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1973-07-11 第71回国会 衆議院 農林水産委員会 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年七月十一日(水曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 佐々木義武君    理事 仮谷 忠男君 理事 坂村 吉正君    理事 藤本 孝雄君 理事 山崎平八郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 柴田 健治君    理事 美濃 政市君 理事 津川 武一君       笠岡  喬君    金子 岩三君       吉川 久衛君    熊谷 義雄君       小山 長規君    佐々木秀世君       島田 安夫君    正示啓次郎君       菅波  茂君    丹羽 兵助君       長谷川 峻君    湊  徹郎君       森下 元晴君    安田 貴六君       阿部喜男君    井上  泉君       角屋堅次郎君    島田 琢郎君       竹内  猛君    野坂 浩賢君       森井 忠良君    諫山  博君       中川利三郎君    瀬野栄次郎君       林  孝矩君    稲富 稜人君       神田 大作君  出席国務大臣         内閣総理大臣  田中 角榮君         農 林 大 臣 櫻内 義雄君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         農林政務次官  中尾 栄一君         農林大臣官房長 三善 信二君         農林省農林経済         局長      内村 良英君         農林省構造改善         局長      小沼  勇君         農林省農蚕園芸         局長      伊藤 俊三君        農林省畜産局長 大河原太一郎君         農林省食品流通         局長      池田 正範君         食糧庁長官   中野 和仁君         林野庁長官   福田 省一君         水産庁長官   荒勝  巖君  委員外出席者         議     員 角屋堅次郎君         自治省行政局公         務員部給与課長 小林 悦夫君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員異動 七月十一日  辞任         補欠選任   馬場  昇君     森井 忠良君  米内山義一郎君     阿部喜男君 同日  辞任         補欠選任   阿部喜男君    米内山義一郎君   森井 忠良君     馬場  昇君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正す  る法律案内閣提出第九六号)  森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正す  る法律案内閣提出第一一九号)  国が行なう民有林野の分収造林に関する特別措  置法案(芳賀貢君外十名提出衆法第一七号)      ————◇—————
  2. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内猛君。
  3. 竹内猛

    竹内(猛)委員 農林漁業団体職員共済組合法等の一部を改正する法律案に関して質問したいと思います。  まず、全体の問題の基礎になる、年金対象になる職員給与の問題について、私はそれを中心質問をいたしますから、できるだけ明快なお答えを願いたいことを最初に要求をします。  そこで、第一に、年金対象になる、組合員となる者の資格について、まず最初にお尋ねします。どういう資格の者が対象になるか。
  4. 内村良英

    内村(良)政府委員 組合員でございますが、農林漁業団体職員共済組合法の第十四条にその規定がございます。農林漁業団体または組合に使用される者で、これは役員を含むわけでございます。それで、農林漁業団体等から給与を受ける者はすべて組合員とするということになっております。
  5. 竹内猛

    竹内(猛)委員 その組合員の数の推移ですね。組合員はこの四、五年間にどういう傾向にあるのか。一体ふえる傾向にあるのか、減る傾向にあるのか、この四、五年間の傾向を明らかにしてほしい。
  6. 内村良英

    内村(良)政府委員 農林年金組合員数は四十七年度末現在で四十一万九千二百五十九人でございます。組合員数は全体として増加傾向を示しております。特に四十四年度までは大体年率三%の伸びでございましたが、四十五年度以降は増加率がやや緩慢になっております。そこで、四十五年度以降の増加率は対前年比一・三%ないし一・八%になっております。  そこで、これをやや詳細に申し上げますと、団体別に見ますと、組合員数のうち約八〇%を占めております総合農協の場合には、四十四年度まで年率四%前後で職員数がふえておりましたけれども、四十五年度以降は対前年比が一・五%ないし二%になりまして、この総合農協伸びの低下が全体の傾向に影響しているように思われるわけでございます。  この理由としては、一方には求人難ということもございますが、他方、合併に伴う大規模化によりまして、事務機械化合理化が進展し、少数精鋭による経営合理化が進んでいる現象もあるのではないかと考えております。  総合農協以外の主要な団体について見ますと、まず農業共済組合につきましては、職員数が年々減少しております。これは共済組合についても合併が行なわれていることと、さらに共済組合の場合には業務の市町村移管がなお進行しております。こういうようなことが共済の場合に言えるのではないかと思います。  次に、土地改良区につきましては、職員数増加率は鈍化しつつございます。  それから、漁協については、これは大体二%台で職員がふえているというような傾向になっております。
  7. 竹内猛

    竹内(猛)委員 いま報告があったように、四十四年には一万一千八百三十七人ふえていた。それが四十五年ころになると三千二百七十、四十六年には五千二百五十一というように、そして一万人台の年金対象者が減ってくるということ、これは将来年金の基本的な主体に関係をすることであるから、この辺、いま御説明がありましたけれども、この根本的な原因というものは、私はやはり農業者あるいは漁業森林組合、これの賃金が低い、こういうところから従事者がだんだん減ってきているのではないか、こういうように思うのですけれども、その辺についてはどういうふうにこれをとらえているか。
  8. 内村良英

    内村(良)政府委員 一般的に四十五年度以降いわゆる求人難というものが進んでおりまして、先生ただいま御指摘がございましたように、農協の場合には確かに他に比べて賃金が安いという傾向もございますので、そういったことが、なかなかいい人が集まらぬということの一つ原因になっているのかと思いますが、全体として、しかし、総合農協の場合には組合員数はふえているわけでございまして、伸び率が減ってきたことの原因には、先ほども申し上げましたけれども求人難以外に、組合合併推進等による事務合理化というような面も影響しているのではないかというふうに考えているわけでございます。
  9. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そこで、私は、ここで賃金の問題の比較について、同じ市町村職場を持つ農協、それから学校の、これは教員の場合には特定の資格を持って試験を受けなければならないから、学校事務職員給与、これについては文部省のほうから資料をとってありますので、これは私のほうから説明をしますけれども、それからもう一つは、自治体給与ですね。これが高卒の十八歳あるいは大卒の二十二歳で初任給幾らで、五年くらいたったときに何ぼになって、最終的に退職のときには幾ら給料が支払われているか、手取りは幾らになるか、プラスアルファとかいろいろなものがつきますから、そういうことについて、これはまず自治体のほうから説明をしていただきまして、それから農協のほうは農林省からどういうふうに賃金をとらえているか、それを出してもらって、私のほうから、文部省のほうからきのうもらった資料事務職員給料について発表して比較をしてみたいと思いますから、まず自治省のほうからお願いします。
  10. 小林悦夫

    小林説明員 市町村初任給でございますが、手当込みで考えまして、これは人口段階別にある程度区分してございますが、八千から一万三千人の規模のところで、大学卒で約四万一千五百円、高卒で三万四千円でございます。それから一万八千人から二万三千人くらいの規模のところにおきましては、大卒が四万二千円、それから高卒が三万四千五百円となっております。それから三万人から五万五千人の規模のところですが、ここにおきましては、大卒が四万四千二百円、それから高卒が三万六千四百円、それから八万人から十三万人程度人口の市におきましては、大卒が四万八千円、それから高市が三万九千四百円ということになっております。  あと経験年数が増すに従いましての給料伸びでございますけれども市町村に入りまして五年から七年くらいのところにおきましては、人口八千から一万三千程度のところで、大学卒が五万一千九百円、それから高卒が四万二千二百円、それから一万八千人から二万三千人のところで大卒が五万三千七百円、それから高卒が四万三千五百円、それから三万人から五万五千人のところにおきましては大卒が六万千三百円、高卒が四万七千三百円。それから八万人から十三万人のところでございますが、大卒が七万百円、高卒が五万三千九百円となっております。  それから、五十五歳という明確なあれがございませんでしたが、入りましてから三十五年の経験年数のところの、これはちょっと恐縮でございますが、本俸だけでございますけれども本俸におきまして、人口八千から一万三千人のところの本俸が九万五千五百十六円、約九万五千五百円でございます。それから一万八千から二万三千人のところでございますが、十万六百円、それから三万から五万五千人のところでございますが、十万八千三百円、それから八万人から十三万人のところで十一万六千円程度となっております。
  11. 竹内猛

    竹内(猛)委員 これは本俸だけですね。
  12. 小林悦夫

    小林説明員 いま申し上げましたのは三十五年のところは本俸だけでございまして、その前に申し上げましたのは手当込みでございます。手当の中でも期末手当とか寒冷地手当とかいう毎月支払われないものは除いてございます。
  13. 竹内猛

    竹内(猛)委員 それでは、農協のほうの同じような形でその賃金がどうなっているかということについて。
  14. 内村良英

    内村(良)政府委員 実は調査が必ずしも同じようになっておりませんので、あるいは完全に御要望にこたえ得るかどうかわかりませんが、私どもの持っております調査によりますと、四十八年四月の給与でございますが、一番調査としては新しいわけでございまして、まず十八歳の者の給与平均、これは農林漁業団体全体の平均でございまして、三万六千六百九円でございます。そこで、農協とか共済とか、その組合によって違うわけでございまして、まず農協で申し上げますと三万六千七百六十九円、それから共済が三万七千九百五十三円、土地改良区が三万七千四百四円、たばこ耕作組合が三万八千三百三十三円、森林組合が三万四千百五十円、漁協が三万五千三百六十五円、こういうふうになっております。  それから二十二歳のところで見ますと、平均が三万九千三百三十円になるわけでございます。そこで組合別に見ますと、農協が四万三百六十七円、共済初任給は高かったわけでございますが、二十二歳になりますと農協より下回りまして、三万八千九百九十七円、土地改良区が三万八千三百六十六円、たばこ耕作組合が四万六百四十一円、森林組合が三万五千百五十一円、漁協が四万四百七十一円ということでございます。  それから勤続十年ということで三十二歳の者の月給を見てみますと、全体の平均が六万一千三百六十九円、農協が六万一千七百五十七円、それから共済が六万一千円、土地改良区が六万八百五十八円、たばこ耕作組合が六万五千五百五十七円、森林組合が五万二千八百六十一円、漁協が六万一千八百八十七円となっております。  これらの数字はいずれもボーナス等が入っていない月給でございます。その点は自治省調査と同じかと思いますが、年齢のところが三十二歳のところしかございませんので、勤続五年という数字が必ずしもはっきりわからないわけでございます。
  15. 竹内猛

    竹内(猛)委員 文部省のほうで、文部省学校事務職員給与は、十八歳の初任給が三万七千五百円、五年目、二十三歳が四万五千二百円、十年目で五万七千三百円、最終の五十五歳の退職時が十三万五千九百円という形になっていて、これに六%のプラスがつく、こういう形であります。  そこで、いま内村局長からトータルの話がありましたが、茨城県の農協の場合においては、十八歳の初任給が四万一千円、これは労働組合組織された組合員賃金です。二十歳で四万三千三百六十円、二十五歳が五万三千六十九円、四十歳が七万八千八百円で、最終五十五歳、これは九万五千円になっている。それから連合会職員給与は十八歳が四万四千十円、二十歳で四万六千七百七十円で、二十二歳が五万四百円、それで四十歳が十万三千円、五十五歳で退職のときが十三万五千円、こういうぐあいになっております。  それで問題は、この全体の中で、同じ自治体の中で——自治体職員給与手当の入らない本俸だけですね。
  16. 小林悦夫

    小林説明員 先ほど申し上げました初任給、それから五年以上七年未満、それから十年以上十五年未満、これらにはそれぞれ諸手当が加算してございます。三十五年以上のところだけが加算した数字がございませんので、本俸だけ申し上げたわけでございます。  なお、私のほうの調査は四十七年四月一日現在の一般行政職調査でございます。
  17. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そういうように同じ町村職場を持つ者が、農協あるいは森林組合、それから町村の役場、これに学校事務職員、こう比べてみて、相対的に全体的に低いということはまず言えると思うのです。とりわけ組織をされない、未組織の形の中にある農協なり漁協なりの職員給与というものは、その中でも安いし、連合会単協と比べてみたら、連合会に比べて単位農協はさらに低い、こういうことになる。これはもう茨城県の例で明らかです。  このような低い賃金というものをやはり高めなければ、これは農林漁業のいろいろなシステムが変わっても、本来の安心した、安定した保障にはならない、こういうふうに私は思いますので、この点についてはまたあとで、どうしたらこれを高めることができるか、これはこの前から議論がありましたが、その議論に続いてなお議論をしたいと思います。  そこで、もう一つ内村局長のほうへお伺いをしますが、二十年以上つとめて六十歳以上の者で、もうすでにこれは年金対象になっているわけですけれども、五万円以下の給料しか与えられていない者が相当数いるはずです。これについて調べてあったならば、これを報告してもらいたいし、もしなければ、私のほうから報告をしてもいいですが、どうですか。
  18. 内村良英

    内村(良)政府委員 五万円以下が何人いるかということにつきまして、いま資料調査中でございますが、二十年勤続組合員平均標準給与は八万四千四百九十円になっております。そこで、現に年金をもらっている人で、五万円以下の数字につきましては、現在調べておりますけれども数字があれば御報告申し上げます。
  19. 竹内猛

    竹内(猛)委員 では時間の関係もありますから、こちらから報告します。  二十年以上働いて五万円以下の給与をもらっている者が、全体の先ほど言った四十一万九千二百五十九人の中でその約一割以上、四万七千三百八十六人ほどいる。そして二十九年働いて五万円以下の者が五人もいる。こういうような低い賃金の者はどういうところにいるのかということについて、これはわかるでしょう。   〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席
  20. 内村良英

    内村(良)政府委員 五万円以下の数字を、まことに申しわけございませんけれども、持っておりませんので、私どもが調べました昨年の十月一日現在で、標準給与が二万六千円未満の者が五千三百九十六人いるわけでございます。これは組合員数の約一・二九%に当たっているわけでございますが、これらの者がどのような団体でどのような仕事をしているかについて、全般的な調査はございませんが、組合員期間おおむね十五年以上の者について、事例的に調査したものを総括してみますと、次の四つぐらいに分けられるのではないか。これも全般調査ではございませんので、部分調査でございますが、まず第一に、農協漁協の支所の住み込み用務員、これは掃除だとかお茶出しだとか、留守番を兼ねている人たちでございます。これはかなり年をとっている人が多うございまして、そういう住み込み用務員人たち。それから次に、土地改良区のポンプの管理人でございます。これは田植えの時期等の排水管理等を行なう人でございます。それから第三は、嘱託に近い形で農協漁協に勤務している獣医さん等、これはほかにも仕事を持っておられまして、嘱託に近い形で月給をもらっているというような形の方々。それから、先ほど最初の御答弁で申し上げましたけれども役員も入るものでございますから、名目的な給与を受けている組合長等というような人たちではないかというふうに、大体事例的な実態調査ではそのようなかっこうになっております。
  21. 竹内猛

    竹内(猛)委員 そういうような、もう年金対象になっている者の中で一割近い者がたいへん低い給与でいるということ、これはどれだけこのシステムを整理しても、なかなか保障になってこないということを、まず私は何とかしなければならない問題じゃないか、こういうふうに思うので、これは一つの課題として残しておきますが、いずれにしても、この問題はこのままほうっておいていいということはないと思うのです。  そこで、何といっても年金対象になるのは、八割を占める農業協同組合に働いている職員の皆さんが最も主流をなしているわけです。そこで、農協合併問題やいろいろなことで何とかして給与をよくして、ほんとうに食料増産のために励めるように、いろいろと努力はされているけれども、先般来の諫山委員質問に対しても、農協合併農協職員給与を上げる一つの道であるという話があったけれども、それだけではなくて、なおまだいろいろとあるだろうと思うのです。この点について、農協合併ということもそうだけれども、それ以外に、なお農協職員の地位と給与、そういうものを上げていく、全体として農林年金対象者の所得を上げていくということについての努力指導というものはされておらないか、その点どうでしょう。
  22. 内村良英

    内村(良)政府委員 農協職員給与を上げるということは、ここでも何回か論議の対象になったわけでございますが、いずれにいたしましても、農協経営の問題に非常に密接に結びついてくるわけでございます。そこで、われわれといたしましては、農協経営をよくしなければいかぬということでございます。そこで、経営をよくするためには、事業量をふやし、さらに経費の合理化ということをやらなければならないということで、合併によって事業量をふやしていく、さらに事務機械化その他の合理化を進めるということで、基本的には農協経営改善合理化によって職員給与改善をはかっていかなければならぬということは、申し上げるまでもないわけでございます。  そこで、実は私どもといたしましても、この農協職員給与が安い、その結果よい人材が集まらぬということは、これは農協の将来のために大問題だということで常々考えておりまして、いろいろ指導面等で、たとえば検査をしたときにどういうところにむだがあるか、それを何とか多少給与改善に向けられないかどうかという点も指導するようにはつとめておりますけれども、基本的には、やはり農協経営がよくならなければ給与も上がらないということで、これは農政全体の問題に関連してくる問題でございますけれども、その中で、農協指導行政と申しますか、私ども行政の範囲では、たとえば講習会をやる、検査をやるというようなことでやっておりますけれども、直接的に手が届かなくて、歯がゆい思いをしているというのが現状でございます。
  23. 竹内猛

    竹内(猛)委員 農協の問題に触れて、最近の農協労働組合団体交渉の中で、どういうことがおもに中心になっているのか、賃金なのか労働条件なのか、それをどういうふうにとらえているかということ、それが一つ。  それから、現在、きのうも飼料質問をしたのですが、茨城県に茨城飼料という工場がありまして、これは石岡の駅の前にあるのですが、ここにいま三十五名の首切りが出ている。これは、一般に日本では飼料が非常に不足しておるというその段階の中で、全農が鹿島に大きな工場をつくる。そうしてこの石岡の駅前のかなり歴史を持っている伝統的な工場の中で三十五名の職員を整理するということでいま問題が起こっている。だから、このあとのほうのことについてはいずれ別なところで調査をしてほしいわけですけれども、前段の、いま農協の中で起きている交渉の中身、これはどういうことが中心なのか、その辺のことについて、農林省のほうでどういうふうにとらえておるか、それはいかがでしょう。
  24. 中尾栄一

    中尾政府委員 農協において労使紛争が多発しておる要因は一体どういうところにあるのかという御質問かと思いますが、おそらくそれは、賃金かあるいは合理化かあるいはそれ以外のものに原因があるのかというようなことになろうかと思いますので、簡単にお答え申し上げたいと思います。  単協におきます労使紛争原因について調査はございませんけれども中央会、経済連、共済連、信連、御承知のように、連合会といっておるグループでありますが、百八十五における昭和四十六年九月から四十七年八月までに発生した労使紛争原因農協労働問題研究所調査したものを見ますると、次のとおりになります。  連合会等争議行為がありましたのが百十。その原因は、賃金関係が最も多くて、ベースアップが百五件でございます。諸手当が四十六件、また夏冬の一時金六十九件、年度末手当が二十二件、職能給体系の導入問題が四件ということに相なっておるわけでございます。事業所の分離などいわゆる合理化問題につきましては十件となっているほか、包括労働協約の締結、改定が十一件、労働時間が一件、退職金問題が八件、配置転換異動四件、このようになっているわけでございます。  なおまた、御指摘茨城農協の問題につきまして、また詳細に調べてみたいと思っております。
  25. 竹内猛

    竹内(猛)委員 もう時間がありませんから、またあしたにこの問題を持ち越すわけですけれども、明日は、いまの農林漁業団体関係する団体職員給与が非常に低い、低いと言っても、先ほど自治団体あるいは学校事務職員などに比べてみてかなり均衡している場面も多少あることはあるけれども、内部の連合会以下の単協職員給与が低いというところに現在の労働争議といいますか、交渉の中において賃金問題が圧倒的に多いということが出てくる。これはまだ組織されている組合だからそれができるけれども、まだ未組織のものが多いわけですから、こういうものについての指導をどうするか。あるいは指導ができない、それはもう農協職員経営者力関係賃金はきめるんだ、農林省は手が及ばないんだということであるのか、その辺についても、きょうは時間がありませんから、これはあした確かめたいと思うのです。  それで一応私の質問はきょうの場面は終わります。明日は、そういうところを中心にして、将来のあるべき年金の方向について幾つかまた質問しますので、これはまた準備をされるように特にお願いをして、きょうは終わります。
  26. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 次に、柴田健治君。
  27. 柴田健治

    柴田(健)委員 農林漁業団体職員共済組合法等の一部改正について御質問申し上げたいと思います。  きょうは農林大臣がお見えにならないので、予定が変更になったわけでありますが、まず政務次官にお尋ねしたいのです。  この制度は、要するに、社会保障という方向へ持っていかなければならないと私は思っておるのですが、どうも社会保障という立場から検討してまいりますと、いろいろな矛盾が出てくる。その矛盾を同僚議員からいろいろ御質疑があったと思うのでありますが、社会保障という方向で思い切った抜本的な改正が必要だと私は判断をしておるわけですが、政務次官としてはどういう判断を持っておるか。
  28. 中尾栄一

    中尾政府委員 先生御指摘のとおり、これは広義の意味では、社会保障という体系でとらえていくというのはごく当然のことであろうと思うのでございます。ただ、共済という意味で、お互いに相助け合っていくということにおける共済制度でございますから、その点ニュアンスがいささか異なるかもしれませんが、最低保障額に対する意味は、共済組合制度におきましては、公的年金における基本的な制度である厚生年金との均衡を勘案しまして、その制度上の最低額をもって最低保障額として定めた、こういうことに相なるわけでございます。そういう意味で、広い意味では、先生のおっしゃるいわゆるソシアルセキュリティと申しましょうか、社会保障制度ということでとらえているわけでございますけれども、あくまでもそこに共済制度の意味を持たせておるということを御理解願いたいと思います。
  29. 柴田健治

    柴田(健)委員 共済年金、厚生年金、国民年金、現行の年金制度の中には大きく三本の柱があるわけですけれども、何としても、厚生年金のほうは、十分とは言えないけれども、社会保障という方向の路線を歩んでおると思うのです。この農林年金のほうは、どちらかというと、何か互助会的な、互助年金的な、そして共済ということばを使っておるわけなんですが、どうもそこに互助会的な精神があるところに受益者の自己負担が大きく浮かび上がってくるわけでありますから、この互助年金制度的なものは現在ではどうも映りが悪い。こういう気持ちをわれわれは持つわけであります。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 一日も早く社会保障という路線に乗せる、そのレールの上に乗せることが大切だ、必要だと私は思うのです。  それから互助年金制度的なもの、共済制度というものは、お互い助け合うということですね。それにいたしましても、受益者のほうが負担が大きくなるのはおかしい。そこに私たちは矛盾を感じるので、これを解決するにはどうしたらいいのかということを、まず政務次官に見解を述べてもらいたいと思います。
  30. 中尾栄一

    中尾政府委員 御指摘の点は確かにそうであろうかと思うのです。これは社会保障制度と考えますと、確かに広義の意味ではそうでありますが、何かもらい金みたいな、言うなれば、共済制度、互助年金制度的なことはおかしいじゃないかという御指摘の意味は非常によくわかるのでございますが、特に先生の御指摘などにおきましても、生活保護水準より低いということはいささかおかしいじゃないか、こうおっしゃるのでございますが、最低保障額というのは、退職後の生活のささえとして支給される公的年金の最低保障でございまして、最低生活の保障である生活保護とはやや趣を異にする面があると思うのでございます。  この点を別といたしましても、生活保護水準との比較を行なう場合、家族構成、生活パターンの違いを考慮することは存分に必要でございまして、農林年金受益者の場合とほぼ類似すると思われます老人二人世帯四級地の生活保護水準を見ますと二万三千七百六円となっておるわけで、一般的には農林年金の最低保障額のほうが低いということはないわけでございますから、そういう点では御理解のほどを願えるのではないかという感じがするのでございます。
  31. 柴田健治

    柴田(健)委員 次官、私はきょう大臣に質問しようと思ったのですけれども、あなたを大臣として質問しているのですから、自信をもって将来の方向づけというものを明確に答えてもらいたいと思います。あなたの答えを中尾大臣として、次官でなく、きょうは大臣として、年金制度に加入しておる組合員が重大な関心を持っておるのですから、彼らの将来の保障の問題なんですから、ただ儀礼的な考え方でなしに、ほんとうにこうあるべきだという、あるべき姿を率直に言うてもらわなければいけないのです。  だから、私たちが言うのは、現行のやり方ではあなたも不満足だろうと私は思うのです。私たちも不満足だから申し上げておるので、そのお互いに不満足をどういうふうに解決するかというある程度の考え方が浮かび上がってこないと、論争にならぬと思うのです。平行線をたどったのでは前進にならない。あなたが現行の法でいいんだという考えがあれば別ですよ。そうではないとおっしゃいますなら、いまのやり方が不満足なら、社会保障の方向で厚生年金と同じような方向に直していくんだ、こういう社会保障の方向で直していくんだという考え方があるなら、具体的にこういう方法をとっていきたい——たとえば現段階では、地方行政委員会にかかった地方公務員の問題にしても、文教委員会にかかった私学共済でもそうですが、各省ばらばらの制度が残されておるところに、どうも農林省だけでは解決できないんだというような逃げ道のことばが生まれてくるわけです。農林省が先頭に立って、文部省であろうと自治省であろうと、そういう互助年金制度的なものは早く解決するという指導的な役割りを農林省が果たすという決意がなければならぬと思うのです。現行でいいというなら別ですよ。その点をひとつ明快に、あなた、大臣になったつもりでやってください。私はきょうは櫻内大臣だと思って信用してやっているんだから。
  32. 中尾栄一

    中尾政府委員 大臣になったつもりでと言われましても、ありがたいおことばでございますが、私はあくまでも政務次官の立場を保持しておるわけでございまして、それだけでもう精一ぱいの気持ちでやっているわけでございます。  先生のおっしゃる御指摘は十分にわかるわけでございます。ただ、社会保障という観念は、これは先生には釈迦に説法でございますが、ある意味においては、あくまでも老後の困った人たちに対する救済という意味があるわけでございまして、この年金制度というのは何も困った救済をする措置という形でなく、あくまでも相互扶助、たとえその若いときに積み上げていくという形においても、自分自身が保障されていくのだといういわゆる年金制度なのでございまして、その点はいささか、俗にいう社会保障制度とは異にするということの意味を私は申し上げたわけでございます。  その他における先生の御指摘におきましては、私どもが現行制度の不満足の点はぜひとも解決していかなければ相ならぬという前向きな姿勢であるという意識だけは、ひとつ十二分に買っていただきたいと思うわけでございます。その点はひとつ御了解願いたいと思います。
  33. 柴田健治

    柴田(健)委員 保障というものは、次官、助けるとかなんとかという意味じゃないのですね。ぼくは、そういう考え方がある限りは日本は年金制度の改革というものはうまくいかないと思うのです。どの産業、どんな職業に、どういう仕事の内容がどうあろうとも、老後の保障というものはこれは平等でなければならぬと思うのです。それが原則だと思うのです。現行制度からいうと、年金それぞれの種類において差があるから問題があるのですね。差をなくするためにどうするかということです。問題は差をなくするためにどうするのか。差があることだけは次官認めておるのでしょう。現行の制度の中にいろいろ差がある。その差をなくするためにどうするかということを単刀直入に私は聞きたいのだ。
  34. 中尾栄一

    中尾政府委員 差があることはこれはもう認めるわけでございますが、これを一挙に解決することができないということから、徐々に一歩一歩解決していくという方向で考えておるわけでございます。
  35. 柴田健治

    柴田(健)委員 次官に基本的なことをお尋ね申し上げたのですが、どうも明確にお答与えにならないのです。やはり一歩一歩前進をはからなければならぬ、ことしよりは来年ということになるわけですが、それなら明年度、いまわれわれがこれから申し上げる点について解決するという考え方に立ってお答えを願いたいと思うわけです。あなたが前進をはかるように取り組んでいくというその姿勢だけは出たのですから、そういう姿勢の中から、これから御指摘申し上げる点について直してもらいたい、こう思います。  まず私は、旧法による矛盾、新法と旧法との矛盾というもの、これがいま一つのガンになっておるように思うわけです。だから、旧法の制度を残すというのがおかしいのであって、これを早く解消すべきだと私は思う。それだから、遺族の最低保障額にしても、五万五千二百円という数字が出てくる。そうして一日が百五十円だというような割り算方式で計算してみると、一日百五十円ならどうも社会保障とも言えない。遺族の保障についてもそういう矛盾が出てくる、おかしいじゃないかということになってくる。たとえば百五十円のいまの経費というものは、野犬狩りをするでしょう、野犬狩りをしてくると一週間どうしても保健所で係留をしなければならぬ。これは法的に示されている。買い主があらわれるまで、補獲をしてすぐばっさり殺すわけにいかない。一週間係留をして飼育するわけです。買い主が出ない場合には、一週間後にこの野犬を電気であろうと何であろうと撲殺するわけですが、その一週間の飼い賃が一日幾らと思うていますか。次官、犬の飼い賃幾らと思いますか、ちょっとお尋ねします。
  36. 中尾栄一

    中尾政府委員 私も犬を飼っておりませんので、ちょっとわかりません。正確に知りません。教えていただきたいと思います。
  37. 柴田健治

    柴田(健)委員 いろいろなことを検討して、人間のことだから、同じ生きておる動物の中でも人間のほうがある程度優位性があるわけですから、犬より下がってはならないと私は思うのです。犬は百七十円です。それが百五十円という、ワンワンより低いという制度は、次官、おかしいと思いませんか。どうですか。
  38. 中尾栄一

    中尾政府委員 生活権そのものから見ますると、百五十円が人間であり、百七十円が犬であるということはまことに矛盾していると思います。
  39. 柴田健治

    柴田(健)委員 そういう矛盾があることをもっと勉強していただきたいと思うのです。私は次官が悪いとは言いませんよ。結局事務当局が、局長のほうがもっと広範囲にいろいろ資料をそろえて調査をして、もっと検討すべきだと私は思うのですね。それから他の制度との矛盾というものがある。それらを直していかないと、そこに不平や不満や不信というものが生まれてくるのです。そこにきめのこまかい思いやりがないと言われるわけですから、その点について局長も早急に直さなければならぬ。これだったら、実際に何のために農林省がさいはいを振るうのか、行政権という権利の行使、そういう立場からいうても、指導性というものは生まれてこない。指導性を発揮しようと思えば、それだけの細心の注意と、そうして号令をかけるだけの思いやりがなければならぬと思うのです。この点、局長、どうですか。
  40. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま先生が御指摘のあった点、私ども非常によくわかるわけでございます。しかしながら、年金の問題につきましては、御承知のとおり、厚生年金をはじめといたしまして、国家公務員、地方公務員、公共企業体、その他いろいろ年金の制度があるわけでございます。そこで、その制度も大体共済年金につきましては旧法というものがございまして、それからその制度の改善のために新法というものがあるわけでございます。さらに一つ問題は、先ほども先生御指摘の社会保障かどうかという話で問題になったわけでございますが、共済の場合には、掛け金を掛けて、その掛け金に基づいて年をとったら給付をもらう、もちろん保険のように収支相等の原則だけでやっているわけではございません。したがいまして、整理資源の問題だとかいろいろ社会保障的な色彩を持った面もあるわけでございますが、いずれにいたしましても、基本的には掛け金を掛け、それによって一定の年齢に達しやめた場合に給付をもらうという仕組みになっておるわけでございます。  そこで、繰り返して申しますけれども、各年金に旧法と新法があるということで、それぞれ旧法と新法につきまして、旧法下のものは旧法、新法下のものは新法ということで対処するというのが現在のわが国の共済年金制度の原則になっているわけでございます。したがいまして、旧法の最低保障額、これは非常に低いじゃないか、犬以下じゃないかという御指摘はまことにそのとおりだと思います。しかしながら、そういった年金制度の体系の問題があるということ、それから年金というものは社会保障かどうかという点で一つ問題になってくるわけでございますが、老後の一つの生活のささえであるということで、必ずしも最低保障という考え方をとっていないというようなこともございまして、現在のところ、旧法は旧法、新法は新法という体系で事に処理しておりますので、これはわが国の年金制度全体の問題として対処すべき問題ではないか。私がこういうことを申しますと、農林だけでなぜできないのかという御質問になってくるかと思いますが、現実の問題といたしまして、やはり各年金間のバランスという問題がございますので、これはわが国の年金制度全体の問題として検討すべき重要な問題ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  41. 柴田健治

    柴田(健)委員 局長ももう矛盾があることは新法、旧法でわかっているのです、御理解されておるのだから。国家公務員や地方公務員その他いろいろある。それなら、どうもおかしい。あなた正義感の強い人だから、たとえば自治省なり文部省なりその他関係省とどのくらい話し合いをしたか。旧法を廃止するためにどのくらい、何回話し合いをしたか、それを聞きたいのですよ。
  42. 内村良英

    内村(良)政府委員 先生御承知のとおり、公的年金制度調整連絡会議というのが政府の中にあるわけでございます。そこで、それがグループ別に分けられまして、農林年金の場合には非常に類似したものといたしまして、私学共済一つのグループになって検討することになっております。そこで昨年も大体五回ぐらい文部省とこの問題については話し合っておりますけれども、まだ明確な結論を出していないというような段階でございまして、終局的には国の共済年金全体の問題として扱わなければならぬというふうな考え方を持っておるのでございます。
  43. 柴田健治

    柴田(健)委員 それは次官、局長はいまああいうお答えをしたんですが、国全体として協力、協調しなければならぬ、調和をとらなければならぬ、こういう御意見が出てきますね。そうすると、局長段階じゃないのですよ。これは次官、大臣ということになるわけですね。どうですか。あなた、その点について旧法を廃止するためには将来どういう話し合いを進めていくのか、国全体のものになってきたんだから、総理大臣が来なければわからぬといえばそれだけのものだけれども
  44. 中尾栄一

    中尾政府委員 これは非常に大事な問題でございますから、これは私の責任の範囲内においてお答えさせていただきますならば、先ほどの先生の御指摘の、特に比喩的な例を出しまして犬の問題等も出しましたけれども、これはほんとうに考えてみますると、一日百五十円というのはひど過ぎるじゃないか、ただ、最低保障額というわけじゃございませんので、その点は御理解願えるといたしましても、ただ、現実にこういう形で年金制度というものが成熟をしておらないということだけは事実でございましょうから、そういう点はひとつ国の問題として関係ある省に、大蔵、厚生その他にも呼びかけまして、私どもの省におきましては十分意見を集約いたしまして、存分にこの問題は先生の意に沿うように話し合っていかなければいけない。先生の意に沿うようにというよりも、むしろ国家的将来の課題であるという感じが私はしてなりませんので、それは十分心得ておるつもりでございます。
  45. 柴田健治

    柴田(健)委員 次官、前進されるようた御発言なんですが、そのためにわが党は、また野党四党含めて提案しておる年金法の一部を改正する法律案を出したわけですが、一応説明だけはしてある。そういうことを考えて、国全体なら政党は責任があるわけですから、自民党としてもこの点については力を入れてもらわなければならない。そこに意見の意思統一が生まれてくると思うわけですね。次官、国全体で、段階がちょっと上に上がった、局長段階ではもうだめだ、農林省だけではだめだ、そういう結論が出ているわけですから、もう結論が出たそこから先の取り扱いをあなたらの責任でどうするか、もう明年中に話をつける、こういうある程度の日程というものの目算、立ちませんか。
  46. 中尾栄一

    中尾政府委員 先生御指摘の日程は、いまプログラムとして立てることはできませんけれども、さっそく自民党に、ここにも農林部会長がおられますし、農政のベテランがおられるわけでございますから、自由民主党筋のサイドでは私も存分に諸先輩、同僚と話し合って、この問題に対する姿勢は考えていくことができるかと思うのでございます。そういう意味におきましても、野党側の立場で、諸先生方の意見も政党サイドで十分御開陳願いまして、煮詰めていただければありがたいという感じがいたします。
  47. 柴田健治

    柴田(健)委員 先ほど竹内委員も言われておりましたが、農業団体におられる職員の皆さんはそれぞれ賃金に格差があるわけです。低いところもあれば多少いいところもあるというふうにばらばらです。これはやはり行政指導の欠陥だと思います。仕事の内容もそう差があるわけじゃないのですから、仕事の内容、それから分量、そしてまた労働時間その他を考えて、どうしても賃金をよくしてやらなければ——けさの新聞かきのうの新聞を見ると、どこかのゴルフ場では十四、五歳の中学生をキャディーに頼んで一日四千円もやっている。それが労働基準法にひっかかったようですが、十四、五歳に四千円もやるようなときに、またいまいろいろな地域で農林災害、土木災害、あらゆる災害復旧工事に人手が足りない。五千円くらい出さないと人が集まらないのです。四千円、五千円がいま基準になっている。農協職員を日割りで見ると、せいぜい一日千五百円から二千円まで。普通は倍くらいもらっている。他の賃金配分と農協職員賃金配分、要するに、勤労者の所得分配の方法が日本の場合はばらばらだし、むちゃくちゃといわれるわけですが、所得分配をもっと国全体として考えなければならぬ気もいたしますけれども、当面農協職員、農業団体職員給料が低いということは、政務次官、認められるでしょう。どうですか。
  48. 中尾栄一

    中尾政府委員 給料配分というのはほんとうにむずかしい面がございまして、私どももそれにはいつもギャップに悩まされるのでございます。たとえば東北あたりから十七、八歳のお嬢さんが口紅一つで上京してきましたならば、翌日ちょっとアルバイトサロンで働けば一日に八千円から一万円もらえる。あるいはまたワンステージちょっと出れば、とたんに所得は年間に数千万円になる。これは私どもがとても考えられない夢想的な巨額をもらう、これは一つの矛盾ではあろうかと思うのです。その中でも、特に農協といわず給料制度というものは、ほんとうに所得配分というものをある意味においてどこに基準を求めて考えていくかということは、単に農林関係の問題だけではなく、ほんとうに考えなければいかぬ問題である。同時にまた、いま先生御指摘のとおり、決して農協給料がほかよりもいいということを認めるものではございません。そういう点におきましては、まだまだこの問題は考えていかなければ相ならぬという感じがしております。ただ、これはひとえに農林省がどうこうという問題ではなく、ただ御質問に率直に答えさせていただきますれば、そういう感想は率直に持っておるものでございます。
  49. 柴田健治

    柴田(健)委員 いまの日本全体の所得の分配方法がどうもでたらめであるということは次官も認められておるのですが、私たちも働く者の分配率を高めるということは、それぞれの政党も責任を感じなければならぬと思うのですね。たとえば、細川隆元さんがあれだけ毒舌を吐いて、地方講演を頼むと、一時間に普通四、五十万取られるそうですね。日本の場合は、自由業というのがどうもややこしい。自由業という部門に携わっておる諸君は、どうも基準がない。取れるだけ取ろうという主義になっておる。いま唐島基智三さん、あまり出られませんが、唐島基智三さんの奥さんが私の郡から行った。ところが、家内のところだからというて講演を頼んでも、車馬賃は別に払って、まあ四十五分か五十分しゃべって、安うしてあげるというて、一時間足らずで二十万も二十五万も取るわけですからね。だから、自由業というものは、どこが基準なのかようわからぬ、正直にいうて。何ぼ取っているのか。弁護士だってそうです。国会議員には弁護士がおるから腹のうちはわかっておると思う。自由業というのは、計理士でも弁護士でも何が基準かわからぬ。要するに、所得分配の方法がどうもでたらめだ。どちらかというと、日本をつくり出してきたのは勤労者ですよ。漁民であろうと労働者であろうと農民であろうと、使命感を持ってきた。その使命感をだんだんなくするような賃金政策をとるところに、所得政策をとるところに問題がある。農民だって、今度米価問題で本格的になるのでしょうが、皆さん方も頭痛の種になると思いますが、農民は非常な使命感を持って長い歴史をつくってきた。あなたも御承知のとおり。いま競馬、競輪やゴルフ場、ボウリング場で、将来、日本にこういうものがはびこって、どんな文化が残るだろうかという気がするのです。次官、そう思いませんか、正直いうて。いま、日本の文化庁で指定している無形文化財の大半は、農民や漁民や働く者がつくり出した。一つの民謡にしてもそうでしょう。踊りにしてもそうでしょう。それぞれの地域で苦しみながら、耐え忍んで、みんな生活の知恵を持ち寄って一つの伝統を築いてきて、それがいまや日本のみんなに親しまれ、愛されていく一つの文化として残っている。競馬、競輪やギャンブルでどれだけの文化が残るだろうか。そういう使命感のない産業を発展さして、ただ遊びのためにということでどれだけ日本の文化が築かれていくだろうか、こういう気がするのです。それから働く者が今日、日本の、どれだけの文化を築いてきたか。そういう働く者は何から築いてきたか。使命感を持ってきた。その使命感を剥奪するような賃金政策、所得政策をとるところに問題があると私は思うのです。この点をどの政党も反省しなければならぬと私は思う。だから、この際一つ年金法を改正するにしても、やはりそういう点を踏まえて、あたたかい思いやりというものが基本にないと、いい制度にはならぬと私は思うが、次官、その点はどうですか。
  50. 中尾栄一

    中尾政府委員 私は、もう柴田先生と言わず諸先生方の話を聞いておって、いつも非常に感動するのです。これはむしろ、柴田先生などは私どもの自民党にほしいと思うほど感動するのであります。これは実際、私は絶えずそういう気持ちで考えておるのでございます。はっきり申し上げて、私自身もいまの所得配分というものには不満が多い。特に私は先般タクシーに乗りましたらば、タクシーの運転手さんが、実に嘆かわしいことです、つい先日久しぶりに私自身も疲れをとろうと思ってサウナぶろに入ったらば、二十五、六歳の若者が二人そばにすわっておって、おまえ売ったか、おまえ幾つ持っているんだ、十幾つ持っている——ゴルフの会員権です。そして、それがもう三十万ぐらい値が上がったから売ったかというやりとりをしているのを見て、サウナぶろで単に汗を流していながら、片やどんどん不労所得を得ていく、私どもは命をかけて、からだを張ってタクシーに乗って、そして月に十万も取れない、このような勤労意欲をそぐようなことは政治でやめてもらいたいのだと私は思っております、こう率直に言うておりました。全く同感であります。汗を流さずに、勤労もせずに不労所得がいたずらにふえていくというこのありさまは、私も慨嘆にたえません。その点は全く柴田先生の気持ちはそのまま私どもの気持ちであります。そういう意味におきましては、ある意味におきまして先生方からそういういろいろな示唆を賜わりまして、私どもも足らざる点を補って、一歩一歩解決点に踏み出していきたい、こういう気持ちでございます。
  51. 柴田健治

    柴田(健)委員 次官、農業団体職員はまん中にはさまれて苦労しているのですよ。賃金はほんとうにほしい。けれども、農民の所得を見るとどうも強い要求も出せない。しかし、仕事の分量は年々ふえる。そして、この多様化してくるいろいろな複雑性の中で、それぞれの処理をしていくためには、それぞれの機能をフル回転しなければならぬ。心身ともに疲れるという、この精神的な面、肉体的な面の疲労というものは非常にふえておる。そういう点から、まん中にはさまれて、上からの仕事はふえてくる。下からは、農民のいまの生活の実態というものを知る限りにおいては、賃金要求も十分できないという苦しみがあるわけですね。それのコントロールをとってやるのが農林省じゃないのでしょうか。次官、どう思いますか。
  52. 中尾栄一

    中尾政府委員 その点においては、農林省だけではなく、考えておりますが、特に私どもが土に親しむ農林問題というものに取り組んでいったヒューマニズムというものはそこにあるのだという感じがしております。
  53. 柴田健治

    柴田(健)委員 次官も農村出身だからよく理解されていると思いますけれども、農民が長い間、たとえば米つき節もあなたは知っておられると思う。木びき歌もよく知っておられると思う。あの歌を読んでみて、農民がどれだけ苦しい風雪に耐え忍んだ中からそういうものをつくり出してきたか。それが綿々と続いてきた。ところが、高度経済政策で、土地に対する価値観も失わせる。生産意欲、勤労意欲も失わせる。それは要するに農産物の価格政策がない。それから所得配分がだんだん不均衡を来たす。それが波及的にいろいろな分野に発展してきているわけですね。この点を考えないと、いま農村、農業を振興するために何が必要かといったら、心だと私は思う。何としても心だ。農民の精神構造を変えてもらわなければならぬ。変えさせるためにはどうしたらいいのか、私は心だと思うのですね。いまその心を破壊してしまった。農村を破壊し、農民を苦しめて、おまけに心まで破壊してしまったところに、農業団体職員がいまどれだけ現状を見詰めて苦しんでおるかということを、もっとすなおに政府当局は認めなければならぬと私は思う。ほんとうに気の毒だと私は思う。そういうものを踏まえて、一つの法案を作成するためには、ただ場当たり式、思いつき、ただセクト主義というような官僚主義的な法の改正では、十分な改正とは言えないという見方を私は持っているわけですね。ですから、一日も早く心をふるい立たせる、取り戻すというように、何としても人間の心を取り戻すような政策が必要だ。そこには、行政面においても、政治面においても、経済面においても、両々相まっていくような、そういう発想でなければならぬと思うのですが、次官、どうですか、その点は。
  54. 中尾栄一

    中尾政府委員 先生の御指摘のとおりでございますが、私はその心というのは非常に大事である。その心を取り戻すのは、経済面、政治面と先生のおっしゃるほかに、あと一つかてて加えて教育面を指摘しなければいけないという感じもするのでございます。私は先般、これはひとつ先生にもお聞きいただきたいので、二分だけ御猶予願いましてお話し申し上げたいと思うのでございますが、先般、ラフカディオ・ハーンの本にも書いてあったのでございますが、少なくともいまの日本人の心の中に失われつつあるものがある。それは、すべてを目的のために手段化する思想である。この考え方自体も日本人の一番失いつつある根性であるという感じがいたします。すべてを目的のための手段化する考え方、それはオートバイを買うためにかせぐ。自分のうちの娘にピアノを買うためにかせいでいく。この心の中には、どんなに所得を求めていっても安らかになり得ざる心というものが内在するのではなかろうかという感じがいたします。あくまでも私は、もっと健全な、むしろ自分のする仕事、勤労意欲そのものが心であり目的であるという考え方に立脚していく考え方に、これまた教育面でも教えていかなければ相ならぬだろうという感じがいたします。昔もいまも大きく変わっていったものは心だろうと思います。戦前のほうが農村はいまよりも疲弊しきっていたことだけは間違いありません。戦前のほうが農村は貧乏だったのであります。しかもなおかつ落ちつきがあったのは、それは与えられておった心である、教育であったという感じがいたします。すべてを物質的に追いまくられていく心、これこそがやはり是正していく一つの根幹でなくてはならないという感じもするので、その点は先生の御指摘とともに教育問題をも考えていただきたいと思うのでございます。
  55. 柴田健治

    柴田(健)委員 あなたと精神文明論、物質文明論を論争したってきりがないですから、いずれまたあらためてあなたと精神文明論、物質文明論をやるといたしまして、何としてもそういう農業団体職員給料の安いことを改善するような力をあなたたちがどこで示していくのかということが、今後の重要な行政の課題だと私は思います。だから、この点を十分配慮してやってもらいたい。  それから、次に沖繩の職員の皆さんですが、これは数についてはどの程度あるのか私も十分確認しておりませんが、どちらにいたしましても、二十数年の間異民族の支配の中で苦しんできた。そして農業のいろいろな諸情勢は非常におくれておる。基盤整備にしてもまた共済制度にいたしましても、すべておくれてきている。その中で職員のほうのこれもおくれてきておるということからいえば、ここだけは何らかの特別な方法はとれないものだろうか。この点について政務次官、あなたの見解を聞きたいのです。
  56. 内村良英

    内村(良)政府委員 まず沖繩の組合について数字がわからぬがというお話がございましたので、その辺のところを事務的に御説明させていただきます。  昭和四十七年八月一日において標準給与のいわゆる定時決定——これは毎年八月一日にきめるわけでございますが、これを受けた組合員は国全体で四十三万三千二十六人でございますが、沖繩は二千百三十三人でございます。全体の〇・五%になっております。このときの標準給与でございますが、県段階以下の団体組合員平均額は五万八千五百七十一円になっております。これが全国平均でございます。沖繩の場合はこれが五万六千百七十一円でございますから、若干低いということになっているわけでございます。これは数字的な事実を申し上げたわけでございます。
  57. 柴田健治

    柴田(健)委員 沖繩だけは特別に何とか考える。二千三百人程度ならたいした額ではないので、これはひとつほんとうに血の通った思いやりのある考え方に立つべきだという気がするのですが、次官の見解をお聞きしたい。
  58. 中尾栄一

    中尾政府委員 ただいま具体的な事務事項は局長に答弁をさせたわけでございますが、確かに先生の御指摘のとおり、政治的課題でございますし、これは復帰直後にこの問題は考えたのでございますが、同時にまた、先生のおっしゃるとおり、これは沖繩という特殊地帯であり、戦後二十七年、特にあれだけの苦しみの中で戦い抜き、犠牲を払い、なおかつ復興してきた沖繩でございますだけに、県民の気持ちも十分そんたくいたしまして私ども考えていかなければいかぬ。そのためには、その減額措置を撤廃することは即座には困難でございますけれども関係各省とも連絡をとりながら、ぜひひとつほかにとるべき方法はないだろうかということで、これは前向きに検討させていただきます。
  59. 柴田健治

    柴田(健)委員 どうも、あなた、初めて前向きということばを使われた。何らかの優遇措置というのでなしに、沖繩だけはどちらかといえば、この二十数年間特別災害を受けた地域だということで、この災害対策からいっても思い切った処置をとるべきだという気がしますので、ひとつ十分配慮してもらいたい、こう思います。  それからいま農林年金制度に加入していない農林中金、この農林中金を加入させるべきだという判断を私はしておるわけです。それで局長、どうですか。この点はあなたがかりに呼びかけても農林中金のほうが入らないのか。いままで入らなかった理由はいろいろあったと思います。大きくいえば、農林中金法が時限立法であるからいつ解散されるかわからぬという、基盤的なこのものが不安定だからということが加入しなかった大きな理由になってきたと思うのですね。御承知のとおりだと思うのです。今度農林中金法が抜本的な改正をされて、もう永久的になったのですから、そういう点、基盤的なものが安定してきたら、今度は職員の問題を考えなければならぬ。だから、農林中金をこの農林年金に入れるべきだ。あれは農業団体と私は認めているのですよ。あなたたちが農業団体とは違うのだと言えば別だけれども、この点、局長、どうですか。
  60. 内村良英

    内村(良)政府委員 農林中金が農林年金発足当初に加入しなかった理由といたしましては、ただいま先生から御指摘がございましたように、やはり特殊法人的な性格が強かったということで農林年金に農林中金が加入することは見送られたというふうに聞いておりますが、御指摘のように、今般の農林中金法の改正によりまして政府関係機関的な色彩は薄れてきているわけでございます。  そこで、農林年金対象団体にするかどうかということにつきましては、これは現在農林中金の職員は厚生年金に加入しております。したがいまして、厚生年金との関係をどうするか。それからこれは農林中金自体の問題でございますから、農林中金として厚生年金にとどまるか、あるいは農林年金に加入するかということは、中金自体がある程度決定すべきことでございます。もちろん、このためには法律改正が必要になりまして、国会の御審議を仰がなければならぬ問題でもあるわけでございます。現在、その点につきましては私どもも先般そのような御議論がございましたので、中金にどうかということを聞いております。中金といたしましては、現在、役員の中、それからこれは組合とも非常に関係が出てまいりますので、組合等ともいろいろ話をして中金の態度をきめるのではないかと思っております。  ただ、これには非常に技術的な問題がございまして、なかなか困難な問題もございます。それはどういう点かと申しますと、御参考までにこの際申し上げますと、農林年金への移行、これは厚生年金から移るわけでございますが、過去の厚生年金期間を引き継がないといたしますと、満四十歳以上の人については厚生年金にいたほうが有利になってしまうという問題がございます。そこで当然厚生年金期間のものは引き継がなければならぬ。これは農業共済協会が農林年金に加入した際、そうしたわけでございます。引き継ぎますと、今度は昭和三十四年一月以降の厚生年金期間にかかわる厚生年金農林年金の掛け金の差額の元利合計額を農林年金へ入れなければならぬことになります。その納付すべき額は、現在具体的な計算を行なったわけではございませんが、相当なものになるのではないかということがございます。  それからもう一つは、これは男と女の違いでございますが、農林年金の場合は男女で掛け金率に差がございません。ところが、厚生年金の場合には、女のほうがかなり安くなっております。したがいまして、農林中金の女子職員の立場から見ますと、これは二十年つとめる人があまりいないわけであります。いなくて掛け金は取られる、その掛け金が現在の倍になってしまうというようなことにつきましては、労働組合の中でもいろいろ問題があるのではないかというふうに考えられる問題がございます。  いずれにいたしましても、現在農林中金におきまして加入すべきかどうかということは検討中でございます。これは法律改正が必要になりますので、次の国会でそういったことをお願いするかどうかという問題ではないかというふうに考えております。
  61. 柴田健治

    柴田(健)委員 局長は農林中金の理事長みたいなことを言われたのだけれども、この中身のことを私は聞いているのではないのです。あれを農業団体としてみなさないと、これは考え方が違ってくるのです、農民の金はみんなあそこに入っているのだから。農業共済が厚生年金から脱退して、農業団体として手続をして農林年金に入ってきた。だから、農業団体として足並みをそろえる。これからの日本の農政のあり方というものはまず農業団体から足並みをそろえる。その指導性を発揮するのは農林省じゃないですか。基本は農業団体として認知するかしないかということが問題なんですよ。これは農業団体として認知いたします、だから好ましい姿としては農林中金の職員の皆さんもこの農林年金制度に入ってもらうべきだ、こうはっきり明確に出していただけば、今後取り組みの姿勢というものが出てくるのじゃないですか。次官、どうですか、その点は。
  62. 中尾栄一

    中尾政府委員 これはいささかむずかしい問題か思います。ただいま概略は局長の答弁したとおりだと思うのでございますけれども、ただ、農林中金についてはその設立が政府の手で行なわれたという、いわゆる特殊法人でございまして、この点におきましては農林漁業者等が自主的に設立された農林年金の他の諸団体とは性格を異にしておるということは認められておりますから、農林年金対象団体とはしておらないということは先ほど申し述べたとおりでございます。もっとも農林中金はその後の法改正によって政府関係機関的な色彩を薄めてきておりますから、これを農林年金対象団体とするかどうかにつきましては、厚生年金との関係及び役職員を含めた農林中金の意向の関係もございますから、それらを勘案いたしまして、今後なお慎重に検討すべき問題ではなかろうか、このように私は率直に感じております。   〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席
  63. 柴田健治

    柴田(健)委員 いままではこの農林中金の役員は天下り官僚がどっと入っておった。ところが、それではだめだ、ほんとうの農業団体として農民に与える印象が悪いということで改正して、役員の選出も変えたし、純粋な農業団体としていま新しい船出をしているのですよ。ですから、もう農業団体として認知すべきだという気持ちなんです。われわれはそう判断をしている。そういうことを考えたら、もうこの辺で、厚生年金のほうへ入っておられようとも、これはひとつやめてもらって、中金は農林年金のほうに入ってもらうのだ、こういうことで明確に出していくならば、農林中金の幹部の皆さんも、農林省がそういう見解なら、内部のいろいろな矛盾の調整や、他の厚生年金に入っておる皆さんとも話し合いを始めて、徐々に、一ぺんにというわけにはまいりますまいが、それには制度改正も必要でありましょうから、いろいろとこの作業が始まると思うのですね。農林省が明確に出さないからもたもたするのであって、あなたのほうが明確に出したら、われわれも農林年金のほうに、早く入りなさい、こういう呼びかけも運動もできるわけですね。組合のほうにも話ができる。皆さんが早く明確に方向を出してもらえれば、われわれも助言や協力はできる。指導はできない、指導できる立場ではないのだから。助言やいろいろな協力はできる。だから、そういう範囲内でひとつまとめていく、足並みをそろえていく、そういう方法をとりたいと思うものですから申し上げているのであって、じゃましたり追及したりしているのではないのです。だから、どうですか、次官、もうはっきり認知して入るべきだ、入るのが好ましい姿だ、こういうお答えを願いたい。
  64. 内村良英

    内村(良)政府委員 農林中金が農林漁業団体職員共済組合法第一条の農業団体に入るか入らないかという点は、これは法律上非常にむずかしい点がございます。と申しますのは、中金法改正の審議の際も御答弁申し上げましたけれども、いわゆる農林中金が完全なる農業団体であるかどうか、私どもはやはり特殊法人的な色彩を残しているというふうに考えておりますので、この農林漁業団体職員共済組合法第一条の農林漁業団体に読めるかどうかという点は、まず先ほど申しましたように、中金が厚生年金から農林年金に移りたいということを決定して農林省に申し出があった場合に、私どもは今度は関係方面とこの第一条の団体の中に書けるかどうかという点についてはなお検討しなければならぬ問題がいろいろあるわけでございます。したがいまして、その点について、いわゆる農業団体ということばの解釈でございますが、まあ、かたい法律的な解釈でいきますと、農業団体ということは別にいたしまして、この農林漁業団体職員共済組合法第一条の中に農林中金ということが書けるか書けないかということは、これは法制局等の法律の専門の人たちといろいろ相談しなければならぬ問題はなお残っておるというふうに事務的には考えております。
  65. 柴田健治

    柴田(健)委員 あなた都合のいいときは変な解釈をする。どうも日本の法律は解釈法律だから、どんなふうにも解釈するのですね。農林中金法の審議をするときに、たとえば生協に貸し付けをどうだ。ところが、あれは農業団体でないという論理でしょう。農林中金の融資先は、貸し出しも預け入れもとにかく農民の資金、農業団体だ、あなたはそういう答弁をしたじゃないですか。今度は農林中金は農林年金に入れと言ったら、また別の法の解釈、あなた、どっちがほんとうだ。
  66. 内村良英

    内村(良)政府委員 農林中金は、中金法改正の際に御答弁申し上げましたように、わが国の農林漁業の協同組合の中枢の金融機関でございます。そのとおりでございます。ところが、中金自体というものがそこに出てまいります。中金の機能というものは、農林漁業協同組合の中枢の金融機関としていろいろ働かなければならぬということはそのとおりでございます。ところが、中金はその半面、たとえば農林債券を発行しております。そこで、農林債券の発行につきましては、不特定多数の人から金を集めているという面もございます。  そこで、中金自体がそれでは完全なる農業団体であるかあるいは特殊法人であるかという点につきましては、特殊法人的な色彩は弱めております。三十六年までは理事長、理事は全部主務大臣の任命でございました。それが三十六年の改正で、理事長と監事は出資者総会で選ばれるというふうに変わりました。さらに今度の改正で、理事長が任命する副理事長と理事は、出資者総会の同意を得て任命するというふうに御承知のとおり変わったわけでございます。したがいまして、逐次そういった政府機関的な色彩を弱めておりますけれども、法律論として見た場合に、中金が完全なる自主的な農業団体であるかあるいは特殊法人であるかということにつきましては、やはり法律論としては特殊法人的色彩がまだ残っているというふうに私どもは考えておるわけでございます。  したがいまして、もちろん中金は農林漁業関係の協同組合の中枢の金融機関でございまして、農林漁業のために働くのは当然でございます。しかし、中金自体、その中金そのものがそれでは農業団体かどうかということにつきましては、法律上若干問題があるということでございます。
  67. 柴田健治

    柴田(健)委員 理事役員は、農業団体の者がみな入っておるのでしょう。森林組合の代表だとか漁業協同組合のいろいろな団体の幹部が入っておる。外部から入っているということはあまり聞いてない。それで、特殊法人的なものが残っているというふうにあなたの言うことは、よくわからない。それなら、あなた、農林中金は、われわれはこれからもう農林年金制度に入らぬ、農業団体として認知してないんだぞ、あんなところに金はどうなんだというぐあいに言うたら、どうするのですか。そういうへ理屈を言うことになる。あなたがへ理屈を言えば、何だかこっちもへ理屈を言わなければならぬ。農林中金はいままでの内部的な経過があるから、現段階ではなかなかむずかしいことはわかるけれども農林省としては、農業団体として認知しております、それから、農林年金制度に入るのは好ましいことですと、簡単にすなおに答弁したらいい、へ理屈を言わずに。大体役人というのはへ理屈を言うのが好きだ、どこで習ってくるか知らぬけれども。もっとすなおになったらどうですか。
  68. 内村良英

    内村(良)政府委員 農林中金の機能から見て、広い意味の農業団体であるということは、私もそう思います。しかしながら、法律論を申し上げて、へ理屈を申し上げて恐縮でございますが、農林漁業団体職員共済組合法の第一条の農業団体であるかということは、法律論としてなお検討すべき問題があるのではないかというふうに考えております。
  69. 柴田健治

    柴田(健)委員 そうすると、もう農業団体と認めて、将来農林年金制度に入ってもらうためには、法の改正をする意思があるのですか、いつやるのですか、政務次官、ちょっと答弁してください。
  70. 中尾栄一

    中尾政府委員 その問題、中金の意向を十分詰めまして、それから漸次検討していかなければならぬと思いますが、これは決してへ理屈論ということじゃなくて、局長の答弁しておりますのは、あくまでも、いま現行法のたてまえから、たてまえ論で言うておるわけでございまして、いわゆる情感といいましょうか、そういうものの考え方からいきますると、それはもう先生のおっしゃるとおり、農林中金は、農業団体そのものがあっての農林中金であるということのたてまえからいけば、そういう方向が好ましい状況ではあるけれども、たてまえ論上、法制上やむを得ない、こういう御答弁だと御解釈願えればありがたい、こう思っております。
  71. 柴田健治

    柴田(健)委員 局長、どうですか、法の改正。
  72. 中尾栄一

    中尾政府委員 ですから、これは法の改正は、農林中金と十分に詰めまして、農林中金の意向がどういう考え方に立つのか、その点も十分意向を聞きただして、その反映の上に立って私ども自身が詰めていかなければならぬ問題である。これは検討いたします。
  73. 柴田健治

    柴田(健)委員 次官のほうはややニュアンスが違ってきたのですが、もう入ってもらうべく将来折衝もし、努力をするというように判断してよろしいか、どうですか。
  74. 中尾栄一

    中尾政府委員 いや、これはもう先生の御提議なさったことですから、ただそれに対する私の感想を求められたわけでございますから、特にこの問題は私は中金の方々ともお話しをするつもりでございます。
  75. 柴田健治

    柴田(健)委員 時間が来ましたからもうやめますが、もう一つ次官、これは政治的な配慮を願わなければならぬのは、やはり国庫補助がいままで一八%で押えられて、これは二〇%にしろという長年の懸案なんですね。それからこの二〇%は与党の自民党の皆さんも非常に努力をされておるようですが、何としても早急にこの二〇%は解決しなければならぬと思うのですね。これはもう緊急を要する問題だと思うのですが、どうですか、次官、国庫補助の二〇%に引き上げの問題。
  76. 中尾栄一

    中尾政府委員 ちょっとこの問題は局長に答弁を申させたいと思います。
  77. 内村良英

    内村(良)政府委員 御承知のとおり、四十七年から一六%が一八%になりまして、それに財源調整費の一・七七%がついておりますので、大体実質には二〇%程度になったわけでございます。これを引き上げるかどうかというのは大きな政策の問題で、私ども事務官僚でございますが、一生懸命努力したいというふうに思っております。
  78. 柴田健治

    柴田(健)委員 事務官僚ではできないものを事務官僚に答弁させたんじゃ、次官、その点、ちょっとあなたもう一ぺん、私はあなたを大臣だと思って質問を盛んにしておるのですから。
  79. 中尾栄一

    中尾政府委員 こまかい内容のことを先に答弁させまして、私はあとで意思を述べるつもりでございましたが、これはもう最善の努力を払うつもりでございます。
  80. 柴田健治

    柴田(健)委員 わかりました。
  81. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 この際、午後一時十分再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十六分休憩      ————◇—————    午後一時二十八分開議
  82. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正する法律案及び芳賀貢君外十名提出、国が行なう民有林野の分収造林に関する特別措置法案の両案を議題といたします。     —————————————  森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正する法律案国が行なう民有林野の分収造林に関する特別措置法案   〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  83. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 内閣提出森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正する法律案について趣旨の説明を聴取いたします。核内農林大臣
  84. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  わが国の国土の約七割を占める森林につきましては、古来、重要な住宅用資材たる木材の供給を通じ、また、急峻な地形のわが国では国土の保全の重要なにない手等として国民生活と深く結びついてきたことは御承知のとおりでありますが、近年、経済の高度成長、都市化の進展等の社会経済情勢の変化に伴い、森林の有する公益的機能の発揮に対する国民的要請が高まる一方、需要の増大に対応して木材の安定的な供給をはかることもまた大きな課題となっているのであります。  政府におきましては、このような事情にかんがみまして、森林の有する経済的機能と公益的機能とを総合的かつ高度に発揮させるため、森林の適正な利用と健全な林業活動を確保することを旨として、森林計画制度の改善、開発許可制度の導入、伐採届け出制度の強化等をはかるとともに、森林組合制度の改善強化と森林組合合併の推進とをはかることとし、この法律案提出いたした次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。まず第一に、森林計画制度の改善をはかったことでありまして、全国森林計画は、流域ごとに計画事項を明らかにすることを旨として定めるようにするとともに、地域森林計画は、自然的、経済的、社会的諸条件及び利用の動向から見て森林として利用することが相当と認められる民有林について樹立することといたしております。  また、全国森林計画及び地域森林計画の計画事項として、新たに、森林の整備に関する基本的な事項及び森林の土地の保全に関する事項を加えるほか、これらの計画は、森林の有する公益的機能の維持増進に適切な考慮を払って定めるべき旨を明定することといたしております。  第二に、森林の土地の適正な利用を確保するため、民有林における一定規模以上の開発行為についての都道府県知事による許可制を導入することといたしたことであります。  すなわち、地域森林計画の対象となっている民有林において、周辺地域に相当の影響を及ぼすおそれがあるような一定規模以上の土地の形質変更を行なおうとする場合には、都道府県知事の許可を要することといたしました。  この場合、都道府県知事は、その森林が現に有している土砂の流出等の災害の防止、水の確保及び環境の保全の機能を維持するという観点に立って許可するかどうかを判断することといたしております。  第三に、伐採の届け出制度に関する規定を整備いたしたことであります。  すなわち、地域森林計画に従って適切な伐採が行なわれるよう、森林所有者等が届け出た伐採計画が地域森林計画に適合していない場合や、その届け出た伐採計画が地域森林計画に適合していても現実に行なっている伐採がその伐採計画に従っていない場合には、都道府県知事は、必要な命令をすることができることといたしております。  第四に、森林施業計画の認定制度に関する改正でありまして、小規模経営林家の共同施業の推進を助長するため、新たに、一定の基準に適合する森林の団地について共同して森林施業計画を樹立し、都道府県知事の認定を受けることができることといたしております。  第五に、森林組合制度の改善強化をはかったことであります。  その一は、森林組合制度の目的の整備でありまして、従来以上に森林所有者の地位の向上を重視する旨をその目的規定において明らかにすることといたしております。  その二は、事業範囲の拡大でありまして、施設森林組合につきましては、その事業として環境緑化木の販売等の事業、林地供給卒業、保健休養の事業等を追加するとともに、森林の保続培養及び森林生産力の増進を期する観点から、みずから森林の経営を行なうことができる道を開くことといたしております。また、生産森林組合及び森林組合連合会につきましても、その事業の範囲を拡大することといたしております。  その三は、管理運営体制に関する規定の整備でありまして、森林組合及び森林組合連合会の業務の運営が円滑に行なわれるよう、総代会の権限の強化、参事及び会計主任に関する規定の新設等の措置を講ずることといたしております。  第六に、森林組合の広域的な合併を促進しその体質の強化をはかるため、森林組合合併助成法を改正し、合併に関する計画の認定制度につき、その適用期間を五年間延長することといたしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  85. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 以上で本案の趣旨説明は終わりました。  引き続き、本案の補足説明を聴取いたします。福田林野庁長官
  86. 福田省一

    ○福田政府委員 森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。  本法律を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下その内容につき若干補足させていただきます。  第一に、森林計画制度の改善であります。  まず、全国森林計画につきましては、水源の涵養、土砂の流出または崩壊の防止等の森林の有する公益的機能と木材生産等の経済的機能とを総合的かつ高度に発揮し得るようにするためには流域的な観点から森林の整備をはかることが適切であることにかんがみ、流域ごとに計画事項を明らかにすることを旨としてこの計画を定めることといたしております。  また、全国森林計画の計画事項を追加いたしまして、この計画が森林政策の長期の指標であることにかんがみ、森林の整備の目標その他森林の整備に関する基本的な事項を明らかにすることとするとともに、急傾斜地が多いわが国の森林の現況から見て、土砂の流出または崩壊の防止、水源の涵養等の森林の有する公益的機能を一そう維持増進するためには、森林施業や森林の開発行為等に当たって地形、地質等の自然的条件と森林の樹根や表土の効用等とに十分配慮する必要がありますので、森林の土地の保全に関する事項を明らかにすることといたしております。  次に、地域森林計画につきましては、まず、この計画の対象とする森林を、自然的、経済的、社会的諸条件及び土地利用の動向から見て森林として利用することが相当と認められる民有林とすることといたしました。  また、全国森林計画の場合と同様、地域森林計画の計画事項を追加いたしまして、森林が有している諸機能に着目して森林のタイプ分けを行ない、このタイプ分けをした森林についてさらにその整備の目標その他森林の整備に関する基本的な事項を明らかにするとともに、先に述べましたような全国森林計画において定める森林の土地の保全に関する事項の趣旨に従って、樹根及び表土の保全その他森林の土地の保全に関する事項を明らかにすることといたしております。  このほか、森林の有する自然環境の保全等の公益的機能と木材生産等の経済的機能とを総合的かつ高度に発揮し得るよう、全国森林計画及び地域森林計画は、自然環境の保全及び形成その他森林の有する公益的機能の維持増進に適切な考慮を払うべき旨を法律上明確にすることといたしております。  第二に、民有林における大規模な開発行為についての都道府県知事の許可制の導入であります。  すなわち、地域森林計画の対象となっている民有林において、周辺の地域に相当の影響を及ぼすおそれがあるような大規模な開発行為をしようとするときは、国または地方公共団体が行なう場合、非常災害に際し緊急の用に供する必要がある場合等一定の場合を除き、都道府県知事の許可を受けなければならないことといたしました。この場合、都道府県知事は、その開発行為が現にその森林の有している機能から見て、土砂の流出その他の災害の防止、地域住民の水の確保及び地域の環境の保全という三つの点で支障を及ぼすおそれがないかどうかを基準としてその許可の是非を判断することといたしております。  なお、都道府県知事は、必要があると認めるときは、許可を受けないで開発行為をした者等に対し、その開発行為の中止を命じ、または期間を定めて必要な行為をすべき旨の命令をすることができることといたしております。  第三に、伐採の届け出制度に関する規定を整備したことでありまして、都道府県知事は、森林所存者筆提出した立木の伐採の届け出書に記載されている伐採面積、伐採方法または伐採齢に関する計画が地域森林計画に適合しない場合には、その者に対し、その伐採の計画を変更すべき旨を命ずることができることといたしております。また、伐採の届け出書を提出した者の行なっている伐採が、その届け出書に記載されている伐採面積、伐採方法または伐採齢に関する計画に従っていない場合には、その者に対し、その伐採の計画に従って伐採すべき旨を命ずることができることといたしております。  第四に、森林施業計画制度の改善を行なったことでありまして、森林施業の合理化をはかるため、森林所有者が共同して施業することを相当とするものとして政令で定める基準に適合する森林について、森林所有者は、その有する森林の全部を計画の対象としない場合であっても、これらの森林を対象として共同で森林施業計画を作成し、都道府県知事にこれが適当であるかどうかにつき認定を求めることができることといたしました。  第五に、森林組合制度の改善強化であります。  その一は、森林組合制度の目的規定を整備して、森林施業の合理化と森林生産力の増進をはかることのほか、森林所有者の経済的社会的地位の向上をはかることも、森林組合及び森林組合連合会の直接的な目的とすることといたしました。  その二は、事業範囲の拡大であります。  まず、施設森林組合につきましては、林産物以外の森林の産物及び環境緑化木についても販売等の事業を行なうことができるようにするとともに、森林の施業及び経営を推進するために必要な林業労働力の組織的な確保に寄与するための事業、経営規模の拡大その他林業構造改善の推進に資するための組合員に対する林地の供給の事業、森林の保健休養機能の増進のための事業、組合員労働力を利用して行なう林産物等の加工に関する事業を行なうことができるようにいたしております。  また、組合員に出資をさせる施設森林組合につきましては、このほか、森林の保続培養及び森林生産力の増進を期するためにはみずから経営することが相当と認められる森林であってその組合の地区内にあるもの等の経営を行なうことができるようにするとともに、組合員の委託を受けて、林業以外の目的に供されることが相当と認められる林地の売り渡し等の事業を行なうことができるようにいたしております。  次に、生産森林組合につきましては、新たに環境緑化木の生産や森林を利用した農業を行なうことができるようにし、森林組合連合会につきましては、施設森林組合に準じて必要な事業範囲の拡大を行なうことといたしております。  その三は、管理運営体制に関する規定の整備でありまして、まず、施設森林組合につきましては、森林所有者と同一の世帯に属する者で委託を受けて森林の経営を行なうものにも正組合員資格を与える等組合員資格の範囲の拡大を行なうとともに、総代会の権限の強化、参事及び会計主任に関する規定の新設、出資割り配当限度の引き上げ等を行なうことといたしております。また、生産森林組合につきましては、その組合員組合事業への従事に関する規制を緩和することといたしており、森林組合連合会につきましては、施設森林組合に準じて所要の規定の整備を行なうことといたしております。  その四は、森林組合及び森林組合連合会の事業を通じて森林の有する公益的機能の維持増進がはかられるようにするため、国及び都道府県が、森林組合及び森林組合連合会の健全な運営と発達について助言、指導を行なう等必要な配慮をする旨の規定を新設することといたしております。  第六に、森林組合合併助成法の一部改正でありまして、森林組合制度の改正と相まって、森林組合の事業運営基盤を強化するため、合併しようとする森林組合が共同して合併計画及び合併後の事業経営計画を立て、その計画が適当であるかどうかにつき都道府県知事の認定を求めることができる期限を昭和五十三年三月三十一日までに延長し、これに伴う税制上の特別措置と相まって、森林組合の広域合併を促進することといたしております。  以上をもちまして森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正する法律案の提案理由の補足説明を終ります。
  87. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 以上で本案の補足説明は終わりました。  次に、芳賀貢君外十名提出、国が行なう民有林野の分収造林に関する特別措置法案について趣旨の説明を聴取いたします。角屋堅次郎君。
  88. 角屋堅次郎

    ○角屋議員 ただいま議題となりました芳賀貢君他十名提出にかかわる国が行なう民有林野の分収造林に関する特別措置法案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を説明申し上げます。  わが国の森林面積は、二千五百万ヘクタールで国土のおよそ六八%を占めているとはいえ、国民一人当りでは〇・二ヘクタールと世界平均の一・二ヘクタールの六分の一にすぎません。  すなわち、森林の果たす役割りは、国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保持形成、国民の保健休養などの公益的機能を確保し、木材その他の林産物を持続的に供給する等、国民生活の安定と福祉の向上をはかる上できわめて重要なものがあります。  また、木材需給の動向につきましては、さきに政府が公表した「森林資源に関する基本計画」並びに「重要な林産物の需要及び供給に関する長期の見通し」によりましても、わが国の木材需要は今後も大幅な増加の傾向を示し、すなわち、昭和四十六年度の総需要量は一億四百万立方メートルであり、供給量の内訳は国産材が四六%の四千八百万立方メートルと輸入外材が五四%の五千六百万立方メートルでありますが、十年後の昭和五十六年度には、総需要量は一億三千五百万立方メートルに増大し、一方供給面では国内生産は依然として停滞から脱却できず、自給率は三七%の五千万立方メートルにすぎず、不足分の六三%の八千五百万立方メートルを外材輸入にたよらざるを得ない状況となり、いまや日本は世界第一位の木材輸入国に転落したのであります。  しかしながら、外材輸入をめぐる情勢を見ましても、わが国の木材輸入量はすでに世界の総輸出量の三〇%を占めており、各国においても、資源政策及び環境保全の両面から木材輸出に対する規制が一段と強化され、最近、アメリカ議会の上院における原木の対日輸出制限の動き等を見ても、わが国を取り巻く海外の木材事情は決して楽観を許さない状況であります。  ひるがえって、わが国の林業は一九七二年林業年次報告でも明らかなごとく、GNP至上主義の高度成長経済のもとで乱伐及び乱開発による森林資源の荒廃を招き、農山村の過疎化と労働力の不足、素材生産の減少と経営の不振により林業の生産活動は後退を余儀なくされており、なかんずく、民有林の造林事業の動向についても、造林面積は昭和三十六年の三十三万八千ヘクタールをピークに年々減少を続け、四十六年には二十五万五千ヘクタールと大幅に落ち込み、政府の民有林長期計画の達成率も八二%と低く、さらに今後は奥地化、造林コストの上昇により造林の推進は一そう困難の度を加えることは明らかであります。  結局、造林が進まない最大の原因は、林道の未整備及び労働力不足に加え、経営上の不安と資金的な制約によるものであります。  確かに、今日の国の造林施策は補助造林制度や融資制度による助成の措置がとられておりますが、市町村自治体や小面積所有林家の自力造林はきわめて困難な状態に置かれており、その上、公社造林も資金的な行き詰まりを来たしている実情であります。  このような、わが国林業の危機打開のため、昭和四十六年には、第六十五国会の農林水産委員会において全会一致をもって林業振興に関する決議が議決せられ、決議の第一項の中に「国が行なう民有林野の分収造林等に関する制度的措置」を検討し、その実現につとめることと明示されているのであります。この際、わが国林業の現状に対処し、国土保全、水資源確保、自然環境の保全など森林の公益的機能を確保し、林業生産力の増大と林業従事者の所得の向上を期し、森林資源の充実をはかるため、民有林野に対する国営分収造林の制度を創設し、国有林野事業の組織、技術、労働力及び資金を活用して、十五年間に、百万ヘクタールの造林を目標に、国営分収造林を実施するため、この法律案提出した次第であります。  以下、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。  第一は、国営分収造林計画に関する規定であります。  民有林野の造林は、林業基本法第十条に規定する森林資源に関する基本計画及び森林法第四条に規定する全国森林計画に即して、昭和四十八年度以降十五年間に実施すべき国営分収造林契約に基づいて行なう国営分収造林計画を立てることとし、この計画において、造林の目標及び造林の事業量を定めるものとし、なお農林大臣はこの計画を立てるときは、中央森林審議会の意見を聞かなければならないこととしております。  第二は、造林実施地域に関する規定であります。  農林大臣は、関係都道府県知事の申請に基づき、中央森林審議会の意見を聞いて自然的経済的社会的制約によって造林が十分に行なわれておらず、かつ、すみやかに造林を行なうことが必要であると認められる地域を造林実施地域として指定することとし、さらに、知事がこの申請を行なうときは、あらかじめ都道府県森林審議会及び関係市町村長の意見を聞かなければならないことといたしております。  第三は、国営分収造林契約の締結についての規定であります。  国営分収造林契約とは、国が民有林野につき地上権の設定を受けて造林を行ない、その造林による収益を、所有者と分収する条件で締結する契約をいうものであります。  まず、農林大臣は、造林実施地域内の民有林野の所有者が国営分収造林契約を締結したい旨の申し出をした場合、その民有林野が政令で定める一定の理由と、一定の要件を満たすときは、当該所有者を相手方として国営分収造林契約を締結することができることとしております。  この場合、小面積の所有者が数人で共同して申し出をした場合においても、国営分収造林契約を締結できる要件を定めておるのであります。  第四は、国営分収造林契約の内容等の規定であります。  国営分収造林の収益を国及び造林地の所有者が分収する場合の分収割合は、それぞれ十分の五を標準とすることとしております。  第五は、国営分収造林契約にかかる造林事業に関する費用の繰り入れについてであります。  政府は、国営分収造林契約にかかる造林事業の業務の執行に要する経費を、毎会計年度、予算で定めるところにより、一般会計から国有林野事業特別会計の国有林野事業勘定に繰り入れるものとしております。  以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
  89. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 以上で本案の趣旨説明は終わりました。
  90. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 内閣提出森林法及び森林組合合併助成法の一部を改正する法律案について質疑に入ります。  この際、質疑者各位に申し上げます。  ただいま田中内閣総理大臣が御出席になりましたので、先日来理事会で申し合わせを行ないましたとおりの質疑割り当て時間を厳守され、その範囲内で御質疑をされますよう、特に質疑者各位の御協力をお願い申し上げます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笠岡喬君。
  91. 笠岡喬

    ○笠岡委員 総理、お願いをいたします。  本日提案をされました森林法の一部改正案、また総理みずから陣頭指揮をとられペンを入れられた国土総合開発法案、さらに生活関連物資買い占め売り惜しみ緊急措置法案等、かつてないほど公共の福祉を優先させるということを念頭に置いて私権を制限し、ある一面には統制経済政策とすらいわれるほどきついものであり、しかもいま日本の社会の現状を見たときに、非常に騒然としたときに、こういう法案を勇気をもって提案された政府に対して、国民は非常に大きな期待を寄せていることは事実であります。  そこで、この森林法案というもののみそは、俗にいう乱開発の抑制にあると私たちは考えております。現に、特定の地域あるいは特定業者によって、いろいろ国民が目をおおうような乱開発が続けられておることも事実であります。そこで、このまま推移したならば、農民あるいは林業者、そういう者は生活を脅かされるというようなもろもろの弊害がかもし出されることは疑いない事実であります。しかしながら、ここで私は一つ申し上げたいことは、こうしたことを規制することは当然であり、勇気をもってやらなければなりませんけれども、しかし、わが日本の国の現状というものは、御承知のように、必ずしも均衡ある発展には至っておりません。非常に未開発の地域をたくさんかかえておることも事実であります。そこで、一方においては、総理がよく言われる、健康で文化的生活環境の保全、さらに国土の均衡ある発展という、この両面にわたって、この森林法の一部改正といわゆる国土総合開発法案、こういうものとの関連について、今後総理がどのように運営、推進されていくのか、総理の所信を承りたいと思います。
  92. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 人間は自然に生まれたものでありますから、自然の法則に従うことが最も能率的であり人間的であることは申すまでもありません。  しかし、複数以上がだんだんと、文化それから生産性の向上、就職の機会とかレベルの高いところとか、水は低きに流れるといいますが、人は高きに集まるわけであります。そういう意味で、町を形成し、大都会を形成する。コンビナートのような一部に起こっておるように、経済効率の面から見ると、非常に効率的なものであり合理的なものであるが、そこには必然的に複合公害が起こるという新しい問題が起こるわけであります。  そういう意味で、自然を愛する、自然が原則であっても、人類の生々発展の過程において社会的環境を整備しなければならないというような意味で、ある程度の制約を受けるということはやむを得ないわけであります。これは人間の英知として当然のことであります。また現状だけではなく、過去があり現在があり将来があるということを考えると、後代の人類の利益を守らなければならないというためには、ある程度の合理的な計画性を持った規制ということもやむを得ないわけでございます。  そういう意味で、明治から百年間を展望してみましても、就業の機会を得るとか、一定の生活水準を確保するとか、一定の就学の意思のある人が学校へ行けるというような政治の一つの目的は達成されたと思うのです。しかし、その過程においていろいろな弊害が起こってきて、このままに推移ぜんか、将来に対して相当な混乱を起こすおそれがある、こういうことが看取される以上、現状を改革し、将来に向かって誤りのない規制を行なうということは当然だと思うのです。  一億八百万人、先般発表されたわけですが、一億八百万人という膨大もない人口がアメリカのカルフォルニア州以下の面積に住んでおって、しかもここで自由世界第二の生産をあげているということでございます。あげておるから国民生活の水準も上がったわけです。就学の水準も上がってきておる。将来に希望が持てるということはおおうべくもない事実でございます。しかし、限られたところにこれだけの多くの人が住んでおり、高い成長を続けておるのでありますから、このままでもって無計画であれば、無規制であれば非常に混乱が起こるということは事実であります。その一部が全国土の八五%を占める森林地帯、これは水源涵養地帯であり魂の安息所でもございますし、民族のふるさとだと思うのです。この自然を守りながら効率的な国土の利用をはかるというために国土総合開発が必要であるということは、これはもうだれでもうなずけるところだと思うのです。その中で国土総合開発を進めなければならないと同時に、自然は可能な限り守るということが当然のことであるということで、森林法の改正その他諸般の法律改正が提案をされておる、まあワンパッケージで御審議をお願いしておるわけでございまして、これは政府がなさなければならない当然のことだと思うのです。  このほかになお、将来の学校をどうするとか、いろいろなものがまだまだ付随して国会の御審議をいただくという状態であります。
  93. 笠岡喬

    ○笠岡委員 次に、農政一般について一言お尋ねをいたしたいと思います。  わが国の農政についてはいろいろな批判があります。たとえば政策に一貫性が欠けておるとか、あるいは硬直化して機動性に乏しいとか、あるいはまた今日、食料を確保するという信念に乏しい、いろいろな批判があることも総理先刻御承知のとおりであります。これはわが国の産業構造が急速に高度化、近代化あるいは工業化いたしまして、その変革から起こった一つの現象としてやむを得なかったこともあると思います。しかしながら、率直に言いまして、経済の高度成長の一番の犠牲者ということばは強過ぎるが、農民というものが大きな犠牲を受けたということはいなめない事実であると私は考えております。  しかし、最近、農業就業人口にいたしましても全就業人口の大体一五%、たとえばイギリスあたりにはいかなくても、近代国家並みに定着をいたしつつあることも事実であると思います。そこで、この辺で日本の新しい活力ある福祉国家を建設し、高度の近代国家を目ざしていく以上は、ここに日本の経済社会の新しい長期展望というものを明らかにしなければならないと私は考えておるものであります。その中に農林業いわゆる農林漁業というものが新しい日本経済のどの辺にどういう形で位置を占めているか、そういうことをはっきりさして、農民諸君にそういうことを十分に理解させる、そうしていくことが政策の一貫性というものを農民に明示することができる。そのことによって新しい農業、また農民も勇気をふるって農業というものに努力をできるものである。簡単に言えば、そういうことになろうかと考えるものであります。新しい日本の経済社会の上に立つ農業というものについて、総理の所信をお伺いいたしたいと思います。
  94. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 農業はどこの国でも一番大切なものだということは私もそのとおり理解しております。農業は将来とも大事にしなければならないということはそのとおりであって、よって農業基本法ができ、将来的展望に立って日本に適合する農政を繰り広げておるということは正しい姿だと思います。しかし、私は本質的に考えて、日本の農政というものは、現象面は別にしまして、明治から百年間の諸外国の農業政策を考えてみましても、非常に大きな成功をしておると思います。これはしかも南方作物である稲を北海道でさえ多収穫の稲に変えるだけの能力があるわけでありますから、必ずしも歴史の上で失敗したということはないと思います。  どこの国でも米は不足であります。これは気候、風土、地勢上の制約を受ける天然産物でありますから、一次産品というものは非常にむずかしいことは、これは論議を待たないわけです。しかもソ連においても年間二千万トン主食の不足がいわれております。中国においても二千万トンの不足がいわれている。またインドにおいては八百万トン以上の主食の不足。これは地球上における一つの大きな問題であると思うのです。あるところには干ばつ、あるところには雪が降らないということで、相当な現実が存在することは事実であります。しかも南方諸地域は、三毛作も四毛作もとれているところで、食糧の援助がなければその日の生命を保つことができないという事実に徴しても、少なくとも百年間に日本の農民が非常に努力した成果があることは事実だと思うのです。特に一次産業地帯においては百年間の日本の歴史が一番明確にしているわけです。一次産業比率九〇%であったものが御指摘の一五%になったわけであります。これだけ地形、地勢上の制約を受けておるこの地域で、よくもこういう原動力になったと思います。九〇%が一五%になったという過程には、出てくるときにはみんな何らかのものを、教育費を負担し、そして青少年として生産の第一線に送り出したわけです。戦後の大都界の復興の源泉がどこにあったかというと、貧しい農山漁村から幾ばくの財産を持って、それが起爆剤となって今日の経済的繁栄がある。いまでも盆と正月には千数百万ですかというような人たちが都会を離れて帰る。それは魂の一種の安息所であり、心のふるさとであるという事実だと思うのです。  しかし、私がここでもって申し上げたいのは、アメリカにおいて一次産業比率が四・四%、それから拡大EC十カ国の平均が六%であります。そうすると、まだ九%も多いわけであります。かつて池田内閣時代もいろいろ議論をされましたが、これは一次産品と二次、三次のいわゆる工業、商業との収益の差というものはいかんともなしがたいわけであります。アメリカにおいては、日本の百倍以上の反別を持ちながらも、政府は長い間余剰農産物として買い上げ制度をとらなければ、農業政策を維持できなかったという事実もあります。そういうようなものから考えて、日本の農山漁村から人口が——人口というよりもいわゆる就業という面が変わってくるということは、どんなことをしても避けがたいと思うのです。二次産業は二〇%平均月給が上がって、一次産業は二〇%上がらないということになれば、どうしたって二次産業、三次産業のほうに流れるという趨勢は人類の方向としてとめがたいものだと思うのです。だから、そういう意味で、アメリカのように、何百町歩を飛行機で種をまくようなことはできない。いまようやく充足ができるという状態である日本の農業ということを考えますと、やはり日本全体から見て保護しなければならない、農業というものの生産性を上げなければならない。農業の生産性を幾ら上げても飛行機で種をまくというものと一緒になるわけがないのですよ。そういうものの限界を明確にしまして、日本の六〇年代における農業はこうである、七〇年代の農業はこうであるということで——保護政策だけでできるものじゃないわけです。幾ら保護したって、何ぼも保護できるわけはありません。それはやはり自然の力で、より安定した職業につこうという人間の欲望をそぐわけにいかぬのです。ですから、そういうところに調整機能を果たしていかなければならないというのが、私は農業政策に対する国の基本政策でなければならぬと思うのです。  農業というのは、全国の八五%を持つ森林、それから生産性は非常に低いし、この間発表された東北の農民の例を見れば、六三%までは他収入である。青森県は五三%は出かせぎであります。ですから、そういうような状態を考えながら農業の地位をどうするかということは、ほんとうに民族の課題として考えなければならないし、これは経済的指数だけで考えるべき問題ではなく、民族全体のふるさとなんだというものの考え方で国の政治の中で位置づけを行なうということが必要である、私はそういうふうに考えておりまして、これは列島改造の中で一番考えなければならぬのは、農山漁村が、ECは六%、アメリカは四・四%、それ以下になるというような考え方でやったらそれこそ崩壊するおそれがあるということで、政という立場よりも、より大きな社会的な国民的な課題として一次産業部門を見直さなければならぬ、こう考えております。
  95. 笠岡喬

    ○笠岡委員 次に、簡単に三点ほどお尋ねしたいと思っておるのですが、時間がございませんかもしれませんが、最近の世界の食糧危機の問題、また昨年の秋以降の穀物の不足によって国際市況というものが非常に高騰を続けておる。そこで、わが国におきましても大豆の需給対策というようなことを一番考えなければなりませんが、時間がございませんので、これはまた農林大臣にお伺いするとして、総理は二十九日には訪米されるわけであります。先般アメリカにおいては日本に対して輸出規制をやるというような話があるわけでありますが、当局におかれてもそういうことをいろいろ心配されておることを私たちはよく承知をいたしております。一国の総理が訪米されて、そういうことを期待するのは私たち行き過ぎかとも思いますが、この際アメリカに行かれて、少しかってではないかというような話をしていただきたいと思いますが。
  96. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 一国の問題ではなく、世界的食糧飢饉という現状に徴しまして、やはりほんとうにライスバンクのような制度とか食糧基金とか、これは全人類的な問題として考えなければならない問題であろう、こう考えております。  それから、日米問題では、大豆とかアメリカに依存度の高いものがありますから、これは国内自給度をふやしていくという国内政策をやることはもちろんでありますが、当面する問題は、いますぐ大豆に転換するわけにもまいりません。そういう意味で、この間からアメリカに対しては強く要請もしておりますし、十六日、十七日の合同委員会でも主張するつもりでありますし、私も、首脳会談では日米間の貿易のアンバランスを是正しなさいと言っておるにもかかわらず、こっちは是正しますといって木材を買いましょう、大豆を買いましょうといえば、禁止するような状態で、一体日米貿易のバランスが改善しますかということは当然言わなければならぬと思うのです。同時に、アメリカも余剰農産物を海に捨てなければならなかったような歴史もあるのですから、やはり安定的供給ということのためには、こちらも安定的な長期契約を行なう。そうして日本の自給度が上がりますまでは、少なくとも五年、十年はこれだけ買いますよ、あなたのほうも輸出を保証しなさいということで行くべきだと思うのです。木材などに対しましても、いまアメリカとの間で、アメリカが同じカナダから取っておるというところに問題があるので、ニュージーランドのチップ材の問題とかパルプの問題は、日米と豪州、ニュージーランドでもってほんとうにこの問題を解決しないで、お互いがかってなことだけ言うようになるじゃないですかということを議題にしているわけですから、いまの国内自給の問題を高めるという問題はもう当然でありますが、必要な木材や大豆をとめて、困るというオレンジを買えというんじゃ、これは話にならぬと思うのですよ。そういうところはひとつ明確に主張すべきは主張し、同時に日米間の友好は守っていって両国の利益を守ろう、こういう考えです。
  97. 笠岡喬

    ○笠岡委員 もう一問。自由化についてもお願いしたいと私、思ったんですが、さっき総理の決意を承りましたので、オレンジが口に出て決意を承りましたので省略をいたしまして、最後に一点、米価のことについて簡単にお尋ねいたします。  時間がございませんので省略をいたしますが、米というものは、一合がことし二十一円、これは私は安いと思う。そこで、総理もいろいろ御配慮をいただいておる、心配されておるということを私たちも承知をし、非常に期待をいたしておりますが、ただ物価、賃金という角度からだけ私は考えずに、食糧危機、これは防衛にもつながることでもございますし、また国土保全あるいは公害、環境保全というような広い観点から、高度な政治判断によって適正米価というものをきめていただきたいということを私は強く要望するものでありますが、最後に一言お願いいたします。
  98. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 日本の米は食管法に基づいてきめられるわけでございますが、これは国際価格に比べても非常に高いという面が一つあります。しかし、国内的に見ますと、他の産業の従事者に比べてあまりにも安いという面があるんです。ですから、これは政治的に調整をされ、国民のコンセンサスの上に米価がきめられなければならぬ、こういうことだと思うのですね。ですから、法律的にはお答えすることは簡単だと思うのです。これはもう審議会の議を経て、法律で定めておりますように、所得補償方式をとりまして決定をするつもりでございます、こういうことでございますが、これは一面において消費者米価を据え置いたので、自動的に政治的に生産者米価が押えられるんじゃないかというような機運があるようですが、そんなことは考えておりません。これはあくまでも消費者米価を据え置いたというのは、他の目的を持って据え置いたわけでございまして、生産者米価に対しては実情に即した決定がなされるべきである、これはもう当然のことでございまして、これは他の賃金や物価の問題もございますし、米価をきめる基準はあらためてございますし、そこにはお互いがなお今日必要としておる主食であるお米というものに対しての配慮もあるわけでありますので、できるだけすみやかに合理的な米価がきめられるものと信じております。
  99. 笠岡喬

    ○笠岡委員 質問を終わります。ありがとうございました。
  100. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 角屋堅次郎君。
  101. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は日本社会党を代表いたしまして、田中総理出席の機会に数点について率直にお伺いをいたします。  私ももう国会に出てから十五年有余になりますが、農業基本法のときに農林水産委員会に池田総理が御出席されたのを別にすれば、連合審査等は別にして、総理自身が農林水産委員会に御出席というのはなかなか異例のことであります。  田中総理が、昨年の七月に日本列島改造論を掲げてはなばなしく登場してから一年を経過しておるわけでありますが、その間、本委員会に関係する農林水産問題というのを見てまいりますと、まさに苦難の一年であるということが率直に言えようかと思うのであります。たとえば漁業関係では、御承知の水銀、PCB関係で各地域で大きな漁業被害が出て、沿岸漁業者としてはもう深刻な事態に立ち至っておる、あるいは昨年来の木材の高騰問題、大豆その他のいろいろなえさの問題等も含めたそういった海外依存主義によるいろいろな問題というものが出てきておりますし、さらに米問題をはじめ、これから生産者米価等を決定していかなければならぬ問題も含めて、いわゆる高度経済成長下におけるいろいろなひずみ、破綻という問題が各方面に、単に物価、公害等の問題ばかりでなしに、日本の農林水産業にも苦難な問題が提起されておるというふうに率直に思うわけでございます。したがって、田中政権二年目の今後の問題としては、こういう深刻な事態をいかに打開するかということが重要な政治課題である、こういうふうに率直に思います。  そこで、森林法の問題に関連をして、総理御出席でありますので、まず森林関係の問題について一点お尋ねをいたしたいと思います。  御承知の昭和四十一年四月一日に閣議で決定いたしました「森林資源に関する基本計画」並びに「重要な林産物の需要及び供給に関する長期の見通し」、こういうのが本年二月十六日に大幅な改定が行なわれたのであります。私はこの内容に詳細触れることは省略をいたしますけれども、ここで明確なることは、古い計画と新しい計画と関連をして見てみますと、「重要な林産物の需要及び供給に関する長期の見通し」において外材に依存する率が非常に大幅に改定をされたのであります。たとえば昭和五十六年は、従来の計画では外材依存率二六%が六三%、さらに昭和六十六年には旧計画で二一%が六〇%、さらに九十六年、約五十年後において旧計画では九%が三八%、つまりここ約二十年間は六三%ないし六〇%外材に依存しなければならぬという大幅な改定が行なわれておるのであります。しかも私どもが提案をしております、国が行なう民有林野の分収造林に関する特別措置法案の提案理由の説明の中でも触れましたように、今日日本の外材の輸入量は、国際的な輸入の中で三〇%を占めておる。アメリカ、ソ連、南洋材等全体を見てまいりますと、はたしてこういう大量の外材依存が長期にわたってできるのかどうかという基本問題も含んでおる。したがって、やはり国内の林業資源の自給度を積極的に高めるという意味の林業政策が、これから抜本的に講じられなければならぬ段階を迎えているのではないか、こう率直に思うのでありまして、この点では昭和四十六年三月二十五日、本委員会で草野委員長提案によって満場一致できまりました林業振興に関する決議、あるいは参議院における四十六年五月十一日、参議院農林水産委員会で、河口委員長提案で満場一致決定されましたこの決議を積極的に推進することが必要である。これは約一千にのぼる県、市町村の議会の意見書なりとして国会にも要請されておる点である。こういう問題も含めて、今後林業政策を外材依存から積極的に国内自給を高めるという意味で、われわれの提案をしております、決議に基づいて提案をしております国が行なう民有林野の分収造林に関する特別措置法案を政府が積極的に受け入れて、明年度以降これを実施するというその考え方も含めて、林業問題に対する基本の考え方を率直に承りたい。
  102. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 いま御指摘ございましたように、外材依存度は昭和三十五年に一三・三%、四十年に二八・六%、四十五年に五五%、四十七年に五八・七%、九十六年には、前計画の昭和九十年度一〇%に対して、三八%になっておることは、御指摘のとおりでございます。  原則論からいいますと、八五%も林野面積を持つ日本でございますし、高温多湿でございますから、木材を生産する素地はあるわけでございます。そういう意味で、日本ができるだけ木材需給に対して、みずから自給自足体制をとることは望ましいことであります。木材も、永久に切らないでもって生命が続くわけはありません。ある時期において伐木をして新しいものにかえなければならないわけでありますから、それは御指摘のとおりでありますが、そういうことでございまして、これからも森林政策というものに対しては、やはり切るよりも植林をする、造林をする、分収造林を行なっていくという基本的な体制を積極的に進めてまいらなければならぬことは言うをまちません。  ただ、外材に依存しなければならぬということは現実でございます。これは長い年代、林業というものは自分の代でやるのではなく、孫の代にものになるというのが林業であり、これはもう人類が営々として築いてきておる事業でございますことは言うまでもありません。今日植えたものが三十年後でなければ建築用材にならぬわけでありますから、そういう意味で、いますぐにはものにならないということでありますが、これはやはり水源涵養、自然保護、緑地の保護、あらゆる面から植林を行なわなければならぬということは御指摘のとおりでありまして、政府もそのように考えております。  ただ、現実的に外材依存度が上がってきたというのは、これは需要と供給との問題でありまして、戦後までようやくもってきた、明治の代につくったものが、全部改築をしなければならないようになっておる。それから都会に来れば新しいうちをつくらなければならぬ。収入が上がるために、家族は核分裂を行なって何倍もうちが必要となるということで、現在の需要という面から考えて、いますぐどうにもならぬわけでありますので、現実と日本の森林政策、自然保護政策というものをちゃんと区別をしまして、御指摘のような線に沿ってやってまいりたい、こう思います。
  103. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私が質問をした中に、わが党提案も含めて、来年度以降、国内の林産物の供給について積極的な施策を考えるべきである、こう言ったわけですが、その点には触れておりませんので、さらに……。
  104. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 せっかくの御提案でございますから、勉強させていただきます。
  105. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の関係もありますので次に入りますが、総理は、六月の二十一日の内外記者団百八十名を集めて開かれました日本記者クラブ主催の昼食会、あるいは参議院補選で青森に参られたとき等を通じまして、いわゆる食糧政策あるいは食管、米価問題等について発言をされてまいりました。本委員会でもその問題を取り上げて、本日の総理出席のきっかけになったわけでございますが、特に内外記者団を集めた六月二十一日の新聞記者会見の報道等を通じまして、国際的な食糧不足状況あるいは国内的ないわゆる過剰米といわれた百九十万トンの問題がおおむね本年度中に底をつく。さらに東南アジア等から日本の米がほしいという需要がフィリピン、インドネシアその他からも来ておる。せいぜい三十万トン程度しか振り向けられないというふうな、東南アジアに対する経済援助も含めたようないわゆる日本の米の需要というものは強く出ておる。あるいは国際的にFAO等では、先進諸国は主要な食糧については備蓄する方向を考えるべきである。過般のFAOの理事会等でも出ておるというふうなことと関連して、いわゆる米を中心とした食糧政策というものについては、大豆、えさ等の問題を見るまでもなく、積極的に国内自給を高めるという観点からこれから考えるべきだと思うし、特に米の問題については、来年度以降は減反政策はやらないのだ、こういう意味のことが報道されておりますが、おそらくこれは、減反政策ではなくて、休耕については来年度以降の助成はやめる、転作については今後とも進めるという意味かと思いますけれども、いわゆる減反政策については打ち切り発言ということ等も報道されておるわけでありますが、米の生産政策というものについてこれからどうしていこうというのか、あるいは食料全般の自給率を確立するという点ではどうしていこうというのか、率直にお答えを願いたい。
  106. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 原則的に自給率を上げようという考え方を前提にいたしております。それから、いま政府も政党も米に対してはことしの端境期に五十万トン、来年二十五万トンを入れて七十五万トン、まあ百万トンまで上げられれば、あとは——百万トンまで持つと、これはノーマルな状態でずっと在庫が続いていくと、ほとんど他に転用しなければならないというような、四、五年前の千万トン以上の米の過剰、それに対する税金による補てんという問題が前提になっておりますから、それは政府部内では一応そういう決定をしております。私ももちろんそれを踏襲してはおりますが、ただ、その後世界的な食糧事情も変わっておるというような問題もございますし、日本に対して、経済援助もさることながら、まず米だという切実な訴えがあるわけであります。また五十万トン米が余っておったからえさに回せたのですから、これまたアメリカでもって完全に十月まで出せないということになれば、何万トンでも何十万トンでも回せるものがあるからこそ、これは家畜対策にもなるわけでありますから、そういう意味でも、いままで何年間やったから計算上七十五万トンで押えなければならないというような考えよりも、もう少し新しい立場で衆知を集めて米に対しては検討すべきじゃないかという考え方を私はすなおに述べたわけであります。これは政策決定をするまでにはいろいろな機関を通してきまるわけでありますが、しかし、その一つとしては、ことしは七十五万トン余ると思ったのが、どうも七十五万トン余りそうもないという状態もございますし、そういう意味で、私の基本的な考え方を述べたということでございます。  それから、米の減反の補償打ち切りというようなことも、今年一ぱいでやられるわけですし、来年度は転作ということになるわけですが、どうも私は、まだほんとうにこれは個人的な考え方で、党の決定も得ておりませんし、農林省でもまだ勉強してもらっているという程度でございますが、農民が働く意欲があるにもかかわらず、これを押えるということに対する政策的なものをどういうふうな調和をとるのかということもあります。同時にまた、農振法の問題もございまして、これは皆さん専門家でございますが、米というのは、収穫は少ないけれども、水の多い、水の便のいい山田は十俵が七俵しかとれないけれども、自家保有米としてはいい、質のいいうまいものができるということも、私も百姓の子供でございますから……。しかし、そういうところは減反で荒らしておるということで、もう三年たつと木がはえてきておるというような状態。こういう問題を、現実を見ながら目をおおうてはおれない。ここでもってソバを植えなさい、大豆にしなさいといっても、なかなかいかないものもある。ですから、そういう意味で、宅地化をしなければならないところもいろいろある。そこは農振法できっちり押えられると、宅地化は全然進まない。そこで、いい米で自家保有米として非常にいいところは全然廃田になっておるというような問題です。現実に徴して私はもっと勉強する必要があるのだという意味のことを述べたのでございまして、それは皆さんの御意見も十分聞きながら、これは与野党対立の問題ではございませんから、十分聞きながら、四十九年度というものに対して正すべきところがあれば正したほうがいいじゃないか。これをすなおな感じを述べたのであります。
  107. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 総理はことばは多いのだけれども、ポイントをぴしっと言うてくれない。  それは別として、私は総理の御発言で、新聞報道を通じ伝えられておるところ、あるいは農林大臣が本委員会その他で報道として伝えられておるところ、これらを見ても、いわゆる米のことしの全体の需給計画というのは一応あるわけですけれども、その中で予約限度数量が八百十五万トン、あるいは生産調整量が二百五万トン、政府の買い入れ数量が五百八十万トン、こういうふうな形に一応なっておりますが、総理の御意向も、あるいは農林大臣の御意向も、いわゆる今日の国際的な食糧の不足状況あるいは備蓄あるいは海外の食糧の不足のところからの日本の米を入れてもらいたい、こういう諸般の情勢を考えれば、これらの問題についてはゆとりを持って考えなければならぬというのが基本的な見解かと思うのですが、その点、明確に簡潔にお答えしていただきたい。
  108. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 国会で御説明をいたしました計画は、いまちょうど、もう一カ月たてば米は出るわけでございますから、これから植えつけようというのではありませんから、これは踏襲しておりますということを言わざるを得ません。(角屋委員「買い入れ」と呼ぶ)ですから、買い入れの問題については、これは私も参議院の予算委員会でも述べましたとおり、国際事情も変化しましたので、減反も押しつけないようにしなさい、農民自体や農協自体が自主的な調整を行なえるように、なるべく緩和をしてやってくださいということで、農林省農協もそういうことでことしは臨んだはずであります。それはちゃんとそういう意味で、今度やらないものは買いませんよというような、そういう去年とは違う状態、国際情勢はちゃんとはだで感じてそういうものは行政指導をうまくやっているはずです。ですから、それでも気候だとかいろいろな問題で、特に北海道や青森県などは、減反が二〇〇%も行なわれた去年に比べて、ことしは急に減らないということで、やはり予約数量というものは政府が企図したよりも少ないんじゃないかというようなことさえも考えられるわけです。きょうあたりから暑くなってきましたから、これでまあ米はやっとよくなったなあというのがほんとうの感じでして、国会で申し上げた数字を改定するという状態でないんで、改定するなら、四十九年度をどうするかという問題になるわけでございまして……(角屋委員「買い入れをどうするか」と呼ぶ)買い入れの問題は、これは事情を見ながら弾力的にちゃんとやると思いますから、これはひとつ……。
  109. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 買うか買わぬかはっきりしてください。
  110. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 これは、もうそこはうまく生産農民の理解を得られてちゃんとやれるようにいたします。
  111. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 もっと田中総理らしい答弁というのが出るかと思ったら、答弁もきわめて抽象的あいまい的にする点は遺憾です。  最後に、時間の関係もありますから、生産者米価の問題についてお尋ねをいたします。  ことしは、国際的な問題ばかりでなしに、国内的ないろいろな問題もあって、いわゆる生産者団体、生産農民からの米価要求というのは、非常に必死なかまえですね。農業団体等の場合は四八・八%、全日農はそれ以上の米価要求をしているわけですが、考えてみますと、いわゆる食糧が、米が過剰というふうにいわれた昭和四十三、四年時代、この時代以降生産者米価の引き上げの状態を見ますと、総理も御承知のように、昭和四十三年米価が四十四年はそのまま据え置かれる。四十五年が〇・二〇の値上げにすぎない。あるいは四十六年が三・〇二の値上げにすぎない。あるいは昨年の四十七年が五・〇六の値上げにすぎない。したがって、昭和四十三年に対して四十七年はわずかに八・四%、単年度の値上げ分にもすぎないとう状況であり、この間賃金の上昇一つをとっても、四十三年一四・八%、四十四年二八・四%、四十五年一七・六%、四十六年十三・七%、四十七年一五・六%、これは労働省の毎月勤労統計調査の製造業の賃金上昇率でありますが、そういう点から見ても、過剰を理由にして過去四年間は非常に低く押えられてきたことは間違いない。したがって、今日の生産者米価は、異常な物価上昇その他から見て大幅な引き上げをやらなければならぬ情勢にある、こう思うわけであります。総理の内外記者団との会見その他を通じまして、ことしの生産者米価は、食管が赤字になるとか、やれどうだとかいうふうな短視的な見方ではなしに、国際的な食糧の不足状況、国内の食料の自給度の向上、農民に対する増反意欲に対するところのいわゆる刺激というふうなものを総合的に判断をして、ことしは大幅に生産者米価を上げなければならぬということを公表されておるかと思うのでありますが、この点、米価審議会が——われわれからいえば、総理訪米前に米価審議会が開かれて、総理訪米前に米価をきめるということがわれわれから見れば望ましい。なぜかならば、米審から、私が最後の米審委員になりましたけれども、国会議員を除外した。それは、米価の問題については国会で議論できる舞台がある、こういうことでございましたが、やはり去年の例からいけば、七月二十四日から三日間米審が開かれる、政府の米価決定は七月二十九日になされる。たまたま去年の例と関連をしていえば、総理が二十九日にアメリカへ行かれる予定であるということならば、米審を、開会中から十分議論をして、そして総理の訪米前にきめるということも一つの考え方だろうと思う。国会からいえば、そういうことになって、米審に諮問案が出れば、並行して国会としても徹底的な議論ができるというふうに思っておりますが、米価審議会はすでに、来月の一日、二日ということで内定をしておるというふうに聞きますので、この点深く触れませんけれども、生産者米価についての数年来の据え置き状況、今日の異常な物価、賃金の上昇、農業の今日の実態というふうなものから見て、大幅な値上げをしなければならぬということが総理の基本的な考え方であろうと思いますが、この点について端的に御答弁を願いたい。
  112. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 その前に、先ほどの予約の問題でございましたが、これは農林大臣にもただしたわけでございますが、ことしは予約はほとんど全部買い上げることができるだろう、こういうことでございますから、御理解をいただきたい。  それから、先ほど申し上げましたのは、所得補償方式ということは、これは間違いでございまして、そうではなく、生産費、物価その他経済事情をしんしゃくして米の再生産を確保することを旨として決定をする、こういうことでありますので、訂正をさせていただきます。  これは、そういうことでございますので、物価、生産費、経済事情等をしんしゃくして、米審でもって十分検討を行なわれる。私がアメリカ訪問中に決定をするというような無責任なことはいたしません。これはもう当然帰国後にきめなければいかぬということでありまして、いま一、二、三ということでございますので、この間十分御議論もいただいて、帰ってまいってから決定が行なわれるということで御理解をいただきたい、こう思います。
  113. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間も予定になっておりますので、私は総理に申し上げておきたいと思うのですが、総理はよほどものを知っておるというふうに判断をしておりましたけれども、生産費及び所得補償方式というのは今日採用されておる算定方式なんですね、かつてはパリティとかいろいろな形を通じて。それを何か訂正されたようなのは、少し錯覚がある。  やはり生産者米価については、これは今日の諸情勢から見て、農業諸団体、第一線農民の要求にこたえるように積極的な対処姿勢が必要である。  先ほどの予約限度数量等の問題と関連をして、予定されておるものを買うのは、これは当然です。そうではなくて、備蓄米あるいは海外の需要等から見て、ゆとりをとるという点から見ても、それ以上の、全量買い上げの考え方で受け入れ体制をとるべきであるというのがわれわれの主張である。それに対する結びの答弁を聞きたい。
  114. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 ですから、先ほど申し上げましたように、私たちも減反を強制しないようにということさえも言っておったのでございますから、予約をされる農民、生産農民の希望を全部受け入れるような態度でございますと、こう述べておるわけでございます。
  115. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 美濃政市君。
  116. 美濃政市

    ○美濃委員 総理大臣に二、三質問いたしたいと思います。  まず第一に、三月の九日であったと思いますが、予算委員会で、問題は、今日日本の農業の中で、輸入量の増大あるいは自由化ということで、農民が非常に不安におちいっておる。そこで、過般農林省が出しました「農産物需給の展望と生産目標の試案」、これは私どもとしては大体支持できる内容のものであるから、これを閣議で決定して、これに伴う政策を明らかにしてもらいたい。それに対する総理の最後の結びですが、いろいろ応答いたしまして、最後に総理は、「農政というものに対して国民に不安を抱かせるような政治というものはいい政治ではないという考え方」であり、政治の基本から見て「私自身もできるだけ早い機会に確固とした、農民に不安をもたらさないというような状態を早く決定いたしたい」、こう約束されたわけですね。  もうかなりの日数がたちまして、特に状態も変わってきて、先ほど来質疑の中にもありますように、片や国際的な需給から一部の農産物については輸出制限という問題も出てきておる、また過剰な農産物はやはり自由化を迫られておる、こういう状態ですが、この中で約束されたいわゆる国内の農産物の需給の展望と生産の体制を明らかにして、農民が安心して生産できるという体制についてどういうふうに検討されたか、きょう御発表願いたいと思います。
  117. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 十年間を展望した農林省の農産物の需給見通し、これはもう政府もこれを了といたしておるわけでございます。この中身をまた十分固めていかなければならぬし、年次計画もつくらなければいかぬという考え方でございます。特にまた国際情勢も変わってきておりますので、そういう問題も加味しながら勉強を続けてまいらなければいかぬ。四十九年度予算編成ということになれば、当然その実施をしなければならないことでございますので、そういう農政費の計上に対しては、当然のことながら、第二年度としてそういう考え方に立って政府は予算を検討してまいろうということでございます。八月の末には概算要求の期日も来ておりますし、いま勉強中であるということでございます。ここで全部発表せよ、こう言っても、何しろ長い国会中でございましたし、これまた農林省も勉強しておりますが、私たち広範に最終的に詰めるというにはまだ時間が不足でございます。いずれ国会でまた政府側から申し上げてもけっこうですし、御質問に答えて確定するようなものから順次御説明いたしたいということで、御理解をいただきたい。
  118. 美濃政市

    ○美濃委員 非常に抽象的な答弁ですけれども、きょうは時間の関係であまり煮詰まりませんが、大綱はやる、こういうことですね。大綱としては予算委員会で約束したことをこれから逐次やっていく、こう理解してよろしゅうございますか。
  119. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 その基本は、先ほどから述べているとおりでございますし、国会でもって政府の姿勢を述べておるわけでございますから、これはもう間違いなくやってまいりたい、こういうことでございます。
  120. 美濃政市

    ○美濃委員 それでは、次に林業問題で一問だけお尋ねいたしたいと思いますが、今回森林法の改正が提案されておりますが、私が林業問題で将来一番問題だろうと思うのは、労働問題であります。たとえば、私の地元の国有林で働いておる労働者の平均年齢は五十歳です。若年労働者が入らないということ。先ほど総理の話を聞いておりますと、二次産業の賃金が商いからそっちへ流れるというようなニュアンスの話をされておったと思いますけれども、二次産業であれば、かなり国の経済の基本である産業であることは間違いないのですが、特に、私は、そのほかに三次産業といいますか、消費的な労働、これが非常に多いと見ております。そうすると、これから山には、もう平均年齢五十歳で、十年くらいたった場合に林業労働者、山で働く人はいなくなる。そうして就業人口の三分の一くらいが消費労働だということになった場合、取り返しのつかない一まあ条件は違いますけれども、あの終戦直後イギリスが植民地が独立して一時的におちいった労働需要に対するあれよりもっと深刻な状態が出るのではないか、こう思います。ですから、私は、明年度予算でもやらなければならない、あるいはこれから森林法も審議いたしますが、まず労働問題を大きく取り上げてやらなければ、——林業政策はいろいろやれると思います。しかし、国会で法律を審議しておっても、山で働く人がいなくなってしまえば、日本の山は非常に傾斜も急だし、やはり人手でなければやれない作業内容にあるのですが、この労働問題を、特に、国有林は政府、農林省直接でありますから、こういうものもあわせて、これからの山で働く労働者の体制、働ける条件をどうつくっていくかということが一番大切な林業政策だと私は思うのです。その基本的な考え方をお伺いしたいと思います。
  121. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 非常にポイントだと思います。これは政策的にはそんなむずかしい——やる気さえあればできると思うのですが、労働問題は、確かに他の産業と比べての賃金問題がございまして、なかなかむずかしい問題があると思います。やはり山を愛する、国や地方公共団体が率先してやるという姿勢が根底にないとやれないと思うのです。ですから、坂田農林大臣のときでございますが、皆さんの御意向もしんしゃくしながらいわゆる直用制度に切りかえたわけであります。ですから、労働者の生活や給与は安定したわけです。安定しましたが、そのかわりに林野庁は赤字会計に転落してしまってどうにもならなくなった、こういう問題があるわけでございます。これも十年間過ぎたわけでございます。しかし、ほんとうに日本の林野行政をどうするのか。帝室林野局時代、これから後にはいまの林野庁、それから林野庁から一歩進めて下請制度を直用にしたという問題、その上においては技術屋が必要であるといいながら、技術的な問題では、今度、のこぎりの問題で新しい白ろう病が起こるとかいろいろな問題が起こっておるわけです。そういう問題もやはり爼上にのせて、基本的な林野行政というものを定着させ、確立させると同時に、労働問題をどのようにして考えていくか。やはり米と同じような問題でして、どの程度国民の税金で負担できるのか。これは林野庁、国に全部移しても、国が地方公共団体に移しても同じことだと思うのです。市町村へ移したらどうかという考え方も一部あるようですが、市町村は逆に部落有林を買ってくれということで、いまいろいろ陳情を続けておるわけですから、そういう問題を全部やはり爼上にのせて、林野というものをどうするのか。国有林の活用に関する法律もできました。しかし、これは明治初年の藩閥政治時代のひずみをようやく直すということですが、これも活用するということで、植林に対しての問題はまだまだこれからやらなければならぬと思うのです。植林だけでなく、間伐もあるし、いろいろな面の問題があるのです。そういう意味では水源涵養とか、いろいろな水という問題が大きくあるのですよ。水の特別会計をつくったときには、水は最大の財源なり、水の涵養源である森林に、水の料金、ここから上がる料金を還付して計算できるかどうかという問題も過去に議論されたわけであります。そういう広範な立場で、諸外国がどういう制度をとっているか、日本は一体どれが一番好ましいのかというような根本的な問題と取り組まないと、労働問題一つを取り上げてみても、早急に結論が出る問題ではないのであって、これは真剣な課題として検討してまいりたい、こう思います。
  122. 美濃政市

    ○美濃委員 総理も労働問題を深刻に受けとめられておるようでありますが、どうかひとつ、これは今度の森林法の中にも労働問題確保の条項が入っているようでありますから、もう来年の予算編成になるわけでありますから、これは将来の日本のほんとうのかなめになる問題として、重要課題として、十分検討すると同時に、いなくなってしまってからではどうにもならないですから、時期は緊急を要すると思うのです。十分検討してもらいたいと思います。  それから次に、第三の点をお伺いしたいと思います。  この森林法の中でも乱開発制限の条項があります。それから、先ほど来もお話がありましたいわゆる商品投機の規制とか、こういういままでなかった問題が出てきております。私はそれに対して、画期的な法律、こうは解釈しないわけです。そういう反社会的行動が国民の中になぜ起きるのか。しかも大きな資本力をもって反社会的行動が起きておる。それを私権なりあるいは所有権というものを法律をつくって制限しても、どこまで効果を発揮できるか。一番望ましいことは、そういう反社会的行動が起きない社会を、政府も私ども努力をしなければならぬと私は思うのです。そういう法律がなくても反社会的行動が起きない社会をつくっていく。それなりに政治をやる者に負荷された任務というものがあると思う。そういう行動が起きて、それを制限する法律をつくって、画期的な法律だと喜んでおるというのは私はどうかと思うのですね。どうですか、何が欠陥でそういう過去になかった反社会的な大きり行動が次々起きてくるのか。それに対して、そういう制限法律をつくって対抗していかなければならぬ、悲しむべき現象だと思うのです。画期的な法律だという表現は私にはできないわけですね、こんなものは。総理はどうお考えになるか。これは政治も悪いからだと思います。政治自体がえりを正す。政治が悪いからこういう反社会的行動が多く起きると私は思うのです。総理のこれに対する対処とそれから自覚、そういう点がどうして出てくるのか、どの部分が政治が悪いと思うか、所見を承りたい。
  123. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 これは人類の歴史をずっとひもとくまでもなく、政治が悪いという感じは持っておりません。それは先ほども一番初めに笠岡君の質問に述べたとおり、人類は自然の中に芽ばえたものであって、自然が望ましいのです。しかし、複数以上がだんだんと社会を構成してくる限りにおいては、やはりある意味の規制は必要なんです。これは社会主義じゃありませんが、社会政策が必要なんだということは、これは当然じゃありませんか。社会主義の国ではすべてを国家権力でもって統制をしなければいかぬ、それが一番最良であるといっているのですが、まだ自由主義経済の中では、自由を基礎にしながら、社会的に必要やむを得ざるものは規制をせざるを得ない。これはやはり多数の利益を得るために一つの基準をつくるというのは人類の英知だと思いますよ。私は、お互いが三人、四人おれば、それぞれ異なった意見を持ち、異なった行動をするわけでありまして、いろいろなことが起こるのですよ。しかも経済が拡大していってエネルギーが爆発する過程において、一つ工場ができれば公害が幾ばくか起こる。しかも車があれば排気ガスが出る。これは出たから車をやめて歩くわけにいきませんから、少なくとも無公害の車をつくるということに人類の英知を傾けなければならぬ。そのためには排気ガスの規制法を出す、これは当然一つの方向だと思うのですね。それは全然砂漠の中でもって一人でラクダで歩いているわけじゃありませんから、そういう考え方が政治に基因するのだということは、それは極論だと思いますよ。それは社会主義政策の中だったら、全部がんじがらめに法律でやるじゃありませんか。実際にそんなことを——あなたの言おうとすることはわかりますよ。高度成長からくる一つの欠陥だと言われようとしているかわかりませんが、それならそのメリットもあるしマイナスの面もある、それを調和するのが政治である、こういう考え方で、私はやっぱり自然というものを守るために、破壊のおそれがあるということに対しては、これはある程度の基準法をつくる。これは住宅に対して宅地造成法があると同じように、斜面に対してつくる場合には、のり面を幾らにしなさい、排水路をつくりなさいということの基準案をつくることは、これは私は当然のことだと思います。
  124. 美濃政市

    ○美濃委員 総理はちょっと受け取り方が違っているのじゃないですか。私は公害問題に触れておりません。公害はやはり産業発展の過程において、悪ければそういうものを規制するなり、あるいは汚水を海に流さぬで浄化するなりすればいいのです。公害と違うのですよ。商品投機だとか乱開発だとか、目に余る反社会的行動、これをさしておるわけです。これはきれいな政治きたない政治との関係があるだろう。  たとえば一例をあげると、しからば田中総理大臣は、あの徳川幕府の末期、これはもう歴史も近いですから、おおよそ歴史物語ではなくてわかるのです。ああいう状態が起きるということは、政治がよかったか悪かったか。政治がかなり乱れておったと私は思うのですね。徳川幕府の末期になってくると、幕政というものが乱れて、ものすごい、いまの東京、江戸の町もいろいろな問題が起きておった。私は商品投機とか乱開発、それを言っているわけです。公害は言っておりません。どうですか。
  125. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 乱開発とかそれから商品投機の問題、これはまた別だと思いますけれども、商品投機の問題などはモラルの問題で、教育の問題でもあるのです。実際こういうところは、戦後の教育が一体是なりか非なりかという問題から掘り下げていかなければならぬと思うのですよ。昔だってそういう問題はありました。明治時代にも大正時代にもありましたし、米の相場でもって大暴動が起こったということはあります。しかし、これは国際流動性の問題とか国際通貨の問題とか、日本に起こっている問題だけではなく、諸外国にも起こっている一つの現象であって、短い間にこれを規制するように売り惜しみ買いだめ防止の法律を通していただいたということでありまして、これは実効をあげなければいかぬ。あれだけ上がったとうふもちゃんとおさまっておりますし、そういう意味でお互いが英知を傾けて、お互いがというよりも政府の責任でありますから、政府も地方公共団体も相協力しながら、これらの問題に対してはあらゆる努力を傾けていく。  それで窓口規制もやっている。公定歩合も引き上げている。とにかく企業の使命を明らかにしながら、日銀による融資を抑制している。こういうことでもってこれはひとつ御理解を賜わりたいと思うのです。  乱開発の問題は、まだ乱開発のおそれがたくさんあるということで、乱開発をいまにして抑制せずんばということで森林法の改正を出しておるわけです。これは私はいろいろな議論があると思うのですが、自然のままでただ残せるということも、これは一つの理想でありますが、自然というものはやっぱり大衆の生活の中にこれを織り込むということがいいのだということになれば、これは自然の中に道路をつくり国民レクリエーションの場をつくる。それで自然を害さないように規制を行なっていくということは当然だと思うのですよ。だが、いま行なわれている乱開発という面は、これは全面積から比べてみれば全く微々たるものであります。微々たるものではあるが、このままにして推移ぜんか、これは大きな乱開発になるおそれがある。これは今日これだけの法制は必要である、こういう考え方に立っているわけです。  これはしかし、どうしたって住宅がなければ山の上にも住宅をつくろうという気にもなりますし、山の上が一番いいんだということで、離島に一人住んでいる人もあるわけですから、そういうことは、これは全部が全部すべて乱開発である、これは社会的な悪であると断じてしまっては——これはやはりそういう現状に目をおおうことなく、われわれもやはりおそまきながら、少なくとも乱開発ということばが国民の間に出る限り、乱開発が引き続いて行なわれないように、国土保全、自然愛護、自然保全のためにしかるべき処方を国民の前に明らかにしなければならない。これは政治の責任だと思って御審議をお願いしているのです。それは御理解いただきたいと思います。
  126. 美濃政市

    ○美濃委員 時間ですからもうやめますが、いまの総理の答弁は私はやはり問題があると思います。私の提示したことを玩味して、やはりそういう反社会的行動が起きる過程、みずからがやはり政治の姿勢というものを正しくしなければ、日本の将来のためによくならないと思いますから、苦言を呈しまして、あと答弁は要りませんから、いまの総理の御答弁どおりの姿勢でいった場合には、まだまだ田中内閣の人気は落ちるかもしれません。  終わります。
  127. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 柴田健治君。
  128. 柴田健治

    柴田(健)委員 田中総理は、お答えを聞いておると、バラエティーに富んでどうも焦点がぼけておるような気がいたしますから、答えも簡単にお願いしたい。それからお尋ねも要点だけ申し上げたいと思いますので、その点でお答え願いたいと思います。  まず、土地問題で、今度森林法を改正される法案が出て、この法案を通せば直ちにすべての売買、乱開発の規制ができるという大義名分を前面に出しておられるわけですが、私たちは、その一つの方法と手段としてはそうかもわかりません。しかし、これまで手が打てなかったか。何も法律をつくらなくても、打てる方法なり、監督権は総理大臣にあったはずだ、こういう気がするわけです。そういう立場から、まず土地問題について四つを一括お尋ね申し上げますから、四点お答え願いたいと思います。  第一点は、四十六年七月一日現在で百四十六万七千ヘクタールの市町村、財産区有林があり、この面積の中で、この一、二年の間にたいへんな売買が行なわれておるわけです。民有林、私有林は個人ですから、これは私有財産の問題で憲法問題になって、売ってはいけないといって押えることはなかなかできない。けれども、公有林、区有林は、地方自治法に基づいて法人組織で管理しておるわけですね。その地方自治法に基づく法人が持っておる財産の処分をかってにさした。先般、自治者の関係者を呼んで聞いたら、そんな指導も何もしておりません、地方公共団体、都道府県知事にみなまかしておりますと、こういう答弁です。私は、こういう点について、この公有林の乱売というのは、これは何としても、地方自治法には総理大臣の監督権が明記されておるのですから、こういう点にもっと配慮しておいて、行政指導を自治大臣に命じてやったならば、この乱売買というものはある程度規制ができたのではなかろうかという気がする。この点の総理大臣の見解を聞きたい。これが第一点であります。  それから第二点は、都道府県がいまや土地の保全条例または県土条例、あらゆる規制条例を漸次いまつくっていっておるわけです。御承知のとおりだと思います。このそれぞれの都道府県が土地の保全条例をいまつくっておる、やはり都道府県知事の責任において土地の利用計画というものをそれぞれの府県において立てていこうという前提があればこそ、この乱売買、乱開発を規制しながら、やはりそこに環境保全なり自然保護なりまたは優良林野、優良農地、そういうものを守りながら、人間のしあわせのため、土地の付加価値を高めようとする一つ努力だと思うのです。そういう過程の中で、この森林法の一部改正で一方的に中央集権的に規制を強めていくだけでは、これはほんとうに都道府県知事のほうが迷惑するという気がします。そういうことを考えたときに、何としても国が個人の財産を規制する、または市町村の公有財産——県有林なり国有林というものはそう簡単に売買しておりませんが、しかし、何としてもこの個人の山を買ってくれという場合、買い取りの問題が起きる。次は、いままでこの乱売買においてゴルフ場をつくるとかまたはレジャー施設その他緑の工場を誘致するとか、いろいろな名前を使ってこの買い占めをしておる土地が、元の市町村なり地権者から買い戻しの運動が起きる。言うならば、市町村が買い取りをするというか、要するに、買い戻しをする。それからまた、土地の利用計画からいうと、やはり換地処分という換地を考えなければならぬ、交換をしなければならぬということも一応考えられる。そういう換地なり買い取りなり買い戻しという問題を考えるならば、そこに財源措置を考えてやらなければならない。その財源措置は、私は、田中総理は宅地債券を考えて労働者の財産をふやしていくということを言われておりますが、宅地債券というよりか、まず都道府県のその土地の利用計画を高める、規制をしまた調整をするためには、やはり地方債というそういう制度を認めたらどうかという気がするのです。それから地方債を認める財源措置を講ずる意思があるかどうか、これが第二点です。  それから第三点は、この三十万ヘクタールという、現実に生産調整からくる減反政策の中で、完全にペンペン草をはやしておる、完全に荒れておる土地がある。これは御承知のとおりだ。それはもう総理大臣が進めた政策ですから、この三十万ヘクタールを原形のままで転作を奨励されるのか。これはもう私は農民にどんなに転作をすすめて、大豆を植えろと言ったって植えるものではない。先ほど総理大臣は一言触れておられましたが、この三十万ヘクタールの休耕地、荒れた田をどう再開発するかという具体的な構想を聞かせていただきたいのです。原形のままの利用計画という転作は私はもう不可能だと思うのです。こういう判断から、この休耕地三十万ヘクタールの再開発についての具体的な施策をお聞かせ願いたい、これが第三点であります。  それから第四点は、この土地がいろいろな民間業者なり民間企業が開発をやっておることもこれは事実であります。それをとめるわけにもなかなかまいりますまい。けれども、地方住民、関係住民が一番心配する点は、災害が起きたときにどうするかというのがいまの最大のこの住民の関心であります。要するに、受益者負担、原因者負担という立場から申し上げると、そういう民間企業——地方公共団体がやる場合はそれは別としても、民間企業がそういういろいろな形で宅地造成なりレジャー施設なりゴルフ場なりその他の開発をする場合に、災害が起きた時分にどういう責任を持たせていくかということが住民の関心のあるところであります。要するに、災害が起きたら、災害復旧または地元住民に与えた災害補償というもの、この二つの面のある程度法的な義務づけをする必要がある。これを考えなければならないと私は思うのです。だから、災害復旧なり地元補償、住民に安心を与えるための開発ということになれば、この二つの法的な措置を考える必要があるという気がいたします。  以上、四点をまずお答えを願いたい。
  129. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 第一点の、公有林の処分状況から見てもう少し調整を必要としなかったかということでございますが、公有林は相当ございます。この公有林、特に部落有林というものを国で買い上げてくれという運動が熾烈であるということは御承知のとおりでございます。これは国で買い上げるのですから・乱開発に結びつくわけはありません。しかし、公有地そのものが処分されているというのは、自治体の財源問題が主体でそういうことになっていると思うわけであります。これは私は具体的にはつまびらかにしておりませんが、しかし、これは自治体でありますので、自治体の意向尊重——当然公有地の処分は議会の議決を経なければ処分ができないわけでありますから、適法な処置が行なわれているわけであります。そういうものに対して、国土の総合的な利用というような第二問との関連性で、今度国土総合開発法の中ではいろいろなことを考えておるわけでございます。そういう意味で、第一点の、公有地が他に転用されたという点に対してはもう少し政府の調整権を発動しなければならないというような地方自治法の調整権の発動は、地方財産の処分権の行使というものに対してはどうも直接結びついておらないようでございます。  第二の問題は、土地利用計画その他、これは先ほど申し上げましたように、国総法でこれらの問題を解決して、買い取り請求権に対応できるように、また換地の措置等も行なわれるようにということは、国総法に十分明記してあります。国総法に明記してあるものは、十年前のことを考えるととても考えられなかったような相当強い規制が入っておるわけでございます。凍結をする、移動を禁止する——民法上の問題、憲法の私有権の問題は、買い取り請求権を有するという一条で救済をしておるというものですから、これから考えると、相当飛躍的な、現状に徴してやむを得ずというふうな考えでとった法律であるというふうに理解していただきたい。  そうすると、宅地造成とかいろいろなものがこれから行なわれるわけでありますが、そういう意味で、地方自治体が将来の展望のもとに合理的な計画を施行するためには金がなければならぬ。それはそのとおりでございます。これは地方債の拡大をするかどうか。これは拡大をしてまいるつもりであります。そういう方針であります。場合によれば、計画ができて宅地を提供するということになりますから、宅地を提供すれば当然造成もしなければなりません。換地やその他に金が要りますから、地方債を発行するということに対しては、これは土地供給公社債でもけっこうだと思うのですが、これは大幅に認める。それが民間資金を圧迫しないように、場合によれば資金運用部で相当部分引き受けてもよいというぐらいに具体的な考え方を持っております。これは全く地方が主体で行なうということでございまして、政府がこれに対して制約をしようというような統制的な意図は全くありません。明確に申し上げておきます。  第三は、休耕地の三十万ヘクタールということでありますが、これは御指摘のとおり、実際荒蕪地になっておるという面が相当ございます。ですから、高速道路や汽車の窓から見る場合も、農振地域にありながらも、十分の一が草ぼうぼうになっておるというところはまだいいのです。ところが、その部分でも三年間やりますと、カブト虫でございますか、何か非常に甲らの固い変な虫が発生する。これは農政上初めてであります。困っております。これは米を半分食いますから、全部砕米になってしまうということでございまして、たいへんなことでございますが、この中で植林をされているものがあります。植林をされているものがどうなのか、廃田になっているもの、他に転換されているものがどうなのかということも、いま農林省で検討させております。あと三十万ヘクタールのうち結局幾らが転作になるのかという問題を詰めながら、具体的に実情に適合した制度をやらなければ、とてもこれはもとには戻らぬと思うのです。青森県においては今度開田費を出してやっても受け付けないという現状でございますから、そういう意味で、実情を十分把握の上、転作が幾らできるのかという計算はしてまいろうという考えでございます。  それから、民間企業の土地開発による災害の負担、これは原因者負担であることは当然でございます。原因者が人命に危害を及ぼしたとか、災害を及ぼして公に損害を与えたという場合、原因者が負担をするということはいまでもそういう制度でございますから、これはもう法制上は完備しておる。ただ、個人的な災害とか休業補償とか、いろんな問題に対して民法上の争いが起こるということも事実でございますが、法制上は現行法で十分完備をしておる、このように理解をしております。
  130. 柴田健治

    柴田(健)委員 第三点の、三十万ヘクタールの休耕地を調べてみなければわからない。これがおかしいのであって、杉やヒノキや何か植えておるところは転作として認めておるはずですよ。そんなことをいまごろ総理大臣に知恵をつけるのはだれがつけるのですか。とにかく小規模の構造改善をやらないと、これは現行のままでは転作は成功しないと思いますから、十分留意してもらいたい。時間がございませんから、それだけ申し上げます。  次に、米の問題を一つ申し上げますが、いま四十八年産米の米価の問題が話題にのぼり、それぞれこれから苦労をされるわけでありますが、しかし、何としても農民はいまささやかな抵抗を示しつつある。要するに、予約制度の問題について、予約を延期する、拒否をするという問題がいま起きております。これに対して総理大臣は、農民がなぜこういう抵抗を示してくるのか、それをどう理解されておるのか、これが第一点。  それから、農民がどうしても理解できないという点を農民の側から申し上げると、米価の決定の期日であります。作付が終わってもう新しい米が出ようとする七月、八月になってからきめるなんということは、何としても農民をばかにしたやり方だというのが農民の声であります。こういう農民の声を無視するところに農民が抵抗を示してくるということも言えると私は思うのです。そういう立場から申し上げると、もうこの辺で米価の決定は農民の意をくんで、農民の期待にこたえて、明年度からは作付前の四月かおそくも五月に米価の決定をするという方向で決意を示してもらいたい。  この二点を、ひとつ簡単にお答え願いたいと思います。
  131. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 予約拒否というようなことがございますが、やはり日本の善良な農民でございますし、私の母も善良な農民でございます。ですから、まあいろいろな過程においてそういうことがあると思いますが、私はいまの状態において、政府がこれに対処して、真剣な米価算定ということに対して審議会でも討論をいただき、国会でも議論をいただき、そして適法な措置をとるわけでございますから、農民の協力は得られる、こう考えております。  それから米価の決定というのは、これは前から問題になっておるのです。これは米価だけでないのです。米価というものは、予算米価としてきめるのはあたりまえなんです。これはもみの貯蔵、来年の開田計画をそれによって農民が自由選択をされるような状態に予算米価できめることは望ましい。これは毎年問題になっているのです。それと同じく議論されておるのが人事院の給与なんです。これは、国会で議決をされた予算というものをまた修正をしなければいかぬ、こういう人事院の状態が行なわれておるわけです。これは米価と常に同時に議論されている問題なんです。それは前提があるのです。その後の経済情勢、賃金の上昇、そういうものをしんしゃくしながらきめなければならぬということで、国会の議決のあった予算とは関係なく補正予算を組まなければならぬというような、いまの人事院の制度と同じような状態において米価もきめられたわけでございます。ですから、政府当局からすれば、予算米価でもってきめてもらうことが一番いいのです、実際は。米価だけじゃなく、人事院の勧告も来年度からやってもらうのが正しいのだ。国会の議決尊重といえば国会の議決に拘束されるわけですから、そういう意味では、政府には資金上、予算上だめな場合には国会に対して疎明すればいいという救済条件がありますけれども、憲法における国会の状態から考えれば、少なくともこれは予算の前にきめらるべきものであろうと思います。しかし、戦後に社会情勢の変化が非常に大きかったので、諸般のファクターを全部寄せ集めてしかる後に慎重にきめなさいということで、いまの人事院の勧告制度になり、片や同じ時期から採用されておる米価の制度になっておるわけですから、そういう意味からいいまして、四月に上げる、四月というとまだ春闘もきまらぬとか、いろいろな問題もあるのです。それで七月になってしまって、まごまごすると八月の早場米が出てくる、こういうことで、多年国会で議論され、お互いに英知を傾けた問題でございますが、なかなか結論が出ない、こういう問題でございまして、これはやはり国会で議論していただきまして、米価もできれば予算米価にしてもらえば、私は望ましいことだと思います。官公労の給与を予算できめるということになれば、そうすれば、勧告があって来年の四月一日からということになれば、次の予算で組めるわけです。この議論も人事院の制度の中でさんざん議論してきたのですが、これだけの戦後の経済情勢が一年、半年ともいえないような現実に徴してやむを得ないということできているわけです。ですから、そういう意味で、この問題、せっかくの御発言でありまして、私もよく理解はします。私も百姓の子ですから、よく理解するのです。政治というものはそういうことをはっきりしたほうが非常にいいのです。それで、安い値段できめるというようなことでは政府は不届きだ、こう言われやすいきめ方は政治上は排除しなければならないことは私もわかります。ですが、それはプラス、マイナスがありまして、そこらひとつ十分御検討いただきたい、こういうふうに思います。
  132. 柴田健治

    柴田(健)委員 時間が参りましたけれども、ちょっと最後に農林大臣、農民の心を破壊してきた高度経済成長というものは理解してもらわなければ困ります。いままでは農民の農政という立場でそういう取り組み方をしてきたところに私はいろいろの矛盾が出たと思う。もうこの辺で農政の大転換をやるとすれば、国民の農政に方向を転換しなければいかぬ、国民の農政として取り上げていかなければならぬ、そういうことを十分理解してもらいたいと思います。  総理、この月末に訪米されるのですが、いろいろ重要な課題があろうと思いますが、私たち農林水産の立場からいうと、貿易自由化の問題で、オレンジだとか肉類その他もそうでありましょう。しかし、どういう心がまえで話し合いをつけてこられるのかという一言だけお聞かせ願いたい。
  133. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 アメリカ側が長いことオレンジの自由化を迫っておることは事実でございますが、こちらにもかんきつ類の業者もございますし、ミカンは収穫が多過ぎてなかなかたいへんな状態である、こういうことでございますので、国内の状態というものを十分述べて理解を求めたいという考えでございます。この間農林次官をアメリカに派遣をしまして、日本の実情をいわば数字をもってよく言いなさい、数字のない話はだめだから、説得力がないから、私が絶えず数字を持っているのはそこにあるんだ、こういうことで数字を持っていったのです。ところが、向こうは驚いたのですよ。耕作農家というものの単位面積の、いわゆる農林省の統計数字を持っていきましたら、日本の農家が持つ反別が七反歩だ、六反歩だということは向こうでは考えられない、まるの二つも落ちているんじゃないか。そういうことで具体的な例を述べてやったら、日本の農民のおそるべき活力ということでやっと理解した。そういう意味で、なるほど、かんきつ類のわずか五億ドル総額の自由化がなぜできないんだ、こう言っておったものが相当の理解を示したということでありますので、やはり私もそういう現状というものを、一万人集会の写真も用意しておりますから、こういう状態であるということを事実を述べて理解を求める、こういう考えであります。
  134. 柴田健治

    柴田(健)委員 終わります。
  135. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 諫山博君。
  136. 諫山博

    諫山委員 私は短いことばで聞きますから、簡単に答えてください。  主要な農産物を外国に依存することがどんなに間違いであり、危険であるかを端的に示したのが、先月末アメリカが行なった大豆輸出停止の措置であります。きのうNHKのテレビで、とうふ屋さんが訴えていましたが、大豆の価格はすでにアメリカの発表以来五割も高くなったそうです。そこで、現在の大豆の自給率がすでに四%を割るというような異常な状態になっていることは御承知だと思いますが、この大豆の自給率をこの機会に大幅に引き上げる計画はないのかどうか、お聞きします。
  137. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 せっかく、大豆、なたねの不足払いの価格をきめる際によく検討し、できる得る限り自給率を引き上げたいと考えておるところでございます。
  138. 諫山博

    諫山委員 総理にお答え願います。  確かに、農林省は、昭和五十七年までに大豆の自給率を一二%まで引き上げるという発表はしています。しかし、実際は大豆の自給率はほとんど上がっていないというのが現状です。この現状は総理もお認めになると思いますが、どうでしょうか。
  139. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 それは認めます。認めておりますから、大豆の自給率を上げなければならない、こう考えております。上げなければならないと考えておりますが、しかし、米と違いまして、大豆というものは自給率が五〇%、七〇%ということにほんとうにできるのかどうか、これは地勢上や気候上の問題もあるのです。これはソバや小麦もそうでございます。ですから、そういう問題に対して国際分業という面もあるし、日本でこれから開かれる南の国との南北問題もありますし、新ラウンドもあるのですから、そういう問題も十分考えながら、しかも安定的な主食、農産物の自給度をきめていくということでないと、観念的にだけではきまらない問題だと思います。
  140. 諫山博

    諫山委員 いまの日本の大豆の自給率が、農林省がきめた程度にも達してないということを厳然たる事実として認識せざるを得ません。問題はなぜ自給率が上がらないかです。確かに総理が言われますように、自給率を高めろ高めろと言ったところで、農家は大豆をつくりません。その最大の原因は、大豆の価格が安いということです。大豆をつくっても引き合わないというととです。どうなっているかといいますと、昭和四十五年を例にとりますと、大豆六十キロの生産費が五千七十一円です。ところが、農林大臣がきめた基準価格は五千十円です。つまり生産費のほうが基準価格よりも六十キロ当たり六十一円高いという数字になっています。昭和四十六年を例にとりますと、大豆六十キロの生産費が六千八百五円、農林大臣のきめた基準価格が五千四百四十円です。つまり一儀当たり生産費のほうが基準価格よりも千三百六十五円も高いわけです。ことばをかえますと、大豆をつくればつくるほど赤字が出るような数字になっている。これでは農民が幾ら大豆をつくりたくてもつくらないのは当然です。こういう実情になっていることを農林大臣はもちろん御承知でしょうが、総理は御存じでしょうか。
  141. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 知っております。
  142. 諫山博

    諫山委員 あなたは自給率を高めなければならないと言っていますが、大豆をつくればつくるほど赤字が出るという実情で、これが達成できると思いますか。
  143. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 それはもちろん、農民の生産意欲を高めるようないろいろな処方せんを考えなければならぬことは当然でございますが、米はこれはもうどうにもならぬことでございますから、これは一〇〇%自給しなければならない。しかし、大豆という問題は、これはいま大豆の不足という問題でたいへんとうふが上がるとか、いろいろな問題がございますが、しかし、大豆というようなものは、大陸と比べて一体日本でできるのかどうか。だから、国際的分業という方向に進んでおりますし、ですから、安定的な需要をはかって、その上で最低限備蓄というような意味でも、どんな場合でも、日本で国内産の大豆というものは何カ月か、これは一年間も二年間もなくなるという問題じゃないのですから、ちょうどいまアメリカが輸出禁止したということでもって、いま八月一ぱいはある、ところが九月一ぱいだけがどうなるかということなんです。そういう問題である。しかし、事実を申し述べれば、三十万トンくらいよけい買って、向こうが困ったから戻してくれというような事態もあったわけですから、そういう意味で、大豆というものの自給度をどうするかという、これはもう六割も八割も自給度を全部持つということになったら、外国も日本の製品を全部シャットアウトするということになりますから、米はもうしようがない、一〇〇%だが、大豆の場合は、国民が安いものの提供を受ける、安いものであり安定的なものでなければならぬということでありますから、そういう意味では、いかなる国際的変動があっても、国内大豆でもって変動はカバーできる、これは二カ月でも六カ月であってもカバーできる、その限度は一七%であり、二〇%であるというなら、そのためには国民も二〇%なら二〇%、一七%なら一七%、これは一五%でもって十分耐え得るのだということになれば、それに対しては相当な助成をしても国民の容認するところになると思うのです。これは国民の税金を使うということになるのですから、やはりそういう意味で国民が理解できる、そうして生産意欲も確保できるということでなければならないわけであります。だから、そういうところにやはりバランスがあるのだということは、御理解いただけると思うのです。
  144. 諫山博

    諫山委員 私は、一番最初に、短いことばで聞くから簡単に答えてくれと注文しました。今後これを貫いてもらいたいと思います。  それで、総理の説明では大きな矛盾があることに総理はお気づきになっておらないのでしょうか。大豆の自給率は高めると言っています。これは、国内でもっと大豆を生産してもらうという意味です。ところが、大豆をつくればつくるほど農家は赤字が出る。これで大豆の生産が上がるのかということを聞いているのです。
  145. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 一二%程度の自給率を維持したいということでありますから、この自給率を維持できるように最善の努力をいたしたい。
  146. 諫山博

    諫山委員 私が希望するのは、大豆の基準価格を引き上げない限り、幾ら自給率を高めると言ったところで、農家はつくるはずがないじゃないかということです。この矛盾が総理に御理解できませんか。
  147. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほど、それでありまするから、あなたはたぶんその辺だと思って、価格のことも考えながら自給率を高めますと言ったのです。しかし、そのほかにも生産団地を育成するとか、いろいろ他の奨励方法ももちろんあることは御承知であろうと思います。
  148. 諫山博

    諫山委員 さっき自民党席から、農林大臣が答えればいいという指摘もあったのですが、いまの問題はやはり日本の農政の基本に触れる問題です。  たとえば先月末の大豆ショックのときに、新聞はこういう書き方をしています。六月二十九日の毎日新聞は「大豆、なぜ国産できぬ」です。六月二十九日の産経新聞は「食糧政策大転換を」です。これはいまや国民の広範な要求であり、世論です。そして政府は、形式的には、大豆の自給率を高めたいと言っているけれども、肝心の大豆の価格を補償しない。こういう状態が続いている限り、いつまでたってもこの問題は解決しません。だから、私は、自給率を大いに高めてもらいたい。しかし、それをほんとうに実りあるものにするためには、もっとすべての農産物について完全な価格補償をすべきだ、こういう主張をしているのですが、総理、いかがでしょう。
  149. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 大豆は、しょうゆとかみそとか、これはもう全く米につきものの原料でありますから、非常に重要であるということはよくわかります。私も毎朝に豆を食っているわけでありまして、これはほんとうにわれわれは豆がなくちゃどうしようもないというくらいでありますから、自給率を高めなければならぬということはこれは同感であります。ですから、そのためには生産者の所得を補償しなければならぬということでありますが、これはただ三〇%でも四〇%でもというわけにはまいらないのです。これはやはり大豆を幾らつくっても、日本でつくるよりもうんと安いものが多量にできるのだということになれば、国民にはなるべく税金のお世話にならないで、それで安いものを提供しなければいかぬ。ただ、物価の安定とか安定的供給をしなければならぬという面で、少なくともどんな国際的変動があってもそれに耐えられるだけの、先ほど言ったように備蓄というような性格を持つ、どんな変動にも対応できるような国産大豆は必要であろう、こう述べておるわけです。  だから、そのためにどうすれば一二%できるのかという問題に対しては、ひとつ勉強いたします。
  150. 諫山博

    諫山委員 そうすると、昭和四十五年、昭和四十六年を例に出して価格を大幅に引き上げるべきだという指摘をしたのですが、この点についても勉強しないと結論が出ませんか。
  151. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 大幅に引き上げれば、それは税金でまかなうか、消費者価格を上げるか、どっちかになるのですよ。ですから、簡単には申し上げられないのです。政府は、そんなに簡単には言えないのです。税金も計算しなければならないのです。安いものは安定的に提供しなければいかぬ、生産農民の利益も守らなければならぬ、こういうことなんですから、それは勉強しなければとても申し上げられないという、理解できるじゃありませんか。
  152. 諫山博

    諫山委員 この問題について、政府が基本的な解決策を持たないということを私は指摘しながら、次の問題に移ります。  第二は、PCBや水銀による漁業の破壊についての問題です。工場の排水についてこういう説がありますが、総理は御賛成でしょうか。読み上げてみます。万一有毒であることが判明した場合には、直ちに操業を中止するなどして必要最大限の防止措置を講ずべきである、PCBとか水銀について。こういう説は賛成でしょうか。
  153. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 まあPCBとか水銀汚染という問題は、人類の生命に関する問題でありますから、真剣に取り組まなければならぬことは言うまでもありません。しかし、ただ水銀というものに対しても、長い集積で——いま追跡調査を行なっておるわけであります。どこから出ているのか、どの程度責任があるのか、こういうことをいまやっているのでありまして、それをただ、水銀が有毒である、PCBが分解しない、それはそのとおりです。それだからといって、工場を、日本コンデンサのようにPCBを多量に流す、琵琶湖の汚染をする、これはそういうところでなくて、工場を廃止することがいい、三菱モンサントに対してその製造を禁止する、これはあたりまえのことだと思うのです。ただ、そういうおそれがあるからということだけで工場を全部吸収してしまう。そこには従業員もたくさんおるのです。家族もおるのです。ですから、そういう意味で、そう観念的に問われれば……(「公害か命か」と呼ぶ者あり)企業が大事か命が大事かといえば、命にきまっているのです。命を大事にしなければならぬことは当然であります。命あっての物種でございますから、公害などをごうまつも許すつもりはございません。これは明確にしておきます。これは生きるための手段でしかない。そんなことは考えておりませんが、ただ、そんなことを観念的にずっと推し進めていくと、幾ばくかはみんな公害を出しますよ。お互いに乗っている自動車全部公害を出すんだから、全部とめてしまえということになる。しかし、ものには限度があり、基準がある。非常にむずかしい問題なので、とにかく重金属の被害に対しても、有害でないという学説もあるし、ないといったって、それはあるというほうにウエートをかけていま制度上完備するようにいろいろやっているじゃございませんか。これはやはり認めていただかなければいけません。ただ、何でもとめてしまえばいいんだというわけにはまいらない。そうすると、公害たれ流し論者かと、それは極論でございまして、そんなことは考えておりません。生命の重視ということにはそれはもう人後に落ちない、こういうことです。
  154. 諫山博

    諫山委員 私が読み上げた文章にあまり積極的に御賛成ではないようですが、これは熊本地方裁判所の水俣病事件判決です。  そこで、六月二十七日の参議院本会議で、あなたは「わが国の経済力、技術力をもってすれば、公害の防除は実現可能であります」「科学技術の総力を結集して、公害の絶滅と環境保全に万全を期してまいりたい」と言っておられます。しかし、水銀とかPCBの排出をいま直ちにやめさせるとは言われなかったようです。どうしていますぐPCBとか水銀の排出をやめさせるという措置をとろうとしないのか、御説明ください。
  155. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 PCBとか水銀の汚染が行なわれないような措置は、公害関係法を御審議いただいたときから十分とっております。これは明確にしておきます。  PCBに対しては全部回収するようにという措置もとっておりますし、PCBの代替品を使うように、PCBは使わぬようにという措置もとっておりますし、製造も禁止しております。そういうものに対しては明確な行政措置をとっておる、法制上の手続もとっておるということだけは事実でございます。  それから、水銀が川や下水に流れないようにしなければならないということ、これは当然でありまして、いまとにかく十年間、二十年間、三十年間にわたる操業開始からの水銀の追跡調査を行なっておるわけであります。少なくとも水銀汚染を行なったものに対して、これはこの工場の責任だと思うというデータをちゃんとつくるためにいま追跡調査をやっておるわけですから、そういうことはちゃんと事を分けて理解していただかなければならぬと思うのですよ。いま無制限に水銀を川や何かに放流する、こんなことを許すわけがありませんから、これは構内でもってあらゆる管理をしなければならないということを指導していることは事実でありまして、いまでも依然として水銀をたれ流しているという前提に立ってのお考えは誤りだと思います。  残る問題は、水銀を使わせないということでしょう。これは水銀にかわる反応力を持つものがあるかどうかという問題が一つです。あるにはあるが、水銀工場が事実閉鎖すると同じように、水銀を使わなければならない工場はもう全部一切廃止しなければならない、ペイしないということになれば、代替品が見つかるまで水銀を使わせることはやむを得ないが、水銀が流出しないように管理を万全にして、これに対して罰則も設ける、こういうこと以外にはないわけでございまして、いま行政上の措置は完ぺきにとられておる、このように考えております。
  156. 諫山博

    諫山委員 そうすると、現在はPCBも水銀も全く排出させていないという御認識でしょうか。
  157. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 それは、全くやってないのかと言われると、これはまた別です。排出を全くしないように行政上完ぺきというほどに努力を続けておるということで理解をしていただきたいと思います。それ以外にないのです。それは水銀を持ってたらして歩く人もおりますから、絶対にないとは言えないのですよ。言えませんけれども、生産工場に対してはものすごいきつい行政をやっておる。これは事実ですよ。
  158. 諫山博

    諫山委員 まじめにお答え願いたいのですが、そうすると、現在、もし少しでも水銀を流しているような工場があったら、これはとんでもないことだから、直ちにやめさせますか。
  159. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 やめさせるというのは、操業停止というのじゃなく、排出をしていることは禁止する。これはもう、流出、排出、公共下水にそのまま流しておるというようなことはきびしく規制をいたします。
  160. 諫山博

    諫山委員 次に、被害漁民に対する補償の問題ですが、これは天災融資法に準じた緊急の融資ということがずっといわれています。この緊急の融資を受ける対象は、現在被害を受けているすべての漁民についてのことでしょうか、それとも特定の地域の特定の漁民についてのことでしょうか。
  161. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 これはある範囲内の漁民ということでございます。
  162. 諫山博

    諫山委員 本会議での説明にはそういう限定づけはしてありませんでしたが、どういう範囲の漁民について特別な融資を考えているのですか。
  163. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 いま被害の実情の調査報告を求めておるところでございまして、原因者がはっきりしておるその付近については、すでに私どもとしてはつなぎ融資の対象の地域と考えておりまするが、その他につきましては報告に基づいてなお検討してみたい、このような態度をとっておるわけであります。
  164. 諫山博

    諫山委員 大体、被害漁民に対する融資というのでは根本的な解決になりません。私たちは完全な補償をすべきだと思います。また、加害者が特定されない場合には、政府が立てかえてでも補償するということが必要です。さらに、融資融資と言いますが、いまの説明では、どこの漁民にどれだけの範囲融資できるのか全く不明確です。これでは無責任な宣伝と言わざるを得ないと思います。  そこで、最後に米の問題ですが、さっき総理は、予約分は全部買い入れると言われました。これは裏から聞きますと、予約していなかった分は買い入れないという意味なのか。ことばをかえますと、買い上げを申し込んだ全量を買い入れるというつもりではないという意味なのか。不明確でしたから、はっきりしてください。
  165. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 予約をしたものに対しては、これはもう全量買い上げます。これは当然のことを申し上げておるわけでございます。それで、いままでは農林省農協、十分意思の疎通がはかられておるわけです。幾ら減反をして、幾ら収納してということでございますから。しかし、ことしは、予約割り当てというものが現実にあっても、それを上回るものがありますが、これを追加予約できませんかというようなことがあれば、それも買い上げるようにいたしたいと思いますという前向きの姿勢を述べたわけでございますから、それはひとつ御理解をいただきたいと思います。
  166. 諫山博

    諫山委員 これから休耕奨励金が出ないということになりますと、いままで米をつくらなかった田でたくさん米がつくられることになると思います。これについては、政府に買い上げを申し入れれば政府は買い上げるという趣旨に聞いていいですか。
  167. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 それは今年度に関して申し上げたわけでございます。来年度はまた来年度ですが、とれもうんと余れば、また五年、六年前に逆戻りをして、国民の税金をそれにつぎ込まなければいかぬ。そういう国民全部を対象にする食管に組み入れるものにはおのずから限度がある。それよりも、困っておる身体障害者もあるし、業病、難病に泣く人もあるんだから、そういうところに重点を置くためには、やはり米もある程度の調整をしなければならぬということで、今日まで調整が続いてきたんですから、その時点における状態を十分考えながらものを申さなければならぬと思うのですが、七月の末には予約が始まろうという四十九年度に関しては、国際情勢も違ってきたし、どうなんだ、こう言うから、それは資格条件には考えておりません、こう述べておるのですから、明確にしてください。
  168. 諫山博

    諫山委員 重ねて明確にしていただきます。そうすると、来年度分についてはまだ何とも言わない、今年度の分については、申し込みがあれば、みんな買い上げる、こういうことですか。
  169. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 おおむねそのように御解釈いただいてけっこうです。
  170. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 瀬野栄次郎君。
  171. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 森林法等の一部を改正する法律案、土地、米対策、農産物自由化問題について田中総理に伺います。  ただいまから七、八点について質問をいたしますが、農林省は、大蔵省農林局とこういわれるように予算が少ないし、予算獲得が十分でない、こういうふうにいわれて、田中首相も農家の出身であり、農林水産業については十分認識をしておられると思うのですが、こういったことを踏まえまして、今後農林水産業に十分なる新年度予算に対して対処をしていただきたい、こういうことを含めまして、以下、質問をいたすのであります。  国民生活の中における森林の役割りというものをまず最初にお尋ねしますが、わが国の森林及び林業を取り巻く情勢が、国の森林、林業政策が木材生産等の経済的機能の発揮に傾斜したものから、森林の持つ国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全及び形成等の公益的機能との調和の上で、これら機能の最高度の発揮を実現するという方向に新たなる展開をしていることは御承知のとおりであります。このように国民的要請である森林の持つ公益的機能の強化が叫ばれているにもかかわらず、国の林業に対する財政投資は、国土の約六八%、二千五百三十万ヘクタールにもなるのに対して、農林省総予算一兆五千三百四十五億円中、林業予算が千三百五十六億円で八・八%と、全く少なく、これでは国は真剣に取り組み、めんどうを見ているとは言えないし、まことに不十分であります。今回の本法改正にあたりまして、真に山村をささえているにない手が明確でない。林業家不在の政策である。農山村はいまや希望をなくし、過疎化はますます進んでいる。私は、農山村から大都市へ人口を引っぱり出すというのが列島改造ではなく、農山村に働き、希望を持って生活する、このために帰すことが重要な改造である、かように訴えたいのであります。また、現在の林政は、近年造林補助金の単価等がわずか上がったことはあるが、十年来全く基本的には変わっておらない状態であります。本法改正にあたりまして、山村において林業に希望を持って従事することができる政策を立て、国民的要請にこたえる機能を果たすことが焦眉の急務であると言わざるを得ない。  そこで、衰退しつつある農山村の現状を踏まえ、国は財政的裏づけで、従来と違う抜本的政策を樹立すべきであると私は訴えたいのでありますが、田中総理の所信を承りたいのであります。
  172. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 先ほども申し上げましたとおり、林野は木材の供給源であるとともに水源涵養という非常に大きな使命を持っておるわけでございます。もう一つは、やはり民族のよりどころ、心のよりどころ、自然環境というよりは生活環境そのものでございまして、そういう意味で、十分林野政策の充実ということは考えていかなければならぬと思うのです。ただ、林野というものに対してもいろいろな指摘されるような問題もあるわけです。民間の持っておるものは木の育つことによってちゃんと維持して、税金も払っておるわけであります。ところが、国有林野は、木材は切っておるし、税金を納めないのだというけれども、実際的には赤字になっておる。長いこと林野は現業として、三公社五現業としてやってきたのですが、この二、三年間赤字になって、将来は相当の赤字になるだろう。その原因はいろいろ指摘されております。ですから、やはり林野行政というものがどういう状態が一番理想的なのかということは、これは国民的な課題ですから、一政府だけの問題じゃない、国民的な課題として十分検討してまいらなければならぬ問題だと思います、ということを述べておるわけです。ですから、これは特別に財源を必要とすれば、林野が水の水源涵養であれば、水が財源なりと考えれば、水の特別会計等というような同じ考え方で林野に対しても考えられるじゃないかというようなことも一つの問題としては考えられるわけです。  ですが、農林省の予算そのものが米でもって大きなウエートをとられておって、あとの政策というものにその予算が盛られないというような実情、これはやっぱり米が固定的でどうにもならないなら、別に農林予算は別な角度から考えなければいかぬだろうということは十分理解しております。
  173. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 森林の乱開発防止対策についてお伺いしますが、保全だけでは機能を十分に果たせないことは御承知のとおりであります。国民的要請にこたえて、需要の増大に対応した木材の安定的な供給をはかることは当然でありまして、流通対策、なかんずく価格対策が不十分であることを私は率直に指摘したいのであります。  昨年暮れ、商社の木材買い占めで表面化し、大問題化したことは御承知のとおりでありますが、いま日本の林業に欠けていることは、さきにも指摘したごとく、林業者が安心して造林、保育に従事し、生涯、希望を持って生活できる長期の対策が必要であります。今回の改正にあたっては、森林組合がみずから森林の経営を行なうことができる道を開いております。また乱開発防止が規定されておりまして、乱開発防止のために森林組合が林地の転用、林地造成、交換分合などで森林を買って再配分しようとしても、資金量に乏しく、大企業の山林買い占め、乱開発には対抗できないのが現状であります。御承知のごとく、農地については農地法の規制がありますが、森林法ではまじめに自営している人以外でも山林の買い占めができるようになっております。  したがって、森林組合に対しては、総理の決断と実行によって、乱開発防止のためにも、適正伐期齢級等を考慮して、四十年償還、据え置き十年、しかも国から利子補給するなど、相当思い切った政策によって対処すべきである。そうしなければ林業は救えない、かように思うのですが、この点、総理の見解を簡潔に承りたいのであります。
  174. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 突然具体的な数字を御提示になりましたので、私もまだ準備がございませんので、そういう問題が採用できるかどうか、まだ明確にお答えできません。できませんが、森林の保護ということは重要であるということだけは、これはもう私自身も同感でございます。ですから、お互いが、東京でもどこでも、やはり都会生活は青い空、緑の生活環境、これはもう人類の夢であり、理想郷なわけですから、そういう意味で、やっぱり日本人の緑、日本人の水というようなものを守らなきゃならぬということは、これはもう当然でございまして、これらの問題に対しても、私もひとつ、せっかくの御提案でもございますし、十分勉強さしていただきたいと、こう思います。
  175. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ゴルフ場の乱開発等に対する土地対策について一点お伺いしますが、本年四月、参議院決算委員会でわが党の黒柳委員がみずからの調査で明らかにしたところによりますと、全国の既設ゴルフ場は六百八十一カ所、約六万一千余ヘクタールで、造成計画中を入れると千四百カ所近く、約十四万六千ヘクタールになっております。これは東京二十三区の約三倍、全国の工業用地十二万ヘクタールをはるかに上回った面積になっております。ところが、このようなゴルフ場開発にもかかわらず、政府には主管官庁がなく、したがって、この数字の当否すら明確にできない実情にあります。一例として栃木県の場合を見ると、二、三年前のゴルフ場の数は七つだったのが、最近では十数カ所にふえ、造成中や計画申請を入れると約百三十カ所にもなるといわれております。もちろん私は国民の健康管理、体位向上のため、またレクリエーションの場して適当なゴルフ場の必要性は認めるのでありますが、最近のゴルフブームは、会員権の売買等による利益を目的としたケースが少なくなく、その投機化は目に余りがあります。  そこで、土地が急峻であり、ゴルフ場適地が少なく、ゴルフ人口の急増しているわが国の場合、国としても自然保護の見地から、国土利用とゴルフ揚の将来計画を早急にきめる必要があると思うが、この点どうか。  さらに総理大臣に伺いたいんですが、四月十九日の毎日新聞の社説に、総理は、「新潟にはどんどんゴルフ場を造成するがいい。国会答弁と違って、これが私の真意だ」と言っておりますし、また、トンネルを通ればゴルフ場だ、と新潟県のいわゆる同郷人の会合においてこんなことを言った、こういうことが四月十九日の毎日の社説に出ておった。このことに対して、私は去る四月十九日、四月二十九日、二回にわたって農林大臣にその真意をただし、総理にも真意を聞くように言ったのでありますが、その結果は明確な答弁がないのであります。ときあたかも、物価問題等に関する特別委員会でこの審議がなされ、商品投機、土地暴騰等が問題になっているときであったので、たいへんな問題になったのでありますが、このことは総理がかねがね心の中で思っている本音ではないか、偶然ではなく、総理自身の心にあるものがつい口に出たものではないか、国会軽視もはなはだしいということで、いろいろと論議したところでございます。この機会にぜひ総理に答弁を求めたいということで、今日を待っておったわけですが、その真意が不明確なので、総理自身から明確にひとつ、ゴルフ場乱開発とともにお答えいただきたい。
  176. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 自民党の中にもゴルフ場の問題に対していろいろな議論が行なわれております。しかし、私はあくまでも個人的な見解を述べるわけでございますが、私は乱開発が行なわれるというような状態でゴルフ場ができるということは望ましいことではないと思いますが、いまも御指摘がございましたように、国民レクリエーションの場——ゴルフ人口が千万から千五百万人になんなんとしている。ワンラウンドやるのに一万円もかかるというような状態がいいとは私は考えておりませんが、そういう意味で、ゴルフ場というものが国民的欲求として必要不可欠なものであるとしたならば、ゴルフ場は提供すべきである、こう考えておるのです。  これは、よその国は緑地保護という意味で、ゴルフ場に対しては税金をまけ、補助金を出しておる国もあるわけでございますから、やはりそういうものも十分勘案をしながら、日本は国際的に見てどのような状態にあるのか、ゴルフ場というものは野球場やいろいろなものと比べてどういうふうになるのかということを考えて、結論を出すべきだと思うわけでございます。アメリカは一万五百カ所あります。イギリスは日本よりも小さいけれども二千五百カ所あります。(「面積が違うよ」と呼ぶ者あり)イギリスが二千五百カ所あるのです。だからイギリスの面積とイギリスの国民の数でいくと、日本は三千カ所あってもイギリスよりも少ないのです。それは明確に数字で申し上げます。私は自信をもって数字で申し上げているのです。ですから、観念論じゃだめです、こういう問題は。数字でちゃんと申し上げておるのですから、数字で反駁されるのはかまわぬけれども、これは事実だ。  そういう意味で、少なくとも国民レクリエーションという場でゴルフ場が必要であるということが国民的要請であるなら、これと反するような政策がとれるわけはない。しかし、そのかわりに、ゴルフ場をつくることによって他に影響が及ぶというなら別であります。影響が及ばないようにちゃんと国土総合開発法でやって、特定地域に指定されれば、公共用地には収用できる、移動することができない、買い取り請求権でもってちゃんと収用できるようになっているじゃありませんか。そういうこともすべてを考えながら国土総合開発法を提出しているわけであります。  ですから、私は少なくともゴルフ場というものは国際的視野に立って、しかも日本人の要求というものがどうなっておるんだということ。ゴルフ場十八ホールでもって百二十二人の従業員を使うわけであります。そういうものでもって何十カ所持った場合、一体冬どのような収入を受けられるのかということを計算しておる地方公共団体もたくさんあることは事実でございますから、そういう意味で、広範な立場で、東京や大阪の近隣というだけの考えで日本全体のゴルフ場を律すべきではない、私は個人的にはそう理解しておるのです。  それから新潟の問題は、これは申し上げたのですよ。私はそう思っているのです。新潟は新幹線が五十一年四月一日にできるのでありますが、新潟にはいま八カ所しかない。そういうことで、いまゴルフ場の設立の申請が二十カ所ばかりあるが、これはどういうことでありますかと問われましたので、私はその地域を一つずつ話を聞いて調べてみたのです。それはみなどうにもならない山なんです。これは信濃川や何かの治水工事に使ったそだ山なんです。ですから、そだ沈床というものが非常に少なくなって、わずか五十メートルか七十メートルの山であっても、雪の降るところである。そしてそれは農地ではない、雑地であり山林である。そしてそだ山はだんだん大きくなってどうにもならなくなる。いまは炭は焼かない。これはどうすればいいんですか、こういう話を持ち込まれたときに、私はそういう丘ならゴルフ場にすることは望ましいことだし、ゴルフ場のまわりに百坪ないし三百坪の土地を用意しておくことによって、どうせこれから学校は週休二日というよりも、夏と冬四十日間休むというようなことが、私はそう長い将来のことではないと思いますから、そこへ、新潟県から出ておった人たちが子供を連れてきて、夏四十日置く、冬四十日置くということになれば、これこそ一石二鳥じゃないか、こういうことを述べたのであって、そこでその、トンネルを越したらゴルフ場ありきと、これはまあ、そこは一言多かったかもわかりませんが、そういう心境を述べたのでございまして、私は悪い発言だとは思っていません。
  177. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 このことについて詰めてまいりますと時間が足らなくなりますので、一応議事録を見てまた次回に譲ることにしますが、総理の真意が一応わかりまして、私、あ然としたわけです。いずれにしても、次回にまたこの件については質問をいたすことにいたします。  そこで、森林法関係についてもう一点、重要なことをお尋ねしておきますが、森林組合森林法から切り離して単独法でやるべきである、こういった点についてお尋ねするわけですけれども、総理は先ほども、数字のことをとっさに言われてもとおっしゃられたが、昨日からちゃんと通告して、これらの問題についてはお答えいただくように連絡をしてあるわけですから、明確な御答弁をお願いしたい。  森林組合及び森林組合連合会は、森林法に基づく特別法人でありまして、森林所有者が協同組合原理を取り入れて組織する協同組織となっております。その行なう事業によって、施設組合と生産組合に分かれております。  現行森林組合制度は、昭和二十六年の改正森林法によるもので、すでに二十二年を経過しておりますが、この間、林業と山村の情勢も大きく変貌し、林業経営も、従来の家族労働中心の個別経営から、森林組合中心の協業化へと急速に近代化の道をたどりつつあることは御承知のとおりであります。  そこで、森林組合の山村地域社会における役割りを果たすために、この際協同組合として農協とか漁協と同様に、単独法による制度化を行なうとともに、その事業内容も、信用事業及び共済事業を含めた大幅な事業拡大を骨子とした抜本的な改正をすべきと思量するが、田中総理も農山村出身でありますから、こういったことについては関心がおありだと思うのですが、ぜひこういうふうにして、森林組合の今後の発展をして、農山村を守っていただきたい、かように思うのですが、御見解を承りたい。
  178. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 先ほど急な御質問でございましたというのは、御発言の中に四十年というような具体的な数字のある金融制度が指摘されましたので、その面に対して申し述べたわけでございますから、誤解ないようにしていただきたい。  森林組合に対しては、これは農協漁協のように分けたらどうかという御議論があることは事実でございますが、森林組合の特性から考えてみて、事業範囲の拡大を行なうというようなことが第一義だろう、現在の段階においては森林法の中で定めておる森林組合ということのほうがよろしいという結論を政府は持っておるわけであります。  これは、そういうのは具体的に議論をされて、戦後ずっと議論をされてきております。これは放送法の中で、日本放送協会法と放送事業法と、民放ができたんだから放送法で分けるべきだといって、十五年前に国会でもって議論になりましたが、まあこういう問題、非常にまだ時を見なければいかぬので、放送法の中で律すべきであるということで、あの大きなNHKでも、日本放送協会法というふうになっていないわけです。  ですから、そういう意味で、この問題、やはり農協法や漁協法のように単独法とすべきでないという議論が政府部内では現在定着をしておるわけであります。
  179. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この件については十分ひとつ検討願いたいと思う。  そこで、あと若干端的に聞きますが、食管の問題がいろいろ論議されてきましたが、総理は食管制度を堅持していくのか、食管については維持するというふうな態度であるのか、この点について簡潔にお答えいただきたい。
  180. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 食管制度は維持するも堅持するも、これは同じことだと思うのです。これはもう食管制度をやめるというのじゃありませんから、食管制度というものは、合理化は必要であっても、食管制度というものは依然として必要である、こういう考え方は持っているわけです。これはもう戦時中の総動員法として残っているのは食管制度と日銀法ぐらいしかないのかもわかりません。これはそれだけ非常に重要であるということでございますから、食管制度は維持してまいるという考えでございます。これはもう維持と堅持が違うということであれば、堅持でもけっこうであります。
  181. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 本年度の生産者米価については、農業団体等は十キロ二千百八十五円を要求しております。生産者米価の大幅な値上げを要求しておりますが、さらに消費者米価については据え置くという方針のように伺っておりますけれども、この機会に生産者米価及び消費者米価について、簡潔にお答えを願いたい。
  182. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 消費者米価は年度間これを据え置くということは、そのとおり関係各大臣との間に協議が成り立っておりますから、これはもう消費者米価を上げるような諮問はいたしません。明確にいたしておきます。  生産者米価は、先ほど申し上げておりますとおり、法律に基づく米審の議を経まして、私がアメリカから帰りましてから、内閣としての責任で決定をいたしたい、こう考えております。
  183. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後にもう一点お伺いします。  農産物の輸入自由化、特にオレンジ、果汁の自由化問題についてお伺いしたい。  農業のビッグスリーというのは米、畜産、果樹ということは御承知のとおりであります。その中で米の生産調整によって果樹生産農家はたいへんな打撃を受け、転作をいたして、今日日本の温州ミカンなども生産過剰に推移しておることは御承知のとおりであります。西日本においてはこういったことでたいへんな問題になっておりますが、この上オレンジ、果汁の自由化が行なわれると、果樹農家は壊滅的打撃を受けるということでたいへん心配をし、先日来しばしば大会等を開いてきたところであります。言うまでもなく、果汁についてはブレンド用に昨年は五百トンの輸入をしておりますので、これらは一応私も了とするのでありますが、これ以上の輸入拡大は自由化につながるということで反対をいたして、阻止すべきである、このように訴えておるわけであります。  このことについては、本国会においてしばしば私も農林大臣に、また政府にも姿勢をただしてまいりましたが、農林大臣はそのつど、私としては自由化はしないと明言しておる。私としてはと言うから、田中総理はどうかとこう言いますのですけれども、私としてはと言う。閣僚の一人であるから田中総理も含めてのことかと言うと、やはり私としてはということで、言を変えないのであります。  そこで、田中総理にぜひこのことは明確に果樹農家のためにきょうは聞きたいと思って、前からお待ちしておったわけですが、田中総理は、日本農業における果樹農家を守るため、断固オレンジ、果汁の自由化は阻止していただきたい、総理の口からはっきり言っていただきたい、このことが果樹農家の声であります。私もそう思うわけであります。今月二十九日に訪米されるが、米国側に対して強い態度で臨んでいただきたい。その決意のほどを伺いたいのであります。  また、大豆輸出規制、近くはトウモロコシ、マイロの輸出規制等も考えられるといわれております。そういったことで、日本はどうしてもアメリカに依存をせねばならぬ飼料問題等がありますので、その見返りとしてアメリカから強い要請がないとも限らないと推測するわけです。そういったことを踏まえて、農家のために、農家出身の田中総理は断固としてアメリカに対処していただきたい。このことの決意をひとつ伺いたいのであります。
  184. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 オレンジの自由化を強く迫られていることは事実でございます。事実でございますが、しかし、日本の生産農民に与える影響は非常に甚大であることと、しかも農業構造改善をやっておる、減反政策等を進めておる現状に徴して非常にむずかしい問題であるということをるる述べて、今日に至っておることは事実でございます。日米会談が行なわれれば、十六日、十七日も合同委員会が行なわれるわけでありますから、ここでも当然問題になるわけでございますが、事実を述べて理解を求めたいということは、これは当然でございます。  生産農民が不安であるということに対しては、不安を除去しなければならない政治責任を持っておるということも、これはもう当然でございます。私は生産農民と会っている場合には、少なくともどんな場合があっても、あなた方は——果樹に転換をするとか肉牛に転換をするとか、地域によってできないところがございます。また南九州のように、果樹にもいいけれども肉牛にも転換できるというような面もありますから、それに時間がかかるわけです。そういう政策というものがあわせて行なわれなければ混乱が起こるということになりますから、そういうことを政府としては十分しんしゃくをしながら考えます。だから、あまり何かやられるのじゃないかというような考え方で考えないで、動揺しないでおいてもらいたい。どうにもならないような事態があったらどうしますかという質問に対しては、少なくともその場合、果樹、国内でもってできたものでうんと値下がりをするというようなものは、政府がいま学童給食をやっているのですから、そういうものや、社会保障政策の老人ホームとか、いろいろなものに全部さばいても迷惑をかけてはいかぬという考えを基本にしているのですから、ひとつ政府を信用してくれ、こう言っているのです。ですから、そういうことで御理解いただきたい。  これは私もこの政府、この政党で転作を奨励しているのですから、それで転作は奨励するが転作できないようにするということでは非常に農民としても苦労するわけでありますので、その間の事情を十分考えながら、国際的な問題には対処してまいりたいということであります。
  185. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 以上で終わります。
  186. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 神田大作君。
  187. 神田大作

    ○神田委員 私は第一に、森林法の改正によって開発行為に県知事の許可制をとろうとしておりますが、これだけで大企業の土地の買い占めを抑止することは不可能であろうと思います。いま法人等の大企業が土地の買い占めをし、庶民が土地の入手並びに住宅に非常な困難を来たして大きな政治問題になっておりますが、これに対しまして総理はどのようにお考えになっておりますか。大企業の土地買い占めに対してこれらをこのまま放置しておくつもりか、それともこれに対して何らかの手を打つつもりか、お尋ねを申し上げます。
  188. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 大企業が土地を買い占めしておるということでございますが、これはいま追跡調査を行なっております。これは一体銀行がどういう企業に幾ら金を貸したのか、それは一体どのような土地を入手しているのか、いま保有しているのかどうか、こういう問題をいま追跡調査をやっているわけです。大企業もゆえなくして土地を取得しているわけじゃないわけでありますから、値上がりを待っているということであれば困るので、これに対しては、新規の土地取得に対する融資はもう停止をせよ、窓口を締めているわけです。それから品物を持っておって、それを温存しておって手持ち資金が苦しいというなら、その土地を売りなさいということで、金繰り上の問題だけで融資をしないということでもって、こまかくいま行政指導をやっているわけです。もう一つは、それだけでは逃げ道がないわけでございますから、それは売りなさい、ことし中に売れば税金は法人税だけで済みますよ、来年になると分離をして二〇%重課になりますよと、こういうことをやっているわけですから、これをだんだん締めていけば、もう土地に対する妙味はなくなったということで、このごろ土地が下がりつつある、逆に都心の土地が上がりつつあるということを考えてみれば十分おかわりになるとおりだと思いまして、特にそれだけでは困るので、建設省は大企業の追跡調査をやったわけです。郊外にある土地を住宅公団に売らないか、こういっていまやっておりますし、住宅公団に売らないというならしようがありませんから、今度住宅公団や建設省の諸君が出かけていって、今度は住宅金融公庫で四分五厘、三十年というようなものを出すんだから、ここでひとつやりなさい。産労住宅でもって全然使われない資金がこうしてあるのだからやりなさい、税制上は優遇しますよ、こういってPRを進めているわけでありますので、私はそれ以外にやっぱり方法はなかなかむずかしいんじゃないか、こう思います。
  189. 神田大作

    ○神田委員 建設大臣が大企業に対しまして、いわゆる都市圏におけるところの大企業の所有しておる土地を公有地として手放してもらえないかということを言われた。しかし、大企業を中心とする不動産業者は、これに対しまして色よい返事はしておらないのは、新聞でもごらんのとおりだと思うのです。なかなか一たん手に入れた、もう目の前でもって相当の価額に上がっていこうとする土地を、何も金に困っているわけではない大企業がそうやすやすと手放すはずはない。こういうことからいたしまして、これはただ勧奨とか、そういう税金対策だけでは解決できない。これはやはり政府が、大企業がいま直ちに必要でない土地を買い占めたものに対しましては、庶民住宅の建設等のためには、これは法的処置をとって国が買い取り、それを庶民に分け与えるというような措置をとらなければ、これは解決できないと思うのです。その点についてどう考えますか。
  190. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 これは大企業に対して、そういう土地の値上がりを待っているということになれば、売り惜しみ買いだめという法律でもって中へ入りますから、これはまあいろんなもので当然リストアップできるわけであります。そしてまだそういうものを寝かしておるような企業には金融を締めますから、これはだんだんといぶり出しが行なわれるということでございます。いぶり出しが行なわれるだけではだめなんでということで、短兵急にこれは何かしたらどうかというので、今度あめとむちと俗にいわれておるそういう法制もお願いしているわけでございます。ですから、しかるべくやっているんです。  それだけではなく、私はやっぱり昭和六十年展望でもって、来年から勤労者財産形成法ということでいま検討を始めたわけでありますが、これは百坪、百五十坪、二百坪、二百五十坪、三百坪の五段階にしまして、そして地方公共団体農協が主力になってひとつ土地を造成する。そして土地債券として、これをとにかく土地証券として流通する。これは私の年来の主張なんです。だから、そういう意味で、まあ所得政策というところまでいかなくとも、一定期間無税国債というものを持てば、少なくともある一定限度の頭金をそれで払えば、段階的にいつでも百坪のものが手に入るのであって、まだ収入がふえれば三百坪のものに買いかえられるというようなものを、少なくともいま大ざっぱな一つの試案として検討している段階では、百坪が百五尺それから百五十坪、二百坪、二百五十坪、三百坪までで百万戸分ずつというと五百万戸になるのです。そのほか職住の近接というので、市街地における立体化による借家が約五百五尺そうするとおおむね一千万戸というものを用意すれば、土地証券とか住宅証券というものが流通するようになるのであって、やっぱりそういうことと全部合わせないと、ただこれをいぶり出しをする、出さない者には懲罰をするということになれば、これはもう憲法上の問題とか民法上の問題とか、いろいろな問題があるわけですから、これはそういう意味では今度の国総法でも、きょうも質問がありましたけれども、一定の用途を明確に明示をしないで特定地域に指定して私権の大幅な制限をやることは憲法の問題が起きないかという議論がありますように、それは当然起こり得る問題なんです。ですから、現行憲法の許容する範囲内であって、社会通念というものでもって許容される際限一ぱいという法律が今度の国総法だと思っているんです。  だから、そういう意味では、あの国総法が通過をして、いまいう地方の債券を大幅に認めて、しかもそれは資金運用部でも引き受けるということになれば、これは物価問題の状態等相当勘案しなければなりませんが、国民が求める土地が与えられないということじゃないのです、全然ありません。そういう意味で、そうすれば今度民間も競って自分たちが宅造を行なって売り出すということになるのであって、やはり法律で懲罰的なものだけ考えるということよりも、あめとむちと俗にいわれておるようなもので、それであなた方がつくらなければ建設省は代執行しますよという法律までいま用意しているわけですから、やはりここらが現行憲法下における際限一ぱいの法体系ではないかと考えております。
  191. 神田大作

    ○神田委員 時間の関係もありますから、簡潔に御答弁願いたいと思います。  それはわかります。わかりますが、しかし、いまたとえば東京都についていえば、東京都の沿線の通勤に必要な土地、そういう適地というものは大部分大企業が買い占めをしておるのですよ。いかにそういう施策をしても、適当な土地がなければこれはどうにもならぬ。その問題に対してそういう庶民が必要とする土地——山奥には幾らでも土地はあるでしょう。しかし、そういうところを買ったってどうにもならぬ。そういうところにうちを建ててもどうにもならぬのですから、そういう点においてもう手おくれをしておると私は思うのです。たとえば、さっき総理はゴルフ場の問題につきまして、これは必要性があるというようなことを言われましたが、たとえば栃木県の場合です、いまゴルフ場が現実に三十カ所ある。認可したのは三十カ所、六十カ所。申請中のものが六十カ所、百二十カ所。栃木県に百二十カ所のゴルフ場ができる。約一万ヘクタール以上になるでしょう。この一体乱立といいますか、何といいますか、これは非常な行き過ぎじゃなかろうか。これに対してさすがの知事も、これは二年間今後のものは凍結するのだといって、いわゆる土地利用委員会でもって、これらのものに対しましては今後水道とかそういうものを引かないということで規制するようでありますけれども、これは県がやることじゃない、全国的な問題なんだから、国がもっとこれらの問題を調査して速急の手を打つべきであろう。しかもこの間の大豪雨で、建設中のゴルフ場から流れた土砂がたんぼや桑畑に流れ込んで大被害をこうむっておる。一体この埋まったどろをどうするのだ。ゴルフ場の建設者は、前を通る県道だけのどろを取って、たんぼのどろは取らないで、責任がないといって、幾ら交渉しても補償はしないというような問題が各所に起きている。こういうような問題に対してこれは真剣に考えて、こういう乱立、乱開発に対しまして取り組む必要があろうと私は思いますが、この問題について簡単にお答え願います。
  192. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 あなたの言うことはわかりますけれどもね、ゴルフ場が自分の県の中にできるかできないかを規制できないような地方自治じゃどうにもならぬじゃありませんか。そういうところまで政府が口出すようになると困るのです。それこそ栃木県知事が、いま言われたように、委員会をつくってがちゃんと押えれば、現実問題としてできるじゃありませんか。だから、いま法律がなくたって、これは神奈川県でもちゃんとやっていますよ。ですから、それ以上に広範なものを考えるのは、国総法を通していただけば、ちゃんと国総法の中でできるようになっているのですよ。全部の知事と相談をしながら、必要があれば政府もとにかくちゃんとして、そこを特定地域に指定できるというふうになっておるわけです。ですから、森林法もその一環でございます。森林法も一環だし、国総法でもちゃんとできるようになっている。(「いまは国総法をやってるのじゃないよ。」と呼ぶ者あり)いまの御質問が、森林法の条文に対しての御質問じゃなく、ゴルフ場に対する規制をしたらどうかという御発言ですから、私はそのままでお答えしているのであって、おかしいですよ、そうじゃないですか、皆さん。逐条審議じゃないじゃありませんか。栃木県のゴルフ場の話をしているから、それは地方自治の問題であり、それをほんとうにやるならそうじゃないですかと申し上げておる。私は悪いとは思いませんよ。
  193. 神田大作

    ○神田委員 それは県とか地方自治体の長がやればいいというような、そういう問題じゃないですよ。ゴルフ場というものに対して、なるほどある程度の規制をすると言った。ところが、法的根拠はないわけですからね。やれば何らかの方法でやる方法はあるでしょう。だから、私は、栃木県の場合は一例をあげたので、あなたがゴルフ場は必要なようなことを言うから、私は一例をあげて、こういう県もあるのだ、だから、これは国が基本的な観点に立ってこれを規制するなりすべきであろう、こういうように考えると言った。  この問題をやっていると時間がなくなってしまいますから、次に、アメリカが身がってに大豆のすでに契約した分の半分しか出さぬというような、こんな身がってな国はないでしょう。これは、商取引でも、幾ら買った、幾ら売りましょうときめたやつを、今度は国内事情で、全然ないのなら、それはあるでしょう。しかし、現にあるのです。あるにもかかわらず半分だといって、日本の国内のとうふ屋あるいは納豆屋さんあるいは消費者に大きな迷惑をかける、大豆の価格はどんどん上がってしまうというような、こういうことに対して、委員会等においても、先ほど農林大臣にも質問したのですが、何らアメリカに対して抗議をしておらない。今度幸い総理がアメリカへ行くのですから、こういうような身がってな、余ったときはどんどん買ってくれ買ってくれと売り込んで、今度は国内の大豆が上がったから半分にする、こっちに相談もしないで、相談したならいいですよ、相談もしないで、かってにそんなことを言って、そうな話を黙って聞いている、そういう国がありますか。これに対して、総理は気が強いのですから、そんな話を聞いて帰っては困るのだ。これはもとどおりに戻して、約束したなら約束しただけをちゃんと送れ。そういう国はもう今後当てにならぬから——先ほど総理が、食糧に対して国際的な分業というようなことを言われました。私は、国際的分業は当てにならぬと思う。私は国内において、大豆といえば一二%の自給率、こんなことじゃどうにもならぬ、少なくとも三分の一あるいは半分を自給するというような、そういう考えのもとに立っておれば、こういう問題もそんな緊急な問題じゃなしに解決できるわけです。それを一二%くらいの自給率、とにかく自給もできないような状態。これは安いものがあるから、名国から安いものは入れるのだ、高いから日本ではつくらないのだ、そういうような農政のあり方、これはもう変更しなくちゃならぬ、こう私は考える。機内農林大臣はさすがにこれは国際分業じゃとてもだめだ、今度は米価審議会にかけて、ゆっくりこの問題を検討して、国際分業ではない、国内で少なくとも自給を達成できるような方策をとりたいということを言われました。これは米審にかけて検討すると言われますが、総理の国際分業によって農産物の需給を満たすのか、農林大臣の、国際分業ではだめであるから、今度は国内生産に重点を置くのだというのか、食い違いの答弁をやっておるようでありますが、この問題について総理と農林大臣と両方から答弁してください。
  194. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 食い違いはありません。国際分業論というのは確かに国際的にあります。そうしなければ南北問題が解決できないわけでございます。南北問題だけではなく、人類の平和が維持できないということで、東西問題から南北問題に焦点が移っておるわけでございまして、ケネディラウンドの採用はまさにそれでございます。今度は東京において九月には新ラウンドの決定のための総会が開かれるわけでございます。ですから、そういう意味で、工業化ができておらない人類が、とにかく七〇%も七五%も地球上に存在するのだ、だから、主要工業国というものは、なるべく一次産品は低開発国と俗にいわれる開発途上国から買ってくるようにしなければ平和維持ができない、こういうことであって、そういうことは石油問題にもみな転化してきているわけでございますから、大筋として自由な貿易ということをたてまえとしておる日本としては、新ラウンドを推進しなければならないし、やはり全部が全部一次産品無関税、一〇〇%自由化ということはできませんから、三十二品目のうちから二十六、七品目農産品を押えておる。これだけごうごうたる非難の中で押えておるということでありますから、政府の一次産品に対する政策の基本的な態度というものは御理解いただけると思うのです。これが一つです。  二つ目は、アメリカに行ったときに大豆の問題、これは話してまいります。長期的なお得意であるから、日本はとにかく九〇%もアメリカによっているわけですから、多様化するといっても、いまよそはみな不足である。中国大陸も不足だ、どこも不足だ、ちょっとどうにもならない、アメリカにたよらざるを得ない。おそらくソ連も中国もみなアメリカとカナダに行っているわけですから、少なくとも長いお得意であったから、日本に対しては安定供給をするような確約を求めるというのは、これは日米合同委員会でも当然のことでございますし、首脳会談においても十分主張して、日本がなすべきことはやります。同時に、向こうからも計画生産をやったら必ず引き取ってくれるかという問題が出てくるわけですから、そういう問題に対しても十分論議をしてまいろうということでございます。  さっきのゴルフ場の問題ですが、これは今度法律が出ておりますから、森林地帯は森林法で、それから市街化区域やそういうところは市街地再開発法や都市計画法で、農地は農地法で、こういうことで全部ワンパッケージでもって片づくようになっておりますから、そこらはひとつ御理解のほど、お願いします。
  195. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ちょっと御説明をしておきとうございます。  それは大豆の問題で、自給率を上げる、それについては、食品用の大豆は少なくとも国内で自給ができるようにつとめたい、一二%の自給率とは申しますけれども、食品用の大豆に重点を置いて、少なくとも七、八〇%まで持っていこう、こういう考えでございます。大豆かすの問題もございますが、食用油につきましては別途いろいろ考えられる、こういうことで大豆のことについては申し上げておるわけでございます。  それから、国際分業論のことにつきましては、私はこういうことを申し上げておると思うのであります。今回の世界的な食糧需給の逼迫から、これからの日本の食糧をどうするか、その場合に、基本的には国内で生産できるものはできるだけつくることがよろしい。しかし、日本に万一気候異変が起こらないとはだれも断定はできないのであるから、そういうことも考えておけば、国際的なつき合いというものも必要である。だから、その辺はいろいろ勘案しながら、なかなか政治の上からはむずかしい問題であるということを申し上げておるわけでございまして、基本的には、食糧政策として国内ででき得る限りつくっていくということについては、農林大臣として当然の職務だと思っておる次第でございます。
  196. 神田大作

    ○神田委員 これは時間がかかりますから、あとで大臣の見解についてただしましょう。  一体米審はいつやるのです。いつ米審をやって、こういう問題を検討するつもりです。
  197. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 きょう午前中に総理の決裁も得まして、八月一日、二日に米価審議会を招集することにいたしました。なお、あるいは三日に及ぶことあるべしということで、そのことも通知の中に明らかにした次第であります。
  198. 神田大作

    ○神田委員 今年度の米価はそういう自治体の農政問題等もあるわけですから、例年のような日にちではとっても無理じゃないか、四日なり五日なり時間をかけてみっしりした審議をすべきであろう、私はこういうように考えますが、大臣、どう考えますか。
  199. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほど総理から、自分がアメリカから帰ってきめるよ、こういうふうに言われておるので、お話のように、十分時間をかける、農政上の一番大事な米価問題でありまして、この際米価を中心としていろいろと生産者の方、消費者の方、中立の委員の方の御意見もちょうだいするに絶好の機会である、こういうことで十分時間をかける考えでございます。
  200. 神田大作

    ○神田委員 米価の問題についてお尋ねしますが、米価は過去四年間に八%しか上がっていないのです。物価とかあるいは賃金は一五%から二〇%毎年上がっている。ところが、四年間で八%しか上がっていない。今度農業団体が十キロ当たり二千百八十五円、六十キロ当たり一万三千百十円というような生産費・所得補償方式による最小限度の要求をしておる。もしこの要求が適正にいれられない場合には、予約を延期するとかあるいは出荷を拒否するというような非常に強い態度に出てきておる。これはいま日本の農業としましては、米価の問題ばかりじゃなしに、いわゆる価格対策が一番大事な重要な問題である。そういう観点から農業団体が要求する米価は適切な最小限度の要求だと私は思うのですが、これに対しまして総理はどうお考えになりますか。
  201. 田中角榮

    ○田中内閣総理大臣 農業団体がどのような要求をしておるかは承知をいたしておりますが、しかし、米価審議会という議を経ていろいろな問題を考えながら政府は最終的に決定をするのでございます。
  202. 神田大作

    ○神田委員 先ほど総理は生産費は補償するけれども所得は考えないというように私ちょっと聞いたんですが、生産費・所得補償方式に基づいて農民の要求する米価というものは、これはよくお考えになって、今後の農業政策の基本になるわけですから、そういう意味合いにおきましてひとつ十分これを尊重して米価の決定を行なってもらいたい、こういうように考えますが、これについてどう考えますか。
  203. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これは食管法に基づいて米価審議会に諮問をしてきめるのでございまして、いろいろな御意見はその際に私も十分承りたいと思っております。
  204. 神田大作

    ○神田委員 生産費及び所得補償方式に基づいて決定するという考えであるかどうか、お尋ねします。
  205. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 神田君に申し上げます。  申し合わせの時間がすでに超過いたしておりますので、結論をお急ぎください。
  206. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 食管法の規定に基づいて計算をいたします場合に、お話のようなことになると思います。
  207. 神田大作

    ○神田委員 時間が来たということですから、次の機会に質問します。
  208. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 これにて田中内閣総理大臣に対する質疑は終わりました。      ————◇—————
  209. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 次に、内閣提出農林漁業団体共済組合法等の一部を改正する法律案について、午前中に引き続き質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津川武一君。
  210. 津川武一

    ○津川委員 公的年金としてわが国の年金制度は貧弱であり、国民は安心して老後を暮らすことができない状態にあります。そこで、わが党は抜本的な年金対策の方針を明らかにしましたが、今回の政府の改正案はその年金を進める上できわめて不十分であります。そこで、年金を一歩でも前進せしめる意味で、私たちは社会党、公明党、民社党、三党と共同で改正案を出しました。今回は、私たち四党の改正案の実現のために努力すると同時に、私たちの改正案をいま少し進めて補完してみるという立場から、若干の質問をしてみたいと思います。  そこで、午前中の柴田委員質問にも出ましたけれども、新旧法の問題であります。新法の既裁定年金者及び新規発生年金者のみに今回の改正が適用されて、昭和三十九年九月以前の旧法の既裁定年金者にはその引き上げの効果が及んでいない。私たちは厚生年金の最低保障額がすべての年金者に適用される。そのために新旧の差別はあってはならない。これが年金の公平性というものだと思うのですが、これをすみやかに是正すべきだと思うのです。新旧両方同じように年金の恩恵に浴させるべきだと思うのですが、大臣はこの点どんなふうに考えておりますか。
  211. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 新法の始期については各共済組合制度間に相違がございますが、各共済組合制度とも旧法と新法とがあり、給付については原則として旧法下のものは旧法、新法下のものは新法で措置するもの、こういうふうにしておるわけでございまするので、この点は御理解をいただきたいと思います。
  212. 津川武一

    ○津川委員 そこで、いまの問題になっている年金ができたのは昭和三十三年、それから国家公務員共済制度が新法になったのは昭和三十四年。私たちの年金ができたのは三十三年、私たちの年金が新法になったのは三十九年。  私は、いまの農林年金を、三十四年に国家公務員共済制度を新法にしたとき一緒にやるべきだった、それをやらなかったためにいまみたいな差別が出てきたので、これは行政上の手落ちがあったんじゃないか、おくれているのは行政上の問題に問題があるんじゃないか。したがって、この際なので、きょうとは言わないけれども、今回とは言わないけれども、すみやかに改正する方向に大臣としての方針をとるべきじゃないかと思うのですが、この点はいかがでございます。
  213. 内村良英

    内村(良)政府委員 新法と旧法の関係につきましては、ただいま先生から御指摘がございましたように、国家公務員共済昭和三十四年から、農林年金昭和三十九年から、旧法が新法に切りかえられておりまして、そこに不均衡があることは事実でございます。しかしながら、新法の始期の相違はございますけれども、制度的な扱いの違いはない。  そこで、この五年間の相違からいろいろな問題が出てくるのではないかということでございますが、先ほど大臣から御答弁もございましたように、新法は新法、旧法は旧法、これはそれぞれ——午前中も御答弁申し上げましたけれども年金はやはり掛け金を払って給付を受けるという体系になっておりますので、そこはある程度バランスをとらなければならないという問題がございます。  それじゃ、なぜ五年おくれたのかという問題でございますが、それぞれスタートが違いまして、さらに、旧法から新法に切りかえるにつきましてはそれぞれの準備があったというようなこともございまして、歴史的な経緯があるわけでございます。  そこで、それをどうするかということは、やはり午前中も御答弁申し上げましたけれども、国全体の共済年金制度全体の体系の中をどうするかというような問題と関連して検討すべき問題であって、これだけ切り離してやるということにはやはり体系上非常に問題があり、困難ではないかと思っております。
  214. 津川武一

    ○津川委員 そこで、年金は公平でなければならない、法のもとに国民は平等でもあるので。いまの局長の答弁も了解しましたが、大臣として、そういう点で、一元的な年金制度をつくるためにこれからおやりになる必要があると思うのですが、そこいらあたりの御所見を伺わせていただきます。
  215. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 局長のほうからお答えを申し上げましたように、掛け金の関係とかあるいはスタートが違っておったとか、そういうようなことでズレがあることは御了解がちょうだいできたと思うのであります。  ただいまのそういう差がないようにという御発言の趣旨は私にはわかりますけれども、なかなかこれが簡単に技術的に解決できないということで、この段階におきましては、早急に御趣旨のような解決をするということはきわめて困難だと思います。
  216. 津川武一

    ○津川委員 差別のないようにしていくことが、年金を進める上に必要なことだということは了解されたようですが、現実には困難だと言う。農林年金を見ると、ほかにもかなり差別のところがあるのです。  第二の問題は、沖繩県の問題です。  これも午前中に問題になったかと思うのですが、沖繩県の農林漁業団体農林年金は、昭和四十五年一月一日に発足した。発足にあたって、制度発足前の農林漁業団体に勤務していた期間をみなし期間として制度発足後の期間と同様の取り扱いをしております。それが今度沖繩が日本に返って——あの沖繩が日本に返るときには大臣も重要な委員会の委員長をしておって、沖繩県民をあたたかく迎えるという体制をとっておるわけですが、このみなし期間の給付が五五%、本土よりも少ない。こういう差別があるわけですが、これだとやはり問題があると思います。沖繩が返ってきたときのあの原点のお気持ちに返られて、これだけはぜひ是正してあげなければならないと思いますが、いかがでございます。
  217. 内村良英

    内村(良)政府委員 沖繩の農林年金制度の本土の農林年金への承継にあたりましては、沖繩が日本に返ってまいりますときにいろいろ議論されまして、そこできまりましたのは、先生御承知のとおり、組合員負担部分の掛け金が納付されていない期間に対応する給付の額について四五%の減額措置をとったわけでございます。  なぜそのような措置をとったかと申しますと、われわれといたしましては、もちろん沖繩が返ってきたときに沖繩をあたたかく迎えなければならぬということはもう当然でございまして、そこで、いろいろ沖繩の年金制度等も研究したわけでございますが、本土の組合員との均衡ということもまた一方において考えなければなりませんので、承継するにあたって、自己負担部分の掛け金が納付されていない期間だけについて減額措置をとったわけでございます。これは単に農林年金だけではなくて、他の共済組合制度においても同様な措置がとられたわけでございまして、国の中におきまして、各年金全部相談いたしましてこのような措置をとったわけでございます。  そこで、今後の問題でございますが、これはなかなかむずかしい問題でございますけれども農林年金だけの問題でもございませんので、関係各省とも十分連絡をとってなお検討いたしたいと思います。
  218. 津川武一

    ○津川委員 大臣、沖繩を日本に迎えるときに、沖繩の人がすでに享受しておる基本的なものは悪くしない、こういう大前提で沖繩を復帰していただいたつもりなんです。局長の言うみなし期間は、自己負担を出していないから、これはわかります。そこで、大臣として、そういう技術面ではなく、日本で沖繩の人をあたたかく迎えるという意味において、私はこの点で何らかの処置があってしかるべきだと思うのですが、いかがでございます。
  219. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 内村局長のお答えの中にございましたが、農林年金単独で処理すべきものでなく、他の共済組合制度においても同様の措置がとられておるということでございます。したがって、他にとるべき方法があるかどうか、そういうことも含めて関係各省庁間で検討をしてみたい、こう思います。   〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席
  220. 津川武一

    ○津川委員 その検討のイニシアチブを農林省がおとりになるということでございますか。
  221. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これは他の共済組合制度との間の相互の関連ということでありますから、あえて農林省がイニシアチブをとるとか、他省がイニシアチブをとるとかいうことでなく、あくまでも関係各省間で協議、検討いたしたい、こういうことを申し上げる次第でございます。
  222. 津川武一

    ○津川委員 私はきょう農林水産委員会でこの問題を取り上げて櫻内農林大臣の所信をただしました。そこで、どうしても社会労働委員会にもう一回出ていって、年金の主管官庁である厚生省のほうにこれを申し上げなければならないという状態ですか。それとも、私はそれをやらなくても、もう櫻内農林大臣のやることを信用していればよろしいということになりますか。この点ひとつ、できるかできないか私はわかりませんが、問題の提起をしていただく、これだけの質問が出たので、一つの原動力を農林省がとらなければならぬ、こう思うわけですが、いかがでございます。
  223. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 この委員会を通じて各省間との検討をと申し上げておるのでございまするから、適切な機会をとらえて検討をいたすようにいたしたいと思います。
  224. 津川武一

    ○津川委員 それでまあいいんだけれども、現地沖繩からの報告によりますと、農協職員が非常に減りつつあるのです。それはサトウキビが非常に困難な状態になってきた。海洋博がああいうふうにやることになって、海洋博の本ものの工事じゃないんだけれども、付属したいろいろな旅館なんかの工事で、復帰前は千五百円から二千円であった賃金が、海洋博のほうにいくと三千円から三千五百円になってくる。一方に農協仕事が非常に困難になってくる、こういう状態にありますので、農協職員に安心してそこで定着していただくとすれば、この点からもぜひ、沖繩の農業、漁業団体で働いておる人たち年金だけでなく、賃金その他の問題についても農林省の格別の処置が必要かと思うわけであります。午前中に農協職員の俸給の問題も出たのですが、それでもやはり本土よりも低くなっておりますので、沖繩の農業のために働いておる職員漁業のために働いておる職員、これに対して少しでも全国的な平均に近づけることが必要かと思いますが、全般のこういう職員の処遇に対して大臣の所見を伺わしていただきます。
  225. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 これは基本的に申し上げまするならば、農業経営漁業経営が全般的に向上がはかられてまいりまするならば、それぞれの協同組合においても十分な処遇ができることはもとよりだと思うのであります。しかるところ、いまの御質問にもありましたように、沖繩の基幹作物ともいうべきサトウキビの現状が、労働費の非常な高騰によっていろいろ影響を受けておるということは、農業サイドから見て、まことに遺憾なことでございます。この委員会でも種々御意見を賜わっておるのでございまして、来たるべき機会のサトウキビの価格に対しましては、これらの諸事情も反映して、沖繩農業の中心的なサトウキビ生産というものが十分継続のできるようにいたしたいと、こういうことを申し上げておるわけでございまして、こういうような農業経営あるいは漁業経営の向上即職員の処遇につながるものである、かように見ております。
  226. 津川武一

    ○津川委員 そこで、農林年金にはまだ差別があります。私たち、これは公的年金として発達さしていかなければならぬ、互助組織では済まされないと思っているわけです。公的年金であるから、本来の意味の互助組織でないからこそ、私は国庫補助も出ていると思うのです。  そこで、国庫補助の率ですが、厚生年金だと二〇%、船員保険だと二五%、農林漁業団体職員共済組合だと一六%、こういうふうに国から出る補助の間に差が出ていることは、これもそれぞれの発生過程の中に、歴史的な伸びの中にいろいろな問題があることは私もわからないわけではありませんが、ここいらあたりから、国が公平にするという態度を、まず国の出すべきものから示していくべきだ、このように思うわけですが、大臣、いかがでございますか。
  227. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 ただいまの津川委員のお取り上げになった例では、農林年金が国庫補助が少ないように御指摘でございまするが、私どもとしては共済年金制度における国の補助率、こういうことで見てまいりまするならば、農林年金における国の補助率は一番いいんじゃないか、こう思うのでありまして、したがって、私どもとしては、同じような性格の制度の中でこういう措置がとられておるということで、特に他の制度との比較からいま論議をするのがいいかどうかということについては、ちょっと疑問を持つものでございます。
  228. 津川武一

    ○津川委員 退職した後の老後の生活を見ていく、これが年金という制度であると思うのです。農林漁業団体職員共済組合、これも私は年金だと思うのです。その性格はそこにあるので、なればこそ国が補助していて。もう一つ言うと、厚生年金保険法で、鉱業関係では坑内夫が二五%、そして船員が二五%、だから低いのを見ないで、国が育てていくべきものの高いものを、国民のしあわせがよけい得られるようなものを、そこを基準として調整していくべきだと私は思う。なるほど共済組合の中に一五%のものもあります。大臣はそこは見るべきじゃないかと言う。もう一回大臣の見解を聞かしてもらいます。
  229. 内村良英

    内村(良)政府委員 ただいま御指摘がございましたように、厚生年金の中に坑内夫のように補助率が高いものがあることは事実でございます。ただ、共済年金と厚生年金につきましては、しばしば比較が問題になるわけでございますが、先生御承知のとおり、厚生年金の場合には六十歳から老齢年金の支給になる。ところが、共済年金の場合には五十五歳からなる。それからさらに、標準給与のとり方につきましても、共済年金の場合にはほとんど大部分のものが退職直前の三カ年をさかのぼってその平均標準給与にする。ところが、厚生年金の場合には全被保険者期間が対象になるというようなことで、いろいろ制度上の違いがございます。   〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕 そこで、単純にパーセントで比較することには多少問題があるのではないかというふうに考えておりまして、さらに農林年金の場合には、これは私学共済農林年金だけにあるわけでございますけれども、財源調整費というものがついております。そこで、農林年金の財源調整費を四十八年度分を率に直してみますと、一・七七%になります。したがいまして、一八足す一・七七ということになりますと、一九・七七、ほぼ二〇%になっているというような事実がございます。したがいまして、国庫補助率をふやすことは、これは大切なことでございますが、やはり全体のバランスというものを考えながらやらなければならぬということで、現在のところ、そうひどく不均衡になっておることではないというふうに私どもは考えておるわけでございます。
  230. 津川武一

    ○津川委員 調整財源をもっと出しているところもたくさんあります。これ以上出しているところもあります。そこで、数字的な問題ではなくて、国の一つの制度に対する基本的な態度を評価するバロメーターは補助率できまるわけです。そういう点で、このわれわれの年金というものはやはり差別がある。この差別の根本的な性格、年金の本質問題が出ているのは障害年金です。私たち共産党は、職務上の障害であろうが職務外の障害であろうが——国民の願っておるのは、そういう障害が起きないようにというのが第一の願いですが、起きた場合には、職務上であろうが職務外であろうが、やはりそこの職場につとめておるので、ここのところはそういう形で年金というものを考えなければならぬ、これがわれわれの根本的な考え方なんです。政府が出しておる考え方は労働政策的な面がある。自分たちの仕事のためにけがをした人は優遇する、そうでない人はどうでもよろしい。もっと言うと、労働政策的、労災的な考え方がある。そうではなくて、根本的に考えることは、一つの障害によって生活の手段を著しく阻害されたり失った人たちに対して生きていける道を講ずる、ここに年金の本質があるわけです。したがって、私たちは、職務外であろうが職務上であろうが、同じにするのが当然だと思っているわけです。こういう認識を大臣はいかが考えているか、これを伺わしていただきます。
  231. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 職務上といえ職務外といえ、その障害を受けた以上は同じように見てやるべきではないか、これも一つの見方だと思うのですね。しかしながら、よく公用上とかというようなことばも使われるように、あるいは公務の上からとかいうようなことばもございますが、通念的には、職務上から受けたという場合は、やはり職務外の場合とは受けとめ方がちょっと違うのではないかというのが一般的なように思いますよ。だけれども、けがを受けたその実質は同じじゃないかという御意見も、御意見としては一応お聞きもできるところはありますけれども、どうも一般的にどうかといえば、これは職務上のほうが優遇されておっても認められるのではないかというふうに私は感じます。
  232. 津川武一

    ○津川委員 いままでの若干の質疑でも明らかになったようで、わが国の年金制度というもので安心して老後を暮らせるようにするとすれば、その生活の根拠が奪われた人に対しては生活が保障できるようなかっこうの年金、これをつくることが私たちの主張でもあり努力でもあるということを申し上げ、一元的な年金制度をつくることを強く主張して、きょうの私の質問を終わります。
  233. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 次回は明十二日、木曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十五分散会      ————◇—————