○
前田参考人 この
売却益の一部を、百二十億相当額を基金として永劫の形で
聴視者に還元したいという
考え方は、実は落札が決定した翌週に、私
どもで今後の
NHKの
経営の実態と勘案しながら、私自身が決定した問題でございます。したがいまして、
新聞等の攻撃が始まってから
考えたものではございません。これはもう率直に申し上げておきます。ですから、落札直後三日か四日で私は原案を指示して事務当局につくらせ、そしてその結果私が決定した金額であります。そのことは四十八年度
予算と
関連する問題ですから、当然
郵政大臣が
予算に
意見をつけるべき
立場にございますから、私は
土地の
売却の経過と結果、それと
関連して、四十八年度
予算との
関係でこの基金をつくりたいという御
説明をしに
郵政大臣にお会いに行ったわけです。
したがいまして、私としてはこの物価騰貴とインフレの
時代に、百二十億円を直接事業にのみつぎ込むことは——社会的、客観的な
立場に立ってみても金のあることは歓迎すべきことですが、これが雲散霧消するようなことがあってはいけないという基本的な
考え方を私としては持っております。
それじゃ、百二十億円というのは一体どこから計算したかという問題にもからんで、私の
考え方を申し述べなければおそらくはっきりしてこないと思いますけれ
ども、劈頭林先生にお答え申し上げたように、私
どもがこの金の処理で当面目標としたものは、いわゆる代々木の
放送センターの借金を全くなくすということです。これは先ほどちょっと申し上げましたが十年間でその前の
土地代を含めまして、総額三百十六億かかっております。そのうちの一部は、すでに御審議をいただいて実行したわけですが霞が関の一部を処分しております。これらを総合しますと、売った時点で、
契約した時点で残っていた借金の総額は五百二十億をこえておりました。そのうち百億が放送債券でございます。放送債券というのは、甘は引き受け会社あるいは銀行などが全額引き受けた
時代もございましたが、現在では九〇%近くが
聴視者の
個人消化でございます。したがいまして、部内でも一部には放送債券の償還も
考えたらいいじゃないか。しかし、繰り上げ償還ということは、ある
意味で
聴視者の利益、すなわち債券を持っておられる
聴視者の利益を制限することになると思いました。したがいまして、金融
機関からの借り入れ金を返すことに重点を置くべきだと
考えました。その結果、御審議いただいております
明年度予算の中では、放送債券百億を加えて五百億をこえておった借金の総額は三百二十億に減ります。その点で約百八十億を借金の返済に充てるという
考え方を持ったわけです。
それからまた、今年度
予算の審議で、私自身審議の途中で非常に波乱を起こした発言をいたしましてまことに失礼いたしましたが、本年度
予算は、御
承知のように昨年五月の沖繩復帰に伴って沖繩の沖繩放送
協会の債権債務を引き継ぎ、かつ五年以内に本土と同じ施設をしなければならないという
前提のもとで、資本収支から八億二千万円を経常収支に繰り入れております。これが実は今年度
予算御審議の際の最大の問題でございました。それで、安定資金五十五億のうち、沖繩
関係を除きますと三十四億余りが残るばかりでございます。率直に言って、今年度の
あと始末もその中に含まれているわけです。したがいまして、約十九億余りが沖繩に投資される金でございます。
そう
考えてまいりまして、しかも今後三年間くらい値上げをしない
方法があるかどうかを検討したわけでございます。この検討の結果、今年度
予算御審議の前から、私は四十八年度までは
聴視料に手をつける気はないということを申し上げておりましたが、大体四十九年度、五十年度くらいまでいけるのじゃないかという見通しを持ったわけです。それは先ほど林さんの御
質問にお答えしたように、
放送センターに移って中央機能がセンターに集中される場合、その時点での、すでに御審議をいただく四十八年度でも明らかになっておりますが、減価償却費が百六十五億円になります。
明年度の建設費は百七十五億円余りになっているかと記憶しておりますが、これを今後三年のスパンで、経過で
考えたときにどのような結果になるかと申しますと、当初われわれが検討したいわゆる第四次構想の三年間の建設費の総額と、
明年度予算御審議をいただくのを初年度とする今後三カ年間の建設費の総額とを
考えますと、約百二十六億の節約ができます。この施設の建設の節約に伴いまして、技術運営の日常節約費が大体四十一億円になります。それで先ほど申し上げ金融
機関からの借金返済によって年間七億の利子支払いが不必要になってまいります。それから同時に、これと
関連して中央機能が向こうに一元化されるという点で、移っただけで年間六億の管理費、運営費が節減されます。そしてこれと
関連する事業費も節減されますので、合計二百十億以上が節減されるわけです。
したがって、いわゆる
売却益を計算しなくても社会経済上の革命的な変化がない限りは、私
どもの計算としては、四十八年はすでに皆さんにお約束していた年でありますが、四十九年、五十年にわたっても値上げの必要はないという、大体の計算が出たわけです。
したがって、残りの百二十億、これを永久に固定して
聴視者に還元していくという
方法を
考えたわけでありまして、この
意味で百二十億という
数字が出ました。しかし私としては、この百二十億はスタートであって、これがゴールではないという
考え方を持っております。いろいろな社会の変化によってこの基金がいろいろな社会的協力をもいただいてふえることになるならば、これにこしたことはないと
考えておりますが、当面このようなことを期待しているわけではございません。
それでは、この運営をどうするかということになりますと、やはり元金は残すべきであるという
考え方です。と申しますのは、建設にいたしましても、借金の主たる内容は将来の
聴視者のための借金でございます。現在の
聴視者のためではございません。したがって、事業費では借金は
一つもないわけなんです。そういうことを
考えますと、私は将来の
聴視者の利益のためにもこの百二十億という基金そのものは減らすべきではないという
考え方に立つわけでございます。
百二十億というのがいつ入るかという問題になりますと……。