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1973-04-19 第71回国会 衆議院 農林水産委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月十九日(木曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 佐々木義武君    理事 仮谷 忠男君 理事 坂村 吉正君    理事 藤本 孝雄君 理事 山崎平八郎君    理事 渡辺美智雄君 理事 柴田 健治君    理事 美濃 政市君 理事 津川 武一君       笠岡  喬君    金子 岩三君       吉川 久衛君    熊谷 義雄君       正示啓次郎君    菅波  茂君       西銘 順治君    湊  徹郎君       森下 元晴君   三ツ林弥太郎君       井上  泉君    竹内  猛君       野坂 浩賢君    馬場  昇君       湯山  勇君   米内山義一郎君       諫山  博君    中川利三郎君       瀬野栄次郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 櫻内 義雄君  出席政府委員         農林政務次官  中尾 栄一君         農林省農林経済         局長      内村 良英君         農林省構造改善         局長      小沼  勇君         農林省農蚕園芸         局長      伊藤 俊三君         食糧庁長官   中野 和仁君         林野庁長官   福田 省一君         水産庁長官   荒勝  巖君  委員外出席者         防衛庁経理局施         設課長     伊藤 参午君         防衛施設庁総務         部施設調査官  佐藤 次郎君         外務省国際連合         局経済課長   妹尾 正毅君         農林大臣官房審         議官      下浦 静平君         食糧庁総務部長 森  整治君         林野庁林政部長 平松甲子雄君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ————————————— 委員の異動 四月十九日  辞任         補欠選任   諫山  博君     田中美智子君 同日  辞任        補欠選任   田中美智子君     諫山  博君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農業近代化資金助成法及び農業信用保証保険法  の一部を改正する法律案内閣提出第三四号)  農水産業協同組合貯金保険法案内閣提出第三  五号)  農林中央金庫法の一部を改正する法律案内閣  提出第七五号)  農業協同組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第七八号)  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。美濃政市君。
  3. 美濃政市

    美濃委員 私は、北海道有珠漁業協同組合地域で火が発電所が設置されるということで、公害とからんで漁業協同組合総会が絶対反対決議をして、それに対して組合長その他が条件的に動いておる、こういうことで非常に物議をかもしておるわけですが、これに関して、農林省としてはこの問題をどういうふうに指導上取り扱ってきたか、また現在どういうふうに考えておるか、これをお尋ねいたしたいと思います。
  4. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま御指摘のように、北海道伊達火力発電所建設に伴いまして、有珠漁協におきましてこの問題について内部的にいろいろと意見があったようでございますが、これにつきましては、すでに一応絶対反対決議がなされておるようであります。これにつきましては、当然、私たちといたしましては、水協法に基づく適正な手続が行なわれて決議をされておることについては、組合自主性におまかせしたい、こういうふうに思っておる次第でございます。
  5. 美濃政市

    美濃委員 この問題も含めて、最近、御存じのように、日本沿岸海水汚染というものが漁業に大きな影響を及ぼし、またそのことは、魚が汚染しますから、ひいては人体にも影響が及んでくるわけですが、これらの公害問題に対して、水産庁としてはいまどういう考え方をもって、あるいは機構的にもこれらの対応策をどうとっておるのか、これをこの機会にお伺いしておきたいと思います。全く環境庁にまかせっきりなのか、それとも水産庁としてどれだけ取り組んで、どういう方針で臨んでおるのか。
  6. 荒勝巖

    荒勝政府委員 水産庁といたしましては、国内におきます沿岸漁業振興につきましては、戦後一貫して努力してきたつもりでございます。しかしながら、最近におきます特に海における汚染というものが非常に激しくなってまいりまして、その原因一つには、都市汚水並びに廃棄物が海に流れ出るということ、それから産業廃棄物が海に流れ出ること、あるいは油によります汚染というふうなことが相競合いたしまして、最近海の汚染が非常に激しくなってきておる次第でございます。  これにつきましては、私たちといたしましては、水産資源保護という立場から、あらゆる機会にあらゆる場所をとらえまして、何とか海をきれいにしたい、あるいはこれ以上海をきたなくしたくないという立場から、関係方面に呼びかけまして、今後さらに一そう海の汚染防止全力をあげてまいりたい、こういうふうに考えております。  したがいまして、先般衆議院の内閣委員会農林省設置法改正法案提出いたしまして御審議いただき、採決いただいてわけでございますが、何とかして水産庁機構をこの際改正いたしまして、いままで水産庁も、片手間といったらちょっと失礼でございますが、一つのある係でこういった公害防止対策をやってまいりましたが、研究部門におきまして逐次海の汚染防除対策といいますか、防除研究も、またその原因の究明も進んでまいりましたので、今回の機構改革にあたりまして、研究部の名称を変更いたし、権限を新しく付与いたしまして、漁場保全課という、公害の問題につきまして専念する課を新しく一つ設けまして、ここで海岸並びに海水清浄化につきまして、なお一そう今後努力してまいりたいと思っている次第でございます。  ただ、予算につきましては、四億円前後の公害対策という予算でございますが、これはあくまで先般御審議願いましたように、研究的あるいは実験的な予算が主として四億円でございまして、今後防除対策事業が進む過程におきまして、われわれといたしましてはぜひともこういう実験的なものあるいは研究的なものの中から事業予算というものを将来組ましていただきまして、全力をあげて海の汚染防止対策に努力してまいりたい、こういうように考えている次第でございます。
  7. 美濃政市

    美濃委員 いまのお話を聞いておって、これからもかなり海はよごれていくと思いますから、そういう体制を高めることは当然であり、必要だと思いますが、その問題は後日に譲りまして、そうすると、伊達火力の問題につきまして、これができた場合、この汚染が直接流入する海岸では養殖漁業もやっておるわけですが、どのくらい海が汚染するかということを、水産庁は試験をしておりますか、しておりませんか。
  8. 荒勝巖

    荒勝政府委員 この伊達火力建設に伴いまして、水産に対する影響いかんということにつきましては、かねてから非常にいろいろ議論があった次第でございます。したがいまして、四十六年の七月に、日本水産資源保護協会という社団法人に、伊達火力発電の問題につきまして、当時の伊達町でございますが、一千万円の委託費が出まして、この調査研究協会が始められたようでございます。   〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席〕 この調査に当たりましては、地元関係漁協の御了解は得た、こういうふうに理解しておる次第でございますが、ただいま御質問がありましたように、こういった調査をいたしたわけでございますが、問題は、伊達火力発電による水産影響でございますので、ほかの公害のことは一応捨象いたしまして、この伊達火力発電所から排出される高い温度の水が、毎秒約二十二トン温排水が出てくるという前提のもとに、この温排水漁業にどのような悪影響を及ぼすかあるいは影響を及ぼさないかということにつきまして検討した次第でございます。その結果につきましては、資源保護協会から結論、データが出まして、大筋において、この調査報告というものは水産庁としては妥当ではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  9. 美濃政市

    美濃委員 よくこういう問題が出ますと、地方自治団体は、過疎の関係あるいは固定資産税との関係、財政の関係等で、多少無理をしてもやりたいという意欲が動くのは、どの地域でも共通しておる問題です。そこが委託費を出して委託した調査というものは、私どもの感覚では多少ゆがめられていく。委託者意思によって、金をもらっての委託でありますから、公正な——公正という表現は必ずしも適当ではないかもしれませんが、その調査が、その委託発注をした意図を加味した結果が公表される場合がある、こういう危険もあるわけですね。ですから、いろいろいま公害訴訟や何か起きておりますけれども、そういう時代の変遷の中では、何でもないのだといってやったことが、ものによっては人命を損傷しあるいは大きな問題を起こしてきておるじゃないですか。いま公害訴訟が起きたり何かしておる問題が、当初からきちっと整理されておれば、こういうことは起きなかった。  そこで、そういう調査を基礎に何か妥当だと思うという態度なんですか、これからも。どうなんですか。水産庁としては、水産行政の中で海を守るという立場に立ってやるのに、そういう調査だけを基準に、今後ともそういう調査をながめて妥当であるとかないとかいう見解で推移しようというのですか、どうなんですか。
  10. 荒勝巖

    荒勝政府委員 今回伊達火力発電に伴いまして資源保護協会調査をお願いいたしました研究者あるいは学者先生方につきましては、私たちといたしましては、現在の時点におきましては、日本のこういった温排水漁業への悪影響のことについて意見を述べられ、かつ調査をせられるメンバーといたしましては、まあ一応最高水準方々ではなかろうか、それぞれの部署におきましてこういったことについての最高権威者メンバー方々がお集まりになって調査をされた、こういうふうに理解しております。   〔山崎(平)委員長代理退席委員長着席〕 私たち行政府といたしましては、こういった権威ある方々調査検討の結果につきましては、相当な質疑応答を私たち研究部におきましてもいたしますが、一応結論が出た段階におきましては、われわれとしてはやはりその意見を十分に尊重することになるのではなかろうか、こういうふうに考える次第でございます。  ただし、おそらくこういうことはないと思いますが、あまりにも常識をはずれたような御意見が出る場合におきましては、なおさらに追加調査等をお願いすることがあるかとも思いますけれども、こういった方々がそうとっぴな意見を出されたというふうな過去の先例もございませんので、われわれといたしましては、この伊達調査につきましては、権威ある御報告、こういうふうにとらざるを得なかった、こういうふうに御理解願いたいと思います。
  11. 美濃政市

    美濃委員 今度の農林省設置法の一部改正で、先ほど機能強化をするということなんですが、これからもそういう態度ですか。そうじゃなくて、こういう問題が起きたとき、やはり水産庁自体責任の持てる調査、これもその一部に該当しますけれども、やはりこれからも起きてくるわけですから、こういう問題が起きたときに、いやしくも農林省水産庁として責任を持って、この結果はこうなるという調査を行なう意思なのか、それとも、そういう地方自治団体委託費を出して委託調査をした結果を権威あるものだ、学者がおるからというような態度で事を済ましていこうとするのか、どっちなんです。
  12. 荒勝巖

    荒勝政府委員 水産庁といたしましては、従来、これは日本行政機関全部がそういう傾向ではなかろうかと思いますが、公害問題については過去における知識水準なり研究蓄積が非常に少なかったわけでございます。これは当然行政機関の多少の落ち度というふうになるかとも思いますが、こんなふうに急速に公害問題が出てくるということは日本常識としてあまり予想されなかったということで、研究並びに調査関係の職員並びに研究費用につきましてもあまり充実していなかったわけでございますが、私たちといたしまして、今回公害防止のための課まで整備いたしましてこの問題に全力を尽くすという姿勢を示しておりますのて、今後ともさらに調査研究並びにそのほかの、あらかじめ情報を先取りしていろいろ行政を進めてまいりたい、こういうふうに思っております。  なお、この調査研究につきましては、最近非常に活発に公害問題につきましては全力をあげて調査検討をいたしておりまして、いろいろこういった問題が起こった場合に、従来の研究部なりあるいは出先の研究機関十分知識蓄積があります場合におきましては、水産庁蓄積で十分行政的に対処できるのではなかろうか、こういうふうに思っておりますが、何せまだ時間が短いものですから十分な蓄積もございませんし、公害のあり方につきましても相当バラエティーに富んだといったら言い過ぎかもわかりませんが、出方がそのつど相当違った形で出てまいります場合も多いものですから、これにつきましては、あらためてその段階におきまして学者研究者方々にお願いしてその意見を尊重することもあるのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  13. 美濃政市

    美濃委員 どうもひとつ答弁があいまいですね。もう少し自主性を持ってこれに対処していかなければならぬ。せっかく農林省設置法の一部改正もして担当課も設けるというのですが、これは予算上どうなんですか。やはり大企業に対する政治上の配慮があってブレーキがかかるのですか、これは政務次官からも答弁を願いたいと思いますが、どこからかブレーキがかかって思うだけのことをやれないのか、それとも水産庁意欲が全くないのか、どっちなんです、意欲がなくてそんな消極的な答弁しかできないのか、それともどこからかブレーキがかかって、あまり企業を刺激するということで積極的にやれないのか、どっちなんです。いまの答弁では満足できないのです。せっかく農林省設置法を一部改正して専門課を設ける、それでああでもない、こうでもない、学者意見も聞かなければならない。——学者を置けばいいじゃないですか。それくらいの学者を置けぬのですか。あちこち頼まなければいかぬようなものじゃなくて、責任を持ってそういうものを解明して、事後に禍根を残さないという姿勢がなぜとれないのですか。それはどこに原因があるのですか。水産庁というものはそれほど能力がないのか、それとも予算的に、機構的にブレーキがかかってやれないのか、それはどっちなんです。
  14. 荒勝巖

    荒勝政府委員 公害の問題につきまして水産庁に対しまして関係方面から圧力がかかったというふうな例は一件もございません。これはあくまで水産庁独自の判断で行動している次第でございます。  また、水産庁行政スタッフだけでもっと貫徹しろという御激励でございますが、われわれといたしましては、当然そうありたいということで調査研究陣営を動員いたしまして、この公害問題に今後取り組んでいくという姿勢でございますが、問題が、先ほど申し上げましたように、非常に特異な公害問題が今後さらに頻発してくるという可能性もありますので、これについては、そのときにあるいは学者の方に別途調査をお願いすることもあろうかとも思いますが、姿勢といたしましては、当然に水産庁機構をあげてこの公害問題の調査研究に進まねばならないというふうに私は考えておる次第でございます。
  15. 美濃政市

    美濃委員 それでは、この問題について有珠漁協総会その他がさらに意思が整わないで混乱が続くようであれば、水産庁はどういう状況のものであるかということを調査する用意がありますから、どうですか。
  16. 荒勝巖

    荒勝政府委員 いまの御質問についてちょっと私、聞き漏らしたような形で、あるいは答弁が間違っているかもわかりませんが、私といたしまして有珠漁協の問題といたしましては、総会でああいうふうに決議がなされておられますので、この決議は当然に漁協としては尊重されるべきものと私は理解しておる次第でございます。これにつきましては今後いろいろと内部的に動きがあるようでございますが、これにつきましては道庁を通じましてあるいは私たちのほうの立場として御意見を申し上げる、あるいは今後指導申し上げることになるかもわかりませんが、これについては今後の問題というふうに御理解願いたいと思います。  それからまた第二点といたしまして、その実態的な有珠地区水産公害問題についての考え方でございますが、これにつきましては、私たち検討段階におきましても、先般の報告というものがやはり権威あるものであるという考え方を私たちはとっておりまして、これについては、現在の時点におきまては、あの報告結論を尊重してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  17. 美濃政市

    美濃委員 その報告を尊重するという考えについてはちょっと異議があります。これはまたあとから政務次官に聞きます。時間の都合で限られた時間にこれを締めくくらなければならないのです。  そこで、総会自主性を尊重する、こうなると、何か聞くところによれば、地元新聞を見ると、大沢という組合長北電交渉を始めたいという記事、それからしばらくたった新聞記事では、交渉が妥結して調印したというような記事が出ておるわけですが、監督上、このいきさつはどのように承知しておりますか。
  18. 荒勝巖

    荒勝政府委員 最近におきまして、総会では絶対反対であるという決議がなされておるという報告は聞いておりますが、しかしながら、絶対反対決議がなされておる反面、この組合執行部方々北海道電力との間で何らかの形で、非公式だと思いますが、非公式な接触があるということで、それについて組合の内部の間で、それが絶対反対決議かどうかということについていろいろと意見があるやに聞いておる次第でございます。
  19. 美濃政市

    美濃委員 指導立場から言うと、そういう過程であれば、北電がそういう問題の処理ができていないときにこの工事に着工するということは、やはり水産庁としては好ましくないという見解をとらなければならぬと思うが、その点はどうですか。そういう物議の最中に着工してよろしいという考えなのか、それはやはりそういうふうに地元漁民の大きな反対があれば、そういう問題が円滑に処理された後でなければ着工は好ましくないという見解なのか、どうですか。
  20. 荒勝巖

    荒勝政府委員 私たち水産庁立場といたしましては、こういった水産関係地元団体方々が非常に不安と動揺されておる段階に、一方的に工事が着工されるとか、一方的に話がどこか別の場所で進んでいくとかいうことは、私たちとしては非常に困るというか、それについては反対、異論を申し上げなければならない、こういう立場にあるわけでございます。  ただ、具体的に現在の北海道伊達の問題といたしましては、北海道電力とこの有珠執行部の方との間に、何とかして話し合い糸口を見つけ出したいあるいは妥結の方向を模索したいということで、両方で非常に苦しんで話し合い糸口を探り合おうとされていることにつきましては、これ自身私たちとしては反対することはできないと思います。これは非常にけっこうなことではなかろうか。  ただ問題は、その有珠漁協反対決議というものがどの程度水協法に基づく拘束力を持つかという問題は、多少疑問としては残っておるわけでございますが、これにつきましては、できますればこの漁協の中で十分話し合いをしてもらいたい、内部問題として十分解決してもらいたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  21. 美濃政市

    美濃委員 しかし、農協にしても漁協にしても、総会決議というものはその執行者に対しては拘束力はあると思うのです。それがないという解釈に立てば、これはもう総会決定は無視して、組合長たる者は何をやってもいいということになる。そうじゃないですよ。ただ、公害問題やなんかに対して水協法に基づく漁協総会決定というものがどこまで法的な拘束力を持つかという問題は多少あるがという解釈でしょう。しかし、組合長に対しては絶対の拘束力でしょう、総会決議というものは。どうですか。組合長態度について私はそう解釈するのですがね。私も農協組合長です。農協漁協というものの組合長総会決定というものは順守しなければならない義務があります。組合長行動に対しては、絶対の拘束力だと思うのです。ただ、公害対策や何かに対して、その総会決議が他の関連の法的事項や何かに全面的に一〇〇%の拘束力を持つかどうかについてはいろいろ検討の余地があると思いますけれども、組合長行動に対しては総会決定というものは一〇〇%の拘束力だと思うのです。そうでないということになったら、これは問題が起きますね。農林省指導方針としては、組合長立場にある者は、総会というものは最高議決機関ですから、その議決された事項について、それ以外の行動をするということは、これは拘束力があるんじゃないか。ないということになればとんでもないことになると思うのですね。どうですか。
  22. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいま私が申し上げましたように、総会結論が絶対反対決議がありますが、これに伴いまして、当然水協法に基づきます組合長に対するあるいは執行部に対する拘束力はあると認めざるを得ないと思います。ただ問題は、どの程度拘束力があるかということになりますと、非常に微妙なものがありまして、たとえば総会決議というものがどこまで組合長の、たとえばこの伊達火力発電建設の問題についてはおよそ一言半句動いてもならないし、行動してもならないというほどひどいものなのか、それとも組合に不利な形での行動を制約しているものなのか、その辺につきましては、決議を取り寄せておるんですが、どうもその辺になりますと、こんな大騒動になるという前提にはなかったかもわかりませんが、必ずしも明確な拘束力のある決議ではないというふうな考え方も出てくるわけでございますが、私たちといたしましては、そういった誤解を招くようなことになっては困りますので、やはり原則といては拘束力を持つ。したがって、執行部が新たなるアクションなり行動を起こされるに際しては、ある程度組合の承認と事前の了承というものをとられたほうが適当ではないか、こういうふうに考えている次第でございます。
  23. 美濃政市

    美濃委員 私はこう思うのです。たとえば総会決議以外の、決定以外の行動をしようとする場合には、いまお話しの事前了解というものが絶対組合長たる者は必要である。その了解なしに総会決議に反する行動をするということは、これはやはり組合長として逸脱行為だ、こう思いますね。事前了解をとるという手段があるわけです。事前了解なしに総会決議以外の行動をかってにするということは許されない。われわれには許されていないと思うのですね。  それは水産庁のほうでは——農協は別の経済局のほうから、連合会の検査その他で農協法によって行政庁監督をする。その場合、このことはやかましいのですが、水協のほうはどうですか、監督はどういうふうにしているのですか。農協監督よりは多少ゆるいのですか。事前了解なしに総会決議以外の行動をしてはならないが、それが情勢の変化や、あるいはこういう対外的な問題で他からの申し入れ等があって、その申し入れの相談に、世俗のことばでいえば木のこっぱではなをかんだような返事もできないから、一応話を聞いてみようという場合においても、事前了解をとって行動すべきである。事前了解なしにかってに動いている。この間私は報道でなしにNHKのテレビで見たのですが、資材を積んで着工に入っていって、地元住民の反対で一時間か二時間にらみ合いをして、また資材を積んだトラックは引き揚げた。これは九段宿舎のテレビで見たわけです。  これはおかしいと思うのですね。いま長官の説明からいけば、そういう問題の処理がつかないうちに着工することは好ましくないし、行政上の観点から見ても好ましくない、こういうのでしょう。それが行なわれておる。二時間ほどにらみ合って帰ったというのをこの間NHKの朝のニュースで九段宿舎で見ました。そうすると、総会を無視して、あるいは調印はしていないかもしれぬけれども、かなり進んだ約束事があるのじゃないか。だから、ああいう行為が起きてくるのじゃないかと思うのですね。ですから、事前了解はとってないはずですね。事前了解をとらないで、ある程度契約調印をしているかどうかは別としても、相手方に大体その条件でよかろうというようなかなり深い了解を与えておるのじゃないか。だから、着工という動きが出てきたのじゃないか、こう思うのです。  ですから、そういうのは、何も水産庁の命令でやっているのじゃないのですから、直接水産庁責任があるという趣旨に基づいて私は言っているのじゃないけれども、指導監督から見たら、そういう行為が起きてくるということは好ましくないですね。事前了解はとってない。総会決定以外の条件的な話し合いに応じてみたいと思うという事前了解はとってない。その文渉はかなり進んでおると思うのです。着工の動きが出てきたということはかなり進んでおるのじゃないか。正式調印をしたかせぬかは別として、おそらく総会を無視して正式調印をしていないのじゃないかと私は思いますけれども、それも好意的な判断です。あるいはしておるのかもしらぬ、この道紙の記事のように。だから、疑えば、総会が終わらないから、しないとうそを言って、あるいは中身はしておるのかもしれぬですよ。あるいはしていないかもしれません。しておると私はここでは断定はしません。間違ったら困りますから断定はしませんが、着工の動きが出てきた。それは長官の言う好ましくないというものが出てきた。  そうすると、これは指導監督上やはり道庁とも十分連絡をとって、あやまちをおかさないようにもう少し指導監督の強化と、もう一つは、最後に政務次官にお伺いしますが、こういう問題が起きるわけですから、やはり農林省水産庁としての特に海のよごれに対する自主的見解をもっと高めてもらいたい。一千万円地方自治体が出した、市町村を通じて出して、これが適当だろうなんということでは私は了解できません。もう少し農林省は権威のある、みずからこの問題はこうで、たとえばいやしくも農林省でありますから、ほんとうにはっきり害がないということの責任が持てるんであれば、過剰な不安、動揺が起きないように農林省責任を持って、これこれの害は起きるだろうけれども、それ以上の害は起きないというところまで入るべきだと思うのです、こうなってくるとこの公害問題は。それを害があるんであれば、地方自治体が一千万円の調査移託費を出して、それをながめ、ひねくり回してみて、それが適当であるかないかというのはおかしいと思います。ですから、これにはこれこれの害が起こる危険性があるからその害を除去する完全な設備をするか、それともそれができないならば中止と、そういうき然たる、やはりこれからの海を守り、大切なたん白資源を守っていくということになれば、かなりの権威とそれから自信を持ってこの問題に当たっていかなければ、私はたいへんなことになると思う。その点、指導上の見解を明らかにして、逸脱行為があればそれはやはり道庁なら道庁を通してあやまちを起こさないように指導の徹底を期すとともに、農林省水産庁みずからがこういう問題に対して権威ある、また国民に対して責任の持てる取り組みをしてもらいたい、こう思います。いかがですか。
  24. 荒勝巖

    荒勝政府委員 ただいまお尋ねの分でございますが、水協法指導監督につきましては、先生御指摘のように、農協法に基づきます指導理念と全く同一の考え方指導しておりまして、多少法律上いろいろと内容も違う点もございますけれども、指導監督という点につきましては何ら異ならない指導をいたしておる次第でございます。  また第二点の、すでに有珠漁協が、電力会社と組合長との間に秘密の協定があるんではなかろうかという御質問でございますが、これにつきましては、きのうの晩もあらためて確認いたしましたが、そういった違法といいますか、不当な協定なり契約というものは何ら現在の時点においては締結されてないというふうに私たち報告を受けている次第でございます。  それから第三点の、総会決議があるにもかかわらず、そういった誤解を招くような行動というものについての指導監督なり今後の問題でございますが、これらにつきましては、先ほど申し上げましたように、原則として、総会反対決議がある以上は、その決議反対の行為といいますか、決議に反するような交渉なり行動を起こすことは、あくまで原則として水協法の三十五条の二の規定に違反するというふうに私たち考えておりまして、この点につきましては、あらかじめ組合内部の事前の同意なり承認なりが必要ではなかろうか、こういうように考えております。  また第四点の、水産の今後の研究体制の確立あるいは自主性を持てということにつきましては、全く御指摘のとおりでございまして、われわれといたしましては、今後こういった問題にあらゆる努力を払いまして、内部的に権威ある調査研究ができますように今後とも努力してまいりたい、こういうように考えておる次第でございます。  あとは政務次官からお答えいたします。
  25. 中尾栄一

    ○中尾政府委員 るる長官が四点にわたりまして述べましたように、私どももその方向づけの中で指導していきたいと思っておるのでございますが、特に私に対しての御質問は第四点、自主的な判断を持ってもっと農林省地域公害の問題に対してもやっていくべきではないか、こういう仰せでございますが、まさに先生の御指摘のとおりでございまして、それはますますこのように多角的にあらゆる問題が煩瑣に起こってくる現時点におきましては、農林省がもっと自主性を持って、自主的な判断に基づいた指導方針で介入していくべきところは介入をしていくということに私もほぞを固めておるつもりでございますし、農林省もその方針でいくつもりでございます。
  26. 美濃政市

    美濃委員 最後に、質疑の中で一点ありました、こういう物議をかもしておる中を、そう緊急に急がなければならぬ工事でもありませんから、解決のつくまでは着工しないようにひとつ水産庁のほうから道庁を通じて指導するように要請したい。問題が円満に解決して着工することは、私どももとやかく言うものではありません。問題の物議の中で着工を強行しないようにという指導を道庁を通じてやるように要請をいたしまして、私の質問を終わります。
  27. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 馬場昇君。
  28. 馬場昇

    ○馬場委員 私は、牛の奇病について質問をいたしたいと思います。時間が限られておりますので、答弁を簡潔に、明瞭にお願いいたしたいと思います。  昨年の夏ごろから突然牛の奇病が発生したのは御承知のとおりでございますが、まさに酪農家は順調に胎児が育っているだろう、こういうぐあいに思っておったやさきに、早産、流産、死産、奇形、こういうものが続出して発生してきたわけであります。特に死産なんかにつきましては、まさに骨と皮だけでミイラ状態にまっ黒くなって子牛が生まれてくる、こういうような事例もたくさんあるわけでございますし、さらに奇形に至っては、生まれてきて足が立たない、あるいは乳も飲めない、前足が曲がってしまっておる、あるいは大脳がないとか歯がないとか、全身けいれんを起こして直ちに死ぬとか、こういう流産、早産、死産、奇形というのが非常に続出してきたのは御承知のとおりでございます。私の郷里の熊本の地元でも、特に県南で、人吉市、球磨郡、水俣市、芦北郡という二市二郡を担当しております城南家畜保健衛生所というものがあるのですけれども、その管内で去年の八月からことしの三月までに流産が百八十七頭、死産が百二十六頭、奇形が二百七十五頭、計五百八十八頭、小さい二市や二郡の中でこのように大きい数字が出ておるわけでございます。熊本県全体といたしましても、三月末までに大体二千五百五頭、そういうのが報告されておるわけでございます。こういう状態の中で、まさに酪農家は不安の極にあるといっても私は過言ではないと思います。そうして中には、もう二度と再び牛は飼わないぞといって牛を売り払ってしまう、そういり農家もありますし、受けました経済的な打撃というものもはかり知れない、こういうような深刻な状況になっておりまして、まさに酪農家は不安、動揺、ショックを受けておる、こういう現状にあります。  そこで、質問をいたしたいのですけれども、全国的な発生の地域、そしてその発生の経路、全国的に何頭こういうような状況になっておるのか、こういうことについて最初、具体的な数字を明らかにしていただきたいと思います。
  29. 下浦静平

    ○下浦説明員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、昨年の夏ごろから鹿児島、宮崎を中心といたします南九州から始まりまして、中国、四国、それから関東の一部地域にまで早産死産が発生いたしたわけでございます。昨年八月以降、今年三月末までの発生を見ました県は二十四県ということになっておりまして、その頭数につきましては二万七千八百五十二頭ということに相なっております。この内訳を申し上げますと、乳用牛が一万八千八百七頭、肉用牛が九千四十五頭ということでございます。地域的な特徴といたしましては、鹿児島、宮崎、熊本、大分、この九州の各県にかなり多く発生しているということと、それから関東におきましては千葉、茨城、この辺に発生が見られるということと、さらに福島以北につきましては発生が見られておりません。それから北陸地方におきましても発生がないということでございます。  なお、ただいま申し上げました数字につきましては、おおむね四、五%は毎年通常の流産がありますわけでございますが、これも含まれておるわけでございます。
  30. 馬場昇

    ○馬場委員 最初からしかりつけるのも妙ですけれども、昨年の末からとあなたはおっしゃったけれども、八月ごろからですよね。八月は昨年の末じゃないですよ。そういうような認識では非常に困るわけです。最初にちょっと注意しておきたいと思うのです。  では、どこから発生して、どういうぐあいに広がっていったか、そういう経路をひとつ明らかにしていただきたい。
  31. 下浦静平

    ○下浦説明員 先ほど私、昨年の夏ごろからと申し上げたのでございますが、入れ歯の関係で発音が不明瞭でございまして、申しわけございません。  発生の経路でございますが、先ほど申し上げましたように、宮崎、鹿児島の南九州から始まりまして、それから四国、中国地方、さらに千葉県、茨城県を中心といたします関東地方に及んだというのがその発生の経路でございます。
  32. 馬場昇

    ○馬場委員 具体的に聞きますと、九州と関東地方は発生の時期はずれましたか、同じでしたか。
  33. 下浦静平

    ○下浦説明員 おおむね一カ月ほどずれております。
  34. 馬場昇

    ○馬場委員 ピークはいつですか。
  35. 下浦静平

    ○下浦説明員 ピークは四十八年一月でございます。
  36. 馬場昇

    ○馬場委員 八月、九月ごろがピークではなかったかと私は調査をしておるのですけれども、あなたが間違いか私が間違いか、もう一ぺん答弁していただきたいと思うのです。  それから流産、早産ですね、こういうものと奇形というものは一緒に出たのですか。それとも時期的に流産、死産が何月ごろで、奇形が何月ごろとずれましたか、その二つについて。
  37. 下浦静平

    ○下浦説明員 お答え申し上げます。  流産、早産につきましてはピークは昨年の九月、十月ごろでございます。それから奇形につきましては本年の一月がピークということでございます。  なお、奇形につきましては、流早死産をしないで持ちこたえたものが奇形児となって生まれた、こういうぐあいに理解をいたしております。
  38. 馬場昇

    ○馬場委員 通常の場合、流産とか早産とかいうのは大体何%、昨年度はこういう異常な事態で何%になったかという数字をお聞かせいただきたいと思います。
  39. 下浦静平

    ○下浦説明員 お答えいたします。  通常の年におきましては、私どもの調査あるいは都道府県の畜産試験場の調査等を見ますと、大体四%台から五%くらいまでが通常の流産率というぐあいに理解をいたしております。それから本年は高いところでは二八%、低いところでは〇・五%ぐらい、こういうことに相なっております。
  40. 馬場昇

    ○馬場委員 私の調査では、通常の場合は大体乳牛が一・〇%ぐらい、肉牛が〇・五%ぐらいだと私は把握しておるのですが、いま言われたのとちょっと違うのです。私の調べが間違いですか。昨年は大体九月ごろで一〇・六%ぐらい流産、死産、奇形というのが出ておるようでございますが、この数字はいまの答弁と違うのですけれども、どうですか。
  41. 下浦静平

    ○下浦説明員 お答えいたします。  兵庫県におきます調査成績、これは淡路島一市十町の調査でございますが、これで見ますと、流産の発生率が三・二%程度、それから畜産局、私どものほうで、北海道、岩手、埼玉、千葉、神奈川、長野、静岡、兵庫、これら各県下の成牛飼養農家の乳牛につきまして調査いたしましたところでは、発生率が四・九%程度、こういうことになっております。
  42. 馬場昇

    ○馬場委員 私は一地域のことを聞いておるのじゃないのです。全国的な平均を聞いておるのですよ。全国的な平均を答えてください。
  43. 下浦静平

    ○下浦説明員 流産率につきましての調査は、ただいま申し上げました調査しかございません。
  44. 馬場昇

    ○馬場委員 次官に聞きたいのですけれども、いま私とやりとりをしたのですが、実にずさんです。深刻に考えていない。調査も明らかでない。こういうような状態だからこういうことが起こるんだと私は思うのです。二万七千頭以上、二万八千頭ぐらいがそういう流死産、奇形になっているわけですから、これは日本の酪農にとってはまさにたいへんな問題だと思うのですよ。そういう状況の中で具体的な数字というのがはっきりしていない。基礎資料も十分でない。農林省姿勢というものは非常に怠慢だと私は思います。次官はこういう状態を一体どう思うのですか。私はこれは明らかに大災害だろうというぐあいに思いますし、農林省は緊急に緻密な対策を立てるべきだと思うのですが、このように二万七千八百五十二頭も出た、このことについて、この酪農の異常事態についての次官の御見解をお尋ねしたいと思います。
  45. 中尾栄一

    ○中尾政府委員 お答え申し上げます。  先生の御指摘のとおり、昨年末以来、実に二万七千八百頭という、牛頭数からするならばいささかはかり知れない数がこういう被害をこうむっているということは、ゆゆしきことだと考えざるを得ないわけでございます。農林省としましては、緊急にこういう問題点の対策を練っているわけでございますが、いまからもこういう問題を十分に調査をして、なおかつこういうものの発生が拡大しないように、鋭意努力するつもりでございます。
  46. 馬場昇

    ○馬場委員 私は、いまの次官の答弁でも非常に抽象的で、真剣に取り組んでおられるというような真摯な姿勢というものが受け取られなくて非常に残念なんです。  そこで、抽象論ではなしに、具体的な問題に入っていきたいと思うのですが、このような異常なことが発生した原因は何か、真犯人は何かということについて農林省はどういう見解をお持ちですか、お尋ねいたします。
  47. 下浦静平

    ○下浦説明員 原因につきましては、私どものほうの家畜衛生試験場をはじめといたしまして、関係県の大学あるいは試験研究機関、またそれぞれの地域の家畜保健衛生所等におきまして、いろいろの角度から幅広い調査を進めてまいりましたけれども、ただいままでのところ、飼料、農薬、環境要因、受精状況等の要因については否定をされておる状況でございます。むしろ、発生例にウイルス性疾患の特徴的な病変が見られるということからいたしまして、家畜衛生試験場を中心といたしまして、日本獣医学会の専門家をも含めまして、全力をあげて伝染性疾患としての原因の究明につとめているところでございまして、すでに発生例から分離されておりますウイルス株について妊娠牛への接種試験を行ないまして、病源の確認を急ぐことといたしておる次第でございます。
  48. 馬場昇

    ○馬場委員 現在までの結論としては、原因は明らかでないということですか、それともビールスだと断定をされているのですか、どちらです。
  49. 下浦静平

    ○下浦説明員 決定したというわけではございませんが、ウイルスがその発生原因として一番有力であるという見方でございます。
  50. 馬場昇

    ○馬場委員 先ほどいろいろ原因として考えられる中身を言われたのですが、飼料の問題も確かにあろう、牧草に対する農薬の問題もあろう、さらには環境の公害、あるいはわらとかなんとかを食った中毒とか、いろいろこういう原因考えられると思います。先ほど、これは完全に否定した、それじゃないのだとおっしゃいましたけれども、私はまだ完全に犯人ではないということにはならないのじゃないかと思うのです。だから、これについてはどういうことで否定したのか、否定したからもうこれらについての原因究明は行なっていないのか、こういうことについてさらにお尋ねしたいと思うのです。  もう一つは、この去年の精液というのは、大体どこの種畜場から出たのか。あるいは種つけする場合の衛生の問題とかそういう問題もやはりあるのじゃないかと思うのですけれども、これについてはどこの種牛から出たのが去年の種つけに発生地域で使われたのか、そういうことをもう少し具体的に明らかにしていただきたい。
  51. 下浦静平

    ○下浦説明員 お答えいたします。  飼料なり農薬なり肥料なりそれから家畜なり、それぞれの由来の明らかでございます農林省の宮崎種畜牧場におきまして、関係専門家によります現地調査の結果から、これらの要因につきましては否定をされておる次第でございます。また、千葉県、宮崎県等におきましては、家畜保健衛生所管内の農家を個別に調査をいたしまして、給与飼料の種類、すなわち購入飼料、かす類、牧草、野草等の単独または組み合わせ給与している農家別の発生状況等に差がなかったかどうかということを調査いたしましたけれども、これは差がないという結果が出ておる次第でございます。  なお、御指摘になりました種牡牛の関係でございますが、これらも全部調査を行なった結果、先ほど申し上げましたような結論を得ておる次第でございます。  さらに、日本獣医学会におきましては、あらためましてこれらの諸要因全体につきましてまた調査をやりまして、すっかり洗い直そうということでやっておる次第でございます。
  52. 馬場昇

    ○馬場委員 それでは、飼料とか農薬とか環境公害とかあるいは中毒とか、そういうのは現在原因究明の一つとしてまだ調査中であるということで把握してよろしいのですね。  それから、発生地帯に対する精液はどこの種牛から出ておるのか、この点はさっき答弁がなかったのですけれども、これを明らかにしてもらいたいと思うのです。  さらにここで最後に次官にもお聞きしたいのですけれども、たとえば原因が飼料だということになりますと、どこかに責任がくると思うのですよ。あるいは公害だということになりますと、またどこかに責任がくる。さらに農薬だということになりましてもどこかに責任がくる。そういうことでもって、これはうがち過ぎかもしれませんけれども、ビールスに責任を押しつけた場合には責任がないと言われるかもしれませんから、そういうぐあいにして行政責任を回避するというような立場研究に傾いていやしないか。こういうことがありますとゆゆしい問題ですから、そういう点について次官のほうからきちんと、そうであるならある、なければないということを言っていただいて、やはりあらゆる原因を徹底的に、責任が政府にかかろうとかかるまいと一生懸命やるのだ、こういうような姿勢があるのかないのか、そういう点、どうも犯人を隠してしまう中に行政責任のがれ的なものがあるように私は見受けるものですから、その辺についての次官の見解もあわせて御答弁願いたいと思うのです。
  53. 下浦静平

    ○下浦説明員 先ほどの種牛の関係でございますが、これは家畜改良事業団から出ました凍結精液あるいは県有牛の精液その他いろいろございますが、その発生いたしました牛につきましては逐一調査をいたしたわけでございます。明らかにされておるわけでございます。
  54. 中尾栄一

    ○中尾政府委員 お答え申し上げます。  確かに、先生の御指摘になりましたように、一つのそういうアクシデント、災害その他が起こりますと、関係当局というのが逃げ腰になっておるという非難は、いずれの当局においても聞かれる問題点でございます。ただし、この問題に限って、また同時にこの種の問題に関して申し上げますならば、あくまでも農林省は非常に純技術的にこういう問題をとらえまして、逐一調査の上に立って正しい判断を下す。すなわち正しい判断というのは、十分なる資料や十分なるデータに基づいた上に立って初めて正しい判断、決定が下せるんだ、そこにまた決断もあり得るんだ、こういう中で農林当局はやっておるつもりでございます。したがいまして、今日までのこの問題にいたしましても、飼料や農薬、環境要因、さらにまた受精要因というものがなかろうか。それがもし先生の御指摘のように農薬であるならば、これははっきりと農薬だということを申し上げて、それに対する対応策を練っていく、またそれに対して、被害農家に対しては被害に対する対策も緊急措置として練っていく、これはもう当然であたりまえのことであろうと思うのでございますが、あくまでも純理論的に、また純技術的に考えていきましても、何が一体要因なのかということがつかめない段階には、その要因の模索に全力を傾倒せよという形で農林当局は取り組んでおるつもりでございますだけに、その点はひとつ先生にも御了察のほど願いたいと思うのでございます。
  55. 馬場昇

    ○馬場委員 要望しておきますけれども、いま次官の答弁も前向きな答弁ですが、決して、行政責任にかかわるからこれは消すんだとかじゃなしに、はっきり科学的に、農民の側に立って十分やっていただきたい。  それからさらに、もうビールスだということでなしに、あらゆる原因をさらに今後とも並行的に十分究明していただきたいということをお願いしておきたいと思うのです。  そこで、昭和三十四年にこれと全く同じようなことが起きておるということが、農林省の家畜衛生試験場の年報に載っているわけですね。そのときは、発生地帯は中国地方、近畿地方を中心にして出ておるようでございまして、私の調べでは、乳牛、肉牛合わせて三千頭余りがこれと全く同じような状況があったというぐあいに私は思いますが、これについて、昭和三十四年時に、私がいま言いましたようなことがあったのかなかったのかということと、そのとき原因究明が最後まで行なわれていないのですよ。原因不明ということになっているのです。私は、三十四年のときに、農林省全力をあげてきちんと究明しておれば今度のようなことは起こらなかったんじゃないか、こういうぐあいに思うのです。そのときの原因究明は、結局不明になっておるのかどうなのか、そういうのをなぜ徹底的に解明しなかったのか。その三十四年時の模様について御答弁を願いたいと思います。
  56. 下浦静平

    ○下浦説明員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおりでございまして、三十四年から三十五年にかけまして、和歌山県から香川県にかけまして計十三県でございますが、同じような現象が生じております。流死産頭数は三千五十二頭という結果が出ております。  それから、当時やはり私どもの組織をあげまして原因究明にかかったわけでございますが、ついに原因はつかめないで終わっておるということも御指摘のとおりでございます。それから、これは、翌年わりあいに短期間で終息をいたしまして、あとは起こらなかったというような関係もございましたために徹底的な究明ができなかった、こういう事情にありましたことを御了承いただきたいと思います。
  57. 馬場昇

    ○馬場委員 人ごとのようにすらすらっと答弁されるのは、私はどうも気に入らないのですよ。まさに酪農家は塗炭の苦しみを味わっているのに、あくる年起こらなかったから結局原因はわかりませんでした、こういうような農林行政では、安心して酪農をやっていけないと私は思います。そういう姿勢が今日再びあやまちを犯したわけです。この前は、いま言われましたように三千頭でした。今度は二万八千頭という形になってきているわけですよ。そういう意味において、やはり三十四年時の対策というものについてほんとうは足らなかったんだ、いま考えますと、こうすればよかった、ああすればよかったということもあると思うのです。そういう反省がないというところに再びあやまちが起きておる。こういう点について、これは次官のそのときの反省なり今後の取り組みという姿勢をきちんと聞いておかなければ、農民は安心しないんじゃないかと思うのですが、どうですか。
  58. 中尾栄一

    ○中尾政府委員 ちょうど三十四年のころというのは、私も代議士に出ておりませんで、そのときの模様の実態は私もここで詳細を持っておりませんので、いま初めて聞かされたわけでございまして、まことに不勉強であることを恥じるわけでございますが、まさしく先生のいま御指摘になりましたとおりでございます。これはもう通り一ぺんの答えでやっていこうというような気持ちは、私ども農林省当局は一切持ってはならない、また持つべきことではないという感じがしております。あくまでも、こういう事件の発生したときには、一体要因はどこにあったのか、なぜこういう問題が起こったのかということの真相並びにその原因を十分究明するということに全力をあげて、そこで最終的に、病原菌の問題でございますから、まことにわかりにくい点もあろうかと思います、あるけれども、それに対しては徹底的に追及するという真摯な態度だけは失わないということも、これまた積極的な態度であって、また生産者に対する一つの安堵感にも通ずる道になりますから、そういう点は私どもますます鋭意努力をするつもりでございます。そうして、それに対する被害対策におきましても、それにちなんだ方向で私ども全力をあげていこう、先ほど答弁したとおりでございまして、生産者各位に不安のないような方向づけを私どもは打ち立てていくことをお約束申し上げていきたいと思っておる次第でございます。
  59. 馬場昇

    ○馬場委員 現在、たとえばビールスと仮定した場合に、どこで徹底的な究明の、疫学的な調査だとか研究とかをやっておられるのか。私が調べた範囲内では、非常に体制ば不十分だ、こういうぐあいに思います。そのような不十分な体制の中で、私は、またしても原因不明ということで、次にこういうことが起こる可能性が必ずある、こういうぐあいに指摘せざるを得ないのです。そういう意味におきまして、現在どこで疫学的な試験をやって、原因究明をやっておるのか、そこのたとえばスタッフなり研究機関の施設設備なり、あるいは研究員の人員なり、そういう問題について具体的に明らかにしていただきたいと思うのです。  そうしてこれは次官にも最後にお答え願いたいと思うのですけれども、必ず今度は原因を究明してみせる、どんなことをしても農林省全力をあげて究明するのだ、こういうことの決意のほどを聞きたいと思うのですが、前段で、どこでどういうスタッフで何人ぐらいの人数でどういう研究機関でやっているか答えていただきたい。
  60. 下浦静平

    ○下浦説明員 お答えいたします。  ただいま原因究明をやっておりますところは、農林省の試験研究機関でございます家畜衛生試験場、これを中心といたしまして関係各県の家畜保健衛生所、それから大学では宮崎大学と日本大学、こういうところで原因究明を急いでおる次第でございます。  なお、この原因究明につきましては、かなり徹底した体制をもって臨んでおるということを申し上げたいと存じます。  なお、人数その他につきましては、お許しを得ますれば衛生課長からお答えをいたさせます。
  61. 馬場昇

    ○馬場委員 それはあと、資料でいい。
  62. 中尾栄一

    ○中尾政府委員 先ほど来馬場先生の御質問を聞いておりまして、非常に御熱意のある御質問でございますから、私どもも全くその気持ちを十分私どもの政策に反映いたしまして、どんなことをしてもこの原因だけは追及してやまじという覚悟で各大学の研究機関でもやっているようでございますが、そういう宮崎大学等の学校当局にも督励をしたり、さらにまた農林当局で自主的にこの問題に取り組んだりして、原因を追及したい。これは人間が二万七千八百人もなくなりましたらたいへんな問題が起こるわけでございますから、その原因が不問のままに経過するということは許されるべきことではないと考えております。その点は十分考慮に入れていきたいと思います。
  63. 馬場昇

    ○馬場委員 私は時間がありますとさらに追及したいのですけれども、また結論からいいますと、実は三年前にも熊本県では起こっているのですよ。御存じですか。
  64. 下浦静平

    ○下浦説明員 三年前の熊本における案件につきましては存じておりません。
  65. 馬場昇

    ○馬場委員 こういう点もやはり私は行政の怠慢だろうと思うのです。やはり三年前に熊本県の球磨郡でちゃんと奇形が産まれて、そうして前足が曲がって動かない。そうして、それが直ちに死んだ。その牛を飼い主が手放したわけです。今度の特徴で、その別にいった次のところで、今度はまともな子供を産んでいるのですよ。まさにいまの状況と同じなんです。それが三年前にも起こっております。そのときにきちんと行政の手が行き届いておるならば、今回また起こらなかったかもしれません。そういう点、あらゆる点を見ても、やはり行政姿勢というのが十分でないというぐあいに私は思います。  そこで、私は、これはもうこれと関係ございませんけれども、水俣病の公害がございます。このときには行政のタッチのしかたというのは不十分で、熊本大学を中心に原因の究明をやったのですけれども、それに対して政府筋、企業筋が妨害をして、水銀じゃないのだ、爆弾だとかあるいは農薬だとかいろいろなことを言って、それで究明がおくれた。そうしておるうちに、第二の水俣病が新潟で起こったのです。熊本の水俣病の原因をきちんとはっきりさせておりさえすれば、第二の水俣病は新潟では起こらなかった、こういうことを私は経験として知っているわけです。そういう意味におきまして、ぜひ今回は、先ほど次官も言われましたように、三年前にもあったのですから、行政がきちんとそれを把握する努力をするとともに、この原因究明機関、私は千葉の試験場等でやっておられると思うのですけれども、これが筑波に移転するとかなんとかの問題、いろいろの問題でごたごたしておるようです。とにかく徹底的に人員も予算も取って、再びこういうことのないようにやっていただきたいと思うのです。  そこで、時間が来ましたが、一言だけまた言っておきたいのですけれども、被害者の救済の問題です。これは農家に行って聞きますと、たとえば毎年二頭ずつ産ましておる。ところが、それが全部死産、流産だった。四十万円損をした。そうして親牛を手放した。追い銭を打った。その他産まれるときの獣医の問題。とにかく百万円損失があった。また昨年の暮れに四千万円かけて牧場をつくった。そして二十・六ヘクタールの牧場をつくった人がおります。この人の牧場では六頭、こういう流産、死産、奇形になっているのです。この人からも聞きましたら、まさに百数十万円の損失だ、こういうぐあいにいわれておるわけでございます。そこで、こういう損害、私は災害だろうと思うが、こういう損害に対して、もう酪農の行く先は不安だ、牛を手放したいという農家さえあるわけですよ。こういうものに対して補償を国は考えないのか。また家畜共済といいますか家畜保険といいますか、こういうものも何ら適用されない。切り捨てごめん、原因もわからない、不安動揺におとしいれておる、こういうことでございますが、国がこの損害を受けた農家に対してあたたかい手を差し伸べて救済をする、こういうようなことを考えていないか。現在精液を二本国がやったというだけでしょう。あと何もしていない。この辺についてもぜひよろしくお願いしたいと思います。救済を確立すべきだということについて、具体的な話は抜きにして、時間が来ましたので、次官の方針といいますか、今後することでもいいですから、今後やりたいというような方向でもいいですから、そういうことをぜひ私を通じて、この質問を通じて農民に明らかにしていただきたいと思います。
  66. 中尾栄一

    ○中尾政府委員 時間の関係もございましょうからごく簡単にお答え申し上げたいと思いますが、被害農家に対する措置は、当面次のように緊急措置を講じていくつもりでございます。  まず、家畜伝染の予防につきまして、伝染病予防法に基づきまして家畜保健衛生所職員による立ち入り検査、消毒及び巡回指導を行なうとともに、母牛には異常がなく、流産、死産後の再種つけが順調であることにかんがみまして、関係機関を活用して母牛の売り急ぎを防止しまして、早期再種つけを励行するように指導していきたい、こう考えております。  また、流早死産が発生した乳用牛または肉用牛の飼養農家に対しましては、優良な人工授精用の精液を無料で早急に配布するように措置をいたしまして、それと同時に、被害農家の既貸し付け金の償還猶予並びに貸し付け条件の緩和については融資機関に協力を十分要請していくつもりでございますし、また現在要請しております。  今後、その原因につきましては早急に結論を得るように努力をするとともに、原因が判明した際には、それに応じました所要の措置の実施につきまして万全を期すことをお約束申し上げたい、こう考えております。
  67. 馬場昇

    ○馬場委員 とにかく宮崎県等では、子牛安定基金というのをつくりまして、そういう積み立てをしてそれで助成をするというような方法なんかもいろいろ考えておるようでございます。国もぜひ、二万八千頭ぐらいあるわけですから、そういうような被害農家に対して救救済措置を今後さらに十分研究して助成をしていただきたいということを要望して、質問を終わります。
  68. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 瀬野栄次郎君。
  69. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣が参議院の農林水産委員会に出席されて、当委員会で議員立法しました古々米四十万トン及び政府操作飼料の二十万一千トンの審議に入っておられるということでございますので、中尾政務次官に主として緊急な問題として次のようなことを質問いたしたい、かように思います。本日は、私いろいろ質問通告をしておりましたが、けさほど通告しました問題からまず当局のお考えをただしていきたい、こういうように思います。  きのう実は金融四法の審議をいたしまして、その中で、農業協合組合法の一部を改正する法律案の中でレンタル制の問題等をいろいろ一時間近く論議したわけでありますが、その中で今後の土地の買い占め、乱開発ということを農林大臣にいろいろと聞きだしたわけであります。ところが、けさ、ちょっと新聞を見てみましたら、毎日新聞の社説に「ゴルフ場建設を断固規制せよ」という見出しで、その二段に「田中首相は最近同郷人の会合に出席し「新潟にはどんどんゴルフ場を造成するがいい。国会答弁と違って、これが私の真意だ」」こういうふうに口をすべらした。国土の将来を最も強く考えていかねばならないはずの首相が、冗談か何かわからぬにしろ、このようなことばをほんとうに口にしたということになれば、これはいかにも軽率ともいうべきか、またけしからぬ問題である。まさか、まんざらうそをこんな新聞が社説に書くわけがないと思う。けさ通告してありますので、政務次官は十分これを読んで知っておられると思うが、まずその辺の御感想からお伺いしたい。
  70. 中尾栄一

    ○中尾政府委員 私も実は社説を、残念ながら毎日新聞のを読んでおりませんで、さっそく読んだのでございます。掲載記事の具体的内容、記事の経緯については、全く私も承知しておらなかったということをまずもって申し上げておきたいのでございますが、まあ、私も読んだ限りにおいては、ほんとうにこういうことを言ったのかというような、まだ疑わしいような気持ちでございまして、真意のほどがまだつかめておりませんので、その点はいまふえんすることは差し控えたいような感じがいたします。  感想と申し上げますると、まあおそらく、何といいましょうか、総理御自身も、地元に帰って、地元方々とお会いになったリラックスしたお気持ちの中で——だれしもか軽口をひょっときいて、真意でない気持ちをそのまま冗談に託して言う場合がよくございます。中国の問題でも、八億の民がおる。原爆を中国が落とされた場合には四億の民がまだ残るだろうというようなことを軽口に、よく冗談のように言う人がおります。これは考えようによってはたいへんな重大問題であるにもかかわらず、その場の雰囲気で冗談のようにたたく場合がある。そういう関連したことばの中における一部を取り上げられるとすると、これが重大問題になりますけれども、その場の雰囲気を察知いたしませんと、なかなかこういうものは、ただその場の雰囲気におけるものをことばだけの上に立って判断することは、早急なような感じがいたしますので、その点は私も十分内容に至ってもう少し掘り下げて聞いてみたいという感じさえするわけでございます。  いずれにいたしましても、最近におけるゴルフ場の建設の増大に伴いまして、農地等が過剰につぶされていくという傾向はもう厳に戒めなければいけないということは、しばしばここで論議されたとおりだと私どもも思っております。農林省といたしましては、関係省庁における適切な業界指導と相まちまして、地域の農業のいわゆる維持、発展に支障の生じないように、農業振興地域制度あるいは農地制度、保安林制度等を厳正に運用してまいりたい所存でございます。
  71. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官がその現場におられたわけじゃないと思いますので、この真相の問題についてはあなた自身がはっきりしたことは言えないことば一応わかりますけれども、いやしくもこのような大新聞の社説に堂々とこういうふうに出ているということは、これはまことにけしからぬ。田中総理自身が本会議においても、乱開発の問題については土地の買い占めその他をきびしく規制しなければならぬということで、現在、皆さん方御承知のように、国会においても生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律案及び生活関連物資の買占め及び売惜しみに対する規制措置等に関する法律案を提案してありますし、当委員会でも、昨日、この法案について物価問題等に関する特別委員会に連合審査の開会を申し入れ、来たる二十三日にはこの審議をするということで、いま準備をしておるわけでございます。こういう国民重視の中に、しかもこの土地買い占めないしは物価騰貴問題を取り上げて、いま真剣に対策を練っておるときに、軽率であろう。また政務次官のおっしゃるおことばをかりれば、リラックスした中でつい漏らした、こういうのだが、私はこれがいわゆる本音ではないか、いわゆる総理のことばは偶然でなく本音じゃないか、こういうふうに思うわけです。いずれこれは来たる物価特別委員会の中でも重要な問題として論議をするということになりましょうし、またこの問題については真相を明らかにすることになると思いますが、かねがねこういったことが心の中にあるから、いわゆる列島改造論その他についてもわれわれはたいへんこれは問題であるというふうに言っているわけでありまして、大問題である、こういうふうに思うわけです。  それで、この新聞はおそらく私は間違いない。自信があるからこういうふうに書いてあるわけで、しかもこの中に、総理自身もこれが私のいわゆる真意だ、と書いてある。こうなると、まさにこれは国会軽視もはなはだしい。また田中総理のいわゆるかねがね思っておる真意がここに出たんだ、こういうふうに私は思うわけです。それについて私は憤りを感じております。農林省として、これはいずれ明らかになることでありますけれども、こういったことを発言したことに対しては、どういうふうに今後総理に対処されるのか。また農林省としては、これはいずれは明らかになりますが、いかなる考えで田中総理に今後これを明らかにしていかれますか、その姿勢についてさらに政務次官からお伺いしたい、かように思います。
  72. 中尾栄一

    ○中尾政府委員 私ども政府に関係しておりまする立場の者、並びにまあ自由民主党という一つの狭い範囲で考えましても、田中内閣をいただいて、これに協力を惜しまずやっておるつもりでございます。そういうさなかの中で、これが新聞では真意という形で総理が述べられたと書いてございますが、まだ私は実はふに落ちないのでございます。大新聞ともあろうものがまかり間違うことはなかろうと先生御指摘でございますが、その大新聞がややもするならば、これまた過誤をおかす場合も間々あるわけでございまして、昨年の七月に田中内閣の出発のときには、あれほど非常に大きく書き立てられほめそやされた田中内閣が、六カ月後には全くまことに批判も批判、中傷的批判が多いというような新聞のやり方を見ましても、必ずしも新聞が絶対値であるというように私どもは考えておりませんので、この内容をもう少し私どもは調べてみたいという感じがいたします。  同時にまた、農林省当局は一体それに対してどういう感想を持つかということは、先ほど述べたとおりでございますが、さらに追って言いますならば、これがほんとうに田中総理の真意、内容であるというならば、それは総理の発言は、現在の日本列島改造の中における一翼をになって農林省が逐一じみに、現在の農地法の問題並びに山林原野の荒らされていく問題等をも踏まえながら、私どもが現在鋭意努力、討議していることといささか違ってまいりますから、その点は厳に戒めていかなければいけないという気持ちに立つものでございまして、その点は、田中総理が言うたから絶対そのとおりに従っていくというものじゃございませんで、政治家でございまするから、あくまでも是々非々にとらえていく。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕 自由化の問題のように、私どもはいささかがんこにまでも抵抗を続けるというような大臣のたてまえを見ましても、農林省農林省当局の考え方がございますから、その方向に沿ってわれわれは考えていくということをここに明らかにしておくつもりでございます。
  73. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官からいまるるお話がありましたが、先般の本会議の席でも、与党の、あえて名前も申しますが、渡辺議員は、与党でも総合農政調査会または林政調査会、土地問題調査会、この三つの副会長をしておられる方です。この渡辺議員が与党を代表して本会議質問されたその節、田中総理に、最近のゴルフ場の乱開発の問題を取り上げてきびしく追及され、与野党からも一時拍手が起きるほどこの問題については共鳴の声があったわけです。与党としては実に思い切ったことを言ったということで、われわれも評価したわけでありますが、去る四月十三日にも渡辺議員は、与党の関連質問で、最近、中金あるいは各農協は金がダブついている、それらの金を、いわゆる債券を持ってきて中金にそれを買っていただき、農協が業者に金を融通したお金で土地を買う、買い占める、そういったことは栃木県、群馬県あちこちにたくさん起きてきている、けしからん、こういった実態をいずれ農林省は勉強して明らかにせよというきびしい追及があったことも御承知かと思います。与党でさえもそういうところでいまたいへん問題にされている。わが党でも参議院の決算委員会で、黒柳議員がこのゴルフ場の問題を明らかにして、ずいぶん世間の注目を浴びたわけであります。  ちなみに申し上げますと、全国の既成ゴルフ場は六百八十一カ所、約六万一千余ヘクタールになっておりまして、造成計画中のものを入れると千四百カ所に近く、約十四万六千ヘクタールである。これは東京二十三区の約三倍に当たり、全国の工業用地十二万ヘクタールをはるかに上回るという数字になっております。しかもゴルフはますます庶民の運動として最近その広がりを増し、需要が増大する一方であります。またその建設には広大な地域を必要とすることはもう御承知のとおりでありまして、最近のように地価の値上がりの中で、自然破壊、土地投機などを助長するほか、文化財の破壊とか土地に対する犯罪も起きておりますし、森林法違反など、問題がいろいろ起きてきております。  こういったときにこういうことを一国の首相みずからが、最近の土地買い占め、物価騰貴に対してきびしい規制をしようといって、立法を逐次命じて国会提出になっているこのときに、われわれ農林関係に携わっている者として真剣にこの問題を論議しているときに、こういったことを不用意にも言うことは、まことにこれは国会を軽視し、また国民をばかにしたやり方である、かように思うわけです。  この機会に聞いておきますが、こういった与党からのゴルフ場の乱開発を規制せよとか、最近目に余るゴルフ場の開発、こういったことに対していろいろと土地問題調査会も検討されておると思いますが、農林大臣の代理である次官は、こういった問題について、ゴルフ場については今後どういうふうに規制をする考えであるのか、どういうふうに方針を立てていかれるのか、その点も明らかにしてもらいたいと思うのです。
  74. 中尾栄一

    ○中尾政府委員 詳細にわたりましてどのように法制化していったりあるいはまた規制していくかということに対しましては関係者に答えさせることといたしまして、基本的な考え方といたしましては、さきに渡辺議員が農林中金の質問をいたしました際に、それに答弁したのは私だと記憶しておるのでございますが、私も渡辺議員の御質問に同感でございます。日本列島改造というもののメリットはたくさんあるわけでございまして、その上に沿って田中総理は日本列島改造と言うたにもかかわらず、それをむしろデメリットたるべき、どちらかというと土地の買い占めとか、そういう方向にいささか投機的ムードが流れたことだけは遺憾であるということは、あらゆる点で指摘されるかと思うのでございます。  特にゴルフ場などにおきましては、ゴルフ場という名目で土地買いあさりをしていながら、結果的にはゴルフ場ではなくて、売買投機のための対象にしておるというようなことが現にあったという事実も聞いておりますし、これは絶対に戒めるべきものである。しかもそのゴルフ場の対象になるのが、ほとんど農林省の管轄である山林原野に買い占めが行なわれておる。一つの村に七つ、八つもゴルフ場の申請が出ておる。これは狂気のさたと言わざるを得ない。この点におきましては、どんな方法においてもそういうことのないように規制をしていくことを厳に考えていかなければ相ならぬなという感じは、農林当局の政務次官として持っておることを私はお伝え申し上げたいと思います。
  75. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この問題はまことに重大でございますが、近く田中総理を当委員会に呼んでいろいろ真意を問うということで、実は金融四法の問題で委員会でもいろいろ計画をしておるわけです。その際もちろんいろいろと真意を問うということになりましょうが、さしあたっては来たる二十三日、月曜日の物価対策特別委員会で明らかにすることにもなりますが、私は農林大臣の代理である政務次官に——この世論の中にこれは重大な問題でありますし、一回の総理がかりそめにもそういった同郷人の前でリラックスした姿で言った、その辺もどうかわかりませんが、つい出たこのことばは、これはいつも思っておる本音じゃないか、そうすればまことに国会軽視もはなはだしいことで、とんでもないことである、憤りを感ずる。  こういう問題でありますので、自民党のいわゆる総合農政調査会または土地問題調査会等でいろいろ問題にもなろうかと思いますけれども、私は当局に対してこの真相を早急に明らかにしていただいて、二十三日の物特でもいろいろとまた論議されることになると思います。自民党としても渡辺議員等も、かねがねこういったことに対しては政府に対するきびしい追及をしているわけでございますので、総理の真意について、正式に早急にひとつこれの釈明をしていただきたい、またこれに対する弁明を私は要求したい、かように思う。その点についてはっきりと政務次官から農林大臣に伝えていただき、農林大臣はちょうど参議院に行っておられますから、農林大臣を通じて総理に強硬に申し入れをしていただいて、一両日中に明らかにしていただきたい、返事をもらっていただきたい、回答してもらいたい、かように実は思っておるわけです。その点についてよろしくひとつお願いしたいのですが、御答弁いただきたい。
  76. 中尾栄一

    ○中尾政府委員 瀬野先生からただいま御質問にありました点は、至急本日農林大臣にもお伝え申し上げまして、そのように実現するべく努力をしたいと思っております。
  77. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ぜひひとつそういうふうにお取り計らいいただきたい。本日実現するように努力するということでありますので、一応それで了とします。  そこで、つけ加えておきますが、かりに百歩譲ってこの社説が間違いだった、こうなればこれはまた別問題でありますけれども、その点についても新聞の報道の自由でありますから、よもやそんなことはあるわけはありませんけれども、間違いであればあったで、その辺もあわせてはっきりとひとつお知らせいただきたい。このことをつけ加えておきたいと思います。  通告しております問題がほかにもございますので、時間の範囲で若干はしょって質問をすることにいたします。  ただいまのゴルフ場建設の問題については、また田中総理のこの発言については次回に、詳細また御返事いただいた上で、譲ることにいたしまして、私はエカフェ総会の問題できよう外務省当局に通告しておきましたので、若干の問題を質問したいと思います。  国連アジア極東経済委員会が去る四月十一日から開かれたわけですが、この中で大平外相は日本政府主席代表として、各国主席代表の一般演説の中で、アジアの経済社会発展のため積極的に取り組む日本姿勢を明らかにしております。その中で、まずエカフェ開発途上国にとって農業開発、特に食糧増産の重要性を強調しておられますが、この問題についてまず外務省から要点を明らかにしていただきたい、かように思います。
  78. 妹尾正毅

    ○妹尾説明員 大臣の御発言の内容の要点は次のとおりでございます。  まず、アジア地域の工業化は非常に大事であるけれども、それを成功させるためにも農業の基礎固めを行なっていくことが肝要である。これが第一点でございます。それで特にアジア地域で最近米不足がひどくなっておりますので、この問題を解決する必要があるということでございます。  それで次に、わが国がこの点に関してやってきたこと、あるいはやることと、それからエカフェで取り上げるべき問題と、二つを論じておられます。  わが国との関係では、特に米不足国における増産対策について経済技術協力を一そう強化していくということを強調しておられます。それからエカフェとの関係につきましては、従来エカフェでは農業問題をあまり取り上げていないので、こういうふうに農業問題、農業開発が重要な問題になってきているので、エカフェでも積極的に取り上げるべきであるということを提案されまして、米を中心とする農産物の需給の問題とか生産の問題、さらには工業化とか資源開発なんかについても農業開発との関連を十分考えてやっていくべきであろうということを言われまして、エカフェで農業問題について政府間の協議をやっていこうではないかということを提案しておられるわけでございます。
  79. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政府次官、いま外務省当局からエカフェの総会に対して大平外相の農業問題を中心とした発言の内容を説明いただきましたのですが、このことについては農林省はどういうふうにこれを受けとめておられるのか、事前に外務省ともいろいろ十分な打ち合わせをなさってのことか、その辺の関係をお伺いしたいと思います。   〔藤本委員長代理退席委員長着席
  80. 中尾栄一

    ○中尾政府委員 エカフェの総会におきます大平外務大臣の発言は、従来エカフェが工業開発を重視してきたのに対しまして、いまや工業開発のためにも開発途上国の農業開発が重要となってきたということを強調し、今後は農業開発、特に当面いたしまする食糧不足に対しまして開発上国の食糧生産の促進をはかる必要があるということを述べたものでございます。  農林省といたしましては、国内農業に摩擦を与えない分野で、従来からアジアの開発途上国を中心に農業開発のための協力を行なってきておるわけでございますが、今後ともこの趣旨に沿ってさらに積極的に拡充してまいりたいという考え方に立っておるわけでございます。  なお、本エカフェの総会におきましては、農業の分野の議題といたしまして、アジア開発途上国におきます米貿易を促進するためにアジア米貿易基金の設置が提案されておりまして、これに対しましてわが国を含む先進国の拠出ないしソフトローンが要請されることが予想されるわけでございますが、わが国といたしましては、現在需給の安定化施策の一還として行なっているKR援助、さらに日本米の延べ払い輸出との関連がございますし、また本構想自体さらに検討すべき問題が多いと思われますので、わが国としましては開発途上国の農業生産の安定のための施策を重視してまいりたいと考えておる次第でございます。  なお、つけ加えますけれども、外務当局とはこれは十分連携を保ちながら、打ち合わせの上で所作しておりますし、また所作していくつもりでございます。
  81. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 外務当局にお聞きしますが、去る三月二日の記者会見でバーマ国連FAO事務局長は、後進国の援助に対しては、日本が開発途上国の開発援助をする場合については、FAOを通して行なうようにしていただくことがいい、こういうふうな意味の発言をしておりますが、その点は外務省はどういうふうに今回の総会では協議をされたのか、どういうふうに考えておられるか、その点を明らかにしてください。
  82. 妹尾正毅

    ○妹尾説明員 お答えいたします。  大平外務大臣の演説の中でも、今後エカフェ等で農業開発の問題をこういうふうに取り上げていく場合は、FAOはじめこの分野で有益な活動を行なっている諸機関、諸団体と十分連携を保ち、かつ調整をはかっていくべきであると考えますというふうに御発言しておられまして、当然FAOというのは世界的なこの問題に関する一番大きな機関でございますので、十分協力しながらやっていく、そういうことでございます。
  83. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 政務次官、先ほどの答弁で、摩擦を起こさないように、そして十分外務省と連携をとってやっていくということでございましたが、私の知る範囲では、東南アジア諸国で米が年間約六百二十万トンくらい不足している。日本は米だけは一〇〇%以上あるわけでございまして、今後米のいわゆる食糧基地として、日本は米をぜひひとつ増産をして、そして東南アジア等足らないところに対してはいろいろまた援助をしてほしいというような意味のこともこのバーマ国連FAO事務局長は言っておるのでありますが、こういったことについて、従来の例から見ますと、開発途上国では日本の米の問題については、兄貴分である日本は弟分の低開発国の地域を荒らすなということで、なかなか受け入れられない。また日本がかりに米を輸出するにしても、赤道を通る関係もありますので、大型精米工場によって精米しないと、玄米ではなかなか出せないということで、フィリピンその他に対してもやろうと思っても、精米能力がないということでなかなかできないという事情もあるわけですが、そういうことも踏まえて、どういうふうに農林省では対処をする考えで今回のエカフェ総会に対する外務省との打ち合わせ等をなさっておるのか、簡潔にお伺いしたいと思います。
  84. 中尾栄一

    ○中尾政府委員 後ほど内村経済局長からバランスの問題につきましては詳細の報告をさせたいと思っておりますが、バーマ博士も私も実はお会いをさせていただいたのでございます。バーマ総長が言われますのは、世界的な供給と需要というもののバランスを考えて、日本もその役割りの一員としてどのような供給をし、また需要をしていくかという適地適産を世界的な視野でやっていこうというような御提案でございまして、全く私も同感して聞いておったのでございます。そういう意味からいたしましても、先生御指摘の米の問題等も、生産調整をどうこうするという問題にもつながってくるわけでもございましょうし、それはいま鋭意それぞれの分野で検討されていることだと思います。そういう意味におきまして、私も瀬野先生の御意見等は十分加味をしまして、反映にこれまたつとめていきたいと思っております。詳細にわたりましては事務当局から答弁させたいと思います。
  85. 内村良英

    ○内村(良)政府委員 瀬野先生御指摘の点は私どももよく理解できるわけでございますけれども、やや事務的な立場から問題を考えた場合には、これにはいろんな問題がございます。  まず第一には米不足、東南アジアの米不足という問題でございますが、過去四、五年の状況を見ますと、三、四年前には米が余っていたわけでございます。たとえば、フィリピンはもう伝統的に米の輸入国であったわけでございますけれども、フィリピンの稲作研究所でつくりましたいわゆるIR8の品種が非常に広がって三年前には輸出国になった。それが昨年の干ばつで東南アジア全体に非常に米が不足して、国際米価が暴騰したというようなことがあったわけでございます。したがいまして、穀物、特に米の需給というものを考えた場合に、長期的にずっと不足であるかどうかという点には非常に検討すべき問題があるのではないかというふうに考えております。  それから、先生御承知のとおり、日本で米をつくってそれで東南アジアの国々を援助するという場合に考えなければならないことは、日本の生産者米価と国際価格水準との間にはトン当たり十万円以上の格差があるわけでございます。したがいまして、国際価格で輸出するということになりますと、多額の財政負担が要る。その財政負担をそういう形でやったほうがいいのか、あるいは現地の農業技術の向上ということに、むしろそういった技術援助に力を入れたほうがいいのかというような問題も、これは検討すべき問題がいろいろあるわけでございます。そういうわけで、事務的にはいろいろな問題がございますので、本件は慎重に検討して方向をきめるべき問題ではないかというふうに考えております。  なお、精米能力の点につきましては食糧庁から御答弁いたします。
  86. 森整治

    ○森説明員 先生からいま大型精米工場の点についての御指摘がございましたが、ただいま御指摘のように、国内では大型精米工場の助成につとめておりまして、稼働率が約五〇%になっております。現在、御承知のように、援助で輸出を行なっておりますが、これも精米工場を活用して有効利用をはかっておるという状況でございまして、時間的なりあるいは場所的なりに特に集中しない限り、現在の工場を活用して輸出をはかっていくということが可能だというふうに考えておるわけでございます。
  87. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  88. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 諫山博君。
  89. 諫山博

    諫山委員 林野庁にお伺いします。  福岡県遠賀郡岡垣町で四月の七日に町長選挙がありました。保守対革新統一候補の一騎打ちの選挙でしたが、そこで最大の争点になったのは、芦屋射爆場をどうするかということであります。その投票の直前になって、亀井福岡県知事は、芦屋射爆場を自衛隊に使用させたい、その期間は五年とする、五年したら絶対返してもらう、こういう発言をしました。これを受けて保守系の町長候補も、五年たったら必ず返してもらうから五年間だけ自衛隊に使用させることにしたいと公約しております。選挙の結果は僅少の差で保守系候補が勝利しました。この選挙で亀井知事の発言が大きな役割りを果たしたことは否定できません。  ところで、この問題について三月一日、私は当農林水産委員会で福田林野庁長官と平松林政部長にこの問題で質問をしました。そのとき平松林政部長は林野庁と県知事の関係について次のように答弁しています。福岡県知事は林野庁長官から機関委任を受けている、機関委任の官庁と林野庁とは指導関係にある、こういう発言です。したがって、芦屋射爆場の保安林を自衛隊に使用させるかどうかは福岡県知事と林野庁が密接な関係を持って協議する、両者の協議は当然でございます、こういう答弁になっております。  そこで、林野庁当局にお聞きしたいと思います。芦屋射爆場を五年間だけ自衛隊に使用させるということで福岡県知事と林野庁との間に協議がととのったかどうか、お答え願いたいと思います。
  90. 福田省一

    ○福田政府委員 お答えいたします。  御指摘のございました福岡の射爆場は約三百ヘクタールの保安林でございます。この場所につきましてはまだ県との協議がととのっておりません。一応県知事のほうからこの問題についての森林法上の取り扱いをどうするかということについての相談は受けておりますけれども、協議はまだととのっておりません。
  91. 諫山博

    諫山委員 時間が限られていますから簡単に御答弁願いたいと思います。  私が前回質問したのは三月一日です。それから現在まで何らか協議の進展があったかどうか、あるいは何らかの合意があったのかどうか、お答え願いたいと思います。
  92. 福田省一

    ○福田政府委員 この場所につきましては私たちは慎重に検討しているわけでございまして、まだ具体的にはその年数の問題であるとかいうふうなことには、県との間で話し合いはいたしておりません。
  93. 諫山博

    諫山委員 そうすると、合意は成立していないということは明白でありますが、三月一日から現在まで話し合いは深められてきたのでしょうか。それとも三月一日と変わらない状態なのか、お答え願いたいと思います。
  94. 福田省一

    ○福田政府委員 三月一日の状態と現在のところでは変わっておりません。
  95. 諫山博

    諫山委員 そうだとすれば、事はきわめて重大であります。亀井県知事が町長選挙を前にして、林野庁と協議がまだ進んでいないのに、もちろん何らの合意も存在しないのに、一方的に五年間だけ使用許可したいというような発言をするというのは、きわめて重大だと思います。  そこで、林野庁側の前回の説明では、亀井知事に機関委任をしているんだ、機関を委任した側と委任された側の関係というのは指導関係にあるというふうに言われたと思いますが、林野庁の意向を全く無視してこういうことを亀井知事が一方的にきめられるような関係になっているのかどうか、お聞きしたいと思います。
  96. 平松甲子雄

    ○平松説明員 お答えいたします。  森林法の規定では「都道府県知事は」という表現になっておりまして、通常そういうような形で処理される事項について機関委任と称しているわけでございますが、その点につきまして、一般的な事項でございますと、都道府県知事がみずからの権限において決定をするというのが通例でございます。今回の問題につきましては事柄が重大でございますので、福岡県知事のほうからも内々の協議をいただいているわけでございまして、私どもいま諫山先生御指摘のような知事の発言があったかどうかということについてはつまびらかにいたしていないわけでございます。
  97. 諫山博

    諫山委員 前回の答弁で明らかになったのは、自衛隊に使用させるかどうかということは林野庁と知事と密接に協議をしながらきめていくというふうになっております。ところが、一方的に、林野庁と関係なく、亀井知事のほうで五年間だけ使ように、福岡県知事の発言については、私どもつまびらかにいたしておりませんので、その問題について正しいか正しくないかということについての答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  98. 諫山博

    諫山委員 長官にお聞きしたいのですが、この問題はすでに参議院においても取り上げられております。そして三木環境庁長官は、これは公園に使うことも考えるんだというような答弁になっているのです。そういう状態の中で、一方的に、知事が決定する権限もないのに、これを県民に公表するというのは全く越権行為だと思います。林野庁長官としてはどのように考えられるか、お聞きしたいと思います。
  99. 福田省一

    ○福田政府委員 林野庁といたしましては、しばしばお答えいたしますとおりに、保安林としての機能を完全に維持管理してまいりたい、かように思っているわけでございます。その点に関して知事から意見を聞かれておるわけでございまして、慎重に検討している段階でございます。さようでございますから、知事のほうからそういったような発言があったということはただいま聞きましたけれども、林野庁としましては、また県のほうとよく話をすることにつとめてまいりたい、かように思っております。
  100. 諫山博

    諫山委員 芦屋射爆場の保安林をどうするかという問題について、林野庁としては、保安林として残したい、保安林としての維持管理を続けていきたいということを答弁されておりますが、この立場は現在も変わっていないと聞いていいでしょうか。
  101. 福田省一

    ○福田政府委員 その点に関しては、現在でも変わっておりません。
  102. 諫山博

    諫山委員 今度は防衛庁側にお聞きします。防衛庁側にも三月一日に答弁をいただいたわけですが、三月一日以後現在まで、防衛庁と福岡県知事との間で何らかの協議の進展があったのか、あるいは何らかの合意があったのか、お答え願いたいと思います。
  103. 佐藤次郎

    ○佐藤説明員 お答え申し上げます。  ただいまの先生の御質問の件につきまして、三月一日以降県知事と直接接触等はいたしておりません。
  104. 諫山博

    諫山委員 そうすると、防衛庁と県知事との関係というのは、三月一日現在と同じだというふうに確認していいですか。
  105. 佐藤次郎

    ○佐藤説明員 かねてから申請は出しておりますが、三月一日から以降そういったようなことにつきましては進展を見ておりません。   〔委員長退席山崎(平)委員長代理着席
  106. 諫山博

    諫山委員 そうすると、防衛庁としては、芦屋射爆場は五年間を限って使用したい、五年以上使うことは絶対にない、もし五年間だけ借り受けたとすれば、この五年の間に他の場所をさがす、五年を延ばすことは絶対ないというようなことを決定したことがありましょうか。
  107. 伊藤参午

    伊藤説明員 お答えします。  当射爆場の使用につきましては、さきに地元と覚え書きを取りかわしまして、その際に、使用を開始してから五年を経過した時点で再検討するというふうな覚え書きの内容になっておりますが、その後地元からの種々の御要望もありまして、現在、当庁としましては五年以内に他に移転するということで処置したいと考えております。
  108. 諫山博

    諫山委員 これは、将来どういう事情になろうとも、五年間を更新することは絶対にないというふうに聞いていいですか。そしてそれはあなた個人の見解ではなくて、防衛庁の正式な見解だというふうにお答え願えましょうか。
  109. 伊藤参午

    伊藤説明員 この件につきましては、ただいまも申し上げましたように、当該施設周辺の開発状況というものを考慮することとしておりますので、先ほど私申し上げましたように、防衛庁としまして、五年以内に他に移転するということは、そういった開発状況からもやむを得ないと判断しております。なお、このことにつきましては、さきに大臣からも地元のほうにそういうふうにお話し申し上げておりますので、そのように御承知いただければけっこうだと思います。
  110. 諫山博

    諫山委員 私は明確な答弁をいただきたいのです。防衛庁としては、五年の間に他に射爆場をさがすという立場のようです。もし五年の間に他のかわりの射爆場が発見されなかったというような場合でも、芦屋射爆場を継続して使用することは絶対にないと断言していただけますか。
  111. 伊藤参午

    伊藤説明員 先ほど申し上げましたように、大臣からも地元のほうにはっきりその旨申し上げておりますので、私どもとしましては、今後使用を開始してから五年間に極力他に適地を求めるということでまいりたいと思っております。
  112. 諫山博

    諫山委員 五年の間に極力他に代替地を求めて、かわりの射爆場が発見されなかったらどうしますか。
  113. 伊藤参午

    伊藤説明員 毎度申し上げるようでございますが、五年ということではっきりお約束しておりますので、われわれとしましても、地元へのお約束は果たすべく、また一方防衛上の機能というものに阻害を生じないように努力していきたいと考えております。
  114. 諫山博

    諫山委員 私は、もともとあまり防衛庁を信用しておりませんから、くどいくらい聞きますが、今度の質問に対してイエスかノーか答えてもらいたいと思います。  もし五年間に他に射爆場を見つけることができなかったとしても、どういう事情になろうとも、五年間の期間を延ばすことは絶対にしないということを、イエスかノーかで答えてもらいたいと思います。
  115. 伊藤参午

    伊藤説明員 ただいま申し上げましたように、全力をあげて地元との約束を果たすべく、また防衛上の機能を十分十全に維持していくべく努力をしていきたいと考えております。
  116. 諫山博

    諫山委員 私はそういう答弁を期待しておりません。イエスかノーかで答えられるはずです。イエスかノーで答えられないとすれば、私の疑惑はますます深まります。イエスかノーかで答えてください。それとも答えられないなら、なぜイエスかノーで答えられないかを御説明願いたい。
  117. 伊藤参午

    伊藤説明員 先ほど先生御指摘のように、参議院においても大臣がこの点について答弁しておりますから……。
  118. 諫山博

    諫山委員 そういうことはいいですから、どちらでしょうか。
  119. 伊藤参午

    伊藤説明員 いま毎度繰り返すようでございますが、地元との約束を果たすような努力、防衛上の機能を維持するような努力、これを続けていきたいと思っております。
  120. 諫山博

    諫山委員 もうそれは三回くらい聞きました。——委員のほうから政府側に入れ知恵をするのは不当じゃないですか。発言の内容について委員から助言を受けないと答弁できないのでしょうか。  さらに質問します。防衛庁としては、絶対に五年間の期間を更新するようなことはしないということをこの席で断言できませんか。
  121. 伊藤参午

    伊藤説明員 現在私の立場としまして、事務当局としましては、大臣からそのような御命令を受けて、今後の代替地あるいは防衛上の機能維持ということを考えていきたいと思っております。
  122. 諫山博

    諫山委員 そうすると、あなたは防衛庁の最高責任者ではないから、私の質問した問題に対しては責任のある答弁はできないという趣旨に聞いていいですか。そうであれば、私は次回に防衛庁の最高責任者に出ていただきますが、いかがでしょう。
  123. 伊藤参午

    伊藤説明員 お答えします。  先ほどから申し上げておりますのは、すでに大臣が私どもに示されたこと、あるいは地元にお話されたことということで、私どものこの問題に対する処理の方針というように考えてけっこうだと思います。
  124. 諫山博

    諫山委員 なぜ私の明快な質問に対してイエスかノーかという明快な答弁が出せないのですか。イエスかノーかで答えられない限り、私は防衛庁のそういう政治的な発言を信用することはできません。私は重ねて疑問の余地がないくらい問題を限定して聞いたのですが、やはり断言できませんか。
  125. 伊藤参午

    伊藤説明員 大臣が地元方々と五年以内に他に移転するというお約束をしておりますし……。
  126. 諫山博

    諫山委員 そういうわざと質問をはぐらかしたような答弁では私は満足できません。私はイエスかノーかで答えられるはずだと聞いているのです。イエスかノーかで答えられないということは、何らかの含みがあるからじゃないですか。なぜこの点を明確に答えませんか。
  127. 伊藤参午

    伊藤説明員 私の立場としまして、先ほどから大臣の現在の御決意、御方針ということを先生に御説明してまいったつもりでございます。
  128. 諫山博

    諫山委員 結局、防衛庁の責任者でないから、これ以上責任のある答弁はできないという趣旨のようですから、私は、きわめて重大な問題ですから、この問題は次回に防衛庁の責任者に答弁をいただきたいと思います。  私がこの問題で最後に強調したいのは、芦屋射爆場の保安林というのは、私たち調査によりますと、一七三八年、徳川吉宗将軍の時代からつくられたものです。そしてたくさんの農民が、いろいろな苦労をしながらこの保安林を守り育ててきました。たとえば、保安林をつくった当時の権藤伊右衛門という奉行は、次のような指示を藩内に下したそうです。常に絶えず見回り、根芝、松苗の鉢が吹き出しているのや、砂が吹いて埋もれているのがあった場合、受け持ちの村や隣村を呼び出して手入れせよ。こうして徳川時代から長い間の努力によって守られてきたのが芦屋射爆場の保安林です。ところが、いま全く不当なやり方で自衛隊に取り上げられようとしております。  しかも、私ががまんできないのは、権限を委任した林野庁と一言も相談なしに、亀井知事がいかにも町長選挙を有利に導くために、間違った発言している。根拠のない発言をしているということです。しかも、この点について防衛庁が一役買っていることは明らかです。しかも、正式にこの問題を追及すると、防衛庁としては絶対に五年以上使わないということをこの場で断言できない。きわめて重大です。これは、町長選挙を前にして、町民と県民を愚弄したというふうに言わなければなりません。  私は、この問題についてさらに防衛庁の最高責任者にもっと明確な答弁を求めるということを申し上げて、終わりたいと思います。
  129. 山崎平八郎

    山崎(平)委員長代理 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ————◇—————    午後三時五十七分開議
  130. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農業近代化資金助成法及び農業信用保証保険法の一部を改正する法律案農水産業協同組合貯金保険法案農林中央金庫法の一部を改正する法律案及び農業協同組合法の一部を改正する法律案の各案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。米内山義一郎君。
  131. 米内山義一郎

    ○米内山委員 きょうはこの法律案について関連して質問するつもりでありますが、その前に、四月五日の委員会に大臣がお見えにならなかったので、質問を残しておいた問題があります。それについてきょうはまず最初に大臣の御見解をお尋ねしておきたいと思います。  それは昭和四十六年の六月二十三日まで、農林省農地局長として在職しておった岩本という方が、四十六年七月二十日、つまり退職後一カ月たたないうちにむつ小川原開発株式会社の参与に就職しました。その後間もなく常務取締役になっているわけです。このことは国家公務員法の百三条並びに人事院規則一四−四に抵触するのではないかという疑いを実は私、持ったわけです。なぜ、これが私にとって関心があるかというと、その後むつ小川原開発株式会社の用地取得について、何としても農林省と会社とのなれ合いというよりも、ぐるになっている形跡が非常に強いのであります。いわゆる許可すべき立場にあった人が、許可を受ける会社の常務になっている。こういうことを押えるために国家公務員法の百三条並びに人事院規則があると思うのです。その委員会で人事院の職員局長の御答弁を得たのですが、規則による人事院の承認を取っていないという事実が明らかです。このことは私は非常に重大な問題だと思うのですが、農林大臣はこれに対してどういう御見解を持っているか。私らの考えではこれは違法だと思うが、何か適当な解釈があって、あるいはむつ小川原開発株式会社というものに法律上の特権があってこういうことが許されているのかどうかということについて、まず最初にお伺いしたいと思います。
  132. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 私は十分な専門的見解は申し上げられない、それだけの知識を持っておりませんけれども、私のもとへの報告によりますと、この御質問のむつ小川原開発株式会社は、その設立にあたって農林省の許認可等を要しない会社である。それから就職時までに農林省との間で取引関係監督関係等の具体的関係を持っておらない。また具体的見通しもさだかでなかったから、そこで国家公務員法にいう密接な関係にないので、同法百三条第二項に該当しない。したがって、同条第三項の規定による人事院の承認を要しないものとして処理したのだ、こういうことでございます。  前段のむつ小川原開発株式会社の営業問題については、ちょっと御質問の趣旨がわかりかねましたので、とりあえずいまの人事の関係についての私の報告を受けておる見解を申し述べさせていただきます。
  133. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そうすると、新しくできる会社というものは何をやる会社であってもいいということ、在職中関係がなかったということでそういうことが認められるとすれば何でもいいということになると思うのです。むつ小川原開発株式会社というのは、広大な土地を開発のために取得するということが会社設立の目的なんです。ですから、当然農地法と一番密接にからみ合う性格を持った会社であることはわかっております。それが農林省の許可が要らない会社だとかなんとかいうことですが、何か法律か規則の上に明確に定まった規定があるかどうかということを重ねてお伺いします。
  134. 小沼勇

    ○小沼政府委員 いま大臣が御答弁申し上げましたように、国家公務員法の百三条の就職制限を受ける規定につきましては、御説明申し上げましたように、密接な関係が存するかいなかという点が問題でございますが、この件につきましては、密接な関係がないというふうに判断をいたしたわけでございまして、先般の人事院のほうからの答弁と同様でございます。
  135. 米内山義一郎

    ○米内山委員 この問題はさらに私らのほうでも調査研究をすることにしまして、打い切ります。  そこで、きょうは大臣に法案にからんでお尋ねしたいのでありますが、たとえば農協法改正にしろあるいは開拓融資の法律の廃止法律案にしろ、日本の農業、特に開拓行政についての一つの転機がくるわけです。この際ひとつ開拓農業について、今後農林省として政府としてどういうお考えに立って行政を進められるのか、大臣の御所見を聞いておきたいと思います。  戦後の苦しい開拓時代というものは、いま思い出せば、全く血と汗の苦しい時代でありまして、いまどきは東京のこじきといえどもあんな苦しい生活には耐えていないと思います。そういう苦難の時代を経まして今日に至ったのですが、開拓農業の問題はまだ終わっていません。特に次に開拓農民、開拓地に迫ってきているのは開発の問題です。きょうも本会議に上程された国土総合開発法なんというものは、まず一番先に開拓地に迫ってくる可能性があるわけです。そういう条件が整っているわけです。なぜかというと、開拓地が苦しいのです。営農が安定していないのです。そこへ開発という怪物が来まして、銭で開拓者をまず倒す。貧しいから、農業が苦しいから、開発というもの、国土開発というもの、工業開発というものに対して一番弱い性質を持っておるのは開拓農民です。具体的に申しますならば、いま日本じゅうの話題にもなっており、新全総あるいは日本列島改造論のモデルだとも言われているむつ小川原開発でも、強固に反対しているのは既存農家です。一番先に土地を売り出したのは開拓農民なんです。しかもこれからの開発というのは規模が大きいから、まとまった広い土地を選ぶ。そうすると、また開拓地が対象になるというような関係を持ちます。  こういう点から考えて、特に今後国土総合開発、全国総合開発が進められる段階に入りまして、農林省として考えていただきたいのは、あくまでも農業の立場から、農民の立場に立ってこれに対応していただきたい。もっと具体的に言うならば、農林省がもっと主体性を持っていただきたいということです。米の問題にしろ自由化の問題にしろ、近ごろの農林省は大蔵省の農林部じゃないかとか言われているのは、これは政治家だけが言うのじゃない、野党だけが言うのじゃなくて、農民がそう言うし、そう思うようになっている。総合農政とかなんとかいうたびに農林省は主体性を失って別なほうの総合性に巻き込まれているような感じがしてならぬのです。私、そういうことで、今後の農政を進めるにあたってもらいたい。と申しますことは、農民と農業の立場行政を進めてもらいたいという強い念願があるのです。農民もそれを熱望していると思うのですが、大臣、農政の主体性というものについてお考えをお尋ねしたいと思います。
  136. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 全般的な考え方を申し上げるよりも、御質問の御趣旨が、むつ小川原の開発に伴って農林省の主体性ということを中心のお話でございますので、その点でお答え申し上げますと、このむつ小川原の開発につきましても、御承知の、昨年九月十四日の閣議了解事項にもはっきり書かれております。それはこの申し合わせによって、開発する場合におきましても、周辺地域における農林水産業振興を配慮しながら、適切な措置を講ずるものとするということで、この閣議了解以前に、当時の農林省の担当者あるいはそれを受けての農林大臣が各省との間で十分主体性を持っての話し合いをされたものと思うのであります。したがいまして、これからの開発に際しましても、お話の御趣旨には十分沿って留意しながらまいりたいと思います。
  137. 米内山義一郎

    ○米内山委員 それでは具体的にお尋ねしますが、その閣議了解という中で、どういうふうにして農業や漁業振興をはかるという、具体的な考え方はありますか。文章の上では書きやすいものです。しかし、実際現地の状態というものは、とてもじゃないが、ああいうふうな開発を進められて、開発地域の農民だけではなしに、周辺の農民まで立ち行くものじゃないというような大開発なんです。口では、周辺の農業や漁業影響を及ぼさないようなこととか何か言うけれども、実際には、実情から見ると、そういうことは単なることばにすぎないので私は聞くのです。具体的に何か閣議了解の中に、文章にはないのですが、具体的な問題が、話の内容に何かあったら一言でもいいからお答え願いたい。
  138. 小沼勇

    ○小沼政府委員 周辺の農業につきまして十分その振興について配慮をするという考え方でございまして、たとえば四十八年度におきましても、この残された地域につきましては、農業振興地域の指定並びに整備計画を策定するということを現在青森県がやりたいということでございまして、その線に沿って具体的な計画ができますれば、私どものほうでも助成並びに指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  139. 米内山義一郎

    ○米内山委員 いまそんな抽象的な話をしている段階じゃないわけです。現に、開発ということで用地の取得が始まっているわけです。用地を買う前に、売った人たちはどうなるか、周辺の農民はどうなるかというような明確な具体的な指針なしに、地域の同意を得られるはずはないじゃないですか。だから、反対が起きるのです。そういうことを何も示さないままに、農林省が土地の先買いだけをスタートさせる。これは実に今後の国土開発の上においても重大な問題だろうと思うのです。その点いかがです。
  140. 小沼勇

    ○小沼政府委員 約五千ヘクタールについての計画でその地域を工場地域にするような考え方でございますけれども、その周辺地域について、私が先ほど申し上げましたように、従来からも土地改良投資等もなされておりますけれども、農業の振興地域の指定をいたしまして振興をはかっていくということを申し上げたわけでございます。
  141. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そういうことはよほど画期的な対策があれば別ですが、たとえば鹿島開発は農工両全ということをまずうたい文句にしてやったのですが、工業だけは開発されたが、あの地域の農業は一体どうなっているか、これは世間周知の状態です。完全に農業は侵食され尽くしてしまった。息ついている農民は一人だっていやしないじゃないですか。前面の海の漁場は全部荒廃に帰している。あの反省に基づいて、むつ小川原には何か画期的な考え方なり何かがあるのですか。
  142. 小沼勇

    ○小沼政府委員 周辺地域の農業の開発につきましては、現に農林省におきまして農業開発調査をやり、水の需給の問題あるいは農用地の整備の問題等につきましても検討を進めるところでございます。また、いま申しましたように、農業振興地域に指定をいたしまして振興をはかっていくということでございます。  ただ、おそらく、御指摘の点は、その周辺ではなくて、五千ヘクタールの中ですでに買いが進んでいる、そこでその地域についてどうするのかというお話ではないかと思うのでございますが、現に営農をしているという者につきましては、それぞれ農業経営が安定的に進められるように配慮していかなければならないというふうに考えているわけでございます。
  143. 米内山義一郎

    ○米内山委員 あなた方はそう言うけれども、現地の状態は、あなた方のその程度のここでの答弁では全く説得力がないのです。いまあの現地はたいへんな状態なんですよ。開発を推進しようとする人たちは村長をリコールしている、開発に反対の人たちは、開発を進めようとする村会議員の一人をリコールして、賛否投票の何日か前の状態ですが、こういうことは村の人が求めてやったのじゃなくて、青森県や国が地元の合意も納得もないままに、既成事実をごり押しに進めてきたところからくる、生きる権利の主張なんですよ。ですから、せっかくここで開発についてものを言うのだから、農林省のサイドからももう少し具体的な発言があってもいいと思うのです。いわゆる閣議の了解に基づいて開発を進めるならば、政府の責任で、鹿島ではこう失敗したのだからここでは失敗させませんとか、その裏づけになるこういう政策をやるぐらいのところは、もうすでにいまの段階農林省あたりには十分用意されてしかるべきものだと思うのですが、それがないのは何としても不満足です。ないのですか。
  144. 小沼勇

    ○小沼政府委員 先ほど申し上げましたように、農林省におきましては、この地域の、いわゆる五千ヘクタールの工場予定地の周辺地域につきましては、今後の農業開発を進めるべく、水並びに土地についての調査を現にやっているわけでございます。また農業振興地域を指定いたしますれば、それに応じて従来の農業の上にさらに営農の改善をはかり、地域の農業の振興を進めるという考え方でいるわけでございまして、五千ヘクタールの地域自体は今後工場用地として開発されるということでございますが、その周辺については、やはり農業地域としてしっかりと営農をやっていただくようにしたいという考えでいるわけでございます。
  145. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そうすると、やはりこの九月十四日の閣議了解になったものがものをいうわけです。閣議了解をした根拠のものは、青森県の提出した開発計画の第一次基本計画というもの、つまり石油二百万バーレルというものを基軸にした世界に例のない大石油コンビナートなんです。それだけ大きいものを立地させるから五千ヘクタールが必要なんだというものが閣議の了解を得たということにわれわれは理解をするわけです。  ところが、この国会の審議の過程で、二百万バーレルなんという石油は問題にならないというようなことを通産大臣自身が言っております。あるいは企画庁の局長は、具体的な工場の内容は今後考えると言っておる。そうすると、まるで腰だめじゃないですか。開発の中身がきまらないうちに五千ヘクタールだけきまったということは、まるで農林省は、工業開発のための土地買いのための農林省じゃないですか。それ以外の何ものでもないと思うのだが、何かそれ以外に理由がありますか。
  146. 小沼勇

    ○小沼政府委員 約五千ヘクタールの土地につきましては、一応開発の予定地として、閣議了解の線に基づきまして、農地等を取得するということについて事前審査で認めたということでございまして、その全部が全部計画がなければこれは転用できませんので、具体的な計画が伴った際に、これは農地転用等について認めることになると思いますが、その具体的な計画の張りつけがない段階では認めるわけにはまいらぬというふうに思っております。で、現在一応予定地として五千ヘクタールを置いておいて、その中で具体的な計画をにらみながら転用するわけでございますから、それぞれの計画が伴わないといけないというふうに考えているわけでございます。  ただ、御承知のとおり、農業地域を開発していくという場合には、どうしても先行的に用地を取得することが必要でございますので、それについては事前話し合いに入ってよろしいということを言っておるわけでございます。
  147. 米内山義一郎

    ○米内山委員 この前も言ったことを私は繰り返しますが、五千ヘクタールというものは一応の根拠があったわけです。その内訳を申し上げるならば、原油処理二百万バーレルのために二千六百ヘクタール、石油化学エチレン・ベースで年四百万トンのために一千九百ヘクタール、電力一千万キロワットのために五百ヘクタール、合計五千ヘクタールという根拠に基づいて出ているわけです。ところが、この根底がなくなった。また、こんな非常識な石油化学、電力というものは常識上あり得ないわけです。こういう架空なものを前提にして閣議で了解され、それに基づいて農林省事前審査の内示をしたというところに重大な誤りがある、あなた方の暴走がある、私はこう主張するわけです。そうでないという理由があったら、言ってください。
  148. 小沼勇

    ○小沼政府委員 四十七年の六月にむつ小川原開発の第一次の基本計画の中には、御指摘のとおり、産業の業種、規模等が書かれておりますが、国といたしましては県から十分説明を聴取いたしまして、その結果、環境の保全なり公害防止、あるいは安全の確保、周辺におきます農林水産業振興なり、住民の対策を配慮いたしまして、さらに基礎調査を繰り返した上でないと結論が出ないということでございまして、その旨を閣議了解をしております。このことにつきましては四十七年九月十八日付で企画庁の事務次官から青森県知事に対して指示をしているところでございます。  用地の取得につきましては、閣議了解におきまして、工業開発の地区、新市街地等を合わせまして約五千五百ヘクタール程度が必要であろうとされておりますが、この用地につきましては、御承知のとおり、地域の住民の理解と協力を求めまして、特に住民の生活再建に配慮いたしながら、むつ小川原開発株式会社におきまして一元的に進めるということで、農地の転用等につきましても遺憾のないよう、青森県並びに関係のところを指導していくという考え方でございます。その点では、具体的に二百万バーレルとか一千万キロワットというような点についてはなお検討の余地があろうかと思いますけれども、転用に際しましては具体的な計画の張りつけがあって許可がなされるということでございます。
  149. 米内山義一郎

    ○米内山委員 石油化学とかそういう内容については検討の余地があろうというお話だが、五千ヘクタールにも検討の余地が大ありじゃなかろうかと思う。その点いかがです。  それからもう一つは、この開発というものは、単に土地を買えばいいというのじゃないのです。いろいろな諸関係と調整がなければ、開発が不能になっていく。工場の立場もできなくて、農民は札束をつかんでルンペンになるか、そうして土地も荒蕪地が残る以外ないわけです。  そこで、内部調整の問題ですが、政府内部の調整がついていますか。たとえばいろいろな軍事基地の問題もあるし、その他の問題が、この開発と不可分の関係にある。政府部内の調整というものがたくさんあるはずです。その重要な問題について調整があろうとは思われないような状態ですが、あるのですか。
  150. 小沼勇

    ○小沼政府委員 御承知のとおり、政府の関係十一省庁で構成しておりますむつ小川原総合開発会議というのがございまして、そこで推進してまいって、昨年に閣議口頭了解がなされたわけでございます。その要旨はすでに御承知のとおりと思いますが、その中で、一応五千ヘクタールとした場合にいろいろの調整すべき問題点、あるいは具体的な立地の場所等ございますけれども、それらについてさらに調査検討を加えて決定するということがうたわれております。全体として約五千ヘクタールというところを予定地としながら、その中で具体的な計画が出され、それについて各省での調整を経て、そこでその地点がはっきりきまるということになろうかと思いますが、何ぶん広い地域でございますから、その中での、どこにどういうふうに立地していくかということはこれからの計画の進行によってきまる問題でございまして、いま御指摘の点につきましては、今後調査の進行と相まって検討を進めていくということになろうと思います。
  151. 米内山義一郎

    ○米内山委員 ますます奇々怪々な話です。第一番に、この工業開発は、最初は陸奥湾を使ってここにタンカーとかそういう原料搬入港をつくる、太平洋岸に鹿島と同じような掘り込み港湾をつくって大きな工業をつくるというのが最初の出だしだが、陸奥湾を使わないということはこの間青森知事も言い出したし、企画庁もそう言いました。そうすると、太平洋岸の掘り込み港湾をつくる以外にないわけです。ところが、御承知のとおり、あの正面地区、開発地域内に二つの軍事基地がある。一つは三沢にある米軍に提供している対地射爆撃場、もう一つは自衛隊が使う対空高射砲の演習場がある。これは地上にありますけれども、海に向かって射撃するものですから、危険地域が海に向かって扇状に広がっている。この二つが接触しているから、この地域には現状のままでは港をつくることは不可能なんです。ところが、先般の予算委員会の分科会で、防衛庁はこの三つの軍事基地の撤去は考えられないということを言っている。どこかに移したいけれども、この関係というのはピッチャーがあってキャッチャーがないのだ、いまはこういう危険なものを受け取る地域がないんだから、防衛庁としてはこの二つの軍事施設の提供は考えられないということを言っている。この点でも政府部内の調整ができていないことは明白なんです。政府部内の基本的な問題の調整がつかない前に土地だけを買っておくということは一体何の理由です。だれの利益のためなんです。ほっておけばスプロール化するというけれども、なぜ早く買わなければならないか。ほっておけばこの土地が岩手県や東京へ移るものではない。所有権は日本中に散らばるかもしれないが、そのときはそのときの値で買えばいいでしょう。もうけるために買ったものには金を足して買えばいい。結局安く買おうというために土地の買収を急ぐだけじゃないですか。そうだとすると、買うほうが得で売るほうが損だという結果しか出てこない。これから見ても、農林省は開発を進めるサイドに立っているのか開発される農漁民の立場に立っているのかということは明白なんです。この点についての見解を承っておきたいと思います。
  152. 小沼勇

    ○小沼政府委員 先ほども申し上げましたのですが、閣議口頭了解に基づきまして、現に農地の買い入れについての交渉が進められております。こういう広域の地域を開発するということになりますと、やはりどういたしましても先行的に用地を確保することが大前提になるわけでございまして、その点では閣議口頭了解の線に沿いまして、用地の取得については農地の転用についての措置を講ずる考え方で進めているわけです。  しかし、先ほども申しましたように、周辺地域の農業等については今後とも振興をはかっていくという考え方でございまして、その点は私どもその地域の農業振興に十分意を用いながら、地域の開発には農地法の面で、農地の土地取得の面では転用について混乱が起こらないようにしていきたいという考え方で、一元的に取得させるような線でやっているわけでございまして、地域の個別具体的な計画ができてくる段階で転用の許可がなされるということで、現在はそれ以前の段階での折衝が進められているということでございます。  地元の住民の対策についても十分意を用いながら、農業についても私どもは決して無視しているわけではございませんで、農業者の立場考えていかなければならないことは申すまでもございません。
  153. 米内山義一郎

    ○米内山委員 何を答えているかわからないのです。答えなければならないからしかたなしにしゃっべっているようにしか聞こえないが、それはそのまま速記録に残してもらいます。  それでは重ねて伺いますが、農林省内部の調整がついているかということなんです。この地域には東北に一つしかない農林省のバレイショの原原種農場がある。これは非常に貴重な存在です。以前は原原種でなくてもジャガイモがとれたものですが、近ごろは無菌のイモでないと栽培ができないのです。これがなくなれば、東北一帯のバレイショの栽培というのは不可能に近くなる。これの問題について農林省内でどういう調整がついていますか、対策がありますか。たとえばこの土地というものは、あの貧困な六ケ所村が、ここに原種農場があれば、ジャガイモの適地ですから、自分の村のバレイショの品質がよくなるだろうということで、農林省に無償で寄付した土地なんです。無償で寄付しています。しかも、これは種イモをもらう以外にあまり利益のない施設です。これをどうします。しかも、二十年たってやっと目一ぱいとれるようになった。最初のころは十アールから十俵も種イモがとれないのが、おととしあたりは一ヘクタールから六十トンもとれるようになった。これは何だかというと、長年の間に地力を肥やしたからです。これをいま移そうといったって、適地があろうとは思われない。これは十ヘクタールや二十ヘクタールでおさまる性質のものじゃないのです。面積があっても、これだけの生産力のある農場というものは、いま見つけ出すことは不可能に近いのです。これを廃止するということは、原原種農場を廃止することではなくて、あの東北全体の地域でバレイショ栽培を廃止するということにつながるわけです。これについての農林省内の調整はついていますか。
  154. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 お答え申し上げます。  今回のむつ小川原開発第一次基本計画の区域内に農林省の上北馬鈴薯原原種農場が含まれておるわけでございます。今後開発計画が実施されまして、同地における農場の存続が困難となります場合には、同農場の重要性にかんがみまして、当然その移転が必要になるということになります。私どもといたしましては、地元の青森県と協議いたしまして、適当な移転候補地の選定を行なっていく考えでございます。
  155. 米内山義一郎

    ○米内山委員 バレイショの種イモをつくるということで町村から無償で寄付を受けた土地だから、使用目的を変更し、他の町村へ移るという場合は、道義上も当然この土地は村に返還されるべきものだと思うのだが、この点はどうです。これは大臣にお答え願えればいいと思うのです、考え方として。
  156. 伊藤俊三

    伊藤(俊)政府委員 地元とよく相談をいたしましてきめたいと思います。
  157. 米内山義一郎

    ○米内山委員 次に、農林省内の調整の問題でもう一つ伺いますが、十和田湖から流れてくる奥入瀬川ですが、この左岸について農林省は数年前からこの地域の国営調査をしている。一ころはこれは開田のための調査でしたが、近ごろは畑地かんがいその他の改善ということで調査を重ねていますが、この畑地開発のための水源と工業開発のための水源は同一なんです。小川原湖から取水しようという、この国営調査をしていますが、工業開発を進めようとすれば、どうしても農業の水は優先的に工業に取られる可能性が強い。こういう計画、調査、しかも、もうほぼ結論に近い時期になっていると思うが、農林省内でのこの二つの水を中心とした調整はどうなっていますか。
  158. 小沼勇

    ○小沼政府委員 お答え申し上げます。  小川原湖に依存する農業用水といたしましては、湖周辺の約二千ヘクタールの水田に毎秒約九立方メートルが取水されておりますが、新規に利水するものにつきましては、相坂川の左岸約八千五百ヘクタールの耕地に対しまして、水田の補水と畑地かんがいを行なうために四十七年度から国営の土地改良地区調査を現在実施しておりまして、受益地の確定所要水量の算定を待ちまして、全体の利用計画を調整して計画をとりまとめるということをいたすことにしております。
  159. 米内山義一郎

    ○米内山委員 そうすると、農林省としては農業開発と工業開発をその水の面で両立させようという考えで現在いるわけですか。その取水量は大体どの程度になるのです。
  160. 小沼勇

    ○小沼政府委員 数字でございますが、小川原湖に依存する農業用水の約二千ヘクタールの水田分については、毎秒最大八・七五トンということでございまして、年間八千三百万トンになるわけでございますが、先ほど新規のと申しましたのは畑の二千百七十八ヘクタールと水田の約六千ヘクタールでございますが、最大毎秒一〇・四二トンということで、年間六千万トンの供給をするということになるわけでございます。将来の畑地かんがいにつきまして、畑約一万一千ヘクタールにつきましても供給を考えておりますが、全体といたしまして年間一億七千万トンを新たに確保していくという考え方でございまして、これを先行的にやはり取得する必要があるであろうというふうに考えているわけでございます。
  161. 米内山義一郎

    ○米内山委員 この問題は、農林省の内部だけ見てもこういうからみ合う問題があるのです。ましてや地元ではもっと複雑にからみ合う問題がある。この開発正面の海は日本でも魚の大量にとれる有数の漁場なんですよ。これは局長も十分知っておられるとおりです。イカとサバのもう日本最大の漁場なんですよ。これとどうからみ合うかということは、農林省立場水産庁立場から重要に考えなければならない問題です。さらに、ここには内水面の漁業権もある。特に小川原湖というのはもう日本では残されたワカサギや白魚の産地です。八郎潟はだめになる、霞ケ浦はだめになる、諏訪湖はだめになる、まるで貴重な存在になっています。こういうものも、工業開発によって水質が当然変わるし、魚族が絶滅するわけですよ。こういう漁業との調整はまことに複雑で、重大な問題がたくさんあるにかかわらず、どう調整するかということについては、ただ進行するとかなんとかということではなくして、もっと具体的に示されなければならない段階だということです。それがなければ農林行政とは言えないのです。どうです。
  162. 小沼勇

    ○小沼政府委員 御指摘のような問題につきまして、御承知のとおり、太平洋側とそれから陸奥湾と内水面と三とおりあるわけでございますが、陸奥湾は別といたしまして、太平洋岸、内水面等につきましても、今後の計画の進展にあわせましてその具体的な対策を立てていく必要があると思います。住民対策あるいは生産対策として考える必要があると思います。内水面につきましても、小川原湖につきましては、あの地域についての漁業振興の面があると思いますし、また太平洋側につきましては、イカあるいはサバとかいろいろ漁業がございますが、そういうものとの調整を十分はからなければならないし、所要の措置が必要であるというふうに考えております。県とも協議をして進めることになろうと思いますが、私どものほうといたしましても、この計画の具体化に伴いましてその対策を立てる考えでございます。
  163. 米内山義一郎

    ○米内山委員 もう一つあるのです。この小川原湖からこれだけの工業開発をやるために取水する。かりにそれは一日八十万トンでもいい。必ずこの湖をダムアップしなければならない。水位を上昇させる以外にないわけです。湖の面積は、全国十一位ですが、湖の面積に対して流域のきわめて小さい湖なんです。ですから、これから工業用水をとろうとすれば、渇水期を標準にして計画を立てる以外にしょうがない。ですから、水の豊富なときの量をためる以外にない。そうすると、ここの周辺の開けているたんぼというのは大体勾配は千分の一ですから、一メートル水位が上がると、それは五百ヘクタールぐらいのたんぼが水没するのです。これを防水堤で防ごうとすれば、いままで自然に排水されておったものが、干拓地のように全部機械でなければ排水できなくなる。農業環境も生活環境も破壊される。これは必至です。さらに、あるときには水位が平水よりも低下すると干がたができます。こういうふうなことから、漁業に使えないだけでなく、生活環境も破壊される。こういうことの調整といいますか、同意というものがない限りこの開発は不可能なんです。  ところが、同意を得ようとしても、こうやるんだという明確な指針がない。こうやりたいと思いますということはあっても、こうやりますということはないのです。しかも、中身は根底が架空でしょう。こんなものを前提にしては説明ができないです。対話ができないです。対話ができないで、同意ができないです。それでもなおかつ総理の指示によってやるなんというのは、これはファッショだよ。眠っている鳥でも目ざめるだけじゃない。六カ所の役場へ行ってごらんなさい。何と書いてある。ごく小さな虫けらでも踏まれれば刃向かう、一寸の虫にも五分の魂、まして人間においておや、こう書いてあるんだ。結局問題は、いまあなた方がやっているとおりにいくならば、最終的には人権問題になるのですよ。単にいま内示して土地を買う準備だなんという筋合いのものじゃないですよ。  だから、あなた方に私は言いたいことは、大臣にこれは特に申し上げたいが、見ざることは言うべからずということばがある。これは日本人は昔から使っていることばです。見ないことは言っちゃいかぬということです。中国では調査なしに発言なしという同じことをいっていますが、あなた方は現場を見ていないでしょう。見ないことは知るわけはない。青森県知事がうそをつけば、あなた方はそのうそを信用しているにすぎない。県庁のための政治なのか、住民、農民、漁民のための政治なのかといったら、もっと現地の事情というものを詳しく調査する必要がある。書いたものは無数にありますよ。読むことも必要だが、農林行政立場から現地を調査して、どこに問題があるかということをすみやかに農林省農林省立場調査してもらいたいと思うのですが、大臣、御所見はいかがですか。
  164. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 先ほどから御所見を詳細に承りまして、いろいろと教えられた点のあることは率直に申し上げます。私はお説のように、現地を最近には見たことはございません。かって一回参ったことはございますが、もちろんそれは全然参考になるものでないということは自覚をいたしております。  ただ、私はいろいろお話を聞いておって感じますることは、私どもの手元にありますこのむつ小川原の開発についてのいろいろな書面から見ますと、御心配になる点については大づかみにはほぼ指摘をされておると思うのですね。たとえば先ほどから小川原湖の水の問題について御所見がございましたが、「その開発にあたっては、自然環境、動植物の生育環境等の保全、水質の保全ならびに治水対策の推進を図るとともに、上水、農業用水などの需給、既存農業水利および内水面漁業等について総合調整を行なうものとする。」そしてまた、一メートルのかさ上げが必要だという御所見でありますが、この文章によると、「一方、工業用水の回収利用率の向上等によってできる限り水使用の合理化につとめるものとする。」というように指摘をしておるわけでございます。また、基本的な小川原の開発について必要な用地の買収等について、地域住民の理解と協力を前提に、特に地域住民の生活再建に配意しつつやれというようなふうに、まあ、私どもがこういうことを非常に推進しようとする立場でここに書かれておることもでき得る限り前向きに取り上げていく、そういう見方でこれを読んでおります。  しかし、きょう先生が詳しく御指摘になった点は、私は全然それを無理解にお聞きしておるものではございません。たいへん貴重な御意見を承った次第でございまして、これからの関係各省の間の調整を進める上におきましては御意見を尊重し、また最も必要なことは、地域住民の理解が得られるような計画がちゃんと示される必要があるということは、これは言うまでもないと思うのであります。ただ、いま一番問題になりますのは、土地を取得する、そういうことは計画もはっきりしておらないでけしからぬじゃないかという点については、局長のほうから、こういうような問題についてはまず用地の確保が必要である。よく公共用地の先行投資というようなことばをいわれる時代でございますから、それはそれとしてのまた御理解もいただかなければならないと思うのであります。
  165. 米内山義一郎

    ○米内山委員 間もなく大臣御退席の時間ですが、まあけっこうです。ただ、最後に申し上げておきたいが、私は実はこの問題について重大な怒りを持っている。というのは、あの小川原湖の漁業組合長を私は二十数年やっておりまして、いまは理事です。それから同時に、この湖辺の、周辺の土地改良区の理事長も十数年やっておりますので、こんな開発の進め方ではわれわれの二十年苦心惨たんしたものがゼロになるという感じもあるので、重大な問題ですから、その点を慎重に御調査を願いたいと思います。  それじゃ、農地法上の問題について構造改善局を中心に伺いますが、先回の四月五日の委員会で、土地を買収しているわけです。契約をしているわけです。それが証書の書き方がじょうずにいっているという意味でしょう。許可を停止条件とした契約をしておれば違法ではない、だから、やっていることは合法だという御答弁だと思いますが、それは、買収というものは、単なる形式上の問題ですか。
  166. 小沼勇

    ○小沼政府委員 先般もお答え申し上げましたように、農地法上は、その形式、内容がどういうふうな売買の段階に至っているかということで判断をするわけでございます。
  167. 米内山義一郎

    ○米内山委員 法律の解釈権というものは最終的にはあなた方にもないのですが、私は実質上の問題としてこの際明らかにしておきたいのは、内示というものを受けた開発側、つまり第三セクター、前農地局長が就職しているむつ小川原開発株式会社が実質的な買収行動に移ったわけです。なぜ実質的かというと、実際なんだ。売ると言えば三〇%払う、仮登記すると五〇%払う。ですから、もう何千万も受け取った人がいますよ。残りの二〇%は税金分なんだよ。だから、開拓者の場合は、もう土地を売ったという腹があるから、立ちのきをしているんです。だから、許可を得る前に土地がもう引き渡されるかっこうになる。農地法の趣旨というものは、優良農地を遊休化させないということなんです。そういうことについて、あなた方はオーケーを出したんです。これは必ず責任問題になりますよ。実質的な買収だ。特に農林省の規則を見ると、事前審査を申し出る場合には、買収交渉をする前に申し出をして内示を受けろとあるんです。内示を受けるということは、交渉を始めるということで、買収していいという解釈には絶対ならぬ。一歩譲っても、口約束じゃだめだから、手付金として五%か多くても一〇%払うことが、これは普通の常識なんだよ。八〇%というのはもう内金じゃないんです。こういう事実は、一体、農地法の解釈が、第一条を考えた場合に適当であるかということなんです。どうです、適当ですか。
  168. 小沼勇

    ○小沼政府委員 農地の転用の許可を停止の条件といたしまして売買の契約をするということ、これは、その契約を締結いたしまして、転用許可の申請手続を行なうというのが一般でございまして、このことは、農地法上、適法な行為であるというふうに考えております。
  169. 米内山義一郎

    ○米内山委員 それは別な場所で議論しようと思います。  そこで、農林省責任として、一体、この開発は、いつごろ具体的に土地の利用が始まって、いつごろまでに終わるかということがわかりますか。結局ここで明らかにしてもらいたいことは、申し出側、むつ小川原開発は、手続による第六号の書式というものはあるわけですが、どういう設備のものを、何年に着手していつ終わるか、二期目は何年に始まっていつ終わるか、着手の時期はいつなのか、終わる時期はいつなのか、書けるはずがない。書いておるとすれば、これはもう子供をだますこともできないうそのはずだ。こういうことをあなた方はどの程度に調べたのですか。
  170. 小沼勇

    ○小沼政府委員 事前審査を申し出ておりますが、そこで、工場用地を取得したいということでの事前審査の申し出があって、それを認めたわけでございますが、大体事業の全体といたしましては、五十年から造成をしていきたいという考え方のようでございます。
  171. 米内山義一郎

    ○米内山委員 五十年に始まるわけないですよ。一番早い調査でも、終わるのが五十一年ごろですよ。調査の済まないうちに計画が立つわけはない。だから、これはあなた方はただ書類の上だけで、開発する側の立場に立って、向こう有利にだけものを考えるからそういうことになるのです。これは決して水かけ論ではないのです。実質的に農地法に違反している。五条とか手続の問題ではなくて、次はどういうことになるか。こういう農地は必要の最小限度という一つの原則があるのだ。どれだけ必要だか、その絶対必要なもの、その最小限度をきめる根拠がありますか。
  172. 小沼勇

    ○小沼政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、全体で約五千ヘクタールほどの工場用地の予定地域ということで見ております。その中で具体的に計画をつけて転用の許可の申請が出てくるわけでございます。その際に、具体的な計画については各省とも審査をしていただきまして、それでこの転用許可が正当であるかどうか、妥当であるかどうかということを判断しなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  173. 米内山義一郎

    ○米内山委員 この農地転用というのは非常にきびしい規制を受けているわけです。ですから、きのうの新聞を見ても、どこかの町で四ヘクタールか何ぼの転用を認めてほしいために、農地委員長にわいろを出して検挙された事件も出ている。小さいものにはこれほどきびしいのです。大きいものにはまるきり寛大じゃないですか。小さいものには農地転用の場合には非常にきびしい書類の提出を要求して、これがないと許可にならない。事前審査だってそのとおりです。ところが、重要なそういう必要の最小限度を判断すべき資料もない。ただ五千町歩が適当だから五千町歩を内示したということだけでは問題だ。本申請の段階で審議するというけれども、問題なのは、すでに実質的にもとへ戻ることが不可能な実態がつくられているということ、一番問題なのはそれなんですよ。不許可になってみたところで、もとへ戻らないんですよ。絶対不可能だ。こういうふうなことが全然無視されている。あなた方はそれをもって合法だというかもしれないが、これは明らかに法律の精神に違反している行為ですよ。  その次に問題なのは何だ。農地法というものは耕作者の地位を第一に考えなければならぬ。土地をまるきり売ってしまった人の生活再建対策も昭和五十一年ごろ考えるのですか。本申請のときに生活再建対策を考えるのですか。いますでに八割金を受け取って、もう村から立ちのいている人が続々と出ているのですよ。そういう場合に、転用の一番重要な条件である生活の再建対策、それから考えるというのですか。それじゃ、やはり農地法の精神はもう失われているのです、どうですか。
  174. 小沼勇

    ○小沼政府委員 生活の再建措置はたいへん重要な問題でございまして、当然閣議の口頭了解でもその点はうたわれておりますが、青森県並びにむつ小川原株式会社が現に具体的な措置を講ずるよういろいろの項目を立てましてきめこまかく進めております。青森県でも四十八年度に予算を住民対策の特別会計に計上いたしておるというふうな状況でございまして、全体として地域の問題でございますので、個別の転用の許可が実際に申請がなされるかどうかということではなしに、地域対策として進めていくという考え方に立っております。そういう考え方で住民対策が進められますので、御指摘の点については、大事な問題でございますが、十分考えて対策を立てていくということに私どもも協力をしていきたいと思っております。
  175. 米内山義一郎

    ○米内山委員 青森県が住民対策を立てたというが、あれは住民対策なんです。生活再建対策じゃないのです。しかも住民対策というべき筋のものじゃないのです。貧民対策というものですよ。金を持たない人には、就学金ですね、学校へ入る学資金を貸すとか、身体障害者には手当をくれるとか、これは生活再建対策じゃなくて貧民対策なんですよ。生活再建対策というものは、農民の立場からいうならば、確実に農業によって生計が立つか、あるいは水産業によって立つか——土地を売った金で別な商売をする人は、それはそれでいいでしょう。ただ、そこから移転したり村から立ち去りかねる人の生活再建というものを保障することこそ、国土開発というものが福祉を優先するとするならば、何ものにも優先して明確でなければならぬはずなんです。それを許可権を持つ農林省が、青森県にげたをはかせて、自分はしゃあしゃあしているということはおかしいんじゃないか。これも農地法違反の考え方です。法律違反の考え方なんです。
  176. 小沼勇

    ○小沼政府委員 事前審査の場合に、内示の条件をつけて、その中で留意事項をつけております。その一つは、具体的に詳細な計画を図面をつけて出すように指示をしております。その二点目は、土地等を提供することによる農民の生活再建措置を明らかにすることということをつけております。なおそのほかに、用地の取得、造成についての資金計画等がございますが、いま御指摘のその生活再建措置をどういうふうにするかということをこの審査の場合に当然留意をして行なうということになるわけでございます。
  177. 米内山義一郎

    ○米内山委員 農林省のこの許可基準あるいは第二節の一般的基準というものの中に、離農措置ということについて非常に具体的に明確にされておる点がある。「転用により経営の縮小、離農を余儀なくされる耕作者に対して「駐留軍の用に供する土地等の損失補償等要綱」又は「電源開発に伴う水没その他による損失補償要綱」等の基準をしんしゃくし妥当な措置がとられるとともに、できるだけ関係者において就労の機会を与えるよう措置するものである」、書いたものはきわめて具体的で親切です。少なくともこの程度のことはなければならぬ。しかも、こういうことは事前に示されないことには意味がないのです。何年先になるか、計画ができて本申請のときこれを要求するなんということは、これはおかしいのです。あなた方、無責任なんです。全く農民、現場と遊離した行政なんです。  近ごろのお役人が官僚化したとよくこういわれるが、官僚じゃない。何かの言いなりになっておる道具なんです。昔あった宦官というのはこんな性格だろうと思う。人間のために公務員としてやるから、生きがいもあるし働きがいもあると思うのです。無難に事を過ごそうというのでは、これは死んだお役人なんです。こういう具体的な問題を中心にして、ぼくはあなた方の猛反省を促したいのです。そうしないと、あなた方は栄えるかもしれないが、日本の農業は滅びるのですよ。農業が滅びて次に国が滅びるのだよ。ここで農林省に主体制を要求したいのはこれなんだ。  戦後食糧不足のときは農林省は花形だった。これは国民の期待に沿うておったからです。金も少ない、物が不足なときでも、農林省というのは、われわれ村に住んでおるのから見れば、一番ありがたい役所だったよ。ところが、このごろ最も軽べつされる役所になったのは、住民、国民が悪いのではなくて、あなた方の責任なんです。特に基本法農政とか総合農政とか言うたびに、農林行政というものは主体性を失ってきて、何かに巻き込まれておる。要すれば、いま日本を占領しようとしておる怪獣、開発アニマル、エコノミックアニマルに日本の農林行政がのみ込まれておるというのが、いまこのむつ小川原にあらわれた諸君の姿勢なんです。私は怒りを持っておるから、少し荒い口調を使うけれども、実際、私は、人生をかけて建設をしてきたこの地域に、諸君のお粗末な行政でわれわれの血と汗で守ってきた土地を渡すわけにいかないから言うので、政治的立場の問題じゃない。こういうことを改めない限り、土地は買われても開発は絶対できない。  なぜというと、われわれに対して保障があるのです。憲法です。開発というものはまずまっ先に農民から土地を取る、漁民から土地を取ることから始まるのです。ところが、われわれはなぜあの村に住んでおるかというと、そこに土地があって農業をやっているから、そこにいる。漁業権があって漁師をやっているから、そこにいる。これを奪うということは職業を奪うことになる、居住を変えるということにもなるのです。憲法で保障した権利を侵害することにもなるし、さらに規模が大きいと自治権の侵害にもなるのですよ。六ケ所の村から五千ヘクタール——六ケ所という村は確かに三十二キロもある長い大きい村だが、五千ヘクタールも村の中心部に穴をあけられて、そこにいる原住民は退いてそこへ白人みたいなのが来る。これでどうしていままでのような自治というものが存続できるかどうかという問題もある。しかも、こういうことは住民に相談なしに、同意なしに上からかぶされてくるということは、自治権の侵害でもある。そういうことを農林省、自治省、いろいろなものが十一省庁もかかって手分けして、それぞれ責任を持たないかっこうで、国に言えば県知事だと言う、県知事に言えば開発会社、開発会社に行けば国、こういうのをナショナルプロジェクトというのかね。責任を一本にしてやればこそ納得もいくものです。無責任状態です。  そうしておまけに、正体不明の第三セクターとか称するものがやっているのでしょう。第三セクターというものはどういうものだか私もいま研究中だが、いろいろな資料が出てきた。むつ小川原で特に言いたいのは何かというと、一番先にこの地域に目をつけて土地を買いに来たのは三井不動産ですよ。一〇〇%三井不動産出資の内外不動産というのは、いまから約五年前に、新全総が閣議決定になるもっと前に来て、千ヘクタール以上の土地を買い占めしておるのだ。その中では開拓住民が十アールを四万三千円で売ってしまったのもある。なぜ売ったか、借金で苦しいからですよ。その土地がいま開発公社によれば六十万なんです。だから、この地域だけで三井不動産の取る純益というものは少なくとも五十億は下らない。明白なんです。これを住民がみんな知っているのです。しかも、これがこのむつ小川原開発というのに社長みずからか取締役——ついこの間までは何とかという人間を常務に入れて、これがいわゆる偽装した、国の金も地方の金も出ているから公益的な企業だとかなんとかという第三セクターのむつ小川原における実態なんです。あなた方はそれを支援して、それのつごうをはかって住民に犠牲をしいるような農林省じゃ、もう問題にならぬと私は思うのだ。  きょうはこの程度にして、きょうの答弁の速記録を見てからまたいろいろお伺いする時期もあると思いますから、きょうはこれで終わります。      ————◇—————
  178. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 この際、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、ただい審査中の四法案について、参考人の出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  179. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、参考人の人選、出席日時及びその手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  180. 佐々木義武

    ○佐々木委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十四分散会