べてどこを優遇するのかという問題です。たとえば複雑の度合いあるいは困難の度合いあるいは責任の度合い、こういうものがどうなっておるのか。賃金の問題ですから、そうあいまいな感覚だけでやるべきものではないわけですから、そうすると、一般職給与法の中で出てくるところのこれらの問題ですね、これはどういう関係があるのか。たとえば一般公務員に比して教員というものは複雑の度合いというのはどんなのか、どの程度に評価できるものか、あるいは困難の度合いというものはどの程度のものか、あるいは責任の度合いとはどの程度のものか、これは一応賃金をきめる場合におきまして、しかも優遇という問題が出てくるわけですから、しかも、この法律が成立をしました場合には、一般職給与法を教員が適用されるわけですから、そうすると、その辺はどういう基準で判断をしたらいいのかということ、これはぜひ聞いておきたいのです。その辺検討されましたか。このほうはこの法案を作成したほうの側になると思いますがね、むしろ人事院総裁よりも。人事院総裁にもその辺の御見解はあろうと思いますから、あとでお伺いしますが、岩間初中局長どうですか、その辺どんなふうな検討をなされておりますか。
  289. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 一般職給与に関する法律というのは、これはもちろん基本法になるわけでございますけれども、今度御提案申し上げておりますのは、その特別法ということで、いわば教員によき人材を得るための特別の配慮をしていくべきであるというふうな観点に立って、いま法案を御提案申し上げているような次第でございます。したがいまして、あそこにある一般原則の中でももちろん、たとえば責任の度合い、そういうものは教員につきましては特に強調されてしかるべき問題であるとは思いますけれども、それを越えまして、今度は、今回の特別法によりまして、新しい観点からお考えをいただきたいということを、人事院にお願いするというふうなものでございます。
  290. 山原健二郎

    ○山原委員 それでは今度、一般公務員に比べて教員を優遇するという場合、このもとになる法律一般職給与法、その中にある複雑、困難、責任の度合い、こういう問題については、あまり精密な検討というのはなされていないのでしょうかね。文部省は概算要求で当初初年度二五%要求しましたね。それから計画的に五〇%まで引き上げていくという考え方でございましたが、私は率直に言うと、その根拠を聞きたいわけですよ。たとえば教師は優遇されなければならないと頭で言われましても、それは一般職給与法に法律として存在をする複雑あるいは困難あるいは責任の度合い、その度合いに応じて、一般公務員よりは、教員の場合には、この程度の評価がなされなければならぬということが出てきて初年度二五%、そして計画的に五〇%という案が、文部省として要求をされたんではなかろうか。ただばく然と、まあ五割だろう、初年度は二割五分だろうということではないと思うのですけれども、その辺の法案作成の基礎になった文部省の見解、賃金に対する見解、教員待遇に関する見解、優遇をしなければならぬという基礎、それはどこに求めるかと思って私さがしてみると、やはり一般職給与法の複雑、困難、責任、こういう度合いにかかってくると思うのですね。そこを文部省の場合は、当初五〇%に評価した、こういうふうに私は受け取ったのですが、その辺の経緯ですね、これはどうですか。
  291. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 教員の場合には、ただいま山原先生おっしゃいましたように、職務の複雑性、それから困難性、責任の度合い、そういうものが、一般公務員よりも高く評価されてしかるべきじゃないかというふうな考え方が基礎になっておることは、確かでございます。これはもう御存じだと思いますが、NHKの調査によりますと、教員の職務というのは非常に大事だ、それから社会的な貢献度も高いのだ、そういうのに比べまして、賃金が一番低いというふうな結果も出ております。それが一般国民方々一般的なお考えじゃないかというふうなことでございまして、その度合いをどういうふうにしてはかるのか、どの程度に見積もるのか、それからそれが給与にしますと二五%であるのか、五〇%であるのか、いろいろむずかしい問題がございますけれども、私どもはそういうふうに、国民一般方々はあるいは教職員方々は、せめてそこまでは引き上げてほしい、あるいはそこまでは引き上げるべきだというふうなお考えがあるんじゃないかということを、私どもなりに考えまして、予算の要求もいたしましたし、また法案の御提出もしているわけでございます。
  292. 山原健二郎

    ○山原委員 その点で、やはり多少感覚的ですわね。大体NHKの調査によっても低いということです。それから一般的にこの程度ではなかろうかというようなことだろうと思うのですよ。これは私の質問に対してお答えがちょっとできにくいですわね。困難の度合い、複雑の度合いあるいは責任の度合いを賃金にして計算するならば何万円になるというようなことになってくると、ちょっと困る質問だと思います。けれども、法律はやはり存在するのですし、だから、賃金の問題は、率直に言ってかなり科学的なものでなければならぬというわけですね。だから、日教組などが賃金を要求する場合には、これは相当生活実態に即した算定がなされているわけですね。たとえば米価の問題だってそうですね。いま米価問題が問題になっていますけれども、米価の問題だって、賃金とはずいぶん性質が違うから一緒にするのはおかしいですけれども、これを要求する場合には、必ず米価についての算定の基準というのをかなり長期にわたって農協でもやりますし、日農関係でも算定していくわけですね。まして賃金の場合は、そういう法律上の複雑、困難、責任の度合いというようなことが算定の基礎にならなければちょっと困る面が出てくる。ばく然とこの程度だと、人事院総裁のほうは、この法案ができました場合には数字をあげなければなりませんし、また表をつくらなければならぬというたいへんこまかい仕事までやられるお仕事でございますが、私がいま質問しておること、これはどんなふうに人事院としてはお考えになるでしょうか。私の言っているのはまさに空論だというふうにおとりになるか、それとも、それは相当綿密にやったほうがいいのではないかと私は思っていますが、どうですか。
  293. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 先ほどちょっと妙なお答え方をしておったわけですが、給与法の第何条かの非常にアカデミックな俸給の問題を御議論されるのではないかと思いまして、用心をいたしまして、調整額はだめだよ、本俸に限るぞとか、そういうことをくぎづけされては、われわれ勧告する側としてはたまりませんぞ、そこのところはひとつゆるやかにおまかせ願いたいという気持ちがあったものですから、そのほうを先に申し上げちゃってたいへん失礼いたしましたけれども、いまのようなお話であれば、これはよくわかるので、要するにこの法案にも、文章のじょうずへたは別として、次代の国民となるべき云々、こういう人を育てる仕事だ、これは職務の責任その他からいって相当重要なものだということを文章にうたってあるわけです。だから、教員組合の方々などが、賃上げ要請の要求書をお出しになりますけれども、それにもやはりわれわれの職務と賃金の何とかにかんがみということをうたっておられる。私どもはそれをすなおに取り上げて、確かにこれは普通の行政職の方々よりは待遇をよくするだけの仕事だ。したがって、先ほども触れましたように、微力ではありますけれども、初任給なんかも行政職よりはいままで上げて、優遇にはつとめてきました。そういう基本的の気持ちをお察しいただければ、あとはもう勧告をお待ちいただきたいということになるのじゃないかと思います。
  294. 山原健二郎

    ○山原委員 もうちょっとこだわって言いますけれども、最初文部省は、初年度二五%、そして計画的に五〇%、率直に言えば、一般職給与法に基づくところの他の公務員と比べて優遇しなければならぬ複雑性、困難性、そして責任性、その度合いを計算された数字がそこへ来ておると思うのです。ところが、政府全体としては、今度の法案によれば、予算の面から見ましても一〇%ということになるわけです。そうすると、あっさり言えば、一〇%の根拠を聞きたいということになるわけですよね。それは、その複雑、困難、責任の度合いが一〇%なのかということです。だから、団体交渉や何かできまればもうちょっと科学性が出てくるのですけれども、政府が頭で考えると、結局、そういう一般公務員と比べて優遇しなければならぬというところが一〇%に落ちつくという政治的産物になってしまうわけですね。だから、非常にこれは考えてみればおかしいことなんですよ。一〇%の根拠というのは、これはどうなんですか。大蔵省と折衝されたりいろいろした結果がこうなったと思いますが、一〇%とは何ぞや。
  295. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 どなたかに申し上げましたように、また、いま御指摘になっておりますように、五〇%引き上げたいというような希望を持ちながら予算折衝をしたわけでございまして、そして結論は、なお今後調査研究していくわけでございますけれども、さしあたり一〇%、これをもっと引き上げることは違いないわけでございます。どの目標にするかということにつきましては、さらに詳細に検討していきたいわけでございますけれども、さしあたり一〇%は四十八年度の予算に計上し、そして実現をはかり、引き続いて引き上げをはかっていく、こういう考え方でございます。
  296. 山原健二郎

    ○山原委員 賃金というものにつきましては、いままでずいぶんこれは経済学の面からでも、あるいはマルクス経済学の中では賃労働と資本というようなのがあるわけですが、非常に科学的で、しかも学問的な面から、各面から賃金問題につきましては検討されておるところですね。だから、そういう点から考えると、教師の労働に対する代償としての賃金、こういうふうに法律は出ていますが、それは実際問題としては、出てくるものは、皆さんは最初二五%、五〇%の線を考えられて、今度は政府から出てきたのは一〇%という数字ですから、気持ちはわからぬわけではないですけれども、一〇%というこの数字は、かなりいわば一面ではお手盛り、一面では感覚的な、いわゆる感想論あたりから出てくるわけですね。実際はかれないわけですね。だから、そういう点で困難な問題がありますので、いまの資本主義社会の中で賃金を決定する場合に、いま私が申しましたように、実際政府が単独で頭の中で考えてやろうとすれば――それは法律に書かれておる。法律には、これは賃金論から出てきた法律論があるわけですね。先ほど言いましたように国家公務員法あるいは一般職給与法というこの法律過程がありますが、それにはまず合致できないようないわゆる政治論から生まれてくる賃金ということですね。いわば、はかれない、どうにも理屈、根拠、基準というものを確立し得ない面があると思います。だからそれを一番科学的にできるのは何かというと、私は団体交渉だと思うのです。それは、使用する側の者と、そして働いておる側の集団との間における団体交渉、その中で粘り強く双方が議論をし合って、そして今日の日本の国情の中で、あるいは日本の経済の動向の中で、賃金はどの程度にきめるべきかということの話し合い、その接点の中から生まれてくるものが、これは、資本主義社会における一番普通の方法として、それが今日の段階では最も科学性を持っているというふうに私は思うのです。しかも、そういう形態が定着しておる。しかも、それが資本主義社会における賃金設定の原則だと私は思います。だから、私どもはいままでも、教職員団体と、各県の自治体との交渉あるいは日教組を含むところの教員団体と、そうして文部省の団体交渉が必要であるということを主張してまいりました。それが一番科学性を持つだろうと考えておるわけでございます。ところが、今回の場合は、それがもう全く逆な形をとっているわけですね。そのことを最初に指摘をいたしまして、それから先ほどもかなり触れられましたけれども、この団体交渉に関する世界の動向あるいは国際的な協定、そういうものについてどれだけの誠実な認識を持つかということについてお伺いをしていきたいと思います。  一つは、ILO・ユネスコの「教師の地位に関する勧告」、これは日本政府も賛成をいたしておりますから、これは日本政府代表も入っているわけですね。これはどう見るかという問題、先ほども触れられましたが、これは私は非常に重視すべきところだと思っておりますので、この点について私の見解を述べながら質問をいたしたいと思います。  まず第一番に、教員給与の項、これは教師の地位に関する勧告の中の教員給与の項ですが、これは岩間さん、お持ちになっていますか。――それで、その中で特に問題にしたいのは、一一五の(ハ)についてでございます。これは私がちょっと読み上げます。一一五の(ハ)、こう書いてあります。その(イ)、(ロ)、(ハ)と、ちょっと読みましょう。  「教員給与は(イ)教員が教職についたときから彼らに課される種類の責任を反映しなければならないと同時に、教育機能の社会にたいする重要性、したがって教員の重要性を反映しなければならない。(ロ)類似のあるいは同等の資格を要求される他の職業に支払われる給与とくらべて遜色があってはならない。(ハ)彼ら自身と家族のために適正な生活水準を確保するとともに、研修の積み重ねあるいは教養活動を続け、もって彼らの専門的資質を向上するに足るものでなければならない。」こう出ております。  これから考えますと、教師というものにつきまして「彼ら自身と家族のために適正な生活」、これは政府も賛成しておるわけですが、これはどういうふうに受け取っておりますか。たとえば「生活水準を確保するとともに、研修の積み重ねあるいは教養活動を続け、もって彼らの専門的資質を向上するに足るものでなければならない。」ということですね、これなんか御研究になっておりますか。
  297. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 少し翻訳が違いますものですから、そのとおりになるかどうかわかりませんけれども、ただいまお読み上げになりました一、二、三と申しますか、a、b、cと申しますか、(イ)、(ロ)、(ハ)と申しますか、まずその(ハ)の部分の「教員が自己及び家族の合理的な生活水準を確保し、並びにさらに研修をつみ、及び文化活動に参加して、教員としての資質を高める手段を提供する」ということ、このこと自体は私ども少しも異論がないところでございます。これは日本国憲法の二十五条でも明らかなように、健康で文化的な生活を営むということと相通ずるものがあるのではないかということでございますが、この勧告に賛成された国々でもいろいろな国があるわけでございまして、そういう意味から申しますと、わが国の場合は、この部分に関しましてはかなり高度の水準まで達しているんじゃないかというふうに考えられます。また研修その他につきましては、私どももかなり力を入れて一おりますけれども、さらにことしから始めました研修の代替教員の確保とか、そういう面におきまして、前進をするようにしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  298. 山原健二郎

    ○山原委員 たとえば「彼ら自身と家族のために適正な生活」、これはたとえば家なら家ですね。どの程度のものでなければならぬかということ、これは研究の対象にはなると思うのです。私は、どの程度の家が教師に必要なのかということはちょっとわかりかねますけれども、われわれ議員、今度新しいデラックスな宿舎ができて驚いているわけですけれども、三LDKなどというのができているわけですね。それから「研修の積み重ね」といわれますと、これは何があるだろう。たとえば書斎、本の購入あるいはそれぞれの学会への参加の問題もあると思います。それから「教養活動を続け」るという点では実際に、たとえばすぐれた映画、民族的伝統芸能を見るとか、あるいは史跡を見るとかいうようなことも教師にとっては必要なことだと思うのですね。それから「専門的資質を向上」、これは大学あるいは研究所へ、留学というようなことも含まれていると思うのです。たとえば大体どれくらい給与水準、生活水準が要るんだということになりますと、今度この法案を出すにあたりましては、人材確保、こういわれるわけですから、相当皆さんは研究をされておると思うのでございますが、そんなことは論議の対象にはなるのですか。確かに研究所入りとかあるいは留学というようなこと、ヨーロッパ旅行とかいうようなことは出ておりますけれども、実際に現場の教師の姿を見ました場合に、そんな文化的な教養を維持継続できるような状態にあるのかというようなことも、賃金の算定にあたっては、私は論議をしていただいたほうがいいんじゃないかと思いますが、その点はどうですか。
  299. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 ここに書かれておりますことは、全部の国の方々に通用するような基準で書かれているわけだと思います。したがいまして、国によりましては、その個人に対する給与だけで、研修もやらなければならないし、文化的な生活もしなければいけないという国もあると思います。   〔森(喜)委員長代理退席、委員長着席〕 それからわが国のように、給与は自己及び家族の生活の水準を維持するという点で、あと研修とか文化的な生活に関しまして、たとえば図書館とか博物館の利用が容易にできるとか、そういうふうな国とは性質が若干異なってくるのではないかというふうな気がするわけでございます。私どもとしましては、教員の研修というのは、公の立場でできるだけ費用がかからないように機会を提供するというような方向で参っておるわけでございまして、それはそれとして先生方待遇全般を引き上げるためにそういうふうな公的な力でカバーする面、これを私どものほうではなるべく機会を多くしていきたいという方向で進んでいるわけでございます。国によりましてだいぶ違うと思いますけれども、俸給というのは生活の維持、それから研修その他の公のものにつきましては、これは公の力でできるだけそういうものに食い込まないようにしていくというような方針で進んでいるということだろうと思います。
  300. 山原健二郎

    ○山原委員 いろいろな国がありますから、非常におくれた、後進性を持った国家もありますし、だから一律にはいかないと思いますけれども、しかし、日本の国はGNPを謳歌するような宣伝もされているわけで、それに見合った教員待遇の問題、給与の問題、これは日本の国に即した立場で考えなければならない。そうすると、どの程度の生活水準給与水準というものが必要なのかということ、これは当然論議の対象になると思います。  その意味で日教組が出しております要求がありますね。人事院総裁のほうにも提出をされた要求があるわけです。これは人事院のほうでは御承知だと思いますが、これによりますと、初任給は大学卒で七万五千円、それから経験年数五年で二十七歳の場合、これが十万円という計算になっております。それから経験年数十五年三十七歳の場合に十五万円、経験年数二十三年、これが大体四十五歳ですが、そのときには大体十七万円という要求が出ておるわけです。これも私は率直に言って非常に控え目な要求だと思いますけれども、こういう要求が出ておりますが、これについて人事院のほうでは、この程度の賃金要求については、大体今日の情勢の中でほぼ妥当なものだとお考えになるかどうか、賃金の問題として。御検討になっておりますか。
  301. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 申すまでもありませんが、給与については、高ければ高いほどいいことは当然のことでございます。御要望も、ことしばかりでなしに、日教組その他の団体から、毎年熱心なる御要望をいただいております。私どもは、一応その御要望そのものは無理もない御要望だということで、いつも大きな関心を持って拝見し、かつ、先ほどもちょっとお話がありましたように、ひんぱんに団体の幹部の方とお会いし、きょうも実はお会いするお約束になっていたのですが、こういうことでお会いできなくなりましたけれども、おっしゃることはとことんまで伺ってやっておるわけですが、今度も、たまたまこういう法案ができますと、さっきのお話じゃありませんけれども、たいへんその辺が御要望に沿いやすくなるという魅力を持っているわけでもあるわけです。
  302. 山原健二郎

    ○山原委員 いま東京で二DKのアパートを借りたとしますと、大体月四万円、家族三人でどう少なくしましても一日二千円見当要るのですね。そうしますと、家族三人の生活は、ぎりぎりの生活で六万、それで家賃が二DK、これも決して広くありませんが、それで四万、十万要るわけですね。そういうこともやはり賃金設定にあたっての検討の資料にはなると私は思います。一例だけ申し上げました。もっときびしい見方をしてもいいのではないかと思いますけれども、そういう状態。  ところで、今度の人材確保に基づくところの予算措置一〇%ですね。一〇%というのは平均幾らになるのですか。いまの教員平均給与は大体どれくらいですか。
  303. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 百三十六億でございますと、いま義務教育関係教員が大体六十万でございますから、一人当たりにいたしますと二万円ちょっとでございますか、そういう数字になるわけでございます。これは負担金でございますから、そのほかに地方負担分が百四十五億ございますので、二百九十億近くになるわけでございます。したがいまして、一人当たり年額四万円強ということになると思います。  いまの教員給与の年額でございますけれども、調べてあとからお答えいたします。
  304. 山原健二郎

    ○山原委員 私が言います。ちょっと高く見ておるかもしれませんが、教員平均賃金は大体六万円程度ではないかと思うのですね。そうしますと、一〇%にしまして今度出てくる分が六千円で、六万六千円ということになるわけですね。この計算どうかと思うのですが、ちょっと検討してください。  それで、現在の小中学校初任給が大体五万円程度だと思います。それから二十七歳ぐらいで六万二千円、三十七歳で九万二千円、四十五歳で十一万円、大体この程度だと思います。そうしますと一〇%というのはたいしたことはないわけですよ。あんまりいばれた数字でもございません。これで人材が確保できることになるだろうかという疑問も生じてくるわけでありますが、いまの賃金状況というのは大体その程度じゃないのですか。どうですか。
  305. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 どうも失礼いたしました。四十五年度の小学校平均年額の給与額が百三十九万九千円、中学校が百三十五万九千円、高等学校が百四十五万五千円ということになっております。これは諸手当なんかも若干入りますけれども、その一〇%でございますから大体十万円以上の額にはなるわけでございます。
  306. 山原健二郎

    ○山原委員 これは正確にしておいてくださいね。これは実際にお金が相当来るんだろうと思って、みな期待していますからね。そういう宣伝がなされている。たいしたことないとはいわれませんが、率直に言うてたいした金額じゃないのですよ。実際に教職員団体が要求しておるものに比べますと、これはだいぶ違ってまいります。だから、やはり一〇%などという数字がぱかっと出てくるよりは、交渉して詰めていくということが必要だと私は思うのです。  次に、いわゆるILO・ユネスコの八二項、八三項の問題について伺っていきたいと思います。  まず、この法案の提出にあたって、いわゆる教員団体との合意を得たかという問題です。あるいはその話し合いの中で妥結を見たのかということです。これはおそらくそうではないと思うのですが、ここで正確にしておいていただきたいのです。その点はどうでしょうか。
  307. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 法案の提出につきましては、公に各関係団体の意見を聞いてその了承を得たということはございませんけれども、私のところへ日教組の書記長などが参りました際には、こういうふうなことになるという意見は申しております。
  308. 山原健二郎

    ○山原委員 勤務条件についてですが、教員はいわゆる団体交渉権はないんですか。
  309. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 教員は、各都道府県の教育委員会交渉する権限はございますけれども、文部大臣に対しましては団体交渉という権限は持っておりません。
  310. 山原健二郎

    ○山原委員 これは先ほどの教員給与に関するILO。ユネスコの勧告文の中身ですけれども、先ほど言いましたところは一一五でございましたが、一一六には御承知のように「教員は、教員団体との合意によって定められた給与表にもとづいて給与を支払われなければならない。」こういうふうになっておりますね。そしてこれは地公法五十五条の「交渉」の項目、それから国家公務員法の百八条の五の一項、二項で給与、勤務時間については交渉の対象になるわけですね。だから団体交渉の権利はあるわけです。国際的に見てまいりましてもそれは言えると思います。ところが、こういう国際的な勧告やあるいは政府みずからも賛成をしたことをなぜやらないのか。給与の決定にあたっては合意を得るということは、いまや世界の通念になっているわけですが、それをなぜしないんだろうという疑問がつきまとうわけですね。これはどうですか。
  311. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 この点につきましては、先ほど大臣がお答え申し上げましたように、ユネスコの教員の地位に関する勧告というのは、各加盟国の国情に応じた相違を認めて、各国の実情とか法制の特殊性に適合した方法で考えていくべきものである、したがって、各加盟国を拘束するものではないというふうなことを確認をいたしまして、文部省としましては、政府といたしましては、この勧告を受け入れるということにいたした次第でございます。
  312. 山原健二郎

    ○山原委員 拘束性がないということでございますけれども、いいことでしょう。大体、国際的な趨勢というものに対して、しかも団体交渉権を持っているわけですから、その職員団体の意見を聞くということは、これは積極的な内容を持っているわけですね。だから、それをやるということが文部省の姿勢になぜならないのかということなんですよ。あなた方はいつも、拘束性がないんだ、それぞれの国の実情に応じてやったらいいんだということを常に強調されるわけです。全部が全部こまかいところまでは、それはそれぞれの国の状況もあるかと思いますが、しかしながら一番肝心の教員給与の問題について、国際的な協定があるのに、それを最後のところの拘束性がないんだというところだけを適用して、団体交渉に応じようともしない。そういう体質、そこに問題があると思うのです。  国際的なそういう道義的責任というのは、わが国の憲法ではその前文ではっきりしているわけですね。憲法の前文を見てみると、「われらは、いずれの國家も、自國のことのみに専念して他國を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に從ふことは、自国の主権を維持し、他國と対等關係に立たうとする各國の責務であると信ずる。日本國民は、國家の名譽にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」となっている。  国際的に賛成をしたもの、しかも、賛成をしたのはその拘束力がないというところだけじゃないのですよ。実際に教員給与については、団体交渉によって決定をしていくのが正しいというこのILO・ユネスコの勧告の精神を、これを全く無視しようとする態度ですね。そういう点で、国際的に賛成をしながら、それに沿った措置をとらないで、そういう態度をとってきておるところに、この文部省の今回出された法案一つの大きな側面があると私は思うのですね。政治的道義の問題、あるいは拘束力がないといいますけれども、これは法律屋の解釈ですよ。政治家のやる解釈ではないと思うのですよ。だから堂々と団体交渉を行なって、それで給与や勤務条件の問題については話し合う。その結果かんかんがくがくの討論が行なわれるかもしれませんが、それに基づいて決定をしていく給与、賃金というものが、むしろ私は一番科学性を持ったものだと思うのです。なぜそれをやらないのかという点は、私はもう疑問としてつきまとっておりますので、これは文部大臣にこの点についての見解をしっかりと伺っておきたいのです。
  313. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 民間の給与は、私は利益の分配だと思っております。利益の分配でございますので、話し合いにおいてきめられる、よく理解できるのでございます。公務員の場合は、そうじゃございませんで、住民の拠出します税金によってまかなわれるわけでございます。税金によってまかなわれ、その税金は住民全体が拠出する。だから、住民の代表者が送られている議会が、公務員給与についての基準を定めていく。その際に、公務員の立場が十分に守られてない場合があってはいけないという配慮もあって、ことさらに人事院等の第三者機関を設けて、その改善をまつことにしているわけでございます。そういう方式が、国民全体の納得の得やすい方法ではないだろうか、こう考えているわけでございます。  そもそもどういう経緯をもってこういう仕組みがいろいろとられてきたかということを考えてみますと、民間の場合には私は話し合いできめるのだ、また協約締結権とかあるいは同盟罷業権とかというものを背景に、労使対等の立場で話し合いができるようにしていくということは、よくわかるわけでございます。しかし、公務員の場合はそういう利益の分配じゃございませんで、国民の税金でまかなわれている。また公務員は、国民全体に対する奉仕者だ、こう明確に規定もされているわけでございます。そうしますと、やはり国民代表者で構成されている議会がきめるというほうが、国民全体の納得が得やすいんじゃないだろうか、こういうふうに考えるわけでございます。やはりそれぞれの国情のほかに、いま申し上げましたような点もぜひ御理解を得たいものだ、かように考えているものでございます。
  314. 山原健二郎

    ○山原委員 その論理、文部大臣が言われておるその論理に問題があるのですよ。これはもうILO・ユネスコのこの勧告なんか賛成しなければいいのですよ。これは明らかに教員のことをいっているわけでしょう。教員給与のことについて、団体交渉できめなさいというふうにいっているわけですね。ただその場合には、国情によって、国の状態によって拘束するものではない。しかしながら、この流れておる精神、国際会議における話し合いというのは、これは団体交渉によってきめるのがいいのですよということをいっているわけです。それに賛意を表明してきたわけです。しかも、団体交渉によってきめることと、国会できめることとは、矛盾しません。矛盾しないのですよ。何か団体交渉できめれば、国会の意思と全く違うものが出てくるかのようなことを言われるけれども、むしろそういうことのほうが矛盾しないのです。むしろそういうことをしないで決定をしていく、いわゆる公務員の場合は税金でまかなわれているのだから、これは政治的に決定すれば、国会が多数できめればそれでいいのだという論理になってしまうわけです。この論理が、文部大臣を頂点とする文部官僚の中にずっとあるわけですよ。ここに問題があるわけですよ。だから、交渉したらいいじゃないですか。交渉して、政府の場合は税金という問題を使っての予算構成をするわけで、その予算の中で、それは無理という場合も出てくるでしょう。しかし教員の場合は、自分たちの身分、生活条件の保全のために、あるいはまた自分たち教育専門家としてのその資質を維持するために、要求を持ってくるわけですね。そこで話し合いがなされる。なされて決定されることと、国会できめることと、常に矛盾するものではないのです。矛盾しないのです。むしろ今度の場合は、率直に言ってどこの団体とも、いま岩間さんの御答弁にありましたように、職員団体等と交渉を全くしないできめておるというところですね。むしろそれは、混乱を起こす可能性をよけいに持っているわけでございまして、そういうILOあるいはユネスコなんかの国際的な流れというもの、しかもそれは近代的な流れですよ。新しい前進的な流れですよ。したがって、古い感覚の中でやられたものではなくして、国際的な各国の経験の交流が行なわれて、その中で教員給与についてはこうしたほうが一番いいのだ、こういうふうに前進しながらきておる国際的な勧告です。しかも、政府がみずから賛意を表明しておる。だから、これにのっとっていけばいいわけですよ。それを一方は全然団体交渉にも応じない、話し合いもしないということで、公務員の場合は税金だから国がきめればいいのだと、政治的にぱっと出してくる。だから、あなた方の背景には、何にもないわけですよ。たとえば最初二五%出し、五〇%だという案を出してきた。これは国民にはわからない。賃金をふやしてくれという人は、みなそうですから、出てきたことに対しては、それはもらったほうがいいという人が出てくるのは当然ですけれども、これには何ら根拠がない。だから大蔵省が一〇%だとぱっと切ってきたら、背景が何もないものですから、ぱっと参ってしまうわけです。それで一〇%ということになるわけでしょう。一体賃金の問題について国民的な合意がなくして、そういう大蔵省との関係とか、そういう政治的な上部取引だけでぱっと賃金が決定される、そんなことは国際のいまの潮流じゃないわけですよ。まさに古めかしい感覚で賃金を決定していくという、そこにこの法案の問題があるということを私は指摘をしておきたいのです。どうですか。
  315. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 国会でいろいろ御論議いただく、それを何か文部省がぱっときめる、大蔵省との間にぱっときめる。どうも私は適当なお話でもないように思うのでございます。先ほど人事院総裁は、民間企業について膨大な資料を得て、そして準備を整えて給与改善勧告をしているのだということもおっしゃったわけでございます。いまの仕組み、もう少し私は公務員の立場を守るために、いろいろ心を砕かれている点について御理解を得たいものだと思います。  教員といいますと、日本の場合には、私立の学校、これは公務員じゃございません。したがいまして、学校当局との話し合い給与がきめられているわけでございます。その部分に関します限りは、この勧告のとおりに行なわれているということになろうと思います。  また義務教育教員の場合には、これは府県の公務員でございます。府県の公務員でございますけれども、ばらばらな給与体系になって、みんな納得していけるのだろうかということもございまして、国家公務員である教員給与の種類及び額に準じて定めることになっているわけでございます。ある程度バランスをとっていくというようなこと、しかも半分は国庫負担をするという仕組みをとりながら、府県が給与改善をやっていく場合に、やりやすいように府県の実負担額を軽減するという配慮も行なっているわけでございまして、それぞれ国々にはいろいろな深い背景があるわけでございまして、私は十分公務員の立場を配慮しながら今日の日本の仕組みはつくられているものだ、かように考えているわけでございます。そう簡単に文部省の一存、大蔵省の一存できめられるものでございませんし、また自由にこうやって国会においてその給与がいいか悪いか御論議いただいておるわけでございますので、その御論議の中からもっとさらによいものが生まれてくるのではないか、かように考えておるわけでございます。  いろいろ伺っていますと、山原さんと私との間では、基本的な考え方にかなりな開きがございまして、労働時間一時間当たりの賃金というような表現をされます。私にはなかなか使えないことばでございまして、私たち教員の社会的処遇を考えていきたいというようなことが中心になります。その辺でやっぱりものの考え方の違いもあろうかと思いますけれども、いろいろな沿革、また深い配慮が加えられて、こういう方式にはこういう方式なりの、山原さんの考え方を私は頭から否定するつもりはございませんけれども、それぞれの特色を持っているものだ。いまの日本のこの仕組みが、何か公務員の立場は全然考慮してないんだというふうにおっしゃいますと、少し見解の違いがはなはだしいが、われわれの考えている日本の仕組みについても御理解を得たいものだ、というお願いはしたい気持ちになります。
  316. 山原健二郎

    ○山原委員 文部大臣、私も声を大きくしますけれども、一時間幾らで計算するというようなことは私はまだ言ってないのです。だから、私が言っておりますのは、もちろん国会で最終的に公務員の賃金はきめるわけですね。けれども、その過程を言っているわけです。そしてそれは私は国際的に見ましても、ILO・ユネスコの「教師の地位に関する勧告」を見ましても、これはむしろ道理が通っておりますので、だから、その過程においては、文部省としては、全部の教師の地位の問題ですから、いろいろの職員団体の意見も聞き、団体交渉も行なっていくという過程を踏まれて、そしてこれだけの賃金は要るんだ、こういう自信が文部省の中にもしっかりできて要求していく、そのほうが道行きとして正しいのではないかということを私は言っているわけですよ。だから、今日の国力の中で国民の税金を法外に使うなどという、そういう考え方話し合いの中では出てこないのです。労働組合も職員団体も、そういうことは考えてはいないと思います。それはそれなりの生活の実態に即した要求というもの、そして自分の研修のためにはこれだけ要るんだという切実な数十万の教師の意思が結集されていく、その中で賃金はこうきめていく、これが国際的な通念でもありますし、今日賃金をきめる上でも、それが原則になったほうがいいんだということを私は主張しているのです。その背景のもとに、文部省がたとえばこの程度にきめていくということをきめて、そして政府部内間の折衝も行なわれるだろうと思いますし、そういうことを私は主張しているわけですから、それをさらにふえんをしていきたいと思いますが、団体交渉というのはILO九十八号条約、これもしばしばいわれてきたことですけれども、この際、私はやはりお互いに確認をし合っていきたいと思います。  ちょっとこれを読んで見ますけれども、「団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約」、これがいわゆる九十八号条約でございますが、その四条には、「労働協約により雇用条件を規制する目的をもつて行う使用者又は使用者団体と労働者団体との間の自主的交渉のための手続の充分な発達及び利用を奨励し、且つ、促進するため、必要がある場合には、国内事情に適する措置を執らなければならない。」こういうふうに、このILO九十八号条約は述べているわけでございます。  そして、これについては先ほども言いましたように、政府は批准をしているわけですね。岩間さん、これは批准をしていますね。この批准に基づいてどんな措置をとったか、もう一回聞きたいのですが、この批准をした以上は、この九十八号条約第四条に基づきまして交渉をしたらいいんじゃないですか。なぜ交渉しないのですか。もう一回伺っておきたいのです。どうしてもそこがわからぬ。
  317. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 この点につきましては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律という法律によりまして、先ほど大臣がおっしゃいましたように、各都道府県の当局と、それから教職員の組合との間で、交渉が行なわれるというふうな法的な措置がとってあるわけであります。したがいまして、わが国ではILO八十七号条約に沿った措置が行なわれているというふうに解するわけでございます。  なお、先ほどちょっとお答えを不正確で終わりましたけれども、このたびの法律によりまして、年間教員一人当たり約二十万円の給与の引き上げになります。その中には二万円程度の退職金へのはね返りが含まれておりますけれども、約二十万円というふうにお答えいたします。
  318. 山原健二郎

    ○山原委員 いまの問題ですけれども、各都道府県においては、その団体交渉が行なわれるといっても、実際には非常に困難なんです。勤務条件の問題あるいは賃金の問題について交渉するといいましても、いろいろ制約があり、また会わなかったり、いろいろなことがございまして、うまくいっていないのですよ。こんなのはうまくいかしたらいいのです、文部省の指導助言によりましてね。何にもそんなところでいやがることはないわけですし、それから日教組との関係あるいは全国的な職員団体、労働組合との関係におきましても、これは話し合いというか団体交渉を行なったらいいのですよ。しかも、各都道府県では賃金の決定がなかなかできませんからね。だから、実際に全国の六十万という教員を確保しておる職員団体と話し合う、団体交渉を行なう、賃金問題、勤務条件の問題について行なうということは、これはもう当然の国際的通念です。しかも政府みずからが、わが国が批准をしておるという状態でしょう。それで、いま岩間さんも文部大臣も言われましたけれども、都道府県ではやれないのですから、私は日教組と会うべきだと思うのですが、その全国組織である日教組などとは会いませんと言う。しかし、その点についてもドライヤー報告をちょっと読み上げてみたいと思うのです。これも幾たびかこの委員会でも発言をしましたし、他の委員方々も発言をしておりますけれども、これはもうILO八十七号条約の批准に基づきまして、ドライヤー報告はこう述べております。「教員は、その交渉が地域ないし全国段階のいずれで実施されようとも、それにかかわりなく、日教組、をその実施されるいずれの交渉においても教員を代表するものとして指定する法的資格を持つに至った。当委員会は」、これはドライヤー委員会のことですが、「当委員会は、このことが六四年九月文部大臣の代理者によって当委員会の場で出された証拠の中で暗に容認されたことを満足の意を込めて記録する。」こう述べておるわけでございます。こういう点から考えましても、ほんとうに文部大臣が、この問題について日教組などと団体交渉をやるということ、これはもうほんとうに原則的なことだと私は思いますので、この点について実際、給与、賃金、勤務条件の問題については団体交渉をやったらどうですか。いままではやれなかった、この法案を出す過程ではやれなかったというのですが、これからはどうなんですか、これからもやらぬという姿勢を堅持されるわけですか、そのことを伺っておきます。
  319. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 たびたび申し上げていることではございますけれども、文部省と日教組との関係、たいへん不幸な姿にあると思いますが、ぜひ国民の立場に立って私は打開したいという希望を、非常に強く持っておるわけでございまして、そして常に隔意のない意見の交換ができる間柄にもっていきたい、そういう努力を払いたいと念願しているところでございます。
  320. 山原健二郎

    ○山原委員 民間の場合でも、労使の間に不幸な状態が続くのは、これはあたりまえなんです。それは、要求する側と要求される側との見解、また要求される側はみずからの会社その他の利潤の問題も出てまいります。それから要求する側は、今日の物価値上げの状態の中で自分の生活を守るためにどうするか。これはいつでも労使間の話し合いというのは火花が散るわけですね。これは言うならば、不幸な状態といえるかもしれません。しかし、その火花が散る中で、お互いに賃金や条件を決定をしていくという、そういう立場にあるわけです。また、そういう意味では、日教組と文部省との間に、それは火花が散るのはあたりまえなんです。文部省がいろいろの法案あるいは管理運営の問題、管理体制の強化の問題などを出してくると、それに対して、いわば管理される側に立つところの職員団体が猛烈と反撃をする、あたりまえのことです。それはもう社会発展の一つの法則です。そういう中でお互いに交渉を持ち合いながら、そしてそのことが解決をし、また、解決が延期をしたりする場合もあるわけです。そういう過程を踏むということは、当然のことなんです。いわばそれが文部省にとって一番大きな仕事でもあると思うのですよ。しかも、職員団体が要求しておるのは、単なる賃金の問題だけじゃないわけですね。きょうは私は賃金の問題だけ言っていますけれども、先ほども馬場委員からもお話がありましたように、日本教職員組合というのは、職員団体が要求しておる項目の中には、もちろん大幅賃金値上げという問題がありますよ。ありますけれども、研修の問題もあれば、また学校の施設の問題もある。これは実際に現場で子供たちを教える中で出てくる、さまざまな各様の、要求というものを掲げてやっているわけですから、そういうことについて交渉に応じるということ、これは当然。そしてその中でこそ日本の教育が一そう前進をしていくわけですね。むしろ今日の段階では、この団体交渉あるいは話し合いというものを拒絶しておるのは、文部省側じゃないんですかね。不正常な関係にあるとか、残念な関係にあるとかということを言いながら、むしろそれを拒絶しておるのはあなたのほうじゃないですか。どうですか。
  321. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 交渉ということを、私は、山原さん二つの場合を一緒にしておっしゃっているんじゃないかと思うのであります。交渉過程を経て、そして労使交渉できめるという意味の、言いかえれば、政府教員の団体の間で合意をする、その合意に基づいて給与をきめていくんだ、こういう意味でおっしゃっている場合の交渉と、そうじゃなくて、いまの形式でいくんだが、やっぱり日教組の意見をよく聞く、そういう意味での交渉と、両方一緒にしておっしゃっているんだろうと思うのでございます。私は、法的には、先ほど初中局長が申し上げましたように、府県の公務員でございますし、府県のほうから給与が払われていくわけでございますので、そういう相手方は、法的には府県だ、こう考えるわけでございます。しかし、そんなことにとらわれないで、もっとざっくばらんに文部省としても話し合っていく間柄にしたいんだ、こう申し上げているわけであります。私は、そういう努力をしている際でございますので、日教組がどこがどうだというようなことは避けていきたい、こう考えるわけでございます。  もう一つの、両者の合意によってきめていくべきだという強い主張をお持ちいただいている。私は違った考え方を申し上げているわけでございます。利益の分配、労使の話し合い給与をきめる、そのために対等で話し合うために、労働者側には同盟罷業権まで与えていく、そのかわり使用者側にはロックアウトの権限を与えていく、そして対等で話し合うということだろうと思うのでございます。山原さんの話を延ばしていきますと、合意に基づいて給与をきめていくんだ、そのかわり教員の側に同盟罷業権を与えるべきだというお考えに立つんだろうと思います。その場合に、やはりそれじゃロックアウト権を与えるのかという問題になってくる。いろいろある中で、私はそういうことを捨象して、日本のいまの姿というのは、それなりにいろいろな沿革もあるし、またそれなりの事情もあるということを、先ほど仕組みを通じて申し上げたところでございますので、その点につきましてはぜひ御理解を得ておきたい、かように思います。
  322. 山原健二郎

    ○山原委員 非常に大事なところをお互いに論議しているわけですが、私は罷業権があったってちっともかまわないと思っております。あればといって、そんなものを簡単に使いやしませんよ。しかも国際的に見たって、どこだって、とは言いませんけれども、罷業権を持っているのですよ。憲法も労働三権というのは保障してきたわけですが、それがずっとこういうふうに変わってきまして、人事院などというものができてくる過程がありますから、そのことを私はきょう論じようとは思っていませんけれども、だから、いわゆるストライキの問題にしましても、ストライキなどというものはこれはたいへんなことなんです。ほんとうに職員団体がストライキをやる場合には、どれほどの苦労をしておるか、そんなことも勉強されたほうが私はいいと思うのですよ。ただ、かって気ままにやれるような状態ではありませんしね。しかも皆さんも、処分ということをやっておられるわけでしょう。だから、いまここでそのことを申し上げるつもりはありませんが、この点は国際的に見まして、国会法律できめるからもう団体交渉をしなくていいというような国が、そんなにたくさんあるでしょうか。これは人事院総裁のほうにお伺いしておきたいのですけれども、国際的先進国家諸国においては、この辺の賃金の決定は大体どういう形態でやっておるか、御存じと思いますがどうでしょうか、ちょっと少しそういう例をお持ちでしたらここで表明していただきたいと思います。
  323. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 先ほど来お話を伺っておりまして、もうすっかり意気消沈してしまいまして、もうしょげてしまっておるわけです。一体われわれの立場はどういうことになるんだろうということですね。この現行法制を前提としてのお話なのか。現行法制では御承知のように労働基本権は公務員に対しては否定されている。それを回復すべきだ。奪還すべきだという勇ましいことばもありますが、それを奪還した上でのお話なのか、いまの体制のもとでのお話なのか、それを私は非常にさっきから伺って気にしておったのですが、どうもいまの体制のもとにおいても、もう人事院のごときは横へのいておれ、これは文部省と話をするんだ。いかにもわれわれのほうがじゃけんで文部大臣のほうが親切であるかのごときにも、ひがみ根性で聞こえるわけです。これはわれわれの立場としては非常に重大な御発言だと思わざるを得ない。それですっかり意気消沈しておりまして、もう少しはっきり御趣旨を伺っておきたいと思いますけれども、いま最後にちょっと希望的なおことばがございました。いまの制度では人事院があるからという、そうおっしゃったと思いますが、それならば安心して引っ込みますけれども、したがって、いまの現行法制を改めるべきだということを前提としてのお話ではないお話であるとして、現行の体制のもとにおいて、われわれが労働基本権の代償機関として、そうしてたびたび最高裁の判決にもございますように、代償機能というものは大いに尊重すべきであるというわれわれの使命を強く判決の中で示されており、われわれはまたその使命感に燃えて公務員諸君のためにということで、先ほども申しましたように、組合の方々にももうひんぱんにほとんど毎日のようにお会いをして、そうして皆さんのおっしゃるところをできるだけ実現しようという努力をしているわけでありますが、卒然として、おまえ用はないと言われたんじゃないかと思って、そこのところを非常に私心配しておることだけを申し上げさせていただきます。  したがって、いまの御質問の点も、いまいわゆる公制審、公務員制度審議会で、根本論として論議されておるその点に触れるものじゃないかと思いますので、それは私はここでお答えすべき限りではない。現行法制のもとに、われわれが死力を尽くして公務員のためにがんばります、どうぞ御信頼願います、ということだけを申し上げさせていただきたいと思います。
  324. 山原健二郎

    ○山原委員 意外な受け取り方をされておるので、ちょっと私もびっくりしましたけれども、私は労働三権の問題については、憲法の立場から私は労働者には基本的にあるという考え方に立っています。そしてこの法案が成立をする場合にも文部省職員団体とが団体交渉していく。それは国際的にもそういうことですよ。だから、それはちっとも人事院総裁の存在を私が無視するとか、そういうことを言っているわけではありません。しかも、人事院がいままでも勧告その他をめぐっていろいろ苦労されておることは、私知っているわけであります。そんなことを一つも私は言ってない。むしろ労働三権の問題については、文部大臣から言ってきたものですから、私はそれを原則的な問題として話をしておるのでして、その点は人事院は用はないなどという考え方でいま申し上げているのではありませんから、それは了解していただきたいと思います。  たとえばイギリスの場合、いわゆるホイットレー協議会というのがあるわけでしょう。ここでは労使交渉で賃金をきめるわけですね。これは教員の場合です。労使は半々ですよ。労使というのは政府職員団体ですね。これがイギリスの賃金決定のやり方ですね。そこでまとまったものを、政府法律案として議会できめていくという、そういう経過をたどっておりますね。これはイギリスの例ですから、よその国の例をそうあげる必要はないと思いますけれども、これは参考としてやはりお互いに知っておく必要があろうと思うのです。  ホイットレー協議会意見がまとまらない場合にどうするか。意見がまとまらないで政府国会法案を提出するときには、たしかイギリスにおいても争議権を行使して、これに対抗する権利が与えられておると私は思っています。それだけ給与の決定ということについては、職員団体、労働組合の意思が尊重される形態をとっているわけですね。  フランスの場合はどうかというと、これはドライヤー勧告の中にもありますけれども、フランスの教員の場合はこういうふうにドライヤー報告は述べています。「彼らの保護と基本的保障は十分行き届いている。」彼らというのは教員でありますけれども、「彼らの保護と基本的保障は十分行き届いている。」ここでは賃金決定にあたっての職員団体の権限というものが、相当保障されているわけですね。  それから、その他の場合、カナダの場合を例にとりますと、公務員法によって公務員委員会を組織し、職員団体との協議について規定をしているわけですね。これも述べられておるところでございます。これはおそらくアメリカ、イタリア、インドの場合などもそれぞれあると思いますけれども、こういう国際的な状況ですね、こういう点を考えておく必要があると思います。  それから、またいま文部大臣いろいろ言われまして、団体交渉のことについてはかなり消極的な態度でありますけれども、これはドライヤー報告の二千二百四十七項のところに「当委員会は、日本の総理大臣の一九六五年五月十八日政府と総評間の初の定期的会合において行なった文部大臣と日教組の間の話し合いに関する声明を深い満足の意をもって記録にとどめた。」こういうふうに述べてありまして、「遠くない将来に、双方の合意によって達成されることを確信する。」ということが述べられているのですね。これはたしか佐藤総理大臣の場合だったと思いますが、一定の前進的な姿勢を示しているのですよ。それから比べますと、ただいまの文部大臣の見解というのは、私はむしろ非常に後退しておるというふうな受け取り方をせざるを得ないのですが、その点はどうでしょうか。
  325. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 たびたび申し上げるのでたいへん恐縮なんですけれども、ほんとうに私、文部省と日教組は、やはり協力し合っていかなければならない、それなくして教育の振興はできないとまで思っておるわけでございます。初中局長と書記長の間で、いろいろ話を詰めているわけでございますけれども、その結果によっては十六日にも話し合いをしよう、こういう経過をたどっておるわけでございますので、私の気持ちをぜひ御理解をいただきますように、お願い申し上げておきたいと思います。
  326. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、これは定期的その他いろいろの形で接触を保ち、交渉も行なうという形をとってもらいたいと思うのです。そういう方向へ向かっておったわけですからね。佐藤総理大臣の発言を、ドライヤー勧告が評価しているような状態があったわけでございますから、その点をぜひ強く要請をしておきたいと思うのです。  その際に、私はたとえば日教組に象徴されております職員団体、労働組合というものに対する一定の誤まった見解というものは、これは払拭していただく必要があると思います。それは特に文部大臣として、かなり公平な立場でこれを見るという目を持っていただかないと、ぐあいが悪いと思うのですよ。いままで率直に言いまして、文部大臣がしばしば表明されております見解の中には、どんなに考えましても日教組に対する偏見があるように私は思うのです。  たとえばこの前の、どこでありましたか、教育会議で行なわれました文部大臣の日教組に対する批判ですね。これはついでにこの際述べておきますけれども、ここへ持ってきたんですが、これは新聞だけで申し上げて恐縮でございます。しかし各新聞が取り上げました文部大臣の六月十一日ホテル・ニューオータニで行なわれました都道府県・指定都市教育委員会教育会議における発言ですね。「日教組暴力事実なら遺憾」という見出しで書かれておりますが、その中で新聞は「日教組の考え方、運動方針を厳しく批判した。」それから「現状の改革、前進を目ざす筑波大学法案教員人材確保法案などに反対する日教組、先生たちの考えは理解できない。このままでは日本の将来は憂うべきものになる」、こういう発言をなされているわけです。それからさらに、これはちょっと私も理解に苦しむのですけれども、文部大臣がその際、「雑誌に「日教組を斬る」「日教組解体論」など、組合内部で脅迫、脱会しようとする先生に対する村八分などが書かれているが、これが事実とすれば、人つくりに励むべき日教組が暴力を使っていることになり、日本の将来は憂うべきものになる。」こういうような表現、さらには「左翼の人は現状の改革にことごとく反対するが、現在、改革を試みないでよいものを考えてほしい。」これは新聞の記事でたいへん不正確な部分があるかもしれません。けれども、ここで表現されておることは、これは私は一度文部大臣に申し上げてみたいと思っておったんです。  というのは、文部省政府が出してくる法案に対して、私たちは反対する場合があるわけですね。私学共済などについては、これは与野党お互いに賛成しました。しかし、筑波大学の問題、人材確保の問題については、われわれ野党のほうは見解を持っていますから、だから、これは反対するわけですね。それをいわゆる左翼だというような見方ですね。左翼はすべて反対するというような表現、こういう表現のしかたも私は不正確だと思います。同時に日教組に対するこういう見解――文部大臣が公式の場で発言をする場合には、たとえば政界裏話のような雑誌、これをもとにして発言をされては、文部大臣の権威というものは失われると思うのですよ。だから、「日教組解体論」とかあるいは「日教組を斬る」などという原典を私調べてみたのです。読んでみますと、確かにそういう場面もあったかもしれませんね。しかし組合を脱会しようとするかあるいは組合の運動についていかない人に対して、つるし上げが行なわれたという記事が西日本新聞にある。これがもとになって「日教組を斬る」とか、「解体論」というのが出てまいるのですが、しかしその中でも、ちゃんと初めから終わりまで見てみますと、日教組の見解はそれでもやはり出ているのです。  たとえば、このことにつきましては、これは九州であったことでございますけれども、現在の日教組槇枝委員長は、「スト不参加者にはとくに慎重に対処するよう指導している。あまりラディカルなやり方は逆効果。スト不参加の理由にはいろんな事情や立場があるだろう。その人たちを組織の外に追いやらないよう、息の長い説得こそ必要だ」と言って、日教組自身としてはこれらの問題についても見解を述べているわけです。ところが、あなたが使われたのは、その前半の部分だけ、あるできごとを使われて、日教組批判にそれを持っていく、こういう形をとっておられます。これも私は正しくない評価だと思いますので、そういう点で申し上げておきたいのです。  要するに、日教組に対しては、頭から反撃をしていくという姿勢があるのです。自民党が持っておるならまだかまいませんよ。政党ですから、それぞれの見解があろうと思います。けれども、文部省の長に立つ文部大臣が、率直にいって、そういうあまり正確でない雑誌などをもとにして、しかも、全国の教育会議で発言されるなどということは、これは不見識だと思う。誤りなんだから、しかもそういう考え方が、あなたは、筑波大学に対して反対しておることに対して、他の大学にけちをつけるよりも勉強せよという発言になってあらわれてくる。だから、文部省のやる方法が一番正しいのであって、これに対して反対するものは、全部間違いなんだという思想があるのです。これがあなたの論理になっておるのです。だから、そういうことではうまくいかぬのはあたりまえなんです。  私は、そういう点については、文部大臣の姿勢をはっきり変えていただかなければならぬ。もっと公平な立場でものを見る。少なくとも文部大臣の席におる限りは、そういう立場で臨まないと、十六日に会合を持っても、ほんとうに腹から話し合える条件が出てこないかもしれません。どうですか。
  327. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 いろいろ私としても申し上げたいことがございますけれども、なろうことなら、文部省と日教組がほんとうに腹を割って、絶えず話し合いをしていくような環境をつくり上げたい、こう考えておりままので、そのような、特別な批判めいたことは避けたほうがよろしいのではないかという気持ちを持っておるわけでございます。  同時に、事務当局に対しましては、いますぐ話し合いをして詰めるということは困難であろう、かなり両者の間の考え方に開きがあるのではないだろうか。だから、考え方の違う問題は、片一方はこういう考え方、こちらはこういう考え方、やはり違いを明確にする。話し合って結論が出るまでは積極的に話し合いをする。こういう姿勢でいったほうがいいのではなかろうかということも、注意としては事務当局に言っておるわけでございます。ぜひ私としては、積極的にいろいろな問題について意見が交換し合えるような環境をつくっていきたいな、こう念願をしておるところでございます。
  328. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に伺っておきたいのですが、今度の人材確保法ですね。これは皆さんの文部広報によりますと、「反対意見」というところがありまして、「この法案は、五段階給与制度を導入し、教員に対する国家支配をねらっているとの意見がありますが、どうですか。」国家支配のことは長くなりますからおきますけれども、五段階の問題ですね。  五段階ということばは、これはいろいろ総合して出てきた名前だろうと思うのです。先ほども自由民主党のあれにはないということでございますが、事実五段階ということばはありません。中教審の答申の中にも、五段階ということばはありません。けれども、中教審答申の中を見ますと、たとえば中教審の答申の文部省の出しておりますものの三六ページ、「教員の養成確保とその地位の向上のための施策」というところ、あるいはまた、随所に出てくるわけですが、もう一カ所申し上げますと、八六ページの「教員の資質の向上と処遇の改善」、ここのところは「職制・給与・処遇に関する改善措置」というのがありまして、「(1)初等・中等教育教員給与の基準は、学校種別によっては差等を設けないこととする。また、教頭および「大学院」で再教育を受け、またはその他の方法によって、高度の資質を身につけたと認定された教諭に対しては、別種の等級を適用できるようにする。(2)初等・中等教育教員初任給は、大学卒業者の職業選択の動向に関する現状分析の結果によれば、教職への人材誘致の見地から、一般公務員に対して三〇~四〇%程度高いものとする必要がある。なお、校長の最高給は一般行政職の最高給まで到達できる道を開く必要がある。(3)教員の研修を体系的に整備し、その適当な課程の修了者には給与上の優遇措置を講ずる。また、教頭以外の校内の管理上、指導上の職務に従事する者についても特別の手当を支給する。」こういうふうに出ているわけですね。だから、学校の中には賃金の面でも、身分的にも、格差が出てくるというのが中教審答申の中身だろうと思います。  それから自民党の出されております案の中にも教員身分法を制定するというのがございまして、「教員の採用、任期、研修、争議行為の制限、身分保障等専門職としての教員の身分を確立するため教員身分法を制定する。」というのがあるわけですね。  そうしますと、ここらに一つの疑問やいろいろな問題が現在出てきておるわけでございますが、今度出されておりますこの法案というのは、中教審の答申の考え方とはどこで接触しておるのですか。全く関係のないものとして出しておるのですか。どうですか。
  329. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 中教審答申の基本的な考え方は、教員待遇改善する必要があるということでございまして、その線に沿いまして今度の法律案ができておるということは確かでございますけれども、内容につきましては人事院のほうにお願いをして、人事院のほうで適切な勧告をしていただくということが主眼でございます。したがいまして、内容につきましては人事院におまかせしているということでございます。
  330. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすると、この法案が通りました暁におきましては、すべては人事院にまかされるということで、人事院のほうにおきましてどういう御判定をされるかわかりませんが、中教審の考え方に基づく方向が出てもやむを得ない、こういうお考えですか。
  331. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 人事院人事院として、独自に御判断をされるものと思います。しかし、中教審の答申が客観的にあるということ、これは事実として否定できないところでございますけれども、人事院はそれに拘束されるものではないと考えております。
  332. 山原健二郎

    ○山原委員 あまり長く質問するつもりはありませんが、そうしますと、この法案が通ったあとでどういう形態になるかということは、文部省としてもわからないということですね。場合によっては、この中央教育議会の答申のような形になるかもしれないし、また別の形態になるかもしれない。その辺はわからないというのが現状でしょうか。
  333. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 人事院総裁も申しておりますように、いろんな関係の団体の方々も御意見を申し上げているようでございます。また、私どもも、調査会の結論が出ましたら、人事院のほうにお願いをするということもあろうかと思います。そういうものとは別に、人事院は独自の御判断をされるものというふうに考えております。
  334. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすると、五段階ということばは、中教審の答申の中からあみ出されて形態として出てきたことばだと思いますが、それは全く関係がないといままで言ってこられたのですけれども、そういう形になる可能性もあるということになるのでしょう。どうですか、この点。
  335. 岩間英太郎

    ○岩間政府委員 このたびの法律とは、いわゆる五段階というのは私どもがつけたものではございませんで、関係の組合の方がおつけになったことばでございますけれども、人事院のほうは人事院のほうとして、独自にお考えがあると思いますので、私どもに、人事院がどういうふうにやるかということを聞かれましても、ちょっと困るわけでございます。
  336. 山原健二郎

    ○山原委員 それを聞かぬでも困るが、また五段階ということばは不正確であるかもしれません。だから、そのことばは要約して、中教審答申の給与待遇に関する問題、教員待遇改善せよということのもとではありますけれども、同時にそれは、かなり職階的なものがあるわけで、その点でございますが、だから、そういう五段階というふうにまとめて言っておるわけでございますけれども、そういうことにならないという保証もないわけですね。  こうなると、全くお先まっ暗、あとは人事院のほうにおまかせする。それから今後の計画についても、今度は一〇%だけれども、次には何%になるかわかりませんが、計画的にやっていって五〇%にされる、こういうわけですから、その過程においても、それは賃金の形態というのはどういう形になるかはまたわからぬ、こういうふうに受け取ってよろしいですか。
  337. 奥野誠亮

    奥野国務大臣 山原さん、先ほど来たびたび申し上げているので、もうほんとうに理解していただきたいという気持ちがするのであります。この法律は、教員の処遇の改善でございます。処遇の改善と、五段階給与と、何の関係もございません。何か幻想を抱いていろいろ反対をしておられるのじゃないかという感じを、五段階給与のことを言われる方には、私は抱かざるを得ないのでございます。  たびたび申し上げますように、そういうことを考える場合には、そういう意味法律国会に出さなければ実現できないわけでございますので、別個の法律だということでございます。この法律と五段階給与の問題とは別個の法律なんだ、かりに実現しようとします場合にも、そうしなければならないのだ、こう言っているわけでございます。ぜひこの法案に書いてあるとおりにお読みいただきますように、心からお願い申し上げておきます。
  338. 山原健二郎

    ○山原委員 そのことをずっと言っておられるので、そこのところが、法案はそれだけのことだとこうおっしゃるわけだけれども、しかし、じゃあそういう五段階にならぬという保証もないわけですからね。そうでしょう。別に法律をつくれるわけですからね。そういう点で、そこのところはすれ違いになると思いますが、これはまたあとでどなたか質問をされると思いますので、私の質問はだいぶおそくなりましたから、これでおきたいと思います。
  339. 田中正巳

    田中委員長 次回は来たる十三日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十四分散会