○田中
内閣総理大臣 順次
お答えいたします。
税に対して不公平感、重税感というものを持っているということは、もうよろしくないことでございまして、不公平感と重税感というものをなくするということが
税制改正の主眼でなければならない、こういうことで、私も同感でございます。
それから、
課税最低限というものはどういうことできめるのかということは、
一つには国際比較がございます。それからもう
一つは生計費からはじき出して
課税最低限をきめるということであります。三点目にいえば、これはよその国の比較だけではなく、日本の理想的、あるべき姿に、年次的にどのようにして近づけていくかという三点から
課税最低限というものはきめられていくわけでございます。そういう
意味で、
課税最低限の
引き上げというものに対しては、十万円上げれば二千三百億円という財源を必要としますから、御
指摘になっておるように、直ちに百五十万円まで上げるということは、なかなかむずかしいことであっても、十分これからの
税制改正においても考えてまいりたいということで御理解をいただきたいと思います。
それから第二は、事業主報酬
制度等を認めたということは理解するが、
サラリーマンの問題に対してどう考えるかという問題に対しては、これは先ほ
どもちょっと
議論が出ましたが、この事業主報酬
制度だけではなく、医師に対して特別
控除が認められておるとか、それから
必要経費が認められておるのにかかわらず、
サラリーマンに対しては、低
所得者は別でありますが、
サラリーマンといっても、
サラリーマンイコール
給与所得者と考えれば、低
所得者だけではなくて、中堅
所得者もみんな
サラリーマンに入るわけであります。われわれもその
意味では入るかもしれません。
そういう
意味で、いわゆる
サラリーマンというよりも、もっと詰めて勤労者の納得を得られるようなものというのは、相手が恩典を受けるからけしからぬというのではなく、相手が恩典を受けるならば、みずからも恩典を受けるように、いいほうに持っていくことが望ましいわけでありまして、そういう
意味で橋本幹事長が述べたように、やはりそれなりの
必要経費はあるのだし、世の中に生きていくために、純風美俗をつちかっていくためにも、計上できないような支出も事実あるのだ。そういう
意味で、
サラリーマンも課長になれば係長よりも、それから部長になれば課長よりも出費は必ずかかるわけであります。ところが、現在においてはどうかというと、課長と銀座へ飲みに行っても、課長は一万円しか持っていない。新しい入社の
独身者は十万円——十万円は大きいかもしれませんが、五万円は持っている。実際問題としてもそれじゃだめなんです。
そういう
意味で、一律
控除というようなものを考えられないかということでまじめに検討しているのです。事実、まじめに検討いたしております。これは
必要経費という面からでもいいと思いますし、それは当然、社会的な
生活を維持していくための
必要経費であるということで一律のものが考えられないのか、低
所得者に高くてもかまいません、そういうものが考えられないかということを考えております。
それから、
未成年者の
給与所得というものに対しては、これはひとつ
非課税にしてはどうかということを先ほどからも言われておりますが、
未成年者というだけで
控除をするということになるのか、
控除をするとするならば、
未成年者は人生における修養期であります、勉学期であります。ですから、学生に対して
控除をしなさいというと、これは学校に行けない人もあるのだからということで、なかなか反対はあります。ただ、人生何びとも通る
過程において修養しなければならない。それは独学でも学校で勉強するのでも同じであります。そういう
意味で、いわゆる修養費、勉学費というようなことで学生とか区別しないで一定の
控除ができないかということは、私も大蔵大臣時代からずっと考え続けてきておる問題でございます。十年の余たっても結論が出ないというのは、はなはだ遺憾なことでございますが、抜本的な改正という場合には、そういう面から取り上げるべき問題だと思います。そうでないと、未成年なるがゆえにといっても、憲法上とかいろいろな問題が未成年といえ
ども違っておりますから、そういう区別を
税法上一体どうできるのかという問題もありますので、
未成年者、成年に達せざる人といえば、修学している人も修学していない人も、一様にどのような
控除の
制度があるかということが勉強課題であろうと思います。
法人税率が低い、これは先ほどから申し上げておるとおり、現在の暫定
税率一・七五を加えて三六・七五になっているわけでありまして、来年の四月三十日にはこれは切れるわけであります。そういうことでございますので、来年度この問題は当然検討さるべき問題である、こう考えております。暫定
税率を基本
税率に繰り入れるという問題も
一つございますが、それだけで済むのか済まぬのかという問題も当然あります。暫定
税率がある
現状に対しても、御不満があるわけでございますし、また歳出の必要性も増大するわけでありますので、そういう面では考えていかなければならない問題だと理解しております。
法人税に対して累進
税率を採用せよという
議論がたくさんございますが、これはなかなかむずかしいのです。大体
法人税にはなじまないのです。相続税とか
個人の
所得税とかいうものに対しては、これは
所得の再配分ということで考えられる問題でございますが、
法人は株主も非常に多様でありますし、
法人自体に累進
税率をかけることは、
制度上なかなかなじまないということがあることをひとつ御理解いただきたい。
それから、財政と
税制というものに対する政策上の問題に対しての御
質問が第五点でございましたが、これは私は常に言っておるわけでございますが、財政という現ナマ
中心主義というものは、はっきりいうと撤回する方式でございます。だから、財政でやらなければならないものは、社会
保障とか、直接お互いの
税金によってまかなわなければならない重度心身障害児とか寝たきり老人とか、社会連帯の公の責任で必ず責任を果たさなければならないというものは、これは財政でやる以外にはないのですが、その他のものはだんだん補完的な任務を持つということで、金融を合わせてまいっておるわけであります。そこで財投
制度ができたわけであります。そういう
意味で、財投も大きくなったので、今度は国会の議決事項にしようというふうに転換してきておることは御
承知のとおりでございます。
ですから、国が全部土地を買って宅地を提供する、うちをつくってやるよりも、土地を持っている人やその上に借地権を持っている人が、みずからの力でもって貸し家や分譲住宅を提供できるとすれば、同じ金で倍の戸数が提供できるわけでございますから、先進工業国においてなすことは、財政
中心主義よりも他の方法も加味していくべきであるということは、これはもう避けがたい事実であるし、当然の方向だと思うのです。
そういう
意味で、税は財政の補完的任務だということが長らくいわれてきましたが、今度の国土改造政策を行なうような場合には、やはり税を財政というものは二本の柱になり、金融を入れれば三本の柱になって、その優劣はつけがたいような
状態である。場合によっては、税が先行しなければならないということもあり得る。これは過去において、輸出力増強などについては、財政ではなくて
税制が主体になってきて、今日の国際競争力ができたわけでありますから、そういう
意味から考えてみても、税というものはいままでの財政の補完的な任務ではなくて、税が先行する場合毛ある。
そうであったならば、なぜ追い出し税をやらなかったかということでありますが、追い出し税は受けざらがなかったので、受けざらがなくて取るとすれば苛斂誅求になるわけであります。これは全くそういうことになるわけです。ですから、国土開発庁や国土総合開発法やいろいろなもので受けざらをつくっておいて、それでもなおおいでにならないならば、こちらのほうで追い出し税というものでいきます。これは追い出し税が先行すべきではないという問題があったわけであります。もう
一つは、自治省は事務所税をかけたいとか、いろいろな大都市における財源確保の問題がありましたので、そういうものと紛淆しては困るということで、これを見送ったわけでございますが、こういう問題は、効果が出ない場合には罰を加えるような
税制よりもやはり補助するような
税制が先行するほうがいいということでございまして、実効があがらなければ当然公害税という問題も出てまいりますし、同じ思想でありますから、そういうことになっていくと思います。
誘導税や禁止税というものは各国で使われております。これは自動車の
税金についても日本よりも十倍もよけい取っておって、中距離の貨物は鉄道に移すように西ドイツはやっております。遠距離は船に移すように、日本の遠距離逓減ということと逆の遠距離逓増
制度をとっているわけでございます。それから
税制が誘導、禁止税に入っていく、こういうことでありまして、日本もそういう方向をとらざるを得ないということは言うまでもないことだと思うわけでございます。ですから、今度工場の追い出し税をやらなかったからということですべてを律しないで、これからひとつ御理解を賜わりたい、こう思うわけでございます。
最後は、特別措置の問題でございますが、特別措置は、四十八年度において千六百七十二億円でございます。これは
企業分でございますが、そのうちに大
企業は三百十六億、一八・九%、
個人及び中小
企業は千三百五十六億、八一・一%でございます。中小
企業や
個人に対して代がえをするわけにはまいりませんから、もう少し事態を見ていかなければならないし、場合によっては付加しなければならぬものもあります。しかし大
企業に対する特別措置は漸次改廃の方向にあるということは御理解いただけると思います。特別御
指摘のございました海外市場準備金というものは、中小
企業だけを残して、あとは経過措置を講じておるというのが
現状でございます。