運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1973-02-27 第71回国会 衆議院 地方行政委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年二月二十七日(火曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 上村千一郎君    理事 小山 省二君 理事 谷垣 專一君   理事 中村 弘海君 理事 三ツ林弥太郎君    理事 山本弥之助君 理事 林  百郎君       愛野興一郎君    今井  勇君       片岡 清一君    亀山 孝一君       保岡 興治君    渡辺 紘三君       小川 省吾君    佐藤 敬治君       山田 芳治君    三谷 秀治君       小川新一郎君    小濱 新次君  出席国務大臣         自 治 大 臣 江崎 真澄君  出席政府委員         自治大臣官房審         議官      近藤 隆之君         自治省財政局長 鎌田 要人君        自治省税務局長 佐々木喜久治君  委員外出席者         地方行政委員会         調査室長    日原 正雄君     ————————————— 委員の異動 二月二十四日  辞任         補欠選任   今井  勇君     黒金 泰美君   島田 安夫君     灘尾 弘吉君 同日  辞任         補欠選任   黒金 泰美君     今井  勇君   灘尾 弘吉君     島田 安夫君     ————————————— 二月二十三日  地方公務員退職年金スライド制早期実現に関  する請願三原朝雄紹介)(第二四五号)  電気に対する課税撤廃に関する請願橋本龍太  郎君紹介)(第二七一号)  同(笠岡喬紹介)(第二九八号)  土地取得及び開発事業に対する規制に関する請  願(鈴木善幸紹介)(第三四一号)  市街化区域内農地宅地並み課税反対に関する  請願稲富稜人君紹介)(第三九二号)  市街化区域内農地宅地並み課税阻止等に関す  る請願外一件(唐沢俊二郎紹介)(第四〇一  号)  同外九件(藤波孝生紹介)(第四〇二号)  同外二件(小沢貞孝紹介)(第四一五号)  同外十六件(松野頼三君紹介)(第四一六号)  同(山本幸雄紹介)(第四一七号)  同外二件(坂村吉正紹介)(第四二三号)  同(河野洋平紹介)(第四二四号)  同(田口一男紹介)(第四二五号)  同外五件(羽生田進紹介)(第四二六号)  同(服部安司紹介)(第四二七号) 同月二十六日  市街化区域内農地宅地並み課税阻止等に関す  る請願小川省吾紹介)(第四三七号)  同外七十五件(木村俊夫紹介)(第四三八  号)  同(小島徹三紹介)(第四三九号)  同外二十七件(坂口力紹介)(第四四〇号)  同(堀昌雄紹介)(第四四一号)  同外四件(細田吉藏紹介)(四四二号)  同(山口鶴男紹介)(第四四三号)  同(戸井田三郎紹介)(第四六六号)  同外一件(田邊誠紹介)(第四六七号)  同(池田禎治紹介)(第五〇〇号)  同外二件(河本敏夫紹介)(第五〇一号)  同(原健三郎紹介)(第五〇二号)  同(宮田早苗紹介)(第五〇三号)  同(渡部一郎紹介)(第五〇四号)  同(井上普方紹介)(第五九〇号)  同外一件(池田禎治紹介)(第五九一号)  同外三件(稲富稜人君紹介)(第五九二号)  同外十三件(浦野幸男紹介)(第五九三号)  同外九件(小澤太郎紹介)(第五九四号)  同外五件(大野市郎紹介)(第五九五号)  同(小平久雄紹介)(第五九六号)  同(黒金泰美紹介)(第五九七号)  同(左藤恵紹介)(第五九八号)  同外十三件(中村寅太紹介)(第五九九号)  同(原田憲紹介)(第六〇〇号)  同外四件(松本十郎紹介)(第六〇一号)  同(山口鶴男紹介)(第六〇二号)  同外一件(吉田法晴紹介)(第六〇三号)  同外一件(渡辺紘三君紹介)(第六〇四号)  特別区の区長公選制実現に関する請願和田耕  作君紹介)(第四四四号)  松江市立病院に対する財政援助等に関する請願  (大橋武夫紹介)(第四六四号)  地方事務官制度廃止に関する請願羽田孜君紹  介)(第四六五号)  同(小川平二紹介)(第四九七号)  同(小沢貞孝紹介)(第四九八号)  同(吉川久衛紹介)(第四九九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方自治地方財政警察及び消防に関する件      ————◇—————
  2. 上村千一郎

    ○上村委員長 これより会議を開きます。  地方自治地方財政警察及び消防に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。佐藤敬治君。
  3. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 いま、地方公営企業の中で、特に自治体病院が非常に大きな財政の危機に逢着しております。最近、福祉政策であるとか、いろいろなことがいわれまして、これは非常に大きな要素をなしておると思いますので、この点について二、三質問をいたしてみたいと思います。  一つは、現在、公営企業、特に病院が長い間赤字だ、赤字だといって騒がれているにもかかわらず、さっぱりその事情というものが改善されておらない、ますます悪くなっているのではないか、こういうふうに実態が考えられます。この原因一体どこにあるのか、ひとつ大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  4. 江崎真澄

    江崎国務大臣 公営企業の中でも、非常に利用度の高い、また、住民にとっては切実な問題を解決してくれる大事な機関病院でございます。この病院は、やはり自治体病院というような特殊な性格から、最近では特殊医療も引き受けなければならぬ。また、きわめて細分化され、高度化されてまいりました時代の要請に沿って、そろばんを度外視して高度医療も施す。そういうものを担当しておることが一つマイナス原因になっておる。それから、医師の給料というものが、他業種に比べまして相当高くありませんと、これをそこにつなぎとめることができない。こういったこともございます等々、最近は病院経営マイナス点が多くなっておる実情というものは、私どももよくわかるわけであります。また、一面におきましては、これが市町村営であるということから、患者がオーバーラップしておるといいまするか、重なり合っておって、適地配置ができていないというようなことも、これまたマイナス要因になっておるというふうに考えております。  したがいまして、自治省といたしましては、極力適切な負担措置をしていくべきであるというふうに考えて今日に至っておるような次第であります。
  5. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 いま、病院赤字一つ原因として、高度医療あるいは特殊医療、こういうものが自治体病院の大きな原因になっている。私もそうであればいいと実は願っております。しかしながら、現実自治体病院を見ますと、必ずしも高度医療特殊医療や、あるいはまた僻地等に対するところのああいうような医療、こういうものに自治体病院が徹しておるという状況ではないと私は思うのです。私、実は十何年間病院経営をやってまいりまして、ずいぶん苦しんでもきましたし、その間に切実に感じますのは、現在の公営企業としての自治体病院というものは、目標としては高度医療特殊医療あるいは僻地医療、こういうような医療をやりたいという願望はありますけれども現実は決してそういうふうにはなっておりません。その原因が何であるか、これはもうすでに大臣おわかりのとおりだと思いますが、この最大の原因は、やはり企業性をどこまでも追求させられることである、こういうふうに思いますが、大臣の御所見はいかがでございますか。
  6. 江崎真澄

    江崎国務大臣 先ほど私が申し上げましたほかに、これは根本的な問題ですから私特に申し上げなかったわけですが、社会保険診療報酬を改定して、やはり収入源を妥当なものにしていかなければならない、こういうことも当然あったわけです。それで、いま御指摘企業性の追求、まさにその点もありましょうが、これは、自治省といたしましては、利用者がある程度の負担をしてもらうということで、適正な診療費が払われれば、それが収入一つの有力なもたれということになっていくわけでありまするが、これがまだ改定されない、おくれておるというようなことがやはり何といっても一つの大きな原因になろうかと思います。  もともと、これは病院ばかりではありませんが、企業と名がつきまする以上は、利益を受ける側が経営にある程度の負担をしていくということは必要であります。しかし、福祉優先ということがいわれるようになりました以上は、当然、国がこの事態をなおざりにしていいわけのものではありませんので、今後とも関係省庁十分話し合いをいたしまして、国の助成方途をどうするか、どう展開するかという点については十分努力をしてまいりたいと考えております。
  7. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 いま、利益を受ける側でもある程度の負担をしなければいけないということなんですが、ここに非常に大きな問題が私はあると思います。大体、自治体病院というものは一体どういう使命を帯びているかということですが、これは、先ほどお話のありましたように、自治体病院の本質的な問題とつながってまいりまして、いわば、企業性を追求しないのが自治体病院性格であると思います。どこまでも企業性を追求していくならば、これは民間開業医と何の変わるところもないわけです。これはどこまでも、自治体という、住民健康保持なりあるいは病気予防なりをやっていくという、いわば一つのもうからない仕事のために必要だと、私はこういうふうに考えます。そのために、先ほど大臣も申されましたように、高度医療であるとか、あるいは特殊な医療であるとか、一般開業医が金がかかってやれないようなことを自治体病院がやっていく。これでこそ自治体病院の価値があるのであります。  ところが、私が先ほど申し上げましたように、現実の問題は、非常に強い力で自治省あたりからどんどんしぼられますので、もう病院は一生懸命になって、住民に対するサービスよりも、何とかして赤字を克服したい、これのみに頭が集中しておるのです。そのために、いわば開業医と同じようなことをだんだん始めている。そして、開業医と競争して外来患者を獲得することのために一生懸命になっておる。現実の問題として、外来患者が多いか少ないかということが、病院が黒字になるか赤字になるかということに非常に大きなつながりを持っているのがほとんど現実の問題です。したがって、大臣が、患者が適正な配置になっておらぬところに問題があると言われましたが、患者が適正な配置になっておるかおらないかは自治体病院とは関係がないことだ、それがどこまでも企業性を追求して、開業医と同じことをやっているから患者が適正な配置になっていないという考え方が出てくるのではないかと私は考えます。どこまでも自治体病院というものは、やはり自治体というものの原点に返って考える必要があるのではないかと私は考えております。したがって、その自治体原点とは何であるかということが非常に大きな問題になってくると思います。  そんなことはもう百も御承知のことで、ここで言う必要がないことですけれども、この点が非常に忘れられておるので、現在の病院赤字が出てくる根本の問題がそこにあるのではないかと考えますので、大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  8. 江崎真澄

    江崎国務大臣 佐藤さんの言われる意味はよくわかりますが、これはやはり、サービスを受けた者がある程度必要経費利用者として負担していくということは、公平の原則からいって当然なことであるというふうに思います。ところが、これは御指摘のように、企業経営に伴う収入をもってまかなえるものと、とうていまかない切れないものと、性格がそれぞれ分かれると思います。まかない切れないものについては、国及び地方公共団体一般会計からこれを繰り入れて助成していくということも当然考えなければならぬと思います。  先ほども申し上げましたように、おっしゃる意味はよくわかりまするし、私ども現実は一応認識しておるつもりでありまするので、関係省庁とよくよく相談をいたしまして、機宜の措置がとれるように十分努力をしてまいる決意でございます。
  9. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 その問題は、私がここで言う必要もないような非常に根本的なことなので、これでやめておきますが、とにかく、一般病院と、開業医と違うんだという点をよく認識して自治体病院の問題に当たらなければとんでもない間違いを起こすのではないか。特に、病院の問題は、単なる上下水道だとか交通の問題と違いまして、人間の命を預かっているので、まかり間違えば人間の命に関係するということから、私は非常に重要な問題だと思いますので、この問題を取り扱うときは、どこまでもこの原点を忘れないように行動していただきたいと特にお願いしておきたいと思います。  自治体病院の問題で、いろいろ赤字であるから経営診断をしてもらいたいということを、大学だとかあるいは病院管理研究所というようなところにお願いしますと、専門家が来まして病院のいろいろな診断を行ないます。しかし、それが、あちこちのものを見てみますと、ほとんど異口同音に同じことを書いております。一つは、これは医者が足りないとか、あるいは薬が多く使われ過ぎておるとか、どこの科の医者が悪いからそこの科が赤字になっておるとか、あるいはまた、整形外科が最近もうかるから整形外科を置きなさい、整形外科によい医者を入れればうんともうかるとか、こういうことを盛んに分析していきます。これは私も分析を受けておりますが、ほかの病院のものを見てもほとんど同じことを言っているのです。ということは、こんなことはとっくの昔にわかっているということなんです。わかっていることを麗々しく分析してもらって、それをまた麗々しく受けてやるのですが、ふだんやっている病院職員が全部こんなことをもう知っている。こういうことなんですけれども、このことがまた非常に大きな意味があるのではないかと私は思います。ということは、現在の病院経営赤字という問題は、こういう何々専門家経営診断をして、医者不足だとか、薬を使い過ぎるとか、やれ整形外科医者を入れろとかいうような問題よりも、もっともっと深いところに赤字原因がある、こういうことだと私は思うのです。たとえば、医者不足だということは長い間言われておるのです。もう十何年、二十年くらい、医者不足だ、医者不足だと騒いでいる。それで、しょっちゅうその対策が立てられているはずだけれども、最近の統計を見ますと、充足されているどころじゃない、ますます不足になっている。一体何をやっているかという感じを持ちます。また、薬が高い、たくさん使うと言いますけれども、いまの医療体系というものは、薬を使わなければ成り立っていかない。あたかもネオンサインでも飲まされるごとく、広告費をたくさん含んだ非常にコストの高い薬をたくさん飲ませなければ病院が成り立っていかないようになっているのです。あるいはまた、整形外科医者を入れればいいといったって、日本じゅう整形外科医者が幾らいるか。整形外科医者を右から左に連れてこれれば、何も経営診断してもらわなくてもいいのです。こういう病院の商売のやり方、こういうことでもって赤字が解決される状態ではないということ。さっきの問題とからみますけれども、このことは非常に私どもが考えてみなければいけない。病院やり方について、専門管理者がいないとか、自覚が足りないとか、そういうことを盛んに言われていますけれども管理者幾ら自覚をしてみても、合理化をやってみても、赤字が減らないのです。私も現実に、七百五十床くらいある大きな病院をやって、職員組合とけんかをして合理化をしてみたりしましたけれども、すぐまた赤字に転落してしまう。そういうような病院管理の技術だとかなんとかいうことじゃなくて、医者不足だということは、病院以前の問題なんです。薬がおかしいいうことは、もう管理者がやることじゃないのです。これ以前の問題がここにある。このことをよく解明していかないと、この赤字の問題というものは幾らやっても、群盲象をなでるような結果に終わるのではないかと思います。  それで私はちょっとお伺いしたいのですが、現在の社会診療体系の中に、原則として、たとえば建物であるとか、あるいはいろいろな検査の設備であるとか、こういうものがいわば減価償却の問題として含まれているのかどうか、これをちょっとお伺いしたいのです。
  10. 鎌田要人

    鎌田政府委員 社会保険診療報酬は私どもの所管でございませんので、的確なお答えはできません。  ただ、私ども厚生省当局から伺っておりますところでは、当初、社会保険診療報酬が定められた当時におきましては、減価償却分というものは入っておったようでございますが、その後の過程におきまして、その点はしかく明確になっておらないというふうに伺っております。詳細は、あくまでも厚生省のほうからお聞き取りいただいたほうが正確かと存じます。
  11. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私の調べたところでは、社会保険診療報酬体系の中には、こういう減価償却分だとか元金というものは入っておらないようなんですね。そうしますと、結局いまは国民皆保険の体制でありますから、したがって、理論的に、病院が働いた金でもって設備投資をしていく余裕が出てこないということになるわけです。だから、もし病院で、働いた金でもってこういう建物なりいろいろな減価償却をしていくことができるとするならば、それは、医者がうんと働くか、あるいはまた患者にうんと負担をかけるか、このどっちかだと思うのです。一般的に考えますと、こういうものは母体市町村が持つのが当然だと私は考えておりますけれども現実は、母体市町村が三割自治で、非常に貧乏世帯で、ちょうど病気の母親が病気の子供をかかえたようなもので、にっちもさっちもいかないというのが現実なので、地域住民の要望に従ってりっぱな病院を建てると、どうしても病院自体がそれを返していかなければならない。こういうかっこうになっておるわけで、こういうことが非常に大きな負担をかけておるわけです。  そこで、ちょっとお伺いしたいのですが、建物であるとか設備、こういう起債は、一体何年ぐらいの償還で、あるいはどのくらいの利息で借しておるのか、それをちょっとお伺いしたい。
  12. 鎌田要人

    鎌田政府委員 病院起債につきましては、政府資金を充当することといたしておりますので、資金運用部のほうは、去年の十月から六分二厘になりましたが、簡保資金のほうは少しおくれまして、四十八年度から六分二厘。したがいまして、四十八年度からすべて六分二厘になります。それから償還年限でございますが、償還年限は二十五年になっております。
  13. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 二十五年だと、かなり長いのでいいと思いますけれども、これはやはりできるだけ償還年限を長くして、貧乏な母体市町村でも十分に返していける、知らず知らずに返していけるという、こういうくらいの手当てをしてやりませんと、この減価償却が非常に大きな負担になってくるのではないか、こういうふうに考えますので、御配慮をお願いいたしたいと考えます。  それから、医者不足の問題についてちょっとお伺いしたいと思いますが、現在、医者不足については、どのくらい自治体病院医者不足なのか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  14. 鎌田要人

    鎌田政府委員 正確に自治体病院個々についての不足状況を積み上げて調査をしたものはございませんが、私どもが全国の自治体病院協議会その他から伺っておりますところでは、おおむね七割程度の充足状況というふうに聞いております。
  15. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 これは自治省で調べたのだと思いますけれども、大体医者充足率は六九・七%になっておりますが、問題なのは、百床未満の小規模の病院なんです。この小規模病院医師充足率が五六・三%という数字が出ております。四百床以上の病院が七八・六%、平均して六九・七%という数字が出ておるわけです。  いま申し上げましたように、小規模病院は五六・三%という数字であります。この数字が非常に問題だと私は考えております。というのは、これも自治省公営企業決算状態で出した「昭和四十六年度地方公営企業決算の概況」というのに出ておるのでありますけれども、百床未満病院は非常にたくさんあるわけです。特に、市町村立病院が五九・四%と、非常に大きな率を占めております。そして、これが、開業医のあまりいない地域に非常にたくさんばらまかれておるわけです。ところが、この病院医師充足率が五六・三%、半分しか医師がいない。僻地といいますか、あまり開業医のいないような、医療については非常に希薄な地域でなおかつ医師が充足していない。こういうような状態があらわれているのは非常に大きな問題であると私は思うのです。  これに関連しまして、仄聞するところによりますと、国は、百床以下の病院というものが非常に経営が困難であるという意味からだと思いますが、この小さな百床以下の病院を整理していく、だんだんなくしていこうというふうな方針を立てているということですけれども、このことはほんとうでしょうか。
  16. 江崎真澄

    江崎国務大臣 いま御指摘のような病院が、私の持っております資料では、全体の三七・四%、三百二十三病院あるといわれます。そこで、そういう病院は、民間医療機関による診療を受けることが非常にむずかしい地域に主としてある。いま佐藤さんが御指摘のように、医師不足しておるということで、どうも閉鎖のやむなきに至るというのが主原因でありまして、自治省がこれに干渉して廃止をするという傾向はもとよりございません。これなどを、将来、御審議を願って発足いたしました自治医科大学卒業生等によってカバーしていくということも必要であるというふうに考えております。
  17. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 いま出ました医師不足の問題ですけれども一体日本ほんとう医師不足であるかどうかという問題だと思うのです。それで、外国の例等と比べてみまして、この問題はどういうふうになっているか、どなたでもよろしいですから、人口十万当たりでもいいし、一人当たり人口でもよろしいし、教えていただきたいと思います。
  18. 鎌田要人

    鎌田政府委員 これはすでに先生御存じだろうと思うわけでございますが、人口十万人当たり医師数、これは昭和四十五年末現在でございますが、わが国の場合百十四人でございます。アメリカが百五十人、西ドイツが百五十一人、イタリアが百七十三人、ソ連が二百十五人。これはいずれも一九六六年現在の数字でございます。したがいまして、これらの数字等を比較対照してみますと、わが国の場合、やはり絶対的に医者が足りない。  それからもう一つ、これも厚生省でございますが、中央社会保険医療協議会調査によりますところの、マクロモデルによる医療需給研究報告書を、昭和四十四年三月に出しておられるわけでございますが、これでは、望ましい医師数から見ますと、三万人以上の医者不足しておるということを言っておるようでございます。  私ども見ておりまして、毎年度新規大学を卒業し、医者がふえていくわけでございますが、多くの方が開業医になられて、いわゆる病院勤務のお医者さんというものがどうしてもなり手が少ない、不足がちである、こういう傾向が見られるようでございます。
  19. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 いま、医者の問題で各国との比較がありますが、私の持っている資料は、一九六七年の世界保健機構調査によるのですけれども、これによりますと、日本が十万人当たり百九・二人となっております。それから、厚生省統計調査部でやった昭和四十六年の統計では百十七・三人というふうになっております。確かに絶対数は非常に不足ですけれども、現在私どもが実感を持って感じているほど日本医者不足ではないと思うのです。いま財政局長の言われたのとちょっと違いますけれども、ここにありますのは、アメリカが百五十三・四、イギリスが百十三・一、フランスが百十七・七、西ドイツが百六十二・七、ソ連が非常にこれは多くて、二百二十・六、日本がこの場合で百九・二と、こういうふうになっています。確かに日本の場合は、低いことは低いですけれども、しかし、この数字というものは、私ども医師不足で悩んでいるこの実感から比べますと、決して——これほど接近しておるとは、私も実はこの数字を見るまで思いませんでした。実感は、非常に私どもにとっては不足に見えるのです。この問題を考えてみることが、この医師不足に対する一つのポイントになってくるのではないか、こういうふうに考えます。  まあ、医者が足りないというけれども、実際には医者が足りないのではなくて、一つには勤務医が足りないということを意味しておる、それからもう一つは、医者一つ地域に偏在しておる、この二つが非常に大きな問題だと私は考えます。  そこで、この問題をどういうふうに解決していくのかということが、この医師不足に対しての解決の大きな糸口になってくるのではないかと思いますが、皆さんのお考えでは、一体、何で勤務医はこんなに不足するのか、この点についての御所見をお伺いしたいと思います。
  20. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これはいろんな原因もあるわけですが、やはり、直接的には、何といっても、こういう医療機関の給料、待遇が悪過ぎる、低過ぎるということが一番の原因であろうというふうに考えます。
  21. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 確かに、この待遇の問題は非常に大きな要素だと思います。しかし、私は、やはりそれだけではないと考えます。というのは、いわば、理想に燃えた、病院の若いお医者さんに私もずいぶんつき合ってまいりましたが、一様に言われるのは、決して給料が安いということではないのです。一つは、病院の中で勉強したいというのです。この日進月歩の医療の進展する時期において、いなかの病院あるいは大規模病院でも同じですが、研究の施設、勉強する設備というものが一つもない。朝から晩まで、これはもう診療するというのではなくてさばくの感じというか、外来に一生懸命で、職に押されてしまって、勉強どころではなくて、疲れてしまって、うちに帰ると何ともならない。何とかして若いうちに勉強しなければ医者として成り立っていけない。こういう切実な願望が一つある。これは、私は、年とって打算的になった医者は別としまして、学校を出たてのような若い人は、非常にこの点について希望に燃えておるわけなので、この点の配慮というものが非常に不足ではないか、こういうことを考えます。  もう一つは、雰囲気といいますか、環境があまりにも索漠とした環境の中にあるので、どうもやはり居つきにくいという点もあるようでありますけれども、私は、やはり最大の問題は、たとえばかなり大きな病院ならば研究の施設をうんとつくってやって、そして勉強しながら診療するということ、こういうふうなやり方をしていけば、若いお医者さんがもっともっとたくさん集まるのではないかと思う。したがって、それのためには、もう一つ大事なことは、医者にひまを持たせなければいけないということなんです。ところが、医師不足の事態に、これはイタチごっこ、追っかけごっこになりますけれども、ひまがない、ひまがなければ医者が来ない、こういうことになるわけなので、なかなかこれはむずかしい問題だと思いますけれども僻地を含めて平均的に日本じゅう医者をばらまくためには、こういう配慮というものが、単に金だけの問題ではなくて、非常に大きな問題だと思います。  これは現実にこういう例がたくさんあります。私の隣の小さな町で、病院が、組合立の病院だったのですが、わざわざそれから脱退しまして、大学で、りっぱな病院を建てなければ医者をよこさないと言っているからというので、鉄筋コンクリートのりっぱな病院を建てた。医者は来ました。しかし、半年もたたないうちに医者がいなくなった。ところが、この医者がいない病院を、やめるわけにもいかないというので経営している。こういうばかな例はたくさんあると思うのです。こういう状態はまことにおかしい状態だと私は思っておりますけれども現実にこういう状態があるわけなんです。これは、一つ病院診療所みたいなものを見ますとこうですが、ずいぶん大きな病院でも、かなり医者不足です。ですから、診療科をどんどん廃止している。せっかく機械から器具まで全部買ってあるにもかかわらず、医者がいないために一つ診療科を廃止してしまうという例は幾らもある。これはやはり医者をどういうふうに充足するかということが問題ですけれども、私の一つの提案としては、忙しいのにもかかわらず、なぜ開業医と競争して外来患者を見るかという問題が一つあると思うのです。外来患者は全部開業医にまかせてしまって、ほんとう高度医療あるいは特殊医療というものに徹すべきだ。あるいはまた、開業医の持てないところの高度の検査設備、ガンでもあれ、あるいはレントゲンでもあれ、あるいはまた放射線の診療器械でもあれ、非常に高度な設備を備えつけて、高度的な医療特殊医療をやって、開業医と競争して外来患者を奪い合うということをまずやめるべきだ。そうすれば、病院医者のひまというものは、三分の二、少なくとも六〇%ひまになると思う。いまの勤務医というのは、朝の八時半、九時に来て、三時ごろまでびっちり見なければ、病院管理者からおまえはなまけているといっておこられるのです。ほんとうにこれは診療じゃなくて、さばくという形でどんどん見ておる。待っているのが三時間で診療が三分だという笑い話がありますけれども、全くそのとおりなんです。私は、自治体病院外来患者診療をやめるべきだ、そうして医者にもっとひまを与えて、さばくじゃなくて、しっかりと診療をさせるべきだと、こういうふうに考えるのです。  そこで、一つ開業医の問題が浮かび上がってくるわけです。地域の根幹の基幹病院であるところの自治体病院というものと、地域に散在しているところの開業医というものをもっと結びつける必要があると思うのです。いまはもうばらばらです。ばらばらどころではなくて、自治体病院開業医というものは対立して、けんかしている。これは当然でしょう、商売がたきだから。こういう状態にしておいて、医者不足が解消されるはずがないのです。開業医というものと自治体病院の勤務医、これをしっかりと一つのチームとして編成し、地域医療体系の中に開業医を引っぱり込む、こういうことをしなければ、何ぼたってもこの医者不足という問題は解決できないと私は思うのですが、いかがですか。
  22. 江崎真澄

    江崎国務大臣 まさに専門家としての御意見、傾聴いたしました。私ども代議士として、いろいろな公立病院自治体病院を見ておりますると、これの両立は、お説のようになかなかむずかしい。それは自治体病院が、いまおっしゃるように、いわゆる研究をする施設がない。それから、高度医療機械の設備も比較的少ない。こういうことが、月給の多寡以外に、医師の居つきが悪いという大きな原因になるわけでありまするが、民間医と自治体病院との協力体制の確立ということが結局むずかしくなる根本も同じところに原因があると思うのです。大病院の場合は、かぜひきであるとか腹痛というような比較的簡単なものは町の開業医にお願いをする。そうして、難病、奇病といいまするか、高度な医療設備を要するようなものは、町の開業医と協力をし合いながら、大病院の場合は、機械施設その他を通じてともに研究して治療に当たる。むずかしいものを病院で、簡単なものは開業医で、この相互扶助がきわめて円滑にできるわけでありますが、比較的設備のまだ未熟な、特に先ほど指摘のありましたような百床以下の小自治体病院ということになりますると、これが言うべくして事実上できないという実情にあるわけでございます。したがいまして、これは基本的には、私がとやこうお答えすることよりも、医療供給体制を国としてどう整備していくのか、この基本方針を確立した上で実現をしていく問題であろうというふうに考えます。これなどはよく厚生大臣などにも申しまして、おっしゃる意味はまさにそのとおりで、私も同感いたしまするので、十分ひとつ厚生大臣ども督励し、努力してまいりたいと考えます。
  23. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 これからの医療というものは、いままでの、病気になったからこれをなおしてやる——ということももちろん大事ですけれども、それよりも、やはり住民の健康管理であるとか、予防医学であるとか、こういういわば第三の医学といわれているものが非常に大切になってくると思うのです。特に、最近のような、公害問題が常時発生するというようなことになってきますと、この予防医学、健康管理、こういう第三の医学的なものが非常に大きなウエートを占めてくると思うのです。これのにない手というのは、これは決して開業医じゃなくて、自治体病院、公的医療機関がやるしかないと私は思う。そういう意味で、これはもう絶対もうからぬもの、企業性からいくと最も採算の悪い仕事なんですよ。これから自治体病院というものが一生懸命に取り組んでいかなければいけないこういうときに、病院に対するところの独立採算制というものをどこまでも続けていくならば、国民的な要望である第三の医学なりこういうものに取り組む姿勢というものがどうしても出てこないと私は思う。これからの国民の非常に大きな要望、特に公的医療機関に対する要望、これを解決するところの根本の問題は、公営企業という、この企業という字を取ってしまうことだ。これを取らない以上は、何ぼやってもこの病院の問題は解決できないと私は思いますが、どうですか。
  24. 江崎真澄

    江崎国務大臣 おっしゃる意味はわかりますが、これは相当な財政措置も必要といたしまするし、国の医療供給体制をどういうふうに整備するか、まずこの基本から確立してかからなければならぬ重要な基本的な問題になってくるというふうに思います。特に、地方公共団体病院で、老人医療の無料化だとか、乳幼児の定期診断だとか、そういうものがだんだん福祉社会において実行されてまいりますると、ますますいま御提示になりましたような目まぐるしい忙しさにも見舞われることにもなるわけでありまして、これはやはり、私は、国の厚生行政として根本的に検討をする大問題であるというふうに考えます。いまのところは、自治省としては、現存するものをどう措置するかというのに手一ぱいで追われておるというのが実情であります。
  25. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 私も、いま大臣が言われたとおりだと思います。これは現在の赤字をどう手当てするか、これだけで手一ぱいだと思いますけれども、しかし、それだけに追われておったのでは、いつまでたってもこの問題は解決できませんから、どうかひとつ、大臣の努力でもって、根本的なところにメスを入れるというふうにしていただきたいと思います。  時間がありませんので、もう一つだけ別の問題をちょっとお伺いしたいと思います。これはあるいは直接大臣には関係がないと思いますけれども、一応大臣のところにも議会の議決した意見書が提出されておりますので、念のために御質問申し上げます。  実は、秋田県の鉱山のある小坂町、あそこは東北縦貫道路が通ることになっておるのです。ところが、この縦貫道路が非常に大きな問題になってきておるわけです。というのは、あそこは小坂川という川の狭い谷合いにできたウナギのねぐらのような町なんです。あそこのどまん中を、高さ五メートル、幅四車線の高速道路が、せっかく区画整理をしたたんぼのまん中を通り、小坂町の町のまん中を通って、万里の長城みたいなのが走るのです。町じゅう一人の反対もなく、大反対をしておるのです。私はいろいろ事情を聞いてみましたら、この路線を決定するまで、建設省も道路公団も、ただの一回も地元との協議をしていないのです。ずいぶん長い時間があるので、やっておるのではないかと思って私は念のためにずいぶん調べてみましたが、ただの一ぺんもやっていない。そうしていきなり発表して、ウナギのねぐらのようなところを万里の長城が走る。こういう状態になっておりますので、町じゅう大騒ぎになっておる。大臣は直接関係がありませんけれども自治体等を管理する大臣として、こういうことはかなり問題がある。私はこういふうに思うのです。これは地図ですが、ちょっと見ていただきたいと思う。
  26. 江崎真澄

    江崎国務大臣 これはおっしゃるとおりに、地域の開発につきましては、当然、地方公共団体市町村、それから住民、これが十分納得した上で仕事を進めるということでなければならぬと思います。私どもも、これは建設省側に十分注意を喚起いたしたいと思います。  それから、私ちょっとそれは非常にふしぎに思うのですが、私どものところに、名神高速というものが一番初めにできたわけです。私の選挙区ですね。そのときには、これが土地開発のための建設省、道路公団の態度かと思えぬくらい、非常に民主的、話し合い的でそのときはできたわけです。したがいまして、一度も話がないというのは、最近の道路公団及び建設省のやり方としては、むしろ、私の知る範囲では、いかにも例外的というか、不行き届きなように思いますので、御趣旨の存する点は私からも十分言いますが、どうぞひとつ佐藤さんからも建設大臣によく注意を喚起していただきたい。
  27. 佐藤敬治

    佐藤(敬)委員 質問を終わります。
  28. 上村千一郎

    ○上村委員長 次回は、来たる三月一日木曜日、午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いた  します。     午前十一時三十分散会