○齋藤国務大臣 御承知のように、最近第三水俣病といったふうなことが
指摘を受けたり、そのほか農林省においてPCBによる汚染の魚がたくさん出ているとかいう発表がございました。そういうようなことで魚に対する不安が出てまいりましたので、環境庁を
中心にもろもろの
施策を検討いたしてまいったのでございますが、魚の水銀含有についての安全基準をひとつ
厚生省が引き受けてやってもらえぬか、こういうふうなことになりまして、私
どものほうでは、椿博士その他水銀に関する大ぜいの専門の学者の諸君にお集まりいただいて、安全基準を設定することといたしました。アメリカなどよりも相当きびしい安全基準を設定いたしたわけでございます。すなわち、それが総量規制で申しますれば〇・一七ミリグラム、さらにまた魚についての濃度の規制ということになりますと〇・三PPM、こういうことにいたしたわけでございます。
そこで、魚の濃度についての〇・三PPMということは、非常に科学的、学問的な話でございますが、それはどういう意味かと申しますと、〇・三PPM以上に汚染されておる魚は市場に出さないことにしましょう。すなわち排除せらるべき汚染魚の濃度を〇・三PPMに置く。したがって、〇・三PPM以下の魚ならば
国民は安心して食べてもいい、こういう排除せらるべき魚の汚染の度合いをきめ、同時にそれが、裏表で申しますれば、
国民が安心して食べられる魚の濃度は〇・三PPMだ、こういうことがいわゆる基準というものの意味であります。
そこで、その当時の発表の際に、例のアジ何匹とかいう献立表を出したのですが、これは一応未定稿として局のほうでその
資料をクラブのほうに配ったのでございますが、その意味は、〇・三PPM満度まで汚染されておる魚でもこれだけ食べてもけっこうなんです、安全なんですということの意味なんでございます。ところが、こちらの説明もあるいは不十分であったか、あるいは
新聞の中ではそういう前提条件を大体文章の中には書いてくだすっているようですが、書いてない
新聞もあるというふうなことで、見出しでばっとアジ何匹、こういうふうに出たものですから、何かもうアジはこれ以上食べてはならぬのだといったふうな誤解を与えた。その点については、私
どもの説明が不十分であったことは反省をいたしておりますが、これは科学的な
一つの前提を置いての数でございます。
ところが、その二、三日
あとでございましたか、漁業
関係者の団体が
環境衛生局長のところに来たときに、魚はそんなによごれていませんよ、もっと食べられるのじゃございませんか、こういう話になったわけです。そこで実際の汚染度はどのくらいかということが問題なんです。すなわち、
先ほどの基準というのは、〇・三PPMまでぎりぎり汚染されている魚でもこれだけ食べられるのですというのが、安全基準というものの科学的な説明なんです。ところが、その説明が十分でなかったという点もあります。そこで、実際はどの程度かといいますと、御承知のように、
昭和四十五年から四十七年の三カ年にかけて、環境庁、
厚生省でおもな海域の魚を調べたことがございます。それはもちろん完全な
資料でないかもしれませんが、その実績を見ますと〇・〇八PPM、これが平均でございます。これは実績なんです。実績は〇・〇八PPM、こういうことなんです。ですから、そうなると〇・三PPMが限界でございますから、〇・〇八PPMきりよごれてないとすれば、魚はその四倍近い三十何匹食べても差しつかえない、これは実績の上の数値でございます。したがって、私
どもは終始一貫——これは二転、三転とよくいわれますが、二転、三転何もしてないのです。ただ
数字の説明のしかたが多少不十分であり、
国民にその見出しだけがぱっと出るものですから、その見出しでアジは十二匹しか食べられないのか、とたんに今度は三十何匹食べられるようになったのかという誤解を生ぜしめたことは、私も遺憾といたしておるわけでございます。
しかし、そこで問題は、こういうことは科学的な問題でございまして、
国民には、何PPMよごれていて、その魚を買うときに、〇・四PPMの魚なら青くなって〇・一PPMなら白くなるなんて、色を見たってわかりません。そこで、こういう科学的な議論は別として、今度はすなわち
対策ですね。
行政の
対策としては、こんなことばかり言ったって
国民には
一つもわからぬことでございますから、
行政としてはどうするか、結局一言でいえば、汚染のおそれのある魚は市場に出さないということだと思うのでございます。汚染されておるおそれのある魚は市場には出さない、これ以外に方法はございません。そこで、この汚染されておる魚の問題についての国の
施策としては、すなわちこういうことをやるのでございます。まずさしあたり汚染のおそれのあるといわれておる九水域でございますか、この水域について監視体制を厳格にしいて、そして検査をするためには、これは科学的なものでございますから、相当精密な機械を
整備しなければなりません。そこで、その九水域についての産地市場において専門の人をそこに常駐せしめまして、そしてその検査をする機械も国の
予算において
整備してあげましょう、その九水域を所轄する県の衛生試験所にこういう機械を
整備いたしましょう、そしてそういう県には専門の方々がまだ十分そろっておりませんから、たとえば
東京とか
大阪、そういう府県には相当専門家がおりまして、小さな県にはいない。そこで、それじゃよその県から専門家も応援してあげましょう、こういうものを
計画して実施する。そうしてそこの
地域において、〇・三PPM以上の汚染をされておる魚があれば市場には出しません、こういうことにすれば
国民は安心して魚が食べられるということになるわけでございます。
そこで、いま申し上げましたような監視体制を厳格に行なうということについて、先週、
関係府県の衛生
課長を招集いたしまして、水産部と衛生部が十分に打ち合わせをした上で、汚染のおそれのある魚が今日までとれたといわれておる海域における産地市場について、この監視を厳格に行なうという措置をいま準備をいたしております。大体この十日から十五日の間に全国九
地域一斉に汚染魚についての科学的な検討を加える、それによって汚染のおそれのある魚は市場には出さないということにいたしておるわけでございます。
それと同時に、
東京、
大阪の魚市場におきましても、
東京都、
大阪府衛生試験所においていま専門的に検査をすることにいたしました。
東京では、先般、
東京市場に流れておる魚の検体をいたしましたところ、ほとんど〇・一PPM以下、あるいは〇・一をちょっとこしたものもある、こういうのが第一回目の検体の状況でございますから、もちろん、
東京においてももっと検体を続けさせることにいたしておりますが、その実態を公表して、
東京都の市場に入ってくる魚は心配ないならないということを明らかにしていく
考えでございます。
大阪においては、たぶんきょうあたりから魚市場における検体を開始しておるはずでございます。すなわち、PPMと言いましても
国民にはわかりにくいわけでございますから、色でわかるわけでもなし、形でわかるわけでもございませんから、要するに国の責任において汚染されておる
地域の監視体制を厳格に行なって、汚染の疑いのある魚は一匹も市場には出しません、こういうことを国の
施策として行なっていくという
考えでございます。
しかしながら、総合的に
考えてみますと、私
どもの
厚生省はそういう仕事を分担するわけでございますが、さらにまた、根本的に申しますならば、水銀
関係工場については、水銀が海に流れないように汚染源を断ち切る、これがやはり一番大事なことでございます。これは環境庁が
中心になって、通産省あるいはその他と連絡をとりながらクローズドシステム化を行なう、こういうことが大事になってくるわけでございます。あるいは今日まで売れなかったといったようなことの補償問題こういうことは農林省、水産庁が責任をもってやる、こういうことになろうかと思います。私
どものほうとしては、汚染魚というものについて科学的な分析をいたしましてこの結果を発表いたします。想像でやっては
国民は不安を持ちますから、
数字を発表いたしまして、どこどこの海域ならばこういう状況です、こういうことによってやっていくことが一番適切である、かように
考えておるわけでございます。