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唐沢参考人 いま、庶民の生活にたいへんな不安と苦しみを与え、
国民にかってない政治不信を抱かしているものは、大
商社の生活必需品に対する不当な投機、買占め、これによる異常な物価高騰であります。そして、これらの
事態を放置してきた
政府の無策であります。
このはしりとなったものはまさに
木材価格の
暴騰だと
考えております。
言うまでもなく
木材は、
日本の
住宅建設にとって欠くことのできない必要な資材であります。御
承知のように
住宅建設は年間約百九十万戸で、そのうち実に八割、八〇%が木造
住宅でございます。この
木材が昨年の夏以来二倍、三倍と異常な高騰を続け、さらに
合板、セメントなどの建設資材が相次いで
暴騰をし、
品不足を生ずるという
状態が出てまいりました。
この影響としわ寄せをもろに受けたのは当然一般
国民であり、
消費者でございます。長い間マイホ−ムへの夢をかけていた
国民の期待はむざんにも打ち破られましたし、
建築に携わっております大工、左官の仕事面に対する影響も深刻なものがございました。民間
住宅はもちろんのこと、公営
住宅、公団
住宅に至るまで、工事中止、工事の繰り延べ、入札不調などが
全国的に続出したのであります。
こうした
事態の中で建設労働者、職人は職を失ったり、棟梁は資材の手当てができずに違約金を請求され、あるいは契約額を大幅にこえる工事額を負担するなど、その影響、損失は甚大なものがございました。事実、大工をやめて他の職に転ずる、あるいは棟梁が蒸発をしたり夜逃げをしたり、そのために残された子供たちが自殺をしたり、大工の奥さんが発狂をしたり、あるいは大工のうちに置いておきました材料がひんぴんと盗難にあったり、こういう幾多の事例が発生をしてまいっております。また、念願のマイホームが完成をしない、そのために奥さんが自殺をした大阪の例など、涙なくしては語れない事例が
全国的に発生をしているわけであります。
そうした
事態を踏まえて、私はあらためて、こうした悲しい犠牲者を一体どうしてくれるのか、大手
商社や
政府に対して強くその責任を追及するものであります。
もちろん、こうした動きを、私たちが手をこまねいてほうっていたわけではございません。昨年来何回も経済企画庁、
林野庁、建設省へ、この異常な
事態について緊急
対策を強く迫ってまいりました。しかし、ここでは問題は一向解決しませんでした。むしろ、
事態を追及していけばいくほど、行政庁の無策ぶりが暴露され、さらに、
木材を買い占め、その
価格をあやつり、
暴騰させ、大もうけをしている張本人は、三井なり三菱なり丸紅なり伊藤忠なり日商岩井なり、こうした大
商社であることがわかってまいりました。
御
承知のように、
木材需要の約六〇%は
外材に依存をしております。その
輸入材の九〇%を押えているのが大手
商社であります。私たちは、おくればせながらこの事実をつかんで、
政府に、
商社への
指導と
規制を要望したのであります。しかし、
政府筋からの答えは、自由経済だからしかたがない、手のつけようがない、お手あげだ、こういった無責任きわまるものの回答でありました。
ここで、私たちは実は腹をきめたのであります。いつまでも
政府の無策と大手
商社の反社会的横暴を許しておくわけにはいかぬ。このままでは自分たちの仕事と暮らしを守っていくことができない。背に腹はかえられない。ひとつ
木材暴騰の元凶である大手
商社へ直接抗議を行なおう、これが三月二十二日の私
どもの総決起大会になったわけでございます。
そして、大手六社へ怒りを込めて抗議団を送りました。ところが、
商社の回答は全く人を食ったものでありまして、六社とも口をそろえて、投機、買占め、売惜しみの事実はないと強調したのであります。
しかし、そんなばかげた話はないのであります。
大体
木材は、投機行為のしやすい
商品であります。反面、実態のつかみにくいものでもあります。その理由は、産地での立木買い、
輸入材なら現地ストックからで、単に
国内の
在庫量などを
調査しても、買占め、売惜しみの実態をつかむことは困難だという面がございます。また、
日本の港湾における貯木施設は十分ではありませんで、相当の備蓄ができるかというと、そういう
状態にはございません。この面からも
商社は平気で売惜しみ、買占めを否定できる
状態にあるわけであります。
さらに
価格操作には、
商社が
市場に流す材料の一〇%から一五%をやめて、
供給不足だという
情報を流すだけで直ちに
価格上昇をはかることができるのではないかと思うのであります。
商社は、
商社活動が常に投機的な体質を持っており、どのように、買占め、売惜しみをしていないと否定をいたしましても、
国民の疑惑は晴れません。
商社は、
価格の
上昇理由の
一つとして国際
価格の問題をあげておりますが、
丸太の国際
市場のほぼ半分を
日本の
商社が握っています。そこで正常の取引を越えて買いだめ行為をすれば、国際的に
市場価格は
上昇するのは当然であります。日銀の
調査によりましても、
輸入原本
市況は昨年十月までは低
価格であったにもかかわらず、
輸入製品は十一月から
暴騰しているのは、現地の買い付け、船出、入港、通関手続、
原木取引、
製材、
製材品市場流通などの期間を
考えると、十一月以降の
暴騰は、明らかに
国内市況を見た上での人為的な
暴騰だと判断せざるを得ないのであります。
以上、若干、投機
暴騰の要因に触れましたが、何といっても不可解なのは、大
商社の態度であり、
政府の無策であります。私
ども消費者、
国民の前では、投機や買占めや売惜しみはしていない、こう断言をしております。しかし、二月二十六日に自民党の橋本幹事長に十大
商社が呼ばれたときには、自粛してくださいと要請されて、反省すると、こう言っております。さらに一昨日は通産省に呼ばれて、投機の疑いが濃い、こういう注意を受ければ、自粛をする、こう言っているのであります。
新聞報道でありますから、まさか大新聞がうそを報道しているとは思いませんが、もしこれが事実だとすれば、私
どもはたいへん憤慨にたえないのであります。ほんとうに投機はやっていない、売惜しみはやっていない、こういうことであれば、自民党の幹事長の前であれ、通産省の局長の前であれ、堂々と、
商社は投機はやっていない、あるいは買占めはやっていない、こう言明すればいいわけであります。しかし、それはやらない。権力の前には頭を下げ、
消費者の前では開き直る。何とも私
どもはがまんのならない
状態だ、このように
考えているところであります。
とりわけ三井物産の橋本会長は、池田新社長就任の際、これも新聞報道でございますが、三井の歴史と伝統とは常に
国民の利益とともに歩む、このように記者会見で発表しております。はたしてそうなのか。私
どものいままでの運動や取り組みの中での感じは、断じてノーであります。
さすがに、
商社内で働く労働者はこうした動きに反省を示し、先般の新聞でも、
商社マンが内部告発をする、もうけ主義を排せ、このように全
商社の労働
組合は決議をしている、こういうところまで
事態は発展をしているわけであります。
さらに、御
承知のように一昨日、通産省の
調査が発表されました。この
調査はきわめて遠慮深い
調査であり、
商社の自主申告によるものだといわれております。その遠慮深い、しかも自主申告によります通産省の発表によりましても、
木材のもうけにつきましては、四十七年一月から六月にかけての売却益は五十七億有余、これが四十七年の七月から本年一月にかけましては何と二・四倍の百四十九億、こういう膨大な売却益を、通産省の遠慮深い
調査によっても発表されているわけであります。
なお、新聞ではこの五十七億と百四十九億程度しか発表されておりませんが、私、あるところから耳にしましたところから申し上げますと、販売量及びその金額との比較を見ますと、さらに驚くべき事実が出てくるわけでございます。たとえばこの六大
商社の取引量、その中で、四十七年の一月から六月までの販売量は一千百三万一千立米、こういうことでございます。それで五十七億の売却益であります。ところが、昨年七月からことしの一月にかけましての半年間の販売量は、七百三十五万二千立米でありました。実に、
前半期に比較をいたしますと四百万程度の差がございます。一千百万から七百三十五万、こういう
減少量でありながら、もうけは逆に、前期が五十七億で後期が百四十九億だ、こういう事実をどう見たらいいのか。こういうところに、私
どもは非常な疑惑、疑惑以上の憤りを感ずるわけでございます。
さらに、第二次
問屋などからの
情報を耳にいたしますと、
商社の利益は通常三%だ、しかし昨年の十一月ころからは五〇%から六〇%の利益を得ていたであろう。そして、第一次
問屋の利益は通常六ないし一〇%だったが、昨年十一月は二〇ないし三〇%の利益を得ていたのではないか。このように第二次
問屋筋は私
どもに教えているのでございます。
こうした事実を見たときに、私
どもは、
商社のどこに正義感があるのか、
商社のどこに道義感があるのか、
商社のどこに社会的責任があるのか、深い疑惑と憤りを感ぜざるを得ないのであります。
しかも本日、私はここに朝日新聞を持ってきているのでありますが、丸紅飯田は米の買占め数千トンで検察庁の告発を受けた、このようにいっております。ところが、この丸紅飯田自身が、三月二十二日に私
どもが交渉いたしました際、その要求に対する回答として、ここに文書がございますが、三月三十日付で中島代表取締役名で、買占め、売惜しみの事実は全くない、このように、私
どもの組織に対して文書で回答しているのであります。米と
木材の違いはありましょうけれ
ども、米で数千トンの買占めを行ない、
木材で全く買占め、売り惜しみがないという、これは全くこっけいな話でございます。
以上申し上げた幾多の事例につきましては、ぜひ当
委員会でも徹底的に御
調査を願い、
国民の疑惑をすみやかに晴らしていただきたいと、特に要請を申し上げたいと思います。
さて、お手元の資料で、最近の小売店の
木材価格の推移についてごらんをいただいております。確かに下がりぎみであります。しかし、この下がりぎみだとはいいましても、これが昨年の七月、八月の時点に戻るという保証は全くないのであります。常にこの
価格が不安定なのであります。いつどうなるかわからないのであります。これでは重要な
住宅建設、それに責任を持って携わることができません。
政府でも第二期
住宅五カ年計画というものを策定しております。これは
住宅審議会の議を経て、さらに閣議決定まで行なっております重要な第二期
住宅五カ年計画でございます。しかし、今日このような
状態で、先般すでに金丸建設大臣は、計画どおりにいかない、この第二期
住宅五カ年計画は再検討せざるを得ない、このように言明をしているわけでございます。
時間がないので、最終的に私
どもの要望に移りたいと思いますが、お手元にお配りをしてございます請願内容についてでございます。
何といっても私
どもは、このような大
商社の投機的な買占め、売惜しみを
規制するために、
調査権及び
価格決定権を持つ
委員会を
国会に設置して、違反に対してきびしい
措置を含めた法制化を行なってほしい、このことを第一に要請をしたいのでございます。
伝えられるような投機取締法については、単に勧告、単に公表程度のものだと聞いておりますが、この程度で一体、大
商社の社会的責任を実行させ、あるいは投機的買占めを取り締まることができるかどうか、深い疑問を抱かざるを得ません。
第二に、会計法を改正し、
国有林を時価より安く放出する
措置を講じてほしいということでございます。
先ほど私は、何回か
政府の無策ぶりについて触れましたが、具体的な内容については触れませんでした。しかし、具体的な内容に触れることができないほど、
政府内部で今回のこのような投機について何らの具体的な手を打たなかった、という証明でもございます。確かに経済企画庁あるいは建設省、
林野庁、いろいろ話し合ったという事実はございましょう。しかし、具体的にどういう手が打たれたのかといえば、ほとんどと言っていいほど何らの手を打たれていないのであります。こういう
状態の中で重要な、衣食住のうち住という重要な問題について
木材価格が高騰した、このときに、たとえば
国有林を早急に放出をするというような
措置がとれないのかどうか、そこが政治であり、行政ではないかと思うのであります。すでに、この点については、三月二十八日の建設
委員会で金丸建設大臣は、食管制方式というものを検討すべきだ、このように
松浦委員の質問に対して答弁をしております。金丸建設大臣の答弁内容については、新聞の報道の範囲でございますので、具体的な内容については十分知ることができませんが、しかし、いま私
どもが第二点として要請をしております会計法の改正、そして
国有林なり民有林なり、全般的な総合的な計画を立てながら、一朝有事の際に放出のできるような
体制をつくるという方向に金丸発言がつながりがあるのであれば、私
どもはこれを大いに歓迎をしたいし、当
委員会でも、もっともっと専門的な立場からこれらの問題についての御論議なり、具体的な施策についての追及を
お願いをしたいと思うわけでございます。
第三に、複雑な流通経路を改善し、
消費者の保護の立場から公的な流通経路を設置してほしいということでございます。
流通経路は確かに複雑でございます。全く不可解な何段階かの流通経路で、あちらで上がり、こちらで上がり、こういう流通経路が現存してございます。これでは
消費者は救われません。しかも、よく調べてみましたら、
木材については公的な流通経路は何らないのであります。ところが、野菜、牛、馬等についてはすでに公営
市場があるわけでありまして、衣食住の、野菜や牛や馬の問題について公的な流通経路を持つことは当然でありますが、
木材の問題は、この野菜や牛、馬にまさるとも劣らないほどの重要さを
国民生活の上で持っているわけでありますから、やはり公的な流通経路を設置するということがきわめて緊急性を持っているのではないかと思うわけであります。
最後に、今回の
木材問題で痛感いたしましたことは、
木材需要の六割を
外材に依存するこの事実について、非常な疑惑と多くの問題点を感じました。そのことを一言で申し上げれば、私
どもにとって、
木材は海からとるものではない、
木材は山からとれるものだ、なぜ
日本の山からとれないのか、そこをなぜほうっておいたのか、このことについて大きな問題を感ずるわけでございます。
たいへん時間が超過をいたしましたが、以上るる申し上げた点などについて十分御批判をいただきながら、一日も早く
木材及び建設資材の
価格が安定をし、りっぱな
住宅が早く安くできますように一そうの御努力を心から要請をいたしまして、公述を終わりたいと思います。