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高木(文)
政府委員 いま江口次長から御
説明いたしました大工、左官等のいわゆる一人親方問題というのは、昭和三十年代に当
委員会において非常に
議論がございまして、当
委員会での
議論に基づきまして実態調査したものが、その後ずっと続いて今日の通達になっておるわけでございますが、この
考え方の基本は、従来はどっちかというとむしろ事業扱いになっておったわけでございます。事業扱いになっておりましたが、請負の場合は明らかに事業でありますけれ
ども、請負でない場合については、実態はむしろ
給与のほうに近いのじゃないか。
給与のほうに近いのであれば、大工さんや左官屋さんたちについても、
給与所得控除の適用を受けることによって有利に働かしたらどうだという
議論から、当時の
議論が起こってきたわけであります。ところが、いまの阿部
委員の御質問のほうは、
給与では不利であるから、むしろ逆に事業のほうへ持っていったらどうだ、こういう御主張のように思えるわけなのでありまして、それはそれなりにまた
一つの別な問題があるのかもしれないと思いますが、これは実は雇用形態が変わってきて、先ほど来御
指摘のように、請負業者が出てきて、多くの大工さんがまたその請負業者から一種の下請の形で仕事をするが、その下請の形というのは、必ずしも包括契約ではなくて、日給月給のようなことになっている場合等、いろいろな場合がございますから、確かにおっしゃるように、過去においては、むしろ
給与に持っていくほうが有利だからというので、
給与にならないかという
議論を展開してきたわけですが、逆に今度は事業に持っていくことで境目はどこに見るかという御
議論だと思います。この御
議論も、ここですぐにはなかなか回答を申し上げられませんが、いま御
指摘のような形の大工さんというものが一体どういう
収入形態になっており、契約形態になっており、経営の形態になっておるかということを、場合によりましたならば、もう少し詳細にお指図をいただいて
研究するというようなことが必要ではないかと思っております。
なお、
給与所得控除が概算
経費控除であるということの関連で、
給与所得者については、ただいま大工道具の問題をおあげになりましたけれ
ども、
給与所得者の中でどうしても道具が要る、その道具が非常に値段が高いというようなことから、いまの
給与所得控除ではまかない切れないのではないかということで、しばしば
指摘を受けている事例がございます。たとえば、非常に特殊な例で恐縮でございますが、音楽
関係の教師というような場合、たとえば楽器であるとか楽譜であるとか、そういうこととの関連で、とても普通の概算
経費では引かれないというような
議論もあることがあります。ただいま御
指摘の大工道具の問題は、あるいはそれとやや似て非なるかと思いますが、ここのところは非常に事業と
給与との境目の問題でございまして、実態に合った処理をすることにやぶさかではございませんが、何ぶん対象人員の多い職種の問題でございますので、個別に妥当性を求めると同時に、相互間の公平性という問題もございますから、何か基準をつくって処理をしなければならないということであろうと思います。いずれにしても、御
指摘の点はもう少し勉強させていただきまして、場合によったら何か新しい
考え方を立てなければならないかもしれない分野が、この分野にもまだ残っているかもしれないという感じがいたします。