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1973-06-21 第71回国会 衆議院 内閣委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月二十一日(木曜日)    午前十時一分開議  出席委員    委員長 三原 朝雄君    理事 奥田 敬和君 理事 加藤 陽三君    理事 笠岡  喬君 理事 中山 正暉君    理事 藤尾 正行君 理事 大出  俊君    理事 木原  実君 理事 中路 雅弘君       赤城 宗徳君    伊能繁次郎君       江藤 隆美君    越智 伊平君       大石 千八君    近藤 鉄雄君       佐藤 守良君    竹中 修一君       丹羽喬四郎君    旗野 進一君       林  大幹君    三塚  博君       上原 康助君    岡田 春夫君       坂本 恭一君    楢崎弥之助君       山崎 始男君    横路 孝弘君       和田 貞夫君    木下 元二君       東中 光雄君    鈴切 康雄君       受田 新吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制次長  真田 秀夫君         国防会議事務局         長       内海  倫君         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       田代 一正君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁長官 高松 敬治君         防衛施設庁総務         部長      河路  康君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         防衛施設庁労務         部長      松崎鎮一郎君         外務政務次官  水野  清君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省経済協力         局長      御巫 清尚君         通商産業省貿易         振興局長    増田  実君  委員外出席者         大蔵省理財局国         有財産第二課長 川崎 昭典君         大蔵省理財局国         有財産審査課長 勝川 欣哉君         文部省大学学術         局医学教育課長 齋藤 諦淳君         厚生省医務局医         事課長     手塚 康夫君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 六月二十日  辞任         補欠選任   江藤 隆美君     河本 敏夫君   越智 伊平君     田村  元君   近藤 鉄雄君    橋本登美三郎君   佐藤 守良君     中村 梅吉君   竹中 修一君     篠田 弘作君   横路 孝弘君     米田 東吾君   受田 新吉君     安里積千代君 同日  辞任         補欠選任   河本 敏夫君     江藤 隆美君   篠田 弘作君     竹中 修一君   田村  元君     越智 伊平君   中村 梅吉君     佐藤 守良君  橋本登美三郎君     近藤 鉄雄君   米田 東吾君     横路 孝弘君   安里積千代君     受田 新吉君 同月二十一日  辞任         補欠選任   赤城 宗徳君     林  大幹君   吉永 治市君     三塚  博君   坂本 恭一君     楢崎弥之助君   和田 貞夫君     岡田 春夫君 同日  辞任         補欠選任   林  大幹君     赤城 宗徳君   三塚  博君     吉永 治市君   岡田 春夫君     和田 貞夫君   楢崎弥之助君     坂本 恭一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第七号)      ————◇—————
  2. 三原朝雄

    三原委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。楢崎弥之助君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎委員 一昨日に引き続いて質疑を続行させていただきます。  きょうまた、たいへん恐縮ですが、冒頭委員長にお願いをしておきたい問題があるのであります。  委員長も御承知のとおり、かつて予算委員会において、小林元法務大臣の国会軽視ことばが取り上げられて、責任をとって辞任された事件がありました。この内容は、おわかりのとおり、国会というところは窮屈なところで、野党が質問しておるのをじっと聞いておかにゃいかぬ、時間さえたってしまえばどうせ数で押し切るんだからということで、そのことばが取り上げられて、そして国会軽視ということで責任を問われたわけです。  重ねて委員長にお願いしますが、問題がずっと解明されていけばこれは問題ないのですけれども、違法の疑いのある問題、あるいは解明されない問題点が保留されておることは御案内のとおりでありますから、ひとつ、それらがこの審議中にぜひ解明された後、これが円満に決着されるように運営のほどをお願いいたしたいと思います。どうでしょうか。
  4. 三原朝雄

    三原委員長 御趣旨了承いたしましたが、最大の努力をいたします。
  5. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そのような運営を要望いたしまして、私も勉強が足らないかもしれませんが、身の入った質疑をぜひ展開したい、このように思っております。  そこで、おととい、文書取り扱いをめぐって混乱が起こったわけですけれども、私はやはり、おとといも言いましたとおり、国会における政府側答弁の重みというものをほんとうにかみしめていただきたいと思うのですね。言ったことが数十分後に取り消されるというようなことがないように。特に、外務省アメリカ局長なりあるいは防衛局長、あの日米安保事務レベル会議に対する事務次官のメモについて、その国会答弁と違う疑いがある内容を盛られておる、こういう点。それから久保局長は、私が、この文書取り扱いマル秘扱いですか取り扱い注意ですかと言ったら、いやそんなものは何もありませんというおことばであったわけですね。拝見したところによると、取り扱い注意という判が押してある。こういうことは、わざわざそんな事実と違うことをおっしゃる必要はないのですよ。  それで、私はここで、防衛庁文書取り扱いについてもう一ぺん確認をいたしておきますが、昨年十月十九日に秘密保全に関する訓令、これが改正をされて、取り扱い注意という規定は廃止されたはずでありますが、どうですか。
  6. 久保卓也

    久保政府委員 そのとおりであります。
  7. 楢崎弥之助

    楢崎委員 長官も御記憶がありましょう。おととしの沖繩国会冒頭予算委員会で、私は佐藤首相訪米資料なるものを取り上げたわけです。そしてそのとき長官総理府長官であった。この問題は山中長官答弁によって決着がついたわけです。そのとき長官は、この文書総理府の便せんを使ってあるから非常にまぎらわしいけれども、実はこれは総理府公文書ではない、そういう公文書でないものに極秘の判を押すというのは、これは間違いであるとあなたはおっしゃいました。それと対比するならば、今回も、公文書でないとおっしゃっている。それに取り扱い注意の判を押すことは間違いである。しかも取り扱い注意というのはすでにない。だから、こういう取り扱いは間違いであるということをはっきりここで確認をしていただきたいと思うのですね。
  8. 山中貞則

    山中国務大臣 いまおっしゃったとおり、私が中心になってまとめた秘密文書取り扱いでありますから、その時点において、当時は、総理府には極秘書類は一件もないという扱いをきめた記憶があります。したがって私、就任いたしまして初めてのポストでありますから、一生懸命勉強しております合い間にも、防衛庁における秘密書類取り扱い、あるいはまた長官まで上がってこないで消えてしまう書類があるのではないか、それらの取り扱い等について全部詳細な説明を求めました。もちろん、そのときに問題になっております文書があって、それに取り扱い注意という判こを押してあることについては、私がそこまでまだ目が届いていなかったということでありますから、いま御指摘のとおり、そのような取り扱いの原則にもとる行為は今後いたさないようにいたします。
  9. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それを確認をして先に進みたいと思いますが、久保局長は、参議院予算委員会、四月段階において、ファントム空中給油装置の問題についてやはり虚偽答弁をされて、そして参議院でおわびをされておりますね、申しわけなかったと。このときは、まあ私どもの情状によって別に責任を追及することはしなかった。今回二度目ですね。私はここであえて局長クラス責任を云々はしたくありません。しかし、そういうことを続けられるならば、少なくとも国会における答弁は、あなたは今国会中自粛してなさらないように、というぐらいのことを私は言いたいのですよ、大体は。そうでしょう、あんなうそを平気で言われるのだから。(「かわりがいない」と呼ぶ者あり)おっしゃるとおり、かわりがいないという感じもするのですね、率直にいって。そこは私もよく考えて、やはり審議が大事ですから、今後そういう——言えないことを言えないとおっしゃることはやむを得ぬと思うのです。また、自分が気づかずに間違ったことを言われるのもやむを得ぬ場合がある。しかし、うそとわかるものを、虚偽のことを言うということはいけないと私は思うのですね。以後厳重にひとつ注意をしていただきたいと思うのです。
  10. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、いままでの防衛庁の全体としての答弁、あるいは国会の臨み方が、何か隠しごとがあるような、問われて追及を逃げるような姿勢があるように私も若干見受ける点がありましたから、そういうことでなくて、賛否はあっても、防衛論争というものはその本質を堂々と議論すべきものであって、それに対して与野党ともに、合意は得られなくとも理解を深める対話の国会をやろうということを、初めから幹部に訓辞しております。  また防衛局長の問題は、参議院で、空中給油装置を地上に使う、その実験をやって八分から四分に縮めておりますというようなことを言ったのですが、あれは民間でやっていたんだという、まあ制服ではありませんから、事実行為の誤認があった。この点は本人がわびております。今回のことは私自身の責任でもありますし、文書取り扱いについての注意はもうすでに示してありますから、私の就任以前に、直前に起こった問題でありますので、今後私が責任を負ってきちんと統制してまいります。
  11. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そういう点では私も合意できるのです。たいへんけっこうだと思います。  そこで、国の安全保障というものは絶対のものはございません。社会党も、非武装中立政策こそ一番危険性の少ない政策ではないかということを訴えておりますけれども、しかしこれは、絶対のものであるという形で訴えておるのではないのです。少なくとも今日政府から出されておるその安全保障政策よりもより危険度が少ないのではないかという相対的な形で出しております。したがってきょうは、そういう点で政府安全保障政策に対するわれわれの批判を十分聞いていただきたい。そしてまた私たちの考え方も言いますから、賛成、反対は別として、そういう形で私は審議を尽くしたい、このように思っております。  そこでまず、今度増員計画が出ておるのですが、いままで四次防について装備はいろいろ論議いたしました。私も予算委員会でずいぶん論議いたしました。きょうはその装備以外の点で、四次防の実態をまず冒頭にお互いに明らかにしておきたいと思うわけであります。  そこで、増員計画が出ておりますが、四次防の最終限度五十一年段階ですね。五十一年段階では各自衛隊定員はどうなるのか。来年度からの増員計画ですね。それを年次別に、各自衛隊ごとに、しかも各自衛隊自衛官予備自衛官婦人自衛官ごとに、ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  12. 久保卓也

    久保政府委員 現在、装備の各年度ごとにどの程度購入調達するかという計画を、四次防の具体化として製作進行中であります。したがいまして、年度別人員をどういうふうにするかということは、いま申し上げた装備調達整備計画に対応して決定されまするので、年度別はまだ出ておりません。いずれ出ましたらもちろん御報告をいたします。  そこで、現在わかっておりまするのは装備の総体でありまするので、その結果、年度間、つまり四次防間においてどの程度整備されるかということについて御報告申し上げますと、四十七年度から五十一年度までの間では陸上自衛隊が一千名、これは現在二法案に計上されているものであります。海上自衛隊が約四千三百人。なお念のために申し上げますが、この人数につきましては、大蔵省合意をしたということではありませんで、防衛庁内部での検討数字であることを申し添えておきます。それから航空自衛隊が約三千七百人。合計で約九千人ということになります。  それから、この約九千人のうちで、二法案改正で四十七年度、四十八年度分として要求されているものは五千六百七十七人ということになります。したがいまして、その差し引きは四十九年度から五十一年度で約三千四百人ということになります。  また予備自衛官につきましては、これはこの期間中でありますが、海上自衛隊で千八百人、それから航空自衛隊が千五百人ということになっております。海上自衛隊の場合には、本年の二法案の中で三百人要求しているところでありますが、あと四十九、五十、五十一が五百人ずつ。それから航空自衛隊も四十九年度から五百人ずつということになっております。
  13. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私がいただいた資料と若干違う点がありますから、もう一ぺん確認します。  そうすると、いまの御答弁でいけば、まず陸上自衛隊については、自衛官は十八万で終わる、予備自衛官は四万五千人になるのではないか、婦人自衛官は約千五百人になるのではないか。今度は航空自衛隊でいきます。まず自衛官は約四万六千人程度予備自衛官は、航空自衛隊はいままでございませんでしたが、来年度から要求がある予定で、最終的には千五百名。同じく婦人自衛官も、航空自衛隊はいままではなかったけれども、来年から要求が始まって五百人。次に、海上自衛隊自衛官最終の映像は約四万三千名。婦人自衛官は、海上自衛隊もございませんでしたが、来年度から要求が始まって最終年度五百人。予備自衛官は前からあるわけですけれども、最終五十一年度には二千四百人。大体そういう予定であるということでよろしゅうございますか。
  14. 久保卓也

    久保政府委員 先ほど婦人自衛官のことを申し上げませんでしたのと、それから海上自衛隊が毎年度五百人ずつと申し上げたのは、ことし三百人すでに二法案の中で入っておりますので、六百人ずつということをちょっとつけ加えさせていただきますが、あとはおっしゃるとおりであります。
  15. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、今度の防衛二法では、最終的には結局、定員は二十六万六千四十六人ということで出ておるわけですね。最終的には二十六万六千四十六人。この数字は今度は予定でいくと、五十一年度には総数どうなりますか。約一万人ふえることになるのではありませんか。
  16. 久保卓也

    久保政府委員 いまの二法案末の数字に対しましては三千四百ふえるわけでありますが、現在四十五年度定員に対しては約一万ふえるわけであります。
  17. 楢崎弥之助

    楢崎委員 五十一年度の姿を言っているのです。最終的には定員は……。
  18. 久保卓也

    久保政府委員 ですから、二法案が通過した場合の定員に加えて、五十一年度末は約三千四百人ふえる。それから四十五年度定員、つまり現在の定員でありますが、それに対しては約一万人ふえるということになります。
  19. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そういう増員計画を一応皆さん方としては今後予定されているということがはっきりしたわけであります。特に、いままでなかった航空自衛隊関係予備自衛官婦人自衛官が来年度から要求が始まる。並びに、いままでなかった海上自衛隊婦人自衛官が、これまた来年度から要求が始まる、こういう新しい形が来年度から予想されているわけであります。  今度は各自衛隊について、部隊編成についてお伺いをしたいわけです。特に新しい装備中心とする新しい編成部隊について、それを中心にしてお伺いをしてみたいと思うわけです。  まず陸上自衛隊、いまは戦車群でありますけれども、これを戦車団にする計画がありますか。
  20. 久保卓也

    久保政府委員 これは四十九年度事業計画として陸幕で持っているわけでありまして、ちょうど四十九年度事業計画は、現在事務的に陸幕と私のほうとで協議をしている段階であります。私の手元にもまだ上がっておりませんが、陸幕計画を持っていることは私も承知をいたしております。今後どういうふうになりますか、検討の問題であろうと思います。
  21. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私がいまからお伺いするのは大体予定でございますから、そういうことで私も聞いておるんです。確定ではもちろんないということははっきりしております。  それから、来年度予定をされております第七高射特科群ホークですね。これは西九州に置かれるわけですが、大村というのはきまったのですか。
  22. 久保卓也

    久保政府委員 大村地区の近くの竹松という場所予定をいたしております。
  23. 楢崎弥之助

    楢崎委員 次に五十年度予定の第八高射特科群阪神に置かれる予定でございますけれども、阪神のどこですか。青野原じゃないですか。
  24. 久保卓也

    久保政府委員 第八高射特科群は五十年度に新設の予定でありますが、阪神地区、その中で青野原一つ候補地でありますが、自衛隊施設の中で適当なところということを考えております。
  25. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その際の配置人員は大体どのくらいでございますか。それと、また聞くところによると、中部方面のヘリがこの第八高射特科群と一緒に行くということを聞いておるんですが、どうでしょうか。
  26. 久保卓也

    久保政府委員 約六百名余でありますが、ヘリコプターの件は、考え方としてないわけではございません。これはいま陸幕検討中の問題であります。
  27. 楢崎弥之助

    楢崎委員 次に多連装ロケット発射機、これはいつごろ装備する予定ですか。
  28. 久保卓也

    久保政府委員 五十一年度末ぐらいの予定になっております。
  29. 楢崎弥之助

    楢崎委員 五十年度に二十五、五十一年度に十、五十二年度に十五、計五十を予定しているんじゃないですか。
  30. 久保卓也

    久保政府委員 ちょっと数字あとでチェックいたしまするけれども、装備調達とそれから部隊編成との食い違いかと思いますが、装備の点、部隊編成の点もあわせて確認をいたします。
  31. 楢崎弥之助

    楢崎委員 次に航空自衛隊についてお伺いします。ナイキの第六大隊は、幾つの高射隊で、場所はどこを予定されておりますか。
  32. 久保卓也

    久保政府委員 四次防では、ナイキ部隊は二高射群を建設し、一が準備ということになっておりますので、そのうちの一つ沖繩で、いま御審議中のものにかかわるものでありますが、四十九年度青函地区に第六高射群、それから四次防末までに第七高射群準備をいたすことになっておりますが、それの配置はおおよそ中国地域ということだけで、具体的な場所確認しておりません。なお、高射隊は大体四隊の単位であります。
  33. 楢崎弥之助

    楢崎委員 このナイキ第六大隊ですが、四十九年度に一中隊、五十一年に一中隊、五十二年に一中隊、そしてあと五次防でなお一中隊予定しているのではないか。そしてその中に、北海道の八雲、それから東北の車力が含まれているのではないか、こういうふうにいままでの経過から私、想像するのですが、どうですか。
  34. 久保卓也

    久保政府委員 隊別に申し上げますると、四十八年度分、これは沖繩でありますから三隊でありますが、そのほかは四十九年度の一隊分は第本局射群のもの、それから五十年度及び五十一年度の一隊分は第四高射群のものが編成されます。それから第六高射群が五十二年度に出てまいります。それとなお、先ほど準備と申し上げた中国地域のものが第七高射群として装備ができてまいりますのは五十三年度ということで、青函地区につきましては、これは自衛隊施設の中で整備をするという考え方を持っておりますが、場所はまだ確定をいたしておりません。
  35. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ナイキの第七大隊は五十三年に一中隊置かれるのでしょう。美保中心として四中隊置くんじゃないですか。
  36. 久保卓也

    久保政府委員 ホークの場合には機動が十分に可能でありまするので、これは一カ所にまとめても差しつかえないわけです。同様にナイキにつきましても、自衛隊の場合にはいわば半機動性を持っておりまするので、必ずしも一カ所にまとめることが不適当とは考えませんが、しかし、本来のたてまえから申しますると、関東でも西部でもそうでありまするように、あるいは北部でもそうでありまするように、なるべく四隊なら四隊というものが適切な火網を構成いたしまするように分けて配置をいたしたいという考え方を持っております。したがいまして、場所が得られるかどうかは別でありまするけれども、やはり四隊を適当な地域に分けて分散配置をしたい、可能であればそういうふうに持ってまいりたいと現在考えております。
  37. 楢崎弥之助

    楢崎委員 次にナイキの第四大隊、これは五十年に一中隊、五十一年に一中隊置くようになっておりますけれども、この五十年の一中隊能勢、五十一年の一中隊高森あたりではございませんか。
  38. 久保卓也

    久保政府委員 五十年度の一隊は大阪周辺ということで、能勢が従来候補地にあがっておることは確かでございます。しかしながら、土地の取得がきわめて難航しておりまするので、これまたそういう方向で確定するというふうにはまいらないかと思います。それから火網構成関係からいいまずると、五十一年度の一個中隊はもう少し南のほうに持っていく。これはまだ場所が完全に確定をされておらないという段階であります。
  39. 楢崎弥之助

    楢崎委員 次にいわゆる新装備部隊に移りますが、F4EJファントム部隊編成、これは百二十八機、五スコードロンになるわけでしょうが、四十八年度に三〇一スコードロンが百里、四十九年、三〇二スコードロンが千歳、五十年に三〇三スコードロン小松、同じく三〇四スコードロン築城、五十三年に三〇五スコードロン那覇に行って、これは那覇F104とかわるわけです。こういう予定じゃございませんか。
  40. 久保卓也

    久保政府委員 現在の予定では、四十八年度で百里、四十九年度で千歳ということになっております。で、その後の計画は必ずしも明確ではございませんが、五十年度以降において小松築城、それから五十三年度ごろには、F104が減耗いたしまする那覇において104にかわるという予定でございます。
  41. 楢崎弥之助

    楢崎委員 特に、せんだって御答弁なさいましたね、那覇ファントムを置くというのは。  次に、RF4E部隊、これは十四機ですが、どこに置かれますか。
  42. 久保卓也

    久保政府委員 以下、全部事務的な予定段階検討段階でございまするので、庁内ですらきまっておらないことをお断わりいたしておきます。  RF4Eは一応入間編成をいたしまして百里に持っていく。百里に持っていく時期は、正式に部隊編成がされる時期は、百里で五十年度という見込みでおります。
  43. 楢崎弥之助

    楢崎委員 四十八年、つまりことしに入間に置いて、そしてそれを五十年に百里に持っていく。それから五十年には百里に本部と五〇一スコードロンを置く、こういう予定ですね。  次に、C1中型輸送機、これは先行型入れて二十六機のはずですが、この司令部の四〇一スコードロン、これは五十年に美保に置いてそれを小牧に移す。それから四〇二スコードロン、これは入間に置く、そういう予定でよろしゅうございますね。
  44. 久保卓也

    久保政府委員 一応、大体そういう方向で検討が進んでおります。
  45. 楢崎弥之助

    楢崎委員 次に、いわゆる高等練習機T2部隊編成計画、これは五十九機でございますが、五十年に一スコードロンを松島、五十一年に第七スコードロンを同じく松島、これでよろしゅうございますか。
  46. 久保卓也

    久保政府委員 いまの見込みは、そういうような方向で進んでおります。
  47. 楢崎弥之助

    楢崎委員 次に、海のほうについてお伺いします。  掃海隊は、いま掃海隊群でございますが、これを掃海艦隊編成にする予定がございますか。
  48. 久保卓也

    久保政府委員 これは、海幕の希望としてはそういうことを聞いておりまするけれども、ちょっと防衛局としては、そう簡単にはまいらないのではないかというふうに思います。
  49. 楢崎弥之助

    楢崎委員 次に、潜水艦、これも現在は隊群でありますが、いよいよ潜水艦隊を編成するのではありませんか。
  50. 久保卓也

    久保政府委員 これも海幕の非常に強い要望がございますが、なかなかむずかしい問題で、私自身まだ検討しておりません。したがって、事務当局ではそういう名前を、一応文書といいますか、資料をつくるときに書いてまいりますが、私自身検討しておりませんので、ちょっとこれは何とも言いかねると思います。
  51. 楢崎弥之助

    楢崎委員 海幕の希望としては、五十年にいよいよ潜水艦隊を編成したいという希望のようですね。間違いありませんか。
  52. 久保卓也

    久保政府委員 海幕の希望はそのようであります。
  53. 楢崎弥之助

    楢崎委員 今度は護衛艦についてお伺いします。  まずDDK、これが二千トンから二千五百トンになるわけですが、四十九年度から一隻、五十年一隻、五十一年一隻の予定でございましょうけれども、これはDDK、つまり、ミサイル駆逐艦ですが、これは短SAMを装備する予定だと伺っておりますが、これは現在いわゆる研究開発中の短SAMを装備する予定ですか。
  54. 久保卓也

    久保政府委員 このDDKは、短SAMの場合に四十九年度から二千五百トンが出てまいりますけれども、ちょっといま手帳で確認いたしますが、国産のものはたしか間に合わないはずだと思います。
  55. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ではどういうものを輸入の予定ですか。
  56. 久保卓也

    久保政府委員 現在幾つか候補があがっているそうでありますが、外国ものの輸入のようであります。
  57. 楢崎弥之助

    楢崎委員 次に、SS、潜水艦、これはいままで千八百トンですが、いよいよこれが二千二百トンクラスになるわけですね。五十年に一隻、五十一年に一隻。これは深度はどのくらいをねらっておられますか。
  58. 久保卓也

    久保政府委員 従来のものよりも百メートル以上深くなる見込みであります。
  59. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、現在が三百メートルですから、いよいよ深度四百メートルですね。これは長官、二千二百トンの潜水艦ということになると、しかもこれは涙滴型です。鋼材も全部アメリカの原潜と一緒です。そうですね、久保さん。そうすると、アメリカの原潜に例をとると、一九六 ○年に建造されたタリビーという原潜がありますね。これは二千百七十五トンです。いよいよ米側と同じような原潜の形になってくる。ただ推進力が原子力と違うというだけの話で、しかもその推進装置を入れるところはいつでも取りかえられる仕組みになるはずでありますが、どうですか。
  60. 久保卓也

    久保政府委員 私は原子力潜水艦の知識は持っておりませんが、原子力潜水艦の中でも比較的小型の三千トン前後のものがあるということも承知いたしておりますが、現在はもう少し大型のものでありまするし、もともと原子力潜水艦を日本が装備するかどうかということは、歴代の長官がお答えになっておりまするように、防衛庁としてそういう計画なり考え方を持っておるわけではありませんで、原子力推進機というものが一般化した場合にどうするかという相当将来の問題でありまして、事務的な、あるいは実務的な問題としては、私どもは全く考えておりません。
  61. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この原潜の問題については、四十六年の予算委員会でやっておりますから、あなた方は最終決定ではないけれども、検討しておることは事実でしょう。あのとき明らかにしたじゃありませんか。それはここではもう蒸し返しません。ただ、こういう事実を私は指摘をいたしておきます。いよいよ四十九年度から二千二百トンの米国原潜に匹敵する潜水艦が出てくる。しかも深度もこれまた百メートル深くなって四百メートルになる。まさにアメリカの原潜と同じ能力を持つようになる。これを指摘をいたしておきたいと思います。  それからAOE、補給艦です。これもいよいよ五千トンクラスが出てくるのでしょう、五十年に。どうですか。
  62. 久保卓也

    久保政府委員 そのとおりであります。
  63. 楢崎弥之助

    楢崎委員 同じく五十年に装備予定のMASHを一機つくるという話でございますが、MASHとは一体どういうものですか。
  64. 久保卓也

    久保政府委員 これも国会で問題になりましたDASH艦というのが従来七隻ございましたけれども、DASHというものがアメリカで生産をしなくなりまして、購入がだんだんできなくなりました。DASHは無人ヘリで、艦艇に搭載をして、艦艇から操縦をして、潜水艦を捜索して爆雷を投下するというものでありましたが、DASHのかわりに、これは米国でもイギリスでも検討されているわけでありますが、やはり人を乗せた小型のヘリコプターでもって——DASHの場合ちょっと間違って申しましたが、捜索機能を持っておりません。そこで探知、捜索機能を持たせて、なおかつ爆雷を投下し得る、魚雷を投下し得るというような機能を持たせるものとしてMASHというもの、ドローンのかわりにマンドということになりますが、検討されているわけであります。  そこで私どものほうでも、DASH艦というものがありまして、それの甲板をある程度改造を加えることによって小型ヘリを搭載することが可能であろうという見通しを持っております。そこで、そういうものを装備体系として整備するかどうかという決定はまだいたしておりません。四次防の中ではいたしておりませんけれども、一応そういうようなことが対潜装備としてのシステムとして有効なものであるかどうかということを検討したいという意味で、四次防の中でMASHを一機整備することにしております。
  65. 楢崎弥之助

    楢崎委員 時間の許す範囲で新しい四次防の実態というものを明らかにしたつもりでありますが、空のほうは、一応ファントム採用で新装備を一段落させて、あと残っているのはAEWとPXL、海のほうが非常に強化をされつつあるという実態が明らかになったと思います。  そこで、私は本論に入りたいと思うのですが、まず、政府・自民党の防衛政策に対する私たちの批判を冒頭述べてみたいと思うのです。これは自衛隊とは一体何なのかということも含めてであります。私どもの考え方の結論を先に申し上げ、なぜそういう考え方をわれわれは持つのかというのを、以下具体的な事実と資料をもって裏づけをしてみたい、このように思うわけであります。  政府・自民党の防衛政策に対する私どもの批判は、まず何よりも国民不在の防衛計画ではないか、そのためにまことに防衛政策が観念的な構想になっておる、これが一番であります。二番目に、アメリカのアジア戦略における反共自由諸国同盟軍の一部隊を構成する下部構造にしかすぎない。(「それは違う」と呼ぶ者あり)違うかどうかはよく聞いてください。あなた方の言いぶんも聞きますから。特に対外的には航空自衛隊海上自衛隊がその役割りを果たしておる。三番目に、国内的には自衛隊は日米両軍事基地を守り、自民党の支配体制を擁護する治安行動部隊である。特に陸上自衛隊がそうではないか。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)それをまた証明します。四番目に、財界主導型の防衛政策の中で……(発言する者あり)ああいうやじがある間は私はやりませんから……。(「やじるのはあたりまえだ」と呼ぶ者あり)
  66. 三原朝雄

    三原委員長 不規則発言はひとつ慎んでいただきたい。
  67. 楢崎弥之助

    楢崎委員 よく聞いていただかないといけないと思います。  財界主導型の防衛策の中で兵器産業に奉仕し、死の商人をささえる産軍癒着の防衛政策を非常にとられておる。一番危険なのは防衛政策が財界主導型になっておる、そういうふうに私どもは思っておるわけです。いまも不規則発言がありましたが、なぜわれわれがそういうふうに思うか、以下その具体的な事実と資料で明らかにしてみたいと思うわけです。(「労働組合に頼んでゼネストをやってもらっている政党もあるんだよ」と呼ぶ者あり)それでまず直接侵略の可能性について論及してみたいと思うわけであります。  第二次大戦後、実際に起こった戦争、あるいは国際的な紛争、これの類型、それと日本の諸条件を対比をしてみたいと思うわけであります。侵略があるかもしれない、あるかもしれないといっているけれども、大体、第二次大戦後起こった実際の紛争なり戦争の類型というものは、ある程度きまっておると私は思います。  まず第一番に朝鮮戦争とベトナム戦争型ですね。これはどちらも第二次大戦後の米ソの対立によって成立した分裂国家である。しかもいわば内戦というものに外国の軍隊が介入をしておる、これが一つの特徴であります。二番目にパレスチナ・スエズ・中東戦争型ですね。これは御案内のとおり、ユダヤ人のシオニズム運動によって、一九四八年アラブ諸国の反対を押し切ってつくられた人工国家であるイスラエルという国家に端を発しておる。そしてこの特徴は、建国の事情のほかになお非常に国境を接しておるという特徴があります。三番目に、ハンガリーあるいはチェコ事件の型ですね。これは双方ともソ連の衛星国であります。そうして自由化を求める民族の蜂起にソ連が武力介入をしたケースであります。さらに特徴的なのは軍事同盟関係にある。ワルシャワ条約機構ですね。これまたいずれも国境を接しておる。  私は、実際に起こった戦争、紛争の類型は、大体それになると思うのです。そういう類型と日本の諸条件を考えてみた場合に、まず建国にまつわる人工的な特殊事情、つまり分裂国家では日本はありません。また宗教的な問題もない。それから民族的な問題もない。日本民族という統一の民族でありますから。日本の場合は国境も接していない。  ただ一つ似通った点があるのは、軍事同盟関係を持っておるという点が似通っております。つまり安保条約であります。そこで問題は、もし似通っておる可能性があるとしたら、この軍事同盟関係、安保条約というのが、いままでの実際に起こったケースから考えると非常に問題になる。これをまず指摘をしてみたいと思うわけです。  それから今度は、次に実際の侵略の定型というものが一般的にあると思うのです。これはたとえば資源が少ない国が資源を獲得するために起こすという問題が一つありましょう。資源獲得のための侵略の可能性というのが一つ考えられる。しかし日本の場合は、もう御案内のとおり、これは貿易でなくてはいけない国です。資源が非常に少ない国であります。だから資源獲得のために侵略が起こるという可能性はまことに少ない。あるいは皆無であるかもしれない。二番目に、領土を獲得するという一つの侵略の可能性というものが一般的にはある。しかし、これはたとえ話ですが、社会主義国が日本に軍事基地を求めてくるメリットというのがあるのでしょうか。これは私はないと思います。次に、高度の技術獲得、それも一つの欲望としてありましょう、侵略の可能性として一般的に。しかし、こういうことは、この時代にあっては、人事交流なり、経済あるいは産業プロジェクトを交流すれば済むことであります。一般的な経済外交。  だからここでも、もしわが国に軍事的な脅威があるとすれば、具体的な事実から考えて、あるいは一般的な類型から考えて、軍事同盟関係、つまり日米安保条約が一つの問題になるということを私は結論づけられると思うのであります。それで、私どもは、軍備を持たないことこそ侵略の可能性を減らす道ではないかということを訴えておるわけです。  そこで、実際に人類に非常な脅威を与えておるものが私はあると思います。実際に真に差し迫った脅威とは何なのか、危機とは何か。これはここでは釈迦に説法であります。日本自体が死の海に浮かぶ四つの島に化そうとしておる。公害問題あるいは環境破壊、廃棄物によって人類は滅びる。日本自体もその問題に直面しておる。こういうことにこそ、日本人のエネルギーいうか、予算というか、現実に差し迫った脅威にこそ、そういう予算なりエネルギー、あるいは英知というものを働かすべきではないか、こういうことを私どもは考えるわけです。軍備に金を費やす、これは人的にも、あるいは資源的にも、あるいは予算的にもたいへんな浪費ではないか、こういうふうに私どもは考えるわけであります。  そこで一体……(「何言ってるのかわからぬじゃないか」と呼ぶ者あり)わかりませんか。(「むだな時間を費やしておる」と呼ぶ者あり)
  68. 三原朝雄

    三原委員長 お静かに願います。
  69. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それがわれわれの批判であります。そこで以下具体的事実で私はいまからお伺いをしていきます。  なぜそういうふうに思うか、まず第一番に明らかにしなければならないのは、あなた方の国防白書でも指摘しておるとおり、一体何から何を守るのかということが一つの大きな問題でありまして、これが原点であります。まず安保条約の第二条についてお伺いをしてみたいと思うのです。安保条約の第二条、特に前段であります。「締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより」云々とあります。この「自由な諸制度」の意味であります。つまり自由主義、民主主義に基づく政治、経済、社会体制を意味しておるというのが従来の答弁であります。前の政府の資料によってもそうなっております。とすれば、この第二条の「自由な諸制度」というのは、社会主義あるいは共産主義による政治、経済、社会体制ではないと思いますが、どうですか、その点。
  70. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 安保条約第二条「締約国は、その自由な諸制度を強化することにより」、この「自由な諸制度」とは何だということでございますが、政府がかねて申してまいりましたように、自由と民主主義を信奉する制度、こういうことであるわけでございます。
  71. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私がそれは指摘したでしょう。政府がそう答えておりますから聞いておるのです。社会主義あるいは共産主義の政治、経済、社会体制ではないですね。どうですか、その点。
  72. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 自由と民主主義、これがここでうたわれていることは、ただいま御指摘のとおりであり、また私どももそう考えております。
  73. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私の聞いておることに答えてください。社会主義、共産主義の政治、経済、社会体制をさしておるのじゃないのですね、この「自由な諸制度」は。どっちかはっきりすればいいのです。
  74. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 アメリカは社会主義国、共産主義国ではございません。ここに、第二条に「締約国は」ということをうたっておりますのは、締約国であるアメリカ並びに日本でございまして、そういう意味から申しますと、自由と民主主義ということになりますと、アメリカから見ますと、まさに社会主義あるいは共産主義というものは、これに想定されておらないということであります。
  75. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうでしょう。はっきりしているでしょう。このことはつまり現支配体制を守るということですね。これは防衛庁が出されました国防白書の原案にもありますね。「特に重要なのは、わが国の発展、国民の繁栄の基礎条件である政治体制、経済、社会体制等を守ることである」。何を守るかというと、その体制を守ることであると書いてあります。それからさらに「右の政治、社会体制を基礎とした国民の生活様式であり、現在の日本の繁栄をもたらした経済体制である」、つまり自由主義経済体制をこの第二条はいっておるのですね。もしそうであるとするならば、この第二条の前段というのは、端的に言うと社会主義、共産主義をとらないというイデオロギーを表明しておることになる。したがって、現行の制度、体制、すなわち自民党政府の支配体制の強化をアメリカに誓約したことにこの第二条はならざるを得ないのです、結論として。したがって、現行秩序を含む現支配体制を否認をして、それを変革しようという政治運動は、たとえ平和革命であってもこれは防衛の対象になるんじゃないですか、そうなら。どうですか。
  76. 山中貞則

    山中国務大臣 安保条約の解釈はまさにそうでありましょうし、外務省の述べたとおりだと思いますが、かといって、武力もしくはそれに近いもので国家体制を破壊するというようなこと等をそれは意味するものである。そういうものも意味するものである。これは間接侵略の話に移りますけれども、そうでなくて、自分たちの国民に自分たちの主張に同意を求めつつ、合法的な手段によって自分たちの主義、主張がその国の政治に責任ある立場を得るように努力すること、このことについては何ら安保条約の介入すべき対象ではない、そう思います。
  77. 楢崎弥之助

    楢崎委員 第二条前段を条約論として見れば、私がさっき言ったとおりになるのです。いまの長官のお答えは、政治論的なものが含まれておると思います。それは長官のお考えとして承っておきます。  そこで、いまも長官がくしくも言われたのですけれども、治安出動ということばを出されたわけです。この治安出動がそれにからんでくるわけです。自衛隊法の七十八条「間接侵略その他」という「その他」が入っておりますね。これはたいへん私は微妙である。つまり、現在の政治体制、支配体制を変革をしようという政治行動は、この「その他」の中に含まれるのではないかと私は思わざるを得ない。私どもはなぜそう思うかというと、防衛庁のいわゆる隊内資料でそう思わざるを得ないのです。  まず防衛研修所研修資料、この治安行動関係は、六〇年のあの安保問題の間近かの五九年、あるいは六〇年のとき非常に自衛隊の隊内資料がふえておりますね。それから次は七〇年の安保改定期の例の時期です。そして今日実は私はなぜこの問題を取り上げるかというと、例をあげれば小選挙区の問題の強行の件であります。世上、安保のあの騒動以上になるのではないかということをいわれている。安保のときには自衛隊が出動準備をしておったのは、もう御案内のとおりであります。だから私は、この治安行動の問題を今日の問題としてもう一ぺんここで取り上げてみたい、こういうふうに思うわけです。  いまの隊内資料、「国内紛争と革命の一般的考察」、この隊内文書では、治安警備任務は対敵行動の一つとして述べられております。これは教科書なんですよ、研修する場合の。特に労働運動が非常に敵視をされております。さっきもゼネストということばがありましたが、ゼネストが出てきております。ちょっとこれを披露してみたいのです。このうちのいわゆる防衛対象になるいろいろなものを述べておりますが、たとえば「現在わが国における階級闘争が日共及び社会党を中心とする政治闘争として総評を中核とした労働運動を中心とする経済闘争として、また文化運動、平和運動を中心とするイデオロギー闘争として行なわれておることは周知の事実である」。さらに「農民運動、学生運動、婦人運動、青年運動等の大衆運動が多かれ少なかれ階級闘争的性格を有していることは言うまでもない。なお、特殊な階級(身分闘争)としては部落解放運動がある」。このように指摘をしておるわけです。そして「わが国の社会党及び総評は」——社会党がさんざん出てくるのですね、どういうわけか。「わが国の社会党及び総評は第一次大戦以前の社会民主主義と呼ばれるべき特異な立場に立っている。特に政権獲得の過程において基幹労組のゼネストを示唆するようないわゆる向坂理論は共産主義のいわゆる平和革命論との間に戦術的差異を見出しにくい」。それから今度は非合法手段のことです。「特定の政府政策あるいは法規等に反対してなされるスト、政治ストや、関係のない産業の場合はもとより、同種産業におけるストに協力するためのストは原則として非合法である」。こういう指摘ですね。  さらに、これから先非常に問題だと思うのは、これは自衛隊法をいまさら説くまでもありません。つまり政治的な中立であります。そのために、政党に対する批判とか支持とか、そういうものはしていけないようになっています。私は条項を言いませんよ。そのために、そういう運動のために本を印刷したりすることができないのです。この中にこういう個所があります。「いわゆる向坂理論のように、政権奪取するために議会闘争とともに議会外大衆闘争、特に基幹産業のゼネストを示唆する場合にはその革命が非合法的性格を有することは明らかである」。社会党がゼネストをもし示唆したら非合法になる。「政権の獲得は議会及び議会外大衆闘争による圧力を通じて平和的に達成するが、平和的に達成しても、いわゆる政権獲得後においてはいわゆる永久政権を策し、反対党の存在を認めない構想の場合、このような反民主主義をいかに評価すべきかである」。もしこれを言い直すと、これは差しさわりがあるかもしれませんけれども、小選挙制度を強行して反対党をつぶす、圧殺する、そして自民党政権の永久化をはかる、こういうことは非民主主義的な行動であるということにもなるのです、これによると。(「そのとおりにはならないよ」と呼ぶ者あり)いや、そのとおりになるのだ、書いてあるのだ。そして「以上のような平和革命について最も注目すべきことは、その手段としてとられる大衆闘争の法的性格いかんによっては警察及び軍隊等の実力行使が問題とされる場合がある」。つまり自衛隊というものがかまえておるわけですね。例の有名な杉田元陸幕長の「よい中隊の育成」では、これは母親大会でも、母のしつけを通じて、家庭のしつけを通じて間接侵略の策謀の一つであるというふうに指摘しておるのですね。  こういう例は数限りないのです。たとえば「航空自衛隊幹部学校記事」に載っております最優秀論文、これは昭和四十三年です。三等空佐松本正美、この人は、いざというときには単に国民に銃口を向けておるだけじゃない、親戚、知人にまで向けておる。いいですか。「いざというときには親戚、知人を含む同胞を対象として不安や動揺を生じない隊員を育て上げることは、各級指揮官の切実な問題として銘記してかからねばならない」。いざというときは知人や親戚に対しても動揺しちゃいかぬ、そういう隊員を育てるのが指揮官の心得である、これは自衛隊の隊内文書なんです。だから、私どもはさっき言ったような結論のように思わざるを得ない。これはわれわれの独断じゃないのです。現実にいわゆる隊内の資料によってそういうふうに思わざるを得ないのです。  それで、たとえば小選挙区制反対運動、今後また臨時国会等で出してこられるとしますね。そうすると、社会党なり、あるいは民社党もたしかそうですが、せんだっては同盟のゼネストを云々されておったようですけれども、こういうことをいえば、いわゆる自衛隊の対敵行動の対象になると指摘しておるのです。こういう点は長官どう思われますか。
  78. 山中貞則

    山中国務大臣 いまのあなたの最初に読み上げられた資料ですが、それは何なんでしょうか、よくわからないのですが。そういうことで自衛官の教育などをやっておるはずは絶対にないはずでありますけれども、そこのところをちょっと教えていただきたい。
  79. 楢崎弥之助

    楢崎委員 先月二十九日になられたばかりで、御承知ないと思いますけれども、防衛研修所の研修資料、つまり講義資料なんです。あるいは自衛隊の研究論文の最優秀論文をいま披露したのです。
  80. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 ただいまの最初の防衛研修所の資料の問題でございますが、防衛研修所は、御承知のように、自衛隊の管理運営に関する基本的な調査研究を行なうとともに上級幹部の研修を行なう任務が与えられております。したがいまして、治安行動という自衛隊の任務に関連をいたしましてそういう研究をやっておりますけれども、その中で、特定の政党なりあるいは団体を治安出動の対象とするというような研究は行なっておりません。  それから、ただいまお読みになった資料は私の手元にございません。だいぶ以前の資料であると承知しておりますが、それは教科書として使っているものではなくて、研修所の所員が個人的な立場で研究をしたものである、そういうふうに聞いております。
  81. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それにもう私は時間をとりたくないのですが、これは教科書として使っておったのです。古いといったって決して廃棄されていない。さっき言ったように、十年前の六〇年のときと今度の七〇年のときに、一番こういう研究が進んでおるのです。だからわれわれはこれをいま取り上げておるわけです。これは自衛隊はその出発点からそうでしょう。警察予備隊、それから保安隊、それから自衛隊になったんですね。警察予備隊と保安隊のときは、国内治安にこれを用いるということを当時の吉田首相もはっきり答弁されておるのです。歴史的にいっても、もともと治安部隊として陸上のほうは出発したのです。だから私は決して違ったことを言っているのではないのです。特に陸上の場合は治安行動の部隊であると私が指摘したのはそれなんです。  次に、今度は……。
  82. 三原朝雄

    三原委員長 お静かに願います。
  83. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまの政党に対する批判、そういうものは自衛隊法のいう自衛隊員の政治的な中立の条項に反すると思いますが、どうでしょうか。
  84. 山中貞則

    山中国務大臣 明らかに違反します。
  85. 楢崎弥之助

    楢崎委員 しかも国の予算を使ってこういう印刷物をつくるということも、自衛隊法でいけないということになっておりますね。どうですか。
  86. 山中貞則

    山中国務大臣 そのとおりです。
  87. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どういう措置をとられますか。
  88. 山中貞則

    山中国務大臣 その問題の文書防衛研修所ということではっきりしましたが、はたして防衛研修所でそういうものをつくって、それで教育を行なっているという事実については私は知りませんし、いま聞きましたところ、そのような教育は行なっていないというのでありまして、たとえば後段の一人の三等空佐ですか、そういう者の論文とかなんとかいう問題については、これは別な範囲だと思うのですが、防衛庁の組織の中、あるいは自衛隊の組織の中で政治的な中立をみずからが破らんとする行動というものは許されていない、これは明白であります。
  89. 楢崎弥之助

    楢崎委員 長官もそういうふうにおっしゃっていますから、これは理事会の中では資料を私は提示しますから、整理していただいて、政治的な中立に反するような文書というものは、これは処分してもらわなくちゃいけない、そう思いますが、よろしゅうございますか。
  90. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 この資料は十年前以前の資料であると思いますけれども、見せていただきまして、中を点検しまして、それが自衛隊法の政治的中立の条項に該当するかどうか調査の上、御報告を申し上げます。
  91. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これはもう私いま読み上げたとおり、だれが聞かれても政治的中立に反するのですね。だから、聞いただけではわからないという声もありますので、資料を示しますから、これについてはっきりした見解を出していただきたい。これは理事会でひとつお取り計らいを願いたいと思います。  さらに、本来、問題が起こったときに治安出動するようになっている、あるいは警察と協力するようになっていますが、昭和三十六年に通達が出まして、治安出動に至らない事態のときでも自衛隊は警察に協力するようになりましたですね。長官、聞いておってくださいよ。命令が出ないときでも警察に自衛隊は協力する。通達が出ております。それは「警察に対する物品等の支援要領 陸幕発三第二十一号別冊、通達、昭和三十六年四月」になっております。自衛隊が物品等を警察にいろいろ支援するわけです。この中でこういうことが書いてあるのです。この自衛隊から警察に貸すやつは「すべて被覆」、つまりおおいをかけること、「すべて被覆又は抹消等の措置を講じ、特に治安警備を行なう現場には、前記の措置を講じても自衛隊の物品であることがわかるような車両を通常使用させない。」なるたけ隠して隠して、おおいもかぶせて、自衛隊と書いてあったら消して警察へ貸す。もしあなた方が確信があったらどうしてこういうことをやるのですか。確信がないからでしょう、こういうことをわざわざやるのは。そういう点でもあなた方はやはり治安行動について、国民に銃口を向けるという点についてうしろめたさを感じておるのじゃございませんか。(「違う」と呼ぶ者あり)違うならなぜこういう通達を出すのです。おかしいでしょう。じゃ、この通達どうですか、長官
  92. 久保卓也

    久保政府委員 いま該当のところをさがしますが、通達があることは確かであります。
  93. 楢崎弥之助

    楢崎委員 なければ私が貸しますよ。あるのです。だから、これに対する措置もどうするか、同時にひとつ理事会で検討していただきたい。
  94. 久保卓也

    久保政府委員 「警察に対する物品等の支援要領」ということで出ておりますが、これは陸幕の通達の中に「すべて被覆または抹消等の措置を講じ」云々、そして「自衛隊の物品であることがわかるような車両を通常使用させないものとする」というのが、陸幕長であろうと思いますが、通達が出ております。この趣旨はどういうことかと申しますと、こそこそということではありませんで、やはり治安出動でない以上は自衛隊が出るべきではない、これは当然でありますが、しかし、警察が行なう場合に、いたずらに自衛隊が出動していると誤解されるようなことを生じないということのほうが、むしろ事態を鎮圧と申しますか、維持するのに都合がよろしいのではないかということで、物品の供与、物品の貸与ということは、これは行政官庁の協力関係ということで行政組織法にも出ておりますから、当然行なうべきでありますが、無用な摩擦、無用な誤解を招かないようにという配慮に出るものというふうに考えます。
  95. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その点は私どもとやはり見解が違いますよ。確信があることなら堂々となさればいいじゃないですか。そして堂々と国民の批判を受ければいいことであって、何もこそこそと、おおいをかぶせなければいかぬとか、あるいは自衛隊関係の文字は消せとか、何でそういうことをするのですか。私はたいへんおかしいと思います。  次に、アメリカのアジア戦略と日本の自衛隊関係についてお伺いします。その際に、レアード及びリチャードソン両長官の国防報告と具体的には自衛隊関係を明らかにしてみたいと思うのです。  そこで、おととい、私はこの審議上非常に必要であるということで、日米安保事務レベル会議に出された説明資料、メモを問題にしたわけですが、その際に長官は、私は聞きもしなかったのですけれども、何か予告記事が新聞に早く出て云々、それでこの資料の原案はあるかもしれないが、あの予告記事にあるようなものはないのだということを答弁されたのです。だからやはり原案というものはあるのですね。
  96. 山中貞則

    山中国務大臣 これは私がそのとき率直に申しましたように、新聞にあなたが取り上げるらしいという記事が早く出たものですから、それで私もびっくりして、もちろん調査するのはあたりまえでしょう。調べたところ、そういうことが最初の段階において文書になった。それで討議された事実はあった。しかし、それはもう事務レベルの段階の常識においてすら、私が言いましたように、日本から何かサービスしましょうかというようなことを、大体外務省が考えることもちょっとおかしいと思うのですが、防衛庁がそういうことを考えるのはおかしいというので事務レベルで消えていて、増原前長官も知らなかったことだということを正直に申し上げたわけです。私としては、あれが出たら調べるのは当然あたりまえです。
  97. 楢崎弥之助

    楢崎委員 たいへん率直でいいと思うのですね。  それで、消えたとおっしゃいますけれども、その資料はマル秘になっておるのでしょう。
  98. 久保卓也

    久保政府委員 その事務レベル会議の性格については、この前アメリカ局長からも答弁されましたとおりでありますので、その際にどういうことを次官からしゃべってもらうということについては、外に一応秘にしておかなければいけないということで最終扱いがきまるので、最初のプリントに秘の判を押したということであります。
  99. 楢崎弥之助

    楢崎委員 マル秘になっておったと思うのですが、だからそのマル秘文書をここへ出せ、出さぬというあれは、もう時間がございませんからやりませんので、必要な場合には、質疑の中で、答弁の中でいろいろやってみたいと思うのですが、それはよろしゅうございますね。出せとは言いません。
  100. 山中貞則

    山中国務大臣 もうあなたは持っておるわけですからね。しかも私のほうは、自今こういう誤解を招かないように、したがって議論についても私は指示もしましたし、また不必要な誤解を招くようなことを文書にしたり議論したり、あるいは、そういう問題等を、限られた人間が討議資料としてかりにメモを配付したとしても、そういうものは、消えたという瞬間に、それはちゃんとした廃棄処分にすべきだということできちんと処分を命じてあります。
  101. 楢崎弥之助

    楢崎委員 質疑を続けます。  それで、いわゆるリチャードソン報告、これはことしの四月にアメリカの下院にリチャードソンが報告した。アメリカの七四会計年度、それから七四年からさらに五年間の防衛計画について触れておるわけですね。これは今後のアメリカの戦略を知る上についてたいへん重要な資料だと思います。それでレアード戦略からリチャードソン戦略に引き継がれたわけでありますけれども、今後のアメリカの戦略構想、つまり現実的な抑止戦略のもとにおける、有名なことばであります、通常戦略におけるトータル・フォース・コンセプト。総合兵力構想というのですか、総合戦力概念というのですか、日本語はどうかわかりませんが、とにかくトータル・フォース・コンセプト、この中に自衛隊は組み込まれておるというふうな認識でありますかどうか、その点をお伺いします。
  102. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、アメリカのほうで総合戦略構想とでもいうべきものをいろいろいっておりますし、しかし日本の場合には、もう日本が世界戦略の中で果たし得る役割りというのはないわけでありますから、憲法に定められた範囲、しかも外国に脅威を与える戦力を持たない、国際紛争解決の手段としての戦力も放棄している、そういう日本が、日本列島の局地防衛、すなわちわが国の独立と自由を守るという意味においてならば、それは私どもの民族の問題でありますから、それはその地域における日本のみずからの力として、外国がどう評価しようと自由であります。しかし、日本がその総合戦力の中に組み込まれて、そして国際的な戦略の役目を果たしているということは、日本の自衛隊においてはできない相談であります。それははっきりしていることだと思うのです。
  103. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうでしょうか。この七四年国防白書でリチャードソン前長官はニクソン・ドクトリンを引用してこう述べております。「米軍と同盟軍は共通の安全保障の利益を追求するために総合兵力として扱われる」と断定しております。あなたがどう思われようと、日本の自衛隊は総合兵力として扱われる、こう断定しております。  さらに、ちょうどおととしレアード長官が来ました。これはおととしの七月十五日付の「朝雲」に載っておりますから事実でしょう。レアード長官自衛隊に向けて特別講話を発表しておりますね。この中でレアード長官はどう言っておりますか。「自衛隊の皆さまも現実的抑止というアメリカの新しい安全保障戦略のもとで総合兵力概念の欠くべからざる一環であることを理解され、日米力を合わせて太平洋の平和と安全保障の維持に力をかしていくべきことを知っていただきたいと思います」。もしそうでなかったら、これは反論されましたか。
  104. 山中貞則

    山中国務大臣 反論できます。それは、アメリカがどう思おうと、日本は日本の国を守るために、国家民族の生命、財産を守るためにのみ存在するものであります。かろうじて安保条約において、その範囲内において、アメリカとの間に、日本が手に負えない場合において、専守防衛を越えて急迫不正な侵害が行なわれるという場合に、アメリカがそれに手をかしてやろうという条約は結んでおりますけれども、しかし、アメリカ側のそのときの責任者がどう言ったからといって、日本のほうがそのとおりにいたしますということを国際的に約束したということにはならないと思うのです。
  105. 楢崎弥之助

    楢崎委員 このアメリカのトータル・フォース・コンセプトの根底にあるものは、アメリカと同盟国がそれぞれ防衛上の責任を分担するという姿勢ですね。どんなにあなたがおっしゃろうと、否定されようと。だから、同盟国つまり日本に対する防衛分担という構想は、何と否定されようと今後強力に推し進められる。そうでしょう。  そこでさらに、リチャードソンは、「自由世界同盟諸国が最強かつ可能な防衛上の寄与をするよう総合的兵力構想について同盟諸国と協議を進めたい」、こう言っておる。そしてリチャードソンは七月に日本に来る予定でございましたね。これはどうなりましたか。長官はかわったわけですけれども。
  106. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、アメリカがいっておることは、ヨーロッパにおいてはNATOでありましょうし、極東においては米韓、そしてアメリカにおいてはなお存在する米華というものについては、そういうことがあるいはいえるかもしれません。しかし日本の場合は、アメリカにおいても、国会や一部議論がありますように、明らかなアメリカ側から見たこれは片務条約だというような意見もあるくらい、日本の場合には全く類例のない自主憲法というものを持っておりまして、その平和憲法の名においてのみの範囲で持っておる独特な自衛力でありますから、これはアメリカも十分承知しておりますし、日本の場合のみは、その構想の中からダイレクトにそのものを受け取るべき筋合いの立場にない、こういうことで明白であります。  また新国防長官については、米韓安全保障条約に基づく定期協議でありましょうか、そのために正式に韓国を訪問する——これはまだ新長官が行くかどうかはよくわからないようでありますが、前の長官も新長官も、その帰途もしくは行く途中で、行く場合には日本に立ち寄りたいという連絡は受けております。
  107. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなた方がどんなにおっしゃっても事態はそのように進んでおるわけですよね。  それで、この際お伺いしておきますが、あなた方否定されましたけれども、総合戦力構想に組み込まれるということは、もしそうなれば憲法上問題があると思いますが、どうでしょうか。
  108. 山中貞則

    山中国務大臣 組み込まれない。日本は日本自身の国家、民族を防衛するのみの力でありますから、したがって日本自体の行動は制約されております。そのことを、日本の国土は一定期間日本自身が守るからということを前提にしてアメリカが考え、あるいは世界戦略で考えることは、これは現実でありますから自由でありましょうけれども、それと連動して日本の自衛隊が変貌して、憲法違反になるような対外的な軍事活動ができるかというと、これはできないことでありますから、これはどう言われましても、そういうあり得ないことを前提に議論するのはむずかしいんじゃないかと思うのです。
  109. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だから、もし総合戦力構想に組み込まれるということになった場合には、憲法上問題がありますねということを言っておるのです。
  110. 山中貞則

    山中国務大臣 憲法上問題にならない範囲で処理しているわけでありますから——私どもの考えはですよ。したがってそれを逸脱することはない。そうすると、アメリカがそれを越えて要求することには私どもは応じないというようなことははっきりしておるわけでありますから、そういうことがあり得ない以上は、そういうことをもしするという仮定であるならば、それは憲法違反になることはあたりまえです。
  111. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その説明資料の最終案の中には——最終案は消されておるけれども、原案の中にはこういう文章が入っておったでしょう。「安保条約の常時における運用や有事における日米間の軍事協力等の問題についても協議を進めておく必要がある」。つまりまさに軍事協力、共同作戦あるいは防衛分担についてその協議を進めたい。幾ら否定されても現実にこういうふうになっておったのですよね。  そこで山中長官はせんだっての野党質問に対して、これは十五日の鈴切質問だったと思うのですが、マラッカ海峡防衛論は憲法を知らざる者の議論である。私は、その点では率直に合意できると思うのです。違憲である、それは確認していただけますか。
  112. 山中貞則

    山中国務大臣 もう確認も何もない、当然のことだと思います。
  113. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは次に、今度は久保さんがまたちょっと一言多かったのですね、その次に答弁された中で。公海、公空上で武力を行使する場合、憲法上どこまでがその許容する範囲か明らかにされていないので、ただいま法制局で検討中という御答弁がありましたね。法制局、検討しておるのですか。
  114. 真田秀夫

    ○真田政府委員 具体的に防衛庁から当該問題について私のほうへ来ているかどうか、まあ担当部長のほうへあるいは来ているのかと思いますけれども、私のほうの見解は、楢崎委員百も御承知の、自衛権の行使についてのいわゆる三原則というものがございますので、その範囲内においてならばもちろん憲法に抵触することはないが、それをはみ出るかどうかは、事態によってははなはだ判断の困難な問題もあろうと思いますけれども、その範囲をはみ出すことになれば、もちろん憲法に触れるということに相なろうかと思います。
  115. 楢崎弥之助

    楢崎委員 AEWを採用する予定でありますが、もしAEWを採用した場合にはいわゆる電波能力が非常に充実されるわけですから、ADIZは修正されるのではないでしょうか。
  116. 久保卓也

    久保政府委員 ADIZは関係ないと思います。御承知のように、ADIZは現在のレーダーサイトを基準にしてできておりまするけれども、近間のところでは、レーダーサイトに低空侵入の場合に穴が生ずるということですから、むしろADIZより手前のところで問題が生ずるわけでありますから、AEWとADIZとは関係がないと私は思っております。
  117. 楢崎弥之助

    楢崎委員 空のほうにADIZがあって海のほうに領海侵犯の措置がないのは、どういう意味ですか。
  118. 久保卓也

    久保政府委員 領空につきましては、一応規定のもの以外については、つまり運輸大臣の許可を得たもの以外については領空侵犯の対象になるわけでありまするけれども、海上については私よく存じておりませんが、領海につきましては通常の安全航行が認められておる。したがいまして領海侵犯という問題は起こらないのではないかというふうに思っております。これは海洋における航行の自由といいますか、そういうことに関連する問題ではなかろうかと思います。
  119. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その点、私は問題があると思います。もし有事の際に、領海あるいは領空外、たとえばシーレーンですね。いまからシーレーンの問題に入っていきたいと思うのですけれども、たとえばシーレーンあるいはADIZの中で、日本の自衛隊は有事の際、米国の艦船や航空機を防衛する責務を負うことになりますか。
  120. 久保卓也

    久保政府委員 それは安保条約の運用の問題だと思いますけれども、日本側としては責任を持たないと思います。
  121. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その持たないというのは次の三つのうちのどれですか。まず第一番は能力上持てないということなのか、あるいは憲法上それはできないということなのか、三番目に安保条約第五条の制約からできないということなのか、どれでしょうか。
  122. 久保卓也

    久保政府委員 正確には法制局と外務省からお答え願ったほうがよろしいと思いますが、私の考えとしては、第二と第三の両方からであると思います。
  123. 楢崎弥之助

    楢崎委員 外務省、よろしゅうございますか。
  124. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいま防衛局長答弁のとおりでよろしいと思い、ます。
  125. 楢崎弥之助

    楢崎委員 つまり有事の際といえども領海、領空外で、アメリカの艦船や航空機、これは一般の船舶、飛行機を含む、これを防衛することは、憲法上も安保条約第五条上も違反である。そういう見解の表明だと思います。  次に、公海、公空上においてもしわが艦船あるいは航空機が攻撃されるという事態が起こった場合は、それはわが国に対する直接侵略になりますか。
  126. 久保卓也

    久保政府委員 それは一がいには申せないのでありまして、単にある日本の艦艇、商船あるいは航空機が攻撃されたという事実だけをもって、直ちにわが国に対する直接の武力攻撃とはみなされないと思います。しかし、それがさらに広がって、日本に対する直接攻撃の一環であり、そのおそれが十分であるといったような客観情勢があるならば、それはわが国に対する直接の武力攻撃であろうというふうに思います。したがって、そういった関連とあわせて考えてみないといけないと思います。
  127. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その点も私は問題があると思うのですね。それは問題を残しておきます。  結局、たとえばシーレーンにおいて日米が共同作戦をとるということは、これはいわゆる憲法違反、安保条約五条違反である。重ねて確認をしておきます。よろしゅうございますね。
  128. 真田秀夫

    ○真田政府委員 ただいまの御発言のうちの、いわゆるシーレーンにおいて日米が共同作戦をとることは直ちに違反であるというふうにお聞きしましたが、どうもそのおっしゃる御趣旨がよくのみ込めませんので、おっしゃることをそのまま私の口から確認するというわけにはまいらないと思います。(発言する者あり)
  129. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなた、いまいいと言ったんですよ。あなた答弁できないじゃないですか、それじゃ。いままで論議したでしょう。聞いていたですか。そういうことを含んでもう一ぺん確認しておるんです。
  130. 真田秀夫

    ○真田政府委員 安保条約上はっきり申せますことは、公海上で日本の艦船がかりに武力攻撃を受けても安保条約五条の発動にならないと……。
  131. 楢崎弥之助

    楢崎委員 何を言っておる。私はそれはもう済んでおる。その次を聞いておるんですよ。何を言っておるんですか。何を言っておるんですか、あなた。シーレーンで日米共同作戦をとることは、さっきの憲法違反とおっしゃった問題も含めて、たとえばですよ、アメリカの艦船、飛行機を防衛するということは違反であるということも含めて、そういう共同作戦というのは、シーレーンあるいはADIZの中においてそういうことをとることは、憲法違反、安保条約五条違反ですねということを再確認しておるんです、あなたに。法制局のほうも。防衛庁外務省はそうだとおっしゃるんだから……。
  132. 真田秀夫

    ○真田政府委員 共同作戦と一口に申されましても、いわゆるドンドンパチパチになった場合の最も戦闘の激しい……(「何ですか、ドンドンパチパチというのは」と呼ぶ者あり)平時における防衛の防護措置というか、護衛の作戦のことなのか、よくはっきりいたしませんので、この点はやはり詰めておかなければならない問題であると思います。
  133. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたの答弁を聞くとわからなくなるから、さっきの防衛庁外務省答弁のところでもうやめておきます。これは議事録は削除するわけにはいかぬかもしれないが……。  それで次に、実際に共同作戦が行なわれておるんですね。すでに空の場合は、一昨日横路君からも五空司令部の移転の問題についてもやりとりがあったわけですが、ここで今度私は、横須賀の在日第五空と航空自衛隊総隊司令部の同居の問題はもうすでに論じられておりますから、横須賀の在日米海軍司令部の中の共同作戦体制についてちょっと確認をしておきます。  この司令部には、司令官、参謀長のもとに、海ですから、N1、N2、N3、N4、N5と、それぞれの分担がありますね。そこには参謀長の補佐官がおるわけですが、この作戦担当の補佐官室に、海上自衛隊の連絡将校一名がいままで配置されておった。沖繩返還直後、一昨年八月から連絡将校一名に加えて、レディネスオフィサーという、日本語でいうと、緊急即応担当将校というのですか、これが新たに一名加えられて配置されておるそうですが、間違いありませんね。
  134. 久保卓也

    久保政府委員 その事実そのものは、私は承知いたしておりません。
  135. 楢崎弥之助

    楢崎委員 では、それは直ちに調べてください。  次に、座間の在日米陸軍司令部、これは陸軍のほうですからGになりますけれども、横須賀同様、ここにもG3、つまり、作戦担当参謀長補佐官室に、陸上自衛隊から連絡将校一名、陸上自衛隊関係部は二名の将校、つまり三佐が配置されておるはずですが、それも同時に調べてください。私は、もうあとわずかですから、その間に御答弁をいただきたい。いいですか。
  136. 久保卓也

    久保政府委員 直ちに調べます。
  137. 楢崎弥之助

    楢崎委員 次に、防衛分担の問題ですけれども、つまりトータル・フォース・コンセプトの関係からいって、防衛分担、一つは行動の分担、一つは金のほうの分担があるわけであります。これが強い要請があっておるはずであります。この防衛分担の行動のほうは先ほど若干触れたわけですが、今度は金の問題に触れてみたいと思うのです。  いままでの直接日本に対する要求の形は二つある。一つは、せんだっての予算委員会で取り上げたとおり。つまり、米軍在日基地の集約化に対して、地位協定二十四条を拡大解釈をして日本のほうに銭を出させる。こういう拡大解釈の問題。それから今度はもう一つの形は、アメリカがいままでアジア諸国に援助をしておったわけです。それを肩がわりしてくださいという問題があると思います。で、先ほどの説明資料の最終案にはなかったのですけれども、原案のほうには、この問題について、四次防ではもうすでにきまっておるから、研究開発の分については今後性能、経費、効率などを勘案してケース・バイ・ケースで検討することになろうということばがあります。これはまさにAEWとRXLのことをさしておると思うのです。これは一体どうなるのですか。私はせんだっての予算委員会で取り上げましたけれども、専門家会議はいつできるのですか。そしていつまでにこれは決着をつけるのですか。それとも、これは田中総理の訪米で決着をつけるのですか、どういう予定ですか。
  138. 内海倫

    ○内海政府委員 ただいまの御質問の点につきましては、RXL及びAEWにつきまして、研究開発に関連する部分につきましては、できるだけ早い時期に専門家会議を設けて検討をしていただきたいと思っておりますが、それがいつどういう形で発足するかは、目下私どもは事務的に準備を進めておる段階でございます。いま直ちにいつごろというふうな時期の明示はいたしかねます。まして田中総理が訪米されるというふうなこととの関連において問題を考えるというふうな性質のものではないと、私ども事務当局はそういうふうに考えております。したがって、そういう関連をもって問題を処理するというふうな考えはございません。
  139. 楢崎弥之助

    楢崎委員 アジア諸国へのアメリカの軍事援助の肩がわりの問題であります。これは私は、二、三年前、予算委員会でサイミントン報告を取り上げたことがあります。この中で、サイミントン委員会で当時のジョンソン国務次官は、日本の軍事援助の問題についてこう証言しております。「軍事目的用あるいは軍事援助とはっきりわかる経済援助は、日本の国会においておそらく将来とも問題を起こすだろう」。そのとおり、われわれはすぐ問題にするから。「しかし、経済援助という名が冠されていても、実質は補給援助と呼べる、つまり(軍事)補給援助と呼べるような種類の援助はやり得るのであって、そのようなものであれば日本も供与することは可能であるかもしれない」。もうすでにこういうふうに日本に対して予告しているんですね。それが現実になってあらわれてきておると思います。具体的な実績もそのような方向に向かっている。で、これもせんだっての説明資料の原案のほうですけれども、長官は否定をされました。否定をされたけれども、こういう文書になっておるんですね、その否定をされた個所は。私は、これは実際には話し合われておると思うのですけれども、ちょっと重大なところですから読んでみます。「わが国は石油、鉄鉱石その他国民生活の維持発展に必要な物資の海外依存度はきわめて高い。したがって、国の安全と発展のためには、国際平和の維持が必要であり、わが国としてはそのための努力を積極的に行なわねばならない」。この個所は非常に賛成です。「このためには、開発途上国に必要な経済、技術援助を積極的に行なうべきであり、国際関係のトラブルから物資輸入が途絶しないよう、関係国と協力して外交努力を重ねるべきであろう」。まことに賛成です。それから先がおかしくなる。「ただ、この場合、直接資源国に対して、またはマラッカ海峡からインド洋にわたる長大な補給路線に対してわが国が物資輸入のために軍事力を利用することは全く考えられない」。これも私はそのとおりだと思う。今度はその次です。「また韓国をはじめ幾つかのアジア諸国はセキュリティー」、つまり安全保障「の問題をかかえており、米国としては、日本が相応の援助をすることを期待されるかもしれない。しかしながら、日本としては、国内事情からして、事実上兵器としての援助は困難であり、軍用のトラック、通信器材、哨戒艇、ヘリコプター等ですら同様であろう。したがって、もし考えられるとすれば、軍以外の政府機関または民需用のトラック、通信器材等を援助し、当該国がそれによって得る財政的余裕を(軍事を必要とする分野にその金を回せばいいではないかという)必要とする分野に回すことを考えるよりほかないのではあるまいか」。つまり安保の事務レベル会議でこの種のことが論じられるということは、軍事援助の問題であるから、長官はお打ち消しになったけれども、こういうことはずっと資料で出てきておるわけです。それからさらに、せんだって実業団が訪米をいたしました。これはワシントン十一日発APであります。この訪米した日本実業界の代表に対してクレメンツ国防次官がこのように言っております。「日本は中東を往復する石油輸送船団を護衛するため海軍力を拡大してはどうかと示唆したほか、トラック、通信機、ヘリコプターなどの形で年間一億ドルの韓国向け軍事援助をしてはどうかとも述べたという」。全くそのことばまで一緒です。トラック、通信機、ヘリコプター、全く一緒です。幾ら長官が打ち消されてもこういった傍証はたくさんあるのであります。この点は長官、重ねて打ち消されますか、そういうことはしないと。
  140. 山中貞則

    山中国務大臣 これは純粋に外交、経済の分野の話であって、自衛隊が、ましてや防衛庁全体がそういうことを、自分たちがそう思いますなんという文書をつくること、そのことが非常識なんです。だから、政治的判断を待つ以前の事務レベルで消えてなくなった文書になってしまっているのですから、それがたまたま、あなたのところに消えてないのが生きていたということで、私はそういうことは、防衛庁というものの本来の目的からかんがみて、外交、経済分野において日米で話し合わるべきことはあるかもしれませんが、防衛庁がみずからそういうことを考えて何かするという、これはむしろ設置法の目的からいってもはずれたことだと私は思うわけです。だから打ち消す、打ち消さぬの問題ではなく、幾ら打ち消してもだめだというなら、それは外交、経済の話し合いの分野でどういう形で話し合いが行なわれるか知りませんが、少なくとも防衛庁というものが、そういう考えをもって積極的にみずからの意思として出過ぎた行動をすることを私は認めないわけですから、今後ともあり得ないということを私の分野において述べているわけです。
  141. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、五月二十九、三十日の事務レベル会議で韓国援助の問題は全然話が出ませんでしたか。
  142. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先ほど来山中長官が述べておられますように、新聞に報ぜられました防衛庁内部の紙というものは、私ども全然承知いたしておりません。したがいまして、新聞で見ました際に、そういうことがあったのかというふうに私自身驚いたくらいでありまして、五月二十九、三十日の事務レベル協議委員会における協議の段階におきましては、日本の防衛政策問題については、一昨日来御議論いただいておりますような説明資料に基づいての説明が行なわれたというにとどまるわけでございます。  また、韓国援助ということにつきまして、クレメンツ国防次官の談を引用して具体的な要求があり、またそれをもとに話し合っているだろう、こういう御指摘でございますけれども、クレメンツ国防次官がそういうことを言ったということを、私はこれまた新聞報道で承知いたしておりますけれども、米側からそういう具体的な要求には全然接しておりません。
  143. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは実績のほうをお伺いしてみます。通産省来られておりますね。  韓国を例にしますと、いわゆる輸銀の援助だと思いますけれども、プロジェクトでなしに商品援助のほうは四十六年度はありましたか。
  144. 増田実

    ○増田(実)政府委員 四十七年度におきまして、日韓の定期閣僚会議で五千万ドルの商品援助がきまっております。
  145. 楢崎弥之助

    楢崎委員 お聞きのとおりです。いままでなかった。四十七年度に初めて、プロジェクト援助ではなしにノンプロジェクトで五千万ドル、約百五十四億円が商品援助という形で出てきておる。つまり、プロジェクト援助であればちゃんとその追跡をしなければいけません。どのプロジェクトとはっきりしておるから、これは変えようがない。しかし、商品援助を現実にふやすのは、さっき言ったとおり、トラックだとかヘリコプター、こういうものをふやしていって、それによって韓国が余った金を軍事のほうでどこからか、アメリカならアメリカから兵器を買いなさい。実績は全くそのとおりになっておるじゃありませんか。そうでしょう。
  146. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 先ほど通産省のほうからお答え申し上げました商品援助は、四十七年の初めに、四十六年の終わりごろかもしれませんが、韓国の輸出入のバランスが非常に悪化いたしまして、非常な悪い状態になりましたものですから、韓国側からそういう場合の緊急な援助として商品援助をやってほしいという要請がございまして、先ほど御説明申し上げました閣僚会議の前にも、七月一日に韓国に五千万ドルの商品援助を約束した。それで、そのあとまた閣僚会議がございましたときに、いまの七月一日の約束が全部消化されたあとにまたさらに続けて商品援助をやる、そういうようなかっこうで、もっぱら国際収支のアンバランスを救うというための目的に提供したものでございます。
  147. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いや、目的はそのとおりなんです。だから言っておるでしょう。そういう品物を実際に援助して、そうすると韓国はそれによって金が余るから、その分を兵器をお買いなさい。このとおりになるのです。幾ら否定されても現実の実績がそうなっておるのです。だから私は、アンプロジェクトの援助、それからアンタイド援助、この援助のやり方は考えるべきであると思う。
  148. 三原朝雄

    三原委員長 お静かに願います。
  149. 楢崎弥之助

    楢崎委員 考えるべきであると思いますが、どうですか。
  150. 三原朝雄

    三原委員長 お静かに願います。
  151. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 いま申し上げました商品援助で供与いたしますものは、一つにはいわゆる原資材というもので、もっぱら韓国の民生安定その他のために……。
  152. 楢崎弥之助

    楢崎委員 黙れ、聞こえないから。委員長、やめさせてください。聞こえませんよ。
  153. 三原朝雄

    三原委員長 お静かに願います。
  154. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 韓国の民生安定もしくは経済発展に役に立つ物資を供与する。もう一つは……。
  155. 三原朝雄

    三原委員長 お静かに願います。
  156. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 機械類でございまして、韓国の産業開発に役に立つような機械類を供与する。それを輸銀と基金とに分けて供与しておるという形になっておりまして、そういう御指摘のような考え方は全くないわけでございます。
  157. 楢崎弥之助

    楢崎委員 委員長、全然聞こえませんでした。
  158. 御巫清尚

    ○御巫政府委員 繰り返して申し上げますが、商品援助、緊急な援助の形で供与されます商品援助で韓国に供与されました物資は、一つは、原資材と一括されておりますが、これは韓国の民生の安定もしくは経済の発展に役に立つための物資でございます。さらにまた、機械類というふうに定義されておりますものは、韓国の産業の発展に役に立つ機械を供与するということでございまして、それらを海外経済協力基金と輸出入銀行の資金をもって供与してまいっておるわけでございまして、御指摘のような考え方は全くないというふうに申し上げたわけでございます。
  159. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたがないとおっしゃっても、ジョンソン次官のサイミントン委員会における証言。それから、いかにこれは文章を消したとおっしゃっても、そういう考え方防衛庁の中にあることもまた事実ですね。文章上幾ら打ち消されても。だから私は重ねて言います。ノンプロジェクト、それからアンタイドエイド、この援助のしかたは十分お考えにならないとたいへんな方向に使われる、チェックしようがないということを私は要望いたしておきたいと思います。  それでそろそろ結論に入りたいと思いますが、最後に一点だけお伺いをいたしておきます。  防衛庁は、非常事態に対して新しい戒厳令的なものを研究しておるのではないですか。
  160. 久保卓也

    久保政府委員 私の関知する限り全くございません。
  161. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これは「日本の安全保障」、日本国際問題研究所、鹿島研究所の編さんの本でございますが、これは防衛庁長官も外務大臣も非常に推奨されております。その本です。有名な増原さんがここに論文を出されております。「自衛隊の沿革と日本の安全」というものであります。四百二十七ページです。はっきり言っておきます。こう言っておるわけです。その中に、「次に間接侵略の問題に関連して安保のときに見られたような事態に対処する一つのキーポイントは戒厳令なのです。戒厳令がなければいけない。これは前々から私どもは政府部内で話をしておるのですけれども、戒厳令を研究してみろということはよう言わないのです、政府にしても長官にしても。内々でやっているのですが、戒厳令というものは昔の通りのものを持ってくる必要はないのですけれども、やはり非常事態における総理なり長官なりの権限を拡大しなければいけませんからね」。それから「動く動き方をもっと変えなければいけないようです。戒厳令というものをつくらないというとああいう騒擾」——安保のような。「暴動には対処できません。戒厳令ができれば警察だってうんと力ができますし、自衛隊だってきわめて有効です」。「内々でやっておるのですが」——だからやっておられるのでしょう。
  162. 久保卓也

    久保政府委員 私は、防衛局の課長も部員も、局長もいまやっておるわけでございますが、私の在職中そういった事実はありませんで、だいぶ以前の時期、年次はちょっと覚えておりませんけれども、統幕、内局を中心に一部、有事の際にどういった法令が必要であるか、その項目はどういうものであるかということを勉強した時期があったようであります。しかし、いろいろやはり国会その他でもかえって疑惑を生ずる、有事に近いのかといったような懸念、不安を生じてもいけませんというようなことで、だいぶ以前にストップしたままずっと長らく今日に至っておるというふうに私は承知いたしております。
  163. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これは……(発言する者あり)やじの間はしません。
  164. 三原朝雄

    三原委員長 不規則発言はおやめください。
  165. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これも研修資料ですね。別冊第百七十五号、「自衛隊と基本的法理論」防衛研修所発行です。この中に、新戒厳法の研究をされております。そして「新戒厳法に最低限必要な事項は次の通り 一、戒厳地区内の知事、地方総監または戒厳司令官は次の非常警察権を有すること A集会、多衆運動等の禁止、制限、解散 B新聞、放送、雑誌、文書等の停止、禁止 C郵便、通信の検閲 D銃砲刀剣火薬類等の使用、所持等の禁止、検査、押収 E運輸、通信の停止、統制」、まだありますけれども、こういうふうに羅列されている。実際にこういう形で研究されております。あなたは知らないというだけの話です。これをはっきりしてください。
  166. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 だいぶ以前、研修所の所員が非常立法につきまして研究をし、それを整理をして取りまとめたものがあることは承知いたしております。
  167. 楢崎弥之助

    楢崎委員 結局、研究をし整理をしておるということですね。それをいつ出してくるかが問題でしょう。どういうふうに今後それを取り扱われるつもりですか。長官にお伺いをします。
  168. 久保卓也

    久保政府委員 防衛研修所は防衛政策全般にわたって、政策あるいは軍事面にわたって個人の研究を累積するところでありますが、実務といたしましては、いまのような問題を取り上げるのは、統幕の一部、あるいは内局で申せば官房の法制調査官の手元であります。したがって、行政事務レベルで検討するという場合には統幕、及びいま申し上げた法制調査官のところでありますので、防衛研修の場合には、それぞれがいろいろな担当を持ちまして個人的に勉強しておるということで、それがわが内局の行政のほうに直ちに反映するといったものではございません。
  169. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はいまの答弁は受け取れないわけですよ。あなた方はチャンスさえあればそれを出そうとしておる。  最後の締めくくりをいたします、あと三分ありますから。  私はまだいろいろな事実をあげたかった。たとえば油の問題にしても、自衛隊はこれを守れないとあなた方ははっきり言っておるのですね。これはズムワルトの証言にも出ておりますね。アメリカも守れない。油は日本の工業の動脈です。飛行機も艦船も油がなければ動けぬでしょう。これを防衛力で守れないという。一体何を守るのです。国民の生活はそのときどうなるのです。油も九九%中近東から持ってきておる。あるいはマラッカ海峡付近から持ってきておる。食糧だってもう自給率は五〇%でしょう。日本は全部貿易にたよっておるのです。だからもし侵略が起こったらいけないから自衛隊を置くという発想では、そのときはどうしようもないのですよ、国民生活は。工業もとまる。だから、ものの発想を、もし侵略が起こったらではもうおそい、起こらないようにするにはどうすべきかという発想に変えるべきであろうと私は思う。これから先の考え方が具体的に、私は与党と野党と考えの違うところであろうと思うのです。これはお互いに、相対的な問題ですから、今後とも国民の批判を受けていかなくちゃならぬ問題であると思います。  それで、一体何をどのようにして守るのか、つまり防衛の対象を国民自体の生命や福祉に置くのか、それとも、さっき明らかにしたとおり、現在の支配体制に置くか。防衛手段のとり方はこれで大きく変わってくるのです。支配層がみずからの支配体制をどうあっても守ろうとした場合には、かつての経験があるように、国民の福祉も生命も自由もその至上命令のために無視されてしまうのです。経験あるでしょう。特にそれは沖繩においてはっきりと出たじゃありませんか。つまり天皇の軍隊の行動のじゃまになる人民どもは処理もしくは自決させられた、これが事実なんだ。こういう非情な命令を下した軍隊というものを、だから沖繩県民は決して忘れないのです。  国民の生命や福祉、そういうものを防衛目的の最上位に置くということになると、私は事態は変わってくると思う。おそらく戦争という反目的的な手段の回避という方向に向かわざるを得ない、私はそのように思うわけです。政府・自民党の防衛構想は、戦争がもし起こった場合に、じゃ一体国民の命や福祉や財産や自由はどのようにして有効に守り得るのか、具体的に示していますか。遺憾ながらないでしょう。ただ単に、国を守る気概を持てというような観念的なことばかり言っている。自衛隊が戦車や飛行機を使って、いわゆる戦争に入ったときに、一体国民はどうなっておるのです。国民はどうすればいいのです。そのような肝心な問題を抜きにして、いわゆる装備の充実はかりやっておるところに、国民不在の防衛政策だと私が言うその根拠があるわけです。だから、政府防衛政策は国民不在の政策であって、むしろ観念的であり非常に抽象的であるというふうに私どもは思わざるを得ないのです。  以上で私の結論を申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  170. 山中貞則

    山中国務大臣 楢崎委員は先ほど、日本社会党としての、究極的には軍備を持たないことが基本である、そういう姿勢に立った前提の展開をされました。国民不在、あるいは反共自由諸国、米国のためにことに海空が組み込まれているのではないか、反共ではないか、その体制の中に使われているのではないか、あるいは米軍基地は自民党を守るものではないか、財界主導型ではないか、こういうようないろいろなことを言われて、そして過去の第二次大戦後に起こった局地紛争等について類型を分けて御説明がありました。  こういう問題をもう少しお互いに議論をしたかったと思います。これがやはり基本だと思うのです。エネルギーの問題なんかも、日本が守れるかといえば、私は究極的には守れないと思います。ことにチュメニ油田等はソ連から買おうというのでありますから、ソ連が向こうで井戸のパイプを締めてしまえば、もう来ないわけですから守りようもない。そういう日本というものは何を守るんだということは、それはおっしゃるとおり、そうかもしれません。しかし私たちには、かけがえのない日本という国があり、日本国民がおるわけであります。それらの人々は、マイカー時代、レジャー時代、みんな楽しんでいても、やはり、自分たちの家庭なり生活なり、あるいは生命なんというものは大切にしたいという気持ちはみんな持っていると思います。そのときに私たちが、自分たちにできる範囲、憲法の範囲において守る力を持つということは私どもの基本でありますから、これは楢崎さんから一方的に言われっぱなしでおしまいになっちゃうと困りますので、私どもの考え方を申し上げておきます。(拍手)
  171. 久保卓也

    久保政府委員 先ほど御質問で残っておりました連絡員について報告が参りましたので、答弁いたしますと、座間のほうは陸幕から二佐のものを一名、それから横須賀のほうは海幕から幹部二名とあと若干の補助員を派遣いたしております。
  172. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が指摘したとおりですね。  じゃ、以上で終わります。ありがとうございました。(拍手)
  173. 三原朝雄

    三原委員長 午後一時より委員会を開会することとし、この際、暫時、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ————◇—————     午後一時十五分開議
  174. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。大出俊君。
  175. 大出俊

    ○大出委員 一点だけ承りますが、一昨日、日米事務レベル会議の席上で外務省防衛庁側から出されました文書について楢崎委員から質問がございまして、結果的に久保防衛局長答弁との食い違いが明らかになってまいりました。この点について大河原アメリカ局長から、会議の席上で米側に出してある文書でございますから、それを米側と話し合って修正をしたい、それは久保防衛局長答弁をした議会答弁が正しいのであるから、それに基づいて修正をしたい、直したい、こういうことでございまして、それがわれわれに確認ができるようにと私が注文をつけましたら、そのようにいたします、実はこういう答弁が返ってまいりました。  この件につきまして、相手方との折衝等が行なわれ、国会答弁の筋に従って手続をおとりのようでございます。これは文書をいただけませんので、議事録にお残しをいただきませんと明確になりません。そういう意味でひとつ読み上げていただき、経過を御説明いただきまして確認をいたしたいと思いますので、御答弁を願いたいと思います。
  176. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 一昨日の本委員会におきます御要求に基づきまして、きのう付の、つまり六月二十日付の文書をもちまして、本日、米側に対しまして申し入れを行ないました。申し入れの内容は次のとおりでございます。  「去る五月二十九、三十日に行なわれた日米安保事務レベル協議の際、米側参加者に対する説明に用いられた防衛庁の説明資料中、海上自衛隊関係の主たる行動範囲について、日本の周辺海域(数百カイリないし千カイリ程度)と述べられているが、これは周辺海域については数百カイリの範囲内であり、また特定の航路帯を設定する場合には千カイリ程度の範囲で検討していきたいとの意味であるので、念のため申し述べる」、こういうふうに米側に申し入れまして、米側はよくわかっております、こういうことでございます。
  177. 三原朝雄

  178. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しばらく防衛問題をやっておりませんで、きょうは試運転ですから、ひとつ率直にお答えをいただきたい。御答弁を聞いていると、答えなくてもいいようなことまでたいへん時間を使っておりますので、私は時間をできるだけ尊重したいと思いますので、御答弁に時間をとらないようにひとつお願いをいたしたい。  まず第一点、質問に入りますが、防衛庁の姿勢の問題です。きょうの午前中の質問を伺っておりましても、山中長官が初めて就任された関係等もあろうと思いますけれども、長官自身が御存じにならないようなことが少なくない。これはやはり、シビリアンコントロールの問題からいってまことに重大な問題でありますだけに、十分これから姿勢を正すということで、ひとつ長官は思い切ってやってもらいたいと思います。これは単に内局の問題だけではありません。むしろ制服に非常にたくさんの問題をかかえている。できればこのあとで私、一々取り上げてまいりますけれども、まず第一点としては、防衛庁の姿勢の問題について、特に先ほど楢崎君の質問の中で、政治に関与する部面も相当あるわけですが、それに関連をすると例の三矢研究の問題が出てまいりましただけに、制服が政治に関与をするというような問題については、絶対にこれは許してはいけない。こういう点をひとつ、はっきり基本点を踏んまえて長官から、姿勢の問題についての御意見をまず第一に伺いたいと思います。
  179. 山中貞則

    山中国務大臣 これは御指摘を待つまでもなく、現行憲法のもとに許された自衛隊設置法というもので国会で法定されておる任務の遂行に当たるわけであります。したがって、いわゆる制服と称する、必要な場合に対応して戦闘に当たる諸君、そういう諸君と、いわゆるシビリアンコントロールの第一段階である、背広といっております内局、こういうものとの対立なり意思の不疎通があってはまずいけませんし、あるいは制服の中の陸海空の間において、わがまま、対立等があることも許されません。これは私は就任の日に、私が許さない旨をはっきり申しました。  さらに具体的には、内閣総理大臣が最終最高の指揮命令権者であり、防衛庁長官はその下において防衛庁に関する事務を所掌するわけでありますから、少なくとも文民をもってその長としてあることについての意義を深く思いをいたして、私になりましてからすでに答弁もいたしておりますが、末端の二十四万近い実人員の諸君の一件の事故たりといえども、公務以外の休暇中の事故といえども、すべて一件漏れなく私の手元に上がるようにいたしましたし、それについての原因究明、あるいはまた処罰、場合によっては賞じゅつ等の問題まで全部私が目を通すことにいたしました。さらに、いままで上がっておりませんでした、駐留軍労務者並びに沖繩における軍労の皆さんの一件の解雇であっても、漏れなくその日のうちに私の手元に上げるように、しかも理由を付して、その処置、そういうものも全部上がるようにしております。  さらに、文書取り扱い等については、いやしくも私の目に触れないで途中で何か文書の形になって論議されるようなことは、今後は私は許しませんし、機密文書秘密文書等の取り扱いについても、私の新しい方針にきちんと従って取り扱うように、そういう処理もいたしております。  なおしかし、全国に散らばっておりますために、毎日のように上がってきますいろいろなできごとを見ますときに、やはり末端に駐とんしておる諸君の現状等から考えて、もう少し私と制服の諸君と直の対話というものも必要であると考えまして、一、二そのような会合も予定をいたして指示してございますが、これから、国民のために存在する自衛隊が、国民のためにならないようなことを考えたり行動したり、あるいはそういうことが起こったりしないように、責任を一生懸命果たすために努力してみます。
  180. 岡田春夫

    岡田(春)委員 少し具体的な問題に入りますが、前回の横路君の質問のときに、七三一部隊関係者の問題について、衛生局長ですか、答弁をされましたが、結局、何名であるということが間違いないのですか。前の楢崎質問の場合には、これは質問書でありますけれども、二名となっておりますが、今度は何名なんですか。そしてその氏名を明らかにしていただきたい。
  181. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 楢崎先生のおととしの御質問の場合に二名と申し上げまして、その場合、現在現職でおられる防衛大学校の増田教授並びに元衛生学校長の園口陸将というこの二名の方を御報告申し上げたわけでございますが、その後横路先生からさらに資料要求が出まして、いろいろ調べておったわけでございますが、判明いたしませんで、資料提出後に、その後も鋭意調査いたしまして、さらに三名追加が出てまいりました。  その名前をただいまから申し上げますが、一人は元衛生学校長の中黒秀外之という方でございます。それからさらに高橋三郎という元一等陸佐の方でございます。それから佐伯実、これは二等空佐。この三名がただいまの時点で判明いたしました。いずれも御指摘の第七三一部隊、石井部隊でございます。
  182. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ四名じゃなくて五名ですね。
  183. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 合計五名でございます。
  184. 岡田春夫

    岡田(春)委員 きのう四名と言った。
  185. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 さきに御報告申し上げました二人に追加いたしまして、あとで判明いたしましたのが三名、計五名でございます。
  186. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だって、初めの二名にあと四名加えたら、あなた、六名になるじゃないの。
  187. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 ただいま防衛庁関係に勤務しておられる方が、防衛大学校の教授をなさっている増田先生、そのほかの四名の方はいずれも退職をしておられます。
  188. 岡田春夫

    岡田(春)委員 まあいいです。あなた、さっきの答弁、それこそまた久保さんじゃないけれども、速記録を見てごらんなさい。二名に四名加えたら六名でしょう。それで合計五名と言っている。まあいいですよ、それは。  増田美保、これは入っていますね。それは先ほど言われました。そのとおりですね。
  189. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 そのとおりでございます。
  190. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それ以外にあるでしょう。ないとおっしゃるけれども、橋本栄市。どうです。
  191. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 ただいま御指摘の橋本栄市という方は、まだ私のほうで究明いたしておりません。
  192. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは七三一には直接関係ないが、研究が同じである。そしてそれを踏襲しており、特に軍に関係がある。高橋広、これは衛生学校の教官。なぜ関係があるかというと、ツツガムシの研究。このツツガムシの研究は七三一と、それを継承した南方軍の防疫給水部、これがツツガムシの研究をずっとやっておったのですが、それを踏襲して、そして座間にあるアメリカの四〇六部隊、ここへこの高橋広という人は通っていたはずだ。これは七三一ではないけれども、研究の課題は同じである。こういう人もいるはずだ。これは七三一部隊とは直接関係はありませんけれども、こういう関係をもっと徹底的にお調べにならないと、防衛医大の場合に、こういう人が入ってきて研究を踏襲する可能性が非常にある。  こういう点はひとつ、あまり長い間申し上げませんけれども、長官に伺っておきたいんだが、防衛医大の教育陣ももう内定しているはずです。そういう中にいまあげたような人が、七三一の関係が入っているということになると、これは重大な問題だと思う。先ほど私が答弁を聞いておっても、きわめて調査が不十分だと思う。これはひとつ徹底的に七三一関係はお調べいただかなければならないと思うのですが、長官としては、これは徹底的にお調べになるかどうか、この点を伺っておきたい。
  193. 山中貞則

    山中国務大臣 もちろん、新しく法律が制定された場合に発足する防衛医大というものに、石井部隊関係者が教官あるいはその他の関係でタッチすることは許されないことだと思います。  しかし、ツツガムシの研究というのは、よくわかりませんが、それは、つつがなきやと昔は手紙に書いたとおり、寄生虫というものはおったわけで、それをどういうふうにやるのかよくわかりませんので、そこらのところは承ってからにします。
  194. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そういう、つつがなきやということばで済まされる問題ではないので、これは十分お調べいただきたい。  姿勢の問題に関連して御質問するのですから、あまり長い点は伺ってまいりません。たとえばこれは同じく楢崎質問。文書によるのですが、昭和四十四年八月の文書ですけれども、昭和四十二年六月一日から一カ月間、陸上自衛隊の勝田部隊、一千六百名を使って集団赤痢に対する人体実験を行なった。この人体実験の責任者、研究者は、先ほど答弁のあった七三一部隊の園口である。しかも、これを指導したのは、同じく答弁のあった七三一部隊の中黒陸将である。こういうことで、戦後においても七三一の研究が人体実験という形で踏襲をされている、こういう事実が非常にはっきりしている。こういう事実について、長官は御存じないかもしれないが、こういう事実がまずあったということをお認めになるのか、この点が第一点。  第二点は、こういうような問題で人体実験というのは、それ以外にないのかどうなのか、今日あるのかないのか、こういう点を伺っておきたいと思います。
  195. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 「乳酸菌によりますポリラクトンの集団赤痢発生防止の研究」というテーマのもとで実験が行なわれた事実は確かにございます。その事実は昭和四十二年でございます。しかしながら、これが人体実験に当たるかどうか、この問題はいささか疑問が多いところでございまして、特にこの医薬品でございますが、ポリラクトンという薬は、二万五百カプセルばかり使いましていろいろ実験を行なったわけでございますが、製薬として認められる段階までに、まず物理化学的な方法でいろいろ検討しますし、さらに厳密なる動物実験を経まして、その結果、これならいけそうだという場合におきまして、厳重なる監督のもとに少数例を用いた人体実験を行ない、それを用いまして、これは正式に認められるわけでございます。これはもうだいじょうぶだ、動物実験によりましてその結果絶対だいじょうぶだという、その段階を耐容試験ということばを用いておりますが、その段階を経まして、さらに今度は相当例数をふやしまして、そして臨床実験をさらに続けるわけであります。それでその例数がほとんどもうだいじょうぶだということに相なりまして、厚生省の製薬課のほうで許可を与えるというふうな段階を経ておるわけでございまして、このポリラクトンはすでに製品化されまして、十分だいじょうぶだというようなことで使ったわけでございますので、あとの臨床実験に当たるわけでございます。
  196. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ほかにないのですか、人体実験のような例は。
  197. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 そのほか私どもが現在承知いたしておりますのは、人体実験といわれるようなものは承知いたしておりません。
  198. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ここにあるのは衛生学校の記事、しかも、ことしの四月発行の第二号、この中に出ている。ことしの一月三十一日から一カ月間、第二師団の管轄下の旭川駐とん地において、凍傷に関する集団の人体実験を行なっている。これは、この間、横路君が取り上げた七三一部隊の吉村寿人、この人の凍傷の人体実験の継承である。こういう事実がある。それだけではない。その実験は、本年だけではない。去年も一月から行なっておる。定期的に人体実験をやっているじゃないですか。本は「衛生学校記事」、ごらんのとおりであります。
  199. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 昨日の横路議員の御指摘になりました七三一部隊におきます凍傷実験、この内容をトレースしてみたわけでございますが、これは凍傷にかかりやすい素質を持った……(岡田(春)委員「質問に答えなさい」と呼ぶ)その内容は、私、詳細よく存じておりませんから、事実はわかりませんが、はたして人体実験に当たるかどうか、その点、私、詳細わかっておりませんので、お答えしかねます。
  200. 岡田春夫

    岡田(春)委員 写真が載っておるのですからお調べください。調べていただけますか。
  201. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 さっそく調査をいたします。
  202. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それからCBRの問題についても、防護だけしかやっていないと、これは長官もはっきり答えている。しかし防護だけですか。CBR自身も実際いろいろなことをやっておるじゃありませんか。こういう点は人体実験やっておりませんか。
  203. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 これまた過去におきまして、特にGBガス類似、そのようなものをつくりまして、特にろ水機の実験におきまして使ったことはございます。
  204. 岡田春夫

    岡田(春)委員 では、過去において日本がつくったことは間違いないのですね。
  205. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 これはGBガスそのものとは申しておりません。中間体でございます。
  206. 岡田春夫

    岡田(春)委員 中間体というのはGBガスではないのですか。
  207. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 これは化学的に申しますと同定をやらなくてはならぬわけでございますが、その同定がしてなかったわけでございます。
  208. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは人体実験やっていませんか。
  209. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 やっておりません。
  210. 岡田春夫

    岡田(春)委員 やっていますよ。私、証人を出してもいい。自衛隊の隊員の名前を出してもいいですよ。ガス室にマスクをつけないで入れられた実例がある。必要があったら、このあと見せましょう。あなた、お調べになりますか。
  211. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 それは私、その事実はしかと存じませんが、防毒マスクの装着訓練だと承知いたしております。
  212. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だから私、言ったじゃないですか。マスクをつけないで入れたと言っておるのです。
  213. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 その事実は存じません。
  214. 岡田春夫

    岡田(春)委員 大宮の化学学校を調べてください。お調べいただけますね。必要があれば、入った人の名前を私は出してもいい。相当数が入っている。それだけではない。ここに持っていますが、山中さん、これはぜひ聞いてもらいたい。  富士学校で、昭和四十五年の五号、「富士学校記事」、この中にこういうのがある。掲載された論文ですね。論文の名前は「野戦特科の近代化について」、この論文は大隊長以下の討論会の報告論文である。これに対して、わざわざ記事の中で推薦文をつけておる。その推薦文を見ると、「この論文は、思考過程は妥当であり、その論旨も納得できる」。しかもこの点、「本テーマを取り上げ真剣に討議されている光景を思い、敬意を表する次第である」ということで推薦のことばまで書いてある。(山中国務大臣「だれが」と呼ぶ)いや、この「富士学校記事」で。これは富士学校で出している記事ですからね。(山中国務大臣「推薦者はだれですか」と呼ぶ)推薦はこの学校の教化訓練部が出しておる。  そうしてこの論文の内容を見ると、こういうことが書いてある。ここに原文がありますが、論文のままおもな点を読んでまいりますと、「野戦特科の近代化は焦眉の急であり、すでに四次防において検討されつつある時点なので」——今日はですね。「時点なので、さらにもう一歩十年先を目途に五次防以降のあるべき姿について」——五次防の問題をやるというのですね。「平素の教育、訓練を通じ、日ごろ考えている事項を大隊の幹部によって討論会を行ない、その際の発言内容を整理要約して論文として発表することになった」。これはこう前文に書いてある。この論文の中に、弾頭部分で次のごとく述べている。「敵戦力を減殺する、人道的でかつ威力のあるGB剤の研究開発が必要である。特に中距離SSMを装備するためには、使用効果の面からZに匹敵する新物資を発明発見する必要がある」。Zとは言うまでもなく原子力です。「このためには敵戦闘員の戦意を喪失させるガス類が最もよいと思われる」。ここまではっきり書いてあります。ガス類を防護のためではなくて戦闘のために使う、こういう点が非常にはっきり書かれて、これが推薦されている。こういう点、長官どう思われますか。防護のためだけではない、まさに積極的な攻撃用のためにGB兵器を使うということで、はっきり研究論文がつくられ、これが推薦されている。一体どう思われますか。
  215. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 ただいま御指摘の「富士学校記事」は、陸上自衛隊の幹部の親睦団体、また相互に勉強する団体の修身会というところから出しているものでございます。したがいまして、その点は先生御承知と思いますので省略いたしますが、その中で御指摘のような論文があるかどうか、私は見ておりませんけれども、もしそのような記事があるとすれば穏当でないというふうに考えます。
  216. 岡田春夫

    岡田(春)委員 何もお調べになっておられないのだが、いまの答弁を聞いても、穏当ではないという答弁をしておられる。長官、これをどう思われますか。攻撃兵器にGB剤を使うということをはっきり書いてある。長官、これについて御意見を伺いたい。
  217. 山中貞則

    山中国務大臣 その事実は私はもちろん知りませんが、私がいままで大急ぎで現在の隊の体制について調べました中では、いわゆる防護のために、におい等をかがせるための試験管程度のものについてはありますということは言っておりました。しかしながら、局地戦術としてそのような、普通の砲爆弾にかわるガス兵器、そういうものを使うことを考えているということは全く聞いておりませんので、その事実はあとで調べて善処いたします。(発言する者あり)
  218. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いま大出君もちょっと言われたように、Zに匹敵するのですから、原爆に匹敵するものですよ。こういうものをつくれというのです。これは重大な問題だと思うので、ぜひこれは徹底的にお調べをいただきたい。  しかもそれだけじゃありません。この論文を見ると、一九八〇年代の日本の政治情勢を想定して分析している。ここにはこう書いてある。これも書いてある点をそのまま読んでみますが、「政界は多党化現象を呈するであろうが、自民党が依然政権を担当しており」——これはどうかわかりませんが、問題はそのあとだ。「自主防衛の必要性から一九八〇年ごろには防衛庁は国防省に昇格する」、このように書いてあります。こういう例を見ても、制服がこういうことまで政治問題についてやっているというのは明らかじゃありませんか。大隊の中の幹部の間で、こういう討議をして分析をやっているじゃないか。  私はかつて三矢作戦計画を取り上げた。あのときに当時の佐藤総理大臣は、そういう政治問題について関連するのはゆゆしい問題である。そこにいる久保さんは三矢作戦計画に参加したのです。あの当時の情勢を知っているはずだ。こういう政治に関与する状態は、先ほど楢崎君の言われた政治の問題についてもしかり。まさにこのような政治の問題が公然と制服で論議されている。そして記事となって印刷されている。どこにシビリアンコントロールがありますか。シビリアンコントロールはこのときこそはっきりしなければならない。長官、ここははっきりしてもらいたい。まず第一点、この点について伺っておきたいと思います。
  219. 山中貞則

    山中国務大臣 事実関係は後ほど調べますが、そのことを前提に答弁いたしますならば、まさに、自衛隊法、あるいは自衛隊法施行令、そういうものに定められた、やってはならない政治行為というものに、明らかにそれは抵触するものであると私は考えます。したがって、自今そのようなことのないように、十分に末端までどのようにしてそういう処理ができるのか、これを真剣に検討してみたいと思うのです。
  220. 岡田春夫

    岡田(春)委員 こういう問題についても、いろいろ質問をしていかなければならない問題もありますけれども、時間の関係もありますので、続いて進めてまいります。特に吉國法制局長官が御用事があるそうだから、そういう点も勘案して質問してまいりますが、私の伺いたいのは自衛権の問題です。  それに関連して、まず防衛庁長官伺いたいのは、この間、鈴切質問にも御答弁があったようですけれども、山中さんは、戦略守勢をとるのか、専守防衛をとるのかということで、これについてどちらのほうをおとりになるのか。もう一度くどいようですが、念のためにお伺いをいたしておきたいと思います。
  221. 山中貞則

    山中国務大臣 これは表現の問題で、戦略防衛ということがぴったりするのか、私どもは、まあわかりやすく専守防衛、すなわち、日本の独立を守るために最低、憲法で許容された範囲の防衛というふうに受け取っておりますので、ことばの問題はまたいずれ別途の角度から議論したいと思います。
  222. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、戦略守勢と専守防衛内容は同じだ、こういうように理解してもよろしいのですか。
  223. 久保卓也

    久保政府委員 ことばの意味の問題になりますので……。防衛庁の内部では、専守防衛と戦略守勢とは同じに考えております。これはなぜ同じかと言いますと、専守防衛というのは必ずしも軍事的用語ではございません。軍事的用語としては、戦略守勢ということばが以前から使われている。そういう意味で、しいてあげるならば戦略守勢と同じであると防衛庁内部では言っておりますけれども、さて、別の立場で戦略守勢というものを本格的に議論しますと、戦術的な攻勢面を含んでいるという解釈に立ちますと、そういうような解釈であれば戦略守勢とは違うということになります。
  224. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ちょっと最後の部分ですが、戦略守勢の中には戦術的な攻撃面も含むわけでしょう。戦略の面では守勢、したがって戦術攻勢というのは当然攻勢面を含むわけでしょう。そういう点、専守防衛の場合にはそれは含まないのですか、含むのですか。
  225. 久保卓也

    久保政府委員 戦術的攻勢、戦術的攻撃という面も、これまたややばく然とした表現になりますけれども、憲法上の解釈から申しますれば、たとえば相手国の基地をたたくというようなものも、ある場面では戦術的攻撃というふうに入りましょうけれども、そういった場面は入りません。しかしながら、たとえばわが国を攻撃してくる上陸用船団がいるという場合に、相手国の船団が日本の領海を侵すまでこちらが守勢であるというのではなくて、明らかに日本への上陸を企図しているという場合に、あらかじめ攻撃をかけるという場合があります。そういう場合も戦術的攻撃ということでありましょうから、その場合は自衛力の発動として攻撃する場合がある。したがって、一がいに戦術的攻撃はやるのかやらないのかというふうに割り切っては考えにくいということだと思います。
  226. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いまの御答弁についても、私はまたあとで伺ってまいります。  ちょっと話が違いますが、これは外務省のほうがいいのかもしれませんけれども、アメリカの海軍の編成の中でストリッコム、ストライクコマンドという戦略手段がありましたね。これが今度なくなりましたね。なくなって、レディネスコマンド、これが現在できているのですが、このコマンドは戦略部隊ですか、戦術部隊ですか。
  227. 久保卓也

    久保政府委員 ちょっと私、承知しておりませんので、すぐ調べてみます。
  228. 岡田春夫

    岡田(春)委員 困るな。ストライクコマンドは明らかに戦略部隊ですね。それにかわってレディネスコマンド、戦略部隊。そうすると、先ほどの楢崎質問に関連しますね。在日米海軍に出向しているレディネスオフィサー、これはレディネスコマンドにコミットするんですよ。戦略部隊にコミットするオフィサーがいるのです。これは明らかに戦略面まで担当しようとしている意図ではありませんか。どうですか。
  229. 久保卓也

    久保政府委員 これは、第七艦隊でありましても、あるいは海兵の部隊でありましても、きわめて限られた地域だけで活動するということではなくて、やはり広い意味の戦略的な体制の一環を占めるもの。これはアメリカの立場に立てばですね。広い立場での戦略的な体制の一環を占めるものということはあると思います。そういう意味で、たとえばSACの部隊もありまするし、あるいはMACの部隊もあるということでありまするから、一がいに、米側の体制の一部が日本にいるということと日本の憲法といいますか、そういうこととの関係は、ちょっと直接には関係ないんではないでしょうか。
  230. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これはよくお調べいただきたいと思いますが、あなた、専任担当将校ですよ、レディネスオフィサー。ですからこれは、あなた、七艦というようにごまかされるつもりじゃないかもしれないけれども、在日米海軍の司令部の中にいるのですから。ですからこれは七艦だけを意味しているのじゃありません。こういう点からいっても、もっとお調べをいただきたいと思う。  そこで、戦略守勢か専守防衛かの問題について、これは去年の九月十四日の参議院の決算委員会で、当時の増原防衛庁長官、それにあなた、久保さんも出て答弁をしている。たいへん重大なことを幾つか言っている。質問をしたのは実はこの間なくなった社会党の水口君なんです。水口君の質問に答えて、増原長官は以下次のように言っている。ここら辺は重要ですから、ちょっと長くなるけれども、読むことをお許しいただきたい。  水口君の質問は、「だから私は、むしろ戦略守勢と長官が言われたことは、まあ基本的立場は異なるにしても、用語としては私は戦略守勢のほうが的確ではないか、ということは、この間久保防衛局長からの御答弁にもあったように、具体的に攻撃が行なわれ、それに対して日本が反撃を行なう場合、戦術的にはこちらが攻勢に出る場合も十分あり得るわけですね。したがって、戦略的にはあくまで守勢である、ただし戦術的には攻勢に出る場合もあり得るのだ」云々ということを質問して、そのあとは、増原長官なかなかおもしろいことを言っている。「国務大臣(増原恵吉君)何といいますか、文字の問題、解釈の問題としては、水口委員のおっしゃられるとおり、私は、戦略守勢ということばを使うほうがいいと思う。これも私が考えたのではなく、専門家である防衛局長その他に、これは今度でなく去年教わったことばでもある」、このように言っている。あなたが教えたらしいや。そうして続いて、「水口宏三君 どうもことばの問題でございますけれども、専守防衛であれ戦略守勢であれ、いずれにしても戦術的にはこちらが攻撃に出る可能性というものは、これは十分あり得るわけでございますね」と質問した。「国務大臣(増原恵吉君)そういうことでございます」、このように答えている。  まず山中長官、この増原さんの答弁に御賛成でございますか。どうですか。
  231. 久保卓也

    久保政府委員 事実関係を申し上げて、長官がお答えになるそうでありますので、申します。  この戦略守勢ということばと増原長官との関係は、長官になられましてすぐに、専守防衛というよりも戦略守勢のほうがよろしい、こうお答えになったことがあります。新聞に出ました。といいますのは、この前も申し上げたとおり、専守防衛というのは新しい用語であり、やや政治的な表現であります。したがいまして、以前からの感じ方、考え方をお持ちの増原長官は、専守防衛というようなものよりも、従来からなじんでいる戦略守勢ということばのほうがいいんではないかということで発言をされたわけであります。しかしながら、私が申し上げまするように、昔から使われておりまする戦略守勢というのは、いまもありましたように、戦術攻勢、戦術攻撃的な面も含んでおりますので、いま政府がとっております専守防衛の態度からいたしますると、やや広い。そういう意味で私は、軍事的用語としては戦略守勢ということばしかないけれども、やはり専守防衛のほうが適当でありますよということをお教え申し上げたわけであります。  そこで、専守防衛と従来から使われておる戦略守勢ということばでは、その範囲をやや異にする。しかし、軍事用語としては何があるかといえば、専守防衛に対応するのは戦略守勢ということばしかございません。しかし、ぎりぎり詰めていけば戦略守勢というほうがやや広い。ですから、防衛庁としては専守防衛ということばのほうがよろしいということを増原長官に申し上げ、自後、増原長官は専守防衛ということばを使われておるはずでございます。  以上が事実関係であります。
  232. 山中貞則

    山中国務大臣 いまの経過であれば、私の現在の考え方と変わりはないということであります。
  233. 岡田春夫

    岡田(春)委員 じゃあなたは同じですね。
  234. 山中貞則

    山中国務大臣 いまの久保局長が設例しました経過で、増原前大臣も、専守防衛ということのほうが、不必要な攻勢に転ずる可能性のある戦略守勢ということばよりもよろしいということに変わられたそうですから、それならばいまの私の考え方と同じである。(岡田(春)委員「専守防衛ですか」と呼ぶ)そうです。
  235. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃこの点はどうですか。これもある新聞で明確にされたんですが、増原長官は、「戦略的意味で攻撃に出ることはありえない。長距離爆撃機を持たないことでも、それははっきりしている」。そのあとだ。「しかし、個々の戦闘では機先を制して敵を攻撃するのは当然のことだ」と、ここまではっきり言い切っている。これは長官としてどう思われますか。機先を制して攻撃することは当然のことである。先制攻撃、予防戦争、こういう意味の問題に関連すると思うが、これは適当なことばであると思いますかどうですか、長官、お答えいただきたい。
  236. 山中貞則

    山中国務大臣 これはいろいろな場合を想定してのお話でありましょうが、しかし、現在の日本の専守防衛における具体的な形態というものを考えた場合、向こうが発砲していないのにこちらから発砲するということは、ちょっと考えられません。したがって、もし発砲する場合でも、それは自分自身の安全を守るか、あるいはそれから待避するために発砲しつつ待避行動に移るのか、いずれにしてもその前に領空内であることを認識させ、あるいはそれに従わない、退去に従わない場合は着陸することを求めたり、そういうことをやるわけでありまして、それでも撃ってきた場合、その場合において自分自身を守る、あるいはまた待避するために発砲しながら待避していくということは考えられますけれども、相手が直進してくるので、向こうが引き金に手をかける前に撃ったほうが無難であるということは、現在の私たちの考えておる——ケースはいろいろあるんでしょうけれども、原則論としては、そういうことを日本からしかけていくという形はとらないんだというのが専守防衛だと思う。
  237. 岡田春夫

    岡田(春)委員 先制攻撃ということは、先制的に攻撃をする、機先を制して敵を攻撃すること、これが先制攻撃ですね。憲法上これは認められないと思いますよ。吉國さん、憲法上そういうことは絶対認められないと思うが、どうですか。
  238. 吉國一郎

    吉國政府委員 結局、これはいつも申し上げておりますような、自衛権の発動の要件に当たるか当たらないかという問題であろうと思います。
  239. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だから、それは当たるのですか、当たらないのですか、先制攻撃をするということは。
  240. 吉國一郎

    吉國政府委員 その先制攻撃という意味でございますが、これは全くの想定でございますけれども、まだ日本に対して急迫不正な侵害がないという状態を想定をいたしまして、そこで急迫不正な侵害が起こってきた。この場合に、自衛権の発動の要件にかなう限りは自衛権を発動するわけでございますが、その段階において、いま岡田委員御指摘のような先制攻撃というものは、これはあり得ない。絶対にあり得ないと思います。あってはならないことであろう。  ただ、事態が進行いたしまして、個々のこまかい戦闘の段階でそういうことは自衛権の発動の三要件に当たり得る場合が、事例によってはあるのではないかというような考えを持っております。
  241. 岡田春夫

    岡田(春)委員 吉國さん、それはあなたのお仕事の分野じゃない。憲法の解釈をなさるのがあなたの分野です。防衛局長が言うなら……。  そこの点はあえて詰めませんが、せっかくあなた自衛権の話になったから、もう一度私は念のために確定解釈として伺っていきたい。自衛権の限界をあらわすところの三原則、自衛権行使にあたっての三原則といいますか、政府確定解釈はどういう確定解釈ですか。
  242. 吉國一郎

    吉國政府委員 この三要件と申しますのは、わが国に対して急迫不正な侵害があったこと。この場合に、これを排除するために他に適当な手段がないこと。さらに第三に、その急迫不正な侵害を排除するために必要な最小限度の力の行使にとどまるべきこと。この三つの要件を従来自衛権発動の三要件と申しております。
  243. 岡田春夫

    岡田(春)委員 わが国に対して急迫不正の侵害があったこと、これは私も念のためにいろいろ調べてみましたが、その確定解釈は間違いないと思います。実は昭和二十九年四月六日のこの内閣委員会で、やはり当時の佐藤達夫法制局長官は、あなたと全く同じことを言っておられます。これは重要な点ですから、私、速記録を重ねて読みます。  「佐藤(達)政府委員 私どもの考えておるいわゆる自衛行動と申しますか、自衛権の限界というものにつきましては、たびたび述べておりますように、急迫不正の侵害、すなわち現実的な侵害があること、それを排除するために他に手段がないということと、しかして必要最小限度それを防禦するために必要な方法をとるという、三つの原則を厳格なる自衛権の行使の条件と考えておるわけであります」。これといまの御答弁は全く同じだと思いますが、わが国に対する急迫不正な主権の侵害を行なった。先ほども侵害を行なった、こういうように言われましたが、この点は間違いございませんね。——変なことをアドバイスしなくてもいい。
  244. 吉國一郎

    吉國政府委員 わが国の独立を侵すおそれのある侵害ということでございます。
  245. 岡田春夫

    岡田(春)委員 おそれとは、先ほどの答弁と食い違いますよ、そういうことを言われたら。だからあまり変にアドバイスすると頭が混乱しちゃうん、だ。
  246. 吉國一郎

    吉國政府委員 もう一ぺん申し上げますが、急迫不正な侵害と申しますのは、わが国の独立を侵すおそれのある差し迫った正当性を欠くような侵害であるということでございます。
  247. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その前の形容詞はいい。私はもう少しつづめて言いましょう。侵害ということばは、わが国の主権——独立ですね、あなたのように独立とおっしゃってもいいが、主権を侵害したという、侵害という事実でしょう。侵害したということでしょう。
  248. 吉國一郎

    吉國政府委員 侵害という事実でございます。
  249. 岡田春夫

    岡田(春)委員 現実の侵害ですね。
  250. 吉國一郎

    吉國政府委員 侵害と申しますのは、わが国の主権を侵すということでございまして、その害によって現実の被害が生ずるというところまでは要求するものではございません。
  251. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはどういう意味ですか。これは重大だ。どういうことですか。侵害ということは、現実に主権を侵害しなくてもいいのですか、それでは。そういう答弁は私は聞いておりませんよ。変にアドバイスするからそういう混乱が起こるのです。それでは佐藤政府委員答弁と違う。そういう話は違う。
  252. 吉國一郎

    吉國政府委員 これは前々から申し上げておりますが、いま現実の被害と申し上げましたのは、武力攻撃というものに着目いたしまして、武力攻撃が始まればそれで侵害があったということでございます。
  253. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そんなことありますか。そういう答弁がありますか、あなた。武力攻撃が始まったら侵害があったということになりますか。イコールですか、それは。そんないいかげんなことを言っちゃいけませんよ。いつからそういう解釈が出てきましたか。
  254. 吉國一郎

    吉國政府委員 武力攻撃のおそれがあるという時期ではございません。現実に武力攻撃があったという時期でございます。  ただ、その武力攻撃によって現実に被害を生じたというところまでいっているのではなしに、わが国の主権を侵す行為、その武力攻撃が始まれば侵害があったという時点に相なると思います。
  255. 岡田春夫

    岡田(春)委員 被害が起こるのではなくて、侵害があったというのは具体的にどういうことですか。ちょっと私には常識として考えられないのですが、被害がなくて、そして侵害があった、そんなことありますか。(「ミサイルが飛んできたら」と呼ぶ者あり)いやいや、具体的な法解釈で私、伺っているのです。そんなばかな話ありますか。
  256. 吉國一郎

    吉國政府委員 武力攻撃の具体的な態様については、私ども知悉をいたしておりませんけれども、かりに武力攻撃の手段として兵器を用いて攻撃をするというときに、その攻撃によって現実に、たとえば家屋その他の財産が破壊される、損壊されるという現実の被害、あるいは人命が損傷され、あるいは人命が喪失されるというような具体的な被害、そういうものまで要求しているのでなしに、わが国土に対して武力攻撃として兵器を使用するという、使用し始めたというときが武力攻撃が開始されたというふうに私ども考えております。
  257. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは、憲法解釈、非常に問題があると思う。あなたはこういう答弁をされるのではないかと思って私いま考えていた。被害があらわれなくても、相手の軍艦が三海里以内の海域に、領海に入った、それは被害ではないけれども実質的に主権の侵害である、だからこれはまさに被害ではないけれども侵害であります、こう答えるかと思った。あなた武力攻撃の問題だけを取り上げられるのですが、武力攻撃の問題だけでそういうようにお取り上げになるのは非常に問題がありますよ。私あとで質問していきますが。侵害というのはそういう意味ではありませんか。私の言った意味じゃありませんか、あなた先ほど御答弁になった点では。
  258. 吉國一郎

    吉國政府委員 領海を何海里とするかは別といたしまして、わが国の領海内に不法に入ったというだけで、自衛権発動の急迫不正の侵害というまでにはなると限らないのではないかと思います。
  259. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはそうですよ。私はそんなことを聞いているのじゃないのです。それは、先ほどあなたが言った三条件があって、三条件を満たさなければ武力行使の条件ができないのですよ。しかも武力行使は単に自衛権行使の一態様ですよ。自衛権行使の中には、これはあなた御存じのように、自衛隊法八十四条をごらんください。領空侵犯の場合においては武力行使できない。強制退去権、強制着陸権という自衛権の行使ができる。自衛権の行使というのは、武力行使を必ず、それ以外のものはあり得ないということではないですよ。自衛権の行使というものには幾つかの態様がある。その一つにすぎない。  あなたの先ほどの御答弁、まだお取り消しにならないようですから、私もう一度、それでは具体的に今度伺いましょう。たとえば相手の軍用機が公海上から、先ほどからここでも再三言っておられるが、わが領域に向けてミサイルを発射した。いいですか、ミサイルを発射したのだが、発射されたミサイルはわが領域に到達する以前に、みずからの故障によって公海上に墜落した、こういうことはあり得ることだ。いいですか、あり得るでしょう。そこで、これに対してわがほうは、ミサイル発射のとき、すなわちあなたが言った武力攻撃の始まったとき、これに対して自衛権を行使して相手の軍用機を撃墜した。これは過剰防衛でしょう。どうです、あなたの解釈で言えば、憲法解釈だから。過剰防衛でしょう。どうですか。
  260. 吉國一郎

    吉國政府委員 そのときの具体的な諸般の情勢によってきまる問題であろうと思いますので、単に一機の某国の航空機がそういう事態を起こしたからといって、必ずしも急迫不正の侵害があるということにはならないと思います。
  261. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたは憲法を守るという立場で言っていただきたいのです。こういう事態は明らかに武力攻撃の発生が同時に自衛権行使の条件になるということにはならない。この点は憲法解釈上非常に重要な点です。ですから念を押した。現実にあなた答弁している。速記録を調べてごらんなさい。現実に侵害が発生した、侵害された、されたことが一つの条件であるとはっきり言っているじゃないか。だから私は念のために、重要だからと言って、佐藤達夫法制局長官答弁も重ねて使った。しかもそれだけじゃありませんよ。六 ○年安保のとき——私はこのときおったのだが、この六〇年安保のときに、参議院ですが、辻政信君の質問に答えて、被害が起こっておらなければ、これは自衛権行使の条件を満たさないとはっきり言っている。はっきり言っている。では、いつからそういう解釈が変わったのですか。先ほどからどうもアドバイスをしているところを見ると、最近解釈を変えてきているのじゃないかと思われるのだが、そこら辺はどうなんですか。
  262. 吉國一郎

    吉國政府委員 いま手元に非常に古い時代のものは持っておりませんので、昭和四十五年三月十八日の第六十三回国会、衆議院予算委員会における楢崎委員の御質問に対しまする当時の高辻政府委員答弁を申し上げますと、楢崎委員の「領域に入られない場合でも、自衛権の発動はあり得るのですね。それを聞いておるのです」という御質問に対しまして、高辻政府委員から、「大体いままで申し上げたことでもう尽きておると思うのでありますが、要するに武力攻撃が発生したときということでありますから、まず武力攻撃のおそれがあると推量される時期ではない」。これは先ほど私が申しましたとおりであります。「そういう場合に攻撃することを通常先制攻撃というと思いますが、まずそういう場合ではない。次にまた武力攻撃による現実の侵害があってから後ではない。武力攻撃が始まったときである。こういうことをいっておるわけです。始まったときがいつであるかというのは、諸般の事情による認定の問題になるわけです」というような答弁をしております。もっと古い時代にもあったと思いますが、いま手元に持っておりますのはそのようなものでございます。
  263. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなた、いま速記録のあとのほうをつけ加えましたね、意識的に。私それ持っているのですよ。持って聞いているのですよ。そのときの情勢、認定によりますなんて、何にも書いてないですよ。取り消しなさい、あなた。そんなこと言っちゃだめですよ。書いてないですよ。私、持っている。いまごまかしを言っちゃだめですよ。
  264. 吉國一郎

    吉國政府委員 ございます。
  265. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはうしろのほうでしょう。ずっとあとのほうでしょう。
  266. 吉國一郎

    吉國政府委員 「始まったときがいつであるかというのは、諸般の事情による認定の問題になるわけです。認定はいろいろ場合によって、その場合がこれに当たるかどうかということでありまして」云々というように、認定の問題をそのあとのほうで答弁をいたしております。
  267. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私は、実はその問題をきょう質問したかったのです。憲法解釈は高辻長官のとき以来変わったのです。それ以前と以後とは違うのです。自衛権行使の条件の幅を広げたのです。こういう解釈によって自衛権行使の幅を広げるようにするようにしたのです、ねらいは。発生があったということで自衛権の行使ができるということにしているわけです。ところがその場合においては、三条件が伴わなければなりませんよね。皆さんどうですか、いいですか、主権の侵害が具体的にあった、そういう場合には三条件がそろうことができる。主権の侵害があったということによって自衛権行使の条件になるという意義はあるのです。先ほど吉國さんが答弁をされた三条件の問題、これは国際法上の通念として、これは通説ですが、必要性、ネセスティー、それから均衡性、プロポーショナリティー、この三条件がそろわなければならない。そうでなければ最小必要限度ということが生まれてこないのです。なぜならば、均衡性という条件があるからこそ、攻撃があったのに対して、侵害があったのに対して、それに相応する均衡したそのようないわゆる反撃、自衛の措置がとり得る、そういうことでしょう。それに、公海上で攻撃があったからといって、現実の侵害が起こらないのに、これに対して反撃を加えた。その反撃というのは、過大な、とんでもなく大きな、たとえば原爆を使うとかいうような場合には、これは過剰防衛ですよ。これは均衡性の条件ですよ。均衡性の条件からいったら、現実の侵害なくして均衡性の条件をどうして完徹しますか。いいですか、均衡性の原則はどうして完徹できますか。
  268. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほど三要件の第三として申し上げました、その急迫不正な侵害を排除するために必要最小限度の実力の行使にとどまらなければならないということを申しました。これがいまの問題だろうと思います。
  269. 岡田春夫

    岡田(春)委員 アメリカ局長ちょうどおられるから、外務省の方のほうが正確だと思うので伺うのですが、条約局長のほうがいいと思う。  自衛権の行使の問題で、憲章五十一条、ありますね。ひとつ原文の英語のほうでごらんください。武力攻撃の発生と日本では書いている。それは英文のほうではハズ オカーズ、起こった、EDが入っている。過去形じゃないか。発生するとは書いてない。
  270. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 国連憲章第五十一条の英文の当該個所は、イフ アン アームド アタック オカーズで、ハズじゃございません。イフ アン アームド アタック オカーズ。日本訳は「武力攻撃が発生した場合には」……。
  271. 三原朝雄

    三原委員長 お静かに願います。
  272. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それから、安保の五条ではオカードでしょう。じゃこの解釈の違いがある。
  273. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 安保条約第五条の英文は、アン アームド アタック アゲンスト アイザー パーティーという表現が使ってあります。武力攻撃はということであって、名詞として使ってあるので、武力攻撃が起きた場合云々という表現にはなっておりません。
  274. 岡田春夫

    岡田(春)委員 わかりました。私、ちょっと原本持ってきませんので、これは留保いたしておきます。私の記憶では、正確にはオカードと過去形になっていた部分がはっきりしております。
  275. 三原朝雄

    三原委員長 お静かに願います。
  276. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、この問題について資料を持ってきてやりますから、ちょっと待ってください。いいですか。  ではもう一度吉國さんに戻します。あなたも二時半過ぎには帰らなければならないそうですから。先ほどのあなたの速記録で見るとはっきりしますが、侵害を犯した場合、こう言っていますね。それは佐藤達夫法制局長官と同じ侵害を犯した場合。ところが、武力攻撃の発生という点については、吉國さんは高辻政府委員と同じ、こういうようになるわけですか。二つ違うのですね。二つの点をあなたは御答弁になっているわけですね。
  277. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほど私、申し上げましたのは、自衛権発動の三つの要件として、わが国に対する急迫不正な侵害というのが一つと、それからその侵害を排除するために他に適当な手段がないということ、それからその侵害を排除するために必要な最小限度の実力行使でなければならないという三つの要件を申し上げました。そのときに、侵害ということについては、現実の侵害がなければいけないのかどうかということについて、先ほどの先制攻撃と少し私も関連をしてお答えしたようなつもりでございますけれども、たとえばということで武力攻撃の例を出しまして、その武力攻撃の一つの態様として、たとえば一種の一定の武器の使用があった。その武器の使用があって、わが国に対する急迫不正というような要件が備わっていなければもちろん相なりませんけれども、侵害がそれで始まったということになりますと、というのは、現実の財産の損壊であるとか人命の殺傷というような具体的な被害というものまで、侵害ということで言っているわけではございません。そのちょっと前の段階で侵害があったことになりますよということを申し上げたつもりでございます。  したがって、これは前々からもう歴代の長官がそういう答弁をいたしておるはずでございますので、違いはないと思いますが、必要でございますれば、先ほども申し上げました昭和四十五年の答弁より古い答弁をまたさがし出してお目にかけてみてもよろしいと思いますが、三要件の考え方について、法制局の考えは変わっておらないつもりでございます。
  278. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたは主権の侵害ということを言われたのでしょう。主権の侵害というのは、何も殺傷だけを意味しませんね。私がさっき言ったように、領空、領域、領海の侵犯、これは何も殺傷はないですね。そのことにすぎないのですよ。それだって主権の侵害でしょう。そのこと以外にはあり得ますか。それではその点を伺いましょう。
  279. 吉國一郎

    吉國政府委員 主権の侵害という意味では、いま岡田委員のおっしゃるとおりと思います。
  280. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それから、主権の侵害ということは、現実にこれは、有事または平時を限らず侵害は侵害。その場合において自衛権の行使の問題になってくるわけですが、問題は、自衛権の行使の態様からいうと、武力行使を必ず伴わなければならないということではありませんね。
  281. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほど武力行使、武器の使用を一例として申し上げたつもりでございまして、自衛権の侵害はそれのみに限るということはないと思います。
  282. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その点がはっきりしていれば、私はほんとうのことをいえば、いまの御答弁では了解しません。前の速記からずっとお調べください。前の速記と違います。どうも高辻法制局長官以来、拡張解釈をやっている。主権侵害ということについて、武力攻撃の発生、発生ということばにウエートを置いている。発生があって現実に侵害があり得ない場合はありますね。これは理論問題として伺っておきましょう。いいですか、武力攻撃が発生して主権の侵害があり得ない場合もある。それはどうですか。
  283. 吉國一郎

    吉國政府委員 わが国の主権を侵害することなしにわが國に対する武力攻撃がなされるということはあり得ないのではないかと思います。
  284. 岡田春夫

    岡田(春)委員 たとえば、武力攻撃ばかりでなくてもいいのです、主権の侵害なんですから。何らかの攻勢というものがあって、その攻勢について主権の侵害を伴わない場合が当然あるじゃないですか。それは、自衛権の行使、いわゆる武力攻撃と主権の侵害を別にするからいけない。いいですか、あなた、何らかの攻勢が主権の侵害を伴わない場合は当然あり得るじゃないですか。
  285. 吉國一郎

    吉國政府委員 これはほんとうに想定の問題でございますけれども、わが国に対する武力攻撃を意図して、その武力攻撃をするためにある兵器の使用をした。ところが、先ほどの御説明にもあったかと思いますが、その武器がその意図どおりわが国に対する武力攻撃の現実の被害を生ぜしめるだけの作用を果たし得なかったというような場合、これはわが国に対する武力攻撃があったということには相なると思います。
  286. 岡田春夫

    岡田(春)委員 ちょっといま最後が……。もう一度。
  287. 吉國一郎

    吉國政府委員 あったことになる。あったということです。
  288. 岡田春夫

    岡田(春)委員 侵害が伴わなくとも武力攻撃があったのですか。これは憲法解釈上、私はさっきから何度も言うように、拡張解釈になる危険性があるから念を押しているのです。防衛局長答弁はそういうことになるだろうと思う。
  289. 吉國一郎

    吉國政府委員 それは、武力攻撃があったということについていま説明を申し上げたつもりでございまして、それだから直ちに自衛権が発動するというものではもちろんございません。
  290. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、この問題は私はまだ納得しません。もう少しあなたのほうもお調べになるというからお調べください。これは別な機会に必ず質問を続けます。
  291. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほど来、自衛権発動の三要件について、前からの法制局の答弁が、前の時代に広がったように思うというお話でございまするが、私どものほうは、自衛権の発動の三要件については、四代前の長官以来変わってないつもりでございます。しかし、その御質疑がございますので、古い答弁も調べまして、またお目にかけるようにいたしたいと思います。
  292. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは、もう一点だけこれを伺って吉國さんに行っていただきますが、いま言ったような侵害、攻撃があったとして、そういう情勢を常に自衛権行使の条件とする、恒久的にそういうものを施設としてきめておく、そういうことは憲法上認められますか。
  293. 吉國一郎

    吉國政府委員 いまの御質問は、そういうような、ただいまの設例のような場合を想定して、それに対応する施設を設けておくということでございますか。
  294. 岡田春夫

    岡田(春)委員 常に……。
  295. 吉國一郎

    吉國政府委員 それは武力攻撃の態様にもよると思いますが、先ほど御設例のような場合を想定して常に、そういうことが起こってはいけないというので、それに対応する手段を設けるということは、どうも日本の自衛権のあるべき姿としては、憲法に適合するところではないと思います。
  296. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃもう少し進めますが、たとえば、久保局長が先ほどからいろいろ示唆しておりますから、去年の九月十四日の水口君に対する答弁の中で、「われわれのほうの防衛構想上前提といたしておりますのは、公海上でありましても、その艦隊なら艦隊が日本を目ざして、日本の侵略のために行動を起こしているということが、四囲の状況で明白であるという場合には、領海に入らなくても、公海におきましても攻撃を加えるであろう。それは自衛の範囲に入る」。これは先ほどの答弁から見ると、私はこれは憲法違反だと思う。違憲の答弁だと思う。しかし、あなたはきっと、答弁するのに、「四囲の状況で明白であるという場合には」と言っておりますと答えるだろうと思う。しかしその場合でも、攻撃というのは武力攻撃ですよ。必ずしも日本の武力攻撃をやるのではないということを吉國さん言っているじゃないですか。ここには武力攻撃と限定しているじゃないですか。これは違憲の措置ですよ。違憲の措置といわざるを得ない。なぜならば、私、具体的に言わなくてもおわかりのように、公海上において行なわれるというのは、現実の侵害が起こっておらない。第二点は、侵害が現実に起こってないだけではなくて、先ほど言った自衛権行使の均衡性の原則からいって、侵害がないのにバランスのとれないところの攻撃は行なわれない。この第二の点、攻撃という場合には、自衛権の行使の場合、武力攻撃というのは意思、態様にすぎない。ここで攻撃と限定したところに憲法の違憲性がある。あなたはこういう点について、どういうように御解釈になってこういう答弁をされたのですか。
  297. 久保卓也

    久保政府委員 もちろん、憲法解釈は法制局の見解にまたねばならないわけでありますが、いまの御質問を受けた際の私の真意というのは、四囲の情勢からして日本を攻撃することが明白である、そして攻撃の態勢を持って日本に進んできている、そういう場合に、領海に入ってない公海上におきましても、相手方が領海に入り一もしくは相手方が砲門を撃つまでわがほうが対応しないという必要はない。情勢から明白にわが国が侵害を受けることが具体的かつ明白に予想される場合に、わがほうが相手方に攻撃を加えることは自衛の範囲であろう、というふうに私は思ってそうお答えしたわけであります。
  298. 岡田春夫

    岡田(春)委員 この自衛権問題については、私は留保いたしておきます。これは吉國法制局長官答弁も、先ほどの最初の答弁あと答弁とだいぶ違ってきている。だから、これはあなたのほうもお調べになるとおっしゃるし、私のほうもこれは留保をいたしまして、あとで適当な機会に質問をいたします。  続いて、別な問題に入ってまいります。吉國さんもしお帰りになるならどうぞ。  そこで、ADIZ、防空識別圏ですね。これは本土、沖繩にあることは知っておりますが、硫黄島、南鳥島、沖ノ鳥島、小笠原諸島の場合にはあるのですか、どうですか。
  299. 久保卓也

    久保政府委員 ADIZは、大体、要撃機の足の長さ、それからレーダーサイトのレーダーのききぐあいというふうなものを総合勘案して定められておりますので、小笠原でありますとか硫黄島でありますとかいうようなのは、非常に遠い場所にありますので、ADIZのうちに入っておりません。
  300. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは日本の領域ですが、それに対する防衛の問題はどうなるのですか。
  301. 久保卓也

    久保政府委員 ADIZは、言うまでもなく常時におきます領空侵犯がある場合に備えて、あらかじめいわば情報伝達をすべきラインということになります。そういたしますると、小笠原とか硫黄島をその中に含めませんでも、日本本土に近づいてくる場合、外側のADIZの線でキャッチすれば一応本土の領空侵犯措置は可能であろう。また現実問題としまして、小笠原なり硫黄島にADIZを設定いたしましても、これはレーダーサイトでキャッチできませんから実効がないということになります。
  302. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、ADIZは常に北のほうと西のほうに向けてある、太平洋のほうは要らないんだ、こういうことですね。
  303. 久保卓也

    久保政府委員 もちろん、ADIZのラインは御承知のとおりでありまして、日本周辺に向けられております。
  304. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、このADIZは外側線がありますね。この外側線までの距離はどこから大体何キロということになっていますか。何海里ということになっていますか。
  305. 久保卓也

    久保政府委員 これは地域によってだいぶ異なっております。外国との関係も考慮しまして設定しておる関係もありますので、非常に外国領土と接近して、あるいは逆にいえば本土に接近して設定しているところもありますれば、本土からやや離れたところもありますが、ちょっと計算をいたしておりませんけれども、大体百マイルから百五十マイルぐらいではなかろうかと思います。
  306. 岡田春夫

    岡田(春)委員 日本海の場合には大体二百海里。それはどこからですか。
  307. 久保卓也

    久保政府委員 本来、外側線を計算する場合には、レーダーサイトの場所から計算をいたしております。ところで、レーダーサイトの場合も、場所によりましてききぐあいが違ってまいります、高度の関係で。したがって一がいに言えませんけれども、日本海の場合には、大体レーダーサイトから見て二百マイル程度のところもございます。
  308. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、二百マイルのところを最長として、そのADIZの外側線まではいわゆる日本の防空空域ということになりますか。
  309. 久保卓也

    久保政府委員 このADIZの性格でありますけれども、ADIZというのは、領空侵犯に備えまして情報を得る場合の線である。したがって、そのADIZの中は全部防空をやるとか、あるいはADIZに入ったら領空侵犯措置を講ずるという性格のものではございません。要するに、ADIZの中に入ってくるときに、その飛行機がどこの飛行機であるか、あるいは日本本土を目ざしてくるものであるか、領空侵犯をしそうであるかどうか、その点を情報を得ながらキャッチすべき、つまり情報を追及しておくべき空域であるということになりまして、このADIZの中に入ったもののうちから、領空侵犯機になるかならないかを判断をするということになります。
  310. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはそうですよね。領空侵犯というのは、三海里説をとればそれ以内が領空侵犯です。そうするとあれですか、ADIZの外側線以内というのは領空ではなくて、したがって公海上の地域を観測をする、そういうことですね。
  311. 久保卓也

    久保政府委員 ADIZの中は領空でないことはもちろんとして、防空の範囲でもない。防空という見地でとらえるべきではない。要するにADIZを越えて来た場合に、それが本土の領空を侵犯することになるかもしれないという警戒をする空域、したがってその中から判別をして、これは方向が違うから領空侵犯にはならないだろうということで領空侵犯措置をとらない、あるいは本土のほうに向かってきている、いまのうちにスクランブルをかけないと間に合わないというようなものを選別をする、そういうような空域である。言うならば情報を得るべき線であるというふうにお考えいただきたい。特にこれは義務は自衛隊機にだけ課しているということであります。
  312. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは具体的な点を伺ってまいりますが、最小発見線、MLD、これはどういうものですか。
  313. 久保卓也

    久保政府委員 これはおそらく、スクランブル機が会敵をするために時間を要しますから、そのためには、それまでにその時間を——相手のスピードにも関係いたしますが、そのスピードとの関連で相手方を発見をしておかないと、スクランブルをした飛行機が領空外で会敵し得ない、そういうぎりぎりの線のことだと思います。
  314. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたあまり正確じゃないようですから、私のほうで言いますが、これは私のほうが正確なんです。なぜならば、私は航空自衛隊教育訓練資料「術語の解」、これによってはっきり言いますが、「術語の解」によれば、「要撃機が、最小要撃線で敵機を攻撃するため、航空警戒管制組織のレーダーで敵を発見することが、これ以上遅延することを許さない敵機位をつらねた線」、こういうようになっています。  そこで、もう一つ伺いますが、最小要撃線、MLI、これは何ですか。
  315. 久保卓也

    久保政府委員 ちょっと私、正確でありません。おそらく最小要撃線というのは、日本本土に対して爆弾を投下する以前に会敵、要撃をしないと、爆弾が日本本土に落ちるという意味で、本土に落ちない範囲内でそれぞれの基地から自衛隊機がスクランブルして会敵し得る、その前にあらかじめ飛行機を発見しなければならない線、そういうふうに思います。
  316. 岡田春夫

    岡田(春)委員 最小要撃線は、やはり「述語の解」によれば、「要撃機が、敵機を兵器発射線又は友軍の対空射撃圏以前において撃墜するため、これ以上第一撃の開始を遅延できないところの敵機位をつらねた線」、撃墜するために必ず撃たなければならない線、これが最小要撃線。  もう一つ、兵器発射線、WRL、これは何ですか。
  317. 久保卓也

    久保政府委員 これも正確でないかもしれませんが、たとえば、東京なら東京都というものを想定いたしますと、東京都に対して、たとえば三万フィートから爆弾を落とす場合に、速度との関係がありますけれども、一マッハで三万フィートの場合に爆弾を投下したら、東京都に落ちるその手前で相手方の飛行機を落とさないといけないわけでありますが、そういった線。たとえば、一マイル前から爆弾を落とせば東京都に落ちてしまうということであれば、その一マイル以遠において相手方の飛行機を撃墜しなければいけない、そういった場合の一マイルなら一マイルという線が爆弾投てき線だったと思います。
  318. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私、これはさっきからの自衛権の問題で聞いているのですよ。それで具体的に、最小発見線というのは、私はADIZの外側線だと思う。最小要撃線、攻撃をするところ、必ず落とさなければならない、これがどこにあるか私にはわからないのですよ。この距離をぜひ伺いたかったのです。この点、防衛局長御存じでしょうか。
  319. 久保卓也

    久保政府委員 私は図面を見たことはありますけれども、距離そのものは存じておりません。ただ、ADIZと同じではありませんで、ADIZよりもだいぶ中に入ります。そしてまたレーダーサイト及び……(岡田(春)委員「ADIZの外側線でしょう。外側線より中に入るというのでしょう」と呼ぶ)ADIZよりも中に入る。それから、航空基地との関係もありますので、非常にいびつなかっこうで線が引かれていたと思います。
  320. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは防衛庁の「国の守り」に出ている。いいですか、ここにある。ここにADIZの図面がある。これをごらんなさい。この地図をたんねんに見ると、最小要撃線というのは三十八度線になっている。これ、長官どうですか。日本海側で三十八度線が最小要撃線になっている。最小発見線は三十九度。これは明らかに侵略的な方式がとられているじゃないか。どうです。これは見にくかったら、この大きなのを、少しかいてきましたから、この点線でごらんなさい。薄いけれども、日本列島から見て一番外側の線が外側線である。これが最小発見線である。その次に点線が出ている。いいですか、これは最小発見線は三十九度である。それから一度下がって点線が引かれている。この点線は三十八度。三十八度まで攻撃しなければならないということになっておる。あなた、これでもさっきの法解釈で自衛権の行使をやる、三十八度線まで攻撃ができるというわけですね。これはあなたのほうの地図だから、よくごらんなさい。
  321. 久保卓也

    久保政府委員 何度であるか、私も明確にはいまお答えできません。ただ、日本を攻撃することが明白な飛行機があります場合に、日本に到達する以前にこれを撃墜するということは、防空任務上当然でありまして、たとえば日本に非常に接近をして、領空近くになってから航空自衛隊が待ちかまえていて撃墜する、あるいはそれから飛び立つということでは間に合わない場合が往々にしてありますので、一応物理的、技術的に計算してみると、いろんなそういった要撃の線が想定をされるということになります。
  322. 岡田春夫

    岡田(春)委員 長官、よく聞いてください。いいですか、それ、三十八度線とすれば、先ほどの「用語の解」、航空自衛隊が必ず下部でやらなければならないといっている、必ず撃ち落とさなければならないといっているところは三十八度線だ。三十八度線で落とさなかったら、これは自衛隊の方針に従わないことになるじゃないか。しかも、指令として「用語の解」に出ているじゃないか。  それ以外にもありますよ。航空自衛隊参考書の「幹部必携」の中にも書いてある。それから統合幕僚会議の「用語の教範」の中にも書いてある。三十八度線のところまで撃たなければならないわけですね。それでも当然だ、自衛権の行使だといえますか、長官。これはどうなんですか、長官
  323. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、私もそこまで技術的なことは知りませんが、三十八度線というのはいわゆる朝鮮半島の三十八度線ということではないのであって、それは北のほうに列島の緯度が上がっていけば、それは四十四度線もあれば四十三度線もある、そういう性格のものじゃないんですか。
  324. 岡田春夫

    岡田(春)委員 山中長官いみじくも答弁しました。その地図をごらんいただきながら私やりましょう。  そこのADIZは朝鮮につながっているでしょう。これまさに日本とアメリカと韓国の共同作戦を明らかにしているのです。三十八度線につながっている。明らかになっているじゃないか。ADIZでは日米韓共同作戦が明らかですよ。あなた、韓国の三十八度線、もう語るに落ちたことだ。共同作戦ですよ、それは。(山中国務大臣「これは韓国のほうでしょう、日本のほうはこれでしょう」と呼ぶ)これは日本のスクリーンですよ。日本のスクリーンにこれ全部飛行機が飛んでいるじゃないか。これ、皆さん確認しておいてください。日本の飛行機が飛んでいるじゃないか。どうなんだ。
  325. 山中貞則

    山中国務大臣 この線以内のことでしょう。
  326. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、その線以内なんてわかりはしないですよ、そんなことは。あなた、これは日本の自衛隊のスクリーンだもの。そんなばかな話がありますか、あなた。これは日本の飛行機が飛んでいるように書いてあるじゃないか。あなた、防衛局長もそういうこと、これほど共同作戦の問題を私やるやると言っているんだもの、あなた調べてくださいよ。これじゃ困りますよ。いいですか。  もう一つ私、言っておきますが、あなたこれしか見なかったが、もっとうしろを見なさい。うしろに出ているんだ。うしろにはこうなっている。韓国を除いてある。これは国民用にはこういうように出してある。いいですか、実際の作戦では、スクリーンでは韓国を入れてあるのです。いいですか山中さん、国民の外向きには入れてないのです。実際のスクリーンにおいては入れている。これ委員長要求したいと思うのだが、うそだとあなたがおっしゃるのなら、府中のCOC見にいこうじゃないですか。峯岡、見にいこうじゃないか。峯岡、これそっくりだよ。そのままですよ。外に対しては、国民に対しては、韓国に関係ございませんと答えている。国会に対してもそう答えている。実際の実線の上ではちゃんと韓国を入れてやっている。日韓米の共同作戦ですよ。明らかなんですよ。あなた答弁されたとおりですよ。
  327. 久保卓也

    久保政府委員 もちろん日本のADIZというのは日本の周辺だけであります。そこで自衛隊としてはどういう情報が必要であるかと申しますると、たとえば沖繩が返還される前でありましても沖繩地域の航空情報は必要でありまするし、それからまた韓国におきまする航空情報の中で、日本の防空に必要なものは日本また必要であります。     〔藤尾委員長代理退席、委員長着席〕 その点については、これは御承知のように米側から自衛隊が情報としてもらうことになっております。そして日本は韓国に隣接をしております。そこで、どういうような防空情報が出るかわかりませんけれども、日本の防空に必要なものであればそれは日本側で利用するということで、自衛隊といたしましては、韓国のADIZも参考のために掲示をしているということであると思います。
  328. 岡田春夫

    岡田(春)委員 最小要撃線の問題はまだあとで質問しますよ。  いまの問題に入りますが、それでは、きのう答弁しましたね、府中のCOC、あれは動かすのですか、動かさないのですか。
  329. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 COCそのものは、おそらく横田飛行場のほうへ動かさないことになるだろうと思います。
  330. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃもう一つありますね。TACC、これは動かすのですか。
  331. 久保卓也

    久保政府委員 TACC、ちょっと私、知りませんので……。
  332. 岡田春夫

    岡田(春)委員 おれのほうが先生だな。これは米軍専用なんです。(「知っているんだったら聞くことないじゃないか」と呼ぶ者あり)いや、確かめておるのですよ、おれのほうが正確であるかどうか。質問というのはそういうものですよ、あなた。米軍専用のやつですよ。
  333. 久保卓也

    久保政府委員 米軍の戦術用の司令部が府中にあるそうであります。
  334. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そんなのはあたりまえですよ。だって第五空というのは戦術司令部だもの。
  335. 久保卓也

    久保政府委員 TACCとして……。
  336. 岡田春夫

    岡田(春)委員 TACCというのは、それのスクリーンが全部あるのですよ。それはどうなるのですかと聞いている。
  337. 久保卓也

    久保政府委員 府中の器材について、何がどの程度動くか私は存じておりません。この前の施設庁のほうの話では、府中の司令部機能も横田のほうに移るということでありまして、それ以上のことは私は存じておりません。
  338. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、どうも調査不十分だな。そうするとCOCは、これは日米共管ですね。
  339. 久保卓也

    久保政府委員 現在、COCは日本側で設定しておるわけでありますが、米側もそこに関与している。私はおそらく、横田にかりに司令部が移ってしまった場合にも、日本のCOCにいわゆる連絡員は派遣されるのではないかというふうに思っております。
  340. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはあたりまえの話ですよ。だってあなた、COCに米軍がいなかったら韓国のエリアはどうするのですか。韓国のエリアはスクリーンに乗るのでしょう。韓国のエリアについて、どういう連絡、指揮系統をとりますか。
  341. 久保卓也

    久保政府委員 当然、ですから米側が今後どういうような指揮機能組織を持つかということは、空幕のほうでも情報を得ておりません。したがって、横田のほうに司令部組織をつくって、通信回線を府中のほうを通って利用して韓国のほうに指令をするのか、あるいはCOCに指揮要員を置いて、米側がCOCから韓国の在韓米軍に指揮をするのか、その辺は空幕もまだ聞いておりませんで、おそらく今後の問題ではないかというふうに思っております。
  342. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかしあなた、どうですか。C ○Cでスクリーンに乗るのに、あなた最初に言われたように、アメリカから連絡将校が入るだろう、これが常識ですよね。入らないという場合なんかあり得ないですよ、だってエリアが一緒なんだもの。別に置きますなんということは考えられないでしょう。そうですね。
  343. 久保卓也

    久保政府委員 米側のやることでありますので、私が責任をもってここでお答えできないからそう申しておるわけでありまして、COCに米側が連絡員を置いて、そこで指揮をすることは可能だと思います。ただ、この前施設庁の話では、司令部組織が横田に移るという話でありましたので、COCと同じデータを持ったものを横田につくるのかどうか、そこのところを私、知らないものですからそう申し上げておるわけであります。
  344. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはそうでしょう。横田に別にもう一つつくるかもしれない。しかしCOCにはアメリカの将校を置かなければならないのですよ。置かなければならないということは何だといったら、韓国と日本とアメリカとが共同作戦をスクリーンの上においてはっきりしているということですよ。長官どうですか。そうでしょう。
  345. 山中貞則

    山中国務大臣 それは日本側がどうするかという問題と一緒じゃないと思うのです。日本側のほうは、お手元のあとのほうに図面がありますように、日本側の警戒航空識別圏、そうして先ほど来問題になっている要撃圏と申しますか、そういうところ、そういうものは日本側でありますけれども、韓国のほうに向かって日本側が行動を起こすような線というものは設定されてはいないわけですよ。それは違うと思います。
  346. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはだめです。そういう答弁じゃだめです。これは日米韓の分担関係をあらわしているだけなんです。実際の実線はこの三つが一体になっているものなんです。そういうことなんですよ。ですからあなたは、あなたのおっしゃったうしろのほうに出ているというのは日本の分担なんです。  ですから言いましょうか。アメリカが韓国全域を含むところの、日本を含んだ全体の作戦をやる。日本はこの管轄をやるのです。韓国エリアは韓国の軍隊がやる。そうして三位一体の作戦を行なうのです。これが共同作戦の本質なんです。これが共同作戦なんです。初めから韓国エリアの中へ入っていくわけがないのです。これが共同作戦なんです。日米韓の共同作戦。先ほど楢崎君が質問された、韓国に問題が起こった場合に、日本の自衛隊がこのエリアに移ったので、いま言った分担上の共同作戦をやった場合には、これは明らかに韓国の飛行機に対して何らかの措置をとったとするならば集団自衛権の行使です。集団自衛権の行使ですから、これは憲法上認められていない。明らかに違憲の措置です。これはもう明らかに違憲の措置をとるという条件がここででき上がっているということです。どう思いますか、長官
  347. 山中貞則

    山中国務大臣 具体的には防衛局長答弁させますが、それはそうではなくて、日本は日本の守るべき分野を空においても明らかにしておる。識別圏も明確にしておる。それは決して韓国にかぶっているものではないわけです。したがって、韓国はまた韓国で米韓相互安全保障条約によってそういうものを持っている。米軍の極東の機能としては、それを両方それぞれの分担というものにおいて米軍は統一しているでしょう。しかし、かといって、韓国の圏内においての行動について、日本の本来の自衛すべき範囲から飛び出していって、一体となって行動するということはあり得ない。それはすなわち、あなたのおっしゃるとおり憲法違反、そういうことはしないということを言っているわけであります。
  348. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その点は了解できません。なぜならば、エリアが、スクリーンが同じなんだから、そういうわけにはまいりません。  どうも先ほどから私の質問にお答えができないわけですが、最小要撃線、最小発見線、兵器発射線、これらの空域の線というものを少なくとも私は出してもらいたい。そうでないと、私の想定によると、最小要撃線というものは、少なくとも領海を越えて、領空を越えて、日本の領域以外からだいぶ先の公海上にあるはずです。公海上少なくとも三十八度線の付近までいっているはずだ。  この地図じゃだめです。これじゃだめですよ。途中で質問をちょっとあれするけれども、それは国民向け、国会向けのあれで、だめなんです。そんなもんじゃ私はとても信用できません。実戦に使われているものでなければだめです。いいですか。  話はもとへ戻しますが、そういうMLI、MLD、WRL、この三つはどこに線を引いているか、これはぜひお知らせを願わなければならない。委員長、これは重要な、領海以外の公海の攻撃の問題ですから、あなたちょっと座をお立ちになったようですが、これは委員会中にぜひお出しをいただきたい。その線を出していただきたい。そうでないと、私はさっきから三十八度線ではないかと聞いている。それが違うのかほんとうなのか、こういう点も含めてひとつ委員長要求をいたします。
  349. 大出俊

    ○大出委員 ちょっと議事の進め方について関連質問をいたします。  私どもが一貫していままで質問をしてきておりますのは、どうも一九六九年のニクソン・ドクトリン以来、しきりに総合戦力構想といわれるものが表に出てきた。そこで、片やわが国は四次防というものを計画を進めている。したがいまして、その相関関係の中で、どうやら沖繩返還というものを含めまして、日本の自衛隊と米軍の間における、総合戦力構想というものを基盤にした、かつ沖繩返還というものを一つ含めての共同戦闘作戦行動という、ものの考え方がどこかで話し合われているのではないか。その節々がたくさんある。将来そうなっていくのではないか。現在でも、制服の諸君を入れての安保協議委員会等の構想からいきまして、詳細なそういう点の打ち合わせも進んでいるはずである。先ほどうしろのほうから不規則発言がございましたけれども、韓国にしても、日本にしても、アメリカにしても、極東地域においてそのおのおのの軍隊、自衛隊がばらばらでやっていくなんという、非常に非効率的な——その間には米韓条約もあります。日米安保条約もあります。そういうことになってくるとばらばらであるはずがない。だれが考えてもばらばらであるはずがない。防衛分担もある。作戦行動範囲もある。空における話し合いもある。何かあったときにそれが総合的に機能するトータル・フォースでなければならない。これはだれが考えてもあたりまえのことなんですね。だから私が冒頭に、少し長い質問のあとになって入りましたが、そこで四次防原案について聞いているのも、トータルフォースといわれるものの考え方の中に事実上組み込まれているのじゃないのか。そうでなければ、いざというときに立体的な戦闘ができないはずなんだ。これをはっきりさせたい。皆さん方から率直に、アメリカとの関係においてそういう形になっているのだということならば、ちぐはぐは起こらないのですよ。  ただ、それを認めたときにあなた方が困るのは、憲法の関係が出てくる、安保条約との関係が出てくるということなんですね。安保条約五条なら、日本の領域における米軍なり日本なりが攻撃をされれば日米共同戦闘は自動的に発生する。これは安保条約で認められている。ところが、六条という段階になると、対象は日本の領域の外における紛争なんです。だから岸・ハーター交換公文で事前協議、ただし安保五条を除くというカッコ書きがついている。したがって、もしもいまのMLI、最小要撃線が三十八度線にあるということになるとすると、かつての朝鮮戦争のようなことが想定され、現実に起こった場合に、韓国の釜山なら釜山においても——あるいは小松の飛行場からは三十八度線まで八百キロしかないのです。F4Eファントムなら二十分なんですから、そうなるとここで共同戦闘が行なわれる。三十八度線で侵入機を全部落とす、こういう共同戦闘になってしまうのではないか。その心配が質問者に出てくるのは当然であり、聞いているわれわれに出てくるのは当然なんですよ。そうでしょう。だからそのことは、そうでないというなら……。  あなた方の答弁は、山中さんの答弁もそうだけれども、憲法というワクが明確にある。だから、先ほど楢崎さんの質問で海上の場合もそうなんです。領海をかりに三海里説をとるとして、そこから先の公海でどこかの国、つまりアメリカの輸送船に対して攻撃が行なわれる、日本の自衛隊がそれと戦うということになると、憲法上の問題か、能力の問題か、安保条約の問題かという問題がさっき出ておる。同じ意味で、もし三十八度線で一緒に共同して侵入機を落とすという行為が行なわれているとすると、これは明確に安保条約六条の問題かつ憲法の問題。だからあなた方は、共同戦闘作戦行動をとりますと言えない。ここに本来の矛盾があるから、いろいろやっていくと至るところでちぐはぐになる。これが今日の経過です。  ADIZにしても、一点だけつけ加えますが、松前・バーンズ協定を岡田さんが取り上げたことがある。米軍の識別圏を受け継ぐ形になっておる。あのときに問題になったから、皆さんは識別圏は手前に引いたのですよ。そうでしょう。これは沿海州まで含んでいたのを引いた。その識別圏というものを対象にMLIはどこにいったかといったら、三十八度線にあったのじゃおさまりがつかないじゃありませんか。そうでしょう。だからいまの問題が出てくる。したがいまして、この問題は、いまこのスクリトンにあるADIZは手前に引いたのだ、引いて国民向け、国会向けに出されている。私もこういうふうに引きましたというのをあなた方にいただいた。松前・バーンズ協定を取り上げたときにはそうなっていない。だから問題になってあなた方は引いたのだ。引いたのだが、それは国民向けであって、このスクリーンを見たら三十八度線にMLIがあるということになるとすれば、これは私ども重大な問題だと考えますよ。そうでしょう、ここにあるのだ。私も全くのしろうとではない。十年やっておるのだから見ればわかる。これを見れば岡田さんと同じ感覚に立つ。そうだとすれば、ここのところは日本国憲法に照らしてやはり明確にしておく必要がある。立場は違います。違いますが、皆さんがおっしゃるように、共同作戦あたりまえじゃないか、ばらばらで戦争できるか、これはだれが考えたってそうなんです。だから心配をする。憲法もある。改正しているのではないのだ。そういう意味で憲法、安保に抵触をするのですから、だからこれがまずいならまずいで、あなた方に直していただけばいいのだ。  そういう意味で私も、このスクリーン見て疑問に思いますから、これは理事会でけっこうですが、あなた方のほうからひとつお出しをいただいて、実際にこのスクリーンは、私どもの認識、岡田さんの認識がどこがどう間違っておるのか、それを納得させるように理事会で資料を出してください。そういうことで委員長理事会で処理をする、そういうように預けていただいて質問を続けていただく。岡田さん、よろしゅうございますね。そうしてください。言った意味はおわかりになるでしょう。
  350. 三原朝雄

    三原委員長 ただいま岡田委員及び大出委員要求の資料の取り扱いについては、後刻理事会で協議をいたします。
  351. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、その問題については理事会でぜひ防衛庁のほうで資料を出して、その上でひとつ御検討いただいて、満足のいくような御答弁をいただけることを約束できますね。いいですね。
  352. 久保卓也

    久保政府委員 このMLIその他のラインというのはわがほうの実力を示すことになりますので、公表したくはございません。そこで、いま大出議員からも御質問のように、疑問の所在がわかりましたので、理事会で御説明申し上げたいと思います。
  353. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは問題をそういうことで了承いたしまして、続けます。  これは共同作戦の実例を具体的に伺いますが、この間、南朝鮮を中心とする陸海空の域において、アメリカの軍隊が参加する大規模な演習が行なわれた。それは七三年度ゴールデン・ドラゴン作戦、これは七〇年以来三年ぶりの大演習である。この七三年度ゴールデン・ドラゴン作戦というのは、いつからいつまで行なわれましたか。私は、少なくとも三カ月以上、すなわち三月の初めから五月の末まで行なわれていると思うが、その点はどうです。しかもこれは防衛庁のある人は、三カ月間行なわれたということを言っております。そういう点はどうでしょうか。
  354. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ゴールデン・ドラゴン七三という演習につきまして、米側に確認いたしましたところでは、三月の三十一日から四月の八日にかけて韓国の東南部の海岸沖合いで行なわれたということでございます。
  355. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは、私が外務委員会でこの間あれしたのをあなたは答えたのだけれども、上陸作戦のことです。ゴールデン・ドラゴンという全体の作戦の中の上陸作戦が、あなたの言った三月の三十一日から四月の八日の問題なんです。全体は四月の八日に終わっているのじゃないのですよ。上陸作戦のことですよ。全作戦は三月の初めから五月の末までやっています。御存じないですか。
  356. 久保卓也

    久保政府委員 私どもも、外務省から御連絡をいただいた関係上、同じでありまするけれども、演習の内容といいますのは、対空・対潜訓練、あるいは上陸演習、輸送・補給訓練、そういうものを逐次実施した。その期間は、いまアメリカ局長答弁されましたように、やはり同じものというふうに理解をしております。
  357. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そんなことはない。その証拠に、いいですか、それは上陸作戦だけを言っているのです。たとえば三月の八日から五月三十一日まで米韓の間で射撃訓練をやっている。三月の五日から四月の五日まで一カ月、韓国の海軍がやはりそれに応じてやっている。こういう幾つかの一連の問題ですよ。あなたが先ほど御答弁になったのは、私がこの前、外務委員会で質問するからと外務省に言って、上陸作戦の問題だけ質問したのです。私きょう聞いているのはゴールデン・ドラゴン作戦全体を聞いている。御存じないでしょうか。
  358. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいま御指摘がございました韓国軍の演習その他につきましては、事実関係を確かめておりませんので、調査させていただきたいと思います。
  359. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私、きょうゴールデン・ドラゴンをやるということは質問の中に入れてあるのですが、どうもあなたのほうがお調べになっておらないので、きわめてこれは残念ですけれども、あなたのほうの準備が非常に不十分ですよ。これはやるのだからと言ってある。  その場合に、沖繩にある第三海兵航空師団がみずから参加している。岩国のアメリカの海兵第一航空師団も参加している。まさに基地の提供という形で日本も一緒に参加している。  しかもそれだけではありません。先ほどアメリカ局長答弁したとおりに、上陸演習は四月八日に終わった。ところが終わったあとでアメリカの海軍は全部佐世保に集結をした。それは四月の九日と十日です。施設庁知っているでしょう。そして続いて今度は、日本とアメリカの海上演習が四月の十一日から十五日まで行なわれている。その間において、日本の海上自衛隊航空自衛隊陸上自衛隊、それぞれその一連の演習に参加している。  たとえば、例をあげて言いましょう。四月の七日には若狭湾の北方において海上自衛艦が射撃演習をやっている。航空自衛隊は四月の十日から十四日まで五島列島南方においてやっている。それから四月の九日から十一日までは陸上自衛隊の演習が対馬において行なわれている。これは対ゲリラ演習。この対ゲリラ演習は、その直前に韓国でやはりゲリラの演習をゴールデン・ドラゴンの一環として行なっている。そうすると、先ほどから大出氏も言ったように、事実上、三位一体の演習をやっているじゃないかということです。もう明らかじゃありませんか。こういう点について、事実関係を御存じならばひとつ御答弁をいただきたい。先ほどからの答弁を聞いていると、どうも防衛庁外務省もあんまり調べておらないようだが、わかっていないならわかっていないとお答えいただきたいし、わかっているならお答えいただきたい。
  360. 久保卓也

    久保政府委員 四月の佐世保からの米艦艇と日本の艦艇との合同演習は、たしかこの時期であったように思いますが、従来も、米韓の合同演習がありました場合に、その前後に、日本の海上自衛隊で米海軍の協力を得て合同演習をやっていることは再々ありましたので、これはそれだと思います。といいますのは、米軍の艦艇もやはり、米側の都合でなかなか都合がつかないという場合も多いので、あちらの日程に合わせて自衛隊の側の艦艇の訓練を行なうということは間々ありますが、この場合もそれだと思います。、  なお、いまおあげになりましたいろいろな訓練については、ちょっと手元に資料を持ち合わせませんので、よくわかりません。
  361. 岡田春夫

    岡田(春)委員 半分ぐらい認めたような形だが、米韓合同演習に続いて日米合同演習をいままで再三やっております。これは一連の連動した演習ですよ。これはゴールデン・ドラゴンの一連の中の演習ですよ。そういう観点でお調べをいただかないと、いまの答弁だけでは私は納得できません。  その点に関しても皆さん、長官にも見せておきます。そのときこれだけ演習をやっているのだ。全部私は調べてあるのだ。一連のゴールデンドラゴンの中に日米韓三国でこのような演習をやっている。これは共同演習です。  それ以外に、四月の七日に日本の海上自衛艦が別に呉港を出航して、初めて潜水艦を同行して父島、硫黄島、南鳥島付近を通過した。各種の演習を行なった。この演習については、これは久保さん御存じだろうと思うが、この演習の名前。そしてこの海上自衛艦はどこまで行ったのか。グアム島まで行ったはず、だ。この演習もゴールデン・ドラゴンの一連の関連の演習です。なぜならば、日にちだけ見ても、四月の七日に出航して帰ってきたのは四月の二十六日に呉に戻っている。この海上自衛艦はどういう名前でどこまで行ったのか、これを伺いたい。
  362. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 詳細なことはただいま資料がございませんが、海上自衛隊では幹部候補生学校の卒業生の一部を毎年グアム島まで遠洋航海をさせております。おそらくそのときの航海に該当するのではないかと思います。
  363. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その演習の名前はこういうのでしょう。七三年度グアム島父島方面航海演習でしょう。
  364. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 そのとおりだと思います。
  365. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これはグアム島へ行って何をやりましたか。日米共同作戦をやったのでしょう。
  366. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 これは日米共同作戦をやったのではありませんで、幹部候補生学校を卒業した初級幹部に長期の航海を体験をさせるという目的であります。その終点がグアム島であるということでございます。
  367. 岡田春夫

    岡田(春)委員 演習やってるじゃないですか。演習は四月の十六日から十九日までやっていますよ、合同で。
  368. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 もちろんその途中において、ただ船に便乗しているわけでございませんで、各種の演習をやりながら行ったと思いますが、米国とやったということは聞いておりません。
  369. 岡田春夫

    岡田(春)委員 日米合同でやっているのを知らないのですか。
  370. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 私は承知しておりません。調べて、もしそういうことがあれば御答弁いたします。
  371. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私は、これは特に聞いているのは、この間からたいへん議論になった日本の周辺一千マイル、あるいは一千海里でもいい。一千海里以上の地域ですよね、これは。この間久保さんの答弁によると、サイパンまで一千三百海里と言った。一千三百海里以上、グアム島だからまだ向こうだ。千五百海里くらいでしょうか。ここで何のために合同演習をやらなければならないのですか。これは路線問題ですか、どういう意味ですか。
  372. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 先ほど申し上げましたように、これはいわばミニ遠洋航海というべきものでございまして、海上自衛隊幹部候補生学校を卒業した艦艇の乗員に対しては、世界一周その他の遠洋航海をやっております。しかしながら、航空機の乗り組み員、すなわち航空学生出身の者についてはそういう機会が与えられておりませんので、グアム島まで類似の体験航海をさせているという趣旨でありまして、遠洋航海の系列に属するものであります。
  373. 岡田春夫

    岡田(春)委員 先ほども山中長官、グアム島まで行ったら憲法違反だと言いましたね。グアム島の近くまで行っているのですよ、これは。しかも合同演習をやっているのですよ。あまりおわかりにならないようですが、事実をお調べいただきたいと思います、これからもっと進めますから。いいですか。しかも今度の場合には潜水艦が初めてこれに同行している。これは御存じでしょう。
  374. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 これは私、確かめておりませんけれども、当然演習をやるときには対潜訓練をやるわけでございますから、海上自衛隊の潜水艦が同行することはあたりまえだと思います。
  375. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それ見なさい。演習だと言ったでしょう。演習ならば、しかもグアム島でアメリカと一緒にやっているなら、共同演習じゃないですか。違いますか。
  376. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 アメリカと一緒にやっているかどうかにつきましては、調査の上お答え申し上げます。
  377. 岡田春夫

    岡田(春)委員 これは調べてください。  続いて伺いますが、共同作戦の問題ですが、先ほどたいへん問題になった事務レベルの会議、これには今度初めて中村統幕議長が出席をしていますが、これはどういう意味ですか。これは先ほど楢崎君の御質問の例の問題のやつですよ。統幕議長が出ているのですが、いままでは出てないはずです。
  378. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 事務レベル安保協議はいままでに八回やっておりますけれども、毎回統幕議長が出席いたしております。今回が初めてじゃございません。
  379. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ伺いますが、日米の運用協がありますね。運用協には統幕議長は出てない。それから一九六八年、昭和四十三年にできた日米軍事会同というのは現存していますか。
  380. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 日米安保運用協議会はいままでに三回開かれておりますが、統幕議長は日本側のメンバーであります。ただ第三回目は所用のため欠席いたしております。
  381. 久保卓也

    久保政府委員 四十三年末の日米安保協議委員会で設置がきめられました日米の幕僚研究会同、これは今日も継続して、大体月に一ぺんぐらいの割合で会同しておるようであります。
  382. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、公式ルートによるのは、そうすると、事務レベル協、日米軍事会同、日米運用協、これは全部制服が出ているわけですね。そうですが、まず第一に。
  383. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 メンバーとして出ておりますのはそれだけだと思いますが、ただ、安保協議委員会には日本側代表は防衛庁長官ですが、従来、統幕議長が会議には出席していると思います。
  384. 岡田春夫

    岡田(春)委員 安保協議委員会は、これは当然出てるはずです。それ以外にこれもあるでしょう。在日米軍の参謀長と日本の統幕会議の事務局長との定期協議というのがありますね。
  385. 久保卓也

    久保政府委員 いまおっしゃいましたものが日米幕僚研究会同でありまして、米側は参謀長、それから統幕が統幕の事務局長、両者が主体になって、あと事務当局を連れて会同をやっております。同じものだと思います。
  386. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃその三つだけですか、制服の出ているのは。それ以外にありませんか。
  387. 久保卓也

    久保政府委員 在日米軍司令部との関係は、いま申し上げた日米幕僚研究会同でありますが、あとは陸海空幕僚幹部が在日陸海空軍司令部とそれぞれ協議を適宜これは持っております。
  388. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ幕僚間の研究会同としてはFTC、FTS、日本語に直して協同企画委員会、同小委員会、これもやっているわけですか。
  389. 久保卓也

    久保政府委員 FTCとかFTGというものが、三十年代の末ごろからではないかと思いますが、そのころに統幕議長とか事務局長とか、あるいは米側の在日米軍司令官、参謀長といったようなところで行なわれたものがFTCであったようであり、またFTGというのが、各幕の部長と在日陸海空軍司令部の幕僚幹部ということで会議が行なわれておったようでありますが、現在はそういう名称では行なわれておりません。単純に、いま申し上げた日米幕僚研究会同というものと、あとは陸海空の幕僚幹部と対応する在日米軍司令部の幕僚間の、これは随時の協議、連絡交換というようなものが行なわれているにすぎないということであります。
  390. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、FTCはやっておったというのですが、それは現在は別だ形になってやっておるわけですか。
  391. 久保卓也

    久保政府委員 少なくともFTCという形では行なわれておりませんで、言うならば、先ほどの日米幕僚研究会同に吸収されたということがいえるかもしれませんが、いずれにしましても、日米幕僚研究会同は安保協議委員会の決定に基づいて設置されたもので、FTC、FTGのほうは自然消滅と申しますか、なくなっているようであります。
  392. 岡田春夫

    岡田(春)委員 Sのほうがなくなったとしても、FTCのほう、これはどういう目的でやったのですか。非常事態の問題、有事における日米の共同作戦問題の打ち合わせでしょう。
  393. 久保卓也

    久保政府委員 当時のFTCというのは、平時、有事を通じまして、日米間での軍事的な情報交換、あるいは運用についての意見交換、そういうものが行なわれたように聞いております。
  394. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だから、これは大出氏の問題がもう一度出てくるのですが、非常事態における共同作戦というのは日米間でやっているわけでしょう。
  395. 久保卓也

    久保政府委員 共同作戦ということばの問題はありまするけれども、有事の場合に日本側がどうする、米側についてはどういうことが可能であるかといったようなことについての意見交換でありまするとか、情報交換であるとか、そういうことは行なわれておったようであります。しかしながら、その結果、日米の作戦協定といったようなものが、あるいは作戦計画といったようなものができ上がるということには至っておりません。
  396. 岡田春夫

    岡田(春)委員 FTCというのは、協同企画委員会は、非常事態における日本防衛のために、日米陸海空部隊の共同運用に関し有効な諸計画を確実に準備する責務を有する、そしてこれに基づいて現行の緊急計画大綱を改定する、これがその任務でしょう。それは昭和三十八年三月三十一日の了解覚書に基づいている。どうです。
  397. 久保卓也

    久保政府委員 このFTCが問題になりましたころに、私もちょっと担当課に調べさせてみましたが、当時の記録がございませんで、日米間で有事、平時を通じての作戦運用に関する協議が行なわれたことは承知いたしておりまするけれども、その場合に、どういうことが具体的なものとして結論されたかということは了承しておりません。
  398. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の言ったのは間違いないですよ。これは、いま言ったのは統幕三登第三九甲−二八号、これの中にこのように書いてあるから間違いありませんよ。出してくれますか。
  399. 久保卓也

    久保政府委員 これがどういうものでありまするか、調べてみないとわかりませんので、帰って検討させていただきます。
  400. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だいぶ前のものですから、長官お出しいただけると思うのです。一九六四年だから九年前のものです。一九六四年四月六日に出している。出せると思う。
  401. 山中貞則

    山中国務大臣 調べてみます。
  402. 岡田春夫

    岡田(春)委員 お調べいただくのはいいが、出せるものは出していただけますね。
  403. 久保卓也

    久保政府委員 これは、FTCといいますのは、国会でも再々問題になったようでありまして、その意味で私も調べてみたことがあるのですが、担当課で調べがつかなかったということであります。おそらく、問題になったので書類を廃棄したのかどうか知りませんけれども、そういう意味で、私がここでお約束できないので、調べてみたいということであります。
  404. 岡田春夫

    岡田(春)委員 おわかりにならなかった。間違いないですね。
  405. 久保卓也

    久保政府委員 私が担当課に調べさせたところではわからなかったということであります。
  406. 岡田春夫

    岡田(春)委員 内局ではわからないです。これは制服なんです。内局には隠してあるんです。いいですか、協定は、防衛庁統幕会議と在日米軍司令部との間に結ばれたものです。内局ではわからぬはずだ。これ、お調べになるかどうか。
  407. 山中貞則

    山中国務大臣 もちろん、さっき言ったとおり調べますが、日米安保条約を締結している相手方との間において、憲法違反に類するような範囲は私たちはできないという前提のもとに、非常事態の際の想定訓練等をすることはいけないとは私は思いません。それが、韓国と日本と一緒になってやったとか、そういうことであれば私はとんでもないことだと思いますが、日本と安保条約を結んでいる相手国との間に、いろいろな便宜をはかってもらいながらのこともありましょうし、演習その他をやるということは、私はふしぎではないと思うのです。それは当然だと思うのです。
  408. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなたのその問題についても私は意見がある。しかしそれだけではない。私のさっき言っているのは、内局が知らないうちに結ばれているという点にもう一つ問題がある、そのことを言っている。内局は知らないと言っている、さっきから。しかもこれは重要な書類ですよ。おそらく出さぬでしょう。なぜならトップシークレット、機密だ。機密文書の一部を私いま読んだ。国会だから問題ないから読んだ。機密文書ですよ、これ。出さないと思ったから私、言うのです。
  409. 山中貞則

    山中国務大臣 あなたの手に入るくらいですから、トップシークレットといっても、防衛庁長官たる者が、制服たるといなとを問わず、存在している文書を私が調査して、それを、あるものを秘匿するというようなことは考えられないことでありますから、私が調べれば、当然あるものは出ると思います。しかしそれが、あなたが持っておられるからもうトップシークレットじゃないでしょうけれども、しかし制服として、それはアメリカとの間で約束があって、極秘なものであって出せないということであれば、またあらためて出すか出さないかについては、私自身が判断いたします。
  410. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、あなたが調べる能力がないなんて私は言っていない。内局は隠されているという事実を言っている。松前・バーンズ協定だって、内局の知らない間にきめたのですよ。その間に、私があれこれ言い出して、それからあれは回したのです。これあなた、岡田の言ったことはトップシークレットではないんだろうけれどもとひやかし半分に言ったけれども、トップシクーレットですよ。この文書には機密と書いてありますよ。あなたお調べになれるはずだ、防衛庁長官だから。こういうのを隠しておくことを私、問題にしているのです。隠しておいて、防衛庁長官が知らないうちに、日米共同の制服の作戦をやることが問題なんだ。それを言っているのだ。だからお調べくださいと、こう言っている。
  411. 山中貞則

    山中国務大臣 もちろん、調べもしますし、私が最高の防衛庁に関する責任者として、制服であろうとどこであろうと、文書が存在するならば、私が調べて調べられないはずはないんで、そういうことがあったらたいへんなことであります。(岡田(春)委員「それは私は否定していないのです」と呼ぶ)だから、私が調べますと、こう言っているでしょう。
  412. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それではもう一つ次の問題に入ってまいりますが、いまの問題はぜひお調べいただきたい。  演習の問題について若干伺います。再三先ほどからお話で、日本の演習の場合に仮想敵国はつくらない、こういうお話ですが、間違いないですか。
  413. 久保卓也

    久保政府委員 仮想敵国というものは考えておりません。
  414. 岡田春夫

    岡田(春)委員 対象国は。
  415. 久保卓也

    久保政府委員 対象国ということばは使っていると思います。要するに、どこの国であれ、わが国に対して侵略を加えよう、武力攻撃を加えようとする国があると仮定をして、その国を対象国と称しておるということはございます。
  416. 岡田春夫

    岡田(春)委員 対象国という場合には、事実上、仮想敵国という名前は使わないけれども、具体的な相手の国を想定して対象国と考えているわけですね。
  417. 久保卓也

    久保政府委員 やはり、仮想敵国ということばと、それから対象国という場合とは違うのでありまして、旧軍であれば、アメリカとかソ連とか、その他特定の国が仮想敵国になったと思います。現在でも、外国の場合にはそういうことばに近い表現で相手国を称している場合があります。しかしながら、日本は単純に、どこの国であれ、攻撃があった場合に必要最小限度の範囲で自衛をするというだけでありますので、防衛あるいは自衛行動が起こる場合にはどこかの国が武力攻撃をしているわけでありますから、どこかの国を単に対象国と呼んでいるにすぎません。
  418. 岡田春夫

    岡田(春)委員 特定の国を一つの対象として日本の自衛力の計画をつくっている、こういうように理解してもよろしいでしょうか。
  419. 久保卓也

    久保政府委員 必ずしも特定の国を考えておるわけではございませんで、まあ日本から非常に離れた国が攻撃することはございませんでしょうが、日本の周辺諸国ということを意識していることは確かだろうと思います。
  420. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だいぶはっきりしてきました。あなたも「国防」という雑誌にそう書いておられるから。これは読んでもいいのですが、「国防」の四十七年一月号、久保卓也、岡村和夫、細島泉、和田教美の座談会の中で、周辺諸国の軍事力に対応するものでなければならないという。周辺諸国というなら、当然、ソ連、中国、北朝鮮、これを意味するわけでしょう。
  421. 久保卓也

    久保政府委員 当時の判断であれば、周辺諸国でありますから、周辺にありまする国すべてが入ります。
  422. 岡田春夫

    岡田(春)委員 仮想敵国という名称は使わないけれども、事実上その相手にしているのはソ連、中国、北朝鮮である、これは間違いないですね。
  423. 久保卓也

    久保政府委員 日本の周辺にはまだほかにもございますので、日本周辺諸国というものが、一応日本の防衛上念頭に置かねばならないことであると思います。
  424. 岡田春夫

    岡田(春)委員 周辺ばかりじゃない。日本の中に外国の軍隊もいる。アメリカなんだ。これは対象国にならないでしょう。韓国だって対象国にならないでしょう。
  425. 久保卓也

    久保政府委員 対象国というのは、特定の国を意味するわけではございませんで、日本を攻めてくる国があれば、その国を対象国と考えるにすぎないということであります。
  426. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし少なくとも、対象国でないにしても、あなたの言われる周辺諸国の中には、アメリカ、韓国、それから、いまや私は中華民国ということばを使うのは大きらいなんだが、台湾、これは、あなたの頭の中に置かれた周辺諸国の中には入っていませんね。
  427. 久保卓也

    久保政府委員 周辺諸国の中には含めるべきであろうと思います。
  428. 岡田春夫

    岡田(春)委員 じゃこれは、周辺諸国、それを含めて軍事力で対応するという、そういう意味ですか、あなたの言われたのは。周辺諸国の軍事力に何らかの意味で対応するものを持ちましょうという考え方ですか。そういう意味ですか。
  429. 久保卓也

    久保政府委員 本来の防衛のあり方一般として申し上げているわけで、防衛ということをやらなければいけない以上、どのような周辺諸国であっても、それは一応防衛の見地からいえば念頭に置かねばならないというふうに思います。
  430. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ伺います。対抗部隊甲、乙、これは何ですか。
  431. 久保卓也

    久保政府委員 これは演習を行ないます場合に、特に陸上自衛隊で演習を行ないまする場合に、当方の部隊編成表できまっておりまするし、また現実の装備できまるわけでありますが、相手方の装備をどういうふうにするかという場合に、これは周辺諸国と申しまするとたくさん国があるわけでありますが、それを一々設定したわけではございませんで、一応、比較的に重装備のものと、比較的に重装備ならざるものと二様にかりに分けて、それぞれと対抗をする場合にどういうことになるかという仮定の問題として一応設定をしておる、そういうような演習の前提と申しますか、そういうような場合に使われているもののようであります。
  432. 岡田春夫

    岡田(春)委員 のようでありますは一言多いよ、それに違いないんだから。対抗部隊を、具体的に特定国を考えて甲という案をつくる。それから対抗部隊乙。特定国を対象にしてそういう計画をつくる。これははたして適当なことでしょうか。周辺国に違いないですよ。長官、どう思いますか。
  433. 山中貞則

    山中国務大臣 たとえば、ソ連という国が周辺にいるといったところで、ソ連の核兵器等については、アメリカでさえも、いまある意味でバランスが追い抜かれたとさえいわれているような状態のときに、対応するようなということをとても考えるようなわが国のものではありませんから、わが国としては、周辺諸国からわが国の自主独立というものが侵されるということに対して、これを防ぐということで周辺諸国と使っているもの、私はさように解釈します。
  434. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、周辺諸国の問題じゃないんです。対抗部隊甲、乙。対抗部隊甲というのは、もっとはっきり言いましょう。周辺諸国の特定な国を対象国甲という形で、装備その他も全部甲ということで対象国というものを具体的にきめている。対象国乙というのは、周辺諸国のある国を具体的にきめている。もっと具体的に言いましょう。対象国甲はソ連です。対象国乙は中国。そうでしょう。
  435. 久保卓也

    久保政府委員 陸上自衛隊が演習をやりまする場合に、たとえば、ゲリラ闘争なんかの演習も必要かもしれませんが、いわば近代的な戦闘をやりまする場合に、相手方がどの程度人員装備を持っておるかということは一応想定しませんと、これは演習が成り立ちません。そこで、演習をやりまする便宜上、かりに相手方の装備の比較的重いものを甲とし、比較的軽いものを乙としていると思いますが、そういったことで仮定の話として、つまり演習を実際的なふうに持っていくために仮定をして、装備の重いものと軽いものとに分けた、それにすぎません。
  436. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかし、それはソ連、中国というものを具体的な一つの想定のもとで、対抗部隊甲、乙をつくったわけでしょう。そうじゃありませんか。
  437. 久保卓也

    久保政府委員 現実にどういう作成経過をたどったかは存じませんけれども、周辺諸国の装備を参考にすることは、おそらくあったろうと思いますけれども、具体的にそれが特定の国であるというふうには私は思っておりません。
  438. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そんなことありませんよ。「富士学校記事」、昭和四十四年九月、甲がソ連であることについては、「ソ連の主要戦法は貫通攻撃、両翼包囲である」、これに対応するためにはどうするかということを書いている。だから対抗部隊甲、乙というのは、対抗部隊甲はソ連、中国は対抗部隊乙、これであるということは間違いない。そういう想定に基づいてつくられている。この点はお認めになるでしょう。
  439. 久保卓也

    久保政府委員 これは必ずしも特定国が甲であるということではないんで、ABCという三つの国のいずれも全部が甲になる場合もあるかもしれませんし、あるいはその同じ国が乙の編成でもって侵略に来るかもわかりませんし、これは特定国と別に結びつける必要はないんで、要するにヘビーな、重い装備を持ってきた場合にはわがほうはどうするか、軽い装備の場合にはどうするか、そういうことを演習の前提として考えればよろしいわけで、必ずしも特定国との結びつきをつける必要はないんではないかと思います。
  440. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうじゃない。これはもっと言いますが、調査学校でつくっている。昭和四十三年に、ソ連を中心にして対抗部隊甲、対抗部隊乙は中国として、昭和四十四年の三月に完了している。そういう内容のものである。  そこで、私ここで取り上げたいのは、いいですか、北海道の第七師団演習は、昭和四十五年十月一日から七日まで矢臼別で行なっている。矢臼別で行なっているこの演習は陸幕の特命に基づくものであって、機械化師団の三次防末の時点における練度及び問題点確認して、四次防における陸上自衛隊の近代化のための案をつくっている。その場合に敵をつくっている。敵は対抗部隊甲で編成をしている。しかも、ここで私ぜひ言いたいのは、七師団の演習に今度は五師団を敵として扱っている。対抗部隊甲でソ連軍の編成にしてやらせている。第五師団というのは帯広です。帯広の師団を今度は敵として編成している。こういう形で、対抗部隊甲という名目で、実際はソ連に対する演習を第七師団において行なっている。そういう場合における演習の内容を具体的に私、申し上げてもいい。この資料全部です。日本の自衛隊を、ソ連編成という形で第五師団を編成さして、しかもそれに対して、それを敵として演習をさしている。こういうことを一体認めていいんでしょうか。第七師団のほうは機械化部隊、しかもその中にこういうことまであります。「演習実施部隊に対して対抗部隊甲の持つ装甲機動力、火力の偉大さを実感として与えるように仮設敵部隊編成し、しかも戦術、戦法もつとめて対抗部隊甲に類似させることは今後の重要な課題であり」、こういうことまで考えている。自衛隊の中でソ連の軍隊の編成をさして、戦術、戦法まで似せるようにさせなければならないというのが、これは統裁官の講評なんです。仮想敵国はないなどと言いながら、こういうことをやっている。  こういうことは、私は認めるわけにいかぬ。これはまさに憲法上たいへんに問題があると思うのです。第七師団の演習というのはこういう形で行なわれているんだが、長官、これをどう思いますか。
  441. 山中貞則

    山中国務大臣 その事実はつまびらかにしませんが、憲法上の問題はないと私は思うのです。ということは、日本の持つ自衛力というものは外国に脅威を与える、もしくは直接攻撃をする意思も何もない、そのような装備もない、目的もないものでありますから、したがって、わが国に直接、間接武力による侵略等があった場合を想定して演習等は行なうわけでありましょう。したがって、日本のほうがそのことによって、いまおあげになった国ならばソ連、そのソ連というものをいつの日かすきをねらって攻撃しようというような演習をしているのなら、憲法違反でもあり大問題だと思うのです。しかし、ソ連とも言ってないわけでしょうし、似たようなものの想定をして、日本よりかはるかにすぐれた重装備部隊を相手にして日本国土の防衛をするような場合にはどのような戦術、戦闘が必要であるかというようなことをやっているわけでしょうから、私はそのことは憲法違反とは思いませんし、それに対しまして、それでもって攻撃をしかける意図を持っておる、そういうふうなことはもちろん許されないし、あり得ないことだと思うのです。
  442. 岡田春夫

    岡田(春)委員 あなた、そうおっしゃったのだが、では相手のソ連に入って戦争するというようなことなら憲法違反ですか。当然でしょう。
  443. 山中貞則

    山中国務大臣 わが国の憲法はそういうことは明確に禁止いたしております。
  444. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その前の年、昭和四十四年の十月に行なわれた北斗演習、これにはそれが書いてあるのです。これも矢日別です。ここに理事さんがおられるから見ていただいてけっこうですが、根室以東の地域は陸続きとする、そしてそこで戦争をやる練習をやっている。これは明らかに憲法違反ですね。どうですか。
  445. 久保卓也

    久保政府委員 これは別に根室という場所を前提にしてやったわけではありませんので、単に部隊の演練をやる場合に、広いたとえば北海道のまん中、本土のまん中というふうなところで、周辺がすぐに海になるということを前提にしたわけではありません。単純に甲部隊と乙部隊の対抗演習を考えたにすぎないのであって、したがって、すぐそばに海がある、すぐそばに外国があるということを前提にして演習を考えなくてよろしいということであります。単に技術的な問題であります。それは地理に関連してお考えいただかないほうがよろしゅうございます。
  446. 岡田春夫

    岡田(春)委員 了解することできません。あなた、そんなことなら書く必要はないじゃないですか。矢臼別というのは、あなた御存じのように、根室のすぐそばですね。矢臼別の先に根室があって、その先は陸続きであるというのは、これは明らかにソ連のシベリア大陸における演習の想定ですよ。そうですよ。
  447. 山中貞則

    山中国務大臣 海があるのに海がないことにして演習をしたといって、それがシベリアに日本が行ってという、そんなことを——これは憲法違反でできないのですが、もしかりにそんなことをやってみたところで、蟷螂のおのにもならぬですよ。事実、憲法で許されないことは自衛隊はやらないし、自衛隊法で明記された範囲内でやるということでありますから、海があるのにないことにして演習したからといって、それはシベリアに上陸して演習したのだという想定ではとてもないと私は思うのです。
  448. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それでは何のためにこんなことを書く必要がありますか。海が現実にあるのに、こういうものはないとしてやる。それでは、あなた、大陸の問題を考えているんでなければ、現実に海があるなんて言ったって——あなた言ったように、海があるのでしょう。あるものをないのだといって想定をして演習するということは、大陸における演習ですよ。  しかも、さっきから伺っていると、あなたには若干のはき違いがある。いいですか。あなたの場合にはさっきから、たとえばソ連は原爆を持っている、そういうことでやれるはずはないという。ところが、日本の軍事力の問題というのは、安保条約に基づいてその面はアメリカに依存する、それに基づいて日本は戦術面においてやる、こういうことになっているのですよね。いいですか。戦術面をやる場合において、アメリカが戦略面で攻撃をする、その地域において戦術面の行使をする。ですから、一定の条件のもとにおいては、大陸の中に入って実戦することも考えられるわけです。その場合において、原爆があるからできませんとか、何があるからできませんとか、そういう問題ではないのです。  そういうことをいえば、さっき私が最初に取り上げたように、化学学校の中で、Zは使えないけれども、Zと同じような威力を持つ兵器、弾頭をつくる必要がある、こういうことなんかだって、原爆は使えないけれどもCB剤を使うことはできる、こういうことを言ったということは、アメリカと日本との共同作戦の問題として、戦術面を日本が担当するのだから、そういう面でやろうとしている。攻撃的な、侵略的なそういう兵器までつくろうとしている。だから、ここに根室以東を海とは見ない、陸続きとするということは、これは単に演習の想定だけの問題じゃないですよ。演習の性格を規定しているものです。これはそういうものですよ。
  449. 山中貞則

    山中国務大臣 わかりました。あなたの前提に誤解があります。それは久保局長が、周辺国は特定はしない、しかしそれぞれの能力に対応するような想定をして、というようなことを言いましたので、私は、その能力というものがとても問題にならない国がたとえばソ連であるということを言ったのであって、その点は誤解であります。そういう対応するという意味の比較論の問題であります。  それからもう一つ、日米安保条約が、これは動かないことを願いますが、かりに動いたことを想定した場合に、日本はアメリカの核のかさの遂行によってソ連と対応できるものを背後に持つ、したがって日本もシベリアに上陸するということはあり得るとおっしゃるのですけれども、それは実はないのであって、それは相手国の憲法及び諸法律に従って行動するとなっておりますから、これは、米韓とか、アメリカから見ればまだ存在している米華とかいうものと違う。日本は自分の憲法及び自衛隊法その他の法令で定められた、国土を守る、国家を守る自主防衛の範囲内においての行動しかとれない、そのことをはっきり言っているわけでありますから、これを破れといっても、す本は憲法という最大の基準法規にそむくことはできませんし、その意味からいって日本の行動というものはきわめて制約されたものであって、自分たちに与えられた任務の範囲でしか行動できないのですから、それは私はあり得ない事柄を前提に議論することになると思うのです。
  450. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは、そういうあり得ないことが、現実にあなたの知らない間に進められているから私は問題にしているのであって、だからあなたは、そういう点は徹底的に調べてもらわないと困ると思う。  たとえば、いま日米が安保条約に基づいて共同してやるという問題についても、あなたはそういう答弁をされたけれども、たとえばデフコンの問題。そろそろ制約の時間になってきたのでもう終わりますけれども、デフコンの問題はどうなんですか。いわゆる日本の防空警戒態勢、これは幾つあるのですか。
  451. 久保卓也

    久保政府委員 五つございます。
  452. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それは防空態勢ですね。それから防空警報は……。
  453. 久保卓也

    久保政府委員 防空警戒態勢としては五つございます。それから警報の関係は、これは具体的につまびらかにいたしませんが、たしか三つの段階ではなかったかと思っております。
  454. 岡田春夫

    岡田(春)委員 その初めのほうの警戒態勢、五つの段階、これはアメリカのデフコンと連動するわけでしょう。
  455. 久保卓也

    久保政府委員 この点につきましては、御承知のように、日本は日本、米側は米側で発動するわけでありますが、相互に連絡し合うということになっております。
  456. 岡田春夫

    岡田(春)委員 連動するわけでしょう。
  457. 久保卓也

    久保政府委員 連動ということばがはっきりいたしませんが、たとえば、かりに米側がデフコンの三をかけた場合に、日本が自動的にデフコンの三になるということではございません。そのときの情勢を日本側が判断して、必要と認めれば三にするかもしれませんが、必要ないと認めれば五のままにしておきます。
  458. 岡田春夫

    岡田(春)委員 昭和三十五年の三月五日、日本とアメリカの制服の間での了解事項として合意されたものの中には、連動してやることになっていますね。
  459. 久保卓也

    久保政府委員 いま日米間の取りきめというお話でありましたが、確かめてみますけれども、少なくとも、今日の運用上、双方が連絡することは確かでありますけれども、連動して、片っ方がきめれば同時にそれを片っ方もきめるということにはなっておりません。
  460. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そこで若干伺っておきますが、アメリカのデフコンが在日米軍基地において実施されたのは、私のほうで記憶しているのでは、キューバ事件のとき、プエブロのとき、それからトンキン湾のとき、北朝鮮の飛行機が三機スクリーンに出たといって間違ってデフコンを出したとき、それからアメリカのEC121が撃墜されたとき、それから去年のアメリカのベトナムの機雷封鎖のとき、六回ですね。これ以外にありますか。そしてキューバの場合にはデフコンが三か四かちょっとはっきりしない。それからプエブロの場合は三です。北朝鮮の三機の場合には二ないし三だと思います。それからトンキン湾の場合には三。アメリカのEC121のときは、これがはっきりわからないんだ、私も。これは知っておればお答えいただきたい。それから去年の機雷封鎖の場合はデフコン四。大体これは間違いないと思いますが、どうですか。
  461. 久保卓也

    久保政府委員 私どものほうでわかっておりますところでは、キューバが三であるということ、これは正式に通告があったようであります。それからトンキン湾の場合には、非公式の情報でデフコンを三に上げたというふうに伝えられております。それから、いまの北鮮機の航跡があらわれたというときも、私も承知いたしておりますけれども、これもデフコンをあげましたが、数字は存じておりません。その他の場合に、いまおあげになりましたことについては、私どものほうで、米側がどういう措置をとったか存じておりません。
  462. 岡田春夫

    岡田(春)委員 去年の機雷封鎖のときには、の知っている限りでは四であった。そのときに日本の自衛隊は連動してデフコンに入ったんじゃありませんか。
  463. 久保卓也

    久保政府委員 機雷封鎖のときには、私、責任者の一人になるわけでありますが、デフコンには完全に関係ございませんでした。
  464. 岡田春夫

    岡田(春)委員 入ってない……。
  465. 久保卓也

    久保政府委員 はい。
  466. 岡田春夫

    岡田(春)委員 じゃ、キューバの三のときには、日本の自衛隊は入りましたね。
  467. 久保卓也

    久保政府委員 これは当時新聞でいろいろ問題になったとおりでありまして、米側がデフコンを上げたことは承知しておりますけれども、日本側は、警戒を厳にするようにという長官の指示を幕僚長が部隊に伝達をしたというふうに聞いております。
  468. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ、そのとき入っているわけですね。しかもこれは長官の知らないうちに入って、総理大臣の知らないうちに入って、そして航空総隊司令官のほうが入ってしまって、あとから追認したんでしょう。
  469. 久保卓也

    久保政府委員 私どもはそう承知いたしておりませんで、米側の連絡を受けたことは確かでありますが、これは長官とも連絡をとった結果、幕僚長が、警戒を厳にするようにという、念のための注意部隊に指示をしたということで、デフコンをかけたというふうには聞いておりません。
  470. 岡田春夫

    岡田(春)委員 デフコンではなかったのですか、注意というのは。
  471. 久保卓也

    久保政府委員 当時の幕僚長の命令は、デフコンではなかったというふうに聞いております。
  472. 岡田春夫

    岡田(春)委員 デフコンであった場合には、自衛隊法との関係はどうなりますか。
  473. 久保卓也

    久保政府委員 デフコンというのは警戒待機の姿勢をいうわけでありますから、必ずしも隊法との関係はないように思います。
  474. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そんなことない。たとえば例をあげると、デフコンのトップの場合には、敵機はもうあらわれた、そういう場合には自衛隊法七十七条より七十六条でしょう。防衛出動のあれがなくちゃならないでしょう。
  475. 久保卓也

    久保政府委員 これはそのときの情勢がどういうものであるかによって違ってまいりましょう。そして判断をする者は防衛庁長官でありますから、一般には。ですから、どう判断されるかは別でありますが、しかし、事柄の性格そのものとしましては、防衛出動の命令でありますとか、あるいは待機命令の関係でありますとか、そういうこととは関係ございません。あるいは待機命令をかけるときにデフコンを一にする場合も現実にはありましょう。しかしながら、待機命令もかけないでデフコン一にする場合もあり得るわけでありまして、これは事柄の性格上違うのではないでしょうか。
  476. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはたいへんおかしいと思う。さっき答弁の中で、防衛出動の場合、総理大臣でしょう、発令は。総理大臣でしょう。そうでしょう。間違いないね。
  477. 久保卓也

    久保政府委員 私が防衛庁長官と申し上げましたのは、デフコンを定める最高の責任者と、こう申し上げたわけであります。
  478. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、私は防衛出動を言っているのですよ。
  479. 久保卓也

    久保政府委員 防衛出動は、もちろん総理大臣でありまするし、国会の承認を得るわけでありますが、そういう手続のことは別にいたしましても、事柄の性格上、必ずデフコン一の場合には防衛出動がなければならぬというものではないように私は思います。
  480. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、デフコン一の場合には防衛出動は必ずしもないかもしれないが、七十七条の出動待機、それは該当するでしょう。
  481. 久保卓也

    久保政府委員 これは出動に応じてやる場合が多いわけでありましょうから、出動待機の場合にデフコン一ということは事実上多いだろうと思います。ただし、事柄の性格とも称しておるわけですけれども、事柄の性格からいけば、デフコン一にするということが必ず待機命令でなければならないというふうにはちょっと思いません。
  482. 岡田春夫

    岡田(春)委員 だいぶんそれは、答弁、いままでのをごまかしていますね。デフコン一の場合、敵機があらわれるのですからね。そういう場合に防衛出動待機、隊法の七十七条だけでやれるなんて考えられませんよ。ここでごたごた言っているけれども。防衛出動というのは総理大臣の通達ですよ。敵機があらわれたという場合にデフコン一ですよ。その場合に長官の権限で七十七条でやれますか。そんなことないですよ。
  483. 久保卓也

    久保政府委員 デフコン一というのは一応抽象的な表現で、事態が非常に緊迫をしているとか、あるいは領空侵犯の度合いが非常に頻発しそうだというような条件もありましょうけれども、それが必ず出動待機命令のときであるというふうにイコールであるとは考えられませんので、待機命令がかかった場合にはデフコン一になる場合が事実上は多いでありましょうけれども、しかし事柄の性格として、両者は必ず同一レベルのものであるということまでは考える必要はないんではないかというふうに思います。
  484. 岡田春夫

    岡田(春)委員 しかしデフコン一の場合には、当然防空警報でもトップでしょう。
  485. 久保卓也

    久保政府委員 防空警報というのは有事の場合の概念でありまして、平時の場合はございません。そこで、たとえばデフコン一の場合には、日本についての直接の脅威というよりも、国際関係がどうなっているかということもありましょうし、それから領空侵犯が非常に頻発化するというおそれのある場合もありましょうし、そういうことから考えまして、待機命令がかかっているときだけに限るということではないのではないか。しかし、デフコン一になっているときの部隊がどういう行動をするかということは、おのずから領空侵犯措置でありますから、待機命令であるとか、あるいは防衛出動でありますとか、そういう段階において違ってまいりましょうけれども、そちらのほうの防衛出動の系統とデフコンのほうとは同じ系列ではないように私は思います。
  486. 岡田春夫

    岡田(春)委員 系列でないことは、私もわかっているのですよ。系列であるわけはないですよ、それは。問題は、さっきから私ごとさらデフコンといって指摘しているのは、そういう非常事態の問題ですよ。その場合、防衛出動というものがないということを考えられることができますか。総理大臣の指示に基づく防衛体制、防衛出動ですよ。防衛出動というものが、防衛出動をしたから必ずしも武力行使しなければならないということではないですよ、これは。だから八十七、八十八ですか、武力行使の基準をきめてあるのですよ。ですからデフコン1の場合には必ず防衛出動というのが前提ですよ。不可分の問題。それから、おそらくそういう場合においては防空警報でもトップですよ。トップはあれですか、アップルジャックですか。略称を使わないことになっているのか、ニックネームを使わないのかどうかそれは知らぬが、その場合には、デフコン1だったら、コックドピストルという場合には、これは防空警報であってもおそらく1ですよ。そういう場合において防衛出動の七十六条の適用がないなんということをあなたおっしゃると、われわれ全然知らないのなら別ですけれども、やはり一応常識を持っている者なら、それは話が通りませんね。そうでしょう。
  487. 久保卓也

    久保政府委員 デフコン1という体制が、先生のおっしゃいますような事態の場合にかけられることが多いであろうということならば、私も賛成をいたします。しかしながら、必ずそうであるかというと、概念そのものが違いますので、そうでないケースがあり得る。さっき申し上げましたように、領空侵犯が非常にふえている。通常のスクランブル体制では間に合わないといったときに最高のレベルに引き上げるということもあり得るわけでありまするから、常にそれが防衛出動と関連させて考えねばならないというものであるようには思いません。
  488. 岡田春夫

    岡田(春)委員 そうすると、先ほどからの答弁を総括して伺うと、アメリカはデフコンに入ったのは、私の言った全部を否定されなかったので、そうすると六つくらいあるわけですね。それに対しては日本の場合には、自衛隊はデフコンに入ったことは一度もない、こういうように理解してもいいのですか。
  489. 久保卓也

    久保政府委員 航空自衛隊始まって以来、デフコンをあげたことはないというふうに聞いております。
  490. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それはもう一度調べないと、それこそこれも、内局が制服との関係において、長官、問題ありますよ。去年の機雷封鎖のときにも、習志野その他における動きというのはデフコンでないとはいえない。  これはあなた、だから私がさっき伺ったように、もう一度申し上げておきますが、昭和三十五年の三月五日、在日米軍司令官と航空自衛隊の総隊の司令官との間に取りきめられた了解事項を見せていただきたい。これに書いてある。連動関係があるはずです。これはできているはずだ。
  491. 久保卓也

    久保政府委員 三十五年三月の書類というお話なのでありますが、この点が、私どもどの点であるかよくわかりません。従来の取りきめから申しますると、米側との話し合いによりますると、双方が連絡をするということで、自動的にそうなるというふうにはなっておりません。また、昨年の機雷封鎖のときには、これは私の現職中でありまするので、そういった事実はないというふうに思います。
  492. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私の言っているのは、久保さん、いいですか、連動するというのは、向こうが1になるから1にならなければならないということでも必ずしもないのですよ。連動関係として動くんだ、そういう申し入れの了解事項が昭和三十五年の三月五日にできているはずなんです。これは松前・バーンズ協定を結んだあとですよ。その後、七十日間交渉し合ってきめたものです。いままでこの問題は出ていないのです。こういう問題について、長官、われわれ納得できないのですが、こういう了解事項そのものを出すかどうかは別として、この関係の文章上の趣旨、そういう点をお出しいただけますか。
  493. 山中貞則

    山中国務大臣 先ほど申しましたとおり、私が調べて、私に隠す資料があり得るはずはありませんから、あるものであれば必ずわかると思います。それに対して、これは対米関係もありますから、したがって、出す出さないの問題は別にして、何ぶんの回答をいたします。
  494. 大出俊

    ○大出委員 先ほど三つほど問題がありまして、演習の問題ですが、旧来これは経過がありまして、長官が簡単にああいうふうに言われたままでは困るのです、後退しますので。  実は昭和四十一年に、北海道を守る陸戦想定という上中下の三つの計画がある。これは昔、私、取り上げたことがございまして、網走周辺に極東ソ連軍の、当時七師団ぐらいの兵力が攻めてくるというのを守る想定なんです。それからまた、いみじくも岡田さんが取り上げた菊演習計画というのがあった。そこで、このときには樺太にこれこれの兵力が現にいるという想定などが入っていまして、地域指定がある。これを赤国、こちらが緑国、こういうふうに想定している、演習の中で。このときに防衛庁長官答弁しているのは、明らかな地域指定をしたということになると、これはソビエトの領土なんですから、それで赤国といっておるわけですから、装備その他は全部書いてあるわけですから、これはたいへんにまずい、自今こういうことがないように厳重に正していきますというふうにはっきり答えておる。だから、この演習の想定というのは、そういう意味でこれは簡単じゃない、憲法と関連をして。前文で、どこの国とも仲よくしていこうということになっておるわけですから。  そういう意味では、きちっとすべきものはきちっとしていただかないと、そのつど問題があとに残る。この辺はぜひ一ぺんお調べをいただいて、不適当な形のものがいままであって問題になっておるわけですから、そこらはやはり一つのあり方をきちっときめていただかぬと、制服まかせにしておきますと、さっき言った、対象国甲というのはソビエトとあなた方の注釈がついておると、これはやはり問題になる。だからそういう点は、やはり憲法というものがあるのですから、その趣旨に沿うような形の想定のしかたにしていただかぬと困る。これは何べんか私も経験をいたしておりますので、ぜひこれはそういう整理を将来に向かいましてきちっとしておいていただきたい、これが一つ。  それから、トップシークレットだという言い方を岡田さんされていましたけれども、たしか三十八年だと思いますが、この日米の日本に対する防衛計画、これも実はいままで問題になったこともあるのです。したがって、長官見ていない。つまり久保防衛局長が知らないという。知らないものが政府機関の話し合いで存在をするということ自体がたいへんな問題ですから、シビアリンコントロールということを言っておるわけですから、だからそこらは長官が明確に調べていただいて、アメリカとの関係でどうしても出し得ないものであれば、一昨日の楢崎質問じゃございませんけれども、その趣旨を明確にしていただければ、それなりの処理のしようはあるわけであります。私どもも、この防衛関係の仕事を十年もやってきて、疑問に思って、これだけは見ておかなければならぬと思うことが幾つもあるわけです。先ほどの問題もそうです。また三十五年の問題もそうです。一種の日米の防空協定なんです。その中で、一体キューバ危機のときにはどうするかとかいうふうなことになっておるとすれば、これは皆さんの側でそれなりの説明のしようがあると私は思う。そうでないとやはりこれは問題になる。だからそこらのところは、きちっと長官自身お調べをいただいて、将来に向かってこうでなければならぬということをはっきりしていただきたい、こう思います。
  495. 山中貞則

    山中国務大臣 それは私が先ほどから答弁しておりますとおり、私が調べにかかって、隠されてなお発見できない書類が対外的に存在するというようなことはあり得ないことでありますから、あるものならば必ずわかると思います。それについては私が判断をして、何らかの手段をもって報告します。
  496. 岡田春夫

    岡田(春)委員 それじゃ私、最後にまとめに入りますが、いま大出君からまとめていただいたので大体整理ができたと思うのですが、対抗部隊甲、乙の問題、これはさっき申し上げたようにソ連、中国であることは間違いない。これは調査学校で調べている。そしてこれは文書ができ上がっている。こういう点は、対抗部隊という形でなぜこういうように変わっていったかというと、いまも話が出たんだが、はやぶさ演習、菊演習というのを私は国会で取り上げたのです。そのときに増田防衛長官が、そのような想定は間違いです、これはやめますと言ったことによって、初めてこれが昭和四十三年、対抗部隊甲、乙ということになってきた。それまで名前は違います。今度は甲、乙という対抗部隊、甲、乙という形で変えていったのです。こういうことで内容はあくまでもソ連と中国です。ですからだれが考えても、これは仮想敵国として想定しているということです。そういう点はぜひお調べをいただきたい。  それから、先ほどあなたの答弁に関連をして私は質問をしたんだが、共同作戦の問題、これが先ほど言った昭和三十五年の了解事項です。内局はこれも御存じないということなんで、それでは困るわけですね、内局が知らないなんて。あなたが今度なったから、たまたま徹底的に調べるなんてことをおっしゃるけれども、もしあなたが何らかの事情でやめるかもしれない。そういう場合に、あなたは徹底的に調べるということまでやれるかどうかわからない。少なくとも私の考えでは、増原防衛庁長官はそれは知らないし、徹底的に調べもしなかったでしょう。こういう点では、了解事項なるもので制服間の話し合いというのはたくさんある。こういう制服間の話し合いというのをこの機会に徹底的に洗いませんと、私は最後に言うが、シビリアンコントロールをやります、徹底的にやりますとあなたはおっしゃるけれども、これはシビリアンコントロールじゃないですよ。なぜならば、シビリアンコントロールであるといって、平時のときは制服は黙っていますよ。事態が変わった場合には、防衛庁長官なんか問題じゃないですよ。どんどん進みますよ。関東軍ですよ。ですから、私がさっきから伺っているデフコンの問題についても、私が知っている限りでは、キューバ事件のときには、池田総理大臣も防衛庁長官も知らない間に、キューバでデフコン3になった、日本の航空自衛隊もそれに連動してデフコンに入ったという事実。それがわかったのは、防衛庁長官も総理大臣も三十分あとになってから。そういう事態まであったといわれている。  こういう点を考えた場合、あなたはどうですか。これだって平時の問題の場合でしょう。有事になった場合においては、そういうことをどんどん制服にやらしておいたら押えがきかないですよ。何ぼあなたが若くて、おれは張り切ってやるんだと言ったって、制服に、おまえ何言っているの、どんどんやっちゃえと、関東軍式にやられますよ。いまから体制を全部調べておかなければだめです。  さっきからうしろで、対抗部隊甲、乙の問題だって、そんなこと言う必要はないと言っているけれども、こういうこと一つ一つが積み重なった中で、現実に制服と向こうの制服との間の具体的な共同作戦が進められている。さっきから私が幾つか質問した中で答えられなかったことが大体半分でしょう。皆さんどうですか。さっきのADIZの韓国との連動の問題についてもお答えになれないわけでしょう。そういう問題、一つ一つ私が取り上げても、それに対して答えられないというのは、内局がわかっていないということだ。内局がわかっていないのに制服がやっているということだ。これではたして日本の軍事力の問題について防衛庁長官が押えていけますか。だから軍国主義の復活だといわれるのですよ。あなた自身の主観的な意図においては、おれは軍国主義の復活なんかやらないんだ。主観的には長官はそうかもしれない。制度としての日本の制服の軍国主義の体制というのは、こういう形で進んでいるんだということをあなたは認識されなければだめですよ。そういう点が制度として結ばれている。その結ばれている内容をあなた方内局の人は御存じない。ましておや長官も知らない。ごれでは知らないうちに戦争になって、関東軍と同じ役割りを果たすことになる。この点を私は警告を発しているのですよ。だから、さっきからうしろから不規則な発言があったけれども、こんなものはあまり問題にしないで私はやってきた。というのは、なぜならば、この人たちはあまり知らないから問題にしないでやってきた。問題は、関東軍になる危険性がいまあるということを強く強く私は防衛庁に警告しておく。あなたの時代においてほんとうにそういう事態にならないように、そういう制度を徹底的に調べて、そういう危険のある問題については押えてもらわなければだめだと思う。  そういう点を最後のことばとして申し上げて質問を終わりますが、その点についてのあなたの見解を最後に伺って、終わりにいたしたいと思います。
  497. 山中貞則

    山中国務大臣 武器を持った集団を閉鎖集団に追い込んではならない。私はやはり国民の前に開放された集団でなければならぬと信じています。したがって、あなたがなったから、おれはシビリアンコントロールをやるのだと言ったってそうはいかぬぞとおっしゃいますが、あなたは私の性格を御存じです。私としては、本来の任務に対してそれを達成するために全力を傾けます。そして少なくとも私が掌握して、そして総理大臣が最終的に正確な指揮判断のできるような自衛隊というものに、もしいま違った点があるならば直していきます。私としては開かれた制服集団というものを目標にして、私自身の政治姿勢を進めてまいるつもりです。
  498. 三原朝雄

    三原委員長 岡田委員に申し上げますが、さっき数点答弁を保留しました。調査した上でというようなことがありました。その点、はっきりしたものについて答弁させますから……。
  499. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 簡単に申し上げます。  まず、最初にGBガス類似物質について人体実験をしたという御指摘でございますが、そういう事実はございません。これについて大宮の化学学校では、催涙ガスにつきまして、防護マスクの装着状況を点検するために、密室の中でガスを満たしてその中に数分間入れます。それを入れるときに、数秒間ガスマスクをはずして体験をさせるということはやっております。  それから第二点は、「富士学校記事」でございますが、「富士学校記事」の論文は、六名の幹部が討論をしまして、それを整理をした懸賞論文でございます。その中で、内容でございますが、野戦特科の近代化についてというテーマで約十年先の近代化の目標を議論をした中で、弾頭威力の増大をはかるための方法として幾つかの選択をしております。その中でBC兵器を使うとすれば、人道上問題のないB剤の開発及び人道上問題のないC剤の開発というものを可能性のあるものとして掲げてあるわけであります。したがいまして、BC兵器全部を開発をするということではございません。なお、敵の戦意を喪失させるガス法というものは、開発可能性のないものということで落としてあります。  第三番目は、海上自衛隊のグアム航海演習におきましては、日米共同訓練は行なっておりません。  あとは衛生局長から御答弁申し上げます。
  500. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 先ほどの衛生学校の記事につきまして調査いたしましたので、御報告申し上げます。  結論的に申し上げますならば、研究方法に一部問題点がございます。特に抗凍傷指数を出す場合に、冷水でございますが、零度に三十分ばかりつけさせます。これは指先だけでございます。その問題がございまして、その他の研究内容につきましては問題ではございませんが、そういう寒冷地におきます凍傷予防の研究は必要だと思います。ただ、研究方法の検討を、直ちに衛生学校と私どものほうで話し合いまして処置しようと考えております。
  501. 岡田春夫

    岡田(春)委員 私はもうやめようと思ったのだが、また質問しなければならなくなった。簡単にやりますけれども、あなた、衛生局長、いまの問題こそが吉村寿人のそれですよ。吉村寿人は、いわゆる昔の満州、現在の東北の孫呉その他において、わざわざ水をためて、酷寒に手を入れさせたのですよ。そのことをまたやっているのですよ。いいですか、山中長官、それをまた旭川でやったのですよ。適当じゃないと言うとおりなんです。明らかに七三一がそのままに継承されているじゃないですか。それを、ことしだけじゃないのです、去年もやっているのだ。来年もやる計画でしょう、おそらく。こういうことは、まさに七三一の継承がこういう形であらわれているじゃありませんか。こういう点からいっても、もっとあとで詳しく適当な機会に伺いますが、七三一の継承がこういう形で行なわれているのだということを、衛生局長、銘記してもらいたい。  それからさっきの答弁で特に問題なのはCB兵器の問題。人類上害のない云々と、私さっき速記を読みましたよ。そこの点抜かしてなんか読んでませんよ、私は。そのとおり読んでいます。あなた、問題はそこにあるのではないのですよ。Zに匹敵するような——Zというのは原爆ですね。原爆に匹敵するような新製品を発明、開発すべきであると言っているのですよ。それが問題なんですよ。しかも、その場合においてガス弾が必要であるとまでいっているのじゃないですか。それであなたは、あなたに都合のいいところだけ読んで納得させようたって、そんなわけにはいきませんよ。私は全文持っているのだもの。あなたの都合のいいところだけで、ああそうでございますか、納得いたしましたなんて言うわけにいきませんよ。  最後に、あなた、あくまでもガス室に入れたことはないとおっしゃるなら証人を出しましょうか。委員長、きようでなくてもいい、証人を出してください。私は名前を具体的に出して、証人を出してみます。これは理事会で御相談ください。ガス室に入れたことはないとおっしゃるのなら、マスクをとってないんだったら……(「とってある」と呼ぶ者あり)マスクをとってやっているんですか、それじゃ。じゃもう一回答えてください。マスクをとって、ガス……。
  502. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 ただいまガス室に入れたというのは、GBガスの、GB類似物質の実験というものはやっておりません、催涙ガスについてはやっておりますと、そういうふうに申し上げました。  それからもう一つ前の、Z以外のZに比肩する威力強大なる新物質の発明、発見という項目があがっておりますが、これは二重マルがついておりません。二重マルがついておりませんのは、可能性がないということで落としてあります。
  503. 岡田春夫

    岡田(春)委員 何が二重マルですか。そんなこと言われたって私わからない。二重マルをつけるかつけないかはあなた方のほうでやっているので、論文に二重マルなんかつけていないですよ。それは文章にしてもいいのだよ。二重マルがついているとかついてないかなんてあまり問題じゃないですよ。それじゃ、ガス室で実験をやったのは事実ですね。
  504. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 実験ではございませんで、隊員に催涙ガスの体験をさせるということでございます。
  505. 岡田春夫

    岡田(春)委員 いや、皆さんも聞いたらおわかりだろうと思うが、実験ではなくて体験だという。これはまさにナンセンスなお答えで、これで終わりますが、これはまさに実験です。われわれが言うのは実験です。生体をそのまま、生きた人間が入っているから、これは実験です。生体体験とは違います。ともかくもガス室に生体を入れてそういうことをやったのは事実です。こういう事実をお認めになったんだから、また必要のある場合私は証人を出してここでやらしてもいい。はっきり申し上げる。それは理事会で御相談ください。
  506. 三原朝雄

    三原委員長 木下元二君。
  507. 木下元二

    ○木下委員 私は、防衛医科大学校の問題と、それから北海道の稚内基地の問題、この二つの問題について質問をいたしたいと思います。  まず第一の防衛医科大学校の問題であります。この防衛医科大学校を設置する目的は何でしょうか。これは簡単に一言で言っていただきたいと思います。
  508. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 医官不足の実態は先生も十分御案内のとおりでございまして、そういう不足を解消するために防衛庁独自でつくりたい、こういう発想でございます。
  509. 木下元二

    ○木下委員 この前も言われたのですが、医官一人に対する自衛隊員数は、昭和四十七年度で八百六十八人ということであります。     〔委員長退席、藤尾委員長代理着席〕 これは充足率が三二・一%の状態においてこういうことであります。医官の定数が一〇〇%充足された場合には、医官一人に対して隊員数は何人になるのでしょうか。
  510. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 三百九・八です。
  511. 木下元二

    ○木下委員 それでは厚生省に伺いますが、全国の医師一人に対する人口は、これもこの前言われましたが、四十七年末七百八十一名ということでありますが、沖繩県では一体どうなっているでしょうか。
  512. 手塚康夫

    ○手塚説明員 沖繩では、四十六年末の数字ですが、医師一人当たりの人口は千九百五十七名ということになっております。
  513. 木下元二

    ○木下委員 沖繩では、千九百五十七人に対して一人。自衛隊では、医官の定数が充足をされますと、三百人程度に一人の医官というわけであります。全国の医師が国民三百人に一人の割合になるのはいつごろでしょうか。厚生省に伺います。
  514. 手塚康夫

    ○手塚説明員 現在、養成計画で厚生省が考えておりますのは、昭和六十年に人口十万対百五十人、割りかえますと医師一人当たり六百六十七名、それを昭和六十年に達成するという目標を立てて文部省にお願いしているところでございます。したがって、人口三百まで持っていくという計画を、いまのところ立ててはおりません。
  515. 木下元二

    ○木下委員 自衛隊のほうでは、約三百人に一人という目標でもってこの防衛医科大学校をつくっていこう、こういうことなんですけれども、国民のほうは昭和六十年でも六百数十名に一人という割合です。三百人なんというのはもうまるで夢のような話であって、そういう計画もないというこであります。  そこで伺いますが、患者の状況についてみますと、自衛隊の場合は、昭和四十五年度の患者数は一日平均、隊員千人について九十六・九人。一般国民の場合には、国民生活白書、四十七年度のものによりますと、人口千人当たり九十三・六人となっております。これを見ましても、何も自衛隊員が極端に多いというわけではないのであります。ほぼ同じくらいであります。しかも、自衛隊の患者というのは九十六・九人。これは調べますと、ほとんどが就業患者でありまして、かすり傷をした程度の患者で、仕事をしながら治療をしておる、こういう患者であります。医官の不足だ、こう言われるけれども、その基準となるその定数そのものに問題がある。自衛隊の医官の定数そのものが、一般にはとても通用しない、非常に多いものになっております。その定員が充足されないから、自前で医師を養成して充足率を高めるというのは、まさに国民の目をごまかすための理論のからくりではないか。どうですか。
  516. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 現在では、にわかに国民当たり一般医師数と自衛隊医師数とを比較することは、非常に困難だと思います。私どもが調査いたしました厚生省から得ております資料によりますと、大体、一般の医者の中で九五%近くが、医療、すなわち診断、治療、そういうことで、開業されておる方もおられますし、あるいは病院等に勤務されておる方もありますが、九五%を示しておる。ところが、自衛隊の場合には単に診療だけの業務ではございません。先日も横路委員の御質問にお答え申し上げましたが、非常に多様化しております。たとえて申し上げまするならば、健康診断にいたしましても、定期、特別、臨時というふうな段階の健康診断もやらなくちゃなりませんし、それが大体全体の一四%程度を示しております。それから予防接種、身体検査、入隊時の身体検査というふうに、いわゆる保健所の医師がやっておるような仕事があるわけでございます。そういう点から、にわかには比較できませんし、一般の医師数も、先ほど厚生省から御発表になられた数の中にも、自衛隊医官の数も入っておるわけであります。これはネグリジブルかもわかりませんが、入っておるというようなことで、その数字をもってにわかには議論ができないわけでございます。  それと、定員が多過ぎるじゃないかというもう一点でございますが、われわれの業務の組織内容がこれまたいろいろな分野がございまして、衛生部隊をとりましても、いわゆる行政部門に必要な医官、それから部隊、教育研究施設、こういうふうな形でそれぞれいるわけでございますが、その配分比率を見てみましても、たとえて申し上げまするならば、八百三十六名の中で四%程度が行政部門であり、研究施設については五%、部隊等につきましては大体六七%、自衛隊中央病院をはじめといたしまする地区病院その他で二三%程度というようなデータがございまして、その配分比率は決して多過ぎるというものでもございませんし、やはり船には船のドクターがいなくちゃなりませんし、医務室におきましても全国百五十ぐらい持っておるというような実態がございますので、私どもといたしましては、この八百三十六名の定数は決して多いとは考えておりません。  ちなみに外国の状況について、医官一人当たりの兵員数を御参考のために御報告申し上げますと、アメリカあたりでは、これは「ミリタリー・バランス」の兵力量を基礎としたデータでございますが、医官一人当たり二百六・七人であります。英国におきましては、三軍合わせまして——先ほどのアメリカのデータも三軍の総計でございます。英国の場合は、同じく医官一人当たり百九十五・〇人、それからフランスでは医官一人当たり三軍計二百五十六・九人でございます。西独が二百二十九・四人、このような数字で、自衛隊は一人当たり三百九人というふうなデータから比較いたしますと、諸外国に比して決して多過ぎるという数字ではないと存じます。
  517. 木下元二

    ○木下委員 自衛隊の場合には健康診断とか予防接種をする必要があると言われましたけれども、その必要は、自衛隊ばかりではなくて、国民の場合だって同じことなんです。国民の場合だってもっともっとひんぱんにやる必要があると思う。身体検査は、一般の場合には、小学校、中学校、あるいは学校関係はあるでしょうけれども、これは自衛隊が特殊なものだと思います。けれども、自衛隊だって、そんなに身体検査ばかりやっているわけじゃないのですね。身体検査なんというのはめったにありませんよ。いまあなたはそういうふうに言われましたけれども、いろいろ考えてみますと、たとえば自衛隊員というのは、採用されますときに、いま言われる身体検査が行なわれるわけでありますが、この身体検査にパスした者が自衛隊に入隊をする。したがって身体的には健康な者ばかりであります。罹病率の高い子供や老人は自衛隊にはいないわけなんですね。そういう点からいっても、必要性という点で国民のほうと比べて問題がある。さらに、自衛隊の場合には万全の搬送手段を持っております。国立、公立、私立のすべての医療機関を自衛隊は平等に使うことができるわけですね。また、現に使っておると思う。  だから、こういうことから考えますと、医官の不足ということを理由に、これを自前で自衛隊が養成しなければならないという必要性と申しますか、必然性は出てこないと思う。だから、あなた方が言われるのは、これはこの前も問題になったのですけれども、ただ医官を養成するというだけではなくて、より高度な軍事医学の研究者をつくり上げようということではないのですか。簡単でけっこうです。
  518. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 軍陣医学と申しますのは、きのうも横路委員にお話を申し上げましたけれども、ただいまの日本には軍陣医学というものは存在し得ないと考えます。しいて申し上げますならば防衛医学という問題だろうと思いますが、この点につきましては、この大学校のカリキュラムにつきましては、文部省の大学設置基準に基づきまして、その学校教育法に基づきます医学科に課せられる教育水準をそのまま準用していくというふうな考え方でございます。
  519. 木下元二

    ○木下委員 それでは伺いますが、昭和四十五年九月九日、当時の中曽根防衛庁長官は、レアード米国防長官と会談をいたしております。その際、いろいろ言われておるのでありますが、引用いたしますと、「自衛隊は極度な医官の不足に悩んでいるので、防衛医科大学校設置を決定した。そこで、極東に駐屯または来訪する米軍軍医チームの協力、特に教育、レクチュア、手術デモンストレーション等への支援または参加を考えてほしい。そうすれば、米軍の優秀な軍医技術、近代医学のノーハウが防衛医学の進歩、向上に役立つとともに、優秀な日本の青年を自衛隊に引き寄せることができると思う」、こう言っているのです。「米軍の優秀な軍医技術、近代医学のノーハウが防衛医学の進歩、向上に役立つとともに、優秀な日本の青年を自衛隊に引き寄せることができると思う」、こういうふうに、米軍の協力を要請いたしております。さらに、中曽根長官は、四十五年十月十二日の参議院内閣委員会で、質問に答えましてこう言っております。「この間私が米国へ参りましてこの防衛近代医学の連携につきましても先方の協力を要請しましたが、先方も快諾をいたしまして、次の防衛計画の中でこれを達成しようと思います」と言明いたしております。そして、すでに昭和四十年度から四十七年度までに、これは資料によりますと、陸海空合わせて二十八人米国へ研修派遣をいたしております。  そこで伺いたいのですけれども、中曽根元防衛庁長官も言っておりますが、この防衛医学というのは、結局、軍事医学のことではないのでしょうか。先ほど何か軍陣医学と言われましたが、どちらでも同じでしょうけれども、軍事医学はないかのように言われますけれども、確かに辞典を引いてみましても、軍事医学という用語は出てきません。しかし、これはもう社会一般には通用していなくても、自衛隊の中で防衛医学なりあるいは軍事医学という、そういう概念がつくられているわけですね。確立をしておると思います。だから結局、あなた方が防衛医学というようなことを言われますけれども、これは軍事医学のことではないのですか。何か軍事医学ではない防衛医学であるというようなことを言われますけれども、実際にはそんな限界というものを医学の場面で引くことができるでしょうか。
  520. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 昨日も御答弁申し上げましたけれども、私どもといたしまして、旧軍時代には確かに軍陣医学という形で私自身も習いましたけれども、いまの私どもの段階におきましては、防衛医学というものは学問的に体系づけられておらないと考えております。何をもって防衛医学というのか、そういう問題はまだ体系づけられておらないということでございます。
  521. 木下元二

    ○木下委員 そういうふうに言われますけれども、中曽根元長官は、そういうふうに防衛医学ということをはっきり言っておるわけでしょう。そういうふうに元長官が言われたことを否定されるわけですか。
  522. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 私どもといたしましては、長官がどのような御意図で防衛医学というおことばをアメリカに行かれてお使いになったかは聞いておりませんが、ただいまの段階防衛医学としいて言うならば、公衆衛生学だ、衛生学だ、あるいは細菌学だ、いろいろそういう分野を網羅した総称したものが、一つの学問的に体系化されまして防衛医学というんじゃないかと私自身考えております。
  523. 木下元二

    ○木下委員 それでは伺いますが、中曽根元長官が、いまも援用いたしましたけれども、米軍に対しまして優秀な軍医技術あるいは防衛近代医学の協力を要請しておるわけでありますが、この米軍の優秀な軍医技術というのは一体どういうものでしょうか。
  524. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 これは私の分野でございませんが、一たん有事の場合にはいろいろなけが人がやはり出ると思います。そういった場合のいわゆる創傷の治療、これはまたひいては日常、このごろ交通戦争といわれておりまして、そういう患者が頻発いたしておるわけでございますので、そういう創傷治療に対する外科の優秀な技術者、これは例示でございますが、そういう形の人を考えております。
  525. 木下元二

    ○木下委員 確かにそういった医学もあるでしょう。しかしそれだけではないんです。米軍の軍医技術というのは、その結集したものをベトナム戦争に全面的に使っているではありませんか。アメリカの軍事医学というのは、人をいかに苦しめ大量に殺すかを研究するものであります。ベトナムにおいてあの枯れ葉作戦を行ない、あるいはナパーム弾、こういうものを使ってむざんな人殺しをやっておる。まさに米軍の近代軍事医学というのは、アジア人を実験台にした医学ではなかったでしょうか。ここに写真があります。これはあのアメリカの北爆の中で、ナパーム弾によって負傷したベトナム婦人の写真であります。あまりにも残酷であります。いかに残酷にアジア人を殺傷するか、そういう研究をアメリカの軍事医学はやってきたんじゃないですか。中曽根元防衛庁長官の言っております米軍の優秀な軍医技術の協力要請というのは、まさにこのような技術の要請ではないのでしょうか。防衛医科大学校の真の目的というのは、いまいろいろ言われましたけれども、四次防によって強化されていく自衛隊に即応するために、ただ不足しておると言っているこの医官を自前で養成するというだけでなくて、より高度な軍事医学の研究者をつくり上げようとする、こうではないのですか、長官。どうでしょう。
  526. 山中貞則

    山中国務大臣 過去のいきさつは私よく知りませんが、日本の医学は、アメリカ、西ドイツ、大体世界のトップクラスにあると思います。防衛医科大学校をつくるについても、医師会の会長の武見先生あたりの御意見等も伺いながら、どのようなものにしたらいいかという御指導等もいただいてやっておりますし、私どもは、かりに大学校がお許しを願ってできたとしても、アメリカの教官を連れてきて勉強を指導してもらったり、そういうようなことをする必要はないので、日本の医学というものはあらゆる分野において高度の発展を遂げております。アメリカで手術できない幼い子供でさえも日本の医学をたよって来るぐらいでありますから、自前で日本の教育は医学においても完全にできる。しかも、すぐれた医学が教育できると私は思います。
  527. 木下元二

    ○木下委員 アメリカの協力は必要ないというふうに言われますけれども、それでは一体、さっきも私が援用いたしましたように、昭和四十年度から四十七年度までに陸海空合わせて二十八人米国に派遣して研修をさせておる。これはどうしてですか。
  528. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 これは毎年やっておるわけでございまして、これは何も大学のスタッフ要員としてなっていただく方々をアメリカに研修派遣をしておるわけではございません。たとえて申し上げまするならば、海上では海軍潜水学校等へやらせまして潜水医学の勉強をさせる。こういった潜水医学の勉強をしてきた方々が、それぞれの潜水医学の高圧の実験研究に従事するというふうなことでございますので、この問題と防衛医科大学のスタッフの問題とは関係がございません。
  529. 木下元二

    ○木下委員 アメリカと医学の面でいろいろ協力をしてやっていくという姿勢は、これはとっていくのだ、こういうことですね。  そこで伺いますが、先ほども、あるいはこの前も、人体実験あるいは生体実験のことについていろいろと問題にされたわけでありますが、あのDDVP、板状蒸散剤というのがあります。これは一九四三年、第二次世界大戦の終戦直前に、ナチスが毒ガスとしまして開発をしたパラチオンとよく似たものであります。神経に障害を起こす薬品でありますが、これを陸上自衛隊の医官の手によって研究をしてきておる。そのことはこの「防衛衛生」にはっきりと出ておるわけですね。あるいは、米軍がベトナム侵略戦争の際に、あの枯れ葉作戦に使ったDNOCという薬品とよく似た成分を持つPCP、これについて同じように陸上自衛隊の医官の手によって研究をされておる。このDDVPの研究などについては、この「防衛衛生」を拝見いたしましたけれども、相当大がかりにやっておりますね。昭和四十四年の一月から同年九月にかけまして、しかも七十八名の人たちについてやっておる。これはたいへんなことだと思います。自衛隊員といえども基本的人権を持っておると思いますが、隊員だから人体実験をやってよいということにならないと思うのです。自衛隊員の基本的人権を侵してまで軍事医学の研究を進めてきたのではないのですか。どうですか。
  530. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 衛生学校で、御指摘のDDVPは、確かに水の汚染除去、放射線の測定等で使ったことはあります。その「防衛衛生」に記載されておるとおりでございます。それは御案内のようにいわゆる農薬でございます。それを、本ものがございませんので、擬剤として実験に使ったということでございます。
  531. 木下元二

    ○木下委員 江崎防衛庁長官は、昨年の予算委員会におきまして、自衛隊としての特殊な医官養成をしたい、こういうふうに答えております。そしてまた、防衛医科大学校設置に関する懇談会の意見書では、「自衛隊における医学研究のセンターとしての機能をも発揮できるよう、特段の配慮が必要である」、また、「国民医療におけるニードとあわせて、自衛隊の特性を考慮したテーマのもとに、大型プロジェクト研究に重点をおくこと」としております。いわば自衛隊の特性を考慮したテーマを研究する大型プロジェクトをつくるために、一般の医師の養成ではなしに、自衛隊としての特殊な医官を養成するというわけであります。私は、まさにこの防衛医科大学校設置の大きな目的の一つがここにあると思うのです。さきにも申しましたけれども、そのために中曽根元長官は、みずからレアード国防長官に対しまして近代軍事医学の協力を要請しておるのです。この大型プロジェクトは一体何をするプロジェクトでしょうか。
  532. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 現在のところ、そのテーマは考えておりません。
  533. 木下元二

    ○木下委員 テーマは考えてないと言われますけれども、防衛医科大学校設置に関する意見書というのが出ております。この中にはっきりそのことがうたわれておるのですが、それは御存じだと思います。そういう計画のもとにこの防衛医科大学校の設置構想というものがつくられたのではないのですか。初めの構想と変わってきたのですか。
  534. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 先ほど長官から御答弁になりましたように、武見日本医師会長を中心にいたしまして、十人ばかりのメンバーで懇談会を設置いたしまして答申が出たわけでございますが、その答申を十分尊重して、その構想に基づきまして、われわれはこの防衛医科大学校をつくってまいりたいと考えております。したがいまして、これからお認め願えれば、今後の問題といたしまして、大型研究も当然考えてまいらねばならないと思います。
  535. 木下元二

    ○木下委員 どうもあなたが言われていることはよくわからぬのですがね。この防衛医科大学校設置に関する懇談会が中心になって、いろいろな意見を出し合ってこの意見書をつくった。これが防衛医大の構想になるわけですね。この中に、私がいま申しましたように、「自衛隊の特性を考慮したテーマのもとに、大型プロジェクト研究に重点をおくこと」。医学研究をこういうふうにしてやっていくのだと書かれているのですよ。だから聞いているのです。この大型プロジェクトというのは、一体どういうものなのかと聞いているわけです。
  536. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 いろいろ私も武見先生と御懇談申し上げておりますが、その中でやはり考えられますのは、自衛隊として取り上げるプロジェクトとしては救急医療体制の問題。これは、まだ残念ながら日本におきましては、この交通戦争で、これは単に救急と申しましても、交通事故等による負傷者だけではございませんが、どうもうまく救急医療体制が各都道府県ともいかないというような点もございまして、そういう研究をひとつしてみたらどうかというようなお話し合いがございまして、私ども武見先生その他先生方の御高見に全く賛成でございまして、それも取り上げて今後考えてみたいと考えております。
  537. 木下元二

    ○木下委員 救急医療体制なんて言われますが、救急医療ということは、これは一般国民の医療にとっても必要なことなんです。災害とかいろいろな場合においてそういった救急医療体制の必要性というのは、これは自衛隊だけのものではないでしょう。どうですか、自衛隊だけのものですか。
  538. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 もちろん私は、厚生省がまず現在やっておられるような形で全国をリードしてやるべき姿でございますが、自衛隊としても、自衛隊の立場上、そういう災害協力をいたしていく関係上、そういう体制をひとつモデル的に研究しておく必要があるのじゃないか、こう考えておる次第でございます。
  539. 木下元二

    ○木下委員 ごまかすようなことを言いなさんなよ。「自衛隊の特性を考慮したテーマのもとに、大型プロジェクト研究に重点をおく」、こういっているんですよ。だから、一般国民を対象にした災害等の場合における救急体制あるいは救急治療の問題、そういうことをやるのではなくて、自衛隊の特性を考慮したプロジェクトなんですね。だから、あなたが言われるのはごまかしですよ。結局、米軍の枯れ葉作戦などの化学兵器、人殺しの目的で研究、開発をする者は、これは医師ではありません。医師とはあくまで人の命を助ける研究を行なう者であります。人殺しの研究をするためには、まともな神経の持ち主、まともな考え方の者ではもうだめだ、そういうことで、学生のうちから特別の教育をするために防衛医科大学校を設置するのではないのですか。防衛医科大学校設置に関する懇談会の座長をつとめました武見太郎医師会会長みずから言っております。日本医師会の第六回全国理事会におきまして、いまの医科大学校のあのだらしない規律の中で出てきた者は軍医として使いものにならない、普通の学校にすると文部大臣の監督を受けなければならないし、そうすれば軍医さんだけの養成ができなくなる、こう言っておるんですよ。だから、あなたが初めから言っておるような、医者が不足しておるから医者の養成だ、こういうことではなくて、一般の医科大学校を出てきた者ではつとまらないような自衛隊の中の軍医、その養成をするためにつくるんでしょうが、この学校は。
  540. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 先ほど簡単に設置目的を話せということで、まことに舌足らずの御答弁を申し上げたわけでございますが、これは医師不足ということは、実情を申し上げまするならば、現在、自衛隊の医官を採用する場合は、一般の公募——一般の公募と申しますのは、一般の医科大学を卒業した人を採用する場合と、それから在学中に衛生貸費学生と申しまして、月々六千円の手当を出しまして採用する方法でございますが、卒業したら自衛隊につとめてもらうという制度、この二つの制度によりましていま確保いたしておるわけでございますが、特に四十七年度の時点で申し上げましても、十九名採用いたしまして、やめたのがその年度内に四十九人というふうな実情でございまして、やはり一般の公募だとか衛生貸費学生では足りない、やはり自分でつくっていかなくちゃならぬということで、もうそういうことで自前でやるということに相なった次第でございます。
  541. 木下元二

    ○木下委員 時間の関係であまり議論はいたしませんけれども、こうして文部省や一般国民の目から離れたところで、これは設置懇談会の報告にもあるわけですが、「学校長のもとにこれを補佐する複数の副校長を置き、全校的な意思決定を的確かつ迅速にできる体制を確立すること」といっておるのです。こういう体制の中で、まさにゆがんだ、片寄った哲学や社会学を教え、殺人を平気でするような研究をすることのできる、そういう医官を養成するためではなかろうか、こう私は思うのです。こういうふうになれば、まさにこれは武見会長みずから言っております軍医の養成であります。軍国主義復活の教育ではないかと思います。長官、この点どう思われますか。
  542. 山中貞則

    山中国務大臣 武見さんがおっしゃっているのは、軍医ということばは、それはいまの自衛隊は軍じゃありませんから、したがって隊医でもよろしゅうございますし、要するに、自衛隊の中で勤務していただくお医者さんというものが、現在の社会環境から見てなかなか確保しがたい。  ことに、一般の大学で貸与費等を月六千円やったところで、卒業して入ってもらったのはことしは一人ですか、貸与学費はもらっていても、自衛隊に来てもらった人は一人しかいないというようなこともありますし、また一般公募をしても、しばらくはいてもらっても、やめていく人の数が多いということで、やはり自衛隊としては、各種駐とん地等における、僻地等もございますから、病院等においては定足数をほぼ満たしておらなければいけませんし、部隊のほう等については手薄である。しかしながら、勤務の態様等からいって、やはり不測の事故やその他の件数が多うございますから、そういうものに常時対処したり、あるいはまた自衛隊は、最悪の場合でありますけれども、万が一にも直接侵略等を受けた場合において対応する力を持つ部隊でありますから、それらの場合に、一般の開業医の人々に、ぜひこの危険なところにやってきて手当てをしてくださいといっても、とても間に合うものじゃないでしょう。  だから、その意味で逆に私が心配したのは、そういうふうに自前で養成する大学をつくったときに、これがどんどん卒業していくわけですから、自衛隊の中でさばき切れなくなってしまうという将来の展望について心配したのです。     〔藤尾委員長代理退席、委員長着席〕 しかしながら、やはり一定の停年、勤続年数でやめていく人、あるいはまた義務年限とは申しておりませんが、つとめてほしい期間、こういうもの等で逐次減数をかけていきますと、先ほど申しました一人当たりの一定の隊員数に達しまするころには、毎年卒業生が一定数出ましても、これが自衛隊だけあふれるというような状態にはならない。しかも、停年になられたら、それは国家試験の道もありますから、一般の地域開業にも従事される方々になっていただけるであろうということで、むしろあり余って困るんじゃないかということのほうを私は心配しておるのですが、そのことはないということで、これはやはり必要な医官養成所であろう、そういうように考えます。
  543. 木下元二

    ○木下委員 人を殺傷するための研究は絶対にしないと言い切れますか。この点は、この前もそういうことはないというふうに言われましたのですが、私は、これまでの歴史的な背景と、それからまた、この問題について地元の所沢市の人たちが一番心配しておる。だから反対をしておるのであります。だから私は念を押して聞きたいのでありますが、このことをはっきりと約束されますか。
  544. 山中貞則

    山中国務大臣 医学上、人を殺傷するというような研究開発をするはずは毛頭ありませんし、所沢においても、併置される付属病院は、一般大学の付属病院同様、地域に対して開放された病院とするということをたてまえといたしておるわけであります。
  545. 木下元二

    ○木下委員 そのような、将来において防衛医科大学校において、いわゆる軍陣医学の研究などが進んで、人を殺傷するような、そういうためにいろいろな研究が行なわれる、そういうことは一切ない、こう言われるわけですか。
  546. 山中貞則

    山中国務大臣 もちろん、あなたは名言を吐かれましたが、医者というものは人の命を救うためのものであって、人を殺すためのものは医者ではないと言われたのですが、私はやはり、それは自衛隊の医科大学校においても当てはめるべきであって、医学の手段を通じて人を殺すというような研究が行なわれようはずもなく、またそういうために人を養成することはあり得ない、このように考えます。
  547. 木下元二

    ○木下委員 質問を変えますが、この防衛医科大学校の教育の内容について聞きます。専門課程の講座はどのようなものを置くのか。文部省の設置基準と同じものかどうか伺いたいと思います。
  548. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 まず、基準から申し上げますと、進学課程におきましては年間六十四単位以上ということになっておりまして、もちろんこの点につきましては、それを満足する十五学科がすでに予算化されておりまして、そのとおりにやってまいります。  それから専門課程につきましては、基準では基礎講座が、文部省の基準から申しますと十三講座でございますが、私どものは十六講座、三講座ふやします。そのふやす内容は、基準の中に生化学がございますが、生化学の第二、それから行動科学、医用電子工学、この三講座をふやしたいといまのところ考えております。これは事務的にまだ考えておるわけでございまして、これからまた予算折衝に入るわけでございます。  それから臨床講座につきましては、基準では十四講座でございますが、これを十七講座にしたい。その中で、先ほど救急医療対策ということにもちょっと触れましたが、やはり脳神経外科は必要であろう。それから内科は、二つ以外にもう一つ第三内科を設けたい、このように考えております。
  549. 木下元二

    ○木下委員 専門課程については、実は資料要求をいたしまして、私の手元に資料があるわけでありますが、これは間違いないのでしょうか。医科大学における必須の開設講座とされておるものを防衛医科大学校の専門課程の講座にする、こう書かれてずっと載っておりますが、間違いないですか。
  550. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 そのとおりでございます。
  551. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、この専門課程の中に一つ欠けておるものがあると思うのですがね。「医学部設置審査基準について」というのがありますが、その設置基準によりますと、整形外科学、これは必要科目になっておりますね。これが入っておりますか。専門課程には入っておりませんね。どうして入っていないのですか。
  552. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 専門課程の講座の中に整形外科学は基準として入っております。
  553. 木下元二

    ○木下委員 私のもらった資料に入っていないから聞いておるのですよ。ちょっと見てください。入っていないですよ。どうしてですか。
  554. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 まことに申しわけございません。故意で落としたわけでございませんが、私のチェックが悪くて、一応見たつもりでございましたが、落ちておりました。
  555. 木下元二

    ○木下委員 間違いでは済まないですよ。正式に資料要求をしたのでしょう。それに対して、あなたのほうから正式な資料としてよこしてきたもの、それに不備があった、落ちておったということでは済まないと思うのですよ。まだあるのじゃないですか、落ちておるものが、あるいは間違いがあるのじゃないですか。今後はこういうことの絶対にないように慎重にやってください。  それから防衛庁は、この防衛医科大学におきまして教育と訓練を行なうというふうにいっておりますが、この訓練というのは、これは文部省の基準にももちろんないわけでありますが、一体、授業科目には入っていないのか、どうなっているんでしょうか。
  556. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 ただいまの予定では、学生は定員外の防衛庁の職員でございまして、われわれと一緒に一年二十日の賜暇しかございません、一般大学では二カ月ほどの夏休暇とか冬休暇がございますが。そういう時間を利用して補習訓練、その他部隊の見学だとかスキー、そういった程度のことを考えております。
  557. 木下元二

    ○木下委員 私の質問に答えてほしいのです。いろいろよけいなことを言われると時間がかかるし、もう簡単にやりたいと思うんですよ。私が聞いているのは、授業科目に入っているかいないかと聞いているのです。入っていないでしょう。
  558. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 必須科目の中には入れておりません。
  559. 木下元二

    ○木下委員 そうすると、選択科目とかほかの科目にきまったものとして入っていますか。まだそういうきちんとした計画、構想というものはつくられていないでしょう。
  560. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 そのとおりでございます。
  561. 木下元二

    ○木下委員 ですから、結局、器だけ法案を出しまして、教育の中身についてはかってにやるんだということでは、そして普通の医大と同じだというようなことでは、信用できないと思うのですよ。訓練もやるというなら、一体訓練の中身がどういうものか、その内容も明らかにして出すべきじゃないですか。どうですか。
  562. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 いまのところ、お認め願えれば、来年の四月開校予定にいたしておりますので、それまでに間に合うように、鋭意詰めておるところでございます。
  563. 木下元二

    ○木下委員 お認め願えればと申しますが、認めるか認めぬかということが、その訓練の中身にもやはりかかわっていることなんですから。まず認めてもらって、あとから訓練の中身をつくるんだということでは、これは逆だと思うんです。  次の問題に移ります。防衛医科大学校に教育基本法の適用はあるんでしょうか、防衛庁伺います。
  564. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 当然、教育基本法の精神は守らなくちゃならぬと考えております。
  565. 木下元二

    ○木下委員 これも質問に答えてください。教育基本法の適用があるかないか、どっちなんです。いま言われた、精神を尊重するというようなことは、これは適用がないという前提で言われているのですね。適用がないという前提で精神を尊重する、そういうことですか。
  566. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 教育基本法の適用はにわかにはございませんが、その精神を尊重したい、こういうことでございます。
  567. 木下元二

    ○木下委員 結局、教育基本法の適用はないということですけれども、教育基本法というのは、私から多くを申すまでもなく、教育の憲法であります。この前文にはっきりと示しておりますが、「日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する」としてつくられたものであります。いやしくも事、教育に関する限りは、この教育基本法が適用されるべきであります。もとよりこの教育基本法の中には、たとえば義務教育に関する定めとか、あるいは社会教育に関する定め、こういうのがあります。こういうのは当然、事柄の性格から申しまして防衛医大に適用がない、こんなことは当然であります。それ以外の教育全般にかかわる事項を定めた条項は防衛医大に適用されずに、精神を尊重するというようなことを言われたけれども、先ほどからあなた方は、普通の医科大学と同じである、学校教育法に基づく大学と同じであるということを盛んに強調されながら、一番肝心なこの点になってくると、教育基本法の適用はないという前提でお答えになっている。これは問題じゃないですか。長官、この点はどうですか。
  568. 山中貞則

    山中国務大臣 これは私、直接の設立構想に参加していないわけでありますが、いろいろな案を検討したそうであります。  第一案としては学校教育法による防衛大学医学部、第二案は防衛庁設置法による防衛医科大学、第三案は学校教育法による防衛庁医科大学、第四案は既存の私大に医学部設置、第五案は学校法人をして、民間ですが、医科大学を設立させる私立防衛医科大学、これらの構想を全部検討して、ここらに中曽根当時の長官と文部大臣等との話し合いが逐一載っておりますが、最終的には防衛医科大学校とするのが適当であるということで文部大臣との意見が一致したということになっておるようであります。
  569. 木下元二

    ○木下委員 私は、その防衛医科大学校をどのような構想でつくったかということでなくて、教育の一番基本問題を伺っておるのです。この教育基本法には、たとえば大学その他の学校教育の場であろうとも、あるいは社会教育の場であろうとも、家庭教育の場であろうとも、あらゆる機会に、あらゆる場所においてこの教育基本法の定める目的が実現されなければならない、こういうふうにはっきりうたっているのですよ。だから、教育基本法の定める教育の目的というものは、あらゆる教育の場、したがって、自衛隊のつくる防衛医科大学校であろうとも、少なくとも教育が行なわれるという以上はこの教育基本法が適用されるべきではないですか。それを適用されない。  だから、この教育基本法はいろいろな規定がありますけれども、たとえば八条には政治教育の禁止というのがありますね。特定の政党を支持したり、あるいはこれに反対するための政治教育はしてはならない。当然のことであります。午前中の質問でも、何か革新政党に反対をするような教育が自衛隊の内部で行なわれておるというふうな問題の指摘がありましたけれども、この点は非常に大きな問題だと思います。大事な問題だと思います。いかがでしょうか。
  570. 山中貞則

    山中国務大臣 これはもう防衛医科大学校は当然自衛官たるべき医官の養成でありますから、自衛隊法あるいは施行規則に列挙された政治活動を禁止されることはあたりまえでありますし、一方、学校教育法の問題については、一例は航空大学校等もありますが、ほかにもたくさんありますが、これは、学校教育法のかぶっていない職域養成の機関としてやはり大学校の名前で存在しているわけであります。
  571. 木下元二

    ○木下委員 いや、そういうことを聞いているのじゃないのですよ。大学校がいかぬとは私は言っていないですよ。学校教育法と教育基本法と違うのですよ。学校教育法に定める大学ではない、それはそれでけっこうですよ。問題は、教育基本法があって、それに基づいて学校教育法がつくられ、普通の大学はこの適用を受ける。この防衛医科大学は学校教育法の適用はない、それはそれでけっこうです。しかし、学校教育法の適用はなくても、教育の憲法である教育基本法は適用されるべきではないか、こう言っているんです。それで、一方では普通の大学とかわりない教育をやるんだということを強調する。そういわれながら教育基本法の適用はない、これは矛盾するじゃありませんか。そうでしょう。どうですか。
  572. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 これは、学校教育法第八十三条に御案内の各種学校の規定がございますが、その中で規定されておるいわゆる法律による特例措置の大学校でございます。防衛大学はまさにそれに該当するわけでございますが、いままで各省庁が行政上必要だと認めまして大学校をつくる場合はすでに例があることでございまして、数えれば十四ばかりございます。そういう大学はすべて教育基本法の適用は当然除外されておりますが、教育基本法に規定されております内容を侵害したという事実がないのは御案内のとおりでございます。したがいまして、まさにそういうスタイルの大学を設置しまして、その教育内容が、医学教育を中心に考えますれば大学設置基準を満足する内容でございますので、厚生省のほうも医師の国家試験の受験資格を与えよう、こういう了解を取りつけ、文部省のほうにおかれましても、そういう内容であればけっこうだということで御了解を得ておる次第でございます。
  573. 木下元二

    ○木下委員 文部省はいられますか。文部省は、いまの教育基本法の適用があるかないかという点については、どう考えているんですか。
  574. 齋藤諦淳

    ○齋藤説明員 教育基本法では後半のほうで、学校教育とか、社会教育とか、一般人を対象にするそういうものをきめておりますが、前半のほうでは抽象的に書いておりまして、必ずしも明らかではありませんが、後半から見て、文部省所管の学校が対象になる、そういうように推定されるのではないか、そう考えております。
  575. 木下元二

    ○木下委員 文部省所管の学校が何ですって。
  576. 齋藤諦淳

    ○齋藤説明員 教育基本法は主として文部省所管の学校を対象にして定められたものである、このように推定できるわけでございます。
  577. 木下元二

    ○木下委員 この点については、私はもう論議をいたしませんが、教育基本法をもう一度よく読み直してもらいたいと思います。教育基本法が自衛隊防衛医科大学校に適用はないというのは、これはまたある意味では私は当然だと思うのです。結局、教育基本法というのは、この法文が示しておりますように、「われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない」、こういうふうに高らかに宣言をしておる。こういうふうな教育が防衛医大に適用がない、これをお認めになったわけであります。けっこうであります。  それからもう一つだけ防衛医大の問題について質問いたします。  防衛医大卒業者を医師にするというのは、これは、医師になるための医学のコースというのが学校教育法できめられておりますけれども、法律上きめられた教育体系というものを乱すものではなかろうかと思うのですが、その点はいかがでしょう。
  578. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 私は、こういう形のものが学校教育体系を乱すものとは考えておりませんで、ある省庁が所管する法律で他省庁の所管いたします一般的な、原則的な事項を定めた法律の条項の適用につきましての特例措置を定めることはしばしばある立法技術でございまして、本件はまさにその例にならったものでございます。  さらに本件は、防衛庁設置法の中におきましても、防衛医科大学校の教育水準を法的に担保する規定が置かれておりますので、医師国家試験受験資格の特例措置というものはそれとうらはらであるということを明確にする上からも、ただいまお願いいたしております設置法の中において特例措置を規定するのが一番いいと考えた次第でございます。
  579. 木下元二

    ○木下委員 この防衛庁設置法の今度の改正案でありますが、これによりますと、「防衛医科大学校卒業生は、医師法第十一条の規定の適用については、同条第一号に規定する者とみなす」ということで、みなし規定がつくられております。で、医師法十一条一号の規定というのはどういうことかというと、「学校教育法に基づく大学において、医学の正規の課程を修めて卒業した者」、これがつまり医師法の定める国家試験受験資格であります。これとは質的に異なる防衛医科大学校卒業生を全く同じようにみなしてしまう。これは先ほども言われましたけれども、教育基本法の適用もない普通の大学とは違った教育コースなんですね。それを正規の課程を修めた者と全く同じようにみなしてしまって国家試験受験資格を与えるというのは、これは乱暴じゃないでしょうか。  それからもう一つの理由といたしまして、医学の正規の課程というものが要請をされておるのはどうしてか。これはやはり医師たるにふさわしい知的、道徳的あるいは社会素養と申しますか、そういったものが医師には要請をされる。だから医学の正規の課程というものが社会的に要請されているんだと思うのです。これを経ない防衛医大卒業生を医師にするということは、私は社会的にもゆゆしい重大問題であると思うのです。この点については長官どうでしょう。この点は私は本会議でも質問をしたんです。まことに不十分な答弁しかなかったわけですが、どうでしょう。
  580. 手塚康夫

    ○手塚説明員 医師法は厚生省の所管の法律でございますから、とりあえず私のほうから答弁したいと思います。  先生御指摘のとおり、確かに医師法の十一条一号で認めております資格は、学校教育法に基づく大学での医学の正規の課程ということになっております。ただ、あえて申しますならば、たとえば十一条の三号で、外国の医学校を卒業し、または免許を得た場合、これも受験資格を認めておるわけでございます。その場合に私ども厚生省としてやっておりますのは、その外国の医学校でどういう教科内容をやってきたか、科目、時間数をつぶさに検討して突き合わせて、それで受験資格を認めているわけでございます。  ですから、そういう意味では、防衛医科大学校につきましても、先生御指摘のとおり、国民の健康、生命を直接に預かる職業である医師を養成するものでございますから、そういった正規の大学におけると全く同等の水準の教科内容を持つように要求をしているわけでございまして、これが法律に入っていると私ども理解しております。
  581. 木下元二

    ○木下委員 この問題については、実は本会議ではどういう答弁がされておるかといいますと、各行政庁が行政目的に沿って必要な要員を養成することは別にかまわぬ問題だ、そういうことはほかにも例があるし、やれるんだ、こういう趣旨の答弁であったわけですが、これは明らかにそういう問題ではないと私、思うんです。たとえば防衛庁内部でのみその隊員の治療に当たるというのであれば、これはその範囲でも、隊員といえども生命、身体、健康にかかわる問題でありますから、問題はありますけれども、しかし社会一般の国民の治療に当たるということではないわけでありますから、それはまあそれでけっこうであります。行政目的に沿って要員を養成するというなら。自衛隊の内部だけでやる場合はそういうことがいえるんですよね。ところがこれはそうではなくて、行政目的を越えて、一般社会の要請である医師の資格を隊員に与えて、除隊をすれば一般の医師と全く同様に扱われる、ここに問題があるわけなんです。この点はどうですか。
  582. 山中貞則

    山中国務大臣 これはやはり防衛医科大学校も医師養成機関であることは間違いありませんから、ただいま厚生省から答弁がありましたように、修業年限とか入学資格、設備、編制、教員の資格等に関するそのような事項が、きちんと医師国家試験を受けるにふさわしい内容のものとして法的に整っていれば、すなわち厚生省が認める医師国家試験を受ける資格のあるものとしての対象としてとらえられているわけでありますから、それらの人々が国家試験に合格して正規の医師の免許を取った上で、停年後等、まだ現在の常識からいえば相当活躍期のまま停年で退いていかれますから、そういう人々が一般の地域社会の医療にも貢献するであろうということで、別段この点における厚生省との対立もなく、法的に整備された大学校としてお願いをしているわけであります。
  583. 木下元二

    ○木下委員 この問題は沿革的に見ましても、たとえば、戦前、専門学校令による専門学校、あるいは大学令による大学の卒業者、この卒業資格をもって医師の資格を与えるということが一貫して守られてきたのであります。あの戦前の軍国主義はなやかなりしころにおいても、軍隊で特別に軍医を養成するというような制度はなかった。軍医の場合も、社会一般で医者の資格を持って、それをなお特別に軍医として訓練あるいは教育をやる、こういうことでやって、昔にも戦前にもなかったことなんです。私、調べてみますと、日本はもとよりのこと、外国においても、こういうふうな軍隊が自前で医者を養成するという制度はございません。非常に問題のある問題でございます。この点については、私は根本的に検討する必要があるということを指摘しておきます。  時間がありませんので、次の問題に移ります。  次の問題というのは、北海道の最北端の稚内の問題であります。ここには極東最大といわれる米軍の電子情報基地が存在をしておりました。ところが、いま、この電子情報基地を、巨大な施設とその機能もろとも、自衛隊が引き継ごうといたしております。この基地は、最新の高性能電子装備を使って、シベリヤ大陸、サハリンあるいは北朝鮮の軍事的動向を、大規模にしかも詳細、緻密に探り取ろうとする基地であります。自衛隊がこの基地を引き継ぐことは、ソ連など社会主義国に対する侵略的、挑発的機能を一段と強化することではないのか、また日米共同作戦体制を一段と推し進めることではないのか、私はこの観点から本会議で代表質問を行ないましたけれども、総理らの答弁はまことにそっけないものでありました。稚内基地の機能は、北海道周辺において、艦艇や航空機等の発射するレーダー電波を捕捉することを目的とする受動的なものだから問題はない、という趣旨の答弁でありました。そこで、私、先般五月の末でありますが、現地稚内におもむきまして視察、調査を行ないました。そしてこの目で、この電子基地の実態を一つ一つつぶさに確かめてまいったわけでありますが、問題がないどころか、自衛隊がこの基地を引き継ぐことは、その機能の上からいいましても、あるいはまた憲法上、あるいは外交上からいいましても重大事である、こういう感を深めた次第であります。  そこで、この稚内基地の問題について具体的に質問いたしたいと思います。米軍がこの稚内基地をこれまでどのように使ってきたのか、米軍はここで一体何をしてきたのか、まずお答えいただきたいと思います。
  584. 久保卓也

    久保政府委員 昨年の六月まで米軍が所在をしたわけでありますが、実際の実任務は、それ以前から漸次縮小しておったようであります。そこで、ここにおりました部隊は、通信保全群、通信中隊、それから軍病院、それらの支援隊といったようなものでありまして、私どもの承知しておりまするところでは、無線中継、それから電子情報の収集、それから稚内飛行場が近くにありますが、そこにありまするTACANの維持管理、それと通信保全といったような任務を担当しておったように聞いております。
  585. 木下元二

    ○木下委員 いま電子情報の収集ということを一つ言われましたが、あまり詳しくはけっこうですから、こっちから聞いていきますが、あまりにも簡単ですから、もう少しその内容を言ってもらえませんか。
  586. 久保卓也

    久保政府委員 私どもが、米軍のここで果たしておりました機能を全部知っておるわけではございません。そして今日知り得る範囲におきましては、御承知のように、米軍の施設、器材というものは相当撤去されておりますので、全容をおおうわけではございませんが、私どもが行なおうとしておりまする電子情報、これは米軍もやっておったようでありまするので、それを申し上げると、稚内周辺におきまして艦艇、航空機その他いろいろな電波源から電波が発射されます。その発射した電波を捕捉いたしまして、その電波源が何であるか、どういうような動き方をしておるか、どういう性質を持っておるか、そういうようなこと々知りまして、われわれの他の一般の情報と突き合わせまして、防衛の、いわば平時における情報収集の一環とする、そういった業務を米側はやっておったように思います。
  587. 木下元二

    ○木下委員 この稚内基地が、極東における電子情報基地といたしまして重大な役割りを果たしてきましたことは、ほとんど公然たる事実であります。たとえばここに四十六年十二月九日付の読売新聞がありますが、七段抜きで「稚内通信基地自衛隊肩代わりへ」という大きな見出しの記事があります。こう書かれております。「同基地はソ連、中国など大陸の軍事通信の傍受を主要な任務とする極東最大の情報基地の一つといわれ、防衛庁関係者は、自衛隊がこの機能を引き継ぐことによりわが国の防衛力は飛躍的に充実するとみている」。そしてこの基地の機能について、「ソ連、中国などの軍事通信を傍受、部隊配置状況などの情報を収集していることは確実だといわれる。米軍人は約七百人で、通信基地としては大規模なものである」、こういうふうに書かれております。いまの稚内基地の重要性は、いまのお答えの中からはどうも浮かび上がってこないのであります。  そこで、さらに具体的にお尋ねいたします。レーダーから発射された電波を捕捉し分析する作業、これが行なわれておったということでありますが、それは稚内基地内のどの場所で行なわれておったのでしょうか。
  588. 久保卓也

    久保政府委員 稚内は御存じのとおりでありますが、それの中部よりも西のほうに比較的大きな施設がありまして、その周辺に、ごらんになりましたアンテナが十四場所ありますが、そのアンテナに囲まれた施設、アンテナを含めまして、その施設一帯がそうであります。
  589. 木下元二

    ○木下委員 この稚内の一番北端に、これはサハリンと向かい合ったところでありますが、野寒布岬というのがありますね。この野寒布岬からも見られるわけでありますが、大体丘陵地帯になっておりますね。丘陵地帯になっておりまして、その一番北寄りの地点、ここにレドームなどの施設があるわけであります。この施設でいまの作業は行なわれておったということですね。
  590. 久保卓也

    久保政府委員 そのとおりでございます。
  591. 木下元二

    ○木下委員 かりにこれを、いま言われたのをAグループというふうに申しますと、そのAグループから、もう少し丘陵が高くなっておりまして、一段と高くなっておる南に寄ったところ、ここにも卵型のような大きなレドームなどの施設があります。かりにこれをBグループといたします。このBグループからさらに一段高くなった山の上に、またこのパラボラアンテナとか、あるいはレドームがあるわけです。それをかりにCグループというふうに便宜上申しておきます。私が聞きたいのはいまのBグループですね。一番北から少し南に寄った、一段高くなったところにあるこのBグループにあるレドーム、卵型のレドームであります。米軍はここで一体何をしておったのでしょうか。ここに写真がありますが、この手前のレドーム、給水塔型と申しますか、これはいま言われた一番手前のAグループの南のレドームですね。それからその奥に見えるレドーム、これが一段高くなったところのBグループのレドームであります。このBグループの高いところのレドーム、ここで何をしておったのか。
  592. 久保卓也

    久保政府委員 通称ヒル2といわれる台地のことではないかと思いますけれども、そこには受信専用のアンテナが一基残置されておりまして、米軍はたしかそれで、三沢であったかと思いますけれども、通信をやっておりましたが、数年前からレーダーは使用しておりません。中の器材も撤去しておる模様でありまして、わがほうは——間違いました。三沢への通信ではございませんで、やはり受信装置だそうでありますが、受信器材は撤去されて現在は何もないということで、防衛庁としては、これを引き継ぐ予定はございません。
  593. 木下元二

    ○木下委員 この手前のAグループのレドームですね、それとBグループの奥のレドーム、これは形が違いますね。これは同じ機能のものではないと思うのです。手前のものについてはいま説明されましたけれども、これは同じ機能のことをやるということではないと思うのです。形も違いますし、また同じことをやるんだったら二つも必要ないわけです。手前と違ったことをやるものだと思うのです。そこで聞いているのですが、どういうことでしょう。
  594. 久保卓也

    久保政府委員 現在、いま申し上げましたように、中の器材が入っておりませんので、受信施設であることは間違いないようでありますが、どういう使い方をしておりましたか、どういう区分がありましたか、私どものほうで知識は持ってないようであります。
  595. 木下元二

    ○木下委員 ここに「安保と自衛隊」という毎日新聞社編集の本がありますが、その一五五ページにこの稚内基地が写真入りで紹介されております。その中で、確かにここはほかの基地と異質の緊張感があるように思えたというふうに感想が述べられております。私もこの基地内をバスで案内されましたけれども、隊員とも話をいたしましたけれども、写真撮影は一切断わられましたし、基地全体が、緊張感と申しますよりも、何か不気味な秘密のベールで包まれておる感じがしたのです。  もっと確かな証拠をお見せいたしますと、ここに貴重な航空写真があるのです。これは北海道新聞というのがありまして、それがカレンダーとして使った裏側に航空写真が出ているのです。この向こうに見えるのがサハリンであります。この手に見えるレドーム。これが大体Aグループのレドームであります。そこからずっと、Aグループのところから道が通っておりまして、なだらかな坂を上がっていくような形で通っております。Bグループにつながっております。ところが、この写真をよく見ますと、これはよく見ていただきたいのですが、この道路がさっと途中で消えておるのです。地下にもぐっているわけです。このBグループの近くまで行きますと道路が消えておる。これは私、虫めがねでよく見たのです。ということは、このBグループにあるこのレドーム、これはごく氷山の一角でありまして、その地下には膨大な地下施設がある。少なくとも過去にあったということであります。だから聞いているわけなんですけれども、一体ここで米軍は何をしておったのか。わかりませんか。
  596. 久保卓也

    久保政府委員 施設、器材が撤去されておりますので明確ではございませんが、現地を知っております施設課及び調査課の担当者の話によりますと、道路が消えてトンネルになっているということではないというふうに申しております。
  597. 木下元二

    ○木下委員 ここで何をしておったかわからぬということですか。この写真はあとで見てもらってもけっこうです。道路が消えております。  私のほうから申しますが、ここには三次元レーダーがあったのではないでしょうか。三次元レーダー、つまり宇宙空間を超高速で飛ぶ物体、たとえばICBMなどをとらえるレーダー網の一つとして機能しておったのではないか。つまりICBMなどを撃墜する対弾道ミサイル用、ミサイル、ABMといったもの、このABM網に関連した三次元レーダーとして動いておったのではないのか。
  598. 久保卓也

    久保政府委員 それは明らかに間違いだと思います。ABMの場合には方法が二つあるようでありますが、非常に長距離を飛びますオーバーホライゾンの方法でやるわけでございまして、これは米本土、おそらくアラスカなどを使ってやっておると思います。日本のそういうようなところを使うはずがございませんし、もし必要ならば、それを撤去するはずがございません。それからICBMにつきましても、これも御承知のBミューズその他それぞれレーダー組織があるわけでございまして、これも日本は全く関知いたしておりません。  それから三次元レーダーというのは、高度、方向、距離、この三つを同時にはかるレーダーでありまして、これは、たとえば一般の航空機の進行に対してすみやかにその位置を確認するという意味で使われるものでありまして、自衛隊でも現に三次元レーダーを少しずつ整備しているということで、三次元レーダーであるかどうかわかりませんけれども、かりに三次元レーダーだからといって驚くものではございません。
  599. 木下元二

    ○木下委員 あなた、何をやっていたかわからぬと言われながら、絶対そうではないということは断言しにくいのじゃないですか。こういうふうに私が言いますのは、現在の施設は白いレドームにおおわれておるわけでありますが、地元の人に聞きますと、このレドームがかけられましたのは一昨年秋ごろだというのです。それまでは大きなアンテナがそのままあらわれておったということです。このアンテナは、米空軍のミサイル追跡船、ゼネラルホワイトSバンデンバーグ号というのがありますが、この船が搭載をしておる三次元レーダーとほとんど一致をしておる。きょう私、写真を持ってこなかったわけですけれども、似ております。それでもなお、この三次元レーダーの存在を否定されるのか。もしこの三次元レーダーでないとすれば、では一体何があったのかということです。  アメリカは、この稚内基地をこれまで特に別格扱いしてきております。このことはもう公然の秘密になっています。たとえば、ライシャワー大使やジョンソン国務次官らがじかじかに稚内基地を、通り道には千歳基地などがありますが、そういうところには立ち寄りもしないで視察に訪れておる。ここにこの基地が特別な基地であったことを物語っておると思います。で、米軍の秘密厳守の体制も、現地の人々に聞きましでも、非常にきびしいものがあったようであります。  一体、なぜこの稚内基地が特別扱いされてきたのか。もしその三次元レーダーでないというならば、一体何があったのか。あなたは、初めに私が聞きますと、いや、何があったかよくわからないと言われながら、三次元レーダーではないかと言うと、そうではないと言われるけれども、何があったかわからないということでは、私は断定はできないと思うのです。どうでしょう。
  600. 久保卓也

    久保政府委員 具体的にこのヒル2にありましたレーダーが何であったかということはわからないわけでありますが、かりに三次元レーダーであっても、三次元レーダなるがゆえに驚くものではない、これは自衛隊が持っておるからということで申し上げたわけであります。  そこで、レドームでおおったということでありますけれでも、これはやはりレーダーのカバーということで、格別、これだからそのレドームが特別の性格を持っているものというふうには考えません。しかし、いまお話しになりましたのは、ICBMとかABMに関連するのではないかということでありましたから、これは、われわれが承知しておりまするこの基地の全体の機能というのは、電子情報の収集であり、その電子情報というのは、見通しの範囲内ということでありますから、あまり遠距離には行かない。つまり電離層を突き抜けてしまうという関係上、見通し線の範囲内でしか電子情報が集まらないということで、非常に長距離を要するICBMとかABMの系統でない。そこのところだけはわかる。しかし具体的に、このヒル2にありましたレドームのところで、どういう器材であったかということは存じておらないということを申し上げたわけです。ただ、いま申されまするように、ライシャワー大使その他の方が行かれるということでありますが、やはりアメリカ本国から遠く離れた日本の、そのまた最果てのところに幹部の方が行かれるのは、むべなるかなというふうに感じます。
  601. 木下元二

    ○木下委員 千歳基地にも寄らずに稚内の基地にというのは、もう一人ではなくていろいろな人がこの基地に寄っておるから、こういうことを言っておるのですよ。まあ結局、ここに何があったのかということについては、いろいろ疑いがあると思うのです。  さらに私は、この疑いを深める重大な問題に触れたいのでありますが、ここに「わが国の防空態勢について」と題する自衛隊内でつくられた文書の写しの一部があります。その一節を引用いたしますけれども、「稚内地区の米陸、海、空軍等の情報収集、解析グループの業務は、日本の防衛を主眼としたものではない」とはっきり書いてある。「もちろんその一部は在日米軍司令部を経て通報、活用されているが、日本独自によるこれらの業務は行なわれていないし、また航空自衛隊関係においてはその道の専門家もいないので、根室のレーダー・サイトで収集できる筈の情報すらも収集・解析する能力がない」、こう書いております。日本の防衛を主眼としたものではないところの、また日本独自による業務とは全く異なるところの稚内地区の米陸海空軍等の情報収集、解析グループの業務というのは一体何でしょう。きわめて重大です。
  602. 久保卓也

    久保政府委員 この稚内におりました米軍の全般的な機能ということは、冒頭に御説明を申し上げました。しかしながら、具体的に、それではどういう器材がどういうような性能を持ち、どういうような機能を果たしておったかという個々の問題については、私どもは承知いたしておりませんし、また、当時の稚内の米側がとっておりました資料が、そのつど日本側に知らされているということでもございません。一般的な情報連絡の中にそしゃくされて、それはわれわれのほうに伝わってまいりましょうけれども、具体的に、個々の場合についてわれわれのほうに連絡があったということはございません。したがいまして、当時の米軍が具体的に何をやっておったかということは、冒頭に私が申し上げた全般的な機能以外には、私ども承知をいたしておりません。
  603. 木下元二

    ○木下委員 私がいま引用いたしました「わが国の防空態勢について」というこの文書、これはもう前にも国会で問題になって、この文書の存在については明らかになっておりますが、この中に私がいま指摘をしたことが書かれておることは、これはお認めになりますね。
  604. 久保卓也

    久保政府委員 それはたしか民間の方が書かれたものではございませんか。
  605. 木下元二

    ○木下委員 違います。自衛隊内部でつくられたものです。
  606. 久保卓也

    久保政府委員 自衛隊内部の資料というお話でございますけれども、私、読んでおりませんので、よくわかりません。
  607. 木下元二

    ○木下委員 これは非常に重大なことで、いまおわかりにならないというのなら、あとでけっこうですから、これは自衛隊の「わが国の防空態勢について」というこの文書に、いま私が指摘したような事実が書かれておるかどうか、調べられて返答ください。(「だれが書いたのか」と呼ぶ者あり)自衛隊の幹部が書いた文書です。
  608. 久保卓也

    久保政府委員 国会で問題になったというのは、私が知っている範囲では、国防会議事務局が、これは自衛隊出身の人かもしれませんけれども、民間にある人に委嘱して、委託調査でつくった資料のことであれば、私、その存在は知っております。全文読んだわけではございませんが。いまの該当の事項については承知いたしておりません。もしその資料でなければ存じません。
  609. 木下元二

    ○木下委員 ですから、いまの点について、そういうふうな私が指摘をした点が書かれておるかどうかということをお調べ願いたい。  結局、この稚内の基地が日本の防衛を主眼としたものではないんだ、しかも日本独自によるこれらの業務は行なわれていない、日本独自の業務とは関係のない業務が行なわれておる、こういうことなんです。この事実は明らかだと思います。結局、あなたは具体的には何をやっていたかわからないということでお逃げになりますが、危険な業務がBグループの施設内で行なわれておったということは明らかであります。その業務というのは、たとえばABM網の一環としての三次元レーダーの操作であった。断定はできないけれども、少なくともそう疑わざるを得ないような状況証拠がそろっておると思うのです。私はずっと先ほど申しました。防衛庁長官としても、この具体的な状況あるいは事実関係についてはよくおわかりにならない点があろうと思いますが、こうした問題の重要性についてよく御検討をいただきたい、このことを申しておきます。  次の質問に移りますが、初めに言われましたこのAグループの施設ですね、これについてお尋ねします。  このAグループの施設というのは、これを米軍から自衛隊が引き継ごうとしておるわけでありますが、この施設というのは、さっきも言われたのですが、この中にある、いま写真をお見せしましたけれども、給水塔型のレドームですね、これは一体何をするものでしょうか。
  610. 久保卓也

    久保政府委員 A地区ということであれば、アンテナのたくさんあるところだと思いますけれども、その中には円型のものもありまするし、円筒型のものもございます。これらはそれぞれキャッチする電波の周波数の相違によって違う。あるいは方向などで違う。たしかいまの円筒型のものは全周から電波をキャッチし得るというふうに聞いておったと思いますが、そういうような性能の相違であると思います。
  611. 木下元二

    ○木下委員 結局、航空機であるとか艦船などから発射されたレーダー電波の特性をキャッチする、そしてこれを分析する、これによって発信源の種類あるいは行動などを判断する。この給水塔型のアンテナというのは、これによって方向をキャッチして、それから手前にまるいレドームがありますが、このアンテナによりましてさらに詳しく対象物をキャッチする、そういうものでしょう。
  612. 久保卓也

    久保政府委員 やはり電波というものは、周波数が違いますとある幅以上はキャッチできないそうでありますので、その周波数が多ければ多いほどアンテナの種類、数も必要とするわけでありまして、そういうものの中で、比較的近代的なものがいまの円筒型のアンテナになっておると聞いております。
  613. 木下元二

    ○木下委員 局長でなくてもけっこうですが、私がいま言いましたような機能を持っておるのではないかどうかということを聞いているのですが、これは私、現地に行きまして説明を受けましたので伺っているのですけれども、どうですか、私の言いました点。これは別に、私自身が説明を聞いたわけでありますから、否定はされることはないと思うのですが……。
  614. 久保卓也

    久保政府委員 私も技術的には全くしろうとでありますが、担当者の話によりますと、やはり周波数の相違によってそういったアンテナの種類があるというふうに申しております。
  615. 木下元二

    ○木下委員 これによって、一体どの程度の距離の対象物までとらえることができるのですか。
  616. 久保卓也

    久保政府委員 これは、先ほど申し上げましたように、見通しの範囲、電離層を突き抜けない範囲ということでありますので、おそらく二、三百キロというようなオーダーではないかというふうに思います。
  617. 木下元二

    ○木下委員 さっき私が言いましたけれども、いまのAグループの問題になっているレドーム、これでなくて、一番上にあるCグループの、第十八警戒群が使っておりますレーダーサイトの捜索レーダーがありますが、この捜索レーダーでは、一体どの程度の距離まで対象物をとらえるのでしょうか。
  618. 久保卓也

    久保政府委員 これは、全国的にそうでありますけれども、場所によって距離が異なってまいります。たとえば島根県にあるものなどは、千フィートでしたか、千メートルでしたか、ちょっと忘れましたが、そういった高いところにレーダーを置いている。したがって、そうであれば非常に遠いところ、二百数十マイルまで届きます。そうでなくて、平地に近いようなところでありますとそれが近いということで、いまの当該部分についての距離は、私、存じておりませんけれども、百数十マイルかそこらではないかというふうに思っております。
  619. 木下元二

    ○木下委員 担当者がお答え願ったほうが、現地にも私も一緒に行ったわけですから、いいと思うので、そういう具体的な点になったらお答えいただきたいと思います。  このサーチ用レーダーですね、一般的なことじゃなくて、私は稚内基地にあるレーダーを聞いているのですが、これは公称四百キロというふうに聞いているのですけれども、実際には五百キロ以上。自衛隊のレーダーですよ。五百キロ以上あるいは六百キロくらいはキャッチできるのではないか、こう思うのです。たとえば、ここにアサヒグラフの七二年十二月二十二日発行のものがありますが、ここに、「スコープには、稚内を中心に五百キロ圏内がうつっている。沿海州、サハリンの地形がくっきりと見える。のぞきこんでいたら、監視官が説明をはじめた。「ほれ、機影です。ソ連の定期便ですね」」というふうに書いてあるのですね。こういうふうに、このスコープでも五百キロ圏内は映るのじゃないか。実は私、現地に行きましてスコープから見せてもらったのですよ。その中心点から少し下がったところに、あの北海道の大雪山の影が映っているのですよ。稚内から大雪山まで約二百キロです。まん中あたりにその大雪山が映っています。そういたしますと、やはり普通に測定できますのは五百キロ圏内、こういうことになるのじゃないですか。
  620. 久保卓也

    久保政府委員 通常レーダーサイトのレーダーは二百数十マイルといわれております。一マイル一・六キロメートルになるわけでありますが、それを掛ければよろしいわけですけれども。そこで稚内の場合に、具体的な数字を係の者も知っておりません。ですから、おそらく場所にもよるのと、それからもう一つ問題は、キャッチをすべき電波の、いまはレーダーサイトでありますから、航空機といたしますと、航空機の高度によってたいへん違ってまいります。低高度であれば非常に近くでしかキャッチできませんし、いまおっしゃいました大雪山などのように、非常に高いところにあります場合には比較的遠方までということになります。
  621. 木下元二

    ○木下委員 自衛隊の使っている捜索用レーダーというのは、強力な電力でもってパルス電波を空間に向かって発射するわけですね。それが飛行機などの対象物に当たって反射して返ってくる。だから電波は、当たってはね返ってくるわけですから、そのときにこれによって相当微量なものに弱まってしまうわけですね。ところが、これは十八警戒群のサーチ用レーダーですが、そうではなくて、Aグループにある米軍のレーダー、これは電波を発するのではなくて、その対象物が発する電波をとらえるわけですね。だからAグループのものというのは、相手方が打ち出したレーダー電波そのものをストレートにキャッチできる。だから理論的に言いますとはるかに遠距離のものがキャッチできる。だから、かりにこの装置では、サーチ用レーダーで五百キロキャッチできれば、少なくともその倍くらいはキャッチできる、そういうものじゃありませんか。
  622. 久保卓也

    久保政府委員 これは、わがほうのレーダーサイトは、非常に強力な電波を発射して、いまおっしゃいましたように、その反射を受けているわけでありますが、こちらの受信装置、受信施設の場合には相手方の電波の強度いかんによるわけで、二倍ということではございませんが、一般論的にいえば、先生の言われたような議論も成り立つと思いますけれども、いかにも相手方の電波の照射いかんであります。たとえば艦艇とか航空機などが、わがほうのレーダサイトがそのために発射するような大きな出力を出しておるわけではございませんでしょうから、したがって、むしろ非常に弱いものを鋭敏につかまえるということで、距離との関係は一がいに申せないと思います。
  623. 木下元二

    ○木下委員 五百キロでも相当な距離ですが、かりに一千キロといたしますと、たとえばサハリン、あの細長い樺太ですね、北の端までほとんど入ってしまうのですよ。それからシベリア大陸、これも奥深くずっと広範囲に入ってしまう。中国も入ってしまいます、あの東北部のほうは。それから一部北朝鮮も入ってしまう、こういうものですね。  私が聞きたいのは、自衛隊は、いまも申しますように、サーチ用レーダーを持っておる。このサーチ用レーダーでとらえた対象物、たとえば飛行機や艦船の距離、方向など、こうした情報を従来稚内の米軍の電子情報基地に提供してきておったと聞いております。これは私は現地で聞きました。今度はその米軍の電子情報基地そのものを引き継ごうとしている。このサーチ用レーダーの基地があるのに、なおその上米軍の基地をもらう。この両者の機能はどういうふうに違うのでしょう。
  624. 久保卓也

    久保政府委員 レーダーサイトの捜索用のレーダーというのは、機影、つまり飛行機の航跡をキャッチする。飛行機そのものが、どこの場所に、どういう高度でどういう方向に進んでいるかということは、レーダーサイトでごらんになりましたように、わかるわけであります。しかし、その機影の大きさによって、これは重爆だ、これは戦闘機だというような視認による、あるいは経験による区別はございますけれども、それ以上にはわかりません。またレーダーサイトの場合には、艦艇の追跡はおそらく機能的にやれないのだと思いますが、やっておりません。  これに反しまして、いまの電子情報の収集というのは、高空を飛びかっておるいろいろな種類の電子の中から、それの発生源がどういう種類のものであるか、こういうものを分析していけば、おそらく発生源の種類、機能というものはだんだんとわかってくるであろうと思います。これは稚内でまだ業務をやっておりませんからわかりませんけれども、おのずからそこにはレーダーサイトのものとは明らかに性格が異なっております。
  625. 木下元二

    ○木下委員 局長は詳しく御存じなはずだと思うのですけれども、どうもその点をぼかしてあいまいに言われているような感じがするのですが、この米軍の機器ですね、これは対象物から発射されたレーダー電波の特性を解析する。そのレーダー電波の特性というのは一体どういうものか。周波数だとか、パルスだとかパルス幅、変調の方式、スキャン・タイプ、スウィーピング・タイム、スウィーピング・ピリオド、こういうふうないろいろな特徴を精密にとらえ解析をする、こういうことですね。たとえば、対象物を精密にキャッチするわけでありますが、このボーリング・ウエーバーなる最新型の受信装置を中心に十四個の強力なアンテナがあるわけなんですけれども、超短波から極超短波に至るレーダー電波を探り取る、こういうことで、たとえば飛行機の場合に、その機種はもちろんのこと、同一機種のものでも一機一機の個性、特徴というのはこれは千差万別なんですね。ちょうど指紋のように、それらの個性、特徴を、千差万別な特徴をすべてキャッチする。乗り組み員の声紋までキャッチする。基地との通信などもキャッチをいたします。そうしてそれがキャッチした個々の対象物について、いわゆる指紋台帳をつくっておく、そして整理をしておく、こういうことをやっておったんでしょう、米軍は。これは御存じないでは通りませんよ。あの第十八警戒群はサーチ用レーダーでいろいろキャッチして、それを米軍のほうに渡しておったわけですからね。米軍が一体何をしておったかわからぬということでは通らない。私がいま言いましたようなことをやっておったわけでしょう。
  626. 久保卓也

    久保政府委員 この電子情報といいますのは、一般に、いま言われましたように、電波の発生源の性格、性質を探るわけでありますから、航空機あるいは艦艇等からとにかく電波を発する以上はキャッチし得る。ただ、音声は電波ではないでありましょうから、それは別でしょうけれども。  そこで、そういったものをどういうふうに分類し得るか、どの程度わかり得るかということは、これは具体的にわれわれ米側から聞いておるわけではございませんし、今後またわれわれがどの程度できるか、これはまたわれわれのほうの能力との関係もございますので、やってみないとわかりませんが、方向としてはそういうことに使われるべきものであります。
  627. 木下元二

    ○木下委員 音声はわからぬと言われますけれども、これはちゃんと電波としてキャッチできるでしょう。声紋としてきちっとキャッチできると思いますよ、これは。結局、キャッチできる距離内を飛ぶ、たとえば飛行機のレーダー電波の特性は平素からすべてキャッチをされて、いわゆる指紋台帳におさめられておる。こういう指紋台帳がつくられておるという説明も受けましたけれども、どうですか、局長でなくて担当をしておられる方、そういうことでしょう、事実上。
  628. 久保卓也

    久保政府委員 米側がどういうものを持っておったかは別にいたしまして、私どもそれは承知しておらないわけでありますが、私どもとしましては、いずれにせよ指紋台帳のようなものができるかどうかは別といたしまして、電波の発生源というものを詳細に分析する能力はつけたいというふうに思っております。
  629. 木下元二

    ○木下委員 私の問いに答えていただきたい。私はそれがいいとか悪いとかということを問題にしているんじゃないですよ。私はその事実を一つ一つ確かめて言っているのです。私がそういうふうな説明を聞いたのは、現地に行って、そういう指紋台帳をつくって整理をしておったということを聞いている。そういう事実はあったでしょう。
  630. 久保卓也

    久保政府委員 ですから、米側がそういうものを持っておったかどうかについては、私は存じておりません。もちろん、米側のそういった資料を私どもが引き継いでおるということではございません。
  631. 木下元二

    ○木下委員 持っておったかどうかわからないと言いましても、米軍がそういうふうな、対象物をキャッチして指紋台帳をつくって整理をしておったんだ、そういうことをやるのがこのいわゆるエリント基地の役割りなんだ、こういう説明を私は詳しく聞いた、現地で。そうでしょう、担当者の方。ちょっと局長でなくて担当者の方に答えさせてくださいよ。それはどうしてですか。
  632. 久保卓也

    久保政府委員 それは私、別にいま否定しておりません。ですから、指紋台帳のようなものがつくられておったかどうかは存じませんが、この種電子情報の収集というものは、音波の発生源を詳細に分析をし、音声発生源がどういうものであるかということをキャッチするのが機能でありますから、米側がどこまでやれたかは別といたしまして、そういう方向で作業が進んでいたことは間違いなかろうと思います。ただ、そういった指紋台帳があったかどうかについては、私どもは承知しておらないということを申しておるわけであります。
  633. 木下元二

    ○木下委員 あなたはそう言われますけれども、私は現地でそういうふうに聞いた。確認しております。そういうことを防衛局長が御存じないというのは、これはおかしいと思います。シベリヤ、サハリンなどの航空基地の飛行機は、だからそのそれぞれの個性、特徴によって、ただ機種だとか、飛行機の型だとか、そういうものでなくて、もう一機一機みんな特定されてしまう、乗り組み員まで特定されてキャッチされて指紋台帳におさまってしまう、こういうことでしょう。これがエリント基地の任務でしょう。機能でしょう。認めなさいよ。あなたはそういうことを御存じないでは通りませんよ。
  634. 久保卓也

    久保政府委員 私は、何も否定しておるわけではございませんで、この基地の機能というもの、つまり電子情報というものは、その電波発生源の性格なり機能なりその他のものを正確に分析をして、正確にキャッチし得るものである。ただし、これについては、相当の実績と経験がなければなかなかそこまでいかない。乗員までがどうのということは私ども存じませんけれども、発生源の性格その他を知り得るものである。したがいまして、私どもはそういうような作業にかかれば、そういうような方向で仕事を進めるであろうということは肯定しておるわけであります。
  635. 木下元二

    ○木下委員 そういたしますと、結局、この基地が動きますと、この指紋台帳を通じまして、シベリヤやサハリンなどの航空基地の飛行機の機種、機数、編成、行動、そういうものはすべて掌握をされるということになりますね。たとえば新たな部隊がやってくるとします。サハリンの基地に新たな部隊がやってきて飛行機が飛ぶ。そうすると、指紋台帳にない新しいレーダーがキャッチされるわけだから、新しい部隊がやってきたということもこれはわかる。すぐすべてが掌握をされるというシステムになる。これは私、飛行機のことについて申しましたけれども、艦船についても全く同じことで、飛行機について言ったことが、艦船についても全く共通をする。だから、こういうことで、訓練の状況や作戦の指揮も全部掌握されてしまう。そういうことでしょう。  それから、さらに地上基地について言いましても、同じように、たとえば各種の地対空ミサイルなどの基地の位置であるとか、機能であるとか、編成その変化などについてもその動向がわかる。だから、結局、相手方の軍事状況の動きが事こまかに具体的にキャッチされる、そういう機能ですね。
  636. 久保卓也

    久保政府委員 私は、いま先生がおっしゃるようなことができればたいへんいいことだと思いますけれども、それまではとてもできないのじゃないか。とにかくやってみなければ、どの程度の能力を持っておりまするか、これは器材について実際にやっておりませんのでよくわかりませんが、性格的にはそういう方向のものであるということだけはいえると思います。
  637. 木下元二

    ○木下委員 防衛庁が新たに引き継ぐわけですから、これはあとからも伺いますけれども、確かに能力があるかどうかという問題はあるかもわかりません。だから、引い継いですぐにそういう機能が一〇〇%果たされるかどうかということについては、これは私もわからぬと思います。そうでなくて、いま言われたように、エリント基地というものはそうした機能をそもそも持っておるんだ、そういう情報キャッチをなし得るものだということはお認めになったわけですね。
  638. 久保卓也

    久保政府委員 先生があげられましたのは、たとえばミサイル部隊編成、それから新たな部隊ができたら何を装備しているかというようなことまで事こまかにおっしゃったわけでありますが、どうもそこまではなかなかいかないのではなかろうか。しかしながら、いろいろ電波を発生するものがあって、その中で勉強していくうちには、どういうような電波源があるのかということがだんだんわかっていくであろうということで、私どもとしては、当面そういった業務を通じまして訓練をしてまいりたいという方針でございます。
  639. 木下元二

    ○木下委員 飛行機が飛ぶ、あるいは艦船が航行する、その一こま一こまの動きをキャッチして指紋台帳におさめ、これをもとにしてレーダー電波の分析をやっておりますと、相手の動きが手に取るようにわかる、そういう機能を持っておるということがわかりました。  このほかに、エリントの機能ばかりではなくて、米軍はこれまでコミント、つまり暗号の解読もやっておったのではないですか。通信保全ということを言われましたね。これは自国の通信保全ばかりではなくて、それと同時に、ソ連の暗号解読もやっておったのではないですか。
  640. 久保卓也

    久保政府委員 通信保全は、御承知のように、米軍、自衛隊もやっておりますが、米軍の内部の通信における秘密の保全ということであります。コミント、つまり通信関係の捕捉をやっておるかどうか、私は承知いたしておりません。(発言する者あり)
  641. 木下元二

    ○木下委員 いろいろ雑音が入るもので、ちょっと結論がわからなかった。一言だけ言ってください。やっておったのかどうか。
  642. 久保卓也

    久保政府委員 私どもは、いわゆるコミント、つまり通信情報というものを米側がやっておったかどうか存じておりません。
  643. 木下元二

    ○木下委員 やっていなかったということは、否定はできないということですね。相手方の軍事状況を、言うなれば素っ裸にしてその詳細をつかみ取る、まさに驚くべき、おそるべき機能であると私は思います。こういうものを自衛隊がなぜ必要とするのか。さっきも言われたように、十八警戒群がサーチ用レーダーをもっていろいろやっておるわけでしょう。このほかに米軍基地のやっておったこのエリント基地をなぜ必要とするのか。必要ないと私は思うのです。
  644. 久保卓也

    久保政府委員 レーダーサイトの捕捉というものと、いまの電子情報の収集というものは機能的には違います。わがほうにおきまして、将来、電子情報がある程度の機能を発揮するようになりますれば、稚内周辺、北海道周辺の状況というものが比較的わかりよくなると思います。しかしながら、そういうことはおそらく外国も当然やっていることでありまして、かえってそういうことが、むしろ相手方の情勢がわかることによって、いたずらに警戒心を起こさないというプラスの面もございます。たとえば、核実験停止条約というものが成立するためにも、相手方の国に立ち寄って監察をしなくても、自国の偵察衛星なりあるいはその他の施設でもってそれをキャッチし得るというような体制。あるいはSALTにいたしましても、なぜそれができ上がったかというと、偵察衛星があるから相手方の戦略核兵器の規模がわかるというようなことで、そういったような相手方の体制がある程度わかるということは、こちらが無用に防衛力を、たとえば整備し過ぎたり、そういうことをしないで済むというような面もありますので、むしろ私は、いつも言いますけれども、情報がきちっとそろっているということは、ある種の抑止力を構成するものであるということもいえるのではないかと思います。
  645. 木下元二

    ○木下委員 専守防衛であればあるほど情報機能は必要だ、こういうことだと思うのです、言われんとするところは。しかし、そうだとすれば、じゃ専守防衛でない場合の情報というのはどうなのか。専守防衛でない、たとえば攻撃を加えたいという場合の情報機能というのはもっともっと必要でしょう。  だから私が言いたいのは、専守防衛ということであるならば、その防衛機能というものもおのずからそこに限度があるのではないか。専守防衛だからかえって何でもできるんだというような、そういう論理の立て方は私は誤っておると思うのです。
  646. 久保卓也

    久保政府委員 専守防衛であればあるほど、情報というものが重要であることは御説のとおりであります。そこで、専守防衛の範囲内の情報収集であるべきこと、これもまたそのとおりであろうと思います。いたずらに相手方に誤解を与えるような、たとえばU2を飛ばすとかSR71が飛ぶとかいったような情報収集のしかたを、私どもは全然考えておらないわけでありまして、本土にいて、そして高空を飛んでいる電子をわがほうの能力でキャッチする、それをわがほうの能力で分析して情報を集めるということは、まさに専守防衛の範囲内の情報収集のしかたではないかと思います。
  647. 木下元二

    ○木下委員 この点については、時間の関係あとから論議をいたしますけれども、とにかく自衛隊は、従来このような高度の、言うならばレーダー電波盗聴システム、こういうものは持っていなかったと思うのです。もっとも、あの北海道の千歳のそばに二年前から開始されましたクマ・ステーションというのがありますね。ここでの通信盗聴のための日米共同使用というものがありますが、これを除きますと、こういうふうな電波盗聴システムというものは稚内の基地が最初ではないかと思います。そうでしょう。
  648. 久保卓也

    久保政府委員 盗聴ではございません。高空を飛んでおる電波をわがほうがキャッチするわけでありますが、そういった能力というものは、たとえばわがほうの航空機もそれから水上艦艇も持っております。ただ地上に固定されたものといたしましては、もう少し小規模なものでは東根室に本ございます。根室の東のほうでございます。
  649. 木下元二

    ○木下委員 専守防衛に情報機能が大事だというような一般論で、私はこの問題は納得できないと思います。サハリンやシベリアなどの基地の状況であるとか、航空機や艦船の状況や動きを事こまかに、乗り組み員の特性に至るまで個々に特定してキャッチする、そういうふうなシステムをなぜ持たねばならないか。どう考えても必要性ないですよ。必要性という観点から見て、これは必要性がない。  次の問題に移ります。質問を変えますが、大蔵省に聞きたい。この二4(b)施設、区域の返還後から防衛庁所管がえになるまでの経過、内容について尋ねたいのであります。  第一点は、この当該施設、区域は、日本側に仮還された時点で大蔵省の普通財産になったと思うのでありますが、どうでしょう。
  650. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 御指摘の地域は、四十七年六月三十日に米軍から返還され、大蔵省の普通財産になっております。
  651. 木下元二

    ○木下委員 大蔵省の国有財産審査課で聞いたところによりますと、大蔵省普通財産であったが自衛隊に管理を委任しているという答えをもらいました。管理を委任したことに間違いないのかどうか、その時期はいつなのか、伺いたい。
  652. 川崎昭典

    ○川崎説明員 大蔵省の普通財産になったと先ほど申し上げましたが、引き継いだというのが正確な表現でございます。提供財産はもともと大蔵省の普通財産でございまして、米軍に提供中も国有財産であることには変わりませんので、これは大蔵省の普通財産というようにきめられておるわけでございます。管理権を米軍が持っておる、この米軍に提供する際の国内の管理権を防衛施設庁が持っておる、こういう仕組みになっております。したがいまして、返還日において防衛施設庁から大蔵省へ引き継ぎをされる、こういう仕組みになっておるわけでございます。
  653. 木下元二

    ○木下委員 私の質問に答えてくださいよ。質問以外にいろいろなことを言われると、みんな早く終わりたいと言っているのに時間がますます長引きますよ。管理委任に間違いないのかどうか。違うなら違う、そうならそう、そう言えばいいのですよ。どうですか、結局は。
  654. 川崎昭典

    ○川崎説明員 提供期間中は管理委任でございます。
  655. 木下元二

    ○木下委員 時期はいつと言われるのですか。
  656. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 先ほどの私の答弁を若干補正させていただきます。  いま問題の地域は約百三十万平米ありますが、そのうち、国有地五十二万平米は昨年の六月三十日返還され、残り七十七万七千平米は、四十七年七月十一日あるいは四十七年十二月十九日にかけて、二4(b)に基づきまして使用転換になりまして、防衛施設庁に使用承認しているということでございます。なお、このうちの五十七万五千平米、これは大蔵省普通財産に限ってでありますが、その点につきましては、今年の六月九日に総理府のほうに所管がえになっております。
  657. 木下元二

    ○木下委員 管理の委任と言われたのじゃないですか。管理の委任と言われて、そう聞いたのだけれども、いま言われるのは使用の承認と言われましたね。管理の委任ですか、使用の承認ですか、どっちですか。
  658. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 使用承認であります。
  659. 木下元二

    ○木下委員 あなたが言われたのは、管理の委任と言われたのと違うのですか。
  660. 川崎昭典

    ○川崎説明員 提供期間中は、大蔵省防衛施設庁に管理をまあ委任とは言っておりませんが、管理を依頼しておる。返還後は大蔵省の普通財産として引き継ぎを受けますから、返還になったら今度は正規に使用承認という手続を与える、そういう仕組みになっております。
  661. 木下元二

    ○木下委員 それはなっておるのですか。
  662. 川崎昭典

    ○川崎説明員 ええ、なっております。
  663. 木下元二

    ○木下委員 いつからなっておるのですか。
  664. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 大蔵省の普通財産に限って申しますと、先ほどの七十七万七千平米、国有財産総体のうち、使用転換、つまり使用承認しているものは六十万五千平米ありますが、四十七年七月十一日に五十九万九千平米、四十七年十二月十九日に五千四百平米を防衛施設庁に使用承認しております。
  665. 木下元二

    ○木下委員 実は私、この問題について、大蔵省のほうにも、あるいは防衛施設庁にもいろいろ聞いたのです。返ってくる答がいろいろ違う。管理の委任だと言ったり使用の承認だと言ったり違うのです。さっき援用いたしましたアサヒグラフ、このアサヒグラフにもいろいろ書かれておりますけれども、ここにも自衛隊が管理を委任されたという趣旨で報道されております。私は、先般、稚内の当該施設を視察しました際も、現地の説明では管理を委任されているだけだということで、使用承認を受けているという説明はなかった。     〔委員長退席、藤尾委員長代理着席〕 どっちがほんとうですか。何回も言うことがいろいろ変わる。ほんとうのことを言ってください。
  666. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 先生がおっしゃっているのは、先ほど申しました二つ部分がありまして、六月の三十日に返還になった部分と使用承認している部分とあるわけですね。六月三十日に返還になった部分につきまして、一部自衛隊に使用承認した部分を除きまして、自衛隊のほうに四十七年七月十四日に警備依頼している面はあります。したがいまして、正確に申しますと、四十七年六月三十日に、大蔵省普通財産で申しますと四十八万二千平米が返還になった。そのうちの相当部分を四十七年七月十四日に警備依頼している。そのほかに、四十七年七月十一日以降、合計六十万五千平米を使用承認している、そういうことであります。
  667. 木下元二

    ○木下委員 警備の依頼と使用承認と両方あるというような説明は、私、初めて聞いたのです。使用承認がほんとうだといたしますと、私が最初大蔵省の国有財産審査課やあるいは現地で聞いた説明というのは、これはみなでたらめということになる。現地に私、国会議員として調査に行ってでたらめを教えられた、こういうことになるのですよ。  使用承認がほんとうだということだが、それでは一体返還基地のあとをどうするか。これがきまっていない段階で、国有財産北海道審議会の答申も出ていない段階で、管理の委任あるいは警備の依頼でもけっこうですが、そういうものならともかくとして、自衛隊に使用承認を与えるというのは一体どういうことですか。
  668. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 それは所管がえを前提にするものではなくて、一時的に必要な国有財産を使用承認したということであります。
  669. 木下元二

    ○木下委員 それだったら警備の依頼でいいんじゃないですか。あるいは管理の委任でいいんじゃないですか。使用承認というのは、自衛隊のほうで使用をいたしたいということで、それを承認するということでしょう。だから、使用承認を与えたということは、その施設自衛隊が将来使用していくということを前提にしてこれはやっておる。北海道審議会にもかけられず、もちろん防衛庁への所管がえも行なわれていない段階で、将来自衛隊が使用するということを前提にして使用承認を与えるというのは、一体どういうことなんですか。
  670. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 ちょっとこの席上であれするのは非常に混線するわけでありますが、私が先ほどから申しております使用承認というのと、返還になった財産と二つあるわけですね。その返還になった財産のうちで、その中でもまた一部自衛隊に使用承認している部分があるわけです。そのほかに大部分は自衛隊に警備依頼しているわけです。その返還になった財産自衛隊に使用承認している部分はどんな部分かといいますと、通路とか、アンテナ用地とか、その他、要するに当時越冬する際、しかも自衛隊施設が狭隘でありまして必要とした分を、将来所管がえを当然前提にするものでないという前提のもとに使用承認したのでありまして、そのほかに、自衛隊が早急に必要としないと思われる分はよく将来のことを考えて処置したい。それまでの間は自衛隊に警備依頼した、そういうことでありまして、ただいまここで抽象的にことばで説明してもおわかりになりませんでしたら、また後ほど御説明にあがります。
  671. 木下元二

    ○木下委員 そうすると、まあこれ時間の関係もありますので、詳しく聞くのは別の機会にしますけれども、使用承認した部分というのはどこですか。米軍の問題のエリント基地のところ、これを使用承認したというのですか。どこですか。
  672. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 おそらく先生が御視察になった段階では、エリント基地とは関係のないところを使用承認したと思います。
  673. 木下元二

    ○木下委員 どこですか。
  674. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 何といいますか、稚内地区の東側の一部ですね。それで、現在エリント基地があるところは、本年の六月九日に総理府のほうに所管がえになっております。
  675. 木下元二

    ○木下委員 とにかく、この北海道審議会のあと地利用の答申にも出されていない段階で、こういう使用承認がされておる。これは審議会無視、自衛隊による施設の先取りであります。既成事実をつくり上げておくというやり方以外の何ものでもありません。大蔵省はこういうふうな国有財産管理をしてよいのか。これはもう自衛隊の米軍基地の肩がわりに不当に手をかすことになるのじゃないか。どうですか。
  676. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 必要最小限度の面積を国の機関である自衛隊に承認したわけであります。
  677. 木下元二

    ○木下委員 そこで、防衛庁伺いますけれども、この返還された国有財産施設、区域、工作物でありますが、その使途がきまっていないのにもかかわらず、北海道審議会の答申も得ていない段階で、自衛隊の使用を取りつけるという理由はどこにあったのでしょうか。米軍から稚内を返還される前提条件として、この返還された施設自衛隊が肩がわりするという文書の取りきめがあったのではないですか。
  678. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 先ほど来大蔵省のほうからも御答弁ありましたように、返還の態様が三つに分かれております。第一は、六月三十日に返還されました五十二万九千平米の部分であります。第二番目は、七月十一日、これは七十七万平米でありますが、一たん返還になって、即日地位協定条4項(b)に基づいて米軍が使用する施設、いわゆる使用転換の対象になった区域でございます。さらに、米軍がそこに所在しておりました建物を撤去することによって、十二月十九日に、残りわずかでございますが、五千四百平米がこれまた返還になりまして、その土地は同じく、七月十一日使用転換になりました部分の一部として、使用転換の対象になったわけでございます。  そこで、自衛隊のほうといたしましては、まず六月三十日に返還になりました部分の中に、従来から稚内分屯地、レーダーサイト等の間を往来いたしますところの通路の部分がございます。そこで、その通路の部分、千三百二十一平米を七月一日に使用承認を得たわけでございます。それしから二条4項(b)という施設に切りかわりまして、年間一応四回ということになっていますが、四回ほど米軍が使いますが、その使わない間、それらの二条4項(b)の施設、区域を一応そのままの姿で管理し警備する必要がある、そういった面で、大蔵省のほうから警備の依頼を自衛隊が受けることになったわけです。そのために、警備のために必要とするところの土地、建物等を、これは土地にしまして二万三千平米ほどでございますが、これをその目的のための使用ということで使用承認を受けているわけでございます。そういった使用承認の形で、それ以外の大部分の返還になりました区域、あるいは二条4項(b)の対象になりました区域につきましては、使用承認を受ける対象とはなっていなかったわけでございます。
  679. 木下元二

    ○木下委員 そうすると、その警備のために管理をする、そのために使用するというのなら、わざわざ使用承認なんということでなくてよいように思うのです。警備をするということで自衛隊が管理をするんだったら、当然その通路なんかは警備のために使用するんだから、あえて特別使用承認なんて要らぬと思うのですね。その点はけっこうです。  私が聞きたいのは、結局、米軍から稚内を返還される前提条件として、返還されたこの施設自衛隊が肩がわりするという文書の取りきめがあったのではないか、こう聞いているのです。
  680. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 施設の面に関しましては、少なくとも私はそういう取りきめがあったことは承知しておりません。
  681. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、米側は稚内の返還にあたりまして、二4(b)使用以外一切の条件をつけなかったというのでしょうか。二4(b)で共同使用する施設、区域さえあれば、そこがたとえば稚内市に払い下げられても、あるいは気象庁や電電公社の管理する財産になってもかまわぬということなんでしょうか。そうではないでしょう。二4(b)共同使用というのは、これは当然自衛隊とのことであって、自衛隊が引き継ぐことを条件としてやられておる。これはもうだれの目にも疑う余地のないところじゃないでしょうか。米側がこの基地返還にあたって、あと自衛隊が肩がわりすることを求めてきて、日本政府はそれを承認して、合同委員会の際の本協定に組み入れたことは、これはもう明白であります。どうですか、この点は。
  682. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 地位協定二条4項(b)に基づきますところの米軍の使用の必要を満たすために、年間のうちに、この場合でございますと四回、一回はそれぞれ四十五日以内となっております。それ以外の期間は、いわば地位協定上の施設、区域ではないわけでございます。しかし年間四回、それぞれ四十五日以内の使用を満たすために、それ以外の期間を、米軍の使用を満たすに必要な形で現状のまま保持しておく必要が条約上のたてまえとしてございます。そういう点は、アメリカ側といたしましては、必要のつど、アメリカが使う場合にはそのままの姿で使わしてくれという条件はつけてきております。したがって、その条件を平生から満たすために、だれが管理する、だれに引き継いでもらうというところまでは条件はつけてきておりません。
  683. 木下元二

    ○木下委員 そうじゃないですよ。二4(b)に基づいて米軍が共同使用をするというその前提は、それは、たとえば稚内市がここを引き継いで何かに使う、そういう形でもかまわぬのか、あるいは電電公社でもかまわぬのか一そうではなくて、自衛隊がここを使うという前提で、その上で自衛隊と共同使用をやる、こういう話でしょう。そうでなければおかしいですよ。
  684. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 たとえばの話で、稚内市というお話が出ましたが、たとえばこの二4(b)の米軍が年間四回使うのに必要な施設の中に、稚内市が、たとえばそこに大きい体育館を建てるとか、そういうことになりますと、二4(b)による米軍の使用に支障を来たすおそれがあるわけでございます。したがって、条約上のたてまえとして、日本側として二4(b)の条件を満たすに必要な状態で三百六十五日管理しておく必要があるわけでありますから、おのずからその対象の土地の利用というものについては限界があろうかと思います。
  685. 木下元二

    ○木下委員 このさっきから問題にしております二4(b)の対象の区域の電子装置、大きな建物の中にセットされた電子装置ですね。それは自衛隊がここで機械を動かす、使用する、そういう前提で米軍と二4(b)による共同使用をするという話でしょうが。そうでなくて、じゃもうその機械はほうりっぱなしでほっておくんだ、もう稚内市が管理をして機械はほっておく、で、米軍がときどきやってきて使う、こういう話ですか。そういうことでは米軍だって使えないでしょう。米軍が使うためにも、共同使用をするためにも、これは自衛隊が管理し、自衛隊が使っていくという、その前提で話ができていなくちゃおかしいじゃないですか。正直に言ってくださいよ。こういうことで質問がおくれるんです。正直に言いなさい。
  686. 高松敬治

    ○高松政府委員 いま申し上げておりますのは、ちょっと混線しておるようでございまして、二4(b)にかかるものは土地、建物でございます。つまり施設、区域というものは二4(b)にかかる。それからいまおっしゃった中のいろいろな機械とかそういう装置は、これは物品でございまして、これについての二4(b)とか、そういう問題はございません。  それで、ここで話がちょっとややこしゅうなるわけでございますけれども、昨年六月三十日に米軍からこれを譲渡されました時点におきましては、これがほんとうに自衛隊で使えるものかどうか。それから装置も若干持っていったものもあるようでございます。そういう点が未確定でございました。それで、そういうことで機械そのものにつきましても、私の聞いておりますところによるとかなり古いものである。老朽という表現は当たらぬかもしらぬけれども、かなり古いものでおる。通信器材の耐用年数からいえば、一般的にいうと耐用年数が過ぎておる、こういうふうな事情もあったようでございます。その辺、自衛隊が引き継ぐかどうかということを検討してみたい。それで、その間再使用するかどうか検討して、再使用するということがきまりましたら、それを正式に引き継いでいく、その間の期間がある、こういうことでございます。したがって、物品は物品管理法に基づいて防衛施設庁の所属物品として現在管理しておる、こういう形になっておるわけでございます。
  687. 木下元二

    ○木下委員 いまの説明も、私が現地で聞いたところや、あるいはいろいろな説明を聞きましたけれども、どうも違うのですよ。いまあなたは、問題の建物の中に入っておる電子装置は二4(b)の対象ではないと言われたけれども、これは、たとえばさっき私が指摘しました、ずっと山の上のCグループにあるパラボラアンテナ、これは確かに入っていませんよ。しかしAグループにある一番問題のエリント基地、この電子装置、これは全部入っているのですよ。これはもう建物とともに二4(b)の対象になっておる、そういうふうに私は現地でも聞いておる。あなたのいまの説明はまた違うのですよ。
  688. 高松敬治

    ○高松政府委員 物品につきましては、これは二4(b)になりようがないものでございます。二4(b)といっておりますのは、施設、区域について二4(b)ということでございます。これは地位協定からいってもそうだと思います。
  689. 木下元二

    ○木下委員 私はその物品という扱いの問題も聞きました。それは物品扱いなんだという話も聞きましたけれども、最終的にきのう現地の稚内施設事務所長に問い合わせをした。そうすると、このAグループのエリント基地にある電子装置、器具類は、物品扱いではなくて建物と一緒に二4(b)の対象になっておる、それからこの上のCグループの施設、そういうものは物品扱いだとはっきり聞いた。おかしいですよ、それは。  ですから私が問題にいたしておりますのは、その電子装備の問題についてはあとから聞きますけれども、日米合同委員会で返還の本協定がきめられておる。その本協定でどういう中身がきめられたのか。これが、さっきから私が指摘をしておるように、この施設を日本政府に返すけれども、しかしそれは自衛隊が使用するんだという前提があって話が進められておる。これはそうでなければおかしいと思うのです。だから一体合同委員会でどのようにきめられたのか。その協定があるはずです。その協定の内容を明らかにしてもらいたい。
  690. 高松敬治

    ○高松政府委員 前段の点について、くどいようですけれども申し上げます。  確かにアンテナの基礎とか鉄塔とかいうものは不動産、工作物でございます。これについては工作物でございますけれども、中の機械については動産でございます。動産については、たとえばいすだとかテーブルだとかと同じように、これについては二4(b)というものはあり得ないというこでございます。稚内の事務所長が、どういうふうに間違えてそういうことを申したか知りませんけれども、これは私はきわめて明白だと思います。
  691. 木下元二

    ○木下委員 その点についてはあとからまた関連して聞きますが、私があとから聞いたほうの質問、日米合同委員会でどのように取りきめられか、その内容を明らかにしてもらいたいと思います。
  692. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 昨年の六月三十日に開かれました日米合同委員会におきまして、稚内の施設に関しまする合意事項の要旨は、次のとおりであります。  まず第一が、「合衆国軍隊に対して、地位協定第二条四項bの規定の適用ある施設及び区域として一時使用を認める」。第二点としまして、「合衆国軍隊がこの施設を使用する期間は、地位協定の必要な条項が適用される」。この二点が合意事項の内容であります。
  693. 木下元二

    ○木下委員 ですから、私がさっきから聞いております二4(b)施設として一時使用がされるというのは、自衛隊と共同使用をしていくという前提で話ができたのではないかと聞いておるのですよ。そうでしょう。自衛隊とでなければ、だれとでもいいのだ、どことでもいいのだ、そういうわけにはいかぬでしょうが。そうだとすれば、米軍がやってきて、一時使用というけれども、一年に四回やってきて使用しようとしても使用できませんよ、これは実際問題として。自衛隊が使うという前提でしょう。そういう前提がなかったというのか。ただ日本政府に返す、日本政府はどうしてもかまわぬということで話があったのかどうですか。そんなばかなことはないでしょうが。
  694. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 合意事項の要旨はただいま申し上げたとおりでございまして、日本政府としましては、米側に対しまして、合衆国の軍隊に対して、この施設、区域は、地位協定第二条四項(b)によって、(b)の規定の適用のある施設、区域として一時使用を認めるということでございますから、日本政府としては、その一時使用を可能ならしめる措置を確保してやるという義務は負っているわけであります。
  695. 木下元二

    ○木下委員 そうすると、この一時使用の対象は自衛隊であるという前提はあったというのか、なかったというのか、どっちかで答えてください。あったかなかったか。どうですか。
  696. 久保卓也

    久保政府委員 この施設の機能の面は私のほうでやりますので、私が先にやりまして、あと施設の手続のほうは、施設庁のほうからお答えしたいと思います。  これは四十六年の十二月ごろ、米側は予算の関係上撤退するようになるということで、日本側がもし使うならば一部の器材は残してもよろしい。日本側につきましても、また米側のある種の機能というものはやはり重要であるというふうに考えておりましたので、米側が可能であれば日本もそれをとりたいという考え方は持っておりました。  そこで、それは米側としましても、その機能を自衛隊側に引き継ぐためには、やはりある種の施設を日本側に提供して自衛隊で使ってもらうのが適当であるという前提であったことは確かであります。しかしながら、この米軍が使っておりました施設自身は相当広大でありまするし、また地元から払い下げてほしいというような問題も加味されておりましたので、具体的に、どの部分は自衛隊が持ち、どの部分が地元にいき、あるいは米側が共同使用として使いたいかということは施設の問題でありますが、一応特定の、特にいまのエリントの施設のある場所については、米側としては、自衛隊が使うであろうという前提で施設の手続を進めておったというふうに思います。
  697. 木下元二

    ○木下委員 それを初めから言われたらいいのですよ。自衛隊が使うという前提で話が進められている。当然そうですよ。だから、私の質問が時間が長引くのはあなた方の答弁のせいですよ。率直に答えてもらいたいと思います。  別の角度から少し聞いていきますけれども、この電子情報施設は幾らぐらいの価格のものでしょうか。
  698. 高松敬治

    ○高松政府委員 価格の点につきましては、米軍の取得の価格が幾らであったか、それから経過年数が幾らあるのかということは、私どものほうにもわかりません。  ただ、先ほども申し上げましたように、たとえば個々の器材の部品が最新式のものではない、相当旧式なものが使用されておる、それから相当に摩耗されておる、こういうところからいって、いわば耐用年数を越えているものであるというふうに考えられる。耐用年数を越えた品物については一般に、残存価格は一割ぐらい、こういうことでございます。ただ、もとの価格がわからないものですから、これは幾らだと言われてもわかりませんが、大体そういうことに推定するよりいたし方ないわけでございます。
  699. 木下元二

    ○木下委員 いま言われたような回答は、資料要求しました際にもらっておるわけです。「エリント地区の通信機器 動産 アンテナ及び受信機等一式 約三十品目 価格については、米軍の取得した価格経年等が不明であるので、いちがいに言えないが、残価は一割程度と思われる」。この回答は一体何ですか。「米軍の取得した価格経年等が不明であるので、いちがいに言えないが、残価は一割程度」、これは日本語になっていないですよ、こんなもの。残価は一割程度と言われるのなら、その米軍の取得した価格あるいは経年、こういうものがわからなければ出てこないと思うのですよ。——いや、もう答弁はけっこうです。  また質問します。この電子情報施設というのはばく大な価格のものですよ。十四基の巨大なアンテナ群、電波の分配器、受信表示コンソール群、分析器、記録のためのビデオ及びコンピューター装置、地下には、私も通りましたけれども、三方面にわたってケーブルが通っております。膨大な施設です。まさしく最新の電子情報機器であります。ざっと見積もってもこれは一億ドルを下回らない。どうですか。
  700. 高松敬治

    ○高松政府委員 先ほども御説明申し上げたと思いますけれども、私どもは、そういうことを申し上げたのは、決していいかげんなことを言っておるわけではございません。実際に取得価格あるいは経過年数がわからないから、価格についてはそれのはじきようがない。ただ、一般に耐用年数を過ぎた物品につきましては、大体残存価格が一割だというのが、これは何か物品の取り扱い上の一つの基準だそうでございます。そういう意味で、一般の通信機器の耐用年数というものは九年であるから、様式その他から見て、それをもっと過ぎているというのが専門家の話のようでございます。そういうことだから、耐用年数が過ぎているから残存価格は一割ぐらい、こういうことをこの資料にも書きましたわけです。決してふまじめに書いたわけではございません。
  701. 木下元二

    ○木下委員 いずれにしましても、この物件目録と価格の見積もりはどうなっておるかということは、これは国有財産ですから明確にしておく義務が国のほうにあります。防衛施設庁は、これは物品扱いだなんて言われましたけれども、かりに物品だとすれば、これは物品管理簿というものをつくっておくことが義務づけられておるはずです。そうでしょう。それから大蔵省にしましても、これは国有財産法によりまして、防衛施設庁が管理をいたしておりましても、大蔵省としてきちんと掌握をしておく義務がある。  この国有財産法の七条、四条には「総轄」ということが書かれておりますね。「「国有財産の総括」とは、国有財産の管理及び処分の適正を期するため、国有財産に関する制度を整え、その管理及び処分の事務を統一し、その増減、現在額及び現状を明らかにし、並びにその管理及び処分について必要な調整をすることをいう」、こう書いてある。そしてまた十一条というのがありますけれども、各省各庁の所管に属する財産についても、大蔵省は「常時その状況を明らかにして置かなければならない」、こうあるのだけれども、一体どのように明らかにしておるのでしょうか、この機器について。
  702. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 先生の御指摘になりました国有財産法は、先ほど施設長官が申し上げましたように、不動産及びその従物を対象にしておりまして、物品は対象外であります。ここに申します「国有財産」というのは、狭義には物品を除外しておるものであります。物品につきましては、物品管理法によりまして各省各庁の長が所管しておるものであります。
  703. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、大蔵省はその内容はわからぬというわけですか、価格、見積もり。
  704. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 物品については、私どもは存じ上げておりません。
  705. 木下元二

    ○木下委員 物品については除外するなんという規定はないでしょう。財産を総轄するということになっておるのでしょう。
  706. 勝川欣哉

    ○勝川説明員 もちろん、常識的に申す国有財産と、私どもが責任を持ちます狭義の国有財産とは違っておりまして、狭義の、国有財産法の第二条に、「この法律において国有財産とは」と次々と書いてありまして、そこに、お読みいただければ、明らかに物品は除外しております。
  707. 木下元二

    ○木下委員 当然大蔵省としてもこれは管理をする義務があると私は思いますけれども、ここでもう議論はいたしません。  それでは、防衛施設庁が物品物品と言われるけれども、一体それはどういうふうに整理しておりますか。
  708. 高松敬治

    ○高松政府委員 大体物品の数にして五万以上あるようでございます。これの整理にだいぶん手間どっておりますけれども、現在まで、先ほどおっしゃいました物品管理法に逐次記載してやっておるところでございます。これはなかなかむずかしいようでございまして、いろいろ手間どっておりましたが、だんだんその点は仕事が進んでおるようでございます。
  709. 木下元二

    ○木下委員 何を言っておるのかようわからぬけれども、何ですか、現在において整理ができていない、物件目録もつくられていない、価格の見積もりも出ていないということですか。
  710. 高松敬治

    ○高松政府委員 帳簿上の整理がまだ完全に全部終わっておりませんけれども、かなりそれが進んでおるようでございます。いずれそれは近く終わると思います。
  711. 木下元二

    ○木下委員 この問題にしております電子機器装置です。この装置一切は有償でしょうか、無償でしょうか。
  712. 高松敬治

    ○高松政府委員 無償でございます。
  713. 木下元二

    ○木下委員 無償で返ってきた。ほんとうですか。これだけばく大なものを米側がはたして無償で渡すでしょうか。沖繩では、もうこれは私から申すまでもなく、ナイキホーク、レーダーサイト、こういうものを七十億円余りで日本は買い取らされた。沖繩以外でも、米側はこうした施設を一体無償で引き渡した例があるでしょうか。あるかないか、どうですか。ないはずですよ。
  714. 高松敬治

    ○高松政府委員 無償でございます。間違いございません。
  715. 木下元二

    ○木下委員 沖繩でこういう例がある。一体沖繩以外で無償で施設を引き渡した例があるかないか、どうですか。
  716. 高松敬治

    ○高松政府委員 たとえば、ある……。
  717. 木下元二

    ○木下委員 あるかないか聞いておるんですよ。ほかに例があるかないか。問いに答えてください。
  718. 高松敬治

    ○高松政府委員 私は存じておりません。
  719. 木下元二

    ○木下委員 存じておらない。ないということですか。
  720. 高松敬治

    ○高松政府委員 一般に施設、区域を陸上自衛隊なり海上自衛隊に引き継ぐ場合に、そのままそこにあるものが引き継がれるという例はたくさんあると思います。ただ、こういうふうな種類のものが、あるいはたいへん高額だと思われるものが引き継がれた例があるかないかということは私は存じません、こういうことを申し上げておるわけであります。
  721. 木下元二

    ○木下委員 結局、存じないということは、ないということでしょう、あなたがそういう高額なものを存じないということは。
  722. 高松敬治

    ○高松政府委員 私もこの仕事に参りまして、昨日でちょうど一年になります。その前のことはあまりよく知らないのでございますが、そういう意味では存じておりません。
  723. 木下元二

    ○木下委員 それでは局長伺いますけれども、こういう高額なものを無償で引き渡したという例があるんでしょうか、ないでしょうか。
  724. 久保卓也

    久保政府委員 どの程度の高額になるかわかりませんが、以前、有償援助、無償援助という時期もありました。したがって、無償援助がないということではございませんが、ただ、今回の場合はおそらくきわめて多額でしょう。いま申しておりまするように、施設庁の関係で基地を返還する場合に、そこに米側が必要でないと認めたものは、返還物件と称せられるそうでありますが、そのものについては、米側が求償しないでそのまま残置するというようになっておるそうでございます。
  725. 木下元二

    ○木下委員 アメリカはいまたいへんなドル危機、ドル不足で苦しんでおります。私が……。
  726. 藤尾正行

    ○藤尾委員長代理 静粛に願います。
  727. 木下元二

    ○木下委員 静かにしなさい。私がここに聞いているのは、あなた方は無償だ無償だと言われるけれども、はたしてほんとうに無償なのか。アメリカがドル不足、ドル防衛で必死になってやっておる。それなのに今度の場合だけ、このすごい財産をぽんと投げ出してしまうか。私はそういう状況から見て、あなた方は無償だと言われるけれども、それはおかしいではないか。ほんとうに無償かということを確認したい。そうでしょう。
  728. 高松敬治

    ○高松政府委員 無償でございます。間違いございません。
  729. 木下元二

    ○木下委員 今度の稚内基地の電子機器を引き渡す件は、それでは日本と米国いずれの側から申し出たことでしょうか。
  730. 久保卓也

    久保政府委員 これはいずれの側というのは必ずしも明確ではございません。あえて言いまするならば、米側としては、先ほど申し上げましたように、昨年の六月ぐらいをもちまして閉鎖をしたい、もし日本側でその機能の一部を使用する意図があるならば、それはその場に残してよろしいということを言っておったわけであります。     〔藤尾委員長代理退席、委員長着席〕 それに対して、以前から日本側にいたしましても、米側がそういった器材を日本に残すつもりがあるならば、それは使用したいという気持ちは持っておりました。これは先ほど来の機能の面から見ましても、日本の防衛にとって枢要な機能を果たすものであるという認識を私どもが持っておるからであります。
  731. 木下元二

    ○木下委員 いまあなたがはしなくも言われましたように、結局これは双方が希望したということですね。そうしますと、これは物の売買でも同じでありますが、売り主、買い主が双方希望して意見が合致をして成立をする。日米双方が希望したとすれば、無償の取引というのはますます私はおかしいと思うのです。アメリカはこれは希望するはずがないですよ。だから、かりに無償だとすれば、そこにアメリカ側から持ち出された条件があったはずだ。そうでしょう。これは当然そうですよ。条件があったからこそ、無償ということでアメリカ側が希望し、また了解をしたのではないですか。何の条件もなしに無償でアメリカがこんなばく大なものを、しかもやるということを希望するはずないじゃないですか。(発言する者あり)静かにしたまえ。私、これ、さっきから質問いたしておりますが、うしろが騒がしくて非常に妨害になります。厳重に制止をしていただきたい。
  732. 三原朝雄

    三原委員長 不規則発言はやめてください。静粛に願います。
  733. 久保卓也

    久保政府委員 米国からかつて無償援助を……。
  734. 三原朝雄

    三原委員長 お静かに願います。
  735. 久保卓也

    久保政府委員 米国からかつて無償援助でもらいました装備などにつきまして、日本側で不要になりました場合には米側に返すわけでありますけれども、これは米側で、日本から返してもらっても引き取るのに非常に金がかかるということで、なかなか進捗しない面がございますが、同様にこのような場合におきましても、この器材そのものは、施設長官も申しましたように、比較的古い器材になっております。自衛隊にとっては貴重でありますけれども、重要でありまするけれども、米側から見ました場合に比較的古い器材になっております、耐用年数なんかの関係で。したがいまして、維持費その他相当かかりまするし、そういう関係で撤去する場合に金がかかる。これはおそらく米側としては経済的な理由もあったでありましょう。経済的な理由でそこへ残したほうが、むしろそういったものを本国へ持って帰って利用するということよりも便利であるという場合もありましょう。  それから精報の交換につきましては、これは必ずしも稚内のみに限らずでありまして、米側で得た情報で日本の防衛に役に立つもの、また日本で得ました情報で米側の役に立つもの、そういうものは常時交換するたてまえになっております。そういうものの中に、この稚内も入るのは当然のことだと思います。しかし、それが条件であるというような筋合いのものではございません。
  736. 木下元二

    ○木下委員 いまいろいろ言われたことは、半分くらいしか耳に入らぬわけです、うしろからいろいろと雑音がありますので。ひとつやじを厳重に制止していただきたい。
  737. 三原朝雄

    三原委員長 お静かに願います。
  738. 木下元二

    ○木下委員 自衛隊の肩がわりが返還の前提であったということはお認めになったわけです。つまり、自衛隊使用のもとでの米軍の二4(b)による共同使用、これが前提であった、これは認められた。これだけじゃなくてまだ条件があった。これを私のほうから申しましょう。  この電子機器によって得た情報、これはソ連や北朝鮮や中国などの軍事的動向をスパイするという情報であります。この情報の一切を逐一無条件にアメリカ側に提供する、これが少なくともその条件の一つであった、そうでしょう。そうでなければアメリカがこんなものを渡しませんよ。認められますか。
  739. 久保卓也

    久保政府委員 これは、ただいまの答弁の繰り返しになりまするけれども、この種のアメリカにとって古い器材を、わざわざ本国まで持って帰るには相当の金がかかるわけでありまして、米側から見ればペイしないということで、むしろ日本側がそれを引き取って、おそらく維持費は、これは器材が古い関係上ある程度かかると思いますけれども、日本側がそれを受け取って機能してもらえば、日本の防衛にとってもプラスになる、日本の防衛にとってプラスになることは、またアメリカにとってもハッピーなことであるという点があったろうと思います。そうしてまた情報の交換という面については、何も稚内に限りませんで、全般的に双方に必要な部分については双方が情報を交換する、稚内もその例外ではないというふうに申し上げたわけであります。
  740. 木下元二

    ○木下委員 これをもって帰ったら金がかかる、運送賃がかかるというような言われ方をしますけれども、これは一部上のほうのものは持って帰っているのです。それでエリント基地の一切のものはそのまま建物の中にセットされて置いてある。これはあなた、運送賃の問題じゃないですよ。そんなごまかしを言われてもここでは通りません。  結局、こうした問題について日米間でだれとだれとがいつ話し合ったのか。これは、私が聞いておりますのは、一昨年十一月から昨年六月にかけて、久保局長と米軍の間で返還に関して繰り返し交渉がされたというふうに聞いておりますけれども、そうでしょう。だから、どういう取りきめがここでされたのですか。
  741. 久保卓也

    久保政府委員 取りきめということではありませんで、責任者は、当然機能の面では私になりましょうけれども、実際の担当は私のほうの調査課長が在日米軍司令部と、これは空幕が入っておったかどうか、ちょっと私いま忘れましたけれども、そういった関係者を通じまして話し合いが進められた。そして米側が撤退をする場合に、自衛隊のほうでどういうふうな手続をするかというような話し合いが進められております。しかし、究極するところ施設の問題でありますので、施設のほうの手続で返還といいますか、自衛隊の使用ということがきまったということであろうと思います。
  742. 木下元二

    ○木下委員 これはいろいろなことを言われますが、とにかくこれは客観的に見まして、日本がアメリカからこの電子機器をもらい受けて——無償なんです、いま言われるように、無償といたしましょう。無償でもらい受ける、それと引きかえに、これによって得た情報の一切は提供するという、あるいはもっとそれ以上のものがあるのではないかと思われますけれども、少なくともあの稚内エリント基地を運転して、そこで得られた情報の一切は提供する、そういうことでなければ、これは話の筋としておかしいと私は思うのです。だから結局、日本側はこれをもらうかわりにそのような債務を負担した。だから同時に、アメリカ側はそのような一切の情報の提供を受ける権利を取得する。これは事務的な話し合いではありません。はっきりいって債権債務、権利義務を新たに生ぜしめる国と国との間の取りきめであります。そうでしょう。もしそうだとすれば、この取りきめがなされた文書の提出を求めたいと思います。
  743. 久保卓也

    久保政府委員 そのような文書はあるわけではございませんで、稚内だけではありませんで、米側にとって必要な情報は、私どもが取り得る範囲内のものの中から私どもが選別をして向こうにやる、向こう側がまた私どもに情報をくれる場合には、向こう側が選別して、これは日本側にとって有用であろうということで情報交換が行なわれろということで、これは国の約束ということではおりませんで、通常の場合であれば、ユニフォームとユニフォームが情報交換をしているというものであります。
  744. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、そういう文書はないというのですか。断言できますか。
  745. 久保卓也

    久保政府委員 そういうような文書はございません。
  746. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、さっきも話に出ました、その日米合同委員会できめられた協定書、これはありますね。
  747. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 昨年六月三十日の日米合同委員会の合意書はあります。
  748. 木下元二

    ○木下委員 その内容について、簡単な説明をさっき聞きましたけれども、いろいろな問題がこの問題には含まれております。さっきから討議をいたしておりますように、いろいろ問題が多いわけです。この合同委員会の協定書をひとつ出していただきたい。
  749. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 日米合同委員会の合意内容につきましては、その文書を出さないということが前々からきまっておりますので、提出は御遠慮させていただきます。
  750. 木下元二

    ○木下委員 ほかの点から聞きますけれども、この地位協定二4(b)に基づく共同使用ということなんですが、この共同使用の態様というのは、さっきも言われましたが、年四回、一回の使用が四十五日以内、こういうことに聞いております。一体こういうたぐいの共同使用の形態というのはほかに例があるでしょうか。
  751. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 前々から国会で御説明申し上げておりますように、地位協定二条4項(b)に基づきます共同使用の内容といたしまして四つばかりございます。年間何日以内というふうに日数を限定して……(木下委員「そういう一般的なことでなくて」と呼ぶ)使用を認めるというのが今回の例に該当すると思いますけれども、たとえば長坂の小銃射撃場、これなどが年間百五十日以内と日数をきめております。これに該当するような例かと思います。
  752. 木下元二

    ○木下委員 そういうのはあると私も知っております。この場合のように、一年四回でしょう。一年四回で一回の使用四十五日以内、一年のうちちょうどフォーシーズンごとのような形で、四回に分けて、一回四十五日以内というような形態、こういうのはちょっとほかにはないのではないかと思いますが、一体なぜこうした共同使用の形態をとるのですか。
  753. 久保卓也

    久保政府委員 これは合同委員会のほうで四十五日、四回というふうにきまったそうでありますが、米側とまだ、そういった点について、作業の面について私ども打ち合わせをしておりません。自衛隊の作業が始まるようになれば、米側がどういうことに関心を持ち、どういうことをするかということは、その時点で話合われるのではないかというふうに思います。
  754. 木下元二

    ○木下委員 共同使用の対象は、さっきも言われたんですが、電子機器などの装備一切は入っていない。土地、建物である。これ、もう一ぺん確認しておきますが、そう聞いて間違いないですね。
  755. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 二4(b)の対象としましては、土地及び建物、工作物で、建物が五棟、工作物二十六件でございます。
  756. 木下元二

    ○木下委員 この共同使用の使用方法ですね、これは一体どうするのでしょう。私がなぜこういう使用形態をとるのかということを聞いておるのは、これは実際問題として考えてください。一体、アメリカはどういう使用、何のためになぜこういう使用形態ということになっておるのか。これは建物があって、その中に電子機器が装備されているわけですね。それで自衛隊がこれを使おうとしているわけでしょう。そうだとすれば、米軍は一年に四回やってきてどこを使うのでしょう。使用するところがないじゃないですか。米軍が使用するときは、自衛隊はその間だけストップをするというのですか。あるいはそれとも米軍は、あいた部屋が二つか三つありましたけれども、その部屋に入るというのですか。一体どういう使用をするのですか。
  757. 久保卓也

    久保政府委員 どういう使用をするかということは、自衛隊が作業を始めて、そうしてまたその後に米側が使用する場合に、話し合いに入るのではないかというふうに思います。ただし、いまの御質問の中にありました、自衛隊がかりにスコープに着いているものを、それがどいて米側が着くというような使用ではこれはなかろうと思います。しかし、これは想像でありまして、具体的なやり方を協議しているわけではありません。これは自衛隊施設になるわけでありますから、作業そのものは自衛隊がすべてやることは間違いございません。その場合に、米軍の人が来て、そとで資料をもらって帰るのか、あるいはスコープその他をのぞいて自分で判断をするような材料があるのか、その辺は全く私にはわかっておりません。
  758. 木下元二

    ○木下委員 局長ともある者が、一体どういう使用をするのかわからないでは、これは困ると思うのですよ。これはあなた、私をごまかそうとしているのじゃないですか。こんなこと考えられませんよ。少なくとも二4(b)による共同使用の使用形態を一年四回、四十五日とこういうふうにきめておる。この使用形態というのはどういうふうに使用をするか、その使用方法と密接に関連をしております。その使用方法、どういう使用をするかという前提があって初めて使用形態が出てくるのですよ。どう使用するかわからぬようであって、この使用形態がどうしてきめられますか。
  759. 久保卓也

    久保政府委員 再々申し上げるように、この施設自衛隊施設として運用するわけであります。したがいまして、私どもは共同使用するということは聞いてはおります。聞いておりますが、その面は私どもに直接関係がないわけで、私どもがその施設を運用するにあたってじゃまにならない範囲において、米側が来て何らかの作業をするということは、私どもも支障ないと認めて共同使用に同意したということであります。
  760. 木下元二

    ○木下委員 共同使用について話し合うわけですから、一体どういう使用をするのかということが、当然これは議題になると思うのですよ。そんな、あなた、とぼけなさんなよ。  それでは私のほうから言いましょう。米軍の共同使用というのは、電子機器を自衛隊がどのように操作、使用しているかを点検、監督しようとするものでしょう。そうでしょう。始終つきっきりおるわけにはいかない。だから年四回、フォーシーズンごとに点検、監督に来る、それ以外には考えられないじゃないですか。どんな使用ですか。そうではないというなら、この共同使用はどういう使用か。
  761. 久保卓也

    久保政府委員 私どもは米軍に監督されるいわれはございません。
  762. 木下元二

    ○木下委員 監督ではない。そうしたら指導ですか。さっきの初めの答弁でも、あまりこの能力がないとか、一体どういう機能を果たすか、エリント基地は初めてでよくわからぬというお話があったわけなんですね。だから結局、ずっと米軍が使っておった、米軍に教わろうというわけですか。指導でしょう。
  763. 久保卓也

    久保政府委員 私どもは、米側が指導助言をしてくれるというような申し入れば聞いておりません。単純に自衛隊がこれを運用する、その際に、自衛隊の作業に支障のない範囲で米軍が来て何らかのことをする、それがわがほうの作業に支障がない限りはけっこうであります、そういうことでありまして、具体的に何をやるかということは、やはり米軍が来るようになって、あるいは自衛隊が少なくともこの運用をするようになって後のお話ではないか。その時点になるまでは、具体的にはっきりいたさないのではないかというふうに思います。
  764. 木下元二

    ○木下委員 そういう答弁はだれが聞いても理解できない。納得できないと思うのですよ。(「理解できる、理解できる」と呼ぶ者あり)理解できるのは自民党だけですよ。それは国民が理解できない。少なくとも二4(b)として共同使用しようということで、合同委員会で検討、討議を加えて、そして共同使用ということがきまったのでしょう。一年四回、四十五日以内というふうにきまって、なぜ米軍がそういう使用を求めておるのか、これは自衛隊側には当然わかっていなければならないと私は思うのです。あなた、それを隠しているんじゃないですか。
  765. 久保卓也

    久保政府委員 防衛局は共同使用については直接関与いたしておりません。——防衛局は共同使用の問題については直接関与いたしておりません。けっこうですという立場にあるわけであります。
  766. 木下元二

    ○木下委員 内容については結局明らかになりませんけれども、これはアメリカの指導監督による稚内基地の運営という以外には考えられない。それはまさしく対米追随の日米共同作戦そのものではないですか。基地が返還されても、共同使用という名でアメリカからこのような屈辱的な監督を受けねばならない、自衛隊がアメリカから監督されつつ専守防衛の名のもとに、シベリア、サハリン、北朝鮮などの軍事的動向を奥深く精密にスパイして、そしてスパイされた情報資料は一切アメリカに提供する、こういうふうな稚内基地の返還は、国民の立場から見て断じて許されないと思うのです。長官、どうですか。
  767. 山中貞則

    山中国務大臣 最後の締めくくりだからといって、そういう一方的に——私たちもやはり国民の一人ですから……。  わが国を守る立場の自衛隊を是認する者としては、わが国の自衛隊のためにも、情報収集源として役に立つ部分を、相当古いけれども受け継いだということで、局長も申しておりますように、アメリカが年四回来ても監督を受ける立場にはないとはっきりいたしておりますから、自主性もそこに保っておりますので、そのことについては見解が分かれるところでありましょうから、私どもはさように思わないということを答弁いたしておきます。
  768. 木下元二

    ○木下委員 どういうふうに使用するかという問題について、内容を言われないからこういうふうに問題が発展してくるわけですよ。やはり内容々明確にするべきだと思うのです。この共同使用について取りきめた現地協定というものが実はあるのです。これを明らかにしてもらいたいと思うのです。これは札幌施設局と在日米第五空軍技術部長キング大佐との間で現地協定が結ばれておる。これを資料として出していただきたい。どうですか。
  769. 三原朝雄

    三原委員長 木下君にちょっとお願いしますが、審議に協力願います。
  770. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 これはやはり米軍との間の協定でありますので、いま直ちにここで出すということを御答弁するわけにはまいりません。
  771. 木下元二

    ○木下委員 米軍との協定であればこれは直ちに出せない、そういうのはやめなさいよ、そういう態度は。これは非常に重大な問題ですよ。なぜ提出できないのか。そういう提出もできないということでは、私が先ほどから出しております疑惑は一向に解消されません。これは私の疑惑というよりも、まさに国民の疑惑であります。自衛隊は米軍の監督指導のもとにこのエリント業務を行なって、情報は米側にすべて提供されていく。まさにこれは日米共同作戦であって、日米共同で侵略的なスパイ活動をやっていく。しかもこれは明らかに憲法九条違反だという重大な疑いを解消することはできないのであります。日米合同委員会の本協定及び日米共同使用に伴う現地協定、これをぜひとも明らかにしてもらいたい。
  772. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 合同委員会の合意書の内容につきましては、要旨、先ほど御説明申し上げたとおりでございますが、合意書そのものを提出することは遠慮さしていただきます。
  773. 木下元二

    ○木下委員 この点の問題については、時間の関係がありますので、私は、これ以上の点につきましては質問を保留しておきます。  これはもう言われたことなのですけれども、ひとつ確認いたしておきます。稚内の米軍基地は、サハリン、シベリアの基地、あるいはまたそれらの基地を拠点とする飛行機、艦船をキャッチしておることは間違いないわけですね。
  774. 久保卓也

    久保政府委員 米側の実績がどうであったかということは、私ども存じておりません。したがって、稚内を中心とします一定の距離の範囲内で電波が走っておれば、その電波をキャッチしていたということは間違いなかろうというふうに思います。
  775. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、結局、サハリン、シベリアの基地の状況、あるいはその基地を拠点とする飛行機や艦船の動きを探知することがこの稚内米軍基地の目的であった。少なくともそういうことがキャッチできる施設を置いてやっておったわけですから、私は客観的にも明らかだと思うのです。米軍のこの基地を自衛隊が引き継ぐ、こういうことなのだけれども、そうしますと、田中首相は私の本会議の代表質問に対する答弁の中で答えておるわけです。稚内基地の情報機能について、「特定の国を対象とするものではありません」と言っておる。すでにこれは明らかになっておるが、特定の国の軍事情報をキャッチしておることはまぎれもない事実ではないでしょうか。そうでしょう。
  776. 久保卓也

    久保政府委員 特定の国を対象にするものではございません。特定の国を対象にするものではございませんで、高空を自由に飛びかっている電波をこちらが捕捉をする、自動的に捕捉をするということであります。米側の艦船であれ、日本のものであれ、どこのものであれ、すべてここに入ってくるように思います。
  777. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、稚内基地周辺を飛ぶ飛行機、航行する艦船、それは一体どの程度あるのでしょうか。運輸省、国籍別に言ってください。運輸省、おりますか。——おりませんか。局長、わかりますか。
  778. 久保卓也

    久保政府委員 私にはわかりません。
  779. 木下元二

    ○木下委員 この周辺は確かに、漁船や民間の船、あるいは民間の飛行機なども飛んでおるでしょう。航行しておるでしょう。しかし、米軍はそういうものをキャッチすることが目的ではなかったのでしょう、さっきからの論議の中で明らかになったことは。サハリンやシベリアの基地、あるいはその基地から飛び立つ飛行機、艦船等をキャッチする。そうでしょう。そうすれば、この周辺に、たとえばほかの国のものが通る、飛ぶ、中にはそういうこともあるかもわかりません。少ないでしょうけれども、あるとします。あっても、問題は、その米軍が何を対象にこの基地を動かしておったか。結局、アジアの社会主義国を対象にやっておったということは明らかではないですか。そうでしょう。これ、認められませんか、防衛庁長官考え方の相違とか何かいろいろあるかもわかりません。私はこれはそういう問題で出しているのじゃないのですよ。これはだれが考えても、特定の国を対象にしてこのような行動をしておったということは明らかじゃないですか。だから、それが一体いいのか悪いのかという議論はあるでしょう。それは別といたしましょう。それは別といたしまして、そういうことを事実やっておったではないかということです。
  780. 山中貞則

    山中国務大臣 私も、この稚内エリント基地というのは、あなたは現地に行かれたので御存じでしょうが、私もこの問題をそう深く調べておりませんし、いまいろいろ質疑応答の中で、おぼろげながらわかったような気もいたしますが、したがって断定的に、特定の国に対してのみこれが設けられているものであるかどうか、その点については、現時点においては答弁いたしかねます。
  781. 木下元二

    ○木下委員 答弁いたしかねる、特定の国を対象にしておったかどうかはよくわからないということですね。そうですね。
  782. 山中貞則

    山中国務大臣 答弁いたしかねますと申しました。現時点においてはまだ詳細把握しておりませんので、答弁いたしかねます。
  783. 木下元二

    ○木下委員 それでは、その点についても、私はあらためて長官答弁をいただきたいと思います。  これは、一言言いますと、ちょうど人の家の門の前に望遠鏡を持ってきてのぞいておる。中には、人の家から出てくる、あるいは通行する人たちがおるでしょう。しかし、それはあくまでその人の家を対象にしてやっておる。当然特定しております。今日の戦争技術の上で情報収集機能というのは最も重要な要素であります。だから、この情報収集機能の強化ということは四次防計画の目玉の一つでもあります。一体これが具体的にどのような計画になっておるのか、これは簡単に一言でけっこうですから言ってください。
  784. 久保卓也

    久保政府委員 これはまだ四次防の中で、四次防としてきめられておりませんので、年度年度計画をしてまいらねばならないと思います。現在のところでは、いまの稚内の運用というものを今年度からやってまいりたいというのが一番大きな事業計画になっております。
  785. 木下元二

    ○木下委員 これは、統合幕僚会議を五名ふやすということにきちっとなっているのじゃないですか、この四次防によって。そういう文章があったと思いますよ、これはちゃんと。
  786. 久保卓也

    久保政府委員 五人ふやすことは確かであります。情報の関係でありますけれども……(木下委員「だから、情報機能の強化について言ってください」と呼ぶ)これは、いわば動態情報を統合幕僚会議に集めて——動態、動いている情報です。動いているものの情報を統合幕僚会議に集めて、それを常時把握をしているという体制をとろうと思ったわけでありますが、現実にはこれには十数名の人を要しますので、五名ではなかなかできないということで、情報の機能そのものの強化、つまり情報要員が少ないので、そのものをふやす、情報要員をふやすということで処理をしたい、そういう意味での統幕の情報の組織の強化ということはございます。
  787. 木下元二

    ○木下委員 防衛庁内局の情報部門も一段と強化される方向が打ち出されております。それは、たとえば七三年五月二十一日のサンケイ新聞を見ましても、「情報部門を強化」ということで、調査課は一つであったのを調査一課、二課、二つつくる。そして現在、防衛庁の情報収集というのは、統合幕僚会議や陸海空三自衛隊など制服組でまとめておったものを調査課で整理しておる、そういうことであったけれども、今度の調査課拡充によりまして、内局は内局独自に、独自の判断に基づいて情報収集活動を行なっていく、こういうふうに報道されております。これは間違いありませんか。
  788. 久保卓也

    久保政府委員 いわゆる情報収集の名前でいわれるような情報収集は内局ではできません。やはり、公刊資料でありますとか、各幕で作業した資料でありますとか、あるいは外務省を通じて参ります資料とか、そういったものを総合判断して、いわば戦略的と申しますか、もう少し政治、軍事といったほうがよろしいかもしれませんが、政治、軍事的な情報として取りまとめる。同時に、内部で整理しました情報を関係の向きに、つまりこれは防衛庁の内部のことでありますけれども、関係の向きにそれぞれ資料として再編集して配ってやる、いわゆる情報のサービスをするというような機能を考えておるわけであります。情報収集という機能、これは内局としては持ち得ません。
  789. 木下元二

    ○木下委員 自衛隊情報部門の組織的な強化がはかられていくということなんですけれども、それとともに、私が問題にいたしましたこの稚内のような米国エリント基地、これを引き継いでいく。これによって、マスコミも報道いたしておりますように、日本の軍事力は飛躍的に増大をする、こういうことなんです。  この電子機器を自衛隊が引き継いで繰作をすることになりますと、相当数の情報部隊が必要だと思います。米軍は七百名ほどいたということを申しましたけれども、少なくともこれは一部縮小をするわけですから、そんなには要らないといたしましても、二、三百名は必要と思われますが、その計画はどうなっておりますか。
  790. 久保卓也

    久保政府委員 この稚内の運用は、おそらく本年度の中ごろぐらいから運用できるのではないかと思いますけれども、人員がそう豊かにあるわけではございません。したがいまして、百人以内の範囲内で運用せざるを得ないのではないかというふうに見込んでおります。
  791. 木下元二

    ○木下委員 人数をそろえるだけでなくて——百名と言われますけれども、それはともかくといたしまして、人数の問題だけでなくて、さっきも能力があるかどうかということを不安がられましたが、最新の高性能電子装備を繰作できる高度の技術が必要なんであります。この技術者というのはアメリカで養成をするわけですか。
  792. 久保卓也

    久保政府委員 先ほどもちょっと申しましたように、東根室にもやはり電子情報の収集組織がございます。そうしてまた、米側が稚内におりましたときに、わがほうでいわゆる電子情報の収集について。
  793. 木下元二

    ○木下委員 委員長、私、答えが聞こえないのです。
  794. 三原朝雄

    三原委員長 あなたも協力願います。
  795. 木下元二

    ○木下委員 協力いたします。もう質問を終わります。終わりますけれども、やはり答えは答えではっきり聞かしてほしい。
  796. 三原朝雄

    三原委員長 お静かに願います。もう最後ですから。
  797. 久保卓也

    久保政府委員 東根室にも電子情報を収集する機能を持っておりますが、そこの者を充当し得るということ、したがって、訓練をある程度従来からもやっておりますが、米側からの指導を受けたこともかつてはございます。そういった要員があるので、これはむしろ運用かたがた訓練をしていくということで、運用しながら要員を養成していくということにならざるを得ないのではないかというふうに思います。
  798. 木下元二

    ○木下委員 中曽根長官が米国に行ってきまして、そうしてキッシンジャー大統領特別補佐官と会談をいたしまして、そこでの会談の中身でありますが、「自衛隊の情報機能強化について、要員の米国派遣訓練などについて協力を得るべくレアード長官に要請した、キ博士より、情報機能強化への協力は可能だと思う」、こういうふうに出ております。こういうことで、稚内基地の問題につきましても、米国のほうに協力を求めて指導訓練を仰いでいく、結局そういう体制でしょう。そういうことがこの報告の中にもはっきり示されておると思うのです。これは否定されないでしょう。
  799. 久保卓也

    久保政府委員 中曽根前長官がレアード長官に具体的にどういうふうに言われたかは存じませんけれども、私ども中曽根長官にお仕えしておりまして聞いておりましたのは、米国へ自衛隊の人たちを派遣していろいろ勉強させるということを聞いておるわけで、そういった意味での一般的な情報要員あるいは技術要員の教育ということについて、中曽根前長官は、米国に派遣するのがいいのではないかということを漏らされておったのは私、承知いたしております。
  800. 木下元二

    ○木下委員 もう議論はやめます。最後にいたします。  結局、憲法は戦争を放棄して交戦権を否認いたしております。その前文には、「平和を愛する諸國民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」、こう高らかに宣言いたしております。永久平和主義こそ憲法全体を貫く基本原理であります。生命であります。この憲法のもとで、ソ連をはじめとするアジアの社会主義国の軍事状況を、詳細かつ大規模にキャッチするスパイ基地を自衛隊移管とすることは、この憲法の基本原理を踏みにじるものだ、こう思います。長官、どうでしょうか。
  801. 三原朝雄

    三原委員長 お静かに願います。
  802. 山中貞則

    山中国務大臣 日本のような、東西冷戦時代はやわらぎつつあるといっても、やっぱり大陸に隣接した島でありますし、そこに一億以上の人間が住み、高度の工業生産を持つ国家として、私たちは、外国からじろじろ見られたり聞かれたりすることは裸でいい。しかし周辺諸国、どこを仮想敵とも言いませんが、われわれは目もつぶり耳もふさいでいなければならぬということは少しおかしいので、私たちとしてはやっぱり、正常な、憲法で許された範囲の、わが国の安全を守るための機能というものは持っていてよろしい。ただ、あなた方からすれば、アメリカとあまり親しくやるのはけしからぬということでありましょうが、それはやはり分に応じたことをやらなければいかぬ、それは私もそう思います。
  803. 木下元二

    ○木下委員 質問は終わりますが、最後に申します。  この稚内のようなスパイ基地というのは、さっきも申しますように、憲法を貫く永久平和主義の理念に明らかに抵触をいたします。いろいろ言われましたけれども、結局それは、平和を愛する諸国民の公正と信義を、信頼どころか全面否認する態度であります。これはもう憲法の根本原理を踏みにじるものであります。しかも、この稚内米軍エリント基地の引き継ぎというのは、アメリカのいわばグローバルな対ソ戦略に日本が具体的に組み込まれるということであります。外交上もソ連と敵対関係に立ち、重大な国際問題を招くおそれがある。稚内基地をスパイ基地として使用することは、これは直ちにやめるべきだ、私はそのことを強く要求いたしまして質問を終わります。
  804. 三原朝雄

    三原委員長 次回は、明二十二日金曜日、午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後八時二分散会