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1973-04-17 第71回国会 衆議院 内閣委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月十七日(火曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 三原 朝雄君    理事 奥田 敬和君 理事 加藤 陽三君    理事 笠岡  喬君 理事 中山 正暉君    理事 藤尾 正行君 理事 大出  俊君    理事 木原  実君 理事 中路 雅弘君       赤城 宗徳君    伊能繁次郎君       越智 伊平君    大石 千八君       近藤 鉄雄君    竹中 修一君       丹羽喬四郎君    旗野 進一君       林  大幹君    三塚  博君       吉永 治市君    上原 康助君       山崎 始男君    和田 貞夫君       木下 元二君    東中 光雄君       鈴切 康雄君    受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      小坂善太郎君  出席政府委員         防衛施設庁総務         部長      河路  康君         防衛施設庁施設         部長      平井 啓一君         防衛施設庁労務         部長      松崎鎮一郎君         経済企画政務次         官       橋口  隆君         経済企画庁長官         官房長     高橋 英明君         経済企画庁調整         局長      新田 庚一君         経済企画庁国民         生活局長    小島 英敏君         経済企画庁総合         計画局長    宮崎  仁君         経済企画庁総合         開発局長    下河辺 淳君         経済企画庁調査         局長      宮崎  勇君         法務省民事局長 川島 一郎君         外務大臣官房長 鹿取 泰衛君         外務省アジア局         長       吉田 健三君         外務省アメリカ         局長      大河原良雄君         外務省条約局長 高島 益郎君         運輸省航空局次         長       寺井 久美君         労働省労働基準         局安全衛生部長 北川 俊夫君  委員外出席者         警察庁刑事局捜         査第一課長   小林  朴君         警察庁刑事局保         安部保安課長  相川  孝君         外務大臣官房領         事移住部長   穂崎  巧君         文化庁長官官房         国際文化課長  角井  宏君         内閣委員会調査         室長      本田 敬信君     ————————————— 委員の異動 四月十七日  辞任         補欠選任   受田 新吉君     塚本 三郎君 同日  辞任         補欠選任   塚本 三郎君     受田 新吉君     ————————————— 四月十六日  靖国神社の国家管理反対に関する請願勝澤芳  雄君紹介)(第二七〇九号)  同(青柳盛雄紹介)(第二七一〇号)  同(諫山博紹介)(第二七一一号)  同(石母田達紹介)(第二七一二号)  同(梅田勝紹介)(第二七一三号)  同(栗田翠紹介)(第二七一四号)  同(紺野与次郎紹介)(第二七一五号)  同(多田光雄紹介)(第二七一六号)  同(寺前巖紹介)(第二七一七号)  同(土橋一吉紹介)(第二七一八号)  同(中川利三郎紹介)(第二七一九号)  同(中島武敏紹介)(第二七二〇号)  同(野間友一紹介)(第二七二一号)  同(林百郎君紹介)(第二七二二号)  同(平田藤吉紹介)(第二七二三号)  同(東中光雄紹介)(第二七二四号)  同(不破哲三紹介)(第二七二五号)  同(正森成二君紹介)(第二七二六号)  同(増本一彦紹介)(第二七二七号)  同(三浦久紹介)(第二七二八号)  同(村上弘紹介)(第二七二九号)  同(山原健二郎紹介)(第二七三〇号)  同外一件(横路孝弘紹介)(第二七三一号)  同(米原昶紹介)(第二七三二号)  同外二件(阿部未喜男君紹介)(第二八八七  号)  同外二件(井岡大治紹介)(第二八八八号)  同外二件(石橋政嗣君紹介)(第二八八九号)  同外一件(板川正吾紹介)(第二八九〇号)  同外二件(木島喜兵衞紹介)(第二八九一  号)  同(兒玉末男紹介)(第二八九二号)  同外二件(田中武夫紹介)(第二八九三号)  同外二件(松浦利尚君紹介)(第二八九四号)  同外一件(八木昇紹介)(第二八九五号)  官公労働者ストライキ権回復に関する請願  (馬場昇紹介)(第二八四四号)  非核三原則立法化等に関する請願栗田翠君  紹介)(第二八九六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一九号)  在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務  する外務公務員の給与に関する法律の一部を改  正する法律案内閣提出第八号)      ————◇—————
  2. 三原朝雄

    三原委員長 これより会議を開きます。  経済企画庁設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木原実君。
  3. 木原実

    木原委員 経済企画庁が、従来の国民生活局の一部にありました物価関係を独立させまして物価局をつくる、こういうことなんですが、どうもいまの物価状況を片方に置いて考えますと、意図はよくわかるわけでございますけれども、少しばかりみみっちいのではないかという感じがするわけであります。同じつくるならば、物価局でなくて物価庁でもつくる、あるいはまた、かつて経済企画庁経済安定本部という過去の歴史を持っておるわけでありますけれども、いまの状況からすれば、物価安定本部でもつくって、たとえば公正取引委員会などの権限を強化をして吸収合併でもして、きちんとした対応策、それに基づく部局をつくる、こういうのならたいへんわれわれも歓迎をしたいところですけれども、問題の大きさに比べて何かその場しのぎのような印象を免れないわけであります。経済企画庁ワクとすればおそらく一歩前進だ、こういう側面があるのではないかと思うのですが、それにいたしましてはあまりにも事態が重大である、はたしてこれで行政的にどういう対応ができるのかと初めから疑問を抱かざるを得ないような、そういう印象がございます。  そこで、最初長官に伺いたいのですが、物価局をつくりまして一体何をやろうとするのか。恐縮ですが、ひとつ最初に御所見を承っておきたいと思います。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 物価の安定というものは福祉社会実現根本に触れる問題だと思いますわけですが、その意味で、政府といたしましては、最重要施策一つと考えておるわけでございます。物価というものは、本来、財政金融政策なり、あるいは産業政策対外経済政策など、各種の経済政策の結果として物価の面に投影してくるものだと思いますものですから、やはり経済企画庁といたしましては、経済関係各省庁がございまするわけですが、その原局と申しますか、主務省と申しますか、そういう実際経済問題を扱っている各省庁との連絡を密にいたして従来運営してきたわけでございますが、しかしそこに何かもの足りないものがある、それはやはり物価に対する総合調整機能ではないかというふうに考えまして、そういう意味で、政府全体としてもっと物価を重視した行政機構をつくる必要があるのではないかと考えまして、木原委員の仰せられまする構想も、私もそういう構想一つの御見識だと思いますわけでございますが、政府といたしましては、あまり行政機構をこの際拡張したくないということから、いろいろ折衝をいたしましたる結果、企画庁の中に物価局をつくるということにおさまったわけでございまして、これによりまして、従来よりもさらに緊密に連絡をいたしまして、資料を提出してもらって、そして意見を具申して、聞かれないときは総理からの勧告をしてもらうというような、いわゆる物価行政に対する推進という権能を持つようにいたしたわけでございます。  中は物価政策物価調整物価調査、この三つの課を設けますわけですが、総員三十三名を予定しておるわけでございまして、人数は、おっしゃるとおり、みみっちいというおことばがございましたけれども、えらい膨大な機構とは思いませんわけでございます。この意味政府の現在の、できるだけ行政機構を簡素化しながら、しかも行政の実をあげていく、こういう目的に沿うものと考えておるわけでございます。
  5. 木原実

    木原委員 権限でございますけれども長官権限として、たとえば勧告、こういうことがうたわれておるわけですけれども、この勧告権というのは、実際に行政分野の中でどの程度の作用、能力あるいは機能をお持ちになるのか。いかがでしょう。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 各行政庁はそれぞれ対等の立場にあるわけでございまして、物価に対しても勧告する権能を持つということは、勧告を受けるほうの省庁にしては、従来の関係からすれば、好ましくない気持ちを持つ問題ではないかと思うのです。しかし経済企画庁としては、実はもっと大きく全体の経済計画をする場合の勧告、そういうものまでも考えた時期もあるわけでございますが、なかなかそうまでもまいりませんので、物価に関してだけはひとつ勧告権を持って、物価行政推進役としての企画庁立場を確立したい、こういうことに考えて政府部内の御了承をいただいたわけでございます。
  7. 木原実

    木原委員 そうしますと、勧告対象になる、つまり物価政策といいますか、そのカテゴリーはどの辺までをお考えでございますか。御承知のように、いまの物価の高騰しておる諸要因を考えますと、たいへん複雑で、しかも行政分野の中でも範囲が広い。そうなりますと、一口に物価政策と申しましても、その要因の特に根幹的な問題に触れていくということになりますと、相当対象範囲が広がる、こういうふうに考えられるわけなんです。とうふが高くなったから大豆を輸入しなさい、こういうようなのは、対症的な療法としては明らかに勧告対象になると思うのですが、そのカテゴリー範囲はおおむねどれくらいのことを考えるわけでございますか。
  8. 小島英敏

    小島政府委員 現実には企画庁が、いままでもそうでございますけれども法律的な勧告権がございませんでも、いろいろ企画庁長官意向に応じまして、各省に、こういうことをやったらどうか、あの政策はどうもできるのじゃないかということは言ってまいったわけでございますが、今後もそういう意味で、こまかい点につきましても、法律に基づかないでも、実質上企画庁意向というものを各省に反映することはできるわけでございますけれども、今度の法律に基づきまして、法律的に勧告権対象になりますものは、やはり総合的な物価対策推進をする上に必要だと思われること、たとえば数日前に閣僚協議会で「当面の物価安定対策」という一種の総合物価対策を打ち出したわけでございますけれども、これできめられました線に沿って各省に今後努力してもらうわけでございますけれども、どうも原則がきめられたにもかかわらず執行が非常に不十分であるというような場合には、今度の改正されました場合の法律に基づきまして、法律に基づく勧告権が発動できるということでございます。  そういうものに関係のない個々のこまかい問題につきましては、必ずしも法律に基づく勧告権対象とはならない。これはいままでどおり事実上の、企画庁意見は申しますけれども法律上の勧告対象にはならないというふうに考えます。
  9. 木原実

    木原委員 どうもはっきりわからないのですがね。特に最近の物価上昇の傾向、さまざまな形容詞のついたインフレではないかという論議がございます。確かに様相が複雑でございますね。そうなりますと、従来のようないわゆる物価カテゴリーでとらえられる範囲から、たとえば財政金融、ないしは場合によれば予算編成そのものについても、これだけの予算を組めば明らかに物価上昇に影響を及ぼす、こういったような場合に勧告ができるのかどうか。あるいはまた、財政金融のそういった側面の運用についても、御案内のとおり複雑な諸問題があるわけですが、物価観点からそれに対して勧告ができる、こういうように考えられるのですかどうですか。
  10. 小島英敏

    小島政府委員 ただいま申し上げましたように、総合物価対策というようなもので原則がきまりました場合に、たとえばこの間の物価対策でも、第一に財政公共事業に関しまして時期的に調整をするということがきまっておりますけれども、一度ああいう原則できまりました場合には、これはその実行上、どうも各省が非常にその原則に沿っていないというような場合には、これは法律上の勧告も今度の勧告対象に考えているわけでございますが、そうでございませんで、一般的にたとえば翌年度の財政について、インフレ防止観点からあまり大型でないほうがいいというようなことを企画庁が考えているといたしましても、これはいまの考え方から申しますと、直接法律上の勧告対象にはならない。もちろん企画庁長官といたしまして、閣議その他の席上いろいろ意見は申し述べるわけでございますけれども、この法律に基づく勧告対象にはならないというふうに考えております。
  11. 木原実

    木原委員 なぜこういうことを聞くかといいますと、先ほど申し上げましたように、物価上昇の原因が非常に複雑多岐になってきておる。しかも従来の物価対策なるものが、いつもあとから出てきた結果についての対症療法といいますか、しりぬぐいといいますか、そういうことに追われていたわけですね。たとえば、これだけの予算を組めばこれだけの物価が上がる、しかもそれははるかにワクを越える可能性があるというような場合があるわけですね。つまり、根本にさかのぼらないで、高くなってしまってからばたばたしているというような姿。われわれ、十年近く物価上昇の中でさまざまな活動をしてきまして、行政的な立ちおくれ、もしくは政治的な対応の立ちおくれというものは、しばしば指摘もされてきましたし、私ども自身が痛感をしてきたところなんですね。なるほど、起こりました一つ一つの問題については、農林省にしましても、通産省にしましても、いわゆる現場の官庁はそれぞれやはり問題を持ち、対応策を持っているわけなんです。それが十分でないにしても、持っているわけなんです。さらに、それに対して、いまのような物価状況の中で、もっと強力な勧告権を持って物価の問題に対処しようとすれば、望まれることは、やはり根幹にさかのぼって、絶えず先回りをして、物価上昇要因になるものに対して適切なアドバイスなり適切な措置を進言をし勧告をしていく、そういう姿勢でなければ、何かこの物価局は、いまのお話の限りの中では、せいぜい調整か、宙に浮いてしまったものになるのじゃないか。国民の言いわけのために、異常に物価が上がったときに、あわててその辺に勧告をして回るという程度のことに終わりはしないか。それでは、せっかく設置法を改正をして一つ部局をつくるにしましても、何だか屋上屋を重ねた、あまりパンチ力のない、迫力のない部局をつくるにすぎないのじゃないか、こういう感じがするわけなんです。  これは、企画庁という役所の限界という問題もあるかもしれませんし、内閣全体という問題もあるかもしれません。しかし、長官をいただいて、物価に挑戦をしていくのだ、こういう姿勢だと、思い切ってやはりそこに踏み込んでいくという姿勢がなければ、どうもこういうものを出されましても、ああそうですかというだけに終わってしまう。したがって、思い切って根幹の問題にアプローチをしていくという、そういう姿勢を確立できるのかできないのかという問題なんです。いま局長お話なんですが、前向きの姿勢長官のお考え方はいかがですか。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほど申し上げましたように、閣議というものがあるわけで、各省が対等の立場でおるその閣議の前に、経済企画庁というものが総合的な調整権限経済政策全般について持つということについては、この考え方で私などは実はそういうことも希望したこともございますのですけれども、なかなか通らなかったのでございます。そこで、閣議というものがあり、物価に対しては物価関係閣僚協議会というものがございますし、経済閣僚協議会というものもございますし、そういうような場所を用いまして、私の立場からは、大いに物価に関連する全体の経済政策物価政策について発言をするということをしていけばいいのではないかということに考えまして、経済企画庁の中に物価局をつくるということでおさまろう、こういうことに思い立ったような次第なんでございます。  木原委員の御指摘の点は、私も理解できるのでございますけれども現状においては、まずこれで出て、そして従来よりはとにかく物価というものに対して発言権が相当強化されるわけでございまして、この新しい機構をお認めいただきまして、そしてその上でしばらくやってみたいと思っておる次第でございます。それで、どうしても経済状況等から見てさらに次のことを考えたほうがいいということになれば、これはまたあらためて次に考える方策がございますれば、それはそのときで調整いたしまして、お願いするということもあろうかと思いますが、現状においてはこれが私どもの考えられる最善である、こう思っておる次第でございます。
  13. 木原実

    木原委員 くどいようですけれども、たとえば最近の問題でも、いまのインフレ的な状況から、たとえば予算執行上の繰り延べをやったらどうかというような意見政府部内にもあるやに聞いておるわけです。そういう問題については勧告対象になるといいますか、長官閣僚会議なりないしは閣議の中で発言をされるということのほかに、経済企画庁として勧告ができる、あるいは総理に対して上申ができる、こういうようなことは考えられますか。
  14. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 法律上許された権利としての勧告権ということには、いまの問題は及ばないと思います。ですから、経済関係大臣として閣議なり閣僚協議会などで、こうしたほうがいいではないかということを言うにとどまるものだと思います。ただ、内閣というものは一体的に運営されるわけでございますから、そういう意見を非常に強く言えば、これはまた問題によってはいれられるというふうに考えておるわけでございます。
  15. 木原実

    木原委員 金融あるいは財政上の措置を、最近もわれわれは顧みまして、少しばかり物価観点から見て手痛い反省といいますか、そういうものをお互いに持つわけですけれども、たとえば金融上の措置として公定歩合は確かにもう少し早く〇・七五くらい上げておけば、あるいは少し様子が変わったのではないかという、あとになってのそういう反省をすることがあるわけですが、そういう措置についてはどうですか。
  16. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先般も他の場所で申し上げたのでございますが、その点は私どもは非常に深く反省をいたしておるわけでございます。最近の問題にとどまらず、昨年、公定歩合を下げた時期が一体よかったのかどうかという点も、やはり反省をしているわけでございますが、こういう問題は今後の強い参考にいたしてまいりたいというように、大蔵省の方も含めて他の場所でそういうことを申し上げたことがあるわけでございます。  やはり金融の問題でございますから、金融は中立的であるということで、これは日銀のなさることになっております。私ども外部から、非常にそういうことをしたほうがいいと思いましても、そのほうの連絡がこれなかなか問題で、各省から日銀政策委員というのが出ております。大蔵省から行ったり、企画庁から行ったり、出ておりますけれども、やはりそういう人のその立場というものはある程度限定されますので、やはり物価というのは、非常に政治の根本に触れる問題、そういう問題につきまして現状でいいのかどうかということは、やはり問題があるというふうにいま考えております。
  17. 木原実

    木原委員 問題がだんだんしぼられていきますと、たいへん限定をされた問題にしかアプローチができないという結果が出るわけなんですね。しかも物価という問題はある意味では非常にとらえにくい。そういうはっきりした問題については、それぞれの分野の問題がある。対応策がある。一番望まれておるのは、繰り返すようですけれども、非常に物価上昇要因というものが複雑になってきて、先回りをして打つべきものを打たなければならない。そうなりますと、やはり私どもは、せめてばらばらになっているそれぞれの行政分野の問題を調整をしていく、総合をしていく、そうして一つの結論を得たら、やはり大胆にそれに対してアプローチをしていく、そういう姿勢にならなければ、結局、対症療法に終わってしまう。対症療法に終われば、それぞれの行政分野の中でそれぞれの専門的な対応策がある。こうなってくると、何かせっかくの物価局、どう考えましても分野限定をされていて、そう言っちゃあれですけれども経済企画庁のいままでの力量、行政分野全体の中で持っておる力というものを勘案いたしますと、何だかどうも、先き行きあまり迫力のない局が一つできるにとどまるのではないか、こういう印象を受けるわけです。ただ、できるからには、私どもとしては、一定の権威を持ち、力を持ち、そうして物価全体について少なくとも方向を示していく、こういうことでもあってほしいと思いますから、いろいろ申し上げたわけなんです。  あわせてお伺いいたしますけれども、従来も、物価上昇見通しにつきまして、たとえば、五%であるとか、来年度は五・五%になるだろう、こういう指標が示されておりましたですね。これは経済企画庁責任で従来もお出しになっていたのでありますか。
  18. 小島英敏

    小島政府委員 政府見通しでございますので、企画庁で原案をつくりまして、各省に合議をいたしまして、合議いたしましたところで指標を出すという形でございます。
  19. 木原実

    木原委員 御承知のように、昨年、四十七年度は五・三%でしたか。毎年のようにわれわれもそれを見、それからまた、政府のたとえば予算編成等にいたしましても、これが一応の指標になって経済の運営が行なわれる、こういうたてまえになっているのですが、しかし残念ながら、現状はしばしば天気予報と同じようなことになりまして、せっかくの指標を上回るというような場合が往々にしてあったわけですね。ただ、その際に、これは私は皆さんの権威のために申し上げるのですけれども、かりに五・三%、こういうふうに目標を立てて、その中で物価上昇はおさまるだろうという予測を立てる、それに基づいてさまざまな措置が行なわれる。しかし、一年経過するとそれが六%にもなっていたといったようなときにも、一向この責任を明らかにされないのですね。よくいわれてもまいりましたし、指摘もされてきたわけなんですが、予測が一%狂っても二%狂っても、どこもこの責任をとらない。外国では、何%か物価が上がれば内閣総辞職ものだというようなことがしばしば話に伝えられたりするわけなんですが、われわれの場合は残念ながら、そういう目標は立てられるわけですけれども現状がそれに狂った場合に、行政的に責任をとるという、そういう姿勢一つもないわけですね。結果的にはもう権威がないわけです。経済企画庁が五・五%と言っているからまあ六%くらいで済むかなというような話になってしまう。これではいけないと思うのですね。せっかく新しい部局が出発をするのならば、せめてそういう数字について、内閣全体でもよろしい、原案をつくる経済企画庁立場でもよろしいのですが、出したものについては責任の所在を絶えず明らかにしていく、こういう姿勢で作業をこれからもしてもらいたいと思うのですが、いかがなものですか。
  20. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 従来出しておりまする見通しが、もうほとんど毎年のように修正されているということはおっしゃるとおりでございますが、これがいわゆる計画経済をやっている国でございますと、まさにおっしゃるとおり大臣責任になってまいりますわけで、諸外国の例を見まして、西欧の国では必ずしもそういうところまではいっておりませんけれども、だからといって、それがいいことだという気持ちは毛頭持っていないわけでございます。  私ども、最近の物価の動向については非常に心痛をいたしております。はっきり申し上げて非常に心痛をいたしておるのでございますが、四十七年度に関する限り、御承知のように、消費者物価は五・三%、これが大体それ以下でおさまりましたわけでございます。卸売り物価のほうが二・二%、これが三%程度になりましたが、さて四十八年度は、御承知のように、五・五が消費者物価で、二・〇というのが卸売り物価でございます。これは非常に情勢が悪いわけでございまして、何とかして私どもはこの目標に近づけるように努力をしていかなければならない。目標を達成できるように年間を通じて努力していかなければいかぬ。それには相当の金融引き締めもやり、財政の支出時期の調整等もやって、それから他の委員会で御審議をいただいておりまする買い占め売り惜しみ等に関する規制措置、あるいは行政指導というものをもっと強化してやってまいりまして、相当な努力をしなければならぬと思います。  ただ、私は思いますることは、私ども統制経済をやっておるわけではございませんけれども、一度立てた目標閣議で決定したならば、とにかく全力を合わせてそれに合うように経済運営の基本をしていかなければならぬと思います。その点は非常に重要でございまするが、それにつきまして、やはりこうした物価局というものを設けていただきまして、そして物価というものに対してこの省が責任を持っているのだということにしていただくことによって、いままでよりよほど前進が見られるのではないかと思っております。今日、御承知のように、国民生活局ということで消費者行政というものが中心になって、そこに物価をくっつけて物価政策課というものがあるわけでございます。それをもっと独立さしていただきまして、非常に木原委員のおっしゃることも理解できますし、これが人数ももっと持って、そしてもっと強力なものにならなければいかぬじゃないかということもよくわかりますわけですが、この際はこれで出発させていただいて、そしてこれを基礎にして、ほんとうに日本のやっている物価行政というのはこれだけのもので、外国から見ても非常に手本になるものだというところまで持ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  21. 木原実

    木原委員 私は、行政権威を持つためには、やはり責任の所在を絶えず明らかにせなければならぬと思うんですね。物価の問題は、もちろん政府全体の問題でもございますし、主として内閣全体が背負うべき責任の所在というのは大きいと思うんです。ただ、物価が上がりましてどうにもならなくなると、経済企画庁何をやっているんだというようなかっこうになってくる。そういうことも勘案いたしますと、せっかくこういう機会でございますから、長官の決意としても、たまたま私は物価上昇率の見通しの問題について触れましたけれども責任のある官庁が、たとえ計画経済などやっていようといまいと、特に閣議で決定をして目標を出すわけですから、それが狂ったという場合には、少なくともその責任の所在は絶えず明らかにしていく。そういうものが伴いませんと天気予報と同じことで、いろいろデータを集めてやったんだけれども雲の動きがちょっと変わったのだ、これではもう第一信用しなくなりますわね。ですから、もし上昇見通しが一%狂ったら局長がやめる、二%狂ったらお互い坊主になるわけにはいきませんけれども長官責任をとる、三%上がったら内閣が辞職をするんだ、こういうようなはっきりしたものを出せば、なるほどこの数字はあだやおろそかにならぬ、こういうことにもなると思うんですね。そういうものがなかった。この間出ました七項目の物価対策の末尾に、責任体制を明らかにする、こういう何か文言がございました。私はけっこうだと思うんです。ただ、やはりそういう際に、具体的に、われわれはいつも職を賭してこの数字にかけているんだと、少なくとも数字をつくるという機能を持つ官庁ですから、権威を持たせるためには絶えず責任を明らかにしていく。そういう姿勢がないと、これは繰り返すようですけれども、せっかく物価局ができましても、まあまあよきに扱われてしまうんです。なかなかしたたかな行政分野があるわけでございますから、しかも端倪すべからざる経済の動きの中で一つ目標を立てて、国民がその数字を見ながら自分の経済活動をやっていく、あるいは政府やその他の機関もやっていくわけですから、やはり権威を持たせるためには責任の所在を明らかにしていく。この姿勢がなければ、せっかく物価局ができましても何か必要なときにだけアクセサリーに使われて、そうして実際の機能は適当に聞きおかれる、こういうことになりはしないかという心配があるものですから申し上げておるわけですが、責任論について、くどいようですが、長官の見解を承っておきたいと思います。
  22. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 たいへん私はある意味で思いやりのあるおことばだと考えております。確かに経済企画庁というのは、もっとほんとうに国民の理解とある意味の尊敬をかち得るためには、やはりここの言うことがほんとうに責任を持たれるということが、うらはらになきゃならないと思います。  実は七項目の当面の物価対策をきめる際にも問題になったことでございますが、木材の値段が三倍にもなってしまう、そしてそのことを担当していた人が、いつの間にか栄転してほかに行ってしまうということでは、とてもどうにもならぬじゃないかということでございまして、やはり信賞必罰というのがすべての行政根本であると考えております。これはもうおことばはそのとおりに、私はありがたくちょうだいしたいと考えておるのであります。ただ、坊主になるほうは、これはいとたやすいことで、私などは初めから坊主でございますから。これは冗談でございますけれども、とにかく責任を持たなければいかぬ、これはもうまさにそう痛感いたしております。  実は個人的なことを申し上げて恐縮なんですが、私はこのごろ新聞の字づらを見るのがほんとうにつらいのでございまして、物価値上がりというものに対して、国民がこれをどう受け取っておられるか、この問題の責任官庁を主宰している私の立場というのは、ほんとうにそれはつらいものだということを実はしみじみ思っておりますので、何とかしてひとつこれに立ち向かいたいと考えておることを申し上げさせていただきたいと思います。しかし、それにつけても、いかにも経済企画庁というものの立場が、ただ統計数字を述べて、こうでございますというだけであって、こうあるべきであるからこうしてついてこいというところは、実はあまりない。せめて物価局をつくって、物価に対しての総合的な調整権を得るということによって、幾らかでもこれ前進できると考えておる次第でございますので、どうぞよろしくお願いしたいと思っております。
  23. 木原実

    木原委員 これはもうぜひ、強く当たるためには、みずからの責任の所在というものを絶えず明らかにしていくという姿勢だけはとっていただきたいと思うのです。従来の経済企画庁は、私もいろいろながめていたつもりですけれども、せっかく物価局というものが出発をするわけですけれども、先が思いやられるという感じがいたします。  そこで、長官、先ほどもちょっとおことばがございましたけれども、四十八年度の見通しでございますね。五・五%というような目標を立てられた。しかし、どうも情勢はたいへんに暗いものがある。このままでいけば、数字の上だけからまいりましても、四十七年度末の卸売り物価その他のなだれ込みといいますか、ズレ込み、こういうものを考えましても、とてものことには五・五%のワクにはおさまりそうもない。ただ数字だけの問題ならいいのですが、これは御承知のように、生きものが動いているわけでございますから、私どもも、先の見通しについてたいへんに案ずることが多いわけなんですが、特にこの四十八年度の消費者物価の動向について、このままいけば一体どういうことになるのか。先ほどもちょっとお話がございましたけれども、この段階でもし五・五%という数字の問題を入れるとすれば、それに対する修正的な御意見も含めて、これからについてのおおむねのお見通し。対策はまた別にいたしまして、このままいけば一体どういうことになるのかということについてお考え方がございましたら、ひとつお伺いしたいと思います。
  24. 小島英敏

    小島政府委員 おっしゃるように、五・五%がなかなかきつくなっていることは事実でございます。最近、今度の消費者物価上昇というものは、分析してみますと、やはり卸売り物価からの波及というものが上昇の基本的原因でございます。しかも卸売り物価がこの間改定されまして、四十年基準から四十五年基準になったわけでございますけれども、前の指数の場合は、消費者物価の中で卸売り物価との共通品目というものを洗い出してみますと、約三十数%くらいでございましたのですが、今度の四十五年基準の卸売り物価の場合にはこれがかなりふえまして、四八%、CPIのウエートの中の約半分くらいは卸売り物価と大体共通の品目になっているということでございます。したがって、卸売り物価と消費者物価の共通品目でありましても、理論的には、卸売り物価が上がりましてから消費者物価に同じ品目で波及するにも、若干のタイムラグがあるはずなんですけれども、どうも最近、実情を見ておりますと、卸売り物価が上がるようなときには末端価格のほうも上げてしまう傾向が非常に強うございます。そういう意味で、最近の一つの特徴は、いま申しました消費者物価の中で卸売り物価の共通品目が非常にふえているということが一つ。  それからもう一つ、非常に消費者物価にとって遺憾な現象は、卸売り物価といいましても、生産財的なものもあり消費財的なものもあるのでございますけれども、最近、特にことしになりましてからの一、二、三月あたりの動きを見ますと、卸売り物価の中で、最もCPIに関係の深い繊維関係とか食料品関係、あるいは雑貨の関係、そういうものの上昇率が特に強いわけでございます。昨年あたりは、木材とか、特に前半は鉄鋼とかいうことでございましたけれども、最近、そういうことで、卸売り物価の上がり方の中が、消費者物価にとって非常に影響の大きいようなものが上がっている。そういうような事情から、最近やはり消費者物価に対して非常に波及が早くなってきておる。昔の分析ですと、大体一年から一年半くらいかかって最も相関性が高くなるという分析がございますけれども、最近はかなりその状況が変わってきておりまして、相当早目に卸売り物価から消費者物価に波及しているということであろうと思います。  したがいまして、今後消費者物価をどう考えるかといいます場合に、やはり基本的には、一体卸売り物価の動きがどうなるかということがまず重要な問題でございますけれども、これは幸いというと語弊がございますけれども金融引き締めが相当強力に行なわれて、四月に入りましてから、いままでの卸売り物価上昇の基本原因でございました幾つかの問題品目につきまして、特に繊維原料等が中心でございますけれども、ようやく反落の動きが見え始めてきております。したがいまして、おそらく卸売り物価の動きの中におきましても、四月以降は、ほかにもまだじりじりと上がっているものがありますから、卸売り物価全体が総合として反落に転ずるかどうか、まだ予断を許しませんけれども、少なくも、いままで非常に上昇していたものがかなりの反落を見せておりますから、卸売り物価全体としても次第に横ばいに近づいていく。状況によっては多少弱含みに転ずるという可能性もないわけではございません。卸売り物価につきましては、どうやら四月を峠にいたしまして、いままでの急上昇基調というものは相当大幅に鎮静化していくというふうに思います。したがいまして、これが多少のタイムラグを伴って消費者物価にも反映していくということが予想されるわけでございまして、特にこの二月、三月あたりの消費者物価の急上昇というものは、全体的に、秋になると衣料が上がるというような、何となくもう先行き物価高必至である、したがっていまのうちに買い込もうという、消費者の中にすらいわゆる買いだめ心理というものが働いて、それが消費者物価上昇をさらに促進して、そういう価格の上昇を可能にしたということもいなめないわけでございまして、この辺はやはり、卸売り物価自身が落ちついてまいりますとそういうムードも鎮静いたしますし、二、三月のようなCPIの上昇は——四月は、これは季節的に毎年かなり上がる月でございますし、特に今度のストの影響等もございますので、四月の上昇は避けるわけにいかぬと思いますけれども、それ以降は、卸売り物価上昇に対して、多少のタイムラグを伴いながら、いままでのような上昇率は鎮静していくというふうに期待しております。  あと、やや長期的には、やはり今後の賃金上昇率の関係とか全体の景気の動きとかいうものによって、本年度下期以降の動きは変わってくると思いますので、現段階は五・五%が非常にむずかしいことは事実でございますけれども、何としても私どもは、まだ年度に入ったばかりでございますので、あらゆる努力を払いましてこの目標を達成いたしたいというふうに考えている次第でございます。
  25. 木原実

    木原委員 認識の問題、考え方の問題でございますが、私どもの記憶では、かつて、なくなりました池田総理が、消費者物価は上がっても卸売り物価は落ちついているからインフレじゃございませんよというようなことが、ずいぶん政治的な御発言としてございました。いま局長の話の中でも、卸売り物価から消費者物価に対するはね返りのテンポというものが何か非常に早い感じがするわけですね。おっしゃいましたように、半年とか一年とか、こういうテンポで卸売り物価の動向というものが消費者物価のほうへはね返っていくのが、何か見ておりますともうすぐはね返っている。材料高はすぐ製品高、あるいはまた関係するのがテンポが非常に早くなった。それからまた、何か循環をしているという感じがするわけですね。ですから、たとえば、最近、材木なら材木が反落の傾向に転じたというのですが、一方パルプなんかが上がっている、紙が上がっている、こういう関係がすでに出ているわけですね。そのほかにも、御案内のとおり、もっともっと、根本的といいますか、むずかしい問題がたくさんあるわけですね。アメリカとの関係でいえば、やはり一種の輸入インフレでないかというような議論もございますし、これはこれでたいへん大きな問題がある。さまざまな、少なくとも新しい要因、通貨問題なんかにあらわれているような、物価を押し上げていく新しい要因というものが次々にあらわれてきている。そのいずれについても、全然手を打っていないとは申しませんけれども最初の話に戻るようですが、どうも対応策というものが後手になっているか、足踏みをしている、そういう側面があるわけですね。あるいはまた、そのほかに、この間成立をいたしましたことしの予算にいたしましても、たいへんな大型予算。われわれは、明らかにこれはインフレ促進予算だ、こう断定をいたしましたけれども、それの執行上の問題もあるというようなことを考えますと、現状というのは、単なる物価高というようなカテゴリーでおさまらない、一つのテンポの早いインフレの段階になって進んでいるんではないか、こういう考え方があるわけですけれども、いかがですか。これはことばの問題として、物価高であろうとインフレであろうとどうでもいいことですが、現状の認識について、これはやはりただならぬインフレ症状の中に突入をしているんだ、こういうふうに私どもは認識をしたいと思うのですが、いかがですか。
  26. 小島英敏

    小島政府委員 インフレの定義がなかなか問題でございまして、一番シビアな定義をいたしますと、要するに、金を持っているよりも物を持っているほうが有利だということで、いわゆる換物、通貨の信認が完全に失われるような事態が、おそらく一番シビアな意味におけるインフレの定義だと思います。最近、換物の動きが出ていることは事実でございますけれども、やはり何でもかんでも物を買おうというところまで行っておりませんで、繊維品なんかについても、秋になるとせびろが上がるという話だから何着も買っておこう。結局、原料が高くなっているようなものについて製品を買いだめしようということでございますので、通貨の一般的信認が失われているということではないわけでございます。その意味では、シビアな意味におけるインフレではないと思いますけれども、毎年こういうふうに物価上昇しつつあるということは、非常に広い定義に従えば、インフレ傾向に入っているということも否定できないわけでございます。  したがって、今後の問題でございますけれども、それじゃ継続的に卸売り物価もどんどん上がっていくのかと申しますと、これはやはりそうではございませんで、日本の卸売り物価というものが、非常に景気動向に支配されるという性格がはっきりしております。したがいまして、昨年からことしにかけまして非常に景気の上昇が急テンポでございましたから、卸売り物価も非常に急テンポ。これは先生おっしゃいますように、輸入インフレ関係とか思惑の関係もございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、これが一本調子で上がるというものではございませんで、むしろ、フロートの影響とか金融引き締めの影響とかが、今後次第に顕在化してまいると思います。そういう意味で、逆に景気の下降を心配する声も一部にあるわけでありますので、一本調子のインフレというふうには私ども思っておりません。
  27. 木原実

    木原委員 インフレの定義については、これは評論家や学者にまかしておけばいいことなんですが、しかし、事実上われわれが直面しておる状態というのは、この定義のいかんは別にいたしまして、少なくともわれわれが過去にさまざまな物価高という現象に悩まされてきたわけですね。しかし、新しい要因といいますか、国際的な環境を含めまして、新しい要因というものが次々に起こってきている。それがマイナスに働く部分ももちろんあるわけですが、どうしても加速度をつけるような傾向が非常に強くなってきている。そこを一番心配をするわけです。  そこで、これは長官一つばかりお伺いをしたいわけですが、新年度の問題、われわれもたいへん心痛する要因が多いと思うのですが、対応策ですね。いずれにいたしましても、異常な姿で物価上昇の姿がある、これに対する対応策、つまり物価政策根幹になる問題、幾つかあるような感じがするわけであります。個々の対応策の前に、大きくいって、物価を下げるために、くいを打っていかなければならぬというような問題が幾つかあるような気がするわけですが、そういう根本的な問題について、どういうくいを打っていったらいいのか、長官の御見解をひとつ聞かしていただきたいと思うのです。
  28. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 おことばに従いまして、個々の問題をしばらくおきまして、全般的な対策という点を四つばかり申し上げてみたいと思います。  まず第一番、根本論としていわれますことは、過剰流動性が今日非常にあるということ、それを吸収しなければならないということであると思います。そのためには、預金準備率の引き上げを二度やったわけでございますが、もう少しやってもよかったのじゃないかという反省はございます。ここへきて公定歩合を〇・七五引き上げまして、これが非常にききまして、だいぶ株価にも下落傾向が見られますし、あるいは商品相場等も暴落しております。卸売り物価も鎮静化しているという状況で、これは先ほど国民生活局長が申し上げたとおりの状況が見られておるわけであります。こういうことならもう少し早く十二月ごろやればもっとよかったのじゃないかという向きはございます。しかし、これは私ども反省しておるわけでございます。  もう一つは、国際化の時代であるということでございます。これはいま為替がフロートしておりますのですが、過剰流動性を生み出すもとは、一昨年の八月に固定相場を維持しようとしてドルを大量に買い込んだところに問題があるわけでございますけれども、今日はそういうことをする考えはございませんで、やはり実質に従って円を変動さしていくという考え方、これはある意味におきますと物価調整になるわけでございます。実質的な円の切り上げになりますので、物価調整になるわけでございます。海外の物価がそのままでおれば、これはまさに国内物価を下げる要因になると思うのでございますが、残念なことに海外の物価がみな上がっている。これはことばの問題でございますが、海外インフレということばを使う。これは御承知のとおり、この問題は、しかし確かに下がる要因なんでございますから、できるだけ自由化をするという方向、あるいは非自由化のものについても輸入のワクをふやすというようなことで、たとえば先般も農林大臣が、牛肉輸入のワクを三倍にするということを言い出しまして、閣僚協議会で決定したわけであります。そういうようなものをたくさん選びまして下げていくという方向がございます。  もう一つの問題は、情報化社会であるということであると思います。先ほど、卸売り物価と小売り物価の関連性が非常に早くなったという点の御指摘がございましたが、これはやはり情報とも関連していると思うのです。あそこでこれだけ物が上がったから小売り物価がこうなるのがあたりまえじゃないかというような、そういう意識が働いていって物価を押し上げていくという点もあると思います。私ども、むしろこれは逆に使いまして、やはり政府として持っておる情報を流して、それによって、消費者はみんな物価は安いほうがいいのでございますから、消費者として物価引き下げに協力していただくという方向をとりたいと思っております。実は今日も、前月比あるいは前年同月比で下がっている物価というものを閣議で御披露いたしまして、新聞に申したのでございますが、みんな物価というものは上がるものだと思っておられる方が多いわけですが、下がっている物価もございます。たとえば食料品で申しますと、イワシとかイカというものは下がっております。それから野菜で申しますと、季節的にキュウリなんというものは相当出回り期で下がっております。この時期に高い白菜を買うよりはキュウリを買うほうがということもあるわけでございます。それから洋服なども、これは実に意外なんでございますが、せびろが前年同月に比べて安くなっておる。子供服もそうでございます。  そういうようなことは、国民の消費態度、これがやはり問題になると思うのでございます。何か、かつて消費というのを非常に奨励して、美徳とまで言った時代があるわけでございますが、私どもはやはり、資源というものは限りがあるものだ、そうして日本に資源がないのに外国から入れて、そして工業化すれば何でもできるのだという考え方は、これは誤りであって、そういうことを無理にすれば環境が汚染する。その意味で、環境との関係で考えれば、資源そのものが有害だし、資源は非常に限られたものである。そういう意味でみんな合理的な消費というものをもっと考えなければいけないということを私どもは申しまして、そして消費態度というものをもっと合理的にしていただく国民運動というものが必要ではないかというふうに思っておるわけでございます。  これは仮需要の問題とも関連いたしますが、この過剰流動性をなくする国内的な財政金融の対策と、それから国際化時代に沿うてインフレ問題を考えていくという対策と、それから情報化社会にさおさして、これを有利に展開、物価を上げない方向に持っていくという対策、この三本柱。それに、仮需要というものを起こさないような心理作戦ですか、そういうことも加えれば四つになるかと思いますが、そういう、国内、国外、そして国内の心理的な問題、この三本柱が当面考えられる対策ではないかというふうに考えております。
  29. 木原実

    木原委員 大いに議論をしたいところですけれども、私の時間もございますので、あれいたします。  お示しになりましたほかに、ことしの予算財政投融資を入れますと、二十兆という政府執行する金を持っておるわけなんですが、状況によりましては、年度の途中でありましても、たとえば、この減額修正をするとか、一部繰り延べをやるとか、さまざまな予算執行上の措置、これをインフレ傾向ないしは物価上昇の動向に見合わせて、一つ対応策としてやるような何か状況が生まれやしないかという感じがするわけですが、このお考え方はいかがでしょうか。
  30. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私ちょっとそれを申し上げるつもりで落としておりましたが、いわゆる過剰流動性対策の中に、財政金融対策としていま御指摘の点は十分考えなければならぬ問題だと私も考えております。たとえばセメントが不足する。これはセメントの生産はふえているわけでございますが、非常に需要が一ぺんに来ている。そこで、公共事業の施行の種類、たとえば災害対策というようなものは、これは待てぬものでございますから、すぐにやらなければなりません。あるいは東北地方のような、早く工事をやらなければ雪が来るようなところ、そういうところは早くやらせる。そうでないところは少し時期をずらすとか、そういうこともしなければならぬことだと考えております。全体の予算執行というものも、この景気の状況を見ながら考えなければならぬというふうに思っております。  それからもう一つは国債でございますが、国債が御承知のように二兆三千四百億、これの発行の時期を少し早めて、これによって過剰流動性の吸収策にもなろうかと思うのでございます。そんなことも考えるべきだと考えております。非常にありがたい御指摘で、そのとおりに私も思います。
  31. 木原実

    木原委員 イカが安くなったりイワシが安くなったりするということはたいへんけっこうなことですが、あわせまして、いま申し上げましたように幾つかの根本的な問題にメスを入れていかなくちゃならぬという、条件は非常に成熟しているといいますか、あると思います。それだけに、他の現業を持っておる官庁と違いまして、経済企画庁の役所の中で、財政金融や、あるいは予算執行についても、やはり必要に応じて適切な勧告をするなり、あるいはリーダーシップをとるなり、そういう問題があるやに考えられますから、いま申し上げたところでございます。  そこで、話が少し個別の問題に入ってきますけれども、たとえば土地の値上がりが異常な姿であるということは、御案内のとおりでございます。しかも地価の上昇というものはインフレとか物価高の諸悪の根源である、土地インフレじゃないかというようなこともいわれてすでに久しいわけなんですね。しかし特に最近、過剰流動性の分野かどうかわかりませんけれども、一方では土地買い占め、買いあさり、それがまた異常な土地の値上がりを示しておるのは御案内のとおりでございます。これにつきましては、税金上の対策その他ほかの分野で対策がないとは私は申し上げません。しかしながら、現実にはなかなか実効性のある有効な地価対策というようなもの、地価抑制政策というものがまだ出ていないのではないか、こういう感じがするわけでございます。非常にこれはこれ自体としてむずかしい問題なんですが、しかし、物価動向等を勘案いたしますと、この地価の抑制というものは、物価という観点から見ましても、もちろん避けて通ることのできない問題だ。こういうふうなことを考えますと、この段階で土地の値段の抑制という問題についてまとまったお考え方がございましたら、お示しをいただきたいと思います。
  32. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御指摘のように、土地問題は国民生活にとりまして基本的に重要であると考えます。ことに、若い方々が働いても自分の家を持つこともできないというふうに考えられることはたいへんなことでございまして、何としても土地の確保をしなければならぬと考えておりますが、最近の異常な土地価格の高騰は、基本的には土地の需要が一部の大都市に集中したということであろうかと思っておるわけでございます。その対策としては、人口、産業の配置の適正化をはかることによって、国土利用の偏在を是正することをしながら宅地の供給を促進すると同時に、投機的な土地取引というものを抑制するという対策が必要であるというふうに思っておるわけでございます。  そういう観点から、去る一月二十六日の地価対策閣僚協におきまして、三つの柱を内容とする今後の土地政策の大綱を決定したわけでございます。すなわち、一つは土地利用計画の策定と土地利用の規制でございます。第二は土地税制の改善でございます。第三は宅地供給の促進。この三つであるわけでございますが、私ども企画庁といたしまして、このうち特に土地利用計画の策定と土地利用の規制を内容といたしまする国土総合開発法の改正案、これは戦後、国土総合開発法をつくりましたわけですが、その改正案をこの国会に提案いたしておるわけでございます。これらの具体的な施策を早急に実施していくことが必要であるというふうに考えておるわけでございます。
  33. 木原実

    木原委員 時間の催促が参りましたので、私のほうで聞きたいことだけをお伺いしますので、よろしくお願いいたします。  それにいたしましても、たとえば例のNHKのあと地の売買をめぐりまして、異常な取引の値段が示されるというようなことがございました。ただ、一つだけ伺っておきたいのですが、公共の金をつぎ込みまして、たとえば海面の埋め立てをやる。それの払い下げ価格が異常に安いというのは、これはある意味ではいいことなんです。ところが、たとえば、私は千葉県に住んでおりますけれども、海岸を埋め立てまして、ごく最近の取引でも、実際に公共団体がそれを売り渡す場合には坪当たり八万円ぐらい。たちまちに二十万、三十万の形になっていく。これは売買が十年間できないということになっておりますけれども、しかし、少なくともそういう価格を呼ぶ状況があるわけですね。何か非常に矛盾を感ずるわけです。一方では押えなくてはならぬわけですから、われわれの税金を使って公共の仕事としてつくった土地、こういうものが安い価格で出るということについては、これはこれでいいのですが、しかし、そこに非常に矛盾があるわけですね。  だから私は、そういうことを勘案をいたしますと、土地の値段を下げていく、抑制していくためには、いまお話がございましたような案もいろいろございましょうけれども、具体的な問題として、たとえば公共の費用で造成をしたような土地。それからまた、ケースが違いますけれども農地のような場合、それを一かどの農地にするためにずいぶんと国あるいは公共団体が金をつぎ込んだ。そういうものがゴルフ場等に転用をされていく。いろいろなケースがあるわけですが、少なくともそういうようなケースを考えますと、やはり坪八万円で海面埋め立ての土地があるんだということになれば、これは一つの基準になるわけですから、思い切って基準価格を示していく。地価の表示制度というようなものがありますけれども、あれはただ自然の取引の公約数をとって表示するという形になっているのですが、思い切って国の段階で基準価格のようなものを示していく。それがほかのさまざまの土地政策と関連をして、相対的にうんと安い価格が土地の値段でございますよ、こういうような措置はいかがなものであろうか、これは私どもの党で考えているのですが、どんなものでしょうか。
  34. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 非常に御示唆に富んだお話を承りました。よく研究させていただきたいと思いまするが、専門の開発局長がおりますから御答弁させます。
  35. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 いま御提案いただきました基準価格の問題でございますが、今度国会で御審議いただきます国土総合開発法の中で、特別規制地域の地価のきめ方の問題が一つございます。これは、指定をいたしました時期の地価、公示価格をそのまま凍結いたしまして、それを基準といたしましてある標準的な価格をつくりまして、それで決定したいという考え方を持っておりますので、御提案の基準価格の考え方と非常に類似しているものではないかというふうに考えているところでございます。  しかし、どういたしましても、いま御指摘いただきましたように、公共投資が盛んに行なわれますと、公共投資によります開発利益が周辺の土地へ出てまいりますので、基準価格を必ずしも固定することがいいかどうかというようなことについては、もう少し研究の余地があるというふうに存じております。それからまた、全国的に基準価格を設定するためには、やはり相当の時間と調査を要するのではないかということがございまして、そのために、緊急に地価対策を講ずるという観点からいえば、この間御提案いたしました国総法の特別規制地域をまず運営いたしまして、その上に立って適正な地価というものを検討してまいりたいというという考え方でございます。
  36. 木原実

    木原委員 これまた残念ながら時間がございませんが、別の法案の審議のときに少し議論をいたしたいと思います。  最後にもう一つだけ伺っておきたいのですが、例の公共料金の問題でございます。これもずいぶん論議が久しいわけでございます。この公共料金の抑制をしていくということですね。一般的には政府のほうもおそらくそう言うだろうと思うのです。しかし現実にはなかなかその限界が設けられない。公共料金についての考え方を伺いたいわけなんですが、具体的に公共料金を考える場合に、もうすでに、従来の独立採算制、受益者負担、こういう原則は現実の問題としてもくずれ始めているというふうに私どもは認識をしているのですが、従来、公共料金の問題の一つのささえになっておりました受益者負担の問題独立採算制の問題、これについてのお考え方はどうでしょうか。
  37. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 公共料金につきましては、真にやむを得ざるもののほか極力これを抑制するという方針をとっておりますことは、御承知のとおりであると思います。そこで、公共料金は本来の特定のサービスの受益対価としての性格を有しておるものでございますから、負担の公平や資源配分の適正化の観点から、受益者負担、独立採算制という基本原則は維持すべきものであると考えております。  ただ、これまで、たとえば国鉄のように、その性格に応じて所要の財政措置を行なうなど、原則が若干修正されておるものがありまするほかに、新たに社会的費用の内部化、すなわち、従来、社会的費用というものは企業以外で持つべきであると考えておったものを、やはり公共企業体それ自身が持つというふうなこともございますし、開発利益の還元等の問題も生じておりますので、これらによる原則の修正について今後検討してまいりたいと考えております。
  38. 木原実

    木原委員 これは長官、もう少し突っ込んだ御意見を実は伺いたいわけなんです。これ自体またただならぬ状態でございますね。ほかの委員会で御案内のとおり国鉄運賃の問題がかかっておりますけれども、あの再建案、あの運賃の上げ方を見ておりましても、これはもうどうにもならないということが先に立ちます。  これについても、いろいろと意見が私どもにもありますのは、あれでいきましても、十年たっても依然として借り入れ金があり、たいへん大きな累積赤字が残るような側面があります。その反面、御案内のように、利用者に対しましての四次にわたる値上げがやはり想定をされておる。特に物価との関連で、はたしてこういう形でいってよろしいんだろうかという疑問があるわけですね。あるいはまた他の分野で、たとえば東京の地下鉄営団等の駅舎であるとか固定をした施設等については、国でひとつ財源を見てもらいたい。そして東京都の答申なんかによりますと、運用の分だけについて企業体でやっていくんだ、こんな考え方が出たりなんかいたしておりまして、実際問題として国の援助も行なわれ始めておるという姿があるわけです。ですから、原則はなかなか曲げられない側面があるでしょうけれども、現実の問題としては、特に物価関連の問題その他から考えまして、独立採算制、受益者負担という原則は、確かに原則は存在しておりますけれども、事実問題としてはもうすでにくずれ始めている。くずれ始めているのならば、やはり新しい公共企業体の運営のあり方を、あるいは原則を検討していく時期に来ているのではないか。そうしませんと、先ほどの問題に返りますけれども、来年度の物価動向の展望を考えましても、どうもやはり公共料金というものが避けて通れない問題として出てきている。政府の手の届くところにある問題が、これまた物価を引き上げていく要因になる。過去に問題になりましたことの同じ繰り返しをこういう状況の中でまたやるのか、こういう印象を免れないわけなんです。したがいまして、私は原則論をあれこれするわけじゃございませんけれども、しかし、この段階で公共料金のあり方という問題についてはやはりきびしく検討していく時期に来ているんではないのか、こういう考えを持つわけですが、再度お考え方はいかがでしょう。
  39. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 公共料金というものは安いほうがいいと私も思いますのですけれども、やはりこれも人件費、物件費等と無縁のものでございませんものですから、これについては、できるだけ安くするために国の負担をふやしていくということは、今度の国鉄の再建計画にも見られておるところなんでございます。ただ、あまりむやみに押え込みましても、結局サービスへのはね返りということもございますし、あれこれ私も非常に苦慮いたしておりまするが、原則原則として、しかし原則が若干修正されているという点は現実にあるわけですから、どこまでそれをするかという程度の問題ではないかとも思います。そういう点も勘案いたしまして今後の問題は十分考えてまいりますが、他の委員会で御審議をいただいております国鉄の再建計画の問題は、これはぜひお願いしたい、こう思っている次第でございます。
  40. 木原実

    木原委員 時間が過ぎておりますので、これでやめますけれども、最後の公共料金の問題につきましては、従来も論議がございました。そしていままた、形としては同じような議論をやらなくてはならないわけですね。国鉄運賃につきましても、昨年もさんざんやりまして、ことしもまた同じ問題についてやらなければならない。しかも昨年より四十八年度のほうが、はるかに物価動向というものが深刻になっている、こういうような事態もあるわけなんです。ですから、その部面についていえばいろいろあるでしょう。しかし、それこそ物価動向全体の観点から考えますと、何かやはり従来の型にこだわり過ぎて全体を見失うようなことがあってはいけないのではないか、こういう感じがするわけであります。  それからもう一つだけ伺っておきたいのですが、物価の問題につきましては、たとえば物価安定政策会議あるいは懇談会、こういうようなところで、その時点その時点で、野党のわれわれからすればかなりもの足らぬところがありますけれども、少なくとも政府部内からすれば、かなり適切な提言なりあるいは進言なりというものがあったと私は記憶をしておるわけです。いまの公共料金の問題につきましても、私の記憶では、もう三年か四年前に、いま申し上げたような、受益者負担、独立採算制というものについて再検討の時期に来ているのではないかという答申があったと記憶しておるのです。しかし、そのことを含めまして、従来、政府関係をするそういう機関から適切な意見が上がってきても、残念ながら一向にこれが実現をしていない、こういう側面があるわけなんです。  ですから、最初の問題に返るわけですけれども経済企画庁行政全体の中であまりにも力がなさ過ぎるのじゃないか。いい案が部内から出ていても、それを政府の施策として実現をする能力に欠けていた、こういう思いを新たにするわけでございます。したがいまして、物価の問題については、ある意味では論議が終わっておる、個々の対策についてもそれぞれ案がないわけじゃない、やるかやらないかという側面の問題がかなりあるというふうに私は考えるわけなんです。やはり国民の生活に一番関係の深いのは物価の問題。お互い選挙をやる身ですけれども政府自身が国民にアンケートを求めた。いまの政治に何を一番望みますか、こういうアンケートを出しましたところ、実に六割以上から、物価を何とかしろ、こういう回答が来ておるわけですね。国民の声なんです。まあどうせたいしたことは期待ができないから、せめて物価でも下げろという気持ちもあるかもしれません。しかし、いずれにいたしましても、この物価の問題、引き続きそういう国民の強い期待があり、希望があり、それからまた状況が非常に深刻になってきている。そういう状態の中でこういう設置法が出てきているのであえて申し上げるわけですけれども、従来も案がなかったわけではない。従来もそれぞれの施策の方向がなかったわけではない。一向にそれが実行されていなかった。公共料金についてもしかりと私は申し上げたいわけなんです。  そこで、お伺いをしたいわけなんですが、そういう従来のさまざまな積み上げその他の問題を含めて実行に移していく、その突破口になる問題は目の前に幾つかあると思うのですが、せめて公共料金などについては、政府の決断でできることですから、思い切って従来の型を離れて再検討をしていく、こういう心がまえを持って、まず近いところから実行に移してもらいたい、こういうふうに考えるわけですが、いかがでございましょう。
  41. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御意見のあるところはとくと拝聴いたしました。
  42. 木原実

    木原委員 それでは、これで終わりたいと思います。
  43. 三原朝雄

    三原委員長 木下元二君。
  44. 木下元二

    ○木下委員 先ほども触れられましたけれども、昨年十一月に行なわれました多くの世論調査を見ましても、政府にやってもらいたいことの第一位は物価の抑制ということになっております。これだけ物価問題というのは、国民にとってますます深刻な問題になっておるわけであります。  この十年間に消費者物価の値上がりは、政府の統計によりましても二倍近くになっております。その上、年々、いや日々この値上がりはひどくなっておるわけであります。日銀が先日発表しました三月の卸売り物価の動きを見ましても、三月の総平均指数で一〇九・六、これは四十五年を一〇〇とした指数でありますが、これは前月比一・九%高騰ということであります。これは戦後の混乱期を除きますと、昭和三十一年九月のスエズの動乱時と並ぶ最高の上昇率であります。卸売り物価は、昨年二月以来、実に十四カ月の連続高騰、特に田中内閣発足以来、一段と騰勢を強めておるのであります。  政府予算つくりのときに、インフレを抑制するとか、円の再切り上げを回避するとか、大みえを切って言われたわけでありますが、歴代自民党政府インフレ政策によりまして、国民生活は圧迫されてまいりました。自民党は昨年の総選挙の際に、物価の安定を国民の前で公約したはずでありますが、国民に対する責任大臣はどのようにお考えになっていられるか、所見を承りたいと思います。
  45. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私も何回か選挙をいたしまして、選挙のたびに物価の問題が非常に火急の問題であるということは身にしみておるわけであります。一方におきまして、私どもは非常に完全雇用ということを重く見ておりまして、この政策は幸いにいたしまして一応達成されておる。今日有効求人倍率が一・六七というのも、これまた数字では戦後最高といいますか、こういう統計資料始まって以来の最高を示しておるわけでございます。やはり一億それぞれ職を得てその途に安んずるということは、また別の面からいいますと消費購買力がふえておるわけでございます。  できるだけひとつ物価を安定させるということは、先ほどもいろいろな点で一時間近く申し上げておったわけでございますが、そういう施策を考えて努力いたしておりまして、私の責任においても、何とかひとつ物価の安定を招来しなければならぬ、かように存じておりまする次第でございます。
  46. 木下元二

    ○木下委員 田中内閣が発足をしまして約九カ月、内政面で目立ったことをやったと申しますと、公共料金を次々と引き上げてきたのであります。まず発足早々の昨年七月二十二日には、田中内閣最初の仕事としまして、営団地下鉄、それから四大市営交通の運賃値上げをそのまま承認をいたしました。それに引き続いて消費者米価の八%引き上げ、さらに国立大学授業料の三倍値上げ、こういうふうに国民の声を無視しまして実施をしてきたのであります。  これらの公共料金の大幅な無責任な引き上げがほかの物価にもはね返ってきております。そして全体の物価を引き上げる結果になっておることは、もう私から多くを申すまでもなく、明らかなところであります。今日まで政府物価をつり上げるためにいろいろ施策をやってきた。しかし、物価を安定させるための効果のある具体的な施策はとってこなかったと思うのです。この点はどうですか。これからのことを申します前に、これまでの問題について伺いたいと思います。
  47. 小島英敏

    小島政府委員 昨年は実は、おっしゃるように、非常に公共料金を大幅に上げざるを得なかったわけでございますけれども、これは御案内のように、一昨年の暮れに、そのとき物価情勢に対応いたしまして、公共料金のストップをいたしましたしわが昨年に集中したためでございます。それから、いま御指摘がございました昨年下期における各種公共料金の値上げというものは、私ども感じでは、全体の物価に対して非常に大きな影響を与えているというふうに思っておらないのであります。好ましくないことではございましたけれども、やはり昨年後半以来こういう物価の高騰というものは、先ほど来お話に出ておりましたような、過剰流動性を中心とした需要面に一番大きな原因があるというふうに思っておるわけでございます。  それから、これまで政府がさっぱり物価安定のための具体策をとらなかったではないかという、きびしい御指摘でございますけれども、私どもといたしましては、やはりできるだけの努力をしてまいったつもりでございますが、やはり物価対策というものの正道と申しますか、一番の基本は、低生産性部門の生産性を向上させるということが基本であると思います。それともう一つは、先ほ来申しております総需要政策、二の二本がやはり非常に大きな柱であると思います。  低生産性部門の生産性の向上のためには、毎年相当の予算を計上いたしまして、国としてお手伝いできるところを極力やっていこうということで努力をいたしております。その関係予算も年々かなりの勢いで伸びておりまして、最近、野菜の問題というのが、だいぶ前に比べますと、相変わらず波を描きながらも、かなり安定してきております。ここ一、二カ月はちょっと端境期で上昇しておりますけれども、長期的には前に比べますとかなり安定しておりますが、これは一番大きな原因は、昨年あたり天候が非常によかったということもございますけれども、やはり農林省を中心に、いろいろ指定産地というようなものを進めたり、あるいは価格の補てん事業を始めたりというようなことで、昔に比べるとかなり生産者が安定した段階で野菜生産が行なわれるというようなことが非常に大きく響いているというようなことでございまして、そのほか、流通関係もいろいろ物的な近代化が進められておりますし、低生産性部門の生産性向上ということにつきましては、それ相応の効果が出てきておるというふうに思っております。  それから需要に関しましては、先ほど来お話ございましたように、特に今回の場合は、やや総需要の調整がおそきに失したという御批判があるわけでございまして、私どももこの点は遺憾であったと思いますけれども、長期的に見ますと、やはり日本の景気対策の観点から、財政面あるいは税制面、あるいは金融面を通じて、総需要の調整がほぼ適切に行なわれてきたと考えていいと思います。  そのほか、競争条件の整備、これもやはり独禁法の厳正な運用ということを通じて、まあときどき、たとえば不況カルテルなんかで多少甘過ぎたじゃないかという御批判があるわけでございますけれども、大筋におきましては日本の産業社会というものは、ほぼ競争的な条件を維持してきておるというふうに思います。  そのほか、こまかい点いろいろございますけれども、輸入の問題、これもやはり、供給をふやすという点を通じまして物価対策の非常に大きな柱でございまして、これは特に、ごく最近におきましては、自由化もかなり進み、残存輸入制限品目につきましても、輸入割り当てを大幅に拡大するということも先日きめていただいたわけでございまして、先生方から見ますれば、まだ不十分だという点がいろいろあるかと思いますけれども、私どもといたしましては、できるだけの努力をしてまいったつもりでございます。
  48. 木下元二

    ○木下委員 先ほど、公共料金の引き上げを昨年来いろいろやってきたけれども、それは物価の一般の値上げにはそう影響を及ぼしていないというふうなことを言われましたけれども、それはどういう根拠に基づいて言われておるのでしょうか。ただ単なる推測、想像でしょうか。
  49. 小島英敏

    小島政府委員 CPIに対します影響を寄与率ということで計算いたしてみますと、昨年の場合の営団地下鉄の運賃の引き上げというものは、四十七年度全体に対しまして〇・〇一%CPIを引き上げたことになっております。同じような計算で、六大都市の公営交通の運賃は〇・〇四%、それから米穀の政府売り渡し価格の寄与率が〇・一四%。以上をトータルいたしまして〇・一九%、大体〇・二%くらいの影響でございます。もちろん米なんかの場合には、米の売り渡し価格が上がりますと、何となくその他の物価に対しましても心理的に影響するというようなことは否定できませんけれども、これはなかなか計算ができかねるものですから、私どもの計算からははずしておりますけれども、少なくとも直接的な影響といたしましては、まあ〇・二%くらいの影響というふうに考えております。
  50. 木下元二

    ○木下委員 寄与率というふうなことで数字を言われましたけれども、あなたも言われましたように、心理的な、あるいは社会的な影響というものは私は非常に大きいと思うのですが、そういうものについてお考えにならずに、ただ影響が少ないんだということでは私は困ると思います。  それから先ほど、物価安定の基本は低生産性部門の生産性向上にあるということで、そういった対策をこれまで講じてこられたように言われ、そしてまた効果があったように言われましたが、ごく一部の品について物価が上がらなかったとしても、全般的な物価の値上がりというものは、これはもうだれしも否定できないと思うのです。だから、いろいろ努力をして物価安定の施策を講じてきたかのように言われますけれども、現実には物価は安定しておりません。全般的には騰貴をしておる。だから結局このことは、私が初めに聞きましたように、物価安定の効果的な施策はとられてこなかったということになるのではないか。あるいは、そういうことはいろいろ努力をしてやったとすれば、施策は講じたけれども、ほとんどことごとく失敗したということではないのか。私はどちらかだと思うのです。違いますか。
  51. 小島英敏

    小島政府委員 なかなかこの物価問題と申しますのは、日本のみならず先進国共通のいま最大の問題でございまして、日本の場合には、いままで比較的卸売り物価が安定しておりました点では、むしろ外国に比べますとインフレーションの問題について有利な状況だったわけでございますが、消費者物価につきましては、毎年おっしゃるようにかなりの上昇が続いてきたことは事実でございまして、たいへん遺憾に思っておるわけでございますけれども、これはあらゆる政策が効果を全然及ぼさなかった結果だと言われます点はなかなか問題でございまして、政策の効果というものは、物価が下がったということでございませんで、もしそれがとられなかった場合には達したであろう物価上昇率に対して、どのくらい下がったかというところに政策の効果がはかられるわけでございます。ただ、そう申しましても、それじゃ物価政策が何もしなかったらどれだけ上がったのかと言われますと、これはとうてい計算できないのでございますので、たいへんわれわれもつらいところでございますけれども、しかし何もしなかった場合に比べますと、やはりかなり効果をあげているというふうに確信いたしておるわけでございます。
  52. 木下元二

    ○木下委員 もう少し具体的に聞きますが、このたびの法律の改正で経済企画庁物価局を設けるということであります。これまでは国民生活局というのがありまして、この改正によりましてもこれは残るわけでありますが、この国民生活局で、物価に関する基本的な政策の企画とか立案、あるいは総合調整を行なっていたと思うのです。新しくできる物価局というのも、この国民生活局が行なってきたこととほぼ同様のことをやることになるのだと思うのです。で、一体それではこの国民生活局は、これまで実際に何をしてきたのか。この法律ではこういうふうにきめられておっても、実際には何をやってきたのか。あまり物価の引き下げ、物価の抑制に効果のあるようなことをやってきたとは思われないのでありますが、そうすると、新しくできるこの物価局も、まあいろいろ言われましたけれども、あまり期待できないのではないか、こう思われるのです。  そこで伺いますが、国民生活局がこれまで一体、事、物価問題についてどういうことをやってきたのか、役割りを果たしてきたのか、伺いたいと思います。
  53. 小島英敏

    小島政府委員 先ほどの物価対策の体系に即して申し上げますと、一つはやはり総需要の調整ということでございまして、これはそのときどきの景気情勢をにらみながら、これは生活局だけのもちろん任務ではございませんけれども、生活局として、こういう段階では総需要はどうあるべきかということを庁内にはかる。もちろん、調整局あるいは調査局等もそういう仕事を持っておりますので、庁内の意見総合して企画庁から外に向かってものを申すということになるわけでございますが、その面でまず一つの役割りがございます。  もう一つは低生産性部門。先ほど申しましたが、主としてそういう部門の近代化を促進するための努力でございます。個々のものにつきましては、もちろん各所管官庁がございますので、翌年度の予算の要求をいたします場合には、原案はすべて各省から出るわけでございますが、これが非常に膨大なものであり、優先順位がなかなかつけにくいということもございますので、大蔵省に対しましては、企画庁の段階で、物価関係予算ということで中途で取りまとめをいたしまして、特に来年度の要求の中ではこれとこれが非常に重要であるというランキングをつけまして主計局に話をする、そういう形で各省大蔵省の間の予算折衝に関しまして、一つの指針と申しますか、物価観点から見たメルクマールを与えるという仕事をいたしております。  それから、あと、やはり公共料金の問題といいますのが非常に重要な仕事でございます。公共料金というのはたくさんございますけれども、ランキングに応じて、非常に重要なグループから非常に軽微なグループまで分かれております。一番重要なグループにつきましては、これももちろん所管の省庁が公共料金についての値上げの査定をするわけでございますけれども、その場合に、必ず経済企画庁の協議を経まして閣僚協議会に上げまして、そこの了解を得てから実施をするということになっております。その次に重要なグループにつきましては、閣僚協までは上げませんけれども経済企画庁の協議を経ないと料金の改定認可は行なわないという約束ができておりまして、これも実質的に経済企画庁の協議が行なわれて同意いたしませんと、各省がそういう権限を行使しないということになっております。その次のグループになりますと、そこまでのものではございませんということで、各省独自の立場で認可をいたしまして、これを企画庁に報告をするというような形のものもございます。そういうことで、公共料金につきましては、かなり実質的に経済企画庁国民生活局の判断というものが反映されているというふうに考えております。  これは経常的な仕事でございますけれども、そのほか、今回のように物価情勢が非常にただならぬ状況になってまいりました場合には、これは相当準備期間が要りますが、総合的な物価対策というものの案をつくりまして、これを各省にはかりまして、その間にいろいろ折衝がございますけれども、最後に閣僚協議会で今回行ないましたような形の総合的な物価対策ということで打ち出して、それを監視してまいるということを非常に重要な仕事として行なってきたところでございます。
  54. 木下元二

    ○木下委員 いろいろ言われましたけれども、新しくできる物価局は、法文上から言いますと、国民生活局のやっておった仕事の内容とほとんど変わらぬわけでありますが、この物価局も、いまあなたが言われたような、これまでの国民生活局の仕事を同じように引き継いでやるということで、特に目新しいものはないわけですか。
  55. 小島英敏

    小島政府委員 現在の国民生活局は、その中に物価政策課というのがございまして、そこは実は課長以下二十名の定員でございます。したがいまして、いままで申しましたような仕事をこなします上にも非常に能力が不足いたしておりまして、毎日戦争状態のような執務を続けておるわけでございます。それが、今度御審議いただいております案によりますと、局長のもとに三つの課に分けまして、物価政策課、物価調整課、物価調査課という形で、全体といたしまして三十三名。決して十分な陣容とは申せませんけれども現状と比べますと、かなり拡充された形で体制を整えることができるというふうに思います。そして、その三つの課によって仕事の分担を明確にして、若干生じました余裕を通じて、いままでに、いろいろやりたいと思っても、手不足の関係でできませんことが山積しておりまして、たとえば物価モデルの開発などというのも、非常にやりたいにもかかわらずなかなかできなかったことでございますし、そういうような問題を含めて整備いたすということが一つでございます。  それと、もう一つは、やはり先ほどお話に出ておりましたが、法律に基づく勧告権、あるいは各省に対する資料請求権とか意見具申権とかいう権限が、法律企画庁長官に認められることになりますと、従来からももちろん企画庁意見はいろいろ申しておるわけでございますけれども、こういう法律的なバックを得ますと、たとえ勧告しない場合でも企画庁長官発言力が非常に強くなるということは言うまでもないわけでございまして、それでも各省が合意に達しない場合には勧告権を発動するということが十分予想されるわけでございます。そういう意味からは、従来の企画庁発言力がこの法律の改正によりまして一般的にかなり強化されるということは、申して差しつかえないと思います。
  56. 木下元二

    ○木下委員 いま言われましたように、二十名から三十三名にふやして物価局に組織がえをするということでありますが、これまでやってこられた仕事の内容から見まして、私はどうもあまり多くの期待はできないような感じがするわけです。  それはともかくとしまして、いま勧告の問題を言われましたので少し伺いますが、この勧告というのはもちろん公表されるんでしょうね。こういう勧告をしたといって公表をするという前提でお考えになっておるんでしょうね。
  57. 小島英敏

    小島政府委員 新聞発表をする予定にいたしております。
  58. 木下元二

    ○木下委員 大臣に伺いますが、勧告というのは、これまでも、中身は少し違いますけれども、制度があったわけですね。「長期経済計画に関する当該行政機関の重要な政策及び計画の立案について勧告することができる」ということになっていたわけですが、これはこれまで発動されたことがあるのでしょうか。
  59. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 法律に基づく勧告というのは特にありません。
  60. 木下元二

    ○木下委員 それは最近のことでなくて、以前からそうですか。もうずっとそうですか。
  61. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 以前からであります。
  62. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、この制度ができて以来、この法律に基づく勧告は行なわれたことがないということですか。
  63. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 もちろん、計画でございますから非常に広範な問題を盛り込んでおりますので、各省の施策について、経済企画庁として計画に基づいていろいろの意見を言い、あるいは注文をつけるということはやっておるわけでございますが、この法律に基づく勧告というのは非常に重いといいますか、かどが立つ、そういったこともあろうかと思いますけれども法律に基づいて大臣から正式に文書で勧告するということはやったことがございません。
  64. 木下元二

    ○木下委員 これは私もよく知らぬのですが、この制度ができて相当期間経過すると思うのですけれども、何年になりますか。
  65. 宮崎仁

    宮崎(仁)政府委員 正確な年数は覚えておりませんが、大体十年くらいになると思います。
  66. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、この制度ができて以来、およそ十年ほど勧告というのは行なわれたことがない。それはもう企画庁というのがあるわけですから、事実上、いろいろ意見を申し出たり協議をしたりするのは当然のことなんです。それはもう事実の問題であって、そういう制度がある以上は、企画庁というものがある以上は、そういうことが行なわれるのは当然のことなんです。そういうことでなくて、この法律に基づく勧告というものがやられたことがない。それでこの改正案によると、先ほどから勧告勧告ということを何か非常に強調して言われるのですけれども、この勧告というのは「長期経済計画に関する当該行政機関の重要な政策及び計画の立案について勧告」、これが従前であります。今度の場合は「長期経済計画及び物価に関する基本的な政策に関する当該行政機関の重要な政策及び計画の立案について勧告」、つまり物価に関する基本的な政策ということが勧告対象としてふえたというだけのことなんですね。そうすると、この改正案の内容も、いま申しましたような事柄であって、ごく一般的な、抽象的な基本政策についての勧告でありますが、これまでも、幾らか内容は違っておりましたけれども勧告が一回もやられたことがない。これから一体これにそんな期待ができるのかどうか。これまでと同じように、この勧告制度というのは死文化するのではなかろうか、こう思うのですよ。特に基本政策について、これはもう先ほども言われておりましたけれども内閣としては一体的なものであります。この一体的な内閣が、そういった経済政策とか長期政策とかいったものについては、当然持っているわけですね。そういう問題についてあえて勧告をするまでもないと思うのです。だからこれまで十年間も勧告されたことがなかったわけですよ。だから私は、この勧告をする必要があるというのは、もっと具体的な問題だと思うのです。たとえば公共料金の値上げの問題が起こった場合、それについて具体的な問題が起こった場合に勧告をするとか、そうでなければ、そんな抽象的な、一般的な政策といったことについては、内閣でもうきまっているわけですから。そうじゃないでしょうか。そうでなくて、新しくこの勧告対象をふやしてこの制度を維持していくという意味が特にあるとすれば、伺いたいと思うのです。
  67. 小島英敏

    小島政府委員 一つは、計画の場合におきましても、発動しなかったから全然効果がなかったかというところに一つの問題がございまして、勧告権がなかった場合とある場合では、やはり発動する、しないにかかわりませず、企画庁発言力というものはそれだけ評価されているということがいえると思います。それが一つ。  それからもう一つは、これは行政一つのビヘービアと申しますか、まあ昔でございますが、あまり法律に基づく勧告というようなことを役所の間でやるというようなことが行なわれていなかったと思います。しかし、最近はかなりそういう行政手段というものが活用されるようになりまして、たとえば環境庁から運輸省に対して、新幹線の騒音に対して勧告というものが出されておりますし、かなりそういうものがひんぱんに行なわれるようなビヘービアになってきているということがございます。したがいまして、物価に関しましても、私どもといたしましては、勧告権というものをうしろに持っていて、そういうものを発動しないで済むように各省が機動的に適切に処置をして政策を立ててもらえば、これが一番望ましいわけでございますけれども、どうしても企画庁各省の間にその間の意見の相違があって思うようにいかないという場合には、これは当然法律に基づく勧告を発動するつもりでございます。  それから、この表現といたしまして、「長期経済計画及び物価に関する基本的な政策に関する当該行政機関の重要な政策及び計画の立案について勧告することができる」と、いかにも実施について勧告できないような文案でございますけれども、私どもといたしましては、先ほど申しましたように、たとえば、今回きまりました閣僚協議会の決定に基づいて、輸入ワクの拡大というようなものを原則として相当大幅にふやすことがしるされておるわけでございますけれども、それに対して、もし各省が実際それを行なう場合に、「原則として」という文言を利用いたしまして、非常に例外が多いというようなことになりますと、これは閣僚協の決定に本質的に相違するわけでございますので、こういう場合には各省に、もっと具体的に、何は何トン、何倍、何割ふやすというような計画をつくってもらうように、しつこく申すわけでございます。ですから、こういうのが当然この「計画の立案」という文案で入るわけでございまして、実施に関連する立案をしてもらうということを含めて考えておりますので、決して抽象論だけをやろうということではないわけでございます。
  68. 木下元二

    ○木下委員 ちょっともう一点。さっきもお尋ねしたのですが、私はそういう経済政策、特に長期の経済政策とか基本的な政策とかいうことについては、内閣としてもうすでに共通点、一致点があると思うのです。ですから、特に各省に対して勧告権を発動するというような実益といいますか、必要性というものは生まれないと思うのですね。あるいは、内閣意見が内部で異なってくる、各省意見が非常に食い違って内部で統一がとれないというふうな事態を予測されて、そういう場合の勧告というふうに伺っていいのですか。
  69. 小島英敏

    小島政府委員 やはり私どもは、先ほど申しましたように、総合的な物価対策というものが内閣の合意としてできましたあとで、どうもそれが実際上行なわれていないという場合にこの勧告権を発動して、先ほど来申しておりますように、具体的にいえば、こまかい実施状況について勧告をするということにむしろ効果を見出したいと思っております。
  70. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、この法文上は基本政策についての勧告というふうな形になっているけれども勧告をする内容、中身というのは、具体的な問題について勧告をするのだ。それだったら私はわかるのですよ。そういう意味ですね。
  71. 小島英敏

    小島政府委員 具体的なものにつきもしても、ということでございまして、もちろん抽象的なものも含めております。それから具体的なものにつきまして何でもかんでも勧告権を発動するかというと、そうではございませんで、これもやはり先ほど申しましたように、合意に達した総合的な物価対策に関連した具体的な問題というふうに御理解いただきたいと思います。
  72. 木下元二

    ○木下委員 まあ、そういうふうに伺っておきます。  それから次は、国民生活を長い年月にわたって圧迫しております物価の高騰は自民党内閣の慢性の持病であるといわれておるわけでありますが、先ほども少し言われましたけれども、生鮮食品、たとえば野菜について値上がりの中心原因は何であるか、どのようにお考えになっておられるか、伺いたいと思います。
  73. 小島英敏

    小島政府委員 野菜は、長期的な観点といたしましては、私はやはり需要の問題と供給の問題と両面すると思います。需要に関しましては、特に最近、食品の嗜好の変化ということもございまして、昔はなま野菜などというものはあまり食べなかったのが、最近は特に若い人、女性はなま野菜をばりばり食べるというようなこともございまして、そういう点に関してどうも需要がかなり急増した面がございます。それに対して供給のほうはどうかと申しますと、そういう需要の変化に対して十分に機動的に適応できなかったために、需給間にアンバランスが生じたということが一つございます。それからもう一つは、都市化の進行に伴いまして、いままでは近郊の農家で野菜をたくさんにつくっておりまして、それが大都市に送られるということで比較的供給がスムーズでございましたのが、みな近郊農地というものが宅地化されるということに伴って、近所からの供給が非常に少なくなってきたということも無視できないわけでございまして、最近のように、フェリーなどを使って非常に遠くから運んでこざるを得ないということが、やはり運賃の上昇等を通じて野菜の価格を構造的に高くするファクターであるというふうに思っております。
  74. 木下元二

    ○木下委員 その需給のアンバランスというふうな言われ方をされますと、そういう面も多分にあると思いますが、ただ、そういう形だけで理由づけいたしますと、私は問題があると思うのです。野菜について申しますと、野菜の生産量と生産者価格がしょっちゅう大きく変動させられておるということが問題なのであります。豊作貧乏ということばがありますが、農作物に対する価格保障がきわめて不十分なままに放置せられておる。せっかく農民が汗水流して働いてつくった生産物を畑で燃やしてしまわねばならない、こういう事態が起こっておるのです。こういう問題があるわけでありますが、こういう値動きが激しい問題を利用しまして、卸売り会社が値をつり上げておる。値上がりの中心というのはそういった問題ではなかろうかと私は思うのです。これは物価安定政策会議でさえもそのことを認めておるようでありますが、この点はいかがでしょうか。
  75. 小島英敏

    小島政府委員 確かに二、三年前まではおっしゃるような動きが非常に顕著でございまして、野菜の価格についてはサイクルがございまして、一年おきに非常に暴騰、暴落を繰り返すという動きがございました。これはある年に非常に野菜の価格が上がりますと、農家のほうはやはりそのものの作付面積を非常にふやす。そうすると翌年は非常な供給超過になってしまって暴落をする。そうすると今度はペイしないからというので作付が減ってしまって、その翌年は暴騰するというような動きがあったわけでございます。これを何とか平準化したいということで、ここ二、三年来、野菜の対策が非常に強力に行なわれております。これは物価安定政策会議の提言等も一つの重要な契機となりまして、農林省が予算化いたしまして、最近は重要野菜につきましては指定産地制度を拡充して、全国で何百という指定産地をつくって、ここのものにつきましては、価格が暴落いたしましても、昔のように所得がそれに応じてもろに減ってしまうのではなくて、過去の動きに対して、こまかい数字はちょっと記憶していませんけれども、要するに所得の面で七割、八割くらいは十分カバーできるような価格補てん事業というものが進められております。その面で最近の価格の動きを見ますと、先ほども申しましたように、昔のような、ひどいときには、八割も九割も倍にもなる。これは個々のものでございませんで、野菜の総合指数として非常に大幅に上がったことがございますけれども、最近はかなり施設野菜等もふえたり、それからそういう価格補てん事業等が行なわれたということもございまして、それほど大幅な動きはなくなってまいりました。かなり波は描いておりますけれども、小幅になりつつあるというふうに考えております。
  76. 木下元二

    ○木下委員 魚の場合はどうでしょうか。
  77. 小島英敏

    小島政府委員 魚はどうも基本的に供給面の制約があるということが野菜以上に長期的には問題でございまして、いろいろ漁業の海域等にややこしい問題があって、国際的な問題もございますし、それから潮流の関係とかその他自然条件の変化によって、昔に比べますと非常に漁獲高というものが減ってきております。表面上の漁獲高はそう減っておりませんけれども、内容を見ますと、スケソウダラというような練りものに使われる原料としての魚が非常にこれは収量が多く、われわれが食ぜんに魚の形で食べられるような魚が非常に減ってきておるというところに、基本的に魚の価格の高騰現象の原因があると思います。幸い去年からことしにかけましては、潮流の関係が非常に幸いいたしまして、一時に比べますとかなり漁獲がふえておる。これがごく最近魚の価格が比較的安定している原因と聞いております。したがいまして、やはり対策といたしましては、今後、養殖と申しますか、魚についても一種の栽培をしていくというような考え方が非常に重要だということで、農林省は大いに予算も獲得して努力いたしておりますし、それから漁獲のための新しい海域の開発ということで非常に努力をしているというふうに伺っております。
  78. 木下元二

    ○木下委員 どうも言われることが一面的な感じがするのですが、魚の場合にしましても、歴代政府の高度成長政策で海面が次から次に埋め立てがされていく、瀬戸内海をはじめとする優良漁場がどこもよごされていく、赤潮が大量に発生をする、こういうことで沿岸漁場が急激に衰退をしてきたということが原因の一つではないかと思います。さらにそれに加えて、水産大企業が加工食品用に魚を買い占めたり、あるいはまた、水産大企業に直結する卸売り会社がコールドチェーンというような名でどんどん冷蔵庫をつくって、魚の価格のつり上げを操作しておる、こういうことが値上がりの原因だと思うのです。ですから対策としては、いま言われましたけれども、やはり公害を抜本的に防除する、そして漁場を守っていく、漁場を保護していく、こういう政策がなければならないと思うのですけれども、どうでしょう。
  79. 小島英敏

    小島政府委員 おっしゃるように、公害のために沿岸の漁業が水揚げが減ったということは事実だろうと思います。ですからこれは原因の一つとして考えるべきものだと思います。ただ、対策といたしまして、昔のように近海からとれるほど公害物質の排出を減少させていくというようなことは、実際問題としてなかなかむずかしいわけでありますが、今後の問題につきましては、おっしゃるような観点も加味していくことが必要だろうと思います。  それから流通面につきましては、確かに部分的に冷蔵庫というふうなものが悪い面に使われることがなきにしもあらずだと思いますけれども、長期的、総合的に見ますと、流通過程で貯蔵能力を大きくするということは、地域的にも、あるいは時間的にも需給のアンバランスを縮小させて、価格を均等化させる非常に大きな機能でございますので、これはやはり流通合理化の一つの柱として今後とも進めてまいらなければいけないというふうに思っております。
  80. 木下元二

    ○木下委員 何も冷蔵庫が悪いと言っているのではなくて、そういうものを利用して価格のつり上げを行なっておるということを言っておるわけなんです。そういうものに対する規制が必要だと思います。  それでは、先ほども言われたのですけれども、地価の非常な値上がりですね。これについて大臣は一体その原因はどこにあるとお考えでしょうか。
  81. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 経済の成長に伴いまして都市化が非常に進展したという過程で、土地需要が高まった地域において供給が円滑に進まなかったということがまず原因であると考えますが、短期的な地価の動向を見ますと、景気の動きと密接な関連を持っておりまして、地価の上昇は不況時には鎮静するし好況時には高まるという循環を繰り返しておると思うのであります。最近、四十七年秋以降の地価の上昇が高まったというのも、四十七年秋以降経済が非常に上昇いたしまして、その影響を受けたことによるものと考えられますが、同時に、過剰流動性というものを背景とした法人の投機的な土地買いなどがこれに拍車をかけたということはいえると思っております。
  82. 木下元二

    ○木下委員 いまの自民党政府の新全総などの政策のもとで、太平洋沿岸地域、沿岸都市を中心に大企業がやみくもに膨張しているということが地価騰貴の根本的な出発点だと私は思います。しかも大工場や大ビルの激増に伴いまして、人口が都市に集中をする。そして土地と住宅への需要が一そう高まると、これでさらに大もうけしようということで、大手私鉄とか、大手不動産であるとか、あるいは大商社、大企業、こういったものが大銀行から多額の資金を借り受けまして市街地や近郊農地を買い占める、そして数倍あるいは数十倍の地価につり上げをやる。政府は、いまいろいろ問題になっておりますけれども、これまでこういうふうなことを野放しにしてきたのではないか。先ほどいろいろ、土地利用計画の策定であるとか、土地税制の改善であるとか言われましたけれども、もっと抜本的な政策の実行が必要ではないかと私は思うのです。いま三つの政策を言われましたけれども、一体そういうことでいまのここまで暴騰した土地の価格を下げることができるとお考えなんですか。そのことが一体責任を持って言えますか。はっきりしていただきたいと思います。   〔委員長退席、藤尾委員長代理着席〕
  83. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 新全総を見直すということを言っておるのでございまして、昭和五十年から新しい計画を引き続き行ないます。その間に、御承知のように国総法を改めまして、その中に土地利用計画をつくったり、先ほど申し上げ、またいま御引用になりましたような三つの政策の柱を立てまして、土地の新しい展開を計画的にやっていこうというふうにいたしております。いまこの税制によって相当に全体の金融が締まってまいりますと、土地は新しく出てくるというふうに思っております。それから一方、従来長きにわたって土地を所有している、ことに農村部の方が多いわけでございますが、そういう方々に対してはレンタル方式、土地の賃貸方式でございますね。それによって住宅をつくるという方向をやっておるわけでございます。やはり一時的に非常に都市に集中した土地買いというものを、ことに法人がさっき申したように相当持っておるわけでございますが、これをどういうふうにしてはき出させるかということをいろいろ考えておりまして、この国総法も、御審議いただいた結果立法していただきますれば、相当にこれは効果を生じてくるというふうに考えております。
  84. 木下元二

    ○木下委員 いわゆる日本列島改造論が実行されまして、田中内閣が日本列島改造論を打ち出して以来、都市部はおろか地方におきましても、地価は高騰に高騰を続けてきたのであります。まさに政府は無策であったと私は思います。先ほど言われたような政策をやることによって、ほんとうにいまの地価を大幅に引き下げることができるとお考えなのかどうか。ほんとうにそのことができるということをここで責任を持って言われますか。
  85. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 いわゆる日本列島改造論というものは、過密過疎の状況が非常に今日顕著である。そこから住宅難や交通難が出てくるし、地価の高騰や公害というような問題も、すべてある一部に極端に、過度に集中している人口構成にあるのだから、もっと均衡のとれた形で人口構成を考えたらいいじゃないかということが一番の根本であると思うのでございます。何かそれを言われて急に、それじゃ土地を買えというようないわゆる土地に対する仮需要、投機的な気分というものが背後にあった過剰流動性とマッチしていまのような状況を生んだのだろうと思うのでございまして、それに対する対策としては、何といっても計画的に今後土地を持って配分するような計画を立てていくということ。それから、場所によりましては規制地域を設けまして、その地域については土地の売買を凍結してしまう。特別規制区域というようなものを考えておるわけでございますが、そういうようないろいろな場所場所によるところの規制をするわけでございます。  それから一方、ただ土地を持っていてもこれを売らなければ利益を生まぬわけでございますから、そこに税制をきつくし、金融を締めてまいりますということによりまして、土地を持っていても、これは利益にならぬということで吐き出してくる。そこにいまの行き過ぎた土地投機の解決ができると考えているわけなんでございます。  地価というものは、従来の趨勢を見ておりますと、先ほども申し上げたように、好況時に上がり不況時には上がらないということを繰り返しているわけです。大体、GNPの伸びと地価というものは、平時においてはパラレルになっておるというふうに思うのでございまして、これをノルマルな形にしようということは、私は自信を持って申し上げられます。  先ほどまた、物価がこの十年に倍になっておるじゃないかということで非常にきつい御叱責がございましたが、数字的に申し上げますと、昭和三十六年から四十六年までのCPIは七割八分上がっているわけでございます。七八%上がっているわけであります。その間に賃金が三・二倍になっております。それから一人当たりの国民所得が三・七倍でございます。ですから、ラフに物価が倍になったじゃないかという御指摘でございますと、賃金も国民所得も四倍になっていますと、こういうふうに申し上げることになるわけでございます。私どもは、だからその物価が上がることがいいと言っているわけではありませんで、むちゃくちゃな政策をやっているわけじゃない、こういうことを申し上げておるわけなんであります。
  86. 木下元二

    ○木下委員 これまでのことはけっこうですが、私はさっきから聞いているのは、もう土地対策の具体的な内容ではなくて、経済企画庁長官として、いまこの土地の値上がり、これがもう国民の重大関心事ですから、これに対して、もうこれ以上値上げがないばかりではなくて、このいまの地価を大幅に引き下げられるような、そういう対策を確信を持って進んでいくんだ、こういうことが言えるのかどうか、大臣の自信のほどを伺っているのです。
  87. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まじめに働いた人が自分の住宅を持ちたい、マイホームを持ちたいということは非常に大事なことでございまして、そうした夢を失わせるようなことのないように万全を尽くすということを申し上げておきます。
  88. 木下元二

    ○木下委員 別の問題ですが、政府は先日、物価対策閣僚協議会におきまして「当面の物価安定対策」を決定いたしましたが、その中では公共料金については何ら触れられていないのであります。物価に大きな影響を与えている公共料金につきまして責任ある対策が立てられないのに、物価対策を行なっていると言っても、これは無責任な態度だといわざるを得ません。公共料金の引き上げはやめるべきだと考えますけれども、この点についての所見を伺いたいと思います。
  89. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 政府といたしましては、今後とも、具体的な事情をよく十分審査をいたしまして、真にやむを得ないものを除きまして、公共料金の引き上げについてはきびしく抑制をしていくという方針を掲げております。ただ国鉄につきましては、国鉄が国民の足として期待されておりまする役割りを十分に果たし得るように、その財政再建の一環として、国鉄自身の合理化努力、所要の財政措置拡充等をあわせて必要最小限度の値上げを行なう案を現に国会に提案いたしまして、御審議をいただいておるわけでございます。でございまするから、これはぜひお認めを願いたいと考えておるわけでございます。国鉄につきまして、国鉄自身の努力もあり、それから政府としての財政援助もする、そして利用者にも御負担を願おうという、いわば三方一両損という形でこの再建を考えているわけなんでございますが、また、一方におきまして国鉄が国民の足として期待をされておりますので、あまりこれをただただ締め上げてサービスが低下してしまう、必要な工事もできないというようなことになりますのも非常に困ったことでございます。一方、国民の足として国民が期待いたしております国鉄がどうもストライキをやられるというようなことになりまして、それによってまた物価にはね返ってくるということも非常に困ることなんでございまして、ぜひそうした点を十分皆さんで、国民も認識し、国鉄関係者自身も認識していただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  90. 木下元二

    ○木下委員 長官のほうから国鉄の問題を言われます以上、私も言わざるを得ないのですけれども、公共料金の仕組みというものを、国民に安く、大企業に対して現在とっておるような特別な低料金の制度、これを改めるような方法で進めていくべきだと思うのです。  国鉄で言いますと、たとえば昭和四十五年度には、旅客運賃のほうは四百九十七億円の黒字でありながら、貨物運賃では一千八百二十二億円の赤字を出しておる。これは結局、大きな企業の貨物運賃を特別に安くしておるから、こういう赤字が出てきておるわけなんであります。こういうふうな制度の体系を改めることが必要だ。そうすれば何も国民のほうにしわ寄せをする必要はないのです。そのことを指摘しておきます。  それから、新聞報道によりますと、田中首相は十三日の物価対策閣僚協議会におきまして、今後は需給見通しの誤りから物価の大幅上昇をもたらした場合には、担当局長責任をとってもらうことを指示したとあるわけでありますが、これは事実だと思いますけれども物価はただ単に一つの局だけの政策で安定させることはできないと思うのですけれども長官はどのようにお考えでしょうか。
  91. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 仰せのとおりだと私も思います。ただ、一番もとになる責任の局が真剣になってこの問題を考えてもらわないといけないことだと思います。それには、どこが第一次的な責任をとるかということは明瞭にしておく必要があると思うのでございます。たとえて申しますと、先ほど出た話でございますけれども、木材がいきなり三倍になってしまった、何割ということじゃなくて三倍になる、これは見通しがどうだこうだと言っておるうちにその責任者が栄転してしまうということは困るという話でございまして、これは当然なことであると思っております。
  92. 木下元二

    ○木下委員 各部門、各部門が最善を尽くすということは当然必要なことでありますが、ただ私は、今回の田中首相の指示のしかたは、政府物価対策責任を回避したきらいがあるのではないかと思います。一局長に全責任を押しつけることはもってのほかではないか、政府全体が責任をとるべきだ、こう思うのです。  昨日の朝日新聞の夕刊にも、「今日の問題」でその点が触れられておりますけれども、「首相が需給見通しを誤った役人ばかりを責めるようなら、これは片手落ちというものだ。閣議で決定した今年度の経済見通しでは、消費者物価が五・五%、卸売物価が二%の上昇率とされている」「首相としては、見通しが大きく狂った場合の自らの責任もはっきりさせなければ筋が通るまい」というふうに述べられておりますけれども政府全体としての物価問題についての責任、これを十分にお考えいただきたいと思いますが、所見を伺いたいと思います。
  93. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 政府といたしましては、極力物価を安定させて、いまの見通しの中におさめるということについて最善の努力をいたします。  その場合、責任というのは、いわゆる形式的な責任もございますし、実質的な責任もございますし、いろいろあるわけでございますが、一番私どもが注意しなければならぬと思っておりますのは、最近特に、あれもいけないが、これもいけない、これのいけない理由もこれだというようなことで、一体どこに責任があるか全くわからないというのがいわゆる評論でございまして、評論家的なものではないんで、私ども政治をやっておるのでございますから、現実にそういうことは明確にしておいて、ただその責任はどういう形でとらせるかというのが、これはまたそのときの事情を勘案してやるわけでございまして、信賞必罰は明瞭にしよう、こういうことでございます。問題がどこで起きても最終的には全部内閣だ、総理責任だと言っておれば、結局締まらないことになってしまう。これは当然そういう責任はあるわけでございますけれども、一義的にどこが一番重要なことを考えて事に処してもらわなければならぬかというところだけは、ひとつ明瞭にしておく。そして、よいことをすれば大いに称賛をするし、それから間違ったことに対しての責任は免れないものだと思ってもらわなければ困る、こういうことでございます。
  94. 木下元二

    ○木下委員 経済企画庁長官としても、十分に責任をお感じになって物価対策に当たっていただきたいと思います。  それから次に、日本の物価上昇の大きな原因でありますのは、独占価格の問題が一つあると思います。鉄鋼について見ますと、鉄鋼業の労働生産性は昭和三十五年から四十五年までの十年間に三・七倍も向上をしております。通産省でも、昭和三十七年から四十二年の五年間で銑鉄のコストは一七%下がったと言っております。ところが、棒鋼、鋳物用銑鉄は一割前後つり上げられております。鉄鋼は申すまでもなく産業における基礎資材であります。この値上がりがほかの物価にも大きく影響を与えておるのでありますが、こういった実態について大臣はどのようにお考えでしょうか。
  95. 小島英敏

    小島政府委員 鉄鋼は、昨年の上半期におきまして、不況カルテルによって、景気が回復過程でございますから、ある程度値が上がるのはやむを得ないかもしれませんけれども、その後、景気がかなり回復していたのに不況カルテルを延長したという問題がございまして、私自身も、当時の段階ですぐに不況カルテルをなくす、そういう決断ができるかどうかということは、公取としてもなかなかむずかしかったと思います。ただ、申せますことは、不況カルテルのワク内でもっと生産量を大幅に余裕を持ってやっていけばよかったのではないかという感じを持っておるわけでございまして、実際、公取も、年の終わりの十二月でございましたか、緊急にまたワクを拡大したわけでございますけれども、そういう面で、景気の上昇が予想以上に強かったために、カルテルのワクの操作その他が多少あとをおくれて追っかけたという感じがございまして、これが昨年から最近にかけて鉄鋼価格を強くしている一つの原因でございます。しかし基本的に、いまの段階ではすでにカルテルもなくなっておりますし、供給面よりも需給面に、特に建設活動が非常に盛んでございますので、鉄鋼需要の伸びというものが予想以上に強く、これが現在の鉄鋼価格を強勢に保っている一番大きな原因であるというふうに考えます。
  96. 木下元二

    ○木下委員 鉄鋼大メーカーが政府の承認のもとに公開販売制度というふうな販売カルテルをつくっております。これによって公然と独占価格をきめられるようにしておるのでありますが、こういうふうな大企業に対する保護はやめるべきではないかと思うのですけれども、いかでしょう。
  97. 小島英敏

    小島政府委員 鉄鋼の公販制度と申しますのは昭和三十三年度にできたと聞いておりますが、このときは不況対策として、各メーカーがどれだけのものを卸商に出荷するかということを数量的に公開し、しかも価格をきめるというような形で、一種の不況対策として行なわれたわけでございます。ただ、その後、どうもこういうのはあまり好ましくないということで、現在ではすでに、不況対策といたしましても、公販のいわゆる相談と申しますか、公開量自身を不況カルテルのワク内できめて、公開生産量自身を制限するというような形でむしろ昨年あたりの不況対策が行なわれたわけでございまして、現在の段階では、公販制度というものは、出荷者に聞いてみますと、形骸的には残っておりますけれども、これは価格については一切ノータッチで、たとえば、来月ものについてはうちは何万トン出しますという出荷の数量を公表するというだけで、実質的に、おっしゃるような形の下ざさえ効果というものを持っているというふうには、私ども判断していないわけでございます。
  98. 木下元二

    ○木下委員 やはり制度としては残っており、何らかの役割りを果たしているわけでしょう。ただ、この制度がやはり残って、あることはあるんでしょうね。
  99. 小島英敏

    小島政府委員 形式的には残っているそうでございます。ただ、実質的にはほとんばワークしていない。むしろ、私どもがいま警戒しなければいけないと思いますのは、カルテルがなくなった段階で、一種のやみカルテル的なものが行なわれて、公開の生産量その他が実質的に制限されるようなことになることが、むしろ今後の鉄鋼価格を左右していく上に一番重要なポイントであろうと思っております。
  100. 木下元二

    ○木下委員 それから、たとえば一錠の原価が二円とか三円とかいわれておりますアリナミンが十五円、それから原料代が二十数円のコールドクリームが千数百円で販売されておるというふうな状態であります。いわゆる再販制度の指定を受けまして、こういった販売価格が維持をされておるわけでありますが、この不当性についてはどのようにお考えでしょう。
  101. 小島英敏

    小島政府委員 再販制度は、物価安定政策会議でも前に提言したことがございまして、一種のおとり販売の防止というようなことから、先進諸国においても行なわれている制度ではございますけれども、どうも物価対策観点から申しますと、私どもとしては、あまり好ましい制度とは思っていないわけでございます。現在、公正取引委員会におきましても、制度のあり方自身を含めまして検討を進めているわけでございます。
  102. 木下元二

    ○木下委員 そうしますと、そういったことについては、企画庁として行政指導をされておるというふうに伺っていいんですか。
  103. 小島英敏

    小島政府委員 現在行なわれております再販制度は、独禁法に基づいていわゆるオーソライズされた形で行なわれておりますので、これを企画庁がチェックをするということはいたしていないわけでございまして、公正取引委員会としては、当然法律で認められたとおりにやられているかどうかという監視はしているわけでございます。むしろ企画庁といたしましては、再販制度のあり方自身について、公正取引委員会とも話し合いを進めて、物価対策観点から望ましい方向に結論が出ますようなことを望んでいるわけでございます。
  104. 木下元二

    ○木下委員 けっこうです。  この改正案によりますと、物価局をつくって物価の安定をはかるということになるわけですけれども、この物価局は、独占大企業の製品の価格等について、どの程度の調査ができるのでしょうか。不当な価格だと考えられる場合に立ち入り調査ができるとか、あるいはそのほかの方法があるとか、そういったことについて伺いたいと思います。
  105. 小島英敏

    小島政府委員 物価局ができましても、これは個別の物資につきまして、その価格を立ち入り検査をするという権限はないわけでございます。これは物資を所管しております官庁自身におきましても、一般的な調査はもちろんいたしますけれども、個別のものにつきまして、強制力を持った立ち入り検査を行なうということはできないわけでございます。私どもも、同じく一般的な調査を十分いたしまして、その物資についてどういう問題があるかということは常時心しなければいけませんけれども、個別の企業に立ち入って調査をするということはいたすつもりはございません。
  106. 木下元二

    ○木下委員 その点も非常に不十分だと思うのですけれども、時間がありませんので、それについては詳しく申しませんけれども、私は、幾ら機構をさわったとしましても、やはり政府物価に対する正しい施策が示されないことには実効がないと思います。独占的な大企業の利益優先の物価対策ではなくて、国民の切実な声が十分に反映させられた物価対策でなければならないと思います。この点についての長官のお考えを、簡単でけっこうですが、承りたいと思います。
  107. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほど申し上げたように、いまの物価の一番の問題は、生産性の低い部門がわりあい多いということで、低生産性部門の生産性を上げるということに政府として非常に力をいたしておるわけであります。高生産性部門、たとえばいま御指摘になりましたいわゆる近代的な企業の生産というものは非常に順調にいっておりまして、その価格も下がってきておるのが多いわけでございます。そういう点で、できるだけ高能率、高生産にやってもらう、しかしこのごろの問題として、公害を出さぬように特に気をつけてもらうというように思っておるわけであります。生産性が上がり価格が下がっているものを、特にそれだけ大企業であるからといって目をつけて調査をするとか、そういうような気持ちは持っておらないわけでございます。
  108. 木下元二

    ○木下委員 公共料金の問題を見ましても、年々相次いで大幅に引き上げられてきましたし、これが物価全体を高騰させていく、言うならば先導車の役割りを実際は果たしてきたと思うのです。先ほど言われますように、低生産性部門の問題であるとか、あるいは物価上昇するのは国民所得が上昇をし購買力がついてきたからだとか、いろいろ言われますけれども、そういうことでは私は解決はつかないと思います。インフレ政策、大企業を優先するような政治、そういうふうな政策を大きく転換していくことが必要ではないかと思うわけです。公共料金の引き上げは一切ストップをする、独占的な大企業が不当に価格をつり上げておる、そのことを調査権を発動してやめさせるような制度をつくっていく、あるいは赤字公債を大量に発行するようなインフレ政策をやめさせる、こういう物価対策が必要だと私は思います。こうした問題について、政府はほんとうに国民立場に立って真剣に再検討されるべきだということを私は指摘をしたいと思うのでありますが、そのことについての長官の所見を最後に伺いたいと思います。
  109. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 おっしゃるように、政治というものは国民立場に立たなければならぬものである、これはもう基本的なものであるというふうに私ども思っておりまして、わが政府は、自民党、与党といたしましても、すべて国民のためになる政策をするということを基本に考えておるわけであります。しかし、経済は生きものでございまして、その際に走り過ぎたり、あるいは勢いがとまったり、いろいろな点がございますわけでございます。それを、財政金融や、あるいは貿易、為替、いろいろな政策を勘案いたしましてやってまいりたいと思いますが、やはり、力のある者はその力に乗って経済上の弱者にのしかかるような、そういうことはどうしてもやめてもらうという方針を従来からとっているわけです。その意味から独禁法というものも持っているわけで、われわれはその独禁法の公正な運営をやっていくというふうに思っているわけでございます。  それから、インフレーションというのは最もわれわれとして排撃しなければならぬものであるということで、物価安定ということに大いに力を注いでおるわけでございまして、その意味で、先ほどからも申し上げているように、政府の直接関与し得る公共料金というようなものについても、真にやむを得ざるもの、国民のためのサービスに影響するようなものはこれはしかたがございませんが、それ以外のものについては極力これを抑制するという考え方政策運営をいたしていくという次第でございます。
  110. 木下元二

    ○木下委員 インフレは抑止をすると言われながら、赤字公債を大量に発行したり、公共料金もいろいろ理由づけをされながら引き上げをしていく、こういうふうな物価対策を私は根底から見直していただきたい。このことを望むものであります。これを拒むことは、これはまさに国民に背を向けることであり、田中内閣の短命を政府みずから保証するものだ、このことを指摘しまして、私は質問を終わります。
  111. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ちょっと一言だけ申し上げますが、赤字公債は出しておりませんから、それだけ申し上げておきます。建設公債ということをやろうと思っております。
  112. 木下元二

    ○木下委員 けっこうです。
  113. 藤尾正行

    ○藤尾委員長代理 三塚博君。
  114. 三塚博

    ○三塚委員 今回の経済企画庁設置法改正に伴いまして若干質問をいたします。だいぶ長時間ですから御苦労さんでありますが、持ち時間一ぱいやるつもりはございませんで、確信のあるところで御答弁をいただきながら、よりよい形に進めさせていただきたいと思います。  ただいま同僚委員から、物価高騰の原因等について種々論議が行なわれました。それは過剰流動性であり、さらにその他海外のインフレの傾向の問題、さらには景気の過熱、生産性の格差の問題等、数えれば多指にわたると思います。しかしながら、国が総合行政をやられておりまして、こういう物価上昇というものが予見でき得なかったのであろうかという点を、まず最初にお聞きしておきたいと思います。
  115. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 過剰流動性というものが、おととしのいわゆるニクソン・ショック、あのときからできておるわけでございまして、数字を申し上げますと、あのときに大いにドルを買いささえた、これが円資金になった。平素の外為支払いの払い超を、四十五年を見ますと大体平均して四千億円ぐらいになってございますが、四十六年におきましては四兆四千億ぐらいになっております。それで、これが四十六年がピークであったわけですが、四十七年になりましてもさらに一兆七千億ありまして、合計して約六兆円あるわけでございます。それから銀行の貸し出し増でございますが、これも四十三、四十四、四十五の三年とって平均してみると大体年間七兆円弱ぐらいのものでございますが、四十五年には少しふえて八兆五千億になっておりますが、四十六年度には十二兆七千億円になっております。それから四十七年には十七兆八千億、この二年合計いたしまして三十兆円になる。そこに非常に問題の禍根があると私ども思っておるわけなんでございますが、これを吸収するのにどうしたらいいかということでいろいろ議論がございましたのですが、結局、銀行の預金準備率を引き上げようじゃないかということで、二度引き上げをした。今度公定歩合を引き上げた。この過程でいろいろ議論されましたことは、やはり不況というものに対する非常な心配、不況になったのでは困る、いわゆるスタグフレーション、不況下の物価高ということになったのではたいへんだということから、いまにしてみれば、もう少し早く公定歩合引き上げをやってもよかったという議論がたくさんあるわけでございますけれども、そういうようなことでだんだん推移いたしてまいりますうちに、今度、過剰流動性というものが、最近問題になっております商社筋の投機を呼んでいる。あるいは商社だけでないと思います。卸売りの過程、流通段階におけるいろいろな投機があったと思うのでございますが、それが土地へいき、株へいき、それからいろいろな商品にきた、こういうことでございまして、まあ問題は不況下の物価高ということ。それと、やはり不況になると輸出をどうしてもふやしていく、いままでそういうパターンできたわけであります。それで不況にしてまた輸出がふえる、輸入が減る、貿易上の黒字もまたふえるということになると、やはり国際収支を正常化しなければならぬという点で、これは問題があるということで若干手控えていたようなことが、今日に至ってちょっと異常な物価高を呼んでいる、こういうようなことがあるかと思います。  それからもう一つは、物価高に関連いたしまして、先ほどもちょっと申し上げたように、情報化社会でございますので、いよいよ上がりそうだ、上がりそうだというので、中には、ある品物までなくなるような宣伝が行なわれまして、そしてそこに買い占めがさらに進んだ。買い急ぎということばもございますが、まあ買い占めでございますね。そういうことが現実に行なわれたということもあろうかと思っております。
  116. 三塚博

    ○三塚委員 まさに経済政策目標物価安定だけでございませんで、いま長官のいう完全雇用の実現であり、さらに所得増大をはかっていくということにもあるでありましょうし、さらに福祉元年といわれる今年度、福祉を充実をしていかなければならぬという要請、さらに環境を保全をしていかなければならぬという問題、さらに、物価を安定せしめるために零細企業の格差を是正していかなければならぬ。非常に多角的な経済政策がとられなければならない、こういう時代でありますから、シンプルな政策で効果があがるということはなかなかむずかしい。そういう状況でありますけれども、しかし物価高の大きな原因が、ただいま指摘されました三十兆円にものぼろうとする過剰流動性にあった、この指摘は正しいと思うのであります。  しからば、その過剰流動性というものの出てくる原因はどこにあるのかという点で考えてみますならば、やはり依然としてわが国が、戦後乏しき中から、アメリカに追いつこう、先進国を追い越そうという、そういうことの中でやられてきました輸出第一主義であり、重化学工業重点主義であったと思うのです。これはプロセスとして正しい政策の実行だと私は思っておるのであります。ただ、今日の世界経済の環境の中でものを考えてみますと、日本だけがはたしてそれが許される時代であろうかということになりますと、世界的な資源の枯渇という問題がいろいろな角度から議論をされております。さらに、わが国経済の基本である石油資源の将来についても、ある学者に言わせますと、二十年たてば世界の石油量というものはなくなるのではないかとすら極言する人がおります。  そういう状況の中で日本が、今日の経済社会基本計画ですか、御省の発表されたのを見ましても、傾向的な指数として出されておりますのを拝見をいたしますと、今日は二億キロリットルちょっとでありますが、これが昭和六十年には七億キロリットルにまで上がるであろう、世界の石油資源に占めるその数字の比率はどうかというと、三〇%前後であろう。そうしますと、世界人口の三十六億分の一億、パーセンテージにして三%の日本民族が、世界の石油エネルギー資源の三分の一を占拠して、自国の経済繁栄だけに集中することが可能な国際環境かというと、これはきわめてむずかしい。またそういうゴーイング・マイ・ウエー方式でやる時代ではないという反省がいま経済界においてもなされております。産業経済懇談会の提言なんというものも、そういう意味では非常に傾聴に値するものであるし、わが国経済の方向を示す一つの問題であると思うのであります。  しかし、ここでそう思いましても、資本主義経済の中におけるメカニズムというものが、スピードのついたものを、このスピードを落とすということがなかなかむずかしい。そういう点で、このスピードを落とすことにわが日本政府が全力を尽くしていきませんことには、いわゆる対米四十億ドルの出超、全体で九十億ドルの出超というものが依然として続くでありましょうし、この経済社会基本計画にも盛られておりますように、その黒字というものは、このままの状態でいけば数倍に達するであろう。  こういうような条件の中で行きますと、依然として過剰流動性というものがわが国に滞留をして、そのものが物価を押し上げる大きな原因として残るという、こういうかっこうになるかと思うのでありますが、そういう意味で、いわゆる経済政策総合調整をやる経済企画庁長官として、今後の日本の産業のあり方という形の中で、もう一つは輸出をどのようにしていくか、こういう問題などについて御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  117. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ただいまの三塚さんの現状認識はまさに正しいと思って拝聴いたしました。そこで、今後のやり方でございますが、御承知のように、「経済社会基本計画」というものをわれわれと政府で決定いたしまして、国会の皆さんにもごらんに供しておるわけでございますが、あれは「活力ある福祉社会のために」という副題をつけております。私はやはり、日本のように非常に人口が多くて資源の少ない国が、高度に国民の所得をふやして豊かな国民生活を築いていくためには、国民の一人一人が活力を持った社会を築くような、そういう環境に置かなければならぬというふうに思っておりまして、私どもは、政府の強権による国民生活の統制というようなものは活力を招来するゆえんではないというふうに思っておるのでございます。やはりわれわれは、福祉社会をつくらなければなりませんが、これは、墓場の中の静けさのような、そういう平和の中に福祉社会はできないのだというふうに思っておるわけであります。その意味で、やはり個人の活動というものを刺激しながら経済の営みを続けていくというふうに思っておりまして、私どもはあの基本計画の中で今日まで一〇%以上の成長を続けておりましたのを、まず五年間で九%台におろして、さらにそのあとをまた落としまして、六%から七%の間ぐらいというふうに思っておるわけであります。いま三塚委員の御指摘のように、急に減速させまするとやはり事故が起きることになるものでございますから、そんなふうな経済成長率をもっていったらどうかというふうに思います。  それから公害の問題、これは非常に重要でございますので、日本の産業というものは、今後公害を起こさないように、環境をよごさない、そしてできるだけ頭脳集約型の産業、そういうものに切りかえていく必要がある。やはり海外から資源を持ってまいりまして、これを加工して出す、そういう日本の営みにかわりはございませんけれども、その中で営まれる産業の性格というものは、できるだけ省労働力、省資源、そして公害を出さない、そういう形のものを選んでいくべきだと思っておる次第でございます。いま御指摘の石油等につきましても、従来の政策趨勢型と申しまして、そのままいくような形でございますと、これは七億五千万キロリットルを昭和六十年に使用することになります。これを政策急転型といいますか、急に政策を変えるようにして、三億五千万キロリットルくらいがいいじゃないかという説もございますけれども企画庁といたしましては、コスモモデルというものを使いまして、コンプリヘンシブ・システム・モデル、コスモということでございますが、それで大体五億キロリットルから五億五千万キロリットルくらいが適当なんじゃないか、こんなふうな計画を持っております。エネルギーというのは省エネルギーでもやはり電力は要ります。電力のもとになる石油であるとか、あるいは原子力であるとか、そういうものの発電所をどんどんつくっていくことは必要でございますが、どうも環境問題がこれだけ重要になってまいりますと、そうどんどん発電所をつくるわけにもまいらない。そういう点から日本の産業は規制されていくというふうに思います。  それから輸出の問題でございますが、最近このところ、統計はあと局長のほうから申させますけれども、非常に輸出は減ってきております。これがどういう形で今後いくかということは検討すべき問題だと思っておりまして、これはまだ結論を私から申し上げる段階にはございませんけれども、いまの三塚委員の御指摘の点に大いに敬意を表します。私どももその点で一生懸命やっておるということを申し上げさせていただきます。
  118. 新田庚一

    ○新田政府委員 昨日発表になりました四十八年度の国際収支、これは推計でございますが、それによりますと、輸出が前年比一九・五%、輸入が非常に伸びまして二九・八%ということで、貿易収支が約八十四億、そういうふうになっております。  輸出の動向でございますが、四十七年度の上期が約一六%、それが十−十二月に約二二%というふうに伸びておったのでございますけれども、一−三月から非常に鈍化してまいりまして、一月が一六・二%。二月が多少為替管理の関係で伸びたのですが、三四%、三月が一八%というふうに逐次スローダウンしておるというふうな状況でございます。
  119. 三塚博

    ○三塚委員 長官から、今後の日本経済の方向として、趨勢型でなく新しい角度から経済の方向を確立しようということでありますから、非常にいいと思います。石油の問題なんか、いまの状況ですら十万トンのタンカーが年間十往復しまして、それで二百五十隻を必要とする、こういうことであります。八億トンを昭和六十年に必要とするということになりますと、十万トンのタンカーが中近東から五十キロごとに一列に並んで補給しませんと、日本の石油資源の補給ができないとすらいわれておる計算がユニークに出されておる今日でありますから、やはり石油そのものの規模が、今日ですら非常な公害を起こして物議をかもしております。これ以上、精製工場が二倍になり三倍になるという状態になりますと、日本全土が公害になりまして、せっかくの行政効果というものがそのことによって急減されるという条件が出てきます。また私は、公害は、高いお金をかけますならば、今日の技術水準で完全に克服できる問題だと思います。だけれども、それができ得ない一つのリミットというものもあるだろうと思うし、そういう意味で、科学の進歩に並行しながらそういうことがやられなければならぬというふうに思うのであります。  そこで、さらにその点についてお聞きしたいことは、今日の物価上昇の原因が先ほど来申されておった問題等にあるわけでありますが、それが昨年の十二月から、生活関連物資がまさにある日突然高騰したというイメージを国民に与えたわけであります。それでありますだけに、それは商社の投機によるのではないだろうか、また資本力の強い会社の先買いによるのではないだろうかという疑点が出ましたことは事実であります。私も物特に入っておるものでありますから、六商社の代表を参考人として審議を続けた経過で感じたのでありますが、六商社の代表は、売り惜しみ、買い占めはしておらぬと言う。しかし今日の現況については深く反省をする、こういうことであります。私自身は、あの大手商社によってしか取り扱うことのできない生活関連物資でありますから、やはりそこに投機的行為があったからそうであるだろうという多くの国民の疑惑というものは、相当、当を得たものであると思うのであります。そういう意味で、今後、投機規制法などが出されておるわけでございますけれども法律だけではたして本問題の解決になるだろうかということでありますと、やろうとする気がまえがあるならば法律は何ら効果があり得ないことは、今日までの結果でおわかりであります。そういう意味で、今日ほど経営者のモラルというものが必要な時代はないでありましょうし、同時に私は、ここで問題の本質を明らかにするために、大手商社だけがそういうことであったかということを冷静に今度考えてみました際に、そこに第一次卸であり、第二次卸であり、小売り店であり、また国民各層の中に、情報不足から来るという先ほどのお話もありましたが、いま買わなければもっと高いものをつかまされるであろうという不安感そのものが、一そうそういう物価高騰に力をかしたということも現実の問題として見なければならぬだろう。  そういう相関的な関係というものをシビアに見詰めてまいりました際、経済企画庁として、今後こういう問題が、日本が資源輸入型の国でありますだけに、起き得ないという保証はない以上、やはり今度の経験というものを貴重なものとして、これに対応する対策というものがいまのうちから真剣に考えられなければならないだろうと思う。極端に言いますと、商社だけ悪いものにして、そのことで問題の本質の解決はあり得ない、そういう観点があるものでありますから、私は申し上げるわけであります。  と申しますことは、ある日突然と先ほど申し上げましたが、そういうことではない。われわれが関係官庁の担当官に御意見を聞きますと、初めて、アメリカが気象異常でありましたとか、シカゴ市場において非常な高騰を示したとか、もろもろの原因がそこで出されるわけであります。そうしますと、上がってから原因というものを知らされましても、人間というものは、必ずしもそうですがといって割り切らない。特に野党の皆さんなんかは、ちょっと根性が悪くなっておりますから、どうもそうではないだろう、こういうことになるわけであります。われわれですら、立場を了解し、ある程度の流れを見詰めておる者にしても、どうもおかしい、こういうふうに感ずるわけでございますから、その辺の今後のあるべき姿として、ひとつ総括的なお話をお伺いしたいと思います。
  120. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 買い占め、売り惜しみに対する措置法の問題点は、一言で申し上げますと、立ち入り検査ができるという点でございまして、従来の行政措置でできなかった点を、それを認めていただいて補強したいということでございます。それができると、よほどまた行政能力が強化されると思っております。  ただいまのような、今後の物価の動きというものをもっと国民に事前に知らせて、それに対する対応策を、政府のみならずみんなでもっと考えていくべきではないかという御指摘は、そのとおりだと私も思います。その意味で、ここに御審議をいただいております物価局も、実は経済企画庁物価の担当省でございますけれども、やはり物価というものを常時国民との関連でお知らせし、また国民の気持ちも伺っておるという専門の局をつくっておくということが、今後非常に役に立つだろうというふうに思っておるわけでございまして、そういう点で、まだ企画庁にも至らぬ点もたくさんあるわけでございますが、何かとまた御指導、御鞭撻を賜わりたくお願いする次第でございます。
  121. 三塚博

    ○三塚委員 そういうことでぜひ進めていただきたいし、日本の生活関連物資、日本の資源の状況というものが、今度できました物価局から、特に関連するものについての状況というものが、それぞれの方法で伝達され国民に知らしめていく、需給の関係をしっかりとつかまえておくということが、物価高騰への歯どめにもなるわけでございますので、ぜひともお願いしたいと思います。  そこで、四月十三日の物価閣僚協議会におきまして、七項目が決定されたわけであります。このことが完全に機能するということでありますと鎮静化に向かうとは思うのでありますけれども、しかし、いろいろな要素を考えてまいりますと——と申しますのは、いまインフレムードが日本全土に横温いたしております。金を持つことよりも物で持ったほうがより安全であるというものの考え方、できるならば土地を買っておきたい、あるいはダイヤモンドを買っておきたい、金塊を自分の手元に置いておきたい。そういう価値が不変なもの、あるいは上昇すると思われるものに通貨が指向するわけでございます。そのことが非常な物価高騰の原因にもなっておるのではないかと思うのでありますが、さらにそのことが、土地を持っておるだけでその人が、この間の新聞にも出ましたように、住宅公団に売ったやつで三十億近い金が入った。こういうものを新聞紙上で大衆が見ますと、情けなくなるだろうと思います。それから長者番付が発表されると、すべてが土地を売った者であり不動産業者である。これまた何となく情けなくなる。一生懸命働いておった者が、とうてい及びもつかないことが今日の事態において出てくるということでありますと、日本民族の勤勉性といいますか、堅実性と申しますか、そういうものにまで大きく水をかけていくものであろうし、ばかでもちょんでも土地を持っておれば大金持ちになって、資本主義経済の体制でありますから、何でもやれる。馬子にも衣裳といいますけれども、ぼくらはそう思いませんが、ダイヤモンドから何からこうやってもったいぶりますと、何となく総理大臣よりも偉いような感じを持つ。これではいかぬだろうと思うのであります。また、目先がきくということで株に投資をした人、商品投資をした人が、これまたばく大な利益を得ていく。見る見るうちにそうやって、遊んで暮らしてなお生活が豪華であるというようなことが大衆の目に映るということは、政治を行なっていく場合に、大きくは日本というものを考えてみました場合に、公平の原則から言い、世の中に正義というものがあるということから考えてみますと、きわめてうまくない結果であろうと思うのであります。   〔藤尾委員長代理退席、委員長着席〕  そういう意味で、はたして閣僚協の今度の七項目で物価対策というものが万全であるのかどうか、二段、三段と、さらに歯どめというものをこの際思い切ってかけておく必要があるのではないかと思いますだけに、ひとつ御見解をお聞きいたしておきたいと思います。
  122. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 おっしゃるとおり、国民に連帯感というものがなくなりますと、これはたいへんなことになると思うのです。あれはいつの間にかたいへんなえらい者になった、一体何をしてあんなになったんだろうということで、額に汗して全身全霊を打ち込んだということではなくて、何か一夜にしてたいへんな者になるというような、そういうことは政治としてはどうしても排撃しなければならぬことであると私は思っているのです。そういう意味で、何といっても物価の問題、地価の問題、そういうものはいま一番私どもが力を注がねばならぬことだと思っておるわけでございます。  先般の七項目の物価対策も、そうした気持ちを裏に込めてこの関係閣僚で決定していただいたわけでございますが、まずこれをやってみて、そしてあの中で、みな重要ですが、特に注目していただきたい点は、金融は今後さらに締まっていくということです。決して甘く見ておりません。そうした点で様子を見まして、また必要があれば次のことを考えねばならぬと思いますが、当面はあの対策を誠実にやっていくということを心がけたいと考えております。
  123. 三塚博

    ○三塚委員 今日の現況、先ほど局長からもお話ありまして、生活局長だったと思うのですが、シビアに見ればインフレではないのだ、大きい見地から見るとインフレといえるかもしれないという見解があったと思うのでありますが、私は、今日の状況はいずれにしてもインフレ的な傾向だろうと思うのです。でありますだけに、先ほど来申し上げましたような、公平の観点から見ても、正義の観点から見ても、起こってはいけないことが平然と起きておる。そのことが民族の調和、共同体に非常なひびを入らしておるという点で、このインフレ的な傾向というものを何としても押えなければならない。これは物価政策とうらはらの問題でありますけれども。  経済企画庁が協力して編集をしておる「ESP 物価インフレ」、これはいい本なんですよ。これはPR誌なんですけれども、私はよくこれを読むのですが、この中でもちょっと触れております。先ほど長官からも、国債、建設公債は今年度は二兆三千億円でやられる。これは支出を必要とするから、二兆三千億やられるわけですけれども、私は、これから、先ほどのお話のように、経済成長率を九%に押えていくのだ、こういうことでありましても、日本経済はやはりたくましい成長を続けていくだろう。そういたしますと、この過剰流動性というものをどのようにして吸収をしていくかということになりますと、金融政策だけではたして効果があるのだろうかという、一まつの懸念を持つものであります。過剰流動性は出超による問題だけではございませんで、法人たると個人たるとを問わず、その手元にある可処分の資金を吸収していくという問題だといたしますと、ここで思い切った国債制度という問題などが考えられていいのではないだろうか。いま財政法四条で、公共事業に関する問題でなければその発行が押えられておりますけれども、これはこのままでいきますと、そういう問題がそのつど出てまいるわけであります。しからばそれを公共事業に転化すればいいのか、しかしそれとても大きな問題がそこに生まれるわけでございますから、何としてもこれは国債として吸い上げる。いま日本は六兆円残高があるようにいわれておるわけでありますが、多くの経済学者が指摘いたしますのは、GNPの三分の一程度が非常に理想的な形で、無理のないかっこうだろうといわれております。そんな点で、いま六兆円ですから、あと二十四兆円、これを十年間くらいで埋めていくということになりますと、一年二兆四千億円の国債を発行いたしまして、これは凍結をしていく。もちろん、戦前の苦い経験がございますから、それは政府が保証していくというような形の中で、こういうもので過剰流動性を吸収をしていくような方法。もちろんその場合には、自由市場などというものも考えられるわけでございます。先進国が物価高に悩む、インフレ傾向に悩むと先ほども言われましたが、ドイツはこの問題で非常に成功をしておる一つのケースであろうというふうに思うのであります。四十億マルクの国債を発行し、自由市場を持ち、そのことで非常に経済的な歯どめに成功していることなどは、今後政府として、ここではなかなか、こういう問題は基幹に触れる問題ですからあれでありましょうけれども、大いに検討すべき課題ではないかというふうに考えるのでありますが、長官、いかがなものでありましょうか。
  124. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は本年の税収は相当ふえるというように思っておりますが、そのふえた税収を物価の安定のためにどう使うかということと、それから、次年度においてやはり法人税は増徴したほうがいいと思いますし、サラリーマン減税というものはやったほうがいいと思うのです。それで、そういう観点の中で今後の国債政策をどうするかということで、さしあたり、いま御提案のような、資金凍結のための新しい国債の発行を考えてはおりませんけれども、しかし、いま御指摘のように、西独、フランス等でもすでに行なわれておるものでございますから、十分検討いたしたいと考えております。西独においては、先般ドルを買って固定相場を維持しようとしたために、マルク資金が非常に多くなった。それに対する吸収策として四十億ドイツマルクの公債を出しました。フランスでも六十五億フラン、満期十五年償還の公債を発行しておるわけでございます。日本の場合は、このままの形を考えることは、いま実は考えておりませんけれども、御提案は十分検討させていただきたいと思います。
  125. 三塚博

    ○三塚委員 本問題、議論しますと長くなりますから、これはまた後の機会にさせていただきますが、ちょうど本日は開発局長もいらっしゃいますし、さらに長官の御意見もお聞きいたしたいので、最後にお伺いしますが、新全国総合開発計画がこれからつくられようといたしております。列島改造関連法案がいま国会に提案をされておるのでありますが、そこで、私は東北の出身なものでございますから、東北開発の問題をこの際お聞きをさしていただきたい。  と申しますのは、もちろんその審議の際にも申し上げたいのでありますが、七県知事会、いわゆる東北自治協議会、七県の知事——新潟まで入れてでありますが、議長等の中で、東北のあるべき姿ということで提言をまとめております。四月の末か五月の初めに出るわけでございますが、これはすべて、東北開発三法の趣旨に従いまして今日まで進んできたわけでございます。ところが、いままさに、新しい開発体制の移行に伴いまして、大きく開発のビジョンというものがゆらいできたことも事実でございます。そういう意味で、東北開発の問題については、そのつど関係各庁、総理大臣にも意見を具申をしたりお会いをしたりしておりますが、この列島改造関連法案に関連をいたしまして、一体、東北というものの今後のあるべき姿、また東北開発の理念といいますか、そういうものはどういう方向に求められるべきであろうかということであります。東北開発促進法という法律がございますが、これには開発促進計画をつくることになっております。これは四十五年ですでに終わっておるわけでありますが、その後延長も改定もなされておらぬ。そのままの状態で二年経過をいたしております。本問題については、開発局長なり前長官の佐藤さんなりが、新しい法案の成立の際に一番先に本問題を手をかけてみるというようなことが、東北開発審議会の席上言われておるわけでございますけれども、いま東北というものは、日本列島の中においてただ一つ残された後発の利益と申しますか、自然等がそのまま温存をされておる地域であります。残念ながら今日土地の買い占め等がありまして、若干くずれようといたしておりますだけに、この列島改造の過密過疎同時解消という、その人口の誘導地域としても、裏日本とともに東北の位置づけというものは、日本政治の中で重要なポイントであろうと思うわけです。そういう点などから考えてみました際に、やはり東北のあるべき姿というものをしっかりと経済企画庁の中で、今度は開発庁になるわけですが、これがなされなければならないと思います。そういう点でどう考えられておるのか、ひとつ御見解をこの際お聞かせいただきたいと思います。
  126. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 後ほど開発局長に補足してもらいますけれども、私の気持ちを申し上げますと、東北地方というのは、北海道とともに自然環境を保存しているきわめて貴重な地域であるというふうに思います。したがって、今後、東北地方の開発にあたりましては、従来の既開発地域の持っておるいろいろな問題を反省して、その反省の上に立って、すぐれた自然環境のもとに豊かな生活環境を備えた地域社会を形成するように、また今後の地域開発のモデルになる、そういう開発をしてまいらねばならぬと思っておるわけでございます。  御指摘の、東北開発促進法が四十五年に期限切れのままになっておるわけでございますが、これはその改定を当然検討しておるわけでございますが、現在、東北各県においては、地元としての意見を取りまとめつつあるというふうに承知いたしておりますので、これらの意見を踏まえまして、新全国総合開発計画の総点検と新国土総合開発法案とも関連しながら、新しい総合開発計画の中において十分に取り入れてまいりたい、こう思っております。
  127. 下河辺淳

    ○下河辺政府委員 長官の御説明を補足さしていただきますが、いままでの日本の開発は、大都市あるいは太平洋ベルト地帯というところを中心に、しかも重化学工業を中心に、あるいは人口が集中してくることを追いかけて対策を講ずるということに追われてきたというふうに思いますが、七十年代に入ってからの開発問題としては、やはり環境問題というものを中心にしてどのように開発を進めるかということが大きな課題であることは、御指摘のとおりであると思います。その際に、北海道、東北という地域、あるいは日本海沿岸地域というものについて、どのような施策、あるいは開発の方向が必要であるかということについては、私ども事務当局としてもかなり突っ込んだ勉強をし始めております。しかし、それをまとめるにあたりましては、長官から申し上げましたように、各県の意向がまず明らかにされることが重要であろうということから、各県の知事方に、どういう方向で今後の東北を考えるかということについてお尋ねをしておりまして、実は御承知のように、昭和四十四、五年のころ、一度七県知事の提言というものが出ております。私どもは、その提言もけっこうでありますが、この段階でもう一度その提言を再検討していただきたいということをお願いしておりまして、近くそれをいただけるという見込みを伺っておりますので、いただきましたものを中心に検討いたしまして、東北開発促進法に基づく東北開発促進計画をできるだけ早い機会にまとめたいと思っておりまして、東北開発審議会でもう一度御審議いただくように段取りをしつつあります。  三法の改正問題につきましては、国土総合開発法の改正によりまして、それに関連して考えるべきであるというふうに考えておりまして、三法改正問題についてもあわせて検討しておるところでありますが、現在、企画庁としては、新全国総合開発計画の総点検と、国土総合開発法を従来のものを廃止して新法をつくるということを中心にやっておりまして、それと関連して当然三法も検討さるべきであるというふうに考えておりまして、国土開発庁が設置されますれば、新しい国土開発庁のほうの仕事になりますが、経済企画庁総合開発局としての考え方を十分申し送ることにしたいと考えております。
  128. 三塚博

    ○三塚委員 最後に。すでに、いま局長お話のように、新しい方向というものが、七県の知事、そして企画部長段階で練り上げられまして、知事も大体それで意見がまとまっております。すでに地元の河北新報なんかには、四月七日にその中間報告が発表されておるわけであります。それも、これをつくるにあたりましては、経済企画庁をはじめ関係諸官庁とも綿密な連携の中であるべき姿を求めながら、なおかつ、東北の特性、地域の特性というものを民選の知事として出されて、非常に苦心の作であると私は思うのであります。  と申しますのは、道州制などが叫ばれておるわけでございますが、依然としてそれが実行でき得ない大きな一つの悩みに、いわゆる公選で選ばれておるというこのことがあります。これは議会政治、民主主義をたてまえとしてとる以上、やむを得ない一つワクでありますけれども、その中であえて県境を越えて、そうして東北州という観点の中から、東北圏という観点の中から、今後子孫に残すべき東北のあるべき姿はどうなければならないかということを、立場を越えてまとめ上げるというのは相当な苦労だろうと思います。それぞれああいう後進県でありますから、自分のほうに何でも引っぱってきたい。一つの青年の家を国が発表いたしますと、六県がこぞって激烈な誘致運動をやります。以下同じであります。そういう中にあって、今回一つの方向づけを苦心の中で出してきておるわけでございますから、いま長官をはじめ局長が言われました、今後正式に出される提言について十二分にそんたくをされて、地元の意向を生かし、同時に、そういう府県単位なものでありますから、これをコントロールあるいは誘導していくというのはやはり政府の力であろうと思います。そういう意味でひとつなお御検討を賜わりたいと思います。  最後に、この具体的提案とは別に、私も地方議会に長くおった者として感ずるのでありますが、食糧基地化構想というものが四十二年の七県知事会提言で出されました。なかなかそれが政府の取り上げるところとならぬのでありますけれども、今日の食糧事情からいいまして、やはり東北を食糧基地として残す、同時にレクリエーション地域、それから国民の保養の場としてのすぐれた自然環境を残すという意味においても、食糧基地化構想というものは当を得たものであると考えるわけであります。そういう意味で、多極化する今日でありますから、農林水産業の地域指標というものがしっかりと政府の判断の中で打ち出されなければならないというのが一つ。  また、東北をよりよくレベルアップをするために、国際研究学園都市というものをプロジェクトチームをつくり各界の代表を集めてやっております。これはすでに成案が出ておるのでありますが、これも七県知事会の提言の骨子になるはずでありますが、こういう問題なども、ひとつ懇切に住民の意向というものをくみ上げていただきたいと思うのです。  明治百年、まさに東北は奥州列藩同盟を結んで対抗したのでありますが、敗れてから近代国家に移るのでありますけれども、依然として、長い間中央官庁からはべっ視されてきました。そのことはいなめない事実であろうと思うし、白河以北、一山百文といわれ、今日は地価高騰のおかげで上がりましたけれども、しかし依然として、東京近郊と比べますと問題になりません。そういう苦闘の中で築き上げてきました地域開発、それは何も政府だけにおんぶをしてやろうということではないのであります。しかし、全体の社会経済の中でありますから、政府と一体になりながら進めることがよりよく効果をあげるものであり、東北は東北だけで生きるわけではありませんで、日本列島の東北だという観点の中でひとつ今後やっていただきたい。  東北開発株式会社は昭和十一年、六十九帝国議会においてつくられた法律であります。時限法で六十一年で終わりますけれども。そして東北開発促進法、そして北東公庫法と、この画期的な、東北にとりましては非常にすばらしい法律が三法あるわけでありますから、この改正につきましても、現況に合った形の中で、先ほど見越した形の中で、ひとつ思い切ってやられますように要望を申し上げまして、私の質問を終わります。この点についてひとつ御答弁を賜わりたいと思います。
  129. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 郷土を愛される三塚委員お話をよく承りました。御趣旨を十分尊重して事に当たりたいと考えております。
  130. 三原朝雄

    三原委員長 午後三時三十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時三十二分休憩      ————◇—————    午後三時四十二分開議
  131. 三原朝雄

    三原委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴切康雄君。
  132. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昨日東京入りをいたしまして、中国の廖承志さんを団長とする五十五名の代表団が来日をされました。約一カ月間日本に滞在する予定の中で、各種各般への接触が行なわれると私は思うわけでありますけれども、形式的にいえば民間レベルということになっておりますけれども、実質的には外交代表としての資格権限を備えた顔ぶれが並んでおるわけでありまして、そういう意味においては、廖承志氏の任務は中国の特使としての性格を持つもの、私はそのように判断をしているわけでありますけれども政府はこれらの方々と、ただ単に友好のエール交換というにとどまらず、日中間における懸案とされている問題として率直に話し合われる用意があるのかという点について、まずお伺いをしたいのであります。
  133. 大平正芳

    ○大平国務大臣 仰せのように、廖承志氏の今回の訪日は民間の各団体の御招請によることと承知しております。しかしながら、同氏の立場、役割り等にかんがみまして、政府としても非礼にならないように処置したいと思っておりまして、私は明朝お目にかかりますが、個々の事務的案件につきましては、外交ルートを通じまして処理すべきものと思いますけれども、日中間は目下相互理解を深めてまいらなければならぬ段階と心得ておりますので、率直に相互理解を深めるようにお話し合いをいたしたいと考えております。
  134. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 確かに、両国大使館の開設ということで、外交ルートの件についてはそういうふうなことも考えられるわけでありますけれども、御存じのように、昨年の九月の田中・毛沢東会談では、周恩来首相とともに廖承志さんが同席されたことは、対日政策推進の最高責任者という地位であるというように考えますし、またそういう事態がそれを物語っていると私は思うのですが、日中国交回復が実現してから半年余りになりますが、この間三月には大使館が開設され、初代大使の交換も実現をし、人事交流の幅も着実に拡大されてきてはいるものの、実際には肝心な実務協定等の交渉というものは足踏み状態であるというようにいわれているわけであります。この際、行き詰まった状態、これらの問題について、意見の交換、さらに突破口を開く可能性が期待されているわけでありますけれども、その点、外務大臣はどのように対処をされていかれるつもりでしょうか、それについてお伺いをいたします。
  135. 大平正芳

    ○大平国務大臣 御指摘の実務協定を逐次やってまいらなければならないわけでございますが、それを円滑にやってまいる上におきましては、先ほど申しましたように相互の理解が大事だと思います。したがって先方に、日本の制度、考え方、慣行、そういったことをよく承知していただかなければなりませんし、また、先方のそういったことにつきましても、当方として十分消化した理解を持たなければならぬわけでございますので、今回の御来朝を契機といたしまして、そういう理解が一そう深まって、今後のもろもろの案件を処理してまいる上におきまして、有益な結果を生むことができればと念願しております。
  136. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 廖承志さん一行は、きょう田中総理大臣を表敬訪問されるというように聞いておったわけですが、明日は外務大臣とお会いになる、そういう予定でありますけれども、明日のお会いになるときに、外務大臣としては、おいでくださったことに対する儀礼的な話にとどまるのか。あるいは場合によっては、それよりも深い問題にお話を進めていかれるのか。あるいはまた、田中首相あるいは外務大臣との間に個別的に会談を持たれるのか。その点はどのようになっておりましょうか。
  137. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま申し上げましたように、具体的な案件につきまして折衝するというお立場ではないと思います。けれども、彼我の間に十分な理解を遂げるいい機会だと思いますので、率直にお話し合いをしてみたいと考えておりますが、あした以後どういう段取りになりますかは、まだきまってはおりません。
  138. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 きのうも孫平化秘書長の記者会見のときに、一応民間レベルという立場で訪日をしたというふうに言われておりますけれども、場合によっては政治会談ということもあり得るというような御発言をされているわけでありますけれども、向こうで政治会談というふうなことで申し入れがあった場合においては、それを前向きに検討されるお気持ちでありましょうか。
  139. 大平正芳

    ○大平国務大臣 明日の会談は、事務的会談でなくて政治的会談だと心得えておりますので、先方からそういう御希望がございましたので、こちらも快く応じたわけでございまして、あしたやってみまして、あとどうなりますか、またそういう必要があるのかないのか、そのあたりは、いまのところ見当がつかないわけでございます。とりあえずあしたやってみようと考えております。
  140. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 儀礼的なことでなくして、むしろ政治的な会談を持たれるというお話でありますけれども、そうなりますと、当然いま日中間に懸案とされているいろいろな問題がやはりあるわけであります。特に日中の国交が回復されて、一日も早く平和友好条約や政府間の諸協定を結ばなくてはならないという、そういう状態になっているわけでありまして、なかんずく国交回復の瀬踏みともいうべき日中航空協定ですけれども、もうすでに何回か予備交渉が持たれて、そういう予備交渉においてある程度の問題が煮詰まってきておるというようなお話でありますけれども、日中航空協定の締結の見通しあるいは内容について、概略御説明を願いたいと思います。
  141. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これはすでに本委員会で御報告申し上げましたとおり、去年の十一月、当方の協定案なるものは先方に提示いたしました。先方から二月にそれに対応した案文が寄せられたわけでございますので、三月に入りまして、いま御指摘の予備会談を北京で行なったわけでございます。それで、北京におって何をしたかと申しますと、その案文の突き合わせをお願いしたわけでございます。そのほうの作業は順調にいっておるわけでございまして、若干の点が残っておりますけれども、これはそう大きな問題であるとは思っておりません。言いかえれば、協定案文に関する限り、彼我の間に大きな距離はないと私は判断いたしております。  問題は、付属書に路線の問題があるわけでございまして、このほうにつきましては、予備交渉を通じまして、先方の一応の感触というものは読み取ってきたつもりでおりますけれども、これもなお一応のものでございます。また、わがほうはわがほうの考慮しなければならないところが相当ございますので、いま運輸省と私どもの間で、専門家レベルでそういった問題の具体的な日本側の検討をやっておる最中でございます。本交渉をいつごろの段階で持てるかということにつきましては、いま私まだ見当を持っておりませんで、このわがほうの側の検討が煮詰ってまいらないと本交渉にかかれないわけでございまして、目下、鋭意技術的な、専門的な検討を進めておるというのがいまの段階でございます。
  142. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 事務レベルにおけるところのいろいろの煮詰め等についてはかなり話が進んできて、その点についてはあまり支障がないけれども、言うならば、最終的な政治的に判断をしなくてはならない問題がやはり残っている、私はそのように判断をしています。その中で、いまはからずも大平外務大臣が言われたいわゆる航空協定の核心問題、それは何といっても利害が伴ってまいりますので、やはり路線の問題が大きくあげられるわけでありますけれども、その路線についてはどのような話し合いがなされているか。そしてまた以遠権の問題については、どのように話し合われて、またそれをまとめようとしておるのか、その点についてお伺いをいたします。
  143. 大平正芳

    ○大平国務大臣 せっかくの御質問でございますが、外交交渉の過程におきまして、交渉の中身につきまして当事者の一方側が外部に申し上げるということにつきましては、先方ともよく御了解を得なければならぬのが筋道でございますので、いまの段階は内容的にどういうことかという点につきまして詳しく御説明申し上げる自由を目下私は持っていないわけでございますが、ただ申し上げられることは、なるほど政治的な判断の問題に最終的にはなりますけれども、航空の問題、とりわけ路線の問題というと、いまあなたの御質問にもございましたように、これはたいへん技術的な問題を含んでおりますので、政治的な判断をするにいたしましても、十分そういった点を精細に検討しておかないと、見当がはずれるということは申しわけないと思いまして、いま鋭意事務当局を督励いたしまして、そういった点についての検討を急がせておるということだけを、この段階におきましては、申し上げることでごかんべんをいただきたいと思います。
  144. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その内容については両国間の外交折衝の結果であるから、なかなかその点については触れることはできないというようなお話でございますけれども、それでは意向についてお聞きしましょう。  日本の意向と向こう側の意向はどういうことにあるかということでありますけれども、例をあげますと、日航のほうは、上海からヨーロッパ及び東南アジア方面の二つの路線がありますけれども、日本政府意向としては、どういうようにお考えになっておるかということが一つ。もう一つは、中国のほうは、東京から米国、カナダ、中南米の路線があると思うが、日本政府はこれに対してどうお考えであるかということ。この二つについてお伺いします。
  145. 大平正芳

    ○大平国務大臣 その点は、一口に申しますと相互主義でございまして、中国のある地点から以遠を日本がどう希望するか、あるいは日本のある空港から以遠権を向こうがどう選択するか、それはそれぞれの国の選択で、相互主義を貫いていくというたてまえでございます。
  146. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日中航空協定の妥結がなかなかきまらないということは、一つは台湾の中華航空公司の問題が大きなネックになっているということは想像にかたくないわけでありますけれども、日中共同声明の精神をそこなわないという考え方から、この問題をどのように処理されるおつもりなんでしょうか。
  147. 大平正芳

    ○大平国務大臣 共同声明が発出された以後、日台路線は今日あるがままのような姿で維持してまいったわけでございます。先方の政府と日本政府との間に外交関係がない状態にありますので、民間の間の話し合いで維持されてきておるわけでございまして、この姿は今後も変わらないと思うのであります。形の上で別な形態が考えられるかというと、それは考えられないわけで、協定発効後もいまのような形でやっていきたい、今後もこういう姿でやるよりほかに道はないと私は考えております。
  148. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日台関係を今日まで日中国交回復の中において維持してきた、そういうお話でありますけれども、今度の航空協定には、実はそういう非常にむずかしい点を解決をしなくてはならない問題が含まれている、私はそのように判断をしているわけです。それがゆえに、事務的レベルにおける問題がある程度解決の方向に向かっているとはいうものの、実際にはそういう点で最終的に日中航空協定がなかなか結べないというような状態は、一つはそこに非常にむずかしい問題を内在していることを意味しているわけでありますけれども、しかし今後は、ただそれだけの考え方でいかれるものかどうかということになると、実際の点においてはなかなかむずかしい点が出てくるんじゃないかと思うのです。  日台航路については、日台間の航空協定はすでに失効しているわけでありますけれども、現在、航空法に基づく日台間の航空業務は何の根拠に基づいて行なわれているかという問題です。まずその点についてお伺いしましょう。
  149. 大平正芳

    ○大平国務大臣 双方に乗り入れております飛行機会社双方の間で契約ができまして、それで運営いたしておるわけでございますが、日本の空港の利用につきましては、空港の管理権は運輸大臣にあるわけでございますので、発着につきまして運輸大臣の許可が要るという仕組みに相なっておるわけでございまして、今後もそういう姿でいく以外に方式はないと私は考えております。
  150. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 台湾と日本との間はそういうような関係になっておりますけれども、現在、財団法人の交流協会と亜東関係協会との間に、いろいろそういうふうな問題等の連携がなされているように聞いておるわけでありますが、そういう問題等も、双方を通じて取りきめられているものかどうか。その点について……。
  151. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 ただいまの航空問題につきましては、交流協会と亜東関係協会は別に直接取りきめをやっておりません。もし何か話し合う必要があります場合には、民間のパイプとしてこの両者が話し合いの場を持つということになろうかと思います。
  152. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこでまたお尋ねしますけれども、現在、日航が台湾に、また中華航空公司が日本へダイレクトに乗り入れをしているのがありますが、週何便それが行なわれているか、ちょっと報告を願いたいのです。
  153. 寺井久美

    ○寺井政府委員 ただいまの御質問にお答えします。  日本航空が三十七便、中華航空が二十一便飛んでおります。
  154. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 日本航空が週三十七便、中華航空公司が二十一便でございますけれども、二十一便の中華航空公司はどの飛行場を使用しているか、具体的にひとつ……。
  155. 寺井久美

    ○寺井政府委員 東京の羽田空港と大阪の伊丹空港を使用いたしております。
  156. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、二十一便の内訳はどういうふうになりましょうか。
  157. 寺井久美

    ○寺井政府委員 いろいろなルートがございますが、大阪に寄っておりますのが現在のところ七便でございます。
  158. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、羽田は十四便だというふうになりますね。
  159. 寺井久美

    ○寺井政府委員 さようでございます。
  160. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 参考のためにちょっとお伺いしておきますけれども、外国を含めて、日台間の運営企業が航路を持っている便数は、全体でどれだけありましょうか。
  161. 寺井久美

    ○寺井政府委員 百三十三便でございます。正確に申しますと百三十三・五でございますが、これは片道寄らないのがございますので、〇・五と計算しております。
  162. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 羽田空港の例をとってみますと、台湾と東京のダイレクトの直行便のほかに、台湾から東京を経由して外国に行くという便があると思いますけれども、ダイレクトの便と合わせますと、一日何便くらいになりましょうか。
  163. 寺井久美

    ○寺井政府委員 羽田に参っておりますのが十四便ございますが、このうち東京を抜けてサンフランシスコ、ロサンゼルス方面に行っておりますのが七便ございます。それからソウルに行っておりますのが二便ございます。
  164. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、台湾と東京だけというのでなくして、それからさらに以遠に行くということで、全部で十四便だということでしょうか。
  165. 寺井久美

    ○寺井政府委員 さようでございます。日本に来ておるもの、日本を通っていくもの、合計いたしまして二十一便でございます。
  166. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 その便の発着陸は、羽田空港について見ますと、大体何時ごろに羽田空港に着陸をいたし、また何時に離陸をするという状態になっていましょうか。
  167. 寺井久美

    ○寺井政府委員 たいへんこまかい御質問なのでちょっと時間がかかりますが、これは曜日によって多少時間に前後がございます。  例を申し上げますと、月曜日、台北から参ります便が、東京に二十一時五分に着きまして、二十二時五分にホノルルに向かって出発いたします。それから台北発九時の便が十二時三十五分に羽田に到着いたします。同じく月曜日、十九時五十分に大阪に一便台北から参ります。月曜日にはこういうふうに三便が日本に参っております。このパターンが火曜日、水曜日、木曜日、大体同じように続きます。そして金曜日は、台北から東京に参りますのがソウルに抜けますので、金曜日のパターンはいままでの木曜日までのパターンとやや異なります。十一時五十分に東京に着きまして、十二時三十分にソウルに向けて飛びます。それから土曜日になりますと、また月曜日のパターンになりまして、日曜日が金曜日と同じパターン、こういう状態でございます。
  168. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そこで、大平外務大臣は常に日中共同声明の精神を尊重するということを言われておるわけでありますけれども、また、おそらくそういうことによる問題の解決というか、話し合いをされていくわけでありましょう。しかし、日中共同声明の中においては、中国は一つである、しかもそれを代表するのは中華人民共和国であるという立場をとられるときに、中華人民共和国の中国民航と台湾の中華航空公司が同一場所に翼を並べるということは、これはもうたいへんに中国側においても気にしている問題でありますけれども、絶対にそういうことがないと判断してよいかどうか、その点についてお伺いします。
  169. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほど申しましたように、いろいろな角度から技術的、専門的な検討をやっておる段階でございます。どういう仕上げになりますか、いまのところ全く見当がつかない段階なのでございます。  ただ、日中間の信頼をこわさないように、しかも日台間の輸送需要というものが満たされるように、両方の要請を踏まえた上で最終的に解決せねばならぬのではないかと思っておりますけれども、具体的な問題になりますと詰まっておりませんので、国会を通じて御報告を申し上げるまでに至っていないというように御承知をいただきたいと思います。
  170. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実はそれが、中国側にしてみるならば、たいへんに日本側の誠意に疑問を感ずる点ではないか。少なくとも大平外務大臣が、事実関係として、中華人民共和国と台湾の飛行機が同じ飛行場の中に同時に翼を並べることがあるかどうかということについてあいまいにされているということ、これは私、外務大臣としてはちょっと考え方が甘いのじゃないか、そういうふうに思うわけでありますけれども、そういう事実が考えられるかという問題につきまして、もう一度お伺いします。
  171. 大平正芳

    ○大平国務大臣 事柄をあいまいにしたり、お互いの不信を買うようなことをしてはいかぬと考えて、慎重に対処したいと考えております。
  172. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 廖承志さんが、たしか訪日が最終的にきまった段階においてアメリカの記者に言われたことですが、日本側の誠意に疑問を感じているというような談話があります。この問題は、私は、台湾問題について一向に明らかにしない日本政府の態度が、向こうの方々の疑惑というか、不信というか、それにつながっていると思います。少なくとも今度廖承志さんがおいでになったわけですから、そういう点についても何らかの決着をつけなければならぬ段階ではないかと思うわけですが、日本側は航空協定を結ぶおり、中国側にどの飛行場を提供してもらいたいと申し出ておるのでしょうか。
  173. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先方の飛行場ですか。
  174. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうです。日本側ですね。
  175. 吉田健三

    ○吉田(健)政府委員 私たちの考え方は先方に申し上げてございますが、これはまだ交渉の段階でこれからさらに詰めていかなければならぬ問題でございますので、ただいまのところ、どの路線であるかというのを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。
  176. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 技術的な考え方を言いますと、ちょうど廖承志さんがきのうおいでになるときも、一時から三、四時ごろの、言うならば台湾の飛行機がいない時点をとらえての乗り入れというような状態になってきている事実を考えると、これから台湾の飛行機と中国の飛行機が両方翼を並べるようなことがありますと非常に大きな問題になってくるわけですから、そういう点について私は、少なくとも現在の状態の台湾からの乗り入れば変更せざるを得ない、そのように思うのですけれども、そういう点についてはどのようにお考えでございましょうか。
  177. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日中間の信頼をこわさないように、日台間の輸送需要をできるだけ確保するように、という二つの要請を踏まえて鋭意検討いたしておるということでございます。いずれまた、きまりましたら国会で御審議をいただかなければいかぬわけでございますので、いましばらく政府におまかせをいただきたいと思います。
  178. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そういうふうな一切ノーコメントであれば、先へ進むすべはないわけです。少なくとも大平外務大臣が、台湾の飛行機というものは今後便数は減るだろう、そのように実はあなたは国会において答弁をされております。少なくともそういうふうに答弁されている以上は何らか表明をされていいわけでありますが、その点について……。
  179. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私は、まだそういう具体的なことについて答弁をした覚えはないのであります。いままだ検討中であるということでひとつごかんべんをいただきたいと思います。
  180. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは、日本政府としての考え方なんですけれども、これは向こうのほうにお話しになっているのかいないのかわかりませんが、羽田空港と近い将来の国際空港としての成田と、こういう二つの飛行場がこれからできるわけでありますけれども、これに対しては、両方ともその対象として考えられているかどうか。その点について……。
  181. 大平正芳

    ○大平国務大臣 遠からず開設になるであろう成田空港というものも、当然考慮の対象にすべきものと考えております。
  182. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 少なくとも私は、日本の国が、たとえば、上海とか北京、あるいは広州、こういう飛行場等を日中航空協定の対象の飛行場だというふうに要望されますと、おそらく中国側においても当然、首都である東京あるいは大阪、そういうところが対象になってくると思うわけです。そうなった場合に、いまの中華航空公司の飛行機と、時間的には食い違いがあっても、事実関係としては、たとえば、台風とか、あるいは飛行機のおくれとか、そういうふうなことになってくると、東京とか大阪の便というものは今後減らさざるを得ない状態になってくるのではないか。私はそういうふうに思うのです。しろうと考えでもそういうふうに思われるわけでありますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  183. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日本の空港事情、空の交通事情、そういった置かれた条件の中でこの問題の処理をしなければならぬわけでございまして、いろんなケースを専門的、技術的にいろいろ検討してみておる段階でございます。
  184. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 そうしますと、少なくとも東京、大阪というものは、中華人民共和国としては当然今後主張の対象になってくるのではないか。これは私の想像の域を出ないわけでありますが、そうなった場合に、そこに技術的な問題として、過密ダイヤが組まれている日本の空というものは、遅延とか、あるいは航空気象等の問題があるときには、事実、羽田空港あるいは大阪空港が使えないような状態になってくるんではないかと思うのですが、そうなると、いま大平外務大臣が言われたような、ほかのもろもろの飛行場もやはり検討をしておるということになりますと、名古屋あるいは福岡、鹿児島等もその検討の範囲内にお入りになるのでしょうか。
  185. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日本の空の事情というものは、一応全部レビューして踏まえて判断せんならぬと勉強はいろいろいたしております。
  186. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 それでは当然、いま私が申し上げた、そういうふうな飛行場も含めて御検討されているというお話でございましょうか。
  187. 大平正芳

    ○大平国務大臣 ええ。日本の国際空港というものは一応全部爼上にのせて検討してみなければならぬと思っております。
  188. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 将来、日中航空協定が成立をして、いよいよ相互の乗り入れが実現した場合に、わが国の航空企業は日航だけに限定をされるか。それとも、政府としては頭の中に、国際線は日航に限られているようでありますけれども、特例として全日空等にも許可をする意向がおありであるのかどうか。この点についてひとつ……。
  189. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それはまあ運輸大臣の航空政策の問題でございまして、外務省の立場からとやかく言うべき問題ではないと思います。
  190. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 いま私が申し上げた点は、外務大臣なかなか口をお割りにならない。口をお割りにならないけれども、必ずや解決しなくちゃならない非常に重要な問題だ、私はそのように判断をしております。路線の問題にしても、あるいは台湾の問題にしても、いよいよ決断をしなくてはならない。日中航空協定のなかなか今日まで進まない重大なポイントというものは、私がいま申し上げ、しかも外務大臣はなかなかお口をお割りにならないというところに大きな問題がある、私はそのように思うのです。廖承志さんも今度こちらのほうに来られたわけでありますから、当然そういうものを含めてのいろいろの内容等を検討される機会があろうかと思いますけれども、そういう問題等が検討される場合には、大臣として前向きに検討されるかどうか、その点についてお伺いします。
  191. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いずれこの問題も決断せなければいかぬ時期がくると考えております。しかしそれは、国の内外を通じまして御納得がいくような仕上げにしなければならぬのじゃないかと思います。そのためには、日中間に十分こなれた理解がないといけないと思うのでありまして、廖承志氏との意見の交換におきましても、先ほど冒頭に申し述べましたように、相互理解を一そう深めていくように、私といたしましては努力したいと考えております。
  192. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 航空協定のほうは、私がそれ以上お話をしても、なかなか外務大臣はお口をお割りにならない様子でありますから、私はそれ以上突っ込むことは避けたいと思いますけれども、しかし、そういう点に重要な問題が残されているということだけは、本日提起をしておきます。  次に、在勤法の審議でありますから、在勤法のことについて少々お聞きしておきたいと思いますが、現在、在外に勤務する外務省職員で子女教育手当の支給を受ける数はどのくらいになりますか。またこのための予算措置はどうなっておりますか。お聞きいたします。
  193. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 昭和四十八年度の在外職員子女教育手当の予算額は、九カ月予算でございまして、総額にいたしまして四千六百八十七万二千円でございます。この基礎となりました在外職員の同伴子女の数は全部で四百三十四名でございます。
  194. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 第十五条の三の2に「学校教育その他の教育を受ける場合」とありますけれども、「その他の教育」とは具体的に何を意味しておりましょうか。
  195. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 在外におきます小学校、中学校、高等学校のほか補習教育というようなものも含めて考えております。
  196. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 在外に勤務する外務省職員の悩みの一つは子弟の教育の問題だというふうに聞いております。子弟の教育のため在外勤務を敬遠する傾向が見られるとのことでありますけれども、外務省当局としては、子弟の教育問題をどのように解決したいと考えておられるか。特に男子の中学、高校生の子弟の教育が最も問題であるかのように聞いておりますけれども、その点についてはどのようにお考えになっておりましょうか。
  197. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 先生御指摘のとおり、在外の職員の最大の悩みは子女の教育の問題でございます。そこで、外務省として現在行なっております施策を申しますと、第一は、ただいま申し述べました子女教育手当でございます。これは本年度の予算から新設し、法律にいたしまして、この国会でその御承認を仰いでいる次第でございます。  それから第二は、すでに始めましてから数年になっておりますけれども、在外に日本人のための学校がございます。その学校に対しまして、文部省と共同いたしまして補助をいたしておるわけでございます。その数は四十七年の会計年度末で三十校でございまして、四十八年度の予算におきましてさらに三校新設いたしまして、合計三十三校になったわけでございます。これらの日本人学校に在学する子女の総数は約三千人で、そのために教員が二百三十人おります。外務省といたしましては、これらの学校の校舎の借料を主として補助いたすとともに、補助教員の往復の旅費滞在費を負担いたしております。文部省におきましては、正式の教員の旅費、滞在費、それから教材費を負担いたしておるわけでございます。  それから第三の施策といたしましては、これは予算上は明らかな項目はございませんが、こういう子弟が日本に帰ってまいりましたあとの復学の問題につきまして、主として文部省にお願いして、その復学を快く迎えてくれる学校等に対して協力を仰いでおります。そのために子女教育財団というものを設置いたしまして、文部省と外務省が認可してその事業を遂行しております。  第四に、これは外務省の職員にだけ適用されるわけでございますけれども、在外職員がおる間に、残りました子弟の教育を負担するために、第一に、外務省の施設といたしまして、共済組合でもって子弟寮をつくりまして、これを子弟の寄宿舎として、子弟に利用していただいているわけでございます。それからもう一つは、残留いたしました子女を、毎年一回、親がおります出先の在外の任地に呼び寄せる、そして親が本国に置いておいた子女に会ってその教育を指導する機会を与える、そのための旅費を支給しております。
  198. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 勤務地国の教育関係は、外国人である日本人の子弟を無条件で受け入れてくれるかどうか。また勤務地国の教育と日本国内の義務教育との関係はどうなっておるか。また、同等のものとして認められるものであるかどうか。また、勤務地国で教育を受けた者は、日本の高等学校、大学に受験をする資格が与えられているかどうか。この点をお伺いいたします。
  199. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 ただいまの御質問でございますが、海外におきまして、在外公館の子弟は、もしその国にさっき申し上げました日本人学校がありますれば、それに入学を希望するのが通常でございます。ただ、現地の学校につきましては、ことばの関係上非常に入学がむずかしいということが通常でございます。しかし、あるいはアメリカとかフランスとか、日本へ帰りましてもそのことばが役に立つような国におきましては、子弟によりましてはその学校へ入るという場合もございます。現在アメリカには日本人学校というものはございませんので、あるいはフランスもいまはそうでございますけれども、そういう土地におきましては、地元の学校に入っております。  ただ、いま申し上げました日本人学校は、当初、主として開発途上国につくりまして、開発途上国におきましては、現地のことばで教育をする、またこれを受けるという側に立ちまして、その教育を受けることが非常に父兄としても希望しないということもございますので、そういう場合は、昔は、そこにありますアメリカ系、あるいはイギリス系、あるいはフランス系の学校に入っております。もし日本人学校ができますれば、それらの学校に入学するのが通常でございます。これらの学校に入らなければいかぬかという問題がございますけれども、われわれがいままで聞きました範囲では、外国人の子弟に対して、それらの国の学校にぜひ入らなければならぬということは聞いたことがございません。  それから、現地の学校を出まして日本の高校、大学に入れるかどうかという問題でございますが、大学の点は私よく存じませんが、高校につきましては、現在、日本人学校で中学校の課程を持った学校につきましては、文部省のほうで、これらの中学校を卒業した子弟につきましては、日本の高校に入る資格を与えるというような措置をおとりになっておりますので、現在ありますほとんど大部分の日本人学校の中学校を卒業しました者は、日本の高校に入る資格を持っておる次第でございます。
  200. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実際の問題として、東京にはアメリカンスクールがありまして、そこに日本人の子供たちが入学をしておると聞いておりますけれども、これらの者の日本国の義務教育との関係はどういうふうになりましょうか。
  201. 角井宏

    ○角井説明員 お答え申し上げます。  学校教育法上、在外経験が長くて日本語が話せないというような場合、日本の学校に入りにくい、こういう事態がどうしても出てまいります。日本人学校などのある地域から来られました方はそういうことはございませんが。そこで、そういう方々に対しましては、特に就学義務の猶予、免除という規定を運用いたしまして、アメリカンスクールに通学することを認めるというふうな仕組みになっております。
  202. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 昨年訪ソしたときに、わが党の議員が、モスクワにおける日本人学校の窮状について、現地の先生から切々と訴えられたことがあります。これによりますと、モスクワの小中学校は、義務教育の課程にしてはあまりにも内容が貧弱であるとのことでありまして、教室は狭いし、屋外の運動場もなく、先生も不足で、教員の奥さんも臨時に手伝っているということでありますが、政府はソ連政府当局に対して、もっと学校にふさわしい場所の提供を要請できないものであるかどうか。それは私どもの議員が行って陳情を受けてきたわけでありますけれども、その点についてどのようにお考えになっておりましょうか。
  203. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 モスクワの学校につきましては、確かに、御承知のように、いろいろな施設も手狭な点がございますが、実は日本人学校全般の問題といたしまして申し上げますと、日本人学校は昭和四十一年以来急速にふえてきまして、現在三十校に及んでおります。われわれといたしましては、年々学校を新設し、先生を派遣し、いろいろなことをやっているわけでございますけれども、なかなか日本と全く同じような状態までにはまだ至っておりません。したがいまして、毎年ふえていきます生徒の数に対応して先生をふやし、あるいは施設をふやし、いろいろ努力しているわけでございます。ただ予算的に申しますと、日本人学校と申しますのは、現地の日本人の皆さまと政府が一緒に協力しましてつくっておる学校でございまして、その点、日本の義務教育とはちょっと違う点がございます。そういうことと、いま申し上げましたソ連におきます特殊事情によって、思うように建物が見つからないというような二つの事情から、いまおっしゃいましたような、日本と全く同じような教育ができないというような事情がございます。われわれといたしましては、もちろんこういう事情を克服し、理想としましては、日本と全く同じような教育を受けられるように努力しておりますが、先ほど申しましたように、年々ふえてまいりますという事情に対処するために、確かに御指摘のありましたような事態が起こっていることでもございますし、将来ともこの点につきましては、できる限り日本に近い教育をでき得るような措置を講じたい、かように考えております。
  204. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 努力をしていると言っても、実態がそうでないことから、いわゆる私どもの議員が切々と現場で訴えられてきたわけですから、その実態に伴ってやはり改善をしていかなければならぬと思うのです。  そこで、その学校は図書も全く古びたもので、子供さんが非常に哀れであった、そのように述べておりますけれども、文部省はそういう点について、具体的に新しい図書の補充等を考えておられるのかどうか。また、外務省も文部省もそういう点について非常に配慮が欠けている、そう言う以外にないと私は思うのです。それで、子供たちも、またその親たちも特殊な環境の中にあるので、特にそういうことについての配慮が必要であるということを痛切に感じてきたということなんですが、文部省も外務省も、これに対してどういうふうに具体的に解決をされるつもりですか。
  205. 角井宏

    ○角井説明員 お答え申し上げます。  モスクワの日本人学校と申しますのは、比較的新しくできたものでございまして、最近までそういったような事態があるいはあったかと思いますけれども、この一、二年の間にだいぶ改善されたと聞いております。  それに対します教材、図書といったようなものの充実でございますが、大体、日本の学校に国が助成をしております理科設備基準とか、あるいは一般教材基準といったようなものがございますが、そういったものに準じまして整備できるようなものを送っているという状況にございます。それからまた先生の数も、日本の学校に適用されております定数基準法という法律がございますが、これに準拠いたしまして定数をはじき出していただいているように私どもは考えております。
  206. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 実際には教員の数も非常に少ないというふうに調査の結果いわれているわけですけれども、このことは教員の能力の限界ばかりでなく、外地で勉学する子弟の教育の水準の低下ということも問題になってくるわけですよ。国内の水準に比較して大体一年の程度の差がつくというふうにいわれておるわけでありますけれども、義務教育でそのような格差のつくなんということは非常に問題である、そういうように私は思うわけでありますが、その点、実際もう一度調査をされて、善処するところは善処をするというふうにお約束なさったらどうなんでしょうか。
  207. 角井宏

    ○角井説明員 モスクワの件でございますけれども、これは現在小中合わせまして五十名でございます。これに対しまして教員は、当方から派遣しておりますものが五名、それに現採を含めまして六名という現状でございます。五十名の学校に対して六名というのは、日本の学校の水準からいたしましてもそう見劣りする数ではないというふうに考えております。
  208. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 外地にある日本人学校の学力、設備の程度が国内と比較してはるかに低いことは共通のようでありますけれども、そういう状態を放置しているということは、子供たちの将来を思うと非常に問題があろうかと私は思うのですが、そういう格差是正についてはどのようにお考えになりましょうか。
  209. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 外地の日本人学校と日本の小学校に格差があるとおっしゃいましたが、これは一がいには申せませんので、私の聞きましたととろ、数年前にタイで日本人学校の生徒に日本と同じようなテストをやってみた結果は、逆に日本の一般水準より高いというデータが出たというふうに聞いております。もちろん、新設の学校におきましては、いままで外地でいろいろ教育を受けておったという関係と、それから、こちらから向こうへおいでになった先生が、何といいましても日本とは全然条件の違ったところで日本と同じ教科書で勉強するわけでございますから、たとえば季節のない国で季節感のある科目を教えるということもなかなかむずかしい、そういう点もございまして、確かにおっしゃるような、当初ある一定の水準に達するまでに時間のかかることはあったかと存じますけれども、しかし、創立してだいぶ時間のたっておる学校では、すでにそういう点もなくなりまして、日本とのギャップも少なくなっておる、このように考えております。  それから、先ほどちょっと申し落としましたが、モスクワの学校は、御指摘のように手狭でございましたけれども、昨年の十二月に広いところを見つけまして移転しておりましたので、この前ごらんになったような事情は解消されたもの、かように考えております。
  210. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 教員の待遇はどういうふうになっておりましょうか。外務省の役人は本俸のほかに在勤俸、それからまた今度の法改正によって子女教育手当等が加算されておりますけれども、外地で教べんをとる教員に対しても、これと同程度のものが支給をされてしかるべきではないかと思うのですが、その点についてはどうなっておりましょうか。
  211. 穂崎巧

    ○穂崎説明員 教員の待遇につきましては、現在、在勤俸、在勤手当のほかに配偶者手当、住居手当、そのほかに子供に対する家族手当をつけております。それで非常に平均値でございますが、四十七年度におきましては、在勤手当としまして、基本手当が平均月額四百十三ドル、住居手当は基本手当の二五%、家族手当は、妻と子供を入れまして、子供一人の場合は基本手当の三五%。したがいまして、平均でございますけれども、四百十三ドルプラス住居手当と家族手当で、その上に六〇%の加俸がついているということでございます。われわれといたしましては、四十八年度におきましても、この基本手当の増額をお願いいたしまして、これが実現した次第でございます。
  212. 鈴切康雄

    ○鈴切委員 新関駐ソ大使も、大使館としてできることは現状がもう精一ぱいだというふうに、実は私ども議員が行ったときに言われておったそうですけれども、実際にソ連の場合においては、かなり改善はされたとはいいながらも問題等があろうかと思いますけれども、そういう点について、よく現地ともまた御相談になるなり、あるいは実態等をお聞きになった上に、改善をしなくてはならない点は改善をされるというふうにお考えになったほうがいいのじゃないかと思いますけれども、その点を最後に大臣に伺って終わりたいと思います。
  213. 大平正芳

    ○大平国務大臣 よく実態を調べまして、改善の要があれば考えたいと思います。
  214. 三原朝雄

    三原委員長 上原康助君。
  215. 上原康助

    ○上原委員 せんだって十三日の本委員会でもいろいろお尋ねしたわけですが、十二日に沖繩のブルービーチの演習場で起きた事件についてさらにお尋ねをしてみたいと思います。  十三日の段階で一応政府のとられた措置についての説明があったわけですけれども、その後の事件の捜査の進捗状況等々について、今日の段階までどうなっているのか、説明をいただきたいと思います。
  216. 小林朴

    ○小林説明員 今日までの捜査の状況でございますけれども、まず事件が発生をいたしました四月の十二日には、現地を県本部長以下捜査幹部が見ておるわけでございますが、夜間のために十分なことができませんで、引き続きまして実況見分をいたしておるわけでございます。それは、この前もお話しをいたしましたように、九時三十分から始めまして、お昼のころまでやっておるわけでございますが、これにおきましては、米軍の関係者、それから検察庁の検事等が立ち会いまして、戦車を三台出しまして、現地の演習場の状況等を再現させながら状況を見分したということになっております。  それから、次は死因の究明の問題でございますけれども、これも事故の発生をいたしました翌日の十三日に、午後でございますけれども、在沖繩の米軍病院におきまして、県の警察の法医の顧問をしておられるお医者さんが執刀いたしまして、米軍医並びに地検の検事の立ち会いによりまして死体を解剖いたしております。その結果の死因は、右の胸腔が圧迫されまして、それによって肋骨の骨折を起こしたということに伴なう窒息死ということで一応結果が出ております。  それからまた、関係者からの事情の聴取でございますけれども、事件が起きました翌日に、米軍の関係者が石川署に出頭いたしまして、その戦車を動かしておりました操縦者、あるいは乗り組みの指揮官、同乗者、それから事故を目撃をいたしました米兵がいるわけでございますけれども、その米兵、それからこの訓練を総括して指揮をした幹部、こういう人方から事情を聴取をいたしておりますけれども、引き続きまして、今後も調べを進めていくという経過になっております。  それから住民の人方の関係でございますけれども、当時、演習場内に立ち入っておりました住民等につきまして、その演習を見聞した状況等につきまして、関係者十数名から事情を聴取をいたしまして、状況確定につとめておるわけでございます。  そういうようなことで、今後、そういう関係者の状況を聞くことと現場の実況見分等をあわせまして、事故の当時どういうことであったかというような真相をただしていきたい、こういうことでございます。
  217. 上原康助

    ○上原委員 先日の調査経過報告といいますか、あるいは現場の実況見分の経過説明とあまり変わらないわけですね。そこで、この事件のいわゆる核心ともいえるかと思うのですが、一体、裁判権の所属については、政府はどういう判断をしておられるのか。その点について、米側なり現地軍なり、あるいは米国政府と話し合いを持たれた経緯があるのかどうか、その点について説明をいただきたいと思います。
  218. 小林朴

    ○小林説明員 御承知のように、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定、これの十七条によりまして裁判権の問題が一応規定をされておるわけでございます。公務執行中の作為または不作為から生ずる事件につきましては、合衆国の軍当局が一次的な裁判権を行使するという一応たてまえになっておりますけれども、この問題につきましては、警察側といたしまして、現在まで事件の真相糾明ということに全力をあげておりました関係で、まだ正式に米軍関係意向を聞くという段階には至っておりませんけれども、近くそういう折衝をする予定でおるわけでございます。
  219. 上原康助

    ○上原委員 外務省は、その点は警察だけにまかしてあるのですか。
  220. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 事件が起きましたあくる日、すなわち十三日に、インガソル大使が外務大臣のところに参りまして、今回の事件に対して弔意並びに遺憾の意の表明をいたしましたけれども、その際、外務大臣からは、まことに遺憾な事件であり、米側と協力して善後措置並びに今後の再発防止のための予防措置について十分な措置を講じたいということを申しまして、米側もできる限りの協力を惜しまないという意向を述べているわけでございます。  そこで、今回の事故が米軍の演習中に起きたという点から見ますと、地位協定第十七条三項(a)、ただいま警察当局から御説明がありました条項の適用を受ける可能性が強いと思いますけれども、大事な問題でございますので、現地警察当局において、また米軍自体において、この問題の事実関係をいま調査中でございますので、その実情把握を待っている状況であります。
  221. 上原康助

    ○上原委員 そういたしますと、裁判権の所属については、まだ、第一次裁判権がアメリカにある、あるいはないということに対しての結論は、政府は現段階で出していないということですか。
  222. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 ただいま御答弁申し上げましたように、第一次裁判権は米側に帰属する可能性が強いと考えられますけれども、慎重のために、なお慎重に事実関係の把握につとめたいという状況でございまして、この点についての結論をまだ得ているわけではありませんし、米側から第一次裁判権を行使するという正式の通報にも接しておりません。
  223. 上原康助

    ○上原委員 あと一点議論を進めていく上で確かめておきたいのですが、施設局にちょっとその前にお尋ねしたいのですが、当日は立ち入り許可日になっておったということは、十二日の経過説明あるいは御答弁の中ではっきり答弁しておられます。立ち入り許可日になっておったということは、いわゆる米側のそういった指示なり指令というものが文書もしくは口頭で出ておったと解されるわけなんですね。その立ち入り許可日に対する法的根拠といいますか、取り扱いというのはどういうふうになるのか、御答弁いただきたいと思います。
  224. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 法的根拠と申しますか、この金武村ブルービーチのアメリカ側の使用に伴いますところの日米間の合同委員会における取りきめというものを昨年の五月十五日に行なっているわけでございます。したがって、その中にいわゆる使用条件として何項かしるされております。その中に第三十二回の合同委員会、これは一九五二年の十二月に行なわれた合同委員会でございます。そこで、陸上訓練場への立ち入り警告、責任に関するところの日米の合意というものが行なわれております。この合意をこの金武ブルービーチ演習場においても適用するということを掲げてございます。そしてその三十二回の合同委員会の合意の中身の一つといたしまして、地元住民の方たちが採草採木その他類似の生業目的のために立ち入る場合に、一定の条件を設け、そしてあらかじめ立ち入り日を定める等の方法で立ち入ることが許される、そういう趣旨のことがうたわれているわけでございます。そこで、金武ブルービーチにおきましても、この取りきめに基づきまして、沖繩の復帰以後、この演習場の演習通報の際、立ち入ることができる日をあわせて地元の方たちに通告する、そういう取り扱いをしてまいったわけでございます。
  225. 上原康助

    ○上原委員 ちょっと理解しにくいのですが、そういたしますと、当日の立ち入り許可日というのは、法的な根拠はないということですか。
  226. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 法的と申しますか、金武ブルービーチに関する演習場の使用条件に関する日米間の取りきめに基づいて、具体的には、四月の十二日に米側としては地元住民の方たちが立ち入ってもかまわない、そういう演習通報を出しているわけでございます。それに基づいた立ち入り日という扱いになるわけでございます。
  227. 上原康助

    ○上原委員 その通報は文書ですか、口頭ですか。
  228. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 沖繩におきますところの海兵部隊の司令官から那覇防衛施設局長あての文書で通報が行なわれております。
  229. 上原康助

    ○上原委員 その文書は、この間、四月の二日に金武村当局に発送したのだという説明でした。私の仄聞するところによりますと、金武村当局は受け取ったのは十一日だということなんですね。そこらのいきさつにも問題があると私たちは疑問を持っているわけなんです。那覇防衛施設局はほんとうに四月の二日に発送をしたのか、あるいはいつ金武村当局が受け取ったのか、また金武村当局が該当地域住民に通達をする方法はどういうふうなルートをとったのか、そこら辺についても説明を求めたいと思います。同時に、第三海兵隊司令官が那覇防衛施設局に通達したという文書については、その写しを正式に提示をしていただきたいと思います。
  230. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 那覇防衛施設局に海兵隊の司令官からの文書が到着いたしましたのが四月二日でございます。これは日付は三月三十日付になっておりましたが、四月二日に那覇防衛施設局は受け取りまして、中身は四月八日からの演習でございますので、一週間前の通報ということで、二日の日に直ちにこれを行なう必要があるということで、那覇局から、金武ブルービーチに関しましては、金武村の役場の軍用地係のほうへ電話で内容を通報いたしました。そして、こういう演習通報が非常にぎりぎりに参りましたからまず電話でお知らせをいたします、ということで内容をお知らせをしたわけでございます。そのあと、その中身を文書にいたしましてお送りした次第でございます。  それから、演習通報を受け取られた場合に、通常、金武村におきましては、各部落ごとだと思いますが、班を分けておられますので、各班ごとの班長さんに、役場からその演習通報を伝えていただく、と同時に、演習通報の内容をそれぞれの部落にございます掲示板に掲示していただく、こういう方法を従来からとっていただいているということを聞いております。
  231. 上原康助

    ○上原委員 こういう通報のしかた、通告のしかた等で、演習場に対しての立ち入り許可あるいは立ち入り禁止等の問題を、十分地域住民に周知徹底させ得たと解しておられますか。
  232. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 従来から本土の演習場におきましてもこのような方法をとりまして、地元の市町村と公共団体の御協力を得て周知していただく方法をとってきたわけでございます。沖繩におきましても同様の方法で、復帰直後から、那覇防衛施設局がそれぞれの市あるいは県のほうともよくお話し合いをさせていただいて、いまのような方法で周知をはかることができるということで、お話し合いの上で今日まで進めてきたわけでございます。ただ、今回の問題等にかんがみまして、演習通報のあり方等につきまして、復帰後日の浅い沖繩のことでございますから、那覇防衛施設局におきましても、それぞれの市町村の現実のやり方等具体的に詳しくお聞きした上で、改善を要する点は今後の課題として詰めていく必要があろうかと思います。
  233. 上原康助

    ○上原委員 通告のしかたについて改善をしていかなければいけない余地があることは認めますか。
  234. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 具体的にそういう演習通報の周知方が徹底を欠いているという事実を、私、まだ承知いたしておりません。これは念には念と申しますか、そういう周知方をさらに十二分にするという意味におきましてただいまのような御答弁を申し上げたわけでありまして、実態等につきましては、現在、那覇局におきまして、今回の問題を踏まえまして、さっそくにもアメリカ側と検討に入っているという報告も受けております。
  235. 上原康助

    ○上原委員 いまの御答弁、納得いかないのですがね。先ほどの説明では、電話で一応通告をしたのだという、金武村当局に対して那覇の施設局から。少なくとも戦車を繰り出して行なうああいう上陸演習のことを電話でやるということ自体に、私は問題があると思うのですよ。じゃ文書はいつ出したのですか、金武村当局に対して。金武村当局が文書を受け取ったのはいつなんですか。  もう一点は、まとめていろいろお尋ねしてみたいのですが、その事件が発生した地域、場所というのは、通常いわれている黙認耕作地ではないわけですね。その二点について。
  236. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 金武村が演習通報の文書を受け取られた日付につきましては、私ちょっと承知しておりませんが、那覇局から文書を出しましたのは四月の七日でございます。  それから、ただいまの事故の発生いたしました地点は、黙認耕作地ではございません。
  237. 上原康助

    ○上原委員 那覇防衛施設局から文書を発送したのは四月の七日ですね。
  238. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 四月の七日でございます。
  239. 上原康助

    ○上原委員 演習は四月八日から始まったわけですね。
  240. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 八日からでございます。そこで、最初に二日に米軍から受け取りまして、日がないものでございますから、電話でそういった点の趣旨を金武村の役場のほうに特にお伝えして、周知方をお願いしたわけでございます。
  241. 上原康助

    ○上原委員 これだけ明らかになれば、改善の余地があるないはおのずと判断ができると思うのですね。これ以上その点は申し上げません。  さらに、あと一点確かめておきたいのですが、これは現地の那覇防衛施設局長の、この事件に対して、人権協会なり関係団体が抗議もしくは要求をしたことに対しての御発言のようですが、いわゆる沖繩での米軍演習は、従来の慣行と日米合同委で取りきめたものがごっちゃになっている、演習場にいつでも自由に出入りできるような状態にある管理のあり方が問題だという御発言をしているんですね。先ほど若干触れたような気がするのですが、この言わんとしているところですね。従来の慣行と日米合同委で取りきめたものがごっちゃになっている、日米合同委で取りきめたものがはたして現地の市町村なりあるいは県、県民に対して公示されているのか、その趣旨が公にされておったのかどうかも問題だと思うのですね。ここで言っていることは、一体防衛施設局としてはどういう解釈をとっておられるか、まず説明をしていただきたいと思うのです。
  242. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 ちょっと私、那覇防衛施設局長がどういう機会にそういう発言をし、またどういう問題を踏まえてそういう発言をしたか、ちょっといきさつにつきましては承知しておりませんので、そのことについて具体的にどうこうということを私、申しかねる立場でございますが、ただ御指摘の問題につきまして、たとえば復帰前、米軍と地元の市町村なり地元の住民の方との間に、いろいろ立ち入り問題等について従来から慣習的に行なわれていたものが、復帰後の使用条件との間に運用上必ずしもかみ合わないと申しますか、かみ合わないと申しますよりも、たとえば射撃演習の場合に赤旗を立てるというようなことが三十二回の合同委員会で取りきめられておりますが、その赤旗にかわる何らかの表示というものが地元との間にお互いの了解がなされた場合に、そういう方法で行なっているような実態、そういったものが従来あるいはあるのじゃなかろうかと思いますが、いずれにいたしましても、演習場の使用条件の扱いとか、あるいは演習時の立ち入りの扱いとか、あるいは通報のしかた、そういったものにつきましては、沖繩に関しましてはさらに検討を加え、関係者との間の意思疎通を十分はかりたい、そういうふうに考えております。
  243. 上原康助

    ○上原委員 あと一点確めてから話を進めてまいりますけれども、先ほどお述べになったいわゆる一九五二年十二月ですかの演習場の立ち入りに関する合意事項がある。これは一般に公表された事項なんですか。
  244. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 昭和二十七年のちょうど講和条約発効直後の合同委員会の取りきめで、当時、相当の演習場をいわゆる本土に持っておりました時期に、各県知事、市町村長等に、こういった日米合意ができたということで周知をしたという経緯があったことは私記憶しておりますが、沖繩に関しまして、現地で那覇防衛施設局が、これらの点について、どういうふうに県なり各関係市町村に復帰後御説明しているか、その点につきましてちょっと具体的な経緯は承知しておりません。
  245. 上原康助

    ○上原委員 その合意事項はどういうことが述べられているのですか。
  246. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 昭和二十七年十二月の「演習場への立入、責任並びに警戒予告」に関する合意で、内容は次のとおりでございます。  一、訓練に支障のない限り生計目的のための立入を許可する。  二、訓練期間中、一週一回、春秋少くとも一週ずつの立入を特別考慮する。  三、米側に故意重過失なき限り、立入の結果射撃演習その他による傷害損傷に対しては、米側は行政協定十八条3項関係責任を負わない。  四、演習場使用に当っては、七日前の予告を米側は出す。  五、日本側地方代表者と現地司令官との連絡方法に関し規定する。 これが内容でございます。
  247. 上原康助

    ○上原委員 この合意事項も、先ほどの施設部長の御答弁じゃ、沖繩にも適用されるのだ。米側はこの件を持ち出してきたのですか、今度の事件で。
  248. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 御質問の御趣旨がちょっと私はっきり受け取れませんでしたが、いずれにしましても、これは演習場の立ち入りに関しまする日米間の合意事項でございますので、沖繩におきまする演習につきましても、当然これが日米間の合意として適用されるわけであります。   〔委員長退席、藤尾委員長代理着席〕
  249. 上原康助

    ○上原委員 そこが問題なんですよ。この合意取りきめがなされたのは昭和二十七年の十二月なんです。二十年も前の話。しかもこれがあるかどうかは、皆さんは、沖繩の県庁あるいは市町村該当者に対して周知徹底させているかどうかもわからない。これではこれを持ち出されてくる事態が問題なんですよ。その点、どうお考えなんですか。まず、法律、規則、規定というのは公にして、それを国民に周知徹底させることが先決でしょう。それがなされないで、ただこういう合意事項があったのだということだけでこの問題が処理されていくということになりますと、これは重大な政府責任ということになっちゃうとわれわれは受けとめざるを得ないのですよ。その点どういう理解のしかたをしておられるのか。これからこの問題はいろいろ発展していくと思いますので、政府の基本的な考え方についてまずぜひ明らかにしていただきたいと思うのです。
  250. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、復帰後、この問題を含めたそれぞれの演習場の使用条件について、県なり市町村にどういう説明を申し上げ、どういうふうに相互に理解をしたか、具体的な取り扱いについてはさっそく那覇局につきまして調査をいたしますが、現在、たとえば演習通報は那覇防衛施設局から少なくとも一週間前には各関係市町村に通報をされ、それに基づいて、たとえば金武村において受け取られた場合に、金武村としてはこういう方法で演習通報周知徹底方を取り扱うという方法も具体的にきめられている実態から考えまして、この合意等を含みました演習場の使用条件の取り扱いにつきまして、復帰後、関係市町村等とお話し合いができた上でそういうことになっておるというふうに私どもは了解をしております。
  251. 上原康助

    ○上原委員 話が少しおかしいのじゃないですか。演習場の使用についてこういう取りきめがあった、それを適用するんだという答弁をしておきながら、現にこれがどう周知徹底させたかについては、現地の施設局なりあるいは県関係者等の話を聞いてみなければわからないということ自体が、本末転倒じゃないですか。  この件はさておくとして、少なくともこういう取りきめがある、しかし、この件についてはわれわれも知らされてないのです、実際。わかるのは外務省か防衛施設庁だけです。皆さんのファイルにあるだけにしかすぎない。そこに、いろいろな基地問題から派生してくる事件というものがますます複雑、そしてアメリカ側の恣意によって、あるいは言いなりによって事が進められていく可能性というものが多いと思うのですね。その点、どういう方法で、この昭和二十七年の十二月に日米合同委員会において合意された事項が、復帰後、沖繩県関係市町村に通報されたのか。されてないとすると、これが適用されるという自体に私は問題があると思うのですね。そのいきさつをぜひ明らかにしていただきたいと思うのです。その点いいですね。
  252. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 さっそく調査いたします。
  253. 上原康助

    ○上原委員 そこで、ちょっと大臣に一点まずお聞きしたいのですが、いまいろいろやりとりをしておっても、演習場への立ち入りの問題、あるいは日米間で合意された事項等の趣旨の公開、それの関係者への通告のしかた等にいろいろ問題があるわけですね。そういう点を含めて、外務大臣として、今回のこの戦車による轢殺事件というものをどうとらえておられるのか。また、裁判権の問題なりいろいろなことが、これから日米間で話し合われると思うのですが、そのことについて、外務大臣という立場でどう対処していかれようとしておるのか、見解を賜わっておきたいと思うのです。
  254. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たいへん不幸な事件が起きまして、きわめて遺憾に存じます。これは何はさておきましても尊い人命にかかわる問題でございます。と同時に、日米間の取りきめに関連しての問題でございます。したがって、これからどのように取り組んでまいるかということは、非常に慎重に考えていかなきゃいかぬと私は思います。したがって、第一になされなければならないことは、真相の究明が大事だと思うのでございます。日米協力いたしまして真相を究明して、それを踏まえた上でこの問題の処理に当たらなければならぬと思っておるのでございます。せっかくいま関係当局の間で真相の究明が進んでおるわけでございますので、正確な御報告を承りまして、政府として適正な対処のしかたをしなければならぬと考えております。
  255. 上原康助

    ○上原委員 真相の究明というのは、私たちが理解をする限りにおいては、十分できていると見ているんですがね。一人の日本人の婦人が戦車にひき殺された、当日は立ち入り許可日であったということ。あとは地位協定等に基づく日米の手続上の問題だけでしょう。われわれの理解はそう思うんですがね。真相の究明を慎重にいま続けておるので、その報告を受けて適正な対処のしかたをやっていかれるという大臣の御発言ですが、この事件の真相究明というのは、あとどのくらいかかるのですか。
  256. 大平正芳

    ○大平国務大臣 いま申しましたように、真相の究明を急いでおるわけでございまして、それを待って判断したいと思います。
  257. 上原康助

    ○上原委員 先ほど局長の御答弁で、第一次裁判権はアメリカ側にある可能性が強いということでしたが、その根拠は公務中の行為であるということを政府は認める立場にあるのか。あるいは公務中の行為だということをアメリカ側は証明することを提示をしたのかどうか。そこいらのいきさつはどうなんですか。
  258. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、戦車を使って米軍の部隊が演習をしておった、そのこと自体から見ますと、公務中であったように見られまするけれども、慎重を期してこの点の事実関係を調査しておるという段階でございます。したがいまして、地位協定十七条に従って米側に第一次裁判権がある、すなわち公務中の事故であるということが確立されるかいなかにつきましては、その調査の結果を待ちたいと存じまするけれども、米側からはまだこの点について、公式に米側が第一次裁判権を行使するということを言ってまいっておらないということを先ほど御答弁申し上げたわけでございます。
  259. 上原康助

    ○上原委員 警察当局のいわゆる現場検証といいますか、そういうことのあれがあったんですが、それは法律行為としてやっておられるのか。単なる捜査じゃなく調査なんだということをこの間も盛んに強調しておられたのですが、一応、法律行為として捜査をしているというふうに理解をしていいんですか。
  260. 小林朴

    ○小林説明員 この実況見分と申しますのは、通常法律で強制的な令状をとってやるものを検証といっておるわけでありまして、この場合は任意に米軍の協力を得まして実情を調べておるということでございますけれども、それも法律行為ということには間違いないというふうに思います。
  261. 上原康助

    ○上原委員 防衛施設庁はどういう調査をしているのですか、この件で。
  262. 河路康

    河路政府委員 防衛施設局としましては、現在、米軍及び警察と緊密に連携の上、できるだけ早く事故原因等事実関係を十分精査しまして、万全の措置を講じたいと思います。なお、精査の結果、米軍の責任が明らかになれば、地位協定第十八条第五項及び民事特別法に基づきまして賠償の措置を講ずることといたします。
  263. 上原康助

    ○上原委員 いま大体政府姿勢というものがある程度理解されたような気がするのですが、そこで外務省にもう一ぺんお尋ねしたいのですが、今回の件で、第一次の裁判権はアメリカ側にある可能性が強い、しかし事件の真相をもっと究明をして結論を出したいというあれですが、アメリカ側とのかかわり合いということよりも、政府自体は、じゃこの事件についてどうお考えかということなんですね。立ち入り許可日であったということ、あるいは、八日から演習が始まろうとするのに、七日にしか文書を発送しなかったという事実。金武村に届いたのはおそらく八日か九日でしょう、距離の面からして。そういういきさつ等からすると、単なる公務中の行為であるというだけで片づけられない性質の問題だとわれわれ見るわけですね。はたして業務上の過失というものが立証できないのかどうか。それを立証する前向きの姿勢の捜査というもの、法律解釈というものを政府自体がやろうという意思があるかどうかが、この問題をいわゆる国民の人権を守る立場に立ってこれからやっていくのかどうかにかかると思うのですね。その点については、独自の御判断といいますか、捜査の方法というか、それはやっておられないのですか。
  264. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 先ほど警察当局から御答弁ございましたように、現地警察当局が、現場検証その他、現場におきましてこの事実関係の調査に当たっておられるわけでございますので、政府といたしましては、この調査の結果を待って、先ほど外務大臣の御答弁にございましたように、適正な措置を講じてまいりたい、こういう考え方でございます。
  265. 上原康助

    ○上原委員 警察当局は捜査という法律行為をやっておるというのですが、いわゆる刑事特別法の十四条でしたかにおいて、当然捜査しなければいかないわけでしょう、法律行為として。その点は政府は、地位協定との関係でどういう解釈をとっておられるのですか。
  266. 小林朴

    ○小林説明員 十四条に基づきましても、私どもは独立の立場から事件の真相をきわめようと努力をしておるわけでございます。したがいまして、先ほども申し上げました事件の経過の中で、いろんな関係者から供述を聞いておるわけですけれども、ただ、その供述というものはそれぞれの人の主観でございます。こういうものを総合いたしまして、また客観的な事実とにらみ合わして、真相がどこにあるかということをきわめるのが捜査だと思います。そういう線に沿いまして現在やっておるわけでございます。
  267. 上原康助

    ○上原委員 地位協定十七条の実施に伴う刑事特別法というのがありますね。その十四条で「日本国の法令による罪に係る事件についての捜査」、これをやらなければいかないわけでしょう。しかも日米で取りきめた協定に基づく捜査権でありながら、現段階までそれを十分活用しようとしない。そのことがこの事件に対する政府の消極的な立場と受け取らざるを得ないのですよ。十四条に基づく捜査を政府、警察当局はやっているという解釈でいいのですか。この間の説明とは若干違いますよ。
  268. 小林朴

    ○小林説明員 捜査というのは、そういうふうに法律に該当をするという、要するに裁判権を前提にした場合のものかどうかということを私はこの前申し上げたわけでございますけれども、十四条に基づいての捜査はやってないということは言っておりません。こういう立場で私どもは独自に捜査を展開いたしておるわけでございますから、そのことにつきましては、先ほどからも経過を申し上げておるわけでございます。
  269. 上原康助

    ○上原委員 じゃ裁判権を前提とした捜査はどこがやるのですか。
  270. 小林朴

    ○小林説明員 裁判権の問題につきましては、地位協定によりまして、第一次的な裁判権が、公務中であるのならば米軍にあるというような規定があるわけでございます。この問題につきましては、まだどちらでやるともきまっておるわけではないわけでございます。したがいまして、私どものほうでも独自の立場から捜査を進めておるということでございます。   〔藤尾委員長代理退席、委員長着席〕
  271. 上原康助

    ○上原委員 いまのはまたあとでお尋ねしますが、防衛施設庁も、ただ何か実情調査をやっているというだけのことをおっしゃっているのですが、防衛施設庁も直ちに調査をしなければいかないわけでしょう。そういうことになっていないですか。米軍の施設、区域において起きた事故に対する総理府施行令があるんじゃないですか。これに基づいて調査はやっているのですか。
  272. 河路康

    河路政府委員 那覇防衛施設局は、事故が発生すると直ちに、被害者が入院した陸軍病院及び事故現場に急行し、米軍及び地元警察の協力を得て初動調査を実施いたしまして、事故の現場等を確認しております。なお、翌十三日、局長代理でございますが、第三海兵師団ミッチェル・P・ライアン少将を訪れて、事故原因の究明及び再発防止等について注意を喚起いたしました。さらに、十三日、同局長は遺族宅を訪れて弔意を表し、次いで十四日にも再訪して見舞い金一万円をお贈りいたしました。
  273. 上原康助

    ○上原委員 そういうことも行政の一部かもしれませんが、私の言いたいのはそういうことじゃないのですよ。事故の真相の究明ということを盛んに強調しておられるのですが、十二日からもうすでに一週間近くにもなるわけでしょう。そこで、警察庁当局、あるいは外務省を含めて、この事件の真相というものを慎重に究明をするということを言いながらも、何か穏便に事を運んでいこうという従来の姿勢というものが出ている感がするわけですね。したがって、あらためて確かめておきたいのですが、現段階では、米側から公務中の犯罪行為であったということの証拠もまだ提示されていない、また裁判権も第一次的にアメリカ側にあるということも米側は言っていない、こういうふうに理解していいですか。
  274. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 繰り返しになりまして恐縮でございますが、演習中であるということから見ますと、公務と思われる状況でありますけれども、かりに公務であるということが認定されますと、地位協定十七条の規定に従いまして、「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」ということで、米側に第一次裁判権を行使する権利が残ることになります。しかしながら、米側は、公務である、したがって第一次裁判権を行使するということを正式に通報はいたしてきておりません。そこで政府といたしましては、米側が米側として行なっている捜査、取り調べ、またわがほうの現地警察当局が行なっておりまする捜査、調査、こういうものをもとに実情を正確に把握するということがまず第一であるというふうに考えるわけであります。その上で今度は、米側が第一次裁判権を行使するということが明確になりました場合におきまして、当然補償の問題が出てまいります。これに関連いたしましては、該当の第十八条の規定もございますし、これが補償の関係において具体的にいかなる適用が行なわれるかということがその次の問題になると思いますけれども、いまの段階におきましては、まず公務であるかどうか、したがって、それに関連して米側が第一次裁判権を行使するかどうか、その点がまず明確になる必要があると思いますけれども、その点の公式な態度の表明は受けておらない、こういうことであります。
  275. 上原康助

    ○上原委員 裁判権を日本側に譲渡すべきである、日本側に第一次裁判権をよこせという立場で、この問題について対米交渉なり話し合いをもっていく姿勢は、政府にはないのですか。
  276. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 たびたび繰り返しになりましてまた恐縮でございますが、まず事実を確かめました上で、米側が第一次裁判権を行使するかどうかということがはっきりすることが必要でありますし、その上で第一次裁判権の放棄を米側に要求するのかどうかということにつきましては、司法当局と慎重に協議をしなければいけない問題だろうと考えております。
  277. 上原康助

    ○上原委員 この問題のいきさつから見ても、あるいは基地問題等を含めて考えても、まさか政府は自損行為だという立場はとっておらないでしょうね。その点もまず伺っておきましょう。
  278. 大平正芳

    ○大平国務大臣 たびたび政府側から御答弁申し上げておるように、いろいろなことをやるにつきましては、真相を把握しないといかぬということでございます。重大な事件でございますから、あやまったことをやってはたいへんでございます。したがって、そういう段階でございますので、真相が究明されたら、それを踏まえた上で適正な措置を講ずると申し上げておるわけでありまして、それ以外にいま分別はございません。
  279. 上原康助

    ○上原委員 県民の強い要求がだんだん多くなってくると思うのですが、裁判権の問題を含めてこの事件について日本側で対処していく、そういう姿勢で問題処理に当たっていただきたいと思うのです。  さらに申し上げたいことは、こういう不幸な事件といいますか、あるいはある意味では起こるべくして起きた事件だと言っても過言でないと思うのですが、たびたび起きているということは、沖繩にあれだけの軍事基地が存在をしているという事実の証明だと思うのです。そういう意味でも私たちは、これまで基地問題について鋭く政府姿勢を追及する、あるいはただしながら御要望も申し上げてきたのですが、一向に前進をしていない。そういった面を含めて考えますと、今回のこの事件というものを、ただ公務中の行為であったというようなことで片づけられる筋の問題でないということだけは、ぜひ大臣関係者も念頭に入れてこの問題に対処をしていただきたい。そして、真相究明ということでいつまでも時間をかせぐということは、県民感情、あるいはいろいろな政治的な面からしても、ある意味では好ましくないことだと私は思うのです。そういう意味では早急に結論を出すように重ねて要求をしておきたいと思うのです。
  280. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これは公務上の事件でないという前提に立ってやれなんという政治的なことは私はできません。真相を究明しないと、私はそういう軽率なことは言えないわけでございます。  それから、私どもこういう問題を逃げ隠れしょうというわけでは決してないのでございます。あなたから御指摘を受けるまでもなく、政府が処理しなければいかぬ事件でございますから、私ども鋭意この解決に当たっておるわけでございますので、そのあたりは十分御理解をいただいて御協力を賜わりたいと思います。
  281. 上原康助

    ○上原委員 では、この点はこの程度にして、次の質問に移らしていただきたいと思うのです。  次も基地問題との関係ですが、例の基地労働者の問題でいろいろお尋ねしたいのですが、時間もかなり経過していますので……。  これは、全駐労、あるいは本土の駐留軍の場合も同じなんですが、地位協定でうたっている、いわゆる基地で働く労働者の権利の保障の問題、あるいは労働条件、安全衛生管理等々を含めて、憲法や地位協定で保障されている点、それと米軍の内部規程といいますか、基地内で適用している人事規則、規程等というのがあるわけですが、そういうものとどちらが優先するのか、きわめて不明確な点があると思うのです。どうもこの点も、米側の一方的な解釈によって事が進められているきらいがあるのですが、基地で働いている労働者の労働基本権、労働条件等については国内法が適用されるということはいなめないことだと思うのですが、その点について政府はどうお考えなんですか。
  282. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 お答えいたします。  米軍の基地の中で働きます日本人従業員の労働に関する基本権その他については、わが国の法令に従って保護されておるわけでございます。
  283. 上原康助

    ○上原委員 保護されている基本権というのは、具体的にはどういうものがありますか。
  284. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 いわゆる労働三権と申しますか、そういった基本的な権利でございます。
  285. 上原康助

    ○上原委員 よく引用されることなんですが、労働基本権との関係において米軍の内部規定といわれている、いわゆる在日米軍便覧といいますか、規則といいますか、四〇−一というのがしばしば適用されたり持ち出されたりしてきているのですが、四〇−一というのは、公開されているのですか。またどういう法的根拠がそれにあるのか。
  286. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 ただいま先生がおあげになりましたものは、在日米軍の内部通牒でございます。したがいまして、法的には米国の軍隊の基地の中で米軍の内部を規律するものでございます。
  287. 上原康助

    ○上原委員 それは基地で働いている労働者には周知徹底されているのですか。また政府は、その内部規定というものを通常どういうふうに取り扱っているのか、人事行政措置あるいは労務管理という面で。
  288. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 米軍の中の規定でございますので、いわゆる外に周知と申しますか、そういったことは行なわれていないと思います。ただ、いま先生おっしゃいましたことと関連して若干補足いたしますと、最近、沖繩等の基地で、基地内のデモとか集会、そういったものについて禁止命令を基地の司令官が出しておる、そういう場合に、そういうものをビラ等に書いて米軍が配っているという例があることを承知いたしております。
  289. 上原康助

    ○上原委員 そういたしますと、この内部規定というのは、地位協定あるいは基本労務契約には優先しないという理解のしかたでいいのですか。
  290. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 米軍の内部規定でございますので、それに基づきまして、あるいはそれに基かなくても、従業員側と米軍との関係だけを申しますと、米軍が適法な職務命令を発しましたものについては従業員のほうが守る義務がある、そういう関係だけでございます。
  291. 上原康助

    ○上原委員 その四〇−一というのは資料として提示いただけますか。
  292. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 これは、たびたび申し上げておりますように、米軍の内部通牒でございますので、私どもがそれを提出できるかどうか、提出することについては疑義がございますので、お許しいただきたいと思います。
  293. 上原康助

    ○上原委員 政府は、その四〇−一がどういうことを規定されているのか、わからぬとは言えないと思うんですが、知っていらっしゃるんですか。
  294. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 米側に照会いたしまして、内容を承知いたしております。
  295. 上原康助

    ○上原委員 施設局は、基地で働いている労働者の人事措置とか、あるいはいろんな懲罰、制裁規定、そういうものはすべてどういうあれに基づいてやっていらっしゃるんですか。それじゃ、四〇−一というものは全然参考にもしないで今日までやってこられているわけですか。
  296. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 従業員に関します人事措置と申しますか、そういったものにつきましては、たとえば陸上勤務者につきまして、防衛施設庁長官と在日米軍の代表者との間に基本労務契約というものが結ばれておりまして、それによって律しております。いまおっしゃいました米軍内部の通牒は、直接それによって従業員を律するものではないというふうに考えております。
  297. 上原康助

    ○上原委員 四〇−一の件は、いま大体考え方がわかりましたので、またあとで議論しますが、ちょっとその前に、外務省にお尋ねしたいんですが、いわゆる地位協定の十二条の五項の解釈というものは、施設庁でもいいですが、これはどういうふうにやっておられるのか、見解を明らかにしていただきたいと思うんです。
  298. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 施設庁でもよろしいというお話でございましたので、私どもの見解を申し上げますと、そこに書いてございますように、別段の合意がない限り日本国の法令に従うということになっておりますのは、先ほどから問題になっております、労働者に関するいろんな労働条件とか、その他労働者の持っている権利と申しますか、そういったものは国内法に従うんだ、そういうことになっております。
  299. 上原康助

    ○上原委員 その程度は私でも理解できるんですが、ここでうたっている、「相互間で別段の合意をする場合を除くほか」とありますね。「除くほか」というこの「別段の合意」というものは、どういう何々があるのか。そこを説明なり見解を明らかにしていただきたいと思うんです。
  300. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 地位協定五項に続きまして第六項の規定がございまして、十二条五項の「相互間で別段の合意をする場合を除く」というのは十二条六項の規定をいっているんだ、こういうのが外務省の解釈でございます。
  301. 上原康助

    ○上原委員 「別段の合意」というのは十二条六項という解釈ですね。
  302. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 さようでございます。
  303. 上原康助

    ○上原委員 あと一点、十二条六項に「合衆国軍隊又は、適当な場合には」というのがありますね。この「適当な場合」というのは、日本語としてどうもこの条文は理解しにくいんですが、この「適当な場合」というのをひとつ教えていただきたいと思うんです。
  304. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 十二条六項の規定は、「合衆国軍隊又は、適当な場合には、第十五条に定める機関により労働者が解雇され」云々とございまして、十五条の規定は、いわゆるPXその他歳出外資金調達諸機関、これをさしているわけでございますが、それをさす場合につきまして、「適当な場合」にそれが該当する場合にはと、そういう意味であります。
  305. 上原康助

    ○上原委員 ここでいっている十五条というのは、おっしゃるとおり諸機関の労働者に対する規定なんですよ。したがって、問題にしているのは解雇の手続上の問題だと思うのですね、私の理解は。「別段の合意」がある限りというのは、私の理解では、先ほど引用いたしました四〇−一というのも、当然この概念には入っていると思うのです。入っていないという理解でいいですか、五項、六項両方にまたがって。
  306. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 先ほどから申し上げておりますように、合衆国軍の中の内部通牒は、これは別に日本政府と合意したものではございません。
  307. 上原康助

    ○上原委員 では具体例でお尋ねしたいのですが、出勤停止あるいは暫定出勤停止というのは、どういう手続をとって実際にやっているのですか。
  308. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 先ほど申し上げました基本労務契約の中に規定がございまして、従業員の行為が不適当な場合に、これを矯正する措置が書いてございます。その場合に、たとえば戒告とか出勤停止とかいうような強制措置がいろいろしるされております。それから、暫定出勤停止の規定は、通常の場合、従業員に何か問題になる行為がございましたときに、それを米側として調査する期間、暫時基地の中に立ち入らせない、就労させない、そういうための規定でございまして、その暫定出勤停止はいわゆる強制措置ではない。ただ調査のための措置で、その間には俸給の六割が支給されております。なお、その処分がきまりました際には、かりにそれが処分が何も必要でないというような判定が下されました場合には、さかのぼりまして俸給を全部払うということになっております。
  309. 上原康助

    ○上原委員 この暫定出勤停止ですが、基本労務契約は第八章にいろいろありますが、そのOの項、そこにもいわゆる制裁の段階が一応規定されておりますね。さらにOの(3)項で「例外的解雇」というようなものがあるわけですね。この例外的解雇、時間がありませんから、これはいずれ時間を相当とらぬと議論できませんが、第九章で「保安上の危険」というのがある。ここにもまた暫定出勤停止という処分がたぶんあると思うのですね。第九章の3のb項の「暫定出勤停止」とこの第八章でいう「暫定出勤停止」の制裁とどう違うのですか。
  310. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 暫定出勤停止の第八章に規定してあります分は、先ほども申し上げましたように、いわゆる疑いがあります問題について調査をいたします期間、いわゆる出勤停止を暫時させるという趣旨のものでございまして、第九章のものは、その行為がいわゆるサボタージュその他牒報行為等、米軍の要するに安全に関連するような疑いがあります場合にとられる同様措置でございます。
  311. 上原康助

    ○上原委員 では、第八章でいう暫定出勤停止というのは解雇も含むのですか、通知の段階でですね。
  312. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 その従業員のなしました行為が、米側の考えとして一番最高の処分と申しますか、最悪の処分といいますか、そういうものを考えます際に、解雇にも当たる場合と予想される場合という場合に、その第八章の暫定出勤停止がなされる規定になっております。
  313. 上原康助

    ○上原委員 その第八章で規定をされている行為の基準なり、それを裏づける資料、証拠というものはだれが判断するのですか。
  314. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 これは、第八章を詳しく申し上げますと長くなりますが、最初にそういう疑いがありまして、調査を必要とすると考えます場合に、その暫定出勤停止がくる場合があります。そのあと嫌疑書というものが、米側から所定の調査報告書を添えまして、各県庁に送られてまいります。そうしますと、県庁としましては県庁独自の調査をいたすわけでございまして、米側の調査と日本側の調査、それが食い違います場合が多うございますが、その食い違います場合には、日米間の協議を行なって処分をきめていく、そういうことになっています。
  315. 上原康助

    ○上原委員 そういたしますと、第八章でいう暫定出勤停止に対しては、地域の労監はその手続をとること、アクションをとることを留保する権限はありますか。
  316. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 先ほど申し上げましたように、暫定出勤停止と申します措置は、いわゆる強制措置といいますか、制裁措置ではございませんので、これはこれで拒否することはできません。
  317. 上原康助

    ○上原委員 拒否することはできないというのは、米側から、たとえばAという雇用員に対して、この第八章のOの事項に違反をしているので暫定出勤停止手続をとれと、たとえば地域の労監に通達が行きますね。それに対して労監が、実情調査をしたいということでその手続をとることを保留していく、それを拒否することはできないという意味ですか。拒否することはできるという意味ですか。
  318. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 暫定出勤停止という、そのものの措置は、いわゆる強制措置、制裁措置でございませんので、それはそれで、いま日米間の取りきめでは、日本側としてはそのまま受け入れる。そのあと、両方で調査をいたしまして、それで制裁措置の手続がいろいろございますので、その手続の中で十分事実を突き合わせまして、意見を交換いたしまして、協議いたしましてきめる。きめましたときに、それがアメリカ側が当初疑いをかけたことが間違いであるという場合には、全部それを帳消しにいたしまして、引いておりました俸給、その他も全部お返しする、そういう仕組みになっているわけであります。
  319. 上原康助

    ○上原委員 俸給その他のことはあとでいいのです。いま事実関係を確かめておきたいのです。  もう一ぺん確かめておきたいのですが、暫定出勤停止処分を通告された場合は、一応疑いがあるということを地域の労監でもって実情調査をしたいということもできないということですね。向こう側が通告したとおり、暫定出勤停止を何月何日からやれということを受け入れざるを得ないというのが、いまあなたの答弁ですね。それはわかりました。わかりましても、私はそれは今後議論していきますので、容認はしませんよ。  それと、第九章にいう、通常いわゆる保安解雇といわれていることについてはどうなのですか。その二点、もう一ぺん確認をしておきたいと思うのです。
  320. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 暫定出勤停止の要求と申しますか、米側から参りました場合に、それはそのまま受け入れて出勤停止措置をすることになっておるわけでございます。ただし調査は、これは調査できないということではございません。調査できないどころではなく、当然積極的にやるべきことでございます。それで突き合わせる、そういうことになります。
  321. 上原康助

    ○上原委員 きょうまだこれから事実関係をあげて議論したかったのですけれども、いろいろほかの方の御発言もあるようですからおきますが、要するにいま御答弁があったとおりで、人事措置をやっていくということになると、アメリカの判断ですべて基本労務契約が解釈されるということになるわけですよね。実際はそうでしょう。その根拠になっているのは、やはり私が最初に特ち出した四〇−一ですよ。いつかそれも具体的に例をあげましょう。  そこで、最近、沖繩の事例で、本土もいろいろあるのですが、相当そういう使用者側の権利の乱用といいますか、もう続出しているのですね。これについては、施設庁としては、もうあまりたくさんで、何月何日にどういうことをやったと言わなくてもわかると思いますので、一体こういうことでいいのかどうかということなのです。あまりにもでたらめな、活動家のねらい打ちといいますか、あるいは労働組合に対しての切りくずし、弾圧というものが復帰後極度に激しくなっている。それはすべてたてまえは、これを持っておっても本音は米側はやはり四〇−一ですよ。それは皆さんは気づかないはずがない。その点をとくと、そういうことではいけないと言うのです。  さらに私はきょうもう一つ議論したかったのですが、一方において、労働者の権利というものが、そういうふうにアメリカ側の恣意判断によってどんどん規制をされているにかかわらず、皆さん当然やらなければいけない国内法の適用については、実際にやっていないわけでしょう。特に安全衛生管理の面、この件もきょう議論したかったのですが、一応例だけあげておきたいと思うのです。基本労務契約の第十六章には「安全及び衛生」というふうにうたわれている。そして1に「安全及び衛生に関する計画 両当事者は、この契約に基づき提供される従業員の福祉のため、日本国の法律により事業主に要求されるところに従い、作業上の安全及び衛生に関する計画を立て、これを実施するものとする」となっている。「日本国の法律により事業主に要求されるところに従い」ですよ。当然、一般民間企業で行なわれている安全衛生基準というものは、基地内においても日本国の法令によってやらなければいけないはずなんだが、全くなされていない。それもいつか具体例をあげて議論もしていきたいと思うのです。そしてその第十六章の4の「報告書」というところには、「B則」いわゆる防衛施設庁は、「労働安全衛生規則(昭和二十二年労働省令第九号)」とある。この労働省令第九号には、毒物はどうしなければいけない、危険物はどう取り扱わなければいけないという、いろいろなことがうたわれているのですよ。こういうことは全然やらないでおいて、労働者の権利に対してだけはアメリカ側の言いなりになってやるというのは一体何事かと言いたい。皆さんはやっているというかもしれませんが、いまの基本労務契約、地位協定の解釈、あるいは四〇−一というのは、あまりにも矛盾する点が多いのです。まず基本労務契約において、国内法を守るべき点については、外務省も防衛施設庁も、徹底してアメリカ側にも順守せしめる姿勢で、しかる後にいろいろな規制面、制裁面についても十分組合側なり核当者と話し合うという意思があればまだいいのですが、賃金は全然支払わない、どんどん解雇はする、そういうことで労使関係がうまくいくはずがないじゃありませんか。そこいらについても、きょうは時間について委員長のあれも受けておりますので、これ以上触れませんが、やろうと思えばできる面がたくさんあるにもかかわらずやっていない。いま私が指摘したことについて今後どうしていかれようとするのか。  外務大臣、私はこの点は防衛施設庁だけにまかしてはいかぬと思うのですよ。基本労務契約も地位協定、安保から来ているわけでしょう。アメリカ側はいま、義務は履行しないくせに要求だけはやっているようなありさまでしょう。そういうことではいけないと思いますので、こういう事柄に対して、ぜひ職場の実態というものを、これは本土も同じなので、含めて調査をするなり、国内法の適用というものを、労働者を保護するというか、労働者の権利を擁護する立場でやっていかれなければいけないと思うのですね。その点を強く要求いたしまして、これに対する政府の明確なこの段階における答弁をきょうは求めておきたいと思うのです。
  322. 松崎鎮一郎

    ○松崎政府委員 ただいま先生のおっしゃいましたように、基本労務契約の冒頭に、それから特にたとえば第十六章の「安全及び衛生」等におきましても、日本の法令に従うということは規定されておるわけでございますので、現在なお不十分な点があるということはまことに遺憾でございますが、それを十分達成するように努力中であります。特に安全衛生の問題でございますが、たびたび事故がございます際には常に、事故発生のつど、原因の究明、事故再発防止ということを申し入れておりまして、たとえば労働基準監督署等の立ち入りも行なっていただきまして、その矯正につとめると申しますか、そういうことをやっているわけでございます。  それから、先ほど来問題になりました出勤停止その他の問題につきまして、たとえば最近青森等でも例がございましたけれども、これも、その出勤停止になりました者は解雇には至りませんで、そのあと青森県なり施設庁の交渉によりまして、軽微な処分に終わった例もあります。そういうことで、ちゃんと手続に従った、ルールに従った問題の処理ということを、在日米軍、各当核県庁並びに従業員の皆さんという方々に常々お願いをしているわけでございます。
  323. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 米側が米軍の施設、区域を使います際に、当然地位協定三条三項の規定に基づきまして、施設、区域内の作業について公共の安全に妥当な考慮を払うべきことが規定されており、米側はこの趣旨を十分念頭に置いて施設、区域を使用しなければいけないわけでございます。復帰後の沖繩におきまして、塩素ガスのボンベ漏れその他いろいろな事故が二、三発生いたしておりまして、これにより施設、区域内に働いております従業員が非常な不安を覚えたという事故が起きていることは非常に残念でありますけれども政府としてはそのつど、米側にこの地位協定の規定につきまして注意を喚起すると同時に、施設、区域内における作業には安全上十分な注意を払うよう申し入れておりまして、米側も、このような事故の再発防止のために全力を尽くすということを申しておるわけでございます。したがいまして、安全措置につきまして、今後とも米側に対して十分注意を喚起してまいりたい、こういうように考えます。
  324. 上原康助

    ○上原委員 これで終わりますが、特にセカンド・ログ、第二兵たん部隊におけるガス漏れやら、いろいろな危険物の取り扱いの安全管理が全然ないまま復帰前から行なわれているわけですね。復帰後もやはり、いろいろなことで改善要求を出しても、いまアメリカは、職場の安全にしても、福利厚生施設にしても、金のかかることは一切やらない。それではいけないのです。セカンド・ログなんか、四千名近くの労働者があの地域で働いているのでしょう。いま四千名の労働者を雇う民間企業なら、どういう福利施設がありどういう安全施設がなされているか。きょうは労働省も見えているのですが、調べてくださいよ。その点を強く指摘しておきますので、次に具体的な例もあげてさらに議論を進めていきますから、ぜひ実情調査もして早急に手を打っていただきたいということ。さらに、暫定出勤停止等についても米側に強くその撤回を申し入れあるいは緊急な解決策をやるという前向きの姿勢でひとつ対処していただきたいということをあらためて要望いたしまして、質問を終わりたいと思うのです。
  325. 三原朝雄

    三原委員長 中路雅弘君。
  326. 中路雅弘

    ○中路委員 私は三月二十九日の質問をした際に、施設庁の方が参議院に行っていてお見えになりませんでしたので、きょうはその問題を続いてお尋ねすることにしていますけれども、その前に一つ、前回でも問題になりました問題で、緊急の問題でもありますので、最初にそのことをお尋ねしたいと思うのですが、例の池子弾薬庫の弾薬輸送の問題です。  前回、外務大臣はこの問題で、施設を提供しているという立場、それを考えてもらって市民の納得を得たいというお話もされていましたが、市民の納得というなら、逗子の市議会はきょう緊急市議会を行ないまして、これは満場一致で池子弾薬庫の再使用即時中止に関する意見書を採択しています。いずれこちらに来ると思いますが、地方自治法九十九条に基づいた意見書を一致して採択をしているわけですが、私はこの問題で最初に、池子の飛び地といいますか、管理部門が四十七年末に返還になった際の代替施設の提供ですね。この問題について、川上弾薬庫と池子の本隊の中で代替施設がつくられたということですが、どこにどれだけの経費で代替施設がつくられたのか、まずお尋ねしたい。
  327. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 池子の弾薬庫につきましては、ただいま御指摘のように、従来から地元の返還要望が非常に強く、また長い御要望があったわけでございます。これを踏まえまして、当面、池子弾薬庫の本隊のほうは引き続き米軍が必要とするという状態を踏まえながら、逗子市の市街地に飛び地としてありますところの弾薬庫管理地区、約六万平米でございますが、これをせめてまず返還させようということで、当時、池子弾薬庫の管理使用をやっておりました陸軍と話し合っておったわけでございます。そのうちに昭和四十五年七月にこの弾薬庫が海軍の管理に移ったわけです。その時点で、従来、管理地区を返還させるに伴い、管理地区に所在しますところの施設を陸軍と移設することで話し合っておりました内容を、引き続き、どういうふうに取り扱うかについて陸軍及び海軍と話し合いを行ないました。その結果、陸軍の所要とする移設分を川上、海軍が必要とする移設分を池子の本隊地区と一部浦郷倉庫地区に移設するということで話し合いがまとまり、これに伴う管理地区の返還が促進されたわけであります。  ただいま御質問の施設移設と申しますか、代替施設は、池子の本隊におきましては警備隊舎と消防署施設、それから浦郷倉庫地区におきましてガソリンステーション一基でございます。あと、陸軍が必要とします移設代替施設としましては倉庫一棟、それから従業員休憩所、作業場、小さいものでボイラー室、これら全部を川上に建設する、こういう計画でございます。  それで、それに要します経費といたしましては、池子の海軍の関係につきましては、約六千八百万円、これをもって四十七年十月に工事が完成いたしまして、その暮れに管理地区の返還を見ることになったわけであります。あと、川上の所要分につきましては、四十七年度成立の約八千七百万円、四十八年度予算一億五千二百万円、三百万円弱でございますが、この予算をもちましてこれから川上に建設の工事を行なう予定にいたしております。
  328. 中路雅弘

    ○中路委員 三月十六日の参議院の予算委員会でこの問題が詳しく質問をされていますね。移設をされた施設と費用について、公明党の方だと思いますけれども、相当詳しく質問された。その場合には、いま御答弁になった四十七年度の八千七百万円は、これは議事録全部読んでみましたけれども、入っていない。四十六年度の海軍の分の六千八百万円と、それから四十八年度の川上弾薬庫の一億五千万円余り、この二つしかお答えになっていない。何べんも質問されていますけれども。これは大河原さんも出席をされて、この点については関係して御答弁もされていますけれども、この参議院の予算委員会の答弁といまの施設部長の答弁と食い違うわけですが、これはどういう経過ですか。
  329. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 池子の弾薬庫の分につきます御質問、あるいは川上におきます昭和四十八年度の一億五千三百万円の予算につきまして、それぞれ別の機会にたしか御質問があったのじゃなかろうかと私、記憶しておりますが、いま御指摘の参議院の予算委員会におきましては、私の記憶では、まず御質問が、昭和四十八年度に予算案として計上されている一億五千三百万は、一体川上においてどういう工事を行なうのかというたしか御質問でございまして、それに対して当時、防衛施設庁長官が、これはこういう経緯で川上において代替施設を建設するに要する昭和四十八年度の必要経費でございますという趣旨で御答弁したかと記憶いたしております。
  330. 中路雅弘

    ○中路委員 それでごまかすからいけないのだね。そのときの答弁で、四十八年度の一億五千万円は何の施設かということについて高松施設庁長官が答弁されていますが、じゃもう一度、この四十八年度の一億五千万円、参議院でもお話しになったこれは、何の代替施設の費用ですか。
  331. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 一億五千三百万円は、昭和四十八年度におきまして、先ほど申し上げました川上における作業場、休憩所、ボイラー室、倉庫と、四十八年度分に必要とされます予算でございます。
  332. 中路雅弘

    ○中路委員 これは高松施設庁長官の答弁で、一億五千万円というのは、川上弾薬庫における従業員休憩所、作業場、倉庫等の建設ということでお答えになっておりますけれども、施設庁の方に来ていただいてお話を聞きましたら、この一億五千万というのは作業所のみの費用だというお話ですね。四十七年度の八千七百万円というのが、いまお話しになりました倉庫、ボイラー室、休憩所等に充てられているんだというお話なんです。高松長官はこの一億五千万円の中に全部含めちゃっているわけですね。だから、四十七年度の八千七百万円というのはどこからも出てこない。出てこなくても、これは施設全部出てくるわけですから、合うわけです。いまの答弁はそういう点でごまかしじゃないですか。この一億五千三百万で倉庫もボイラー室も全部できちゃうんだったら、四十七年度の八千七百万円というのは何に使うのですか。
  333. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 私どものほうの担当者がどういう御説明を申し上げましたか、そのいきさつは私ちょっと承知しておりませんが、あるいは御説明が舌足らずで、御指摘のような誤解をお招きしたかと思いますが、昭和四十七年度に成立しております八千七百万、それから四十八年度の一億五千三百万、いずれも先ほど御答弁いたしました施設の建設のための必要予算でございまして、昭和四十七年度におきましては、それらの工事を行なうにつきまして、それぞれの施設を手がけながら、一部付帯工事的なものを四十七年度で行ない、引き続き四十八年度一億五千三百万の予算を成立させていただいた上であとの工事を行なうことによって終わるという考え方で、四十七年度から四十八年度、八千七百万と一億五千三百万と合わせてこの四つの施設の移設工事を当初から考えていたわけでございまして、もし私どもの担当者等の御説明申し上げたことでそういった御疑問を持たれた点がございましたら、この際あらためて、以上のようでございますので御理解いただきたいと思います。
  334. 中路雅弘

    ○中路委員 参議院の長官の答弁ですと、この一億五千万円の中に、いま言いました川上の施設は全部入っているわけですね。だから私は、八千七百万円というのは何に使用したのかと聞いているわけです。八千七百万円も含めてこれだけの施設を川上弾薬庫につくるとすれば、合計すれば二億三千七百万を川上弾薬庫の代替施設ということで使っているということになるわけですから、二億三千七百万と一億五千万では大きな違いがあるわけですね。この点は、参議院における長官の答弁も、四十七年度を抜かしているという点で、しかも対象は、一億五千万円の中にこの八千七百万円も含めて、全部これでやるんだという答弁に何回読んでみてもなっているのです。その点で、これが誤りだ、答弁が不十分だということならば、もう一度お聞きしますけれども、ここではっきりして、訂正していただいて、川上弾薬庫については合計すれば二億三千七百万円の費用をかけているんだということになるわけですから、それをはっきりもう一度お願いしたい。
  335. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 私ども長官の答弁でございますので、私がどうこう申し上げる立場じゃございませんが、ただ、私もあのときの議事録をもう一度先ほど読んでまいりまして、質問の経過からああいう私どものほうの長官の答弁になったかと思います。したがって、あの答弁そのものは、経過におきましては、その一億五千三百万の中身を御説明したことであろうと思いますが、いずれにしましても、四十七年度の八千七百万について御疑問を抱かれた点につきましては、先ほど私が御答弁いたしましたような中身でございますので、あらためてそういうふうに御理解いただきたいと思います。
  336. 中路雅弘

    ○中路委員 それから、この池子そのものについてお尋ねしたいのですが、先ほど四十六年度は海軍の代替施設の分ですね。お話しになりました三千九百七十二万円、これが、いまのお話ですと、本隊の中につくる警備隊舎、消防施設、それから浦郷にガソリンステーションとおっしゃいましたが、十月に完成したというお話ですが、これは全部代替の施設ですか。新規のものがありますか。
  337. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 これらはいずれも、すでに返還になりました池子弾薬庫の管理地区にございました施設でございます。なお、ただいまこれらに要しました予算につきまして御指摘がございましたが、これは六千八百万円であります。
  338. 中路雅弘

    ○中路委員 ああ、私が間違えました。  具体的にひとつお尋ねしますけれども、浦郷につくられたこのガソリン補給所、ガソリンステーションですか、これも代替施設だとおっしゃったわけですけれども、いままで管理地区にあったどの施設の代替ですか。
  339. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 池子弾薬庫の管理地区には、ガソリンステーションとしまして、ガソリンの貯蔵タンクと申しますか、七基ございまして、一万六千ガロンの容量がございました。それを、浦郷におきましては一基にまとめまして、容量も三千ガロンということでつくっておりまして、池子管理地区にそういうガソリンステーションというものが現存しておったことは事実でございます。
  340. 中路雅弘

    ○中路委員 管理部門にガソリンステーションがあったということは、施設庁の皆さんは実際に確かめられたのですか。
  341. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 私どものほうは確かめておりますし、それから私の手元にあります管理部門の財産台帳にもはっきりとそれは登載されております。
  342. 中路雅弘

    ○中路委員 私も横浜の施設局施設管理課から、この管理地区にある施設について全部こまかい報告をいただいています。この中には、自転車置き場から更衣室あるいは物置きの小さい小屋までありますけれども、これは横浜施設局のお話ですが、この中でおそらく、施設番号として私のほうと合うかどうかわかりませんが、S46というのが給油施設になっておりますけれども、横浜施設局からの話でも、これは倉庫なんだ。アメリカのほうが、これは給油所というふうに届けてきただけで、実際は倉庫で十坪ぐらい、三十四平方メートルほどの建物。給油の施設というのは全然ない、これは倉庫だということを言っていますし、現に返還になったあと、逗子の市役所の企画課があとを調べた場合にも、私のところに来ておりますけれども、全部調べたけれども、ガソリンステーションまたは給油装置等に類するものがこの管理地区には一切ないというのが、逗子の市役所の返還されたあと調査された人たちの報告でもあるのですが、ここでいう給油施設というのはどういう施設があったのですか。
  343. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 私どもこの移設計画を詰めるにあたって、昭和四十四年ころからずっとアメリカ側と詰めておりまして、当時、昭和四十四年、四十五年ころに池子の管理地区の実態等も調べながら、当時の陸軍ともいろいろ詰めていたわけでございます。引き続き海軍とも詰めたその経過におきまして、この移設計画と現存施設との対比というものの資料がずっと今日まで作業の一応前提となって、私の手元で持っておるわけでございまして、私どもの記録としては、ガソリンステーションはあったものであると考えております。  また、当時陸軍があそこを管理しておりましたときに、陸軍は横須賀地区におきましては、この池子弾薬庫以外には陸軍の支援施設というものを持っておりませんでした。弾薬の荷揚げ場としては追浜の海軍施設の波止場を使っておりました。あと陸軍の弾薬の運営活動はすべて池子で行なわれていたわけでございます。それに要しますところの輸送車両あるいは消防車、そういったものの運営のために当然相当の部隊が動いておったわけでございますが、ガソリンステーションあるいはガソリン貯蔵の施設機能というものが管理地区にあったことは当然でなかろうかと思います。  なお、御指摘の点につきまして、どういう経過で横浜局が御説明申し上げましたか、こういった点はさらに私、調査してみたいと思います。
  344. 中路雅弘

    ○中路委員 いまのもここで答弁されている方自身は確かめられてないわけですね。これは報告でごらんになっていると思いますが。実際、埠頭でその当時調べた人たちの話だと、この十坪余りの古い倉庫にドラムかんが何本か置いてあった。ドラムかんが置いてありますから、当然給油できますけれども、そういう倉庫であった。横浜施設局の人も倉庫だと言っている。それをアメリカのほうは、返還交渉のときに、それは給油所としてS46というのは届けてきたんだということを言っていますけれども、施設局がそう言っているだけでなくて、私たちが確かめてみても、そこにはドラムかんが置いてあった。ドラムかんがあれば当然給油ができます。しかし、ドラムかんが給油施設だということはとうてい考えられないと思うのですね。  大小の問題というのは、やはりこの前の参議院の会議のときに、大平外務大臣も、既存の施設より大きくなるようなものを代替施設としてつくることは毛頭考えていないという御答弁をされています。大河原さんも、原則として代替の範囲を越える新規のものはつくらないのだ。これはまあ当然のことです。新規のものになれば、日米合同委員会で協議をしなければならないということになるんですが、この代替だといってつくられた浦郷の給油施設に幾ら予算をかけられておるのですか。
  345. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 一基で三百八十万でございます、工事費は。
  346. 中路雅弘

    ○中路委員 いまの警備隊舎、消防施設、これは幾らですか、本隊の中につくられているのは。
  347. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 六千四百十万円でございます。
  348. 中路雅弘

    ○中路委員 既存の施設より大きくなるようなものを毛頭考えていないと、外務大臣も答弁されているのですけれども、ドラムかんと三百万円からかける給油施設とどちらが大きいか、これは比較しなくても、見なくてもよくおわかりになると思うのですが、実際にこちらでいま答弁されておる方は事実を見ておられない、報告だけで答弁されておることは、さっきの話でもよくわかるのですが、私は、こういう代替施設の場合に、その施設について、実態について、実際にそれが既存の施設よりも大きくならない、原則として代替の範囲を越えるというものをしないというならば、その施設について皆さんがしっかり確かめられるということがないと、いまのようなでたらめな答弁になってくるんじゃないか。  私はもう一度その点でお尋ねしますけれども、いま答弁されている施設部長さんも、実際に逗子の管理部門の給油施設、ガソリンステーションというのを事実見られたのですか、どういうものだったということを。
  349. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 私自身は直接現場は見ておりませんが、こういった作業を行なうにつきましては、当然これを担当いたします日米の折衝に当たる者、あるいは現場をチェックしながら財産の実態を踏まえて交渉する立場にある者としては、当然慎重に調査をした上で折衝を行なったわけでございます。  また、ないものとか、あるいは小さいものを大きくとかというような御指摘がございましたが、全部で池子の管理地区にございました建物は八千五百五十三平米でございました。これらの建物を陸海軍両方を合わせて二千七百平米という移設所要の建物に圧縮した形で管理地区の返還をはかるということで折衝したわけでございます。代替性の問題、あるいはこの移設に伴う日本側の経費負担の問題につきましては、十分折衝の過程におきまして日本側の立場を踏まえ、アメリカ側と折衝を行なった結果の結論であるというふうに私どもは考えております。
  350. 中路雅弘

    ○中路委員 実際、いまおっしゃったように見ていられないわけですから。私自身、また逗子の現地を市の企画課でも、返還されたあと、どういう施設があったかということを視察をして、ガソリンステーションについては、そういう給油施設は全くないのだという、市議会としても、市役所としても、実態について調査した結果について報告されていますし、先ほど言いましたように、横浜の施設局でも、実態というのは倉庫なんだ、倉庫の中にドラムかんが入っているのだ、これが実態なんだ。ドラムかんが入っていれば給油ができるのはあたりまえです。そういうものの代替として何百万という費用をかけて浦郷に施設をつくる。これは明らかに私は新規だと思うのです。当然日米合同委員会で検討しなければいけない問題です。  消防施設というのがあるのですね。実態は何か、用途は何かと聞いたのです。これも横浜施設局の管理課の話ですが、消防施設というのは消防車一台。これもいいかげんなものだと思うのです。きょうは一つ一つあげませんけれども、実際あなた方は、代替施設とかリロケーションの中で、こういうふうに私たちが実際に確かめていけば、ドラムかんを給油施設だといって何百万の費用をかけてつくってやる、これは全くいまの不当な予算、金の支出による基地の強化である。縮小どころじゃない。管理部門を返すということによって、一そう給油施設や新しい基地の機能を強化していくための施設を提供してやるということになるわけですから、私は、きょう実際に見てもおられないということなので、施設庁でいま具体的にあげました、たとえばガソリン補給施設については、もう一度実態を、何の代替なのかということを明らかにしていただきたいというふうに考えるのですが、この点はどうですか。
  351. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 横浜局のどういう立場の者がどういう機会に御説明申し上げたかは存じませんが、いずれにしましても、政府としては責任ある立場で、この移設計画の中身につきまして検討の上、日米間で合意したものでございます。御指摘の点につきましては、さらに調査をいたします。  それから消防署につきましては、弾薬庫の安全対策上、当然消防機能というものを持つことが必要でございます。管理部門にありましたそういう機能を池子の本隊地区に移したものでございます。
  352. 中路雅弘

    ○中路委員 私のいま御質問しているのは、あなた自身も実際に確かめてないというお話なので、もう一度この問題については、何の給油施設というのか、いままでの施設が何の代替として浦郷にそれだけの費用をかけてつくられたのかということについて、もう一度調査をしていただきたいということをお尋ねしているわけなんです。その点についてどうですか。
  353. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 調査いたします。
  354. 中路雅弘

    ○中路委員 火薬の輸送の問題ですけれども、昨日も延べにして三十台の火薬が搬入されているわけですが、六日八台、九日十一台、十日十五台、十六日を含めていままで約何トンの火薬が搬入されたわけですか。
  355. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 池子の弾薬庫に対します弾薬類の搬入は、四月の六、九、十日、それから四月の十六日、十七日の五日間行なわれておりますけれども、合計いたしまして約五百トンちょっと搬入されたというふうに承知しております。
  356. 中路雅弘

    ○中路委員 火薬の輸送について、米軍の火薬類運搬上の処置という合意事項がありますが、この中でも「二〇〇〇ポンド以上の鋭感な火薬類」云云の「性質の弾薬を運搬する場合には先導車をつけなければならない」ということがありますが、昨日もみなSPのパトロールカーが先導している。先導車がついているわけです。相当高性能の火薬だと思いますけれども、この池子弾薬庫に運び込まれている火薬について、御存じのように市民の間から非常に大きな不安が出ている。高性能の火薬であることに間違いがないと思うのですが、どういう種類のものがいま運ばれているのか、お答えできますか。
  357. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 通常の弾薬であるというふうに承知いたしております。
  358. 中路雅弘

    ○中路委員 この点については、私たちも立ち入りの調査も要求しているわけですけれども、まだ返事が来ませんし、あらためて聞きたいと思うのですが、米軍の車両で輸送する場合に、国内法の火薬類取締法で義務づけられている手続は、いま言いました合意事項で、かってに必要としないという取りきめはされていないわけですね。これ自身私は非常に不当なものだと思いますけれども、しかしこの合意事項では、火薬の輸送についての詳細な規定はありません。そうだとすれば、こまかい輸送については、地位協定の三条一項に照らしても、あるいは十六条の国内法の尊重の立場から見ても、アメリカが輸送する場合に公道を走るわけですから、この火薬の輸送について、日本の国内法を十分に承知をして、そういうものを尊重するという立場から行なうというのが当然だと思いますが、この点についてはお考えどうですか。
  359. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 昭和三十五年の日米合同委員会の合意によりまして、米軍が火薬類を運搬いたします際の処置がきまっているわけでございます。米軍といたしましては、日本の火薬類取り締まり規則がそのまま適用ということではございませんけれども、公共の安全に十分な考慮を払わなければいけないという地位協定の規定の趣旨に照らしまして、米側といたしましては、実体的に日本の安全規則に近い合衆国安全規則において許容されている輸送方法をとっているということであるわけでございます。先ほど御指摘がございましたように、現実の運搬にあたりましては、事前に警察当局に通知をする、あるいは輸送をいたします際に、前部及び後部に赤地に白で火薬と日本語で記載した約十五インチ平方の標識をつけなければならない。あるいは積載二千ポンド以上の場合は先導車をつけるとか、そういう手続を講じて、輸送にあたって安全上の措置を十分に講じておる、こういうことでございます。
  360. 中路雅弘

    ○中路委員 国内の火薬類取締法では、十九条で運搬上の問題で総理府令でこまかに規定をしています。この中で、火薬類を運搬する場合の通路については、「車両で運搬する場合には、その車両の幅に三・五メートルを加えた幅以下の幅の道路を通らないこと」とか、「繁繁華街又は人ごみを避けること」とかいう規定もありますが、昨日搬入された問題について、私もいろいろ調べてみました。たとえば入り口に京浜急行の踏切がありますが、ふだんは警手はいません。きのうは京浜急行の神武寺駅の駅員が臨時の警手として向こうへ出たそうです。その警手の人の報告ですけれども、たとえば十時三十分ごろ通ったアメリカの輸送車は、警報が鳴っているのにそれを無視して通過をして弾薬庫に搬入されたということを、警手自身が私たちに話しているわけです。この点について、何か報告なり、あるいは確かめられた事実がありますか。
  361. 相川孝

    ○相川説明員 ただいま御指摘の点につきましては、私ども神奈川県警察のほうから、輸送車両が踏切に入りましてから警報が鳴ったと聞いております。
  362. 中路雅弘

    ○中路委員 これも実際警手の人自身が、警報が鳴っているのに通過する、全くけしからぬということで市のほうにも訴え、私たちのほうにも寄せられているわけです。あなたたちのは県警からの間接的な報告です。私たちは現場で、警手として踏切に立っている人自身の話を聞いているわけです。この点についても非常に乱暴な違反だと思います。またスピードについても、一緒に車について走ってはかりますと、全部じゃないですけれども、速度も四十キロをオーバーしているのもある。こういったものも、私たち実際に輸送車にくっついて——あなたたち警察はたっているだけですからね。町かどでスピードについても私たちはかったのですが、これだけの人込みのところを速度についてもオーバーする。こういう点について十分監視をし、取り締まり、警告をする、こういうことについてどういう態勢で輸送について当たられているのですか。
  363. 相川孝

    ○相川説明員 今回の弾薬輸送につきましては、私ども聞いております限りでは、神奈川県警察本部の保安課員と所轄の田浦警察署の保安係員が、日向の弾薬庫に出向きまして、出発前に積載弾薬をまず確認をいたしましたり、あるいは積載の方法を点検してみたり、さらには必要な標識が掲示されているかなどのチェックをいたしております。さらに池子の弾薬庫に至るまでの約五・八キロの沿道の交通の要衝といいますか、大事なところには八カ所に警察官を配置いたしまして、交通整理あるいは車両の誘導、さらには危害防止など必要な措置に当たっております。
  364. 中路雅弘

    ○中路委員 こういう合意事項そのものが不当だと思いますけれども、先ほどの合意書の中でも、通路について、「米軍の指揮官と日本の地方警察とは火薬類を運搬する通路についてしばしば連絡をとらなければならない」という規定もあるわけですね。こういう点から見ましても、あの横須賀の船越や逗子の神武寺駅前というのはほんとうの繁華街です。こういう繁華街あるいは門の入り口は、この規定からいえばはるかに違反するわけですね。大出委員がこの前質問しましたように、とうてい車の幅に三・五メートルはないわけです。全体で四・五メートルぐらいのところです。こういう国内法をそのままかぶせれば数々の違法な方法によって実際は搬入されている。それが日米合同委員会の合意だということで特権が与えられているわけです。こういう点について市民の皆さんは非常に大きな不安を持っているわけです。  今度の弾薬輸送について、外務大臣が、この場合ひとつ施設を提供している立場も考えてもらって、市民の納得を得るようにしたいとお話しになっておりますけれども、その市民からは、先ほどもお話ししましたように、これは保守革新を問わず満場一致で、きょうの緊急市議会でも弾薬の搬入を即時中止してほしい、そして過密化した町のまん中にある弾薬庫を、いままで二年間は全く使っていなかったわけですから、即時返還してほしいという決議をされているわけです。私はこの点について、前回、外務大臣があのように答弁されておりますけれども、しかし、実際の国民の、市民の要求は、こういう要求で一致して出ているわけですね。与党である、私と同じ選挙区の田川さんも、このことでは一生懸命、即時中止してほしいということで、いまのところはいろいろなところを回っておられる。こういう状態ですから、市民に理解してほしいというのではなくて、ひとつこういう満場一致で決議をしている市民の立場に立ってもう一度弾薬輸送中止について話してみる。あるいは、少なくともこういう危険な通路については検討してみるというお考えは、外務大臣ありませんか。
  365. 大平正芳

    ○大平国務大臣 地元の方々、また市議会、市執行部等の御意向はよくわれわれも承知いたしております。それから政府が置かれた立場につきましても、精力的に接触を持ちまして御説明は申し上げておるわけでございます。この上とも、私どもといたしましては地元の方々の御理解を得るように努力せなければならぬと思いますが、いま輸送中のものをとめるようにするということにつきましては、他の場所に野積みにしてあるような危険な貯蔵のところもありまして、安全保障装置がとられたところに運び込むほうがいいと判断いたしますので、いま輸送計画中のものにつきまして、これをとめるという考えは持っておりません。ただ、中路さんが御指摘のように、輸送中並びに保管中の安全保障につきましては注意の上にも注意を重ねて、市民の不安を除くように最善を尽くさなければならぬと考えております。
  366. 中路雅弘

    ○中路委員 ほかの問題の質問もあるので、もう一点を聞きたいのですけれども、いままでの経過からもわかるように、管理部門を部分的に返還をして、市民の皆さんは、これでさらに全面的に返還がしていただける。しかも二年間はいままで全く遊休になっていた。もう警備もついていないという状態だった。それが実際には、管理部門を一部返還するということで、代替施設ということで、さっき言ったように、もっと機能を発揮できるような、そういう給油施設もこの間につくる。しかも中に隊舎もつくられたわけです。いま中に入れてくれないから、外からカラー写真でとったのですけれども、この隊舎もいままでと比べものにならないりっぱな隊舎です。この白い建物ですね。あとで見ていただきます。このように、あれは部分的な返還をするその代替だといいながら、実際は弾薬庫の機能を一そう強化していくという仕事をこの二年間やってこられた。そして、去年の十二月に全部の施設ができたら、ことしになったら弾薬をどんどん運び込んでいくという、これが事実だ。  外務大臣はミッドウエーの問題についても、これは家族対策だという。この間、久保防衛局長は、母港化といってもいいというお話ですけれども、実際に横須賀の第七艦隊を中心にして基地の機能がいまの情勢の中で一そう強化されてきているということは、逗子の今回の問題を見ても明らかだと思う。二年間使っていない、弾薬も入ってない、だから市民の皆さんは返してくれると思っていた。この間にあなた方は、代替施設をつくるんだということで、どんどん機能を強化している。そして施設ができ上がったら、どんどん運び込んできた。これは市民の皆さんにとって全くだまし討ちみたいなやり方じゃないかと思うんです。  もう一つお聞きしておきますけれども、この横須賀の海軍基地の人事部で人員募集をやっていますけれども、これはちょっと呼んでなかったので、関係の方おられなかったらわからないかもしれないけれども、人員募集についての内訳はおわかりになる方はいませんか。
  367. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 先ほどまでおりました労務部長が帰りましたので、ちょっとその内容はわかりかねます。
  368. 中路雅弘

    ○中路委員 この横須賀にある管理事務所の渉外部が募集している百二十五名の内訳を見ますと、この中には、池子弾薬庫、浦郷倉庫の消防士あるいは警備員十二名、こういった者がみな含まれているんですね。施設もつくる、でき上がったところで今度は消防士も募集する、重量運転手二十名、警備員も募集していくということで、実際にこの弾薬庫を今後永久に、長期に使っていくという、そういう体制をこの二年間やってこられた。それで市民には、いまにも返ってくるように期待させていた。全面返還の請願も議会で決議されているんですね。ますます市民の皆さんは、もう近く返ってくるということで、大きな期待を市長さんはじめ持っておられた。私は、こういう政府のやり方、これは全く許せないと思うんです。このことがやはり横須賀の基地の大きな強化の一環であるということは事実で明らかです。この問題については、あらためてまた時期を見てお尋ねしたいと思うんですが、私は本題のきょう御質問する一つ残っている問題がありますので、そちらに移りたいと思うんです。  前回、施設庁の方がおられなかったので、施設庁の方にお聞きしますけれども、三月二十九日の当委員会の質問で残しておいた部分ですが、第十四回の日米安保協議委員会ですね。この中で沖繩の問題ですが、那覇空軍・海軍補助施設というのがありますが、この補助施設の中にどのような建物があるかということを施設庁にお尋ねしたいのです。
  369. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 那覇空軍・海軍補助施設の中には、米軍が使っております建物、全部で九百七十八棟ございますが、それらは、海軍及び空軍の事務所施設、あるいは宿舎施設、それから住宅がたしか六百三十七戸ほどあったと思います。その他、隣接します那覇海軍航空施設におります海軍航空部隊の支援施設等の建物が所在していると承知しております。
  370. 中路雅弘

    ○中路委員 これは、防衛施設庁の告示第十二号、四十七年六月十五日の施設及び区域の提供に関する閣議決定と両方出ていますけれども、これを見ますと、いま御質問しました那覇空軍・海軍補助施設の中に弾薬庫というのがありますが、この弾薬庫というのはどこのことをいうのですか。
  371. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 弾薬庫のことを冒頭に御説明申し上げればよかったのでございますが、これは瀬長島という島がございまして、これは陸続きにはなっております。そこに弾薬庫がございます。
  372. 中路雅弘

    ○中路委員 いま施設庁の施設部長の御答弁で、この那覇空軍・海軍補助施設の中の弾薬庫というのは瀬長島であるということをお答えいただいたわけですけれども、これで私は大河原さんにお聞きしたいのですが、三月二十九日のこの委員会での私の質問で、一月二十三日の日米安保協議委員会の中の那覇空軍・海軍補助施設に瀬長島の弾薬庫は入っているのかということをお尋ねしましたら、こういう御答弁ですね。「瀬長島のいわゆる弾薬庫と申しますのは、これは地理的にはいまの補助施設と反対側の方向になるというかっこうでございますから、いまの当該施設には入っておりません」という答弁をされたわけです。私は、施設庁の方がおられなかったので、この問題はそれ以上御質問をしませんでしたけれども、いま施設部長も、瀬長島がこの中に入るのだということをお答えになっていますけれども、この前の大河原さんの答弁はどういうことなんですか。
  373. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 三月二十九日の当委員会におきまする私の瀬長島に関する御答弁は正確を欠いております。ただいま施設庁の施設部長から御答弁あったとおりであります。
  374. 中路雅弘

    ○中路委員 それでは、この補助施設の中には瀬長島が入るということで間違いありませんか。
  375. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 那覇空軍・海軍補助施設の中には瀬長島は入っております。
  376. 中路雅弘

    ○中路委員 そうしますと、この二十三日の日米合同委員会、この文書の中で、那覇空軍・海軍補助施設、この移転の問題がずっと書いてありまして、「移転が完了した際は、那覇空軍・海軍補助施設の全域」、これは「日本に返還されることとなる」というようにありますから、当然この「日本に返還される」という中には瀬長島は入ると思いますが、間違いありませんか。
  377. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 当時の発表文によりますと「那覇空軍・海軍補助施設の全施設のうち、大部分を嘉手納飛行場へ、一部分を牧港補給地区その他へ移転すること並びに牧港住宅地区の住宅二百戸を嘉手納飛行場へ移転することに原則として合意した。これらの移転が完了した際は、那覇空軍・海軍補助施設の全域及び牧港住宅地区の当該区域は、日本に返還されることとなる」というふうになってございまして、移転完了の上は当該施設は日本側に返還、こういうことに原則的な合意ができておるわけであります。
  378. 中路雅弘

    ○中路委員 これは非常に重要な問題だと私は思うのです。この返還について協議された日米安保協議委員会には、アメリカ局長も施設庁長官も出席はされている直接メンバーですか。
  379. 大平正芳

    ○大平国務大臣 協議委員会は、防衛庁長官と私と、東京駐在のアメリカ大使と、太平洋軍司令官と、四名が正規の委員でございます。
  380. 中路雅弘

    ○中路委員 私はこの前の大河原さんの、瀬長島は入らないとおっしゃったのは、きょう訂正されましたけれども、答弁の間違いではなくて、外務省はいままで一貫してこの補助施設には瀬長島は入らないという見地をとっておられたのではないかと思うのですが、その点はどうですか。
  381. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 私先ほど答弁申し上げましたように、三月二十九日の答弁は正確を欠いておったということでございますので、きょう御答弁申しているとおりに御理解いただきたいと思います。
  382. 中路雅弘

    ○中路委員 弾薬庫は軍用に供する施設だと思うのですが、住宅やそういうものではないわけですね。もう一度お尋ねしますけれども、弾薬庫は軍用に供する施設ですね。間違いありませんか。
  383. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 瀬長島にございます弾薬庫は現に米軍が弾薬庫として使用している、そういう性質の施設でございます。
  384. 中路雅弘

    ○中路委員 私が聞いているのは、この弾薬庫というのは決して住宅やそういう施設ではなくて——住宅でも広くいえばアメリカの施設ですから、軍用に供するということになりますけれども、直接弾薬庫ですから弾薬を貯蔵しているわけで、そういう意味でははっきり軍用に供するという施設だというのに間違いないかということを聞いているわけです。
  385. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 いま御質問になっております那覇空軍・海軍補助施設の中には、先ほど施設庁から答弁ございましたように、いろいろな施設が含まれております。その一つに瀬長島の弾薬庫があるわけでございまして、弾薬庫として米側が現に施設として使用している、そういう性格のものだというふうに申しているわけでございます。
  386. 中路雅弘

    ○中路委員 いや私の聞いているのは、念を押しますけれども、同じ提供している中でも、住宅や学校、そういう施設じゃなくて直接軍用に供するものでしょうということをお尋ねしているわけです。
  387. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 施設、区域としては同じでございますが、用途が違っているということだと思います。
  388. 中路雅弘

    ○中路委員 その用途について、施設は一つの補助施設ですね。しかし、その中にある瀬長島というのは、いま言いましたように、用途は直接軍用に供するものだろうということを言っているわけです。
  389. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 軍用ということがいろいろ使われ得るかと思いますけれども、米軍が弾薬庫として使っている施設ということで用途ははっきりしていると思います。
  390. 中路雅弘

    ○中路委員 この前の沖繩国会の特別委員会の議事録の中でこの那覇空軍・海軍補助施設の問題について何べんも質問をされています。そしてこれは一つの例であげますと、中川委員が当時の吉野アメリカ局長さんですかに、この補助施設について繰り返し質問をされているわけですけれども、時間がありませんから経過をずっと省略をして、こういうくだりです。この補助施設に何があるのかということを詳しく聞いておられます。もう少し詳しくとか正直に答えていただきたいというふうに聞いて、吉野政府委員がこういうふうに答えております。「ここは主として住宅、学校その他のいわゆる軍に付属する施設がございますが、直接軍の用に供するようなものはございません」というふうに吉野政府委員は答えておられますが、弾薬庫はだれが見ても、ここでいう学校や住宅とは違いますね。軍の用に供する施設であることは間違いないと思うのですが、吉野政府委員は、このときいろいろ聞かれていますけれども、何べんも聞かれて、最後に軍に供する施設ではないんだということを繰り返し言っている。きょう施設庁も大河原さんもお認めになったように、瀬長島はこの補助施設の中に入るんだ。  瀬長島というのは小さい施設じゃないですよ。有名な弾薬庫ですからね。私、この弾薬庫が補助施設に入るのかどうかということで苦労してしまったのです。沖繩へ行って、県庁や市役所まで回って、やっと色刷りの地図でこの弾薬庫がつながっているんだ、補助施設と。あるんだ。地図も持っている。施設庁の方にも色分けしてつくってもらった。これも施設庁が持ってきた地図ですね。これにも瀬長島ははっきり入っている。きょうの答弁のほうが正しい、間違いないと思うのですが、この吉野さんの答弁を見ますと、この前の大河原さんの私に答弁になったのは、きょう訂正されたように、そういうミスではなくて、外務省は一貫して、この施設の中には軍に供するものはないんだ、弾薬庫というのはないんだ、これはここにいう住宅、学校だということに答弁されていますけれども、この点はどうですか。
  391. 大河原良雄

    ○大河原(良)政府委員 私、当時の吉野局長の当該答弁を直接承知いたしておりませんので、どういう文脈において答弁されたのかということを承知いたしておりません。しかし、先ほど来御答弁申し上げておりますように、那覇空軍・海軍補助施設の中には瀬長島が含まれているということは、先ほど来御答弁申し上げておるのが正しい扱いでございます。
  392. 中路雅弘

    ○中路委員 私がお尋ねしているのは、まだ吉野局長の当時の沖繩国会における答弁を十分検討されてないということですが、この問題で重要なのは、吉野局長は何べんも聞かれているのです。いま簡単に読みましたけれども、公明党の委員の方も、もっと詳しく言ってくれとか繰り返し言っているのです。そうしたら、住宅と教育施設だけだ、軍に供するものはないと答えられているのだから、このときには明らかに瀬長島の弾薬庫は含まれていないという答弁だ。そしてこの前、大河原さんもそういうふうに答弁された。外務省はその点では一貫して、きょうは訂正されましたけれども、瀬長島はこの補助施設に入らないんだという見解に立っておられた。しかし施設庁は入っているという話です。そしてその中間に日米安保協議委員会が一月二十三日にあった。その協議委員会で、どの施設を返還するかということの合意があるわけですね。経過から見れば、出席されている外務省、施設庁は、返還してもらう対象の施設について、しかも書いているのは、小さなどこかの倉庫だとか住宅ではなくて、瀬長島という非常に問題になってきている弾薬庫なんです。これが返ってくる施設の中に入るのかどうかということについて、全く日本側の出席者に見解が違うまま合意をされて、しかも、それのまた代替施設をどうするかということも、いろいろ返還の問題では相談されているわけですね。これは私は非常に重要な問題だと思うのですが、いまいろいろ御質問した中で、途中ですけれども、外務大臣どういうようにお考えですか。
  393. 大平正芳

    ○大平国務大臣 協議委員会で合意を見まして、それを発表いたしました限りにおきまして私の責任でございます。そこに書いてあるとおりに、実行に対しては私が責任を負っておるわけでございます。  それから、ついでに恐縮でございますけれども、私ども基地問題基地施設のリロケーションその他いろいろ本委員会において御心配をいただいておるわけでございますが、中路さんは、施設を強化する、あるいは機能を強化するようなぐあいに考えておるんじゃなかろうかというような御指摘でございますけれども、ずっと経過をごらんいただきますと、全体として、リロケーションをやる場合は、前の施設よりずっと小さいものにしぼってやってきておる。これは経過的に御点検いただけば御理解いただけると思うのであります。  ただ今度、リロケーションをやる場合に、構造上あるいは木造のものが鉄筋コンクリートになるとかなんとかいうようなものが中にはあるのじゃないか。あるいは個々の施設をとりますと、あなたが御指摘になる、前に置いてあった施設よりも、その部分だけとりますとこちらのほうが大きくなっているようなケースが、いろいろ調べてみるとあるのかもしれない、ないのかもしれない。そのあたり、私は実ははっきり実態を究明いたしていないわけでございますけれども、きょういろいろ御指摘をいただきました点、たいへん示唆的なものでございまして、私どもといたしましても、実行にあたりまして十分そういった点に注意しながらやってまいりたいと思います。  なお、施設庁のほうでまだ御調査をいただかなければならぬこともあるようでございますから、そういった調査を踏まえた上で処置いたしたいと思いますので、われわれが米軍の便宜だけを考えていろいろ国費を相当むだに使っておるというような御印象がもしありとすれば、そうではないということだけは御理解をいただきたいと思います。
  394. 中路雅弘

    ○中路委員 いま、小さいものとおっしゃったのですけれども、ドラムかんと給油施設じゃ、全くだれが見ても、ドラムかんより小さいものというわけにはいかない。また個々の施設がいろいろあると言われたけれども、じゃ、更衣室のかわりに給油施設をつくることは、これはとんでもない代替ですよね。自転車置き場もひどい。やはりその対象になるのは、倉庫、その中にドラムかんが置いてあったからこれは給油施設だ、ということでりっぱなステーションをつくる。これはどう考えても新規の提供です。非常に不当なものです。  私は、これらの問題については、あとで十分調査してもらうということになっていますからあれしますけれども、この瀬長島の問題というのは、いまお話ししましたように、ここで答弁をしてどっかでミスをされた、落ちたというのでなく、一月二十三日の日米協議委員会の発表文について、その中身について外務省と施設庁の関係の方が違う理解をされている。そうだとすれば、これは返還するといっても、片方はこの返還の中に入ってない、片方は入っている、そういうことでアメリカと施設の提供や返還について交渉されているとすれば、これは私はたいへんな問題ではないかというふうに思うので、時間も限られていますから、私は、この問題についてはもう一度十分調査をされて、この安保協議委員会の発表文については、外務省、施設庁含めて統一した見解を出していただきたいし、またこの前のを大河原さんまだ読んでいられないと言っておられますけれども、吉野さんが沖繩国会において答弁をされているこの答弁が、いまの訂正されたのでいえば明らかに誤りですね。しかも多くの議員がこの中身についてはいろいろ聞いているわけです。それについてこういう答弁をされているわけですから、これは、もしその当時から誤りだとすれば、外務省として大きな責任問題ではないかと思いますので、いずれにしても、この問題についてもう一度統一的な見解を出していただくということで、一応この問題はきょうはとめたいと思います。委員長そういうふうに取り扱っていただきたい。いいですか。  一応時間になりましたから、最後に一問だけちょっと聞いておきます。これももう少し質問したかったのですが緊急の問題ですから……。  この前、私が聞いた立川の問題で、長坂さんですか、答弁されたのですけれども、差し迫った問題で、いま立川の市民祭りというのを市がやっている。これについてこの前私がお尋ねしましたら、長坂さんから、できるだけ意向に沿ってやれるように防衛庁が協力をしたいというような答弁もありました。立川問題を論議した二回目ですね。いま起きているのは、この市民祭りについて、米軍の立川基地司令官から二日付で立川の市長に非常に不当な申し入れがきています。  要約しますと四点ですけれども、この立川市がいま自主的に計画している市民祭りについて、全面返還がすでにきまっている、場所がないので、あの場所をそのときには一時使用させてほしいという要望について、アメリカのほうではあくまで米軍との共催だ。これは報道なんかでも、その共催だということは明記しなければならないということが一つの条件。もう一つは、自衛隊を含む日本人と米国人の友情の緊密化をはかることに市民祭りの目的があるのだから、そういうふうに準備をするということ。市民祭りの準備は、米空軍と立川市民の代表、それも規定してきています。市役所、観光協会云々ですね。それぞれ同数の参加のもとで行なわれること。こういった条件を出して、以上の条件を認めることが基地提供の絶対必要条件だということで申し入れをしてきていますけれども、私はこれは非常に不当な、乱暴な干渉だと思うのです。  いま市のほうが計画しているのは、市民の娯楽と商業振興ということを目的として、自主的な行事として市民祭りを計画しています。主催者も市役所、観光協会、商工会議所、商店連合会、青年会議所、五団体が共催できめる。ただ会場がないので、ここをそのときだけ貸してほしいという申し入れですね。ただ米軍については、場所の提供者でもある。これは阿部市長が言っていますが、米軍の回答ですね。電気、水道等も一部を使用するわけですから、米軍については、祭りについてはそれにふさわしい取り扱いをしたい、主催者は自主的な市民団体であるけれどもと、こういうことまで言って場所を貸してくれということで申し入れているわけですね。それについて参加団体まで米軍が規定する。自主的な市の市民祭りについて報道のやり方まで規制する。これはぼくは非常に乱暴な干渉だと思います。この点については、外務省も防衛庁のほうも、このような市民の自主的な祭りに対する米軍の干渉に対して、こういう干渉を取りやめさせるということと、すでに全面返還がきまったところですから、一時使用について防衛庁、外務省がひとつ積極的に力をかす、協力するという問題の一つであり、自分もお願いしたいので、この点についてひとつ外務大臣御答弁をお願いしたいと思います。
  395. 平井啓一

    ○平井(啓)政府委員 いろいろ手続上の問題につきまして、施設庁の立場で現地との接触も行なっておりますので、まず私のほうの立場で御説明申し上げたいと思います。  現在、立川市の飛行場は全面返還の方針がきまったとはいえ、まだやはり米軍の管理する飛行場でございます。その立場で米軍がいろいろとこの問題について条件を出してくる立場は、一応どうこうと言うわけにはいかぬと思いますが、ただ御指摘のような点については、米軍必ずしもそういういやがらせのつもりで言っているとは私ども解しておりませんで、あくまで米軍の善意から出ている条件ではなかろうかと思います。昭和四十五年、四十六年に実は円満に行なわれました市民祭りが、昨年やはりこの共催の問題でこじれたわけでございます。アメリカ側も自分の管理する基地を提供して、立川市民と一緒に共催の立場で市民祭りを大いに盛り上げようという善意から出たものかと思います。ただ御指摘のような点で、いろいろと立川市当局と米軍との間に相互の誤解があるように存じます。ただいま東京防衛施設局が中に入りまして、お互いのそういった誤解を解きながら問題を円満に解決していきたい、そういうことで目下努力しておりますので、五月二十七日予定の市民祭りが円満に相互の理解のもとに解決されることを私ども期待しておる次第でございます。
  396. 中路雅弘

    ○中路委員 これで終わりますが、いまお話ししましたように、市のほうのこれについての要望、これはもうだれが考えても当然なことなんですね。むしろ米軍に対する配慮までした申し入れもしている。こういう点で、ひとつ外務省のほうも、この市民祭りが自主的な祭りとしてできますように、いろいろ努力をしていただきたいと思うのですが、この点についても一言外務大臣からお答えを聞いておきたいと思います。
  397. 大平正芳

    ○大平国務大臣 施設庁のほうと御協力申し上げて問題が円満に解決するように私どもも御協力いたしたいと思っております。
  398. 中路雅弘

    ○中路委員 時間ですから終わります。
  399. 三原朝雄

  400. 受田新吉

    受田委員 ほんに数分間で終わります。先回の委員会で私から質問申し上げて、資料提出をお願いしたその資料が、われわれの手元に届けられました。これに関連する質問だけにとどめさしていただきます。  元首のない国が国際的にあるのかという意味でお尋ねをしたわけです。そうしたら、御答弁を願ったこの記事を見ると——日本の国のことを言うておったんじゃないのです。外国を指摘したのですけれども、わざわざ日本の場合も、元首の機能のうち、外国使臣の接受の機能については天皇が元首の機能を持っておる、こういうよけいなことが書かれておりますので、質問をさしていただくことにしたわけです。私がお尋ねしているのは、日本の天皇は元首か、あるいは君主かというような問題は、外務大臣には非常にむずかしいことでありますので、これは法制局長官と論議する対象であるから、私は外務大臣に無理な注文をしてなかったのです。だから外務大臣には、外国で元首という扱いをされている国と、日本が外国の代表、元首を迎える場合の実情を伺ってみたかったわけです。  そこで、これは外務大臣がむずかしければ、官房長でもけっこうですが、外交上の問題として、外国において日本の天皇を元首としてお迎えするか、あるいは君主として迎えられるか、それは外国の解釈であるから、日本でその解釈を論議するのは私は適切でない場合があると思うのです。したがって、外国では日本の天皇を君主として迎え、あるいは元首として迎える国があっても、それはその国の解釈でやることで、わが国は元首としてお送りしたのでもなければ、君主としてお送りしたのでもない、象徴天皇として御親善旅行をしていただいた。それを、日本の天皇を君主あるいは元首と見られる場合があっても、それは向こうの解釈であるから、私はかれこれ論議する筋でないと思うわけですが、しかし、実情だけは明確にしておかなければいかぬので、私はお尋ねしたわけです。  そこでお答えを願いたいのは、この元首という解釈は、いろいろここにあげてある。対外的に国家を代表する国家機関としての元首という意味を言うならば、どのような国、すべての国に存在する、こういうふうになる。つまり国家を代表する機能を果たす国家機関、それが元首といえばどの国にもあるという解釈です。私、一応この解釈は妥当であると思います。だから元首のいない国はないんだ。ところが日本では、国内的には元首というものはさだかでない、こうなっておる。これははなはだおかしいことと思ったら、幸い外務省は、元首の機能のうち外国使臣の接受の機能については、天皇がこの元首の機能を果たしておると解釈されたその理由を御説明願いたいのです。
  401. 高島益郎

    ○高島政府委員 このペーパーに書いてありますとおり、元首というのは国際的な概念でございまして、いろいろ定義もございますけれども、大体のところは、一般的に国家を対外的に代表する、そういう機能を持った国の機関。その内容といたしましていろいろございますけれども、特にそのうちから、外国の大使及び公使を接受するという面だけをとらえてみますと、わが国の憲法は第七条に、天皇の国事行為といたしまして、内閣の助言と承認によって天皇はこのような行為を行なうということになっておりますので、こういう点だけをとらえてみますると、まさに元首の一つ機能を天皇が果たしておられるということを申したわけでございます。
  402. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、それだけでなくして、天皇の国事行為の中にある全権委任状及び大使、公使の信任状の認証というのも、これは元首としての権能ではありませんか。
  403. 高島益郎

    ○高島政府委員 ここに例として書いてありますのは、国家を代表する機能という観点から、元首としての機能にはいろいろございますけれども、特に外国に対しまして国家を代表する機能という点から見ますと、外国の大公使を接受するというのは非常に典型的な例でございますので、ここに例として書いたものでございます。
  404. 受田新吉

    受田委員 私がいま指摘した大公使の信任状の認証、全権委任状の認証というようなことも同様の性格のものじゃございませんかということを聞いておるわけです。
  405. 高島益郎

    ○高島政府委員 そう考えます。
  406. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、「批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること」も入りませんか。
  407. 高島益郎

    ○高島政府委員 そのとおりです。
  408. 受田新吉

    受田委員 そうすると、元首の機能を発揮する分野が非常に広くて、外交に関係しても、いま私が言った憲法第七条の天皇の国事行為のうちで、三つは元首の機能のうちに入る権能を天皇はお持ちであると外務省は解釈されておる。大臣、そう了解してよろしゅうございますか。
  409. 高島益郎

    ○高島政府委員 いま先生が申しましたのは、憲法第七条による国事行為につきましていろいろお話があったわけでございまするけれども、私ども、国家を代表する機能という点からとらえますと、一番重要なのは、やはり行政権の主体としての内閣の仕事、こういう点に重点があるというふうに考えますので、そういう点から申しまして、非常に重要な国家を代表する機能という点において、天皇はいわゆる一般的にいいます元首の性格をお持ちでない、むしろ象徴という点に重点があるというふうに考えております。
  410. 受田新吉

    受田委員 これは非常に大事なことでございまして、この解釈をいま政府がこうして発表されるようなことになるものですから、元首の権能機能のうち幾つかは象徴天皇がお持ちである、こういう解釈を外務省はされておるわけです。つまり、元首のすべての機能ではないが、その機能の一部は象徴天皇が持っておる、こう了解してよろしゅうございますか。
  411. 高島益郎

    ○高島政府委員 けっこうでございます。
  412. 受田新吉

    受田委員 そうしてもう一つ、元首の機能のうち、内閣が持っているのがある、こう了解してよろしゅうございますか。
  413. 高島益郎

    ○高島政府委員 そのとおりでございます。
  414. 受田新吉

    受田委員 そこでお聞きしたいのは、海外の諸国は、日本の天皇が親善旅行に出られる場合は、元首として迎える国、あるいは君主として迎える国、あるいは元首でも君主でもない、何でもない形でお迎えするという場合、そして内閣総理大臣を代表者として、元首として迎えるという国、それぞれいろいろあると思う、いまの局長の御答弁であると。つまり諸外国は、日本の元首はどういう形のものを元首として迎えておるか、これはもうおわかりだと思うのです。外務省は十分調査しておられると思うのですがね。  天皇陛下がおととし行かれたときに、元首として迎えられた国、あるいは君主として迎えられた国、その国の歓迎のマスコミなどによって十分わかると思うのです。日本の総理大臣が旅行したときに、元首としてこれを迎えた国があるのかどうか、外務省は十分調査しておられると思うのですが、非常に国の基本に関する問題でありますから、私は、すべての国政の基本になる問題として、海外がどうこれを見ておるかを伺いたいのです。
  415. 高島益郎

    ○高島政府委員 先生お尋ねのいまの点につきましては、私、全く主管でございませんので、承知いたしておりません。
  416. 受田新吉

    受田委員 これは外務省のどこが主管になるのですか。つまり日本と外交関係の開けた国が、日本の天皇を元首と見られるのか、総理大臣を元首として迎えるのかというようなことを十分把握していなければ、外交関係の正常な運営はできないと私は思うのです。すべての国に元首がある、こう答弁に書いてあるものですから……。
  417. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 外務省の儀典長の主管の仕事でございますので、いますぐお答えできないわけでございます。
  418. 受田新吉

    受田委員 これは儀典長の所管ですか。つまり、元首として外国が見るのは天皇か総理か、あるいはここにおられる外務大臣か。外務大臣を元首として迎える国があるかないかも、この前は、国家を代表していく場合があるから元首の一種じゃないかと、錯覚を起こすような答弁がありました。えらいいい気持ちになっておられたが、これは外務省としては十分考えておかなければならぬ問題です。つまり、今度アメリカを陛下が訪問されるという場合に、アメリカは日本の元首として天皇を迎えられるのか、あるいは君主として迎えられるのか、あるいはそれのいずれでもない。それから田中総理が行かれる場合は、日本の元首として迎えられるのかどうかくらいはわからなければいかぬ。どこの国にも元首がおるのだと一般的な解釈をしておられるわけですが、外交の基本に関する問題です。国家機関としての国家を代表するのはいずれが元首かというくらいのことは、国際的な答えが出ておらなければいかぬです。
  419. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 接遇の問題として、国賓として接遇するとか、つまり普通ならば元首に与える待遇で接遇するとか、あるいは国賓に準ずる待遇、すなわち普通でありますれば内閣総理大臣に与える待遇で接遇するとか、そのように接遇の基準によって取り扱いは推察することはできるわけでございますけれども、受け入れ国が、たとえば天皇陛下が行きました場合、それを元首として接遇すするというふうに明示的に言うことは、これは従来なかったことでございますし、わが方の総理大臣が行きましたときにも、そのような、元首であるとか元首でないとかいうことを相手が明示したことはございません。しかし接遇はいずれかにしなければならないわけです。その接遇ぶりについては、われわれ記録がございますので、あとで御必要ならばお届けいたしたいと思います。
  420. 受田新吉

    受田委員 日本が外国の元首あるいは総理を迎えるような場合に、これを迎える迎え方が、国賓として、元首として迎える場合と、内閣総理大臣、首相として迎える場合とがあると思うのです。いずれでもないような迎え方のことがありますか。元首でもない、総理でもないような形で、元首か総理かを迎えることがありますかどうですか。
  421. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 わが国の場合は、国賓、それから政府の賓客、それに甲乙というふうに区別して迎えておりますが、実際問題としてはその中間の待遇を行なうこともございます。
  422. 受田新吉

    受田委員 ナウル島の大統領がやってきたときにはいかなる待遇をされたわけですか。これは知っておかなければいかぬのですよ。ナウル島の人口六千七百人おる国の大統領を迎えたときは元首として迎えたのか。
  423. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 あの場合は非公式の訪問でございましたので、正式の待遇を与えていなかったと思います。
  424. 受田新吉

    受田委員 しかし、正式に訪問を受けたときにはどうしますか。元首ですか、あるいは……。
  425. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 閣議におはかりしてきめることになるわけでございますけれども、このナウルの元首が向こうの憲法上の元首である場合には、外務省としては、正式の訪問であれば、元首としての待遇を与えるように閣議にはかることと考えます。
  426. 受田新吉

    受田委員 元首もしくは首相、いずれかで国賓として迎えるわけでしょう。それ以外のものはないでしょう。その二つの地位にある人ですね。どうですか。
  427. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 そのとおりでございます。
  428. 受田新吉

    受田委員 そうすると、外交交渉というのは対等でありまするから、日本の場合も、日本から向こうへ行かれる天皇陛下の場合と総理大臣閣下の場合とは、やはり向こうで同様のやり方がされると思うのです。それを私お尋ねしておるのです。象徴として迎えられるんだというようなあまりこじつけを言われないで、こちらは象徴天皇としてお送りするが、向こう様では、元首とし、あるいは内閣総理大臣を元首とすると——それははっきりわかるはずなんです。日本の場合に、内閣総理大臣を元首として迎えた国があるかないかぐらいのことは、外務省ともあろうものが知らぬということはないと思うんだが、いかがですか。総理大臣を元首として迎えた国があるかないか。あまり時間をとりたくないのですが、こんなに話が複雑になってくるものだから……。  私、むずかしい憲法論とか法律論は法制局長官としたいのです。ただ、外交交渉の立場でどう見るかだけに限定して、非常に簡単な御答弁を願うつもりでいるのです。あまりむずかしい論議はここでやるべきじゃない。それはわれわれとしては筋違いですから。しかしこの問題は、外務省として心得べききわめて簡単な問題で、外国は天皇を元首としてお迎えするのか、あるいは総理大臣を元首として見ておるのかくらいのことは、どの国でもわかると思うのです。  大平さん、あなたも総理大臣の候補者を予定されている一人でいらっしゃる。私も親友として、あなたを総理大臣にと期待している一人です。したがって、あなたもやがて総理になられる場合のことも含めて、海外に総理として行かれるときに、元首として迎えてもらいたいかどうかを含めて御答弁願いたい。むずかしくない議論です。
  429. 大平正芳

    ○大平国務大臣 受田君のむずかしくない議論としてお相手さしていただきますが、外務省といたしましては、国内的には日本国憲法を順守していかなければいかぬ、そう考えております。  それで、天皇が外国に行かれる、あるいは総理大臣が行かれるという場合、私が承知しておるところでは、天皇の御訪問あるいは総理大臣の訪問というような姿で発表されておるわけでございます。官房長が申しましたように、先方がこれにどういう接遇をお考えになるか、これは受け入れ国側の問題でございまして、こちらからこうしろああしろという立場にはないことは、あなたも万々御承知のことだと思うのでございます。私としては常識的に、天皇は最高の御接遇を受けられるに違いないと確信をいたしておるわけでございまして、内閣総理大臣が行かれる場合に、内閣総理大臣を日本国の元首としてお迎えするというような国はないと私は思います。
  430. 受田新吉

    受田委員 きわめて明白になってきたわけです。そういうことになれば、結局、大砲のたまの撃ち方、何発かということによって——総理が行く場合の大砲は何発ですか。それから、天皇が行かれたときは何発ですか。儀典長でなくてもこれくらいのことは外務省でわかっておらなければいかぬ。天皇が行かれた場合には、最高の責任者ということで元首相当の待遇で迎えられておるんじゃないかと私は思うのです。総理大臣内閣責任者ですから、総理大臣を元首として迎える場合もあるとおっしゃるから、日本の場合は二様の元首があって、向こうの受け入れ方としては、総理を元首と見る場合もあれば、天皇を元首として見る場合も起こるという意味に、私、いま局長の御答弁を聞いたんですが、そうでなくて、天皇の場合は元首に相当する礼をもって迎えておるんじゃないか、私、それを聞いておるのです。すなおに答えてくれればいいのですがね。
  431. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 実際の例を申しますと、先般、天皇が御訪欧のときの礼砲は、各国によって違います。これも各国の慣習が違うことによるわけでございますけれども、アンカレッジにお立ち寄りあそばされたときの礼砲は二十一発でございます。それから英国、これは公式訪問だったわけでございますが四十一発。それからベルギー、これも公式訪問でございますが五十一発。それからドイツ、これも公式訪問でございますが二十一発でございます。
  432. 受田新吉

    受田委員 それから、総理大臣が行った場合の大砲は何発ですか。
  433. 鹿取泰衛

    ○鹿取政府委員 総理大臣の場合は、ちょっといま手元にございませんので、お答えいたしかねます。
  434. 受田新吉

    受田委員 大砲の数が少ないはずですね。それはもうはっきりしている。そうするときわめて明白じゃないですか。いまの、かれこれ御答弁を遠慮されておったことは抜きにして、つまり日本の国の最高の地位にある人として元首に相当する礼をもって迎えられておる、そう答えてくださればいいのですよ。きわめて明白なことです。だから、総理大臣や外務大臣は、いかにあわてても元首として迎えてはもらえないんだ。これをはっきりしていただくことを要求して質問を終わります。
  435. 三原朝雄

    三原委員長 藤尾正行君。
  436. 藤尾正行

    ○藤尾委員 在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案の審議でございますから、この際、昨年九月に外務大臣総理大臣のお手で締結をせられました日中共同声明、この問題を突っ込んでとことんまで究明をするということは非常に適切であり、この場で論議をするのはきわめて妥当である、私はかように考えまして質問の用意をいたしたのでございますけれども、いまから二時間もやっていたのでは皆さま方非常に御迷惑でございますし、大臣御自身ももうすでに七時半から外国人大使との晩さんのお約束があるそうでございますから、私はここに用意しました質問内容の項目だけを申し上げて、そうして、おそらくこの後に外務省の設置法もやらなければならぬ、こういうことでございますので、その場合には、この問題の論議は必ずしも適切ではない、かように思いまするが、質問自体をその場に譲りまして、きょうはその項目だけを申し上げて、お覚悟はよろしいかということだけを申し上げておきます。  まず第一に、日中共同声明といいまするものはかなり重要な意味を持つ、実はその内容におきましては条約に相当するものである、かように私は考えます。したがいまして、その内容を主にして考えれば、これは国会の承認を経ることが必須条件である、かように考えるのでありまするけれども総理大臣並びに外務大臣はこの措置をおとりにならなかった。これは一体どういう理由に基づくものか、ひとつ詰めた論議をしてみたいと思います。これが一点です。  第二は、日中両国の戦争状態の終結は一体いつなのかということでございまして、これは次に問題になります台湾の領土権等々の問題とともに、かつて私どもが結んでおりました日華の平和条約といいますものが地域的に一体この作用をしておるのか、あるいはトータルに全般的に作用するのかという問題ともからみまして、非常に重要な点でございます。この点の究明をさせていただきたい。  第三は、先ほども申し上げました台湾の領土権という問題についてでございます。  第四番目に、この問題等々につきまして、領土に対する主権というようなものが共同声明でいろいろな規定がされておるわけでありますけれども、そのようないずれの御見解をおとりになるにせよ、その場合には、台湾に住む、あるいは日本在住の台湾の人々の国籍、つまり対人主権はどうかという問題の論議であります。  その次は、日中共同声明でいろいろなことがされておるわけでありますけれども政府がもしこの日中共同声明といいますものを正統政府の交代という見解で理解しておられるということでありましたなら、これは議論してみなければわかりませんけれども、国家の同一性という問題から、中華民国との間にあったかつての国と国との関係、そういったものが中華人民共和国に引き継がれておるのかどうか。これは日中共同声明の中にあります賠償その他の問題とも関連をいたします。こういった問題についていろいろな御議論を申し上げるということが一点でございます。  あとの二点は、これはいままで他の同僚委員からもいろいろ出ました質疑の中にもございましたけれども、現にこれからいよいよ本番になって問題になるところでありましょうけれども、麻布にある旧中華民国大使館、この大使館のあと地に対する見解、これについて、これは民法的な、政治的な、あるいは道義的ないろいろな問題がからんでおります。この問題を明らかにしていただきたい。  第三番目は、これは先ほど同僚委員からの質問にもございました航空協定の問題であります。  以上の三点の問題について、ひとつじっくりあなたと私は議論をしてみたい、かように思いますが、もうすでに八時を過ぎておりますので、あなたも非常に御迷惑でございますから、私はこれだけのことを内容とする質問をしてあなたと議論をいたしたい、かように存じておるということを申し上げて、本日の私の質問にかえます。(拍手)
  437. 三原朝雄

    三原委員長 他に質疑もないようでありますので、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  438. 三原朝雄

    三原委員長 ただいま委員長の手元に、加藤陽三君より本案に対する修正案が提出されております。
  439. 三原朝雄

    三原委員長 提出者より趣旨の説明を求めます。加藤陽三君。
  440. 加藤陽三

    ○加藤(陽)委員 ただいま議題となりました在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付いたしておりますので、朗読は省略させていただき、その要旨を申し上げますと、原案のうち、住居手当の限度額の引き上げに関する改正規定は昭和四十八年四月一日から施行することとしておるのでありますが、すでにその日が経過いたしましたので、これを公布の日から施行することとし、本年四月一日から適用することに改めるほか、所要の条文整理を行なおうとするものであります。  よろしく御賛成をお願い申し上げます。
  441. 三原朝雄

    三原委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  442. 三原朝雄

    三原委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、加藤陽三君提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  443. 三原朝雄

    三原委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  444. 三原朝雄

    三原委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  445. 三原朝雄

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  446. 三原朝雄

    三原委員長 次回は、来たる十九日木曜日午後三時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後八時七分散会