○愛知国務大臣 まず第一に、
預金準備率引き上げをやったらよかったのではないかということですが、これもやはり
引き締めの有力なる手段なのであります。あの当時としては、従来のずっと長い
政策のパターンや
状況を見ていただくと、従来的には、
引き締めれば必ず外にあふれていくわけです。つまり
輸出のほうにドライブがかかっていくわけですから、あの当時の与件のもとにおきましては、そういったような点からいっても
引き締めはできなかったろうと私は思います。
それから第二の点は、よく提案される問題でございますが、私はこの機会にこういうことを申し上げてみたいと思うのです。
民間の
設備投資というものと、
財政主導型に転換はしておりますけれ
ども、全体の
状況というものはどういうふうになっているか。たとえばGNPにおける重要項目としてのウエートを見ますと、
政府の固定資本の形成というのが一〇・八%それから民間の
設備投資は一七・一%、もうすでにここで相当大きな民間の
設備投資というものの大きさがあるわけです。
それから、今日
経済見通しについてもいろいろの御批判をいただいて恐縮しているわけでございますけれ
ども、成長率は見通しを相当上回る
状況にございます。ところがその原因というものは、民間の
設備投資が一四%と見通されていたものがそれをはるかにこえている現在の
状況のように見
受けられます。たとえば、五月の
日銀の主要
企業の観測によりますと、製造業で
設備投資の伸び率が二六・六%、非製造業で一七・五%、全産業で二二・四%、こういう
状況になっておりまして、さらにいわゆる先行指標で見ますと、機械の受注、建設受注、こうしたものの動きから見ましても、民間
設備投資については非常な盛り上がりが見込まれているわけでございます。
一方
政府としては、福祉国家建設という大命題を持っているわけでございますから、
公共事業費の繰り延べにいたしましても、直接民生に
関係するようなものについてはなるべく予定どおりに実行することが将来にわたっての
日本の福祉向上のために必要なことであると
考えますから、そういう面にはできるだけ繰り延べの
しわを寄せないようにして、そしてそれを除いてみれば五四%
程度の
契約率にしかならないわけでございます。
これを四十七年度と比べれば、いま御指摘もございましたが、比率からいえば、七〇%以上のものを一般
公共事業については五四%にとどめるわけですから、これは相当の
引き締めであります。しかも、量的にいってははるかに民間
設備投資のほうが多い。そして現在の見通しとしてはこれがどんどん伸びる傾向にある。その辺を彼此勘考いたしまして、四月に
財政の
公共事業支出というものをかなり思い切って繰り延べたわけでございます。
これを感覚的にもっと
引き締めろ
引き締めろと言われることは、私は福祉国家建設に逆行することになると思いますし、それから数量的に
考えましてもこれでバランスがとれる、もっと足りないくらいではないかと思います。やはり民間の
設備投資に着目し、御指摘のようなマネーフローの
状況、それから
金融機関の
貸し出しの増加の現状等々からいって、
金融政策というものをその面においてはきびしくやっていく、それから
財政のほうについては、それと量的にも均衡をとり、また目的的にも十分の配慮をいたしまして、この
程度の繰り延べというものは、私は
財政当局としては相当思い切った
措置である、かように
考えておりますが、しかしやはり世間的な感覚的ないろいろの御要請や感覚的な御議論にも十分謙虚に耳をかさなければなりませんから、今後におきましてもこの
公共事業費の実行支出等についてはさらに一そうきめこまかく配慮いたしたいとは思いますけれ
ども、私の基本的な
考え方はいま申し上げたとおりでございます。