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1973-06-08 第71回国会 衆議院 内閣委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月八日(金曜日)    午後一時十六分開議  出席委員    委員長 三原 朝雄君    理事 奥田 敬和君 理事 加藤 陽三君    理事 藤尾 正行君 理事 大出  俊君    理事 木原  実君 理事 中路 雅弘君       赤城 宗徳君    伊能繁次郎君       越智 伊平君    大石 千八君       瓦   力君    小泉純一郎君       近藤 鉄雄君    志賀  節君       住  栄作君    竹中 修一君       丹羽喬四郎君    旗野 進一君       林  大幹君    三塚  博君       村岡 兼造君    保岡 興治君       山崎平八郎君    吉永 治市君       坂本 恭一君    和田 貞夫君       鈴切 康雄君    受田 新吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣 山中 貞則君         (防衛庁長官)  出席政府委員         国防会議事務局         長       内海  倫君         防衛政務次官  箕輪  登君         防衛庁参事官  大西誠一郎君         防衛庁参事官  長坂  強君         防衛庁参事官  岡太  直君         防衛庁長官官房         長       田代 一正君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛庁人事教育         局長      高瀬 忠雄君         防衛庁衛生局長 鈴木 一男君         防衛庁経理局長 小田村四郎君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁長官 高松 敬治君         防衛施設庁総務         部長      河路  康君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省条約局長 高島 益郎君         外務省国際連合         局長      影井 梅夫君  委員外出席者         外務省アジア局         外務参事官   中江 要介君         外務省アメリカ         局外務参事官  角谷  清君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 六月八日  辞任         補欠選任   大石 千八君     保岡 興治君   笠岡  喬君     住  栄作君   竹中 修一君     小泉純一郎君   中山 正暉君     瓦   力君   丹羽喬四郎君     志賀  節君 同日  辞任         補欠選任   瓦   力君     村岡 兼造君   小泉純一郎君     竹中 修一君   志賀  節君     丹羽喬四郎君   住  栄作君     笠岡  喬君   保岡 興治君     大石 千八君 同日  辞任         補欠選任   村岡 兼造君     山崎平八郎君 同日  辞任         補欠選任   山崎平八郎君     中山 正暉君     ————————————— 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第七号)      ————◇—————
  2. 三原朝雄

    三原委員長 これより会議を開きます。(拍手)  自由民主党以外の各派委員諸君が御出席になっておりませんので、正規に事務局をして出席を要求させますので、しばらくお待ちください。     …………………………………
  3. 三原朝雄

    三原委員長 日本社会党委員日本共産党革新共同委員公明党委員及び民社党委員に御出席お願いいたしましたが、出席がありません。やむを得ずこのまま議事を進めたいと思いますが、再度連絡をとりたいと思いますので、このまま暫時お待ちください。     …………………………………
  4. 三原朝雄

    三原委員長 午後三時より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時四十四分休憩      ————◇—————     午後三時九分開議
  5. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  自由民主党委員以外の委員諸君が御出席になっておりませんので、事務局をして出席を要求させますので、しばらくお待ちください。     …………………………………
  6. 三原朝雄

    三原委員長 御出席にならない各派委員諸君出席を要請いたしましたが、日本社会党委員日本共産党革新共同委員公明党委員及び民社党委員出席がありません。まことに遺憾ながらやむを得ず議事を進めます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤陽三君。
  7. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 先般、会期中に防衛庁長官の交代がありましたことは、まことに遺憾なことでございます。しかし、政治家として手腕、力量ともに非常に高い山中長官を迎えましたことは、たいへんうれしいことでございまして、私は心からお喜びを申し上げたいと存じます。  先日、山中長官には、当委員会に御懇篤なるごあいさつをいただきましたが、防衛庁といたしましては、防衛法案をはじめ重要なる課題が山積いたしております。長官の御健闘を心からお願いを申し上げる次第でございます。  これから防衛法案質疑に入るわけでございますが、まず、何から何をいかにして守るかという、わが国安全保障政策の基本的な問題から質疑を始めてまいりたいと思います。  最近、新聞等で拝見しておりますと、日本近海外国の飛行機がしばしば往来するとか、あるいは外国の軍艦が通航するとか、いろいろな記事が出ておりますが、最近のこの種の事象防衛庁として防衛上注目を要する事件がありましたならば、それを御報告願いたいと思います。
  8. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいま加藤委員より、私の新任にあたりはなむけの激励のことばを賜わりましたこと、身に余る光栄であります。私はとの大任を果たすために、政治家として蓄積したすべてのたくわえをはたき出しても完遂するつもりでおりますので、加藤委員のみならず委員各位の御協力のほどを切にお願いをいたします。  これからの質疑にあたりまして、私は大体みずから全部答弁するのが私の本来の性格でありますが、事柄の事実関係、あるいはこまかな装備等関係につきまして、それらのことについては政府委員より答弁をさせることを、着任早々というゆえをもってお許しを願いたいと存じます。  ただいまの、領空侵犯事例等、あるいはまた近海国籍不明船が航行したこと等につきましては、新聞報道等にもすでに伝えられておるところでありますが、なお具体的に防衛局長より説明をいたさせます。
  9. 久保卓也

    久保政府委員 日本周辺への不明機の来襲と申しますのは、昨年は例年に比べて特に多いというわけではございませんでした。しかし、ことしの一月は非常に多かったということと、それから特に本年の特徴といたしましては、朝鮮海峡を越えまして中国近辺までソ連機が接近してきたのが三回あるということと、沖繩周辺にまでそういったソ連機が来ているということ、これは、最近の国際情勢、あるいは沖繩復帰ということとの関連での回数の新たな出現であろうというふうに思います。  それから、津軽海峡とか朝鮮海峡ソ連艦艇が従来常住的にいた場合もございますけれども、最近では断続的にいるようであります。特に最近顕著でありましたのは、台湾海峡ソ連艦艇が五隻、五月十二日でありましたか、通過したケースでありますが、これは台湾政府台湾に退いてから初めてのケースであるというふうにいわれております。そしてこれに対して台湾側では、台湾海軍がこれを厳重に監視をしておったということが台湾政府のスポークスマンから言われております。しかしこれに対して、航空機がこれを監視をしておったということまではわかっておりません。なお、ソ連艦艇のこういった事柄がどういうような意味を持つかということは、もちろん公表されたものはございませんので、推測の域を脱しないわけでありますが、そういった点が最近での新しい事象と申せましょうと思います。
  10. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 いまの台湾海峡通航事件ですが、私の承知する限り、いままでソ連海軍艦艇台湾海峡を通過したことはなかった。新聞で見ますと、台湾事前通告をした、こう書いてありますが、これは外務省の方でもいいのですが、そういう事実があったかどうか。これは私はたいへん大事な問題だと思うわけであります。
  11. 中江要介

    中江説明員 ただいまの防衛局長から話のありましたソ連艦隊の一部分が台湾海峡を通過した問題につきましては、政府としては、台北発の外電によって、そういう発表があったということを承知しておるわけでございますが、その報道によりますと、台湾の当局はソ連艦隊の動静について事前に通報を受けていたといわれる、こういう報道になっております。それ以上のことは確認されておりません。
  12. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 では、その点はそれでよろしゅうございます。  次に、国際連合の問題について少しお伺いをしたいと思います。  わが国国連基本方針で、国際連合を強力にいたしまして、世界安全保障体制としたいという希望を持っておるわけでございますが、国際連合が発足をいたしまして以来、いまだに十分な力を発揮しておりません。これはどういう点におもな原因があるとお思いになりますか、御答弁お願いいたします。
  13. 影井梅夫

    影井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のとおりに、国連がその本来の任務である国際の平和と安全の維持、その機能を十分に発揮し得ないということ、御指摘のとおりであろうかと思います。その理由、原因はいろいろあろうかと思いますけれども、一つは、申し上げるまでもなく、国連存立基礎でございます大国間の協調ということが十分にはかられていないということがあろうかと考える次第でございます。  そのためにいかにすべきか、これは国際連合が持ちます平和、安全の維持機能、これのための最大の責任を持っております安全保障理事会機能強化をはかり、また国連全体といたしまして、紛争の発生あるいはそのおそれがある場合にいろいろな事実調査機能というものを十分に発揮させる、具体的にはこれを総会にも持たせる、あるいは事務総長にも持たせるというようなことが必要ではなかろうかというふうに考えております。
  14. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 これは、外務省情報文化局編集の「世界の動き」二月発行の中に、「国連平和維持活動の諸原則の問題は、国連財政問題と並んで目下特別委員会検討されております」、こう書いてありますが、この検討はどういうふうになされておりますか。
  15. 影井梅夫

    影井政府委員 国際連合憲章全体に関しまして、これを見直す必要があるのではないかということはかなり前からいわれていたことでございます。国連が成立いたしましてから四分の一世紀以上経て、加盟国の数も当初の原加盟国の数に比較して三倍近くにふえておる。しかもその大部分はいわゆる発展途上国であるということで、客観情勢が非常に変わってきておるということが言えるかと思います。  わが国も、昭和四十四年の総会以来、国際連合のあり方というものを、ただいま申し上げましたような客観情勢の変化に応じて見直すべきじゃないか、具体的には国際連合憲章につきまして改定の余地があるのではないかということを唱えてきた次第でございます。これを受けまして、昨年の七月一日まで、国連の各加盟国から国連事務総長に対しまして、国連憲章の現在の規定、これについていろいろのコメントを求めるという作業が行なわれ、これを受けまして、昨年の国連総会におきまして、国連憲章の再検討の必要ということが問題にされた次第でございます。昨年の総会におきまして、国連憲章検討の必要ということは過半数によって認められたのでございますけれども、しかしながら、昨年の総会において、直ちにその作業に入るというのは時期尚早ではないか、もうしばらく事前検討研究を経て、その結果を持ち寄って再検討の事業に当たるべきであるという意見が過半数を制しました結果、この問題は来年の総会においてもう一度取り上げる、ただしそれまでの間、この問題に関心を有する各国が集まりまして常時研究を進めていく、こうなっておりますのが現状でございます。
  16. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 特別委員会には日本は入っておるのですか。また、この特別委員会会合は何度か持たれたわけですか。
  17. 影井梅夫

    影井政府委員 日本は、その委員会に入っております。  それから、これは必ずしも定期的な会合はやっておりません。また会合の形式も、非公式な会合をかなり開いておる。大体の感じで申し上げまして、二週間に一回ぐらいはこの検討のための会合を開いておるという現状であります。
  18. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 いまの国際連合のいろいろな問題がありますけれども、一つは、やはり安全保障理事会の構成及び権能の問題だと思うのです。一九五〇年十一月三日の「平和のための統合決議」というのがありますが、これが集団的な措置をとることについて適当な勧告を行なうことになっているわけですね。安全保障理事会と同じような権能を、拘束力を持たせるような憲章改正というのは困難なんですか。日本は試みられたことがありますか。
  19. 影井梅夫

    影井政府委員 この問題は、御承知のとおり憲章改正を伴う問題でございまして、手続的に申し上げまして、憲章改正のためには安全保障理事会常任理事国五カ国すべての賛成を含む全加盟国の三分の二の賛成を必要とするということになっておりますので、見通しは容易ではないというふうに考えております。  なお、そのような考え方、これを推し進める場所といたしましては、PKOと呼んでおりますが、平和維持機能に関する委員会というのがございまして、日本もそのメンバーになりまして、研究を進めておりますが、必ずしも近い将来にその方向に動き得るという見通しは持っておりません。
  20. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 憲章改正についての日本政府の提案がありましたならば、ここでお聞かせ願いたいと思います。
  21. 影井梅夫

    影井政府委員 具体的に憲章の第何条のどこをどう直すという形にまではまだ至っておりません。ただ考え方といたしまして、先ほど申し上げました国連平和維持機能、これを強化するという考え方、それから国連の諸機関の事実調査機能、これの強化をはかるということ。それから第三点といたしまして、安全保障理事会の現在の機構、またその機能、これを見直す必要があるのではないかということ。それから第四点といたしましては、国連経済社会理事会、この機能強化をはかり得るのではないか。そのほか、御承知の現在の国連憲章敵国条項というのが入っておりますが、これの削除。こういった考え方を打ち出しまして関係国との協議を進めるという現状でございます。
  22. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 いまの日本政府考え方というのは、私は適当だと思うのですね。これをぜひ強力にあらゆる場を通じて実現方向に向かうように御努力を願いたいと思います。  その次に、やはり国連憲章関連をいたしましてお伺いをしなければならないのは、昨年の十月三日の国連総会で、中華人民共和国の喬冠華代表がこういう発言をしていらっしゃる。  「人々は戦争を非難し、戦争は人類の紛争を解消する野蛮な方法だと考えている。しかし、社会がまだ階級に分かれ、人が人を搾取する現象がまだ存在する限り、戦争は避けられないということを、われわれは、はっきり知っている。戦争には正義戦争と不正義戦争との二つがある。われわれは正義戦争を支持し、正義にもとる戦争に反対する。社会主義者がなお社会主義者でありたいと考えるならば、すべての戦争に反対するわけにはいかない。国際関係武力行使しないといっても、それは条件のあるものであって、無条件のものでは決してない。こうした条件とは、主権と領土保全相互不可侵相互内政不干渉平等互恵を通じて、平和共存実現することである。そしてこの点をなしとげるには、どうしてもすべての帝国主義侵略政策拡張政策に反対しなければならない。種々様々帝国主義植民地主義、新植民地主義が、まだ武力で全世界の大多数の国々を奴れい化し、侵略し、支配し、おびやかしているとき、なんの区別も条件もつけないで、国際関係の中で、武力行使しないことを絶対的に鼓吹することは、世界人民に対する裏切りである」、こういう論議があるわけです。私は、喬代表の平和への気持ちを疑うものではありませんけれども、国連憲章の第二条には、御承知のとおり第三項に、「すべての加盟国は、その国際紛争平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない。」並びに第四項で、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」、こう規定しておる。これはそれほど明瞭じゃございませんけれども、一九七〇年十二月十六日の決議の二七三四号、これは「インターナショナルセキュリティー強化に関する宣言」でありますが、その第五項の中に、「いかなる国も他の国におけるシビルストライフ」——内乱というんですか、「またテロリストの行動を組織をしたいように、また扇動しないように、またこれを補助しないように、またはこれに加わらないようにする義務を負う」、こういうことがあるわけですね。私はどうも、この決議のこの宣言及び国連憲章と、いまの喬代表演説との間に理解できない承のがあるんですが、これはどういうふうに理解したらいいんでしょうか。
  23. 影井梅夫

    影井政府委員 ただいま冒頭加藤先生のお読みになりました、昨年の国連総会におきます中国代表演説、これは国連総会冒頭に行なわれます各国一般討論演説ということで、それぞれの国の政策を打ち出す場所である。したがいまして、その演説の内容というものには、多分に政治的な含みと申しますか、というものが含まれているのが普通でございます。昨年の中国代表演説も、その一つであろうと考える次第でございます。  中国は、御承知のとおり国連の場におきましては、第三勢力と申しますか、非同盟の勢力代表たらんとする姿勢を打ち出しておりますので、そういうことを背景において考えますと、どういう意図であの演説が行なわれたかということも察しがつくように考える次第でございます。  これをどのように見るかということでございますが、ただいま先生が御指摘になりました国連憲章第二条第三項、第四項、それからそのほかの決議の趣旨にかんがみまして、国連加盟国、これは武力行使というものはあくまでも慎まなければならない、また他国の内政に干渉してはならないということをうたっているわけでございますが、わが国といたしましては、これらの国連憲章規定決議に忠実に従うべきものというふうに考えております。
  24. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 これ、私どももいま納得できるようなお答えがいただけないことは残念に思うのでありますが、国際儀礼ということもございましょうから、この点はさらに追及することはいたしません。  その次に、軍縮問題について若干お尋ねしたいと思うんです。  私、ジュネーブ軍縮委員会に参りまして、傍聴させていただきました。きわめて熱心におやりになっていることに敬意を払うのでありますが、昨年の総会地下核実験禁止大気圏内の実験禁止をきめておるわけですね。これはいま軍縮委員会でどういうふうに取り扱われておりますか、お聞かせを願いたいと思います。
  25. 影井梅夫

    影井政府委員 核実験につきまして、まず大気圏内の実験、これには、国連総会におきましても、従来再三その禁止ということが打ち出されておりますし、またジュネーブ軍縮委員会の場におきまして、日本は機会あるたびにこれに反対の意向を表明しております。ただ遺憾ながらそれがなかなか聞き入れられないという現状でございます。しかしながら、これは今後、大気圏実験が続けられる限り、軍縮委員会場所におきましてわが国主張というものは続けてまいるつもりでおります。  それから地下核実験につきまして、御承知のとおりに、最大問題点禁止のためにいかなる方法をとるべきか。日本といたしましては、もちろんこれを全面的に直ちに禁止することが望ましいことではあるけれども、それが非常にむずかしいということであれば漸進的にこれを禁止していく。漸進的と申し上げます意味は、大規模の核実験、これを禁止していき、その禁止の範囲を逐次広げてと申しますか、実験余地を逐次狭めていくという方法によってこの地下核実験の全面的な禁止に持っていきたいというように考えております。  もう一つ問題点は、この地下核実験についての検証をいかにするかということでございますが、これにつきましては、ソ連側から自国の領土内に立ち入って検証をする必要はないという主張が非常に強く出されております。現在の時点におきましては、現地における検証ということがなければ、最終的にはほんとうに効力のある地下核実験禁止はできないということでございますので、これが難点となりましてなかなか進展しないというのが現状でございます。しかしながら、問題の性質性質でございますので、一回、二回試みましてこれが直ちに受け入れられないということでありましても、わが国といたしましては、しんぼう強くこの主張を続けていくという所存であります。
  26. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 その次に、先生皆さんのたいへんな御努力によって生物兵器の制限、禁止の問題は解決をしたわけでありますが、化学兵器製造禁止の問題はいまどういうふうに進んでいるのでありますか、お尋ねをいたします。
  27. 影井梅夫

    影井政府委員 この問題も、ジュネーブ軍縮委員会におきます一つの大きな問題になっております。本件につきましても、もちろん理想といたしますところは、全面的に直ちにこれを禁止したいということでございますが、なかなかその実現がむずかしい。わが国は、現在全面的に禁止がむずかしいのであれば、その製造、それから開発ということだけは禁止する、しかしながら、現在貯蔵されているもの、それについては一時的に認めるという考え方を出しております。その問題につきましても、やはり現地についての検証ということがなければほんとうの実効は期待し得ないということでございますが、本件につきましても、ソ連側は非常に強硬に反対しているということで、なかなか思うとおりに進捗を見ないというのが現状であります。
  28. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 まだもう少し聞きたいのですが、この問題はあとにいたしまして、その次に昨年の十月にきめられました「第四次防衛力整備五か年計画の策定に際しての情勢判断および防衛の構想」というものが発表になりましたが、その中で情勢判断として「最近の国際情勢は、かつての厳しい東西対立期を脱し、全般的な方向としては多極化の方向をたどりつつあり、その間にあって緊張緩和傾向も見受けられる」、こういう文章があるわけであります。この「緊張緩和傾向」というものは、どういう事態をとってそうおっしゃったのであろうか、また、どういうことからこういう傾向が出てきたというふうにごらんになっておりますか、お聞かせを願いたい。
  29. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 第四次防衛計画の「情勢判断」の中に国際情勢に対する判断がございますが、過去二年ほどの間に、アメリカ中国、それからアメリカソ連との関係が新しい展開を見せまして、欧州におきましては東西間の各種の交渉が進展を見せております。またアジアにおきましても、ベトナムで和平協定が成立いたしましたし、朝鮮半島におきましては、平和的な統一を探求するための対話が南北の間に持たれております。また、日本中国との間には昨年の秋国交の正常化が実現するなど、一般的に申しまして、世界は大勢において緊張緩和の方向に進んでいるということが認識されるわけでございます。  しかしながら、他方におきまして、今日の世界では依然として、イデオロギー、それから社会体制の相違等に基づきますきびしい対立が存在いたしており、また米、中、ソ等の諸国が強力な軍事力の維持につとめておるということも事実でございます。また特にアジアにおきましては、緊張緩和の動きと申しますのはいまだやっと端緒についたばかりでございまして、各種の不安定要因が各地に根強く存在しているというふうに見ざるを得ないかと思います。第四次防衛計画策定の際の情勢判断はこういう認識をもって行なわれたわけでございます。
  30. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 そこで、これは防衛庁にお伺いをいたしますが、いわゆる緊張緩和の時代になりまして、日本の周辺の各国の軍備というものは縮減をされましたかどうですか、その点をお伺いいたします。
  31. 久保卓也

    久保政府委員 わが国の周辺では、かりに縮減と見られるものがあるとすれば、それは韓国がベトナムに派遣をしておりました二個師団が帰ってきたにつきまして、五十八万の規模を一応維持するということで、一個師団でありましたかをなくすということがあった以外については、量的な問題は格別といたしまして、質的な面での整備はますます増強されているというふうに見るべきであろうと思います。
  32. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 私も大体そのとおりだと思うのですね。  そこで、もう一つ、これは外務省にお伺いいたしますが、「情勢判断」の中で「しかしながら、アジア地域においては、米・ソ・中三大国の利害が依然複雑にからみ合い、全体として安定した緊張緩和状態に至っているとはみられず、また、その他の諸国間においても種々の緊張要因が存在している」、こういうふうに見ておられる。私は、一体「安定した緊張緩和状態」というものはどういうものであろうかということを自分なりにいろいろ考えてみるのですが、どうもわからないのです。外務省の皆さんの頭の中にある「安定した緊張緩和状態」というのはどういう状態でしょうか、お答え願います。
  33. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 かつての冷戦時代を経まして、今日、緊張緩和への一つの動きというものが進んでいるわけでございますが、その裏側には、依然としてアジアにおきましては、アメリカ中国、それからソ連、この三大国の力関係というものが微妙なバランスをとっていると思います。したがいまして、現在保っておりまするバランスというものは、いわばきわめて不安定なバランスでございまして、一つそこに不安定要因がもたらされます場合には、現在かろうじて保たれております安定あるいは緊張緩和への方向というものは、そこでくずれる要因を十分はらんでいるものである、そういう認識に立っているわけでございます。
  34. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 それはわかるのです。私も力の均衡が緊張緩和に作用していることは認めるのですが、「安定した緊張緩和状態」というのはどういうものだろうかということについて御説明を願いたいということなんです。
  35. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 たとえばヨーロッパにおきましては、西側NATO体制、東側はワルソー体制ということで東西間に一応の安定が保たれておりまして、この状態が定着いたしてまいりますならば「安定した緊張緩和の状態」ということがあるいは言えるかと思います。
  36. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 わかりました。まあそういうことでしょうね。しかし私は、これは質問ですから、意見を申し述べることは極力避けたいと思うのでありますが、スイスの政府が発行した「民間防衛」の中にいろいろなことを書いておりますが、「今日の世界は、何人の安全も保障していない。戦争は数多く発生しているし、暴力行為はあとを断たない。われわれは危険がないと、あえて断言できる人はいるだろうか」、「スイスは侵略を行なうなどという夢想を決して持っていない。しかし、生き抜くことを望んでいる。スイスはどの隣国の権利も尊重する。しかし、隣国によつて踏みにじられることは断じて欲しない」というようなことを書いておる。こういう認識が私は正しいのじゃないかということを言いたいと実は思っておるのでございます。  第一の、何から守るかという点については、まだ十分ではございませんけれども、一応これで終わりまして、次に、何を守るかという問題について少しお尋ねをしていきたいと思います。  この主権国家が存在する国際社会において、主権国家の存在と生存を守るということは、これはいかなる方法で守るかということは別として、国際社会における主権国家の存在の事実というものは、これは何人も否定するものはないと思うのですね。国家がある以上、国家を守るということは何人も否定することはない。ただ手段、方法については議論がございましょう。ただ、国家の要件は、法律的に申しますと、領土と国民と主権というふうにいわれておる。これを守ることについては、これは議論はないと思うのですが、しかし、われわれが守ろうとしておるものはそれだけであろうかという問題が私はやはりあると思う。  旧軍時代の陸軍士官学校の教程には、われわれは国家の権威を守り国の威信を貫くのだというふうなことが書いてありました。現在こういうふうな観念に立っておる国は、私は少ないだろうと思うのです。それでもやはり外国の憲法の例などを見てみますと、いろいろなことを書いておるわけです。イギリスにつきましては、よかれあしかれわが英国という観念が国民の間に定着をしている。このよかれあしかれわが英国という観念は、いまの王室をいただいたイギリスの伝統と秩序と制度だと思うのですね。これがよかれあしかれわが英国というふうなことばで表現されているのだろうと思うのであります。タイ国の憲法、中共の憲法等を見てみますと、タイ国は憲法の中に、国土防衛と独立と安全及び国の利益を守る、こういうことを書いております。中華人民共和国は、人民革命と国家建設の成果を守り、国の主権及び領土の安全を守る、こう書いてある。朝鮮民主主義人民共和国は、祖国の自由と独立と平和を守ると、こう書いてある。アルバニアは、国境の安全、国の独立と人民の自由を保障し、及び防衛すると書いてあります。オランダは、国家の利益を保護する、こう書いてあるわけであります。いろいろな規定のしかたがあるわけであります。  日本につきましては、この日本国憲法を読んでみますと、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という文句がある。われらの安全と生存を保持しようというのが憲法前文の文句です。第十三条には、国民の生命、自由及び幸福追求の権利を守るということだけしか書いてありません。何を守るかということは、ほかの法律を見ましてもなかなか統一していない。たとえば自衛隊法は、「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つ」ということを言っているわけです。砂川事件についての最高裁判所の判決も、わが国の平和と安全を維持するための安全保障というものは、これは当然だというふうな判決を書いておるわけであります。自衛隊法のほかでも、「国防の基本方針」では、「国防の目的は、直接及び間接の侵略を未然に防止し、万一侵略が行なわれるときはこれを排除し、もって民主主義を基調とするわが国の独立と平和を守ることにある、」こういうふうに書いておる。それから、これは防衛庁でおつくりになった、私も責任があるのですが、「自衛官の心がまえ」の中にも「祖先より受けつぎ、これを充実発展せしめて次の世代に伝える日本の国、その国民と国土を外部の侵略から守る」ということを「使命の自覚」として書いておられます。また、前に発表せられました「日本防衛」という本の中には、「わが国防衛とは、われわれの国土の安泰と、民族の文化、自由と民主主義および国民共同の生活体の安定と繁栄を守ることである」ということがいわゆる国防白書の中の文句であります。  これを統一して、われわれは何を守るのだということを強く国民に訴えかける必要があるのではないかと思うのですが、これは大臣、いかがでしょうか。
  37. 山中貞則

    山中国務大臣 私もその点を就任の瞬間から決意いたしました。ということは、私どもの自衛隊員諸君が、みずからはだれのために存在するのかという最も基本的な問題、この問題について十分な自覚と信念と、そしてでき得れば誇りを持たなければならぬ。また、そうあってしかるべきであります。そしてそれは同時に、周辺住民を含む国民の理解、信頼、そして尊敬にまでそれが高められれば、私はきわめて理想的な姿であると考えます。  そのためには、何を私たちは基本的な心としなければならないか。この問題は、憲法、あるいは防衛庁設置法自衛隊法その他もろもろの刊行物等においていろいろの表現がされておりますけれども、逆に申し上げるならば、それは最悪の場合において、私どもはそのようなことが将来もあってならないと思いますが、わが国が直接に侵略をされる場合において、いまの日本国民の経済の繁栄、そして個々の国民生活、それぞれ不平不満はたくさんあるとしても、しかし自由というものを満喫し、そうしてレジャーブームに見られるように楽しい毎日を送っている、そのような、少なくとも心の面において自由の保障された、そして豊かでありたいと念願しつつ暮らしておる一般庶民生活、国民の一人一人の生活というものを根底からくつがえす状態がそのときに予想されることになるわけであります。そのときに、すべての国民が、自分たちが、最悪の場合において、自分自身最も愛する妻、子あるいは親、そういう者を含む家庭あるいは地域、自分の財産あるいは生命、そういうようなものを含めて、だれが守ってくれるのかということについては、国民自身も考えてみてもいいことだし、私は、ほかの国ならばそれは絶えず、考えろとか、あるいは考えていいことだという議論の前に存在する問題であると思います。いわゆる国家の中の、あるいは民族の中の自分という観念においての説明とか、あるいはまた、そういうことでなければならないとかという問題以前の前提的な姿であろうと考えます。  しかし、わが国においては、日本の歴史始まって以来の敗戦という打撃の中で、二度と戦いをすまい、自由と平和に徹したいという国民の願いが憲法を生み、しかも前文の、各国にも信頼を寄せ、日本をまさか侵してくる国はないだろうということに将来へも希望をつなぎ、そうして明確に憲法九条において、私どもの外国を再び脅かすことのない、そして平和な、自由な国であり、民族というものを私たちはつくっていきたいということを内外に宣明をいたしました。このような憲法というものは、将来はどうあれ、少なくとも現時点において、私は世界に特異なものであり、また冠たる憲法であるとも思います。  したがって私どもは、外国を脅かすことはあり得ないし、また外国に対して、経済大国即軍事大国の常識が今日まで一部いわれてきましたし、また、その点を日本に対しても危惧する東南アジア諸国等の一部があるやに聞きますけれども、そのようなことは憲法上もでき得ない国家になっておることを、十分われわれとしても努力して知ってもらう。そうすれば私どもは、だれのために存在するのかということが逐次明確になってくると思います。  すなわち、わが自衛隊というものは、国民のまさかの場合、最悪の場合のためにのみ存在する。しかし、その最悪の場合といえどもいろいろありまして、災害その他の場合もありましょうし、いろいろな不発弾処理等の問題等も含めて危険な事柄について、緊急を要する事柄について、もちろん他の機関の合法的な手段において間に合わない、いわゆる許された活動範囲内で間に合わない、数の面において、力の面においてという場合において、離島の患者の緊急輸送その他のことに象徴されますように、われわれ全力をあげて日常の国民生活の安寧を守りたい。こういう一人一人の国民の生活に直結した自衛隊でありたいと願っておりますが、そのことが、幾ら私がここで述べてみても、はたして国民の間に定着をしているのかと聞かれたときに、私は、完全にそれに満足すべき答えをいまの時点で見出せないことを、きわめて遺憾に思います。また国会においても、それぞれの政党における思想なり主張なりというものがありますが、その存立について、これを前提として認めないという立場をとられている役所というものは、残念ながら私どもの防衛庁、自衛隊のみである。このことはまず最初に、国民的コンセンサスを得なければならないと願う私たちにとって、きわめて不幸な事態であると思います。  しかし、あらゆる立場の人々を含めて、すべての国民のために必要であり、すべての国民が必要とする存在であるということについて、その原点から私は、今後のわが国の自衛のあり方、あるいは自衛隊のあり方について、とことんまでこれを国民に理解していただく努力を展開し、隊員諸君にそれに対する自覚を徹底して、その目的のための士気をふるい立たせてもらいたいものと考えておる次第であります。  たいへん抽象論を並べて、釈迦に説法でございますけれども、そのような基本的な覚悟をもって臨んでいるつもりでございます。
  38. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 大臣のお考えよくわかりました。やはり軍隊的な組織におきましては、単純明白な使命、目標を与えることが私は非常に大事なことだと思うのです。これは、よその国の例を見ましても、アメリカは自由を守るとか、中共は解放だとか、ソ連は共産主義化とか、ごく一人一人までわかるような目標を与えることが大事なのですね。われわれは、民主主義を守るということになりますと、民主主義そのものが実は混乱しているわけですよ。われわれの考えておるような自由主義的な民主主義というものと、共産主義者の考える民主主義というものは違うわけですね。われわれは手続、方法、自由というものを大事に考えるのですが、かれらは、人民のためになることが民主主義だというふうな観念になっておる。これを理解せいといいましても、なかなかむずかしいと思う。これも長官おっしゃったとおり、たいへんむずかしいことでありますけれども、よくわかるような明白な目標を与えていただくように御努力を願いたいと思うのでございます。  その次に、いかにして守るかという問題に移りたいと思います。これは各政党の意見が非常に分かれる問題でございます。これには、何としてもまず国と国との間に紛争原因をなくするという意味におきまして、平和外交政策の展開ということが大事であることは申し上げるまでもございません。しかし、幾らこちらが平和政策をとっても、相手の国がどう出るかという問題なんですよ。私は、外交の努力にはやはり限界がある、こう思うのであります。  それはそれといたしまして、これは外務省の方にお聞きしたいのですが、昨年の暮れの「ソ連邦結成五十周年記念式典におけるブレジネフ書記長の演説」を読んでみますと、「同志諸君、わが平和、善隣及び諸国民間の友好の政策の基本的諸原則に立脚して、ソヴィエト連邦はアジアにおける集団安全保障体制の構想を提起した。若干の首部からは、わが提案が恰も中国を「牽制」し、或は「包囲」する目的を有するものであるかのような主張が拡められている。このような主張は全く根拠のないものである」というふうなことを言っておるわけですが、このソ連アジア集団安全保障体制の構想というものは、日本政府に対してどういう形において、どういう内容が伝えられてきておるのでしょうか。
  39. 大和田渉

    ○大和田政府委員 ソ連のいわゆるアジア安全保障体制構想、これは一九六九年の六月に行なわれました世界共産党大会で、初めてその構想がブレジネフ書記長によって提唱されたわけでございます。ただ遺憾ながら具体的な内容については何ら明確になった点はございません。  それで、われわれといたしましては、もちろん、アジアの平和と安定というものに貢献することをアジア外交の基本政策としておりますので、非常に深い関心は持っております。     〔藤尾委員長代理退席、委員長着席〕 この構想を、いままでわかっておりますばく然とした中でもわれわれとして考えますのは、先ほど先生も御指摘になりました、一体何に対して何々守るのか。もしソ連との間に安全保障ということを考える場合には、当然のことながら日本の国境、日本領土を守るという問題が出てくると思います。これに対しましては、御承知のとおり日ソ間には北方領土問題という問題がございますので、ソ連との間に安全保障を考える場合には、領土問題を解決して平和条約を結ぶということが前提にならざるを得ないというふうに考えております。さらに、そのほかの点といたしましては、アジアの集団安全保障という以上は、当然のことながらアジア諸国全部が入らなくちゃならないという問題。それからアジアの平和、安全にはアメリカが非常に大きな関係を持っております。これは現実でございます。したがってアメリカというものも入る可能性ありゃなしやということも考えざるを得ないと思います。それからもう一つ、現在アジアの地域におきまして、二国間あるいは多数国間で幾つかの条約等がございます。それと矛盾する姿で集団安全保障ということは考えられないのじゃないかというような問題点をわれわれは検討しております。  以上でございます。
  40. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 全く仰せのとおりで、私も非常にむずかしい問題だと思うのです。ことに分裂国家が存在し、ソ連の承認をしていない国もあるわけですね。どういうふうに扱うのだろうかなあと実は考えておるところなんですが、いま話を聞いておるうちに考えたのですが、施政方針演説で田中総理は、アジア会議を招集したいというふうなことを仰せになっておりましたが、これはいまどういうふうに進んでおりますか。
  41. 中江要介

    中江説明員 総理の施政方針演説の中にございました、国際会議を提唱することを検討したいというその姿勢そのものは、引き続きもちろん変わりはないわけでございまして、機熟すれば日本が、そういう国際会議のメンバーとしてアジアの平和と安全に貢献できることを期待はしておるわけでございます。しかるに、残念ながらアジアの状態は、先ほどもちょっとお話が出ましたけれども、ヨーロッパに比べまして、まだ緊張緩和が定着するに至らない状態、いわんやいまも御指摘にございました分裂国家というような問題も、まだ包蔵したままの状態でございますので、日本としては機が熟するのを待って、アジア諸国がそういうことを熱望する段階になれば、こういう構想も現実のものにしていこうということで、現時点においてはこれをすぐに無理に強行するというような考えは持っておりません。
  42. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 その点はわかりました。いまのあなたのお話を伺いながら考えましたことは、一挙にそういう問題を進めることはなかなかむずかしい問題がたくさんあると思うのですね。一昨年、国際連合におきまして、インド洋平和地帯宣言決議しておりまして、その中で日本特別委員会のメンバーになっておる、中国もこれに入ってきておるということのようですが、このインド旧洋の平和地帯の構想に関する日本政府考え方、及び現在の進行状況はどういうふうになっておりますか。
  43. 影井梅夫

    影井政府委員 本件につきましては、セイロンからきわめてばく然とした提案がなされました。このための委員会に参加いたしました国といたしましては、ただいま御指摘のとおり中国がございますが、インド洋を平和ゾーンにするためには、そのほかに有力な国も入らなければならないというのが私どもの立場でございます。  現在日本が何を考えているかというお尋ねでございますけれども、私ども、まずこのメンバー国、十五カ国であったと記憶いたしますが、それらがそれぞれ一体どういうことを考えているのか、その考えを確かめた上で、それがはたして現実的であるかどうかということを確かめながら進みたいということで、現在直ちに具体的な考え方というのは持っておりません。ただ、最初に申し上げましたとおりに、これをほんとうに実効あらしめるためには有力な国の参加ということが先決条件であろうというふうに考えております。
  44. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 同じく関連いたしまして、ASEANの中立化構想に対して日本はどういう態度をとっておりますか。軍縮委員会における西堀大使の演説を見ますと、日本はこれに積極的に協力をするのだというふうなことを述べておられますが、いまこれはどういうふうに実際はなっておるのですか。
  45. 中江要介

    中江説明員 ASEANという機構は、加藤先生も御承知のように、アジアに対するアメリカ政策が、ベトナム問題を契機といたしまして方向転換をするのではないかということがアジアでおそれられたときに、アジアの国の中から起こってきた一つの構想であったわけでございます。その発想そのものは、これからはアジアの国の平和と安定はアジアの国で守らなければならない、自分たちの力を合わせて平和と安定を維持していかなければならない、そういうアジア諸国の自主的な外交の一つのあらわれである、こういうふうに私どもはとっております。  そういう意味では、アジアの国がいままでいるいろの動乱を各地で持っておったわけでありますけれども、ASEANのような一つのリージョナルなグループをつくりまして、そして自分の手でつくっていこうという姿勢そのものは歓迎しておりますし、こういう自主的な姿勢というものが順調に発展していくことを願っておるわけでございます。ですけれども、他方ASEANも、そういう構想が出ましてそう長い年月がたっておるわけでもございませんし、またその構成メンバーの間には、いままでの歴史的な背景、あるいは宗教の問題、人種の問題あるいは安全保障についてのからみ合いがそれぞれの国によって違う、また国境を接している国との関係、いろいろ複雑な問題がありまして、それが一つにまとまってこれを中立の地帯にしていくというまでにはまだ相当の時間がかかる、また解決すべき問題がある、そういう点についてはASEANの構成諸国も認識しているようでございまして、中立化構想というものは打ち上げておりますけれども、それをいますぐどうするという段階にはいっておりません。  ASEANそのものは、御承知のように自由と平和と中立というスローガンを掲げておりますけれども、その中の最もむずかしい中立そのものにつきましても、それをどういうふうに概念規定するかというような問題について何度も議論しておるようでございます。ASEANの外相会議、それから閣僚会議というのは非公開になっておりますので、直接には情報はわかりませんけれども、出先公館その他を通じて集めましたところで見ますと、まだその点について完全な概念についての意見の一致はないということで、引き続きそれに向かって努力をしていく。ASEANそのものは、そのほかに、それぞれメンバーの国自身の持っている国内の経済的な安定の問題、政治的な問題、そういったものもまだあるようでございますし、日本政府としても、こういう自主的な外交をしようというアジアの国の動きを、非常に関心と歓迎の気持ちを持って見守っているというのが現状でございます。
  46. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 ちょっとこれは意見になるのですが、ベトナム戦争が停戦しましたけれども、完全には終わっていない。しかし、いずれインドシナ戦争というものが落着をするときが来ると私は思うのですね。そうなったら、日本はやはり積極的なアジア外交というものを展開して、ASEANの中立化構想とか、インド洋の平和地帯構想というものを積極的に推進すべきじゃないか、経済的な援助が主になりましょうが、というふうに私は思っております。これは私の意見であります。  その次は、これも外務省の方に教えていただきたいのですが、日本の国内で、日中及び日ソ間の不可侵条約を結べというふうな議論は、政党の中にも公然とあるわけであります。私、日ソ及び日中の共同宣言を読んでみますと、その中にいずれも主権及び領土の保全の相互尊重とか相互不可侵というふうなこともうたっており、武力による威嚇または武力行使を慎むというふうなこともうたっておるわけですね。この日ソ共同宣言は国会の承認を得ておるわけです。こういうものがあるにかかわらず、別に不可侵条約を結ぶことの意義というものは、どういうところにあるのでしょう。
  47. 高島益郎

    ○高島政府委員 国連加盟国といたしまして、日本も、それからソ連中国も、先生指摘のとおり、すべて国連憲章第二条第三項、第四項の義務を負っておるわけでございまして、武力行使は慎まなければならない。特に領土保全に対する武力行使は絶対になしてはならないというふうになっております。したがいまして、そういう観点からいたしますと、国連加盟国である以上は、あらためてまたさらにそういうことを条約で約束する必要はないというのが法律論だと思います。ただ、日ソ共同宣言の場合は、日本はまだこれに入っておりません状態でございましたので、特に国連憲章第二条の原則を共同宣言の中に引用いたした意義はあろうかと思います。  それから日中の場合につきましては、現在日本中国もともに国連加盟国といたしまして、先ほど先生指摘国連憲章第二条に基づく義務を負っておりますので、法的には特別に義務はございませんけれども、特に共同声明におきまして、いわゆる平和五原則の一つとして不可侵ということをうたいました。また、その項に引き続きまして、国連憲章の原則をまたもう一回繰り返しております。  そういうことでございますので、法的に申しますと、ソ連との関係におきましても、また中華人民共和国との関係におきましても、日本があらためてまたそのような武力行使を約束する必要はないということは言えます。しかし、これは非常に政治的な問題でございまして、不可侵条約というものを結んでさらに相互不可侵ということを法的に再確認するという意味では、政治的に非常に重要な効果があろうかと思います。私どもそういう意味で、法的な必要は特別にはないといたしましても、政治的な意味は非常にあろうかというふうに考えております。
  48. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 その点はよくわかりました。  それからもう一つ教えていただきたいと思うのですが、ブレジネフ書記長の演説を読んでおりましたら、「中国指導者は彼等が恰もソ連邦の側からのなんらかの脅威を危惧しているかのごとく声明している。若しこれらの声明が偽善的でないならば、一体何が故に中国は、一九六九年以来再三に亘りわれわれによって提起された一方が他方を攻撃しないという明白にして確固かつ恒常的な義務を負うとの提案を回答なしに放置してきたのであろうか」、こういうふうなことを言っているわけです。中共とソ連との間には中ソ友好同盟条約というものがあり、第五条を読んでみますと、「両締約国は、友好と協力との精神をもつて、また、平等、互恵、国家主権及び領土保全に対する相互尊重の原則、並びに他方の締約国の国内事項に対する不干渉の原則」に従って経済的な協力を遂行する、こういうふうなことをうたってあるわけですね。こういうふうな条約というものと、また武力行使をしないという条約の締結を提案することとの間には、どういうふうな意味があるのかということが、私、不可侵条約というものを考える上においてわからないのですが、これはまたお答えいただきたいと思います。
  49. 大和田渉

    ○大和田政府委員 御指摘のように、一九五〇年に結ばれました中ソ条約には、領土保全、あるいは侵略を受けた際の相互援助というような取りきめの規定がございますが、武力行使については規定はございません。ブレジネフが申しますように、ソ連側が一九七一年に武力行使条約の締結を提案したのは事実でございます。ただ、それに対しまして、中国側はこれを受け付けないというのも事実でございます。これは法律論と申しますよりも、むしろ両国間の関係をある意味では象徴したものではなかろうか。御承知のとおり、一九六九年以来、両国間の国境紛争を解決しようという交渉はいまだに続いているような状況でございますので、そういう事実を踏まえまして、中国側としてはにわかに応じかねるという態度ではなかろうか、こう考えております。
  50. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 それはいいです。  次に、私のいままで言わんとしたところは、外交的な努力は今後とも強力にやってもらわなければいけないわけでありますが、外交的な努力だけでは国の安全保障に十分ではない。結論的に申し上げますと、やはりある程度の防衛力は持たなければいかぬという考えなんですが、この見地から、いま政府側の御意見を伺いたいことは、日本防衛力は要らぬという意見の方がいろいろな根拠で言われるわけです。それは二つあると思うのですよ。一つは、この核兵器の時代に日本が通常兵器の防衛力を持ったって無意味じゃないか、無意味なものは持たないほうがいいんじゃないかという、きわめて耳に入りやすい初歩的な意見です。そういう意見の方が多いのですが、これに対する政府の確固たる御答弁をいただきたいと思います。
  51. 山中貞則

    山中国務大臣 御承知のように、アメリカが核保有国であって、そして自由国と申しますか、自由主義圏としての南ベトナムの側に立って長年月の、われわれがどろ沼的な様相を呈したと思うまで、地上戦闘も空中もいろいろやったようであります。一方、北ベトナムは核を持っていない国であります。しかしながら、局地的な核兵器といえども、あるいは通常われわれが考えているような巨大殺戮あるいは人類壊滅に至る核兵器といえども、アメリカは使っておりません。これは、使おなかったのではなくて、使えなかったのであると私は思います。ということは、北ベトナムに入るには、一方においてソ連あるいはまた隣接して中華人民共和国という、いずれもアメリカと並ぶ核の保有量を誇る国、並びに近来とみに核装備について懸命である国がそれぞれ友好国家として控えておるわけでありますから、これは局地の問題ではなくて、地球全体の核の引き金に通ずることをアメリカは知っていたに違いないと思うわけであります。  これらのことを考えますときに、中東紛争等も別途ありますが、いずれも核は保有していない。しかし、核を持っているからといって、それがそう簡単に使えるものでないということは、これはもう定着した、核保有国自身がむしろよく知っていることであろうと私は思います。ですから、核の時代において、なまはんかな地上兵力ぐらい、あるいは海上、航空兵力ぐらいを持っていたところで、そんなものはしょせん税金のむだづかいであって、かりにまた核戦争でも起こったら何の足しにもならぬのだという意見も、私は一理屈あると思いますが、かといって、ただいまあげました二地点をあげただけでも、核兵器を一方が持っている立場においての交戦、局地紛争、両方持っていなくても中東紛争というもの等が考えられまする場合に——私たちは幸いにして島国であります。長い日本の歴史の中で、明治に至るまで鎖国というものが通用したのも、島国であるからにほかならないと思いまするし、日本人のすべてが、いまどこかの国が突如として自分たちの国を侵してくるであろうということを現実感としては受けとめ得ない。朝鮮戦争のときに、釜山近くまで共産軍が来たときにも、現実感として日本の国民がはだえにアワを生ずる思いをしたとは断定しがかい節があります。これはやはり、島国としての特殊な日本の環境のもたらしているものといえましょう。  かといって、今日の近代兵器の発達した時代において、完全に核兵器の時代になっているのに、いっそそんなものを、もちろん、つくらず持たず持ち込ませずというのは、いまや国会の決議にもなっておるわけでありますから、そこまではっきりしておるのならば、きれいさっぱり何にも持たなければいいではないか、そういうことは論理の飛躍であって、現実には、やはりなぐられたら、相当がまん強い人でも何発日かにはなぐり返したい気持ちにもなるわけでありますし、左のほおをなぐられたら右のほおを出せという教えもあるようでありますけれども、かといって、日常生活においても、どろぼうでも自由に入ってもらっていいといってすべての戸口を開放し、犬も飼わないという生活は、平和な日本においてもみなあまり考えない。特殊なへんぴな山奥は別でありましょうが。そういうことを考えるときに、常識的にいって、国家、民族の独立と平和、そしてまた国民の生命と財産を守る力をすべて放棄するということは——あなたが先ほど読み上げられた、スイスが永世中立国であることを願い、それを守り抜き、常備軍はわずかであっても、国民皆兵的な姿勢をもって他を侵す意思のない国家の姿は、世界じゅうがそれを承知し、定着しているにもかかおらず、スイス自身に加えられる侵略行為については、国民、男女をあげて断固戦う意思を示している。私は、これは大陸の中の国家であるために当然そういうことが常識として定着しているものと思います。  したがって、わが日本の島国という条件を考えても、やはりわれわれは最悪の場合に備えて、核時代であっても、核は持たない、つくらない、持ち込ませないが、自分たち自身の備えだけはしておく。もちろん、よそに対して自分たちが進んで出る、あるいはまた攻められてもよそを攻撃するというようなことは憲法の禁止するところであるという前提を踏まえても、なおかつ、自分たちの最小必要限の自衛力を専守防衛の立場から持つということは何ら異議のないところであろうし、私どもは顧みていささかもこの問題で間違っている点があろうとは思いません。
  52. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 長官のお考えはよくわかりました。  ひとつこういう問題についてお伺いしたいのですがね。というのは、米ソの間にSALTの交流が成立をしたわけです。このこと自体は私は非常にけっこうなことだと思う。しかし、SALTの交渉は、米ソの間の安全は保障したと思うのですが、ほかの国に対する安全は保障していない。ほんとう世界の安全を確保しようと思えば、戦術的な核兵器とか、あるいは爆撃機とか、こういうものまでも制限しなければだめだと思うのですね。これは日本政府としては、米ソ両方にそういうものをやるように働きかけるということはできないものでしょうかね。
  53. 影井梅夫

    影井政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、御承知のように、SALTの交渉、これは現在秘密交渉でやっておりますので、私ども正確なところはわからないというのが現状でございます。ただ、あえて推測をいたしますならば、これは間違っておるかもしれませんけれども、少なくとも爆撃機の問題が取り上げられる可能性は多分にあると思います。しかしながら、今回の第二次SALT交渉におきまして戦術核兵器のほうまでいくかどうか、この点は私どもちょっと疑問に考えております。ただ、これはあくまで私どもの推測にすぎないことでございます。
  54. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 その点はそれでよろしゅうございましょう。  さっき長官が一緒に答えをおっしゃったので困るのですがね。お尋ねしにくいんだが、自衛力を持つ必要はないという議論は、一つは核兵器の時代に役に立たぬじゃないかという議論、もう一つ日本は補給を断たれたらどうだという議論なんですよ。補給を断たれた場合には何ぼ防衛力を持っておったってしかたがないじゃないかというふうな意見もあるわけですね。この点についても、はっきりした説明を国民にするようにしてもらいたいと思うのですが、どうでしょう。
  55. 山中貞則

    山中国務大臣 補給を断たれるという意味には、たとえばいま世界の問題として提起されているエネルギー、ことに石油を中心とする問題もありましょう。しかしながら、日本としては、日本国民はどこからどのように攻められても、じゅうりんされても、座して死を待てということが国家として要請されているとは断じて思いません。したがって、われわれは核を持ちませんが、アメリカとの安保条約の締結の基本である日米の安保を通じての提携によって、日本が侵略を受けた場合の局地的紛争には、地上、その周辺の海域、空域等において持てるだけの力をもって懸命の抵抗をする。しかし、もしかりに一瞬にして抵抗ゼロの姿にするためには核兵器が必要でありますが、そういう姿勢を示すならば、安保条約によってアメリカは、日本の安全をアメリカの安全と同じようにみなして行動してくれるというのが背景にあるわけでありますから、俗にいう核のかさというものがあるわけであります。したがって私どもとしては、わが国は資源の乏しい国でありますから、われわれ自身がわれわれを守らなければならないというその立場と同時に、いつまで守れるんだという疑問は確かにありますけれども、かといって守らなくてもよろしいということには帰結しないと思います。守れるだけ守る。そしてもちろん石油を中心とし、あるいは弾丸その他もありましょうが、武器等もありましょうけれども、自分たちは座して死を待つ国民ではない、したがって、われわれの自由と安全を守るための最低限の、自分の国は自分で守り、自分の民族は自分の力で守りますよという姿勢を世界に示しているのである、かように私は考えております。
  56. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 ことに、現在の日本の経済規模というものは、この前の戦争時代の何十倍になっているわけですからね。補給がだめだから防衛力を持ってもだめだという議論は、私は非常に飛躍をしていると思うのですよ。実はどういう状態で侵略が起こるか、補給路がどういう状態で遮断されるかということで考え方はいろいろ違うわけでありまして、一ぺんに補給路が全部断たれるということはあり得ないと私は思っているわけです。  その次に、防衛論議についていろいろ勉強をしてみましたけれども、世上、戦略的な降伏論ということを唱えておる人がいる。抑止力としての防衛力は持ってよろしいが、しかし余力を残して降伏とまではいわぬでしょうけれども、戦いをやめろという議論なんですね。これは私は、太平洋戦争日本の降伏の場合等を考えますと、ある状態は想定できるわけです。しかし、こういう考え方自体が日本防衛論の基礎になったらたいへんだと私は思うのです。こういう点について防衛庁の御見解を承りたいと思います。
  57. 山中貞則

    山中国務大臣 自衛力は持っていいが余力を残して降伏しろ、これは私ちょっとわからないのですけれども、現実の問題として、いかなることを想定してそういうことがいわれているのであろうかということをきわめて疑問に思います。かといって、それならば戦前の一億玉砕というようなことを考えているのかといえば、そうではなくて、これは国民が許容する専守防衛の限度において、装備にしても、定員にしても、国会で法律によって定められた範囲を守りながらやっております。その力の限度において、その限度一ぱいの自衛力を発揮するということでありまして、この見方からするならば、日本のみならず世界の国々の大部分は、一国のみをもってして自分の国の安全をどのような環境下においても守り抜けますという国は、ごくわずか数えられるほどであろうと私は思います。  でありますから、そのような中で日本というものも、その意味で最も平和な立場を守ろうとする国でありますけれども、われわれとしては一時は防衛してみても適当なところでさっと降伏してしまったほうがいいというのは、これはちょっといろいろな状況を想像したときのことであって、もちろんアメリカが、知らぬよ、かってにしたまえと言った場合に、日本はとてもそれはもてぬでしょうというようなこと等もありますから、いろいろな場合場合のケースのことを言っているのでしょうから、そういうのがわが国の自衛隊の設置の基本的な姿勢なんだ、ちょっとやりますけれどもあとはすぐ手をあげますというような自衛力を持っている国というものは、私は想像できませんので、これは御質問があればまたお答えいたしますが、そのようなことはちょっとケース・バイ・ケースの議論としてもおかしな議論だと思いますし、ましてや、わが国の自衛隊の存立の基本的な考え方として、あるいはとらえ方として論ずべきものではないのじゃないかというふうに考えます。
  58. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 ごもっともなんですが、結局こういう主張をする方の言わんとするところは、守るべき価値は何かというところから出てくるわけです。人命が第一だ「領土が第一だということになれば、領土、人命が守れる条件ができれば、そこで手を打ったほうがいい。ですからこれから出てくる結論は、自衛隊は抑止力というものに重点を置いて整備すべきである、実際に侵略に抵抗する力というよりも、抑止をする力に重点を置いて自衛力を整備せいという結論になるわけであります。私自身はこの考えには賛成じゃないのですから、これ以上は申しません。  その次に、今度は問題を変えまして、自衛隊の整備計画のことについて御質問をしてみたいと思います。  四次防は三次防の延長だということを、四次防の制定の際にもわれわれお聞きしたわけなのであります。ただ、三次防のときと四次防のときと、アメリカアジア政策というものはだいぶ変わってきておるわけですね。アメリカの日米安保に対する協力の体制というものは、三次防のときと四次防のときとあまり変わらないという前提で四次防をおつくりになった、こう考えていいのでしょうか、その点をまずお伺いいたします。
  59. 久保卓也

    久保政府委員 わが国防衛力の整備は、必要最小限度の自衛力を漸を追って整備してまいるということであります。そこで、対外的な国際関係の情勢というものはおのずから影響はされると思いますけれども、いまの整備の段階で申しますと、全般的なニクソン・ドクトリンの適用ということがあるにせよ、それがそのまま自衛力の整備に影響しているというふうにはどうにも考えにくいというふうに思います。この点についてはいろいろ御議論のあるところだろうと思いますけれども、一応必要最小限度の自衛力ということを目標にしながら、三次防に引き続いて、三次防のペースで四次防も整備していくということでであります。
  60. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 そこで皆さんもお読みになったと思いますが、最近ニクソンの外交教書が出ておるわけです。これを読みまして、私自身は非常に不満なんですよ。経済の問題と安全保障の問題をひっかけてくるという態度には私は賛成できません。できませんけれども、外国のことであり、明瞭に日本に対して、いままでの対米関係というものを調整をしろということを非常に強く言っておるわけですね。これは、経済関係の調整をしないと安全保障問題にも影響しかねないぞと言わんばかり——言っておると言っていいでしょう。こういう事実が一つある。  もう一つは、アメリカ日本に対する、彼らのアジア政策における期待度というものが変わってきたということも事実なんですね。これは、米中協定ができ、米ソ協定ができまして、米ソの間にはお互いの安全が保障されたとほぼ言っていいと思う。中共に対する脅威というものも彼らは減じてきておる。そうなると、アメリカアジア政策の中で日本に対する期待度というものは減ってきた、こう見なければいけないのじゃないかと思うのですが、その辺はどうでしょうか。
  61. 山中貞則

    山中国務大臣 これは私もあの教書を見て、ずいぶんはっきりものを言うものだな——率直に言って表現はまずいと思うのですよ。われわれは端的に言えばどうかつみたいな表現にも受け取れますし、あるいはまた、少なくとも相当な決意を示したのだというふうに、いい意味で表現もできるでしょう。  ただこれを、日本に向かって言ったのではなくて、教書として場合によっては世界に向けて姿勢を述べたのであるということに私は着目しました。これは私が考えていることですが、防衛問題というものはすでに外交、経済あらゆる分野にからんできつつあるというふうに、日本の立場からいえるのではないかと思います。またアメリカとしては、逆に経済の問題が窮迫をして、そして先般行なわれましたヨーロッパにおける、私どもからいえば共同謀議みたいな通貨の合議が行なわれたときに、アメリカはすっ飛んで行きました。そのときに日本は呼ばれなかった。しかしアメリカはおそらくドルのたれ流しや威信の低下というものの大きな要因の一つに、一番直近な例をとれば、日本との間に四十二億ドルの赤字があるのだというようなことも言っているに違いありません。  こういうようなことを背景として考えますと、それらを踏まえてからませる意図ではなくとも、アメリカ自身がからまざるを得ないような環境があって、しかもそれを全世界の人々に見られ、あるいは全世界に大統領の決意を述べたと思われてもしかたのない、オープンな文書の中にそれを載せてもいい世界的な環境が、日本を除いてできつつあるのではないかという気が私はいたします。  そういうことを考えますと、アメリカ側においては、そう強い意見ではありませんが、日米安保条約というものは、アメリカ日本にのみ一方的な義務を負い、日本アメリカに対して負う義務があまりにも少ないということに対する不満がぶつぶつくすぶっていたことは御承知のとおりでございますけれども、そろそろそれがマンスフィールド上院議員あたりの口では表に出てきましたし、それらのこともあって、日本に対して従来の安保体制というものに対して何か考え方を変えてくることがあり得るのではないかという予測も、私たちとしては一応立てておかなければなりませんが、具体的にはそのような動きは全くない。むしろその後あらわれましたエバリー代表等を中心とする経済会議等において表明せられた、あるいはインガソル駐日大使等のその後の講演内容等において顕著な変化の見られたことは、日本アメリカに対する貿易の、日本側からいうならば黒字が、昨年の四十二億ドルに比べて異常な低下を示しつつあり、その傾向は今後も顕著な改善となって、アメリカのためには好ましい傾向として進みつつある。このことを踏まえて、その後の論調はきわめて両国間においてトーンダウンしている、穏やかになっているということが、私はまた一方において言えると思います。現実にも、あるいはまた形式の上でも、それらのことが日本に対して具体的に、両国の安保体制について言及されていたあと、接触、あるいはまた呼びかけ、検討、そういうものは全くありません。むしろアメリカは、第二の点としてあげられましたように、アメリカのベトナム戦以後の中華人民共和国及びソ連邦というものと、考えられなかった改善が持たれましたために、軍事的には、第二次大戦以降できわめて明白であった東西の冷戦という両極の問題から、多極化された構造の中に極東も据えて考えつつあるに違いない。  また一方において、アメリカ国民の意思あるいは納税者の意思、あるいは上院等において、ベトナム、カンボジア等の経費についての議論に見られますように、アメリカ自身の軍事費というものに対する自動制御と申しますか、相当なうしろ向きの国民の要望にこたえるような政策を出さざるを得ないところにアメリカは来ているのではないか。  そう考えますと、その両面、すなわち納税者の負担、議会のそれを反映した声、そういうものにだんだんこたえていく体制をアメリカはとることになるだろう。関東周辺の基地の集約化もその端的なあらわれの一つと言ってもいいかと思いますし、また、今後沖繩の基地について積極的に努力をしたいと思いますが、それに対応するアメリカ側の柔軟な現時点における姿勢から見ても、やはり新しい質的なものがアメリカ自身も要請されているのではないか。しかし、本来の日米安保の持つべき機能というものがそこなわれるようなことは、少なくともアメリカも考えていませんし、日本も予想しなくてもいい状態にあることは間違いないと考えます。
  62. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 いま長官のお答えのようであれは私も安心をするのですが、リチャードソンの国防報告を読んでみますと、いろいろなことを言うておりますけれども、一つは、いままでのレアードの政策だったトータル・フォース・ストラテジー、これに日本も協力してくれということを、短期的には一定の米軍がアジアに駐留する必要があろう、しかし長期的に見た場合にはアジアの安全保障は日本中国アメリカソ連という四大国間の相互関係の発展にかかるところがたいへん大きいのだというふうなことをこの国防報告でもいっておるわけですね。現実の問題として見ますと、これはこの前、昨年の委員会ですか、私、話したことがあるのですが、アメリカの戦略配置の重点がだんだん変わってきているように思うのですね。いままで西太平洋岸にありました第一艦隊が、第三艦隊としてハワイに根拠地を移しておる。こういう事実が一つある。それから、沖繩の返還の問題についての上院の軍事委員会におけるウエストモーランド統合参謀本部議長の説明の中に、われわれは沖繩を返還するけれども、これによるわれわれの能力の損失を最小にする道をわれわれは見出せるのだ、この点からすれば、ミクロネシアの将来の政治的な状態というものが、沖繩との関係におけるわれわれの力の機動性の損失を補償するであろうというふうなことを言うておる。これはすでに沖繩返還のときのアメリカの統合参謀本部議長の証言ですね。それから、最近の新聞を見ますと、テニアンに大軍事基地をアメリカは建設するのだということが書いてあります。アメリカとしては、これからはやはり戦略的な重点というものが、資源関係等を重視いたしますならぱ、中部太平洋から南太平洋、さらにインド洋に移るであろうということは私は想像できる。  そうなると、アメリカ側から見た日本の価値というものは、いままでのような前進基地としての価値というものはだんだん減ってくると思うのですね。通信基地、第七艦隊の補給基地としての効果はあるわけです。それ以外の価値というものは、アメリカ側から見てもだんだん減ってくると思うのです。日本との経済関係がうまくいかないということになれば、アメリカは思い切った政策の転換もするのではないか。私は非常に実は心配しておるのであります。いまの長官のお話で、エパリー氏とか、あるいはインガソル大使等とのお話でそういうことはないような模様でありますので安心をするのですけれども、私は、どうして本日米安保条約というものは堅持しなければいけない、そのためにはしかるべき協力は日本もすべきである、いままでのような態度ではアメリカは手を抜いていく可能性が非常に多いということを心配するものでございます。これは御答弁は要りません。私の意見を申し述べておいたのでございます。  やはり日米安保条約に関連いたしまして、極東条項の発動はないのだというふうなことを政府は言っていらっしゃる。台湾問題がどのような解決になるかわかりませんけれども、台湾条項を発動する場合もないだろうということも言われておる。朝鮮についても統一が推進されておる。そうなると、日米安保条約によって日本に米軍が駐留する価値はどこにあるかという意見が、米軍側から見て出てくるわけですね。第七艦隊の修理、補給という点についてはありますよ。通信基地としての価値も私はあろうと思う。その点はだいじょうぶなんでしょうかね。アメリカが引き続き日本に基地を置くことの利益を、彼らは見続けるでしょうか。
  63. 山中貞則

    山中国務大臣 ものの見る角度の問題ですが、アメリカ側のいわゆる日本列島に対する利用価値、日本に対するアメリカ側の必要性ということからだけ日米安保条約が取り結ばれているとは、私は実は思いません。それはやはり、自由主義陣営の中の日本という敗戦国が独立して一人立ちをするにあたって、その当時のいわゆる世界の自由主義の警官と申しますか、そういう立場において、とてもおぼつかないというようなことから、ある意味で母親的な立場という表現もおかしいのですが、保護者的な形においてつくられた要素も多分にあると思います。でありますから、利用価値の問題だけで日本というものをアメリカが見ておるという考え方をいたしますと、ものの見方を一面において誤るおそれがある。日米友好というものは、貿易の面においても、アメリカ日本もこれを断ち切ることのできない環境に置かれているわけでありますし、これは将来も変わらないウエート、あるいは重大性を持ち続けていくでしょう。そのときに、軍事的に見てアメリカが、日本列島というものが価値がなくなったから、したがって安保条約というものはやめるのだというような言い方をしてくる可能性は、少なくとも今日のアメリカ日本の永続した関係の将来を展望してみるときに、そのような理由からのみでさよならということにはならない。  私どもは、しかし、アメリカがさよならという形もいろいろありましょうから、アメリカ自身の都合ということもありましょう。これは国内的な都合です。そしてまた、アメリカ日本と太平洋を隔てていても強いきずなを持ち続けなければならない場合に、安保条約そのものはもう要らない、おまえさんの列島には価値がないのだということだけの結論を出すということは、とても信じられないことであり、そのようなことは考えられないことであって、お互いがお互いの両国の繁栄のために、安保条約には経済条項もあります、そういうことも含めて結んであるわけでありますから、今日の日米関係が音をたてて崩壊していくということは私は考えられない、そういうふうに思っております。
  64. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 これはアメリカに対する見方ですけれども、アメリカ人は、私の接する限りにおきましては、ヨーロッパの国々とはやはり人種的に同系統ですからわれわれは親近感を持っているのだ、しかしわれわれと日本人との関係というものはこれは利害関係だ、利害で結びついているのだということをはっきり言うのがアメリカ人におります、相当な有名な方で。  私、安保条約の締結のときにアメリカへ行ったのですが、そのときにニューヨーク・タイムズを読んでおりましたら、今度の安保条約の改正というのは日本側に有利で、アメリカ側には不利だ、しかし三つの利益があるからニューヨーク・タイムズは賛成するというのですね。一つは、いままでは期限がなかったのだが、今後は十年間というものは日本を信頼できる。日本政府はどう変わっても信頼できる。第二は、やはり第七艦隊の修理、補給の基地として日本を利用できるというのは、これは非常に大きいのだ、もし横須賀、佐世保というものが利用できないとわれわれはハワイまで帰らなければいかぬ。さらには横須賀と佐世保を合わしただけの能力はハワイにもない、アメリカの太平洋岸まで行かなければならぬ、第七艦隊の戦力というものを落としておくわけにいかないので、この補充を考えたらたいへんな金もかかるんだ、人もかかるんだ、これが第二の理由です。第三は、やはり韓国に駐留しておる米軍に対する補給の基地として日本というものが非常に有利なんだ。この三つの利点があるからニューヨーク・タイムズは新しい安保条約に賛成だというふうなことを書いておりました。私は、それくらいのところがアメリカ人のすなおな見方じゃないかと思うのです。  日米安保条約を破棄するとかなんとかということは、私はないと思います。しないでしょう。しかし、破棄しないでも、日本の革新勢力のいっておるとおり、実際に空洞化されることも非常に困るわけであります。その点について賢明なる長官の、この日米安保条約を有効、適切に運営できるような基盤をつちかうことについての御考慮をぜひわずらわしたいと思うわけであります。  その次には、民社党の皆さんは有事駐留ということをいっていらっしゃるわけですが、一体有事駐留というものはいまの安保条約のもとにおいてできるのでしょうか、どうでしょうか、この点をお伺いをいたします。
  65. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 よく有事駐留ということがいわれますが、この有事駐留ということばの意味する内容がどういうものであるかということによっていろいろな考え方があろうかと思うのです。極端な場合には、通常の状態においては米軍の駐留は一切日本になくして、まさに有事の場合に米軍が日本にありますからっぽの基地に、その段階において入ってくるということをいう考え方もありましょうし、そうでなくして、アメリカの実戦部隊はすでに日本に駐留していないけれども事実上現実の部隊はある程度日本に駐留している、そこで有事の際には実戦部隊の配置が行なわれるという考え方もあろうかと思います。したがいまして、有事駐留についていかんということになりますと、有事駐留の考え方の中身を十分確定してからでないと、この考えについてははっきりした議論ができないんじゃなかろうかと思います。  現実には、日本本土には米陸軍の実戦部隊は配置しておりませんし、空軍も、沖繩には実戦部隊はおりますけれども、本土にはおらない。海兵隊は沖繩には配置されておるという状態でございますけれども、かねて日本政府といたしましては、共同使用という地位協定の規定に基づく米軍の施設、区域の共同使用の形態を使っている施設、区域があるわけでございますけれども、ここらをただいまの有事駐留という観念との関連におきましてどういうふうに考えていくべきかということにつきましては、その使用の形態、実態に照らして考えていかなければいけない問題じゃなかろうかと思っております。
  66. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 結局、われわれは政策としてはとらぬわけですが、いまの日米安保条約のもとでも、形によっては有事駐留ということはあり得るんだということに了解していいんですか。
  67. 大河原良雄

    大河原(良)政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、したがいまして、有事駐留という観念がどういうものであるか定義づけられました上でないと、それについて、政府としてそれを支持する云々ということはなかなか言いかねる状態かと思います。そこで、共同使用という形が現実にいわゆる有事駐留を可能ならしめている方策であるかどうかということにつきましても、各施設、区域の使用の実態に照らして考えていきたいというのが政府の立場でございます。
  68. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 時間の関係で次に進みます。  次は、日本が持つ防衛力をどういうふうに考えるかということなんですが、まず非武装論というのが日本の国内でもあるわけです。非武装論の根拠というものはいろいろあるんですが、これは名前は言いませんが、ある元高級官僚が、人の命というものは絶対だ、人の命があってこそ自由もあり、イデオロギーもあり、宗教もあるんだ、もし日本が非武装であれば世界が見殺しにしない。また非武装の場合に、かりに侵入してきた場合も、抵抗するよりか犠牲が少ないんだというふうなことを言うておるわけですね。私はこういう議論に対して非常に憤りを感ずるんです。人間は命さえあれば魂はなくてもいいのかというふうな感じを私は持つわけなんですが、一体世界の非武装国家というものは、こういうふうな哲学に基づいて非武装なんでしょうか。あるいは実際上武装できないから非武装なんでしょうか。この辺からまず国民の皆さんに説明していきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  69. 久保卓也

    久保政府委員 現在、世界で非武装の国家は十カ国程度あると思います。これは人口にしまして、一番大きいところでもせいぜい百万以下のところで、小さいところは数万という国家が多いと思います。これらは、それらの国の国際環境からして非武装で事足りる、その国家の国際関係における重要性といいますか、そういうことが非武装で済まされるということで、歴史的あるいは国際関係の場からそういうふうになっていると思います。そこで、国際関係の中で重要な国家で非武装である国家はないということでありまして、どのような関係があれ、将来その国に対する脅威があるかもしれない、それに対する準備のために防衛力を持っておるというのが、通常、国家の原則と私は考えております。
  70. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 その次に、先ほども戦略的降伏論ということに関連して申し上げましたが、日本の自衛隊の構想を、抑止力を重点に考えろという意見、これが相当のインテリの方の中にもある。いま日本は専守防衛ということをいっておるわけですね。専守防衛けっこうだと思うのですよ。専守防衛という構想と、抑止ということを中心に考えた構想と、防衛力の整備において違いが出てくるでしょうか、どうでしょうか。
  71. 久保卓也

    久保政府委員 防衛庁考え方は、政府がとっておりまする専守防衛の力を持つということが、日米安保体制と相まって抑止力になるという考え方であります。これは伝統的な考え方でありますが、そこでいま御質問がありましたのは、おそらくこういった御疑問があるかもしれないと思います。つまり、十分な専守防衛の力を持つことではなくて、抑止力として役に立つような防衛力の持ち方はないだろうかという御疑問ではなかろうかと思います。実は私も前からそういう考え方を持っておりまするけれども、なかなかいい知恵は出ておりませんので、いままでの考え方としては、専守防衛の力を持ち、それが日米安保体制と相まって抑止力になるということを、まだ出ておりませんけれども、御指摘の点はもう少し勉強させていただきたいと思います。
  72. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 それでは、その次は少しこまかい問題に入りますが、陸上の一千人の増員の根拠と見通しについてお答えを願いたいと思います。
  73. 山中貞則

    山中国務大臣 次の御質問もあることでありましょうから、一応一千人増員の問題についてだけ申し上げますが、これは提案理由に説明してあるとおりであります。これはやはり部隊の編成という立場からの必要な数であって、これを増員しないで、欠員の問題は後ほど触れられると思いますが、やった場合に、たとえば砲四門をもって一個中隊とするという場合において、現在でも、その砲四門を一斉に一発ずつ発射するだけなら、それは能力ありといえますけれども、装備は一個中隊として四門を持っている、しかし能力においては、その火砲の威力を発揮する場合に定員が足りませんから、たとえばたま運び等の要員はどうするのだということになりますと、半分の二門ぐらい、やりくりしても三門がやっとという程度の状態でありますけれども、少なくとも砲四門という編成体系はある。それを定員を全然ふやさないで、さらに縦に長い国境を新しく接する沖繩県列島というものが入った場合において、全く新しい編成というものを考えないでできるかといいますと、今度はやはり、本土のほうのすべてのやりくりというものが、砲四門の一個中隊という形が砲三門の一個中隊という、ちょっと考えられない形態の編成等にもなる可能性があるというようなことで、これ以上具体的な問題は専門家のほうにまかせますが、その意味において隊の編成上必要なものということで御了解を賜わりたいと思います。
  74. 久保卓也

    久保政府委員 陸上自衛隊の場合の定員といいますのは、海空あるいは一般官庁の定員と異なりまして、いわば編成定員ということで、個々の人間の積み上げと申しまするよりは、部隊の積み上げというふうにお考えをいただきたいと思うわけであります。したがいまして、現在の十七万九千名の定員といいますのは、そこに部隊が一ぱい詰まっておるわけであります。新しく部隊をつくる場合、たとえば沖繩に約一千名のホーク以外の陸上の部隊をつくります場合には、その部隊にもう一つ定員を与えてやらないと部隊のワクができません。その部隊に対してどの程度人間を充足するかという問題は、これはまた充足率の問題でありまして、予算のほうで八十何%というふうにきめられます。そこで、いわば定員のワク、部隊のワク組みをつくるためには、実質の人間があるなしとは別に、そういうワクを与えるために定員を千名ふやしてやる。これはちょうど、沖繩に千八百人持ってまいるわけでありますが、十八万に対しまして、その中で一応やりくりしようということで、十七万九千人の中から八百人は捻出をしましたけれども、あと千人はどうしても出てこないということで、千人の増員をお願いを申し上げているということであります。つまり、定員とは申しまするけれども、部隊のワク、新しい部隊をつくるときには、定員というものを伴って部隊がつくられる。その充員というものは、充足率ということでまた別の問題である、海空と違った構成であるということで、なかなか御説明しにくいわけでありまするけれども、御了解をお願い申し上げたいと思います。
  75. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 これは専門家にはわかっておりますけれども、しろうとにはなかなかわかりにくい説明なんですね。つまり、一千人ふやしても充足率は前と同じだということになるのか、充足率がふえるのか、予備自衛官のほうに回したらいいじゃないかとか、いろいろな議論が出ようと思います、その問題は。私は賛成したほうですからこれでいいのですけれども、よく説明を考えていただきたいと思います。  その次にお伺いしますが、海上自衛隊の問題ですが、平時における防衛力の限界ということで、一回防衛庁が国会に御提案になって取り下げられた。このこと自体を取り上げるわけではありませんが、前から防衛庁長官は、海上自衛隊の兵力はもう少しふやさなければいかぬということを歴代言っていらっしゃるわけですね。この説明が、私ども一般の国民の皆さんにするのになかなか苦しむわけです。  一つ伺いたいのでありますが、明年、海洋法会議が行なわれるわけですが、領海が十二海里になるか、あるいは二百海里ということを主張する国もあるわけですが、領海の幅が広がることによって海上自衛隊の防衛力というものはいまと構想を変える必要があるかどうか。いまのままでいいのか。たとえば二百海里になっても、いま防衛庁で考えていらっしゃるままでいいのかどうかという点をまず第一にお伺いいたします。
  76. 山中貞則

    山中国務大臣 海洋法会議というのは、これは日本がいまや少数国になりつつあるという立場にありますから、いずれ変えられる時代は来ると思います。また、日本も合意を余儀なくされる環境にあると思います。かといって、二百海里という南米等がとっているような、そういう海域の合意が国際的に行なわれようとは思いません。ですから、大体十二海里ぐらいのところになるのではないかという感じもいたしますが、これは会議の進行いかんによって変わるわけでありますが、少なくともしかし、日本の現在の領海の範囲というものは世界の少数国になりつつある。  そのときに、領海が広がった場合において、日本の専守防衛というものは領海、領空でありますから、当然領海は日本で守るということでありましょう。しかしながら、かといって日本は、領海が広がったからといって、特別にそれが外国につながるような領海を持っておりません。したがって、現在の構想で進んでおります四次防を一応総体とする計画を、それによって変えなければならぬということはないし、またそれに対応する機能は現在のままで十分であろうというふうに一応考えております。
  77. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 海上防衛力の決定の問題は私は非常にむずかしいと思いますね。前回、昨年でありますか、ここでお尋ねしたときに、一応外航防衛の兵力というものを考えて海上勢力をきめるのだ、しかし運用は外航防衛に充てる場合もあるし、ある海域の警戒に充てる場合もあるのだというような説明を承ったように思うわけですね。ところが外航防衛というものは、だんだんと各国でも問題になってきており、これは皆さんも御承知でしょうけれども、ことしの一月二十二日の、石油の海上輸送問題に関するアメリカのズムワルト海軍作戦部長の上院委員会における証言の中では、アメリカにおいても長距離の海上輸送に対しては弱体である、十分に守り切れないのだということを言うておる。ズムワルトは、であるがゆえに石油はカナダとかアラスカとかというような方面からもっととるようにしてもらいたいという証言をしているわけです。ましてや日本が外航防衛構想をもとにして海上防衛力を算定するということ自体に、非常に皆さんの納得を得がたい点が出てきておるのじゃないかというふうに私は思うのですが、今後の海上防衛力をつくるにあたって、どういうふうな構想の上に立ってやったらいいのか、もしお考えがありましたら……。依然として外航防衛構想に立って兵力の算定をしていいんだというならそれでもいいし、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  78. 山中貞則

    山中国務大臣 これは詳しくは局長から答弁させますが、その際において、日本の場合に当てはめてはマラッカ海峡あたりのことが出ておりますが、われわれとしては、従来繰り返して申しておりますし、本日でも私が答弁いたしておりますように、日本のもっぱら国家、民族の生命、財産の擁護であるといっても、それが領海、領空をはるかに越えて、ましてや他国の領海もはるかに通り過ぎて、マラッカ海峡の油その他の輸送を日本の自力で守るなどということは考えられないことであって、むしろそういう証言ですか、そういう意見を表明した人が、日本の憲法をよく知らないために、一般の国の軍隊と同じような考えでもって……。
  79. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 いや、米国のことを言っているのです。アメリカ海軍でも守れないということです。
  80. 山中貞則

    山中国務大臣 そうですか。ということを言っていると思います。日本の場合には、当然憲法上の制約というのが大きなワクがあるわけでありますから、これは限られた範囲ということでありますので、そういう問題については、いままでの姿勢と変わってないということだと思います。
  81. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 ほんとうに海上防衛力をどういうふうにきめるかということが非常にむずかしい。これは三月十七日の朝日新聞に出ておりますが、篠原記者、これは私の友人ですが、彼の談話として、リチャードソン国防長官が、将来、経済上の補給線を守るため、日本はより多くの役割りを果たすことになろうというふうに篠原君に話したという記事が出ておるわけですね。これは防衛庁のほうにその接触はあるのですか、ないのですか。アメリカとしてはそういう希望を持つと私は思うわけです。
  82. 山中貞則

    山中国務大臣 私が連日勉強しております中で、そのような接触があったということは全くありませんし、ただいまも確かめましたが、そのような事実はないということであります。
  83. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 これは、いままでないとしますと、あるいは今度田中首相の訪米のときに出てくる可能性のある問題の一つだと思うわけであります。  海上自衛隊の防衛力につきまして、私、気にかかりますことは、いまのところ、私の知っておる限り、対潜能力といいますか、対機雷能力というものはまずまず海上自衛隊は備えていると思うのですが、対空能力及び対水上艦艇に対する能力が私は弱いように思うのです。この点はだいじょうぶですか。
  84. 久保卓也

    久保政府委員 戦前と違いまして、今日の戦闘では水上艦対水上艦というケースは比較的少なくなっている。したがって、対潜水艦及び対空、防空という面が強調された艦艇がつくられていることは御承知のとおりであります。  そこで、対水上及び対空につきましては、三インチ砲及び五インチ砲、これは艦艇に応じましてそれぞれつくられておるわけでありまして、それの速射化ということが戦前の火砲と大いに違っておるところは御承知のとおりであります。  そのほかに、対空ミサイル艦、これが二次防から毎五年計画ごとに一隻ずつつくられておる。DDGが一隻ずつつくられておる。しかも、そのターターと申します対空ミサイルが、三次防からはスタンダード型で対空と対水上とを兼ねられるようになったということが特徴であろうと思います。  このほかに、対空といたしましては、四次防にできますDDA、三千六百トンの艦には短距離の対空ミサイルを搭載をしたい。それから魚雷艇の改造型、これも四次防に二、三隻出てまいりますけれども、これについては、おそらく外国型の短距離SSMを搭載したいということで、漸次、短距離の対空ミサイルあるいは対水上、ミサイルというものを整備してまいる。  世界的な傾向でありますので、もちろん十分ではございませんけれども、そういうような着意で四次防の艦艇も計画をいたしております。
  85. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 次に、沖繩配備の問題が今度の法案の重要な部分を占めるわけですが、時間がありませんから簡単にお答え願いたいのですが、昨年の四月十五日に「沖繩への部隊配備計画概要」というものをいただきました。大体この概要図のとおり配備は進んでおりますか。
  86. 久保卓也

    久保政府委員 その表であるいは暦年の四十七年十二月末が三千二百人にもしなっておるとしますれば、現実には二千九百になっております。そして航空機が二十五機の予定は二十一機というふうに若干減少しておりますが、一応いまのところでは今日まで、陸海空を通じまして、約二、三百名の人員の減はありますけれども、予定どおり進行いたしております。
  87. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 非常にけっこうです。  その次に、沖繩に航空混成団というものを設けられるようになっておりますが、まずこれと航空方面隊とどう違うかということと、これを直轄とする理由、この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  88. 久保卓也

    久保政府委員 航空方面隊は、御承知のように法律事項であります航空団というものが一ないし四ございます。それから対空ミサイル、ナイキの部隊も、一ないし二ないし三、たしかあったと思いますが、そういった部隊で規模が六千名から八千名くらい、相当大きな規模になります。  ところで、沖繩の航空混成団の場合には、ナイキの部隊、それから航空の部隊、これは航空団ではございませんで航空隊になっておりますけれども。それからレーダーサイトの部隊。これらの部隊をそれぞれ統合しておるという意味においては、性格的には方面隊に準ずるものと考えてよろしいかと思います。また、人員的には方面隊ほどではございませんで、三千数百名ということになっておりますが、いわば小方面隊というふうな性格のものと考えられますので、現在はばらばらに指揮系統をしておりますけれども、これを合わせて一本の部隊にする場合には法律事項とするのが適当である、そういうふうに考えております。
  89. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 次に、これは野党の諸君がいつも、四次防で攻撃的な兵器を持っておるということを絶えず言われますけれども、その例にあげられるのが、ファントムでありDDHであり潜水艦ですね。ところが、私、この間「スウェーデンの安全保障政策」という本を読んでみましたら、スウェーデンの安全保障政策の中で「いかなる国に対する脅威とも解されることができないような構造を有する兵器を持つべきである。われわれの防衛力は通常兵器を装備し、核兵器で装備することはない」ということをいっておる。そこで、他国に対する脅威と解されることのできないような構造を有する兵器だ、こう彼らが思っているのはどういうのですか。一体スウェーデンは、私がいまあげましたような、潜水艦とか、あるいはDDHとか、あるいはファントムというものに対して、どういうふうなこの種の兵器を持っておるか。日本で申せば、ナイキにしましても百三十キロぐらいの射程しかないわけですね。私は脅威ではないと思うのですけれども、スウェーデンがこういっておる。スウェーデンはどういう兵器を持っているのだということを、ちょっとお聞かせ願いたい。
  90. 久保卓也

    久保政府委員 スウェーデンが持っておりますたとえば戦闘機は、自衛隊が次期戦闘機といたしまして候補機を選びました場合、F4とか、フランスのミラージュとか、そういうものとあわせて選定の候補としました場合のドラーケン37というものを持っております。これはF4に比べますと足は若干短いわけでありますが、やはり二マッハをこえます戦闘機でありますし、要撃、対地支援、それから訓練、偵察それぞれ、言うならば汎用の戦闘機として開発されたといわれております一流の航空機であります。F4よりも若干目方が軽いとはいえ、それにそれほど劣るものではないと思います。  ただ、スウェーデン政府のほうで申しておりますることを私流に解釈しますれば、そういう考え方のもとに、スウェーデンとしては絶対に核装備はしない、これはよく申しております。そしてまた、現実にスウェーデンの装備から申しますると、爆撃機を持っておりません。しかしながら、航空機の機数というものは、ちょっと数字は手元にございませんけれども、世界で何番目、日本よりもはるかに強力な航空機、特にそれの支援器材、地上器材を含めますると、非常に強力な戦闘能力、防空能力であるわけであります。  それから艦艇のほうにつきましては、これは大西洋に出るわけではございませんで、オストゼーといいましたか、あそこの海の中で活動する。しかもあそこの海は数百メートルという浅い海でありまするので、潜水艦にしましても千トン前後の小型のものが多い。他の艦艇も比較的小型。これは、日本のように太平洋で活動するわけでありませんで、そういった海洋の特性によったものだというふうに考えます。したがいまして私は、防衛能力としましては、御承知のように、地下のいろんな倉庫、退避濠、それから潜水艦を隠す濠、そういったようなものを総合的に、言うなればきわめて専守防衛的なものになっていると思いますけれども、わが国は、そういった装備そのものでなくて、関連器材のほうでまだスウェーデンに劣りませんけれども、専守防衛という点では、スウェーデンと性格的に何ら変わるものではないというふうに確信をいたしております。
  91. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 スウェーデンは国境が続いているわけです。わが国は四面海があるわけですが、たとえばファントムが二十機や三十機よその国へ行っても、一体どのくらいの脅威になりますか。航続距離はありますけれども、スウェーデンは若干短いということでありますけれども、私は考え方だと思うのです。ヘリコプターを積んだ船が一隻行ったって何ができますか。ほかの野党の皆さんのおっしゃることは私はおかしいと思うのですが、スウェーデンの例がわかればけっこうであります。  その次に、装備について若干伺いたいと思いますが、いまアメリカから供与あるいは貸与を受けた兵器というものはどの程度残っておりますか。
  92. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 お答えいたします。  米国からの供貸与につきましては、御承知のとおり、米国側におきまして対外援助法に基づきまして行なわれておりますが、対外援助法は昭和三十八年十二月に改正されまして、その時期におきまして先進国への装備品の供貸与は打ち切られたわけでございます。したがいまして、現在におきましては、三十八年の七月一日以前に契約したものが最後でございまして、その最後の取得は四十四年に行なわれたものが一部ございますが、そのようなものすべてを含めまして、またそれから現在まで受けました中で、消耗してしまったもの、もしくは返還をいたしたもの等を差し引きまして、おもな装備品について簡単に申し上げますと、たとえば航空機の場合には現在約二百八十機程度ございます。先生承知のとおり、たとえばF86Fでございますとか、あるいはRF86F、C46とか、このようなものがございます。それからその他艦船で約九十隻ございまして、トン数にいたしまして三万二千トン程度でございます。それから戦車が約二百両程度でございます。それから陸上自衛隊の関係につきまして、特に現在小銃がやや多く残存しております。そのうちの一部につきましては、現在日本におります相互防衛援助事務所の担当者と相談いたしまして、できるだけ早く米国でつくってもらうように交渉を現在進めております。小銃が現在約十万三千丁供与されております。それから短機関銃が約八千六百丁、六十ミリの迫撃砲約七百七十門、七十五ミリの無反動砲が約三百門、このようなものがおもな装備品でございます。
  93. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 四次防を立てられましたときに、一体各兵器の稼働率というものはどの程度に見ていらっしゃるんですか。
  94. 久保卓也

    久保政府委員 四次防では、計画上は装備の稼働率についてのせておりません。ただし、現状におきましては、大体航空機について見ますると、各種航空機、前後いたしまするが、ほぼ八〇%の前後でありまして、おおよそのところにはいっていると思います。それから艦艇については、護衛艦と潜水艦について約七〇%前後でありまして、若干低いかと思いますが。それから戦車につきましては九〇%程度。それから通信器材も、ものによりますが、九〇%あるいは八〇%という程度。これをここ数年間ながめてみますると、大体横ばいになっている。ものによりましては少しずつ上向いている。つまり新しく採用しましたような兵器については少しずつ上向いている、こういうような傾向にあります。
  95. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 次に、昨年の四次防予算の問題で凍結をされた防衛関係予算ですね、この三月三十一日には執行なさったように聞いておりますが、その執行の状況をお答えを願います。
  96. 山口衛一

    ○山口(衛)政府委員 昨年の二月二十六日の閣議了解に基づきまして、T2超音速高等練習機、C1中型輸送機、RF4E偵察機及び超音速練習機の補用エンジン、この四品目につきまして、四十七年度予算につきまして、国防会議及び閣議におきまして主要項目が決定されますまでは大蔵大臣の承認を行なわないという意味の了解が行なわれたわけでありますが、昨年の十月九日に国防会議及び閣議が行なわれまして、そこで四次防の主要項目が決定されたわけでございます。その後、十三日におきまして内閣官房から衆議院議長の確認が得られた旨、また参議院議長の了承が得られた旨連絡がございまして、防衛庁としましては、昨年の十月十三日以降この関係四機種の取得業務を開始いたしました。ことしの三月の三十一日に大蔵大臣の承認を得ましてこの四機種につきまして契約を完了いたしました。全体の契約は、予算額上におきましては九百六億五千万円というのが当時の予算上の価額でございましたが、最近におきます為替相場の変動制におきまして、円相場が実質的に高くなったというようなものが、たとえばこの四機種の中に含まれます輸入品価格に反映いたしまして、予算価額よりも約六十八億二千百万円下がりまして契約を完了することにいたしたわけでございます。現在のところ、当初の調達計画からだいぶおくれまして、これはいずれも後年度負担が予算上明確にされておりますT2、C1につきましてはそれぞれ四年、あるいはRF4につきましては三年という国庫債務負担行為の時期の限定がございますが、私どもは今後、国庫債務負担行為の期限内になるべく調達できるような体制をとろうとしておりますし、関係企業に生産ペースを上げるようにいま勧奨しておりまして、おおむね現在の見込みでは、この期間内に取得できるというふうに考えております。
  97. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 次に、これは国防会議のほうに伺いますが、昨年の十月九日に国防会議の議員懇談会の了承事項といたしまして、高度の技術的判断を要する問題について専門家会議を設けるということになっておると承知しておりますが、これはすでに設けられておりますか。
  98. 内海倫

    ○内海政府委員 まだ設けておりませんが、目下慎重に検討いたしておりまして、一方において、できるだけ早く設けてはどうかという意見もございますし、また私どもも、事務的に慎重に行なわなければならない点もありまするので、現在、関係各省とも調整しつつその設置についての仕事を進めておる段階でございます。
  99. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 これは新聞等でもいろんなことを書いているわけですけれども、この性格、どういろ人を委員にするのか、運営をどういうふうにするのかという点についてお考えがありましたら、お答えをいただきたいと思います。
  100. 内海倫

    ○内海政府委員 これらにつきまして、事務局長の段階におきましての考えでございますけれども、人選につきましては、事柄性質上、できるだけ客観的な立場に立って、しかも的確に判断をできる方を選任いたしたい。また、高度の技術的判断というふうになっておりまするので、そういうふうな面におけるどういう専門の方がいいかということについても、各省の意見を聞きながら慎重にその選考の基準などを考えていかなければならないと思いますが、人数におきましては、おおむね十人程度を限度に考えたいと思っておる次第でございます。
  101. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 もちろん人選については十分御配慮のことと思いますけれども、つまらない疑惑を起こさないように、公正な人選をなさることを希望いたします。  これは、PXLとAEW、この二つのものだけを扱うことになっておるのですか。その他のものもやるのですか。
  102. 内海倫

    ○内海政府委員 これも事務局長のお答えできる限度内で申し上げますが、私どもは、昨年の十月九日の議員懇談会の了解事項に基づいての仕事と理解いたしております時点では、そういう意味では、PXL及びAEWに関連する研究開発というふうなものであろうか、こういうふうに考えます。
  103. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 その次にもう一点伺いたいのですが、「文民統制強化のための措置について」、四十七年十月九日の閣議決定ですが、この中で、「別紙の事項は、防衛庁設置法第六十二条第二項第五号の「重要事項」として国防会議にはかることとする」ときめておりますね。その中で「左に掲げる装備の新型式のものについての種類および数量」というのがあるわけです。これは一体どの段階で国防会議におかけになるのですか。開発の段階ですか。あるいは試作の段階ですか。あるいは量産の段階ですか。また、これを国産するかどうかという点についても、国防会議におかけになるのですか。その場合に防衛庁のほうは、前に防衛庁調達に関する基本方針におきめになっておるわけですね。国産を原則とするということを書いていらっしゃるわけですが、防衛庁の方針と国防会議との関係はどういうふうに調整なさるのでしょうか。  以上の点についてお答え願います。
  104. 内海倫

    ○内海政府委員 防衛庁のほうからも答弁があることと思いますが、国防会議事務局長としてのお答えできる範囲内で申し上げますと、先ほど御指摘のありました十月九日の閣議決定に伴うものにつきましては、一応いろいろ限定がございますので、いわゆる必要な装備というものをどうきめるかということも、十分慎重に防衛庁の意見を尊重しながら考えていかなければならない、こう思います。現実、具体的には、本年度の予算を編成した場合に国防会議にはかりましたのは、新型の装甲車がこれに該当するということで国防会議にはかりました。それから将来の問題といたしましては、そういうふうな事例を参考にしながら今後基準を考えていかなければならないと思います。  ただ問題は、研究開発ということになり、あるいは国産か輸入かというふうな問題になりますと、防衛庁における本来の職務権限という問題もございますので、きょう直ちに私ここで的確な御答弁を申し上げることを差し控えさしていただきまして、後刻また防衛庁ともよく打ち合わせをいたしまして、さらに国防会議の御意向に沿いまして御答弁をいたすことにいたしたいと思います。
  105. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 次に、最近非常に飛行機の事故が多いことで私心を痛めているのですが、四月の九日にF104J、十一日にMU2、二十七日にP2V7、五月一日にファントムE、また昨年はF104の事故が新聞で報ぜられましたが、これらの飛行機事故につきまして原因を探求なさったと思うのですが、その原因等でわかったところあったらばお知らせをいただきたい。
  106. 大西誠一郎

    ○大西政府委員 ただいま御指摘のとおり、最近事故が続発をいたしておりますが、それぞれにつきましてその原因を究明中であります。最近のものはまだわかりませんが、四月の初めに起こりましたF104JとMU2について申し上げますと、現在中間段階ではございますが、F104Jにつきましては、夜間訓練中の事故でございまして、おそらく。パイロットが自分の機位を見失って、急いで空中集合するというときに無理な操作をしたのではないか、そのために失速をして海没をしたというふうに想像いたします。これはいずれにいたしましても、機体があがっておりませんので推定の域を出ませんが、そういうような推定をいたしております。  それからもう一件は、九州の新田原の近くで起こりましたMU2でございますが、これは離陸をいたしまして七分くらいの間に山に衝突をしたという事故であります。これにつきましては、当時の状況を見ますと、非常に気象が悪くなっておった、それにもかかわらずやや気象に対する判断が甘かったのではないか、そのために、引き返すという判断を的確に行なわなかったため、そのまま山にぶつかったのではなかろうかというような推測をいたしております。これにつきましてもまだ中間段階でございまして、詳しいことはさらに調査のまとまった段階で御報告をいたしたいと思います。  以上でございます。
  107. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 時間がありませんので、あとをまとめて御質問いたしますから、簡潔にお答えを願いたいと思います。  一つは、これは長官にお答えいただきたいのですが、いまの自衛隊の内部の階級の扱いが、前から私、言っておるのですが、幹部と曹、士、こうなっておるわけですね。将校と下士官、兵というふうに分けておるわけです。ところが、部隊の実際を見ますと、下士官、いまの曹ですが、これが士、昔の兵と一緒に扱われることにいろいろな身分規則、衛門の出入りというようなことにつきまして非常に不満を持っております。幹部と曹と士と三つに人事の取り扱いを変えていただくことが私は非常にいいのじゃないかと思うのですね。やはり曹というのが各部隊でも縦横の連結の中心点でありますから、この点にぜひ御配慮いただきたいということ、これをまず長官にひとつお伺いしたいと思います。
  108. 山中貞則

    山中国務大臣 いまの点は、確かに御指摘されるような問題点も含んでいるやに私も思います。ただしかし、隊外居住等については、曹、士は原則として隊内居住ということになっておりますが、曹は妻帯者については隊外居住を認めるというようなことで、士と区分は一応いたしておりますが、さらにそれらについて、曹の諸君の隊の実際の行動の中における第一線の責任の分野の重大性から考えて、現行の分け方において手落ちがあると私が判断するようなことが見つかりましたならば直したい、かように考えます。
  109. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 ぜひ御検討いただきたいと思います。  その次に防衛医科大学校のことをお尋ねいたしますが、この定員、それから教育訓練の内容、付属病院をどうするか、それから償還金はどれくらい取るのか、資格をとれない者はどういうふうに扱うか、まとめてお答えいただきます。
  110. 鈴木一男

    ○鈴木(一)政府委員 お答え申し上げます。  医官の定員は、現状申し上げますと、四十七年度末で八百三十六名でございます。三幕別に申し上げますと、陸が六百二十四名、海が百十二名、空が百名でございまして、それに対しまする現員が、陸が百八十七名、海が四十三名、空が三十八名、合計二百六十八名でございます。その充足率は約三〇%に相なっております。  それから付属病院のベッドでございますが、ベッドにつきましては、現在防衛庁といたしましては一千床ほしいというふうに考えております。と申しますのは、現在、防衛医科大学校の医者の養成目的は、総合臨床医と私ども申しておりますが、これはどういう医者かと申しますと、一般内科につきましても、一般外科につきましても、大体一通りのことはこなすという医者を養成してまいりたい、そういう養成目的に従いまして、やはり臨床に十分重点を置かなくちゃいかぬ。そうしますと、ベッドサイドの教育ということになりますとベッドが要る。教育審議会あたりの報告を見ますと、学生定員一名につきまして十五床が必要であるという一つのめどがあるわけでございますが、そうしますと、防衛医科大学は八十名の定員でございますと千二百床が必要でございます。しかし、管理の問題その他を考慮いたしまして、現在は一千床を防衛庁としては希望いたしておるわけでございますが、これにつきましては、四十九年度予算におきましてやる予定にいたしております。  それから償還金の問題でございますが、償還金はまだ全体の卒前教育六年間の全体構想がまとまっておらぬ段階でございますので、いまの時点で幾らにするということはきめかねますが、これはいずれ総理府令できめるわけでございますが、御参考のために申し上げますならば、自治医科大学校におきましては、現在あれは貸与制度でございますが、一千七十六万円というふうな金額を考えておるわけでございます。それらも参考にいたしまして今後十分検討してまいりたい、このように考えております。  それから、現在の医師国家試験の合格率は、加藤先生も十分御案内のように、非常に高い高率を示しております。私どもも、もし法案が通りまして設置されるような暁になりますれば、授業料は無料、月々の手当は学生手当といたしまして二万三千八百円もいただけるというふうなことを勘案しますと、そしてしかも所沢というかっこうの地にあるし、スタッフもいい先生が来るとなれば、相当の志願者が殺到するというふうに期待をいたしておるわけでございます。  そんなことから考えますと、私どもの大学校を卒業したほとんどの学生は一〇〇%合格するだろうという自信は持っておりますが、御指摘のように、万が一だめな場合には、単に臨床だけではございません、基礎部門にもそういうポストがございますので、一回合格しなかった場合には、もう一年そこにおりながら勉強してもらってもう一ぺん受けるというふうなことで、いまのところ私どもは、いまの合格率から勘案するならば一〇〇%合格するんじゃないかという気持ちを持っております。
  111. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 最後に基地問題をひとつお伺いしたいのですが、これもまとめてお尋ねいたします。  日米安全保障運用協議会ですね、最近お開きになったようですが、これはどういうふうに進んでおるかということ。  それから基地対策につきまして、私、調べてみますと、周辺整備法第四条の民生安定事業の補助率がほかの事業の補助率よりか低いものがあるのです。たとえば保育施設、かんがい排水、農業機械、農地保全、漁港、有線放送電話、これらのもので基地周辺整備法のほうが補助率の低いものがありますが、基地問題は非常に大事な問題でありますので、ぜひほかの補助率に劣らないような補助率にしていただきたいということ。  それから、今度運輸省から出されました公共飛行場周辺整備法ですか、これを読んでみますと、公共飛行場の周辺の緑地計画とか都市計画なども国が指導し補助をしてやるようになっておるのですね。当然、公共飛行場になされるぐらいのことは、防衛庁でも基地所在地に対してやるべきであるというふうな感じがしてならないのですが、この辺はひとつ、長官、お答えいただきたいと思います。
  112. 山中貞則

    山中国務大臣 私も一応、補助率その他については対比してみました。何に対して比べるかというのも問題があります。たとえば特別に前例のない手厚い措置をとりました沖繩振興開発特別措置法、こういうものと一律に論ずることは困難だと思いますが、その他の各種法令、たとえば離島振興法等に見られる特例等より、部分的に御指摘の点で劣っている分野もあるように思います。ただこの基地周辺整備の場合に、はたしてそのような必要性があるかどうかの問題で取り残されているものもあるかと思いますが、基本的な問題としては、やはりバランス上そういう姿勢をとらなければならない。すなわち地域住民の理解と協力なくして基地機能は完全に発揮できないということを考えた場合に、その基本的な御指摘はそのまま承って、私自身が検討して、必要なものは来年度予算で直します。  さらに第二点の、特定飛行場等の周辺整備等、今回手厚くいたそうとしておりますが、運輸省の指定飛行場に対する緑地帯設置の構想等において、両者ややバランスのとれていない点がある、この点は私も気がついております。それらのすぐれた点は、私どもの防衛施設周辺整備法の中にも当然取り入れていかなければ、これは申しわけがその周辺の地区の方に対して立たない、こういうことにもなりますので、これまた現時点においてはすぐには実行できませんが、来年度予算編成、あるいは法律改正等において、実質上も形式上も、そのようなことを国が行なう場合において、まず国が防衛の責めに任ずるために持っておる基地、提供した基地、こういうことを重点に考えていく方針をとってまいります。
  113. 角谷清

    ○角谷説明員 運用協議会についてお答え申し上げます。  運用協議会につきましては、すでに二回会合を開いておりまして、第三回目を来週の月曜日に行なう予定にいたしております。  御承知のとおり、この協議会は、大臣レベルの安保協議委員会、それから地位協定の細目を協議いたします合同委員会、この二つの委員会のいわば中間的な存在でございまして、いろいろ安保条約の運営、基地の縮小問題等を討議する場でございます。したがいまして、第三回、来週月曜開催いたします委員会におきましても、そのような問題を協議いたしたいと考えておる次第でございます。  なお、このほかに安保事務レベル協議会というのがございまして、これは協議委員会のすぐ下にある次官ないし次官補レベルの会議でございますが、これも先般開催いたしました。いろいろ会議がございますが、これらの協議の場を通じまして、両国の意思の疎通を十分はかる、このようにいたしておるわけでございます。
  114. 加藤陽三

    加藤(陽)委員 大体質問を終わりますが、最後に長官一つお尋ねやらお願いですけれども、防衛問題というものは、いままでタブーにされてきているような感じが国民の間でも非常にあります。私、非常に残念なことだと思う。やはり国民の皆さんが防衛問題を平素の話題にするようになれば、ほんとうに健全な防衛政策ができるようになるのじゃないかと思うのです。先年、防衛白書、「日本防衛」というパンフレットが出されまして、これは国内でも外国でもいろいろな批判がありました。いろいろな批判がありましたけれども、私は防衛白書を出された効果は十分にあったと思うのです。ぜひ長官の時代に、また日本防衛についての考え方、自衛隊の実情というふうなものを国民に知らせるような書類をぜひお出しいただきたいということを最後にお願いいたしまして、質問を終わります。
  115. 三原朝雄

    三原委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後五時五十二分休憩      ————◇—————     午後六時三十九分開議
  116. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  本日の当委員会審議にあたり、円滑なる運営のでき得なかったことはまことに遺憾に存じます。今後は公正なる委員会運営を行ないたいと存じますので、御了承を願います。      ————◇—————
  117. 三原朝雄

    三原委員長 委員派遣承認申請に関する件についておはかりいたします。  ただいま本委員会において審議中の防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について、審議の参考に資するため、委員を派遣いたしたいと存じます。  つきましては、議長に対し委員派遣の申請をいたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。
  118. 三原朝雄

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、派遣地、派遣の日時、派遣委員の人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  119. 三原朝雄

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、来たる十四日木曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後六時四十一分散会