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広瀬(秀)議員 ただいま議題となりました
国家公務員共済組合法等の一部を
改正する
法律案及び
公共企業体職員等共済組合法等の一部を
改正する
法律案につきまして、
提出者を代表して、その提案の
趣旨及び
内容の概要を一括して御説明申し上げます。
最近の急速な経済成長の蔭で、わが国の
社会保障の水準は、西欧先進諸国に比べ、依然として低水準に置かれております。しかも注目すべきことは、すでに
政府の
昭和四十七年度経済白書も指摘しておりますとおり、経済規模の拡大につれて成長と
福祉の乖離が次第に顕著となり、とりわけインフレを背景として、高齢者世帯、母子世帯等の所得格差が拡大し、他方における資産の偏在と不平等化の進展と相まって所得と富の格差と不平等を一そう増大させている
現状にあります。いまや「成長より
福祉へ」の転換点に立って、成長の成果を
国民生活の充実に振り向けるべき絶好の機会であるといわなければならないのであります。
このような観点から、現在の国家公務員及び公共企業体職員の
共済組合の
現状を考慮いたします場合、その実態は、きわめて憂慮すべき
状況に置かれているのであります。その国の
福祉の水準は、その時代の老人の生活がどうなっているかを見ればわかるといわれております。国家公務員、公共企業体職員及びその遺家族が、退職後、今日の生活を保障し得る人間らしい
年金を受け、病気になっても経済的不安のないようにすることは、国及び公共企業体の
共済組合の
趣旨に照らして当然の任務であります。
それだけでなく、最近における医療費の急激な増高は、各種
共済組合の短期給付財源の収支を悪化させ、組合員に過重な負担をしいる
掛け金の引き上げを余儀なくし、また一方、
長期給付におきましても、ここ数年来の異常なまでの消費者物価の上昇のもとで、
年金受給者の生活は極度に逼迫しているのが実情であります。
このような
事態に直面し、国家公務員及び公共企業体職員の
共済組合制度を充実強化するため、
共済組合による給付の
内容を大幅に改善し、
年金額を平均給与額の変動に応じて自動的に
改定するとともに、その財政については賦課方式を採用し、かつ、国の負担金割合を引き上げ、あわせて国家公務員及び公共企業体職員の
共済組合の
制度が組合員の
福祉の増進のために
運用されるよう規定を整備するほか、退職者についての短期給付の特例等の措置を講ずることは、緊急かつ重要な課題となっているのであります。
以上の立場から、
共済組合の短期給付及び
長期給付の改善充実等をはかるため、両法案を
提出いたした次第であります。
次に、法案の
内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。
まず第一は、
共済組合の給付に要する費用につき、国の負担割合を引き上げ、組合員の負担の軽減をはかったことであります。すなわち、短期給付に要する費用につきましては、現在、国と組合員の負担が百分の五十ずっとなっておりますのを国の負担割合百分の七十、組合員の負担割合百分の三十とし、
長期給付に要する費用につきましては、現在国の負担割合百分の五十七・五、組合員の負担割合百分の四十二・五となっておりますのを、国の負担割合百分の八十、組合員の負担割合百分の二十といたしたのであります。
第二に、従来の積み立て方式による
長期給付の財政方式を改め、これを賦課方式に切りかえたことであります。後に申しますように、本法案は
長期給付の給付
内容を大幅に充実させ、また
年金のスライド制を実施することといたしておりますが、このような給付
内容の充実のためには、従来からの積み立て方式では限界があるため、新たに賦課方式を採用したものでありまして、三年を一期とする期間を単位としまして、
掛け金、国の負担金は、その期間内における給付に要する費用と均衡を保つよう定めることといたしたのであります。
第三に、共済給付の
内容を大幅に改善することといたしました。
まず、短期給付におきましては、家族療養費の給付率を現行百分の五十を百分の八十といたしました。次に
長期給付におきましては、退職
年金は、現在その支給率が組合員期間二十年の場合、俸給年額の百分の四十となっておりますのを百分の六十に引上げ、最高支給率も百分の七十を百分の八十一とし、さらに最低保障額十五万円を四十八万円に引上げることといたしました。これに準じまして、退職一時金の額の引き上げ、廃疾
年金の支給率及び最低保障額の引き上げをいたし、また遺族
年金の額につきましては、その最低保障額の引き上げとともに、現在退職
年金額の半額とされておりますのを八割相当額といたしました。さらに、
長期給付の算定の基礎は、従来退職前三カ年の俸給の平均額とされておりましたが、消費者物価の上昇の中で年々ベースアップが行なわれている
現状等を考慮して、これを退職時の俸給といたしたのであります。
第四は、
年金額の自動スライド制を採用したことであります。右に述べましたように
長期給付の額を大幅に改善いたしましても、年々の消費者物価の上昇の中ではその価値は常に低下するのでありますが、これを是正して、
年金受給者に一定の生活水準を確保するため、公務員の平均給与額が五%以上上昇しました場合には、政令によって、当然にそれに見合った
年金額を引き上げる措置をとるごとといたしたのであります。
第五は、遺族に対する給付を受けるための要件の緩和と
年金者遺族一時金の創設であります。まず遺族に対する給付を受けるべき遺族の範囲でありますが、
年金を受ける遺族は、現在組合員の子、父母、孫、祖父母は、組合員死亡の当時組合員の収入によって主として生計を維持していた者に限られておりますのを拡大しまして、一部でも組合員によって生計を維持しておればよいこととし、
年金以外の給付を受ける遺族の範囲はこれを一そう拡大しまして、組合員によって生計を維持していない者等を含めることといたしました。そして、遺族
年金の支給要件を満たしていてもそれを受けるべき遺族がないときには、組合員の収入によって生計を維持していなかった者に対して遺族
年金の七・五年分の
年金者遺族一時金を支給することといたしました。
次に、遺族
年金の受給要件につきましては、現在、組合員期間が十年以上二十年未満である者に支給される遺族
年金は、六カ月以上の組合員期間があれば支給されることとし、これに伴いまして、従来の遺族一時金は廃止することといたしました。
第六は、退職者についての短期給付の特例の新設についてであります。現行法では、退職の際に療養の給付等を受けている場合には療養の給付等の支給開始後五年間は継続して療養の給付等を受けることができることになっておりますが、退職後の新たな疾病や事故に対しましては、
共済組合員の資格がないため、給付水準の低い国民健康保険によらざるを得ないのであります。しかしながら、永年勤続して退職した者は、退職後二、三年の間に疾病する場合が多いという事情等を考慮いたしますと、退職後も一定期間は医療給付等が行なえるよう改善をはかることが必要であると
考えられますので、組合員期間が二十年以上である者が退職した場合または組合員期間が十年以上である者が五十五歳以上で退職した場合には退職後十年間はなお短期給付を受けることができることといたしたのであります。
第七は、
国家公務員共済組合審議会
委員と
国家公務員共済組合の運営審議会
委員についてでありますが、
共済組合運営の実態及びその特殊性から、現在は非組合員であっても、たとえば労働組合の役員として専従
業務に携わっている者等、かつて組合員であったものについては、労働組合の推薦により、
委員に任命できるようにしたのであります。
第八は、
長期給付の支給のための積立金の
運用についても組合員の意思を反映させるようにはかったことであります。すなわち、現在この積立金は
法律上の一定の制約のもとに組合員の意思が直接には反映しない形で組合または連合会が
運用いたしておりますが、これがなるべく組合員の
福祉のために活用されるよう、その管理、
運用については、組合の運営審議会または連合会の評議員会の議決事項としたのであります。
第九は、
年金受給者の
福祉増進のため、
共済組合は、
福祉事業として新たに老人
福祉施設その他必要な施設の設置、運営の事業を行なうことができることといたしました。これは、現在の
共済組合の
福祉事業が組合員の
福祉増進のためのものに限られておりますのを広げまして、かつて組合員であった者で現在は
年金を受けておりますもののための必要な
福祉施設の設置、運営の事業をも行なうことができるようにしたものであります。
第十は、労働組合専従者の
共済組合員としての継続についてであります。
昭和四十三年十二月十三日において、
国家公務員共済組合法に規定する職員であった者で、在職中に国家公務員法の規定により職員団体または労働組合の役員としてその
業務にもっぱら従事した者がその後職員を退職した場合において、その退職の日の翌日において、職員団体または労働組合の役員であるときは、その者は、その後における職員団体または労働組合の役員である間、職員である組合員と同様に取り扱うものといたしております。
第十一は、退職一時金からの通算退職
年金の原資の控除を受けないことを選択することができる期限の延長についてであります。すなわち、この選択期限は、男子については
昭和四十四年十月三十一日に満了しておりますが、その期限を、とりあえず、
昭和五十一年五月三十一日まで延長することといたしたのであります。
以上は、
国家公務員共済組合法について御説明申し上げましたが、
公共企業体職員等共済組合法についてもほぼ同様の
改正をいたすことといたしております。
以上、この
法律案の提案の理由及び
内容の概略を申し述べました。
何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第でございます。