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彦坂参考人 ただいま御紹介にあずかりました
全国養鶏経営者
会議の
彦坂でございます。
私は、
畜産のうち、養鶏いちずに五十年を通してきておる。したがいまして、今度の
えさの
値上げ、これは私の知る範囲では、こんな大きな
危機はない、かように考えます。私たちの一番困ったのは、戦争中に
えさがなくなって転業しなければならぬ事態に追い込まれましたが、あれは別としますと、これが一番の大きな
危機であります。
そこで、私ど
もとしますと、営々として養鶏にいそしんでおるが、このままでは養鶏家は全部が没落してしまう、崩壊するのではなかろうかというわけで、せんだって十日の日に養鶏
危機突破
全国大会を
開催したようなわけであります。
皆さん御
承知のように、この
えさそのものの
値上がりで一番
被害を受けておるのは、畜種によっていろいろ違いますが、養鶏が一番大きいわけであります。何となれば、
生産費の六七%、
えさ代がかかる。ところが、今度の
えさの
値上がりによりまして七六%にはね上がってしまいます。私
どもは、ここ二十年の間卵価が上がっていない、諸
物価が年間五、六%上がる中で、卵価そのものはずっと水平、単年においては違いがありますが、
平均しますと卵価そのものは上がっていない。俗にいう、
物価の中あるいは食品の中で一番の優等生だとかなんとかいっておりますが、優等生といわれておったところで、これでは食っていけないということになります。過去におきましては、これは戦前、戦後を通じてですが、とうふ一丁、
牛乳一本、ふろ賃、卵一個、これは同じ
相場であったわけです。ところが、どうでしょう。いままでの
消費者価格は十四、五円である。ほかの
物価はどれだけ上がっておるか。それから見ましても、われわれの
努力がどこにあったか、どれくらいわれわれが食生活に寄与してきたかということが言えるではなかろうか、かように考えます。むろんこれについては、日本の養鶏が世界の水準までも来た。
国際価格においても日本の鶏卵は、百三十国ぐらいのたくさんの世界の国の中でいつも五、六番目ぐらいにおる、それまでの
努力をしてきた。それで、私
どもはこの中でほんとうに
努力したそのものは、私たちは生きんがためにやったんだということになりますが、これについてはいろいろの方面の御助力もあったが、しかし、現在の国の
畜産行政、最近はだいぶ変わってきましたが、過去においては大家畜
重点主義の
畜産行政であった。したがって、養鶏というものは、見限られたというわけではありませんが、どうかというと、自然にしておいたって何とかやっていけるのだということになっておりまして、置き去りを食っておったようなわけであります。最近になると幾ぶんか国においても予算の上でお認め願っておりますが、しかし、過去においては養鶏に関しましてはどうかといいますと、日本の養鶏の発展史上、国とか県が特筆すべき大きな力を尽くしたということはわれわれ養鶏業者は思っておりません。われわれが
努力して今日の養鶏を築き上げたということがはっきり言えると思います。
そこで、こういうような
値上がりの場合に、どのくらいわれわれが苦しくなるかということを申し上げますと、先ほ
ども全酪連のほうからお話がありましたが、過去三回の間に、一トンについて二万一千円から二万二千円。これは養鶏の場合、養鶏
飼料は原穀をよけい使う
関係がありまして、ほかの畜種よりも大きな
値上がりをしておる、これはやむを得ないことでありますが、いろいろ私
どもが
全国調査をしましたところ、二万一千円、新聞なんかによると今度の
値上げが一万円だというようなことも出ますが、実際においては今度は一万二千円の
値上がりだ。末端の
農家の
価格になりますと、結局は二万一千円から二万二千円になります。そこで、上がった率、
値上げの幅はどのくらいか、六〇%になります。
いまパンフレットを渡しておりますが、私はこれに基づいてやっております。
あとは大会のときの参考資料でございますが、この一枚のものを
もとにして御説明いたしております。
そこで、この
値上がりにしますというと、
飼料が一トン千円の
値上がりするごとに、私
どもの計算は一キロにつき三円六十銭
値上がりしなければなりません。これは算定がいろいろありまして、
全農さんあたりは三円だといいますが、それは成鶏の食べておる、卵を生んでおる鶏の一年間の
えさで割り出してありますが、それは
えさが上がるに従ってひなもよけい高い
えさを食うことになります。したがいまして、成鶏の食う
えさと育すう鶏の使用の
えさで五十キロ、そうしますと十四キロ一年に卵を生みます。これは私
どもが、私は神奈川県ですが、神奈川県のコンサルタントで毎年三十五、六軒の
畜産農家、養鶏
農家をいろいろ調べたデータによると、一羽で十四キロしか生んでおりません。それで割りますと三円六十銭である。したがいまして、千円で三円六十銭上がるのだから、二万一千円の
値上がりと仮定するときには、結局は七十五円六十銭の
値上がりになる。これは大きなことになります。
それから、
えさですね、
えさそのものを何キロ食うのがほんとうであるとかあるいは食下量がどうだとか、あるいは
飼料の要求量がどうかといいますが、現在の
えさは非常に悪くなっております。私も
畜産審議会の一員として、
えさの
値上がりのとき、非常に
メーカーが苦しいときには実際において
えさは悪くなっておるのだ。しかし、
原料価格は上がっておるのだから、ある
程度多目に見なければならぬと思っておりましたが、どのくらい
えさの食下量がふえておるか。大体五グラムか六グラム一日によけい食っております。それでありますから、これからの
値上がりが妥当と見ましても、今度は元へ返してもらわなければいかぬ。
飼料の効率を上げてもらわなければいかぬ。これが上がらぬとしたなら、一キロについて大きな差が出てくるのではなかろうか、かように思います。
それから、鶏卵の
生産費になりますと、
飼料費が七十五円六十銭上がるのだ。それから流通経費が非常に上がっております、養鶏の場合は。皆さんもうお使いになっておる。パッケージ、十個入るパッケージ、あれが三円でございました。いまあれが十五円、これが十五円でもない。それから段ボールの箱が六十五円のものが百三十円になっても、これはありません。それから運賃が上がっておるというわけで、流通経費が八円上がる。それから人件費、諸資材。人件費は一五%ぐらい上がりまして、こういうものが五円と見る。そうしますと、今度の
えさの
値上がり、諸
物価、諸経費の
値上がりを見ますと、八十八円六十銭になります。
そこで、どのくらいになったらわれわれはいいか、安定した
価格はどこにあるかといいますと、大体におきまして卵価の安定は
市場の
価格、これで二百七十円くらいじゃないと引き合いません。これ以上じゃないと企業の利益がありません。二百七十円なら食べていくのに精一ぱいというところになります。
しかし、これからのひながまた高い
えさを食います。ひなを育てる。でありますから、そこにも書いてありますように、四十九年三月以降は育成費が上昇しなければならない。こういうものが上がってくるということになります。それでわれわれ養鶏家の
生産者レベルというものは二百七十円とかあるいは七十五円で
市場で売っておるのがそのまま入ってきません。これにはいろいろな流通経費があります。したがいまして、手取り二百五十円か二百五十五円、ここらが妥当な
数字ではなかろうかと思います。これも先行きこういうような高い
えさを使っておりますと、来年に入ると原価計算が上がってきますが、いまの場合ならそのくらいでいける。それ以上でなければいかぬということが言えるのではなかろうかと思います。この辺が私
どもの非常に苦しいところであります。
そこで、時間がありませんからかいつまんで申し上げますと、今後の問題点と、私
どもお願いしなければならぬという問題は、
飼料関係で申し上げまするならば、原穀ですね、御
承知のように、
アメリカの
輸出禁止があったために引き上がった、あるいは
ソ連、中共が
食糧が足らぬで買い付けたから上がった。むろん買い手が多くなれば
値段の上がることは火を見るより明らかでございます。そこで、これらのものの
輸入に関しましては、私
どもに言わせれば、競争もいいが、国で特別の機関を設けて一括して買ってもらいたい、そうすることによって
価格は安定する。これは実はだれが悪いかということはちょっと言いかねますが、私、横浜の近くであります。横浜の港に一月余りも十万トン以上の
飼料が陸揚げができなくてだるま船等に積んであった。これは一月以上ありました、ああいうのはやはり買い付けを一本に買っていないから、ああいうような結果になる。それで
アメリカあたりの
市場を刺激して
値段が上がるのではなかろうか。それでありますから、それは今後考えてもらいたい。それと同時に、
飼料需給安定法によるところの調整保管の量をふやす。これに対しまして
政府は経費を
負担してもらいたい。それから
配合飼料の
価格安定基金に対しましては、これに対する考慮の
強化と助成を
お願いいたしたい、かように考えます。
それから、
生産の調整、これが一番大事なことでありますが、現在の
生産調整は国の
生産調整、これは自主的にやっております。各都道府県の
会議を招集して、実情を話して、本年はこれくらいの
需給だと
需給量を示して計画を立てておりますが、これは実際においては何ら下まで浸透しておりません。県の
段階ではそのくらいいっておるが、しかし養鶏家のところまでいくとこれはできていない。したがって、これからはそういうことのないように、私は登録制にしてもらいたい。そしてその登録制の中で国においては抜本的の国の法的
措置を講じて調整をしてもらう。そういう国はいろいろあります。オーストラリアとかあるいは
アメリカにおいても、州によってそういうような
方法を取り入れておりますが、そういうことによってほんとうの
需給計画を立ててもらう。養鶏というのはほかの畜種と違いまして、大体三年を周期として一循環しております。景気のいい年があると今度は悪い年がある、あるいはとんとんの年がある。そんなことを繰り返すたびごとに養鶏
農家、
畜産農家は非常な痛手をこうむっておりますから、今後そういうことのないようにしてもらいたい、かように考えます。
それからもう
一つは、せんだっては国の御好意によって緊急的な
畜産資金を
融資していただいた。この辺はありがたいと思いますが、二年では償還できません。そんな傷が浅いわけではない。今度の養鶏
農家の痛手は二年で償還するなんてとうていできないから、あれは長期にしてもらいたい。これは少なくとも五、六年の長期でないと償還はできないと思います。
それからもう
一つには、卵価安定です。むろん現在の卵価形成というのは、
市場におけるところの荷物の操作によってやっておりますが、これはそうでなしに、集中的に
市場へ出ると卵価は下がりますから、
市場へ出たものをカットする、そのカットしたものは液卵にする。そのための三億円の拠出、これは
生産者によって拠出していく。これは液卵化することが必要ではないかと思いますが、その中にパンフレットがあります。液卵に対する三億円の拠出、液卵に変えるということもありますが、そういうことにしてもらいたい、かように考えます。
それからもう
一つは、先ほ
ども申しましたように、包装資材が上がっております。べらぼうな上がり方です。こういうものに対しては
政府は何らかの手を打って包装資材の引き下げをはかると同時に、流通の面で、
消費の面で、学校給食等も今後考慮していただきたい、かように考えます。
時間がありませんからこの
程度にさせていただきます。私の
意見はこれで終わりとします。