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1973-05-09 第71回国会 衆議院 大蔵委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年五月九日(水曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君    理事 大村 襄治君 理事 木村武千代君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 森  美秀君 理事 阿部 助哉君    理事 武藤 山治君 理事 荒木  宏君       宇野 宗佑君    越智 通雄君       大西 正男君    金子 一平君       木野 晴夫君    小泉純一郎君       三枝 三郎君    塩谷 一夫君       地崎宇三郎君    中川 一郎君       野田  毅君    萩原 幸雄君       坊  秀男君    村岡 兼造君       毛利 松平君    佐藤 観樹君       塚田 庄平君    平林  剛君       堀  昌雄君    村山 喜一君       山田 耻目君    増本 一彦君       広沢 直樹君    内海  清君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         大蔵政務次官  山本 幸雄君         大蔵省主税局長 高木 文雄君         大蔵省証券局長 坂野 常和君         大蔵省銀行局長 吉田太郎一君         中小企業庁計画         部長      原山 義史君         労働省労働基準         局長      渡邊 健二君  委員外出席者         大蔵大臣官房審         議官      田辺 博通君         国税庁徴収部長 相原 三郎君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申し入れに関する件  中小企業金融制度整備改善のための相互銀行  法、信用金庫法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第七二号)      ————◇—————
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  中小企業金融制度整備改善のための相互銀行法信用金庫法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。広沢直樹君。
  3. 広沢直樹

    広沢委員 今回、相互銀行並びに信用金庫、信用組合の中小企業金融機関について、四十三年の基本的改正後の情勢変化に伴って若干の制度整備改善を行なうことになっておりますが、一方中小企業政策審議会の意見をもとにして中小企業基本法における中小企業者定義改正されることになっています。その資本金基準は、製造業卸売り業あるいは小売り、サービス業と三段階に分けて一応改正されるわけでありますが、新しい基準によると、大体資本金は倍になっていますね。こういうわけで改定された中小企業基本法にいういわゆる中小企業者定義、これは変わってくるわけでありますが、中小企業金融機関においては、資本金限度、これもそれぞれ倍にするということに一応なっております。これは中小企業定義というのが、一応基本法にいう定義といわゆる中小企業対象とした専門金融機関定義というものと少し変わっているわけですが、その照準を合わしておるところは、信組のほうは一応基本法にいう中小企業定義に合わしてあるわけですけれども、やはり中小企業定義というものがそれぞれによって違うという理由はどういうわけか、まずその点から。
  4. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かにお説のように違っておるわけでございますが、これは金融の場合に、御承知のように厳格に中小企業中小企業でないその段階、むしろ戦後、三十年代以来いわば金融谷間としての、大企業でもなくそれから厳密な意味での中小企業でもないというところの金融というものが、金融のいわば谷間ではないかというような考え方がございまして、自来中小企業金融と申します場合に、できるだけそこのところを厳格な、一挙に中小企業からすぐそのあとが大企業的なものであるということに割り切るのははなはだ現実に合わないというような沿革がございまして、したがいまして、端的に申しますと、たとえば二部上場以外のいわば中堅企業のしかも下のようなものまで含めて中小企業金融の疎通をはかることが厳密な意味での中小企業金融にも回り回って金融が疎通することである、こういう実態がございました。そういうことからいたしまして、三段階制というようなことで、四十二年の調査会答申におきましても、そういう相手対象にするものについてはいわば三つ段階で、現在でございますと五千万、一億というように分けていくのが一番現状に合っているのじゃないか、さような考え方から来ているわけでございます。現基本法にいう中小企業が一挙に資本金がふえることによっていわゆる法律にいう定義から脱した場合、これはいわば非常に矛盾が起こるわけでございまして、中小企業成長に合わせて金融面で常にそのめんどうが見られるようにという考え方から、さような制度になっておるというように承知しております。
  5. 広沢直樹

    広沢委員 そこで、中小企業専門金融機関としてのこの三つ機関はそれぞれの性格を持っているわけですから、それについては一応こういう形にはなっておりますけれども、やはり問題になるのは、これからの融資対象としても上位シフトするのじゃないかというような、そういう傾向懸念されるわけですね。定義では一応そういうふうに、今回の基本法では一億円以下というふうになるわけでありますが、それ以上になるということになりますと、そういう懸念があるのじゃないかと思われるのですが、その点が一点と、それからもう一点は、資本金増加状況です。今度信金の場合は一億円が二億円になり、相銀の場合は二億円が四億円、それから信組の場合は五千万円が一億円になる、いわゆる倍になるわけですが、これを倍にした理由といいますか、状況というものについては当局としては追跡調査をやった、こういうふうにいわれているのですが、その状況についてちょっと説明していただきたい。
  6. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かに御指摘のように、上位シフトという心配がございます。ことしの金融制度調査会でこの問題を御審議いただいたときにも、そういうことから、答申の中でもこういう措置によっていわゆる上位シフトが行なわれないように特段の配慮をすべきであるという答申を実はいただいておるわけでございます。そういう意味からいたしまして、私どもがたとえ会員資格範囲内であっても、その融資対象については法律範囲内であっても一定限度内にするようにということを通達いたしておりまして、これが守られておるわけでございます。ただ、法律でおきめいただいておるものをそれ以下にあまり押えるということは、これは法律との関係でいかがだろうかと存じますので、たとえますと、全体の融資の中の二〇%以内であれば、もちろん法律には違反いたしませんが、このうちで大きな融資があってもこれはよいのだ、こういう指導をいたしております。したがいまして、逆に申しますと、全体の融資量の中の八割はそれぞれの段階において法律規定の内部であっても大口融資にならないようワクを通達でいま指導しておるのが現状でございます。  なお、相手方資本の額がどういうふうに変わっておるかという御質問でございますが、四十二年の三月と昨年の三月末を比較してみますと、これを相互銀行取引先で調べたわけでございますが、大体資本の額が六割五分ふえておるわけでございます。一六五%にふえておる。それから信用金庫の場合でございますと、相手方中小企業資本金増加状況でございますが六三%、一六三%に四年間で相手方資本金が増加しておるという状況になっております。
  7. 広沢直樹

    広沢委員 それではこの三機関について若干お伺いしておきたいと思うのですが、まず相互銀行制度改正の問題、この中で、第二条では一応外為業務を認めることとなっておりますが、この意味するところを若干御説明いただきたいと思うのです。あわせて、やはりこれは相互銀行だけではなくて同じ機関としての信金もあるわけでありますから、信金外為業務要請もあるわけでして、相互銀行を認める趣旨からいえば同じような意味になると思うのですけれども、今回の場合にそれを見送っている理由は何なのか、その点お伺いしたい。
  8. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 相互銀行に今回こういう御提案を申し上げましたのは、相互銀行相手にしております企業の海外との取引状況がふえておるという実態がございます。これを貿易業者ということで押えてみますと、取引先貿易業者増加状況というのが、四十二年から四十七年、やはり五年間で七割増加しております。それからそれに対する融資量は四倍になっておるというような実情でございます。特に、特定の地域、東京、大阪、神戸、福岡といったところではこれの増加状況がきわめて著しいということがございまして、相互銀行についても外国為替取引を認めていくことが適当な時期に来た、かように判断したわけでございます。その背景には、相互銀行業界がそういう状況に応じてかねてから職員訓練経験等を富ます意味でいわば研修生を為替銀行に派遣いたしまして、ここ四、五年の間にかなりそれが充実してきておるというようなことも一つ条件になっておるわけでございます。  信用金庫の場合も、まさに御指摘のように、これも今後同様に考えていくべきではなかろうか、かように思っております。現段階においては信用金庫の場合は、両がえ商というようなことを認められておるものが百をこえております。こういうことを積み重ねまして、職員訓練経験を向上させるということが一つでございます。それからもう一つは、現在信用金庫は東京銀行為替専門銀行と特別の提携関係為替取り次ぎを行なっておりまして、こういうことの経験が積み重ねられますと、おそらく信用金庫の中における外国業務というものの水準もだんだん上がってくる。その暁にはやはり同様のことを考えるべきではなかろうか、かように考えております。
  9. 広沢直樹

    広沢委員 そこでもう一点。いまの問題については、これは外為業務については、外為会計とそれから外国貿易管理法によりまして、いわゆる外為公認銀行にならなければならぬ。これは大蔵大臣認可によってきめられるわけでありますけれども、その場合に相互銀行はすべてこれに該当するかどうかということはむずかしいと思うのですが、それで実際に、この中で相銀としては、それだけの要請に基づいて今度認めるわけでありますから、大体どれぐらいの範囲になるのか、そしてまたその許可の基準というのはどこに置いているのか、その点お聞かせ願います。
  10. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 いまもお話しのように、為替管理法規定の中で、国際的な信用があることが一点、それから行内において外国為替取引を行なうに足る職員を有しておるということが一つ条件になっておるわけでございます。そういうことからいたしますと、やはり認可為替管理法の体系でいたしていく場合の基準といたしましては、外国為替取り次ぎ実績、現在もやっております外為銀行への取り次ぎ実績でございますとか、あるいはその相互銀行がございます地域におきます貿易取引実情、あるいは貿易業者の数といったことを基準としたいと考えております。いまのところ、まずこの法案が成立いたした暁で発足いたします場合には、十行未満のところから出発したい、かように考えております。
  11. 広沢直樹

    広沢委員 それから今度は第十条の改正で、限度額自己資本の一〇%から二〇%に拡大されますね。こういうふうにすべて考えていきますと、やはり普通銀行相互銀行、いまいう十行ぐらいの大きな相互銀行といいますか、そういうものがだんだん、基本的な性格の問題はあるとしても、同質化していくんじゃないか。将来やはり情勢に基づいて手直しはやっていかなきゃならないと思うのですけれども相互銀行性格から考えても、そういうふうな状況になっていくんじゃないかと思われるのですが、その点はどういうふうにお考えになっておられるわけですか。
  12. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 まさに同質化ということは今後とも強くなっていくのではないかと私は思っております。それは一つには経済全体のあり方がそういう方向に向かっておる。中小企業というものがだんだん育っていき、あるいは大企業との格差が縮小していく、そういう形でこれからの経済の社会が進んでいくという実態がやはり背景にあるのではなかろうかと、かように思っております。現に全体の民間の金融機関の中で、いわゆる中小企業金融という形で資金が出ておりますのは、いわゆる普通銀行が全体の四五%ぐらい、それからいわゆる中小企業専門機関というのが、それより若干低い程度で四二%、かような実態になっておるわけでございます。したがいまして、中小企業金融中小金融機関のみに扱わせるということもはなはだ現実に合わないわけでございます。また同時に、その中小企業というものの実態が、先ほどお答えいたしましたように厳密な意味中小企業でない、広い意味での中小企業というものが今後より一そう育っていくというようなことからいたしますと、これを受けて立つ金融面においても同じような適用が行なわれてしかるべきではなかろうか、かように考えておるわけでございます。そういう意味では、いま御指摘のように、同質化ということは今後も避けられない方向ではなかろうか。  ただ、そのために、金融機関がそういうことにいくあまり、先ほども御指摘がございましたように、大口化あるいは上位シフトという傾向によって中小金融がおろそかになってはいけないということについてのおもしを十分やっていくということがこれから必要なことではなかろうか、かように考えております。
  13. 広沢直樹

    広沢委員 そこで、融資限度額の問題については、これは資産の健全性の問題もありますし、さらに融資を均てんしていくという問題もあろうかと思うのですが、そこで、いま相互銀行における融資状況ですね、どういう状況になっているのか、一貸し出し先当たり平均金額が非常に高くなっていると思われるのですが、その点いかがでしょう。
  14. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 まず相互銀行の一件当たり貸し出しということで見てまいりますと、四十三年くらいは約百万件の件数貸し出しでございますが、一件当たりが大体三百四十万程度という状況になっております。これが四十五年に至りますと、三百八十万から三百九十万という状況でございまして、ことしの三月にこれをとりますと、件数にして百五十五万件の貸し出し先になっておるわけでございます。五割件数はふえております。金額は約五百三十万という状況になっております。
  15. 広沢直樹

    広沢委員 やはり上位シフトしていくという問題や大口化の問題について、具体的にそういうことを特別指導はしているのでしょうけれども、そういう具体的な対策というものは何か立てていらっしゃるのでしょうか。
  16. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 具体的な対策といたしましては、私ども、たとえこの法律が、現在でございますと自己資本の一割までということになっておるわけでございますが、その一割の範囲内であっても同一人に対して五億円をこえるものを貸してはいけないということを限度にしておるわけでございます。それも法律との関係で、あまりそういう行政指導をきびしくするということもいかがかと存じますので、それをこえるものは全体の二割までに押えるように、そして八割までは五億円以下の融資を行なうようにということでやっております。もっともこの五億円という金額は、かなり高い金額でございまして、こういう金額が適用される相互銀行はそれほど多くはございません。むしろこの融資法定限度が窮屈かどうかということを考えます場合に、適当な計数はございませんけれども、たとえば昨年の三月におきまして、資本金の一割という法定融資限度の半分の融資をやっておるものが全体の融資のどのくらいあるかということを調べてみますと、大きいほうの銀行十行をとってみますと、それが四%程度でございます。それから低いほうから十行をとってみますと、自己資本の一割のさらに半分以上をやっておる比較的大口というのが一八%程度、したがいまして、それ以下はむしろ自己資本に対する比率限度の半分以下の小さな融資をやっておる、かように考えております。
  17. 広沢直樹

    広沢委員 次に、全信連について若干お伺いしたいのですが、信金の親機関として、地域的な問題あるいは季節的な資金需給関係を調整しているのが連合会なんですが、今回の改正で、員外預金受け入れや、あるいは有価証券の払い込みの受け入れ、その他公庫の業務代理、そういうふうに一応なってきておるわけですが、こういう情勢の中で、全信連が独立した金融機関的な性格を持ってきているのではないかというふうに見られる向きもあるわけでありますけれども、その点やはり信金法によれば、これはいまいう全信連性格というのははっきりしているわけですけれども、それについて今後そういうような情勢変化に基づいてこういうような手直しがなるとするならば、やはりそれだけの一つ金融機関としての動きはやっておるわけですから、それぞれ信金会員としてそういう運用をやっておるわけですから、いま言うようなことになってまいりますと、独立した機関としての動きになってくるのではないかと思うのですが、その辺の見通しと考え方について……。
  18. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 信用金庫のいわば中央機関と申しますか、中央銀行というような形で全信連が機能することが一番望ましいわけでございます。そういう意味からいたしますと、いま御指摘のような形で信用金庫から離れていく形で全信連が独立していくということは、制度あり方として望ましくないと考えております。現在もそういう心配があるのではなかろうかという御懸念でございますが、現在のところは、むしろ信用金庫資金運用についての調整を行なうということに主眼を置いてやっておるようでございます。たとえば金融が緩和してコールレートが低下するときには、むしろ全信連にこれを吸い上げて、全信連統一運用をする。それから金融が逼迫してまいりますと、全信連のほうで資金の比較的余った地域から逼迫したところへ金を流すという形で機能しておるのが実態かと存じます。特に今回の改正につきましては、むしろどちらかと申しますと、中小の小さな信用金庫がやれないことを補完する意味で、むしろ中小信用金庫のためにその機能を強化していくのがねらいでございまして、そういう意味からいたしましても、全信連性格ということを、御指摘のようなことのないように今後ともやっていきたいと思っております。  なお、三十名でございますか、全信連の役員というものがある。これが信用金庫理事長さんでやられておるということが制度的にも歯どめになるのではなかろうか、かように考えております。
  19. 広沢直樹

    広沢委員 信金卒業生金融という名前のついたのがありますね。この卒業生金融についてでありますけれども、一応いままでは会員としてそれだけ大きく育ってきた分が、これから限度額をこえることになって、いわゆる卒業生金融として今後もいままでの状態を一定期間続けようということになっておるわけでありますが、これは五年とか一応年限を付してその間の中において打ち切るということになっておるようでございますが、やはりこういう卒業生金融という一つ現状に即して変わらなければならないという立場はわかるのですが、こういうようなことを考えてみますと、やはり小口員外貸し出しについても総貸し出しの二〇%程度で押えてきめておるわけですね。それを認めているということになれば、これは卒業生金融についてもやはり五年とかそういう年限でなくて、これはやはり信金とのかね合いにおいて、それだけの取引をし、それだけの成長をしてきたのですから、それはその範囲内で考えられないのか、五年なら五年やったあとで打ち切ってしまうということにしておるということについては、ちょっと矛盾があるような感じがするわけですね。それは員外貸し出しの二〇%を全然考えていないならば、これは一応一定期間便法的にそういう方法をとるのもしかるべきかと思うわけですが、それによって今度はいわゆる上位シフトをするのではないかという問題は出てきますけれども、それは総貸し出しの二〇%で押えてあるという意味からすれば、八〇%はやはりその対象零細中小企業に対してのワク範囲というものはとってあるわけでありますから、その制度を認めていることからいうと、この意味合いが少し感じが違うのではないかと思われるのですが、その点はどう考えておられますか。
  20. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かにこの問題は、御指摘のように非常に両方の面がございまして、扱い方によってはよくにもなり悪くにもなるという側面があろうかと思います。お話しのように小口員外貸し出しということを認めておるわけでございますが、これは御承知のように会員入会金というものが非常に名目的になっておる、五十円百円であったということを整理して、実質的な会員組織に切りかえていこうというところから、会員資格を上げたことに伴いまして、それの会員資格からこぼれていく、あるいはそういう、たとえば千円というような入会金を払うことを好まれない方々のために、いわば員外貸し出しという形で認めたのがこの制度でございます。それで信用金庫制度というものの格をどこまで、どういうように考えるかというところが非常にむずかしいことでございます。預金一般大衆から集めるが、貸し出しについてはあくまでも会員のための相互組織である、そういう考え方にのっとって信用金庫総代会というような制度運用されているということも一つ金融制度の特色でございますので、この員外貸し出しをどう考えていくか、あるいはいま御指摘卒業生金融ということをどう考えていくかということは非常にむずかしい問題で、今後とも研究をしていかないといけないとは思います。ただ、もしも今回の法律改正が実現いたしますれば、現在の取引中の卒業生のうち約六割近くが会員資格が回復されるということになっておるわけでございまして、そういう意味からいたしますと、残りの数は約八十七企業という程度でございまして、実際問題としての支障はまずなかろうか、現段階においてはやはりこういう歯どめというものが、むしろ大口化していく、上位シフトをしていくことに対する歯どめになるのではなかろうか、かように考えております。
  21. 広沢直樹

    広沢委員 ただ、この卒業生金融の問題と、員外貸し出し限度額を総貸し出し額の二〇%に押えて、一応員外貸し出しも認めているわけですね。ですから、卒業生というのもやはり会員外になるわけですから、総額の中で押えておりながら、制度としてそういうふうな便法的なものがあるというのが、一応そのワクの中で考えていけばいいんじゃないかというふうに言えるわけですね。ただ上位シフト大口化というふうな問題になってきますと、やはりこういう員外的な貸し出しというものやら、員外をどう考えるかという問題に基本的になってこようかと思うのです。  そういう意味からすると、実態としてはそうあまりないのかもしれませんけれども、しかし今後確かに中小企業は、先ほどお話があったように資本装備率というのがぐんぐん伸びてきておりますから、当然これは問題になってくるのじゃないかと思いますが、その点大口化していくことに対する歯どめとしてはこれは私は賛成なんで、考えておかなければならない問題ですけれども、ただその問題外に、こういう制度の中で考えた場合にちょっと矛盾があるのじゃないかと思われるのですが、その点はいま申し上げたように員外貸し出し総額で押えてありますので、卒業生金融もその中に含めて考えられているはずなんですね。ですからその点はいかがですか。
  22. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かに一つのお考えとして私どもも同様に考える面がございます。ただその辺は私どもの判断の問題といたしまして、二〇%の中で、えてして卒業生金融の場合には比較的金額が多くならざるを得ない、それが小口貸し出しを圧迫しはしないかということをむしろ私のほうとしては心配したのが現在の扱いをしておる理由でございます。  なお、前回四十二年の答申におきまして、この問題をどうすべきかという場合に意見があったものとして、比較的多かった意見といたしましては、卒業をしていくような企業というものはどうしても力がついてきておるわけであって、そういう企業については自然に金融の道がついていくのではなかろうか、したがって卒業生金融というものについてはまあほどほどに考えるべきではなかろうかということも、私どもの判断に一つの影響をしたわけでございます。この辺のところは、現実の問題といたしましてはいま申し上げたようなところでございますが、長期的な問題としては今後とも研究はしていかないといけないとは思っております。
  23. 広沢直樹

    広沢委員 大体都銀とかあるいは地銀とかあるいは相銀信金信組というふうにそれぞれの機関の今日までのあり方の中で、経済の中で各金融機関の占めているシェアというものは、いまから始まったわけじゃないのですからもう大体きまってきていると思うのですね、多少の移動はあったとしても。ですから、そういう考え方からすると、いままでの取引、それだけのシェアの中で考えるという考え方も出てこなければならないと思うのですよ。ですから、一応区切りをつけて、ここまで来れば卒業して、ここまで来れば上位銀行に回ってというふうなことも、それは制度の中では一応考えるべきことでしょうが、マクロ的に考えた場合は、もう大体都銀のシェアあるいは地銀のシェアというふうに、経済状況によっては多少の変わりがありますけれども、シェアというものはきまってきていると思うのですね。そのシェアの中で信金にせよ信組にせよ相銀にせよ、それぞれ大中小いろいろなそれを育成して健全なものに持っていこうという考え方を持っているわけですから、そういう意味から考えていっても、やはりいま私が申し上げた問題というのは、一応今後考えるべき問題ではなかろうか。一応私は、大口化したり、あるいは小さい中小企業に対する切り捨てになるとか、あるいはそれにはあまり恩典がいかないようになるというのは、これは中小企業金融機関としての基本的な問題になりますので、そういう傾向はこれは気をつけなければなりませんけれども機関健全性から考えていきますと、そういうことも考えるべきことじゃなかろうか、こう思うわけです。  それから、信組についてでありますけれども、今回の場合、員外預金が認められるわけですが、これは四十二年の金融制度調査会答申におきましても、一応与信受信については否定をしているわけですね。これは性格上からはっきりとそこに一線を引いているわけですけれども、一応員外預金というものは今後認められるということになってきておりますね。これは状況によれば今後また員外貸し出しということにもなってくるのではなかろうかと思います。これは情勢によってそうなるかもわかりませんし、そこまではならぬというかもわかりませんが、こうなってくると、やはり先ほど申し上げた相互銀行普通銀行あるいは信用金庫信組というものの性格がだんだん、先ほど同質化と申し上げましたけれども、似通ってきているのではなかろうかというふうに思われるわけでありますけれども、基本的には、基本的な今度の改正でありませんので、一応四十三年度の改正においては、中小企業金融専門機関としては三機関をそれぞれの性格づけをして残しているわけですから、今後もそういう問題については現状に即して一応三機関として存続することは私も賛成でありますけれども、しかしいまのこの状況から見ますと、そういうふうにだんだん似通ってきているような感じがするわけでして、当時の四十二年の調査会の中でも、三機関にするかあるいは二機関にするかという議論もあったようでありますが、そういうこともかね合わせて考えてみますと、この問題についてはどういうふうに将来の問題として考えているのか、お伺いしたいと思います。
  24. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かに長い目で見た将来の金融制度あり方と、それから現実のこの御提案申し上げておるものとがどう結びつくかということは、一つの非常に大きな問題だろうと思います。ただ今回の御提案の趣旨そのものは、そういう大きな問題に対して一歩を踏み出すという趣旨ではございませんで、むしろ非常に封鎖的な会員組織の協同体がその与信業務を十分行ない得るためには、その本質を変えない程度資金吸収を与えていくことが現段階としてはむしろ必要ではなかろうか、かようなところから、いわば農協その他の類似の組合並みにこれを合わせたというのが趣旨でございます。  長い将来の問題といたしまして、そういうきわめて純粋な協同組織あるいは相互扶助金融といった実態と、ある程度一般預金一般大衆に開放された形で、しかも協同組織という二つの種類の金融機関が併存し得るかどうかということについては、これは必ずしも予断を許さないものではなかろうか、むしろ今後の中小企業実態変化あるいは今後の経済情勢全体の変化の中で、それに一番適応するように考えていくべきではなかろうかと考えております。しかし、これは非常に長い話でございまして、現実的な立場といたしましては、この御提案申し上げておる程度のことは、そういう両者の金融機関性格が今後非常に大きく変わっていくことをむしろ意図したという趣旨ではないことをぜひ御了承いただきたいと考えております。
  25. 広沢直樹

    広沢委員 それでは法案関係から少し離れまして、これからの金融政策とそれに伴う中小企業対策、それから消費者ローン、住宅ローンの問題について若干お伺いしていきたいと思います。  金融当局は現在、景気が過熱するという一つの想定、それからまたインフレ抑制ということに主眼を置いて、一応金融引き締め政策をとっているわけですけれども、一月と三月における預金準備率の引き上げ、それから窓口規制の問題、これは今次最大の問題になっておりました過剰流動性をまず吸収しなければならないという面に金融引き締め政策の主眼が置かれておったわけであります。しかしながら、四月二日におけるいわゆる公定歩合の引き上げというのは、総需要を抑制しなければならない、こういうことに主眼が置かれてきているわけですね。それと同時に、いままでと変わったところでは、いままで大体都銀がそういう対象になってきておったわけでありますけれども、いわゆる地方銀行にしても長期信用銀行にしてもあるいは信託銀行並びに中小企業専門機関である相互銀行から信金に至るまで、窓口の規制というものについての個別指導が行なわれるというようなことでありますから、物価に対する抑制をしていくための金融引き締めとしては当然きびしくやって、物価安定が金融だけでできるとは思いませんけれども、そういうふうな政策をとることがむしろ当然であろうと思われます。  その中において、こういう総体的な総需要抑制という引き締めが行なわれると、したがってしわ寄せされるのは中小企業の問題と、いわゆる福祉へということで、消費者ローン、特に住宅ローンというものが相当削減されるという問題が現実に起きてきているわけですね。ですから、これからどういう方向でこれを考えていくのか。やはり物価の関係から考えると、これは当然、今回の引き締めだけではなくて、動向によってはまださらに強化しなければならないという向きも出ないとは限りません。  ただ、今日の景気の対策としては、昔のように単なる金融政策だけではなくて、要するに財政、金融のミックスした形、いわゆるポリシーミックスということで考えていかなければなりませんが、予算編成のときにも問題になっておりましたように、財政、予算が大型化しているわけですね。その中で、トリレンマだ何だかんだという問題がありました。片方ではいかにこれをうまく組み合わせようとも、予算が大型化していくということそれ自体は、公共事業を主体とした大型化でありますので、それだけ景気を刺激することは事実でありますけれども、一方においてはそうしながら、片方においては物価抑制、金融引き締めをどんどん強化していくということになりますと、勢い弱いほうにしわ寄せがくるといういままでのパターンが何ら変わっていないという状況が、今日においても出ておるわけですね。ですから、先日の新聞にもちょっと載っておりましたけれども、公共事業の繰り延べなんということも言っております。  しかしながら、いまやはりこういうような引き締めが強化されてきているという状況の中で、その中小企業対策を具体的にどういうように考えておられるのか、その点まず最初にお伺いしておきたいと思うのです。
  26. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 中小企業全体の対策については、後ほど中小企業庁からお答えがあろうかとも思いますが、私ども金融面を通じまして特に注意しておきたいと思いますことは、まず民間金融機関における中小企業向け貸し出しというものの比率が低下しないようにということが一つの関心事項でございます。この辺の計数は、最近のところはわかっておりませんが、得られる限りの数字で見ます限りは、都市銀行におきましても、中小企業に対する貸し出しの比率というものは下がるよりはむしろ上がっておるという状況でございます。それから相互銀行信用金庫といったところにつきましては、むしろ預金の伸びが非常によいという状況から、これに対する貸し出しということはそう減らないのではないか、かように考えております。  日本銀行で行なっております窓口指導につきましても、都市銀行は前年同期の一六%減というようなきびしいワクを与えておるわけでございますが、地方銀行は大体前年並み、相互銀行につきましては大体前年よりも多少上回る程度、一・五%ぐらい上回るワクでやっておるというのが状況でございます。それから信用金庫につきましては、ごく大きな、相互銀行とか地方銀行と匹敵するような信用金庫十数行について、ワクは与えませんが指導しておるというのが実情でございますので、そういう意味からいたしますと、中小金融機関全体の貸し出しは従来から見てそう激変ということは起こらないのではないか、かように考えております。  そういう状況がやはり出てまいりますのは、たとえば中小企業の倒産の状況でございますとか、あるいは企業金融の信用の変化というようなことを今後十分注意していきたいと思いますが、現在までのところは、マクロの問題としては比較的大きな変化が起こっていないというように考えております。これは一つには、やはり従来の大企業に非常に片寄った金融というものが、これからの経済社会の中ではなかなか一般大衆の協力も得られないし、どうしても中小企業あるいは大衆と密着していく形でいかざるを得ないという気持ちが金融機関サイドに非常に強いということも基本的にはあるのではなかろうか。したがいまして、そういう全体のことを踏まえながらこれからよく注意していきたい、かように考えております。
  27. 広沢直樹

    広沢委員 いまのお話は、一−二月の状況からするとそういう影響はあるでしょうが、第二次の預金準備率が引き上げになりまして、四月−六月の状況から見ますと、これに伴って、いまお話があったように前年同期に比べて二八%低い水準に押えるというきびしい窓口規制になってきているわけです。ですから、そういうことから考えると、これからそういう状況が顕著に出てくるのじゃないかと私は思うのです。  いま御説明になったのは、いわゆる金融が緩和されて、それから過剰流動性の問題が問題になって、第一次の引き上げをやった段階において、第一回は同期に比べて一三%増に押えるという形をとっておったわけですから、その点から考えると、今回の場合においては、相当今後において問題が出てくるのじゃなかろうかと思うのですよ。それは現在の実績からいえばあまり懸念がないみたいな御説明ですけれども現実の問題として借り出しに銀行の窓口へ行くと、相当きびしい選別というか、窓口規制というものがやらされているわけでして、確かに今次中小企業製造業ですか、それの設備投資的なものが相当上向きになってきているということで、金融のほうもそちらのほうにウエートを置いて考えてきているので、いまのように多少実績があがってきているのではないか。しかし、それにつれて、やはり大きな企業のほうもいままで横ばいだったものが多少これから景気上昇の過程において設備投資のほうに動き始めているということも出てきているわけでして、そうなってくると、いままでのパターンから考えると、やはりこれは民間の金融機関ですから、効率的な方向に動こうというのはいままでにもあったことでして、そういうふうな動きが出てくるのではないかと思われるわけです。  ですから、いま言われるようなことでは、大体現実状況がそういうことだから、そういう向きにもなってきているから、あまり心配ないんじゃないかと言うのですが、それはそうじゃないと思うのです。これだけのきびしい規制をやっていくというのであれば、やはり中小企業対策についても特段の考え方を持っていかなければ、あるいは格差の問題が絶えず問題になり中小企業の育成だ、何だかんだ言いながら、絶えず金融引き締めになると被害をこうむるのは中小企業であるということで、現在、中小企業は御存じのように、実質的な円の切り上げだとかあるいはインフレによるコストの上昇だとか、そしてまた今度は金融引き締めということで、三段締めに締められているというかっこうになってきているのですね。ですから、せめて金融面においては特別な配慮というものをしていかなければならないんじゃないか。もちろん政府機関においては増額をやっていこうということはわかるのですけれども、やはり民間の金融機関についてもその点は十分に配慮するような対策が講じられてしかるべきじゃなかろうかと思うのです。  特にこの金融引き締めの過程から考えてみましても、今回の引き締めが過剰流動性を吸収するということから始まって、そしていわゆる土地だとか株式だとか、また商品投機、これが一そうインフレに拍車をかけているということで、それに対しての窓口の規制というものをきびしくしようということからやってきたわけですけれども、しかし、総体的な引き締めに入ったわけですから、そういう意味から考えていきますと、もう少し窓口の規制のあり方も、総ワクが締められると、どうしてもそういうふうに中小企業だとかあるいは住宅のローンだとかいうものに、どっちかにしわ寄せが現実にはやってくるわけですね。  そういうようなことから、やはり窓口の規制の問題については、今日問題になってきたそういう時点をよく踏まえた規制というものを適切にやらなければいけないんじゃないかと思うのですが、そういう意味からもう少し具体的な対策というものを当局は考えるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  28. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 仰せのとおり、いままでのケースから今後とも楽観的に考えるべきではなかろうということは全く同様に存じます。特に六月という時期は決算資金あるいは法人税の収納の時期あるいは引き締め後六カ月というような、ちょうどタイミングでもございますだけに、中小企業に対する影響というものはどういうふうに出てくるかということは非常に私どもも注意しておるわけでございます。  基本的な姿勢といたしまして、中小企業金融というものの疎通のためにはできるだけのことをやっていくということはもう申し上げるまでもないことでございます。ただ、具体的なそのために対策を用意しておくべきではなかろうかということにつきましては、これは一つは政府機関を通ずる一つ対策がございましょう。それからもう一つは、民間の金融機関の金の流れでそういう規制をすべきではなかろうかということは、確かにお考えとして私どもも傾聴すべきだろうとは思いますが、何ぶん金融の、釈迦に説法でございますが、なかなか質的規制と申しましょうか、対症的規制ということは金融性格からいって非常にむずかしくしり抜けになる。全体の景気調整策全体を成功さしていく、そういう前提の中でどれだけのことがやれるかとなりますと、非常にむずかしい問題がございます。もちろん検討事項ではございますが、しかしなかなかこれは実際問題としてはむずかしいということを特にお断わりせざるを得ないと思います。
  29. 広沢直樹

    広沢委員 むずかしいということだけじゃ困るわけですけれども、そこで私は、もう少し突っ込んで住宅ローンの問題について、過般来問題になっておりますので、お伺いしておきたいと思うのですが、一応日銀もあるいは大蔵当局も住宅ローンについては今回の公定歩合の引き上げで金利が引き上がるということの中で、やはり住宅ローンの金利は据え置こうということに一応なっているわけですね。しかしながら、それだけで住宅ローンの今日需要に対して十分なるおこたえができるかというと、むしろこれは先ほど申し上げたような理由から、どうしてもそういう面にもしわ寄せがいかなければならないのじゃないだろうか。  過去一年間くらい考えてみますと、大体住宅を建てたいという人がそれぞれの窓口で金融の申し込みをすると、ほとんど満額に近い貸し出しを受けているわけですけれども現実は、今日になりますと、そうではなくて、相当、件数としては一応住宅政策ということも兼ね合わせ、あるいは当局の指導もあってそれぞれ考えるのでしょうけれども総額においてやはり引き締めの影響を受けて削減されているということが如実に出てきているわけですね。ですから、やはりこれはすべてがこれから企業優先から福祉優先へということで考えていかなければならないときが来ているわけでしょう。ですから、やはり金融に関しても福祉充実の方向金融のウエートというものも置いて基本的には考えていかなければならないときが来ているわけですね。  ですから、当然この一つのあらわれであります住宅ローンについては、これは大衆に還元するという意味から考えていっても、やはり十分なる資金の手当てをしていかなければならないのじゃないかと思いますけれども、実際皆さん方でつかんでいらっしゃる実態というものはどういうふうになっているのか、そしてそれに対してどういう対策を講じていこうと考えているのか、まず総括的にお伺いしておきたいと思います。
  30. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 今度の一六%減の総貸し出しの規制、これは都市銀行の場合でございますが、これの中で一体四−六で住宅ローンにどれだけ各都市銀行が向けるのかという計画を聴取したわけでございます。そういたしますと、その数字は千六百八十億、約千七百億を住宅ローンにさこう、こういう計画になっております。これは全体の貸し出しの増加額約一兆足らず、九千八百億のワクの中で一七%というシェアになっております。これは非常に高いシェアでございまして、昨年の同期は住宅ローンに向けられた金額は六百億でございます。その貸し出しの中のシェアは五・一%である。むしろこの千七百億弱の数字というのは十月から十二月あるいは一−三月の数字をそのまま減らさないという計画を都市銀行は、これは銀行によってもちろん経営方針がございますので違いますが、総体としてはこういう数字を示しております。  ただ問題は、この金額だけではたして現在の住宅ローンの需要にこたえられるかどうかということにあろうかと思います。私は、現在の規制の中でこの一七%の資金をこれにさいていこうということは相当の努力として評価してしかるべきではなかろうか。全体が二八%減らしておる中でこれを維持していくことは相当の努力であろうと考えますが、しかし住宅ローンそのものの需要が非常に増加しておるということも事実でございます。これは一つには不動産融資に対する規制を非常に金融面でも強めてまいりました。そのはね返りの面がございまして、従来は不動産業者がローンというかっこうで融資しておったのを、それをしぼったために銀行の窓口に殺到しておるということでございまして、この辺のところは、将来の問題としては長い目でやはりそういうことも兼ね合わして考えていかなくてはいけない、かように考えております。  しかし、何と申しましても住宅ローンに向けるべき原資をいかにして調達させていくかということが大事な今後の研究課題でございまして、それが一つでございます。  それからもう一つは、現在住宅金融会社というのを、こういう事態のために備えてかねて発足しておるわけでございます。この住宅金融会社が十分疎通するようにということの育成を考えていくべきではなかろうか、かように考えております。そういう意味からいたしまして、この住宅金融会社は、これは資格は貸し金業でございますが、大蔵省の直轄にすることに先般きめまして、そしてこの住宅金融会社の資金手当てについてもいま検討しておるわけでございまして、金融制度調査会の住宅金融部会で秋口までには何らかの結論を出したい、かように考えております。
  31. 広沢直樹

    広沢委員 その住宅金融会社ですが、その融資申し込みの現状は、これは報道されてもおりますが、大体月に八十億をこえているのに、同社が金融機関から調達できる資金というのはわずか月に五十億くらいしかない。三十億くらいはお断わりしているのだという現実がいわれているのですね。やはり急激に住宅資金需要が伸びてきたということもあると思います。現実に住宅ローンを考えてみますと、約二倍近くの増になってきておるわけですね。それが、いま申されたように一応一〇%か二〇%の範囲内で確保されるとしても、伸びの状況から考えると押えられるという傾向にある、伸びを認めないということになってくると思うのですね。  やはりこれは個人的な問題だけではなくて、これは不動産業ではなく、いわゆる建て売り住宅をどんどんやっていきたいというわけで土地も買いたいということがあるわけですね。そういうことを専門にしている会社もある。ですから、住宅政策の中で考えていくと、個人的な住宅ローンの問題とそれと兼ね合わせて考えていかなければならないと思うのですね。やはり個人で建て得ないという者は、そういうような会社で一括して土地を確保し、それに家を建てて、これは同じような規格で建てていけば、非常にコストも安くつくのじゃないか、そういうようなわけで、それを希望している人も多いわけです。そういう意味から考えると、やはり何か全体のワクの中でこういう福祉重点という考え方から考えるならば、住宅ローン、そういうような資金というものは別ワクで何か考えるような方法をやっていかなければならないのじゃなかろうか。そういった中で、都市銀行のほうでは中期預金なんという問題を出していろいろ論議になっておるようであります。そういう考え方もいろいろな議論もありますが、きょうは触れませんけれども、しかしそういった住宅ローンについての別ワク考え方を持つべきではなかろうかと思うのですが、その点どういうふうに考えておられるのか。  いまおっしゃったように、住宅金融会社というのはこれは直轄にして融資考えて、それを専門に一つの窓口にしていこうという考えはあると思うのですが、これだけではどうにもならないと思うので、やはり一般の銀行においてもその点の考え方というかやり方をこれは基本的に考え直すべき時期に来ている。その一つのあらわれが、先ほど言ったようないわゆる中期預金の問題を何とかしなければならぬとかということも問題になってくると思うので、その点も兼ね合わせてどう考えておるのか。  ただ住宅金融会社だけじゃなくて、住宅金融公庫というのもあるわけですが、しかし、これだって希望に沿って満額を貸しているのじゃなくて、だんだんに、いままでは何分の一か貸している、あるいは土地は認めなかったものを認めるようになったとか、変化はしているのですが、十分じゃないのですね。それと銀行と合わせた形で満額借りて何とかしようというのが、今日の傾向として出てきておるわけですから、そういう面から考えていくと、これに対する考え方はもう少し具体的な方策を立てる必要があるのじゃないかと考えております。その点、お伺いして、一応終わりにしたいと思います。
  32. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かに住宅を個人に建てていただくための形が住宅ローンだけではなくて、やはり住宅産業全体としての金融の疎通という問題が一つの大きな基本的条件として研究に値する問題だろうと思います。この辺のところは、現在の不動産業に対する融資というのがきわめて一律規制という形でやっておる問題に対しても議論はあろうかと思います。これについては、何らかの形でほんとうに家が建っていくための金融と、そうでない金融とを見分けるようなことが必要ではなかろうかと考えておりまして、建設省にも、たとえば証明制度、あるいは地方公共団体が、この不動産業者はこういう宅地で上に家を建てておられるから、この金融は証明しますというようなことになれば一番いいんではないかということで検討をお願いしておるわけであります。  ただ、そもそもその不動産業者に対する融資を規制していくことが、いわば対症療法と申しますか、あるいは非常措置でございますので、あまりこういう措置が長続きしていくこと自身が、全体的に住宅政策に寄与するかどうかということは、これは私は非常に問題だと思います。そういう意味からいたしますと、やはりああいう住宅ローン、不動産業の規制そのものについても、もう規制が撤廃できる時期が早く来たいものだと考えておりますが、現在のところはなかなかそういう状況になってない。そういうことからいたしますと、先ほど申し上げましたような何らかの証明制度というものも短期間ではあるが必要ではないか、こういうことでいま検討しておるわけでございます。  それから、住宅金融に向けられるべき金を何らかの形で確保すべきでないかという御指摘につきましては、現在鋭意金融制度調査会で御審議をいただいております。そのときには、大体現在までは各界のいろいろの提案がございました。たとえば中期預金もその提案でございます。あるいは抵当債券という形で住宅金融会社が債券を出したいという希望もございます。それからその他住宅ローン債権信託という形で、受益証券という形で資金を吸収していくという形については、試験的に間もなく実施されようとしているということでございます。外国の制度などの中で、いま御指摘の住宅公庫に類するような政府機関を通ずる一つのてこ入れというようなことも含めて、これから研究する段階に入っておるわけでございます。そういう意味では、現在のところ特に具体的に申し上げる策を持ち合わせてないのははなはだ恐縮でございますが、御質問の趣旨に沿った形で努力しておるということで御了承いただきたいと思います。
  33. 広沢直樹

    広沢委員 最後に、一言御意見申し上げておきたいのですけれども、一応この金融引き締めの政策の過程からいろいろ考えてみましても、やはり具体的なこういう問題が起こってから、あとからあとから対策を立てている、いま調査会で検討しているということでは、いつもやはり問題になってくることは、弱いほうにしわ寄せがいくという問題なんですね。景気が非常に上向いてきている今日、問題になった過剰流動性の問題から投機の問題ということになれば、これは締めなければならぬことは当然わかり切った話でございまして、その対策を立てるならば、金融引き締めはこれだけやっていかなければならぬというけれども金融引き締め政策をとる段階においては、今日までのパターンを繰り返すのではなくて、中小企業に対してはその引き締めの中では、これは総需要抑制の中ですから、それだけ配慮するということになれば、総需要抑制がどうなるかという問題にもなるかもしれませんけれども、しかしそれがいままでの考え方であったんだろうと思うんです。したがって、中小企業対策の問題あるいは福祉に重点を置いたこういう住宅ローンの問題とか、こういう具体的な対策は強力な引き締めをやっていかなければならない段階においては、事前に対策として講じていなければならぬ。引き締め後においてこういう対策考えようとするから、必ずそのしわ寄せを何段階にこれにかぶってくるという可能性が出てくると思うんですね。ですから、いまおっしゃったように、早急に対策を立てていただきたいことを強く要望して、終わりにいたします。
  34. 鴨田宗一

    鴨田委員長 内海清君。
  35. 内海清

    ○内海(清)委員 すでに同僚の委員諸君からいろいろ御質問がありました。なおかつ時間がかなり詰まっておるようでありますので、できるだけ簡単に御質問申し上げたいと思います。  昨日来からのいろいろ質問でも、いまの金融状況、こういうことから考えまして、中小企業金融制度につきましてはきわめて多くの問題があると思うのであります。できるだけ重複を避けて御質問申し上げたいと思います。  今回提案されておりまするこの政府案、これは昭和四十三年の六月に成立いたしました相互銀行法とそれから信用金庫法のそれぞれの改正案並びに同時に成立いたしましたいわゆる金融機関の合併転換法ですか、こういうふうなもの、つまり金融二法といわれているものでありますが、これにつきまする改正であると思うのであります。申し上げるまでもございませんが、この改正の趣旨というのは、結局中小企業金融の機能を整備改善する、こういうことであると思うのであります。  そこで、まず第一点としてお伺いいたしたいと思いますのは、今日全国銀行に属しまする大手の銀行というものは、いわゆるコンピューターでございますとかあるいは他銀行との業務提携、こういうものに、さらにはまたすでに合併のできました第一銀行と勧業銀行、あるいは太陽銀行と神戸銀行の合併、こういうふうなものによりまして規模の拡大による利益とそれから経営改善による利益、この双方を著しく向上させておるのが実情であると思うのであります。  ところが、これに対しまして、いわゆる中小企業の関連金融機関の整備でありますが、これは先ほど申し上げましたように、昭和四十三年の六月の金融二法成立以来今日まで、特にそういう改善の目ぼしいものはないように思うのでありますが、政府は四十三年のこの改正以来どれだけ成果をあげたというふうに評価されておるのかどうか、この大銀行の機能の整備改善と対比してひとつ御見解をお伺いしたいと思うのであります。私の見るところでは、この中小企業関連の金融機関整備改善というものは非常に立ちおくれておるのじゃないかというふうに見ておるわけで、その点についての御見解をひとつ伺いたいと思います。
  36. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 広範な問題でございますので、簡単にお答えしていって、補足さしていただきたいと思います。  まず、合理化状況はどうかということでございますが、相互銀行信用金庫のコストの推移というものは非常に著しいものがございます。資金のコストは、相互銀行の場合でございますと、ここ十年間に、いままでは七・五%であったのがもう七%を切って六・九%になっておるという状況でございます。信用金庫は三十七年ぐらいでございますと七・五%ぐらい、それがやはり五百ぐらいの信用金庫全体を平均いたしましても、もう七%になっているということでございます。その幅は約〇・五、六%下がっておるわけでございます。都市銀行が同じような時期には〇・〇七%、地方銀行が〇・三%のコストの低下をしておるのに比べますと、その低下率というものは相当著しいものがあるのではなかろうか、かように考えております。  何ぶん、もう御承知のように、中小金融機関は、どういたしましても非常に手数がかかる仕事をやっておる問題あるいは貯蓄専門の金融機関としての性格が強かったというようなことから、定期性預金の割合が非常に高いというようなことからコストが割り高にならざるを得ないことはございますが、各行並みの努力をしておると考えております。  それから、御指摘のコンピューターなんかの導入状況でございますが、相互銀行の場合でございますと多少資料が古いのですが、昨年の五月現在で四十五行がコンピューターを導入しております。信用金庫の場合だと、四百を上回る信用金庫の中で二百十二行がコンピューターを導入しております伊信用組合はまだそこまでいっておりませんが、それでも四十六組合がコンピューターを入れておるという状況でございます。  そのほか、相互銀行の場合にはやはり業務の提携ということが活発でございまして、普通預金を相互に受け払いしているとか計算の委託をしておる、共同研修あるいは協調融資というようなことをやっております。信用金庫の場合も、ほぼ相互銀行と同様の状況で、業務提携ということにかなり前向きに取り組んでおるようでございます。  なお、合併転換ということにつきましては、合併が実行済みのものは全体で七十八行、いま話が進んでまとまったのが一行という状況でございます。  そのほか、相互銀行から普通銀行に一件転換、信用組合から相互銀行に転換したのが一行、信用組合から信用金庫に三金庫が転換しております。合計五つの金融機関がその種類を変えたというのが現状でございます。
  37. 内海清

    ○内海(清)委員 いまのお話を聞きますと、かなりこの整備改善が進んでおるということであると思いますが、従来いわゆる都市銀行その他の銀行に比べて非常におくれておっただけに、今日相当の進展を見てもこの問題はなお不十分であろうというふうに考えるのであります。したがって今後、中小企業専門金融機関としてやりまする以上、ことに現在の状況からいえば、中小企業での金融につきましては多くの問題があるだけに、これが一そう早急に整備されていかなければならぬのじゃなかろうかというふうに考えるわけであります。ですから、この問題につきましては、これらの金融機関の機能の整備改善ということにより一そうの努力をしていただかなければならぬ、これをひとつ強く要望しておきたいと思うのです。  それから第二点でありますが、今回のこの御提案は、相互銀行信用金庫、あるいは信用協同組合、こういうふうなもののそれぞれの業務範囲の拡大を意図しておるものであります。この点はよく理解できるのでありますが、全国銀行との比較におきまして、政府は信用金庫、信用組合等の機能をどういう方向に発展させようというふうに意図されておるのであろうか、こういうふうな一つの疑問を持つわけであります。  全国銀行中小企業も営業の対象としておりますことは御承知のとおりであります。ところが、相互銀行信用金庫、それから信用組合というものは、対象中小企業に限定されておるのであります。昨年のような非常な金融緩和の時期におきましては、全国銀行中小企業向けの金融にも非常に進出していった。これはまぎれもない事実であります。そのことがまた中小企業専門金融機関をはなはだしく圧迫してきたのも現実であります。そして全国銀行は、中小企業に対しまして融資範囲を拡大しておきながら、その後になりまして、いわゆる今回の窓口規制ということが出てきたわけであります。こうなってまいりますと、金融の引き締めに一転いたしまして、中小企業はほとんど顧みられない、こういうふうな状況になってきて、このことがまた中小企業そのものをいま非常に苦しい状態に追いやっておる、こういうことであると思うのであります。このことは、いままでいろいろ整備、改善はやってきたと言われますけれども、今日のこの状況から申しますと、中小企業金融機能が必ずしも安定していないということを物語るものではなかろうか、かように思うのであります。  したがって、今回の改正にあたりまして、このような点についてどういうふうな配慮が行なわれておるのか、そういう点をまずお伺いいたしたいと思うのであります。
  38. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かに引き締め下になると、中小企業のような弱いところが最初にしわ寄せを受けるという現象が過去にあったわけでございます。今回そういうことのないようにということで、私どもも決意を新たにしてそういうことをやっていきたいということを考えておるわけでございます。最近の新しい資料はまだ集計が出ておりませんが、従来までの引き締め下の初めの数ケ月間においては、むしろ都市銀行のほうが全体の資金量の中で中小企業に向けておる貸し出しの比率というものは従来以上にふやしてきておるということがいえるかと思います。これはむしろ都市銀行のような大銀行中小企業金融に出すのがけしからぬという問題ではなくて、こういうものが比較的中小企業に進出していることによって、安い資金が出ていく。それは相互銀行信用金庫を圧迫する問題ではなくて、むしろ逆に刺激材料になる。競争の効果で、合理化努力といいますか、いわば過保護の形で経営をやっておるものに対する一種の刺激材料になる、歓迎すべきだ、かように考えております。  そういう意味からいたしますと、中小企業金融に対する全国銀行の比率が落ちないで、伸びてもらうということがまず第一点のねらいでございますが、同時に、相互銀行信用金庫がそのために圧迫されないようにということも私どもの関心事ではございます。ただ、相互銀行信用金庫資金量の伸びというのは、むしろ全国銀行を上回っておるような状況でございまして、現在までのところ、そういう意味からいたしますと、相互、信金、信用組合といった中小企業金融のいわば原資というものについての確保の状況としては、引き締め下といえどもあまり心配はいたしておりません。  問題は、そういうふうに集められたお金ができるだけ効果のあるように出ていってもらいたいというところが私どもの念願でございまして、できるだけ安い資金で良質のお金が供給されるように、そのためには、先ほど指摘もございましたように、今度の提案で、そういう方向に沿って自己資本の比率を厳格に押えることによって、むしろ効率的な運用ができないということをはずしていこう、あるいは信用組合の場合でございますと、信用組合が貸しやすくするために、原資を調達するのに二割程度員外預金を集めていいようにするというのもそういう考え方でございます。そのほか今回提案いたしておりますのも、大体そういう趣旨に沿ったことを内容にしておると私は考えておるわけでございます。
  39. 内海清

    ○内海(清)委員 なるほど、良質低廉な資金を供給しよう、そのために都市銀行中小企業関係に進出することは好ましいことである、これも一つ考え方でございましょう。しかし、今回のような状況になってきますと、かえってそのことが中小企業を非常に苦しめておるという状況になっておる。そういう状況が起きないように今日まで行政指導と申しますかそういうものが十分行なわれて、こういう事態が出てこなければ、それもまた認められることかと思うのであります。  これは一例でありますが、われわれのところにも中小企業関係からいろいろ連絡があります。これは銀行名をあげることはいかがかと思いますから省略しますけれども、ある大手の大企業の下請——その大企業には系列金融機関があるわけであります。そういうところが非常に進出してきた。ところが、この窓口規制が出てまいりますと、ほとんど相手にしてもらえない。金融機関の行き方としてはどうかと考えますが、これは窓口規制が強力に行なわれましたためにそういうふうになったんだと思いますけれども、そこでその下請の中小企業は非常に困っておるんだ、こういうことであります。こういう現実があるわけでありますが、それらにつきましてはさっき御指摘のような問題の裏面が出てきた、こういわざるを得ぬのであります。  でありますから、そういうことについての基本的なお考えは私ども理解いたしますけれども現実の問題としてはそういうことが十分解決されていかなければならぬと思うのであります。それにつきましての御意見をお伺いいたしたいと思います。
  40. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 全体の話として申し上げたことでございますが、そういう問題が現実にはかなり起こっておることと思います。そういうためには、私がいま申し上げたような一般論ではなくて、非常にきめのこまかいことをやっていかなくてはいけない、さように考えておるわけでございます。現に全国銀行なんかでも苦情相談所というようなものを設けて、そういう苦情を承っていって、できるだけ相談に乗ってごあっせんするというようなこともその一つかと存じます。あるいは通産局あるいは財務局といったところでそういう行政的な相談、苦情相談といったことも承っていくのも一つかと思います。いずれにいたしましても、しかし基本的には中小企業金融を疎通させていくために、そういうときの御指摘のような受けざらとしての中小企業専門機関というものを育成していくということを同時にやっていくということでございまして、全体の景気調整の中でそれがしり抜けにならないようにという一面と、同時にそのしわがそういうところに寄らないようにということについては、非常にむずかしいことでございまして、現在までのところ、過去の引き締めに比べると比較的全国銀行の経営者もかなり自覚してやっておるのではないかと私は思いますが、何ぶんいわば経済の転換期でございますので、その辺の頭の切りかえについては、今後やはり息長く指導していきたい、かように思っております。
  41. 内海清

    ○内海(清)委員 先ほど申し上げたのは一例でありますが、ことに大企業で系列金融機関を持っておるところ、そういうところの下請がこういうことが多いようであります。ですから、この点はわれわれのほうにもかなり入っておりますけれども、われわれはこういう場合には十分ひとつ中小企業庁あたりと相談すべきであるというふうに言ってきておるのであります。現実の問題としてはそういうところはかなり深刻であります。  ついては、これにつきまして、こういう事態に対して中小企業庁のほうはどういうふうな指導をされ、どういうふうな処置をされてきたか、対処されてきたか、これはひとつ中小企業庁のほうにお伺いしたいと思います。
  42. 原山義史

    ○原山政府委員 全国銀行金融緩和時には中小企業金融を増大しまして、逼迫の際にはこれはなるべく縮小し、切っていくというふうな傾向は、中小企業の経営にとってきわめて不安定な要因となるということでございまして、非常に好ましくないというふうに考えております。特に下請関係という問題につきましては、先般のドル・ショックの問題の場合におきましても、全国銀行協会のほうで下請関係金融に十分配慮するようにというふうな要望を出していただいておることでもありますし、私ども、通産局等を通じまして、具体的な事例を取り上げて、苦情相談に当たらせていきたいというふうに思っております。  なお、今回のドル・ショックの関係に関連しまして約二千ほど下請関係の調査をやっておりまして、特にそういういろいろ親企業の問題、いまおっしゃったような金融問題等も含めまして、問題があればどしどしこちらのほうに申し出てもらう、必要があればこちらのほうから大企業あるいは関係方面に連絡し指導するというふうなたてまえにしておりますので、具体的な事例を取り上げて個々に解決に持っていきたいというふうに思っているところでございます。  なお、特に今回こういう事態に備えまして、政府関係中小企業金融機関におきましても、先生御承知のとおり、補完金融の役割りを十分果たさせていきたいというふうな見地から、前年に対しまして一八・九%というふうに貸し出しワクを増加いたしております。なおそのほか、限度の引き上げ等所要の改善をはかってまいりたいというふうに思っております。  それからまた、今回のドル・ショックに対処するために二千二百億円の緊急融資を行なうことにいたしておりますが、この緊急融資対象としましては、単に直接輸出をしているというものだけではなくて、それの関連の下請企業も十分拾っていくというふうなたてまえにしておりますので、金融逼迫問題とドル・ショックの問題というのは重なってきたというので非常に苦境に立っておるわけでございますが、この緊急融資も十分活用して、この苦難を乗り切らせていくようにというふうに私ども指導してまいりたいと思っております。
  43. 内海清

    ○内海(清)委員 中小企業庁としてもいろいろ御指導になっておるようでありますけれども現実の問題としては、中小企業はいま金融面では相当困難な状況にあるということは事実だと思うのであります。これはさっきも申し上げました、大企業の下請というのは、同系の金融機関であるならば、これは将来とも十分われわれを見てくれるだろうという一つの安心感があるだろう。したがって、いままで相互銀行とか信用金庫とかいうふうな中小企業の専門の金融機関のほうの手を離れて、もちろんこれは系列ということもありますし、そちらに移って、そうしていっておったのが、急に窓口規制によってそれが非常な壁にぶつかったというここに中小企業の一番困った状況が生まれてきたわけであります。したがってそういう場合には、これらにつきまして十分救済の手を差し伸べなければ中小企業は立ち行かぬということに相なるわけであります。したがってこの問題につきましては、ひとつ大蔵省も今後、昨日あたり聞きますと、いろいろ今後検討してそういう問題ごとに解決していこうという御意向のようでありますけれども、およそこれは窓口規制をやる時分には予見できる問題ではないかというふうにも私は思うのでありまして、これらにつきましてはもっと十分配慮をして、そうしてそういう状態の起きないようにやっていくことが必要であろう、こういうふうに考えるわけであります。なお中小企業庁としてもほんとうに手の届く、こまかいそういう施策を強力に進めていただかなければ、今後の中小企業関係はますます困難度を増すだろう、かように考えるわけであります。その点を強く要望しておきたいと思います。  それから第三点でありますが、さらにこの信用金庫、それから信用組合、これは営業地域を限定されておるのでありまして、なおかつこの国際化時代にもかかわらず、外国為替業務、こういうふうなものは認可されていないというのが現実であります。ところが、信用金庫取引しております中小輸出メーカーというのは、御承知のとおりかなりあるわけであります。そこで、さらにこれは今後の問題になるかもしれません、今回の改正にはこれは十分のものはないと思うのでありますが、お伺いいたしておきたいと思うのは、その一つは、この国の制度として営業地域の制限を受けておる信用金庫それから信用組合、これらに許容されておりまする金融政策上の恩恵というものは何であろうかというふうな一つの疑問を持つわけであります。御承知のように、信用金庫は全国で四百八十四でございますか、あるということでございますが、その中で、日銀と預金取引等を認められておりますのは百六十五金庫、こういうふうに伺っておるのでありますが、そういう日銀との取引が認められる金庫の数をふやすという方法、さらには日銀との手形の取引業務を認可する、こういうふうな新しい政策はだんだんと必要になってくるだろう、かように考えるのであります。これについては政府はどういうふうな見解を持っておられるか。これは将来の問題でありますから、できれば次官にも御見解をお伺いいたしたいと思うのであります。
  44. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 この問題は、一つのルールをきめて、そのルールでやっていくというその概括的な話よりも、やはり一つ一つの具体的な金融機関、言うなれば個々のケース・バイ・ケースで考えて、方向としてはおっしゃるようにだんだんふやしていくということが適当であろう。先ほど指摘のように、数の上でも信用金庫は、ただいまのところ全体の三分の一に当たる金庫が取引対象となっておるという現況でもございますので、考え方といたしましては、さような考え方で前向きにはやっていきたい、こう考えておるわけでございます。
  45. 内海清

    ○内海(清)委員 この問題は、今日の経済活動の状況から見ますと、中小企業にもこういう道が十分開かれるべきであると私は考えるのであります。それぞれの具体的なあれによってやっていこうということでありますけれども、これは、いずれにしてももっとそういう日銀との取引が認められる金庫の数をふやしていく、この方向は当然今後十分検討されなければならぬ問題であろうと思うのであります。  それからいま一つは、今回の改正案では、信用金庫外国為替の取り扱い業務、これは認められていないのであります。これはもちろん直ちにこれを認めることは、いろいろな関係で困難な問題があるだろうということも思うのでありますが、今後はこれを認めていくという方向で検討さるべきである、至急にそういう方向で検討さるべきであると思うのであります。  同時に私は、そういう方向を確立して、信用金庫等に対しましても外為業務に着手する準備をさせるような指導をしていく必要があるのではなかろうか、こういうふうに思うのであります。あるいはそういう点は法律事項ではなくて、大蔵省の行政認可というふうな方向にいくのかもしれませんけれども、いずれにしてもこの二つの問題を早急に改善していく方向に向かうべきではなかろうか、かように考えるのであります。いまの問題も今後の問題であります。したがって次官にひとつ御意見をお伺いいたしたいと思います。
  46. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 この問題は、先ほど広沢委員からも御質問がございまして、それに対して局長からもお答えをしておりまするとおりでございますが、何せ外為取引をしていただくという上においては、それだけの信用がなければならないということが一つ。それからもう一つは、その内部組織におきまして、それを処理するだけの能力を備えた、いわゆる具体的に申せば、そういう職員がいなければならない、こういうことがございます。御承知のように、外為及び外国貿易管理法という法律がございまして、それで大蔵大臣がこれを認可しなければならないという、その認可条件にもいま申し上げたようなことがあるわけでございまして、そういう一つ条件にはまってまいりますためには、いろいろ仰せのように、そうした具体的な経験を積んでいただくという、そういう一種の訓練がだんだん必要であります。そういう意味で、いまいろいろとそういう訓練職員の中ではやっておることでありますし、また信金の中でもそういう外国為替取引に備えた事務についてもいろいろ勉強をしておるようでございますので、だんだんそういうことが整備してまいりますれば、仰せのような外為取引を認めるということも可能になってまいる、そういう段階が来る日はそうえらい遠いことでもなかろうと思いますので、私どもも前向きにその時点になれば考えてまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  47. 内海清

    ○内海(清)委員 ただいま御答弁によれば、なるべく早い時期においていわゆる準備がそれぞれ十分できたならば、外為取り扱い業務を認可する、こういう方向考えておられる、かように承知いたしたいと思います。しかしこれにつきましては、やはり大蔵省として十分着手する準備をさせるような指導をされることが必要であろう、かように考えておるのであります。  それから次に第四点としてお尋ねしたいと思いますのは、一貸し付け企業に対しまする融資額の限度、これを引き上げますことは当然であると思うのであります。しかし、これが融資大口化傾向を誘発してはまた困る点がある、そのことによってまた小口融資が圧迫されても困るという問題があるのでありまして、その辺の調整がきわめて重要なことだと思うのであります。これらの点につきまして、監督行政はこれは厳重に行なわれなければならぬ、かように思うのでありますが、御見解をお伺いしたいと思うのであります。
  48. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 私どもも同様の懸念を持っておるわけでございます。ただ、私どもといたしましては、現在までのところさほど大口化傾向というのはここ数年起こっていないと承知しております。ただそういうことの裏には、実はたとえば資本金の一割以内であっても、その一割がたとえば十五億とか二十億であってもいいんだということではなくて、資本金の一割以内であっても、五億以上のものについては原則として貸さないようにしてもらいたい。ただそれを厳格にやるということはいかにもしゃくし定木でございます。あるいは法律で御制定いただいたものをそう無視するということにすべき性質のものではございませんので、全体の二割程度までは五億をこえるようなものがあってもこれは認めましょう、そういう指導をいたしております。小さな相互銀行でございますと、もともと自己資本の一割が五億以下でございますので、そういう心配はないわけでございますが、大きな相互銀行になりますと、そういう状況になっております。ただ、実績は、先ほども申し上げましたように、そういう大口自己資本の五%をこえるような融資は、大きな相互銀行の中では四%程度である、小さな相互銀行の場合だと、自己資本の五%をこえるようなものは一八%くらい、こういう状況でございます。
  49. 内海清

    ○内海(清)委員 このことは、貸し付け限度額がだんだん上がっていきますと、とかく大口化傾向が出てくると思うのであります。もちろん中小企業も、今日の経済活動からいえば、だんだんと大きくなっておりますので、それもある程度中小企業専門金融機関としては考えなければならぬと思いますけれども、そのために小口融資が非常な圧迫を受けるようになることは、かえって逆効果を招くのじゃなかろうかと思いますので、その点につきましてもひとつ十分今後御配慮願って、御指導願いたい、これまた強く要望しておきたいと思います。  時間がかなりたちましたので、この辺で終わりにしたいと思いますが、第五点として、信用組合の員外預金の幅を今度は二〇%に広げたわけであります。このことはけっこうでありますが、これによりまして、信用組合と信用金庫との機能の差というものが、ますます縮小していくのじゃなかろうかというふうに私は考えるのであります。これは一面におきましては、またこの金庫と組合との間におきます過当競争を刺激することにもなりはせぬかということも実は心配いたすわけであります。  そこで、ここまでまいりますと、本質的に両者の機能をことさら区別していくよりも、むしろ同一の機能として、合併あるいは吸収等の大型化あるいは広域化を促進することが、より有利なのではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。これに対します御見解をひとつお伺いして終わりたいと思います。
  50. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 お説のように、信用組合、信用金庫、非常によく似た形で活動が行なわれておるわけでございます。もっとも信用組合の中には、単に地域組合のほかに業域組合、たとえばお医者さんだけの信用組合であるとか、そういう信用組合もございます。あるいは職域といった一定の職場内の信用組合ということも認められる可能性はあるわけでございます。そういう意味で、それぞれ多少なりとも現段階においては特徴がございます。一方は非常に封鎖的な、相互扶助金融に徹しておる、一方は比較的開放されて預金を吸収しておるというところの差はございますが、員外預金を今度二割程度、農協並みに認めていくということからいたしますと、形の上では一歩同質化のほうに近づいていくということも否定できないことだと思います。私どもといたしましては、やはりそういう金融界全体を通ずる同質化という傾向が、日本の経済社会を背景にした趨勢というふうに考えておるわけでございますが、そういう前提のもとにおいて、まさに御指摘のように、信用組合の転換ということについては、できるだけ前向きの姿勢で協力していきたい、あるいは合併についてもできるだけ協力し、歓迎していきたい、こういうことで現在指導しておるところでございます。
  51. 内海清

    ○内海(清)委員 まだいろいろ問題がございますけれども、時間の関係で終わりたいと思いますが、いまの問題は将来の問題として十分ひとつ御検討の上、強力な指導をしていただきたいということを強く要望して終わります。
  52. 鴨田宗一

    鴨田委員長 平林君。
  53. 平林剛

    ○平林委員 私は、法律案に関連をいたしまして、最近の金融事情、特に金融引き締め政策の問題で、たとえば過剰流動性の問題、住宅ローン、それから中期預金、これらについて少し政府当局の考えをお尋ねしてまいりたいと思うのであります。  そこで最初に、過剰流動性の問題について、御承知のように土地だとか株式、商品相場、宝石、絵画、ゴルフ会員権、世をあげて投機時代であります。私は、この元凶はいわゆる過剰流動性にある、その傾向を助けたのは、政府の経済政策と見通しの誤り、二つ目にはドル・ショック以来の巨額な外貨の流入、第三には超緩慢といわれた金融状況を放置してきた、こういうところに要因があると思うのであります。  そこで、過剰流動性の問題がにわかに注目を浴びまして、政府におきましても金融の引き締め政策、これはインフレの傾向を抑制することでもありますが、同時に過剰流動性を吸収していくのだということから、先般金融の引き締め政策が一連的にとられた。  ここで私がお尋ねしたいのは、過剰流動性というけれども、その実態は一体どういうものであるのか、これがまずしっかり頭に入っておらぬとぬかにくぎ、やみ夜に鉄砲と同じことです。私は、むずかしい問題だけれども、過剰流動性についてやはりある程度輪郭をつかむということがなければ、金融政策をやろうと財政政策をやろうとだめだ、こう思うのでありまして、この過剰流動性の実態についてどう把握されておるか、これをまずお尋ねしたい。
  54. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 過剰流動性という問題は、確かにいま御指摘のようにむずかしい問題だろうと思います。一つは、これが過剰流動資金といわなくて、過剰流動性といわれておるところからも明らかでございますように、具体的な計数でもってなかなか提示しがたいものであろうかと考えております。ただ、過剰流動性というものについて私ども考えておりますことを申し上げますと、これは一つの国民経済に流れておる通貨の大きさ及びさらにはそれを背後といたしまして、どれだけそういう通貨と申しますか、資金が利用可能になるかという利用可能性、この二つが結びついたものがいわゆる流動性である、かように考えております。たとえばそういう資金が非常に豊富であっても、それを投資なり運用いたしましてなかなかあとが続かないというような状況でございますれば、それは非常に慎重な投資態度にもなり得るわけでございます。一つ資金運用いたしまして、その結果これがさらに補給されていくという、いわば利用可能性というものが増大いたしますと、そこにいわば流動性が非常に豊富な状況として、ある意味で過剰というような現象をもたらしてくるものである、かように考えておるわけです。  ただ、それではそういうものを計数的にどう考えておるのかということでございますが、いま申し上げましたような私ども考え方からいたしますと、これは確かに現金通貨というものが一つございます。そのほかに現金通貨に加えまして、資金の利用可能性でございますから、その利用の大部分は銀行の信用供与ということになるわけでございまして、その信用供与の裏にあります預金というものが一つのやはり計数的な基礎になる。そういう意味からいたしますと、現金通貨と預金通貨、この預金通貨の中で定期性の預金のものもございますし、あるいは要求払いのものもございます。総体してそういう預金通貨の大きさ、大体GNPに比べて大きいか少ないかということが一つの手がかりになるのではなかろうか一かように考えております。  そのほか、企業の手元流動性という考え方もあろうかと思います。これは企業が自分の手元にあります現金及び預金に対しまして、売り上げの高さはどういうものであるかというような指標もひとつとり得るかと存じますが、総体して申し上げますると、過剰流動性と申しますか、流動性というものはそういうものであると考えております。  ただ、これが過剰であるかどうかということにつきましては、これは従来から金融が非常に緩和しておるときには、常に流動性は過剰なと申しますか、豊富な状況でございます。これが締まってきますと過小になってくるという状況の繰り返しで推移してきたわけでございます。その間いわゆる過剰流動性という現象が昨年来生じてきたというところのことかと存じます。
  55. 平林剛

    ○平林委員 理論はわかるのです。ただ、今日金融引き締め政策をやる場合でも、あるいは財政政策をとる場合でも、この問題について、政府がある程度、過剰流動性の正体についての総体的な把握がはっきりしないのですよ。たとえば、いわゆるドル・ショック以来、外為会計から輸出入の企業に支払われたものが、四十六年から四十七年で約六兆円、四十八年に入ってから約三千五百億円余り、この六兆三千五百億円余り、これは全部でなくても、このうちのどの程度がいわゆる過剰として流動するかという程度の政府の推定というものがやはりあっていいんじゃないか。そうでなきゃ金融引き締め政策というのはぬかにくぎだし、やみ夜に鉄砲だ、こう言われるのですね、だから、そのうちのどの程度を見たらいいかという、やはり見解があっていいんじゃないですか。  それからもう一つは、マネーサプライの点で見ても、最近における関連指標の推移を見ると、四十七年の十月から十二月における現金通貨と預金通貨、それに定期性預金を加えたものが合計しておおよそ八十兆円あります。このいわゆるマネーサプライの増加率というのは、四十七年度において、二三・一%、十月から十二月には二三・九%、四十六年度において二一%ですから、四十七年になっても引き続ぎ増加しておる。これについてある銀行では、この八十兆円の中でおおよそ九%ぐらいはいわゆる過剰流動性になるのじゃないかという計算をしておるところもあるわけですね、九%というと約七兆五千億ぐらいである、こういう推定もされておるわけですね。  最近日本銀行の日銀券の増加率も、戦後の混乱期を除くというと過去最高の水準で、この間四月二十八日の発表を読んでみますと、月中の平均発行残高が六兆五千七百七十億円、前年同月比二七・五%増という数字も見ました。いろいろなことを総合して、こうした数字の摸索が行なわれておるわけでありますけれども、やはり政府は、こうした問題についてのかなめになっておるのですから、ある程度推定を立ててそしてわれわれにも示していく。あとで聞きますが、預金準備率がどういう効果があらわれて、公定歩合の引き上げがそうした問題についてどういう役割りを果たすかということも、その前段のおおよその計数の考え方というものがないと、われわれ判断できない。いろいろなことをおやりになっているのだけれども、当たっているのか当たっていないのかわからない。この問題については計数的にあらわすことは困難でしょうが、おおよその考えぐらいはひとつ示してもらいたい。
  56. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 まず最初に、一昨年来の外為会計からの散超がどういうふうに、どの部分が超過部分であろうかということは、はなはだむずかしいことではございます。ただ、いままさに御指摘のように、ここ両三年で外貨の面から来る通貨の供給が非常にふえたということは事実でございます。ただ、国民経済の必要になります通貨の供給というものが、どういう形で供給されていくかという窓口は、一つは外貨でございます。一つは財政の面からの散超、あるいはもう一つは三十年来の日銀貸し出しという形で通貨が供給されている。その通貨のルートがどうであるかという問題よりは、その全体の供給量が多いか少ないかという問題が、事後的に問題にならざるを得ないことだろうと思います。そういう意味から、私どもは、外貨の増加をてことして国内にどれだけの資金が供給されたか、その要因を分析する一つの手段といたしまして、日本銀行が通貨供給の要因分析ということをいたしておるわけでございます。  ここ数年来の通貨の供給要因といたしましては、現在、いまお話しのように、外貨の増加から来る供給要因が四十六年度では一八%、対民間信用の増が残りの八割である、銀行貸し出しが八割を占めておる。確かに、最初のてこは、輸出の手取りがふえることによって資金がふえ、それが銀行預金されて、預金が信用創造になってふえていくという形で通貨がふえていくということでございますが、形の上ではやはり八割は銀行の与信超過によるものだ、こういう考え方に立ちまして、これを調整していくためには、まず銀行貸し出し態度を変更させていかなければならない、こういうことから引き締め政策、その一環として準備率に踏み切ったというのが現在の政策の基本にある考え方でございます。幸い、外為を通ずる供給は、現在フロートに移りまして減っておるわけでございます。むしろ吸い上げ要因になっておるわけでございます。現在のところ、むしろ銀行貸し出し態度に変化を起こさすために、窓口規制を初めとする引き締め政策をとっておるというのが実情でございます。
  57. 平林剛

    ○平林委員 確かに日本銀行の現金及び預金の供給要因の内訳を見ると、外貨の増加あるいは対政府の信用増、対民間信用増等を見ますというと、その八〇%が金融機関貸し出しというところにあるというのはわかります。わかりますが、そしてまた、外貨増が四十六年度から比べて四十七年度は低下しておるというのも数字の上ではわかります。しかし、いまやっておる金融引き締め政策は、これからの貸し出しを押えていくというだけでしょう。もうすでに四十六年、七年の外貨の急増によって得た手元流動性、余剰の資金は、商品あるいは土地、株ということであばれ回っちゃって済んでしまっているわけですね。そしてそれが場合によっては土地に化け、場合によっては預金に化け、あるいは株に化けているわけですね。これらを売ればまた手元の流動性はふえて、今日国民の生活を不安におとしいれた投機あるいはその他物価高の要因としての根というものは消えていかない。  そこで、これは銀行局長だけの問題ではありませんで、政府全般の政策の問題でありますけれども、私はいまの過剰流動性を吸収するための金融の引き締め政策というのは、もう過去の問題はほうってしまっておいて、これからのものだけだ、それじゃやはり手抜かりがあるんじゃないか、こう思うのですね。これはどうですか。
  58. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かに金融面からする措置というのは、非常に間接的な面が側面にございます。ただ、わが国のように非常に銀行借り入れに対する依存度の強い経済におきましては、これが外国には見られないほどよくさいてきだということは、もう平林先生とっくに御承知のことだろうと思います。私どもがそういう引き締め政策ということを現在とっておりますのも、それを通じて銀行貸し出し態度の変化を通じて、銀行に借り入れ依存をしている企業の投資意欲あるいはその企業の行動を変えさせよう。それが慎重になることを通じて、全体の経済活動のテンポが鈍り、渋くなっていくということを通じて、引き締めが効果が出てくるというのが、これまでの経済のパターンでございます。そのパターンは今後も、銀行に対する依存度が非常に強い経済におきましては、そう早急には変わらないだろう、かように考えておるわけでございます。したがいまして、その引き締めに踏み切ったとたんに効果というものはなかなか出てこない。いわば企業家の心理を通じて変化が出てくる期間をどうしても待たなくてはいけないというのが、やはり金融引き締めの一つの限界だ、かように考えておるわけでございます。  幸いもう数カ月たち、だんだんそういう企業家全体の心理の変化あるいは日本の経済社会全体のムードが変わってくるという時期が、遠からず来るということを期待しておるわけでございます。そして、そういうことになった場合には、今度はそういう実態活動が金融面に逆にあらわれてきて、通貨の還収を行ない、あるいは預金量の伸びが減ってくる、こういう繰り返しというのが起こってくるのではないだろうか、かように考えております。
  59. 平林剛

    ○平林委員 私は、経済政策あるいは特に金融の政策などを見て、どうも大蔵省は気象台みたいなことを言っていると思うのだな。天気予報と同じだ、私はそういう感じがするのですよ。もう少し計数的に分析をして手を打つというようなことを、多分おやりになっていると思うけれども、あまり自信がないから表に出せない、こういうことだろうと思いますが、何となくお話を聞いていると、気象台みたいなことを言っている。  たとえば今度の過剰流動性を吸収するための金融引き締め政策について、政府からの資料を検討してみますというと、一月実施の預金準備率の引き上げで凍結資金量は二千九百億円、それから三月実施の預金準備率の引き上げでおおよそ三千五百億円、こういう数字が示されていますね。合計して六千四百億円。大蔵省では、準備率の引き上げの金融機関貸し出しに対する波及効果は、凍結資金量の六倍から七倍ぐらいに考えているという注書きが書いてあるから、これを見ると、六倍にすれば三兆六千億円ぐらいになる、こういうことになると思うのですけれども、さて、今度は都市銀行預金量の増加を見ると、昭和四十七年の二月と昭和四十八年の二月、この一年間に都市銀行は何ぼふえているかというと、預金量は、四十七年度に三十一兆八千五百十六億、一年後の二月には四十兆千二百七十八億ですから、この一年間だけで都市銀行預金量は八兆二千七百六十二億円ふえている。地方銀行においてもこの一年間に四兆三千八百二十八億円増加しておるわけですね。信託銀行においてもこの一年間に六千三百七十三億円ふえている。その他の金融機関を合わせると、この一年間の預金量の増加というのは非常に多い。金融機関というのは、預金をするだけが商売じゃないのだから、それを貸し出しするということになってくるわけですから、依然として対民間に対する信用増加というのはふえている。  私はそういう点から考えますというと、今日まで行なった預金準備率の引き上げや公定歩合の引き上げ、これが一体過剰流動性を吸収するための政策としてどれだけの効果があるのか、具体的な数字はある程度むずかしいかもしれませんけれども、どの程度の効果があるか、天気予報的なことでなくてもう少し具体的な考え方というのを示してもらいたい。
  60. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 おことばを返すようで恐縮でございますが、過剰流動性というものの基本が銀行貸し出し態度にあるということを申し上げたわけでございまして、その貸し出し態度の変化がいろいろの企業活動を通じて全体の企業家心理に影響してくる、こういうことでございます。したがいまして、いわば過剰流動性を吸収するという考え方ばかりではいけない。むしろ過剰流動性の背後にある企業家の考え方を変えさせると言ったほうが適当かとも思います。しかし何らかのかっ  こうで数字を示せという御指摘でございますので、あえて非常に大胆に申し上げますれば、やはり私どもの指標となるものは通貨の増発率、マネーサプライのGNPに対する比率が一体どのぐらいになることがノーマルと考えるかということではなかろうか、かように考えます。それ以外には、全体の資金が幾ら減るかということはむしろむずかしい話でございます。  そういう意味からいたしますと、まあ四十四年から四十六年までGNPに対する現金通貨とそれから定期性預金の割合というものが大体二〇%台の上のほうに推移しておる、それが四十六年の後半から三〇%をこえるようになった、これがやはり一つ変化でございまして、やはりGNPに対して二〇%台の上のほうで推移するというようなことになるのが一つのノーマルな状況かなと、かように考えております。もちろんGNPの中の構成比が変わりまして、たとえば非常に消費側に寄って伸びるか投資に寄って伸びるかによって違いますが、私はそういうものではなかろうか、かように考えております。
  61. 平林剛

    ○平林委員 このマネーサプライの指標が重要な指標になるというのは私はわかりますし、その効果は、経過を経て出てくるということではっきりすると言えましょうけれども、どうも今度の引き締め政策の中で、たとえば都市銀行の十四行の貸し出し増加の額を前年同期の二八%減にするとか、あるいは信託銀行関係では前年同期の三%減とか、長期信用銀行に対しては一〇%増とかやっておりますけれども、私、このパーセンテージで貸し出し増加額の規制というのは、ほんとうの意味の今日の状態に適切な措置であるかどうか疑問に思っているのです。というのは、対前年同期貸し出し増加がうんとふえたとき、たとえば、都市銀行を例にとれば、一六%減にしたところで、ただいま申し上げたように、この一年間で預金量が八兆二千七百六十二億円もふえておる。超緩慢の時期のものを基準にして、ある程度の割合を示して貸し出し増加を押えたとしても、総体の金額ではふえているのです。都銀の例をいうと、かりにずっと一六%減で経過しても、現在四十兆あるものの一六%減としたら、三十三兆六千億円ぐらいになる。それは去年の同じ時期の三十一兆円から見ればまだ大きいわけです。ですから、いわゆる信用増加という点では、むしろ増加傾向になるわけです。これで当初政府が目的としておる効果、あるいはそれを抑制し——これでも多少は抑制にはなりますが、いま加速度的に進もうとするインフレ、いろいろな物価高の諸悪の根源を退治するという、それまでの効果をあげることができるかどうか疑問ではないかという感じがするのですが、私は手ぬるいのではないかということを感じておるのです。いかがでしょうか。
  62. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かに先生御指摘のように、二八%減といえども貸し出しの増加額はあるわけでございます。ただ、この一六%とかいうのは、これはいわば一種の統計的に御説明をする意味で申し上げておるわけでございまして、各銀行別には資金を割り当ててワクで規制しておるということでございます。そういう意味では、都市銀行は四月−六月は一兆足らず、九千八百八十億くらいだったと思いますが、そのくらいのワクで規制しております。長銀が二千六百億、信託が三千六百億、市銀が四千四百億、こういうワクで規制しておるわけであります。  ただ、これの強さ、弱さということについては、確かに先生御指摘のような御意見も一つあり得るかと思います。逆に、これが将来の経済の先行きに非常に強いショックを与え過ぎはしないかという意見があることも周知のとおりでございます。この辺のところは、引き締めに転じましたのがことしの一月からでございますので、大体、従来の傾向から見ますと、六カ月後にその効果というものが徐々に出てきておるということでございまして、私は、むしろこの六月、七月といった時点において、やはり一つのよりはっきりした判断のできる時期が来るのではなかろうか、かように考えております。何ぶんいま次から次に薬を飲んだ状況で、その薬がきいてくるまでの期間というものも多少考慮してみますれば、確かに先生御指摘のような考え方ででも臨まなくてはいけないか、その辺の時期はあと一、二カ月待つべきではなかろうか、かように考えております。
  63. 平林剛

    ○平林委員 そこで私は、先般日本銀行のお金の増発が、戦後の混乱期を除いては最高になったということを非常に注目しておるわけです。精神的な意味、こういう措置をとって企業家あるいはそういう資産を持っているものに対して警戒信号を発したということがまだ十分さいていない。そこへ持ってきて、六月時期を迎えて大型決算資金が要るとか、あるいは賞与の支払いが集中するとかいうので、六月金融いろいろ騒いでいる。しかし私は、いま申し上げました見解から見て、そう大げさなことを言うな、いま行ないつつある効果というものをゆるめてはいかぬ、ゆるめるとまたくずれて、現在進行中のインフレ傾向というものはおさまりませんよという態度をとらなければならぬのではないか。  ところが最近、こうした逼迫感を強調することによって、法人税の延納問題などが浮かび上がってくるだろうと思うのでありまして、これは国税庁にひとつ伺いたいと思うのですが、こういう場合、法人税の延納などは法律的に措置はとられておるのでしょうけれども、無原則にこれを認めていくということになると、金融政策でもあと追いであるし、すでにある手元流動性ではけた株券もあるし、在庫もあるし、そういったようなところを、法律的な措置があるからといって、延納でさらに手元流動性を潤沢にさせるようなことは、これは間違ってもやらしてはいけないのではなかろうか、こう思うのですが、国税庁の考え方を伺っておきたいと思います。
  64. 相原三郎

    ○相原説明員 まず延納の状況から御説明いたします。  最近の延納状況を見ますと、非常に利用率が低下してきております。たとえば四十四年、四十五年を見ますと、延納の利用状況は全法人で二五%ないし三〇%という状況が、最近は急に低下してまいりまして、四十七年の上期は一五・一%、下期は、十月から二月ですが一五%、この中身を見ますと、六月決算の大法人、これは一億円超の大法人でございますが、わずか二・一%、非常に低い状況になっております。  先生すでに御承知と思いますが、法人税の延納制度は、納期までに半分納めれば、あとは届け出で自動的に延納できるという仕組みになっております。それからまた、公定歩合と延納期間中の利子税とが連動しておりまして、公定歩合が五・五%をこえます場合には、その約三倍の幅で利子税が上がるというぐあいにスライドしております。したがって、公定歩合の上昇には、そういう歯どめといいますか、延納の利用に対する一種の歯どめがついておりますから、先生御心配のような事態はまずなかろうというぐあいに考えております。
  65. 平林剛

    ○平林委員 それが甘いというのです。大体、延滞に対する利子程度のものより、手元流動性で商品投機でもやったほうがうんともうかるんだから、三〇%でも四〇%でももうかれば、そっちのほうに走るにきまっている。多少延滞利息を高くしたからといって、それが歯どめになるはずがない。  私は、そういう意味から考えると、国税庁はよほどこうした点について注目しておいてもらいたい。いずれ、これはいかに法律的に措置ができようとも、何とかいうことがあっても、もしもその法律を——どうしても困る人はしょうがない。延納措置はそういうためにあるのですから、いいですよ。だけれども、いやしくも今日国民が、商品投機やその他物価高の元凶である過剰流動性、手元流動性を少しでも押えていこう、政府も必死になって知恵をしぼって金融政策をとっているときに、これがしり抜けになるようなことが結果的にあらわれたら社会的に糾弾される。こういうことを自覚をしながら企業もこの措置の活用をすべきだし、またそういう場合は、手元における株券を処分しよう、商品を放出しよう、あるいはそれぞれの持っている土地をお金にかえよう、そういうことをやってから初めてそれを利用する。こういうくらいな心がまえにみんながムードをつくっていかなければだめだ。国税庁も、歯どめになりますなんて、そんな甘い考えではだめです。こういうことを注意したいと思うのですが、いかがですか。
  66. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 ただいま平林委員から御指摘の問題は、四十八年度の税制改正の問題としても検討する必要があるかどうかということで見てみたわけでございます。確かに御指摘のように非常に投機によりますところの利益等が大きいという場合には、延納金利と市中金利との関係だけからでは十分に規制できないという心配があるわけでございますので、場合によりましたならば一段と進めた措置をとるべきかどうか、これは国税庁のほうの分野もないわけではございませんが、むしろ現行税法上の問題として新しい何か歯どめ措置をつくるべきかどうかということを検討いたしてみたわけでございますが、ただいま国税庁徴収部長から御報告申し上げましたように、最近では非常に延納率が落ちておりまして、大法人に関しましては金額で、もし全部が延納を利用すれば五〇%になるべき率が二%まで落ちているということでございまして、この二%という率はある意味からいえば当然である。市中金利が下がっているわけでございますから、延納金利よりも相対的に下がっておりますから当然であるともいえますし、またある意味からいいますと、現段階では法人税をわざわざ延納してまでそれを他に回しているということは私どもの大数観察では認められないのではないか、そう心配しなくてもいいのではないかというふうに考えまして、今回は手直しをいたさないという前提で過般の租税特別措置法なり何なりの御審議をお願いしたわけでございます。  しかし御指摘の点はまさに問題があるわけでございまして、現在の延納金利は七分三厘でございますから、七分三厘以上にもっとうまく回せるということであればそれはそこを利用しようという人が出てくる危険があるわけでございます。今後そういうことの動向があってはならぬということで注視をしてまいりたい。しかし、いままでのところは、どうもそこまでして投機資金をかせいでいるということは行なわれてないというふうに私どもは見ておりますが、なお今後ともよく注視をしてまいりたいと思っております。
  67. 平林剛

    ○平林委員 それから、これと同じことですが、相変わらず卸売り物価の上昇ベース、株式や商品市況過熱の状態は温存しておるわけです。多少下がったところもありますけれども、しかし投機の元凶である商社の、あるいは不動産業の手元の流動性というのは私はまだあると思っておる。  そこで、たとえば日本銀行が手形買い取り制限の対象にしておる割引手形の問題ですけれども、最近この割引手形の転売あるいはこれを担保で資金を充当する動き相互銀行だとかあるいは信用金庫だとか農林関係金融機関などの中小金融機関などにかなり集中してきているのじゃないだろうか。特に商社などは子会社に借り入れさせる形で、これは中小企業ということで大商社は表に出てこないけれども、その子会社という抜け穴でただいま申し上げましたような措置がありはしないか。それでは金融規制はしり抜けになる。こういう点についてどういう措置をおとりになるつもりですか。
  68. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 現在日本銀行でやっておりますのは、日本銀行が特定の大企業の振り出した手形を日本銀行が買い取る限度を設けたというやり方でやっておるわけでございます。そのはね返りといたしまして商社の金融が詰まるので、系列の小さなところにさらに金が回ってくるという問題だろうと思います。これを一つ一つの会社なり種類別の質的な金融の統制ということは実際問題として不可能でございます。どうしてもやはりそういう意味からいたしまして、主として今回の引き締めというのは、都市銀行を中心として大企業をねらい打ちにするところから出発したわけでございます。そのいわば流れ込みといいますか抜け穴を防ぐという意味で、現在日本銀行相互銀行指導しておるというのが実情でございまして、中小金融機関をやっておるというのもまさにいま先生御指摘のような、そういういわば抜け穴を防ぐという意味でそちらに回らないようにという手を打っておるのが現在の状況でございます。
  69. 平林剛

    ○平林委員 いずれにしても、大蔵省、日銀でも主要銀行に対して、商社などの関係会社の子会社の資産だとか業務内容は文書で提出させるようにさせておるようですから、そうしたことをひとつ十分把握をされて、抜け道がないようにやはりしなければならぬ。あとでいやこんなことになったなどということの指摘のないようにだけ注意をすべきだという点を私はきょうの段階では申し上げておきたいと思うのです。  次に、金融引き締め政策と住宅ローンの問題。先ほどもお話がありましたように、金融引き締め政策が進むにつれまして、都市銀行の窓口で個人向けの住宅ローンを押える傾向が目立つようになったという指摘がございます。建設省と通産省は大蔵省と日銀に対して住宅金融の緩和を要望したという報道まであるわけですから、これは単なる憶測でなく責任ある官庁のほうでも動き出している。  そこで、住宅ローンの実態につきましては先ほどお話があったようであります。都市銀行の例を用いますと、最近は貸し出し増加額の一七%になったというけれども、これは数字の魔術であって、総貸し出しに対する割合というのが最も正しい。そういう意味考えますと、現在住宅ローンの実態は、都市銀行が七千四百四十四億、これは総貸し出しに対する割合が二・二%、地方銀行で六千四百七十八億、これは三・六%、信託、長銀四千二百八十一億円で二・四%、つまり全国銀行で一兆八千二百三億、二・六%というふうに私は承知しておるのですが、これは間違いございませんか。
  70. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 そのとおりでございます。
  71. 平林剛

    ○平林委員 私は、この率はまだまだ低過ぎると思うのです。アメリカなんかでは大体かなり高いんじゃないかと思うのですけれども、参考のために、アメリカなどは住宅ローン貸し付けはどのくらいになっておるのですか。
  72. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 後ほど正確な数字をお答えいたしますが、先生御指摘のように、確かに一割前後あるいはそれをこえておるかと記憶いたします。いずれすぐ調べまして報告いたします。
  73. 平林剛

    ○平林委員 大体諸外国の例もこの機会に資料として出してほしいなと思います。私の承知しているのは、アメリカの商業銀行あたりの住宅ローンに対する貸し付け比率というのは一五二二%です。日本は二・六%ですよ。まだまだこれから福祉政策をとろうというときに、金融政策の面で二・六%程度では低過ぎるのじゃないか。先ほどからの話を聞いていると、こういうときにはその住宅ローンの比率を低下させないようになどということをいっているけれども、消極的だと思うのですよ。高めるように指導するというくらいなかまえがなければ、諸外国と比較してもまだまだ私はこれからの国民の願望する政策は日暮れて道遠しという感じがいたしますね。ですから貸し出し残高に対する比率を高めるような努力をすべきだ、こう思いますけれどもいかがでしょう。
  74. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 仰せのように全く同感でございます。私の申し上げたのは、少なくとも金融引き締め下の規制のワクの中で従来どおりの金額を維持するようにということで、それが現下についてのところ一七%のシェアだということは、必ずこれは、それが積み重なってまいりますと、総貸し出しに対する残高に対する割合は非常にふえてくるということを期待しております。まあ元が非常に少のうございまして、御承知のように四十年度の末では、都市銀行の場合でございますとわずか七十九億というような、総貸し出しに対する割合も〇・一%であるというところから出発いたしましただけに、なかなか八十兆近いような総貸し出しの中で、すぐシェアが大きくなるということは期待はむずかしいかもしれません。しかし現在のこの趨勢をもってすれば、必ず急激に伸びてくるものと期待しております。
  75. 平林剛

    ○平林委員 とにかく先ほど私が申し上げたとおり、四十七年の二月から四十八年の二月のわずか一年間で預金増加量は八兆二千七百六十二億も都銀はあるのです。それに対して住宅のローンの貸し付けば現在七千四百四十四億円であるということから考えても、いまお話しのように、私はこうした面については、これは田中さんなんかもう少しこっちの方面に力を入れるべきだと思うのだ。あとで聞くけれども、中期預金はどうのこうのなんて指示をする前に、こっちをどうだと、こういうふうにやるぐらいなことでなければこれはだめだと思うのですよ。私はそういう意味ではこの比率は、単に低下を防ぐということだけでなくて、増加をさせるようにすべきである。  そのためには、私はこういうことを考えています。最近金融機関は引き締め政策であんまり締めると取引先企業が倒産するおそれがあるなんということで、住宅ローンの分だけ別ワクにせいなんということを言うておるけれども、これは私に言わせれば泣き言だ。そこで、支店認可をこの間基準をきめましたね。そして私は、支店認可基準の中に、住宅ローンに対する金融機関の態度、これは一つの国家政策なんだから、福祉を充実するという国家政策でもあるし、そういうことから考えると、政府がもしほんとうに住宅ローンの拡充強化をはかろうとする意思があるならば、支店認可基準にこれを入れるというぐらいな強い指導があっていいんじゃないですか。これは銀行局長でもいいし、政務次官、どうですか、そのぐらいのことをひとつやはり基準の中に一項として入れるというようなことがあって、支店認可の点は少しサービスしてやる。支店認可については新聞で見た限りですが、要するに利用者の利便だ何だというけれども、利用者の利便で支店の増加をはかるというその前に、実際の必要とされておるこうした住宅ローンをふやすということ、それこそほんとうの利用者の利便をはかることに相なるわけでございますので、いかがですか、これは。
  76. 山本幸雄

    ○山本(幸)政府委員 まあこれはいろいろお考えようがあると思いますが、先生のおっしゃるのもまさに一つの見識でございます。しかし、金融機関の大衆化といいますか、民主化といいますか、そういうことは広く一般住民の利便ということ、そういう見地から店舗の適正な配置、増加をはかるということが筋であろうと思います。おっしゃるように、一般住民の利便という中に、いまの住宅ローンというものが大きなウエートを占めるんだという考え方も、私は確かにできると思います。そういうことで、直ちに住宅金融実績というものを踏まえて、その実績に結びつけて店舗の増設の認可をしろということに直に結びつけるべきであるかどうか、その辺のところは、確かに住宅金融を推進していかなければならぬということは、おっしゃるとおり国民福祉の充実という観点から非常に大切なことでございますから、そういう考え方を入れていきます、つまり一般住民の利便という見地からやっていくわけでありますけれども、その際にその中の大きなウエートとして住宅ローンというものを考えてまいりますという、そういう態度で運営をしていきたい、こう思うわけであります。
  77. 平林剛

    ○平林委員 ちっとは遠くたって、住宅ローンでもってたっぷり貸してくれる銀行なら行きますわな。それがほんとうの利便というものです。私は、歩いて近いところにあるからということよりも、それこそ少しくらい遠くたって、電車賃かけたってそこへ借りに行くわね。私はやっぱりそういうことを考えると、それをすべてにせよと言うわけではありませんけれども、少なくともその一つの項目の中に加えるというようなこと、銀行局長どうですか。
  78. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 たとえば住宅ローンの相談とかなんとかいうような形の店舗、それだけの店舗というようなことについてはできるだけ弾力的に認めていきたいと思います。まあ現実の問題としていま認めようとしておるのは、主として住宅街に、国民生活審議会の答申にございますように、もっと身近なところにほしいんだ、そういう意見もかなり強いようでございまして、金融機関がむしろ出たがらないところに、ここなら認めるという条件をつけて認めた、今回の店舗認可の半分の数はそういうことでございます。そういうところが確かに住宅ローンのあるいは返済のために利用しやすい店舗になり得る可能性は非常に強いだろう、かように思うわけでございます。また逆には、東京都内の中の新たに敷地を買わないようなビルの中というような店舗についてもこれを認めていく。そういうところはいずれにいたしましても企業本位の店舗ではなくて、いわば預金者大衆の店舗である。しかもその預金者大衆が住宅金融に対して非常に渇望しておるということであるのなら、必ずその結びつきは実績となってあらわれてくるものだ、かように考えております。
  79. 平林剛

    ○平林委員 まあこれは私はそういうことを要素としてやっぱりチェックしてほしい。私らもそういうことは関心を持って今後の住宅ローンの実績というのを、それこそ各行別に点検をするくらいな体制でやっていくべきだ、こう思っております。  そこで、大蔵省はこの個人の住宅ローンを普及していくために住宅金融専門会社の機能拡充をはかるという方針をとられておるようでございます。私の承知しておるところでは、民間の住宅金融専門会社としてここ一、二年にできたのは四社、日本住宅金融、住宅ローンサービス、相銀ローンセンター、住宅総合センター、これがあるわけでありますが、大蔵省としては、このいま都道府県知事に委任をされておる住宅専門会社の監督指導の権限を大蔵大臣に移して、まあローンの問題に力を入れようというわけでございましょうけれども、具体的には今後どういうふうにしようとする考えであるか、これをひとつ明らかにしてもらいたい。
  80. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 住宅金融会社は、もう先生御承知かと思いますが、現在利用されておるのが比較的年の若い方で、しかも所得の低い方に利用されておるという特徴がございます。これは物的担保に基づいてやっておる。個人的信用よりは物的担保に基づいて、こういうところの土地を買いたいからといえばその評価額についてもできるだけ配慮するという形でやっておるというのが特徴だろうと思います。そういう意味からいたしますと、むしろこの住宅金融会社というものの今後の発展の余地というものは、非常にうまくいくのではなかろうか、かようには考えております。ただ、何と申しましても問題はその原資の調達、特に住宅金融が長期資金であり、二十年にわたるような融資であるだけに、その債権をいかにして流動化していくかというところが一番問題だろうと思います。そういう意味からいたしますと、今後の研究課題ではございますが、これらの住宅金融がいかにして資金を調達できるかということについての指導監督ということが行政の重点になるべきではなかろうかと思っております。  もう一つは、一般大衆は特に金融サービスになれていない貸し出し先でございますので、一般大衆と住宅金融会社との間の取引が公正に行なわれるように、あるいは契約というものになじみのない人にとってもその契約がわかりやすいようにというような面での指導であります。その二つの面があろうかと思います。  しかし、当面急の問題は、この資金調達をどうしていくかということであろうかと思います。その辺のところは現在鋭意研究中でございます。
  81. 平林剛

    ○平林委員 民間の住宅金融専門会社、法律上は貸し金業者の指導監督の権限を大蔵大臣に移すということになると、ある意味では一般の貸し金業者と違って、準金融機関というようなものに行く行くはしていくつもりか、あるいは住宅金融会社法というような法律でもつくって、金融機関として認めていくつもりか、また、いまお話しのように、住宅ローンの債権信託を認めるとかいうような考えとか、そういうことはいまお持ちですか。
  82. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かに法律的にいうと貸し金業でございますが、その法律の中で、大蔵大臣の指定するものは、都道府県知事の監督から大蔵大臣が直接監督するものとなりまして、現在ではいわゆるコールローンを扱っておる短資業者がございます。それと同じ扱いになるわけでございます。  問題は、それに対する監督という場合には、いま申し上げましたような債務者との間の取引の公正という問題がありますが、もしも住宅金融会社が今後資金調達の面で新しいことをやっていこうとする場合には、それに対する投資家保護という面が加わっていこうかと思います。これは貸し金業者でございますから、預金という形は扱えないわけでございます。  たとえば社債を出していくとかいう場合には、そういう意味からは投資家保護という必要も起こってくるかと思います。ローン債権信託につきましても、そういういろいろな角度から検討する必要があるわけでございます。今日の住宅ローンというものの重要性からいいまして、とりあえず試験的に実施してみたらどうだということで、近く発足することになっております。試験的にやってみてそれが非常にうまくいくようでございますれば、四社とも、希望があればそういうものを認めていくということもございましょうし、あるいは問題があるようでございますれば、これはまた別の方法に切りかえていくということで、現在ちょうど住宅金融部会で住宅ローンの金融の審議をやっておりますので、それと並行しながら問題点を研究していこうというのが住宅ローン債権信託に対するこちらの考え方でございます。  そのほかの問題といたしましては、現実には、たとえばこの住宅金融会社の親会社からできる限り住宅金融会社に対する貸し付けをするようにというようなことも配慮していくというのが当面の問題でございます。  これがうまく発展していきまして、将来何らかの法制的な規制あるいは保護が必要だという時点が起こらないとも限りませんが、現在の段階では、そういう法的措置ということはまだ考えておりません。
  83. 平林剛

    ○平林委員 さっき質問の中で、この住宅金融専門会社の貸し出し残高は千二百億ぐらいというようなお話をしておったのですけれども、これはこれからもふやしていくつもりですか。
  84. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 必ずふえていくと思います。現在の住宅需要から見まして、このごろ一社当たり、大体月二十億くらいの伸び率があるということでございます。これは非常に異常なあれで、来年の春にはおそらく資金量は三千億に達するのではなかろうか、そういうふうに考えております。
  85. 平林剛

    ○平林委員 各金融機関では、今度の住宅ローンの問題は別ワクにしてくれというようなことがあって、これは日本銀行としても、そういうことをすると物価政策の面からよくないというので、総体のワクでやれといっておりますけれども、この住宅金融会社の問題については金融引き締めのワク外にするというような気持ちはあるのですか。
  86. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 引き締めのワク外となりますというと、ちょっと語弊がございますが、日本銀行貸し出し指導についての特別の配慮はしてもらいたいということで現在考えております。
  87. 平林剛

    ○平林委員 最後に、中期預金の創設の問題について。きのうの新聞によると、田中総理大臣は閣議で、インフレ抑制の補完手段として中期預金を創設する必要があると発言をされて、大蔵大臣が具体的な作業をまとめるように指示をされたと伝えられておりますけれども、大蔵省はこれについていままで検討した結論がございますか。
  88. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 先生すでに御承知のように、中期預金の問題は、四十三年の金融制度調査会以来の非常に長い間の問題でございます。四十三年の場合にも一応答申が出ておるわけでございます。その後も常にその答申の線に従って、答申の中でいろいろ、慎重に考えるべき条件というようなことがしるされておりますが、常に検討は続けてきておるわけでございます。  最近の状況といたしましては、金融制度調査会の住宅金融の部会で、その住宅金融資金調達の一ルートとしての中期預金というものの提案がございました。これは中期預金のみならず、たとえば抵当債券でございますとかその他もろもろの提案の一環としてあったわけでございます。ただ、中期預金の問題は非常に影響するところが多いわけでございまして、単に金融界という狭い社会の特定業界の間のバランスの問題だけではなくて、いろいろ国民経済的に影響するところも多いわけでございます。この辺のところは非常に慎重な配慮が必要だろうと思っております。同時にまた、基本的には、中期預金というものは、結局預金者への利益還元と債務者への利益還元とのバランスをどう考えていくかというところで最終的にはきめられるべき問題であろう、かように考えておるわけでございます。その辺のところはいましばらく時間をおかしいただいて研究をしたいと考えております。
  89. 平林剛

    ○平林委員 田中総理の考え方の中には、預金者に魅力ある新預金を提供して、市中にだぶついた資金を吸収するんだという発想があるようですけれども、中期預金で吸い上げられた資金が都銀などを通じてまた大企業の設備投資や生産の拡大というところに向けられたのでは、これは何にもならぬ。そうでなくても預金量の増加そのものが貸し出しワクを広げ、それがまたインフレ、過剰流動性に発展する危険を絶えず持っているだけに、かりに新しい預金制度資金が吸収されても、使い道いかんによってはますますとんでもない方向に走る、こういうことになるわけですね。  そこで、吸い上げられた資金の使い方についてワクをはめるという考え方をとる必要があるのじゃないか。たとえば、その吸収された資金を住宅金融に使え、一〇〇%全部でなくても、一定以上のものは住宅ローン拡充に使え、それでなければだめだ、このくらいの考え方をとるべきではないかと思うのですけれども、それについてはどう考えますか。
  90. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かに預金が、たとえば中期預金として認められたものが、たとえば二年なり三年なりのものがそのまま純増で預金としてふえるという形でございますれば、いままさに先生御指摘のように、これはいわば高度成長のエネルギーをたくわえるという危険が非常に強いわけでございます。したがって、もしもそれを何らかのかっこうで運用していくのなら、できるだけ生産力化しないもの、あるいは国民の福祉にプラスになるものということは当然考えるべきことではなかろうか、かように思っております。ただ、中期預金というもの全部がプラスに純増になるものかどうか、あるいは現在一年なり一年半なりの定期預金をしておられる方がそのまま延ばしていくという振りかえの部分もかなりあろうかと考えます。こういうものは単なる利益還元、金利が上がった分だけが預金者に恵まれるという性質のものとして考えるべき分も中にはあろうかと思います。  この辺のところはもうしばらく検討させていただきたいとは思いますが、先生御指摘のように、いたずらに過去の高度成長のメカニズムにさらに油を加えるような形での、そのエネルギーを加えるようなしかたということについては非常に問題がありはしないか、かように考えております。
  91. 平林剛

    ○平林委員 もう時間も来たようですから、最後に私は、都銀や地銀の増資問題、これをちょっと聞いておきたいと思うのですが、最近金融機関、特に都市銀行などは、海外短資の大量流入あるいは金融超緩和を背景にして法人や個人の預金が好調に伸びておるというようなことで、預金量が急速に膨張した、これは先ほど私が数字で申し上げたとおりであります。そこで、自己資本率そのものが相対的に低下する、そうすると、可能な配当の率、これは大蔵省の通達で指標が示されておるわけでありまするけれども自己資本率が低下すると配当が十分できないということから、増資をするという傾向がある。この増資をするということになると、増資の割り当てを目標にして銀行の株が上昇する。かりに銀行が、特に上位銀行が増資をするということになってまいりますと、これは公募すれば相当巨額のプレミアムがそこでころがり込む。銀行の株主は大体銀行自身が多いですから、結局プレミアム還元あるいは無償割り当てというようなことで、銀行そのものはさらにふところぐあいがよくなる、こういうことに相なるわけであります。  私は、金融機関というのはそう設備資金というものは、支店のことはございましょうけれども、必要でないという場合に、配当可能率を引き上げるためだけに増資をするというような考え方、これはどうなんだろうかという感じがするのですけれども、この点についての見解をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  92. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 さっき御指摘がございましたように、日本の銀行自己資本の比率というのは非常に少ないわけでございます。もともと資本金なり自己資本というものは最終的な預金者に対する担保であるというところから、その自己資本の比率に対してはむしろこれを充実していって一割近くまでいってもらいたいというのが、かねがねの指導の方針でございます。ただ、最近のように預金が非常にふえるというような状況でございますと、どうしてもその自己資本比率がむしろ充実するよりは低下していくというような形になりまして、どうしてもその周期が比較的早くなっていくという傾向があることは事実でございます。ただ、その中でも長期信用銀行などは自己資本に比例した金融債の発行ができるというむしろ実際上の必要性もあるわけでございますが、長期信用銀行の場合を別といたしますと、むしろ自己資本を確保させていくという金融行政のいわば基本的な考え方がそこにあるわけでございます。ただ、そのためにいろんな問題が生ずるということがあってはいけないことは申すまでもないことではございます。その辺のところはやはりケース・バイ・ケースでよく考えながら、証券市場の状況どもよくにらみ合わせながらこれからやっていきたい、かように考えております。
  93. 平林剛

    ○平林委員 自己資本率の低下を心配をするならば、私は含み資産——特に金融機関自己資本率の低下というのは従来の資産を再評価していない、十分でないという点が、自己資本率が他の企業に比べて低いという顕著な例ですね。ですから、私はむしろ含み資産の再評価をやるということによって可能なのじゃないだろうか、こう思うのです。最近、企業もそうですけれども、時価発行その他の増資でよけい流動性を豊富にするというようなこともありまして、株価の問題ではこの間もちょっと問題になりましたけれども、そういうことが先行すべきじゃないかと思うのですけれども、これはどちらの分野ですか、主税局の分野ですか、銀行局の指導によるものですか。この点、こういうことをまず先行すべきだという考え方はいかがですか。
  94. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 非常にむずかしい問題でございまして、再評価ということについてはこれはいかがかと私は思います。一般の問題としてそういう方向に打ち出されるのであればともかく、この際金融機関というものはやはり国民の金庫としてできるだけ充実させておくという姿勢はとっていきたい、かように思っております。  ただ、先ほどちょっと申し忘れましたが、時価発行ということについては、金融機関の場合にはきわめて制限的に指導いたしておりまして、端数程度ということで指導しているわけでございまして、そういう点ではむしろできるだけ神経質過ぎるほどの配慮はしていきたいとは思いますが、現在のところそういう再評価ということは適当ではなかろう、かように考えております。
  95. 平林剛

    ○平林委員 地方銀行のほうでもそうですけれども、やはりことしになってから相当の銀行が増資をやっておる。それからまた地方銀行の中にはこの際新規上場しようというようなことで、そういう株式上場ブームというのがわいておるという状況でございます。これは少し税法の問題に関連いたしますけれども、株式の公開は資本金が三億円以上あるいは六億円とか、一つ規定がございますけれども、こうした上場の傾向が出てきています。これは私は前にも問題にしたのですが、株式を公開するメリットは、信用度とか知名度の増大、資金調達のパイプの拡充あるいは人手確保に有利だとか、いろいろなこともありましょうが、銀行同士が上場という問題に刺激されて、そうして株式の公開、上場ということを競争するということもある。ところが、これが税法では非課税なのですね。そこで銀行だけに限らず、元来キャピタルゲインについては問題がありましたが、特に金融機関などは株式は一族郎党で株主を占めておるわけでございますから、私はそういう意味では経営の合理化、健全化をはかるために株式を公開するというのは銀行の義務だと思う。いまさっきお話しにあったように銀行の義務だ。その義務に対して非課税というのはいかがなものだろうかという論処なのですけれども、主税局長いかがですか。
  96. 高木文雄

    ○高木(文)政府委員 前回の昭和四十六年のときの改正の際の経緯を平林委員もよく御存じでありますから、あえて申し上げるまでもないわけでございますが、いろいろ御提案いただき、御示唆をいただいて、現行のように株を公開をするためにまとまって、いま一族郎党と言われましたが、そういう方々がキャピタルゲインを得られるという場合に限って非課税にするということになっておることは御承知のとおりでございます。そこで、そもそもキャピタルゲインの課税の問題は基本的に税制としては問題があるわけでございまして、先般の税制の御審議の際にもいろいろ御質問をいただき、お答え申し上げましたように、今後の問題としてはやはり何らかの道を開いていかなければならぬ。現状のままでいいとは思っておらないわけでございます。  ただ、ただいま御指摘のように、銀行だけについて特殊な扱いをすべきかどうかという点については、私どもはいつも申し上げることでございますが、法人税法の上で業種業態によっていろいろ差異を設けるということは、これはなかなか困難であり、またどういう業種業態について特例的に課税すべきかということになりますと、その線を引くことがまたむずかしいということではないかと思います。今後ともキャピタルゲインの課税問題、これは非常にむずかしい問題ではございますが、ギブアップをすることなしにまじめに取り組んで、何らかの打開の道を見つけていきたい。その中の一環としてただいまの御指摘の点も頭に置いてまいりたい、こういうふうに考えます。
  97. 平林剛

    ○平林委員 それでは最後に、法律のほうで、今度の改正相互銀行法二条の改正外為業務の取り扱いができるようになりました。私はこれは経済環境の変化、国際化あるいは取引先との関係でその利便をはかるという意味では適切な措置だと思うのです。同時に中小金融機関である信用金庫関係でも、相互銀行よりもむしろ規模その他は大きく、そして取引先もこうした関係する企業がかなりあるわけでございますから、ここにも認めてしかるべきであるというのが私の考えです。そこで今回は一応見送られておりますけれども、準備期間をとって、たとえば外為要員の養成をするとか、そういうような準備がある程度進行したならば、こうした措置もとるということをやってよいと思うのですけれども銀行局長からその点について政府としての考え方を明らかにしておいてもらいたい、こう思うのです。
  98. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 基本的にはいま御指摘のとおりだと思います。私どもも次の機会にはやはり法改正をお願いすべきではなかろうか、かように考えております。ただ現段階といたしましては、何ぶんまだ経験不足ということも免れないわけでございまして、現在は両がえ商の業務というようなことの認可を通じて経験を積みつつある、あるいは東京銀行と提携をして取引をやっておるという形で、いわば職員訓練を今後むしろさらに鋭意努力していただきたい。その暁にはいま御指摘のようにやはり同様な扱いにすべきではなかろうか、かように考えております。
  99. 平林剛

    ○平林委員 大体その他の法律内容は、われわれがかねてから希望しておったことが一ある程度盛られてこの改正案になっておりますから、質問は省略いたしまして終わりたいと思います。      ————◇—————
  100. 鴨田宗一

    鴨田委員長 この際、連合審査会開会申し入れの件についておはかりいたします。  すなわち、目下運輸委員会において審査中の国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案について、運輸委員会に連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、連合審査会の開会日時等につきましては、委員長間で協議の上、公報をもってお知らせいたします。  午後三時より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後一時五十六分休憩      ————◇—————     午後三時十二分開議
  102. 鴨田宗一

    鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。村山喜一君。
  103. 村山喜一

    村山(喜)委員 最近、銀行の首脳部は、口を開けば大衆化路線とかあるいは国民福祉充実への役割りとかをそれぞれ強調されているようであります。そこで、社会的な責任というものを非常に強調するようになったその考え方背景には、企業活動に対する国民の批判の声がやがては金融機関に対しても同じような声となってあらわれてくるのではないだろうかということに対する一つの危機感から、そういう態度をとられているのだという報道もされているようであります。  そこで大蔵省としては、銀行の首脳部の人たちが言われる大衆化路線というものは一体どういうふうなものを考えて、何によって大衆化路線が定着をしたとか、あるいは本物だという見きわめ方をしようとしていらっしゃるのか、そういうような点からの指導にあたっての方向づけというものをどういうふうに考えておいでになるのか、その点をまず明らかにしておいていただきたいと思います。
  104. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 大衆化路線と言われ始めたのは、実は私は都市銀行の人たちなどの一種の経営戦略から出てきたことばが最初の発想であったろうと思います。これは昭和三十年代の経済の姿が、非常に経済成長ということを重視して、経済優位という考え方ですべての経済活動が行なわれてきた。また、その過程にあって都市銀行というものがいわば中核的な役割りを果たしてきたために、ある意味では好むと好まざるとを問わず、いわゆるオーバーローンという形で、非常に産業金融に傾斜した形で経営が行なわれてきたわけでございます。その裏目というか、実は総体的に預金吸収力が非常に低下してきたというのが三十年代の後半の姿ではなかろうかと思います。  その原因は、やはり何といいましてもそういう大企業中心の融資を続けている形であるわけでございますが、どうしても資金散布は歩どまるところは大衆でありあるいは中小企業であるという形で国内の資金が流れておった。そのところに一番密着しておる金融機関ほど預金の吸収力が強かったということがやはり過去の三十年代の姿ではなかろうか。  その結果、都市銀行のシェアというのは漸次減少してきた。これに対して中小金融機関というものがだんだんだんだん力が強くなった。そういう預金吸収力の違いに対する反省から大衆路線ということが打ち出されたというのが一つの契機ではなかろうかと思います。  そういう時点におきましては、大衆化ということは預金を吸収するために大衆にサービスしていく、こういうかっこうで出てきたわけでございます。使途のいかんは別といたしましても、大衆を離れて金融機関の経営の基盤はあり得ないのだという自覚は三十年代の後半から四十年代にかけて非常に強くなってきておるようでございます。特に四十年に入りましてから、国債発行という政策がとられまして、構造的に企業の手元流動性というものが充実してまいりまして、そういう形で中小企業あるいは大衆と密着していかないといけないという角度から、今度は融資面においても中小企業に対しても積極的に出ていこうという傾向があらわれ、今日におきましては結局預金者というのが同時に利用者である、したがってそういう預金者のために今度はその需要にこたえて消費者金融あるいは住宅金融に向かっていかないといけない、こういうところでいわば大衆化路線というものが本格化しつつある、かように考えております。  私ども指導方針といたしましては、金融界というものが従来経済が非常に優位に置かれた時代につくられたいろいろな経済の秩序の中で行動しておりますだけに、いわば金融的常識というものがその外にある広い社会の常識と食い違ってくる面がえてして起こりがちでございまして、そういう意味からいたしますと、いわば金融の常識をこえた社会の常識といいますか、社会の論理というものにより根を広げていくような指導をしていかないといけないということでやっておるわけでございまして、この辺のところは日本の経済の転換期とともに新しい秩序がこれからできていくのだということで、いわばそういう新しい時代へ金融機関がいかにして適応していくかという、現在は過渡期のいろいろなルールをこれからつくっていかなくてはいけないのではなかろうか、かように考えております。
  105. 村山喜一

    村山(喜)委員 四十七年度の貯蓄の増加額が二一%伸びて二十五兆八千億程度だということでございますが、そのうちの預貯金の伸びが二十一兆五千四百億といわれております。その金融機関ごとの伸び率がどういうような状態になっているか。
  106. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 預金の伸び率で申し上げますと、全国銀行が年率にいたしまして二五・三%、そのうち都市銀行が二五・三%、地方銀行が二四・七%、信託銀行が二二・九%、長期信用銀行が二七・六%、これに対しまして相互銀行が二六・三%、信用金庫が二四・七%でございます。
  107. 村山喜一

    村山(喜)委員 その趨勢からいえば、貯金の伸び率というのはさほど大きな隔たりはない。むしろ全国銀行あたりに資金が集中するという形になっておりますね。それは間違いございませんか。
  108. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 その結果全体の金融機関のシェアで見ますと、都市銀行が民間金融機関の中の四分の一、二四・八%、地方銀行が一三・八%ということでございます。相互銀行は五・八%、七・一%といったところでございます。なお、いま申し上げましたこの表は狭義の金融機関ではございませんで、保険会社、運用部、郵便貯金なんかを入れた中身でございますが、大体そういうことになっております。
  109. 村山喜一

    村山(喜)委員 相互銀行なり信用金庫のシェアが五・八%ないし七・一%というのは、四十七年九月末の金融機関の現況でございますが、この比率は下がっておりますか、伸びておるのですか。
  110. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 たとえば昭和三十五年度でシェアを率を見ますと、都市銀行は全体の民間金融機関の中の三四・四%になっております。これが四十年代に入りまして四十一年二八・九%そして四十六年が二八%、ただ四十六年は多少高い年でございまして、四十五年でございますと二六・八%になっております。これに対しまして相互銀行は、三十五年が六・六%の構成比になっておりますが、四十一年に入りまして七・六%そして四十二年からずっと七・七%でございます。なお四十六年は六・五%と低下しております。信用金庫は同じく三十五年が五・七%ございます。四十年度に入りまして七・五%の水準を維持して、四十六年には八%になっておる、こういう推移を示しております。
  111. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは広義の金融機関の中に占める数値だと思いますが、その関係からまいりますと、おたくの銀行局が出された金融年報の四十七年度版、これで見てみますと、相互銀行の四十六年度上期の経常利益は相互銀行制度が始まって以来の減益であるということが指摘をされているようであります。そしてまた信用金庫連合会の場合にも経常収支率は悪化をして、全信連が創設以来初めての赤字を出したというような指摘がされておりますが、それはどういうようなわけでそういう状態になったのですか。
  112. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 四十七年度の場合にはおそらくコールレートが低下をしていわば資産運用益が減ってきた。一方、預金金利は当時でございますからまだ高い水準であるというところから、主としてそういうコールレートの低下が大きく響いたのではなかろうか。三十年代になりますと相互銀行信用金庫はコールローンに出しておる収益が非常に多かったということが一つその反対にございましたわけでございます。
  113. 村山喜一

    村山(喜)委員 その後最近、これは四十六年度の古い資料しかないわけですが、四十七年度の上期におけるそういう経常利益の動向というのはどういうふうになっておりますか。
  114. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 四十七年九月期の相互銀行の決算で申し上げますと、資金量そのものは非常に順調な増加ぶりでありまして、これに対応して融資も非常に増加をいたしております。特に増加額は従来の最高であるというような状況でございます。これに反して収益のほうは、貸し出し金平均約定利率の大幅な低下が一番大きなことだろうと思いますが、伸び率としては四十六年の下期の増加率を下回りまして七・九%となっております。これが前期が八・八%、もう一つ前は八・二%というように状況になっております。  これがなぜ経常収益の伸びが鈍化したかと申しますと、やはり金融緩和で貸し出しの約定金利が大幅に減ってきた、低下したということが一番大きな原因のようでございまして、前期に比べて〇・二七ポイントも貸し出し約定利回りが減ってきた。それと先ほどのコールなどの余裕金運用の利回りが低下したということが原因になっておるようでございます。
  115. 村山喜一

    村山(喜)委員 四十七年の三月期における資金量と四十七年の九月期における資金量並びに融資量を調べてみると、いずれもふえていることはふえているけれども資金量の伸び率が低下しておりますね。これはどういうような関係でこうなったのですか。
  116. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 その原因については、私、ちょっとまだよく承知しておりません。いずれよく研究してお答えさせていただきたいと思います。
  117. 村山喜一

    村山(喜)委員 各年度を追って順調に伸びてきて四十七年の九月になると伸び率が低下をした。そこに何か原因があるのだろうと思うのですが、私はやはり相互銀行というものが存在をする理由というのですか、その特性というものが今日金融機関の中で明確にされていないところに問題があるのではないかという気がしてならないのです。約定金利を見てみましても、非常に金利は高いですね。そうしてパーヘッドの問題にいたしましても地方銀行に比べたら低いわけです。おまけに税金は、これは株式会社ですから信用金庫や信用組合とは違って都市銀行と同じようにかかってくるわけでしょう。そういうような点から見まして、今日相互銀行というのはなるほど中小企業の中における融資の比率の割合というのは、シェアはわりあいに高いことは高いのですが、それでも都市銀行やあるいは地方銀行融資比率よりもはるかに低いわけですね。そういうような点から考えますと、相互銀行というのは一体何のために存在をするのだろうか。地域実態にあまりぴったりと合っていないというような問題もあって、その資金量がそれだけ伸びていないのではないだろうか。また公金の預託等についても、地方銀行あたりに比べるとほんのわずかしかないというようなことで、そういうような公的な機関からも相手にされないというようなかっこうになっているのではないだろうかと思うのですが、この相互銀行の位置づけという問題は、これからどういうふうにして特性のない金融機関を育てていこうというふうにお考えになっているのか。金融当局の考え方をお聞きしておきたい。
  118. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 確かに相互銀行がいま当面しております問題というのは、御指摘のように非常に深刻な問題があろうかと思います。一つは、これが無尽会社から変わってきたという関係から、どうしても人手をかけて仕事をしていくという、そういう業務の行き方がまず沿革的にあったということが一つだろうと思います。  それからもう一つは、やはり相互銀行の中でも非常に地域的な金融機関という性格を持っておる相互銀行、それから都市なんかにございます地縁性というよりは、むしろ中小企業専門銀行といった色彩の、いわば小型都市銀行といった宿命の道をたどるべき相互銀行、その立地の条件がそういうように二つに分かれつつあるというようにも見受けられるわけでございます。一方では非常に地方銀行的な地域性の強い相互銀行という地域もあろうかと思います。その辺のところは地方銀行とうまく協調関係を保ちながら、その地域性を根深く耕せるかどうかというのが今後の宿題だろうと思います。  それから、都市に所在する相互銀行については、地縁性というよりは小型都市銀行としての中小企業専門銀行ということにほんとうに徹しない限りは、今後の経営にいろいろな問題が出てくるという面があろうかと思います。  ただ、私ども考えておりますおぼろげながらの方向といたしましては、何と申しましても中小企業専門銀行の中でそれぞれのそういう性格を踏まえながらも、どちらかといいますと、中小企業から中堅企業的なところに今後の取引の主たる構造ができ上がっていくのではないか、またそういう方向でいってしかるべきではなかろうか、こういう考え方でいままでは指導をしておったわけでございます。
  119. 村山喜一

    村山(喜)委員 いままでの指導はそうですが、これからはどういうような指導をなさいますか。
  120. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 これはことばが足らなくて恐縮でございました。そういうような指導の中で、一つ同質化という方向にたどらざるを得ないものと考えております。これは、一つは日本経済自身の構造が大企業と、一方にはまた非常に格差のある中小零細企業という形から、比較的中堅企業を中心としたそちらにウエートが高くなるような経済の構造ができ上がってほしい、あるいはそういう産業政策のあり方が期待されるということに伴いまして、金融面でも、やはりどうしてもそういう中小企業専門機関といえども中小企業そのものがそういう方向にたどりますれば、一般の普通銀行同質化する傾向はどうしても避けられないだろうと考えております。そういう場合に、同質化方向の中での専門的色彩というものをできるだけ維持させていきたい。  そこで、自己資本に伴う指導でございますとか、融資の大きさを伴う指導というようなことを通じまして、経営のあり方としては同質化方向に向く引力が非常に強いわけですが、できるだけ中小企業というものに密着させていくような一つの規制を加えていく、そういうことが今後とも必要ではなかろうか。いわば相互銀行に対しては、中堅企業に根ざした金融機関ということを目標に今後とも指導をやっていきたい、かように考えております。
  121. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで相互銀行預金者別の預金構成を見てみますと、一般法人が地方銀行に比較をして落ちているわけですね。そのかわりに個人のウエートが高い。こういうようなかっこうになっておりますが、今度窓口規制が相互銀行に及んだ場合に、一体どういうような影響をもたらすと考えられておるのですか。融資に対するチェックをした場合に、どれだけの運営ができる状態になっているのか。準備預金制度の問題については対象からはずされましたけれども、窓口規制の問題はとられるわけです。四〇%程度にとどめなければならないのではないかというような話も聞いておりますが、そういう融資面に対する影響度合いをどういうふうに判断をしておいでになりますか。
  122. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 相互銀行に対する日本銀行の窓口指導の規制のワクといたしましては、四月から六月、すなわち現在進行中の期間におきましては、前年の同月、四月から六月に比べまして約一・五%増くらいに貸し出しの増加額を押えておるわけでございます。全体の量で申しますと二千六百億ということでございます。  これがどのくらいの強さのものかということを比較いただく意味におきましては、前期の一月−三月に相互銀行がどれだけの貸し出しの増加をいたしましたかということで御参考にしたいと思いますが、大体二千九百億というのが一−三の実績でございます。それに比べまして四−六が二千六百億の貸し出しの増加ということで、現在窓口指導を行なっておるという状況でございます。前年の実績に比べますと、一・五%の貸し出し増加ということでございますので、四〇%ほどのカットというのは、よほど特殊の支店あるいは銀行ということではなかろうか、かように考えております。
  123. 村山喜一

    村山(喜)委員 他の金融機関の窓口規制の状態はどういうふうになりますか。
  124. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 都市銀行の場合が一番きびしいわけでございまして、ちょうど四−六を四十七年の四−六と比較してみますと一六%減になっておる。それから前期と比較してみますと、これは前期の規制ワクが一兆三千二百億でありますが、都市銀行はこれを一兆に押えられております。むしろ純減になっておるわけでございます。  それから長期信用銀行も一〇%前年同期に比べるとふえておりますが、ことしの一−三に比べますと四千二百億が二千六百億に減っておる。信託が同じくことしの一−三が五千億でございますが、これが四−六は三千六百億、こういうことになっております。地方銀行の場合は四千四百億でございます。これは昨年の四−六に比べまして〇・五%増ということでございます。大体一−三並み、一−三よりちょっと多い程度というのが地方銀行の規制のワクでございます。
  125. 村山喜一

    村山(喜)委員 そこで、その日銀の窓口規制によりまして、四月から六月強化措置をとられて、都市銀行の場合には前年同期比に対して一六%の減という措置をとって、そしてそういうような窓口規制をやるものですから、結局不動産とか建設とかいうような特定の産業分野は、ほとんど金を借りることはできないという引き締めがとられております。その結果都市銀行としては、かねてから深い関係にある地方銀行であるとかあるいは相互銀行とか農林系の金融機関融資のあっせんを依頼をするというような傾向があるように聞くわけでありますが、その場合に、そういうような状態の中でだんだん資金は窮屈になっていく、しかしながらまだ企業の手元流動性は高いという見方をしておられるのだろうと思いますが、これも金融の引き締め政策というものが間接金融の形で引き締められてまいりますと、勢い逃げ口はそういうような中小専門金融機関のほうに融資が集中したり、あるいは直接金融方向で問題の打解に当たりたいという考え方が当然出てくるだろう。特に最近目立って出てまいりましたのが、転換社債の発行がきわめて大きく取り上げられようとしているわけでありますが、間接金融を締めて直接金融のほうは放置するというのでは、全体の総需要抑制政策にならないというふうに考えるわけです。  そこで、証券局としては、そういう間接金融の引き締め政策に対応して、今後どういうような直接金融の引き締め政策をとられようとしておられるのか、お尋ねしたいと思います。     〔委員長退席、木村(武千代)委員長代理着席〕
  126. 坂野常和

    ○坂野政府委員 御承知のとおり、わが国の産業資金の調達は、大部分が預金貸し出しという形で行なわれてまいったわけでありまして、そういう意味から、言われます直接金融は国民経済的に見ますと非常にウエートの小さなものでありたわけであります。このところ一両年、過剰流動性その他の原因から、株式の発行市場並びに言われますところの転換社債の発行市場というものが非常に活発になってまいったことは事実でありますが、全体の量といたしましては、御承知のとおり公募増資を含めまして、増資は昨年度一兆三千億円、転換社債の発行は二千八百八十億円に四十七年度はとどまったわけであります。四十七年度の後半から転換社債発行が非常に盛んになってまいりまして、その流れが、四十八年度の上期にも幾らかその余韻が残っておりまして——残っておると申しますか、その流れの強さがなお響いてきております。  こういうことを踏まえまして、四十八年の四月以降は転換社債の発行につきまして、引き受け証券会社の申し合わせ基準というのをつくりまして、質的な基準、量的な基準それから発行の間隔、親引け比率、それからいわゆる幾らで発行するかという発行価格、アップ率の問題、そういうことについて詳しい取りきめをいたしました。そういうものに該当しない発行会社は取り扱わないということにしております。その結果、急激にふえてまいりました姿はやや横ばい的に抑圧されております。時価発行増資のほうはかなり大幅に削減されておりますが、転換社債のほうはそういうことで横ばい状態というのが四十八年度の上期であります。  しかし、言われますように、たまたま金融引き締め期でもありますので、数量についてはさらに圧縮ぎみに検討していきたい。  それから、いまの株式市況のように株価が非常に沈滞ぎみで、かつ動きやすい状態にありましては、転換社債の発行価格をきめることが非常にむずかしい現状でありますので、四十八年度上期に予定されておりますものも、全部発行されますかどうかはわからない現状にあります。おそらくは幾らか減少ぎみになっていくのではないかというふうに考えられます。  なお、いまのところ、四十八年度の下期は、かなり大幅に減っていくのではないかという見通しであります。
  127. 村山喜一

    村山(喜)委員 この間接金融によって産業が資金調達をやりましたものは、四十七年度で幾らというふうに踏んでおられますか。
  128. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 私どものほうで、これは日本銀行資金循還勘定という一種の統計的な手法でございますが、それで試算いたしましたところによりますと、間接金融と直接金融の割合ということを見ますと、全体の中での間接金融、いわゆる金融機関、狭義の金融機関を通ずる割合は、四十六年で八六%ぐらいでございます。四十年ぐらいは九四・九%でございました。四十年、四十二年というところは九四、九三、それが四十四年に入りまして九〇%になり、四十六年で八六%、こういう状況になっております。なお、昭和三十二年ぐらいでございますと八四%、一番減りましたのが昭和三十六年の六七%、こういう状況でございます。
  129. 村山喜一

    村山(喜)委員 私がお尋ねしているのは、そういうような傾向ではなくて、最近日銀総裁が、四十六年と四十七年の両年度にかけていわゆる過剰資金という形で流動している、金融機関がむやみやたらに貸し付けていったものが、二十五兆円だと言われたことがたしかありましたね。そういうようなところから、直接金融による資金調達の状況については証券局長から、四十七年度分については御説明願いたいのですが、間接金融による資金調達の状態がどういうふうになっているのかということを、銀行局長のほうからお聞きをしたいわけです。
  130. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 おそらく御質問の趣旨が、わが国のここ一、二年のいわゆる過剰流動性と申しますか、国内に現金あるいは何らかのかっこうで信用で供給された、その供給のルートがどういう形で供給されたか、あるいはそのウエートがどういうことかということではなかろうかと思いますが、そういう御趣旨でございますと、全体で、たとえば四十六年でございますと十三兆といった金が、民間の金融組織からいわゆる民間経済の中に出ていった。これに対して、政府を通ずる信用増あるいは外為会計の信用増は幾らかというような統計は承知いたしておりますが、そういうことでございましょうか。
  131. 村山喜一

    村山(喜)委員 外為会計を通じまして、払い超になった分が六兆一千億という数字が算定できますね。ところが、民間の金融機関等がそういう不動産会社や商社あるいは事業法人等に貸し出した金が両年度で二十五兆円にのぼる、こういうようなことを言われておりますね。それのいわゆる資金量的なものをどういうふうに把握しておいでになるのかということなんです。  といいますのは、金融機関の現勢というんですか、現況は、四十七年の九月末の統計数値はいただきましたが、この四十七年度の全体のまとまった数値はまだお持ちにならないだろうと思いますので、それの傾向の数値からその大体の見通し、それは出てくるのではなかろうかと思いますので、その点をお尋ねをしているわけです。
  132. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 いま、二十五兆と総裁がおっしゃったというような数字でございますと、おそらく対民間信用増ということかと存じます。それは四十六年が、十三兆一千億が民間の金融組織を通じて市中に散布をされたかっこうになっております。四十七年は、十二月末でございますが、十五兆五千億といったところでございまして、四十六年、四十七年を合わせますと二十八兆六千億という形で市中に信用が追加された形になっております。これに対しまして、外貨を通じてふくれました通貨といたしましては、四十六年、四十七年、同じ期間では大体四兆ということでございます。そういうことからいたしますと、大体八割が民間信用の増、二割が外貨を通ずる増、こういうことになっております。  なお、六兆といわれております分は、外為の外貨の売り上げでございまして、その中から、そのままの形で日本銀行に輸入資金として入ったものを差し引きますと、大体それが四兆五千億くらい  ではなかろうか、かように考えております。
  133. 村山喜一

    村山(喜)委員 合計いたしまして三十二兆余りの金が、それだけ土地や株のほうの買いあさりの資金として使われていく、あるいは設備投資に回るというような形で運用されてきていたわけですが、四十七年度は、株価が異常な上昇をしていく中で、時価発行や転換社債の発行、事業債の発行というものが、全部トータルをしたら幾らになってまいりますか。
  134. 坂野常和

    ○坂野政府委員 事業債は、発行ベースでなくて、償還もありますので純増ベースで数えますと、二千二百八十九億であります。発行ベースでは六千五百五十二億であります。株の払い込み、転換社債は先ほど申し上げましたとおりでございまして、それらを合計いたしますと、一兆八千百五十一億円であります。
  135. 村山喜一

    村山(喜)委員 こういうような一兆八千億余りの直接金融による資金調達が、四十七年度においては行なわれた。四十八年度の上期の見通しはどういうふうになりますか。
  136. 坂野常和

    ○坂野政府委員 いまの数字に対応いたします事業債の純増がまだわかりません。償還が実際に行なわれておりませんので、これからの予定が不明確でありますのでわかりませんが、上期の概算を申し上げますと、株式の有償払い込み額が四千億円程度、転換社債は二千八百億円程度、事業債発行額が千五百七十六億円であります。いまの事業債は四月、五月だけであります。したがいまして、まだこの先の分が入っておりません。そういうことでありますから、いまのところ上期で明確なものは八千三百億円程度ということであります。
  137. 村山喜一

    村山(喜)委員 預金準備率の引き上げ、それから窓口規制、それに公定歩合の〇・七五%の引き上げ、こういうような三本柱によって、金融の過剰流動性の調節というのですか、それの引き締め政策をとる、それから、公共事業は繰り延べ措置をきめられたようであります。そういう中で、いま私が直接金融の問題を取り上げましたのは、そういうような引き締め政策を間接金融でとりながら、直接金融のほらへだんだん逃げ場を求めていく事業法人等が出てくるという傾向がありますので、両方から引き締め政策をとっていかなければ、これはほんとうの意味の総需要抑制政策にはなってこないと思うのです。そういうような意味においてお尋ねしたわけでありますが、いまのところそういうような引き締めがずっと続いてまいりましたときに、一体どこでそういうような経済情勢が鎮静化するという見通しを立てられることになりますか。それは、いわゆる事業法人が持っている土地や、有価証券の手持ち資産の換金売りが出てきた段階が本ものだというところまで、金融の引き締め政策をとっていかれるつもりなのか、一応の目安をどこら辺に置いてやっていくという方向でお考えになっているのか。     〔木村(武千代)委員長代理退席、委員長着席〕
  138. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 現在の引き締め政策の基本は、単に金融面における資金の過不足を調整するという段階を越えましで、むしろ金融面の裏にあると申しますか、さらにその裏にある実体経済の活動に対して、直接攻撃しようというのが現在の公定歩合引き上げを中心とした金融引き締め政策のねらいでございます。したがいまして、あくまで日本の経済活動そのものの拡大テンポをある程度落とすところに、この引き締め政策がきいてくることのねらいがあるのでありますので、そういういわば今回の金融面における引き締めを通じ、これが企業家の心理に影響し、企業家がそれによって将来の投資活動を適当に調節していこうという、そういう効果が出てくるまでは、やはりこういう引き締め政策は続けるべきであろう、かように考えております。  そういういわば企業活動のあり方が変わることが何によって出てくるのかという御指摘かとも思いますが、これはやはり生産活動なりあるいは出荷、在庫の状況、場合によっては日本銀行券の増発基調にも変化が起こるかとも思います。そういうやはり実物経済と申しますか、経済の実体面の変化が出てくるということが、やはり今度の引き締め政策に対する姿勢を変える一つの契機ではなかろうか、その前の段階金融面が締まってまいりますということもあろうかと思います。あるいはその金詰まりの結果、いろいろな手当てをするための金融面での動きがあろうかと思います。債券の売買でございますとか、あるいはいま御指摘の土地の売買というのも、あくまで金融的な手だての一つの反応ということはあろうかと思います。  しかし、ねらいといたしますのは、その結果全体の日本経済の拡大テンポが縮小する方向に向かうというきざしが得られるときまでは、やはり現在の引き締め政策は続けるべきではなかろうか、かように考えております。
  139. 村山喜一

    村山(喜)委員 最近卸売り物価がある程度落ちついてきた、商品投機も鎮静化してきた、そういうような状態の中で、引き締め効果というものが漸次あらわれてまいるわけですが、経済情勢はやや鎮静化した、こういう見方で、しかしながら企業の手元流動性はまだ依然として厚いし、あるいは企業間信用の水準もまだ最低であるというような状態から見ると、景気はまだ上げ潮ムードというものが残っておって、もっと引き締めがきかなければ物価の安定という問題もこれは実現ができない、こういうような見方をとっていらっしゃるわけですが、そうなると、いまの政策は、前は過剰流動性の引き締めというのですか、その政策だったが、いまの経済政策としては総需要抑制策に移っていったのだ、こういうとらえ方をするわけですか。
  140. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 表現といたしますと多少そういう感じにもなるかと存じます。ただ、けさほどもお答えいたしたわけでございますが、流動性対策といいますか、流動性というものがあくまで、単に資金が多いか少ないかということではなくて、そういう資金を利用する利用のしやすさが裏にある、その利用のしやすさが、たとえば投機でございますとかあるいは投資活動ということに転化しやすい、それの結果過剰流動性だといわれるようないろいろな摩擦現象といいますか、好ましからぬ現象が起こってきておるわけでございます。ひっきょうするに、そういう資金を利用する利用態度というものに変化が来ない限りは過剰流動性対策にもなり得ないことである。  そういう意味からいたしますと、総需要を抑制するということは実体経済に着目した説明でございます。過剰流動性対策というのは金融面に着目した対策であるということがいえるわけでございまして、二者は異なるものではないと思います。ただ、どちらかといいますと、ことしの春から初めのころは金融面に着目した流動性対策といわれている面が強いわけでございます。その後公定歩合の引き上げあるいは窓口規制強化というようなものは、単に金融面だけではございません。その裏にございます実体経済の活動規模そのものを縮小をさせるための政策である、こういう意味では総需要抑制策であるということもいえるのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  141. 村山喜一

    村山(喜)委員 そうなってまいりますと、やはり選択的な需要管理政策というものが必要になってくる、福祉投資をふやしていくというような、そういうようなものをとらなければならないわけだし、また、大衆化路線というのですか、そういうような道も強化しなければならぬというふうに考えるわけですが、先ほどは中期定期預金の問題についてお話がありましたけれども、安定国債で——それは貯蓄債券というような構想のようでございますが、個人の過剰資金の吸収策をやっていくのだ、そしてそれがやがては景気調整安定基金の構想につながっていくのだというような新聞の報道もなされている。これについてどういうような考え方で作業をやっていらっしゃるのですか。
  142. 田辺博通

    ○田辺説明員 お答えいたします。  新聞紙上で最近安定国債、それと景気調整資金といいますか、結びついた構想について大蔵省のほうで検討しているように報じられております。これは全部うそではございませんが、しかし、発想は確かに西ドイツで、ことしになりまして典型的な安定国債を発行している。これは従来の国債と申しますものは所要の財源を調達するための、国の経費をまかなうための国債発行、こういう考え方から一歩踏み出しておりまして、つまり財源が必要だからではなくて、それを凍結するために国債を発行する。したがいまして、その目的は過剰の流動性と申しますか、民間の資金を吸い上げて凍結するということについてはある種の金融的なものでございます。そしてドイツの景気調整資金も、その凍結しました資金は後日と申しますか、あるいは後年景気が不況におちいりましてこれを浮揚させるための刺激が必要である、それを財政面から行なう場合の支出の財源として用いることができる、こういう構想のように思われます。もっとも西ドイツの場合には、安定国債と景気調整資金というものは完全にオーバーラップしているわけではございませんで、別途臨時の増税を行なって、その増収部分を景気調整資金に入れたり、あるいは景気調整の観点から歳出繰り延べを行なった場合の余剰金、これを景気調整資金に入れる、そういうような道もあるようでございます。  私どもも、いろいろ経済の体質あるいは構造が漸次変わってまいります現在の日本の現状から見まして、従来のような既定のと申しますか、財政金融による景気調整の手段のみならず、いろいろなことを検討し、くふうする必要があるのではないかと思いまして、検討はしておるわけでございますけれども、これは先ほど申しましたように、財政の基本原則と申しますか、そういうものとの、非常に大きな踏み出しの問題でございますので、問題が広範囲でございます。したがって、目下慎重に検討している、こうお答え申し上げるほかはないわけでございます。
  143. 村山喜一

    村山(喜)委員 好況期でも国債がふえるというようなかっこうにもなってまいりまして、日本の財政政策全体に関係がある問題ですから、慎重に検討願っておきたいと思うのですが、過剰資金というものが何らかのきっかけであばれ回っていく姿の中で、たいへんに物価がはね上がる、卸売り物価も消費者物価も上昇に転じていくという形がわれわれのいま生活をしている中において生まれてきたわけですから、そういうような点から、個人の過剰流動性、過剰資金を吸収するという考え方で大臣が言われたのだということで新聞に出ているわけですが、あるいは中期性の定期預金の問題については総理が指示をしたというようなことも新聞に出ている。あまりにも手軽に次から次に指示やあるいは何かを連発をされているところに今日の政治の貧しさを感ずるわけです。  だから、もっと具体的な検討を十分に行なった上で政策というものをつくらなければ、その日暮らしの政策が新聞をにぎわして、それもけっこうなことでしょうけれども、実際はそれができないというようなのが田中内閣の実態ではないかというようなふうにわれわれは受け取るわけであります。  そこで、あともう少し時間をいただきたいと思いますが、住宅ローンの問題ですが、最近二千万円までは借りられます、二十五年間借りることができますというようなことで、それぞれ金融機関が住宅ローンを発表しておるわけですが、問題は金利です。この金利が、今度は金融の引き締めとそれから公定歩合の引き上げ等によりまして、金利は何とかして押えるということで指導をされましたので、住宅ローンの金利は据え置きになったようでありますが、いまの住宅ローンで家をつくる、なるほど確かに四十七年度は民間の住宅は二八・五%ふえたようであります。それは金融機関が住宅ローンを広げてそれをふやしてくれたから、そういうような家もできたのだと思うのですが、片一方においては、そのために地価上昇のテンポが上がっていくし、木材の価格は上昇をしていく、鉄などの資材も値上がりをするというような形になってきたわけです。  そこで、大衆化路線は住宅ローンだというようなことで、これからもいろいろ金融はやるだろうと思うのですが、二十五年もずっと借り続けていくということになると、借り入れ金額の金利負担分は一体総額のどれくらいになるのですか、現在の金利体系の中で。
  144. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 具体的なケースでむしろお答えすべきかと存じますが、現在の金利の高さでは、二十年でございますと、住宅ローン、都市銀行の場合でございますと大体九%というような金利になっておるようでございます。全体の負担は、返済条件、毎年毎年どれだけ返していくかということで、残債に対して九%をかけていくことになるわけでございますので、ちょっとどういうふうにお答えいたしていいかわかりませんが、一割近く毎年自分の返済金額にふやして返すということは、九%という金利から当然のことだと思いますが、二千万円の場合に幾らになるかというようなお答えをすれば……
  145. 村山喜一

    村山(喜)委員 いいです。私は、金融機関がそういうような大衆化路線で住宅ローンをこれからもやっていこうということに対して反対をするわけじゃありませんが、資金の裏づけをする場合には、資材やその他のそういうような実際面からの裏打ちもなければ、ただむやみやたらに金を貸すから家をつくれ、今度の四十八年度の予算の中でも、住宅金融公庫等を通じまして資金も出る、融資が拡大をされるというようなことが出ておりますが、土地は自分で見つけなさい、そして値上がり分は自分で負担をしなさい、金だけは貸してあげますよというのが日本の住宅政策の柱になってきている、主軸になってきている。そういうような住宅政策というものがはたしていいのかどうかということについては、十分私は、資金的な面だけじゃなくて、その内容なりあるいは質の問題からも検討をし直してみる必要があるのではないだろうか。特に公共住宅等を柱に据えるような住宅政策というものが、これが主軸にならなければ、日本の都市の住宅政策というものは、持ち家政策中心の住宅政策ではやっていけない段階に来ているのだというふうに考えるわけですよ。それで、その点については、これをどしどし進めていきなさいというような方向ではなくて、もっと中身の伴うものとして大衆が利用できるようなものを考え、しかもそれが実際に都市における住宅政策の中におけるしっかりした位置づけをやってもらいたいということを要請をしておきたい。  そこで最後にお尋ねいたしますが、店舗行政の問題であります。これは四十八年、四十九年度の設置計画の内容をちょっと説明を願いたいのです。というのは、新設が五百九十五店ですか、二年分を一括して許可をされたようでありますが、その店舗政策はどういうふうにとられようとしているわけですか。
  146. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 店舗政策の基本的な考え方といたしましては、大体全体的に銀行の店舗というものは一体幾つあればいいかという問題が一つ基本的にあろうかと思います。しかし、これはそれぞれの事情によって、店舗の数と人口の関係ということは一律に出てまいりません。たとえばドイツであるとかアメリカであるというのは非常にたくさん店舗がございます。わが国なんかはむしろ大きな店舗という形で、英国とかわが国なんかは比較的数は少ない。全国で一万五、六千、店舗の数はそんなことであったと記憶いたしております。全体の店舗を規制するという考え方よりは、金融機関がいわば企業としての経営のあり方から店舗を出していくことに対して、むしろ社会的と申しますか、国民的な立場から、店舗をあるべき方向に誘導していくというのが、これからの店舗行政の基本的な考え方ではなかろうか、かように考えております。  そういうことからいたしますと、金融機関の店舗の希望というのは、きわめて全国的には少ない、競合するところに非常に殺到するというわけでございますので、むしろその意欲を散らすことによって利用者の便に供したい、そういうところに店舗を設置さすべきであるということが基本になっております。そういうことからいたしますと、新設といいますか、二つに分けまして、一つは従来どおりの、金融機関が希望する場所に近いところ、人口、企業がふえているから出すというカテゴリーが一つございます。もう一つは、近くに金融機関がないところに、そこなら認めますという形のカテゴリーと二つに分けて、半々の数にふえたわけでございます。それから二年間にいたしましたのは、一年間に無理して出すことよりはむしろ長期的な期間を計画的に考えて、地価の高騰というようなことのないようにあらかじめ計画的に処理していくということがしやすいようにということから二年間、二年分を認めることにしたわけでございます。  それから、第三の問題は、従来は配置転換と申しまして、銀行の希望によって一方から一方に移すことを認めておったわけでございますが、これがどうしても過度に集中するところに配置転換が行なわれることをむしろ矯正する意味から、配置転換については制限的に考える。例外といたしまして、合併による店舗が重複する場合にそれを整理するということと、もう一つは店舗が多過ぎる地域からそれを間引いて地方に持っていく、こういうときにはむしろ認める、こういう基準でやっておるのが大筋でございます。  なお、そのほかに団地内でございますとか、あるいは団地に準ずるような、たとえば老人ホームといったところについては、その規制のワク外にして、預金者の便というところから認めるという、いわばそういう三つぐらいの原則のもとに認めたのが、今回の店舗内示の姿でございます。
  147. 村山喜一

    村山(喜)委員 老人ホームがあるところに店舗をつくってみたって、それは所得源がないのですから、そんなところへ店舗をつくったって引き合わないですよ。問題は、近くに金融機関がないところに二百三十店舗くらい新設をされるようでありますが、それは利用者サービスということになるだろう。ところが、前の配置転換の、おまえのところは一行に一店舗割り当てるからというようなことで、そういうような配置転換によるところの店舗をやられた結果は、結局所得源のある、金のある都市のほうに全部集中しちゃって、いなかのほうから金融機関がなくなっていくという現象が出ましたですね。その結果、資金を借りようと思っても、今度は利用者のほうは支店がなくなっていくのですから、都市部にまで出かけていかなければならないというようなことで、たいへん不便な状態になった。結局、そういうような状態になるので、勢い銀行から農協へ資金が流れたり、あるいは郵便局のほうに資金が流れたりするというような傾向がありましたですね。そういうような点から見て、配転の分については、これは今度はどの程度に押えてあるのですか。
  148. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 いま御指摘のような問題がございましたので、配置転換については、店舗が多過ぎるところから出て行く場合、合併による重複店舗の整理、その二つ以外は認めない原則でやったわけでございます。そこで今回の配置転換、そういう合併による重複店舗と、店舗が過密の地域から地方へ出ていくという場合で認めたのが七十五でございます。これは二年間で七十五でございます。それから四十七年度は、一年間で百七十の配置転換を認めたわけでございますので、一年にいたしますと、今回の認め方は七十五の半分、約四十くらいでございます。大体四分の一くらいになっておる、こういうことでございます。
  149. 村山喜一

    村山(喜)委員 最後に、自己資本の一〇%を二〇%に引き上げて同一人に対する融資額が引き上げられたわけですが、これについては上位シフトという状態が起こらないように行政当局や金融機関が特段の配慮を払うということになっておりますが、貸し付けの実態から見て、大口のほうについては、それだけ件数が少なくなり、コストが安くなって貸し付けやすいわけです。そうなってきますと、上位シフトを防ぐ対策というものが示されなければ、今度の改正案の中ではこれは卒業生金融あるいは中堅企業金融に対する重点政策ではないかというふうになりかねないわけでありますが、その上位シフトを防ぐところの具体的な方策をどういうふうにお考えになっているのか。先ほど二〇%というのは金額にしては五億円ということで、まあ金額の面においても示すのだということでありましたが、この中小企業金融機関制度調査会ですか、こちらのほうでは二倍の四億にすべきだという答申が出ていますね。これが五億にはね上がった理由は何なのか、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  150. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 いま御指摘になりましたのは相互銀行の場合の五億で、これは現行の自己資本の一〇%以内ということであってもその限度が五億をこえる場合には、五億をこえる融資の合計が融資全体の二割以内に押えてほしいという指導でございます。これを今度自己資本の二〇%以内というように法定限度改正することによって、この五億という金額限度を幾らにするかという問題が別途あるわけでございます。  それから、融資金額限度につきましては、四十三年の金融制度調査会の際の話をおっしゃったものと思いますが、これを基準とすることが望ましいということを私どもが現在五億にしておる、それはなぜかという御趣旨かと思います。これはいま先生自身が御指摘になりましたような金融機関としての合理化、効率化ということと、それから専門機関であるべきその理念ということの調和として検査などで調べてみますと、どうも五億ということで押えるのが適当である、かように判断したことによるものでございます。  それから、上位シフトを防ぐ具体策としては、いま申し上げましたような、そういう自己資本による法定限度というものがあっても、通達による限度を設けることによって上位シフトということは防げるのではないか、かように考えております。その実例としては、たとえば上位十行、大きなほうの相互銀行についてみますと、自己資本の五%をこえるような大口貸し出しというものがそれらの銀行融資総額の大体四%程度という現状、それから下のほうをとってみますと、下位十行をとってみますと、同様大きな貸し出しというのが大体一八%前後であるというところから見て、そう大口シフトと言われるような状況はいまのところは考えられないのではないか、かように考えております。
  151. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、荒木宏君。
  152. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 改正案の理由についてまずお尋ねしたいのでありますが、趣旨説明によりますと、たとえば中小企業資本装備率が上昇した、金融に対する要請が多面化したといったような御説明があり、また他の議員の質問に対して政府委員の答弁されたところを伺いますと、中小企業資本の規模といいますか、これが数年の間に百六十数%でありますか、拡大している、こういった説明を伺ったのでありますが、私は、伺っておりまして、再三指摘されております上位シフト、まあ資金効率だとかあるいは資金コスト、利潤追求、そういった面からどうしてもこういった傾向が出てくるおそれがある。ですから、政府委員の説明された数年間に百六十数%ふえておるというところも、客観情勢がそういうふうに変わっているのではなくて、あるいは相互銀行なり信用金庫がそういった上位のほうへ向けて顧客層を移していっておるということも考えられるのじゃないか、こういうように思っておったわけであります。  そこで、局長に伺いたいのですが、得意先については選択ができるわけでありますから、得意先の資本規模がどうであるかということは調べておいて、客観的に日本の法人の資本規模がこの数年の間にどう変わっているか、全法人を対象にして、たとえば一億円を刻みにそれ以下とそれ以上と構成比が動いているのかどうか、あるいは実勢の推移がどうなっているのか、こういう点についてどのようにつかんでおられるかをまず伺いたいと思います。
  153. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 これは、大蔵省の法人企業統計年報による数字でございますので、必ずしも相互銀行なり信用金庫取引先ということではございません。それによります業種別の資本装備率ということで、四十二年度と四十六年度と対比して申し上げます。  まず、全産業で申しますと、資本金が五百万円未満のところが一六六%、五百万から一千万未満が一六九%、それから一千万から五千万未満が一七一%、五千万から一億円までが一六〇%、こういうように資本装備率がふえております。  その内訳で申しますと、製造業が、五百万未満が一六八%、それから五百万から一千万未満が一六六%、一千万から五千万が一七〇%、五千万から一億が一六七%。卸・小売業につきましても同様でございまして、五百万未満が一四四%、五百万から一千万未満が一六九%、一千万から五千万未満が一五四%、五千万から一億円が一六三%。それからサービス業が特に高いわけでございまして、五百万未満が一九八%、それから五百万から一千万が一五三%、それから一千万から五千万が一九二%、五千万から一億が一三六%。それからその他がやはり同様でございまして、五百万未満が一七六%、五百万から一千万未満が一七二%、一千万から五千万未満が一八一、五千万から一億が一五五というように、大体五割以上六割の増加になっておる。これは必ずしも金融機関取引ということでなくて、法人企業統計で調べた数字でございます。
  154. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 そこで、今回の改正案に関連させていまの御説明を伺いますと、たとえば信用金庫の場合には融資対象法人、融資対象企業、一億から二億、こういうふうにワクを広げるということになっておりますね。相銀は二億から四億。そうしますと、今度の改正案にとって重要な点は、融資対象になる取引先ですね、それが一億以上がふえたのかどうか。一億以下でまかない切れないような状態になっておるのかどうか。ここのところが一つの目安ではなかろうかと思うわけですね。そこで、いま言われた大蔵省の法人企業統計を見てみますと、私どもの調べでは、四十五年、六年、七年をとってみましても、一億円未満は、構成比で九九%と、動いていない。一億から十億の間をとってみますと、〇・七%から〇・六%で、これも構成比としては大体横ばいになっておる。実数で見ますと、この三年間に一億円以上が千百七十五件の増加に対して、一億未満は九万四千三百四十件という、もう比較にならないくらいです。ですから、いま五百万刻み、一千万刻みということで御報告を伺ったのですけれども、今度の改正案にからんでおる一億というところで線を引けば、構成比は変わっていないし、実数はむしろ一億以下のほうがうんとふえている。  だとすれば、客観情勢の推移というよりも、相銀信金上位シフトしたい、取引先を動かしていきたい、そういったところが今度の改正の主たる理由というふうにも見られるのではないか、こういう考えが出てくるわけですが、いま指摘をしました一億を境にした法人構成比の推移と関連をしますと、どういうふうにお考えになりますでしょうか。
  155. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 今回の法律改正は、一つには中小企業基本法の中で、中小企業そのものの五千万という定義を変えて一億円にするということがまず条件としてございます。したがいまして、それに応ずる信用組合の制度改正がございます。中小企業金融機関としての三段階と申しますか、三つ金融機関あり方を定める場合に、信用組合、信用金庫、それから相互銀行それぞれがバランスのとれた形で中小企業あるいは中堅企業にお世話をする、こういうのが基本的な中小企業金融制度のたてまえでございますので、そういう中小企業資本装備率という考え方は、単にこの金融問題だけではございません。むしろ中小企業基本法全体を通ずる一つ考え方になっておるわけでございます。それに合わせまして、私どもも三段階制として融資の充実をはかっていきたい、こういうことでございます。必ずしもこの制度が変わったから相互、信金融資大口シフトするという実態になるというふうには私は考えておりません。
  156. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 制度改正即そういった結果が出るということは、いろいろな分析が要りましょうけれども、いまおっしゃった、中小企業基本法が変わったということはもうそのとおりでありますが、しかし四十三年の改正のときには、そういった基本法改正なくしてワクの拡大があったわけですね。また三金融機関相互間のバランスというお話もあるのですけれども、これは一つ上げれば続いてみな、バランスを保とうとすれば上がってくるわけであります。私がそういうふうに繰り返し申しておりますのは、今度の改正によって、そういう窓が開かれるというか、上位シフト方向へ上がって、大きくワクが開かれていくというか、そのことの危険を申しておるわけであります。それにはいまの相互銀行信用金庫貸し出し実態との関連でいろいろ検討しなければならぬと思うのです。  そこで、政府委員にお尋ねをしたいのですが、相互銀行信用金庫で、貸し出し金額の階層別といいますか、その違いによって資金量がどういうところへ集中して動いているか、これについての調査があればお伺いしたいと思います。
  157. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 相互銀行信用金庫それぞれ金額別に貸し出し件数を申し上げますと、百万円以下が、相互銀行の場合でございますと貸し出し件数にして六三%、信用金庫の場合でございますと六五%でございます。それから百万から五百万までのランクになりますと、相互銀行の場合が二三%、信用金庫の場合が二四%でございます。五百万から一千万までが、相互銀行が五%、信用金庫が四%。一千万から五千万までが、それぞれ五%、同様の数字でございます。五千万をこえ一億に至りますと、相互銀行が一%、信用金庫が〇・六%。一億から二億が、相互銀行が〇・六%、信用金庫が〇・二%、こういう状況でございます。
  158. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 いま伺った資料は私がいただいたのと大体同じようでありますから、これをもとにお尋ねをしたいと思いますが、いまのお答えでありますと、相互銀行にしても信用金庫にしても、借りている金額が百万円以下という得意先、融資対象が六十数%、半分をはるかに上回っている。これを五百万円で切りますと、五百万円未満は、相互銀行信用金庫もほとんど九割に近い。正確にいえば、相互銀行が八七%で、信用金庫が八九%ですから、九割近くの人たちが、相互銀行にしても信用金庫にしても五百万円以下しか借りてない、こういうふうな実態だというふうに伺ったわけです。  しかるに、そこへいっている資金量というものは、相互銀行は百万円以下が四・三%、百万円から五百万円が一一・六%ですから、両方合わせますと約一五%。だから、九割近くの人たちが貸し出しを受けている金額というものは、相互銀行の総資金量のうちでわずかに一割五分しかない。信用金庫についても同じことで、約九割近くの融資対象は二六%の資金量しか融資を受けてない。一方、一億をこえる分は、相互銀行では、融資対象としては〇・九%ですから一%にも満たない。にもかかわらず融資を受けている資金量は三四・二%なんです。だから、一%に満たない融資先が三分の一以上の資金量をずっと自分のほうへ引っぱってきている。信用金庫にしても、一億円以上というランクで見ますと〇・二四%ですから、これまた一%にはるかに及ばぬのですけれども、ここで受けている資金量が一四・二%ですから約一割五分です。  こうして見ますと、相互銀行信用金庫も、いわゆる小口金融といわれるところは、希望者はどっと来ているけれども、金は少ししか回っていない。大口金融といわれるところは、融資対象はずっと少ないけれども資金量はうんと回っている。こういう実態になっていると思うのですけれども、大蔵省のほうではどうごらんになっていますか。
  159. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 これは小口である場合には、件数金額の割合からいたしますと、どうしてもそういうことにならざるを得ないものだと思います。ただ、相互銀行の場合でも、件数、割合を比べてみて一番多いのはやはり一千万から五千万、あるいは五千万から一億といったところが融資の中心になっておる、こういう実情でございます。ただそういう融資に応ずることがいいか悪いか、あるいはもっと小口にやるべきではないかという問題は、一つ金融機関の経営のあり方としては確かにあるのかもしれないと思います。しかし全体七十何行の相互銀行あるいは五百に近い信用金庫のそれぞれの個々の経営のあり方として、必ずしも一様に経営がされるわけではございませんし、立地条件にもよろうかと思います。したがいまして、これはやはり一つの民間金融機関であるという実態を踏まえて考えてみます場合に、そのあり方として、非常に異常な姿であるということには考えてはいないわけでございます。  ただ、先生も御指摘のように、できるだけ零細なものに回すべきではないかという御趣旨はよくわかります。それはやはり民間金融の補完としての政府金融機関というものと、こういう民間金融機関がどういうふうに補完関係にあるかということで考えていくべき問題ではなかろうかと考えております。
  160. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 ところが、私は特に重視しておりますのは、中小企業金融で、全国銀行あるいは相互銀行信用金庫、政府関係金融機関いろいろありますが、これらの各種金融機関が占めておる比率が、相互銀行信用金庫は低下してきている。いま御指摘の政府関係金融機関のほうも構成比としては下がってきておる。  中小企業金融公庫の出した統計によりますと、相互銀行は昨年に比べて一七・四%から一六・八%、信用金庫は二〇・六%から二〇・一%、政府関係金融機関機関ともいずれもシェアは低下している。ただひとり全国銀行のみが構成比がふえてきている。ですから金融機関の公共性、ことに相銀信金などの中小企業専門金融機関としてのあり方という点から考えますと、こういったように全国銀行中小企業のほうへずっと入ってきている。しかもおそらくは大手のほうへ、中小上位のほうへ金融シェアを伸ばしてきていると思うのですけれども、こういった傾向にあることを局長はどういうふうにお考えになりますか。
  161. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 中小企業金融というのは、ひとり厳格な意味での中小企業、たとえば現在でございますと資本金が五千万以下の中小企業金融をやっておればいいということとは私は考えません。むしろそういう厳格な意味での中小企業と、それからいわゆる大企業との中間に所在する中堅企業というものも、広い意味中小企業として考えていくべきでございまして、そういう意味からいたしますと、それらの中小企業というものに対してできるだけ多様の機関がこれに手を差し伸べていくということこそ望ましいことではなかろうかと思います。  都市銀行がそこに入ってくることが、これは資金コスト、金利面からいっても、非常に相互、信金なんかに対する刺激材料にもなるわけでございまして、いい意味での競争原理が働くことによって、中小企業金融の分野が拡大していくということで、決して悪いことではない、かように考えております。  相互銀行のシェアが下がったというお話でございますが、これは相互銀行がそれ以外のところに貸すことによって下がったのではなくて、先ほど預金の伸びの関係相互銀行貸し出しが減ってきたという面も時期的にはあったかと存じますが、相互、信金がやっておるやり方が中小企業から非常に離れておるということとは別問題だろう、かように考えております。
  162. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 これは机の上のきれいごとと言いますと言い過ぎになるかもしれませんけれども、しかし、実際に小規模零細業者で金融の希望が非常に強いという場合には、都市銀行ではなかなかこれはめんどうは十分見切れない、実際見てもらえないというのが実情だろうと思うのです。私が言っていますのは、個々のその中小企業金融機関がどうだということではなくて、全体として全国銀行のほうが中小企業上位のほうにまで入ってきている。それはまあ刺激にもなってかえっていいじゃないか、こういう話ですけれども、そこへ今度は相互銀行信用金庫ワク上位のほうへ向かって開かれた。そうすると、そこで確かにこれはまあ競争原理、いろいろな刺激原理が働きましょう。しかし、実際に中小企業金融の中で約九割近い頭数の比率を占めている五百万以下の融資を受けている業者の人たち、ここのところはますますこの中小企業金融機関からも、それから全国銀行関係金融機関からも、その分野での競争が激しくなるから取り残される危険があるではないか。  そのことについて政府当局のほうも、それは行政指導の必要性を全く否定してはおられないわけですから、私の言っていますのは、こういったいろいろな傾向から見て、ことに強力な指導が必要なのではないか。制度調査会指摘も、特段の配慮というふうにありますけれども先ほど来他の議員からのお尋ねで、四十三年以来の行政指導の内容も伺いましたけれども、しかしこの際思い切って、たとえば相互銀行については五百万円以下、九割近い件数の分野でわずか一五%というふうな比率を、せめて三割ぐらいに伸ばし、信用金庫については同じく二十数%というのをせめて半分近くにまで持っていくような行政指導、経営改善ということも、国民の皆さんの零細な金融を確保するという点から見れば必要ではないか。もちろんこれは、採算性とかそういった法律ワク内という問題がいろいろありますから、先ほど来の答弁しておられる趣旨はよくそれなりに伺っておりますけれども、この際、四十三年に出されたあの通達にもかかわらずこういう結果になっておる、これを異常と見るか見ないか、これはまあ見方の違いかもしれませんが、私はしかし、九割近い人たちがわずかこれだけしか受けられない、一%にも満たないところに、国民大衆からずっと預かったお金が三分の一以上も行っている、これはやはり行政指導で是正をはかられる姿じゃないか、こういうように思うのでありますけれども、そういった方向での行政指導をひとつ十分検討なさるおつもりはないか、このことを伺いたい。
  163. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 お考えは私、それなりに伺って理解をしておると思います。ただ、先ほど申し上げました百万円以下の貸し出し金額が、すなわち百万円以下の零細な人であるかどうか、すなわち、それを即断していいものかどうかとなりますと、これは別だろうと思います。これは貸し出し金額が百万円ということで分けておるわけでございますので、おそらく大部分は、小さな貸し出し金額の人は零細な人だろうとは思います。しかし、小口に分散をするというような、あるいは資金需要が小口化しておった、四十二、三年と現在とは、同じ資金需要としても、一つのロットが大きくなっておるということも、経済情勢変化に対応してあり得ることでもあるように思います。したがいまして、これらの統計、私ども貸し出し件数ということでしか申し上げられないのは、私どもが統計上十分な資料を持っておりませんので、はなはだ申しわけないわけでございますが、そういう意味では、必ずしもこの統計に即して私ども指導するその手がかりになるかどうかとなりますと、なお慎重を要する、かように考えております。  ただ、お考えの趣旨としては、そういう小口の人にできるだけ均てんさせていくということが調査会答申でもございますので、そういう趣旨に沿っての指導はこれからも十分やっていきたい、かように考えておるわけでございます。
  164. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 増本議員がお尋ねしましたときに、この貸し出し先の規模別の統計はない、これはかなり困難だというふうなお答えのように伺ったのであります。そこで先ほどから申しております、これは単に一件当たり貸し出し金額ではなくして、名寄せをされたものでありますから、偽名を使えばこれは別でありますけれども、いま分散というお話がありましたけれども、普通は、そんなに手の込んだことは別といたしまして、大体一人の人にずっと貸し出す金額としては集合された統計になっておるわけですね。ですから、資本金別の統計がなければ、これをもとにどういう融資分布になっておるかということを基礎に十分検討をされて、調査会答申の趣旨にも沿い、いまお話しの、単に手がかりということからさらに進めて行政を行なわれるように要望したいわけですが、ちょうど大臣がお見えになりましたので、先ほど来お尋ねしておりましたことを集約しまして、ひとつ政治的な方針を伺いたいと思います。  相銀信金などの法律改正にからみまして、ちょうど統計によりますと、相互銀行の四十七年の融資対象一人当たり融資金額が四百七十九万円、これは大蔵省のほうの統計でございます。信用金庫のほうが、融資対象一人当たりの平均が二百九十五万円ですから、どちらも平均が五百万円以下になっているわけですね。  そこで、平均となっております五百万円以下を見ますと、融資対象者の比率は、相互銀行の場合には八七%、それから信用金庫の場合には八九%ですから、相銀信金ともに約九割近い人たちが五百万円以下の融資を受けている人たちである。ところが、そこへ行っている資金量が、この統計によりますと、相互銀行ではわずか一五%余り、信用金庫では二六%余り。一方、上位のほうを見ますと、一億円以上の場合には、相互銀行では〇・九%しかありませんが、資金量のほうは三四%になっております。信用金庫のほうも、数字としては似たような傾向であります。  そこで、調査会答申にもあります、この上位シフトのないように小口金融をできるだけ十分にする、こういった点から、単にいまいわれております五億円以上について規制をするとか、あるいはそれを上回った場合でも全体の資金量の二割以上にならないようにするとかいった規制方法だけでは必ずしも十分とは言えないのじゃないか。  そこで、法律ワクが設けられた意味合いでありますとか、あるいはまた採算性の面もそれなりに考えた上で、相互銀行資金融資先が五百万円以下というところがせめて三分の一ぐらいになり、一億円以上と同じ程度になり、信用金庫の場合にもせめて半分ぐらいになるように行政指導がされてはどうか、こういうことをお聞きしておったわけでありますが、大臣の政策、御意見をお伺いしたいと思います。
  165. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 確かに御指摘のとおり、金融制度調査会答申の中にも触れられておるように、大口シフトになるようになっては、本来の庶民金融機関としての性格からいっておかしいことは御指摘のとおりでございますから、何とかそういう方向にならないように行政的にも指導をしてまいりたいと思います。ただ、たとえば四十七年三月において、法定融資限度額の五〇%相当額以上の融資の総融資量に占める割合を上位の十行と下位十行について見ますと、上位十行では四%、それから下位十行では一八%というような状況でありますことも参考になる点ではなかろうか、こう考えております。
  166. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 関連して、金融制度調査会の構成ですけれども法律に根拠規定がありますが、たとえば利用者の大半を占める五百万円以下の融資を受けているような業者の人たちですね、こういう中小業者といいますか、小規模零細業者の代表の人たちを調査会のメンバーに入れられて、そして実際にそういった面で、産業、金融にいろいろ経験があり、知識があり、関係業者からも審議会参加について強い要請がある、こういったような人たちを構成に加えられるということも、調査会答申をさらに充実したものにするためにも必要ではないかというふうに思いますが、学識経験者、それから金融機関、それぞれ代表がお入りになっているようでありますが、いまのような領域での顔ぶれを検討なさるおつもりはありませんか。
  167. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まあ率直に申しまして、消費者代表というか、こういうところまでは、この金融制度調査会性格、使命からいってちょっとどうかなとは思いますけれども、現に、委員の中に、たとえば氏家寿子さんというような方、日本女子大の先生ですが、それから国民生活センターの理事長というようなところもお入りいただいているようなわけでございますから、適当な機会に適当な方がおられれば、さらに広い範囲考えるということにはやぶさかではございません。
  168. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 そういった一般的なお答えで、実際に方向がそういうほうへ進むことを強く期待しておるのでありますが、たとえば特定の名前を申し上げるとどうかと思いますけれども、今度の国会でも、買い占め、投機が大きな問題になって、そこへ召喚を受けて出頭された某商社の代表者の方などがお入りになっている。これは社会的な指弾、糾弾というのは立場、見方によっていろいろありますから一がいにいえないかもしれませんが、しかし、この時期にそういうふうな指摘をとにもかくにも受けておるような関係の方がおられることは必ずしも好ましいとはいえないし、また貸す側の協会の代表者がお入りになっている。だとすれば、借りる側の公正な意見を代表するような立場の人もこれは必要ではないかというふうに思うのでありますが、その点はひとつ、今後の運用の点で十分に御理解をいただきたい、こう思います。  それから、大臣がおられる時間があまりないようでありますから、今度は、相銀信金金融機関に働く従業員の人たちの労働条件の中で、いま問題になっております役席者の時間外手当の問題をひとつ伺っておきたいと思うのですが、これは本年になりましてからも、相互銀行関係では、銀行局の中小金融課長さんでありましたか、関係の組合のほうから御相談したそうでありますし、それから地方銀行関係では、銀行局長に前に要請もしたと伺っておるのでありますが、実態をよく調べて善処をする、労働省にも連絡をとった上で善処をする、こういう返事を伺っておるようでありますが、その後の調査の結果はどうであったかということを、初めに一言伺っておきたいと思います。
  169. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 いまのお話の点につきましては、各銀行でそれぞれが、地域によっても慣習が違うというようにも聞いておりますので、それぞれの労働基準監督署の見解を確かめてやるように、各銀行に注意を喚起しておきました。具体的にどうであったかということについては、現在の段階では、まだお答えする材料を持っておりません。
  170. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 これは前に当該の組合のほうからいろいろ御相談をしたときに、善処をするという御返事があったように私は聞いておりますので、それはそれで大いに期待をしておるわけであります。  地域の慣習がいろいろ違うというお話だったのですが、これは全くそういう性質のものじゃないと思うのですよ。労働基準法ではっきりきまっておる問題でありますし、ことに銀行の公共性とかあるいは信用というふうな問題から申しましても、また預金者へのサービスという営業の点からいっても、戦後労働基準法が設けられてもう二十数年になるわけですけれども、いまごろまで放置されておるような問題ではなかろうと思うわけですね。  そこで、労働省の労働基準局の担当の方にお伺いをいたしますが、相互銀行信用金庫、あるいは全国銀行も同じでありますけれども、支店長代理だとかあるいは次長さん、また本店でいえば課長代理だとか課長さんとか、労働組合の組合員である人たちも多いのですけれども、こういった人だちの時間外労働について、労働基準局のほうではどういうふうな方針を出していらっしゃるのか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  171. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 労働基準法では、先生も御高承のように、四十一条という規定がございまして、管理、監督の地位にあられる方については、基準法上の労働時間、休日、休憩等に関する規定が適用されないことになっております。したがいまして、それらの方々が一日八時間、週四十八時間をこえて時間外労働をされる場合に、三十六条の協定がなければならないとか、あるいはそういう時間外労働をされた場合に二割五分の割り増し賃金を払わなければならないという規定は、これらの方には適用がないわけでございます。  ところで、管理、監督の地位にあるという方はどういう方がそれに該当するかということになりますと、これは数多くの企業で、部長だとか課長だとか参事だとかあるいは支店長代理だとか、いろいろな役職の名称がございますけれども、名称によって一がいにどうだというふうに線を引くことはできないわけでございまして、企業によりまして、同じ名称を設けておりましても、その企業内における権限等に非常な違いがあるわけでございます。  そこで私どもは、その名称によって、どういう名称の者はそれに当たるとか当たらないとかいうことは申しておらないわけでございまして、この管理、監督の地位にあるというのに該当する人々は、その実態から見て、労働条件の決定とかあるいはその他労務管理について経営者と一体の立場にあるような方々、そういう立場に基づいて出勤その他の勤務時間について厳格な規制を受けないような人々、これがこの基準法の四十一条の管理、監督者ということに当たるわけなので、実態によってそれに当たるか当たらないかを判断するように、こういう指導をしているところでございます。
  172. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 大臣が退席なさるそうでありますから、一言伺っておきたいのですが、大蔵省としては、金融機関に対する監督をなさる立場として、役席者の実態によって労働基準法上の時間外手当の支給をなすべきであるかどうかをきめる、労働省はこういう見解のようでありますけれども、それをさらに現場に当てはめて、いま若干労働省のほうで言われたような基準に従って、これは経営者と一体をなす者ではないという実態の判断ができたときには、時間外手当が払われるべきだというふうな行政指導をなさる御用意があるかどうか。私は当然そういうふうになさるべきだと思うのでありますけれども実情をよく調査をして、そういう実情にあるということがはっきりしたときには、大蔵省としてはそういう方針をとられる用意があるかどうか、これをひとつお聞かせいただきたい。
  173. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは事務的な問題よりもむしろ政治的に判断すべき問題だろうと思いますけれども一つは、銀行行政といいますかその面の問題としては、労使関係はやはり中立的に、第三者的に律するということが一番ふさわしいことではないか、一般論としてはそう考えております。  それから具体的には、いま労働省の渡邊局長からも説明がありましたけれども、私は、金融機関として何か一律に一線を引けるような考え方ができるならば、前向きに検討していいのじゃないかと考えております。たとえば銀行といいますか金融機関の場合は、よくPPといわれておりますけれども、小切手など署名する、そこのところなどが私は常識的に一つの限界じゃないかと思いますが、局長から御答弁しましたように、実態を見ますと、銀行によって、あるいは大小の企業等によって、これもずいぶん違うようでございます。そういうことでまだもたもたしているのが現状でございますが、何か適切な方法があれば私は前向きに対処してしかるべきものである、こういうふうに考えております。
  174. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 そこで、いまの大臣の御答弁を受けて局長にお尋ねをいたしますが、その前に労働省にもう一つ伺っておきたいのです。  いま、出退勤に厳格な規制を受けない、それから労務管理について経営者と一体的な立場にある、この二つの指標を示されたわけですが、これをもう少し具体的に言いますと、前者については、たとえば出勤時間が一応きまっている、もちろん退社の時間もきまっている、こういうのはいま言われた出退勤について規制を受けておるというふうに見なければならぬと思うのです。支店の代理、次長、あるいは場合によっては支店長という立場の人たちは、出退勤についてはほとんどいまのような時間的に規制を受けているというのが実情だと思うのですけれども、その辺のところはいかがでしょうか。
  175. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 まあ管理者的な立場にある人でも、業務の関係で一応の出勤、退勤の時間というものはあることが通例であろうと思うのでありますが、私がいま厳格な規制と申し上げましたのは、そういう経営者側と一体の立場に基づいて——やはり一般従業員と同じように出勤、退勤について当該企業の中で非常に厳格な規制を受けている者はそれに入らないけれども、一応の出勤、退勤の時間が定められておっても、そういう経営者と一体の立場から、一般の従業員よりはそれほど厳格には取り扱われていない、場合によっては一般の従業員のような厳密な取り扱いをされていないというような場合には、必ずしも出勤、退勤の時間がきまっているということだけでこれに当たらないということは言えないのではないかと考えます。     〔委員長退席、木村(武千代)委員長代理着席〕
  176. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 そうしますと、実態によるということですから、もう少し詳しく伺っておきたいのですけれども、たとえば出勤簿が備えつけてある、あるいはタイムレコーダーがある、そして三十分おくれたり四十分おくれたりするのがずっと続くとぐあいが悪くなって注意を受ける、こういった立場に置かれている人は、それなりに出退勤の厳格な規制を受けているというふうに言えるのじゃないでしょうか。そういうふうに見て律するというと、これはやはり一つの指標になると思うのですけれども、そういう見方で考えてもよろしいんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  177. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 ただいまも申しましたように、管理、監督の立場にある人でも、たとえば会社の普通の一般の製造業の事業場における工場長とか部長とか、こういう人たちでも、場合によれば、やはり出勤簿等がある場合があるわけでありますが、しかし、やはり管理者という立場からして、ときに経営者という立場の仕事から出勤時間がおくれる、そういうことがあっても一般の従業員のように直ちに賃金を差し引いたり、あるいはそれによって勤務上の特別な処置を受けたりしないような立場の場合には、出勤簿がある、あるいはタイムレコーダーを押すことになっているというだけでは、直ちに勤務時間についての規制を受けているんだということにはならないわけでございまして、やはりこれも出勤簿がある、あるいはタイムレコーダーを押しているというだけではなしに、その企業の中で、そういう人たちについて出勤時間等についてどの程度一般従業員と同じ取り扱いをされているか、あるいは場合によって別個に取り扱いをされているか、そういう実態によって判断すべきであろうと考えるわけでございます。
  178. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 どうもお話を伺っていると、ラッキョウの皮みたいなものですね。     〔木村(武千代)委員長代理退席、委員長着席〕 ずっとむいていくけれども、さっぱり中身がない。厳格な厳格なとおっしゃるけれども、一般の従業員と同じであるかどうかという比較論だけであって、基準そのものが示されてないのじゃないか。  私が言っておりますのは、やはり明確な外形基準というものが一つの目安になって、そして実態の判断というものがあるのではないか。ですから、経営者と一体をなすような者、たとえば取締役会のメンバーであるとか、これは普通に考えて出動簿に判を押しませんわね。そしてその出退はそれぞれ経営上のことがあるから自由になっていますよ、常識的に考えて。だけれども、タイムレコーダーに打刻をし、出勤簿に判を押し、おくれると気がねをし、言いわけをするというようなことになると、これはやはり時間規制を受けておるというふうな社会常識、社会通念ではないかと思うのです。  ですから、そういうふうな点から、二十二年九月十三日の局長の通達ですか、こういう立場はそのまま現在も引き継がれておる、こういうふうに伺ってよろしいわけですね。そうですね。
  179. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 二十二年の通達は、いまもこの考え方でおるわけでございます。  ただ、私が申し上げましたのは、たとえば工場の部長などの中には取締役でないような場合には出勤簿は判を押すことになっている。しかし、経営者と一体的な立場で、必ずしも出勤時間が一般の従業員より三十分おくれたからといって、賃金カットをされたり、あるいはそれによって遅刻が多いというようなことで勤務上の処置をされない、一応勤務のめどとして出勤簿は判こを押すけれども、一般の従業員と異なった取り扱いをされているというような場合には、出勤簿がある、あるいはタイムレコーダーの打刻があるというだけでは管理監督者でないんだ、そうは言えない面もあるわけでございまして、やはりそういう実態で判断すべきだということを申し上げているわけでございます。
  180. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 それでは実態のもう少し本質的なところで一つ伺っておきたいのですが、経営者と一体をなすというのは、これはどうでしょうか。たとえば人事権あるいは懲戒権、そういった雇い入れ、解雇、懲罰あるいはまた昇給、昇格の決的権ですね、そういったものを持っておる人を経営者と一体をなしておる者、こういうふうに考えてよろしいわけですね。
  181. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 おっしゃるように、雇い入れ、解雇あるいは労働条件の決定、昇給、昇格といったようなことが労務管理の最も重要な問題でありますが、決定権ということになりますと、場合によれば工場長なども人事の問題については内申をするだけで、本社が最終的には決定をする場合があるわけでございます。しかし、本社がそういう場合に決定権を最終的には持っているとしても、それは幾つかの工場の間の調整をはかるために本社が最終の決定権を持っておるけれども、実質は特に調整の対象にならないような場合には工場長なりの内申等によって実質的には行なわれているというような場合には、形式的な決定権は本社にあったとしても、やはりその工場長が労務管理上の経営者と一体的な立場であるということは言えると思うわけでございます。したがいまして、実質的なそういう労務管理上の諸権限の行使、それに実質的に経営者の立場において非常に大きな決定についての参画の権限を持っておるということによって判断されるものと考えております。
  182. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 だから、要するに実質的に経営者と一体をなす、あるいは決定権限を分有しているというか、そういったようなもの、つまり、だからこそ出退勤に厳格な規制を受けていない、こういうふうに扱っておるわけですね。  そこで、ある労働組合の計算によりますと、地方銀行だけでいま役席の人が、男子でいえばもう三人に一人くらいに数がどんどんふえてきている。いろいろな肩書きをつけて、そうして役席と称しておるわけですが、そういった人たちの時間外手当を一応計算いたしますと、ある計算によれば一昨年一年だけで二十億円になる、地方銀行だけですけれどもね。そういうふうな計算もあるくらいなんですけれども、紛争になったときに各労働基準局などで実際に実態の判断をしなければならぬと思うのですが、それはいまのような方針で、申し立てがあれば、労働省としてはそういう実質的な人事権なりの点から判断をして、そうしてどんどん解決するように前向きに事を処理される用意があるかどうか、この点をはっきりしていただきたい。
  183. 渡邊健二

    ○渡邊(健)政府委員 私どもは、先ほど申しましたように、二十二年の通達によってこの基準法四十一条を運用しておりますので、具体的な問題が起きました場合には、その通達の趣旨に従いまして実態を十分調べました上で処置をするように地方に指導をいたしておるわけでございます。
  184. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 そこで、銀行局長にお尋ねをしますが、それぞれの金融機関内の実情はよく御存じと思いますけれども、大蔵省のほうにもこのことでいろいろ要請も重ねておるように聞いておりますけれども、いま労働省のほうで言われたような方針で解決が促進されるように大蔵省としても監督指導を強化していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  185. 吉田太郎一

    吉田(太)政府委員 私どもといたしましても各銀行に各地区の労働基準監督署と連絡をよくとり、その見解に従うようにというように指導をしておるわけでございますので、そのことがいまの先生の御趣旨に沿うゆえんではなかろうか、かように考えております。
  186. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 五時をだいぶ回りましたので、最後にまとめて申し上げて質問を終わりたいと思いますが、時間の関係できょうは小口金融の点とそれから時間外労働の割り増し賃金の問題に限ってお尋ねをしたわけでありますけれども、この御答弁を伺っておって、たてまえは上位シフトにならないように気をつける、それから時間外手当の問題についても解決方を促進をしたいというふうな趣旨の御答弁があるのですけれども、しかし前者について申しますと、統計の指標のとり方の違いという点がありますけれども、ほんとうに金融機関の公共性ということを、効率化その他の採算性ともにらみ合わせながら、実際に大多数を占める階層の人たち、その金融要請にこたえるような親身な、親切な指導、それをもっと強力に進めていただきたいという感を非常に強くしましたし、それから時間外手当の問題でも、労働省のほうの説明を伺いますと、むしろ時間外手当を支給しないでもいいような形の答弁をされておるような節もあるわけであります。そういう点で、いま相互銀行では、全国の中で実際に支給しておるのは三行しかありません。御承知かと思いますけれども、事業規模としてはむしろ低いほうの三十位の富山、三十七位の殖産、六十八位の東陽、三つしかありませんで、ほとんどすべての相互銀行信用金庫あるいは地方銀行にわたってこの問題が起こっておるわけでありますから、先ほどのいただいた答弁の趣旨に沿って、現場のこういう金融機関の従業員の人たちの労働条件をしっかり確立する、そして公共性、銀行の信用保持という点からも、労働省も大蔵省もともにそういう方向で早急に解決をしていただきたいということを強くお願いをして、質問を終わります。
  187. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次回は、来たる十一日金曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二十一分散会