○瀬川参考人
日本証券業協会連合会の瀬川でございます。
委員の皆さま方におかせられましては、平素は何かと証券市場に対しまして御
配慮御指導を賜わりまして、厚く御礼申し上げます。
本日は、証券市場の当面する諸問題につきまして意見を述べよとのことでございますので、いささか所見を述べまして、御参考に供したいと存ずる次第でございます。
証券市場の状況につきましては、ただいま森永東証
理事長から詳細な御説明がございましたので、私はあえて省略させていただきますが、本連合会におきましては、昨年来、
株式市場が著しく活況を呈してまいりましたので、累次にわたり証券会社に対し、経営
姿勢についての自粛を求めてきたところでございます。特に本年一月に入りまして、株価が急速に上昇し、ややもすれば過熱化の
傾向が見えてまいりましたので、全国の証券会社に対しまして、積極的な営業活動を抑制し、市場の鎮静化をはかるよう協力方を
要請したのでございますが、さらに二月二十一日には、株価が、
わが国の当面する内外経済情勢から見て、不安定な様相を示していることから見まして、証券会社に対し、さらに一そうの自粛を
要請するとともに、一般投資家をはじめ
政府、
産業界、金融界など
関係各方面におかせられても、証券市場の現状について十分な御認識のもとに、慎重な
配慮をいたされますよう、特にお願いをした次第でございます。
申すまでもなく、証券市場は、金融市場の一環といたしまして、
産業資金の調達のため重要な
役割りを果たしておりますとともに、
国民の健全な資産運用の場として、その責務はいよいよ重要性を加えておるのでございます。
特に
わが国経済が高い成長を遂げ、個人の金融資産が増大してまいりますと、その資産選好は、より有利な、より利回りの高いものへと
重点が移ってまいるのでございます。これは、ストックの多い欧米先進国の例を見ましても明らかなことでございまして、今後
国民の蓄積が増大するに従いまして、資産運用の対象としての証券はますますウエートを高めてまいるものと存ずるのでございます。また、これに相応しまして、証券の発行形態も多様化し、企業金融につきましても、証券市場を通ずる資金調達は一段と重要性を加えてくるものと存ずる次第でございます。今日の証券市場はその過渡期にあるものと存じます。証券市場が安定的な成長を遂げ、
国民経済の発展に真に寄与していくためには、
国民各層から信頼される健全な市場として、円滑にその機能を発揮していかなければならないと存ずるのでございます。
近年、証券市場の規模は急速に
拡大いたしましたが、これは証券市場が
わが国経済の
拡大に比して立ちおくれていたということを考慮いたしますと、当然の流れであると存ずるのでございますが、これが行き過ぎまして投機的な風潮が強くなることは、証券市場の健全な発展をそこなう結果となります。特に最近に至りまして、証券市場をめぐって不祥事が見られ、証券界に対する世間の批判が高まっておりますことは、まことに遺憾なことであり、証券業に携わる者の一員といたしまして深く反省している次第でございます。
本連合会におきましては、
証券取引に関する信義則を助長し、投資者の
保護に資するため、公正慣習規則、統一慣習規則等諸規則を制定いたしまして、その励行をはかるとともに、証券従業員の資質
向上のための教育訓練を実施し、また試験制度を設くるなど、諸般の施策を講じてまいったのでございます。
私
ども証券界といたしましては、最近の事例にかんがみまして、さらにえりを正して、かかる事態の生じないよう自粛自戒してまいりたいと存ずるのでございます。
これに関連いたしまして、私
どもの
考えております方策の一端を申し述べさせていただきたいと存ずるのでございます。
その第一は、時価発行に関する問題でございます。
時価発行は昨年来著しい増加を見せまして、さらに時価転換社債の発行も加わり、これが企業の有力な資金調達の方途として注目を浴びるに至ったのでございます。時価発行の採用によりまして証券市場を通ずる資金調達は、長年にわたる額面発行による増資形態から脱却いたし、欧米諸国の企業と同じ
立場に立った新しい資金調達の方策となっているのでございます。しかしながら、これが定着していくためには、漸進的に、しかも着実に行なわれるべきでございまして、その乱用は避けなければならないものと存じます。
このような
観点から、証券界といたしましては、昨年六月以来そのルールづくりについて
検討を行なってまいりまして、十二月には新しいルールを設けて実施したのでございます。さらに本年の二月に至りましてその一部を
改正いたしまして、現在実施に移しているところでございます。
産業界におかれても、時価発行によって得たプレミアムは株主のものであるということを十分認識くだされ、その運用については慎重な
配慮をお願いいたしたいのでございます。
また、時価発行に関連いたしまして、株価形成に問題があるのではないかという御批判もございますが、証券業界といたしましては、取引所を中心といたしまして、より公正な株価が形成されますよう、絶えず努力を重ねているところでございます。
なお、最近協同飼料の株価の形成につきまして問題が生じておりますが、この点につきましては、当局が具体的な内容を
調査されておりますので、その結論をも参加して、さらに一そう公正な株価形成のための具体的諸施策を
検討してまいりたいと存じておるのでございます。
また、発行企業の内容に対するアンダーライターといたしましての審査機能は、公認会計士による監査と相まちまして重要な意義を持つものでございまして、鋭意その充実につとめているところでございます。
なお、アンダーライター業務をブローカー・ディーラー業務と分離して、両者の情報交換を遮断すべきであるという御意見もございますが、この点につきましては、証券会社の業務運営の
観点などから、なお十分に
検討を進め、このような御
指摘を受けることのないよう、適切な方策を講じてまいりたいと存じておる次第でございます。
次に、公社債市場の整備に関する問題でございます。
近年、金融の緩和基調を背景といたしまして公社債の流通利回りが低下し、発行利回りとの乖離が解消して、公社債市場は正常化の
方向に向かい、また、国債を中心とする公社債の発行量の増大などによりまして、資本市場に占める公社債市場のウエートは今後いよいよ高まってくるものと存ずるのでございます。このような動向に即応いたしまして、
証券取引審議会におきましては、一昨年来公社債市場の
あり方について
検討を進められ、先般
答申が行なわれたのでございます。私
ども証券界といたしましては、この
答申の趣旨に沿い、流通市場の整備、引き受け機能の充実など具体策について現在積極的に
検討を進めているところでございます。
第三に、証券市場の国際化の問題でございます。
わが国の国際的地位の
向上に伴いまして、近年証券市場の国際化は急速に進展いたしております。一昨年、個人によりますところの外国株式及び公社債の取得が自由化されました。また昨年末には、外国投資信託証券の取得が自由化されました。さらに取引所におきましては現在外国証券の上場について
検討が行なわれております。また、円建ての債券の発行も活発に行なわれております。今後
わが国が、資本
輸出国といたしまして国際経済社会に占める地位が
向上するに伴い、外国証券投資は大きく
拡大し、国際的資本交流の場として、証券市場の
役割りはいよいよ高まってまいるものと存ずるのでございます。
証券界といたしましては、これまで投資者
保護の
観点から外国証券投資に関するルールづくりを行ない、その円滑化をはかってまいったのでございますが、今後とも、情勢の変化に応じ適切な方策を講じるよう努力を重ねていく所存でございます。
また、資本の国際交流を一そう促進していくためには、有価証券に関する法制、慣習等が諸外国のそれと調和のとれたものとなる必要がございます。皆さま方の十分な御理解、御協力をお願いいたす次第でございます。
以上、当面の諸問題につきまして、若干所見を述べさせていただいたのでございますが、私
ども証券業に携わるものといたしましては、この際、
姿勢を正して証券界に課せられた使命の遂行に邁進していく所存でございます。
本連合会といたしましては、自主規制機能を一そう強化するため、本年七月を目途といたしまして全国の証券会社を直接会員とする単一の証券業協会の設立を実現すべく、鋭意準備を進めているところでございます。これを契機といたしまして、証券会社に対する法令順守の徹底、証券従業員の資質の
向上、証券会社に対する監査
体制の充実をはかるなど、証券業協会としての機能の発揮につとめてまいる所存でございます。
証券会社は、おかげをもちまして、近年その経営基盤が著しく強化されておりますが、さらにその一そうの充実をはかるとともに、経営の合理化に努力を重ね、一般投資者への適切な情報提供など、投資家に対するサービスの
向上につとめているところでございます。
諸
先生方におかせられましては、証券業界の現状を深く認識くだされ、今後とも、証券市場の安定的な成長発展のため格段の御
配慮を賜わりますようお願い申し上げる次第でございます。
以上、簡単でございますが、私の陳述を終わらせていただきたいと存じます。ありがとうございました。