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1973-09-11 第71回国会 衆議院 地方行政委員会 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年九月十一日(火曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 上村千一郎君    理事 小山 省二君 理事 高鳥  修君    理事 中村 弘海君 理事 中山 利生君   理事 三ツ林弥太郎君 理事 山本弥之助君    理事 吉田 法晴君 理事 林  百郎君       愛野興一郎君    今井  勇君       片岡 清一君    亀山 孝一君       島田 安夫君    保岡 興治君       小川 省吾君    佐藤 敬治君       山田 芳治君    多田 光雄君       三谷 秀治君    小川新一郎君       小濱 新次君    折小野良一君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   江崎 真澄君  出席政府委員         警察庁長官   高橋 幹夫君         警察庁長官官房         長       丸山  昮君         警察庁警備局長 山本 鎮彦君  委員外出席者         法務省刑事局公         安課長     俵谷 利幸君         法務省入国管理         局入国審査課長 澤井 昭之君         法務省入国管理         局参事官    岡田 照彦君         外務省アジア局         北東アジア課長 妹尾 正毅君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ――――――――――――― 九月三日  固定資産税免税点引上げ等に関する請願(神  崎敏雄紹介)(第九九七六号)  ドライブイン等における酒類の販売禁止に関す  る請願外二件(中村寅太紹介)(第九九八九  号)  事業税における事業主報酬制度適用に関する請  願外二件(伊東正義紹介)(第九九九〇号)  同外二件(宇都宮徳馬紹介)(第九九九一  号)  同外二件(大竹太郎紹介)(第九九九二号)  同(大橋武夫紹介)(第九九九三号)  同(奥田敬和紹介)(第九九九四号)  同(大西正男紹介)(第九九九五号)  同(越智伊平紹介)(第九九九六号)  同外一件(笠岡喬紹介)(第九九九七号)  同(木村俊夫紹介)(第九九九八号)  同外一件(黒金泰美紹介)(第九九九九号)  同外一件(斉藤滋与史君紹介)(第一〇〇〇〇  号)  同(三枝三郎紹介)(第一〇〇〇一号)  同(塚原俊郎紹介)(第一〇〇〇二号)  同外二件(西村英一紹介)(第一〇〇〇三  号)  同(根本龍太郎紹介)(第一〇〇〇四号)  同外一件(深谷隆司紹介)(第一〇〇〇五  号)  同外三件(藤本孝雄紹介)(第一〇〇〇六  号)  同外九件(松野幸泰紹介)(第一〇〇〇七  号)  同(水野清紹介)(第一〇〇〇八号)  同(村田敬次郎紹介)(第一〇〇〇九号)  同外三件(毛利松平紹介)(第一〇〇一〇  号)  同(森山欽司紹介)(第一〇〇一一号)  同外一件(渡部恒三紹介)(第一〇〇一二  号)  同外二件(赤松勇紹介)(第一〇〇五五号)  同(阿部喜元紹介)(第一〇〇五六号)  同外一件(越智通雄紹介)(第一〇〇五七  号)  同外五件(亀山孝一紹介)(第一〇〇五八  号)  同(黒金泰美紹介)(第一〇〇五九号)  同(小泉純一郎紹介)(第一〇〇六〇号)  同(笹山茂太郎紹介)(第一〇〇六一号)  同外二件(羽田野忠文紹介)(第一〇〇六二  号)  同外二件(橋本龍太郎紹介)(第一〇〇六三  号)  同(藤田高敏紹介)(第一〇〇六四号)  同(三塚博紹介)(第一〇〇六五号)  同(森喜朗紹介)(第一〇〇六六号)  同(内海清紹介)(第一〇一三五号)  同(小澤太郎紹介)(第一〇一三六号)  同(大村襄治紹介)(第一〇一三七号)  同外一件(奥田敬和紹介)(第一〇一三八  号)  同(小坂徳三郎紹介)(第一〇一三九号)  同外二件(田中榮一紹介)(第一〇一四〇  号)  同(西岡武夫紹介)(第一〇一四一号)  同外七件(原健三郎紹介)(第一〇一四二  号)  同(広沢直樹紹介)(第一〇一四三号)  同(本名武紹介)(第一〇一四四号)  同外二件(宮澤喜一紹介)(第一〇一四五  号)  同外四件(横山利秋紹介)(第一〇一四六  号)  聴力言語障害者自動車運転免許に関する請願  (亀山孝一紹介)(第一〇〇六七号)  風俗営業等取締法による規制からの自動車旅行  ホテル業除外等に関する請願愛知揆一君紹  介)(第一〇〇六八号)  同(大橋武夫紹介)(第一〇〇六九号)  同(海部俊樹紹介)(第一〇〇七〇号)  同(河本敏夫紹介)(第一〇〇七一号)  同(竹下登紹介)(第一〇〇七二号)  同(中山利生紹介)(第一〇〇七三号)  同(橋本龍太郎紹介)(第一〇〇七四号)  同(旗野進一紹介)(第一〇〇七五号)  同(細田吉藏紹介)(第一〇〇七六号)  同(早稻田柳エ門紹介)(第一〇〇七七号)  同(伊藤宗一郎紹介)(第一〇一四七号)  同(小澤太郎紹介)(第一〇一四八号)  同(大村襄治紹介)(第一〇一四九号)  同(神門至馬夫君紹介)(第一〇一五〇号)  同(原健三郎紹介)(第一〇一五一号)  同(坊秀男紹介)(第一〇一五二号)  同(森下元晴君紹介)(第一〇一五三号)  自治体病院助成対策強化に関する請願折小  野良一君紹介)(第一〇一五四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 九月五日  固定資産税の引下げに関する陳情書  (第六四六号)  自治体病院経営健全化に関する陳情書外三件  (第六四七  号)  地方自治法の一部を改正する法律案に関する陳  情書  (第六四八号)  地方自治法の一部を改正する法律案反対に関す  る陳情書外一件  (第六四九号)  聴力言語障害者自動車運転免許取得に関する  陳情書  (第六五〇号)  人口急増過密都市行政対策に関する陳情書  (第六五一号)  事業税における事業主報酬制度適用に関する陳  情書  (第六五二号)  非常勤消防団員に対する賞じゅつ金制度適用等  に関する陳情書  (第六五三号)  消防対策の充実に関する陳情書  (第七一六号) は本委員会に参考送付された。     ―――――――――――――本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  警察に関する件(金大中事件)      ――――◇―――――
  2. 上村千一郎

    上村委員長 これより会議を開きます。  警察に関する件について調査を進めます。  この際、金大中事件について、警察当局から、その後の捜査状況報告を求めます。江崎国家公安委員長
  3. 江崎真澄

    江崎国務大臣 金大中事件捜査しております警視庁特捜本部は、九月五日、警察庁から外務省を通じ、駐日韓国大使館に対し、同大使館金東雲一等書記官任意出頭を求めましたが、いまのところ、韓国側は、金東雲書記官出頭要求を拒否しております。警察としましては、今後とも、従来どおり、じみち捜査によって、事件真相解明のため、慎重かつ着実に捜査を続けていく所存であります。  ここで、これまでの捜査段階を振り返ってみますると、本件の背景には、私ども理解の及ばない韓国の複雑な政治情勢があり、その規模において、日本から韓国にまたがる国際的スケールのものであり、また、捜査条件として、事件被害者であります金大中本人をはじめ、事件発生当時の目撃者である梁一東氏、金敬仁氏がいずれも韓国にいて、犯行時の模様捜査の進展に応じて詳細に聴取することができないという最悪の状態であります。  また、犯行の舞台となった場所が、白昼とはいえ、大都会の近代的ホテルという、個人の行動に対してはきわめて無関心であるか、または無関心を装う場所であったことも、目撃者発見が容易でなかったという意味で、捜査の困難に一そう拍車をかけたと言えます。しかし、警視庁をはじめ関係府県警察は、事件発生以来、日夜を分かたず、あらゆる困難を克服して精力的な捜査を展開し、容疑者の一人を割り出し、今後の捜査の発展への端緒をつかむに至ったのであります。  金東雲書記官本件容疑者として判定するに至りました経緯について申し上げます。  警視庁特捜本部では犯行現場となったホテルグランドパレス中心にして、慎重綿密な地取り捜査現場鑑識活動を行なった結果、二二一〇号室などから数十個の指紋などを採取するとともに、二二一〇号室には、八月六日から畑中金次郎と名のる不審人物が宿泊していたこと、現場の二二一〇号室のベッドのそばに遺留されていたリュックサックは、事件の二日前、八月六日午後一時三十分ごろ、現場の近くの登山用具店から二名の男が購入していたものであることなどの事実を突きとめました。また、金大中氏の韓国における供述や現場模様などから判断いたしますると、金大中氏は、二二一〇号室に一たん閉じ込められたあとエレベーターを使って下におり、ホテル地下にある駐車場から車で外部に運び出されたものと考えられたので、そのコースについては、特に、目撃者発見のため、聞き込み捜査などを行ないました。しかるところ、ちょうど事件発生直後の一時三十分過ぎに、同ホテルの三階から一階までエレベーターに乗った二人の日本人が不審な五人連れの男を目撃していることが判明し、その目撃状況から、その五人連れの男は金大中氏及び犯人四人と判断されるに至ったのであります。これら目撃者の証言から、金東雲書記官本件に関与している疑いがあり、さらに、同人指紋ホテル二二一〇号室遺留指紋と一致したので、本件容疑者と判断したものであります。  警察庁では、警視庁と十分に打ち合わせを行ないました結果、事案全貌解明のため、本人出頭を求め、直接事情を聞く必要があるとの結論に達しましたので、九月五日、外務省を通じまして、駐日韓国大使館同人任意出頭を求めるに至った次第であります。  さて、今後の警察の方針といたしましては、韓国側良識誠意に期待しながら、金東雲書記官任意出頭金大中氏の来日を、外交ルートを通じ、粘り強く要求していくとともに、現場中心としたじみち捜査を着実に続行して、事案真相究明につとめる所存であります。  以上、金大中事件のその後の捜査を概況について申し上げました次第であります。
  4. 上村千一郎

    上村委員長 以上で、報告は終わりました。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。片岡清一君。
  5. 片岡清一

    片岡委員 ただいま、江崎国家公安委員長から、その後の捜査の御経過を拝聴いたしまして、警察の御苦心の点、しかも、大きな成果をあげられたことに深く敬意を表するものでございます。そこで、若干の問題について御質問をいたしたいと存じますので、よろしくお願いします。  八月九日、事件発生直後、私は、AA研金大中事件経緯を聞く会に出席いたしまして、そのときに、韓国居留民団の側から、日本警察初動捜査がたいへん不活発であるという点に対して若干の不満の意向が表明せられまして、金大中氏の生命安否を気づかうのあまり、いっときも早く捜査に取りかかってほしいという切なる要望があり、そして、また、日本警察政府当局から捜査上何らかの制肘を受けるのではないかという懸念のあることを述べたのでございます。私は、警察出身者として、日本警察の名誉のために、日本警察は、その時の政府意向によって捜査が二、三にされるというような、そんな弱い警察では断じてない、あくまでも社会正義にのっとって、どこまでも強く明るく正しく捜査を進めるのが日本警察の真面目である、特に、隣国の著明な政治家生命安否にかかわる事件であります以上、人命尊重という至上命令立場からも、あらゆる手段をもって、できるだけ早くこの事件解明に当たり、そして、金氏の生命の安全のために最善の努力をするものであるから、その点は、ひとつ日本警察を信じてもらいたいということで大みえを切ったのでございます。  ところが、その後、遺憾ながら、日本警察警戒線をゆうゆうとのがれて、犯人金大中氏を韓国に拉致して、自宅に連れ戻したことが判明いたしたのでございます。私は、この点で大いに面目を失った次第でございまして、この点はまことに遺憾千万でございました。しかし、その後の捜査が、ただいま御報告があったように、みごとに日本警察の不名誉を挽回しまして、金東雲一等書記官がこの事件の主役をつとめておるという動かぬ証拠によって、そのことを割り出しましたことはまことに偉大な成果でありまして、日本警察の真価をみごと全世界に発揮し得たものとして、私は、警察当局に対して、その捜査の途中における御苦心のほどを察しまして、深甚なる敬意を表するものであります。  ところが、その後の韓国政府の非常にかたくなな態度といいますか、金東雲一等書記官はこの事件に全然関係がないのだというような態度をとって、捜査が大きな壁にぶつかったようでございます。さらに、金溶植外相の、わが国の三十六年間にわたる暗い日韓関係の負い目を暗示するような発言によりまして、わが政府としては、末長い日韓友好立場から、警察側の持つ正論だけではとうてい押し切れないという点を感知せられたのでありましょうか、その後のこの問題の処理については、全体として、非常に調子がトーンダウンしたものを感じさせられるのでございます。  そこで、私の心配いたしますのは、捜査の壁にぶつかったことと、外交的な配慮によってこれを処理しなければならぬというところに重点を移さざるを得なくなった結果、こういう二つ命題の前に、今後において、どこまで――いま江崎大臣から御説明がありましたところによると、相手方の良識誠意に待って、どこまでも警察本来の使命の追求に向かって真相解明に当たるということでございますが、この点について、警察側が、そういうむずかしい二つ命題のもとに、どこまで本来の使命を貫くことができるのかどうか。そういう点について、警察の担当の、きょうは長官がおられないようでございますから、警備局長にお伺いをしたいと同時に、国務大臣としての江崎国家公安委員長は、政治的な配慮をしながら、しかも、警察の運営、管理を本来の使命に向かって遂げられなければならぬという国家公安委員長としてのお立場を考えながら、この問題をどういうふうにお考えになっておるか、お伺いしたいと存じます。
  6. 江崎真澄

    江崎国務大臣 本件初動捜査につきましては、警察は、事件発生を知ってから、できる限り迅速に、全力を尽くして行なっております。いやしくも、故意に緩慢にこれを行なうというようなことは、日本警察としては断じてありません。これは本会議などでも申し上げてきたところであります。私も政治家でありまするが、就任以来、日本警察優秀性というものを十分認識いたしております。日本警察は、日本政治情勢はもとより、韓国政治情勢などにかかわり合いを持って捜査をするということは断じてありません。やはり、厳正、公正に事件解明全力を傾注しておるというのが実情であります。また、今後も、日本警察の面目にかけて、そうあってもらいたい。これはむしろ、政治家たる私が、それが確保されるように、これを守っていくことが、私自身の職掌柄責任ではないかというふうに認識をいたしておるものであります。  ただ、事件発生の通報が約四十分以上経過したあとになされたということが、非常な初動捜査のおくれにつながったことも、これまた事実であります。それから、金大中氏の身柄が国外に移送されておったということは、これはいかにも遺憾千万なことであったと思いまするが、ただいまも申し上げましたように、事件発生以来、警察としては、昼夜を分かたずこの問題と真剣に取り組み、先ほど申し上げましたような経緯で、外務省を通じ、大使館に、金東雲氏の任意出頭の要請をするというところまで取り運んだわけであります。  本件のような犯罪の再発は、警察として、今後十分責任をもって防止していかなければなりません。また、不幸にしてこういう事件ができたときには、万全の措置をとりまして被害者を助け出すよう、あるいは、被疑者加害者の検挙ということがすみやかに行なえまするよう、国際事犯捜査のためにする特別委員会を設けまして、警察庁の次長をその責任者に任命をしてへ今後に備えておるような次第であります。  さて、そこで、今後一体どうするのかということですが、おっしゃるように、韓国側日本政府に対する応答が何となくかたい感じがいたします。しかし、従来の友好関係から考えまして、私どもは、韓国良識に期待をつなぐものであります。外務省を通じまして、金東雲氏をはじめ金大中氏ら、合わせて四者に、日本にすみやかに来てもらうように、特に、金東雲金大中両氏来日を粘り強く今後も要請してまいりたいというふうに考えております。
  7. 片岡清一

    片岡委員 一時、新聞紙上で、金大中氏の再来日が、きわめて近い将来に可能であるというような観測記事が出ました。各新聞とも、ほとんど確定的であるような報道のしかたをしておったのでございますが、金東雲一等書記官事件関与警察によって解明せられ、発表せられた直後から、急激にその可能性が遠のいたもののように思われるのでございますが、その変化真相はどこにあるのか。警察の御当局、あるいはまた外務省北東アジア課長が来ておられるようでございますが、外務省の見解と、両方承りたいと思います。
  8. 妹尾正毅

    妹尾説明員 お答えいたします。  私どもの受けております印象としましては、金東雲一等書記官任意出頭を求めた前後で、基本的に変わったという点は、特に見受けられません。韓国側は、一貫しまして、韓国側で現在調査中の段階であり、日本に行くということはできないという言い方でございまして、一時、確かに、新聞紙上等におきまして、可能性が特に強くなったような報道もあって、私もそういう記事を見たことを記憶しておりますが、基本的にそういう点で事情変化があったという材料は、私ども持ち合わせておりません。  それから、なお、金東雲書記官任意出頭を求めたあとも、わがほうでは、外交チャンネルを通じまして、金大中氏等の再来日を求め続けているのが実情でございます。
  9. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 私のほうは、外務省お話し以上のことは承知いたしておりません。
  10. 片岡清一

    片岡委員 ただいまの外務省北東アジア課長の御答弁では、私は必ずしも満足できないのでございますが、時間の関係もございますし、これはなかなかむずかしい外交問題もあることでしょうから、それを察しまして、これ以上追及はいたしません。  では、次に移りますが、警察捜査を開始するにあたりまして、ある特定の偏見に基づいて、片寄った見込み捜査をすることは、これは非常に危険であるばかりでなく、そのことによって、永久に取り返しのつかない誤りをおかすおそれのあることは、私も十分に理解できるのでございます。したがって、初動捜査において、あらゆるあり得べきケースを考えながら、慎重に手をつけなければならぬことは、これは言うまでもないわけでございます。ところが、今度の金大中事件で、いろいろそのケースとして考えられるのは、第一に自作自演であるということ、あるいはまた、朝鮮民主主義人民共和国からしかけた謀略であるということ、あるいはまた、韓国側からのいろいろの思惑による謀略であるということ、大別してこの三つが考えられるのでございます。特に、グランドパレスにおいて、二二一〇号室における遺留品があまりにもみごとに残されておるということで、最初、自作自演にあらずやという疑いの節が確かにささやかれたことは、だれしもちょっと感づいたことでございます。ただいま江崎国家公安委員長お話しになりましたように、届け出がおくれました関係からも若干初動捜査がおくれたということもあったと思いますが、ところが、この初動捜査がおくれたということについては、やはり、若干批判を免れないのではないかと私は思います。おそらく、その理由に、あるいは自作自演ではないかということについて若干の疑いがあった。そういう結果からではないかと私は思うのでございますが、必ずしもそうでなかったかもしれません。しかし、これは、金大中氏が韓国においてどういう政治的な立場にあるか、しかも、日本へ来て、ほとんど亡命と同じような取り扱いを受けておったという事実から考えまして、この金大中氏の政治的な立場というものを、日本警察が、外事警察等であらかじめもっと十分理解をしておられたならば、こういう事件が起きたことはたいへんなことだということで、もっとすばやく初動捜査につけたのではないかという、若干の遺憾な点を私は指摘せざるを得ないのでございます。  いずれにいたしましても、そういう政治的な立場というよりも、事人命に関する問題であります。しかも、前回の大統領選挙において、朴大統領との選挙の施行の途中において干渉があったとか、いろいろなことが想像せられるのでありますが、もし、さようなことがなかったら、あるいは金大中氏が当選していたかもしれぬというほどの、韓国民の間に潜在的な人気と人望のある若い著名な政治家であった。その人の生命の安危にかかわる大事件であるから、何はさておいても、事件届け出とともに、もっと広範囲に、あるいは国道の要所要所に、あるいは高速道路のチェックポイントに、その他駅、港等にもっと、すばやく、もっと真剣なといいますか――真剣でなかったとは私は申しませんが、もっと本気な手配がなされるべきではなかったか。たとえば、京都のインターチェンジの近くで道を聞いたというようなこともございますが、そういうことからも、もっと早く何らかの手がかりを発見することができたのではないかという点を、私は非常に遺憾に思うのでございます。私は、自今かようなことのないように、十分御留意を願いたいのでございまして、ただいま、国家公安委員長から、いろいろの対策を立てておられるというお話しがございましたが、これらの点について、もう一度、この初動捜査における問題について、何らかの確たる御所見をお伺いできればたいへんありがたいと思います。
  11. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  まず、その見込み捜査なり、あるいは自作自演説、こういうような形で捜査が緩慢になったのじゃないかというようなお話しでございますが、そういうことは絶対にございません。われわれは、予断を避けて、あらゆる条件を想定して、純粋な形で捜査に着手したわけでございますが、初動捜査の手おくれというのは、先ほど大臣からお話しがありましたように、向こうからの連絡が非常におくれたということで、具体的に申しますと、犯罪は、金大中さんの陳述要旨によりますと、一時ごろと言っているわけでございますが、一方、梁一東さん、金敬仁さんの話では一時半ごろというわけでございまして、宇都宮徳馬先生から御連絡がありましたのは十四時十四分ということでございます。それで、これが警視庁警備部長のほうに連絡がございまして、それによって、十四時二十分ごろに、麹町の署員と外事二課員が現場に行っております。それから、十四時四十一分に、金大中さんの秘書であった人から一一〇番が来ております。これで、四十五分に、麹町署のパトカーが現場に行っております。さらに、十四時五十分には、引き続いて外事課の者が現場に到着するという形で、現場事情を聴取いたしておるわけですが、その聴取の際に、梁一東さんなり、金敬仁さんが、犯人の人相とか、そういうものをいろいろな方面に御連絡しておるので、なかなか具体的に内容を聴取できなかったというわけであります。また、車の番号も、車種も、あるいは出かけた方向もわからない。こういうことで、具体的に緊急手配をするといっても、なかなかむずかしい状況でございましたが、一応、とりあえず、十四時五十五分には、有線電話をもって、出国警戒を、特に羽田空港、それから水上署、月島署に手配はいたしております。とりあえずの、東京都内から出ないような手配はいたしております。  それから、全国的な緊急配備を続いてやるわけでございますが、その場合に、警視庁だけの緊急配備が十五時十五分になされております。十五時三十分までに、指定検問場所において検問配置についております。すなわち、高速道路、主要ランプ、その他交通要点、それから空港、東京港等への道の検問、こういう配置に十五時三十分にはついておるわけでございます。  それから、引き続いて全国的な手配警察庁のほうからいたしておりまして、全国の空港並びに港に対しての手配は、三時四十分・各管区警察当局を通じて、各警察本部に対しての指示をいたしております。空港及び港湾に対するチェックと、それに通ずる主要道の検問、そして、高速道路の上の検問というのは長くなりますから省略さしていただきますが、東名高速道路では神奈川県、名神高速道路では滋賀県、京都府、大阪府、岐阜県、そういうところで、それぞれ二カ所ないし三カ所で検問をいたしております。さらに、この高速道路以外、あるいは関東管区では群馬県、中部管区では愛知県、あるいは三重県、岐阜県、福井県、富山県、石川県、近畿管区でも、高速道路以外で大阪府、兵庫県、京都府、滋賀県、こういうところでやっておるわけでございまして、結論として、結局、金大中氏がこういう網をくぐって行ってしまったというのは非常に残念で、われわれ反省の点がたくさんあるわけで、先ほど申し上げましたような委員会を設けて、将来こういうようなことが再び起こらないように、十分本事件を参考にして、新しい手配、整備ということを考えておるような次第でございます。
  12. 片岡清一

    片岡委員 先般来の国会論議におきまして、政府は、国家主権が侵害されたかどうかということのきめ手は、相手国の公権力の行使があったかなかったかということによってきまるのだというふうに言われて、統一見解が示されておるのでございますが、金東雲一等書記官が個人的な盗みをしたとかなんとかいうような犯罪の場合ならいざ知らず、金大中氏の拉致という、純政治的な行動をしたということについて、公権力の行使がこの中に加わっておったかどうかということの立証は非常に困難な問題であると存ずるのでございます。金東雲氏の任意出頭はもちろん、あるいは金大中氏、梁一東氏、金敬仁氏ら、事件関係者の再来日も非常に困難になってきておる今日におきましては、その糾明はほとんど不可能に近いものと言わざるを得ないと存ずるのでございます。この困難な事情下で公権力の行使があったかどうかを割り出そうとすることは、非常に長期戦になって、相手方の出方を待つということで、まあ待つほかはないということのようでございますが、来たる二十三日には、大平外務大臣が国連にお出かけになる。その後、田中首相、大平外相がさらに訪ソ、訪欧するということで、日程が詰まっておる。そこに何となくタイムリミットがあるように感ぜられるのでございますが、こういう段階において、韓国側があくまで知らぬ存ぜぬということでがんばられたとしたら、この主権侵犯の証明の問題は、これはほんとうに不可能に近い。結局、事件はうやむやになってしまうほかはないというふうに思うのでございますが、もし、そういうことになると、やはり、日本の国民の中には、何となく将来の日韓関係における思わしからざるものが最後に残るというふうに思うのでございますが、江崎国家公安委員長は、国務大臣として、どういうふうにこの問題をお考えになっておるか、また、外務省はいまどういうふうに考えておられるのか、その点をお伺いしたい。最後までがんばった日にはどうなるのか、どういう手段を講ぜられるかということをお伺いしたいと思うのでございます。
  13. 江崎真澄

    江崎国務大臣 金東雲氏が、どういう立場でどういう意図でこの事件に関与したか、これは、まだ本人の身柄を捜査したわけでもありませんし、事情聴取をしたわけでもありませんので、よくわからないというのが率直なところであります。したがって、国家権力がこれに介入したかどうか、にわかに断ずるわけにまいらない。これが、先ごろ来の、総理、外務大臣がともにお答えをしておるあらましであり、私も、全くそのように考えます。  しからば、いま身柄を要求しておるが、金東雲氏はもとより、金大中氏ほかもよこさない韓国の方針と申しまするか、考え方がよくわからないままで推移をしたらどうなるかという、御心配の点はごもっともだと思います。ただ、日本としては、事件発生以来、金大中氏ほかの身柄を要求し、引き続いて、金東雲氏が今回の事件に何らかの形で積極的な関係があるということの割り出しに成功しまして、この身柄を要求したわけであります。したがって、外務大臣と先ごろ来話しておりますことは、何といっても、日韓関係は友好親善の上に立っておるということで、両者の間は緊密であります。したがって、先方の誠意良識を期待するという形で、しばらく韓国側の出方を待ってみようということ、これが日本政府の現在の立場であります。じんぜんこのまま日を過ごして回答がないということはないのではないか、従来の友好親善関係から申しても、そういう不徳義は韓国側としてもとり得るところではないということで、したがって、私どもは、この問題の先行きに絶望はしておりません。これが今日申し上げられる私どもの見解でございます。
  14. 妹尾正毅

    妹尾説明員 ただいまのお話しのとおりでございまして、私どもも、心配なさっておられるような事態になっては非常に割り切れないものが残ると思っております。この点、全く御指摘のとおりだと思います。  それで、私どもとしましては、外務省として、韓国側の協力を得るために、できる限りの努力を今後とも続けていくということでございまして、いまの段階で絶望することはない、そういうふうにしないようにぜひとも持っていかなければならない、こういうふうに考えております。
  15. 片岡清一

    片岡委員 そのために、だれか特使を派遣して、その焦げついた状態を何とか解きほぐすというようなことも考えられると思うのですが、きのうの参議院の質問等で、総理は、そういう考えはないということを言っておられますので、私は、重ねてそれは申しません。  そこで、捜査の壁を打ち破る一つの方法として、外交特権を持っていない犯人の割り出しができれば、これは重要であると私は思うのでございますが、今回の金大中事件で、逮捕状によって逮捕ができるというような被疑者は、いまの段階で、まだ出ていないのですか。また、その見込みはないのですか。その点をちょっとお伺いしたいと思います。
  16. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 まだ、そういう者は出ておりません。これからの見込みということになりますと、ちょっと、いまの段階では申し上げられません。
  17. 片岡清一

    片岡委員 金大中事件発生直後に、捜査当局の発表として、梁一東氏と金敬仁氏との自供の中に、時間の関係で一致しない点があったという発表があったように思っております。その後韓国から送られてきた捜査資料の中にも、両人の供述で、何か一致しない点があったということが指摘せられておるやに発表があったように私は記憶しておるのでありますが、それは、何か重要な点において相違があるのかどうか、お聞かせいただければありがたいと思います。
  18. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  これは、金大中さんの陳述の要旨によりますと、部屋を出た時間が一時ごろだということです。ところが、梁一東、金敬仁両氏のお話しによりますと、これは一時半ごろだと、三十分食い違っておる。事件発生時間が三十分食い違っておるのは、かなり大きな相違なので、この点をはっきりさせたいと思って、韓国側にもこの点をただしておるわけでございますが、まだ返事が来ないわけであります。  それから、もう一つの違っておる点は、犯人の数ですね。金大中さんは、六人の犯人である、二二一五号室と二二一〇号室から三人ずつ出てきて自分を取り囲んだと言いますが、金敬仁さんのお話しによると、これは二人、三人の五人だという話で、犯人の数も食い違うし、発生時間も食い違っておるということ、これが大きな食い違いの点でございます。
  19. 片岡清一

    片岡委員 これはいわゆる私の勘でございますが、梁一東氏が、この事件で、何か犯人とぐるになっておるのではないかというようなことが感ぜられるのでございますが、まあ、その点については、いまの警備局長お話しで、これは、あるいは時間の若干のズレがあっていいのかもしれませんが、九月二十三日付の「サンデー毎日」を見ますと、そういうことの時間について、若干のズレがあるのじゃないか。たとえば、梁一東さんが電話で韓国大使館に知らせたのは二時ごろだということになっておる。ところが、大使館から金在権公使がグランドパレスへやってきたのは、二十分後の二時二十分だというふうに書かれておるのでございますが、これは「サンデー毎日」の記事でございますから、若干の時間の問題があると思います。ところが、金大中氏のボデーガードの金康寿氏が、「午後二時になっても二十二階から金大中先生が帰らないので、心配になって自分が見に行った。ところが、金敬仁氏が二二一〇号室であけてくれと言っておった」ということでございますから、事件が起きたのが、いまのお話しで一時ないし一時半ということならば、そのことは問題ないのですが、この「サンデー毎日」が書いておるものによりますと、二時に大使館に通知があって、それからやってきたということでございまして、この、金康寿氏が言ったところの、二時まで来られなかったので自分が上がってみたということと、どうも時間的なズレがある。だから、梁一東氏が金大中氏について言ったのは、事件が起きる前に予測して何か言うたんじゃないかということを「サンデー毎日」に書いておるのですが、そのことはどうなんでしょうか。
  20. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  梁一東さんと金敬仁さんは、もとの部屋の二二一二号室のほうへ押し戻されて、そこに二人の者に監視されておったので、一時半になっても動きがとれないということで、しばらくは、その部屋に、いわば、一種の軟禁状態にあったわけです。したがって、はっきりした時間はよくわかりませんが、その二人の者も下におりていったということで、初めて金大中さんの閉じ込められた部屋をあけようとしたら、あかなかった。それで、下に連絡して、マスターキーを持ってきてもらってあけたということで、その際はボデーガードも一緒に上がってきておると承知いたしております。それで、いないということで、これはたいへんだというので、最初に韓国大使館のほうに連絡した、こういうことになっております。
  21. 片岡清一

    片岡委員 時間がありませんようですから、簡単に申しますが、「サンデー毎日」の二十三日付の二〇ページを見ますと、趙活俊という韓国民主制度・統一問題研究所東京事務所長という人が、「いまだから言うけれども、私が駆けつけていったところが、梁一東氏が、ベッドルームのある二二一一号室にひとりで座っておって、『何が起きたんです』と私が聞くと、梁氏はビクッと振り返って『私がやったんじゃない。情報部がやったんだ』と韓国語で叫んだ」ということを言っておるのですが、これは、警察捜査線上にそういう事案が出ておるんですか、どうですか。
  22. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 そういうものは出ておりません。
  23. 片岡清一

    片岡委員 もう時間がないようでございますから、私は、あと、最後に簡単に申し上げたいのは、これは、人道上の問題として私の所見を申し上げ、そして、大臣の御所見を承りたいのでございます。  わが国には亡命の制度がない。しかし、金大中氏は、国際赤十字から身分証明をもらって、亡命と同様の取り扱いを受けておったんだ、ほとんどそれと似たような扱いをされておったんだということを田中法務大臣が言っておられるようでございますが、金大中氏は、先ほど申しましたように、朴大統領に匹敵するような支持を韓国で受けておる。こういうときに、そういうことを考えますと同時に、朴政権がいまや永久政権になったというような関係から言いますと、金大中氏はどうでもいいんだというようなことが言えるかもしれませんが、しかし、長い将来の韓国の民主的な発展、民主主義議会政治の発展を考えていったときに、やはり、金大中氏はなかなか得がたい大事な人でないかというふうに思われるのでございます。そういう立場と、また、本来の人道上の立場と、両方から、これは何とかして金大中氏の身柄をもとの状態に戻す、日本連れ戻すということが、日本人の感じとして、やはり必要な配慮ではなかろうかと思うのでございます。このままうやむやにされると、身柄の問題はそのままになってしまう。そうすると、長い間のうちに、金大中氏の安全というものが非常に危険にさらされるおそれがある。いまのような朴政権のもとにおける状態においては、これはたいへん憂慮せられるのでございます。日本韓国の遠い将来の問題を考え、また、人道上からも考えたときに、おそらく、金大中氏は、アメリカへ亡命したい、あるいはまた日本へ来たいという気持ちを持っておると思いますが、そういう立場から考えまして、このままうやむやになって、身柄の問題もうやむやになると、何か、そこに、生命の安全に対する非常な危険が内在しておるように思われるのでございますが、この点について、大臣はどういうふうにお考えになっておるのか、また、外務省としてもどういう見解をお持ちになっておるのか、最後にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  24. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私ども警察庁管理監督いたしまする立場の者から申しますると、やはり、事件真相をすみやかに捜査して決着をつけること、これが第一義の問題であります。したがって、金大中氏の将来につきましては、韓国側において、世界的にも納得する良識のある措置がとられることが望ましいというふうには思いまするが、具体的にいまこれをどうするかという問題については、考えておりません。私どもとしては、金大中氏の再来日を粘り強く要請をし、その上に立って、被害者と目される金大中氏から事件の背後関係等を十分聴取いたしまして、事態を解明したい、これに全力をあげる、このことに専念してまいりたいと考えております。
  25. 妹尾正毅

    妹尾説明員 ただいま御指摘の点でございますが、お気持ちの点は私どももたいへんよくわかりますし、ごもっともな御懸念というふうに考えております。ただ、法律的な面で申しますと、原状回復といいますのは、主権侵害がはっきりしておりませんと要求できないということでございまして、そういう意味で、現在は、捜査のための協力ということで、再来日を要請しているということでございまして、その点は、今後の真相究明がどう発展していくかということにもかかっているのではないかというふうに考えております。  それから、なお、金大中氏の安全の点につきましては、先般来、韓国におきまして、後宮大使が、韓国政府首脳から、金大中氏を別件逮捕するようなことはないということを聞いておりますし、それから、後宮大使が現実に金大中氏に会ったときも、金大中氏は元気で健康そうだったということでございまして、その後変ったことがあるという報告には接しておりませんので、現在もそうであることを私どもは期待しているということでございます。
  26. 片岡清一

    片岡委員 それでは、時間が来ましたので、終わります。
  27. 上村千一郎

    上村委員長 吉田法晴君。
  28. 吉田法晴

    ○吉田委員 先ほど、江崎国家公安委員長から、その後の報告をされまして、金東雲氏のことについて報告がございましたが、警察、あるいは国家公安委員長として、金東雲氏が個人であのことをやったのか、あるいは、韓国中央情報部の一員として仕事をしたのかということについて、そのことをどういうぐあいに認識しておられますか、お尋ねいたします。
  29. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは、今後の捜査結果にまつべき重要なポイントであるというふうに考えます。現在のところ、金東雲氏が大使館の一等書記官であることはわかっておりますけれども、その任務分掌がどういうことであるのか、また、今回の事件にどういう立場で関与をしたのか等々は、本人出頭をまって、事情聴取の上で判断できることでありまして、まだ、にわかに推測することはできないのが今日の状況でございます。
  30. 吉田法晴

    ○吉田委員 捜査段階だから、まだ断定はできぬということはわかりますが、新聞によりますと、アメリカの政府当局は、今度の事件韓国CIAの仕事であるということは、ほとんど断定的に申しております。私は、これはあとでお尋ねをいたしますが、いわば公安当局と言われる日本警察も、韓国情報部と定期的な連絡がある、あるいは訪問をされる、事件の前にも会っておられるということのようでございますから、金東雲氏が韓国情報部に関係があるのかどうか。あるいはアメリカからは、アメリカの捜査当局が確認をしたところでも、日本に一人や二人――あるいはもっと多いかもしれませんけれども、一人や二人日本に行って帰ってきたということが言われている。その辺も、日本の公安当局は知らぬはずはないと思うのでありますが、国家公安委員長は、報告を受けておられなければ、いまのような答弁しかないと思いますが、それでは、警備局長はどういうぐあいにこれを理解しておられますか、伺いたい。
  31. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 金東雲書記官が中央情報部員であるかどうかということは、私どもは存じておりません。そうであるかどうか、全然知りません。  それから、アメリカ関係云々ということも、アメリカのほうからわれわれのほうに、要するに、外交ルートを通じてわれわれのほうに、そういう連絡は何ら来ておりません。
  32. 吉田法晴

    ○吉田委員 国家公安委員長にお尋ねをいたしますが、日本警察韓国に弱いと、新聞に、あるいは雑誌等に公然と書かれております。いまの、前の、同僚議員の質問のように、日本警察は国際的に有能だと認められている。これは間違いありません。その日本の有能な警察が、なぜ、この問題について、いわばたいへん協力的でなければならないのか。  そこで、その理由を一つお尋ねをいたしたいと思うのですが、新聞、雑誌によりますと、韓国大使館から自作自演説が流された。これは意識的に流されたと思いますが、その情報に惑わされた、あるいは動かされたと考えるべきなのか。それとも、日米共同声明で、韓国条項の中に、韓国の平和と安全に貢献をするという、その「安全」という中に、韓国の治安についても日本責任を分かたなければならぬということになっておるのか。お尋ねをいたしたいと思います。  念のために申しますが、これは新聞に出ておりませんけれども、確かな筋と申しますか、話を聞いた者の言によりますと、高橋警察庁長官は、二、三日前にこういうことを言っておられる。金東雲氏を出すことによって、日本警察としてやることはやった、金大中氏の原点復帰は不可能だろう、韓国の謝罪ということでおそらく落ちつくのではなかろうか、最悪の場合でも、在日大使の更迭ぐらいだろう、と、こういうことを言っておられる。これは公表されておりませんから、あるいは少数の者に言われた話かもしれませんけれども金東雲氏が犯人の中に入っておったということを出すだけで警察責任は終わっておるのだと、こういう意向のことを言われますと、けさの朝日新聞ではありませんが、うやむやに収拾するのではなかろうか、時をかせいで、真相解明には立ち入らないままに収拾をはかるのではなかろうかという疑いが残る。これはひとり新聞だけではございませんで、私どももそう思います。   〔委員長退席、三ツ林委員長代理着席〕 あるいは、日本の国民も、この問題について、総理をはじめ政府の煮え切らなさに大きな疑問を持っております。これは、政府としても、あるいは政権を担当しておられます自民党にとっても、大きなマイナスだと私は思うのでありますが、国家公安委員長としてどう思われるか。私は、江崎さん個人の善意は信頼をいたします。その善意は信頼をいたしますが、この事件についても、多少つんぼさじきの点もあるのではなかろうかということを感じます。あるいは、九日の夕方ですか、後藤田官房副長官が、すでに金大中氏は日本の土地を離れたということを御存じであったといううわさも聞きます。それだけに、私は、国家公安委員長の今日のこれらの疑惑に対する態度はたいへん重大だと思いますし、私が知り得ましたことをもってしてもたいへん疑問に思われるだけに、はっきりした御答弁をいただきます。
  33. 江崎真澄

    江崎国務大臣 こういう事件が起きますると、たまたま、日本では、推理小説が非常に流行しておりますし、いろいろな憶測や揣摩がなされるのは通例であります。したがって、警察としては、そういう憶測とか予断とかに全然耳を傾けないわけではありませんが、そういうものと離れて、独自に、じみち現場を検証し、積み上げていくという努力によって、金東雲氏を有力な容疑者として割り出したわけですね。そして、外交ルートを通じて任意出頭を要求するに至った。このこと一つを見ていただいても、韓国側となれ合いなどということは、日本警察にあるべくもありません。これは、日本警察の名誉のために、私は、公安委員長として、責任をもって申し上げておきます。のみならず、今回のことについて、韓国には弱いとか、強いとか、そういうものはありません。捜査当局としては、事件をいかに解明するかということが中心であって、強いというならば、終始強い信念でこれに当たっておるというのが実情であります。  しからば、なぜもっと強く韓国側に身柄の要求などをしないのかということですが、これは、過去を振り返っていただきますると、後宮大使が帰国いたしておりました。これは外務省関係になるわけでありまするが、外務大臣との間に詳細の打ち合せがなされ、そして、向こう側の、韓国側の協力が得られない場合は、日本において、確たる証拠に基づいて容疑者の名前を出しますぞということを予告し、そして、相手に誠意ある回答を求めたが、十分な回答は得られなかった。そこで、日本側としては、金東雲氏を出頭するよう要請した。これは、決して緩慢な外交折衝ではありません。少なくとも、相当強い姿勢で、ストレートに韓国側にものを言ったわけであります。したがって、この場面としては、外務大臣として、これはしばらく相手の出方を見守ろう、韓国良識誠意を期待するということで、じっと相手の出方を待っておるというのがここ一両日の動きであります。こういうふうに分析して考えてまいりまするというと、日本警察当局はもとより、外務省におきましても、非常に真剣そのものであり、事件解明のために全力をあげておるという状況はおのずと明らかであるというふうに考えます。
  34. 吉田法晴

    ○吉田委員 韓国中央情報部の人に、どの程度か知りませんけれども日本の公安が会っておるのは、今回だけではない。アメリカのCIAは金氏を守ってきた。日本の公安が知らぬはずはない。尾行その他、間接的な接触はあった。したがって、朝鮮問題研究所ではありませんけれども、日韓治安当局の共謀であったという説もある。あるいは、知っておって看過をしたのか、あとで具体的にお尋ねいたしますが、納得のいかないものがございます。  それから、先ほど警察庁長官がしゃべられたという、金東雲氏を出すことによって、やることだけはやったんだ、金大中氏の原点復帰は不可能であろうというようなこと、これは、警察庁長官お話しになったとすれば、私は、これが警察庁のいまの態度ではないかと思うのです。それは、国家公安委員長のいま答弁された方針とは若干違う。あるいは、大いに違うと言ってもいいかと思いますが、これらの点についてはどういうぐあいに考えられますか。警備局長に伺いたい。
  35. 江崎真澄

    江崎国務大臣 先に、警察庁長官の発言問題について、私から念のためお答え申し上げておきます。  これは、いずれ、またの機会に、本人が出てまいりましたときに率直に聞いてやっていただくことが、本人の名誉のためにも大切かと思いまするが、私が聞いておりまする範囲では、いまお示しになったようなことは言った覚えはないということで、むしろ、金東雲氏を容疑者の一人として割り出したところからこの事件解明は始まるという表現はしたことはあっても、もうこれで警察の任務は終わったんだと、そんなことは、常識で考えても、あの長年警察畑に奉職してきた長官が言うことばではない。これは、私、確信を持ってお答えできるのであります。  それから、もう一つ、駐日韓国大使が更迭されるとか、少なくとも、そういった政治的な問題に憶測をはさんで意見を述べるということは絶対ない。これは、私、直接聞きました。そういうことはありませんということを申しておりまするので、また、何かの機会に本人に直接聞いてやっていただければ、おのずと明らかになる点だというふうに考えます。
  36. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  韓国の中央情報部と日本警察が共同して金大中氏を視察をしたり、何かしていたんじゃないかというようなお話しだと思いますが、そういうような事実は全くございません。
  37. 吉田法晴

    ○吉田委員 お尋ねをしたのは、韓国中央情報部のどの程度の人か知りませんけれども日本の公安当局が会っておったということ、それから、金大中氏に対する日本の公安当局の、間接的かもしれませんけれども、尾行その他、間接的な接触があったということを聞きますが、それらの点はいかがですかと聞いておるのです。
  38. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 駐日韓国大使館にいる中央情報部所属の者と会っていたのじゃないかというお話しでございますが、そういうことはございません。  それから、金大中氏に対しては、これは、金大中さんは、今度、七月十日に来日されたわけですが、そのときに、銀座の第一ホテルに泊まられたというところまではわれわれとしても承知いたしております。その後は、別に、そういうように、金大中さんを特に視察しているとか、尾行しているとか、そういう事実はございません。
  39. 吉田法晴

    ○吉田委員 この前のときに、時間がなくて、ちょっとお尋ねをして、否定をされましたけれども日本における韓国人の人たちで、居留民団に属しておろうとも、多少朴政権に対して批判的な意見を持っておる人たちが日本から拉致をされ、あるいは逮捕されていった、こういうことは今日に始まっているわけではないということを、私は事例をあげて申し上げたが、全部、韓国を訪問をして、向こうでとらえられたのだという説明でした。そうでない者がございましたが、きょうは資料を持ってきておりません。  ただ、ここに、こういうことを話しておられる人がある。金大中先生救出対策委員会の鄭在俊さんという人が、「日本の保護のもとに生活しているにもかかわらず、毎日不安におののきながら生きていかねばなりません」……(「スパイだから」と呼ぶ者あり)いま、声をなす人があって、スパイだということでありますが、それは、韓国側から、あるいは情報部から流しておる情報でしょう。それを、青嵐会に属しておられるかどうか知りませんけれども、自民党の一部でもそういうことが言われることが、警察態度あるいは政府態度に影響することを私は心配いたします。そして、これは、国家公安委員長として、その点についてはおそらく異議はないと思いますけれども、国籍選択の自由あるいは亡命の自由等は、国際的に認められている。それに対する戦前の日本政府態度は弱かった、あるいはあいまいであったということは言えます。しかし、今日、国際的な日本の地位から言いまして、そういう点について、いささかも、韓国に準ずるような、あるいは日本の戦前のようなことがあってはならぬと、おそらく、公安委員長としても思っておられるでしょうが、もし、中央情報部の行為か、あるいは韓国の公権力の行使としてか、日本におる人が領土内から不法に拉致されるということになると、それは出入国の法を犯したということだけでなくて、日本に対する期待――これは主権もですけれども、それが裏切られ、日本に生活をしておるけれども、毎日不安におののきながら生活していかねばならぬ。こういうことを言わせるようなことは、私は、日本政府としては、あるいは警察としては、なさるべきではなかろうと思いますが、それにかかわらず、今度の問題については、警察態度もたいへんわからぬところがある。  そこでお尋ねをするわけでありますが、抽象的に申し上げましてもお答えがございませんでしたから、初動捜査のおくれに関連してお尋ねをするのですが、私どものようなしろうと、民間の人間が多少聞いただけでも、ホテルグランドパレスでの経緯については、たいへんわからぬところがあります。特に、二二一一号室の前があけられていたことは、これは経緯でわかります。ところが、隣の二二一五号室というのは、フランス人か、さっき聞きましたらドイツ人だと言われますが、外国人が泊まっておる。それがあいたら、あとから入った人の話によると、シーツがりっぱにおおってあった、掃除がしてあったということですが、普通ならば、それはあかない部屋だ。自動的にロックをされる部屋だ。かぎがなければあかないところ、それがあけてあったということ。それから、車が地下から出たということでありますが、地下には、ホテルグランドパレスの従業員で車の世話をする人がいる。ところが、その車に乗っていった人が、初めは三人であるとか、みんな含んで三人以上の人はいなかったとか、とにかく、証言がすぐに得られなかったということを先ほども報告された。それから、電話ですが、これは、金大中氏の身を心配をして行って、あと新聞記者諸君が赤電話へ全部飛びついておりますから、フロントで電話を受けて連絡しようとしたところが、フロントで電話を借りることができなかった。こういう点から言って、これはグランドパレスの社長であるのか、あるいは支配人であるのか知りませんけれどもグランドパレスの協力なしには、この金大中氏の誘拐事件というものは起こらなかったと考えられる。そして、また、さらに、高橋警察庁長官は右翼にはたいへん強いといわれる。これは警備局長もそうだと思うのですが、われわれが聞いた範囲内でも、いわば、これは、韓国関係についても有力な大もの、名前もあげてもかまいませんが、その系統であったということが聞かれる。私どもが聞き得るのでありますが、私どもが聞き得るんだから、警察の諸君が、このふしぎさに、あるいはおかしさに気がつかぬはずがない。あるいは、アメリカなり、日本新聞に載る。何名か、アメリカからも来た。あるいは、韓国からも来た。そして、情報部員と思われる者が三十人近く来て、次々に中継をしていった。日本から出ていったのも、あるいは韓国に入ったのも、何らの抵抗なしに入ったについて、韓国のほうは、これは捜査の範囲内ではありませんからわかりませんでしょうけれども日本の中で、白昼公然と相当の人物が拉致されて、そして、翌日夕方には、船で国外に連れ去られた。こういうことを許すような警察ではないとはみんな思っている。それがなぜできるのか。ホテルグランドパレスの協力ということもございますけれども警察が、あるいは公安当局が全部であるかどうか知りませんが、おそらく、江崎国家公安委員長はよく御存じなかったと思われるけれども日本警察のどこかで――あるいは、それは後藤田さんであるのか、あるいは警備局長であるのかどうか知りませんけれども、何らかの了解があったと考えなければ、こういうことはできないと考えるのはふしぎでしょうか。常識的には、みんなそう考えておる。ホテルグランドパレスの経営者との関係あるいは……(「推理小説の読み過ぎじゃないのか」と呼ぶ者あり)いや、読み過ぎではございません。名前をあげてもかまいませんけれども警備局長がもし御存じなければ教えてあげますけれども、これらの点について御存じなのかどうか。あるいは、捜査状況がどうなっておるのか。
  40. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 部屋の関係でございますが、二二一五号室ですね。この部屋がなぜあいておったのかというお話しでございますが、これは、たまたま、当日、さっきお話しがあったように、ドイツ人夫妻が泊まっておりまして、十時半にチェックアウトしておるわけです。それで、そのあとホテルの者が掃除をしておるわけです。したがって、たまたま一時半ごろは、一時過ぎからは、その部屋が、掃除が済んで、メイドがまだかぎを締めていない状態であったので、偶然にあいておったということでございまして、別に、ホテル側と特別な連絡があったということではございません。これはどこのホテルでもあることだと思いまして、特別なことだとは思いません。  それから、ホテルの経営者等その他、本件に特別の関係があるんじゃないかというような御質問だと思いますが、この点についても、一応捜査はいたしましたけれども、現在、そのような事実は全くございません。
  41. 吉田法晴

    ○吉田委員 そうまでして、どうしてかばわなければならぬのでしょう。チェックアウトを午前中にしたら、掃除をしてかかっておること、これは事実ですが、昼からになって、まだあいているというのは、かぎがだれかに渡されたと考えるしかないのが常識です。それから、経営者についても、全然知らぬというお話しですが、名前を読みましょう。韓国関係や、あるいは韓国関係の政治資金の受け渡しその他について、児玉譽士夫氏が関連をしておられるという話でございますが、その系統の町井さんという人がグランドパレスの経営をやっておられる。こういうことを私が知るのですから、右翼に強いといわれる警察当局が知らぬはずはないと思うのですが、どうして、そういうように一々について弁護しなければならぬのでしょうか。
  42. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 そういう、いまあげられた名前の方が関係しておるかどうかということは、これは、一種うわさみたいなもので、われわれの耳にも入ってきておりました。したがって、捜査本部としては、一つ一つそういう点についても慎重に調査をしておりますが、いまの町井さんなる方は、このホテルの経営その他に参画しているという事実は、われわれとしては把握しておりません。
  43. 吉田法晴

    ○吉田委員 それじゃ、もう一つ明らかなことをお尋ねをいたしますが、初動捜査がおくれたことはお認めになりました。現場の保存、それから現場状況を写真にとること、あるいは鑑識が出るのがおそかった。鑑識は出なくともよろしいということが言われたというお話しでございますが、写真をとること、現場を保存すること、あるいは、鑑識が出なくていいという話は、公安部が押えたということですが、そういう事実があったかどうか。これらの点は、あとで、さっきの指紋の問題等もありますから動き出されたことはあるようでありますが、新聞によると、自作自演説に固執をして現場を保存することをしなかったという話でありますが、問題の重要性を考えなかったか、あるいは、韓国中央情報部との連絡があってやられたのか、その辺はわかりませんけれども、最初の現場の保存、あるいは写真をとること、あるいは鑑識課の出動をすぐに押えたという点はいかがですか。
  44. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 鑑識課の出動を押えたというような事業は全くございません。現場の保存、写真の撮影、指紋の採取、そういうふうな鑑識の基本的な活動、これは、最初から徹底してやっております。
  45. 吉田法晴

    ○吉田委員 それでは、もう一つ伺いたいのですが、この前、山本議員から質問をして、大阪で、どこから入ったかまでは聞いておりませんけれども、亀田得治氏は、社会党の大阪府本部の委員長でありますが、九日の午後――おそらく、そのときには、あとからの本人の話によりますと、まだ身柄が大阪にあったときだと思いますが、荷物として大阪にあると、こういう確実な情報があるという話があったが、その次のときの連絡では、捜査をしてみたけれども、そういうことはなかった。そのときは、もう出たあとの話であります。身柄があるときに、九日の午後、府警の本部長に連絡をされたのに全然動きがなかった。あるいは、佐々木参議院議員からも、大阪方面にあるということは伝えてあるということでありますか、動かなかったのはどういう理由なのか。意識的にさぼったと報告をされておりますが、これはどうしてなのか。重ねて承りたい。
  46. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 意識的にさぼったという事実は全くございません。佐々木さんからも、大阪にいるらしいという、ばく然とした情報を九日に受けております。大阪府警本部は、片岡本部長でございますが、亀田さんから、午後九時半に、こまかい提報がございました。したがって、佐々木さんと亀田さんの提報によって、大阪府警察本部は、徹底的に、制服、私服を動員いたしまして、旅館、ホテルの宿泊客のチェック等、提報内容を裏づけるような事実の発見につとめたわけでございますが、その晩、九日の晩から直ちにやったわけでございますが、いま言ったような、亀田さん、佐々木さんの提報の事実を裏づけるような事実を発見することができなかったというのがほんとうのところでございます。
  47. 吉田法晴

    ○吉田委員 「アンの家」というのが、大阪方面で出たのはもう早いことです。きのうの、これは読売新聞だったかと思いますが、安何とかという人の名前があがっておりました。事件が起こりまして、もう一カ月近くになるわけでありますが、金大中氏は、朴大統領の対抗馬として出て、いまもなお相当の人気が韓国の中にある。あるいは、民主運動を進めておられることも事実であります。   〔三ツ林委員長代理退席、委員長着席〕 そういう人でなければ、とうの昔に捜査ができる警察だと思うのです。それから、あるいは、手配をしたと言われますけれどもホテルから連れ出されて、大津のインターチェンジのところでは道を尋ねたとか、あるいは検問を避けたという意味のことがありますけれども、それから先、何のとがめもなしに海の上に行った。九日の晩も、後藤田官房副長官のところに、報告があったのか、協議があったのか知りませんけれども、もう九日の晩に出ただろう、日本の港を離れたところだろうということが言われたという話であります。それにしても、そのときはまだ日本の領海の中にあった。それを、いまごろ港を離れただろうということが言われながら、想像をされながら、港を出るとき、あるいは港を出ても、日本の領海内にあるのに、何の捜査も受けないで領海を離れることがどうしてできたのだろうかということは七ふしぎです。「アンの家」というのが出たのは、もうずっと早い話です。一週間やそこらじゃありませんよ。それが、きのう見ましたのは読売でしたけれども、やっと出たという話でありますが、その「アンの家」云々と、あるいは新聞に出ましたものについて、どういうふうに捜査しておるのか。わかっておるけれども明らかにしないのか、新聞に報ぜられたとおりに、うやむやにして、時をかせいで、真相解明に立ち入らないままに収拾をはかろうとされるのか、その辺の事実と、それから方針とを承りたいと思います。
  48. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 「アンの家」というのは、金大中さんがソウルにあらわれてから、新聞記者に語った中にあったわけでございます。さらに、八月の末、韓国当局から送られてきた金大中さんの陳述要旨の中にも出ておるわけです。したがって、これも、大体関西方面だというようなニュアンスの濃い陳述でございますので、関西を中心にして、まあ、大阪、神戸、そういうところを中心にして、「アンの家」というのは最初から捜査いたしておったわけでございますが、ただ、「アン」という人も、これはいろいろとピックアップしますと、十数人おるようでございます。しかも、その家が、これは陳述要旨にはないのですが、新聞記者にソウルで語ったという中では、その家に入ると、車庫からエレベーターで上がっていけるというようなものがあるわけでございまして、それにぴたり適応するような家は――現在までにあがってきている「アン」という人の家とそういう家とは、いまの捜査段階で、一致しているというのが出てきておらない状況でございます。
  49. 吉田法晴

    ○吉田委員 のっぴきならなくなって、新聞その他で出てきたら、そろそろ警察のほうも出そうかと、こういう態度のようにしか思えませんが、時間がございませんから、国家公安委員長に最後にお尋ねをいたしたいと思います。  これは、同様な事件として、西独の例がしばしば引き合いに出されます。警察の点についてもそうであります。そういう点から言えば、この前からも私は申し上げておりますけれども日本警察も問われております。これは、国際的に問われております。そして、ドイツの先例にならえというのは、これは、ひとり政府だけではないと思います。これは、国家公安委員長としても要請をされておるところだと思うのですが、皆さんがおっしゃるところには、「常識的には韓国情報機関の犯行という見方が多いなかで、警察捜査のその方面に対するエンジンのかかり方が鈍く、犯行の背景の見方についてもなんとなく歯ぎれが悪い裏には、韓国への政治的遠慮が感じられ、そのムードが捜査陣の馬力を鈍くしている、というのは誤解であろうか。韓国CIAが西ドイツから十余人の学生を不法に連行したとき西ドイツ警察は独力で韓国CIAの犯行をつきとめ、高官がソウルに乗り込むという筋の通った姿勢で身柄を取り戻した。」これは、外務省にまかせ切りで、強い態度も表明されぬ日本警察と比べてみて、だいぶ態度も違うように思うのです。「この先例は貴重である。日本警察は国際的にも不偏不党の姿勢を貫き、国際的評価を取り戻さねばならない。」と書いてございます。そういう意見を述べたのがございますが、各新聞の論調を見ても、大体その方向だと思うのです。国家公安委員長の所信といいますか、けさの新聞の、真相の究明に立ち入らないままうやむやに収拾をはかるのではなかろうかという疑問に対して、どうお答えになるか、ひとつ、最後に承りたいと思います。
  50. 江崎真澄

    江崎国務大臣 事件発生しましてから、警察は、公正な捜査を続けております。警察捜査に政治的な配慮が加味されるなどということは、全然ございません。私、さっき、冒頭に片岡さんの質問にもお答えしたように、私は政党人でありまするが、少なくとも、政党の判断、介入というようなことは、事件捜査の行くえに影響させてはならない。これは、私の責任であるというふうにも思っております。したがって、今日まで、そういう傾向が見られたことは一つもございません。これは、念のためにはっきり申し上げておきます。  ドイツの場合は、本会議でも出た問題でありますが、これは、KCIAが積極的に参加しておるということが明らかになった。公権力の介入が明らかであった。ここに、ドイツ政府として取り得た、あの厳然たる措置があるわけです。まだ、日本警察としては、金東雲氏が何らかの形で事件関係があるということで、深い容疑者として出頭要求をしたという段階でありまして、いま、KCIAがどういう形でこれに関与しておるのか、関係があるのかないのか、問題はこれからであります。したがって、それを明らかにしていくのが警察の任務でありまして、いまあなたがおっしゃるようなことは、それが明らかにされたあとの措置に属する問題であるというふうに考えます。  したがって、私どもとしては、あくまでも警察は不偏不党、事件の究明のためには、厳正公正にこの事件の行くえを追及していく、捜査展開をする、これはもう変わりはございません。そのためには、外交ルートを通じて、金東雲氏、金大中氏をはじめとする関係者の来日を要請していく、こういうことであります。したがって、これがうやむやに葬り去られるというていのものであるなどとは、私は絶対思いません。  これは念のために申し上げておきます。
  51. 上村千一郎

  52. 山本弥之助

    山本(弥)委員 二十八日にこの事件の概要をお聞きしたわけでありますが、そのときには、私どもも、この計画は、非常に綿密に大規模に計画されたような事案であるという予想から、これは、おそらく、民間人の犯罪ではない、韓国大使館のだれかが関与し、あるいは、KCIAのだれかが関与しておるのではないかというような疑いを持ちながらも、皆さま方の御意見をお聞きしたわけであります。国家公安委員長は、この問題につきまして、今後、警察は、積極的に、綿密に、慎重に、しかも厳重に捜査をしていく、そして真相の究明に当たるという御答弁をなすったわけであります。私どもも、その後初めて長官警備局長からお話しを聞いたわけでありまして、その以前におきましては、新聞で知る以外になかったわけですが、韓国大使館金東雲一等書記官容疑者として取り調べたいという申し入れをしたということが事実であることも聞いたわけであります。そして、最初のいろいろな委員会の各大臣の答弁は、この前も私は申し上げたのでありますが、法務大臣と外務大臣とでは、非常な答弁の開きがある。国家公安委員長は、ちょうどその中間くらいの御答弁をなすったようですね。その後、やっと、衆参両院におきまして、本会議の緊急質問があったわけであります。その答弁は、要約いたしますと、真相究明と、それに対する公正な措置をするのだということに尽きると思うのですね。  そこで、先ほどからの吉田さんの質問に、大臣も、真相究明には警察はあくまでも全力をあげて対処するという答弁をなすっておられるわけです。しかし、私は、非常に大きな壁にぶつかったような感じを持つのです。韓国との間は、中央情報部長の李厚洛氏の発言では、KCIAは関係していない、それから、韓国政府関係していないということです。そして、具体的にあとでこれはお聞かせ願いたいと思うのでありますが、その後、後宮大使を通じて、十項ですか、五項目ですかの申し入れをしたが、それの回答のあった部分は、新聞によりますと、捜査に実際に役立たない回答にすぎない。こういう協力体制も得られていないわけですね。ことに、金東雲氏は全然関係がないという発表がされたと出ておりますね。こういう状況の中で、今後真相究明をして、それに対する適正な措置をとるのだ、内外が納得する筋の通った解決をはかるのだということか一つの方針のようですね。  そこで、私はお聞きしたいのですが、大臣の答弁を聞いておりますと、真相究明は、日本警察だけで十分究明ができるような印象を受けるのですが、この見通しにつきまして、お聞かせ願いたいと思います。
  53. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私は、さっきから申し上げておりますように、金東雲氏をはじめ、金大中氏らの来日を待つ、このことが日本捜査を進展させる重要なポイントであるということを申し上げておりますので、ただ、日本政府だけで事件の全貌を明らかにするということはいささかむずかしい問題であろうというふうに考えます。そういうふうに聞こえたとしたら、それはちょっとことばが足りませんでしたかと思いますが、それは、いまの段階ではちょっと想像できぬことであります。しかし、相手が拒否したからといって、いま腕をこまねいておるわけではございません。金東雲氏の指紋照合が合致して、容疑者として浮かんできたように、警察側としては、現場中心とした基礎的な捜査をじみちに続けていくことは、これは当然必要なことだし、また、現に、捜査本部では、鋭意努力中でございます。
  54. 山本弥之助

    山本(弥)委員 この機会に、妹尾課長さんがお見えになっておりますので、後宮大使の、五項目ですか、十項目ですかの申し入れに対しまして、回答はどの程度あったのか、お聞かせ願いたいと思います。
  55. 妹尾正毅

    妹尾説明員 お答えいたします。  手元にたまたま詳細な資料を持ち合わせておりませんので、記憶で申し上げますが、こまかく申しまして、十項目の要求をいたしまして、そのうちの七、八割方について回答が来ておりまして、来ておりません一番重要なものは、「今後の捜査の発展の見通し」という項目についての正式な回答を得ておりません。
  56. 山本弥之助

    山本(弥)委員 金大中氏外二名の供述書というのが要求の項目にありましたね。これは来ているわけですか。
  57. 妹尾正毅

    妹尾説明員 お答えいたします。  来ております。
  58. 山本弥之助

    山本(弥)委員 来ているわけですね。
  59. 妹尾正毅

    妹尾説明員 はい、来ております。
  60. 山本弥之助

    山本(弥)委員 その内容はどうなんですか。警察が検討されて、どういうことになっておりますか。
  61. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  供述といっても、正確に言うと、陳述要旨という形になっておりまして、要約したような形でございます。それに基づいて――先ほど吉田先生にもお答えしましたように、矛盾点もあるわけです。だから、そういう意味では、捜査上なかなか参考になる点もあると私としては思いますが、犯人像について語られるところが非常に少ないという印象が強いものでございますので、あらためてそういう犯人像についての陳述の内容を知らしてほしいということは、向こうのほうに、外務省を通じて連絡はいたしております。
  62. 山本弥之助

    山本(弥)委員 重要な参考資料としての金大中氏ほかの供述調書も来ていないということになりますと、真相究明についての資料というものはほとんど来ていないということが言えるのではないかと私は思うのです。それから、金東雲氏の取り調べにつきましては、向こうの発表では、全然この事件には関係しない、いわば、外交特権ばかりではなくて、この事件関係しないということをはっきり言い切っているという回答があったということですが、これは事実でございますか。
  63. 妹尾正毅

    妹尾説明員 お答えいたします。  最終的なものかどうかの点がはっきりいたしませんけれども、現在ではそういう判断をしているというふうに承知しております。
  64. 山本弥之助

    山本(弥)委員 そうしますと、その点は、確認はまだできていないわけなんですね。
  65. 妹尾正毅

    妹尾説明員 現在、確認努力を続けているところでございます。
  66. 山本弥之助

    山本(弥)委員 どうも、その点が、新聞等で私どもが承知しておる点と違うわけなんですね。そうしますと、金東雲氏の、この事件に全然関係していないということは、まだ確認していないということが言えるわけですね。
  67. 妹尾正毅

    妹尾説明員 一応のところとして、韓国側はそういうことを言っているということでございまして、それが、徹底的に調査した結果、最終的にそういうふうに確認されたかどうかということは承知していないということでございます。
  68. 山本弥之助

    山本(弥)委員 警察側指紋が、照合したということについて、容疑が濃厚であるということについては、確信を持っておられるわけですか。
  69. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 確信を持っております。
  70. 山本弥之助

    山本(弥)委員 この指紋というのは、同一人物でないと同じ指紋がないということは捜査の常識になっておるわけですが、それが、現場発見された指紋と、それから、警察が、何らかの方法で、本人のものであると思われる指紋とを照合し、それについて確信を持っておるということになりますと、韓国大使館が、この事件について――金東雲という韓国大使館の一等書記官が、この事件に重要な役割りを果たしておる。新聞によりますと、おそらく間違いないと思いますけれどもエレベーターの中でたまたま乗り合わせた二人の男性が金東雲らしいという証言もしておるということは、警察で確認しておるということが新聞に載っておりましたが、それらを照合いたしまして、警察は確信を持っておると思うのであります。私は、韓国大使館員がこの事件について重要な役割りを果たしておるということは、公権力が働いたかどうかということとの関連におきましては、重要な問題だと思うのです。おそらく、架空の人物ではなくて、正式な一等書記官だ。しかも、これは、おそらく間違いないと思いますので、時間の関係で御答弁は要りませんけれども、正式に届け出ておる住所等も虚偽の住所であったというようなことから判断いたしますと、これは重要な役割りを果たしておった。これ以上真相の糾明のしかたはないわけでありますが、この機会に、新聞にも相当大々的に出ておるようでありますが、畑中金次郎という日本名の人物がさらに金東雲の上の総括的な人物であると報道せられ、そして、韓国政府の準政府機関の重要な地位を占めておる人物であるということが新聞報道されております。それもお聞きしたいと思いますが、新聞では「L」という名前で書いておりますね。これらの人物についての捜査というのはどの程度進んでおるのか、それから、韓国大使館員の事件の前後の相当の出入りということも警察で確認しておるようでありますが、相当な人物が出ていっておる。神戸から二人出ていっている。横浜から一人出ていっている。計六人ぐらいの者が出ていっている。家族も引き揚げたというようなことが出ておりますが、これらのことはどうでございますか。ある程度まで新聞記事警察から得られたニュースとして、事実なものかどうか、お聞きしたいと思います。
  71. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 畑中金次郎氏なる者が、二二一〇号室に二日前から予約しておったという事実は確認いたしておりますが、その人物が、たとえばどういう地位、身分にあるとか、それが韓国人であるとか、そういうところは、現在捜査中で、まだはっきりいたしておりません。  それから、事件が起きてからかなりの韓国大使館員が出国しているじゃないかということは、これは、入管当局からの通報によって、若干の者が出ている事実はございます。大体新聞に出ているのが事実に近いというふうに考えております。
  72. 山本弥之助

    山本(弥)委員 警備局長も慎重な発言をされているようですが、新聞には、あちこちに詳細な記事が出ていますね。私どもは、それが真相であるかどうかお聞きしたいのですけれども、そういたしますと、真相を究明しなければ、公権力に基づくものであるかどうかもわからない、それがはっきりしなければ、いわば、内外にわたる筋の通った対応のしかたもできない、こういうのが政府のいまの方針だと思うんですね。新聞によると、韓国の出方待ちというような、捜査それ自体よりも、何らか韓国と妥協のできるようなことにならないかというような配慮があるようですね。これは、ある程度までそういう配慮も必要かもわかりませんが、政府の方針が、いわゆるこういう国権の侵害に関係し、わが国が、国民主権を尊重し、他国の主権を尊重する国であるということを内外にはっきりさせるというような重要な問題について、いわば、内外が納得する筋の通った解決をはかるということよりも、むしろ、日韓関係の影響をどう緩和しようかということを優先しているような政府の方針のように私どもは見受けるんですね。そうしますと、真相究明に本気であらゆる努力をしておると国家公安委員長は言われますけれども、その捜査というものはどこまでやっておるのか、私どもは疑問を持つわけなんです。しかも、韓国の協力の得られないような体制で、韓国政府は、ほんとうにこの事件政府関係していない、韓国人のだれかがやったんだと、そのことは、金鍾泌首相の総理大臣及び外務大臣に対する親書による陳謝によって認めておるわけですね。韓国人が計画的に行なったか、あるいは個人の韓国人のしわざであるか。それが、いまの段階では、金東雲氏の指紋の照合によりまして、政府機関がやったのではなかろうかという疑いがだんだん濃厚になっているんですね。それの真相を究明をするにつきましては、韓国の積極的な協力が必要であることは当然でありますが、韓国との関係の影響を最小限度に食いとめていこうという日本の基本方針だと、真相がうやむになるような心配が多分にあるのでございますが、国家公安委員長はどうでございますか。  真相を究明するのに、今後、日本の優秀な警察力をもって、韓国の協力がなくともこれはやれるのだと――この段階で、すでに本会議等でも質問がありましたように、政府は、日韓親善は親善としても、真相を究明するについての、積極的な協力に対する何らかの手を打つべきではないか、そのことがほんとうにこの事件解明を早めるのじゃないか、こう思うのですが、真相の究明と言いながら、それがわかってから筋の通った解決をはかるのだとおっしゃっておることは、先ほど吉田委員からも話があったかと思うのですが、どうも、動いていることは動いているけれども、宣伝は、新聞等に、次から次に、新聞の独得なニュースソースによって書かれていると思うのでありますが、やっているけれども、最後の腹は、もうこれ以上出てもらっては困るのだという及び腰の政府の姿勢ではないか。このことは、国家公安委員長が二十八日に言明されたところの、これは人道問題あるいは日本の主権にも関係する重要な問題であるので、何としても積極的にあくまで究明していくのだという姿勢というものがおありになるのかどうか。また、日本警察をもってして、独自で今後詰めていけば必ず真相が究明できるのだというところまで、今後、短期間のうちにできるものかどうなのか。私どもは、警察がおやりになっている御苦労はわかりますし、そのために、こういう思い切ったところの金東雲氏の容疑者としての線も浮かび上がってきたと思うのです。しかし、この浮かび上った線を、韓国の譲歩によって何とか打開しようという手段に使われたことによって、この問題がデッドロックに乗り上げたという印象をぬぐい得ないのですね。国家公安委員長も、衆議院の本会議の答弁でしたか、大使館の行政組織はどうだとか、いわば背後関係との関連を今後究明するのだという意味のことを、私は直接聞きませんでしたが、新聞報道によると、そういう答弁をなすったように承知したのですが、この段階では、この問題の真相をほんとうに究明するということについての韓国に対する強い姿勢を警察が要請しない限りは真相の究明はできない、真相の究明ができないと対応の処置がおくれていく、こういう話の順序に、総理大臣や外務大臣の答弁によりますと、なりますね。そうすると、警察捜査自体も、何か、動いているのだというだけの印象をわれわれに与えるのですが、見通しからいくと、ある程度までつかんでいるのだ、畑中金次郎の問題もつかんでいるし、その後の車の問題も、連れ出されたホテルからの車の関係も把握できるのだ、船も把握できるのだ、あるいはモーターボートも把握できるのだというところまで捜査が進んでおるのかどうか。そのことによりまして、真相究明あとの対応のしかたというものが、日本の外交として、あるいは、日本の主権に関連する、人権を守るという重要な問題との関連において、早期解決を見るような気がするのですが、この状態ですと、だらだらとうやむやになるという懸念が深いですね。大臣真相究明についての決意なり、究明がどの程度までいくものかどうかについての見通しなり、お考えをもう一ぺんお聞かせ願いたいと思います。
  73. 江崎真澄

    江崎国務大臣 御熱心な質問の御趣旨は、私、全く同感でございます。やはり、こういう事件は、国際的に、なるほどと世界の国々が納得する形で解決されることが望ましい。友好関係友好関係、問題の究明は究明で、これはおのずと別問題であるというふうに思います。したがって、われわれ警察側としては、韓国側からいままで十分の捜査関係資料を得られなかったにもかかわらず、金東雲氏が有力な容疑者であるということを割り出して、外交特権を持っておる人でありまするから、任意出頭の形で、強くこれを要請しておる。外務省を道じて、韓国側に、金東雲氏はもとより、金大中氏等々の身柄をもらいたいということを強く要請しておる態度には変わりはございません。ですから、いま御質問の中に含まれておったところの、何だか警察を疑われるようなおことばは、これは思い過ごしといいまするか、間違いであるというふうに、私、率直に否定できるわけであります。  のみならず、この事件は、いかにその性質が密閉されたホテルとはいいながら、白昼堂々と外国の要人が拉致されて、しかも、それが海を渡って、韓国ソウルの自宅の前で釈放されたというようなことは、これはうやむやに済ませる性質のものではございませんですね。したがって、これは、日本警察、ひいては日本の法律の権威、尊厳をないがしろにした事件であるというふうに言えると私は思うのです。それをうやむやのままに葬るということが一体どうしてできるでしょうか。もとより、私どもは、長い友好関係にある韓国との間に、これがこのままで済むとは思わないし、また、韓国側もうやむやに済まそうとはまさか思っておられないのでないかと思う。それにしては、日本側の態度が少し手ぬる過ぎるのではないかということは、そんなことはないと思うのです。要するに、先週金東雲氏の出頭を求めるまでというのは、さっき吉田委員にもお答えしましたように、外務省としては相当な決意で、後宮大使が、時に韓国外相に、時に韓国首相に迫っております。そして、向こう側の反応を目下見ておるというのが今週に入ってからの状況で、まだ、日、月、火の、この三日間であります。したがって、韓国側からは当然何らかの誠意ある回答があるものと私どもは期待いたして、慎重に推移を見守っておる。なお、そればかりか、金東雲氏の身柄、任意出頭等々についても、誠意をもってこたえていただくことを強く要請して今日に至っておるというのが実情であります。
  74. 山本弥之助

    山本(弥)委員 いろいろ国家公安委員長からお聞きしたのですけれども、私は、警察調査にはやはり限界があると思うのです。優秀な警察をもってしましても、金東雲氏自身も取り調べることができない、指紋が符合した有力な容疑者を取り調べることもできない、そのほかの関係者と思われる者も、再入国の査証もしないでどんどん日本を去っておるというような事実、これは明らかに政府機関が関与しなければできない事案であると同時に、そういった個々の現象が、嫌疑が濃厚な事件が出ているわけなんですね。それをあくまでほうかぶりで断わっているということでは、日本の納得する対応策というものは出てこないのじゃないかというふうな見方も、私は、相手国としては予想されると思いますね。  それなら、先ほどから申し上げておるように、御質問しなければ断片的なことしか御答弁にならないのですけれども日本警察で、さらに、金東雲氏と同じような、これこれのきめ手がもうじき出てくるのだというような見通しがおありでしたら、警備局長からお聞きしたいと思います。
  75. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 現在の捜査段階で、金東雲氏に準ずるような人がはっきりしてきて、それに任意出頭をかけるというようなことが、見通しとしてあるかというお話しだと思いますが、現在では、そういうような状況ではございません。
  76. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これはちょっと念のために申し上げますが、韓国大使館関係者とおぼしき者が――関係者というのは、大使館関係者ですね。それが、どんどん出国しておるではないか、それをじんぜん見ておるのはどういうことかという御質問にお答えしませんでしたが、これは本会議でも問題になりまして、私、お答えいたしましたように、外国人は、入国については、日本政府機関として、完全チェックができます。ところが、出国については、逮捕の理由でもない限りこれは自由というのが現況であります。ましてや、外交特権を持った人たちの往来というものは、これは何も韓国に限らず、諸外国の人々ともに自由に出入りができる。これがそもそも外交特権の尤たるものであるわけでありまして、こういう事件韓国との間に起こっておるからといって、この出国を、逮捕理由もない人が自由にしておるからといって、チェックすることはできない。これは、日本の法律のたてまえからやむを得ないのであって、警察が手をこまぬいておる、ふまじめであるということにはならぬわけで、これは、警察の名誉のために、私は率直にお答え申し上げておきたいと思います。
  77. 山本弥之助

    山本(弥)委員 警察の名誉がどうのこうのということを申し上げておるのじゃないのですね。限界があるんじゃないかということを申し上げているのです。警察の名誉の点から言いますと、こういう事件のさ中ですから、私は申し上げるつもりはなかったのですが、こういう事件にわずらわされているのは、警視庁中心でしょうけれども警視庁におきましても、かつて不祥事件がありましたし、また、愛知県警だとか京都府警の汚職事件あるいは不正事件等、やはり、警察は締めるところは締めるという体制をよほどとらなければならぬということを私は痛感していますね。しかし、これはいま御苦労しておるところですから、その問題につきましてはわれわれ触れたくないわけなんですが、これは、そういう方面の名誉も必要なんですね。これは国内に対する関係ですが、こういう国際的な問題は、とうとい人命に関するし、人権にも関するので、警察の名誉のために十分御努力を願いたい。御苦労はわかっておりますけれども、御努力願いたいと思っております。  それで、もう一つ伺いますが、いまの政府の見解は、背後の公権力の関係ですね。その公権力が作用したかどうかというようなことを、日本警察調査ができるものでしょうか。また、それに向かって御努力を願っておるわけですか。
  78. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 いま、日本警察で直ちにそれはできないということで、本人出頭を求め、それから、関係者である金大中さん以下の出頭を求めておるわけですが、その方が絶対に来れないというわけではない。外務省によりますと、いま、そういう絶対的な拒否ではないというお話しでございますので、それが来ることを、先ほどのお話し韓国良識に期待しており、日本に来ることが可能である、われわれはそう思って、そういういろいろな要求をしているわけでございます。  そういうことが全部だめになったというような場合にどうかということでございますが、これは非常に困難な捜査ではございますが、われわれは、基本捜査その他いろいろな捜査を通じて、何とかそれに到達したいという努力は捨てないでやってまいるつもりでございますが、非常にむずかしいということは、これは万人の認めるところだと思います。
  79. 山本弥之助

    山本(弥)委員 私の申し上げておりますことはこういうことなんです。政府の方針が、日韓関係に影響を与えないということを第一に置いて、そして、真相を究明し、内外の納得する筋の通った解決をはかるという基本方針があるとするならば、しかも、国会の本会議の答弁で、公権力が作用していないということであれば、これは国権の侵害ではないという解釈をとっておられるわけですね。そういたしますと、公権力に基づくものであるかどうかということについて、韓国政府の協力がない限りは、これを警察の力で確認することがむずかしいということであれば、いま政府の方針でとっておられることは、論理から言いますと、問題の解決にならないですね。そこに外交と捜査と、それからわが国における内外――人を問わず、その生命、財産を守るんだという警察使命を遂行すること、そのことは、外国の主権がこれに関与する場合には、主権侵害になるわけですね。それらの問題が一切うやむやになる心配がありますね。韓国のほうが、折れて妥協しない限りは、この問題についてのことは、静観だということにならざるを得ませんね。この論理の推移からいきますと、そういうことになる。私は、そこに警察の限界があると思うので、真相の究明ということは、それらの問題を一体として解決づけるということ、国家公安委員長が閣僚の一人としてこの問題にどう対処するかということの、わが国の基本姿勢をある程度まで変えなければ解決はつかないと私は思うのです。最もむずかしい真相究明警察が背負い込んで、その真相究明が、いわゆる国の基本方針に合致して対応策をとるところまでたどりつけないわけですね。それらのむずかしさは、大臣が、閣僚のお一人として、また、国家公安委員長として、警察力がほんとうに国家の主権の中の警察権として発動しやすいように、それを重点に置きながら真相究明をし、そして、日韓関係に悪影響を及ぼさないというふうなことでなければいかぬと私は思うのですが、影響を及ぼさないということを主眼に置く限りは、この問題の解決のしかたは、警察真相を究明すると大みえを切られても、論理的に究明のしようがないし、問題が時日の経過とともにうやむやになる。最後には何かの形はとられるでしょうが、私はどうもそういう感じがするわけです。  ドイツの例を吉田委員が言われましたけれども、ドイツの例とは違うわけでしょうけれども真相は、ドイツのほうが、警察がはっきりそういったものをつかんで、どんどん折衝したとは思えませんね。やはり、いろいろな紆余曲折を経て、最終的には原状回復のところまでいっているのですね。日本の場合は、原状回復にいくことを非常にちゅうちょして、将来にわたる日韓の友好関係ということの見地に立って日本はどういう国だということを示すことに力点が置かれていない。どうも、当面の問題で壁にぶつかって困っているという印象を受けるのですがね。その意味で、国家公安委員長が、閣僚としても、警察のそういった苦衷といいますか、苦労といいますか、事と問題の大局との両立場から強く主張されることが必要なんじゃないか。私は、日韓の友好関係を阻害してもいいのだということを言っているわけじゃないのです。長い両国の親善関係から言いますと、かつての植民地統治というような考え方を離れて、目先のことよりも、長い友好関係を結ぶという努力がもっと必要だと私は思うのです。そうなりますと、真相究明と対応のしかたというものは、いまの方針よりほかにもっと出てきはしないかという気がするのですが、どうお考えでしょうか。  真相を究明する、究明すると、大臣の答弁は何回も聞いているのですよ。しかし、いろいろと聞いてみますと、時間の関係で十分お聞きできませんけれども警察としては最もむずかしいところに追い込まれているのですね。そのむずかしいところをバックアップするのが外交なんですね。外交は外交としての良識があろうかと思うのですけれども、このことは、日本の将来から言っても、今後の国際警察というものが非常に複雑になってくるということから言っても、やはり、内外の関心の的になっていると思うのですね。ちょっと言いにくいことだと思いますけれども、明快に御答弁をなさる大臣の所信をひとつ聞かせていただいて、また、捜査の推移を見ました上で私ども質問をいたしたいと思います。お聞かせを願いたいと思います。
  80. 江崎真澄

    江崎国務大臣 御質問の御趣旨は、私も十分理解できます。警察側がことさらに手を抜くとか、外交の問題や政治の問題にわずらわされて捜査をスローダウンをしておるとか、そういうことは一切ございません。  お説は、警察はそれで苦しんでおるのだろうか、もっと強い外交展開が当然ではないか、こういう御趣旨と体しますが、私は、外務省側が手をゆるめておるとは思いません。これは、さっきから何べんも繰り返しますように、先週までの段階は、日本外務省としては、強く身柄を要請する、また、容疑者を出しますぞということで、容疑者を出すところまで運んだわけです。向こうは関係がないということで、その任意出頭を拒否してきたというわけで、なるほど、おっしゃるように、壁に突き当たった感じがないわけでもありません。しかし、こういう大きな国際的な問題が、それだけでうやむやに済まされていいでしょうか。そこに、私どもは、韓国誠意良識に期待をするという表現が出てまいるわけであります。うやむやにすることは、仰せのように、日韓の長い親善友好関係のためにも妨げにこそなれ、役立たない。それから、また、いかに友好関係にあるとはいいながら、問題が問題だけに、これがうやむやに済まされるというようなことであるならば、日本ももとより、韓国も、内外からも国際的に評価されるでしょう。かれこれ考えまするときに、もうしばらく事件真相究明の推移を見守っていただきたいと思う。外務省外務省として、あらゆる努力を傾ける、私ども警察当局当局としての任務を遂行する、もうしばらく時間をいただきたい、これが率直なお答えでございます。
  81. 山本弥之助

    山本(弥)委員 最後にお尋ねしますが、そういたしますと、警察としては、金東雲一等書記官のように、動かぬ証拠をさらに幾つか今後の捜査によってつかんで、そして、外交折衝によってこの問題の解決をつけるということですか。
  82. 江崎真澄

    江崎国務大臣 もとより、現場中心事件の着実な捜査を行なっておるわけでありまするから、金東雲氏の割り出しが可能であったように、なお、関係者とおぼしき者が割り出される場合もあると思いまするが、これは、いま警備局長からもお答えしておりましたようにまだそこまで至っておりません。しかし、何といっても、これはやはり韓国人によって起こされたと考えられる問題でありまするし、当然、金東雲氏、それから、繰り返すようですが、事件被害者である金大中氏をはじめとする目撃者等々が日本に来てくれまして、これに即して捜査を継続し、事情聴取をするということが大切なことだと思います。しかし、警察庁警察庁として、特捜本部が中心になりまして、独自の捜査を熱意をもって継続していくこと、これは当然であります。
  83. 山本弥之助

    山本(弥)委員 これで終わります。
  84. 林百郎

    ○林(百)委員 議事進行ですが、大臣は午後一時半からここへ来れるんでしょうか。それをはっきりさせておいていただかないと――それでなければ、私はここで関連質問をさせていただきたい。来れることが間違いないなら、一時半から再開していただいて、私の質問をさせていただきたいと思います。
  85. 上村千一郎

    上村委員長 ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  86. 上村千一郎

    上村委員長 速記を始めて。  この際、午後一時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      ――――◇―――――    午後一時三十八分開議
  87. 中村弘海

    中村(弘)委員長代理 休憩前に引き続き、会議を開きます。  委員長所用のため、委員長の指名により、私が委員長の職務を行ないます。  警察に関する件について、質疑を続行いたします。林百郎君。
  88. 林百郎

    ○林(百)委員 最初に警察当局へお尋ねしますが、金東雲指紋現場から採取された。それを本人指紋と照合したところが一致したということは、新聞に発表されておりまして、捜査段階においては、明らかにすることができると思います。この経過を少し説明していただきたいと思います。
  89. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  現場遺留指紋というのは数十個ございまして、それは、事件発生と同時に、鑑識班がそこで徹底的な指紋採取を行なっております。これは二二一〇号室、すなわち、犯行があったと思われる部屋の指紋でございます。その現場遺留指紋と、それから、一方において、いろいろと捜査を進めていった過程で、金東雲一等書記官がこれに関与していたんじゃないかという形で、特に、エレベーターの中で、当日、金大中氏が連れ去られていく現場を見たという証人が出てきまして、その中に、犯人とおぼしき者の中に金東雲一等書記官と酷似する人物がいるという証言を得たわけでございます。それで、さらに捜査を進めておりまして、結局、金東雲一等書記官の公的な関係指紋というものを捜査の過程で入手することができまして、それと照合したところ、まさに一致したということでございます。   〔中村(弘)委員長代理退席、委員長着席〕
  90. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、現場でとられた指紋と照合した、その指紋というのは、どういうところにあったんですか。指紋台帳にあったわけですか。あるいは、どういう際に、どうしてとったものがあったわけですか。
  91. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 それは、金東雲一等書記官がかつて新聞記者として入国しておるという事実がわかってまいりましたので、それじゃ、そのときの記録があるのじゃないかということで、法務省のほうに捜査照会をいたしまして、その結果入手したものでございます。
  92. 林百郎

    ○林(百)委員 新聞記者として入国する場合には、指紋をとるのですか。
  93. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 これは、入管のほうからお答えがあるかと思いますので、入管のほうでお答えいただきたいと思います。
  94. 長澤井昭之

    ○澤井説明員 お答えいたします。  外国人で本邦に滞在します者のうち、在留期間一年をこえます者につきましては、外国人登録に指紋を採取することにしております。
  95. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、新聞記者であったからとったということではないわけですね。
  96. 長澤井昭之

    ○澤井説明員 先ほど申し上げましたように、一年をこえる者につきましては、外交官を除き、全部採取いたしております。
  97. 林百郎

    ○林(百)委員 外交官を除き、すべてとる、こう聞いていいんですか。
  98. 長澤井昭之

    ○澤井説明員 さようでございます。
  99. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、この金東雲指紋というのは、原本は、その指紋の台帳にあったわけなんですか。あって、それと照合したわけですか。新聞記者か何か知りませんが、それで上陸した。そして、一年以上滞在するということでとった。その台帳にあったわけですか。
  100. 長澤井昭之

    ○澤井説明員 その原票は、たまたま入国管理局のほうで保管されておりましたので、それを利用したわけです。
  101. 林百郎

    ○林(百)委員 金東雲指紋を照合するに至った事情は、いま局長の言うように、エレベーターに乗った男の客二人の現認ということですか。そのほかの事情があったわけですか。目撃した者ということだけですか。
  102. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 現場に遺留してありましたリュックサックを購入した店がわかりまして、そこの店員に、だれが購入したかということで、いろいろな人相、特徴を聞いた際に、あわせて、しばらくあとになりましたけれども金東雲書記官の写真をたくさんの写真の中から選ばせましたところ――写真を選ばせたというか、たくさんの写真を見せて、この中に買った者がいたんじゃないか、これが買ったと思われる人がいるかという形で聞いたところ、その中から金東雲一等書記官の写真を指摘している。こういうようなこともあって、目撃証人という数が、具体的に言えば三人でございますか、そういう形で出てきておるという状況です。
  103. 林百郎

    ○林(百)委員 これは外務省のほうにお聞きしますが、金東雲犯人として非常に濃い容疑を持つに至っている。いま、金大中氏が不法に日本の国から拉致された状態にあるわけですね。この不法に拉致されたという状態に対して、これは、国際法上から言えば、どういう責任日本の国の政府側にはあるわけなんですか。
  104. 妹尾正毅

    妹尾説明員 その点、私、確信をもっていまお答えできませんので、念のため、後ほど調べましてお答え申し上げたいと思います。
  105. 林百郎

    ○林(百)委員 当時、金大中氏が日本にいるときには、旅券はどういう状態にあったわけですか。
  106. 妹尾正毅

    妹尾説明員 法務大臣の許可による、特別滞在資格の形で日本に滞在していたと承知しております。
  107. 林百郎

    ○林(百)委員 法務大臣の特別許可による滞在という場合に、その滞在者は、日本の国の法律では、どういう保護を受ける権利を持っているわけですか。また、日本の国では、その人に対するどういう法的な保護の責任を持っているわけですか。
  108. 長澤井昭之

    ○澤井説明員 若干こまかい技術的な問題になりますが、この場合、法務大臣が特に滞在する必要を認めた者ということで在留特別許可を与えたわけでございますが、日本に在留しております一般外国人と同様の保護を国際慣行に従って与えるということで、金大中氏の件につきましては、特にそういう特別の保護というものを要請されたわけではございません。したがって、一般在留外国人と同様の保護を与える義務がある、こういうことでございます。
  109. 林百郎

    ○林(百)委員 一般在留外国人と同じ保護の状態にあるということになりますと、日本の憲法による基本的な人権の保障、あるいは生命に対する保障、そういうものを享受する権利は当然あるし、また、日本の国としても、そういう権利をこの在留外人に与えるという責任はあるわけでしょうね。   〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  110. 長澤井昭之

    ○澤井説明員 国際法上、外国人の保護につきましては、いろいろと学説があるわけでございますが、通常の通説に従いますと、内国人に準じて必要な保護を与えるということになろうかと思います。
  111. 林百郎

    ○林(百)委員 では、不法な行為によってその保護がじゅうりんされた場合には、どういう形で、その不法行為に対する回復の責任日本の国としては持つわけですか。
  112. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 ただいまの問題でございますが、在留する外国人が日本で不法な行為を受けて被害を受けたという場合には、日本人が求められるような犯罪に対する救済、たとえば、捜査を受けて犯人の処罰をする、こういった手続が国内法によってとられる、こういうふうに承知しております。
  113. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、だれがそういう不法行為をしたかということを明らかにする責任は、日本の国としてはあるわけでしょうね。加害者に対する追及、あるいは、加害者がだれであったかということを明らかにする責任は、日本政府が持っているわけでしょうね。
  114. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 これは、犯罪捜査一般についても同様でございますが、犯人がだれであるか、どのような犯行が行なわれたかということにつきまして、日本捜査当局捜査を行なう責任がある、こういうふうに考えております。
  115. 林百郎

    ○林(百)委員 これは仮定として聞きますが、もしそういう加害者を追及するということをサボっている、あるいは、故意でないにしても無過失でも、そういうものを容認しているということになると、国際法上、共同不法行為者としての責任を負うことになりますか。
  116. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 国際法上云々という点は、私どもよくわかりませんが、私どもといたしましては、捜査機関は、犯罪が行なわれた場合には、全力をあげて責任を果たすべきもの、かように考えております。
  117. 林百郎

    ○林(百)委員 そこで、警察当局にお尋ねしますが、金大中氏に関して、日本の国の憲法あるいは法律による保護が侵されている。その犯人を追及するという場合に、全面的にあらゆる容疑を解明する責任を持ってるわけですね。これは、国際法上でも当然だと思います。そういう場合に、この容疑がKCIAだという場合に、KCIAだからその捜査はしないのだと、そういう論理が成り立ちますか。KCIAも含めて、犯人の追及ということは当然なさるべきではないでしょうか。
  118. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 いかなる者であろうと、犯行を犯した者は追及しなければならないというふうに考えております。
  119. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、かりに、KCIAが行なったという場合には、それに対する捜査の手が伸びるのは当然でしょうね。KCIAだから調査はしないということは、捜査当局としてはあり得ないことなんでしょうね。
  120. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 さようでございます。
  121. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしますと、金東雲とKCIAとの関係を、捜査当局はお調べになったことがありますか。
  122. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 はい。そういう関係があるかないかということは、捜査いたしております。
  123. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、その結果はどういうことになっておりますか。
  124. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 いまのところ、KCIAと関係があるかどうか、その点、判明いたしておりません。
  125. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、金東雲とKCIAとの関係についての捜査というのは、どういう形でおやりになったのですか。
  126. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 これは捜査の機微に関係する問題でありますので、発言は差し控えたいと思いますが、一つの手段としては、やはり、本人出頭を求めるという形で、いろいろと本人事情を聞けばある程度わかる、そういう問題もあろうかと考えております。
  127. 林百郎

    ○林(百)委員 本人出頭を求めるということは、もちろん、決定的な捜査の方法だと思いますが、あなたは、それ以外に捜査をされたということを言われております。それはどういう方法で捜査をされたのか、ここで発表できる範囲のことでけっこうですから、発表していただきたいと思います。
  128. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 ただいま申し上げましたように、これは捜査中の事件でもあり、いろいろと機微な点もありますので、この機会に発表することは遠慮させていただきたいと思います。
  129. 林百郎

    ○林(百)委員 これは外務省へお尋ねしますが、韓国のKCIA、いわゆる中央情報部、この中央情報部法という法律がありますけれども、これは大体どういう内容の法律ですか。
  130. 妹尾正毅

    妹尾説明員 たいへん失礼でございますが、いま手元に持っておりませんので、詳細は申し上げられませんけれども、中央情報部の権限とか機能、予算等を規定した法律でございます。
  131. 林百郎

    ○林(百)委員 それじゃ、私のほうから申し上げますが、中央情報部法によりますと、第五条には「組織等の非公開」という条項がありまして、「情報部の組織・所在地・定員・予算および決算は国家安全保障上必要な場合にはこれを公開しないことができる。」ということが規定してあります。また、国会への「資料の提出、証言又は答弁を拒含することができる。」とも規定してあります。また、その職務の中には、国外の情報の収集、反共法、国家保安法などに規定された犯罪捜査権がきめられておる。その組織は一局から九局まであって、一局は海外情報、五局は在日朝鮮人、八局は海外工作を担当すると伝えられている。  このように、KCIAが日本の国において独自の捜査権を行使する、そして、そのことが日本捜査権と衝突をする、あるいは、日本捜査権がこのKCIA法のために妨害される、そういうような場合には、日本警察当局としては、どういう態度をとるべきですか。それは、日本の国の主権、すなわち、日本の国の主権の重要な一環である捜査権というものがこのKCIA法によって阻害されているということにならないでしょうか。国家公安委員長、これはどうお考えになりますか。両方の捜査権が競合してしまっている。そして、そのことのために、向こうは向こうでかってな――かってなということは少しラフな言い方ですけれども、かってな捜査権だということで、たとえば今度の金大中事件のようなことをかりにしたとすれば、そして、向こうからは、原状回復について何らの誠意を示さないという態度がかりに出たとすれば、そのKCIAの動きというものが、日本の重要な主権の一つである捜査権をそこなうということにならないでしょうか。
  132. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 かりの話でございますが、もし、KCIAが日本でそういう捜査権を行使して人を逮捕するなり、拉致するというようなことが起これば、当然、さっきお話ししたように、日本に住む人の一般的な保護という任務に当たるわれわれとしては、それはやはり違法行為であるということで、しかるべき日本の国内法の手続によってそれを追及しなければならない、違法行為として追及するということにならざるを得ないというふうに考えます。
  133. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、それがKCIAの関係者である場合には、KCIAを捜査するということは、これは、先ほどの答弁から、当然のことでしょうね。
  134. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 それは、当然のことであります。
  135. 林百郎

    ○林(百)委員 昨日の参議院の本会議で、田中法務大臣は、KCIAの実態調査について、現行法制下ではできない、また、やるべきでない、したがって、調査してないし、調査する考えはない、こういう答弁をしているわけなんですね。しかし、およそ、犯罪の嫌疑が事KCIAの一員あるいはKCIAの活動に関係していると見る場合には、日本警察当局がそこに捜査の手を伸ばすことは当然だと思いますが、この、田中法務大臣の昨日の参議院の本会議における答弁について、同じ閣僚である江崎国家公安委員長はどういうふうにお考えになりますか。これはおかしい論理だと思うんですね。
  136. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私は、おかしいとは思わないんですがね。金東雲氏がKCIAの所属であるかどうか、これすら、まだ、実はわかっていないということですね。したがって、田中さんが言いまするように、わが国は、基本的人権を尊重する、いわゆる自由民主主義の国ですね。そういう国柄のたてまえから言って、どういう団体、どういう組織であっても、過去に組織として違法行為の実績がないということになりますると、わが国憲法下では、わが国の法令には違反しない、こういうことになります。法令に違反しない範囲で活動を続けておりまする限りは、警察がこれを取り締まったり、いま直ちにその実態を捜査するということにはならないわけであります。KCIAが組織として、過去に、わが国において、法令を犯す違法な活動をしたという確たる証拠はありませんですね。そういうたてまえから申しましても、これは、やはり、いまにわかにこれを捜査の対象にするということは、むしろ問題がある。金大中氏の事件以来、KCIAの問題が非常に活発に論議されるようになったということでありますね。したがって、KCIAが今度の問題に関係しておるかどうか、あるいは、金東雲氏がそのKCIAの一員であるのかどうなのか、そのあたりは、今後の捜査にまたなければ、軽々に判断できないところでございます。
  137. 林百郎

    ○林(百)委員 国家公安委員長、これは西ドイツでも例があるように、KCIAがああいう不法な拉致をしたという事例は国際的にもあるわけなんですね。そして、また、金東雲、これは韓国大使館の外交の任務を持つ一員ですね。それから、韓国はいま戒厳令下にあって、軍事的に非常に厳重な監視下に国民を置いておる。こういう現状から言って、また、いろいろの国際的な事例、国内的な諸般の事情から言って、捜査の方向を、KCIAにも一応手を伸ばしてみるということはお考えにならないのですか。全然これは捜査のらち外に置いておくわけなんですか。もし、KCIAがこのことを組織的にやっていたということになって、あなたのおっしゃるように、まだそれははっきりしていないから除くということになったら、いつまでたっても問題は核心をつかないことになるのじゃないでしょうか。どうお考えになりますか。
  138. 江崎真澄

    江崎国務大臣 KCIAの問題は、いまも申し上げるように、金大中氏の事件後しきりにこのことが取りざたされるということで、直ちにそれが徹底的に究明されなければならぬということにはならないと思うのですね。したがって、やはり、今後の捜査にまつところが非常に多いというふうに私は考えます。
  139. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、今後の捜査にまつことはけっこうですけれども、その捜査の対象から、どうしてKCIAだけを除くのですか。そうすると、どういう犯罪像が浮かんでくるわけですか。当然KCIAも捜査の対象として、在日KCIAがどういう動きを当時していたのか、あるいは本件にどういう関係があるのか、あるいは関係がないのかという、捜査の対象にこれをどうして入れてはいけないのですか。常識から言って、入れるのが当然ではないでしょうか。
  140. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私は、KCIAを除くとは言っていないですね。ですから、今後、捜査の過程において、KCIAを特に突っ込んで捜査しなければならぬという形が出てくれば、これはまたそのときの問題であるということを申し上げておるのであって、現在は、まだ、KCIAの行為であるのか、あるいは特に、金東雲氏がKCIAの所属であるのか、そのあたりについては明らかでないということを申し上げたわけなんです。
  141. 林百郎

    ○林(百)委員 これは九月八日の朝日新聞ですが、「この人はスパイの先生」ということで、こういう大きな形で金東雲の写真が出ているわけですね。要するに、KCIAの訓練をする責任者であったということまで新聞に出ているわけですね。そして、各新聞紙も、KCIAを調査せぬということは、日本の国の本件に対する捜査態度を後退させるものだと言っているわけでしょう。こう言っているときに、捜査の材料というものは、こういうものだって捜査の材料になるわけなんですし、ことに、日本の国の有力な新聞紙が、KCIAの動きは注目しなければならないということを言い、金東雲がKCIAの先生だと言う人まで、在日韓国青年の中から出てきている。そういう場合に、なお、まだ、捜査の過程でKC五Aということが出てこない限りはKCIAへ捜査の手は伸ばしませんということは、そうすると、KCIAではないということをいま考えておられるのですか。KCIAを含めて、被疑者として捜査の対象にするというのが、今日の金大中問題に対する捜査当局のとるべき当然の態度ではないでしょうか。――いや、これは国家公安委員長に聞いているのですよ。
  142. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは具体的な問題ですから、警備局長からお答えしたあと、また私が補足いたします。
  143. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 われわれは、この捜査について、最初から、この機会にもこの場でもお答えいたしましたが、あらゆる予断を排して、先入主を排して、本件の真実を追及するということに一貫しておるわけでございます。したがって、その事実を一つ一つ積み重ねていった過程で、それは何らかの組織に到達するかもしれません。その場合は、その組織はもちろん解決する。あらゆる場合を予想した、徹底した捜査をやるというのがわれわれのねらいであり、最初からの捜査の方針でございまして、具体的に予断を持って捜査をしておるわけではございません。
  144. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、全面的に、予断を持たずして捜査をするということは、KCIAの動きも含めて捜査をするということが予断を持たないことであって、KCIAはまだ捜査の過程でたどりつく組織ではないからこれを捜査しないということのほうが予断を持っていることになるのではないですか。ことに、日本韓国との関係は、たとえば日韓条約があるとか、あるいは佐藤・ニクソン会談で、韓国日本は運命共同体であると言ったり、あるいは経済援助をしている。こういうような状態で、ただでさえ日本韓国の間にはただならぬ関係がある。しかも、先ほどの社会党の同僚議員からの質問にもありますように、いまや、こういう政治的な壁のために公正な捜査が思うように進まないじゃないかという疑惑まで持たれているときに、予断を持たずして本件捜査するという場合には、KCIAに対しても日本の国の捜査当局捜査を進めていくのは、これは当然じゃないでしょうか。それをしないほうが予断を持つことになるのじゃないでしょうか。私は、その辺がはなはだおかしいと思う。何でそんなにKCIAを擁護するのか。ことに、山本警備局長は、この前の答弁から、その点がどうもすっきりしないということを私はあなたに言っているのですけれども、おかしいと思うのですよ。
  145. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 繰り返すようで恐縮でございますが、われわれは、KCIAとか何とか、そういうことにこだわることなくて、すべての問題について、すべての犯罪捜査の過程で出てきたものについては、それが何であろうと、すべて徹底的に捜査いたします。
  146. 林百郎

    ○林(百)委員 それでは、国家公安委員長に、政治的な責任の点についてお尋ねしますが、先ほどの同僚議員からのいろいろな質問もありましたけれども、政治的な解決をはかるというような名のもとに、本件が結局うやむやにされるのではないかということに、もう、日本の世論が非常に大きな危惧を持つに至っておるわけですね。現に九月二十三日には、大平外務大臣は、韓国の国連問題で日本を出発する。九月十九日には金韓国外相もアメリカへ行くというような状態になれば、外交交渉だってこれで途切れてしまうわけですね。そういう段階で、政治的な解決という名のもとにこの問題をうやむやにしないという責任をあなたは持てますか。日本捜査権の行使によって必ずこれを究明するのだという、こういう責任ある答弁が、あなたは国会でできますか。
  147. 江崎真澄

    江崎国務大臣 私が午前中から申し上げておりまする意味は、事件捜査に政治配慮は絶対加えないということで、これは当然なことです。国家公安委員長たる私は、政治配慮を加えないということに責任を持つ。これも当然なことだということを何べんも繰り返し申し上げたわけですね。韓国には後宮大使もおります。いまから、国連の総会に外務大臣が臨んだあとどうするのだということをここでお答えするのは、ちと早計にすぎる。やはり、外務大臣は外務大臣として、責任をもって、相当強くこの問題では韓国側と折衝させております。  そういうようなことから考えまして、とのことがうやむやになるなどとは、私は考えません。いや、そればかりか、韓国日本の間には、過去には不幸な場面もありましたが、こういう事件が、もし、かりにうやむやになるとしまするならば、将来、長い日韓友好の上に暗い影がさしこそすれ、これが友好信頼に役立つなどとは思いません。むしろ、逆の効果をあらわすでしょうね。ですから、こういう問題は、はっきり解決されることが、両国の親善友好のためにも必要ですし、内外が事件の成り行きを注目いたしておりますときだけに、その疑惑にこたえていく責任が、日本としても、韓国としてもあるというふうに私は考えております。これは、責任をもって対処いたします。
  148. 林百郎

    ○林(百)委員 外務省当局にお聞きしますが、金大中氏の再来日の問題ですね。この問題は、日韓の外交交渉の間で、いまどういう状態になっているか。  それから、金東雲について、これは有力な犯人として、日本捜査当局は確信を持っておると言っておりますが、この任意出頭を求めておりますが、これは一体どういう状態になっているのか。  それから、金大中氏の供述調書。日本の国の捜査当局から言えば、もっと明細なな、捜査に役立つものがほしいのだということを言っておりますが、これは一体どうなっているのでしょう。
  149. 妹尾正毅

    妹尾説明員 お答えいたします。  金大中氏の再来日につきましては、繰り返し、韓国政府と折衝を続けておりまして、韓国側態度は、韓国側でまだ調査中であり、日本に行くことはできないということでございますが、この点について、今後とも折衝を続けていくというのが現在の方針でございます。  それから、金東雲氏の任意出頭につきましては、東京と、次いでソウルで、同じように折衝をしておりまして、韓国側は、外交特権を理由に、これに応じられないという態度を明らかにしておりますが、日本側としましては、真相究明のために、ぜひ任意出頭に応じてほしいということで交渉を続けているということでございます。  それから、三氏の供述調書の問題でございますが、これは、その概要を韓国政府から入手しているわけでございますが、その中で、さらに突っ込んで知りたいと思うような点につきましては、さらに韓国側に問い合わせを行なっております。  以上でございます。
  150. 林百郎

    ○林(百)委員 問い合わせをした結果、それに対する回答は来ているのですか。
  151. 妹尾正毅

    妹尾説明員 まだ、来ておりません。
  152. 林百郎

    ○林(百)委員 警察庁長官にお尋ねしますが、そのように、犯罪捜査に決定的な要素となる被害者である金大中氏の再来日は、韓国が、目下、韓国の独自の捜査中だということで、これに応ずることはできないというお話しである。日本捜査当局が、これは犯人に間違いがないという確信を持って明らかにした金東雲任意出頭も、これも拒否されている。それから、せめて、事実関係に対する、もう少し詳細な金大中氏の供述調書を送ってもらいたいということを外務省を通じて求めても、これも来ないという状態である。このままの状態がかりに続いたとして、それで、日本警察捜査権で、この問題の本体を究明することは可能とお考えになるでしょうか、どうでしょうか。
  153. 高橋幹夫

    ○高橋(幹)政府委員 ただいまの三つの問題については、私どもはそういう期待をしておりますけれども、現在の状況では非常にむずかしい問題でありますけれども金大中氏あるいは金東雲氏の任意出頭の問題、あるいは、いまの捜査の供述書やその他の問題については、韓国もそういう点については必ず協力をするであろうし、また、協力をすべきだというふうに私は思っております。そういう点において、その三つの捜査条件というものについては、確かに、非常に重要な条件であり、それが解決をされないという場合においては、私のほうとしては、捜査上は非常にむずかしい問題があることは間違いありませんけれども、私のほうの独自の捜査というものをやりまして、現在の自動車の問題であるとか、あるいは通行方法の問題であるとか、あるいはその他の船の問題であるとか、そういうものについても独自の捜査をやることによって、ある程度の到達ができるということについても、われわれは今後とも努力をしていくというふうに思っているわけでございます。したがって、独自の捜査というものに精力的に努力をしておるというのが現状でございます。
  154. 林百郎

    ○林(百)委員 国家公安委員長は、日本の国の治安に任ずる最高の責任者であります。それから、金大中事件というのは、これは、日本の国の法律が破られているわけです。憲法で保障されている基本的人権がじゅうりんされているわけですね。日本の国にいた人に対して原状に回復してやるということは、日本の国自身の責務でもあると私は思うのです。そういう点で不法行為が行なわれておる。われわれは、これは、韓国政府機関が一枚加わらなくて、このような大規模な、白昼日本の国の首都のホテルから一人の、しかも政治的な相当の地位にある人を拉致して、そうして韓国に上陸さして自分の家まで連れていくということはできないという確信を持っております。しかし、政府当局は、その点は捜査捜査中ということで、依然としてその点はとうかいしているという状態なんですけれども日本捜査がいま一つの壁に突き当たっているということは、率直に言って言えると私は思うのです。ということは、日本捜査当局が求めているものは、何ら反応が韓国側からないわけなのでありまして、そして、これがいつ希望が実現されるかということは、警察庁長官も、韓国の善意を期待しているということだけなんですからね。そういう状態のもとにあって、あなたは、日本の国の治安の最高責任者として、この問題は決して迷宮入りにはさせないという責任ある答弁がここでできますか。万一、韓国側日本捜査当局の要求するところにこたえられないために、本件犯罪像が明確にならないというような事態が出たとするならば、あなたはどういう責任をお感じになりますか。私は、これは、重大な政治責任だと思うのです。日本の国の法律自体が不法な行為によってじゅうりんされていることなんですから、それを回復する義務は日本の国自身にあるわけなんですから、日本の国の治安の状態、日本の国の法治国たる立場の評価が国際的に問われていることなんですから、これを原状に回復して、日本の法律の保護のもとに金大中氏を置くということは、不法行為を原状に回復させるための日本政府のどうしてもとらなければならない当然の義務だと思いますから、そういう点で、あなたの責任ある答弁をお聞きするわけです。迷宮入りにさせないという責任ある答弁ができるかどうか。もし、そういうことになった場合には、あなたはどういう責任をおとりになるかということです。
  155. 江崎真澄

    江崎国務大臣 捜査が難航をきわめておることは、これはもう私も十分承知をいたしております。あなたも御承知のとおりです。しかし、そうかといっていま長官も言いまするように、警察独自の、現場中心にした捜査も続行いたしておるわけですね。したがって、少なくとも、この問題は、うやむやになるというようなことは断じてありません。また、させません。これは、政治家として、はっきり申し上げます。
  156. 林百郎

    ○林(百)委員 万一、うやむやになったら、どういう責任をおとりになりますか。
  157. 江崎真澄

    江崎国務大臣 万一ということは、これはお尋ねに及ばないので、少なくとも、外交特権を有する金一等書記官の場合でも、容疑ありというところへ持ち込んできた警察というものは、相当有能であったと、私も認めております。今後の捜査に期すべきものもいろいろありましょう。ただ、しかし、韓国側からの協力が得られぬということは、おっしゃるように、ちょっと壁に突き当たった感じがなくはありません。なくはありませんが、やはり、独自の捜査もねばり強く続けていく。それから、また、外務省当局も、ねばり強く韓国側と折衝をしておってくれます。私は絶望しておりません。したがって、今後に大いに期するところがあるわけであります。もうしばらく時間をおかしいただきたい。
  158. 林百郎

    ○林(百)委員 もうしばらくが、いつまで続くかわかりませんけれどもね。  そこで、山本警備局長にお尋ねしますが、金東雲犯人であるということは、日本捜査当局では確信を持っておいでなんですか。それとも、向こうから任意出頭して尋ねなければ断定はできないという状態なんですか。
  159. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 先ほどからお話ししましたように、金東雲一等書記官本件に関与している疑いは非常に強いわけです。したがって、本件犯罪についても、十分知悉しているというふうにわれわれは確信をしているわけでございます。もちろん、本人任意出頭してその間の事情を話してもらえれば、さらにわれわれの確信を深めるであろう、われわれの確信を裏づけてくれるであろう、こういうふうに考えておるわけであります。
  160. 林百郎

    ○林(百)委員 外務当局にお尋ねしますが、ある一国の出先である大使館の公務員が、その国の公務員が、こういう犯罪について、いまの捜査当局の答弁によると、非常な濃厚な嫌疑があるということを言っておりますが、これが犯人の一人であったという場合には、日本の国の主権が侵されたものと断定していいわけでしょうね。これは、国際法上から言っても当然でしょうな。
  161. 妹尾正毅

    妹尾説明員 それは、公権力の行使であったと認められるかどうかという点があると思います。
  162. 林百郎

    ○林(百)委員 公権力の行使であるかどうかということも、一つの国際法上の理論としてそういうものもありますが、しかし、相手国の国家機関の末端の公務員たる資格を持っている者がこういう行為を犯したという場合には、その国が日本の国の主権を侵したということになりませんか。それは、かりに私人であったとしても、国際法上の通説から言っても、公務員としての身分をもってやった場合は――もっとも、公務員としての身分を持った者は、私人としてやるか、公務員としてやるかなんて区別はできないわけですね。少なくとも、韓国の一等書記官というものが犯罪の嫌疑を受けて、いま、日本捜査当局によれば、非常に決定的というような指紋の照合までしているわけなんですから、そういう場合に、日本の国の主権が侵されているのだから、したがって、日本の国としては、そういう不法行為を原状に回復する権利を相手国に対して当然に持つのじゃないですか。そうでなければ、この捜査は、あなたの言うようなことを言っておったら――ただ、外交ルートを通じてお願いする。要請する。それでは、すべては、相手国の判断によってきまることになるのじゃないですか。
  163. 妹尾正毅

    妹尾説明員 それは、政府の統一見解で申し上げているとおりでございまして、公権力の行使ということがやはり主権侵犯の基準になるということでございます。
  164. 林百郎

    ○林(百)委員 大使館の館員が行なっているということは、それは、その国の国家の権力の行使じゃないですか。しかも、外交特権を利用して、任意出頭を求めているのに来ないというのでしょう。もし、そういう犯罪行為を犯していないというなら、堂々と出てきて、日本捜査当局に協力したらいいじゃないですか。そういうことをしないということは、国家権力の行使として認定される、日本の国の主権が侵されている、こういうように見て当然じゃないでしょうか。そういう態度を貫かなければ、日本捜査というものは、それこそ政治的な壁に突き当たってしまって、相手国待ちということになってしまうのではないですか。
  165. 妹尾正毅

    妹尾説明員 ただいま御指摘のありましたような疑いをかけられる、かけるということは、非常に考えられることでございまして、だからこそ、われわれも、任意出頭してほしいということを韓国側に要請しているということでございます。  それから、主権の侵害があったかどうかという認定は、その国が認定権を有していると了解しております。
  166. 林百郎

    ○林(百)委員 そんなことはないでしょう。主権が侵害された認定権が、相手国側にあるなんということはないでしょう。
  167. 妹尾正毅

    妹尾説明員 こちらの国、現在の場合は、日本でございます。
  168. 林百郎

    ○林(百)委員 そういうことですね。幾ら外務省でも、まさかそんなことを言うとは思いませんでしたからね。  いまのこういう情勢のもとで、捜査当局金東雲に対する重大な嫌疑があるというような状態のもとで、主権が侵されているという判断をするということは不当ではないのじゃないですか。国際法上あるいは国際的な慣例から言って、どうお考えになりますか。その国の大使館の一等書記官がそういう行為を行なっているという場合に、これが日本の国の主権を侵した、相手国の国家の末端機関が国家の権力を行使したということで、日本の国の主権が侵されている、日本の国の法秩序が不法行為でじゅうりんされている、したがって、日本の国としては、その金大中氏に対して、その不法行為によってじゅうりんされた権利を原状に回復するという権利は当然持つ、こういうように国際法上も考えていいのじゃないですか。
  169. 妹尾正毅

    妹尾説明員 ただいまの点でございますが、主権の侵害があったかどうかということは、それが公権力の行使であったかいなかという点がございまして、この点は、さらに真相を見きわめる必要があるというのが現在の政府の判断であるというふうに私は了解しております。  金大中氏の再来日を原状回復という考え方で実現するという点につきましては、さらに真相解明する必要があると考えております。
  170. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、金東雲犯罪の重大な嫌疑を受けているということが、あなたの言うように、韓国の国家権力の末端の者として行なったということでないという判断だとすれば、どういうことでやったということになるのですか。かりに、犯罪行為に加担したとすれば、どういう資格でやったことになるのですか。
  171. 妹尾正毅

    妹尾説明員 それが公権力の行使であったのかなかったのかという点がポイントでございまして、まさに、それは、真相究明のための捜査努力によってさらに一そう明らかになることを期待しているということでございます。
  172. 林百郎

    ○林(百)委員 だから、大使館の一等書記官が、その身分のもとで、外交特権を利用して、そして、犯罪の嫌疑を受けているのに、まだ出頭もしない、そして、犯罪の嫌疑は、非常に重大な嫌疑を持っているという場合に、その相手国の国家の権力の末端の者が国家権力として行為を行なったのだという解釈以外に、どういう解釈がそれでは出てくるのですか。金東雲はどうしたというのですか。
  173. 妹尾正毅

    妹尾説明員 残念ながら、その点は、真相をさらに究明していかないとわからないということだと存じます。
  174. 林百郎

    ○林(百)委員 これは押し問答になりますから、次へいきます。  真相究明真相究明で、結局、真相究明真相究明をしないことになってしまって、うやむやにされる。その責任の一端は外務省当局も負わなければならない。当然の主権が侵害されている。少なくとも、日本の国にいた金大中氏が、不法行為によって損害を受けている。その金大中氏の受けた不法行為を原状に回復してやる、日本の国の法律の保護のもとに戻してやるということは、これは日本の国家の責任じゃありませんか。その責任が、あなたの言うような、国家権力の行使かどうかはっきりしませんから、まだ主権が侵されているかどうかわかりませんからということでは、問題は進展しないじゃないですか。少なくとも、日本の国の法秩序がじゅうりんされていることは間違いないじゃないですか。そういう意味から言ったって、そういう意味の主権の侵害だってあり得ると私は解釈しています。あなたは、相手方の国家権力の行使だ、それが主権の侵害かどうかだと言いますけれども、かりに、そうでないにしても、そういう身分を持っている者が日本の国の法秩序を破壊する、そして、日本で安穏な生活を保障されなければならない人がこういう不法な処置を受けているという場合に、日本の国が、その不法な行為を受けた人に対して、日本の国の法律の保護を与えるように原状に回復してやる、その損害を回復してやるということは、これは日本政府の当然の義務じゃないですか。そういう不法行為をした者が、当然の権利として韓国に逃げていっているのならば、そういう者に対して、もっと強い態度出頭を要求するなり、もっとき然とした態度で臨むべきじゃないでしょうか。  私は、そう思います。  そこで、時間も参りますので、次に進まざるを得ないわけでありますが、日本韓国との関係は――田中総理に言わせれば、韓国は自由と民主主義の国だと言いますが……(「それを目ざしているのだ」と呼ぶ者あり)われわれから言えば、韓国は、軍事クーデターによっていま戒厳令をしかれているという状態で、この中に自由があり得るはずはない。この中に民主主義があり得るはずはない。いま、自民党の議員から「目ざしているのだ」という発言があったのですが、自民党の議員ですら、そういう弁解をせざるを得ないような状態にいまあるわけなんですね。そこで、そういう状態のもとで、そういう韓国日本が、運命が共同だというようなことを歴代の自民党の政府は言っており、そして、この関係はくずしたくないと言っている。日本の資本も大きく進出している、これを守ってやらなければならないというような関係もあるというようなことになりますと、いま捜査当局が突き当たっている壁は、これは政治的な壁だと私は思うのですよ。純粋な捜査権が行使されない形になっているわけですね。上層部の政治的ないろいろの操作によって、ですね。   〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕 しかし、先ほど、私の質問に対して、日本の国の捜査当局も、最悪の事態の場合には独自の捜査を行使していかざるを得ないということを言っているわけです。おそらく、一線の警察官としては、この政治的ないろいろの困難を憂慮しながら捜査に努力はしていると私は思う。一線の警察官ですよ。首脳部はどうかわかりませんけれどもね。そう考えているわけなんですね。  そこで、これから日本警察当局捜査を進めていく上で、この段階で明らかにしてもらいたい点を二、三私は質問したいと思いますが、滋賀県の大津市の名神高速道路の大津インターチェンジ近くの休憩所において、大津インターチェンジの料金徴収所の徴収係が、事件当日の夕方、金大中を連行したと見られる五、六人の男が乗った品川ナンバーの外車を見ておると、金大中氏の証言と一致する証言が出てきているわけですね。「右へ行けば大津、左へ行けば京都ですか」と聞いたという、こういう事実が去る九月六日に突きとめられ、発表されておる。警察当局は、この目撃者をどのようにして突きとめておるのか。現在、これに対する捜査はどういう段階にあるのか。もちろん、捜査の発表の浪界というものはありますけれども、国会で質問しておりますので、できるだけ事実を明らかにしてもらいたいと思います。そのほか、品川ナンバーの外車を発見するための捜査ですね。車に対する捜査はどういうように進んでいるのか。この辺をちょっと明らかにしてもらいたいと思うのです。
  175. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  これの目撃者をどうやってつかんだかということでございますが、これは、その方が日本道路公団の職員の方ですが、この方が金大中事件関係のテレビの特集報道を見て、ああ、これは自分のあのときのあれじゃないかというふうに気がついて、好意的に警察のほうに通報してくださったというのが端緒でございます。そして、品川ナンバーの白色の乗用車ということで、その時間帯において、どこかのランプでおりていないかということで聞き込み、さらに、そういう切符等も払っていないかということでの捜査をずっと現在いたしております。さらに、ほかに目撃者がいないかということでの捜査も引き続いてやっておる状況でございます。
  176. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、これは警察当局が突きとめたのではなくして、テレビを見て、みずから申し出てきた、こういうことなんですか。
  177. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 さようでございます。
  178. 林百郎

    ○林(百)委員 その次に、これも新聞等で報道されているところでありますが、韓国の神戸領事館の安潤璟氏からの事情聴取をしたい――要するに、韓国の神戸領事館にも捜査の対象となるべき人物が二名ほどいるというようなことで、その取り調べの申し出をしたという事実はありますか。
  179. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 この安という方は、金大中さんの供述の内容にある「アンの家に行け」というような形の、その「アン」という対象にたくさんの人物があがってきているわけですが、その一つとしてあがった。そういう形での、「アンの家」ということの捜査の中で出てきた名前の方でございます。しかし、現在、その安という方について、具体的に本件と関連があるというところまで捜査は進んでおらないし、現在の状況では、事情を聴取するというまでの材料をわれわれは握っておりませんので、本人に正式に出頭を求めるというようなことはいたしておりません。
  180. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、この安潤璟氏について、一応事情を聴取したいということで、韓国大使館へその旨を申し入れもしていないのですか。
  181. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 申し入ればいたしておりません。
  182. 林百郎

    ○林(百)委員 どうして申し入れをしないのでしょうか。念のために事情を聴取するということは、必要ではないのでしょうか。たとえば、金東雲の問題も、指紋が合致したというときには、これはもう韓国へ帰っているという手おくれをしているわけでしょう。どうして、もっと事前に万全の措置をとらないのですか。
  183. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 この安という方は、われわれも、そういう関連性でいろいろと捜査いたしましたが、御報告いたしますと、神戸の領事館の中に、いわば住みついておるわけです。そこに住んでおる方でございまして、これはまだそういう被疑的な事実がないので、こういう席で申し上げるのはあれでございますが、その他いろいろな関係があって本件と関連しているというような情報も、捜査の結果も、われわれは握っておらないわけでございます。したがって、これは、全然関係のないような方について出頭を求めるというのは行き過ぎではないかということでやっていないだけでございまして、調べるだけのことは、現在の段階まで十分調べております。
  184. 林百郎

    ○林(百)委員 調べており、それから、金大中氏の供述の中にも「アン」という名前が出てきておるわけなんですし、しかも、神戸は港なんですから、この人から事情を聴取することは、少しも不自然ではないんじゃないでしょうか。そういう点に、警察当局の、非常に消極的な及び腰な態度が見られるように思うのですが、どうでしょうか。
  185. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 「アン」という人はたくさんいるわけでございまして、そのいろいろな方を、いま、捜査線上にあげて調べておるわけでございます。そして、あの供述の要旨によりますと、そのうちに行きますと、下から車が車庫に入って、車庫からずっと上がるようなエレベーターがついていた、そういううちに行ったということでございまして、少なくともそういううちでなければ、金大中さんの供述の内容と合致した家であるというふうには言えない。だから、そういううちに住んでいる「アン」そういううちを持っている「アン」というのを現在捜査している段階でございます。
  186. 林百郎

    ○林(百)委員 一応そういうことならば、そういうように聞いておきますけれども、非常に消極的な態度だというように思います。もう一人の安という人があるということもわれわれも知っておりますけれども、それでは、「アン」という関係の人物をどのように捜査をして、その結果、神戸の安が本件関係がないという結論に達したかどうか、その辺もはっきりさせたいのですけれども、これは捜査段階でありますので、いずれまた明らかにしたいと思います。  そこで、最後に私からお尋ねしたいのは、金東雲被疑者としての関係なんですけれども、これは、警察庁としては、どの程度の被疑事実を認定されておりますか。ということは、この事件警視庁の三井本部長が、「無関係とは白々しい」「指紋の証拠消せぬ」ということを「絶対の自信」ということで記者発表しているわけですね。捜査の本部長がこう言っている。ところが、警察の首脳部のほうはこれだけの確信をまだ持っておらないということになると、そこに重大な食い違いが生じてくることになるわけでありますが、この点をどういうように認定されていくか、この記者会見のときの三井本部長のことばでは、「金外相が、金一等書記官が事件に無関係だといっているのは、白々しいではないか。われわれは、指紋などから金一等書記官は容疑者だと断定している。捜査には絶対の自信があるんだ(キメ手の指紋まで否定されたことで語気が強くなる)。六日に、金一等書記官の家族があわただしく引き揚げているが、あれでわれわれの心証はますます黒くなっている。」ということを言っておるわけなんですね。絶対に自信がある、ことに、六日に家族がそそくさと引き揚げたということとも合わせて、これが犯人であることについては絶対の自信がある、それを無関係ということは白々しいと、こういうことを言っておりますけれども警察当局の考えはどうでしょう。
  187. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、着実な捜査の積み重ねによって――目撃者の証人、それから指紋の照合という、そういう地道な捜査の結果によって、われわれは、金東雲一等書記官出頭を求めるというところまで来たわけでございます。この過程、この判断において、捜査本部とわれわれは何ら異なるところはございません。全く一緒でございます。
  188. 林百郎

    ○林(百)委員 最後に、国家公安委員長にお尋ねしますが、幾度か私が繰り返し質問をいたしましたし、同僚議員も質問をしているわけなんですけれども、結局、この問題は、日本韓国との関係、ことに、田中内閣あるいは歴代の自民党の政府韓国との関係、日韓条約あるいは佐藤・ニクソン会談による運命共同体という、韓国条項あるいは経済援助、こういう日韓不可分の関係からして、いろいろの利害が錯綜してきて日本韓国との関係をくずしたくないという、そういう政治的な壁のために、いま捜査が壁にぶち当っている。これはだれが見ても、客観的に壁にぶち当たっている。そして、各世論も、これがうやむやの形で処理されるのではないかという危惧を持っているわけなんですね。ですから、繰り返しお尋ねしますが、これに対して、国家公安委員長としては、どういう所信で今後臨まれるかということが一つと、私は、国際的な事例から申しましても、また、国内におけるいろいろの過去の事例から申しましても、これは明らかにKCIAがかんでいるということは間違いないと思う。そうでなくして、このような大規模な犯罪行為が、白昼、日本の国はもちろんのこと、韓国で無事に行なわれるはずはない。したがって、これは主権が侵害されている、日本の国は、原状回復の権限に基づいて強硬な措置をとるべきだというようにわれわれは確信しております。この点もあわせて国家公安委員長の答弁を求め、そして、警察庁長官の今後の捜査の確信のほどを問いただして、私の質問を終わりたいと思います。
  189. 江崎真澄

    江崎国務大臣 本問題が、内外ともに納得のいく形で解決されることが日韓の親善関係を増すゆえんであるというふうに私は理解いたしております。これがうやむやに葬られることはむしろ、両国関係をはなはだまずい方向に持っていくことで、憂慮にたえません。したがって、この問題は、両国の協力捜査によって事件がはっきり究明せられることが当然一番望ましいわけでありまして、私どもとしては、今後もそういう方向で最善の努力を続けてまいりたいというふうに考えます。  それから、KCIAが参加をしておるのじゃないか、原状回復をしろ、あるいは、KCIAを警察はもっと積極的に取り調べろと、こういう先ほどからの御意見でありまするが、私どもは、KCIAであろうと何であろうと、その組織、団体がいかなるものであろうと、わが国の法律にもとる行為をしておるということがあれば、日本警察として、き然としてこれを取り締まっていくことは当然であります。しかし、いまのところは、KCIAが加担しておるという確たる証拠もまだありませんので、KCIAが直接の容疑団体である、組織であるなどとは、いま軽々に言えないということを、さっきから、私や警備局長は繰り返し申し上げておるわけです。事が明らかになれば、これはやはり厳重な捜査をすることは、法に照らして、もとよりでございます。
  190. 高橋幹夫

    ○高橋(幹)政府委員 今回の捜査は、いつも申し上げているように、非常にむずかしい条件の中で捜査をやっておる次第でございます。幸いにして、第一線の警察官あるいは全国の関係警察官の努力によって、金東雲一等書記官の容疑というものについては、明らかにしたわけでございます。  そこで、今日まで、非常にむずかしい条件の中でこの捜査に到達したわけでございますので、それと同じように、さらにその犯行の全貌というものを明らかにしていくということが私の責任でございます。  いろいろな御意見があるようでございますが、しかし、政治的な壁において、第一線はよくやるけれども私はやらないというようなことは断じてございません。長官として、第一線とともにこの真実を明らかにするということが私の責任でございまして、でき得る限り私も努力をしていきたいと、こういうふうに思っている次第でございます。
  191. 上村千一郎

  192. 小川新一郎

    小川(新)委員 私は、ちょっとこまかい点になりますけれども金大中氏が連れ出されたという正確な時間をちょっとお聞きしたいのでございますが、それは、一体、何日の何時だったんでございましょうか。きょうまでの捜査の中ではっきりした点で、その時間帯を明確に聞きたいのです。
  193. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 現在の段階では、八月八日の午後一時半ごろだということでございます。  ただ、先ほど申し上げましたように、金大中さんは一時ごろじゃないかというふうに言っているわけですね。したがって、やはり、本人が来て、金大中さんあるいは梁一東さん、それから金敬仁さんという、こういう現場にいた人の話をもう一度突き合わせないと確定的なことは言えませんが、いまの捜査では、大体一時半ではないかというようにわれわれは考えております。
  194. 小川新一郎

    小川(新)委員 そこで、韓国の金在権公使が現場に来た時間は何時ですか。
  195. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 正確な時間はちょっといまあれですが、大体二時ごろじゃないかというふうに考えております。
  196. 小川新一郎

    小川(新)委員 金在権公使に対して、捜査当局は、取り調べといったらおかしいのでございますが、そういったいろいろな参考的な意見を聞いたりしたことがあるのですか。
  197. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 金在権さんのほうから、事情説明をということで、自発的においでになって、われわれはいろいろと話を伺わせていただきました。
  198. 小川新一郎

    小川(新)委員 そのときに、金在権公使は、正式に日本政府に何らかの依頼をしてきたのですか。これは外務省のほうにちょっとお尋ねしたいのですけれども
  199. 妹尾正毅

    妹尾説明員 私どものほうを通じては、特に依頼はございません。
  200. 小川新一郎

    小川(新)委員 そうすると、事件発生した時点において、公使とか韓国政府から、正式に、調査をしてくれとか、いなくなったからどうしてくれとかということを言ってきた時間は何時なんですか。
  201. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 韓国政府なり大使館からでございますか。――われわれのほうにはそういうことは全然ございません。
  202. 妹尾正毅

    妹尾説明員 私どものほうといいますか、外務省を通じる話としましては、八月九日に、法眼外務次官のところにイ・ホ駐日韓国大使が参りまして、そのときに、正式に、韓国政府としては本件関係ない、徹底的に真相を究明してほしいし、金大中氏の身柄の安全に最善を尽くしていただきたいということを言っております。
  203. 小川新一郎

    小川(新)委員 私が疑問に思うことは、韓国の金在権公使が日本警察よりも早く現場に来たということですが、これは事実ですね。これはどうなんですか。
  204. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 正確なものがいまわかりましたので、お答えいたしますが、結局、金在権さんは、当日の午後一時五十分ごろ梁一東さんから電話があった、いま金大中連れていかれたと、そういうことがあったので、すぐ車で行きました、ホテルに着いたのが大体午後二時二十分ごろであると、こういうふうに言っております。したがって、梁一東さんは、警察のほうに連絡する前に大使館のほうに連絡をされておる、したがって、大使館の者が警察捜査官よりも先に着いたという結果になったわけでございます。
  205. 小川新一郎

    小川(新)委員 港区南麻布の韓国大使館から九段のグランドパレスまで、わずか二十分間で、この交通繁雑の中を、いろいろと報告を受けて飛ばしてくる。こういうことは、日本警察として、現在の時点で可能と考えていますか。
  206. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 これは一時五十分ごろ電話があったわけですね。そして、二時二十分ですから、三十分ですね。ですから、三十分ぐらいなら普通のところじゃないかと思います。
  207. 小川新一郎

    小川(新)委員 梁一東氏の件については、警察では、いま、どう考えているのですか。非常に疑惑があるように報道もされているし、私どもも、いろいろと聞いているところにおいては、非常に疑問がある。特に、なぜ再来日しないのか。金大中さんだけでは、本事件解決のかぎにはならない。それから、もう一人いらっしゃいましたね。金敬仁さん。この三人の方がそろわなければならない。特に、電話をかけた梁一東党首が来なければだめだ。こう思っているのですが、その点、警察当局はどうお考えですか。
  208. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 そういう趣旨で、三人の来日方を強く要望しているわけでございますが、梁一東さんは、まさに、その事件現場におられたわけなんで、その梁一東さんを金大中さんが訪問して、そこでいろいろと話をした。その話の内容は、われわれはよくわかりません。そうして、出たときにそういう犯罪が行なわれたということでございまして、梁一東さんにも、当日、次の日と、いろいろと事情を伺ったわけでございますが、時間的な制約その他で、なかなか十分に事情を聴取することができないうちに、十一日にソウルへ帰ってしまった。十六日にはまた出てくるという一応の約束のもとに出たわけですが、その後おいでにならないというのが事実でございます。したがって、われわれは、梁一東さんに別に疑いがあるとかなんとかということでなくて、やはり、現場状況を一番よく知っておられる方の一人であるので、ぜひ、もう少し詳しい事情を聞きたいんだというところでございます。
  209. 小川新一郎

    小川(新)委員 十日までの調査で、韓国大使館員ら公館員と準政府機関員ら十三人が続々と帰国しているということが判明したと新聞に出ておりますが、この人たちの名前は、いま発表できますか。
  210. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 お答えいたします。  その後出たという人物については、入管当局がそういうような調査をされたようでございますが、私どもは、いま、その手持ちの資料はここに持ってきておりません。
  211. 小川新一郎

    小川(新)委員 これは大事な問題だと思うのですが、どうなんでしょうかね。どういうわけで帰国したかということがいま疑問点になっていると思うのですが、この辺のところはどう理解しているのですか。
  212. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 その点は、われわれの捜査の内容というものはここで詳しくお話しすることはできないわけでございますが、何で帰ったかということになりますと、われわれとしても、その点については、はっきりした心証というものは持っておりません。
  213. 小川新一郎

    小川(新)委員 十三人以上の方々が帰ったというが、再入国の手続をしているんですか。そういう報告はあるのですか。
  214. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 この問題につきましては、入管局の所管でございますが、ちょうど係官がおりませんので、つまびらかに承知いたしておりません。したがいまして、後ほど調べましてお答えいたしたいと思います。
  215. 小川新一郎

    小川(新)委員 この人たちの氏名と、その目的、再入国の有無、家族を連れているかどうかということは、後日、名前の発表等は入管でしていただけますか。
  216. 俵谷利幸

    ○俵谷説明員 この点につきましては、帰りまして、上司に報告いたしまして、回答申し上げたいと思います。
  217. 小川新一郎

    小川(新)委員 国家公安委員長にお尋ねしますが、これは大事な問題ですが、国家公安委員長としては、この問題を明快にする権利と申しますか、そういうことを言える立場にあると思うのでございますが、その点、いかがでございますか。
  218. 江崎真澄

    江崎国務大臣 具体的な容疑の事実があればともかく、容疑者でないということになれば、これは、出国は自由ということですね。入国については、御承知のようにチェックできます。出国については、具体的な逮捕の事情でもあればともかく、そうでなければ、これをチェックすることはできぬというのが日本の現在の法のたてまえでありまして、容疑者でない人を追跡して、これをどうするということはちょっとむずかしいと思います。
  219. 小川新一郎

    小川(新)委員 それでは、警察当局にお尋ねいたしますが、警察のお調べの中では、少なくとも、この十三人以上のお帰りになられたという方々の中に、あの金大中さんを拉致した中に金東雲という方が出てきたように、疑わしき人物、何らかの容疑があるという方々はいないのですか。
  220. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 それは捜査の内容に触れますので、この機会に申し上げることはちょっと遠慮さしていただきたいと思います。
  221. 小川新一郎

    小川(新)委員 そこが一番大事なところで、聞きたいところなんですけれどもね。結局、私どもしろうとが考えて、何のために急遽ばたばたと国へ帰ってしまったのか。しかも、再入国の手続も、したんだかしないんだかわからない。中には、家族まで連れていっちゃった者がいる。少なくとも、金東雲さんの指紋までつかみとった警察力というものからいたしますれば、あそこに介在した人たちの中にその疑惑があると思うのは、これは私どもの出過ぎた考えかもしれませんが、当然だと思うわけです。それが、捜査の都合上どうしても発表できないということであれば、疑惑がますます深まったというふうに思うわけなんです。これはまことに残念であります。  そこで、外務省にちょっとお尋ねいたしますが、先ほど林さんからもお話しがありましたように、主権の問題でちょっとお尋ねしたいのですが、公権力の問題です。  「主権侵害とは、一国の領域内で他国の公権力が承諾もなく行使されることである」と大平外務大臣がおっしゃっていますが、その問題について、八月二十四日の衆議院外務委員会で、松永局長が、わが党の渡部氏の質問に答えて「政府機関所属の者がやった場合は当然、私人でも政府機関が責任を負うべきものと考える」と言っている。だから、上部機関の命令があるとかないとかという範囲以外に、私人の立場であっても、政府機関所属の者がやった場合は、これは命令されたとかなんとかでなくとも、政府が当然責任を負うべきであるという答弁を行なっておりますが、この答弁をどう理解したらよろしいんでしょうか。
  222. 妹尾正毅

    妹尾説明員 その点、私つまびらかにいたしませんので、帰りまして、関係者と相談いたしまして、御報告できればするようにいたしたいと思います。
  223. 小川新一郎

    小川(新)委員 でも、ちゃんと委員会で答えているんですね。松永条約局長ですか、松永さんが、わが党の渡部君に言っているわけです。そういう問題がうやむやになるということなんであって、これがはっきりしないと、国民の納得のいく、公正なものではない。  じゃ、調べて、もしも、松永局長がこの事実のようなことを言ったとしたら、あなたはどう理解しますか。
  224. 妹尾正毅

    妹尾説明員 そのお答え、どのようにお答えするかという点を含めまして、専門のところと十分相談いたしまして御報告いたしたいと思います。
  225. 小川新一郎

    小川(新)委員 江崎大臣、国会で局長がこう答弁しているんですけれども、先ほど言った公権力の問題でございますが、確かに政府機関がやったという証拠が出ないうちは、軽々にこれは論ぜられない、それは、確かに一理あると私も思うのです。しかし、その捜査の過程、その途中において、国会において、条約局長が、国会議員に対して、いま申し上げましたように、「政府機関所属の者がやった場合は当然、私人でも政府機関が責任を負うべきものと考える」という答弁をしているということになりますと、政府の見解が違ってきたというふうに私は考えるのです。また後退したんじゃないかと考える。よく言えば慎重になったと考える。これは大事なところなんでございますが、大臣の御見解をひとつお尋ねしたいと思います。
  226. 江崎真澄

    江崎国務大臣 そのあたりを今後の捜査によって明らかにしようということで、まあ、重要なところだと思います。やはり、大使館の所属外交官であっても、私人として、そそのかされて行動をするということが皆無とは言えますまい。そういういろいろな場面が想定されまするので、外務大臣、総理大臣ともに慎重な答弁になるわけでありまして、私も、今後真相が究明されるのを待って、正しい判断をしたい。やはり、事態の究明が先決かと、こういうふうに考えます。
  227. 小川新一郎

    小川(新)委員 事態の究明ということになりますと、金大中さんも来ない、梁一東さんもよこさない、また、関係者が幾ら言っても、向こうのいろいろな面で、日本捜査に必要な資料もよこさないということになりますと、公権力の介入というものは、日本警察当局独自で公権力の介入というものを立証しなければならないと私は考えるのですが、それはどういうふうになるのですか。
  228. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 ごく仮定のものでございますが、そういう形で関係者の来日ができないということになれば、独自で解明する以外しかたがないというふうに考えております。
  229. 小川新一郎

    小川(新)委員 その努力に対しては、私どもは認めますが、どうしても不可能な場合は、わが警察だけでもそれをやるという御決意があるのですか。
  230. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 どうしても来日が不可能である、来ないということになれば、これは、われわれとして、できる限りの努力をせざるを得ないというふうに考えます。
  231. 小川新一郎

    小川(新)委員 その場合、日本捜査官を韓国へ派遣するようなことまで、外交問題の中に強く要求いたしますか。
  232. 高橋幹夫

    ○高橋(幹)政府委員 いまの捜査官の問題については、前々からいろいろ考えてはおりましたけれども、それを具体的なものとしてやるかやらないかというのは、やはり、今後の問題でございます。
  233. 小川新一郎

    小川(新)委員 今後の問題というと、期限、タイムリミットはいつごろまで見ているのですか。また、逆に、韓国警察当局が、金大中さんが拉致された現場を見たい、そして、こちらの関係者にも聞きたい、だから日本捜査官を派遣したいということも言ってくる可能性がある。これはお互いに交換の問題になってまいりますが、その辺の問題については、長官としてはどう配慮しておりますか。
  234. 高橋幹夫

    ○高橋(幹)政府委員 やはり、いろいろな場合があると思います。そのいろいろな場合については、われわれとしては、その時期になりましたら十分対処していきたいということで、いまの段階においてああだこうだということを申し上げるのは、捜査の過程においては言わないほうがかえっていいというふうに私は思っておりますし、いま申し上げたようなことについては、われわれとしては十分対策を講じておる次第でございます。
  235. 小川新一郎

    小川(新)委員 それは、先ほど私が言ったような、こちらの、日本政府の要求を韓国政府がどうしても聞き入れてくれない、捜査当局が、捜査が行き詰まって壁にぶつかって、これ以上進展がないという理解をしたときなんですか。
  236. 高橋幹夫

    ○高橋(幹)政府委員 小川先生の言われるように、そう即断をしていただくと、私は困るのであります。いまの問題は、捜査の問題と同時に、外交問題として、外務省において十分対処しているわけでございますので、やはり、一応外交問題として処理をするということの前提において、私どもはそれに対応していく、こういうことを申し上げた次第でございます。
  237. 小川新一郎

    小川(新)委員 私は、もっと大きな問題で、韓国政府態度についてちょっとお尋ねしたいのですが、最初、八月十七日に、金鍾泌首相が、ソウル駐在の後宮大使に会い、「今回の事件日本側に御迷惑をおかけしたことはまことに申しわけない。事件韓国人が関与していたことは確かであり、御迷惑をおかけしたことに対して深くおわびしたい。田中首相と大平外相にはおわびの親書を送った。」と述べています。ところが、十日後には、李厚洛韓国CIA部長から、「日本こそ外国の主権侵犯をやったのではないか」と開き直ってきて、私どもとしては非常にショックを受けているわけですけれども、こういう変節、こういうように変わってきたことについては、この点は事実なんですか。
  238. 妹尾正毅

    妹尾説明員 御指摘の点は、どちらも事実でございます。ただ、金鍾泌国務総理の発言の日にちは、あるいは十一日ではなくて、たしか十七日におわびの発言があったというふうに記憶しておりますが、いずれにしましても、どちらも事実でございます。
  239. 小川新一郎

    小川(新)委員 そういたしますと、韓国の姿勢、態度というものは大臣、どちらを信用したらよろしいのですか。韓国CIAの部長から「日本こそ外国の主権侵犯をやったではないか」と言われたことは事実だと、いま外務省で認められました。これは大事なことですね。そんな態度であったら、警察当局が幾ら理解をもって……。
  240. 江崎真澄

    江崎国務大臣 話は、いまわかりました。金鍾泌首相から来ておりました手紙は、首相に対する親書ですが、私も、関係者の一人ということで拝見しました。これは丁重なるものであります。それから、いまの李厚洛氏が発言されたというのは記者会見で発言されたということであって、私ども、それは承知しなかったわけですが、そういう見解を公式に外務省を通じて日本政府に申し入れがあったかということは、そんなことはないと外務省が言っておりますから、いまお示しの点は、新聞記者会見の発言らしゅうございます。
  241. 小川新一郎

    小川(新)委員 新聞記者会見でございましても、これは非常に大問題だと思うのですね。わが国が外国の主権侵犯をやったと、まるでどっちが被害者かわからないようなことを言って開き直ってきたわけです。いま、私たちは、国家の権力が公に介在されたかしないかということで、国の主権というものが侵されたか侵されないかということを国会でつまびらかにしようとしております。そして、その問題については、捜査当局も、また、大臣国家公安委員長も、それを明確にするために、いま一生懸命捜査している。そういう大事なときに、金大中さんをよこせと言ってもよこさない。梁一東さんも呼び、参考人もよこせと言っても、これもだめだ。満足のいく捜査の内容を知らせてくれと言っても、知らせてくれない。KCIAが関連したのではないかといういろいろな疑惑が出てきているからこそ、日本警察当局も、また、外務省も緊張しているんだ。そういう国際情勢の中にあって、向こうの責任者の一番の大将が、「日本こそ侵犯したのだ」というようなことを言っておるということについては、それが記者会見であろうと、何であろうと、そういう問題こそ問題にして、姿勢をきちっとした上でいろいろと対処をしていかなければ解決できないじゃないか。だから、さっきから言っておるように、主権という問題が、日本警察独自の力でやらなければならないのかということを聞いておるわけです。その点、いかがでしょう。
  242. 江崎真澄

    江崎国務大臣 李厚洛氏が、どういう根拠でそういう新聞記者会見での発言をされたか、これは、私もそんたくしかねるわけですが、李厚洛氏がどういう意味で言われたか、いま、だんだん聞いてみますると、これは、本事件関係してではなくて、過去において日本韓国の主権侵犯をしたということを言っておられるもののようです。これは、外務省から答弁させます。
  243. 妹尾正毅

    妹尾説明員 私、手元に電報を持ってまいりませんでしたので、資料不足で恐縮でございますが、それで、正確な言い回しまでは御披露いたしかねますけれども、趣旨としましては、日本で、韓国の主権侵犯、主権侵犯ということを言っておるけれども日本こそ、かつて韓国の主権を侵害したではないかという趣旨の発言であったと記憶しております。
  244. 小川新一郎

    小川(新)委員 いずれにしても、それは論旨のすりかえですよ。おれが悪いのじゃないのだ、おまえさんこそ悪いじゃないか、過去にやったじゃないかということを表に立ててきて、自分たちのいまやっておることに対してはほおかむりしてしまって、日本こそ、と言う。そんなことを言い出したら、日本韓国の外交問題にまで発展していってしまいますね。それは、その態度が、その姿勢がかたくなであり、いま問題にされておるところでありますから、それはあなた方の責任を回避する条件にはならないじゃないかということで、これは当然抗議をしてしかるべきであると思うが、どうでしょうか。
  245. 江崎真澄

    江崎国務大臣 こういった問題は、公式発言以外の発言をあまり取り上げまして、私どもがこういう公式の場で議論をしまして、そういうことがまた誤解を生んだり、今後の捜査協力という体制にもひびが入るというようなことがあってはならぬと思います。したがって、この発言については、私自身も公式に承知していなかったことですし、承れば、新聞記者会見のようですし、私も、もう少し実情をつぶさに調査しまして、いずれまた申し上げることにしたいと思います。御了承願います。
  246. 小川新一郎

    小川(新)委員 そこで、そういった問題がいろいろと出てきますが、この事件の原点という問題をちょっとお聞きしたいのですけれども金大中氏の事件の原点は一体何であるかを確認したいと思います。  一つ。生命の危険を感じて事実上亡命していた金大中氏が、ある日、暴力によって韓国に強制的に連行されたという事件である。そして、これは、基本的人権が踏みにじられ、生命の尊厳が脅かされたという怒りであり、ともかく、金大中氏の生命の安全をはかれという要求がこの事件の原点ではないか。私はそう思っておるのです。  そこで、主権の侵害という問題はさておいて、韓国政府金大中氏を、国家保安法や反共法で極刑にするなとどいう情報なども入ってきたりしている。そういった問題でまた原点という問題がいいかげんにされてしまってはならない。そのために、逆に、日本警察当局金大中氏の身柄を受け取りにソウルに行ったらいいじゃないかという声さえ出始めておるが、こういう問題について、大臣の所見をまずちょっとお尋ねしたいと思います。
  247. 江崎真澄

    江崎国務大臣 両国はかねてから信頼関係に立っておりまするので、外務省を通じて、身柄をもらいたい、一方では、任意出頭の形でありまするが、ぜひ出頭せしめられたいと、こういうことで、正式の話し合いをしておるわけであります。したがって、原状復帰という理論もありましょうが、これは外務省の交渉にもうしばらくゆだねて、相手の誠意とか良識とかいったものに期待をする。これは世界じゅうがながめておるわけでありますから、韓国といえども、やはり、国として責任ある態度で接せられるであろうというふうに私どもは期待しておるわけでございます。
  248. 小川新一郎

    小川(新)委員 そこで、私は、外務省にちょっとお尋ねしたいのですが、いま申し上げた原点という問題から発想して、国家の主権侵害とは断定できないということで、韓国政府に対して、まだ、何ら抗議もしておりませんね。正式には、しておりますか。
  249. 妹尾正毅

    妹尾説明員 いたしておりません。
  250. 小川新一郎

    小川(新)委員 これに対しては、外務省ではどう考えておるのですか。
  251. 妹尾正毅

    妹尾説明員 私として、外務省を完全に代表するということで答弁できるのかどうかは存じませんが、現状は、いずれにしましても、事態の究明を一方において行ない、一方において韓国側の反応ぶりを見ながら、日本政府としてとるべき措置を常に検討しているということだと私は了解いたしております。
  252. 小川新一郎

    小川(新)委員 大臣、そこで韓国側は、九月五日、外交特権などの国際慣例をたてに、金書記官の任意出頭を拒否しておりますね。そして、翌六日には、「韓国捜査当局が調べたところ、金東雲氏は事件とは無関係である。」と、日本警察とは全然違うことを言い出した。しかし、大使館員の事件介入が捜査で明らかになってさましたら、その国家は、一、謝罪、二、原状回復、二、責任者の処罰、四、再発防止の誓約、これをしなくてはならないというのもまた国際慣例であると思いますが、これについてはいかがでございますか。
  253. 江崎真澄

    江崎国務大臣 この事件解明をされた場合においては、やはり、国際慣例に従って処置されることが望ましい。これは、韓国側においても、日本側においても、同じことが言えるわけであります。
  254. 小川新一郎

    小川(新)委員 そういたしますと、いま私が言った四点、この四点をかみ合わせて行なうのか。それとも、一つ一つの中から、状況に合わせたものを一つやればいいんだということですか。
  255. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これは全部どうするかとか、いまの条件が満たされなければ解決できないのかとか、それはすべて仮定の問題でございまして、いまからそれを私がこうだと言うことは少し即断に過ぎるように思います。これは、事件そのものが解明された段階で、国際慣例に従って解決されるものというふうにお答えする以上、ちょっとお答えしにくいと思います。
  256. 小川新一郎

    小川(新)委員 警察関係の方にお尋ねいたしますけれども韓国では、金東雲氏は事件に無関係であるというふうに、もうはっきり断定したのですか。これはどうなんですか。外務省のほうへも間違いなくそう言っているのですか。正式に言ってきたのですか。
  257. 妹尾正毅

    妹尾説明員 五日に任意出頭の要請をいたしまして、六日の時点で韓国側はそういうことを言っておりますが、これが、はたして徹底的に調査を行なった上での最終的な結論であるかどうかの点は、必ずしもはっきりいたしません。
  258. 小川新一郎

    小川(新)委員 無関係というのと、犯人であるということの断定とは違う。関係しているか、関係していないかということなんですね。ところが、現場に、日本警察によって指紋が出たということは関係があるということなんであって、それだったら本人をよこせばいいし、いろいろな問題が出てきますね。そうすると、これは、日本警察庁はどういうふうに理解したらいいのですか。
  259. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 ただいま外務省からお話しがありましたように、どういう事実をさして、それによって、どういう内容をもって無関係だと言ったのかどうか、われわれとしてはわからないわけでありますが、しかし、無関係だという内容については、やはり、向こう側が説明すべきものであるというふうにわれわれは考えております。
  260. 小川新一郎

    小川(新)委員 現場指紋が残れば、関係がないなどということは、普通われわれの常識では考えられないし、日本の国内における刑事事犯においても、そうだと思いますね。これだけ証拠を突きつけられても、それを頭から否定するということは、日本警察を無視していることにならないかという考えを私は持つわけです。そして、事件と無関係だと言うなら、むしろ、日本捜査当局出頭して身のあかしを立てるべきではないかという考えを私は持つわけです。そして、金東雲書記官の家族も帰国した。何のために家族まで引き揚げてしまったのか。これは、しろうとが考えても、ほんとうに容疑が深まるばかりですね。そんなことをする必要がないじゃないかと思うわけですね。その辺はどう御理解になっていますか。
  261. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 小川先生のお説のように、常識的には考えられます。しかし、この問題は、いま外交ルートでいろいろ論じられている問題でありますので、外交的な判断によって、さらにこの間の事情をはっきりさせていってほしいというふうに考えております。
  262. 小川新一郎

    小川(新)委員 今後捜査がどんどん進んでいって、金東雲一等書記官と同様に、外交特権のある者が容疑者として浮かんできた場合は、また金さんと同じようなケースになるというおそれも出てきます。ここで、ほんとうに日本警察当局のきびしい態度が要求されてくるのですが、同じようなケースが出た場合は、もっと突っ込んで強硬に出るということも仮定のうちで考えられますか。
  263. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 同じような事情が出れば、やはり、われわれは同じような手続を踏むという以外にないと思います。
  264. 上村千一郎

    上村委員長 小川委員の質問に対しまして、入管局の岡田参事官から発言を求められておりますので、これを許します。岡田参事官。
  265. 岡田照彦

    ○岡田説明員 法務省入国管理局の岡田でございます。  在日韓国公館の関係者の方々の出入国の事実でございますが、これにつきましては、単に事実だけを申し上げますと、まず、大使館の方でございますが、公使の禹容海という方がおりますが、この方が、八月三十一日に羽田から、再入国許可をとって出ております。それから、参事官の尹英老という方が、同じく八百三十一日に羽田から出ております。一等書記官の金東雲という方は、八月十日に羽田から出ておられます。なお、九月六日に、家族三名、使用人一名が羽田から出ておられます。  なお、金東雲という一等書記官の方は、八月十九日にも羽田から出ておられますが、そのときには、八月十七日に羽田から入国されて、八月十九日に出ておられる。こういうことであります。  なお、一等書記官で領事の洪性採という方でありますが、この方は、九月六日に伊丹から出ておられます。海軍武官の趙英吉という方でありますが、この方も、八月十日に羽田から、再入国許可を取って出ておられます。二等書記官の領事の韓京鎬という方ですが、八月十八日に羽田から出ておられます。なお、この方は、九月七日に、家族二名、使用人一名が羽田から出ておられます。二等書記官の副領事の方で、柳春国という方ですが、この方が、九月六日に伊丹から出ておられます。二等書記官の副領事の方で、尹聖源という方が、九月の八日に羽田から、再入国許可を取って出ておられます。以上が大使館関係の方であります。  横浜領事官の関係の方では、副領事の方で、劉永福という方が、九月五日に羽田から出ておられます。大阪総領事館の方で、副領事の朴聖一という方が、九月十日に伊丹から出ておられます。同じく大阪総領事館の運転手の方で、安龍徳という方が、九月七日に伊丹から、再入国許可を取って出ておられます。下関領事館の館事の方で、安圭鶴という方が、九月八日に板付から、再入国許可を取って出ておられます。札幌総領事館の総領事で、鄭求郁という方が、八月十八日に羽田から出ておられます。  以上でございます。
  266. 小川新一郎

    小川(新)委員 合計同名ですか。
  267. 岡田照彦

    ○岡田説明員 合計十三名でございます。
  268. 小川新一郎

    小川(新)委員 こういう事件がないときには、通常、こういう短期間の、期間の詰まった中で、大使館、領事館等政府機関筋の人が多数出国したという例は過去にあるんですか。
  269. 岡田照彦

    ○岡田説明員 今回は、金大中氏の事件で、韓国の、わが国にあります在外公館の方々の出入りが激しいというような新聞記事がありましたので、私どもでも関心を持ちまして調べましたところ、こういう事実が出てきたということでございまして、従前こういうような出入りが激しかったかどうかという点につきましては、まだ、つまびらかにしておりません。
  270. 小川新一郎

    小川(新)委員 過去にそういうデータがない。こういう大事件発生したのであわただしい出入国という問題だと思うのですが、こういう問題は、いま捜査中のわが国の警察としては、好ましいことなのか、好ましくないことなのか。また、こういう事態は、いまの捜査中において、事件の解決に影響があるのか、ないのか。警察当局、詳しいことはどうせ言ってもらえないでしょうから、そういう点だけでけっこうです。
  271. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 これらの者の中に、捜査当局が追跡をしている者がおれば、これは非常に残念なことでございます。そういう者がいなければ、別にどういうことはないというふうに考えております。
  272. 小川新一郎

    小川(新)委員 私たちは、この国会で、そんなふざけたいいかげんな気持ちで質問しているのじゃないのですね。あなたの答弁じゃ、まるで無関係みたいな、へんな印象を私は受けますね。おかしいですよ、そんな答弁は。いたらどうだとか、いなければどうだとか。何のために私がここでこんな質問をしているのですか。私は、警察当局として答えられないことまで答えてくれとは言っていないじゃないですか。何ですか、あなたの態度は。不謹慎きわまりないじゃないですか。いなければどうだとか、そんなことはあたりまえのことですよ。だからこそ、こんなふうに国会で一生懸命質問をやっているのじゃないですか。だからといって、その中で、名前がだれだとか言って、捜査に支障があったんでは困るから、私どもも、あなた方の捜査に協力している立場上、答えなくてもけっこうですと言っているんじゃないですか。そんな、木で鼻をくくったようなぶっきらぼうな返事だったら、私だって感情的になります。少なくとも、公安委員長の答弁は、私どもにとって満足とはいかなくても、私に不愉快な念は与えてはいません。だから、私はさっき冗談に言ったんですけれども捜査の壁は厚いけれども、答弁の壁も厚い。私も汗を流して聞いているんですから、そんな木で鼻をくくったようなあいさつではなくて、もう少し真剣になって、できるだけ親切に、ここの限度までは答えていただきたいし、また、われわれもそれを聞きたいのです。あの、有名な韓国の社説があるじゃないですか。「国民はいま何かを言いたい、知りたい、われらの衷情」と言って、韓国でさえも、言論に対してはそういう問題が出てきている。だけれども、この国会の中で、重大な公式の場の中で、捜査に影響のあることまで無理にあなたから答えを引き出そうなんという、意地の悪いことを私は言っているのではないのです。公明党はそんな考えで聞いていません。だけれども、いまみたいな言い方をされたのでは、何だか私はかつんときた。再答弁を求めます。
  273. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 私のお答えする趣旨は、結局、捜査に関連して追跡している者がここで出国してしまったということになれば、これは、捜査の、いわばまた一つの壁ができてきたわけで、これはまことに残念であるということでございますが、それでは、それがだれかということまでは言えないということでございますが、一方、全然捜査の対象になっていない者、これが出国しても、これは、われわれとして、遺憾であるとか残念であるとか言うわけにいかないわけでございます。そういう形で、これをはっきり申し上げますと、捜査上のいろいろな支障もあるのではっきり言えないと、そういう意味で端的に申し上げたのでございますが、その点、御不快の念を与えたことはまことに申しわけないと思いますが、真意はそういうことでございます。
  274. 高橋幹夫

    ○高橋(幹)政府委員 いまの山本君の答弁ですが、今回の問題の中で、しかも、そういう個人個人の問題については、捜査の上においては非常に微妙なものがあるわけであります。いままでにおいても、いろいろな新聞においても言われ、あるいは週刊誌においても言われておるわけでありますが、その一つ一つに対して、この問題についてはかくかくであるということを言うことについては、やはり人権の問題もありますし、その他いろいろな問題もありますので、いま申し上げたような微妙な問題については、山本君として、断定できるとか、あるいは断定できないというようなことについては、非常にむずかしい答弁だと思いますので、その点はひとつ御了承を願っておきたい、こういうふうに思うわけでございます。
  275. 小川新一郎

    小川(新)委員 私の質問が常識をはずれているというわけではないでしょうけれども、これはだれが考えても、一人の男が、国家の権力に介在している人が大使館の中から出て、そして、それが複数、複々数の中で、容疑者捜査をいま進めている段階であれば、そして、急速ここで十三人もの方が出ていったとなれば、その中に、警察当局が追っていらっしゃる方が一人や二人はいるんじゃないかという疑問を持つのは常識だと私は思うのです。ただ、それについて、警察当局がここでは名前をあかすことは非常に困難で、ないともあるとも言っていないわけですかな、私もよくその辺は理解いたしますが、非常に微妙なところでございますので、私もちょっとエキサイトいたしましたけれども、何も、ここででかい声を張り上げて言うのが本意じゃないのですが、その辺のところが国民としては一番知りたい。また、何でそういう事態が起きてきたのだろうかということは、事件を解く一つのかぎとして大事な問題だと私は思っているわけであります。  そこで、その問題はけっこうでございますが、ホテル目撃者たちの中の、畑中金次郎という人物の人相像、これはどういう人相像だったのですか。
  276. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 畑中金次郎という方は、二日前、すなわち八月六日に投宿したわけでございますが、ホテルの受付でそういう宿泊のカードを書いて入ったわけですが、その畑中がその部屋にいるところを見北のは、マッサージ師以外におらないわけでございます。そして、様子によりますと、受付をしたときから、どうも一人ではなかったようですね。複数の者が来て泊まって、また出たということで、どれが畑中であるかということがまだ確定できない段階でございますので、畑中の人相像と言われても、ちょっとお答えできない状況にあるわけでございます。
  277. 小川新一郎

    小川(新)委員 複数ということは、二人という意味ですか。
  278. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 まだはっきりしませんが、二人ないし三人ということでございます。
  279. 小川新一郎

    小川(新)委員 何十人も何百人もというわけじゃないのですから、二人か三人、であれば、一人の人はこういう人相である、もう一人の人はこういうかっこうをしているということはおわかりになるわけですね。それは、いかがですか。
  280. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 畑中についてわれわれの承知しているのは、特色のある人相が出ておらないのですね。ただ、めがねをかけておるとか、中肉中背であるとかということで、一見何々風というような形で、たとえばほくろがあるとか、そういうような具体的な人相というのは、まだはっきり出ておりません。
  281. 小川新一郎

    小川(新)委員 私も時間が参りましたので、これで失礼さしていただきますけれども、私が聞きたいのは、畑中という人物について、二人ないし三人の相はあらゆるところから調査なさったと思いますが、その調査なさった人相像が、韓国大使館の中の方々に符牒するような方は、いまいないのですね。
  282. 山本鎮彦

    山本(鎮)政府委員 その二人ないし三人の中に、一応金東雲氏に近い者がいるということは言えると思いますが、それが畑中であるかどうかということは、まだ確定していないという状況でございます。
  283. 高橋幹夫

    ○高橋(幹)政府委員 吉田法晴委員の質問がありまして、大臣答弁をさしていただいたわけでありますが、それに関連をしまして、今回の問題の中で、一つは、金大中氏はもう日本には来ないだろうということ、あるいは、金東雲氏を容疑者として割り出したので、国民に対してすべて終わったんだ云々の問題、あるいは、今後は韓国政府側が陳謝することになり、最悪の場合は韓国大使の更迭となるであろうというような意味のことを言われました。それに関連をいたしまして、私の答弁をいたしたいと思うのでございます。また、先般来、小川委員から、金在権公使のことにつきましても御質問がありました。金在権公使に対して、私が、前のときに何か警告を言ったのではないだろうかというような意見がございましたが、金在権氏は公使でありますので、もちろん私は知っておりますが、今回の問題について、金在権公使に警告をしたこともございませんし、また、今回の問題について金在権公使に言ったことも、一つもございません。私としては、担当の長官でありますので、そういう問題については、もちろん慎重な態度でやっておるわけでございます。  なお、金大中氏につきましては、現在の問題として、非常にむずかしい問題であることは間違いございません。しかし、先ほど来申し上げたとおり、金大中、あるいは梁一東、あるいは金敬仁の三氏については、今回の捜査の問題については、ぜひ来日をしてもらいたいということを、私ども、重ねて要請しているわけでございます。したがいまして、金大中氏はもう日本には来ないだろうというようなことを申し上げているわけではございません。しかし、非常にむずかしい問題であるということは、率直に言って間違いのないことであると思います。そういう面で、金大中氏については、日本に来ないだろうというふうなお考えがあったそうでありますが、私は、そういう意味で申し上げるわけでございます。  また、金東雲氏の問題については、あと長官談話を申し上げると、すっかりその経過が明らかになるわけでございますが、金東雲氏を容疑者として今回割り出したということは、第一線の警察官が、いままでたいへんな努力をしたことでございます。しかし、金東雲氏については、今後の問題が捜査の問題でございますので、これは初めにやったという程度の問題でございまして、今後の全貌を明らかにするという意味において、金東雲氏がまず第一歩として出てきたというふうに申し上げている次第でございます。  また、韓国政府云々というようなことは、私は断じて申しておるわけではございませんで、私は、いまのような問題について、外交との問題、あるいは政治との問題については、私の、警察官としての、あるいは警察庁長官としての立場として申し上げたことは全然ございませんので、御了承を願いたいと思うのでございます。  なお、長官談話として九月の五日に私が申し上げたことの内容で御了承願えると思いますので、私から長官談話の内容を申し上げたいと思うのであります。  「本日、警察庁は、警視庁の要請に基づき、外務省を通じて韓国大使館に対し、館員の一人である金東雲氏の任意出頭を求めました。金大中事件発生以来、警視庁中心関係府県警察は、日夜をわかたず、本件真相究明のため懸命の捜査を続けて参りましたが、何分複雑な国際的政治的背景をもつ極めて特異な国外移送拐取事件であり、又当初通報のおくれから警察の立上りがおくれたことなどから、目撃者が容易にみつからず、足取りもとれず、又被害者金大中氏がソウルに現われ、重要参考人二人も韓国へ帰国するなど悪条件が重なり、捜査は困難をきわめました。しかしながら警察は、不撓不屈、予断を排し、あくまで地道に事実を追及する堅実な捜査を続け、その結果韓国大使館員が何らかの関係があるのではないかと疑うに足りる、指紋の割り出しその他の参考人の供述を得ましたので、外務省を通じ本人から事情聴取するため、任意出頭を求める措置をとることに決めました。一般刑事事件ならば当然逮捕令状を請求できる状況でありますが、相手が外交特権保持者であり、又韓国政府が再々無関係である旨声明を出しておりますので、日韓友好関係を考慮に入れ、慎重の上にも慎重な配慮を加え、捜査の秘密の保持に留意して綿密な検討を続けた結果、本人からの事情聴取することが真相究明上不可欠であるとの結論に達したものであります。本件真相は、まだ解明されておらず、金大中氏も未だ来日いたしませんので、本格的捜査はまさにこれからであります。日本警察は今後も韓国側良識誠意とに期待して、金大中氏らの来日を要求し続け、真相究明につとめてまいる決意であります。」  以上が、吉田法晴氏の御質問に対する私の責任ある長官談話でございますので、御了承を願いたいと思うのでございます。
  284. 小川新一郎

    小川(新)委員 よくわかりました。  そこで、大臣、いまの長官お話しの中にもありますが、金大中さんが来日するのはむずかしいだろうという、そのよって来たる判断はどこでなさっているのか。もしも、金大中さんが来なければ、本格的捜査は壁にぶち当たるのではないか。それから、また、金東雲一等書記官関係がないと言う韓国側態度も、そのまま継続した場合には、本格的捜査に対して非常に壁になるのではないか。それから、重要参考人である梁一東さんほか二名、この方々が再来日をしない場合もまた出てくるだろう。だんだん詰めてまいりますと、そうなってまいります。しかし、その問題は、ごり押しはできない。それは、日韓の外交上、友好関係にひびが入るという警察当局の大きな配慮が動いているということになると――これは大きな国の問題ですから、当然動くでしょう。そうなってまいりますと、私は、非常にたいへんであると思うのですが、まずお尋ねしたいのは、金大中さんの来日はおそらくむずかしいであろうという判断はどこでなさったのかという点が一点と、いま私がるる述べた問題についてのお考えをお聞きしたい。それで終わります。
  285. 高橋幹夫

    ○高橋(幹)政府委員 韓国捜査当局者あるいは政府側の言われておることは、現在まだ韓国においても捜査の内容が明らかでないので、捜査が終わるまでには、金大中氏を来日させることは、いまの場合においては、すぐにはできない、こういうことを言っているわけであります。そういう面で、やはり、向こうの捜査の経過というものを見、あるいは向こうからの捜査の内容についての報告等から見て、必ずしもわれわれに対して十分な協力をしているというふうには思っておりませんので、したがいまして、そういう面については非常にむずかしい問題があるであろうということを申し上げているわけでございます。したがって、非常にむずかしいということについては、あるいは語弊があるかと思いますが、今後、そういうむずかしい中においても、私のほうは、外交当局を通じてぜひ来日をしてもらうということを、いま申し上げたような長官談話の中で申し上げている次第でございます。
  286. 江崎真澄

    江崎国務大臣 後段でお話しがありましたが、そういう日韓友好にひびが入るようなことがあってはならぬので捜査当局も慎重な配慮をするのではないかと、ちょっと気にかかる御発言がありましたので、念のために私から申し上げておきまするが、これは午前中に山本委員にもお答えいたしましたように、警察というのは、事態の真相を究明することが任務であります。したがって、事態の真相をどう究明するかということに全精力をあげて傾まするわけでありまして、友好親善の間柄をどうするかこうするかということは、これはやはり外交上の大きな問題であって、捜査当局がそのことに配慮をする、政治的考慮を加える、言いかえると、手心を加えるというようなことは一切ございません。これは念のためにはっきり申し上げておきます。
  287. 小川新一郎

    小川(新)委員 私は、いま読み上げた中にそういう字句があって、そういう感じを受けたから聞いたのですが、そこのところは、何も私のほうから言ったわけじゃないのです。いま長官のお読みになった中に、日韓友好関係云々というところがありましたように聞いたので、聞き違いであれば別ですが、ちょっと心配だったので、そこのところをいま質問したのです。そこのところはいかがですか。
  288. 高橋幹夫

    ○高橋(幹)政府委員 二点あると思いますが、一つは、「又韓国政府が再々無関係である旨声明を出しておりますので、日韓友好関係を考慮に入れ、慎重の上にも慎重な配慮を加え、捜査の秘密の保持」というものに留意したという意味に重点があるわけでございます。それから、もう一つは、「日本警察は今後も韓国側良識誠意とに期待して、金大中氏らの来日を要求し続け、真相究明につとめてまいる決意であります。」ということで、いま申し上げたように、金大中氏らの来日を要求し続け、真相を究明する、しかし、韓国側においても良識誠意をもって、と、期待をしているということを言っているわけでございます。したがって、われわれは、日韓関係の問題の外交的な問題に重点を置いて、捜査の行き方について問題点があるという意味ではございませんので、御了承を願いたいと思うのでございます。
  289. 小川新一郎

    小川(新)委員 私は、その文章を手元に持って一字一句言うわけじゃないのですが、どうも、最初のところがちょっと気にかかるのですね。日韓友好云々というところ、機密の保持というところ、そこのところが……。警察当局はなぜそれを言わなければならないのか。それだったら、その字句はとったほうがいいのじゃないですか。日韓友好関係云々は、捜査のためだったら関係ない、どこまでも追及していくべきだというのが江崎長官のお考えですが、それが誤解の――そうではない。確かにそういう配慮が動いていることは事実のように見えるのです。だから、そういう問題が私にぐっとくるわけです。では、それはとれませんか。
  290. 江崎真澄

    江崎国務大臣 どうでしょうか。これは、私は、いま聞いておって、なるほどと、すらっと理解したわけですが、友好関係にあることは現実なんです。また、相手が外交特権を持っていることも現実なので、慎重の上にも慎重に配慮をしたということは、これはやはり重要なところだと思います。相互信頼の上に立ってというふうにお考えいただければ、別に、私の言ったこととこの談話とが矛盾することはないように考えます。
  291. 小川新一郎

    小川(新)委員 そういう態度で、ひとつお願いいたします、私も、何も、横車を押して、偏屈な態度で、字句を取り上げてどうのこうのと言うのじゃないし、長官もまた、そこまでの御決意を持っておっしゃられているのですから、いまの警察当局捜査の方針には一貫して変わりがないと、私は確信して引き下がりますので、よろしくお願いいたします。      ――――◇―――――
  292. 上村千一郎

    上村委員長 この際、委員派遣の件についておはかりいたします。  地方財政に関する件の調査のため、各地に委員を派遣いたしたいと存じます。つきましては、衆議院規則第五十五条により、議長に承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  293. 上村千一郎

    上村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、派遣委員の氏名、人数、派遣の日時、派遣地及び承認手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  294. 上村千一郎

    上村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後三時五十七分散会