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佐藤(観)
委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となっております
入場税法の一部を
改正する
法律案及び同案に対する自由民主党
提案の修正案に反対、日本社会党、日本共産党・革新共同、公明党、民社党の四党共同
提案の修正案に賛成、
物品税法の一部を
改正する
法律案及び同案に対する修正案に反対の意向を表明いたします。
まず、
入場税につきましては、われわれは従来から、このような
大衆課税は基本的に撤廃すべきものであるという
考え方を明らかにしてまいりました。
すでに御承知のように、今回の
政府案は、千円または二千円以下の
映画、
演劇等の
入場料金に対する
税率を五%に
引き下げようとするものでありますが、
免税点のほうには全然手をつけず、依然として百円のまま据え置こうとしております。われわれが
入場税を
大衆課税とする理由の
一つは、この
入場料金の現状からかけ離れた時代錯誤的な低い
免税点にもあるのでありまして、これでは諸物価
上昇の著しい今日、何のための
免税点か、全くその存在の意義をなしていないのであります。
免税点が少額不追求の
趣旨から出ているという
政府の
説明は、全くの官僚的な発想にすぎません。小づかいをさいて
入場する
子供料金にまで課税するという
入場税の
大衆課税的
性格は、今回の
改正によっていささかも改善されたといえないのであります。大いに努力してここまでの
減税に踏み切ったという
説明にしては、あまりにもお粗末というべきであります。
われわれが
入場税を撤廃すべしとする理由については、
先ほどの修正案の
説明に述べられておりますので、多くは申し上げませんが、口を開けば福祉社会の建設、人間性の回復、芸術文化の振興を唱える
政府が、財政的にも八十六億にしかならない
入場税に今日まだこだわっているのは、全く筋の通らない話で、矛盾もはなはだしいといわざるを得ません。われわれは、このような
入場税の存続を
前提として
提案された
政府案及び自民党の修正案に反対し、
入場税の撤廃を進める四党共同
提案の修正案に賛成するものであります。
次に、物品税につきましては、私
どもも、ここ数年来、その全般にわたる基本的な見直しを強く要求し、
政府もようやく今回重い腰をあげたというところでありますが、具体的な
改正の内容は、高級消費財偏重の
減税案であって、
大衆消費物品の負担軽減を
主張したわれわれとしては、きわめて
不満足の意向を表明せざるを得ないのであります。
税率の
改正について言うならば、一方において、ダイヤモンドや貴金属製品あるいはゴルフ用具、大型乗用車等の豪奢的物品については、製造
段階税率に換算して一〇%もの
引き下げを行ないながら、ストーブ、電気掃除機、電気洗たく機などの
大衆消費物品についてはその半分の五%、扇風機、卓上用の電気スタンドなど数多い必需品的なものに至っては全然手がつけられていないのであります。これまでの
政府の
答弁などから判断するならば、このような
改正は、最近における消費の一般化や高級化等の傾向に即応するという
考え方にあると思われますが、今日といえ
ども、ダイヤモンドや高級乗用車の奢侈性が薄れたと誰が
認めるでありましょう。特に、高級乗用車については、対外的な理由があるにせよ、別途、租税特別措置法により、さらに
減税措置が講ぜられるに至っては、まさに何をかいわんやであります。高級消費財の軽減をはかり、きりだんすを非課税とする不公平をそのまま放置するような余裕があるならば生活必需品化した数多くの物品に対する課税をまず廃止すべきであります。
また、
政府は、一方において付加価値税等の一般
消費税の導入は慎重に取り扱うと再三言明しておきながら、今回のこのような
税率の平準化によって、事実上その布石を置くがごとき措置をとることは、われわれの絶対に見のがすことのできないところであります。
さらにまた、この際
政府に対し、特に
検討を要求したいことは、政令のあり方の問題であります。
現在、物品税の政令においては、物品税の課税
対象について、その定義をはじめ、ほとんどの物品について
免税点の
金額や規格による非課税等の規定を置いており、
法律上の課税物品が国会の意思によって決定されても、その事実上の課否の決定は、
政府の自由裁量にまかされるという構成になっているのであります。
たとえこの
免税点や規格非課税の措置が一般消費者にとって、あるいは中小企業対策等のため、かりに許されるとしても、現在のような構成のあり方が妥当であるかどうか、きわめて疑問のあるところであります。
あらためて申し上げるまでもなく、租税
法律主義を規定する憲法の八十四条は、税法上の基本的事項である納税義務者、課税物件、課税標準、
税率等をはじめ、不服の申し立てや訴訟、罰則に至るまで、税法上の権利義務の一切について、必ず
法律をもって規定すべきことを厳格に要求しているのでありまして、かりに政令に委任する場合においても、それはきわめて必要最小限のもののみに限って許されるのであります。この点は単に学説のみならず、いくつかの判例においても明らかなところであります。
いやしくも、このような租税
法律主義のたてまえをとるわが国の税制の中において、行
政府の独断で事実上の課否が決定できるという現在の
法律、政令の構成は絶対に
認められません。
今回の
改正においても、相当の品目数にわたる
免税点の
引き上げや、新規課税、課税の廃止等大幅な、ある
意味では
法律以上に内容のある
改正が、
政府限りで行なわれようとしております。この機会に
政府に対し厳重な警告を発するとともに、
法律上の政令委任、特に別表の構成のあり方を含めて、基本的な政令のあり方について、早急に再
検討を行なうよう強く要請しておきます。
なお、最後に、
入場税、物品税の本質から見て、今回の
減税の
効果は小なりといえ
ども、すべて最終消費者である国民に還元されべきでありますので、
政府においても、行政指導等の面で十分な配慮を払い、いやしくも中間の業者によってこれが吸収されてしまうようなことのないよう、特に要望して私の討論を終わります。(拍手)