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佐藤(敬)
委員 確かに、この待遇の問題は非常に大きな要素だと思います。しかし、私は、やはりそれだけではないと考えます。というのは、いわば、理想に燃えた、
病院の若いお
医者さんに私もずいぶんつき合ってまいりましたが、一様に言われるのは、決して給料が安いということではないのです。
一つは、
病院の中で勉強したいというのです。この日進月歩の
医療の進展する時期において、いなかの
病院あるいは大規模
病院でも同じですが、研究の施設、勉強する
設備というものが
一つもない。朝から晩まで、これはもう
診療するというのではなくてさばくの感じというか、外来に一生懸命で、職に押されてしまって、勉強どころではなくて、疲れてしまって、うちに帰ると何ともならない。何とかして若いうちに勉強しなければ
医者として成り立っていけない。こういう切実な願望が
一つある。これは、私は、年とって打算的になった
医者は別としまして、学校を出たてのような若い人は、非常にこの点について希望に燃えておるわけなので、この点の配慮というものが非常に
不足ではないか、こういうことを考えます。
もう
一つは、雰囲気といいますか、環境があまりにも索漠とした環境の中にあるので、どうもやはり居つきにくいという点もあるようでありますけれ
ども、私は、やはり最大の問題は、たとえばかなり大きな
病院ならば研究の施設をうんとつくってやって、そして勉強しながら
診療するということ、こういうふうな
やり方をしていけば、若いお
医者さんがもっともっとたくさん集まるのではないかと思う。したがって、それのためには、もう
一つ大事なことは、
医者にひまを持たせなければいけないということなんです。ところが、
医師の
不足の事態に、これはイタチごっこ、追っかけごっこになりますけれ
ども、ひまがない、ひまがなければ
医者が来ない、こういうことになるわけなので、なかなかこれはむずかしい問題だと思いますけれ
ども、
僻地を含めて平均的に
日本じゅうに
医者をばらまくためには、こういう配慮というものが、単に金だけの問題ではなくて、非常に大きな問題だと思います。
これは
現実にこういう例がたくさんあります。私の隣の小さな町で、
病院が、組合立の
病院だったのですが、わざわざそれから脱退しまして、
大学で、りっぱな
病院を建てなければ
医者をよこさないと言っているからというので、鉄筋コンクリートのりっぱな
病院を建てた。
医者は来ました。しかし、半年もたたないうちに
医者がいなくなった。ところが、この
医者がいない
病院を、やめるわけにもいかないというので
経営している。こういうばかな例はたくさんあると思うのです。こういう
状態はまことにおかしい
状態だと私は思っておりますけれ
ども、
現実にこういう
状態があるわけなんです。これは、
一つの
病院、
診療所みたいなものを見ますとこうですが、ずいぶん大きな
病院でも、かなり
医者が
不足です。ですから、
診療科をどんどん
廃止している。せっかく機械から器具まで全部買ってあるにもかかわらず、
医者がいないために
一つの
診療科を
廃止してしまうという例は幾らもある。これはやはり
医者をどういうふうに充足するかということが問題ですけれ
ども、私の
一つの提案としては、忙しいのにもかかわらず、なぜ
開業医と競争して
外来患者を見るかという問題が
一つあると思うのです。
外来患者は全部
開業医にまかせてしまって、
ほんとうに
高度医療あるいは
特殊医療というものに徹すべきだ。あるいはまた、
開業医の持てないところの高度の検査
設備、ガンでもあれ、あるいはレントゲンでもあれ、あるいはまた放射線の
診療器械でもあれ、非常に高度な
設備を備えつけて、高度的な
医療、
特殊医療をやって、
開業医と競争して
外来患者を奪い合うということをまずやめるべきだ。そうすれば、
病院の
医者のひまというものは、三分の二、少なくとも六〇%ひまになると思う。いまの勤務医というのは、朝の八時半、九時に来て、三時ごろまでびっちり見なければ、
病院の
管理者からおまえはなまけているといっておこられるのです。
ほんとうにこれは
診療じゃなくて、さばくという形でどんどん見ておる。待っているのが三時間で
診療が三分だという笑い話がありますけれ
ども、全くそのとおりなんです。私は、
自治体病院は
外来患者の
診療をやめるべきだ、そうして
医者にもっとひまを与えて、さばくじゃなくて、しっかりと
診療をさせるべきだと、こういうふうに考えるのです。
そこで、
一つの
開業医の問題が浮かび上がってくるわけです。
地域の根幹の基幹
病院であるところの
自治体病院というものと、
地域に散在しているところの
開業医というものをもっと結びつける必要があると思うのです。いまはもうばらばらです。ばらばらどころではなくて、
自治体病院と
開業医というものは対立して、けんかしている。これは当然でしょう、商売がたきだから。こういう
状態にしておいて、
医者不足が解消されるはずがないのです。
開業医というものと
自治体病院の勤務医、これをしっかりと
一つのチームとして編成し、
地域の
医療体系の中に
開業医を引っぱり込む、こういうことをしなければ、何ぼたってもこの
医者の
不足という問題は解決できないと私は思うのですが、いかがですか。