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小池参考人 横浜の
小池でございます。
本日は貴重な時間をお与えいただきまして、まことにありがとうございました。お手元に説明資料をお配りしてございますので、この順序に従いまして公述をさせていただきたいと
思います。
私
ども、
昭和四十一年の十月でございますが、
再建団体の指定を受けまして、以来、今日まで、いろいろと努力をしてまいりました。その結果、
横浜の市営
交通の現状、そして
財政事情はどうなっているかという点については、お手元の資料に記載をしてございます。時間の関係もありますので、内容の説明は省略をさせていただきます。しかし、結論として言えますことは、今日の市民生活のスピードについていけなくなりました市電、トロリー
バスは全廃をして、これにかわる新しい
交通機関としての
地下鉄の
建設に着手をしたということでありまして、これからの市営
交通はこの
地下鉄を幹とし、
バスを枝としたところの新しい輸送体系に再編整備をしていく。この点につきましては、現行
再建計画に基づく事業執行によりまして、ほぼ
計画どおり大きな成果をあげ得たと私
ども考えております。
しかし、反面、
財政事情、
財政の建て直しという面になりますと、
再建団体スタート時点には六十六億八千万円の
赤字をたな上げしてスタートをしたわけでございますが、その後のたび重なる
給与改定の問題、さらには
企業環境の
悪化の問題等によりまして、六度にわたる
再建計画の変更を余儀なくされ、その結果、四十七年度末におきましては、百三十六億四千万円という
不良債務を路面
交通機関だけでかかえるという、まことに重大なピンチに直面をしたわけでございます。したがいまして、現行
再建計画におきましては、事業面の再編整備という点については大きな成果をあげ得た。しかし、
財政再建については、現行
計画を御破算にせざるを得ない結果に相なってしまったということは言えようかと
思います。
なお、このような大きな
赤字を出さざるを得なかった要因といたしましては、先ほど来いろいろ御議論がありましたとおりでございまして、これにつきましてもこまかい説明は省略をさせていただきますが、都市の人口急増に伴うドーナツ化現象の問題、さらには、これによって生ずるラッシュ時輸送確保の問題、あるいは
行政路線の問題、道路混雑によるスピード低下の問題、さらには、諸物価の上昇によります
経営原価の増大等、これに追いつけない乗車
料金の問題等々があろうと
思います。しかし、この主因といたしましては、やはり、
企業外の
環境悪化ということが大きな要因だろうと
思います。
そこで、今日の都市
交通問題は、もはや一
企業、一自体の努力のみではとうてい解決し得ない段階に逢着をしていると言えようかと
思います。そこで、私
ども、この都市
交通の
再建整備をはかりますための抜本
対策について、ここ数年来国に御要望を申し上げてきたところでございます。幸い、この四十八年度の国家予算におきましてその
対策が打ち出されたわけでございますが、この点につきましては、政府の提案説明にもありますように、緊急
対策と言えるものでありまして、これだけで都市
交通の今後の
健全化がはかれるかどうか、まだまだ多くの問題を残しておりますし、きびしいものがあろうと
思います。
そこで、私
どもは、これまでいろいろお願いしてきました事項も含めまして、今後の都市
交通の
再建整備という点について、まず、
企業環境の整備、それから
財政援助の強化、この二点について御
意見、御要望を申し上げたいと
思います。
まず、
企業環境の整備の面につきましては、
交通行政の一元化をぜひ実現をしていただきたいということでございます。現在、国におきましても、
交通行政につきましては、運輸、
建設、自治、警察庁、その他各省庁にわたりまして、この権限が分割をされておる
実情でございますが、これを極力一元化していただく。そういう方向の中で、大都市の自治体につきましても、現在、首長は道路管理者であるのみでありまして、都市
交通に関する行政権限は何も付与されていないというのが実態でございます。都市
交通につきましては、都市
計画等と一体となってこれを進めていきませんと、その実をあげられないことは御承知のとおりでございますので、この都市
交通に関する権限を、道路管理者である大都市自治体の長にぜひ大幅に移譲をしていただきたい、そのようにお願いを申し上げます。
それから、第二点といたしましては、これも先ほど来議論がございましたが、
自動車そのものに対する政策の転換をぜひお願いをしたい。いま私
どもがかかえております一番大きな
悩みの
一つは、やはり、
バスが思うように走れない、道路混雑によるスピード低下という、効率低下の問題でございます。したがいまして、
自動車そのものを抑制していくという原則に立っての政策転換をぜひお願いしたい。これにつきましては、
自動車関係諸税、あるいは強制保険の増徴、排気ガス等の規制強化、保管場所の義務づけの強化、生産者の宣伝自制など、いろいろな方策があろうと
思いますが、この点については、自治体の権限では解決できる問題ではございませんので、ぜひ国において有効適切な方策を講じていただきたいことをお願い申し上げます。
それから、第三点といたしましては、道路
交通施設の整備と
交通規制の強化の問題でございます。道路でありますとか、駅前広場その他の公共
交通施設は、公共性の高い大衆大量
交通機関が優先使用すべきであるということは論をまたないところであろうと
思います。こういう観点に立ちまして、今後、これらの
交通施設の整備をぜひお願いし、また、その使用については、極力個人輸送機関の使用を制限するといった方策をおとりいただきたいと
思います。また、当面の問題といたしましては、
バスの効率を高めますために専用、優先レーンというものが設けられておりますが、
横浜の場合を申し上げますと、
バス専用レーンはわずか二区間、二・七キロしか現在実施をされておりません。と申しますのは、基本的な
考え方として、片側三車線ある道路について
専用レーンを認めるという原則をとっているからでありまして、この原則をとる限り、
横浜の道路事情から、これ以上
専用レーンを増設する余地はないということになってしまいます。むしろ、二車線、一車線の道路こそもっと混雑をするわけでございますので、たとえば
団地と駅を結ぶような
路線につきましては、一車線であっても、一定期間諸車の通行を禁止して、
バスが効率的にピストン輸送ができますような
専用レーンを設定していただくという方向に御努力をいただきたいと
思います。さらには、
都心部への諸車の乗り入れ規制など、いろいろな方途があろうと
思いますが、この
交通規制の強化についても、実効のある措置をぜひともとっていただきたいと思う次第でございます。
このような
企業環境につきましては、抜本的な
対策を国において実現をしていただく反面、私
ども自身といたしましても、市民の足を確保いたしますために、これからは、道路
交通と鉄道
交通との機能の再配分をいたしまして、これによって、
地下鉄、
バス網などを総合的、有機的に再編整備をして、よりよい市民の足を確保していく努力をしてまいりたいと
思います。
また、先ほど来お話しがございましたが、現実の問題として、
バスの終車時間が早過ぎるとか、経由地がわかりにくいとか、あるいは停留所がはっきりしないというような問題も現実に起きております。これらにつきましては、私
ども、現在その
改善作業を進めておりますが、これからもそういった努力をいたしまして、ともあれ、市民の信頼を回復していくという方向の中で都市
交通の再編整備をいたしていきたいと考えております。
次に、
財政援助の強化の問題でございますが、ただいまの
法案のまず第八条関係で、路面
交通関係の
不良債務につきましては、四十七年度末の
不良債務を全額たな上げをするという措置がとられたわけで、このことにつきましては、われわれ
企業サイドから見れば非常にありがたいことでございますが、しかし、これの元利
償還という問題になってきますと、
横浜の場合、いま百三十六億の
不良債務をかかえておりますので、これを十五年
償還、年利七分一厘ということで試算をいたしますと、総額二百十一億円の元利
償還になってまいります。このうち、原案では、国が五十六億、市が百五十五億
負担するということに相なります。百五十五億というのは、年間に直せば十億の金額でございますが、しかし、
一般会計におきましては、このほかに、これからの都市
交通の主役となってまいります
地下鉄に対しましての出資、補助をしていかなければなりません。この額が、本市の場合約七十億程度になりますので、この路面
交通の元金
償還、
地下鉄への補助を含めますと、約八十億、年間八十億、この額は
横浜の市民税総額の約一割に当たる額でございまして、これだけのものを
一般会計が
交通会計に繰り出しをしなければならないということに相なります。したがいまして、
一般会計の
負担軽減をはかりますために、元金の一部については国において
負担をしていただく、あるいは
一般会計の
負担分について、
基準財政需要の中に織り込んでいただく、あるいは、先ほど来御議論がありましたような新税を創設していただく、このようないろいろな方途があろうと
思いますが、
一般会計の
負担軽減について格段の御措置をお願いいたしたいと
思います。
それから、新
再建債を
発行する現実の問題でございますが、この
法案では、上限利率を七・一%で頭を押えております。しかし、現実の今日の金融事情から、この
再建債の
発行は、本年度の後半、年度末になるであろうということが予想されます。そういうことを考えていきますと、実際問題として、この七・一%の利率で新
再建債が
発行できるのかどうか、この点に危惧をいたしております。したがいまして、この上限につきましては、この規制をはずすか、また、現実の問題として、国の御指導、御配慮によりまして、このワク内で新
再建債が
発行できますような特段の御配慮をお願いいたしたいと
思います。
また、第三点といたしましては、これも先ほど来いろいろ御議論のありました
行政路線の問題でございます。今後の
バス事業の運営につきまして、
バス購入費の一部補助という
援助策が打たれておりますが、それ以外に、今後の運営面については
対策がとられておりません。したがいまして、今後の運営を考えますと、やはり、この
行政路線問題について格段の御配慮をお願いしたいと
思います。
この
行政路線とは何ぞやという議論になりますと、いろいろ問題があろうと
思います。そこで、私
どもは四十七年度に、百十二本の
路線すべてについてこまかい実態調査をいたしました。そこで、この調査に基づきまして、それぞれの
路線の営業実態を積み上げまして、再編成
計画をこれから立てていくわけですが、その中において、その地域においての唯一の
交通機関であるが、どうしても廃止せざるを得ないという結論に達したものにつきましては、そこから生ずる
赤字について、国あるいは
一般会計において
負担をしていただくという措置をとっていただきませんと、今後の
バス事業の
経営というものは、この点についてストップしてしまうであろうということを考えるわけでございまして、この点については、私
どもも、議会の中で、
一つ一つの
路線について十分定義づけをしていきたいと
思いますので、その出た結論の
行政路線につきましては格段の御配慮をお願いしたい、このように思うわけでございます。
それから、さらに、
地下鉄建設につきましては、本年度予算で補助率の引き上げを願ったわけでございますが、しかし、これも、今後の
地下鉄建設費の高騰あるいは営業費の
増高等を考えますと、まだまだこれで完全だというものではないと
思いますので、この補助金の増額と、これも先ほど申し上げましたように、
一般会計においては、今後約七十億という
負担をしていかなければなりませんので、この
一般会計負担分については、ぜひとも軽減措置をお願いいたしたい、このように
思います。
最後に、
料金制度の問題でございますが、これも先ほど来お話しがありましたように、今後の事業運営を考えますと、これまでのような
経営原価の増大を余儀なくされるとすれば、その一部を
利用者に
負担していただくという問題が当然出てこようかと
思いますが、その際の手続といたしまして、現在はすべて認可
制度をとっておりますが、これを届け出
制度に改めるように、関係法令の改正をお願いいたしたいと
思います。
以上、たくさんの項目につきまして御要望申し上げましたが、このうち抜本
対策等につきましては、一朝一夕にして実現できないもの、あるいは予算措置を必要とするもの等いろいろ問題があろうかと
思いますが、実現可能なものから
一つ一つ国においてその推進をはかっていただきたいと
思います。そういう中で、われわれも、いまかかえておりますこの
経営危機を一まず乗り切りますために、ぜひともこの新
再建債の早期
発行を願いまして、われわれ自身としても、
企業内で、可能な限りの努力を今後ともし、一日も休むことのできません市民の足の確保に最善の努力をいたしていきたいと
思います。
したがいまして、この緊急
対策にかかる分につきましては、いま御要望を申し上げました事項について、可能な限りの
改善措置を講じていただきまして、この
法案を早期に成立くださいますよう切にお願いをいたしまして、公述を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(
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