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湊委員 農業金融の問題に関しまして、こまかい質問に入ります前に、基本的な考え方について
大臣からお伺いをしたいと思います。
大臣、所用がおありのようでありますから、濃縮をしてポイントをお聞きしたいと思いますので、的確な御答弁をお願いいたします。
第一番目には、
農業金融全体について、私は実際の
農業金融を進める上で五つの
原則があると心得ております。ただいまからそれを申し上げますので、それに対する
大臣の所見をお尋ねしたいのであります。
第一番目には、
農民の金は
農民に還元する、あるいは
農業の金は
農業へ、
農村の金は
農村へと言いかえてもけっこうなんでありますが、そういう流れを確実にしていくことが
農業金融政策上最大の課題であろうと思います。と申しますのは、実際問題として流れ、いわゆる
農業金融の還流が今日完全に行なわれていないからであります。たとえて申しますならば、
農協預金はまさに
郵便貯金に匹敵する約十兆円という巨額の
貯金を預かりながら、約四割が
余裕金というふうな形で
所属団体ないし
系統外に
運用されておるという
現実があります。また、
一般的な
金融緩和の傾向を反映して、
一般金融機関においてはかなり
合理化、
効率化が進んでおるわけでありますが、最近
農協の
金利体系、これがまさに
市中金融機関と逆転をしておるという現象が著しい。簡単に言えば
コスト高になっておる。したがって、
基準金利も上がらざるを得ない、したがって、それがなかなか農家にうまく還元されていかない、こういう事情があるからであります。ただいま申し上げたのが第一番目の点であります。
第二番目に申し上げたいのは、最近の諸
情勢を踏まえて、
農政全体の大きな
方向が変わっております。当然
金融も、
政策手段の一つといたしまして、財政とともに
農業政策遂行の
目的を果たさなくてはなりません。その場合に、はたして今日の
農政そのものの
目的に沿うような
金融が行なわれておるか、こういうことを考えてみますと、必ずしもそういっていない面がたくさんあるように思います。一例を
近代化資金にとりますならば、ほとんど
単協の窓口にまかせてという形になっております結果、
現実には現在でも二百万円が
貸し付け限度になっておるわけでありますが、実際は、たとえば
バインダーが流行すれば
バインダーに、あるいは
田植え機が流行すれば
田植え機にという、かなり少額の、しかも右へならえ式の融資がほとんどでございまして、そこに
政策性といいますか、今日のたとえば大
規模経営を育成するという大きな眼目に照らして、実際の
近代化資金がそういう
政策目的にはたしてかなっているかどうか、非常に疑問なきを得ないわけであります。また、
農業とは直接
関係ありませんが、
林地取得資金なんというのも、
取得後三ヘクタールに至るまでは三分五厘の低利の金を貸すということに、これは
公庫資金でありますが、なっております、
取得後三ヘクタールというのは、
農業でさえも、普通もし
稲作専業でやらんとするならば、他
産業に匹敵するような所得をあげるためには四ないし五ヘクタール程度が必要であるといわれておる昨今、
林地において三ヘクタールなんということではたして林政の
目的にかなうような
金融と言えるかどうか、はなはだ疑問なきを得ない。したがって、
農政の大きな
方向に沿うた
金融に
改善をしていく、そういう必要があるわけであります。
三番目には、いま
農業金融と一口に申します中にもいろいろなものがあります。大きく申しますと三つでございましょう。一つは
政府財投を背景にいたしますところの
農林漁業金融公庫資金、もう一つは
系統資金を原資にして利子補給によって
運用いたしております
近代化資金、もう一つはプロパーの
系統資金、そのほかに最近府県において約二百種類にのぼる県単
近代化資金的な
制度金融が実は行なわれております。また共済積み立て金を原資にし、あるいは
農業者年金を原資にする融資もだんだんとその量を増してまいっております。そのほか系統内部で一種の
制度金融的なものを設けておる例もたくさんございます。これはいずれも最近の
農業情勢の
変化に対応するわけでございますが、それらの諸
金融ないしは一種の広い意味の
制度金融の中で、はたして完全な分野調整が行なわれておるかどうかということになると、かなり競合している面や何かもたくさんあるわけであります。そこら辺の
農業金融内部における分野調整、これをどう考えるかということが大きな
金融の課題であると考えております。
それから四番目には、昨今の内外の
情勢は急激な
変化をいたしております。先ほど
農林中央金庫法の
提案理由の中でもお話がございましたように、いまや国際的な
農業の観点から、ないし国際
農業とのかね合いから、かなり横の広がりを増していかなければならない面もあります。また、従来流通、加工、消費の段階については、どちらかというと消極的でございました。これなんかも実際に農家の所得を確保するという
見地からするならば、相当ウエートを置いてしかるべき分野であり、特に流通、消費段階の立ちおくれが農家所得の減少につながっておるということは、これは
現実の姿であります。また、ひとり
農業の生産の面のみならず、
農村におけ、る
生活環境全分野にわたって、まさに
農業金融というよりは
農村金融といっていいような分野にこれから大いに系統も努力を願わなければならない時点であると考えております。そういう新しい
情勢変化にどう対応していくかということが、第四番目に
金融にとって大事な問題であろうと思っております。
五番目には、そういう
金融が円滑に行なわれ、そしてまた合理的に効率的に行なわれるために、現在の
組織の問題に関連をしたり、
農協の行なっているほかの
事業分野との
関係も出てまいりますけれども、そういう円滑な、そして効率的な
金融にしていくために幾多の問題があります。たとえば
預金の一厘高の問題もございましょう。それから直接経費が
一般金融機関よりも高くついておるという
現実もございます。その結果として、先ほど申し上げたように、コスト全体が高くなる。それに三段階制という
農協組織の流れを通じて中金段階まで来ると、もう
資金コストが七分を上回る。そこへいって、
銀行や何かが七分を割るような金利で貸すような現象が出てくると、自然
資金は農林中金に滞留してそれが有効に生きていかない、こういうような点もございます。以上のことが第五番目。
以上五つの
原則が今回の
改正を貫く基本的な考え方でなければならないと私は思いますし、農林当局もそういうお考えのもとに各種の
金融に関連する諸
法案の
改正に踏み切ったものと理解をいたしておりますが、それに対する農林
大臣の率直な所見をお伺いしたいと思います。