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佐々木参考人 ただいま御指摘がございましたように、四回にわたって
公定歩合の
引き上げを実行いたしました。その
引き上げ幅も二・七五%、戦後における
金融の
引き締めにあたって、これほど大幅な
公定歩合の
引き上げを実行いたしたことはございません。
こういうような激しい
金融引き締めを必要とした環境、その点につきましては、世界
経済の中で
日本経済というものが非常に強い上昇
傾向を続けてまいり、その中で
物価の上昇が非常に大きく目立ったということが、何と申しましても、この
引き締めを必要とした最大の原因でございます。
いまさら申し上げるまでもなく、
日本の
卸売り物価は、世界でも非常に安定した姿を示しておりました。それが昨年の夏以来急速に上昇してまいりました。この原因につきましては、
国内の要因と海外の要因と両方ございます。
国内の要因は、しばらく停滞を続けておりました
日本の
経済が上昇に転じてきたということで、いままで不活発であった総
需要が増加してきたということがきっかけになっております。
たまたまそれと時期を同じゅうして、海外における
物価の上昇が始まってきた。特に農産物を
中心とした第一次産品の価格の上昇が目立っておるわけであります。
日本のように原材料の大部分を海外に仰いでおります国柄といたしましては、こういう海外における原材料の価格の上昇は、
国内物価に非常に強い
影響を持つわけでございます。
こういう中で、ことしの一月から、
預金準備率の
引き上げをはじめといたしまして、
金融の
引き締めをやってまいりました。こういう
金融の
引き締めを実行いたしました最初のところでは、実はまだ
日本の
国際収支が
相当大幅な
黒字を示しておりまして、円が再び高くなってくる
状態から、
国内における
金融引き締めの程度をあまり強くできない
感じがございました。それがまず最初に
預金準備率からスタートしたわけでございまして、また今度は、流動性がわりあいに市中に高かったということから、量的な規制から始めるほうがいいという判断もあったわけでございます。
ところが、二月、三月にわたりました為替
調整が
日本の
経済に及ぼします
影響、私
どもはもう少し
抑制的な、鎮圧的な
影響があるのではないかと思っておりましたけれ
ども、
日本経済の上昇の力が非常に強くて、この為替変動というものをほとんど問題もせずに乗り切った関係もございました。したがって、その後において四月から
公定歩合を
引き上げた、こういうことでございます。
そういうような環境の中での
金融引き締めというものは、戦後の
金融引き締めの歴史の中で環境としては初めてのことであったと思います。したがって、
金融引き締めの及ぼします
効果は必ずしもはっきり著しいものがございませんでした。戦後における
日本の
経済は非常にオーバーローンの
状況でございましたので、
金融引き締めの
効果というものはわりあいに強く出ておったのでございますが、今度の非常に多量の
ドルの流入後における、また景気がよくなってまいりました後における企業の手元というものは非常に熱くなっておりまして、
金融引き締めの
効果がなかなか出にくかった
状況がございます。それに
先ほど申しました
国際的な関係がありまして、
金融引き締めの
効果というものがなかなか出にくい
状態で今日まできたのでございます。
しかしながら、すでに最初の準備率
引き上げ以後日がたっておりますので、
金融面では
相当な
効果が出てきております。たとえば市中
金融機関の貸し出しの増勢はだんだん低くなってきております。それから、何と申しましても企業の手元流動性も下がってきております。それからまたマネーサプライ、要するに資金の
供給の数字もやはりやや鈍くなってきた。それからまた、ごく最近実施いたしました私
どものほうの
調査によりますと、企業も設備投資の予定を多少削っている
感じが出てきておるのでございます。しかしながら、これが総体の
経済の動き、特に企業の投資態度にはっきり
影響が出たというふうには申すことはできない。総
需要もまだ依然として強いということから、今度の第四回目の
公定歩合の
引き上げということを実行したわけでございます。
私
どもはもちろん、今後の推移いかんによりまして、
金融政策というものは弾力的にやっていかなければならないとは思っておりますけれ
ども、しかし今度の
措置は
金融引き締めの
相当徹底し得る
措置である、こういうふうに思っておりますので、その
効果が近く出てくるのではないかということを強く期待し、それがまた
日本の
物価上昇に対してもいい
影響が出てくるだろうと考えておる次第でございます。