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1973-07-26 第71回国会 衆議院 内閣委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年七月二十六日(木曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 三原 朝雄君    理事 奥田 敬和君 理事 加藤 陽三君    理事 笠岡  喬君 理事 中山 正暉君    理事 藤尾 正行君       伊能繁次郎君    江藤 隆美君       越智 伊平君    大石 千八君       近藤 鉄雄君    竹中 修一君       丹羽喬四郎君    旗野 進一君       林  大幹君    羽生田 進君       三塚  博君    村岡 兼造君       吉永 治市君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         外務政務次官  水野  清君         外務大臣官房長 鹿取 泰衛君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君  委員外出席者         外務大臣官房領         事移住部長   穂崎  巧君         外務省アメリカ         局外務参事官  角谷  清君         外務省欧亜局外         務参事官    山田 淳治君         外務省中近東ア         フリカ局外務参         事官      中村 輝彦君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 七月二十六日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     林  大幹君   丹羽喬四郎君     村岡 兼造君 同日  辞任         補欠選任   林  大幹君     赤城 宗徳君   村岡 兼造君     羽生田 進君 同日  辞任         補欠選任   羽生田 進君     丹羽喬四郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一四号)      ————◇—————
  2. 三原朝雄

    三原委員長 これより会議を開きます。  自由民主党以外の各派の委員諸君が御出席になっておりませんので、正規に事務局をして出席を要求させますので、しばらくお待ちください。     …………………………………
  3. 三原朝雄

    三原委員長 日本社会党日本共産党革新共同、公明党及び民社党の各委員諸君に御出席をお願いいたしましたが、出席がありません。まことに遺憾ながらやむを得ずこのまま議事を進めます。  外務省設置法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤尾正行君。
  4. 藤尾正行

    藤尾委員 ただいま議題となりました外務省設置法の一部改正に関する法律案でございますけれども、この内容は、これはもう一目りょう然で、アジア局という外務省の局に次長を設けたい、こういうことでございます。これについてひとつ外務省側の御意向を承りたいわけでございますけれどもほんとうは、もう会期も二回延長になりまして、最終これ以上この国会では審議ができないぎりぎりのところへ来ておる。そういった間におきまして、外務省は、この簡単な法律案をどうしても成立をさせたいという熱意に、私は非常に欠けるところがあったと思う。本日こうやって私ども委員会を開きまして、そうして外務省設置法改正という問題を真剣に討議をしよう、こういうふうに考えておりまするにかかわりませず、外務大臣出席がない。まことに外務省当局の私ども委員会に対する態度、あるいはみずからお出しになった法律案成立に関しまする熱意、そういったものに欠けるところがあると私は考えまするけれども、この点はいかがですか。
  5. 水野清

    水野政府委員 御指摘の点でございますが、私、政務次官でございまして、私がかわりに参りましたことは、まことに失礼かと思いますが、決してこのアジア局次長を設置する設置法改正につきまして外務省が不熱心であるということではございませんので、これはぜひとも御審議、御成立をお願いしたいわけでございます。  本日、外務大臣出席できませんのは、外交上の案件、さらに渡米のための準備その他の諸事情がありまして、どうしても出席ができないわけでありまして、その点はぜひとも御了解をいただきたいと思います。
  6. 藤尾正行

    藤尾委員 御了解をいただきたいとおっしゃいますから、御了解をしてもいいのでございますけれども、私は今後のこともある。国会立場、これは国における最高機関でございます。それが法律審議をするという場にそういう態度をおとりになるということは、私はいかなる御用件がおありになるか知りませんけれども、それはきわめて私は遺憾な態度であるということを重ねて申し上げておきます。  そこで質疑に入りたいわけでございますけれども、まず私は、この前も実は他の法律案審議の中で申し上げたのでございますけれども、いろいろな外交問題たくさんございます。その中で、このアジアに対しまする問題というものが占める比重というものは、外務省所管をいたしておられまするお仕事の中で非常に大きいように私は感じております。  こういったことを考えてみましたときに、たとえば昨年九月に総理大臣並びに外務大臣北京においでになられまして、そうしておきめになられました日中の共同声明というような問題は、この問題が、戦後の日本政治あるいは外交、こういうものに占める評価地位というものは、私は非常に高いように思います。この点、一体外務省当局は、戦後のいろいろな外交の中でこれがどれくらいの重要性を持っておるとお考えになっておられるのか、その点をお伺いいたしたい。
  7. 水野清

    水野政府委員 田中総理大平外相訪中についてはいろいろな評価があろうかと思いますが、御承知のように、世界的に緊張緩和時代に入っておりまして、米ソの間でも核戦力を含むいろいろな話し合いをして、ともかく国際的な緊張を取り除いていこうという世界的なワク組みでございます。その中で、御承知のように、ニクソン訪中ニクソン訪ソというあとに続いて、昨年でございますが、田中総理訪中されたということは、私は、極東の緊張緩和に、あるいは世界的な緊張緩和、さらに世界的な新情勢の中で、日本外交が新しい展開をした、新しい第一歩を踏み出したというふうに評価をしております。
  8. 藤尾正行

    藤尾委員 私がお聞きをいたしましたのは、新しい外交展開に踏み切ったのだというような評価ではなくて、戦後日本の国の外交としていろいろなことがありました。たとえば、サンフランシスコ平和条約締結でありますとか、いろいろな外務省所管仕事がたくさんあったわけであります。その中で、私はアジアの主軸をなすと思っておりますけれども、日中の共同声明というものはどれくらいの立場にあるか、何番目くらいにあるか、あるいはそういったものの評価外務省は一体どのようにお考えになっておられるのかということを聞いておるのであります。
  9. 水野清

    水野政府委員 御承知のように、これは私のような軽輩が評価を申し上げることが御納得いくかどうかわかりませんが、戦後の政治史の中で、外交歴史の中で、私は、サンフランシスコ平和条約締結というものが、日本のまず新しい進路占領下から解き放たれた状態において進めたというふうに考えております。その次に大きな歴史的な事件鳩山総理訪ソであり、さらに日米安保条約の二度にわたる締結、批准、これもまた大きな事件であろうと思います。  さらに私は、そういう緊張時代の、いわゆる二極時代世界政局の中から、だんだんと多極化する新情勢に入りまして、ベトナム戦争の停戦であるとか、あるいは、先ほど申し上げましたように、ニクソン大統領訪中訪ソというもののあと日本田中総理中国を訪問されたということは、先ほど申し上げましたサンフランシスコ平和条約締結鳩山総理訪ソ日米安保条約締結に次ぐ大きな壮挙であろうというふうに評価をしております。
  10. 藤尾正行

    藤尾委員 そうすると、これは外務省見解でなくてあなたの御見解も入っておると思いますけれども日本の戦後の外交というものの中で、一番大きなものはサンフランシスコ平和条約である。二番目は、何か知りませんけれども日ソ国交回復である。これは三番目だというような御見解ですか。
  11. 水野清

    水野政府委員 サンフランシスコ平和条約という画期的な事件の中に日米安保条約締結というものを含めて考えれば、それに次ぐ画期的な事件であろうというふうに私は思っております。
  12. 藤尾正行

    藤尾委員 そうすると、あなたのただいまのお答えでは、今度は一段上がりまして、これはサンフランシスコ平和条約に次ぐ二番目の重大事件である、かようにお考えなんですね。
  13. 水野清

    水野政府委員 私の申し上げたことばが足りなかったかと思いますが、サンフランシスコ体制確立というものに日米安保条約締結というものを含めて考えますならば、鳩山総理訪ソに次いで大きな外交的な成果であろうというふうに私は思っております。
  14. 藤尾正行

    藤尾委員 あなたの御見解がたびたび変わりますので私はよく理解できませんけれども、二番目であったり三番目になったりするわけですが、それは議論はやめて、ともかくも、そうすると、二番目ないし三番目に位する重大な壮挙事件である、かように御評価になっているのですね。
  15. 水野清

    水野政府委員 さようでございます。
  16. 藤尾正行

    藤尾委員 そこで、あなた方は二番目、三番目という非常に大きな評価であるというお考えでございますけれども、しかし、これがいかに大きなあなた方の御評価でも、サンフランシスコ平和条約のほうが大きい、これは動きませんね。
  17. 水野清

    水野政府委員 そのとおりでございます。
  18. 藤尾正行

    藤尾委員 それを聞いて私は安心をいたしたのでありますけれども、私ども自由民主党政府が持っております外交当局というものが、何といいましても、私ども政治目的というものを達成するという観点から考えてみましたときに、サンフランシスコ平和条約、これはむろん日本の独立を完成させたわけでありますから、あたりまえな話でありますけれども、主として自由主義国家群との間の関係というものを確立をしたということが外交方針基調である、かように考えてよろしゅうございますか。
  19. 水野清

    水野政府委員 そのとおりでございます。
  20. 藤尾正行

    藤尾委員 非常にけっこうなお考えで、それは私ども考え方自由民主党の立党の精神とぴったり合っておるわけでありますから、これについて私は、非常に安心をいたしたということを申し上げておきます。  そこで、そうなってまいりましたときに、私ども外交姿勢というものは、今日も今後も自由主義国家群との関係を濃密にしていくということを基調として、そしてその他の案件といいますものをそのラインに沿って展開をしていくんだというような姿勢であると、私ども解釈してよろしゅうございますか。
  21. 水野清

    水野政府委員 そのとおりでございます。
  22. 藤尾正行

    藤尾委員 それでは、外務省当局政府のいまの立場というものに大きな疑問を抱く必要がないという意味合いで、私も非常に安心をいたしました。  そこで今度は議論を進めてまいりますけれども、大体、日本の二十八年間という長い戦後の歴史の中で、ともかく一番目ではないけれども二番目か三番目かといわれるような重大な外交案件処理というものが、条約という形で展開をされなかった、これはいかがな理由に基づきますか。
  23. 高島益郎

    高島政府委員 藤尾先生すでに御承知のとおり、わが国中国との戦後の関係は、日華平和条約によって最初新たに始まったわけでございます。この日華平和条約によって始まった日本中国との関係が、昨年の九月二十九日の日中共同声明によってどのように変わったかという点でございますけれども日本中国との関係において、その中国を代表する政府を従来の中華民国政府から中華人民共和国政府承認がえをするという方針に基づいて昨年日中共同声明をやったわけでございますけれども、基本的に法律関係日華平和条約によって中国との間にすべて処理済みである、この前提に基づいてやったわけでございますので、新たにまた法律関係中国との間に締結し直すということは不可能な状態にあったわけでございます。  その点は、先生先ほどから御質問ございましたように、わが国は、昨年の正常化交渉におきまして、サンフランシスコ条約、それから日米安保条約ワク内で日中間の新しい関係を開きたいという基本方針にのっとってやったわけでございます。そういうことでございますので、少なくとも共同声明において法律関係を新たに設定するということはできない立場にあったわけであります。  この共同声明の中にございます若干の法律関係と申しますと、第二項の日本政府中華人民共和国政府中国合法政府であることを承認するという点でございますけれども、これは、従来から御説明いたしておりますとおり、政府権限処理し得る事項である、つまり行政権の範囲内で処理し得る事項であるということでございますので、あらためて国会の御承認を求める必要がないという立場からできておりまして、したがって、その第二項を除きましてほかの事項は、すべて政治的な事項、あるいは国連憲章等で定めた加盟国間の権限関係をさらに再確認をするという政治的な意思表明ということにすぎないことでございますので、いずれにいたしましても、日本中国との間において新たに法律関係をこれによってつくり直したということではないというのが政府立場でございます。
  24. 藤尾正行

    藤尾委員 ただいま専門の条約局長からお話があったわけでありますから、それはそれなりに法律的に成り立つ一つの見識である、かように私は考えるのでありますけれども、問題の展開があまりにも早く進み過ぎておる。もっと基本的なところで私どもはこの問題の議論をしていなければならない、私はかように考えるのでございます。  いやしくも今度の日中共同声明というものが含んでおります内容、これはたくさんございます。たとえば、いまの御答弁の中にもございましたように、日中両国間に存在しておる不正常な状態を終了するのであるとか、あるいは中華人民共和国政府中国の唯一の合法政府であると認めるとか、あるいはこれに付随をいたしますと、台湾が中華人民共和国領土の不可分の一部であるとする主張を日本国政府が十分理解し尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持するとか、あるいは日中両国外交関係を樹立し、大使をすみやかに交換するとか、中華人民共和国政府日本に対する戦争賠償の請求を放棄するとか、あるいは日中両国は主権及び領土保全相互尊重相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則基礎平和友好関係を樹立する。また、今後日中関係国連憲章原則に基づき平和的手段によって解決するとか、あるいは、日中両国間の国交正常化は第三国に対するものでなく、また両国アジア太平洋地域覇権を求めず、覇権確立しようとする他国の試みにも反対をするとか、平和友好関係を強固にするために平和友好条約締結合意するとか、あるいは人的往来の拡大を意図しつつ、貿易海運航空漁業などの協定締結することに合意をするとかいうような、この内容を見てみますと、これはただ単に、田中総理大平外務大臣北京に行って、周恩来をはじめとする中国当局者と話しをして、共同声明を発したということで済む内容のものではない、私どもはそういうように考えております。  これは、戦争の終結をはじめといたしまして、日中両国間の基本的な関係を示す、いわば平和条約にもひとしい重要な合意が中に盛り込まれておる、かように考えるのでございまして、そういう内容であればあるほど、あなた方の評価が高ければ高いほど、この問題は、昨年九月に締結をされて、やがて九月が来ようとしておる、一年になろうとしておるが、その間、これは共同声明でございますといってほうりっぱなしにして、国家最高機関であります国会がこれについて承認をするかいなかというような意思決定をする機会が与えられていないということが、はたして政治常識から考えて通るかどうか。法律論は別ですよ。  そういうことを考えてみますと、もしかりに、これは声明だから何も国会承認手続は一切要らないんだという、あなた方のいまとっておられる態度で何でもかんでも処理せられるとするならば、これは行政上の行為であるからといって押し切っていけるとするならば、日本の国の方向を決定する重大な外交進路といったものが、国会と何も関係なく、国民と何も関係なく、一外務省、一大臣、一総理大臣の恣意で何でもやっていけるという前例をつくることになるのです。私は、その基本的な体制態度、そういったものが、自由民主主義にのっとって運営をせられておる私ども日本国政治体制あり方立法体制あり方外交体制あり方、こういうものから考えて、きわめて逸脱をした、非常に専権が過ぎておる、いわばこれは一種のファッショ的やり方ではないかと私どもが申し上げても、国民諸君は別に、それはおかしい、言い過ぎだということは考えられない内容を含んでおる、かように私は考えておるのでございますけれども、そういった私の考え方が間違いなのかどうか、この点はどう思っておられますか。
  25. 高島益郎

    高島政府委員 繰り返しになりますけれども、私からもう一回法律論につきまして御説明いたします。  先ほど申し上げましたとおり、中国との間に戦後平和条約締結いたしました事情もありまして、同じ中国との間に二度平和条約締結するということは法律的に不可能なことでございます。そういう観点から、私ども苦心いたしまして、このような形でもって日中間正常化をなし遂げたわけでございます。  いろいろ先生指摘のとおり、この共同声明自体の持つ政治的な重要性は、私ども十分に承知いたしております。ただしかし、政府といたしまして、形式論になるかもわかりませんが、法律的に申しますと、共同声明の各項とも、どの項につきましても、国会の御承認法律的に得なければならないということではなくて、政府権限処理し得ることであるという御説明だけはできるということを先ほど申し上げましたけれども、全体といたしまして、非常に重要な政治的な意味を持った共同声明であるという点につきましては、私ども十分に了解いたしております。
  26. 水野清

    水野政府委員 私が補足させていただきますが、藤尾先生の御指摘のとおり、この共同声明日本外交方針、あるいはさらに国運に関する非常に重大なことであろうと思います。そしてそのことにつきましては、日中共同声明の発出後、昨年の臨時国会あるいは通常国会におきまして、総理大臣演説並びに外務大臣外交演説の中で、この内容につきまして御説明を申し上げております。そして、もちろんそれだけで十分というわけではございませんが、この中に出てまいります、これから交渉しなければならない実務協定が幾つかございますが、その実務協定一つ一つにつきましては国会の御審議をいただく、こういう手はずになっているわけでございます。
  27. 藤尾正行

    藤尾委員 政務次官、あなたは外務大臣の代理として出てきておられる政治家です。よろしゅうございますか。条約局長が言っておられるような法律的な解釈、それは一方の解釈論として成り立つ。しかし、それに反対法律論もあるわけです。それはたくさんある。ここにございます中央大学の法学部教授経塚作太郎という方の法律論を見ましても、それは内容からいってそのように処理すべきものではないんだ、憲法第七十三条第三号によってそういったものは国会承認手続上必要であろうと思うというような法律論も片方にある。そういう問題なんです。  あなたは、その中で処理すべきこまかい、やれ貿易協定であるとか、航空協定であるとか、あるいは海運協定であるとか、漁業協定であるとかいうような、今後つくっていかれるような行政的な協定国会審議されなければ成立しないんだから、本家本元の、肝心かなめ共同宣言というものが、別に法律論法律論としてありますけれども政治的に見て、そういったことが国会というものが関与することなくかってに発効していく、そういう姿で日本の国の政治がありとあらゆるところに進んでいったときに、われわれは過去いろいろなことがございました。戦前、戦中を通じて私どもはいろいろな経験をしてきたわけでありますが、その際に議会というものがほんとう役割りを果たしてきたのか、あるいは行政というものがそれを乗り越えて突っ走ったのか。そこに大きな力の力学的な関係が、非常に正常な民主主義的な帝国憲法というもののあり方を乗り越えていって、そうして一つの道にまっしぐらに進んでいったんだ、その結末がかつての太平洋戦争であったという経験をわれわれは持っておる。われわれはそういったものを踏まえて、今後の日本平和的建設世界の中における日本地位の確定ということをやっていかなければならない。そのときの意思決定をする基本的なものはこれは国民です。日本国憲法ではっきり示されておる。にもかかわらず、行政が優先をしてもいい、これは法律的に国会にかけなくてもいいんだ、そういう形式があるんだという見解があるからといって、そういった道をあなた方がお選びになっていかれるということが、日本の国の政治の将来、政治の大道というものから見て正しいかいなかということを、あなたがどのように判断しておられるか。  あなたは政治家です。外務大臣がどのように考えているんだ、総理大臣がどのように考えているんだということを、あなたは総理大臣並びに外務大臣にかわって国民にいま述べられんとしておられるわけです。よろしゅうございますか。これは国会の場です。速記をとっておる。国民はみんなこれを見るわけです。聞くわけです。そういう立場であなたは後世に残る決意をここで御表明にならなければならない。わかりますね。協定国会に御承認を願うことになっておりますという態度で、あなたが、戦後の日本政治史の中で、サンフランシスコ平和条約というものに次いで大事だと思っておられます日中関係基礎というものが処理せられていいと考えておられるのか、あらためてお伺いいたします。どうですか。
  28. 水野清

    水野政府委員 非常に重大なお話をいただきましたが、私が先ほど申し上げたことをもう一度まず申し上げますと、この共同声明は非常に重要なことでございますので、この声明内容につきましては、総理大臣施政演説外務大臣外交演説その他でいろいろな角度で御説明をしております。そしてこの共同声明が将来日本中国との平和条約に発展するであろうということは私どもは予測をしている点であります。しかし現在は、ちょうど日本とソビエトの国交回復のときと非常に形式が似ているわけであります。実務協定からだけでも、ともかく合意できるものを——御承知のように、中国はわれわれの住んでいる社会社会体制が違うわけでありまして、実務協定からでも自主的に話し合いのつくものはまとめて御審議をいただいて、その進展いかんによって日中の平和友好条約というようなものを将来締結をして、国会の御審議を得て日中間の総まとめにしていくのが私ども考えでございます。
  29. 藤尾正行

    藤尾委員 あなたは大体私の質問の要旨を理解しておられないようです。政治家として、総理大臣があるいは外務大臣国会で一回説明をいたしました、それでよろしい、それほどその中身は軽いものなんでしょうか。  あなたは、日本の国が戦後とってきた外交という、非常に大きな、大事な仕事の中で、これは二番目か三番目に位する、こういうような評価をなすっておられる。その内容について国会審議する場が与えられていない、これは事実ですよ。そうして法律的にも、一方において、これは共同声明という行政的行為であるから別に国会承認は得なくてもいいんだというものの解釈がある。法律的解釈。もう一方には、しかしながらその内容というものは、少なくとも両国間の基本的な関係、そういったものを決定するという重大なものを含んでおるのだから、これは条約と同じに考えて、条約なんだというものの考え方で、このこと自体を国会承認手続をとっていくのが至当ではないかという法律論もある。そういうときに、とにかく政治というものの過去、現在、未来、そういう長い長い日本の国の運命というものを踏まえられてそういう措置をおとりになることがほんとう政治的に正しいのだろうかどうかということを私は申し上げておる。そこに非常に懸念がある。へたをするとファッショになる可能性を持っておる。おそろしいことです。そういうことをあなたが政治家としてどう考えておられるかということが大事なんです。  いま一点、あなたの御見解の中に非常に重要な点が含まれておる。これは速記にとっちゃったのですから、あなたは速記を訂正されるより方法はなかろうと私は思いますけれども、日中の共同声明というものはやがては平和条約になるんですということをおっしゃった。ほんとうにそうなりますか。これは高島条約局長が、そうじゃありません、平和条約というのは結べないんですという見解表明しておられた。明らかに、外務省のあなたと条約局長の答弁の中に、大きな大きな食い違いがある。これをどうされますか。だから私は、大臣が出ていらっしゃい、総理大臣も出ていらっしゃいということを申し上げるわけです。
  30. 水野清

    水野政府委員 先ほど私の答弁の中に、平和条約と申し上げた点があったかと思いますが、それは平和友好条約というつもりで申し上げたのであります。  いま藤尾先生お話でございますが、先ほど条約局長が申し上げましたように、この共同宣言というのは、政府国会におはかりしなくともできる範囲の権限でやったということは、外務省だけでなくて内閣の法制局とも打ち合わせた上の法律見解でございます。もちろん、この見解に反するという御見解も、学者の先生方にはあろうかと思いますが、政府はその見解をとってやっているわけでございます。私は、そのやり方の方法以外は現在はなかろうと、こう思っているわけでございます。そしてこの共同声明を将来発展させて日中の間の平和友好条約というものに煮詰めていって、それをやがて国会におはかりを申し上げる、この方法が現在とられているわけでございますし、私はこれに疑念を持っておりません。
  31. 藤尾正行

    藤尾委員 あなたの御答弁は非常に次元が低い。私が申し上げておるのはそんな法律的な——法律論はいろいろありましょう。法律論を無視して政治的判断をするということはなかなかできない。ですから法律論は、その限りにおいて、その根拠をなすという意味合いで重要です。しかし、私どもにとって大事なのは、法律的解釈ではなくて政治的な決断なんです。よろしゅうございますか。戦前から戦後を通じて、幾多のわれわれの先輩が大きなあやまちをやってこられた。そのときそのときは、それぞれちゃんとした政治的理由があり行政的理由があったのです。よろしゅうございますね。にもかかわらず日本進路が非常に大きなカーブをしてしまった、軌道をそれていったという事実を、私どもは認めなければならぬ。あなたがいま言っておられるような見解、それは私に言わせれば役人のような見解ですよ。  だからあなたは、ほんとう政治的な立場政治家として、こうすることが日本の将来にも過去に対しても恥ずかしくないんだ、これで一点の間違いもない、それが歴史的ないろいろなあとからの批判を受けるに足るんだ、国民にもそれを申し上げていいというお考えなら、なぜそれを当初において、もう一年になろうとしておるこの間に、国会におかけになって堂々と審議をお受けにならないのですか。大きな政治的な大道というものを避けて、裏道のほうをずっと通り抜けていこうというあなた方の政治的な姿勢、その中に非常なあぶない不純なものがあるということを私は申し上げておるわけなんです。よろしゅうございますか。  それから、いま一点お伺いいたしたいけれども、あなたは冒頭に、私が申し上げたのは平和友好条約でございまして、平和条約じゃございませんと言われたけれども、これは速記を通じ、やがて中共にもいくのですよ。北京にそのとおりあなたの見解はいくのです。そうすると、北京へいって周恩来があなたのその答弁を聞いて、日本政府というやつは平和条約というものをつくる意思はないんだ、平和友好条約というものは平和条約とまるっきり違ったものなんだ、このように考えられるという可能性を持っておりますけれども、それでもよろしいんですね、あなたは。よろしゅうございますね。その点はあらためて確認をいたします。明確に言ってください。
  32. 水野清

    水野政府委員 先ほど申し上げたとおりでございます。それから藤尾先生から、このやり方は非常にファッショ的であるというような御指摘、おしかりを受けましたけれども、私はさようには考えておりません。日本中国との間に結ばれた、昨年の総理訪中の際の共同声明内容、その後の手続につきまして、ファッショ的である、独断であるというようなおしかりがございましたけれども、私は決してそういうふうには考えておりません。
  33. 藤尾正行

    藤尾委員 私は別にここであなたと議論をする考えはない。それだけのものが記録に残りましたから、それでよろしいわけです。その政治的見識というものは歴史がこれを示すんです。よろしゅうございますね。ですから、あなたがいま言っておられたことと私の言っておることは、明確に記録に残っておりますから、後世、こういったものをお読みになられる、勉強せられる方々がこれを考えられて、どっちの見解がより正しく政治的に見て間違いがないのかということを判断せられるのですから、私はあらためてここであなたとその議論を繰り返したくない。無用の議論である、かように考えます。  しかし、あらためてお伺いをいたしますが、平和友好条約であって平和条約でないとあなたはおっしゃった。そうですね。そうすると、何のために友好条約に平和という字をつけたのですか。そこに非常なあなた方の態度の不明確さ、悪いことばで言えばごまかし、そういったもののにおいが感ぜられてしかたがない。平和友好条約なんというまぎらわしいことばを使うものじゃない。平和条約をおつくりになる気持ちは全然ありません、だから友好条約をこの次につくりましょうということを表明されたらいいのであって、そこに平和友好条約というようなまぎらわしいことばをお使いになった。これにはこれだけの理由があるはずです。私はその点を考えましたときに、世の中に、平和友好条約という、どっちにウェートがあるのか、知りません、平和にあるのか、友好にあるのか、そういうことを詰めていくのが私ども国民的な課題なんです。そういった点もあわせお考えになって——法律論は別です。政治的にお考えになって、なぜ平和友好条約という平和がついているんだ。あなたのお考えはどうですか。
  34. 高島益郎

    高島政府委員 この問題、実は法律的に多少関係ございますので、私から先に答弁さしていただきます。  先生承知のとおり、平和条約と申しますのは、戦争あと始末をつける条約、つまり戦後処理条約でございます。まず第一番に戦争状態を終了する、それから領土の問題を解決する、それからいろいろ賠償問題を処理する、主としてそういう項目を盛ったものが平和条約という名前のものでございます。これに対しまして、共同声明第八項にございます平和友好条約、この平和は、いわゆる平和条約の平和とは全く違いまして、平和的、友好的関係を設定する条約ということでございまして、これは国際間にも先例がございます。戦争と全く関係なしに、二国間で平和友好関係を設定するための条約をつくるという例は過去にもございます。共同声明第八項でわれわれが意図しましたことは、まさにそういう将来の日中間関係を持っていこうということでございまして、戦後の処理は全く問題にいたしておりません。そういう点は完全な合意がございますので、ぜひ御了解いただきたいと思います。
  35. 藤尾正行

    藤尾委員 そこでまた重大な問題が出てまいりました。いま条約局長のお考えによりますと、平和友好条約と第八項に規定されておるけれども、それは平和条約的な処理は一切含まないんだ、これは友好条約なんだ、友好条約の友好の上に修辞語として、平和的にという意味で平和という字がくっついているんだ、こういうことなんですね。そうすると、あなたがさっき言われた日中共同声明というものがやがては平和友好条約に変わっていくんだという認識は、これはまるっきり誤りだ、内容がまるっきり違っておる、こういうことになりますよ。あなたはおわかりになっておられるんですか。どうですか。
  36. 水野清

    水野政府委員 高島条約局長の答弁がありましたけれども、私はこの共同声明を踏まえて、この内容も含めて将来平和友好条約を結んでいく、そういうふうに理解をしております。
  37. 藤尾正行

    藤尾委員 そうしますと、そこでますます問題がおもしろくなってきて、あなた方は非常にお困りになることになる。そうすると、あなたが言っておられることがほんとうだとすれば、将来結ばれるであろう日中の平和友好条約の中に、領土とかあるいは賠償とかというような戦争終結に関する内容が、そのまま持ち込まれるとあなたはおっしゃるのですね。
  38. 水野清

    水野政府委員 必ずしもそういうことではございません。
  39. 藤尾正行

    藤尾委員 あなた、そういうごまかした、ひょろひょろした答弁をしておられたのでは、私ども非常に迷惑をする。そうじゃないんです。平和条約というものは、いま条約局長が言われましたように、これは明らかに戦争あと始末ということが目的なんです。でございますから、戦争状態の終結であるとか、賠償問題であるとか、領土問題であるとかということがうたわれるわけなんですよ。よろしゅうございますか。それが平和条約なんです。この共同声明は、全面的な戦争終結に関する問題かいなかということはこれからの論議でございますけれども、そういったものを含んでおる内容になっておる。それをあなたは、将来、第八項に基づく日中の平和友好条約に持ち込むということを、いま二度も三度もおっしゃった。  そういうことになると、非常に重大な問題が出てくるのは、日本中国との平和関係戦争あと始末をきめた条約というものは一体何なんだということに関連してくるのです。よろしゅうございますか。高島条約局長の御答弁をそのまま私どもがふえんをして伺いますと、ほんとうを言うと、これは日本と中華民国との間の平和条約ですな。その間で日本中国との戦争の終結に関する処理はできておるんだ、それが条約局長の御判断ですよ。法律的な見解です。ですから、いまさら平和条約というものは中華人民共和国との間に必要がないんだ、こうおっしゃっておるわけです。あなたの答弁はまるっきり逆で、この戦争終結をうたったような重大な日中共同声明というものを、やがてこれを日中間平和友好条約にしていくんだから、もう一ぺんその平和友好条約というものの中で、戦争の終結をいたします、平和条約を二度結ぶのです、こういう意味なんですよ。
  40. 水野清

    水野政府委員 私は、そういう意味で申し上げたのではなくて、いま藤尾先生指摘のとおり、日本中国——中華民国だけではございませんが、中国との戦争の終結問題については、いま御指摘のとおり、日華平和条約で規定をされておりますその方針で戦後の日本中国との関係は来たわけでございますが、この共同声明によって、日本と中華民国との関係というものが切れて、これから新しい承認をいたしました日本中華人民共和国との関係が生まれるわけでございます。その際にもう一度平和条約を結ばなきゃいけないという意味で私は申し上げたのではなくて、そういうことを踏まえて、この共同声明に、これから出発する日本中華人民共和国との諸関係と、これまでの日華平和条約を否定しないで、それを踏まえた上の関係とをちょうどつなぐちょうつがいみたいな形になっていると私は思うわけでございますが、そういう意味で、この内容を踏まえて、これから日本中華人民共和国との平和友好条約を結んでいくんだ、こういうふうに申し上げたわけでございます。ことばが足りなかったとすれば、これはお許しをいただきたいと思います。
  41. 藤尾正行

    藤尾委員 これはことばの問題じゃないのです。これは判断の問題、姿勢の問題です。ですから、私が最初から申し上げておるように、政治家としてお考えになって、これは中共も聞いておるし、あるいは全世界が全部聞いておるんだから、そのおつもりでお答えになりなさいよということを申し上げてあるのです。ことばの上の問題じゃない。だから、その間をするする逃げて回ろうたって、逃げて回れない、こいつは。そういう内容を含んでおる。  そこで、あなたとまたこの議論をやったら一日かかります。まことに委員会の皆さん方に非常に御迷惑でございます。基本的な問題ではございまするけれども。この問題は三日も四日もかけてやるのがほんとうでしょう。しかしながら、あなたを相手にこいつを一日中やっているわけにはいきませんから、これはこういう問題があるということを記録に残したままで、ここのところはとにかく一応問題を将来に預けましょう。  そこで、先ほどからあなた方は、中国中国とおっしゃっておられる。中国という国はあるのですか、一体。
  42. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 中国という中国民族を中心にしてでき上がっておる国家体制というものはあったわけでございますが、地理的な概念というふうにも中国はとれますし、また場合によっては、これは国家としての中国。ただ、政府という形になりますと、具体的に歴史的には、中華人民共和国政府とか、中華民国政府とか、そういう形になって出てきておる、こういうことでございます。
  43. 藤尾正行

    藤尾委員 あなたも、またまた、ばかばかしい、あいまいなことをおっしゃる。中国という国は昔からあったのだとあなたは言われましたな。そうすると中国という国は、一体いつごろからあって、一体その領土は、どのような領土中国という領土で確定をされたものか。その中国という主権のもとに包含をされておる国民というものは、一体どこからどこまでが中国国民であったのだという証拠はありますか。中国という国がかつてあったことがありますか、伺いたい。
  44. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 私、申しましたのは、国家というものは生きものでございますから、そのときのいろんな情勢で、人数がふえたり、場所が減ったりふえたりする、こういう事実はあろうと思いますが、一般的に中国は、歴史的に見ますと、いろんな名称を使った王朝なり政府ができておりましたが、これを中国民族を中心にして一つ国家体制をつくってきておったという意味で、一般的、常識的に中国というふうにわれわれ考えられる国がある。これが何年までさかのぼって、いつの時点でどうであったかということは、歴史的にいろいろ詳細に見なければならない問題であろうかと、一般の常識論として申し上げた次第でございます。
  45. 藤尾正行

    藤尾委員 重大な法律的な問題を含んだこの問題を論議しておるときに、一般的に見て、常識的に見て中国というのはそのようなものらしゅうございますというようなことで、あなた通りますか。いま現在私どもが、あなたが言っておられる中国というものの中へどれだけの——一体、正式な国名は、何と何と何という国があるのか。それを言ってごらんなさい。
  46. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 現在の状況で見ますと、いわゆる中国大陸のほうの中華人民共和国政府も、台湾は自分の領土であり中国一つであるということを言っております。また台湾のほうにあります政権も、中国大陸を含めまして中華民国と称して、これが中国一つであるということを主張しておるわけでございまして、その意味では、どちらも中国、そしてそれは一つである、そういう考え方が出ておる。体制といたしましては、北京中華人民共和国政府があり、台湾に中華民国という政権が存在しておるという姿であろうか、かように考えるわけでございます。
  47. 藤尾正行

    藤尾委員 あなたはもう少しまじめにお考えにならなければいけない。いま三つあるのです、中国の中に国は。中華人民共和国中国と称しておる。あなたがおっしゃったとおり、台湾にあります中華民国も中国と言っておる。そのほかにモンゴル人民共和国という国がある。これは一体どこなんですか。中国じゃないのですか。中国なんですか。
  48. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 モンゴル人民共和国は、国際的には、モンゴル人民共和国という独立国として、一つ国家として中国とは別に存在しておるものと現時点では考えられておるわけであります。
  49. 藤尾正行

    藤尾委員 あなたの言っておられる中国というのは地名なんです。その地名の中に、あなたが言っておられる地名的概念の中に、中華人民共和国が持っておる広い広い領土がある。また台湾にあります国民政府は、自分も中国と言っておるから、台湾も中国なんだろう。またモンゴルも、これはあなたの言っておられるような一般的な、常識的な地名からいえば、これは中国なんでしょう。その中に入る。三つあるのです。あなたは二つだとおっしゃる。だからこの中国というのは少なくとも国名じゃない。国じゃないのです、あなた方のおっしゃっておられる中国というのは。これは国家ですよ。厳然と、だれが考えてもふしぎのないように、ことばを使い分けてもらわなければ困る。これは中華人民共和国でございます、これは中華民国でございます、これはモンゴル人民共和国でございますといって、使い分けをしてもらわなければ困る。一般に中国という地名をもって国の総称にかえておりますというようなことで通るときと通らぬときがある。この場は通らないのです。外務当局が、こういったことを、あまりわれわれがものを知らぬからといって、ごまかして通ろうというような態度はきわめてよろしくない。もっとまじめにお答えを願いたい。  そこで、ここでまたあなたとそんな議論をしているひまはありません。内容の問題に入らざるを得ませんから、内容の問題に入ります。  ここにたくさんの問題が含まれておるわけです、この日中共同声明というものの中には。先ほども、その間にいささかそのことばの言及が出てきたわけでございますけれども、先ほども私が申し上げましたように、九つの内容がこの共同声明の中に大体盛られておる。これは私の不敏のいたすところで九つしかないと言いましたけれども、あるいはもっとあるかもしれない。しかしその中には、非常に重大な戦争あと始末に関する部分、これがあるわけですね。よろしゅうございますか。たとえば戦争状態の終結、賠償問題あるいは領土問題、こういう問題について、あなた方は中国中国とおっしゃる。しかし、この問題を詰めてまいりますと、これは、そういった中国というような一般的な通称、地名で通っていけない場合が出てくる。そこに相互間に非常に矛盾した問題が含まれておる。私はそう思いまするけれども、あなた方はどう思っておられますか。
  50. 高島益郎

    高島政府委員 法律的な点につきまして御説明いたしますが、共同声明の中で戦争状態の終了という法律事項を含んでいる、これはすなわち戦後処理の問題だと先生おっしゃいましたけれども、私、先ほど申しましたとおり、日中間戦争状態は、従来政府がたびたび申しておりますとおり、日華平和条約によって終わっております。したがいまして、この日中共同声明によって、また別に日中間戦争状態法律的に終了したということではございません。そのために表現に非常に苦心いたしまして、共同声明第一項にあるような表現になったわけでございまして、これは決して法律的な意味の表現ではございません。
  51. 藤尾正行

    藤尾委員 そう言ってあやまられてしまいますと、私は非常に困るので、かみついてきてもらわなければ困るのです。たとえば賠償の問題というような問題も、日中共同声明の中に入っているわけですね。明確に入っておる。そうすると、一体、日華平和条約の中できめられた賠償の問題、これは、あなた方が言われる中国との間で、日本中国との間で、戦後処理といたしましての賠償の問題は片づいておるのだ、こういうことになる。その片づいておる問題をなぜここであらためて日中共同声明の中に取り上げて規定しなければならないのか、どう考えてみたっておかしいでしょう。国民は理解できませんよ。そういったところの矛盾をどのようにお考えになっておられますか。時間がどんどん経過していきますから、これから延々とやっていれば、きょう一日で済むか済まぬかわからぬ、一つ一つ詰めていくと。そういったことも含めて、ひとつ国民に——私にじゃないですよ、私になんか言ったって、それは何も通りやしませんから。どのように考えておるかということをお答えをいただきたい。
  52. 高島益郎

    高島政府委員 この点も、実は共同声明の作成にあたりましてたいへん苦労したところでございまして、わがほうといたしましては、日中間の賠償問題を含めましてすべて法律的に処理済みであるという立場で交渉いたしまして、こういう政治的な表現になったわけでございまして、ここに書いてございますとおり、ただいま先生が賠償請求権を放棄したとおっしゃっておられましたけれども、そうではなくて、戦争賠償の請求を放棄するという、法律的な表現でない表現で処理したということでございます。
  53. 藤尾正行

    藤尾委員 そこで、そんなことはどうでもいいことですけれども、これはあなた方が非常に苦労なすったという話を聞いているだけの話で、何の説得力もない。そうすると、政治的に見て、日本中国との間にあった非常に不幸な長い間の戦争、そういったものを終結をして、賠償はもういただきません、賠償はようござんす、領土の問題はこうやって片づけましょう、戦争状態は終結をいたしましょうと日本との間にきめてくれたのは、中華民国ですか。あるいは中華人民共和国ですか。どっちですか。
  54. 高島益郎

    高島政府委員 これも先ほど申しましたとおり、日華平和条約によってその問題はすべて処理済みであるという立場で昨年の日中正常化をやったというのが、私ども立場でございます。
  55. 藤尾正行

    藤尾委員 水野政務次官、いまお聞きのとおりです。そうすると、日本立場とすれば、長い間の中国との間の不幸な戦争、それによって与えたいろいろな戦争被害というようなものも含めて、この戦後処理というものを解決をしてくれたのは、現在、台湾にある蒋介石総統の率いる国民政府であるということが、いま条約局長の口から明らかになった。よろしゅうございますね。(水野政府委員「けっこうです」と呼ぶ)これはあらためて記録に残すのだから、私語はいけません。
  56. 水野清

    水野政府委員 日華平和条約によって戦争処理あと始末の諸規定ができ上がったということは、私もそう思っております。
  57. 藤尾正行

    藤尾委員 そうすると中華人民共和国は、この戦争処理の問題について私どもには何もしてくれなかったことになる。この共同声明は一体何ですか。どうお考えです。
  58. 水野清

    水野政府委員 これは法律的な問題ではございませんが、中華人民共和国は、日本に対しまして自分たちの正統性を主張しておりましたけれども、その中で、やはりそれだけに、領土問題であり賠償問題というものを考えておったわけであります。たとえば、この賠償請求を放棄するということは、向こう側が一方的に言ったことでありますが、中華人民共和国が今後そういう問題を持ち出さないということの約束には、私はなろうかと思うわけであります。そういう意味で価値がある、私はこういうふうに見ております。
  59. 藤尾正行

    藤尾委員 あなたは法律的な立場でものを言ってくださいよ。ばかなことをおっしゃってもらっては困る。いいですか。先ほども言われたように、日本中国との戦争の諸関係日華平和条約できめられておるわけです。それで全部パアなんです。済んでいるのです。あとで請求権が残るとか残らぬとか、よけいなことだ、そんなことは。そういうものは何の意味もない。何の意味もない、内容のないことをここに羅列してあるだけにすぎない。こういうことなんです。私はそう思っておりますけれども、あなたは違うと思いますか。
  60. 水野清

    水野政府委員 この共同声明自体が、日本がそういう立場をとってきたという、日本と中華民国とが日華条約によって規定されて戦争処理の問題が済んできたということを、これは別の表現で中華人民共和国に認めさせた、私はこういう結果であろうと思って評価をしております。
  61. 藤尾正行

    藤尾委員 そうすると、きまっておるものを中華人民共和国が認めてくれたから、それはそれなりに非常に大きな意味を持っておるのである、こういう評価ですね。
  62. 水野清

    水野政府委員 さようでございます。
  63. 藤尾正行

    藤尾委員 まあ、それでよろしゅうございます。この問題でもなお議論をすれば切りがございませんから、議論はやめておきます。  そこで、この中にございます領土の問題、日中共同声明の第三項です。ここには「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」ということになって、台湾はここで言っている中華人民共和国領土の一部であるということをあなた方はお認めになったんだ。私のその理解に間違いはないかあるか、その点をお答えいただきたい。
  64. 水野清

    水野政府委員 藤尾先生お話とちょっと違うのでありますが、中華人民共和国が主張しているのは、台湾は中華人民共和国領土の一部である、こう言っておるわけです。日本政府はその言っていることを理解もしたし尊重もいたしますが、日本のとる立場は、ポツダム宣言第八項に基づいて台湾に対する領土権というものを放棄したわけでありますから、そちらで御解決を願いたい、こういう態度をとっておるわけでございます。
  65. 藤尾正行

    藤尾委員 あなたとそんな議論をしたくないけれども、そういうことを言われるから言わざるを得ない。中華人民共和国側が言っておる復交三原則というのは何と何と何ですか。
  66. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 国交正常化前に中国側で言っておりました復交三原則というのは、北京政府が唯一正統の政府であるということを認めろ、台湾が自分の領土であるということを認めろ、それから日華平和条約は無効、不当であるからこれを廃棄しろ、この三つのことであるかと思います。
  67. 藤尾正行

    藤尾委員 そうすると、この日中共同声明をおつくりになられた政府姿勢、そういったものの中では、一体ただいま言われました中華人民共和国側の復交三原則というものを認めておるのですか。認めないのですか。
  68. 水野清

    水野政府委員 その第一項である中華人民共和国中国の正統政府であるという点は認めておりますが、あとの二項は十分に認めておりません。
  69. 藤尾正行

    藤尾委員 そうすると、日本国中華人民共和国のいわゆる復交三原則というものを認めてないということを、あなたは明確に言い切られるのですね。
  70. 水野清

    水野政府委員 第一項以外は完全に認めていないということでございます。
  71. 藤尾正行

    藤尾委員 それは政府見解として受け取ってよろしゅうございますね。あなたの見解じゃありませんよ。
  72. 水野清

    水野政府委員 けっこうでございます。
  73. 高島益郎

    高島政府委員 ちょっと補足させていただきます。  この辺のところは非常にむずかしい問題でございまして、共同声明の前文にもございますとおり、「日本側は、中華人民共和国政府が提起した「復交三原則」を十分理解する立場に立って国交正常化の実現をはかるという見解を再確認する」ということを日本側が申しておりまして、この立場から共同声明に述べられた各項目が規定されておるということでございまして、まず第一番の中国政府承認、この点につきましては、ただいま政務次官がおっしゃったとおり、完全に日本中国側の立場に同意しているわけでございます。ただし、第二原則でありますところの台湾の主権に関する主張につきましては、第三項に書いてあるとおりでございまして、両方の立場が並記されておる。もし、ただいま政務次官がおっしゃったとおり、完全に同意しているのであれば並記する必要はなかったわけでございまして、そういう点におきまして若干のニュアンスの差があるという点を御理解いただきたいと思います。  それから日華平和条約につきましては、共同声明の文言の中には出てまいりません。これは共同声明の発出の日に大平外務大臣から口頭によって失効する旨を宣言をいたしておりまするけれども、この点につきましても、中国側の主張でありますところの、当初から無効であるから廃棄すべきであるという立場には、わがほうは完全には同意いたしておらない次第でございます。
  74. 藤尾正行

    藤尾委員 いろいろ回り持った話で、むずかしいところが多々ありますから、これはもっと詰めた議論をしてみなければいけないわけでございますけれども、ここに大平外相が日中の共同声明を御調印になったあと、昨年の九月の二十九日の記者会見で明らかにされた共同声明に関する政府見解というものがあります。その中にこの第三項をめぐりまして日本政府意思が述べられておるわけであります。「台湾問題に関する日本政府立場は、第三項に明らかにされているとおりであります。カイロ宣言において、台湾は、中国に返還されることがうたわれ、これを受けたポツダム宣言(具体的には「カイロ宣言の条項は履行せられるべく」とした第八項)をわが国が受諾した経緯に照らせば、政府ポツダム宣言に基づく立場を堅持するというのは当然のことであります。第五項に明らかにされている中華人民共和国政府の」云々といって賠償放棄の項に移っていくわけでありますけれども、ここで、先ほど条約局長が言われた並記をしてあるということ、これは実は非常に重大な意味を持っておるわけですね。これはあなたも言われた。それは向こうが言っておるのであって云々ということなのですけれども、この第三項にも明確に書いてありまするように、向こう側は「台湾が中華人民共和国領土の不可分の一部であることを重ねて表明する」。そうして日本国政府はそれに対して、「この中華人民共和国政府立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」と書いてある。これは理解するのはいいでしょうね。理解するんだから。ああ、そうですかということなのですから。尊重するということばが入っている。この尊重するということばの持っておる中身、これはどういうことなのですか。
  75. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 これは第三項の最初に、中華人民共和国政府は、台湾が不可分の領土の一部だということを先方の意見として述べておるわけでございますが、サンフランシスコ平和条約わが国が台湾に対する領土権を放棄したわけでございまして、だれのものであるかということはわれわれとしては言えない法律立場に立っておるわけでございます。また同時に、先ほど先生指摘のカイロ宣言、ポツダム宣言で、台湾は将来中国に返還されるべきものというような規定があるという事実を踏まえまして、現に、いままでは台湾のほうでは、中国大陸全部を含めまして中国一つで、これが全部中国という領土であるという主張もあったわけでございますから、そういった観点から、そういう事情を理解し、尊重していくということでありまして、また、この同じような文言が、中国とその他の国々、いままで国交回復いたしました国々の間に使われておるという先例も多々ございますということを御参考までに申し上げておきます。
  76. 藤尾正行

    藤尾委員 あなたはいま、私が聞きもせぬのに、先の問題まで踏み込まれて御答弁になられた。ポツダム宣言でわれわれは領土権を放棄をしておるのだ、そこまでは日本国のやっておる権限であって、それから先はわからぬのだ。ただ、向こうがそう言っておるから、そう言っていることを尊重をしたのだ、こういう趣旨のことでございますけれども、それはそれでいいでしょう。しかしそこで重大な問題が出てくる。一体領土とは何ですか。
  77. 高島益郎

    高島政府委員 一般に領土と申しますのは、国家一つの構成要件といたしまして、主権、国民、それから領土、そういう国家構成要素の一つとしての部分をなしておりまして、その部分に対しまして通常は施政権が当然及んでいなければならないわけでございますけれども、施政権が現実に及んでいるかどうかという点は、領有権という問題とは必ずしも一致しないケースがございます。現に日本につきましても、そういうケースは北方領土についてあるわけでございまして、わがほうは、北方領土領土であると思って、そういう立場でございますけれども、現実の施政権は及んでない、こういう不幸な事例がございまするけれども原則としては、当然領土という場合にはその政府の施政権が及ぶ、そういう地域をさしております。
  78. 藤尾正行

    藤尾委員 そこで、重大な問題が二つ出てまいります。一つは、つまり私ども権限がない、放棄した。そうしてサンフランシスコ条約あとでつくりました日華平和条約におきまして、これを中華民国の領土であるということをきめたわけです。その平和条約は昨年の九月まで生きておった。そうしてその精神は今日もなお生きておる。そういった台湾という、私どもが放棄をして、私どもは何の権限もない、どこかへ行ってどこのものかさっぱりわからぬ。私ども立場から言えば、それは日華平和条約で、こいつは中華民国のものでございますということにきまった。しかもそこには、中華人民共和国の主権というものはかつて一回も及んだことはない。そこには、国家成立の必要要件である国家主権は、中華民国という国家主権が存在をし、政府があり、そうしてそこに一千五百万の国民がおる。台湾、膨湖島、金門、馬祖という領土もその中にある。一体この国とよその国、外国、その外国にある私どもが、かつて持っておったけれども放棄したその領土はいわば人のものです。そいつを片一方から片一方に所有権を移転する、そういう権限日本の国にありますか。それから、一体、中華民国という国を、現在あなた方は存在をしておる国であると認めておられるのかどうか。この二つの問題があります。条約局長がうずうずしていますけれども、これは政治の重要な問題であります。あなたがお答えになれるのならお答えください。
  79. 高島益郎

    高島政府委員 先生の第一の質問につきまして、前提に多少誤解がおありであるように存じますので、ちょっと説明させていただきます。  日華平和条約の第二条では、桑港条約第二条に基づきまして台湾を放棄したということをただ再確認したというだけでございまして、その台湾の主権が中華民国に及ぶということを日華条約によって認めたということではございません。ただ、桑港条約第二条にあるとおり、要するに日本が放棄したということを日華条約でまたもう一回再確認したということだけでございます。
  80. 藤尾正行

    藤尾委員 そのあとは。質問に御答弁いただきたい。
  81. 高島益郎

    高島政府委員 第二問のほうでございますけれども、これは各国それぞれ、政府承認するということはそれぞれの政府がやっておりまして、中国につきましてもそのとおり。ある国は中華民国を承認し、ある国は中華人民共和国政府承認するという関係にございまして、日本といたしましては、去年九月二十九日に中華人民共和国政府承認しているわけでございますので、日本政府としては、中華民国というものが法律的に存在するということを言い得る立場にございません。この点はぜひ御理解をいただきたいと思います。  ただしかし、先ほど申しましたとおり、世界のうちには、アメリカをはじめかなりの国が中華民国政府承認しておるという事実がございまして、この国々にとりましては、中華人民共和国政府というものは法律的に存在しない。ちょうど日本と逆の関係になっておるということは事実でございます。
  82. 藤尾正行

    藤尾委員 いま法律的な解釈はいいのです。私が言っているのは、要するに政治的な評価見解なのであって、一体、政府あるいは外務省は、あなたは、その点をどのようにお考えになっておりますか。
  83. 水野清

    水野政府委員 台湾に現在中華民国政府というものがあるということは、これは一つの事実でございますが、日本政府北京にある中華人民共和国政府を正統政府として認めておるという関係でありまして、しかし台湾に一つの政権があって北京の勢力の及ばない範囲であるということも認識はしているわけであります。そこにいろいろの人的な交流もある。またこれはやむを得ないということは、昨年の共同声明の発表以後に現実に行なわれていることであります。
  84. 藤尾正行

    藤尾委員 そういういいかげんな話じゃなくて、台湾にある中華民国というのは国ですか、これは。どうですか。
  85. 水野清

    水野政府委員 日本政府にとっては承認をしていない国であります。
  86. 藤尾正行

    藤尾委員 承認していようと承認してまいと、これは国なんです。そんなことは関係ない。厳然と存在しているこれは国家である。主権もある。領土もある。国民もある。千五百万の国民といえば、世界に今日存在しておる百四十の国の中で、おそらく半ば以上の国でしょう。そういった国が現にあって、あなた方も、そこに国があるということは、これはほんとうに知っておられる。その国との間に平和条約結んだのですから、知らぬとは言わさぬ。その台湾というのはどこの領土ですか。国がそこにある。台湾、澎湖島、金門、馬祖、これはどこの領土ですか。
  87. 水野清

    水野政府委員 日本中国の非常にむずかしい関係一つでございますけれども、台湾の領土権については、中華人民共和国は自分のところだと主張している。なるほどあなたのおっしゃることは理解はいたします、しかし日本ポツダム宣言に基づいて発言権がございません、こういう立場にあるわけでございます。
  88. 藤尾正行

    藤尾委員 よくわからぬことをおっしゃるけれども、一体、現実に、いまの台湾、澎湖島、金門、馬祖というのは中華人民共和国領土なんですか。それとも中華民国の領土なんですか。それともその第三の立場があるのですか。どうですか。
  89. 水野清

    水野政府委員 中華人民共和国政府は、あそこは自分の領土だと、こう言っているけれども勢力は及ばない。台湾にある、日本承認していない中華民国の現に勢力の及んでいるところである、こういうふうに見ておるわけであります。
  90. 藤尾正行

    藤尾委員 そうすると、事実問題として、台湾、澎湖島、金門、馬祖というものは中華民国の支配地域であって、中華人民共和国領土であると言ったって、まだ一回も行ったこともなければ見たこともない、さわったこともないという地域であるということはお認めですね。
  91. 水野清

    水野政府委員 見たことがないとかいうような表現とは違いますけれども中華人民共和国が自分の領土であるということを主張しておりますけれども、勢力は及んでいないということは認識をしております。
  92. 藤尾正行

    藤尾委員 そこのところはあなたは、これは速記をとっているのですから、先ほどから何回も言っておりますように、これは、中華人民共和国北京でも聞いておるし、世界各国みんな聞いているわけですから、そういう意味で大事をとられる気持ちは私はよくわかります。しかし常識的に見て、あなたはさっき、中国というのは常識で言えばといって、中国だヘチマだと言われた。そういう立場を援用していけば、この領土は現に中華民国のものです。それが世界の常識。そういった領土権に関して、その領土権を放棄した日本が、どうじゃこうじゃと言う権限が一体あるのかないのか、尊重する権限があるのかないのか、承認する権限があるのかないのか、こういうことが問題になってくる。どうですか。
  93. 水野清

    水野政府委員 ここでは、とやかく言っているのでなくて、中華人民共和国が言っていることを、そうですかという理解をしている、こういうことであって、日本の積極的な意思の表現ではないわけであります。
  94. 藤尾正行

    藤尾委員 尊重はしてないわけですか。
  95. 水野清

    水野政府委員 尊重もしているわけであります。
  96. 藤尾正行

    藤尾委員 こういうことを詰めていきますと、非常にこれは長い時間かかります。そこで、委員長から先ほど御提示がございましたように、十五分になりました。ほんとうを言うと、まだまだこれは延々としてやらなければいかぬのですが、あとの問題はあとの問題といたしまして、委員諸公の御迷惑もございますから、一応ここで打ち切りにいたしまして、あとは継続させていただくということにいたしたいと思いますが、どうかひとつ御決定を願います。
  97. 三原朝雄

    三原委員長 午後一時より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時十四分休憩      ————◇—————    午後一時六分開議
  98. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  外務省設置法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
  99. 江藤隆美

    ○江藤委員 議事進行について。  私は午前中から藤尾委員質問を実は傾聴しておったわけであります。この質問はいままで与野党の質問を通じてなかった外交の基本理念に触れる問題が非常に多い。そういうことを実は耳を傾けて拝聴しておったわけであります。私は、せっかく水野政務次官が御出席で獅子奮迅の御努力でありますから、政務次官をどうこうというのではありません。しかし本日の委員会はふだんの委員会とは違います。これは六十五日の延長国会をやって、これがしょっぱなの委員会です。言うならば、自由民主党が、国民に責任を果たそうとするための責任与党として、大事な委員会をきょうは開こうというその第一日目であります。その委員会外務大臣出席なさらぬということはあまりいいことではない。あまりではない。たいへんよろしくない。外務省の幹部の皆さんが大臣の身をおもんぱかって、なるべく出席させないということをするとするならば、これはもってのほかである。野党が要請をすれば出てくる、与党の質問には出てこない。それは外遊のための準備だとか何だとか言われるそうですけれども、そういうことは理由にならないと私は思う。ですから、これからでもけっこうでありますから、一時間でも三十分でもぜひこの委員会出席されて、問題の焦点について大臣から直接外遊前に御答弁あるように、委員長のお手元でお取り計らいをいただくようにお願いをいたします。
  100. 水野清

    水野政府委員 先ほども申し上げましたように、当委員会を軽視して欠席をしたということではございませんので、外交案件と訪米の準備とあわせてきょう一日日程を組んでおりまして、午後からも外国の大使を一人呼んでおりまして、そういう関係で欠席をしたわけでございます。決して軽視をしておるわけではございません。御了解をいただきたいと思います。
  101. 三原朝雄

    三原委員長 いまの江藤委員の御意見、私も全く同感であります。実は一昨日も、ここに来ております官房長、アジア局長ほか二名、四名の方がお見えになって、いま政務次官から申されたような事情も承りました。しかし私は、国会審議のきわめて重要な段階であるし、短時間でもいい、お顔を出されることが適当と思うということも要請をいたしました。ところが、いま政務次官から御意見がありましたように、たっての御意見であるし、なお、訪米行事が終わりますればあらためて参上いたしますので、その際にひとつお許し願えぬかということであります。  なお、私はこの際、外務省にも御注意を申し上げておきたいと思いますが、先般の外務委員会でも、私は国対でたまたま立ち会いましたが、外務省に対する委員会としての強い責任追及がございました。特にこのことについて政務次官をとやかく言いたくはございませんけれども、各省が、こういう事態になるときは、政務次官がわざわざお出ましになってわれわれに御了解を受けられるわけでございます。このこともございませんでした。政務次官御多忙であったと思いまするけれども、それらの問題をあわせて、私は、いま江藤委員の貴重な御意見については、しかと受けとめていただきたいと思っております。  そういうことで、江藤委員の貴重な御意見でございましたが、ひとつきょうのところは、私もたってきのうからお願いをしましたが、内容的にはきわめて重要なこともあるようでございますので、まあ訪米後にずらしていただこうということで了承を与えたというような事情もございますので、ぜひお許しを願って審議を続行させていただきたいと思います。お願いいたします。  藤尾君。
  102. 藤尾正行

    藤尾委員 午前中から基本的な問題の二、三について御質問を申し上げ、論議を展開いたしておったわけでありますけれども、その決着がなかなかつきません。したがいまして、午後あとたくさんのわが党の同僚委員質問をなさる、こういうことでもございますから、できるだけ早く私の質問を終わらなければならぬ、かように考えておりますから、はしょって問題を申し上げます。  第一は、午前中から引き続きました論議の焦点でございますけれども、午前中も申し上げましたとおり、私ども、長い間の日本中国との間の戦争、この間にかけましたいろいろな戦争被害というものにつきましての戦後処理といいまするものは、これは日華平和条約で、現在台湾にあられます蒋介石総統のお率いになっておられる中華民国、国民政府との間の日華平和条約処理をしていただいたわけであります。いわば日本は、この戦争の責任についてのいろいろな処理、これについては、台湾にある中華民国政府といいまするものは、日本が非常に大恩を受けた相手方であって、おかげさまをもって今日私ども世界に繁栄しておるということが唱えられるような、日本の国の戦後の基礎ができたわけであります。これはひとえに国民政府の蒋総統をはじめ各位のわれわれに対して与えてくだすった恩恵である、こういうことはお認めをいただいたわけであります。  そこで、その大恩のある台湾にありまする中華民国政府に対し、その持っておりまする領土の大半、領土の全部、それを、私どもはそういうことをする権限もない、権利もない、にもかかわらず日中共同声明というものによって、中華人民共和国側が言っておる主張、台湾は中国の一部であって、その中国というのはおれが統一をしておる中華人民共和国政府の主権下にある中国である、こういうことを重ねて言う、それは承知をいたしました、それは尊重いたしますてなことを約束をした。これは私は、いやしくも相手を現在承認していようと承認していまいと、国と国、そういう立場において考えまするときに、日本日本領土である北海道をどうしようとか九州をどうしようとかいうことならわかりますが、そうでない、よそさまの持っておられる領土、これについての主権の移動というものについての態度表明、まあ表明までいかなくても、それに対するコミットメントを与えたということは、私はこれは、歴史に残っていく、だれもぬぐえない大きな政治的素地であったということをいわざるを得ない。それが相手が、私どもの戦後の基礎をつくってくれた、私ども戦争処理あと始末を全部やってくだすった蒋介石総統の率いられる中華民国でありその領土であるだけに、事は重大である。これは法的な問題はともかくといたしまして、お互い政治家として政治的な見識に立っていったときに、一体私ども政治基礎をなす道義というもの、国の外交基調をなす国際正義というもの、そういったものが、日中共同声明を含む政治的な姿勢態度というもので世界に対して日本国政治的道義が貫けたかどうか、この点についての詰めは、これはやっておかなければいけませんから、田中総理大臣であろうが、大平大臣であろうが、水野政務次官であろうが、そういうお立場に立っておられまする政治責任という立場において明らかにされなければならぬ。どのように思われますか。
  103. 水野清

    水野政府委員 日本の戦後の処理の問題の中で、中国大陸で犯したいろんな事件、その処理ということは非常に重大なことだったことは、先生の御指摘のとおりであります。これが台湾で蒋介石総統が率いる国民政府の好意的な計らいによって、日華条約で賠償その他一切の問題が処理された、免除されたということは、私は日本人として多としていいと思います。しかし、この共同声明内容は、決してその現在国民政府中華民国政府が領有している地域を日本が云々するという表現でないことは、先ほど申し上げたとおりであります。中華人民共和国の言っていることは理解はします、しかし日本は、非常にくどいようでございますが、ポツダム条約によって、これは領土権を左右する権限がないのでございます、そういう言い方で表現をされているわけであります。この点も先生は御不満かもしれませんが、書いてあるのはそういう意味であります。  そこで、これは私は、非常に苦心をした表現だろうと思います、御承知のように。道義的な問題もこの中に含まれて表現をされた。私どもは、日本の国の長い歴史において、日本国の運命というものを考えた際に、そういう過去のいろんな問題はあるかもしれないけれども、また日本としては、一億の国民をどっちの方向へ持っていくことがこの緊張緩和時代に大事であるかという政治的判断は、中華人民共和国承認をせざるを得なかった、私はこういう結果であろうと思うのであります。決して日本が人の国の領土を左右したという表現でないことは御理解をいただけると思います。私の答弁でも御不満かと思いますが、私はさように信念を持って考えております。
  104. 藤尾正行

    藤尾委員 そうすると、また同じことを、残念でございますけれども繰り返さなければならぬのですが、理解をする、尊重をするという主体は、これは一体だれですか。
  105. 水野清

    水野政府委員 これは共同声明に署名をした田中総理大臣であり大平外務大臣でございます。
  106. 藤尾正行

    藤尾委員 そういうばかなことを言っちゃいけません。田中総理大臣や大平大臣の個人がそういうコミットメントを与えたからといって、それが日中共同声明というようなものになるわけがない。日本国です。一億の国民を含んだ日本国が残念ながらそのコミットをしたのです。そこに問題がある。  私どもは国の政治基礎というものを今日どこに置いておるか。いろいろ議論もありましょう。しかし、少なくとも日本という国がずうっと発展をしてまいりました過程におきまして、私ども政治基礎というものが、道義であり、そうして国際正義であったということは、これは戦争によっていろいろな批判も受けましたけれども、一貫をしてきた私ども世界に対する美徳であった、私はこのように考えておりますし、また今後もこのように考えていきたい。  こういうことを考えてみましたときに、その日本国が、よその国の領土、それがおれのものだ、おれのものだと言うことを理解をし、それを尊重するということによって、他の台湾にありまする中華民国政府、蒋介石総統以下のわれわれが大恩を受けた方々、こういう方々の顔に何を塗ったかということをわれわれは反省をしていかなければなりません。起こってしまったこと、やってしまったことを消せと私は言っているのじゃない。国民道義、国際正義というものの上に立って、私どもは、この一連のやってきたこと、そういうものをいま静かに振り返ってみて、それがほんとうに道義に立脚をしたものであり、国際正義に立脚をしたものであるということをあなたは言えますかということを言っているのです。
  107. 水野清

    水野政府委員 御指摘の国際的な正義というものの考え方でございますが、私は、国際的な正義ということは非常にはっきりしない概念でありまして、やはり日本国は、自分の国の利害関係、国益というものを基礎にしてものを考えていく以外にはなかろうと思います。もちろん日本外交方針が国連中心主義の外交であることは御承知のとおりでありますけれども、ただ一国と一国との間の道義だけで律し切れないものがいまの世界情勢の中に非常に生まれてきている、これに適応していかなければならないということも、私は日本の国益の一つの面ではなかろうか、こういうふうに思っております。
  108. 藤尾正行

    藤尾委員 これまたあなたとの見解が違うわけでございますから、この問題を詰めて議論をいたしましても、延々としていつ果てるやらわからぬ、同じことになるということを私は考えます。  そこで、それでは最後にこの基本的な問題の締めくくりをする意味におきまして、条約、これは国が国との間に責任を持って署名をいたし発効させるものであります。その条約の中におきましても、特段と戦後処理ということを規定をいたしまする平和条約。これは、条約が多数ある中で、平和条約なんというものはそうやたらにあるものではない。そういう意味からしても、この平和条約というものの重み、これはたいへんなものだ、私はこう考えております。その大事な大事な、非常な重みを持っておる平和条約といいまするものを、ともかく大平さんが記者会見において述べられておられまするように、昨年の九月の段階におきまして、これは終了してしまったんだということで弊履のごとく投げ捨てられた。歴史的な事実であります。  そこでお伺いをしたいが、一体、条約がなくなってしまう、効力を失ってしまうということの前提というもの、それは一体何と何と何ですか、お答えをいただきたい。
  109. 高島益郎

    高島政府委員 条約論一般につきまして御説明いたしますと長くなりますので、日華平和条約につきまして御説明をいたします。  日華平和条約は、御承知のとおり、その中で地域的な適用の限定をいたしております。したがって本来は、平和条約に限らずすべての条約は、国と国との関係を律する条約でございますので、一方の政府承認を切りかえるという事態において、その条約が当然に失効するということはあり得ません。したがって本来ならば当然中華人民共和国政府が引き継ぐべき性質の条約であります、一般論としましては。しかし、先ほど申しましたとおり、この日華平和条約は地域的な限定がございまして、実際に大陸に適用のしようがございません。そういう関係で、昨年の九月二十九日の段階において、中華民国政府承認を切りかえるその段階において、この平和条約の存続の意義がなくなってしまったということを大臣が記者会見の席で声明されたという経過になっております。一般論といたしましての御説明は省略いたしましたけれども日華平和条約についてのわれわれの立場はそういうことでございまして、特別にある手続をとってそうしたということではなくて、政府承認を切りかえたことに伴う付随的効果として日華平和条約の存在の意義がなくなってしまった、こういうことでございます。  その場合に、戦争状態の終了とか、あるいは賠償とか、その他の戦後処理に関する条項はございまするが、こういう点は、われわれ専門的に申しますと、すべて処分条項ということになっておりまして、これは日華平和条約発効のその日においてすべて処分されてしまって、これは使命を果たしてしまっておるということでございまするので、この点については何らの影響はないわけであります。
  110. 藤尾正行

    藤尾委員 一般的な法律的解釈は、これはこれなりにわかりますけれども、大体、一国が条約を失効させるというときには、その相手方がなくなったか、あるいは双方の合意によって、そのようにいたしましょうという合意ができるか、そういったような条件があるという場合に限ってそういうことは行なわれるのであります。この場合みんなそうじゃない。そこに、先ほど私が申し上げた国際正義、道義という問題との関連が出てくるということを申し上げておるのであります。  確かに、戦争を終結をするということは、これはある時点、平和条約を結んだとたんに、賠償の問題がどのように解決をし、戦争状態の終結がどのようになされ、領土問題の解決がどのようにされるかということはきまってしまう。でございまするから、中華民国との間にあった私ども平和条約が、何となくふわふわ、ふわふわして消えてなくなるというようなことがあっても、その実体的なものは、その以前の平和条約締結の段階でもう成立をしちゃっておる、効力がもう全部出ちゃって出切っておる、だから別に差しつかえないんだ、まあこういう見解がただいまの条約局長の御見解であります。しかしながら、それでは済まぬものが残っておる。それを私はあなたに、政治家といたしまして政治的な立場に立って申し上げておる、こういうことでございますから、あらためて性根を据えてその点について御返答を賜わりたい。
  111. 水野清

    水野政府委員 日華平和条約の価値については、先ほど来申し上げたとおりであります。しかし、中国という地理的な概念、先ほど御指摘がありました非常にはっきりいたしません点もありますが、中国という地理的な概念の中にある、国家一つの片方である中華民国を北京にある中華人民共和国承認をかえたという時点において、中華民国との間の日華平和条約というのは、御承知のように、現に領有する地域という規定があるとおり、これを自然に消滅するという形で条約の効果を失わしめたということについては、私は、先ほど条約局長が申し上げたように、これはやむを得ない措置であったと思います。  しかし、先ほど来、中華民国政府という、日本承認はしておりませんけれども、いまだに台湾に一つの政権があって、そこと日本との間に、現在も人の交流その他投資とかいろいろなことがあるということについては、われわれもこれは重大だと思っております。また、そこにある人たちに対して、個人的にはこれは人情的に切りがたいもののあることも、われわれはよく承知をしております。そういう点については、今後の実際上の交流でこれを——ある意味においては私は、いまの台湾に住んでいる人たちに、失望感とかいろいろなものを与えたということも知っておりますが、これは今後の交流関係で、私は、私どもの持っている気持ちを表現していく以外に方法がなかろう、こう思っておるわけでございます。
  112. 藤尾正行

    藤尾委員 あなた、いろいろなことをおっしゃるけれども、次元が違ったことをおっしゃっちゃいけません。よろしゅうございますか。これからどうするから、こうするから、それでいいというものではない。まるきり違っておる。片一方は基本的なものです。国の政治の根幹に関する問題である。あなたの言っておられるのは、あとのほうはさまつな政策上の配慮に関する問題であります。一緒にならぬ。  そこで、そんなことを議論したってしようがありませんから、ここもバイパスをいたしまして、この基本問題を終わるについて、最終的に一つの問題を詰めておきたい。  戦争終結に関する、賠償であるとか領土とか戦争終結というようなことを取りきめました日華平和条約というものに、一体地域的な制限がついておったか、ついてなかったか、重大な問題であります。あなたどう思われます。
  113. 高島益郎

    高島政府委員 その点につきましては、これまで政府がたびたび御説明いたしておりますとおり、そういう戦後処理に関する部分は地域的な限定の適用はしようがない、日本と台湾との間のいろいろな実務関係、こういうものについてのみ地域的適用の限定があるという説明をいたしておりますが、この見解は現在でも変わりません。
  114. 藤尾正行

    藤尾委員 そういうことでおわかりになられましたように、平和条約というものの戦争終結に関する諸規定、これは地域制限がないのです。中国全体との間の一切の問題がこれで処理されておる。だからわれわれは、この戦争処理に関する限り、先ほどから申し上げておりまするように、私どもに対する恩恵は全部、一〇〇%、いま現在、台湾にある蒋介石政権のいろいろな措置というものによって日華平和条約ができて、それによって全中国、地域的中国中華人民共和国も一切を含めて、それとの間の賠償の問題も片づいておるし、領土の問題も片づいておるし、戦争状態の問題も片づいておる、こういう立場なんです。それが、中国に対して感じなければならぬ私ども日本の国といたしましての国際的道義、そういったものの基本であるべきであるということなんでございます。これ以上申し上げてもしかたがありませんから、長くなるばかりですから、これでやめます。  そこで、基本的な問題はここで打ち切りにいたしまして、次に、今度は戦後の処理の問題。これは、ただいま申し上げましたように、日中共同宣言の中にも、航空協定はどうするのだとか、あるいは貿易協定はどうするのだとか、あるいは海運協定はどうするのだとか、漁業協定はどうするのだとかいうことが、これはきめられるはずであります。あなた方もそういうふうにきめておられる。またこれは、私どもが持っておりまして、いまはそれが消えてなくなったとあなた方が言っておられる日華平和条約の中にも、基本的な戦後処理問題でない、これに付随する諸規定がたくさんあるわけであります。このほうは地域的な制限がついております。基本的な問題でありませんから、これは地域的な制限がついておる。であるから、その当時中華民国政府が支配していなかった大陸の諸地方については、日華平和条約ではその効力が及んでいないという問題も出てくるし、また、これからあなた方がおつくりになられようとするいろいろな諸協定、そういったものについても、中華人民共和国政府というものが、現にその主権が及んでいない台湾、澎湖島、金門、馬祖というものに対しては、これからあなた方がどんなに精緻にこれをおつくりになられましても、その権限は及ばないのであります。その点は御異論ございませんね。
  115. 水野清

    水野政府委員 中華人民共和国の施政権というものは、現に台湾その他、おっしゃった付属の諸島には及んでいないわけでございますから、これから日本中華人民共和国と結ぶ実務協定についてはその効果は及ばない、こう認めざるを得ません。
  116. 藤尾正行

    藤尾委員 これは私の言うとおりお認めになったわけでございますから、それなりにけっこうでございます。  そこで、ここで出てくる問題はたくさんあります。これまた、やっていれば切りがないくらいたくさんある。あるけれども、その中で二点だけ引き出して御質問を申し上げ、そして私の質問を終わりたいと思います。  第一は、これは現在、麻布にある旧中華民国の大使館のあと地であります。大体、大使館というものの存在、そういったものがどのように取り扱われておるのか、どのような根拠法規にのっとっておるのだろうか、それが今日どのような変更を加えられてどのようになったんだということをここで御発表をいただきたい。これが第一であります。まずそれをお伺いいたしましょう。
  117. 高島益郎

    高島政府委員 大使館と申しますのは、従来、国際慣習法に基づきまして、ある国を代表しまして外国に派遣され、そこで国と国との関係処理するということを任務といたしております。その国際慣習法は、現在、外交関係に関するウイーン条約ということになっておりまして、そこではっきり実定法となっております。  先生の御質問の御趣旨は、私、必ずしもよく理解いたしかねまするけれども、従前中華民国大使館としてあったものが、その後の日本中華人民共和国政府承認によってどのような変貌を受けたかということかと思いまするけれども、中華民国大使館というのは、私ども立場では、あくまでも中国を代表する政府としての中華民国がその外交使節として大使館を持っていたというふうに理解いたしております。したがって、現在では中華民国の大使館というものは存在し得ませんで、中華人民共和国の大使館というものは存在するというふうに考えざるを得ないというふうに思います。
  118. 藤尾正行

    藤尾委員 あなたの言っておられることは、私が申し上げていることの先を行かれました政治的な問題でございまして、そこまで私は言っていない。物理的な、大使館のあと地、あるいはあとの建物、こういったものは一体その政治的ないろいろな措置によってその性質を異にするということ、変貌をするということがあり得るのかということをまず聞いておるわけです。どうなんですか。
  119. 高島益郎

    高島政府委員 従前、中華民国大使館がございましたところの土地は、私ども政府考えでは、中国を代表する国としての中華民国、それの大使館のあと地であるというふうに考えますので、現在私どもは、中国を代表するものとして中華人民共和国政府というものしか認めておりませんので、国家に帰属する大使館のあと地というものは、当然現在では中華人民共和国政府の所有権のもとにあるというふうに考えざるを得ないというのが、現在の、昨年九月二十九日以来の政府立場でございます。
  120. 藤尾正行

    藤尾委員 そんなばかなことがありますか。いやしくも土地建物ですよ。物権です。これに外交もヘチマもないはずです。これはただ民法上の存在でしかない。そしてそれは、登記上、中華民国政府というものが登記をしておったというにとどまっておる。そうすると、これがかって気ままに、日本国政治的なマヌーバによって、民法上、登記上の名前というものまでが一ぺんに書きかわってしまうというようなことが一体あっていいものでしょうか。たとえば私どもの家があったとする。そして、相手方と話し合いが切れてしまった、私どもの家が今度は私にかわって代表するその人のものに、名義上書きかわるのがあたりまえでございますというようなこと。これはいやしくも法治国家といたしましては通りません、どんなことがあっても。国破れてもそれは通らぬのであります。そういう民法上の権限というものが外交的な措置によって左右せられるというようなことがあっていいかどうか。この問題と、いま麻布にありますかつての中華民国の大使館のあと地が、民法上、登記上どうなったかということをお示しいただきたい。
  121. 水野清

    水野政府委員 第一の御質問に私からお答えいたしますが、先ほど条約局長が申し上げましたように、いま藤尾先生国家の場合と個人の場合とを一つ議論で押えましたけれども国家の場合、日本はいままで中華民国を正統政府と認めて、その使臣が日本に来て使っていた。いわゆる中華民国と違いまして、中国全体の財産と私ども考えれば、中華民国を承認するのでなくて、私ども中華人民共和国という別の政権を承認した段階で、この所有権はその承認した相手にかわらざるを得ないということはやむを得ないと私は思います。個人の財産権の問題とはここに根本的な相違があろうと私は思います。
  122. 藤尾正行

    藤尾委員 これは午前中に申し上げたはずです。そうしてあなた方もお認めになったはずです。地名のほかに中国というものはないんですよ。よろしゅうございますか。これはあなた方お認めになったんですよ。速記録をひっくり返してごらんなさい。明確に民法上の財産の所有主は中華民国であったわけです。今後もそうです。一方的に抹消するのでなければ、あるいは登記上の中華民国が、それをよろしいといって合法的に移転するのでなければ、民法上の財産が、中国を代表するとかせぬとか、そういうこととの関係によって常に移動をする、移転をする、形が変わってくる、そういうような性質のものではない、この点を申し上げておるわけです。
  123. 水野清

    水野政府委員 御不満だと思いますが、私が中国というあいまいな地理的な名前を使ったからでありますが、ともかくこの中国というものを、御承知のように台湾の国民政府も、自分が正統政府であり全体の代表だと、こう言っております。同時に中華人民共和国も、同じことを逆な意味で言っているわけであります。日本はこの二つのうちのどっちかを選択せざるを得ない。両方同時に選択することはできないということも、先生承知のとおりであります。そして日本国政府は、中華民国を中華人民共和国承認の相手を切りかえた、こういうことであります。これは民法上の制限でなくて、国家と民族、そういったものの財産であろうと私は思います。私ども国家を切りかえたわけでありますから、残念ながらその所有権は中華人民共和国に移った。これは、たとえばほかの国と戦争状態になって、その国の所有する財産を日本が没収したというような事件とは全く性質を異にするということでございます。
  124. 藤尾正行

    藤尾委員 あなたは、中華民国と中華人民共和国との承認問題、承認によるわが国政府政治的な判断、そういったものと物の所属権限というものとを混同しておられるのではありませんか。いやしくも中華民国というものは現にまだ存在しておるのですよ。あなたも存在しておるということは認めた。所有主はおるのです。ただ不在地主になっただけの話です、日本国から見れば。現におる。その所有権が急に雲散霧消してなくなる、そんなことが一体あっていいものでしょうか。あなた方は、不動産登記というものを変えるだけの力がそういった政治的措置でできると思っておられますか。この点いかがです。
  125. 水野清

    水野政府委員 先ほども申し上げましたように、台湾に住んでいる方が個人的に日本に持っている財産を侵害したというようなこととは違うわけであります。たとえば台湾にAという方がおられて日本に土地を持っておられる、家屋も持っておられる、これを没収することはできないと私は思います。しかし、中華民国政府というものはありますけれども、これは日本承認をしていないのであります。そしてそれに付随する日本の国内にある財産権というものは、承認する相手をかえた時点において、その所有者を、対象をこっちはかえざるを得ないということは、私はやむを得ないことだと思います。
  126. 藤尾正行

    藤尾委員 この問題につきまして、あなたと押し問答していたって、これまたしかたがありません。しかしながら、もっとよく勉強しておいてもらいたい。民法というものと不動産登記法というものの性格について、あなたはまだまだ研究の御不足のところがある、私はかように思います、あなたは、ないとおっしゃるかもしれないけれども。この問題で議論したって、あなたと私とは見解が違うのですから、議論はいつまでたっても果てるところがない。そんな無意味な議論をしたってしようがありませんから、この点はひとつペンディングな問題として研究をしていただきたい。よろしゅうございますね。  そこで、最終の問題といたしまして、中華人民共和国政府との間で日中共同声明というものをおつくりになられましたときに、別にそれが文書でかわされたわけではありませんけれども、その文書の中の一環と、そして田中総理並びに周恩来首相との間のやりとりというものの中で明確にされたものの一つに、日中航空協定というものがございます。これを一番初めにやろう、けっこうでございましょうということで、これに取り組まれることになった。これから大問題になろうとしておる。この問題が現状としてどのように進んでおるかということを御説明願いたい。
  127. 水野清

    水野政府委員 日中航空協定の交渉は、日本側から去る三月、四月に二回関係者を北京に出張させまして、いろいろな問題について、あるいは交渉に入る場合の基本的な考え方について話し合いをさしております。しかしその後、現在のところはあまり進展をしておりません。
  128. 藤尾正行

    藤尾委員 そうすると、進展をしていない問題について私どもが論議をしてもむだでございますから、これはいたしませんけれども、しかしながら、基本的に一国と一国との間の航空協定というものの及ぼす効力と、そして国内で厳然として施行せられておる航空法という法律と、一体どっちが優先いたしますか。法的にお答えを願います。
  129. 高島益郎

    高島政府委員 一般的な条約と国内法との関係ということでこの問題も解決がつくと思いますけれども、やはり条約国会承認を得て締結いたします場合には、その条約は国内法を拘束するということでございます。航空協定につきましては、一般的に国際間に、実際に定期便を飛ばす場合に必ず締結するということが慣習になっておりまして、これを受けまして、日本航空法の中に航空協定に基づく取りきめについての規定がございます。したがって、条約と国内法との関係について云々する必要はないくらいに明白に、この航空協定と国内法との関係航空法の中に明示的に定められている。したがって、相互間に何ら矛盾はない関係になっておるというふうに考えております。
  130. 藤尾正行

    藤尾委員 そのかかわり合いのところが、これから先、非常に重要になってくる問題であります。そこで、この問題も現に進行中でありますと言われるんだから、この問題について詳しくあなた方と議論してもしようがありません。  ただ、申し上げたいと思いますことは、現在とにかくハイジャックというようなことで起こりました一連の最近のこと、こういうことを考えてみましても、日本はリビアとの間に航空協定を結んでいない。リビアはそういった国際条約、シカゴ条約というようなものに拘束されないということがあって、非常に困難ないろいろな問題がそこに発生をしたというようなこともあります。そこで、日中航空協定をこれからお進めになるというときに、日本国の国内法規であります航空法との関連、そういったものを含めて万遺憾なき解決をおやりにならないと、これは国会承認案件でありますから、国会承認しなければ発効しないのですから、ただいま条約局長航空協定というものが発効をすれば国内法を拘束するのだということを言われましたけれども、それが成立するまでの間は国内法が単独に有効に働くわけであります。日中航空協定というものはそういった環境の中に進められるということを、ひとつしかと御承知おきを願った上で御善処あらんことをお願いをいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  131. 三原朝雄

    三原委員長 近藤鉄雄君。
  132. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 まさにいま日本外交は大きな岐路に立っていると思うわけであります。ただいま藤尾委員からもるる御質問があって、政府の御説明もあったわけでありますけれども日本は戦後のいろいろな不正常な関係正常化していくこの過程の中でまたいろいろな問題がありますが、同時に新しい外交方針というものもこれからつくり出していかなければならない、実行していかなければならない、そういう段階にあると思いますので、まさに外交当局の御苦心のほども十分に理解できるわけであります。  この非常に重要な役割りを果たしておられます大平外務大臣はじめ外務省の方々に私は非常に敬意を表するわけでございます。しかし同時に、先ほど議事進行に関して質問もございましたように、このような重大な外交の基本に関する問題についていろいろ御意見を承りたいと思っておるときに大臣がお見えにならないということにつきましては、私も内閣委員会委員の一人としてたいへんに残念に思う次第でございます。訪米を控えてのことでございますので、いろいろ御事情はわかりますが、ぜひ訪米後には再び当委員会に御出席を賜わりましていろいろ御説明をいただきたい、かように要望を最初に申し上げたいと思う次第であります。  そこで私は、実はきょうの質問は、訪米、訪ソ、そして訪欧を総理が計画をしていらっしゃるこの問題についてお聞きしたいと思っておるわけでございますけれども、これまでの藤尾委員の御質問とも関係いたしまして、ひとつはっきり理解をしておきたいことがございますので御説明を賜わりたいわけでございますが、いわゆる日中正常化というこの問題。日中正常化が成りましてすでに十カ月を経過しているわけであります。この日中国交正常化につきましては、当時もいろいろな議論があったわけでございますけれども、いま振り返って考えてみて、今日の時点に立って、日中関係が昨年の九月以前のようないわゆる非正常な状態にあるということを想定いたしますと、これはやはり、世界政治の流れの中でたいへん奇異な状況であるということを、私としても認めざるを得ない。現段階に立って考えてみますと、日本中国本土との間に国交関係が樹立してあるということは、私はやはり、国際政治の流れの中で妥当な方向だったのじゃないかというふうな認識をあえて持つわけであります。この状態に踏み切られました総理及び外務大臣のまさに決断については、私は十分に評価をするわけでございますが、しかし、同時にやはり気にかかりますことは、藤尾委員質問の中にもいろいろあったわけでありますけれども、いわゆる日中国交正常化がもうちょっとうまくいかなかったかなという感じがいたします。  具体的に申しますと、まさに米中関係日中関係というものはよく対比されておるわけでありますけれども、少なくとも日中国交正常化のきっかけをつくったのがニクソンの突然の訪中であったわけでありますが、結果として、あとからスタートした日本がむしろ米中関係を先に越してしまった。端的にいいますと、現段階におきましても、ワシントンにはいわゆる二つの中国の事務所があるわけであります。そして東京には、いまも藤尾委員の御質問の中にも、大使館をどうなんだという議論がありましたように、一つの事務所しか認めないような状況になっておる。  そこで、私はまず外務当局に承りたいわけでありますが、このような形で米中関係の改善と日中国交正常化が変わってきた、変わらざるを得なかった本質的な、また現実的な条件というものは一体何だったのかということについて、これはいろいろなところで御説明があったと思いますけれども、あらためてひとつこの際承っておきたいと思います。
  133. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 問題が米国と日本との差異という点に最初触れられていたようでございますが、これはやはり、アメリカの国際的な立場、力関係というものと、日本立場、力関係というものはおのずから異なりますので、でき上がっていくいろいろな姿というものは、国際関係の結び方というものは、中国との関係におきましても異なってくるのはやむを得ない、日本日本立場で、これでいいという方向で行かなければならなかった。  日本のほうの立場からいいますと、日中間のこの長い歴史にかんがみましても、中国民族と日本人というものがお互いに友好関係をつくっていかなければならないという大きな運命を持っておると思うのでございますが、ちょうど昨年の時点におきまして、日本の国内の多くの意見も、また国際環境からも、日中関係の過去の不幸な状態を正常な状態に戻して一つの友好関係をつくっていこうという決断に入ったということでございまして、付随的には、中国側のいろいろな国内事情なり、それを取り巻く国際環境というものも、もちろんあったと思いますが、大筋といたしましては、日中間の大きなパイプをつけなければならないという、ある意味では、日本が終戦後におきましても一貫して考えておりました一つ方針がようやく実現したという姿になったのではなかろうか。  日中間関係というのは、アメリカとまた違った意味で、非常に中国民族と日本人というものは密接な関係がございますし、また、それだけに台湾の問題というのは、以前は日本領土であった、しかし日本の敗戦によってその領土権を放棄した、それで中国のほうにああいう事態が起こったということからくる、一般的な従来の国際法の形を逸脱したような、しかし、なまなましい現実の国際関係というものがそこにあったという姿を踏まえて、私たちとしては、ちょうどいい時期にああいう方法でやったことが、大きな政治的決断であり、日本外交としては正しい方向であった、かように私は考える次第でございます。
  134. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 最初に日本とアメリカの力の違いが、アメリカは言ってみれば二つの事務所をワシントンに残すことを可能にしたし、日本の場合には一つに限定せざるを得なかった、選択せざるを得なかった、こういうふうに理解される御発言があったようでありますが、現実にそういう日本とアメリカの力の違いだったわけでございますか。
  135. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 これは簡単に力というふうな言い方をしましたので、はっきりしなかったのでございますが、やはり立場なり国際関係におけるアメリカの行動なり責任なり、そういったものと日本のそれとは、やはりその歴史的な、また現実的な姿において違っておるという点を申し上げたかったわけでございます。
  136. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 力にこだわるわけではございませんが、私はこれからの日本外交というものを進めていく場合に、これは非常に基本的なことでもあると思いますので、あえて繰り返してお聞きするわけでありますけれども、まさに力というのは、経済的な力もありますし、軍事的な力もある。それ以外にいろいろな力もあり得ると思いますけれども、したがいまして、これから日本日本の国益を進めていくために有効なうしろだてとしての力というのは、経済的な力という点に限って考えれば、よくいわれますように、日本は自由世界二番目のGNPを擁しているということでありますので、これでなおかつ不十分であるのかどうか。しからば、それ以外にかりに力というものを考えるとすれば、それは軍事力ということも一つ考えられますけれども、そうしますと、日本のこれからの外交を進めていく場合に、これも国民の要望をにない、国益を追求していくために、そういう意味の軍事的な力ということも考えられるわけでありますけれども、そういうことをあわせて考えてみて、こういうことを言ってはあれですが、日本の場合には中国から、アメリカよりはいささか——あえて私、申しますが、軽く見られている、扱いやすいと見られている、そういうことがいまのような状態をもたらしたというふうに考えていいのかどうか、承りたいと思います。
  137. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 私は、先方が日本の力をどう評価して、これをくみしやすしと見たかどうかということは、必ずしも先方がどう考えているか、正確にはわかりませんけれども、これは先生御高承のとおりに、私、先ほどちょっと力と申しましたけれども、経済力とか政治力とか、あるいはそれぞれの持っておる国際的な約束とか、国際関係におけるいわば立場、これには軍事面から経済面に及ぶいろいろな要素が複雑にかみ合っておりますから、簡単には分析できませんけれども、結局、それぞれの国の国益と外交方針と、これがその国家なり民族にとって一番正しい方向であるという姿になったときに、もちろん相手のあることでございますから、その相手との話し合いにおいてある種の合意に達していくというのが国際政治における現実の姿であろうというふうに思いますので、ある国が一つの方向をとったということが、必ずしもそのまま日本もそうなったのではないか、あるいはそうやるべきであるというふうにも断定できない面があるという点を申し上げたかったわけでございます。
  138. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 日本中国戦争をしたこと、そしてその後日華平和条約が台湾にある政府との間に結ばれたこと、このことが日中関係と米中関係のいまの妥結の形に大きな差異をもたらしたというふうにお考えになっていらっしゃるかどうか。
  139. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 それも一つの大きな要素であったと理解いたしております。
  140. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 私はこの問題にはあまり長くこだわる気はありませんけれども、やはり私は、日本の力という点で、経済的な力は、まさに多いにこしたことはないかもしれませんけれども、対外的に評価される形の力は十分であるというふうに考えるわけであります。軍事的な力がいままで十分であるかどうかという点につきましては、これはいろいろな議論の分かれるところでありますけれども、しかし同時に、あえて私はもう一つ、その力の中に、交渉力とか、かけ引き力だとか、そういう外交力、そういったものも、これは重要な国際関係を進めていくための要素であるわけだと思うわけであります。けれども、あえて外務省の幹部の方々に言わせていただきますけれども、もう少し、この問題につきましては十分な御配慮があってよかったんではないかという感じを、私、率直にいって持っておりますので、この点について、ひとつ私の意見を述べさせていただいて、次の質問にまいりたいと思います。  そこで、いよいよ総理訪米も間近いわけでありますけれども、私は今度の総理訪米をいろいろ過去の例と比較して考えてみますと、これまでの総理訪米の場合には、日米間の交渉の中で、まさにギブ・アンド・テークという形のお互いの国益のバランスみたいなものが考えられたと思うわけであります。一番端的なのは佐藤前総理の沖繩返還交渉でありますけれども、その場合に、沖繩の返還をアメリカに要求すると同時に、これはいろいろ世上伝えられるところでありますけれども、繊維について日本として一つのギブをしなければならなかった、こういうことだと思うわけであります。また、日米関係に限定しないで、たとえば今度総理訪ソされる場合を考えてみましても、これは田中総理もいろいろな場合にたびたび御表明になっていらっしゃいますけれども、北方領土の問題が片方にあって、それに対してチュメニその他のシベリア開発、経済協力ということもわがほうのギブとして考えられる。そういう意味で、ギブ・アンド・テークというものが比較的簡単な方程式でわかる形に考えられるわけでありますけれども、この訪米に関して考えてみますと、必ずしもギブ・アンド・テークという形で明確な国益のバランスみたいなものが考えられない。あえていえば、わがほうはテークのほうはあまりなくて、たとえば経済協力とかその他いろいろな形で伝えられておりますような、対米ギブのほうがあえてあるとすればある、こういうふうに考えられるわけでありますが、この点に関しまして、ひとつ政務次官、この時期に総理が訪米されてニクソンと話される場合、非常に端的にいって、ギブ・アンド・テークという形で問題を考えた場合に、何が今回のギブでありテークであるかについて御意見を承りたいと思います。
  141. 水野清

    水野政府委員 今回の田中総理の訪米については、私は、これまでの日米関係と違った段階に来ているというふうに、まず認識をしております。  昨年、田中内閣ができて以来の三つの国際的な事件があったと思いますが、その一つは、先ほど来御論議のあった日中の国交正常化の問題であります。第二は、ニクソン大統領が再度大統領に当選をして、その任期に入っているということでございます。それから第三の問題は、アジアで長い間問題となってきて、日本においても直接間接にいろいろな影響のあったベトナム戦争が終息した、このことであります。この三つの事件がちょうど昨年田中総理がホノルルで日米会談をやられて以来起こったことでありますが、こういうことを踏まえて田中総理大平外相は渡米をされる、そしてニクソン大統領と話し合うことは、私は、何を与えるとか何をもらってくるとか——もちろん、農産物の自由化の問題とか、あるいは逆に日本で必要とする農産物を確保しなくちゃいかぬとか、そういう問題もあろうかと思いますが、私は、世界政治という段階において、今日までも、イコールパートナーであるとか、いろいろな意味で、ことばの意味では対等であるような論議がされてまいりましたけれども、今日の日本の国力において、もちろん軍事的な意味は除いてでございますが、対等な意味で話し合ってこられる、最初のといいますか、初めてこういう日米会談をすることができる国際環境になったというふうに考えております。  そういうわけでありますから、私は、何を与えるとか、何をもらってくるかという以上の論議がなされるであろうということを予測をしております。たとえば国際的な問題としては、御承知のようにキッシンジャー構想というものが発表されております。これも必ずしも、自由社会、自由諸国の足並み、考え方というものはそろっておりませんけれども、とにかく自由諸国、アメリカと日本とヨーロッパ、この三極がどういうふうに足並みをそろえて、もちろん軍事的な意味は日本は参加することはできませんが、それ以外の問題では、たとえば資源確保の問題にしましても、公害の問題にしましても、あるいは緊張緩和後の国際的なワク組みの問題にしましても、私は対等に話しておいでになることが重要だと思っておりますし、そういう立場で今回の日米会談が行なわれるというふうに聞いております。また、そうすることが、次に、この秋に予定されております総理外務大臣の訪欧、さらにその次に予定をされております訪ソ基礎固めにもなるのではないかと、こういうふうに考えております。
  142. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 まさにいま政務次官から御説明があったと思うわけでありますが、私も日米関係の経済面に限って考えてみますと、一ころは、日米間の国際収支のアンバランス、日本の大幅な黒字ということが解決を迫られる最大の問題であった。しかし、幸いいろいろな政策が功を奏しまして、その問題は従来のような緊迫度がなくなってきているわけだと思います。また、新たな問題として最近騒がれました大豆の問題等にいたしましても、これは国民生活にとって大きな問題でありますけれども、しかしこれも、事務的に詰めていけば解決する問題ではないかというふうに私は思います。あえて経済的な問題として大きな問題をあげれば、最近はよくいわれております石油とか資源の問題になると思いますけれども、これも確かに重要な問題でありますが、私はこの日米関係というのは、まさに経済的なそういう利害の対立——これは私は今後とも、それぞれの経済がそれぞれの目的を持って動くわけでありますから、完全に一致することはあり得ないので、常に経済的な対立というものは、程度の差こそあれ起こると思います。しかし、もはやそういう段階ではなしに、いまの政務次官お話の中にありましたように、日米関係というものは、いわば脱経済問題ということで、経済以外の問題に入っていかなければならない。だとすると、日米関係で話し合われるところのその経済以外の問題というのは具体的に何だというふうにお考えになりますか。
  143. 水野清

    水野政府委員 先ほど私がことばで落としましたが、日米会談、これは今日までもそうでありましたし、今後も自民党の内閣が続く限りはそうだと思っておりますが、まず日米間の信頼であろうと思います。その裏づけは、御承知のように日米安保条約というものが現存することであります。日米安保条約というものが、先ほど申し上げたように、ベトナムの停戦以後の極東の軍事情勢、国際情勢というものが変化をしておりますけれども、なおかつこれが重大であり、日米間の関係の象徴であろうと思うだけに、まず私はこのことがきわめて重要なことであろうと思います。  さらに、国際的なアメリカの政治、たとえばヨーロッパに対する、東南アジアの諸国に対する、あるいは中国、ソビエトに対するアメリカの考え方というものをよくたたいてくるということも、私はきわめて大事なことであろうと思います。そのほかに私は、これも経済問題の中に入ってまいりますけれども、たとえば資源確保の問題というのは、今日、石油資源その他のエネルギー問題については、単に経済問題にとどまらず、むしろ政治問題に発展しようとしておるだけに、この辺も考え方は、きちんとお互いの考え方を遺憾なく話し合ってくるということがきわめて重要なことではないか、こう思っております。
  144. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 政務次官のおっしゃることもたいへん私はよくわかりますが、最近の日米経済関係閣僚会議、これは、これまでたびたび日米経済閣僚会議がワシントンと東京で交互に行なわれましたけれども、率直にいって一ころの熱意両国間にない。特にアメリカの側にない。これはいろいろなニクソン政権の国内事情もあると思いますけれども、今度訪日をされましたアメリカの経済閣僚の数も非常に少なかった、代理がほとんどであったということも事実なわけであります。言いかえますと、私は非常にこのことが象徴的な事柄のように思うわけでありますけれども、まさに日米間がいわゆる経済問題に限ってお互いに言い合い、やり合いをする時代ではだんだんなくなってきたのではないか。むしろ、やはり人間の関係もそうですけれども、初期の段階においては、友人と二人でよく話し合うことでお互いを知り合うわけでありますが、それを一歩進んで個人間のいわば連携をとることにつとめようとすれば、それはお互いに話し合うことではなしに、共通の目的に向かって両者が具体的に努力をすることである、働きかけることである、かように私は考えるわけです。その形の中で、共通の目的に向かって動く中で、いわばもう一回友人なら友人関係のお互いの相互理解もなされる、こういう段階に入っておるのではないか、かように考えるわけであります。  ですから、これはすでにいろいろ議論されておることでありますけれども、日米が協力をしながらアジア太平洋地域の経済発展に経済的な協力、資金援助をするということは、私はまさに正しいことだと思います。同時に私は、いま政務次官から、日米安保体制は大事だ、これをお互い確認するのだ、こういう話もございましたけれども、いわゆる日米だけの安全保障という形で日米安全保障体制というものをお互い確認し合うというようなことから、これからは少し一歩も二歩も出ていかなければならないのではないか。私はあえて、経済以外に日米間でこれから本気で話し合わなければならないものは何かということをお聞きしたわけでありますが、これから日米が経済以外の分野で本気で話し合わなければならないことは、まさに日本だけではなしに、日本を中心とした周辺地域、もっと大きくはアジア太平洋地域の平和であり安全保障の問題ではないかと思うわけでありますが、政務次官いかがでございますか。
  145. 水野清

    水野政府委員 質問の御趣旨でわからないところがありますが、アジア太平洋地域の安全保障ということは日本の望むところでありますけれども、御承知のように、日本国憲法の範囲においてこれを考えていかなければならない。海外出兵はできない、あるいは日米安保条約のように非常に片務的な形でしか相互防衛条約——相互ではないわけでありますから、防衛条約というような形のものができないわけであります。そういう初めから限定された条件の中で、私は、日米安保条約というものは、それだからこそきわめて重大な意味を持っている。ヨーロッパのようなNATO協定のようなものをアジア考えようとしましても、これは今日はなかなか現実には非常にむずかしいわけであります。たとえばソビエトがアジア安保構想というものを提言をしておりますけれども、現実にはなかなかむずかしい情勢は御承知のとおりでございます。そういう中でこそ私は、日米安全条約というものをいろいろな意味で、単に軍事的な意味だけでなくて、もう一度見直すという時期が来ているのではないか、それがまたきわめて重要なことではないか、こう思っているわけであります。
  146. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 まさに、いま政務次官のおっしゃいました日米安保条約の持つ限定性といったものについて、私も理解をしているつもりでございますけれども、問題は、日米安保条約というものも、あくまでもこれは、アメリカと、そして日本の国益に即するからこそ維持すべき問題であり、もしもいまの日米安保体制の形が日本の国益に合わない、アメリカの国益に合わない、たとえば日米共同によってアジア、少なくとも日本の周辺地域の安全保障に対して責任を持つということ、これがこれからの日本の新しい国益なんだ、広い意味の国益なんだというふうに理解をするとすれば、私はそれを非常にかたくなに制約をしているような日米安保条約体制というものについて、それをいつまでも固持する必要はこれからはないのではないかというふうに考えるわけでございますが、いかがでございますか。
  147. 水野清

    水野政府委員 いま近藤先生と私の議論の中で、安全保障という問題と、安定というようなことばと、やや混雑して議論をしているようでございます。安全保障ということになりますと、これは軍事的な意味がきわめて強くなります。その意味では私は、日米安保条約がいかように不自由であっても、このワクを出ることはできない。これは日本国憲法改正すれば別であります。御承知のとおり憲法改正をしなければできないわけであります。しかし、アジア全体の平和である、安定である、繁栄である、こういうことは私はまた別であろうと思います。何も軍隊を持っていってどうするという、そういう考え方でなくて、アジアの発展途上国の経済的な発展をさらにてこ入れしてあげる、あるいはアジアの発展途上国が日本と一対一でなくて、二国間でなくて多国間のそういう機構を考えていく、そういうことならば、私はこれから大いにやっていくべきことだろうと思います。しかし、安全保障ということになりますと、これはちょっと簡単にはできない——簡単にはということでなく、全くできないというふうに考えざるを得ないわけであります。
  148. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 繰り返して申しますように、私は日本のこれからの新しい国益を確保する道が、単に経済分野だけじゃなしに、政治及び安全保障の面におけるアジアの責任をあえて分担することであると思います。分担ということばはいろいろな誤解がありまして、アメリカが考えておるような、アジアの平和、安全保障のいわば下請を日本がする、こういうような形で世上よくいわれておりますけれども、ですから私は、そういう意味で分担ということばが正しいかどうかわからないのですが、むしろ積極的に日本の独自の判断で果たす、こういうことでなければならない。とすると、いまのような体制がいいかどうかいろいろ検討をしなければならない時期に来ていると思います。  そこで、二、三具体的に、きょうは防衛局長もお呼びしておりますけれども日米安保条約体制について私かねてから考えております疑点を述べさせていただきたいと思うわけでありますけれども、まず第一点として、日本の最終的な安全保障というものがアメリカの核のかさによって担保されている、こういう体制であるといたしますと、先ほどもちょっと触れましたこれからのいろんな日米間の経済問題につきましても、たとえば通貨だとか、また繊維でも農産物でもけっこうですし、また資源でもそうですけれども、日米間のいろんな意見の対立がこれから起こった場合に、最終的に日本の生存はアメリカによって守られるんだというそういう状態であるとしますと、結局、経済的にいろんな交渉をやりましても、最後の段階でやはりこれはアメリカの言うなりにならなければならぬのじゃないか、こういうことで、日本の経済的な国益の完全な追求ということが最後の段階で滞ってしまうというような危惧を私は持たざるを得ない。実際問題として、日本が最後まで言い切ったとしても、そういう体制でありますので、一般日本国民は、結局アメリカの安保体制の中に日本があるからどうも言いたいことを言っていないんだというようなことで、日本政府の対米交渉に対して大きな疑いを持つ、不信感を持つ、こういうことも現実に起こっているし、またこれからも起こるのではないか、私はかように考えますが、その点についても御所見を承りたいと思います。
  149. 水野清

    水野政府委員 ちょっと先生の御質問に対してそのままのお答えになるかどうかわかりませんが、いまアジア緊張緩和が行なわれている、緊張緩和状態が非常に進んできた、特にベトナム停戦後は非常に緊張緩和された、こういっておりますけれども、私はこれは、まあ二つの極が緊張緩和するということは、お互いに武装を少しずつ減らすということでもあるわけでありますけれども、そういう意味でも、われわれのうしろに日米安保条約があって、アメリカという一つの大きな存在があるということが、緊張緩和の中においても日本の安全保障が安心していられるということが一つであり、また同時に、日米安保体制があるから私は緊張緩和というものが進んできたんだと思います。これは、アジアだけでなくてヨーロッパでもそうでありますが、緊張緩和をするということは、東西の両陣営がお互いに兵力を減らすとか、あるいは核兵器の使用を制限していくとか、そういった形でお互いにそれを減らしていくから緊張緩和されるわけであります。決して、一方的にどちらかが突然武装解除をするから、これで緊張緩和するということではなく、むしろそこには新しい戦争のようなものが起こる可能性があることは、先生も御承知のとおりであります。  私はそういう意味で、日米安保体制というものを再認識するといいますか、見直す必要があるということは、さっき申し上げたとおりであります。しかし、日米安保体制、安保条約があるから何かアメリカに言いたいことが言えない——よく世上にはそういう議論もありますが、私もある時期に、若いころにはそういう考え方を持って政治というものを見た時代もありましたけれども、私は現実には必ずしもそうではないというふうに確信をしております。
  150. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 私もある段階まではそうだと思うのです。しかし、これは、ぎりぎりにまいりますと、やはり最後は、これは私は、アメリカの政治家とか国務省の役人なり、また学者なんかともたびたび議論をいたしますが、そんなことは絶対ないと言うのです。安保条約があって日本を守ってやっているから、最後はこれはおどかしをかけて日本を経済的な交渉でもねじ込んでしまうなんということは絶対ない、こう言うのですが、しかしそれは、まあ最後になっておどかすぞということはだれも言えないだけでありますから、やはり最後のどたんばになると、これはもうこっちとしても言い切れなくなるような状況も起こり得るのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、再度御答弁をお願いいたしたいと思います。
  151. 水野清

    水野政府委員 先生のおっしゃりたいことはわかりますが、ただ、現行憲法の中で日本の安全保障というものを考えなければいけないという大前提は、ひとつお認めいただきたいと思います。そういう意味で私は、日米安保条約というものを見直していきたいというふうに申し上げたわけで、たとえば防衛と経済問題というのは、これは別にリンクをしていない、別であるということを考えております。これは日米安保条約というのは、日本ばかりが得をするというふうにいわれている面もありますし、逆にいうと、アメリカばかりが得をしているという面もありますが、私はその両方であると思います。日米安保条約によって極東の平和と安定というものが行なわれていることは、アメリカにとっても利益であるというふうに考えて、私のお答えは御質問にちょっと答え得ないかと思いますが、この委員会における先生に対する答えはこれで御容赦をいただきたいと思います。
  152. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 あと二、三点、ちょっと安保条約について御質問をしたいのですが、先日も前の駐日アメリカ大使のライシャワー教授が参りましていろいろ話をしたのですけれども、そのときも、突き詰めていえば安保体制は核のかさである、こういうことを彼も言うわけでありますけれども、それを核のかさだとしますと、ほんとうに大事なときにアメリカはその核の引き金を引いてくれるだろうかという問題もあるわけです。これはよくいわれるフランスのドゴールの単独核武装の理論にもつながることでもありますけれども、私はやはりこの点につきましても、アメリカの大統領はまず第一義的にアメリカの国家の安全保障に最高の責任を有するわけでありますから、決して日本国民を守るためにアメリカの大統領に選ばれたわけではない。ですから、やはりそういう問題が一つあるし、よしんばアメリカは最後の段階で核の引き金を引いたとしても、少なくとも日本に対して侵略を企てる国の側が、そんなことを言ったってアメリカは、日本のためにアメリカを核戦争の中に巻き込むなんていう決意はない、そんなばかなことはしないぞというふうに誤解すれば、それだけその限度において、第三国の日本に対する侵略の危険度は高まってあるわけでありますけれども、その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  153. 水野清

    水野政府委員 日米安保条約があって、その中で、一つの問題ですが、アメリカの核のかさに入っている、しかしアメリカが引き金を引いてくれるかどうかわからぬじゃないか、そういう議論があることも承知をしております。しかしアメリカは、この日米安保条約については、これまで何度もそれについては日本にコミットメントを与えております。まずこれが一つでございますが、なおかつそういう御疑念があれば——これは決して政府にあるということじゃない、社会的にあれば、それだからこそ私は、今回の日米会談というものが、対等な意味においてアジアあるいは太平洋地域政治を論じ、そこで日米安保条約も見直して日米の友情というものをしっかりと押えていくということは必要なことではないかと思うわけであります。
  154. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 第三点として、私は、いまの安保体制に対して疑義を持っておりますことは、防衛局長もいらっしゃいますが、いまの安保体制というものは、言ってみれば、日本が第三国から侵略を受けた場合に、自動的にアメリカを巻き込むような形になっていると思うのです。それがアメリカの核のかさであるかもしれませんし、いわゆるアメリカの第七艦隊の援護という形もあるのでありますけれども、かりにそういった不幸な状態が起こった場合に、最初の段階からアメリカの軍事力を日本と第三国との軍事的な紛争に巻き込ませることが正しいかどうか、問題だと私は思うのであります。それは先ほど申しましたように、そういう形でアメリカが、第七艦隊であれ核のかさであれ、入ってくることによって、たとえば具体的な場所をあげますが、北海道なら北海道で起こった戦闘が地域的にエスカレートしてくる、単に二国間の日本と第三国の争いじゃなしに、アメリカを巻き込むことによって、地域的にも国際的にも、また兵器的にもエスカレートの道をたどる危険がある。そして場合によっては、戦争が長引くだけじゃなしに、また日本の全土を戦争に巻き込んでしまう、そういう危険すらあるのではないか、かように私は考えるわけであります。ですから、最初からアメリカを入れることは問題であって、私は、日本と第三国の間に戦争状態が起こった場合に、むしろアメリカを強力な調停者として、いわば和平交渉の話しかけをする、呼びかけをする、そういう役割りを期待すべき面もあっていいのではないかというふうに考えるわけであります。これは具体的に国の名前をあげて問題があるかもしれませんが、たとえば、端的に言ってソ連が侵略をしてきたような場合に、ソ連に対して強力な話し合いで仲介する役をとり得る国というのはアメリカしかないわけでありますから、そこで安保体制が、ぶつかった、はいソ連が攻めてきた、すぐそれにアメリカが入るという形でなしに、場合によっては、ある一定期間はアメリカを介入させないでおいて、むしろしかるべきタイミングを見てアメリカが入ってきて、日ソの間に立って、そういうつまらないことはやめろという形で調停をさせることのほうが日本の国益に合うのではないか。場合によっては、国の名前をあげて問題かもしれませんが、それこそ中共に、さらにまた別の側からの調停者といいますか、場合によっては、ある程度の役割りを期待するということも考えていい。  そういう点から考えますと、安保条約に戻りますが、いまの安保条約が、日本が攻め込まれた場合に、自動的にアメリカ軍の作戦開始が行なわれるというようなのを前提としているように私は考えますけれども、この点についてはいささか問題ではないかというふうに考えますが、いかがでございますか。
  155. 水野清

    水野政府委員 われわれは外国へ兵隊を出したりなんかすることはできないわけでありますが、日本の国土が寸土でもどこかの国に侵される、あるいは内乱を起こさせられるというようなことは、これはもう考えることもおそろしいことでありますし、そういう事態が起こればたいへんなことであります。私は、日米安保条約というものは、そういうような事態も起こらないためのともかく抑止力なんだ、そのためにあるのだというふうにお考えいただくことが大事じゃないかと思います。日本のほうでもしその存在を疑うようなことになれば、これは相互信頼でありますから、条約に盛り込まれていること以上の信頼関係という精神的な信頼というものが大事でございますから、その意味において、むしろ日米安保条約の意味が薄れていく。私は、そういうふうに考えないで、ともかく抑止力として非常に大事な存在なんだ、こういうふうにお考えをいただきたいわけであります。
  156. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 まさに政務次官のおっしゃることは非常に私もわかりますが、しかし同時に、戦争が起こったら安保条約で徹底的にやられるということもわかります。それが抑止力になるということもわかりますけれども、まさにアメリカの戦略思想の進展を見ましても、いわゆる核兵器によるところの大量報復戦略から変わってまいりまして、一種の柔軟即応戦略といいますか、初めから核と核がにらみ合っているということでは、これはほんとうにオール・オア・ナッシング、対決姿勢ですから、やはり場合によっては局地的な紛争も起こり得るし、またいわば戦術的な武器によるところの局地的な戦いということも考え、だんだんその状況に応じてエスカレートしていくという形までいくわけであります。ですから、日本の安保条約というものも、ここで起こればぱっとアメリカが出てきてやっつけられるから、したがって日本に対して侵略がないのだというふうにそういう形で考え切っていいものかどうか。逆に、まさに大量報復戦略が柔軟対応戦略に変わってきた、その議論の中をもう一回繰り返してみますと、そういう大戦争は起こらぬだろう、したがって局地的な侵略が可能になるというような形で、いわば核対核の大きな対決というものが逆に局地的な戦争というものを可能にした、危険性をふやしたというのと同じ意味で、私たち、日米安保体制がそういうオール・オア・ナッシング、一たん事が始まればすぐ日米共同なんだということじゃなしに、やはりある程度の段階的な対応ということも考えてしかるべきだと思うのですが、再度その点について御意見を承りたいと思います。
  157. 水野清

    水野政府委員 先ほどから同じことを申し上げるようでございますが、ともかく、われわれの国土が寸土も侵されたり、あるいは内乱状態になつたりすることを押えなければいけない。そのために日本の防衛力というものは国内問題であるわけであります。同時に、それだけでなくて、あらゆる段階の抑止力という意味において、核戦争に至るまでの抑止力もありましょうし、あるいは間接侵略、あるいは直接侵略ということに対する抑止力も含めて日米安保条約というものを私どもは見直していかなければいけないのじゃないか、こういうふうに私は確信をしております。
  158. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 まさに政務次官のおっしゃっておられますことは、私たちが安保条約に対して従来理解をしておることでございますけれども、ただいま私が申し上げましたような三点について考えてまいりましても、私は、日米安保条約があって、それだけでいいのだというようなことにやはり全面的に信じ切ってしまうわけにいかないのではないか、これはやはりいろいろな意味で議論の分かれることだと思うわけであります。ですから、私が申し上げたいことは、従来のような日米安保体制を絶対化するような発想ではなしに——私は決してここで日米安保条約がだめであるということを申し上げているのではないのであって、日米安保条約も大事であります。しかも政務次官の御説明の中にもございましたように、この日米安保条約がまさにその目的どおり機能するためにも日米間の友好関係が大事であり、そしてまさに田中総理ニクソン大統領の首脳会談に見られるような、最高レベルにおけるところの意思の疎通が大事だ、かように考えるわけであります。しかし同時に、先ほど申しましたように、国内的な考慮を考えてみましても、日米安保条約というものがオールマイティーではない、これがすべてではないのである、やはりある程度限定性というものをこれからの日本国民考えながら、あくまでもこれは相対的なものだということを考えながら日本の安全保障政策を進める時期にそろそろ来ているのではないかと考えますが、政務次官いかがですか。
  159. 水野清

    水野政府委員 先ほど来、先生からいろいろ傾聴すべき御意見をいただきました。私も、いろいろな印刷物その他で、そういう御意見もあり傾聴すべきであるということは存じております。しかし、御承知のように、先ほど来何べんも申し上げてお耳ざわりだと思いますが、日本国憲法の範囲内で、そしてそれに許される日米安保条約の範囲内で私ども日本の安全保障というものを考えていかざるを得ない、こういう現実もまた非常に重要なことでございます。同時に、先ほど来申し上げましたことにさらに加えて言わせていただくならば、私はやはり、国民の全体が、よく例にいわれるように、欧州の中立国あたりであるように、国を守る気概というものをしっかりと持っていくということもまた非常に必要ではないか。日米安保条約にたよっているからいいのだというだけではなくて、自分たちで自分の国を守るのだ、寸土も他国の侵略を許さないという気持ちが大事じゃないか、私はこう思っております。
  160. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 まさにいま政務次官お話にもあったわけでありますけれども、単に法律的な体制の問題じゃなしに、日本の国を守る気概を一人一人国民が持つということが私は大事だと考えるわけでありますが、繰り返しになるかもしれませんが、やはり安保体制というものがあるために、一つ日本の精神的な独立性が少なくとも心情的にそこなわれているような面が非常にある。私は繰り返し申しますが、決して安保体制を破棄してしまえ、そして、日本の精神的独立を達成するために全面的に日本は単独武装を核武装を含めてしてしまうのだ、この点において憲法改正してしまうのだ、そういうことを申し上げておるわけではないのですけれども、しかし、安保体制によってアメリカにもたれかかっているという、そういう心情にいつまでもわれわれは浸っているわけにいかなくなってくるのではないかということであります。そして、そういうものから一歩越えていかない限り、繰り返し申しますように、これから日米関係でどんな議論をしてまいっても、結局は日本という国は自分のことしか考えない国である、そういうことにも逆になってしまう。経済的なことになるとすぐ飛んできて、肩をいからせて、また目を輝かせて話をしてくるのだけれども、事それ以外の問題になってくると、まさに貝のごとく口を閉じてしまって話をしてこない、そういうことだとしますと、いわゆる国際社会の中において日本の持つ役割り、ウエートというものがどうしても中途半ぱなものになってきてしまうのではないかというふうに考えるわけであります。  そこで私は、海外派兵の問題につきましても、いろいろ御指摘がございましたけれども、いまの日本国憲法ほんとうにどの程度法律的に禁じられているものか、それとも解釈でいくものかについて、やはりもうちょっと議論をしなければならないと思いますし、さらにいわゆる報復力につきましても、いまのように、日本は攻めてくる場合には受けるが、しかし向こうの基地をたたくわけにいかないというような形、これが憲法に認められた自衛力なんだという解釈、これについても、私はもう一回法理論的にもいろいろ考えてみなければならない時期に来ているというふうに考えているわけでありますけれども、しかし、その議論はさておいても、少なくともやはり、これからのアジア・太平洋の安全保障体制というものに日本が責任を持つのだという基本的な政策を立てて、そして具体的に日本の自衛隊が海外派兵をするということがなくても、少なくともアジアの安全保障体制というものをきめる適当な場を考えて、その中において日本が影響力を持って発言をするくらいのことは漸次考えていってしかるべきではないか。  例が必ずしもいいかどうかわかりませんが、たとえばヨーロッパの安全保障を保つ方策としてNATOがあるわけでありますが、NATOの司令部には各国の参謀が集まって、そこで議論をしている。同じような形でアジア太平洋の安全保障というものを、これからアメリカを中心にしてアジア・太平洋の国が集まって議論をするような場に、日本は、現実に自衛隊の海外派兵ということはなしにしても、少なくとも戦術、戦略の面で総合的なアジア・太平洋の安全保障政策に積極的に加担する日本としての立場表明するし、また、その中で日本の国益を守るというような、そういうことがこれからはあってしかるべきだと思うわけでありますが、ひとつ政務次官並びに防衛局長の御意見を承りたいと思います。
  161. 水野清

    水野政府委員 非常に傾聴すべき御意見をいただきましたけれども、なかなかアジア全体の安全保障を日本考える——安全保障ということばの中には軍事力という意味が入ってまいります。これはなかなか簡単には私は踏み切れる問題じゃないと思います。  さらにもう一つ申し上げたいことは、ヨーロッパにおいては、同じ国民所得、同じような生活水準、同じような歴史を持った国家群があって、その間において初めて同じ立場でNATO条約というようなものができ上がっておりますが、アジアにおいては、日本のみが非常に近代国家として経済成長はしておりますけれども、そのほかの国は非常に経済的にも政治的にも発展途上にあるわけであります。それだけに、ヨーロッパのような形で、もしできたとしましても、多国間条約、多国間の安全保障ということを考えることもむずかしかろう。しかし、これすらも私は、いまの日本憲法その他の諸法律では踏み切れない大きな壁があることを御了解をいただきたいと思います。
  162. 久保卓也

    ○久保政府委員 日本アジアの安定に寄与すべきであるということは論ずるまでもないことでありまして、ただその場合に、日本政府立場は、軍事的な面での寄与はできないということで終始をしているわけであります。しかしながら、アジア政府の首脳部の中には、アジアの諸国が軍事的な立場でどういうことをやり合うべきであるかという提案をしておられる人もあります。また、私どもが白紙で考えるならば、日本憲法ワクの中で軍事的に何をなし得るかということは考えることはできます。しかし、現実にどれをどうするかという問題は、これはやはり政治の問題でありまして、政府なり国会なりでおきめいただけば、その範囲内でわれわれがするということでしかないのでありまして、政府委員立場から提案申し上げるようなものはございません。
  163. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 その軍事的という意味ですけれども、それはまさに軍事的な、はっきりいって兵隊とか軍艦とか、そういう形ではできないにしても、たとえば参謀スタッフとしてそういう知的な面で参画することも、憲法上といいますか、これもできないというふうに政府としては考えられるわけでありますか。
  164. 久保卓也

    ○久保政府委員 もちろん憲法ワクの中でやれることは幾つかございます。いま申されましたような軍事的な面で、外国の軍人あるいは日本の制服の人たちが集まっていろいろ討議をすることが憲法違反であるとは存じません。     〔委員長退席、藤尾委員長代理着席〕 ただ、日米安保体制のもとに、米国との協力関係以外は、一応外国と軍事的な協力をどのような面でもする立場にはないというのが政府方針でありまするので、こういう面は、何をどの程度やるべきか、十分に政治の場で御議論をいただいてわれわれに御指示いただけば幸いというか、そういうことは可能な問題であろうというふうに思います。
  165. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 私は、アジア太平洋地域の総合的な戦略というものをアメリカが立てて、そしてかりにアジア太平洋地域でそういう不幸な戦争状態が起こった場合に、アメリカがつくった戦略に基づいてアジア太平洋地域において具体的な戦闘活動が展開される、その中で日本の自衛隊は、まさにアメリカのアジア太平洋地域の戦略、戦術の中で日本の国土の安全保障、防衛を加担するというかっこうだけだとすると、私はまさに、これは非常に対米従属的な防衛戦術、戦略、作戦行動にならざるを得ないと思うわけであります。まさに、どこをどういう形で守るか、どの島を捨てるかというようなことについても、これはもうそれぞれの国の利害がぶつかってくるわけでありますから、そういう意味で、全体のことはアメリカにまかせます、日本憲法があり安保条約も備わっているから、日本のここしかありません、こういう体制はたいへん従属的であり、きついことばを使えば国辱的でもある。まさに左翼陣営が言っているような、従属的であり、いわば下請的な役割りしかになわないということにもなり得るわけであります。  やはり大事なことは、大もとをきめることに参加することだと思いますので、こういう問題について、憲法の問題があることも私は十分わかりますが、しかし、憲法解釈というものも、私はこれから社会情勢の進展に伴ってある程度流動的に解釈できると思いますし、ましていわんや安保条約というものは、これ自身は日本とアメリカの取りきめでありますから、この形式が絶対不変であるというような前提に立ってお話をされることも、特に首脳会談の場合には私は穏当ではないというふうに思うわけであります。むしろ、まさにそういう根本的な問題について、腹を割ってニクソン大統領と話をされることが、私は田中総理の日米首脳会談に臨まれる本来のあり方ではないか、かように考えるわけであります。  この首脳会談をめぐっていろいろな論評が新聞、テレビ、雑誌その他で行なわれております。従来の関係じゃなしに国際間の中の日米関係とか、いろいろな美しいことばがたくさん書かれておりますし、そういう御意図を政府の方々がお持ちだとも思いますけれども、しかし、何か一番大事なところを真剣に取り組んでいないという感じを、私はそういったいろいろな論評を読みながら、聞きながら、どうしても感じざるを得ない。  先日も日本に参りましたカリフォルニア大学の政治学教授であるスカラピーノさんも、もうやっぱり日本はそういうことを考えないと、何か国際社会の中でおとなのつき合いができなくなってくるのではないか、どうも何か大事なときはいつも日本を除外してやるというようなことで、ほんとう日本の国益のためになるのかなという話をしておりました。  伝えられるところによりますと、今度のワシントンの会談の中でも、さっきも政務次官お話があったのですが、いわゆるキッシンジャーかニクソンの構想か知りませんが、新大西洋憲章の加盟の問題についてもいろいろ話がある、こういうことでありましたけれども、たとえばこの新大西洋憲章に日本が加盟するということになりましても、当然この安全保障問題というものが、やっぱりお互いヨーロッパ諸国でやっているわけでありますから、その中に日本はどういうふうに入るのかということがある程度明確にならざるを得ない。  また今度は総理訪ソされてブレジネフと会う。ブレジネフはいわゆるアジア安保構想というものを持っているようでありますけれども、このアジア安保構想というものの内容はよくわかりません。わかりませんし、これは中国を追い出すためのアイデアだとかいろいろな議論がありますけれども、もしもこういった問題について日本が真剣に議論するということになるとしても、しからば具体的に安全保障をどうするのだ、日本はどこを受け持つのだ、日本は安保条約がございますからここしか受け持てませんという形の中で、かりにブレジネフのアジア安保構想というものに日本がある程度議論としてでも乗っかっていく場合、済むものかどうか。  ですから私は、やっぱりこういう問題を、先ほど防衛局長の話もあったわけでありますが、これは政府の分野ではないというような御意見もあるようであります。まさに私はこの問題については、われわれ政治家が与野党で本気で真剣に議論をしてみる必要がある。安保体制のいろいろな問題、また憲法解釈の問題、さらに進んで、いわゆる憲法というものはあくまでも日本国民のしあわせのための約束でありますから、したがって、そのために、現行の形の、現行の表現の憲法が万古不易、永久不変のものであるということも、私はない。要は、国民のしあわせのために、幸福のために、また繁栄のために変えるべきものは変えてしかるべきだ、かように私は考えるわけであります。  これは実は、政務次官出席でございますけれども、最初に申しましたように、できれば総理なり大平外務大臣に直接担当最高責任者としての御意見を承りたい、かように私は考えておったわけでございますけれども、訪米を控えられてのお忙しい時間でございますから、そのお時間もないということは私としても十分に了といたしますが、最初に申しましたように、ひとつこの問題を含めて、大平外務大臣御帰国のおりにはいろいろ御識見を承りたい、かように考えるわけであります。  最後に一つだけ御質問したいと思うわけでありますが、先日の例のハイジャックで、私たち国民は非常に、何十時間かちょっと忘れましたけれども、毎日毎日夜おそくまでテレビを見て、ほんとうにはらはらしておったわけでありますけれども、幸い乗客全員が無事に救出されまして、国民一人一人、大勢の国民すべてが非常に安堵の胸をなでおろしたわけであります。日本航空は貴重な飛行機を一機失ってしまったわけで、このことについては非常に残念でございますけれども、今度のハイジャックが起こった地域、いわゆるアラブ、中近東、あの地域というのは、率直にいって、これまであまり日本との関係もなかった地域でございますが、先般、中曽根通産大臣お見えになって、中近東とわが国との経済的その他の友好関係をこれから進めていこう、こういうことでございますし、さらに、いまの最大の問題の資源問題のまさに当事国でも地域でもあるわけでございます。そういうことも兼ねまして、政府としてこの問題について、現地の政府、また住民の皆さんその他にも、いろいろ心配をおかけをし御迷惑をおかけしたわけでございますので、何らかの形で感謝の気持ちをあらわしてしかるべきである、かように考えているわけでございますが、その点について政務次官の御意見を承りたいと思います。
  166. 水野清

    水野政府委員 このたびのハイジャック事件では、中近東諸国に、直接飛行機の着陸した国だけではなくて、直接、間接にいろいろと御迷惑をかけましたし、非常にそういう国々の御協力でともかく日航機が無事にベンガジに着きまして、乗員が非常に間一髪というような事件でありましたけれども、全員無事に生還をできたということは、対策本部を設置いたしましたが、新谷本部長以下私どもは非常に喜んでいるわけであります。そしてこの御迷惑をかけた国々に対して何か謝意を表明するような使節団を派遣をするかという御質問でございますが、これはぜひ派遣をしたいと思って検討しております。
  167. 近藤鉄雄

    ○近藤委員 これも大事な問題だと思いますので、われわれ国会の側も、全面的に政府のほうに御協力を申し上げたい、かように考えておりますので、十分な措置ををとられますことをお願いいたしまして、私の質問を終えたいと思います。ありがとうございました。
  168. 藤尾正行

    藤尾委員長代理 加藤陽三君。
  169. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 アジアに関する若干の重要な問題についてお尋ねをいたします。  まず第一に、北方領土の返還の問題及びシベリア開発の問題についていろいろ新聞等では報じておりますが、外務省で御承知になっておる事態を御説明願いたいと思います。
  170. 水野清

    水野政府委員 北方領土の返還問題は、これまでも政府がソビエト政府に対しまして、いろいろな機会を通じまして要求をし続けてきたわけでありますが、御承知のように、日本とソビエトとの間の平和条約がいまだ締結されないのは、問題点はこれだけが残っております。それ以外の、航空協定であるとか、経済貿易協定であるとか、こういった実務的な問題は全部解決がついておりまして、これは、一般のほかの国との関係ともいささか変わらないだけの実務的なものはでき上がっておりますが、平和条約というものには、先ほど午前中の日中間での論議にもありましたように、領土問題という問題が含まれております。この領土問題には、歯舞、色丹、択捉、国後という四島の帰属問題があるだけに、ソビエト政府も簡単に乗ってこない、こういうわけで締結されていないわけであります。しかし、政府としましては、今後もともかくねばり強くこの問題には取り組んでいくわけでありますし、当然この秋に予定されております田中総理訪ソの際にも、この問題は重要議題一つとして爼上に乗るであろうというふうに考えております。  シベリア開発の問題は、政府態度は、ソビエトは社会主義体制の国でありますから、国家か、あるいは国家に準ずる機関がそれを担当しておりますが、日本側は民間の企業がやっております。政府としては、ソビエトの当事者と日本の当事者間で、現実にいま、チュメニの油田の開発であるとか、ヤクーツクの天然ガスの開発とか、こういった問題の交渉が行なわれておりますが、両方の合意ができ上がったところで政府が、必要な金融措置であるとか、あるいは借款措置であるとか、こういったことについてめんどうを見ていきたい。両者の合意が先決であるというふうに考えております。
  171. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 領土問題がソビエトとの平和条約の一番の難点であるということはわかっておるのですが、昨年の一月にグロムイコ外務大臣が参りまして、平和条約交渉を始めようということを言うたわけですね。日本の国内事情というものはよく知っておると思うのです。知っておるにかかわらずああいう発言をしたということは、領土問題について一るの望みが持てるということじゃないのかと思いますが、その点が一つ。  もう一つは、シベリア開発について私が心配しておりますのは、日本だけ単独でシベリア開発に協力するのか、あるいはアメリカも加わってやるのか、巷間いろいろな話がありますけれども政府としてはどういう方針でやっておられるのか。この二つをお答えください。
  172. 水野清

    水野政府委員 グロムイコ外相が訪日したときの問題は、御承知のように、向こう側から平和条約の交渉をしたいという提案をしたわけでありますけれども、もちろん向こうも、領土問題が難関であると思っておりますから、何らかの希望的な観測も行なわれましたけれども、現実にはそういう提案というものはまだ行なわれておりません。ともかく領土問題というのは、ソビエトでも、単に政府レベルの話よりも、党レベルの話で問題を討議してもらわなければきまらないという政治機構は、先生も御承知のとおりであります。その意味で私は、ブレジネフと話し合える日本のいまの政治の責任者である田中総理訪ソに、この問題の期待をかけていく以外には方法がないというふうに思っております。  それから、シベリア開発にアメリカの参加を求める気はないのか、また求めることが必要ではないかという御質問はごもっともでありまして、日本側はこれまでにアメリカ側とこの話は何度かいたしております。アメリカの政府態度は、やはり日本政府のとっていることと似たような態度でありまして、政府自身がやることではない、アメリカの民間企業がこれに参加することに異議は差しはさまない、こういう態度をとっております。ですからこの問題は、もちろん民間企業の問題の背景には大きな政治の決断といいますか、庇護というものがあろうかと思いますけれども、やはり日本のシベリア開発の当事者である民間企業が、アメリカの民間企業と話し合いをして、その合意の上でソビエトの当事者と三者で話し合いをする、こういう方向が私は望ましかろう。政府間では、これまでアメリカの見解は何度かたたいてきた経過はございますけれども、絶えずアメリカは、異議を差しはさまないという表現で日本側に答えております。
  173. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 実情はわかりましたけれども、私は安全保障上の見地もあって、アメリカが参加しないで日本がシベリア開発をやるということに非常な疑問といいますか、心配を持っておるわけであります。でき得べくんばそういう形でおやりになるほうがいいんじゃないか。これは質問ではなしに意見でありますから、それはそれとして、新聞を見ておりまして心配になりますのは、松前さんがソ連へ行かれて伝言を受けたというのですが、今度、田中総理が訪問される際に、ソ連は、アジアの安全保障機構というもの、構想というものを打ち出して、これを中心といいますか、これを柱にして話をしようということのようでありますが、これは事実でありますか。
  174. 水野清

    水野政府委員 これは日本政府に対しては、まだ正式に来ているわけじゃございません。そうでございますから、具体的にソビエトのアジア安保構想というものについて政府が解説をするといいますか、コメントをするというのは、非常にむずかしいことでございますが、もしいろいろ伝えられるような内容であった場合にどうするかという仮定の上の議論を申し上げますと、やはりアジア集団安保をもし日本が認めるとしましても、その大前提は、やはり私は、日ソ平和条約締結がまず必要であろう、それがあって、ともかく日本もそれに入るか入らないかという議論をする立場になろう、これが第一であります。さらに、その段階でもう一つども考えなければいけないことは、アジアのすべての国が参加をできる。これは、このアジア安保構想が中華人民共和国を何となく敵視しているというようなふうに伝えられておりますが、もしそうであるとしても、中華人民共和国も含めて参加をできる体制であるということ。あるいはさらに、アジア地域の、これは先ほど日米安保条約議論にもありましたように、平和と安全に非常に深い関係を持っておりますアメリカの参加ということも、日本としては考えなければならないことでございます。同時に、この種類の新しい機構が、いま、たとえば申し上げましたが、日米安保条約のような二国間のいろいろな取りきめというものに矛盾しないという、この三つの大前提が含まれていなければ、なかなかこのアジア集団安保構想というものは現実の日の目を見ないのじゃないか。しかし、ソビエトがこういうものを提案してきたということは、ヨーロッパにおいても、ヨーロッパの全欧の集団安全保障という提案をしておりますから、私どもは、注意深く、特にヨーロッパのほうは比較的具体的でございますから、一つのパターンとして注目はしていきたい、こういうふうに思っております。
  175. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 私、松前さんの報道を読んで、非常に心配しているんですよ。まさかソ連と外務省の間で秘密裏に交渉があっているとは思いません。思いませんけれども、いきなりモスクワの首脳会談でああいうものがきまるということになりましたら、これはたいへんなことなんですね。そこで、若干いま詰めておきたいと思うのです。大体の原則は、いま水野さんがお話しになって、私も了解をするのですが、いままで公にせられておるソ連の構想というものを中心にして、若干皆さん方の御意見を承っておきたいと思います。  私の知っておる範囲では、相互不可侵だとか内政不干渉であるとかいうふうなことを言っておるようです。これはブレジネフの演説でも言っている。しかし、こんなことだったら、これは国連憲章に書いてあるとおりなんですね。国連憲章原則に何も反しない。何のためにアジア安保体制というものを言い出したのかという点に、私は非常に疑問を持つわけです。ことに、既存の条約体系というものを認めるのか認めないのかという点につきましても、ソ連は、既存の条約体系の上につくるんだというふうな言い方もしているように思う。中共は、そうじゃないんだ、いままでの条約関係というものは全部やめて、新しい構想でいくんだというふうな発言もしておるように思う。この辺が非常に大事なことだ。いまも政務次官がおっしゃったように、日米安保条約を認めた上でのアジア安保構想になるのかどうか、これが非常に基本的な問題なんですね。  もう一つ心配になりますのは、アメリカが入るのか入らぬのかということなんです。どうせ安全保障機構を考えます以上は、きれいごとじゃ済まぬわけなんですから、安全を保障するために必要な場合には力を用いるという保障がなければいかぬわけです。この保障を考えた場合に、いまアジアの国といわれている国を集めてみましても、ソ連一国に拮抗できるだけの力を持っている国はないですよ。全くへたをしますと、ソ連のためのアジア安保体制というものになりかねないと思う。その辺の点は、いままで公表せられたものに基づいて、これとこれとこういう点はだいじょうぶだとか、こういう点ははっきりしない、心配な点があるんだというふうなことを、これは国民の前にひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  176. 水野清

    水野政府委員 このソビエトのアジア安保構想というのは御承知のように、コワレンコソ連党中央委員会日本担当員が松前重義氏を通じて何か提案したというふうに伝えられております。これ自体がまず正式の外交ルートに乗ってきたことではございません。さらに、私が聞いております範囲で——これはちょっと速記をとめていただけますか。
  177. 藤尾正行

    藤尾委員長代理 速記をとめてください。
  178. 藤尾正行

    藤尾委員長代理 速記を始めてください。
  179. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 そうしますと、これは正式の話ではない、今度の田中訪ソにつきましても、ソ連のアジア安保構想というものが中心的な議題になるということはないというふうに了解していいですか。
  180. 水野清

    水野政府委員 総理訪ソ議題というものは、日本側として予想される問題、あるいは話をしたいというさっきの領土問題のような問題はありますが、正式には日取りもまだきまっておりませんし、この議題について協議をされておりません。
  181. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 一応それなら安心いたしました。  その次にお聞きしたいことは、いま竹島の問題はどうなっていますか。
  182. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 竹島はわが国の固有の領土であるわけでございますが、韓国側はまた自国の領土であるという主張で、この点におきましては、双方の見解が対峙して紛争の対象にはなっております。昭和二十七年にいわゆる李承晩ラインというものができまして、先方は竹島をその中に組み入れてしまったわけでございますが、その後少したちましてから、向こうのほうに駐在の人数を置いたりしておりますので、わがほうはこれに対しまして繰り返し抗議するとともに、またわがほうからも巡視艇を派遣しまして、その情勢を見守っておるわけでございますが、基本的には平和的に解決したいということでございまして、日韓間のいろいろな懸案がだんだん片づいていきますと、さらに今後、日韓間に紛争解決に関する交換公文もございますので、最後にはそういう手段によって円満な解決がはかられることを希望するわけでございますが、現状は遺憾ながら先方が不法占拠しておる、わがほうはこれに対して抗議しておるという形で対峙しておるわけでございます。
  183. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 これはずいぶん長い話なんでして、私、非常に不満なんです。いまお話を聞きますと、韓国に対して抗議を繰り返しておるだけですか。これを国際司法裁判所に訴えるとか、あるいは国連の安保理事会に提出するというふうなことはなぜお考えにならないのですか。
  184. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 それは最後の手段としてそういう方法を考えなければならないということは考えておりますけれども、タイミング、もう少し情勢の進み方を見てということで考えておる次第でございます。
  185. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 私が言いましたのは、国連の安保理事会に提訴をするとか、あるいは国際司法裁判所に訴えるということは、これは国際連合憲章で認めておることなんですから、平和的な解決の一方法なんですよね。     〔藤尾委員長代理退席、委員長着席〕 韓国に抗議を繰り返すこともけっこうですよ。けっこうですが、こんなに長いことほっておいて、私は日本国民の大多数は非常に不満を持っておると思いますね。政府は何しているんだというふうな気持ちが強いんじゃないでしょうか。もうそろそろ決断をして、そういうふうな効果的な手段に訴えることを考えられるべき時期ではないかと思いますが、いかがですか。
  186. 水野清

    水野政府委員 加藤先生お話は非常にごもっともな話だと思います。しかし、私がここで、いま決断を申し上げるとか申し上げないとかいう立場ではございませんが、先生の御趣意につきましては、政府部内で積極的に検討さしていただきます。
  187. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 いまの御答弁で、ぜひそうやっていただきたいと思うのですが、その次に尖閣列島の問題ですね。沖繩が復帰しますときにいろいろ新聞等にも書いてありましたが、いまあれについてはどこからもクレームは来ていないわけですか。
  188. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 尖閣列島はわが国の固有の領土であるということは、わが国歴史的な状況のみならず国際法上に照らしても明瞭であるということを確信しておるわけでございまして、従来どの国も、あの諸島のわが国に対する帰属に関しまして疑義をはさんできた国はなかったのでございますが、昭和四十五年の夏ごろから、エカフェの報告によりまして、あの近海に石油資源がありそうだというような話が出ましてから、中華民国政府及び中華人民共和国政府のほうから、あれは自国の領土であるというような主張がなされてきたわけでございますが、その後、先方の考えはそうであると思いますけれども、特に目新しい動きは現時点においてはない。われわれの立場は一貫して、尖閣諸島は日本の固有の領土であるということを考えておるわけでございます。
  189. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 沖繩の本土復帰の直前に中華民国政府が、私の承知しておる範囲では、向こうの官報ですか、公報に掲載をして、何県とかの所轄だということを発表した、調査隊を派遣するんだというふうなことが当時いわれておりましたが、そういう事実はございませんか。
  190. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 先方は、昔のそれぞれの政府が出しておりました地図によりますと、尖閣諸島は日本領土に記載しておりましたが、最近、先ほど申し上げましたような時点から、急拠行政的に自国の領土であるということを示そうとする手段をとったということは承知しております。また、御指摘の調査団を派遣しようという動きがあったという情報は得ておりますが、現実にそういうものは派遣されておらないという状況でございます。
  191. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 それならそれはけっこうですが、あくまでも尖閣列島は、言うまでもないことですが、日本領土なんですから、その主張が国際的に承認をせられるようにこの上ともに御尽力を願いたいと思うのであります。  その次に、マラッカ海峡の問題についてちょっと伺いたいと思います。マラッカ海峡の国際管理にシンガポール、マレーシア、インドネシアが反対をしたというふうな記事が出ておったように思いますが、その現状はどうなっておりますか。
  192. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 マラッカ海峡は、言うまでもなく非常に重要な海上交通路の要衝に当たっておるわけでございまして、ただいまおっしゃいました沿岸三カ国は非常に重大な関心を持つのみならず、私たちとしても非常に関心を払っておるわけでございますが、国際管理という具体的な議論は出ておりませんので、一番の問題は、あそこが国際海峡なのか。また、現在主張されておりますそれぞれの国の領海の範囲というものとの関係からどうなるのかというような問題がございまして、今後、海洋法会議とかそういったところでそういう問題がきまれば、マラッカ海峡がどういう取り扱いになるのか、またそこを通航する無害航行権はどうなるのか、その他の通航権はどうなるのかという問題が、その時点において具体化されてくるというふうに思われる次第でございます。
  193. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 数年前に、日本関係国の同意を得ましてマラッカ海峡の調査をいたしましたね。あれはその後どういうふうになっていますか。
  194. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 一九六九年に、沿岸三カ国、マレーシア、インドネシア、シンガポールの三カ国の要請を受けまして、わが国が予備調査を行ないまして、翌年、七〇年に第一回の精密調査を行ない、七二年、昨年第二回の精密調査を行ない、本年第三回の精密調査を行なうということで、現在、先方と細部にわたって交渉中でございます。この合意ができましたら、日本の技術をもって、マラッカ海峡の安全航行、汚染防止、海深をさらに深くするとか、航行範囲を広げるとか、灯台、標識を設置するとか、そういった安全航行その他に関する具体的な措置をさらに進めていく、過去の三回の調査で非常に成果をあげておる、かように考えておるわけでございます。
  195. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 いまおっしゃった安全航行とか汚染の防止というふうな仕事は、日本がやるわけですか。あるいは三カ国が日本に依頼をしてやるわけなんですか。いまどういう考え方なんですか。
  196. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 これは、三カ国の要請を受けて、日本の技術をもってそういったことに関する精密測量を行ない調査を行なって報告を出すということでございまして、最終的な責任の所在とかそういった問題は、まだ未定の部分があるわけでございます。とりあえず必要なことは、マラッカ海峡を大型タンカーが通れるように、衝突が起こらないように、汚染が起こらないようにすることを考えなければならないということで、わがほうの技術面からの協力を提供しておる、先方の要請を受けて協力を提供しておる、そういう姿でございます。
  197. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 ASEANの五カ国のこの問題に対する態度というものはどうなんですか。
  198. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 ASEANの五カ国は、先ほどのシンガポール、マレーシア、インドネシアが直接マラッカ海峡の沿岸三カ国でございますが、あとフィリピンとタイが入ってくるわけでございます。フィリピンのほうは直接関係がない。タイのほうは、現在、あそこのクラ地峡というところにマラッカ海峡と並行して運河をつくろうというような構想もだんだん具体化しておるわけでございますが、場合によっては、この沿岸三カ国の中に関心を示して入ってくる可能性はあるかもしれませんが、マラッカ海峡自体の問題は、現時点では沿岸三カ国の問題として取り上げられておるわけでございます。
  199. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 ASEANの問題に移るわけでありますが、このASEANのいわゆる中立化構想ですね、これに対して、日本政府としてはどういうふうな考えでおるのですか。ジュネーブの軍縮委員会における日本代表の演説を読んでおりましたら、何かこれに協力をするというふうなことが書いてありましたが、これはそういう態度なんですか、ASEANの中立化構想に対して。お伺いいたします。
  200. 水野清

    水野政府委員 ASEAN諸国の考え方というのは、ASPAC以後のアジアの新しい方向として注目されておりますが、日本がこれに協力していくというのは、日本が直接参加をするということではなく、向こうの合意があれば経済的な点でごめんどうを見ていく、そういうことを考えて提案をしている最中でございます。それらの諸国は、日本を含めて大国のアジア諸地域に対する干渉といいますか、影響というものをかなり複雑な感情で見ている立場でございますから、日本があまり積極的に、ここに金を出すから入れろとかいうような形では接近しがたい。しかし同時に、経済的に何かをしてもらいたいという気持ちもそれぞれ持っております。向こうの合意があれば、いろいろな具体的な話も出ておりますが、この場でお許しをいただきたいと思いますが、経済的なめんどうを見ていきたい、こういう態度でございます。
  201. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 私も、経済的にめんどうを見ていくということはいいことじゃないかと思うのですけれども、ただ、アメリカのアジア政策というものとASEANの中立化構想というものとが、どういうふうにマッチするんでしょうか。アメリカのアジア政策として、ASEANというものが中立化することをアメリカは希望するんでしょうか。あるいは好まないんでしょうか。その辺はいかがですか。
  202. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 ASEANの中立化構想というのは、本質的には、ASEANの五カ国が、大国主義を排除して、自由と平和と、そこの周辺に大きな国があるわけでございますから、そういった国にわずらわされないような方針で自分たちの自主的な地域協力を進めて、自立的な力を強めていきたいという念願に基づいて発足しているものでございます。その方向自体といたしましては、私はけっこうな方向ではなかろうかということで考えております。アメリカもそういう意味で、こういった東南アジアの国々が自立、自主的な方向に力をつけていく、その立場から相寄って話し合っていく、そういう地域協力を強めていくということに対しては賛成しておる、かように考えるわけでございます。
  203. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 そうおっしゃいますけれども、結局、アメリカ、ソ連、中国という大国がこれをどう見るかということに非常にかかってくるわけですよ。いまASEAN諸国はそういう方向で進んでおっても、ソ連は着々として軍事力を東南アジア方面へ伸ばしていっているわけですね。その際に、アメリカは黙ってこれをほっておいていいのかという問題が私には気になるわけですが、いいんでしょうかね。日本立場から見ても、ソ連はソ連で伸びていってくれ、ASEANはASEANで中立化構想を実現していってくれということでいいんだろうかという疑問があるんですが、その辺はいかがですか。
  204. 水野清

    水野政府委員 これは一つの国際情勢の分析でございますけれども、ソビエトが、たとえばインドであるとか、今度独立したバングラデシュであるとかその他の国に対して、いろんな艦隊の寄港権といったものを獲得して、インド洋で一つの軍事的な情勢をつくっているということは、日本政府は直接確認したということでなくて、いろいろな報道機関から報ぜられております。私はこの結果が一つのASEAN諸国の中立化構想になった。また、ASEAN諸国の中も利害関係があるにもかかわらず、ともかく団結をしている、私はそういうふうに見ております。これに対して、もっとアメリカなりそのほかの国がてこ入れしなくちゃいけないだろうという考え方もあるかもしれませんけれども、現実には、アメリカの東南アジアの政策というものは、このASEAN機構をむしろ見守って育てていくほうがよろしいというふうに見ているのではないかと思います。日本がまたそれ以上にこれに参加、介入することはできがたい問題じゃないかと思います。
  205. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 いまおっしゃったことが私の言わんとすることなんですがね。ASEANの中立化構想、これはそれ自体はいいでしょう。しかしソ連は、それをまだ保障も認めもしていない、どんどん軍事力を伸ばしていっておる。中国がこれからどう出るかわかりませんけれども、アメリカのASEANに対する立場というものは、私は非常にむずかしいと思うのです。その際に、いわば日本だけが先走りをして経済的な援助をしていくということがはたしていいのかどうかということに、私は疑問を持っているものだから御質問をしたわけであります。
  206. 水野清

    水野政府委員 先ほど私の申し上げたことはことばが足りなかったかと思いますが、援助といいましても、向こう側から要請があった、各国の承諾があった。非常にわずかのことでありますが、ともかく援助をしてみてほしい、事務局の人件費というようなことで要請があったので、各国の異論がなければそれで御援助申し上げる、決して日本側からその反対給付をほしいとも何とも思っていない、こういう形の援助であります。金額も非常にわずかなものであります。
  207. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 わかりました。  現状においては私はこれでいいと思うのですが、これからのASEANに対する態度というものはやっぱり慎重でなければいけないということを申し上げたいと思います。  その次に、セイロンが提案しましたインド洋の平和地帯案ですね。これは国連で特別委員会をつくってやっておるというふうに聞いておりますが、これはいまどうなっておりますか。
  208. 影井梅夫

    ○影井政府委員 御承知のとおり、これは一昨年の国連総会におきましてスリランカが提案いたしました。その提案を受けまして、昨年の国連総会でこの研究のために特別の委員会をつくるということになりまして、現在、日本中国、インド、パキスタン、スリランカ、オーストラリア、それから一部のアフリカの沿岸国、十五カ国から構成される委員会が発足しております。日本はかねてこの構想に対しまして、これが究極的にいま望ましい姿である、ただし、これを実現するためには、現実からその理想の姿に持っていくためには非常にいろいろの問題があるということを指摘しております。そのうちの一つが、まずインド洋平和ゾーンにどういう国が関与してくるかということ、これが一つの問題でございます。それから、インド洋の平和ゾーンで一体公海自由の原則あるいは船舶の航行の権利ということはどういうことになるかというふうに、非常にたくさんの問題があるということを指摘して、この提案に賛成し、またこの特別委員会のメンバーとなったわけでございます。これを受けまして今年の二月の末から六月の半ばにかけまして、この委員会は前後八回にわたって開かれております。ただし、そのうちの大部分はこの委員会の議事運営をどうするかということ。また残りの部分は、日本指摘いたしましたようないろいろな問題点の指摘ということに終わりまして、現在までに実質的に、この平和ゾーン実現のための動きと、そちらの方向へ動いたという状況には、まだ達していないという事情でございます。
  209. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 よくわかりました。  やはり最近の新しい動きとして、私、申し上げたいことは、アジアの小さな国々がお互いに地域協力を固めていこうとして、意識的に自分たちの安全と平和を守っていこうという動き自体に対して、私は日本として好意的に見守るべきだと思うのです。ただ、やはり大きな世界的な視野に立って考えますと、ソ連がどう出るか、アメリカがどう出るか、中共が今後どういうふうな対策をとるかということで非常に影響されると思うのですね。好意的に見守りながらも、日本としては先ばしってはいかぬのじゃないかという私の意見を申し上げて、質問を終わります。
  210. 三原朝雄

    三原委員長 奥田敬和君。
  211. 奥田敬和

    ○奥田委員 午前中以来、対中国、対アメリカ、またいまは、対ソ、まあアジア関係を含めての真摯な質疑が行なわれたわけでありますけれども、私は主として今度のハイジャック事件から中近東における外務省の機構、そういった面に少し触れてみたいと思います。  今度は国際線で起きた初めての事件ではございますけれども、この中に日本人が一名含まれていたということはたいへん大きなショックでございました。しかし、これを契機に、外務省の機構問題を含めて、いろいろの問題が出てきたように私は思うわけです。  質問の前段に、最近、ポスト・ベトナムをめぐって、何かペルシャ湾が世界の火薬庫になるのじゃないかといったような論評が、各種のマスコミ報道を通じてなされておりますけれどもわが国にとっては石油資源の九〇%を仰いでおる、こういった状況を踏まえて、最近のイラン、イラクを中心とする情勢を少し簡単に御説明願えたらお答え願いたいと思います。
  212. 中村輝彦

    ○中村説明員 アラブ湾を中心とした地域の政治的な現状を簡単に御説明申し上げますと、ただいま御指摘のように、石油の問題が非常にクローズアップされてきたわけでございますが、特に日本との関係では、御高承のとおり、日本の大部分の石油は輸入にたよっておりまして、そのうちのまた八割以上というものをこの中近東の産油国にたよっておるということで、特に私たちにとりまして非常に関心のある点でございますが、最近のこの地方は、イスラエル・アラブ問題がいまも解決されないままに続いておりますものの、何となく膠着状態のようなありさまになっておりまして、それとの関連におきましても、アラブ、イスラエルの間の問題よりは、湾岸地方の石油を中心とした情勢というもののウエートが非常に上がってきたということでございます。  ここをめぐりまして伝えられておりますところは、米国がイランあるいはサウジアラビア、クウェート等に対しててこ入れをやっているのじゃないか。他方ソ連のほうが、主としてイラクを通じまして、このアラブ海のほうに勢力を伸ばすことを考えているのではないかというようなことを中心といたしまして、米ソ両陣営が、このアラブ湾をめぐりまして、勢力の角逐をやっているのであろうというふうに推測され、話題になっておるわけでございます。ただ、その辺の実態につきましては、もちろん正確なところはわかりませんで、いろいろ見方もございます。したがいまして、私どもも、その辺の両陣営の角逐が非常に熱気をはらんで激しいものになっているとは必ずしも思っておりませんけれども、そういった要素がありますことは十分推測できる次第でございまして、そういった点から私どもも大きな関心を持って重視しておる次第でございます。
  213. 奥田敬和

    ○奥田委員 いま、大きな関心を持っているけれども詳しい状況はわからない、しかし、いますぐどうのこうのといったような熱気をはらんだ情勢ではないだろう、要約すればそういうペルシャ湾の情勢お話であったと思います。ですけれども、基本的には、いまお認めになりましたように、この産油国に、日本の石油資源のほとんどというよりも九〇%近くをたよっているわが国にとっては、今後の資源外交を控えてたいへん重要な地域であるということは当然思います。しかも、いま一部御指摘がありましたけれども、イランあるいはサウジアラビア、クウェートといったところには、アブダビ石油、アラビア石油があり、わが国の資本もたくさん入っておりますし、これがアメリカに近い線でいろいろ動いておる、イラクはソ連に比較的近い形で軍事基地の拡張をはかっておる、イラン、イラクの国境の河川問題、シャテル・アラブの問題をめぐって、ある意味においてはたいへんな緊張状態をかもし出してきておる。またイラン、クウェートの間にもいろいろな国境紛争が介在しておる。こういった意味で、非常に重要な地域であるにもかかわらず、いまのお答えを聞いておる段階では、中近東諸国に関してあまり的確な情報が入ってないように私は思います。  いま中近東二十二カ国ありますけれども外務省は一体どれだけ在外公館をここに持っておるのですか。
  214. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 二十二カ国のうち十五カ国に実館を有しております。アフガニスタン、イスラエル、イラク、イラン、クウェート、サウジアラビア、シリア、トルコ、レバノン、アルジェリア、スーダン、チュニジア、モロッコ、リビア、エジプトでございます。したがいまして、残りの国、すなわちアラブ首長国連邦、カタール、オーマン、バーレン、ヨルダン、イエメン、南イエメンにはまだ在外公館を設置しておりません。
  215. 奥田敬和

    ○奥田委員 そうすると、いま問題の起きたドバイのアラブ首長国連邦、あるいは、いまお話しになったように、カタール、ヨルダン、オーマン、バーレン、イエメン、こういったところにはまだないということですね。いま起きたハイジャックはもちろん中近東アフリカ局の所管で、即応体制で相当動かれたと思いますけれども、一体、こういう国際線で起きるハイジャックは、いやなことですけれども、当然予測されたことでもありましょうし、これらに対しては外務省としては、ハイジャック対策といいますか、どういう即応体制を持っておられるわけですか。
  216. 水野清

    水野政府委員 ハイジャックが起こるまでの体制というのは、外務省の問題ではなくて、運輸省、日本航空の問題だと思います。しかし、起こった際にどういう措置を講じたかというお答えを申し上げて、ちょっと御質問と違いますが、かんべんをしていただきたいと思います。  たとえば、あのドバイというのはアラブ首長国連邦でございますが、いま官房長から申し上げたように、実際に実館が置いてございません。ですから、通信施設その他というものも全くないわけです。しかし、こういう国も国交がありますし、実際にはいろいろな民間関係の交易で現地へ行っている人たちがおりますので、首長国連邦はクウェートが兼務をしておりますが、クウェートから人を派遣いたしまして、手の足りないところはそういう人たちを動員して手を打つ。あるいは、実際に公館がありましても、先生指摘のように、大使館とは申しますけれども、大使以下三人とか四人とかいうような、正直申し上げると、欧米の大使館とは比べものにならない陣容でございます。その人たちを、たとえば飛行機がどこへ着陸するかわからないというときには、実は全部の飛行場に館員を待機をさせまして、イラクのバクダッドにもおりるかもしれないということで待機をさせましたが、ここは断わられて次のシリアのダマスカスに着いたわけでありますが、着いたときには、こっちの大使館から人を出して、とにかく交渉ができるようにしておったわけであります。  それから、そういう指示をするのにも、具体的には私はこまかく知りませんが、大使館によっては、英米仏独などの大国の大使館は、大体自分の大使館の中に無線も持っておりますし、通信施設を持っておりますが、日本の大使館は開設が間もなく、また予算上の問題もありまして、まだそういう通信施設を持っておりません。でございますので、ときには大使館員が電報局へかけつけるということもあるわけであります。そういう不便な状況でございましたけれども、今度の際には、英米独などの在京の大使館の通信施設を頼んで借りまして、在京の大使館から、たとえば現地のアラブ首長国連邦のイギリスならイギリスの大使館の通信施設へ電報なり電話をかけて、通信連絡をとったということもいたしております。ともかく非常に弱体でございましたけれども、あの地域、飛行機がどこにおりるかわからないものですから、全部を動員いたしまして今度の事件に対処したわけでございます。
  217. 奥田敬和

    ○奥田委員 政務次官、追及するという意味ではなくて、どこにおりるかわからないというのは、それはしろうとですよ。アラブゲリラにハイジャックされてどこにおりるかといったら、大体見当がつくのです。私なんか予想は間違いましたけれども、きっとこいつらはリビアに行くだろう、トリポリの空港のほうに行くだろうと思ったけれども、それは違いました。結果においてはベンガジのほうに行きましたけれども、リビアに最後的には行った。これは、私のような中近東情勢に対してちょっと関心のある者だったら、大体どの辺とどの辺に、彼らがあとのことを考えておりるだろうということはあれするので、中近東二十二カ国のどこにおりるかわからぬなんて言っておられる。そういう意味じゃないと思いますけれども、私はそういう形は非常に残念に思います。特にいままで、パンアメリカン、あるいはトランスワールド、あるいはBOAC、ルフトハンザ、全部ハイジャックされて、過去のこういったハイジャック事件に関するいろいろな情報は、決して人ごとじゃなくて、もう少し考えておかれる体制が必要だと思うのです。  それじゃ、ちょっとお聞きしますけれども、答弁は簡単でいいですが、このアラブ首長国連邦の日本大使館はあるのですか。
  218. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 アラブ首長国連邦は、法律的にはございますけれども、先ほど政務次官の御答弁にありましたとおり、実館はございませんで、クウェートにおります大使が兼轄しておるという形でございます。兼轄でございますので、ときどきそこの地に行ってみるということでございます。
  219. 奥田敬和

    ○奥田委員 先ほど二十二カ国中十五カ国にあれだと言いましたけれども、残ったヨルダンとかオーマンとかイエメン、こういったところは東京に公館を持っていますか。
  220. 中村輝彦

    ○中村説明員 大体は持っておりませんけれども、中には持っているところもございまして、カタールは東京に最近大使館を開設いたしました。
  221. 奥田敬和

    ○奥田委員 この間のドバイは、いま官房長のお話によると、クウェート大使館管轄である。一体クウェートからドバイへどれくらいの時間がかかりますか。すぐ空港を閉鎖したようですけれども、連絡をとってすぐ外務省がクウェートからかけつけるまでは。
  222. 水野清

    水野政府委員 飛行機に乗れば二時間でございますが、あれはローカル線ですから、便をつかまえるまでに時間によっては三時間なり五時間かかる、あるいは六時間かかるというようなこともあります。
  223. 奥田敬和

    ○奥田委員 それは空港も閉鎖されたようですし、あれですけれども、大体二十時間ほどかかるように聞いています。ろくに便もないわけですし、ですから、これはクウェート大使館が全部管轄されておるのはけっこうですけれども、私は、ここでこういうことを次官に質問するという形になると、何か追及がましくなりますが、二十五日付の朝日新聞、見出しが「大使の“優雅な生活”」という形で、クウェートの大使が当時は日本に来ていましたね、今月の十一日まで中近東の大使会議が開かれて。十日後に、休暇で帰られなかったのでしょうけれども、これはいいとして、ハイジャック事件が起きてから相当の時間がたっているのに、中近東大使の中で連絡がとれなかった。個々の名前はあげませんけれども。したがって、この問題が起きてから在外公館の、しかも大使ともあろう人が、日本へ休暇で帰っていても、いついかなるときにどういう事件が起きるかわからないときに、外務省の即応体制はどうなっているのかとさっき聞いたのは、こういった形の連絡が実にだらしない。したがって、日航の社長が飛び立つときの便に、あなた方は間に合わなかったでしょう。その点についてはこのニュースは間違いありませんか。
  224. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 御指摘の点でございますけれども、たまたま中近東の大使会議が東京で開かれておりまして、その直後でございますが、何しろ中近東地域というのは瘴癘の地でございますので、大使によっては健康のドックに入るというような要請がございまして、私ども本省といたしましては、日本に来た機会に健康をチェックするという期間の余裕だけは、要請があった場合認めたわけでございます。  いま先生指摘のように、すぐ連絡がとれなかったという報道があるとすれば、それは誤りでございまして、すぐ連絡はとれたのでございますけれども、たまたまやや遠隔の地に休養に行っていた。したがって東京に帰ってくるのに時間を要したということでございます。したがって、日航の救援機にはこのクウェート駐在の石川大使は間に合わなかったわけでございますけれども、東京からアラビア語の専門家の事務官を便乗させたわけでございます。
  225. 水野清

    水野政府委員 つけ加えて申し上げさせていただきますが、先生もアフリカ地域においでになったことがございますが、夏は高温で瘴癘の地域でございます。政府によっては政府自体の、たとえばサウジの王さまのようなものは、政府自体が全部スイスあたりに避暑に行くというぐらい気温の悪いところでございます。それだけに、中近東の大使会議もわざわざ東京で開催いたしまして、この際に、大使といいますと大体五十五歳以上ぐらいになっておりますから、ヘルスチェックを希望する人は全部やってもらった、こういうわけで新聞にはだれもヘルスチェックと書いてありましたが、全部の人がやるのが当然であろう、そういう地域であるというふうに私は思っております。  また、石川大使については、個人的な彼の名誉にもなりますから特に申し上げますが、山梨県におりましたけれども、この連絡がありまして、中近東アフリカ局から連絡をしましてから三時間で東京へ帰ってまいりました。救援機には間に合いませんでしたが、現実に日航機がドバイ空港にありまして、ハイジャッカーと管制塔のいろいろな問題があった際に、あるいはアラブ首長国連邦とのいろんな交渉の際には、石川大使は十分の働きをしております。  それから、先ほど申し上げることがおそくなりまして、ちょっと私がことばを落としておりましたけれども、どこにおりるかわからないから待機させたと、ちょっと大ざっぱな話をしました。それ以外にも実は隠れた任務を持って大使諸公は働いておったわけであります。具体的に申し上げますと、サウジアラビアとイスラエルの両国は、このハイジャッカーの乗っている飛行機が自分の国に来て予測せざるような災害を起こすのではないかということで、それぞれは最近は非常に大きな空軍を持っておりますが、空軍に警戒体制、アラート体制をとらしておったわけであります。もし領空をかすめたような事件が起こりますと、日航機自体が戦闘機に撃墜される。撃墜されなくても強制着陸を命ぜられて——ハイジャッカーが乗っておりますから、そんなことをするはずはないわけでありまして、予想せざるような危険事態が起こる可能性もあったわけであります。それぞれの国の、サウジの大使、イスラエルの大使は相手国政府に要請をいたしまして、万一そういうことがあってもともかく無事に領空を通過さしてもらうようにという要請をしておったとか、そういうような働きもしておったわけでございます。
  226. 奥田敬和

    ○奥田委員 私は決してヘルスチェックをするなというのではなしに、大いに休暇をとってもらってけっこうなんです。ただ、いま次官から言われましたからこれ以上言いませんけれども、やはりそういう突発事件に対して、どこでヘルスチェックされようがけっこうですが、やはり一国の大使、一国の国との折衝にあずかっている人は瞬時に連絡がとり得る体制をとってほしいということを特に要求しておきます。  ただ、私はいつも外へ出たときに感ずるわけですけれども、少ない人員でたいへんだろうと思います。その点の御苦労はわかりますけれども、何か開発途上国あたりの上級の人たちだけとのおつき合いだけではなく、私はやはり、在外公館のほんとうに大きなこれからの役目は、そういった情報収集、あらゆる面に対応できる形が必要だと思います。  しかも、いまはもう海外渡航、一年間に百四十万近い人たちが、昨年の統計だけでも外へ出ているようであります。こういったことを考えると、私は、在留邦人、あるいはそういった観光目的を含めての短期、長期を含めての海外渡航、こういった人たちに対して、いままでにない問題をたくさんかかえておるということは十分察せられます。  そこでお聞きするのですけれども、長期滞在者、外国に三カ月以上長期にわたって滞在する人たちに対しては、いろいろな規定があるわけですけれども、旅券を出すときに、私はいつも旅券でふしぎに思うのですけれども、数次旅券というやつは幾らでも使えて、五年間で期限がくる。しかし観光目的で外へ出た人は、一体あれは期限があるのですか。帰ってくるまで期限がないんじゃないですか。ちょっとその点お答えを願います。
  227. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 数次旅券と違いまして、一回限りの旅券は帰ってくるまで有効でございます。
  228. 奥田敬和

    ○奥田委員 ということは、その期限の規定はないわけですね。
  229. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 いま言ったような期限の規定はございますが、特定期間についての期限の規定はございません。
  230. 奥田敬和

    ○奥田委員 これはやはり何らかの対策を講ずる必要があるんじゃないでしょうか。要するに、観光で出ていった、しかも片道の旅費しか持っていかなかった、途中でアルバイトなんかしていろいろな意味でひんしゅくを買う。まじめな人は別としても。この間、北欧でもいろいろな事件を起こしておりますし、観光目的で出て世界でいろいろな犯罪ケースというものを起こし、わが国の大きく言えば信用を失墜しておるといったようなケースが年々ふえておるわけですね。いままでのように、海外渡航が一年間全部トータルしても十万あるいは十五万という程度のときだった場合には、こういった問題は比較的起こらなかったけれども。ですから、犯人の身元はまだはっきりしませんが、あげていけば、どういう目的で——おそらく観光か何かで出ていってこうしてやっておるのじゃないかと思うのです。しかも旅券法十六条で届け出義務、長期滞在の登録といったことがきめられておりますけれども、これに対する届け出のなかった場合の罰則の規定というのはないのですか。
  231. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 罰則の規定はございません。
  232. 奥田敬和

    ○奥田委員 しかしこれは、届け出しろという義務規定はある。義務規定というか、第十六条がそうだと思います。そしていろいろな事件のケースで返納命令というものが出されるように、十九条でいろいろの項目にわたって書いてあります。二十三条がそういった返納命令に従わなかったときとかのいわば罰則規定になっておると思うのですけれども、この旅券法というものは、先進国に見習ってできるだけフリーにそういう規制緩和をしているのだろうと思いますけれども、今回の事件等々を見ておりますと、観光目的で出た者が帰ってくるまで、いつまでおってもいいんだ、期限なしなんだ、そういう形というものは、確かに少し洗い直してみる必要があるのじゃないかと思います。それは、犯罪者はコンピューターにかけてすぐチェックできるでしょうけれども、いろいろな面で行ったきりになっておって、外国で流浪して、観光目的で出て行ったのにまだ全然帰ってきていない、こういった形がどんどん世界にばらまかれていく。これに対して外務省は、人手が足りないから、あるいは、うちは届け出される人だけはチェックしているけれどもそれ以外の人たちは知りませんといった形の中では、非常に出足の旅券発行に関して、国民は簡易化のほうを望んでおるということは間違いありませんけれども、こうした犯罪予防のために何らか一ぺん洗い直してみる必要があると思いますけれども、これは次官どうでしょう。
  233. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 御指摘の点でございますが、確かに一回限りの旅券で出まして帰ってこない方は相当います。これは観光目的その他で出ましてそのまま方々の国を回るわけでございますが、ただその場合に、それではかりに三年なら三年という期限がありましてチェックいたしまして、おまえは期限を延ばさないということをかりに言うといたしましても、その場合どういう理由で期限を延ばさないかということは、一つ憲法に規定されました移転の自由という問題もございますし、やはり憲法との関連で、その人が日本へ帰らなければいかぬ、要するに旅券の更新を認めないというに足るような十分な理由がなければいかぬという点を考えますと、一回限りの旅券に期限を設けますこともきわめて慎重に検討しなければならないのじゃないか、そのように考えます。  それから他方、最近は数次旅券で旅行する方が非常にふえました。いま日本は海外へ出る人が非常に多いものですから、いつでも出られるようにということで、数次旅券をとる人が非常にふえております。したがいまして、このほうは、先ほど申し上げましたように、五年という期限がございますので、五年たって帰ってくれば、とにかくそれで期限が切れるわけでございますから、もう一回旅券をとり直さなければいかぬということにもなっておりますので、そのようなことを考えまして、現在の体制、御指摘のような点はございますけれども、いま申し上げましたようないろいろな問題を含んでおりますので、なかなかむずかしい問題かと存じます。
  234. 奥田敬和

    ○奥田委員 これはやはり政務次官、答弁聞いておったらあのとおりでしょう。それは憲法で移転の自由も保障しなければいかぬでしょうけれども、それじゃ数次旅券は五年間の年数制限がある。観光目的でそんな五年も六年も行っているはずはないでしょう。そんなもの大体おかしいくらいのものですよ。観光目的なら観光目的で、そんな長期という形じゃなくても、大体一年あるいは半年というような、観光目的なら観光目的に沿った形である程度期限を切る、そういう措置が政治的にとられていっても、憲法違反にも何にもならぬと私は思うのですがね。これは法解釈の面でいろいろ議論のあるところでしょうけれども。ただ単にそういう理由だけで帰国するまで制限がない、それに対するいろいろな意味での罰則規定というものがなかなか整っていない、こういった形がハイジャック事件等々を契機に明るみに出てきましたけれども、そういった人たちが海外における犯罪を犯し、そしてその国にも迷惑をかけ、また日本人の信用を失墜するというケースも、私はやはり考えていっていただきたいのです。  旅券の偽造が最近非常にあるということを聞いておりますし、そして彼らが出た場合の旅券なんかおそらく偽造関係でやられている。海外逃亡する機会もあるのじゃないかと思いますけれども、この偽造旅券の防止対策について外務省は積極的にどういう手を講じておられますか。
  235. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 昨年ロッド空港の事件がございましたときに、現実に使用された旅券をわれわれ調べまして、これが偽造であるということがわかりましたので、現在計画しておりますが、今回は偽造がよりむずかしい旅券をつくりまして、来年になりましたらこの新しい旅券に切りかえる。ただし、現在使っております旅券はもちろんそのまま流通するわけでございますけれども、すべての旅券が新しい旅券に切りかわった段階においては偽造は一〇〇%できないことになるかと思いますが、いずれにいたしましても、来年から新しい旅券を使う計画をいたしております。
  236. 奥田敬和

    ○奥田委員 それは初めて聞きますけれども、それは、透かし入りの日本の技術、しかもお札に使っているような紙を使って、当然、偽造防止のためには最大の努力をするということもたいへん大事だと思います。来年一月から大体新しい旅券が発行できると解釈していてよろしいわけですね。
  237. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 はい、そうです。
  238. 奥田敬和

    ○奥田委員 これはやはり私は大事なことだと思います。  いろいろ質問したいこともありますけれどもアジア局次長を置こう、従来の参事官二名の一名をそれに振り当てるようにという今度の設置法改正であるわけでありますけれどもアジア局は非常に広範な守備範囲なんですけれどもアジア局長、現在のアジア局の機構、一局六課ですか、この中で、私たち日本と一番関係の深いアジアの二十数カ国が、分裂国家も含めてあると思いますけれども、これから対アジア外交展開するにあたっても、いまほど言いましたように、いろいろな海外渡航の急激な増大、あるいは海外在留邦人に対する情報収集、こういった面でこれからの機能を果たす上においても非常に大事だと思いますが、たとえばいま中近東アフリカ局とかそういったいろいろな機構と比べて、アジア局の守備範囲というものは一局で今後とも十分やっていけるという状態なんですか。
  239. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 先生指摘のとおり、確かにアジア局は地域も広大でございますし、また日本との関係も濃密でございますので、他の局または他の地域局に比しまして、仕事の質、量ともに多いということは、まことに先生指摘のとおりで、われわれも内々に、場合によってはこれを二局にしたほうが適当かどうかも研究したわけでございます。しかし、いまのところわれわれの一応の考え方といたしましては、やはりアジア外交といというものを一体的に扱ったほうがいいのではないかという考えでございまして、したがいまして、いまこの設置法改正で御審議をお願いいたしておりますように、アジア局アジア局としてそのままにいたしまして、そのアジア局長の下に次長を置いて局長を助けるというような体制考え法律改正をお願いしているような次第でございます。
  240. 奥田敬和

    ○奥田委員 質問をこれで、ピンチヒッターで終わりますけれども、まあ結論から言うと、先ほどの中近東、ここは日本にとって非常に大事な地域である。したがって情報収集でも、それはクウェートに兼務させておくこと、けっこうですけれども、そういったわずかなあれによって、大きな対外的な資源外交の、あとにほぞをかむようなことがないように、私はやはり、これからの情報収集は、人口とかそういった意味じゃなくて、中近東に在外公館の充実をはかってほしい、そのことが第一点。  そしてその長期滞在者を含む在留邦人のあるいはお世話とかいろいろな面を通じて、私はおそらくいま外務省に御答弁を求めれば、永住者は別としても長期滞在者は大体世界で何万名でございますというお答えは返ってくると思いますが、しかし、それが一〇〇%間違いないかと言われれば、おそらくそういったきっちりしたお答えは出ないのが実情だと私は思います。そういった意味においても、私はやはり、こういった長期滞在しておる人たちの実数を把握し、そしてまた観光目的等々で短期渡航される人たちの保護等々も考えて、今後ともこういった意味の充実をやってほしい。そのためには旅券法、こういったものも一ぺん洗い直してみる姿勢を持っていただきたい。こうしないと、やはりいま言ったようないろいろな数次旅券の年数規制等と違って、一発で観光目的で行く人たちが、もう外国で流浪し、どうにもならぬようになっている状態まで残しておく結果にもなる。旅券法の穴がそういう形になって、わが国の信用が損なわれていくということはたいへん残念である。また今後、アジア局機構というものも、膨大な事務量、膨大な関係のある友好国を抱えておるわけですから、こういった点も含めて、今後ともがんばっていただくことをお願い申し上げまして、私の質疑を終わります。
  241. 中山正暉

    ○中山(正)委員 一言だけ関連して。  いま奥田先生の御質問、いろいろ拝聴したわけでございますが、一言だけ関連をして質問をいたしたいと思いますが、この乗っ取り犯人の引き渡し要求というようなことは考えていらっしゃいますか。日本人が一人いるということを聞いております。どういう処置をとられるか。
  242. 水野清

    水野政府委員 乗っ取り事件のあった飛行機の中の警察権あるいは裁判権というものは、日本に帰属をしております。そういう関係からは、この犯人の引き渡しをリビア政府に要求するということをいま検討しております。ただ問題は、昨年できましたハイジャックの防止条約という国際条約の中には、ハイジャックされた飛行機が着地したその国にまた裁判権があるという規定になっておりまして、その点では食い違っております。ですから、これから外交交渉としてリビア政府話し合いをしていかなければ、単に日本側の主張だけで裁判権、警察権はこっちにあるんだということだけでは解決がつかないんじゃないかと思っております。
  243. 中山正暉

    ○中山(正)委員 リビアは大体ゲリラ活動を支援をするという体制をとっておりますし、今度は逮捕をされたということでございますが、うわさによりますと、もう三十億円という金を取ったという話があるとかないとか、実は犯人を逮捕してゲリラ組織がそれをふところに入れるんだというようなうわさもあったりなかったりします。  そこで思い出しますことは、「よど号」乗っ取りの犯人が、私、記憶にちょっと残っていないのですが、警察庁において逮捕状の請求をしていないのではないか。逮捕状は出しておりますんでしょうか。このごろテレビを見ておりますと、北朝鮮に乗っ取っていった連中が、堂々と日本のテレビを通じて日本人に話しかけるという、それをマスコミが仲介をするという異様な状態を見ておりまして、私はまことに憂えております。民主連合政権は必ずできるんだ、共産主義政権ができたときには、われわれは堂々とそのときにこそ帰っていくんだという宣伝をやられたのでは、どうも一体外務省何をやっているんだろう。北朝鮮との問題もいろいろ出てくるときでございますから、そういう筋道というものは、はっきりつけておいていただく必要があるのではないか、私はかように感じますので、よど号乗っ取りの犯人に対してはどういう手をいままでに打ってこられておりますのでございましょうか、そういうこともちょっとお聞かせを願いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  244. 水野清

    水野政府委員 「よど号」の犯人につきましては、これは御承知のように、北朝鮮は国交がありませんから、間接に第三国を通じて引き渡しの要請をしております。  逮捕状その他の件につきましては、警察庁の所管で、きょうは予定されない御質問ですから来ておりませんので、私も正確なことを申し上げることは遠慮させていただきます。
  245. 中山正暉

    ○中山(正)委員 わかりました。何かの機会でけっこうでございますから、北朝鮮関係、どういうふうに犯人に対する処置を警察と協議をしてとっておられるか。私はきょうは聞いていなかったからということでございますが、そのくらいのことは当然に知っておいていただかないと、ちょっと困ったなという気がいたします。  きょうは関連でございますから、この辺で質問を終えたいと思いますが、今後いろいろなことが起こってくると思います。アラブ諸国では、一体日本はどっちの味方なんだ、イスラエルの味方なのか、アラブの味方なのか、はっきりしてほしいというような態度決定を迫られる。われわれは両方の国と仲よくしたいというふうに思っておりますが、そういうふうに、これからシビアに条件を押しつけてくる。乗っ取りとかそういうものを利用して、政治的に日本態度をはっきりさせようということに出てくると思いますので、いろいろとそういう面が起こったときに対する対策を考えておいていただきたい。アラブの、中近東の遠いところの国のように思っておりましたが、それに日本人が参加をするということになりますと、何か意外と遠くて近い話に、私は今度の乗っ取り事件も感じたわけでございますので、その点よろしく外務省において、御方針なり、そういう場合にはどうするかということを政治的に高い立場で御判断をお願いをしたい、かようにお願いをいたしまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  246. 三原朝雄

    三原委員長 次回は、明二十七日金曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十五分散会