○
山田(芳)
委員 自治大臣から
所信表明を伺ったわけでございますが、昨年もそうでありましたけれ
ども、当面の問題についてのお話は非常にけっこうだと思いますけれ
ども、
地方自治のいわゆる基本的な問題についてお
考えをお伺いをしたいと思います。具体的な問題をあげながら、最終的に、
地方自治に対する
大臣の基本的な
考え方についてお尋ねをいたしたいと思います。
私は、二十数年にわたって
地方行政一本で来た人間でございます。
地方から見た
地方自治行政という問題について、日ごろからいろいろと
意見を持っております。
その第一は、何と申しましても、
地方自治の本旨ということであります。憲法の第八章九十二条以下に「
地方自治の本旨」ということばが出ておりまして、御
承知のように、法律や制度というものは
地方自治の本旨に基づいて運営されなければならないし、制定されなければならないというふうにいわれております。そういう根本原則の中にあって、現在の
地方制度組織及び運営がはたして
地方自治の本旨に基づいてできているかどうかということは、
地方自治団体におる多くの人たちが非常に疑問を持っておる点であろうというふうに思います。累次にわたる御
努力はわかりますけれ
ども、なおいまだしの感を深うしているわけであります。特に、憲法の付属法典として、
地方自治法、
地方財政法、
地方税法あるいは
交付税法等が制定をされておるわけでありますけれ
ども、それらの内容が、
地方自治の本旨に沿っているということは必ずしもいえないのではないかというふうに私
どもは
考えておるわけであります。
そこで、「
地方自治の本旨」というむずかしいことばを憲法でも
地方自治法でも使っているわけでありますが、その問題には二つの要素があるといわれております。一つは
住民自治であり、もう一つは団体自治だというふうにいわれております。
住民自治は、
住民の
意見というものを聞きながら行政をやるべき制度というものが確立されていなければならないということであり、団体自治というものは、
地方自治団体が国から独立をした行政権能と
財政権能を持たなければならないというふうに
考えられるということは、多くの学者が
指摘し、また、いろいろの人の言っている一致した
意見であります。
さて、そこで、私は、いわゆる三割自治あるいは一割自治といわれているところに見られるような現在の
財政権能、行政権能の中で、
地方自治が、はたしてほんとうに
地方自治の本旨に沿った運営がなされているかどうかという点について、
大臣の基本的な御
意見とお
考えを伺いたいというふうに
考えているわけでありますが、先ほど申しましたように、いろいろの質問をいたしました中で、最後にこの点をお伺いをいたしたい。
まず、第一に、
地方自治体の
機能についてちょっと申し上げますと、御
承知のように、いまの
地方自治体というものは、国の高度成長政策やいろいろの政策の中のひずみというものに対して、一つのクッションの
役割りを果たしていると思うのです。いろいろの
住民が一々東京へ来て、各省に対していろいろとものを申すということができない。だから、いろいろな公害であるとか、物価高であるとか、
交通難であるとかというような問題については、みなそばの
自治体にかけ込んで何とかしてほしいということを言うわけであります。したがって、
地方自治団体こそまさに、国のいろいろのひずみを何としてでも解決をしてやるんだという立場に立った
住民自治の原則の中で行政をやってきているわけでありますから、非常に苦労と困難が多いわけであります。そういう
意味でクッションの役を果たしている
地方自治団体というものは、もっともっと大事にしてやってほしい、それが私たちの
意見であります。
さて、そこで、
大臣にまずお尋ねをいたしたいのですが、
地方自治法がございまするけれ
ども、その
地方自治法ももう何べんも改正されておりますけれ
ども、もっと基本的にものを
考え直す時期ではないかというふうに思うわけであります。ここに昨年の「
地方行政委員会審議概要」という本がございますが、その九二ページを見ると、昨年の三月におきましても、渡海
自治大臣は、社会経済情勢の
変化に伴って、
地方税の税源配分や、あるいは
地方自治のあり方についての根本問題を
考えるべき時期ではないか、そのために
地方制度調査会の
委員の任期を二年に延期し、当面の問題はもとより、根本的な問題についても長期にわたり取り組んでみたいというふうに言っておるわけであります。したがって、前の
大臣がこういう
所信表明を
地方行政委員会でされているわけでありますから、私も、引き続いてこの
方針の中で、いまやまさにこの根本的なものの
考え方というものをひとつ
江崎大臣のときに打ち立てていくというような
考え方でやっていただきたいというふうに思うわけでありますが、その第一点は、
地方自治団体の事務の問題であります。
地方自治法第二条に、いわゆる
地方自治団体の事務というものがあげられておりますが、
地方自治団体の事務は、第二条によりますと、「その公共事務及び法律又はこれに基く政令により普通
地方公共団体に属するものの外、その区域内におけるその他の行政事務で国の事務に属しないものを処理する。」とあるわけでありますが、こういう府県制以来の事務の列挙のしかたでなくて、
地方自治団体としての、もっと
住民自治あるいは団体自治の原則に基づいた、いわゆる
地方自治事務というようなものに変えていくべき時期が来ているのではないか。普通固有事務あるいは団体委任事務その他の公共事務というむずかしいことばでいわれている三つの事務が、それぞれ区分する実益と
意味があるのかどうか、その点についてまずお伺いいたしたいと思います。