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1973-06-15 第71回国会 衆議院 内閣委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十五日(金曜日)    午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 三原 朝雄君    理事 奥田 敬和君 理事 加藤 陽三君    理事 笠岡  喬君 理事 藤尾 正行君    理事 大出  俊君 理事 木原  実君    理事 中路 雅弘君       赤城 宗徳君    伊能繁次郎君       江藤 隆美君    越智 伊平君       大石 千八君    近藤 鉄雄君       佐藤 守良君    丹羽喬四郎君       旗野 進一君    村岡 兼造君       吉永 治市君    上原 康助君       坂本 恭一君    山崎 始男君       横路 孝弘君    和田 貞夫君       木下 元二君    鈴切 康雄君       山田 太郎君    受田 新吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      坪川 信三君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 山中 貞則君  出席政府委員         国防会議事務局         長       内海  倫君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         給与局長    尾崎 朝夷君         人事院事務総局         職員局長    中村  博君         総理府人事局長 皆川 迪夫君         総理府統計局長 加藤 泰守君         防衛政務次官  箕輪  登君         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       田代 一正君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁長官 高松 敬治君         防衛施設庁総務         部長      河路  康君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         防衛施設庁労務         部長      松崎鎮一郎君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省条約局長 高島 益郎君  委員外出席者         外務省アジア局         外務参事官   大森 誠一君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 六月十五日  辞任         補欠選任   竹中 修一君     村岡 兼造君   林  大幹君     佐藤 守良君   三塚  博君     江藤 隆美君   正木 良明君     山田 太郎君   受田 新吉君     安里積千代君 同日  辞任         補欠選任   村岡 兼造君     竹中 修一君   山田 太郎君     正木 良明君   安里積千代君     受田 新吉君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出第九四号)  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第七号)      ————◇—————
  2. 三原朝雄

    三原委員長 これより会議を開きます。  国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。中路雅弘君。
  3. 中路雅弘

    中路委員 この災害補償法の一部改正法律案は、すでに私のほうも同僚の木下議員も質問をしていますし、ごく二、三の問題についてきょうは簡単に御質問したいと思います。  法改正において、公務上の災害に準ずるとして、全面的に公務上の災害としたものではないということでありますが、公務員労働者災害補償通勤途上まで一応拡大した点で、不十分ですけれども、私たちはこの法案に賛成するわけです。  二、三問題点といいますか、すでにこれは質疑の中で出されている問題ですが、二、三要望をもう一度最初お話ししておきたいと思うのです。  一つは、立ち寄り規制を大幅に排除する必要があると思うのです。わが国の労働者の文化、スポーツは、いろいろの機会通勤途上における機会を得るためにも、勤務終了後そこからそういうところへ出かけるという場合が常識になっていますから、その点で、これらの立ち寄りを締め出しているという点については検討する必要があると思うのであります。  もう一つは、これもすでに出ていますが、合理的な経路及び方法による往復という規制にも問題があると思いますし、特に通勤の形態が、交通機関の発達や都市への労働者の集中などによってさまざまなケースを生み出しているわけですから、どんな経路でどのような方法勤務をしようと、それが勤務に起因し、また勤務を目的とする行為であることが明確な場合は、すべてに対して適用される必要があるというふうに思います。そしてこういった問題の認定が、当局で一方的に行なわれるのでなくて、労使の代表により十分協議され、民主的に運営されるようにしていただきたいと思うのです。  最初に、いままですでに質疑になった問題ですけれども、これらの点についてのいろいろの配慮あるいは検討について、まとめて簡単に御質問したいと思います。
  4. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 基本的な問題にお触れになってのお尋ねでございますけれども、いま話に出ました合理的経路の問題は、これは個々の具体的ケースを精密に、克明に調べた上で、はたして合理的であったかどうか、これは一律に律すべきことではないと思いますから、私どもはこの運用にあたりましては、そういう点に十分留意をしながらわりあいに弾力性のある態度で臨んでいくべきだと思います。  最初におっしゃいました寄り道の問題は、これはなかなかむずかしい問題だと思います。第一、通勤自体公務そのものではないということは、これは私は明らかだろうと思います。公務に準ずるものというのが本質的な性格だろうと思いますから、それからさらにはみ出たものというのをどういうふうに扱うか、これは甘く扱うわけにはいかないだろうと思います。さっきの合理的云々の判断はございますけれども、一がいに甘く扱うわけにいかないであろうという気持ちがいたします。  それから、一般公務災害補償関係でございますけれども、これは関係省においてはもちろん厳密にやっておられますし、さらに不服のある方は人事院に提訴してこられます。その場合に、私ども公平人事とほとんど同じような精密な現地調査その他を行ないまして、たとえば公務上であるとか公務外であるという認定を厳正に下しておる。したがいまして、第一線のほうで公務外とされたものが、私どもの詳しい調査の結果公務上となったというケース相当ございますし、その点は御信頼いただきたいと思います。
  5. 中路雅弘

    中路委員 もう一つ、これは関係組合皆さんから要請を受けている問題なのであわせて御質問しておきますが、公務上の災害通勤途上災害等について、長期間の休職、欠勤などを余儀なくされた場合に、昇給の停滞によるハンデが退職時まで改善されない問題がある、昇給がおくれた分がその後取り戻せるような救済措置をしてほしいという要請一つあります。  もう一つは、この法案が施行の日以後に発生したケースに適用されることになっていますけれども、すでに通勤途上災害によって治療を継続しているという者もあるわけですから、これらに対して救済措置がとれないわけですから、この点の改善を求める要望が同じように寄せられているわけです。  この二つの問題について、どのようにお考えになり、また処置されるか、これもお尋ねしておきたいと思います。
  6. 尾崎朝夷

    尾崎政府委員 問題が二つございますけれども最初のほうの問題につきまして私のほうからお答え申し上げたいと思います。  通勤途上災害がございまして、そのために長期に休むといったようなケースにつきまして、出てきた場合に、そういう災害を受けなかった人との関係をどうするかという問題でございますけれども、これは今度は公務災害に準じて扱うというようなたてまえになっておりますので、それでは、そういう給与上の関係で一体どういうふうに扱ったらいいかという点は全くの新しいケースになってまいりますので、民間等でどういうふうに扱っていくかという点も十分調査をいたしまして、それによって落ちついた姿に今後定めていきたいというふうに考えております。  先ほど申されました、退職時まで違いができるというような関係一つございますけれども、これは、たとえば組合方々からそういう話がときどき参りますけれども、それは、そういう実際休んだ人と、そうでない——これは公務の場合はまた別でございますけれども、たとえば、普通の病気で非常に長く休んだ人とそうでない人が全く同じであるかどうかという点につきましては、やはり職場における感情問題もございますので、そういう関係については、そういう実情を考慮しながら均衡のとれた形に考えてまいりたいというふうに考えております。
  7. 中路雅弘

    中路委員 長官も何か御用事があるようですから、あと二つばかり問題を取り上げたいと思うのです。  一つは、先日も関係組合の大会に参加をさせていただいた問題なのでお聞きしますが、行政職口表の問題なんです。人事院にお聞きしたいのですが、行政職俸給表の(二)表による公務員がつくられているわけですが、どういうわけでこういう制度、(二)表、(一)表に分けられているのか、この点について最初にお尋ねします。
  8. 尾崎朝夷

    尾崎政府委員 現在、技能労務関係職種につきましては特別な俸給表を設けまして、行政職(二)表という形で適用をいたしてございます。行政職(一)表のほうは事務技術職のほうに適用しますという形で適用しておりまして、この両者について統合したらいいではないかというお話がときどきございます。しかし実際問題といたしまして、たとえば事務技術の場合には、学校を出た者を原則として採りまして、そしてまだあまり仕事にタッチしない人を新しく入れまして、つまり低い初任給から仕事を覚えさせながら仕事をさせていってだんだん格が上がっていくという方向になっているわけでございますけれども技能労務関係におきましては、たとえば運転手をとって申しますと、運転手方々は、二十歳ぐらいでございましても、四十歳ぐらいでございましても、仕事そのものはほとんど同じ仕事をするわけでございまして、そのために民間における給与も、年齢によってあまり変わらないという状況でございます。したがいまして、そういう方々については、事務技術学校出人たちよりも、若いときには高い給与を支給するというふうに普通なるわけでございます。したがって、普通の事務技術俸給表を適用いたしますと、若い職員は絶対採れないということになる、年とった職員ばっかりになってしまうというような関係がございまして、民間におけるその職種給与のパターンが違っておりますので、そういう関係考えて、どうしても技能労務職種にはそれなりの俸給表ができませんと、若い人を採っていくわけにいかないというような状況でございます。
  9. 中路雅弘

    中路委員 私も行政職(一)表と(二)表を調べてみたんですが、現在では行政職(二)表の俸給が(一)表に比べますと非常に矛盾を持ってきていると思うのですね。たとえば行政職(一)表に対応する行(二)の等級としては、行(一)の五等級と行(二)の一等級が対応するわけです。調査時報に出ていた給与から見ますと、行(一)の五等級で行(二)の一等級に対応するのは、六万三千八百円から十一万三千二百円までとなっています。行(二)の一等級を見ますと、六万三千百円から十一万三千七百円ということになっているわけですが、行(二)の場合は一等級以上はないわけです。最高が、いまお話ししましたように一等級十一万三千七百円ですし、いまお話しのように、行(二)の場合は、このクラスになりますと非常に年齢も高くなって、家族もかかえているという点で生活費も非常にかかるわけです。それにもかかわらず給与が低いという点で、まあ給与の面では将来的に希望が持てないというような状態があるわけですし、行(一)の場合は、四等級、三等級というふうに将来の可能性もあるわけですね。行(二)の場合に全くこういうのがないという点で、すぐ統合するという問題の前に、まずこのような状態改善すべきじゃないか。当面、たとえば行(二)の一等級を行(一)の四等級にするとかいうふうな方法ですね。家族構成も高いわけですから、お話を聞いても、対応するところでいまよりも一万、二万ぐらいは必要じゃないかという話も出ているわけですが、たとえば対応します行(二)の一等級と行(一)の四等級を比較いたしますと、行(二)の一等級は、先ほどお話ししましたように、六万三千百円から十一万三千七百円。これに対しまして行(一)の四等級になりますと、六万九千五百円から十二万三千百円という状態になるわけです。少なくとも当面この程度の改善はやる必要があるんじゃないかと私は思うのですが、この点はどうでしょうか。
  10. 尾崎朝夷

    尾崎政府委員 御指摘のとおり、金額面としましては、行(一)の五等級と行(二)の一等級はほぼ均衡のとれた姿になっております。で、行(二)の一等級に格づけ負る職種としては、小型船舶の船長さん、それから最近は守衛さんやあるいは車庫長等について相当一等級を出してきておりますけれども、そういう方々民間における給与というものを調べてみますと、現在の一等級金額で悪いということはまずないというふうに考えております。  それで、いま御指摘のような、つまりてっぺんがほぼ五等級相当でございましてちょっと頭がつかえているという感じがいたして、その点が若干問題であるということは、私どももそう考えておりますけれども、そういう点で、上のほうにも一等級つけ足すべきではないかというお話が前からございまして、私どもも、この一、二年真剣にそういうことを考えていろいろ検討しておりますけれども、いま申し上げましたように、民間における実情考えますと、いま緊急にその上に四等級相当を乗っけるということは必要ではないといったようなことが去年までの経過でございました。  まあ、ことしもそういう状況をよく見まして、また片面において、事務技術のほうの場合に、五等級相当までの運用をどういうふうにするか、あるいは四等級相当までどういうふうに格づけしていくかという面での均衡もございますので、ことしもそういう点をよく検討してみたいと考えております。
  11. 中路雅弘

    中路委員 少なくとも、もう上がないわけですから、その点で私は、いまの五等級をやめて事実上四等級から出発するとか、いろいろ方法があると思うんですが、この点の十分な配慮が必要じゃないかと思うのですね。  それからもう一つ昇給についても非常に格差がある。たとえばこの表で調べてみますと、行(二)の昇給については、千円から千四百円ぐらいまでの昇給が三〇%を占めています。最高昇給で二千四百円です。行(一)の場合は、千四百円までの昇給は一二%ぐらいで、二千五百円以上の昇給が五〇%以上あるわけです。非常に大きな差が生まれてくる。賃金は仕事の内容とともに年齢家族構成等考えていくならば、少なくとも行(一)の昇給水準に行(二)の昇給の場合も近づけるべきではないか。行(一)の場合は五〇%以上の人が二千五百円以上昇給しているにもかかわらず、行(二)の場合にはほとんど一〇〇%近くの人が二千五百円以下で、差がひど過ぎると思うんです。昇給についても行(一)の水準に近づける必要がある。その点で行(二)の給与体系をこの点では改める必要があるのじゃないか。これも、行(二)の関係の人、おそらく五、六万おられるのじゃないかと思いますけれども、非常に強い要望ですし、この点の改善についても至急にやっていただきたいと思うのですが、この昇給格差の問題はどのようにお考えになっておりますか。
  12. 尾崎朝夷

    尾崎政府委員 先ほど申し上げましたように、行政(二)表の場合は、給与年齢別カーブとしましては、本質的にいいまして、つまり職種によりましての性質でございますけれども年齢が若かろうが年とっていようがそう給与は変わらないという民間における一般的な特徴がございますので、若いところの給与相当高くしております。したがって、そういう若いところで、たとえば二十歳台の行(二)の職員が行(一)の職員のほうに職種転換をいたしました場合には数千円の差があるという問題が生じておりまして、その場合にその給与を当分の間保証してもらいたいという御要望がかなりございます。それほど若いところでは差がございます。そういう点で、昇給カーブとしてはどうしても、行(一)との関係に比べて行(一)との関係は、低い初任給からスタートして昇給を早くやるという関係になっておりますので、そういう両方の給与性質にかんがみまして、どうしてもそういう昇給カーブの差が出てくるということになるわけでございますけれども、御指摘の点もございますので、従来からそういう点についてできるだけ改善していこうという気持ち考えておりまして、ことしもひとつそういう点を考えてみたいというふうに思っております。
  13. 中路雅弘

    中路委員 少なくとも私は、行(一)の水準、これに近づけるということはぜひやっていただきたいと思います。  もう一つだけこの行(二)の問題で要望しておきたいのですが、給与の面とともに、いろいろ話を聞いてみますと日常の勤務している状態が非常に悪いというので、たくさんの訴えもあるのですが、資料がたくさんありますが、一つ二つだけ具体的に聞いたお話をお伝えしておきたいと思うのです。  たとえば職場環境の問題で例をあげますと、仙台の通産局の運転手さんの詰め所職場に働いておる人からのお話ですけれども、この詰め所地下にあるのですね。だから日が全く当たらない、換気もない、湿気が多くて非常に健康上問題がある、車庫地下にあっても詰め所は少なくとも一階にしてほしいという強い要望が私のところにも寄せられているわけです。同じような例はどこにもあるらしいのですが、たとえば関東海運局。横浜の港湾の合同庁舎にありますが、私も神奈川県に住んでいるので直接行ったこともありますが、ここの運転手職場もやはりコンクリートのたたきで、部屋が地下なんですね。だから非常に窓も小さい。採光は若干ありますけれども、通風はないというところで、一年じゅう蚊やゴキブリも出てきて悩まされるという状態です。寒暖の差はまた一階以上に激しいわけなんで、やはりここでも詰め所だけは一階にしてほしいということで、この行口皆さんから、職場環境改善の問題についても、懇談しました際にいろいろ要望が出ていたので、この点、ももう一度、組合皆さんや直接職場状態についても点検をしていただいて、特にいま訴えがありましたようなことは、当然これは検討しなければいけない、改善しなければいけないというふうに思うのですが、そういう点については至急改善について対策を立てていただきたい、要望しておきたいと思うのですが、これについてもひとつお考えをお聞きしておきたいと思います。
  14. 皆川迪夫

    皆川政府委員 公務員職場環境につきましては、なかなか改善がおそいということも従来から御指摘もあったわけでございますが、いろいろな条件でなかなかむずかしい点もありますけれども、それを一つの目標にして漸次進めておるわけでございます。ただいま御指摘の面につきまして私たちも十分承知しておりませんが、その点につきましては、各官庁相互間に十分連絡をとって、なるべくいい職場環境ができるように努力してまいりたいと思います。
  15. 中路雅弘

    中路委員 最後にもう一つだけ総理府に御質問したいのですが、総理府統計局の中で、頸肩腕症候群になったために公務災害認定申請を提出している人がありますが、いま何名が提出されているのか、この扱いがどうなっているのか、最初にお尋ねしたいと思います。
  16. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  統計局から官房人事課のほうに報告しております公務災害申請者の数を申し上げますが、公務災害申請者の中でキーパンチャーにつきましては六名ございます。それ以外の一般職種につきまして二十七名。合計三十三名の方が公務災害申請をいたしております。そのうちキーパンチャーにつきましては、四名の方がすでに認定を受けております。残り二名につきましては目下手続をとつているわけでございます。それから二十七名の一般職につきましても、二十名は申請手続を済ましてありますが、七名につきましては申請手続中でございます。その二十名のうち一般職公務災害につきましては、新たなケースでございますので、人事院に対して協議する必要がございます。したがって、二十名のうち三名につきまして人事院に協議をいたしております。この三名の結果がわかりましたら、それに基づいて二十名についても処理する、そういう方針でございます。
  17. 中路雅弘

    中路委員 いろいろ申請が出されても、総理府のほうでいろいろ理由をつけて、公務災害としての認定をするという点で、これがおくらされたりなかなか解決しないという問題があるわけですね。  総理府統計職組から出ている資料を見ますと、こういう問題についての交渉で、当局のほうが、仕事の量や密度からいっても仕事原因だというふうには考えられないという答弁をされているわけですが、この組合調査して、詳しくは紹介しませんけれどもいろいろ職場の健康についてのアンケート集計を見ましても、当局の言われるように、決して仕事原因だと考えられない、こういう状態ということには絶対ないと思うのですね。非常に異常な状態ですね。この頸肩腕症候群の初期の症状というのは非常に多くの皆さん訴えているわけなんで、職場状態からいっても、この発生の条件がないということは考えられないわけですし、またこれは、こういう状態は何が原因だと思うかというアンケート調査においても、千百名の調査で六四%の人が、仕事原因だというふうに答えています。あと、冷房だとか、あるいはいろいろ理由があがっていますけれども、実際に職場に働いている皆さんが、これは仕事原因だということで詳しく職場状態も報告されていますけれども、こういった点については、非常に神経を使う仕事の中でそれだけの病状が訴えられているわけですから、実際の例もよく検討をしていただいて、たくさん職場状態の詳しい訴えが出ていますけれども、きょう一々取り上げて私は問題にする時間もありませんから省略しますが、このような職場の現状の中で、定員増の問題やいろいろ職場状態改善もありますが、まず第一に、いま申請が出ている人たちについて、早急にこの認定の問題、あるいは職務上と認定をして治療の問題についても十分な対策を立ててもらうということを特に要望したいと思うのです。  この点については総理府の各職場からいろいろ訴えがある。特に統計関係が多いのですね。国勢調査を扱うところの職場なんかは、九五%の人がいろいろそういう症状訴えています。数字だけの記入だとか、ポチつけ、スタンプ押し、ホチキスの使用、集計用紙をめくる、数える、こういう仕事の動作の繰り返しですから非常に多い状態なんですが、この点について、これらのいまの新しい職場環境から出てくる、電子計算機の導入なんかに伴って出てくるこういう職業病について、十分な配慮検討が必要なんじゃないか。申請が出されてもいつまでもこれがおくらされている、医者に行くのにも職場も休めないという状態訴えられているわけですが、この点についてもう一度十分の検討をしていただいて、改善について思い切って公務員皆さんに対する処置をとっていただきたい。最後に大臣にお願いしまして、要望しまして終わりたいと思います。
  18. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 ただいま御指摘になりました総理府の、ことに統計局関係職員職場におけるところの客観的条件あるいはその他についての御指摘、非常に重要なことでもございますので、職員の健康の保持の意味からも非常に重要な問題でもございますので、御要望に相なりました点を十分踏まえまして配慮いたし、適切なる措置も講じてまいりたいということを表明申して、御理解をちょうだいしたい、こう思います。
  19. 加藤泰守

    加藤(泰)政府委員 お答えいたします。  公務関係があるかないかという問題につきましては、原因がどういうところからくるかという点、いろいろいわれまして、たとえば、睡眠不足だとか、あるいは体力低下だとか、あるいは特に女子に見られます美容のための減食とか、あるいは通勤距離の問題とか、そういうようないろいろなことが原因ではないかといわれますけれども、実際問題、医学界におきましてもそこがはっきりいたしていない現状でございます。したがいまして、その点につきまして人事院のほうに協議をいたしている段階でございます。  ただ、人事院のほうとのいろいろな資料の提出につきまして、いろいろ私のほうから必要な資料を出しているわけでございますが、一部の資料につきまして、治療者の方の、あるいはその治療者の加入している組合の方の同意が得られないために、その点ちょっと資料の提出ができない状態になっております。しかし、いずれにいたしましても、われわれとしては、できるだけ資料の提出ができるように関係者の方々によく理解していただきたい、こう思って努力いたしている次第でございます。  なお、具体的に、そういう病気が発生しないように、職場の立場でいろいろなことを考えていかなければならないと思っております。たとえば、先ほど御指摘のように、単純な作業を繰り返しているというような状態が続いているのも、あるいは一つ原因かもしれないというふうにも考えられますので、その点、われわれとしては、職場における配置転換等による、あるいは仕事そのものをできるだけ単純な形で繰り返しにならぬような配慮をするとか、あるいは健康診断等につきましても特に配慮を加え、あるいは職場そのものの環境についての配慮等も相当具体的にやっているつもりでございますが、御指摘のような点につきましては、さらにわれわれとして十分配慮してまいりたいと思っております。
  20. 中路雅弘

    中路委員 統計だけでも、これだけ膨大な職場のいろいろ資料を添えた訴えも来ているわけですけれども、私はやはり少なくとも、いま申請が出されている問題については、放置しないで至急これについての対策を立ててもらうということと、職場の健康の問題については特別の配慮をしていただいて、仕事上の問題や、あるいは労務管理上の問題、こういった点についても、もう一度実態を検討していただきたい。職場のこれで見ても、ほとんど九割以上の人たちが初期的ないろいろ異常な状態訴えているわけですね。これは事実なわけですから、これについての組合のほうからの要望についても十分検討していただくといけことを最後にお願いしまして、三、四十分で終わろうという約束でありましたので、これで質問を終わりたいと思います。
  21. 三原朝雄

    三原委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  22. 三原朝雄

    三原委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決いたします。  国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。
  23. 三原朝雄

    三原委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  24. 三原朝雄

    三原委員長 ただいま議決いたしました国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案に対し、加藤陽三君外四名より、自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の各派共同をもって、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者から趣旨の説明を求めます。加藤陽三君。
  25. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 ただいま議題となりました自由民主党、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党及び民社党の各派共同提案にかかる附帯決議案につきまして、提案者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗続いたします。     国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項についてすみやかに善処するよう要望する。  一 通勤公務との密接な関連性等にかんがみ、通勤途上災害は、公務上の災害とするよう検討を加えること。  一 業務上の死亡等に対する民間の法定外給付の実情にかんがみ、公務員の場合においてもその均衡を考慮して適切な措置を講ずること。  一 一般公務員が、特に危険をおかして業務を遂行しなければならない場合の補償についても、引続き検討を加えること。   右決議する。  本件の趣旨につきましては、先般来の当委員会における同僚議員の質疑を通じてすでに明らかになっておることと存じます。よろしく御賛成くださるようお願い申し上げます。
  26. 三原朝雄

    三原委員長 本動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
  27. 三原朝雄

    三原委員長 起立総員。よって、本案に対しては附帯決議を付することに決しました。  この際、坪川総務長官より発言を求められておりますので、これを許します。坪川総務長官
  28. 坪川信三

    ○坪川国務大臣 国家公務員災害補償法の一部を改正する法律案の御審議をお願いいたしましたところ、当委員会におきましては、連日にわたって真摯な御審議をちょうだいいたし、その間におきまして、適切なる御指摘また御要望の点、十分拝承もいたしておりますので、各委員から御指摘賜わり、御要望賜わりました問題点等につきましては、政府といたしましても十分その法の運用に万全を期して、御期待に沿うべく努力と御配意を申し上げたいと思う次第でありまして、その間、御要請いただきましたる委員各位、委員長の皆さまに対して、つつしんで敬意と謝意を表したいと思うのであります。  また、附帯決議として全会一致御決定、議決賜わりました三点につきましては、十分今後制度の運営の経験と照らしながら、労働省あるいは人事院等の関係機関とも連絡調整をはかりながら、前向きの姿勢でこれに検討を加えてまいりますことを表明申し上げて、御理解をちょうだいいたしたいと思います。  重ねまして、連日にわたる当委員会の御審議の御熱意に対し深く感謝を申し上げて、ごあいさつを終えたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)     —————————————
  29. 三原朝雄

    三原委員長 なお、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  30. 三原朝雄

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     —————————————
  31. 三原朝雄

    三原委員長 午後一時より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午前十一時十三分休憩      ————◇—————     午後一時七分開議
  32. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中路雅弘君。
  33. 中路雅弘

    中路委員 昨日お聞きした問題であと一、二、もう一度確かめたいのですが、今度の増員の全体の六千九百八十八名のうち、沖繩の配備ということで増員の要求をされているのが、陸海空合計しますと、昨年度分も含めて三千三百九名。そうしますと、今度の改正の定員増の約半分が沖繩配備ということになるわけですが、昨日の答弁でも長官が言っておられた定員増や予算のつく問題は、当然国会で審議にかけなくてはならない。この二法が今度の国会で成立しなければ、いま臨時という名前がついて送られている沖繩配備の部隊はどうされるのかということをもう一度承りたいと思います。
  34. 山中貞則

    ○山中国務大臣 たいへん意地の悪い質問のうちに入るわけでありますが、二年越し通らないで、したがって四十七年度からたとえば陸上の場合は千名をお願いし続けてなお今日に至っているということでありますから、今度はぜひ通してほしい、意見は十分お互いに述べ合っても、国会の手続上は通過成立をさせてほしいと願っておりますし、またこれは政府としてのお願いでありますし、したがってその願いがかなえられるものと信じておりますので、そういう御質問はたいへん意地が悪いということを申し上げたわけでありますが、しかしそれは、通らなかった場合に仮定上どうするかという問題でありますから、お答えをいたします。  したがって、通らない場合は、定員もしくは部隊名、そういうもの等は、国会の御承認を仰ぐべき事柄について意思を決定してもらえないわけでありますから、そのまま使うことは許されないわけでありますので、定員というものの増加もできませんし、南西航空混成団等に代表される名称も使うことはできません。したがって、いまの欠員等が相当あります中のやりくりというものの中でいたしております不自由さをなお忍びつつも、一応の沖繩の局地防衛、国土防衛の一端としての地域についての配備というものは現体制でいかざるを得ないだろう、そういうふうに考えます。
  35. 中路雅弘

    中路委員 現在、現地で聞きましたら四千八百人ですね。七月一日の久保・カーチス取りきめにほぼ近い部隊が送られているわけですが、そうしますと、現在の臨時の名前がついたまま送られている部隊、あるいは七月一日までに送る予定の部隊は引き揚げるつもりはない、解散するつもりはない、そのまま現地に、混成団というような司令部はできないけれども配置をする、そういうことですか。
  36. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ここらの点の合意の得られないことをきわめて私たちも残念に思いますが、そうせざるを得ないということであります。
  37. 中路雅弘

    中路委員 昨日の質疑でもありましたけれども、現在でも二万五千人の欠員がある。そういう中で増員が認められない場合でも、本土の欠員がある部隊をやりくりしても沖繩には約束しただけの部隊は送るということになるわけですね。文字どおり、そういう意味ではやみ部隊。国会で通らないということは、いかに必要性を強調されても、これは最高のシビリアンコントロールの——きのうも御答弁がありましたように、国会で増員が通らないわけですから、そういう国会の審議を無視して、防衛庁が独断で、また政府がこれを強行されるということになれば、実態は実際に行っているわけですから、国会の審議、法律というのは要らなくなってしまう、私はそういうように思うのですが、それでもなおこの久保・カーチス取りきめ、協定というのに、対米制約というもので国会の審議より以上に拘束される、縛られるということになるわけですか。
  38. 山中貞則

    ○山中国務大臣 そういうふうには考えませんで、これは憲法あるいは自衛隊法ともに国の法律でありますから、法律によってきめられたことはきちんと守る、当然のことであります。したがって、法律を経なければできないことは、法案が成立しなければできないということでありまして、やはり日本人同士で肩がわりしたほうがアメリカが居すわり続けるよりも私としてはよろしいという気持ちもあります。もし、アメリカが、いま一万名ほど撤退をしておりますが、それは全部自衛隊が引き継ぐ航空管制もしくはミサイル基地等の要員でございますけれども、こういうものは、おそらくアメリカが返還後、アメリカの基地機能は事前協議その他によって制約を受けることになりますから、機能の面において変化があるにしても、そこを裸で局地防衛の任務を全部捨てて撤退するかというと、私はなかなか帰らないのじゃないかと思うのです。その意味ではやはりアメリカ人に、まず外国人でありますから帰ってもらおうということの考え方も認めてもらってもいいのではないかという気もいたします。
  39. 中路雅弘

    中路委員 この問題は、これから具体的に沖繩の配備の部隊についていろいろ御質問してから、もう一度戻りたいと思うのです。  昨日も最初に、石川空幕長が沖繩へ行って記者会見をした話をしましたが、同じ石川空幕長が沖繩に行った同じ記者会見で、これはもう一つの琉球新報を見ますと、記者団の質問に答えてこういうように話しているのです。この問題は、今度の視察のときに、現地に行きまして内局からお答えはいただいていますけれども、重要な問題なのでもう一度御質問しますが、こう言っています。「沖繩め航空自衛隊の主任務は、外国の日本領空侵犯の防空措置であり、これまで三件の侵犯があり、同基地からF104J機がスクランブルに出動した」云々とあります。この記者会見では三件の領空侵犯ということばを使っておられますが、この事実はどういうことですか。
  40. 久保卓也

    ○久保政府委員 沖繩で現実に領空侵犯があったということではございません。ただ領空侵犯に至るおそれがあるということで領空侵犯に対する措置を行なったということで、これは北側から参りました、あとで確認したところではソ連機でありましたが、これが二回。それから日本海側から接近しました外国機に対して一回、これは一月であります。それから四月にも同様にスクランブルを三回実施をした。それから五月に二回。計八回になっております。
  41. 中路雅弘

    中路委員 空幕長はここでは「領空侵犯」と新聞記者会見で言っているんですね。領空侵犯となると問題は非常に大きいわけです。空幕長がこういう重要な発言をして新聞に出ている。侵犯でないとすれば、そういうことを語ってないとすれば、新聞に、それは違うんだ、領空侵犯でないんだという取り消しをされるのが当然だと思うのですけれども、空幕長という最も責任ある人が、領空侵犯が三回あったと新聞記者に言っている。取り消しもしていない。空幕長は領空侵犯というふうに考えているのじゃないですか。
  42. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは私も疑念に思いまして、きのうの質問以来調べてみました。それによりますと、ちょっと読ましてもらいますが、一問一答形式になっているのです。  まず最初に空幕長が、   本日は、臨時那覇救難隊の表彰に来た。同隊は配備以来、三十数回災害派遣に出て、四十余名の人命を救助した。この他に陸上自衛隊も多くの回数災害派遣をしている。     (暫時沈黙の後)  質問してよいか。  −どうぞ。  防衛二法が通らない場合は(沖繩配備は)どう  するか。  −臨時のままで置かれると思う。   (その場合)配備の変更はあるか  −変更のないことを希望している。こう言っておりますから、きのう私が、政策上の決定等に対して空幕長がそういうことを言うのはどうかということを言いましたけれども、そういうふうには言ってないようであります。  その次の領空侵犯事件でありますが、「沖繩の自衛隊の主な役目は」という問いに対して、  −本土と同じで、対領空侵犯措置で警察的措置である。   先日TU−95が来た時にやったように、向うも領空侵犯しないようにしている。向うは対馬、壱岐の間を(高度)二〇〇〇呎位で低く飛ぶ。去年(沖繩配備)以来、沖繩近くまで来たのは三件だ。  領空侵犯が三件か  −違う。領空侵犯ではない。沖繩の真西百浬くらいまで近づいて引返している。こういうふうに答えておりますので、報道の真偽の問題にも、このことが一問一答の内容である、これならば私は事実と違わない、こう思うのです。
  43. 中路雅弘

    中路委員 いままで、一月一日からアラートの体制に入っている。スクランブルは現在まで、先ほどお話しになりましたけれども、何回あったのか。それからソ連機あるいは民間機というのがありますが、それについて簡単にお尋ねしたいと思う。
  44. 久保卓也

    ○久保政府委員 スクランブルの回数は、ことしの一月が三回、二月が一回、三月はゼロ、四月が三回、五月が二回、それから六月が十三日まではゼロであります。このうち、先ほどソ連機に対するものが八回と申しましたが、一つの目標に対して二回スクランブルをやる場合もありますので、件数で申しますと、先ほどおっしゃった三件が四件になります。それから民間機に対するものは、私の手元の資料では一回になっております。間違っておりましたら訂正いたします。
  45. 中路雅弘

    中路委員 民間機のスクランブルの一回というのは、二月の一回ということですか。
  46. 久保卓也

    ○久保政府委員 さようでございます。
  47. 中路雅弘

    中路委員 それは私は、この沖繩に配備された沖繩航空隊のスクランブル、特に民間機にかけられたこの一回のスクランブルですね。二月十三日の沖繩航空所属のビーチクラフト機にかけられた航空自衛隊によるスクランブルの問題。     〔委員長退席、藤尾委員長代理着席〕 特に民間機にスクランブルがかけられたわけですから非常に重要ですし、沖繩県民が乗っている飛行機なわけですから、これに武装した戦闘機が接近するという問題です。雫石の場合は空包をもってのことですけれども、これは実弾をもってのスクランブルですから、この問題について少しお尋ねしていきたいと思うのです。  最初、事実経過を確認したいわけですが、この沖繩航空機に対するスクランブルですね。不明機としてどこで発見をされたのか、時間、位置等について最初にお尋ねしたいと思います。
  48. 久保卓也

    ○久保政府委員 二月十三日十時五分ごろに、宮古島の北方約九十キロメートルの地点で、宮古島サイトのレーダーで航跡を探知いたしました。ところが、飛行計画と照合いたしませんでしたので、宮古島及び与座岳の各サイトから、緊急周波数をもって交信をさらに試みてみたところ、それの連絡ができなかったということのために、不明機と判断をいたしまして、那覇基地から104Jの緊急発進をして、那覇西方の約九十キロメートル上空でこの航空機を発見をして、いま言われましたような、沖繩航空所属のビーチクラフトであることを確認いたしたということであります。
  49. 中路雅弘

    中路委員 宮古のレーダーが発見したというお話ですが、私が現地で聞いたのは、与座岳が見つけたということをいっています。これは宮古に間違いありませんか。
  50. 久保卓也

    ○久保政府委員 間違いございません。
  51. 中路雅弘

    中路委員 もう少し時間をお聞きしたいのですが、不明機として発見したのが宮古の北方九十キロ、十時五分ごろというお話ですが、そしてスクランブルが那覇西方九十キロ。十時五分に発見してからスクランブル命令が出たのは何時かということと、この那覇西方九十キロの上空でコンタクト、確認されたのは何時かということについても、最初に確認しておきたいのでお答え願いたい。
  52. 久保卓也

    ○久保政府委員 発見時刻は十時五分、これはレーダーサイトで発見をしまして、そして……
  53. 中路雅弘

    中路委員 スクランブル命令が出たのはいつですか。
  54. 久保卓也

    ○久保政府委員 スクランブル命令が出まして、十時七分に発進下令が出まして、離陸をしたのが十時十二分。それからこの航空機が到着帰投いたしました着陸時刻が十時四十六分。それからおそらく確認をした時間が十時三十分であろうと思います。
  55. 中路雅弘

    中路委員 あとから御質問していくのに必要ですからもう一度正確に確認していきますと、宮古の北方九十キロで十時五分に発見をした。そしてスクランブル命令が十時七分に出た。五分ぐらいかかりますからそのとおりだと思うのですが、発進が十時十二分、そして那覇西方九十キロの上空で確認したのが十時半ごろというお答えですね。これに間違いありませんか。
  56. 久保卓也

    ○久保政府委員 間違いありません。
  57. 中路雅弘

    中路委員 これはどこの資料ですか、現地の報告ですか。
  58. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは空幕からの資料を私が手元に持っておるわけでして、この空幕の資料はおそらく現地からの報告ではないかと思います。
  59. 中路雅弘

    中路委員 ちょっとこれから質問するので地図をつくってきた。あけていいですか。
  60. 藤尾正行

    ○藤尾委員長代理 どうぞ。
  61. 中路雅弘

    中路委員 最初に航空自衛隊のF104のことからお尋ねしますけれども、F104のスクランブルにおける速度はどのぐらいですか。
  62. 久保卓也

    ○久保政府委員 正確には存じません。
  63. 中路雅弘

    中路委員 私は今度現地へ視察に行ったときに説明を受けた。その前に、これは委員会で視察に行った方皆さんごらんになったと思うのです。104は二マッハというのが書いてありまして、たしか東京−大阪十分という説明がありました。私がパイロットに聞いたのです。二マッハだけれども、しかし、普通スクランブルのとき最高の二マッハ出ないだろう、やはり低空から飛ぶから。どのぐらいのマッハでスクランブルをかけるのだという話をしましたら、一・六から一・八マッハ、大体一・八マッハだという話なんですね。  それからお尋ねしますけれども、七分にスクランブル命令が出て十二分に発進しますね。十二分に発進して三十分にコンタクトする。十八分あります。一・八マッハでしても、この九十キロは五分で行ってしまうのです。三倍以上向こうに飛んでしまうのです。これはどうしてこういうことが起きるのですか。
  64. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは単純な計算ではまいりませんで、航空機が上昇過程に時間をかけます。この航空機は三千フィートの高度をたしか保っておったと思いますけれども、三千フィートにこの104が到達するその時間と、それからあと追尾する時間、これを計算しないといけないと思います。  それから一・七もしくは一・八マッハというお話でしたけれども、この点は私は少し再確認をする必要があるのではなかろうか。通常巡航の場合にはもちろん一マッハ以下で飛んでおりますけれども、スクランブルでありますから当然もう少しスピードは出ましょうけれども技術的にいまの三千フィートまで上がる上昇時間と、それからその後のスクランブルの時間、これを計算してみないと一がいには申せないのではなかろうかというふうに思います。
  65. 中路雅弘

    中路委員 私もその程度はわかっていますから、だからパイロットによく聞いたのですよ。低空から飛び上がるわけですからね。上空を垂直で飛んでいるわけじゃないから二マッハでいかないだろう、もう少し落ちるのじゃないか、それでスクランブルをかけた場合どのくらいなんだ。それで一・八、落ちても一・六ぐらいだという話なんです。一・六、一・八にして大体四分、五分ですね。わずかの差じゃないです。十八分飛んでいるわけですからね。こちらへこれはひとつおいておきましよう。  ビーチクラフトのほうからいきますけれども、これは民間機だから御存じないかもしれないけれども、この沖繩航空のビーチクラフト、大体時速どのぐらいか御存じですか。
  66. 久保卓也

    ○久保政府委員 百八十ノットだそうであります。
  67. 中路雅弘

    中路委員 航空自衛隊のビーチクラフトでどのくらいですか。
  68. 久保卓也

    ○久保政府委員 ちょっと手元の資料さがせば出ると思いますけれども、おおよそ同じ程度のスピードではないかと思います。
  69. 中路雅弘

    中路委員 これも現地で聞いたのですが、航空自衛隊のビーチクラフトで最高三百八十五キロという話を聞きました。それで、この沖繩航空は普通定期でどのぐらいのあれで飛んでいるか、時速二百二、三十キロ、二百五十キロまでだ。実際、定期に出発しますと、石垣から那覇まで一時間四十分なんです、航空時間で調べますと。ほぼそのくらいの時間だと思います、四百キロくらいありますから。それで計算しますと、十時七分に宮古北方九十キロで発見して、それから三十分、那覇西方九十キロになると、向こうに書いてあるように、直線でも百六十四キロある。したがって、これを飛ぶためにはビーチクラフトの能力を倍にしなければだめだ。二十三分。だから、とうていこのビーチクラフトは、スクランブルをかけたという那覇西方九十キロには行かないのです。スピードが少し変わったとか、航路が少しずれたとか、そういうことになる。実際には倍かかるわけですからね。これはどうしてこういうことになるのですか。
  70. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは具体的な事実関係でありますので、事実そのものを調査しませんと、私の手元の資料の範囲内ではお答えいたしかねます。
  71. 中路雅弘

    中路委員 私が質問をしようと思っているのは、この事実確認からこれから質問しようと思っているのですよね。これがこういうことじゃあと質問ができない。しかもあなたたちは、現地の正規の機関からこの報告をとっておられるわけでしょう。この報告をとって、私のようなしろうとでも、両方の飛行機のスピードを考えれば、当然こんな報告がでたらめだ、道理に合わないということはわかるわけなんですけれども資料要求したときにどうしてこういう報告を私たちに出すのですか。あなたたちは、これがでたらめな報告だ、少なくともおかしいというふうに気がつかれなかったですか。
  72. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは時間と距離の関係は、具体的に民航機の飛ぶコース、及び自衛隊機が当然まっすぐ飛ぶわけでもありませんで、スピードが速ければ速いほど、滑走路から離陸しましてあと上昇過程に、どういうふうなコースをたどって目標機に接近するか、それのコースのいかんをあわせて計算しなければいけませんので、直線距離だけでは必ずしも計算できないのではなかろうかというふうに思います。
  73. 中路雅弘

    中路委員 運輸省から報告とったのです、スクランブルを受けたのは何時かと。運輸省の報告がここにありますが、運輸省は十時十五分、ほぼ地位は同じ地位です。十時三十分でも半分しか行っていない。倍スピードを出さなければ行けない。十時十五分の運輸省の報告だったら、なおさらこれはとうてい行けないですね。いま局長が言われたように、少々、いろいろいまのお話のことを加味したって、とうてい考えられないです、この報告は。子供だましのような報告、それを現地から正式の報告をとって防衛庁は、これがスクランブル、しかも沖繩へ配備された航空自衛隊が民間機にかけた最初のスクランブルです。県民に対して加えたスクランブルです。みな乗っているのです、要員が、県民が。実弾を持ってスクランブルをかけて、それについてこんなでたらめな報告、そのまま承知しているのですか。これではこれからあと質問できないです、全然合わないのですから。実際のスクランブルのいま言われた民間機の時間と位置、少しぐらいずれているというのじゃないですよ。二倍も三倍も違うのですよ、時間と位置から言って。どちらから見たって合わないです。
  74. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは私は、現地の部隊がでたらめな報告をするとは信じませんし、そういう必要もまたないわけでありまして、この報告は正しいものと思いますけれども、いま御指摘の点からすると、合理的な説明を私ができませんので、この御質問のうちに具体的なデータを空幕のほうに調べさせたいと思います。
  75. 中路雅弘

    中路委員 じゃ委員長にお願いしておきたいのですが、この問題だけ報告が出てから質問さしてもらっていいですか。保留しますから、いいですか。
  76. 藤尾正行

    ○藤尾委員長代理 けっこうです。
  77. 中路雅弘

    中路委員 じゃもう一つだけあわせて聞いておきますが、フライトプランですね。飛行の計画書、これは出ていたわけですか。
  78. 久保卓也

    ○久保政府委員 このフライトプランは出ておったわけでありますが、たまたまこの民航機の出発が四十分おくれたわけであります。そこで、通常の場合ですと、十五分以上おくれる場合には那覇空港事務所に緊急連絡をするようになっているそうでありますけれども——失礼しました。四十分おくれていたということと、それからこの民航機が飛び立ちました航空基地には運輸省の出先の機関がなかったということで、那覇の空港事務所のほうに連絡するゆとりがなかった。ゆとりといいますか、そのすべがなかったといいますか、あるいは本人の着意がなかったといいますか、そういうようなことで、いずれにせよ、那覇空港事務所のほうにその四十分のおくれというものの通知がなかったということと、それから通常のコースから事前に受けておりましたフライトプラン、飛行計画に対しまして、約四十キロでありましたか、コースがはずれておったということで、自衛隊側のサイトでは、これはあらかじめ受けているフライトプラン、飛行計画にある航空機とは別のものではなかろうかという疑念を抱いて、いわゆる不明機として出発さした、スクランブルをさしたということになっております。
  79. 中路雅弘

    中路委員 いま藤尾さんがかわっていったときに、この問題だけ保留してあらためて質問さしていただくということを確認していますから、それ承知しておいていただきたいのです。  ただ、同じ調査してもらう上で、幾つか一緒に話しておいたほうがいいですからもう一、二お尋ねしますけれども、いまのフライトプランの問題についても、私は実情を全く知られていないと思うのですね。事前にプランを管制に送るというのは計器飛行の場合。有視界飛行の場合は事前のプランの提出は必要ないわけです。離陸したときに送るということになっている。これも現地で聞いたのです。ただ沖繩の場合、いまおっしゃったように、離島が多いから至急に連絡をとるのもたいへんだというので、電話の連絡通信でも二、三時間かかる、特急でも三十分かかるので、内地と通信状態が違うから、この場合は前日にフライトプランを出しているのですね。十三日に飛んでいますけれども、十二日にフライトプランはすでに出されている、こういう事情もありますから、その点も、フライトプランが出ているのだけれども少しおくれたか何かが確認できなかったというのも、少し実情と違うわけです。  それからもう一つは、航路がはずれたというお話ですけれども、これも沖繩の事情を全く航空自衛隊は知らないのじゃないですか。沖繩に南西航空があります。沖繩航空とは別にですね。南西航空というのは、これは石垣から那覇まで大体直線でこう飛んでいるのです。この南西航空の航路と重複を避けるために沖繩航空はこの久米島寄りの幅十マイルのブラボー62という航路を飛んでいるのです。重複を避けるために航路としてきめられて、この時間にそこを飛んでいるのです。あなたたちが言うように、航路をはずれているのじゃないのです。初めから南西航空と沖繩航空というのはそういう航路をきめて、重複を避けるために飛んでいるわけなんです。航路がはずれたからスクランブルした、これも実情と全く違うわけですが、こういう点はあらためてお尋ねしたいので、一緒に調べておいていただきたい。いいですか、いまの点。
  80. 久保卓也

    ○久保政府委員 調べさせますが、ただ、南西航空との関係は存じておりませんでしたけれども、この沖繩航空の飛行機は航空路の中心線から約四十キロ離れていたという報告であります。そこで、いま十マイルとおっしゃいましたが、その場合ですと約十八キロになりますので、私どもの見方からすると、航空路から離れたものというふうに理解したのだろうと思いますが、いずれにせよ調べてみます。
  81. 中路雅弘

    中路委員 それでは、同じこの問題ですが、もう一つ御質問しますけれども、このスクランブルはだれが命令したのですか。
  82. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在は沖繩の与座岳にありますADDC、DCサイトの先任指令官でありますが、この民航機の場合には、まだ米側がこのサイトを管理しておりますので、われわれはADOTというふうに呼んでおりますが、自衛隊の連絡員がスクランブルの指揮をとることになっております。これは委任されておるわけであります。
  83. 中路雅弘

    中路委員 現地で聞いたときは山田将補ですが、私がスクランブルを命令したのだと、何度も私は聞いたのです。あなたの責任でやったのかと聞いたら、私の責任でやったのだということを言う。現地へ三月の下旬に私が行って山田将補と対談をしたときに、何回もこの問題を聞いたのですが、私がやったのだということを最後まで突っぱりました。これは間違いありませんか。
  84. 久保卓也

    ○久保政府委員 私が聞いておりますのはいま申し上げたようなことでありますが、責任が山田将補にあるというのは、最終責任はあるいはそうかもしれません。ただ現実には、この事態の軽重によって違ってくるわけでありますが、通常は、DCサイトにあります普通の場合であれば先任の指揮官、指令官でありますけれども、この場合はADOT、連絡員というものでやったというふうに聞いております。最終責任が山田将補であることは間違いないと思います。
  85. 中路雅弘

    中路委員 山田将補のことでもう少し聞きたいのですけれども山田将補の肩書きは、今度視察に行ったときも同じですけれども、名刺ももらっていますけれども、臨時那覇基地隊司令ですね。この航空自衛隊のF104の航空隊と山田空将補とどういう関係にあるのですか。
  86. 久保卓也

    ○久保政府委員 あるいは私が誤解したかもしれません。基地隊司令は基地の管理業務を行なう部隊の司令でありますから……。
  87. 中路雅弘

    中路委員 南西航空団はまだできてないのだよ。
  88. 久保卓也

    ○久保政府委員 基地司令といいますのは、本来その基地の管理業務を行なうもので、この管制業務に直接タッチするものではございません。ただおっしゃいますように、現在の第一線部隊の編成ができておりませんので、一応この基地司令に統制権、指令業務に対する統制を行なうことができるというのを幕僚長の達で出しております。そのことによって、指揮権は持っていないけれども、この基地司令が一応統制という範囲内で責任を持っておる、こういうことのようであります。
  89. 中路雅弘

    中路委員 これは非常におかしいと思うのですね。まだ全部臨時ですよ、沖繩へ派遣しているのは。航空隊も臨時ですね。臨時の那覇基地隊ですよ。山田空将補が司令であるのも。管制隊もそうですね。現在はみんな並列して西部航空隊に指揮を受けているのじゃないですか、臨時という名前のもとに。そうでなかったら、あなたたちが派遣した臨時という形にはならないでしょう。山田空将補がスクランブルのところにどんなことがあっても出てくるわけがない。いまおっしゃった達というのはどういうやつなんですか、詳しく……。
  90. 久保卓也

    ○久保政府委員 達といいますのは、幕僚長が口頭で命令するかわりに文書の形で任務付与をしておるというものでありますが、本来、おっしゃいまするように、基地司令がこのスクランブルの権限に関与することは通常の場合はございません。ただ、いまのところ、警戒管制業務というものが西部方面隊に直属するという形でやりにくいということで、全般的な統制をやるということで、具体的なたとえばスクランブルを上げた後にどういうふうにやる、どういうようなスクランブルのしかたをするということは、これはその統制の及ぶ範囲ではないということで、基地司令のほうで自分の責任だというのは少しオーバーな表現であったように私は思います。
  91. 中路雅弘

    中路委員 西南航空団というのはできてないでしょう。司令部もできてない。スクランブルの命令をするという現地の部隊、現地のこの那覇基地隊ですね。これの司令は全くスクランブルとは関係ないわけですね。それが関係を持つようになれば航空師団の司令部ができたことになる。できなければこういう権限は持てない。  もう一つこっちの面からお尋ねしますけれども、久保・カーチスの取りきめ四項Cに「沖繩の防空の運用責任は、自衛隊が一九七三年七月一日までの間にその責任を引き受けるときまでは、合衆国空軍が保持する。ただし、自衛隊及び合衆国軍隊に対する指揮は、それぞれの国の指揮系統を通じて実施される」というのがあるわけです。一月一日から引き継いだというのは航空機とパイロットを引き継いだわけですね、もっと正確に言えば。二月の段階で、当然ですけれども、その他の防空の組織は引き継いでないわけです。それでどうして日本の、だれがやったかというのはまた別にして、航空自衛隊に、スクランブルの命令を出す、あるいはそのスクランブルの発進をかける判断をやることができるのかどうか。だれが不明機を発見してこのスクランブルの命令を出したのか。
  92. 久保卓也

    ○久保政府委員 自衛隊が対領空侵犯に対する措置を講ずることができるのは自衛隊法そのものに書かれてあるわけでありまして、これは、対米関係がいかようなことがあろうと、自衛隊の任務として本然的に持っております。ただ、沖繩におきましては自衛隊側の準備ができておりませんので、一月一日からは領空侵犯に対する措置はわがほうで引き受けますよというようなのがいわゆる事務的と申されるその取りきめの内容でありまして、全般的な防空そのものは七月一日以降は米側は解除されますよというのが取りきめの内容になっております。したがって、隊法のたてまから申しても当然のことでありまするし、沖繩現地における実情及び取りきめの内容からすれば、一月一日以降におけるスクランブルについては、これは対領空侵犯措置ということでありまするので、自衛隊が持ち、しかも米側が管理しておる施設、たとえばDCサイトで、米側の指揮によるものではなくて、そこに配置されておる自衛隊の隊員の指揮によってスクランブルがかけられるというのが当然の理であろう。従前、三十何年ごろに本土でレーダーサイトが逐次返還され、あるいは航空自衛隊の建設過程のときにも同じような事情があったわけであります。
  93. 中路雅弘

    中路委員 もう少し聞きますが、たとえばこれは、発見するレーダーサイトにしても、この二月の時期は、レーダーサイトに対して小規模の引き継ぎのための訓練の要員、これが派遣されていた時期だと思うのですね。完全に引き継がれていない。だからレーダーサイトそのものも、引き継ぐといっても、まだほんとうの小規模の訓練あるいは連絡要員しか派遣していなかった、こういう状態じゃなかったのですか。
  94. 久保卓也

    ○久保政府委員 このころは当然そうであろうと思います。したがいまして、久米島等のレーダーサイトで航跡をキャッチしました場合には、それをDCのサイト、与座岳のサイトに送るわけでございます。そして与座岳のサイトで米側の係員も見ておりますし、航空自衛隊の隊員も見ておる。そこでその不明機に対して、これはスクランブルをかけるかどうかを判断するのが自衛隊側である、こういうことになります。したがって、技術的、機械的にいろいろのデータがDCサイトに送られるのは、当時であれば米側の手を通じて送られておったであろうということになります。
  95. 中路雅弘

    中路委員 DCというのはまだ日本に引き継がれていないわけですね。CCも当然そうですね。七月一日にならなければまだ引き継がない。全体としてアメリカがこれを握っているわけです。レーダーサイトでも、いま言ったように小規模の訓練要員しかない。一月一日に日本が引き継いだのは、先ほど言ったように航空機とパイロット。しかし全体の防空管制の組織はまだアメリカが握っている、そういう中で起きた問題である。当然、これは国籍不明機として判断するのも、アメリカがまだ握っているわけですから、判断する。スクランブルについても、このDCは日本にまだ引き継がれていないのです。連絡員は置いていたかもしれない。防空を命令する、まだこの問題については日本に引き継がれていないのです。それでいて命令する権限ができたとすれば、司令部ができたこと、引き継いだことになるのじゃないですか。
  96. 久保卓也

    ○久保政府委員 一月一日に領空侵犯に対する措置をわがほうが引き受けることになったということは、パイロットと航空機を引き継いだということではございません。つまり領空侵犯に対する措置という機能をわがほうが引き受けるということになるわけであります。そこで、その機能をどういうように働かせるかということは、これは米側と話をして、米側の施設の中に入れられている自衛隊の隊員が隊法に従ってスクランブルを指令するということは当然のことであろうというふうに思います。それは施設の問題あるいは機能の問題ということとは別個にお考えいただきたいと思います。
  97. 中路雅弘

    中路委員 これも現地で確かめた。CCの施設は二4(a)になる。建物は二4(a)になる。引き継がれるときですね。しかし六月末、七月一日にならなければ機能は引き継がないんだという話を現地はしているわけです、日本は連絡員を出しているけれども。また、引き継いだとすれば、これはいまの沖繩の南西航空団の司令部の設置ともからんできまずから、私は重要な問題だと思うのです。  じゃこの問題をもう一つ別の角度から質問してみます。もう少し初歩的に聞きますけれども、ADDCとかADCCというのは訳しますと何というのですか。
  98. 久保卓也

    ○久保政府委員 ADCCは防空指揮所、それからADDCは防空管制所——間違えました。ADCCは防空管制所、ADDCは防空司令所という名前になっておるようであります。
  99. 中路雅弘

    中路委員 あなたが約束して、取りきめでこれから引き継ぐ組織ですから、間違えられると困るわけです。  そうしますと、このスクランブルの命令はどこで出すわけですか。どちらですか。
  100. 久保卓也

    ○久保政府委員 これはDCサイトのほうで出します。
  101. 中路雅弘

    中路委員 もう少しこまかく聞きたいのですが、DCの機能、CCの機能、簡単に言いますとどういうことでありますか。
  102. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは本土でも同じでありますが、ただ本土のバッジ組織があるのと違って、手動組織になっている点が違うだけでありますけれども、機能的にはDCサイトのほうではレーダーを持っております。CCのほうでは持っておりません。つまり言うならば、CCというのは作戦といいますか、戦闘の指揮本部というようなところであります。DCのほうはレーダーは持っておりまして、自分で情報を集め分析をし、そして航空機、防空機能、これはナイキを含みますけれども、防空機能に対する指令をすることができます。その情報はCCのほうに伝達されて、司令官なりその代理の者が、全般の防空関係、あるいはそれ以前の段階の航空機の飛行状況がどうなっているか、それから航空基地、あるいはわが方の防空機能はどうなっているかということをデータをもって知って、ボードの前ですわって全般の指揮統制を行なっております。DCの場合には情報がまっすぐレーダーを通じて入ってくるという関係上、きわめて時間的なおくれが少ないわけでありますが、CCのほうはレーダーを持っておりませんから、その分だけ若干ボードに書き込んだりする関係上、正確度もやや粗になりますし、時間的なおくれが若干あるというような違いがあります。いずれにせよ、第一線の指揮組織と、それからその上の本部的な統制組織というふうな違いがあろうと思います。
  103. 中路雅弘

    中路委員 装備年鑑、七三年のは、きのうもらったから見ている間がないので、前の七二年の装備年鑑で見たのですが、図解をして詳しくDCとCCの機能についてここに書かれておる。絵で書いてあるから私たちにもよくわかるのですが、このDCは、いまおっしゃったように、レーダーに対する指示もある。それからナイキもついていますし、航空機に対する指示、スクランブル、これもDCの機能の中に含まれているわけです。これは間違いないのですか。
  104. 久保卓也

    ○久保政府委員 そのとおりであります。
  105. 中路雅弘

    中路委員 それではこのDC、CCは、久保・カーチスの取りきめに基づいて、いまこの状態で七月一日になった場合に、取りきめどおり日本に引き継がれるのですか。
  106. 久保卓也

    ○久保政府委員 DCサイトはすでに引き継がれたように思いますが、CCが七月一日の予定になっております。
  107. 中路雅弘

    中路委員 これは長官にお聞きしたいのですが、DC、CCはいまお話しのような機能を持っている。現在は臨時という名前で、先ほどお話したように那覇基地隊、F104Jの第八十三航空隊、南西航空警戒管制隊、ナイキの第五高射群、これは臨時だから全部並列して西部方面隊、春日につながっているわけですね。そうすると、返ってくるDC、CCというのはこの中のどこの部隊に入るのですか。
  108. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは二法案の通過いかんによって違ってくるわけでありまして、通過以前でありますと航空総隊の下の西部航空方面隊に所属しますし、それから二法案によりまして南西航空混成団ができますれば、それが西部航空方面隊に所属をする、こういうことになります。
  109. 中路雅弘

    中路委員 これも私は今度視察に行ったときに現地で何回か確かめた。七月一日にこのままになって返ってくるのか、返ってくる場合にはこのDC、CCはどこの部隊に所属するんだと聞いたら、南西航空警戒管制隊に所属をしますというのが現地の制服の人たちみんなの話。一人じゃないです。関係者に何人も聞いたのです。これはどういうことですか。
  110. 久保卓也

    ○久保政府委員 それはそのとおりであります。ちょっと御説明が不十分でありましたが、つまりDCサイト、それからCCのサイトとも、これは警戒管制の関係の部隊でありますので、南西航空警戒管制隊に所属するわけでありますが、飛ばしましたけれども、その南西航空警戒管制隊が、二法案が通過すれば南西航空混成団に所属する、以下は同じわけであります。
  111. 中路雅弘

    中路委員 だから私がお聞きしたいのは、七月一日に返ってくるDC、CCの実際の機能は司令部的な機能ですね。機能的には司令部なんです。二法案が通らなくても、七月一日になればアメリカはこっちへ引き継ぐ。そして司令部的な機能を持つDC、CCが南西航空管制隊に入る。DC、CCの機能は、ナイキについてもF104についても、レーダーについても指揮をするという機能を持っているわけでありますから、そうなれば、名目的にまだ混成団というのはできてなくても、事実上司令部の機能はここででき上がる。いま並列になって西部につらなっているこの部隊は、返ってきたこの機能によって全部つながって、実際には混成団の指揮、司令部の機構というのが事実上でき上がるわけです。いわば、法案が通らなくても司令部の先取りになる。そういうことにならないでしょうか。長官、どうでしょうか。
  112. 久保卓也

    ○久保政府委員 それはちょっと違うのでありまして、このDC、CCが返ってまいりました場合に、二法案が通過する前の段階であれば、当然現在の臨時沖繩航空警戒管制隊というものとして部隊が編成されるわけであります。その臨時沖繩航空警戒管制隊というものが西部航空方面隊にまっすぐ所属をしている。指揮系統としてはそうであります。ところが、そのほかに二法案が通過しない場合に、臨時高射訓練隊というもの、あるいは臨時第八十三航空隊という飛行機の部隊、こういったものが並列的に存在をするというその実態は何ら変わらないのであって、これをどういうふうに運用するかということ、これはいま言われましたように、F104の航空部隊に対するスクランブルの指令もここのDCサイトから参りますし、それからナイキの部隊に対する、あるいはまたホークの部隊に対する連絡もこのDCサイトからいくということで、これは運用の問題であります。したがって、指揮系統、指揮組織の問題としては、この二法案が通過しない場合に南西航空混成団ができないという場合の運用のしかたというもの、これはやはり対空機能というものを一元的に運用する必要がありますので、DCで連絡をし統制をしてまいる、指揮もする。これは、その指揮なり統制なり連絡なりというのは、それぞれの段階に応じてことばが違ってまいろうと思いますけれども、そういうことになるわけでございます。したがって、司令部組織ができるというような考え方ではない。単純に防空機能に対してこのDCサイトはどういうふうにするかということと、各部隊の上級組織というのは、単純に防空の指揮命令だけではありませんで、人事権からいろんな管理業務に関する権限その他すべてを持ったものが、これは指揮系統のもとにおける上級司令部になるわけで、そういうものは二法案における南西航空混成団ができなければ存在をしないということであります。
  113. 中路雅弘

    中路委員 だから私の言っているのは、名目的な司令部はできない。もちろんつくれない。しかし、運用だとか、いまいろいろ言われました実際の統制機能ですね。司令部としての機能、ナイキに対する、あるいはスクランブルに対する航空隊の指揮命令、こういった実際の機能、司令部がやらなければいけない機能は事実上ここにでき上がるじゃないか、引き継げば。ということで、確かに名目は司令部はできない。これは法案が通ってないのだから、司令部をつくるというわけにはいかない。しかし、沖繩において現にその司令部の機能は、国会の審議とは関係なしに、アメリカから引き継げば、当然そういう機能は果たしていかなければならないということで、事実上の司令部の機能はそこで働いてくるじゃないかということを私は言っているわけですけれども、しかし、この問題と、先ほどここで質問した二月の段階でのスクランブルの命令の問題、みんな関連してますから、あらためてもう一度この点はその機会にもお尋ねしたいと思います。  もう一つ、二、三お尋ねしますけれども、このCCが返ってきた場合に、米軍の担当幹部あるいは連絡員、それが配置されていると聞いていますけれども、実際配置されるのか、どのような任務をもって配置されるのか、もし配置されるとすれば。
  114. 久保卓也

    ○久保政府委員 本土におきまするレーダーサイトは、当初米側が運用しておりましたが、昭和三十三年から五年にわたって逐次航空自衛隊に返還をされてまいりました。航空自衛隊に返還になって、長い間米側が、先ほど申しましたが、英語で言いましたADOT、防空連絡員という意味でありますが、その連絡員を自衛隊に返還されました本土のレーダーサイトに配置をしておりました。その米側の連絡員が、当時おりました米側の航空基地における本部のほうにそれぞれ連絡しておったというようなのと同じ状態がこのCCにおいては行なわれます。ただし、本土よりも規模が小さくて、いまのところこのCCに置かれるということだそうでありますが、私が聞いておりまするのは、返還後は約二十名ぐらい配置されるであろうと聞いております。
  115. 中路雅弘

    中路委員 嘉手納の空軍のほうには、今度は逆に自衛隊を送る。管制をやってますね。そこにこちらのほうが送るということはあるんですか。
  116. 久保卓也

    ○久保政府委員 この嘉手納でやっておりまするのは航空管制業務でありまして、これは別個の問題になりますが、いまの嘉手納における空軍の機能に関連をして、自衛隊が何らかの連絡員を置くかという問題については、いまのところ全く計画はございません。
  117. 中路雅弘

    中路委員 実際にDC、CCが返ってきても、いまお答えのように、そこには二十名からのアメリカのほうも人を送るということですから、決して沖繩の防空の責任を引き継いだとか肩がわりしたという単純な問題じゃないと私は思うのです、今度の事実は。沖繩でこのような特殊な体制がとられるということは、沖繩の防空の責任を直接アメリカから肩がわりしたというのではなくて、文字どおりアメリカとの共同作戦行動。レーダーの情報も当然交換されるでしょう。さらにいえば、アメリカの担当幹部、将校によって、ある場合には事実上CCが指揮されるということにもなるのではないか。形の上ではスクランブルについて、系統では日本の自衛隊の幹部がスクランブルの命令を出すでしょう。しかし、判断やそういう点については共同の作戦の体制になる。肩がわりだとか引き継ぐというような問題ではないだろうというふうに思うのです。また、F104Jの戦闘機が一月一日からアラートの任務についていますけれども、嘉手納のF4Cファントムによるアラート、あるいは第十五戦術偵察中隊のRF4Cによる偵察飛行、これはさらに続行されると思うのですが、そのとおりですか。
  118. 久保卓也

    ○久保政府委員 嘉手納には第十八戦術戦闘部隊が存在をするわけでありますが、その実体の大部分は現在台湾に行っていると思います。しかし、本部そのものは残っているようでありますが、いまF4がスクランブルの体制にあるかどうかについては私ども承知しておりませんし、外務省のほうでも関知しておらないようでありまして、その実態はよくわかっておりません。
  119. 中路雅弘

    中路委員 これだけであまり時間をとってもあれですから、もう一つ二つ聞いておきますが、スクランブルの機能の問題ですね。確認をする、それからCAP行動をやっていくということは当然でありますが、自衛隊法の八十四条に領空侵犯に対する問題で「必要な措置」というのが書かれていますが、この「必要な処置」の中に、いわゆる攻撃といいますか、撃墜といいますか、射撃ですね、これは入っているのですか。
  120. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは、武器を使用する以前の段階で、いろいろな領空侵犯に対する措置を講ずる手だてが国際法的にもあるわけでございますが、それ以外にどういう場合に武器を使用するということは、外国の場合と違いまして、緊急避難及び正当防衛の場合にしかわがほうは武器を使用しないということになっております。したがいまして、その範囲内のものであれば入るだろうと思います。
  121. 中路雅弘

    中路委員 松前・バーンズ協定に基づいて「日本の防空実施のための取扱いに関する通達」というのが出ていると聞いております。三十四年の九月二日。また、この松前・バーンズ協定の中でこういう節があるのです。いまおっしゃった、日本の場合は外国の場合と違うというお話と関連して、この松前・バーンズ協定の中に、「総隊の要撃機は航空自衛隊の要撃準則を守り、アメリカの第五空軍の要撃機は太平洋空軍の交戦準則を守るものとする」というのが書かれていますが、日本の場合は外国の場合と違う。当然、交戦権が禁止されていますから、違いがあるわけですが、この航空自衛隊の要撃準則というのを出していただきたいと思いますが、どうですか。
  122. 久保卓也

    ○久保政府委員 要撃準則というのは一応秘書類になっておるそうでございまして、この点については、帰って内容をよく吟味をして検討してみたいと思います。
  123. 中路雅弘

    中路委員 しかし、これは松前・バーンズ協定でも出ているわけですし、スクランブルの場合にどういう行動をとるのかということについて、日本の場合は、交戦権が禁止されているという関係で自衛隊がどういう準則をつくられているのかということについて、どうして出せないのです。
  124. 久保卓也

    ○久保政府委員 私も一応読んだことがありますが、おそらく格別困ることもないような気もいたしますけれども、秘書類になっておりますので、私一存でもいきません。したがいまして、空幕ともよく相談して、どういう点が問題であるかを確認した上で、あるいは内容を御説明するようなことにしたいと思います。
  125. 中路雅弘

    中路委員 いまの点は、ひとつぜひ出していただくということでお願いしたいと号います。  それでは、いまの航空の問題は、あらためてスクランブル問題と関連してあとで質問したいと思います。
  126. 三原朝雄

    三原委員長 不規則発言は停止願います。
  127. 中路雅弘

    中路委員 別の問題になりますけれども、沖繩の協定以前のアメリカの任務、米軍が持っていた機能、そういった中で、いま沖繩に配備された航空、陸上、海上の自衛隊が、簡単にいってどういう任務を引き継ぐのかということについてお尋ねしたいと思います。
  128. 久保卓也

    ○久保政府委員 これはまさに久保・カーチス取りきめの中に書かれておる事柄がそれに該当するわけでありまして、防空、領空侵犯措置、それから海上の救難、陸上における防衛、哨戒任務といったような、まさにそこに書かれているとおりのものがわがほうに引き継がれるということであります。
  129. 中路雅弘

    中路委員 これは四十四年の七月十日の参議院内閣委員会の議事録ですが、沖繩のアメリカの基地、米軍がどういう機能を果たしているか、その中で引き継げる問題と引き継げない問題について宍戸政府委員が答弁されているところでありますが、確認する意味で読みますと、「軍事的な機能を一応分けてみますと、先生もよく御存じと思いますけれども一つは核抑止機能、これが代表的だと思います。これはメースBを中心としていると思いますが、これはまずわがほうが肩がわりするということは全くございません。それから戦術的に攻撃機能というものを持っておると思います、F105を中心にいたしまして。これもわがほうが肩がわりするという筋合いのものでないというふうに考えられます。それから極東の平和と安全のためにいろいろな機能を果たしておりますが、特に太平洋軍の地上の機動部隊の待機基地というふうな機能も果たしていると思います。これは事があれば東なり西なり、南なりに、いつでも飛んでいけるというふうな機能でございますが、こういったこともわがほうが肩がわりする筋合いめものでもないというふうに思われます。で、わがほうに縁がない機能の代表的なものがいま申し上げたようなことであろうかと思います。あるいはもう一つ、全般的な補給機能と、現在ベトナムで戦われている戦いについてのいろんな補給をやっているようでございますが、こういった極東全般の補給、支援というような機能も支援機能として重要視されておりますが、これもわがほうが肩がわりすることはできない、こう思われます」。その次ですが、「逆にそういう大事な機能を持っておる基地について、それを防衛する機能というのも当然付随しているわけでございます。その代表的なものが防空機能、あるいはそれに付随するいろんな哨戒機能と、偵察機能というようなものもあろうかと思いますが、主として代表的なものはやはり防空機能であろうと思います」。それから「あるいはもっと具体的に申し上げますと、その防空機能を果たすためには、レーダーサイトが必要でございます。それから対空ミサイルとしてナイキ、ホーク等のミサイルが必要でございます。現に、御承知のように、本土では自衛隊がそういうことをいたしております。現在沖繩では米軍が維持しております。こういうことは将来のことを考えますと、自衛隊がそれを維持する能力はあるし、機能上も憲法上も問題ない、わがほうがやり得る機能であるというふうなことが言えるんではないかと思います。さらに、あるいは対潜哨戒、港湾等の哨戒、こういったこともわがほうがやり得る機能であろうと思います。さらに直接的な陸上防衛、返ってまいりましたあとには災害派遣とか治安警備とか、あるいは領空侵犯とか、こういったことはむしろ米軍はやる立場にないわけで、わがほうが当然やる」というふうに書かれていますが、ここでいう引き継げる機能、それは基地を防衛する機能、相対的にいって。それが自衛隊が引き継げる機能ということで、あと具体的にあげられていますけれども、沖繩に行った場合に、沖繩の自衛隊の任務は沖繩の県民を守るんだ、災害派遣とか不発弾の処理をやっているんだとか、あるいは、昨日も言いましたように、ハブ退治の実験まで見てきましたけれども、ここでいうアメリカの基地を防衛する機能、この問題については一言も現地では言われなかった。この国会での宍戸政府委員の答弁、これについては間違いありませんか。
  130. 久保卓也

    ○久保政府委員 いまお読みになったことばの中で、すぐ私も気がついたわけでありますけれども、引き継ぎ得る機能を幾つか並べましたが、それを「防衛する機能」という表現は間違っておると思います。少なくとも不適当であったと思います。米側から見れば、あるいは基地を防衛する機能であったかもしれませんが、日本が自衛隊を配置するものは、米側の基地を防衛する意味でこれを配置することを考えたことは一回もございません。やはり沖繩そのものを防衛する、いざという場合、有事の場合と平常における任務、双方を沖繩という領域に関連してわがほうは持っておる、こういうことで終始参っております。
  131. 中路雅弘

    中路委員 いま、当時の宍戸政府委員のその部分は適当でなかったという御発言をされましたね。じゃ、もう一つだけ例をあげましょう。これは四十五年の八月十八日の衆議院内閣委員会の中曽根当時長官の発言です。「沖繩列島並びにその県民の生活を守る、いわゆる本土防衛の一環として沖繩防衛はあります。これが第一義です。しかしそれと同時に、米軍との共同防衛ということも出てまいりますから、アメリカの基地も守ってやるということも第二義的には出てくるだろうと思います」ということで、ここでもアメリカの基地を守ってやる、米軍との共同防衛ということもその義務の中にあげられている、第二義として。アメリカの基地を守るということも出てくるということを言っているわけなんですが、この点はどうですか。
  132. 久保卓也

    ○久保政府委員 大臣の御発言を局長がコメントするのはたいへん不遜だと思いますけれども、御質問でありますので、お答え申し上げれば、もちろん米国との共同防衛というのは、日米安保体制そのものが共同防衛といえばいえるわけでありまして、本土におきましても、沖繩におきましても、わが国が第一義的に防衛の任に当たるわけでありますが、それが不可能な場合にはやはり米側の協力を得るということ、これは本土と変わらないという意味であります。  それから、第二義的に米軍の基地も守るという御発言があったようでありますけれども、これはむしろ沖繩そのものを防衛するのだ、その結果として、言うならば波及効果として米軍の基地も守られるということならば、事実関係を申し述べられたにすぎないのではなかろうかというふうに思います。
  133. 中路雅弘

    中路委員 ごまかしながら進められているわけですけれども、沖繩に置かれているアメリカの基地が、それでは、日本の国土を守る、あるいは沖繩県民を守る、これが第一義的に配置されている基地かどうか。アメリカの基地の機能についてもう一度お伺いします。
  134. 久保卓也

    ○久保政府委員 沖繩に配置されておりまする米軍の機能と申しますのは、これは先ほどの宍戸前局長が答えました中で、核抑止力を除けば大体当たるところでありまして、極東の安全に寄与するための前進防衛基地であり、また補給及び通信の中継基地であるということがそれに当たるのではないかと思います。
  135. 中路雅弘

    中路委員 ではもう少し具体的に聞いていきましょう。  安保条約の第五条で「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対ける武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」というふうに書かれているわけですけれども、いまおっしゃったように、沖繩にあるアメリカの基地、これはいまもお話がありましたし、これはアメリカの高官がたびたび言っていることですね。これはジョンソン国務次官も上院外交委員会で言っていますが、われわれは第一義的には、日本の直接防衛のためではなくて、その周辺地域のために日本にいるのだ、沖繩にいるのだということも言っていますけれども、これは現実の実態から見ても、いままで沖繩の基地が、ベトナムをはじめとしたアジアにおける攻撃の基地になって使用されて、繰り返してやられてきた、このことはベトナム戦争が明白に示しておりますし、日本の沖繩基地として、これがアジアにおける戦争の基地になっていたということは事実がはっきり示しておるわけです。第五条でいう、いずれか一方に対する武力攻撃が起こり得る、そういうことがあり得るとしたら、いまの場合、この沖繩を基地として、これが足場になって極東周辺に展開しているアメリカの基地あるいはアメリカ軍に対する攻撃以外にあり得ないと思うわけですが、このアメリカの基地が外国から報復攻撃を受けた場合、その防衛のために日本自身の自衛権に基づく行動ができるのかどうか。
  136. 久保卓也

    ○久保政府委員 相手方の艦艇あるいは航空機による武力侵攻といいますか、武力攻撃が何を目標にして行なわれるかということは、これは事前にはなかなかわからないわけでありまして、少なくとも本土におけるいかなる施設、いかなる領域が攻撃されようとも、これは日本そのものが武力攻撃されるわけでありますから、私は当然防衛出動を下令すべき事態であろう、こういうように思います。
  137. 中路雅弘

    中路委員 たとえば攻撃をして引き返してくる、逃げてくる、明らかに追跡されてきて、もっとわかりやすく言えば、たとえば領海内の停泊の米軍艦ですね。領海内のアメリカの軍艦、侵略をして戻ってきた、あるいは逃げてきた、その軍艦だけに追跡をしてきて攻撃をする、武力攻撃がある、この場合もいま言われたような理解に立たれますか。
  138. 久保卓也

    ○久保政府委員 デリケートな問題でありますると、安保条約の解釈の問題でありまして、私のほうの解釈をここで申し述べるのは適当でありませんので、外務省のほうへ御質問いただきたいと思います。
  139. 中路雅弘

    中路委員 この自衛権の問題は非常に重要な問題ですが、たとえばこれは昭和四十三年三月十六日の予算委員会で、総理に社会党の岡田委員が質問をされて、確定解釈をお願いしたいという質問について、佐藤総理が「法制局長官にお答えさせます」ということで、高辻政府委員が答弁している。自衛権の範囲の問題です。ここで言っているのはわが国に対する急迫不正の侵害があったとき、これが第一番ですね。自衛権の発動の要件を三つあげていますが、二番目に国民の生命安全を守るために他に手段がないという判断の場合、三番目に必要最小の限度において働くものだと解釈するというのが、自衛権発動のいわば三要件として答弁をされているわけです。  いま私がお尋ねした、たとえば実害を与えない領空や領海の侵犯というのはありますが、当然これについては外交交渉ということもあるでしょう。ほんとうにいまいった自衛権をどうしても発動しなければいけない事態ですね。国民の生命や財産を守るのにこれ以外にないという条件ではないと思うのですが、その場合にも、いまお話しのように、この共同行動を宣言するといっている自衛権の発動、そういうことが必要があるのですか。
  140. 久保卓也

    ○久保政府委員 この自衛権の要件として三つの要素があげられましたが、これはもう常にそういう説明が行なわれていますので間違いないと思います。  そこで、どういうような事態に防衛出動がかけられるべきであるか、これは一政府委員が申すべき事柄ではなくて、国防会議にもかけられまするし、内閣総理大臣がきめられて国会にも審議される、まさに政治的な問題でありまして、どういうような場合にというふうに具体的にここできめつけるのは適当ではないのではなかろうかというふうに思います。
  141. 中路雅弘

    中路委員 長官にお伺いしたいのですが、日本の場合には当然憲法の上からいっても集団的な自衛権というのは発動できない、まずこれからお尋ねします。これは間違いありませんか。
  142. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはもう憲法上そうでありますし、個別的自衛権の範囲であることは当然であります。安保条約の先ほど言われました第五条でも、先ほど読まれましたところのうしろのほうに、「自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する」。でありますから、日本国の憲法の制約をはずれるというようなことはあり得ないということであります。
  143. 中路雅弘

    中路委員 日本の憲法の及ばないアメリカ軍基地あるいは米軍、それに対する、たとえば先ほど言ったような例の攻撃、こういったものが自国の国土、財産と自国民を守るというこの個別自衛権ですね。個別自衛権がそれで発動できるのかどうか、この問題についてもう少し統一的な見解を長官からお伺いしたいと思います。
  144. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはやはり基本的に統一見解と申しますか、法制局長官が答弁したような、わが国に急迫不正の侵害がある、ほかに全くこれを防衛するという手段がない場合、それは必要限度にとどめなければならない、こういうような条件に合致する、まあ三要件といいますか、お読みになったことと同じでありますが、そういう条件下でなければ考えられないということだと思います。
  145. 中路雅弘

    中路委員 私の具体的な例をあげての質問には十分答えていただけないわけですけれども、私は沖繩を視察して痛感するのは、沖繩で一番こういう事態が予想される。たとえば考えられるのは、締約国の一方に対する攻撃というのは、いま私が言ったような例、最も考えられるのは。それに対して、いまの憲法のもとで、当然安保条約の五条でもこれは集団自衛権の行使じゃない。共同に対処するというのは個別自衛権の発動の問題ですけれども、この関係の問題を、私は見解を明確にしていただきたいというふうに思うのです。きょう法制局は呼んでなかったのでお見えにならないし思いますけれども……。  では、もう少し別の点でまたお伺いしますけれども、いま長官が言われた「憲法上の規定及び手続に従つて」というふうに書かれてある。日本国憲法九条では、一切の戦争、武力行使というのを放棄している。戦力を保持せず、交戦権を認めないと宣言している。「憲法上の規定、手続」というのは、一体どういう規定、手続があるわけですか。
  146. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはもう憲法第九条をめぐる論争が絶えずいわれていることでありますが、私たちは、第九条というものは、国際紛争解決の手段としての戦力の保持は禁止されておる、しかし一国の国家、民族の独立というものを守る力というものまで否定されておるものではないということでずっと一貫いたしております。したがって、その範囲内における専守防衛、武器にしても他国を攻撃せず、攻撃する能力を持たず、あるいは核兵器については国会の決議等もございますし、政府の方針としても、つくらず持たず持ち込まずという方針が確定しておりますから、もっぱら専守防衛という立場の範囲ということになろうと思います。
  147. 中路雅弘

    中路委員 結局ここで言われているのは、自衛隊法に従って行動するということになりますね、具体的には。それ以外にないわけですね、行動の基準というのは。  そうしますと、この自衛隊法は国会の承認が要るわけです。緊急の出動の場合には、この自衛隊法七十六条でも出ていますが、国会の承認を得ないで出動した場合には、あとでやはりはからなくちゃならない。共同に対処するということで出動した、国会の承認を求めた、不承認の議決があったとき自衛隊はどうされるわけですか。
  148. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはもう書いてありますから。「内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、又は出動の必要がなくなったときは、直ちに、自衛隊の撤収を命じなければならない」。これは同じように自衛隊法の第六章の第七十六条第三項であります。
  149. 中路雅弘

    中路委員 そうしますと、先ほど読みました安保条約五条で、共同に対処するということを宣言していますね。この安保条約五条で、そういう危険には共同に対処するということを宣言するということになっていますが、これと、いまの自衛隊法で読まれた、たとえば出動したけれども国会で不承認になったという場合には自衛隊の撤収を命じなければならない。この安保条約五条の宣言するということと、自衛隊のいま読まれたところの関係ですね。これはどういう関係になりますか。
  150. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはもう日本国の憲法とその手続に従って行なわれる行動であっても、当然国会の承認がなされなければならないということは原則でありまして、したがって、国会の承認を得るひまがなかったときということがここに書いてあるわけでありますから、そういう事態も一応は予測してある。しかし原則は国会の承認が前提である、こういうことではっきりしておると思います。
  151. 中路雅弘

    中路委員 私の聞いているのは、承認を求めて不承認になりますね。なった場合、「撤収を命じなければならない」と書いてある。安保条約五条では、そういう危険に対しては共同で対処することを宣言するということになっている。宣言して共同で対処するということが書かれてある。しかし国会で不承認になった場合には撤退しなければならない。この関係はどういう関係になるのですか。
  152. 山中貞則

    ○山中国務大臣 「自国の憲法上の規定及び手続に従って」でありますから、この手続自衛隊法に定められている、先ほど読んだところであります。
  153. 中路雅弘

    中路委員 そうするとこれは撤収される。安保条約の五条があって、共同に対処するということは宣言していますけれども、国会で不承認になれば、当然そちらが優先して撤収するということですね。
  154. 山中貞則

    ○山中国務大臣 それはもちろんであります。
  155. 中路雅弘

    中路委員 私は沖繩県の視察をして、この自衛権の問題についていろいろ考えさせられることがあったわけですけれども、実際に沖繩の県民を守るということ、本土を守るということはどういうことなのか。沖繩の県民を守るということは、私は第一番に、あの占領直後ブルドーザーと銃剣で農民から土地を奪って居すわっていった、きのうも質問のあったこのアメリカの基地、これをまず県民に返す。そして沖繩県民の望んでいる平和な暮らし、こういうものを回復していくということがいま沖繩県民を守るほんとうの趣旨じゃないか。施政権返還のあとも引き続いていわゆる土地強制収用法、公用地等の暫定使用に関する法律で、いまも、地方自治体も、あるいは民有地の人たちが強制収用されて、しかも、軍用地を押える、そして沖繩県民を守るという名目で実際には米軍とその基地を守る、共同の作戦のもとに入れられる。こういう点で、今度の自衛隊の沖繩の配備という問題が、ほんとうに県民を守り日本本土を守るということにならない。ますますアメリカのこの共同作戦に引き込まれていくのじゃないかということを痛感するわけですけれども、これについてはさらにまたあらためて御質問することにして、もう少し配備の部隊について、先ほど防空の問題について御質問しましたけれども、陸上、海上ともう少し突っ込んでさらに質問したいと思います。  沖繩配備の陸上自衛隊の普通科中隊二個中隊ありますが、この基準の編成、これは本土と同じですか。
  156. 久保卓也

    ○久保政府委員 この混成団の編成の中で、高射特科群は別でありますが、普通科の中隊と施設科の部隊とは、本土におきまする配備に比べて、たとえば普通科の中隊ですと、装備を若干減らし人数を減らしております。反面、施設部隊については、普通のたとえば地区施設隊に比べて人員を増強しておるというような違いを持っております。
  157. 中路雅弘

    中路委員 そういういいかげんなことを答弁されちゃ困るんだな。じゃ普通科だけ聞きましょう。この第一混成群、普通科中隊の編成について、分隊までどうなっていますか。——じゃ私がお話ししますが、間違いないか。  本土の普通科中隊の編成はライフル小隊が四つあります。そして班が三つですけれども、沖繩の普通科中隊はライフル小隊四つ。分隊といっていますが、分隊三つに別に火器分隊というのがあります。本土の普通科中隊の編制にはない火器分隊というのがあって、六〇ミリ迫撃砲二門ずつ持つという編制になっていますが、これは間違いありませんか。  じゃもう一つだけあわせて聞きましょう。局長が装備を減らしているというお話だから、私は聞いているのです。装備を減らしているんじゃなくて、本土にもないこの火器分隊というのがついているという話。編制についても、実際には本土の中隊よりも多いんですよ。そうではありませんか。
  158. 久保卓也

    ○久保政府委員 本土の普通科中隊が二百十三名に対しまして、沖繩の臨時普通科中隊というのが百八十五名で、人員は若干減っております。  それから、おっしゃいまするように、火器分隊というものが沖繩にはありまして、本土にはそれに対応するものがありませんが、そのかわりに、連隊の中で重迫撃砲中隊というものが普通科中隊を支援する部隊としてございますけれども、その普通科中隊を支援する部隊としては、この重迫撃砲中隊に相当するものを持っておらない、こういう意味であります。
  159. 中路雅弘

    中路委員 いま人員の編制もおっしゃいましたけれども、定員ですよ。二百十三名というのは本土の普通科中隊の定員ですね。しかし実際には、充足率はいま六割か七割、百三、四十名じゃないですか。間違いありませんか。
  160. 久保卓也

    ○久保政府委員 大体六〇%前後であります。
  161. 中路雅弘

    中路委員 沖繩に配備された今度の普通科中隊百八十五名というのは、全部充足されているんですよ。私は、三日間調査に行けと言われたから、視察に行って見てきたことを御質問しているわけです。向こうでも何べんも聞いた。百八十五名、欠員ありますか。全部充足されていますかと。ほとんど充足されている。だから、いまのように、規模も小さいし装備も減らしているんだという答弁ですけれども、時間もないから、ほかの部隊について一つ一つやりませんが、普通科中隊一つ取り上げても、編制も実際は多いんです。普通科中隊の人員も多いんです、沖繩のほうは。減らしているんじゃない。装備も別の装備を持っておる。たとえば、いま言った六〇ミリ迫撃砲二門持っておる。それに迫撃砲の小隊がありますから、合わせますと、この六〇ミリだけで二個中隊で三十二門持っておるのです、沖繩の部隊は。そういう点では、小型の重火器というのは、本土の普通科中隊の編制に比べてはるかに強化されている、異常に強化されているというのが状態なんです。火器分隊をよけいにつけている。そういう意味では、いま言ったように、非常に小型の重火器は強化されているし、本土並みの編制でもないということが言えるわけですね。いままだ臨時という名前がついていますし、演習場もない。だから、当然戦車や特科はまだ持ち込めないでいるというわけですけれども、幾つかもう少し大きいところで聞きますと、この混成団になりますと、大体人員で千八百人、一個旅団並みの人員です。ホーク部隊を持っておるのは本土では方面隊しかないと思うのですが、間違いありませんか。
  162. 久保卓也

    ○久保政府委員 間違いございません。
  163. 中路雅弘

    中路委員 ヘリコプターについても、沖繩の配備の部隊がヘリコプターを持っておるのは、離島が多いからだという説明でありましたけれども、離島が多いということになれば、瀬戸内海だって、長崎だって、鹿児島だってみな離島が多いんだ。方面隊しか持たないヘリコプター十機近く持っておる。あるいは、これはもういままでの質問でありましたけれども、幹部の曹が非常に多い、異常に多いということもいわれています。  こういった編制を見た場合に、装備も少ないし部隊の編制も少なくしているんだというお話です。一見、非常に規模が小さいものを送っているんだ、本土並みといわれていますけれども、幾つかいまあげただけでも、陸上を見ただけでも本土並みでない編制なんだ。小型の重火器が非常に多い。編制も、本土の普通科中隊よりは実際には充足率も高い、ホーク部隊も持っている、ヘリコプター部隊も持っている、こういった点も本土の部隊と違うところです。しかもいま過渡的です。二法が通ったあと、沖繩の配備というのはさらに強化されるのですか。増強されるのですか。どうですか。
  164. 久保卓也

    ○久保政府委員 陸の部隊が非常にいろいろな面で多いではないかというお話でありますけれども、また充足率が高いではないかというお話でありまするけれども、本土の場合には彼此融通し得るわけであります。隣の県で問題があって人が少なければ、別の県から人を派遣することができるというような融通性を持っております。その点は、警察官の人数が、沖繩の場合に本土の平均に比べて多いということからもおわかりだろうと思います。要するに非常に遠いところの島であるというところで、それぞれの規模のワンセットずつを置いておるということで、高射特科群などはそこに入るわけでありまするし、また災害派遣などを考えてみますると、本土のように、普通科中隊を配置したわ、六〇%しか充足しておらないということでは地元の方にも申しわけないということもあります。  そういうようなことで、この場合には、本土における充足率が非常に低いにもかかわらず、沖繩にヘリコプターも比較的に多く派遣をし人員も充実させているということであります。
  165. 三原朝雄

    三原委員長 静かに願います。
  166. 久保卓也

    ○久保政府委員 そういうような事情で沖繩の部隊は整備されているわけでありまするけれども、今後この二法案が通った後にどうなるかという問題については、現在は四十八年度について海上自衛隊の航空機、P2Jの航空機を三機ふやすという計画以外にはございません。
  167. 中路雅弘

    中路委員 いまいろいろ理屈づけをされましたけれども、いずれにしても沖繩に配備されている部隊が本土の部隊の編制でないということははっきりしているわけです。人数こそまだ千八百人ですけれども、機能やそういう点からいいますと、さらにこれが防衛二法で臨時がとれた場合に当然増強ということが予想されるとすれば、ミニ師団にひとしいような機能をだんだん持ってきておる。そういうことになれば当然設置法で国会で審議をしなければいけない。そういう部隊だ。空軍の場合に一応混成団ということで今度審議にかけられておりますけれども、陸上の場合には、それぞれ臨時という名前をつけて防衛庁の権限で配備されていますけれども、いまその機能の一端だけお話ししましたけれども、決して本土並みの編制じゃない。最初にお答えになった、本土よりも編成も少ないし規模も装備も少ないのだ、そんなことは絶対ないのです。その点でも私は、この沖繩の派遣の、いま臨時という名前をつけながらこういう部隊をすでに送り込んでいるということは、全く許せないことだと思います。  あまり陸上だけひっかかってもあれですから、もう一つ海上についてもちょっとお尋ねしますけれども、いま久保・カーチス協定で対潜哨戒機隊一となっていまして、現にP2Jが六機置かれていますが、この哨戒活動の六機の配備については今後増強されるわけですか。
  168. 久保卓也

    ○久保政府委員 先ほど申し上げましたように、海上自衛隊のP2J六機が九機になるというのが一応四十八年度の計画でありまして、これ以外には、陸海空を通じて二法案通過後の増強計画は、四十八年度についてはございません。
  169. 中路雅弘

    中路委員 四次防中にさらに、たとえば六機声倍にするとか、そういう計画はないですか。
  170. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは四次防の中で具体的にはなっておりませんが、しいて考えますれば、この四次防の中で、F104について、四次防よりもあとの時期になりますけれども、手当ては四次防とされているF4に代替するというような問題。P2Jにつきましては、九機から十二機、あるいは十一機にするかどうか、これは確定しておりませんという問題。それ以外には四次防期間中もないと思います。
  171. 中路雅弘

    中路委員 P2Jについても、私も現に行ってみて、実際に置かれているのは二機ですね。六機ありますけれども、すぐ発進できるような状態のは二機です。哨戒活動を本格的にやるとすれば、これでは済まされない。当然倍以上にふやされる、しろうとが考えてもこういうことはわかるわけですね。いまの沖繩に置かれている部隊というのはまだ過渡的なんです。防衛二法が通れば一そう各部隊が増強されるというのは、こういう一つ一つの事実の中でも当然考えられると私は思います。  そしてP3はまだいるわけですね。しかも那覇空港に居すわっているわけですが、このP3とP2Jの分担区域というのはきめられておるのですか。
  172. 久保卓也

    ○久保政府委員 P3は米側の意図のもとに運用されておりますし、P2Jはわがほうの意図のもとに計画されるわけでありますが、特に沖繩の場合には、本土でもそうでありますけれども、常時における哨戒任務を行なうにはまだ至らない。これは通常の哨戒を行なうための訓練を当分行なうであろうというふうに思います。したがって、将来、たとえば本年度で九機になりますし、かりにこれが十一機ぐらいになりました場合でも、P3とP2Jの任務分担をきめて、この分野はP2J、この分野はP3というような運用をやることは考えられません。
  173. 中路雅弘

    中路委員 実際にP2Jも、いまお話しのように、将来約二倍近くにはなるだろう。しかもP3はそのまま居すわっておるわけです。私は繰り返し言いますけれども、決して肩がわりや引き継ぎじゃないのだ、今度の沖繩の配備は。実際はP3に加えてP2Jが増強されることになる。沖繩における自衛隊の配備というのは、まさにこういうアメリカとの共同作戦の体制、日米安保条約の一つの姿が沖繩に集中してあらわれているというふうに考えるわけですが、この海上自衛隊の配置の問題で、沖繩に派遣されている海上自衛隊のおもな任務、これはどういうところにありますか。
  174. 久保卓也

    ○久保政府委員 これも取りきめの中で明白にされておりますように、常態におきましては海上救難、哨戒、それから有事の場合には対潜のための作戦行動ということが海上自衛隊の任務になっております。もちろん、若干の人員、たとえばヘリコプターないし艦艇を使っての離島間の輸送、特に災害派遣に関連する輸送というような問題が海上自衛隊の任務になっております。さらにホワイト・ビーチに寄港する海上自衛隊の艦艇のいわば管理、世話をやく任務を持つということであります。
  175. 中路雅弘

    中路委員 これも先ほど読みました四十四年七月十日の参議院の内閣委員会、一部不適当な発言だったといわれた同じ委員会の宍戸政府委員の発言ですけれども、これは前川さんの、沖繩に派遣される海上自衛隊のおもなる任務は何かという質問の中で、沖繩の施政権が返ってきた場合に、「わがほうが将来沖繩に海上自衛隊の幾ばくかの部隊を当然置くことになろうと思いますが、その場合の考え方の根拠としては、いまお示しの、本土からの航路を守る、あの列島における列島間の交通も守る、さらに侵略の様相を想定した場合の潜水艦なりあるいは他の艦艇による攻撃機能も守ると、あるいはさらに直接、おっしゃいませんでしたけれども、あそこを基点にして、全体の、本土へ至る海上交通の要路を守ると、そういった機能を果たすべきだし、そういうことを頭に置いて海上自衛隊の配置を考えるべきであろうというふうな考え方を持っております」というふうに答弁されていますが、これも間違いありませんか。
  176. 久保卓也

    ○久保政府委員 幾らかオーバーな感じはいたしますが、たとえばP2Jを配置をするということは、これはこのラインに、つまりいわゆる南西航路というものを設定した場合に、これは有事の場合でありますけれども、そういう場合に、哨戒を行なうことによって航路を守るということになろうと思います。もちろん、このP2Jが対潜機能も持っておりますので、いわゆるASWの機能も持っておる。しかしながら、水上艦艇から攻撃を受けた場合に、それに対処する能力を海上自衛隊の沖繩配置の部隊が持っているかといわれると、これは持っておらない。したがって、掃海艇でありますとか、支援船でありますとか、そういう小規模の小型の艦艇しか配置しておりませんので、そういう能力は持っておらないということになります。
  177. 中路雅弘

    中路委員 前の国会の答弁が、いつも少し不適当だとかオーバーだとかいう表現ですけれども、私はそのときの答弁のほうが、沖繩の配備の自衛隊の役割り、任務をわりあい正確に言っているんじゃないか。いま実際に派遣されているのがまだ規模が小さいから、ごまかそうとされているんじゃないかと思います。  もう少しお聞きしますが、海上自衛隊は将来護衛艦を基地隊が持つようになるのかどうか。
  178. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在のところは考えておりません。
  179. 中路雅弘

    中路委員 現在のところ考えてないというのは、将来は配置するということか。あるいは現在考えてないのは、まだ条件が整ってないから、そういう意味ですか。
  180. 久保卓也

    ○久保政府委員 私どもが政府の内部で、あるいは少なくとも防衛庁長官の指示のもとにつくられておりますのは四次防しかございません。そこで四次防の範囲内で申し上げれば、そういう計画はないということであります。
  181. 中路雅弘

    中路委員 四次防以後には護衛艦を何隻か配置するということは検討中ということはありますか。
  182. 久保卓也

    ○久保委員 検討はいたしておりません。
  183. 中路雅弘

    中路委員 佐世保からホワイト・ビーチ、これも視察させていただきましたが、向こうの司令部に普通の護衛艦はどのくらい時間がかかりますかと聞きましたら、二十ノットで一日かかるという話をしていました。護衛艦についてお尋ねしましたら、佐世保の所属ですね。佐世保の所属にしておいて、将来は常時二、三隻の護衛艦が置かれるようになるでしょうという話もしていました。なぜ佐世保の所属にしておくのかというふうに聞きましたら、艦船修理の能力がまだ沖繩にはないんだ、だから実際には佐世保の所属でないと現地に艦船修理能力がないからだという話を制服の方がしておられましたけれども、最近新聞で、これは朝日新聞だったですか、沖繩の共同使用のホワイト・ビーチの地域に艦船修理の施設をつくるという記事が出ていましたが、これはどうですか。
  184. 久保卓也

    ○久保政府委員 二つの問題があったわけでありますが、四次防におきます護衛艦の建造は三次防と同数であります。つまり減耗に対する補充分を近代化によってつくったわけでありますが、そのうちで地方隊に配属するもの、これは地方隊にはDEといいますか、護衛艦の数がばらばらでありますので、なるべく均分化してまいりたいというふうに思っておりますが、そういった場合に、南西諸島もわが領域の中で、つまり防衛の範囲に拡大されておるというようなことを含めて、佐世保には若干増強をせねばなるまい、一隻くらいはふやさねばなるまいかということを考えておることは確かでありますが、それが沖繩の部隊に配備されるべきものということではございません。あくまでも、佐世保のいわゆる警備区域というものが拡大された、そういうことに伴って若干、一隻ぐらいは余分に配備をしたいということであります。それと、佐世保の現在米側が使っておりますドックを自衛隊が使いたいという希望を持っておることは確かであります。しかしそれはまだ進行はしておらないという状況に現在あります。それと、いまの基地の司令が言ったと言われますような、佐世保に所属させる護衛艦との関連はございません。
  185. 中路雅弘

    中路委員 いまちょっと記憶間違えしました。司令じゃなくて、何というのですか、一緒に案内してもらった向こうの幹部の人です。  それからもう一つ、これも現地でお聞きしたのですけれども、船の燃料補給をどうしているのか。海上自衛隊が向こうに派遣されて、現に掃海艇も行っていますね。たびたび護衛艦も立ち寄る、艦隊も立ち寄るでしょう、その場合の燃料補給をどうしているのかと聞きましたら、タンクローリーで運んでいるのだという話ですね。将来、こういうふうに艦艇がたびたび寄るわけですけれども、タンクローリーでどこから運んでくるのか知りませんが、そういうことではとうてい解決できないと思いますけれども、燃料の問題はどうされるのか。
  186. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは私、具体的には存じません。そういった施設の問題でありましょうけれども、おそらく年次計画で計画されるのではなかろうかということだと思います。
  187. 中路雅弘

    中路委員 将来、独自の燃料の補給施設を持たれるのか、それともホワイド・ビーチに広大なアメリカの燃料タンクがあります。これも説明していただきましたが、この燃料も共同使用にされるのか。この点は具体的に何か……。
  188. 久保卓也

    ○久保政府委員 施設関係は私、存じませんが、少なくとも米軍との共同使用という形にはなるまいと思います。おそらくこのホワイト・ビーチで海上自衛隊の使う燃料補給が不便であれば、もし必要であれば自分でつくるということであろうと思います。それがどの程度必要であるかどうか、ちょっと私いま存じません。
  189. 中路雅弘

    中路委員 沖繩に海上自衛隊が配備され、ホワイト・ビーチが使われる、共同使用だ、ということは海上自衛隊の作戦範囲が非常に広がってきた。東アジア全体の広い海域に拡大するという問題と当然関連が私、出てくると思いますが、昨年十月の国防会議できまった四次防の「主要項目」の中に、「周辺海域の防衛能力および海上交通の安全確保能力を向上」というのが書かれていますが、この「周辺海域」というのは、具体的にどこからどこまでの海域を意味するわけですか。
  190. 久保卓也

    ○久保政府委員 中曽根防衛庁長官の当時、すなわち四次防の防衛庁原案当時の国会に対する説明といたしましては、その周辺海域、少なくとも日本が防衛の範囲として考えるべき分野を、東は南鳥島、南は沖ノ鳥島、そして南西諸島というふうに線を引きました。つまり一番東、南、それから東南、西南の海域におけるわが領土の最先端を結んだ線、これは距離的に申せばほぼ一千マイルくらいになりますけれども、そういった御説明を国会でもしてきたわけでありますが、その後の長官の指示によりまして、それは少し広過ぎるのではないかということで、しかも四次防というのは三次防並みということになりましたので、三次防当時における発想をそのまま踏襲をいたしまして数百マイルということにいたしております。その数百マイルというのは、それでは、五百マイルなのか、七百マイルなのかという具体的な数字を明示せよという問題もあるかもしれませんけれども、これはやはりそのときの情勢によって、もっと縮まる場合もあれば若干広まる場合もありましょうと思いますので、この数百マイルという数字を確定することは適当ではなかろう、やはりそのときの作戦様相によるものであろうというふうに思っております。
  191. 中路雅弘

    中路委員 普通の船の航路について、航路帯の防衛といいますか、パトロールですね。こういった点については最大限どの地点まで大体防衛されるのですか。
  192. 久保卓也

    ○久保政府委員 航路帯の構想もございます。四次防原案といいますか、あるいはもっと昔から検討されているところでありますが、サイパンまでで千三百マイルありますけれども、そこまでは行けない一大体航路帯をもし設定する場合に考えるとすれば、千マイルぐらいが適当かなという感じは持っております。ただ、それも周辺海域と同じように、数百マイルに縮めてしまったほうがいいかどうか、そういう問題があろうかと思います。防衛庁内部でもときどき見解がその点については変わりますので、いまのところやや不明瞭な検討課題として残っておるように思います。
  193. 中路雅弘

    中路委員 私は、この問題でも具体的な御答弁はないのですけれども、沖繩が、先ほど言いましたように当然新しい足場になってきますから、演習の問題、海域の問題だけではなくて、こういった防衛海域についても、さらに日米の間で広く区域を設定するという問題になってくれば、これは当然、領海内における行動を、法の上からいえば本旨とすべき自衛隊法の三条に定める「自衛隊の任務」からさえ大きく逸脱してくるというふうに考えるわけですが、この防衛海域の問題は、自衛隊との共同防衛の区域は、日本の領海内に限定したこの憲法との関係ですね、そういう点についてもう一度どのようなお考えなのか。
  194. 久保卓也

    ○久保政府委員 ある時期、領空及び領海を防衛するというような発言がなかったわけではございませんけれども、だいぶ前から、わが国を防衛するために必要最小限度の範囲においては防衛をし得るのだという説明になっております。したがいまして私どもは、領海、領空の範囲内で防衛するということでは事実問題としてわが国を防衛するということにならない。これはまあ大昔ならばともかくとして、最近の科学技術の進歩からいえばそういうことになるということで、やはり必要最小限度の範囲というものをどういうふうに考えるかという問題でありまして、領空、領海に限るという発想は政府としてはとっておりません。
  195. 中路雅弘

    中路委員 もう少しお聞きしていきたいのですが、現地を空からヘリコプターでいろいろ見せてもらいました。当然沖繩に配備された陸海空それぞれの自衛隊ですね。これから施設だけではなくて演習場の問題というのが大きい問題になってくると思います。その場合に米軍との共同使用の問題も当然考えられると思うのですが、この自衛隊の演習場問題について、どのようにこれからお考えになっているのか。
  196. 長坂強

    ○長坂政府委員 現在の陸上自衛隊、まあ主として陸上自衛隊だと思いますが、配備されております陸上自衛隊が演習場を持っていないということは、これは事実でございまして、それはその面で何か考えなければならないかというような議論もございます。しかしながら、昨年自衛隊が配備されまして以来、この自衛隊に対する地元の人たち、県民の感情、それからよく山中長官が言われますように、敗戦以来の自衛隊に対しますところの県民感情というようなものを特に考えまして、この点についてはきわめて慎重と申しますか、いまのところ特段の計画も持っているわけではございません。  以上でございます。
  197. 中路雅弘

    中路委員 いま陸上だけですね。海上はどうですか。
  198. 長坂強

    ○長坂政府委員 海上につきましても同様な考えでおります。
  199. 中路雅弘

    中路委員 これもすでに共同の演習の計画があるのですけれども、実は昨日の大出委員の発言にもあったように、視察があるからかどうかわかりませんけれども、演習は一応取りやめということになっています。いずれにしても、海上、陸上を含めてこの演習の問題は考えざるを得ない。そうすれば、沖繩県民との間の問題あるいはアメリカとの共同使用の問題、これは当然出てくるわけですね。一そう大きな問題を将来持ってくるということだと私は思うのです。  演習場の問題で、これは前から私が御質問してそのままになっている問題なので、この際もう一度はっきりしておきたいのは公海の演習の問題ですけれども、これはことしの四月十二日のこの委員会で私がリマ海域の問題について質問しました。沖繩にも、ホテル・ホテルとかマイク・マイク等の水域が、領海だけじゃなくて公海も、防衛施設庁の告示で、地位協定に基づいた施設の提供区域として告示をされているという問題について質問しまして、法制局も、それは誤りだという答弁があったわけです。当時、その日に平井政府委員はこういうふうに答弁されている。これは昨年の十月以来私たちが取り上げている問題です。「防衛施設庁がその告示の内容を、従来適切を欠いていた」——適切ではない。全く法的に間違っている。「部分を明らかにする具体的な告示の表現の方法、扱い方等について、今日まで外務省等とも協議を重ねながら作業を続けてまいったわけでござ  いまして、そういった点を明らかにした告示を、ただいまもう作業は大体終局の段階に入っておりまして、近く告示をもってこの点を明らかにした形で出す予定でございます」「在日合衆国軍隊にその使用を認めております水域が、領海と公海にまたがるもの、あるいは公海だけのもの、いろいろございますが、特に沖繩におきましては、陸上の施設に接続しました訓練水域、領海と公海とにまたがる水域を一括した形で使用を認めている形態のものがかなりあるわけでございます」、だからこれを明確にしなければならないということを答弁されて、これは四月で、近く告示をもってこの点を明らかに出す予定だと答弁されておりますが、その後出たのですか。
  200. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 ただいま告示の手続をとる直前の段階に至っております。
  201. 中路雅弘

    中路委員 この前は平井部長さんだけだったから、大臣もおられるのでもう一度はっきりさせたいのですが、沖繩だけじゃないのです。この前、私がお尋ねしたのは、高知沖のリマ海域の問題でお尋ねしたのですが、公海と領海を含めて安保条約地位協定に基づいた施設、区域として提供している。そういう告示がなされている。公海をこういう安保条約に基づいて提供するということはできないわけです。これは明確なわけです。それが誤りだということは認めておられる。誤りだと言いながらどうしても取り消さない。誤りであるにかかわらず、これを指摘したのがもう去年の十月ですが、今日まで取り消しをしない。しかもリマ海域というのは最も漁業の地域なんです。この告示に違反すれば、安保条約地位協定の告示ですから、法体系からいえば当然処罰を受けるということにならざるを得ない。そして漁民に対しては、こういう誤った告示で非常に長い間被害を与えてきた。それだから誤った告示はすぐ取り消しなさいということを言ったにかかわらず、すぐ近くこれが発表できると平井さんはこの前答弁した。きょうも同じ答弁である。実際に検討されているのですか。
  202. 高松敬治

    ○高松政府委員 この問題につきましては、私も前に一回御答弁したことがございます。その後、事務手続がややおくれて申しわけございませんが、二、三日前に私の手元に上がってまいりまして、二、三の調整を、指摘した問題を直して、それで決裁をするということでございます。そういうことでやっておりまして、もうすぐ告示の改正ができると思います。
  203. 中路雅弘

    中路委員 今後どうするかということはともかくとして、間違った告示をしていることを、どうして間違ったとまず取り消さないのですか。その告示は間違っているのだということを取り消さなかったら——間違った告示をやっていますね。間違っているということはあなたたちも認めているわけです。しかし、いますぐ取り消したらアメリカの演習が支障を来たすとか、この前そう答弁された。あとどう取り扱うかということを検討してから近く発表したいというが、まず、間違った告示は、法に照らして間違っているのだから、それははっきり取り消すということをどうして言えないのですか。
  204. 高松敬治

    ○高松政府委員 この問題は、前にも申し上げたと思いますけれども、公海を施設、区域として提供するという形式をとっておることは明らかに間違いである。公海についての制限というものは本来あるわけのものではないのですけれども、ただ、そこにおいて演習が行なわれるについては、一般の漁業者あるいは海洋を航行する船舶に、あらかじめこの区域において演習が行なわれるというふうなことをきめておいたほうが、よりそういう保護に適するであろうということで、この区域が大体演習区域であるという点の告示はやはりどうしても必要でございます。しかしそれは、安保条約に基づいて提供する施設、区域ではない、それを一緒にして告示したところが従来の間違いである、それを分離してそれぞれ性格をはっきりさせる、こういうことで、従来ありますものをすべて取りまとめまして、かなり厚いものになりますけれども、そういう告示に現在直すということで、大体私の決裁が終わったという段階にあるわけでございます。別に、その告示をやらなければ米軍が公海上において演習できない、こういうことではございません。むしろそこを通行する船舶、漁船その他に対する保護を考えてそういう区域をきめていたわけでございます。
  205. 中路雅弘

    中路委員 漁業に危険を与える場合もありますから、それをどういうふうに知らせるかということは、一つの別の問題ですね。施設として提供したということは間違いないわけですね。間違った告示は取り消しなさい。それからあと、それをどういうふうにするのか。施設として提供するわけじゃない、しかし、そこで演習が行なわれた場合に、漁民に対しても被害を与えるわけですから、それをどういうふうにお知らせするかということは別の方法考えなければいけない問題です。しかし、私が言っているのは、安保条約の地位協定に基づいて告示で施設を提供する、これは間違いなんだから、間違った告示は取り消すというのは当然のことなんだけれども、半年以上、もっとたっても、まだこれさえ取り消さないというのは非常に不当なことじゃないか、それを聞いているわけです。今後どうするかという問題だけではなくて、いままでの間違った告示をなぜ取り消さないのか、何ヵ月もたって。
  206. 高松敬治

    ○高松政府委員 おくれましたことはたいへん申しわけないのですが、先ほど来御説明申し上げておりますように、告示を新しい形の告示にいたしまして、それで領海の部分と公海の部分とを一緒といいますか、公海におけるこの区域の明示ということも含めまして、ただそれは施設、区域ではないことは先ほど御説明したとおりですが、そういう形においてごく近くそれが告示として官報に掲載されるようになると思います。事務的にどういう形でそれを直すか。間違っていることにつきましては、私どもも前からその点については、これを訂正いたしますということを申し上げておるのです。その訂正のしかたについて若干日にちを食ったことは申しわけございませんけれども、そういう段取りでもうすぐこの点についての訂正はできると思います。
  207. 中路雅弘

    中路委員 これ以上この問題はしませんが、大臣、初めて聞かれたかもしれないけれども、私が言っているのは、間違っているのですから告示を改めなければいけない。これは当然のことなんです。しかし、いままでの間違った告示をどうして取り消さないのか。間違ったということを認めながらどうして取り消さないのか。それで漁民にも大きな影響を与えているわけだ、その地域は。きのうも大出委員の発言があったけれども、施設庁がやっていることは、自分らがやった間違ったこと、そして県民や国民に大きな影響を与えている、被害を与えているという問題について、間違った場合にははっきり間違ったとおわびをしなければいけない。それすらできない。それでごまかして、そしてまた次の告示を出していくというやり方をやろうとされるから、私は、けじめをきちっとつけなさい、間違った告示は間違ったといって取り消しなさいということを言っているのですよ。  長く話したから大体おわかりになっただろうと思いますけれども、ちょっと大臣の御意見だけ聞いておきたい。
  208. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは私も実は驚くべきことを聞きました。ということは、いままで私は鹿児島県漁連の会長もやっておるわけです。(中路委員「鹿児島は影響が大きいですよ」と呼ぶ)したがって、この影響の大きい海域、ことに四国、九州、ことに東岸のほうが各県影響があるわけですが、それを提供水域として告示していたということは、これはどうも初歩的に考えられないことであると思って私はいま聞いておりました。したがって、これは誤っていたことについては直ちに、施設庁長官名で文書をもって、関係する県、そして漁協、そういうものに対して根拠が間違っていたことのおわびをさせます。  さらに、これは私の考えですが、それを今度は提供水域でないことに変えた告示をしたことによって、漁業者に補償する責任はもうないという立場をとることは許されない。ということは、単なる航行の安全とか操業の制限とかいうものでありませんで、どのような形で誤っていようといまいと、その水域が演習に使われている以上は、当該水域にかかる漁業者の補償ということは引き続いて行なわれるべきものと思いますので、これは私の責任においてそのような形で処理していきたいと思います。
  209. 中路雅弘

    中路委員 この問題はいま大臣から答弁がありましたから、至急そのように処理していただきたいと思うのです。  もう一つ、これもこの前、きょうは大河原さんお見えになっていませんけれども、大河原さんが最後は認められたのですが、沖繩の那覇空港の先にある弾薬庫、有名な瀬長島弾薬庫、これが、この前の春の日米安保協議委員会できめられた、返還される空軍・海軍補助施設に入るのかと私が聞きましたら、入らないという答弁をしていた。だから私は地図を示して、これは空軍・海軍補助施設に入るんじゃないかと何べんもやって、結局それは入るんだということになった。しかしこれも、前の沖繩国会の記録を見れば、吉野アメリカ局長は、空軍・海軍補助施設には軍事に要するような施設はないということを繰り返し言っているのですね。だからおそらく、その中身といえば瀬長島は入れられていなかった。日米の施設の返還の交渉に当たる最も当事者の人たちの間で、施設庁と外務省の間でも食い違っている。この弾薬庫は返すんだ、入らない、こういう状態は私は全くけしからぬことだと思うのですけれども、この前、入るんだということではっきり答弁されましたから、もう一度これは施設庁にも念を押しておきますが、この瀬長島弾薬庫は空軍・海軍補助施設に入り、この前の日米協議委員会の中できめられて、この補助施設は近く返還されるということになるわけですから、瀬長島も当然、この安保協議委員会の合意文書で述べてあるとおり、この補助施設の一部として返還されるんだということに間違いありませんか。
  210. 高松敬治

    ○高松政府委員 瀬長島弾薬庫が那覇空軍・海軍補助施設に入ることは間違いございません。
  211. 中路雅弘

    中路委員 それではお聞きしますが、いま一部自衛隊が使っていますね。二4(a)の使用だという話を現地で聞きました。将来この弾薬庫はいずれ返還されるということに合意をされていますから、いつごろ返還を目ざされているのかということもお聞きしたいのですが、その返還と関連して、自衛隊がこの施設について引き続いて使用する、そういう考えがありますか。
  212. 長坂強

    ○長坂政府委員 御質問の、瀬長島自身が米軍の施設でなくなるとき、つまり返還されたとき、現在の二4(a)の地位協定上の条項のもとに共同使用しておりますこの施設は防衛庁としてはどう考えるか、こういう御質問だと思いますが、これは結論はまだ出しておる段階ではございません。ございませんが、私ども事務担当者としての感じからいきますと、ここが米軍の施設でなくなった場合、引き続き自衛隊が弾薬庫としてこれを使用するということはあまり適当ではないのじゃないかという感じを持ちまして、引き続き検討をしておるところでございます。
  213. 中路雅弘

    中路委員 それが返還になりますと、もういまの時期ですから、公有地のあの強制の収用はできないわけですね。だから、この瀬長島を含む空軍・海軍補助施設の施設、区域、これは私も行ったときに少し調べましたけれども、国有地はわずかです。これは前日の大出委員の発言にもありますように、沖繩の場合には、ほとんどが市町村公有あるいは私有というのが多いわけです。瀬長島もそのとおりですが、これが米軍から返還になった場合、それぞれの所有者に返還をされる。またそれが、たとえばいま自衛隊は使用する気持ちはあまりないとおっしゃいましたけれども、自衛隊が使用する場合は、当然その時点で市町村あるいは個々の地主と契約を結ばなければならないと思うのですが、その点についても間違いありませんか。
  214. 高松敬治

    ○高松政府委員 大体そのとおりでございます。
  215. 中路雅弘

    中路委員 村有地が相当あるのです。この村長は又吉村長ですね。沖繩における公用地等の暫定使用に関する法律では、これは収用できないということ、対象外であることは明らかですから、当然、この所有者が契約を拒否した場合は、この弾薬庫については強制収用できないと思うのですが、これも間違いありませんね。
  216. 長坂強

    ○長坂政府委員 強制的な手続によっては不適当であると思います。したがいまして、先ほどお答えいたしましたような、それから御発言の中にございましたような、反対の事実がございますですね。契約拒否と申しますか。そういうようなことも考え合わせまして、先ほど申し上げましたような、現在で結論を出しているわけじゃございませんけれども、引き続き自衛隊が使っていくということは不適当ではないか、適当ではないのではないかという感じでいま検討しておる、こういう状況でございます。
  217. 中路雅弘

    中路委員 もう一、二お伺いしたいのですが、これはもうすでに何べんも国会で質問されている問題。しかし、やはり、沖繩へ行ってみて、あの空港に行ってみて、全く民間空港が片すみに追いやられているという姿を見ると、もう一度御質問したいのですが、この沖繩返還協定の目玉商品だと宣伝された那覇空港、ここにP3が居すわっている。五十年の三月の海洋博をめどに、たびたび外務省の皆さんも、那覇空港のP3対潜哨戒機を嘉手納飛行場に移転するので米軍と折衝中だというお話もありますけれども、実際にどいて、あと、運輸省の人に聞いてみても、空港ターミナルやいろいろ建設することを考えれば、直前に返還されたのじゃとうてい海洋博の問題も問題にならないという状態ですし、第一、施政権が返還になって以来すでにもう一年以上たっている。しかもあと、五十年ということになればさらに二年アメリカが使用するということになるわけですから、地位協定の二条四項(b)に基づいたというこの地位協定の解釈からいっても、私は非常に不当じゃないかと思うのですが、長官がこの問題について最近発言をされていますが、このP3の移転の問題についてどのような見通しを持っておられますか。
  218. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは私は、率直に言ってアメリカの約束違反だと思っております。しかし現実はここまで来てしまっておりますから、これをすみやかに嘉手納基地に移してもらいたい。そのためにわれわれとしては、途中で陸、海、空、マリーンの対立等があって、現地で、普天間飛行場に移ってかさ上げの費用が三十八億とかいろいろな経過はあったようでありますが、私は、振り出しに戻さなければいかぬ。すなわち、滑走路の一番便利なほぼ中央部、海岸寄りと反対の陸地のほうにターミナルビルというものの計画を、当初運輸省と防衛施設庁も含めて私の手元でやっていたわけでありますから、その原案に返す。  問題は、嘉手納の基地のほうに移るP3の駐機場、格納庫、それに地上の連絡高度精密機械等がありましょう。こういうもの等の移転と、それからその移転に伴って工事を開始するターミナルビルの着工とその完成の時期の問題があります。この問題は運輸省当局も承知しまして、私どもの施設庁もまじえて相談をしたのですが、いろいろと技術的な困難があるということでありますけれども、しかし、まず、P3の地上機能に関係のない、現在の自衛隊が一部入ってもおりますが、かまぼこ兵舎的な隊舎、あるいはまたグラウンド、野球場みたいなものがありますが、そこらのところが予定地でありますから、ターミナルビルそのものの建設には、さしあたりP3において支障はないという線で、運輸省には、現在のターミナルビルを補強して少し広げて仮設的な感じで使おう、将来は移ろうというような考えがありますが、これは将来むだにならない程度にやっておいて、そして本格的なターミナルビルというものは原案に戻そうということで、運輸省の航空局の諸君とも合意いたしまして、あと残されたものは、その消化する能力、工事を進捗させる時間的な問題というだけでありますので、これを検討して、五十年の三月とかなんとかということでなくて、それより早くまずターミナルビルの建設が始まる、そして海洋博にはそれが機能を有したターミナルビルになるように、両面の準備を進めながらいま努力をしておるところであります。
  219. 中路雅弘

    中路委員 私たちは視察に行って、現地でこの空港の使用状況の説明もいただきましたけれども、これは私自分で那覇空港事務所でまた資料をいただいて見たんです。たとえば昨年の十二月、非常に発着回数が多いときですが、をとってみますと、那覇空港で一カ月一万二百四回、多いときは一日四百回以上。五月は五千回だと簡単に現地で言っていましたけれども、調べてみると十二月は非常に多いですね。東京国際空港や大阪空港と比べても変わらない、それに次ぐような交通量で、パンク寸前になっているわけです。しかも幅四十五メートル、長さ二千五百五十メートルという滑走路一本しかない。ここにP3がまだ居すわっている。そして自衛隊機が入る。十二月のこの一万二百四回のうち、軍用機の使用が五千六百八十五回、民間機が四千五百五十九回。しかも軍用機の事故がいろいろ起きています。  これは古い資料ですが、昨年五月十五日から八月二十三日までほぼ百日間で、那覇空港事務所の話ですが、民間機の事故四件、軍用機事故は九倍の三十六件になっています。三日にほぼ一件の割りで軍用機の事故が那覇空港で起きている。私は、こういう状態が続いていけば、いつ大事故が起きるかわからない状態だと思うのです。  沖繩返還の目玉商品といわれたあの那覇空港が実際、民間機がああいう片すみに押しやられて、P3が居すわるだけじゃなくて、自衛隊が入ってきて、しかも事故回数も民間機の九倍に達している。三日に一回の割りで事故が起きている。沖繩県民をほんとうに守り、この那覇空港が施政権返還の目玉商品だとすれば、このような状態は即時解決しなければいけないと私は思う。ほんとうに沖繩県のこれが玄関であり、返還の目玉商品であるというならば、こういう状態は許せないと思うのです。  この問題について、P3も含めて、おそらく長官も、いまの状態のままでいいということではないと思うのですが、自衛隊もこれからさらにふえる。さっきの話だったら、自衛隊機もふやすということになれば、これはどうするつもりですか。
  220. 山中貞則

    ○山中国務大臣 発着回数等の事実関係事務当局に説明させますが、基本的には、私が先ほど申し上げましたとおり約束違反ということで、私はそう思いますから、したがってその約束どおり実行させるために私は全力をあげる、こういうことであります。むずかしい問題等いろいろありますけれども、何が何でもという気持ちでやっております。
  221. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 那覇空港におきます航空機の離発着回数は、先日御視察のときに御説明いたしましたのは離発着回数でございます。それから空港事務所で普通、空港の使用状況をはかるために使う数字は管制回数でございます。ただいまお話がございました十二月の数字は管制回数であろうと思います。  そこで、五月の管制回数を申し上げますと、合計七千二百回でございます。確かに昨年の十二月は一万回程度の管制回数でございまして、私どもも、これは非常に多いという感じを持ちまして、運輸省の事務当局に事情を照会いたしましたところ、あの時期は民間機が非常に訓練をしたというようなことでございまして、運輸省のほうも、民間機の訓練をある程度控えるようにというような指示を出しまして、その後一月から五月まで大体七千回から九千回程度でございます。そのうち民間機は四千回から五千回程度でございますが、那覇空港の収容力といいますか、管制上の収容力がどのくらいあるかという点につきまして、運輸省当局の話では、一月一万回くらいは可能ではなかろうかというふうに見ております。現在自衛隊は、五月の数字では約一四%程度を占めております。米軍機が三五%くらい占めておりますが、したがいまして、P3が撤去された暁にはゆっくりするのじゃないか、こういうふうに見ております。
  222. 中路雅弘

    中路委員 もう一つお伺いしたいのですが、これは昨日長官から、陸上自衛隊が少なくともあの町のどまん中に居すわっているのはどうか、他のほうへ移ったほうがいいというようなお話もありましたけれども、その問題と関連してお聞きしたいのです。  これも、私たちが視察に行ったときに、那覇の市長あるいは建築関係の方から訴えがあったものです。資料ももらってきました。  さきに営内居住の自衛隊員の住民登録の問題がありました。この問題の解決にあたって政府が、自衛隊基地内にも地方行政権が及ぶということを確認されたわけですが、いま那覇市内の自衛隊の基地内で進められている建築工事、これが、市の文書でも明らかなように、建築基準法に違反している。航空自衛隊那覇基地、陸上自衛隊那覇駐とん地などで進行中の工事十二件。防衛施設庁が十一件ありますが、あと気象庁のほうはストップしている。防衛庁の関係の十一件だけ。これは、自衛隊の電話交換室、あるいは倉庫、こういったものが含まれていますが、こまかい点は省略しますが、第一番に、市の建築主事の適合通知を受けるということに建築基準法十八条四項ではなっていますが、この建築はまだ那覇市の建築主事の適合通知を受けないまま着手をされている。条例の規定に適合するかどうか審査をして通知をするわけですが、これはまだ受けないまま工事を進められているわけです。この問題について、まず施設庁のお考えもお聞きしたい。
  223. 高松敬治

    ○高松政府委員 昨年からことしにかけまして、この問題がだいぶ那覇でごたごたいたしました。いろいろ長いいきさつがあるわけでございますけれども、いまおっしゃった中で、建築基準法に違反している、そういうことをやっている、こういうお話でございますが、確かにそういう確認通知を受けないで工事をやったという点については、そういうことにもなろうかと思います。  ただ、これが問題になりましたのは、工事の内容なり工事の中身自身が建築基準法の定める基準に合致していないということではございませんで、ただ手続上においてそういう問題が起こった。特に、昨年の十二月二十五日に那覇市長から、うち三件について確認通知の保留の書類が参りました。引き続きまして、ことしの三月の七日になりまして、建築主事から確認通知ができない旨の通知がございました。その理由一つは、基地内に行政権が及ぶかどうか非常に問題があるというのが当初の議論でございました。それが、住民登録の問題がああいう形で解決されてまいりまして、それに伴いまして、その点については疑問はなくなってきた。  ただ、建築基準法四十三条に規定する「建築物の敷地は、道路に二メートル以上接しなければならない」、この規定に違反している疑いがある、したがって出せない、こういうことがございました。しかし四十三条には、「ただし、建築物の周囲に広い空地があり、その他これと同様の状況にある場合で安全上支障がないときは、この限りでない」、こういう規定がございまして、私どもは、この規定に合致しておるのじゃないか、したがって、那覇市役所はそういう確認通知を法に定められているとおり、二十一日以内に出さなければならないのじゃないか、ということを話をしました。これはずいぶん長い間かかって、毎日毎日ごたごたやっておったようでございます。建築基準法の所管官庁である建設省に対して、この問題は私どもこういう見解であるから、これについてどうだろうか、ということの意見を求めましたところが、建設省としても、それはただし書きの趣旨でよろしいんだ、那覇市役所がそういうふうに確認通知を出さないほうが建築基準法の解釈上間違っているというふうな意見でございました。それに基づきまして、四月二十五日には建設省住宅局長から那覇市長あてに通牒もされておりまして、これはただし書きを適用するのが妥当であると思量されるので、この趣旨に従ってすみやかに本件事務処理がなされるよう適切な措置を講ぜられたい、こういう趣旨の通牒が出ております。  私どもといたしましては、これは何か那覇のほうに誤解があったのかもしれませんが、こういうことで、正常のいろいろな手続をとることができませんで工事をやらざるを得なかった。工事をそこでしばらく中止した時期もございます。中止して話し合いをした時期もございます。しかし、御承知のように、いまの沖繩のような事情で、人夫も散ってしまいますし、工事もたいへん遅延するというふうな状況になりましたので、建設省もそういう意見であり、建築基準法の実体的解釈においてその点に誤りがないならば、これは工事を進めるのもやむを得ない。那覇市役所とはずいぶん現地で、交渉をしたようでございますけれども、とうとうその点については意見の一致を見ないままに現在に至っている、こういうことでございます。
  224. 中路雅弘

    中路委員 航空自衛隊那覇基地、この敷地が米軍基地に囲まれた形になっていて、いわゆる法にいう道路に接していないというところを一つ問題にしているわけですね。問題にしているわけだけれども、この問題も何で起きているか。基地内を走る国道三百三十一号線の開放がまだなされていないというような、こういう問題とも関連しているわけですね。これも前から開放するんだということを言いながらそのままになっている。またこのことが那覇市内の中心の交通問題解決の一番大きな障害になっているわけです。だから、ここの解釈をどうするか、ただし書きを使って何とか抜けてあくまで建物を建てるという前に、施設庁として、まず問題の大もとの三百三十一号線をいつ開放するのか、こういう問題についてもっと積極的な仕事をやらなければいけないのじゃないですか。このことを私はまず最初に言っているわけです。
  225. 高松敬治

    ○高松政府委員 三百三十一号線の問題につきましては、繰り返し御説明したと思いますけれども、われわれといたしましても、これについてはずいぶん努力をしてまいりました。現在、大体米軍とも話がつきまして、関係の必要な工事を現在行なっている、したがって七月末には大体完成を見て三百三十一号線が開放される、こういう段取りになっております。  しかし私は、本件の問題と三百二十一号線の開放の問題とは、おことばではございますけれども全然別個の問題である。三百三十一号線の開放がおくれているから、建築基準法の正当な解釈をまげてもこちらのほうの工事を阻止するんだとおっしゃる考え方が那覇市の考え方であったとすれば、それは非常に間違った考え方であろうと私は思います。
  226. 中路雅弘

    中路委員 それは非常に不当な言い方ですね。文書があります。那覇市の建築関係の実際に仕事に当たっている人たちから、建設省に見解を求めるというのが出ているわけですね。那覇市では、ここでいう安全上支障がないという空地、これは公園、緑地あるいは公共空地、こういったもので公的に空地が確保されているということが行政的に認められるという見解をとって、いままでずっと行政をやってきたわけですね。それからいって、あなたたちがいう空地というものについての見解をいま建設省に問い合わしているという段階だ。市長もそう言っていました。私の言いたいのは、道路の開放の問題も、いま言われたように間近にあるんだ。そして那覇市から実際にこの法の解釈についても問い合わせが来ている。そういうものを待たないでなぜ建物をどんどん進めるのか。長官自身があの場所は不適当だと言っているんですよ。臨時という名前がついているだけではなくて、一つは、いま行っているのは臨時の派遣部隊だ。しかも、臨時であっても向こうに置くということはあまり適切じゃない、もっとほかの地域に移ったほうがいいのじゃないかと、一緒に視察に行った同僚の自民党の議員さんだって、現地の懇談会で言っているんですよ。少なくともあんなまん中にいるのはまずいんじゃないか、どこかほかの場所があるんじゃないかと与党の諸君だって言っている。  そういうところで、臨時と名前をつけた部隊が、現地の行政との関係でこういう問題を起こしている、しかも強引に建物だけどんどん建設していく、こういうやり方を私は問題にしているわけなんです。法の解釈の、どのただし書きを使ってやればいいんだとかそういうことを言っているのじゃない。政治をやる立場に立ってみて、その建築の許可を与える市当局が意見を言っている、それが待てないのか。それだけではなくて、あの地域自身が、長官自身も自衛隊が居すわるのはどうかとさえ言っている。しかも派遣されているのはまだ臨時ですよ。臨時というのは間に合わせの処置なんですよ、字引き引いたって。そこに新設の建物を建てて居すわるというような部隊が臨時というようなことはいえないのです。そういう中で強引にこういうことをやろうとするから、それが国策の名前であなたたちが、国の一機関がやるということで、市の当局自身もますます反発をしている。そういうことがわからないで、ただし書きを使えばどうだからという解釈でやっている。こういう施設庁の行政のやり方、ここに私は一番問題があると思うのですが、この問題についてどうですか、長官
  227. 高松敬治

    ○高松政府委員 あそこで行ないました工事のうち、陸上自衛隊の関係については、那覇市も適合確認の通知を出しています。残りましたのは航空自衛隊の関係の食堂、厨房、補給倉庫その他の、まあそう大きなものでございませんけれども、そういう建物の工事でございます。  そこで、どうも私、理解できないのですが、空地ということについての解釈が、那覇市と建設省なりわれわれのほうと違っている。そういう場合の解釈は、やはり建築基準法の主管官庁である建設省の解釈に従うべきものである、私はどうもそう思われてなりません。いろいろなほかの要素があるときにそういう解釈をするのはおかしい、こういうふうな御意見のように受け取れましたけれども、しかし、これは事は建築基準法の解釈の問題です。そういうことについていろいろなほかの政治的な要素が入ることが、むしろ私としてはこの問題についてはおかしいのではないか。  それから、あそこの陸上自衛隊の場所につきましては、昨日も御意見が出たのを拝聴しておりましたけれども、そういう問題については、これはまた別個の観点から論ぜられ、考えられていってしかるべきものではないかというふうに考えます。
  228. 山中貞則

    ○山中国務大臣 沖繩には、まだ、その法律のたてまえとかなんとかいうことを押しつけてみようとしても通用しない面があります。ことに、二十七年も全く本土の法体系、行政体系に切り離されて、やむを得ず琉球政府という形で国家主権を与えられないままでやってきておられますから、いろいろ今後よく相談をしてやらなければならないことはあると思いますが、いまの問題は、こういう形の押し問答よりも、私もよく存じ上げている市長さんですから、私から話をして、そして、どうこうするという前提じゃなくてよく話をしてみるということでおわかり願いたいと思います。
  229. 中路雅弘

    中路委員 これはやはり、十分地元の行政当局と話し合いをされるのが私も必要だと思います。いまおっしゃった、建設省が出されたのは三月十五日だ。私の言っているのは、三月十五日にそういう建設省の解釈を出して、そのあと三月二十六日に建設省に対して現地の那覇市から、私が言ったような点についての、解釈についての問い合わせが出ているわけです。だからこういう点については話をされたらどうかということを言っているわけなんです。前にそういう解釈でいくということで建設省は指示を確かにされた。それについて地元の市のほうからその後三月二十六日に、私が言ったような問題について見解はどうかという問い合わせがまだ出ている段階ですから、そういう段階で工事だけ一方的に進めるというのは、行政府と対立してまずいんじゃないかということを言っているわけなんです。どうして施設庁がそんなに突っぱねるのか。時間がないからあれですけれども
  230. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはどっちがいいとか悪いとかいうことで片づけちゃいかぬと思います。私はよく現地の事情はわかりますし、まあ一応私と市長さんと話をするということでこの場はおさめて……。
  231. 中路雅弘

    中路委員 時間が来ましたからまとめの発言をしますけれども、現地でも自衛隊に対する県民感情の問題で、そういう点について幾つかの世論調査とかそういう話もありましたけれども、これは毎日新聞社が現地の琉球新報社と協力して、沖繩の全島からサンプル抽出して調査をした昨年暮れの自衛隊配備についての県民の調査一つ資料ですね。簡単に要点をお話ししますと、今度の自衛隊の沖繩配備について、防衛上置く必要があるというのが二五%、全く必要がないというのが四五%、あと、あるいは災害救助ということだけに備えてなら最小限の配置が必要かもしれないというものや、その他無回答が相当出ている。それからアメリカの基地については、一日も早く撤去してほしい、それらを含めてアメリカの基地の撤去を望むのは五八%。いまの国際情勢の中でまだやむを得ないというのは一五%しかいない。ほかにいろいろまた資料も使われればあると思いますけれども、これも一つ資料ですね。毎日新聞社がやった調査です。  前の大戦のときに、いま自衛隊が配備されている沖繩本島の南のほうは戦場になった。あの島尻地域ですね、あそこにはいま自衛隊の中心が派遣されている。しかも米軍基地と共同使用の形が非常にふえてきておるという状態です。その点でも、しかも軍事面におけるだけではなくて、沖繩におけるこのアメリカ基地をまた守るという任務も、先ほど大臣もたびたび答弁されて、いままでの国会でも答弁されていますけれども、こういった機能を持ったものが、しかも国会の審議を待たないで、久保・カーチスという文字どおりアメリカとの誓約、これを果たすということで、事実上もうその実体が送られているということについて、私は強く抗議をしたいと思う。  久保・カーチスの取りきめというのが、事務的なもの、単なるそういうものならば、当然、この配備の問題については、国会の審議を経ていかなくてはならない。また約束事であり条約にひとしというものであれば、これは当然国会の審議にかけなくてはならないものだと私は思うのです。この点も明確でない。そういう点で私は、この問題をほんとうに審議をしていくならば、まず、いまやみ部隊として送られている自衛隊は引き揚げて、沖繩における自衛隊の配備についてどうしていくかということは、当然国会の審議を経なくてはならない、こういうふうに強く感じるわけです。  先ほどの例のスクランブル問題については、またあらためて資料を出していただいて発言する機会をいただくということになっています。  一応約束の時間ですから、これで終わりたいと思います。
  232. 三原朝雄

    三原委員長 鈴切康雄君。
  233. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 まず、山中防衛庁長官にお伺いをすることが初めであります。個々にわたる問題と防衛論争、そういう問題をきょうは論議をしていきたい、このように思うわけであります。  いずれにしても、三十万近くになんなんとするところの自衛隊という武力の集団、それを統括するのが防衛庁長官であります。そういう意味から考えますと、新しく就任をされました山中長官が今後防衛行政を担当することになるわけでありますけれども、一面、長官は武力の集団である自衛隊をシビリアンコントロールする面と、もう一面は、やはりみずから憲法の基本精神を踏まえた姿勢がなくてはならないと私は思うのです。不幸にして防衛庁長官は、西村長官をはじめ増原防衛庁長官も、相次いで不用意な発言をされることによって辞任をされました。そういう意味から考えるならば、防衛庁長官というものはたいへんに微妙な、たいへんな責務があろうかと私は思いますが、まずそういう点について、防衛庁長官の就任にあたっての心がまえをお伺いいたします。
  234. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私も、失言のほうはややあぶない、すれすれの男でありますが、しかし、自衛隊というものは、いまおっしゃったように、定数でいっても二十五万九千でありまして、そういう集団というものが一応武装しておるわけであります。これをやはり責任者として、最高の責任者は総理でありますけれども、その実際の日常の委託を受けて総理の代行をする者は私でありますから、その任務の重大性は他の役所とは比較にならぬ、まず私はそう思います。しかもその集団が、われわれの責任であるかもしれませんが、国民的なコンセンサスというものを得られていないままに今日に至っておる。すなわち、なお今日でも違憲論争というものの対象にされておるわけであります。事実上また法廷においても持ち込まれておる事件もあります。  このような姿を考えますときに、警察予備隊から保安隊、そして自衛隊という変貌を、一応国民の賛否両論のある中ではありますけれども、見守られながら今日に至っておる自衛隊というものの現時点における責任は、まず隊員一人一人が、国民に自分たちの存在というものが理解されるような心がまえを不断に持っていなければならないことであります。一たん事ある場合のことはもちろんでありますけれども、ふだんにおいても、挙措動作、心がまえも含めて、国民に対して、また基地の周辺地域の人たちに対して接する態度から始まって、すべての心がまえの面に至るまで、自分たちはだれのために存在するのかということをよく自覚しておくべきである、私はそういうことを申しました。就任の際にそういうあいさつをしたわけであります。また国民の合意を得る努力。各党間において意見の相違がありますから、その努力にも限度がありましょうが、しかし、少なくとも理解をしてもらうための最大公約数を得る努力は、私をはじめとして懸命にしなければならない責務があると思います。そういう努力をしなければならない。  また、かつての軍のように、陸海空が対立してみたり、あるいは明確にその前提でもって設置されておる文民統制、シビリアンコントロールというものに対して疑問を生ずるような行動があってはならないし、また、かといって、それをかさに着て、背広組というものはどんな制服よりも、どんな下っぱの者でもいばりちらしてもいいんだというふうに解釈しているようなことがあるならば、それはまたそれも間違いでありますから、陸海空の対立も許さない、制服と背広の対立も許さないというのが私の就任のあいさつであります。これは全隊員に向かって放送いたしました。  私自身そのような決意をもって、きわめて慎重に処さなければならない立場であるというおことばのとおり、国民の生命財産を守るためにのみ存在し、そして平和を願う国民、国家、民族を守る、その独立を守る目的のみにおいて存在する自衛隊というものが、武装しておることのゆえによって、あるいはまたその心がまえのゆえによって、逆に国民の生命財産に被害を与えたり迷惑をかけたりすることが絶対にないように、私になりましてから、それはないことを願いますが、毎日でも、いかなるささいなできごとの隊員の事故でも、すべて報告が手元に上がるようにしてございます。なぜこういうことを起こすのか、なぜ起こったのか、そして最後においてはその処分、あるいはまた不幸にして公務のため死亡する者がありますが、そういう者についても、こまかく賞じゅつの対象となすべきものかどうか、そういうもの等についても、全部私が一々目を通すことに姿勢を変えておるわけであります。  これらの諸点を踏まえながら、できれば今後国民に愛される自衛隊になりたい。そうなるためには何をしなければならないかということをみずからに問いかけ、全防衛庁、自衛隊の隊員に問いかけるまず第一歩を進めてみたい、このような決意でおります。
  235. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 山中長官が所信の一端を述べられたわけでありますけれども、慎重に対処をする、あるいは国民的合意を得るためにというふうな抽象的なおことばでありました。  そこで私は、やはり具体的に一つ一つその中身について考え方をお伺いをしていかなければ、ほんとうに山中さん自体がそういう状態考え方であるかということについて国民の多くはわからないわけでありますから、そういう意味において、私はひとつ具体的にお伺いをいたしておきましょう。  まず、基本的な問題を聞くということで、中曽根前防衛庁長官はわが国の国防の基本方針に触れました。これは憲法ともいうべき国防の基本方針でありますが、それを改めたいという見解でありました。すなわち、自主防衛を第一義として、安保体制を基調から補完とする構想を明らかにされましたけれども、山中防衛庁長官はどのようにお考えになっておりましょうか。
  236. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、それはそれでよろしいのではないかと思いますが、日本の自衛隊というものは日本のために存在するものですから、したがって、日本の専守防衛というものが任務である。しかし、一方において安保条約というものを核のかさというような表現等で使われておりますから、もし最悪の事態が起こった場合に、私たちの手に負える状態というものは、ごくわずかの、日本の本土をじゅりんされない程度のある期間を持ちこたえる力しかないわけでありますから、やはりその意味においては、これは中曽根元長官の表現がどのような性格のものであったかは知りませんが、考え方としては、安保条約で日本の本来持っ機能以外のものが補完されておるという考え方でよろしいのではないかと思います。
  237. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、これは一つの重大な問題じゃないかと思います。それは、自主防衛を基調として安保を補完にするのか、安保を基調として自主防衛を補完にするのかというものの考え方については、これからの防衛論争の中においてたいへん多くの論議を呼ぶところであります。今日まで各総理大臣並びに防衛庁長官の発言がこの問題でたいへんな論議を呼んだということから考えてみますと、その憲法ともいうべき国防の基本方針自体を長官自体が理解できていないということは、これはたいへんな問題だと私は思うのです。どちらが基調でどちらが補完であるかということをはっきりしていただかなければいけないと思うのです。もしも中曽根防衛庁長官の言われる、言うならば自主防衛を第一義として、安保体制を基調から補完とする構想であるというならば、それはそれなりにまた論議を進めていきたい、このように思うのですが、、この点についてお伺いします。
  238. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、そうはあまりたいへんな問題だとは思わないのですが、安保条約というものは、日本の独立を最後まで守るための基調とするということでありますから、中曽根大臣がどう表現したか知りませんが、いま中曽根大臣の発言をめぐっての議論でありますが、わが国の自衛隊というものは、わが国の独立と安全、そして国民の生命財産というものを守ることが任務だという自衛隊法の設置の目的どおりでありますから、そういうことであって、そして、まさかの場合にはとても手に負えないから、安保条約を結んでいるアメリカの力に依存するということでしょうから補完ということば等は、まあ中曽根大臣の使ったことばでありましょうから、そこらのところを、私としてはどういうことばを使ったのかよく知りませんので、そう重大な問題であるとは思いません。
  239. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 だから私は、山中長官防衛庁長官に就任をしたその時点において、まず憲法ともいうべき国防の基本方針をただしておかなければならない、そのように思ったわけです。  そこで実は、「日本の防衛」という、これはいわゆる防衛白書であります。となりますと、「外部からの侵略に対しては、将来、国際連合が有効にこれを阻止する機能を果たし得るに至るまでは、米国との安全保障体制を基調としてこれに対処する」。この「米国との安全保障体制を基調としてこれに対処する」、この部分が変わるということですね。
  240. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは国防会議できまった日本の防衛体制、国防の基本方針、これにも一、二、三、四とありますが、「国力国情に応じ自衛のため必要な限度において、効率的な防衛力を漸進的に整備する」、こうなっておるわけでありますから、そして第四で、「外部からの侵略に対しては、将来、国際連合が有効にこれを阻止する機能を果たし得るに至るまでは、米国との安全保障体制を基調としてこれに対処する」。そう別段おかしなところはないと思うのですがね。
  241. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日米安保体制を基調にするのか、自主防衛を基調にするのか、これは、その主導権というものはすべて変わってくるわけであります。補完をするというものは、その足りないものを補完をするということなんです。ゆえに、あなたの考え方が全く中曽根さんと同じであるとするならば、それはそれでよろしいです。これは、もう論議をしてまいりますと、私は次の問題がたくさんあるわけですから、あなたの考え方を一応聞いて、またその上に立って私は論議をしたいと思いますので、それはそれとしてお伺いをしておきましょう。  次は、日米安保体制の評価については、現在及び将来にわたってどうお考えになっているか、その点についてお伺いします。
  242. 山中貞則

    ○山中国務大臣 やはり日米安保体制というものは、極東に位する日本の今日までの戦後の足取りから見て、一応朝鮮動乱のときあたりもいろいろなことは日本にもありましたけれども、日本直接ではありませんが、身近な問題として起こりましたけれども、やはり日本の存在というものが脅かされないで済んでいるということは、私は非常に効用があるものである。したがって私どもとしては、安保条約というものは、これを中身を絶対変えないとは言っておりませんが、やはり将来に向かっても堅持をすべきと思っておりますが、しかし、条約そのものには、当事国のどちら側からでも、一年前に予告すればこれはもう廃止をされるという、ある意味では非常に不安定な問題になってきておるわけでありますから、私どもとしてはそれを堅持したい。また、なお米側においても、これに対して、別段やめようじゃないかというような話はないというふうに考えておりますので、当分こういう状態が続くことのほうがよろしいと考えます。
  243. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 同じく、先ほど触れられました国防の基本方針の中に、「国力国情に応じ自衛のため必要な限度において、効率的な防衛力を漸進的に整備する」というふうに書いてありますけれども、その国力、国情に応ずる防衛力というものはどういうことであるのか、その点についてお伺いします。
  244. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これも国力、国情でありましょうが、日本の力が経済大国になったからといって日本は即軍事大国になることはない。また、東南アジアあたりで一部いわれておるような、再び経済大国日本が軍事大国となって脅威を与えるのではないかというような、そういう懸念といいますか、そういうものがあるとも聞いておりますけれども、しかし私たちは、第二次大戦のあの凄惨な体験に基づいて平和憲法といわれる今日の憲法をいただいておるわけでありますから、その憲法の認める範囲、そうしてまた、日本の自衛隊というものは、日本の国の独立と自由、安全というものを守るための最低限の自衛力である。外国に対して、気に食わない国があるからといって出かけたり、あるいはまた国際紛争解決の手段に武力を用いることは、憲法等で定めて禁止してあるわけでありますから、おのずからそこにきちんとした節度を持ったものであると考えます。  したがって核兵器についても、国会の決議もすでに加わっておりますし、国の意思として、持たずつくらず持ち込まずという三原則というものを確認をしておりますし、それは堅持されていくでありましょう。そうすると、日本が国力、国情に応じ必要な限度においてというのは、日本の経済力が大きくなったら防衛力をふやしてもいいというような意味ではなくて、日本が自分の分相応の、そうしてまた「自衛のため必要な限度」ということは、やはり国際的に兵器というものは近代化されてまいりますし、新しいものが開発されてまいりますし、レアード前国防長官が感心して帰ったというのは、手入れのよさに感心して帰ったということになっておりますが、よくもまあこんな兵器を長いこと持っているものだということも裏には含まれているのでありましょう。そういう意味では、やはりある程度の更新ということもあるわけでありますから、そういうようなことをもろもろ踏まえていけば、これが無限に膨大化するというようなことには絶対にならない、そう考えます。
  245. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛費の限界は、GNPとの比率によって限界を求めるというような考え方は、私は適当ではないと思います。社会保障費あるいは教育研究費、公共事業費とのバランスをどこに置くかによって私はきめるべきであるというふうに思うのですが、前の中曽根さんもやはりそういう見解を示されましたけれども防衛庁長官はどういうふうにお考えでしょうか。
  246. 山中貞則

    ○山中国務大臣 一つお願いがあるんですが、中曽根大臣の例だけ引いて言ってもらうとちょっとまずいのであって、そのことは別にして、GNPに対比して考えることは、GNPに対して現在日本が〇・八であるという結果は、私は対比の一つの数字として持っていいと思います。しかし、日本のGNPは今後も、通貨変動、あるいは国際経済、貿易の変動によっても、相当な勢いで成長を続けていくだろうと思います。したがって、GNP対比、たとえば一%以内とかなんとかいうめどの中でやるということは、そのGNPがきわめて異常な大きさになってきた場合には、防衛費そのものも一%分だけ異常な大きさになるわけでありますから、それはものさしとして考えるのはあまり適当じゃないだろうと私も思います。  したがって、いま言われた、社会保障とか、いろいろな国の社会公共投資、社会資本充実、こういうようなこと、こういうのがやはり国情に応じということでありましょう。ですから、日本国民の許容できる範囲内ということで、その時点、時点においてやはり認められるような限度内において処理しませんと、GNP対比何%まではいいというようなことで、親方が伸びればそのパーセント部分も大きく伸びるわけでありますから、そういう考え方でものごとを受け取ってはいけないだろう、そういうふうに思いますから、基本的には同感であります。
  247. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 中曽根さんの名前を出されて言われるのは非常に迷惑だ、こういうように言われるわけでありますが、しかし私は、前防衛庁長官であった中曽根さんというものが、少なくとも防衛庁長官当時にいろいろ発言された問題についてやはり比較対照をして、あるいは責任継承の原則という問題から、それを全く切り離して考えるということはちょっとできない、私はそう思うわけでありますから、中曽根さんと違う点があったならば、中曽根さんはこうであるけれども私はこう違うのだということを言っていただけばけっこうなんです。ですから、何も私の発言に対して、言うことは困るという必要はない、私はそう思うのです。  あわせて、装備の面等についての限界、部隊運用上の限界については、どのようにお考えになっておりますか。
  248. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは専守防衛の限界という意味でもあります。そうすると、たとえば先ほど私が言いました、核兵器は持たずつくらず持ち込まずというのも一つのめどですし、基本的な条件ということでありますが、それに、敵をみずから進んで攻撃することはない、他国に脅威を与えることはない、国際紛争解決の手段として武力を用いることはしない、もっぱら日本の独立と自由、あるいはまた国民の生命財産というものが不当に侵される場合においてのみそれは許される自衛力であるということでありますから、たとえばマラッカ海峡防衛論なんというものがあります。こういうようなものなどは、日本国憲法を知らざる者の言うことであるということで、問題にするに値しない、そういうふうに考えます。
  249. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 またここで中曽根長官が出てくるわけでありますけれども、中曽根前長官は、さきに個人的見解として、非核中級国家という構想を打ち出されましたけれども、当時の佐藤総理大臣との調整の結果、非核専守防衛国家という形に改めた経過があります。現在のわが国は非核専守防衛国家ということであるのか、長官はどのようにお考えになっておられるか。
  250. 山中貞則

    ○山中国務大臣 日本が非核国家であることだけは間違いありませんね。そしてまた核保有の超大国でないことも確かです。かといって、日本が経済力も国を守る力もほとんどないようないわゆる零細国といいますか、そう言うのも変ですが、そういう立場にもない。そういうことを考えますと、表現はいろいろありましょうが、私もその問答は聞いておりました。したがって佐藤総理が、しいて言うならば非核専守防衛国家。というのも、私はそんな名のり方をする必要があるのかなあとも思ったものですが、しいて呼べばそういうことになるのではないかということで、私もそれは同感であります。
  251. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府のとっている非核政策は、どのような評価に立って進められているか。長官は、一応憲法という点をさておいて、除いて考えてみたときに、わが国の核武装について、軍事的または政治的にどのような見解に立たれておられるか、その点についてお伺いをします。
  252. 山中貞則

    ○山中国務大臣 核武装というのは日本はしないということでありますから、それに対しては感想も何もありません。絶対に持たない、持ち込ませない、つくらないというのですから、そういうことを自衛隊として、武器として考えるというようなことは絶対にないということであります。
  253. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 最近の新聞によりますと、核拡散防止条約について査察が日本だけ不利なような国際的な動きが報ぜられておりますけれども、核防条約の早期批准についてはどのようにお考えになっておりましょうか。
  254. 山中貞則

    ○山中国務大臣 批准は内閣が国会に対して求めるものでありますから、その手続の問題については、私は特別に自分で答弁する権利はありません。しかし、内閣としては一応それに対して閣議決定はいたしておりますけれども、やはり日本が、原子力の平和利用という問題において、核保有大国のエゴイズムという感じもある程度私はいたします。したがって、それによって私たちの平和利用ということは、一応原子力基本法等に基づいて許されておるわけでありますから、武器ではないし、平和的にエネルギーとして利用するようなことについてまで、一方的に自分の国は閉鎖しておいて干渉するということ等があることについては、やはり核保有国とよく話をしなければならぬということがあることは、私自身もよく承知いたしておりますが、かといって、私がそれを批准すべきじゃないとかなんとかと言うことは権限外のことであろうと思います。
  255. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 報道によりますと、防衛庁は中期防衛計画に着手をされるということでありますが、そしてその報道される見出しには、「五次防を実質検討」という見出しで報道されております。山中長官事務当局に対して、四次防の防衛計画については従来の長期計画を前提とせずに作業を進めるよう指示したと報ぜられておりますが、五次防計画は進められておるのでしょうか。
  256. 山中貞則

    ○山中国務大臣 四次防の次は、四の次は五だよという意味では五次防ということに当然なるのでしょうが、それは三次防の次は四次防であったというようなことと同じことで、私は、そういうことでやるべきなのか、あるいはたとえば陸上は、沖繩が返ってきたんで必要になった千八百人というのを、言うならば一次防から設定していた目標の十八万というものに乗せなければならないと思うのですね。理論的には十八万一千八百名。しかし、実際には今回の一千名によって十八万名ということになりますから、広く周知されておる十八万名であるならば、今回は八百名が高射砲群の再編によるやりくり、そしてどうしても足らない一千名は、十八万名の当初のワクの中にめり込ませていこうということでやっておるようであります。  こういうことにも見られますように、じゃ、陸上自衛隊の定員の増というのは、かりに四次防が終わったあとあるかというと、もうないということは一つ言えると思うのですね。そうすると、あと残るのは、やはり変貌していく兵器あるいは装備の各国のレベル、そういうものによって、日本もやはり装備の近代化なり更新なりをしていかなければならぬだろう。そういうようなことから考えますと、調達等においては、研究開発、契約調達、そういう過程を踏むものは、ある程度の長期的な見通しがないと、単年度こっきりでは、これはとても普通の建設工事の国庫債務負担行為と違いますので、二年間で必ず済んでしまうというようなものでないものも存在しますから、簡単にはいかないと思いますが、しかし、私ができるんじゃないかと思うのは、普通の経常費これはべースアップ分等も含めた人件費ももちろん入りますが——的なものは、こういうものは単年度予算的にやってできるんじゃないかというふうにいま考えておりますけれども、まだそれを具体的に、就任してから日も浅くて、国会に備えて一生懸命勉強さしていただく時間だけでありましたので、庁内で私の考えを指示して、来年度予算からでも反映させようというような事柄は、単にこの四次防が終わったあとの問題ということばかりでなくて、こまかな問題等も、まだ具体的に庁議等を開いて私の感触を盛り込んでいく時間がありませんので、そこまでやっておりませんが、一部新聞に報道がされましたので御質問があったと思いますが、私自身はちょっとそういう感じを抱いている。それをどうするかは、まだこれからの問題であります。
  257. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 また中曽根長官が出ますけれども、中曽根長官が十年後の長期整備の方向を打ち出して、その前半が四次防であり後半を五次防とする、そういう考え方のもとに、陸上は現在の五方面隊、十三個師団、十八万体制のままで、航空機は約一千機、海上は三十二万トンという計画を私見として示されて、第四次防衛力整備計画が達成されれば、少なくとも七、八〇%は達成できるという冨期の整備計画の考え方を明らかにしました。その点、山中防衛庁長官は、防衛力の整備の方向というものをどのようにお考えになっておられるか、お伺いします。
  258. 山中貞則

    ○山中国務大臣 もうあきらめました。中曽根大臣当時言われたことは、私の承知している範囲では、それは結果的には政府として認めないということで、四次防は三次防の延長の、いわゆる三の次の四というよけな形で実質上でき上がっているものと私は思っております。でありますから、十年後を想定して、前期四次防、後期五次防というような考え方は、現実に存在しておりませんし、私もその考えをとる意思はありません。
  259. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 新聞の報道でございますから、きょうは正式な場所で聞いてみなければならぬと思うのですが、山中長官が、五カ年計画をやめて単年度計画にしたらどうかということの理由として、長期計画だと、やはり計画そのものが非常に惰性に流れるほか、情勢に即応した手直しがむずかしい、五年分の予算を先取りするということの不合理と、インフレに伴う予算の狂いが大き過ぎる、つまり長期計画は激動する現代には不向きというもので、同時に、巨額な防衛予算に対する世論の反発も考慮して言われたというふうに報道されております。私も、そういう理由からやはりあなたが言われたとするならば、それはそれで一理あると思うのですが、今後、防衛庁長官は、この五次防に対する考え方というものをどういうふうにお考えになっておられるか、その点についてお伺いします。
  260. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私はそういうことをしゃべった覚えはないのです。したがって一社しか記事になっていないと思います。一社だけだと思います。それは、幹部会の公的な席でもありませんが、毎日勉強会をやっております中で、たぶん経理局の段階だったと思いますけれども、そういうようなことも考えてみたらどうだ、研究しようということは言いました。それだけの話でありまして、その理由づけその他については、先ほど私がちょっと述べましたようなことを、それも私の口から出ておりませんで、いま御質問がありましたから、どういうことなのかということでありますから、そういうことも私として考えられるのじゃないかということで述べたわけで、その当時においては、何も就任早々で私が具体的にそんな指示をしておるはずはないのであります。
  261. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁は、「日本の防衛」ということで国民に提示されましたいわゆる防衛白書、これは四十五年の十月の時点でその分析等はなされているわけでありますけれども、国際情勢の分析を含めた諸問題について、その後、米中接近、あるいはわが国の日中国交正常化、ベトナム戦争の終結等、諸般の国際情勢の変化がもたらされてきている現状の中にあって、国民にはこれだけしか示されていないわけでありますから、私はもう改定の必要があろうかと思いますが、その点についてどういうふうになさいましょうか。
  262. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは防衛白書とかりにいわれているにしても、これは法律によって国会報告の義務の存する各種白書とは全然違いますから、前に出しましたものは、その時点、昭和四十五年十月の時点までに踏まえた国際情勢と日本の防衛力の姿というものをわかりやすく書いたものと私は思っておりますが、こういうものを出したほうがよろしいのかどうかという問題も含めて、出すならばことし出すかどうかですね、そういうことも含めて今後検討したいと思っております。
  263. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は前に「日本の防衛」について質問をしたことがあります。そのときに総理大臣が、日本の防衛の問題は、今後国際情勢の変化とかそういう点にいろいろの変化があった場合、改定をしなくてはならない状態になった場合には改定をしますという旨の答弁がなされております。そういう点について、防衛庁においては、国際情勢の分析とか、あるいはこういうふうな本を出されたのは初めてなわけでありますから、国民はこの「日本の防衛」だけしか目にしていないわけです。現実はもう大きく変わってきているわけでありますから、当然改定をして、少なくともいま現在においてはこういう状態である、こういう考え方であるということを、私は明確に国民の前に示す必要があろうかと、そのように思うわけでありますけれども、その点についてお伺いします。
  264. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いまの御意見は非常に参考にさせていただきたいと思います。というのは、これは毎年出す意味の、そういう性格を持つ各種白書でつくったのか、それとも日本の防衛の基本方針みたいなものでつくったのか、このところは、一回しか出ていないわけでありますから、初めてといえば初めてでありますし、国民がこれをどういうふうに受け取られたか。また私たちは、やはり国民に知ってもらう必要がある、知ってもらわない限り理解もしてもらえないということでありますから、格別の御異論がない、むしろそのほうがいい——まあ改定ということばは違うと思うのです。これはそのときの時点、ことしつくるならばことしの時点における日本の防衛というものでありましょうから、それは作業はできないことはないと思いますが、やはり知らしめる努力の一つにこういうものも加えたほうがいいという御意見が多いようであれば、私ども考えてみたい、こう思います。
  265. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛局長、たしか国防白書、防衛白書というものをすでに作業に入ったというような、前に国会でそういう答弁をされたと思うのですが、その点どうなんでしょうか。
  266. 田代一正

    ○田代政府委員 これは前長官のころに、たしか国会の関係上、昨年の夏以降だったと思いますけれども、なるべく早い時期に防衛白書を出したいという御意見がございました。そういうことで、実は部内でもことしの春ごろに、玉木審議官という防衛白書の担当がおりますが、事務的にいろいろな書類を整理していたという段階がございました。しかし、さっき長官からお話がございましたように、これは長官の決断を要する問題でございますので、国会でも済みましたら、さっそく長官とも十分御協議の上おきめ願いたい、こう考えております。
  267. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま御答弁があったとおり、前長官は少なくとも早い時期に防衛白書を出したいということを言われておられて、もうすでに作業が進んできているわけです。しかし、この間の問題から増原防衛庁長官は引責辞任という状態になったわけでありますから、当然山中長官においても、この防衛白書については早急に出されたほうがよいのではないか。そうしませんと、国際情勢のものの見方が全くいま現在は異なっているわけでありますから、そういう点を含めて改定をされたほうがいいんじゃないか、私はこう思うわけでありますが、その点についてもう一度。
  268. 山中貞則

    ○山中国務大臣 前長官のことを全部踏襲するわけにはまいらない部分もございますので、したがって、まあいいことであれば、これはやはり路線としては踏襲したほうがいいんでありましょうから、そういう発言があったことは初めて知りましたので、そのことも念頭に置いてまいります。
  269. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛白書は、むしろ防衛庁サイドによる考え方が非常に強いわけです、実際には。そういう考え方からいきますと、しょせんは国防強化につながるおそれが出てくるんじゃないか、こういうふうに私は心配されます。ゆえに、広義の安全保障白書というような状態で、外交、経済等も含めた上に立って防衛というものを考えられるという、そういう考え方はどうかというふうに思うのですけれども、その点いかがでしょうか。
  270. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これまた傾聴いたします。私も就任のあいさつの際に、今日、防衛は防衛のみで独立できない環境のもとに置かれている、すなわち、防衛は日米間において、安保条約だけでなくて、経済の問題でも、通貨の問題でも、外交そのものにも影響してきつつある、そういう環境を踏まえて広い視野に立つべきだということも言いましたけれども、やはりそういう意味でつくるとすれば、いまの御意見のようなことは、できるかできないかわかりませんが、念頭に置くべき新しいものではないかということは私も感じます。
  271. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま防衛白書は、防衛庁のサイドでこれをおつくりになった上において、閣議において報告をされる。こういうものができましたということで報告をされるということにとどまっているわけであります。私は、少なくともこれは国防会議にかけて、そして国防会議の議を経て出されるのが正当ではないかと思うのですけれども、その点についてお伺いします。
  272. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、まだつくるということを決心しておりませんので、あなたの御意見を非常に参考にしながら耳を傾けております。ただ、そんなふうにして権威づけるようなものでなければならぬとなると、これはまたたいへん作業が重大な作業になりますし、肩のこらない、国民に対して、現時点における国際情勢その他を踏まえた日本の防衛のありのままの姿というもの、それを知っていただくような意味の白書というようなことのほうを考えていたものでありますから、そこまでになりますと、またあらためて法的な地位とか、取り扱い方の基準とかいうものに重大な問題が起こりますから、防衛庁の狭い視野でやるなよという御指摘と承っておきます。
  273. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 当局のほうに。先ほど御答弁がありましたけれども、防衛白書、いま現在検討されている段階であるというわけでありますが、やはり検討されている段階の中において一番問題点になっているところ、そして、これはもしも出されるということであるならば、改定が必要であるというふうに思われる場所はどういうところであるか、その点についてお伺いをいたします。
  274. 田代一正

    ○田代政府委員 実は、私もたいへん国会その他で忙しくて、玉木審議官からその辺の事情は聞いておりませんので、ただいまの御質問に対しては、お答えがしかとできません。
  275. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国会においてたいへんに審議が忙しかったということは理由にならぬと思うわけです。実際に国会において審議が始まって、与党の質問は、それは皆さん方もよく言われることでありましょうし、そういう点についてはどちらかというと、さほど苦労されることはないと思いますけれども、野党の質問はきのうから始まったばかりであります。実際に国会の審議が忙しくてそういうことについては知らないということは理由にならぬ。少なくとも責任者であるならば、いま現在どういう状態のもとに作業が進められているかということぐらいは知っていただいてけっこうじゃないですか。しかも昨年増原防衛庁長官が早期に防衛白書を出したいということを言われている以上は、相当内容が詰まってきているわけですから、そういう点について、どこが改定されるかぐらいはわからなくてはいけないと思うのです。あなたの私見でもいいですから言ってください。
  276. 田代一正

    ○田代政府委員 重ねての御質問でございますからお答えいたしますが、御案内のとおり、防衛白書ということになりますと、防衛庁、自衛隊というものがどういう活動をしてきたかという面が半分くらい紙面を占めようと思います。ですから、それは四十五年度に出ておりますので、それ以降の最近に至るまでの資料を整理するという問題は当然ございます。それから、四次防がその間にできました。四次防についての詳細な説明というものが要求されるだろう、こういうぐあいに私は考えます。それ以外に、今国会終了を待たないとわかりませんが、その間における国会を中心にしたいろいろな御議論がございますので、その御議論を踏まえてみてどういうことが問題であるかという問題点でございます。そういうものを整理しなければいかぬということで、事務的なサイドとしましてはそういう整理のしかたがあるんじゃないか。その上でどういうフォーメーションにするか、これは長官の御判断による、こういう気持ちでございます。
  277. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁長官に、就任にあたっての基本的な考え方、それを一通りお伺いしたわけでありますけれども、今度は具体的な問題として、米国からの無償援助による供与品、すなわちMAPですね。MAPに対して、いかなる根拠に基づいて行なわれているか、またその返還はどのようにしてなされておるかということについてお伺いいたしたいと思います。
  278. 山中貞則

    ○山中国務大臣 詳細な数量等については事務当局に報告させますが、これはやはり当初の約束どおり、日本側が不要になった場合にはアメリカ側が引き取る、こういうことでありますから、大体予備自衛官等の必要なもの、あるいは若干の予備的なもの、数以外に、明瞭にもう要らなくなったもの、代替できたもの、あるいは使えないもの。赤さびた戦車などはその例でしょうが、そういうものはアメリカに引き取ってもらいたい。ところがアメリカのほうも、約束は約束だけれども、そういう取りきめだけれども、いまさらこんなものをもらってもしょうがないやというような気持ちがあるんじゃないかと思いますが、一向にその交渉が進んでいないようでございます。  先日、私は米側の軍の高官と会いまして、このことぐらいはさっさと片づけようじゃないか。したがって、あなたのほうで引き取りたくない程度のしろものになり下がっているわけですから、それならそれで言ってもらってお互いの了解を得て、どっち側がやるにしても、スクラップならスクラップで処分をしてその代金をアメリカ側に返すことはどうだ、そういうような話をしましたら、それはグッドアイデアだというようなことを言っておりました。したがって、そういうことで進むのじゃないかと思いますが、なお、すでに返還、向こうが受け取ったと言っているもので場所が動いていないもの等もありますし、そういうもの等については事務当局から説明させます。
  279. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 先生の御質問は二点あると思います。第一点は根拠でございますが、日米間の根拠は、昭和二十九年に締結されました日本とアメリカとの間の相互防衛援助協定でございます。それから、アメリカ側の直接これを供与いたします根拠法規は対外援助法でございます。ただしこの対外援助法は、一九六四米会計年度一ぱいで経済先進国に対しましては供与を打ち切るということになりまして、日本の年度でいいますと昭和三十八年の十二月一ぱいで打ち切られております。以上が根拠でございます。  それから第二点の、それに関しまして、現在どのような供与品でたまっているものを処分するのかという御質問だと思いますが、この根拠は、やはりいまの相互防衛援助協定第一条に基づきまして、返還に関する取りきめというのが同じく昭和二十九年に締結しております。この取りきめに基づきまして、日本側が不要となったと考えるときは、日本におりますMDAO、すなわち相互防衛援助事務所というものがございますが、この事務所を通じまして、供与の相手先であります米国防省及び各陸海空軍省に対しまして、このようなものが要らないということを通報することになっています。また同時に、アメリカ側がこれは返してほしいというような通報がやはりあり得るということがこの取りきめに規定されております。以上のような点か根拠でございます。
  280. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 先ほど山中長官からはからずも、米軍の日米相互防衛援助協定に基づく供与品の処分はきわめて不円滑である、いろいろ都市においてこの処分の予定品が山積みされておるということで困るというようなお話があったわけでありますが、具体的に、たとえば都内の十条の補給支処については、特に市街地の中心にあり、年々そのくずの山がふえ続けております。このような場所を供与品の不要なものが占拠したままに実はなっているわけでありますけれども、私は、これはきおめて不当である、このように思うわけでありますが、その具体的な処分方法についてはどのようにされておるか。ごらんになればおわかりになると思いますけれども、この都内の十条補給支処については、すでに戦車の老朽化したもの、あるいはジープ、装甲車等、数多くのそういう不要品があるわけでありますけれども、これは具体的にどういうふうにされようとするのですか。
  281. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 ただいま先生の御指摘になられました十条の支処でございますが、これは陸上自衛隊の武器補給処の十条支処赤羽地区というところでございます。ただいまの御指摘は、私どももきわめて重要だと感じておる点でございまして、その現状につきましてごく簡単に申し上げますと、五月十九日現在で私どもがたまたま調べた経緯がございます。  この時点におきましてありますものは、装軌車両、つまり戦車とか自走砲等でございますが、とにかくキャタピラのついているものが九十三両現在ここに置いてあります。この中で、その大半につきましては、私どもはすでにこれは不要であるということでアメリカ側に申し出ておりまして、アメリカ側もその旨を受容しております。したがいまして、現在この保有は、アメリカが所有しておるという形に本来なっておるものでございますが、そのままに現在されております。それから双輪車両、すなわちトラックとかトレーラーとかでございますが、このようなものが約三百十八両ここに現在あります。これもほとんど全部につきまして、私どもは、これは不要になっておる、廃品処分をしてほしいということをアメリカ側に申し出、アメリカ側も受けております。なお、それ以外には火砲、すなわち高射砲関係でございますが、高射砲の古くなったものが約八十三門ございます。なお、これ以外に古い戦車でございますが、古い昔の型、すなわちM4A3という戦車でございますが、これのスクラップになったものが、くずとなりまして約二百トンここに累積されております。そのほか、まあ一、二まだ不要品も入っておりまして、このようにかなり大量のものが、現在の私どもが修理、補給に使っておりますこの十条支処の周囲に積まれておるわけでございます。  私どもは、現在相模にアメリカの補給廠がございますので、その相模に早く持ち返って処分をしてほしいということを申し出ておったわけであります。ところが、これはアメリカ側の規則でいいますと、かってに日本内部でMDAOは処分することはできないということになっておりまして、一々その相模の補給廠から、米軍のハワイ太平洋司令部とか、あるいは国防省まで指示を仰がないと、この処分ができないというような規制をされているようでございます。なぜかといいますと、アメリカ側には、そのような不要品がはたしてほんとうに不要になっているものかどうか、くずであるかどうか、さらに軍事化されるのではないかどうかというような点の確認がなければ処分はできないというような体制をとっております。したがいまして、従来の例でいいますと、私どもが申し出てから約二百日以上の日数が、大体処分の許可がおりるまでかかっている実情でございます。  私どもは、このような長期のやり方は非常に不適当であるということで、かなり強く抗議を申し入れておりましたところが、また昨年の十月ごろから、アメリカ側では、海外に渡した供与品の軍事化に対してはきびしく監督するというような態度をとってきておりまして、また、そのようにきびしくされて長引かされては困るということで、かなり強くまた抗議を申し出まして、ごく最近にようやく、それではそのような特別に以前よりもきびしくするというようなことではなくやりますと、また確認を得まして、ようやくこの五月以来、これがまたアメリカとの間に処分が進み始めたという状況でございまして、私どもとしましては、先ほど長官が申されましたとおり、なるべく早くくず化できるものはその場でもくず化してしまって、また補給廠に送るものはどのような形でも早く送り込んで、私どもで使っている場所は少なくとも十分に使わせてほしいということ。もう一つは、市街地の住民の皆さま方にも、そのような場所を不当に占拠するということは私どもはきわめてよくないと考えておりますので、このような処分を早急にいま実施をしております。  以上でございます。
  282. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 これは外務省が窓口になるのですか、それとも防衛庁が窓口になって対外的に交渉をされているんでしょうか。どういう機関でやられておるのでしょうか。
  283. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 直接的には防衛庁がMDAOに申し出ております。
  284. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 十条の支処には戦車用の試験道路がありますね。その試験道路は非常に騒音がうるさくてどうにもならないということで、住民の方々がこの戦車の道路で戦車を動かしては困るということで、ほとんど使用していない状態だというふうに聞いておりますけれども、その使用状況と、使用されていないとするならば、このような不要な場所については、私はやはり市民のために返還をさるべき筋合いのものではないかと思うのですけれども、その点はどうお考えでございましょうか。
  285. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 ただいま御指摘の戦車のテストロードでございますが、テストロードは、先生御指摘のとおり市街地でありますので、騒音がやかましいのでほとんど現在使っておりません。それ以外にそばに、グラウンドがありますとか、あるいは双輪車のテストをする場所がございます。それ以外に、私どものその十条支処が使っておりますいわゆる武器の修理、整備の工場がございます。この双輪車の部品にしまして約四千五百点ぐらいの修理を現在年間にしております。それからまた、双輪車の修理実績は昨年度で約百七十八両、装軌車で二十五両というような整備を現在実施しております。  なお、戦車ロードその他につきましては、関係参事官からお答えさせます。
  286. 長坂強

    ○長坂政府委員 その戦車道路を含みますところの、いま北区の運動場として自衛隊と共用している部分がございます。それらを含めまして、十条の赤羽地区の北側の部分につきましては、北区の区長からも直接お話がございました。運動場の部分として北区の区民のために、青少年のために使わしてもらえないか。それからさらには、その運動場の西側の部分というものについては地下鉄の車庫用地というような要望もあるので、ひとつ自衛隊としても、防衛庁としても考えてくれないかということでございまして、私ども内部でもその要望を受けまして、態度の決定も近く行なおうとしておりますし、それから関係省庁のほうとも連絡をとりまして、十分その御意向を踏まえながら近く決定をいたしたい、上司等の御裁断も仰ぎたい、こう思っているわけでございます。
  287. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 山中長官、いま当局からいろいろ話がありましたように、基地の問題ですがね。そういうふうに、都市化されているところにたいへん広大な地所を使いながら、老朽化した戦車とかあるいは自動車とかジープとか、そういうようなものが放置されているということは、これは住民感情としても非常に許せないというような感じになるのは私は当然だと思うのです。そういう意味において、いまたいへんに前向きなお話で、この問題については至急に、住民の方々の御要望等があったので、それも踏まえて決定をする段階である、しかもあとは上司の裁断を仰ぐ段階に来ている、いまこういうふうな御発言があったわけですが、それについてどういうようなことでございましょうか。
  288. 山中貞則

    ○山中国務大臣 ちょっと参事官、言い過ぎじゃないかと思うのです。それは国有財産でありますから、きめるのは大蔵省の国有財産払い下げに関する審議会の議を経て決定されると思うのです。しかし、私どもとしては、防衛庁としては、これはそこを使用するといいますか、引き続き自分たちが使いたいということは申し出る意思はありませんし、もしその審議会で結論が出て、なおかつそこに戦車その他のくず鉄等がありましても、それは直ちにいまの残った敷地のほうに引っ越すといいますか一移してもそこは開放すべきである。そこを営団地下鉄が希望しているからそうなるのか、あるいは北区になるのか、そこらのところは私どもの問題ではなくて、自衛隊は使わないということでありますから、大蔵省がそれをどう裁量するかという問題にかかるのではないかと思います。
  289. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 さきに私どもの同僚議員の坂井さんが、MAPの問題について、米軍からの供与部分がかなり余剰にあるという点を指摘いたしましたときに、前防衛庁長官は、余剰のものについてはすみやかに返還をする、このように約束をされましたけれども、どのような措置がとられてきておりますか、その点についてお伺いいたします。
  290. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 先般の衆議院決算委員会におきまして、坂井先生に対しまして前増原防衛庁長官からお答えいたしました内容につきまして、小銃、自動銃、短機関銃、六十ミリ迫撃砲、七十五ミリ無反動砲、百五ミリりゅう弾砲、七十五ミリ高射砲、同じく九十ミリ高射砲、この種類につきまして、それぞれ保有数と、予備になった、つまり先生いま御指摘の余剰ではないかというような部分につきまして御指摘がありました。それに対しまして御返答をいたしましたが、その際は余剰になる分についてできるだけすみやかに返還措置をとるというふうに申し上げました。私どもはそれに基づきまして、直ちにMDAO等と協議をいたしまして、この六月九日付で文書をもちまして、それぞれについて返還数量を明示しまして、返還をしたいという申し入れをいたしました。  その中の代表的な例で申し上げますと、小銃につきましては、当時の委員会におきましては、余剰となるものが約三万四千丁というふうに申し上げましたが、その後の当方の計算におきまして、約三万八千丁を返還するということを申し出ております。以下、自動銃その他につきまして、その当時申し上げました数量は、そのとおりの数量で返還を申し入れております。したがいまして、私どもは、いま申し上げましたとおり、単に文書だけの通報ではなくて、さらに具体的に早く引き取ってもらうような措置を今後進めたいと思っております。
  291. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 事実上さほど役に立たないような、そういう供与小銃については、これを余分に持っている必要はもうない、全部返還をしたほうがいい、私はそのように思うわけですが、どういうお考えでしょうか。
  292. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 小銃につきましては、ただいまのところ供与小銃としまして、昨年の十二月末におきまして十万三千丁保有しております。そのうちで、現在定数に対しまして充足している分が約三万六千丁ございます。それ以外に、予備自衛官、あるいは学校の教材でありますとか、そのような数字を含めまして三万二千丁別にございます。したがいまして、三万六千と三万二千を加えますと六万八千丁必要である。したがいまして、その残りの三万四千丁は直ちに返還いたします、そのようなことを申し上げました。その後、この三万四千丁が三万八千丁不要になるという計算で私どもは返還申し入れをしたわけでございます。  ただ、現在までのところでは、四十七年度におきます小銃の調達、つまり契約は九千丁でございます。これは二年国庫債務をとっておりますので、入ってくるのは四十八年度でありますが、ここまでを合計いたしますと、十四万二千丁の契約をすでにしておるわけでございます。しかしながら、現在定数が約十六万五千でございますので、その差額の分は、どうしてもこの定数補充というものを供与小銃からしなければならない状況になっております。  以上でございます。
  293. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまいろいろ御答弁されましたけれども、先般、装備局長が、六四式国産小銃の生産を十五万一千丁でとどめる旨の発言がありましたけれども、現在の陸上自衛隊の定員、定数から見て、供与小銃を残しておかないと計算が合わないように思うわけでありますが、十五万一千丁で生産を停止してもよいということでしょうか。この点についてお伺いいたします。
  294. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 先般、衆議院の決算委員会におきまして、坂井先生に私が十五万一千丁とお答えいたしましたのは、私の計算上の間違いでございまして、ここにおわびをいたしまして計算を訂正させていただきたいと思います。実は昭和三十九年から調達を始めまして、これは言いわけにはなりませんが、早急に決算委員会の席上で積算をいたしましたところ、積算を誤りまして、十五万一千で生産を切るというふうに申し上げてしまったわけでございますが、これを訂正させていただきます。  この訂正させていただきます内容は、十五万一千ではなくて、昭和五十一年度までの段階で十七万八千というふうに訂正をさせていただきたいということでございます。このような間違った答弁をいたしまして申しわけございませんでした。  この十七万八千につきましてごく簡単に申し上げますと、先ほど申し上げましたとおり、四十七年度末の調達が、三十九年度から累計いたしまして十四万二千丁になります。したがいまして、現在の約十六万五千丁に対しましては、先ほど申し上げましたとおり、まだここに約二万三千以上の不足が出ております。なお、これ以外に年々の損耗が、わずかではございますが、ございます。それと、ただいま先生も、いつまでこのような古い供与小銃を持っているのかという御指摘がありまして、そのとおりでございまして、私どもも予備自衛官とかいうものに、たまも十分ないような供与小銃を持たせることは不適当であるというように考えまして、なるべく早い時期にこのような供与小銃は全部返還してしまいたいというような方針を持っております。  したがいまして、五十一年度までは毎年九千丁程度の調達を続けてまいりませんと、どうしてもこの供与小銃が残ってしまいます。したがいまして、五十二年度以降につきましては四次防以降でございますので、まだ何ら計画もございませんが、五十一年度までのいまのおおよその見通しとしましては、できれば、予算が認められれば、四十七年度同様毎年九千丁ずつを補給していきますと、五十一年度末には十七万八千丁になります。その場合には、まだ幾ぶん予備自衛官用は残りますが、このような方針でまいれば、可及的すみやかに世与小銃は全部返還できるというように計算いたしまして、十七万八千丁というふうに訂正させていただきたいということをお願いする次第でございます。
  295. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま私のほうから、どうも計算が合わない、十五万一千丁で生産を停止をしてもよいのかという質問をしたときに、それは間違っておったんだというような御答弁があったわけですけれども、私は、ただ間違いで済まされる問題じゃないと思うのです。これは私はかなり重大な問題だと思います。しかも、決算委員会においてそういうふうな丁数が間違ったということをその場所で訂正もしないで、そのままにおくということは私は非常に問題だと思うのです。それも、やはり何といっても十七万八千丁になるという積算の根拠というものが明らかになっていないから間違った答弁がなされるわけですから、その積算の根拠というものはどういうところにあるのでしょうか。
  296. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 ただいまの先生のおしかりはそのとおりでございまして、重ねておわびいたしたいと思います。  積算の根拠は、私どもはやはり定数の充足というものを第一に考えておりますので、その定数が根拠になっております。
  297. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その定数というのは、どういうふうな状態で一応根拠となされているのか、その点についてお伺いします。
  298. 久保卓也

    ○久保政府委員 現在、四十八年度におきまする定数は十六万五千何がしでありますが、四次防末の定数を見込みますと十七万ということになっております。  そこで、まず現在の定数を見ますると、以下申し上げる者を除く分については小銃をそれぞれ支給するということにいたします。除かれる者は何かと申しますと、拳銃を装備している者、これは三佐以上の幹部及び。パイロットなどでありまして、これが一万七千二百。それから短機関銃を装備しておる者でありまして、たとえば、タンクでありますとか、あるいは自走火砲のドライバーなどでありまして、この数字が四千三百。それから機関銃を持っておる者でありまして、これが二千九百。それから個人装備の火器を装備する必要のない者、たとえば支援の要員、陸幕にいる者、それから関係の陸幕以外のところに派遣をされている者、あるいは病院に勤務する者といったもので二千七百。これが合計しますると十五万二千になります。それからそのほか、重複することになるわけでありますが、学校などにおきまして、小銃は隊に置いてきて、学校に来てから学校に置いてある小銃を使う、その分は重複いたしますが、これが一万三千五百ということで、合計いたしますと十六万五千ということになります。このほか四次防末になりますると、いまの計画の中から拳銃を装備している者のうち小銃に切りかえる者、それから短機関銃を持っている者について、短機関銃がだんだんなくなるということとも関連いたしまして小銃を装備するような者、そういう者が、たとえば、百六ミリの無反動砲の砲手でありますとか、副砲手でありますとか、それから戦車部隊の尉官でありますとか、偵察隊の斥候員でありますとか、それから対戦車部隊の分隊長でありますとか、そういったような、ほかにもありますけれども、そういう者が約四千ばかり加わりまして十七万になるという計算であります。
  299. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 予備自衛官に対しては、この小銃というのはどういうふうな関係になりましょうか。
  300. 久保卓也

    ○久保政府委員 予備自衛官は現在三万六千でありまして、私どもの計画では、これは防衛庁限りの計画でありまするけれども、四次防末には四万五千にしたいと思っております。したがって、予備自衛官に対してはこの四万五千に応ずる小銃を付与したい、こういう考え方であります。
  301. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それは問題もかなり残されておりますが、次に進んでいきます。  FMS、有償援助品目というものがありますけれども、言うならばこれの根拠法といいますか、協定というのはどういうふうなことからなされておりましょうか。
  302. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 日米間を規定しております根拠は、先ほどのMAPと同じ日米間の相互防衛援助協定であります。それからまた、アメリカ側を規制いたします法規は、アメリカの対外軍事販売法でございます。
  303. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 FMS、いわゆる有償援助品目による輸入については、近年アメリカのほうから未納入額がたいへん累積をしているというように聞いておりますけれども、もしもそれが事実だということになれば、たいへんに国費のむだづかいになりますけれども、最近の実情というものはどういうふうな状態になっておるか、お答えを願いたいと思います。
  304. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 最近の状況を申し上げますと、昭和四十三年以前の分につきましては納入をされております。問題は四十四年、四十五年、四十六年、この三カ年にわたりまして、最近幾ぶん未納入の累積がふえてまいりまして、四十六年度までのところでは未納入の総額は五十一億六千百万円になっております。その契約件数は八十件でございます。このうち、出荷予定時期がまだ来ていないもの、すなわちアメリカとの間におきましてまだ契約の時期が来ないものが約十件ございます。したがいまして、七十件はすでに時期が来ておるのにまだ入っていないという状況でございます。それから金額的に申し上げますと、五十一億の中で約三十六億はまだ時期が来ておりません。すなわち十件に当たるものでございます。残りの十五億円が七十件に当たるものでございまして、ただいま先生御指摘の問題があるとおっしゃるのは、時期が来ておるのにまだ入っていないというこの七十件、十五億円の問題であろうかと考えます。
  305. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 十五億円でも、これは国民の税金であります。ゆえに、そういうものが契約をしたにもかかわらずいつまでも入らないということは、これは許される問題ではないわけです。私は、やはりずさんな契約に問題があろうかと思うのですが、その前に、どういうものが契約の対象としてアメリカのほうから輸入をされるべく契約をされたけれども入ってこなかったかという、その内容についてお伺いいたします。
  306. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 これには試験用の器材から航空機の部品に至るまで、かなり多くのものが含まれております。一々御指摘する時間もありませんと思いますので、おもな点だけ申し上げますと、おもなものは、航空機、誘導武器、装軌車等の部品類が非常に多くを占めております。  それから、ただいま先生が契約上ずさんな点があるのではないかという御指摘でございますが、実はこれは契約ではございますが、アメリカ側では一応有償援助という形をとっておりまして、通常の私契約のように、何月何日までに必ず納めよというような形式が実はとられておりません。アメリカ側としてはできるだけこのような時期に納付するというような形の契約になっております。と申しますのは、たとえばものによりますと、日本側が全然特許権も何も持っていない、技術的なノーハウもない、ただ非常にその部品が必要であるというようなものでございますので、どうしてもアメリカ側の考え方に従わざるを得ない。その場合に、アメリカ側ではできるだけ早く出すという方針ではあるようでございますが、この有償援助は、日本のみならずかなり数多くの国とそのような契約を結んでおりまして、たとえば、このような航空機の部品類でございますと、同じようなものが時期を接して来る場合は一挙にまとめてできますが、幾ぶん間が各国の間であきますときは、なるべくならば安く提供するために、できるだけロットをまとめてから生産に入らせるというような状態がだいぶあるようでございます。それからまた、米国の受注業者の納期の遅延があるとか、向こう側のサイドでの問題もあろうかと思われます。それから、在庫品から出す予定であったものが、在庫品がほかの国に出てしまって、どうしてもこれは新しくつくらないとできないというようなものがあるというような事情がそれぞれの部品にありまして、私どもとしましては、随時アメリカ側に早くこれを納めてくれということを毎回のように頼んでおりますが、だんだんとこのように累積してまいりましたが、最近かなりきびしくMDAOを通じましてアメリカ陸海軍省に頼みましたので、ようやく四十五年度までの分については、ことしじゅうにほぼ全部入るという見通しが現在ついております。ただ問題は四十六年度分でございますが、四十六年度分の時期到着未納入分が約七億ございますので、その七億につきましても、できるだけ早く納めるよう現在交渉中でございます。
  307. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いわゆる有償援助品目といっても、しょせんはこちらでお金を払うわけです。そういうことに基づいて契約がなされるわけでありますけれども、いわゆる納期に期限がないというようなずさんな状態で、いま装備局長が話をされた中に、向こうの都合だけですべてが処理をされているというところに、私は、このようにして国費十五億もいまだに未納入でずっと推移してきている大きな原因があろうと思うのですが、その点についてアメリカと話し合うことはできないのでしょうか。また実際話し合ってもどうにもならないものなんでしょうか。その点についてお伺いいたします。
  308. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 ただいま先生の御指摘のとおり、私どもは、なるべく明確に納期を規定するように、再々契約のつどに頼んでおります。ただ、日本だけにこれをやりますと、各国から全部それを申し込まれるというような事情がアメリカ側にあるようでございまして、これは結局、かなり強く随時折衝して、早くとにかく日本に納めてもらうという努力を私どもが重ねますことが、やはり現在ではベストの道であろうかと思いますが、今後できますれば、先生の申されるように、契約時期的なものをなるべく入れるように私どもは交渉に臨みたいというように考えております。
  309. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 話は変わりますけれども、F4のファントム、これは先般百里基地の沖合いで原因不明の事故を起こしたわけでありますけれども、事故の原因はどういうふうになっているのか、その実情をお伺いしたいのです。
  310. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 お答え申し上げます。  五月一日に第七航空団のF4EJ三〇四号機が事故を起こしまして海没いたしましたが、原因につきましては、’直ちに現地に調査のチームを派遣しまして、これに会社から技術者も加えまして現地調査を行なってまいりました。これに基づきまして来週ぐらいから、航空幕僚監部に設置されております事故調査委員会におきまして、原因の本格的な究明を行なうというような段取りにいたしております。したがいまして、現時点におきまして、まだ原因の具体的な点につきまして申し上げる段階には至っておりません。
  311. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 原因がわからないF4ファントムは飛ばすべきじゃない、少なくとも原因が究明されるまではファントムの飛行というものは自重すべきではないか、そういうふうに私は思うのですけれども、どういうふうな状態なんでしょうか。
  312. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 事故が起こりましてから、百里に所在いたしております他の十機につきまして全部飛行停止をいたしております。これにつきましては、特別点検というものを五月十五日から九項目につきまして実施してまいりまして、六月の上旬にほぼその点検を終了いたしております。一方、今回の事故は、空中爆発という、航空自衛隊にとりましても、従来経験のない事故でございますので、米軍の事故例というものを取り寄せまして、その面からも原因の推定というものを進めております。この両者を合わせまして、原因の推定というものが確実になりましてから飛行停止を解除するというような予定にしております。
  313. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この事故を起こした飛行機は、四十四年度に三十四機調達をするということが決定をされて、実際には、その後アメリカから輸入をされたもの、あるいはノックダウン方式で入ってきたもの等があるわけでありますけれども、事故を起こしたF4はどのような生産体制でつくられたものであるか、その点についてお伺いいたします。
  314. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 今回の事故機は、先生おっしゃったような、四十四年度に私どもが三十四機契約いたしました第四号機でございます。これは昭和四十五年の三月三十一日に三菱重工と契約をいたしまして、納入は昨年の十月の三十一日に、三菱重工の小牧南工場におきまして検修の上納入したものでございます。  ただいま御指摘のとおり、最初の二機は、アメリカから給油をしながら入れてきた輸入機でございますが、三機目からノックダウンに入りました。ノックダウンは、御承知のように、アメリカから全部部品、器具類を持ってまいりまして、日本でデッドコピーの上にアセンブルしてできた飛行機でございます。このノックダウン方式でやりましたものは全部で八機ございます。したがいまして、八機のうちの第二号機でございます。現在、十一機目からはライセンス生産つまり三菱重工側におきまして全部こちらの部品製造の上に生産されておりますが、このライセンス生産ではないノックダウンの第二号機が事故機になったわけであります。
  315. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ライセンス生産によるところのF4ファントムの現在の生産については、どういうような状況になっておるでしょうか。
  316. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 四十四年度に三十四機の調達をいたしましたが、その後四十六年度に四十八機の契約をしております。すなわち、現在まで契約をいたしましたのは、合わせまして八十二機でございます。現在、この八十二機につきまして、四十八年度におきましては、毎月約二機ずつの割合で納入されるという状況になっておりますが、この事故が起こりまして以来、現在納入をストップしております。  以上でございます。
  317. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 やはりこれだけの大きな事故があったわけで、空中爆発という事態を招いたわけでありますから、ライセンス生産にしても何にしても、原因が究明されるまではこの生産を中止をして、原因が何であるかということが明らかになってから生産をすべきではないかというふうに私は思うわけでありますが、そういう指示をされておるわけですか。
  318. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 おっしゃるとおり、原因をできるだけ早く追及しまして、どのような点に理由があるのかを突き詰めなければならないと思いますが、ただ、ただいま申し上げましたとおり、このノックダウン方式とライセンス生産とはか々り実は生産実態が違っております。それからもら一つは、この飛行機は契約しましてから四年以上かかります。そこで実は、生産をストップしてしまいますと、部品その他、生産に対します工場の納入がおくれますと、自然とやはり人件費、物価等の上昇によりまして、当初予定しましたコストをさらに上回るという事態が生じてまいります。したがいまして私どもは、現在納入をストップしておりますが、一応生産体制にだけは入れさせまして、つくらせることだけは現在つくらしておきたい。ただ、その事故原因がどこにあるかということは、まだ月二機平均でございますから、どのくらい早く見きわめられるかわかりませんが、なるべく早く、それほど大がかりな生産体制にならぬ前に決着がつき得るかというふうに考えております。
  319. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 ファントム一機で二十数億円も実はするわけです。それが原因不明な空中爆発を起こしたということは、事は非常に大きい問題でありますけれども、やはり何といっても国費のむだになるわけです。言うならば、国民の税金をもとにしてつくったこの航空機がそのような事故を起こすということは、これは私は許される問題ではないと思いますので、その点については、やはり慎重の上に慎重を期して、そうして二度とそういうことがあってはならない、そういう観点で厳重にチェックをしていただきたい、そういうことを夢望しておきます。  次に、ただいま「施設及び区域の返還」という資料が手元に参ったわけでありますが、きのう大出議員のほうから、十五日には安保協議会で返環をなされたものは閣議決定をする、それに基づいて発表をする段階になるであろうというお話があったわけでありますが、その閣議決定がなされて、現実にいま手元に施設及び区域の返還の明細が行なわれましたので、その概況について、やはり国会の場所でありますので、議事録にとどめておく必要がありますので、お答え願いたいと思います。
  320. 山中貞則

    ○山中国務大臣 お手元の表を便宜上読み上げることにいたします。  全面返還が二ヵ所でありますが、一ヵ所は建物の二階の一部屋というのはたいしたことはないので、これは実際には一ヵ所ということです。  そういう実質がありますが、初めのほうからいきますと、ボロー・ポイント射撃場、これは旧嘉手納第一サイト、メースBの施設部分であります。場所は御承知のとおりであります。その面積は二十一万平米でありますが、建物が七百七十六平米。これに対しまして、なお施設全面積としては四百八十万九千平米あるわけでありますので、相当部分でありますが、まだ残っている部分が多いということになります。  次に天願通信所、これは御承知の具志川のものであります。これは、九十六万六千平米のうち八十三万平米の返還でありますから、大部分返還でありますが、現地をごらんになった方はあるいは御承知かわかりませんが、残る部分は大体施設のまん中でございまして、北に向かって道路の左側と、海岸寄りに二つ道路が出ておりますその両側、並びに海岸のほうへ面した大部分は返還されますので、基地が一部、まん中の北へ向かっての道路寄りに若干残るという形になると思います。  次に平良川通信所、これは十七万七千平米の中の六万平米でありますから、一部であります。  トリイ通信施設、これはまだ残っている部分があります。全部で三百二十二万八千平米のうち百三十六万平米返ってくるわけでありますから、三分の一弱程度でありますが、これは相等な一応の面積として、ことに読谷村でありますから、評価されるのではないかと考えます。  西原陸軍補助施設、これは旧ナイキサイト、四Aの部分でありますが、これは、二つありましたもののうち、宿舎及び事務所等に使われておりました部分。ちょっと距離が離れておりまして、名前は同じ呼び名でありますが、その部分に関する限りは全面返還ということで、面積は四万八千平米、建物が千九百六十八平米含まれておるわけでありまして、残りはまた、少し離れたところになお提供施設があるということになります。したがって、名称からいえば一部返還ということになります。  泡瀬倉庫地区、これは十三万平米全部であります。が、現在集積場になっております地帯を返すということでありまして、まだなお、米軍が契約をして民間の所有者の倉庫を借りておりまする二棟は残るということになります。——失礼しました。泡瀬は全面返還でございます。  次は牧港サービス事務所、これは、冒頭に申し上げました建物の一棟の一部ということで、六百十三平米です。  浦添倉庫、これがただいま申し上げました野積み場が全部返ってくるもので、あと借り上げ倉庫が二棟残ります。  合計二百六十四万一千平米、建物約三千八百八十平米であります。  以上が今回、本来閣僚レベルの会議を秋に予定しておりますものに間に合う程度の作業を進めておったようでありますが、それについて、やはり合意したものはどんどん返還もしてもらうし、そしてそれについては発表もしてもらう。ここには返還予定日もちゃんと、六月三十日に返す個所が六カ所、そして九月の十五日に返す個所が二カ所というふうに日にちも明記いたしてありますので、これはこれから次々と、双方合意したものはひんぱんに会合を持ち続けながら、また私が赴任して追加いたしたもの等も相当ございますし、施政も変わってまいりましたので、今後こういう合意が次々と発表できていくようにしたいと考えます。
  321. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 基地の返還がなされたと言いますけれども、実際には全面返還と言ってもごく一部分でありますし、ほとんどは一部返還にすぎないわけでありますけれども、このあと地利用についてはどういうふうにお考えになっていましょうか。
  322. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは全部沖繩県民である国民の地主に返されます。
  323. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 沖繩の返還に伴う基地の縮小については、国会において再三、返還を促進をするということ、これは政府は公約してきております。しかし、実際には沖繩の基地というものの返還はなかなか促進されなかったわけでありますけれども、きょうはわずかながらも返還の実績があがったということは、私、今後さらに返還については米側と折衝をして、そして推進をしていかなければならない問題ではないか、このように思うわけです。  わが公明党も、基地の返還については、党独自に基地を調査をしたり、いろいろ今日まで努力を払ってきたわけでありますから、そういう意味において、さらに返還を促進するということで進めていかなくちゃなりませんけれども、政府みずから返還を求めるためにどのような考え方でこれに取り組んでおられるか、相手方との交渉はどういうふうにされているか、その点についてひとつお伺いしたいと思います。
  324. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはもう私、就任以来申し上げておりますように、沖繩の基地は本土の基地と全く発生の沿革を異にしている、その原点に立って考えるということを申し上げておりますので、アメリカ側にとっては、ちょっと予想しないような感じで私としては押しまくっているつもりであります。ただ、私だけでできることではありませんから、絶えず外務省の大河原局長も、また外務大臣にも、閣議のつどと言っていいぐらいいろいろと、まあ私のほうで頼むというのが正直な表現でありましょうが、とにかく協力してくれということで、気にもさわろうけれどもということまで言って協力を頼んでおります。米側のほうも、沖繩における基地のあり方については最近理解が出てき始めたと私は見ております。これをやはり強く押し続けて、そうして合意に達したら、そのつどこのようにして発表していくべきことであって、本来は沖繩県民の個々の持ち主の人たちの意に反して取られた戦闘中の基地である特性にかんがみて、なるべくその規模もスピードも上げるようにいたしたいと考えます。
  325. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 米軍基地でも、常時使用、それからまた一時使用、ときどき使用、あるいはもう五年間全く使用してないという、そういうふうな基地がまだあるわけであります。そういう点について、政府としては、おそらく施設庁においてかなりの調査もしておると思いますけれども、こういう施設はもう返還をされてもいいのじゃないかという基本的な考え方に立って基地を交渉の対象とされているか、その基本的な考え方について伺いたい。
  326. 山中貞則

    ○山中国務大臣 まず、完全に遊んでいる土地というのは、見てもわかるくらい遊休なる土地もありますし、あるいは黙認耕作をさせておるところもありますし、あるいはまた、部隊の集約によってリロケーションを伴わなくても移転可能なところも私自身がよく知っているわけでありますから、また必要な経費を要する代替施設の建設も、やはり関東周辺等においても、国が特特会計と呼ばれる特別の歳入を原資としながらも進めているわけでございまして、沖繩の場合には、遺憾ながらこの特特会計の歳入の原資になるような土地は、私有地でありますからほとんどない。そういうことを考えた場合に、財源捻出については、財政当局、大蔵当局相当よく話を詰めなければならない点はありますけれども、しかし、それは私たち国民が負担を当然してあげていいことであって、そういうつもりで私としては折衝をしますし、地点をいろいろあげますと、向こう側もいろいろとまた現地の反応がすぐ各軍ごとに上に上がってしまうものでありますから、地点をあげては明示をいたしたくありませんが、そういう感触のもとに進めているということであります。
  327. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 対米のいろいろの交渉のあれもあり、また現地住民の問題等もあるので、地点をあげることはできないというわけでありますけれども、現在、返還をしてもらいたいと、そのようにこちらのほうから強く要望をしている個所が何ヵ所ぐらいありましょうか。言うならば、八ヵ所以外に現在日米安保協議委員会で話題にのぼっている基地の数、それは何ヵ所くらいあるでしょうか。それくらいは言えるでしょう。
  328. 山中貞則

    ○山中国務大臣 やはりこれは、P3の嘉手納だって、内々きまっているものを、陸海空なりの対立で普天間だの何だのといって、ついに予算までかさ上げをして三十八億つけたいきさつがあるわけですから、なかなか現地の個所とかなんとかいうことになりますと敏感に反応がありまして、そこらのところは、ひとつもうちょっと時間をかしてくれませんか。私は隠そうなんて思っておりません。隠して何にもなるものじゃありません。ただ、ものごとの達成に、そのほうが目的を達成しやすいので御協力をお願いできないだろうかという意味でございます。頼みます。
  329. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、なぜこの質問をするかといいますと、実は政府は国民に、基地の返還については、極力返還を促進するのだということを公約をしているわけです。その後何の音さたもなくして、きょうこうやって部分的にも八ヵ所返還をされたということなんですけれども、私はやはり、政府はそれだけの努力をしているということについて、少なくとも国民には、基地は何ヵ所ぐらい、いま現在場所は言えないにしても、アメリカとの交渉の対象になっているのだということで明らかにすべきが私は当然だと思うのです。それによってやはり沖繩の住民も、なるほど政府も、基地の返還については、あるいは縮小整理については真剣にやっているんだということはわかるわけでありますから、私は、具体的にどこの場所の基地をやれというわけではないわけでありますけれども、その点について再度御答弁できたら御答弁していただきたい。  それからなお、日米安保協議委員会においてこの問題が持ち出されると思うわけでありますけれども、今日まで沖繩の基地の問題について、返還後日米安保協議委員会においてどれだけ話題になったか。
  330. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 日米安保協議委員会は、第十四回目の会合をことしの一月二十三日に持ちました。その際に、基地問題が大きな議題の一つでございましたけれども、いわゆる関東平野計画というものが、今度基地に関しましては日米間の合意を見ましたと同時に、沖繩に関しましては、P3の嘉手納移転、並びにそれに伴いまする那覇の空港のそばにあります米空軍・海運補助施設の移転、それから牧港の住宅地区千二百戸のうちの二百戸の移転、こういうことが合意されたわけでございますが、日本側といたしましては、基地問題の重要性にかんがみまして、引き続き米側の理解と協力を得つつこの問題の解決促進に当たりたい、こういう姿勢をずっととってまいったわけでございます。  その一つ考え方といたしまして、一月の十九日に日米間で設立の合意を見ました日米安保運用協議会が、四月の二十三日、五月の十四日、六月の十一日と過去三回持たれております。この協議会におきましては、日本にあります米軍基地、特に沖繩にあります基地に重点を置きまして、基地の目的、役割り、使用状況、こういうものを再検討し、その再検討の上に乗ってこの問題の具体的な解決をはかっていきたい、こういうことで話し合ってまいったわけでございまして、そういう協議を踏まえまして、昨日の合同委員会で、ただいま山中長官が御発表になりました八カ所の施設、区域について、全面並びに一部返還についての話し合いがまとまったわけでございます。
  331. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 具体的な基地の数については、いろいろの問題があるので言えないということでありましょうけれども長官、このような状態で、さらに安保協議委員会等でもいろいろこういう問題が煮詰められていくと思いますけれども、少なくとも本年度じゆうには、さらに大幅といいますか、基地の縮小整理が行なわれる感じがおありでしょうか。この点について……。
  332. 山中貞則

    ○山中国務大臣 なかなか巧みな誘導尋問でありますが、そういうことをとにかくやらなければ、沖繩の人たちを一日ほうっておけばほうっておくほど、私はある意味の罪悪だと思うのです。だから積極的に、私の考えております場所等については、向こう側がいやな顔をしようとどうしようと、どんどん要求していって、次々実現をさしていきたいと思っておりますから、ただいまの大河原局長の言いました事務レベルの会合も、これからひんぱんに開いてもらいたい、こういうふうに思っております。
  333. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 基地の問題はそれだけにいたしましょう。  次に、幾らか防衛の問題についてお伺いいたしますけれども、今日の国際情勢は、少なくとも冷戦の終止符である、そして緊張緩和の現象というものはまぎれもない事実となってあらわれてくる、そのように私は判断をいたしております。このような状態で、平和への流れというものは、これから将来とも容易に逆行するものではないのではないか、そのように思うわけでありますけれども、特に平和憲法のもと平和国家を標榜するわが国は、この平和を定着させるべくあらゆる非軍事的な平和政策の遂行に最大の努力をしなければならないと、私はそのように思います。  ところが、政府が考えておられるのは、むしろそれとは逆行するような軍事増強政策のみに奔走されておりますけれども、なぜ四次防が必要であるのかという率直な国民の疑問というものはいまだに晴れていないのではないか、そのように私は思うわけでありますが、四次防の前提になりますところの国際情勢の分析と極東の軍事情勢をどのように評価されておられますか、その点についてお伺いいたします。
  334. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、あなたの見ておられるような環境になりつつある。すなわちベトナム停戦、カンボジアが一部残っておりますが、少なくともアメリカが全面的に手を引いたという事実だけは厳然としておりますから、再びアメリカが介入することもない。それはもう一応最終的な形になったわけでありますから、その面において大きな変化がありますし、またアメリカ自身が、冷戦構造といわれた東西の対立というものを、いろいろ理由もありましょうが、中国を大統領が訪問する、あるいはモスクワを訪問し、近くまたブレジネフ書記長がアメリカを訪問するというようなこと等は、やはり当然緊張緩和の方向に向きつつあるという、われわれの周辺における非常に顕著な傾向であると私は思うのです。  またヨーロッパ等においても、主として経済問題等のトラブルはあるにしても、中東を除いてはおおむね戦争ということを考えられない状態でありますし、東方条約等も西ドイツのブラント首相がやったわけでありますし、したがってまたヨーロッパにおいても、この冷戦構造というものが形が変わってきつつあります。  われわれの周辺でも、そういうような全般的な流れは確かにありますが、一方において、私どもはそう特別に深く知っておるわけでありませんが、かつて一枚岩といわれたソ連と中華人民共和国というものが、どうもおかしいのではないかというような話等も聞きますし、そこらのところはなかなか微妙な問題があるのではないか。あるいはまた、南北朝鮮が赤十字会談を通じながら、離散家族の人道上の問題で話し合いを続けておりますが、実態ははたして、ほんとうの民族の悲願である平和、統一のほうに向かいつつあるのかどうか、ここらのところも、われわれにはまだわからない要素等もあるのではないかと思います。  一方、日本とアメリカとの関係には、安保条約を基調とする関係において変わりはありませんが、日本とアメリカとの経済的なバランスの問題からいろいろと論及する者も出てまいりましたし、ニクソン大統領が外交教書であれだけはっきりと、この経済アンバランスは同盟関係を引きさくおそれがあるとまで、どうかつに近い表現を全世界の人の耳に聞こえ、目に見える形で言ったこと、こういうことを考えますと、そうそう楽観ばかりしておれる状態でもないのではないか。ここらのところは非常に流動的でありますし、かといってアメリカも、ニクソン大統領がそう言ったからといって、安保条約を一年後にやめようという通告をしてくるということは全然ありませんし、したがって、われわれとしては、やはりいま一応は何事もなく過ぎておりますから、この体制で進んでいくべきことが正しいのではないか。  この四次防というものは、当初は、先ほどの前期五年、後期五年の議論がありましたろうけれども、現時点において進行中の四次防というものは三次防の延長であり、そしてまた装備の近代化、更新あるいは調達というようなものでありますから、そう特別に、いまの極東情勢、世界情勢に日本のみがひとり逆行をしておるという感じではないのではなかろうかと思っております。
  335. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁長官の、少なくとも平和は定着しつつあるというものの判断は、これはいま御答弁にあったとおりでありますけれども、現在の安全保障政策は、もはや単なる軍事力ではなくて、内政、外交等各方面にわたる総合的なもので考えなければならないというふうに私は思います。したがってわが国は、この際、四次防のような軍事増強政策という考え方から平和戦略、すなわち外交政策を重点的にして、内からの脅威をなくすための内政諸施策を中心とした総合的な安全保障政策を確立することが非常に大切ではないか、私はそのように思うのですけれども、御見解をお伺いします。
  336. 山中貞則

    ○山中国務大臣 もちろんそのとおりです。国際紛争を解決する手段として武力を持たないと憲法九条でいっておりますことも、国際紛争は最終的な手段として武力で解決しようとすることが間々あるということを踏まえてのことでありますから、国際紛争に至らざる前の問題は外交であります。外交の基底というものは、いわゆるその国のあるべき姿である内政の安定ということが当然前提になるわけでありますから、まさにあなたのおっしゃるとおり、私もそう思います。ただ四次防についてはそういうふうには思いません。
  337. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実にものの考え方が、片一方はそのとおりであるけれども四次防は必要性があるんだということ、これは全くいままで盛んに政府が使ってきたことばのあやだと私は思うのですが、政府はいわゆる幻の脅威というものをつくり上げて、それに対処するために軍備の増強をはかってきたというのが現状ではないかと思うのです。三次防の二兆三千六百億の倍増になんなんとする五兆一千億の予算を持って四次防を増強しているわけでありますけれども、政府は、四次防の前提として一体どういう脅威を考えておられるか、脅威の具体的な実体について国民の納得いく説明をしていただきたいのです。
  338. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは日本は脅威がないからたいへんありがたいと私は思うのです。脅威のない状態を永続させることが私たちのつとめではないかと思うのです。それはどこの国であれ、現実にこういう脅威が迫りつつあるというような状態に日本を置くことは、やはり私はたいへんよろしくないことであって、そのためには、日本自身の防衛は専守防衛の限界、憲法の許す限界において自分たちでやります、しかしもし日本がとうてい及ばない近代兵器である核の段階のそういう脅威というものがあった場合には、これは安保条約の俗にいう核のかさというもので担保してもらっておりますという姿勢でよろしいのではないかと考えます。
  339. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 脅威がないとするならば、何も四次防などおつくりになる必要はないじゃないですか。
  340. 山中貞則

    ○山中国務大臣 それは世の中の人が、性善説、性悪説といろいろありますけれども、みんな善人であって、どろぼうは一人もいないということがはっきりすれば、確かに戸締まりも何もしなくてもいいのかもしれませんが、やはり一応人の善は信じながらもみんな戸締まりはいたします。したがって私は国防戸締まり論を言うつもりはありません。そんな子供じみた話を言うつもりはないが、自分たちは他を脅かしあるいは他を侵略しというようなことは前提に置いてないのでありますから、自分たち自身を守る、国、民族、独立、生命、財産、こういうものを守る力を全く持っていないで、真空状態で日本の安全が保障されるというならば、とうにスイスなどは、常備軍も持たず、あるいは国民皆兵の組織も持たないで、もう日本の模範とできるような国になってくれているはずだと私は思います。やはり国際連合が究極的に世界の国々全部に、安心だ、何も心配要らないよという体制をつくってくれるということになったら、私たち日本は、当然一番先に日本の国防のあり方を根本的に考え直すという国になるであろうことは間違いない、私はそう思います。
  341. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 脅威がないということは、私は非常におかしいと思うのですよ。この「日本の防衛」の中に少なくとも、「特に中共および北朝鮮は引き続き硬直した対外姿勢を堅持しているが、アジアにおいて核兵器を開発している唯一の国である中共の動向や、さらに英国軍のアジアからの大巾な撤退とソ連海軍の進出、ベトナム問題の処理のきすう、米国軍の動向等は、アジア地域における今後の紛争生起の可能性に大きな影響を与えるものとみられている」という、そういう日本の防衛の分析の中から、言うならば三次防、四次防というものをつくってきておるわけです。ですから、脅威が全くないというようなものの考え方、私はこれは間違いだと思うのです。だから、少なくとも直接侵略の脅威というものは現在ないというならば、ないならないというふうに御答弁願えればいいし、間接侵略としてあるというふうにお考えであるならば、その態様はどういうものであるか、それについてお伺いするわけです。
  342. 山中貞則

    ○山中国務大臣 脅威ということばをどういうふうに使うかという問題でありますが、私が先ほど使ったのは、いま日本がきょうあすにも独立を脅かされる、安全を脅かされる、あるいはまた極端に言うならば、領空、領海侵犯をされて上陸をされ一あるいは空襲をされというような状態は予測できないということを言っているわけでありまして、日本が全く真空状態のような環境の中にあるという意味での脅威がないということは、ちょっとまだ、どうも人間の本能の一つにも闘争の本能がありますし、やはりなかなかそこらのところは、民族の集団である国であってもなかなかうまくいってないことは、イギリスの、同じ国民でありながら、しかし北アイルランドで騒ぎが起こっているようなことなんかも——これは私は日本で内乱があると言っているわけじゃありませんで、だから、そういう局地紛争というものは、予想もできないところで起こるかもしれないということ等は、やはり独立国としては予想を当然して、全然ないという状態でぼさっと突っ立っているというわけにはいかないのじゃないか、そういうふうに思います。
  343. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 だから、先ほど質問いたしましたように、いまの国際情勢を考えたときに、非常に緊張緩和の方向に進んできている、平和は定着をされてきている。そういう中において、あなたもおっしゃるように、実際に直接侵略の脅威なんというものはいまの時点においては考えられないのだという、そういう考え方に立って、さらに三次防の引き続きだといって四次防の、いわゆる三次防の倍になんなんとする軍備がはたして必要であるかということは、国民がまことに疑問を持つ問題だと私は思うのですよ。それは、納得のいく御説明がそういう点においてもずいぶんなされないというふうに思うわけですけれども、直接侵略と間接侵略というものの定義についてひとつ防衛局長……。
  344. 久保卓也

    ○久保政府委員 直接侵略は外国からのわが国に対する武力攻撃を申します。それから間接侵略は、外国の教唆または干渉による大規模な内乱または騒擾をいうという定義をされております。
  345. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府は、差し迫って他国からの直接の侵略の心配はないけれども、間接的な侵略というものはやはり懸念されているけれども、それは具体的にはどういうことなんでしょうか。
  346. 久保卓也

    ○久保政府委員 直接侵略につきましても、間接侵略につきましても、わが国について具体的なそういうおそれはない、いわば脅威はない、また差し迫ったそういう脅威はないという判断をいたしております。しかしながら、わが国について、これは、自衛隊法でも、あるいは防衛庁設置法でも、直接侵略及び間接侵略に対してわが国を防衛するとありますように、わが国について、外国からの組織的な武力攻撃のみであって、間接侵略の可能性というものは将来にわたって絶無であるということは考えられない、やはりその可能性自身については配慮しなければならないというのが、従来の防衛庁の考え方であります。
  347. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 直接侵略の心配はないのだ、しかし間接侵略というものに対して一応懸念されるところもあるというわけですが、間接侵略というものはどういうふうな形になってあらわれるというふうに御想像になっているのでしょうか。
  348. 久保卓也

    ○久保政府委員 直接侵略よりも間接侵略の可能性のほうが多いということを申し上げておるわけではありません。直接侵略も間接侵略も、それは可能性の段階として考えられる。しかし、可能性としてその存在を否定し得ない以上は、わが国がそれに備えなければならないという発想であります。  そこで、間接侵略というのはどういう事態で起こり得るかということになりますと、原因はいろいろありましょう。しかしながら、いずれにせよ、国内で何らかのきっかけで騒乱が非常に大規模になってくる。外国との関連が全くない場合には完全な国内の治安問題であります。したがいまして防衛出動の対象にはなりません。治安出動の対象にはなり得ても防衛出動の対象にならない。そこで、外国がこれに対して、たとえば、武器を援助する、あるいは不正規軍を潜入させていくというようなことで、国内に起こりました大規模な内乱やら騒擾がそういった外国の援助と結び合わさった場合に間接侵略というふうに申しております。そういったことは私は現実的に起こり得ないであろうと考えますけれども、しかし可能性を否定することはできないというのがたてまえであります。
  349. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 唯一の可能性はあるということを前提にして、第四次防の整備計画というものはなぜこんなに必要なんだろうということは、どうしても私自体がなかなか納得がいかない問題であります。要するに間接侵略というものは、本来軍事の問題でなくて政治の問題であるというように私は思うのです。政治に対する広範な不平が広がって大変革を国民が求めるようにならない限り、かりに外からそういう誘惑があっても、国民に生活保障や自由を十分に与えて安定した秩序を保っているならば、間接侵略など起こる危険性はきわめて少ない。むしろないと言ってもいいと思います。間接侵略なるものの対応策は非軍事的な政治、外交、内政等の問題であり、四次防予算を教育なりあるいは社会保障なりに使えば、それは国民生活や社会の安定にプラスになることは間違いない事実です。ひいては間接侵略の憂いを確実に減らすことになると思いますけれども、間接的な侵略という想定を軍事力によって解決をしようとする考え方はたいへんに危険であるし、間違いだというふうに思うのです。間接侵略が起こるとするならば、それはすべて内政の問題に端を発している、そのように思うわけですが、それを大臣はどのようにお考えですか。
  350. 山中貞則

    ○山中国務大臣 内政の問題の場合もありましょうし、宗教問題のような、イギリスのような問題もありましょうし、思想の問題のようなこともありましょうし、いろいろあるでしょうが、われわれの国は幸い島国でありますから、間接侵略といっても、直接侵略を伴わない間接侵略だけがどんな形で起こるだろうかということはなかなか想定しにくい。その意味では、われわれはきわめて幸いな立地条件にあるというふうには考えます。
  351. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 米軍のアジア撤退の戦略的背景をどのように評価をされているのか、まずその見解を承りたいのが一つと、それから防衛、外交、経済等をからませたキッシンジャーの西大西洋憲章構想についてはどのように評価をされているか、その点についてお伺いします。
  352. 山中貞則

    ○山中国務大臣 大体はニクソン・ドクトリンというものからずっと一貫していると思いますが、しかし、最近はアメリカのほうで、目的のない戦争といいますか、大義名分のない戦争というものに次々と若者たちがかり立てられていくということに対して、政治自体がもうそれに対応できなくなったというようなことが大きな要素の一つであるように私は感じております。したがって、アジア全体の地域に対しても、いまはベトナムの話でありますけれども、米軍自身のアジアの他の地域における極東戦略というものが全面的な撤退になるだろうというふうにはなかなか考えられない面もありますけれども、しかし、米国も一応ほっとしているという感じには受け取っていいのではないかと思います。  キッシンジャー提言といわれております西大西洋憲章であります。これはどういうわけで日本をその中に入れようと言っているのか。われわれは太平洋圏の国でありますから、それに入ってくだらない負担を押しつけられるようなものであるならば、そういうものには、おいでおいでと言われたからといってわざわざ入る必要はない。しかし全世界的に、OECDなどと別な意味の友好とかなんとか、そういうものであって、それは日本もおったほうがいいというものであるならば、それは考えてもいいでしょうけれども、いまのところは、何の意味でそういうことを提言したのやらよくわかりませんし、第一、フランスあたりもそういうことはなかったようなこともいいますが、アイスランドでしたか、フランスの大統領とアメリカの大統領が会ったときに、この問題をめぐって、実際にははたして合意に達したのやら達しないのやら、当事国同士が第一まだわからないわけでありますから、われわれとしては静観するというのが結論だろうと思います。
  353. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 アメリカは、ニクソン・ドクトリン、それに基づくいわゆる総合戦略構想で同盟国に責任の分担を今日強く迫ってきております。それは、レアード前国防長官の来日の際に報道された、海上自衛隊による米第七艦隊の一部機能の肩がわりとか、あるいは自衛隊の装備近代化の提唱とか、また最近のリチャードソン国防報告、ニクソン外交教書、新大西洋憲章構想とかを見ると、政府がどんなに否定をしようとしても、このことは動かしがたい事実だろうと思います。要するに、従来在日米軍等が果たしていた極東戦略の役割りを自衛隊が肩がわりしようとするもので、四次防による自衛隊増強はまさにこの総合戦略構想のワク組みのもとに入っているといわざるを得ませんけれども、この総合戦略構想と四次防とのかかわり合いについて見解を承りたいと思います。
  354. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私が先ほど言ったのは私の見解であって、わが国の見解というならば総理大臣でなければなりません。先ほどの大西洋同盟の話です。したがって、そういう意味でお受け取りを願いたいと思います。そんな不遜な立場にはありません。  いろいろとアメリカのほうで雑音も聞こえますけれども、かといって、日本がアメリカの第七艦隊と、日本の海上自衛隊の一番大きいので五千トンそこそこという船が、ここまでは日本が守りますからなんて、そういうことが言えるような第一がらでないし、そういうことは憲法上も許されないことでありますし、マラッカ海峡航行を守るとかなんとかということも、日本の憲法を知らない者の言うことであって、日本の憲法並びに自衛隊法というものの範囲内で、アメリカ側においてはいろいろな意見がありましょうけれども、そういうものには、私たちとしては絶対に踏み越えてならぬ限界というものをきちんと持っておる。世界のどこにもない独特のわれわれの自衛隊の任務がありますから、その範囲を絶対に踏み出すことはないという姿勢を堅持していけばよろしいのではないかと思うのです。
  355. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 この総合戦略構想ですね。ニクソン・ドクトリンのいわゆる総合戦略構想のワク組みの中で自衛力の増強を推し進めようとすれば、米軍のアジア撤退に伴って自衛力増強の歯どめがかけられないようになってしまうのではないかと思うわけでありますけれども、自衛力の限界というものをどのようにお考えになっていましょうか。
  356. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはやはり、私たちの専守防衛、そして他国に脅威を与えるという、国際紛争解決の手段としての軍隊は持たないし、したがって自分たちの国の独立と安全を守る、そして国民の生命財産を守るという限界は、日本の場合には厳然としてあるわけでありますから、どんな計画を立でてみようと、その限界を突き破ることは許されない。そしてこれは国の政策であって、国会の決議にもなりました非核三原則というものがさらにぴしっとそれに歯どめをしておるわけでありますから、われわれの今後の進路というものも、これがはっきりと示しておるものと考えます。
  357. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 専守防衛に徹する、あるいは他国に脅威を与えないということで、いまお話しになったところは、非核三原則ということで、核に対しては少なくとも持たないというのは政策である。それ以外は、少なくとも今後も可能な自衛力の限界であるということになるのか。あるいは質的、あるいは量的、数的において、憲法のワク内においてそれはやはり限界があるのかどうかという問題については、どのようにお考えになっていましょうか。
  358. 山中貞則

    ○山中国務大臣 詳しくは局長から……。しかし、基本的には政治の問題でありますから、当然限界があるべきだ。でありますから、たとえば、先ほども答弁しましたように、陸上十八万というものは、欠員議論は別にして、定員としてはおおむねもうこれでいいということでありますから、これ以上ふえるということはあり得ない。海空その他については、またいろいろ装備その他の問題とも関連がありますから、局長から答弁させます。
  359. 久保卓也

    ○久保政府委員 防衛力の限界ということばで申しますならば、それは先ほど長官がお述べになりましたように、憲法上の限界というものが最大のものであります。すなわち、必要最小限度の自衛力であるというのが防衛力の限界であるということになろうと思います。それをもう少し具体的にいえば、他国に脅威を与えるような攻撃的兵器を持たないとか、海外派兵をしないとかいうようなものが幾つかあるわけであります。  そこで、それを数量的にどうかというのは、これは昨年の国会以来問題になりまして、平和時の防衛力ということで一応の答えを出しましたけれども撤回をしたわけで、これをどういうような形で今後検討していくべきか、お教えをいただきながら勉強してまいりたいと思います。
  360. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 平和時の自衛力の限界については、これはこの間の国会において撤回をされたのでありますけれども、憲法上いわゆる許される限界というものがあるわけです。それについてはいま山中長官が、少なくとも陸上自衛隊においては十八万体制以上は絶対あり得ないんだということをはっきり言われたわけでありますけれども、当然陸海空とあるわけでありますけれども、海空についてどういうふうな見解をお持ちになっているか。
  361. 久保卓也

    ○久保政府委員 防衛力の限界ということばは、法制局から再々、法律上の文言と間違われやすいから、そういうことばは使っでほしくないという注意を受けております。  そこで山中長官が言われましたのは、防衛力を整備しようとしても事実上それが限界になってしまうではないか。そういう意味でいうと陸は十八万であろうということでありますが、海空についても、そういうような意味及びこの国際環境をどう考えるか、また国民感情との関連でどう考えるかということで、数字的に申せないではないでありましょうし、また質的に申せば、これは、核兵器を持たないとか、あるいは他国に脅威を与えるような装備を持たないとかいったような一連の制約がありますが、その他の面で、たとえば技術的な進歩、というものは常にあるわけで、一定の、たとえば航空機というものは一・五マッハ以上持たないのだということを一がいにきめてしまっても、これはまたおかしいわけでありまして、それは相対的なものとして考えざるを得ない。やはりそのときそのときの状況において、どの程度防衛力を整備すべきものであるか、そのめどは何であるかということは、内閣、国防会議及び国会がお考えになることであろうと思います。
  362. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 十八万体制は、現在の状況からいって集まらないから十八万体制である。しかし、集まるという状態であるならば、さらにそれを大きくオーバーすることもあり得るという答弁ですか。
  363. 久保卓也

    ○久保政府委員 私は、今日の国際及び国内の条件から申せば、それをこえる必要はないと考えております。
  364. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 陸のほうは、山中長官が、いわゆる十八万体制、これが限度であるということをはっきり言われたわけですから、それはそれとして聞きおくとして、あと海空ですが、海空の自衛隊の実際の量的あるいは質的というものはどういうものが予測されているか。すでに前の国会等でもいろいろ数量等も言われているわけでありますし、中曽根さんもそれに対して、四次防においては、大体これくらいのめどですでに七、八〇%を達成ができるんだということを明らかにしているわけでありますから、結局は、七、八〇%ということになれば、あとの残りの三〇%はその限界がどこにあるかということはおのずとわかるわけでありますけれども、その点についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  365. 久保卓也

    ○久保政府委員 いまのは一昨年の防衛庁原案に基づいたお話だと思いますけれども、四次防におきまして、防衛庁原案というものは放棄いたしましたので、五年の次の後半五年という考え方は持っておりません。したがいまして、今日事務当局においても持っておりますものは四次防であり、四次防をいかにして遂行するかということでありまして、四次防以降についてはまだ考え方を持っておりません。
  366. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 四次防はもうすでに出ているわけで、わかるわけでありますけれども、しかし、しょせんは憲法の制約された限界というものはあるというふうに山中防衛庁長官も言われたわけでありますから、あるという最終の点というのは、もう少し量的にも質的にもはっきりとお示しになったらいいんじゃないでしょうか。
  367. 久保卓也

    ○久保政府委員 憲法上の制約というのは、必要最小限度の自衛力ということでありまして、これが数量的にどの程度のものであるかということはなかなかむずかしい問題であります。簡単に申し上げれば、国連の機構というものが非常に強化された場合、そして武力というものが防衛上それほど大きな意義を発揮しないというような場合には、必要最小限度の自衛力というものが非常に小さくなりましょうし、そういった国際環境によって影響されるものでありますから、具体的に今日の条件でこれぐらいということは、なかなか言いにくいものであろうというふうに思います。  しかしながら、質的な面で申しますと、たとえば非常に大きな攻撃型空母を持つというようなことはないでありましょうし、またB52のような、きわめて長距離を行くような爆撃機を持つことは憲法上も適当でない、そういったものはすべて他国に脅威を与えるような装備であるというふうに考えられる。そういうようなものは、憲法上の制約の範囲内で考えられようと思います。いずれにせよ、しかし、量的にしましても、質的にしましても、今日の四次防の防衛力というものが飛躍的に強化されるというような状態は、私は予想されないと思います。
  368. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 たとえば一つの装備、一つの兵器によって、それは確かに攻撃的な能力はないにしても、それが連動した場合、かなり長距離にも飛ぶことができるし、言うならば相手方に攻撃を行なうことができるというような状態になった場合、これはどういうふうな判断に立たれるのか。憲法上そういうものは許されるかどうか、ひとつお伺いしたいと思います。
  369. 久保卓也

    ○久保政府委員 こういう兵器は、具体的にいって憲法の範囲を越えるものであるというものは、顕著なものはわかろうかと思うのです。いま申し上げました攻撃型空母とかB52のようなものは、一つの兵器体系をとりましても、憲法のワクを越えるものであろうというふうに思うわけであります。  ところが、いま連動というおことばをお使いになりましたわけでありますが、たとえて申しますならば、陸上自衛隊が十八万よりも数十万にふえたようなときに、上陸用舟艇を非常にたくさん持っておるというような体制。これは、個々の陸上自衛隊を見れば憲法の範囲を越えない、あるいは個々の上陸用舟艇を見れば憲法の範囲を越えないという場合もありましょうけれども、そういう防衛力の総体を見た場合に憲法の範囲を越える場合ということはあり得る。したがいまして、従来は装備というものに着目がされた議論が多かったわけでありますが、そういう総体ということも一つの問題ではあろうと思いますけれども、われわれのいま四次防で装備しておりますようなものは、それよりもはるかに下回るものでありますから、そういった点についての問題はなかろうと思います。
  370. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 たとえばF4EJ、この戦闘機に空中給油装置を取りつけるということは、当然足も長くなるわけであります。確かに空中給油装置を取りつけなければ足としては短いわけでありますが、取りつけた場合はたいへん長くなる。そういうふうに連動した場合、それがかなり攻撃的な兵器として作用するというふうに私は判断をしているわけでありますが、そういうものは許されるかどうか。
  371. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは、たとえばF4に空中給油装置をつけた、それが常態の装備として持っているということが憲法の範囲を越えるものとは、私はとうてい考えられないと思います。そういうものがどういうふうに相手方に対して攻撃的な脅威、侵略的な脅威を与えるかということになりますと、おのずから別であります。特に、わが国のような縦深性の少ない国、つまり敵機の発見がおそい、そしてまたわが国は細長いわけでありますから、すぐ突き抜ける。つまり防衛陣が縦深、縦と深さが少ないといったような国においては、足が長いということではなくて、実は滞空時間が長いというふうに読むべきなのであります。しかしながら、いろいろな経緯がありまして、いろいろな誤解を与えてはいけないということで、憲法上の問題としてではなくて、結論的に言うならば、政府が同意したわけでありますから、妥当性の問題として空中給油装置を地上給油専用に切りかえたものであろうと私は思います。
  372. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 憲法が禁じております戦力というものの見方は、平時においても、緊急時においても、有事の場合においても不変であるかどうか。
  373. 久保卓也

    ○久保政府委員 法制局にお聞きになるとよろしいかと思いますけれども、私個人の考えでは、やはり国際環境によってその戦力の内容も違ってくるんじゃなかろうか。たとえば昭和二十年代における戦力と昭和五十年代における戦力というものは、おのずから異なる面があるのではなかろうかというふうに思います。厳密には法制局と相談してみなければわかりません。
  374. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 国際環境によって戦力が異なるというふうに言われるわけでありますけれども、憲法第九条は、戦力は保持しないということでありますから、そういう意味において、国際環境がどんなに変わろうとも、戦力というものの定義というものは、少なくとも憲法上においては変わるものではないと思うのですけれども、その点はいかがでしょう。
  375. 久保卓也

    ○久保政府委員 戦力の法的概念は、憲法がある以上変わるはずがございません。しかしながら、戦力を構成する内容というものは、やはりその環境によって異なるべきではなかろうかというふうに思います。たとえば極端な例で申せば、徳川時代なら徳川時代のころに警察予備隊当時の防衛力を持っておれば、それは当時においては戦力と読むべきであったろうと思うのです。逆のこともまた言えるかもしれません。
  376. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 防衛庁は、戦力ということについては、これは憲法上持つことはできないということは明記されておりますから、戦力ということばをお使いにならない。戦う力ということを言われているわけです。戦う力と戦力とはどう違うのでしょう。
  377. 久保卓也

    ○久保政府委員 これも法制局がお答えすべきところでありますが、ある程度承知しておりますのでお答えいたしますと、戦う力というのは、単に二つの実力がぶつかり合って実力を行使し得る力ということであります。ところが戦力というのは、日本国憲法において日本国が禁止されておるところの実力というものが戦力とされております。これは憲法上の解釈であります。
  378. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 軍事的な面をとらえたときに、質的、量的、数的においては、戦力と戦う力とはどういうふうに違いましょうか。
  379. 久保卓也

    ○久保政府委員 戦う力であれば、たとえばわがほうが一個中隊の部隊が小銃を持っておりましても、戦う力であろうと思います。これは単に実力を行使する力というほどの意味でありますから。しかしながら、戦力と申せば、憲法上どういうふうに解釈すべきかという問題になっておのずから性格が違うだろうと思います。
  380. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 憲法の禁止をしているところの戦力というものの限界は、質的、量的にどのようにお考えになっておりましょうか。具体的に……。
  381. 久保卓也

    ○久保政府委員 憲法にいう戦力におきまして、それが量的、質的にどういう限界であるかということは、先ほど来申し上げるように、具体的にはなかなか申し上げられない。ただ、少なくとも抽象的に言えますことは必要最小限度の自衛力である。その必要最小限度の自衛力は何であるかということがやはり問題になるのでありまして、それはある程度その国際環境といいますか、時代といいますか、そういうものによっても左右されるものである。きわめて平和の確保されたような時期に、ある時期においてある程度許されたものを持つこと、防衛力を持つことが、そのときにおいてはすでに戦力になるということもあり得るのではなかろうか、というふうに思います。
  382. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 政府がいっておる、万一侵略が発生した場合には、間接侵略及び小規模の武力侵略に対してはわが国が独力でやり、それ以上の規模の武力侵略に対しては、アメリカの協力を得てこれを排除するという考え方のようでありますけれども、だとするならば、緊急事態において日米共同作戦下の防衛分担のワク組みと内容はどのようになっておるのか、御見解を承りたい。
  383. 久保卓也

    ○久保政府委員 そのことの是非はともかくといたしまして、緊急事態におきまして日米がどういうふうな防衛の分担を行なうべきかということについては、日米間での協議は正直のところございません。
  384. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その場合、協議がないとはいいながらも、やはり防衛を日米で一応やろうということであり、しかも日本の足らないところはアメリカにたよるという、そういう考え方を明らかにしているわけでありますから、その場合、米国に防衛の分担として全面的にたよらざるを得ないものはどういうものがあるか具体的に御答弁願いたいことと、それから核抑止力は当然であるとしても、相手の国土に対しての攻撃は、戦略的にも、また戦術的にも米軍にお願いをするのかという問題ですが、その点お答え願いたい。
  385. 久保卓也

    ○久保政府委員 言われましたように、核抑止力については、これは四次防の文章にも書いてありますように、米国に依存するということであります。  それから、そのほかに米国に具体的に依存するものは何かということになりますと、わが国は海上防衛については、いわゆる周辺海域の防衛にしか当たらないわけでありまして、全般的な海洋における海上交通の確保といいますか、あるいは対潜行動というものは、大きな作戦というものは米国にやってもらって、わが国は周辺において行なうというようなことがおおよその区切りということになろうかと思います。  それから、かりに日本の防衛上必要な場合に相手国の基地をたたく力というものを日本が持つかということは、これは通常の場合憲法で否定されているという解釈になっておりますので、わが国は持たないわけでありますが、その場合に、必要な場合には米国に依存せざるを得ない。その主たる勢力は、今日の情勢であれば第七艦隊の機動部隊であろうということになります。
  386. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本が全面的にみずから分担をするものはどういうものであるか。たとえば小規模の武力侵略ということは観念的にはわかりますけれども、実際にはどういう武力侵略というものを考えておられるのか、この点についてお答え願いたい。
  387. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは、小規模の武力侵略という場合に、どの程度のものを小規模というかということがたいへんお答えしにくいわけでありまして、そこに書いてありますのは防衛の構想、つまり三次防も同じでありますけれども、わが国がとっておる防衛の構想はそういう考え方にのっとっておる、そういう考え方に基づいて三次防をつくり四次防をつくっておりますということでありますが、そのときの、防衛力が行使されねばならない時期によって、その規模も違いが出てまいります。  たとえば、非常に緊張が予想されて、それから実際の侵略が起こるまでに相当長期間があるというような場合には、わが国の防衛力についても、いわゆる縦深性と申しますか、厚みと申しますか、そういうものがつけ加わってまいりますから、その小規模の程度も高まってくる。しかしながら、たとえば四次防期間中にも、今明年にもそういうような事態がかりにもあったとしますれば、これはわが国の防衛力は必ずしもそれに十分対処すろような準備をしておりません。いわゆる有事即応体制にあるのはごく一部でありますので、そういう場合には、相手方の小規模の武力攻撃というその小規模の度合いもまた低まってくる、こういうようなことでありまして、そのときどきの状態に応じて内容が変わってくるということであります。
  388. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日米が共同で担当する分野はどういうものが考えられましょうか。
  389. 久保卓也

    ○久保政府委員 共同でというのは、彼此相補うという意味では共同ということになりますが、同一対象を目標にしてということになりますと、これはそのときの情勢によって違ってくるのではなかろうかというふうに思います。  たとえば、そういうふうになるかどうかは別といたしまして、仮定の話として申し上げれば、わが国に上陸のために進攻してくる艦艇群、艦隊というものがありました場合に、当然わが国の航空機はこれに対して攻撃を加えるわけでありますが、その際に、第七艦隊が遊よくしておれば、第七艦隊の航空機もその同じ対象に対して攻撃を加えるというような場合には共同防衛ということでありましょうが、一般的に、私どもが日米の共同防衛というときには、先ほどの御議論にもありました「安保を基調として」ということとも関連いたしますが、わが国の防衛力と米国の支援と相まってわが国が防衛し得る、それを総称して日米の共同防衛というふうにいっていると思います。
  390. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 専守防衛に徹する自衛隊と、攻撃であれ防禦であれオールマイティな戦略、戦術を行使し得る米軍との共同作戦が、有事において一体いかなる協力関係を具体的に持つのであろうか。どこまで専守防衛ということで自衛隊がやり、どこから先をアメリカがやることになるのか、その点の境界線についてはどのようにお考えになっていましょうか。
  391. 久保卓也

    ○久保政府委員 わが国はあくまでも専守防衛でありますし、また大きな防衛力を持つことはないでありましょうから、わが国がなし得ることは、たとえば本土周辺における上空の防空でありましょうし、それからまた本土に上陸してくるであろう艦艇に対する攻撃でありましょうし、あるいは周辺海域における対潜作戦の範囲でしかない。したがって、それでわが国の当時における防衛力が十分でないという場合には、それにかぶさって、たとえば日本の防空を担当する、日本の防空に加勢に来る場合もあるかもしれませんし、あるいは先ほど申し上げたように、上陸してくる艦艇を攻撃してくれるかもしれませんし、あるいはさらに遠巻きの海洋にわたって対潜作戦を実行してくれるというようなこともありましょうし、場合によっては、本土に上陸しました相手国の軍隊に対して、わが国の自衛隊と相まって米国の地上兵力が参加することもあり得る。そういうようなことで、必ずしも一がいにこういう場合にはこういうことは言えませんし、また日米の協議というお話もありましたけれども、具体的な事態に即した協議というもの、あるいは計画というものは、なかなかできておらない、できないというのが今日の実情であります。おそらくはそういった事態に際して日米間で協議されるべきものというふうに考えております。
  392. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 増原前長官は、自衛隊が戦略的な意味で攻撃に出ることはあり得ないのだ、しかし個々の戦闘では機先を制して敵を攻撃するのは当然のことである、大体専守防衛という言い方は間違いで、戦略守勢ということなのだと言われておりますけれども、専守防衛と戦略守勢というのはどういうふうに違うのでしょうか。
  393. 久保卓也

    ○久保政府委員 これはすでに増原長官御自身がどの委員会かで御答弁になっていることでありますが、現在、私どもは戦略守勢と専守防衛ということばは区別して使っておりません。ただ、しいて言うならば、戦略守勢というのはやや軍事的、従来使われる表現でありますし、専守防衛というのは、最近使われ始めました、やや防衛の体制を示すという意味での幾らか政治寄りの表現ではなかろうかというふうに思っております。いずれにせよ、日本に対して直接の侵略があった場合に、そのつどこれを追い落とすというような姿勢、遠くまでは出ていって攻撃を加えないというような姿勢、そういうものを専守防衛といっておるわけでありまして、その中に、たとえばわが国に対して進攻してくる航空機がありました場合に、可能な範囲においてこれを撃墜を試みるということは当然あり得るわけで、そういう意味においては、私どもの解釈では実質的にはあまり変わりがない。  ただ、ある範囲で申せば、戦略守勢というのはやや広い意味合いを持っている場合もございます。たとえば、全般的に相手方の国の後方関係までも攻めるわけではないけれども、相手方の基地を攻撃するといった場合に、これは戦術攻勢であって、いわゆる戦略守勢もその中に入るんだという解釈があるとすれば、それは私どもがとっております戦略守勢という考え方とは異なっているわけで、いずれにせよ私ども考えているその両者は、一緒の範囲、すなわち、少なくとも専守防衛に同じ範囲での戦略守勢という考え方しかとっておりません。
  394. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いまはからずも戦術攻勢とか攻勢防御とか、あるいは専守防衛とか、いろいろな用語が使われているわけです。国民は全くわからないというのが現実じゃないかと思うのですが、まずその定義と、戦略、戦術の相違点について、あわせて御見解を承っておきたいと思います。
  395. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは用語集を見ないと的確にお答えできませんが、戦略と申しまする場合には、国全体を含んだ後方関係、戦争場面全体を踏まえてどう考えるかといった場合に、国全体のそういった戦争を全面的に考えた場合に戦略という思想が使われましょうし、個々の戦闘の場面でどうするかということが考えられる場合に、戦術ということばが使われると思います。
  396. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、いま申し上げた戦術攻勢ですね、それから攻勢防御、専守防衛、こういうことばが使われているわけでありますが、それはどう違うのでしょうか。
  397. 久保卓也

    ○久保政府委員 この種のことばは、おそらく定義が確立されているものとは考えません。専守防衛は防衛庁が最近使い始めたことばで、先ほども申し上げましたように、やや政治的なものであり、防衛の体制を示す、比較的明確ではないかもしれませんが、感じをくみ取れるような文言ではないかというように思いまして、私どももそれに従っておるわけであります。  攻勢防御とか戦術攻勢ということばは、いろいろの軍事的な用語として使われているように思います。攻勢防御の場合には、これは個々の拠点を守る場合に、あるいは特定の地域を守る場合に、守勢防御ということばがありますが、単に守るだけ、たとえば籠城のようなものでありますが、そういった守るだけの守勢防御に対して、攻めるは守るなりということばがありまするように、こちらがある程度の攻撃を加えるということによって防衛というものを全うする。ちなみに、防御ということばのほうが、防衛ということばよりは範囲が狭いというふうに受け取られておるようであります。  それから戦術攻勢というのは、戦略攻勢と戦術攻勢の対比で使われていると思いますが、いま言いましたように、特定の戦闘で攻勢的な姿勢を示すというようなことであろうかと思います。
  398. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 三月二日の本会議における防衛二法の趣旨説明に対する私の質問に対しまして、前増原長官は、「いわゆる戦略攻勢でなければ、守勢をどしどしとってよろしいというふうなことでないことは、そのときの談話の中で明確に申し上げておるわけでございまして」云々というふうに答弁されておりますが、それは具体的にどういうことなんでしょうか。
  399. 久保卓也

    ○久保政府委員 私も、どういうおつもりでお使いになったかよくわかりませんが、戦略攻勢というのは、これは、たとえば昨年の末から北ベトナムに対してとった米国の姿勢のような、相手の国に対してこちらが全面的に攻撃的な姿勢を示すというような場合に使われるべきことばであろうと思いますが、そういうような形というものは、日本の防衛についてはなじまないはずでありまして、むしろ言うならば、全面的には国の防衛全般にわたっては戦略的な守勢の形、これはおそらくは専守防衛とあまり変わらない考え方ではなかろうかと思います。
  400. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 「いわゆる戦略攻勢でなければ、守勢をどしどしとってよろしいというふうなことでないことは」、要するにどんどん攻撃していいということなんでしょう。守勢をどしどしとってよろしいというふうなことではないのだということは、そのときの談話の中で明確にしておる。どんどん攻撃してよろしいということです。それはたしかに私が質問したことに対して、増原防衛長官は是認をしている部分ですけれども、その意味が私はわからないのです。ですから、防衛局長ならば、具体的にどういうふうな内容でどういうふうな状態を意味しておるかということがおわかりになると思いますから、その点について……。
  401. 久保卓也

    ○久保政府委員 私も実はよくわかりません。前長官にお伺いしておきますけれども、おそらく言われたかったのは、単に狭い意味の守るだけではなくて、たとえば航空機が攻撃に来ればそのつど落とすということも入る、あるいは相手方の艦艇が上陸部隊をもってやってくる場合に、領海に入るまでおめおめとそれを見守っておる、領海に入った場合に初めて攻撃を加えるというようなことを考えているのではない、そういう意味で守勢だけではないということを言われたのではなかろうかと思います。
  402. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私は、四次防における戦略の基本というものは、従来の専守防衛型から、戦術的には公海、公空における攻勢を含めた戦略をとるというふうに思うのですけれども、その点はどのようにお考えでしょうか。
  403. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは、四次防は三次防の延長でありますし、全般的な防衛構想については全く変わっておらないわけでありまして、時代の推移に応じて技術的な向上、技術的な近代化が行なわれている。それに伴って、単にわが国の兵器、わが国の装備もまた近代化されているということでありまして、四次防に至って公海上における攻撃的な姿勢が強化されたというふうなことでは全くないというふうに私ども考えております。
  404. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 三次防の従来の考え方というものは、日本に進攻してくる敵を領海、領空において迎え撃つという、いわば水ぎわ防衛の専守防衛という防衛構想であったわけですね。いまあなたが言われたように、同じ専守防衛という表現であっても、内容は、公海において戦術的攻勢で迎え撃つという防衛構想の質的な転換がなされているというふうにしか私は思えないのですが、この点について……。
  405. 久保卓也

    ○久保政府委員 わが国の防衛は領海、領空であるということを発言されました外務大臣がおられることも承知いたしておりますけれども、その後の防衛庁長官の答弁で、やはり領海、領空に限られるものではないということはすでに言われておりますし、ちょっと記憶は不確かでございますけれども、総理大臣からも何年も前に言われているように思います。
  406. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 領海、領空における戦略的な攻勢は別として、公海、公空における戦術的な攻勢がとられるのかどうかということなんですが、その点はどうでしょうか。
  407. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは、戦術的攻勢ということばをどういうふうに受け取るかということでありまして、定義の不明瞭なことばを避けまして具体的な行動でもって明示いたしますと、三次防も四次防も同じでありますが、たとえば、こちらに進攻してくる航空機に対して、わが要撃機が能力の範囲内において飛び立って要撃をする、ナイキ、ホークがやはりそれを要撃するということは、これはそういった意味での攻撃というのは当然あり得る。またわが国に上陸をしようとする艦艇があれば、適当な場所においてこれを要撃するということもあり得るわけで、その点については三次防も四次防も変わっておらない。ただ、たとえば二次防のころにナイキアジャックスというやや到達距離の短いものがハーキュリーズにかわっているはずでありますが、そういうようなことで、時代の進歩と同時に技術に対応した装備を持っておると  いうことの違いでしかないというふうに思います。
  408. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 船舶の大型化、装備の近代化等に伴って、従来の日本の領海、領空防衛から、わが国周辺における航空優勢、制海確保ということがいわれ、必要な範囲で公海、公空で敵を撃破する体制となっておりますし、しかも公海、公空の範囲が明確に限定をされていないということになると、かつて財界の一部から出されましたマラッカ海峡防衛論のようなものが出てくるわけでありますが、航空優勢、制海の確保については具体的にどのようなことを考えておられるのか、その限界についてお伺いをいたします。
  409. 久保卓也

    ○久保政府委員 制海及び航空優勢ということばが使われたのは防衛庁の原案のときでありますが、現在の四次防についてはそういうことばは使われておりません。したがって、四次防の防衛力でもって制海あるいは航空優勢の能力があるということではないと思います。しかしながら、具体的な運用の場面においては、航空優勢なら航空優勢というものを確保する努力はするであろうと思います。わが防空能力だけで航空優勢が確保できない場合に米側の援助を求めるということもありましょう。そういった運用上の目標というものと四次防がどうなるかということとは、おのずから別であろうと思います。
  410. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 海外派兵の定義についての見解を承りたいわけでありますけれども、政府は海外派兵と海外派遣とを区別をしておりますが、防衛庁はどのようなものを海外派兵といい、どういうものを海外派遣と考えておられるのか。海外派兵の定義と海外派遣の区分について具体的な例をお示しになって御答弁願いたいと思います。
  411. 久保卓也

    ○久保政府委員 これも私の答える範囲外であると思いますけれども、御質問でお答えせねばならぬといたしましてお答えいたしますが、武力行使の目的を持って外国の領域に自衛官を派遣をするということが海外派兵というふうに考えられております。それから、海外派遣ということばで区別していいかどうかわかりませんが、そういう区別のしかたもあったと思います。  そこで、その場合の、つまり海外派遣といわわた場合には、武力攻撃を伴わないで自衛官を派遣する場合、これを海外派遣といっているようであります。たとえば、外国におきまする国際監視団で、これは単に平和の状況の継続を監視する、あるいは衛生とかその他の事務に従事をするといったような、いわゆる平和目的というものがありまして、武力行使を伴わないといったときには海外派遣といわれておるように思いますけれども、これまた法制局のほうにお答えいただいたほうが適当であろうと思います。
  412. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 海外領域とは、他国の領海、領空、領土ということであるのか、他国周辺の公海、公空はそれに入るのかどうか。
  413. 久保卓也

    ○久保政府委員 海外領域という場合に明確なのは、その国の領海、領空でありまして、そこで、それを越えるような公海において自衛官が武力行使の目的を持って派遣される場合、これがどの場合に憲法の範囲内であり、どの場合に憲法の範囲外であるかについては、法制局の意見がまだ出ておりません。したがいまして、私が述べるのは不適当であろうと思います。
  414. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 公海、公空における侵略排除には、場合によっては敵基地内に、もしくはその近くでたたくということもあり得るかどうか。
  415. 久保卓也

    ○久保政府委員 これもすでに確立された見解がございまして、わが国が相手方のたとえばミサイルなどによる攻撃によって自滅する、座して死を待つのが憲法のたてまえではあるまいということで、わが国の存立上やむを得ない場合に相手方のミサイル等の基地を攻撃すること、そこまで憲法は禁止するものでないというふうに、鳩山首相の答弁以来、歴代内閣はその答弁を踏襲していると思います。
  416. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 敵の基地近くの公海、公空上から、自衛隊が敵の領海、領空、領土上の敵に向かってミサイル等で攻撃するということは、憲法上許された自衛行為の範囲内として可能であるかどうかということを伺います。
  417. 久保卓也

    ○久保政府委員 私どもは、この日本周辺におきましていろいろな武力攻撃が発生した場合に、それに対応して自衛隊はどの程度行動できるかということを、憲法上、あるいは国際関係の法律上、条約上知りたいと思うわけでありますが、法制局のほうでも、具体的な状況を想定をしないで一律に何がどうだということを考えるのは不適当であるということで、明確な教えをいただいてないのが今日の状況であります。
  418. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま、こういう問題は私は非常に基本的な問題ですから、ただ憲法上においてはっきりと見解が示されていないからということだけで逃げられるということになれば、私、この問題は保留いたしますよ、いままでのやつを全部。こういう問題は今後やはり大きくいろいろの見解になってあらわれてくるわけですから、少なくともそういう問題については何らかのきちっとしたものがなければ、それが拡大解釈されるようなことがあれば重大な問題に発展するから、私はそういうことを言っているわけですよ。その点について……。
  419. 久保卓也

    ○久保政府委員 もちろん私どもも同じ立場に立つものであります。ただ、事が憲法上の解釈でありまするので、しかも法制局から考え方が示されていないのに防衛庁側が見解を申し述べるのは不適当であるということを申し述べたわけであります。
  420. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 場合によっては、これはやはり私は重大な問題でありますから、法制局等を呼んだ上においてある程度見解を詰めてみたい、このように思うわけです。委員長、その点お取り計らい願いたいと思います。  相手がわが国の領海、領空近くまで来て初めてこれを撃滅するのか。あるいは、相手方に明らかに侵略の意図があると推定された場合は、日本が相手の機先を制して、相手の基地、あるいは相手の領海、領空近くの公海における周辺地域においてこれをたたくということもあり得るのか。その範疇というのはどのようにお考えになりますか。
  421. 久保卓也

    ○久保政府委員 いまの問題も政府側から明確な答弁がなされたことはございません。したがって私が、答弁されてないものをここでお答えするのは不適当であろうと思いますが、ただ言い得ることは、従来の答弁の中から言えば、相手方の基地をたたくということは通常ございません。そしてまた問題は、いま抽象的な御質問でありましたけれども、日本に対する具体的な侵略の意図があるのかどうか、それをどういうふうに確認したかというような問題もありますので、従来政府側から具体的な答弁が出なかったのであろうと思います。
  422. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 自衛隊の公空、公海における守備範囲についての限界というものはきめられていないという、そういう問題がいま浮き彫りにされているわけでありますけれども、結局そういう点についてはやはり明らかにしていかなくちゃならぬと思いますが、自衛行動の三要件として、わが国に対する緊急不正の侵略が発生した場合、そうして他に守る手段がない場合、必要最小限度の実力行使でなければならないとしているが、要するにわが国に現実に侵略があるという状態でなければ自衛権は発動できないということになるのでしょうか。
  423. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは自衛隊法の中にも「武力攻撃のおそれのある場合を含む」と書いてありますし、現実の武力攻撃があったということを前提とはしないと解釈されております。
  424. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 私、まだたいへん質問をする内容を持っているわけでありますけれども、一応七時ということでお約束してありますので、私、この法案に対するいろいろの問題点等があるわけでありますけれども、その法案に対する問題点等も明らかにし、またいろいろの問題もありますので、その点を同僚議員に譲るということにいたします。
  425. 藤尾正行

    ○藤尾委員長代理 受田新吉君。
  426. 受田新吉

    受田委員 たいへん皆さんお疲れです。こんなに熱心に審議しておいでの委員会というのはそうざらにはないわけです。今週は月曜日から三日間、沖繩に実地調査をいたしまして、引っ返してこうしてほとんど二十四時間勤務を五日間続けておるわけであります。  では、ひとつ質問をさしていただきますが、防衛庁長官、防衛庁がスタートして、また陸海空の自衛隊がスタートしてここに満十九年、数えでいえば二十年、ようやく成年に達した自衛隊であり防衛庁である。ようやく一人前になったということです。国民生活の中に自衛隊の存在というものがある程度定着されつつあるといってもいいようなところへある程度来た、このように長官はお考えかどうか、御答弁を願いたい。
  427. 山中貞則

    ○山中国務大臣 あとのほうがなければたいへんありがたい御意見だと思ったんですが、私は、定着ということばに、これが国民の各階各層、思想、党派、いろいろなところを越えて許容されているという意味であるならば、残念ながらまだ違憲論争その他も存在いたしております今日において、それが得られていない、そう思いますので、定着しておると言うのには少し僭越過ぎると思います。しかしながら、私どもとしては、現実に存在するこのような集団でありますものを、国民が正当な理解と評価をしていただきたい、そしてそれが定着した独立国としての基本的な概念として受けとめてもらいたいということに対して全力をあげたいと考えます。
  428. 受田新吉

    受田委員 全力投球を尽くしたい。長官御就任以来短期間ではあるが、相次ぐ指示の乱発、それから部隊の視察、勉強の続行、とにかくハッスルしていらっしゃる姿は、まさに男の子の代表者として大いにたたえて差し上げたいと思います。  しかし、私は静かに日本の置かれている現状を考えるときに、防衛庁並びに自衛隊の置かれている使命は非常に重大である。まず私が指摘したいことは、極東の国際関係というものはいまどういうところにあるか、これから日本の自衛隊をながめていく必要があると思うのです。日中国交回復以後、アジアの緊張は大幅に緩和されたと私も思い、世間もそう思っております。その中で日米安保条約のもとに自衛隊が今日の地位を確保しているのでありますが、この極東の緊張緩和ということについては、防衛の担当国務大臣として、私と同じような認識を持っておられるかどうかを伺いたい。
  429. 山中貞則

    ○山中国務大臣 わが国をめぐる極東並びに全体としての極東の情勢、これは少なくとも緩和の方向に向きつつあることは、先ほど申し上げましたベトナムにおける、なおカンボジアの余じんがあるとしても、一応のアメリカ軍の撒兵、さらにアメリカ自身が政治の責任者である大統領を中華人民共和国の首都に派遣をした、またソ連の首都モスクワに派遣し、そしてまたソ連からはそれに対して答礼がなされようとしておる。こういう傾向を見ましたときに、だれしも、われわれの周辺を取り巻く極東の情勢も含めて、安定化の方向に行きつつあるというふうに見るのが至当だと思います。流れの本然の姿であると思います。  しかし、反面において、ソ連と中華人民共和国との間には、私たちのどうも予測し得ないような空気がある。あるいは南北朝鮮の表面の赤十字会談を通じて、人道的なお互いの離散家族の問題等についての話し合いは好ましいことでありますけれども、はたして軍事面においては、そのような雪解けのムードがあるのであろうかというような問題等々については、いろいろ疑問がありますし、またアメリカとそれらの国々、すなわちソ連、中共との表向きの関係は、そういう友好の度合いを深めようという姿勢を示しておりますが、一方において核装備の競争というものが依然としてバランスの優劣を競う感じで、これは主としてアメリカとソ連とでありますが、依然として現実に現在も行なわれつつある。こういうようなことなどは、一体私どもとしては全く関係のないことだと思っていいのかどうかという点については、まだなお疑問の存するところであって、われわれは将来ともにこのような傾向が続いていって、究極的に国連の段階における、国連の手による世界全国民が安定した生活の営める平和な地球というものの実現を望みたい、そういう気持ちであります。
  430. 受田新吉

    受田委員 ベトナムの平和協定も結ばれたわけです。南北朝鮮にも、そこに最近ちょっとけげんな点もあるのでございまするが、交流の風穴があいた。分断国家が相次いで和平への道をたどろうとしておる。こういう中において、日米安保体制のもとに、わが祖国日本は、防衛力を最小限に保持するという自衛隊を持って今日を迎えておる。極東の平和と安全のための、アメリカが日本の自衛隊に対する期待、これもわれわれはよく伺っておるところでございます。  しかし、いま長官からのおことばの中で、いずれも共産主義国家である中国とソ連の間に、どうも釈然としない趣のあることを発言されたのですが、中国とソ連は戦うことがあるか、中ソ戦が展開されるということが予想されるかどうかを御答弁願いたい。
  431. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私も国際戦略の専門家ではもちろんありませんが、私たちは、そういう国は核保有国でありますので、おそらくは戦争というものはあり得ないだろう。ダマンスキー島もしくは珍宝島と相互に呼び合っている川中島の争奪くらいのところの問題は、あるいは今後もあり得るのかもしれませんが、核保有国同士が相互に使い得ない兵器であることを承知しておりますから、そういう事態はないだろう。ベトナムにおいても、アメリカはほんとうの戦争の勝敗を、世界各国にみえも外聞もなくつけようと思えば、核兵器を使えばすぐにつけられたはずでありますけれども、結局、あのような犠牲を払いながら全然使えなかったということが証明しているように、核保有国同士の戦いというのは、いわゆる地球壊滅に通ずることに連鎖反応としてなっていくのではないか。したがって、その意味では、中ソ相戦うということは考えられないことではないだろうかと思っております。しろうと考えでございます。
  432. 受田新吉

    受田委員 先般、ソ連の軍艦が台湾海峡を通ったという事実をわれわは聞いております。これは、ソ連が中国に対する牽制、あるいは台湾に対する何らかの意図があったかないかわからないけれども、どこかにそうした中ソの緊張の一端を招いておるのではないかと疑われる節もあるのですが、これはアジア局長になりますか、外務省としては、この中国とソ連の関係、緊張の度合いというものをどのように見ておられるか。極東の平和と安全に非常な影響力のある中国とソ連でありますので、私たちとしては、その点特に気にかかる点でございまするが、外務省は情勢判断をどういたされておるかを御答弁願いたい。
  433. 大森誠一

    ○大森説明員 私どもも、先ほど長官の御発言がありましたように、基本的にはアジアの情勢は緊張緩和の方向に向かいつつあるという考えでありますが、しかし同時に、アジアにはいわば不安定の中における安定、こういった感じがまだ残っているという立場でございます。  ただいま御質問のございました中ソの関係でございますが、中国、ソ連双方がどのような立場でお互いに考えているかということにつきましては、憶測は控えたい次第でございますが、両者とも自国の安全保障というものを考えていく際に、双方の関係というものに強い配慮を加えていく、こういうことは申せると存じております。
  434. 受田新吉

    受田委員 佐藤総理がアメリカへ行かれたときに、沖繩返還に先立って極東条項の中に台湾条項を挿入された実績があります。台湾条項というものは、今日中国を承認したわが国としてどういうふうな立場でこれを見ていけばいいのか。台湾条項というのは抹殺されたと解釈してよいのかどうかを御答弁願いたい。
  435. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 一九六九年の十一月に佐藤総理とニクソン大統領の間にかわされました日米共同声明の第四項にいわゆる台湾条項というものがございますが、これはその当時における両国首脳の台湾地域の情勢に対する認識が述べられたものでございます。その後、先ほど山中長官からもお話がございましたよけに、ニクソン大統領が昨年の二月に訪中いたしまして、いわゆる上海コミュニケというものを発表いたしました。米中間の話し合いの結果がそれにうたわれておりますが、いずれにいたしましても、こういうふうなアメリカと中国との間の本格的な対話が始まるというふうな状況のもとに、台湾地域をめぐる情勢は大きな変化を遂げておりますし、この地域をめぐって武力紛争が現実に発生するという可能性はなくなったもの、こういうふうに考えられるわけであります。こういうふうな背景のもとに、一九六九年当時のコミュニケにうたわれました認識というものは変化している、こういうふうに政府としては考えておるわけでございます。
  436. 受田新吉

    受田委員 変化をしている。それでは台湾条項は削除してもよい、もう有名無実、名があるだけで実はないと見るのか、あるいはこれは抹殺されたと見るのか、そのいずれであるか、お答えを願いたいのです。
  437. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 繰り返しになりまして恐縮でございますが、六九年当時に述べられた認識は、当時の情勢のもとに述べられたものでございますが、その後の情勢の変転に照らしまして、今日その当時の認識は変わっておる、こういうことを申しておるわけでございます。削除云々ということを特に申しているわけではございません。
  438. 受田新吉

    受田委員 認識が変わっているというのは、どのように変わっておるのかを御答弁願いたいのです。
  439. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 いわゆる台湾条項ということで代表されます当時の佐藤総理とニクソン大統領との間の考え方は、佐藤総理からニクソン大統領に対しまして、台湾地域の問題というのが日本の安全保障に対してきわめて重要な問題である、こういうことを現実に当時の情勢に照らして言われたわけでございますけれども、その後の情勢の変化に照らしまして、この認識は、今日では認識の対象となるべき客観情勢が異なってきているということであり、また現実に当時心配されたごとき武力紛争の可能性は予見されておらないということでございます。
  440. 受田新吉

    受田委員 わが国が中国と国交回復して以来、台湾の日本に対する感情はどのようになっているか。一九六九年の当時と主客そのところを異にして、今度は逆にどういうかっこうになっているか。いま認識が変わっているとおっしゃった。それと対応するような形で、台湾の日本に対する感情というものはどういうふうに変わっておるかを、御判断の結論としてアジア局参事官からお答え願いたいと思います。
  441. 大森誠一

    ○大森説明員 日本と中国との間に国交が開かれましてから、私ども、台湾との間には外交関係がなくなりまして、台湾政府がいかなる評価を下しているかということにつきましては、ただいまのところ、直接これを知る手だてを有していない次第でございます。しかしながら、日中国交正常化後も、政治的にわたらざる分野における事実上の交流というものが今日まで平穏裏に続いてまいっているということが、台湾側の感じを評価する一つの目安になるかとは存じております。
  442. 受田新吉

    受田委員 ソ連艦が台湾海峡を通過したということ、そのことは、ソ連の対中国政策、対台湾政策の変更という面があるかないか。これもやはり、アジアの情勢分析というものは常に政府が的確に把握しておかなければならぬわけですから……。
  443. 大和田渉

    ○大和田政府委員 台湾海峡をソ連の軍艦が通過したという事実はわれわれも承知しておりますが、ただそのことだけで、はたしてソ連の対中国政策あるいはその他の政策の変更を意味するものかどうか解釈しかねると思います。中ソの間それ自身につきましては、先ほど先生御指摘のように、いまだに問題が残っておりまして、交渉が続いているという状況でございます。
  444. 受田新吉

    受田委員 中ソの間、日本を仮想敵国とする国連憲章五十三条の規定に基づく不可侵条約もできるほどじっこんな国が、国境紛争までも起こして、いまなおわれわれとしても、その間の友好にひびが入っているような印象を受ける点がある。その船が台湾海峡を通った。それだけでは対中国対台湾の判断はできないけれども、われわれとしても、どこかにアジアの情勢分析の中に一つ検討をする種があるということは、これは外務省もお考えですね。
  445. 大和田渉

    ○大和田政府委員 もちろん、われわれが中ソの関係あるいはソ連の政策を判断する上で、一つの事実としてわれわれは認識しております。
  446. 受田新吉

    受田委員 そこで、台湾が日本に寄せる国民感情というようなものを考慮に入れるときに、台湾に対する警備、台湾に対する心づかいというものが、一九六九年のときとは変わった形になっておるのじゃないか。したがって、政府自身が南西航空混成団のようなものをつくる、そういう計画なども、台湾に対する配慮があったのではないかという感じもするのでございますが、これは防衛当局、どういうことになりますか。
  447. 久保卓也

    ○久保政府委員 沖繩の防衛問題が生じましたのは、当然沖繩の返還に関連してでありまして、六九年十一月のニクソン大統領と佐藤首相の共同声明の第六項であったかと思いますが、沖繩についての局地防衛の見解がそこに示されたわけでございまして、それに基づいて日米間で協議が進められ、結局、現在見るような部隊が配置されました。  そこで、当時の情勢と今日の情勢は、いわゆる米中接近あるいは日中国交正常化というようなことで、もちろん変わっております。しかしながら、そういった国際情勢と必ずしも関係なくて、やはり日本国の領土である、しかも最南端である、しかも非常に本土から離れた地域にあるということで、防衛のワンセットずつを配置しているということで、私は必ずしも、この当時の情勢と今日の情勢の相違が、いまのようなものをもたらしたということにはならないのではないかというふうに思います。
  448. 受田新吉

    受田委員 防衛庁が防衛力整備計画を進める上において、極東の情勢分析、平和に対する各国のあり方などというものを常に研究しておられる、また外務省との間で、そうした分析については情報交換等をもって適切な答えを出そうとしておられる、私、かように思っておるのですが、そう了解してよろしゅうございますか。
  449. 久保卓也

    ○久保政府委員 そのとおりであります。
  450. 受田新吉

    受田委員 そこで、いまの南西航空混成団というものは、沖繩の防衛ということを目的とされておるほかに、南西諸地域をもっと広い範囲で包括しているかどうか、台湾に対する警戒ということが加味されておるかどうか、これもあわせてお伺いしたい。
  451. 久保卓也

    ○久保政府委員 沖繩におきます南西航空混成団、その主たる防衛力は、言うまでもなくF104であり、ナイキでありますし、また陸のホークがあるわけであります。そういった防空能力というものは沖繩本島を中心にする島々についての防空でありまして、遠く台湾にまでは、これはレーダーサイトの関係もありますし、104の足の関係もあります。そういった事実上の問題を別にいたしましても、台湾との関係は全く考慮いたしておりません。
  452. 受田新吉

    受田委員 台湾との間の距離は非常に接近しております。遠くじゃない。非常に近い。そして台湾との関係は、一九六九年度に見た関係よりもっと深刻になっておるという判断は、防衛庁、お持ちじゃないですか。
  453. 久保卓也

    ○久保政府委員 台湾の問題につきましては、私は政治、経済的な問題と軍事的な問題とは区別すべきではなかろうかというふうに思います。  そこで、政治、経済的な問題につきましては、ただいま外務省のほうへ御質問になったと私は了解するわけですけれども、軍事的な問題としましては、六九年当時と今日との相違というのは、いま申し上げたような、米中接近、日中国交正常化の過程におきまして、台湾に関するいわゆる武力解放というようなことは、私はまず行なわれないのではなかろうか。そういう意味においては、そういうことのある種の見通しのなかった時期よりは、軍事的には今日のほうが安定しているのではなかろうかというふうに思いますけれども、外務省のほうの御見解もおただしいただきたいと思います。
  454. 受田新吉

    受田委員 外務省。
  455. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 台湾海峡をめぐる情勢につきまして、先ほど来申し上げております一九六九年当時に考えられた問題と、その後の国際情勢の進展、変転に伴います今日の情勢を比べてみました場合に、日本側もアメリカ側も、明らかに当時と同じような緊迫した情勢が予見される情勢ではないし、またそういう可能性は今日考えられない、こういうことになっているわけでございまして、その意味で、当時の認識と今日の認識とは異なってきておるということを申し上げておるわけでございます。
  456. 受田新吉

    受田委員 外務省の方々は非常に上品なことばを使われるもので、認識が異なるというようなところは、国民になかなかわかりにくいのです。国民にわかりよいことばをもってしていただきたいと思います。  そこで、ちょっとこれは関連するのですが、去年外務大臣をなさっておられた現行管庁長官福田先生は、沖繩から飛び立つ米軍機について、もちろん米軍基地全体を含んで、その事前協議の運用の面において具体的な方針を打ち立てると言明をされたのです。その後、解散、総選挙が行なわれて、この問題がしばらく放置されておりましたが、きょうあらためて、福田前外相が事前協議制の運用面における具体策をお約束されたそのことについて、その後、日米安保協議委員会、安保運用協議会、いろいろと機関がありますが、日米合同委員会でもけっこうでございますが、そういうところでこの事前協議運用の問題で具体的な話し合いがされたのかどうか。福田前外務大臣の単なるゼスチュアとしての国会発言であったのかどうかを、ひとつ明確に御答弁を願いたいのです。
  457. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 事前協議制度の運用に関します問題につきましては、ただいま御指摘のとおりに、前外務大臣の当時におかれて国会でいろいろ御議論がございました。そういう情勢を踏まえまして、事前協議制度の運用に関する問題につきまして、本年一月二十三日に行なわれました第十四回の日米保安協議委員会の席上におきまして、日本側から提起いたしまして、その問題の討議を行ないました。  討議の結果、事前協議制度の運用にあたっての基本的なワク組みについては、日米双方の考え方が一致していることが再確認されたわけであり、またその具体的な運用につきましては、日米間の相互信頼と現実の状況に即して密接な連絡、協議によるべきであるという点でも意見の一致を見たということが、日米安保協議委員会の後に発表されました共同発表にも出ておるとおりでございまして、この大事な問題につきまして、日米高いレベルにおきまして、この問題についての討議がいまのようなかっこうで行なわれたわけであります。
  458. 受田新吉

    受田委員 それでは長官どうぞ。あなたがからだの調子が悪くなってしまっては祖国の防衛にたいへん影響しますから、あなたは非常に大事なお方ですから、どうぞ一刻も早くお薬を召されて、ちょっとお休みになってください。
  459. 三原朝雄

    三原委員長 ちょっと速記をやめて。
  460. 三原朝雄

    三原委員長 速記を起こして。
  461. 受田新吉

    受田委員 それではひとつもう少しやります。  防衛局長、私はあなたに御苦労さんと言いたいほど、あなたは非常によく敢闘されておるのです。非常に勉強もされておられるし、そして他との連絡、折衝にも非常な努力をされておられる。ただ私は、いまあなたにこれから御答弁いただかなければならぬ大事な問題が続いて起こるのですが、あなたの周辺におられる、あなたの参謀としての防衛課長その他のスタッフ、これは少し人数が少な過ぎやしませんか。
  462. 久保卓也

    ○久保政府委員 おっしゃるとおりでありますが、問題は、先ほども御質問がありましたけれども、日本の防衛の問題について、純粋に軍事力だけでなくてもっと広範囲な問題について勉強する、しかもそれを日本の国民にのみ込んでもらえるように、ほんとうに納得のできるような防衛論と申しますか、防衛のあり方と申しますか、そういうのを勉強するだけの余裕が私どもの内局には存在をしない。必ずしも私の下でなくてもよろしいわけですけれども、そういったものがなければ、大きな意味での安全保障政策というのは成り立ちにくいのではなかろうか。ただし、これは人数が多いだけでは足りませんので、やはり質のいい人が集まらねばならない。そういう点においての欠陥を私は痛感をいたしております。
  463. 受田新吉

    受田委員 防衛局長、あなたは八面六臂の敢闘をしておられるわけだが、国会でこうして毎日毎日やるうちに、防衛庁内部においては、内局の責任者として、他の局長さんたちとこうして国会ばかりについておられると、日本の防衛の基本が忘れられやしないか。その危険が少しあると思うのです。私は、内局は長官の補佐の役を果たす上に、制服の皆さんを十分リードしていく力がなければいけないわけですが、防衛局長の下に陸海空と三幕の担当分野というようなものができておるのかどうか。総括的にいっておるのか。あるいは空陸海とそれぞれ分担をきめた担当者が内局におるのかどうか。
  464. 久保卓也

    ○久保政府委員 いい悪いは別でありますけれども、私どもの防衛課及び運用課におきましては、それぞれ陸海空を担当する者及び機能で担当する者というふうに分かれております。
  465. 受田新吉

    受田委員 そこで、ひとつ防衛局長の御所管として、自信がおありのようですからお尋ねしたいのですが、基本的な問題として、このたびの法案改正でも沖繩に力点が置かれているのですが、沖繩の防衛の中に米軍がおる、それに今度日本の自衛隊が入っていく、こういうかっこうの中で、外部の武力侵略に対する日本側の任務とアメリカ側の任務との間に、終始連絡を密にして日米共同作戦行動ができるような体制が、私この間視察してふと不安があったわけです。日本の自衛隊は自衛隊だけでやっておるのです。しかも陸海空は全く横の連絡もとっていないような話でございました。これは行って視察された皆さんが聞いておることです。つまり、陸は陸、海は海、空は空で、空は春日の指示、海は佐世保の指示、陸は態本の指示をいただいておりまして、その指揮下にありますので、現地のわれわれは常に陸海空三位一体の行動を、つまり、そういう連絡はほとんどとっていない。また、あそこにある在日米軍の皆さんともほとんど会っておらぬ。つまり臨時という、法律を無視して自衛隊が行っておられるのですが、その間非常に独立的な色彩が農厚なんです。これは防衛上非常に問題があると思うのです。  そういう問題については、共同作戦行動をする体制としては、沖繩の自衛隊は、臨時と名がつくような、つまり臨時的なもので、いま外部の武力攻撃があったら、これはがたがたになるね。現時点で言ったら、もうさっぱりということになってくるわけです。陸と空の例のミサイル基地にしても同様です。陸はホークを今度七月になって移管する。海はナイキはすでに移管済みだ。ところがナイキ部隊は、百三十キロの時点で敵機を把握して、それに無人機のようなかっこうのミサイルで撃ち込む。それから漏れたら今度はホークが近くでやっつける。最初にレーダーサイトで敵機を把握する、それで今度要撃機が出る、それからナイキ、ホークと、こういうふうにやるというのですけれども、こういう大事な問題を陸と空とが別々に分割して、一方は春日の指示でやるのです、一方は熊本の指示でやるのですというようなことで防空体制が確立できますかしら。防衛力を充実して総合的な力を発揮する上には非常に大きな問題があると思ったのですが、防衛局長、そういうことをほんとうに真剣に考えられたかどうか。
  466. 久保卓也

    ○久保政府委員 これは主としてナイキ、ホークの関係かと思いますけれども、米側の場合には陸軍がナイキもホークも持っておったわけでありますが、わが国は別にしております。これはもちろん本土も同じであります。外国でもやはり、ナイキ、ホークを一緒の空軍なら空軍、陸軍なら陸軍に統一して持っておるところと、それから陸軍と空軍とに分けて持っておるところがあります。それぞれ国内事情によってそうなっておると思いますけれども、わが国の場合には、本来機動的に運用されるナイキというものは、言うならば地域防空を担当させられております。そこで、それを補完するためのホークというものが、場合によって陸上自衛隊とともに動く可能性を秘めています。機動性を持っておるわけであります。そういう意味で陸上自衛隊が持っておるわけでありますが、そこで、いまおっしゃいましたような欠陥、問題点を生ずるわけであります。  その問題をどういうふうに調整しているかと申しますると、御視察になったかもしれませんけれども、DCサイトでは全般の指揮官のほかに、コンソールと申しまして、航跡の映る機材の前に、F104の係、それからナイキの係、ホークの係がそれぞれおります。したがって、専任指揮官から、たとえば標的がありまして、それは104がよいというときには104のほうに指示が参ります。それからナイキあるいはホークのほうに指示が参る場合には、専任指揮官の指示がナイキの係とホークの係とでその場で調整される。それは、一つの部屋の中で、104、それからナイキ、ホークというものが一緒に連携しながら動作をしておりますので、航空自衛隊であろうと陸の部隊であろうと変わりません、この防空指揮に関連いたしましては。したがいまして、そういう意味で、これは指揮ではありませんけれども、統制ということばを使っておりますが、空と陸との間に統制及び調整が行なわれて、一応支障がなくできるというふうに私ども考えております。
  467. 受田新吉

    受田委員 あなたがそう簡単に考えられるほど現地は簡単でないのです。それは双方に連絡がない。陸将補も空将補も、鬼澤さんも山田さんも双方の連絡というものはほとんどしておらぬ。今時ホークが完全にこちらへ帰ってき、また航空管制が七月に入ったら帰ってくるそうですが、そういう時点において、なお春日の指示と熊本の指示とで両方が動いているようなことで沖繩の防衛ができるのかどうか。そしていま、外国には両方一緒同じ軍に属しているのもあれば別々もあるとおっしゃったが、あそこには米軍がおるわけです。米軍の陸が握っておる。こういうのと連絡をするのに、こっちは空と陸があるというようなことで、どうして円滑な運営ができるかという懸念が一つあるわけです。防衛局長というものは、こういうときに、やはり沖繩の防衛はアメリカとの共同作戦をするのに都合のいいようなかっこうで——私はいま別にそれに味方をしておるわけではないんだけれども、私は専門的な立場でいま質問をするわけです。軍事学の専門の意味から。同じ共同作戦をするのに、一方は二つの軍に属し、一方は一軍に属しておるというときに、その連絡協調をはかるのにたいへん不便であることは、局長おわかりですね。  そういうことを考慮に入れて、山中長官、あなたは非常に勇気を持った長官として多くの人に期待されてデビューされたわけですから、この機会に、あのミサイル部隊は、高射群は陸と空、これを一本化して、適切な措置によってその運営の妙を発揮できるような英断をふるわれる必要があると思うのです。これはいまいいチャンスです、沖繩が返還されて、近くホークもこちらに帰ってくるという時点で。つまりいま同じところに同棲しておるのですから。別々の地域じゃないのです。沖繩という狭いところで、一緒にナイキ部隊とホーク部隊があるのです。その指揮命令系統が陸と空で違っておる。こっちは撃つなと言い、こっちは撃てと言ったときにはどうなるかということで、非常にこれはおかしなことになるのですが、軍事的に見て、この部隊編成をできるだけ有力な効果を発揮できるような隊編成にする。もちろん、陸にしても空にしても、長く訓練された者が陸上自衛隊から航空自衛隊、あるいは航空自衛隊から陸上自衛隊にかわるのには、官職の問題等で問題はあろうけれども、適切な同列の官に当てはめればいいわけです。それで私は部隊の非常に有効な編成ができると思うので、ナイキ部隊とホーク部隊の統一という点については、軍事的効果をあらわすという意味において長官は何らかの英断をふるう時期が来ておるのじゃないか、ちゅうちょなく。それぞれのなわ張りなどを考えるときじゃないですよ。沖繩がちょうどいま返って、間もなくホーク部隊がこっちに戻ってくるわけです。そういう時点でいまが一番いいときですからいずれかにまとめる、こういうことでいかがでしょう。
  468. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは本土も含めてですか。
  469. 受田新吉

    受田委員 それはもちろんそうです。
  470. 山中貞則

    ○山中国務大臣 この問題は、私も素朴な疑問を抱きました。しかしながら、日本の場合はあくまでも、空も海も、陸はもちろんでありますが、専守防衛でありますから、そうすると、まずそのような事態が起こった場合を仮定してみますと、最初に発見するのは空だろうと思うのです。そして核弾頭は装着しませんが、足の長い専守防衛用のミサイル、これは当然ナイキは空軍が持つのが一番密接な連携がとれる。そこでそれ以上に近距離、低空ということになって事態が進展してまいりました際は、これは移動もききますし、地上部隊である陸というものが、もちろん密接な連携をとってやるわけでありますので、それが持っているのが現在の体制でありますから、そういうことのほうがよろしいのかなということで一応納得はしております。  ただ沖繩においては、現時点において、おっしゃるように、おかしな状態になっておることは事実だと思います。これはやはり、空の管制を、あるいは空の守りを引き継ぐということになりまするまでに、当然それらの点は沖繩においてもきちっとルールをつくらなければならぬ、そのように考えます。
  471. 受田新吉

    受田委員 長官、内地と沖繩といま分離してお考えのようですが、沖繩の場合は長官がいま疑問を持っておられるようなかっこうです。当面、沖繩の部隊を一括防空業務に統一できるような効果的な部隊編成にやり変えるという、これは自民党政府の防衛庁長官として、沖繩の部隊をまず隗より始めるというかっこうでやられる必要があるのじゃないかと思いますね。  これは、現地をお互い今回視察して、その陸海空の三者一体のかっこうができておらぬのです。司令だけは並んで来られましたけれども、お互い司令が相談するような会はないという。米軍との話もほとんどしてないという。これでは日米共同防衛などということはとても不可能だという危険を感じました。長官の英断をふるういいチャンスがいまあらわれましたので、まず沖繩部隊の一括統制をされるということに、ひとつ勇を鼓して検討していただいたらと思うのですが、賢明な防衛局長がそばにおられますので、お二人がまず相談されて庁議を決定、閣議決定ということでやられる必要がないかと思います。
  472. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはやはり、せっかく置く以上は、それが有機的かつ機能的でなければならない。でなければ、むだにあちこち向いているということになりますから、それは確かにしなければならぬことでありますから、早急にその問題を一元化するという——いわゆる隊の編成がえ、所属がえというようなことまではちょっといま私がお答えできませんが、早急に機能統一という面では検討するということを申し上げます。
  473. 受田新吉

    受田委員 外務省の方も早くお帰りいただくように。防衛庁以外の役所の方のきょうの質問の解除をさしていただきたいので、私のこの質問が終わりましたら、外務省はお帰りになられてもけっこうでございます。  ベトナム和平が成功したわけですから、沖繩の基地から飛び立ってベトナムへ攻撃を加える、そういうことはもうなくなったと思います。しかし、ベトナムに軍需品を送ったり、あるいはその他戦争に関係のある協力は、いま和平が成立したといえども、そういう形のものが今後沖繩から行なわれることがない、今後はそうした一切の武器、軍需品その他の輸送は沖繩からしないのだという確約ができるかどうか。
  474. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいまの御質問の一番最初のところに、沖繩から米軍の飛行機がたとえばベトナムへ攻撃にいくというふうなことがございましたが、これは現在も、いままでもなかったわけでございます。沖繩から米軍機が攻撃のために発進する場合には、当然これは事前協議の対象になります。そういう事態は今日まで一切なかったわけであります。  なお、後段の補給の問題につきましては、一月二十七日に締結されましたベトナム和平協定によりますと、一般的には外部からの南越に対する軍事援助は禁止されておりますけれども、和平協定の第七条によりますと、国際監視のもとに一対一のベースで武器等の補充を行なうことが認められており、つい一昨日発表されました新しいパリ協定におきましても、あらためてこの点に触れておられます。したがいまして、このような和平協定のワク内で行なわれまする補給について、米軍がわが国の施設、区域を使用することはあり得ると思いますし、また、そのような目的のためにわが国の施設、区域が使われることは、安保条約上禁じられておりませんし、和平協定で認められているものならば差しつかえない、こういうふうに考えております。
  475. 受田新吉

    受田委員 ちょっとどうも理解に苦しむ点もあるのですが、時間の関係で次の問題がありますので……。  最近、ベトナム監視委員会、ICCSという委員会からカナダという国が脱退した。そこで、カナダが脱退通告をした現時点で、あとがまに日本がなったらという報道が一部あるわけですが、この報道を外務省がキャッチしておられるかどうか。
  476. 大森誠一

    ○大森説明員 ベトナム和平協定の当事国の一つから非公式に、日本としてカナダにかわってICCSに参加する意向はないかという照会は受けたことはございます。
  477. 受田新吉

    受田委員 これに対して、招請に日本は応ずることがあるかないか。外務省から……。
  478. 大森誠一

    ○大森説明員 現行の関連国内法にかんがみまして、わが国としてはこれに応ずることはできないという立場をとってございます。
  479. 受田新吉

    受田委員 ベトナムの和平協定の中で出た機関でございますね。そこに日本の監視団が参加できないという根拠は、憲法上、海外派兵ということが許されないという、このワクがあるからということでございますか。
  480. 大森誠一

    ○大森説明員 憲法上のワクと申しますよりは、現在の自衛隊法であるとか、あるいは警察関係国内法の関連であるとか、そういうところから考えまして、わが国がICCSに入って活動することはできないという立場でございます。
  481. 受田新吉

    受田委員 これまた、よく以通ったような問題で、キッシンジャーが新大西洋憲章というものを構想しておるようです。それの中へ、すなわち欧州の軍事、経済、通貨等の統合をはかろうというこの機関の中に日本が入るべきだ、こういう意見を言っておる。これはキャッチしておられることかどうか。
  482. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 キッシンジャーのいわゆる新大西洋憲章構想、キッシンジャー構想といわれるものが、四月二十三日のニューヨークにおきます演説におきましてキッシンジャー氏から提唱されておりますが、この考え方は、基本的に申しまして、アメリカとしては一九七〇年代を展望いたします際に、日本、アメリカ、ヨーロッパ、この三者間の協力関係というものについての基本的な考え方をまとめる必要がある段階に来ていると思う。その関係において、政治、経済、特に通商、通貨、エネルギー、そういうふうな問題のみならず、安全保障の面につきましても包括的な関係というものを考えていくべきものでなかろうか。したがいまして、いわゆるヨーロッパの年という関連において、キッシンジャー自身は大西洋に重点を置いて新大西洋憲章という考え方を提唱いたしておりますが、この考え方の中身につきましては、必ずしも詰まったものではないというふうに私どもも承知いたしております。  ただ、その考え方の中に、政治、経済、安全保障というものを包括的にとらえるべきだという新しいアプローチが提唱されておりますので、この問題については慎重な検討を必要とするというふうに考えておりますが、安全保障の問題につきましては、日本はNATOとは全く異なる立場にあるわけでございますから、その面でNATOと一律に考えるべき性質のものではない、こういうふうに考えておるわけであります。
  483. 受田新吉

    受田委員 その安全保障と軍事は留保するということが、事実上可能であるかどうかです。
  484. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいま申し上げましたように、キッシンジャー氏は構想として大きな基本原則を打ち立てるべきだということを言ってはおりますけれども、では、いかなる形でいかなる内容ということについては、一切まだ明らかにされておりませんし、おそらくその点はまだ考えは十分熟していないのではなかろうか、こういうふうに思われます。したがって今後の慎重な検討にまつべき性質のもの、こういうふうに考えております。
  485. 受田新吉

    受田委員 ニクソンの外交教書の中にも出てきておるということでありますので、新大西洋憲章というものとNATOとの関係をちょっと承っておきたいのです。
  486. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 アメリカのこの呼びかけに対しまして、NATO自体は、現在NATOのワク内でこの問題を真剣に検討しているようでありますし、またヨーロッパの諸国は、すでに西ドイツのブラント首相が五月の初めにワシントンを訪問しました際に、ニクソン大統領と会談をいたしこの問題も話し合っているようであります。さらにまた、先ほど山中長官が言われました、五月末から六月初めにかけてのニクソン大統領とフランスのポンピドー大統領との間の会談におきましてもこの問題が出ているようでありますけれども、ヨーロッパ側のこの問題に対する取り組み方自体もまだ十分形を整えておらない、こういうふうに承知しております。
  487. 受田新吉

    受田委員 これによくまたつながるのですが、ヘルシンキで全欧州の安全保障会議というものが提案されておる。これには東欧諸国、ソ連も入っている。この呼びかけは、外務省はどう見ておられるわけでしょう。
  488. 大和田渉

    ○大和田政府委員 ヘルシンキで行なわれておりましたいわゆる欧州安保会議、これは昨年の十一月から始まりましてこの六月八日に予備会議を終わりました。本会議が七月三日から始まるという段階でございます。この会議には、仰せのとおり、ソ連あるいは東欧諸国、西欧を含めまして合計三十五カ国が参加しておりますが、NATO諸国はこの会議に臨みます前に、NATOとしての統一の考え方をあらわすということで、必ず会議を開いて統一的な態度で臨んでおります。われわれとしては、本会議がどうなっていくかということを、会議が始まってから情報を得たい、こう考えております。
  489. 受田新吉

    受田委員 私は、ここでまたもう一つ、ソ連がアジア安全保障というものを提唱している。これは局長御存じですね。
  490. 大和田渉

    ○大和田政府委員 存じております。
  491. 受田新吉

    受田委員 七月になったら田中総理がアメリカへ行かれる。それから三カ月ぐらいたって今度ソ連へ行かれる。総理が行くのですから、必ずこの問題が何かの形で呼びかけられる危険があると思うのです。決してこれを見のがすわけにいかない。田中総理がアメリカへ行ったときには、キッシンジャーの提唱を本格的にニクソンから呼びかけがある。ソ連へ行ったら、ソ連のブレジネフ書記長が今度アジア安保会議。これひとつどうですかと言うて呼びかけがある。また、さっき申し上げた、安全保障のソ連、東欧含めた組織への呼びかけがある。これはもうスケジュールとして当然出てくる問題になると思うのです。そのときに、日本の安全を担当する防衛庁もこれは黙視できない。田中総理は決していいかげんに外国を訪問されるわけでないのでございますから、アメリカへ行ったら都合のいいことを言い、ソ連へ行ったら都合のいいことを言うようなことでは、これは日本の総理として適格でない。田中さんは案外勇気があるから、決断と勇気をもって、実行をもってやられるというときに、両方の調整をどうするかという問題にもぶつかるわけなんですがね。これは外務当局、国務大臣、田中総理の御信任を厚うしておられるあなたは、これは当然日本の安全保障につながる問題でございますので、これからの外交関係と日本の防衛とは分離できない、こういう意味で、田中総理のアメリカ訪問及びソ連訪問に際して、いま私が提案したこれらの問題に対してどういう態度をもって臨むべきかを、外交当局としてどういう進言をしようとしておるのかをお答え願いたいのです。
  492. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 日程の関係でアメリカが先でございますから、私からまず答弁させていただきますが、七月末のワシントンにおける田中総理訪米、その際に考えられる議題はいろいろ重要なものがあると思います。ただ、いま具体的に御指摘のキッシンジャー構想につきましては、キッシンジャー氏が四月二十三日の演説で提唱いたしまして、その直後に五月の三日にニクソン大統領が外交教書を発表いたしまして、その中で基本的には同じ考え方を述べております。日本に関しまする個条も、従来の外交教書に比べますと非常に長いページをさいて具体的な問題を取り上げております。  この問題につきましては、かねて大平大臣が国会でも御答弁されておりますように、米国が外交教書の形で具体的な提案をし、または呼びかけを行なっておるのに対して、日本としても真剣にこれに取り組んで、日本としての考え方をまとめたい、こういうことを言っておられますし、大臣の指示を受けまして、私ども事務当局といたしましては、一連のこの発表にありまする、あるいは提唱にありまする米側の考え方を真剣に検討し、これに慎重に対処していきたい、こういうことで準備をしておるわけであります。
  493. 大和田渉

    ○大和田政府委員 いわゆるヨーロッパ安全保障会議、それとブレジネフ書記長によって唱えられたアジア集団安全保障構想、その関係及びそれに対する日本の考え方という御設問でございますが、ヨーロッパの安全保障の会議というものは、先ほど申し上げましたように、三十五カ国がほかの国を入れないという前提でやっておりまして、日本がこれにオブザーバーとして参加する、あるいはメンバーとして参加するという可能性はいまないわけでございます。ただ、われわれとしては、あの会議自身がもう一つのいわゆる兵力相互削減会議というものと合わせまして、ヨーロッパにおける緊張緩和、あるいはそれの定着性というものをあらわす一つというふうに考えたいと思っております。  それから、アジアの集団安全保障の構想でございますが、これは一九六九年にブレジネフ書記長によって唱えられたものでございますが、遺憾ながらまだ具体的な内容がはっきりしておりません。したがいまして、具体的なコメントというものはしかねるわけでございます。  ただ、われわれとしては、アジアの集団安全保障というものを考えます場合に、問題点としては、まずソ連との間のことを考えた場合に、前提として領土問題を解決して平和条約を結ぶという問題が一つ。それからアジアの集団安全保障という場合に、アジアの国すべてが参加する必要があるのではあるまいかということが一つ。それから、アジアの安全に対してアメリカが非常に重大な関係を持っているということで、アメリカの参加というものが考えられるのかどうかというような問題。あるいは、そういう構想がかりに何らかの形で具体化するという場合に、現在ある既存の二国間あるいは多数国間の条約関係と矛盾するものであってはならないのではないかというような問題点があるというふうに認識しております。
  494. 受田新吉

    受田委員 田中総理は、この国会の劈頭の施政演説の中でアジア太平洋会議なるものを提唱された。これは御記憶にも新しいと思う。そういう総理でありますから、このアジア太平洋会議というものと、いま指摘した新大西洋憲章その他の関係というものとが無関係ではないと私、思うので、田中総理のアジア太平洋会議なるものは、外務当局はいま一体どう受けとめておられるのか。総理は非常に思いつきでぼんぼんやられるから、外国に行ってぱっぱっと、かつて松岡外務大臣が日独伊三国軍事同盟条約、ソ連との中立条約などをぱんぱんと結んできたような、総理みずからがやるのだから、手も足も出ぬようになるから、その内助の功を果たす外務当局が道を誤らぬようにせにゃいけぬのですから、田中総理のアジア太平洋会議構想というのは、一体どう受けとめておられるのですか。
  495. 大森誠一

    ○大森説明員 田中総理がベトナムを含めたアジア平和会議の開催ということを申された趣旨につきましては、非常に長い間戦火の絶えなかったインドシナにおいて、ベトナムに関するパリ和平協定というものがちょうど署名を見たときでございまして、ようやくアジアにも平和安定べの希望が生まれてきたということ、このことを背景といたしまして、田中総理とされては、この際、関係諸国が衆知を集めてアジアの平和と安定をさらに確固としたものにするということが切に望まれる、こういう観点から施政方針演説において、アジア太平洋国際会議開催の可能性検討したい旨述べられたものと私どもは受け取っている次第でございます。  外務省といたしましては、現実にはアジアの情勢は、先ほどからお話が出ておりますように、複雑でありまして、まだ不安定を含む要素というものが残っているわけでございます。そこで、いま直ちに総理が御提唱になった会議を開催できるとは考えておらないわけでございますけれども、長期的には、このような会議の開催を目標といたしまして、関係諸国の考え方とか、あるいはアジアをめぐる情勢の推移というものを見きわめつつ、さらに検討を続けてまいりたい。このように考えております。
  496. 受田新吉

    受田委員 時間が進行しておりますので、私はこれで質問を終わりますが、外交関係がもう一つあるのです。  それは防衛に関係する外交です。久保さんがカーチス中将との間で結ばれた取りきめ、これは条約と同じ性格のものか、条約でなくて国会の承認を要しない行政協定のようなものか、どういう性格のものと外務省は見ておられるのでしょうか。
  497. 高島益郎

    ○高島政府委員 ただいまお尋ねの久保・カーチス取りきめ、これは、いわゆる憲法にいう条約とは全く関係のないものでございまして、防衛庁当局防衛庁設置法の権限のワク内で、アメリカの防衛当局との間に、沖繩返還に伴いましての自衛隊の配置に関するいろいろな技術的調整を文書にまとめたものというふうに考えております。したがいまして、これは、いわゆる行政取りきめとして政府間で結ぶ行政取りきめとも違いまして、関係官庁間の技術的な取りきめというふうに考えております。
  498. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、これを履行しなかった場合には、政治不信があるだけで、国際責任はないと考えてよいか。
  499. 高島益郎

    ○高島政府委員 これは、防衛当局間のいわゆる話し合いの結果をまとめたものでございますので、その話し合いの結果が、着実に履行されることがもちろん期待されるわけでございますけれども、いわゆる法的な関係から申しますと、この内容が確実に実施されなくとも国家責任は伴わないというふうに考えております。
  500. 受田新吉

    受田委員 非常に明確な答弁が出まして、国家的には責任はないということでございます。すなわち、もしこれが国家責任があるということであれば、憲法第七十二条の、すべて条約は事前及び事後に国会の承認を経るを要するという、ここで国会の承認を得なければならぬのですが、国家責任はないと明確な外務省の答弁が出たので、履行しなくても国家は責任がないということでございます。  非常に重大な答弁をいただいた時点で質問を終わらしていただいて、またあらためて質問をさせていただきます。
  501. 三原朝雄

    三原委員長 次回は、来たる十九日火曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後八時十四分散会