○
池田参考人 農業会議所の
池田でございます。
ただいま全中の
宮脇会長から問題の基礎になるような点は大体触れられましたし、またわれわれ
農業団体は
農政のいろいろ問題なり
方向につきましては常時打ち合わせをしながらそれぞれ推進をいたしておる、こういうことで、あまりつけ加える問題はないわけですが、せっかくの機会でございますので、三、四点ひとつ申し上げまして、御参考に供したいというふうに考えるわけでございます。
〔
委員長退席、山崎(平)
委員長代理着席〕
先ほ
ども触れられましたが、いまさら私がここで申し上げることもないわけですが、異常気象であるとか、いろんな理由はあるようでございますけれ
ども、国際的な食糧の需給
関係が急激に変わってきて、そういう
意味で国内
農業をもう一ぺん見直さなければならぬ、こういう、いうなれば、
一つの反省が一応は国民合意の
方向であるようであるが、しかし、これは必ずしも長期的に見るとそういうことをここで急に考え直す必要はないでないか、こういう
意見もあるようでございます。
私は、皆さん御案内のように、国際的に全体を見ますと、とにかくいわゆるこの
農産物を輸出してそれでその国の国際収支なりそういう問題のささえをしておる、アメリカを
中心としたそういう国々はもちろん幾つかございますけれ
ども、世界全体から見ますと、やはりどこの国でもまず食糧だけは自国でできるだけ生産をして、足りないものはやむを得ずよそから買う、これが国際的な全体から見ましたならば原則であるというふうに統計を見ましても見るわけでございます。したがいまして、国際市場に出ておる
農産物の貿易の量というものは、作目別に見た場合に、それは全体の生産量は、世界の地球の
規模の人口を養うわけでございますから、非常に大量生産されておりますけれ
ども、これが貿易の量にあがっているものは意外に少ない。その辺がやはり
一つ見落とされた問題があって、今日がたがたと
日本の国があわてふためいているという問題にもつながっているような感じがいたすわけでございます。
言うまでもなく、米につきましてはわずか二、三%、いわゆる国際商品であるというえさや小麦につきましても十数%、まあ大豆についてもその
程度である。一番量の大きいものは砂糖であり、これといえ
ども三〇%である。こういうような
状況の中で、一億の国民をどういうふうにしてその命をつなぐか。こういう
農政の課題をそういう側面から考えた場合には、私
どもは、これが単に短期の問題ではなくて、そういうことは常にあり得る、こういうような重大な反省に立って、この辺で
農政をもう一回ひとつ
基本的な姿勢から建て直してやり直してみる、そしてときどきに起こる問題にはそう心配をしないでやっていける、こういう問題を打ち立てる必要が今日非常に重要な時期になったのではないか、こういう感じをまず申し上げておきたいと思うわけでございます。
そういう場合には、やはり
農政の理念と申しますか、
農政の哲学といいますか、その辺が次元を変えた形で
確立をし、それが
政府の政策の姿勢の中に正しく取り入れられ、これが国民合意の上で納得される、こういう筋道でまず
農政を建て直してみるということが
政府全体として、あるいはわれわれ
農業団体も国会も産業界も含めてそういう問題を取り戻すことが
基本ではないかというふうに考えるわけでございます。
昨今、
農業は緑の産業であるとか、あるいは環境を保全する役割りを持つとか、そういう問題が新しく付加されておりますけれ
ども、これはあくまでも付加された要素であって、
基本は一億の国民の食糧を安定的に供給する。これは
基本は国内で供給する。どうしても足りないものは外国から買う。こういう原則が
一つあって、それこそ
農政のあくまでも
基本でなければならないので、これが緑や環境のほうに追いやられていきますと、これはやや錯倒した考え方になると思いますので、その点は私
どもは
基本は、従来からいわれております食糧の安定的供給、ここに置いて、しかも一億の国民の命を国が責任を持って
農業者の働きの中で
農産物を提供してもらってやる、こういうような筋道ではないかと思うわけでございます。
そういう観点から、私は米の問題を取り上げてまいりますと、米は何と申しましても
日本農業の基幹であり、国民の主食の中核であり、これが生産調整という形で今日その生産の調整が行なわれておりますけれ
ども、この点につきましてはやむを得なかった
方向であるかと思いますけれ
ども、幸か不幸か、来年からは休耕をやめる、こういう時期になっておるわけでございます。もちろん財政的な面から見ますと、あまりたくさん古々米がさらに加重するということは困る問題もわかりますけれ
ども、私はいま前段に申し上げましたような観点から、ここで生産調整は根本的に再検討して、必要な米は余り目につくると申しますか、余裕を持った形でつくる、そういう
一つの原則が——とんとんにつくるということは米に関する限りは非常に危険な政策の筋道ではないか。したがって、備蓄の問題等を含めながらある
程度余裕を持った形でつくる。こういうことを
一つのベースにして、それでも余るというものは転作を定着させていくというような
方向で、来年度以降の生産調整の問題は根本的に再検討する時期が来ているのではないか、こういうふうに考えるわけでございます。
したがいまして、一たびすでに見捨てられておる麦でありますとか、大豆でありますとか、そういうような問題、これは今日国際的に非常にわが国に影響を大きく及ぼしている問題でございます。そういう問題も生産調整とのからみで一体どの
程度ひとつつくってみようか。五十七年の生産目標はございますけれ
ども、あれは単なる目標にいま堕して、むしろその実績がどんどん低下しておるというのが現状でございます。麦につきましても、大豆につきましても、特に麦につきましては、国内でめん類等につきましては国民が一番国産の小麦を好んでおる、こういう
現実。八十万トン
程度の小麦が要るようでございますけれ
ども、すでにそういう品物は十六、七万トン
程度に下がっておる。
日本の国民が
ほんとうにうまいめん類を忘れかけておる。こういうような問題等も、この機会に米の生産調整、転作、そういうものと関連をして、五十七年の生産目標等につきましても十分再検討を加えて、しかもこれを全国一律にやるかどうか。この辺がこれからの
農政の
一つの重要な問題だと思います。
価格政策で全部これをカバーすることはおそらく
価格関係の原則から見てむずかしいと思います。
そういたしますと、地域特産化と申しますか、地域分担ということが
農林省でもいろいろ検討されておりますけれ
ども、この辺をもう少し大胆に整理をしくそしてこういう地帯にはほかのところと違って、国が必要とするこれだけの小麦をつくってもらいたい、そのためには周辺でつくっている米に匹敵するようないろいろな政策を集中的にやる。こういうような問題が付加されて、そして特化されたような形の地域がそういう問題との一環で出てくる。北海道なんかにつきましてはそういう問題をいまこそ意識的に私は国の政策としてもやる時期に来ているのではないかという感じがいたすわけでございます。
そういうような観点を含めまして、今回米価の問題が日程にのぼっておるわけでございますが、私は今日
日本の
農家が総体として先ほど
宮脇会長が言われましたような状態に追い込まれております。このことは一面、もう
農業はやる気を総体としては失いかかっておる。意欲をふるい起こしても、簡単なことでは起こらないというようなところまで実は
耕種農業については少なくとも追い込まれておる。施設
農業につきましてはそうでない面があり、非常に近代的な
経営を雄々しくやっておる
経営群をわれわれも承知いたしておりますけれ
ども、事、
耕種農業になりますと、大体生産意欲が限界まで衰えてきておる。これをいかにしてふるい起こしていくかということが
農政の課題であり、また次元を変えて申しますと、政治の大きな問題ではないか。
そういう視点から、先ほど来申し上げましたような段階におけるわが国の
農政の建て直しをする場合に、ことしの米価は、単に従来の米価とは違って、新しい付加された
意味をそこに大きく持っておるのではないかというふうに考えるわけでございます。かつてはいわゆる米価の水準は
昭和四十二年ごろまでは、五人以上の製造
規模の工業の賃金を幸いに上回る
程度のことで米価がきめられておりました。その後据え置きの段階を経まして、これはどんどん割ってまいりまして、いま製造工業の賃金をはるかに下回るような形で事実上米価がきめられておる。今日製造工業に匹敵するような作目というものは、何か二十数品目の中ですでに四つの品目になっておる。この中からは米はもう消えておるわけでございます。そういう形で基幹になって、農民がとにかく稲作を軸として
日本の
農業は
基本的に行なわれておる。この軸がそこまで落ち込んでおるという問題をどういう形でふるい起こして、この稲作をささえながら全体の
農業をささえていくか、こういう問題の中でことしの米価問題が議論されなければならないというふうに考えるわけでございます。
御案内のように、
昭和四十二年から四十七年、この五年間にいわゆる賃金は七五%ほど上がっております。その間に米価は
幾ら上がっているかと申しますと、八%
程度しか上がっていない。いかにもこういう形では生産意欲というものをもうぎりぎりのところまで追い込んできておる。こういうような
状況の中で、本年の米価が先ほど申し上げましたような国際的な長期的な展望、わが国が
ほんとうに米を中核として主要食糧をできるだけ国内で確保しないと、
日本の国の存立のためにもはや重大な問題である、こういうようなこととの関連で米価問題はきめられなければならないと思うわけでございます。
その次にちょっと申し上げておきたいことは、先ほど
宮脇会長も触れられましたように、
日本の
農業をここまで追い込んでしまった。これは国際分業なり経済合理主義というような問題が、好むと好まざるとにかかわらず、経済の大きな流れの中で
農政もそれを許容しなければならなかった。それをどうしても
コストを引き下げるという構造改善その他の政策でカバーをしようという努力をいたしましたけれ
ども、一方のほうが非常に進んでくるという中で、どうしてもそのおくれを取り戻すことができないという環境の中で今日の
農業の状態ができて、特に
耕種農業が苦悶をしておる、こういう状態であると思います。このことは、
基本的には、
土地問題に集中して出てきておるというふうに私は理解をせざるを得ないわけでございます。その集中的な表現は、やはり
農地価格の高騰でございます。
農地価格はわれわれ
農業会議所のほうで毎年
調査をいたしておりますけれ
ども、過去五年間におきまして、四十七年の数字しかございませんけれ
ども、これを四十二年、五年前に比較いたしますと、四十二年が全体の平均で四十九万一千円でございます。これは反当たりでございます。それから四十七年百四十三万六千円、この五年間に地価が三倍上がっている。こういう中で一体
耕種農業というものをどういうふうに
確立するか、この辺が
基本的な問題であり、これは単に
農用地の問題だけでございません。わが国全体の地価対策をいかにして冷やしていくか、それがやはり
農地の問題につながる。われわれの試算では、少なくとも
昭和四十二、三年の五十万
程度、この辺でなければ
耕種農業は引き合わない、こういう計算が実はあるわけでございます。そういう根本問題は、これは
農政の問題だけでは解決いたしません。少なくともやはり今日
政府全体もあるいは国会全体として経済の基調を切りかえていく、いわゆるいままでのような輸出産業
中心主義の高度経済成長というものの基調を変える。この基調をいかにして大胆に政策的に切りかえていくか、そういう姿の中で初めて地価問題というものが解決する曙光が出るわけでございまして、その点は単に
農政の問題ではございませんけれ
ども、
農政がいま一番苦悶をしておる
基本は、この地価問題が
農業に集中的にしわ寄せされてきておる。これはもちろん住宅問題その他みんなあると思いますけれ
ども、特に
農業は
土地を軸としてやる産業でございます。
耕種農業が衰えるという問題をいかにして回復し、展開するかは、やはり私はこの地価問題の解決に触れざるを得ないので、これは単に
農政だけの問題ではなく、国の経済政策全体の問題につながるかと思うわけでございます。
もう
一つそれと関連いたしまして、
農業がここでやはり
基本的には悠久にわが国で続かなければならぬし、わが国の一億の国民の食料をできるだけ担当していく、こういう産業でなければならないという前提に立ちますと、これを担当する人の問題、これがいままでとかく
農政の課題としては軽視されたとは申しませんけれ
ども、浮き彫りされてきておらないことを非常に遺憾に存ずるわけでございます。
御案内のように、従来は伝統的に
日本は四十万の人口というものが農村に常に新しく入り、それをめぐって千数百万の就業人口があったわけでございますが、今日新規学卒で
農業に入ろうという者はだんだん減ってまいりまして、それがしかも急激に減ってまいって、四十七年では二万二千人、そのうち男子は一万六千人、しかもそれが全部定着するという保証はございません。
農業高校ではいわゆる
農業経営者を養成する学科の学生が三万数千名ございますけれ
ども、このうち一応
農業に就業するのは、何とこれが三分の一しかない。
農業に就業することを目的でつくっておる、しかも国や県が金を出しておる学校へ集まってくる生徒の卒業生が、三割しか
農業には就業しない。しかもその三割は定着するかどうかという保証がない。こういうような形で、一方におきましてはお年寄りが多い。完全に中が空洞化してきておる。これは二十年、三十年先を考えましたならば、もうこの人の面から
日本の
農業はなくなってくる。極端に申しますと、そういう問題が今日すでにぎりぎりの段階に出てきておるのではないか。そういう
意味では将来の
農業のビジョンをつくることが
基本であり、その政策をつくることが
基本でございますけれ
ども、いま待ったなしの段階で、
一つの問題は、この人の問題に対しまして、どういう政策を
ほんとうに金を使ってやるか、こういう問題がこの辺で大事ではないかというふうに私は考え、
農業会議所も近くそういうような問題に対しましての政策の要望をいたしたいと思いますので、国会におきましてもよろしくお取り上げを願いたいと思うわけでございます。
もう時間もございませんから簡単に申し上げますけれ
ども、そういうような問題を総合しながら、私は
農業基本法が誤っておったかどうかということは問題でございますけれ
ども、
農業基本法そのものが、われわれ
農業団体の意識した
農業基本法の
方向を、国の施策がそういう
方向をとらなかったという問題に今日
農業基本法
農政の破綻があるというふうに考えるわけでございまして、やはりわが国でたくましい
農家群をできるだけ、しかも
耕種農業の中でどうやってつくっていくか、こういう問題をもう一回その原点に戻って整理をし政策を組み立てるというような時期に来ておるような感じがするわけでございます。そういうことで国内
農業の再建をこの際どういう形でやっていくかということが
基本であります。
しかし、先ほど
宮脇会長も言われましたように、絶対量を国内で一〇〇%まかなうということにはなかなかまいらないこともわれわれは重々承知しておる。特にそういう問題を相当大きく依存をしなければならぬ今日、原料を含めますと、食糧の半分を外国から輸入しておるわけでございまして、これはやはりどうしても必要であるという前提に立たざるを得ない分野につきましては、一面いかにしてこの輸入の安定化をはかるかという問題だと思います。そういう
意味からは、私はこれ以上の自由化は、先ほどの
宮脇会長と同様に、ナンセンスである。しかし、私もアメリカに
宮脇さんにお供して一緒に行ったわけでございますが、やはりアメリカといえ
ども自国
中心に最後はなります。
日本が困っても、よく理解はできるけれ
ども、だめなときはだめですよというのがアメリカの態度である。そうでありながら、一方におきまして余っておるオレンジ、ジュースにつきましてはあくまでも自由化を要求する。こういうわれわれから見ますと理解のできないことが、これはもう国際的な常識として考えていかないと、その辺は東洋的な感覚で
日本人はとかくものごとに対処しがちでございますけれ
ども、もっとドライに割り切るというのがやはり西欧の人の考え方のような感じがいたします。そういう
意味では、やはり
政府、国会を含めましてこの自由化の問題はき然としてひとつ今後対応していただきたいし、輸入の安定につきましてはやはり一国にたよるというような政策ではなくて、これを多元化するなり、あるいは一国を相手にいたしましても、若干経済的な問題では問題があると思いますけれ
ども、中長期の契約を結ぶとか、あるいは開発輸入の問題を考えるとか、また、いま急にはできませんけれ
ども、やはり少し長い目では、非常に物が買いやすい、そういう時期にこそ輸入
農産物についてもある一定量の備蓄を考えるというような問題を含めまして、どんなことがあってもわが国の食糧問題あるいは国民の生活問題に影響がないというような万全の対策を、少なくとも経済大国といわれておるわが国の経済力から見ましたならばそれができないことはない。これがいわゆる経済合理主義、国際分業に徹しておる間はそういうことはとらないと思いますけれ
ども、そこの反省さえあれば私はできるのではないかというふうに考えるわけでございます。
最後に一言お願いを申し上げておきたいわけでございますが、これは先ほど緑の効用とか環境の保持とか、そういう
農業の役割りがあるということが、新しい問題として今日出ておりますけれ
ども、このことはいわゆる都市
農業の問題との関連ではぜひひとつこの際取り上げてもらうべき性質の問題ではないか。いわゆる市街化区域の中で税金問題でだんだんとこれから
農家が追い出されるというような政策が進んでおりますけれ
ども、これはひとつ暫定措置であって、それをささえる
一つの問題として——農民の立場に立ちますと、
農業がそこで営めるというような生産緑地の
制度化というものをぜひひとつやっていただく、これこそ都市計画の側から見ましても、緑やそういうものが、公園緑地等だけではなくて、いわゆる
農業が、都会にふさわしい作目を選定して、そこである
程度まとまりながら行なわれるというような中におきまして、いわゆるいままでの公害その他の都市問題がそういう形を含めてある
程度解消されるし、また、
農業の側から見ますと、都会の中の
農業者が
農業を継続できる。こういうような一石二鳥の形での問題解決ができるのではないか。
市街化区域の中には、御承知のように、いま二十八万ヘクタールの農耕地がございます。建設省が
幾ら計算をいたしましても、その半分以上は使えない、永久に十四万ヘクタールは残る、こういうことを建設省も言っております。そういう問題の中で、せっかくそれだけあるのでありますから、そこに都市の
農業というものを
確立する、それを新しく都市計画法の位置づけをして、生産緑地の制度を
確立するという問題につきまして国会方面でもいろいろ御検討願っておるようでございますが、ぜひ次の通常国会までにはそういう成案を出して、いま税金で追い出されようとしている、それだけがいま先行している、そういう問題に対しまして、いわゆる都市の中で
農業を営んで、将来もやりたいという者が
ほんとうに安心をして
農業が続けられるということの御解決をぜひ願いたいということを最後に申し上げたいと思うわけでございます。
以上で、時間も参りましたので、私の
意見を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。