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後藤参考人 私、
三重県副
知事の
後藤でございます。
知事がやむを得ない会がございまして、私、かわりまして御説明にあがりました。
平素から農林
漁業の
振興につきまして格別の御高配を賜わりまして、この席をおかりしましてお礼を申し上げたいと思います。
また今回の
日聖丸の
事故につきまして、私どもの
被害の状況をお聞きいただきます場を持っていただきましたことに対しましても、心からお礼を申し上げたいと思います。
被害の状況につきましては、先般来
愛知県さんのほうからいろいろお話がございました。また私どものほうから資料としてお配りもしておりますので、簡単に申し上げます。
最初は、湾内におきます油は、おもに
愛知県さんのほうに
漂着しておりましたので、三日以後しばらくの間は、県といたしましてはその状況を注視していたわけでございます。何ぶんにも油は一分間に一リットル程度の
流出でございまして、最初はかなり出ましたが、そのあとはその程度の
流出でございまして、かなり長期に続いたわけでございます。これは計算いたしますと、三年半も続く、このような状況でございましたが、その油が漸次湾口あるいは湾外へ流れ出るに従いまして、南東の風が吹いてまいりまして、湾内におきます油は
三重県の鈴鹿市から松阪市のほうに吹き寄せてまいりました。また湾外にあります油は、志摩半島のほうに流れ、さらには回りまして熊野灘沿岸、主として南勢町、南島町のほうに
漂着してまいりました。この結果、
伊勢湾から志摩半島、熊野灘にかけまして、
海岸線で延長約二百六十キロメートル、
被害の市町村四市七町一村、このような広い範囲にわたって
被害を与えたものでございます。
直ちに
海上保安本部のほうも警戒をしていただきましたほかに、県といたしましても、
漁業取り締まり船あるいは
漁業調査船を動員いたしまして、さらにはヘリコプターによってその状況を監視したのでございますが、油がこのようにして流れてまいりました五月六日に至りまして、
三重県といたしましても、
タンカー事故対策本部を設置いたしまして種々の対策を講じたわけでございます。
油につきましては、
愛知県さんと同様、
オイルフェンス、オイルマットあるいはむしろ等を利用いたしまして、また化学
処理剤も利用いたしまして、これらの対策を講じたわけでございますが、現在のところではむしろが一番効果があったように聞いております。
このような油の付着によりまして起こりました
被害は、おもなものを申し上げますと、第一には、出漁を中止いたしましたことによりまして、漁獲が減少したという損失でございます。私もさっそく沿岸部に行っていろいろ話を聞いたのでございますが、大体三日ないし四日ばかりは
漁業を休んだようでございます。
次には、沿岸部にございます海藻を主とする根つけ資源で、ただいま
愛知県さんのほうからもお話がございましたが、このようなものが
汚染によりまして
損害をこうむりました。
次には、養殖をいたしておりましたカツオのえさのイワシが
汚染によりまして斃死をいたしました。
熊野灘沿岸におきましては、御承知のように、ハマチの養殖が盛んでございますが、このいけすが
汚染をいたしまして
損害を受けました。
次に、定置
網漁業をいたしましたところが、この油が参りまして網についた、あるいはそれによって、魚類が油を飲んで
汚染をされた、こういうようないろいろの
損害をこうむっております。
このほか私どもといたしまして
心配しておりますのは、魚貝類が、まだはっきりとした実情がわかっておりませんけれども、油の
処理剤の毒性がもし残っていたならば、今後ゆゆしい問題になるのではないか、このように
心配をしております。
現在のところは、
被害額は、
漁業の粗
生産額の減少がおそらく一億七千万円程度ではなかろうか。このほか油の
防除あるいは清掃、こういうものに用した費用が千二百万円程度かかっておりまして、今後もさらに
被害の集計につとめたいと思っております。
このような観点に立ちまして、
愛知県さんにならいまして融資制度を近く実行いたしたいと検討中でございます。
以上のような状況でございますので、油の
被害対策といたしまして国のほうに
お願いをいたしたい点が若干ございます。お
手元にお配りいたしました資料がそれでございます。補足的に説明を申し上げたいと思います。
最初に、
汚染海域における水産資源のすみやかな回復
措置を
お願いいたしたいと思います。
先ほど来いろいろ御説明がございましたが、たとえば海藻類、これはちょうどただいま海藻類が胞子の
状態でございまして、成熟期に当たっておりまして、かなり
汚染が著しいところでは母草を移植したり種つけ等をしなければならない。あるいはそのほか、イセエビ、アワビ、こういうような根つけ資源に及ぼす影響も
心配されております。
第二番目には、
漁業被害対策基金の創設及び融資制度の改善を
お願いいたしたいと思います。
被害対策基金につきましては、後ほど
宮原漁連会長のほうから申し上げたいと思います。
出漁できない
漁業者の経営安定資金につきまして、農林
漁業公庫資金の中で、
貸し付け限度額三十万円以内、年利五分、現在こういう制度がございますけれども、これを五十万円に引き上げ、利息も無利息にしていただきたいというのが私たちの
お願いでございます。
第三番目は、災害対策費に対しまして特別交付税等の財政
措置を
お願いいたしたいということでございます。今回の
事故は
流出した油が重油でございまして、比較的に単一のものでございましたが、これがたとえば揮発分の多い原油でございますと、
被害はさらに広がりまして、また甚大な
被害が予想されるわけでございます。こういうような状況でもございますので、地方自治体の対策費につきまして特別交付税等の財政
措置が講ぜられたならば幸いかと存ずるのでございます。
第四番目には、毒性のない油の
処理剤を開発していただきたいということでございます。先般お話がございました昨年七月の
グランドフェア号の
事故あるいは今回の
事故、いずれの場合におきましても、油の
処理剤が
漁業の二次
公害という立場から、
先ほども申し上げましたが、たいへんいろいろの問題をあとに残すようでございますので、将来の問題として、これをぜひ無害な
処理剤を開発していただきますよう
お願い申し上げたいと思います。最近におきましてかなり改善されてきたという話も伺っておるのでございますけれども、従来市販されておりました有毒な
処理剤もかなり使用されていると聞いておりますので、この点御配慮をいただきたいと思うのでございます。
第五番目には、
伊良湖水道の航行の安全を確保していただきたいということでございます。これは
先ほど愛知県さんのほうからもお話がございました。
内容はそのとおりでございます。
それから第六番目には、海上に
流出しました油の回収船を配置していただきたいということでございます。これにつきましても
宮原漁連会長のほうから
お願いを申し上げることになろうかと思います。
第七番目には、
沈没いたしました
タンカーを早く引き揚げて撤去していただきたいということでございます。どうやら今月中にはその運びになるというふうに伺っておりますが、
先ほど申し上げましたように、一時間に六十リットル、このような緩慢な勢いで油が出ております。これは計算いたしますと三年半も
被害が続くという状況でございます。幸い最近
海上保安本部その他の御努力によりまして、油の
流出を食いとめる
作業が進みまして、この
流出量はきわめて減ってきたというふうに伺っておりますが、いずれにいたしましても、
漁民にとりましては爆弾をかかえているような状況でございますので、一刻も早くこのような
沈没船を処理していただきたいと思うのでございます。何ぶんにも深さが七十五メートルという非常に困難な
作業であることは重々承知してございますが、この点御高配をいただければと思います。
このような
事故につきまして、私どもといたしましてはたいへん
心配をしておるわけでございます。今回はわずか八百トンの内航
タンカーでございました。また積み荷も
C重油でございましたので、火災、こういうような
心配はなかったわけでございますが、これがかりに二十万トンクラスの原油を搭載いたしました大型
タンカー事故であったとするならば、これはゆゆしきことになるのではないか。特に火災等の
心配もあるわけでございます。こういう点につきまして、今後このような
事故を繰り返さないように
お願いを申し上げたいと切に考えるのでございます。昨年の七月それからことしの五月、このような
事故が繰り返されたわけでございます。
さらには、実は昨日でございますけれども、これは小さい船でございますが、第二共和丸という約五百トンぐらいの船でございますが、苛性ソーダを積んだ船が、湾の外でございますが志摩郡の和具町の付近で座礁をいたしました。幸い油が少し漏れた程度でございます。苛性ソーダは現在荷物の積みかえをしておる最中でございますけれども、このような危険な毒性のあるものが、もし万一
沈没によって
海岸その他に悪影響を与えたならばと考えますと、非常に
心配でたまらないわけでございます。私ども地方自治体といたしましても、こういうような対策につきまして今後もさらに努力をいたしたいと考えておるのでございますが、何とぞ国会の皆さま方におかれましても格別の御高配を
お願いいたしたいと思います。
以上、簡単でございますが、概況を御説明いたしました。