○池田
政府委員 ただいまの伊能先生からお話がございましたのは、俗にいうピンポン買いという売り方でございます。これは東京都の条例によりますと、六十三条でございましたか、四条でございましたか、ピンポン買いは禁止いたしております。したがって、何と申しましてもこれは、
法律で明文があるかないかということではなくて、卸売り市場というのは、いま御指摘がございましたように、公正な価格をとにかくきめるということが第一の機能でございますから、売る側が同時に買い側に回るというようなことは、これは絶対避けなければならない。したがって、公正機能に対していささかでも
疑いが持たれるようであれば、これは
法律の四十五条によって、公正な価格形成が保たれないというおそれがある場合ですから、当然これは取引に規制を加えなければならぬというようなわけであります。
おそらくいま問題になっておりますのは、具体的例としては、この間東京都の都議会で問題になった、十人くらいの卸
関係の業者が洋上に出ていって、無線機か何かで向こうに入ってくるものを先につかまえて、一船買いで取引をしていられるのですね。それを市場の荷受け人、卸売り会社に売りつける、委託する。そうすると卸売り人はそれを買って売るという疑惑が一つございました。これは直ちに調べたのでございますが、仲卸業者がそういうことをやっておるという事実は、当時その件につきましてはございませんで、ただ売買参加者の中に、何人かの者が共同で出資して一船買いをやる会社を別につくったのに当時参加しておったという事実がございまして、これは、そういう自分が出したものとおぼしきものに自分がまた入札へ参加をするという形は、これは絶対いかぬということで、東京都とも話し合いをいたしまして、それに入らないように
措置いたしております。
問題は、仲卸業者が、自分の東京都なら東京都の区域の中で卸売り人以外からかってにものを買ってはいかぬということは、これははっきりきまっておるわけですね。それをもし買うとすれば、これは当然法令
違反になる。それから卸売り人が、自分で売ったものをまた買ったり売ったりするということは、これは禁止されておる。これがいけないということははっきりしておるので、見つかれば処分ということになるわけです。
ところが、ここで問題になりますのは一般の買参であります。一般の買参というのは、当然市場の中で仲卸業者から買ってこれを分荷するということでございまして、大口もございますから、自分で消費するスーパーみたいなのもございますけれども、そういうものが逆に卸売り会社とか仲卸業者に対して売るなんということは、これはさか立ちしておるわけでございまして、そういうことは実は
法律の中では考えていない。ましてや、さっき
水産庁長官が申し上げましたような、産地のほうまで出かけていって、それが逆に出荷者側にまわるということに対して、卸売市場法の
規定の中にそれを盛り込むということは当然法域の外で、考えていないわけであります。
したがって問題は、現在何ができるかということになりますが、先ほど
木原先生にも申し上げたように、単なるモラルではなく、制度の上で、ルールの上で何ができるかということになりますならば、いま申し上げましたような不公正な売買というものが実質的にいまの卸売り市場を支配する、それがために価格が不公正になるおそれがあるというような実態が明らかになれば、例の市場法四十五条にひっかけて売買規制をやるということが、いまの
法律体系の中でわれわれのし得る一つの方法だと思うわけです。
そこで、いま東京都と、この問題につきましては、特に最近マグロにつきまして非常に一船買いがやかましい様子もございますので、一体どういうふうになっているだろうかということで、いま実は調査をいたしまして、価格の動向を調べてみたわけでございます。そういたしますと、マグロ以外のものに一船買いがあるかどうかという問題を含めて考えますと、多少御批判は別に出てくるかもしれませんが、当面問題になっておりますのがマグロでございますので、キハダマグロを中心にして、スルメイカとかサバとかマアジ、これは、四十五、六年に市場法を直します以前と最近における相対的な比価は一体どう動いているかということを調べてみますと、一番上がっておるものはむしろサバとかマアジでございまして、大衆魚でございます。そしてこれが、
昭和四十五年を一〇〇にいたしまして、四十六年の市場法
改正当時の前後を見ますと、マアジが九四・五に逆に下がっておりますのが、四十八年の二月現在で一四〇・七。それからサバが同じように、四十五年一〇〇でございましたのが四十六年も一〇〇、四十八年の二月は一四二・五。それからマグロは四十五年一〇〇であったのが、四十六年に一〇三・七、現在は一三〇・八というように、この問題に関して一船買いが非常に叫ばれてまいりました四十六年以降の動きを見ますと、相対的な比価は必ずしも上がっていない。そういう意味から、先ほど
水産庁長官の申し上げたような、一船買いがじかにこの問題に響いているということを考えつくのがおそかったというお話をしたわけでありますけれども、それは確かに一つあったと思います。ただ今後、たとえば出荷者側が市場の外側に出て会社をつくって売り込んでおいて、自分が中のほうの買参に入って、せってせり上げるということをやろうと思えば、これは物理的に可能性としてはあるわけであります。そこはもう厳重にやらなければいかぬというので、これは私どもとしては、各都道府県と連絡をとり合って、そういうことがいささかもないように十分注意してまいりたいと考えておるわけでございます。