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1973-06-14 第71回国会 衆議院 農林水産委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十四日(木曜日)     午前十時七分開議  出席委員    委員長 佐々木義武君    理事 仮谷 忠男君 理事 坂村 吉正君    理事 藤本 孝雄君 理事 山崎平八郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 柴田 健治君    理事 美濃 政市君 理事       金子 岩三君    吉川 久衛君       小山 長規君    正示啓次郎君       菅波  茂君    丹羽 兵助君       西銘 順治君   三ツ林弥太郎君       湊  徹郎君    森下 元晴君       安田 貴六君    井上  泉君       角屋堅次郎君    島田 琢郎君       竹内  猛君    野坂 浩賢君       馬場  昇君    湯山  勇君       中川利三郎君    瀬野栄次郎君       林  孝矩君    稲富 稜人君       神田 大作君  出席政府委員         大蔵省主計局次         長       吉瀬 維哉君         農林政務次官  中尾 栄一君         農林省農蚕園芸         局長      伊藤 俊三君        農林省畜産局長 大河原太一郎君         農林水産技術会         議事務局長   中澤 三郎君         食糧庁長官   中野 和仁君  委員外出席者         大蔵省主税局税         制第二課長   渡辺 喜一君         気象庁予報部長 毛利圭太郎君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 六月十三日  林業振興に関する決議の具体的実施に関する請  願(下平正一紹介)(第六九八二号)  同外四件(楯兼次郎君紹介)(第六九八三号)  同(中澤茂一紹介)(第六九八四号)  同(村山喜一紹介)(第六九八五号)  同(安宅常彦紹介)(第七〇九〇号)  同(柴田健治紹介)(第七〇九一号)  同外二件(島田琢郎紹介)(第七〇九二号)  同(田口一男紹介)(第七〇九三号)  同外四件(芳賀貢紹介)(第七〇九四号)  同(森井忠良紹介)(第七〇九五号)  同(山田耻目君紹介)(第七〇九六号)  同(阿部昭吾紹介)(第七一六五号)  同(神門至馬夫君紹介)(第七一六六号)  同外二件(佐藤敬治紹介)(第七一六七号)  同(楢崎弥之助紹介)(第七一六八号)  同外一件(福岡義登紹介)(第七一六九号)  同(美濃政市紹介)(第七一七〇号)  造林政策確立に関する請願外三十五件(永山忠  則君紹介)(第六九八六号)  同外一件(渡辺美智雄紹介)(第六九八七号)  同(大久保武雄紹介)(第七〇八六号)  同外三十七件(倉成正紹介)(第七〇八七号)  同(中村寅太紹介)(第七〇八八号)  同外三件(齋藤邦吉紹介)(第七一七二号)  同(浜田幸一紹介)(第七一七三号)  同(中村寅太紹介)(第七一七四号)  同外十六件(萩原幸雄紹介)(第七一七五号)  同外二件(橋本龍太郎紹介)(第七一七六号)  同外五件(湊徹郎紹介)(第七一七七号)  農林年金制度改善に関する請願吉田法晴君紹  介)(第七〇八九号)  飼料確保緊急対策に関する請願下平正一君  紹介)(第七一六三号)  同(原茂紹介)(第七一六四号)  オレンジ及び果汁の輸入自由化阻止に関する請  願外六件(倉成正紹介)(第七一七一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(麦価問題)      ————◇—————
  2. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  麦価問題について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安田貴六君。
  3. 安田貴六

    安田委員 私は、今月そう遠からずの日にちに決定を見ようとする麦価の問題に対して、若干の時間、農林省当局に御質問をいたしたいと存ずる次第であります。  そこで、麦価の問題、要するに、農産物価格政策の問題ですが、この問題に取り組みまする場合、私は何といっても、まず最近におけるわが国経済情勢というものを背景とした適切な麦価、これがどうしても必要になってまいるわけでありまして、そういう点からいって、若干、最近特に目を引くいわゆる春闘における労賃の上昇、こういう問題を端的にながめてみますと、政府関係公営企業体におきます今年度のベースアップの状況は、御承知のとおり、加重平均で一七・四九%アップいたしておりまして一万四千七十八円という数字になっている。民間ではさらにこれより上回るわけでありまして、平均をいたしますと二〇・一%上昇、二万五千百五十九円というアップになっております。さらに加えまして、これはもう一々申し上げるまでもありませんが、物価が最近とみに上昇しておりまして、このことは世論のきわめてきびしい批判の対象になっておりますことは御承知のとおり。  それに加えまして、農林省が出しております昭和四十七年の農業白書の中から、農林当局自身がなさっております指摘を若干抽出してみますと、最近のわが国農業事情はきわめてむずかしいいろいろな問題を提起いたしておるのでありまして、時間がありませんから、そう詳しくは申し上げられませんけれども国民経済という観点から見ますと、農産物価格が、米の生産調整等を含めまして、非常に低迷しておるというような特殊事情がある。したがって、農業所得伸び悩み、これが最近の特徴の一つだと私は思うのです。それから、農業就業構造老齢化、こういうような問題、あるいはいろいろな問題を背景とした地価の暴騰、こういうような問題を含めまして、そのほか農産物輸入拡大傾向が非常に著しくなってまいっておる。しかし、その輸入は、農産物についても世界的には需給はたいへん逼迫しておる、こういうような中で、わが国における国内農産物生産自給割合、これは低下をいたしてまいっております。そして総就業人口に占める農業就業人口割合も一四・三%とこれは低下減少をいたしてまいっておるのであります。そのほか農業比較生産性からいっても、これも製造業などと比較いたしますと、四十二年度は三九%でありましたが、これがだんだんと低下して、現在では、四十六年度では三〇%に低下しておる。あるいは生産水準比較からいっても、農業所得というのはこれはもう減少いたしておりまして、農家所得そのもの農外所得増高によりまして若干ふえておりますけれども、しかし農業所得はきわめて減少傾向が顕著である。それから、四十六年の農業生産は、普通畑作物減退等によりまして前年度を四・六%下回る。これは四十四年度以降三カ年間生産状態は下回っておる、こういうような情勢になっておるわけでありまして、したがいまして、だんだんと国内農産物自給率低下してまいっております。そういうような事情が、これは農業白書の中で農林省自体指摘しておるわけであります。  それから農産物価格問題については、先ほど申し上げましたように、生産者価格が四十六年度には前年度から一・七%上昇をしておるようになっておりますけれども、しかしこの一・七%というようなものでは問題にならぬことは言うまでもありません。こういうふうに、農村の諸般生産状態、あるいは需給問題、あるいは農家所得の問題、農業所得の問題、あらゆる面から見てもたいへん多くの問題をかかえておるわけでありまして、こういう状態は、平たく言うと、労働者賃金はどんどん上がる、物価もどんどん上がる、それから農業そのものの面においても、いま申し上げたような農林省自体指摘しておるような諸般の問題が伏在いたしておりまして、私は、農民方々がこれからの農業に対する希望であるとか、あるいは期待であるとか、生産意欲であるとか、そういうものについては非常に憂慮しなければならない事態に直面いたしておるものと考えるわけでありまして、こういうような事態をながめながらこれからの明るい農政推進しなければならない農林省当局としては、いま麦価問題をも含めまして、こういう麦価決定を目前にして、どのような基本的な考え方でおいでになるのか。時間もありませんから、明確に、簡単でけっこうでありますから、政務次官から総括的に御答弁いただきたいと思います。
  4. 中尾栄一

    中尾政府委員 先生から非常にかいつまんだ、なおかつ要点を得ました最近の見通し等もお話しをいただきましたので、かいつまんでお答えさせていただければありがたいと思います。  わが国農業を取り巻きます内外のきびしい情勢の中で、わが国農業近代的農業として確立し、国民食料を安定的、効率的に供給しながら、農業従事者所得生活水準向上をはかるためには、農業構造改善を基本として生産性の高い農業育成することがきわめて重要であると考えております。このため、今後十カ年にわたります新しい土地改良長期計画に基づきまして、農業生産基盤の整備を計画的に進めるとともに、農業団地育成農業構造改善事業推進集団的生産組織育成農地流動化促進等各般の施策を推進していく必要があることを認めます。
  5. 安田貴六

    安田委員 政務次官からいろいろ御答弁をちょうだいしましたが、私は端的に言って、これからの農政に対応する政府姿勢としては、まず自給率を高めるという姿勢が基本的になければならぬ。それからその次には、思い切った価格政策実施すべきである。それからもう一つは、食管制度というものは、従来からいわれておりますが、これをき然として堅持していく。それから、農業金融というものを徹底的に改善をはかるべきである。そのほかいろいろな問題がございますけれども、そういうような問題を特に私は強調いたしたいと思うのであります。  そこで、私は今回の焦点になっておりまする麦の価格の問題に触れてまいるのでありますが、最近十カ年ほどにおける、七カ年ないし十カ年くらいになりますが、日本における畑作物作付動向を見てみますると、これは農林省当局方々は私が言わなくたってわかっておることですから一々申し上げませんが、麦類、それからカンショ、大豆、アズキ、そういうようなものは特に昭和三十六年あたりから四十七年あたりまでの推移を見ると、極端に減反をいたしておるのでありまして、てん菜というのが北海道でつくられておりますが、これは大体伸び状態にある。こういうことを私はどうしても麦の問題に取り組む場合に触れざるを得ないわけでありまして、酪農のほうももちろん生産伸びが鈍化し停滞し、むしろ減退傾向に入っておりますが、こういうような面積減少、停滞というのは、私は時間がありませんから御質問申し上げずに私の意見を申し上げますけれども、端的に言って、生産奨励対策あるいは価格政策が不十分なものほど減反しておる。これは端的に証明できるわけです。これは作物別になぜ減ったかという理由皆さん方が検討する過程においていろいろな幾つかの要素は出てくるでしょうが、その中でてん菜のごとくわりあい価格政策——農民の立場からいえばまだ不十分ですけれども、他の作物比較すると、価格政策についてもわりあいに適切に近い手が打たれておる。こういうものについては面積は減っておりませんが、価格政策が不十分なものほど非常に面積が減っておるわけであります。  そういうことでございますから、従来の農林省の結果的にだけ批判して申し上げますると、従来のこういう畑作物に対する農林省政策価格政策というものを非常になおざりにしてきておる、そうして安易な輸入依存の方向に走り過ぎたきらいがどうしてもある、これを指摘しなければならぬと思うのでありまして、これは農林省としても強く反省すべき点でないかと私は思うのですが、この点に対する、これは政務次官がいいのかあるいは食糧庁長官がいいのか、どちらでもけっこうですが、ひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  6. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまの価格政策との関連でのお尋ねでございますが、農林省といたしましては、作物によりましていろいろ政策とり方は違っておりますが、作物の七割程度価格支持あるいは直接政府買い入れというようなことでやっておりまして、先生方から見れば、あるいは不十分な点もあるかと思いますが、相当程度価格政策に意を用いているつもりでございます。  ただ、輸入との関係で申し上げますと、やはり需要がどんどん強くなる。それに対しましてやはり相対的に、それから高度成長経済の中にあって他産業への従事、兼業というようなことから、かなり冬作物が減ってきておるというようなことでございまして、その点につきましては、やはりいろいろな手をもちまして、そういう減退していく作物生産増強ということをそれぞれの作物需要に合わせてやっていくべきだというふうに考えます。
  7. 安田貴六

    安田委員 そこで、四十八年における麦類作付面積は一体どうなのか、これをちょっとお聞きいたしたいのです。予想というよりも大体農林省ではつかんでおると思うのですが、それをちょっとお知らせいただきたいと思います。
  8. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 お答え申し上げます。  五月十五日現在主産県を調べました作付面積でございますが、四麦合計十二万三千六百ヘクタールということになっておるわけでございます。ちなみに、前年が十九万一千八百ヘクタールでございます。
  9. 安田貴六

    安田委員 いまのお話のように、十二万ヘクタールに下がっておるということですが、四十七年が二十三万五千ヘクタールになっておるようですから、半減しておるということが端的にいって言えると思うのです。こういうような状態で、昨年の十月に政府が出しておるいわゆる農産物需給見通し生産目標、こういうものから見ても——これは農林省自体が発表しているところによると、五十七年には自給率三%で面積は三十一万九千ヘクタールを確保したい、こういうことをいっておる。私はこれ自体が少な過ぎると思っておりますが、そういうような農林省自体が考えておる目標から見ても、三分の一になんなんとするところまで、もうすでに四十八年でそこまで来てしまっておる。こういうようなことでは、昨年の十月につくられた長期生産目標についても、五十七年の三十一万まで挽回するのに一体どうするかという問題がすぐ思いつくのですが、こういうような面に対してはどういうふうにお考えになっておるのか。  それからまた、麦類というのは、畑作全体の作付計画からいうと、これはローテーション、輪作体系の適切な実施という観点からいうと、いまのような面積では、私は畑作全体の作付計画としても適切だと思えない。やはり五、六品目の畑作物が循環的に輪作をして、そして五年ないし、ものによって違いますけれども、おそくとも六年ぐらいには一巡するというたてまえになっておる。それから病害虫の防除という点からいっても、麦間作物というのは絶対必要なんです。農業技術からいって必要なんです。そういう指導が農林省でなされておるということからいっても、麦類というのは、農業技術肥培管理という観点からいってもきわめて重要な作物でありますが、それが極端に減っておる。こういうような情勢に対応して、昨年の十月にこういう長期見通しを出された農林省当局としては、一体どうしてこれを挽回されようとされるのか。どうしてこの面積を回復して、せめて五十七年における三十一万九千という約束の面積を確保しようとされておるのか。この点に対する、端的に焦点に合わせた答弁だけでけっこうですから、お答えをいただきたいと思うのです。
  10. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 ただいま先生指摘のように、麦の作付面積減少して私ども憂慮をいたしておる次第でございます。国内の麦の生産対策でございますが、麦というものが本来水田との関係、あるいは畑の輪作体系上重要な作物であるということは、先生指摘のとおりでございます。同時に、麦が機械化栽培が非常に容易な作物であるというようなことでもございますので、私どもといたしましては、麦作作業規模拡大機械化というようなことで生産性向上をはかることが何よりも肝心だというように思っておるわけでございます。  こういうようなことで、水田におきましては米と麦の一貫した機械化作業体系推進、また畑におきましては合理的な輪作体系の中で生産振興をはかるというようなことを考えまして、麦作適地を中心に中核的農家群によります農作業の受委託、期間借地等を通じまして生産性向上につとめ、麦類安定的供給をはかるように努力をいたしたい、こういうように考えておる次第でございます。  なお、ただいま先生指摘のように、畑作連作障害というようなものを回避するという面から麦を入れていくということは非常に重要なことだと思いまして、そういうものの考え方で特に北海道等畑作地帯における麦作振興をはかってまいらなければならないと考えております。
  11. 安田貴六

    安田委員 そこで、私は時間もありませんので自給問題等には触れませんが、ただ、私は、農林省のほうでいろいろと計算されておるものの中から、この麦をつくっておる農家家族労働報酬というものを見てみますると、非常に低いのです。四十六年産の場合で言うと、一々申し上げませんが、大麦は四百四十一円、裸麦が四百十六円、ビール大麦が千四百五十六円、六条大麦が千九十円、こうなっていますが、家族労働報酬が四百円とか千円とかということであっては、これはもう農家において麦をつくる気が出てこないのはあたりまえだと私は思うのですが、これは問題はやはり価格も問題になっているのです。買い上げ価格が低いから結局家族労働報酬が低くなるわけです。ですから、粗収入も低い。したがって家族労働報酬も低い。生産費そのものはかかるだけかかるのですから、どうしても政府買い入れ価格が問題になってくるわけでして、そのために家族労働報酬が低くなるわけで、これでは農家が喜んで麦をつくるはずがないと私は思うのでありまして、そういう点を農林省としてはどういうふうに御認識になっておるのか、この辺のところをどう御理解になっておるのか、時間もありませんから、端的に御答弁いただきたいと思います。
  12. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 家族労働報酬につきましては、ただいま先生指摘のように、麦につきましては現在非常に低いわけでございます。これは麦の作付規模が非常に小さいということが一番大きな理由ではないかというように私ども考えております。ちなみに私ども、大規模でありますとどんなことになるかというようなことでちょっととってみますと、北海道あたりで大規模にやっております場合には、家族労働報酬が非常に高い。びっくりするほど高いので、ほんとうに信用していいのかどうかというくらい高い数字も出ておるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、やはり規模拡大する——土地流動性というものはなかなか望み得ないものでありますから、集団的生産組織によって機械化して麦作を行なうということが一番いいことではないかというように考えておるような次第でございます。
  13. 安田貴六

    安田委員 私は農業近代化であるとか、あるいは構造改善であるとか農用地の拡大、そういう要するに構造政策的な観点あるいは肥培管理改善、こういう問題からくる麦類の問題あるいは畑作の問題というのは当然のことなので、私はそれはそれなりの理由はあると思いますけれども、いま局長さんのおっしゃっているように、こういう家族労働報酬の低いことが、全部農業経営適正規模にまで拡大されておらないからだというような片づけ方というのは非常に適切でないと私は思うのです。やはり率直に反省するところは反省していくべきなのであって、そういうことだけではなく、私は価格政策の問題にも影響があるのではないか、そこにも原因があるのではないかということを指摘しておるので、これからの答弁の中でもそういう点に対する御配慮をいただきたいということを特に申し添えておきたいと思います。  それからもう一つ、さっそくですが、今度は買い入れ価格の問題に入りますけれども、大体麦類というのは、三十八年に二千円台であったものが四十七年には三千四十三円というのですから、大体十年間に千円アップしておる。五〇%上がっておる。私は、十年間に五〇%しか上がらないものというのは日本の中にほとんどないのじゃないかと思うのですが、いろいろなものをこまかく調べておりませんからはっきり言えませんけれども、常識的には大体十年間に五〇%程度伸びしかないというものはほとんどないと言っても過言でないと思う。そういう状態のものがいまの麦の価格なんです。  そこで、私は、今月の何日になるかわかりませんが、近々決定されようとする麦価の問題、これは御承知のとおりパリティによって計算されるわけですから、もう今月きめるパリティ指数というものは大体できていると思いますが、これによると、ことしの麦の値段は何ぼになるか、試算されたものがあれば、それをちょっとお漏らしをいただきたいと思います。
  14. 中野和仁

    中野政府委員 御指摘のように、麦の政府買い入れ価格につきましてはパリティ指数によって算定をしてきております。六月にきめます麦につきましては五月のパリティを使ってやることになっております。いまそのデータが集まってきまして、麦の米価審議会を十九日にやるつもりでございまして、それまでに間に合わせるように一生懸命やっております。ただ、ここで申し上げられることは、最近農家経営部門あるいは副業部門にしましてもかなり物価なり賃金が上がっておりまして、本年はいままでの年に比べますとはるかに指数が上がっております。かなりな値上がりになるんじゃないかというふうに思っておりますが、具体的な数字はいま計算中でございます。
  15. 安田貴六

    安田委員 パリティ指数がまだ出ておらないということですし、自民党の政調の中でも議論ができますので、私はこれ以上申し上げません。とにかく、総じて農産物支持価格制度というものを政府でとっておりますが、この制度そのものは私は根本的、抜本的に改定を要する時期に来ておると思います。しかし、きょうはこの問題については触れませんが、乳価の問題もそうでありますし、大豆の問題あるいはビートその他の甘味資源あるいはでん粉、これらの問題はすべていわゆる労働賃金とり方の問題、それから生産費計算の方法の問題、これは農林統計そのものを直さなければならぬのですから、そのほうにメスを入れていかなければなりませんが、そのような問題等について抜本的な改正を必要とする時期に来ている、こういうふうに申し上げてよろしいと思うのであります。そこで、四十九年度予算編成等も間近に控えておるわけですから、そういう面に対して、農林省にとくと御検討おきをいただきたいということを特に申し添えておきたいと思います。  それから、四十八年産麦価の問題ですが、これは前段ただいままで申し上げてきたように、話にならぬほど安いのですから、パリティだけでは手に負えぬと思う。パリティ指数が相当伸びるといわれておりますが、パリティがかりに一五%伸びたところで一五%のアップにしかならぬ。もともとが安いのですから、一五%アップしたところでたいした金額にはならない。こういうことでありますから、これはひとつこういう一般の買い上げ価格のほかに、麦作農家が本気になってやって、農林当局の考えておる五十七年の三十一万九千ヘクタール、あるいは私の希望するところによれば、むしろ五十万ヘクタールくらいつくってもらいたいと思うが、そういう面積に近づけるためには、私はやはりどうしても麦作農家生産費を補償するという点と、再生産を確実に確保できるという価格でなければならぬと思うのであります。そうなると、いまの買い上げ価格だけでは間に合わぬ。したがって、これに対して特別の奨励金制度というものを設けて、そして麦作農家に対する意欲増進向上に一段と効果のあがるような施策を実施すべきだと思うのですが、こういうような面に対してはどういうようにお考えになっておるか。これは長官なりあるいは政務次官どちらでもけっこうですが、お答えをいただきたいと思います。
  16. 中尾栄一

    中尾政府委員 麦の管理改善対策は生産需要を結びつけることによりまして、需要者の麦の品質に関する選好や需要、土地に応じた生産を誘導することを本旨としておりまして、契約生産奨励金はこの目的に沿って交付されるべきものである、こう考えております。このような考え方に基づきまして、政府は四十五年度産以降、契約生産奨励金を増額してきたわけでございますが、これをさらに引き上げることにつきましては、四十八年度産の減産予想なども十分に考慮しまして、引き上げの効果についても十分確認の上に慎重に対処する必要がある、このように考えておる次第でございます。
  17. 安田貴六

    安田委員 いまの政務次官答弁は私の質問に対する答弁ではないと思いますが、それはいいです。いいですが、私の申し上げているのは、麦の作付に対する政府買い入れ価格ではどうしても対応できない麦作農家に対して、十アール当たり一万円がいいのかあるいは一万五千円がいいのか、これはいろいろ考え方があるが、食糧庁サイドでなくて、農蚕園芸局サイドにおいて特別奨励金、作付奨励金というものを実施することが必要ではないか、これに対する考え方をお尋ねしたのですが、時間がありませんから答弁は要りませんけれども、私はそういう意見を持っておりますので、この問題については十分御検討いただきたいということを私は特に申し添えておきます。  そのほか麦作の問題については、農家生産意欲を振起させるにはいろいろな方法がありますけれども農産物作物ごとの助成政策というものが一番大事だと思うのです。生産基盤のように何をつくってもいい——土地に対する政策は別ですが、農産物については米は米、麦は麦あるいはビートはビート、こういうふうにやっていくのが正しいと思うのです。そういう点では、農林省は従来もそういう形はとってきておりますが、麦に対してはあまり熱が入っておらぬと考えるのであります。四十八年度の予算を見ますと、麦に対する生産対策事業費としては十億ほど見ておるようであります。その中で特に稲作転換の関係の奨励の面に金を使っておるようでありますが、こういう点に対して思い切った重厚な生産対策事業費の予算を増額して、四十九年度以降これを実施していただきたいということを私は特に注文いたしておきたいと思うのであります。  それからもう一つの、いま政務次官の御答弁になられたのは麦の管理改善対策事業の問題でございますが、これはいまお話がありましたように、これは質問の前に御答弁をいただいたような形になりますが、いまの契約生産奨励金は一昨年から小麦が二百円、大麦が百円、裸麦百円、こういう奨励金になっておる。これも少なくとも倍増しなければならぬものだと思うのです。  それからもう一つは、等外上麦の買い入れを、麦の政府買い入れ価格がきまる時期と同時にどうしても決定しておくということが必要だと思いますが、こういう面に対しての農林当局考え方をお聞かせいただきたいということと、もう一つは、麦の管理改善対策事業というものの中で、耕作している場所、まいているところが製粉工場からたいへん遠いために、対策から除かれておる心配のある地域が北海道などについてもありますから、これについては、せっかくつくった麦について対策事業から除外する、そして契約生産奨励金の交付対象からはずされるというようなことの絶対ないような仕組みをどうしてもとってもらわなければならぬと思うので、この麦の管理改善対策事業については三点について御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  18. 中野和仁

    中野政府委員 ただいまの契約奨励金の問題につきましては政務次官から御答弁があったわけでございますが、われわれとしましては、先ほどのお話のように、また麦が減るというようなことを頭に入れましてひとつ慎重に検討いたしたいと思っております。  それとの関連でただいまの遠隔地の契約奨励金の取り扱いの問題でございますが、かつて契約栽培をやりましたけれども、やはり距離が遠いためになかなか契約ができないというのが北海道にございまして、そこで、政府の売り渡し価格につきましてトン当たり三百五十円の値引きをいたしましたことと、それから契約奨励金の一部を積み立てて運賃の助成をするということによりまして、ここ二年ほどは非契約麦は出ておりません。しかし、そういういろいろな御希望もございますので、今回の麦価をきめます際に、その点も念頭に置きまして検討を進めたいと思っております。  それから等外上麦の買い上げの問題につきましては御要請が毎年のようにあるわけでございますが、これは通常の場合でございますと、なかなか普通の食用にはしないということで、災害の場合に対応してやるということになっております。ことしも九州等にも若干災害があるようでございますので、御指摘のように、麦価をきめます際か、あるいはそれに近いときになるべく早くその買い上げをきめたいと思っております。
  19. 安田貴六

    安田委員 時間が切れてまいりましたのでこれで終わりたいと思いますが、いまの等外の麦については、もう毎年どうせ買い上げることになるのですから、麦の値段のきまるときに買い上げをきめる、そういう明確な姿勢農林省当局農民に示していただくべきだと思うのです。毎年毎年実際買ってやっておるのにもかかわらず、何か何回も何回も陳情して、そして時期がずるずるおくれていって、その中でようやく腰を上げたようにして買い上げをきめる、そういうやり方というものはぼくは改めるべきだと思うのですよ、そんなに毎年買ってやっておる実績があるのですから。ことしそういう制度をしくものでもないんだから、農民方々が喜んで、なるほど手っとり早くきめてくれたという印象を農民の人方に植えつけるような措置をやらないと、結果的に同じことをやるのに、喜ばれないやり方をとるということになると思いますから、そんなばかなことはないと思います。この点について私はよく再検討をお願いしておきたいと思います。  私は先ほど来申し上げましたように、総じてもう労賃は上がる、物価は上がる。それから農業関係の、農家のいわゆる構造政策をやりながらでも農業構造というものは決して平均的には高まっておらない、低下しておる、そして就業人口も減っておる、専業農業はますます減ってくる、第二種兼業農家がふえてくる、こういう、農業構造の理想像からいえば、マイナスの傾向、後向きの傾向をたどっておるというのが最近の日本農業の実態であります。したがって、こういう中において麦の値段をきめるという今日、いかなる価格をきめるべきか、いかなる価格政策をとるべきかということは自明の理だと私は思うのでありまして、こういうようなことから、今回の四十八年の麦の値段については十カ年間に五〇%程度、しかももともとの金が二千円台ですから、何ぼ五〇%上がっても千円しか上がっていないのです。こんなものはほかのものにはないのです。賃金にもなければ物価にもない。だから、こういうことが農業政策だけにあるということは私はいかぬと思うのです。是正すべきだと思うのです。端的に言って、他の製造業なんかというのは自分のつくったものは自分で値段をつけられるのです。農作物に限っては自分で値段をつけられないのです。これはどういうわけですか。それで支持政策というのを政府がとっておるのじゃないですか。生産者そのものが自分で値段をつけられないものであるがゆえに、政府がこういう支持政策をとっておるのです。その支持政策をとっておる政府のやり方が適切なものでないとするならば、一番みじめな結果におちいるのは農民自身なんです。私はこれを特に強調して、そして四十八年における麦価については、少なくともいままでのいわゆる価格政策に対する強い反省の上に立って、なるほど政府よくやった、農林省よくやったと言われるような麦の値段をきめていただくことを強く要請いたしまして、私の質問を終わります。
  20. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 竹内猛君。
  21. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 まず最初に、六月の八日にたいへん異常な天候がありまして、栃木県、埼玉県、茨城県、この方面にひょうが降り、その被害というものは非常に甚大なものがありました。われわれの茨城県の場合においても六月九日の十五時現在において約十億の損失があります。これに対して、現地ではもちろん対策は立てておりますが、農林省としても調査をして、適切な指導、それから援助、助成をしてもらいたいということをまず最初に要請をします。この点、ひとつ。
  22. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 ただいま先生のおっしゃいましたような災害が関東に発生をいたしましたことは私ども承知をいたしております。ただいま統計情報部等の機関によります情報を至急集めておる最中でございます。その結果によりましてしかるべき手を打ちたいと存じております。
  23. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 麦の問題に関して五十七年の長期展望というものを去年の十月に農林省は出された。その中で麦が非常に粗末に扱われているという感じがします。特に先ほど安田委員からも質問がありましたけれども、麦が日本の食糧の中の相当重要なウェートを占めていながら、外国の麦が安かったためにそれを輸入してその逆ざやで食管の米のほうの赤字を埋めるという方針をとってきたように思う。ところが、最近はもう内麦、外麦ともに赤字になっていてそういうような操作もできない状態になってしまった。そこへ持ってきて、海外の麦の事情というものが必ずしもよくない。こういう長期見通しと現状の段階で矛盾はないかどうか。私はもう現に狂っていると思うのだけれども、狂っていないという保証があるかどうか、その点を明らかにしてもらいたい。
  24. 中野和仁

    中野政府委員 御指摘のように、昨年の十月の見通しと現状と見ますと、狂っているといいましょうか、かなり作付面積生産が落ちております。ここに追いつくためには相当な努力を要すると私は思います。ただ、その場合には、在来の麦の生産といいましょうか、そういうようなことではなかなかいかないと思います。やはり能率的な規模の大きな経営を少しでもよけいつくっていって、それに追いつくということを考えるべきではないかというふうに思います。
  25. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、最近気象条件というものが世界の食糧の事情を相当左右する、日本の場合においてもことしは、二十七年と三十九年と同じようにすでに不吉な予報が発せられております。そういう中ですでに北海道では五月の段階で雪が降る、そして先ほど申し上げたとおりに、関東においてもひょうが降る、あるいは台風が当然いまごろになれば七つ八つは出るものがいまだに出ておらないという状態、こういう状態というものは、これは通常な状態ではないと思う。そういう気象的変化というものが世界の食糧あるいはまた日本の食糧の前途に不安を与え、そして新聞などでは常に気象による食糧の危機ということがいわれておる。気象庁のほうから見て、この予測に対する見通しというものはどういうことになるのか、この点について説明を願いたい。
  26. 毛利圭太郎

    ○毛利説明員 申し上げます。  世界の気候が少しずつ変りわつつあるということは、世界の気象学者や気候学者がいろいろ調べておりまして、この二十年くらいの間に少しずつ世界の気温が下がる傾向が出てきております。特に北緯六十度から北のほうでは、温度が下がるということが非常に顕著な形であらわれております。  日本におきましても、戦後はあたたかい年があって、豊作の年が続いたのでございますが、近年はやや気温が低い年があらわれて、北日本では冷害が起こりやすいという状態が間々あらわれるようになってまいりました。  一方南の国で、たとえばインドとか中国南部のようなところでは気温はあまり変わりませんで、かえって雨が減って干ばつが起こりやすくなるというような傾向になっております。  こういうふうな状況におきまして、やや異常な現象があらわれておるのでございますが、気温が下がるという傾向は、毎年毎年下がるということでは決してございませんで、これからあたたかい年も寒い年もございますけれども、どちらかと申しますと、気温が低い年があらわれやすいということでございます。  なお、この原因につきましては、いろいろ研究調査をしておりましても、残念ながらよくわかっておりません。したがいまして、今後この傾向がずっと続くかどうかということは申し上げられないのでございますが、現在までのいろいろの資料から判断いたしますと、なおしばらくはこの寒冷化の傾向が続くのではないかと思われます。  この問題に関しましては、農業気象とも非常に関連いたしまして重要な問題でございますので、気象庁といたしましてももっと調査をしてみる必要があると存じております。
  27. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 気象庁のそういうような予報の見通しの上に立って、農林省は五月二十四日に各関係地区に対して気象の悪化というものに対応する通達を出したということがいわれているけれども、これは事実かどうか。
  28. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 五月二十一日の三カ月予報これは気象庁発表でございますが、これに対応いたしまして六月一日に農林省の官房長名で異常気象に対する技術対策の通達を出しております。  水稲につきましては深水かんがい等の水管理をやり、施肥技術、品種の選定等につきまして指導をいたしております。
  29. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そこで、麦の問題でありますけれども、先ほどから質問をしておりますように、従来麦が日本の食糧の中では相当なウェートを占めておりました。三十五年ごろは百四十万ヘクタールぐらいの麦の作付があったわけですけれども、いまではそれの十分の一ぐらいに減っている。特にことしは十二万六千ヘクタールという形になった。ますます減りつつある。その減っている主たる原因はどこにあるか、その点を説明してもらいたい。
  30. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 近年におきまして麦の生産が著しい減少を見ております。その原因としまして、私どもは次のように考えております。  その第一点は、麦作規模が非常に零細性がございまして、わが国麦作農業経営の中でだんだん従属的な性格を強めてきております。また経営がきわめて零細の上に圃場も分散しておるというようなことで、個々の農家機械化麦作実施することが非常に困難であるというようなことでございます。そういったことが麦作生産性を低める、また収益性を低めるというようなことにもなっておるわけでございます。  それから第二は、兼業機会の増大による農業労働力の流出の問題でございます。他産業におきます賃金水準というものが麦作における労働報酬を上回るというようなことで、麦作を放棄するというような事態が出ております。  それから第三点は、麦作と前後作の問題でございます。これは水田畑作両者別々に考えなければいけませんが、水田の場合には、特に米の田植えが機械化されるに伴いまして、田植えの時期が早くなりつつございます。これが麦の収穫時期と競合をいたしまして、そういうようなことから麦の作付をあきらめるという傾向がございます。また畑作につきましても、マルチ、トンネル栽培というような技術が普及するに伴いまして、落花生、カンショ等の作期との関係で、麦が非常に入りにくくなってきているという点もございます。  またもう一つ、間作の麦というものがあるのでございます。こういったことも、従来風よけというようなことでやっておったわけでございますけれども、先ほど申し上げましたマルチだとか、いろいろな施設、資材が入りますに伴いまして、そういったものが排除されていく、また同時に、間作でありますと非常に機械化がむずかしいという点もございまして、そういう点が麦作の減った原因のおもなものをなしております。  なお、九州におきましては、やはり長雨の問題がかなり問題になっておるわけであります。
  31. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 いろいろ説明がありましたけれども、端的にいって、農家は麦をつくるよりもほかの仕事をしたほうが割りに合うということだと思う。もうはっきり言ってそれだけだと思うんですね。麦をつくることが他の仕事をするよりもよければ麦に集中するはずなんです。ともかく三十六年農業基本法ができる前の段階から、現在はますます減ってきて、作付が一〇%しかないという状態というものは、どう見ても、基本的な問題は収益性がない、合わないということなんだ。農業白書を見ても、一日の日当、米なら二千三百円、麦の場合には四百六十円にしかなっていない。この事実が明確に証明している。だから、農林省としては、麦というものは日本農業にとって必要なのか必要でないのか、もうじゃまにしているんじゃないか、こういうふうに思うんですね。これはどうです。ほんとうに心要なのか、その点、はっきりしてもらわないとあとの話ができなくなってしまう。
  32. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 先ほどもお答え申し上げてあったのでありますが、麦は米と、水田及び畑作の中におきますやはり重要な作物でございます。輪作作物の上でも非常に重要でございますし、米の裏に入りまして農家所得を助けるというような意味で重要でございます。私どもはそういった作物の維持、振興をぜひはかっていかなければならないということで、従来からも努力を傾けておるわけでございます。先ほどもお答え申し上げましたように、一番のあれは、経営規模が小さい、作付の規模が小さいというのが大きな理由でもございますので、私どもといたしましては、集団的な生産組織というようなものを育成して大きな機械を入れていく、あまり大きいのが無理だとすれば、中型の機械を入れていくというようなことをやりまして、麦の生産性向上をはかっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  33. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 最近、六月の初めに経済界においても、麦をはじめとする中心的な食糧は自給体制をとれ、こういうようなことを要請している。また、五百万の組織を持つ生活協同組合連合でも、重要な農畜産物は国内で自給するべきであるという決議をしております。そういうように、主要食糧をできるだけ自給の方向へ持っていく、そして、多少そこには財政的なめんどうがあったとしても、これを確保していこうとしていることを御承知かどうか。これはどうですか。
  34. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 御指摘のように、私どもといたしましては、国内で供給できる範囲の食糧というものは国内自給というようなことで、できるだけ努力をはかっていかなければならぬというように考えております。麦についても同様でございます。
  35. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 そうだとすると、麦に関する今日までの取り扱いというものは私は非常に不満なんです。十九日に米価審議会で麦の価格をきめるというけれども、今日まで麦の価格をきめるに際しまして、常に政府の答申に対して、やむを得ずこれを了承するけれども、次のことはぜひやってもらいたいという附帯決議がついている。その附帯決議は年を経るごとにきびしいものになっている。去年の附帯決議などは相当きびしい。ほんとうは返上したいところだけれども、まあまあ次のことをやることを前提としてやろうじゃないか、こういうふうになってきておるのに、これがどのような形で具体的にこの附帯決議を実行されたかということについて説明をしてもらいたい。
  36. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 お答え申し上げます。  麦につきましては昨年も附帯決議がありまして、長期的視野に立った麦政策の検討を進めるように、こういうようなことでございます。私どもといたしましては、そういった麦作振興というようなことで本年も十億六千万円、前年は六億七千八百万円でございますが、かなりの予算を計上いたしまして、麦の生産振興に努力を傾けておる次第でございます。こういったもののおもな中身は、高能率の米麦作団地育成対策事業というものが特に大きな経費になっております。
  37. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 私は、どう見ても今日まで満足のいくような努力をしてきたとは決して思えない。農家の皆さんに説明ができないのです。農林省はこれこれの努力をしてきたというような証拠があまりない。  そこで、今度の麦価決定にあたって次のことをぜひ実行してほしい、これを要請したいわけです。  先ほど安田委員のほうからも話があったわけですが、まず第一に、ことしの価格をきめる場合において、われわれのところにいろいろな要請が来ています。はがきもたくさん来ていますけれども、その中では、ともかく現在の生産体系に見合った価格決定と、それから検査規格あるいは奨励金を出してほしいということになっている。そういう要請があります。そして農民自体生産意欲を起こさせるようにしてほしいということなんです。だから、そのためには、やはり麦というものが日本にとって必要だという先ほどからの御答弁があるのですから、必要であるならばあるように、現在のパリティ価格でもちろん指数は出すけれども、それに加えるに政策的なものをつけ加えてもらいたい、要するに、そういう価格決定の中に政策価格というものを当然加えて、そして麦をつくる意欲を刺激していく、こういうことをしてもらいたい。米に対する休耕奨励金など出してきたけれども、今度これは打ち切ろうという。あれは一千億もいままで出してきた。ところが、それはほとんど農業政策のためになっていなかったと私は思う。そういうことでありますから、もっと長期的に考えるならば、麦というものを水田との関係で米、麦そして畜産、こういうものの連関をしていけるようにするためには、やはりどうしても地力の維持のために大事なんだから、これに対する奨励金を出してもらいたい。われわれに対する要請からしてみると、これは十アール当たり一万五千円をぜひ要求したい、これが第一です。  それから第二の問題は、価格決定に対しては先ほどから言っているように、パリティ指数でもちろん計算をするにしても、これに対する政策的なものを加えないと、どうしても農家生産に勢いをつけない。こういうことになるから、価格決定に対する配慮をしてもらいたい。  さらに契約生産の奨励についても、従来二百円とか百円とかいう価格になっているけれども、これを倍額にふやしてもらいたいという要請があります。その要請もこれは理解ができる。  それから四番目には、この買い上げの等外麦の問題。常に要請をしなければそれを買わないという先ほども安田委員から話があったけれども、毎年毎年買っているのだから、それを制度化してはどうか。  こういう四つの点について、当局のほうの決意というか、考えを求めたいと思います。
  38. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 私のほうの関係のことについてまず私からお答え申し上げたいと思います。  麦の増産をはかるために奨励金を出したらどうか、一万五千円程度のものを出したらどうか、こういうような御意見でございます。私どもとしましては、麦の生産によります家族労働報酬というものがたいへん低いということは先ほど来申し上げてきているところでございまするが、その根本的な原因としては、やはり作付規模が零細であるということが一番大きな理由でもございますので、私どもといたしましては、やはり生産性の高い麦をつくっていくということに努力を傾けなければならない。そういう意味で、集団的生産組織育成あるいは機械の導入ということに従来からも努力をいたしておるわけでございます。  生産奨励のために思い切った増産奨励金というようなものを出したらどうかという御意見でございますが、政府価格支持政策全般にも及びまする非常にむずかしい問題でございまして、慎重に検討しなければならないと考えておる次第でございます。
  39. 中野和仁

    中野政府委員 残りの三つの問題でございますが、まず買い入れ価格の問題につきましては、先ほど安田先生にもお答え申し上げまして、現在パリティ指数計算中でございますが、かなりの上昇を見るというふうに考えております。  それから契約奨励金の問題につきましては、これは本来生産需要とを結びつける一つのやり方として食糧庁のほうで売り渡し価格の値引きをいたしまして、それを積み立ててやっているわけでございます。先ほどからるる御指摘のように、かなりの減産というような事態に対応しまして、われわれとしましてもその辺の状況を十分勘案をして対処いたしたいというふうに思っております。  それから等外麦の問題につきましては、御指摘のように、結果として例年買っておるじゃないか、そのとおりになっております。そうしてわれわれとしましても、これをいろいろわいわい言われたからやるということではありません。先ほども申し上げましたように、できるだけ早く買い上げの決定をいたしたいというふうに考えています。
  40. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 これは一番先に申し上げたわけですけれども、国際的に見て、小麦というものが食糧用として、えさ用として非常に重要な作物になってきた。そこで、価格を見てみると、品物はあるけれども価格は高いわけです。外国の価格がかなり上がっている。おいおい上がっている。そういう状態であるからして、従来は麦をたくさん買い入れてきて、逆ざやの米のほうの赤字を埋めてきた。これができなくなっているという状態だと思う。だとすれば、国内においてほんとうに麦というものを、五十七年のあの見通しでいうと、五十七年のときに八%の自給率ということでしょう。そういうことでは私は心もとないと思う。まあ、えさの自給の問題について、きょうではありませんが、あとで質問をしますけれども、えさを見た場合においても、実際日本の飼料状況というものはたいへんな段階に来ていると思う。そういうところからいって、日本畑作をもっと考える必要がある。と同時に、全体から言ってみれば、水田の問題、それから麦の問題、大豆、こういった耕種農業というものについて再検討をする段階に来ているのじゃないか、しっかり考えなければならぬ段階に来ていると思うのだけれども、この点について食糧庁並びに園芸局、さらに技術会議等においてはどういう考え方をしているのか、この点を私は確かめたいと思います。
  41. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 御指摘のように、畑作の問題というのは非常に重要な問題でございます。従来日本農業は、どちらかといいますと、米にやはりウエートがかかってきていたということも事実でございまして、畑作振興に意を用いなければならない。ことに米作転換というようなことで、毎年いろいろ努力を傾けてきておるわけでもございますが、なかなか思うようにいかない点もよく踏まえまして、畑作振興に努力していかなければならぬと考えております。
  42. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 日本のいままでの農業の研究を見てみる場合に、米に対しては惜しげなく金をつぎ込んできた。品種の改良なり、それこそ技術から土地改良から相当な金をつぎ込んできたわけですね。そして、今度は米ができると、減反だとか休耕だとか、せっかく金をつぎ込んできて、それを頭から押えていくという世界にも珍しいことを日本はやってきた。他の国にも若干そういう例がありますけれども。そして今度はこれを転換をしよう、こういうことで総理大臣が発言をされる、こういうように全く一貫性がない。そして一方において、同じ重要な位置を持っておる麦については、重要だとはいいながら、どうも力が不足しているような感じがする。技術会議は麦の研究あるいはそういうような努力について、どのような体制を今日までとってきたか、現在とっているか、将来とろうとするのか。この辺はどうですか。
  43. 中澤三郎

    中澤政府委員 お答え申し上げます。  まず端的に御理解いただくために、米との比較で申し上げたらいいと存じますけれども、ただいま御質問にございましたように、麦とか大豆というような問題になりますと、米に関する研究体制と比較して、生産が非常に少ないということを考えますと、非常に試験研究を行なっていないのじゃないかという御疑念をしばしば持たれる方がおるわけであります。しかし、試験研究といたしましては、行政の問題は別問題といたしまして、研究所の専門とか研究の継続性という観点からいいますと、現実がそういう生産割合が少なくなったからといいましても、すぐ低めるというようなものでもございません。そういう性質のありますほかに、事実また日本の耕種農業ということを考えますと、これまでも米麦、そういうものに関する試験研究を、比較的に言いましても、決して軽視しているというふうには考えていないわけでございます。  現状を端的に数字比較して申し上げますと、予算の規模を見ましても、また研究室の数あるいは米なら米、麦なら麦に従事する研究員の数を見ましても、ほぼ五五%前後をずっと維持してきておるわけでございます。  研究水準につきましても同様でございまして、やはり米がはなやかであるといいますか、そういう印象と比べると、一見そういうふうに見えます研究水準においても、遜色が特にあるというふうには決して考えていないわけでございます。  具体的に申しますと、麦の場合ですと、現在技術試験研究で問題になりますのは二点ございまして、いわゆる優良品種の育成機械化体系の確立ということだろうと思うのでございます。品種について、小麦について申し上げますれば、この六年間ほどにほぼ八つほどの新しい品種を育成しております。特に四十七年におきましては、サキガケ小麦と申しまして、先ほど農蚕園芸局長からもお話がございました水田作というのは、前後作との関係上、非常にわせ化をはかる必要があるという観点から、従来の品種と比べれば一週間も収穫期が早くなるような品種をつくっております。大麦とか燕麦についても、数は少ないのでございますが、やはり新しい品種を常に育成しておりますし、機械化体系においても、小型、中型、大型、機械化自身の問題といたしましてはほぼ見通しが持ち得る段階まで研究しているということでございます。  しかし行政との関係におきますと、こんなような実績をあげているつもりでございますが、なお努力していかなければならないと考えております。
  44. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 ここに国内生産振興連絡協議会で出した各地の模範事例があります。私の承知しているところでも、実にりっぱな麦の経営をやっているところがある。だから、決して麦は粗末にすべきものではなくて、非常に大切にしなければならない農産物であると思う。ですから、いま事務局長が言ったようなことがあるとすれば、これはやはりいずれの日にかそういう資料を出してもらって、そして検討の材料にさしてもらいたい。なお、そういう研究をしている場所があれば見学をして、大いに麦に対する熱意を込めて生産をしてもらわないとたいへんなことになると私は心配する。将来の日本農政の上でたいへん心配になることでありますから、ぜひそのことをやってほしい。どうですか、政務次官
  45. 中尾栄一

    中尾政府委員 ただいま技術会議事務局長がお答え申し上げましたように、何といいましても、国際的に見まして日本の領土そのものが狭隘な土地の中に最も作付面積を要する麦をかかえてどのように発展させていくかというところに問題点があるわけでございますから、これは十分研究の上に研究を重ねまして、先生方のお知恵を十分拝借いたしまして、これを増産せしめていけるような体系と、価格安定に寄与できるような安定方向を裏づけてみたい、このように考えておりますので、努力を払っていきたいと考えております。
  46. 竹内猛

    ○竹内(猛)委員 この麦の問題は、いままでどういうような表現をしても、あまり重要に考えられていなかった節がある。だから、この新しい転換期に際してこれをもう一度見直してもらいたいということと、その見直すのは、従来の麦の価格をきめる審議会において決議をしてきたそのことについて誠実に答えを、価格の面であるいは諸般買い入れの状況の面でこれを明確に出すことが、百の答弁よりもこれは具体的になるわけでありますから、それをやってもらいたいということと、長期にわたって研究の上においても、米や畜産に投ずるようなそういう熱意を麦の面にも出してもらって、従来と同じように田畑輪換あるいは畜産とのかみ合わせというような耕種農業の重要なウエートの上にこれを置いてもらいたいということを要請をして、私の質問を終わります。
  47. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 美濃政市君。
  48. 美濃政市

    美濃委員 最初にお尋ねいたしたいことは、昭和三十五年当時、日本の麦の生産は三百八十万トン、四十七年は六十万トン。年々麦類の作付が減少し、同時に自給量が落ちてきて崩壊寸前と言ってもいいと思うのです。政策上何に原因があってこうなってきたかということを農林省としては検討しておると思うのです。まずその原因究明の結果を、私のほうから意見を提出する前に聞きたいと思う。これに対する対策ですね。三百八十万トンはつくれるのでありますし、農地がなくなったわけでもない。いま盛んにやかましくいわれておりますように、世界の人口の三分の一、十億の国民の食糧が足りないというのですよ。この地域で、報道によれば、一千万人くらいの餓死者が出るのではないか。こういう国際的な食糧の需給逼迫の状態になっている。一部凶作の原因もありますけれども、国連の食糧機構では、長期的に見ると、食糧は需給が年々困難になるという長期見通しを出しておるわけですね。それらとの関連において、この段階でやはり麦に対する農政の転換をしなければならない。それらに対する考え方をあわせてお伺いいたしたいと思います。
  49. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 麦の作付が減った理由はどうかということでございます。先ほど竹内先生の御質問にもお答え申し上げたとおりでございますけれども、何よりもまず麦作規模が非常に零細であるということ、これが生産性を非常に低位に置いておる理由の第一であるというように私どもは考えております。それから第二が、兼業機会が増大して労働力が流出しておるということ。それから第三は、麦作と前後作との関係、ことに水稲との関係が一番大きな理由であります。また、米の作期が少しずつ早くなってきつつあるというようなこともございます。その他九州における長雨の被害というようなこともございますが、いま申し上げたようなことが大体一番大きな理由ではないかというように私どもは考えておるわけでございます。  麦は本来機械化比較的容易な作物でございます。経営規模拡大機械化によって生産性向上というものが期待できる性質のものでございます。ただ、いま申し上げましたように、作付規模というのが非常に零細であった。収益性が低い。また地価が非常に値上がりをしまして、農地の流動性というものがなかなか高まらないというような状況にあるわけで、非常に困難な状況、そういった事情が重なり合いまして、先生指摘のように、たいへん麦が減産をしてきた、こういうことであろうかと思います。  こういう中で、麦の生産を維持また発展さしていくためには、関東でありますとか、九州でありますとか、北海道というような主産地を中心といいくためには、関東でありますとか、九州でありますとか、北海道というような主産地を中心といたしまして、専業的な農業者を中核とした農作業の受委託を行なう等の集団的な生産組織あるいはまた機械施設の共同利用組織というようなものを育成いたしまして、そういったところに高性能の機械を入れていくということが一番必要ではないか。そうしたことによりまして生産性の高い麦作の実現をはかってまいりたい、かように考えておるような次第でございます。  長期的な問題といたしまして、私どもとしましては、水田の裏作問題につきましては、水稲作と麦作が一体的に高能率な機械によって生産をされるというようなことを考えております。そういうために、水稲の作期の重複が見られるようなところがかなりあるわけでございますが、こういったことを回避するために、水稲の中苗による移植というような技術を開発して早期にこれを確立していく。  それから麦につきましては、収穫期を早めるというようなことも努力を払っていかなければならない、かように考えておる次第でございます。それから作付規模の大きい麦作農家を中心としまして、その他の農家から麦作作業の経営委託というようなものを受ける、あるいは期間借地によって作業規模拡大するというようなことをやる必要があります。それから乾燥調製施設というようなものを導入して、米麦を通じて乾燥調整の合理化をはかっていくということが必要かと思います。  それから畑作麦のほうでございますけれども、麦というものが、先ほどの安田先生の御質問にもあったわけでございますが、地力の維持の上に非常に重要な役割りを果たすわけでございますから、地域の実情に沿いまして、麦を取り入れました合理的な輪作体系確立というようなこと、それから機械化、省力化というようなことにも進めてまいりたい。輪作体系の中における機械の共同利用あるいは受委託組織の育成というようなことをやっていきたい。  水田畑作それぞれにつきましてそういうような考え方を持っておりますが、さらに一般的な問題としまして、長雨による被害の回避のために、極わせ品種の導入というようなことも必要ではないかというように考えております。  その他、麦作の適地における麦の生産振興していくというようなことでの啓蒙活動を進めていくことも必要かと考えておる次第でございます。
  50. 美濃政市

    美濃委員 いまのお話を聞いておって、いろいろ問題があると思いますが、第一に、確かに機械化問題でも、私はその必要なしとは申し上げませんけれども、どうも最近は日本農業の従来からの実態というものをかなり無視しておるのではないか。一例を申し上げますと、機械化専業——特定な地域に生産性を高めるなどというアイデアばかり言うものですから、日本農業の中で合理的に仕組まれておった、たとえば非常に山の多い地帯の農業と林業労働との組み合わせの問題、これらがそういう政策指導から破壊されてしまって、林業労働なんか枯渇に瀕しておる。  あるいは日本全体の労働をいま私どもが見ると、いわゆる世界的な食糧危機時代なんかが来たときには、取り返しのつかない、世界に例のないほど消費産業部門に若年労働がものすごく傾いておる。一体社会構造としてこういう体質でいいのかどうか、そこまできておるのではないか。たとえば私どもがこういう案を提示して、農業とは違いますけれども、公害の問題でも、私どもは数年前から公害はやかましく言っておる。それに対して政府が、その気にならぬで、ああでもないこうでもないといって企業擁護の姿勢をとっておるところに、きのうの質疑でも相当問題になっておったように、日本の近海においても公害によって魚が食べられなくなってきておる、汚染によって魚がだめになったという問題。私はここで公害の問題は申し上げませんけれども、それと同じように、いま日本の消費産業に若年労働者が傾いておるというのはゆゆしき問題だと思うのです、山から木を切ったり麦をつくったりするのがいなくなってくるわけですから。こういうふうに、消費産業というのは、一面ある程度は必要だけれども、最近のように、若年労働が、全部行っておるとは言いませんけれども、比率から見て、消費産業労働に労働傾向が高まっておる、世界に類のない消費産業ブームが起きておる社会などは健全な社会とは私は言えないと思うのです。消費産業の中からは何も出てこないわけです。食糧危機の問題とか国際的な景気変動の問題が起きたときには、消費産業でささえる何ものもないわけですから、ほんとうの日本の社会経済の経営構造の力とは言えないわけですね。どうですか、消費産業はほんとうの力になるのですか、経済の基礎的な力ですか。  そういう傾向があらわれてくると、いま言ったように、ただ機械化一辺倒で、そういう日本農業日本の農村の実態に合わない、そういうものは無視して——もう一つ申し上げますが、いわゆる畑作条件からいけば、日本よりずっと機械化に適合しておるフランスの農業を見ても、EEC農業を見ても、日本ほど機械化機械化といって刺激しておらないですよ、農民を。私どもが行ってみても、まだあの畑作地帯では馬でかなりのものを運搬していますね。農村に日本ほど運搬車は入っておりません。農業というものを日本ほど刺激していないのですね、機械化機械化といって。どうなんですか。これは仕組まれておる。日本の経営構造というものはそう機械化機械化といったってついていけないのですね。それは意識を破壊してしまうわけです。特に後継者の意識を指導上破壊しておると私は思うのだな。だから、こういうふうに、三百八十万トンとれた麦が六十万トンぐらいになってしまうのですね。どうですか、その辺の考え方は。
  51. 中尾栄一

    中尾政府委員 全く先生の御指摘になりましたように、消費産業部門に若年労働者が流れていく傾向があまりにもはなはだし過ぎる、それは国家の健全なる姿ではない、確かに私もそう思うのでございます。世界的に見ましても、その傾向は強いとはいいながら、御指摘のとおり、EECを見ましても、アメリカ経済を見ましても、農家の健全なる姿によって社会の安全性が保たれておるという感じがいたします。特に日本の場合は、都会と農村というものの実態がそのまま二つにはっきり区分されておるような感じがいたしまして、都会でなければ農村、農村でなければ都会という形でございますが、外国の例は、都会並びに近郊さらに農村と、まさに近郊という、都会の近郊部門が非常に健全なものを営んでおるというような感じがいたしますし、そういう点では、日本機械化というものがもたらす社会のいわゆる秩序というものに対する被害というものはおびただしいものがあるのではないだろうかという考え方においては、先生の御指摘のとおりでございます。そういう意味におきましては、この麦の問題にいたしましてもそういうことに基因するということも考慮に入れまして考えていかなければ相ならぬなということは、私も切実に考えておる次第でございます。
  52. 美濃政市

    美濃委員 そこで、一、二問題をお伺いいたしたいと思いますが、これは特に昭和二十年前ですね、あの当時の社会情勢の中、ただいま申し上げたように、日本農業の仕組みの中で大体麦の価格は米に対して七〇%だったわけですね。それで、その当時の国民は、あるいは政治の中で、麦は高いとか、麦価が不自然だとかいうことはなかったわけですね。それからまた、戦時中食糧統制をしてきたときに、米穀換算というものがありまして、いまでいうならばカロリーですね。あの当時米穀換算、たとえばバレイショ三百キロは米一俵、大豆は四斗二升といったですね。あの戦時中の統制価格というのは米の価格にずっとスライドしていったわけですが、あの価格の仕組みから見ると、麦価というものがものすごく後退しておると思うのです。いまどうですか。労働力がなくなったとかなんだとかいうけれども、それは直ちに採用できるかどうかはなかなか問題があります、しかし、私はあのときの価格政策をいま持ってきて、いまの米価の七〇%を麦の価格にしたら、全部二毛作が起きてくるのではないですか。消費産業労働に行っていいかげんな働きをするよりも、田畑のある限り二毛作可能な地域はみんな二毛作をやりますよ。米の価格の七〇%に麦の価格を持ってくれば、二年ぐらいで三百八十万トンになりますよ。しかしいまの価格から見たら、極端な価格上昇になりますから、一面やはり時代が変わっておりますから、規模拡大なりあるいはあまりに極端に刺激をするからちょっと申し上げたので、前段申し上げたように、機械化というようなことを全然否定しておるわけじゃないわけです。それを言ってはならぬとかいうふうに否定しておるわけじゃないのです。しかし、あまりにもそういう指導表現だけでいくと、意識を破壊する。  ことしきめる価格の中にも、そういういわゆる国際的経済事情——これは法律の中にもあるわけです、農安法にもある。麦価をきめるのにはパリティですね、パリティを基本とはしているが、経済的事情を参酌するという事項はすべての農産物価格にあるわけですから、国際的な食糧の需給あるいは国際価格が暴騰してくる状況、こういう経済事情を参酌して、一つには価格作用に織り込んでいく。一つには、やはりいろいろ品種改良なり諸般政策を進める、こういうことでいかなければならぬと思うのです。  単純に価格政策だけで言うなら、私がいま申し上げたことです。それは日本の過去の歴史の中においてとってきた政策でありますが、言うなら価格政策の上で何の疑義もなく行なわれてきた政策が、今日ああだこうだというのも、国際的に食糧事情が逼迫して、自給度を高めなければならぬということになれば、ある一面、そういう政策をある程度導入しなければならぬ。  単純にもう一回申し上げますけれども、米価の七〇%の政策をとったら、二年ないし三年で三百万トンぐらいの生産は可能と思います。価格政策だけでこれは興きてきます。私は興きると思います。二毛作可能なところは全部麦をつくるようになりますよ。そうすると、一面、いま麦価がきわめて安いですから、生産では所得があまり出ません。内地の小規模経営になると、あまり単位的には所得が出ませんから、二毛作の麦なんかつくるより、何か仕事があれば働いて賃金を得たほうが所得的には有利なんですね。ですから、つくらないということなんです。ところが、一面、米の生産調整からいうと——金肥をどんとやって、十アール当たり二十キロ、三十キロ米の収量を上げて、米一作にかけたほうがいいわけですね、麦なんかつくるよりも。だから、つくらないのですよ。そうじゃなくて、今度麦をつくるような政策を持っていって二毛作をすれば、何ぼ気候のいいところでも、二作とると米の収量は減るわけです。米の収量が、裏作をやるならば落ちます。そうすると、米の生産調整にもいいのじゃないですか。だから、麦をつくれば米の収量は落ちます。二十キロ、四十キロぐらい落ちるのじゃないでしょうか。そうすると、裏作をやったために、主たる二毛作可能な地域の田にほとんど麦が入って、昔の姿に返って、四十キロぐらい米の収量が十アール当たり落ちますと、ものすごい広い面積になりますから、かなりの米の生産が減じて、足らない麦がつくられてくる、こうなると私は思うのです。これに対してどうお考えになりますか。そういう政策をこれから導入しようとするかしないか、お伺いしておきたいと思います。
  53. 中野和仁

    中野政府委員 ちょっと食糧庁だけでお答えできるかどうかということでございますが、ただいまのお話のように、戦時中、戦争直後、確かに米換算のいろいろのことがございました。ただしかし、その場合はもちろん米だけでは足りませんし、外国からはなかなか入りませんし、乏しいものを分かつということで、麦その他いろいろ雑穀類まで統制をしたわけでございます。その後日本経済の向上、国民生活の高度化というようなことから、大麦一つをとってみましても、だんだん麦めしを食べないというようなことになってまいりまして、それが一部反映をしたと思います。そこで、麦がだんだん農業の中で、もとから裏作といわれておりましたけれども、従属的な地位になってきたということかと思います。  それではどう考えるかということでございますが、先ほどから農蚕園芸局長がいろいろ御説明申し上げておりますように、それから私も昨日、実は主要麦作県の検査部長がたまたま上京しておりましたので、集めましていろいろ実態を聞いてみたわけでございますが、裏作を伸ばすには、一つには、昨日技術会議の話もございましたが、水田では品種をもう十日ぐらい早めなければいけないというのが九州、四国、西のほうでございます。それから北海道の場合は、輪作として四年なり六年の間に一ぺん入れていくということですから、相当な面積がなければいかぬということでございます。ただ、北海道畑作振興、不十分でありますがいろいろやっておりまして、北海道面積が最近ずっと落ちてきた中で、初めて四十八年産はふえる見込みでございます。私たちも非常にうれしく思ったわけでございます。  ただ、畑作の場合、いろいろ聞いてみますと、たとえば茨城の話その他を話を聞きましても、やはり麦は収益性が低い。現在の価格体系ではあるいはそういう面もあるかと思います。そのためにむしろ白菜をつくったり、あるいはその他の特産物をつくる。そうしますと、あるいは西のほうではビニールハウスをつくるというようなことになりますと、面積が非常に少なくて済むということで、麦はつくらぬということになるようであります。  そういうようなことで、美濃先生のお話、私もよくわかるわけでございますが、麦の値段を米の七割にすれば、二年ほどで三百万トンというふうにいくとは私はなかなか思えないわけでございます。もちろん若干の影響はあろうかと思いますが、やはり基本的には、こういうふうになりましたあとでの麦作振興するということになりますれば、経営形態から変えていって、底から積み上げていくということが必要ではないかと私は思います。
  54. 美濃政市

    美濃委員 ことしのパリティはどのくらいになると考えておりますか。
  55. 中野和仁

    中野政府委員 すでに三月パリティ計算をやっておりますが、それが一三%ぐらいになっておりますから、いま五月パリティ計算中でございますが、その辺が御参考になろうかと思います。
  56. 美濃政市

    美濃委員 どうですか。近く麦価の審議会が開かれるようですが、原案として提示するものは、私がいま申し上げた時代に合ういろいろの諸施策も言っておるわけですし、それをしなくてもいいとかそれを否定しておるものではないが、ここで諸般情勢、国際的な食糧需給状態から見て、やはりもっと自給度を上げなければならぬ。ですから、その他経済的事情をことしの麦価にどういうふうにどのくらい反映しようとしておるか。もう農林省の試算ができておれば、それをずばり言ってもらえばいいし、まだ審議会には日にちがありますからできていなくても、おおよその構想は描いておると思う。その内容を少し聞かしてくれませんか。
  57. 中野和仁

    中野政府委員 ただいま申し上げましたように、現在食糧庁でパリティ計算をしておりまして、まだ具体的な額というところまでいっておりません。これはもちろんパリティ計算できますれば、先生承知のような計算式でございますから、すぐ出てまいるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、パリティ指数が例年とは比べものにならないほどかなり上がりそうだということでございます。これは十九日の米価審議会までに政府の諮問案を整えまして御審議をいただくということにいたしたいと思っております。
  58. 美濃政市

    美濃委員 そのパリティの一三%というのは一応わかったわけです。私もそのくらいと思っておりますが、そこで、とにかく自給量を上げるためには、経済事情を参酌するというふうに法律上なっておるわけです。こういう時期にはパリティの上積みをすべきだ、その考え方を聞いておるわけです。その他経済事情需給の均衡を参酌してという。米でもそうでしょう。米は生産費所得補償方式となっておるわけです。それでも供給過剰ということになりますと、この委員会でも、二年、三年前、米の過剰問題で生産調整の話をすれば、法律では生産費所得補償方式となっておる、米価に対しても経済事情を参酌するのを導入することはやむを得ないという答弁をするわけですね。しかし、経済事情の参酌という法律事項は、余った場合に発動して需給事情の好転のためには入れないんだというものでは私はないと思うのです。需給事情を好転させるためには、前向きのできるだけの価格によってある程度はかっていく、そのために経済事情の参酌は入っておると思うのですね。過剰な場合の生産調整のためだけに、生産費やあるいは出たパリティから据え置く、そういうときのみに経済事情の参酌事項を使って、需給事情の好転——はっきり申し上げますと、価格決定する場合に、パリティなり生産費の上に経済事情の参酌事項で上積みして生産刺激をするという意図も、私は経済事情の参酌事項だと思うのです。どうですか、その解釈。あくまで据え置きのための経済事情の参酌事項なんですか。生産費なりパリティなりを、生産が過剰だからといって押えつけるための経済事情の参酌と法律には入っておるんだ、需給事情の好転にそういうふうにはしないんだ、こういうことなんですか。そうじゃないんでしょう。私はそうは解釈していない。経済事情を参酌するということは、需給事情の好転にはやはり価格政策によって生産刺激の政策をとる、こう解釈しておるのです。どうですか。
  59. 中野和仁

    中野政府委員 生産を刺激する場合、価格をうんと上げることは一つの方法かと思います。だから、具体的にではありませんで抽象的に先生に申し上げれば、先生のような経済事情ということも私は否定はいたしませんが、ただ、麦が置かれている事情は、先ほどから私なり農蚕園芸局長答弁しておりますように、単にいまの雰細な経営のまま、一戸平均二十アールとか三十アールというようなものを大幅に上げましても、それほど生産伸びるというふうにはどうも思えない。これはやはり日本の麦を育てるためには、経営形態を変えていかなければならないという気がいたしますことが一つと、もう一つは、小麦の場合には国際商品になっておりまして、非常にいま穀物事情が逼迫しておりまして価格が上がっております。ソ連が買い付けに入りました昨年の夏などになりますと、ドルでいいますと倍になっております。円の切り上げがありましたので七割くらい上がっておりますが、それでもトン当たり四万円でございます。ところが、食糧庁買い入れ価格は、小麦六万五千円というようなことになっておりまして、一方、政府の売っております価格は、内麦につきましては三万一千円、外麦につきましても三万四千円程度というようなことでございます。しかも相当部分外麦に依存をしているという実態から見まして、いろいろなことを勘案して今度の麦価の諮問をいたさなければならないと思っておりますが、食糧庁といたしましては、現在ではパリティ価格を基準にして、それによってきめていきたいというふうに思っております。
  60. 美濃政市

    美濃委員 最後に、大蔵省から来ていただいたわけですが、ひとつ財政当局として、こういう時期になってまいりまして、国際的な食糧事情その他から見て、当面麦の問題、そのあとに米価がまいりますが、一連の農産物価格対策に対する財政当局の腹がまえをちょっと聞いておきたい。
  61. 吉瀬維哉

    ○吉瀬政府委員 先ほどから美濃委員御指摘の食糧の自給率を高めるという問題につきましては、最近の世界的な食糧需給状況等の長期的な見通しに立って私どもも判断していかなければならないのではなかろうかというぐあいに考えております。  なお、ただいま御質問の最近の物価高、こういうものが農産物価格にいかに反映されるかという問題でございますが、御承知のように、農産物価格につきましては管理価格的なものをとっているものもありますし、あるいは安定帯価格的なものとか、あるいは最低価格支持というようないろいろな形態があるわけでございますが、やはり物価の変動の事情は、そのときどきの生産事情需給事情も同様でございますが、農産物価格に反映されていくべきものではなかろうか。ただ、ただいま食糧庁長官が御答弁になったように、構造政策の展開をもあわせて考えていかなければならない、こういうぐあいに考えております。
  62. 美濃政市

    美濃委員 以上で終わります。
  63. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 島田琢郎君。
  64. 島田琢郎

    島田(琢)委員 通告しましたが、そのときの予定では一時間にわたって御質問申し上げたい、こう思っておったのですが、時間が半分になりましたので、通告をしてこの席にたいへんたくさんの方がおいでになっているのですが、場合によって質問を保留するあるいは取りやめるという方もおられるかもしれませんが、これはひとつあらかじめ御容赦をいただきたいと思います。  ただいままでそれぞれ代表が質問をいたしました中でも、お聞きをしておりまして、麦に対する考え方というものが、私どもがいままで言ってまいりました麦の生産振興対策と比較いたしましてもたいへんな違いがあって、はたしてこれで大事な穀物政策の主要な位置を占める麦類が、国内において安定的にいわゆる需給度合いというものが保持されていくのかどうかということさえもたいへんな心配をしているところでありますし、その疑惑といいますか、われわれが言っておる問題についてもいままでの論議を通しては明らかにならないようでありますが、私は再度食糧庁長官あるいは伊藤局長に、麦がなぜ今日このような状態になっているかというその問題点を明らかにする意味で、しつこいようですけれども、ひとつ端的に、先ほど長々とおっしゃっておりましたけれども、問題はそうたくさん数あるじゃなくて、ごく限られた部分にあると思うのです。その面が完全に政策補完されれば、私は日本の麦の生産は確保できるという自信を持っておるひとりであります。したがって、その問題点をもう一度明らかにしてから、それから質問を進めていきたい、こう思うので、もう一度考え方をお示しいただきたいと思います。
  65. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 先ほどからお答え申し上げておるわけでございますが、麦の問題、私ども憂慮をいたしておるわけでございますけれども、やはり何と言っても第一の減産の理由というのは、経営面積作付面積が非常に小そうございまして、そのために生産性が劣るというようなこと、そのためにまた家族労働報酬も低いというようなことに相なっておるわけでございます。これが麦の減産の一つの大きな理由でございます。それからまた、これは作付体系の面でございますけれども水田におきます米の早期化との競合、それから畑地帯におきます蔬菜等との競合関係、特に新しい技術が入りますに伴いまして出てきました競合関係というようなものが麦の作付を減らしておるというようなことを私どもは考えておるわけであります。さらにまた他産業への労働力の流出というようなことも大きな理由であろうかと思いますし、また西南暖地におきましては雨というものがやはり麦の増産の阻害になっておるというように考えております。
  66. 島田琢郎

    島田(琢)委員 幾つかあげられましたけれども、その中でたいへん大事なことがありましたが、競合作物によって麦が徹退した、こういうことがいま一つ言われたわけであります。競合した場合に、当然経済の原則として、間に合わなければ撤退していきます。明らかに麦は他作物との競合の中で撤退せざるを得なかった。その問題点は明らかであります。つくっても間に合わないからであります。これは局長は明確にそのことをおっしゃいませんでしたけれども、そのことは十分おわかりになって、競合作物によって撤退した、こういうふうにおっしゃっているわけでありますから、その問題点は明らかであります。  そこで、私は、先ほど来美濃委員もお話の中で出しておりましたけれども、非常に古い統計の数字をひとつ出してみて検討願いたいと思うのでありますけれども昭和九年ごろの米に対する小麦の——麦類全般について申し上げるのが順当でしょうけれども、この際小麦に限って言いますと、当時の米一〇〇に対して小麦の値段は原麦で六五%であります。それがだんだん米との比較の上で差がついてまいりまして、昭和四十三年には対米、いわゆる米の価格に対する麦の価格の比が実に二八%に落ち込んだわけであります。四十七年度ではどうかというと、若干持ち直しましたが、これまた四一%ないし四二%という米の値段との差でありますので、これはいまお話があったように、競合する上では明らかに撤退せざるを得ない。とても問に合わぬのであります。したがって、こうした価格というものが今日の小麦はじめ麦類の作付がこのように減退をしてきた原因であることはまさに明らかであります。これはいかに局長はそればかりではないと強弁されても、明らかにこの価格政策が問題になっているということは言えるわけであります。  したがって、再三の御答弁の中にもありましたように、麦類は非常に大事な穀物の一つである、日本には欠かすことのできない作物一つであるということを繰り返しおっしゃっております。そういうお考えがあれば、私は麦類の増産に向けて真剣に努力をする大事な時期に来ていると思う。そういう中における問題点は価格政策をまず第一点に考えていかなければならない。もちろん価格だけで済むものでないことは明らかであります。内地府県における雰細な麦作状態、主産地を求めようにも北海道における主産地の形態といいましても、これまたある一部分に限られているという実態もあります。したがって、これら一連の誘導施策が必要であることは言うまでもありませんが、まずこの価格をどうするんだということを十分検討しなければ、麦の蘇生は絶体に不可能だと私は思うのです。価格問題については思い切った考え方を持つ必要に迫られていると考えますが、政務次官、ことしの麦価を審議会に諮問するにあたって、そうした思い切った価格をお考えになっているかどうか。きわめて端的な質問でありますけれども、腹がまえのほどをお聞きいたしたいと思うのであります。     〔委員長退席、山崎(平)委員長代理着席〕
  67. 中尾栄一

    中尾政府委員 先生のそういう御指摘の点等を十分考慮に入れまして、パリティ方式の積み上げで、この問題を考えておる次第でございます。
  68. 島田琢郎

    島田(琢)委員 先ほど美濃委員の質問に対しまして、予測でありますけれども、大体パリティが出されました。前年対比で一三%くらいである。だとすれば、もうこのパリティで出される麦価というものはほぼ想像がつきます。これではいまの瀕死の状態におちいっている麦を蘇生させるなどということは絶対に不可能だと私は思います。絶対にということばはかみそりみたいなものでありますから、絶対ということばは不用意に使われるべきではありませんけれども、いま想定されるパリティに基礎を置いた、四十八年度の麦価決定するとするなら、もう麦の生産などは絶対不可能だと断言いたしておきます。したがって、別立ての何らかの措置がこの際必要だと思います。しかしながら、先ほどお話しがありましたように、外麦が四万円という台に乗ってまいりまして、国内食管制度の中でも実態は逆さや現象に相当おちいっていることは私も承知をいたしております。内麦に至っては六万五千円というトン当たりの価格でありますから、この辺は長官も非常に頭の痛いところであろうということは私も想像いたしております。しかし、生産の側からいえば、いまの状態では米と比較してさえもこのような状態、他作物比較したって、値段の上からいってとても麦をつくれるようなしかけのものではない。  それに伴う誘導施策がどのように進められてきたか。私は北海道の実情について、私の網走地域の主産地地帯といわれております斜里、網走郡の小麦の生産の実態をお話ししたいと思います。誘導施策が打ち出されてまいりまして、この中でみんな借金をして、構造改善事業の中で取り上げられて、カントリーエレベーターの設置もいたしました。そしてまたコンバインも導入いたしました。畑の圃場の整備もして、大型コンバインが駆使できるような状態にもしてきたわけであります。こういう状態でそれぞれ現地努力をしましたけれども、しかし、現実には後ほど申し上げるいろいろな制度上の問題の欠陥もかかえ込み、生産地として、主産地としてそれだけ施設やあるいは条件を整えることができ上がったにしても、依然小麦は非常に不利な作物だといわれて、面積伸びていかないのであります。特に本年四十八年の麦作状態北海道に限ってみますと、ことしは少し持ち直しているようでありますけれども、一万ヘクタールという状態であります。これは、四麦全部合わせてこういう状態であります。  そこで北海道においては、地域別の農業指標をつくりました。昭和四十五年を基準年にしてつくった一つの将来への目標でありますけれども、この実態がすでに憂慮すべき実態にある。麦類作付面積は、昭和四十五年においては一万三千三百九十ヘクタールであります。それが昭和四十八年度では、一万八千ヘクタールの目標に対して、一万三百ヘクタールなんであります。約八千ヘクタール落ち込んでいる。昭和五十二年には二万六千ヘクタール、昭和五十五年には三万三千三百ヘクタールの一応の目標を持っておりますけれども、もはや昭和四十八年度、わずか五年足らずで半分の面積に落ち込んでいってしまっている。それはもうまさしく、幾ら機械化したって、省力化したって、畑の条件をよくして何とか努力しようと考えても、価格の上で引き合わない。だから、麦がこのように撤退していく。目標に対して半分くらいにしかならないという状態に落ち込んでしまうのであります。  ですから、くどいようですけれども、私は乙の際、パリティで出される計算計算として、やはり何らかの穀物政策——先日私は大豆問題についても触れました。大豆もまともな計算をしていけば、シカゴ相場が七千六百円で、いまかなり高目に推移している大豆といえども日本に持ってくればやはり差があるわけであります。そう考えますと、小麦についても、まともな計算では確かに食管の逆ざや現象に、内外麦含めて深刻な状態になるだろうということは、私は常識的におっしゃるとおりだと考えております。したがって、そういうまともな形で麦作振興価格面で打ち出そうとしても、これは無理があると思う。  そこで、この際、反当たり、ヘクタール当たりでけっこうだが、特別生産奨励金制度を考えてみてはどうか、このお考えがありますか。私の提案に対して、ひとつ率直な御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  69. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 先ほどもお答え申し上げましたが、食糧管理法に基づきまして価格支持制度をやっておる麦につきまして、別途生産奨励金を出すというようなことにつきましては、いろいろむずかしい点もありますので、なお慎重に考えたいと思います。
  70. 島田琢郎

    島田(琢)委員 どうも慎重過ぎるようで、これでは日本の麦の将来は伊藤局長にはとてもまかしておけないと思います。したがって、私は、いま六万五千円の内麦の価格で消費面に与える影響というものを心配しなければならない。これは私もそう思うのであります。  しかし、私は、せんだって以来計算をしてみました。この計算が間違っているかどうかは、後ほど御批判をいただかなければなりませんが、いまかりに四万円の外麦で製粉をして小麦粉にして市場に売り出していくとしたらどうなるか。製粉率、大体八〇%くらいだろうと思う。八〇%よりもっと高いかもしれません。しかし、四万円の麦単価で製粉をしていきますと、小売り価格は大体——この間、 私は小麦粉を買ってきたら、キロ九十円でありました。そうすると、製粉率八〇%、トンから八百キロの粉ができると勘定いたしますと、その単価は、逆算すれば三十二円であります。売るときは九十円。そのほかにふすまがとれる。ふすまは政府管掌で、たしかキロ二十一円だと思うのですが、こうしますと、四万円の小麦でも十分採算がとれてがふすま代で大体加工賃が浮くと考えれば、五十八円、キロ当たりのいわゆるメリットがある。六万五千円で計算しても、大体三十円から三十二円ぐらいのメリットがある。こういうふうに考えるのです。これは全部メリットと言っては言い過ぎでありましょうけれども、こういう加工段階においての利益率というものを十分計算されておられますかどうか。この点、中野長官、どうですか。
  71. 中野和仁

    中野政府委員 ちょっといまの計算自身、私はまだのみ込めなかったわけでございますが、政府の売り渡し価格につきましては、玄麦で売りまして、それをいまおっしゃるように加工いたすわけでございますが、御指摘のように、いま製粉はたしか七八%ぐらいの歩どまり率でございます。そこで、いまかけられたわけでございますが、これはむしろ八〇%なら八〇で四万円を割った値段を出すのではないかという気がいたします。それと、御承知のように、二八%のふすまが出ますけれども、いま実はわれわれ非常に弱っておりますのは、製粉業界から食糧庁の売り値を下げてくれ、こういわれておるわけでございます。といいますのは、労賃それから運賃等の値上がりというようなことから、もともと一トンの製品の中で原麦の占める割合は約八割で、なかなか合理化の要素もないというようなこともございまして、値段を下げてくれということをいまいわれておるような状況でございますが、ただいまの計算は後ほどまた伺いまして、もう少し詰めてみたいと思います。
  72. 島田琢郎

    島田(琢)委員 私の言ったのは、外麦四万円ですね。売り渡し値は違いますよ。四万円をストレートでやったってこれぐらいといわゆるあれになるのじゃないか。原麦に対して粉が八百キロ、七百八十キロでもけっこうです。そうすれば、このできた原麦代というのは三万二千円ですね、四万円のうちの原麦の価格は。私は粉の値段を言っているのじゃないのですよ。その原麦の製粉率に占める価格の総額はこうなるのじゃないか。そうすると、一キロ三十二円という計算になる。これは後ほどひとつ——このことに時間をかけては次の質問ができませんから、私、後ほど長官とお話ししたいと思います。  それで、言いたかったのは、この加工段階における追跡をしてみているかどうか。そうでないと、麦価格——いま小麦の話をしております。小麦の原麦の価格が上がっていくと消費者価格にはね返ってくるという、こういう問題がそこに出てきますから、この加工工程における問題もこの際十分精査をし、洗い直す必要があるのではないかということを申し上げたくて、一つの例として私はいま申し上げたわけです。  さてそこで、特別生産奨励金の考え方については明確に局長からは出てまいりませんでした。しかし、これは私は具体的にいま農業団体で検討しておりますのを申し上げますと、どうしてもこの際反当一万五千円くらいの奨励金が必要だ。それがあれば、少なくとも政府が言っている麦の生産振興に対しては協力できるし、また農家自身も麦というのは非常に大事な作物で、特に内地における零細な規模麦作形態は、確かに局長が繰り返し言うように、将来に向かってかなりコストが高くついてなかなか生産伸びていかないし、その余地もない、この事実はわかるわけであります。だとすれば、おっしゃっているように、生産団地を求めていかなければならない。生産団地といえば、大きく面積的にも求める地域とすれば、やはりこれは北海道というのが常識的であります。私は北海道の出身だから、セクトで言うのじゃありません。北海道には条件が確かにある。しかし、その北海道でさえ、さっき言ったような状態になっているのですから、ここでひとつ私は主産県としての北海道麦作振興はどうあるべきかという点について、若干の問題を提起して、ぜひともこの際ひとつ麦生産振興に対しての重厚な政策措置を打ち立ててもらうようにお願いをしたい、こう思うわけであります。  そこで、北海道における麦づくり農家考え方としては、先ほども申し上げた斜・網郡におきます麦の生産状態というのは、比較的に、伊藤局長がおっしゃる生産団地の構成可能な地域であります。しかし、この地域といえども、いま問題が出ておりますのは、やはり輪作形態を大きくくずして団地に持ち込むことが、はたして将来の農業経営畑作経営にとっていいのかどうかという検討がいま具体的に農民の間から問題として出されております。これは私も農民の一人でありますが、私なんかもきわめて後生大事にいまも持ち続けているのは、やはり畑作の地力維持をはじめとする経営全般のいわゆる展望をしてまいりますときには、どうしてもくずしてならないのは、この輪作ローテーションである。だから、麦といえども大豆のときにも私、申し上げましたけれども、このローテーションにしっかりと根をおろした麦作振興でなければならない。そのローテーションに組み合わせていく場合の麦作といえども北海道においてはかなりの大型の麦作経営ができるという確信を私どもは持っているのであります。だから、大豆のときにも申し上げましたけれども、想定として大体十二町歩から十五町歩のいわゆる畑作経営を北海道で考えております。その中に六作目ぐらいの作物を組み合わせたローテーションを堅持したいというのが私どものねらいであります。一つは麦であります。それからビート、バレイショ、そうして豆類、大豆を入れた豆類ですね。それに地力維持のための牧草、こういう大体六作物を組み合わせてローテーションを組んでいかなければ、将来の農業はほんとうの長期的展望に立った安定性というものを期せられない、これは私の一つの持論でもあります。最近、政府はいわゆる主産地形成あるいは生産団地、こういう言い方で、大型化、大型化といわゆる団地の大型化をはかっていく傾向で指導してまいりました。これがいま行き詰まっているのであります。ですから、私はこのローテーションに組み合わされた場合に麦一俵幾らという考え方ではなくて、全体で、夫婦二人で働いて得る所得を念頭に置いて、繰り返し繰り返しいままでくどいように言ってまいりましたけれども、夫婦のうち一人でもって百万円、二人で二百万円の所得の確保ができなければ、この輪作体系もくずれるばかりか、畑作経営が成り立たないという現状にいまあるわけです。これはもう政務次官にはよくおわかりいただいたようであります。  ですから、そういう立場から割り出された、麦をつくったら幾らというものが出てくる。だとすると、いまの三千八百十四円という小麦一俵の価格では、反収がわずか四俵や五俵ではとてもこれは麦づくりができないと思うのであります。そこからどうしても一万五千円、当面反当たり特別奨励金制度をしいてでも麦作をとにかくローテーションの中で定着させてほしい。そしてまた、片や食糧の穀物の自給の重大な使命をになわせてほしい。これは農民の率直な願いであります。それをつぶすということになったら、私はたいへんなことだと思うのです。  だから、思い切った——大豆のときにも申し上げましたが、特定の品種改良が進んでいく段階、これはきょうから品種改良に手をつけてといっても、先ほど技術会議の事務局長から八品種ほどの優良品種を小麦についても指定しておる、こういう話でありましたけれども、私はそれだけでは十分でないと思うのです。アメリカでは四百キロ反収をあげている。日本は二百七十キロです。北海道においては二百七十キロしかとれていない。四百キロの小麦がとれるような技術体系を急いでいま確立するとしても、それが実際圃場で定着するには六年、七年かかると私は思うのです。その間特別奨励金制度をしいて麦作振興をはかるべきだ。これは大豆の場合に申し上げたことと全く同じ論法であります。そのお考えはないですかということを言ったのですが、検討したい、しかも慎重にとおっしゃる。いまごろ慎重にやっていたのではとてもこれは何年かかるか。思い切ったことをやりながら、片や慎重に検討していくという姿勢なら私は園芸局長姿勢について了解をいたします。しかし、それではとても麦作は品種どころじゃない、壊滅してしまうという危険性をいまかかえているのであります。  いまいろいろ北海道の実情について申し上げましたが、この点について言でけっこうですけれども、腹がまえのほどをもう一度聞かせていただいて、やらないというのであれば、われわれはとても麦づくりは引き受けられない、こう答えざるを得ません。
  73. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 ただいま先生北海道の、ことに道東の麦作につきましていろいろなお話がございました。私どももローテーションの特に重要なこと、私は同感でございます。そういうことで、従来からもそういう指導をいたしておりました。バレイショ、ビール麦または小麦それからてん菜、豆類、それに牧草というようなものをからみ合わせながら、地力の維持をはかりつつ農家所得をはかっていくという考え方で私どもも従来指導をいたしております。そしてまた、機械化の体系というようなものも整備をはかりながら、そういった努力を傾けていきたいと思っております。  また、北海道につきましては、先ほど食糧庁長官官からもお話がございましたように、麦というものは、ほかの地域は大きく減っていく中でも、北海道はかなり残っておるというようなことであります。また、気象条件からいいましても、北海道の麦というのは私は適地ではないかというようにも考えておりますし、いろいろ生産施策、それから価格政策というようなことと相まって、北海道のビール麦、小麦というようなものの維持発展をはかっていかなければならぬというように考えております。
  74. 島田琢郎

    島田(琢)委員 そこで、この際、麦管理改善要綱の問題につきまして御質問をいたしますが、これも北海道の実情をちょっとお話し申し上げたいと思います。  北海道において四十七年産の秋まき小麦の契約の内容がはっきりいたしましたが、私ども毎年小麦の販売にあたって非常に難儀をしている。麦管理改善要綱が出たら安心して政府に全量買ってもらって——政府が全量買う制度でありませんけれども、奨励金をもらって、そして小麦の販売についても心配ないようになるのだ、こういうふうに思っておりましたら、どっこいそうはならない。御承知のとおり、非常にたくさんの非契約麦というものが出てまいりました。その後、事務取り扱い要綱の手直しなどがありまして、内地の実需者との間における取引なども可能になりましたから、その後四十六、四十七、四十八年にわたっては、非契約麦、こういう状態は出てまいりません。解消されました。しかし、非契約は解消されましたと私は簡単に申し上げましたけれども、これがまたたいへん難儀なのであります。前後三回にわたって実需者との話し合いを進める。そのあげくにどういうことが出てきたかというと、横持ち運賃をおまえたちが持て、運賃をおまえたちが負担するのであれば買ってやろう、こういうことであります。それも毎年運賃のいわゆる持ち出し分がふえてまいりまして、ことしは五百八十円、そのほかにさらに六十円上積みをしてもらわないと最終的ないわゆる非契約麦の引き取りはできないということで、これも泣く泣く六十円上積みして、六百十円横持ち運賃を生産者が負担をして、小麦を買ってもらっているというのが実情であります。これは私はせっかくつくった麦管理改善要綱が必ずしも機能的でないばかりか、幾つかの問題点をここにかかえ込んでいるからだということを言わざるを得ないのであります。しかしながら、小麦をつくる者は、アウトサイダーにおろうとインサイダーにおろうと、あるいはまた一等から三等あるいは等外の下、こういう小麦を持っている者であろうと何であろうと、お互いにひとつ仲間だからみんなでもって奨励金はプールで計算しようじゃないか、そしてまた横持ち運賃も持つ者と持たぬ者があるということについては仲間としては好ましくない、お互いに麦をつくっている仲間は共同して連帯してやろうじゃないかということで、これまたたいへんむずかしい話し合いを幾度も幾度も繰り返しながら、ようやく今日、いずれもプール計算方式に基づいて麦類の全作付農家が負担をし合って、非契約麦の解消に努力しているというのが現地の実態であります。しかも、内地府県の皆さん方にも二十円のいわゆる負担をしていただきまして、それを全農に約一億円積み立ててあるわけでありますけれども、そのうちから助成金を北海道に大半つぎ込んでもらっている。内地府県の麦づくりの農家皆さん方にはまことに私どもは頭の上がらぬ状態であります。申しわけないと思っているのです。  こういう点を考えますと、この麦管理改善要綱なるものをせっかくつくっているのでありますから、そうした問題が現地に起きないように手直ししてほしいということを、私ども毎年繰り返し繰り返し要請をし、陳情をしているわけであります。私もその陳情には毎年来たわけであります。しかし、われわれが期待するような形にはついにならないまま今日までこういう状態に据え置かれてきておるのであります。この際、麦管理改善要綱の問題点は明らかでございます。  もう一つ加えるならば、三等まではこれは自動的に買い上げられるが、等外についてはこれも相当運動しなければ買ってもらえぬということは私はおかしい。要すれば、四等をつくってやはり買い上げ対象の麦にすべきではないかという意見を持っております。長官、この点についてはどうお考えでしょうか。
  75. 中野和仁

    中野政府委員 麦管理改善対策の北海道の実情につきまして、いまるるお話がございました。私どももおおむねそれは承知をしております。そこで、先ほども指摘がありますように、若干改善をしてまいりましたが、まだそういういろいろ改善された中でも問題点があるようでございますので、これは今度の麦価の算定の際にいろいろ検討して、前向きに考えてみたいと思っております。  ただ、四十八年度の産麦につきましては、小麦の奨励金を三十円上げまして、その分を別途積み立てて、道内の生産者の負担軽減をはかるというような措置等も新しく講じておりますので、なお実情をわれわれも十分把握した上でやってみたいと思っております。  それから等外麦の話でありますが、実はもう五年になりましょうか、麦の規格の改正をいたしまして、むしろ簡素化をしたわけでございます。そういうことでございますが、いま四等ということを言われましたけれども、実はそれは簡素化して、一等から三等までにしたわけです。ただ、普通の場合は、等外麦を食糧として買う必要はないと思っておるわけでございますが、麦が雨害その他不安定作目でございまして、年によって非常に違いがあります。非常に多く買う年、ほとんど買わない年、いろいろございますが、ことしも、きょうこの委員会で何人かの先生からお話がございましたが、いますでに大蔵省とも話をしておりますが、麦価決定あるいは決定直後でも、少なくとも最近は六月までには全部きめておりますから、そういう方向で等外麦の買い上げについて措置をいたしたいと思っております。
  76. 島田琢郎

    島田(琢)委員 時間が来ましたので、言い足りない点はたくさんありましたが、これは後ほど政務次官とももう少し直接話をしたいと思います。ぜひ私どもの実態を承知していただいて、しかるべき措置をひとつお願いしたい。これはほんとうに真剣に私ども麦作振興させて、ローテーションの中で、先ほど言ったように、経営の総体的な安定をはかっていきたいという願いがあります。局長もひとつ真剣に後ほどお話を聞いていただきたいと思うのです。足りない点は後ほどに譲ります。  ただ、いま一つだけ申し上げておきますが、北海道における優良品種の——技術会議中澤事務局長おいでですから、この点だけのお考えをお聞かせいただきたいと思うのですが、従来われわれは「北栄」という優良品種をつくってまいりました。これは一説によれば、農林省の優良品種でなかったと言う人もおりますが、私ども農林省の優良品種としてつくってきた。その後「ムカ」というものが出現してまいりました。アミノ数値が高いとやら低いとやら難くせをつけて、製粉業者は「北栄」を買わないというようなことが出てきて、これから作付の段階で大混乱をいたしました。私は北見の道農試の研究室に三日参りまして、現実にほんとうにアミノ数値が低いのかどうか。そして「ムカ」が「北栄」と品種的にそれほど差があるのかどうか。業者が言うように、えり好みをするほど「北栄」の中にあるのか、いろいろ調べてみましたけれども、私自身としてはこれに明確にこたえることができませんでした。外見上あまり差もありません。粉にしてねばりを見ても、そんなに手ざわりは悪くない。うどんにして食ってみました、何にも悪くない。パンにしたけれどもけっこういい。どうしてそういうものがそういうふうになるのか、私はふしぎでならぬのであります。この点はいまお答えいただけなければ、時間が来ましたので、皆さんに御迷惑をかけますから、後ほどこうした品種の問題につきまして技術会議考え方を聞かしていただきたいと思っておるのでありますが、農林省がそういうものを優良品種だと言えば業者は安易に「ムカ」は優良品種だから買うけれども、「北栄」は優良品種でないからこれは買わない、こういうふうに利用されてしまいます。その点は奨励施策なり品種の改良の面で発表される段階では十分慎重を期していただきたいものだ、こう思うのであります。  意見だけ申し上げて私の質問を終わります。
  77. 山崎平八郎

    ○山崎(平)委員長代理 次に、中川利三郎君。
  78. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 宮城県の県の鳥はヒバリであります。また常磐線の宮城県行きの汽車の中に「ひばり号」という汽車がありますが、こういう名前がなぜつけられたかということについてお考えになったことがございますか、食糧庁長官
  79. 中野和仁

    中野政府委員 存じません。
  80. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 常磐線の沿線は、麦の主産地でありまして、列車からかつて見た風景は、一面麦畑で、ヒバリが飛んでおった。そういうことであの汽車は「ひばり号」と名づけられて、その行く先の宮城県では県の鳥の名前をヒバリとしたのです。麦とヒバリとの関係、特に麦につきましては、いろいろなわらべうたの中にもたくさん出ております。日本の文学の中にもたくさん出ておりますし、日本人の心のふるさととして非常になつかしい思い出を私たちは持っておるわけでありますけれども、この麦が今日植物園へ行かなければ見られない、こういう状態になったようでありますけれども、このようななり方について、これは自然発生的にそうなったのか、それとも政府や行政当局の一定の意図、指導の中で、政治的な状況の中でこういう状態になったのか、そこら辺についての基本的な御見解をまずお聞きしたいと思います。
  81. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 麦の作付面積減少いたしておりますことにつきまして私ども憂慮をいたしておるわけでございます。  その原因はいろいろございますけれども、第一には、麦作規模の零細性、その零細性からくる生産性が低いということと収益性が低いということ、第二は、兼業機会の増大の問題、それから第三は、麦作と前後作との作期の問題、その他九州等の雨の問題というようなことが原因であろうかと思います。
  82. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまりいま言うたようなことは、自然発生的になったのか、それともおたくの一定の意図のもとにそうなったのか、そのことを聞いているのです。
  83. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 こういうような経済全体の動きの中で、こういうことになってまいったと思います。
  84. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そのような経済をそういう状態にしたのは、おたくは全く責任がなかったとおっしゃるのか、麦を全滅のようなこういう危機状態に持ち込んだこと、全体の中でと言うけれども、そういう政治、経済構造をつくったことに対する責任をお感じになりますか。これは次官。
  85. 中尾栄一

    中尾政府委員 責任を感ずるかという御質問のようでございます。もちろん麦が減っていったことは私どもの本意ではありませんから、その観点においては十分これを感じ取っております。まあ諸般の経済状況、国際的な大きな需給のバランスの異常さ、こういうものからすべてがこういうものにしわ寄せをされておるという点は、十分私どもは考慮に入れて考えておる次第でございます。
  86. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 十分そういうものを考慮した状態の中で、たとえば三十年代三百万トンであったものが、四十年代前半に二百万トンに減り、四十六年においては九十万トンに減っており、さらに四十八年の予想では四十万トン。こういうものがあなた方が十分配慮した中で起こったということ、十分に熱意を込めてやったという中に起こったということについてどうお考えになっておるかということです。
  87. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、麦の維持増大ということにやはり努力を傾けなければならないということで、生産性の高い麦作というようなことを片方で考えておりますが、それと同時に、また前後作との関係の調整というようなことも考えて、麦作の維持振興をはかってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  88. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなた方が努力を傾けた結果が、日本の歴史上かつてないような全滅状態に追いやっている。あなた方の努力というものは麦作を滅ぼすための努力であって、発展させる努力というものはどこにありますか。この三十何年以来の経過の中でどういう点で努力したか答えてください。事実上ここに数字が出ていますから。
  89. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 麦の問題につきましては、先ほどから申し上げておりますように、作付規模が零細であるというようなことで、採算性が低いというようなこともありまして、他産業への流出、あるいは他の作物との競合関係というようなものから出てきたものと私どもは考えておる次第でございます。
  90. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 作付規模が零細だということは農民が悪いということですか。おまえのほうの作付規模が零細でと言うが、日本農業というものは昔からそういう状況なんですよ。いまさら作付規模が小さいのを理由にするということは、責任を農民に転嫁するものではありませんか。あなた方は零細だから機械化できにくいと言うけれども機械化した米はどうですか。機械化貧乏が現実に進行して、私どもの秋田県ではほとんどもう米作——日本農業全体がそうですけれども、もうほとんどが出かせぎしている状況です。機械化がそのきめ手だなんという言い方はおかしいじゃないですか。どうです。
  91. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 労働力が流出している中で麦作を維持してまいりますためには、省力的な技術というものの導入が必要であります。また、そういった技術を駆使することによりますかなりいい麦作も出てきております。先ほどの御質問にもございましたけれども、そういった優良事例が全国にも出ておる次第でございます。
  92. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなた方、米づくりには省力化、機械化を一貫してきたでしょう。その結果が今日の日本農業の現状でしょう。そうして、米が余ったからといって買い入れ制限、減反、いま麦は全く生産が全滅しようとしておる。そうした逆の政策をとるかと思えば、それを償えないような麦価を押しつけている。そのことに根本的な原因があるということを指摘しておかなければならないと思います。  さらに、あなたは労働生産性が何だかんだといろいろ並べましたが、引き合うような麦価を出したらいいでしょう。私はしろうとですからあなた方笑うかもしれませんが、簡単なことじゃないですか。引き合わない麦価を押しつけるからだれもつくる者がいない、こういうことだと思いますが、その点はどうでしょう。簡単にいきましょう、お互いに。
  93. 中野和仁

    中野政府委員 麦の置かれている農業内での地位は、るる申し上げることはございません。そういう中で、現在まで麦の買い入れ値段につきましては、経営それから家計の物価の値上がりというようなものを中心にしてやってきておるわけでございます。そのことは、麦が従属的な地位にある——いろいろな議論がありますけれども、われわれとしましては、国際的な状況それから麦の状況ということを考えまして、やはりこの際麦を立て直すには従来のままの経営のやり方ではだめで、どうしてもこれは規模の大きな能率的な経営に持っていかなければならぬというふうに考えております。
  94. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 麦が従属的の地位にあるという前提は、あなた方がつくった前提でしょう。そうじやなかったでしょう、日本の麦というものは。裏作もありましたけれども。だから、表作になるようなそういう位置づけにしたらどうです。日本国民の中では米に次いで重要な麦ですが、そういうものを一貫してサボって、いまさらあの理由この理由をあげまして、そうして麦はだめなんだ、農民が悪いんだ、おまえたちの零細生産がだめなんだということであったら、政治は何のために必要なんですか。そういう点で私は、非常に政策的に今日の麦作を破壊してきたということは、これはもうすでにいわれていることですが、自給を放棄して輸入に依存してきたあなた方自身の責任だということをまず指摘しておきたいと思います。時間がないから次に移ります。  次に、農民から買い入れる麦の価格は、食管法第四条の二第二項によって、再生産を確保することを旨としてきめるということになっていますが、いまあなたがおっしゃったように、麦の再生産を確保することを旨として麦価がきめられていますか、再生産できるのですか。まずそれをはっきり聞きましょう。
  95. 中野和仁

    中野政府委員 御指摘のように、食管法でそういうふうに麦の再生産を確保することを旨として定めるということになっております。ただ、前年とことしを比べてみまして、量が減ったからすぐ再生産が確保されていないではないかというふうには私は必ずしもならないと思っております。やはり麦をめぐります内外の供給の状況なり、麦の生産費なり、その能率あるいは食糧庁の今度は売る場合のいろいろなものの考え方、そういうもの等をいろいろ総合勘案しまして、その結果として再生産ができるようにできるだけ持っていこう、こういうふうに考えております。
  96. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私は食管法を聞いているのですよ。食管法で再生産を確保することを旨とすると書いてあるのです。消費者価格だとか、価格政策の問題を聞いているんじゃないですよ。そういう法のたてまえの中で麦価はきめられなければならないのに、そうじゃないからこそ、あなたは減っても再生産できないことはないなんということを言いますけれども、減ったこと自体が再生産できないことになるでしょう。再生産できないから毎年減っていくのですよ。しかもその減り方が驚くべき減り方だ。そこに問題の深さがあるということでなければならないと思います。  それならお伺いしますが、農民が麦をつくる場合の生産費ですね。たとえば一俵六十キロ当たりどのくらいかかるか、ひとつ実際に御説明いただきたいと思います。
  97. 中野和仁

    中野政府委員 四十七年の生産費はもうすぐ統計情報部から出ますが、四十六年で申しますと、大麦で第二次生産費反当二万六千八百四十三円、小麦が二万二千八百十円、裸麦三万九百七十六円、ビール大麦二万二千五百三十五円でございます。
  98. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 私はいなか者で消費者しか知らないものだから、何キロ当たりですか。これは六十キロ当たりで、買う人の標準でしゃべってもらわなければなりませんが、私の調べたのがありますから申し上げますと、生産費が六十キロ平均で五千百三十三円でしょう。おたくの政府買い入れ価格、これは六十キロ当たり平均で三千六百六十七円。このことを認めますか。
  99. 中野和仁

    中野政府委員 失礼いたしました。私は反当で申し上げましたが、俵当たりにいたしますと、いま御指摘のとおりの数字でございます。政府買い入れ価格もいまおっしゃったとおりでございます。そのこと自体は、統計情報部の生産費調査と比べればそういうことになるわけでございます。
  100. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 つまり、あなたは再生産費を償う旨を食管法で規定しているという状況の中で、農民は麦を一俵つくると千四百六十六円の赤字が出ることになるのです。生産費を償うどころじゃないのですよ。しかも米価審議会での麦価の値上げ幅が米価から比べて四割台だ、非常に低いですね。こういう状況の中で再生産がどうしてできるか、お答えいただきたいと思います。
  101. 中野和仁

    中野政府委員 統計情報部の生産費調査そのものは全国の生産費でございますから、そのことはそのとおりでございますが、その生産費の中身を見ますと、北海道のような畑作地帯の麦の生産費と、それからたとえば香川県のように、たばこなりあるいは果樹の風よけというようなためにつくる麦と、いろいろなものがまざっておりまして、これとすぐ比べてそれが再生産が確保されてないということでは必ずしも当たっていないのじゃないか。その生産費の中でもいろいろ分析をしてみますと、能率的な経営の場合には生産費をまかなっておる農家もあり、また地帯もあるということでございます。
  102. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 特殊なことを聞いているのじゃありませんよ。一般的に平均的な問題を聞いているのです。行政というのはそういう特殊の部分に光を当てていって、典型例だけで政治をやるというものの考え方で、抽出で政治をやるのじゃないでしょう。  それではお伺いしますが、そういう状態があるということは事実です。もう一つは、これだけ農民を犠牲にしながら、こういう状態に押しつけておきながら、国の予算の会計、食管会計の国内産の麦勘定というのは赤字だそうでありますが、そのことは事実かどうか。——では私から言いましょう。私の調べでは四十七年で百五億円の赤字見込みです。四十八年度予算では二百五億円の赤字をおたくでは予想しているわけですね、国内麦の食管勘定は。農民をそれだけ痛めつけておいてそれだけ赤字が出るということは一体どういうことですか。なぜそうなるのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  103. 中野和仁

    中野政府委員 御指摘のように、赤字はそういうふうになっておりますが、これは農家買い入れ値段が小麦にいたしますれば六万五千円、小麦の売り値が三万一千円でございます。その差額と、それから食糧庁がそれを取り扱います運賃、保管料、その他の経費というものを足しますと、そういう赤字が出るわけでございまして、生産者価格に比べまして、一言で申し上げれば、政府の売り渡し価格が非常に安いということでございます。
  104. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 ではお伺いしますが、つまり簡単に言えば、農民からは生産費を償えない安い価格で買いたたいて、大製粉会社にはべらぼうに安く売っている。そのことが赤字の原因だ。端的に言えば、こういうことですか。
  105. 中野和仁

    中野政府委員 それは私は非常におかしいのじゃないかと思います。政府の売り渡し価格は消費者家計の安定ということを旨として定めておるわけでございまして、そのために二十五年、間接統制になりまして以来、ずっと、ほとんど政府の売り値は据え置きか引き下げというようなことで参っております。それの一つの原因といたしましては、やはり国内価格が非常に高い。それに対しまして外麦が、国際価格が非常に安いということで、そんなに引き上げることは対消費者のためにはよくないということでございまして、大製粉会社に安売りしているということでは決してございません。
  106. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 あなたは安く製粉会社へ売るのは消費者家計の安定のためだとおっしゃるのですね。生産者価格の再生産の確保の点についてはあかんべえというか、われわれのことばで言えばあかんべえと言って舌を出すのですが、そうして大資本の製粉会社には、消費者価格の安定だということを理由にして、べらぼうな安い価格で払い下げている。しかもその払い下げ価格は、私の調べがありますけれども政府国内麦の製粉会社への売り渡し価格は、四十六年度で標準六十キロ当たり平均千九百四十四円です。四十七年度でそれよりさらに安くまけて千八百九十五円です。つまり農民から買い入れ価格の約半値です。それで売りつけている。消費者を思えばこそ涙をのんで、そうおっしゃる。消費者価格を安定させるために、そういうふうにあなたはおっしゃりたいのでしょうけれども、しかし、安く払い下げたからパンが安くなったとか、めん類が安くなったとかそういう話がありますか。私、具体的な事実の数字を持っていますけれども、そういうふうに安く売るから、消費者に安く売っているのですか。これらの会社はもうけなれけばならない商事会社でしょう、株式会社でしょう。そこへ安く払い下げるということは、彼らのもうけを保証してやるということでしょう。そこのところをはっきりつかんでいますか。つかんであなたはそういう御答弁をしているのですか。そこをもう一度はっきり答えてください。
  107. 中野和仁

    中野政府委員 先ほど明快に申し上げましたとおりでございまして、小麦粉はパン、めん、ビスケットその他になるわけでございまして、政府が三万一千円の水準で売っておりますからこそ、いまの値段ができているわけであります。それを政府が売ります値段を倍に、いまの買い入れ価格と同じにしますと、当然倍にして売ることになるわけでございます。その場合には、たとえば原麦から小麦粉をつくるに、先ほど御答弁申し上げましたが、八割が原料代でございますから、小麦の値段は当然倍近く上がるということになるわけでございまして、二次製品にいたしましたパン、めんにいたしましても、二割から、ものによりましては一割五分、それぞれ小麦粉がウェートを占めているわけでございますから、それが倍に上がるということになりますと、消費者価格に相当響いてくるわけでございます。水準としまして、いまの政府の売り渡し価格によりまして、現在の末端消費者価格ができておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  108. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 会社は公益事業じゃないですよ。それならお伺いしますが、日本の製粉業界の六割のシェアを占めるところの日清、日本、日東、昭和、この四社でありますが、日清製粉の決算書を出してごらんなさい。公益事業をやっているのか。はたして何ぼもうけたのか。いま準備があるかどうかわかりませんが、どうですか。
  109. 中野和仁

    中野政府委員 ただいま手元に持っておりませんので、後ほど取り寄せまして、お示ししたいと思います。
  110. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そういうばかなことを言うから——ばかなことなどというとおしかりを受けるかもしれませんけれども、そういう頭だから、今日の麦作なり農民の立場を全く考えていないから、しかもあなた方が考えるのは、独占資本や大資本のことばかり。  そこで、私が総括的にお伺いしたいのは、少なくとも今日の食管の麦作勘定の赤字というものは、麦作農民のための赤字ではないということは確実ですね。このことはひとつ念を押しておきたいと思います。
  111. 中野和仁

    中野政府委員 先ほども御説明申し上げましたように、御指摘のように、あるいは買い入れ価格についていろいろ議論があるとしましても、政府が高く買いまして、それを消費者家計の安定のために安く売っている差額が赤字でございます。
  112. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 ことしパンが値上がりをしている、めん類もみんな値上がりしているんだ。それは人件費もあるでしょう。ほかのあれもあるでしょう。しかし、あなたの筆法に従えば、小麦が全体の何割だかを占めるとおっしゃる。しかも、あなたのほうの売り渡し価格は六十キロ当り、四十七年は高くするんじゃなくて、まけて安くやっているのです。それで上がっているということはどういうことですか。
  113. 中野和仁

    中野政府委員 昨年政府の売り渡し価格を若干下げましたのは、ふすまの値段がいまと様相が全然違いまして、非常に下がっておりました。計算上そういうことで下げませんと、これは製粉業界の採算が全然合わなくなるということで下げたわけでございます。  ただ、末端製品になりますと、先生も御指摘のありましたように、私も申し上げましたように、二割、あるいはものによりまして一割五分程度のウエートしか占めておりませんが、二次製品になりますと、末端になりますと、パン屋さん、うどん屋さんにしましても、非常に零細な企業でございますので、最も値上がりに響きますのは、私は人件費ではないかと思っております。
  114. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 ああ言えばこう言うというけれども、末端価格は別だけれども、ほかのところは下がっている、こういう言い方で、卸値段が下がりましたか。小麦粉の卸が下がっていますか。
  115. 中野和仁

    中野政府委員 ちょっといま詳しく調べてみますが、私の記憶ではおととしの暮れから、小麦粉の値段はほとんど水準が安定しておるというふうに考えております。
  116. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 出ましたか——おととしもさきおととしも要らないから、ことしは去年と比べてどうですか。
  117. 中野和仁

    中野政府委員 四十七年一月小麦粉の薄力一等粉のことでございますが、キロ八十八円五十銭でございまして、それが四十八年一月には八十九円五十銭、一円上がっておるわけでございます。その上がりましたのは、去年の四月からでございます。それからあとはずっと安定しております。
  118. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 べらぼうな会社のもうけに比べまして、この資料はあとでいただきますけれども、しかも物が上がっているということですね。こういうことは、あなた方はほかの理由にかこつけたいわけでありましょうが、基本的には、ここには大きい問題がある。こういうことを私は指摘せざるを得ないわけであります。つまり政府のそういう姿勢ですね。いまの米や麦にいたしましても、価格政策だけを問題にしまして、そうした生産者の所得的な補償、こういうものは一貫しておろそかにしてきたところに大きな問題があるし、その根本には大企業優先の政治があるということだと思うのです。あるいはアメリカ優先ですね。この麦の場合には特にそれが顕著であるわけであります。  そこで、お伺いするのは、今回の丸紅の問題です。新聞にも発表しておりますように、丸紅は個人と会社の双方の刑事責任を受ける、つまり食管法第三十七条の両罰規定の適用を受けて起訴された。このことは、食管法と食管制度自体がさばかれたものだ、こういうふうに私は思いますけれども、どうお考えですか。
  119. 中野和仁

    中野政府委員 食管法がさばかれたかどうか、これはいろいろ御批判でありますからお受けいたしますが、先生方承知のように、この二月以降、モチ米の値段が急騰してまいりまして、そのまま放置できないということで、食糧庁として食管法に基づきます倉庫の調査をやったわけでございます。その結果、御指摘のようなことで一応起訴の段階まで至ったわけでございます。私といたしましては、今後とも食管法の適正な運営をはかっていくべきだというふうに考えております。
  120. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 今後とも食管法の適正な運営をはかっていくということは、前も食管法の適正な運営には一生懸命がんばったということの延長でしか、そういう発言はできないはずです。そういう事実関係が事実としてありますが、この丸紅の問題を含めて。
  121. 中野和仁

    中野政府委員 いまの先生の御質問、あるいはちょっと誤解しているかもわかりませんが、戦時中あるいは戦後のような非常に需給の逼迫しましたときからしますと、確かに御指摘があるいはあったと思いますけれども需給が非常に緩和した中での食管法の運用というのは違ってきております。また政府といたしましても、四十四年以来、順次食管の運営に改善を加えてきておるわけでございます。
  122. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 丸紅を起訴した。たいへんりっぱなことのように見えます。起訴されたのは当然でありますけれども、おたくのやったことは、丸紅の輸入代行業務ですが、これは米にして来年の三月まで、麦はことしの七月までの停止だ。なぜ認可をやめさせないのですか。食管法に明白に違反しているという状況が司直の手で明らかにされて起訴された、判決は出ていませんけれども。どうですか。これは前々から問題になっていましたが、輸入代行業務の認可を取り消したらどうですか。そういう気持ちはありませんか。
  123. 中野和仁

    中野政府委員 御指摘のように、処罰されたときに、食管法違反でありますれば、その違反によります影響の度合いに応じまして輸入登録の取り消し、それから売り渡し申し込みの受付の停止あるいは契約の解除等、必要な措置をとることになっております。しかし、今回の事件の諸般の状況から判断してみますと、処罰されるまで待つということは、食糧庁としてもいかにもこれは手ぬるいのではないだろうかということで、起訴される段階において、状況を勘案しまして、先ほど御指摘の受付の停止を米と麦についてやったわけでございまして、新しく取り消すつもりはございません。
  124. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 影響の度合いに応じてものを勘案していく、まだ判決が出ないから、さしあたってこの停止をした、こういうことですね。そうしますと、私、少し誤解しておったようでありますが、あなた方、丸紅にいまのような措置で一件落着と、ほおかぶりするのじゃないかと思っておりましたが、判決が出れば、あらためてその時点でもう一回これに対する態度をきめる、こういうことですね。
  125. 中野和仁

    中野政府委員 そうではありませんで、いま申し上げましたように、本来、いまの形式的な規定からいいますれば、あとで行政措置をすべきなんですけれども、いろいろな状況から勘案をいたしまして、この際それを早めまして処置をいたしたわけでございまして、もう一度やるというつもりはございません。
  126. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 そうすると、あなたはこれで一件落着だと、こうおっしゃりたいわけですね。制裁はこれでもう全部なんだ。あれだけの社会的な政治的な問題を引き起こして、しかもあなた自身が、この前の物価問題特別委員会で、わが党の小林政子議員の質問に答えまして、有罪判決が出たのでないので特別法的な問題はないという答弁をしておるのですね。これから有罪判決が、あるいは、控訴するかもしれませんけれども、出たら、さらにそれに対して確定的な認可取り消しに踏み切る、こういうことでないと国民は納得しないと思います。それでなくとも、いま申し上げましたように、そうした大企業とあなた方政府との癒着が問題になっているわけですから、それくらいのき然とした態度をとらないで、米は来年の三月までだ、麦は来月で終わりだというようなことでは、全くなまぬるいというか、こういう姿勢の中でいろいろな問題が起こってきたのではないかというふうに私は考えるわけであります。その点ではなはだ不満どころではなくて、大きい問題だと私は思いますので、再度御答弁いただきたいと思います。     〔山崎(平)委員長代理退席、委員長着席〕
  127. 中野和仁

    中野政府委員 経緯はいままで申し上げたとおりでございます。食糧庁といたしまして輸入登録業者にこういう処分をしたことは初めてでございます。私たちいろいろ内部で検討しました結果、これが適正な処分であるというふうに考えております。
  128. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 いま食管法自体が国民からさばきを受けている、食管法自体がさばかれている。しかもその典型例である丸紅側に対してあなた方こういうなまぬるいことをやったら、ほかの商社はどうしますか。何ぼやったってその程度かということになるでしょう。このことで、いまあなた方の態度、姿勢が問われておるのに、これを見て私はあ然としたわけですけれども、これでは制裁にもならぬわけですよ。会社にとって痛くもかゆくもないでしょう。どの程度の痛さがあると思うのですが、あなた。
  129. 中野和仁

    中野政府委員 どの程度の痛さになるか。一つは、今度の停止によります経済的な痛さがあるかと思います。これも食糧庁は毎週一回入札をしておりますが、それが麦については三カ月停止、米は輸出と輸入——米の輸入はほとんどいまやっておりませんから、経済的にはそれほどのことはないかと思いますが、私はそれ以上に、大きな商社は国際貿易に参画をしておりますが、それが日本政府から行政処分を受けたという、そういう信用問題というのは非常に大きな痛手ではなかったかというふうに思っております。
  130. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 食管法に違反したことが明らかな場合には、それを取り消しできると食管法に書いてあるのですよ。書いてないのですか、取り消しはできるでしょう。取り消しはできないことになっているのですか。取り消しはできるでしょう。だから、停止なんということは聞いたこともないですよ。取り消しかどうかということがわれわれのいろいろな論議の中で問題になっておるときに、停止という中途はんぱなことが出てくることは予想もしなかったのです。そういうことで、あなたはいま何だかんだと言いますけれども、その態度がまさに日本の商社をますますこういう問題ではびこらしているというか、そういう要因をつくっているのだということを強く指摘しておきたいと思います。  米の在庫につきましては、在庫がふえておると言われますけれども、その反面、世界の麦の生産状況が深刻化しておるということを新聞、あるいはFAOの長官が先般来まして、それを指摘しているわけですね。それにつきまして、麦そのものの自給を放棄してきたというたいへんな状況におちいっておる。これはいまこそ自給をしなければならないということが最大の緊急の課題であると思うのですが、これについて私お聞きしたいのは、政府や財界、皆さん方のほうでは、かねて輸入拡大の方針を少しも改めようとしておらないということですね。たとえばこの国会で田中総理が施政方針演説をしておるわけでありますが、それによりますと、「当面の物価対策としては、まず輸入の積極的な拡大をはかることであります。」と、物価対策の第一義的課題として輸入の積極的拡大を位置づけているわけですね。あるいは昨年の十一月に日経連で「物価安定についての提言」というものを出しております。これについても財界の意向として、農産物などについては「いたずらに自給達成を目標とすることなく漸次輸入依存にふみきることが要請される」、こういっておるのです。また「特に食料品についてのみ高自給度の必要性を主張することは時代錯誤といわねばならない」、こういうようなことをいっているわけでありますね。しかし、日本農業を守るという立場にある農林省は、こういう田中総理の発言やあるいは財界の発言に対して一定の評価を持っておると思いますが、どう思いますか。
  131. 中野和仁

    中野政府委員 財界の一部でいまお話しのようなことがあるいはあるということも私は承知しておりますけれども農林省の態度といたしましては、一貫いたしまして国内生産の可能なものについては自給をはかっていくということできております。現に昨年秋に出しました十年先の見通し生産目標におきましても、そういう方向でその施策をやるということにいたしておりまして、どんどん国内農業を破壊しながら外国のものを入れていくという政策は決してとっておりません。
  132. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 麦の自給の政治的位置づけはどうですか。生産可能なものは国内での自給をはかっていく。麦の場合の位置づけはどうですかということを聞いておるのです。
  133. 中野和仁

    中野政府委員 いま申し上げました生産目標におきましては、麦は一五%自給ということにいたしております。
  134. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 麦は一五%自給だということははっきりしましたね。そうすると、八五%は輸入する、こういうことですね。日本では麦というのは主食ですね。民族の主食である。この麦について自給度が一五%、独立国としてこういう方針をお立てになること自体が私は大きく誇りを失ったものである。かねて政務次官も、そういうおもなる農産物の自給は民族の独立にかかわるものだ、国民の誇りにかかわるものだ、こういうことをおっしゃっていたが、そういうことと明らかに違うではありませんか。
  135. 中尾栄一

    中尾政府委員 何と申しますか、民族の誇りというのは、私の前の答弁でそういう言い方をしたという形でいまここでお話しなさいましたけれども、当然これは心のよりどころの問題でございまして、麦を輸入するから民族の誇りがなくなった、こういう解釈だけでは私は当たらないと思うのであります。そういう意味におきましては、日本の国というのは、いかにせん、世界の国の中において狭隘な土地の中に住んでおって、そこで生産し、そこで需要していく、これが私どものいわゆるルーティンでありますから、その行動体系の中で考えれば、やはりわれわれ農業問題を論ずる場合に、農民をまず考えていくということは必至でございますが、同時に、これまた農林省農民のことだけを考えて消費者の立場を忘れていくというものでもございませんし、そういう立場の中でこういう問題をとらえていくというところに一つの問題点があろうかと思います。それだけに、先ほどの先生の御指摘は十分配慮しながら、なおかつ自給体制を整えて、足りないところは入れていくという方針に私はいそしんでおるわけでございます。
  136. 中川利三郎

    ○中川(利)委員 最後の言だけお伺いします。  いま狭隘な土地、そのことが原因であるようなことを言いましたが、もともと日本農業は、狭隘な土地の中でどういうふうに発展させるかということが真の農業政策だと思うのです。狭い国土の中で土地条件をどう生かすか、そういう面の指導ということを怠って、いまさら土地条件が悪いとか零細であるというようなことを言われますが、零細であるからこそ、そこに日本農業の特色があるのですから、それをどうするかということで政策を進めていかなかったらどうなるんですか。そのやり方について私は指摘していたわけです。  そこで、最後の問題でありますが、問題というよりも、いまの麦価の問題でありますけれども、いろいろ先ほどからも言われまして、特に麦作振興の抜本対策に対する要請というものが関係団体から出ているわけですね。この中には四項目の問題が出されておりますが、先ほど申しましたように、米については過剰だ過剰だといわれながら農民はやられている、麦については少ない少ないといわれながら、どっちにしても農民はやられている。こういう状況の中で、自民党はいまこそ、この麦価あるいは今後起こるであろうこういうものについて、ほんとうに農政の真価が問われているのだ、そういう反省の上に立って新しい麦価のことをお考えになるのかどうか、この点を最後にお伺いして、私の質問を終わります。
  137. 中尾栄一

    中尾政府委員 この農林委員会の場は政党の場ではありませんから、自民党の態度というよりも、政府の態度ということを問われるわけでございましょうが、先生の御指摘なさいますそういう点は、十分考慮に入れて考えてみたいと思います。私、党員といたしましても、当然そういうものは党に反映させるべきものであろうという考え方に立っております。
  138. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 瀬野栄次郎君。
  139. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 麦価問題について農林省当局に質問いたします。  四十八年産麦の政府買い入れ価格政府の標準売り渡し価格をきめる米価審議会が来たる十九日、午前十時から農林省三番町分庁舎で開かれることになったわけでありますが、農林省の諮問案作成にあたり、抜本的な解決策を十分に検討し、対策を織り込んでいただきたいのであります。  中尾政務次官に最初にお尋ねいたしますが、麦作はまさにここ一番という重大なところに来ていることは十分承知だと思いますが、本年の麦価大幅決定いかんにかかっている、私はこういうふうに言っているのであります。すなわち、政府が四十八年秋まきに力を入れるかいなかによって百万トンへの回復もこれは可能でありまして、もし力を入れなければ、まさに従来からいわれておる安楽死から自然消滅死になってしまう、こういうふうにたいへん危惧をいたしております。日本麦作はいわゆる成り行きまかせにしておくのか、どういうふうに当局は考えておられるのか、その辺ひとつ御見解をまず伺いたい。
  140. 中尾栄一

    中尾政府委員 麦価の問題についての御質問かと思いますが、先ほどからずっと討議を続けておりますように、いかにせん、農業の中における麦の占める役割りというのが、三百八十万トンから相当大幅に減少していったという原因、これはるるこの場で述べたとおりでございまして、それだけ私ども政治課題として真剣にこの問題をとらえていかなければならないという立場に立つわけであります。  そこで麦価でございますが、麦の政府買い入れ価格は、あくまでも食糧管理法の規定によってパリティ価格を下がらざるものという方向で考えまして、パリティ価格を基準として麦の生産事情その他の経済事情を参酌して麦の再生産を確保することを旨として定めていこう、このように考えておる次第でございます。
  141. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 麦価の諮問にあたって、問題は大蔵省だと思うのです。農林省の対大蔵省折衝を相当強力に働きかけないと、これは困難な問題があると思うのです。きのうもちょっと失礼な言い方で申し上げたが、大蔵省農林局というようなことをよくあちこちで聞くわけです。こういったことでは相ならぬ。やはり腰が強くなければ相ならぬ。農林大臣はきのうも腰は強いと言われておりましたけれども、そこらに一番ネックがあるのではないかと思います。  そこで、現在まで何回ぐらい本年度麦価について折衝されたか。また、政務次官、農林大臣も直接大蔵省に折衝されたか農民のためにどういう働きを今日までしてきておられるか、それをひとつお聞きしたい。
  142. 中野和仁

    中野政府委員 麦価につきましては、先ほどお話ありましたように、十九日、米価審議会を開いて御審議いただくことにしております。そのためには政府の諮問案をきめなければなりませんので、ただいま大蔵省——これは大蔵省だけでございませんで、企画庁もございます。買い入れ価格と同時に売り渡し価格もございます。三省で毎日のように協議しておりまして、何回という回数の勘定のしかたはむずかしいものでございますが、毎日のように協議して努力しておるということを申し上げておきます。
  143. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 毎日折衝してがんばっておられる、それは当然でありますが、相当期待する麦価が出る、こういうふうに思っております。  そこで、わが国麦作は年々減少を続けております。昭和四十七年には、三十五年の三百八十万トンに対して、わずか六十万トン、こういうふうになっております。ちなみに申し上げますと、三十五年から四十年の作付が年一〇%減、四十年から四十五年が年二〇%減、四十五年からは年に三〇%減、こういうふうに推移いたしております。四十七月十月、農林省が打ち出したところの十年後、すなわち昭和五十七年度を目標にした「農産物需給の展望と生産目標の試案」によりますと、五十七年目標としては、麦類作付面積は三十一万九千ヘクタール、生産量が百五万八千トンを目ざしておる。これに間違いないと思うのですが、しかしながら、四十七年度作付面積はどうかといえば、二十三万五千ヘクタール、生産量が六十万九千トン、ことしの秋まき予想を見ましても、十四万六千四百ヘクタール、生産量が三十四万千六百トン、こういうふうになっておりまして、一年目の四十八年度を見ただけでも、四十七年に比べて約三割減、こういうふうになっております。こういったことを見ましたときに、毎日ずいぶん麦価について折衝して意欲がかかっておると思うのですが、ほんとうに麦作振興に力を入れていこうというふうに考えておられるのか、将来どういうふうに目標を持っていこうと思っておるのか、その点ひとつ明確にお答えいただきたい。
  144. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 麦の問題につきましては、ただいま先生の御指摘のように、最近極端に生産面積が減ってきておるわけでございます。私どもたいへん憂慮いたしておるわけでございますが、これはやはり先ほど来申し上げておりますように、最近の経済の発展の中で、労働力の農業からの離脱の問題、それから農業の中での米作についての新しい技術が入ってきた。田植えが機械化されてくるというようなことがあり、また畑作につきましてもいろいろな新しいマルチというような技術も入ってまいりますし、そういう中で労働力の競合というようなものが出てまいりまして、麦が減退をしていくというような事態を生じたものと考えておるわけでございます。  私どもはそういうような中で麦をこれからも伸ばしていく。昨年の秋に発表いたしました長期の生産目標の試案というような、そういうような線に持っていきますためには、やはり麦の生産性を高めていくということが必要であります。零細規模の麦を集団化していくというようなことのための努力というものがまず第一に必要でございますし、またそういった組織というものを育成するために、機械を導入していくというようなこともやってまいりたい、かように考えておるわけでございます。また他作物との競合関係というようなものにつきましては、米の中苗を移植する技術の導入というようなことも考えておりますし、麦の作期を早める、収穫を早めるというような技術の導入ということも考えて、私どもは長期の生産目標というものの達成に努力してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  145. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 長期の生産目標を考えておる、こういうことですけれども中尾政務次官、あなたにお伺いします。  自給率ですが、もはや自給率は何%などと言えないところまで来ていると思うのです。一例を申しますと、四十六年度の自給率は小麦が八%、大麦、裸麦が三四%だったのが、四十七年度はさらに低下しているのはまず確実であります。四十八年度は、四十八年産の作付減と予想収量の大幅減から見ますと、小麦の自給率は、このまま推移するとおそらく五%を切って、二・三%程度に落ちるのではないかとわれわれは見ておるのですけれども、これはまさに自然消滅になる。ある人に言わせると、もう博物館に行ってみなければ日本の麦は見られない、こういうことになるのじゃないか、こういうように極言しておる。どういうふうにこの自給率を見ておられるか。今度は毎日毎日勉強して、大蔵省または経企庁にも交渉しているということですが、自給率を高めるためにも相当がんばられる、いわゆる世界の天候異変、食糧危機が叫ばれておるときに、相当意欲を持って進んで取り組んでおられると思うのですが、その辺はどういうふうに見通しを立てておられるか、ひとつ明快にお答えをいただきたい。
  146. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 生産自給率の問題につきましては、ただいま先生指摘のようなかっこうに最近下がってきております。  私ども四十八年の麦がはたしてどの程度生産になりますか、まだはっきり確定をいたしておりませんので、自給率はわかりませんけれども、先ほど来申し上げておりますような努力というものをこれからもずっと続けていかなければならないというように考えておる次第でございます。
  147. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 国内産麦の大幅値上げの問題でございますけれども、値上がりの要因としてはいろいろありますけれども、私たちは、異常気象で世界的に小麦が不作である、麦の国際価格が暴騰しておるというのが一つあげられるのじゃないか。  二つには、農業パリティ指数が、肥料生産資材などの値上がりで最近急上昇している。  三つ目には、国内の麦生産が年々縮小をし、麦の自給率が一〇%に減っている。さっき言いましたように、もう現に八%であり、今後の推移は二、三%になるのじゃないか、われわれはこういうふうに見ておるのですが、そういったことが三番。  四番目には、世界的な食糧危機が叫ばれる中で、麦の国内生産拡大の必要性が強まってきている。  いろいろありますけれども、こういったことを今回の麦価の値上げの要因として当然考えて、財政当局と折衝、または諮問すべきであると思うのですが、この私の意見に異論はないですか。その点、当局の見解をお聞きしたい。
  148. 中野和仁

    中野政府委員 御指摘のように、国際価格は非常な値上がりをしておりまして、ドルで見ますと、一年前の倍になっておるわけでございます。  それからパリティにいたしましても、経営費あるいは家計費のいずれも非常に上がってきております。  生産減のことは、もう触れなくても、いろいろ御議論のあったとおりでございます。と同時に、いろいろ世界的な食糧危機等の問題が出ております。そういうことはわれわれとしてはもちろん頭に入れまして、今後の米価審議会に対処いたしたいと思っておるわけでございますが、麦をめぐりますいろいろな情勢がございますので、ただいまパリティ指数を頭に置きまして対処をいたしたいと考えておるわけでございます。
  149. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 パリティ指数は先ほどの答弁で、三月のパリティで二%というようなことを言われておりますけれども、大体私たちも五月のパリティを見ればどの程度だということは、もうお互いに想像がつくわけです。そんなことでは麦価の大幅値上げはとても間に合わないと思っております。  そこでパリティ指数のことに入る前に、麦価決定あたりまして、家内労働報酬額が問題なんですけれども、麦の一日当たりの家族労働報酬というのが極端に低いんですね。四十六年、小麦が四百四十一円、大麦が千八十九円。ちなみに、米の場合は二千三百八円、ミカンが約三千円ぐらい、こういうふうにいわれている。しかるに、農村の臨時雇いの場合は千八百八円。これから見ても、平均値よりもずっと低い。粗収入を見ましても、小麦は反当二万円、米は御承知のように八万円、タバコの場合等は十三万から二十万円、こうなっております。こういったことを見ましたときに、実に小麦の場合、また大麦の場合も低い。小麦は特に低い。こういったことに対して今回の諮問にあたっては、家族労働報酬はどういうふうに検討しておられるか、ひとつお答えをいただきたい。
  150. 中野和仁

    中野政府委員 ただいま御指摘の労働報酬は各作目の生産費調査から出てくるものであります。麦につきましては、食管法に基づきまして、二十五、六年の麦価農業パリティ指数を乗ずるということになっております。直接的には家内労働報酬が幾らというふうには出てまいりませんが、やはりパリティ指数の中には家計費とそれから経営部門のそれぞれの品物の値上がり率をかけておりますから、間接的にはそれが反映してくるということになるわけでございます。
  151. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、生産費を基準にして適正な対米価比を考慮していただきたいということについて、農業団体からも強い要請が出ておりますが、政府買入れ価格をぜひひとつ対米価比にしていただきたいということであります。昭和四十六年産麦の生産費調査がいまわかっている段階で、四十七年度はまだわかりませんけれども、これを基礎としまして、最近時、三月までの経営パリティ指数上昇率によって推定した生産費及び四十八年産米の農協要求米価等より見まして、麦の生産比較的安定していた三十五年以前の政府買入れ米価に対する麦価の比率を考慮して算定する対米価比試算麦価を勘案して、麦の生産を誘導し刺激する麦価の実現をぜひ要望していただきたいという要請と陳情を受けたわけであります。御承知のように、対米価比は、麦は戦前七割だったのが、戦後は六ないし四割に減少しておる。パリティは三月で一三%、かなり上昇政府は考えておるとおっしゃっておりますけれども、ぜひとも政府買入れ麦価の対米価比を三十五年の五五、昭和二十五年には六〇%になっておりますが、この二十五年ないし三十五年の五五%くらいには価格を上げていただきたい、こういうことが強い要請になっております。そうしなければ、なかなか麦作振興をはかっていけない、こういうふうにいわれておるのです。これに対しては、農業団体等からの要請も当局はお聞きになっていると思いますけれども、十分配慮に入れて諮問案をつくり、またこういったことに対してはどういうふうに考えておられるのか、その点、簡潔に見解を承っておきたいと思うのです。
  152. 中野和仁

    中野政府委員 麦の値段をきめます場合に、いまお話しのように、米価との比率ということで先ほども御議論がありまして、七〇あるいは六五というのがあったわけでございますが、やはりその時代といまとでは麦の考え方が、といいましょうか、麦の置かれている地位等が非常に違っておりますので、いきなりそれをそのまま適用するということは、私はなかなか価格政策としてはむずかしいのではないかというふうに思っております。
  153. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 中尾政務次官、いろいろ論議がされ、また先ほどからも議論を私は聞いておりましたが、四十八年産米の農協の要求米価というのが六十キロ一万三千百十円。そこでこの要求米価に五五%を掛けますと七千二百円。生産費は、先ほど申しましたように、四十六年度までしか出ておりませんから、推定する以外にないのですけれども、大体五千八百円だろう、こういうふうにいろいろ試算されておるわけです。そこで、この中間を大ざっぱにとりますと、今年産麦の価格は六十キロ当たり六千円以上くらいにしなければとてもやっていけない、こういうふうにわれわれは見ておるのです。現在はまだ価格が相当下回っておるわけですけれども政務次官農業をずっと経験してこられた方として、次官の立場もあるし、またいろいろ農業を見てこられた立場から、この価格はどうですか。極端に高いと思われますか、またこのくらいは当然考えていかなければならぬというふうに思われるか、その点のあなたの見解を率直にひとつお聞きしておきたいのです。
  154. 中尾栄一

    中尾政府委員 先ほどからずっと事務局側で答弁しておりますように、試算をなす場合に、パリティ方式の積み上げだという形をとっておるわけでございまして、種々先ほど来先生から御指摘をいただいております問題点などを勘案いたしますまでもなく、これはもう当然、私どもとしては政策米価といわれるようなたてまえからも政策麦価というもので考えていって差し上げたいという気持ちはあるのでございます。しかし、これはいろいろの条件によってこの問題点をとらえていかなければ相ならぬというのが、これまた政治でございますから、そういう中で十分いろいろの条件を勘案しながら考えていくべきである、このように考えております。
  155. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私たちはよく地方の農家で聞くのですが、いまこういったことばがいわれております。出かせぎ三日で米一俵、こういうふうにいわれまして、三日間出かせぎすれば米一俵分買える、米をつくるよりも出かせぎに行ったほうがいい、こういうふうな風潮があります。ましてや麦作においておやということになります。十分配慮して諮問案をつくられるようにお願いするわけであります。  そこで、団体からまた要求が出ております。契約生産奨励金、これを大幅に上げていただきたい、大麦、裸麦等は小麦と同水準にしていただきたいということが要請されております。小麦は、御承知のように、一俵二百円、これをぜひ倍の四百円にしていただきたい、大麦、裸麦については現在一俵百円なのを四倍の四百円にしていただきたい、こういったことが強く要請されております。この中身についてはもう時間の関係で省略しますけれども北海道などでは運賃の穴埋めに北海道独自でトン当たり五百八十円も出して、全国でプールした分二千二百二十円と合わせて、計トン当たり二千八百円でやっておられる段階でございまして、ぜひひとつこれは大幅に上げていただきたいと思うのですが、これについてはどういうふうに考え、対処されるのですか。
  156. 中野和仁

    中野政府委員 契約奨励金の問題につきましては、小麦は四十三年、大、裸は四十四年から順次引き上げております。そういうことと、それからことしの麦がまた減ってくるということもいろいろ頭に置きまして、麦価決定までに十分検討をいたしたいと思っております。それから、御指摘北海道の運賃の問題につきましても、先ほど島田先生のお話にお答え申し上げましたように、契約奨励金の単価の問題を検討する際に、あわせて十分検討いたしたいと思います。
  157. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 期待をいたしておりますので、十分ひとつ配慮していただきたいと思います。  次に、等外上麦が毎年三、四割は出ておるわけですけれども、これを買い入れ対象にしていただきたいという要請が強いわけです。申請をすれば買い入れてくれるということに現在なっておりますけれども、常時買い入れ対象とするという制度、これは何か先ほどの答弁ではむずかしいようなことを言っておられるけれども、どういうところが、なぜむずかしいのか。ぜひこういうふうにしていただきたいと思うのですが、その点さらにひとつ簡潔にお答えをいただきたいと思うのです。
  158. 中野和仁

    中野政府委員 四十三年でしたか、麦の規格の改正をいたしまして非常に簡素化をいたしたわけでございます。そのあとまたそういう等外上麦は、年によって非常に違いがございまして、毎年三割もございません。ほとんどない年もございます。ことしもいろいろ要請がございますので、先ほど御議論がありましたように、麦価決定に相前後いたしましてなるべく早く買い上げるように大蔵省と折衝してきめたいと思っております。
  159. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 制度化についてもぜひひとつ御検討いただきたいと思います。  次に麦の振興をはかるために昨年も私こういう機会に質問もし、検討を願ったわけですけれども、品種改良という問題であります。十日ぐらい早く取り入れられる麦をということを政府もいろいろ考えておられるようであるし、また田植えが従来からしますと一カ月ぐらい早くなってきておりますね。そういう関係から競合してくるという問題等もありますので、これには相当力を入れなければなりません。戦前なんか麦の試験に相当力を入れてきたわけですが、さっきも技術会議の話等を聞いておりますと、何かしらん試験もほとんど消滅しているような感じがするわけです。  そこで、私は、何としても二百十日以前に刈り入れるために、それまでに刈り入れできる品種を早く開発してやっていただきたい。政府のほうでは何か八種類くらい新品種を開発されたように聞いておりますけれども、昨年個人的に農林省に話したことがございますが、アメリカのボーローグ博士の小麦の改良という一大革命のことを申し上げたわけです。これは富山農林一〇号という新品種であったわけです。  ちなみに申しますと、このボーローグ博士はノーベル賞を受賞した方でありまして、小麦の改良に二十年という歳月を費やして、メキシコやインド、パキスタン等において収穫量を大幅に伸ばし、緑の革命ということで大改良をやって、たいへんな称賛を受けた方であります。この方が日本に戦時中に滞在したときに、ある機会に富山県の農林一〇号という小麦の原々種を持ち帰って、アメリカでいろいろ試作されたわけです。背が短く、穂は長くて、しかも粒は大きいという品種ですが、これを原種として小麦の危機を救ったわけです。  このような事情を見ましても、心から麦を育て、政府麦作振興に力を入れようという情熱さえあれば、日本においても絶対できないことはないわけです。そういったことにつきましても研究しておられるのか。この品種はどうなったのか。富山農林一〇号、こういったことについて農家意欲を増し、いわゆる麦価を上げてあげる、そうして自給率を強めていく、こういうように大いに力を入れていただきたいと思うのです。こういったことについて関係者からひとつ品種改良、また富山農林一〇号がどうなったかということについての回答をいただきたい。
  160. 中澤三郎

    中澤政府委員 いま御質問ございました富山農林一〇号について、私は具体的に承知しておりませんので、後ほど資料で御提出させていただきたいと思います。  先ほど島田先生の御質問にもお答え申し上げましたように、麦の品種改良につきましては、水稲に比して何ら劣らない体制をとっているというふうに考えております。これは歴史もございますし、伝統もございますし、またわが国農林省の研究者といたしましては、麦と生涯をともにする者が続いております。そういう意味におきましては、いまお話のございましたボーローグ博士でございますかの小麦に対する情熱と同じようなものを持って仕事に従事してもらっている、こういうふうに確信しているわけでございます。  先ほど申し上げましたように、いろいろ努力の結果新しい品種改良を行なっているわけでございますが、特に四十七年度からは品種育成の年限を短縮する方法といたしまして、北海道と沖繩を利用いたしますと年二回栽培できるというようなこともございますので、そういう手法を新たにとるなど努力を重ねております。できるだけ行政課題にこたえ得るような成果を得たい。今後とも研究を推進するつもりでございます。
  161. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官、今後の麦価決定は十分農家の期待にこたえるようにしていただきたいということをお願いして、質問を終わります。
  162. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 神田大作君。
  163. 神田大作

    ○神田委員 政務次官が用事があって帰られるようだから、政務次官にまず第一にお尋ねします。  世界の食料事情が非常に緊迫している現在、日本麦類が年々非常な速度で減少をしておる。三分の一あるいは四分の一、来年は五分の一、三十五年度に比較しましてそのように減っていく、こういう状態はただごとではないと思うのですが、これらに対する抜本的対策をとらなければ、これは重大なる食糧危機が日本にも来るのではなかろうか、こういうふうに考えるが、これに対してどう考えますか、お尋ねします。
  164. 中尾栄一

    中尾政府委員 麦が年々歳々減っていく、それにはいろいろの原因があろうかと思います。しかし、何はともあれ、重要作物一つであるいわゆる麦がどんどん減ってゆくということはゆゆしき問題でありまして、これはもう社会問題、政治問題であることは申すまでもないわけでございます。いろいろの理由というものを別問題にいたしまして、確かに、先ほどの御質問にもありましたように、一体、麦というものをこれ以上日本で作付していくべきなのかどうか、そういう必要性もございましょう。そういう問題点も当然課題の中には入れるべきだろうと思います。しかし、ともかく私どもは、これは重要作物であるということには一貫して変わりはないわけでございますから、この問題に対してどのように増産をさせ、またその生産者に対するいわゆる生活権の安定をはかっていくかということを、われわれ自身は真剣に考えていかなければならぬということでございます。そういう意味をもちまして、今回の価格の問題なども真剣に取り組んでいきたい、このような所存で考えております。
  165. 神田大作

    ○神田委員 真剣に取り組んでいくことは、毎年そういうことを言っているのですね。真剣に取り組むと言いながら、一日の労働賃金が五百円程度あるいは八百円とかいうような、そういう安い金ではこれはどうにもならぬと思う。こういう価格問題に対して政務次官はどう考えますか。そうあわてないで、ゆっくり、大事な問題なんだから。
  166. 中尾栄一

    中尾政府委員 きのう帰ってまいりまして、報告を、きょう総理が十分前に必ず来いという厳命なものですから、私もなるべく早く行きたいと思いながらもここまでずっと待っておるわけでございますが、実はいまの問題点も、何と申しますか、値段の御質問だと思いますが、当然これは、先ほどからずっと十名近くにわたりまする先生方の御意見を承りまして、これは大蔵当局との折衝がかなめでございますから、大臣、私どもをはじめといたしまして事務当局も十分に検案して、この問題は相当煮詰めていきたい、努力をはかっていきたい、このように考えております。
  167. 神田大作

    ○神田委員 特別奨励金を出す考えがあるかどうか、そのことだけひとつお尋ねします。
  168. 中尾栄一

    中尾政府委員 これは先ほど来長官が述べておりますように、この問題はいささかあれでございますから、長官自体のいままで詰めておる段階の中での御答弁でかえたいと思っております。
  169. 神田大作

    ○神田委員 そう腰をふらふらしているんじゃ聞いたってしようがないから、帰ってもいいですよ。  食糧庁長官に尋ねます。あなたは現在の、私がいま次官に質問したような問題について、このままでもって麦作というものの振興、増産ができると思っておるのかどうか。一体四十八年度の内地小麦の買い入れ計画はどうなっているのか、幾らであるか、あるいは昨年は幾らだったか、このことをお聞きします。
  170. 中野和仁

    中野政府委員 昨年の食糧庁の買い入れでございますが、ビール麦は御承知のように契約栽培になっておりまして、食糧庁は買っておりませんが、大麦におきましては買い入れ量が三万六千トン、それから小麦が十九万二千トンでございます。ことしは、ことしの作況それから作付面積から見ますと、これが若干減りまして、三麦合わせまして二十万トンくらいになるのではないかというふうに見ております。
  171. 神田大作

    ○神田委員 二十万トンというのは四十七年度ですか。
  172. 中野和仁

    中野政府委員 四十八年度でございます。
  173. 神田大作

    ○神田委員 本年度の見込みが二十万トン、来年度はどういうふうに考えておりますか。
  174. 中野和仁

    中野政府委員 先ほど申し上げましたように、四十七年産につきましては二十六万トンでございます。四十八年産につきましては約二十万トンでございますが、来年度どうかと言われますと、これから秋植えて、それからの見込みでございますから、まだ適確には当然把握できないわけでございます。
  175. 神田大作

    ○神田委員 四十八年度の計画は小麦で三十二万トン、と聞いておるが、間違いありませんか。
  176. 中野和仁

    中野政府委員 ことしの予算の段階で計画を立てましたときに、小麦は三十二万トン、大麦、裸麦十八万トン、合わせまして五十万トンの買い入れを見込んだわけでございます。
  177. 神田大作

    ○神田委員 一体四十七年度が小麦で十七万トン、予算の計画では四十八年度が三十二万トン、そういうことだろうが、現在の状況では、四十五年度が二十七万六千トン、四十六年度が二十五万トン、四十七年度が十七万トンというように年々減っておるんだ。それが四十八年度計画では三十二万トンというような計画を立てておるが、こういうことが実際可能なのか、どうなんです。
  178. 中野和仁

    中野政府委員 去年の秋からことしの買い入れの作業をする場合に、生産の見込みをどう立てるかということでございまして、その場合に、生産振興ということにかなり期待をいたしまして、いろいろ作業した結果、そういう数字に予算としては編成したわけでございます。実際問題としましては、作況がわかり、それから作付面積が判明してまいりますと、そういうふうにはいかなかったということでございます。
  179. 神田大作

    ○神田委員 そういう無責任な予算の立て方ということはないでしょう。三十二万トンの買い入れ計画を立てて、それができないということがわかっていながら、なぜこういうような計画を立てるのですか。それは無責任じゃありませんか。
  180. 中野和仁

    中野政府委員 いまから考えますと、数字が非常に違っておりますので、はなはな恐縮に存じますけれども、当時といたしましては、やはり麦作振興対策がいろいろ生産当局からもとられております。いろんな推定をいたしまして、それに従来食糧庁が買っておりました買い入れ比率をかけてやったわけでございますが、残念ながら、先ほどから申し上げておりますような数字にしかならなかったということでございます。
  181. 神田大作

    ○神田委員 先ほど政務次官が言われたように、世界の食糧事情が非常に緊迫しておる今日において、このような状態日本の食糧危機というものあるいは飼料問題が、これだけ深刻に騒がれているときにこれが乗り切れるものかどうか、これに対しての長官の考えを尋ねます。
  182. 中野和仁

    中野政府委員 麦がこういうふうに減っていくこと自体私たちも、それから農蚕園芸局長もしばしば答弁しておるように、非常に憂慮をしておるわけでございます。やはり抜本的にいろいろ対策はとっていく、いままでもとってきておりますけれども、非常に不十分でございますので、なおこれからとっていくべきだというふうに思っておりますが、ただ、麦が先ほどからるる申し上げておりまするような事情でございますので、それではこれを一挙に国内で自給するかというと、なかなか容易じゃございません。  そこで、同時に安定的な輸入をはかる。穀物状況が非常に世界的にこういう状況になっておりますが、食糧庁といたしましては、できるだけ安定的な輸入ができる手をいろいろ打っておりまして、すでにことしの端境期までは買い付けを済ましておりまして、国民に対する小麦、裸麦の供給ということは御安心いただいていいというところまで行っております。
  183. 神田大作

    ○神田委員 では、麦類輸入の手当ては、幾ら買って、金額は幾らぐらいなんですか。
  184. 中野和仁

    中野政府委員 小麦はことし五百二十六万トン買うという予算になっておりますが、内麦が減少いたしましたので、若干それよりふやすということにいたしております。  金額の点につきましては、国際価格が非常に動いております。と同時に、非常に高くなっておりますので、いまの国際価格をそのままいまのトン数にかけますと、おそらく二千億をこえるということになろうかと思います。
  185. 神田大作

    ○神田委員 そういう買い入れの契約はしてあるのかどうか。買い入れの予定であるか、買い入れを実際済ましたのかどうか、それをお尋ねいたします。
  186. 中野和仁

    中野政府委員 四十八年度全体が五百数十万トン買うということでございますが、国際事情がこういうことでございますので、先々買っております。と同時に、カナダ等につきましては大体去年の秋に一年分の約束を取りつけておるというようなことで、ことしの端境期までは国内供給はだいじょうぶでございまして、あとは、アメリカ、カナダその他の国の新穀の出回る状況ということを十分注意をいたしておりまして、なるべく早く安定的に買おうというふうに考えておりまして、もう相当量買い付けております。
  187. 神田大作

    ○神田委員 しかし、完全に輸入麦が買えるという保証はこれではないわけですね。予算はしてある、しかも金額が非常に上がってきておる。こういう状況のもとに国内産の麦類を増産するためには、思い切った施策、先ほど言ったような特別奨励金を出す。せっかく耕地基盤整備をやって、日本には田も畑も余っておるのです。これを遊ばせておるわけですから、一俵あたり二千円なりの金を出せば、必ず喜んでつくるわけです。しかし、一たん農業をやめて他産業に走り、あるいは工場に働くということになると、もう農家から離れた者は帰ってこない。もう五年、十年と。日本農業は、そういう意味合いにおいて、私はいまが非常に重大な危機であり、ことしこれに対して抜本的対策を立てなければ、日本農業は壊滅に瀕するということを私は申し上げたい。農業というものは、畜産にしましてもあるいはたばこにしましてもあるいは麦類にいたしましても、やっておるうちはがまんしてやっています、それに対してある程度の施策をやっていますが、離れれば戻ってこない。いまなら戻ってくる、まだことし、来年あたりなら戻ってくる。その大事な年なんです。その大事な年であるから、私は特別な対策を立ててこれを引き戻すようにし、日本国内における食糧の危機、飼料の危機というものを突破する、そういう重大な段階に来ているという認識を深めてもらいたい。一日四百円や五百円にしかならぬものをだれがつくりますか。だれが汗水かいてそういう重労働をしながら小麦や裸麦、ビール麦をつくりますか。そういう点をひとつ真剣に考えていかなければ、これはたいへんなことになると思うのですが、このことについて長官はどう考えますか。
  188. 中野和仁

    中野政府委員 御指摘のように、農家がつくります作物の労働報酬が非常に少なければなかなかつくらないということは、私もそのとおりだと思います。そこで、麦の問題につきましても、先ほどからるる申し上げておりますように、これはパリティでありますからあたりまえといえばそれまででございますが、昨年来の家計費あるいは経営部門のそれぞれの資材の値上がりということが反映してまいりまして、ことしはおそらくいままでにないくらいのパリティの引き上げになるということでございまして、いま御指摘のようなことも十分頭に入れまして諮問案の作成に当たりたいと思っております。
  189. 神田大作

    ○神田委員 時間がありませんから、私は多くの部分を保留してあとの機会に譲りますが、ただ、ビール麦の国内生産買い入れ、それから輸入による買い入れ、これが年々輸入がふえて国内生産が減っておる。しかもビールの税金というものはばく大な税金を取っておる。このビール酒税を取りながら生産に対しましては政府は何らの援助もしておらないが、大蔵省来ていると思いますが、一体ビール酒税というものはどのくらい取っておるか、あるいはまた、各ビール会社も相当の利潤をあげておるが、これらの決算報告等の資料をひとつ提出してもらいたいと思います。
  190. 渡辺喜一

    渡辺説明員 ビールの税収額でございますが、四十七年度の課税見込みで申し上げますと、三千六百五十三億円という税収になっております。それからビール会社の決算状況等につきましては、後日資料で提出さしていただきます。
  191. 神田大作

    ○神田委員 ビール会社は相当の利潤をあげておって、加算金を出すことを渋っているようでありますが、この加算金の増額その他の問題については後刻の機会において御質問を申し上げます。  いま一点最後に、この検査規格を改める考えはないか。日本のように厳重な規格をしている国はどこにもない。いまは機械化されておるので、たとえば麦類というものは皮がむける、そうすると全部等外になる、特にビール麦の場合は、代用麦でもってこれをビール麦にしないで、これをあとでビール会社は安く買い取っている。そして相当の利潤をあげていると思うのですが、こういう問題について、外国並みの検査規格に直す考えがあるかどうか、お尋ねします。
  192. 中野和仁

    中野政府委員 麦の検査規格につきましては、四十三年に非常に簡素化をしたわけでございます。御指摘のビール麦につきましては、ことしの二月全農からも要請がございまして、ただいまこれは契約栽培になっておりますから、生産者側と需用者側との合意が必要でありますけれども、食糧庁も間に入りまして、農蚕園芸局も入りまして具体的にいま検討を進めているところでございます。
  193. 神田大作

    ○神田委員 私は、どうかこの麦価につきましては、農民が麦を生産することに対しまして不安を感じないように、価格の面において政府は何らかの処置を早急に行なう、米審に対する諮問等におきましても、それに沿った諮問案を出すことを強く要求いたしまして、私の質問を終わります。
  194. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後二時散会