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1973-08-31 第71回国会 衆議院 内閣委員会 第49号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年八月三十一日(金曜日)    午前十時六分開議  出席委員    委員長 三原 朝雄君    理事 奥田 敬和君 理事 加藤 陽三君    理事 笠岡  喬君 理事 中山 正暉君    理事 藤尾 正行君 理事 大出  俊君    理事 木原  実君 理事 中路 雅弘君       赤城 宗徳君    伊能繁次郎君       江藤 隆美君    大石 千八君       近藤 鉄雄君    竹中 修一君       三塚  博君    吉永 治市君       上原 康助君    山崎 始男君       横路 孝弘君    東中 光雄君       鈴切 康雄君    受田 新吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 田中伊三次君         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省入国管理         局長      吉岡  章君         外務大臣官房長 鹿取 泰衛君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         警察庁警備局参         事官      中島 二郎君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 本日の会議に付した案件  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一四号)      ————◇—————
  2. 三原朝雄

    三原委員長 これより会議を開きます。  外務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 きょうは法務大臣にはまたお忙しいところを御出席いただきまして、たいへん恐縮でございます。  大平外務大臣並びに田中法務大臣お二人は、連日、金大中事件につきましてはお答えになっておられるわけでございまして、外務省立場法務省立場、おのおのそれなりにわかるわけでありますけれども、実は私は、この件について少し各方面の方々お話を聞き過ぎまして、まあ属人的に仲のよさでいろいろ聞いて歩きましたら、どうも事は事実問題としては結着がついている感じがする。そこで、そうだとすれば、一体これは大きな政治問題でもございますから、一つの大きな収拾段階にある感じがするわけであります。  そこで、いつまでも外務省の言っておられることと法務省の言っておられることの間に、国民の側から見ると何となくすっきり一致しない見方に立たざるを得ない点がありますから、そこらをひとつきょうは短時間の間にはっきりさせていただきたいという気がいたします。  そこで、大平外務大臣一つ承っておきたいのでありますが、旧来から一貫してまいりました外務省姿勢。まあ犯人の引き渡し条約その他もないのだから、その意味では、法的には日本主権侵害、もしそれが相手国政府機関であればという問題が片方ある。だが相手国にも、もちろん韓国の人でありますから裁判権がある。裁判権問題等を表に出しまして、法的には金大中氏をどうしても日本に引き渡せということをどうも言いにくい、こういう態度旧来からございます。そして二十四日、二十五日ごろの大平外務大臣答弁によれば、あるいはまた新聞等によりますと、韓国側がわがほうが納得し得るに足る事件解明を行なうということになった場合には、必ずしも金氏の来日主張し続けるものでないという、われわれからするとたいへんどうも心外な言い方ども出てきておりました。  片や、田中法務大臣主張しておりますこの点に関する一貫した御答弁は、法的な問題はいずれといたしましても、被害者がいないんだから、被害者がいないところでこれは捜査をするということは本来できない。また、第六感ということばを使われましたが、ある国の、あるいは某国政府機関の、KCIAということになると思うのでありますが、しわざだというふうに考えるという話まで出まして、したがって、金大中氏がいなくなる前の状態に戻せ、これが法律問題を云々する前に国民感情であろう、その意味道義的責任相手国にあるだろう、こういう主張答弁の中に出てきておるわけであります。  そこでまず大平外務大臣に、外務省が一貫してまいりました、事件解明を待つのだ、待つのだ。納得する韓国側捜査内容等解明をされれば、金大中氏にどうしてもこの日本に来てもらいたいということを必ずしも主張し続けなくてもいいという意味言い方ども中にありましたが、ここまで参りましたこの時点で、収拾段階ということをひとつ考えながら、いままでの主張がお変わりになっていないのか。それとも、ここまで来たんだからこの時点でどう一体外務省は考えておられるのか、はっきりさせていただきたいのであります。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 問題の拉致事件は、日本の法域で起こった事件でございます。したがって日本政府といたしましては、この捜査を通じて真相を究明することが第一の任務であろうと思います。それが解明されないとこの事態をどう収拾するかの方針が立たないわけでございます。わが国捜査当局といたしましては、解明にあたりまして、重要な参考人である金大中氏等の再来日を強く求められておるわけでございます。外務省といたしましては、そのまま韓国政府にその意向を伝えまして、協力方要請し続けておるわけでございます。  申すまでもなく、本件わが国の公安上の大きな問題であるばかりでなく、日韓関係にとりましてもゆゆしい問題であると心得ておるわけでございます。したがって私は、韓国政府におかれまして、そういう観点に立ってわがほうの再三の要請に対しまして協力の意図が表明されることを期待をいたしておるわけです。
  5. 大出俊

    大出委員 いまの答弁旧来答弁と全く変わらないわけでありますが、私はどうも、外務省弱腰といいますか、腰がないんじゃないかと思うくらいの——弱腰というのは、これは腰がまだあるんだけれども、腰がない、そう言わなければならぬほどに日本政府韓国の間というのは深入りし過ぎている。そこまでのたいへんな、これはいわば私に言わせればくされ縁的になってしまっている。今日の韓国日本資本導入状況等をながめてみて、抜きさしならぬ、朴政権でなければどうにもならぬ。財界の意向もそういうことになる。これが韓国内政面で大ゆれにゆれて、ひとつ変わった事態に発展をするというようなことがあってはならぬ、これが一番大きな外務省等が考えておられる中心ではないのかという気が私はするのでありまして、韓国態度についても私は憤激いたしておりますが、やり方についても、何としてもこれはただでは置けぬという気がするわけでありますが、それ以上にどうも日本政府の、特に外務省がやっておられる今日までの長い日にちの経過の中にあらわれる態度というものについて、何としてもこれは納得いたしかねる国民感情を一体どう考えているのかということになると私は思うのであります。  そこで、私はまずどうしても、金大中氏に日本に再来日という形で来てもらう、またその関係者の方にも来てもらう、この点が最後まで貫徹をされなければならない筋だと思っているわけであります。だから何が何でもこれだけはどんなことがあっても実現をさせる、この意思が、主権侵害ということばが一方ありますけれども、それ以上に大きな国民感情だと私は思っているわけでありまして、とにかく法治国家に間違いない日本の国から、いかなる手段を講じたかは別として、いきなり韓国に持っていってしまうというようなことがあっていいはずはない。法律以前の問題、そう私は考えている。  そういう意味法務大臣にひとつ承りたいのは、一貫して変わらない主張をお続けになっておられますけれども、この時点で、一方田中総理が、どうもいささかたしなめぎみなことを言っておられますが、総理は一国の責任者ですから、多少外交的なことをお考えになることはいいとしても、捜査のその意味における責任をお持ちの行政長官でございますだけに、法務大臣立場というのは今日まではっきりしている。これをこの時点でもう一つ強力にひとつ金大中氏の再来日を求めるという姿勢が必要だという気がするのでありますが、この時点でもう一ぺんひとつ法務大臣の御答弁を承っておきたいのであります。
  6. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 大出先生の御発言一つ気になることがあるのです。それは、大平外務大臣仰せになってきたことと私の発言食い違いがあるという。これは参議院でもそういうことをおっしゃったので、冗談じゃないという話をしたのですが、それはそうでない。これは違う場所で違う人間がものを言うておりますから、質問も違うでしょうから、答えのニュアンス発言ニュアンスというものには幾らか差はあってあたりまえなんです。あたりまえなんだが、それは違うことを一つも言うておらぬ。同じことを言うておる。どこが同じなのかというと、ごちゃごちゃいろいろございましょうが、どこが違わないのかというと、いま先生仰せのとおり、本件は金君の再来日を求めるということと、二人の関係者おいでを願うということが実現をしなければ捜査はこれ以上進まない。事は迷宮に入る。たいへん私は極端なことを言っておる。捜査はこれ以上やれぬ。この責任はどの国にあるのかということを言わなければならぬ段階になってくる。いやでもこれは来てもらわなければならぬ。  しかしここに一つ困ったことがあるのです。ここを大平先生仰せになっておるのでありますが、そんなことを言ったって国際法原状回復義務はないじゃないか、いまの段階では。某国国家機関がやったことだということが立証されない限りにおいては原状回復の道はないではないか、こういうことに重点を置いて御説明になると、そのとおり私もこれは否定はしていない。そのとおりだ。私が言うておりますのは、それはそうであろうけれども日韓両国の間というものはそんなに水くさい間じゃないじゃないか。国際法がどっちを向こうが、日本韓国との間には永年の緊密な関係を持続して今日に至っておる。現に私が全世界から日本で預かっております外国人の数は七十三万人にも及んでおります。その七十三万人のうちの六十二万人、ほとんど全部が朝鮮半島出身諸君でございます。この朝鮮と日本との間には、結婚をいたしまして子供ができて、孫ができて、ひ孫ができている。その数は膨大に及んでいる。この両国は、容易なことで亀裂をしたり、容易なことでみぞを生ずるようなことがあるべきものではないのだ。そういう関係にある両国ならば韓国も考えたらどうだ。本人自由意思韓国に行っておるんじゃないじゃないか。拉致されて韓国にあるものではないか。そして日本捜査に苦労しておるんじゃないか。国際法を越えて政治的に考えて、どうしてこれを返すことができないのか、どうしてそういう水くさいことをおっしゃるのか。両国の間の関係が切れてもいいのかということを強く主張しておる。  けれども、私は外交機関じゃございませんから、私は国内法務大臣でございますから、せめて国会でその発言をいたしまして、それが新聞に報道されて、その新聞報道記事韓国の耳に入って、具眼の士があろうと思います。あほうばかりじゃないと思う。そこでその具眼の士が、なるほど田中法務大臣の言うておることは一理ある、これはちゃんとせなければならぬな、本人意思に基づかぬでこっちに来ておるんだから、これは返してやるくらいのことはやらなければいかぬ。返してやるという両国の間の合意をすることが、国際法上禁ぜられておるという問題と違う。合意ができれば国際法云々を越えてやれるんだ。それをやれ、それをやらぬというのなら、やらぬ者に責任があるというふうに、私が強く力んでおるわけです。ここは力む必要があるんだ。  どうも法務大臣が行き過ぎたことを言うという、党内でも国内でも一部が私を攻撃しておる。脅迫電話までかかってきておるけれども、私は一向差しつかえはない。それはそう言わなければならぬ。この際言うべきだ、えらい事態が発生するということを私は言うておる。これを腰強く主張をしていけば早晩戻ってくる。戻らなんだら両国重大事態——その重大事態中身は言えぬけれども重大事態に入る、こういうふうに私は考えて、御質問があればくどく、強く何度も同じことを申し上げてきておるのでありまして、大平先生の御意向はそれに反対というようなことは一口も聞いたことはない。またそんなことは言うはずはないです。同じことを言うておる。角度が違うだけのことであるのですね。ですから、外務大臣仰せになっておることと法務大臣の言っておることは食い違いがあるではないかというようなことは、もってのほかの御判断だという話をきのうも参議院で強くいたしまして、なるほどそうだという御了解を得たわけでございます。  わが国捜査当局が非常な苦心を重ねて捜査に努力をしておることと、外務省がたいへんな熱意をもって韓国に当たっていただいておるおかげをもって、私が早くから予想して国会発言をしておることでございますが、早晩きっと戻る。戻らなければ重大事態両国重大事態になってアメリカもほっておくはずはない、両国重大事態という前提に立てば、これを避けるために必ず戻ってくる、それくらいなことができないことはないということを言っておるのですが、これは第六感でございますけれども、どうやらこういう私の判断に近い傾向に入ってきておる。  それからもう一つ申し上げたいことは、国会仰せになることを批判するようで申しわけないのでありますけれども、そうやんやん仰せになりましても、事件はこの間起こって今日までまだ二週間たっておらぬのです。日本開闢以来前例を見ざる大事件が起こっているのです。それを事件が起こってまだ二週間たっておらぬのに、さあどうだどうだと仰せになりますと、いろいろ刺激がありまして、国会発言をどうこう批判するのじゃありませんけれども、私は国会の御発言がちと気が短過ぎるんじゃないかと思うのです。まあ外務省にまかしていただいて、私らがやきもきしたって、外務省にまかす以外にないのです。大平先生におまかせをしましょう。必ず戻ることになるという確信を私は持っておるのでございます。政府におります大平先生と私との間に決して食い違いはない。同じことを言っておるのです。言うことばが違うのと、私が強く、きつくものを言う男でありますから、少し言うておることが違うように見えるだけのことで、一方は消極で一方は積極ということはない、同じことを言っておるんだ、これをどうぞひとつ腹から御理解をいただいて御声援をいただきたい。
  7. 大出俊

    大出委員 大平さんは、長いおつき合いだけれども、ものを聞いて三年たって答えるようなところがあるのですな。善意でものを考えれば、たいへんに慎重でおいでになる。それでいいのでしょう。何か聞いてみたら忘れたころにものを言いそうな感じで、もう少しばきばき言ってくれぬかと思うことがある。それはそういうタイプでございますから、それはそれでいいわけです。また法務大臣はたいへんに話の早い方だから、まだ百八十度くらいでいいと思っているうちに、三百六十度くらいまでいっちゃうわけですね。私は宿舎が一緒でしたから、よくふろでの中で裸談義まで大臣といたしましたが、たいへんに早いのす。  その差だけならばいいのです。いま話がありましたように、大平さん言っていることと田中法務大臣の言っていることはやはり違うのですね。どこが違うかということなんですが、ここにも二十五日の毎日新聞記事がありますが、外務省は「「真相が分かれば」対韓関係悪化を憂慮 「金氏ら引渡し固執せぬ」」というのですね。これは大平さんの答弁の中からも推測ができる。きょうは時間がありませんから一々あげません。だいぶ詳しく調べてみましたが、外務省のクラブの諸君に聞いてみましたけれども、そういう考え方が確かに外務省にはある。ここのところ一日二日だいぶ変わったように思いますけれども、つまり法律的に原状回復といったって相手国にそういう義務はないではないかと外務省は言う。相手国義務があるなしの問題を言っているんじゃないのです。法治国家日本から、それぞれこの国の政治を担当する諸君との間の長いつき合いもあり、さて日比谷公会堂で演説会をやろうという計画も進み、そういう人をある日突然連れ去るという、拉致して消してしまうという。お元気にあられたからまだしものこと、それっきりになってしまう可能性だってある。先例がありますよ。おまけに今月号の「世界」ではありませんが、金大中氏がみずから語っておられる中身がずっと載っておるけれども反共法にひっかかって東大に学んだ方まで何人か処刑されている。それはあり得る。  そういうことがこの国を舞台にやられて、この国の政治に携わる私どもが黙っていられる筋合いのものじゃない。こんなものは法律以前の問題だ。法治国家から持っていったんだから、返せということはあたりまえだ。法律上の問題じゃない。法律論の土俵であなたと私はやり合う気はない。ふざけたことをするなということ。  そうなれば韓国政治体制の問題。残念ながら私どもも、何となく韓国に行きたがらぬ人間ですよ。そうではなくて、韓国に行って、韓国の野党の諸君といままでの間にもっと話をしてくるべきであった。隣の国の韓国に対して、私どもはこれはわれあやまてりという感じがする。ああいうかつての日本の旧軍政時代のような、あるいはそれよりなお悪質ではないかと思われるような、全くもって準戒厳令式な、一メートル置きに水際線に人が立って監視するといってもいいような形になっている国、どうしてそんなことにしてしまったかという、実は私どもはその意味の反省さえある。  おまけにいま法務大臣は、二週間しかたっていないんだから、そんなのは性急に過ぎる、がたがた連日連日言いなさんな、こうおっしゃるけども、言わずにはいられぬ。私は法務大臣でもなければ外務大臣でもないが、いまいみじくも法務大臣のおっしゃったように、私は外務大臣でないから韓国に直接話はできぬ。あなたは国会に出てきて答弁をする。そのことは、韓国には具眼の士もいるから、あほうばかりじゃないからわかるだろうという。同じことですよ。私どもにしたって、外務大臣でもなければ法務大臣でもない。あなた方に出てきていただいてものを聞いて、それが新聞に載っかっていけば、日本の世論というものは、あるいは国会の各党の考え方というものはこういうものなんだ、そんな甘いものじゃないぞ。秋の国連総会もあるけれども、そんなものを陰のほうで幾ら外交的に話し合ってみたってふっ飛んじゃうぞということ。  それから、あとから申し上げますけれども、まさに韓国に対する世界最大債権者日本でしょう。いろいろなつながりがあり過ぎるでしょう。朴政権でなければ困る人もたくさんいるでしょう。勲章をもらった人もいるでしょう。浦項の製鉄所をつくるときなんかたいへんなもの。私はここで質問いたしましたが、世界銀行はじめみんな断わった。日本も一ぺん断わったわけだから。実はそういうくされ縁があるから、法律論を表に出して、国民感情というものをあたかも考えないかのごとく、くされ縁のほうが先に立って、韓国の政変につながりかねないようなことまで口に出ていますけれども、そういうふうなことまで表に出しながら、原状回復義務はない、法的には裁判権が両方にあるんだからいうようなことをおっしゃっているというところに、そうではない、それ以前の問題だということに焦点を合わしていただかなければならぬ。根本的にそこが違う。だからこういう記事が出てくる。  だから私は、大平さんにはっきりしていただきたいのは、どんなことがあっても、時間が何ぼかかっても金大中氏に日本に来てもらう。その関係者方々捜査当局が言っておられるお二人の方を中心に、必要な人には来ていただく。この点は最後まで国の主権の問題の名にかけて譲らない。この姿勢を堅持していただきたい。私はいろいろな方に聞いてきましたが、うっかりここでしゃべっていると、ついその人の名前が出ても困るので気をつけて言いますけれも、まずその姿勢を明確にしていただきたい。いかがですか。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 私はじめ外務当局、たいへん弱腰であるというおしかりでございますが、いまわれわれの問題は、先ほど申しましたように事態解明いたしまして、それを踏まえた上で、内外の納得のいく解決をはかっていくことであるわけでございます。外務省が強気な姿勢をとるとか弱気な姿勢をとるとかいう問題ではないと思うのでございまして、こういう大事な問題をいかにして実効をあげてまいるかということを日夜私ども苦労いたしておるわけでございます。強気の姿勢をとることはきわめてやさしいことでございまして、そういうことが問題の本体ではないわけでございまして、問題は、そういう意味日本の権威ある捜査当局といたしまして、この問題を解明していくためには、金大中氏ほか二名の方から直接事情を聴取しないと事件解明上支障がある、これを直接聴取することが不可欠のものであるという強い御要請でございました。ごもっともと思うのであります。もしそれを私ども外務省の机の引き出しに入れてもたもたしておるのなら、大出さんからおしかりを受ける資格があると私は思うのでございますけれども、私どもはさようなことはいたしていないのでありまして、そのまま先方当局折衝を続けておるわけでございまして、先ほどもお答え申し上げましたように、その実現を私は期待をいたしておるわけでございます。態度は一貫しておるわけでございまして、何らの変化があるとは私は自覚いたしておりません。
  9. 大出俊

    大出委員 そうしますと、私が実は大平さん、田中さんお二人の外務、法務両大臣に、確かにさっきお話があったように、人が違えば違った印象を与える場合があり得るが、それのみならず、そうではなくて考え方が違いやせぬかと受け取らざるを得ぬ。これはあなた方とさしで話したわけじゃないからわからぬですけれども、私がそう思うのだから、あるいは与党の皆さんの中にもそういうお話を私は耳にする。質問された方もあるわけですから。それでは困る。この際やはり、外務省法務省という二つの責任ある省の責任者は、先ほどお話がございましたように、全く同じ立場に立っているのだということにきちっとこれはしていただかなければ困る。それで実は、お忙しいのは承知でしたが、法務大臣にまげてお忙しい中を御出席いただいたわけでございます。  そういう意味で私は承っているので、だからまず捜査当局が、金大中氏の引き渡しあるいは関係者二人の引き渡しをどうしても必要とする、そのことを外務省はそのまま相手方に要請している、こう言うのですが、しからばこれは、最後まで、実現をするまでその態度は変えない。ここに引き渡しは固執せぬなどという新聞記事がありますけれども、いささかもそういうことはない。この国から不当に拉致し去った金大中氏でございます。法律云々という問題それ以前の問題として、とにかく日本によこしてくれ、この点については一歩も引かない、この態度を堅持願いたい。いかがでしょう。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 今日までもそういう方針折衝を続けてまいりましたし、今後も続けてまいるつもりでございます。何も意地ずくというわけではなくて、先方の十分な理解も得て私はその実現期待いたしております。
  11. 大出俊

    大出委員 今後もその態度を続けるということでございますから、その限りでは、田中法務大臣がおっしゃっている、最後までこれは金大中氏ほかお二人の方々等についての再来日をどうしても求める、この態度を堅持するという意味で全く一致したということだと思うのでございまして、これは国民の感情でございますから、法律以前の問題であります。こんなばかなことがあるかというのが国民全体の感情です。国民感情というものをまずすなおに皆さんにも受け取っていただいて、法律云々以前の問題、こういうことでこれはひとつ最後まで譲らない、こうしていただきたいのであります。そういう意味のお答えをいただきましたから、この点は了解をいたします。  そこで、もう一つの問題は、先ほど田中法務大臣が、初めからそう言ってきたけれども、どうやらここまで来ると再来日実現をする、その近いところに来ている、そういう意味の答え方をなさいました。大平外務大臣にひとつ、外務省が、後宮大使その他が——これはポパーアメリカの国務次官補がおいでになった結果かどうか、ほんとうのところはわかりませんが、多分は影響はありという見方はできますけれども、わかりません。法務大臣はまた先ほど、そうなればアメリカも黙っておるまいという言い方をなさっておりましたが、黙っていなかったのでしょう。行っておられ、かつまた日本に来ておられるわけだから、ポパー国務次官補が。金大中氏に会った大使、かつまた外務大臣がいまお話になりましたように、韓国側とその衝に当たって折衝しておられる大使でありますから、これはやはり、ここまで来ると当然最後の詰めだという感じがいたします、田中法務大臣のさっきの答弁からすれば。そう理解する限りは、後宮大使が帰日をいたしまして、そこらのところの最終的な判断が必要になってくる。そういう感じ答弁をきのう外務大臣はされておりますけれども外務省としては、後宮大使を呼んで最後の相談をするというような段階まで来ている、そう私ども判断してもよろしい、現時点はそういう時点だという認識でよろしゅうございますか。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 事件発生以来、後宮大使に昼夜をおかず非常に苦心、苦労をいただいておるわけでございまして、一度御帰国をいただいて事情を聴取し、これからの運び方を相談したり、また彼自身、大使の激励をしてやりたいという気持ちでございますので、先方の大使の都合も聞きまして、なるべく早く一時事務連絡のために帰国いたさせようかと考えております。
  13. 大出俊

    大出委員 そうしますと、もう一ぺん重ねて承りますが、外務省としてのものの見方も、金大中氏ほかお二方の再来日実現という問題については相当近い可能性をお持ちである、こういう理解をしてもよろしゅうございますか。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 この時点まで、金大中氏ほか二名の再来日の件につきましては、韓国におきましても捜査中でございますので、応じかねるということ以上にまだ聞いておりません。それじゃこれから先どうかという展望でございますが、私まだ確信を持つまでに至っておりません。
  15. 大出俊

    大出委員 そこで、二つ問題がございますが、一つは、最後まで時間がどうかかろうと、これは西ドイツの例なんかからいけば、最終的なところは一九七一年くらいまでかかっているのですね。これはたいへん長い経過がある。  時の国際的な政治情勢その他が違います。私は私なりにいろいろな方にいろいろな疑点を聞いてまいりましたが、秋の国連総会外務大臣が九月二十三日ごろおいでになって、二十五日ごろ、おそらく国連総会日本立場からものをおっしゃるという日程を持つだろうと思うのでありますが、そのために、ロジャーズ前国務長官が韓国おいでになって話をしておりましたり、また日韓関係でも話をいろいろしておられたはずでありますが、そういう国際情勢もございますから、そうだとすると、このまま引き渡しが行なわれないで、国会は連日性急に過ぎるではないか、こういう話でございますけれども、おそらく、機会あるたびに、毎日であってもこの問題は延々と続いていくと私は思う。続けば続くほどエスカレートをすると思う。いま皆さんが国内世論を見ていただければわかりますように、至るところで話題になっている。私は町をよく歩きますから、どこへ行ったって話が出る。町じゅうの話です。しかも国会は連日やっている。新聞は連日書いている。週刊誌もあらゆる週刊誌が取り上げている。こんなに大きな、まさにいまだかつてない大事件ですね。国内世論もたいへんに強いものがある。こう見ていいと私は実は思っている。こんな雰囲気になっていることはないというくらいに考えていいと思っている。  そうだとすると、いま先の展望ということで、どうなるか、そこから先のことは全くわからぬ、こうおっしゃっているのだが、一つ間違うと、これは私ども主張からすれば、それならそれで、何で今日までこんなにたいへんな経済援助を国民の税金においてやってこなければいけなかったんだ、援助したものが韓国において一体どういうふうになっているんだ。  これは、金大中氏が日比谷の音楽堂で演説をなさる、その演説原稿まで置いていかれて、私もこれを読んでみましたけれども、私どもがおそれているようなことをぴしっぴしっと指摘している。日本から援助が韓国に行なわれる。だがしかし、それは一握りの独裁者の手に渡って、はたして国民のどれだけのプラスになっているのか。日本朴政権をそういう意味でサポートするということなんだけれども、まさに国民不在であって、日本がそんなことで朴政権を一生懸命ささえている。末端にはさっぱり及ばない。低賃金が続いている。しかもものもうっかり言えない。政治談義については筆談をしなければできない。これはどうはね返るかというと、韓国民の日本に対する反日感情を高めるという意味である意味の極限に達しているというふうなことを、不正の問題から始まりまして分析をしている。ぼくは当然だと思うのですね。  だから、そういう意味でいえば、今日以降、国民の税金に基づく経済的な援助なんというものは一切行なうべきでない。それはわれわれ野党を構成する政党の側が一斉にそこまでいくかもしれない。あるところの責任ある方が、断交というようなことをおっしゃった。そこまでいまは口にしないにしても、経済的には一切ストップをすべきである。その場合に、鉄鋼から始まりましていろいろな資本が、特にここ一、二年は、極端に韓国に工場疎開、企業疎開といっていいような動きになっている。そういう面の支障は出てくるにしても、政治的にはどうしてもこれは——日米会談以後におけるアメリカの援助要請もありましたでしょう、あとから承りますが。だが、何もかも含めて一切ここで経済的には交わりを断て、こういうことを私どもは言いたい。これは一斉に街頭に出て国民に訴えたい、そこまでのことになってくるのです。ここまで国内世論が高まっているにもかかわらず韓国が応じないというならば、国民の皆さんに訴えて、経済断交その他についての国民の了解を得ようという気になるのです、われわれ政党人としては。これはそこまでのことに発展しますよ。  まずもって、もしこのまま過ぎていった場合に、あなたが言うように、再来日の見通しはわからぬ、このまま過ぎていくとすれば、そこまで日本国内世論というものは高まってしまうと私は思う。そのことは、田中法務大臣が言ったように、皆さんの立場からしてあるべき姿ではないということをお考えになっておられるようでありますが、外務大臣、いまの段階で将来にわたる見通しがまだないということになるとすると、日韓関係について、これは非常に憂慮すべき問題に国内的にはなると思いますけれども、あなたはどういうふうにお考えになりますか。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたように、本件、不幸な事件でございまして、わが国自体の法秩序の上、公安の上から申しましても不幸な事件であるばかりでなく、どうも韓国人が本件に関与していることが濃厚に見られておる今日、これは日韓両国関係にとりまして私は非常に重大だと思っております。したがって、私が先ほど、大事なことはいまこの事件解明を急ぐことということをあなたに申し上げたわけでございまして、それを急いで、そしてわれわれが掌握いたしました事実、正確な事実を基礎にいたしましてどういう解決をはかってまいるかということを考えるべきだと思うのでありまして、いまその過程でございます。したがって、いまこの段階におきまして対韓政策の基本を変えるという気持ちは、私にはありません。また、そうすべきでないと思うのです。もしそういうことをするとすれば、それはまた軽率のそしりを受けるだろうと思うのであります。  ただ、あなたがいま御指摘になりましたように、一国の対外援助政策というものは、これは日本の対韓援助ばかりでなく、日本のほかの国に対する援助におきましても、またその他の先進諸国の後進国援助におきましても、これは確かにいろいろな点から批判があるわけでございまして、たとえば工業化という点に力点を置いてやるべきか、あるいは農業基盤というようなものを着実にかためてまいる方向に力点を置くべきか。あるいは教育とか技術とか行政とか、あるいは医療とかいうような、つまり人的な側面にもっと力を入れるべきであるかとか、いろいろな議論があるわけでございまして、現にわが国のやっておる対外援助政策につきましても、対韓援助を含めまして国の内外でいろいろな批判があるわけでございます。御指摘のように、金大中氏自身も対韓援助について一つの見識のある批判をいたしておることを私もよく承知いたしておるわけでございます。  私どもは、そういう中にありまして、韓国という隣国、発展途上国に対しまして、どういう援助をするのが韓国の平和と安定のために役立つかということを、政府なりに判断いたしまして今日まで実行しておるわけでございまして、ことしも、エカフェ総会におきまして私は、従来アジアの発展途上国の場合、やや農業面に対する力の入れ方が足らない。工業化といいましても、やはり農業の基盤がしっかりしないと工業化が実らぬわけでございますので、そういう意味におきまして、これからのアジアの開発計画につきましても、もっと農業というものに力点を置こうじゃないかということを提唱いたしまして、アジア各国ばかりでなくほかの国々からもたいへん共鳴を得ておるわけでございまして、私は、対韓援助政策というようなものも、いまあるがままを金科玉条とするのでなくて、これから事態の推移に応じまして、その実績も踏まえながら漸次改善してまいるべきものと思っておるわけでございます。ただこの事件解明中に、この事件のゆえに今日ただいまから日本としてはこうするのであるというようなことを打ち出すということに対しましては、私は遺憾ながら——あなたはそういうことをおっしゃっていないと思います。けれども、もしそうだとすれば私と少し意見が違います。
  17. 大出俊

    大出委員 実は意見が多いに違うのですけれどもね。私は、韓国政治情勢、政治体制というものはそう強固なものでないという見方をする。これは私も実はさっきみずからの反省まで申し上げたのですがね。昔、韓国のある労働組合が参りまして、手伝ってもらいたいという。国際自由労連のワクの中ですけれども。私の出身組織がそうだから。ずいぶんひどい話を聞かされましてね。そこで、これはたいへんなことだとは思ったんだけれども、どうも私ども韓国というと二の足を踏むくせがある、われわれの所属する党派、立場からすると。ついどうも行って話をする気にならない。これは非常にまずかったといま思っていますけれども。ただあの国は、いま昔のような時代じゃありませんから、相当なやはり根強い反朴政権という空気がある。アメリカだって金大中氏との縁を大統領選挙以来今日まで切ってはいない。またもう一人、最近こちらにお見えになって十七日にお帰りになった、この金大中さんに次ぐ実力者といわれる方、元国連大使の林昌榮さん。この方々ともアメリカ側は、これは反朴勢力の中心人物のもう一人の方ですが、縁を切っていない。それは何かというと、韓国の政情をながめていて、いつどうなるかわからぬ要素がある。これは国民がきめるのだからしょうがない。そうだとすると、そのときにしからばどうなるかということまで考えているのだろうと私は思う。そうなると、何でもかんでも朴政権を支持していかなければならぬという一辺倒で、浦項の製鉄所建設のときに私はずいぶんここで外務大臣に、大平さんじゃありませんでしたけれども、愛知さんのときだったと思いますけれども、こまかい質問をしたことがありますけれども、最近でき上がったようでありますが、これらの問題をめぐりましても抜き差しならぬところに来ている。じゃ朴政権がかわったらということを考えると、いろいろなつながりができ過ぎているんじゃないかという気が私はする。私はそこは、あまりいいことではない、こういう考え方を持っているから、基本的に違う点がありましょう。ただ、きょうは法務大臣に時間がないところをお出かけいただきましたから、少し話をそちらのほうに寄せてここで数点承りたいのです。  私が実はいろいろ承って歩いた限りでは、法務省関係方々なり警察庁関係方々なりの話を個々に聞いてみますと、西ドイツの例をあげて言われる方もある。あのときは西ドイツの捜査当局が、確証というところまでいかぬにしても、それに近いものを握っていた。それで、ここまでのものを握っているのだぞといわれて、単なる世論のみでなく韓国側も、それではこちらの捜査その他が終わったら帰さざるを得ないと、ぼつぼつ帰していった。もっとも西ドイツの場合は十七人ですから、学者であったり音楽家であったり留学生であったりするのですけれども、個所が多いですから、痕跡もそれはたくさんあったのでしょう。そういう捜査の違いはあろうという言い方関係方々はおっしゃっておりますけれども、しかし私がやりとりをした限りは、日本の警察当局方々は相当なところまで調べておられる。それがはたして確証だといえるかいえないかということになると、ほぼそれに近いところまでは握っておられる。  ただ、最後まで私が個人的に詰めると何とおっしゃるかというと、しかし大出さん、捜査の基本ですよと。それは何だというと、被害者がいない捜査なんですから、これは捜査の基本だ。それでは、その被害者を西ドイツ並みに日本に引っぱってくるために、調べた結果というものを、確証ということになるかならぬかというぎりぎりなんだから、ここまで明らかにしたらどうなんだと詰めてみた。これはお答えいただきたいのですが、韓国から不審な十三人、直後に七人は帰国。名前までいろいろあるようでありますが、これは警視庁はちゃんと調べておられる。韓国日本アメリカを結ぶ組織的な動き、こんな組織になっているのだというようなことまであなた方は調べておられる。それから目撃者はいないとかなんとかいっていますけれども、畑中という人の問題についても相当調べておられる。二人いたなんていうから、それも追っておられる。不審な車等についても、これまた相当詳しく調べておられる。やはり外交官ナンバーの車二台、ホテルの前にどうのこうのという問題もここにあります。これらも聞いてみるとずいぶん調べておられる。それなりに当たりはすべてつけておられる。だが、その一番中心にある金さんがいないからと言う。  大臣、私は必ずしもそうだとは思っていない。いまここまで調べておられて、日本の警察はある程度ものは言える。びっくりするようなことが出てくる。出てくるが、それを言ったときに一体どうなるかといえば、国内世論というものは、けしからぬと沸騰してしまう。間違いなく輪をかける。だから、関係の方、皆さんの中のある人は私に、被害者がいないのだから、はたしてそれが確証か、そういう意味では確証を得るまでは国会ではそれ以上言えませんというようなことを言つているのだけれども、それに近いものはある。だが、それを発表した場合に相当大きな影響が出るということなんだとおっしゃっている。実際にはそうなんでしょう。つまり、そこまでいけばおっしゃるとおりの大きな政治問題なんですから、警察当局のここまで調べているということについて表に出せない、政治的な配慮が要る、そこに一つのポイントがある、そう見なけばならぬと私は思う。  だから、あなたが第六感とおっしゃっているのは、単なる第六感ではない。やはり調べている、捜査をしている上に立って、あなたは第六感という答え方をしておられる。それは一番いい答弁ですよ。法務大臣、事実問題として一体どこまで調べておるとお考えでございますか。
  18. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 大出先生のおことばを避けるようで申しわけがないのですが、事件はある程度捜査しておる。しかし、その捜査段階はどんな段階かというと、第一線司法警察当局捜査をしておる段階で、捜果の結果は法務省所管の検察当局に送付されていない。昔のことばでいうと送局はないのです。送局のない段階においては、ここはしゃんとしなければならぬところでありますが、具体的な捜査に関して法務大臣が所感を言うてはいけない。これは厳に慎むべきものである、こういうことで、私のものの言い方第六感ということばを使っておりまして、捜査の具体的内容に関しては論及をしていないのであります。そういう事柄なのでございますから、答弁を避けてたいへん申しわけがないのですけれども法務省を代表する私の立場もある。送局のない、事件送致のない案件について具体的所見を述べるということは、これは申しわけがないものと思いますので、これはひとつお許しをいただきたい。
  19. 大出俊

    大出委員 きょうは実は警察庁の高橋長官においでをいただこうと思ってお願いをいたしましたが、いろいろお話がございましたので、警備局長さんの御出席をいただくことで私は了解をいたしました。これは確かに政治的にいろいろ問題もありましょうから遠慮したわけなんですが、そこで、いま私は幾つか問題をあげましたが、警備局長さんのほうで、一体どの程度のところまで——言い方はいろいろありましょう。ありましょうが、あなた方がこの問題を調べておられて、一面、あとから申し上げますが、読売新聞韓国機関説がある。あるいはまた大臣みずからが——これは警察庁の方に言わせると、大臣発言に対する反応、いろいろなお話をだいぶ聞きましたが、それはそれとして、私もどうもあまり言い過ぎてしまうわけにはまいりませんので、聞いた相手の方がいますから。だが、KCIAという問題をめぐっても、相当突っ込んだ捜査をなさっているようであります。したがってそこのところを、警備局長さんせっかくおいでをいただきましたから、この時点で一体さっき私が幾つかあげたような問題をどこまでお調べになっておられるのか。これは限界のあることでございましょうけれども、お述べをいただきたいのであります。
  20. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  捜査のポイントでございますが、これは現場で金大中氏を連れ去ったと思われる者の特定。このための目撃者の発見。それから梁一東さんの隣の部屋に泊まっていた畑中金次郎、これの特定。それから遺留品が各種ございますが、これをどこで入手したかという形の捜査によって犯人を特定する。それからホテルから連れ出したと思われる車の特定。これは一応時間帯を大幅に見て三十台あるということで、これを一台一台つぶしておりますが、残念ながらホテルのチェックが下四けたの数字しかないということで、四けたの車は場合によっては日本全国に二百数十台あるということで、その捜査に非常に時間がかかっておりますが、現在三十台のうち十六台はもう関係ないということで、あと十四台、これを一生懸命やっております。  それから、船で出港したという金大中さんのお話から、やはり時間帯を限りまして、向こうに渡った船の捜査、これは三十数隻ございますが、これについてやっております。  そういう状況でございまして、いずれもこの席ではっきり先生に間違いないというお話ができる段階に至っていないのは非常に残念だと思いますが、やはり、金大中さんはじめ梁一東さん、金敬仁さん、こういう現場を見た人に来ていただいて、そういう人から任意の供述を得ないとなかなか確定的な捜査が進まない、こういう状況でございます。
  21. 大出俊

    大出委員 私が承った限りは、これは法務大臣日本の十項目の要請にこたえて韓国の回答が参りましたね。ここにございますが、回答になっていない中身であります。言ってもしようがないような中身でありますが、これらをめぐりましても、やった当の張本人である限りは、何がどうなってどういうふうに金大中氏を韓国日本のホテルから連れてきたかということはみんな知っているわけですね、やった本人だから。やらせたんだから。やらせた、やったというわけですからわかっている。それは準戒厳令だというのだけれども、みごとに入っていって、金さんの家の近くまで持っていった。この事実も明確にある。それは全部わかっている。わかっている張本人捜査をする、これは一体どういうことなのかということです。やった人間捜査をするといったって、これはナンセンスですね。報告が来た。何もないですね。やった張本人が報告しようがないですね。こういうふうに私がやりましたと、知っている人が。裏を返せばそういうこと。話をしてみますと、いや大出さん、やった張本人捜査をするというのはナンセンスだということになりますかという話が出てくる。つまり私はその意味の見当はついてしまっている。法務大臣がおっしゃる——外務大臣はちょっと慎重にものをおっしゃっていますが、しかし先ほど金大中氏ほか二人の方の再来日最後まで求めるということはお答えをいただきました。そうすると、法務大臣がおっしゃっている筋からすれば、それは非常に近い。私も、秋の国連総会もございますから、そう長引かしているわけにはいかないだろうと思う。大平さんが二十三日に行かれて二十五日に演説をするのだから、国連総会で話をされるのだから。しかも国連総会の議題の中心は何かといったら、朝鮮の問題なんだから。そうでしょう。そうだとすると、おそらく韓国側にすれば、その国連総会時点では腕を組んで、そこから先まで持っていきたいのだろうと思う、私が韓国立場でも。だけれども、それで済むかという問題がいまここにあるから、法務大臣は、比較的近い将来をさして実現をするだろう、近づいていると私は思っているというお話が出てきた。  そこで、ここまで来れば、だから政治的解決しかない。まず一つは、韓国自身が、わがほうの政府機関がやった、あるいは政府機関にごく近い関係機関がやった。うっかり政府機関がやったということを明らかに認めた場合には、李厚洛情報部長じゃありませんけれども、もしわがほうの機関が介入していた、あるいはやったということである限りにおいては責任をとると言っているのだから情報部長が責任とってやめるということになった場合には、一種の韓国の政変でしょう。日本側としても、さっきから私が申し上げているように、朴政権でなければならぬということだから、そうだとすると、韓国に政変が起こることは好まない。あるいは政情不安定になることは好まない。だとすると、よしんば韓国KCIAがやったんだということであったにしても、日本外務省の側がそのことをそのまま表に出せるか、これは問題がありますよ。  そうなると、金大中氏を日本に再来日という形でよこす、関係者をよこすという話がまとまるとすれば、その際は、おそらく先ほど田中さんおっしゃっている、たいへんに水くさい仲ではない日韓の中だ。水くさくないのであれば話をするのはあたりまえ、話をして、話し合いで何かがそこに政治的にきまらなければならぬ。そうすると、極端なことを言えば、韓国側が介入していない、それ以外の組織、あるいは民間の組織が、その中のはね上がりがやったんだ、別な人間の名前が名前だけ出てくるかもしれぬ可能性だってあり得る。そのかわり、金大中氏が日本に再来日でやってきた、そうすると捜査当局が言っている、被害者がいないところの捜査は本来ない、こう言っておられるその筋に乗せるという政治的な解決の方向だって出てくる。  だが、しかしそうだとすると、そこに残るのは日本主権侵害という問題がまた残る。そんなべらぼうな話があるか、この事件はそんなに簡単にはね上がりが出てきてやってのけられるようなしろものか、だれが考えたってそうなりますよ。そうなりますと、そういう決着のつけ方がはたして可能かどうかという判断だって必要でしょう、外務省にすれば。  それから、そこから先に、これは法務大臣に聞いておかなければなりませんけれども金大中氏が法務大臣の言うとおり日本に来た場合に、韓国は無条件でよこすかという問題がある。では何日間捜査協力をするから韓国に帰してくれ。はたして帰していいということになるかどうか。そういう受け入れ方をして一週間なら一週間、十日なら十日、捜査当局は二十日ぐらいのことを言っておられるようだけれども、そうしたら国内世論というものはまた硬化いたします。捜査期間だけ捜査してまた送り帰した、そうなると反共法だ何だというのがある国なんだから、金大中氏の身の安全はどうなんだということが国内世論として出てくる。  あるいはまた、日本に亡命をするということだってあり得るかもしれない。そうなれば初ケースができ上がる、お認めになるならば。そうでなくて、ポパー国務次官補が韓国に行って日本に来られて話をしておられる。国連総会における相談に行くのだということが表向きの発表です。しかしアメリカと今日まで金大中氏が長いつき合いを持っていることは間違いない事実です。厳たる事実です。韓国の政変のあとに出てくる大統領はあるいは金さんかもしれないという新聞の書き方だってある。そうだとすると、第三国につまり亡命をするということだってあり得る。そこらの筋道の話し合い、だてや酔狂で後宮さんが韓国政府と話しているのではないし、外務省当局と連絡をとっているわけではない。そこらの問題が一つ大きな問題として現にここにある、こう私は思う。  したがって法務大臣は、ある国の、あるいは某国CIAのしわざであると第六感で思った。脅迫電話がかかってきた。けしからぬじゃないか、某国とは一体どこだと言われて、いや特定の国をさしたのではない、いや某国とはどこだ、君が某国だというようなことを言ったということが新聞に出ておりましたがね。大臣、名言だと思うのです。田中さんはうまいことをおっしゃると思った。  だが、この一連の動きを考えたときに、これは政治的な処理の段階に入っていると私は見ている、いま述べたようなことで。それしか解決の方法がない。実際そうじゃないのですか。あなたは先ほど非常に近い将来の再来日可能性について、近くまで来ているということをおっしゃいましたが、そういう意味政治的な判断の時期にすでに来ている、こういうふうに見なきゃならぬと、私はいろんな方のお話を聞いてみまして、直接聞いてみまして思いますが、そこのところは法務大臣、いかがでございますか。
  22. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 大出先生お話を聞いておると、たいへんおそろしいことを平気でおっしゃる。ずばりずばりKCIAとおっしゃる。韓国情報部ということをおっしゃるのですね。それに黙って答えをしておりますと、某国というのはかの国だなということを私が認めたことになってしまうんです。それで、私のそのお話を承りましての答えは、すべて私の言う某国ということで御理解をいただきたい、先生のお尋ねをそのまま受けて答えするんじゃないということを。これは日本法務大臣ともあろうものがえらいことになるんです。関西のことばでえらいこっちゃというのがあるのですが、えらいことになるんで、どうかそういうふうにお考えをいただきたい。  それと、申し上げたいのは、戻るという根拠でございますが、これは私は大平先生のお考えとは少し角度が違うのです。見通しというものは角度が近くて違っていい。十人が十人とも角度が違っておもしろいのです。それは非常にいいのです。そういう意味で私は言うた。  私は、大局を見ていくとどうなるかというと、両国関係はみぞをつくり得ない、いかなる事態が発生をしても亀裂を生じてはまかりならぬ、この重大関係両国の間が置かれておる。日本政治家も、相手の政治家も、両国具眼政治家がおるだろう。その具眼政治家がこれを観測するならば、帰さずにはおれない。なぜかといえば、これらの三君を帰してくれなければ、ことに金君を帰してくれなければ事件は迷宮入り、事件は宮入りです。宮に入ってしまったその責任はだれにあるかというと、国際的にその責任韓国にある。かってに行ったんじゃないのですから、無理に連れていったんですから、犯罪によって拉致したんだから、日本ことばでいえば誘拐略取を行なったものである。その誘拐略取した者を戻さぬのだと四の五の言うんだということになれば、責任は向こうにある。事件は迷宮入りだ。これはたいへんな事態。たいへんな事態というのは、国と国とのたいへんな事態というのは一つしかない。経済援助とかなんとかけちな話じゃありません。これは重大事態になる。  そういうことを私は考えてみると、これは具眼の士がおるという前提に立つと、おそいか早いか戻るなと。国会で早くから、これは必ず戻る、きっと戻るということを言っておる。大平先生の御立場から申しますと、戻る傾向にあるというようなことは、それはあなた、私が外務大臣で言うたらたいへんだから、何を根拠に言うかということになります。それは私は仰せになるおことばどおりだと思います。きっと戻る。どんな形で戻ってくるかということはわかりませんけれども、戻るのはきっと戻る。そして犯罪捜査はやれる。きっとやれる。私は、この金君はじめ三君を戻してくれたら、自信を持った日本捜査官憲は必ず答えを出す、これは間違いないと思う。いままでも遊んでおるのではありません。非常な苦心をいたします。百名をこえる専任捜査官が中心となって目下捜査をいたしております。相当捜査はできております。そこへ本人が帰ってきたということになれば、必ず答えは出る。答えは出してみせる。私は捜査当局ではないが、この見通しは言うていいですよ。必ず出せるという確信を持っておる。必ず戻るものとの確信を持っておるのでございます。
  23. 大出俊

    大出委員 外務大臣先ほど田中法務大臣は、外務大臣と違ったことを言うていない、同じだ、こう言う。ところでいま法務大臣は、必ず戻る、経済断交などというけちなものではない、重大事態になる。それ以上重大事態一つしかない。国際的な国と国との間の断交ですよ。これしかない。だからさっき私は、ある党の責任ある方がそういうことを口にされたが、そこまで言う気はないがと念を押しておる。韓国諸君がばかでない限りは——関西弁と関東弁の違いで、あなたはあほうでない限りはと言ったけれども、私のほうから言わせると、ばかでない限りはこれは帰さざるを得ないのだ。これは政治的に落着しないからですよ。国連総会なんかもあるからですよ。これは落着しない。だから帰さざるを得ない。これはそこまで来ている。ところが外務大臣はいつも、これはわからないと言う。それは外務省でいま、わからないなんて言っていたんでは、たいへんこれは迷惑な話だと思う。ここのところは法務大臣は、帰さざるを得ない、そういう展望をはっきりされておる。何べんも答えておる。外務大臣のほうはなおはっきりしない。どうなんですか。帰さざるを得ないところに来つつある、そのくらいのところですか。いかがでございますか。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 御案内のように、本件はいま捜査中であり解明中でございまして、それの解明のかぎが捜査当局はお三方の再来日にあるということでございまして、そのためには韓国側協力を求めなければいかぬわけでございまして、それを求めておるということ、そして今後も求めてまいるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。  しからば、それからの展望ということになるわけですが、田中法務大臣は、展望ということについていろいろ意見があっていいということ。これはいろいろな方がいろいろの展望をお持ちになることでございましょう。私は、先ほどあなたから聞かれたただいまこの時点におきまして、まだ確信を持つに至っていないということを正直に申し上げておるわけでございまして、と同時に、本件解明のために先方協力実現することを期待しておるということでひとつごかんべんいただきたいと思います。
  25. 大出俊

    大出委員 現在この時点で自信を持つに至っていないという御答弁ですが、しかし、私はやはり、これは多分に可能性ありという見方をしていいのではないかというふうに思っておるのです。そういう点については、韓国を回ってこられたアメリカの国務次官補もお見えになっておるわけでありますが、また後宮さんを近日都合を見てお帰りを願うということにしているというお話でございますが、そこらを含めて再来日可能性はお持ちでないのですか。いまの点で確信は持てないにしても、今日までの動きは、経過は、韓国側の変化は、将来に向かって再来日可能性を持つ、そのくらいのことはお考えじゃないのですか。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 事態は究明されねばならない、それもできるだけ早く急がなければならぬ、このことが両国関係にとって非常にシリアスな問題であるということは、あなたも私も同感でございます。問題は、捜査を十分やっていただく、早急な事件解明をするということのために万全を尽くさなければいかぬわけでございまして、そういうことを成功裏に実現しなければならぬわけでございます。そのためにわれわれも鋭意努力をいたしておるわけでございまして、そういう一番大事なことにつきまして、私が折衝の衝に当たっておるわけでございまして、せっかくの御質問でございますが、いまの段階で私からとやかく申し上げるというようなことは、私はたいへんいさぎよしとしないのであります。極力求めてまいって、先方理解のもとにそれを実現させたいということで精一ぱいがんばっておるわけでございますし、今後も努力してまいりたいということ以上にただいま申し上げることはございません。
  27. 大出俊

    大出委員 時間を考えながら質問しておりますから決着をつけますが、いま大臣答弁は、事態解明しなければならぬ、解明を急がなければならぬ、こう言っておられるのですね。ところが解明をするのには、私がさっきから直接警察庁の方にお目にかかって聞いておりますけれども被害者がいない捜査というのは一体何だ、被害者がいないのだから解明のしようがないということです。そうでしょう。そこまでの過程の問題を表に出すことはできるが、国内世論ということもあってにわかにそれができない。確証というなら、被害者が来てくれなければ確証にならぬ。捜査はしていてある程度までわかっている。わかっているが、だから話のやりとりの中には、やった人間捜査中なんというようなことはナンセンスでしょうということまで出てくるのですよ。やった人間韓国にいるんだから、それが捜査中なんというのはナンセンス。わかっている、自分でやらせたのだから。そうでしょう。  そこで、解明をとあなたはおっしゃるけれども金大中氏が再来日しなければ解明ができない。法務大臣答弁は、来れば日本捜査当局がちゃんと調べている、このてんまつは決着がつけられる、りっぱな結論が出る、こうおっしゃっている。つまり金大中氏が来ればと言っている。あなたは、解明を急がなければならぬ、解明を求めていると言っても、呼んでこなければ解明できないと捜査当局は言っている。ここには「外交配慮か国民感情か 外相、解明待ちに終始」と書いてあるけれども、私はさっき腰がないと言ったけれども、全く腰がない。ここにはあなた方は「金氏ら引渡し固執せぬ」とある。韓国側解明をしたら引き渡しを固執しないという態度をあなたは一ぺんとっておられる。  そこで私は、くどいようだが、何がどうあっても金大中氏を日本によこせ、最後まで固執して要求し続ける、そういう態度を堅持してもらいたい。あなたは、堅持する、続けるとおっしゃった。その限りお二人の考え方は一致していると私はさっき申し上げた。いまあなたはまた、解明を待って、解明を急がなければならぬと言うが、それでは、金大中氏なりあるいは梁一東氏なり金敬仁氏なりという方々の供述書を外交手続を通じて求めておりますね。近く回答するということですが、その辺のものが入手されれば、それがあなたの言っている解明という意味なんですか。解明という意味金大中氏を呼んでこなければならぬと私は思っているんですけれども、あなたの言う解明を急がなければならぬというのは一体何をさすのですか。供述書がほしいと捜査当局は言っていた、その時点のものをさすのですか。そこのところはどうなんですか。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 事態解明にあたりまして、捜査当局要請越しの材料は残るくまなく先方要請いたしているわけでございます。そのうち三氏の供述内容につきましては、一両日中にお渡しできるでしょうということが夕べの段階におきまして明らかになったわけですが、それをちょうだいできれば金大中氏ほか二名の再来日要請は御遠慮しますとは言うてありませんから、御安心をいただきます。
  29. 大出俊

    大出委員 そうしますと、どうもはっきりしないのですが、これは大平答弁ですから、いつもそこが一つ残るのだけれども、つまりこういうことですか。三氏の供述書は回答するということで、これはまず来ると考えていいわけですな。だが、それが来たとしても、それがいただければ金大中氏の来日を固執しない、こういうことではないのだ。つまり金大中氏は来なくてもよろしいと言っていない、だから供述書は供述書でいただくが、金大中氏をよこせという点は最後まで努力を続ける、やめない、これでいいのですか。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 そういう態度で終始しております。
  31. 大出俊

    大出委員 そうすると、田中法務大臣のほうは、金大中氏はどうしても来る、来ざるを得ない。これは国会論議だって、これだけ延々とやってきて、来なければやめやしませんよ。これはケリがつきません。国内世論だって、ものをいろいろ書いておられる新聞関係にしたって決着がつきません。その限りでは、いまの両大臣の見解が少し違う。現時点では確信が持てないと大平さんは言う。しかし最後まで来日を求めてやめないというのですから、それはやっていただく。  そこで、もう一つの問題は、読売新聞の支局閉鎖だとか、記者を追い返すとか。それからある党の方が向こうに行っていろいろ聞いてきた。いろんな方から聞く。これはニュースソースはかってですよ。その辺に対して一々文句をつけてくるとか、国会で少し審議が続いている、これに対してとやかく言うとか、それはふざけている。まことに無礼千万なんです。そこらに対してどういう処置をとったのですか。あなたは適当な答えをなさっているけれども、こういう問題は一々ぴしっと韓国側にものを言わなければならぬじゃないですか。明確に、けしからぬならけしからぬ、無礼千万なら千万だということで、これはよろしくないといって言わなければならないじゃないですか。ここらのところはどうなっておりますか。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 事態解明中であり、本件韓国の官憲が介入しているかいないかまださだかでない段階におきまして、読売新聞が掲げた記事の信憑性というものを判断する客観的な信憑すべき根拠がない段階におきまして、支局の閉鎖を命令するということはいかがかと思います。したがってその趣旨は、即刻ソウルにある大使館を通じまして、先方政府にその旨申し入れますとともに、すみやかに再開をされるよう要請をいたしておきました。
  33. 大出俊

    大出委員 法務大臣の時間がございせまんから、お約束の時間ですから最後にいたしますが、この問題はある意味では天下の一大事なんですね。これは、日本という国の国際的な意味での信を問われかねない問題ですね。警察国家といわれ、暗黒政治とまでいわれる朴政権と何も心中するわけにはまいらない。だから、突き詰めていけば断交ということになる、筋道は。そうであっても、この問題はやはり決着をつけなければならぬ。いいかげんな解決はできません。韓国政府機関が携わっている、介入しているということであっても、それを政治的に適当に処理をすることは、私は許されぬと思う。金大中氏を政治的に持ってくる、その条件がいろいろ出てくると思うのですけれども、そういういいかげんな解決であっては、国内世論は納得しないし、私どもは納得できない。これはあくまでもその意味での正しい決着をつけなければならぬ筋合いだ、こういうふうに実は思っておるわけでございまして、どうかひとつ最後までその筋は通していただきたい。これは法務大臣にお願いをしたいわけであります。  あわせて、取りざたされるものの中に、金大中氏が来日するとすれば、日本政治亡命なんということを認めた例がございますか。認めるとすればどういう条件になりますか。
  34. 田中伊三次

    田中(伊)国務大臣 政治亡命条約といわれます難民救済に関する条約というものがございますが、第二次欧州大戦直後に、各国に難民が出ましたので、各国がみな救済しようという条約を結んだわけであります。  そこで、日本の場合を申しますと、難民を救済するという制度ございません。ございませんが、在留管理に関係を持つわけです。外国人日本におって、そして亡命をするという問題ですから、わが国法律で申しますと、入国管理令によります入国管理という関係でタッチすることでございます。その場合においては、ただ一つの方法は、法務大臣のこれは専断でやれるわけでございますが、法務大臣の特別在留許可、いろいろ理由はあるが置いていい、こういう判断をいたしますと置くことができる。これは亡命に準ずるような人物を人道的見地から救済するという方法。その場合においては、法務大臣のやれる特別在留許可——特在とこう一口にいう。このほうがわかりやすい。特在の方針をとることができるのであります。出てきまして、しかし特在は本人意思です。日本に無理に置きたいから日本で特在の許可をするということはまかりならぬ。本人が帰ってきて、いつまでも日本におりたい、あるいはいつまで日本におりたい、それから先はどうするといえば、本人意思に従うということが人道的な処理でございます。そういう方針をとる考えで、とりあえず本人意思があれば特在を許す考えでございます。その後本人意向が変われば、変わった方向に向かってこれを極力尊重して処置をしてやる、行きたいところにやってやる、こういう考えでございます。
  35. 大出俊

    大出委員 そうすると、金大中氏がもし日本に再来日をした場合に本人意思がそこにあれば特在、つまり特別在留許可を法務大臣の専権において、専断においてやることができるということになりますね。  それじゃ、先ほど申しましたような筋でぜひひとつ最後まで御努力いただきますように法務大臣にお願いいたしまして、終わりたいと思います。ありがとうございました。  外務大臣に、続いて二、三点承りたいのでありますが、時間がございませんから、残り十分足らずでございますので簡単に承りますが、田中・ニクソン会談が行なわれました際に、幾つかの問題がございました。とりあえず簡単に承っておきたいのですが、一つは、ニクソン大統領の訪日、天皇陛下の訪米、この問題はおきめになったわけですか。これをまず一つ大臣から承りたい。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 天皇陛下の御訪米の件は、かねてから再々にわたってアメリカ側から御招待がございまして、両国で都合のいい時期に実現しようということになっております。ただ、先方から申し入れがございました、ことしの十月ではいかがかという御要請に対しましては、宮中の御都合等がございまして、他の時期にしていただきたいということに相なっておるわけでございまして、この問題につきましては、できるだけ早く、両国の間で都合のいい時期に実現をいたしたいと考えております。  大統領の訪日につきましては、こちらから、長い友好関係にある両国にとりまして、大統領がただいままで訪日の機会を持ってないということはきわめて不自然だと思うのでありまして、こちらから御招待をいたしたわけでございます。先方もそういう希望を表明されておりますので、ことしから来年にかけまして、来年終わりまでには実現したいものだということで、外交ルートを通じまして今後打ち合わせをいたしたいと考えております。
  37. 大出俊

    大出委員 時間がありませんから意見は申し述べませんが、予定だけを承ったわけであります。  次に、ミッドウエーなる空母の横須賀寄港問題が、九月の十一日ごろにアメリカを出まして、九月の下旬にという一つの情報がございます。これは旧来から何べんか承ってまいりましたが、これまた時間がありませんから、ひとつその辺が、防衛関係の記者がアメリカに行きまして司令官等に会っておりますが、その際に直接述べている中身でもございます。したがって、皆さんの耳に入っていないはずはない、こういうふうに思いますので、まずどういうことになっているのか、そこらのところをひとつお知らせをいただきたいのであります。
  38. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 空母ミッドウエーの寄港の問題につきましては、この春以来、春に来るだろう、夏であろうと、いろいろなことが取りざたされておりましたけれども、私どもといたしましては、大体秋ごろであろうという程度以上の情報を米側から受け取っておりません。ただいま御指摘がございましたように、先般、防衛記者団がホノルルを訪問いたしました際に、米太平洋海軍の首脳者が九月ごろであろうということを言ったという報道を私ども承知いたしておりますけれども、それを具体的に裏づける通報にはまだ接しておりません。
  39. 大出俊

    大出委員 そうすると、クレアリー太平洋艦隊司令官が、ホノルルを訪れた防衛記者団に、その時期は九月であろうということを言ったことは確認をなさっている、そこまででございますか。直接的に通告が日本側に来てはいない。で、もし入ってくるとすれば、外務省に事前に通告がございますか。
  40. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 この種の艦船の行動につきましては、事前通告という義務を米側は持っておりません。したがいまして、極端な例を申しますならば、一々の艦船の寄港、入港について、日本側に米側は通告をすることを必ずしも義務づけられておりませんけれども、ミッドウエーのごときかねて問題となっております艦船の行動につきまして、私ども深い関心を持っておることは事実でございます。
  41. 大出俊

    大出委員 外務省的表現なんですが、深い関心を持っていることは事実であるということは、通常の艦船の寄港については一々事前通告を受けていないし、求めてもいないが、事たいへんこれは長らく政治的な問題として議論されております艦船でございますから、その意味では関心を持っている、つまり、いつごろどういうふうに入ってくるかということを事前に通告を求める、こういう意思があるということですか。
  42. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ある日突然横須賀に入港というふうな事態は避けたいと考えております。
  43. 大出俊

    大出委員 ある日突然に横須賀に入港という事態は避けたいということになれば、ある日突然ではないことになる。つまり事前に知っておくことになる。そうすると、事前に通告を求めることになる。ほっぽっておけばある日突然になるんでしょう。その辺のところをはっきりしていただけませんか。
  44. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 米側との合意によりまして、事前の入港の通告を米側に義務づけておりますのは、原子力水上艦船の入港でございます。これ以外につきましては条約上の義務を米側に負わせておるものではございませんけれども、ただいま御答弁申し上げておりますように、ある日突然というふうな事態にならないように極力情報の把握につとめてまいりたい、こういうふうに考えております。
  45. 大出俊

    大出委員 多く言いませんが、随時協議だってあるわけですから、随時外務省は米側と連絡をとっているわけですから、そういう意味で、ある日突然にならぬようにあらかじめアメリカ側から聞く、あるいは通報を求める、あるいは受ける、どうでもいいのですが、そういうことはやる、そういう意味で関心を持っている、こうおっしゃっているのだと受け取ってよろしゅうございますか。
  46. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 情報の入手に極力つとめてまいります。
  47. 大出俊

    大出委員 次に外務大臣に承りたいのですが、総理の訪欧、訪ソというのはどういう予定になっておりますか。いつからおいでになって、いつごろまでという予定はおきめになりましたか。先般、中身についても、外務大臣は、官房長官等をお入れになって総理と打ち合わせを長時間おやりになっておりますが、これはどういうことになりますか。簡単でけっこうですから、お答えをいただきたいと思います。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 総理が訪欧、訪ソ計画をもくろんでおりますことは事実でございます。先方、訪問国との間で日程を詰めておるわけでございます。関係国と日本との間できまりまして発表するという段階にまだ至っておりませんけれども、九月下旬から十月上旬にかけて実行いたしたいと考えております。
  49. 大出俊

    大出委員 時間がありませんのでこれで最後でございますが、防衛庁の防衛局長久保さんに一、二点承りたいのですが、来年度予算の概算要求がおきまりになったようでありますけれども、大体どのくらいの額に積算の上でなっているかという点、それをお答えをいただきまして、この中で新型戦車、これは六一式改と言っていた旧来の戦車だろうと思うのでありますが、三年分一緒に発注する。これは百六十両でございますか。これはどうも、いままでの三次防以来のいきさつを私も詳しく知っておりますが、いささか予算の先取りのにおいがする。国庫債務負担行為といえども、これは予算でございますから、そういうふうに思うわけでありますけれども、これは一体どういうわけでこういうことをなさるのか、時間がありませんから深くは入りませんが、とりあえず承っておきたい。
  50. 久保卓也

    ○久保政府委員 来年度予算は、ちょっと数字を間違えているかもしれませんが、一兆二百億円が防衛本庁で、防衛施設庁が一千三百億ばかりであったかと思います。数字は、防衛本庁が一九・四%の伸び、それから総体で二三%の伸び。これは本年度の予算との対比であります。伸び率は間違いございませんが、その他の数字は間違っているかもしれません。  それから百六十両の一括契約の分でありますが、従来、防衛庁としては、二次防以来、新しい主要な兵器について長期的に調達する計画のありまするものは、価格の安定と、それから調達の恒常化といいますか、安定化といいますか、そういう見地から一括契約したのがございます。たとえば二次防では、やはり六一戦車でありましたが、当時たしか九十両であったと思います。それから私の記憶では、小銃につきましても一括契約を当初やったと思います。今回の場合には、戦車と自走火砲について一括契約をやる予定になっております。こういうものにつきましては、四次防で確かに総体が戦車で申せば二百八十両ということになっておりますが、年別の割合についておおよそ大蔵省の事務当局合意はしておりまするけれども、もちろんオーソライズされたものではございません。  そういう意味で、初年度が四十両、あと六十両、六十両というようなペースで調達をするということで調達の安定化をはかることと同時に、御承知のように現在価格の向上が非常に激しいわけでありまして、ほっておきますると、人件費あるいは材料費のアップが、単年度の契約でありますると非常に会社側との折衝が困難になるというようなこともありまして、会社側の要望というよりも、こちら側で算定をしたアップ率をかけたもので一括契約するというような方向で進みたいというのが、実は装備局であるわけですが、でやりまして、これを一括契約で認めるか、あるいは単年度になるか、まあ大蔵省との折衝問題になろうかと思いますが、真意はそういうところであります。
  51. 大出俊

    大出委員 これは突っ込んだ議論は後ほどまたいたしますが、私は非常にこれは関心を持っているのですよ。というのは、三次防のときにも二百四十両でございましたか、年々六十両ずつ発注されておりますね。これは六一式ですね。ところが、この六一式の改、新型戦車というものは、まあ六一式が三十五トン、中型戦車でございますが、三十八トンぐらいにふえているのと、装備が全然違うのですね。もちろん一〇五ミリ砲を載っけるわけですけれども、赤外線照準装置であるとか、あるいは完全密閉式であるとか、あるいはシュノーケルなどをくっつけて水の中を走るとか、たいへん変わってきているわけですね。  六一式が始まったときでも、ずいぶんたくさんの欠陥があって問題になった時点がございました。聞いたことございますけれども。これまたいろいろの問題が実はいま出てきそうな気がするわけでありまして、予算的な立場からの問題もあり、かつまた全く新しい形になる戦車でございますだけに、まだ何台かしか試作してないと思いますけれども、そういうものを三年分一緒に発注する。やはり私はこの新型戦車そのものも議論が要ると思う。それも、いまから議論をすればいいじゃないかと言われればそうかもしれぬけれども国会の日程の関係もあります。そう簡単に、これを三年分同時発注するんだとすましていられたんじゃ、私どもこれは了解できない。  したがって、この新型戦車というのは、もう一ぺん聞きますが、どういう性能で、今日までどういう開発をしてきて、これを一体あなた方は百八十両一緒に発注する。たいへん単価が当初の計算とは違うわけですね。二億こえているわけでしょう。そこらのところの説明もない。とりあえずこの三点を簡単に御説明いただきたいのです。私どもはこれに賛成できない、この点だけ申し上げておきますが、とりあえずいま三点を私、申し上げましたが、御説明いただきたい。どうしてこんなに単価が開いたりしたのかということを含めまして。
  52. 久保卓也

    ○久保政府委員 二次防のときには、六一戦車を当初つくりましたときは、一億円から出発をしまして、漸次八千万弱に減ってまいりました。で、二次防から三次防にかけてのころはまだ人件費のアップ率は高くありませんでしたが、三次防から開発を始めましたこの新型戦車につきましては、三次防から四次防の段階にかけての人件費のアップが非常に高かった。それから材料費が非常に高騰しているということ以外に、一〇五ミリの戦車砲、これはイギリスからの輸入でありますが、それを載せていること。それからそれの懸架方式に特異な方式をとっていること。それからいまおっしゃいましたように気密方式をしていること。したがいまして、水中についてある程度航行が可能であること。それから赤外線の暗視装置、たしか照準装置をつけているということ。まあ、そういうようないろいろないわば世界一流といいますか、に近いものを開発できたということとの関連で、しかも外国の場合ですと、五百両、千両という単位で発注いたしまするから、量産単価が非常に安くなりまするけれども、そういったことでのいまの見通しは、これは装備局と会社との話で二億七千万くらいということでありまするけれども、これが最終価格というふうには装備局も考えておりませんで、いずれ年末までにはもう少し価格については詰めてまいりたいということを申しておりますので、一応そういうような要素が価格高騰の原因になっているというふうに思います。
  53. 大出俊

    大出委員 最後に申し上げておきますが、六一式なら八千万くらいでつくったわけですね。ところが四次防のときに私、説明聞きましたが、この四次防計画おきめになるときの一両の単価は一億九千八百万円、そういう見込みだったんですね。ところが、四十九年度予算の概算要求では、百六十両分で四百四十億をちょっとこえておりますね。そうなると一両分二億七千万円をこえる。一億九千八百万円という見積もりで四次防を私どもに説明しておいて、それが一車両二億七千万円をこえる。一億九千万が二億七千万をこえるんじゃ、ちっとやそっとの単価の差じゃない。こういうべらぼうな単価の変化があるにもかかわらず、説明は説明でしておいたんだが、時期がたったから上がったんですと言ってすまして概算要求をこしらえて、事務当局にオーソライズされたものじゃないが了解を得ているなんということでかってにやられたんじゃ、何のために一体四次防積算にあたってこういう説明をしたか疑いたくなる。  そのときだって、これは三十五トンが三十八トンくらいになることはぼくらだってわかっている。百五ミリ砲を載っけることだってわかっている。あるいは赤外線照準装置をくっつけることもわかっている。シュノーケル出して水中を平気で走っていくことも知っている。あるいは完全密閉式で、細菌があろうとガスがあろうと、あるいは放射能があろうと平気で走れることもわかっている。どこが一体どう変わって、何がどう高くなって一体こういう単価のはね上がり方をしたのかということまで、私どもは全くつんぼさじきで、あなた方かってに、何がどうこう性能を高めたからと言うが、性能ぐらい初めからわかっている。それならば、ぼくらが知っているものが一体どう高まったのか、そこらまではっきりしなければならぬ。これは国民の税金を使うのですからね。オーソライズされていないにしても了解を得ているとあなたはおっしゃっている。そうだとすると、そういうことを独断専行的におやりいただいたのでは、何のために四次防のときにそこまでのことをわれわれ聞いたのかわからぬ。まことに心外です、これは。そこらを御解明願いたい。
  54. 久保卓也

    ○久保政府委員 四次防の場合には四十七年度当初予算の単価で組んでおります。したがいまして、そのときの見込みにおける材料費、物件費あるいは人件費等の値上がりで計算をやっていると思います。したがいまして、四十九年度分以降のものとしての計算の基準がおそらく違うのだろうと思います。これは防衛局長としては御説明申し上げる能力はございません、所管が違いますので。ただ私、大蔵省のほうで事務局に一応了解を得ていると申しますのは、単価の問題ではありませんで年度割りの数量の問題であります。数量については、大蔵省は一応こんなことかなという程度の了解を得ておりまするが、単価の問題は、むしろ来年度予算としてこれからの問題でありますが、予算がきまったらおしかりをいただいて、御究明いただいたほうがよろしいんではないかというふうに思います。
  55. 大出俊

    大出委員 きまっちゃってからではおそいんじゃないですか。予算がきまっちゃって、きまったものを四の五の言ったって、政府に編成権があるんだから。だから、いま一言申し上げたんだが、それでもあなた方おやりになるというなら、これはかまいませんよ。ただ私どもは断じてこれは認められない。それだけ申し上げておきます。予算がきまってから御論議いただくのが適当だと言っても、きまっちゃってからではしょうがないじゃないですか。きまってしまえば、また組みかえろの何のという騒ぎになるだけのこと。だからあらかじめ念を押しておく。こういうことをおやりになると、あとでただじゃ済まない、これははっきり申し上げておきます。  シュレジンジャー新アメリカ国防長官が珍しい発表をしております。韓国、台湾の米軍の引き揚げ並びにその時期を述べていますね。なぜ一言ここで聞いておきたいかといいますと、田中・ニクソン会談のときに、かつて防衛二法をめぐってこの席で楢崎弥之助君が質問いたしました韓国援助の問題。防衛庁がつくった一次原案に、憲法との関係その他で直接的軍事援助ができない、だからトラックなり通信器材なり、あるいは橋梁建設なり道路建設なりというようなことで援助をすることはできる、この方法をとったらどうか。これは一九六八年の例のプエブロ号事件のとき以来検討が行なわれて、韓国軍装備の近代化、特に情報機能その他が非常におくれているというようなことで、装備近代化五カ年計画が立てられている。ところが、三百億ドル、四百億ドルを使うベトナム戦争がありましたから、アメリカ側は議会がこれを切ってきた。だから、当時の韓国軍装備近代化五カ年計画でアメリカ側の負った責任十五億ドル、これが六割ぐらいしか行なわれていない。この残りを肩がわりしろという話は、田中・ニクソン会談以前にすでに事務レベルであった。これは五月三十日の安保協議委員会の事務レベル会議だったと思いますけれども、ここに提出をする日本側の資料の中に、そういった形での援助の方法が防衛庁の原案の中にある。これをこの席で明らかにしたときに、そういう原案はございました。ございましたが、最終的に出ていくときにはなくなりました、こういう答弁になっている。だが、日米会談で再燃をして、新聞が大きくこれを扱いました。そういう背景がある。  そこらといろいろからみますから、米国防長官のこの発表を皆さんは一体どういうふうに受け取っておられるのか。台湾のほうは、ベトナム戦争で二千七百から三千ぐらいが駐留しておりましたが、それが六千にふえている。だから、そのうちのベトナム戦争との関連におけるコマンドの部分が帰るんだという説明になっているようでありますけれども、一年ないし十八カ月というのでありますから、一年ないし一年半の間にということになると思うのでありますが、韓国、台湾の米軍の引き揚げ問題、これは皆さん方はどういうふうにお受け取りでございますか。
  56. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 シュレジンジャー国防長官の発言について御指摘がございましたが、これは八月の十九日であったと思いますけれども、テレビ会見におきまして、シュレジンジャー国防長官がテレビ出演者の質問に対して、アジア地域の米軍の維持の問題について答弁をいたしました際に出てまいった問題であります。韓国からの米軍の引き揚げの問題について、シュレジンジャー国防長官は、この地域の緊張緩和の促進を前提としてと、こういうことを申しました上で、いろいろ質問が繰り返された中で、今後一年ないし一年半という程度の時間を想定してこの地域からの米軍の撤退を考える、また台湾からも兵力の撤退を考えている、こういう答弁をしたというふうに承知いたしております。  この朝鮮半島における米軍の駐留、これが将来どういうかっこうで展開されていくのか、あるいは撤退していくのかという問題につきましては、たとえば七月の中旬に東京に参りましたロジャーズ国務長官自身が記者会見でも述べておりますように、米側としましては、少なくとも今会計年度中は韓国からの撤兵は考えておらないということを言っておるわけでございますし、従来の米政府の公の立場は、会計年度を越えて次の年度以降についてのコミットメントをすることは、議会との関係もあってできない、こういうことでございます。したがいまして、今会計年度に関する限りは韓国からの撤退は考えないということにとどまるわけでございます。その先がどうなるかということにつきましては、議会との関係、会計年度との関係、そういうことが考えられながら考慮されていく、こういう事態であるというふうに承知いたしております。
  57. 大出俊

    大出委員 大平さん、日米会談の席上の、装備近代化計画の十五億ドル問題をめぐる日本の肩がわり、これは結果的にどうなったんですか。時間がありませんから言いませんが、韓国新聞などによりますと、日本アメリカ両国における韓国軍の問題についての秘密の話し合いというようなものをにおわしていますがね。表街道で否定して陰でおやりになるという気があるのですか。
  58. 大平正芳

    大平国務大臣 その問題は、日米首脳会談では、先方からも全然提示がございませんでした。
  59. 大出俊

    大出委員 日本新聞が取り上げてたくさん書いたものを、提示がございませんでしたと大臣答えたんじゃ、どうも話の筋がおかしくなってしまうじゃありませんか。しかしこれは、時間がありませんからあらためて聞きましょう。全くなかった、将来ともそういうことは出てこない、そういう認識でいいのですな。
  60. 大平正芳

    大平国務大臣 全くございませんでした。将来ということになりますと、出てくるか出てこないかわかりませんけれども、私どもといたしましては、そういうことが出てくるものとは予想いたしておりません。
  61. 大出俊

    大出委員 平井さん、横浜市瀬谷区の上瀬谷にございます米軍基地のところに海軍道路という道路がありますね。この海軍道路をめぐって、いま、米軍、あるいは市当局、あるいは警察等々でいろいろもめている問題がありますが、御存じでございますか。
  62. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 申しわけありませんが、詳細については存じておりません。
  63. 大出俊

    大出委員 それでは、これはやがて防衛庁に、防衛二法のときのたな上げ部分等について、国政調査の形でお伺いをする予定がございますので、当面の問題でございますが、ひとつお調べおきをいただきたい。そのときにひとつお答えをいただきますように、お願いを申し上げておきます。  以上で終わります。
  64. 三原朝雄

    三原委員長 中山君。
  65. 中山正暉

    ○中山(正)委員 せっかくの機会でございますので、数点この金大中事件に関してお伺いを申し上げておきたいことがございます。  朝野をあげての金大中事件、非常に大きな問題になっておるわけでございますが、実は私も金大中という人に会ったことがあります。それは昨年、四月の二十九日から数日間、連休を利用して日韓議員会議がソウルで行なわれましたときに、表敬訪問その他で行ったり来たりしておりますとき、ソウルの南大門の近くの東急ホテルの前に私が立っておりましたら、見知らぬ人物が私のそでを引きまして、そして朴大統領と大統領選挙を争ったことのある人物、金大中、キムテジュンというが、その人物に会ってみないかというお誘いを私、受けたことがあります。そこで、私も興味がありましたので、そういう大統領候補、百万票ほど違って朴大統領に選挙で敗れた人物というのはどういう人物であろうと政治家としての興味を持ちましたので、実は森下元晴議員をお誘いをしてその案内をする人物についてまいりました。  そうしましたら、非常に密集をした人家の中の四、五階建てのホテル。何というホテルか、私はうっかり忘れてしまいましたが、そのホテルに案内をされて、細い階段をそれこそ映画もどきに連れて上がられました。部屋に入ってみると、金大中氏が目の前にすわっておりました。そして金大中氏は、時間がないのでということで、三、四十分でございましたが、話をしました。よその国の中でそういう現大統領と対立をしている人でございますから、私は自分の意見をあまり言いませんでしたが、向こうはしきりに、朴政権ではだめだ、自分が大統領になったら必ず南北統一をなし遂げてみせる、こういうお話がございました。  私は最後に、一つそれじゃ質問をさしてくれと言いました。あなた南北統一と簡単におっしゃるが、二十数年前に共産主義国家になって、土地から私有財産から企業から全部国家が取り上げた国、その国を自由主義に戻す方法は一体何でございましょう、それを私にお答えを願いたい。金さんは私と森下さんに、若い国会議員の仲間の人たちにいろいろ自分の立場を説明してほしいという御依頼がございましたので、その御依頼を受けるためには、その質問に御答弁願わない限りは私は御協力申し上げるわけにいきませんのでと、こう申しましたら、もうばったりと答弁が詰まってしまいまして、全くお答えがございませんでした。そうでしょう。考えてもみてごらんなさい。自由主義国韓国が共産主義国に統一されるという、その統一ならば成り立つかもしれない。政府のえらい人が、ある日突然、あなた方の財産はきょうから国のものになりましたと宣言をするだけで韓国は北と同じ国になるけれども、あなたが大統領になったって北が自由主義国家に戻るはずもないし、そんなことをさせる原則も連中は持っていない。その中であなたがそういういいかげんなことをおっしゃっておっていいのですかと言って、私は森下議員と二人おいとまをして帰ってまいったのでございます。  彼は女性的な人物でございました。いまソビエトでは、サハロフとかソルジェニツィンという人が、ソビエトの国内で自国の体制を堂々と批判をしております。御承知のようにソ連憲法百二十五条では、社会主義建設のためにしか言論の自由は許さないというちゃんとしたワクがはまっております中に、その中で命をかけて自国の政治に対して批判をしておる人は私はりっぱだと思いますが、その後金大中さんはアメリカへ行かれたようでございまして、日本にも数度来られておる。そこで私は、男らしくもない、海外から自国の政権に対して批判をしておる人が日本に入ってきたときのパスポートは、一体何を持っていらっしゃったか、これをお伺いをしたいと思います。自国の国民が他国に行って、自国の国民としての利益を保護してもらうために相手国にその保証を頼むというのがパスポートを持つゆえんであろうと私は解釈をいたしておりますが、いなくなったときに、金大中という人はどんなパスポートを持っておりましたか、それを御答弁願いたい。
  66. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 八月八日、金大中氏がホテルからいなくなりました時点におきましては、赤十字国際委員会の発行しております旅行文書でございます。
  67. 中山正暉

    ○中山(正)委員 外務大臣いかがでございますか。金大中さんは韓国のパスポートを持っていらっしゃらなかった。韓国のパスポートを持っていない人、韓国が保証していない人が日本に入ってきた。かりにもそれがかつて朴大統領と対立をした大統領候補でございます。その人が自国のパスポートを持って来ないのに、日韓という非常に深い関係があると、さっきから法務大臣外務大臣もおっしゃっていましたが、その非常に深い関係のある朴政権に外国の力を利用して対決を試みようとする人が、韓国のパスポートを持ってこないのに日本に入国を許したということは、日韓親善に対して一体どんな影響があるのでございましょうか。それ自身が、もう韓国主権というものを認めていない、日本韓国に対するたいへんな信頼を裏切る行為ではないか。私は水ぎわで入国を拒否をするのが当然ではないかと思いますが、外務大臣いかがお考えでございましょうか。
  68. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 金大中氏のパスポートに関しまして、事実関係だけ述べさせていただきます。  金大中氏が日本に今回入ってまいりましたのは一月の五日でございますが、その際には韓国のパスポートを持っておりました。ところが、そのパスポートは二月の十七日に失効いたしまして、同氏は三月にアメリカにおもむく。そうしますと同氏は、韓国のパスポートを更新するか、それができなければ、あるいはそれを望まなければ別途の方法をとらざるを得なかったわけでございますが、二月の二十七日の段階で赤十字国際委員会に渡航文書の発給を依頼して、それをもらってアメリカに行き、また引き続いて日本にそれで入ってきた、こういう事実関係でございます。
  69. 中山正暉

    ○中山(正)委員 外務大臣のお考えをお聞きする前に、いまの事実関係でございますが、日本で一ぺん切れて日本赤十字社が渡航証明を出しておるということは、私は今回の事件を通じて初めて知ったわけでございます。いずれにしても、それで再度出国をして日赤のその渡航証明が出たということは、韓国が延ばさなかったということだと思いますが、韓国が自国のパスポートを延ばさないということは、以後韓国人として保証をしないということであろうと思います。韓国人としての権威もすべてを失ったその人物が、一たん外国へ出て、またそれで日本に入ってくる、こういうことが親善関係に一体いい影響を及ぼすのかどうか。私は、韓国政府から、何を言っておるのだ、日本が先に主権を侵しておるじゃないかと言われたら一体どう答えたらいいんだろうか、こういうふうに思いますが、ひとつ外務大臣、御答弁願います。
  70. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 先ほど御説明いたしましたのは日本の赤十字でございませんで、赤十字国際委員会で、これは本部がジュネーブにございまして、これは国際的に五十数カ国が認め合った慣例といたしまして、無国籍あるいはどこかの国に所属しておりながらもそこの旅券を持ちたくない場合には、赤十字国際委員会独自の判断で出しておる渡航文書でございます。
  71. 中山正暉

    ○中山(正)委員 事実関係の御証明わかりますのですが、ジュネーブにわざわざ取りに行ったわけじゃないと思います。日本の赤十字社でこの金大中に対して証明を出したと思いますが、それにはいろいろな人が協力をしたことであろうと思いますし、法務省でそれを認めるという行為が当然にあったことであろうと思います。  私は、芸人が自分の国の政治をきらって、自分の国のパスポートを持つ気がなくなったとか、そういう場合ならいいですが、さっき言いましたように、かりにも大統領候補でございます。その方のパスポートが切れた、その事実を安直に認めることは、一体韓国政府に対してどうなのか。日本の憲法ではいっておりますですね。「平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」「自國のことのみに専念して他國を無視してはならない」と日本の憲法の前文には書いてあります。その行為からして信頼というものを裏切る行為につながるのではないかと私は思う。なぜ韓国はこの点をついてこないのか。向こうは、自由主義国同士の連携というものを傷つけちゃいけない、日本に恥をかかしちゃいけない、こういうことで、共産主義とわずか四キロで対決をしている韓国立場として、私は日本に恥をかかせないということをしておると思うのです。  それが、日本で、いま国会で聞いておりますと、もう一方的に、さっきの法務大臣の御答弁なんか聞いておりますと、何かやってきたら亡命を認めるような話です。ついでに外務大臣に御答弁願いたいのですが、もし日本へやってきてこれが亡命をしたときには、そのあとの日韓関係は一体どうなりますか。あわせてひとつ御答弁願います。
  72. 大平正芳

    大平国務大臣 入管行政は法務大臣の管轄のもとにあるわけでございまして、その案件が外交関係外務省と協議を必要とすると法務省において判断された場合、私どもへ御協議をいただくことがいままでの慣行でございます。日本の出入国管理政策というものは日本がきめておるわけでございまして、私は法務省が現在の法制下で適正に運用されておると思うのでありまして、それが適切であるかないかという問題は立法政策の問題になると思うのでありまして、私ども政府にありまして、これをとやかく言う立場にありません。しからば、本件について、外交上の関連があって私どものほうに御協議をいただいたかと申しますと、私にはそういう記憶がないのであります。
  73. 中山正暉

    ○中山(正)委員 入管のほうにお願いをしておきますが、以後そういう政治的な背景を持った方がお入りになるときは、ぜひひとつ外務省と御協議を密にしていただきたいと思うのです。東京都議会でも、それから国会でも、この無国籍者に対する警護をつけたかというばかな話が堂々と横行をしております。無国籍者にまで警護をつけたかという話に対して、なぜそういうことを根拠にして拒否をなさらないのか。  私は、日韓関係の重要性というのはたいへんな意味がある。共産主義というものと三十八度線で接しておって、かつて一九五〇年に、あの中ソ軍事同盟条約ができた六カ月後の六月二十五日に、突如三十八度線を破って南進をしてきた。今度は一昨々年の九月六日に北朝鮮と中国がまた軍事同盟条約を結んでおります。だから今度は何が起こるだろうと思って国家非常体制をとられた、非常事態宣言をせられた韓国はあたりまえだと思うのです。共産主義という一党独裁をする国と隣接をしておる自由主義国は、共産主義国と戦うために、いたし方なく自国の利益、国益をそこなう連中に対して処置をとるのは、私はあたりまえだと思います。  私は特に、金大中事件に関して韓国はやっていない。田中法務大臣第六感によると、韓国のKCIAがやったかもわからないという話がありましたが、実は私は法務大臣の予感とは全く違う予感を持っております。なぜかといえば、どうも怪し過ぎるのです。私よりあと、十一月に会われた宇都宮徳馬という先生。この宇都宮徳馬先生のおとうさんという人は、ロシア革命を起こすために、陸軍大将として、明石元二郎、それから田中龍夫先生のおとうさんの田中義一という、ロシアに行っていた日本のスパイに対してどんどん金を出して、レーニン革命が行なわれるように援助をした方でございますが、その方の御令息でございます。その御令息が十一月にお会いになって……(「中傷じゃないか」と呼ぶ者あり)中傷ではない。事実関係、歴史を話しているだけでございます。  ですから、その感覚を見ておりますと、あのホテル・グランドパレスで会って、いなくなってから一時間後に後藤田長官に連絡をした。宇都宮徳馬先生を通じて連絡をしたという話です、一時間もたってから。なぜすぐに一一〇番に電話をかけなかったか。そして特に、その直後に金在権という公使があのホテルに行っておられます。私は、もし韓国政府がやっておるならば、のこのこと金公使が出かけるか。特に金公使という方は、天皇陛下とマッカーサー元帥が初めて会見をされたときに通訳をされた方でございます。その金公使が、そういう栄誉をになっておられた人が、KCIAがやったかもわからないところへぬけぬけと出ていくはずがないと私は思います。  特に金大中という人は、前の大統領選挙の前には、自分の政治的な名望をあげるために、自分の家に爆薬をしかけた方でございます。私のようなチンピラ代議士に接触をしてくるぐらいでございますから。まあ宇都宮先生、特に誘拐をされる日には、三重県の代議士、元官房長官もしておられた方にお会いになる予定もあったそうでございます。日本でのいろいろな政治工作をしておられたのだろうと思いますが、私は、もし韓国政府がやったのならば、韓国へ入れてあんな新聞記者に四日も五日もさらさなくても、そのまま刑務所へすらっと入れてしまえばいい。ああいう非常事態体制、準戦時体制をとっておる国家としては当然にできた筋書きだと思うのに、なぜ四日間もさらしたか。私は自分で想像しておるのに、北朝鮮か北京かにあらわれるかもしれません。シアヌークの前例があります。ですから、平壌にあらわれるかもわからないと思っておったのが、京城の地元にぼっとあらわれた。それが新聞記者に先に知らされる形であらわれたのに対して対策がとれなかった。私は第六感というものを許されるとしたならば、田中法務大臣大臣第六感を出されるならば、私も国会議員としての第六感を出しても差しつかえないだろう、こう考えております。  だから、そういうことになってまいりますと、これまた歴史話で恐縮でございますが、明治十七年、日清戦争の十年前に、日清戦争の原因になる甲申事変というのがありましたが、あの時代とよく似ていると思うのです。非常に中国に弱くなった韓国。ベトナムが七百年の中国からの属国を離れて去っていった。チベットが去っていった、蒙古が去っていった。残ったのは韓国だけ。それに対して李鴻章の子分だった袁世凱がどんどん出てきて、韓国に清国系の政党事大党をつくらせていた。そして閔という李王朝の親戚を事大党の党主に仕立て上げた。それに対して、日本派の朴泳考とか金玉均とかいうのは、日本派の独立党というのをつくった。その独立党のクーデターが原因になって、中国の軍隊が日本人の大虐殺をしたのが、御承知の韓国半島における日本人と中国人の最初の接触だと私は思っております。  その時代とよく似ている。北には北朝鮮がある。当時の事大党に乗っておったのがロシアと中国でした。いまも北朝鮮にソビエト・ロシアと中国がちゃんと乗っております。私はまことに歴史は繰り返しているなあという実感があるのでございますが、大臣、もし召喚が拒否される、そうすると断交ということになりますでしょう。一体その辺から、断交をしたら日本の漁船を拿捕する。向こうは六十万の軍隊を持っておりますからね。これはとっぴな想像をしていけないですが、向こうから砲火を開かれるというような場合があったら一体どうなるんですか。  私は、日本に対して砲火を開かれたら、憲法で、あらゆる紛争は武力によって解決をしない、その原因もつくらないという約束をしている日本が、韓国自体の国益にとって、こんなになわのれんをくぐって出たり入ったりされるように、自由自在に出たり入ったりされているのは、韓国が悪いんじゃない、日本が悪いんです。出入国管理法をつくるといえば野党が全部反対。韓国人の北朝鮮系の人たちが国会の中まで入ってきて、議運の委員長室なんかは、いつでもかでも出入国管理法反対とやっている。私はむしろ、いまこそ人を非難するときではなくて、日本自体の態度をもう少し明確にすべきじゃないか。そういう法律体系を整える。もっと日本のまわりを厳重に監視する。私はよその国にけちをつけているときじゃないと思うのですが、外務大臣のお考えを伺いたい。
  74. 大平正芳

    大平国務大臣 午前中もお答え申し上げましたように、本件わが国の法域に起こった非常に不幸な事件でございます。したがって政府といたしましては、こういう事件の再発を防止せなければならない、日本の公安を維持してまいらなければならないわけでございますから、まず起こった以上は、この事件解明をしなければならぬわけでございまして、そしてその解明を通じましてこの解決をはかっていく、国の内外に納得のいく解決をやってまいるということがわれわれの任務であろうと思っておるのでありまして、その事件の究明にあたりまして、いま重要な参考人韓国におるわけでございますので、先方協力を得ましてその解明を急ぐという措置を講じておるわけでございます。それがいま政府立場でございまするし、いま私が韓国側折衝をいたしておる問題の焦点でございます。  第二に、中山さんのお話を伺っておりまして、今日わが国の自由な開放された体制につきまして憂慮を込めた御発言があったわけでございまして、それは先ほども出入国管理で申し上げましたように、いわばこれは国会の管轄になる立法政策の問題であると思うのでございまして、政府立場で、いまの法律じゃ足らぬとか、いまの制度じゃ困るとかということを私から申し上げる立場にはありません。
  75. 中山正暉

    ○中山(正)委員 いずれは総理をねらわれる大平大臣でございますので、私ども大平大臣に大いに期待をいたしておるわけでございますから、その点、国会の所管だからということではなしに、私ども若い者を指導する大物政治家としてのお心を私は聞かせて実はいただきたかったわけでございます。ですが、そういう御答弁でございましたら、一体それじゃ呼ばれてきて、さっき言っておりました亡命をした場合に、外務大臣の所管として、どういうことに日韓関係はなりますのでしょうか。亡命を日本が許した場合、一体どういう韓国との関係になると御想像になられますでしょう。これは想像でございますが、お呼びになっているのですから、その事態は当然予想されていると思います。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 まず、金大中氏ほか二名の方の再来日実現するかどうか、まだきまっておりません。それから、それが幸い実現した場合に、捜査当局としては直接任意の事情を御聴取になるだろうと思うのであります。その場合、御本人が亡命するかしないかということは金大中氏等の意思なんでございまして、私が憶測をするわけにいかないのであります。ただ万一、そういうことが起こるか起こらぬか知りませんけれども先ほど法務大臣が御答弁申し上げたように、日本の出入国管理制度というのがあるわけでございまして、その場合、金大中氏ばかりでなく、わが国におきましてそういう亡命の事例もあるわけでございますが、その取り扱いは法務省が出入国管理令のワク内におきまして処理されるものと思うのであります。そういう仕組みになっておるわけでございますが、私といたしましては、韓国ばかりじゃございませんで、諸外国と友好親善関係を発展してまいるという、いかにかしてやらなければならぬという立場でございますので、終始、そういうワク内において行なわれることにつきまして、円滑な処理ができて日韓関係の基本をそこねることのないように、極力配慮していかなければならないものと思っております。
  77. 中山正暉

    ○中山(正)委員 どうぞひとつその気概でお願いをしたいと思います。それぞれの役所の方々はシカを追う猟師山を見ずという形で、シカの入った穴だけ見ていていただいたらいいのですが、私はやはり、政治家としての大臣は、シカの入った穴だけでなしに、山全体を見ていただきたい。  特に、金鍾泌総理の御談話の中にも、最近、日中正常化をした直後から、北朝鮮の日本に対するたいへんな工作が始まったということを伺っております。それから、印パ紛争のさなかであまり目立っておりませんけれども、スリランカ共和国であの印パ紛争のさなかに、一万人という人間が死ぬ大暴動がありました。それの武器弾薬を提供したのは北朝鮮大使館でございます。退去命令をスリランカ共和国から出されておられることは、外務大臣でございますからよく御存じであろうと思いますし、リーダースダイジェストで読みましたが、メキシコのKGB乗っとり作戦というのが四カ月にわたって連載をされておりましたのを読みますと、メキシコ・オリンピックの直前にメキシコで大暴動を起こしたあの連中、首謀者は、全部東ドイツを通じて北朝鮮へ入って軍事訓練を受けております。日本の田宮高麿もその例にならったんであろうと思いますが、そういうことを見ておりますと、私はいま、自由主義政権同士である日本韓国が、この問題を通じてわれわれの主権を侵された、それに対しては厳然と対処をしなければいけませんが、おのずからそこに自由主義国家同士としての節度というものを私は持っていただきたい。特に、かつて劉少奇が、あのマルコポーロ・ブリッジで清水中隊と宋哲元が対峙する中で、爆竹をならしたのが日中戦争の原因だ。蒋介石を処刑することを西安事件のときにとめた。それは蒋介石と日本を戦わせて、そこに中華人民共和国ができた。今度は朴政権田中政権と戦わして、一体だれが漁夫の利を得るのか、いまだれがにんまり笑っておるかということは想像にかたくありません。  特に私は、韓国で二人の日本におられたスパイに会う機会を得ました。金兄弟です。金兄弟御本人に会って話を聞いてみますと、この人は浦項製鉄所の専務取締役、日本の東大を出ておられるりっぱな方でございます。御本人に会いましたら、自分は日本におりましたが、家族も知らないでしょうが、秋田県の海岸から漁船に乗って北朝鮮へ十日行ってまいりましたと私におっしゃいました。今度、弟の北大の講師をしている方に、永登浦という刑務所で会いましたら、その方は泣きました。私のような自然科学者を思想が犠牲にするというのはけしからぬと、こうおっしゃいましたが、あなたはそれじゃなぜそういうことになったのですかと言いましたら、秋田県からおにいさんのほうは一九六一年に北朝鮮に渡られた。弟と妹に会わしてやると言ったが、会わしてくれなかったとおにいさんも言っておられました。弟さんのほうも、秋田県の海岸から漁船に乗せられて北朝鮮に一カ月行ってまいりました。弟と妹に会わしてやるといって、会わしてくれませんでした、こうおっしゃっていましたので、私は、あなた、それごらんなさい、パスポートを持たない旅行をしているじゃないですか、あなたがむしろ政治をさわったんです、私はそういうことを言ったのでございます。  金大中事件に目が奪われておりますが、「北朝鮮スパイ 逮捕の二人を起訴」とここに書いてあります。本年八月五日、山形県の温海の海岸に、日本語をしゃべれない、韓国語しかしゃべれない三人が逃げてきて、一人は警官をなぐり倒して、一人逃亡中でございます。こんなことはどうなっているのですか。国交のない国から日本語をしゃべれない人がどんどん入ってくる。片一方は、連れて出たやつのほうはごちゃごちゃ言っていますが、堂々とゴムボートを持っている。そして北朝鮮は遭難をしたのだと言っていますが、遭難の浮遊物も何もないというのですね。海水浴場のすみっこのほうで、ずぶぬれになってうずくまっているやつを警察の人が不審尋問をした。  さっき言いました金兄弟、このお二人に聞きましたら、自分が浦項製鉄所の専務になって日本に帰ってきたら、北朝鮮総連の人たちがどんどんきて、浦項の製鉄所はどんなになっていますかと、いろいろな世間話。自分は日本というのんきな国に住んでいるから、何もわからずにいろいろな話をしました。それが韓国では法律に触れるそうです。日本法律に触れないことが韓国法律に触れるということを、この金大中事件でも私は基本に考えないといけないと思う。ですから、警察庁どうですか、こんなのはどれぐらい入ってきているのですか、朝鮮のスパイ関係は。そういうわからない人も一ぱいあると思いますが、この事件に関して、それからいまの金兄弟の事件に関してひとつお話し願いたいと思います。
  78. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  北朝鮮の地区から日本に不法に密入国してきた者は、昨年検挙した数としては、結局、出入国の関係の事実がわからない者を含めて、外登法違反という形の事件として処理したのは七名ということでございます。  それから、いまお話しになった温海の関係ですが、これは八月五日の午前零時五分ごろ、山形県の温海町付近の国道でパトロール中の警察官が、真夜中でございますので、その三名を不審であると見て職務質問をしたところ、そのうちの一名が、青森から歩いてきた、外国人の登録書は持っていない、そういうことを答えたので、外登法違反、不携帯の疑いで任意同行を求めたところ、やにわにその質問をした警察官に、から手突きで暴行を加えて水月を突いて逃げたわけです。それで、直ちに公務執行妨害ということで追っかけていって、それをつかまえた。その際あとの二人は逃げてしまいました。それから一晩かかって大々的な捜査をいたしまして、五時間ほどたって、鼠ケ関の海水浴場の学生のテントの中に潜伏していた、ぬれねずみになっていた一人を逮捕したということで、あとの一人は相変わらず現在までわからない。捜査中でございますが、この件については、去る二十五日、山形県地検で出入国管理令違反ということで公判請求をいたしておる実情でございます。
  79. 中山正暉

    ○中山(正)委員 どうもありがとうございました。  十二時半で終われということですが、もう過ぎておりますので、まだ一ぱい申し上げたいことがあるのでございますが、山形県といえば、近藤鉄雄先生の地元でございます。まことにそういう日本の裏側を非常にねらう傾向があります。岩手県のほうにもぐるっと回って入っていく。日本の山口県とかそういう近いところではなしに、虚をつくという態勢が非常に向こうのとっている態度だと思いますので、これは、日本主権を侵されるのがいやだというならば、そのやられたことより、知らないうちにやっておられることのほうが、おそろしい事態をいろいろその中に内包しておると私は思います。  共産主義戦略の基本原則というのは、あすの敵と戦うためにきょうの敵と結べということでございます。ですから、それを裏返しますと、われわれはあすの敵と戦かうためにきょうの敵、きょうの利害の対立する相手とほんとうに腹を割って話し合っていけという原則を立てていかないと、むさんこにその現象だけをとらえて全体を見ない政治というのは、結局は自国の安全に大きく影響するところになると私は思う。  最後にお伺いしておきたいのですが、国連軍の問題に対して、何か外務大臣が国連軍の引き揚げに協力をするとおっしゃったとか。これはこの間、新聞を見たら、そうじゃないという感覚を私は得ましたので、ありがたいと思っておりますが、私は日本の局地戦争が起こるとしたら、多分、韓国から国連軍が引き揚げてからだ。あの朝鮮動乱の終戦のときに、クラーク大将だけが休戦協定にサインをしておる。国連軍だけがサインをしておって、李承晩大統領は休戦協定にサインをしていませんから、韓国から米軍、国連軍が引き揚げたら朝鮮動乱は再び開始していいという国際情勢になると私は判断している。アメリカ軍、国連軍がいない限りは韓国は百日もたないだろうといわれております。そうしますと、はるか対馬から晴れた日には釜山が見えるわけでありまするから、そこから追い落とされた人たちはどこへ一体逃げてくるだろうか。私は近くの九州だと思います。局地戦争に自衛隊があったらいいとかないとかいう話がありますが、私はもっと現実をきびしく見て、政治をする者は最悪の事態を予想しておく必要があると常々考えております。  最後に、国連交渉も始まるときでございますから、中国の問題は台湾を切らせるということでやってまいりましたが、今度は北朝鮮を認めさせて、どんどんと日本に強力な工作ができるようにするというのが共産主義戦略の朝鮮半島、韓国半島に対する次の手段であろう、かように私は考えておりますので、その国連問題を通じまして、国連軍の問題、大臣の御所見を伺って質問を終わりたいと思います。
  80. 大平正芳

    大平国務大臣 まず初め、国連軍と在韓米軍とは別なんでございまして、いまわれわれが検討いたしておりまする国連における朝鮮問題の実質問題の一つといたしまして、国連軍という旗をおろすかおろさないかというような問題が前々から取り上げられておって、いまも問題になっておるわけでございまして、しかし、あの三十八度線を中心といたしました休戦協定というのは、国連軍司令官が署名しておるわけでございまして、だから、この休戦ラインというものの存在と、それから国連軍の旗をおろすという問題がどういう関連になるのかというような点が、いまわれわれの検討の問題でございまして、在韓米軍につきましては、日米共同声明にもありますように、適正な抑止力は今後とも保持するということでアメリカはいっておられまするし、私どももそれを十分理解しておるところでございます。
  81. 中山正暉

    ○中山(正)委員 そういうことで、その休戦協定にサインをしている国連軍の旗がおりるということが、在韓米軍がいるとかいないとかの問題よりも大きな問題であろうと私は考えておりますので、この下世話に騒がれております現象面にだけとらわれずに、日本の将来の国益、長くひいて日本の将来に一体この事件がどう影響があるだろうかという想像力をたくましくしていただいて、今回の事件の御処理に当たっていただきたい。関係官庁の皆様方にもともにお願いをいたしまして、質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  82. 三原朝雄

    三原委員長 午後三時より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ————◇—————     午後三時十二分開議
  83. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  外務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中路雅弘君。
  84. 中路雅弘

    ○中路委員 この期間、日米会談等重要な問題があったわけですけれども、きょうは非常に時間が限られています。その範囲で御質問したいので、二つばかりきょうは御質問したいと思いますが、金大中氏の問題は外務委員会、法務委員会を主舞台にして質疑がやられていますので、時間をとって私この問題をきょう御質問するつもりはありませんけれども、二、三重要な点について、午前中の質疑と関連して御質問したいと思います。  韓国政府のほうから送られてきた捜査状況では、全く事件の核心に触れる問題というのは一切明らかにされていませんし、捜査状況という名に値しないのですが、もうすでに三週間、事件が発生してからたっています。この真相を徹底的に究明するためには、やはり本人意思に反して拉致された金大中氏の再来日、正確にいえば、原状回復をやらなければ問題が解決できない。これは多くの人たちが主張しているところですけれども、午前中法務大臣も、いまの現状のままで金大中氏の再来日を抜きにしてこれ以上捜査がやれない、国際法を越えて政治的にもぜひ来日が必要だ、そうでなければ両国関係が非常に重要な事態になる、こういう話でありましたし、まあ法務大臣第六感では、近い将来に戻るのじゃないかというお話もありました。  この点について、外務大臣とも変わらないんだというお話がありましたけれども外務省姿勢を見てみますと、非常にこの点では、韓国のほうに対する協力待ちというような状態が変わらない。先ほど答弁でも、韓国における金大中氏ほか二名の供述内容、そういったのが送られてきた場合に、再来日について、それでいいんだという、遠慮するとは言わないという答弁ですけれども、はっきりとこの再来日の問題を日本主権の名において韓国政府に強く要求していく、こういう立場では非常にあいまいな答弁をされているわけです。金大中氏も自宅で後宮大使に対して、日本に来ることを望んでいるわけですが、私は最初に、この金大中氏の再来日の問題について、これが実現しなければ両国関係にとっても非常に重要な問題だ。また捜査がこれ以上やれないという法務大臣の意見もありますけれども外務大臣のこの問題についてのより明確な御答弁をお願いしたいと思います。
  85. 大平正芳

    大平国務大臣 本件は早急に解明をいたしまして、納得のいく解決をはからなければならぬことは当然なことでございます。そのために、捜査当局といたしましては、重要な参考人でありまする金大中氏ほか二名の方の再来日が必要であるというお立場で、韓国政府折衝方申し越してこられておるわけでございます。私どもも、そういうラインで鋭意その実現に努力いたしておるわけでございます。  問題は、お三方の身柄がいま韓国の中にあるわけでございます。どういたしましても韓国政府協力を必要とするわけでございます。したがって、その協力が得られるように鋭意努力をいたしておるわけでございます。  また、お三方の供述内容というものは、一両日のうちに提供できるということでございます。これは入手いたしまして、入手の暁は十分検討をしなければならぬことだと思うのであります。満足すべきものかどうか、受けてみなければわかりません。しかし、私どもかねがねこの事件捜査解明におきまして、お三方の再来日が必要であるという捜査当局の申し出はよく理解できるわけでございまして、供述内容の提供と別に再来日の問題も要請いたしておるわけであります。今後も鋭意努力していくつもりでございます。
  86. 中路雅弘

    ○中路委員 私は、この再来日と普通いわれている問題ですね、もう一ぺん来てもらうんだ、単純にこういう問題じゃないんじゃないか。一般的に再来日といわれておりますけれども、この問題についてもう少し突っ込んでお聞きしたいんですが、これは再来日というのが単に真相究明だけではなくて、明らかに主権侵害本人意思に反して拉致されていったわけですから、最小限の要求として、正確にいえば原状回復することがこの問題の真相を究明していく前提だと思うわけです。その点で、再来日要請の際に、ほんとうの意味での原状回復、条件をつけない。日本に来た場合に、この真相を究明するという立場から見れば、真実を語る保障がなくては自由な供述が得られない。いろいろ条件がつけられておるということでは、再来日によって真に真相を究明することができない。その点で、一般的には再来日といわれていますが、やはり原状回復ということが最小限の要求でなければなりませんし、再来日要請の中に条件をつけない。再来日はこの問題を究明するためであるわけですから、真実を語る保障をはっきりさせてもう一度来ていただくということが、この再来日の中では最も重要な問題だと思うのですが、この点について外務大臣のはっきりとしたお考えをお聞きしたい。
  87. 松永信雄

    ○松永政府委員 法律的な側面がございますので、私から御説明申し上げます。  現在の状況におきましては、連行事件という不法行為があったことは確かでございますが、その不法行為が韓国の国の機関によってもし行なわれたという仮定が成立すれば、いま御指摘がございました原状回復という問題が出てまいるわけでございます。しかし、そういう状況が出ておりません現在の段階におきましては、日本におけるその不法行為の捜査解明のために、御本人被害者であるところの金大中氏ほか参考人の方に日本に来ていただいて捜査解明に当たるよう、韓国政府協力を求めているというのが現在の状況でございます。
  88. 中路雅弘

    ○中路委員 主権侵害かどうかということも明らかにするという意味でも、自由な供述が得られなければいけない。来てもらって、その場合に真実を話せないということでは困る。真相を明らかに究明するためには、そういう点で私がお聞きしているのは、この再来日について条件をつけられてよこすということでは、また真実を語る保障がなければ、この捜査を通じて明らかにするといま言われた主権侵害の問題についても明らかにすることはできない。だから私は、再来日について何ら条件をつけないということで要請をしなければ、真にこの問題の真相を究明することにならないんじゃないかということでお尋ねをしているわけなんです。その点についてどうお考えになるか。
  89. 松永信雄

    ○松永政府委員 再来日のときの条件というものの内容がどういうことでございますか、私ども承知しておりませんので、これまた仮定の問題としてしかお答え申し上げるわけにまいりませんが、当然のことといたしまして、捜査のために、十分な捜査が行なわれないような条件が付されることは、政府としては断わらざるを得ないだろうと思います。当然その捜査の結果、真相、実際の事件の実体が解明されるという必要があるだろうと存じております。
  90. 中路雅弘

    ○中路委員 この再来日の問題というのは、国会での要請というだけではなくて、大きな国民的な世論にもなっているわけですから、その際に、いまお話ししましたように、徹底的に本人自身から聞く。さっき金大中氏ほか二名というお話がありましたが、正確にいえばあとの二人は重要な参考人として来ていただくということになると思う。しかし金大中氏は事件のそれ自身でありますから、そういう意味では原状回復するということが何よりの条件ですし、捜査を明らかにする意味でも、その供述について、いろいろ来るときに条件がつけられるということがないように、このところは、私は再来日要請の中でも明確にしていかなければならないというふうに思うのですが、重ねてこのことを要請しておきたいと思います。  もう一つ先ほど午前中にも質問がありまして、法務大臣がお答えになった問題ですけれども、再来日した場合に、亡命の意思がある、希望があるという場合に、さっき法的な点については法務大臣がお答えになりましたけれども、亡命の要請があった場合に保護するということがされるのかどうか、その点についてもお聞きしておきたいと思います。
  91. 大平正芳

    大平国務大臣 再来日実現するかどうか、いま鋭意その実現方努力中でございます。かりにそれが実現した場合、本人が亡命の意思を持っておるかどうかというようなことは、私にはわかりません。どうお答えしたらいいのですか、これは。万一そういう状況になった場合に、日本政府が、一般的なお答えといたしまして、政府の許された権限のもとで正当に処理しなければいかぬと思いますが、私といたしましては、政治的にまげて処置するとか、両国関係がそのためによけいな摩擦を生むとかいうようなことのないように配慮しなければならぬのじゃないかと考えておりますけれども、まだそういうことは全然仮定のことでございます。
  92. 中路雅弘

    ○中路委員 はっきりしないのですけれども両国関係政治的な関係ということも配慮してということですが、私が端的に聞いているのは、亡命の意思があった場合に、その本人意思を尊重していくのかどうかということですね。その点についてだけもう一度お伺いしたい。
  93. 大平正芳

    大平国務大臣 一般的な取り扱いといたしまして、わが国といたしましては、仰せのように、あくまでも本人意思を確かめた上で措置いたしておるので、日本政府意思によってまげて措置はいたしていないわけでございます。
  94. 中路雅弘

    ○中路委員 韓国の情報部、KCIAの問題についてはいろいろこの国会でも論議をされてきておるわけですが、午前中外務大臣は、この事件韓国人が関与したということは濃厚だということをお話しになっておりました。いま朴政権につながる謀略組織が本事件を引き起こしたということは、一般新聞、週刊誌あるいは世論の中ではあたりまえのことになっているわけですが、この東京のどまん中、首都のどまん中から白昼拉致されて、そして戒厳令下の韓国の中で自宅の近くまで連れていく。それが一般の何か民間人、そういうグルプーでやるということは神わざでもできないような仕事なわけで、これは明らかになっていると思うのですけれども法務大臣第六感というお話もありましたけれども外務大臣は、こういう問題について、韓国の民間の組織、あるいは何かのグループがはね上がってやったのではない、できるものじゃないということについて、第六感か何か知りませんが、何らの疑いも持たない、そういうことですか。
  95. 大平正芳

    大平国務大臣 私が申し上げられることは、いませっかく捜査当局事件の実相を解明中でございますので、解明中に憶測を交えて見解を述べる勇気はございません。
  96. 中路雅弘

    ○中路委員 金大中氏の問題については、いまのような御答弁を繰り返しやられているわけですが、この国会の中では、参議院、衆議院を問わず、韓国のKCIAの日本国内における活動、たとえば、日本に帰化した韓国人や在日韓国人が、不法に韓国に連れ去られて逮捕、投獄されたという例が幾つもこの国会の質疑の中で出されているわけですが、このような事実を見ても、KCIAの活動というのは、一般の情報収集の活動だけではない。韓国反共法を守り現政権を維持するということを絶対使命にして、国の内外で手段を選ばないいろいろの謀略活動をやっている。  私は今度の金大中氏の事件は氷山の一角だと思うのですが、金大中氏の事件はまだ捜査中だ、何も言えないというお話でしたが、この国会の中で幾つか取り上げられているこういう具体的な問題について、当然これは韓国の情報機関政府機関に属するということになれば、こういう活動を一切禁止して国外に退去をさせなければならないと思うのですが、この国会でいままで取り上げてきたこういう問題について、私はきょうは時間がありませんから、一つ一つ実例でお聞きするわけにいきませんけれども、いままで取り上げられた問題についても、たとえば外務省としてどのように具体的にその後対処をされているのか、その点についてお聞きしたいと思います。
  97. 高島益郎

    ○高島政府委員 先生が具体的な例をおあげにならないで、一般的にどういう程度のことを外務省が知っているかというお話でございますので、私のほうでもお答えのしかたが非常にむずかしいわけですが、一般的に申しまして、われわれのほうといたしましても、このような種類の問題についてはたいへんな関心を持っておりまして、一々の事件につきまして、あとうる限りにおきましていろいろ調べております。
  98. 中路雅弘

    ○中路委員 たとえばこれは、参議院で私どものほうの議員が質問した問題で、一つの例でありますが、韓国の金在権公使の問題ですが、金大中事件でも、この金公使が、この事件の直前、四日前に梁一東氏と会って、金大中氏に本国に帰るように勧めてくれと依頼しておったといわれておるわけですけれども事件当日も梁一東氏は、通報で警察より先に金大中氏の誘拐現場であるホテル・グランドパレスに姿を見せていたわけですが、その金公使がかつて韓国のCIAの第七局長の肩書きを持って活動していた人物だといわれていますが、この問題についても参議院質問では、こういうことについてもまだ捜査をしていないというお話だったわけですね。こういう事実について、たとえば金公使からその後事情聴取をやる。具体的に提起されたわけですから、そういうことはやられたわけですか。
  99. 中島二郎

    ○中島説明員 お話にございました、八月四日に金公使と梁一東氏が会ったという件につきましては、質問のありました当時、質問者がそういう事実を知らなかったということでございまして、すでに概要を承知いたしております。  それから、金在権公使が現場に参りました事情につきましては、八月九日に金公使から警察の捜査協力したいということで事情説明の申し入れがございましたので、捜査本部の幹部が事情説明を受けて、どういうことで現場に参ったのかということについて事情を聞いております。
  100. 中路雅弘

    ○中路委員 時間があれば、私は幾つかの具体的な例でその後の問題をお聞きしたいと思ったのですが、時間がありませんから一つ一つ例をあげませんが、不法に韓国に連れ去られたそういう事件だけでも、先日私たちの議員が例をあげただけでも十五、六件あります。その後それがどうなっているのか。あるいは不法な活動がそこで行なわれているとすれば、外務省として具体的な対策をとらなければならない。その点について、この国会で取り上げられたこういった問題について、その後の明確な調査も含めて、具体的な事実があった場合に、それに対して外務省として具体的に対策をとる。不法な活動があれば、CIAのその容疑について国外退去をさせることも含めて明確な対策をとるということについて、私は、一般的ですけれども、当然のこととして、この国会で取り上げられた問題についてそういう対処をしていくということについて、明確な御答弁をお聞きしておきたい。あらためて、その一つ一つ事件についてその後どうなったかということを、また時間がある機会にお尋ねしたいのですが、まず最初にその点をひとつ確認しておきたいと思うのです。
  101. 高島益郎

    ○高島政府委員 私どもの調査している範囲では、いままで明確に、たとえば韓国の外交官が日本でいわゆる主権侵害といわれるような行為をしたという事実は承知しておりません。もしそのような事実がありますれば、これは当然そのような事実に基づいて適当な措置をとらなければならないと考えております。
  102. 中路雅弘

    ○中路委員 いまの問題は、その後の問題については、法務委員会その他別の機会にまた関連の部分で質問さしていただきたいと思いますが、せっかくきょう防衛庁の局長、施設部長も来ていただいているので、重要な差し迫った問題ですので、もう一つの問題をお聞きしたいのです。  午前中、簡潔に大出議員も質問されたミッドウエーの問題をめぐる問題です。アメリカ局長先ほど、秋以降ということでまだ時期の相談はしていない、話はないという御答弁でありますけれども、たとえばこれはアメリカ海軍、横須賀基地の艦船修理部の広報紙ですね。「錨」という広報紙の最近号を見ますと、一九七四年のアメリカの会計年度、ことしの七月から来年六月までの会計年度のSRF、艦船修理部の工事予定表というものが出ています。これを見ますと、九月下旬から十月上旬、十二月、来年一月、四月に、艦船番号CVA41、これは航空母艦ミッドウエーのことですが、ミッドウエーの工事が予定されているわけです。これは工事予定表に出ているわけですけれども。  こういった点や、午前中も質問がありましたが、ホノルルのアメリカ太平洋軍司令部の招きでハワイ、グアムの米軍基地を視察したのですね。十一日からでしたか。防衛関係の記者会のハワイでの記者会見で、これは新聞の報道ですけれども、ガイラー太平洋軍司令長官が、寄港の正確な日取りについて固まっていないが、事前に日本政府と相談の上、秋に実現する運びになろうと言って、さらに第七艦隊の直接指揮責任者であるクレアリー太平洋艦隊司令官は、その時期は九月であろうと述べたというのが各新聞にも出ているわけですけれども、横須賀の現地の艦船修理部の予定表を見ても、あるいはこういうアメリカのほうの第七艦隊の直接指揮責任者の言明でも、九月あるいは十月ということはすでに言われている。日本政府と相談の上ということを言っているわけですが、外務省が全くこういう動きについて知られない、相談もないということはないんじゃないかと思うのですが、その点ありましたら、もう少し詳しくお聞きしたいと思います。
  103. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 けさほど大出委員の御質問にお答えいたしましたように、秋ごろにミッドウエーの横須賀寄港というものが考えられているようであるということは、私どもかねて聞いておるところでございます。具体的にホノルルで米太平洋海軍の首脳者が、ホノルルを訪問いたしました防衛庁の記者会の記者の方々に、九月ごろということを言ったという話も報道で聞いております。また十月じゃないかといううわさが地元に流れているという話も聞いております。しかしながら、米側からまだ九月であり十月であるという具体的な日時についての通告を受けてはおらないということを、先ほど申し上げたわけでございます。
  104. 中路雅弘

    ○中路委員 この内閣委員会でもこれまで何回かミッドウエーの問題が取り上げられていますが、たとえば三月二十九日の内閣委員会で、私のほうの東中議員の質問外務大臣は、このミッドウエーの母港化というのは第七艦隊の戦略的な強化をねらったものでないという答弁もありますし、あるいは四月十二日の大出議員の質問にも同じように、この横須賀の第七艦隊の機能がこれで強化される、私はそうはとらない、家族計画なんだというふうに考えておるという御答弁もされています。三月二十九日には、機能それ自体について、それがためにアメリカ戦略がそれを基点にして変わるんだというような評価は私はしていない。大体共通していますけれども、このような御答弁をされていますが、私はこのミッドウエーの母港化という問題について外務大臣がこのような答弁をされるのは、実際この母港化の性格やそういうものについて、きつく言えば国民の目をごまかす答弁ではないかというふうに思うわけです。  アメリカのほう自身がこの問題についてどう言っているか。一、二引用しますけれども、たとえばレアード国防長官が、これは七三年度の国防報告で述べていますが、海軍が検討しているもう一つの新しい項目は、前進展開した艦隊部隊の海外母港化である、この母港化によって平時のわが兵力水準をよりょく活用できることになるということで、日本に前進展開する、この母港化を実現していくということを述べています。またリチャードソン国防長官が、これは新聞記者の会見で言っているのですけれども、母港化というのは、兵隊の士気という点だけではなくて、艦艇の展開の節約という点から見ても非常にりっぱなアプローチだ、なぜならば艦艇を本国まで引き揚げさせる必要がない、作戦領域を広げ実時間を節約できるというようにいろいろ述べているわけですが、私は、今度の母港化の問題が、単に家族対策とか、あるいは基地の機能を強化するというものでないというのじゃなくて、明らかにアメリカの新しい効果的な出撃拠点をつくる。いまの日米安保条約を、端的に言えばアジアの安保条約として、日本を極東最大の足場にしていく。また、この母港化が足場になって周辺の基地の再編成強化が行なわれてきているというふうに、その一環としてとらえるべきだと思うのですが、この問題について具体的な点でお聞きしたいわけです。  アメリカの太平洋艦隊司令官も、先ほどの防衛記者の会見でもこう言っています。これは日米安保条約をサポート、ささえるものである、横須賀を母港化することによって西太平洋における米軍の大きな存在を維持することができ、全般的にアメリカの力を非常に強めることができる。これは毎日新聞にも引用されておりますが、このように性格をはっきりとアメリカの高官のほうは述べているわけですけれども、この母港化と関連して八月二十三日の新聞にも、在日米軍の海軍司令部が、空母ミッドウエーの横須賀母港化の後に、この航空母艦の艦載機の訓練飛行場として、神奈川県の厚木基地とともに青森県三沢基地を並行して使う方針であることを明らかにしたというのが報道されていますが、まず最初に聞きますが、これは事実ですか。
  105. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 まず最初のいわゆる母港化による機能強化という点でございますが、アメリカ政府は前々から、海軍艦船の展開地域に近い外国に乗り組み員の家族を居住させることによって、艦船の本国への往復の回数を減らし、それによって艦船の効率的な運用と経費の節減をはかるということがねらいであり、あわせて乗り組み員の家族との別居期間を短縮することによって士気の高揚をはかる計画を実施していく、こういうことを言っているわけでありまして、こういう計画の一環として空母ミッドウエーの乗り組み員の家族を横須賀周辺に居住させたい、こういうことを申しているわけでございまして、先ほど外務大臣の三月の御答弁を引用されておりますが、外務大臣の当時の御答弁は、まさにそういう点を含めまして家族に対する対策の一環である、こういう御答弁があったというふうに承知いたしております。  空母ミッドウエーが寄港いたします際には、その搭載機が周辺の陸上基地に補給、補修等の目的をもって収容されるというふうなことは当然考えられるところでありますが、従来、横須賀に寄港いたしまする空母の搭載機は、たとえば厚木でありますとか、そういうふうな米軍の施設、区域を使いましていまのような目的を果たしているわけでございます。ミッドウエーがいつ具体的に寄港いたしますかという時期につきましては、先ほど答弁申し上げましたように、まだ詳細具体的なことを連絡を受けておりませんけれども、入港の場合には、従来と同じような形で艦載機の陸上基地への収容というふうなことが当然あり得るだろうと考えております。
  106. 中路雅弘

    ○中路委員 母港化を拠点にして、横須賀の基地の問題をきょう詳しく聞きませんけれども、現地の横須賀基地だけではなくて、これは池子の弾薬庫の再開もそうですが、いまお聞きしましたように、三沢だとか厚木、あるいは新聞の報道では木更津という名前もあがっていますけれども、この周辺の基地が新しく使用され、いろいろ強化をされてくる、住民との間でも問題が起きてきているという状態。決してこの母港化が家族対策ではないということは、すでにもう事実で明らかになってきているわけですが、この三沢で、最近横須賀に入ってきました航空母艦のバンコックのスカイホークの訓練が行なわれました。これについて三沢市長をはじめとして市議会の委員会から、防衛庁に厳重な抗議が八月二十五日に行っていると思いますけれども、いままで三沢と国と地元ですね、基地の関係、防衛庁の関係で三者で使用についての協定が結ばれている。四十五年三月に、たとえば天ケ森射撃場の使用方法についての条件、あるいは移動訓練を行なうあたりとか、三沢基地への発着とか射撃場の使用の場合、住宅地域の上空を絶対飛行しない、こういう三点の協定があったそうですが、今度の訓練がこの協定にも違反しているということで、地元の市長からも防衛庁に強く抗議があった。そして今度空母ミッドウエーの母港化になれば、三沢基地がこの艦載機の発着訓練に使われるということで、青森県あるいは三沢の住民の皆さんは、こういう問題に非常に大きな不安を抱いている。すでにもう現にそういう空母の訓練が始まっている。ミッドウエーの母港化あるいは入港に伴って、一そうこういうことが大規模に行なわれるだろうということから強い抗議が来ているわけですが、いままで三者で約束したこういう使用協定に違反してアメリカが訓練をやっている、この点について、防衛庁あるいは外務省のほうで、いままで約束されたこういう住民との間の協定を守らせるということについて、私はこの中ではっきりさしていただきたいと思います。
  107. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 先般、八月十三日からたしか二十三日までだったと思いますが、三沢飛行場にハンコック航空母艦艦載のスカイホーク等十機が飛来し、その機会に、三日間ほどにわたって、隣接します三沢対地射爆撃訓練場で訓練を行なったという事実がございます。その際に、御指摘にありましたような三沢市長からの抗議の文書が当庁に参っておることも事実でございます。  当時、さっそく演習の模様等を調査いたしましたところ、三沢対地射爆撃場の訓練に関しますところの使用条件というものがございまして——この際ちょっと申し上げておきたいと思いますが、報道等にも三者協定ということばが使われておるのですが、三者協定というものは実は存在しておりません。昭和四十五年に地元の市長さんに対して、日米間で取りきめられているところの、三沢対地射爆撃場の訓練に関する使用条件の詳細を御通知申し上げた経緯がございます。なお、使用条件につきましては、当然講和条約発効後からすでに告示が行なわれていたわけであります。その中身のさらに詳細な点につきまして、昭和四十五年に三沢市長にそういう点の文書を差し上げたわけでございまして、その条件のことをおそらく報道等でも三者協定とおっしゃっているんだろうと思うのであります。  この使用条件の中に、対地射爆撃訓練を行なう場合に、陸上の標的、あるいは海上の制限水域の中にあります海上標的に向かって射撃訓練を行なうときには、その射撃のために入ってくる進入方向というものが規制されているわけでございます。ところが、今回行ないましたところのスカイホークの訓練で、これは模擬弾ではございましたが、この使用条件にきめられた進入方向じゃなくて、北のほうから南下して入ってきて射場の標的設置場所に模擬弾を落とした、そういうことを八月二十二日の日に行なったという事実をつかみました。  これは確かに、三沢市長のほうからさっそくの抗議がございましたように、使用条件の中に掲げている進入方向という点に関しての条件に対する違反の訓練でございます。さっそく現地におきまして米軍の責任者に対し、また東京におきましても在日米軍司令部に対して、こういう使用条件に反する訓練のないように厳重に申し入れを行なった次第でございます。
  108. 中路雅弘

    ○中路委員 青森の三沢基地がそういう形で条件を無視してすでに訓練が行なわれるということになれば、ミッドウエーの発着訓練がここを使用するということが言明されているわけですから、一そう大きな被害を与えるし、いままでの条件も無視されるということで、まず地元住民との間の約束を厳格に守らせるということを、いまお話しになりましたけれども、明確にさしてほしいということ。  それから、青森の三沢とともに、厚木の航空基地がやはり母港化とあわせて訓練に使われるという話があるのですが、それについても事実はどうかということをお聞きしたいわけです。  厚木は一昨年の十二月に、共同使用で移駐した海上自衛隊の手で新しく計器着陸の管制装置が設置されました。それ以後、これは母港化の問題と関連して、厚木の基地がさらにこういう訓練に使われるんじゃないかという不安が地元にもあったわけですが、基地のほうは、現在以上に発着訓練による爆音といったものを悪化させないと発表していたわけです。     〔藤尾委員長代理退席、委員長着席〕 それが、新しく三沢基地とともに訓練基地としての使用の意向が打ち出されているということで、地元の住民あるいは市議会の中では、騒音の被害や墜落の危険が高まるのではないかということで非常に不安を持って、いま問題になっているわけです。厚木の航空基地は、このミッドウエーの母港化とも関連して、艦載機の発着訓練に使われるのかどうか、どのように使用されるのか、これをお聞きしたい。
  109. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 厚木は、修理、補給、管理部門につきましては、二条一項(a)の施設、区域として提供してございますが、そのアクセスのために必要であります滑走路は二条四項(b)の共同使用を認めております。また木更津についても御指摘がございましたが、木更津は二条四項(a)という形で自衛隊との共同使用が行なわれておりますが、本来米軍に提供いたしました施設、区域でございまして、そういう意味におきましては、厚木、木更津両飛行場とも、地位協定上米海軍がこれを使用することについての問題はないわけでございます。
  110. 中路雅弘

    ○中路委員 いま木更津も出ましたけれども、木更津については、外務委員会ですか質疑があったと思いますが、特にここは羽田空港の進入路になるわけですね。いままでも、自衛隊機の間にニアミスその他の危険で、民間機の間でも非常に問題になっているところですが、いまおっしゃったように、母港化と関連して、三沢、厚木、木更津、こういうところがさらに使用されるということになれば、文字どおり、私が最初言ったように、単なる家族対策というのではなくて、こういう周辺関連の基地をめぐって一そう大きな問題をはらんでいるんじゃないか。木更津でも、もしそういうことが事実であれば地元として認めるわけにいかない、市としても阻止の運動を起こしたいというふうに北見市長も答えているわけです。  母港化の問題というのは、私はこのように一、二の例をあげましたけれども、全体としての新しい基地の強化あるいは再編成につながってきていることは明確じゃないか。外務大臣は盛んに、これは基地の強化でないんだということを答弁されていますけれども、一、二の例をあげただけでもすでにこういう事態が起こっているわけです。この点からも私は、母港化の問題についてもう一度検討し、こういう基地の新しい強化や再編成につながる母港化はやめるべきじゃないかというふうに考えるわけです。  もう一つ、時間もないので続いてお伺いしますけれども、もとオクラホマシティーの艦長をやっていたアメリカのジェーン・ロックという人に、昨年の暮れに、日本原水協の国際部担当の常任理事である佐藤行通さんが、アメリカの国防情報センターで会ってお話をしたときの記録が新聞にも出ていますが、それを見ますと、このもとオクラホマシティーの艦長の語ったのを要約しますと、アメリカの海軍の艦艇で戦術核装備をしていないものは非常に少ない、オクラホマシティーは、第七艦隊の旗艦としての装備上、核は不可欠である、旗艦の船隊に属する巡洋艦、駆逐艦は核装備をしている、日本の基地に入港するときだけ核装備を移してから入港するようなことはあり得ないのではないかという内容のことを話しています。アメリカの公式の言明ではありませんから、そういう発言として私はここで取り上げているわけではありません。  これはジェーン・ロックという、もとオクラホマシティーの艦長をやっていた人の話ですが、ここにも出ていますように、また先日、私も防衛二法のときに御質問しましたけれども、ミッドウエーが、ジェーン年鑑なんかによっても、ルーズベルトやコーラルシーなどとともに、核兵器を貯蔵、組み立て、積載できる最初の核軍艦であるということは世界で周知のことです。その核装備をしている艦艇が途中でどこかに核をおろしてきて、出るときにまたどこかで積んでいく。常識では考えられないわけですね。  しかも寄港じゃなくて、母港にしてこれからいるわけです。田中総理もこの質問で、アメリカが持ち込まないといっているんだから、アメリカを信用しているからというだけのこの前の答弁だったわけですけれども、こういう問題について国民が不安を感じ、この母港化について、また核の持ち込みにつながるのではないかという不安が出るのは、私は当然のことだと思うのです。  もう一度お伺いしたいのですが、この核持ち込みには外務省も反対だといままで言っておられた。アメリカ日本国民の意に反したことはしないといっているから、このことばを信ずると言っておられるのですが、日本に寄港する場合、初めからこの艦船は核は持っていないというか、あるいは日本に寄港する際に核を途中にどこかに置いてくるか、この二つしかないわけですね。この点について外務省はどのようにお考えですか。核を持ち込まないということを信用するというならば、私が言いました二つしかないわけですね。初めからこういう軍艦は核を持ってない、日本に寄港する艦船は核は最初から持っていないんだ、あるいは途中で入るときはどこかに置いてくる、それ以外にないと思うのですが、どのようにお考えですか。
  111. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 一番最初にあげられましたオクラホマシティーの元艦長の発言なるものについて、その事実を承知いたしておりませんけれども、米国の軍人を含めまして、核兵器の所在について言及をすることは許されておらないというふうに私ども承知いたしております。したがいまして、オクラホマシティーの元艦長が、どういう責任においてどういう内容のことを言ったのかということにつきましては、よくわからないわけでございますが、核兵器の持ち込みに関しましては、いずれにいたしましても、昭和三十五年の安保条約締結当時以来、核兵器のわが国への持ち込みはすべて事前協議の対象とされておりますし、日本政府といたしましては、核兵器のわが国への持ち込みは一切認めないという方針をずっととってきていることも、御承知のとおりであります。したがいまして、事前協議に関する交換公文に示されております約束を守ることは、米国にとりまして安保条約上の義務でございまして、この義務に反しまして、ミッドウエーを含めた米国の艦船が核兵器を搭載して、事前協議の手続を経ることなしにわが国に核兵器を持ち込む、あるいは寄港するということはあり得ないこと、こういうふうに考えております。ただ、実際にいま幾つかの事態を想定しての御質問に対しましては、それについて実情を十分承知し得ないので、何ともお答えのしようがないというのが実情でございます。
  112. 中路雅弘

    ○中路委員 私がお聞きしているのは、ミッドウエーが核装備をしているということは世界周知の事実だ。これは海軍年鑑にも出ている。きょうは詳しくお話ししませんけれども。では、その軍艦が入港するときに核を持ち込まないんだということになれば、私が言っていますように、最初から核を持たないで母港として日本に入ってくるのか、あるいは途中で置いてくるのか、これしかないだろう。だからいろいろのことはもう想定できない。それしかないですね。それについてあなたたちは、ほんとうに核を持ち込まないんだということならば、どのようにお考えになっているか。この二つしか事態というのはないわけですよ。
  113. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ジェーン年鑑に記載してございますことは、空母ミッドウエーが核装備可能の艦船であるということにとどまっているわけでございます。したがいまして、装備として核兵器を持ち得る能力を持っておるということはジェーン年鑑が明らかにしているとおりでありますが、はたしてどういう装備をどういうふうに所持しているのかということについては、米側は一切これを言及しない、し得ない、こういう立場を従来とってきているわけでございます。ただし日本側といたしましては、事前協議の対象となる核兵器の持ち込みについて、米側が安保条約に基づく義務の履行を怠っているとは考えておらないということでございます。
  114. 中路雅弘

    ○中路委員 核の問題については、時間がなくなりましたので、あらためてまたお聞きしたいと思います。  最後一つだけ、やはりミッドウエーに関連してお聞きしておきたいのですが、横須賀の泊湾の埋め立てがいま進められているわけですが、十一万平方メートル、ここに住宅を建てるという話ですね。横浜の海浜住宅を移していく、住宅を建てるという計画ですが、この建てる住宅はどのぐらい建設されるのか。それからその財源はどのぐらいか。簡潔にちょっと。
  115. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 横浜海浜住宅の移設の問題は、昭和四十三年の第九回日米安保協議委員会で、横浜海浜住宅を何らかの適当な場所に移設することによって現在の場所を返還するという方針が協議されたわけであります。現在、海浜住宅にあります住宅戸数は九百十戸でございますが、第九回安保協議委員会の翌年、昭和四十四年の三月、とりあえずそのうちのいわゆる本牧一号地区と称しております部分にあります四百二十七戸につきまして、これを昭和五十一年度までに横須賀海軍施設の中に移設するという方向づけが日米間で合意されたわけでございます。  そこで、ただいま御指摘のございましたように、横須賀海軍施設の中に適当な住宅建設の場所をつくるべく、泊湾という入り海がございまして、そこをまず埋め立てていこうということで、昭和四十四年度から工事を始めました。この埋め立て工事は若干途中で工期がおくれておりますが、昭和四十九年度ないしは五十年度には全部完成すると思います。合わせましてその埋め立てに要します工事費は約十二億強でございます。さらに、そういう埋め立てのために、横須賀海軍施設の中に小山が幾つかあるわけでございますが、そういったところの山を切りくずして、その土を泊湾に埋めていっているわけでございまして、そういった切り通した部分が住宅建設可能でございますので、本年度の予算で四十戸、予算にしまして約八億六千万を特特会計で計上いたしまして実施する予定にいたしております。  なお、今後、本牧一号の四百二十七戸、さらに残っておりますところの本牧二号地区にあります四百八十三戸、そういったものを合わせて、この移設計画をどういうふうに進めていくかは現在なお米側と検討中でございますので、全体の工事費総額がどういうふうになるかは、これからの折衝の経過によってきまってくるということになると思います。
  116. 中路雅弘

    ○中路委員 時間がなくなりましたので、途中ですけれどもこれで終わるわけですが、いまのお話も、この二号のほうの移設まで含めますと、特特会計で約百六十五億要るというのも新聞報道に出ております。この特特会計の問題そのものについても、少し時間をとってあらためて質問をしたいと思いますが、私は終わりに、きょう非常に時間がなくて一、二の例でお話ししましたが、ミッドウエーの母港化という問題が、横須賀の基地のこういう埋め立てによる強化、あるいは三沢、木更津、厚木の使用の問題、横須賀の近くでは箱崎だとか小柴の貯油施設が改修されておりますけれども、あるいは二年あき家になっていたという池子弾薬庫に大量の弾薬を運び込む、こういった問題とみんなつながって関連してきている大きな基地の再編成強化の問題だと思う。これを外務大臣は繰り返し、そうではないのだ、端的にいえば家族対策だ、そういう御答弁をいままでされているわけですけれども、私は、この母港化がその点で、日米会談以後における、あるいはベトナムの協定以後におけるアメリカのアジア戦略の中で、それに積極的に協力する非常に重要な基地の強化の問題だと思いますので、幾つか核の問題その他あらためて御質問することにしまして、きょうはこれで終わりたいと思います。
  117. 三原朝雄

    三原委員長 鈴切康雄君。
  118. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 午前中に法務大臣は、金大中氏を名ざして、本人に亡命の意思があれば、出入国管理令に照らして、法務大臣の専権事項であるところの、亡命に準ずる処置として特別在留許可を与えると言明をされました。これは議事録を読んでいただければよくわかるわけでありますが、そのとおりだと思います。そこで私、これはたいへんに前向きの答弁であると評価をしているわけでありますが、法務当局においても、当然大臣の言われたそのとおりであると、そのようにもう一度確認をしておきたいと思うのですが、いかがでしょか。
  119. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 遅刻してまいりまして申しわけございません。  ただいまお尋ねの点でございますが、私もきょう大臣発言を聞いておりまして、事務当局としての私の感触といたしましては、金大中氏に関連して法務大臣は、わが国において政治亡命者等の取り扱いに関しては、現行の入管令によればこういう取り扱いができるということの御発言であったかと思いますが、もちろんこういった問題は現実の問題になっておりませんし、それから現実の問題になりました際には、その時点において国際的ないろいろの関係判断しての結論が出るものと思いますが、とりあえずの感触といたしましては、そういった御説明があったものと了解いたしております。
  120. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 法務当局、だいぶ答弁が後退しているように私は見受けます。法務大臣は明らかに金大中氏を名ざしをして、そして本人に亡命の意思があるならば、出入国管理令に照らして、当然私の専権事項として亡命に準ずる措置として特別の在留許可を与える、こういうようにはっきりおっしゃった。私はこの耳で聞いておりますし、そのところは大切な問題であるというので筆記をしているわけでありますが、それがいま、現在そういう時点でないので、もし金大中が来られたら、諸般の情勢を加味して、そしてそれに対して言うならば判断をつけるという法務当局考え方は明らかに後退しているわけですが、その点はっきりしていただきたいと思うのです。
  121. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 ただいま私が御答弁申し上げましたのは、私が大臣発言を伺った際に私なりに感じたことでございまして、大臣自身の御意向がどうであったかということにつきましては、恐縮ながらひとつ適当な機会において大臣自身のお答えを聞いていただければ幸いだと存じます。
  122. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この問題は重大な問題ですよね。ですから、こういうふうなあいまいないわゆる後退をした答弁では、とうてい審議が先に進められないのですね。議事録を取り寄せてはっきり読んでいただいて、そしてその上に立ってやっていただきたいと思うのですがね。そうしないと先に進めませんよ、これは。重大な問題で、これからいろいろ波乱を及ぼしていく問題が出てくるわけですから、それに対して大臣が言われたよりそんな後退した答弁を出されたということになると、これは先に進めません。委員長、その議事録の大事な部分をひとつ取り寄せて読んでいただいて、その上において論議を伸ばしたい。いかがでしょう。お取り計らいをいただきたい。
  123. 三原朝雄

    三原委員長 ちょっと速記をやめて。
  124. 三原朝雄

    三原委員長 速記を始めて。
  125. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これはたいへんに重要な問題をはらんでおるので、私はそれを再度お聞きしたわけなんですがね。  そこでお聞きしたいことは、法務当局としては、当然金大中氏が来日をしなければもう捜査はできない、そしてまた、言うならば迷宮入りをしてしまうということを言われているわけでありますけれども金大中氏が来日をされた場合、金大中氏の意思というのは日本政府によって尊重されるかどうかという問題、この点についてお伺いいたしましょう。
  126. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 金大中氏の来日に際しまして、どういう状況のもとで来日されるかということはまだ具体的になっておりませんが、入管当局といたしましては、金大中氏の来日の際に本人意思を十分尊重いたしたいと存じております。
  127. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは裏返して見ますと、日本政府意思によって個人の意思を曲げるということはないと判断していいですか。
  128. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 入管行政の上から本件にタッチします面は非常に限られておるわけでございますが、金大中氏が日本に参りまして日本捜査当局協力されるといった面におきましては、何ら問題ないとわれわれは思っておりますが、その間、金大中氏から何らか別の意思表示がございました場合には、その時点において判断いたしたいと存じますが、しかし御本人意思は十分尊重いたしたいと思っております。
  129. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 急遽後宮大使が帰国をされるという、そういう情報を私耳にしたのですが、どういう予定でお帰りになりましょうか。
  130. 大平正芳

    大平国務大臣 今晩帰国いたしまして、明日午前中に事務連絡をいたしまして、午後帰任させるつもりです。
  131. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 もちろん後宮大使が来られるということは、少なくともいま重大な問題を提起している金大中氏との間の打ち合わせが多分に含まれていると、そのように判断してよろしゅうございますか。
  132. 大平正芳

    大平国務大臣 事件発生以来今日までの経過につきまして十分大使からも聴取しなければならぬと考えておりまするし、今後の日韓間の折衝につきましても十分打ち合わせをいたしたいと思っております。
  133. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 金大中氏が再来日をするということは、これは言うなれば重大な一つのポイントとなってくるわけであります。韓国側も当然金大中氏を再来日をさせざるを得ないという時点にもうある程度追い込まれてきている、私はそのように判断をするわけでありますけれども、そこで、少なくとも韓国のほうが、金大中氏を日本に再来日させるについて、何か条件をつけて再来日させるということはあり得るであろうかということなんですが、その点についての御答弁を願います。
  134. 大平正芳

    大平国務大臣 その問題につきまして、先方からまだ何らの意思表示を聞いておりません。
  135. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 たとえて言うならば、考えられるところは、滞在期間の制限とか、あるいは事情聴取のための、あるいはそれを終わったときには韓国に帰すとかいう問題は、いまのところは韓国との間において、そういう条件の提示は全くないのか。きょう後宮大使が来られて、そのことで打ち合わせに来られるのじゃないかというふうに私は判断するのですが、そういう点はございませんか。
  136. 大平正芳

    大平国務大臣 この事件が起きまして今日までの経過、今後の折衝のやり方につきましていろいろ御協議をするわけでございまして、金大中氏再来日問題は、御案内のように先方要請をいたしてありますけれども先方から明確な答えがまだ来てないという段階でございまして、したがってその来日の条件はどうかというところは、いわんやまだそういう問題にはなっていないわけでございます。後宮大使、先ほども御答弁申し上げましたように、本事件出来して以来、昼夜をおかずたいへん御活動いただいておりますので、激励をしたいと思いまするし、また大使の立場で本省にいろいろ報告したいこともありましょうし、私どもといたしましては、現地の大使の御意見を十分聴取した上で今後の運び方を考えてみたいということでございまして、金大中氏の再来日問題のためにお帰りいただく、そういうものではありません。
  137. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 金大中氏の問題がいま一番世間の大きなポイントになっていることについて、やはり外務大臣は、まず金大中氏の再来日というものに対して、どのようなことをすればとにかくできるかということを真剣に考えてほしい。あなたも先ほど答弁の中に、全くこの問題は解明を急ぐ問題であるというふうに言われているわけでありますから、当然、後宮大使が来られたときには、この問題が一つの大きな焦点としてあなたとしても煮詰めもしなければならない問題だと私は思うのですが、先ほど松永条約局長は、たとえ来日をしても十分な捜査ができないという条件では私ども承知をすることはできないという御発言をされたわけでありますけれども、そこで警察当局として、当然外務省を通じて韓国のほうに、捜査に対しての協力ということを申し入れておると思うわけでありますけれども、警察当局としては、少なくとも十分な捜査ができるという諸条件というものが私はあろうかと思います。もちろん、金大中氏がずっと日本に再来日すれば、それにこしたことはないわけでありますけれども、諸条件という問題を考えたときに、最低、金大中氏が日本に再来日して捜査に結論を出せるという確信のある諸条件というものは、どういうものがございましょうか。
  138. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  まず期間でございますが、大体、捜査に必要にして十分な期間ということになりますと、前提としては、御本人がどの程度率直、端的に捜査協力していただけるかどうかということにかかっていると思います。したがいまして、そういう条件が満たされればかなり早い期間で終了するし、またいろいろ記憶等が不鮮明になっているというようなことの関係でなかなか判明しないというような問題がありますと、期間もやや延びざるを得ないというようなあれがあると思いますけれども、率直に言って大体二、三週間ぐらいあれば解明できるのではないか。一応の解明ができる、このように考えておりますが、御本人の記憶その他がやはり重大な問題になってくるというふうに考えます。
  139. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、韓国側にこれから金大中氏の再来日要請するについて、韓国とのいろいろな話し合いがあると思いますが、その中で一応考えられることは、いま申し上げましたように、もうある程度の日限というものを切って、それが終わったならば韓国に帰してもらいたいという、そういうふうな条件も考えられましょうし、それからまた、滞在期間というものをいつというふうにきめて考えられる、こういうふうなことも私はやはりいろいろの交渉の過程の中にあろうかと思うのですが、そうした場合、先ほど問題になったいわゆる法務大臣との関係が出てくるわけであります。  すなわち、そういう諸条件を日本の国が条件としてのんだ場合、確かに金大中氏は日本に来るでありましょう。しかし来ても、日本韓国の間に諸条件がついた場合に、本人意思としては、少なくとも日本の国に亡命をしたいという意思があっても、しょせんは韓国日本との間のいろいろな条件によって本人意思どおりにならないという場合が出てくるのじゃないかと思うのですけれども、そうした場合、韓国とのそういうふうな取りきめと個人の意思とどちらを尊重されるつもりなんでしょうか。
  140. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 入管の立場から申し上げますと、日本韓国政府間の了解事項と申しますか、これは国際的な約束でございますから、これは尊重せざるを得ないということでございます。他方、それを破るような意思がもし金大中氏にございました場合に、その意図が、人道的な見地から、また同氏の人権尊重の見地から、やはり考慮に値するということでございますと、これも入管当局といたしましては、十分考慮せざるを得ないかと存じます。したがいまして、現状におきましては、もちろん仮定の問題でございますから、どういった時点において、どういう状況のもとにそういう意思表示がなされるかということもわかりかねますが、われわれといたしましては、そういった二律背反的な立場にございますが、国際信義を守りながら、しかもなおかつ金大中氏の意図を尊重するという方向で何らかの妥当な解決点を見出すべく、これは入管当局だけの問題ではございませんで、外務当局の御助力も得まして、そういった解決点を見出す以外に方法はないのではないかと存じます。
  141. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、先ほどから私が、少なくとも法務大臣の御発言は前向きで非常に評価ができると申し上げたのは、それをずばりと言うならば、亡命をされたときには受け入れるんだという、そういうはっきりした態度を言われた。そういう意味において、いま法務当局が、韓国とのいろいろの信義の点もあるし、それからあるいは諸条件というものを考えたときに云々ということになりますと、結局は、金大中氏が再来日をしたいということは、後宮大使と会ったときにすでにその意思ははっきりしているわけですから、この問題は必ずや大きな問題として禍根を残すような結果になるというふうに私は思うわけであります。だから、先ほど言いました議事録というものは、たいへんに重大な意味があるということを私は申し上げたわけであります。この問題について、法務大臣はいませんので、さらに追及するというわけにもいきませんから、それでは観点を変えまして申し上げたいと思うわけであります。  梁一東と金敬仁の二人に、どうして日本の国に一度来ていただきたいということを強く要請しなかったのでしょうか。すなわち、金大中のほうはいろいろ渦中の中にあって、なかなか向こうのほうの捜査等の関連もあるわけでありますが、この梁一東、金敬仁の場合においては、そういう意味において自由にある程度行動はできるわけであります。それに対して、捜査の上においてさらに話を進めたいというならば、そのお二人を先に来日するということについて、外務省としては要請をされたんですか。
  142. 高島益郎

    ○高島政府委員 梁一東氏と金敬仁氏につきましては、日本を離れるにあたりまして、捜査協力するために残ってくれということを再三にわたって要請いたしましたけれども先方のたっての事情によりまして、韓国に帰りました。その後、両氏の再来日につきましては、金大中と同様に、再三再四韓国側に対しまして、再来日するように要請いたしております。ただ、切り離して金大中氏と別個に日本に来てくれという要請はいたしておりません。
  143. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは、非常に外務省のほうにしても、それから警察庁のほうにしても、手落ちがあると私は思うのです。少なくとも金大中氏は渦中の人ですから、再来日ということについていろいろな諸般の事情があるでしょう。しかし、梁一東氏と金敬仁氏については、これはこちらのほうでまず先にお二人に来ていただくということを強く要請すべき筋合いのものではなかったか。それによってさらに金大中氏が来日をされるということになれば、すべて早くそういう点については解決できるわけであります。そういうこともしないで、ただ金大中氏とあとの二人と一緒に要請をしているところに、私はそういう意味においては、何か一歩この問題の解決をおくらせているというような感じを受けるのですが、その点についてはいかがお考えでしょうか。
  144. 高島益郎

    ○高島政府委員 政府が三氏の再来日についてとっておる態度につきまして、解決をおくらせているということは、とんでもない考え方だと思います。私どもは、事件捜査の究明のために全力をあげているわけでありまして、再来日につきましても、あらゆる観点から、警察当局の御協力を得て適当な最善の方法を講じておるのが現状でございます。
  145. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 結論から言って、もっとベターな方法があったのじゃないかということを私は申し上げているのであって、何も怠慢であったとかなんとかいうことではなしに、ベターな方法があったのじゃないかと私は申し上げているわけです。  そこで、金大中事件に対して、政府韓国に今日まで正式に何回そういう点についての御要請をなされたか。これについて……。
  146. 高島益郎

    ○高島政府委員 いま直ちにここで何回ということをちょっとお答えいたしかねますが、回数のことでしたら、調査した上でお答えいたします。
  147. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 梁一東氏が離日する際に、外務省のほうでは、ぜひとも協力していただきたい、こういうふうに要請をしたということは、いまアジア局長から話があったとおりですけれども、それに対して梁一東氏が、要するに金大中氏を救済するために努力するということを理由にして韓国に帰られたわけでありますけれども、その後、梁一東氏が金大中氏の釈放についてどのような動きをされておったか。それについて韓国日本大使館から何らかの報告があったと思うわけでありますが、そういうことについて御報告願いたい。
  148. 高島益郎

    ○高島政府委員 ただいま先生の御指摘の梁一東氏の韓国における活動につきまして、特別な報告に接してはおりません。
  149. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そういうことをやはり外務省は、韓国大使館を通じて、どういう状態で動いているかということを明細にあなた方は知る必要があるんじゃないですか。何のためのアジア局長なんですか。あなたはいかにも、私どもはやっているんだ、おくらせた覚えはないというふうなことを言っていながら、大事なポイントはみんな抜けているんじゃないですか。現実にいま私が言ったとおり、梁一東氏は少なくとも、私は金大中氏を救済すると言って出かけたわけなんですから、その後、梁一東氏がどういう動きをやったということについて、あなたたちは克明に韓国大使館を通じて知るべき私は責任があると思うのです。大臣、いかがでしょうか。
  150. 大平正芳

    大平国務大臣 梁一東氏につきましては、その供述内容というものを御提供いただきたいという要求をいたして、近く提供できるということでございます。  それから、われわれの十項目にわたる要求は、事件解明のために必要と存ずる項目でございまして、韓国側で掌握されましたデータは御提供いただきたいというラインで折衝し、一部参りましたけれども、今後なお御提供いただかなければならぬということで努力をいたしておるわけでございまして、梁一東氏の韓国内における行動というものを特定いたしましての資料といたしましては、要求はいたしていないのであります。
  151. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本政府のほうから韓国側に資料を提出してもらいたいという話があって、韓国側はそれに対して中間報告的な資料を提出したわけでございますが、それは日本政府としては、全く期待に沿わないというような状態の内容になっておるということをいわれておったわけですが、きょう後宮大使がこちらに来られることによって、そういうふうないろいろの内容等の書類とかいうものは、韓国政府から預かってきておるんじゃないでしょうか。その点はいかがでしょうか。
  152. 大平正芳

    大平国務大臣 後宮大使がどういう報告をもたらしますか、来着を待ってよく聴取してみたいと思っております。
  153. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま捜査当局としては、何としても金大中氏に再来日をしてもらうということが一番のかぎであるということは、これはもう大方の見方であるわけでありますけれども、そこで私はちょっとお聞きしたいのですが、警察当局は警察当局の中で当然いろいろの捜査を進展をしているかとは私は思います。そしてその進展も、あとポイントとポイントをつなぎ合わせてどういうふうな結論が出てくるかということで、その判断というものは、案外に私は解明が早いぐらい熱を入れられているんじゃないかと思うのですけれども捜査当局がいろいろ捜査をしている中において、犯人の中に日本人または日本人の団体が関係していることはないであろうかどうかということ、それについてちょっとお伺いします。
  154. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  日本人ないし日本人の団体が関係しているかどうか、この点については、いまのところ、そうであるか、あるいはないかという判断をする材料は出ておりません。
  155. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、再度お聞きするわけでありますけれども、直接並びに間接的にも、絶対に日本人はこれに対して関係をしていないと確信してよろしゅうございましょうか。
  156. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 いや、そういうことがまだわからないということでございまして、将来出てくるかもしれません。その点は私、断言できないわけでございます。
  157. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 将来ということになるとあれですが、現在の時点ではどうなんでしょうか。
  158. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 現在の時点では、そういうものではっきりした材料というものは出てきておりません。
  159. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 金大中氏のほうから今度は話を別のほうに移したいと思います。  一般論としてちょっとお聞きしておきたいのですけれども、第三国の領空に侵入して偵察行動を合法的にできる国際法上の要件というものは何があるか、お伺いをいたします。
  160. 松永信雄

    ○松永政府委員 一般論といたしまして、外国の航空機が領空内に入ってまいります場合には、その国の同意を必要といたします。
  161. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは当然戦時中でない場合はそうだと思いますが、戦時中の場合においては、これは当然許される、それから紛争当事国においてはできるというふうに判断できますね。
  162. 松永信雄

    ○松永政府委員 一般論といたしましては、同意を必要とすると申し上げましたのは、たとえば天候その他の状況によりまして、不可抗力によって入ってくるという場合は別でございますが、その国の同意がなければ、それは領空侵犯という事態になるわけでございまして、別にそこに戦争状態があるとかないとかいうこととは関係ございません。
  163. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 法務省と警察庁の方、たいへん御苦労さまでございました。  偵察と爆撃の関係についてお伺いしたいと思うのですが、すなわち、偵察と爆撃とは相互に関連しない全く別個の行動であるのか、それとも偵察と爆撃とは不可分の軍事行動であり、偵察行動は直接戦闘作戦行動の一環と見るべきものであるかという点については、どのようにお考えでしょうか。
  164. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 偵察と爆撃とは一般的には全く別個の行動であるというふうに考えております。
  165. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、戦闘行動と戦闘作戦行動とはどういうふうに違うのでしょう。
  166. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 戦闘行動、戦闘作戦行動ということを並べました場合に、全く回しものであるのか、あるいは一方が多少範囲が広いものであるのか、そこらはことばの上では明確にできないかと存じます。ただ、事前協議の対象となるべき行動について戦闘作戦行動、こういうことばを従来政府は使っております。
  167. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 明確にできないということでは、重要ないわゆる戦闘作戦行動というのは事前協議の対象になるわけでありますから、そういう意味において、戦闘行動と戦闘作戦行動、それが全く同一であるかないかさっぱりわからないというような、そういう答弁では納得できませんよ。そこははっきりしてもらいたいですね。
  168. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 安保条約にいいます事前協議の対象となるべき行動は、戦闘作戦行動のために基地としてわが国の施設、区域を使用する、こういうことでありまして、この点についてはこの概念ははっきりしておるわけでございます。
  169. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 戦闘行動というのは、たとえばB52がベトナムあるいはカンボジアを直接爆撃をする、これは戦闘行動じゃないでしょうか。
  170. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 B52という具体的なケースをあげての御質問でございますが、たとえばB52がかつて沖繩に復帰前に駐留していたことがございます。かりにB52が復帰後の沖繩から爆弾を積んでベトナムならベトナムへ爆撃を行なうために出動する、発進するという場合には、これは安保条約にいう事前協議の対象となるべき戦闘作戦行動でございます。
  171. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる戦闘行動というのは、実際にB52が、沖繩でなくても一般論として、ベトナムを攻撃をしたのを言うならば戦闘行動というように、これは常識でお考えになってもわかると思うのですよ。戦闘作戦行動というのは、要するに何作戦というのがつくかということなんですよ。少なくとも戦闘に寄与するために何らかのアクションが行なわれたのを言うならば作戦行動としてとらえるわけですから、そういう意味において、戦闘行動と戦闘作戦行動とはおのずと意味が違うわけでしょう。今後そういう問題が起きたときに、これはやはり政府としての明快な考え方がないと、いろいろとたいへんな誤解を招くようなことが起こると思うのですが、その点については、アメリカと何らか煮詰められたことがございましょうか。
  172. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 事前協議の対象となるべき戦闘作戦行動について、これは内容的に明らかであるわけでございまして、戦闘行動と比較してどうかという御質問に対しましては、たとえばある交戦地域において作戦が行なわれるといたしまして、その作戦の一つの局面として戦闘行動というものが行なわれるということが普通考えられると思います。
  173. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 カンボジアにおいては確かに爆撃が停止をされておるわけでありますけれども、カンボジアにおけるアメリカ軍の軍事介入の状況から見まして、SR71の偵察は、単なる偵察というのでなくして、明らかに私はこれは戦闘作戦行動の一環ではないかというふうに思うのですけれども、それが沖繩から発進をしたとかなんとかということでなくして考えた場合、そういう行動というものは少なくとも戦闘作戦行動の一環ではないか、そのように私は思うのですが、一般論としてお聞きしておきましょう。
  174. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 カンボジアということにまた言及しての御質問でございますが、八月十五日以降、カンボジアにおきまして米軍は爆撃活動を一切停止いたしました。しかしながら、国防省スポークスマンの記者会見での発言によりますと、八月十五日以降も非武装偵察機による偵察行動そのものは行なわれたことがある、こういうことを言っております。
  175. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 偵察行動が行なわれたことがあるということですか。もう一度。
  176. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 爆撃は停止したけれども偵察行動は行なったことがある、こういうことを言っておりまして、明らかに爆撃と偵察とは別個の行為としてとらえられております。
  177. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま、要するに偵察はあったんだ、こういう話でありますけれども、SR71がいま現在アジアの地域の中に駐留しているところはどことどこでしょうか。
  178. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 沖繩の嘉手納にSR71が駐留しておるという事実のみを承知いたしております。
  179. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうなりますと、カンボジアの要するに偵察というものは、少なくとも嘉手納の基地から立って、そして偵察をしたということになりましょうか。
  180. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先ほど答弁いたしました、国防省スポークスマンが記者会見で申しました偵察につきましては、いかなる種類の飛行機によるものか、どこの基地を発進した偵察機によるものなのか、その点は明らかにいたしておりません。
  181. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 明らかにしていないといって、少なくとも報道においてAP電が伝えるところによりますと、国防総省のスポークスマンのダニエル・ジェームズ中将は当時のブリーフィングで、このSR71を沖繩から発進をさしたというようなことを言っているわけじゃないですか。それについて外務省のほうでは、しかとアメリカ国防省のほうに確認をいたしましたか。
  182. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 八月十六日に行なわれました国防省スポークスマン、ジェームズ中将によります記者会見の内容をとくと調べました。その結果、そこで発言されておりますことは、いま申し上げましたように、八月十五日以降のカンボジア上空において偵察活動が行なわれたことがあるという点が第一点。SR71による偵察かという質問に対しては、その事実について自分は承知しておらないという答弁をいたしておりました。AP電の記事に関しまして米側は、これは推測記事である、こういうことを照会に対して確認をしてきております。
  183. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、偵察行動ということになりますと、少なくとも沖繩にはSR71という言うならば偵察機があるわけです。となりますと、偵察行動を少なくともカンボジアに行なったということであるならば、日本の国も少なくとも無関心ではいられない重要な問題だと私は思うのです。これが発表されますと、いち早く外務省としてその見解を述べられた内容が載せられておったわけでありますけれども、それについて、ただ偵察が行なわれたんだ、機種はわからないんだということでなくして、もう少し外務省としては、その偵察が少なくともどこから行なわれたということをただしてみる必要があると私は思うのですが、その点についてどうなんでしょうか。もう一度ただしてみる気はありませんか。
  184. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 カンボジア上空で行なわれた偵察活動と報じられたものがいかなる種類の偵察であるのか、その場合に沖繩に駐留しますSR71がこれに関与しているのかどうかということについては、当然わがほうとして関心があるところでございますから、照会をいたしましたところ、AP電の記事は推測記事であるということを米側がさきにいってきたわけでありまして、一々の行動については米側としてコメントすることはできないという従来の態度を重ねていってまいると同時に、沖繩に駐留をいたしておりますSR71は国際法に違反した行動はしておらない、またSR71は安保条約のワク内における行動を行なっているものであるということを確言してきたわけでございます。
  185. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる偵察機がどんな種類のものが飛んだかコメントすることはできないというようなアメリカことばを、私どもは信用するわけにはいきません。沖繩における基地には少なくともSR71が現実としてあるわけであります。そういうことを考えたときに、日本としてこういうようないわゆる疑惑を持たれるようなSR71を早く撤去してもらいたい、という日本側としての意思アメリカ側に伝える意思はございませんか。
  186. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 SR71は返還前からずっと沖繩に駐留しているわけでございまして、沖繩返還以後、国会におきましても随時御議論のあったということは承知いたしております。そのつど日本側といたしましては、沖繩を基地としますSR71が国際法に違反した行動を行なっていない、また安保条約のワク内における行動であるということを米側から確認いたしているところでございまして、その限りにおきまして、SR71が沖繩の基地を使用しておりますことは安保条約のワク内のものである、こういう考え方に立つわけでございまして、いまこれの撤去を求めるという考え方は持っておりません。
  187. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 少なくともこういうふうに疑惑を持たれるような種類の偵察機というものの沖繩の移駐に対しては、絶対取り除いてもらうように、日本政府としては当然働きかけもし、またアメリカのほうに交渉すべきである、私はそのように思うわけですが、極東の周辺地域の地理的な範囲というものは限りがあるのかどうか、それともこれは限りは全くないんだというふうなお考え方に立っておられるのか、その点についてお伺いしましょう。
  188. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 一般的な用語として用いられております極東と申しますのは、地理学的には明確に、正確に固定されたものではございませんけれども、昭和三十五年の安保条約締結以来、安保条約上の極東の範囲ということにつきましては、日米両国が平和と安全の維持に共通の関心を特に有している地域であって、こうした地域は大体においてフィリピン以北並びに日本及びその周辺地域であるということを、当時以来政府は統一見解としてずっといってきておるわけでございますので、その点の考え方は今日も変わっておらないわけでございます。
  189. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 確かにあなたのほうで六〇年安保のときには、極東の範囲についてフィリピン以北並びに台湾、韓国及びその周辺というように解釈されておったわけであります。しかし、周辺ということばというのはまことにこれは重宝なことばでありまして、次から次へとアメリカが戦火を拡大をするたびごとに、日本政府としてはその周辺というものの拡大をはかってきたように私は考えられます。  そこで、周辺の中に入る範囲内というものを政府はどのようにお考えになっていましょうか。
  190. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 周辺という地域を地理的に特定するということは必ずしもどうかというふうな感じも持つわけでございますが、たとえばベトナムにつきましてはいわゆる極東周辺地域というふうに従来説明されてきておりますし、政府といたしましては、極東の周辺の地域についても、これが極東の平和と安全に無関係でない地域という場合には、これは周辺の地域というふうに考えてきているわけでございます。
  191. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 極東と無関係でない地域ということになりますと、先ほどあなたがおっしゃった、言うならば極東とその周辺というものは限定されておるんだというものの拡大解釈として、どういうふうにでもなってしまうように私は思う。それが心配でならぬわけです。いまあなたが、周辺の問題についてベトナムはその一つであるというふうに言われましたから、私のほうで名前を申し上げて、そしてそれが周辺地域であるというふうにお考えになっているかどうかということをちょっとお聞きしておきたいと思いますけれども、ラオスの場合はどうでしょうか。
  192. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 私、先ほど答弁申しましたのは、極東に関係があるということではなくして、極東の平和と安定の維持に無関係でない地域、こういうことを申し上げたわけでございまして、いま具体的にラオスということを御指摘でございますが、そのラオスにおける事態がいかなる態様をとるのか、そこらにもよりけりでございまして、一がいにラオスは周辺地域である云々ということを申し上げるのはあるいはいかがかと存じます。
  193. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ベトナムは、あなたがおっしゃるように、はっきりと周辺地域であるというふうに言明された。ラオスはということになると、それについて周辺地域であるというふうに申し上げるのは少し問題があろうかと思う、こういうふうにいまことばを濁らせる。そして今度、極東の平和と維持に関係があるということを拡大解釈しながら、ラオスも当然その周縁地域にあるんだというふうな答弁にまた変わってくる。これでは、はっきりいって、極東の周辺地域という問題は、いかなる場合においても拡大解釈をされているということになるわけです。だからその点、はっきりやはり統一見解というものをお出しになったらどうなんでしょうか。  外務大臣、その点どうでしょうか。統一見解を出されて、これは要するに極東の周辺地域であるとかはっきりしないと、そのたびごとに拡大解釈で変わってくるわけです。
  194. 大平正芳

    大平国務大臣 安保条約にいうところの極東の平和と安全に貢献するという任務があるわけでございまして、極東、わが国にきわめて近いところにおきまして何かのトラブルがありましても、それが極東の平和と安全に脅威をもたらすようなものでないということでございますならば格別問題はないわけでございまして、先ほど政府委員が御答弁申し上げましたとおり、その事態の態様によりまして、極東の平和と安全にどういう影響があるかというような観点から問題を解明すべきものと思うのであります。したがって、地理的な区域をあらかじめ確定するということは、本来安保条約の趣旨から申しまして適当でないと私は思います。
  195. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 地理的な区域を限定するということをはっきりするということは、安保条約の立場からいうならばこれは適当でないということは、そのときそのときの状態によって政府考え方によって極東並びに周辺というものは変えられるというふうに判断していいわけですね。
  196. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもの任務は安保条約を適正に運営していくという任務を持っておるわけでございまして、安保条約の趣旨に照らしまして事案を判断してまいることは当然だと思います。
  197. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ですから、安保条約の解釈、判断というものをはっきり押していかないと、たとえばベトナムは、完全に日本の国としては周辺というふうに一応はっきりされたということは御答弁でも明らかでありますけれども、ラオスあるいはカンボジア、それから引き続いてタイ、そしてまたインド、中近東、これも考えようによっては、極東の平和と安全を維持するために必要であるというふうに判断されれば、こういうところまで極東の周辺というものは範囲が伸びると判断していいんでしょうか。
  198. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 安保条約で考えております極東の範囲というのは、安保条約の規定に基づきまして米軍が日本にある施設、区域の使用を認められる地域でございまして、範囲でございまして、その意味で、ベトナム戦争が行なわれておりました間のベトナムというのは、直接極東の平和と安定に重要な深いつながりがあるという意味で、当時ベトナムは極東の周辺というふうに観念されたわけでございまして、アメリカ軍が日本の施設、区域を使いまして行動し得る範囲ということについて極東という観念が出てくるわけでございまして、インドあるいは中近東と無制限に広がるような性質のものでは当然ないわけでございます。
  199. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最後です。要するにアメリカ日本の基地を使用して行動し得る範囲内ということになりますと、これはいまのアメリカの空軍力をもってすれば、決して私はインドとかあるいは中近東へ飛行ができないということではなかろうと思うのです。そうなった場合に、いわゆるアメリカの飛行機の能力によってそれが極東の周辺であるというふうにきめられるのかどうかという問題、私これまた疑問が非常にあると思うのです。そういう点において、いまあなたは、インドとか中近東、これは周辺地域でないというふうにおっしゃったので、その点ははっきりしたわけでありますけれども、あとカンボジア、タイというのはどういう状態かということです。
  200. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 かりに米軍が日本の施設、区域を使って行動したいというふうに考えます場合にも、日本として、それが安保条約にいう極東の平和と安定に関連のない地域ということでありますならば、日本から見れば、それは極東の範囲あるいは極東の周辺の範囲外ということでございまして、軍事的に米軍の行動範囲いかんということは直接関係のない問題でございます。
  201. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 こういうふうな極東の周辺地域という問題についても、たいへんにあいまいな解釈で今日までずっと来ておるということ。そしてまた、極東の平和と安全ということを一つの名目として拡大解釈されているというきらいが多分に私、見えますので、きょうは時間もお約束をしている関係上これでやめますけれども、また後日この問題を取り上げながらさらにただしていきたい、こういうように思うわけです。これで終わります。以上。
  202. 三原朝雄

    三原委員長 受田新吉君。
  203. 受田新吉

    ○受田委員 私、ポイントを三つにしぼって、端的に短時間に質問をいたします。  最初に金大中事件、他の議員各位の質問と同じような形のものではありますが、いろいろとニュアンスの相違のある質問をしたいと思いますので、御答弁願いたいと思います。  この金大中氏は、再来日が可能であるという期待が持てる方向に現在進行しておると了解してよろしゅうございますか。
  204. 大平正芳

    大平国務大臣 捜査の充実を期する上におきまして来日が必要であるという立場に立ちまして、極力韓国政府協力方要請いたしておりますが、ただいまの時点で、確実にそういう方向にきまっておるということを申し上げる段階にはございません。
  205. 受田新吉

    ○受田委員 韓国当局の説明によると、金大中氏と梁一東、金敬仁という二人の人たちとの間に供述に相違点がある、そういう趣旨のことが報ぜられていると了解しているが、いかがでしょう。
  206. 大平正芳

    大平国務大臣 三氏の供述内容につきましては、近くというか、ただいまのメモによりますと、三氏の供述調書を先刻在ソウルの前田公使が受けたようでございます。これを拝見すれば、あなたの言われる疑問も解明されると思います。
  207. 受田新吉

    ○受田委員 その三人の供述が相違しているという点についての供述書の提出を要請することはできないものでございましょうか。
  208. 大平正芳

    大平国務大臣 まず供述調書がソウルの大使館までは届いたようでございまして、これを御送付を受けまして、捜査当局に御解明いただいた上で判断したいと思います。
  209. 受田新吉

    ○受田委員 そうした供述の相違などを明確にするためにも、先ほど以来の議員の発言にありましたような三人に御苦労願うというのが筋であって、金大中氏だけに御苦労願うということでは根本的な事件解明はできないという感じを一般国民は持っておると思います。その意味で、御苦労願う場合は三人御一緒にという形を、政府としても当然とってもらうということ。これは、供述の相違があるということにおいては、当然その点において明確さを示す意味で、政府としては三人の御出頭を願うように要請されるべきだと私は思います。  そこで、ちょっと金大中氏が今度来る問題でなくして、先般来たことについての事情を明確にしておきたいと思います。  金大中氏がこちらに御苦労されたということは、韓国政府が発給した旅券ではない、赤十字国際委員会の発給した身分証明書であったということ、これはもう国民もすべてよく知っておるわけですが、その赤十字国際委員会とは、いかなる理由があったということで身分証明書を発給したのか、お答え願いたいのです。
  210. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 金大中氏が一月の五日に入国してまいりました時点におきましては、韓国政府発給のパスポートを持って入ってきております。しかしながら、そのパスポートは二月の十七日に失効いたしまして、同氏が日本から再びアメリカに渡りたいというときに、その失効したパスポートを使えないので、赤十字国際委員会の旅行文書を手に入れてアメリカに渡り、またその文書によって日本に帰ってきたということでございます。
  211. 受田新吉

    ○受田委員 そのような証明書で入国を許可するのは、何の根拠でなされておるのでございましょう。条約上か、慣習上か。
  212. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 入管令に基づきますと有効な旅券ということになっておりますが、有効な旅券またはそれにかわるものということがございまして、赤十字国際委員会の発給いたします旅行文書は、現在のところ五十数カ国が一応国際的な渡航文書として承認いたしておりまして、日本もその五十数カ国の中に入ってこれを承認いたしております。
  213. 受田新吉

    ○受田委員 それは、条約上でなくして慣習上と了解してよろしゅうございますか。
  214. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 お説のとおりでございます。
  215. 受田新吉

    ○受田委員 ロシア革命の際に、ナンセン・パスポートというものを、難民を引き受けるために各国が受け入れて発行した経緯があることを、外務省はどういうふうに了解しておられますか。ロシアの亡命者、難民を救うために、各国が、これを受け入れるために特に発行したパスポート、それをナンセン・パスポートというと私は了解しておるのでございますが、ちょうどこのたびによく似たような形のパスポート。条約局長御存じでしたら……。
  216. 松永信雄

    ○松永政府委員 事実関係を必ずしも具体的に承知いたしておりませんけれども、ロシア革命の後に、いわゆる白系ロシア人と称されて方々の国に亡命した人たちにつきまして一種の渡航文書が作成されたという話は聞いております。私どもは、推測でございますけれども、おそらくそれは受け入れ国側が発給いたしました渡航文書でなかったかと存じます。
  217. 受田新吉

    ○受田委員 そうです。受け入れ国が発行した。つまりロシア革命の亡命者あるいは難民、これらを各国が受け入れるために発給したナンセン・パスポート、これは非常に今回の事件にも関連する歴史の一つのこまであると私は思っているのです。ロシア革命で犠牲を受け、生命の危険を感じた人々を各国が受け入れるという体制が当時あった。そのナンセン・パスポートによく似たようなものが、やはり今回のそういう赤十字国際委員会の発給する証明書で慣習上として出たとするならば、ナンセン・パスポートのわだちを踏むものであると了解してもいいのじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  218. 松永信雄

    ○松永政府委員 赤十字国際委員会が発行いたします渡航文書でございますから、受け入れ国、これがたとえば日本でございましたら、日本が発給いたします渡航文書とは、形態、手続の上においては違うでしょうけれども、そのほかにおきましては、そういうものを一種の渡航文書として認める。旅券にかわります渡航のための文書として認めるという効果においては、大体同様のものであろうと思っております。
  219. 受田新吉

    ○受田委員 この金大中氏が日本へ来たのは、韓国政府に受け入れられず、非常に圧迫をされた立場の人であって、いわば政治亡命者といってもいいのではないか。その政治亡命者という立場を承知の上で在留許可を与えたと了解してよろしゅうございますか。
  220. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 金大中氏が本年一月五日に入国してまいりました際、それからその後アメリカに出まして、また再び七月の十一日でございますか、入国してまいりました際には、入国目的といたしましては、病気療養と、それから自分が出版する自叙伝の校正ということでございまして、政治亡命的な意味合いの発言も全然ございませんので、入管当局といたしましては、通常の入国として、そういった政治亡命的な性格を帯びたものということではない取り扱いをいたしております。
  221. 受田新吉

    ○受田委員 事実上、政治亡命者ですよね。いま政治亡命者ではないという前提のもとに、一般の入国者としてこれを扱ったという、その説明はむしろ非常に不十分なんですよ。つまり、韓国に受け入れられない人間である、そういう立場であるならば、日本の国がこれを受け入れる場合に、韓国政治亡命者という立場が一応前提にされますね。そういう一般と何ら変わらない人間だという理由、これはまだもっと納得させる理由を私はお聞きしたいのです。つまり金大中の置かれている韓国における立場、これは法務省も十分御存じだし、また外務省も知っておられると思う。にもかかわらず一般の入国者としてこれを見た。韓国は受け入れてないのですから、一般人国者と違うのじゃないか。一般の入国者と判断するのにははなはだ理由が薄弱である。これを一般の入国者と見るためには、もっと政治亡命者ではないという理由を明確にしていただきたい。
  222. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 先ほども申し上げましたように、一月五日の入国の時点におきましては、韓国政府発給のパスポートを所持しておりまして、なおかつ入国の目的は、先ほど申し上げましたような、病気療養、それから出版のための校正ということでございまして、金大中氏の韓国における立場というものは、われわれは一応常識的には存じておった次第でございますが、御本人から、そういった政治亡命的な意図を持って日本に入りたいというような御発言がない場合は、入管当局として私のほうから、政治亡命者であろうかという推測も、あるいは押しつけもいたすことはいかがかと存じまして、御本人意思表示のない限り、額面どおりの入国目的と受け取りまして入国を許可した次第でございます。
  223. 受田新吉

    ○受田委員 韓国で正規の旅券の発給をされないような人であることは、日本政府は御存じだったのですね。
  224. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 一月五日に入国してまいりました時点におきましては、韓国政府発給の旅券を持っておられた次第でございます。
  225. 受田新吉

    ○受田委員 その旅券の期限はいつまでという旅券だったのですか。
  226. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 本年の二月十七日に失効いたしております。
  227. 受田新吉

    ○受田委員 失効した旅券を持って日本へ入国を許されるということになれば、韓国では正規の手続の旅券を発行されない人間を入れるということになりますね。
  228. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 二月十七日に失効でございますから、一月五日入国の時点におきましては有効な旅券でございました。
  229. 受田新吉

    ○受田委員 そうすると、その期限が切れた場合には、普通は送還手続とか何らかの方法をとるのが法務省の従来の規定ではありませんか。
  230. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 二月十七日に旅券が失効する時点におきまして、金大中氏が再びアメリカに渡りたいという希望を持っておられたようでございまして、したがいまして、旅券が失効しておるので、赤十字国際委員会の渡航文書を入手してアメリカに往復してくるという手続をとられた次第でございまして、私のほうといたしましては、金大中氏が当然在日韓国大使館に行って旅券の新たな交付を受けるなわ、持っておる旅券の期間更新、期間延長ということもできるわけでございますが、御本人がそれを希望されずに、赤十字国際委員会の渡航文書を入手されたというその間の事情につきましては特段承知いたしておりませんが、それを尊重いたしまして、金大中氏はその後アメリカに渡り、また日本に入国された次第でございます。
  231. 受田新吉

    ○受田委員 日本にやってきたときは、もう完全な韓国の正規の旅券のない人物であって、同時に赤十字の証明書を持ってくるような立場の人であって、韓国そのものが外交上の保護を特別に与えるようなことのない人間である。そういう人間を受け入れたということになるならば、これはもう明らかに政治亡命者であり、また、それから日本へ期限が幾らとわからないような形で受け入れておるというようなことも、非常に入国をあいまいにしておると私は思うのですが、一体どのくらい日本へ在留させるような入国を許されたんですか。
  232. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 アメリカに出国されます際に、アメリカの移民法によりまして、在留国の再入国の許可がなければアメリカのほうは受け入れないという事情があったようでございまして、本人から再入国許可の申請がございまして、再入国許可をいたしておりまして、金大中氏に対しましては、日本の在留は本年の十一月二日まで認めるということになっております。
  233. 受田新吉

    ○受田委員 本国が保証しないような人物を、赤十字のほうから証明書をもらってきたからといって、相当長期間に滞在を許すというようなことそのものに一つの問題がある。と同時に、もう明らかに本国の旅券が期限切れであることを外務省も知っておりながら、これを日本へ特別滞在せしめておるということになるならば、その身辺に対する危険は確かに予測されるはずです。つまり、本国が責任を持っていない人物ですから、しかも政治的な重大な立場にある人であるとならば、そうすればその身辺の危険は多分にあるはずです。本人が言わぬから安全だなどとやりおったら、これは文明国として、あなた、あぶない話ですわ。本人が申し出る、本人が何とか守ってくれいと言わなくても、現に非常に危険な状況の中に日本に亡命したと同じことになっている以上は、その身辺の擁護は警察にも連絡をし、そして適当な庇護をも加える、こういう心づかいをするのが、立憲国である日本、人命尊重の国の日本のあり方じゃないかと思うのです。  さっき局長の御答弁によると、何ら本人からも申し出がないし、法務省からも身辺の危険がある人だということも聞いていないということですが、これは確かに身辺に危険がはらんでいる人物であることは、韓国政府の旅券は二月七日で切れておるのに、在日韓国大使館へ行ってその旅券の発給をお願いするというような手も打ったわけでもない。国外にある存在としては、もう完全に本国から隔離された人物ですよ。したがって身辺に非常に危険がある。本人が申し出をしなければ一切身辺の保護をしなくてもいいというような立場の人ではない。政治的にも大統領候補にもなった人です。そういう意味からいったら、警察当局も、どうでしょうか局長さん、身辺の危険について保護を求めにこなかったからやらなかった、法務省からも連絡はなかったというような無責任発言は、角度を変えて追及しなければならぬと私は思うのです。つまり、だれからも身辺の保護の要請がなかったからやりませんでしたというが、現に身辺に危険が起こったじゃないですか。強制拉致されたじゃないですか。こんな見積もりで警察の権限が行使されたり法務省の入国が許されたりするようなあぶない国ではないはずなんです。日本は法治国ですよ。身辺の危険は多分にあった。その身辺の危険は全然なかったと法務省判断をされ、また外務省判断されておるかどうか。警察当局もそれに基づいて、だれからも要請がないから警察権の発動をしませんでしたというのか。  私は、日本の行政府の間に相互連絡に事を欠き、ものを安易に考えていって、事件が起こって主権侵害したなどと騒ぎ立てるのはおそいですから、もうこういう人物については適当な警戒を与えていいはずですよ。非常に危険状況にあったことは、結果論から見たら明白です。つまり、つもり警戒でなくして、犯罪の予防というところに警察の任務があるんじゃないですか。だれからも連絡がなかったからやりませんでしたじゃなくして、連絡がなくても警戒すべき人である場合には、当然庇護の任に当たっていいんじゃないか。警察と法務省の御答弁をもう一ぺん願いたい。
  234. 山本鎮彦

    ○山本(鎮)政府委員 私は、本人の申し出あるいは関係機関からの連絡がなければ警護をしない、こういうことは申し上げた覚えはないのですが、最終的な判断は警察がいたすべきものだと思っておりますし、そのための独自の情報の収集、いろいろなそういう捜査の結果等と相まってわれわれとしては自主的に判断しなければならない問題だと思いますが、一般的に警護というのは、やはり本人の了解を得てやらないと、いろいろとプライバシーの問題もあり、その点については、そういう判断をやったときに本人の了解が必要だと思います。しかし、問題は別でありまして、ただいま先生の御質問のような意味においては、結果的に見れば、結局、われわれの判断が甘かった、こういわれてもしかたないというふうに考えております。
  235. 受田新吉

    ○受田委員 事件が起こった後に警察の非常にあわてた対処のしかたを思うときに、事件が起こる前にちょっと心を使えば、ほんとうに効果的な結論が出たと私は思うのです。つまり警察の事件発生後における異常なばかりの全国的規模の捜査状況を拝見するときに、そのちょっと前にちょっとした心づかいが日本警察当局にあったならば、どのようにわれわれは救われたかと思います。日本の警察のあり方に対して、事件発生後の警察権の発動よりも、事件を起こさしめない予防というところに重点を置く警察権を行使していただきたい。もう結果は明白です。つまり、法務省からも話がない、警察が判断してもたいしたことはない、だから放任しておりましたと言うけれども、もう明らかに事実上政治亡命者ですよ。この点、あらためて政府関係各省庁の責任を明確にしてもらいたいと思うのです。  そこで、韓国にこの金大中事件とよく似たほかの国との関係がある。それは六年前に西独で起きた韓国留学生の大量蒸発事件。これは御存じのとおりです。これは韓国から西独へ行った学生が、韓国CIAによって強制拉致されて本国に連れていかれた。ところがその学生たちを連れていかれた西独が、ちょうど日本と同じよう立場で、西独の主権を侵したというて大騒ぎをして、そして韓国に抗議を申し込んだら、韓国は初めたいへんいいことを言うておる。今回留学生たちは自発的に帰国したものであって、西独政府が推測するような韓国の情報機関が誘拐したものではないと、そっけない返答をしておる。ところが西独政府は、それに対して非常におこって、あらためて厳重な抗議文を出したら、それに対して反応があって、その反応は、いろいろな罪状をお認めになった上で、韓国政府からあらためて陳謝を兼ねた覚え書きが届いたのですね。そして両国政府がこれ以上関係が悪化しないように努力をするという気持ちを表した。しかし、西独はこれに対して、国交断絶をたてまえとするような経済援助の停止という強力手段に出るということになって、ついに韓国は、いやお説のとおりのことで、そうした機関が動いたのでございますといって、これは今回の事件によく似ていますね。西独で起こった韓国留学生を強制拉致した事件。初め西独はなめられた。そんなことはないんだ、これはあなたらの考え違いだ、自発的に戻ったんだ。ところが、今度だんだんと経済援助を打ち切るぞというような強い措置に出たら、いやいやそのとおり間違いをしました、お許しくださいということになった。  お隣の国であり、最も親善友好を深めなければならない韓国国民の中に、こういう政治のあり方の中に、残念ですけれども、西独に留学した学生の事件という、今度の金大中事件を思わせるようなことが起こっておるのですよ。経済援助をとめるといったらすぐ陳謝しておるじゃないですか。日本も経済援助をやめるということをやって陳謝をさせてはどうですか。
  236. 大平正芳

    大平国務大臣 せっかくいま事件解明中でございまして、いままでの対韓政策をこの段階で変えるというようなことは考えておりません。
  237. 受田新吉

    ○受田委員 韓国にはそういう事例が現にあるのです。六年前に西独で起こった事件はちょうどよく似ている。ところが、向こうの西独政府が強い態度に出たら、韓国がすぐ軟化したじゃないですか。この問題は、最も近い韓国政府にしては、これから発展していこうという国としての過程においていろいろな苦労はあろうと思うけれども、しかし、韓国に対するそういう友情と、間違ったことに対してはきびしく反省させる外交とは別ですよ。それを混同しないで、韓国に対する友情を持っておるわが国である、同時に韓国が間違いをするということであるならば、きびしく西独の先輩の歩んだ道をこの際とるべきではないかということを私は考えておるわけですが、調査中でありますとかというようなことよりも、改めるにはばかるなかれ、韓国がこれから大いに発展しようという国家であることを目ざす以上は、こういう事件をうやむやにすることのないように、外務省としては外交上の礼儀も一応心得ながらきびしい外交態度というのをとるべきだと私は思います。大平先生はお人柄がよすぎて、のらりくらりという感じがしていけない。きびしくやるときはきびしくやる。西独政府の歩んだ道をあなたはきっと学んでくださると私は思うのですがね。
  238. 高島益郎

    ○高島政府委員 ちょっと事実問題に関係いたしますので、私から御説明させていただきます。西独の関係と今回の日本に起きました事件とは、非常に本質的な違いがあると私ども考えておりますのは、西独の場合は、西独の政府自体が主権侵害の事実をはっきり確認しました関係上、その事実をもとにしまして、韓国政府に対して主権侵害であるということで抗議を申し込んだ。その後さらにその抗議を、事実をもっていろいろな措置として、たとえば先生が先ほど申しましたとおり、援助の一時打ち切り、そういったことも含めて強硬な措置をとりました。  これは六七年の七月十三日に抗議を行ないまして、韓国政府は、その後約十日後の七月二十四日に、はっきりその非を認め、ドイツ側の要求に応じて、本件関係した大使館員三名の本国召還を約し、それから連れ去られた者のうち六名を直ちにドイツに送還するといった措置をとりまして、その後も逐次連れ去った学生を返しまして、最終的には全員返しましたけれども、いずれにいたしましても、当初からドイツの政府がはっきり主権侵害の事実をつかんでおりまして、その事実に基づいた措置をとることができたというのが今度の日本における事件と違うような気がいたします。
  239. 受田新吉

    ○受田委員 事件発生後相当日時もたっているわけで、その供述の実態なども十分報告を求めて措置をするのには、もう時間的にかかり過ぎているのです。こういう国際問題など、そう時間がかかるはずがない。こういうことについてもっと適切な措置をする必要がある。  大体が政治犯罪人というものは、当人の属する政府に引き渡さないという国際法上の一応の原則があると私は思うのです。日本政府はこの原則を認めていて、これらの者を庇護しておるのかどうか。あるいはこれらの者を不法入国者として強制送還というような措置をとっておるのか。簡単に御答弁願いたい。
  240. 松永信雄

    ○松永政府委員 いま御指摘がございましたように、政治犯罪人あるいは政治的な亡命者につきましては、国際法相手国から引き渡しの要求があった場合に、それに応じなくてもいい政治犯罪人不引き渡しの原則を国際法上援用できるということになっております。
  241. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、このたびの事件は、もう明らかに政治亡命者としか見られませんよ。さっきからお話を聞いても、一般人として認めたなんというかっこうじゃないですわ。旅券の期限が切れている。しかもそれを日本は受け入れて、相当長時間滞在を許すなどというのは、これは明らかに政治亡命者として庇護しようとしたのじゃないかということは想像できる。そうなれば、この金大中氏に対する日本政府の庇護ということは、当然具体的の措置としてとられなければならない。以上の問題で、この政治亡命者を保護するということを法律的にこの際きめておく必要はないか。立法措置が必要なんじゃないですか。
  242. 松永信雄

    ○松永政府委員 これは私のほうの所管じゃございませんので、法務省のほうから御説明申し上げるべきかと存じますけれども、逃亡犯罪人引渡法という法律がございます。昭和二十八年、法律六十八号でございます。これの第二条に「左の各号の一に該当する場合には、逃亡犯罪人を引き渡してはならない。但し、第三号、第四号、第八号又は第九号に該当する場合において、引渡条約に別段の定があるときは、この限りでない」という定めがありまして、その第一号に、「引渡犯罪が政治犯罪であるとき」というのがございます。したがいまして、わが国におきましては、政治犯罪人に関する法律の規定があるわけでございます。
  243. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つそれに関連するのですが、避難民の地位に関する条約、これはこの間、外務委員会でも加盟問題を前向きで検討すると論じておるのですが、これは新しい立法措置は必要としないのか、あるいは何かの措置が要るのか、そういうことです。
  244. 松永信雄

    ○松永政府委員 難民の地位に関する条約、これは一九五一年にヨーロッパ諸国の間で締結されまして、さらに一九六七年にこれに関する議定書が締結されまして、アフリカ諸国がたくさんこれに加入しております。  この条約は一九五一年の条約につきましては、第二次大戦中の戦争状態及び大戦後のヨーロッパにおきます、主として東欧でございますが、革命という状態から発生いたしました大量の難民。さらに六七年の議定書は、一九六〇年代にアフリカにおきまして大量に発生いたしました難民。こういう状態に対処するために、難民の地位を安定し、その人権を保障するために作成された条約でございます。これを直ちに国内法に導入いたしますためには、おそらくこの条約の内容を見ますと、いろいろな難民の要件でありますとか、手続でありますとか、あるいはその難民に対する待遇の問題等に関する規定が非常にたくさんございますので、国内法上幾多の手当てを必要とするだろうと存じております。
  245. 受田新吉

    ○受田委員 立法措置が必要である、それを検討する、前向きでやろう、取っ組もうということですね。
  246. 松永信雄

    ○松永政府委員 そういう問題もございますので、慎重に検討を進めてまいりたいということでございます。
  247. 受田新吉

    ○受田委員 金大中氏がこっちに来てくださるという段階に、韓国政府から何かの条件がつけられる可能性がある。現に私、韓国のこっちへ来る人の身元引き受けで、旅費の引き受けその他何件か扱ったことがある。滞在中の責任を負うことがあった。そういう場合に韓国政府から条件がつけられることがある。たとえば、本邦の滞在日数とか、滞在中の行動の制限とか、あるいは日本当局との会談に韓国当局は立ち会うとか、宿泊所の指定とか、こういう条件がつけられた場合に、日本政府はこれについてどういう態度に出るのですか。
  248. 大平正芳

    大平国務大臣 まだ再来日がきまったわけじゃございませんで、もし韓国側協力しようというお話になりました場合、いま御指摘のような問題につきましてはとくと検討してみたいと思います。
  249. 受田新吉

    ○受田委員 そういう問題は当然予想される問題です。現に韓国からこちらに来る人に対しても、それだけの責任を持っておるわけなんです。そこで金大中氏が、さっき入国管理局長が言われたように、政治的に亡命の申請をしてきた、こういう場合に日本はどう扱っていくかという問題です。
  250. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 金大中氏の政治亡命でございますが、これは現在の時点におきまして仮定の問題でございますし、日本国へ亡命したいのか、あるいは第三国へ亡命したいのかといったような問題もあるかと存じますが、入管当局といたしましては、一応入管令のたてまえからこういったものをどう処理することができるかということにつきましては、けさほど法務大臣の御発言があったと思いますし、法務大臣が言われましたとおり、諸般の情勢を検討して日本に在留せしむることが適当であるという場合には、法務大臣の在留特別許可が与えられるかと存ずる次第でございますが、現段階におきましては、その具体的な要請なりが出た時点におきまして、諸般の問題を検討して方針を決定いたしたいと存じております。
  251. 受田新吉

    ○受田委員 入管令第五十条でしたかによる法務大臣の許可による特別在留の許可申請。ところが、午前中、大出委員質問法務大臣は、金大中氏にこの特別在留許可を与えるという答弁をしたようですけれども、その後午後の記者会見で、それは一般的な原則を言ったんだというふうに取り消されたということのようですが、これは一体どうしたことか。もうきょうの事件ですからね。
  252. 吉岡章

    ○吉岡政府委員 けさほどの大臣の御発言を私、拝聴いたしておりましたが、その後大臣お話をする機会がございませんので、いま御指摘のようなことがあったということは、新聞社の人から聞いたわけでございますが、具体的な内容につきましては十分存じておりません。
  253. 受田新吉

    ○受田委員 朝令暮改ではいけないですね。こういうときには、すかっと政府当局の信念が一貫しておらなければいかぬ。午前中言ったのを取り消して午後は平然としているというようなことでは、日本政府に対する信頼もがた落ちですよ。これは韓国のほうからなめられる国家になるわけです。われわれはそういう悲惨な国家であってはならない。もっときりっとしたもので首尾一貫して、信念をもって対処してもらいたいと思うのです。  最後に、今度の国連総会に関する大事な問題として、外務省設置法でアジア局へ次長を置くという、アジア局の比重が高まる法案がいま出ておるのですから、それに関連することです。  日本は昭和二十七年の六月二十三日に、国連加盟申請を国連事務当局に行なって、加盟が実現したのは、有名な鳩山内閣のときの三十一年十二月十八日。よく覚えております。このように、加盟申請の効力というのは継続すると理解してよろしいかどうか。申請してから四年たって取り扱いが実現した。一ぺん申請しておればそれは継続するのか。
  254. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 加盟申請をいたしますれば、一回申請の手続をした以後、その効力は加盟が実現するまで続くものと了解しております。
  255. 受田新吉

    ○受田委員 そこで、これは慣習的にそうなっておるのか、それとも手続規定にそうなっておる規定があるのか。国連の性格をちょっと…。  なぜ私これを質問するのかというと、南北朝鮮はそれぞれ、一九四九年一月と同年二月、一九五一年十二月及び一九五二年一月に国連加盟を申請しておるが、その事実があったかどうかということとつながるので御質問しているわけです。
  256. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 いま御質問の点につきましては、まだ詳細存じておりませんので、さっそく調べましてお答えさしていただきたいと思います。
  257. 受田新吉

    ○受田委員 朝鮮民主主義人民共和国の国連加盟申請は、だから現在においても有効であると判断してよいかということです。つまり前に申請したものがいまも生きておると理解してよろしいかということです。
  258. 鈴木文彦

    ○鈴木(文)政府委員 ただいまのお話のありました、申請をしたかどうかという事実関係がはっきりいたしませんので、ちょっとお答えしかねますが、その点を調べました上で、それに対するお答えをさしていただきたいと思います。
  259. 受田新吉

    ○受田委員 日本政府は次の国連総会に南北朝鮮の同時国連加盟ということを提案しようとしておるのですか。あるいは提案があった場合にはこれに賛成しようとしておるのか。お答えを願います。
  260. 大平正芳

    大平国務大臣 国連に加盟するのは朝鮮半島における政府の問題でございまして、加盟する加盟しないは先方の問題でございます。日本政府のやることではございません。かりに朝鮮半島における政権が加盟の意思を表明された場合に、国連のメンバーとして日本がどういう態度をとるかという問題につきましては、目下鋭意検討いたしておりまして、総会までにはわれわれの態度をきめなければならぬと考えております。
  261. 受田新吉

    ○受田委員 秋の国連総会に南北朝鮮の国連同時加盟の決議が提出される予定と見るかどうか。また、それが提出されるとするならば、日本政府はその共同提案国となるかどうかということです。検討じゃなくして、そういう一応の目標は日本政府が持っておらなければならない。昨年の失敗もあるわけですからね。このあたりで、すかっとした態度をもうすでにおきめいただいていいんじゃないかと思いますが、見通しと態度を伺いたい。
  262. 大平正芳

    大平国務大臣 それは受田さんが言うようにすかっといかないのです。つまり加盟するかしないかは朝鮮半島における政権がきめる問題でございまして、加盟すべしとか、すべきでないとかいうような決議案を出すということは、私はあり得ないことと思うのであります。そういう意思をそういう政権が表明された場合に日本が賛成するかどうかという問題につきましては、いま検討中だと答えたわけであります。
  263. 受田新吉

    ○受田委員 総理が行かれて発表された日米共同声明を見ても、韓国と言っていた佐藤総理のときと違って、朝鮮半島ということばが用いられておるような状況である。これはけさ質問をされたようですがね。しかもきょうの新聞報道によると、韓国は南北朝鮮の国連への同時加盟の申請について日本協力要請しておるということである。こういう報道をわれわれのほうでは伺っておるのですけれども韓国はそういうことについて日本協力要請しておる。いかがですか。また中国だって、安保条約の存在をそのまま認めて、日本との外交を進めていこう、こういうふうに非常に幅の広い国際情勢が開けておるのですが、この韓国が南北朝鮮の国連加盟の申請について日本協力要請したということはまだ寡聞にして聞いていない、こういうことが言えれば、それでひとつ片づけてください。
  264. 大平正芳

    大平国務大臣 韓国においては、南北朝鮮の国連同時加盟には反対しないという態度をとられておると私は承知いたしております。しかし、日本韓国が相談して北鮮を加盟さすなんということはできない相談でございまして、加盟するかしないかは北鮮の問題なんでございます。北鮮がそういう意図を表明されるかどうか、私は存じません。そういう場合におきましてどのように措置するかということは、そのときの問題だと思います。
  265. 受田新吉

    ○受田委員 その要請の事実はない、そういう報道があれば間違いだ、こういうことですね。
  266. 大平正芳

    大平国務大臣 いま申し上げたとおりの論理的な順序になるわけでございまして、日本韓国と相談して北鮮を国連に入れるなんということはできないのです。
  267. 受田新吉

    ○受田委員 私、この南北朝鮮の問題は、日本が一番関心を持たなければならない外交問題だと思うのですが、共同声明は、日米両国が朝鮮半島における平和と安定の促進のために貢献する用意のあることを実際に声明しているおるのです。そうすると、その具体的な方策はどのようなことなのか。南の韓国の軍事力を強化することが平和と安定の促進となるのか。あるいは南北朝鮮を包括して平和と安定策が考えられなければならないと思うのか。もしそうだとするならば、北朝鮮に対してはどのようなことをなすべきだと考えておるのか。共同声明からこの点を端的にお答えください。
  268. 大平正芳

    大平国務大臣 朝鮮半島の運命は朝鮮半島における方々がまず第一義的にお考えになることでございます。わが国といたしましては、朝鮮半島の平和と安定というものが確保されることを念願いたしておるわけでございまして、そういう意味におきまして、共同声明におきましては、まず去年の七月、南北の間で自主的な統一を目ざしての対話が始まったことを歓迎するという意図を表明いたしておるわけでございます。こういう新たな動きが発展をしてまいりまして、朝鮮半島の統一、平和と安定という方向に漸次固まってまいるように、われわれは少なくともじゃまをしてはいかぬと思うのでございまして、そしてできればわれわれはそれをお手伝いすることを惜しんではならぬ、そう考えておるわけでございまして、そういうラインで今度の国連における朝鮮問題の討議にも臨みたいと思っておりますが、具体的に今度討議される朝鮮問題につきまして、いま日本政府としてこういう態度で臨みますということを国会を通じて申し上げる段階には至っていないわけでございます。この総会までには、しかし少なくともきめなければならぬと鋭意検討中であると申し上げておるところでございます。
  269. 受田新吉

    ○受田委員 やはり日本が先行して態度を一応持っておく必要があると思うのです。日本の外交というものは、情勢を見てその場でどっちへころぼうかというようなあいまいなことであると、昨年のような失敗を繰り返す。  私はちょっとここで伺いたいのですが、朝鮮半島の安定策に貢献したいということであるならば、いまの南北朝鮮の軍事力というのはまず均衡がとれているというのか。われわれは軍事協力をしてはならないという、そういう考えがあるものでありますから、むしろ兵力を削減して平和への貢献というようなことへ強い平和外交方針韓国へも呼びかけていく、世界の国々へも呼びかけていく、こういうことが平和愛好国家の日本の使命だと思うのですが、南北朝鮮の軍事力というのは現在で均衡はとれておるのか。どう判断しますか。これはアジア局長、御答弁をいただきます。
  270. 高島益郎

    ○高島政府委員 韓国には、韓国の軍のほかに米軍が駐留しておりまして、そのもとに北鮮との関係において安定が保たれているというふうに考えております。
  271. 受田新吉

    ○受田委員 日本が朝鮮半島の安定に貢献するという気持ちを共同声明にうたっておられることですが、韓国にある米軍が撤退をしてくるということになると、いま南北の均衡が破れるというようなことがある、あるいは北朝鮮よりも南朝鮮のほうが軍事力が劣っておる、こういうような判断をしておるのか。そういうようなところへ日本外交も、朝鮮半島の安定ということになれば、南と北を両方考えていくべきなんです。佐藤声明のときには韓国とうたってある。今度は朝鮮半島とうたった以上は、南北双方に目を向けていかなければならないのですが、北のほうへはどういう目を向けておられるのですか。
  272. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおり、朝鮮半島全体が平和と安定の方向に参りますことを希求いたしております。しかし、現在不幸にして南北に二つの政権があり、対話の道は開かれたというものの、対話のある対決の状態にあるということもわれわれは否定することができない現実であろうと思うのでありまして、そういう局面におきまして平和のいしずえをどのようにして築いていくかということにつきまして、南北朝鮮においてもそれぞれお考えでございましょうけれども、われわれといたしまして何ができるか、何ができないか、そういうことにつきましては、われわれといたしましても慎重に検討をして対処せねばならぬと考えておるわけでございまして、軍事的な援助をすることができる立場にないことは、受田さんもよく御承知のことと思うのでございまして、南北の軍事力の正確な評価は、私はそういう専門家でございませんで、つまびらかにいたさないのであります。しかし、いろいろの評価があることは承知いたしておりますが、私の立場で、均衡がとれておるとか、この部面において均衡を失しておるとかいうような権威のある発言を申し上げるほど自信はございません。
  273. 受田新吉

    ○受田委員 おしまいですが、そういうことで朝鮮半島という広い範囲の安定を期待する共同声明が生まれてきておる以上は、南北朝鮮の国連加盟が同時に行なわれるという形を政府が希望し、そしてそれに協力する、原則としては一応南北朝鮮の国連同時加盟には賛成として考えていくのか、これだけをひとつ最後に。朝鮮半島の大きな規模を考える場合に、これをひとつ正式に御答弁を願いたい。それがすかっと出れば質問を終わります。
  274. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどのあなたの御質問が同時加盟案を出すか出さぬかというような話でございましたから、木で鼻をくくったような御答弁になりまして恐縮でございましたが、そういうことを希望するような姿のものにするかどうか、そういった点は、確かに今度の朝鮮問題の国連における討議の核心に触れることになるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、せっかくいま検討中であるということでございます。
  275. 受田新吉

    ○受田委員 原則的には賛成の態度であるかどうかです。つまり、具体的な問題は別として、南北朝鮮の国連同時加盟というのは好ましい姿として原則としては賛成である、そして田中総理がせっかく言ったこの問題はわれわれは取り上げていきたいものだということ。具体的に南北朝鮮を同時加盟したいというところへ持っていくかどうか、これは検討をせぬでもいいですよ、原則論ですから。原則論はどうかということです。原則も検討ですか。
  276. 大平正芳

    大平国務大臣 現実的にこういう南北の対話のある対決の情勢を踏まえて、平和を現実的に建設的に積み上げてまいる方途といたしまして、国連加盟という問題は、確かにそういう方向への歩みとして評価すべきものと私は原則論として思います。ただ、この秋の国連総会におきまして具体的に日本政府がどうやるかということにつきましては、外務省の検討の域をまだ出ていないわけでございまして、政府全体にまだおはかりしておりませんので、権威のある国会大平正芳が少し早まった御答弁を申し上げることはたいへん非礼だと思うわけでございます。
  277. 受田新吉

    ○受田委員 ごりっぱな答弁、しかし、三十秒ほどひとつ——それではこれで質問を終わります。
  278. 三原朝雄

    三原委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  279. 三原朝雄

    三原委員長 ただいま委員長の手元に、加藤陽三君より本案に対する修正案が提出されております。     —————————————   外務省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案外務省設置法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。附則中「昭和四十八年四月一日」を「公布の日」に改める。     —————————————
  280. 三原朝雄

    三原委員長 提出者よりの趣旨の説明を求めます。加藤陽三君。
  281. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 ただいま議題となりました外務省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付してありますので、朗読は省略させていただき、その要旨を申し上げますと、原案では、その施行期日を「昭和四十八年四月一日」としているのでありますが、すでにその日が経過しておりますので、これを「公布の日」に改めようとするものであります。  よろしく御賛成をお願い申し上げます。
  282. 三原朝雄

    三原委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  283. 三原朝雄

    三原委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  外務省設置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、加藤陽三君提出の修正案について採決いたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
  284. 三原朝雄

    三原委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。
  285. 三原朝雄

    三原委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  286. 三原朝雄

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  287. 三原朝雄

    三原委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時十一分散会