○阿部(助)
委員 私は、この
大蔵委員会に所属いたしましてからずっと、一昨年のニクソン声明のときまで、いつでも
大蔵省の皆さんから
お話を聞くのは、
日本の企業の国際体質を強化しなければいかぬ、国際競争力を強めなければいかぬということを絶えず聞かされてきたわけであります。そしてそのために、もうここで私は例をあげれば切りがないのでありますが、財政、金融、そして税制、私に言わせれば、あらゆる面からの努力を払って、今日ドルがたまって困るというほど大企業の競争力はついてきたわけであります。しかしそれに比べると、この農業というものに対する
政府の努力というものは、あまりにも少な過ぎたのではないだろうかという感じがするわけであります。
具体的な例をあげますれば、たとえば農業用のダムをつくると言う。大きくいえば愛知用水もそのとおりだと思うのですけれ
ども、農業用水と銘を打ってつくったのだけれ
ども、今日は名古屋地区への工業用水に転換をしておるじゃないか。私のところもダムをつくっておる。これは私は何べんか
指摘をしたけれ
ども、絶対に農業用水でございますということで農民の承諾を受けて、農民の納得の上で建設が始まった、湛水を始める時点になると、今度はその水の一部は都市への水道の用水だということで、これが何がしかの負担はするけれ
ども、給水に、飲み水に回ってしまう。そして今度はだんだん水路ができ始めるころになると、一部は工場用水に使う、水を捨てるのはもったいないから工場用水に使うんだ、こういうのでありますが、今日の農業は、米価はほとんど上がらない、据え置きだ、農業収入はさっぱりなくなる、そういう
段階でなおかつ限られた農業に十何億という農民負担。
政府は国費で六割でありますから、他の四割は地方負担。私の新潟県はその四割のうちで県が二割、農民が二割ということになっておる。その二割で十七、八億の負担が農民にかかる。そうすると、農民のほうでは、もうこれ以上借金には耐えられないということで、せっかくダムをつくり用水を引こうという
段階で、これはごめんこうむりたいという意見が出てくる。これは当然のことであります。いま全国的に見ても、基盤整備反対という農民は、ほんとうはやりたいけれ
ども借金がこわいから、これはやりたくないということになっておる。そういう問題がいまたいへんに出ておるわけです。
ところが、私のところで片一方では新都市計画による東工業港という港をつくっておるけれ
ども、これには皆さんのほうでは予算まるまるつけて、要求額どおり毎年予算がついて、国の金で港ができていく。工業用道路は、まだ自動車はさっぱり通らないけれ
ども、たいへんりっぱな広い道路ができていく。そして土地の基盤整備は県が担当するという形で、ある
意味でいえば企業の場合には至れり尽せり。これは国や県の力で整備が行なわれるけれ
ども、農民の場合には、どっちかといえば、農民のための用水でございますといって農民負担。貧乏な
生活、作付減反だ何だということで苦しい農民に負担をさせながら、でき上がる
段階では、これは都市への給水だ、工場用水だ、こういうのでは、先ほど
農林省の方、国際競争力をつけるために努力しておりますと言うけれ
ども、一体何が努力なんだ、こう言いたくなるわけですが、その辺はどうなんですか。