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1973-09-18 第71回国会 衆議院 大蔵委員会 第49号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年九月十八日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君    理事 大村 襄治君 理事 木村武千代君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 森  美秀君 理事 阿部 助哉君    理事 武藤 山治君 理事 荒木  宏君       宇野 宗佑君    越智 通雄君       大西 正男君    金子 一平君       小泉純一郎君    三枝 三郎君       塩谷 一夫君    地崎宇三郎君       野田  毅君    坊  秀男君       村岡 兼造君    毛利 松平君       佐藤 観樹君    高沢 寅男君       塚田 庄平君    平林  剛君       広瀬 秀吉君    堀  昌雄君       村山 喜一君    増本 一彦君       広沢 直樹君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁物価         局長      小島 英敏君         大蔵政務次官  山本 幸雄君         大蔵大臣官房審         議官      大倉 眞隆君         大蔵省主計局次         長       辻  敬一君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省関税局長 大蔵 公雄君         大蔵省理財局次         長       井上 幸夫君         大蔵省証券局長 高橋 英明君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行理         事)      渡邊 孝友君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正委員の異動 九月十二日  辞任         補欠選任   増本 一彦君     瀬崎 博義君 同日  辞任         補欠選任   瀬崎 博義君     増本 一彦君     ――――――――――――― 九月三日  付加価値税新設反対に関する請願神崎敏雄  君紹介)(第九九七八号) 同月十一日  所得税の軽減に関する請願広瀬秀吉紹介)  (第一〇二四二号)  恩給、年金の非課税等に関する請願福田篤泰  君紹介)(第一〇二六七号)  戦傷病者傷病恩給等担保融資額増額等に関  する請願山崎拓紹介)(第一〇三五五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 九月五日  昭和四十八年度産葉たばこ収納価格の引上げに  関する陳情書(第  六六〇号)  身体障害者に対する自動車重量税等免除に関す  る陳情書(第六六  一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国の会計に関する件  税制に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 木村武千代

    木村武千代委員長代理 これより会議を開きます。  委員長所用のため、その指名により私が委員長の職務を行ないます。  この際、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、金融に関する件について、本日、日本銀行理事渡邊孝友君に参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木村武千代

    木村武千代委員長代理 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 木村武千代

    木村武千代委員長代理 国の会計税制金融及び証券取引に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐藤観樹君。
  5. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私は、きょうは許された時間、相変わらず卸売り物価が上がっているわけでありますけれども、その現状と、まあ今度のインフレについてはいろいろの要因があるわけでありますが、きょうは時間がそんなにありませんので、それに対する金融政策、特に最終的に日銀全国銀行に対する一般貸し出し、このあたり中心にして、まだまだ全体的ないろいろな先行指標を見ますと上向きになっているわけでありますけれども、これが一体いつ鎮静するのか、もうそろそろ金融政策として限度に来ているのではないかと私は思うわけでありますけれども、一体どんな見通しがあるのか、このあたりについて若干御質問をしたいと思います。  まず、経済企画庁にお伺いをしたいのでありますが、一番新しい資料で最近の物価状況はどうなっておるか、そのあたりからまず御報告をいただきたいと思います。
  6. 青木慎三

    青木政府委員 物価指標でございますが、卸売り物価につきましては、今年の一月からずっと上がってまいりまして、現在までわかっております資料で申しますと、七月が前月比で二%、八月で二・一%の上昇率となっております。これを前年同期に比べますと、七月で一五・七%、八月で一七・四%という数字になっております。それから消費者物価でいいますと、全国の七月が〇・七%上がりまして、前年同期比で一一・九%という高水準にございます。
  7. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 卸売り物価で一七%ですか、という数字はおそらく朝鮮動乱以来のたいへんな数字じゃないかと思うのです。これがしかもたいへん続いているということですね。四月下旬以来十一旬続いて卸売り物価が上がっている、こういう状況だと思うのであります。  この原因ということでありますけれども、世界的なインフレの問題あるいは国内のコストインフレの問題あるいは需給アンバランスの問題、いろいろあると思うのですけれども、担当のおたくとしては一番どこにウェートが、今度のこの物価騰貴の大きな原因があると考えていらっしゃるのか、このあたりいかがでしょう。
  8. 青木慎三

    青木政府委員 卸売り物価上昇につきましてはいろいろな理由が考えられます。ただいま御指摘のございましたように海外物価上昇、ことに食糧あるいは非鉄金属の原料というような世界的な物価の値上がりの反映というのが一因であります。それからそのほかにも需要シフトによりますところの上昇原因とか、過剰流動性によります上昇とか、いろいろいわれておりますが、私どもが一番重視いたしておりますのはやはり需給関係でございまして、需要設備投資民間建築投資中心といたしまして非常に強いというところに一番大きな原因があるように思われるわけでございます。  したがいまして、物価対策といたしましては総需要抑制というところに重点を置きまして、いままでいろいろの施策をつくってきたわけでございますが、たくさんある原因の中で端的に一番大きな影響を持つものを言えとおっしゃるならば、やはり需要が非常に強いというところにあるのではないかというふうに考えられます。
  9. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そこで現在の景気なんでありますけれども、四、五、六と三カ月間に三回公定歩合引き上げをやって、八月四回目をやっている。それから預金準備率引き上げが一月から始まってすでに四回。これは聞くところによりますと、三カ月間に三回公定歩合引き上げをやったというのは明治十六年以来のことだそうでありますけれども、ここまで金融引き締めをやっても、景気は依然全体的な指標を見るならばややまだ上がりぎみだと私は思うのです。  少しその辺を確実にするために鉱工業生産、それから出荷生産者製品在庫率、このあたりは一番新しい資料でどういうふうになっておりますか。
  10. 青木慎三

    青木政府委員 最近の指標で申し上げますと、鉱工業生産は四月が前月比で〇・八%の減、五月が二・五%の増、六月が〇・二%の増、七月が〇・四%の減というふうになっておりますが、前年同期で比べますと四月から一八・四、一九・五、一九・二、一九・〇というふうにきわめて高い水準で推移いたしております。  出荷でございますが、出荷はやはり四月から申し上げますと、前月比で〇・九、三・四、マイナス一・四、一・一というふうに推移しております。これも前年同期比で申し上げますと、四月から一八・八、一九・九、一七・七、一九・四というふうに高い水準で推移いたしております。  これに比べまして在庫でございますが、これは四月から、前月比にいたしまして一・二、〇・三、マイナス〇・六、ゼロということになっております。これも前年同期比で比べますとマイナスの四・七、マイナスの三・五、マイナスの三・四、マイナスの三・五というふうに生産者製品在庫で見ますと非常に需要が強く出荷が強いために、むしろ前年同期よりも下がっているという状況でございます。それぞれそれを在庫率で申し上げますと、四月から八九・五、八六・九、八七・六、八六・七というふうに推移いたしておりまして、この数字在庫率数字といたしましては非常に低い数字でございます。
  11. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それからやはりもう一つ経済企画庁が適当かと思うのですが、設備投資でありますけれども、これがいろいろ発表を見る限り依然として非常に強い調子、むしろ二月の時期に比べまして修正がふえるというそういう状態になっていると思うのですけれども設備投資のほうはいかがですか。
  12. 青木慎三

    青木政府委員 設備投資全般でございますけれども設備投資は四十七年度の後半から非常に活発化いたしまして、これが景気拡大の非常に大きな原因となっている実情でございます。民間設備投資につきましては、当中小企業あるいは非製造業において活発化したわけでございますが、四十八年に入りますと大企業製造業におきましても投資意欲が非常に盛り上がりまして、現在各種のアンケート調査によりましても、機械受注建設受注動きを見ましても民間設備投資意欲はなお相当強いというふうに判断されるわけでございます。  指標で申し上げますといろいろな指標がございますけれども設備投資の動向をあらわしますのは、一つ機械受注でございます。機械受注につきましては四月から七月までの数字が出ておりますが、四月が一三・八%の増、五月が三・四%の増、六月が三・五%の減、七月が九・二%の減と、若干振れておりますけれども、前年の同期に比べますとそれぞれ五〇%から八〇%の間の増でございまして、機械受注は非常に強いということがいわれると思います。  それから、民間建設受注でございますが、これも昨年同期に比べまして四月から四八・九、四九・〇、七二・九、六四・六というふうにきわめて高い水準でいまだ推移しているのが実情だと思います。アンケート調査によりましても、最近の一番新しい開銀の資本金十億円以上の主要企業千百三十一社の調査でございますが、昨年に比べまして全産業で二五・九%の増、それから製造業で三三・四%、非製造業で一八・三というふうな、わりあいに強い数字が出ておる次第でございます。
  13. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 いま報告がありましたように、日銀短期経済観測によっても、五月で調べたときと八月で調べた時期で、もう一月から日銀窓口規制を含めれば金融を締めることは始まっていたわけでございますけれども、すでに五月と八月を比べても、増額修正企業マインドとして設備投資考えている、それが非常に修正割合が大きい、こういうことが出ているわけでありますけれども、もう一つだけちょっと数字をあげていただきたいのですが、これは銀行局にお願いしたいのですが、手元流動性でありますけれども、これが四十六年、四十七年の非常に金融のだぶつきのためにいまだにたいへん強いわけでありますけれども、いま手元流動性はどのくらいになっていますか。
  14. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 手元流動性指標といたしまして私どもが見ておりますものとしては、売り上げ高に対する現金預金割合ということで見ておるわけでございます。いわゆる過剰流動性といわれておるものが発生した直前の数というのは、四十六年の四月と六月くらいの時期ではなかろうかと思いますが、この辺の時点におきましては一・一三という数字になっております。それが四十七年の一月から三月に入りまして一・三二と、こういう状況でございました。そういう流動性の高い状況というのは、ことしに入りましても、春までは一−三の間が一・二二、四月から六月が一・一六と、こういう状況に推移しております。そういう意味からいたしますと、若干ピークを過ぎて、流動性という問題が起こる前の時期に戻りつつあるのではなかろうか、かように考えております。
  15. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 設備投資の問題は、先ほど調整局長からお話をいただいたように、需給の非常なアンバランス、総需要があまりにも高いということですから、この部分だけをとってこれを清算をしようと思えば供給をふやせば話はつくわけでありますけれども、この上に供給をふやすという形をとりますと、もちろん部分的にはいろいろな資材、原材料の供給をふやすということになりますけれども、総需要に対する総供給をふやすという経済政策をとったならば、ますますこれは物価の高騰ということは避けられないわけです。そこで設備投資が強いというのは、そういった意味では理屈としてはわからないわけではないわけですね。しかしこのまま設備投資をさらに総需要に対する総供給という考え方でやっていったら、ますますたいへんなことになると思うのです。  それで、再び金融のほうに戻るのでありますけれども、これだけ四回にわたり預金準備率引き上げあるいは公定歩合引き上げ窓口規制、これをやってきて、はたして若干なりとも引き締めの浸透というものが数字の上にあらわれているのだろうか、そのあたりはいかがですか。
  16. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 いま御指摘のような状況ということを背景といたしまして金融引き締めをやってまいりましたわけでございます。大ざっぱに申しまして、まず従来もそうでございますが、常に引き締め政策金融引き締めでございます以上、まず金融面にねらいをつけ、これの効果が漸次金融面に浸透していく、こういう過程をとってこれまで戦後引き締め効果というものが実現したわけでございます。大体引き締めに着手いたしましてから一年ないし一年半という過程でそういう状況になってきたのがこれまでの姿ではなかろうか、かように考えております。  そこで、現在の状況はどうかということでございますが、私どもはことしの初め以来とってまいりました引き締め影響というものは、現在の段階では、少なくとも金融面と申しますか、あるいは貨幣の動きと申しますか、その辺のところではかなり明確にあらわれてきておるのではなかろうか、かように考えております。できるだけ簡単に申す意味から、たとえば貸し出し金利の面でございますとかそれから貸し出しの増勢あるいは先ほど御説明いたしました流動性関係あるいは最近に至りまして法人預金の取りくずしが進んでおることというような点で、金融面ではかなり顕著に出ておろうかと思います。  ただ、先生も御指摘のように、これが実態の経済活動にどれだけ影響をしておるかということからいたしますと、現在の時点においてはまだ経済活動規模というものはかなり強い勢いを示しておるというように考えております。ただ、最近に至りましてようやくいわば現象面といいますか、全体のケースとして御説明いたすまでには至りませんが、多少なりとも若干の企業、たとえば石油の精製あるいは一般機械非鉄建設、不動産、こういったところでは若干動きが弱くなっておる。設備投資を減額修正するという動きが多少見えてき始めたかというように思います。またもう新聞でも報ぜられたことでもございますが、一部の市況商品については若干の動きもある、こういう状況でございますけれども、全体といたしますとやはりまだまだ経済動きは強い、かように考えております。  ただ、蛇足かと存じますが、わが国経済の特徴として、非常に同調性の強い経済である、一たび強気が支配すれば強気に、弱気が支配すれば弱気にいってしまう。こういう状況というものもございまして、今後の推移につきましては、いましばらく、現在の引き締め政策を堅持することを通じて需要を押えていくことをやるべきではなかろうか、同時に、財政面その他においても、まさに先生の御指摘のように、需要全体を押えていくという方法を考えていかなければならない、かように考えております。
  17. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 たとえば全国銀行実質預金あるいは貸し出し、このあたりはどういうふうになっていますか。
  18. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 実質預金で見ますと、これは全国銀行の計数でございますが、本年の五月までは約一兆五千億、正確に申しますと一兆四千九百億といった増加がございましたが、六月に入りまして三百二十二億の減少、七月に入りまして千三百六十九億の減少、八月に入りまして六百三十八億の減少となっております。この姿は都市銀行におきましてはさらに強く出ておりまして、六月には二千九百億、七月には八百九十五億、八月には千三百億、かようにいずれも減少動きをとっております。  なお、貸し出し残高増加状況を前年の同じ時期に対する増加率で申し上げますと、都市銀行の場合には、本年の一−三月が二五・二%、四−六月が二四・四%、七月が二二・一%、八月が、これはまだ確定数字ではございませんが、二一・八%、こういう状況になっております。地方銀行についても同様の数字でございます。  ただここで、特に相互銀行信用金庫の場合においては、むしろ比較的高い水準で推移しておる。相互銀行の場合は、一−三月が二八・四%、四−六月が二八・一%、七月が二七・一%、八月が、速報でございますが二六・一%、信用金庫は、一−三月が三〇・二%、四−六月が三二%、七月が三一・四%、八月が三一%、かような数字でございます。
  19. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 全国銀行の約定金利もかなり急上昇しているという現象からいって、金融市場かなり引き締めが見えてきた。ということは、私は、いま御答弁のありました実質預金の面からいっても、貸し出し額減少からいっても、ある程度出てきたと思うのです。  問題は、金融市場を締めるということは、要は実体経済をどうやっていくかというその手段であるのでありますから、実体経済にあらわれないと何の意味もないわけですね。実体経済とのかかわり合いからいけば、貸し出し減少しておるということになろうかと思います。  今度これだけきびしい窓口規制なりあるいは公定歩合引き上げなりをやって、金融引き締めというものが実体経済にあらわれるのは非常におそい。これは単に金融政策だけにたよる、あるいは金融政策だけの責任ではないかもしれませんが、金融政策の面から見て、どうしてこの金融引き締め実体経済にかなり大きなギャップを持っているのだろうか。これは過去にさかのぼれば、あまりにも昨年六月の第六次の公定歩合の引き下げがやはり余分であった、こういうこともいろいろとあろうかと思いますけれども、この金融引き締め実体経済ギャップ。昔だともう少し早くこれがきいてきたように思うのですけれども、これがなかなかきかないというのは一体どういうところに原因があるのか。もちろん金融だけの責任ではないかもしれません、財政責任もありますが、金融面から見てどういうふうにお考えになっていらっしゃいましょうか。
  20. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 非常に重要なかつ広範な問題を含んでおる御質問でございますので、私一人がお答えすることが適当かどうかと思いますが、多少私の個人的意見をまじえましてお答えすることをお許しいただきますと、基本的にはやはりわが国経済構造が非常に大型化し、先進国化してきたということにあろうかと思います。  これを金融環境でとらえてみますと、やはり四十年を境といたしまして、わが国経済の中における流動性という状況がかなり多くなってきた。三十年代におけるいわゆる過小流動性といわれておったわが国経済社会金融の姿が漸次変わってきた。したがいまして、金融機関に対する依存度ということも若干なりとも修正の姿になってきたということが一ついわれるのではなかろうかと思います。  また一つには、経済構造が、製造業というものがおそらく三十年代におきましては六割ぐらいではなかったかと思いますが、現在におきましては製造業と非製造業と申します関係がかなり変わってきた、むしろ逆転しつつあるというような産業構造もあろうかと思います。  また、中小企業というものがかなり体質が強くなってまいりました。それぞれ流動性の面におきましても、過去におきます非常にひよわな姿から移りつつある。  こういう点から、確かに金利政策と申しますか、金融政策というものがなかなか浸透しがたい面が金融面にできてきたのではなかろうか、かように考えております。  そのほかにももっと広範な問題があろうかと思いますが、金融的に考えますとそういう感じがいたしておるわけでございます。
  21. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 これは調整局長からお伺いするのが適当かどうかちょっとわかりませんが、いつも物価の問題あるいは経済全般の問題を見てみて、いまと同じような質問になるわけですけれども金融政策にしてもあるいは財政にしても若干おそかったと思うのですが、とにかく八%の繰り延べをやっているわけですね。そういったことから考えて、これが実体経済に響くのはどうもおそ過ぎるのじゃないかという感がするのですが、そのあたりはどういうふうに見ていらっしゃいますか。
  22. 青木慎三

    青木政府委員 ただいま銀行局長からお答えしましたような事情がもちろんあるわけでございますが、従来からこういう金融引き締め政策が実施されまして、それが実体経済に及びますまでの間に若干の時期のズレがございまして、私どもの従来の経験から申しますと六カ月ぐらいのズレがあるのが通例でございます。したがいまして、今回の金融引き締め政策につきましても、ようやくいままでの御説明にありましたように金融面影響が出始めておる段階でございますが、いましばらく後に実体経済のほうにその影響が漸次及んでくるというふうに私どもとしては期待しておるわけでございます。
  23. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 少し話を先に進めたいのですけれども、いまの状況を見て、これは銀行局長からはちょっとむずかしいかもしれないのですが、今度の総需要抑制政策がかなり金融政策に寄り過ぎてしまっているのじゃないか、金融政策偏向ではないかという感も私はなきにしもあらずなんであります。これだけ締めたわけでありますけれども金融政策としてはたしてこれがもう総需要抑制最後手段なのか、ぎりぎりこれで——第四次の公定歩合引き上げあるいは窓口規制あるいは預金準備率引き上げ、これでまあ金融政策としては総需要抑制はこれ以上やったら、今度は逆の中小企業の倒産なり悪い部分が出てくる。したがって、これが金融政策としては最後だというふうにお考えになっているのか、ちょっと銀行局長から、むずかしいかもしれませんが、 いかがでしょうか。
  24. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 先ほどちょっと申し上げましたが、これまでの引き締めの例、これが今後当てはまるかどうかということは、先生も御指摘のように経済環境がかなり変わってきておるということで、必ずしもそれをもってお答えとはなし得ないと思いますが、少なくとも引き締め政策というものは私は一年——過去一年三カ月という例がございますが、一年をもってやはり区切りぐらいに考えていくことが経済全体の動きの中でいいのではなかろうか。あまりそれが長きにわたれば、それなりのまた均衡を害する問題が起こってくる、かように考えております。特に長期的に考えます場合にはそういう問題が起こってくる、こういうふうに考えております。  そういう点からいたしますと、もちろんこの金融引き締めというものができるだけ早く解除されるということを期待すべきだろうと思います。現に金融面に関する限りは、先ほど御説明申し上げましたように、かなり引き締め効果というものが出てきておる。あとはこれが先生の御意見のようにまさに実体経済に浸透していかなければならない時期でございますが、これはもう非常に主観的な受け取り方にならざるを得ないのですが、多少今後九月、十月ということにつきましては、そういう実体面における具体的な企業と申しますか業種においてはかなりそういう状況が出てくるのではないか、かように期待しております。こういう状況が、やはり先ほども申し上げましたが、非常に同調性の強いわが国経済においては経済動き全体を支配する、そういうようなものになってくることを期待する余地は十分あるように思います。  同時に、公共面からの公共事業などを中心とする繰り延べ措置等、あるいは建築抑制、あるいは通産省がいま鋭意研究しております具体的な設備投資あるいは消費というものに対する行政指導、こういうようなことが出てまいりますと、私はその効果というものはかなり期待できる、かように考えております。  そういうことからいたしますと、現在の引き締め政策というものはこれをとどめにしたい、かように期待しておるわけでございます。
  25. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それで先行きの話でありますけれども、ある人によれば、十一月ぐらいには完全にこの四回にわたる公定歩合引き上げなり預金準備率引き上げというものはきいてきて、来年の春には卸売り物価が安定をして、六カ月のズレをもって来年の秋には消費者物価が横ばいになるという予測をしている経済誌の記事もあるわけなんですが、そのあたりの将来的な見通しというのは、これはまあ金融政策だけというわけではありませんけれども、どの辺のところにお持ちでございますか。銀行局長調整局長にお願いしたいと思います。
  26. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 私はなはだ先生にお答えするほどの資格がありますかどうですか、わかりませんが、私は、卸売り物価に関しましてはかなり国内面のみならず海外要因というものが大きいのではなかろうか、かように考えております。したがいまして、国内面の要因が卸売り物価を安定に向かわす状況が出てまいりましても、海外要因というものの状況いかんによっては卸売り物価が目立って鎮静することになり得るという保証は私はないように思います。そういう意味からいたしますと、卸売り物価あるいは物価全体について非常に短期決戦的な考え方で臨むということについては避けるべきではなかろうか、むしろ非常に長期的な考え方で物価対策を進めていくべきではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  27. 青木慎三

    青木政府委員 卸売り物価に対する影響でございますが、この八月三十一日にきめました物価対策におきまして、財政金融策とあわせまして、建築の投資の抑制あるいは設備投資抑制というのを行政指導ベースで行なっておりますし、また一方消費につきましても、自動車の割賦販売条件を強化する等の施策をやっておるわけでございまして、こういうことが今後金融引き締め効果の浸透とともに進んでまいりますと、今後は現在のような前月比二%の上昇、あるいは前年同期比一七%の上昇というような形での急テンポの卸売り物価の高騰は漸次鎮静化していくというふうに私ども考えておるわけでございます。また鎮静化させなければならないというふうに考えております。  ただいま銀行局長から御答弁ありましたように、一方海外要因というのもございますが、これは世界全体の経済が過熱状態にありますので、その海外要因のほうはなかなか急に鎮静化するということはむずかしいかもしれませんけれども、少なくとも現在のテンポよりはゆるやかになっていくということを期待しておるわけでございます。
  28. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 消費の抑制についても、自動車の頭金云々をしても、このごろ現金で買っちゃうのがもうほとんどだそうですので、これもなかなかきかないだろうと思うのです。それから建設関係の問題ですけれども、これは実質資材不足ということである程度抑制されるという、経済要因というかどうか実はわかりませんけれども、そういったこともあるけれども、依然として指標設備投資増額修正金融引き締めの間でもやる、非常に高いということを感ずると、かなりおそいものがあるのじゃないかということを感ずるわけです。聞くところによりますと、来年六月が参議院の選挙でありますから、それまでにある程度きゅっと締めて、選挙の前に少し広げていかないと選挙は勝てないのじゃないかということで、非常に短期決戦ということを批評家は言っているわけでありますけれども、これはやはりかなり本質的な日本経済の問題を含んでおるように思いますので、短期決戦をやればそれによる摩擦というものは非常に大きくなってくる気がするわけですね。  そういうことから考えますと、やはりじっくりかまえなければいけませんが、しかし国民の側から見ますと、昨年から一七%も上がって、春闘であれだけやってもまあとんとんの生活しかできない、精神的にはさらに苦しい状況になるということになると、何とかして一日も早く物価の安定をしなければいかぬということになると思う。  で、話をもとに戻しますが、私は今度の金融引き締めを見て二点ちょっと疑問に思うことがあるわけです。  まず一点は、四回にわたって公定歩合引き上げをやったのでありますけれども、これだけ経済が過熱をしているときに四回にわたって——まあ底が低過ぎたものですから、四回といってもたいしたことじゃないわけでありますけれども、これだけこまかにやりますと、かえってこれがいろいろな意味でコストに入ってきちゃっているのじゃないか。つまり銀行の貸し出し金利というものがそれだけ上がると、経済が過熱をしていると、それがもう今度コストの中に吸い込まれてしまって、逆にインフレを押し上げてしまうような要因になっているのじゃないか。見通しがないと言えばそれまででありますけれども、どうせやるのだったら、どうせ七%まで持ってくるのだったら、もっと大幅にやったほうが精神的ショックというものは大きかったのじゃないか、経済に与える影響というものはもっと早かったのじゃないか。あまりにも四回というのは——これは前代未聞でありまして、こういう状況というものはいままでの日本経済になかったわけでありますから、そう簡単には言えないことかもしれませんけれども、今度の経験として、これだけ過熱している時期にこれだけ小幅にやるというと、逆にコストに影響が出てきているという感があるのじゃないか。私、これはまだ別にいろいろ数字を持っているわけではないのですけれども、その辺のところについて、銀行局長いかがですか。
  29. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 金利がコストに影響するという問題は、確かに一つの問題点だろうと思います。記憶に間違いがございませんければ、一度数年前に企画庁のある審議会においても金利とコストというものとの関係について研究されたというようにも聞いております。ただそのときの結論として、やはり金利上昇という問題が抑制効果があるということが確立された考え方であろう、そういうことで再確認されたように記憶しております。  もちろん、この辺のところは実証的にも今後なかなか研究を要するところかと思います。金利と物価関係ということについて、単に私どもが一義的に割り切って進むべき問題ではなかろうと思いますが、しかし景気がこういう急激な拡大を続けておるときに、金利政策の方向といたしましては、やはりこれを上昇し、抑制をしていく、その公定歩合政策というものは単に金利機能であるだけではなくて、先ほど来申し上げております心理的な抑制効果企業家の行動原理に非常に影響を及ぼす、そういう意味での信号という意味で従来から公定歩合政策というものの位置づけがされておったわけでございます。そういう意味で過去四回行ないました。  ただ、それを小刻みにやったのがはたしていいかという問題につきましては、客観的にこれが正しいのか、そうでないほうがよかったかということについては、私ども証明してお答えする材料を持ち合わせておりません。ただ、一回、一回の引き上げ時点におけるその必要性という点からいたしますと、これは適時に適当な幅での公定歩合政策という考え方からいたしますとまず妥当なものであったのではなかろうか、かように考えております。一時に大幅にやるべきではないかという御意見も確かにあり得ると思います。  この辺のところは、各局の金融政策当局者が常に一つの問題点として、そういう時点をどう判断していくかということは今後ともわれわれが謙虚に考えていくべきことであろうかと思いますが、経済動きの中では金融面は常に受け身である、したがって金融面から急激な変化ということについてあまり大きくし過ぎるということについての問題も考え直さなくてはいけないということからいたしますと、私といたしましては、四回というものについてはまあ妥当なものであったろう、かようにお答えさせていただきたいと思います。
  30. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 これは今後のかなり大きな研究課題になるのじゃないかと思うのですね。四回といっても、四回目は初めから考えていたわけではなくて、どうにも響かないものですからやったということですから、妥当だということばがほんとうに妥当かどうかわかりませんけれども、これはやはり今後考えてみる必要があるのじゃないかという気がしたのです。ただし私もそれを具体的な数字で、実はこうなっているからこうじゃないかということを言える資料があるわけではないわけですが、ただちょっと考えていることでありますのでお伺いをしたわけであります。  もう一点は、預金準備率を四回にわたって引き上げたわけでありますけれども預金準備率引き上げる一方で日銀都市銀行全国銀行に対する貸し出しがふえているという問題について、私はちょっと詰めておきたいと思うのであります。  まず、八月の十三日ですが、日銀全国銀行ですか都市銀行ですかちょっと不鮮明でありますが、一般貸し出しを中止したというふうに聞いておるのですが、これはそのとおりですか。
  31. 渡邊孝友

    渡邊参考人 日本銀行は、この時期において銀行に対する貸し出しはできるだけ押えるということにはいたしておりますけれども、特定の金融グループあるいは特定の金融機関貸し出しを停止したということはございません。
  32. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 それは特定ということじゃなくて、都市銀行に対して貸し出しが限度額の八千五百億一ぱいなので貸し出しを中止をし、そして債券オペも適当な期間のものが底をついたので、債券オペは中止をして手形のオペに主力を置くという記事が八月十四日の読売新聞に出ているのですが、これは違うのですか。  それでは、その問題とも関連して若干私は疑問に思ったのですが、九月十四日に、十月−十二月期の全国銀行、おもに都市銀行でありますけれども、その貸し出し増加額を一兆三千四百億円に押える、これは昨年同期の四一%減ということでありますが、これはそのとおりでしょうか。
  33. 渡邊孝友

    渡邊参考人 十−十二月期の都市銀行貸し出し増加予定額を前年同期の四一%減にしてほしいという通知を都市銀行にいたしましたことは、事実そのとおりでございます。  それから前のお話でございますが、先生のおっしゃるところに基づきまして考えますと、こういうことかと存じます。実は日本銀行は、特に上位の銀行十行ばかりに貸し出し限度額というものを置いております。御案内のとおり八千何百億という数字でございますが、これは限度をこえた場合には高率を適用するということに制度としてはなっておりますけれども、私どもとしてはその限度をこえては絶対に貸さないということを言っております。そしてその限度は常時都銀の借り入れのワクの中でふれておりまして、お話の時期のころはその限度に近かったということで、この日銀借り入ればできないということであったのではないかと存じます。  また、オペレーションにつきましても、債券オペレーションを中心にやってまいりましたが、確かに市中保有有価証券で適格のものがだんだん少なくなっておりますし、同時に手形市場というものも発足いたしておりますので、オペレーションの重点を手形買い入れにも移したということは事実でございます。
  34. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私が日銀からいただいた資料ですと、四十八年八月の全国銀行への一般貸し出しが七千九百四十四億円ということですが、日銀都市銀行への貸し出し限度というのは約八千五百億と聞いているので、したがってこの限度一ぱいなんでそれ以上ふやさぬ、それを中止ということばを使ったと思うのであります。  それで、預金準備率引き上げを四回にわたってやったわけでありますけれども、この四回の預金準備率引き上げで、おもに都市銀行ですが、全国銀行から資金としてはざっとどれだけ吸い上げられたのですか。
  35. 渡邊孝友

    渡邊参考人 第一次から第四次の分まで合計いたしまして約一兆円の準備預金の積みをふやすということが必要になります。もっともこの数字はその時点時点における預金残高にその比率をかけておりますから、その後における預金増加に伴いましてさらにふえていくわけでございます。それで現在といたしましては、日本銀行に対します預金残高の月中平均を約一兆七千億円に保たねばならない、そういう仕組みになっております。
  36. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ということは、一兆七千億ということは預金準備率四回引き上げをやって現在月中の引き揚げた額が一兆七千億ということですか。
  37. 渡邊孝友

    渡邊参考人 四回の準備率の引き上げによって積むことをふやした分がそのつどそのつどの計算の分を合計いたしますと約一兆円でございます。それからもとからの引き上げ前の準備積み立ての義務のあった部分、それから預金がだんだんふえていくことに伴いまして自動的にふえていく部分、そういうことを合計いたしまして、現時点では全国銀行が日本銀行に預金を積まなければならない金額が一兆七千億円強という状況でございます。
  38. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 こまかい話は、あとでもう少し詰めますけれども、そういった形でとりあえずとにかくこの二月から日銀に、都市銀行中心にしてずっと今日まで一兆七千億というものが日銀の金庫に原則的に月中は眠っているわけですね。ところが日本銀行から逆に都市銀行には、引き締め期でありましても下は四千億から上は九千億まで、この四十八年をとってみても一般貸し出しがなされているわけですね。ですから、預金準備率引き上げによって一方では一兆七千億市中銀行から預金を吸い上げたけれども、片方では日銀貸し出しがなされている。ここのかね合いがどうも私はわからぬわけですね。このあたりはどういうふうになるのですか。
  39. 渡邊孝友

    渡邊参考人 日本銀行貸し出しの推移につきましては、確かに表面上はふえておりますけれども、そのうちの最近増加してまいりました主体は輸入資金貸し付けというものでございまして、いま先生はそれを除いて一般貸し出しについて問題にされたのでございますが、一般貸し出しにつきましては時により増減がございます。それからこの中で八千数百億円の限度と申しますのは、上位十行、大きな銀行にだけそういう限度を置いたのでございますが、それらにつきましては、その限度の範囲内で月によりあるいは季節により増減しているということでございまして、私どもその限度を多年据え置きかつむしろ縮減につとめてまいりまして、大勢からいってこの貸し出しはふやしていないという考え方でございます。ただそういうような銀行の扱う資金のふれは月の中でも数千億円の上下がございますので、あるいは月によって多少の増減があるといった状態でございます。  貸し出しはそういうことでございますが、一方日本銀行といたしましては、同時にそれ以外の、これは都市銀行ばかりではございませんが、債券の買い入れあるいは手形の買い入れというようなオペレーションによって資金供給をいたしているのであります。それで準備預金を引き上げた額、それによって積み増しを要するようになった額は、銀行としてそれだけ積まなければならないのでございます。同時に日本銀行といたしましては、金融調整上市場の金融が、取引が停止にならないというために、どうしても市場資金の不足があるときは何らかの方法でその資金供給をする必要があるのでございまして、日銀貸し出しなりオペをしたかわり金で準備預金を積ましたというわけではございませんけれども、結果的に見ますと、一方で準備預金の積み増しがある、それに対しまして、その間に日本銀行は、最近主としてオペレーションでございますが、オペレーションによって市場に資金供給をするということで、結果としてはそういう関係になっております。
  40. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 どうもお話を聞いていますと、やはり日銀マンとしての何か慣習になっちゃって、あまりにも専門家的過ぎるような気がするわけなんですね。われわれがはたから見てみますと、いわゆる預金準備率引き上げというのは、市中にだぶついている、銀行にだぶついている余剰の資金を日銀に凍結させるということが預金準備率引き上げだというように思っていたわけでありますけれども一般には預金準備率といっても、たとえば八千億、九千億、一兆円と言っても、これは大体十六日に行なっていますから、その翌月の十五日にその数字が合えばいいということに、具体的にはなっているわけですね。ということは、十五日に預金準備率の額を一兆円なら一兆円という数字がおたくに入っていればいい、日銀の金庫に入っていればいい。ということは、こういうことは現実にありませんが、もっと悪く言えば十四日にはゼロでもいいわけなんですね。十四日にはその資金が全部市中に流れていてもいいのだ、とにかく十五日には日銀の勘定には預金準備率として一兆円積んでありますという形になればいいということなんですね。  現実にはそんなことはないでしょう。おそらくそんな大きな金が簡単に操作できるわけじゃないから、ありませんが、その辺のことも含めまして、総体で一兆七千億、四回にわたる預金準備率引き上げによってほんとうはプールをしなければならぬのが、いま理事預金準備率を積んであるけれども、結果としては一般貸し出しなり債券オペということで市中へ日銀の金が流れていく、結果として流れたのだと言うのだけれども、どうもその辺が、預金準備率引き上げをやった以上はそれだけの額というのが市中に流れないというのが本来の金融政策じゃないか、こういうふうに思うのですよ。  ですから、どうも日銀からの都市銀行への貸し出しのうち、輸入資金貸し付け、これは別の意味がありますから除いておいて、一般貸し出しだけを見ますと、四十七年十二月末で一兆六百八十六億円、四十八年一月九千百五十九億円、これは日銀窓口規制を始めた時期ですね、一月というのは。まず最初に始めた時期、預金準備率をまだ上げておりませんけれども、九千百五十九億円、日銀から貸し出しがなされている。預金準備率を上げた一月に——上げたのは一月の十六日だったと思いますが、預金準備率を上げたのですけれども、そのときたしか当初千五百億じゃなかったかと思うのですが、一回目の預金準備率でほぼ吸い上げられる市中の額、たしか千五百億だったと思いますが、片や四十八年の二月の都市銀行中心とする銀行への日銀からの貸し出しというのが八千六百五十三億出ているということなんですね。ということは、預金準備率で千五百億だったと思いますが、吸い上げておきながら、片方では日銀から一般貸し付けということで八千六百億も出ているというのは、これはどういうことかということがどうもよくわからぬのですね。それでもう一言御説明いただきたいのですけれども
  41. 渡邊孝友

    渡邊参考人 御疑問を持たれるのはごもっともな節があると思うのでございますけれども、大体日本における準備預金制度の導入のときにもいろいろ論議があったのでございますけれども、もともと概して日本の銀行はオーバーボローイングの状態にあるということで、そういうもとで預金準備制度を導入することはどうかということはだいぶ論議のあったところでございます。それはともかくといたしまして、最近の状態で申しますと、先生のおっしゃるように銀行段階金融市場段階ではそんなに過剰流動性というものがあるわけではないのでございまして、特に都市銀行などは日銀からも借り入れており、あるいは市中からマネーをとっている。そういう状態のもとで市中で現金を手持ちしておって、それを日本銀行に預けるというような関係ではないのでございます。  そこで、準備率を上げますと、銀行はそれでもできるだけ手元を詰めて、あるいはその日の取引の金が余れば準備の積み上げに充てるというような努力をいたしますけれども、一方日々の動きといたしまして一日に三千億とか四千億円とかいう、市場といたしましてはそういう財政資金の吸い上げがある。そういう財政資金の吸い上げに対しましては市場全体としてそれだけの現金が足りない。これは何らかの方法で日本銀行は、できるだけ押え押えで供給いたしますけれども、資金を供給していかなければならない、そういう関係にあるのでございます。  なお、いま準備を積まなければならない金額が一兆七千数百億でございますが、これはちょっと念のため申し上げますが、これは十五日一日だけのことではなくて、ある月中の平均残高としてそれだけの準備預金を積まなければならないという意味でございますので、銀行としては常時一兆七千億前後、高低はあるわけでございますが、そういうふうにやっていかなければならぬわけでございます。
  42. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 そうしますと、当初預金準備率引き上げを始めたときには金融市場には特にそれほど余剰があったわけじゃないのだ、それほどだぶついていたわけじゃないのだ。それにも増して金融政策預金準備率引き上げなければならぬ。したがって、もちろんコールで出せるところは出したでしょうし、あるいは若干楽な部分については日銀に預け入れをしただろうけれども、他の部分については結局預金準備率引き上げをやったけれども、他のコールなりあるいは自分のところの、自己資金という言い方は当たらないかもしれませんが、自分のところの預金から出せない部分については結局は日銀からの借り入れによって預金準備率を維持をしていたという形になるというふうに考えていいのですか。
  43. 渡邊孝友

    渡邊参考人 通常のやり方といたしましては私どもとしては、毎日毎日金繰りが大きく銀行は変動するものでございますが、その銀行として資金が余ったとき、たとえば交換じりが勝ったときなど銀行に日銀に積ませる、金の足りないときはそれをくずさせるとかあるいはできるだけ市場でマネーをとらせるようにいたしておりますので、直接その準備を積むために日銀貸し出しをするとかあるいは買いオペレーションをするということではございません。  ただ、このところ財政は引き揚げ基調でございまして、一方で日銀券が増加を続けているわけでございます。日銀券の増加がちょっといままで多過ぎたように思いますけれども、とにかく片や財政資金が引き揚げられ、一方で銀行券が増加する、それらの資金供給は、何らかの形で市場に供給しなければ金融の流れが動かないといいますか停滞するといいますかそういう関係になりますので、市場相手に金融機関で構成されているもの全体に対して日々のあるいは月々のその金融市場状況によって資金を必要最低限に供給する、そういう行き方でやっておるのでございます。
  44. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 ですから、一兆七千億、これは若干動くのですけれども、一兆七千億、四回にわたる預金準備率引き上げといっても現実には一兆七千億まるまる市中から、都市銀行中心にした銀行から預金が引き揚げられた、吸い上げられたということにはならぬわけですね。なってないでしょう。そうしてどうしても現金として必要な部分、当然経済の運営上必要な部分があるわけでありますが、その部分については日銀貸し出しから出ていく。ですから、預金準備率日銀における勘定からいくと確かに月中平均は当初の額になるけれども、その中には日銀のお金も入っておるというのが現実なんでしょう。そうじゃないですか。
  45. 渡邊孝友

    渡邊参考人 日銀が準備預金できめられた金額を預かっておることは確かでございますが、その資金の源泉をどれと結びつけるかということになりますと何ともいえないのじゃないかと思いますが、とにかくその銀行から日銀が準備預金を預かったことは事実でございます。それで並行的に日本銀行としましては、その銀行も含まっておる場合が多いと思いますが、とにかくその銀行だけでなくて地方銀行とかその他全体に対しまして買いオペレーションをする、あるいは手形割引市場というものを通じまして、全体として市場の資金が不足というときにその市場に資金を供給する。その金がどこへ行くかということは、どこの銀行に入るかということは、資金の不足な銀行に入る、あるいは手形を売りに出したところにいくという関係ではございますけれども、そういうことで統計的に結果的に見ますと、準備預金の積み上げと同額あるいはそれ以上にときには買いオペレーションなどの日銀信用の供給ということはございます。それで積んだと見るか、統計分析的にはそういうふうに見られないことはないと思いますけれども、ただ実際の資金供給の方法としては、いま申しましたようにいまの日銀の資金供給そのもので準備を積んだということではないのであります。  それからなお、統計的に見て準備預金で積み上げた額と日銀の信用供与額とが一種の両建てみたいな関係にある、統計的にはそういうことでございます。かりにそうであってもそれでは預金準備率引き上げ意味がないのか。ただ一方で資金を吸い上げ、一方で資金を供給するだけかというと、そうではなくて、たとえばコールマネーを取り入れる銀行であれば、そのマネーをそれ以上ふやさないとか、あるいはむしろ減らす努力をいたします。また手形を売った銀行も、以後は売る量をなるべく押えようとするので預金準備率引き上げ効果はずっと持続いたします。
  46. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 渡邊理事の話は、名前は書いてないけれども、それは市中のコールかもしれないし、他の一般の消費者の預金かもしれないし、確かに名前は書いてないですからね。直接に日本銀行からA銀行の預金準備率維持のために行ったというふうにならないかもしれませんが、ルートとして預金準備率という市中から資金を吸い上げてプールをして景気の過熱を防ごうという手段のときに片一方では日銀貸し出しが行なわれておるということになると、統計上から見ても名前が書いてなくてもそういうことになるのじゃないかということを考えるわけですね。たとえば現実にA銀行が一千億預金準備率として積まなければいかぬということになりますと、一つは自分のところに余っている預金をそのまま積む場合、それからコール市場から持ってくる場合、それから一千億でたとえば八百億ぐらいしかどうしても積めないという場合、残る二百億の帳じりというのは結局日銀からの貸し出しということで日銀の金庫から預金準備率のA銀行の口座に残りの二百億なら二百億振り込まれるということは現実にはないのですか。そういう形は絶対にあり得ないのですか。
  47. 渡邊孝友

    渡邊参考人 ちょっと御趣旨に正面からのお答えになるかどうかわかりませんが、ちょっと繰り返しになりますけれども、個々の銀行と日銀との関係考えますと、その銀行が、きょう準備預金が積み立てられないから幾ら貸してくれとかいうようなことで日本銀行の窓口に来ても、私どもとしてはその銀行に対して直接貸すとかオペを行なうとかいうことはございません。それで先ほどからのお話、なかなか確かにむずかしい点でございますが、準備預金を積ませているということ自体それなりの準備預金制度の持つ金融引き締め効果があると思います。  一方で、そこでもう一つ、これは御納得いただかなければならない点は、それじゃ日銀はなぜこの間オペレーションでも貸し出しでも信用を追加することが必要であったか、それはどういうわけで追加したのかという点であろうかと思います。これはもちろんいまの準備預金の積み増しのためにやったわけではないわけでございます。その間で日銀の信用の動きでございますけれども、それは季節的に時期によっても違いますけれども、このところ財政資金の大幅な引き揚げがずっと連続しておるわけでございます。それから銀行券はこのところやや増勢をやめたと思いますけれども、先般までばかなり増勢をする。とにかくこの銀行券が一方で出て、一方で財政の資金が引き揚げられる、こうなりますと、市場に現金というものがなくなる。その現金というものはどうしても必要な限度までは補給しませんと金融取引がとまるという関係になるわけです。  その補給につきましてはもちろん私どもはできるだけ押えて、さっき先生のお話にありましたようにある時期にはもう貸し出しはしませんよというふうに受け取られたようでございますが、とにかく限度を置いてそれ以上は貸さないとかオペレーションも非常にぎりぎりにやるとか、あるいはその条件を銀行側に不利にしてやっていく、そういう方法ではございますが、必要ぎりぎりの現金というものは補給しないと経済が動かぬといいますか取引が動かない、そういうことになるわけで、資金供給が行なわれているものでございます。
  48. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 時間もありませんので、完全に納得したわけじゃないのですけれども、その問題についてはまたの機会にさしていただきたいと思うのです。  最後に、銀行局長にお伺い、あるいは要望しておきたいと思うのでありますが、私も先ほどちょっと触れましたように、かなりこれは金融政策に偏重をした総需要抑制が行なわれていると思うのですね。その意味では中小企業の倒産、こういったもの、不渡りが多くなるといったようなことがふえてくるのではないかということを憂慮するわけであります。たとえば都市銀行中小企業向け融資についてもこれは三月以降大企業向けの貸し出しのウエートが増加しているけれども中小企業向けは減っている。大企業のほうは六五%前年比で上回っているけれども中小企業向けのほうは逆に前年を二一%下回っているということになってくると、金融引き締めをもろにかぶってそれによる倒産、経営の悪化というようなことをこうむるのがいつも中小企業のわけでありますけれども、その辺のところ、今後選別融資というか中小企業に対しては特別の配慮が必要なんじゃないかというふうに思うのですが、そのあたりはいかがお考えですか。
  49. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 全く同感でございます。私どもも現在国民総生産の中で五割をこえる中小企業の能力というものをできるだけ生かしていくことが必要ですし、また福祉社会という考え方から申しましても中小企業というものがうまくいくということが大事だろうと思います。ただ、いまお話しのように中小企業は減らして大企業に貸したというような形というものは、ことしの引き締めに関する限りはあまり見られない、現在までのところは少なくともそうではないのじゃなかろうか、むしろ貸し出しの中での中小企業向けの比率のウエートは昨年よりも高くなっておる状況で少なくとも今日まではきておるというふうに思います。  ただ、問題は今後にあるわけでございまして、先ほども御説明申し上げましたように、これから引き締めがさらに浸透してまいりますと、そういう意味では中小企業の経営もやはり全体の経済の中での調整は当然忍んでいただかなくてはならないという点がございますので、むずかしく問題が起こってこようかと思います。そういう意味からいたしますと、今後とも私どもは、当然のことでございますが、その辺の指導にはできるだけのことをやりたい、また政府関係金融機関というものについてもできるだけその機能を発揮さしていくということでやっていきたいと思います。まあことしの今度の引き締めの特徴と過去の特徴は、中小企業に対するしわ寄せというのが比較的、相対的には少ない状況でこれまではきたということがいえると思います。できるだけそういうしわ寄せはやらないようにこれからも努力してまいりたいと思います。
  50. 佐藤観樹

    佐藤(観)委員 私が申し上げた数字は、私はちょっと言い忘れたかもしれませんが、貸し出し増加額ですから、減るのは。中小企業向けの融資を重視をしているということはまだかなりいろいろな数字を見てみますとあるようですけれども、だんだんこれからいま局長がお話しになったように将来に向けてやはり切り捨てが行なわれるのじゃないかということを心配するわけであります。その点、いま局長からお話があったようにひとつ今後の監視をお願いしたいと思うわけであります。
  51. 木村武千代

    木村武千代委員長代理 関連して、堀昌雄君。
  52. 堀昌雄

    ○堀委員 銀行局長日銀と両方にお伺いをしたいのですけれども金融は確かに引き締めておりますが、さっきのお話のように実体経済にはなかなか及びにくい情勢があります。いま大企業、鉄鋼、自動車、電機、各こういうものはたいへんな手元流動性があって銀行に返そうかというような情勢がきておる、こういうふうにわれわれは理解しておるのです。手元が少し詰まっておるのは建設と商社ぐらいではないかと思うのですが、ちょっとそこの、個々の企業というよりも、いまの鉄鋼とか自動車とか電機もそうだと思いますが、どの程度これらの大企業のほうは——まあさっき銀行局長のほうで手元流動性一・三幾らあったがそれが下がりつつあるというお話がありましたが、平均値ですからね、そのお話は。ですからこういう特に大手の企業手元流動性というものはどういう形になっておるのかをちょっとお答えをいただきたいと思います。
  53. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 御質問の業種別というものにつきましては私ども手元に数字を持ち合わせておりません。できるだけひとつ調べてみたいと思いますが、むしろ大企業中小企業別に分けましたいわゆる流動性比率、平均の売り上げ高に対する現金預金の残高ということで見ますと、これは日本銀行のいわゆる短期経済観測というものの数字でございますが、ことしの初め、一−三月の数字で見ますと、大企業が一・六四カ月分、中小企業はこれに対して一・五九カ月分という流動性の姿になっております。それが四−六にまいりますと、大企業が一・五五、中小企業が一・六〇というように多少逆転してまいります。七月−九月の自分たちの予測アンケートで答えていただいた数字によりますと、大企業が一・五カ月分、中小企業が一・五六カ月分。先行きの十月−十二月の予測ということでそれぞれ立てておられるものを集計いたしますと、大企業が一・四八、中小企業が一・五三、かような数字になっております。  申すまでもなく、これはもちろん全体の数字でございまして、業種別に非常にアンバランスがあろうかと思います。いま御指摘のように、特に自動車というようなことはよくいわれておる数字でございますが、ちょっといま手元に数字を持っておりません。
  54. 堀昌雄

    ○堀委員 渡邊さんのところでわかりますか。
  55. 渡邊孝友

    渡邊参考人 私の手元に業種別の数字を持ち合わせませんので、具体的なことを申しかねますけれども、私どもの窓口で調べたり聞いたりしておりますところでも、確かに先生の御指摘のように業種により企業により状況がだいぶ違います。したがいまして、貸し出しを返済するという動き、返済超過になっておるような企業もございます。もともと自動車などは借り入れ依存がわりに低いということもございます。それから鉄鋼などは、いまある流動性と申しますよりも収入がいいことによる面、そういう面があるように思います。
  56. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで結局いま金融政策というものは一般的に普遍的に行なわれる形で、日本銀行でも個別には商社等について取り扱いを別個にいろいろやっておられるようですけれども、大企業の言うなれば内部にある過剰流動性の問題、これはやはり金融政策だけではなかなか処置のできないものではないだろうか。私はかねてから、そういう意味では特定業種は除外するとしても、この際減価償却の時間を少し延ばして——結局いまのような、特に鉄鋼にしても自動車にしても、減価償却が実に膨大にのぼっておるわけですね。この減価償却の期間もたいへん短い。高度成長向けのやり方をとってきたものですから、この際こういう企業の手元の資金を吸い上げる意味では、これは減価償却を金融政策に対する一つの補完処置として少し延ばす、そうすればこれは当然税にはね返ってきて、そのことがそういう当該企業のいわゆる過剰資金を吸い上げることに有効に働いてくるのではないだろうか、こういう感じがするのです。  これはやや政策的な問題ですから政務次官、現在の物価に対する政策そのものがやや金融政策に片寄っておることはいま佐藤委員指摘したとおりですけれども財政的な補完処置が財政の主流を占めるというだけでなく、要するに税制をこの際機能的に使うということもあわせ行なう必要があるのではないだろうか。このようにいま経済そのものには非常に落差があって、あるところにはうんとある、ないところは非常に詰まってきておる、こういうときに普遍的な金融政策だけでは私はなかなか対処しにくいのではないかと思います。そういう租税の手段を通じて、これはともかく法律で処理するわけじゃありませんから、現在の減価償却期間というのは行政で処理できるようになっておるわけですから、これをある期間について処理するということが必要なところにきておるのではないだろうか、私はこう思うわけですが、その点についてひとつ政務次官のお考えを伺いたい。
  57. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 確かにいろいろ先ほど来の御論議を聞いておりまして、今日の景気あるいは物価状況を見て、いろいろな手段、手法をミックスしてやらなければとうていこれはできない、非常に金融偏重ではないかというお話がございましたが、そういう感じも若干私どもしないではありません。しかし、財政の問題ももちろんございますし、それからもう一つ、物資の需給というものが非常に詰まってきておりますから、そういう面の一つの行政指導もどうしてもやっていかなければ需給のバランスがとうていとれるものではない、私はこう思います。また民間一般的な需要というものも非常に強うございますから、そういうものもどうするか、一種のインフレ心理というものも非常にこのごろは根をはやしたような感じがするわけでございます。いろいろな方法を考えてやっていかなければならぬと思います。  いまたいへんいろいろやっておるけれども、なかなか薬がきいてこないじゃないかというお話、まことに私どももそういうふうに感ずる面もございます。ただ、先ほど銀行局長もお答えをしましたように、今日の日本の経済は、非常に従来の様子とはさま変わりしておりますから、いろいろの姿を持っておる。そういう多面性を持っておりますから、いま大企業の厚い流動性というものについて一つの御提案がございましたが、確かにこの問題も研究に値すると思います。時期的になるべく早くということでありますが、来年度の税制についてもいろいろ考えております中で、租税特別措置法の見直し、洗い直しということも当然に課題になってくるわけでございます。いまのお話は私もよく研究したわけではなし、また研究の結果を聞いたわけではないので、確かなお答えもできかねますけれども、法律を改正せずに行政的な指導だけであるいはできるのかもしれませんが、できるかどうかという点についても一つ研究課題ではなかろうか、こう思います。おっしゃる点につきましてはよくわかりますので、今後の検討の対象にさせていただきたい、こう思うわけでございます。
  58. 堀昌雄

    ○堀委員 大倉審議官が入っておられますが、いま政務次官がお答えになった減価償却の期間はたしか大蔵省令で処理しておられるので、法律には関係がない。この前安定措置法ですか大蔵省が出そうという話が出ておった時点では、要するに新規の設備投資分についての減価償却を延長したい、こういう話だった。私その話があったときに、同じやるなら根っこからやるべきで新規の分の減価償却だけさわってみてもほとんど効果がないということを申し上げたわけです。  だから私が言っているのは、法律事項となると、来年法人税を含めて引き上げたいという話ですが、来年の四月といまやるのとでは違うと私は思うのです。こういうことは早くやらなければあまり効果はないのです。そうすると、タイムリーにやるためには、あなた方も新規設備分の減価償却の延長をしたい、こういう発想を持っておるならば、それをもっと有効に——私もおしなべて全部平均してやれというのじゃない。たとえば資本金十億とか三十億とか、こういう大きなところをやればいいと思うのです。こまかいところまでやるということはたいへんだと思いますが、少なくともある一定の資本金、大企業として一般的にわれわれの理解をしておるところ、そういうところが私はいまの——特に業種別にも多少問題がありますね。大体機械類をたくさん持っておるところですね。減価償却の多いところが結局手元流動性が高くなるという情勢にありますから、そういう意味では商社なんというのは減価償却といったってしれているものではないかという気がしますので、そういう点で私は、やろうと思えばやれる、これは政策判断の問題だ、こう思いますが、技術論としてどうか、ちょっと大倉さんからお答えいただきたい。
  59. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 御指摘がございましたように、新規の資産だけじゃなくて、保有資産、減価償却資産のすべてについて一律に動かすということであれば、場合によりましては、御指摘のように耐用年数は省令できまっておりますから、法律を用いないでできるという考え方もあり得るかとは思います。とは思いますが、まさしくまた御質問の中にございましたように、特定の規模の企業だけをねらうとか、あるいは現在の需給関係からしまして、いまの状況で適当かどうかわかりませんが、たとえば七月ごろに議論いたしておりましたときには、セメントはやはり絶対的に足りないからそこのところは締めないという御議論もあったわけで、そういうふうに選別的にいくということになりますと、これは省令で選別的にやれるかというところには、かなり問題があるように思われます。  やはりいまの仕組みそのものは、資産の経済的な耐用年数を基礎にしていわばニュートラルに償却の限度を認めておるということが最もすなおな説明であろうかと思いますので、それを事業別あるいは規模別に操作するということになりますと、やはりそういう操作の権限を法律でまず与えていただかないとできないのじゃないかなという気もいたします。なお、研究はいたします。
  60. 木村武千代

    木村武千代委員長代理 渡邊参考人には、御多用中のところ御出席賜わりまことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  平林剛君。
  61. 平林剛

    ○平林委員 きょうは、私は二つばかり問題がありますから取り上げたいと思います。  一つは、最近の証券界におきまして重要な焦点になりつつあります株式の分布の問題です。一般の新聞でも指摘をされておりますように、兜町から逃げ出す個人の投資家とか、あるいは締め出される大衆とか、なかなかうまい表現で問題点を指摘しておりますけれども、今日株式の分布状況は、企業がその三分の二を占めてしまっておる、こういうことが伝えられておるわけでございます。この間東京証券取引所が発表いたしました四十七年度の株式の分布状況調査速報によりますと、上場総株式に占める個人のウエートというのは三二・九%に落ち込んで、東証再開時の昭和二十五年から比べると半分になってしまった。その逆に事業法人は四十七年度で二六・六、金融、証券を含む全法人の持ち株は六六・九%、全株式の三分の二をこえる高い水準になっておるということが伝えられておるわけでございますが、この株式の分布状況がこのように変わってきた理由といいますのをどういうふうに判断されておるか、まずこれからひとつ大蔵省の御見解を承ってまいりたい、こう思うのであります。
  62. 高橋英明

    ○高橋(英)政府委員 ただいま御指摘のように、個人持ち株比率が低下してまいっております。これにつきましてはいろいろ原因考えられるわけでございますが、おもな理由として考えられますることは、第一には証券市場がかつて大きな不況といったようなことがございまして個人投資家がやや警戒したといいますか、いやけがさしたというようなことが四十年ごろにございまして、そういう事情が根っこにございますところへ、最近におきましては、いわば資本の自由化に伴ういわゆる株主安定化工作ということが四十年代に入りましてから前半そういうことがございました。  それから昨年あたりいわゆる過剰流動性といったような現象がございまして、法人が株を買いに出たということもございます。安定化工作、系列化工作といったようなものが裏にあったことは確かだと思います。  そのほかといたしましては、昨年度見られました時価発行というようなことになりますると、株価が上がりますといいますか、上がったから時価発行ができたというようなこともございましょうが、個人としてはなかなか一たん売った株をまた買い戻すということができなかったというようなこともございましょう。  それからまた、これは証券会社の営業姿勢もあったかと思います。法人偏重といいますか、法人のお客が多かったので個人のほうに手を回さなかったといったようなこともございましょう。  そのほか、最近ではいろいろ情報化社会といわれておりますが、個人といったようなものは法人に比して情報の入手がおくれるといったようなことがございまして、個人がついていけないというような面もあったかと思います。  大体そういったようなことが原因になっているのではないかというふうに考えております。
  63. 平林剛

    ○平林委員 このような状況で、株式市場の株主構成が変化をしておる。これはどういう影響が出てくるというふうに判断をされておるか。
  64. 高橋英明

    ○高橋(英)政府委員 一つは、証券市場、株式市場に対する影響でございますが、法人が持ちました株といいますのは、先ほど申し上げましたように安定化といったような面もございますし、いわば株の売買によって益を得ようというような動機で持たない面もございますので、市場に出てくる株が非常に少なくなってくる、いわゆる市場の流動性がそこなわれるという面がございます。そういたしますると、株価形成におきましてちょっとのことでも乱高下するといったような弊害が出てくるかと思います。  それからもう一つのほうは、これは市場の問題ではございませんが、いわば法人株主がふえていくといったようなことは、ある意味では持ち合いといいますか、そういうことが行き過ぎますると、会社の本質といったようなものにも若干問題が出てくるのじゃなかろうか、そういうふうに考えます。
  65. 平林剛

    ○平林委員 こういう状態になってまいりますというと、私は、本来の株式市場の意義といいますか、個人投資家が利潤証券として株式を通じて企業のあり方をチェックするというような機能も失われて、株式市場本来の姿が、機能というのが失われていくし、また金融引き締めが一段と強化された場合には、やがて手元流動性が苦しくなってそれを吐き出していくというようなことから、いつ何どき法人が大量に株を売り出していくということから、またそこに株式に投資した個人投資家に損害を与えていかないとも限らない。個人株主の急減というのが証券界の基盤をゆすぶる根本的な問題としてやはり私は注目しなければならぬだろう、こう思うのであります。  そこで、個人株主をもう少しふやしていくということは、これは基本的に考えなければならぬのではないか。この間も田中総理大臣は証券界の大会へ行ってそういう問題の提起をしておるのでありますが、証券界や一般にそれを問う前に、政府自体としてはこうした個人株主急減の事態に対処してどういう手を打つべきかという考え方があってしかるべきだと思うのですが、それについてはどういう考え方で対処していくつもりであるか、その点をひとつお聞かせいただきたい。
  66. 高橋英明

    ○高橋(英)政府委員 基本的には発行会社といいますか、企業の株主優遇策といったようなものが必要かと思うわけでございますが、先ほど申し上げましたいろいろな原因の中で、証券界といいますか、証券市場といいますか、そういったようなところに問題があるという点につきましては、私どもが証券界を指導してやっていくということからいいますと、きわめて息の長い話になるわけでございまするが、たとえば従来の証券会社の営業姿勢というものを改めて、健全なる大衆投資家というようなものを育てるという見地に立っていただいて、そうして情報を提供し、サービスを向上するといったようなことをじみちにやっていく、そして証券市場に対する信頼あるいは親しみを増加していくといったようなことをやっていく、そういうことを積み重ねていくよりしかたがないのではないかというふうに考えておるわけであります。
  67. 平林剛

    ○平林委員 いまのようなことをやれば個人株主はふえるのですか。
  68. 高橋英明

    ○高橋(英)政府委員 もちろんそれだけでふえるというものじゃないと思います。それから日本の場合に個人が金融資産の中で有価証券投資というものになかなかなじんでくれません。これは圧倒的に預貯金といったようなものに偏向をしておるというような基盤もございます。そういうことがございますので、私のほうの受けざらあるいはパイプといったようなものを大きくしよう、あるいはそのパイプを太くしようということだけでは十分とはいえないと思います。しかし、私どもとしてやれることといえば、そういうことではないか、こう考えます。
  69. 平林剛

    ○平林委員 そうすると、ないということですな。
  70. 高橋英明

    ○高橋(英)政府委員 ないというほど絶望的なことではございませんで、そういうことで積み重ねていく。金融資産のストックが絶対的に少ないうちはどうしても有価証券投資というものには向かわないわけでございますから、だんだん金融資産がふえていけばそういうほうにも向いていく。そこでその向いてくるのを私のほうでは受けよう、こういうことでございます。
  71. 平林剛

    ○平林委員 まあ結局は、私は、日本の場合には国民生活水準そのものが低いし、株にまで投資をしていくというような点の余裕がないという点もあると思うのですよ。それはやはり基本的な問題なんで、幾ら手を使ったっていまの状態は個人株主がふえていくというような日本の環境にないということが一番根本的な問題だと私は思います。しかし現状は、これはこのまま放置いたしますとますます株主の分布の状況は法人に集中する。そこで私は、こうした富の偏在といいますか不公平というか、株式市場がまるで法人の場に化してしまうというようなことは解決しなければならない根本策が必要だ、小手先ではこれはだめだ、こう思っておるわけでありますが、またこれはひとつせいぜい、あなた方、そんな程度のことでは困るわけだから、どういうふうにしてやるかは真剣に検討する必要があると思うのです。  そこで、ちょっとお伺いしますけれども、最近株が、この間も新聞にちょっと出ていましたけれども、東京証券取引所の平均の株価が何日間も連続して安くなっていったというのがございましたね。最近はどうなっているか、私もよう株のほうはわかりませんけれども、九月の初旬にはわずか一週間くらいの間に二百三十一円も下がっていったというのを注目して見たわけです。個人株主の中でも、あら、こんな時期は株を買ったほうがええわいというので、私も相談を受けたことがあるのでありますけれども、これだけ一挙に下げたのにかかわらず、わりあいと市場は深刻なムードが流れていない。伝えられるところによるというと、大手の証券会社でも非常にさばさばした気持ちでこの暴落相場をながめているというふしぎな現象があらわれておるわけでございますが、こうした傾向はどういうわけで出てきたというふうに判断されてますか。
  72. 高橋英明

    ○高橋(英)政府委員 株が暴落しておるということでございましたが、現在の状態、ダウで申しますと四千六百円台におりまするが、これが暴落ということであるかどうかはちょっといえないということであろうと思います。現在株式市場で問題になっておりまするのは、むしろ出来高が激減しておるといったほうでございます。本年当初の一月ごろ、いわば過熱といわれておりましたころは一日に十億株できたというようなことがあったわけでございますけれども、最近は大体一億株を割っております。そんなことで出来高の減少ということが非常に証券会社としては関心を持っておるといいますか、心配しておるところでございます。  そういう現象があるにかかわらず、証券会社は平然としているではないかというようなお尋ねだったかと思いますが、やはり平然とはいたしておりませんで、非常にその点は心配いたしておるわけでございます。それほど心配しないじゃないかということですが、それは、証券会社は一年決算でございますが、本年度上期にかなり商いが活況を呈しておりましたので、そういった面がございまして、本年度の決算としては余力があるというようなことから、それほど必死になって心配するということではございません。ただ、八月以降こういう状態が続いておりますので、この状態が今後半年あるいは一年続くのかどうか、そういうような先の見通しになりますと非常に心配であるということで考えておるというのが状態であろうと思います。
  73. 平林剛

    ○平林委員 暴落ということばが当てはまるかどうかわかりませんが、その期間にかなり大幅な値下がりをしたということを言っておるわけであります。しかし、私らの情報といいますか、いろいろな意見を聞いておりますと、わりあいと法人も持っておるのにかかわらず、それだけ下がってもあまりあわてないというところは、ちょっと奇妙な現象だ。皮肉った見方をすると、大手の手持ちは、ある一定の財産額の割合しか持たせられない、持ってはならぬということになっておるものですから、自己売買で新しい株をかかえ込むと、九月の決算期で利益がオーバーしてくる、そこで大手の各社は、去年の十月からことしの三月までの間に相当株ではもうかってきて利益があるから、その利益を隠すので精一ぱいだから、それはちょうどいいというぐあいで、むしろ操作して株を下げているのだという説がまことしやかに流れておるわけです。  それからもう一つは、金融引き締めをやっているときに、株のほうはまたどんどん上がっているというと、大蔵省や政府に対して申しわけない、金融引き締め効果も多少株の値段に響いてきましたというようなことを印象づけるには、多少評価損が出ても、それは利益を隠す役割りになるし、大蔵省や政府の顔も立てねばならぬので、そして、多少下げることによって、ああ、政府の引き締め政策は株のほうにも影響してまいりましたよ、こういうほうがぐあいがいいんじゃないかというようなことであまりあわてないでいるという見方もあるわけでございます。  これは、最近の株式市場が法人に集中いたしまして、こういういわゆる株の操作が簡単にできるというような事態になっていることがむしろ問題なんじゃないだろうか。また一部であっても、そういう観測や疑いを持たれるような証券市場でありましたならば、いよいよもって個人株主は離れていくということになるわけです。そんなところは、もっと証券局は鋭い観察をして、こういう点についても何らかの措置、対応策というものを検討する必要があるのじゃないかと思うのでありまして、そういう見方はどうなんでしょうか。はなはだしく間違っておるのでありましょうか。もうそういうところに現在の証券市場は来ているのではないだろうか。こういう点はお考えになっておりませんか。
  74. 高橋英明

    ○高橋(英)政府委員 いまの市場に対しますうわさとか御批判でございますが、現在市況が不振なのは、従来買い進んでまいりました法人の買いが渋ってきておるということが一番大きな原因でございます。それは確かに金融政策がきいてまいりまして、法人の手元も詰まってきておるということとのうらはらかと思います。それから、個人の場合、先ほど申し上げましたように、現在の株価水準が、なかなか買いに出られないというような水準になっておるということも確かでございまして、そういう意味で市場が不振であるといいますか、売買高が大きくならないといったような現象があると思います。  金融政策に協力しているのだということを示そうというようなほどの考えが証券会社にあるかどうか、その辺はつまびらかにいたしませんが、いずれにいたしましてもこれは法人の株数がふえて、市場に株が流れてこないというような現象の一端であるという御指摘は、そのとおりかと思います。
  75. 平林剛

    ○平林委員 それから私はもう一つ、この問題に関連してお尋ねしておきたいのですが、株式会社は株主の総会というのをやりますね。その株主の総会というのは、どうも世間の批判を浴びております。特に株式会社の総務担当などというのは、株主総会をなるべく短くするほうが偉くなるのだそうでありまして、報告どもできるだけ簡単に、そして異議なしで早く終わらせるほうがその人の手腕だということで、株主総会が運営をされているという話を聞くわけであります。また、その株主総会には特殊な人種が入り込みまして、実際のリードをするというようなことから問題が指摘されています。中にはうまくやってやるからということで、会社から金をせびるというような傾向も生まれてまいりまして、やや犯罪的要素があるのではないかという批判さえ生まれてきている。  私は、最近の近代的な企業の中において、こういう株主総会が依然として行なわれているというのは、きわめて前近代的な傾向だと思うのでございまして、もう少し合理的に、さっきお話しした親しみやすい会社にして、ちっとは個人の株主もあの会社に投資してやろうかとかいうような空気にさせるほうがベターだと思うのでありますが、何かそれとあべこべな現象が引き続いて行なわれている、こういうことに対しては何かあなた手はないのですか。大蔵省だけで片づけられる性格のものではございませんけれども、これについて何かの善導策といいますか、そういうようなことはできないものでしょうか。株式会社といえば、どうせ個人株主に支持をされて、そして企業に投資していただくというようなことになるわけでありますから、証券局あたりはもっと頭をそういう方面に突っ込む必要があるのではないかと思うのでありますけれども、この点についての御見解を承りたい。
  76. 高橋英明

    ○高橋(英)政府委員 ただいま御指摘の株式会社の総会の件でございますが、現実のあり方等はいま先生のおっしゃったようなことが行なわれているようでございます。まあ基本的にはこれは商法の問題かと思いますが、確かに現在の株主総会というものは形骸化しておる。そしていわば個人の株主といったものの発言といいますか、そういうものがなかなか通らない現状にある。そういったことが、また逆に言いますと、ほんとうの意味の株主といいますか、投資といったようなものにいや気をささせるというようなことになっているというようなことであろうかと思います。ほんとうにそれでいいのかという問題意識は持っておりまするが、証券局として何かできないかと言われますると、ちょっといまのところはっきり申し上げることができないので、私も、問題意識は持っておりますし、勉強はいたしたい、こう思っております。
  77. 平林剛

    ○平林委員 証券市場の大衆化といい、それからただいまの問題といい、どうもあまり具体的な手がないようでありまして、私は証券局の株を少し上げようかと思ったのでありますけれども、ちょっとあれですね、下がるほどまでいかないけれども、ちょっとあまりいい値段はつけるわけにはいきませんね。  こういう問題については、私は、法務省とも少し相談をして積極的にやるというような考えを起こしていいのじゃないかと思いますが、いかがでございましょう。
  78. 高橋英明

    ○高橋(英)政府委員 せっかくの御激励でもございますので、勉強し、法務省ともいろいろ連絡してみたいと思っております。
  79. 平林剛

    ○平林委員 愛知大蔵大臣が四十五分になって出てくるそうでありますから、その前に事務的な問題について少し尋ねていこうと思います。  それは第二の問題であります。私は、きょう取り上げたいと思っておるのは、金融引き締め政策と約束手形など企業間信用の膨張の問題について取り上げたいと思っております。  御承知のように、最近の物価の高騰は、日本銀行の総裁の表現で言えば、燃え盛るインフレであります。過剰流動性が問題となり、超過需要を重視いたしまして、インフレ抑制政策がおくればせながらとられ始めました。日本銀行の四次にわたる公定歩合引き上げ、それから政府の物価対策閣僚協議会の緊急物価政策、私に言わせると、的はずれで、インフレ抑制策としては本質的な解決策ではなくて、効果にはたいへん疑問がありますけれども、とにかく一応政府自体も取り組む姿勢を示したという意味では私どもも承知いたしておるわけであります。  この間、金融、証券の小委員会で、いろいろこの金融引き締め政策効果についてお尋ねをいたしましたところが、大蔵省の見解によると、経済全般に対する効果は別にしても、現象的には効果があらわれつつあるというお話でございました。なるほど注意深く最近の動きを見てみると、土地価格の鈍化なんというのが伝えられて、ほんとうに鈍化したかどうか、これは一部の現象で私は当てにならないと思うのでありますが、そんな記事もちらほら出ていることは事実でございます。また証券界でも、いまお話がありましたように、法人買いがむしろ売りに、株式市場もでき高が一億株を割るという情勢であるというのも、現象面でございましょう。また、いわゆるインフレ倒産の件数がふえつつあるという情報も提供をされておるわけでありますし、日銀では、消費者ローンの抑制まで始めようなんという変な動きが出てまいってきております。  せっかく努力をしておるということは認められますが、私はいずれもこれはへぼ将棋と同じでありまして、王手をささないのでありますから、ほんとうのききめはあらわれてこない。詰め将棋もやはり王様を目標にしなければいけないのでありますけれども、ちっとも王様には手をささないで、香車や桂馬あたりにやっておるわけで、これはへぼ将棋の最たるものである。最近の政府の政策は、やぶ医者がちょうどへぼ将棋をさしておるというのと同じであります。やぶ医者というのは、ほんとうの病原体がわからないで、おまじないをいいながらからだをなで回しているうちに熱が下がると考えているようなのが、やぶ医者であります。でありますから、私は、現在の政府の物価政策なんというのは、やぶ医者がへぼ将棋をさしておる、こういうことだと思うのであります。  しかし、それはさておきまして、いずれにしても、私は金融引き締め政策がある程度進んでまいりますというと、中小企業に対するしわ寄せというのはやはり出てくるのではないだろうか。そこで、この間もわれわれとしては非常に心配をいたしまして、中小企業に対する金融問題を追及したのでありますけれども、まあ抜かりなく手を打っておりますという吉田銀行局長の答弁がございました。そして手形決済の面でも、企業間の信用の膨脹は比較的少ないという御託宣がございまして、売り上げ高との比率も、この七月−九月は三・四六だなんという、どこからとってきたかわからないような数字をあげまして、具体的に指摘をしておったのでありますが、私はどうも納得ができませんで、この問題について少し提案もしたいし、それからこれからの推移について政府の打つべき手をお尋ねをしたい、これが第二の問題についてのポイントであります。  大臣が来てから十分やりたいと思うのでありますが、そこでまずお尋ねいたします。企業間信用の状況について現状はどうでございましょうか、これをひとつ全般的な状況についてわかるようにお話を願いたいと思います。
  80. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 企業間信用の状況を申しますと、まず、手形期間の問題でございますとかあるいは流動性比率あるいは決済条件といったところで、やはり数字としては総体的な数字を申し上げざるを得ないかと存じます。  まず売り上げ債権、売り上げ高に対して売り上げ債権がどういうふうになっておるかという状況を見ますと、これは日本銀行の短期経済観測資料でございますが、昨年の十月から十二月が三・六二カ月分、ことしの一−三月が三・四七カ月分、それが四−六月に入りまして三・五五カ月分という情報でございます。七月から九月については、これはそういう中小企業の方々の予測という形になっておりますが、三・五二カ月分ということで、大体横ばいという状況で推移しておるように思います。  なお、手形期間でございますが、手形期間につきましては東京都の信用金庫協会の調べでございまして、大体信用金庫の取引相手方、お客さんに対する支払い条件ということになっておりますが、これは四十八年、ことしの六月ぐらいで百十三・七日と、こういう状況が平均の姿でございます。これが昨年の末は百十一・四、それから昨年の六月でございますと百八・八、もう一つ前の四十六年の十二月でございますと百十九・二、一番ピークが四十五年十二月の百二十二日間という状況でございます。  それから検収期間についての同様の調べは、四十八年の六月、一番最近が二十六・四日ということになっておりますが、昨年が二十七日、四十六年が二十七日前後、ピークがやはり四十五年六月及び十二月の二十八日、大体こういう状況になっておるのが現在計数的に御説明できる数字かと思います。
  81. 平林剛

    ○平林委員 いまは手形の期間の問題、検収期間の問題、売り上げ高に対する債権の割合が述べられたわけですが、売り掛け金だとか手形だとかというものは金額で言うと大体どのくらいあるものなんでしょうかね。要するに売り上げ高に対するところの債権の割合を三・六二カ月とか三・四七カ月と言ってもしろうとにはわからない。一体そういう受取手形とかあるいは割引手形だとか売り掛け金というのは、総体的にわが国経済市場にどのぐらい流れているのでしょうか。これを言ってもらったほうが、どのぐらいそういうものが流通しているのかということがもっとはっきりぱっとわかるわけですから、その金額でひとつ言うてみてくれませんか。
  82. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 これは法人企業統計の数字でございます。四十八年の三月末の数字を金額で申し上げますと、売り掛け金は、資本金五千万円未満の会社、数にいたしまして三十八万五千社で十六兆二千二百四十億というのが売り掛け金の数字でございます。割引手形の数字は同じ社に対して六兆五百二十億、この両者を合わせますと二十二兆二千七百六十億という数字でございます。それから買い掛け金は、同じ対象、要するに資本金五千万円未満の会社で申し上げますと、支払い手形を含めまして二十兆三千四百七十億という数字でございます。これに対応いたします一カ月の売り上げ高は八兆七千三百三十億、こういう数字になっております。  そこで、いまの中小企業のその数字、売り掛け金に対する買い掛け金の割合がどうなっておるかということからいたしますと、いまの数字を使いますと、売り掛け金のほうが少し多くて一〇九・五%という数字に相なるわけでございます。またその売り掛け金と一カ月当たりの売り上げ高割合から申しますと、この調査によりますと二・五五カ月分になります。  同様の数字が五千万以上の会社に対してもございます。売り掛け金と割引手形の数字を合計で申しますと、五千万以上の比較的大きな会社一万五千七百社で申し上げますと四十三兆六千二百七十億、これに対して買い掛け金が三十三兆四千六百五十八億、売り上げ高が十四兆二千百七十億でございまして、これを先ほどの売り掛け金と買い掛け金という割合で比較的大きなほうの会社で申し上げますと、売り掛け金のほうが買い掛け金よりはるかに多くて一三〇・四%になっております。それから一カ月当たりの売り上げ高に対する売り掛け金の割合は三・〇七カ月分という数字になっております。
  83. 平林剛

    ○平林委員 そこで、いま法人企業統計で昭和四十八年三月末の資本金五千万円未満、三十八万五千九十六社、あるいは五千万円以上、一万五千七百八社の受け取り手形を含む売り掛け金あるいは割引手形を全部合計すると六十五兆円になる。しかし法人会社というのはもっとたくさんあるわけでありますから、六十五兆円というのはもっと多くなるというふうに常識的に考えられますが、それはいかがでしょうか。その点だけをひとつ答えていただきたい。
  84. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 これよりは多くなるかと思います。
  85. 平林剛

    ○平林委員 金融引き締めが強化あるいは長期化していけば、このいわゆる企業間信用の膨張はもっともっとふえると思うが、いかがですか。
  86. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 引き締めといいますか金融的に逼迫してまいりますと、こういう企業間信用というのは大体膨張する傾向にあることは仰せのとおりでございます。
  87. 平林剛

    ○平林委員 そこで、私はそろそろ大臣に質問していきますけれども、大企業が振り出す約束手形、これは利息をつけて手形をくれる場合もあるでしょうけれども、そうでないところもある。つまり下請業者である中小企業の受け取る約束手形あるいは受け取り手形というものは、いま六十五兆円という数字が出されておる。しかし常識的に考えても全部の企業だともっと多いし、金融引き締め政策が長期化していけばそれはどんどんふえて、百兆円までいかないにしても相当の企業間信用にふくれ上がっていくということはおわかりのとおりでございます。これは、もらった下請業者はそれを金融機関で現金化しなければいかぬ。銀行局長、現金化するときの割引料はだれが負担していますか。
  88. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 それは割り引いてもらう、この場合でございますと中小企業でございます。
  89. 平林剛

    ○平林委員 そうすると、大体下請業者が大企業からもらった手形は、どのくらいで割れるというふうに御認識でございますか。
  90. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 銀行の種類によって違いますが、全国銀行数字で見ますと、大体約定平均金利といたしまして七分一厘六毛という程度ではなかろうかと考えております。
  91. 平林剛

    ○平林委員 私も方々調べてみたのですが、年率六・五なら六・五にしておいて、それにプラスアルファがつく。信用状況によって違う。一部上場のものであればたとえば六・八とか、二部上場のものでは七・五とか、その他は八・五とかというふうな数字です。平均いたしますと八%くらいだ。いまお話になったのは都市銀行で七%ちょっとということですが、それを頭に入れておいてもらいたい。  その次に私はちょっと聞きますけれども金融機関で割り引いてもらえない手形があるのですね。最近のようになると、これは下請が大企業からもらったのだけれども、割り引いてくれと言っても金融機関でちょっとと言って割り引いてもらえないものがある。これはどのくらいの割合があると思っていますか。
  92. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 具体的な実数で申し上げることが非常にむずかしい御質問でございます。ただ、先ほど来御説明申し上げました数字にあらわれております受取手形と割引手形との関係からいたしますと七割ぐらいが割引手形、金融機関で割り引いてもらう手形の割合ではなかろうか、かように考えております。
  93. 平林剛

    ○平林委員 逆にいえば三割くらいは金融機関では割り引いてもらえない。割り引かなければならぬからそれはどこへ持っていくかというと高利貸し、町の庶民金融機関、こういうところに持っていくわけです。そこでどのくらいで割り引いてもらっておりますか。
  94. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 具体的には承知いたしておりませんが、例の利息制限の法律の限度までの間に、いろいろ信用状況によってまたがっているかと思います。
  95. 平林剛

    ○平林委員 最近の高利貸しは笑いがとまらない。こういう手形を割り引いてやるのに、たとえば月三分とか、年率でいくと三割六分くらいになる。(「月三分はまだいいほうだ」と呼ぶ者あり)いいほうだ。五分なんというのがあるのですよ。  そこで私は、かりに大蔵省の銀行局長が法人企業統計で御説明になりました手形、いわゆる企業間信用は六十五兆円と仮定をいたしまして、もっとふえますが、六十五兆円と仮定をして、そして手形を割り引いてもらうために中小企業、下請企業が支払っているのは、平均八%としても金額は幾らになるか。五兆円になる。この五兆円あるいは五兆円以上の金額を中小企業、下請企業金融機関に払うのです。もっとことばを変えていえば吸い上げられるわけです。大企業が下請の中小企業に現金決済をしないために、それだけよけいに中小企業や下請企業というものは負担を増加させておるということはおわかりになるだろうと思うのです。  つまり、これは約束手形、こういう手形を乱発することによって、いまやわが国は強者と弱者の経済になっておる、経済取引としては非常に不公正な取引である、こういうふうに認識をいたすのでございますが、大蔵大臣の御所見を承ります。
  96. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 企業間の信用の問題、それから特に大企業の手形の振り出しの問題について非常にこまかく具体的に御質疑をいただき、また御提案もいただいておるようでございまして、非常に敬服しておるわけでございます。同時に、私ちょっと参議院へ行ってまいりましたのでおそく参りましたからいままでの質疑応答について十分承知しておりませんけれども、お考え数字あるいはそれに基づく具体的な方法等については一つの御見識であると思いますけれども、大企業中小企業との関係というのはまたなかなかわれわれの承知し得ないような複雑な関係もあるようで、たとえば納品の代価それからその価格の取りきめそのほかいろいろの点で、手形のほうで便法といいますか中小企業の立場を守るようなやり方をすると、またそれを基礎にして別の方面でいじめられるというようなことも考えられる、あるいはそういう事態も耳にすることもございますので、平林委員から御質疑をいただいた機会に私どもも積極的に勉強させてもらいたいと思います。  同時に私へのお尋ねは、日本の経済全体が強いものと弱いものとに画然と分かれるようなやり方をしておるときめつけられたわけですけれども、私はそこまではちょっとどうかと思いますけれども、しかし問題の所在、これは扱いようによってはたいへんな問題であることは私も認識しておりますから、そういうふうな心持ちで建設的な御意見をいろいろ御教示にあずかりたいと思います。
  97. 平林剛

    ○平林委員 結局私は、いま金融引き締め政策が当面のインフレ抑制策の中心に置かれておる、そして過剰流動性を吸い上げあるいは超過需要を押える、こういうことであるならば、今後大企業が手形の期間を長期化させたりあるいは手形の乱発をしていくということになるならば引き締め政策のしり抜けになる、これを野放しにしておけば信用の膨張になる、そうすればインフレ抑制効果を薄める、こういう点から実は問題の提起をいたしておるわけであります。  そこで、現在進行しつつあるインフレに対する、認識によっても違うでしょうけれども、私は現在のインフレを押える一つ政策として、この約束手形による信用膨張を押えて、ある一定の期間大企業に対する約手の使用について制限をするというようなことを考えてはどうか、こう考えておるわけなんです。大蔵大臣は先にお答えを言ってしまったのですけれども、こういうようなことはいかがなものでございましょうかという点をもう一度お答えをいただきたい。
  98. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 本質は私はよく理解できると思います。なるほど、これは先ほどもちょっと申しましたが、中小企業のほうの立場を考えて、もらった手形を適正に金融化するという道を中小企業のために確保する、その点はけっこうなことだといえると思いますけれども、そうすると今度は金融引き締めについて手形がどんどん大企業から乱発されるということになるとまさにしり抜けでございますね。これはなるほどこういう時期には考えなければならぬということを私もつくづくと思います。  要するに私ども考え方は、いわばマクロ的に総需要を押えるために金融の徹底的な引き締めをやっておるのであって、ミクロ的というか、実際商売しておる中小の企業の方々にはこういう余波はできるだけ及ぼしたくないというのが政府としての基本方針でございますから、そういう点から考え、かつマクロ的な信用膨張抑制という大目的を達成できるためにどこに接点を求めるか。それから同時に、中小企業によくしようと思ってわれわれがいいと思うことをやると逆にほかのところでもって大企業からぎゅうぎゅうやられるということになってはまた申しわけないことですから、いろいろの面から、せめて先ほど申しましたように御提案、御意見等十分われわれも建設的に考えてまいりたい、こう思います。
  99. 平林剛

    ○平林委員 私は、たとえば立場をかえて、いま手形の問題を、たてまえは現金決済にしなさい、そして乱発を押えるようにしなさいという指導をやるべきだと思うのですが、その場合に大きな企業は検収の期間というのを長くする。さっきお話がありましたが、二六・四という数字吉田銀行局長申された。これを長くするということになっては何もならぬじゃないかという議論はあると思います。しかしそれは中小企業振興法という法律があるわけですから、そういうふうにして手形の期間を長くしないで、それでまた押えれば検収期間を長くするというようなやり方をとらせないような国としての法律的措置を加えることによって解決できるのではないだろうか、こう思うのです。  それから、現状として一番困っているのはせっかく手形をもらってもこれを割り引いてもらえない、さっきお話がございましたように、三割は割ってもらえない、高利貸しに行く、高利貸しは高い、そこで結局行き詰まって、仕事はあるのだけれども経理上まずくいって倒産する、こういうことになるわけであります。そこで私は、いま、約手の使用を制限をするようというなことについても検討すべきだということを申し上げましたが、そこまで行かないまでも、もう一つやり方があると思うのです。たとえば、大きな企業が振り出す約束手形ですね、それを利息を込めてやってくれればいいのですよ。一千万円の仕事をしたならば、それに相当する利息を込めて手形を払ってくれれば、これは公正な取引ということになる。ところがそうでないというと、結局さっきの相当の金額を中小企業が負担しなければならないことになる。割ってもらえない。そこで私は大きな企業というのはみんな系列の金融機関を持っているのですから、中小企業はなかなか信用がないからワクをもらえないわけです。しかし大企業は系列の金融機関を持っているわけですから、そこの金融機関で割ってやる、自分のワクで割ってやる、そして現金決済にしていくという指導をやれば、この約手に対する批判というものは幾分満足してもらえるのじゃないか、こういうことも私はこれから、愛知さんがインフレを退治するためにかなりみなにしんぼうしてもらわなければならないというならば、こういう行政指導もやはりやらなければいかぬのじゃないだろうか、こう思うのでございます。これも私の一つの提案でございます。  それからもう一つは、私はこの約束手形の問題についてほんとうに取り組むという気持ちがあるならば、すべて約束手形の発行については、日本銀行とかあるいは日本銀行が指定する金融機関とかで一括して取り扱うことにする、そうして手形を発行したいという企業はそこで印紙代、いまの印紙代よりもっとうんと上げるんですが、そこで利息に相当するものを納めるという形にして約束手形は統一的にやっていく。そうすれば大蔵大臣も、金融引き締めをやったけれども、こっちの信用膨張でしり抜けになるというようことを数字をもって把握できるわけです、金融機関報告する義務をつくらせれば。金融引き締めたけれども企業の信用がふくらんで結局インフレ抑制効果が出なかったということを、この数字を把握することによって、必要な手を打っていける。  印紙代あるいはそういうときに必要な経費というものは振り出した人に負担してもらう。中小企業が負担していたものを振り出した人が負担をするという形にすれば約手の乱発というものは少なくなってくる、こういうような政策を私は用意すべきじゃないか。そして大蔵大臣もかなり強い決意でもってそういう手当てをしながら中小企業を守っていくということをぜひひとつ考えてもらいたいということなんであります。  私は、最近いろいろな事情を調べますと、大企業は約束手形を乱用し過ぎていると思うのです。たとえばこういうことがあるのです。一億円の土地を買う。そのときに現金では三千万円しか払わない。七千万円は手形で出しておく。しかもそれは長期間の一年で出しておく。そして一年間の手形が切れる前にそれをまた転売してしまう。そうすると一億円の土地は一億五千万円で売れる。こうして不当な利益を得ておるというのを私は幾つも知っているのですよ。つまり、これは手形という商法で規定されているところのいわゆる商行為を離れて手形の乱用ですね。ここまでいまきておる。  そこで、この手形の問題については金融引き締めのことにも関連をするし、わが国経済の中における中小企業と大企業関係にも問題があるし、そして手形を乱用することによってますます不当な利益を得ておる大きな企業の横暴に対してはこの機会にチェックする。幸いにまだいま時間がありますから、この問題を政府は真剣に検討してメスを入れていただきたい。これをやってくれれば、私はさっき大蔵大臣が来られる前にやぶ医者がへぼ将棋をさしているのと同じだというのはちょっと訂正させてもらいたい、こう思っております。  最後に、私は考え方を申し上げましたので、大蔵大臣のもうちょっと進んだ御見解を承って終わりたいと思います。
  100. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 実は率直に申しますけれども、現在の実際の動き等につきまして私も不勉強でございましたから、御指摘をいただいたこの機会にできるだけ勉強いたしまして、建設的な御意見を生かすように考えてまいりたいと思います。
  101. 平林剛

    ○平林委員 ありがとうございました。
  102. 木村武千代

    木村武千代委員長代理 本会議散会後直ちに再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時七分休憩      ————◇—————    午後二時三十八分開議
  103. 鴨田宗一

    ○鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。阿部助哉君。
  104. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣は、この国会の冒頭の財政演説で、トリレンマの解決、こういうことでお話しになった。国際収支の改善、円の切り上げの回避あるいは物価の安定、社会福祉の実現を公約されたわけでありますし、私もこの大蔵委員会の冒頭にこの問題を質問をしたわけでありますけれども、半年たってみて今日、どれ一つとってみても、何か大臣の御意図とは反対の方向へいっておるのじゃないだろうか。すなわち、円は変動制になって実質的には切り上げられた。物価は御承知のように天井知らずで上昇しておるわけであります。私は、社会保障、特にお年寄りの問題の最大の問題は、消費者物価の安定、貨幣価値の安定、これが最大のものだと思うのです。ところが、いま物価はウナギ登りに登っておる。一体何が社会保障の充実なんだと、こう言いたくなる。  そうすると、これは一体どれ一つとってみても、大臣の財政演説とはうらはらの方向へいっておるのじゃないだろうか。こういう問題に対して大臣はどのような政治責任を感じておられるのか、まず、そのことをお伺いしたいと思うのです。
  105. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 トリレンマにつきましては、非常にざっくばらんに申しますと、私は、三つの課題の中で、当時一番むずかしいと思いました円の問題国際収支の均衡の改善、これは私は案外今日のような状況で小康を得ていると思います。それから福祉国家の建設ということについては、予算を通し、軌道に乗りつつあると、こう考えます。そして最大の問題が物価ということに相なっておる。したがって物価の安定について全力投球をしなければならない、こういうふうに考えております。  まず第一の問題については、国際的に収支を均衡し、かつ国際協調の上に立ってやらなければならないということについては、国際的なその後の非常な状況の激変もあり、またそれをテークアドバンテージと申しますか、いたしましてすみやかに変動相場制に切りかえ、そしてスミソニアン以前に対しては実質三六%の切り上げになっておりますけれども、これは東京市場を通じて国民の目の前で、突如としてある日起きてみたら切り上げられていたとか切り下げられていたとかいうようなことではなくて、順を追うて国民監視の中で東京市場で円の実勢というものが展開され、かつこれが維持されてきているということは、経済政策の基調としてはこういう状態ができ上がったことは、私は喜ぶべきことであると確信いたしております。そして本来理論的にいえば、こういうふうな状態になれば国内の金融財政政策というようなものはやりやすくなって、そして物価等についてもよい効果があらわれてくるべきはずでございますけれども、やはり国際情勢の激変というようなことに相当の原因があって、たとえば卸売り物価状況などは思うにまかせない、むしろ非常な急激な上昇テンポをたどっておりますことは、この点は残念に思いますが、集中して三月以来の累次の政策効果というものが漸次私は必ず展開してくるものと考えております。  それから、福祉問題については、これは額の問題幅の問題、スピードの問題、そういう点からごらんいただけば、いろいろもどかしい点がたくさんございますけれども、よく私は例に引きますけれども、たとえば年金等についてスライド制を導入したということや、あるいは七十歳以上の老人の無料医療給付制度ができているというようなことは、物価が高い、インフレ的様相であるから福祉なんかはどこへ行ったと、抽象的な論議としてはいわれるでありましょうが、制度的にこういう制度になりましたということは、これは相当な前進であると私は思います。さらにこれに対して幅を広くし、あるいはスピードを早くするというようなことについては、各方面からの建設的な御意見や御要望に沿うてこれを堅実に伸ばしてまいりたいと思っておるわけであります。  要するに当面の状況は、あの当時とは変わりまして、もうひたむきに物価の安定という問題について全力投球をすべきじゃないか。もはやそういう意味のトリレンマという問題は、環境状況がすっかり変わってきた。物価の安定にほんとうに効果があげられさえすれば、ほかの点については十分な成果があがると、こういうふうな考え方を持つに至っておりますのが現状でございます。これらの点について御批判やあるいは責任の追及というようなことについては平静に私もお受けいたしますけれども、私の確信するところはさようなところにございます。
  106. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣は物価問題以外はみんなうまくいったようなお話でありますけれども、当時お話しになっておったときには、円は切り上げをしないで処理をする、こういうふうな御意図であったように私は思うのであります。また社会福祉の問題、これまたいろいろ論議のあるところでありますけれども、私は、大臣の言うような、日本の経済がこれだけ大きな経済力を持ち、生産力を持ちながら今日の社会福祉の貧弱、しかもその中で物価値上げの中で苦しまれる年寄りのことを考えれば、大臣が自画自賛するようなものではないじゃないか。最後に、物価の問題はこれからたいへん集中的におやりになる、こういうことでありますが、依然としてこれは解決していないということをお認めになったようでありますが、まずこの問題から私、具体的に聞いてまいりたいと思うのであります。  私、いつかもここで申したと思うのでありますが、ほんとうに働く人たちにとってみれば、たとえば夫婦分かれ分かれで出かせぎをしながら生活をしておる。しかも地下鉄工事だ。危険な作業に入る人たちにとってみれば、金をかせぐ、給料をもらうということは、ほんとうにからだを張った、命がけなんです。またわずかな貯金をして、これで老後を何とか過ごそうとする人たちにとっては、この金に命を預けておるようなものなんです。そのもとの貨幣が価値を減じていくということは、大臣がお考えになるよりも、私はその人たちにとってはたいへん深刻な問題だと思う。また各家庭においてやはりそれぞれの生活設計というものがあると思うのです。現在その生活設計のもとをなすのは何かといえば、皆さんの物価政策物価見通しだと思う。一体物価見通しは今年度中にどの程度になるという御判断なんですか。
  107. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 現在の時点卸売り物価消費者物価等について……。
  108. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 消費者物価でいいです。
  109. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 消費者物価について、何月には前年度比何%という数字をあげて申し上げるだけの現在勇気はございません。私どもの当面さしあたりの目標は、主要各国も同じような状況に当面し、かつ悩んでおるところを見ましても、主要国、これは大体五つぐらいを想定いたせばよろしいかと思いますが、それらの国の上昇の率よりは低度にとどめるようにということが現在最大の努力の焦点に考えておるわけでございます。
  110. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いま何%になるか発表する勇気がないというのですが、それだと、年度初めに皆さん発表されたのは五・五%でしょう。あのときは勇気があったわけですか。
  111. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは御承知のように、四十九年度の財政計画というものの作業を始めておりますが、いずれ経済の見通しも、これはGNPというようなものが中心で、その成長率ということが象徴的になると思いますけれども、これらの作業も企画庁が中心になっておいおいやっていかれることと思います。それらと相関連いたしまして、そこからあらためて目標というものが出てくると思います。  今日のところは、お示しのとおり本年度の見通しとして当初つくりましたものからは非常に乖離しておる、これは事実何ぴとも認めるところでございます。したがって今日としては、ただいま申しましたように、諸外国同様いろいろのくふうをしておるわけですけれども、その成果としてはそれよりも下の程度でつくり上げることがまず最大の問題であるというふうに考えます。
  112. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これは政府の責任だと私は思うのですよ。やはり皆さん予算をおつくりになるときに、物価の見通しなしに、貨幣価値の見通しなしに予算をつくるほど勇気があるのですか。大体もとの尺度があいまいなのに予算というのができるのですか。私はそんなことはないと思うのです。私はやはり来年度の予算を編成するには来年の物価見通し、貨幣価値の価値尺度をまず立てて、その上でなければ財政計画は立つはずがないんじゃないですか。それが年度当初は五・五%を想定された。今日どれほどになるか、お先まっ暗だというのでは、国民は一体何をめどに生活設計を立てたらいいのですか。私は、そこで勇気がないなんということでごまかされたのでは困る。  当初の見通しは間違った。これは人間であるから間違うことはあり得る。いま今日の時点ではこう見通しておるというなら、そういう見通しをお述べになるのが私は正しいと思うのであって、それをいま発表する勇気がないなんということでやったのでは、国会は、国民は何のために大蔵大臣を任命しておるのかわからぬじゃないですか。何のために政府を預かっておるのかわからぬじゃないですか。私はその答弁ではいただけないと思うのです。これは大臣、勇気とかなんとかというものじゃなしに、国民に対する責務としてやはり現時点における見通し、それはお述べになるべきだと思うのですが、いかがでございますか。
  113. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 財政計画は経済見通しと相照応するものであるということはただいま申し上げたとおり。したがって、四十九年度の財政計画については、いずれ四十九年度の経済見通しというものを並行的につくっていかなければならない、これは当然のことであります。  それから、ことしの消費者物価については、当初の見通しと現実とは違っておりますことは認めておりますが、現在の努力ということは、この騰勢を縮めていくということに最大の努力を払っておりますが、当面のところ、十一月に何%になる、三月には何%になる、そこを正直に誠意を尽して言えば、逆に、何%というようなことを言うだけの勇気がございませんということを正直に申し上げておる、これが現実の状態であると思います。
  114. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いや、だからそこでそんなに私、何・何%正確になんということを言ってはいない。  それならお伺いしますけれども、今年度の最終のときで大体一〇%を上回る見通しなのか下回る見通しなのか。皆さんの努力をしておるなんという主観的な問題を聞いておるのじゃない。もちろん皆さん努力をしておらなければおかしいのであって、怠けていてはだめだ。そんなことを聞いているのじゃないのだ。問題は、国民もそれぞれ家計を、生活設計をする上にこれが必要なんでして、皆さんが予算を立てるために必要だと同じように必要なんです。そういう点で、一〇%を上回るのか、それとも下回るのかという見通しはいかがですか。
  115. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは下であればあるほどいいにこしたことはありません……。
  116. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そんなことを聞いているのじゃない。
  117. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 具体的な数字を申し上げる勇気はございませんと言っておるのでございますから、それ以上申し上げることは私できません。
  118. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 じゃ大臣、そんなことを言うなら、一体あなたは何をもとにして財政運営をやっておられるのですか。
  119. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ですから、主要国の動向もよく見ながら、主要国の程度よりは低い程度に、何としてもできるだけすみやかにそういう傾向をつくりたい。そうして現に今朝も物価閣僚協議会がございましたが、大体八月三十一日というような時点が、これはたまたまときが一致しておりますが、いろいろな物資についてようやくこれは諸般の対策が奏功してきたなという気配が見え出してきた。それから主要各国におきましても御同様で、これはたとえばロイター指数というようなものが国際的に信頼のできるものとされておりますが、このロイター指数などにもそういう傾向が、たまたま八月の末ぐらいの状況から出てきた。これはわれわれとしては努力の成果が、相当の時間がかかったけれども、かなりよい傾向が期待されるのじゃなかろうか。  ことに消費者物価については季節的な商品の比重が相当多いわけですが、これを除いて指数をつくってみますと、三月、四月ごろがピークで、それから前月に比較して値上がりの幅がずっと引き続き低下している。この状況は私は喜ぶべき現象であると思っております。季節的な関係からいって、これから秋に入って生鮮食料品等については若干また逆な傾向があらわれることがあろうと思いますけれども、しかし全体の傾向がこういう傾向になってきましたことは成果があがってきたことであろうと思いますし、これをさらに三月まで努力を続けてまいりますと、三月の時点から振り返ってみれば、ある程度好ましい姿になるのではないかと考えております。
  120. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣、諸外国のものがどうだこうだおっしゃるけれども、それならばそれでまた社会保障の点や何かも比較しなければいかぬのであって、私、そこまでいま問題を広げてないのです。大臣、私に答弁するというよりも、もう少し国民に答えるというたてまえで御答弁いただきたいのです。  当初五・五%という見通しを立てられたが、いろいろな関係でこの見通しどおりいかなかったという点は、これはお認めになるだろうし、そのことはもう現実が証明しておるわけです。それはそれにして、それならばいまの時点で大体どういう程度だという見通しが立たないで財政運営をやるなんというのは、全くかじもかいも持たないで海へ乗り出したみたいなものじゃないですか。そんなことで大蔵大臣つとまるんですかね。たいへん失礼な言い方だけれども、そんなことで大蔵大臣つとまるというなら、私ふしぎでしようがないですな。どの程度なのかくらいおっしゃることができないような日本の大蔵大臣ではなかろうと私は思うのです。  一応の見当くらいは私はあるだろうと思うのです。こうなります、きっぱりとはこれは言えないかもわからない。私はそこまで言っておるわけじゃないのです。だから大まかに、大体一〇%を上回る見当なのか、一〇%を下回る見当なのか、こう聞いておる。それを低ければ低いほどいいという話では、これは子供だましよりもまだ悪い答弁でして、私、そんな答弁はいただけない。  たいへん乱暴な言い方だかもわからぬけれども、大臣もう少し国民に答弁するという立場で、私もその立場でお伺いしておるのです。国民だってやはり家計の生活設計というものがあるんです。そのためにこそ財政運営を担当される大臣だろうと思うのです。私ほかに質問もあるんですけれども、まずこれが一番基本でありますから、これなしに幾ら財政問題だ、経済問題を論議しようったって、ものの価値をはかる価値尺度のもと自体が狂っていくのじゃ、これは何を論議したってどうしようもないじゃないか。そこはもう少し国民に親切にひとつ御答弁を願いたいと思います。
  121. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 国民に対してきわめて率直に、正直に申し上げているわけで、一〇%という話が出ましたからそれを基準にして、低ければ低いほどよろしいということも率直に申し上げているわけで、そうやってまいりますれば、ことばの上の議論になれば、それは年度当初の予想が五・五%であるし、あるいはまた年金等のスライド関係をごらんになっても、政府の当初の見通しや目標というものがあるわけですから、それに乖離しましてもその乖離する幅はできるだけ少なくしよう、こういうところに努力の焦点を置いていることは申すまでもないことだと思います。こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  122. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 ずばり、じゃあお伺いしますが、それならば見通しがないということなんですか。見通しが立たない、こうおっしゃるのですか。
  123. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 見通しがないのではなくて、現在できるだけの手法を用いて上がり幅をできるだけ少なくしていこう、こういう努力をしているわけでございます。ですから、そういう点からいえば、当初の見込みというものははっきりあるわけですから、それにできるだけ近づけようということが目標だということはいえると思います。
  124. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それでは現在時点で最も近い最近の指数で前年対比で何%上がっておりますか。
  125. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 正確に毎月ごとの数字はここにちょっと持っておりませんが、一〇%をこえていることは御承知のとおりです。
  126. 小島英敏

    ○小島政府委員 一番新らしい数字でございますが、全国の七月のCPIが前年同月に対しまして一一・九%でございます。それから八月はまだ東京しか出ておりませんが、東京の速報が前年同月比一二・九%でございます。
  127. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣、いま発表されたように全国で七月で一一・九なんですね、約一二%。しかもこれから物価が皆さんの主観的な努力いかんにかかわらず上がる要因だけが数多く出そろっておるということではないでしょうか。そうすると、これからさらに消費者物価は上がる、こう見なければならぬのじゃないですか。どうです。
  128. 小島英敏

    ○小島政府委員 現在までの状況消費者物価につきましては、大臣おっしゃいましたように、前年同月比は非常に高いところを走っておりますけれども前月比としてはむしろ三月、四月ごろがピークで上がり方としてはむしろ鈍化しつつあるということでございます。ただし大臣もおっしゃいましたように、秋になりますと今度の野菜の関係があまり芳しくございませんので、それから季節商品以外でも、えさが上がるというようなことで肉とか卵が上がりぎみというようなこともございまして、八月の実は季節商品を除きましたものの総合、これの前月比が〇・五%というかなりいい数字になりつつあるわけでございまして、〇・五を年率換算いたしますと、十二倍で六%でございますから、これは非常にいい数字なんですけれども、秋になりますとやはり若干これよりも強くなるだろうという感じを持っております。
  129. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私の聞いておるのとは多少違うのですが、これから、国鉄運賃の値上げも先ほどきまった、また消費者米価も来年は上げるようなお話だ、またガス、電気もそれぞれ上げるようなお話がある、郵便もまた上げようとしておるというようなことを考えていきますと、季節的な天候、おてんとうさまによって左右されるような問題は、これは多少不確定要素があるけれども、少なくとも政治によって左右できるものは全部上げる傾向にある、こう見なければならぬ。  そうすれば皆さん、消費者物価がいまよりも安定する傾向にあるなんということはこれはさか立ちしても言えないのじゃないですか。どうなんです、イエスかノーか言ってくださればけっこうです。
  130. 小島英敏

    ○小島政府委員 公共料金と申しますのも非常にたくさんございますし、その他の品目が一般的にやはり去年末ごろから値上がり傾向にございますから、今後確かにこの公共料金その他である程度値上げしなければいかぬものが出てまいるわけでございますけれども、これは必ず毎年そういうものは幾つかあるわけでございます。したがいまして、前年同月比でどうなるかということは、必ずしもますます高くなるということはいえないわけでございます。やはり今後貯蓄の奨励その他いま大蔵省でいろいろ検討されておりますけれども、そういうことで所得はふえても購買力として一ぺんにみな発動しないようにしていくということが必要でございます。  もちろん卸売り物価が非常に前提でございますから、卸売り物価がいままでのような形で上がってまいりますと、これは必ずやはりある程度のタイムラグを伴って消費者物価に波及しますから、これは幸いにして先ほど大臣からお話がございましたように、九月になりましてからかなり落ちつき始めておりますし、今後も消費者物価に好影響が出るということを期待しておるわけでございます。
  131. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さんの期待やら主観的な努力やらこれを私は何も否定しようとは思わないけれども、先ほど来言っておりますように、国民にやはり指針を与えるというのが私は政治の一番要諦だと思うのですよ。そういう点であまり無責任な楽観論だけでは国民はひどい目にあう。そういう点で皆さんもう少し責任を感じてくれなければ困る。間違いが絶対ないとは私は思わないけれども、それにしても私はあまりにもひどい。五・五%と、こういう見通しを立てながら、わずか半年間でこれを倍以上も上がるなんということ自体、これはもう異常なんですよ。  そういうところにまず反省がなくて、下がれば下がるほどいいみたいな答弁では、国民は浮かばれないと思うのですよ。私はほんとうに大臣、その点真剣にかかっておるとかどうとかということじゃなしに、もう一ぺんしつこいようだけれども、お伺いするけれども、これから年度末にどうなるかという見通しがないならないとおっしゃってくださればいい。あるならば、大体この見当だと、こうおっしゃっていただけばいい。もちろん皆さんの努力も加味して、その発表ができないならできない、私は二途しかないと思うのです。皆さんが全然お先まっ暗で見通しが立ちませんというのか、立っておるけれども、発表ができないというのか、どちらかだと思うのです。どちらか私はそこをはっきり大臣からお答え願いたい。ないならないでいいです。
  132. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私はさっきから言っているのですが、無責任な楽観論の逆なんですよ。責任を感じているからこそ、さっきから何にも目標がないなんということは一つも言っておりません。あなたが一〇%以上になるのか、以下にしたいのかと言われるから、一〇%ということを、たとえばあなたのおっしゃることを基準にしていえば、低いほどよろしいということが目標である。それから終局的に何でもかんでも言えとおっしゃるならば、初めからの当初の計画はこうこうでございますから、遺憾ながら現実はそれに離れておりますが、その乖離をできるだけ少なくしようとしておるのである。そうしてこれをここから出まかせに、あなたから追及されるからごきげんをとって一〇%にいたします、あるいは五%にいたしますというような数字をあげて無責任な御答弁を申し上げることは勇気はございませんと、私は責任を感ずるからそう言っておるのです。
  133. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私の質問とあなたの答弁と食い違っておるじゃないですか。責任を感ずれば、大体見通しを私はこうなりますという結論じゃなしに、見通しがあるのかないのかと、こう聞いているのですよ。見通しがあるならおっしゃればいいのです。ただ希望的なこういうふうな努力をしたいとかなんとかいうことを私お伺いしておるのではないのです。そうでしょう。皆さん、それはわかるでしょう。私の質問は見通しがあるならば、その見通しはどうかということであって、ぴしゃりとなるかどうかということはこれからのまた推移で多少動くでしょう、いままでだってこれだけ動いたのだから。だけれども、予算の執行にあたり、また各個人が家庭設計をするにあたり、それぞれおおむねの見当をつけなければいかぬでしょう。その見当は、見通しはどうか、あるならば発表すべきである、こういうことなんでして、何も私の質問は……。
  134. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 前月比とか、前年同月比とかいうことは先ほど来説明があるようにきちんと数字をあげて申し上げましたね。そうして前月比についてこれはできるだけその幅が〇・二よりは〇・一がよろしい、一・二よりは一・〇を割ったほうがよろしい、こういうことで毎月毎月それを中心にして各般の措置をしているわけでございます。そういうところに、目標がないどころではなくて、これほど周到にいろいろの指標を注意しながらやっておるのであって、目標がないのかと言われれば、先ほどから言っておるように目標はあるわけですよ。設定した目標に対してできるだけ乖離を少なくしたい、これぐらいはっきりしていることはないと私は思います。
  135. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 あなたははっきりしているつもりだけれども、皆さん、はっきりしていると言えますかね、こんなことで。こんなことではっきりすると思う人があったら言ってみてください。だれもはっきりすると思っていない。現在の時点で見通しはどうかと言うのです。予測を立てた時点では五・五%、その見通しを立てて予算を編成されたのです。しかし今日こう上がってきた。そうすれば五・五はどうしたって訂正せざるを得ないと思うのです、正直いって。これはだれが言ってもそうだと思うのです。そうしたら、いまの時点で大体どの程度になるという見通しのもとで予算の問題、執行その他計画が立てられなければいかぬと思うのです。そういう点で私は聞いておるのですが、大臣は私の質問を勘違いしておられるんじゃないですか。どうなんです。
  136. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 勘違いをしておるつもりはございませんが、勘違いをしておるのでしたらもう少し詳しく御質問をいただきたいと思いますけれども、私は勘違いしておるつもりは毛頭ございません。  そこで、勘違いしているかしていないかということは議論の焦点ではないし、また国民の皆さんもそういうことを聞きたいと思っておられることではないと思います。具体的にこういう金融引き締めはどういうふうな効果があがるであろうかとか、あるいは毎日食べている米の価格はどうなるのであろうかとか、あるいは公共料金がかりに引き上げられるとすればそれがCPIにどのくらいのウエートを持つものであるか、あるいはこれを引き上げないとすればどういう方法があって、それがまたどういうふうに国民の負担になるのか、そういうことが論議の焦点であり、そういう点にわれわれとしても一番苦心しているつもりであって、それらを総合して当初の目標というものは掲げてあるわけですが、遺憾ながらいろいろの原因が錯綜して今日それとは相当の乖離がございますからこの乖離をできるだけ縮めていこう、こういう努力をやっているわけで、これは、私は国民的にもその政府の努力というものは十分理解してくださると思います。
  137. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 この問題だけやっておると、これだけでもどうしようもないのですが、大臣なんぼ努力をしておるのだなんということを言っても——私は努力していないと言っておるわけじゃないですよ。努力目標とか、努力しておるとか、していないということを私は聞いておるのじゃないので、大体皆さんとしても予測を立てられておるのだろうと思う。それがないで予算を執行するということは、どう考えてみても私はわからぬのでありますけれども、大臣がどうしてもお答えにならぬとすれば、私は見通しが立たないのだというふうに受け取る以外道がないのであります。そういう点でこれは大臣に何ぼ聞いても、ないものを出せといっても無理なようですから次に移ります。  最近非常に注目した発言が二つあるわけでありますが、その一つは九月十一日、総理が全国証券大会でお話しになったことです。そこで何か自己資本比率を五〇%に引き上げるにはどうしたらよいか、真剣に考えてほしいというような趣旨の御発言を新聞で見たわけであります。  もう一つは九月七日、大蔵大臣が外人記者クラブで所得政策を前向きに検討するようなお話をなすったように新聞で拝見をしたわけであります。  それでまず、ほんとうに総理がおっしゃったように自己資本比率が低いというふうにお考えになっておるのかどうか。その場合に、土地や有価証券、秘密積立金といいますか、これを担保にして融資を受けておる実態、こういうことを見てまいりますと実際は相当に大きな含み資産があるのではないか。具体的な数字をあげろといえば私はあげますけれども、そういうものがある。その中で、さらにまた税制の面でいろいろな問題をやっておる。自己資本比率というものは帳面づらでは確かに一七・何%、低いようでありますが、企業の実態から見ると、日本の企業はたいへんな資産をお持ちになっておるのじゃないかという感じがするのですが、その辺は大臣はいかがお考えなんですか。
  138. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず、証券大会での総理の話というのは、いまお触れになりましたような企業の実体の資産構成というようなところまで触れておるわけではございませんで、資本構成について外部からの借り入れ資本とかそれから法人相互間の持ち合いと申しますか、借り入れ資本その他が非常に比重が高くて自己資本の形成というものが最近は年を追うごとに減ってきているのではないか、これをある程度数字をあげて話をされたわけであります。同時に、時価発行というようなことが乱に流れるというようなことは厳正に慎むべきことであって、これらに対しての行政指導というものについても大蔵省がしっかりやるはずである、ひとつ業界自身において、あるいは企業家自身において、建設的な考え方とそれを実施することについて格段の努力を期待申し上げるということを申したわけでございます。
  139. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 自己資本比率を高める努力をするみたいな話はもう七年前から続けられておるのだけれども、今日の日本の金融のあり方、大体土地を担保にして金を貸す、こういうような仕組みである限り、政府の施策自体が自己資本比率をむしろ低めておるというようなことをやっておるのではないかという感じがするのであります。  だいぶ時間がなくなりましたので飛ばしまして、もう一つ具体的な問題に入ろうと思うのでありますが、今日の非常な物の値上がり、これは基本的にはいろいろな要因もあるだろうけれども、一番大きな問題は管理価格の問題、そしてまた最近はいわゆる大企業手元流動性といいますか資金を持ち過ぎておる、こういう問題、これが大きいのじゃないかと思うのであります。特に四十八年度の三月期の決算を見てまいりますと、全産業で前年同期に比べてみますとたいへんな売り上げ高増加、純利益の増加であります。売り上げ高が三〇・八%の増、営業利益が六二・三%の増、純利益が九〇・七%の増というまさに目をみはるような伸び率を示しておるわけであります。これでは幾ら金融で締めてみよう、こうおやりになってみても現実はなかなか締まっていない。それで締められるのは結局中小企業だけが締められてくるのではないか。私はこの国会の当初から、ことしは大企業流動性も手元というか資金がこれだけだぶついておるのだから法人税を引き上げるべきだ、特別措置をなくすべきだ、整理すべきだ、こう主張し続けてきたのでありますけれども、大臣、ここで増税というか法人税の問題、これは皆さん税調に云々、こうおっしゃるかもわからぬけれども、税調の会長もここで私の質問で、国会や大蔵省が主であってわれわれはその手伝いだと、こうおっしゃっておるのだし、私はやはり大臣としてのお考え、それをまずお伺いしたいと思うのです。
  140. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは少しその背景を含めた考え方を御説明しなければならないと思いますけれども、いま端的に物価のほうの点から議論にお入りになったわけでありますけれども財政計画のほうから申しますと、やはり物価の安定ということを十分念頭に置いて、そして財政政策をいまずっと考究中でございます。これは御意見と多少食い違うところがあるかもしれませんがお聞き取り願いたいと思いますけれども、私どもとしては四十九年度ということを頭に入れまして、四十九年度にはかねがね申し上げておりますような税制意欲的な改正をやりたい。これは法人税については税率においては四〇%ということを考えております。それでこれはもうぜひそういうことを中心にやっていきたいと思っておりますが、法人の関係についてはいまお話がございました特別措置の全面的洗い直し、これも同時にやります。それから多少こまかい関連したことになりますけれども、配当軽課あるいは受け取り配当の益金不算入といったようなことをどう扱うかというような点、それから地方税関係とでも申しましょうか、それらとの関連をどういうふうにするか、そして法人全体の税負担をどの程度に重課していくことがよろしいかということを焦点に検討いたしております。  反面におきまして四十九年度においては財政需要が非常に大きく相なります。すでに八月末に概算要求を締め切りましたが、これがすでに相当大きな額になっておりますけれども、今年度の状況を見てみましても、たとえば消費者米価を据え置かなければならないという政策を実行したこと、あるいは公務員の給与をかなり大幅に引き上げる人事院の勧告を完全実施するということ等々から申しまして、年度中にも相当の財政需要が広がる、こういったことを踏まえて考えてまいりますと、現在の税制をもしこのまま続けるとすれば来年度の税の増収というものは相当巨額なものになりますから、そういう観点から見ても所得税においてはどうしてもこれは還元しなければならない。これは政府としてもぜひ相当の大幅減税をやらなければならない責務を感じているわけでございます。  ですから、一面において財政需要は、当然増などは来年度においては二兆を相当こすぐらいのものになる、同時に税制が現在のままでいけば増収が非常に多くなるから所得税の大減税をやるということになれば、どうしても法人税には相当の重課をして、今度は、物価問題はもちろんでございますけれども財政計画というその方向から見ましても法人税の増徴ということは当然考えなければならない、こういうふうな考え方でございます。なおまた、公債の依存度というようなものもできるならばこれを下げる方向で来年度は考えてまいりたい、こうなってまいりますれば、法人税とかあるいはその他の間接税体系等についても、たとえば道路の特定財源の問題その他も合わせまして、いろいろの面でやはりふやすほうも考えてまいらなければならぬ、おおよその考え方はさように考えております。  で、年度内は増減税ともにやりませんが、これはいずれ年度の終わり近くなりましたら、いま申しました米価の関係、給与の関係等を含めて相当額の、まあ五千億は相当上回ると思いますけれども、補正を予算でやらなければならぬと思います。それに対する財源といたしましては現在の税収入でまかない得ると思いますが、さらに増収等の見込みを考えながら、あるいは年度内に公債の発行ということも財政法のたてまえからいってこれを削減するということも、そういう場合には一つの検討の対象になろう、こういうふうに考えております。
  141. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大臣相当広範にお話しいただいたのですが、法人税は大体四〇%に引き上げる。配当軽課、配当所得の優遇、この問題もお話しになったのでありますが、これはどうなんですか。経団連のほうでは相当強い抵抗を示しておるようでありますが、来年はこれはやはりおやりになる予定なんですか。
  142. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いまざっくばらんに申し上げましたように、これはわれわれとして検討の対象にいたしております。これは相当の反論もいまお話がありましたようにあり得る問題ではございましょうけれども、これはかねがね阿部さんの御所論でもございますが、法人企業のあり方、特に大企業のあり方、そしてまた財政上から申しましても相当の税収入を期待しなければならぬことでもございますから、法人税の問題については重課ということを頭に置いて建設的に検討いたす、こういうふうな基本的な考え方でございます。
  143. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 実際言って、たとえばこれは新日本製鉄ですけれども、これ一つとってみましてもたいへんな利益なんですよね。これを見て私がまあ結論から言うと、新日鉄の本来の利益は一千億なんです。ところが特別措置は洗いざらい使う、研究何とかの控除なんていうのはこの期でばっさりと全額落としてしまうみたいなことをして特別措置を手一ぱい広げたものだから税金は幾らも納めていない。それだから今度は、四十八年度上期の設備投資の資金九百五十億、これは銀行からびた一文借りないで自己資金でまかなうなんという見込である。鉄は最近笑いがとまらない。新聞で見れば、これは新聞の見出しでございますけれども、九月期の決算倍以上、圧縮にやっき。これはどうもわれわれ労働者の側から見たら、税金を納めないように圧縮でやっきになっておるなんという話を聞いたら、これは変な考えになるのじゃないかと思うのですね。それぐらい大きな利益をあげておる。そうして手元の流動性は高まっておる。これだけ大きな設備投資に銀行さんのお世話にならぬでもいいのですから、これはたいへんなことですよ。そういうときに金融引き締めるのだ、こうおっしゃってみたって、大企業は、日銀の総裁じゃないけれども、腰のまわりがあんまり太っちまってまわりに手が届かぬから締めようがないと、こうおっしゃったのだけれども、まさにそのとおりになっているのじゃないですか。  だから、やはり大きな利益をあげたところから、法人税の引き上げによってこれは吸収する以外道はなかったのじゃないか。私はそれが一番端的なあり方だと思うのですが、大臣は先ほど、今年度中はやらないで来年はひとつ抜本的な改正をすると、こうおっしゃったけれども、法人税だけは特に年度内で増税をするという腹を固めなければ、大臣、先ほど来私と論議した物価問題もこれは一向におさまらないのではないだろうか。ほんとうはことし法人税の引き上げをやるべきだった。それを手を抜いちまったというのが、今日いろいろな点で皆さんの政策がうまくいかない一番のもとをつくったので、もうこの辺で法人税の引き上げをおやりになれば、臨時国会であろうと、自民党の先生方が賛成してくれれば、われわれ一日でもって法案を通しますが、大臣、年度内に法人税の引き上げをおやりになる決意はございませんか。これをやらない限り、いまの皆さんの経済政策は、物価問題等とからめて、設備投資の過剰問題は解決しないと私は思うのですが、どうですか。
  144. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私も率直に申し上げるのですけれども、そういう御意見も傾聴に値します。検討もいたしました。同時に、反面においては自然増収等も相当あるようだから、これまた別の意味から所得税の減税は年度内にせよという声も相当強くあるわけでございますが、結論として政府の考え方、私の考え方としては、増減税は来年度において十分考え意欲的なものを提出して、四月から実行することにさせていただきたいというのが今日の結論でございます。
  145. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 来年はおやりになるというのは前からのお話でわかっておるのでありますけれども、私は繰り返すようだけれども、ことしこれをおやりにならぬと、いまの過熱状態はなかなかおさまらぬと思うのです。それは皆さんのいままでの金融政策を見てまいりましても、EC諸国では大体日本よりも半年くらい前から金利の引き上げをやっておるのですね。ところが日本の場合には金利の引き上げをやったのが、三月二日に準備率の引き上げ、三月三十一日に公定歩合引き上げをまずきめた。しかしその時点では、大企業はたいへんな金融の道をつけてしまった。また時価発行の問題だとかいろいろな問題でいわゆる手元の流動性といいますか、手持ち資金を持ったということは、この国会でも幾たびか論議をされてきたところなんです。そういう問題がみんな手おくれになってしまって、片っ方では、大きなところはみんな持ってしまった。それから金融引き締めに入ってみたって、それはもう手おくれなんですよ。  それで、いま法人税の引き上げをやるのか、来年の四月からこれを引き上げるのかということは、これからの半年間というものがまた手おくれになることは明瞭なんでして、大臣、私はここであなたからうまい御答弁をいただこうなんて思っておりませんけれども、しかしこの法人税引き上げの問題は、やはりいまの時点で最も重大な対策として考えるべきではないか、検討すべき問題だ、私はこう思うのですが、たいへんしつこいようですが、もう一度御答弁願いたい。
  146. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど申しましたように、その御意見一つのりっぱな見識のある御意見だと思います。そして私どもも検討いたしまして、結論としてこれは来年度に実行いたしたい、こういう結論をいたしたわけでございます。  それから金利の問題もお述べになりましたけれども、私はそれはこう考えるわけで、やはり総合的、国際的にもいろいろの要素を考えて日本としてとった措置は現状のような措置であって、金利というものは高いほうがいいというものではないと思います。現在日本の公定歩合が七%になったわけでございますが、一%引き上げることについては、それなりに政府としてもずいぶんこれは検討した結果である。現状は確かに主要国よりは低いわけですが、むしろこれが日本としての選択としては適当であったと思います。  中には、外国側から見ても、日本がこの程度で、しかも総合対策を進めることについては、逆に評価を受けているような点もございます。やはりいろいろの点を総合いたしながら適切と思うことをやります場合に、ある意味では手おくれだという御批評もございましょうが、しかし今回の場合でも、このごろは引き締めが行き過ぎているのではないか、オーバーキルはどうするのだ、こういうことが逆に出てくるくらいでございまして、いろいろの角度から御批判をいただきながら適切な措置をとりかつ実行するということには、それなりの政府といたしましても相当の配慮をいたしておることは御理解願えることかと思っておるわけであります。
  147. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 もうやめますけれども、大臣、私はどうもまだ納得しないけれども、来年は消費者米価も上げるのでしょうし、いまのようないろいろな公共料金を上げる。皆さんがほんとうに努力をするというならば、たしか一番物価の上がったときでありますが、公共料金を全面的に値上げをストップしたことがある。まあ伝家の宝刀だ、こう言われるのでありますけれども、それくらいのことを思い切ってやらないと、私はほんとうに消費者物価はどうしようもないところへいくと思うのですよ。そういう点でどうなんです、来年はやはり消費者米価はお上げになるのでしょう。
  148. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 政府としては来年の三月までは消費者米価を上げないということをきめたわけでございまして、それをもとにして今後の財政計画あるいは補正予算等の御審議を願う段階であって、まだその先のことについてまでどうしたならばいいかというようなことについて考えを固めておる段階ではございません。
  149. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 終わります。
  150. 鴨田宗一

    ○鴨田委員長 増本君。
  151. 増本一彦

    増本委員 八月の二十九日の本委員会で、大臣とそれから経済企画庁の小島局長から、関西電力、四国電力、大阪瓦斯のそれぞれの料金の値上げの問題については白紙であるというようなお話があったわけですが、議会で白紙だと言っていながら、本日、物価対策閣僚協議会で決定をする。これは私は国会軽視もはなはだしいやり方だと思うし、全く不当な公共料金の値上げであるというようにいわざるを得ないのですが、この点について、まず大臣と局長から釈明を得たいと思うのです。
  152. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私は、関電、大阪瓦斯の料金値上げで本委員会で御答弁したことがございましょうか、八月何日かで。——それはともかくといたしまして、その当時においていかようにするかということは、当時政府がまだきめていなかったことは事実で、白紙であったわけでございます。  それから、公共料金の一つでは確かにございますけれども、民営の企業であるというようなことから、それぞれ担当の所管の省が、十分現下の経済情勢、会社の経理の内容等を検討を詳細にいたしまして、長い時間をかけて、それぞれ担当の省からこういうふうな結論にしたい、経済企画庁から総まとめで提案がありまして、これを了承をいたしましたのは今朝でございます。  そして申請の内容に比べては、平均の値上げ幅もずいぶん査定されておりますし、それから今日の特に家庭生活等の状況にかんがみまして、特殊のきめこまかい配慮等もいたしてありますので、私どもとして了承をいたした次第でございます。
  153. 小島英敏

    ○小島政府委員 ただいま大蔵大臣から御答弁になりましたとおりでございまして、私どもといたしましても、公共料金は、こういう物価の情勢でございますから、極力抑制的に取り扱うという方針に変わりはないわけでございますけれども、公共料金にも二種類ございまして、民営の企業で料金が政府の認可にかかっているというものにつきましては、やはり経営責任の問題もあり、通産省が十分査定をいたしまして相談に参りましたわけでございますので、物価情勢からまいりますと決していいこととは思わないのでありますけれども、やむを得ないということで、本日閣僚協議会で御決定いただいたわけでございます。
  154. 増本一彦

    増本委員 その場その場の場当たりの答弁をそのときにはされて、そして国会に対してはそういう答弁をしながら、何の釈明もしないで値上げをしてしまう。局長自身も八月二十九日のこの委員会で「政府としては現在全く白紙でございます」、こうおっしゃっているのですよ。大臣も、それを受けて、「現在ペンディングになっておる関電の料金の問題とかあるいは大阪瓦斯の問題とかいうものを含めまして、先ほど企画庁当局は現在白紙であると答弁しておりましたけれども、真剣にこれらの対処策をさらに検討いたしたいと考えております。」結局、物価一つの焦点になって、その問題で本委員会で白紙だというようなことを答弁し、抑制策を検討するということをおっしゃっておりながら、それについて何らあとの委員会で釈明もなさらない。私は、こういうやり方というのは、これでは物価問題について政府と国会が一体になって、ともかく下げていくためによりよい策を検討していこうという点からいったって、道にはずれたやり方だというようにいわざるを得ないと思うのです。  こういう問題について少なくとも国会で一定の方向で答弁をされた以上、その値上げ等の結論を出す前に、委員会等にきちんと報告をし、釈明をした上で、さらに意見を聞くというようなシステムをとるべきではないかというように思いますが、その点、大臣いかがですか。
  155. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 その当時は、結論が出ないから白紙なのであって、そして検討するということを申し上げておるわけでございます。検討をした結果、先ほど申し上げましたように、政府としての責任の問題でございますから、認可にかかっていることについては、所管の通産省が認可をするということを了承したわけでございまして、これはあるいは政治的なあれではないというおしかりを受けるかもしれませんけれども、これは政府の責任で処理すべきことである、そしてただいま御質疑がございましたから、その状況をそのまま御報告を申し上げているわけでございますから、その点は御了承をいただきたいと思います。  国鉄料金等でございますれば、これは国会の御審議をいただき、そして議決をしなければできないわけですが、一方において行政的に政府の責任になっておりますものについては、政府が諸般の状況の上に立って判定をいたしまして、責任をもって決定をする、そしてかくかくにいたしましたということを御説明をするということが、私は制度的に見て適切なやり方ではないかと思います。
  156. 増本一彦

    増本委員 結論が出ていなかったから白紙だ、だからそういう答弁をした。これは国会を愚弄するものではありませんか。
  157. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 白紙だから白紙だと言っているのです。
  158. 増本一彦

    増本委員 それはへ理屈ですよ。最後の、私が伺った、政府において一定の方向なり見解をこういう問題で出されたあと、結論に到達したときには、その関係委員会に釈明をして、さらに質疑意見を問うというような政府の態度、こういうことに変えていくというお気持ちはどうでしょう。
  159. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 あらゆる公共料金はすべて国会の議決ということになりますれば、そういう制度のもとにおいてやらなければならないと思いますけれども、ただいま問題になっておりますものは、政府の責任なんですから、政府の責任を持った処理をいたしましたことをそのまま申し上げているわけでございすから、そのやり方がいかぬということでございますれば、今後の問題として、ひとつ国会であらためて御論議をいただきまして、そしてそれが国会の議決になるということであれば、政府はそれに従わざるを得ない、こういうふうに考えるわけでございます。
  160. 増本一彦

    増本委員 私どもは、こういう公共料金についてはすべからく国会の議決によって決定すべきである、こういうように制度の改善をはかるべきだというように主張しているのですが、こういう点で政府もひとつ前向きで検討していただきたいというように思います。  新聞等によりますと、あとあと北海道、北陸、東北、中部電力など追随的な値上げ申請が出ることが予想されるというようなこともいわれているのですが、そういう点について局長、最近の公共料金の値上げ等の情勢はどうなっているのでしょうか。
  161. 小島英敏

    ○小島政府委員 最近燃料費が、石油が上がるというようなことからコストが上昇しているという話は間接的に聞いておりますけれども、具体的にどこの会社がどういう動きであるかということは通産省のほうでフォローしているかと思いますけれども、私どものほうでは現在関知していないわけでございます。
  162. 増本一彦

    増本委員 いま食料品も非常に上がってきている。それできょうは特に輸入の食肉類あるいは魚介類等の問題についてお伺いをしたいのです。関税局長にお伺いしますけれども、私が東京税関、横浜税関等の関係の人たちから伺っても、保税上屋と指定をされている冷蔵倉庫に大量の食肉や魚介類、また野菜、果実等がある。この搬入、搬出の状況を見ましても、非常に在庫が変わらない。かなりの在庫がある。いただいた資料を見ましても、東京税関の場合、七月で肉類が七万トン以上、魚介類が同じ七月で五万三千トン、野菜、果実等で七千八百トン、これは六月、前月の時点ともそうたいして変わらない。このうち未通関のものはかなり少なくて、通関手続の終わったものが相当そのまま保税上屋に退蔵されている。大体こういう状況ではないかというように思うのです。そうなると、関税法の七十九条で、保税上屋の場合に一カ月の蔵置期間ということになっている。それを行政指導等で三カ月まではよいということにきめているのだそうですが、こういうことのために供給不足を生み出し、こういうととも食料品、特に食肉関係の値上がりを促進している一つ原因になっているのではないかというように考えるのですけれども、現状から見た実際の状態はどういうように判断されておられるか、ひとつ御意見を伺いたい。
  163. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 ただいまの御指摘のように、最近におきます東京税関、横浜税関におきますいまの魚介類あるいは肉類等の搬入、搬出の状況等に関しましては、現在の肉類その他の物価状況その他を勘案をいたしまして——実はかかる種類の資料は今日までつくっておらなかったわけでございます。と申しますのは、保税上屋あるいは保税倉庫と申しますのは自主管理制度になっておりまして、それぞれの倉庫でやっている。したがいまして、税関のほうといたしましては、この調査に関しましては相当の手数と時間を要する関係上、やっておらなかったわけでございますが、最近の状況にかんがみましてこういう調査をいたしまして、それに基づきましてできるだけ早くその倉庫から通関が終わったものの魚介あるいは肉類は搬出が行なわれるように、実は各種の会合におきまして行政指導を行なっておるわけでございます。たとえば通関関連行政連絡協議会であるとか、いろいろな種類の協議会がございまして、それらの会合に税関のほうで出かけてまいりまして、そういうような関係の人たちに協力を求めておるわけでございます。  これが通関以前の状況でございますと、税関の通関手続がおくれているとか何とかいうようなために倉庫に滞貨がとどまっておりますれば、これは税関といたしまして非常に大きな責任もございますので、現在調べてみましたところ、大体通関には平均いたしまして輸入申告が行なわれました後、一日、一・二一日くらいで通関が終了し、税関の立場といたしましては通関が終わりましたもののあとのフォローアップと申しますと、権限上、税関にはその権限がないわけでございます。したがいまして、こういったように倉庫の中に退蔵されておりますものに関しましてはできるだけ早くこれが消費市場に放出されることが望ましい、かように考えておるわけでございまして、今後といえどもこれらの品物ができるだけ早く回転をいたしますように、私どもとしましては税関としてできる範囲におきまして行政指導を行なっていきたい、かように考えておるわけでございます。
  164. 増本一彦

    増本委員 現在輸入量が増大した。職員が不足している。いろいろな事情からこういう保税上屋の場合には大部分を自主管理にしている。これはそれぞれの倉庫業者が結局自主的に記帳をして、ほとんど税関はタッチしない、こういうことですね。  そうすると、保税上屋にどのくらい蔵置されていたのか、蔵置期間がどのくらいだったのかということは、税関当局としてはほとんどつかめないという現状にありますね。その点はそういう実態なんですか。
  165. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 自主管理を認めておりますところの保税倉庫、保税上屋は、現在のところ全体の保税上屋や保税倉庫の約九三ないし九四%が御指摘のように自主管理が適用されておりますが、この自主管理の適用されておりますところの倉庫に対しましては、大体現実問題といたしまして半年に一回以上は少なくともこの倉庫におもむきまして、義務づけられておりますところの帳簿等を検査いたしまして、蔵置の現状というものを把握をいたすことになっております。したがいまして、大体どの程度保税上屋あるいは保税倉庫に蔵置をされているかということはマクロ的にはつかんでおるわけでございまして、保税上屋に置かれまして一カ月以上こえるものに対して税関に対して報告の聴取をいたしておるわけでございます。したがいまして、現状大体外国の貨物が保税上屋ないし保税倉庫にとどまっておりますものは、外国から入ってまいりますものの約七〇%は一カ月未満にこれが出ていくという状態になっているわけでございます。
  166. 増本一彦

    増本委員 いまの局長のお話は、結局七〇%くらいは通関手続が終わって内貨になるけれども、実質的にはその倉庫にそのまま滞留しているんじゃないですか。
  167. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 通関が終わりまして、いわゆる内国貨物に転じましたもののうち約五〇%は保税上屋の場合その倉庫にございます。それから保税倉庫の場合には約八七%が六カ月未満でございまして、六カ月をこえるものは約一三%にとどまっているということでございます。
  168. 増本一彦

    増本委員 保税上屋として指定すれば、そこはやはり外国貨物優先ということがたてまえだと思うのですね。今日のように一定のものが内国貨物に変わっても滞留しているということが市場の供給を圧迫している要因になるのではないか。関税法では、蔵置期間を超過した場合には収容や公売ができるというようになっていますが、こういう冷凍食肉あるいはチルドの牛肉等について収容、公売ということを技術的にはいろいろ検討の要があると思うのですが、いまのように食料の問題で、食料品について消費者物価も非常に上がってきているというような状況のもとでは、やはりこの辺についてのもっときびしい行政指導というものを徹底すべきではないかというように考えますが、いかがですか。
  169. 大蔵公雄

    大蔵政府委員 先生指摘の関税法第七十九条の貨物の収容という項で、税関が要するに貨物を収容することができますのは、「保税地域の利用についてその障害を除き、又は関税の徴収を確保するため、」という法律上の前提条件が付されておりますので、いわゆる物価対策のためにこれを収容するということは現在の法制上は読み取ることができないと思います。したがいまして、現行法上税関が物価対策のために収容をいたすということはできないかと思いますが、ただ先ほど申し上げましたように、現在の食料事情あるいは物価対策上の観点で、税関といたしまして、できる限りのことはしたいということで、各種のいわゆる連絡協議会その他の場を通じまして、できるだけ早くこれを搬出し、処理するように行政指導をして、今後もこれは相当強力に推し進めたい、税関としては力を入れてやってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  170. 増本一彦

    増本委員 いま製品在庫はいろいろ減っているけれども、流通在庫が非常にふえてきている、これも非常に物価上昇原因として警戒すべきであるということは局長も前回の委員会で言われたし、そういうこととの関連で、こういう保税上屋がそのまま流通に出る以前の状態として内国貨物になっているのに利用されているという実態ですね、ここについて、やはり物価対策等の観点から私はもっと強力な行政指導というものをすべきだと思うのですね。  一つは、フローズンの豚肉等は加工をしないとできないけれども、チルドの牛肉その他のすぐに消費者の手に渡って食用に供せられるもの、こういうものについては、少なくともそれぞれのこうした冷凍倉庫いわゆる保税上屋における在庫の実数を正確に把握して、そして農林省その他の所管とも協議して、必要な場合にはそうした実数について公表をするというようなことまで含めて、物価上昇を鎮静していく上で多角的な手だてをとるべきではないかというように考えるのですが、そういう方策でぜひ臨んでもらいたいし、その辺について、局長よりも大臣のほうが適当だと思いますので、ひとつ大臣の見解を伺いたいと思います。
  171. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 局長からもるる御説明申し上げましたように、現在の制度として、通関をする手続のところまでが税関長の権限でありまして、それから先はなかなか自由裁量といいますか、そういう余地がないように私は思います。御質問の御趣旨、前もって私承知しましたので、多少検討いたさせましたが、現在のところはなかなかむずかしい、しかしお話の筋はよく理解できますから、今後の検討にまちたいと思います。  なお、よけいなことを申し上げて恐縮なんですけれども、確かに畜産物、ことに牛肉、豚肉等については、冷蔵というよりも冷凍が非常に望まれているわけで、そういう施設の大々的の拡充ということについては、実は本年度の予算の上でも国の助成すべき点などについては配慮をある程度してあるわけでございますけれども、現実になかなかそういう考え方が思うように施設としてまだ及んでいないところもあるようでございますから、そういう点については関係省等あるいは地方公共団体等の協力を得まして、ぜひ進めていくべきである、こういうふうに考えております。それらと合わせまして、ひとつ検討いたしたいと思います。
  172. 増本一彦

    増本委員 それから輸入牛肉の場合、現地での買い入れ価格、これは七月の農林省の調査を見ますと、キロ六百四十五円になります。ところが国内に入ってきて卸売り価格が、ロースで千四百円、中で千二百円、小売り価格になると、ロースが千八百円から二千円、中どころで千六百円。卸売り価格を見ましてもロースの場合だと二・一七倍、中どころで一・八七倍、消費者価格になると、ロースの場合でかりに千八百円から二千円の中間をとって千九百円としても二・九五倍、ほぼ三倍近い、中どころで二・四八倍というように小売り価格が非常に上がるわけですね。  ここいらの流通の仕組みですが、この辺について、これは所管は別になるでしょうけれども、消費者価格をほんとうに安定させていく、引き下げていくということの立場からすると、徹底的な追跡調査とこうした中間でのマージンの問題等についての規制もきびしくやるべきだというように思うのですが、これは方向として、物価局長のほうからお答えいただきたいと思います。
  173. 小島英敏

    ○小島政府委員 おっしゃるように、一般にこの流通機構の問題というのが非常に大きな物価対策上の問題でございますけれども、輸入品につきましても、特にいろいろ問題が大きいのではないかということで、四月の閣僚協議会で御決定いただきまして、現在企画庁も含めまして、大蔵、通産、農林各省共同で、三十一品目について追跡調査をいたしております。その中の二十品目が食料品でございまして、これは大体先月末から現在にかけて、最終的な取りまとめをやりつつございますので、近いうちに結果を公表できると思います。
  174. 増本一彦

    増本委員 調査の現状の段階で、なぜこんなに小売り価格が輸入価格と比べて大きくなっているのか、そこらのところはどうなんですか。
  175. 小島英敏

    ○小島政府委員 おそらく品目によっていろいろな事情があると思いますけれども、先ほど申し上げましたように、現在取りまとめ中でございまして、私、まだ内容について承知しておりませんので、近いうちにその辺のお話もできるというように思っております。
  176. 増本一彦

    増本委員 消費者物価について、国民が非常な関心を持っている、だけれども政府のほうはまだ調査の作業中である、これではやはり国民が期待するように手を先へ先へと打っていくというようなことはできないわけで、ひとつ早急に結論を出し、正しい手を、急所にきちっと行くような手を打ってもらいたいというように思います。  次に、土地問題について、これは主として大臣にお伺いしたいのですが、日銀は、十月から十二月についての貸し出しの規制で、都市銀行などに対して、前年同期比で四一%減ですか、を指示しているというようなことが報じられ、午前中の委員会でも日銀参考人から若干触れられましたけれども、いまそういうように金融問題がきびしくなると、一そう担保物件、中でも土地を持っている者が、きびしい条件の中でも金を借りやすい、しかし、担保物件を持っていない者に対してはなかなかそういうぐあいにいかないというような状態も、一そうきびしい形で出てくるわけです。  そこで、やはりいまの総需要抑制していくという上からいっても、大企業に対する融資の抑制の実行手段としては、やはり地価を凍結したり、土地取引の許可制を採用したり、新規買い入れの禁止とか、あるいはいままで大企業が買い占めて持ってきた土地、これは簿価と実際の価格を見ると、相当な開きがある、含み資産になっている。これは大企業に資本力を強烈なまでにつけているというような問題もあるわけでして、こうした含み資産の吸収などの抜本的な地価対策を同時に打っていかなければだめなのではないかというように考えるわけです。  そこで、ともかく今日の物価上昇に大きな拍車をかけた原因に、この地価の急上昇という問題があるわけですが、この土地問題の、特に地価対策の解決策をいまのこういう時点でどういうように大臣はお考えになっておられるのか、その点をまず明確にしていただきたいと思います。
  177. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 地価対策については、いままでもさんざん論議があったところですから詳しくは申し上げませんけれども、私は、特に大蔵省の関係の仕事としては、土地関連融資のきびしい規制とか、あるいは税制の上の新しいくふうとか、そういうことですでに相当の効果が出てきているように見受けますが、これが指数あるいは計数的な指標の上になかなかあらわれるものでないだけに、一体どの程度の効果が上がったかということについては、的確に御説明することはむずかしいように思います。  ただ、土地問題については、そうした金融とか税制とかの問題だけで十全を期し得られないということは、もうこの土地問題が起こりましてから、政府で土地総合対策がつくられたときも指摘いたしまして、総合対策を要請してまいったわけですが、土地利用計画から始まって、その処分方法等について、たとえば国土総合開発法等においても、政府においても相当の考え方は展開しているわけでございますので、こうした法制上の整備等ができますと、なお一そう効果が促進されるだろうと思います。  それから、お話の中の地価の凍結あるいはもっとずばりの売買の制限、それから含み資産を計算してこれを吸収するというようなことは、率直に言って考え方として成り立たないことはないと思いますけれども、これが技術的、実際的にはたして適正に実行できるものであろうかということについては、私は率直に言って疑問を持っております。しかし、土地対策については、なお一そうの努力をいたさなければならぬわけでございましょうから、そういったようなことも、ひとつ関係省庁との間でも、今後ともいろいろ検討の課題としてはまいりたいと思います。  私は、こういう機会にお願いするのもいかがかと思いますけれども、すでに政府として御審議をお願いしてあるような件についても、不十分、不満足な点もございましょうけれども一つずつどんどん実行に移していけるように、この上とも各方面の御協力をいただきたいものである、かように考えておる次第であります。
  178. 増本一彦

    増本委員 現在銀行の貸し出しのうち、土地を担保とする貸し出しというのは、件数でいっても三〇%ですか、金額からいくと相当膨大ですね。ますます金詰まりになってくれば、担保力を持っている者は必然的に優先的に借りられるというような面は、これはどうしても出てくるわけでして、ここらのところの問題もやはり根本的にメスを入れていくということをしないと、インフレによって実質的にふくらんでいるものをしぼませる対策も、具体的にこうした問題から私はとっていかなければならぬというように思うわけです。決して私は大臣の答弁に満足はしていません。しかし時間がありませんので、次に移らせていただきたいのです。  今回の物価上昇の非常に大きな原因は、日銀報告などによりますと、四割ぐらいが海外の価格の上昇が現在の物価の寄与率になっておるというぐらいにいわれていて、大臣も前回の委員会でそういう中で第一次産品、農産物の価格の上昇が非常に深刻な問題である、こう言われたわけですね。そこで、農産物についてはやはり自給体制を促進していくということが非常に重要だと思うのです。そういう意味で耕地面積を大幅にふやしていくために国有財産のうち農業用の適地として適当なものはやはり農民に開放していくというようなことも具体的に検討をなさるべきではないかというように考えるのですが、この辺の方向はいかがなんでしょうか。
  179. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 実は従来からそういう方向で考えておったわけでございまして、国有地の中の農地に適するところについては農林省に所管がえをする、そうして農地法によって農民に処分するという扱いをしてまいりました。ところが、今後一部の大規模な返還財産でもあれば格別でございますけれども一般的に普通財産が非常に少なくなってきている。ですから、従来からの考え方を続けて、もちろん残ったところについてもやってまいりますけれども、あまり大きな期待をかけることはどうであろうか。数字的な資料をちょっとここに持ち合わせておりませんけれども、大勢としてはそういう状況になっておるということを御理解いただきたいと思います。
  180. 増本一彦

    増本委員 これまでの実績については後ほど私のほうへ資料をいただけるようにひとつ御配慮ください。
  181. 井上幸夫

    ○井上政府委員 ただいま資料を持っております。先生指摘のように、国有地のうち農用地として適するものはただいま大臣から御説明いたしましたように、自作農創設特別会計に所管がえをいたしまして、農地として使用するということになっております。実績を申し上げますと、四十三年度におきましては九千七百十五万平米というものを農林省に所管がえをいたしました。しかしその後逐年減ってまいりまして、四十七年度には一千七十六万平米まで実績が落ちてまいりました。これがただいまの状況でございます。
  182. 増本一彦

    増本委員 どこの土地をどれだけ所管がえなすったか、あとで詳しい資料ありましたらひとついただきたいのですが……。  時間がありませんので、次に移ります。  土地問題に関連して、前年と比べて今年度は政府の建てる公的住宅の建設の戸数も減った。地方自治体のほうも、たとえば私の住んでいる神奈川県の場合ですと、住宅供給公社を含めましても県の一般会計等を含めても実際には土地が高くてその執行率は現在八%というような非常に深刻な状態なんですね。  一つはここで住宅公団への政府の出資金が押えられているという問題があるわけでして、この政府出資の増加を、これは来年度予算との関連でぜひ検討をなさるべきではないか。  もう一つは地方自治体の公的住宅の建設についての補助金の単価計算を引き上げて、地方自治体の超過負担の解消を積極的にはかるべきではないかというように考えますが、この点についての大臣の見解をいただきたいと思います。
  183. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 確かにこの点は私も憂えをともにするのですけれども、金だけの問題では実はございませんで、やはり土地問題、それから地元のいろいろの面での御協力も必要なわけでありますけれども、仕事の進捗率が相当低下の状況にありますことは、ただ単に出資額を増加するということだけでは解決できない。大切なお金を財政計画で配分いたします場合には、むしろほかの方法を考えたらいいのではないかとさえ考えておるわけでございますが、しかし基本は土地の問題でありますから、それらの点については地方公共団体の関係のいま御指摘の超過負担等の解消ということとも考え合わせまして、四十九年度におきまして予算の編成にあたって十分ひとつ洗い直し、考え直していきたい、かように考えております。
  184. 増本一彦

    増本委員 実は私は先週の日曜日の夜の十一時に大臣が出たお茶の間エコノミーというのをテレビで見たのです。大臣も住宅ローンなどの問題に触れて、幾らそういう金融の面でやっても求めるべき土地が非常に高くなっているのでなかなか求められないということを率直に言っておられたですね。ですから先ほど地価対策をもっと抜本的にやらなければだめだということも含めて大臣の所見を伺ったのですが、あまり明確にお答えにならない。この点はひとつ前向きにもっと積極的に、抜本的な対策というものを検討をさるべきだというように私は思います。  あと短時間しかありませんので、最後に前回の委員会で生活保護費の改定の問題は、大臣は頭の中に入れてそして検討をしていくというお話をされました。低所得者の生活をいまの物価高の中で防衛するという上で非常に緊急な問題だと思うのですが、いま私どもも労働省などと交渉をしたりお願いをしているのですが、失業対策事業で働く労働者の賃金の問題、これもぜひとも引き上げをはかるべきである。いま非常に深刻な状態に置かれていることは大臣もよく御承知だと思うのです。  今年度は標準の失対賃金が三万一千九百十八円、前年比で一三・二%のアップなんですね。ところが一般の労働者の賃金は一五%以上上がっているし、特に人事院の標準生計費でいっても一五・六%ぐらいアップになっている。失対事業で働く人たちも、やはり憲法でいう健康で文化的な最低限度の生活を保障しなければならない。そういう立場から、ひとつ積極的に引き上げについて労働省などの意向を勘案して、財政的な措置をとられるように強く要求をしたいのですが、いかがでしょうか。
  185. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず、ちょっとお答え残りになりましたが、土地の問題については、私は地方公共団体等にも協力をお願いして、やはり先行土地取得をやっていくことが何より緊急の問題ではないかと思います、ことに住宅については。そこで、やはり所要の資金等についてはいろいろくふうの余地があると私は思っております。その中では、たとえば地方債の消化の問題や超過資金の問題、それから利子補給の問題、こういう点私も積極的に考えておりますので、ひとつぜひ前向きに実行するように心がけていきたいと思っております。  それから、生活保護費の問題は、この前、頭の中に入れてとお答えいたしましたが、頭の中ではなくて、少し手を出して具体化にとりかかりつつあります。厚生省と十分御相談をしております。  それから失対の問題でございますが、これはいまさら申し上げるまでもございませんが、失業対策事業賃金審議会というものがございまして、あの審議会で、よるべき基準、つまり他の類似の仕事に従事している人たちの賃金というふうな指標に基づいて御意見をまとめていただくわけでございますが、その審議会の御意見に沿いまして前向きに考えてまいります。
  186. 増本一彦

    増本委員 八月に屋外の労働者の賃金の実態調査を労働省でされ、結論が出るのが十一月だ。そして審議会にはかって、いわば目安が出るのが、そうすると十二月になる。それがいつも翌年度の四月以降の賃金に反映されるということで、八カ月も非常なタイムラグをしょって、実際からいっても非常な苦しい生活、低賃金をしいられているわけですから、いまの物価上昇の実態を見れば、これはもう政治的な姿勢とか政治的な判断として、やはり年度内に引き上げをはかり、こうした人たちの生活をほんとうに守っていくという立場で、前向きに、ひとつ積極的な手だてをとっていただきたいというふうに、これは強く要求しておきたいと思いますが、私の持ち時間がきましたので、これで終わります。
  187. 鴨田宗一

    ○鴨田委員長 次回は、来たる二十六日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十四分散会