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1973-04-17 第71回国会 衆議院 大蔵委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十八年四月十七日(火曜日)    午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君    理事 大村 襄治君 理事 木村武千代君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 森  美秀君 理事 阿部 助哉君    理事 武藤 山治君 理事 荒木  宏君       宇野 宗佑君    越智 通雄君       大西 正男君    金子 一平君       栗原 祐幸君    小泉純一郎君       地崎宇三郎君    中川 一郎君       野田  毅君    萩原 幸雄君       坊  秀男君    毛利 松平君       山中 貞則君    村山 喜一君       山田 耻目君    増本 一彦君       広沢 直樹君    竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  山本 幸雄君         大蔵省主計局次         長       長岡  實君         大蔵省理財局次         長       後藤 達太君         大蔵省国際金融         局長      林  大造君  委員外出席者         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 四月十六日  音楽、舞踊、演劇等入場税撤廃に関する請願  (浦井洋紹介)(第二七三四号)  同(木下元二紹介)(第二七三五号)  同(浦井洋紹介)(第二七六六号)  同(田邊誠紹介)(第二七六七号)  同(浦井洋紹介)(第二七九六号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二七九七号)  同(浦井洋紹介)(第二八四六号)  同(浦井洋紹介)(第二八九九号)  付加価値税新設反対に関する請願竹村幸雄  君紹介)(第二七六二号)  同(中路雅弘紹介)(第二七六三号)  同(竹村幸雄紹介)(第二八〇二号)  同(多田光雄紹介)(第二八四七号)  同(増本一彦紹介)(第二八四八号)  個人事業主報酬制度の創設に関する請願石母  田達紹介)(第二七六四号)  同外一件(有島重武君紹介)(第二八〇三号)  同(金子みつ紹介)(第二八〇四号)  同(渡辺三郎紹介)(第二八〇五号)  同(多田光雄紹介)(第二八四九号)  同(中路雅弘紹介)(第二八五〇号)  所得税等課税最低限度額引上げに関する請願  (石母田達紹介)(第二七六五号)  同(有島重武君紹介)(第二七九八号)  付加価値税新設反対等に関する請願外二件  (有島重武君紹介)(第二七九九号)  同(瀬野栄次郎紹介)(第二八〇〇号)  同外二件(高橋繁紹介)(第二八〇一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間  の協定に基づいて借り入れ外貨資金等償還  に関する特別措置法案内閣提出第二〇号)      ————◇—————
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定に基づいて借り入れ外貨資金等償還に関する特別措置法案議題といたします。     —————————————
  3. 鴨田宗一

    鴨田委員長 まず、政府より提案理由説明を求めます。山本政務次官
  4. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 ただいま議題となりました農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定に基づいて借り入れ外貨資金等償還に関する特別措置法案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  わが国は、昭和三十年及び三十一年にそれぞれ第一次及び第二次の農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定を締結し、米国からの農産物の購入に関連し、約一億五百万ドル借款を受けました。また、昭和三十七年には、日本国に対する戦後の経済援助処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定を締結し、戦後米国から受けた経済援助最終的処理として四億九千万ドル債務を負いました。これらの対米債務返済は、現在、産業投資特別会計の負担において毎年二回の分割払いにより行なわれており、現在の債務残高は、前者については約九千三百万ドル後者については約一億一千二百万ドルであります。最終支払い期は、前者については第一次、第二次とも昭和七十年、後者については昭和五十二年となっております。  ひるがえって、わが国国際収支の動向を見ますと、数年来かなり大幅な黒字基調が続いているのに対し、米国国際収支赤字は依然として大きく、特にわが国に対しては大幅な輸入超過となっております。  このような状況にかんがみ、さきに申し述べました対米債務は、この際、昭和四十八年度に一括して繰り上げ償還することとし、これに伴う当面の資金繰り上必要となる資金を、産業投資特別会計において、昭和四十八年度から五十年度までの各年度借り入れることができることとする等の特別措置を講ずるため、ここにこの法律案を提出した次第であります。  なお、このため必要な予算措置については、昭和四十八年度産業投資特別会計予算所要の額を計上し、御承認を得た次第であります。  繰り上げ償還は、この法律成立後、日米間で所要の手続を経て実施することとなりますが、その時期としては、五月一日を予定しております。  以上が、この法律案提案理由であります。  何とぞ、御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  5. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これにて提案理由説明は終わりました。     —————————————
  6. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹本孫一君。
  7. 竹本孫一

    竹本委員 余農債務残存元本九千三百万ドルガリオア債務残存元本が一億一千二百万ドルということでございますが、これは一体どういう性格債務であるかという点と、それから最初債務の総額がそれぞれ一億あるいは四億九千万ドルということに確定をしておるわけですけれども、どういうきめ方をしてそうなったものであるか、この二つの点について伺いたい。
  8. 林大造

    ○林(大)政府委員 まず、お尋ねガリオア及び余剰農産物債務性格及び金額決定経緯でございますが、まず性格でございます。     〔委員長退席大村委員長代理着席〕  性格につきましては、ガリオア債務と余農債務とで性格を異にしておりますことは、先生案内のとおりでございます。ガリオア債務につきましては、戦後占領時代に、米軍日本の戦後の飢餓、疾病、社会不安防止という目的のために救済物資を送って、そして日本国内へそれを供給いたしました。また、占領地経済復興のためにも所要物資援助として提供いたしました。これらの金額は非常に多額にのぼったわけでございますけれども、この援助性格がはたして信用供与であるか、あるいはグラントであるかという問題がいろいろ問題として取り上げられまして、日米間でこの処理について交渉が重ねられたわけでございます。その交渉の結果、日本国に関する戦後の経済援助処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定が締結されまして、これは昭和三十七年一月九日に署名、そして国会の御承認をその年の五月四日に得まして、そして九月の十一日に発効したわけでございます。そのような経緯で、四億九千万ドル債務を、先ほど政務次官が申し上げましたとおり、昭和五十二年までの債務として分割返済をするということにきまった次第でございます。  一方、余剰農産物債務につきましては、これは昭和三十年と三十一年の二回にわたりまして、日本米国との間で、農産物に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定を締結いたしました。同協定に基づきまして日本農産物を購入いたしたわけでございますが、その農産物見返り代金合衆国勘定に積み立てました。そのうち、協定によりまして割合は違うわけでございますが、七割とか七割五分とかいう一定の金額日本国政府借款として供与される姿になりました。これが余剰農産物債務でございまして、この金額は、第一次協定分が五千八百四十万ドル、第二次協定分が四千七百二十万ドルでございます。そしてその返済期間は、これらの協定に基づきまして、先ほど申し上げましたように、おのおの昭和七十年までの分割返済ということになった次第でございます。
  9. 竹本孫一

    竹本委員 いまの特にガリオアの場合、信用供与になった部分と、その他のものはまあグラントということになったのだろうと思いますが、それを振り分ける場合の基準は何であったか。ただ大体の政治取引で簡単にきめたものであるか。その根拠についてはどういうことでありますか。
  10. 林大造

    ○林(大)政府委員 当時の経緯は、そのときにいろいろ議論になりまして、占領地に対しますこの種の援助といたしまして先例になりましたのが、ドイツの例でございます。ドイツの例では、約三十億ドルの戦後の援助ドイツに対して提供されたわけでございますが、それが約三分の一の十億ドル債務返済、残りの二十億ドル返済を要せずということにされた経緯を参考といたしまして、その当時日米間で戦後の対日援助金額確定をいたします一方で、その確定は、何ぶん戦後の混雑の時期でございましたから、確実に突き合うような計数は得られなかったわけでございますけれども、それが十九億ドルといわれ、十七億九千万ドルといわれ、いろいろと議論はあったようでございますが、結局四億九千万ドルという大幅な金額の減額を見まして、両国間で妥結をしたという経緯でございます。
  11. 竹本孫一

    竹本委員 これは当時いろいろ問題になった点でございますから、次へ参ります。  今回は繰り上げ償還をやるということでございますが、それには二つの大きな前提があると思うのです。国際収支状況が非常に黒字になるという考え方、したがって第二は、外貨資金はあり余るほど手元にたまっておるという二つ前提があると思うのですけれども、まずその初めのほう、国際収支状況につきまして、国際的な収支、特にまた対米関係収支というものの現状と、それから特にこれからの見通しについて、政府はどういうお考えであるか、そこをお伺いいたしたい。
  12. 林大造

    ○林(大)政府委員 日本国際収支及び日米間の国際収支でございますが、日本国際収支につきましては、昨日、三月の推定値が発表されまして、この結果、四十七年度年度を通ずる数字が一応実績推定として固まったわけでございます。これによりますと、経常収支は、ことしの初めの経済見通しでは六十二億ドルとされておりましたが、六十二億六千八百万ドル、ことしの一月の計数にほぼ見合った計数でございます。ただ、その中身を洗ってみますと、貿易外収支及び移転収支赤字が予想よりも小さくなったのに比べまして、貿易収支のほうは約五億ドル余り減っております。すなわち、当初の実績見込みでは八十九億五千万ドルというふうに予想されておりましたのが、八十三億八千六百万ドル、約五億数千万ドルの減ということになる見通しでございます。この関係が特に顕著にあらわれておりますのが三月の計数でございまして、三月の貿易収支の差額は、季節調整済みで九千三百万ドルという、ここ数年にない低い計数でございます。この九千三百万ドルという計数は、この三月に濃縮ウラン支払いを三億二千万ドル、これは原数値でございまして、季節調整をいたしますと約三億ドル計数支払いましたので、そういう特殊の要因を差し引きますと三億九千万ドル黒字ということになります。しかし、この三億ドル台というのは最近にない低い数字でございまして、四十六、四十七歴年ずっと五億ドル台の黒字でございました。それが三億ドル台の黒字になりましたのは、さかのぼってみますと四十五年の十一月でございます。そういうふうに貿易収支のほうは小さくなっている。  それから、日米間の貿易収支はと申しますと、これは暦年計数が一番新しい数字でございますが、これは米国サイド計数で四十一億三千百万ドル日本側の出超でございます。
  13. 竹本孫一

    竹本委員 いまの数字の原因をどう考えるかという問題ですけれども、特に輸出輸入のプラスとマイナスの面で円のフロート関係か、あるいは円の切り上げの実質的な効果が表に出てきた関係と見るか、その辺はいかがですか。
  14. 林大造

    ○林(大)政府委員 実は国際収支状況がはっきりと変わってまいりましたのは三月からでございます。まだどの程度基調変化であるかということは十分に評価し切っておりませんけれども、私どもとしては、このような変化は大きく分けて二つある。  一つは、一昨年の十二月のいわゆるスミソニアン体制に移りましたときに円の大幅な切り上げが行なわれました。それが若干のタイムラグを経て明瞭にきき始めてきているのだというふうに評価をいたしております。  もう一つは、三次にわたる円対策、その中でも特に財政金融政策が功を奏してまいりまして、輸出のほうは比較的伸びは衰えておりませんが、輸入面で顕著に効果をあらわし始めているという状況でございます。  このほかに、二月の十四日からのフロート影響も若干あるかとは存じますけれども、これはいかんせんそのフロートを始めてからの日数がまだ二月あまりにしかなりませんので、まだここに申し上げました計数にその影響があらわれているというのは早計であろうかというふうに存じます。
  15. 竹本孫一

    竹本委員 円の切り上げ効果が着々出てくるだろうと思いますけれども、さらに最後の円のフロートの問題ですけれども、これが実質たとえば一六%ぐらい前回の上に上乗せて切り上げになっておる。大体中小企業立場あるいはそれぞれのメーカーの立場考えてみましても、前回のものは半分はアメリカに持たせる、半分は下請に転嫁するという形で、自分のほうはまあまああまり犠牲を負わないで過ごしてきたと思うのですけれども、最近のものはそうはいかないというような意味で、円のフロートがさらに実質的な再切り上げをやっておるために競争力が痛められて、それがために輸出が困難になる、あるいは輸入が特に楽になるというように見えるのか、あるいはフロートそのもので不安定のところで輸出が一応見送られておるというような関係、あるいはまた輸入についてもフロート関係から影響が出てきておる、その辺はどういうふうに見ておられるわけですか。     〔大村委員長代理退席委員長着席
  16. 林大造

    ○林(大)政府委員 二月の十四日以来のフロート効果は、むしろ為替取引面外貨準備面のほうにはすでに効果があらわれておりますけれども輸出入の面につきましては、ただいま御報告いたしました三月の輸出入計数は、輸出入の契約はすでにそれより数カ月前に行なわれていたものの実行であるわけであります。したがいまして、リーズ・アンド・ラグズその他で一月あるいは二月に積み急ぎいたしましたことの反動というような面での影響ということはあるかもしれませんけれども、ただいま先生が御指摘になりましたような、レートが実質的に切り上がった、あるいはレートに不安があるということによる輸出入への影響は、今後数カ月たちましてから表面にあらわれてくるというふうに私どもは解釈いたしております。
  17. 竹本孫一

    竹本委員 いまの見方を中心に議論をすれば、フロートそのものの問題についてもいろいろ論議があると思いますけれども、時間もありませんので次へ進みます。  次は、今度繰り上げて外貨で返そうということでございますが、現在における外貨資金手持ちは幾らになるかということと、それからそれの今後における見通しというものはどうであるかということ。  時間がありませんからあわせて聞きますが、大蔵省は第二外為論が出ましたとき以来、いろいろとアメリカの長、中期債を買うとかいうようなことで、手持ちをいたずらにふやさないように努力をしておられると思うのだけれども、そういう形のものがどのくらい減っておるかということ。  それから最後に、第四番目になりますけれども日本に入ってきたドルが将来流出することがあるのかどうか。ありとすれば、どういう条件のもとにどのくらいのものが、むずかしい話になりますけれども、流出するであろうかという、その点に対する見通し、以上四つをお伺いいたします。
  18. 林大造

    ○林(大)政府委員 まず、外貨準備金額及びその多寡でありますが、一番新しい三月末の外貨準備の額は合計で百八十一億二千五百万ドルでございます。そのうち金及び外貨は百六十九億四千九百万ドルで、ゴールドトランシュ、IMFに関係いたしますゴールドトランシュが六億六千四百万、SDRが五億一千二百万ドルでございます。したがいまして、百八十一億ドルのうち金及び外貨が百六十九億ドルございますが、このうち金が九億ドル前後でございますので、外貨はおおむね百六十億ドル前後というふうな見当になっております。との外貨は現在減少中でございまして、この減少中の経緯は、二月の末に百九十億六千七百万ドル、百九十億ドルを上回っておりましたから、それが百八十一億二千五百万ドルになりましたのは、九億ドル余りの減少でございます。それからまた、四月末はわかりませんけれども、四月末もおそらく外貨かなり金額減少するのではないかというふうに考えております。  このような外貨水準及び方向というのを踏まえまして、この間私どもがどういうような措置をとってきたかということを申しますと、これは先生に一度御説明申し上げたかと存じますけれども円シフトということで二つ、それから資産中期運用ということで一つ措置をとっております。  円シフトといたしましては、輸入金融につきまして、日銀による輸入金融及び大蔵省外国為替資金によるスワップによりまして、輸入ユーザンスの五割を国内金融に切りかえまして、外銀借り入れを食いとめるということをいたしております。  それからもう一つは、外貨預託でございまして、外貨預託をいたしまして、為銀の対外短期負債を減らすということをしております。  それから、第三の中、長期の運用でございますけれども、これは外貨準備から直ちに落とせるわけではございませんけれども、利回りを高くしたほうがいいということで中期債運用しております。それが四十七暦年の間に、合わせまして約六十億ドルを若干上回るという金額になっております。  問題は、このような外貨準備水準及び方向を踏まえまして今後どのような推移をするかということでございますけれども、現在、と申しましても一番新しい計数は二月の末しかとれないわけでございますが、二月の末で為銀の海外からのいわゆるユーロダラーないしは外銀からの借り入れが合わせまして約百十五億ドルになっております。このような対外的な国全体としての短期債務、それからいわゆるリーズ・アンド・ラグズでどの程度通常よりもドルをため込んでいるかということを考えてみますと、実は最近におきますドル強含み傾向リーズ・アンド・ラグズの巻き戻しということを考えなくてはなかなか理解が困難であるというふうに存じております。現在のところ月十億ドルというテンポでは少し大げさに過ぎますけれども、それに近いような勢い外貨が流出しております。そのような外貨の流出がはずみがついてどのようなことになるかということでございますけれども、先行きのことをあまり予言めいたことを申し上げることもむずかしいわけでございますけれども、やはり外貨かなり勢いで流出することも計算の中に入れて、為替政策運用していかなければならないというふうに存じております。
  19. 竹本孫一

    竹本委員 そこで、いま御説明のありましたような情勢を踏まえて、いわゆる第二外為論でございますが、この国会においても、総理、大蔵大臣は前向きにこれに取り組もうというような意欲を示しておられるようでございますが、そこで二つ、また外為論についてお伺いしますが、そうした基本的な情勢から見て、やはり第二外為を早急につくらなければならぬというふうに考えるべきであるかどうかという問題が一つ。それから次には、やはり第二外為をどういう形でつくるか、あるいはいまの外貨建て外貨貸しをどうするかというような問題もありますが、一番大きな問題は、その第二外為で何をするのであるか、そしてそれは大体経済的にペイするものであるかどうか。一番最初に出た案には、田中構想としては円を媒介しないでやるというようなことで大蔵省として当然にいろいろ議論が出ましたが、その問題は別に片づいているとして、一体第二外為では何をやって、どういうふうにペイするのであろうかということについての考え方、この二つについて大蔵省としてはいまどういう考えを持っておられるか、その辺伺いたいと思います。
  20. 林大造

    ○林(大)政府委員 本件は大蔵大臣が最もお答え申し上げる適当な答弁者だろうと存じますし、また当委員会非常にお詳しい方がおられる前で特に申し上げることもないわけでございますけれども、現在一番新しい外貨準備計数をとってみますと、日本は三月末、ただいま申し上げましたように百八十一億ドルという計数がございます。諸外国を比べてみますと、ドイツが二百九十五億ドルで断然トップでございます。それで日本が第二位。それから第三位が米国の百四十三億ドル、第四位がフランスの百六億ドル、そのほか五、六十億ドルのところは軒並みになっているわけでございます。これは一年前と比較すると特に顕著でございまして、やはりドルかなり流出いたしまして、それが各国政府当局外貨準備としてたまりました関係上、外貨準備各国ともその前一年間にかなりふえております。何と申しましても一番ふえましたのはドイツで九十八億ドル、そのほかオーストラリアは約二十五億ドルふえておりますし、フランスは二十一億ドルオランダが十六億ドル日本は十四億六千二百万ドルということで、順番としてはドイツ、それからオーストラリアフランスオランダに次いで五番目のふえ方でございます。問題は、この外貨準備の高が特に多いと見るかどうか、及びその方向をどう見るかということにまでからんでいるわけでございまして、最近ややさま変わり外為市場、それから国際収支、いずれも基調変化のきざしが、まだ基調変化が起こったと断定するには早過ぎると思いますけれども、きざしが見えている。それをも踏まえまして十分研究してまいりたいというふうに存じております。  それから第二のお尋ねの、どういう形で第二外為というのをつくったらよろしいかということで、これは第二外為をつくるかどうかということが何ぶん先決でございますけれども、その第二外為をどういう姿でつくるかということにつきましては、まだいろいろ議論がございます。やはり円と切り離すということは、現に外貨準備というものが市場を通して円で買い取られたその円は、外為証券という形で調達されているわけでございますから、円と切り離した形の外貨というものはあり得ないわけでございます。それをどういうような姿に持っていこうかということは、たいへん恐縮でございますが、省内で現在研究中という状況でございまして、その場合の損益状況あるいは為替から損益が生じた場合の処理のしかたなどいずれも問題点として重要なポイントであるということで研究をいたしております。
  21. 竹本孫一

    竹本委員 これは特に大臣政治レベルで判断すべき問題が多いと思いますので、この程度にいたしますが、ただ一つ、いまのさま変わりの問題ですね、これはよほど注目をしていなければならぬ問題ではないかと思いますので、そのことだけ申し上げておきます。  最後に、産業投資特別会計の問題でございますが、これはどういう経過で生まれたものであって、特に今後はどういうふうに位置づけをしていくつもりであるかという点だけ承りたい。
  22. 後藤達太

    後藤政府委員 産業投資特別会計についてのお尋ねでございますが、これは発足いたしましたのは御案内のように昭和二十八年でございます。それまでございました見返り資金特別会計主要資産を引き継ぎまして発足をいたしまして、経済の再建、産業の開発、貿易の振興という目的に沿った投資を所掌いたしていくということで今日に至ったものでございます。今日までのところ、見返り資金関係資産、資本の引き継ぎをいたしましたほかに、一般会計からの出資の繰り入れを受けまして投資を行なってまいりました。ただいままでのところ、発足以後二十年たちまして、ただ見返り資金関係の引き継ぎの関係では、開銀からの納付金でございますとかあるいは余農関係の貸し付け金をこれは四十三年度から本会計へ引き継いで、やはり余農関係の特別会計でございましたものを引き継いで運用いたしてまいっております。その関係につきましては、ガリオア関係債務返済あるいは余農関係債務返済という関係で開銀の納付金の大部分あるいは余農関係の回収金というものを使ってまいってきております。  今日までのところ、戦後の復興から今日に至りますまでそういう産業投資関係経済復興に果たしてきました役割りというものは、私どもそれなりに相当の評価をしなければいかぬと思っております。ただ、今回の繰り上げ償還措置によりまして、対外関係という関係はここで一応のピリオドを打つということに相なるわけでございます。ただ、そのための資金繰りとして御提案申し上げておりまする一時借り入れ金をいたしておりますその関係の完済をいたしますのが三年後の予定に相なっております。そういう段階に立ち至りました場合には、やはりこの長く続きました会計のあり方というものにつきまして私ども真剣に考えなければならないかと思っております。  財政投融資の一般的な方向としまして、福祉関係が非常に重視をされてきておるということもございます。それからまた三年後にいまの借り入れ金の関係が全部決済を終了いたしまして対外関係が全部終了いたしました上におきましても、なお開銀の納付金、余農関係が長い貸し付け金になっておりますので、その回収金というものが入ってまいります。そういうものをどういうふうにこれから活用していくかという問題があるかと思います。また、会計自体の立法が二十年前の古い時期でございますから、字句、その他なお多少戦後の遺物というような感じのところも残っております。そういう関係につきまして、措置の結了いたしますまでの間に私どもよく研究をさせていただきまして、合理的な結論を出してまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  23. 竹本孫一

    竹本委員 政務次官、産投会計の今後のあり方について積極的にどういう役割りを持たすべきであるか、持たせ得るのかという点について、何かお考えはありませんか。
  24. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 いま理財局のほうから御説明しましたように、そもそも事の起こりが戦後の日本の復興あるいは貿易の振興ということを目途にできた会計でございますから、目的自体は少し現在の時点に合わないという点も確かにあるように思います。いろいろなあと始末的な、いわゆる戦後処理みたいな性格のものになってまいりましたから、そういう任務が終われば、ただいまの答弁のようにこの問題をどういう方向処理するか考えてみなければなるまい、こういうことでございます。
  25. 竹本孫一

    竹本委員 今後のあり方についてはひとつ積極的な検討を要するということだけ申し上げまして、質問を終わります。
  26. 鴨田宗一

    鴨田委員長 阿部助哉君。
  27. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 提案理由説明の中に、最近における国際収支状況にかんがみ、対外経済関係の調整に資するため、こういっておるのですが、もう少し具体的に説明してくれませんか。
  28. 林大造

    ○林(大)政府委員 対外経済関係の調整に資するためと申しますのは、今回御審議いただいております対米の農産物関係、その他の債務償還だけではもちろんないわけでございまして、先生案内のとおり、第一次、第二次、第三次というふうに、たびたびいわゆる円対策というのを実施いたしてまいりました。それは日本国際収支黒字が非常に大きくなってまいりまして、あまり国際収支黒字が大き過ぎるということが対外的にいろいろな面で摩擦を生じてきている。これは国際社会に住んでおります私どもといたしまして、世界のためにも日本のためにも何らかの措置を講じなければいけないということで、三次にわたる円対策のみならず、一昨年十二月のいわゆるスミソニアンの合意によります円の切り上げを含めまして、いろいろの対策を講じているわけでございます。今回その調整の一環といたしまして、対米債務を繰り上げ償還するという措置がとられている次第でございます。
  29. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 三次にわたる円対策の一環でこれをやる、こういうことですか。
  30. 林大造

    ○林(大)政府委員 三次にわたる円対策の一環と申しますか、延長と申しますか、ことばのあやはあるかと存じますけれども、同じような対外的な均衡是正の一環というふうに考えております。
  31. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、一括して払いたいというのは日本側から提案をされたわけですか。
  32. 林大造

    ○林(大)政府委員 日本側といたしましては、本件はもちろん異議はございませんし、このような措置をとることがそれなりの貢献をするという考えを持っておりますけれども、本件の経緯といたしましては、かねてからいろいろな機会に問題となっていたわけでございます。今回特に本件が具体化いたしましたのは、イニシアチブは米側がとってきたわけでございます。
  33. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 そうすると、アメリカ側から話が出た、日本円対策の一環としてこれをやる、こういうことですが、これはどうなんですか、これを一括処理するというのはどっちかにプラスが出て、どっちかにマイナスが出ると思うのですけれども、どうなんですか。
  34. 林大造

    ○林(大)政府委員 それは御指摘のとおり、何事をするにつけましても、片方の側にとりて有利になることは相手方にとって不利になるわけでございまして、そこのかね合いをとるということがたいへん交渉の両当事者にとってむずかしい仕事になるわけでございます。本件については、特に問題となりましたのは、日本側にとりましては長期低利の債務でございます。これを繰り上げ償還するということはそれなりのマイナスがあるわけでございまして、そのマイナスをカバーするために米国側といたしましてはそれに応じた金額の減額をするということで、その両者の利害の折り合いをとったというのが実情でございます。あるいはまだ御説明いたしておらないかと存じますけれども、現在五月一日に予定しております残存元本の額が、余剰農産物債務及びガリオア債務合わせまして約二億五百万ドルでございます。それを一億七千五百万ドル返済することによって完済とする。その差額は約三千万ドルでございますが、これでそれはそれなりに米国にとってはマイナスでございますが、そういうことで両者の利害を調整したということでございます。
  35. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それは調整をしたのでしょうけれども、どっちかがマイナスになるんだ、アメリカとしてはそれなりの得があるから早よう返せ、こういうことだと思うのですが、大体皆さんはこれからドルは安定していくというふうにお考えになっておられるのですか。
  36. 林大造

    ○林(大)政府委員 ドルは、先生案内のとおり、スミソニアン会議で約八%前後切り下げられまして、それからこの二月にさらに一〇%切り下げられたわけでございます。二年間で二〇%まではいきませんけれども、一八%前後という切り下げ率は、それなりにかなり大きい切り下げ率でございます。その結果、最近の外国為替市場状況から見られますとおり、最近ではドルがやや強含みの状況を呈しております。今後どうなるかということは、外国為替市場が非常に予期しないような事件がときどき起こってまいりますので、あまり予言者じみたようなことも申し上げられないわけでございますけれども、世界的にドルは十分現在の為替レートで強いというふうに感じ取られておりますし、米国当局者も今後ドルの切り下げというのはない、それから効果があらわれるまでには若干時間はかかるかもしれませんけれども、対外的な米国国際収支は回復をするということをいっております。現在の状況からドルの強さ、現在のレートで十分強いというふうに私どもは感じております。
  37. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 二年足らず前にニクソン声明、それからまだ一年ちょっとしかたたないスミソニアン会議できまったレート。私はどうも不可解なのは、皆さんはこういう効果は二年たたないとわからないんだ。二年たたないとわからぬというのは、もう私はここで何べんかお伺いをしておるわけなんですね。二年たたなければわからぬものなら、二年間そっとしておけば何ぼなったっていい。それで実際効果が出たらそれでいいけれども、私は明らかに皆さんが見通しを誤ったのじゃないか、それでなければ見通しは合ったのだけれどもうそをついた、どちらかの一つだと思うのです。現実は二年たたないうちにいまのような変動制をとらなければいかぬ。アメリカドルは切り下げをしなけれなはらぬ。二年たたなければわからぬという前提で皆さんここで御答弁なさっておるとすれば、私は皆さん全く無能力者であるのか、それともたいへんよく知り過ぎているけれども国会でうそをついておるのか、これ、どっちか一つだと思うのですが、どうです。
  38. 林大造

    ○林(大)政府委員 為替レートの調整の効果が大体どのくらいかかって効果をあらわすかということにつきましてはいろいろな意見がございまして、その一つの代表的な見方はOECD系統の見方でございまして、このOECDの系統では、大体為替レートの調整効果が出るのは二、三年はかかるという考え方をとっております。それに対しまして二、三年もかからないんだ、もう少し早目に実勢そのものは出てくるという見方もいろいろあるわけでございますが、これはそのときの状況を見ながら判断をしていくほかしかたがない。私どもといたしましては、レート調整が効果をあらわすまでの間に、早目早目にレートを調整していきますと、切り下げられる通貨はあまり切り下げられ過ぎる結果になる、切り上げられる通貨は切り上げられ過ぎる結果になるということをおそれているわけでございまして、そこで愛知大蔵大臣がワシントンの二十カ国の委員会その他で主張しておりますような固定相場的な発想、管理された為替相場のほうがよろしい、あまり市場の実勢にゆだねたような相場制度はよくないというふうな主張につながっておるわけでございます。  先生ただいま御指摘の、見通しが悪かったのか、あるいはここでうそをついていたのかという御指摘でございますけれども、実は私ども不明の至りで、思っていたとおり必ず世の中は動いているわけではございません。その意味で、ことしの二月のレート調整、それはそれなりに大体バランスのとれたいいところに来たとは思いますけれども、それは結果的に見た場合の話でございまして、その直前にレートがどういうふうにあるべきかということにつきまして、はっきり見通しをつけていたわけではないわけでございます。現に二月のレート調整のあとにおきましても、三月の初めには為替投機のために為替市場が大きく世界的にゆれ動くような状況になっておるわけでございまして、それらの状況をそのときそのときに判断しながら動いていくということでございまして、決して私ども知っていることを隠すとか、そういうような気持ちで御答弁申し上げているわけではございません。
  39. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 私の言い方が少し荒っぽいものだからあれですが、何がしかの見通しがぴしゃっといくというふうには私も考えませんけれども、それにしても皆さんのほうももう少し国会の場で真剣に論議をしないと、いままでいろいろな人がここで質問されたけれども、そのつど二年たたぬとわからぬのだ、こういうふうにおっしゃる。そうすると先の論議が一つもわからない。二年たってみてから論議するより手がない。私はそうではないと思う。いまの国際関係変化の速度というものは、私は非常に早いと思うんですよ。そうすると日本の、皆さんの三次にわたる円対策がはたしてよかったのかどうなのか、この点も私はたいへん疑問を持つわけです。私はやはり日本のこの円対策、なぜ一体こうやってドルがたまるのかという点に、もう少し皆さん率直なメスを入れない限り解決をしないんじゃないか。  私は、それは一番あれなのは、やはり労働者の低賃金、社会保障の貧弱さ、そういうものに全然メスを入れないで、いろいろな財政あるいは金融、税制、こういうもので輸出競争力をつけるということで、これは皆さん全力をあげてきた。私は、この委員会に入っていま七年目でありますけれども、私が入ってきた当時から皆さんの大蔵省の方々のおっしゃるのは、国際競争力の強化のためということ一点ばりで最近までやってきたわけですよ。国際競争力をつけるために皆さんあらゆる努力をしてきた。そうして労働者はどうかといえば、きょうストに入っておるように、社会保障の点はこれはさっぱり進んでいないわけです。皆さん、日本の労働分配率を外国と比べてどうお考えになっているんです、たいへんこれは低いんですよね。こういう問題を直さないと、私はどうにもならないんじゃないか。日本の労働分配率と外国の比較を、皆さんだっておわかりになっているんだろうけれども、ちょっと述べてみる。  これは生産性本部の書類ですけれども、六九年のあれですけれども日本は三二・二%、アメリカ、が四六・五%、イギリスが五〇・三%、どこと比べてみたって日本が低いわけです。そうして社会保障の給付の割合を調べてみますと、人口一人当たりの社会保障の給付額、これはいろいろなものが入っておるわけです。日本が二万九千百円ですね。アメリカが十一万二千九百六十八円、スウェーデンは十九万五千五百二十五円、もうこれはけた違いなんです。  生産性の問題、これを見れば日本の生産性は悪くない。そこへ賃金はたいへんに低い、そうして社会保障はさっぱりしない、その上に財政、金融、税制、あらゆるものをここへ援助を与えて、そうして大企業の援助をしてきたわけです。当然日本の大企業の製品は、外国の製品に比べて安いのはあたりまえの話なんです。安いから売れるということになる。だからドルがたまる、たまり過ぎる。一番のもとを皆さんほっておいて、いや、アメリカドル少なくなった、日本がたまったからこれを急いで返してやるんだ、三次にわたる円対策、どれを見ても甘い。こんなもので、はたして円対策になるのかどうかということをたしか私指摘したことがありますけれども、私はこんなものでそれほどの効果はあげ得ないと思うのです。そしてこの次に来るのが私はおそろしい。このドルを第二外為だ何だで使わなければいかぬ。使っていくときにどうかといえば、いわゆる私たちのことばでいえば、非常な荒っぽい帝国主義的な経済進出を迫られるところにはまるのは、これは当然のことなんです。  そういう点考えて、もう少しこの円対策、抜本的なものを考えないと、こういうびほう策だけやってみても、たまったドルはなるほど持っておるのは政府が持っておるとか大資本が持っておるかもわからぬけれども、ためたのは何といったって労働者の血と汗の結晶ですから、これは同時に国民のものだと私は思う。それがまたつまらないところへ使われていくという循環をしていくわけですから、この問題は、これは局長にお願いをしてもしようがないのだけれども、私はどうもこの問題は大臣でないと質問をする勇気が出てこないのですけれども、どうもその辺で、私は政府円対策というものにたいへんな不満があるわけです。ちっとも抜本的なものを考えないで、小手先のことにこれは過ぎてきたのではないだろうか。いまの国内の問題、国際問題、そのしわ寄せがみんなここへきておるのじゃないか。そうしてこれは、今度急いで返すのだなんという程度では、私はどうも円対策の一環でございますなんて言われてみたって納得ができないのですが、どうでございます。
  40. 林大造

    ○林(大)政府委員 先生御指摘のとおり、ただいまお取り上げになりましたことは、日本及び世界の経済循環全部にわたる非常に幅の広いかつ根の深い問題でございますけれども、まあ私どもなりに解釈しているところを申し上げますと、やはり昭和四十三年ごろまでは、日本の成長を制約しておりました天井の一番低いところは国際収支の天井でございました。そのために、日本じゅうが国際収支の天井の低いところで何とか成長を遂げていこうということのために、輸出力の増強というのをその重要な政策目標の一つに掲げていたことは先生案内のとおりでございます。その間労働分配率が低かったことも、これは事実でございまして、この労働分配率の低かったことはいろいろの受け取り方があると思いますけれども、これはいずれにいたしましても戦後高度成長を遂げまして、しかも卸売り物価は世界でまれに見る安定、そして消費者物価のほうは確かに上がりましたけれども、やはりいろいろな点で世界から評価されます日本の戦後二十年間の歩みをささえてきた一環であると思います。そのよしあしはいろいろ御議論があると存じますけれども。  そのような過程で、四十三年ごろから国際収支関係さま変わりになってまいりました。これは日本国内だけの事情ではございませんで、海外にも事情があるわけでございます。海外のインフレーションが意外に進んできて、したがって日本輸出産業競争力が相対的に非常に強くなったということと、もう一つはそこの段階になって爆発的に日本輸出競争力の強さというのが表面化した。そのときまでは水面下に隠れておりました氷山が、一挙に水面にあらわれてきた。そのときまでは少しずつ水面下に育っていて気がつかなかったものが、にわかに注目を浴びるようになった。そうすると、世界的にその日本の強さということが注目されだしまして、そしてそのことによって外貨はどんどん思ったよりも強く入ってきたわけでございます。これは日本だけではございません。繰り返しますが、海外との相対関係でございます。  この間にあって、ここ二、三年来三次にわたる円対策のほかにいろいろな施策を講じてまいりました。それは、相対的に日本競争力が強くなったわけでございますから、それを対外的にバランスをとっていくためにはいろいろの施策を講ずると同時に、やはりレートの調整ということが重要な施策の一環であるというふうに考えまして、一昨年十二月のスミソニアンにおきますレート調整も、またこの二月のフロートもそのような観点に立ってとられたわけでございます。日本輸出競争力が強いと申しましても、それは一定の為替レート前提にしての話でございまして、いま法外に円が切り上げられれば、もちろん日本産業輸出競争力はそれほど強いとはいえないわけでございます。  現在までにたまってまいりましたドル、これは今回の対米債務支払いにも充てられるわけでございますけれども外貨準備百八十億ドル前後に対しまして今回その返済に充てられますのが一億七千五百万ドル、一%に満たない金額でございます。が、フロートに移行いたしましたということは、もうこれ以上あまり外貨をため込まないということでございまして、ある意味でいえば、いままでにため込んだ百八十億ドルという外貨は今後大切な外貨であるということも言えるわけでございます。そのような観点に立って、百八十億ドルの使い道を考えるにあたりましても、これをかってに使うというわけにはいかない。今後の日本の資源確保であるとかあるいは対外的な経済協力とか、その資金に対する需要は幾らもあるわけでございますから、そのような観点から対処していく。  そういうような段階、経済循環の中にあって、国内状況はどうであろうか。そうすると、御案内のとおり三月の卸売り物価は、前年同月に比べまして日本は一一%余り高い水準でございます。これだけの卸売り物価水準の上昇というのは、戦後、終戦直後のインフレ期を除いては見られなかったことでございまして、このような状況が続けば、日本産業の競争上の優位というものがいつまでも続くと即断するわけにはいかない。そこいら辺を考えながら経済のかじ取りをしてまいらなければいけないというふうに存じている次第でございます。
  41. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 だからその場合、やはり国内の問題をもう少し考えないといかぬと思うのですよ。池田さんは高度成長を始めるときにたいへんうまいことを言って、メロンは小さいときに食べると分け前が少ないから、もっと太らせて資本家も労働者もたっぷり食べるんだなどと言ったけれども、たっぷり食べているのは大企業のほうばかりであって、労働者は耳かきみたいので少しずついただいておるのが現実じゃないですか。そこを直さないと私は問題は解決をしないと思うのですよ。そこらあたりに私は、ほんとうを言うと、所得倍増、あのときの迫水さんですか、書いた夢物語などというのは、いま読んでみたら労働者はたいへん腹を立てると思うのですよ。労働者の住宅はこうなって、何とかがあってどうだこうだというようなたいへんうまい夢物語で、みんな国民はほんとうに所得倍増するんだと思って一生懸命働いたわけだ。ところが、いまは金が余って困るとか、商社はだぶついて買い占めだとかなんとかということで、勤労者のほうは、労働者のほうはほんとうに日本経済が大きくなればなるほど物価で横っつらをひっぱたかれておる、こういう形になっている。そういう問題を皆さん考えないで円対策を何次にわたってやろうとも、国内のアンバランスというものは私は解決しないんじゃないか。  もう一つは、皆さんはドルの問題はいま安定に向かっておる、こうおっしゃるけれども、私はどうもその点が信じられないわけです。私は、これだけ出過ぎてしまったドルが回収されるはずないと思う。愛知さんは、この前ワシントンへ行ってお帰りになっても、何かドルの信認性回復を強く訴えてきたみたいなことを新聞でも見、ここでも御答弁なすったのであります。たしかなすったですね。ドルの信認性回復というのは、具体的にいったら、一体どういうふうにしたら信認性回復になるという案を持っておっしゃったのですか。ただ、何もないけれども、信認性は回復すべきであるなんという抽象的なお考えアメリカさんに申し入れをしたのですか。もう少し具体的な何かがあるんだろうが、どうやったらドルは信認性を回復するのでしょうか。
  42. 林大造

    ○林(大)政府委員 ドルの信認回復が今後の国際通貨情勢安定のためにぜひ必要であるということは、国際通貨問題に関係しておりますもののすべてが認めるところでございますけれども、どういうふうにしたらドルの信認が回復され、また信認という主観的なものばかりでなく、現実にドルが強くなるかということでございますけれども、それはほかの国が協力すれば直ちにそうなる、効果が出るというわけのものではなくて、米国自身の努力と、それからそのほかの国のこれに対する協力ということになると思います。  米国自身の努力といたしましては、当然のことながら国内におけるインフレーションの克服にできるだけ力を傾倒し、かつ国際収支がよくなるようにするということでございます。そのためには主として国内政策を重視する立場をとるべきである。これは国際通貨制度安定のために、関係国がすべてレート調整にあまり多くをたよることなく、国内調整でできるだけ効果をあげるべしということがワシントン会議におきます愛知大蔵大臣の発言であったわけでございますけれども、しかしそれでもどうしてもやむを得なかった今回の一〇%のドル切り下げ、これは今後の立ち直りの基礎固めといたしましてどうしても必要であった。  これに対してほかの国はどういう形で協力をしたらいいかということでございますけれども、このことにつきましては、アメリカの一〇%切り下げ、これはIMFで認められたわけでございますが、それを認めると同時に、米を含めまして各国国際収支の均衡回復にできるだけのことをしていく。で、過去におきまして日本がとりましたことは、三次にわたる円対策であったわけでございますが、今後におきましても、国際収支均衡化のためにできるだけの努力をしていくということであると存じます。  具体的にそれがどういうような姿のものになるか、いわゆるコンソリデーションと申しておりますが、固定化の問題、この問題はまだ具体的に姿がはっきり出てきておりませんけれども、既往におきますドルの対外債務が非常に多額にのぼっております。これがドルの信認回復に妨げになるようであれば、その障害を除去するために日本としても合理的な範囲内でできるだけ協力をしていく。ただ、具体的にどういう姿で協力をしていくかということは、これは日本ばかりではきめ切れるわけではございませんで、各国と相談し、各国の意向をくみ取りながら具体的な措置考えていかなければいけないということでございます。  それで、具体的に特にどういうことがあったかという御指摘でございますけれども、特に具体的にどうこうということはない。それはいまさら急に天下の妙薬のようなものが出てくるわけではございませんで、三次にわたるいろいろな対策の過程で知恵はできるだけ出してきたわけでございます。その方向に沿って今回の措置も含めまして、さらに施策を推進するということであるかと存じます。東京の外国為替市場状況を見ましても、この三月の十九日に市場を再開いたしましてから、ドルはその後関係者の予想を上回るほど強い実勢を示しているわけでございます。
  43. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いろいろとあなたおっしゃったのだけれども、具体的な提案とかそういうあれじゃなしに、あなたのところは何とか気をつけてくださいみたいな抽象的な話だけなんですか。
  44. 林大造

    ○林(大)政府委員 アメリカ国内政策につきましては、やはりアメリカ政府が責任者でございますから、私どもが今回、日本銀行でございますけれども、〇・七五%の公定歩合の切り上げをいたしましたことも、これまた日本の当局者の独自の判断によって行なったわけでございます。  それで、国際収支調整のためにインフレーション克服が大事であるというような合意は国際的に行なわれているわけで、そのような合意は抽象的でございますが、それを具体的にどういうふうに施策として現実化していくかということは、各国政府にまかされているわけでございますから、アメリカ国内政策がうまく行なわれるようにということは、これは希望しながらも具体的に注文はつけてこられなかったのではなかろうかというふうに存じます。
  45. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いまアメリカドルは、外国へ出ておるのは大体どれくらいあるのです。公的ドルは六百億ドルだとかどうだとかいうのですが、皆さんのほうではどの程度だと見ておられるのですか。
  46. 林大造

    ○林(大)政府委員 外国の公的機関が持っておりますドルは六百億ドルでございますことは、先生ただいま御指摘のとおりでございます。そのほかに米国の対外負債の残高がどのくらいあるかということにつきましては、いろいろな統計がございます。その中に、アメリカの昨年の十月に発表いたしました計数では、外国政府以外に対する非流動的な負債その他全部合わせまして、七一年末に合計千二百二十七億ドルという数字がございます。それからまたいわゆる多国籍企業、この多国籍企業の中には銀行その他も含まれておりますが、それが持っております短期の流動資産が二千六百八十億ドルあるという計数も、これはアメリカ委員会が発表いたしました計数にございます。  諸外国にありますドルというものは非常に多額にのぼるわけでございますが、それらを計数としてとらえます場合には、どういう観点からとらえるかということが大切でございまして、アメリカ外貨準備に対する直接の圧迫になるものという意味では、六百億ドルという外国の公的機関が持っている流動的なドル債権を、特に取り上げているわけでございます。
  47. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これはちょっとよくわからないのですが、昨年の十月の千二百二十七億ドルというのは、公的機関の分を含んでいないわけですか、含んでおるのですか。
  48. 林大造

    ○林(大)政府委員 含んでおります。
  49. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 次の二千六百八十億ドルというのは、これはやはり公的機関をひっくるめ外国へ出ておるドルの全部がこの説によると二千六百八十億ドルと、こういうことですか。
  50. 林大造

    ○林(大)政府委員 ただいま申し上げました二千六百八十億ドルという数字は、国際金融市場における銀行その他の多国籍企業の持っております短期資産を、米国の関税委員会というのがまとめた計数でございまして、これは政府機関の分も若干重複しているかと存じますが、全額含んではいないようであります。
  51. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これはどっちの数字にしろたいへんな額を出しておるわけですね。それで、アメリカはいわゆる多国籍企業といいますか、そういう関係外国での資源を持ちあるいは市場を押え、そしてそれはそれなりにたいへんな利益をあげておるわけですね。そうすると、私たちにはどうも理解ができないのだけれども、うまいことするのはみんな自分たちかってにやっておって、そしてドルが弱ったから何とかしろというのじゃ、これもまたおかしいし、またそれに便乗してもうけて自分の国の労働者をいじめておるというのも、これもまた理解ができないし、一体皆さんのほうはどうしたらいいというふうに考えるのですか。私はそこがちっともわからない。おそらく国民は、いまの国際通貨の状況や何か見たって、いろいろな新聞見たって、一体大蔵省政府は何をしておるんだかさっぱりわからぬと思うのですよ。そうしながら国内ではインフレだ、いや物価高だ、買い占めだという問題だけがしわ寄せされてきて、やり切れないと思うのだな。わかっておって、こうすればこうなるんだ、だからわれわれはこうせにゃいかぬというものを国民に指針を与えるのが政治のつとめであるし、皆さんのほうの政府の最大の任務だと私は思うのですが、やれOECDでこうだ、いや二十カ国でどうだこうだなんて言ってみたって、一番しわ寄せを受けている労働者にとっては、これはさっぱり縁もゆかりもたいところで何か話し合いをしているということになるのであって、国民にはさっぱり先行きの見通しがわからない。そうしながら、いまのようなインフレで、家を建てかければ大工さんのほうは悲鳴をあげてしまう、そうかといってやめるわけにもいかないし、やるには借金の道がないということで、中途はんぱでいま困っている人たちというのは幾らでもおる。もし国民に方針を与えられないとすれば、多少の違いはあるにしても、いまのように全くめくらにしておいたのでは、私は政府の責任、同時に、これはまたわれわれにも責任があります、そういう点が一つも解決されないというのは、一体どういうことなんですかね。
  52. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 先ほど来いろいろ御議論がございます。大蔵大臣に尋ねるというお話でございますが、明日は出てまいりますからお尋ねいただいたらいいかと思いますが、ただこれからの日本のあり方というものにつきましては、方向としましては、政府も福祉対策をひとつやっていく、円対策輸出入の問題とかあるいは自由化の問題とかいろいろありますけれども、それを最後に締めくくって大きな目標としなければならないのは、おっしゃるとおり福祉対策、福祉国家をつくっていく、そういう方向だと私は思うわけです。先ほど局長が御答弁申し上げたように、日本は明治あるいは大正以来輸入超過で苦しんだ。それが国際競争力を大いにつけるということによって対米四十億ドルもの輸出超過をするようになってきたということは、日本のいわゆる国力、経済的な力というものからいえば相当のところまで一応行った。先ほど来百八十億ドルという話が出ましたが、振り返ってみて、それだけのドルがおっしゃるように国民の汗と努力によってたまった。そこで今度は、これをこれから国民のほんとうの福祉の意味でひとつ使っていきたいんだ。そこでいろいろな考え方が出てくるわけでありますが、しかし方向としてはそういうことである。そして福祉につきましても、長期のビジョンというものをやはりつくっていかなければいかぬ、あるいは生活環境をよくするという意味においてもう一つ公害の問題とも真剣に取り組んでいかなければならない、そういう一つ方向というものは、めくらめっぽうやっていくわけでは決してありませんで、そういう方向というものはしっかりと見定めて、その方向に向かって進んでおることは私は御了承をいただけるのではないだろうかと思うのです。  そこで、先ほど来のアメリカとの関係ドルの問題がいろいろございます。これは先ほど来局長がお答えしておるとおりでございますが、しかし私は、アメリカは今日世界にずいぶんドルを流した。それをやはりあと始末を自分でして、そして一体ドルが今後世界の場で基幹通貨になっていくのかいかぬのか、私もよくわかりませんけれどもドルにかわってそういう基幹通貨になるというものがまだなかなか出てこない。SDRというものは興味あるものだといわれておるけれども、なかなか出てこない。そこで、私はいまややそういう通貨の混迷みたいなものがあるように思うのですが、しかし何かいまそういう基幹通貨がなければならないのだから、ドルのしりをたたいてまた立ち直らして世界の基幹通貨として通用させるか、そういう努力がいま私は続けられているように思うのです。そういう努力に世界の各国も協力をしていくという、もちろんアメリカ御本尊がやらなければなりませんから、アメリカ御本尊の努力はもちろんでありますが、世界もそれに協力していくというのでいろいろな国際会議も持たれておる、私はこういうふうに思っておるわけであります。そういう大きな方向づけはしながら、日本もいわゆる福祉国家にだんだんなっていく、そういうふうにしていかなければならない、こういうことであろうと私は考えるわけでございます。
  53. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 次官、いろいろあなたおっしゃるけれども二つに問題を分けますが、福祉国家をつくるという方向はきまっておるのだ、こうおっしゃるけれども、私はそれはまた高度成長のときと同じに、スローガンとしては理解できますよ。しかし、これがまた国民が裏切られないという保障は何もない。私は、たいへん苦い経験を国民はしておると思うのです。皆さんは財政硬直のキャンペーンを、宮澤さんが企画庁長官のときに大宣伝をした。一番しわ寄せを受けたのは国鉄と農民の食管だった。米と健保と国鉄、いわゆる3K赤字——皆さん一番最初つくられたときには防衛費の問題も入っておったようだけれども、防衛費は差しさわりがあるのでやめて、3K赤字が財政硬直のもとだという宣伝をした。なるほどそれで国鉄の問題、米の問題はたいへんやかましくなった。しかし、財政硬直しておるのはあれっぽっちの金じゃないですよ。初めから食管をなしくずそうということで3K赤字のキャンペーンを張った。今度はトリレンマの解決だ、福祉国家の方向だというけれども、その裏には、皆さんのほうは高福祉高負担という、おそらくこれは高負担だけが残る。これは間違いなしに私は言えると思うのですが、高負担と合理化だけが労働者大衆に押しつけられてきて、福祉はさっぱり進まない。  ほんとうに福祉というなら、次官、いまのような資本主義の世の中では、労働者が負担をよけい出して福祉をしてもらうなんというのは福祉じゃないですよ。いまみたいにだぶついておる、あり余るほうから金を持ってきて、それで生活の困っておる人たちあるいは労働者の福祉をやるというのが福祉なんでしょう。おまえたち金を一ぱい出せ、そしたら社会保障をもっとちゃんとしてあげますみたいなことは、福祉の考えからいったら私はおかしいと思うんだな。皆さん福祉国家の方向に向かっておると言うけれども、これは宣伝としてはわかります。スローガンとしてもわかります。だけれども、ほんとうにいうならば、高福祉、高負担なんというのは金のあり余っておる大企業のほうに負担をさせるべきであって、労働者や農民に負担をよけいしなさい、そうしたら福祉をやってあげますなんていう、何もそんなことならやってもらわなくたっていい。福祉国家建設だとか福祉云々とおっしゃるけれども、その裏にはむしろ高負担と合理化が押しつけられるだけだと私は判断をしておる。おそらく私は間違いないと判断をしておるのですよ。  だから、そういう点で、福祉云々というそういう方向を私は言っておるのじゃないですよ。もう少し生活の設計の立つような形の指針を与えないと、現実にいろいろな生活面でお困りになっておるわけですからね。もう少し言えば、私はこの前地方自治体、町へ行った。町で設計をして町民の会館をつくろう、こうやった。当初は二億円の予算でつくろうとした。ところが今日セメントはないわ、何はないわでしょう。そこで予算がどれだけかかるかわからぬ。請負業者は、ある程度形の上の設計はできたけれども、見積もりができない。まあ三億から三億五千万円かかるのではないかとなる。そうすると、一体この二億の予算で建てるつもりでおったこの町の予算は総くずれになってしまう。地方自治体でもそうなんですよ。ましてや一般の家庭の設計が立たないとなったら、これはどうしようもないのですよ。そういうのに、そうぴしゃりと当たらぬでも、ある程度のめどが立つような指針を与えるのが政治の最高の、最大のつとめだと私は思うのですが、それをおやりにならない。  私、国際通貨の議論の場合、いつでもそういう感じを受けるのですが、日本の国の国力がどうだこうだ、国の利益がどうだこうだ、こうおっしゃるけれども、その国という場合に、何かしら労働者に縁のない、大企業の利益だけがそれの焦点になっておるのではないだろうか。私、予算委員会でたいへん悪口を言いました。集まっている連中、何のことはない、独占資本の代表者だけが集まっている。勤労者の代表が二十カ国蔵相会議へ行って発言しておるわけじゃないじゃないか。そこで資本家の矛盾を調整して、帰ってきてからいかにして資本家のしわ寄せを労働者に押しつけるかということを考える連中ばかり集まっているじゃないかという悪口を言ったけれども、私はいまでもそういう感じがしてならぬのです。だから、皆さんがお考えになる場合、どうもその辺で国内の勤労大衆というものの問題が忘れられているのじゃないか。あれだけ、高度成長で資本が大きくなったらメロンはたっぷり食べましょう、こう言ったけれども、さっき言ったように、たっぷり食べているのは大企業だけなんですね。そういうことでは国民はきょうのストライキみたいにやるのはあたりまえであって——自民党のほうもストライキをやっているんじゃないでしょうか、さっぱり出てこないところを見ると。これではどうしようもない。その辺を、政務次官お答えになるならばその点を踏まえてひとつやってもらいたい。  もう一つ、次官のおっしゃったことに私は意見がありますから御質問しますけれども、まず福祉の問題であなたおっしゃったから、私は、ちょっと横道だけれども一応反論をしておかないとあれだから申し上げたのだけれども、どうも福祉の問題云々とおっしゃるのとは現実は方向が違うのではないかという感じがするのですが、いかがですか。
  54. 林大造

    ○林(大)政府委員 もとへ若干戻らせていただきまして、先ほど御指摘の国際通貨情勢、それから日本の対外経済政策、十分の見通しが立っていないではないかということでございますが、国際通貨問題につきましては、これは日本日本なりの考えは持っておりますけれども日本だけが思うとおりには必ずしもいかないわけでございます。いわば世界じゅうの国々が全体でみこしをかついでいるようなものでございまして、その間におきまして、御指摘のとおり、ドルというものは基軸通貨として戦後二十五年間、正確には二十八年間世界をささえてきた。その過程において世界じゅうでドル資産ないしはドルによる決済というのが非常にふえてきたわけでございます。終戦直後にはまだポンドの役割りというものがかなり高かったわけでございますが、ドルが世界にこれだけ基軸通貨として高い地位を占めるに至って、それが現在弱くなって基軸通貨の地位に耐えられなくなった、すなわちみこしを一人でかついでおることができなくなった。それにかわるべきものが何かあるか。かつてポンドにドルがかわったように、ドルにかわるべき強力な新しい基軸通貨があるかと申しますと、それは現在のところない。その問題につきましてはいろいろ議論が行なわれておりまして、金であるとかあるいはSDRであるとかいうものが論ぜられましたけれども、金は次第に廃貨の方向に向かうという考えが強くて、関心は主としてSDRに向けられている。しかし、SDRも一挙に多額に発行いたしますと、ドルがあまりに多額になりましてインフレ的になったと同じように、またその重さに耐えられなくなるかもしれない。  そこで、先ほど政務次官も御指摘になりましたように、現在若干国際通貨情勢は混迷の時期に入っております。そのような混迷の時期をできるだけ早く切り抜けようということで、この秋のナイロビ総会を目ざして作業が進められておりますと同時に、その間を少しでも無事に切り抜けていきますために、ヨーロッパ諸国は対ドルフロートをいたしましたし、日本は同様に対ドルフロートをしておる、こういうような背景を踏まえまして、日本の対外政策はどうあるべきかということを考えてみますと、はっきりと言えますことは、むやみに貿易ないし経常収支黒字を大きくする、かつてそれが小さ過ぎて困ったときには大きくする方向への努力をすることがよかったわけでございますが、それを適当な水準以上に大きくするということは、われわれが現に利用できます物資、サービス以上のものを外国に対して輸出しあるいは提供するということになるわけでございます。それでは、せっかく国民が汗水たらしてつくりましたものを、国内の福祉向上に役立てずに外国に対してやってしまうということになります。それもある程度は必要でありましょう。それは後進国の援助をいたしますために、経済協力の一環といたしまして、やはり世界の家族の一員として後進国の立ち上がりを助ける、そのためには資源を若干先進国である日本からも後進国の役に立てるように提供しなければいけない、その範囲の黒字は当然持っていてしかるべきである。しかし、それ以上黒字を出しますことは、海外に対する影響もあまりよくない、と同時に、日本国内にとりましても、福祉向上に役立たない、せっかく生産いたしましたものは国内の福祉向上に役立てたほうがいいわけでございまして、そのために臨時に輸出抑制——これは輸入促進は恒久的な意味で輸入促進をやる、それからレートの調整もそのような意味で行なう。レートの調整によりまして現に国際収支の基調は次第に均衡の方向に向かいつつある徴候があらわれております。この国際収支黒字をあまり大きくしない、これを徐々に均衡に向かわせるというのもまさに福祉実現の非常に重要な一環でございまして、その意味で、先ほど政務次官が言われましたような政策路線に向かいまして、着々とこれがはっきりとした見通しを立てつつ実行をいたしておるわけでございます。
  55. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 これだけ国際貿易が盛んになれば、そう金を中心にしてはなかなか困難であろうということはわかりますけれども、それにしても、金の廃貨に向かって進むということは、それは皆さんが考えるのですか。アメリカもそう考えておるのですか。
  56. 林大造

    ○林(大)政府委員 金に対する関係は、国際通貨の専門家の間でも意見が違いますが、アメリカの当局者の意向は、たびたびの言明から察しますと、金は廃貨の方向に向かうというふうに見ているようでございます。各国の専門家にもこれに同調する者が多いけれども、すべての者がそれで一致しているわけではない。したがって、本件は、研究しなければ早急に結論は出ないということでございます。
  57. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 それにしても、アメリカは前の約束でいけば金との交換をいたしますという約束で出発をしておるわけです。そうですね。それにかかわらずそれを取りやめた。悪口を言えば、手形をさんざん出して資源やいろいろなものを取っておいて、不渡り手形にしてしもうたというようなものです。しかし、それでもなおかつ、アメリカはまだ百億ドルの金を持っておるわけですね。日本はいろいろな、前にドル外貨不足で悩んだ時代、いろいろな経緯がございまして、金の保有が少ないことはわかりますけれども、それにしてもたいへん少ない。私は、アメリカが金の廃貨に向かっていくというならば、そんなに百億ドルの金を抱いていなくて、もっとこれは出したらいいじゃないか。これはしろうとの非常に荒っぽい言い方ですが、もっと出したらいいじゃないか。なぜこれを、百億ドルはぎっちり押えておるのかという点はどうなんですか。
  58. 林大造

    ○林(大)政府委員 非常にむずかしい問題を御指摘でございまして、その金の問題につきましては、先生御指摘のようなお考えも確かに一つの見方でございます。ただ、米国があれだけの金を持っておることが、それでは国際的に通貨体制安定のために非常に妨げになっているかということを申しますと、それが主としてその妨げになって、そのために通貨体制が混乱におちいっているということも言えないというわけでございます。もちろんアメリカといたしましては、金を自由市場に放出するということも考えているという新聞報道はございます。しかし、はたして現実にアメリカが単独で金を自由市場に放出するかと申しますと、これは確認された情報はございません。したがいまして、アメリカの金を含め、世界じゅうの金、通貨当局が持っております金をどういうふうな処理をしたらよろしいかということにつきましては、これは国際通貨制度全体の問題であると同時に、各国通貨当局の非常に基礎的な政策にかかってくるわけでございます。現在のところ、アメリカは百億ドル以上、今回はドルの金に対する切り下げが行なわれますと、また一割ほどドル建ての値段はふえるかと思いますけれども、それをどうするかということを、アメリカ政府に対して日本がどうこう言う立場に、現在のところございません。日本一つ考えを持って、それによってアメリカ政府に何か言うべきかどうかというのは、確かに問題ではございますけれども、現在のところ、特にそういうことは考えておりません。
  59. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 日本がどうこう言えないという皆さんの考えもあるし、また当初の約束からすれば、これは金と交換いたしますという約束があったのだから、そんなによけい持っていないで放出しなさい、そうしてあふれておるドルを少し吸収しろということは言えないわけはないでしょう。これは、私はわかりませんよ。しかし、私が前に聞いた話によりますれば、あのときに、金の百億ドルは確保したいという一番強い要求はやはりアメリカのペンタゴンだ、私はこう聞いておる。もし、これから次に国際的にベトナム問題みたいなものが起きた場合、大きな戦争が起きた場合に、もう紙切れになる。ドルでは、これはもう現地調達、戦略物資の購入も現地派遣軍の給料もまかなえない。国防の責任上、これだけは絶対必要だというペンタゴンの意向、が一番強くニクソンを動かしたという話だ。  しかし、これはわかりません、私、直接に聞いたのじゃありませんから。しかし、それはうなずける。私は、やはりそれが一番的を突いた意見だろうと思う。そうでなければ、あなたがおっしゃったように、金は廃貨の方向に向かっておる、またやるべきだ、こういうことになれば、いまの、皆さんがおっしゃったコンソリデーションだのいろいろなことをやる前に、まずアメリカは自分の持っている金を出して、あふれておる外国でのドルを吸収するということが、これは当然義務づけられてしかるべきなのじゃないか。そういう問題をやらないで、自分のほうは、国防上これは大切なのです、必要なのですということで、いままでの約束を破って紙切れにしてしまうということが、やはり一つ問題になるのじゃないか。  私、そういうことを考えていくと、何か日本の場合には言いたいことも言わず、まあしかたがないということで、皆さんとしてはやっていくのじゃないか。その辺、もう少し話し合いなら話し合いをする。しかしそれよりも先に、やはりドルがたまって困る、またたまる体制にある。これはどっちかといえば国内問題、この国内の、ほんとうに円対策というか、それを社会福祉、労働者の賃金、そういうような問題をもっと真剣に考えない限り、それは非常に短期間においては、アメリカドルの切り下げ、したがって日本の円の切り上げ、こういう事態が起きれば、何がしかの期間は確かに輸出はある程度抑制されるでしょうし、輸入はある程度伸びる可能性は持っておる。しかしある期間過ぎてしまえば、これはまたもとのもくあみであって、またもとに戻るのはあたりまえのことなのです。その間に、問題は円の切り上げだ、ドルの切り下げだという、この短期間の中で、ある程度次に向かっての基礎が打ち固められれば、それはそれでまたいくでしょうけれども、ただ、それを打ち固めないでおれば、もとのもくあみになるのは、これはあたりまえのことなのです。そういうものを、何か円対策といい、アメリカのいまの政策を見ておっても、私にはうなずけるものがないわけですよ。そういう点で、もっと本腰を入れて、私は、円対策なら円対策、そのための国内政策というものをもっときちんとしてもらいたい。これは林さんにお伺いしてもどうしようもないんですね。あなた総理大臣じゃないし、みんな政策をやっておるわけじゃないのだからどうしようもないんですがね。どうもその辺であれなんだけれども、まあしようがないから、あなたに聞く問題に転換します。  これは、やる場合、レートはどうなるのです。
  60. 林大造

    ○林(大)政府委員 レートは、当然のことながらそのときの市場実勢レートで、ドルドルで返すわけでございますが、そのドルを調達するための円をどれだけ支出するかということでございますが、これはそのときの市場レート処理をいたします。市場レートでということになりますと、五月一日を返済期日として予定しておりますので、その五月一日の返済に間に合うように、まあできるだけ国といたしましても、円は節約したいわけでございますから、やはりなるべく安いレートドルを購入して支払うということになるわけでございます。
  61. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 いま変動制をとっておるわけですが、五月一日というのは多少操作をして上げるとか下げるということはないのですか。それはまた政府がそういうあれをした場合に、市場はそういうことに便乗して上げるとか下げるということはないのですか。
  62. 林大造

    ○林(大)政府委員 政府は、現在フロートしております状況のもとで若干の介入はいたす場合がございます。しかし、これはレートが上がり過ぎたり下がり過ぎたりするのを調整するためでございまして、本件債務支払いのために特に円を節約しようといたしまして市場レートに故意の操作をいたしますと、それは市場の実勢で事後的におわかりになると存じます。私どもといたしましては、そういう故意の操作をするつもりはございません。また現実にそのような操作をしようといたしましても、私どもは、外国為替資金特別会計はやはり国の会計でございまして、右のポケットから左のポケットに何がしかの利益を与えてみたところが、国全体ないしは納税者全体といたしましては得にも損にもならないわけでございますから、そのような故意なことをやる意味もないわけでございます。
  63. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 皆さんがおやりになるとは私は言ってないのです。市場で、いろんな企業があるわけですが、それがそれに便乗してやるということはないのですか。
  64. 林大造

    ○林(大)政府委員 それはないと存じます。できないはずでございます。
  65. 阿部助哉

    ○阿部(助)委員 大体時間のようでありますからやめますけれども、どうも愛知さんに私、もう少しそれを聞いてみたいのは、盛んにドルの信認性を回復するように主張したと、こうおっしゃるのだけれども、私はそれがただよそのうちに向かって、どらむすこにもう少し気をつけろやと、こういう程度の言い方なのか、その辺がさっぱりわからない。そんなに抽象的な、何も中身もないで、あっさりもう少し御注意くださいというような話ではなかろうと私は思うのだな。もう少し何かあると思うのです。  一番問題なのは、私は多国籍企業の問題がやはり一つあると思う。そしてこれは調べてもらったところによると、たいへんな利益をあげ、生産能力を持っておる。いろんな学者の説、ベルグマンなんという説によれば、一九八〇年には世界の生産の五分の一、そうして九〇年には世界の総生産の二分の一を掌握するだろうと、こう言っておる。たいへんな力を持っておるわけです。世界の総生産の二分の一を多国籍企業が手におさめるとなったらこれはもうたいへんなことだ。そこまでアメリカとしては外国へ企業を出して、それで外国を、口悪く言えばしぼり上げておるわけだ。そのしりぬぐいを今度はよその国の皆さん一諸にやってくださいじゃどうも話がおかしいのじゃないか。その辺は外国であろうと何であろうともっときびしく、言うべきことはほんとうに言っておるのだろうか。あなたの話だと、アメリカのことだからあまり言えないみたいだし、愛知さん自信満々、ここで、アメリカに対してドルの信認回復を強く訴えてきたみたいな話で、一体どういうふうにしてこのドルの信認回復をされるのか、私は一つもわからないわけです。  もう少しそういう点を解明してもらいたいのと、大蔵省には特に、まあ私、今度時間がいただければ、ゆっくり特別措置の問題あるいは税制、法人税の問題、この前も法人税はやりましたけれども、時間もありませんし、皆さんのほうお急ぎだから私あまり長時間をとりませんでしたけれども、実際言うて、これはたいへんなんです。私の調べているのでは、大体特別措置関係による企業の持っておる金は六兆円です。退職給与引当金だとかそういうものまで入れますと、私が皆さんからいただいた資料で計算したところによれば六兆円というものを持っておる。貸倒引当金だとか、それだけ税制でめんどうを見ておるのですよ。そして社会保障はさっぱりしない。労働賃金はさっぱり上げない。これじゃ日本の企業が世界に強い、ドルがたまり過ぎるなんというのはどうもわれわれ野党にとっても恥ずかしいことでして、労働者ももう少し戦わないといかぬじゃないかと思うので、たいへん残念なことだと思うのですけれども、その辺で皆さんの政策もあまりにもいままで大企業優先の政策をとり過ぎた。この辺で、ほんとうに次官のおっしゃるような福祉国家の建設ということならば、それなりにもう少し本腰を入れた体制をとるべきだ、こう私は思うわけであります。  大体時間が来たので、これでやめます。
  66. 鴨田宗一

    鴨田委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、暫時、休憩いたします。     午後零時二十八分休憩      ————◇—————     午後三時四十二分開議
  67. 鴨田宗一

    鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。荒木宏君。
  68. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 約十年余り前になりますか、ガリオア返済国会で論議をされまして、当時の会議録を見ますと、大体このガリオアの金はそもそも一体返すべきものなのかどうか、金額の範囲はどのようにしてきめるのか、いろいろ両方で資料の突き合わせでたいへん不明な個所もたくさんあるではないか、返したあとは一体何に使うことになっておるのだ、こういった論議が、わが党の川上貫一議員をはじめ多くの議員から提起をされております。今度これを一括して残りを返そうということが問題になっておるわけでありますが、その当時の議論を再びここでもう一度蒸し返すつもりはありませんけれども、しかし問題は、返し方がただ単に問題になるというだけではなくて、それも含めて、今回審議にかかった段階で、国民の多くの人は前回の論議を思い起こしておることだろうというふうに私思いますし、必要に応じてそのことにも触れてお尋ねをしたいと思います。  そこで初めに、政務次官に伺っておきたいのですが、当時、これは一体どういうところから返すんだという質問がいろいろ出まして、当時の総理大臣の、なくなられた池田さん、それから外務大臣をやっておられた小坂さん、いずれも開銀の納付金あるいは回収金それから利子、この範囲内でまかなうことになっておりますし、計算の上からも十分それでいけます、種々論議をされましたこの二重払いの危険はないばかりでなく、元本にも食い込むおそれはありませんと、はっきり言い切っておられるわけでありますが、今回の返済もその当時に言われたそういったたてまえのとおりにおやりになる、こういう御方針かどうか、そう伺ってよろしいかどうか、政務次官にお伺いしたいと思います。
  69. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 仰せのとおりだと思いますが、詳しくは係からお答えいたします。
  70. 後藤達太

    後藤政府委員 計数的なことをお答え申し上げさせていただきたいと思います。  ガリオア債務につきましては、三十七年度以降、ただいま先生御指摘のような方針に従って返済を計画どおり続けてまいりました。そして三十七年度から前年度、四十七年度末まででございますが、返済いたしました額が、円に換算をいたしまして千六百九億に相なっております。これに対しまして財源のほうでございますが、財源につきましては、開銀の納付金につきまして、これは当時御議論がございまして、納付金の全額ではございませんで、納付金のうち見返り関係からの出資に見合うものということで、納付金の八七・七三%という割合のものをこの財源に充てるということに相なっております。そういうふうに引き当てました財源を四十七年度末までトータルいたしますと千百九十億でございます。このほかに、さらに開銀に対しまして見返り資金時代から貸し付けをいたしておったものがございまして、この貸し付けの元利回収金合わせまして、この十年間に四百四十四億に相なっております。これを合わせますと財源のほうが千六百三十五億でございまして、この財源の範囲内で償還を行なってきた次第でございます。  なお、今後の問題につきましては、御提案申し上げておりますように、本年度一括、残りの繰り上げ償還をいたします関係上、一時資金繰りに不足がございますので、その一時借り入れをいたしますけれども、五十一年度までにはこの一時の借り入れ金につきましても、開銀の納付金、あるいは今回は余農と一緒でございますから余農関係の元利回収金、これを合わせまして完済をできるということに予定いたしておる次第でございます。
  71. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 財源のほうとして前から引き継いだ見返りのワクの中で処理をしておると伺ったわけですが、今度の返済の財源ですね、開銀納付金それから余剰金、これは金額が幾らで、それが本年、来年どういうふうに返済をされるようになっておるか、この点をひとつお伺いします。
  72. 後藤達太

    後藤政府委員 お答え申し上げます。  四十八年度、本年度繰り上げ償還いたします予定で見込んでおります財源のほうは、このガリオアと両方でございますので、両方について申し上げたいと思いますが、余農関係につきましては、この元利の回収金が四十三億二千七百万円、これを予定をいたしております。それから開銀の貸し付け金の償還が今年度まだ若干残っておりまして、これが六千三百万円でございます。それから開銀の納付金、これにつきまして八十二億四千三百万円、それから前年度の剰余金の受け入れでございますが、これは八十九億二千四百万円を予定をいたしております。それでこの八十九億二千四百万円につきましては、予算書上の前年度剰余金は九十七億ほどに相なっております。その九十七億ほどの前年度剰余金のうちで、開銀の納付金が剰余金になって繰り越されてきたもの、それから余農の元利の回収金で四十七年度に回収をされまして使用をいたしませんでおりまして、それが四十八年度に繰り越されてきたもの、こういうものを拾い出しまして、八十九億二千四百万円と予定をしたものでございます。  これらを財源にいたしまして、他方、その支払いのほうの繰り上げ償還額あるいはこの借り入れ金の借り入れ利子等の支払いまで計算をいたしますと、所要の支出金額が五百六十五億に相なります。したがって、その差額、不足分の三百五十億を借り入れる、こういう予定をしたわけでございます。  それから四十九年度以降につきましては、支出のほうではいまの三百五十億借り入れたものをだんだん減らしていく、こういう関係の支出が主たるものでございまして、この財源といたしましては余農の元利回収金が四十九年度四十三億六千五百万円、五十年度四十三億六千万円、五十一年度四十三億五千百万円、これは計画どおりの返済額でございます。それから開銀納付金につきましては、これはただいまの時点におきます見込みでございまして、これは九十億を見込んでおります。各年度九十億見込んでおります。したがいまして、借り入れ金の償還に必要なる財源の不足をまかないますために四十九年度二百四十億、五十年度百二十億の借り入れを予定をいたしまして、五十一年度にこれは完済をいたす、こういう予定をいたしておるわけであります。
  73. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 例の二重払いの論議がいろいろとやられましたときに、開銀の当初の出資の中で見返り資金を引き継いだものが大体八七・七%、二千三百四十億のうちで二千五十三億ですから九割弱になっていますが、従来の支払いがそういった納付金にかける八七・七というふうなことでやられてきておったということは、先ほど御説明で伺ったのですが、いまのお話ですと、四十八年度は開銀納付金が八十二億四千三百万円ですね。予算書によりますと、これが全額のように出ておりますけれども、そうすると、本年は従来の九割弱というのではなくて、一括繰り上げ償還だから、入ってくる納付金はもう全部そっちへ回す、こういうことなんですか。
  74. 後藤達太

    後藤政府委員 ただいま先生御指摘のように、私ども予定いたしました開銀納付金の財源としての数字は御指摘のとおりでございます。そういう予定のしかたをいたしました考え方でございますけれども、繰り上げ償還ということに相なりますると、これはあとは借り入れ金をなるべく少額にしてなるべく早く返すということが産投会計としての負担を一番小さくすることに相なるというふうに私ども考えた次第でございます。したがいまして、この納付金の関係のものを一括して財源に見込んでも差しつかえないんじゃないかというふうに考えた次第でございます。  なお、今回は財源といたしましては、ガリオアばかりじゃなくて余農も一括をして返済をする、両方を通じた財源ということに相なっております点も考慮いたしまして、その産投会計の負担をなるべく少なくしたい、そしてこれは五十一年度までにはいずれも開銀の納付金の八七%かけたものでこの借り入れ金は償還されるわけでございますから、そういう意味で、この計算は全額を財源として見込んでおる次第でございます。
  75. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 産投の負担をなるべく軽くしたい、これはそれはそれで一つ考え方でしょう。しかし、これは政務次官お尋ねしたいのですが、御存じのようにずいぶんと論議がありましたときは、そろばんはそろばんだけれども、しかしそのことには筋がある。返すべき金とそうでない金といろいろあって、そのことでずいぶん論議があったわけですね。そのときに政府のほうの答弁としては、これは本来国民がこういった、余農も同じことですけれどもガリオアの物資を受け取って金を払っておる。それが子を生み孫を生んで、その中から払うのだから決して一般会計には手をつけない。産投には御承知のように見返りから引き継いだほかにも、一般会計からも金が出ておるわけですから、だからそっちのほうにはっきりした言い方をすれば指一本触れませんと言わんばかりの言い方を繰り返し繰り返しなさっておる。  ですから、今度のことが一たん承認された協約上の義務として、義務履行としてやられるならこれはまた別ですけれども、期限の利益をみずから放棄して、そしていろいろな趣旨の説明がありますが、今回一括返済をする。だとすれば、初めに言っておった、ほかには触れませんよ、こういうこととはずいぶんとその限りでは変わってきているのじゃないでしょうか。これは山本政務次官、いかがでしょうか。
  76. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 先ほど来のお話のように、見返りの開銀納付金のうちの見返り分だけで支払っていく、そういう基本的な原則があったわけでありますけれども、先ほど次長が御説明いたしましたように、一つにはこれは余農の関係償還もこの際は一緒にやるということでもあり、また産投という会計の性質上、なるべく産投からの借り入れを少なくしたいという、そういう気持ちからそういう処置をやったわけでありまして、先ほどおっしゃったような少し様子は前と違うじゃないかとおっしゃれば、そういう金額的な意味でおっしゃったんではないかと思います。
  77. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 金額的には指摘したとおりだ、こういうお話なんですが、それは金額の問題ではなくて、筋も指摘しておるとおりではありませんか。初めに確認をした筋が曲がってきている。金額としてはこれはそう大きな額じゃありませんからいろいろな見方ができるでしょうけれども、しかしこういうところにも、アメリカとの関係ということになりますと、筋が容易に曲がって少しもはばからない、かようなことではたいへん困るのでありまして、こういうふうなところで、本年から始まって五十一年、借り入れ関係ではあと三年ほどしりが残るのですけれども、なぜこういうふうなことになるのか、アメリカのほうから早く返せというふうな話が強くあったわけですか。対アメリカとの返済関係については、この筋が曲がった関係は一体どのようになっていますか。
  78. 後藤達太

    後藤政府委員 先ほどの私の御説明がちょっと十分ではなかったかと存じますので、もう一度先に御説明させていただきたいと存じますが、先ほど申し上げましたように、余農の関係につきましても今度は一括して返済をするということもあわせ考えて申し上げたつもりでございますけれども、余農関係につきましては、やはり従来余農関係の元利回収金のゆとり等がございましたし、またガリオアのように開銀納付金以外のものには絶対に手をつけないということとは違った感じのものであったと承知をしております。今回の余農関係も含めての財源措置でありますので、産投借り入れ借り入れ負担をなるべく少なくしたいということで全額を見込んでおる次第でございます。  なお、ガリオアだけを分けて計算をいたしてみますと、今回のガリオア分の返済額が三百二十六億に相なっております。この分に開銀の納付金の八七%をそちらに充てる。残りは余農関係に充てるという引き当てでございますから、一応の計算のようなことになって恐縮でございますけれども、そういたしますると、ガリオア関係のものにつきましてはやはりいまの財源を見込んでまいりまして、五十一年度までに完済が済むという計算に相なっております。
  79. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 これは政務次官、先ほど来御説明を伺いましたが、これは少し詭弁というふうな言い方になるのじゃないでしょうか。なるほど余農はありますよ。ありますけれども、開銀のときにはあれほど論議があって、はっきりお約束なさった。それで今回も確認していらっしゃる。それなら、ほかの債務もくっつけて、これがあるんだからといってその原則がくずれるのなら、これはもう借金が一つであって他にない場合でなければ、幾ら金の出どころを約束していたって、これは信用ならぬわけでしょう。だから、ほかにあるから、そっちに回すから、そろばん勘定が合うように、この際は借金をしたくないから、八七・七%と言いましたけれども、一般会計から出ておる回り回ったものにも手をつける。こんなことになれば、それこそお金の節度も何もなくなるのじゃないですか。  ですから、この問題については、事実関係がはっきりしましたからこれ以上は申し上げませんけれども、しかし前年度剰余金の先ほどの御説明にしても八十九億余りで、これは同じ率をかけますと、この数字にはなってきませんね。四億か五億かの違いが出てくる。それから四十九年度以降も、納付金はこれは九十億まるまる一ぱい見込んである。ですから、この際一括返済をするということが先に立って、いろいろ論議された約束はもうたなに上がってしまった。どうしてですかと、こう聞けば、ほかの借金が一緒ですから、こういう言いわけになってくるんでは、これは少し政治の姿勢、あり方としてどうだろう。ことにこういうアメリカとの関係についてこういうことになるのでは、なおのこと問題じゃないかというふうに思いますので、その点はひとつ指摘をしておきたいと思います。  それから、いままでの返済の実績とそれから財源について、先ほど説明を伺いましたけれども、当時の論議で、二十八年から三十六年まで、つまり前のこの協定承認のときに、それまでの運用利益が大体千四百三十三億余りある、こういう説明があったように会議録に出ていますが、この運用利益は、これは返済との関係ではどうなっているのですか。
  80. 後藤達太

    後藤政府委員 いまの先生の御指摘は、三十六年度末におきまして産投会計の積み立て金あるいは利益を合わせまして千四百億ぐらいになっておる、これはどういうふうに使っておるかというお尋ねと理解してよろしゅうございますか。——これは引き継ぎまして、産投の資本になっておりまして、他の資金と合わせまして投資に使われておるわけであります。
  81. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 産投としていろいろなところに金が出ておることは、これは承知しておりますけれども、しかしそういった国民が払ったお金が利を生んで、そしてその後いろいろなところへ回っている。この回る先も問題ですけれどもね。今度一括返済という話が出て、そういう利を生んだお金がいろいろあるにかかわらず、資金不足で運用資金から借りてこなければならない。本来、国民の側から見ますと、返すべきでないお金をすったもんだ言って返すようなところに持っていってしまった。金額だってずいぶん問題があるのに、ああいう経過で、押しつけられたかうのみにしたか、とにかくもうきまった。ずいぶんいろいろ利回りその他があるにかかわらず、今度また、いわば国民が預けている金ですね、運用部のほうからまた借りてこなければならぬ。これは一体どうしたことだろうか。前の論議のときとずいぶん話が違うじゃないか、こう思うのは、私は当然だろうと思います。いま伺ったほかへ回っている金、いろいろ利を生んだ運用利益があるにかかわらず、資金不足だ、この点はどういうふうに説明するのですか。
  82. 後藤達太

    後藤政府委員 産投会計といたしましては、ただいま先生御指摘の積み立て金等とその他の財源と合わせまして、投融資をいたしておるわけでありまして、現在その資金は各公庫あるいは輸開銀、公団等へ出資をいたしておるのは御承知のとおりでございます。したがいまして、そういう形で現在運用をされておるわけでございまして、ただこういうものをすぐ回収してその財源に充ててはどうかという議論もあり得るかと思いますけれども、それぞれそれは出資として運用されておるわけでございます。したがいまして、それを急遽引き揚げるということに相なりますると、またそれぞれの機関につきましての資金手当てをしなければならないという問題が当然起こってまいるわけでございます。したがいまして、この一時的な資金繰りとしましては、この両三年の間、一時的に借り入れをいたしまして、その間の資金繰りをつける、こういうふうに考えた次第でございます。
  83. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 いや、私はそこから引き揚げてきて返したらどうかというようなことは少しも言っておりませんよ。大体どだいこういう債務そのものが不当であり、いわんやその上にこういう返し方が問題だ、こう言っているわけですから何ですけれども、一番お尋ねしておるポイントは、前のときと話が違うじゃないか、こういうことなんですよ。そのときには、とにかく分割にしろ何にしろ、返すにあたっては決してほかへ手をつけたり、いささかたりともゆがめるようなことはありません、こう繰り返し繰り返し言っておきながら、その間にどんどん利殖をして出てきたのは、もうほかへいろいろな形でまいてある。それは公団もありましょう。しかしその中には、武器の製造につながるような向きの資金運用のしかたも、それはいろいろこまかくあとで伺わなくちゃなりませんけれども、問題のある金の使い方もある。  現に先ほど伺った財源とそれから返済実績、これが二十五億九千百万円ガリオアのほうでありますが、余農のほうでは残が三百三十億、ですから、両方合わせますと、財源の中から払ったのは、差し引いてですよ、残りが三百四十六億ある。しかもその三十六年に一たん締めるまで先ほどのように千四百億余りある。だとすると、千七、八百億ほどいろいろの関係で金を手にしておきながら、ほかのほうへいろいろと使って、さあ返すんだとなったら金が足らない。それでは初めに、ほかには手をつけませんとこう言っておったけれども、ずいぶん話が違うじゃないか、このことを言っておるわけでありますが、そういう違う話にしてまでなぜ返すのか。しかもそもそも最初債務確認のときにはあれほど国民から大きな問題提起があり、そうしてずいぶん苦しい言いわけをしておられる。  いままでの運用益その他についていま、少し指摘をいたしましたけれども、金の返済との関係、これが一つですね。ほかにもずっとあるのに、引き揚げてきてやるるかどうか、これは別ですよ。そういう状況のときに、一括返済ということはどうしてか。これはアメリカとのドル関係、これは言われる意味はわかります、それを認めるかどうか別としてですね。しかし内輪のことを考えれば、そんなに右から左じゃなくて、やはり一たんは清算するためにはとにかく資金調達をしてこなくちゃならない。しかもその金そのものはずいぶんと問題になった金だ。しかも相手はいまもう世界の指弾の的になっておるアメリカじゃないか。こういう点で、いろいろ一括返済ということについての疑惑なり問題点がたくさんついて回っている。これは一体どうお考えになるか。
  84. 後藤達太

    後藤政府委員 ただいま先生の御指摘で、余農の関係返済金のほうから申し上げたいと思いますが、余農の関係借り入れ金の返済額は、ちょうど先生御指摘のように三十三年度から四十七年度まで、返済額とその貸し付け金の回収金その他の差額が三百二十億円と相なっております。ただ、この三百二十億につきましては、これは各年、割賦返済というようなかっこうで入ってまいりまして、それを再投資ということで、やはり余農資金の趣旨に従いまして、愛知用水公団でございますとか電源開発事業でございますとか、そういうところに再投資をいたしておりまして、再び貸し付けられたかっこうになっております。これは余裕金として手元にあるわけではございません。ただ、その中で、先ほど四十七年度からの前年度剰余金につきまして、余農の元利回収金の三十億を使わないでいたものを財源に見込んでおると申し上げましたが、その三十億は四十七年度には再投資をいたしませんで、残ったものでございまして、三百二十億のうち三十億残っておりますものを今回の財源に見込んでおる次第でございます。
  85. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 先ほどからもお話がありましたが、要するに三十八年当時と実際問題として事実関係がだいぶ変わってきた。いわば事情変更にだいぶ今日はなってきておる。当初は、先ほど来御指摘のような一つの。プリンシプルを立てておったわけですけれども、そのプリンシプルは、要するにこれを五十二年なり七十年に返済する、返還するという相当長期の計画にのっとった一つのプリンシプルであったと思います。  そこで御存じのように、今回こういう一括して返すという客観的情勢というものは、私はあるいは御納得、御了解いただいておるのではないかと思います。     〔委員長退席大村委員長代理着席〕 そういう事情に即して、ひとつ今度返すということになったときに、なるべく筋道を立てながら、産投会計に迷惑をかけないようにしながら、そして現在の時点の情勢に即応して一括返還をしていきたいということで御審議をお願いをする、こういう立場にあると私は思っておるのでございます。
  86. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 私は了解はしておりませんよ、いま了解しているのじゃないかというお話がありましたけれども。これは私だけでなく、国民の皆さんが決して了解してないと思うのです。私の意見を質問に含めて申し上げましたし、次官のお考えは伺いましたから、これ以上は申しませんけれども、しかし事情変更というような隠れみので言えるような性質のことじゃないと思うのです。いままでのことはそれとしまして、現在、将来のことを少し伺っておきたいのです。  先ほど局長でしたか、レートの問題に関連して、右のポケットから左のポケットへというような御説明があったように伺ったのですが、なるほど外為と産投の間では、おっしゃるような関係が出てくるかと思うのです、元へ戻りますから。しかし、どっちにしても、ドルを買い入れて、そして返済するとすれば、その関係では、最後の帳じりというのは国として出てきますね。だとすれば、いまかりに早く返すことによって、年三%の利息が助かる。しかし、一方フロートしていますから、どこへ固定化するかによって、やはりその間の買い入れの円資金の多寡に相違が出てくる。だとすれば、そういう意味でのプラスマイナスということを考えるに当たっては、やはり固定化のめどといいますか、そういったものがなければ計算は出てこないと思うのです。一体そのめどをどういう点に置いておられるのか。事前の説明など少し伺いますと、早く返すことによって利息が助かるのです、こういうお話もあったように伺いましたので、じゃ、差し引き利息の助かる分と、それから先行き固定化することによってずっとドルが下がって、それで円資金が助かる分と、助かる助かるという説明もあったのですけれども、一体どこにめどを置いておられるか、これをひとつ伺いたいと思います。
  87. 林大造

    ○林(大)政府委員 荒木先生お尋ねの点は、いわゆるコンソリデーションの問題に若干関連してのお尋ねかと存じますけれども、対外的なバランスの上から金利関係でどういう関係に立つかということを御説明いたしますと、わが国全体のバランスシートといたしまして、現在年二・五%とかあるいは三%とかという長期の負債が立っているわけでございます。それに対しまして借り方の、資産勘定のほうには、外貨準備アメリカの財務省証券という形であるわけであります。これは流動性はございますけれども、金利はそのときどきでかなり動いておりまして、昨年は三%台でございましたが、最近はアメリカの金利がだんだん上がってまいりまして、六%を若干上回る程度になっております。それで今回、ドルのバランスで申し上げますと、アメリカの財務省証券に運用しておりますドルを引き揚げまして、そしてこれをもって三%とか二・五%の金利の金を返済するわけでございます。したがいまして、金利的に申しますと、安い金利の借金を、現在比較的有利に回っている資産をもって支払うことになりますので、したがって純粋に金利的に申しますれば、日本としてはそれだけの犠牲を払うことになるわけでございます。  それで、この点につきましては午前中阿部先生お尋ねにもお答えいたしましたとおり、その関係の利害を考慮いたしまして、日米双方の利害の調整ということで、米国側がその金利を六・二%の金利で割り戻して、そして二億五百万ドルある債務残高のうち、一億七千五百万ドル返済すればそれで完済とするということに、現在了解が成り立っていることによりまして、対外的なドルバランスに関します限りは、日本としては、まあいろいろな見方は成り立つと思いますけれども、決して不利な立場にはないというふうに考えております。  円のサイドでございますけれども、円のサイドから申しますと、本件は理財局の後藤次長からあるいはのちほど御説明いただいたほうがよろしいかと存じますけれども、現在あります円建ての産投会計の資産と負債があるわけでございます。その負債は、金利が三%とか二%とかいう安い金利、それを資産サイドにおいて固定しております資産を引き揚げまして返済する。かわりに他の債務をもって振りかえる。その場合、債務は当然国内金利をしょっているわけでございますから、したがって低利の長期の借り入れ金を比較的高利の借り入れ金に振りかえることになりますけれども、しかし、その関係も今回の二億五百万ドルを一億七千五百万ドル金額を減額することによりまして、十分利害はとれているというふうに判断いたしております。
  88. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 元本が減るということについてはたいへんなプラスであって、いまそれをすることによって利益があるのです、こういうふうな説明を事前の段階で伺ったのですけれども、いまの局長のお話によりますと、それはプラスプロパーじゃなくて、金利の差でありますとか、そういったことの見返りのような形で出てくるとすれば、特にこのことによって、いま返すことがたいへんな金利償却その他の利益になるということも言い切れない感じがいたしますがね。その点から言いますと、先ほど過去のプリンシプルに関連して指摘した点にもかかわりますけれども、今回の一括返済というのはどうもすっきりしない。そこで私どもは、そういう手続でありますとかあるいはそろばんの計算でありますとか、これはいわば技術的なことで、一番重視しているのは、そもそもこの返済がどういうふうな政治的な意味があるのか、返した金がどこに使われるのか、それによって日米関係は一体どうなるのか、このことが一番国民の皆さんにとっても大事な問題であろうと思うのです。  そこで、先ほど来のいろいろな問題点を踏まえた上でお尋ねをしたいのですけれども、これは政務次官に伺いますが、前の話では、返した金を何に使うか、これは交換公文がありますから一応の約束はあるのですけれども、前の大きな論議のときには、いまアメリカが計画を策定中である、返してしまえばこれはアメリカの金だから、日本から、その計画が出てくるまではとやかく言えませんというのが当時の大臣の方々の御意見でありましたが、もう返すことが始まってすでに十年余りになっておりますけれども、一体これらの金、今度の一括返済の分も含めて、これはどういうことに使われておるのですか。この点をひとつ政務次官から伺いたい。
  89. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 これは日米間の交換公文がございまして、それによりまして、発展途上国に対する経済援助に使う、こういうことに相なっておるわけでございます。
  90. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 それはどういう根拠でいまのようなお話になっておるのでしょうか。
  91. 林大造

    ○林(大)政府委員 これは昭和三十七年にガリオア債務の最終処理をいたしまして、四億九千万ドル債務分割返済するということを取りきめましたときに、小坂・ライシャワー間の交換公文がございまして、その中で、米国政府国内立法措置を経ることを条件として受領資金の大部分を、低開発諸国援助に使用する意図を有するという趣旨を明らかにしております。さらにそれに加えまして、両国政府は東アジアの経済発展が非常に大切であるから、そのための開発援助が緊要であることを認めて、引き続き相互に密接に協議をするというような交換公文がございます。     〔大村委員長代理退席、木村(武千代)委員長     代理着席〕 その趣旨に沿いまして、現在までアメリカ政府開発援助そのほかの経済協力の関係に努力をしてまいったわけでございます。ただ、政府の一般会計資金性格上、日本からの返済資金がひもつきでいかなる使途に具体的に使われたかということは、これは日本政府におきます一般会計と同様、明らかにはなっておりません。
  92. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 これははどうもまことに私は情けないといいますか、うなずけない話なんですけれども、それはひもつきであろうとあるいは一般会計に入ろうと、これは金の扱いの意味は違いましょう。しかし事の性質が、はっきりと借金であります、それを返しましょうというようなことできまったものではなくて、御案内のように債務と心得るというふうなことから始まって、憲法上の手続問題も含めていろいろなことでややこしい経過でああいうことになったので、そのときに一体どういうことに使われるのか、このことは大きな問題になりましたね。いま言われたような意味合いのことはこれは交換公文にあるわけですからあらためてお尋ねするまでもないのですが、その当時には、使い方について、具体的に計画が出てきたときに話をしますとはっきり責任者がおっしゃっている。これは会議録にもあります。  そこで、政務次官に伺いたいのですけれども、この交換公文にあるような抽象的な使途、目的ではなくて、その後毎年毎年返しているわけですから、多くの国民の了解がないにかかわらず実際問題として金はいっているのですから、そのことについて具体的に自民党政府としてどういう協議をなさったか。ひもつきというふうな意味合いで申し上げているのじゃないのですよ。これについてはこうこうかくかくしかじかですよということについて、一体どのような処置をおとりになったのか、このことをひとつ納得のいくように説明をしていただきたい。
  93. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 これはいまお話しのように、この交換公文によってアメリカ側は発展途上国の経済援助にこの金を使います、こういうことになっておる。その金が、金にしるしはないわけでありますから、アメリカ全体のアメリカ政府がやるところの発展途上国に対する援助費の中に含めて使われる、こういうことになっておる。アメリカ政府の世界各国の発展途上国に対する援助資金というのは相当の額でありましょうから、その中にこの金は含めて発展途上国の経済援助をする、そういうふうに実施をしてきたものと承知をするわけでございます。
  94. 増本一彦

    増本委員 ただいまの荒木委員の質問に関連して政務次官にお伺いしますけれども昭和三十八年の二月十五日の参議院の予算委員会で、わが党の須藤五郎議員の質問に答えて当時大平外務大臣が「この返済金は、返済いたしますと、アメリカの金でございまして、これをどこに使い、どこに使っちゃならないというように、有権的に日本政府が要求する資格はないわけでございます。ただ、交換公文で、しかしながら、東アジア諸国の安定並びに繁栄ということは、両国の関心事でございますから、協議しようということに申し合わせたわけでございます。しかも、その先方の御計画をまだ拝見しておりませんので、私どもは今とやかく論評する材料を持っていないわけでございまして、あくまでも交換公文」で対処したい。しかしこの計画については、次の答弁で、目下アメリカ政府側において計画を作案中でございまして、提示を受けておりませんが、「提示を受けましたら、御相談しようと思っております。」こういうようになっているのですね。その後この計画については提示を受けて相談をした事跡があるのかどうか。そしてもしないとすれば、いまここで一括償還をする段階で、こういう問題についてはどのように政府として対処されてきたのか、また対処されようとしているのか、この点ははっきりしていただきたいと思います。
  95. 林大造

    ○林(大)政府委員 ただいま読み上げられました、提示を受ける計画というものを当時の大平大臣がどういう意味合いでお答えになりましたかはよく存じませんけれども、しかし「低開発諸国に対する経済援助に関する合衆国の計画」ということばは交換公文の中にもあるわけでございます。     〔木村(武千代)委員長代理退席、大村委員長     代理着席〕 日本におきまして毎年予算で審議をいただいておりますと同様に、アメリカ政府も低開発諸国に対する経済援助につきましては、毎年アメリカ議会の承認を経まして政府が随時行なっているわけでございまして、その計画の内容は多岐にわたり、たとえばいわゆる世界銀行あるいはいわゆる第二世銀、アジア開発銀行その他数々の多角的な援助、それから二国間の援助、その他いろいろなものをいたしております。最近では二国間の援助援助供与国と受け入れ国の二国間の話し合いではなかなか話がまとまりませんで、と申しますのは多数の債権国が関与いたしておりますので、お互いにどの程度の新規の資金を供与するか、その条件いかんということのすり合わせが大切になってきておりますので、いわゆるコンソーシアムと私ども言っておりますが、その援助国が多数集まりまして、相互に相談をすると同時に、その援助受け入れ国とも話を詰めるというような手続を繰り返しているわけでございます。昭和三十七年以来すでに約十年の日時が経過しておりますが、この間米国サイド日本サイドは常に連絡をとり、そのような後進国の経済発展のためには共通の努力をしているわけでございまして、したがいまして、広い意味ではお互いにその経済協力の意図のすり合わせをしながら世界的なこの使命を果たしているということがいえるかと存じます。
  96. 増本一彦

    増本委員 それは私の聞いていることの答弁には全然ならないと思うのですね。この予算委員会のいま言いました会議録、予算委員会会議録第四号です、この二三ページには「○国務大臣(大平正芳君)」として、「これはもう、ガリオア返済金の使途につきまして、御答弁申し上げましたとおり、目下アメリカ政府側におきまして計画を作案中でございまして、まだ私どもは提示を受けておりません。提示を受けましたら、御相談しようと思っております。」こう書いてあるのです。これは当時の予算委員会で、提示を受けた段階で相談をするということを国民の前に約束したことではありませんか。政府のほうも当時なぜそういうような答弁をしたかといういきさつは、荒木委員の先ほどの質問の中での経過でも明らかだし、政府もその点はお認めになっていると思う。二重払いの問題もある。そのほか債務の確認の上でも種々の経過があった。国民にもその債務の内容自身が非常に不鮮明だ。いろいろ批判があって、政府のほうも債務と心得るということで、債務は確認して、返済する段階ではその使途についても日本側としては注文をつける、だからこそアメリカの計画ができた段階で相談をしようと思っているというように国民の前に約束をしたはずだと思うのです。  だから、そういう約束に従ってアメリカとの関係でこの計画に基づいて相談をしたのか。していないとすれば、いまこの一括償還する段階で、この点についてはどういうようになさろうとしておるのか。国会で国民の前に公約されたことをいまここでやはりはっきりさせるということが私は非常に重要だと思うのです。だから、その点に限ってどうなっているのかということをはっきりとお聞きしたいと思うのです。
  97. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 お答えの前にちょっと補足しておきますが、当時の大臣がどういう趣旨でおっしゃったのかよくわからないと局長はおっしゃったので、これでは政治的にお尋ねしておる答弁にはならぬと思うのですよ。ですから、この問題については政治的に責任のある政府大臣なり次官のほうからひとつお答えをいただきたい。  ただ、この当時の論議の中で言われておりますことは、いまは案が出ていないから相談ができないんだ、出てくればやります、こういうことですから、局長のほうから、その後十年余りの経過の中で、この問題についての具体的な案の提示があり、協議があったかどうか、こういう事務的な事実の問題について御答弁をいただきたい。ただ、それを、広い意味ではあったというような、こういう政治的な言い方をなさると、これはまた話がややこしくなってきますので、お聞きしておるのは本件についてのお尋ねですから、そのことについての御答弁をいただきたい。
  98. 林大造

    ○林(大)政府委員 それでは交換公文の文言に即しましてお答えを申し上げたほうがよろしいかと存じますが、交換公文の中で次のような事項を確認するということの第一項には、「合衆国政府は、適当な立法措置を経ることを条件として、前記の協定に基づき」——この協定というのはガリオア返済関係協定でございますが、「に基づき合衆国政府が受領する資金の大部分を、低開発諸国に対する経済援助に関する合衆国の計画を促進するために使用する意図を有する。」こういうふうに述べられてございます。この文言の中には「合衆国の計画を促進するために」ということも書いてございますし、同時にこれは行政府の交換公文でございますから、「適当な立法措置を経ることを条件として、」ということで行政府の見解を明らかにした文章になっております。  その後の経緯を御説明いたしますと、その後一九六一年対外援助法というのがアメリカの議会に提出され、いろいろと審議されたようであります。ただ、その対外援助法の関係で開発借款基金につきましていろいろの経緯がありまして、その中で十分にこれが計画であるということのはっきりとした適当な立法措置ということがはたして果たされたかどうかということになりますと、この点は必ずしも明瞭でない。一九六一年対外援助法には、当初はガリオアなどの回収金それから財務省からの借り入れ金、これを対外援助資金として使用する趣旨の条項がございましたが、この条項が議会で削除されたわけでございます。したがって、この関係が不明確になったというのが事実でございます。そういうことでございまして、したがって米国の対外援助の財源は一般の歳入からまかなわれることになりました。その一般の歳入の中にガリオア返済金も繰り入れられることになったわけでございます。したがって、具体的にひもつきになっているということは申せなくなったわけでございますけれども、しかし全体の返済額それから全体の対外援助金額の両方を比べてみますと、対外援助金額のほうがはるかに大きいという対応関係があるわけでございます。したがいまして、この立法府の立法措置を経ることを条件としてということは、この条件が必ずしも十分に満足されたとは認められませんけれども、実質的には日本からの返済金が対外援助に充てられたというふうに考えていいのではないかということは、るる荒木先生の御質問にお答えしたとおりでございます。
  99. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 ただいまの外務大臣の答弁に即して考えてみまするに、計画があってその提示を日本側にしてくる、こういうように読めるというお話であります。その計画というのが、それもちょっとはっきりしないと思いますが、一体アメリカの全体の援助計画であるのかあるいはこの金額の具体的な援助計画なのか、そうなればひもつきになっちゃうわけですけれども、ひもつきの約束は私はこの協定の交換公文ではしてないように思うのです。ですから、ひもつきでないとすれば、一般的なアメリカの世界全般にわたる発展途上国に対する援助、そのアメリカの具体的計画というものが毎年それによってできたはずでありますから、私はよくわかりませんけれども、外務省であるいは調べなければわかりませんが、それは最初はおそらく日本側にもアメリカの世界各国に対する、発展途上国に対する援助計画というものは来ておることと思います。  では、ひもつきであるかないかという問題になってくるわけですけれども、この交換公文ではそういうひもつきということはないという考え方のようでありますので、目的は、ともかく両国政府は、東アジアの経済発展がその地域の安定と平和に不可欠だから、その目標に向かって使うのです、こういう合意をしたものであろう、こう思うわけでございます。
  100. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 次官の御答弁を伺ったのですけれども、事は非常に簡単だと思うのです。アメリカから案が出てくれば相談します、こう言っているのですから、もうやめるもやめないもないのです。非常にはっきりしているのです。交換公文が条件つきだということは、これは局長おっしゃるとおりで、それもはっきりしているのです。はっきりしている交換公文について一体政府はどうするのだ、こう聞かれて、プランが出てまいります、出てきて相談することになっているのです、こう言っているわけですから、それがいまのように、次官が言われたように、どの範囲のものかよくわからないとかということになると、これは私は言いのがれ答弁というと言い過ぎかもしれませんが、そういう感じがいたしますね。だって、そういうことを協議をすると言っているのだから、そのする範囲が広いとか狭いとかそんなことを言い出したら、ものごとは何でも約束したってだめになっちゃうのです。そういう点から、いまの御答弁は私は非常に不誠実なといいますか、そういう印象が非常にするのです。だって、そんなにはっきり、問題になったときは約束しておられるのですから。  そこでひとつ次官に要求したいのは、この十年来の協議の経過ですね、ひもつきまでいかなくても、具体的なプランとしての協議、あるいは一般的な計画としての協議、どちらでもよろしいけれども、そういった協議経過について調査をしていただいて、そしてあすの採決までにひとつこの委員会に御報告をいただきたい、これが一つですね。それを申し上げておいて次の質問に移りたいと思います。
  101. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 いまの交換公文だけ読みますと、使途、使い道についての協議をするとは書いてなくて、この目的に従って「随時相互に密接な協議を行なう」こう二項に書いてあるわけなんです。その目的は、要するに東アジアの発展をひとつ大いに協力してやりましょう、こういう趣旨でございます。そこで外務大臣国会における答弁、これも非常に大切な答弁でありますから、その答弁がこの交換公文と一体どう調和といいますか、かみ合うのか、その辺のところもひとつよく検討をさしていただきたい、こう思うわけでございます。
  102. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 これはあまり他人ごとのように言われては困ります、協議をなさった政府当局として伺っているわけですから。大臣の答弁も協議をすると、こうおっしゃっている。交換公文にもニュアンスはあり、条件つきだけれども、協議をすると、こう言っているのですから。だから両方それこそ斉合的に双方とも協議をすると言っているわけですから、その協議の経過をひとつあすまでに報告いただきたい、こう申し上げているわけです。そういうふうに御理解をいただきたい。これはよろしいですね。
  103. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 はい、わかりました。
  104. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 そこで次の質問に移りますが、いずれにしてもひもつきではないという話ですけれども、そうだとしますと、アメリカ合衆国のいまの金の使い道、全体としてどういう方向へ予算が行っているか、このことをやはり見なければ、こっちのひもの端が向こうのひものどこにつながっているかというのはなかなか言いにくいわけですから、問題になると思うのですが、十年の間のことを一々言うのも時間の関係であれですから、一番新しいのを見ますと、一九七四年度の国防費は御案内のとおりに八百十億七千四百万ドル、四年越し初めて八百億ドルをこえたわけですけれども、こういった傾向を示しており、また先ほど来言われておる対外援助にしましても、七四年度の予算では軍事援助が六億ドルから八億ドルに、また経済金融援助も、防衛支持については五億六千三百万ドルから七億八百万ドルと増加しているわけですね。国防費がふえている。軍事援助、海外経済金融援助がふえている。はっきり言えば、ベトナムでどんどん戦争をやって、そこへ金を使っている。南ベトナムに軍隊を派遣して、そこで軍事支出、それに関連した経済支出をふやしている。そういう傾向が少しも改まっていないように思います。そういうふうな海外軍事経済援助が増大しているということについては、これは認識は違っていないと思うのですが、まずこのことを伺っておきたいと思います。政務次官、いかがですか。金を払っている、今度一括返済しようという当の相手は、軍事支出、海外軍事経済援助をふやしている、そういうふうな相手だということは、これは認識に違いありませんか。
  105. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 私も、具体的な数字は存じませんが、ここで私ども持っております数字は、アメリカが世界の各発展途上国に対してどういう援助の実績を持ってきたかという、そういう年次別に見た数字はあるわけでございますが、それを見ますと、やはり金額的には相当の金額援助しておるのでありまして、日本から先ほど来のお話で返還をしてまいりました金を少なくともはるかにオーバーしておるということはもう間違いないのでありまして、ひもつきではないとは言い条、アジアあるいはもう一つ狭く東アジアに対してそれをこえるアメリカ政府の開発援助がある、そういう実績があるということは言えると、こう思うのであります。
  106. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 次官、先ほど金はしるしはついてない、こうおっしゃったのですよ。金にはしるしはついてない、それでは全体として見なければわからぬから全体として見ましょう。全体として見たところの認識が違っておれば次の話にならぬから、まずいまのアメリカの金の使い方はどうでしょうか、ベトナムで戦争をやってそういう軍事支出をふやしているじゃないのか、ヨーロッパに基地を置いて依然としてそういう海外軍事経済侵略での支出をふやしている国じゃありませんか、この認識を伺っているのです。いろいろなことに金を使っておりますよ。それは当然のことでしょうけれども、それを聞いているのじゃなくして、軍事支出をふやしているじゃないか、そしてかいらい政権に対する経済援助をふやしているじゃありませんか。この事実傾向についての御認識を伺っている。
  107. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 私も具体的にどういう数字アメリカが海外援助、軍事援助をしているのかつまびらかにいたしませんから、それについて私がここで、どういう認識を持っているかということについてお尋ねいただいても、御満足のいただけるような御返事は私はできないだろうと思います。ただ私の申し上げているのは、要するにこの問題に関する限り、交換公文にもありまするように、アメリカが東アジアにおける発展途上国に援助はしていく、そういう前提でこの債務日本側が負うた、こういうことだと私は思っておるわけでございます。その限りにおいては、アメリカはそういう方針で来た。金にしるしのついてないことは、そういうことも申し上げたのでありますけれども、つまり、ひもつきでないとすればそういうことにならざるを得ない、こう思うわけなんです。ひもつきでないということは、一応交換公文ではどうもそのようでありますので、したがいまして、アメリカが東アジアに対してそういう開発援助を相当の金額をしておるということだけはひとつお認めをいただきたいものだ、こう思うのでございます。
  108. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 いや、その話が、前に大臣がおっしゃったようにきちっと協議ができておれば、そんなに言いやしません。そのことについてはどうも、調査の結果を待たなければなりませんけれども、はっきりした御返事がない。そこで、それじゃ一体どういうことになっておるんですかと言えば、一般的な全体としてのいろいろな金の使い道があるからそれについてはそのつどいろいろ接触、連絡もある、こういう話ですから、そこで、全体の傾向についてお話を進める前に、事実関係の違いがあってはいかぬからということで伺っているのです。  先ほど次官も、経済援助、後進国開発ということで使われておるということをおっしゃったわけですが、しかし、対外支出、対外援助ということになれば、ふえておるのは軍事援助じゃないですか。これはアメリカ自身の資料ではっきりしておるでしょう。防衛支出がふえておるじゃありませんか。そして平和部隊とか食糧援助だとかいうのは減っておるじゃありませんか、七三年に比べて七四年は。だから、いま一括して繰り上げてどさっと返そうという相手が、交換公文にあるような、後進国開発ということで平和的な方向にどんどん金を使うということなのか、あるいは軍事援助だとか防衛支出ということに金を使っておるのか。ひもつきでないとすれば、やはり全体のことを見なければしょうがないから、それについてどうごらんになっているか聞いておるわけです。それについてはよくわからぬとおっしゃることはよもやなかろうと思いますが、もしそうだとすれば、これは局長のほうからアメリカのいまの海外の支出傾向についておっしゃっていただいて、次官のほうからそれに対する政治的な認識を伺いたい。
  109. 林大造

    ○林(大)政府委員 米国の海外収支の傾向でございますけれども……
  110. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 海外収支じゃありませんよ。対外援助です。
  111. 林大造

    ○林(大)政府委員 対外援助関係は、いわゆる経済援助と軍事援助とに分かれるわけでございますが、その経済援助のほうも徐々にふえておりますけれども、同時に軍事関係のも、これからの問題はわかりませんけれども、過去の計数では若干ふえている状況でございます。これは諸物価が上昇もしておりますし、予算全体がふくれ上がっておりますので、若干増加しているのは事実でございます。ただ、最近、アメリカの国際的な支出の関係で特に目立っておりますのは、輸入関係の支出が著しく、輸出関係の収入を上回っているというのが最近の状況でございますことは、先生よく御案内のとおりでございます。
  112. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 交換公文では、国際収支全体についてどういう目的でもということではなくて、先ほどもはっきりおっしゃったように、使途は限られておるわけです、後進国援助ということで。だとすれば、これは対外援助というワク内で傾向を見るべきでしょう。貿易収支がどうであるかということは、これは直接関係ありませんよね。ですから、そういう点からいいますと、いま軍事援助のほうはずいぶん遠慮をして若干と、こうおっしゃったのですけれども、しかし、これは依然としてふえ続けているじゃありませんか。しかもアメリカ政府機関、たとえば大統領諮問機関などは、この点について、赤字の大きな原因は軍事援助支出にある、あるいは海外援助にある、こういうふうに言い切っているじゃありませんか。ですから、アメリカの資料によってもそういうことが指摘でき、またアメリカの機関もそういうふうに見ておるときに、繰り上げてそこへずっと返すというのは、とりもなおさずアメリカの手によって軍事支出に回る、そういうふうな方向勢い向いているというふうに思うのですけれども、この点は次官はどういうふうにお考えになりますか。
  113. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 繰り返し申し上げるようですけれどもアメリカの対外援助の中で、経済援助も確かにふえておる。そのふえておるのが、実質的にふえておるのか、あるいはいま局長が言いましたように、要するに物価が上がったとかいろいろな事情のためにただ名目的にふえてきたのか、ここのところは若干わからぬところがございますけれども、少なくとも東アジアに対するアメリカ経済援助というものは、やはり逐次ふえてきつつある、こういうことは言えると思うのです。  日本が返します金というのは、日本側にとってはまことに貴重な金でありますから、その行き先がどこに行くのだろうかということは非常に大きな関心事でありますとともに、アメリカ一つの国の政策としていろいろなことをやる、これは国のポリシーでありますから、いろいろその国々によってあると思うのです。これがアメリカの、端的に申せばそういう軍事援助に大きく使われる、そういう資金になるということならば、これは日本側としても大きな関心を持たなければならぬわけでありますけれども、少なくも、いま東アジアに経済援助としてアメリカが出しておる金は、日本が返しておる金を上回ってとにかく出しておるという事実にひとつ着目をして、少なくもそういう東アジアの経済援助をやっていくということについて両国は全く合意をいたしておりまして、そういう点については随時ひとつ協議をしていきましょう、こういう交換公文になっておる、そういう趣旨でこの交換公文ができたものと私は理解をするのでございます。
  114. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 そのとおりになっておらぬじゃないかということを申し上げておるのです。いま経済援助にも使われておる、こういう話ですけれども、しかし七三年と七四年の対外援助を比較してみますと、軍事援助ははっきりふえていますよね。これは否定しようがない。経済援助金融援助の中で、ふえているのは防衛支持援助ですよ。開発援助、緊急基金、平和部隊、これはいずれも減っているのです。経済援助の中で、防衛支持援助の中で、防衛支持援助だけがふえている。そしてその他の、食糧だとかあるいはその他の海外経費では二千八百万ドルも減っているのです。  ですから、いま次官は経済援助もふえている、軍事援助は若干だ、こうおっしゃるけれども、しかし事実の示すところは、ふえているのは軍事援助であり、防衛関係であり、いわゆる後進国の開発関係で世上いわれるような直接軍事目的にかかわりないものは、むしろ減っている。ですから、返す場合に、十何年前の交換公文一つをたよりに、話も全然しないで相手のほうがそういうことをやっているのに、そのことにも目をつぶり、もう何に使われようととにかく返すのです、これでは責任のある処置とはいえないじゃないでしょうか。このことを申し上げているわけです。  時間が来ましたので、最後に一言だけ、いままで申し上げたことを全部含めてお尋ねをしておきたいのですが、今度の国際通貨危機に関するいろんな会合で、愛知大蔵大臣が三月二十六日にステートメントを会議の席上で読み上げられて、「今日の世界において、経済における節度の欠如が一般化しているかのごとくうかがわれる点を憂慮している。最近の通貨危機も、主として多年にわたる節度欠如の結果にほかならない。」こういうことを言っておるのですけれども、これは、見方、聞きようによっては人さまざまなとり方がいろいろできるかと思うのですけれども、いまこの一括返済という法案を出された時点で、当の相手方の傾向についていまいろいろ指摘をしたわけですけれども、この点について、節度の欠如との関係ですね、これについてはどういうようにお考えになっているか、政務次官、いかがでしょうか。
  115. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 私もこういうステートメントの内容の意味まであまりよく存じませんけれども、少なくもこの文面にあらわれているところによれば、今日経済の分野における節度を回復しろという意味は、要するに、今日のこういう世界の経済、通貨の状況を招いた一つの重大なる責任というものをアメリカ側にもひとつ自覚をさせ、そしてまた今後の世界におけるインフレというものをどう克服していくかということについて、ひとつ節度のある経済の運営をしていこうではありませんか、そういう世界的なインフレというものを克服する上において、それぞれ経済の分野で節度のある考え方、行動をしていこうじゃありませんか、そういうことを述べられたものと、私は私なりに理解するわけであります。
  116. 荒木宏

    ○荒木(宏)委員 五時五分というお話ですので、最後にはっきり申し上げておきたいのですけれども、今度の機会に、前にいろいろ論議されたガリオアの性質ですね、占領目的のために出されたものではないか、また、わが国はいろいろ分担金も負担しておったではないか、西ドイツに比べて少ないとかいろんな論議がありましたけれども、しかし、ずいぶんと金も出しておるではないか。それ以上に、第二次世界大戦のときには多くの国民は非常に悲惨な思いをし、大きな被害を受けました。しかも、政府はその中で阿波丸のあの請求権の放棄に見られるような形で、それらの権利を全部放棄をし、それと合わせてこれの債務性を確認するかのような経緯があった。プレガリオアの時代には金額がどうなっておったか、もうわからぬというふうなことも御案内のとおりです。  ですから、そういった十年前の論議をもう一度むし返すという意味ではなくて、いまこの時点でアメリカとの関係をもう一度はっきりと、論議をされた精神に立って見返すことが必要ではないか。  ですから、今度の金の返済については、私ども、もともとこういうものは払うべきものではないし、いわんや一括返済ということには反対でありますけれども、しかし、こういったところで、いま次官がおっしゃった節度の問題についてはっきりと、軍事、経済支出の問題も含めて、協議というものをもっとしっかりとすべきではないか。こういうことで、先ほどお願いをした資料の提出を明日していただくことを重ねて確認をいたしまして、ちょうど五時五分になりましたから、私の質問をこれで終わらせていただきます。
  117. 山本幸雄

    山本(幸)政府委員 ただいま資料というお話でございましたが、できるだけその方向考えますが、口頭で御返事させていただく場合もあり得るということで、御了承願っておきたい、こう思います。
  118. 大村襄治

    大村委員長代理 次回は、明十八日水曜日、午前十時理事会、十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時七分散会      ————◇—————