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1973-06-14 第71回国会 衆議院 地方行政委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年六月十四日(木曜日)     午前十時三分開議  出席委員    委員長 上村千一郎君    理事 高鳥  修君 理事 中村 弘海君   理事 中山 利生君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 山本弥之助君 理事 吉田 法晴君    理事 林  百郎君       愛野興一郎君    今井  勇君       片岡 清一君    亀山 孝一君       島田 安夫君    谷垣 專一君       古屋  亨君    保岡 興治君       渡辺 紘三君    岩垂寿喜男君       佐藤 敬治君    土井たか子君       山田 芳治君    小川新一郎君       小濱 新次君    折小野良一君  出席政府委員         自治大臣官房審         議官      森岡  敞君         自治省財政局長 鎌田 要人君  委員外出席者         参  考  人         (武蔵大学教         授)      鈴木 武雄君         参  考  人         (主婦)    佐藤 順子君         参  考  人         (大阪市立大学         教授)     中西 健一君         参  考  人         (大阪助役) 内山 敞義君         参  考  人         (函館市長)  矢野  康君         参  考  人         (横浜交通局         長)      小池 国三君         参  考  人         (日本都市交通         労働組合連合会         書記長)    鈴木 富司君         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 六月十三日  ドライブイン等における酒類の販売禁止に関す  る請願吉田法晴紹介)(第七〇三三号)  地方公務員退職年金スライド制早期実現に関  する請願金瀬俊雄紹介)(第七〇三四号)  同(木原実紹介)(第七一二〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方公営交通事業経営健全化促進に関す  る法律案内閣提出第五四号)  地方公営交通事業経営健全化促進に関す  る法律案山口鶴男君外十九名提出衆法第一  六号)      ————◇—————
  2. 上村千一郎

    上村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出にかかる地方公営交通事業経営健全化促進に関する法律案及び山口鶴男君外十九名提出にかかる地方公営交通事業経営健全化促進に関する法律案を議題といたします。  本日は、両案について参考人の御出席をお願いしております。  参考人方々は、武蔵大学教授鈴木武雄君、主婦佐藤順子君、大阪市立大学教授中西健一君、大阪助役内山敵義君、函館市長矢野康君、横浜交通局長小池国三君及び日本都市交通労働組合連合会書記長鈴木富司君、以上七名の方々であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申します。  参考人各位には、御多用中のところ当委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  本法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べ願いたいと存じます。  なお、議事の順序は、初めに、お仕事の関係で十一時三十分に退席される鈴木武雄参考人及び佐藤参考人から御意見をお述べいただいた後、両君に対する各委員質疑を行ないたいと存じます。次に、中西参考人内山参考人矢野参考人小池参考人鈴木富司参考人の順で御意見をお述べいただき、各委員からの質疑に対し答弁をお願いいたしたいと存じます。  それでは、最初に、鈴木武雄参考人にお願いをいたします。鈴木武雄参考人
  3. 鈴木武雄

    鈴木(武)参考人 私が参考人としまして当委員会に呼ばれましたのは、私が座長として、昨年十月三十日、自治大臣私的諮問機関でありますところの公営交通問題研究会が、自治大臣提出した「公営交通事業経営健全化に関する報告」の取りまとめに当たりましたことによるものであると考えております。したがいまして、私は、その報告立場から、今度のこの法案につきまして若干の意見を申し述べさせていただきたいと思います。  申すまでもなく、公営交通事業経営は近年悪化の一途をたどっておりまして、もう皆さまに申し上げるまでもないことでありますけれども、四十六年度における単年度損失は四百二十億円、留積欠損金は千九百二十九億円でありまして、これは、四十六年度営業収益の一・七倍に達しております。そのうち不良債務は千四百八十一億円にのぼっているのでありまして、まさに、これは、国鉄以上に深刻な財政危機に直面しておると言わなければならないのであります。  公営交通事業のうち、バスとか路面電車、つまり、路面交通事業につきましては、昭和四十一年度から財政再建計画が推進せられまして、四十年度末における不良債務を、財政再建債発行四百四十三億円でありましたが、その発行によりまして、これをたな上げしまして、国は、財政再建債利子を三分五厘超八分を限度としまして再建団体に補給する、それとともに、再建期間、これはおおむね四十一年から四十八年度の八年間の、この再建期間中に経営体質改善しまして、財政健全性を回復して再建債償還する、そういう計画でございました。  この財政再建計画に即して、再建団体は、路面電車の撤去、ワンマン化など、極力その経営の立て直しにつとめてまいってきたのでありますが、必ずしも経営収支は好転しない。特に、六大都市におきましては、新たに多額の不良債務が累積するに至ったのであります。  それは、公営交通事業の側における企業努力というものが必ずしも十分でなかった点もないとは言えないのでありますけれども、それよりも、計画策定後における企業環境の急速な悪化、モータリゼーションというようなことを中心といたしまして、企業環境の急速な悪化が生じ、それに伴う輸送効率の低下によりまして、収入見込み違いが生じたということ、これが第一点。それから、給与改定に伴う人件費の急増にもかかわらず、料金改定がタイムリーに実施できなかったということ、これが第二点。それから、財政再建計画自体が、過去の累積赤字事業収益の向上によって解消することとしまして、国の援助再建債の一部の利子補給にとどまるという、きわめてきびしいものであったこと、これらによるところがむしろ大きいと言えると思うのであります。公営路面交通事業の新しい財政再建計画につきましては、これらの点が十分反省せられまして、旧財政再建計画の二の舞いを演じないようにすることが必要なのであります。  それから、公営交通事業には、路面交通事業のほかに地下鉄事業がございます。地下鉄事業財政再建制度適用外でありますが、本来これは巨額の建設投資を必要といたします上に、最近におきましてはそれが一そう増大する傾向にありまして、一キロ当たり建設費は四十三年度で八十億円、今後都心部におきましては百億円をこえるものと予想されているのであります。このような建設費増高に伴う資本費負担の累増というものが地下鉄経営を圧迫している最大の要因となっていると言うことができるのでありますが、現在、地下鉄建設につきまして、国及び地方公共団体一般会計による財政援助として行なわれておりますところの地下鉄建設費補助及び地下鉄事業特例債利子補給、これは資本費のような重圧を軽減する十分な助成とはなっていないのであります。資本費重圧がいかに大きいかということは、地下鉄事業にかかる企業債元利償還費、これは四十六年度決算で、料金収入に対するこの元利償還費の割合は一二七・三%に達しておるということからもうかがうことができるのであります。  そこで、私ども、昨年の公営交通問題研究会でいろいろ審議いたしました結果、その対策をいろいろ提案いたしたのであります。この対策といたしましては、企業内の対策といたしまして、料金適正化というようなこと、それから企業内の経営努力、サービスの改善とかいろいろございますが、企業外負担といたしまして、国及び地方公共団体一般会計かちの財政援助、それから、料金割引制度というようなものの適正な制度、これを大いにはっきりさせて、それによる企業損失については、国及び地方公共団体一般会計がこれを負担する。あるいは行政路線と申しまして、非常に経営採算が悪いけれども、特に、地方自治体といたしましては、そういう路線をやはり維持していかなければ住民のためにならないという、そういう行政路線につきましては、これは客観的な基準を一これは単に赤字になっているというだけでは困りますが、いろいろ客観的な基準をはっきりさせまして、それに該当する行政路線につきましては、運行赤字の一部を地方公共団体一般会計負担する、そしてそれの二分の一を国が補助するというようなこと。それから、財政援助以外の企業外負担といたしまして、環境改善、つまり、バス優先路線とか、あるいは専用レーンとか、その他これは別の役所の管轄の問題になりますけれども自動車マイカーの規制でありますとか、いろいろ環境改善について大いに努力してもらう必要があるということ。それから、間接受益者負担と申しますか、団地等開発をした増合に、そこに路線が設けられて開発利益を生ずる、そういう場合の開発利益負担。それから、沿線の地価が騰貴することによる沿線の地主に対する負担。それから、都心における事務所事業所というものが、この路線によって通勤してくる従業員によって利益を得るわけでありますから、そういう事務所事業所に対する負担といったような間接受益者負担というものを徴収して、これを企業に内部化する。そういうようなことを提案いたしたのであります。  それで、このたび提案せられました内閣法案を拝見いたしますと、おおむね私どもの提案いたしましたことが取り入れられていると思いますので、その点では、この公営交通事業財政問題に対しては一歩前進した対策が講ぜられることになると思われるのでありますが、いろいろな点で、私どもの提案いたしましたことよりは若干、特に、国の財政援助というような点で後退が見られるのであります。   こまかい点はもう省略いたしますが、たとえば、国の負担につきまして、国と地方と二分の一ずつ元金の償還についても負担をするというようなことを私どもは提案いたしました。これは、私ども研究会の内部におきましてもいろいろ意見がございまして、そういう点について大いに検討してほしいという提案をいたしましたが、それは実現いたしませんで、利子だけについて負担するというようなことでありますとか、いまの行政路線赤字補てんにつきましては、全然これは認められませんで、再建団体バス車両購入費の二分の一を補助するというようなことになっております。援助という点で若干後退がありますけれども、しかし、旧財政再建措置に比べますとかなり前進しているということが言えるのでありまして、この程度のことで将来十分に公営交通事業財政基盤を確立することができるかということは、先のことはよくわかりませんけれども、当面はまあやっていけるんじゃないかというふうに考えている次第でございます。  時間が参りましたのでこの辺で終わらせていただきまして、あとまた御質問がございましたらお答えさせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手
  4. 上村千一郎

    上村委員長 次に、佐藤参考人にお願いいたします。
  5. 佐藤順子

    佐藤参考人 私のような一主婦がこんな場に出まして、どれほど参考になる意見を述べられるかは全く心もとないのですけれども、一利用者としての実情を訴えたいと思って出てまいりました。  私が住んでおりますのは川崎市の北部なんですが、もよりの駅は溝ノロ小田急線登戸なんです。南武線溝ノロからも、登戸からも、いずれも五キロほど離れております。それから、もう一つ、田園都市線の宮前平という駅がございますが、そこは歩いて三十分ほどかかります。五キロという距離なんでございますけれども、銀座−上野間が五・五キロだそうでございまして、まあ、大体それに匹敵するところに住んでいるわけでございますが、交通機関は、そこまで出ますのにバス一本しかないのでございます。それにつれて、私どもは、いろいろと苦労したり、ときには、何でこんな思いをしなければならないのかと思ったりすることがございます。  一ぱいある不満といいますか、悩みの中でも、一番私どもが困っておりますのは、バスダイヤというのでしょうか、運行本数が少ないということなんです。それで、バスダイヤの改正がありますたびに、私ども町内会では、こんなふうなバスダイヤ一覧表町内会の会員に出しているわけです。と申しますのは、何本かのバスがありましても、本数が少ないために、それに合わせて自宅を出ませんと乗りおくれてしまいます。昼間では三十分に一本ぐらいしかバスがございませんものですから、それに乗りおくれるととんでもないことになってしまうわけなんです。たよりにしておりますのは川崎市営バスでございますけれども、比較的本数が多いわが家から溝ノ口のほうへ出るバスにいたしましても、主婦利用する時間帯は一時間に四本、十五分に一本の計算になります。ラッシュの朝八時の時間帯でも七本という状態で、バスの時間というものが私どもには非常に問題なんです。  それにつきましてもいろいろこまかい悩みがございますけれども、まあ、これはともかくといたしまして、通勤で一番困るのは、最近近所に大きな団地がどんどんできております。そうしますと、積み残されてしまうわけなんでございますね。そのために会社におくれるので早く出なければならないし、結果的には、マイカーを買わざるを得ないという状態も、あとで申し上げますが、出てきているわけなんです。それから、もう一つ悩みは、朝早くと深夜のバスがないことなんです。それによる疲れとか、いらいらとか、とにかく、足がないという悩みが非常にひどくて、タクシー本数が少ないのでございます。南武線溝ノ口駅の前にタクシーを集中的に集めるようになりましたが、溝ノ口ではタクシーが比較的拾いやすくなったんですけれども、反対に、その周辺の駅では、電話をかけてもタクシーが来ないという状態になってしまいまして、別な意味でしわ寄せを受けてしまっているわけです。冬は十五分から二十分、ときには三十分待ってもバスタクシーも来ないということがございまして、疲れと寒さが身にしみてほとほとつらい思いをいたしております。したがって、私も、いまマイカー利用しているわけなんです。  そんな状態の中でもって、私ども利用者にとって公営交通機関がどうあってほしいかということは、幾つかございますけれども、安全であるということがもちろん大切でございまして、安心してたよれるということが一番の望みでございます。何しろ、げたがわりでございまして、ときには朝早く出なければならない場合もございますから、そんなときも、それから深夜でも乗れるように御配慮いただきたいのです。  それと同時に、きめこまかいダイヤというものがどうしても私ども住民にはほしいんです。十五分に一本というダイヤで時間に合わせて家を出ましても、バスというものは運行時間が不規則なものですから、三分も四分も前に行ってしまって、まるまる十五分待たされるということもちょいちょいあるのです。これが、ダイヤがたとえ乱れましても、本数が多ければ待つ時間というものは少なくて済むと思いますけれども、行ってしまって、そのあと十五分待たされるというのは、たいへん苦痛でございます。こんなことがございますので、川崎北部はもうすっかりベッドタウンになっておりますけれども、そこから都心に出てくるのには、どうしても一時間半を見なければならないのです。時間のロスというものはほんとうにばかになりません。  それから、もう一つは、やはり適切な料金であってほしいと思っております。いま、私の家では、私が週に二回ほどバス利用いたしまして、子供を連れて出ることもございますので、大体七百五十円前後のバスを私と子供が使っております。それから、母が病院に二週間に一ぺん通っておりますので、その費用が二百四十円。そうしますと、バス代だけで大体千円ぐらいの負担になっております。川崎市の場合は問もなく四十円に値上がりし、最終的には五十円にことし値上がりするということを聞いておりますけれども、五十円になりますと、ほぼ千円のバス代が千六百円ぐらいになるのではないかという計算が私にはできるわけです。そうした場合の家計に及ぼす影響は、心理的な圧迫感が非常に強うございまして、私が利用するしかたでは、やはり、バス利用を減らす形になるんじゃないかと思っております。  おもな利用は、ショッピングセンター溝ノ口でございますから、週に二回溝ノ口買いものに出ます。それを一回にして、あと近所で済ませるということにしませんと、往復百円かかってしまっては、幾らスーパーで安い買いものをしても、差し引きゼロか、ときには足が出てしまうということになるわけなんです。そうしますと、私は、たぶん、バス利用を控えることでもってバランスをとることになるんじゃないかという気がするんです。私の場合は、子供ももう小学校に入りましたから、お医者にかけつけるということはあまりございませんけれども、若い家庭、赤ちゃんのいる家庭は、お医者さんにたよる場合が非常に多いのです。ところが、私ども近所では、内科、小児科は一応ございますが、それ以外の病院は全部もよりの駅まで行かなければならないわけで、病気の子供をかかえて医療費がかさむ上に、その上さらに交通費がかさむというのは、経済力の弱い若い家庭にはずいぶん負担じゃないかしらと心配になります。  それから、これはお友だちの例なんですが、自動車交通量が非常に多いところなものでございますから、距離的にはそんなに遠くないのですが、危険を避ける意味で、子供バス通学をさせている方が多いんですね。そうしますと、バス値上げというのは、せめて通学バスだけでも値上げしないでもらえないかしらなんという声も出ております。いずれにいたしましても、おふろに行くにも、保健所に行くにもバスにたよらなければならないというのが、この典型的なベッドタウンであるところに住んでいる私たちの環境なんです。  二つの案を見せていただいたんですけれども利用者である私どもにとりまして、そうした経済的な負担もあるけれども再建されることによって、私どもが切実に望んでいるきめのこまかい運行とか、それから深夜や早朝も使えるだろうかという、その悩みが解決してもらえるのだろうか、そのところが私はどうしても知りたいし、私にはまだよくわからないのです。その意味では、利用者の側から見て、どういう再建というか、バス公営地下鉄がどういうふうにあってほしいかということは、利用者の側ももっと深めて考えていかなければならない問題だということをしみじみ考えさせられました。  私はマイカー利用していると申し上げましたけれども家計簿からマイカー費をちょっと計算してみましたが、そうしたら、私の車は千CCの小さな車の中古車なんですけれども、去年、四十七年は、全部合計しまして十五万二千九百円かかっております。それから、おととし、四十六年では十九万七千三百円かかっておりました。バスタクシーが気軽に利用できればマイカーがなくても済むのにということを主人といつも話し合っているのでございますけれども通勤時にバスがすごくこむこと、ダイヤが少なくて積み残しがあること、それから、深夜の足や年寄りの足が確保されないということから、やはり、どうしてもマイカーにたよってしまっているのです。ですけれどもマイカーにたよらないで済む方法があるならば、そして、マイカー費用が何らかの形でもって公営企業にプラスされていくならば、つまりは、利用者立場から見て、これからの公営企業がどういう形にあるのかがはっきりわかれば、私どもは、値上げを含んだこれからの再建方法についても、もっと具体的に考えることができるのじゃないかという気がいたしました。その意味で、利用者の側にとってどんな再建がされるのか、それからどんな審議がされるのか、これはくれぐれも皆さま方にお願いしたいと思っております。  たいへんつたないことでございますが、述べさせていただきました。(拍手
  6. 上村千一郎

    上村委員長 以上で両参考人の御意見の御開陳を終わります。     —————————————
  7. 上村千一郎

    上村委員長 これより、両参考人に対しまして質疑の申し出がありますので、順次これを許します。愛野興一郎君。
  8. 愛野興一郎

    愛野委員 私は二、三点につきましてお伺いをいたしたいと思いますけれども、若干お話と重複する点があるかもわかりませんことを前もっておわび申し上げておきます。  まず、鈴木先生にお伺いをいたしたいのですが、今日、交通、特に陸上交通の面におきまして、従来観念的に認識をいたしておった陸上交通態様と申しますか、状況とまるっきり変わっておる。たとえば京都市の電車バスを見てみますと、電車は、もう四十一年度から、収入そのもの人件費よりもはるかに少ない。言いかえれば、人件費に埋没をしておるわけであります。ですから、これはもうまるっきり状況が変わっておる。また、バスのごときは、これも収入そのもの人件費よりもはるかに少ないわけでありまして、しかも、採算路線は、全部の系統が四十八系統であったと思いますけれども、そのうちわずか三本であって、あとは全部不採算路線である。こういう状況は、日本の全体の陸上交通に、公営民営を問わず言えることであるというふうに私は考えるわけであります。  そこで、今日採算が合う路線は別といたしまして、不採算路線であるからといって、民営であるといえども、これはもう運輸省がとうてい廃止認可をしてくれるわけにはいかないような社会情勢であります。ですから、民営はもう倒産する以外にない。また、公営企業は、地方公共団体、国に対する財政援助を仰がなければいかぬ。こういうような状態でありますから、陸上路線交通考え方について、これは不採算路線であるからというわけでやめるわけにはいかないのでありますから、いままでに、法的にも、学問的にも、あるいはまた認識的にも、全然過去の歴史的経験もない新たな態様考え方を少なくとも生み出す必要があるのではなかろうか。たとえば、日本列島全体の不可欠なる路線については、これはもうまるまる国でやるとか、そういうようなこと以外に方法はないのではなかろうかと考えるわけでありますが、そういう点について先生の御意見をちょっとお伺いいたしたいと思うわけでございます。
  9. 鈴木武雄

    鈴木(武)参考人 ただいまの御意見、私も全く同感でございまして、現在、陸上交通態様が非常に激変しておるということはお話しのとおりでありまして、この問題は公営交通事業だけの問題ではございませんで、民営交通事業、営団といったような企業主体による交通事業、それから国鉄、私鉄というすべてにわたりまして、さらに、そういう大量交通輸送機関のみにとどまらず、国の道路建設政策と申しますか道路政策、これともあわせまして、全体としての交通体系の確立といいますか、そこでそれぞれどういう分担をするかということがほんとうに焦眉の急になっておると私は考えております。  それで、交通体系の整備についての方策も大体一応立てられたわけでありますけれども、何しろ、それぞれてんでんばらばらに行なわれているというのが実情のようでございまして、公営交通事業問題だけをどういたしましても、そのほかのいろいろな問題との関連において非常にむずかしい問題があるということは私も非常に痛感いたしておるところでございますが、とりあえず、公営交通問題が非常な危機におちいっておる。これは、結局、市民の足の問題でもありますので、これについての財政健全化の方策は、少なくとも急いで確立していただきたい。しかし、これだけですべてが解決するということではなくて、あらゆる交通輸送機関というものについての有機的な、統一的な、体系的な政策がすみやかに確立されることを私は希望いたしておる次第でございます。
  10. 愛野興一郎

    愛野委員 時間が限定されておりますから、一括してお伺いをいたします。  鈴木先生に再度お伺いいたしますけれども、先ほどの行政路線のお話しは私どもも全面的に賛成であるわけでありますけれども、この行政路線が今回予算に計上されなかった、あるいは法律に盛られなかったというのは、行政路線基準と申しますか、認定について、たとえば、市町村長あるいは知事というふうなところでそれを認定をするのか、そういうふうな点が煮詰まっておらなかったからだと思うわけでありますが、この行政路線基準を、先生のお考えではどういうふうにしようと思っておられるのかが第一点。  それから、もう一つは、結局不採算路線であっても、唯一、不可欠のバス事業であるわけであって、しかも、家計費にきわめて影響のある運賃はなかなか上げにくい。また、運輸省、経済企画庁でもそう簡単に今日上げるわけではありませんから、したがって、この辺のかね合いを、行政路線に対しては、運賃の面と、国、都道府県等の財政面との考え方として、一般路線のいわゆる運賃の認可率と若干変化を持たせて認可をさせるべきだろうというふうにお考えであるのか。この二点。  それから、時間がございませんから、佐藤先生にお伺いをいたしたいと思うわけなのでありますけれども、先ほどの川崎市営バスの場合において、運行本数あるいはダイヤ編成における組み方の問題等々について、地域住民の方の利便とはきわめてかけ離れたダイヤが組まれておる。そういうようなことは公営交通としての使命から逸脱をしておるというふうに私は考えておるわけであります。たとえば、陸上交通の場合においては、ダイヤ編成の際には、路線住民の方とのダイヤ編成に対する懇談会、あるいは常時ダイヤに対する、時間帯に対する苦情等を受け付けて処理をしておるというのが、今日、陸運当局から行政指導を受けておる陸運事業のあり方であります。そういうように基本的に地域住民と密着をしていかなければならない公営交通がそういう地域住民の方の声を聞いておらぬということであれば、運輸行政の面から見ても、これは非常にゆゆしき問題であるというふうに私は考えます。日本の多くの企業が、ダイヤ編成時あるいはまた時間帯の問題については、乗降客の推移調査を常時行なっておるわけでありまして、お客さんがダイヤ本数が足らないと言う場合には、苦情処理を受け付けて、そしてダイヤ編成をするということで行政指導を受けておるわけであります。ですから、そういう公営交通としての使命を十分達するように公営交通のほうもしてもらわなければいかぬと思うわけでありますが、そういうダイヤ編成時における事前の乗降客の調査なり、あるいは時間帯に対する苦情の受け付けなり、あるいは乗客に対するサービスに対するいろいろな苦情等の受け付けばしておられるのかどうか。その点お伺いをいたします。
  11. 鈴木武雄

    鈴木(武)参考人 いま御質問のまず第一点は、行政路線の件についてでありますけれども、これは理論的に申しまして、行政路線というものを、つまり、いま不採算路線ではあるけれども、その運行を維持することが公共的にどうしても必要な路線というふうに定義いたします場合、その行政路線というものを維持していく上において生ずる企業赤字は公費で負担して、その行政路線運行を維持させるということが必要であることは当然のことなのでございます。ただし、この場合、お話にもございましたように、行政路線というものをどのように認定するかということが技術的にも非常にむずかしい問題でありまして、それがいいかげんでありますと、何もかも行政路線だということになってしまいまして、際限がないことになりますので、そこに歯どめを設けるということが実際問題として必要なのであります。そのために、単にその路線採算赤字であるということだけで行政路線と認定するのでなくて、そのほかにいろいろな要素を入れました客観基準を設けて、それによって認定された行政路線赤字については、これは企業負担させるべきではなくて、公費でこれを負担すべきであるというのが私ども意見でございます。しかし、これが成案を得る過程におきまして、ほかの役所の反対とか、いろいろありました。これは、私は別に財政制度審議会というところの委員をいたしておりまして、そこでもこれが非常に問題になりまして、私、孤軍奮闘しましたが、多くの反対の意見がありまして、とうとうこれは成案にはならずに、先ほど申し上げましたように、バス車両購入費の二分の一を補助するということで、今度の予算に十四億円が計上されたのであります。  どういうところで認定をすべきであるかという御質問でございましたが、これについては、私は特に行政上の専門でもありませんので深く考えてはおりませんけれども、あるいは都道府県知事でありますとか、国も入った適当な機関を設けて認定するとか、いろいろなことが考えられますが、いずれにいたしても、客観的な基準をまずきめまして、それに従って認定した路線は、その赤字を公費で負担するということが望ましいと思うのでありますが、結局、経常赤字の補てんということが問題とする人にとっては問題になったと思われるのでありまして、そこで、設備費、施設費の一部としてバス車両の購入費の二分の一を補助するということになったのかと思います。何にもなしで、認められないよりは、バス車両購入費の二分の一の補助が得られたということは、不十分ながらも、何もないよりはまだけっこうだと考えております。  それから、料金の点についての御質問でございましたが、この不採算路線、つまり行政路線赤字だから、それを存置しておく以上は、その料金を一般の料金よりも高く取っていいんじゃないかという意見が一部には確かにございます。しかし、そういう行政路線というような、本来不採算路線料金を高くいたしますと、よけいに赤字を増大させるだけのことになろうかと思うのでありまして、そういう方向で行政路線を維持することは、これは行政路線ではないともいうことになると思いますし、やはり、行政路線というものについては、できればこれはきびしい客観基準で歯どめを設けた上で、将来公費で負担するという方向にしていただきたいと私個人としては考えておりますが、現在のところそれがかないませんで、まあ車両購入費について補助が得られた、こういう段階でございます。
  12. 佐藤順子

    佐藤参考人 川崎市の場合でございますけれども住民と当局との話し合いの場はあるというふうに私も聞いておりますし、その委員の方の名前も知っておりますので、そういう声は十分くみ上げられているとは思います。事実、私が四年前に引っ越してまいりましたときといまとを比べますと、本数は確かに多くなっております。そして、ときどきダイヤもふやされておりまして、いま私の手元にございますのは四十七年の九月に改正されたものでございますが、その市当局の努力は決して認めないというのではございません。ただ、それに対しての私どもの要求のほうがオーバーなんだと言われてしまえばそれまでなんですけれども団地がふえることとか、私ども主婦といえども、時間に追われて、どこの会合に何時までに行かなければならないという機会が非常に多くなりまして、そういった形での要望に沿ってもらえないということにたいへん大きな悩みを持っているわけでございます。
  13. 愛野興一郎

    愛野委員 どうもありがとうございました。
  14. 上村千一郎

    上村委員長 次に、山本弥之助君。
  15. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 鈴木先生にお伺いいたしますが、私、研究会報告書も読ませていただいておりますが、過去の再建計画の失敗にかんがみて、一応前進した答申が出ておると思うのでありますが、ただ、先進諸国もそうだと思いますけれども公営企業法の独立採算制という考え方を大きく転換して、行政サービスに重点を置くんだという考え方に徹しなければ——料金の問題も必要でありますが、そういう考え方に立って公営交通を見てまいりませんと同じようなことを繰り返すにすぎないんじゃないかという考え方をするわけでありますが、この点、先生の御意見を承りたいと思います。  それから、第二点は、行政路線の問題でありますが、これは、ただいまの愛野さんの質問に対しましての先生のお考え方は、車両購入費というようなことでお茶を濁すべきではなく、あくまでも、それは行政サービスの充実ということで、公費負担にすべきだということでした。地方公共団体が持つにしても、国が持つにしても、もし国の持ち方が少ないということであれば、当然、地方公共団体一般会計の財源の充実をはかるべきじゃないか、公営交通の行政サービス的な性格を持たせることに関連して、その充実を積極的にはかるべきじゃないかというふうに私は考えるのでありますが、この点は、先生の一応のお考え方はわかりましたので、私どもも同感であります。やはり公費負担で——この問題は、いわゆる企業サイドでのダイヤの改正とか、あるいはサービスが後退するということになるわけでありまして、そのことのないような配慮ということのお考えを承って、力強く感じております。  それから、第三点は、地方都市は別でありますが、大都市におきましては、今後は地下鉄が根幹をなしていくと思うのであります。この地下鉄の助成について、研究会の答申は、一応、国、地方一般会計で、建設線については三分の二という考え方に立っておるようであります。建設費が急速にふえていっておる、上昇しておる、これは経済全体のたてまえだろうと私は思うのでありますけれども、こういう情勢下においては、地下鉄建設につきましては、いわゆる公共事業の道路並みに、長大橋の建設のように、四分の三とか、そういった助成をある程度国がやるべきである。そして、地下鉄経営健全化と、それに関連する補完的な役割りのバスとの関連を健全化していくということが必要ではないか、三分の二ということは、再建の際にもっと強化しなければならぬ、かように私は考えますが、この点についての御意見を承りたいと思います。  それから、佐藤先生にお聞きしたいと思うのですが、私、お話を承っておりまして、バス利用者の立場から非常にごもっともな意見を拝聴したわけでありますが、その基本は、いま申し上げましたように、あくまで企業としての採算をとるということであれば、従事者の賃金を圧迫するとか、料金を高くするとかいうこと以外にはないわけでありますが、どうしても地域住民のサービスに重点を置くということでなければならないと思っております。そうなりますと、よく言われますように、市民の税金で一部の人にサービスすることは企業の性格にはずれるという議論が出るわけでありますが、私は、地域へのサービスは、地域住民の足を守るという交通は、そういった考え方でなくて、あくまでも、できるだけ地域の人の足を守ってあげるという、いわゆる行政サイドから考えなければならぬと思うのであります。そういう意味で、いわゆる税金浪費論ということに対しての意見がよく出るわけでありますが、これに対しての、一般の市民の税金を使っても、料金の問題は、ある程度まで適正な料金でなければならぬという、この考え方について御意見を承りたいと思います。  なお、これはちょっと私の思いつきなんですが、都心地と団地を結ぶ関係は、いわゆるラッシュのときと、それから閑散なときがあるわけなんですね。それで、閑散なときの利用も、ある程度まで利用者利用していただくということが必要なので、この場合に、料金を多少安くすれば利用者がふえるものかどうか。それから、早朝とか深夜の利用ということになりますと、それだけサービスが行き届くわけでありますが、やはりそれも経費の問題に関連するわけであります。そのときの割り増し料金ということが消費者に納得いけるものかどうか。これらを、利用者立場から御意見を承りたいと思います。
  16. 鈴木武雄

    鈴木(武)参考人 ただいまの山本さんの御意見は、第一点は独立採算制の問題でございまして、山本さんの御意見ごもっともと思いますが、この独立採算制の問題につきまして、私個人として考えておりますのは、経常経費については、少なくともこれは経常収入によってまかなう。この独立採算制ということばにつきましては、その中身が解釈によっていろいろ違いますけれども、経常経費については経常収入でまかなうたてまえ、これが独立採算制である。それで、資本的な経費につきましては、その企業が非常に公共的な性質を持っておるというような、行政サービスというものと密接に関連しておるという場合に、この資本費については、経常収入でまかなうというか、普通の民間企業と必ずしも同じシステムでなくともよろしいんじゃないか、その公共的性格、行政サービスという性格、それによるところの財政上の援助といいますか、それは、原則としては資本費に対して行なわれるべきものではないか、このように私は考えております。  それで、行政路線につきましては、これは経常経費の赤字援助の問題でありますけれども、これは先ほどからも申しましたように、行政路線そのものは、一つ企業路線とは言えない面をたくさん持っておって、どうしてもそれは公共的に維持しなければならない。これは、経常経費を公費で負担する、全部でなくとも援助するということがあってもよろしいのではないか、このように考えているわけでありますが、行政路線につきましては、先ほど、私と同様の御意見をお述べになりました。  もう一つ地下鉄でございますが、地下鉄財政につきましては、私どもは、建設工事費が非常に大きいのだから、これの三分の二を、国と地方公共団体一般会計がそれぞれ二分の一ずつ建設時に一括して補助するという提案をいたしたのでありますが、この提案におきましては、建設工事費の六六%、これは大体三分の二と見てよろしいが、これを国と地方公共団体一般会計がそれぞれ二分の一ずつ補助するという点では同じでありますけれども、それを六年分割で補助するということになっておりまして、この点が違うのでありますけれども、これは、私は、ほんとうは一括補助にしていただきたかったと考えておるのであります。  それから、山本さんのお話しは、地下鉄建設というようなことは道路並みに考えていいのじゃないか、たとえば、道路の建設については三分の二の国庫補助がある、だから、地下鉄についてもそれと同じように考えていいのではないかという御意見でございまして、これは、私は、個人としては同感でございまして、私ども研究会におきましても。それに近いような考え方を出しているのでありますけれども、これは、都市計画とか、いろいろなものとの関連において考えなければならない問題でございます。地下鉄建設費は、これはさっき申しましたように資本費補助でございますが、建設費については、現在はこの程度でやむを得ないといたしましても、今後もう少し前進させていただきたいと、私個人としては考えております。
  17. 佐藤順子

    佐藤参考人 公営交通が、地域住民へのサービスといいますか、足であるということについては、全くそのとおり私はお願いしたいのでございます。そして、そのための維持が税の浪費になるだろうかと私も考えてみたのですけれども、確かに個人個人の負担能力は違いますし、たいへん負担能力のある人間が三十円なり五十円なりで乗っていくというのは、ある意味ではアンバランスなことであるかもしれませんけれども、しかし、だれもが利用するという意味では、公の形で、税金の形で一定の限度を負担していただいて、私ども消費者が納得できる形で適正な料金負担することには決してやぶさかではないと思っております。私個人の家計簿を振り返ってのことですが、先ほど申し上げましたように、十数万円もマイカー費に払っていて、これは全く足代であることを考えますと、これが何かの形でバス代に組み入れられていくのならば、バス代がもっと安く結果的には利用できるのじゃなかろうかということを感じないではいられないわけなんです。  それから、都心団地を結ぶラッシュの時間外が閑散だということでございますけれども、事、私どもが住んでおりますベッドタウンに関しましては、あまりそういうことはございませんで、昼間もけっこうこんでおりまして、赤ちゃんをおんぶした奥さんがバスにゆられて立っているというのはざらなんでございます。料金は、安い高いよりも、その前にもっとたくさんきめこまかく運行してほしいということで、料金が安くなれば利用するかというよりも、現在の料金でいいから、あるいはかりに四十円になったとしても、その料金でいいから、もっとたくさんほしいというのが切実な願いでございます。  それから、早朝とか深夜の料金についてでございますけれども、私も、この場に出ますについて、  一人では心細いので、近所の奥さんにいろいろな意見を聞いてみましたが、皆さん、早朝や深夜は、五十円あるいは百円かかってもいいから、足を確保してほしいという方も決して皆無ではなかったのでございます。
  18. 上村千一郎

    上村委員長 次に、林百郎君。
  19. 林百郎

    ○林(百)委員 鈴木参考人に三点ほどお聞きしたいと思います。  地方公営交通事業が、自治省でも、第一次再建計画の破綻に対する反省として、危機寸前にあるということばが使われておるわけなんです。それは、政府が危機寸前というようなことばを使うということは、よほど深刻に受けとめていることだと思うのです。そういう中でこれを再建するには、普通言われているのは、企業内の努力と企業外の努力ということを言われているわけですけれども、第一点として、企業外の努力ですけれどもたとえばモータリゼーションとか、あるいは無政府的な都市への人口の集中、そういう企業外地方公営交通企業を危機におとしいれている要因を取り除くようなことが、地方自治体として一体できるものであろうかどうか。それは、もちろん、政府のそれぞれの機関に要請することはできますけれども、国の政策として、国の責務としてこういうものを取り除くようにしなければ、地方自治体の力ではとうてい及ばないと思いますが、その点をどうお考えになっているかという点が一つ。  それから、独立採算制を廃止したらいいという意見、これはもちろんわれわれも賛成でございますが、問題は、それならば、一般会計から再建事業特別会計へ補助を出した場合に、御承知のとおり、地方自治体の財政というのは弾力性がないわけなんですから、それを何らかの形で埋めなければ、今度は他の単独事業のほうへしわ寄せが行くわけなんですね。だから、独立採算制を廃して、一般会計から公通事業再建特別会計への元利償還の繰り入れをした場合に、繰り出しをした一般財政を埋める何らかの方途を国の責任において考えなくていいのだろうか。そういう点、いろいろ意見がございますけれども、これは先生十分御承知ですから、私のほうからは申しません。  それから、先生の議長をやられました報告を拝見しましたが、受益者負担のうちの間接受益者ですね。この間接受益者の利益というものは一体どのようにして計算できるものなのか。そして、その計算できたものについて、どのような徴税技術、徴収技術を具体的にお考えになっておられるのか。その点を説明していただきたいと思うわけです。  それから、佐藤参考人にお聞きしたいのですが、佐藤さんのお住みになっている環境がわからないので、どうもはっきりしないのですけれども団地がふえているというお話がありました。この団地というのは、一体市が計画的につくった団地なのか、あるいは、民間のデベロッパーがつくられた団地なのか、どちらなのか。そして、その団地ができたときに、そこへお住まいになる方は通勤者が多いと思いますけれども、その団地にお住みになるときに、通勤者の方々が、その責任者、市営住宅ならば市当局、あるいは民間のデベロッパーが建てた団地なら、その民間デベロッパーとの間に、足の確保についての話し合いが一体あったのかなかったのか、あってなおそれが受け入れられなかったのか、受け入れられなかったとすれば、どういう事情で受け入れられなかったのか、その辺をちょっと聞かしていただきたいと思います。  以上です。
  20. 鈴木武雄

    鈴木(武)参考人 ただいまの林さんの御質問にお答えいたします。  第一点は、公営交通事業環境改善が十分行なわれない限り、危機の打開はなかなかむずかしいんではないかという御意見でございますが、これは、私も全く同感でございまして、地方自治体の努力だけでは、モータリゼーションの問題とか、そういったことにはどうにも手が及ばないのでございまして、これにつきましては、単に地方公営交通事業の問題としてでなしに、もっと大きな国の政治の問題として強力に進めるということが必要であろうかと私も考えております。ただ、この公営交通事業財政健全化の範囲内におきましては、これは役所の権限の関係もございましょうし、いろいろな点で、そこまでははっきり言っていないのですが、申し出ることができるという以上に、国はそういうことにもっと努力すべきだということがあってもいいんではないかと思います。  それから、独立採算制の問題でございますが、独立採算制についての考え方は先ほど山本さんにお答え申し上げたとおりでございますが、林さんの御意見では、独立採算制をやめる方向を進めた場合に、地方公共団体一般会計財政が非常に苦しくなる、財源問題が非常に生じてくるということで、これはお説のとおりであろうと思います。これも公営交通事業健全化の問題と間接には関係がありますが、直接には関係がないので、この法案では、それは問題として取り上げられないのは当然でございますけれども、これを離れまして、この公営交通事業の問題にかかわらず、そのほかのあらゆる問題におきまして、現在のわが国の国と地方財政構造と申しますか、それにはかなり思い切った抜本的な改善を施して、地方に対してもっと財源の配分を強化するということが当然必要なことであろうと、私もかねがねそれは主張してきておるところでございます。特に、これからの国民福祉の充実ということが、政府も民間もすべて大きな看板になってきた現在におきましては、結局、そういうことの直接の第一線の実施機関は地方公共団体でありますので、そういう点から申しましても、これまでの国と地方の財源配分構造というものは根本的に再編成を要するんではないかというふうに考えております。  それから、開発利益その他、いわゆる間接受益者負担ですが、これは開発利益と、それからそれの一つにもなりましょうが、沿線の地価の騰貴による地主の利益、それから、遠隔地からの通勤が確保されることによる都心地の事務所事業所利益というようなものが間接受益者負担ということになろうかと思います。これの測定をどうするかという御質問でございまして、これは率直に申しまして、私も、なかなかむずかしいことだと思います。どこまでが路線との関係における間接受益であるかということはなかなかむずかしい。この測定につきましては、やはり、いろいろ研究を要するものであろうかと思います。  それから、その徴収方法でありますが、そういう間接受益者を企業に直接に内部化するということは、いろいろな点でむずかしいのではなかろうかと思います。私鉄が沿線団地開発しているというようなことは、主体が同じでありますから、ある点で内部化ということが行なわれておるわけでありますけれども公営交通企業につきましては、間接受益を直接に内部化するということはなかなかむずかしいことだろうと思いますので、結局は、これは、税の方法で徴収する事務所事業所税の創設ということが伝えられておりまして、まだ実現はされておりませんけれども、この事務所事業所税の創設をして、企業に補助金その他の形で税収を還元する。それから、沿線の地価の騰貴を路線との関係でどこまで見るかということは、先ほど申しましたように、非常に技術上むずかしいことですが、それをある程度見た以上は、固定資産税の上のせといいますが、そういう形で、税としてこれを徴収して、そしてそれを企業に還元するというような徴収方法は、直接内部化は非常に困難で、特に公営企業については困難でありまして、一応、その地方公共団体の税として間接受益を徴収して、そしてあらためてそれを企業に還元するという、間接的な内部化と申しますか、これよりほかにちょっといい方法はないんじゃないかと考えております。
  21. 佐藤順子

    佐藤参考人 ふえております団地は、公営も私営も含めてでございます。  その団地方々が当局と話し合ったかどうか、私は実は存じませんのですけれども、私の家の近所にできました公営団地の場合、入居が始まって——記憶がはっきりいたしませんが、一年たっていなかったかと思いますが、ダイヤの改正が行なわれておりましたので、もしかしたら、その辺で話し合いが少し行なわれて、その結果多少本数がふえたのかとも思います。ただ、団地がふえていないところでも非常にバスがこんでいるのです。私の住んでおりますところから登戸に出る場合なんですけれども、始発の駅ではそんなにこんでおりませんが、たいして団地のないところですが、朝のラッシュ時は、途中まで行きますと満員になってしまって、いままでは乗れていた住民の人たちが乗れなくなってしまって、不満が非常に強いと聞いております。団地ができなくても、一戸建ての家とかアパート等が非常にふえているのではないかと思っております。
  22. 上村千一郎

    上村委員長 次に、小濱新次君。
  23. 小濱新次

    ○小濱委員 鈴木先生にまずお尋ねをしたいと思います。  先ほど、企業外環境改善について大いに努力してもらいたい旨の先生からの御発言がございました。そこで、二点ばかり、基本的な問題ですからお尋ねしたいのですが、先ほどもお話がございましたように、時間のロスということですが、現在は、走りたいけれども走れないという現状になっているわけですが、これがまた合理化対策の根本原因というふうにも考えておるわけでございます。そこでお尋ねしたいことは、自動車の生産と販売ということについて、やはりこの辺に根本問題があると考えておりますので、この点についての御意見が一点。それから、バス及び軌道電車などの公共輸送機関の有効通行という問題についての、道路使用方法についてです。道路の使用方法ということについての、バスと軌道電車などの公共輸送機関を有効通行させるための御意見。この二点についてお答えをいただきたいと思います。  さらに、佐藤先生に申し上げますが、時刻表どおりの運行ということ、あるいは、なおきめこまかな運行の必要性ということ、あるいはまた、適切な料金ということ、あるいはまた、深夜運行の実現、時間のロスということ、こういう大きな悩みをいろいろと御意見としてお伺いしたわけでございますが、その中で、利用者は、なぜこうしたことが実現できないのか、それが知りたいのだ、また、要望が満たしていただければ料金の問題も理解できるのではないか、こういう御意見でございました。これは私ども十分に伺いましたので、今後努力をしていきたいと思います。  そこで、お尋ねをいたしたい点は、深夜運行の実現を要望されましたが、その場合に、私営のものと市の公営のものとがあろうかと思いますが、これは運輸省の問題にもなりますけれども、最終時間は、どういうふうに私営と市営とがなっているのか。その辺のところを、具体的にお知りならば、御意見とあわせてもう少しお伺いをしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
  24. 鈴木武雄

    鈴木(武)参考人 ただいまの御質問の第一点は、自動車に対する政策についてでございました。これは、私は交通自体のほうの専門家ではございませんで、財政のほうが専門でありますので、財政再建の問題として研究会の座長もお引き受けしたわけでございまして、そういう交通そのものについてのことはしろうとでございますので何とも言えませんけれども、私のしろうとなりの考えといたしましては、これまでの自動車に対する国の政策は、野放図というか、過保護といいますか、奨励のし過ぎといいますか、そういう行き過ぎがかなりあったと思います。そのために、公営交通のみならず、排気ガスの公害の問題でありますとか、交通事故による問題でありますとか、いろいろな問題がいま山積していると思いますので、この自動車対策ということは、交通の規制ということももちろんもっと必要でありまして、これはどちらかというと警察のほうの所管の問題であろうと思いますが、それを大いにやって、先ほどお話がございました大量公共交通機関の優先走行ということをもっともっと確保していただくということと、そういうことばかりでなしに、自動車そのものにつきまして、国としては、道路事情とかいろいろな点との関連において、いままでのような野放図なやり方をもう少し考え直していただきたいというふうに個人としては考えております。  道路使用方法の問題も、お説のように、大量公共交通機関が優先使用できるような体制をできるだけはっきり打ち立てていただきたいと私としては考えておりますけれども、これも、公営交通事業そのものではなくて、むしろ、企業外環境改善の問題で、役所としましても、ほかの役所に関連する問題であろうかと思いますが、ほかの役所も、こういう点で、公共大量交通機関の優先使用ということをもっと進めていただきたいと考えております。
  25. 佐藤順子

    佐藤参考人 深夜運行の件でございますけれども、私の住んでおりますところは、川崎市営バスのほかに小田急バスが通っております。その小田急バスの場合は、いま手元にありますダイヤとはちょっと変わっておりまして、私、きょうはっきり調べてくるべきだったといま思っておりますけれども、向ケ丘遊園駅からわが家のほうに出ますバスが非常に繰り上がりまして、私の記憶では、八時のごく終わり、あるいは九時にかかっていたかもしれませんが、とにかく、そのぐらいのあたりでもって最終バスが終わっているように記憶しております。これは私営のバスでございます。したがって、これは本数も少ないので、あまり当てにできないわけです。  公営バスの場合は、一番すいていて、比較的使える田園都市線宮前平からわが家のほうに来ますバスの最終が、駅を出ますのが十時三十五分ぐらいが大体最終でございます。ということは、たとえば渋谷でしたらば、九時四十分には渋谷発の電車に乗っておりませんと最終バスに間に合わないおそれがあるわけです。都内に出ますには、さらに三十分を加算したり、あるいは、私ども主婦の場合はそれでも時間の調節ができますけれども、一番困りますのは、やはり、残業とか、仕事で不規則に帰ってまいります主人などが、このバスがなくなってしまうとどうにもならないという状況に置かれてしまうわけなんでございます。
  26. 小濱新次

    ○小濱委員 ありがとうございました。
  27. 上村千一郎

    上村委員長 次に、折小野良一君。
  28. 折小野良一

    ○折小野委員 時間も来ておりますので、簡単に御質問いたします。  まず、鈴木さんに、お伺いいたしますが、旧再建計画が失敗をした原因の一つに、料金改定がタイムリーにできなかったということをあげておいでになります。この料金改定につきましては、手続上いろいろ問題がございまして、その簡素化を要望するという声も非常に高いのでございますが、この料金改定についての先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。  それから、次は、佐藤さんにお伺いいたしますが、現在お住まいのところから、従来、バスを使い、あるいは電車を使ってお出かけになっておったが、それをいまマイカーを使っておいでになるということでございますが、バス電車を使ってそこまでおいでになる時間と、マイカー利用しておいでになる時間と、その時間をちょっとお教えいただきたいと思います。
  29. 鈴木武雄

    鈴木(武)参考人 料金改定の簡素化の問題でございますが、私どもといたしましては、これは地方公営交通事業でありますから、地方公共団体の議会においてそれを審議して議決する、その前に、住民を集めた公聴会のようなものを開いて、十分住民意見も聞いた上で、地方議会でそれをきめた以上は、中央関係官庁へは届け出にする。しかし、いろいろほかの交通機関との関係もあり、また、一般に、物価政策とか、そういうような国の政策との関連もあるでありましょうから、届け出だけで自動的に有効になるというのでなくて、ある一定期間だけおく、そして、調整について、中央政府が何らかのことをするという、こういうような提案をいたしたのでありますが、これも、御承知のように、各官庁間のいろいろな問題がございまして、結局はそのとおりにはならないことになったのでありますけれども料金改定はできるだけスピーディーに行なえるように、タイムリーに行なえるように——中央で長いこと引き延ばされたということが、四十六年でしたかの公営企業赤字の大きな原因にもなっておると考えられますので、できるだけこれは簡素化することと、それから迅速化することですね。ただし、地方公共団体の段階では、できるだけ公聴会等を通じて住民意見を聞く、地方議会で審議、可決する、こういうことにしていただきたいというふうに考えております。
  30. 佐藤順子

    佐藤参考人 都心へ出ますのに、たとえば私の家からは、東名の高速道路を使いますと、約三十分で来られます。ただし、これは渋滞がない場合でございます。それから、電車で参りますと、銀座へ出るのには一時間半を見ておりますが、普通、私どもは、御近所の奥さまと話しますときに、「乗ってしまえば一時間ね」というふうに話しておるわけでございます。主人の実家が新宿でございますが、そちらも車で参れば三十五分から四十分。ウイークデーは使いませんので、休日に、普通に車が流れている場合でございます。いずれにしましても、電車で来る場合は一時間半を見ているわけなんでございます。
  31. 折小野良一

    ○折小野委員 ありがとうございました。
  32. 上村千一郎

    上村委員長 以上で、両参考人に対する質疑は終わりました。  鈴木参考人佐藤参考人には、御多用中のところ当委員会出席し、貴重なる御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。(拍手)  それでは、どうぞ御退席ください。     —————————————
  33. 上村千一郎

    上村委員長 ちょっと速記をとめておいてください。   〔速記中止〕
  34. 上村千一郎

    上村委員長 速記を始めて。  引き続き、まず、中西参考人にお願いをいたします。
  35. 中西健一

    中西参考人 この法律案の第一条を見てみますと、法案の目的として、「住民福祉の向上と当該地域における交通の確保」ということがあげられております。この目的を達成するために、公営交通事業の、いわば第二次の経営健全化をはかろうというのが今度の法案の趣旨であるわけでございますが、私は、この法律案を考える場合に、その前提として、二つのことを明確にしておく必要があるのじゃなかろうかと、かように思うわけでございます。  二つのことと申しますのは、まず、これまでの旧財政再建計画というものがなぜ失敗したのか、これが成功しなかった原因というものを反省し、そして、それを検討する必要があるのではなかろうかということでございます。それから第二番目には、公営交通事業の本質といいますか、これと関連をして、今後の公営交通事業というものがいかにあるべきかという、本質とあり方について正しい認識を持つということが前提として必要なのじゃなかろうかというように思っております。  第一の点に関して述べますと、御承知のとおり、地方公営企業制度調査会なるものができまして、その答申に基づいて地方公営企業法というものが改正され、そうして旧財政再建計画というものが行なわれたわけでございますけれども、私は、その前提として、次のような構想があったというように考えております。  その第一点は、路面電車というのは、これはもはや斜陽化しているんだ、したがって、それはなるべく廃止をして、不用となった車庫だとかあるいは営業所などの用地を売却して、不良債務とか、あるいはまた退職金の大半というものをそれによって償うのだ、したがって、国からの補助というものは再建債利子の程度で済むのだというように考えた。それから、第二点としましてはバス事業、これは過疎地帯を除いては、経営の合理化と能率の向上、料金適正化というものによって独立採算制が可能になる、したがって、四十年度末までの赤字を処理すれば、バスの場合には採算がとれるという考え方があったのじゃないか。それから、第三点といたしましては、国の公共料金抑制政策というものは誤りである、適時適率の料金改定が必要だというように考えた。それから、最後には、インフレーションの傾向というものがだんだん弱まってくる、したがって、公営交通の場合にも、賃金あるいは物件費というものはそれほど上昇はしないと考えた。こういったような前提的な構想の上に旧財政再建計画というものが行なわれたのじゃなかろうか。要するに、自家用のモータリゼーションというものの発展によるところの公営交通を取り巻く事業環境悪化というものに対して、適切有効な手段が打たれなかった、それから、インフレの傾向を軽く見過ぎた、さらに国や地方公共団体からの助成が少な過ぎた、こういうことに旧財政再建計画がうまくいかなかった原因があるんではなかろうかというふうに私は考えております。したがって、今度のこの健全化方策というものを考える場合には、いまの点についての反省というものがどうしても必要なんじゃなかろうかというように私は思っております。  第二の点に関して述べますと公営交通事業というものは、公園、学校、消防、道路、あるいは公衆衛生といったようなものと同じく、現在の都市生活には欠くことのできないところの公共的なサービスであります。最近の経済学のことばを使いますと、民間財に対しまして公共財というような概念が出てまいっておりますけれども、そういったような公共財というものとして考えるべきで、したがって、当然のことでございますが、これは独立採算制でもって縛るべきものではない、やはり、公営交通事業経営していくために必要ないろいろなコスト、費用というものは主として公共財源でまかなう、利用者負担は従とすべきものではないかというように考えます。今後必要となってきますところの自家用モータリゼーションを抑制し、そして、公共交通機関というものを維持発展させるためにも、そういったような考え方というものがますます必要になってくるんではなかろうかというように私は思っております。  御承知のとおり、外国の都市交通をとって考えてみましても、ロンドン、パリ、ニューヨーク、シカゴ等、どこをとってみましても、国によって多少の相違はございますけれども、原則として、インフラストラクチュア、つまり基礎構造費というものは公共財源でまかなって、運営費だけを料金、すなわち利用者負担でもって償うという原則が確立しておるというふうに言ってもいいと思います。一例としてロンドンの場合を例にあげてみますと、ロンドンの運輸運営公社というものがございますけれども、これは一九六八年の運輸法によりまして公社の地下鉄建設費、改良工事費、車両購入費、信号施設の取りかえ費、列車制御装置や自動運賃収受機の施設の費用、それからバスの専用道路の建設費といったようなものにつきましては、すべて公共財源でまかないます。その内訳は、国が七五%負担する、そしてあとの二五%が大ロンドン市が負担をするということになっております。ところが、地下鉄の場合には、大体、こういう基礎構造費の公共財源によるところの補てんでもって黒字になっておるわけなんですが、バスの場合には、これでもなおかつ赤字を出しておるところが多い。したがって、ロンドンの場合には、さらに、バスにつきましては、新規のバスを購入するところの費用、それからバスの燃料費の補助というようなものまでやって、公共輸送機関というものを何とか維持しようというふうに努力をしております。  こういったような見地から今度の法律案を見てみますと、私は、かなり不満を禁じ得ないというように言わざるを得ないわけでございます。逐条的にこの問題点を指摘させていただくだけの時間的な余裕がございませんけれども、まず、第一点としまして、再建債利子の補給でございますけれども、これがやはり少な過ぎるんじゃないか。少なくとも、政府案よりは社会党の案のほうがこの点についてはいいというように私は思います。これは、社会党さんだけをほめるわけじゃございませんで、ほかの党からも出ておって、それが政府の案よりもっとよければ、そのほうもほめるわけでございますけれども、残念ながら社会党の案しか出ておりませんので、そう言わざるを得ないわけでございます。  それから、第二点といたしまして、これは先ほど鈴木先生も御指摘になっておられましたけれども再建債の元金の償還を全額地方公共団体負担ということにしておりますけれども、これは先ほども触れましたように、外国の都市交通を見ましても、この元金の償還を全額地方公共団体にまかせておるというようなところはどこもないのでございます。この点については、国が三分の二か、少なくも、公営交通問題研究会報告にもありますように、二分の一を負担するということは当然なのではないかというように私は思います。  それから、第三点としましては、こういうように過去の累積赤字不良債務というものが一応処理されるというようにしましても、今後の公営交通事業経営というものを予想してみますと、これは収支のバランスをとることはかなりむずかしいのじゃないかと思います。なるほど、地下鉄につきましては、耐用年数も非常に長うございますので、長期をとりましたならば、あるいは収支のバランスがとれるというようなことは考えられないこともございませんけれどもバスあるいは路面電車というものについては、今後の収支バランスをとることは非常にむずかしい。したがって、これも先ほど来問題になっておりますけれども、やはり、この行政路線というものに対するところの補助というものは絶対に必要ではないか。この点が今度の法案の中に盛られなかったということについては、たいへん残念だというように思います。ただ、行政路線が、認定の問題そのほかでどうしてもむずかしい、不可能だというならば、バスの車両購入費を、二分の一というようなことでなくて、全額補助をし、それからさらに、先ほど申し上げましたロンドンのように、燃料費の補助もやるというぐらいのことをやらなければ、バスの収支のバランスをとるということはとても困難なのではなかろうかというように思います。  それから、第四番目としましては、これからの路面交通事業の場合には、これも先ほど来御意見が出ておりましたように、公営交通事業を取り巻くところの環境をいかにしてよくしていくかということがたいへん大事なことになってくるわけであります。したがいまして、これはもちろん公営交通事業当局あるいは地方公共団体だけでできることではございませんけれども、しかし、地方公共団体が中心になって、各関係機関に働きかけて、積極的にこれを進めていくということが必要だというように思います。その点につきまして、この法案の第十条の「関係行政機関の長等に対する措置の申出」ということも非常に抽象的で、私には弱いように考えられます。国と地方公共団体のもっと強い姿勢といいますか、これを示す必要があるのではないかというように思います。  それから、その次は、公営交通事業につきましては、企業体ないしは地方公共団体の自主性を尊重するということは、これはもう、世界的に見ましてもそうなっております。ロンドンを見ましても、ニューヨークを見ましても、パリを見ましても、国は、なるほど財政的な援助はかなりやる。しかしながら、その監督とかあるいは運営というようなことについては、事業体ないしは関係するところの地方公共団体にまかすのだというやり方をやっております。したがいまして、私は、そういったような点から考えてみると、わが国の場合にも、地方の自主性というものをもっと尊重する必要があるのではなかろうかと思います。したがって、これは当然運輸行政との関連があるわけでございますけれども、たとえば、料金の問題なんかの場合には、これは水道と同じような形で届け出制でいいんじゃないかと思います。なるほど、民間とのバランスの問題が言われますけれども、これは、地方議会という、いわば間接的な住民の参加というものを通じて市民のチェックを明らかに受けておるわけでございますので、わざわざ二重に運輸審議会にかけて、運輸大臣が認可するというようなことまで必要かどうかということについては疑問に思うわけでございます。  時間が来たようでございますので、私の意見をこれで終わらせていただきます。(拍手
  36. 上村千一郎

    上村委員長 次に、内山参考人にお願いいたします。
  37. 内山敞義

    内山参考人 本日公述の機会を与えていただきましたことを、ありがたく、厚くお礼を申し上げます。  大阪市におきましては、交通機関が社会経済発展の基盤となるものでありまして、また、市民の生活にも必要欠くべからざるものだという考え方から、都市交通を都市経営の重要な要素として取り上げまして、明治三十六年以来七十年、市内交通をみずから経営してまいったのであります。  都市交通の使命というものは、都市圏域内におきます大量に発生する通勤通学の足、及び業務、買いものなどの生活の足を確保することにあると考えております。そのための手段といたしましては、生活環境の維持、向上その他から見まして、地下鉄バスなどの大量輸送機関が最も効率的にすぐれておる、かように考えておるわけであります。  私どもは、都市交通経営の基本的なあり方といたしまして、住みよい、働きよい都市をつくることの基盤として、国鉄あるいは私鉄などの他の交通機関との連携を保ちながら、地下鉄バスの持つそれぞれの機能を生かしまして、バス地下鉄または鉄道を利用したらどこへでも大体行けるというふうな交通網の整備をぜひとも進めていかなければならないと考えているのでありまして、この意味において、都市交通公営交通が中心となって整備することが最も条件にかなったものだと、かように考えておるわけであります。  大阪市では、現在、六路線六十七キロメートルの地下鉄網と、これを補完する約四百七十キロメートルのバス路線とで、一日二百七十万人の乗客を輸送しているのでありますが、その経営状況は、近年急速に悪化をいたしております。中でも、路面交通事業経営難は深刻でございまして、四十七年度末では、運輸収入の約四倍に相当する二百九十二億円、約三百億円に近い累積欠損金をかかえまして、まさに危機に直面しておるのでございます。  路面交通事業財政がこのように極度に窮迫してまいりましたのは、都市構造の変化によります片荷輸送、ドーナツ現象でございますので、通勤が朝夕それぞれ片方が満員になりまして、片方はがらがらになるという片荷輸送、それから乗客のラッシュ時への集中と、閑散時の極端な減少、自動車交通量の激増によるスピードダウンなど、経営環境悪化に起因する輸送効率の低下というものが大きな原因になっております。  このような事態に対処いたしまして、また、同時に、近代都市にふさわしい交通体系への体質改善をはかります意味におきまして、大阪市では、路面電車の撤去を完全に終わりました。四十四年三月でありますが、全廃をいたしました。昭和四十五年の六月にはトロリーバスも全廃いたしまして、大量かつ高速の輸送機関でございます地下鉄網の整備を根幹といたしまして、バスを補完機関としてその整備に力を注いでおる現状でございます。  同時に、この間、積極的に省力化にも取り組みまして、バス車両の全車ワンマン化を実施いたしました。あるいは付属病院を廃止するとか、いろいろなことをやりました。また、三十九年以降におきましては、従業員も一万六千人から、現在は一万一千五百人というふうに、五千人ほどの縮減もはかったのであります。この間、四十二年の八月に、財政健全化をはかるための再建計画を定めまして合理化につとめたわけでありますけれども経営環境悪化がますます著しい状況にございまして、残念ながら、いまなお最終年度に至りまして困っておるような状況でございます。  この再建計画におきましては、乗客数の減少に応じまして、事業規模の適正化をはかりますために、車両数を四十年の千八百四十台余りを、四十七年には千五百五十台というふうに縮減してまいったのでありますが、この車両数の激減につきましては、大都市の交通機関としての公営交通の本来の使命を考えますと、なかなかむずかしいところに来ておるわけでございます。また、先般、料金改定の際に、十数回にわたりまして市民との懇談会、公聴会を開いたわけでありますが、その場合におきましても、先ほどのお話しにもございましたけれども、便利なバス、あるいは定時性のバスというふうなものをサービスしろという声が圧倒的に多かったのでございます。  現在、大阪市では、百十六のバス系統運行しておるわけでありますが、いまやほとんど赤字路線でございます。バスは、主として、地下鉄のサービスが及ばない地域の輸送を担当するものでございますので、地下鉄網の整備とともにますます採算をとることが困難になってきておるわけであります。しかしながら、他に公共輸送機関がない場合には、公共性の見地から、バスの維持、運営をどうしてもはかっていかなければならぬと、かように思うわけであります。  以上、いろいろな経営努力をいたしましたけれども、いま申しましたような事情から経営は困難を来たしておるわけでありますが、ここにもう一つ料金問題でございますが、交通料金というのは、公共料金の性格から、市民生活に重大な影響を及ぼしますので、これを改定いたしますには慎重な配慮を払っております。昨年十一月に、利用者をはじめ皆さま方の深い御理解のもとに、五年ぶりにその改定をはかったのでございます。しかしながら、原価を償う料金を設定しようといたしましても、物価政策等の見地から、この実現がなかなか困難なこともあるわけであります。これは過去の実績が示しております。  このように、公営交通事業経営が非常に困難な事態に直面しておりまして、今後とも公共輸送を確保してまいりますためには、私どもといたしましては、さらに効率的な事業運営をはかりまして経営健全化に努力をしてまいりたいのでございますが、今日の大都市交通財政は、もはや、一つ企業体、あるいは一つの自治体では力の及ばない困難な問題をかかえております。これを解決をいたしますためには、大量公共輸送機関の機能が十分に発揮できるような環境の整備と、企業外からの援助が必要であろうと思います。  これらにつきましては、法律案にも盛り込まれておりますけれども、私どもは、まず、バスの円滑な運行を確保するためには、関係機関において、バス専用レーンの拡大やマイカー規制などが確実に実施できるような措置をお願いいたしたいのであります。  また、財政援助につきましては、過去の不良債務をたな上げして、その元利ともに企業外負担で解消しようということになりましたことは、一歩前進した措置であると考えておるのでありますが、この企業外からの財政援助というものは、国と地方公共団体一般会計からの補助となっております。本市の交通事業に対する一般会計財政補助は、地下鉄事業を含めまして、四十七年度では八十四億円に達しております。四十八年度予算におきましても百十四億円に達しておるような状況でございます。  しかしながら、御承知のように、都市における財政需要はますます増大する一方でございますし、反面、また、市税収入は、都市におきましては、都市的税目に恵まれておりませんので、伸び悩んでおる状況でございます。都市自体が財政難におちいっておるということは皆さま御承知のとおりであります。  このような事情につきましては、当委員会におかれましても十分に御認識をいただきまして、本年度も、地方税法改正案の附帯決議といたしまして、「都市、とくに大都市ならびにその周辺都市における財政需要の増高に対処するため、法人所得課税の強化等都市税源の充実に努めること」ということがうたわれておるわけでございまして、御決議をいただいておるわけでございます。  都市交通は都市住民に不可決なものであること、バス事業の経営難の最大の原因が経営環境悪化にあること、また、本市交通機関利用者の相当部分は市域外からの流入人口であることなどから、都市の経営する交通事業につきましては、都市政策の一環、行政施策の一環であるとしてとらえまして、国の財政援助地方公共団体一般会計に対する財源措置、根本的には、かねがね申しております都市税財政制度の抜本的な改正を実現していただくようにお願いを申し上げたいと存ずるわけであります。  なお、料金の決定手続の問題でございますが、運輸行政全般の観点から、運輸大臣の認可制がとられておりますが、公営交通事業料金は、事業の所有者でありかつ利用者である市民の代表者としての市長及び市議会が、利用者の声を十分に聞きまして、審議を尽くして料金を決定しておりますので、その取り扱いについては、特例として、届け出制を認めていただきますように御配慮をお願いしたいのであります。  以上、私どものお願いしたい点を申し上げたのでありますが、公営交通事業経営健全化は重要であり、かつ、差し迫った問題でございます。その解決が一日おくれればおくれるだけ、事態はさらに深刻の度を深めることに相なりますので、私どもといたしましては、何よりも、その救済措置がすみやかに実現されますことを切望いたしまして、ただいま申し上げましたような趣旨を十分に御理解いただきまして御審議を賜わりたいと存じます。  どうもありがとうございました。(拍手
  38. 上村千一郎

    上村委員長 次に、矢野参考人にお願いいたします。
  39. 矢野康

    矢野参考人 函館市長でございます。  私は、東京あるいは大阪横浜というような大都市とは別に、いわゆる人口三十万以下の地方中都市におきまして公営交通事業をやっておりまして、また違った幾つかの悩み、問題点等もございますし、当市の現状、実態あるいは問題点、さらには、従来まで私どもがとってまいりました施策と、さらにいろいろ御要望申し上げたい点等がございますので、それを申し上げたいと思います。  それで、私ども、今回の政府の御提案に対しましては、年来強く要望してまいりましたことが非常に大きく前進をしたと受けとめております一方、ただいま申し上げましたように、将来の見通しについてはなお多くの問題点があると思います。それから、実際にわれわれ地方自治体の努力にいたしましても限度がございますので、この際、当市の現状を率直に申し上げまして、皆さま方の御理解を得たいと思うわけであります。  函館市は、御承知の方も多いと思いますが、大体、地積が二百五十五平方キロメートル、人口は約二十四万であります。北海道におきましては、恵まれた風土と豊かな資源、あるいは長い資本の蓄積がございまして、いわゆる南北海道の中核都市としての立場にあるわけでありますが、交通事業の最大の基盤をなします人口の問題は横ばいであります。特に、最近におきましては、市内周辺あるいは隣接に亀田市というのがございますが、そこに人口が移動いたしまして、若干人口は横ばいあるいは減少傾向、こういう形が一般的な状況でございます。  当市の電車事業というのは、歴史は非常に古うございます。大正二年に開通をいたしまして、全国八番目にできたわけでありますが、昭和十八年に市営移管をいたしまして、一貫して市民の足としての使命を果たしております。先ほど申し上げましたように、人口も減り、乗客も若干減少しておりますが、それでも、現在、一日平均、大体、電車が八万九千人、バスは六万二千人、合わせて十五万一千人の乗客を運んでおります。民間の関係を見ますと、バスが五万人、あるいはタクシーが八万人、合わせて十三万程度でございますので、十五万一千人というと、はるかに民営バスタクシーを上回っている、こういう状況にございます。  お手元に函館市の交通事業の現況についての資料を配付してございますのでごらんいただきたいと思いますが、現在、電車路線長が十八キロ、車両が七十五両、バスにつきましては、路線長が百二十五キロ、車両数が、乗り合いが百二十九両、貸し切りが三十一両、百六十両となっております。  以下、財務の状況でございますが、収支総計欄に書いてありますように、昭和四十七年に単年度赤字が大体九億三百五十四万円、累積赤字は二十九億九千六百九十万円、不良債務額が総収益の一七四%の二十六億四千九百十三万円と、非常に経営は困難になっております。  これは、確かに、私ども経営に対する責任の問題だとは思いますが、あえて申し上げますならば、私のほうの中都市におきましても、大都市と同様に、モータリゼーションの進行とか、あるいは交通環境悪化とか、運転効率の低下であるとか、これが非常に顕著になってきております反面、賃金上昇率というものは年々非常に大幅でございまして、これが経営悪化させているのではないかと、かように考えております。  この間におきまして、私ども、実は、収支改善のために組合とも十分話し合いをいたしまして、特に、人件費対策としていろいろやってきたわけでありますが、まず、昭和三十年には、五十五歳での定年の協定をいたしました。それから、電車にありましては、昭和四十二年以来、いわゆる不補充という形で人員を押えておりますし、それから、一〇〇%ワンマン化を実施しております。バスも、昭和四十年からワンマン化を実施いたしまして、女子車掌等の問題につきましても、できるだけ採用を抑制いたしまして、やむを得ない場合には、いわゆるパートタイマーという形でそれを補っております。  以上のような結果、大体、四十二年度末におきまして職員数が千五十三名ございましたが、四十七年度末では、約二三%減の八百十二名に減ったわけであります。  しかし、人員だけではなかなか経営改善ということもできませんので、こういう現状を踏まえまして、さらに、四十五年の四月に、部外の学識経験者等を入れまして、交通事業経営審議会というものを設置いたしまして、答申をいただきました。さらに、翌年、部内でございますが、いわゆる関係部局長で内部の委員会をつくりまして、四十七年の八月に一応の結論を得まして、現在、各界あるいは各層に対して、その御理解と御協力を求める努力をやっておりまして、次回の六月定例市議会には一応の諸議案を提出できる見通しでおります。  以上が、現在までとってきた当面の措置と見通しでございますが、今後における物価であるとか、あるいは賃金とか、運賃とか、客観情勢は、見通しはあまり明るくございません。先ほど来お話しがございましたように、企業を取り巻く客観情勢もいろいろむずかしい面がございますので、実際に私ども公営交通をやりながら、何とか公共性の保持をやっていく、公共性を喪失しない前にこの再建をしなければならないという点に非常に苦慮をしているわけでありまして、その意味におきまして、今回の四十八年度の予算並びに法案に対しまして強い御期待を申し上げているわけでありますが、その間において、いままでほかの参考人方々からもお話しがございましたが、特に御要望申し上げたい点を幾つか申し上げたいと思います。  第一は、公共負担措置の強化でございます。これも他の参考人の方からお話しがございましたが、住宅団地あるいは流通団地、さらには学校等の公共施設の新設に伴いまして、路線運行などが企業ベースではとうていできないというような、いわゆる行政路線の問題であります。あるいは、一般路線でもそういう路線がございます。また、当市のように、いわゆる積雪寒冷地におきましては、降雪による路線の問題もございます。そういう除雪費等の問題もございますので、こういう地方団体における負担について国の御措置をお願いしたいというのが第一点でございます。  それから、第二点も同じく、一般会計で、単なる今回のいわゆる再建債等の利子補給の問題だけではなしに、有形無形の、除雪費であるとか、あるいは貸し切りバスの購入であるとか、いろいろな面での負担をやっておりますので、この点、第一項にも関連をいたしますが、地方自治体の財源措置について、ぜひ国で特段の御措置を賜わりたいと思うのが第二点であります。  第三点は、交通職員の給与の問題でありまして、これも、本来的にはもちろん企業の責任において解決すべき問題だと思うわけでありますが、一と二で申し上げましたように、いわゆる交通会計自体の収支あるいは健全化がはかれませんと、一般会計公営交通職員の給与のアンバランスが出てくる。そうなりますと、職員の勤労意欲にも非常に影響を与えますので、できるだけ一般職員と交通職員の給与の均衡が保たれるように、私どもみずからも当然努力をしなければならないわけでありますが、国の、そういう線を御配慮いただいた全般的な財政援助措置というものをお考えいただきたいというのが第三でございます。  第四は、これもすでにお話しが出ましたが、企業環境の整備でありまして、これは関係する各省は非常に数が多いと思うわけでありますが、たとえばバスターミナルの問題、あるいは専用レーンの問題、交通規制の問題等幾つかございますが、いずれにいたしましても、交通環境を整備していくということが運転効率を高める大きな要因になると思いますので、この点、国のお力で何とか環境整備が改善できますように御検討を賜わりたいというのが第四でございます。  それから、第五は、これもお話しが出ましたが、いわゆる料金決定の問題でございますが、私どもも、市民と十分協議をし、さらには市議会等の議決を得て料金を申請するという立場になっておりますし、単に事務の簡素化という問題だけではなしに、市民の一つのコンセンサスなり、あるいは地方議会の議決という比重が相当大きなものと考えられますので、料金決定にあたりましては、地方議会における議決を得られた場合には、ぜひ届け出で料金をおきめいただく、こういう措置ができないものかどうか、この点を強く私どもはお願い申し上げたい次第であります。  以上、五つの問題点を申し上げたわけでありますが、私どもも、これらの問題がいずれもなかなかむずかしいということは十分承知をしております。ただ、私は、年来主張してまいりました公営交通再建に対する今回の法案はいよいよ最終段階になってきたと思うわけでありますが、この成立を契機に、むずかしい地方都市における公営交通再建でありますが、私どももぜひ全力をあげて努力をしたいと考えておりますので、その意味におきまして、以上五点、まことにめんどうな問題かもしれませんが、国会あるいは政府のお力によって、ぜひ、少しでも解決をしていただきたい、かような一心で申し上げたわけでございます。この点、議員の皆さま方におかれましては、ぜひわれわれの要望が実現できますように特段の御配慮を賜わりたい、かように考えている次第でございます。  法案御審議のきわめて重要な時期に私にこういう機会を与えていただきまして、この点厚く御礼を申し上げまして、私の意見開陳を終わらしていただきます。  ありがとうございました。(拍手
  40. 上村千一郎

    上村委員長 次に、小池参考人にお願いいたします。
  41. 小池国三

    小池参考人 横浜小池でございます。  本日は貴重な時間をお与えいただきまして、まことにありがとうございました。お手元に説明資料をお配りしてございますので、この順序に従いまして公述をさせていただきたいと思います。  私ども昭和四十一年の十月でございますが、再建団体の指定を受けまして、以来、今日まで、いろいろと努力をしてまいりました。その結果、横浜の市営交通の現状、そして財政事情はどうなっているかという点については、お手元の資料に記載をしてございます。時間の関係もありますので、内容の説明は省略をさせていただきます。しかし、結論として言えますことは、今日の市民生活のスピードについていけなくなりました市電、トロリーバスは全廃をして、これにかわる新しい交通機関としての地下鉄建設に着手をしたということでありまして、これからの市営交通はこの地下鉄を幹とし、バスを枝としたところの新しい輸送体系に再編整備をしていく。この点につきましては、現行再建計画に基づく事業執行によりまして、ほぼ計画どおり大きな成果をあげ得たと私ども考えております。  しかし、反面、財政事情、財政の建て直しという面になりますと、再建団体スタート時点には六十六億八千万円の赤字をたな上げしてスタートをしたわけでございますが、その後のたび重なる給与改定の問題、さらには企業環境悪化の問題等によりまして、六度にわたる再建計画の変更を余儀なくされ、その結果、四十七年度末におきましては、百三十六億四千万円という不良債務を路面交通機関だけでかかえるという、まことに重大なピンチに直面をしたわけでございます。したがいまして、現行再建計画におきましては、事業面の再編整備という点については大きな成果をあげ得た。しかし、財政再建については、現行計画を御破算にせざるを得ない結果に相なってしまったということは言えようかと思います。  なお、このような大きな赤字を出さざるを得なかった要因といたしましては、先ほど来いろいろ御議論がありましたとおりでございまして、これにつきましてもこまかい説明は省略をさせていただきますが、都市の人口急増に伴うドーナツ化現象の問題、さらには、これによって生ずるラッシュ時輸送確保の問題、あるいは行政路線の問題、道路混雑によるスピード低下の問題、さらには、諸物価の上昇によります経営原価の増大等、これに追いつけない乗車料金の問題等々があろうと思います。しかし、この主因といたしましては、やはり、企業外環境悪化ということが大きな要因だろうと思います。  そこで、今日の都市交通問題は、もはや一企業、一自体の努力のみではとうてい解決し得ない段階に逢着をしていると言えようかと思います。そこで、私ども、この都市交通再建整備をはかりますための抜本対策について、ここ数年来国に御要望を申し上げてきたところでございます。幸い、この四十八年度の国家予算におきましてその対策が打ち出されたわけでございますが、この点につきましては、政府の提案説明にもありますように、緊急対策と言えるものでありまして、これだけで都市交通の今後の健全化がはかれるかどうか、まだまだ多くの問題を残しておりますし、きびしいものがあろうと思います。  そこで、私どもは、これまでいろいろお願いしてきました事項も含めまして、今後の都市交通再建整備という点について、まず、企業環境の整備、それから財政援助の強化、この二点について御意見、御要望を申し上げたいと思います。  まず、企業環境の整備の面につきましては、交通行政の一元化をぜひ実現をしていただきたいということでございます。現在、国におきましても、交通行政につきましては、運輸、建設、自治、警察庁、その他各省庁にわたりまして、この権限が分割をされておる実情でございますが、これを極力一元化していただく。そういう方向の中で、大都市の自治体につきましても、現在、首長は道路管理者であるのみでありまして、都市交通に関する行政権限は何も付与されていないというのが実態でございます。都市交通につきましては、都市計画等と一体となってこれを進めていきませんと、その実をあげられないことは御承知のとおりでございますので、この都市交通に関する権限を、道路管理者である大都市自治体の長にぜひ大幅に移譲をしていただきたい、そのようにお願いを申し上げます。  それから、第二点といたしましては、これも先ほど来議論がございましたが、自動車そのものに対する政策の転換をぜひお願いをしたい。いま私どもがかかえております一番大きな悩み一つは、やはり、バスが思うように走れない、道路混雑によるスピード低下という、効率低下の問題でございます。したがいまして、自動車そのものを抑制していくという原則に立っての政策転換をぜひお願いしたい。これにつきましては、自動車関係諸税、あるいは強制保険の増徴、排気ガス等の規制強化、保管場所の義務づけの強化、生産者の宣伝自制など、いろいろな方策があろうと思いますが、この点については、自治体の権限では解決できる問題ではございませんので、ぜひ国において有効適切な方策を講じていただきたいことをお願い申し上げます。  それから、第三点といたしましては、道路交通施設の整備と交通規制の強化の問題でございます。道路でありますとか、駅前広場その他の公共交通施設は、公共性の高い大衆大量交通機関が優先使用すべきであるということは論をまたないところであろうと思います。こういう観点に立ちまして、今後、これらの交通施設の整備をぜひお願いし、また、その使用については、極力個人輸送機関の使用を制限するといった方策をおとりいただきたいと思います。また、当面の問題といたしましては、バスの効率を高めますために専用、優先レーンというものが設けられておりますが、横浜の場合を申し上げますと、バス専用レーンはわずか二区間、二・七キロしか現在実施をされておりません。と申しますのは、基本的な考え方として、片側三車線ある道路について専用レーンを認めるという原則をとっているからでありまして、この原則をとる限り、横浜の道路事情から、これ以上専用レーンを増設する余地はないということになってしまいます。むしろ、二車線、一車線の道路こそもっと混雑をするわけでございますので、たとえば団地と駅を結ぶような路線につきましては、一車線であっても、一定期間諸車の通行を禁止して、バスが効率的にピストン輸送ができますような専用レーンを設定していただくという方向に御努力をいただきたいと思います。さらには、都心部への諸車の乗り入れ規制など、いろいろな方途があろうと思いますが、この交通規制の強化についても、実効のある措置をぜひともとっていただきたいと思う次第でございます。  このような企業環境につきましては、抜本的な対策を国において実現をしていただく反面、私ども自身といたしましても、市民の足を確保いたしますために、これからは、道路交通と鉄道交通との機能の再配分をいたしまして、これによって、地下鉄バス網などを総合的、有機的に再編整備をして、よりよい市民の足を確保していく努力をしてまいりたいと思います。  また、先ほど来お話しがございましたが、現実の問題として、バスの終車時間が早過ぎるとか、経由地がわかりにくいとか、あるいは停留所がはっきりしないというような問題も現実に起きております。これらにつきましては、私ども、現在その改善作業を進めておりますが、これからもそういった努力をいたしまして、ともあれ、市民の信頼を回復していくという方向の中で都市交通の再編整備をいたしていきたいと考えております。  次に、財政援助の強化の問題でございますが、ただいまの法案のまず第八条関係で、路面交通関係の不良債務につきましては、四十七年度末の不良債務を全額たな上げをするという措置がとられたわけで、このことにつきましては、われわれ企業サイドから見れば非常にありがたいことでございますが、しかし、これの元利償還という問題になってきますと、横浜の場合、いま百三十六億の不良債務をかかえておりますので、これを十五年償還、年利七分一厘ということで試算をいたしますと、総額二百十一億円の元利償還になってまいります。このうち、原案では、国が五十六億、市が百五十五億負担するということに相なります。百五十五億というのは、年間に直せば十億の金額でございますが、しかし、一般会計におきましては、このほかに、これからの都市交通の主役となってまいります地下鉄に対しましての出資、補助をしていかなければなりません。この額が、本市の場合約七十億程度になりますので、この路面交通の元金償還地下鉄への補助を含めますと、約八十億、年間八十億、この額は横浜の市民税総額の約一割に当たる額でございまして、これだけのものを一般会計交通会計に繰り出しをしなければならないということに相なります。したがいまして、一般会計負担軽減をはかりますために、元金の一部については国において負担をしていただく、あるいは一般会計負担分について、基準財政需要の中に織り込んでいただく、あるいは、先ほど来御議論がありましたような新税を創設していただく、このようないろいろな方途があろうと思いますが、一般会計負担軽減について格段の御措置をお願いいたしたいと思います。  それから、新再建債発行する現実の問題でございますが、この法案では、上限利率を七・一%で頭を押えております。しかし、現実の今日の金融事情から、この再建債発行は、本年度の後半、年度末になるであろうということが予想されます。そういうことを考えていきますと、実際問題として、この七・一%の利率で新再建債発行できるのかどうか、この点に危惧をいたしております。したがいまして、この上限につきましては、この規制をはずすか、また、現実の問題として、国の御指導、御配慮によりまして、このワク内で新再建債発行できますような特段の御配慮をお願いいたしたいと思います。  また、第三点といたしましては、これも先ほど来いろいろ御議論のありました行政路線の問題でございます。今後のバス事業の運営につきまして、バス購入費の一部補助という援助策が打たれておりますが、それ以外に、今後の運営面については対策がとられておりません。したがいまして、今後の運営を考えますと、やはり、この行政路線問題について格段の御配慮をお願いしたいと思います。  この行政路線とは何ぞやという議論になりますと、いろいろ問題があろうと思います。そこで、私どもは四十七年度に、百十二本の路線すべてについてこまかい実態調査をいたしました。そこで、この調査に基づきまして、それぞれの路線の営業実態を積み上げまして、再編成計画をこれから立てていくわけですが、その中において、その地域においての唯一の交通機関であるが、どうしても廃止せざるを得ないという結論に達したものにつきましては、そこから生ずる赤字について、国あるいは一般会計において負担をしていただくという措置をとっていただきませんと、今後のバス事業の経営というものは、この点についてストップしてしまうであろうということを考えるわけでございまして、この点については、私どもも、議会の中で、一つ一つ路線について十分定義づけをしていきたいと思いますので、その出た結論の行政路線につきましては格段の御配慮をお願いしたい、このように思うわけでございます。  それから、さらに、地下鉄建設につきましては、本年度予算で補助率の引き上げを願ったわけでございますが、しかし、これも、今後の地下鉄建設費の高騰あるいは営業費の増高等を考えますと、まだまだこれで完全だというものではないと思いますので、この補助金の増額と、これも先ほど申し上げましたように、一般会計においては、今後約七十億という負担をしていかなければなりませんので、この一般会計負担分については、ぜひとも軽減措置をお願いいたしたい、このように思います。  最後に、料金制度の問題でございますが、これも先ほど来お話しがありましたように、今後の事業運営を考えますと、これまでのような経営原価の増大を余儀なくされるとすれば、その一部を利用者負担していただくという問題が当然出てこようかと思いますが、その際の手続といたしまして、現在はすべて認可制度をとっておりますが、これを届け出制度に改めるように、関係法令の改正をお願いいたしたいと思います。  以上、たくさんの項目につきまして御要望申し上げましたが、このうち抜本対策等につきましては、一朝一夕にして実現できないもの、あるいは予算措置を必要とするもの等いろいろ問題があろうかと思いますが、実現可能なものから一つ一つ国においてその推進をはかっていただきたいと思います。そういう中で、われわれも、いまかかえておりますこの経営危機を一まず乗り切りますために、ぜひともこの新再建債の早期発行を願いまして、われわれ自身としても、企業内で、可能な限りの努力を今後ともし、一日も休むことのできません市民の足の確保に最善の努力をいたしていきたいと思います。  したがいまして、この緊急対策にかかる分につきましては、いま御要望を申し上げました事項について、可能な限りの改善措置を講じていただきまして、この法案を早期に成立くださいますよう切にお願いをいたしまして、公述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手
  42. 上村千一郎

    上村委員長 次に、鈴木参考人にお願いいたします。
  43. 鈴木富司

    鈴木(富)参考人 私は、公営交通事業に働く職員の立場から、今回の健全化法案に対して意見と御要望を申し上げたいと思います。  いま非常に重大な経営危機に直面している公営交通事業をどのようにして健全化するかという問題はたいへん重要な問題であると思います。私は、この問題について解決策を求める場合、まず、最初に明らかにしておかなければならないことは、公営交通事業経営に対する基本原則についてどのように認識すべきであるかということを明確にすることであると思います。  御存じのように、地方公営企業法は、経営の基本原則につきまして、「地方公営企業は、常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならない。」と規定しております。つまり、公共性と経済性の調和が可能であるという基本的な認識に基づいて経営のあり方を規定しております。  しかし、私は、この基本原則には非常な無理と矛盾があると思います。政府は、この地方公営企業法の基本原則に基づきまして、昭和四十一年に地方公営企業法の改正を行ない、経営悪化に苦しむ公営交通事業財政再建をはかりました。また、この第七十一特別国会においても、地方公営交通事業経営健全化促進に関する法律案を提案し、公営交通事業財政再建をはかろうとしております。私は、政府が、公営交通事業経営危機を打開しようとお考えになる点については心から敬意を表しますが、これら二つの財政再建対策が、ともに、公共の福祉増進、すなわち都市住民の足をいかにして確保するかということよりも、経済性を追求することを優先的に考えていることについて大きな不満を持つものであります。  私は、いま、重大な危機に直面している公営交通事業の正しい健全化をはかるためには、公営交通事業を、経済性追求を目的とする企業としての性格において認識するのではなく、あくまでも、その本来の目的であります公共の福祉増進、すなわち、都市住民の足を確保するということを、何ものにも優先する目的であるという位置づけをすべきであると思います。このことが経営の基本原則であるべきだと考えます。  今日、都市交通の中核的な役割りをになう公営交通事業の問題は、公害、住宅、道路、清掃などと同じように重要な都市問題の一つであると思います。したがいまして、都市住民の生活に不可分な関係にある都市問題である限り、独立採算制を原則とする経済性を優先的に考えるべきではなく、住民の生活に対して責任を負う立場にある地方公共団体の一環であるという認識に立つべきであると思います。  政府提出地方公営交通事業経営健全化促進に関する法律案は、自治大臣の諮問機関でありますところの、先ほど公述されました鈴木先生を座長にいたします公営交通問題研究会報告に基づいて立案されていると思いますが、この報告においても、「未来、都市交通は都市形成や都市機能と密接な関連を有するものであり、都市計画の一環としてその整備がすすめられなければならない。」「地域住民の日常生活に不可分な交通サービスの確保が困難となった場合、最終的には、当該地方公共団体が地域住民の要望にこたえ、これが確保のための措置をとらざるをえないのが実情である。公営交通事業は、これまで都市交通の中核のひとつとして地域における交通需要にこたえてきたが、このような諸般の事情からみて今後その果すべき役割は一層重要性を増していくものと考えられる。」と述べております。いまや、路面交通事業は、過密と過疎、公営民営を問わず経営危機に瀕しております。この経営危機の根本的な原因は、すでにたくさんの方から述べられておりますように、インフレによる物価の高騰、道路の許容限度をはるかに越えた自動車の激増、産業と人口の都市に対する過度集中等、いわゆる企業を取り巻く環境悪化にあると思います。  したがって、この経営危機を打開する抜本的な対策は、政府が従来から堅持してきた独立採算制の経営原則を根本的に再検討し、発想と姿勢を大きく転換し、新しい政策をとるべきであると思います。  この場合、その基本原則は、重ねて申し上げますが、公営交通事業を、都市住民の足を守るという役割におきまして、都市問題の重要な一つの柱であると認識し、地方公共団体の行政の一環であるという性格づけをすべきであると思います。  この観点から今回の政府の対策を見ました場合、路面交通事業の累積不良債務に対する財政措置はきわめて不十分であると思います。特に、再建債の元金返済をすべて地方公共団体一般会計に負わせたことは、赤字のおもなる原因が、企業を取り巻く環境悪化、つまり、外的要因にあることを考えるとき、はなはだ不当な措置であると言わざるを得ません。また、バス事業に対して、自治省は、当初、行政路線という考え方に基づく財政援助を考慮していたにもかかわらず、この考え方を放棄してバス購入費の一部補助に変えたことについても大きな不満を持つものであります。さらに、企業環境の整備改善に対する国の施策もきわめて不十分であると思います。  加えまして、料金の決定の手続、路線の許認可等々、都市交通行政に対する地方公共団体の権限強化という点についてもきわめて不十分であると考えます。  次に、私は、公営交通の職員を代表するという立場から、特に、次の二点について強く御要望申し上げたいと思います。  この要望を申し上げる前提といたしまして、ぜひ先生方に御理解いただきたいことは、私たち公営交通職員のほとんどすべては、若いときに公営交通事業に就職いたしまして、いわゆる定年退職するまで勤務をいたしております。したがいまして、社会生活のすべて、なお、申し上げるなら、人生のほとんどすべてを公営交通事業とともに終始しております。このような立場にあります私たちは、だれよりも強く公営交通事業健全化と発展を念願しております。でありますがゆえに、政府や当局が誠意をもって私たちに協力を求めてくるならば、協力を求める条件と体制を整備していただけるならば、私たちは、これに積極的な協力をする用意があるということをまず申し上げたいと思います。  そこで、第一の問題は、経営赤字を理由に、公営交通職員の賃金、労働条件につきまして、一般公務員と差別をすべきでないということであります。公営交通事業健全化と発展を求める施策の重要な一つの条件は、現場で働く職員の積極的、かつ、自主的な協力体制を確立することが必要であると思います。しかしながら、昭和四十一年の地方公営企業法改正に基づく第一次財政再建においては、路面電車の撤去による職員の大量に及ぶ配置転換、バスを中心といたしますワンマンカーの増強、勤務条件の改悪や諸手当の削減など、多くの合理化によって労働条件が改悪されました。にもかかわらず、今回の法律案に基づく財政再建策におきましても、再び合理化の強化がうたわれております。  聞くところによりますと、第一次財政再建による合理化の強行によって、合理化の余地が非常に少なくなったため、いわゆる第二次財政再建といわれる今度の財政再建計画におきましては、赤字路線の切り捨てをはかるバス路線の再編成による企業縮小、基本賃金について一般公務員と差別扱いをする合理化などが重点に検討されているということを聞いております。合理化を重点に行なわれた第一次財政再建策が、昭和四十六年度決算におきまして、累積欠損金千九百二十九億円を生じ、自治省をして、第一次財政再建は明らかに失敗したと反省せしめた事実によっても、企業縮小や労働条件の改悪による合理化で問題が解決できないことはきわめて明瞭であります。賃金や労働条件については一般公務員と差別扱いをする。しかし、事業の再建については大いに協力すべきであると言われても、私は、積極的かつ自主的な協力体制をつくることは非常に困難であると思います。また、そのような状態の中から事業の健全化と発展を求めることも無理なことであると考えます。国会並びに政府におきまして、いま一度真剣に検討されることを心からお願いを申し上げます。  さらにつけ加えて申し上げたいことは、私たち公営交通職員の勤務は、早朝の午前四時ごろから深夜の十二時、あるいは一時に及ぶ、きわめて不規則な勤務であります。また、午前のラッシュ時に一回勤務をしまして、さらに午後のラッシュ時にいま一度勤務するという、一日に二回勤務するというような変則的な勤務の条件もあります。したがいまして、賃金が労働の内容によって決定されるということを原則とするならば、私たちの労働条件については、より手厚い措置がとられることはあっても、悪い条件による差別扱いを受ける理由はないと考えます。  しかしながら、政府は、第一次財政再建計画と同じように、今回の法律案に基づく財政再建計画におきましても、職員の賃金改定に必要な財源を一切計上しない方針であると言われております。インフレによる物価高騰の中で、人事院勧告におきましても、毎年一〇%をこえる賃金改定が行なわれている現状におきまして、賃金改定に要する財源を一銭も計上しない財政再建計画をもって、私たちにどのような協力を求めようと考えていらっしゃるのか、政府の常識を疑わざるを得ません。  このように、賃金、労働条件について、赤字を理由とする差別扱いが行なわれるとするならば、そこから生まれるものは労使の不信感であり、労使関係の荒廃であります。もし、そのような状態におちいるならば、その状態の中から、公営交通事業健全化と発展は絶対に期待できないと思います。  第二の点は、公営交通職員の労働権の問題であります。第一次財政再建におきまして、財政再建計画の策定及びその変更は、いずれも地方議会の議決を経て自治大臣の承認を必要とすることになっている。そのために人事院勧告に基づく賃金改定が、労使の間で団体交渉によって妥結を見た場合におきましても、その妥結内容が再建計画の変更を必要とするため、当該地方公共団体の一般職員よりも六カ月以上、あるいは一年程度おくれて実施されるという事態をしばしば生じました。労使間の団体交渉によって妥結し、協定が成立した、その協定事項が実施できない。これでは、地方公営企業労働関係法によって保障されております団体交渉権はもちろん、労働協約締結権も事実上空文化されることになると思います。また、この地公企労法は、第八条においての「条例にてい触する協定」や、第十条においての「予算上資金上不可能な支出を内容とする協定」につきましては、ともに、当該地方議会の議決を得ない限り効力を生じないこととされております。このように、現行法におきましても一定の制限を受けております。その上にさらに加えて、財政再建計画の手続を理由にして、労働権に対する行政権優位の二重の制限と拘束を受けることはどうしても承服できません。  私は、労働権につきましては、基本的には、公営交通職員といえども、ストライキ権等労働基本権が認められるべきであると思います。しかしながら、この基本的な問題は別にいたしましても、現行の地公企労法によって保障されております団体交渉権及び労働協約締結権については、最低限度確保されるべきであると思います。財政再建団体なるがゆえに、この最低限度の権利までが事実上否定されることは、何としても理解できません。にもかかわらず、今回の法律案においても再び同じ内容の条項が提案されております。私は、この条項についての再検討を強くお願いを申し上げます。  と同時に、財政再建団体といえども、労使の団体交渉によって成立した協定事項については、再建計画の変更という行政手続きに便乗して、これを否定したり侵害したりするようなことはすべきでないということを、特に関係する労働、自治両省からぜひ御確認をいただきたいものだと考えております。  終わりにいま一度強く申し上げたいことは、私たち公営交通職員は、だれよりも強く、公営交通事業がすみやかに健全化し発展することを念願しているということであります。したがいまして、政府や当局が、私たちに積極的かつ自主的な協力を求める条件をつくっていただくならば、私たちはこれに積極的に応じ、協力する用意があるということを明らかにいたしたいと思います。不信感だけが強まって、労使間が荒廃していく、そういう中に正しい公営交通事業健全化と発展を期待することはきわめて無理なことだということを強く申し上げまして、今回の政府提案の法律案に対していま一度ぜひ再検討をお願いすることを心からお願い申し上げまして、私の意見を終わります。  ありがとうございました。(拍手
  44. 上村千一郎

    上村委員長 以上で、参考人各位からの御意見の御開陳は終わりました。     —————————————
  45. 上村千一郎

    上村委員長 これより、参考人各位に対しまして質疑の申し出がありますので、順次これを許します。  なお、質疑の際は、参考人の御氏名をお示し願います。島田安夫君。
  46. 島田安夫

    ○島田(安)委員 参考人各位におかれましては、いろいろと貴重な御意見を拝聴させていただきまして、どうもありがとうございました。  そこで、われわれも、この公営企業、特に公営交通問題を何とかしなければいけないというような考え方に立っておるわけでございますが、いろいろな意見の中で、現行の制度と、あるいは将来を展望します際に、いろいろな矛盾といいますか、そうした二、三の意見があったように思いますので、その点について、中西先生鈴木書記長さんにひとつ御意見をお聞かせいただきたいと思います。  と申しますのは、中西先生意見の中にもありましたが、公営交通事業というものは地方公共団体の自主性を持たせながら運営すべきではないか、それがためには第十条に規定されておりますものの許認可等について、現在国が持っておりますいろいろなそうしたものを地方公共団体に委譲すべきではないかというような意見もあったかと思いますが、加えて、鈴木さんのほうの意見では、公営交通事業経営というものは根本的にどうあるべきかという、いわゆる基本原則といいますか、そうした点での意見の中で、私ちょっと問題だと思いましたのは、地方公共団体の行政の一環として交通事業というものに対処しなければならないではないか、いわゆるその基本原則としては、地方公共団体の行政の一環として考えていけ、このような意見があったと思うわけでございますが、御承知のように、現行の地方公共団体というのは、財政的に申しましても、あるいはまた、将来の財政需要に対応する財源の捕捉という問題についても、限界点に達しているのじゃないかというふうに私は考えます。  そこで、私の意見ですけれども、なるほど、現在、公営企業というのは、地方公共団体の責任において、交通事業をはじめとしていろいろ行なっております。しかしながら、社会構造の変化、特に都市事情の急速な変化等から考えまして、いまや、公営企業というのは、当該の一地方公共団体のみで対処すべき事柄ではない。特に、交通問題にしぼって考えていきますならば、最近特に交通事情は悪化しているわけでございますけれども、そうした視点に立って考えていきますと、一公共団体の責任ではなく、これは国民全体の一つの生活環境の整備といいますか、国民の足を確保するという意味で、国の行政の一環として、地方と協調しながら、しかも、財政負担の面におきましても、地方財政の現況から、負担にもう耐えられないという現況等を勘案いたしまして——ただ一公共団体の責任というようなことでなしに、鈴木さんの意見のように、行政の一環というような考え方でなしに、国と地方と相共通して、行財政面で、国民の生活権といいますか、こういう観点から、負担も、あるいは事業の運営等についても考えていくべきではないかというふうに私は思っております。  というのは、私は二十年ばかり地方議会におりまして、そうした観点からそういう感を特に深くするわけですが、おっしゃいました意見の、いわゆる鈴木さんのほうは、基本原則を地方行政の一環としてやれという意見、そして中西先生のほうは、地方公共団体の自主性においてこれを運営すべきではないかという意見で、これにつきまして、ただ端的に表現されておりますので、その真意が那辺にあるのか、いま一度お聞かせいただきたいと思います。
  47. 中西健一

    中西参考人 ただいまの御意見、私もたいへんけっこうだというように拝聴させていただいたわけですが、私どもが、公営交通事業というのは自主性を尊重してやれ、そして、地方公共団体に、現在国が持っておるところのいろいろな許認可権限というものを、料金の問題も含めまして委譲せよと言うことは、国の責任というものを回避するといいますか、なくするということでは決してないのです。現在、御承知のとおり、地方財政は決して豊かではございません。むしろ非常に苦しいというような状況の中に置かれておるわけでございまして、特に、財政的な面については、国は現在以上に責任を持って補助をすべきである。ただ、先ほど申し上げましたような、いわゆる行政権限といいますか、こういったようなものについては、現在国がほとんど握っておるというような必要はないのじゃないか。だから、地方自治というたてまえから言っても、こういったような許認可権限については、できる限り地方のほうに譲っていく、それが公営交通事業というものをこれから再建していく、健全化をはかっていくための方策なんじゃないか、こういうように申し上げたわけでございまして、何も、全部地方の責任でやれというように主張しておるわけじゃ決してございません。
  48. 鈴木富司

    鈴木(富)参考人 私は、先般島田先生の御質問を拝聴しまして、たいへん御理解のあることに実は感心して聞いておった一人なんですが、いま言われました御質問に対してですが、私は、実は、昨年北海道の現地調査をいたしました。というのは、北海道の過疎地域におきまして、従来民営が主として路線運行をしておりましたバスが、民営路線運行が困難になりまして、ただでさえ過疎地域で町村の財政が非常に困難になっているところに、民営が撤収したバスを町村が直接経営をするという実態が北海道にかなり多く出ている。そういう実態を私どももこの際学ぶ必要があるだろうということで、実は、調査団を編成して、昨年調査いたしました。その調査によっても明らかなように、結局、利潤追求なり独立採算制の原則をあくまでもたてまえとして、いまの路面交通、特にバス事業を経営するということは、もう根本的に不可能である。といっても、もうからない、採算がとれない、それじゃバス事業を全部やめていいかといいますと、その地域は、それでは非常に住民が困る。特に、ある町長さんは、からでもいいからバスを走らせておくことによって、過疎地域の私たち住民に対して、行政団体なり公共団体がまだ見捨てていないのだという心理的な効果を与える、その心理的効果を考えるだけでも町営バス運行するのは価値があると、そういうことまで実は申されました。そのようなことばでも物語られておりますように、公害あるいは住宅その他と同じように、いまのバスを中心といたします路面交通事業におきましては、何といっても、市民、住民の生活に直接責任を持つ地方公共団体がこれを責任を持って経営するという経営体制というか、経営の基本的な考え方をまず明らかにすることが必要であると私は考えます。  財政問題につきましては、すでに再三参考人の方からお話しがありましたように、現在のバス事業を中心とします路面交通がここまで経営危機になった原因は何かといいますと、先ほど申し上げたように、いろいろ原因がありますから、そういう企業外環境悪化によって生じた赤字を、地方自治体の行政の一環だから、すべて地方自治体で持つべきだというふうには考えておりません。この点は、中西先生のおっしゃることと同じような考えで、したがいまして、あくまでも地方公共団体の行政の一環だという原則は明らかにしながらも、現実処理をどうするかということについては、先生のおっしゃるように、これに対する協力体制あるいは指導体制を国がもっと積極的に強める必要があると考えております。
  49. 島田安夫

    ○島田(安)委員 了解しました。  次に、内山矢野小池、三管理者の方を代表しまして、内山さんだけでけっこうだと思いますが、伺いたいのですが、現在、御案内のように、交通事業につきましては、国がすべての許認可というものをやっておる。さいぜん御指摘になりましたように、しかも多岐にこれが分かれておりますために、道路の問題は建設省、あるいはバスの直接運行等にかかわる問題は運輸省、あるいは、今回のような問題につきましては自治省、運輸省というふうに、非常に多岐にわたっておるわけなんですが、そこで、私は、常日ごろから主張しておるわけでございますけれども、行政の効率化——ただ、ハス事業は赤字だからどうという意味ではなくて、行政の効率化という意味から、あるいは今日の社会構造の変化と進歩ということから考えまして、そのほとんどが地方に大幅に委譲されるべきものだ。現在、日本のいろいろな行政の中で、これが一番おくれておって、しかも、いろいろな行政の隘路はこの一点に尽きるとさえ私は思っておる。そうした意味から、将来の経営健全化をはかるために、そうした料金の改定、あるいはターミナルの問題だとか、専用レーンの問題、いろいろな交通事情その他の許認可の問題等について、今回地方に委譲すべきだという御意見があったわけでございますが、これについて、民間バス等の問題も確かにございます。しかし、私は、それらをひっくるめて全部委譲されるべきだと思っておりますけれども、そうした完全委譲というような事態が起きましたときに、地方行政の面で支障がないのか、あるのか、これを十分こなして、民間との競合路線等につきましてもうまくやっていけるような具体策でもお持ちなのか、これを代表してあなたにお願いしたいと思います。
  50. 内山敞義

    内山参考人 原則として、一地方公共団体は、その一地方公共団体の行政の区域について全責任を持つというのが一つの理想ではあろうかと思いますけれども、行政そのものに広域性の問題もございましょうし、あるいは経済政策的な問題もございましょうし、いろいろ国全体の問題あるいは府県段階での問題というふうなものもございましょうから、一括していまの独立地域的な権限委譲というところまで考えられるかどうか、私はまだ疑問を持っておるわけであります。しかし、地方公共団体が自主的に行政を運営する上において、一そうの権限委譲は必要であろうか、かように思っております。
  51. 上村千一郎

    上村委員長 次に、山本弥之助君。
  52. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 ただいま、中西先生や市の労使の管理者の方からきわめて適切な御意見を承りまして、私どもの考えております意見とほぼ一致するような点が多数あるわけでありますが、御要望等の点についても、私どもは、この法案の審議の過程、あるいはその他の機会に十分努力をしてまいりたいと考えておるわけであります。  時間の関係もございますので、三点についてお聞きいたしたいと思いますが、第一点は、先ほど中西先生からもお話しがあったわけでありますが、従来の再建が、計画の樹立から変更まで承認事項になっておるわけであります。七年の経験もあるわけでありまして、この再建過程におきましていろいろな摩擦もあったのではないかと思いますし、また、市側におきましても、また、労働者の職員の側におきましても、いろいろ苦労があったと私は思うのでありますが、今回の再建は、従来の不良債務につきましてある程度まで企業外負担という考え方で、非常に前進をしておるわけであります。皆さんのお考えを聞きますと、今後の再建が軌道に乗るのかどうかということについての不安もおありになっておると思います。そこで、一般財源の確保あるいは企業経営改善等も必要なことでありますが、各市の実情に即応いたしまして自主的に再建をしていく。基本的な方針等、自治省との協議は必要であるにいたしましても、私は、やはり、自主的に再建をしていくということが必要ではないだろうかと思います。そのためには、ある程度までの協議、届け出は必要でありますが、その他賃金の問題にいたしましても、あるいは職員の給与の改定にいたしましても、すべて市が責任を持って努力をする。しかし、市だけの問題ではないということは、今日、国がある程度まで地域住民の足を守るということについての責任のあることも常識になっておるわけでありまして、国自体も、財源的に配慮をしていけばいいのではないか、私はかように考えるわけであります。  そこで、従来の再建計画の大きな問題といたしましては、最初の計画、これは八年計画でありますので、実際に実施をする段階で、企業といたしましてはいろいろな食い違いがある。あるいは、計画どおり進まないということがあると思うのであります。しかし、再建の問題にいたしましても、賃金の問題にいたしましても、当該議会の承認を得なければいけませんので、その点は、私は、十分慎重におやりになっているものと確信をしておるわけであります。  その意味におきまして、私は端的にこの機会にお聞きしたいのですが、従来の計画で毎年変更しなければならなかったということは、今日の経済情勢で、職員のベースアップの問題が、一般市の職員のベースアップとの関連におきまして、常におくれがちであった。しかも、その点が、改定についてのいろいろな摩擦の原因にもなったと思うのでありますが、この点につきまして、ある程度まで計画の中に、いわゆる定期昇給以外にベースアップの財源を見込んでいくというようなことについて、計画を樹立する上に支障があるものかどうか。この点、関係者あるいは中西先生の御意見を承りたいと思います。輿これが今後の再建をうまくやるかどうかということの一つの問題になろうかと私は思うのであります。その場合には、場合によっては、経済情勢の変化あるいは地域住民の生活の向上等によって、最小限度の賃金のアップということも、管理者なり市長の責任において断行すべき時期も当然あろうかと私は思うのであります。それらとにらみ合わせまして、かりに承認を得るにいたしましても、基本方針なり、一応の計画のときの承認にとどめておいて、事後の変更等につきましては承認を得ないような措置も考えられるのではないか。そのときの隘路は、やはり、ベースアップの財源を見込むか見込まないかということがいつも問題になってきておると私は思うのであります。これは計画で、そういうことが市長さん方といたしまして可能だろうと私は思うのでありますが、それはどうしてもできないという理由があれば、その点をお聞かせ願いたいと思います。  それから、次に、これは横浜の局長からお聞きしたわけでありますが、今日の公営交通の隘路は、都市環境悪化と行政の多元化なんですね。地域のあらゆる行政に関係しながら、交通環境の整備につきましては一部しか権限がない、また、一部しか仕事をしていない、このことが問題である。交通の一元化ということはきわめて重要な問題だと私は思うのであります。この一元化につきまして、法令の裏打ちがないにいたしましても、ある程度まで市が中心になってそういう努力を払っておられるいままでの実績がおありであれば、その点をお聞かせ願いたいと者えます。  それから、最後の一点は、先ほど自主再建の問題に関連いたしまして申し上げたわけでありますが、過去七年間、公営交通の職員は、一般職員と比べて、ペースアップの点につきましても、非常に不規則な労働に従事しながら、おくれがちであった。しかも、減員という、その生活をいつ奪われるかもわからぬというような合理化の措置に対しまして、不安な気持ちで職務を行なわなければならぬという関係にあるわけであります。今後の再建は、やはり、職員の協力によってはからなければならぬということでありますならば、給与あるいは労働条件につきましては、十分な労使の話し合いの中から、相協力して再建をはかるという体制をとらなければならぬと思うのであります。この点につきまして、議会関係あるいは自治省との承認関係において、いろいろな摩擦といいますか、摩擦と言えば語弊がありますが、支障を来たしたような事例がおありになるかどうか。これは管理者側のほうからも、また、組合の代表者であられる鈴木さんのほうからもお聞かせ願いたい。この三点につきましてお聞かせ願いたいと思います。
  53. 中西健一

    中西参考人 この問題は、三つとも私がお答えするよりも、関係者の方にお答えしていただいたほうがいいんじゃないかと思います。私は、第一の問題、第二の問題、第三の問題いずれも何らの関係もございませんので、そういうことにさせていただきたいと思います。
  54. 小池国三

    小池参考人 第一点の、ベースアップを再建計画の中に織り込めないかという点でございますが、これは、確かに、再建計画を立てる際に二つの考え方があろうと思います。  これまでの再建計画は、いまの時点で確定している運賃によって収入をはじき、あるいは給与ベースによって支出をはじいていく。で、今後出てきますベースアップ等の不確定要素については、その時点時点でその財源措置をどうしていくかという、この対策を考えていくというやり方。それから、もう一つは、いまの時点で、給与ベースの改定といっても、その率は別といたしまして、この程度の改定はもう恒常的に行なわれるだろうという前提に立ってある程度の所要財源を見積もり、それに対応する原資をどこに求めるか、そういった収支両面の見通しを立てて再建計画を立てていくという方法と、二つあろうと思います。  ただ、率直に申し上げまして、横浜市の場合を例にとりましても、かりに今年度一四%程度の給与ベースの改定がなされるといたしますと、人件費だけで六億円の増加になってまいります。この六億というのは、四十八年度六億でございますが、これが四十九年度また同じようなベアが繰り返されると十二億になり、三年度目には十八億ということに累増をしていきます。その計画をそれに織り込んだ場合、当然、それに必要な財源を何で求めるかということもともども収入面で対策を立てなければいけません。これについては、経済原則からいきますれば、その経営原価増高の一部は利用者にも負担していただくということから、適正料金料金改定の問題、あるいは企業内でできる合理化によってある程度のものを吸収する、あるいは、先ほど来御議論のありましたバス路線の再編成、あるいは行政路線の問題、そういったもので収支を合わせていかざるを得ません。ところが、現実に私どもがいま試算をいたしますと、横浜の場合でも六億、十二億、十八億という累増をしていくわけでございますので、この計画年次をかりに五年にするのか、六年にするのか、その辺に問題はあろうとは思いますが、これらの原資のすべてを、そういった方策でいまこれを見出すということは非常にむずかしいと思います。われわれが先ほど来御要望申し上げたすべての問題が解決をされ、あるいは財政援助がなされる上に立ってこれらを解消するということなら別だと思いますが、したがいまして、現実的には非常にむずかしい問題ではなかろうか。その時点時点で、国の財政援助その他のお力もかりながらそれらの問題を具体的に解決をしていくという方法をとらざるを得ないのではなかろうか。いまの時点でしまするその対策の範囲内では、そういった感じがいたします。  それから、交通行政の一元化の問題で、具体的にそれに近い事例はあるかというお話ですが、交通関係では、特にバス問題では、路線を新設したり、あるいは運行回数を増減したり、いろいろな事業計画変更の問題がございます。これらについては、すべていま運輸省の権限でございますので、県の陸運事務所あるいは東京陸運局を経由して、ある問題については本省まで上がっていく。これにつきましては、私ども、特に横浜の場合、民営バスとの競合状態が多うございますので、これは道路運送法上の協定ではございませんが、道義的な協定を、市が中心になりまして、民営各社と結んでおります。すべて、そういった路線の新設、事業計画の変更をする際には市に相談をしていただいて、具体的な問題解決をしていく、その上でそれぞれの手続を進めていくという方法をとっております。したがいまして、だいぶ以前は、監督官庁へ出た時点で、いわゆる路線をどちらの会社がやるとかいう争いがありましたが、現実は、そういう問題は一切ございません。自主的に市が責任をもって調整をしていく。また、民間バスが営業しておる路線につきましても、住民から市のほうへ、民間バス会社においてもっと回数をふやしてくれとか、いろいろな要望が出てきます。これも、市でこれを受けとめまして、それぞれの民間会社へそれを要望して、実現をさしていく、また、そのチェックをしていくということをやっておりますので、こういう問題については、現に、いまの体制の中でこういった調整がとられ、一歩を踏み出している。こう申し上げてよろしいかと思います。  それから、再建計画の変更、その他の際の具体的な問題でございますが、これについては、過去、私ども、六回の変更をやってまいりました。先ほど申し上げましたような必要な原資を何に求めるかという方策についてわれわれが真剣に検討し、また、われわれの力だけで解決できないものについては、一般会計あるいは国においてもそれ相応の援助をいただくという問題は当然出てきます。これまでの改定におきましても、企業内努力だけで問題がすべて解決されたという変更はございません。何らかの形で、一般会計あるいは国の財政援助をいただいていく、こういうことになるわけでございまして、その段階においていろいろ国のほうから要望が出、また、私のほうからもお願いを申し上げるということはございますが、これによって再建計画自体が変更ができなかった、あるいは地方議会でもめたというような事例はいままでのところございません。ただし、現実の問題としてこういった手続を必要といたしますので、職員の給与ベース改定を制度化するにあたりましては、市の一般職員よりもその実施の時期がおくれていくということは、現実問題として、いままでに出てまいりました。  以上でございます。
  55. 鈴木富司

    鈴木(富)参考人 まず、最初に、公営交通職員の現在における労使慣行というか、労使の間における賃金、労働条件をきめる一つの扱いというのを申し上げたいと思います。  賃金なり、重要な労働条件の問題につきましては、市の一般職員及び水道の職員等、市労連というような連合組織をつくりまして、この連合組織が一体となって、市の最高責任者であります市長を中心にものごとを解決する。したがいまして、たとえばダイヤ編成に伴う勤務条件の変更とか、そういう公営交通職員独自の問題につきましては、企業の管理者と当該の労働組合が交渉してきめる、こういう労使慣行の中に置かれています。そして、第一次財政再建団体の指定を受けました都市は十一都市でございまして、六大都市のほか、鹿児島、北九州、山口、三原、青森ですかの五都市がございます。こういう十一都市全体の中で起こった御質問の件に関しては、私は、二つ具体的な事例があると思います。  その一つは、先ほど申し上げましたような市労連で団体交渉できめる。したがって、そこできまりますから、大体これは全般的な解決となるということで、持ち帰って、企業の管理者との間にその最終的な具体的な取りきめをするという段階になりますと、いま小池さんからお話しがあったように、まず、自治省と事前に折衝して、現行の再建計画をもう一回手直しをする、変更という問題の事前折衝をする。そうしたら、そこで相当の期間を要し、これはちょっと言いにくいのですが、率直に申し上げますと、自治大臣の承認権というものが事前折衝の中で事実上の威力を発揮していると思うのです。したがいまして、そこでかなりの調整が行なわれて、そして、まあまあいろいろな形で問題の結論を得たという場合に地方議会にかけ、そしてまた、それが最終的に今度は正式の自治大臣の承認という行政手続に移る。こういう間に相当の日時がかかることによって、先ほど申し上げたような事例を生ずるというのが一つ。  いま一つは、事前協議の中で——これは率直に申し上げますと、六大都市以外の都市に例があるのですけれども、具体的な都市の名前を申し上げますと差しつかえがありますから申し上げませんが、事実上市労連交渉で妥結しました労働条件、賃金条件をもう一回企業へ持ってきて、これでいいんですねという確認をした賃金の条件が、再建計画の変更ということで、事前折衝の中で、それでは再建計画ができないじゃないか、あるいは困難じゃないかということで一まあ、困難だとかできないと言っても、だれが判定するのが一番正しいのかにも非常に問題点のあるところですが、いずれにいたしましても、そういうことで、その原案がなかなか思うように通らないで、いろいろな紆余曲折を経るという経過があって、私どもから言えば、市労連で交渉し、さらにそれが、当該の労使である点までまとまったものすら実現を見ることができないということにたいへん不満を持っている。こういう過去の経験を持っております。
  56. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 ほかの市にはありませんですね。函館や大阪には。
  57. 上村千一郎

    上村委員長 内山参考人矢野参考人、何かこれに関連して……。
  58. 内山敞義

    内山参考人 いま横浜の局長がお答えになったのと、私のほうも大体同じでございます。
  59. 矢野康

    矢野参考人 山本委員の言われた三点のうち、いわゆる権限委譲の問題は、先ほど内山参考人から言われたようなことで、地域の自主性の尊重、あるいは地域の自主性ができるだけ発揮できるような権限委譲を一般的には私ども望んでおります。率直に申し上げて、市町村段階、あるいは都道府県段階、それぞれ異なると思います。お話しがありましたように、計画の当初は、たとえば大臣が認可をする、しかし、変更、修正等の場合には知事にその権限を委任する、そういう方法もあると思いますので、できるだけ地域の自主性が発揮できるような権限委譲は確かに望ましいとは思っておりますが、そこらの整理が一つの問題になるのじゃないか、かように考えます。  それから、第二点は、横浜からお話し申し上げたとおりでありまして、できるだけベースアップの原資も組みたい。これは、一般会計も含めまして考えておるわけであります。率直に申し上げて、最終的には財源の問題になります。企業の性格から言えば、やはり、現料金あるいは現給というものをたてまえで組んでいかなければならないと思います。率直に申し上げて、先ほど申し上げたように、地元の公営交通事業企業だけではなかなかいけない面もございますので、一般会計のある程度の援助も行なっております。そういうものを含めてベースアップの財源について見込んでいくというようなことは考えられると私は思います。  それから、第三点は、私のほうは、おかげさまで、いままでは何とか自主再建の形で来ておりますので、一般職員と交通職員の給与のいわゆる不均衡という問題、あるいは自治省等からの何かの御指導というような形は、給与に関しては、現在までのところございません。
  60. 山本弥之助

    ○山本(弥)委員 ありがとうございました。
  61. 上村千一郎

    上村委員長 次に、林百郎君。
  62. 林百郎

    ○林(百)委員 中西先生にお聞きしたいのですが、民間の企業地方公営交通事業との関係についての基本的な考え方なんですけれども、たとえば民間の交通事業は、ほとんど一割の配当をずっとやっている。見ますと、たとえば東急あたりで、ホテルを十近くも経営している。土地は買い占めて、地価の値上がりを待っておる。そこへ集団住宅を建設することもできる。あるいはデパートを経営する。そして、かりに交通部門で赤字が出ても、そういう面からの黒字で埋めていく。しかし、地方公営交通事業は、もともと、全般的な性格が行政路線的な性格を持っているので、もしほんとう企業性を発揮するというのなら、私鉄のやっているようなことを幾らでもやらせればいいわけなのだが、そういうことはできない。しかも、非常に公共性があり、市民の生活と密接な関係を持つ事業なんですから、これはもともと企業性というよりは、公共性を重点的に考えて国と地方自治体が配慮すべきものだと思うわけなんですけれども、私鉄の企業地方公営交通事業との関係について、基本的にわれわれはどう考えていったらいいか。もちろん、私たちの考えとしては、民主的な政府ができ、もっと一歩進んだ社会化の政府ができた場合には、こういう交通事業というような公共性を持っているものを、私的な利潤を求めるだけのものにまかせるというわけにはおのずからいかなくなってくると私は思うのですが、いまの段階ではそういうことはできないわけなので、その辺をどう考えたらいいかということを聞きたいと思います。  それから、大阪助役さんに伺いますが大阪でもドーナツ化現象が出てきている。これはごもっともなお話しだと思いますが、このドーナツ化現象が起きている大阪市において、最も採算の合うような、ドーナツの旅客をわりあいに効率的に運搬できる部門は私鉄がやっていて、そして、都心部門で、モータリゼーションが非常に濃化してしまって効率があがらない部門を地方公営交通事業が受け持っている。私鉄のほうは、もう自分の受け持つ部分だけは運んできちゃって、あと、ドーナツのまん中のほうへ来たら公営交通事業のほうにまかしてしまう。こういうことから来る公営交通事業の持ってる効率の限界というものは一体考えられないのかどうかという点ですね。そういう点をお尋ねしたいと思います。  それから、今度の再建債の元金の償却について、一般会計から見るといいますけれども、私が先ほど言いましたように、地方公営交通事業の持つ公共性から言うならば、これは当然国がこの点を見るべきであって、先ほど横浜交通局長さんも言っておられますように、これは基準財政需要額に算定して国が見るなり、あるいは、基準財政需要額に見ることによって、交付税の均等化がもし若干でもゆがみが出てくるというならば、何らかの方法で国が見るなり、要するに、再建債の元金の償却部門を自治体の一般会計負担させてさせっぱなしということでなくて、これも、何らかの方法で国が手当てをするということをしなければ、市のほう、自治体としては、財政的なしわ寄せがどこかへ来るようになるのではないかと考えますが、この点についてどうお考えになりますか。  それから、横浜交通局長さんにお尋ねしますが、これは大阪も同じだと思いますが、地下鉄ですね。これが非常にばく大な建設費がかかっており、この建設費の未償還分、あるいは利息の償却分が非常に累積されてきておるわけでありますけれども、これに対しても、先ほど、建設費をもっと国が見るべきであるというようなお話しがありましたが、どの程度を地方自治体としては期待されておられますか。それからまた、地下鉄利子相当額についての特例債についてはどういう扱いをしていったらいいのか。大阪にしても、横浜にしても、地下鉄部門の負担が今後大きくなると考えられますけれども、その点について、この法案からはずされているという点から申しまして、将来の地方自治体の財政的な負担が重くなると思いますので、御見解をこの際聞いておきたいというふうに思います。  なお、参考までに、横浜の局長さんでけっこうですが、いま、地下鉄建設費は一キロメートルどのくらいと見られておるのか。もし、試算がありましたらお聞きしておきたいと思います。  それから、鈴木参考人にお尋ねしますが、御承知のとおり、このたびの法案の四条に、「経営改善及び合理化に関する措置の大綱」とあるのですね。私は、この合理化というのは、率直に言って、労働条件に対する改悪、もっときびしい労働条件を皆さんのところへ押しつけてくるものだというように憂慮をしている者です。もちろん、この後の推移を見なければわかりませんけれども、第一次再建計画の結果を見ればこのことは明らかだと思います。そこで、経営改善ということは財政力のある国や自治体が見ることにして、この地方公営交通事業にいま従事している労働者の労働条件の面で、他の地方公務員に比べ、あるいは私鉄の関係の労働者に比べて、合理化をする余裕が一体あるのか。ワンマン化も、六大都市ではほとんど一〇〇%でしょう。神戸がおくれていても、七〇%でしょう。さらに、先ほどあなたから勤務時間のこともお聞きしましたけれども、こういう中で、この再建計画の柱の一つの、労働者に対していま持っている労働条件の合理化ですね。労働条件をもっと強化するという弾力性を一体持っているのかどうか。これを柱にしなければならない。これを言うことを聞かなければ、この再建計画から自治省はその計画をはずしてしまうというような、それほど重要な柱として考えられるだけの弾力性を一体持っているのかどうか。その点をお聞きしたいと思います。
  63. 上村千一郎

    上村委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  64. 上村千一郎

    上村委員長 速記を始めて。  中西参考人
  65. 中西健一

    中西参考人 それでは、林委員の御質問にお答えします。  私も全く林先生と同じ考え方でありまして、この公営交通企業というものは、あくまで企業性でなくて、公共性を本位に考えていくべきであるというように思っております。と申しますのは、たとえば東京で、いまの都電の前身でございますけれども、一九〇三年に、東京市街鉄道、東京電車鉄道、それから東京電気鉄道という三つの民間の会社であの路面電車が発足したわけですね。それから、六大都市とか、ほかをとってみましても、大阪だけは最初から公営でありましたけれどもあとはみんな、神戸にしたって、名古屋にしたって、京都にしたって、民営路面電車で発足した。ところが、民営でやっているうちに、やはり企業性というものが優先しますから、どうしても市民の利害とぶつかるということで、明治の末から大正の初めくらいにかけまして、東京をはじめみんな公営になってしまったのですね。こういうような歴史的な事実一つをとって考えてみましても、やはり、都市の交通事業というものは民営では限界があろう、したがって、公営交通事業の本質というものはあくまで公共性というものに置かなければならない、だから、料金とか、そのほかいろいろな問題にしても、まず、公共性を優先するという原則といいますか、考え方といいますか、これを中心にして考えるべきじゃなかろうか、かように思っております。
  66. 内山敞義

    内山参考人 第一点の、ドーナツ化現象によって一番採算の合う部門は私鉄が運んでいるじゃないか、都心部については市営交通がやっているじゃないかということは、それはそのとおりでございます。私ども地下鉄については、相当郊外まで私鉄との連携で相互乗り入れをやっておりますけれども、主として私鉄、国鉄通勤の関係は参りまして、都心においては、地下鉄あるいはバス通勤、通学の輸送をしておるということは事実でございまして、この面において、本市の経営しております交通事業会計そのものに——先ほどもちょっと私の申し上げた中で申し上げましたように、全部が市民だけを輸送しておるというのではなくて、市域外から入ってくる方々も輸送しておるという面からも、企業外負担としての国及びその他の——現に、地下鉄の場合には、外へ乗り入れる場合には府の負担ということにもなっておるわけでありますから、そういう負担区分がはっきりしていっていいのじゃないか。ただ、これは、計算上そういうことについてはむずかしい問題でございますので、企業外負担としての国の問題も出てきておるのじゃなかろうか、かように私は思うわけであります。  それから、元金償還の財源の問題ですが、われわれ地方公共団体経営者といたしましては、もちろん国の措置を望むものでございまして、私ども、国の財源措置ということを先ほど申し上げたわけであります。ただ、企業外負担という考え方が今度は非常に強く出てまいりまして、その点については私ども喜んでおるわけでありますが、企業外負担というものは、結局は納税者の負担ということになると思うのです。それが国税であろうと、地方税であろうと、とにかく、納税者負担になろうと思うのでありまして、その場合においての、納税者の国全体に対する負担のしかた、地方に対する負担のしかたということから、元金償還を国に見てもらう場合も、これは、やはり、大阪市の公営企業が国に対して御援助をしていただきたいという観点から持っていかなければならない。また、かりに、これが地方負担であるということならば、交付税という一般財源の補完財源がございますので、地方交付税の基準財政需要額に算定していただきたいということを私どもも考えておるわけであります。現に、いままででも、地下鉄についてはそういう措置もとられております。
  67. 小池国三

    小池参考人 地下鉄建設の補助の問題でございますが、これについては、四十八年度国家予算で、従来の二分の一が三分の二に引き上げられた。しかし、実質的にはこれは五〇%補助になるわけでございます。  そこで、この新しい補助制度をもとにしまして、どこまで補助率が上がれば健全経営ができるかという問題でございますが、これは、現在の経営原価あるいは建設費といったものをもとにして試算をいたしますれば一応の数字は出てこようと思いますが、ただ現実問題としては、建設費についても、経営費についても、これから当然ある程度の増高が出てくるだろう、これに見合った適正料金というものをどうしていくのだということ、これをきめていきませんと今後の推移というものは出ないと思いますが、ただ、横浜の場合には、まだ開業当初でございまして、累積の赤字をかかえておりません。こういう状態の中で、現行制度、それから現行の建設費、営業費といったものをもとに試算をいたしていきますと、当分の間単年度の資産不足は出ないという計算は一応出ておりますが、しかし、今後の建設費、営業費の増高と、これに見合う料金問題というものの動向によっては、これではやっていけないことにも相なろうかと思いますので、この点については十分試算をしていきたいと思います。  ただ、従来どれだけ要求していたかという問題になりますと、私ども大都市としましては、実質三分の二になるようにというお願いを従来はいたしてまいりました。  それから、建設費の実績でございますが、いま開業しておりますわずか五キロの区間につきましては、大体五十五億ぐらいのもので建設ができております。いま工事中の区間については、その程度でできるところもございますが、非常に地盤の悪い都心部については、キロ百億かかるというような個所も具体的には出ております。したがいまして、現在工事中の区間については、六十五億ぐらいのものがかかるのではなかろうかといま試算をしております。そういう状況でございます。
  68. 鈴木富司

    鈴木(富)参考人 合理化ということばにつきましては、いろいろ解釈をする向きがあるようですが、少なくとも、私ども労使関係におけるいままでの経過と歴史の中で合理化ということばをとらえた場合に、林先生のおっしゃったような解釈をしておる。したがって、そういう意味におきまして、私ども立場からすれば、もう合理化の余地は全くないという判断をしております。そういう判断をしておりますのにかかわらず、従来になかった用語の合理化ということを法律の本文に入れましたので、これに対して非常に不安と不満を現場の職員が持っておる、こういう実情であります。
  69. 上村千一郎

    上村委員長 次に、小濱新次君。
  70. 小濱新次

    ○小濱委員 まず、端的に中西教授にお尋ねをいたします。  先ほど、諸外国の例をあげられて、財政援助は国がするけれども、管理運営は地方自治体にまかせるのだということと、また、バスの購入費とか燃料の補助まで国が見ようとしているというような内容のお話がございまして、たいへん参考になりました。  そこでお尋ねしたいわけですが、日本の都市交通の特徴は、民営公営が競合しておることですが、お尋ねしたい二点は、今後のあり方として、この公営民営の二本立てでいくことが正しいと思われるのか。あるいはまた、その統合した一元的な企業形態を考えていくことがよいのか。外国の諸例もございますけれども、私どもも、将来の合理化という問題で一応御意見を伺っておきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。  次に、内山大阪助役にお尋ねをいたしますが、国道、県道、市道内のいままでの軌道敷に、交通局の占用地が法的に処理できずにあるという話を伺いました。これは大阪ばかりじゃなくして、他都市にもあるようであります。この解決のために長い間難渋をしてきたという話も伺ったわけですが、その現状と対策についてお答えをいただきたいと思います。  最後に、小池横浜交通局長にお尋ねしたいと思いますが、先ほど、いろいろと御意見伺いました。過去六回にわたって合理化を行なってきたという、その内容については、涙をのんで大なたをふるった過去のそういう経緯を私も承知しておりますので、よく知っておるつもりでございますけれども、これから将来への合理化対策として、財政再建計画の策定の余地がまだ残されているのかどうか。四十九年度以降の問題ですけれども、この点率直に御意見をお披瀝願いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  71. 中西健一

    中西参考人 都市交通の一元化の問題と、それから経営形態の関係でございますけれども、御承知のとおり、外国の場合ですと、いわゆる公共企業体という経営形態というものが一般化されているわけです。ただ、この場合に、公共企業体が設立されておりますところの範囲というものが非常に広域的なんですね。たとえば、ロンドンの場合ですと、ロンドンの中心部から半径四十キロの範囲を含めましてロンドンの旅客運輸地域ということになって、ここに公共企業体というものができております。それから、ニューヨークの場合でも、ニューヨークの交通圏というものは、広さにしまして四千二百平方キロメートル、中に住んでいるところの人口が約千二百万ですね。それから、若干パリが小そうございますが、これでも、やはり、パリの中心部から半径二十五キロというものを含めております。したがいまして、こういったような非常に広域的な都市交通圏といいますか、ここに公共企業体の方式によるところの経営というものが行なわれているわけなんです。  ところが、日本の場合を考えてみますと、もし、この経営の一元化というようなことを将来やるということになりますと、いま御紹介しました外国の大都市の場合のように、たとえば首都交通圏とか、あるいは近畿交通圏といったような非常に広域的な範囲をとって、そして、現在の国電、民営鉄道、民営鉄道の持っておるところのバス、それから公営を全部その中に含めて、そういうやり方で経営の一元化をやっていくということならばいいと思いますが、ただ、現在の公営交通は、非常に地域的に狭いですね。現在の公営交通だけをとって、いまの地方自治体の直営方式から、地方公共企業体といったような、こういう経営形態の変化をするということは、これはあまり意味がないというように考えております。
  72. 内山敞義

    内山参考人 軌道敷の問題については、大阪市の場合も、一般会計の問題と交通会計で、過去においてはだいぶ論争した点なんでございます。  一般会計においては、路面電車を撤廃いたしましたあと、軌道敷全部を道路に使っておるというようなことから、ほんとうならば、それに対する一つの使用料というようなものを払わなければならぬわけでありますが、財政不如意の関係で、ずっとそれは払っておりませんでしたが、旧現行再建計画の第何次でございましたか、途中から、四十四年から四十八年まで五カ年にわたりまして、一年間約十億八千万円という数字——これは、いろいろな評価額から、一つの使用料的感覚で内部で計算したものでございますが、そういうことで、交通会計への財政援助の一環としてやっております。
  73. 小池国三

    小池参考人 企業合理化の余地が今後残されているかどうかという問題ですが、この合理化ということば自体、先ほど来お話しがありましたが、労働者の賃金あるいは諸手当といったもの、あるいは労働条件を改悪するのだということだけではないと思います。私どもは、やはり、生産性をあげ、経営原価を切り下げていくということのために事務事業を改善したり、簡素化したり、能率化したり、機械化したり、こういった意味の広義の合理化というものについては、これで十分である、ここが終点であるというものはないと考えておりますので、時代の推移とともに、そういった事務事業の改善、簡素化というものについては、生産性の向上をはかるために進めていかなければならない。ただ、これまでの経緯からして、前段の、職員の基本給あるいは諸手当といった面についてこれ以上切り詰めをする、節減をするという余地はもうほとんど残されていないと思います。したがいまして、これからの事業運営におきましては、生産性を高めていき、機械化をし、能率化をする中で、それに従来従事していた職員の数をできるだけ削減をしていく、そういうことによって全体の経営原価を下げる、こういう方向の中で生産性の向上をはかっていかなければならないのではなかろうか、このように考えるわけです。
  74. 小濱新次

    ○小濱委員 ありがとうございました。
  75. 上村千一郎

    上村委員長 次に、折小野良一君。
  76. 折小野良一

    ○折小野委員 先ほどの中西先生のお話しにも、新しい再建にあたって、過去の旧再建の失敗のあとを十分反省してみることが必要である、そこから出発することが必要であるというお話しがございました。そうしてまた、旧再建の失敗の原因等がいろいろ掲げられております。  ところで、きょうおいでの参考人の中で、実際に事業を経営しておいでになります三市の皆さんにお伺いいたしますが、いままでの再建の失敗は、その原因はいろいろあろうかと思います。その中で、うちの市はこの点が一番大きかったのだという点がございましたら、それぞれ一言ずつお教えいただきたいと思います。
  77. 内山敞義

    内山参考人 やはり、一番痛感をいたしますのは、たとえば四十年におきましては、バス事業の乗客数が百十万人余りであったが、現在におきましては七十万人になっておる。これの原因は、地下鉄の整備等によって、バスから地下鉄への振りかえというようなものもございますけれども、やはり、自動車その他の問題、あるいは道路交通のふくそうから来る時間感覚のズレ、あるいは、サービスの低下というふうなこと、そういうようないろいろなことから乗客数が非常に減じておる。  今後の問題は、乗客数をどうふやすかということも大きなポイントになろうかと思います。
  78. 矢野康

    矢野参考人 私のほうは、先ほど申し上げましたように、自主再建をやっておるわけです。率直に申し上げて、反省いたしますと、冒頭申し上げたように、私のほうの市は、たとえば電車の表定速度が大体十四キロ、バスが十五キロというように、数年間あまり落ちておりません。  それから、乗客の利用率ももちろん減少はしておりますが、十五万一千と落ち方が緩慢である。したがって、再建なり合理化の時期を若干失したのではないか、そういう反省はしております。
  79. 小池国三

    小池参考人 財政再建計画の立て直しの面において失敗をした。この模様につきましては、先ほどいろいろあげましたが、この中で、最大の問題としては、自動車の激増による道路混雑、これによるスピード低下、バスの効率低下。これは先ほどの資料にも示してあるとおりでございまして、これが最大の要因だと考えます。
  80. 折小野良一

    ○折小野委員 ありがとうございました。
  81. 上村千一郎

    上村委員長 これにて、参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位に申し上げます。  長時間にわたり、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。当委員会を代表いたしまして、厚くお礼を申し上げます。  次回は、明十五日金曜日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後一時五十分散会